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1956-02-14 第24回国会 参議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十四日(火曜日)    午後一時十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            青山 正一君            重政 庸徳君            鈴木 強平君            江田 三郎君            三浦 辰雄君    委員           池田宇右衞門君            横川 信夫君            東   隆君            河合 義一君            清澤 俊英君            溝口 三郎君            千田  正君   政府委員    農林政務次官  大石 武一君    農林省畜産局長 渡部 伍良君    林野庁長官   石谷 憲男君    通商産業省公益    事業局長    川上 為治君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    北海道開発庁企    画室副主幹   吉村 次郎君    農林省農地局参    事官      戸嶋 芳雄君    建設省河川局次    長       浅村  廉君   参考人    電源開発株式会    社副総裁    藤井 崇治君    北海道土木部長 田中 彦敏君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○公有林野官行造林法の一部を改正す  る法律案内閣提出) ○開拓者資金融通法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○農林漁業金融公庫法の一部を改正す  る法律案内閣送付予備審査) ○飼料需給安定法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○農林水産政策に関する調査の件  (北海道十勝上流音更川灌漑用  水に関する件)   —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  最初に参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。北海道十勝上流音更川灌漑用水に関する件について、本日電源開発株式会社総裁藤井崇治君及び北海道土木部長田中彦敏君参考人として出席を求め、意見を聞くことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  なお手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないと認め、さように取り計らいます。   —————————————
  5. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 公有林野官行造林法の一部を改正する法律案議題にいたします。  本法律案は去る二月九日内閣から閣法第二十七号をもって提出され、去る二月十日当委員会付託されたものでありまして、参議院先議で本付託になったものであります。まず提案理由説明を聞くことにいたします。
  6. 大石武一

    政府委員大石武一君) ただいま上程せられました公有林野宮造林法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  公有林野官行造林法は大正九年、当時著しく荒廃いたしておりました公有林野造林を促進する目的をもって制定されたものでありまして、国が公共団体との契約に基き、収益を分収する条件をもって、公有林野造林することができる旨を定めたものであります。この法律に基きまして、公有林野官行造林事業は、約三十万町歩の造林目標として出発し、明三十一年度をもって、おおむね当初の目標面積植栽を完了する予定でありますが、御承知通り公有林野につきましては、なお造林を要すべき土地相当にありまするし、また部落有林野につきましては、いまだに造林が十分に行われていない現状であります。従って引き続き公有林野官行造林を実施いたしますとともに、新たに部落有林野官行造林契約対象として、その造林を促進することといたしたいのであります。元来、部落有林野は、農民共同利用対象とされてきている林野でありますが、その利用状況はとかく粗放で、土地高度利用見地から造林を行うことが望ましい土地があるにもかかわらず、資金不足、従来の使用慣行による規制や森林経営知識経験不足等のため自力による造林がなかなか行われない場合が少くないのであります。このような土地に国が造林を行うことは、これら農民の要望にも適合し、国の造林政策としても、まことに適切なものと存ずるのであります。しかも部落共同利用に供せられている林野のうち市町村の所有名義となっているものは、従来から官行造林対象とされてきておりますので、それ以外の共有等私有名義のものでも、実質的に部落有林野であるものについては、公有林野に準じて官行造林対象にする必要があると存ずる次第であります。  なお、水源林の造成が目下の急務であることは申すまでもありませんが、その方法として、土地所有者状況からみて、国が造林を行う方がより確実にして、効果的である場合があるのであります。このため、従来公有林野官行造林事業においては、保安林契約対象から除いておりましたが、本年度初め、これを水源林にまで拡大実施することにいたしました。ついては、水源涵養のため造林を行う必要のある土地であって、公有林野及び部落有林野官行造林地とあわせて造林をなすことが必要であると思われる一部私有林についても、官行造林を行うことができるようにすれば、官行造林地管理経営の面からも、水源涵養目的達成の上からもまことに望ましいことと考えるのであります。  以上の理由によりまして、官行造林契約対象とすることができる土地範囲を、従来の公有林野のほか、新たに部落有林野及び水源涵養のため造林を必要とする土地の一部にまで拡大し、もって国有林野事業一般林政に協力することにより、造林の促進に資することができますようにいたしたいのであります。  以上がこの法律案提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  7. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本法律案審査は後刻行うことにいたします。   —————————————
  8. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 開拓者資金融通法の一部を改正する法律案議題にいたします。  本法律案は、去る二月十日内閣から閣法第三十号をもって予備審査のため送付され、即日当委員会予備付託になったものであります。まず提案理由説明を聞くことにいたします。
  9. 大石武一

    政府委員大石武一君) ただいま提案になりました開拓者資金融通法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由の概要を御説明申し上げます。  今回の改正の第一点は、昭和三十一年度から新たに農地開発機械公団が保有いたします機械を使用して行われますところの、いわゆる機械開墾事業地区開拓者に対し貸し付けます資金範囲償還条件等を定めた点であります。御承知通り機械開墾は、ごく短時日の間に開墾が完了いたしますので、その営農もまたこれに伴い速度を合わせて参らなければならないわけであります。従って機械開墾地区に入植いたします開拓者一般開拓者に比べ開墾営農を通じて当初から相当多額の資金を必要といたしますし、また従来と異なった新しい種類の資金も必要となる次第であります。そこで政府といたしましては、機械開墾地区特殊性にかんがみ、この地区入植者に対して新たに開墾作業に必要な賃金並びに飲料水供給施設、その他政令で定める施設を設置するのに必要な資金を貸し付けることができるようにいたしたい所存であります。しかし、これら資金償還条件は、開墾営農を通じてごく基礎的な資金については従来の一般入植者に対する営農資金についての条件同様年三分六厘五毛、据え置き五年、償還期間二十カ年とし、そのほかの資金については年五分、据え置き五年、償還期間二十五カ年といたし、いずれも据き置き期間中は無利子といたしたいのであります。  改正の第二点は、従来既入植開拓者に対して、家畜資金等貸付を行い、その経営確立に努めて参りましたが、これは現在五分五厘で二年据え置き、五年償還条件でありまして、営農確立途上開拓者にとってはその生産を拡大する上において多少重荷となっている点もありますので、より有効に拡大再生産に役立たせるためには、もう少し償還条件を緩和する必要があるかと存じます。そこで償還期間を若干延長いたしまして三年据え置き、八年償還条件といたしたいのであります。  最後に改正の第三点といたしましては、昭和二十八、二十九年の両年にわたりまして、凍霜害、風水害等でかなりの被害をこうむった開拓者相当あるわけでありますが、これらの者をこのまま放置いたしますと、受けた痛手のために、ついにはせっかく今まで築き上げてきた成果がくずれ、生産の縮小を余儀なくされるものも出るかと思われます。よって政府といたしましては、これら連年被害を受けた開拓者に対し、農機具、畜舎、サイロ、堆肥舎等生産基盤となる設備を整えるに必要な資金を貸し付けることによって窮状を打開し、営農基盤確立させて経営の安定をはかろうと考え、新たに五分五厘で三年据え置き、十二年償還資金を設けたいと存ずるものであります。  以上が、この法案の趣旨と内容でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  10. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本法律案審査は日をあらためて行うことにいたします。   —————————————
  11. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案議題にいたします。  本法律案は去る二月十一日内閣から閣法第三十三号をもって予備審査のため送付され、即日当委員会予備付託になったものであります。まず提案理由説明を聞くことにいたします。
  12. 大石武一

    政府委員大石武一君) ただいま提案になりました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  農林漁業金融公庫は、その設立以来三年、その前身である農林漁業資金融通特別会計時代をも通算いたしますとすでに五年間にわたり農林漁業者とその組織する農林水産業団体土地改良区等に対し、農林漁業生産力を維持増進するために必要な資金を、長期、かつ、低利で、融通して参りましたことは、各位のよく御承知通りであります。この間に同公庫が貸し付けました資金総額は、千百六十六億円に上っており、昭和三十年度末現在の融資残高は、九百五十億円以上に達する見込みであります。また同公庫は、昭和三十年度から新たに自作農維持創設資金貸付をも始めておりますが、すでに当初計画額のうち相当額貸付を完了いたしております。  昭和三十一年度におきましては、前年度に引き続き、食糧増産等重要農林漁業施策に呼応して、土地改良事業、漁船の建造等に要する農林漁業生産施設資金融通を行うほか、新たに農山漁村建設総合施設等に要する資金融通を行うことといたしております。三十一年度における公庫融資総額は、全体として二百九十億円でありまして、前年度に比較いたしますと、三十億円の増加になっております。この二百九十億円の貸付を行うための原資は、産業投資特別会計からの出資金十億円、回収金八十億円、資金運用部からの借入金百四十五億円と簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金五十五億円となっております。従いまして、政府産業投資特別会計から十億円の出資をするため、農林漁業金融公庫法の一部を改正する必要がありますので、この法律案を提出いたした次第でございます。すなわち、同法の現行規定の第四条中政府からの出資金が四百六十六億七百万円となっておりますのを、十億円増額して四百七十六億七百万円に改めるものであります。  右のような資金構成によりますと、公庫資金調達原価は、二十九年度末に比べ、やや高くなっておりますが、公庫の経費を節約するほか滞貨償却引当金積立率を調整して貸付金利引き上げ等は行わないことといたしておる次第であります。  以上がこの法律案提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  13. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本法律案審査は後日に譲ります。   —————————————
  14. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 飼料需給安定法の一部を改正する法律案議題にいたします。  本法律案は去る二月十三日内閣から閣法第三十六号をもって予備審査のため送付され、即日当委員会予備付託となったものであります。  まず提案理由説明を聞くことにいたします。
  15. 大石武一

    政府委員大石武一君) 次に飼料需給安定法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  すでに御承知のごとく、飼料需給安定法は、政府輸入飼料買い入れ保管及び売り渡しを行うことによりまして、飼料需給及び価格の安定をはかり、もって畜産の振興に寄与することを目的として、昭和二十八年三月より施行せられた法律でありまして、その運用につきましては、制定の当初は財政上の制約もございまして、遺憾ながらその機能を十分に発揮し得なかった事例もございましたが、本年度政府輸入飼料売買差損食糧管理特別会計中に織り込むことといたしましたため、輸入ふすまをはじめ相当量輸入飼料買い入れ及び保管を行うことができ、また一方には昨年秋の大豊作の影響も加わりまして、最近の飼料事情は比較的安定した状況を示し、おおむね本法所期の効果を上げ得たと存ずる次第でございます。  明年度におきましても引き続き政府輸入飼料売買差損につきましては、食糧管理特別会計中に織り込むこととし、この法律規定されております飼料需給計画に従って輸入飼料買い入れ保管売り渡しをいたす次第でありますが、保管中の輸入飼料特にふすま等におきましては、梅雨期などに際し、高温多湿等主として気象上の影響によりまして、品質が低下し、ために国庫損失を与える場合も予想されるわけであります。従いまして、本改正案では、保管する輸入飼料品質が低下し、国庫に著しい損失を生ずるおそれがある場合に、現行法におきましては、買い入れ保管及び売り渡し対象外となっております国内産飼料も含めまして、同一品目、同一数量の飼料保管操作上必要な買いかえ、または交換を行いうる規定を新たに設けまして、損失を未然に防止するとともに、保管飼料を良好な状態において保持し、もって本法所期目的達成に資することといたしたいのであります。  以上がこの法律案提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  16. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本法律案審査は後日に譲ります。   —————————————
  17. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 参考人の都合によって、そのまましばらく休憩を願います。速記をとめて。   〔速記中止
  18. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を始めて下さい。  北海道十勝上流音更川灌漑用水の件を議題にいたします。  本件はかねて再度にわたって当院に請願され、そのつど採択の上内閣に送付され、また当委員会の問題になっておったものでありますが、この問題について、重ねて重政委員から発言が求められておりますので、この際御発言を願うことにいたします。  なおこの問題に対するいきさつにつきましては、お手元にお配りしておきました本件に関する関係大臣に対する照会及び右照会に対する関係大臣からの回答によって御承知を願います。  本件について、ただいま政府及び関係機関からの出席者は次のようであります。参考人電源開発株式会社総裁藤井崇治君、北海道土木部長田中彦敏君政府側北海道開発庁企画室主幹柏原益次郎君、副主幹吉村次郎君、建設省河川局次長浅村廉君、通産省公益事業局長川上為治君、通産省開発業務課長市浦繁君、経済企画庁計画部長大来佐武郎君、農林省農地局参事官戸嶋芳雄君。  参考人各位におかれましては、御差し繰り御出席をいただき、ありがとうございました。  では重政委員の御発言を願います。
  19. 重政庸徳

    重政庸徳君 この問題は、昨年六月十日当委員会議題といたしまして、経済審議庁吉岡電源開発課長農林省戸嶋参事官通産省市浦開発業務課長建設省国宗水政課長等の御出席を得まして、審議いたしたのでありますが、この問題の生じた根源を申し上げますと、糠平ダム水利権の許可に当りまして、これは昭和二十九年の四月二十七日に許可いたしておりますが、北海道知事下流十勝土地改良区が渇水時の八トン及び五、六月の雨季における十六トンの水利権を有しておるにもかかわらず、水利権者意見を徴することなく、糠平ダム地点水利使用を認可いたしておるのであります。建設省もまたみずからこれを調査することなく、北海道知事に臨時に認可を与えておるということが明らかになっておるのであります。これを要約いたしますれば、このいわゆる糖平ダム下流から改良区の取入れ口までの区間流量、これは二十九年の五月から九月の間に共同調査をいたしたのでありますが、一トン半しかなかった。これをその区間流量でまかなえる、八トン及び十六トンの水がまかなわれるという重大なるあやまちがここにある。あるいは調査のあやまちか、どういうあやまちかわかりませんが、しかしこれは常識から考えても、その流域面積から考えても一トン半ないし二トンしかなかったということは常識的に得られるのであります。こういう重大なるあやまちのもとにすべての手続が終了いたしたのであります。その後、ダムはどんどん計画通りに進行して、すでにでき上っておる。しかもこの問題の解決はちょっとも緒についておらない。これはこの問題の骨子でありますが、引き続きまして御質問いたして、この反問の流量があやまちであったかどうかということは、もう議論する余地もないと思いますが、しかしながら一つ御質問いたしたいと思うのであります。  当初の糖平電源開発事業基本計画を策定した際に、下流既得権水量補償放流を具体的にどう考えていたのか。またその算出の基礎はどういう根拠によったのか、お尋ね申し上げます。開発庁あるいはそれを調査して提出した北海道庁に御答弁をお願いします。
  20. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) 北海道開発庁吉村でございます。北海道開発庁といたしましては、総合開発見地上、糖平電源を強力に推し進めるために、二十七年度道と関係官庁も入れまして共同調査をやりまして、北海道開発庁基本計画を作ったのでありますが、そのときは、その区間流量に対する正確なる資料がなかったものでありますから、とりあえず二十七年度十勝土地改良区の資料によりまして推定したときは、そう大した不足はないだろうという結論を出しまして、一応八トンの水利権がありますので、それに、その当時配電計画というものはわからなかったのでありますので、一応その既得権までの水量区間流量不足する場合は放流をしなければならない、こういう文章にいたしまして、基本計画々作ったわけであります。
  21. 重政庸徳

    重政庸徳君 この開発庁責任をもってこれは調査したのですか。
  22. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) この調査開発庁責任をもって調査をいたしました。
  23. 重政庸徳

    重政庸徳君 当初の計画書によりますと、元小屋ダム下流のいわゆる区間流水量は九トンないし二十トンの実測流量があるという数字を記載して、農業用水は大体これだけでまかなえるという判定のもとに計画いたされておるのでございます。ところが区間流量は、共同調査の結果渇水期には一・五ないし二トンしかないということが出た。これは二十九年度において開発局推定も、電源推定もともにそういうことになっております。三十年度は多少水量が多かったと承知しておりますが、しかしながら常識で考えて、流域面積が二百三十平方キロしかない、区間流域面積は。これは概算的に考えても大体二トン内外の水量と思う。それを開発局ともあろうものが、こういう基礎のもとに電源開発計画したということは、はなはだ遺憾に思うのであります。御答弁なければそういうふうに考えてもいいですか。
  24. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) あの計画を作りますときに、そのいわゆる区間流量を測定します資料が、十勝土地改良区のみでありましたので、あの計画書に書いておきましたように、今の数字はまことに不確実であるから、厳密なる調査を行わなければならない、こういう意味のことをちゃんとあれに附記をいたしまして、計画書を作ったわけでありまして、今申されましたように、二十九年度調査と、今度三十年度にまた調査をやりましたのでありますが、それとの間には著しく数字の面における隔たりがあります。それで今三十一年度電源の方におきまして責任をもって調査をしろ、こういうふうに申しておるわけでありまして、北海道開発上もそういう基礎資料が乏しいのでありまして、あの計画を作るときはやむを得ざる数字として、それのみが唯一の資料であったからああいう表現をいたしたわけであります。
  25. 重政庸徳

    重政庸徳君 これはもっと率直に答えてもらえぬかね、率直に。初めからそういう不安定な、しかも常識から考えて、技術者常識から脱している。そういう基礎のもとに下流既得権を侵害するということになっている。今も君はここにそれだけの水量があると思いますか、あると思っておりますか、常識的に考えて。
  26. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) 計画書を作りましたときの数字になるような水量があるとは思っておりません。ただし二十九年度、三十年度の二年間の調査によりまして、数字が変って実測されましたので、どういう数字が最も合理的かということは、まだ確定し得ない状態に今あります。
  27. 重政庸徳

    重政庸徳君 それは結局はなはだ調査が疎漏であった。しかもこんな疎漏の調査電源開発を始めたということは御承認になるでしょうね。
  28. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) あの基本計画をいたしましたときは、資料がなかったのでありますから。
  29. 重政庸徳

    重政庸徳君 率直に認めなさい、率直に。進行しなさい。  それでは次に、既得権水量区間水量でまかなえないということがわかった。わかった以上は何ゆえ適当な措置をとらない。電源開発計画を変更する意思がありますか。
  30. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) 土地改良区の計画と申しますか、それは二十九年度から始めたのでありまして、糠平電源は二十七年度に着工いたしましたので、そのずっとあと土地改良区の計画がいまだに続いておりまして、どれだけの水量が下に要るものであるか、それが明確でありませんので、また計画書もかたまっておりませんので、そちらの方の計画を進めて、それと発電の方との関連において調整する、こういうふうに考えているわけであります。
  31. 重政庸徳

    重政庸徳君 まあすぐ変更するとも言えぬでしょうが、そうすると、とにかく下流放流する補償放流はどうしてもやらにゃならぬ。もう植付も間近なんです。そうすると、元小屋ダム放流施設は今どういうふうになっているのですか。これは私知らぬもんですから、具体的に説明していただきたいと思います。
  32. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) それはむしろ電源の方からがいいかと思いますが、私が承知している範囲を申し上げますと、元小屋の逆調整池ダムは、本年度の灌漑期までに完成をしていただくと、こういうふうになっておるわけでありまして、現在あります水田支障を来たさないように、上水を取ります施設をそれに織り込んでやっていただくようになっております。そして、下流既存水田貯水量支障を来たさない、そういうふうに放流するように考えております。
  33. 重政庸徳

    重政庸徳君 そうすると、大体この農業水利既得権の八トン、十六トンが、今言う区間水量から得られないということは、大体常識委員の方々も今までの何でおわかりだろうと思うのですが、そうすると、それがわかるまで、その施設をするまでいわゆる事業を停止するということになる。常識的に考えれば一方的に既成事実をどんどん積み上げてきておる。下流水利権はほったらかすということになる。この点はどうお考えになります、常識的に考えて。
  34. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) 水量の確定がまだしておらないのでありますけれども、この元小屋の逆調整池下流に流し得る水量というものは、現在の既得権を侵さない意味において流し得るという施設を講じてもらっておるわけであります。
  35. 重政庸徳

    重政庸徳君 ところが、上流では八トン及び十六トンの既得権を侵すようにもう認可してしまっておる。だから、一応認可を取り消してし変えなければならない。その点どうお考えになりますか、常識で。あなたの方は下流にこれだけの区間水量があるものとして上流ではそれだけの水量をもう認可してしまっておる。それがまだわからぬとかいうが、常識的に流域から考えればもうない。そういうことになると、前に認可した水量が間違いだと、だからこれが解決するまで前の認可の分を取り消して、八トン、十六トンは依然として流して、そうして初めて解決せねばいかぬのです。その点どうお考えになります。
  36. 浅村廉

    説明員浅村廉君) 建設省はこの水利使用権の許可をいたします場合に、北海道知事からの禀議を受けまして認可をいたすという立場にある役所であります。そこで、この糠平の関係の水利使用権の許可に際しましては、先ほども北海道開発庁の方からお話がございましたように、下流の十勝の土地改良底の灌漑のために必要な水の流量というようなものについての調査がまだ不十分である、まだ十分に完了されておらぬような状態でありましたために、すでに御承知かと存じますが、関係いたしまするところの五つの省が集まりまして、北海道開発庁を中心といたしまして、農林省経済審議庁通産省、それから私の方の建設省、それに北海道開発庁が中心になられまして、この五つの省で覚書を取りかわしております。それによりまして……。
  37. 重政庸徳

    重政庸徳君 そんなことは知っているから一つ簡単に願います。
  38. 浅村廉

    説明員浅村廉君) 土地改良事業のために必要な灌漑用水については調査の結果を待ってすみやかに決定するということにいたした上で、水利使用権の許可をいたしておりますので、五省の集まりの打ち合せによりまして、その結果がはっきりいたしまして、そしていかように調整するかということがきまりますれば、私の方の水利使用権の許可については必要な措置を直ちに講じたいと思っております。
  39. 重政庸徳

    重政庸徳君 そういう三百代言みたようなことをおっしゃられると解決しない。でこの問題に関しましては、昭和三十一年の一月十六日付で委員長から関係大臣あてに照会いたしたのでありますが、各大臣からの回答は、いわゆる問題の核心に触れんで、あなた方の進言の回答となっていると思うのですが、全く他を言わんとするもののようでありましたから、はなはだ私は遺憾にたえない。  で、問題の第一点は、十勝改良区が法律によって当然に擁護されているいわゆる既得水利権の拡充、これを改良区は要求いたしておるのであります。二十九年の四月二十六日のいわゆる関係省庁の覚書、今おっしゃったその覚書及び三十年十二月十二日の協議による、今後に計画されている土地改良事業に必要な灌漑用水、このことは別の問題で、既得権水量とは別の問題であろうと私は考えるのでありますが、この点はさように考えていいですか。
  40. 浅村廉

    説明員浅村廉君) これは非常にむずかしい問題でありまして、私どももいろいろ研究をいたしておりますが、水利権と申しまするのは、やはりこの実際の実情に合ったものを認定いたし、実情をよく調べまして、その上で認可いたすものでありまするからして、極端な言い方を申すと、大へん失礼でありますが、絶対にこれが既得権であっていささかの変更も許されないというものではないと私どもは理解いたしております。もちろんすでに許可を受けておるのでありまするからして、その実態は十分に調査の上でなければ、軽率なことは申し上げられませんけれども、実情が許可当時と変っておっても、必ずその既得権としてそれが残るというものではないと考えております。
  41. 重政庸徳

    重政庸徳君 どうも——そんな例がありますか。農林省は今の問題をどうお考えになりますか。
  42. 戸嶋芳雄

    説明員戸嶋芳雄君) 今の重政委員のお話しでございますが、農林省といたしましては、現在計画中に属する土地改良事業についての必要水量と、現在まで土地改良区が持っております水利権とは、これはおっしゃる通り私は別個のものである、こう考えております。しかしながら、一方におきましてこういった事業が進められつつありますので、その間の調整をできるだけうまくとって参るということが必要である、こういうことを考えまして、実はその土地改良事業調査もほぼできまして、それによりますと、最も理想的にこの計画をやって参りますと、九トンばかりの水が要るということになりまするけれども、農林省としては、既得の水利権以上の水量を特にこの際に確保するということは、これは両方の事業を円滑に行なっていくゆえんではございませんので、それをある程度水量は現在の既得の水利権範囲内にとどめた計画に調整して、そうして関係省と協議をしてやって参りたい、こう考えております。
  43. 重政庸徳

    重政庸徳君 建設省のお答えは、きわめて遺憾に思うのですが、そういう例はありますか。既得の権利を持っておるものを、上に電気のダムを作って、その既得権をもう一ぺん調査をして、そうしてよく吟味する。これも非常に長い間を要して人の権利を侵害しておる。これは僕はきわめて奇怪に感ずる、そういうお答えは。これはすみやかに一つ、すでに先年の六月に各省とも誠意をもって善処する、それから開発庁は、積極的に各省間の連絡をとってこれを解決するということをここで誓われておる。それなのに、今に至るまでそれが解決しない。そうして今の場合は、もうすでに今年度植付期になって、いわゆる応急的施設をせねばならぬという状況になっておる。これはすみやかに一つ、各省庁が水利権の問題を協議せられて解決していただきたいと思います。これは幾ら答弁せられても、やはり基本的な北海道庁のミスなんです。北海道庁からお見えになっておれば——私そう断定するのですが、そう断定してもよろしいかどうか。
  44. 田中彦敏

    参考人田中彦敏君) ただいま開発庁からも説明がありました通り開発庁調査に基きまして、区間流量が一応あるというようなことで、再調査をして許可をいたせばよかったのでありますが、その点非常に遺憾に感じておりますが、そういう基礎で許可をしたのでありまして、これについてもいろいろ五省間で解決策を講じていると思いますが、それによって農業も電気も立っていくような方策を早く講じていただきたい、こういうふうに感じておる次第でございます。
  45. 重政庸徳

    重政庸徳君 私は、北海道知事は、やはりこのミスを率直に認めて、河川法の第二十条、あるいは昭和二十九年四月三十日の水利使用許可命令第六条、その他適当な方法によって、すみやかに十勝土地改良区の既得水利権確立するような措置を実施されるべきだと思うのですが、どうですか。
  46. 田中彦敏

    参考人田中彦敏君) その点につきまして、北海道独自でこの仕事をやれと申されましても、御存じの通りの地方財政でできませんで、結局この件については先ほどもちょっとお話しがあったようにも考えますが、支流の切りかにその他いろいろな方法を電源会社の方へお願いするように五省間でいろいろ折衝していただく、こういうふうに考えます。
  47. 重政庸徳

    重政庸徳君 これは北海道庁はそういうミスを犯して、そうしてどんどん認可していって、道民のいわゆる既得権を侵害している。だからこれは早く、少くともこの問題は今月中にでもこの水利権の問題を北海道庁が確立する必要があろう、北海道庁が。
  48. 田中彦敏

    参考人田中彦敏君) これは一応電源会社も、足りないのは放流し、あるいは水温の低下についても処置するようないろいろ施設がされておりまして、その反面、また区間流量不足をどういうふうにして補うかということを研究中でありまして、差しあたりの今年の灌漑期には支障がないと、北海道庁はそういうふうに考えております。
  49. 重政庸徳

    重政庸徳君 研究中じゃない、もう結論が出ているんです結論が。農林省から今答弁があったように、いつまで研究するか。もう灌漑期を目前に控えているのでありまして、それでこの二月中までにはこの問題を一つ処置を願うのが私は至当だろうと思います。各省異議がありますか。
  50. 吉村次郎

    説明員吉村次郎君) いろいろ合理的な総合開発見地からやりますので、合理的な五省間の協定に基きます解決をやりたいというので調査を進めておるわけでありまして、今道庁からの話しの通り、三十一年度の灌漑には絶対に支障がないような措置を講ずることを昨年十二月三省間で打ち合せをいたしまして、その線に沿ってやっておるわけでありまして、最終の決定をやりますのに、まだ多少の調査をやりませんと、今すぐここで二月中にとおっしゃいましても、私どもとしては調整する結論は出し得ないというような状態にあるということを申し上げたいと思います。
  51. 重政庸徳

    重政庸徳君 何の調査ですか。何の調査か。農林省はこの問題を二月中に提起して解決するお考えがありますか。
  52. 戸嶋芳雄

    説明員戸嶋芳雄君) 農林省の方で調査いたします土地改良計画は、大体において二月中には十分各省に提示できると思います。
  53. 重政庸徳

    重政庸徳君 北海道庁を中心にして、各省一つ協力してこの問題をお願いいたします。  先を急ぎますが、問題の第二点は、既得水利権確立されましても、ダムの建設によって水温が低下するということはこれはもう常識なんです。あるいはまた水の取り入れに支障を来たすとか、いろいろな影響を来たすおそれがある。この点については関係大臣の御回答は、三十年十二月十二日の関係各省の協議に従って電源開発会社の責任において実施せしむるという御回答があったのでありますが、電源開発会社は当然関係各省庁、特に農林省と十分連絡の上善処していただいておると思うのですが、どうですか。
  54. 藤井崇治

    参考人藤井崇治君) ただいまのお尋ねでございますが、昨年の暮に五省会議の結果を受けまして、実はあそこの糠平ダム下流に元小屋ダムを作る——これは調整中でございますが、作る予定でございまして、それはむしろ明年度に建設する予定であったのであります。ところが先ほど残流量の問題もございまするし、なお水温低下というような問題が起りまして、これに対して善処しなければならないということになったのでありまするが、糠平ダムの方はすでに工事を終って湛水を終えたあとでございますので、今さらいかんともすることができませんので、次善の措置といたしまして、元小屋ダムの工期を、予算が非常に足りない折からではございましたが、いろいろ差し繰りいたしまして、工期を繰り上げることにいたしまして、現在着々進んでおります。本年の灌漑期に間に合うように、多分五月末日までにはでき上るつもりでおります。そうしてその場合になるべく冷たい水を下流に流さないようにするために、そこに特別な施設をやっておるのでありまして、私どもとしてはできるだけの措置を講じておるのであります。  なおこれは皆様すでに御承知のことと存じまするが、この水は芽登川の方に分水いたすことになっておるのであります。芽登川の工事は明年度以降になりますので、それまでは流量の方の問題については大した問題はない。むしろ水を暖める工夫をするということが重点でございますので、一応そういう措置をとっておりますが、芽登川に分水をいたしましたあかつきにおきましては、水温低下という問題は非常に変って参りまして、私どもは今の見当では大して低下しないのではないかと存じておりまするが、しかしまだ予想でございまして、今から断定するわけに参りません。そこでこれは分水後なお水温低下をするような危険がございますれば、これに対しましては、私どももいろいろ関係各省庁とも御相談申し上げまして、できるだけの方法を講じたい、かように考えております。しからばどういう設計でやるかと、こうお尋ねになりましても、これはまことに申しわけありませんが、まだその結論まで持っておりませんので、その点は一つあしからず御了承願いたいと思います。
  55. 重政庸徳

    重政庸徳君 この問題は、もう灌漑は特に北海道は水の使用が内地より相当早いだろうと思う。だからこれこそほんとうに二月中にどういうものをやる、私は仮設備をちょっと農林省へ電話で聞いたら、何か金網の上へビニロンか布を張って、そして遮断して上の水を落して、上の水が減るに従ってまくるとか何とかということをちょっと聞いたんだが、まあ常識で考えられるのだが、いわゆる放水口は表面水から三十メートル下の方にある。まあしかし適当な応急措置を講じてもらわなければならぬということはこれは確定的なんです。ところがやはり一方的に、これをやってみたがこうだったと言われてもしようがないので、これはやはり下流土地改良区の責任者と電源開発会社とよく協定せられて——いろいろな問題が生じてくるだろうと私は思う。たとえていえば、水温の検定の施設とか、あるいはそれを管理する管理人とか、いろいろなこまかい問題、ちょっと今ここで考えてもいろいろなこまかい問題がたくさん生じてくるだろうと思う。だからこれは一つ至急に、これこそ、やったんだけれどもまだ間に合わなかったでなしに、下流土地改良区の責任者と電源開発会社と御協定になっていただきたい。この点どういうお考えでしょうか。
  56. 藤井崇治

    参考人藤井崇治君) もちろんこの問題につきましては、先ほど申しましたように現在私どもはこうするという対案を持っておりません。それにつきましては、御専門である北海道庁かあるいは開発庁か、農林省の方の御意見も承わりまして、できるだけのことはいたさなければならぬと思っておりますが、実はそういうことに対する、こういうような施設にしたらどうだ、このくらい温度が下ってこうだというような資料をまだ持っておりませんので、これは資料が整いますれば、もちろん一日も早く適当な対策を講じたいと考えております。
  57. 重政庸徳

    重政庸徳君 今電源開発会社の御答弁があったのですが、各省も今度こそ間に合うように御協力をしていただきたいと思うのです。  なお、今電源開発の方の御答弁で、下流土地改良区の責任者と協定を結んで、これからすぐ進んでいくということにつきまして、どうお考えになりますか、御答弁がなかったようですが。
  58. 藤井崇治

    参考人藤井崇治君) もちろん今直ちにでも私の方は御相談をする用意がございまするけれども、事実の問題で、幾ら一体水温が下るのか、それに対してどういう適切の方法を講じたらいいのか、これも御承知のことで、これは蛇足でございまするけれども、電源開発でたえられることとたえられないこととございますが、これはまあ関係庁の方もあまり非常識な無理はおっしゃらないだろうと思いまするが、これが妥当なものであれば、私どもはすぐにでも御相談に応じてその方法を講ずる用意を持っております。
  59. 重政庸徳

    重政庸徳君 では、各省庁及び北海道庁、電源開発会社の御意向、本日の御答弁を期待いたしまして、本日はこの程度にいたしたいと思います。  なお日をあらためて、委員長の御配慮をまたおわずらわしする場合があるかもわかりません。よろしくお願いいたします。
  60. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 関連して。ただいま質疑応答を伺っていたのですが、私詳しい事情を知らないのでございますが、ただいま電源開発の方から御答弁がありました。はなはだ心もとない御答弁があったので、私この機会になお念のために申し上げておきたいと思いますが、糠平ダムが完成して、堤防の高さ七十四メートルと書いてありますが、取水塔の水頭は何メートルのところに置いてあって、灌漑期間に何トンの水を出すとか、そうして今までも完成しておりますから、およそ垂直水深に対する水温も観測してあると思う。ただいまの御説明では何度になっているかもわからないし、適当な施設下流の元小屋調整池で上層の水をとるような施設をしているから、そう大した影響はないだろうというようなお話でございましたが、北海道土木部長もいられますが、およその想定していられる水温低下の将来の状況について、具体的に説明をお願いいたしたいと思います。私は現状を知りませんからわかりませんが、先ほど三十メートル以下から出水をしておるというようなお話があった。表面水が夏おそらく北海道において二十二、三度だろうと思うが、三十メートルも下の水温は十二、三度になっていると思うのです。十二、三度ではもうこれは稲は生育できない温度でございますが、下流調整池と逆調整までの距離もわかりませんが、逆調整が何時間ぐらいの水量を逆調整するか、それによって水温がまあどの程度に上昇するのか、十二、三度の水温の低下したものを逆調整でもとに戻すというようなことは、大体私は不可能だろうと思っているのです。冷水温障害を大規模に起すようなことに私はなるおそれがあると思う。電源会社が許可されているから、適当な収支計算が合う程度までなら補償の工事はするが、そうでなければそのままやらせそうな説明をされておったが、これは下流の者としては重大な問題であり、何か具体的に今まで御相談があったのはどの程度までなっておるか、御説明をお願いいたしたい。
  61. 藤井崇治

    参考人藤井崇治君) 利用水深は三十七、入メートルぐらいでございますが、もちろんこれは水温がどれくらい低下するかということは、湛水いたしましたのが十二月でございまして、もう厳冬期に北海道は入っておりますので、これは今調べ得べくもないのでありますから、この点は今回は御答弁できないのであります。  なお元小屋の一体調整時間はどうか、こういうお尋ねでございますが、大体あすこの逆調整池をめどに分水することが主たる目的ダムでございますので、電気的に見まして、これは約六時間ということになっております。  かような次第で、今といたしましては、湛水後にこの問題が起ったものでありますから、糠平の方に特別な措置をしようといっても、今からはちょっと事実上できないのでございまして、私どもとしては先ほども申しましたように、下流の方面の元小屋の方面にできるだけの応急措置を構じて、そうして本年の灌漑に差しつかえがないような方法を講ずる、それで本年のまた残流量調査なり、水温なり、いろいろ十分検討いたしまして、それに応じてしかるべき対策を立てる以外に方法がないのであります。どうかそういう意味で御了承願いたいと思います。
  62. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 今の御説明で、昨年の秋竣工した、そして水を取る水頭は三十七、八メートルだから、はかっているひまもないという御説明でございましたが、三十七、八メートルの水層における水温は夏おそらく十三、四度、これは常識でわかっておる。はかってみなくてもわかる。そうして下流の元小屋調整池は、調整時間は六時間といいますが、おそらく十二、三度に下ったのは六時間の調整では一度程度よりか水温は上昇しないと私は思っております。その逆調整から下流の間に水田がどのくらいあるかわかりませんが、そこにがかったところの水田はおそらく青立ちになってしまう。これははかってごらんにならなくても大体常識でわかっておる。少しは金はかかりますが、この際に私はぜひ希望を申し上げておきたいのですが、六時間の調整池はもっと一昼夜ぐらいの調整池にしないと回復しないと思う。それをめどに各省で御協議になっていただきたい。これでは幾ら協議されてもこれは冷水の障害を受けることは確実であります。はかってみなければわからないということだが、はからなくても冷水障害が起って問題になる。そんなことは常識でもわかっておる。だからそれをめどにして至急に一つ交渉して、そうして灌漑期に具体的な施設が間に合うように、農民が安心できるように協議をお進めになっていただきたい。
  63. 藤井崇治

    参考人藤井崇治君) 御注意の点は十分承わりまして、よく御相談して、できるだけのことはいたしたいと思います。
  64. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を中止して。   〔速記中止
  65. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。  本件は当委員会に再度にわたって採択された問題であり、政府当局及び関係機関においても遺憾の意を表せられておる問題でありますから、関係当局は本日の委員会のいきさつにかんがみて、すみやかに遺漏のない措置をとられんことを望みます。   —————————————
  66. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 重ねて公有林野官行造林法の一部を改正する法律案議題にいたします。  先刻農林政務次官から提案理由説明を聞いたのでありますが、なおこの際政府委員から本法律案審査の前提となる公有林及び私有林を通じて、わが国公有林の現況並びに民有林に対する政府の方針、計画及び対策、本法律案に対する予算措置、その他本法律案の内容等について補足的な説明を願うことにいたします。
  67. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) それでは先ほど提案理由説明を申し上げたのでありまするが、この説明に対しまして一、二補足をいたしまして、改正法案の趣旨及び内容を一そう明らかにいたしたいと存ずる次第でございます。  第一は、官行造林事業の方法についてでありますが、本事業提案理由の中にも簡単に説明のありましたように、国が相手方の希望によりまして契約を締結し、国の経費をもちまして公共団体の所有する林野造林を行い、その収益を分収するのでありまして、国は植栽から補植、保育、管理、保護、そういった成林に至るまでの一切の育林事業をその責任において行うのであります。そして契約期間中はこれに必要な地上権を持ち、造林いたしました樹木は国と相手方との共有といたしております。相手方はこの共有の持ち分と、これはすなわち収益分収の割合と同じでありまするが、収益分収権を持ちますほかに、付随的に造林地の保護の一部を行う義務と、落ち枝あるいは落ち葉等の簡易なる林産物を採取する権利を持っておるわけでございます。収益分収の割合は国が五分、相手方が五分を標準といたしまして、各造林地について相手方の出資分としての地代と、国の出資分としての造林費とを参酌して定める、こういうことにいたしております。  第二に、この事業の特徴について申し上げますと、おおむね次のようになっております。国が営林同署の組織と技術能力を動員いたしまして、その負担において責任を持って造林地の管理、経営を行うのでありまするからして、造林を政策的に推進する方法といたしましては、最も適切確実な方法であろうかと考えるのであります。そして相手方は土地を提供し、その管理、経営に協力するだけで、そのほかに何らの資金、労力を要することもなく、伐期には収益の半分を取得することができます。さらには簡易な林産物をも取得することもできまするので、造林についての知識、経験に乏しく、かつ資金に事欠くといったようなものでありましても、この方法によりますれば、林業による収益を期待することができるのであります。そして国もまたその収益を期待しながら森林資源の培養並びに国土保全の目的を達することができると、かようなふうに申し上げて差しつかえないかと思うのであります。  第三に、官行造林事業造林施策としての意義について申し上げてみます。現在の造林政策の中核となりまするものは、申し上げるまでもなく、所有者がみずから造林する場合におきまして、国がその植栽費の一部を補助する方式であります。国はこの方法によりまして、民有林における林業経営の自主的な発展と振興とを期待しておるわけであります。しかしながら林地の自然的条件、あるいは所有者の主体的な条件によりましては、むしろ国が管理、経営する方が好ましいものもありまするし、さらには補助金を交付するだけではなかなか造林が進まないような場合もあるのでありまして、かかる土地やあるいは所有者に対しまして行います造林の方式といたしましては、官行造林事業が最も適当であると考えられるのであります。従いまして、補助金の交付によって自力造林の期待できまする所はあくまでもこの方式によって造林を推し進めていくべきでありまして、官行造林は、大面積の無立木地で造林に取りかかるのにむずかしいような事情の所でありまするとか、あるいは所有者資金、能力等の関係によりまして、みずから造林地の管理、経営を行うことの困難なようなものを主として対象とすることになるのであります。今回のこの改正案におきましても、かかる見地から対象地を、法案第一条第二号の部落有林、及び同条第三号の水源林地帯の私有林で、公有林野とあわせて造林する必要のあるものに限定して拡大したのであります。ただこの場合におきましても、官行造林事業は民有林業の自主的な発展と振興をはかる方向と背馳しはしないかという問題があるのでありまするが、これにつきましては、公有林野を中心といたしまする官行造林におきましては、決してそのような心配はないと、私どもはかように考えるのであります。すなわち官行造林事業は、造林木を国と相手方の共有とし、林地の管理、経営の一部はともに協力してこれを行い、その結果の収益はこれを分ち合い、損失はともに負担し合う、いわば一種の共同経営的な要素を持っておるものでありまして、ことに公有林野の場合におきましては、所有者はすなわち地元民でありまするからして、官行造林地を自分たちの山として、国に協力しながらこれを育成して参りまするので、その結果は森林経営に対する熱意と知識が深められ、民有林業に対する普及的な効果はすこぶる大きいものがあると、かように確信をいたすものであります。  第四は、部落有林への官行造林を行うことについてでありまするが、法案の第一条第二号の、「旧来ノ慣行ニ依リ共同利用ニ供スル森林又ハ原野」というのがいわゆる部落有林であります。部落有林は沿革的に申し上げますると、旧藩時代のいわゆる村持ち山でありまして、これは当時法律上の所有形態といたしましては、公私未分化の状態にあり、また利用の形態といたしましては、個人の占有の事実がなく、すべて部落単位で利用し収益していたものが、その後の官民有区分や、市制町村制の施行、民法による私的所有権の確立部落有財産の整理統一政策といったようなものによりまして、所有形態は公有または私有へと漸次整理されて参り、また経済事情の変化、なかんずく農業生産の推移と形態とに対応いたしまして、その利用の形も、右のような典型的な総有的な利用の形態から、一方部落の直営利用が生じまするとともに、他方割りかえ、割り山、持ち分利用等の私的利用へと分解してきておるのが実情であります。しかしその所有や利用の形態は決して近代的なものではなく、依然として、部落共同体による規制が強く働いており、従いましてその採草、放牧、薪炭利用等の利用の形態もきわめて略奪的なものが多いのであります。すなわちこれらの村持ち山林は、昔からわが国の農業生産と農家生活の自給的な部分をささえておる基盤でもありまして、そこからはただ採取と利用が行われておるにすぎず、資本投下による改良もなく、利用の高度化もないからであります。従いましてこのような土地は概して利用度が低く、かつかなり荒廃しておりまして、もしその利用を一そう集約化し、さらに合理化するといたしまするならば、造林地になし得る所が多い状態にありまするにもかかわらず、部落共同体による規制や略奪的な利用によりまして、なかなか自力で造林を行うに至らないのでありまして、かかる土地に対する造林施策といたしましては、けだし官行造林事業が最も適当であるかに考えるのであります。また実質は部落有林でも、市町村の所有名義になっておりまするものは、従来でも官行造林することができたのでありますが、それ以外の記名共有名義のようなものも、この趣旨からいたしますならば官行造林することが適当であると、かようにも思われるわけでありますが、旧来の慣行ということでありますが、この言葉につきましては、格別にいついつからという確定的な時期を画することはできないのでありまするけれども、右の部落有林の性格からみまして、相当古い慣行であることが必要ではないかと、かように考えたわけであります。また共同の利用ということの内容につきましては、前にも申しました通り、主として採草、放牧あるいは薪炭利用でありまして、その利用形態としては、典型的な総有的利用はもちろんのこと、割りかえ、割り山等の利用形態から、さらに所有と利用が形式的には分離した持分利用のものまでも入ってくるのであります。しかしながら典型的な総有的利用と、またこれと反対なほとんど私有地化したものにつきましては、これらはともに官行造林対象となる契機は非常に少く、大体はその中間的なもの、従いまして、過渡的な利用形態のものが主としてこの事業対象となるものと思われるのであります。なお農業における利用との関係についてでありますが、これはあくまでも契約による造林でありまするからして、共同利用の集約化、あるいは合理化によります林地に提供できる土地だけが希望として上って参るということに相なるわけでありますからして、これによりまして圧迫をいたしたり、あるいはこれと衝突するというふうな懸念は万々ないものと考えるのであります。  次に水源林造成対象となる私有林への官行造林の問題でありますが、法案の第一条第三号の「水源涵養ノ為森林ノ造成ヲ行フ必要ノアル土地」というのは、森林法第二十五条第一項第一号の目的「水源のかん養」の目的でございますが、この目的を達成するために水源林造成事業を行う予定地でありまして、保安林整備臨時措置法の規定による保安林整備計画の中で、昭和二十九年度現在昭和三十年度以降の計画といたしまして、約四十三万町歩を計上しておる要造林地であります。このうち約八万町歩は同法によりまするところの買い上げが予定されており、残り三十五万町歩を右の水源林造成事業と、本法による官行造林事業の両者によりまして、造林していく予定であるわけであります。元来かかる土地は普通林よりも造林事業としての公共性が高く、かつ造林一般にむずかしいところでありますので、前に申し上げましたような特徴からみまして、官行造林事業によることがむしろ適当なのであります。このような水源林でも、市町村有林や部落有林であるものにつきましては、一号または二号の適用が考えられまするので、この三号はこれ以外の私有林について適用されるということに相なるのであります。  しかしながら一挙にこのような私有林全部に対しまして官行造林を行いますることは、これを担当する営林局署の組織、人員あるいは予算等の制約からいたしまして不可能でありまするので、まず市町村有林や部落有林の官行造林地に介在しておるか、あるいは近接しているもので、これらの公有林野とともに造林をし、管理経営する方が両者にとって便宜でもあり、また水源涵養機能の発揮の上からいたしましても必要であるような私有林につきましてだけ、これを官行造林事業で行うことといたしたものであります。  次に改正法によりますところの造林目標量でございまするが、官行造林対象と相なりまする土地は、無立木地、散生地あるいは疎悪林相地でありまして、このような土地につきまして、最近都道府県に照会をいたしまして、得られました資料を基にして推計いたしてみまするというと、約百七十万町歩ばかりあることになります。このうち三十年度以降約三十万町歩を目標にいたしまして、官行造林計画を進めて参りたい、かように考えるのであります。このうち水源林造成事業の予定地と相なるものが約十一万町歩、それ以外の普通林が約十九万町歩と相なるわけであります。  最後に、この官行造林事業のための経費は、国有林野事業特別会計の事業費の中に、官行造林費という名称で計上されておりまして、大正九年以来の経費の推移につきましては、別紙資料通りでございます。昭和三十年度は八億四千三百九十三万四千円の予算によりまして、既契約のもの六千町歩と、三十年度から拡大いたしました新規の契約によりまするもの七千五百町歩の新値を実施いたしているのでありまするが、明三十一年度は、これより若干増額に相なっておりまする八億七千四百四十一万五千円の要求でありまして、これによりまして既契約分といたしまして最終年度の六千町歩と、新規のものといたしまして、七千五百町歩のものを新値の予定にいたしております。  以上が本改正案につきましての補足説明でありまするが、この機会に若干時間をいただきまして、民有林に対する施策の大要につきまして、あわせて御説明を申し上げたいと存ずる次第でございます。  最初に森林の現況について申し上げまするというと、初めその面積は国土の六七%に当る約二千五百万町歩を占めておりまして、そこにありまする立木蓄積は約六十億石、年間の生産量約一億七千万石の林力を有しているのでありますが、毎年木材及び薪炭用として伐採される数量は、平均二億三千万石ばかりに達するのが実情であります。  これを国有林と民有林とに分けてみますと、国有林は全森林の面積におきまして約三割、立木蓄積におきましてはその半数以上に当るのでありまするが、その多くは奥地山岳地帯に偏在いたしておりまして、しかも現況は天然林が多く、毎年の生産量はおよそ五千万石にすぎない現状であります。従いまして利用せられないままに、比較的豊富に蓄積が維持されているという現状であります。これに反しまして、民有林は面積約一千七百万町歩、その立木蓄積二十九億石ばかりでありますが、比較的経済的並びに自然的な条件に恵まれた里山の地帯に多く分布し、早くから開発されて参りました関係で、国有林に比べまするというと、その三倍量の伐採が行われ、毎年はなはだしく切り過ぎているという現状であります。その結果は単位面積当りの森林蓄積は、国有林におきまして四百七十六石ありますのに対しまして、民有林はわずか百八十石、その半数にも達しないといったような現況であります。一部の先進林業地帯を除きましては、一般にきわめて粗放な森林経営しか行われていないというのが、いわば民有林の実態であろうかと存ずるのであります。もとより民有林の約半分は薪炭林として経営されております。二、三十年の短い伐期で繰り返し伐採されていることが、一般生産力の低下のおもなる原因でありますけれども、これとともにごく一部の大規模な所有者を除き、おおむね五百万に達するところの農業者の零細所有にとりましては、森林は農業収入の補足をはかる程度の場にすぎない現状にありますことも、決してこれを見のがし得ない点であると考えられるのであります。  しからば戦前の林業事情はどのようであったかと申しまするというと、昭和十四年の当時におけるわが国の森林は約四千六百万町歩、約九十億石の立木蓄積を持っておったのでありまするけれども、このうち一部の地帯を除きます朝鮮、台湾の森林はおおむね利用価値の低いものでありましたのに対しまして、南樺太一帯の森林はその九割というものが針葉樹林でありまして、当時急激に勃興いたして参りました紙パルプ産業の原料の半分以上をこれらの森林から供給していたような状況であったのであります。昭和五年から九年に至ります五年間の伐採量は、年間一億七千ないし一億八千万石でありまして、これが日華事変の前後になりまするというと、約五割の増伐と相なり、今次の大戦争中にはほぼ倍量に達したのであります。なおこの期間の木材需要量は平均年間約六、七千万石でありまして、一千七百万ないし二千万石を南樺太、北米、台湾その他の地域から輸入あるいは移入いたしておりました関係で、内地の生産量は四、五千万石で足りるという状況であったのであります。従いまして、いわゆる現今見られるごとき過伐の現象はほとんどなかったと言っても過言ではない状況であったのであります。  戦前の民有林行政はこれを簡単に表現いたしますると、大正から昭和の初期にかけましては、治山治水と公有林対策とが中心をなしておりまして、次いで昭和十四年の森林法の改正を転機といたしまして、私有林地を含めた森林経営の全面的な規整と、この仕事のにない手として森林組合を育成強化することに重点が向けられていたのであります。治山治水対策につきましては、明治四十三年以降昭和十年に至る間第一期森林治水事業によりまして約六万町歩の荒廃林地が復旧され、引き続き昭和十二年から第二期森林治水事業が進められたのでありますけれども、不幸にいたしまして、戦争に際会して中絶いたしたのであります。公有林対策につきましては、民有林の中でも特にその荒廃がはなはだしいという現状認識に立ちまして、入会権の整理を行い、管理区分を決定し、施業案の編成等が行われ、ことに大正九年には公有林官行造林事業が三十万町歩の造林目標を掲げて発足したような次第であったのであります。林産物の需要が加速度的に増大するとともに、国力の増進を目的とする海外発展に備えまして、国の資源政策上林政の一大転換が要望されるに至りまして、昭和十四年には森林法の大改正が行われ、民有林における画期的な施業案制度が創設されたのであります。この制度によりまして、民有林の営林監督は一そう強化せられ、五十町歩以上の森林所有者は単独に、それ以下のものはそれらを構成員とする森林組合に組織され、これらに対し施業案編成の義務が課されたのでありましたが、戦争の発展に伴いまして、昭和十八年にはついに不急事業としてこれを中止するのやむなきに至ったのであります。  以上のような経過で終戦を迎えました以後の民有林関係の施策は、狭められた国内森林資源にのみ依存して、戦災復旧、産業用等国民経済の維持発展に不可欠な木材を供給するとともに、国土の荒廃を防止し、さらにはこの状態からすみやかに脱却いたしまして、森林復興への道を歩み出しますために必要な造林、治山及び林道の諸事業を強力に進め、森林経営の合理化をはかりまして、森林所有者の経済力を養うということに置かれたのは当然であります。すなわち法制の面について申し上げますならば、造林臨時措置法、保安林整備臨時措置法の制定及び森林法の改正がそのおもなものであります。昭和二十五年に施行いたしました造林臨時措置法は、戦中戦後にかけまして累積いたしました要造林地の早期解消を目途といたしまして、治山治水上重要な要造林地に対して知事が特に指定して森林所有者等に造林をさせることを定めたものであります。これらのことによりまして、昭和二十三年度末には百十六万町歩にも達しておりました戦時中以来放置されていたいわゆる要造林地も、本三十一年度中には完全にこれを植え終る状態にまで立ち至ったのであります。昭和二十六年の森林法改正は、戦後の社会経済的諸条件一般国民思潮を背景といたしまして、森林資源の保続培養と国民経済の発展に資するための基本的な森林施策を目途として行われたものでありまして、これによりまして、昭和十四年改正法にも定められた施業案制度によります民有林経営の事前監督的な行き方を廃しまして、国の責任のもとに編成する森林計画の制度を始めて、保安林と一定年令以下の一般民有林の伐採を許可制といたしまして、これとかたがた造林の義務づけをするといったような措置をとり行いますると同時に、従来強制品加入方式をとっておりました森林組合を、加入脱退の自由な協同組合組織に改組いたしたのであります。これにより全国を二千九十六の森林区という単位に区画いたしまして、これらにおのおの一名の林業経営指導員を設置して民有林経営の指導、監督に当らせていたのでありますが、来年度以降におきましては、あとに述べまするように林業技術普及員とあわせまして、林業技術の普及、経営の発展指導にも当らせる方針をとっておるのであります。森林組合の改組は当初若干の懸念が持たれたのでありますが、五千八百余の組合が改組されて現在五千三百八十四の組合と、全国連合会一、都道府県連合会四十六が設立され、組合員は百七十万人にも達しておる状況であります。しかしながら農業協同組合の例にも見られますように、農林漁業組合再建整備法の適用を受けております組合が六百十五組合にも達しておる現状でありまして、一組合平均二十万円弱の資本しか有せず、森林組合の経済力の強化による活動力の培養につきましては、今後なお多大な努力を要請されている現状であります。  保安林整備臨時措置法は、昭和二十八年にきめられた治山治水基本対策要綱に呼応したものでありまして、森林の持つ保安的機能を最高度に発揮させるため、治山事業計画的実行と保安林配備の適正化のほかに、特に国土保全上重要な保安林を十カ年計画で国が買い入れることを定めたものであります。この民有保安林買い入れは全体で五十万町歩を予定しておりますが、二十九年度中には五万三千町歩を買い入れております。  以上法律の概要を説明いたしたのでありますが、次に現在実施しておりまするおもな民有林施策を簡単に御説明いたします。  まず、林業施策の基本であります森林資源の増強策について申し上げますと、森林生産の保続とその生産力の増大を確保するために極力造林の推進をはかって参りました結果、二十五年ごろから毎年の造林面積がほぼ三十五万町歩以上にも達しまして、伐採面積を上回るようになり、先にも申し述べました通り、一時百万町歩をこえておりましたいわゆる戦争中以来の造林未済地も三十一年度末でようやく解消する見通しを得たような次第であります。なお土地生産力高度利用を促進して、今後さらに増大する木材需要に対応いたしますために、経済自立五カ年計画の策定を機会に集約的な人工林を昭和三十五年度までに百六十一万町歩増加いたしまして、六百万町歩にいたすべく、天然喬林、薪炭林、原野等の一部に対しまして重点的に造林をとり進めて参りたい所存でございます。しかし、いかに人工造林地の拡大に努力いたすといたしましても、その効果は少くとも四十年ないし五十年のあとにしか期待されないのでありますから、当面の木材需給を確保し、あわせて伐り過ぎによる国土の荒廃を防いで参りますのには、林道網の急速な整備をはかることがいかにしても必要であります。このために昭和二十六年度に林道十カ年計画を定めまして、十二万キロの林道開設を進めて参ったのでありますけれども、二十九年度まで四カ年の実績を見ますると、一万一千キロに過ぎず、十カ年計画の一年分にも及ばぬ結果しか得られておらないのであります。もとよりこれらの開発資金の多くを財政に依存することは不可能事でありますので、限りある資金を極力投資効果の大きいものから重点的に使用して、この不足を補うべく努力いたしております。  次に山林関係公共事業費の半ばを占める治山事業について申し上げますと、申すまでもなく、直接の被害ばかりでなく、国民経済に与える莫大な損失を通じて、直接間接に国民生活の安定を脅威している荒廃林地の存在は、極力早期に解消させるべきものでありますが、何分にも多額の経費を要する事業でありますため、先ほどの保安林整備臨時措置法の施行とともに主要な流域ごとに保安林整備、電源開発、あるいは河川事業等の進行状況に均衡した治山事業の重点実施の計画を策定して実施して参っているのであります。このうち保安林については、約二百四十万町歩の現有保安林をおおむね四百万町歩とすることを目標として指定を急いでおります。  なおこの際、林野庁において計画した治山関係の諸事業について申し上げますと、荒廃林地は二十九年度末現在で二十三万余町歩、この他に九万八千町歩の荒廃移行林が存しているのでありますが、三十五年度までにこのうち特に重要なものから崩壊地十一万町歩、はげ山二万一千町歩、地すべり地一万一千町歩の復旧と、九万七千町歩の荒廃防止事業の実行を計画いたし、その他重要河川の上流水源地帯にある無立木地や散生地十八万町歩に対する水源林造成とともに、防風林や防潮林等六万七千町歩の防災林の造成をあわせて推進すべく努力いたしております。  ここで戦後の民有林行政に新しく登場した林業技術普及事業について申し上げます。この事業は、昭和二十四年から始められたもので、農山村の自然的並びに社会経済的な各分野にわたる諸条件を検討しつつ、林業経営の合理化を進めることにより、森林所有者の私経済の向上を促すことを目的として行うものでありまして、森林計画による公的制約と相待って、民有林経営に対する行政施策がようやく整って参るものと考えるのであります。このために府県に設置していた千百六十名の林業技術普及員に、さらに来年度からは林業経営指導員を合せて、民有林に対する技術援助の効果をますます高めるよう努力いたしたいと考えているのであります。  以上御説明いたしました各種の施策をとり行います林業関係予算の中では公共事業費が最も大きな比重を持っておりまして、この額は年により多少の変動がありますが、ここ数年は年額百億円前後となっております。  林業金融について申し上げますと、わが国の林業は国民経済上重要な地位を占めているにもかかわりませず、収益性が低く、自己資本の蓄積も少い等のために一般金融の対象にはなりがたいとされておりましたが、昭和二十六年農林漁業金融公庫の設置によって、最も金融ベースに乗りにくかった林業にもようやく融資の糸口が開け、二十六年度以降百七十六億円余の資金貸し出しが行われております。  以上民有林行政の概要をごくかいつまんで御説明いたしましたが、地方財政の窮乏を反映して、補助金交付による民有林施策の推進には決して問題が少くない現状にあります折柄、予算執行に当っては一段とこれが重点的かつ効率的な運用に努めるとともに、林野行政の各分野にわたって国有林、民有林の協調体制をさらに強化して、名実ともにわが国林業のにない手として、これにふさわしい内容の民有林を育て上げることを念願して努力をいたしたいと考える次第であります。今回公有林野官行造林法の一部改正を御審議いただきますのも、かかる意味に発するものでありますことを申し上げまして、私の説明を終らせていただきます。
  68. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 以上説明を聞いたのでありますが、これから質疑に入ることにいたします。
  69. 河合義一

    ○河合義一君 ちょっとお尋ねしたいのですが、官行造林は公有地を持っております自治体が進んでやらぬ場合には、強制的にやるような方法がありましょうか。国有林を町村合併で相当払い下げておるのですが、それに木が立っておりません。そういうところには特に力を入れて官行造林をやる必要があると思うのですが、強制的にやることができるでしょうか。
  70. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) 強制的にこれを実施して参るという考え方は、実は従来も持っておりませんでしたし、本改正案におきましても全然持っておらぬ、あくまでも相手方との契約によりまして実行して参るということでございまするが、ただ、ただいまのお話しにもございましたし、若干御説明申し上げました事柄の中にも触れておきましたけれども、実際問題といたしますると、非常に広大な無立木地がございまして、これに造林をすることにはなかなか困難が感ぜられておるといったような公有林野相当にあるわけでございますし、さらには補助金造林でやりまする場合には、必ず自己負担分があるわけでございまして、そのようなものが資金的に負担し得ないということのために、造林したくてもし得ないような公有林野も実はある、こういうところをさしあたり対象にいたしまして、大いに公有林野事業でおやりになることをすすめながら、契約でもって行なって参りたい、かように考えております。
  71. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 お話しを承わっていますと、まことにけっこうで、今日の造林を促進しなければならぬ際に大へんけっこうな法律と言わなければならぬわけですが、それにしましても疑問の点も幾つかありますので、この際お聞きしたいと思うんです。今度の法律を見ておりますると、結局従来何ですか、大正九年ごろから始められた第一次のいわゆる官行造林計画というものが本年あたりで終るので、第二次ともいうべきものを新しく何といいますか、出直すといいますか、その際に付随した水源涵養林というものを私有林にまで及ぼしたい、こういう趣旨であり、普通の従来の官行造林というものをさらに部落林にまで拡張していこう、従来市町村有でなければならなかったやつを部落有の分野にまで拡大していく、で、あわせてさっき言ったように、水源涵養林といったところを、これは私有林であってもそれらの公有林とあわせてやった方が便利だ、必要があると認めるものは対象にしていこうという趣旨でありますが、ここで一つお聞きしたいのは、先ほど来の説明を聞くと、いわゆる部落林というものは従来入会権があって、入会権については一般法律でも二種類あって、一つはいわゆる共有の性質を持っている、その部落に住所を有するに至れば自動的にそれらの入会権というものが取得されて、そうしてその場を離れれば、その部落あるいは町村を離れれば自動的にその権利が消滅するという入会権、そういう形態のものは比較的入会権云々を直接論じなくても、その所有者においてこの趣旨に賛成をされれば、造林対象になると思われるのですが、その点はどうなのですか。
  72. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) ただいまの御質問の通りでございます。
  73. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 そうしてもう一つの入会権、いわゆる他の町村が所有権を持っている、あるいはその部落の中でも一、二の人がその原野ないしは山林を持っておる、しかし従来のいわゆる慣行からして、そこへ行って利用権を慣習上獲得しているという場合、これもこの第一条のまあ読み方といいますか、機械的にこれを読んでいると、必ずしも当らないわけではない。前に言った種類の入会権の場合でも、当然従来そこに利用権を持っておった者に対する処置というものについては、円満に何らかの方法をもって解決がつくことがこれは前提であろうと思うのです。しかしこの第二の種類の入会権の場合は、持っておる一人あるいは二人の原野または林野所有者が、こういった機会に、ただ漫然と従来の慣行なるがゆえに勝手に利用されておったのではたまらないと、この際一ついい制度ができたから、造林振興の線に沿って一つ自分は手をあげてこの対象にしてもらおうと、こういうふうになってくる場合は、これは相当複雑な形になると思うのです。もちろん前とは違って、利用者は決してそれでは黙っちゃおるまいし、所有者は、しかしここには、「所有者ヲ相手方トシ収益ヲ分収スルノ条件ヲ以テ」契約を締結することができるとある。この問題はなかなかめんどうな、いわゆる入会権のいわば対象と申しますか、法律上非常にむずかしいと言われている入会権そのものにずばりと四つに組まなくちゃならぬといったような問題にまでこれは立ち入らざるを得ないような問題が出てくると思うのです。これの運用については特段の考えがあると思うのですが、そういう点はどのように考えておられるか、この点を明らかにしていただきたいと思うのです。
  74. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) もちろんこの官行造林契約所有者対象にして行わなければならぬわけでありまするからして、従いまして、地番の所有者と現在それを利用しておる者との間に十分な話し合いがつかない限りにおきましては、当然この利用対象にはならないということになると思います。  それから今一、二の所有者というふうに御質問があったように思いまするが、まあ部落有林の地番の所有の形態をいろいろ調べてみますると、実際的には部落共同で利用しておる姿をとっておりながら、実際的にその所有名義は、部落代表といったものの個人名義になっておるといったような場合もあるわけでございますが、実質的に特定個人といったようなものにすでに分化されてしまっておるという形態のものにつきましては、やはりこの官行造林事業で事柄を進めていくということには問題があろうかと思います。
  75. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 いや個人——いわゆる一応分割の性格を持つ共有林、これを入会の例でいえば、私の言った第一の入会山なんでありますが、その場合はその所有者のことごとくが賛成をしていっても、これは個人の所有の集合であるから、第三号に適用しなければだめだ、こういう意味での取扱い対象にせられておるのですが、私は入会山というようなわかりやすい、しかし有名なむずかしい問題を例に出して説明したから、そこが混同しているのじゃないかと思うのです。すでに分割してしまってあるのであれば、それはすでに入会山とは言わなくなっているのだから、その場合は第三号の該当がどうであるかということによって、この対象になるかならないかということになるのだと思うのです。私の聞いていたのは、あとのめんどうな、他町村の所へ入会権を持っているとか、一、二の人の所有の上に他の人たちが慣行による利用権を持っているという場合でありましたのですが、まあそれに対しては所有者と入会慣行の利用権者とが円満な妥結をしなければ、それは対象に事実はしないというお話だったから、それはわかるのです。で今の、あとでそれにつけ加えて御説明になった分、この分は私は入会山という問題じゃなくて、むしろ部落有という名前に事実なっているけれども、それは従来慣行による第一種の入会山あるいは入会原野じゃなくて、ただ漫然部落山になっている。しかしその所有権というものは、ある年に住んでいた何十名かの人の名前が明らかに書いてある入会山といいますか、部落慣行の共有林だ、そういう場合になりますと、その場合はいわゆる入会原野、山林では実質はないのでありますから、そのかつての時に持っていた所有権者だけの山ということになっているのですが、それは一体どういうふうに扱いますか、いわゆる慣行による入会山という、その村に住むという条件さえ足りれば、自然利用権を獲得するし、その部落から出れば所有権は消滅するというのは、これは当然第一種の入会山、原野というのでしょうから、それはわかりきっている。これはそうじゃなくて、ある時代においてその何十人かの者が部落に住んでおった、その当時としては全部その者だけが持っておって、そうしてあとから住居してきた者あるいは分家してふえた家族の者、そういう者は関係のない山といったようなものがある、それはどうですか。それは部落山ですか。
  76. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) なかなかむずかしい場合の御質問のようでありますが、要するにこの部落有林野の現在の実態をとらまえていくとらまえ方がなかなか非常にむずかしい姿を示しておるようでございます。そこで一応いわゆるこの土地台帳の上の地番の所有の形が一体どういうふうに分れておるかということと、それからもう一つは、それらのいわゆる部落有林と言われておるものの利用上の形が一体どういうふうに分れておるか、こういうことですが、いろいろこの地番の所有形態を調べてみますと、先ほど御説明の中にも申し上げましたように、いわゆる実態は、実質的な部落有林でありながらも名前は市町村有になっておる、すでに市町村官行造林事業対象となっているというものもありますし、それから財産区有のものもあり、さらには区有と、それから特殊法人、まあ例示いたしますると森林組合あるいは農業協同組合といったようなものの所有名義でありまするところのものもあれば、あるいは単に任意組合の名義になっているものもあり、さらに社寺有といったような氏子総代の名義になっておって、実態的にはやはりそれの利用は多数の部落民でやっておる、こういうような場合もありまするし、明らかに権利者が全員名義を出しまして、いわゆる記名共有の山林という格好であるものもありまするし、先ほど申し上げましたごとく個人持ちという形の山でありまするけれども、それにつきましては部落民が共同して現に利用、収益しておるというものもありまして、この中には便宜部落の代表者が部落持ちの山林を個人の名前で持っておるという形のものもある、こういうふうに非常に複雑な地番の所有形態があるようにうかがわれます。それから現にこれを利用いたしておりまする形から申し上げまするというと、いわゆる総有的利用と申しますか、個人の占有といったような事実は全然なくて、その林野に共同で入り会い、共同で収益をいたしましてやっているような、いわば昔ながらの利用の形態といったようなものから、部落の直営利用、さらに割り山利用という段階まで入って参りまするというと、いわゆる個人の持ち分が、部落有林の中における個人の持ち分というものが漸次明確化していく形になって参りまして、最後の持ち分利用というような段階まで参りまするというと、いわゆるこの利用者と収益権者とが完全に分離されてくる、こういったような形で、この利用の形態の中にも非常に複雑な、しかも歴史的な発展段階に相応する形のものがあるように考えられるわけでございまして、これらの形のものが先の所有の形態とからみ合いまして、さまざま複雑な部落有林の様相を呈している、こういう現状であるわけでございます。従いまして、私どもの考え方といたしましては、あくまでもやはり所有者との間の契約でございまするからして、そういった利用上の諸形態からくる問題を整理しながら、ただいま申し上げましたこの地番の所有者との間に契約を結んで参る、こういうことであらゆる場合に対処していく必要があるのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  77. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 確かに今長官の説明されるように、この問題をいわゆる法律的に所有権、持っている権利というものとの関連からやっていくと、大変なことになってくると思うのですが、しかし今回勇敢にもこの造林を促進する上から、部落でともかく持っていると普通通俗言う山にまで手をかけられたということについては、私も非常にこの点は賛成しているわけです。ただし実施においては願わくば今長官の説明されたような、無理がなくてしかも目的を達するような立場をぜひとってもらわないというと、よけいなところに紛争ができて、かえってその目的を円滑にしていけないという心配があるので、その点をひとまずお聞きしたわけなんです。  そこで私はその問題はそれで一応打ち切りまして、そのことをお願いしておいて、注文を申し上げておいて進みたいのですが、この水源涵養のための造林という問題は、これはなかなか大変な問題なんです。一部の人に聞くというと、水源涵養といったって結局この法律を読みますと、改正第一条の一号、二号にいわゆる付帯して、あわせて造林をなす要あるものというのは、何かそこにわかり切ったような、非常にわかるような気分はするのですね。ところがおそらくこの新しい改正による官行造林も、その実施は従来通り五十町歩だとか、あるいは一団地三十町歩といったようなものが対象になって、これが契約を結ばれることになると思うのですが、そういうふうに考えますと、一応これに付帯して行うことがきわめて必要であるということが明瞭であるようにしていて、実は明瞭でなくなるというふうに思うのです。そこで私はどっちからお聞きしたらいいのか、従来の民有林に対する造林の幾つかの助成法がある。現にそれは今いただいた資料の七ページに「造林政策の現状」とあるわけなんですね。そこに従来いわゆる一般造林の補助、瘠悪林地の改良、これはちょっと造林と種類も違いますが、水源林造林、それから官行造林、従来の官行造林とあるわけです。水源林造林のところには国が三分の二、県が三分の一、計全額、こういうふうにしてその計画基礎を読んでみましても、この水源林造林を必要とする区域というものの関係が明らかにされてない。私はこの一般民有林造林のうちどの方法によるのが一般土地所有者からいって元来得なのか。それについてはおのずから行政庁であるあなたの方からいえば、それはたとえばその得な形式をほしいと言ったからといって、現実その所有者が提供しようとする林地というものの実態からして必ずしも一番得な方式の範疇には入らないのだ、だから幾つかの種類はあっても、おのずから現地というものについて見ましたときには、一般造林によるか、水源林造林によるか、または今度改正をされて付帯としていこうとする新しいこの官行造林法の付帯のところの形でやってもらおうか、これは現地につけばわかるのだとお言いになると思うのですが、その点はどうですか。
  78. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) ただいま御指摘のありましたように、現在推進をいたしておりまする造林の方式につきましては、各種のものを考えてやっておるわけでございます。そこで先ほどの御説明にもちょっと触れて申し上げましたように、私どもといたしましては、一般経済林の造林につきましては、その方法の中心的な進め方はやはり補助造林、補助金を交付いたしまして造林するという方式を中心に進めていきたいと、こう考えておるわけでありまして、いわゆる一般造林と申しますのは、いわば一般経済林の造成を対象とした造林というふうにお考えいただいていいと思いますが、この中で融資による造林、これはやはり特定な大規模経営者等でありまして、補助金によらずとも十分にやっていけるというものに対して融資による造林を考えているわけでありまして、いわゆる生産業者等の産業備林的なものに対する造林の形式ということで、限定して運営しておる現状であります。自力造林はおおむね一反歩以下のきわめて零細なるものに対しましては、補助金の交付を差し控えているという状況からいたしまして、そういうものに対しては自力造林以外にはないということでやっておるわけでありまして、この一般造林の中では何と言いましても補助造林が中核になって造林推進が行われて参る、こういうふうに御了解いただきたいと思うのであります。  それから瘠悪林地の改良、並びに水源林造、これはいずれも補助造林でございます。補助造林でございますが、これは林地の生産力に相応いたしまして、いずれも補助率が高くなっておるということで、一般造林との間にそれぞれ補助金交付の間のバランスは十分にとれる計算の上に立ってやっておるわけでございます。ただここにいわゆる融資造林という形態で行われて参りまする官行造林なりあるいは部分林というものが登場して参るわけでありますが、これらのものはいわば特異のケースというふうにお考え願いたいということでけっこうではなかろうかと思うのでございまして、ただいま御説明申し上げたように、官公造林の場合におきましては、あくまでもやはり造林の困難性という問題と、それから能力、資金等の関係から見まして、造林ができないといったようなケースに限って、しかもむしろ官行造林を融資形態でやっていくことが双方のために好都合だというものを選んでやって参る、全体の中から拾ってやって参るというような考え方に落ちつくものと考えておる次第でございます。そこで水源林野の造成予定地を対象にいたしまして造林をやっていく場合の方式といたしましては、ここに掲げておりますいわゆる今まで国が三分の二、県が三分の一みまして、いわゆる新値の経費を国と県が全額をみてやって参る水源林の造成方式というものを中心にして推進して参りたいという考え方は、私どもといたしましてもこの段階で放棄したわけではないのであります。ところがそれと同じような対象のものを官行造林で同時にやっていくのはどういうわけか、こういうことでございまするが、これはいわば非常に便宜的なものであるように私どもは理解しておるわけでございます。どこまでも主体は従来の市町村有林であり、さらに今回拡大いたしたいと考えておる部落有林であるというわけであります。その中にやはり官行水源林造成の予定地に相なるようなものも部分的に含められておるわけであります。そこでそういった造林をやって参りまする場合に、そのような地域にはさまれておる、あるいはくっついておるということのために、これを同時にやるということがこの施策を進めていく上にきわめて便利だ、こういう対象に限定いたしたい、かように考えておるわけであります。もちろん官行造林でやることになりまするというと、補植、手入れ等その後の保育一切を国の手でやって参るということになりまする関係上、そこに違った造林方式による部分が加わって参りまするが、一体としての治山治水効果とか、治水機能の強化ということも考えまする場合におきましては、扱いはできるだけ単一にやって参る必要がある。さらにそれをつけ加えることによりまして、営林局長の管理経営能力に支障を来たすことのないように、やはり同時にやっていくことで差しつかえないというものの範囲のものをやはり取り入れて扱って参りたい。こういうことで実態的に区分ができるように考えておるわけであります。
  79. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 一応説明はそういうふうなことをされるかもしれませんが、それでは「水源瘤養ノ為森林ノ造成ヲ行フ必要ノアル土地ニシテ前ニ号ノ森林又ハ原野ト併セテ造林ヲ為ス要アルモノ」というこの表現から引っぱってきて、かつての官行造林がやりましたような基本は五十町歩、これは法律でもなければ勅令でもありませんが、事実施行規則においてだと思っておりますが、ところがだんだんやって参るというと、それだけでは必ずしも目的を達しないということから、それとあわせてやれることのできる飛び地三十町歩というのがやはり出たわけです。経過的にいうと出たわけです。だから今度それと曲を同じくして、かりに第一号、第二号の五十町歩、それにあわせてたとえば三十町歩の水源涵養——第三号に当るものですね。そういうものまであわせてやるという考え方が起きますか、起きませんか。そういうことを考えていますか、考えていませんか。
  80. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) この水源林造成をいたします対象というのは、御承知のように保安林整備臨時措置法に基きまして保安林整備契約というものを現在作定をいたしておるわけでありますが、その中の一つの契約項目といたしまして、重要な水源地帯の中で適当な対象のものを具体的に指定をする、こういうことでやっておるわけであります。いずれもやはり重要水源地帯の奥地における造林事業ということになるわけでございますが、まあそのような意味合いからいたしまするというと、水源林造成の対象地自体が相当限定的なものであるということをまず第一にお考えいただきたいということと、それからただいまの一応五十町歩というふうに私どもが団地の大きさを限定して参りましたことは、これは要するに事業実施の上の便宜関係と、その後長い期間にわたります維持管理の上の関係を考慮しての大きさであるわけでございまして、従いましてやはり一対象地域というものが五十町歩程度以上であれば官行造林の予定地として契約を進めて参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  81. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 ちょっと今のところ聞き漏らしたんですが、どうなんですか。いわゆる水源涵養林というものをあわせてやっていく場合でも、一団地が一号ないし二号のものがとにかくくっついていなければというが、地理的にくっついていなければ、飛び離れた三十ないし五十というものはとらない、水源涵養としてあわせてやるというふうにはとらないと、こういう考え方ですか。
  82. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) その介在あるいは近接しているものを含めまして、主体はあくまでも国有林やあるいは部落有林であるそれらの地域を合めて五十町歩あればよろしい、こういうふうに考えております。
  83. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 そうすると、あの部分は小さいけれども、水源涵養として造林が必要であるということであり、その近くにこの第一号、第二号のようなものがあれば、あわせてそれを対象としていくと、こういう趣旨だと解していいわけですね。
  84. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) はい。
  85. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 ここで私考えるのですが、国有林野整備臨時措置法というのがたしか昨年の三月末で法律は終った。けれども町村合併促進法等であの法律の趣旨を援用していくわけですから、まだあれが二年やそれくらいあると思うのです。そこで幸い長官もおられるのですが、一体あの整備法というのは、私ども法律審議するに当って、うたってあるように国有林野管理経営の立場から見て、自分の経営の立場から見て不便であるものは、これを小さい飛び地なんか売る、こういうふうに思いきっておやりになってそれがまあ一般住民の、特に東北、北海道等の住民の従来からの主張していた考え方と違っていたので、ずいぶん問題を起しためんどうな法律の実施であったようでありますが、ああいったものと、この官行造林といったものを新たに拡張していく考え方とは、国有林の管理経営というただ単なる立場でなくて、造林を保続していくのだということが非常に大きく出ているから、そんなわずかな面積でもこの際やはり国有林関係の管理機構の中に入れていくべきだという結論に達したためにこの法律を出したんだと思うのですが、そこで町村合併促進法との関連においての国有林野整備臨時措置法はどういうふうに採用される考えですか、あわせてちょっとこの機会に聞きたい。一方においては造林というものを早く促進せんがために五十町歩、六十町歩であっても、また国有林野自体の経営からいえば非常に機構上不便だけれども、やはりあえて忍んでこれをやろうという、一方においては飛び地、団地というものは国有林の管理経営から見ると、まあある程度不便だということからして切ろうという法律を作り、その法律の促進法を政府としては援用されて、今日まで運用の年限が残っている。それと兼ね合ってどういうふうにお考えになるか。私が聞きたいのは、町村合併促進法というものでうたってあるあの整備措置法の趣旨をどういうふうにまあ考えておられるかという点を明らかに聞きたいと思うのです。これは、いいかげんなことを言っておくと、各市町村はこれはできるものだと思うようなことから、ずいぶん手間ひま使ってやっている、あるいはそれを知らないために、できるものもそういった要望をしないで済ましてしまう、こういうようなことになりますから、この際考えている点を明らかにしていただいたら便利だと思うのです。
  86. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) 国有林野整備臨時措置法は、ただいま三浦委員からお話のありましたように、まあ国有林野として経営するを相当としないものということで一応あの売り払いをいたしたという経緯が実はあるわけであります。要するに、国有林として国が経営をいたすよりも、むしろこれを希望する市町村その他に売り払いまして、経営をしてもらった方が一そう適切なる経営ができるんじゃないかという考え方が、この法律の前提になっておったわけであります。昨年の三月末日をもちまして失効いたしたのでありまするが、この法律によって運用いたしました結果が、果してそのような法律が意図いたしましたこと通りにいっているかどうかは別にいたしまして、法の建前はそこにあったように私ども考えておるわけであります。それからこの町村合併促進法によりまして、林野整備の例にならって新しくまだ出る市町村の基本財産の造成のために、必要な場合に国有林野を一部売り払うという、こういうことで現にその措置をやっておるわけでございますが、この場合はあくまでもやはり新しくでき上ります市町村の将来の財政基礎というふうなものを考えてみまして、いわゆる基本財産の造成ということが明らかに目的になっておるわけでございますから、従って私どもといたしましても、国有林野整備の場合の例にならってその売り払いを進めていくということを考えながらも、先の場合はあくまでも国有林野経営自体の観点からの扱いでありまするし、あとの場合におきましては、あくまでもこの基本財産の造成という立場に立つのでありまするからして、まあ運用上多少のニュアンスの違いというものは当然持ってやっていかなければならぬというように考えて実は実行いたしておるわけでございます。すなわち町村合併促進法に基きまするところの国有林野の売り払いは、あくまでもやはり基本財産の造成のためにこれを売り払うということであるわけでありまするからして、今回の官行造林法をさらに一部改正をしていただきまして、仕事の対象を広げますると同時に、今後三十万町歩の目標を立ててやっておるということ自体も、造林促進をいたさなければならぬような対象地域に対して最も効果ある方法によってその実を上げて参りたいというねらいがありますと同時に、このこと自体もやはり市町村の基本財産の造成ということに役立つような副目的は当初から含まれておるということに相なりますので、私どもといたしましては、両者の扱いの中に何ら基本的な考えというふうなものの相違なり、対立があるわけでなくて、むしろ相互一体となりまして、その目的のために進み得るというふうに考えておるわけでございます。
  87. 三浦辰雄

    ○三浦辰雄君 まあ、なおその辺研究しなければなりませんが、今度はまた質問の観点を変えまして、従来三十万町歩ばかり官行造林というものでやって来た、ところが町村の財政が御承知通りに非常に困っているものですから、この際契約を解除して、そうして何ぼでも町村の赤字を埋めたいということで契約解除の希望が非常に地方に多いのです。ところが官行造林法の趣旨からいえば、その契約の解除できる条件というのは、まあ施行令の第十二条に五つあげておる。で今日契約の解除を要望してくる多くの理由というのは、「公共団体自ラ造林地ノ経営ヲ為サムトスル場合ニ施テ経営ノ能力確実ナリト認メタルトキ」と、この認めるのは監督官庁である今の営林局長が認めるのではありますが、経営の実力がある、植えてそうしてこれだけ生長して、もう十五年にもなって手入れの時代を過ぎたからいいのだ、こういったことで強く要望をしてくるので、そこでその営林局長あたりはそれを受けて調べるというと、あにはからんや実はまるまる他の方面にそのせっかく植えた自分の部分を売ってしまう、そうしてまあその林地の兼併というか、その上に立っておる権利の移動が行われるという気配があるので、営林局長あたりはこれをお前さん経営ができると言うけれども、それはうそじゃないか、われわれはこういう情報も知っておる、それはせっかくここまで生長したのだから、がまんして持っておれ、そのことがあなたの長い間においてやがて町村の財政をしっかりさせる非常な力になるのだから、持っておれ、こう言うのでありますけれども、なかなか、いやそういうこともわかるけれども、とにかく経営ができるようになったのだから売るといったようなことで、だいぶ悩まされておるということを聞いておるのです。私はこういうようなことをいいかげんなことで解除するようなことになれば、新しくこれから三十万町歩を発足するに当っても、やっぱりその目的を完全に達成し得ないのじゃないだろうかという問題があるので、この点を一つ聞きたいのと、それからもう一つ私は聞きたい。それは官行造林というものに対する国の責任の関係からして聞きたいのだけれども、同じく施行令の第四条の解釈と、その現住実行している運用です。どうですか。第四条は、また説明してもいいです。
  88. 石谷憲男

    政府委員(石谷憲男君) 先の御質問に対しまして御回答申し上げます。お説の通り、施行令の第十二条によりまして、契約の解除に応ずることのできる場合が五つばかり規定してありますが、まあ多くの場合、ただいま三浦委員の御質問のありましたことに関連いたしまする事項は、第二号と第四号でございます。第二号の「公共団体自ラ造林地ノ経営ヲ為サムトスル場合ニ於テ経営ノ能力確実ナリト認メタルトキ」というこの条項を適用いたしまして、契約解除に応ずるというふうなことはほとんど事例があっておりません。むしろ非常に多いケースは第四番目の「公共団体造林地又ハ造林ニ係ル樹木ノ持分ヲ処分シタルトキ」ということでございまして、これは法の第四条によりまして、公共団体がその持分を処分する場合には国の承認を受けなければならないということになっておりまするからして、それを受けまして、公共団体は相手方と連署連名の上で営林局長のところに願書を提出してこの承認を受ける、まあこういう手続規定がされておるわけであります。そこで私どもといたしましては、一般の地方財政の窮乏ということの名によりまして、ただいまのお話のありまするような解除要請のあるような場合におきましては、ほとんどこの解除を受け付けるということをいたしておらぬのでありまするが、ただ特定な市町村につきましては、なるほど極端なる事情が伏在をいたしておりまして、とうていそれを持ち切れないような情勢であるといったようなケースも実は間々あるわけであります。そういったような場合の取扱いは、あくまでも第四号によりまして、この施行令の十二条の四号によりまして扱っておるという実態でございます。しかもこれもその実態をあくまでも究明いたしまして、真にやむを得ないということで、しかもこの場合によりまするというと、明らかに売り渡す相手方というものもはっきりいたしておるわけでございまするからして、そういう扱いをすることもあり得るということでございます。
  89. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) まだ御質問もあると思いますが、ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  90. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会    ————・————