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1956-04-19 第24回国会 参議院 農林水産委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十九日(木曜日)    午前十時五十七分開会     —————————————   委員の異動 四月十八日委員奥むめお辞任につ き、その補欠として井野碩哉君議長 において指名した。 本日委員秋山俊一郎君、雨森常夫君、 池田宇右衞門君、長谷山行毅君、江田 三郎君及び井野碩哉君辞任につき、そ の補欠として井上清一君、館哲二君、 宮澤喜一君、小滝彬君、亀田得治君及 び奥むめお君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            青山 正一君            重政 庸徳君            鈴木 強平君            戸叶  武君            三浦 辰雄君    委員            井上 清一君            佐藤清一郎君            関根 久藏君            小滝  彬君            館  哲二君            宮澤 喜一君            宮本 邦彦君            亀田 得治君            河合 義一君            清澤 俊英君            小林 孝平君            溝口 三郎君            森 八三一君            千田  正君   政府委員    農林政務次官  大石 武一君    農林省農地局長 小倉 武一君    林野庁長官   石谷 憲男君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君   説明員    農林大臣官房文    書課長     村田 豊三君    林野庁林政部長 奥原日出男君    水産庁生産部漁    船課長     稻村 桂吾君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○森林開発公団法案内閣提出、衆議  院送付) ○農林水産政策に関する調査の件  (北太平洋オットセイ会議に関する  件)  (漁船の検査に関する件)  (農林省設置法の改正に関する件)  (農地問題に関する件) ○理事辞任及び補欠互選     —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず委員の変更について御報告いたします。昨十八日奥むめお君が辞任され井野碩哉君が選任され、本日井野碩哉君秋山俊一郎君及び江田三郎君が辞任され、奥むめお君、井上清一君及び亀田得治君が選任されました。     —————————————
  3. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 森林開発公団法案内閣提出衆議院送付)を議題にいたします。本法律案について、前回に引続いて御質疑の向きは御質疑を願います。
  4. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 私先般来やむを得ない事情でこの席に出なかったのでありますが、質疑のされました項目だけはメモをもらったので、それについては質問を避けて、まだ質疑をしない部分と思われる問題を一つ伺ってみたいと思います。  この森林開発公団の行う林道開設事業に対しては、国から補助金相当分公団に繰り入れることになっている、このために公共事業費のうちの林道事業が減ずるようなことがないか、つまり、政府法律をもってこの特定地域と申しますか、特殊な地域対象としておくれている開発を促進するということ、これはけっこうな考え方であって、私は第一条に書いてあるような考え方で端的にこの四県関係にとどまらずに、もっと次に第二の地区、第三の地区というようにやっていくのも、おくれている未開発地森林開発については一つの有力な方法であろうと思うから、この考え方自身に私はとかく言うものではないのでありますが、そうかといってこの特定地域を急速に発展するということによって、一般の他の地域における林道開発というものが非常に阻害される、それが非常におくらされて犠牲になるということがあってはならない。林道の重要なことは、これはもう各人皆ひとしく認めるところであって、どの地域でも林道がないために、既開発林分の上に過伐が行われている。森林法相当に制限をしているのだけれども実態はどうも過伐に陥っておるというので、非常に困った問題になっている。でありますから、私はこちらの方を犠牲にしておいて、必要なことであるが、この特定地域開発するということの急なあまり、その他の方を薄くされたのでは困ると思うのですが、それについてはどういうふうに考えておられるのか、こういう点です。
  5. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 御承知のように、現在林道事業公共事業費をもって実施いたしておりますもの、及び長期融資によって推進をいたしておりますもの、それぞれあるのでございまするが、私どもといたしましては、現在の林道事業に対する予算要求考え方といたしまして、少くとも既開発林のいわゆる過伐度というものを現在以上進行せしめないということを一応の目安におきまして、林道予算編成をいたし、予算折衝をいたしておるようなわけであります。御承知のように、昭和二十九年度末におきましていわゆる過伐度は二七五%、それが三十年度末におきましては二八五%、こういうふうに年を追うて上昇いたしておるのでございまするが、これを少くとも現状からさらに過伐の上昇することのないようにというところを一つ目安にしておるわけであります。そういう意味におきまして、三十一年度の予算要求と実際に確保できました予算とを対比いたしてみますというと、おおむね必要な予算要求に対しまして四〇%の事業量確保し得るという予算確保ができたにとどまっておる、こういうような現状でありますので、従いまして、かりに昭和三十一年度以降この事業が新しく加わるといたしました場合におきまして、そういう意味合いにおいて公共事業費にこの問題が大きく影響を及ぼすというふうなことは絶対にあってはならない、かように考えておるわけでございます。ただ、今回問題として取り上げておりまする二つ流域の所属の森林は、いずれも奥地幹線林道というものを開設いたしまする対象でありまするが、これらにつきましては、大体二十八年、二十九年、三十年の三カ年平均九千一百万円くらいの林道費が投ぜられておるわけであります。従いまして、私ども考え方といたしましては、これらの流域というものはひとまず今後の予算編成をいたしまする対象の中から取りのけまして、そうして残るものが今後の予算要求対象になる森林地域というふうに考えまして、必要な林道予算確保に当って参る、かような考え方で進んで参りたいのでございます。
  6. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 そうすると、この二流域分の過去の林道に関しての国の負担分が九千一百万円、その分は場合によっては減るかもしれないけれども、つまり既定の林道経費の構想の中から減るかもしれないけれどもあとは少しも犠牲にすることのないような、さらには林道の額の増加を実現したいと、こういう考えでいるというふうに聞いていいわけですか。
  7. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) ただいま申しました九千一百万円というのは、二十八年度から三十年度に至るこの地域に投じました林道費の総額でありますが、従来からこの程度のものはこの流域に投じておった。しかもこれが全体の公共事業費の一部をなしておったわけであります。従いまして、これらの流域というものは一応今後の予算編成対象からのけられて参る、のけられた他の部分が今後の予算編成対象になり予算要求対象になって参る、こういう考え方で必要な林道予算確保して参りたい、こういう意味でございます。
  8. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 一応わかりますが、とにかく今日問題になっておる森林法実行原資という問題は、いろいろなまだ政府予算的措置が不十分であるからという理由によって厳格な実施というものが確保されない段階であって、その中でも計画的に林道が伸びていかないということが一番の原因のように思われるのであって、ぜひこの点はそういうような考え方でお進めを願いたいと思うのです。  そこでその次にお聞きしたいのですが、この地域のうちいずれも今日の公共団体財政がなかなか容易ではありませんが、そうして奈良県なども最近ようやく結論がついたようでありますが、木材伐採税を新たに自治庁の許可を受けて任意課税——任意課税といいますか、法定外課税として取ろうとしておる。予算にすでに二千万円を組んで、そうして県会としては大もめにもめて、とうとう森林所有者諸君の反対、しかも自治庁の見解の今木材引取税というものを取っているその同じ伐採対象の木をまたも理由にして木材伐採税立木伐採税は好まないといったような態度にとうとう屈伏をして、県当局は、あるいは県議会は引っ込めて、今度は寄付金程度でことしの予算の欠陥を埋めたいなどというようなところまで行っているのであって、徳島県なども相当に赤字としては有名な一つなのであって、こういうふうなところに対してこういったさきほど来のお話しのような異常な何と申しますか、熱意で、おくれている森林開発をやろうというこれはけっこうなんだが、その県の負担分ですね、こういった県の負担分については県の財政再建計画といったようなものに当然取り入れて考えなきゃならぬ。自治庁などともこれは御相談になってのことだろうと私は思うのだけれども、その経過はどんなふうだったですか。
  9. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 林道開設事業の場合におきましては、県の負担事業費の一割ということに相なっておるわけでございます。それから造林事業の場合におきましても県の負担は一割ということになっておるわけでありまして、それぞれ事業費の一割相当額県負担ということになります。従いまして、現在非常に財政事情の窮迫いたしております県の事情からいたしまするというと、これだけのものを相当長期にわたりまして負担をするということにつきましては、いろいろ問題があるわけでございます。従いまして、その点につきましては各県別県当局と十分相談いたし、さらに自治庁との間にも十分に連絡をいたしまして、そういう意味合い連絡は完全につけた上で提案をいたしたわけでございます。
  10. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 また、熊野川流域関西地方での電源開発上重要な地域であるのであって、森林開発電源開発と総合的な実施でなければむだが多い。ぜひ総合的な観点の上に立った計画でなければならない。このことは当然森林開発にも有利であると考えられるのであって、先般この委員会でもそういった特定地域総合開発、ことに電源開発との関連においてどうなっているのかということが、当時一応の説明会があった際に問題になったのでありますが、この電源開発との問題は総合調整と申しますか、そういった問題についてはやはりどういうふうな関連になって今まできているのか、話し合いの何と申しますか、内容というか、それについてはどうですか。
  11. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 電源開発との問題に関連をいたしましては、一番端的に出て参ります事柄はいわゆる電源開発工事をいたしまするために必要な資材を搬送する道の問題と、それから私ども計画をせんといたします林道との関連の問題でございます。それからさらにこの熊野川流域におきましては、御承知のように従来の輸送手段はおおむねいかだ作業によっておったわけでございまして、従いまして電源開発の進行に伴いまして、いわゆるいかだ作業というものができなくなるということによりまして、この代替手段としていわゆる補償道路のようなものを考えなければならぬといったような問題も同時に出て参るわけであります。いずれにいたしましても、いわゆる電源開発が行われることによりまして、新しく道を開設しなければならぬという問題と林道との関連が出て参るという事柄が一番端的に出て参ります主要な問題であろうかと、かように考えておるわけでございます。そこで私どもといたしましては、この熊野川流域電源開発計画と、それからその開発実施に伴ってただいま申し上げまするような意味合い道路計画との問の調整をはかったわけでございまするが、大体この流域の中でこの事業対象になりまするような規模の林道電源開発関係のありまするいわゆる道路というものは五本ばかりに相なるのであります。そこで現在のところこの開発計画こそありまするけれども、いつからどのようなふうなスケジュールで開発に着手するのかといったような具体的な計画は、まだ熊野川に関しましてはできておりません。従いまして私どもといたしましては、この三年間三十億の計画によりまして実施して参ろうとする林道開発計画の中には、そのような意味におきます電源開発との関係のある林道というものは、着工の時期が明示されておらないという関係で一応計画の上に載せておらないという措置をとっておるわけであります。まあこのほかにも県道の場合におきまして、改修計画がありながらその改修実施の時期というものが明らかでないといったようなものにつきましても、三カ年計画対象からはのけておる、こういったような実は措置をいたしておるわけでございます。
  12. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 県道については今説明中に敷衍して述べられましたが、私たまたまこの地域に行った際に、いわゆる熊野川に沿って五条から十津川で新宮へおりたのでありましたが、その途中国道百六十八号線、これが完成していない、二カ所でもって未通なんですね。この問題などはせっかく奥地をこの公団によって林道として開発しても、あれがあわせて開発貫通をいたしませんと、いわゆる画龍点睛を欠くといいますか、そのもとの方がしびれてくる、先っぽは開けたけれどももとの方がしびれているということになって、ひいてはこの公団の目的を完全に達成しないといううらみが非常に多い。これは現地方面でも非常な望熱であり、この公団事業の出発と並行してぜひ百六十八号国道貫通をしてほしい、まあ、こういう要望、これは最も至大なんでありますが、その点等につきまして、建設関係との話し合いはどうなっておりますか。
  13. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 国道百六十八号線につきまして、これが完成をするということは、本林道開発主体にいたしました公団事業の上からいたしまして、きわめて重要な問題である、かように考えるわけでございます。そこでただいま御指摘のごとく二カ所まだ接続をいたしておらない部分があるということでございますが、その一カ所の平谷−萩間という部分でございますが、これは道路整備五カ年計画によりますると、三十三年度までには大体工事が完了するという計画になっておりまするけれども、今回の森林開発の問題の関係もありまして、完了時期を繰り上げるように建設省に打ち合せをいたしつつある現状でございます。一方経済企画庁におきましても、特定地域総合開発計画の中になるべく早期にこれを完了するようといったような計画内容にしてもらうように打ち合せ中であるわけでございます。  もう一点の請川−宮井という区間、これも開設を見ておらない区間でございますが、この区間道路整備計画によりまして三十三年度までには完了する計画にはなっておりますが、この区間につきましては、特に電源開発関係事業との歩調の問題に関連して参る点がございまして、建設省におきましても、この工事の確定の時期を十分に考慮した上で最終的な考え方の取りきめをいたしたい、こういうような考え方でいるようでございますが、私どもといたしましては、そういった関係方面調整をはかるように連絡をいたしているような現状でございます。
  14. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 この地帯はいわゆる多雨の地帯であって、相当災害も多い所であるのは過去の実績が遺憾ながら示しているのであります。この開発はしろうとが言うように開発したら荒れるなどというようなふうには私は考えませんけれども、せっかく施設した林道というものをその災害から守るために、付帯的な治山的な工事というものが私は勢い必要な部分があるのではなかろうか、こういうふうに思うのです。それはまあ最小限度思うのですが、さらに言えばこれは期限が三カ年ということだからであるかもしれないけれども、この地域開発して、しかも落ちつくまではこれは新たな自然開発の結果起る変貌によっていかに細心の注意をしても治山のような問題が関連して起るのだから、業務範囲の中には私は場合によったら治山事業も入れておくのがほんとうかというふうにさえ思うのですが、最小限度お聞きしたいのは、さっき申し上げましたような施設の保護に必要である治山的な仕事というものは一体これはやるのですか。付帯事業としてやるのですか。あるいはあれはもう治山事業と名がつくのだからやらないというのですか。
  15. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) まあ林道開設するわけでございまするから、従って新しい所に新しい断面ができるということによりまして、崩壊を誘発するといったような場合は林道を守るためのいわゆる崩壊予防的な施設といったようなものは付帯事業としてやるということに相なるかと思いますが、本来の治山施設というものはこの公団事業としては取り上げない、こういうふうに考えております。
  16. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 第十八条の業務範囲の中に、一項の二号の問題ですが、これは公団の「事業施行により開設され、又は改良された林道についての災害復旧事業施行すること。」とあるのであって、これだとすると、まあ未開発——開発といっても何ぼかの林道によってあの国道筋あたりは、あるいは河川の状況のいいところは開発されているのですが、この地域全体の有機的な森林開発ということを考えれば、既往のこの公団によらない既設林道等災害復旧というようなものもですね、起った場合には、この公団としては、あるいはこの地域としては、ぜひ早急な開発が、復旧が望まれる、非常に要望されるだろうと思うのです。で、これらの問題は、何条でありましたか、同じ十八条の二項で、委託を受ける、委託によってこの公団がやり得る場合を規定しておりますが、これでは何か少し物足らないような気がするのですが、どうなんですか。
  17. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) この公団開設いたしました林道ということに限る必要はないじゃないかというまあお考えだと思いますが、もうすでに開発済み林道もあるわけでございまして、それらの施行地帯は多くの場合地方公共団体であり、あるいは森林組合であるという実態でございまするし、それらの従いまして災害復旧等の場合におきましても、それらの主体災害復旧に当っておるという現状が従来からあるわけでございまして、そういう形でやってもよろしいし、あるいはそれらの団体委託によって公団がやってもいいというような取扱いをする方がむしろ柔軟性があっていいじゃないか、こういう考え方でこういう規定をいたしておるわけでございます。
  18. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 この今の委託によってやる既設災害復旧の問題でありますが、この二項を見ますと、公団は、前項に掲げる業務の遂行に支障のない範囲で、あらかじめ農林大臣認可を受けて、委託によって復旧事業をやることができるとあるが、あらかじめというのは、これはどういう運用になるのか、これは災害復旧のことですから、ある程度年度当初の実施計画に組みたいところだけれども、これは委託を受けてこないことには組んでおくわけにいかない。これは経費はこの公団自身の出費にはならないわけでありますから、これは組むのはおかしい、このあらかじめというのは、災害があったそのつどそのつど公共団体あるいは施行者の方からの委託を受けてやるのだと、そのつどそのつど受けて、そして農林大臣認可を受けてやるという意味にこれはとるのですか、その解釈の点を一つ
  19. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) これはやはり公団といたしまして、当然この仕事をやって参りますために必要な資金計画を要するわけでございますからして、従いまして災害のありました場合に、そのつど一路線ごとに、こういうふうに考えておるわけでございます。
  20. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 この公団のときの林道補助ですが、この間の長官補足説明だと、国は五割二分を持つ、五二%、で、県が一割、あとの三割八分がいわゆる受益者負担になる、こうなっているのでありますが、これらの対象林道は多くはいわゆる奥地であって、現在の補助率でいえば一応六割といわれる仲間だろうと思うのです。そこでこの公団の場合でも六割ということを地元の方ではしきりに主張をしていたかのごとく聞くのですが、この五割二分になったという考え方といいますか、この折衝経過ですね。これを一つこの機会に明らかにしておいてもらいたい。
  21. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 御承知のように公共事業として行なっております林道開設事業仕事でございまするが、いわゆる奥地開発林道というものと、それから一般開発林道と二分けあることは御承知通りでございます。その奥地開発林道の場合におきまして、全計画路線数の一割に相当する路線につきましては、一般奥地開発の場合におきまして国の負担が五割ということになっておりまするものを六割まで引き上げて負担することができる取扱いを実はいたしておるわけでございます。これはいわゆる奥地幹線林道といったような範疇に属するものでございまして、従いましてこの剣山あるいは熊野、こういった流域林道に関しましては、いずれも奥地幹線林道開設対象に相なる流域でございます。そのような意味からいたしますると、当然一般公共事業をやる場合には、国六割の、都道府県一割、受益者三割と、この負担区分により事業実施をやって参っていい対象になるのではないかということにつきましては、まあその通り考えるわけでございます。ただこの奥地の場合におきまして、国の負担が普通の場合に五割、一割の部分について六割ということを取りきめております。もとに相なりますこの森林状況でございまするが、このいわゆる平均的な森林内容に比べまして、この具体的に取り上げておりますこの二つ流域につきましては、非常に内容がいいわけでございます。いわゆるこの利用開発対象になる面積が非常に広い。それからその全体の森林の中でいわゆる針葉樹林の占める比率というものが、平均のものよりもぐっと高いというような実情にあることが一点。それからおそらく今までのようなこの開発のテンポでいった場合におきましては、両流域とも十数年を要するわけでございまするが、これがこの事業計画的にやりまするために、大体三年くらいの間に必要な林道路線開設される。まあ非常に受益の顕現する時期が早まるわけでございます。  そういった要素をもとにいたしまして、いろいろ計算をいたしました結果、一応普通の場合でありますると地元の三割というものが、三割八分のいわゆる受益者負担能力が出て参るというふうに考えられて、従いまして県は一割、あわせまして国が五割二分を持つと、こういうことに計算上相なったわけでございます。
  22. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 この補助率の問題から関連してお聞きしたいんですが、造林の助成ですね、造林補助につきましては、最近はところによっていわゆる予算単価というものの平均単価の画一的な適用でなくって、大蔵省との了解に基いて相当困難なところはある程度単価を上げて、六割とか何ぼとかまで上げていいというような了解もと運用を非常に適切にやる試みをしておるようでありますが、この地帯は一体どういうふうに考えるんですか。たとえば跡地造林地、この林道ができましたために、跡地造林をする場合には第一に受託するのかしないのか。あるいはさらに困難だというような種類である今までの雑木山、あるいは薪炭山針葉樹に変えようといったような樹種転換のようなところを主としてねらうのか、そして単価としてはどの程度のいわゆる公団繰り入れといいますか、補助率考えるのか。この点はどうなんですか。
  23. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) この契約によりまして、行なって参りまする造林事業対象でございますが、これは要するに、この林道開設によりましていわゆる広葉樹の伐採相当程度に進行すると、そういう跡地にさらにまとまった造林を必要とする、こういうところにおおむね対象をしぼって考えていくべきじゃなかろうか、またそういうところにこそこの契約造林というものが行われる余地があるのではなかろうかと、かように予想をいたしているわけであります。従いまして、多くの場合樹種の転換でありますとか、あるいは林道開設といったようなことを考えるような造林事業ということに相なろうかと思うのでありまして、普通のいわゆる針葉樹の山を切りましたあとに普通に行われるといったようなものにつきましては、これは従来の補助方式による自力造林という形でやって参るということに相なろうかと思うのであります。  それから補助金の問題でございまするが、御承知のように、造林事業につきましては、国が平均三割、都道府県が一割、合計いたしまして四割、受益者が六割自己負担をする、こういうことに相なっておりまするけれども、これは造林をいたしまする林地の状況の差違によりまして、実際問題といたしましては、国及び都道府県の負担いたしておりまする平均四割というものが一割八分ないし六割の範囲実施をされているわけであります。対象によりまして、その範囲で実情に合うごとく実施をいたしておる、こういう現状でございます。そこでこの両流域でございまするが、ただいま申し上げまするように、おおむね樹種転換、あるいは林道改良といったようなふうに経費のかかりまするような造林事業というものが多くなって参る関係上、国四割、府県一割の合計五割ということを一応この両流域につきましては、補助率として考えているわけでございます。
  24. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 だんだんわかりますが、私はこの際一つ注意的なことを申し上げて、意見を聞きたいのですが、この公団に受託をする場合は、補助金が比較的多くて、同じようなところを公団に受託しないから、いわば自力、従来方式でやる場合、おのおのあると思うのです。そういう場合に、その取り扱う、受託するかしないかによって今の補助の率を、同じ似たようなところであるにかかわらず変えるなどといったような運用は、よもやしないと思うのですが、場合によっては、そういうようなこともほかの第三者が見ると、あるいは第二者と申しますか、造林者によっては、自分のところもこれだけの困難性があるのに、どうも公団に受託をしなかったために補助の率を少くされたといったような、妙な何といいますか、気持を出させない心がまえというか、そういうことはぜひ必要なことと思いますが、それについてはどういうふうに考えられますか。
  25. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) ただいま御説明申し上げましたように、実際運用面におきましては、一割八分ないし六割というものを補助率を出しております。そこでただいま申し上げましたように、大体この地域には樹種転換、あるいは林道改良といったような経費のかかります対象が多くなるという意味において、この公団造林の場合におきまして五割ということを考えたわけでございますから、その辺の不均衡の生ずるようなことは絶対ない、かように考えておるわけであります。
  26. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 そうして、この場所々々によってそういうふうに違う。でありますから、これは契約によって具体的な場所々々でその率を変えていくんだと思うのですが、それにしても、この三年間という短かい年ではあるけれども、実行の結果予想外にかかった、あるいは実行の結果、案外それほどまでにかからなかったといったような問題が、山林のことですからあらうと思うのですけれども、それらはどういうふうな契約をされるのですか。個々に契約するだろうということはわかりますけれども、据置期間があるにしても、毎年の均等納付といいますか、受託者は出さなければならない、その金は最初の契約のときにきまるのだと思われるのだが、それはいつきめるのですか。その契約は契約当初にそれがきまる、従って実行の推定金額というか、単価というものを出して、その上に立って契約が結ばれるというふうに思うのですが、どうなりますか。実行しちゃってからかかったもの、つまり非常に厳格にそれに基いて契約をするというのではなくて、やはりその具体的な場所があれば、大体専門家がいろいろな角度から検討すれば、およそ間違いのない実行単価が出る。従ってその年度、その契約の当初にそういった額は受託者との間に契約が結ばれるというふうに考えるのだけれども、それはどうですか。
  27. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 御承知のように、ただいま申し上げました国と都道府県の負担が五割、こういうふうに申し上げたのでございますが、これはあくまでもやはり予算単価に対します半額の補助、こういうことでございます。ところが実際個々の契約によりましては、その実行費と申しますか、実際造林のために支出する経費というものがいろいろ差が出てくると思うわけでありまして、従いまして、実際に必要とした造林費の中からこれらの補助相当額のものを引いた残額というものが均等年賦で償還される、こういう形の内容になるわけであります。
  28. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 この法律はあまり詳しくないので、説明をお聞きかたがた明らかにした方がいいと思うのですが、この意見書の提出を広く求める、こういう条項があります、第二十条に。それで利害関係人としてカッコの中で「(当該事業につき利害関係を有する市町村の長及び当該事業施行区域内の土地若しくは当該事業に係る受益地又はこれらの土地に定着する物件にりき所有権その他の権利を有する者をいう。)」ということで、カッコをつけて利害関係人のことを説明しておりますが、これは広く意見を聞く建前、そこでもう一つこれに関連して二十五条で賦課金の定めがありますが、このところでは、意見を聞く人たちよりももう少ししぼった意味ではあろうと思われますけれども、「当該事業に係る受益地又はその上に存する立木竹につき権原に基き使用または収益を行うものその他農林大臣の指定するものに対し、その者の受ける利益を限度として」云々、こういうことで賦課金を取る対象を規定しているわけですが、この表現が同じものを違った形において表現しているような面もあるのですが、ここの関係一つこの機会に説明を願いたいと思います。
  29. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) ただいま御質問のありました第二十条の意見書を提出する機会を与えられる者と、二十五条の賦課金の賦課を受ける者という、両方の表現の関係についてのお尋ねがあったのでありますが、二十条におきましては、林道事業に対して利害関係を有する者、要するに利益を受ける者及び損害を受ける者、これを広く表現をいたしまするために、それらの地域におきまする土地及び地上の定着物についての権利者という権利の方面からの表現をいたしたのでございます。二十五条におきましては、利益を受ける者をつかまえまする表現の技術的方法といたしまして、これらの土地及び立木竹についての使用、収益を行うもの、その他農林大臣の指定する特別な事業者というふうな実態的な面からの表現をいたしたのであります。従いまして、両方の範囲は第二十五条の方が第二十条よりも狭く相なっておる次第でございます。一つの例を申し上げますれば、第二十五条におきましては、土地またはその地上立木というものの値上りという利益を受ける者というふうなものが前段で表現されておるのでありますが、第二十条におきましては、値上りというふうな問題を離れまして、単に地上立木というものだけでなしに、土地の上に定着する物件について権利を持っておる者というふうなものも二十条においては意見書を提出する機会を与えられたような次第でございます。
  30. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 そうすると、その地帯にたとえばまだ試掘権ではあるけれども、試掘権を持っている、地下鉱物あるいは鉱石といいますか、そういった地下資源の試掘権を持っているといったようなものは、採掘権になっていないけれども、これは大きに利益を得る場合があり得るのですが、これらのものは当然この二十五条による農林大臣が指定するというふうに考えられるのだと思うけれども、その点と、その賦課徴収すべき限度と申しますか、総額というものは、いわゆる地元受益負担分範囲内なのであって、計算するというと、その林道ができて受ける利益になるものは相当莫大であって、いわゆる負担分をこえて出してもしかるべきという、見方によれば計算が出る権利者もあると思うのです。一体その賦課徴収額は第二の問題としては受益負担の総額の範囲内でのそれぞれの負担だと思うのですが、これがまさか公団が道を作ってそれによって利益が上るだろう額を査定して公団がもうけるというようなことではないだろうと思うが、その二点ですね。
  31. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) ただいま地方におきまして試掘権等の権利を持っておる者に対しては受益負担額をこえて経費負担さしていいのではないか、こういう御趣旨の御意見があったのでございますが、われわれは試掘権あるいは鉱業権等持っておって、この道路ができることによりまして事業上の利益を得るという者に対しましては、ただいまお話しの通り農林大臣がこれを指定いたしまして経費を賦課するということに運ぶべきであると、かように考えておるのでありますが、ただそれから取ります額は、その利益というものをどう認定するかということは、これはなかなか技術的な検討を要する問題ではございますけれども、あくまでもその者の受ける利益を限度として、そうしてそれぞれの利益に応じましてその事業に要する費用を賦課していくと、こういうふうな措置でなければならないと、かように考えておるのでございます。
  32. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 確かにその者の受ける利益を限度としてということでは、一体この林道開設して国が何ぼ、五割二分ですか、そうして県が一割、あとの三割八分がいわゆる地元受益者関係負担、だから百万円かかれば三十八万円が受益者負担ということですから、その三十八万円という総額の範囲内でそれぞれ受益分担金をきめるのがこの規定なんだと私は思うんですが、今の御説明だと一つの誤解があり得るんでずね、これは採掘権とか何とか、その他たとえば大きな山林所有者であっても、所と場所によってはこの村道ができて相当に搬出の便を得ることによって木代金が値上りする、あるいは土地の代金が値上りするというような見方もできないわけではない。しかしそのときはそれじゃお互いに押し問答して、じゃお前さんの利益限度の範囲内までは幾らでも負担していいじゃないかといったようなことでいくんではないんだろうと思うのです。やっぱり総額三十八万円の範囲内で甲は何ぼ、乙は何ぼ、丙は何ぼ、また農林大臣の指定する者は何ぼ、そういうことで総額三十八万円の中でそれぞれの負担をきめる、こういう意味だと思うのですが、その点どうですか。
  33. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) その通りでございます。
  34. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 もう一つ。従来林道奥地林道——この特定地域の中に作ろうとして計画しているような奥地林道も今まで毎年少いながらも努力されている結果は国内にできているのですね。ところがその林道に対する管理規程というものができていないから、管理規程を定めたらどうだということが関係者の間で議論があるのです。ところで今度の公団法によれば二十一条で「管理規程を定め、農林大臣認可を受けなければならない。」とにかく管理規程ができて、作らなければならないことになるわけですが、一体これを機会に全国のどういう種類の林道か、ことごとくといかないまでも管理規程というものをこの公団法による管理規程に準拠して作られるという考え方があるのかどうか。私はやっぱり管理規程というものは相当国が補助した林道であるならば作らせて、そうしてその維持管理、修繕その他のことを規定しておく方が私はいいのではないかと、こういうふうに思うんですが、それについての考えはどうですか。
  35. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) この公団開設いたしまする林道につきましては、二十一条に管理規程を定めてやって参るということにいたしておるわけですが、これを契機にいたしまして、全林道に管理規程を設けて及ぼしていったらどうかということでございますが、従来は指導上の問題といたしましては、管理規程を作って実施するように指導しておるわけでございますが、全国的に統一をとりましたものをということにつきましては、現在林野庁内部で研究をいたしておるわけでございます。
  36. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 一つ研究もけっこうでありますが、どうもその後の維持管理、修繕の責任が明らかでないという問題も御承知通りでありまして、至急何らかの成案を得て、管理についてはよるべきものを明らかにしておくように私はこの際希望をしておきます。一応以上でひとまず質問を終っておきます。
  37. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  38. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。  本法律案取扱いについては、懇談中の話し合いのように取り運ぶことといたします。     —————————————
  39. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) なおここで委員の変更について報告いたします。雨森常夫君、池田宇右衞門君及び長谷山行毅君が辞任され、館哲二君、宮澤喜一君及び小滝彬君が選任されました。  しばらく休憩して、午後一時から再開いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後一時五十五分開会
  40. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を再開いたします。  午前に引き続いて、森林開発公団法案を議題にいたします。本法律案については午前の委員会のお話し合いによって、ただいまから直ちに討論及び採決を行うことにいたします。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見のおありの方は討論中にお述べを願います。
  41. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 私はこの森林開発公団法案に賛成をいたします。この機会に私はこの実施について二、三政府に希望をつけ加えたいと思うのであります。  それはこの本公団法の実施によって、この後進特定地域に対する開発のために、他の地区のこの種仕事犠牲にならないようにという問題、これについては質疑中でそういう点は心配がないようにしたいという御答弁でありましたけれども、なかなかこの実施していく場合、とかく財政当局としてはこういった地域の後進地に対する財政の投入によって、全体のたとえば林道のような経費を削減に持っていこうということが想像されるのでありまして、こういう点はぜひその犠牲にならないように願いたい。  それから、この内容的にはこの法案は熊野川と剣山地帯の後進地の特定地帯のものを取り上げてやっているのでありますが、第一条の目的に書いてあるような趣旨からいって、私はこの法律が通って円滑な実施をされてその遂行を見た暁は、やがて第二の熊野川あるいは剣山、第三の熊野川、剣山といったような同じこの種似たようなもの、さらにそれが針葉樹のみならず闊葉樹地帯においてもこういった法律をもって逐次おくれている方面開発していくという問題を考えるようにすべきではないか、そういうふうに希望を付するものであります。  また、この公団はこの種事業実施機関であるのでありまして、でありまするから、この法案ができるまでには一つの有力な意見として特別会計でいいじゃないか、そうしてその実施というものをこの各関係府県にまかしてもらいたい、その方が円滑にいくのだ、こういう主張がかなり強く一部の県からは主張されたのであります。まあしかしそれについては相当な弊害も伴うということで、一応はこの方がいいということでこの公団方式になりましたのは私ども了解するのでありますが、しかし、どうしてもこの実施機関である公団の心がまえといたしまして、もちろん公団閉鎖後におきます事務の処理をどこに持っていくかという問題もありましょう。私は府県とは十分に連絡を緊密にしてやっていかなければ、この事業の遂行上思わないトラブルのようなものも起りはしないか、この点を注意したいことと、それから電源開発、これは特定地域でありまするから、電源開発等における道路のつけかえ工事その他の問題もある、またその国道開設未解決の場所さえも含んでいるのでありますから、それらの関係方面と十分な連絡をとりながらむだのない、しかも計画的な事業実施されるようなことの注意を特にされるべきではないか。最後にこれは政府の方の提案理由説明補足説明にもうたってありますが、この公団仕事をやっていきます上には、これらの事業について経験と技術に富んだ者を公団に入れなければならない云々とありますが、とにかくこういった問題は特にその人を得なければならない。さきには愛知用水の公団、その他の公団等、この種の問題に対する人事について中にはいろいろと示唆するものもあるのであります。私はこの開発公団の目的が端的に、実質効果的に実現のできるような人を十分御選考になられて、そういったことによる事業遂行の支障がないように十分心がけてもらいたい。以上の希望をつけまして、私は賛成いたします。
  42. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより森林開発公団法案の採決に入ります。本案を原案通り可決することに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  44. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお本会議における口頭報告の内容議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例こより、これを委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。なお本案を可とされた方は、順次御者名を願います。  多数意見者署名     青山 正一  重政 庸徳     戸叶  武  三浦 辰雄     井上 清一  館  哲二     宮澤 喜一  小瀧  彬     宮本 邦彦  佐藤清一郎     亀田 得治  河合 義一     清澤 俊英  三橋八次郎     溝口 三郎  千田  正     —————————————
  46. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 北太平洋オットセイ会議の件を議題にいたします。  この件について千田委員等から発言を求められておりますから、この際御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。    午後二時三分速記中止      —————・—————    午後二時二十三分速記開始
  47. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を始めて下さい。  次に、漁船の検査に関する件を議題といたします。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 漁船の建造の検査に関する件ですが、この漁船を作る場所なり、あるいは船主等において、現在の漁船の建造検査が二重になっているということで、ずいぶん不便を感じておる問題があるのです。そろいう点でいろいろお聞きしたいわけですが、二重検査になっているというのは、一つは運輸省が検査をする、さらに水産庁が検査をする、こういうやり方ですが、一体こういう必要があるのかないのか。これは相当前から始められておるようですが、その辺を何かこう惰性でやっておるようなことなら、早くやめてしまった方がいいことだし、どういうことなのか、少し詳しく説明してもらいたい。
  49. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) 私漁船課長の稻村でございます。ただいまお話のありました漁船の検査の件でございますが、これはいわゆる運輸省の安全法の関係の検査と、いわゆる船舶安全法ですね——船舶安全法に関する検査と、私の方が担当いたしております漁船法による依頼検査というものと、この二つのものについての御質問だと私は思うのでございますが、その二つの検査は根本的に性質から申しますと違うものというふうに私ども考えておるわけでございまして、船舶安全法の方のことは運輸省の所管でございますが、これはあらゆる漁船あるいは一般船舶、すべてのものに対して行う安全に関する検査をやっていただいているはずでございまして、これは強制検査でございます。従ってあらゆる漁船なり船舶なりは、その安全法による検査に合格いたしませんと、船として動かすことができないというふうになっておるはずでございます。それに対しまして、私どもの方で一応御用を承わっております漁船法の検査、いわゆる依頼検査でございますが、これは強制検査ではございませんのです。これは性質等から申しますと、検査という名前がついておりまするが、むしろ依頼された監督をする船主さんの立場に立って監督をするというような意味の、まあコンサルティング・エンジニアとでも申しますか、そういったような形のものでございまして、これはもともとの成り立ちが船主さんには船あるいはエンジン、近ごろで申しますと冷凍機とか、そういったような機器類ですね、まあ船体もそうでございますが、そういうものについての知識が必ずしも十分な者ばかりでもないということで、その人々の御依頼によりまして、従ってこれは手数量のようなものをいただいておるわけなんでございますが、そういったものをいただきましたものについて、私どもの方の検査官という名がついておりますが、これが造船所なり、あるいはエンジン・メーカー、また船主さんといろいろ御相談をいたしまして、この船をどうしたらいいとか、このエンジンについてはこの点を直した方がよかろうとかいうような御相談にあずかっておる検査という形になっているわけです。従って性質から申しますと、少し違う意味の検査をいたしておるわけでございます。従ってやっております内容も、もちろん構造とか何とかいうような面につきましては、似たようなことをやっておりまするが、たとえば魚倉あたりの冷蔵庫あたりがどういうふうになっておるかというような、魚の鮮度の問題というような問題につきましては、これは全く私どもの方だけがやるもので、そういった何と言いますか、船主の代りに船を監督するというような形のものでございまして、従ってこれは御希望にならなければ決して受ける必要はない検査なのでございまして、これはただ御希望の方だけに検査をするという形のものでございます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、水産庁のおやりになっておるこの検査というのは、法規の上には根拠はないわけですか。
  51. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) いや、漁船法の中にそういうことをすることができるということが書いてあるわけです。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 その点は一応わかりましたが、そこで、ところが実際は漁船を作るときには建造の許可を取らなきゃならぬ、その建造許可の際に、これができ上ったらおれの方でその漁船法による検査をしてやるからその依頼書をあらかじめ出せ、こういうことをやっておられるようなんですが、そうしますると結論としては、結局今課長がお話しになったようなほんとうの意味の依頼検査、任意検査ということにはならないので、結局は強制検査が二重に行われるということに実際上なってくる、そういうことを建造許可の際にやっておられないかどうか、あなたは十分そういう点御存じかどうか、一つお聞きしたい。
  53. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) 今の点についてお答え申し上げます。その点は私どもの方は少くとも許可をいたします前にそういったことを何か申し上げるはずはないのでございますが、ただし許可になりましたものについてでございますね、私どもの方で漁船の建造許可を出しましたものについては、実は私どもの名前でこういう制度があるが、御希望ならば検査をお受けになったらどうですかという意味の、これはあり意味で広告のようなつもりでございますが、そういった書類は差し上げております。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 私の申し上げるのは、許可の際にそういうものが、そういう意思表示がされるということを聞いておるわけなんですで、今課長はまあこういう制度があるということを親切に広告しておるのだ、こうおっしゃったのだが、実際はそれを出さないと許可になるべきものが許可にならぬ、こういうことなんです、はっきり言うと。しかしほとんどのものがこれを出しておりますから、そのために許可にならなかったというものはおそらくないでしょうけれども、ともかくそのときの与える印象というものが、どうもそういう印象を与えておるようなんです。どうですか。
  55. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) その点はあるいは私どもの方の係の者にそういうようなことを言う者があるかどうか存じませんが、私どもの方としては、少くとも許可の前にそういった書類云々ということは全然いたしておらぬはずでございます。それでちょっと数字がはっきりいたしませんが、建造許可をいたしております数が、ちょっと今数字を出しますが……、二十九年度の私どもの方で長さが十五メーター以上の船でございますから、大体十五、六トンから上でございますが、そういったものに対しまして建造許可を出しました数は木船、鋼船を合せまして九百六十九隻でございます。それからそれに対しまして二十九年度に依頼検査を受け付けました数でございますが、これはまあ船とか、機械とか、冷凍設備とか、いろいろございますが、一応船の、船体として受けましたものが五百四十八隻と思います。従ってあとのものは別にそれを受けられなかったからどうという問題はないはずなんでございますが……。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 数字の上からいうと、確かに依頼検査されなかったのがあるようですが、そうするとこの許可をする前にそういうことを言うことは絶対ありませんと、これははっきりそういうふうにお聞きしておいていいですか。
  57. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) たしかにそうなんです。私どもは決してそういう気持はないのでございます。ただちょっとここで申し上げたいのでございますが、実はこれは私どもの方が直接やっていることではございませんが、たとえば今回の北洋出漁の船でございますね、北洋出漁の船というようなものにつきましては、これは北洋出漁をするための条件といいますか、適格条件の審査をいたしますときの条件に、これは私どもの担当ではなくて海洋一課の担当でございますけれども、そういうものにつきましては依頼検査を受けたものを出したいというような意味のがございますので、そのものについてはあらかじめお受けになっておいた方が便利だというようなことは私どもの方で申し上げるかもしれないのです。それは、もしそれをお受けになりませんと、今度出漁いたしますときに、北洋へ出漁いたします前に適格性を持っているかどうかという一斉検査をいたしておりますのですが、これは海洋一課の方の担当の部面でございますね、北洋出漁につきましては、そのときにこれは依頼検査を受けておりますものについてなもともとわかっておりますから、これについてはまあ大体検査をしない。ただしことしは二十七年度以前にできました船については全船検査をいたしましたけれども、それ以降のものについてはまあ私どもの方で一応船を知っておりますから、これは検査しないで出てもらおうじゃないかというようなことをいたしております。  それからもう一つは、これは私どもの方ではございませんが、農林金融公庫の融資になりますものについては、国家資金が出るというような意味から、公庫の方の条件といたしまして、依頼検査を合格したものについて出したいというような御方針があるようでございまして、そういったものについては何かそういうお話が出ますと、あるいは受けておいた方がいいというようなことになるかもしれません。しかしこれは何といいますか、私どもの方で言うべき筋合いではないかもしれませんが、実際はそういったことが行われているということは事実でございます。なぜそれではそういったものを安全法の検査だけじゃいけないかというような問題でございますが、先ほども申し上げましたように、安全法の検査の内容よりは、私どもの方の検査の内容の方がやや複雑でございます。たとえば非常に簡単な例を申しますと、スピードの検査をいたしますときにも、たしか安全法はマキシマム・スピードと申しまして、最強速力だけを検査して何ノット出ているというような点、ところが私どもの方は下の方から非常に微速から最高速までの間を何段階かに検査をいたしまして、それによって、まあ漁撈時はこのくらいのスピードが出るだろうから、この程度の馬力でお使いになったら御便宜であろうというような、やや経営面に入ったようなことも申しますので、こちらの方の検査を受けたものの方がより丁寧に見ているの、だからというような意味で、そういったことを、北洋出漁あるいは公庫の融資を受けます船についてはそういう条件が入るということがあるということを御報告申し上げておきます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 北洋出漁の船についてそういう検査をやられるのは、これは法規上の根拠に基くわけですか。
  59. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) これは私どもの直接の担当ではございませんので、ちょっと何とも申し上げかねますが、私の知っております限りでは、いわゆる何と申しますか、北洋の鮭鱒の取締りの規則でございますね、あれで船を選定いたしますことについては基準と申しますか、そういったものでやるということで、これはたしか最初の出漁のときからやっていることだと思います。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 ただいま御説明を聞きますと、結局北洋出漁の関係とか、公庫の世話になる船、こういうものは実際上依頼検査とはいうけれども、検査を強制される、こういうふうにこれはなるんじゃありませんか。この二つの船につきましても許可前にそういう依頼検査書を出さすようなことはしておらぬ、これははっきり言えるでしょうか。
  61. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) これはあれの前に、何と申しますか、許可の前にそれを出せというようなことは私どもの方では言っていないつもりでございますが、ただ条件としては、そういうことを北洋出漁なりあるいはあれの方にはなっておる。しかし、ただ先ほども申し上げましたように、お話しのように考えますと、確かに多少強制的な感じはいたしますが、従ってこれは北洋出漁の鮭鱒であるというようなことでお出しいただけば、あるいはそういう問題は当然こうしなければいけないでしょうということを私どもの出先が申しておるかもしれません。しかし書類としてはおそらくあとから出していただいておると思います。と申しますのは、大体がこれは必ずしもお出しにならなければ許可しないということは絶対ないのでございまして、北洋船の実はぎまりますのは、非常に今までの経験から申しますとおそいのでございます。大体十二月の末とか、何か非常におそくなってからでございますが、それからあわてて書類をいただくというものが非常に多いのでございまして、決して強制をいたしてそれが出ていないから北洋船に選ばないとか、あるいはそれが出ていないから私どもの方の許可をしないという事実はないはずでございます。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 その点は一応本省の意向は承わっておきます。ともかく漁船の許可というものは別個の立場から許可すべきものかどうか、そうしてしかる後に、もし依頼検査をするとすればその後に書類を出してもらう、そういうことの順序になる。そこでですね、実際の検査の状況を私ども若干聞いておるんですが、運輸省からくる検査とそれから水産庁からくる検査内容が大して変らぬ、こういうことなんです。それでですね、どちらか一本にしてもらいたい。まあ以前であれば、水産庁のお世話にならぬと冷蔵庫なりそういったような点がよくわからないということもあったかもしれぬが、ずいぶん関係者の知識も毎年ふえてくるわけですから、現在じゃ漁船としてどういうことが必要かというくらいのことは作る人も船主もわかっておるわけだし、どうも要らぬことじゃないか、こういう感じを相当持っておるんです。そして一方では法律に基く正規の検査が運輸省でやられる。運輸省がやるのは安全の関係からやるわけですから、まあ安全でありさえすればいいので、家の中の設備まで大体どうしようかということまでは干渉してもらいたくないというわけなんだね。しかもそれが本省ではそういうふうな御説明をされるが、実際上はどうも末端にいくと検査を強制されるという印象を与えております。しかもやむを得ず二重にやるとしても、運輸省の人と水産庁の人が同じ日に来てくれたらいいというんですね。ある場所では必ず日が違って来るというんです。その検査の段階を聞きますと、だいぶ複雑な検査のようです。一回や二回では済まないようですね。検査の進む段階に応じて何回かあるらしいんです。そのたびに二日ずつとられるものですから、これは全体を通算すると非常に非能率になるというんですね。私はこれは御説明を受けてなるほどそうだと思いましたんで、果してこんなことをやっておられるものなら、この点はやはり漁業者に便利なようにもう少し考え方があるんじゃないか、こう思っておるんですが、あまり検査の内容は実際上は違わぬようですよ。検査を受けておる人が見ておるんですから……。で倍の時間がかかる。あなたの先ほどの説明と若干違うようですが、ほとんど違わないようですね。そういう点課長は相当詳しく実青をお知りなんでしょうか、どうでしょうか。
  63. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) 今の両方が非常に内容がダブっておるというお話しでございますが、これは内容は確かに先ほども申し上げましたように、たとえば試運転というような面におきましては、同じようなといえば同じような試運転をあるいはいたしておるかもしれません。ただ、しかしその場合には先ほども申し上げましたように、船の試運転といたしまして、あちらの安全法の検査の方は最高スピードをとる、ところがこちらの方はそれよりさらに丁寧なプログレッシブ・トライアル、いわゆる順次に下から上までの各段階をとるというような点が、確かに一部はダブっているということはお説の通りの点があると思います。それから今の同じ日に来いというお話しといいますか、一緒に来ればいいのにとふうことは、確かにそれはお説の通りだと思います。私の方としましては、もし運転でエンジンにいたしましても、それからエンジンの依頼検査もあるわけでございますが、これは非常に数は多いのでございますが、船の検査にいたしましてもタブっている部分がありますれば、そのダブっているときは両方の検査官が行って、ダブらない部分については私の方だけが立ち合うように努力するようにこれは検査官には私は申しております。しかし実際は御指摘のような点があるかもしれません。それはこちらが便宜をはからないというか、あるいは場合によりましては私の方の人員の関係、あちらも多少人員の関係もございましょうが、人員あるいは旅費等の関係によりましてそういうことがあるかもしれません。これはもしそういうことがございましたら、なるべくそういうことのないようにこれからよく気をつけたいと思います。しかしこれは今までは多少はそういった点があるかと思います。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 なるべくこれはやはり国民に便利にしてやってほしいのであって、漁業者の方から見れば運輸省も水産庁も一緒ですね。同じ官庁だから、それが二つ別々に来る、この点非常に困っておられるのだね。しかも検査といったら何でも検査される方の立場は弱いんですよ。だからなかなかそういうことを一々言わぬらしいですね。若干のそれはもてなしもするでしょうが、そういうことだって二重になり、三重になる。そんなことをあまり言うと検査の際にじゃまされるとか、私どもちょっと常識で考えられぬような、あまりこまかいことですがね、私聞くんです。これはほんとうに水産庁の検査も運輸省の検査と並行して必要だということなら、これは何か法規上その辺を検討される余地があるのじゃないか。国民に対してはともかく運輸省も水産庁も一緒に来たっていいんですよ。とにかく国が一度来る。そういう格好を与えなければこれははなはだまずいと思うんですがね、結局サービスをしに行っている、それを今度は逆に恨まれる、そういうつまらぬことになるのでね。これは十分一つ研究してもらいたいと思うのですがね。それから何かこういうことで相当苦情等が出ているというふうなことはお聞きになっておらぬでしょうかね。そんなことは鶴田委員から初めて聞くので、どうも意外だというふうなお感じなんでしょうか、どうですか。
  65. 稻村桂吾

    説明員(稻村桂吾君) ただいま御指摘の点、私も実は正直なところを申し上げまして、全然初めて伺う事実ではございません。確かにそういうことをおっしゃる方も今までにございますようです。しかし私どもといたしましては、これは私どもの方の依頼検査と申しますのは、大体サービスという点を中心に考えるべきものだ、こういうふうに考えているわけなんでありまして、決していばって検査をして通してやるぞという気持ではないつもりなんでございますけれども、あるいはこれは末端のものに参りますと、多少そういったサービス精神の欠除した手合いがあるいは私の監督不行き届きのためであるかもしれませんでございますが、今の御指摘の点私どもといたしましても、前々からこの運輸関係の方の方々ともときに話し合いをいたしましたことはございますので、できるだけダブることのないようにしようじゃないかという、それでその内容もなるべく、全然別個というわけには参らないものもあるかと思いますけれども、なるべくお互いに違うので、立場が違う見方をしておるのだからということで話し合いもいたしたことがあるわけです。従って今の御指摘の点私どもとしても勉強さしていただき、また改善しなければならぬことがございましたら改善したいと思っております。     —————————————
  66. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 農林省設置法の一部を改正する法律案の件を議題にいたします。  本法律案は去る三月二十九日内閣から閣法第百五十五号をもって予備審査のため提出、内閣委員会に予備付託となっておるものでありますが、当委員会としても当局の説明を聞いておく必要があると認めますので、本日議題にいたした次第であります。  まず農林当局の説明を求めます。村田文書課長
  67. 村田豊三

    説明員(村田豊三君) 農林省の文書課長の村田でございます。ただいま提案になっております農林省設置法の一部を改正する法律案の概要につきまして、御説明を申し上げたいと存じます。  お手元にいろいろな資料がお配りしてございまするが、説明の便宜上農林省設置法の一部を改正する法律案要綱というのが、こういう薄い二枚の刷り物がございます。これに基きまして御説明を申し上げたいと存じます。  今回農林省設置法を改正するおもな理由は、この法案要綱にも掲げておりまするように四点あるかと存じます。そのうちの第一点は、農林水産技術会議というものを新たに農林省の付属機関として設置するという点が第一点でございます。第二点といたしましては、農林省の内部部局といたしまして、振興局というものを新たに設置することにいたした点が第二点でございます。第三点は、各種の付属機関を新たに設置することにいたしております。これが第三点でございます。第四点といたしましては、その他以上申し上げましたことに関連をいたしまして、本省の内部部局間相互の間に若干の事務の調整をはかったという点が第四点でございます。  まず第一点の農林水産技術会議の設置でございまするが、これを設置いたしまする理由といたしましては、ここにも明記いたしておりまするが、農林水産業の試験研究の効果的な運営をはかるため、農林省の付属機関として農林水産技術会議というものを設ける、こういうことを言っております。すでに御承知のように農林省は各種の試験研究機関を擁しております。たとえば自然科学的部門といたしましては、農業技術研究所でありますとか、あるいは全国八ブロックに設置いたしておりまする農業試験場でありまするとか、あるいは蚕糸試験場、家畜衛生試験場、食糧研究所、あるいは林業試験場、林業試験場はさらに六つの支場と五つの分場を擁しておりますることも御承知通りであります。あるいはまた水産研究所、水産研究所は全国の八つの海区に設置いたしておりまして、さらに十三の支所を持っておるということも御承知かと存じます。さらには真珠研究所、こういう自然科学的な試験研究機関を持っておりますると同時に、社会科学部門におきましては東京に農業総合研究所というふうなものを持っておりますることも御案内の通りでございます。こういう各種また各般にわたりまする膨大な試験研究を実施をいたしておるわけでございまして、これに関連いたしまする予算といたしましても、三十年度は御承知のように二十九億以上になっておりまするし、三十一年度は先般御可決をいただきましたように三十三億という巨額な試験研究の予算を擁しておるような次第でございます。これらの細部にわたりましては、ただいま御配布申し上げました資料の中に、農林省設置法の一部を改正する法律案参考資料その二というのがございます。農林省所管試験研究所関係というかなり分厚な資料をお配り申し上げておりますので、これをごらんいただければ幸いかと存じます。  今回設置いたしまするこの技術会議は、ただいま申し上げましたようないろいろな試験研究機関が行いまする試験研究がばらばらでありましては効果がない、また今日御承知のようにそれぞれの試験研究が非常に専門的に分化がはなはだしくなっておりまして、高度の専門的な技術を要請されるように相なっております。そのために知らず知らずのうちにそれらの試験研究相互間の連携が保持できなくなる、統一が困難になってくる、またそのためのロスがかなりありはしないかというふうな懸念が前々から言われておったのでございます。従って何らかの形でこれらいろいろな試験研究機関の試験研究というものが総合的に調整される必要があるということは、農林省多年の懸案でございます。すでに御承知のように、国全体の科学技術部門につきましては、科学技術庁の設置が計画されておりまするやさきでもございまして、今回農林省といたしましては農林関係、ただいま申しました各種の試験研究につきましても、これらを総合的に調整する機能を果す機関がほしいということで、今回の設置法改正に及んだ次第でございます。従いまして、農林水産技術会議の行いまする事務といたしましては、この要綱にも掲げてありまするように、第一は農林畜水産業及び農山漁家の生活にかかわる試験研究の基本的な計画の企画及び立案に関することでございます。第二は、農林省の試験研究機関の行いまする試験研究に関しまする事務の総合調整に関してであります。事務の総合調整と申しまするから、たとえば予算関係いたしまするようなこと、従来はそれぞれの試験場から要求されまする予算は、それぞれの原局を通じまして官房の予算課で査定を受けておったわけであります。しかしたがら今後はこの会議ができますることによりまして、この会議で基本的な重要事項につきましては、すべて総合調整を経ました上で予算折衝が行われる、こういうことに相たろうかと存じます。第三点は、農林省の試験研究機関が行なっておりまする試験研究の状況及び成果につきまして、会議がみずから調査をする権能を与えておるわけであります。第四は、農林省の試験研究機関、ただいま申しました各種の試験研究機関の運営をこの会議が指導するという権限を与えておるのであります。第五は、道都府県やその他のもの、第三者の行いまする農林関係の試験研究についての援助と申しますか、助成といいますか、指導と申しますか、そういうことも行える機能を与えておるわけでございます。第六点は、農林省の試験研究機関の行いまする試験研究というものと、それぞれの本省の各部局が行政を担当いたしておりまするが、その行政部門と試験研究部門との連絡調整についての機能をこの会議に与えておるわけであります。  会議の組織はその次にありまするように、会長と委員六名をもって組織いたしております。会議体をとりました行政機関でありまする点が従来の独任機関制度とはやや違ったところでございまするが、ただいま申しましたような膨大な試験研究を、とても一人の人でそれの可否なり総合調整をやる能力はとうていございません。各界の権威者によりまして会議を構成して、会議の決定に基きましてそれらの調整がはかれるように考慮いたしたのであります。会議の会長及び委員は農林畜水産業または農山漁村生活に関する試験研究に関し、学識経験のある者、または農林省の職員のうちから農林大臣が任命することといたしております。また会議の事務を処理させるために会議に事務局を置きまして、事務局に事務局長を置くことに相なっております。  以下会議の細部にわたりましては、法律案の第十四条以降にそれぞれ規定をいたしておりまするし、また法律案の中にも委任を予定しておりますように、さらに細部の組織なり運営につきましては、政令その他省令にゆだねさしていただくことに相なっております。  以上が農林水産技術会議の概要でございます。  第二点は振興局の設置でございますが、これは新農山漁村建設事業を新たに本年度から遂行いたすことに相なっておりますが、その事業を強力に推進するために、それらの事務と、従来農業改良局が担当いたしておりました農業経営なり、農業生産の増進、改善、あるいは農業及び農山漁家の生活に関しまする普及事業、これらの事務を合せまして振興局を設置することにいたした次第であります。従いまして、振興局の設置等に伴って従来の農業改良局は廃止する予定に相なっております。  振興局の所掌事務のおもな点を申し上げますると、ただいま申しました農山漁村の総合的な振興計画の樹立及び実施についての指導助成、その他総合開発に関する事務でございます。従来これらの事務は官房の総合開発課が中心でいたしておりました仕事でございますが、この関係仕事が振興局に移行するわけでございます。それから農業経営の改善なり、農業生産の増進、改善につきましては、従来改良局が担当所掌しておる事務がそのまま振興局に移るわけでございます。さらに農業及び農山漁村の生活に関する自然科学的試験研究及び普及事業に関する事務、これも従来改良局が担当いたしておりまする事務でございます。四の農業移民に関しまする事務は、従来農地局で担当いたしておりまするもの、これはむしろ新農山漁村建設事業との関連を考慮いたしまして、農地局から振興局に移す予定にいたしております。その他現在の農業改良局が所掌いたしておりまする農機具の問題、あるいは病虫害の防除等の仕事はそのまま振興局に移行いたしまして、改良局が廃止される、かように御理解いただきたいと思います。以上が振興局の所掌事務の概要でございます。  第三点は、付属機関の新設でございまするが、第一点は輸出品検査所がただいま東京にございます。全国に一カ所ございまするが、その輸出品検査所の能率的運営をはかりますために現在の支所の一部、ただいま支所は全国に八支所ございますが、その一部を本所に昇格をいたすための改正でございます。現在の支所のうち小樽、静岡、神戸、門司、これを新たに本所の検査所に昇格をいたすつもりでございます。東京と合せまして五つの検査所ができることに相なります。  第二は、動物専用医薬品の検査を行うため動物医薬品検査所を設置する改正でございます。これは従来薬事法に基きまして、動物用の医薬品につきましては検査の義務があるわけでございます。その検査を実行いたしまする機関といたしましては、ただいままでのところ専門的のこうした検査所がございませんで、農林省畜産局の薬事課というのがございます。それの分室がさらに西ケ原の試験場の敷地の中にございまして、ここで便宜事務をとっておりましたけれども、こうした特殊の行政事務でございますので、検査所に独立をいたしまして、薬事課の分室が中心になりまして検査所に独立をいたして、事務の遂行の便宜を期して参る、こういう予定で改正を意図しておるわけであります。  それから第三の営林局及び営林署の職員の診療を行う機関として営林局に病院及び診療所を設置することになっております。これは従来すでに営林局なりあるいは営林署に、それぞれの地方に病院なり診療所を持っておるのでございますが、これをほかの五現業官庁と同様に、設置法上営林局の付属機関として法律的にはっきり明記したというだけのことでございます。法文の一種の整理の一つでございます。それだけの意味しかございません。  それから次に第四に、審議会をそれぞれ設置することにいたしておりますが、その一つは積雪寒冷単作地帯振興対策審議会でございます。これはすでに御承知のことかと存じまするが、従来総理府の所管として審議会はすでに法律的にもあるわけでございまして、それを今回総理府から農林省に移管をするということが決定をみまして、これは総理府の機構改正等の一環としてそういう方針が決定をいたしたものでありまするので、この審議会に最も関係の深い農林省の付属機関として設置することに改正案を提案した次第であります。それから第二の農山漁村振興対策中央審議会は、先ほど申し上げました新農山漁村建設事業の重要事項を審議するためのものでありまして、新たに設置することに相なったわけでございます。第三の農林漁業用固定資産評価審議会と申しまするのは、すでにこれも従来から事実上の審議会としては設置をみておったのでございまするが、農林漁業用の固定資産がいろんな種類に分れておりまするために、農家経済調査なりあるいは農産物の生産費調査等の基礎になりまする固定資産の評価の標準につきましての方針を審議いたしまする審議会、これを法律上の審議会にはっきりとしたということでございます。従前から置かれておるものでございます。それからその次の農業観測審議会と申しまするのは、政府が農業経済に関しまする見通しを行いまして、これを農家に通報するという、いわゆるアウトルックと言われる事業でございまして、すでにこれも農林省の統計調査部で従来から実施をいたしておりまする事業でありまするし、また審議会自体も任意の審議会といたしまして従前からあったものでございます。それを昨年来審議会の設置につきましてはいろいろ内閣に新しい方針がとられまして、任意の審議会は設置してはならない、恒久的にどうしても置かなければならないものであれば法律に明記せよという方針が確定いたしましたので、先ほど申しました農林漁業用固定資産評価審議会とこの農業観測審議会とは、その趣旨にのっとりまして、恒久的になおこれらは設置する必要がございますので、法律に明記していただく、こういう措置をとることにいたしたのでございます。次の「農業資材審議会に蚕種に関する重要事項を調査審議する権限を加える」となっておりますのは、御承知通り、蚕糸業法に基きまして、蚕種を製造する場合には農林大臣の指定を受けなければならないということになっております。従って、従来はこの指定は非常に影響が重大でありまするために、蚕種協議会と申しまする任意の審議会の審議を経まして農林大臣が指定をいたしておったわけでございます。これもしかしながら、先ほど申しましたような審議会整理の方針の一環に即応いたしまして、成規の審議会の一部門にしたいと、幸いこれと比較的部門の類似しておりまする審議会といたしまして、農業資材審議会がすでにございまして、農薬なりあるいは農産種苗に関しまして重要事項を審議いたしております。それの一部門として蚕種部会を付置したい、かような意味の改正でございます。  最後に第四のその他の事項でございますが、農林水産技術会議やあるいは振興局の設置に伴って、あるいはまた本省の内部部局の所掌事務の調整を若干はかる必要がありまするために、農林省の内部部局の所掌事務について改正を加えるということでございまして、細部の点につきましては、また御質問なり、あるいは法案の内容にわたりまして質疑がございますならば、御説明申し上げることにいたしまして、はなはだ簡単でございまするけれども、一応概要の御説明を終らしていただきます。
  68. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 以上説明を聞いたのでありますが、御質疑の向きは御質疑を願います。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  69. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) それでは速記をつけて。  農地問題の件を議題にいたします。この件について亀田委員から発言を求められておりますから、この際御発言を願います。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 農地問題に関してたびたび私質問はしておるのですが、最近の状況を見ておりますと、われわれが憂慮しておるようなこの状況、特に小作地の取り上げですね、取り上げ申請、こういうものがずいぶんふえてきておるわけですが、まあ具体的な問題はあとにいたしまして、まず最初に、最近におけるそういう全般的な情勢についてお聞きしたい。
  71. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 石川県におきます小作地引きあげの問題でございますが、これについての概略を申し上げますと、昨年取り入れが済みましてから、石川県下の金沢市、それから石川郡と、この二市郡下の委員会、二十ほどありますが、その委員会管下のものが大部分でございまして、いわゆる集団引きあげと称されておりますものがこれに該当するわけでございますが、最近の四月十日現在で申し上げますと、県庁まで出て参っておりまする件数が二百九十七件でございます。農業委員会の段階にとどまっておるもの、また農業委員会で審査中のものが四百八十九件、合せまして七百八十六件、こういうことに相なっております。
  72. 清澤俊英

    清澤俊英君 石川県だけ。
  73. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) さようでございます。なおその少し前を申し上げますと、三月中ごろ現在では、四月十日現在の件数に比べまして、七百八十六件に比べまして三月中ごろでは八百六十件という件数になっております。若干減って参っておりますのは、その差額が処理をした件数になっております。七十四件になっておるわけでございます。この七十四件のうち、県の農業会議で審議をいたしまして許可をいたしたものがほとんど全部でございまして、そのうち一つだけは保留になっております。都合七十三件が許可になっておるわけでございます。県に現在上ってきておりまする四月十日で申しました二百九十七件につきましては、内容を申し上げますと、いわゆる合意解約というのが九十八件ございまして、それから解約の申し入れに相当するものが百七十一件、契約の解除が三件、更新の拒絶が二十五件、こういうことに相なっております。そのそれぞれの状況はまだ審議中でございまして、決定いたしておりませんのでわかりませんのですが、また農業委員会にたまっておりまするものが四百八十九件でございまして、これにつきましても、委員会で意見を付して県に逐次提出する手はずでございまするけれども、今度のような特殊の事情でございまするので、申請をした向きから取り下げる部分相当ある見込みである、こういう状況でございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 石川県の問題は後ほどお聞きしたいと思ったのですが、最初に局長の答弁の中に出ましたので、若干それについてまずお聞きしたいと思います。  で、先ほどお答えになった中で、三月中旬と四月十日の差七十四件は、県において処分済みのものだというわけですが、その七十四件のうち七十三件が小作地の引きあげを許可した、一件だけ保留と、こう御説明がありましたが、その許可された七十三件の内容はいかなるものでしょうか。たとえば合意解約とか、一方的解約とか、更新拒絶とか、そういう点から分けてどういうふうになっておるでしょうか。まずこの点を一つ
  75. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 許可されました七十三件は全部合意解約に属するものであります。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 一件保留というのは何でしょうか。
  77. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 一件保留になっておる分は解約の部分です。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 それから私どもへの地元の組合からの報告によりますと、昨年末約千五百件小作地引きあげの申請が農業委員会に出た、こういうふうに報告を受けておるのですが、ただいまの御報告によりますと、相当減っておるわけですね。これはどういう事情でそのようになったか、御説明願いたいと思います。
  79. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 当初お話のように、昨年の末におきましては件数は相当多かったのでございまして、千件以上に達しておったのであります、千四百件ほどあったわけでありますが、その後いろいろ関係者の説得と申しますか、あるいは農業委員会の努力ということによりまして、県の指導が功を奏しまして、漸次取り下げをして参っておりました。先ほどちょっと申し上げましたように、三月中ごろの数字として八百六十件ということに減って参っておる、こういうことであります。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 一応石川県の問題はその程度で、後ほどまた聞きますが、そこでもしあなたの手元でおわかりであれば、昭和三十年は非常にこの取りあげ申請がふえてきているはずですが、数字的に昭和二十八年、九年等に比較してどういうふうになっておるか、御報告願いたいと思います。もし三十年一年間の統計がまだ集計されておらなければ、上半期、六カ月分でもけっこうですから、それは申請とそれに対する知事の許可がどういう状態で出ておるか、おのおの御説明をいただきたい。
  81. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) ただいまのお尋ねの件数の問題でございますが、二十九年度をまず申し上げますと、申請の受理件数は五万六千八百三十二件、これに対しまして許可件数が五万一千二百十七ということであります。それからこれは三十年の状況でございますが、年間はまだわかっておりませんですが、北海道を除く上半期の分でございます。三十年度の上半期は受理件数が三万二千三百二十件、許可件数が二万八千三百六十二件であります。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 昭和二十八年、二十七年はわかりませんか。もしわかりましたら御報告願いたい。  それから昭和三十年の上半期は北海道を抜いたわけですが、例年の従来の例からいいますと、北海道関係はどの程度見当として見積ったら大体正確なわけでしょうか。
  83. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 北海道は二十九年度で申しますと、一千二百件余りになっております。
  84. 清澤俊英

    清澤俊英君 二十七年——北海道が……。
  85. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 二十九年です。
  86. 清澤俊英

    清澤俊英君 このさっきの総数の中ですか。
  87. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) さっき二十九年というところで申しました件数の中に北海道の分が千二百件余りということであります。  それからその前の状況でございますが、終戦直後は非常に多かったのでございまして、二十二、二十三は十万、十一万台になっております。それから二十四年が五万件台、それから相当減りまして、二十五、二十六、二十七は三万六、七千台です。許可件数も同じような推移をたどっておるわけでございます。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 大体の状況は一応わかりましたが、そこでこの二十九年、三十年等の数字を見ますると、非常に違った傾向が出てきておる。こういうことが読めると思うのですね。こういう数字の中から農地局長としてはこの数字をどういうふうにごらんになっておられるか。ちょっとばく然とした問い方ですが、あまりこちらが具体的に聞くよりも一つあなたの方のいろいろな面からのこの数字に対する感じを一つ聞きたい。
  89. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) むずかしいお尋ねでございますが、まあこの農地改革が一応終りまして、それから法制的に申しますると農地法、今度の農地法になりまして、しかもまた一、二年過ぎておるという状況になって参りまして、農地の行政制度といたしましてはむしろ落ち着いたはずでございます。従ってそういう制度の観点から申しますと、むしろこういう二十条の処理件数といったようなものはもっと漸減をするはずではないかというふうにも思われるのでありますが、しかしながら他方何と申しますか、耕作者の方と旧地主の方、これは大部分——まあ大部分と申しますか、ほとんど耕作を専業している部分が多いのでございますが、そういう人との間に話し合いでもって一部この貸し出しをしている耕地について返還を求めるという件数は、むしろ先ほど申しましたようなあるべき姿とは逆にふえて参っておる。それからもう一つの社会的な背景といたしましては、農地改革そのものに対する是正の要望と申しますか、要求といたしまして、御承知のように農地の価格について補償という問題、あるいは農地法の改正、こういった動きがこの一両年だんだんとやかましくなって参っておるのでありますが、そういう機運に乗じまして、農地の引きあげということがやや多くなってきておるのではないか。それからまたこれは一つ誤解もあるのではないかと思いますが、昨年農林省の農地局で今後の農地行政について一種の協議会を開きまして、あり方を検討したことがございますが、その検討の結論について誤解があって、今後小作地について再び解放を要求される、強い解放の要求が制度的に確立されるというふうな誤解もございまして、この際に小作地を引きあげておかないと、また解放しなくてはならぬのではないか、こういったようなまあ誤解と申しますか、逆用と申しますか、というようなこともあったのではないかと思いますが、そういったことが重なりましてこの二、三年、二十八年からでございますが、二十八条の申請件数が多くなってきておる、かように考えておるものであります。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 私はその点は大体農地局長と意見が同じです。で、やはりこの農地改革後土地返還をすべきものも若干あるいはあったかもしれない、そういうものは大体数カ年の間に適当に移動しておる、従って大体落ち着いておる。そこへもってきて急にこう二十八年ごろからふえ出して九年、三十年と非常に件数が多くなってきた。これは私は自然な現象ではないと思う。やはりそういう意味ではこの地主団体の大きなこの影響というものがこういう数字になって現われてきておると私は考えるのです。それからもう一つの点は、これらの数字を見て各年度ともそうですが、申請件数と知事の許可件数があまり違いません。これは私はどうも許可が形式的なこの書類等がととのっておれば、すぐそれを出していくという一つのそういう点が相当現われているのではないか、こういうふうにこの数字を見ておりますが、この点を本省としては検討されたことがあるかどうか、知事が許可を出しておる、それに対して小作人の方から訴願等をすれば、これは本省に上ってくるから、そういうものについてはもちろん検討されていると思うのですが、上ってこない部分ですね、これはまかしてあるのだからというて放置しておるのか、上ってこないものについても適当な方法で実情はどうだろうという調査をおやりになったことがあるかどうか、あるとすればそれに基く一つ感じですね、これを一つお聞きしたい。
  91. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) お尋ねのように二十条の関係、大部分——大部分と申しますか全部地方庁の権限でやっておりまするので、具体的に一つ一つの事件につきまして農林省は実は承知しておりません。お答えしにくいのでございますが、お尋ねの中にございましたように、どうも受理件数と許可件数があまり近よっておりはしないかという点について、実は私もその点について検討したいと思っておるのでございますが、全般的なその間の問題について検討したことはございません。ただ非常に顕著な事例についてはおそらく過去においても調査検討したのがございましょうと思いますが、今回の石川県の場合につきまして、やはり県のただ数字的な報告だけでなくて、少し個々の問題について当ってみる必要がありはしないかということで、個々の許可した、先ほど申しました許可いたしたものにつきましてただいま検討いたしております。その許可が当を得ていたか不当であったかという結論はまだ出ておりませんけれども、そういう顕著な事例については今後も検討いたしたいと思っておりまするし、具体的には滋賀県の場合にはただいま検討中でございます。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 この点は十分石川県等特殊な場合には検討はされたようですが、全般的にはあまり検討されておらぬようですが、これはやはり農林省としては現在の農地法を守っていく、これがまあ責任なわけですから、そうして農地制度を守るには何といったって末端における農地行政が適正に行われておるかどうか、将来のことは別ですよ、憲法なんかの問題も同じですが、これはともかく今ある農地法なんですから、やはりその線に沿って実情がどうなっておるか、こういうことはやはり十分把握できるような一つ努力をしてもらいたい、これは当然だと思います。  そこで、訴願になったものについてはあなたの方では具体的に検討されておるでしょうが、訴願になった分についてはどのような結論が、これは私事前に申し上げなかったからあるいは用意されておらぬかもしれぬと思うのですが、大体結論はどんなような状況ですか、大まかでもけっこうですから。
  93. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 訴願の受理件数、それの処理の件数、あるいは訴願の趣旨を容認したかどうかといったような内容の件数についての資料は持って参らなかったのでございます。従ってすぐお答えしにくいのでございますが、私日常の業務をやっておりましての感覚からだけ申し上げますと、訴願の趣旨には第二十条の関係からいえばもちろん両方ございまして、地主の方から申しますれば許可を当然すべきではないか、こういったもの、耕作者の方から申しますれば許可があったのはいけないのだ、こう両方出て参っておるのでございますが、いずれにいたしましても、どの部分にいたしましても、県知事の処分についての異議の申し立てでございまして、農林省がそれについて訴願の裁決をいたします場合に県知事の処分をひっくり返す、県知事の処分とは違った結論を出しておるというのが相当あるように思うのでございます。数字的にはそういうことをここで申し上げにくいのでございますが、別に資料を整えてお目にかけたい、かように存じます。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 その点は一つ資料は今局長から言ったように委員会を通じていただきたいと思います。で、大体その地方の府県庁ではルーズである。これはお互い想像のつくことなんですが、まあこういうふうに資料的に見てもこの点がやはり大体断定できるのじゃないかと私ども考えております。そこでこういう状況になっていて、農林省としてはこれに対する対策ですね、どういうふうにしたらいいとお考えなんでしょうか。私の申し上げる点は、広く対策と言えばはなはだばく然としますが、一つは農地法の線にあくまでも沿って、それで地元の農業委員会なり農地関係者が動いていくと、このことを何らかの方法でもっと徹底させる必要があるのじゃないか、こう考えておる、その面が一つ。  それからもう一つは、統計的に見てもこの全国解放農地国家補償連盟といういわゆる地主団体ですね、これがやはり何と言っても影響力を与えているわけです。こういうものに対してこれはどういう態度をとるべきものなのか。いや、それは政治活動は自由だからそんなものはほうっておく以外にないというお考えか、あるいは農地制度というものは非常にこれは重要な問題なんですから、政治活動に対する干渉にならない範囲において何らかのことを考えなければならぬものかどうか、そういった点を一つどのようにお考えになるか。二つの点について対策として一つお聞きしたいと思います。
  95. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) まず最初の点でございますが、農地法の精神に沿ってと申しますか、農地法の規定によりまして私どもは当然行政をやっていかなくちゃなりませんので、それと違った趣旨で運用されるということでは、これはわれわれの務めが勤まらぬのでございまするので、できるだけ御趣旨に沿って農地法の趣旨あるいは運用のやり方ということについてはあらゆる機会に普及徹底に努めておるつもりでございますけれども、なお先ほどいろいろお尋ねございましたような点から見ますると、不十分のそしりを免れないのでございます。これは最末端で申しますると、農業委員会の書記の訓練、講習の問題ともなりまするし、あるいは人の養成の問題になります農地の補償十万円の問題について、新聞に見ますと、農林省の声明のようなものが出ておりますね。補償はこれはできないのだと。ということはあれは農林省御了承なんでしょうか。御存じないんですか。
  96. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 声明と申しますか、まあ打ち明けて申しますと、形を整えた声明といったものでは実はないのでございまして、私がです、クラブでもって補償の問題についていろいろ話をした。農林省の公けの見解として体裁を整えて結論をはっきりつけて述べたんではないのでありますが、解説風に地主の補償の要求、特に解放農地補償連盟のそういう団体の主張を中心としての解説、それに対する私ども考えというものを話をしたことがございます。それを各新聞の担当記者がまとめて発表するということになったのでありまして、そういう経過でございます。
  97. 清澤俊英

    清澤俊英君 それからきょうの朝日を見ますと、何か土地取り上げが非常に問題になって、全国農地関係の課長会議を開かれたという記事が出ておりまして、その会議で「地主団体の全国組織である全国解放農地国家補償連合会の解放農地の補償要求運動は、農地改革をなしくずしにしていく意図をもひそめているとして、強い反対の態度を明らかにした。」これは事実ですか。
  98. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 昨日と本日、全国の農地開拓関係の課長会議をやっておりまして、その関連においての記事だと思いますが、別段その会議でそういうことをきめたというわけでもないのでございまして、先ほどもいろいろお話が出ておりましたように、最近の土地取り上げあるいは補償の問題等に関連しての情報を交換し、また農地法の趣旨の励行ということにつきましては、特段に農地法の処理そのものを扱っておる関係者が留意しなければならぬという趣旨を申し上げたのでございまして、そういうことをいろいろ取りまぜて、いわば観測記事的なものを書いたのだと思うのでありますが、経過は以上のようなことだと思うのです。
  99. 清澤俊英

    清澤俊英君 それから二十九年度の土地取り上げが五万六千八百三十二となっていますが、これは上半期と下半期で区別して件数を分けられませんか。
  100. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 今ここに分けたものがございませんのですが、前年のを見れば出ているはずでございますので、御必要でございますれば別の機会に御報告なり資料を御提出いたします。
  101. 清澤俊英

    清澤俊英君 それでこういうことは考えられませんですか。二十九年の六月に農業委員会法の一部改正があって、農業会議所ができまして、従って農業委員の構成がまた一歩後退したわけです。二十六年以降は私は大体非常に無理な土地取り上げが出ているのじゃないかと思うのですが、前の方のはとにかく農地委員で土地を処理しておりましたから、比較的あまり無理なものは出なかったのですよ、県段階においても……。二十六年以降非常にぼやけたものになって、それが二十九年にまたひどくぼやけて、こういう進展がきているように思いますが、それらは統計でどんなふうになっているでしょうか。
  102. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 偶然の符合かどうか、御説のように委員会制度の改組関連において、そういうことになっているのかどうか論断しにくいかと思いますが、そういう関係もおそらくあろうかという推定はできます。お話のように農地改革当時は相当件数が多かったのでございますが、二十四、二十五、二十六と減って参っておるのでありますが、二十六を一つの谷といたしまして、七、八、九と農地法第二十条の関係から申しますると申請件数が多くなって参ったということは事実でございます。
  103. 清澤俊英

    清澤俊英君 その点わざわざそういうふうな形で出してもらわなくてもいいのです。自然の形でただいま申し上げた取り上げ申請数と却下数を二十三年ごろから出してもらいたい。  その次にお伺いいたしたいのは、こういう調査ができておりませんか。小作調停件数はどのくらいあり、そのうち返還を決定されたものはどのくらいあるか、この資料は今わかりますか。
  104. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 今ちょっと手元にございませんから、先ほどの資料と同時に御提出いたします。
  105. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは十九日の新聞記者会見か何かであなたが話されたことがここに出ておるのだろうと思いますが、「金沢農地事務局では「小作人の泣寝入りによるものが多い」と警告、県側でも実情を調べるなど地主攻勢を押えにがかった。」こういう一つの記事があります。それから「小作地の取り上げは小作人の契約不履行など特別の理由がない限り小作人の同意なしにはできない。」こういう解説をしておられるが、その通りだと思います。そこで問題になりますのは、小倉店長談として「単に法律的につじつまを合せればよいといった傾向が農地事務局関係者に見られる点もあり、再反省しなければならないと思う。」とあります。これはその通りだと思う。私はつじつまを合せればいいということが、大体どこで間違いを起しておるかといえば、農地法第二十条第二項の三号に「賃借人の生計、賃貸人の経営能力等を考慮し、賃貸人がその農地又は採草放牧地を耕作又は養畜の事業に供することを相当とする場合」これを農業委員会委員等が強く取り上げて、いかなる場合でも、私はどうも返しては困りますといっても、お前のところなんか何だ、こっちは何だから返せ、これが大体責め手の一番強いものなのですが、結局すれば、さっきも私が言います通り、あなたの方で言うていられる通り、小作人の同意がなければ取り上げられないのだ、特別な理由がない限り。これが決定しておれば、こういう問題が起きない。小作調停等における返還も、それから大体農業委員会等が取り扱う場合でも、これを非常に重要視して、何か自分がばかに偉い裁判官にでもなった気になってこれを強制するのです。これが問題になっていると思うのです。私はだからこういう不当な土地取上げをなくするには、これをもっとはっきりしてかかっていく、もう一度はっきりして、返す意思がなければ取られないのだ、こういうことをもっとはっきり何かでもって出していただければ、何も無理して返すものもなければ、取り上げられて泣き寝入りになる者もないのだと思う。問題の中心はわかっておる。だから結局は、前の農地委員がなくなって、そうして性格の変った農業委員会になって、今度またそれが農業会議所になって、その性格が変るたびにこの問題の取扱いが逆にいきまして、くくくっと上ってきていることは数字に見えた通りなんです。問題はこの解釈と取扱いだけなんです。裁判所においても、おそらくは調停の申請の大部分は、農地委員会で決定した通りに何らかの数は返せ、こういう姿に出てきていると思う。よくよく農民組合等の関係で、これはもう何といってもがんばりさえしておれば双られないのだということが徹底していれば何といっても返しゃしません。それくらいのところは調停に出るところまでいきません。いったところで勝ちになるのです。大体われわれの知らないものがそういうところへ、調停へいってしまってこういう不祥事ができ上ってしまう。こういうことだと思うのですが、その点はどうですか。どういうふうに見ておられるのですか。この会議でどんなふうにお話しになっておりますか。
  106. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) これはもう御説の通り、知事の許可がなければこれは引きあげができない。これはもう大原則でございます。また解約といったような場合には、賃借人の同意がなければこれができないのでございますが、そういう趣旨をやはり十分関係者が承知しておるということが必要だと思うのであります。なお許可いたします場合にも、先ほどちょっと法文をあげてお尋ねがございましたが、賃借人側の生活の状況、これが返すことによって生活がどういうことになるか、また
  107. 亀田得治

    亀田得治君 それからこの石川県の問題は、すでにあすこは早場地帯ですし、耕作に着手が早いのですね。そういう関係からこういう問題に対しては早く断固たる態度をやはり私は明示してほしいと思うのですが、そこがあいまいな態度をとられますと、申請書を出してあるというふうなことだけで簡単に地主の方が小作人の耕作を排除して実力でもって中へ入ってくる、こういうふうなことが起きぬとも限らないわけなんです。で、おそらくこれはすでに社会問題になっておるわけですから、石川県当局としては手抜かりはないと思いまするけれども、たとえこの農地引きあげの申請が許可になっても、小作人がそれに不服なら訴願の道もあるわけだし、決定的にはこれは訴訟まで持っていけるわけですし、だからそういう手続が一切済まなければ耕作権はあくまでも小作人にあるのだ、こういう関係を十分徹底さしてもらわぬというと、力づくで入ってきて植付してしまうとかいうことになると、あすこの鏡石事件の問題が起きたり、行き過ぎるとまたお互いに暴力事件等が起きたりする。だからこれは起きてしまうと、先にどっちがなぐったとかなぐらんとか、あとから議論になるわけですが、そういうことにならぬように十分注意をされているかどうか、この点気にかかりまするので一つお聞きしておきたいと思います。
  108. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) お尋ねのような心配が私どもにも実はございまするので、県当局としばしば課長、部長等とも話し合いをいたしまして、慎重にかつ迅速に処理するように要望いたしておりますし、また事務局を通じて合意解約といえども一がいに許可するということについては問題があるから、内容をよく精査する必要があるというようなことを農業会議等にも話を実はいたしておるのであります。なお一応引きあげの申請が出ているから小作人に立ち入りを制限する、こういったようなことも実は心配であります。でありますが、法律上もそういうことはできないはずでございますが、実際問題としてあり得はしないかということも他の方からも心配が指摘されたのでございます。そういうことも実は一件ございまして、農地委員会が立ち入りすぎたやり方をいたしたのでございまして、その点につきましては是正をさせております。なおそういうことが今後起りませんように、一そう趣旨を徹底と申しますか、注意をして参りたい、かように存じております。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 こういうことはお聞きになっておらんでしょうか。この石川県のこの土地問題に関連して、地主の一部の者が青年の特別な組織を作って、そうして実力行使をやるのだ、こういうようなことを計画しておるというようなことはお聞きになっておらんでしょうか。
  110. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 金沢市、それから石川郡の集団的な小作地の引きあげの問題について、地元に不穏なような、耕作者の方から申しまして、不穏なような、不穏というと穏当を欠きますかもしれませんが、要するに耕作者が耕作権を失うのではないかというような点について不安動揺がありはしないかというような点についても、調べさしたのでございますが、そういう心配は必ずしもしていないというようなことであったので、私どもそういう青年部を作って実力行使を行うというようなことはないのではないかと思いまするけれども、最近のあるいは事情かもしれませんので、なお確めてみまして、地方によっては青年部と申しますか、婦人部を作るといったような動きがあるように、これは聞いておりますが、具体的に金沢の近くで青年部がそういう行動に出るおそれがあるか、あるいはそういう動きがあるかどうかについては、至急調査をして善処をしたいと思っております。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 石川県の土地問題については、全国解放農地国家補償連盟の石川県の副本部長をしておる山上という人ですね、こういう人が背後にいて相当あふったというふうな情報も入っているのですが、そういったような点はどうでしょう。
  112. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 情報といたしましては、私どもそういうことを得ております。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういうわけでしてね、私はこの石川県のケースは地主がほんとうに困って、どうしてもこの部分だけ小作人と話し合って何とかしたい、こういうふうなケースとはだいぶ違うと思うのです。これは非常に背後のそういうものが動いて、そうして非常な行き過ぎた行動に出ておると思う。その証拠に、農業委員会なり県等から注意されると、取り下げ件数がばあっとこう出てくる。こんなばかな、耕作者にしてみればだれしもこれは土地について簡単に書類を出してすぐ引っ込めると、そんなものだったら初めからせんでもいい。ということは、その地主がそういうことをやっているんじゃないのです。一般的にそういうふうな一つの背後の運動があって出ている。こういう動向は一つ十分みて対処してほしいと思います。  それからもう一つ、できれば御注意願いたいのは、こういう農地の紛争が起きた場合に、地主がよく裁判所に仮処分の決定を求める場合があるんです。そうすると、今の裁判所ははなはだ私は法律専門家として言いにくいことなんですが、農地法なんかには非常に暗い、だからそのために農地法を無視して民法の観念だけからよく仮処分決定をやるのです。これは金沢市でもやったし、先だって高松市でもやっている。それであとから農民から指摘されたり、あるいは県の農地関係の人から指摘されたりして、頭をかいておるのですね。しかしそういうことが一旦あると、頭をかいて、そのあと訂正するまでがこれは大変なんです。だからこれはやはり私は農林当局としても、どうも紛争が起りそうだという地区の地方裁判所に対しては、もし農地関係のそういう仮処分等があった場合には、ぜひこの県の意見を聞くなり、あるいは少くともこの口頭弁論を聞いて、そうして事件を判断する。こういうことはまあやって欲しいと思うのですね。でこれは最高裁判所にも私どもそういうミスがあったもんですから、絶えずお願いしておる。最高裁判所としても裁判官は独立だから命令はできないが、まあ裁判官会同等の場合にはこれは注意いたしております、こういうことなんです。で私は裁判官などといったって何もそう自分だけでお山の大将になっていばっていることはないんで、いろいろな好意的な注意はいろいろ受けるべきだと思うのです。ところが裁判所というと、何かものを言うていくことがちょっといかんのではないかという空気が一般的にありますが、私はそういうことじゃなしに、やはり間違いが起きないように若干そういうおそれのあるところについては、そこまでの心配りを一つしてもらいたい。これはぜひお願いしておきます。  それともう一つは農地法違反の人ですね、これは法律でも明示しているのですが、やはりこの犯罪事実があれば、何とかこれを告発するなりそういうことをすべきじゃないか、ほんとうに農地制度を守るためには。もちろんそれは人におだてられてちょっと出してみたとか、いやちょっと強引にやったとか、そういうのは別ですが、ほんとうに悪質なものだと思われるものについては、やはりこの告発をやってもらう、これは当然じゃないかと思うのですがね、それはどういうふうにお考えでしょうか。
  114. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) お尋ねのように農地関係についていろいろ制限禁止の規定がございまして、中には民法上と申しますか、司法上の効力の問題だけじゃなくて、刑罰に相当するものもございますんですが、お話のように必ずしもそれが十分に励行されておるというふうには見受けられない。はなはだ遺憾でございまするので、御説のように違反の悪質なものにつきましては、関係官から告発するといったようなことも必要であると私も考えております。そういうように将来持っていきたいと思っております。
  115. 清澤俊英

    清澤俊英君 さっきね、亀田君の質問で農地連盟の補償に対して、犠牲者が、委員会の書記の研修制度といったようなことについてもっと意を注がなければならぬと思いまするし、まあ県の係官等につきましては、農林省の範囲内で直接趣旨の徹底もできまするけれども、末端にはそうはいきませんので、これは県に主としてお願いいたしまして、地元の農業委員会、あるいはさらに農民層にまで農地法の趣旨の普及徹底につきまして、今後一そう努力をして参る。何と申しましてもこれは農家が直接自分の耕しておる土地の権利の法律上の問題でございまするので、農家自身が自分の権利と申しますか、自分の土地の法律関係についてやはりある程度の知識、権利に目ざめると申しますか、そういうことがなくては守りにくいのでございまするので、そういう趣旨も入れて今後農地法の普及に努力をして参りたいとかように考えております。  もう一つのお尋ねの解放地主連盟の関係でございますが、これは私ども直接にその連盟のやっておりますることについて制限する、どうするということはちょっといたしにくいのでございまするけれども、同連盟が主張いたしておりまするところについて私どもがどう考えているか、あるいはまた県当局等においてどういうふうな考え方で処理しなくちゃならぬかということについては、いろいろな機会に申し述べているつもりでございます。まあ、私どもの力が足らんと申しますか、十分説得力がないためか、連盟の主張そのものは必ずしも力をそがれているという状況ではございませんので、はなはだ憂えているのでございますけれども、なおそういう方向で一つ対処していきたいと、かように考えております。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 この第一の農地法についてやはり農業委員会等初め末端に十分徹底させる、その徹底させ方についてこれは私どもこまかい具体的な問題にたびたびぶつかりますので、たとえば、何だこういうことは法律上当りまえのことなのに、小作人がだまされてうっかりしている、しかしこれも知らなかったからだといったようなことがたくさんあるわけでして、そういうことを今一々申し上げるとこれは大へんに時間を取りますから、まとめて申し上げて、これは一つ御参考にしてもういたいと思う。  その一つは合意解約、賃貸借の更新の拒絶ですね、こういう場合であっても、解除なり一方的解約と同じに、知事の許可並びに土地を引きあげなければならぬという合理的な理由、この二つの条件が必要なんだということですね。とにかく解除とか一方的解約というのは押しつけるのだから、その場合には相当窮屈なんだろうが、そうでないやつはもう形だけでも整えればさっさといけるのだ、たとえば合意解約それから賃貸借の更新拒絶なんというのは一たん期限がきたのだから、そこでは借人はもう弱い立場なんだというふうなばく然とした常識がやはりあるのです。でそこへもってきて地主の方が若干説明すると、そういう常識があるからすぐだまされちゃう、この点は一つやはり啓蒙してもらいたいと思う。  それからもう一つは、厳重に農地法二十条第一項の条件というものを考えていけば、一方的な取り上げということは実際上はほとんど不可能です。これははっきり原則なんです。引きあげのできる条件ということは書いてあります。しかし借地小作人だって地主以上にいいなんというのはこれは例外なんですから、だからどういう条件を出してきたって、一方が困っておれば一方も困っているのですから、結局厳密な検討をやっていけば一方的な引きあげなんというものはほとんど不可能なんです。むしろこういう点をよく徹底さしておいてほしい。もちろん若干お互い同士話し合いをして移動するというような問題というものについては、二十条の条件の検討というものがゆるくされるのは、これはもうおよそ法の運用として常識だと思う。だからそういう意味で常識的に運用したものを私は文句を言うのじゃない。ところが合意解約などについては条件等若干ゆるく考えるということにつけ込んで、今度は県へ持っていく書類は無理やりに合意解約の体裁だけつくろうということがときどき行われるわけなんです。あるいはどうしても合意解約の判を小作人が押さぬという場合には、仕方ないから、たとえば小作料を持って来てもわざと受け取らない、そうしてあいつは小作料を受け取らんでおって、払わない、法律知識の発達しておる農民団体のあるところならそれを供託するとか何とかするのだが、まあそこまでは知恵が回らぬ、そうすると納めないでおる、結局納まっておらぬのだからということを今度は県に出される、形式が一応そろうと結局許可が出る。あとからそれが問題になって、これは実際の合意でもないし、あるいは小作料を払わなかったと言うけれども、実際は受け取らなかったのだ、こんなようなことがよくあるわけでしてね。この辺をまあ平易な言葉で一つ下部にこれが徹底するようにぜひ一つ御指導願いたいと思います。  それからこの地主連盟のことについての御意見を今お伺いしたわけですが、大体地主連盟としては三つのことを出して、そうしていろいろ運動をしておるようです。一番表面に出ておるのは例の解放農地に対する国家補償一反歩十万円という問題ですね。私はこれは農地改革の経過、あるいは最高裁の判決ももうすでに出ておる、いろいろな面から見てもこんなものはもう全く問題にならぬものだと、こう確信しておるのです。まあこれはほんとうを言えば農林大臣あたりにこういうことを正式に明言してもらうということが一番いいことなんですが、おられないからあなたに聞くわけですが、この項目なんかは、政治的な立場は別ですよ、将来どうしたらいいとか、いろいろなことは別ですが、この農地解放が行われてきた経過と、現在の農地法の立場からいって、こんな要求というものはこれはもう全く筋が通らないというふうに考えておるのですが、局長はどういうふうにお考えです。
  117. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 私からお答えするのが適当かどうか、ちょっと判断に苦しむのでございますが、いわゆる解放農地に対する国家補償ということが、根拠として農地改革が不当であったということをやはりどうしても大きな理由にしておるだろうと思うのでありますが、その点ともう一つは、この不当だという問題はインフレーションの問題と非常に関係があるのでございますが、これはそう要求する側の人もおそらく否認をし得ないところでございますが、この問題を補償ということで解決することは、またこれは農地に限りませず非常にむずかしい問題でございまするし、またインフレで受けた影響というものを補償という形で必ず考える、そうしてそれを実行することがさらにインフレーションを起す原因にもなるということで当然あろうかとも思いまするので、そういった趣旨で解放地主に対する国家補償ということが全く考えられないことではないかと考えております。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 石川県の問題について若干もう一度戻ってお聞きしますが、先ほどの御説明の中で、四月十日現在で県に上ってきておるものが二百九十七件あると、こういうお話でした。その内訳も御説明があったわけですが、この中で一番多いのが一方的解約です。その次に合意解約が九十八件あるわけです。私はこの中で合意解約と称するもののうちほんとうに合意であるものは別ですが、そういうものを除きまするならば、これはもうほとんど却下さるべきだというふうに見当をつけておるのですが、この辺は現在のところ本省としてどんなふうにお考えになっておるんでしょうか。
  119. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) おそらく大体お尋ねのようなことで処理されるんじゃないかと私も思っておるのでございます。合意解約以外については多くはこれは許可になる見込みがないのではないか。それからまた合意解約につきましても、少し内容を精査して決定をするということになろうかと思いますし、私どももそういう方針で指導して参りたいと、かように思っております。返してもらった賃貸人の方が経営能力が十分あるかないか、こういった点を両方彼此勘案いたしまして許可をするように、こういう趣旨でございまして、そういう趣旨に合わない際は許可はしてはいけないというまあ逆にも当然読めるのでございますので、そういう趣旨でやって参っております。会議等におきましても、そういう趣旨で問題を処理するように絶えず注意をいたしております。
  120. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは問題はなるほど賃貸人と賃借人の間において両方の経営能力、生活状況等を勘案してというけれども、どっちも成り立たぬ場合が多いのです。ところが、それをただ常識的に足らぬものをあっちからこっちへ足らぬ中で数の権衡が少し破れておるというのでつき合わしてしまう。これは結局は無理な話で、そういうことはいやだと言えば、それまでの話になるやつを、そこに何か道理があるがごとく言うて、そこまで持って行ってしまう。かりに貧農地帯におる私らは始終あります。賃貸人が三反持っておる、賃借人が六反持っておる。お前は六反であるし、こっちは三反なんだから、まあ一反くらい返してもいいだろう、六反は大して正常な経営反数ではない、そういうやり方が非常に多く取り扱われていて、その場合結局私は返しちゃ困ります、こういうことを言い切られないのです。裁判所でもそうだし、農地委員もそうだし、非常にしろうとの農地委員が出て、常識的な考え方をもって——それが常識的なのかどうかわかりませんが、非常にそういう点でこういうものが非常な勢いで増大している。だからその点はもっとはっきりやってもらえば何でもないと思う。ちゃんとわからぬのじゃないかと思う。農地事務局長はそう言うておる。小作人は泣き寝入りの者が多い。局長は単に法律的につじつまを合わせてゆく、話し合いがついたらそれでやろうと農地関係事務当局が言っているのだ。これはちゃんと知っておって、それに対する啓蒙をさらにせられないということはおかしい話だと思う。それはあなたばかり責めるのは無理です。それは無理だと思う。最近農民運動なんというものも、大分だらしなくなりまして、こういう問題に対してあまり実行的な面でやらない線も非常に出ておりますから、そう役所ばっかりぐずぐず言うのも無理だと思いますけれども、あなたの方でも少しはちゃんと原因がわかっている、そうしてちゃんと気がついている。そうしてそういうことは、一つ徹底的にずっとおやり下すっても、私は少しも罰は当らないと思うのです。やっていただけますか。もしやれないとしても、昔の農地委員会のような構成でやるべきだ、これをしまうと考えておられるかどうか。
  121. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 新聞に出ておりますことは、必ずしも私の話したことと正確には同一ではございませんですが、趣旨は要するに違わないと言えるのでございまして、あえて訂正する必要はないと思うのでありますが、二十条の趣旨につきましては、やはり真に農業生産力を向上させるのだ、小作農民の地位を確保するのだ、こういう趣旨はやはりどうしても主体でなければならぬ。そういう主体を忘れて法律のつじつまを合わせるというようなことに終始するようなことになっては困る、そういうことを憂いて実は申しましたのでございますが、またそういうことがあるとすれば、そういう態度は是正しなければならぬ、みずからすべての関係者が相戒めなければならぬという趣旨で申しておるのでありまして、単に現在の欠陥を是正するというだけでなく、そういうおそれがあるから関係者は大いに戒心しなければならぬ、こういう実は趣旨で申したのでありまして、お話のように実はやっておるのであります。  なお委員会の制度の問題につきましては、これはいろいろ御意見がございますし、私どもも必ずしも現在の制度が最善とは思っておりませんけれども、今後どうするかということについては、なお農地問題は恒久制度の問題でございますので、慎重に検討して参りたい、かように存じております。     —————————————
  122. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に理事辞任許可及び補欠互選の件についてお諮りいたします。青山正一君及び鈴木強平君から都合により理事辞任したい旨の申し出がありました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  つきましては、直ちにその補欠互選を行いたいと存じます。この互選の方法は成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認めます。それでは私より佐藤清一郎君、関根久藏君を理事に指名いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十分散会