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1956-02-09 第24回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月九日(木曜日)    午前十時四十分開会   —————————————   委員の異動 二月三日委員田中啓一辞任につき、 その補欠として小西英雄君を議長にお いて指名した。 二月六日委員高橋進太郎辞任につ き、その補欠として長谷山行毅君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            青山 正一君            重政 庸徳君            三浦 辰雄君    委員            関根 久藏君            長谷山行毅君            横川 信夫君            東   隆君            河合 義一君            小林 孝平君            溝口 三郎君            森 八三一君            千田  正君   国務大臣    農 林 大 臣 河野 一郎君   政府委員    農林政務次官  大石 武一君    農林大臣官房長 谷垣 專一君    農林省畜産局長 渡部 伍良君    食糧庁長官   清井  正君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告開拓融資保証法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○家畜伝染病予防法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○農林水産政策に関する調査の件  (農林水産基本政策に関する件)   —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  派遣委員報告の件を議題にいたします。先般熊野川及び剣山地域山林開発事業施行予定地実情調査をわずらわしたのでありまして、御出張の各位におかせられましては、寒さの折から遠路御足労をいただき、まことにありがとうございました。ではただいまから順次調査の結果について御報告願うことにいたします。第一班、三浦委員お願いいたします。
  3. 三浦辰雄

    三浦辰雄君 ただいまから熊野川流域における森林開発事業について現地調査の結果を御報告いたします。  この調査青山委員と私が参加したのでありまして、二月三日東京を出発して、四日奈良に着き、まず奈良県庁において県当局地元関係者等説明のあと、車で大和高田市及び五条町を経由して吉野十津川上野地に一泊し、翌五日は同村小原の村役場で地元人々説明があり、同村折立から船で新宮市に下り、勝浦町に一泊、翌朝三重県及び和歌山県の説明をそれぞれ別個に聞き、同日帰京の途についたのであります。  この間、踏破しました熊野川流域は、五条町から約二十五キロの天辻峠から始まり、十津川沿いに下って新宮まで約百二十キロの道程であったのでありまして、船に乗りかえたのは途中二十キロ余にわたってまだ道路が開かれていないからであります。熊野川流域は、奈良三重和歌山の三県にまたがり、総面積二十四万一千町歩、農地は二%に達せず、その九一%二十一万九千町歩森林でありまして、河口に至るまで森林におおわれているといっても過言ではないのであります。この地域は、中央に有名な大峯山脈が南北に走り、その西側を私ども通りました十津川が流れ、東側北山川が流れ、両者が合して熊野川となり、新宮市において太平洋に注いでいるのでありまして、上流奈良県、下流の西側和歌山県、東側三重県となっております。道路としてはいずれも二級国道となっている十津川沿い大和高田新宮線及び下市町から北山川上流通り、木本に至る大和高田木本線のみでありまして、しかも前者は途中の二十数キロが未成線であり、かつ林道がきわめて少いため、この二本の国道及び熊野川による流送を利用し得る地域のみが開発されているにすぎず、大部分の森林は未開発のまま放置されているのであります。この地域の六三%を占める奈良県下六カ村について見ますと、その森林面積奈良県の五一%を占め、蓄積は老令過熟林の五千万石を含む七千万石、一町歩当り四百七十石で、民有林全国平均の二・七倍を擁しているにもかかわらず、林道普及度は一町歩当りわずかに〇・四七メートルであって、全国平均の六分の一にすぎず、蓄積の七分の五は未利用のままであると推定されておりまして、従って人口もわずかに三万余にすぎないのであります。また国有林は全体の〇・七%という僅少なもので、ほとんど民有林であります。和歌山三重両県の熊野川流域についても大体同様な状況にあると見られるのでありまして、この地方は主として民有林業によって生計を立てていると言っても過言ではありません。  この熊野川流域は、隣接する吉野尾鷲等の諸地域とともに昭和二十六年に国土総合開発法による特定地域に指定せられ、昨年吉野熊野特定地域総合開発計画が三県の間に決定されており、またその一環として電源開発促進法に基く熊野川電源開発計画が策定され、その第一次工事準備工作電源開発株式会社によって進められており、特に十津川上流遠谷ダムによって毎秒十六・五トンの水を紀の川流域に、また北山川上流大瀬ダムによって毎秒三十二トンを尾鷲側へと、それぞれ他水系へ分水して発電する工事が進められておりまして、この地方で長い間行われている木材の流送に大きな影響を及ぼそうとしております。熊野川電源開発計画は十カ所に発電所を設け、三十一万キロワットの電力を生産しようというものでありまして、このうち着工が決定された第一次工事コストが割安な四発電所二十一万キロワットでありますが、このように豊富な電力資源開発がおくれておりましたのは、三県の利害の調整及び林業その他の産業との調整の二点が難点であったようであります。  次に地元要望について申し上げますと、第一は、この森林開発事業をぜひ実施してもらいたいということであります。これはどの地区についても非常に強く要望されていたことでありまして、この地域人々林業に依存しているため、森林に対する認識が特に深く、また地味が良好であることがこの強い要望になったものと思われるのであります。しかしてこの事業に必要な資金を確保し、事業の縮小ないし停滞を招来しないよう努められたいということが強く望まれておりました。  第二は、国道大和高田新宮線完成でありまして、現在奈良和歌山両県の県境附近二カ所にわたり二十数キロが完成していないため、十津川上流から新宮への搬出はもっぱら流送によっておりますが、流送は豪雨による流失の危険が多く、搬出に長日月を要し、また定尺物(十三尺五寸)以下に限られ、大径木、広葉樹材、木炭には不適であること等の欠点のため、陸送の方がすぐれており、さらに電源開発及びこのたびの森林開発上からもこの路線の完通が強く要望せられたのであります。  第三は、区域内の林道路線にも問題がありますが、特に区域内林道区域外から関連として結びつけようとする林道の希望が相当強く、かつその本数も多いということであります。この点は、豊富な熊野川流域の林産物を開発の機にそれぞれの地方に吸引して、すでに資材難に陥っている林産加工業維持振興に役立たせようとする要求からだけに、複雑な様相があります。  三重県側では、厳密な意味での熊野川流域に限定せず、隣接する太平洋岸地域開発をもあわせて行うことを希望せられ、また区域内でも多額の橋梁費にかえ、和歌山県側を走る国道に並行して三重県側に林道を開く等、十一線の開設を希望し、また新宮市においては熊野川流域に集約して開発することを要望し、田辺市、南部町等では区域内とその方面との連絡路開設を望んでいるのであります。新宮市は現在この流域からの出材量約二百万石のうち百二十万石ないし百五十万石を集めている本材都市でありまして、他地域への連絡路開設によって木材集荷量減少を憂慮しているようでありました。和歌山県全体としては隣接地域を含めて十五線を希望し、これらのうちには公共事業として現に工事中のものもあるということでありました。また現在道路がないため流送のみにたよっている北山川沿い北山線開設を望む声が非常に強く、現在の流送量が四十万石に及んでおり、その必要性が認められているのでありますが、十津川との合流点に必要な橋梁の架設費に約一億円を要し、林道としては経済効果の点で問題が残されております。しかし上流大瀬ダム建設によって他水系尾鷲方面へ分水発電することについて、電源開発株式会社側では水面の低下が五ないし七センチで流送に支障はないという見解でありますが、地元では二分の一に減水して流送不能になるのではないかと非常に憂慮し、この点からも林道開設の声が熾烈なのであります。  第四は、奈良県の要望書中の「その方式としては事業全体を国の委託事業とし、本県に森林開発事業特別会計制度を設け、県営をもってこれにあたりたい所存である」云々とある点であります。県当局は当初要望書通りこの事業実施を県に委任されたいということから前記要望書となったわけであり、その理由として、(一)現存の県行政機関利用することにより、間接的な経費を節減できること、(二)開発対象民有林であるため用地及び立木補償等が円滑に行われること、(三)電源開発及び道路網計画との調整も容易であること、(四)地元負担金の徴収、償還の事務が容易であること等であります。しかし今回私どもとの懇談において、奥田知事はこの開発方式は一応の当県の要望ではあるが、必ずしもこれに固執するものではない、要するに早く安く開発されることを要望すると説明されました。  以上が地元要望の大要でありますが、最後にこの調査によって得られた結論的な感想を申し上げますと、第一は国がイニシアチブをとったこの計画に対して、地元の熱意は非常なものであったということでありまして、十津川村におきましては、政府計画された八線に付随して二十五線の開発計画し、また伐採跡地及び林種転換造林計画をも策定しているような状況であり、さらに地元負担の点もほとんど問題になっておらなかったのであります。  第二は、要望にもありました国道完成であります。この事業による林道は前述の二本の国道を基幹としており、また電源開発工事完成すれば、渇水期は流送不可能になると思われますので、国道のつけかえ工事並びに未成部分完成はこの事業実行上の最も重要な点の一つであると思われました。  第三は、電源開発事業との経費負担調整であります。すなわち国民全体のため、コストの安きを望む発電事業負担と、治山治水基本であり、かつ低位生産性林業負担力相互に勘案して場所々々に応じて両事業を両立させるため、合理的な調整がすみやかに行われることが必要であると思われました。  第四は、地元林道開発に対する意見の調整であります。この点は地元要望について申し上げました通り区域内の開発にとどめ、また経済効果を考慮するという政府方針と、各県各地元方面要望とは必ずしも一致しない点があるのでありますが、政府において適当な調整を要すると思われたのであります。  以上はなはだ簡単でありますが、調査概要を申し上げて報告といたします。
  4. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) なお、第二班は委員都合によって後日に回すことにいたします。ただいまの御報告に御質疑の向きはこの際御質疑を願います。   —————————————
  5. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 開拓融資保証法の一部を改正する法律案議題といたします。本法律案は去る二月四日内閣から閣法第十一号をもって予備審査のため送付、同日当委員会予備付託になったものであります。先ず提案理由説明を聞くことにいたします。
  6. 大石武一

    政府委員大石武一君) ただいま議題となりました開拓融資保証法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  戦後開拓地に入植した開拓者は、畑作経営のもとに新しい農村建設を意図して日夜営農に精進し、その成果に期すべきものがありますが、現状必ずしも安定の域に到達していない状態でありまして、これらの開拓者営農促進確立のためには営農資金の調達が緊要であります。これがため、政府開拓者に対しまして農機具、家畜基本的な生産手段整備資金は、開拓者資金融通法をもって直接融通しているのでありますが、さらに肥料、飼料、種苗等を購入する短期営農資金融通措置として昭和二十八年開拓融資保証法を施行し、中央地方開拓融資保証協会を設立して開拓者債務保証することによって営農資金の円滑な融通をはかってきたのであります。  政府は、中央保証協会に対し現在までに二億円の政府出資を行なって保証制度運営をはかっているのでありますが、その後この制度に対する開拓者の加入も増加し、また営農の進展に伴い資金の需要も増大して参りましたため、現在の中央保証協会基金をもってしてはとうてい開拓者債務保証の要請にこたえられない段階に立ち至りましたので、政府は、さらに昭和三十一年度一般会計から五千万円を中央保証協会に対し追加出資してその保証ワク増大をはかり、開拓者の必要とする短期営農資金融通を円滑にし、もって開拓者農業生産力発展農業経営確立を期する次第であります。  以上がこの法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。
  7. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本法律案審査は、日をあらためて行うことにいたします。   —————————————
  8. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案議題にいたします。  本法律案は去る二月四日内閣から閣法第十二号をもって予備審査のため送付、同日当委員会予備付託になったものであります。まず提案理由説明を聞くことにいたします。
  9. 大石武一

    政府委員大石武一君) ただいま上程せられました家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  言うまでもなく、畜産振興は、家畜衛生なかんずく家畜伝染性疾病発生予防と、家畜伝染病蔓延防止基本条件とするものであります。この点にかんがみ、わが国におきましては、法律の定めるところによりまして、家畜伝染性疾病発生予防家畜伝染病蔓延防止基本方針を定めて努力が払われ、逐次減少の傾向をたどって参ったのであります。現行家畜伝染病予防法は、昭和二十六年に全面改正されて現在に至っているものでありますが、最近における家畜防疫態勢整備状況並びに乳牛等飼養密度増大等に伴い、この法律の運用に際して実情に即しない点がありますので、今回その一部を改正して、家畜防疫運営適正化をはかることとした次第であります。  以下この法案の内容を簡単に御説明申し上げます。  第一は、牛、馬及び豚が都道府県区域を越えて移動する際には、すべて都道府県知事または獣医師が発行する家畜伝染性疾病にかかっていない旨の健康証明書がなければ移動できないこととなっておりますのを、若干緩和いたしまして、乳牛及び種雄牛につきましてはブルセラ病及び結核病、馬につきましては馬伝染性貧血、豚につきましては豚コレラにかかっていない旨の、都道府県知事または獣医師の発行する証明書がありさえすれば移動できることといたしました。  第二は、ブルセラ病蔓延の危険を未然に防止するために、検査の方法を強化して、乳牛及び種雄牛等につきましては都道府県知事現行法第三十一条の規定によって行なっている結核病についての検査と同様に、ブルセラ病についての検査も年一回以上受けさせることといたしました。  第三は、ブルセラ病にかかったために殺処分の命令を受けて殺された牛の所有者には、従来第五十八条第一項第一号の規定によりまして、その評価額の三分の一を交付しておりましたのを、同項第二号の規定によりまして、その評価額の五分の四を交付することといたしました。  以上のほか、家畜伝染性疾病発生予防の円滑を期するため、関係都道府県間の相互通報の義務を規定する等、一部条文の整備を行なったものであります。これが本法案提案概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  10. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本法律案審査は、日をあらためて行うことにいたします。  大臣都合によって、しばらくそのままお待ちを願います。ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止
  11. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を始めて下さい。  農林水産基本政策の件を議題に供します。政府農林水産基本政策について、この際河野農林大臣から御説明を伺うことにいたします。
  12. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今国会に提出いたしました予算案、それから今後提出して参ります法律案につきまして、皆様方の御審議並びに御協力をわずらわしますに当りまして、予算案の編成及び法律案の制定の基本となりました農林水産行政に対する私の基本的な考えを申し上げ、施策の概要を御説明いたしたいと存じます。  御承知のごとく世界の農業生産事情は近年著しく好転して参り、一部には生産の過剰すら伝えられる状況であります。従いまして、わが国農政としては、この世界事情に対処して、農家の経営及び経済を安定せしめることに主眼を置くべきものと考えるのであります。明年度における農林予算及び施策は、この見地に立って次のような諸点に重点を置いている次第であります。  まず第一に実施いたして参りたいと考えておりますことは、下からの盛りあがる力によって農山漁村の総合的な振興をはかるための対策を強力に講ずることであります。すなわち、土地条件整備経営多角化技術改良等により世界の農林水産業に十分伍してゆける態勢を確立し、農山漁家の経済及び経営の安定をはかる可能性は、わが国農林水産業に十分あると確信するものでありますが、わが国農林漁業のようにその経営の規模が零細である場合には、個々の農山漁民の力だけでは発展の可能性はおのずから限界があり、従って一定のまとまった経済単位農山漁民が共同して活動することが必要であります。また、従来の補助政策のように、個々ばらばらの嫌いがある上からの天下り的な形では、総合性に欠け、かつ、農山漁民自身の主体性や創意の裏打ちがないという欠陥があります。従いまして、農山漁村の総合的な振興を耕種のほか、畜産、養蚕、林産、水産をも含め、適地適産の推進に重点を置いて、将来農山漁村生産と生活を背負って立つ青年を中心とする農山漁民の下から盛りあがる力によって推進することが必要であり、このような観点に立って、私はその助成と指導を一つ強力に進めて参りたいと存ずるのであります。これが、私が新たに実施して参りたいと考えている新農村建設の基本的な構想でございます。  次に、技術水準の向上とその徹底した普及をはかるための諸対策を実現して参りたいと存じます。すなわち、農林水産業生産性の向上が技術水準高度化を基礎とすることは論を待たないのでありますが、最近の科学技術の急速な進歩に伴い、農林水産業における試験研究重要性は、いよいよ高まりつつあるのであります。従いまして、試験研究機関拡充整備については格段の意を注ぐとともに、特に新たに農林水産技術会議ともいうべきものを農林省に設置して科学的試験研究の総合的な推進力たらしめ、試験研究機関相互の緊密な有機的連繋の強化をはかり得るがごとき態勢を整備して参りたいと存じます。また試験研究事業費を増額いたしたいと存じております。さらに試験研究技術指導普及事業結びつきを強化し、技術普及の徹底をはかりたいと考えます。  特に畜産につきましては、昨年来設立をみた畜産会を中心とする指導を本格的に実施することとし、また水産につきましては、養殖の技術及び漁船機関または機械の取り扱い指導のための専門技術員を増員する等の措置を講ずることといたしたいと存じます。  さらに農業改良事業の効率的な推進と、農家の自主的かつ共同的な経営改善を助長するため、新たに農業改良基金の制度を新設いたしたいと存ずるのであります。本制度は、新しい農業技術の導入を奨励するために従来直接農家を対象として交付されていた補助事業のうち、その技術がある程度の普及度を示し、補助金交付の対象とする理由が希薄となってきている反面、なお若干の技術上の危険が残り、直ちに一般営農資金による農家の自主的な実施にゆだねる段階には達しない農業改良事業に対して、都道府県が無利子の資金の貸付を行うもので、補助事業と並んでもう一つの新しい奨励制度を確立いたそうとするものであるとともに、農業経営の改善上必要な農業施設に対して農業協同組合系統資金余裕金を融資した場合に、その債務の保証を行うための基金を設置することといたし、これに対して国が助成をしようというものでございます。本制度が、改良普及活動の強化と相待ちまして、その成果を一そう上げることと信ずる次第であります。  さらに第三に、以上の諸対策とともに、基本的な施策として農林水産業生産基盤を強化し、資源の有効利用を促進するための対策を効率的に講じ、米麦を初め畜水産物をも含めた食糧の総合的自給度の向上をはかり、かつ農山漁家の経済を安定させて参りたいと存じます。すなわち、土地改良事業につきましては、従来通り重点施策として実施する方針でありまして、特に国内の予算、資金のみならず、余剰農産物見返り円資金世界銀行借款、その他の有利な外国資金を広範に動員いたしますとともに、予算及び資金投資効果を高めるよう重点的効率的な事業施行を期したいと考えております。また開拓事業につきましては、乳牛の導入等を積極的に行い、営農資金の拡充をはかりまして、入植者経営一般農家の水準以下となることのないような方向においてこれを実施して参りたいと存じます。また耕種農業と不離の関係にある畜産につきまして、機械による草地改良事業を引き続き行いますとともに、適格地域に対するジャージー種乳牛導入施設を拡大して参り、さらに水産関係といたしましては、第二十二国会において承認を得ました漁港整備計画の実現を推進する一方、老朽化した漁船の更新及び装備の改善、新漁場への進出のため一部漁船の大型化を行うこととし、これに必要な財政金融措置を講じて参るとともに、対馬暖流総合調査 その他近海の資源調査に努め、さらにインド洋、太平洋における新漁場を開発するための対策を実施して参りたいと存じます。さらに林野関係といたしましては、水源林造林及び人工造林の拡充、奥地未利用林積極的開発治山事業等につきその経済性十分考慮を払いつつさらにこれを推進して参る所存であります。なお、従来市町村有林野のみに実施して参った官行造林を、林業政策市町村有林野と類似の意義と性格を有するいわゆる部落有林野水源地帯の一部私有林に対しても行うこととし、このため公有林野官行造林法改正法律案を今国会に提出いたしたいと存じております。  第四に、農林水産物価格対策流通改善対策並びに生産資材対策をさらに強力に実施して参りたいと存じます。まず価格対策につきましては、米麦の消費者価格の水準については、消費者家計の安定をはかるよう、また生産者価格の水準については、コストの切り下げ、生産性向上等のため必要な措置を積極的に講じて参ることをあわせ行い、現下の経済情勢に適応した価格対策を実施して参る方針をとる所存であります。なお、三十一年度から国民食生活に密接な関係のある砂糖につきまして価格安定の施策を講じたいと存じますが、これは、まず業者の自主的調整に待ち、これによってもなお価格の安定を期し得ない場合には、政府買い入れ売り渡しの操作によって安定せしめようとするものであります。  次に流通改善対策は、農林水産業における生産性の向上と相待って、低位な所得を改善するため最も重要な対策でありますとともに、消費者に対しても緊要なことでありますので、青果物、魚類等流通改善に関し、まず中央卸売市場の改革に着手して参りたいと考えます。このため、大正十二年制定の現行中央卸売市場法につき、類似市場に関する適当な規制、卸売人、仲買人、買出人等についての資格、数、取引方法等の改善、主務大臣の指導監督権限の整備等を内容とする改正法案を提出いたす予定であります。  次に畜産物につきまして、家畜取引の改善により、取引の公正と生産農民の利益の確保をはかるために模範家畜市場を育成いたしますほか、枝肉市場に対する融資措置を講じ、肉類の消費の拡大をはかるために、食肉加工施設の改善に対する低利資金の供給措置を講じて参りたいと考えておるのであります。さらに水産物につきましては、国内消費の増大に努めるほか、市場の整備、出荷共同施設の育成、輸送施設の改善等によって流通の改善をはかって参りたいと存ずるのであります。  次に生産資材対策は、国際競争にたえ得るような農林水産業の自立のため最も有力な槓杆であると考えますので、肥料、飼料、農薬、農機具、漁業用燃油、漁網等の供給の確保、価格の低廉化、流通の合理化の方策をさらに検討し推進して参りたいと存じます。すなわち、まず肥料行政の基本は、農家の必要とする肥料を適期に十分な量を供給するよう需給の調整をはかるとともに、極力廉価にするため価格の安定を期するにあるのでありますが、本年の春肥につきましても、国内生産肥料については輸出との調整を慎重にいたし、内需に不安が生ずることのないよう万全の措置を講じ、また輸入カリ及び燐鉱石については内需の動向を勘案して、必要な輸入量増大のため外貨予算上適切な措置をとっておるのであります。さらに肥料価格の点につきましては、国内生産の合理化を促進して生産費の切り下げを行い、より廉価に肥料を供給するごとく努め、輸入関係肥料については、外航運賃の上昇のため価格上昇の要因が発生しているのであるが、輸入態勢の整備、国内における生産流通の合理化をはかることによって、農家の購入価格を高騰させぬよう価格抑制の措置に努力いたしておる次第でございます。  次に飼料につきましては、自給飼料の確保のほか、海外の低廉な飼料用穀類の輸入を増加いたしましたので、家畜畜産物価格を左右する飼料需給事情は、きわめて安定して参ったのでありますが、今後も自給飼料の普及確保をはかりますとともに、飼料需給安定法の運用につきましても、その差損を食糧管理特別会計において補てんすることを考慮しておりますので、飼料価格の安定は確保できるものと考える次第でございます。なお、政府手持ち飼料の更新をはかり、経済的な需給調整力を維持するため、必要な場合には国内飼料と交換または買いかえを行う措置を準備している次第でございます。  最後に漁業用資材対策といたしましては、漁業用燃油については、その所用量の確保と価格の引き下げに努力するとともに、系統団体による共同購入組織の育成をはかることとし、漁網については、良質な合成繊維漁網の普及とその価格の引き下げのために金融その他必要な措置を講じて参りたい所存であります。  第五に、農林水産物の輸出振興について特段の努力をいたしたいと存じます。すなわち輸出農林水産物は、外貨取得率がきわめて高く、しかもドル圏に市場を有し、輸出品としての適格を十分に備えているものでありまして、三十一年度においては、前年に比しおおむね一割増加を目途とし、その振興に努め、わが国経済自立達成のための輸出増進に資したいと考えているのであります。このため、日本輸出農林水産物振興会等関係団体の機能強化をはかり、輸出規格の適正化等その生産出荷の指導を強化し、また輸出保険、金融等の改善を行い、繭及び生糸の価格の安定及び品質の改善につき所要の施策を講ずるほか、ニューヨークにおける生糸の海外消費宣伝のための事務所の経費は従来通り確保するほか、新たに、マグロ、サケ、マス、茶等についての海外需要増進のための国際施設に対する助成等に要する経費を予算案に計上した次第でございます。  第六に、農業災害補償制度を改正し、農林漁業金融の活用をはかり、農業団体制度の整備強化を実現して参りたいと存じます。すなわち、まず農業災害補償制度につきましては、その運営の実態にかんがみ、農作物共済に関し、たとえば農家単位共済の実施、低災害地等についての加入の自由、共済掛金の予納制、共済金支払いの被災に応じた適正確実化、損害評価方法の整備厳正化、共済事業を行う団体に対する監督強化等の諸問題につき検討を進めておる次第でありまして、でき得れば今国会において改正案の御審議をわずらわしたいと考えております。  次に、農林漁業金融につきましては、まず公庫資金の融通につき、三十一年度は前年度に比し三十億円を増額、二百九十億円の融資を行うこととしてその強化をはかりますとともに、農林中央金庫等の組合系統金融につきましては、昨年度の豊作により、その資金量も著しく増加を見ましたので、これを農林水産業振興に活用いたすとともに、その貸し出し金利の低下等合理化について指導を行なっているのでありますが、今後一そうその融資活動を活発化して農林漁業生産力の発展を促進し得るよう検討をいたす所存であります。  次に、農業団体制度の育成強化は、農政の基本的事項であります。従いまして、現行関係諸団体の形態と諸機能を調整して、各職分に応じて関係団体が系統的に強化されますよう念願しておる次第で、これについて鋭意研究中でございますが、成案を得ますれば、適当な時期に農業団体制度の改善をはかり、要すれば関係法律案を今国会に提出いたしたいと考えておるのであります。またその重要な部分として、農業協同組合の振興をはかるため、すでに整備促進をはかりつつある経済事業連合会等につきましては、今後整備期間を短縮して経営健全化の促進を期しますほか、さらに新たに全国約三千三百に及ぶ不振農業協同組合の経営の刷新、振興をはかることといたし、都道府県に農業協同組合振興委員会を設けて弱小組合の合併促進、指導員の駐在、借入金に対する利子補給の措置を行う等に要する経費を予算案に計上いたしますとともに、必要な法律案を今国会に提出いたす予定であります。  最後に、食糧管理制度につきましては、その基盤をなす諸情勢に相当の変化が生じておりますが、同時にこれは国民経済上きわめて重要な問題でありますので、将来の方向を十分見定めまして現実に即して措置して参りたいと存じます。まず米穀の管理につきましては、三十一年度も事前売り渡し申込制は継続して参る考えであります。三十年産米は、集荷団体の活動に加えて豊作に恵まれ、予定以上の集荷をすることができたのでありますが、三十年度の経験にかんがみ、申込時期等に所要の改善を加えたいと存じます。配給の面におきましては、生産県と消費県の均衡化をはかり、希望配給制度の活用と外米及び麦の操作によって安定をはかっていくことといたします。  次に、麦の管理につきましては、最近の麦の需給事情は、国際的な供給増加、輸入価格の値下り、消費の増加等により直接統制を撤廃いたしました当時とは相当に異なっておりますので、特に原麦の政府売り渡し価格の適正化に留意して参る所存であります。  簡単でございますが、以上農林施策の概要を御説明申し上げた次第でございます。
  13. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまの御説明に対して御質疑の向きは順次御質問を願います。
  14. 千田正

    ○千田正君 今の農林大臣の御報告はまことにけっこうずくめで、従って農林漁業のエキスを集めて御報告になったので、これは大へんな大理想でありますが、特に私がここでお伺いしておきたいと思いますのは、最近農林大臣の施政方針演説に続きまして、非常に社会の関心を深めておりますのは新農村建設でありますが、この基本的な構想につきまして、もう少し詳しく御説明願いたいと思います。聞くところによるというと、衆議院における予算委員会等におきまして、だいぶいろいろな面において、最初農林大臣の演説された当初のお考えとは、あるいは修正される点もあるやに承わっておりまするので、この際もう少し根本的な問題に触れて重点的にはっきりした点を聞かしていただきたいと思います。
  15. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 実は、少し申し上げますことが長くなるかもしれませんが、お許しを得ましてお聞き取りをいただきたいと思います。  御承知の通り、現在の農林行政に課せられたる使命といたしましては、国内の食糧の自給度を高めて参るということが一つの眼目であると思うのであります。土地改良、その他これに必要な施策を講じて参る、これをわが国農政におきましては、数年来強力に推進して参ったのでございまするけれども、これとまた別の面から農家経済の安定ということを深く留意いたさなければならない。これにはおそらく全国農民諸君の非常な強い御要望があると思うのであります。これは食糧の自給度を向上するということと農家経済の安定をするということは、その調整よろしきを得ますれば、その目的は一になると思うのでございますけれども、あまりに自給度の向上にばかり強力に進めますことによりまして、たとえて申しますれば、生産費の非常に高いところ、収穫率の低いところというようなところをあえて忍んで自給度の向上に強い要求をいたしまするときには、農民の負担において国内の食糧を生産するということになる場合もあるでございましょうし、さらにまた今申し上げまするように、食糧の自給度を向上するという面から参りまして、あまりに無理をいたしますると、生産費の非常に高いところで米麦その他主要食糧を生産するということになると思うのであります。そういたしますと、すべての農産物の価格の決定の方向が、最高生産費をとって価格の決定をすることが可能である場合には、農家負担になり農家の迷惑にはならないのでありますけれども、農産物の価格は、大よそこれはすべての生産費はそうだと思うのでありますが、最高生産費で物価の決定をすることは不可能でございます。従いまして、生産費の高いところでは自給度向上を要求するのが強いあまりに高く要求いたしますると、農家の迷惑、すなわち農家経済の安定と一致しない場合が起ってくると思うのであります。ところが戦争から終戦——占領政治下におきましては、世界食糧が非常に欠乏いたしておりましたので、どの方向からも求めることはできないというような時代におきましては、政府としてはいかに強力に施策をいたしましても、国内生産高度化に非常に力を強く用いて、この間においては全国の農民諸君の犠牲において国内食糧の増産をはかったという時代も私はあったと思うのであります。ところが今日この段階に参りましては、今申し上げまするような点を十分に勘案いたしまして、農家経済確立に私は少くとも大きな力を用いまして、農家経済確立と国内食糧の生産拡充とを両々相にらみ合せつつ、妥当性をつかんで持っていくことが必要である、こう思うのであります。そういう見地に立ってものを考えまするときに、従来とかく農家経済確立、農業生産の全体にわたってのあんばい、適地適作、適産というような面にややもすれば留意が払われなかった過去の経緯にかんがみまして、この際私は全国の農家に対し、農村に対しまして、それぞれの農村農家がそれぞれの土地における立地条件を十二分に勘案しつつ適地適作の方向に、そうしてそれぞれの農家がみないずれも自立達成のできるようなふうにあんばい、工夫をせられまして、そうして計画を立てていただく、すなわち食糧の増産に従来非常に強力に押し進めて参りましたものを、これを今申し上げますような農家経済確立——農民諸君の経済をみずから立て直して、そうして自分で働いて自分で完全に収益をおさめるということに立案を願って、そうしてそれと見合いつつ施策を講じていくことが必要だろうというような観点に立ちまして、今回新しく全国の農民諸君にそれぞれの地方においてそれぞれの適地適作、そうしてしかも共同してりっぱな経営をしていただくようにお願いをするということがいいのじゃないかというふうに考えますとともに、御承知の通り今日全国の農村は、町村の合併のために、えてして都市を中心に合併を推進いたしまして、そうしてまま都市中心主義の政治が、行政が行われる傾きもございますので、そこで町村合併とは全然別個に、従来一万余ございました町村が、町村合併の進行によって六千四、五百になるそうでございますが、これとは切り離して、従来一万有余あったものを大体われわれといたしましては五千程度——従来の二カ村を一カ村という程度の単位にいたしまして、そうしてそこに生産性の同一性を期待いたしまして、そうしてなるべくその条件が同じ農家が集まって、そうしてしかもその区域は、従来の二カ村が一カ村という程度のものになって、十分共同で農業経営を営んでいくようにする。これはくどいようでございますけれども、行政区域とは全然関係なしにそれぞれの農業生産の共同性を中心にして、そうして村作りをしていく。これを将来の日本農林行政の対象としてやっていくようにしていきたいという二つの目途をもちまして、今後五カ年くらいの間にこれを具体化していきたい。ただ申しますように、現在の農家の諸君にそれぞれの立地条件に応じて新しく経営を組み立てるといいましても、やりたいことはいろいろあり、これをやればこういうふうにそろばんも合うというようなことがありますが、先だつものは金だ、資金がないからなかなかそういうふうにうまくいかないという場合が多いのでございますから、そこで政府といたしましては、今申し上げます一村に対して少くとも二カ年間に一千万円に近い金を一つ差し上げるようにしようということに考えたい。そうしていろいろな資金を使って、そうしてその土地の農家の人が考えて、その考えたものに自由にその金を使って、将来の生産性を高めてゆくようにしてもらいたい。これを五カ年ぐらいの間に全国の農村を新しい格好の農村に作り上げてゆきたいというふうに考えておるわけでございます。
  16. 千田正

    ○千田正君 そうしますと、それは行政関係とは全然別個のお考えのようでありまするが、農林大臣のお考えは、ただいま政府からそういう面に出すところの金は、従来あったところの制度利用してそういうふうな方向に向けていくのか、それとは全然別個に機関を設置してそれに与えて、新しい農村の行き方を指導していくのか、どっちなんでございますか。
  17. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今申し上げましたような次第でございますから、従来農林行政としてやっておりますものもむろんこの中に加えて考えて参ることはもちろんでございますが、新しく予算もとり、やっております。ただし政府の方といたしましては、中央委員会を作りまして、その委員会でその計画の合理性、適性を審査して、これならばおやりになってけっこうでしょうということで相談相手になっていくということだと思うのであります。  しからば、それでは単位になるものはどうだということになりますれば、それらの区域の人が共同をして一切をやっていただくということになりますから、従来の協同組合の規模を全然新しくするか、してもよろしいでありましょうし、しなくてもよろしい。別にそういうことに対しては、地方実情に応じて一番都合のいい方法でやっていただけばよろしい。もし一つになった方が運営上よろしいということになれば、私の方で一つになれと言わなくても一つになるでありましょうし、三つでやった方がよろしいというならば三つでもけっこうでございましょう。同じ条件と申しましても、その間には米を作る場合もありましょうし、また別の果物類を作る場合もございましょうし、家畜を飼う場合もありましようし、水産をやる場合もございましょうし、急傾斜の地方によりましては、それぞれその適地に応じてお茶畑を作る場合もございますし、いろいろございますから、その団体等で必ずしも——画一に、区域内を一つにして、そうして私が今新農業団体の再編成と言っておるものをそれと結びつけてぴたっとやるつもりじゃないかという誤解があるようでありますけれども、必ずしも私はそういうふうに考えておりません。およそ農村におきまする制度もしくは組織は、幾ら中央で考えましても農村の方でこれはいいものだ、都合のいいものだ、けっこうなものだという場合には、それが残ってだんだん発達して参りますし、都合の悪いもの、こういうものは要らぬものだ、こういう場合には看板だけかけても、これは全く御承知の通りあるかないかわからぬようになって、一、二年で消えてなくなるものでございますから、そういうようなものをわれわれが意図したところで仕方がないと思いますので、その点については十分留意をして考えて参りたい、こう考えております。
  18. 千田正

    ○千田正君 御趣旨はわかりましたが、そうしますというと、よく農村では最近非常に政府のいわゆる平野案、平野君の提唱しておる案であるところの農民団体の再々編成問題と新農村建設という問題をある場合においては混同して考え、ある場合においては関連した一つ河野農相の理想であるというふうに考えられておるようでありますが、この辺をはっきりしていただきたいという点と、大体新農村建設の今の案でいきますると、この前大臣のおっしゃったのは大体全国で五百でした。五百くらいのモデルケースを選んでやってみる、こういう場合に農林省としましては、農林省自体がその適地を選ぶのか、それとも各県の一致で要望してきたもの中のからピックアップしてそれを選定するのか、その辺はどういうふうになっておるのでございますか。
  19. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 五百と申しましたのは、先ほど申し上げましたように、全国を五千という計算で、初年度にまず五、六百、予算が十分取れませんでしたから、そこでまず五百という見当にしておるのでございまして、これはもちろんこちらからモデルケースという意味じゃないのでございまして、五年のうちには全部それにいくようにしたい、こういうふうに考えておるのでございますから、そういう熱意もあり、希望もされ、地方の諸君が協力されるところ、すなわち申し出のあったものから、しかもその計画が妥当性のあるものから取り上げていく。ただし一つの県に、数県に、関東地方に全部寄ってしまうというようなことも工合が悪いことでございましょうから、多少その間には一県に十づつ置こうとか、おおむね幾つ置こうというようなことは、多少の按分はいたしますけれども、とにかく地元で早くそういう計画を立て、そうしてその計画が合理性があるものというものからとっていくということであって、決してこちらで指定してやるというようなことは考えておりません。
  20. 千田正

    ○千田正君 既設の農村と、それから戦後におけるいわゆる引揚者あるいは戦災者等によって建設されておりますところの開拓団地、いわゆる戦後における新農村、こういうものを一切含めておやりになる考えですか。それとも既設のかつての農村だけを中心にする、こういうお考えは別に区別しては考えておられないわけですか。
  21. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 全然区別いたしておりません。なお、急傾斜もしくは積雪寒冷地帯、これらの所には特殊立法があって、特殊に施策して参ることが従来法律で命令されておるわけなのでございますが、それらのものも含めてやって参りたい。ではそういうものをやめてしまおう、決してやめるとは申しません。それはそれ、これはこれということで、しかしその間には総合性を持ってやっていきたい、こういうふうに考えております。
  22. 千田正

    ○千田正君 最後に一点、私もよく研究してみますが、大臣の時間もないと思いますので、研究した結果またいずれお尋ねいたしますが、先ほど申し上げましたいわゆる再々編成の団体の農民会、平野私案というものが出てから非常に農村においてはいろいろな批判がなされております。それとこの新農村建設とは誤解のないようにという大臣のお話も非常に率直にわれわれも理解されますけれども、その辺の区別をはっきりこの際声明された方がいいと思います。その辺はどうなのですか。
  23. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) この機会に一つ団体再編成の問題について、この委員会でお聞き取りいただきたいと思うのです。これは衆議院の方におきましては、予算委員会、農林委員会ではっきり私は申し上げ、参議院の方でも、先般補正予算の問題の際にお答え申し上げたのでございますが、きょうはあらためて農水委員会の皆さんに御了解いただきたいと思います。  先般新聞に平野私案なるものが出ましたが、これは農林省で現在考えておりますもの、もしくは研究しておりまするものと違います。私自身も考えておりますこととむろん全部違うとは申しませんけれども、私自身の考えたものと違っております。決して私が、新聞にありますように、河野がああいうものを出さしたのだろうとおっしゃいますけれども、これは全然そういうことはございません。私は新聞によって初めて平野私案なるものを拝見いたしたのであります。  しからば、私自身はどういうふうに考えておるかと申しますれば、第一にだいぶ全国で誤解があるようでございますから、お聞き取りをいただきたいと思いますことは、かねて米の問題についてしばしば私申し上げますように、今日の農業協同組合を弱化するようなことは絶対に考えておりません。なぜかと申しますれば、食糧の平均売りをし、集荷し、これを販売する上においては、どうしても協同組合に依存しなければなりません。これを強化いたしまして、そうして農産物の流通改善をするという場合において、今日の協同組合の事情が私は非常に不満足な弱体なものだと思っておるのであって、これをより一そう強化し、そうして万全なものにして米の統制撤廃ができるのだ、統制撤廃の前提としてはどうしても農民自身が全国の自分たちの作った米を、協同組合の手によって平均売りをして、値段をくずさずにいけるまでに農民全体の協同組合に対する意欲が向上され、その組織が拡充されたときにおいてできるのでございますから、その点において今日の協同組合はより一そう強化しなければならぬということは、私はしばしば社会に対して声明いたしておる次第でございます。それを突如として私が協同組合を弱化する意思を持っておるというようなことの誤解を受けておりますることは、はなはだ遺憾でございまして、そういうことは絶対に考えておりません。  その次に単位協同組合の信用部の問題でございます。この機会に信用事業のことについて申し上げますると、今日農民諸君が預金をいたしまする預金の利子と、これを借りまする借り入れの利息との間にあまりにも金利の開きが多すぎる。これは何としてもこの事務の合理化をはからなければいけないということは、今日どなたにも私は御異存のないところだと思うのであります。これは昨年秋の米の集荷が進行し、もしくは予約奨励金を出しました当時からいたしまして中金に非常に金が集まる、その集まった中金が金の運用について市中の金利よりも中金の金利の方が高くなければいかんというような非常にめんどうな事態に追い込まれましたときから、私は何とかこれはしなければいかぬということを深く考えまして、今日のように単協、信連、中金という三段階制でそれぞれの段階で金利をかせいでおるようなことでは農家のために絶対にならないということを深く考えておって、自来それぞれの専門家に研究を続けていただいておるのでございます。たとえて申せば小平権一君でありますとか、その他従来よりわが国内におきますエキスパートについて、この点について十分の検討を願っておるのでありまして、その検討の結果はまだはっきりしておりません。しておりませんが、必ず適正な方法を求めて、これを三段階を二段階にしなければいけない、そういうふうにしていくのでなければ、市中金利と対抗ができない、なおかつ農村資金が合理化されないという面からして、何とかこれをいたしたいということは考えております。考えておりますが、さればと申して今にわかに単協から信用部をはずせば、今日の単協が非常に苦境に立つという事実も私は承知しております。従って単協を弱化さして信用部をはずしてよろしいというような、軽率にこれを実行するようなことは断じてこれはいたしません。これもはっきり申し上げておきます。ただ、今日の協同組合全体を通じて強化をして参るのに、どういうふうなことが必要かと言えば、すべてに対して合理性を求めるということだと思うのであります。これが協同組合の制度そのものはともかくといたしまして、今日運用の面において合理性に欠ける面がある。もう少し具体的に申せば、本来の使命よりもやや逸脱する場合があるのじゃないかという疑いがある。そのために経費がかかり過ぎる場合があるのじゃなかろうかと私は思うのであります。これらは全国農民の必ずしも私は期待するところじゃないと思うのであります。従いまして、今日の協同組合を合理化し、これを強化して参りますにはどういう施策が入り用だということ等については十分の検討をする価値があると思っております。しかし基本はどこまでも協同組合一連のものを強化するという精神にのっとってのことであることは御了解いただきたいと思うのであります。そういう意味において協同組合関係のことを考慮しつつ、しからば今日のわが国農村関係しておる団体はこのままでよろしいかどうかということを考えまするときに、先ほども申し上げました通りに、町村合併が全然農村の行政とはむしろ関係なしに町村合併が進行し、そうして町村の中のいろいろな区域においていろいろな団体ができておる。これをこのままにしておいてよろしいかどうかという問題が別途考えられる。こういうものを整理統合、拡充する段階に今日来ておるのではなかろうか、こう私は思うのであります。決して何も河野一郎好みのものをここに作り出して何をしようというようなことを軽率に、私一人の趣味や嗜好やのことでやろうというような軽率のことは絶対考えておりません。どこまでも皆様方の御意見を十分承わって、そうして今申し上げまするような精神に合致する方向を求めつついきたい。従ってここに私はなるべく成案をすみやかに得て議会に提案をいたしたいと考えておりますが、この案は必ずしも私はこの国会で両院を通過しなければならぬと考えておりません。相当の期間をかけて十分に各方面の御意見を拝聴して、直すべき点は十分に手直しをして、そうしてまとめ上げたものによってやっていくことが一番いいんじゃないか、こういうふうに考えておりますので、どうか一つ十分に御研究御協力をたまわりますれば仕合せだと考えておる次第であります。
  24. 千田正

    ○千田正君 今農林大臣からいろいろ詳しい御答弁がありましたが、農村要望というものは、やはり今農林大臣がお考えになっておる点が一つ重点だろうと思うのであります。せっかく農民を中心にして育て上げたところの農業協同組合そのものに信頼をしておったものが、新たなる機構によって屋上さらにまた屋を重ねるような方向にいくのであっては、せっかく積み上げた、さいの河原のようにして積み上げたところの農民のいわゆる本山がくずれるのじゃないかというような、非常な危惧の念を持っておるのが現在の農民の考え方だろうと思うのであります。でありますから、これはよほど慎重に考えられまして、農民の要望する点がどこにあるのか、そうしてどこが弱体であるかというのは今御指摘のある通りであります。弱体化されておるところに政府が親心をもってそれを強化していく、それを増進さしていく、農民をして安心して生業につかしめ、増産なりあるいは適地生産なりにやっていけるだけの方策を講じてもらいたい、これはおそらく全農民が一致して要望するところだと思いますので、誤解のないような方策を一つ立てていただきたい、この点を要望しておきます。
  25. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) それではちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  26. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を始めて。  この問題については、本日はこの程度とし、さらに適当な機会に質問を続行することにいたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  27. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を始めて。  都合によって大臣に対する質問は後日に回し、本日はこれをもって散会いたします。    午後零時十一分散会    ————・————