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1956-05-29 第24回国会 参議院 内閣委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十九日(火曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————   委員の異動 五月二十九日委員石井桂君及び亀田得 治君辞任につき、その補欠として小幡 治和君及び菊川孝夫君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            野本 品吉君            宮田 重文君            千葉  信君            島村 軍次君    委員            井上 清一君            小幡 治和君            木島 虎藏君            木村篤太郎君            西郷吉之助君            佐藤清一郎君            江田 三郎君            菊川 孝夫君            田畑 金光君            松浦 清一君            吉田 法晴君            高瀬荘太郎君            豊田 雅孝君            廣瀬 久忠君            堀  眞琴君   国務大臣    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣総理大臣官    房審議室長   賀屋 正雄君    防衛政務次官  永山 忠則君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁教育局長    事務取扱    都村新次郎君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    防衛庁装備局長 小山 雄二君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国防会議構成等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  委員の変更につきお知らせいたします。  本日亀田得治君が辞任されまして、その補欠菊川孝夫君が選任されました。   —————————————
  3. 青木一男

    委員長青木一男君) 国防会議構成等に関する法律案を議題として質疑を行います。
  4. 吉田法晴

    吉田法晴君 国防会議構成等に関する法律案に関しまして質疑をいたしたいと思いますが、国防会議構成等に関する法律案拝見をいたしてみますと、条文が非常に簡単でわかりにくい。国防会議任務等条文には説明がせられておりません。提案理由説明等には一応国防基本方針その他が書いてございますが、そこで同様の各国の規定等を参酌をいたしてみますと、提案理由説明に書いてありますような国防基本方針、あるいは防衛計画大綱等々がその審議の対象だ、任務だ、こう書かれておりますけれども、特にイギリスフランス等国防委員会等拝見をしてみますと、これが戦争をする会議——昔で言いますと、どういうものに匹敵するかわかりませんけれども、あるいは御前会議のようなものにもなりかねない性格を持っておる、こういうことが考えられるのでありますが、国防会議任務をあらためて明確に承わりたい。なおその本質——戦争をするための会議ではないかと考えるのでありますが、防衛庁長官の明答を得たいと思います。
  5. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま国防会議任務というようなことについて御質問がございましたが、これは防衛庁設置法の第三章国防会議、その四十二条に明確に書いてあるわけでございますが、その第四十二条をここで読み上げる必要もないと思いますが、この国防会議設置の目的は何かと申しますれば、防衛庁設置法にあるように内閣総理大臣諮問にこたえて国防基本方針防衛計画大綱防衛出動の応否等、国防に関する重要事項について、広い視野から総合的に慎重に審議し、わが国国防施策について万全を期しようとするものであるのでございます。
  6. 吉田法晴

    吉田法晴君 そういう説明は今まで何度も繰り返されておりますし、それから防衛庁設置法にもいろいろ書いてある、それを求めておるのではございません。なるほど諮問機関ということでありますけれども、イギリスの何と申しますか、国防委員会、あるいはフランス国防委員会等が戦乱の勃発とともに戦争を遂行する会議になった、あるいは戦争内閣になりあるいは国防審議会になったり、いろいろしておりますけれども、そういう経験からかんがみまして、国防会議も今は諮問機関であり、四十二条の中に「防衛出動可否」というのがございますけれども、それは戦争を遂行していく任務を持つ機関となるのではないか、こういうことを申しておるのであります。その点について外国例等から考えて、明らかに任務を指していただきたい、こういう危険性が全くないという……。
  7. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま吉田委員の御指摘になりましたような危険性は毛頭ないと存じます。吉田委員すでに先ほども御指摘になりましたが、アメリカ国家安全保障会議、すなわちこの法案に出ております国防会議に相当する国家安全保障会議にいたしましても、あるいはイギリス国防委員会にいたしましても、非常に広い視野から国土防衛安全保障という問題について審議をする諮問機関ということになっておるようでございますが、今御審議を願っておりまする国防会議につきましても同様の考え方でございまして、わが国安全保障という国防問題について、安い視野から、大所高所からその基本的な方針、あるいは防衛産業と他産業との調整というような基本的な問題について審議をする、そうしてわが国安全保障体制を整備していくということに役立っていきたい、こういうような考え方でございまして、戦前におけるものとはその点において非常に違っておると存じます。従いまして戦前御前会議戦争遂行中の御前会議等におきまして、今御指摘になりましたような危険な点があったというお感じがあったかと思いますが、そういうことは、この国防会議を設置いたしましても、毛頭起らないと、また起すべきではないと私は信じます。
  8. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではイギリス国防委員会あるいはフランス国防委員会が、平時においては、ここに案として出されております国防会議のような任務を持っております。あるいは防衛組織について、あるいは軍備の計画について、あるいは産業施設の総合的な計画といったような、あるいは出動可否は必ずしも全部が全部任務としてあるものでもございませんようでありますが、同様な任務を掲げておりますけれども、それが後にと申しますか、あるいは戦時においては動的な性格ということが防衛年鑑にも書いてございますが、戦争遂行の中心的な国の最高機関になったという事実は、これは御否定にならないだろうと思います。その点はどうでしょう。
  9. 船田中

    国務大臣船田中君) これは今御指摘になりましたように、戦時中におきましては、軍事的な面が強く出てくることは、これはもちろんそういうことになる傾向はあると思います。とにかく防衛の実際の問題が軍事面に強く現われてきておりますから、そういうことになると存じます。しかし平時における国防会議において論議すべき問題は、先ほど申し上げたように、広い考え方においての国家安全保障ということが主眼でありまして、それは単に軍事面わが国で申しますれば防衛庁の所管の問題に限ることではないと存じます。
  10. 吉田法晴

    吉田法晴君 イギリスフランスその他において、戦時国防委員会等が、軍事だけでなくて、産業あるいは国のあらゆる力を戦争のために調整しあるいは動員をする任務を持ったということはお認めになったわけでありますが、日本の場合にそれがどうなるかということは、これは実際問題でありますが、危険性についてはこれは御否定になりますか。それとも国防会議任務からするならば、今の日本自衛隊法その他から言いますというと、防衛出動等が行われたあとにおいては、国防会議がこの任務としておりますあるいは軍事あるいは経済そういうものについて、調整と申しますか、あるいは広い視野からコントロールをする任務を持つという点はないのでしょうか、あるのでしょうか。
  11. 船田中

    国務大臣船田中君) これはただいま御指摘になりましたように、戦時中においては、もちろん軍事面が強く出てくるということはございましょう。しかしながらそれも国策遂行のために政治が優先するという建前はイギリスアメリカフランス等においても堅持されておったと存じます。わが国におきましても、戦争中においてその点においていささか欠けるところがあったということにおいて、戦時中の失敗もあったと存じますので、この国防会議が設置されましたときにおいては、どこまでも政治優先という原則は堅持して参らなければなりませんし、また政府としてもその方針でいっておるわけであります。従いまして今吉田委員の御指摘になりましたような危険性というものは、私はこの国防会議構成等によりまして感ぜられることはなかろうというふうに考える次第でございます。
  12. 吉田法晴

    吉田法晴君 政治優先原則は貫いて参りたい、その点は了承をいたしました。国防会議性格については、大体任務についてはお認めになりましたから、次に参りたいと思うのでありますが、自衛隊はこれは憲法に認められた正規の軍隊ではございません。やみ軍隊であります。ところがその悪法では認められないやみ軍隊が実際に出動いたします場合は、自衛隊法第七十六条、それからそういう出動をします場合には、行政協定二十四条でアメリカとの協議がなされるということで動くわけでありますが、その場合に、これは何と申しますか、戦闘行為が行われるということは、これは否定をせられて参りませんでした。そうすると、交戦権もないということでありますから、戦闘行為をやって、それに国際法規がどの程度適用されるかということは、これは法制局長との間にいろいろ論戦もありましたが、それはとにかくとして、戦闘行為が行われるということは御否定になりません。そうすると、ここにやみ戦争が行われるということになります。もちろん宣戦布告というものはないでしょう。事実上の戦闘行為自衛のための戦闘行為というお話しではございますけれども、宣戦布告のないやみ戦争が行われるということになりますが、そうではございませんか。そこでまあその点について御所見を承わりたいが、こういうやみ軍隊が、やみ戦争を、自衛というものを理由にはいたしますけれども、自衛のためではございましょうけれども、戦争をするということになりますと、これは大東亜戦争においてすら、太平洋戦争においてすら、国際法規の完全な順守がなかった、日清戦争日露戦争においては、宣戦の詔勅に、国際法規順守するということが入っていた。ところが大東亜戦争宣戦の詔書の中には入っていなかった、こういうことのために、国際法規のこの不順守と申しますか、あるいは無視がしばしば行われたということは、これはいろいろなものに書いてございます。ところが今こういうやみ軍隊が、やみ戦争をする、戦闘行為をするということになりますならば、私は大東亜戦争以上の国際法規無視が起るのではないかということを心配をするのであります。あの第一次欧州大戦後、第二次欧州大戦におけるドイツのこの軍隊成長過程、それからシュリーセン作戦と申しますか、マジノ戦を突破いたしました最初ドイツ経験からいたしましても、あれよりももっとこれは認められていないやみ軍隊である、あるいはやみ戦争が起る、それから国際法規無視が起るのではないかという点を心配をするのでありますが、これらの点について、防衛庁長官はどのようにお考えでございますか、お伺いいたしたい。
  13. 船田中

    国務大臣船田中君) 自衛隊がただいま御指摘のように、第七十六条によりまして出動を命ぜられたという場合におきまして、もちろん自衛隊わが国防衛するため必要な武力を行使することができるのでございまして、これは自衛隊法の第八十八条の第一項にもそのことが明記されております。しかしそのために今吉田委員の御指摘になりましたように、国際法規あるいは慣例等を守らないでいいかどうか、こういうことにつきましても、この第八十八条の二項にはっきり明示してあります通りに、自衛隊武力行使に際しましては、「国際法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、且つ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする」と、こういうことが明記されておるわけでございます。防衛出動をいたしましたときに、わが国防衛のために必要な限度武力は行使しますけれども、それはもちろん国際法規及び国際慣例に従うという制限を受けるわけでございます。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 八十八条第二項は了承をいたしました。ところが林法制局長官説明によると、交戦権はこれを認めない、放棄した、こういうことで国際法規の、あるいは国際条約適用について、この限界があると申しますか、全部について適用がないんだ、こういう御説明がございましたから、先ほどのような心配をしたわけでありますが、あの林さんの説明された点と、それから八十八条二項とは、これは今のような説明からいたしましても矛盾をいたしやしませんか。少くとも八十八条の中には林さんの説明によると、適用せられない交戦権関係条約あるいは法規があると、こういうことになりやしませんか。
  15. 船田中

    国務大臣船田中君) この交戦権の放棄につきましては、先般法制局長官から御説明申し上げましたように、戦争状態になった場合に交戦者として持っておる権利、すなわち中立国の船舶を拿捕、検問するとか、あるいは占領地行政をやるとか、そういったような交戦国として持っておる権利主張しないと、こういうことを言っておるのでありまするし、それから第八十八条の第二項におきましては、自衛隊武力行使をし、国土を守るために戦わなきゃならぬが、しかしそれは国際法規及び国際慣例に従ってその制限を受けなきゃならぬと、こういうことでございますから、その両者の間に矛盾というものは全然ないわけでございまして、従って自衛隊国土防衛のための武力行使というものは、そういう点におきましても、きわめて消極的な活動しかしない、すなわち国土防衛に必要な最小限度のものをやるというだけのことにとどまるわけでございます。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 じゃ具体例を挙げましょう。これは自衛ということでございますから、戦宣布告はもちろんないわけです。で、それからアメリカ軍との協力ということがございますが、たとえば言われるような急迫不正の侵害というものを、大体どこが判断をするのか、実際問題としてアメリカ判断の方が先にきそうですが、たとえばこれは実際にあった例ではございませんけれども、第二次大戦中でありますけれども、三マイルの領海説に対してアメリカが独断で防衛海面を数百マイルも拡張をして哨戒艦船飛行機に対して独伊の軍艦を発見次第発砲すべしという命令を出した、こういう事実があるというのであります。同僚森崎守人君の、これは指摘でありますが、そうしますと、日本から三マイルはるかに越えたところに敵の船なり、あるいは、これはまあ領海以外でありますが、敵の飛行機が現われた、こういう場合にそれを急迫不正の侵害として、あるいは要撃をした云々ということは、これは先般の北海道近くといいますか等でありました事例からいって、そういうことは考えられるのでありますが、その場合にどういう措置がとられるが、あるいはこれを急迫不正の侵害として戦闘行為が始められる、防衛出動がなされる、こういう点等はこれは考えられないことではございませんが、これらの点について先ほどの法規の、国際法規との関係等々について御所見を承わります。
  17. 船田中

    国務大臣船田中君) 今御指摘になりました、この行政協定二十四条が発動されるという場合におきましては、その前提としてはどうしてもこの日本区域内において敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合に限られるわけでございまして、従ってはるか公海の中でただいま御指摘のような問題が起ったと、こういうことに対しましては、この行政協定二十四条の発動は起り得ないものであると、この協定の趣旨についてもこれは相当厳格に解釈すべきでありまして、決して不当にこの解釈を拡張してゆくというようなことを政府は考えておるわけではございません。
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは第二次欧州大戦中にありましたアメリカの例は三マイル領海外の問題ですが、それが数百マイルの拡張をしてアメリカに対する侵害があったと、こういうことでアメリカの海軍、空軍が出たと、こういうことであります。一九五三年のノサップ沖ソ連機領空侵犯問題等を考え合せますと、これはノサップ沖におけるソ連機日本領空を侵しておったか侵していなかったかということは、これは事実判定になりますけれども、それが当時のようにアメリカによって、日本領空以外であっても、あるいは海でいって三マイルそとであっても、日本に対する不正の侵害があったと、あるいはそれがあるとして米軍出動し、あるいは二十四条によって日本協力が求められる、あるいはそれを七十六条で日本出動をする、こういうことは考えられませんか。私は考えられるのではないかということを、考えられる危険性を感ずるのでありますが、どうですか。
  19. 船田中

    国務大臣船田中君) 今吉田委員のおっしゃったことは、日本自衛隊出動について、アメリカ側がイニシアチブをとってやるのではないかということを御指摘になったのかと思いますが、そういう場合には、この行政協定によりましても、また自衛隊法の精神から申しましても、そういうことは起り得ないと、自衛隊防衛出動をするということは、日本区域敵対行為が起った、あるいはその日本区域敵対行為の現実の脅威が起ったという場合についてのみ考えられることでありまして、ただいま吉田委員の御指摘になるような懸念はないものと私は信じます。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは二十四条の関係でそういうことになるのではないかというお尋ねをしたのですが、その点はまあないということなのです。それでは日本領海三海里説をとられるのですか、あるいは領空についてどういうことを考えられるのですか。
  21. 船田中

    国務大臣船田中君) わが国といたしましては従来海岸三海里説をとっておるわけでございます。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 それから領空について。
  23. 船田中

    国務大臣船田中君) 領空も同様に考えます。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、その外においてたとえばこの間の、この間というのは五三年のノサップ沖の事件のような場合に、外部からの武力攻撃、あるいは武力攻撃のおそれある場合ということで、日本自衛隊出動するようなことはございませんか。
  25. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま御指摘のような場合に、自衛隊防衛出動するということはないと存じます。
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 そういう意味において国際法規無視するようなことはない、こういう御説明、これはまあ論争にもなりますし、具体的な問題にも少し入って参ったと思います。  それから構成についてでありますが、構成については、これはいきさつはいいのです。いきさつはいいのですが、民間人を入れないということになりましたわけですが、これは自由党の修正でやめた云々ということでなくて、防衛庁として、あるいは政府として民間人を入れないに至った事由を一つ政府として御説明願いたい。
  27. 船田中

    国務大臣船田中君) 国防会議議員民間練達達識の人を入れた方がよかろうという御意見にも十分傾聴すべき理由はあると存じます。この原案提出されるに至るまで自由民主党の関係者との間において相当論議を尽したことは、これは事実でございます。しかしながら結局におきまして、この先の国会において、御承知通り第二十二国会におきましてはこの民間人を除いた案が衆議院において御審議の結果修正可決されておると、(吉田法晴君「経過ではない」と述ぶ)こういうことにもなっておりますので、従って最後に閣議におきましては、この民間人を入れないという案を決定して提出をしたと、こういうことになっておるわけであります。
  28. 吉田法晴

    吉田法晴君 最初民間人を入れるべきだということで、それはたとえば国防闘争道具から押える、あるいは方針恒久性と言いますか、安定性を与えるために民間人を入れるべきだと、こういう意見があったのであります。とにかくそういうものを一切含めてまあやめたというのですか、こういうことなのですか。経緯じゃなくて政府がこういう原案を出してこられたのですから、政府のこういう主張に対して方針それから意図というものを御説明願いたい。
  29. 船田中

    国務大臣船田中君) 先ほど御説明申し上げましたように、民間人を入れたがよかろうという議論が党内にあったことは、これは事実でございます。しかし種々論議を重ねた結果、民間人を入れない案の方がいいという結論になりまして、これを民間人を入れないという原案に決定いたしたわけでございます。
  30. 吉田法晴

    吉田法晴君 ですから、それじゃ民間人を入れない方がいいという決定をしたその理由、どういう理由民間人を入れない方がいいと、こういうふうに考えておられるのですか、それを承わりたい。
  31. 船田中

    国務大臣船田中君) これは先ほど申し上げましたように第二十二国会におきましても慎重御審議の結果、民間人を除いた案が修正可決されておるのでありますから(吉田法晴君「それは理由じゃない、経緯じゃないですか」と述ぶ)それを尊重することが適当であろう、こういう結論になった次第でございます。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは経緯理由じゃありませんが、理由はまあお上げにならぬ、実質的な……。  そこで民間人を入れるべきだということで主張せられた。主張せられておったこの基本方針安定化だとか、あるいは国防闘争道具にしちゃいかぬとかいったような主張はどうなったのでしょうかそれは……。
  33. 船田中

    国務大臣船田中君) 今御質問の要旨をちょっと了解しかねたのでございますが、あるいは間違った答弁を申し上げるかもわかりませんが、この民間人議員として入れませんでも、この国防会議をこの原案のような構成においてやりました場合において、第六条の活用というようなことによりまして、十分この民間人議員として入れた場合と同じように、十分その民間人意見を聞くということもこれはできることになっておるわけであります。それから御承知通りアメリカにおいてもイギリスにおいても民間議員というものは国防会議正式メンバーとしては入れておりません。それらを見ますると、やはり第二十二国会において御審議の結果修正可決されたあの原案というものは、やっぱり適当である、こういう考え方になりまして、そうして民間人を除いた、こういうわけでございます。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ私どもが今民間人を入れろとか言ったわけでもありませんから、理由は明らかでございませんけれども、それはその程度でけっこうです。  この間、同僚議員から国防省にする意図があるかというお話しをしておりましたが、そのときには調達庁を併合したら云々と、こういうお話しでしたが、どうも外国事例等から考えますと、外国の場合はアメリカでもイギリスでもフランスでも国防会議に出ておりますのは防衛庁長官というようなことじゃなくて、やはり国防大臣ということで出ておる。で、まあ船田さんも国防大臣で出た方がこの国防会議において発言力が大きくなる。こういう工合に考えられたろうなと、こう考えられるのですが、もう一度国防会議と、それから防衛庁長官と申しますか、あなたが出られる、あなた個人じゃありませんから、参加をする防衛庁の資格というものについての所見をお述べ願いたい。
  35. 船田中

    国務大臣船田中君) 国防会議議員として防衛庁長官が入りますが、しかしそれは防衛庁の持っておる防衛計画だけを国防会議審議するわけではございませんで、先ほど来申し上げておりますように、この国防会議というものはわが国国家安全保障ということにつきまして外交、経済、財政、社会生活、あらゆる方面から見まして、大所高所から考えてわが国安全保障体制をいかに整備していくかということが、これはまあ根本の問題になるわけでありますが、そういう大所高所からの防衛問題について慎重に審議するということにつきまして、広い視野からこの問題に取り組んでいく、こういうことでございまして、防衛庁長官はもちろん、直接の防衛問題について相当要求原案を出したり、あるいはそれについての発言をするということはございますが、国防会議というものと防衛庁というものはこれは区別され、また別個の存在を持っておるわけでありまして、防衛庁の作った原案がそのまま国防会議において認められるというわけでもなかろう、それは常に日本安全保障体制を大所高所からみてゆくという立場において国防会議における議員論議をしてゆくということになる、またそうたるべきであると考えております。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 調達庁防衛庁に吸収されるという点は、これはおきまりになったようで……調達庁長官の人選についても、これはあなたなり、あなたの意を受けて次長がやっておるが、その調達庁を引き受けることについて、労働者を引き受けるかどうかという点に難色を示しておられるようであります。これは全駐労その他米軍に間接に使われております労働者が防衛庁の所管に入って参るわけであります。そうしますと、防衛庁長官にこれは労働条件に関連をして折衝をこれからして参るということになると思う。防衛庁にも坐り込みをいたしますかどうか知りませんが、あるいはあなた方も団体交渉の相手になって参るかと思うのであります。これは労働者でございますから当然でございます。その辺に難色の原因があると思うのでありますが、これとそれから防衛庁防衛庁の職員あるいは隊員もこれは労働者である、あるいは公務員として本来同じような団結権並びに団体交渉権を持つべきでありますが、法律上禁ぜられておりますが、あるいは夏季手当あるいは給与ということになりますと、私は同様にやはり要求を持っておると思うのです。これらの点についてどういう工合に今考えておられるでございましょうか、調達庁を吸収せられます防衛庁長官に労働者の使用者として、責任者として所見を承わりたい。防衛庁長官に申し上げなければならぬことがたくさんあると思いますけれども、時間がございませんから簡単に質問をいたしますけれども、根本的な精神と態度とをお示しを願いたい。
  37. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま御質問がございましたが、調達庁防衛庁に吸収するというような問題については、まだ何ら決定しておるわけではございません。たださしあたり来月四日に労働大臣がゼネバの労働会議に出席されるために三週間ほど不在になります。その不在中は調達庁担当大臣を防衛庁長官が一時引き受けるということになっておるのでありまして、それだけは閣議において内定いたしております。しかし調達庁防衛庁に吸収するかどうかという問題は今後の問題でございまして、これは今関係省庁の間において事務的に研究をいたしておるわけでございます。ただいま吉田委員も御指摘になりましたように労務の管理ということはきわめて大切なことであると同時に、また非常にむずかしいことでございますから、そういう機構、経験に乏しい防衛庁が果してうまくゆくかどうかということについても、これは十分根本的に研究をしないというと、ただうかつに調達庁を引き受けて労務管理を防衛庁がやるといったところで、これはうまくゆくわけには参りません。そこで今各関係の省庁の事務当局の間においてそれらの問題をすべて慎重に研究をし、検討を加えつつある、こういう段階でございまして、また何ら結論を得ておるわけではございません。なお、国防省を設置するかどうかという問題も調達庁の問題と必ずしもからんでおるわけではございません。私どもの考え方からいえば、今日の防衛庁自衛隊の規模、組織内容等から申しますれば、優に一省をなすだけのものがありまするし、そしてこれは一省をなして責任を明確にすることができるということは、私は必要であろうかと思いますけれども、これは行政機構の改革という問題と関連いたしまして、これも慎重に検討を加えて参りたい。いずれも今後の問題でございまして、今それについて何ら政府として決定しておるわけではございません。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 国防会議がまあできたとしてですね、下部機関と申しますか、あるいは内部部局と申しますか、まあ外国の例から申しますと、下部機関ということになるでありましょう、あるいは下級委員会ということになると思いますが、そういうものについてどういう工合に考えておられますか。
  39. 船田中

    国務大臣船田中君) これはむしろ内閣官房の方から御説明を申し上げた方が適切かと思います。
  40. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お答え申し上げます。ただいまの御質問の下部機関という意味が必ずしもはっきりいたしませんが、国防会議が設けられました暁におきましては、同法の必要な事項については政令で定めるという条文が設けられてございますので、この政令に基きましてただいまのところでは幹事を設ける考えでおります。この幹事は関係者行政機関の職長のうちから内閣総理大臣が任命することにいたしまして、この幹事は国防会議審議事項につきまして議長及び議員を補佐する立場になろうかと考えております。
  41. 吉田法晴

    吉田法晴君 非常に簡単な構成に関する法律で政令にまかされた部分が非常に多いという点は、これは非民主的なやり方として私は問題があると思うのですが、それじゃなくて、今言われましたような幹事といったようなあれじゃなくて、アメリカ国家安全保障会議が一番参考になっておるかと思いますが、それにしてもたとえば計画立案委員会あるいは活動調整委員会、あるいはこれは中央情報局と防衛年鑑に書いてありますが、どうも諜報局というのがほんとうのようでありますが、イギリスフランス等々においても、それぞれ委員会あるいは国防生産委員会あるいは軍事委員会等々、フランスの場合には十幾つかあげてございますが、そういうものについてはどういうことが考えられておるかということをお尋ねしておきます。
  42. 船田中

    国務大臣船田中君) 国防会議の事務局につきましては、(吉田法晴君「事務局じゃないですよ」と述ぶ)これは大体局長が次官級の人を置くということで、専任が十五名、それから兼任がやはり十名か十五名ということを考えております。なお、ただいま御説明がありましたように幹事を任命いたしまして、そうして国防会議審議事項について議長及び議員を補佐するようにする、こういうようなことを考えております。従いまして各省の幹事がその自己の所属する省庁と十分連絡をとりまして、そうして国防会議の議長なり議員がその職責を果す上において、これを十分補佐し得るような機構にして参りたい、かように考えております。
  43. 吉田法晴

    吉田法晴君 さっき言いましたような委員会についてはどうですか。
  44. 船田中

    国務大臣船田中君) 官務局以外の委員会を、下部機構として今どういうものを持つかということについては、今のところ何ら具体的にはまだ計画を持っておりません。
  45. 吉田法晴

    吉田法晴君 先般来同僚議員から軍需生産といいますか、防衛生産といいますか、そういう問題について質問をいたしておりましたが、そういうものについても別に委員会というものを作ろう、こういう計画、構想は、何と申しますか、構想はとにかくとして端緒もないわけですか。
  46. 船田中

    国務大臣船田中君) それらの問題につきましては、先ほど来審議室の方からも御説明がありましたように、関係の各省庁から出ております幹事あるいは兼任の参事官、そういうものの活用によりまして、今御指摘のような役割を果していくことができようかと思います。それを活用するということ以外に、今特別にそういう委員会を設けるというようなことは考えておりません。
  47. 吉田法晴

    吉田法晴君 私がまあこれは委員会ではございませんが、そういうものは今後できるのだろうということを、私に話をしてくれた人がある、現にそういうものはあるじゃないか、こういうことを言う人もございます。それはまあ自民党の国防部会ですかに、自民党の委員、それから防衛庁から、それから通産省は、通産大臣に聞いたところが、それは私の方からは正規に出ておらぬと、こういうことですが、通産省の方も個人的には入っておる、それから経団連の防衛生産委員会ですか、そういう経済界からも参加して、防衛生産国防部会がある、そういうものが、これは現にあるのだが、それが公けになるかならぬかの違いだけだ、こういうお話でございます。現にこういう自民党の国防部会等を通じて防衛庁意見が述べられるといいますか、実際に相当の圧力が加わっておるかのように考えるのでありますが、大臣はどういう工合に考えておられますか。あるいはこれと、それから今の防衛庁は全然関係がない、あるいは今後の国防会議には全然関係がない、こういうことでしょうか。明確に一つ承わりたいと思います。
  48. 船田中

    国務大臣船田中君) 自由民主党の政務調査会の中に国防部会が設けられておりまして、その国防部会に対しまして防衛庁の方からも説明をするということはもちろんでございます。しかし今御指摘のように、その国防部会の中に、関係の幹事、あるいは通産省あるいは防衛庁の公務員が入って、そうして一緒に委員会を作っておるというようなことは、私は聞いておりません。もちろんそういう国防部会の意見がございますれば、それは十分その意見を聞きまして、そうして取るべきものは取り、また聞くべきものは聞くということをいたしておりますが、それによって何ら圧力を感ずるとか、あるいはそれに左右されるということはございません。これはもちろん防衛庁として防衛庁の政策を実行するにつきましても、あるいは業務計画を立てるにつきましても、防衛庁の考えによって、これをきめていくということでございまして、外部の圧迫によってどうこうということはございません。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ防衛庁の方でも、自民党の国防部会での話、あるいは国防部会を通じての経済界の話といえども、取るべきものは取り、あるいは聞くべきものは聞く、こういうお話でございますが、圧力といいますものと取るべきものは取り聞くべきものは聞くというものと同じことじゃないですか。たとえば衆議院で問題になりましたいくつの問題にいたしましても、大野伴睦氏の名刺が防衛庁の久保課長の所にあったと言っておる。あのくつを買うということは、聞くべきものは聞く、取るべきものは取るということでとられたのでございましょうが、聞くべきものは聞く、取るべきものは取るという今の形が私は問題だと思う、あのくつの問題についてあなたあれでいいと思っておられますか。ああいう形で聞くべきものは聞く、取るべきものは取るということがいいとお考えになっておりますか。
  50. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛庁が購入したくつの問題について今お話が出ましたが、関係の公務員が外部の圧力に属して不正不当が行われたというような問題が万一ありといたしますれば、これは厳に戒めなければならぬし、またその責任者は十分措置されなければならぬと存じます。しかし今御指摘になった井上工業からくつを購入しておるということは、決算委員会においても今御審議になっておることでございますから、十分御審議を願った上に、そこに何らか不正不当というようなことがございまするならば、それは十分それに対して私は責任の所在を明確にいたして十分な措置をとるつもりでおります。しかし今までに御調査を願い、また私どもも調査をいたしました範囲内におきましては不正不当というのは見つからないのでありまして、(「そういうことはないよ」と呼ぶ者あり)従って井上工業を指名競争から抜いてしまうというところまではいっておらないのであります。しかしこれは十分決算委員会において御審議を願うことが適当だろうと考えておりまして、そのために御審議を願い御調査することにつきましては、防衛庁としては最善の努力をして御協力を申し上げておる次第でございます。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 くつの部分品が皮でなくて紙であったというのもこれは不正じゃありませんか。それからこの間防衛庁で保管しておる弾薬がさびたり腐ったりして使えなくなるのも、それは上手の手から水が漏ったのだ、こういうわけです。大体からいえば、防衛庁長官の責任観念といいますか、正不正の観念がかくのごとくである。これはまあ問題になりませんでしたけれども、防衛庁長官になられて最初に自分の学校に防衛庁のヘリコプターでおりられた。これも当然のことだと思っておられるのでしょう。問題はあなたのとにかく責任観念といいますか、考え方にあると思うのであります。取るべきものを取る、それが圧力だというと、いや圧力ではない。くつの中に紙があってもそれが不正でない。あなたのとにかく責任観念というものはそういうものです。くつの問題、あるいは弾薬の問題、それからあなた自身がヘリコプターに乗って自分の母校に、自分の学校ですか、警察学校ですか、おいでになったこと等について、もう少しあなたの責任観念をはっきり伺いたい。
  52. 船田中

    国務大臣船田中君) くつの問題については、現に決算委員会で十分御審議になっておられるわけでありまして、今吉田委員が仰せのごとく、皮のかわりに紙が使ってあったというような事実はございません。この点につきましては、十分なお御審議を願いたいと思います。ですから先ほど来申し上げておりますように、その間に関係の公務員が、調達業務に従事しております公務員に不正や不当があったというその事実が明白になりました場合においては、十分これに対して厳重な措置をとりますし、また私が決算委員会あるいは内閣委員会において答弁申し上げておることが事実と全く間違っておった、違っておった、こういう事実が明白になりました場合におきましては、私は決して責任を回避するものではございません。
  53. 吉田法晴

    吉田法晴君 あなたの答弁と事実が間違っておったら責任をとるということじゃなくて、これはくつの規格というものはわかっておりますが、下が皮であるかゴムであるかはともかくとして、ところがそういう、とにかく納入せらるべきくつでないものが入っておった、それは不正じゃないですか。不正不当という観念が、規格に合わないものが入っておってもそれは不正不当じゃない、あるいは自分の答弁が事実と食い違っていなければそれは責任をとるべきじゃない、そういうところに問題がある。ですからこの間の弾薬の問題も、あるいはヘリコプターに乗っていった問題もあげて、あなたの責任観念あるいは不正不当に対するお考えというものを具体的に例をあげてお尋ねをしておる。もう少し具体的な事例に即して御答弁願いたい。
  54. 船田中

    国務大臣船田中君) くつの問題はもう現に決算委員会で十分取り上げて審議をしておるのですから、そしてしかも今までに判明した事実におきましては、今御指摘のようなものはないのであります。ですからその前提が違っておるのでありまして、皮のかわりに紙を使ったという事実がないということを検査課長も言っておるのでありますから、従ってそれに対して検査課長を処置するとかあるいはそれについて長官たる私が責任をとらなければならぬということには私はならぬと思うのです。むしろ事の真相、事実をはっきりさして、そして二十万に及ぶ自衛隊員にそういう不正不当はなかったということを明白にすることこそ、私の責任だと私は考えております。
  55. 吉田法晴

    吉田法晴君 責任観念がそんなことだから、いつまでたったっても、これは防衛庁から汚職とそれから不正、国費の乱費はなくなりません。もう一つ例をあげますと、P2Vを国産化するということですが、P2Vは幾らかかるのですか。
  56. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) P2Vを国産化するということは、まだ方針としてはきまっておりません。一機幾らになるかということは作りようの問題がありまして、たくさん作りますと、一機は比較的安くなる。アメリカで今作っておりますものをそのまま円ドル換算をしますると、約四億円弱ぐらいになりまするが、国産の使用によりましては、これはなお相当に高いものになる見込みであります。まだ国産にするという方針は決定をされておりません。
  57. 吉田法晴

    吉田法晴君 作るか作らぬかわからぬ、幾らかかるかわからぬ、これが実情だという今のお話です。ところが実際にはP2Vが予定通りに供与されないから作りたい、こういうお話はここで——この前委員会にございました、増原さんはごまかされますけれども。ところがそれが防衛庁で自主的にきめられるというのでなくて、事実もうP2VならP2Vは、その作る方向に動いておるのは、別のところに勢力がございますが……。しかもP2Vが作られる先がもう大体きまっているじゃないですか。しかも幾らするかということは、これは防衛庁からは新明和に二億という話ですが、あるところによると三、四億という話もあります。防衛庁に前に尋ねたときには、あるいは六億という話もある。結局新明和の言いなりになっている。防衛部会なら防衛部会等で、供与をしなければ日本で作りたい。その作ることに推進しているものには国防部会を通じて新明和なり、あるいは経団連の方で、生産委員会のこれは圧力ではないと言われるけれども、意見が出ている。そうして取るべきものは取ろう。価格もおそらく向うの言いなりになってこれはきまるのではないかと思うのですが、もしそういうことが行われるとするならば、防衛庁長官、これは国民の税金を、私ども反対するけれども、防衛関係費を使おうとして、そこにやはり不正と不当とが行われませんか。やり方自身にも問題があると考えるのであります。やられる結果は乱費と、それから不正が起ってくることは、これは当りまえです。しかもあなたがああいうことで不正不当を当然のことのように言われるから、次から次に起って参るのです。どういう工合に説明されますか。
  58. 船田中

    国務大臣船田中君) P2Vの生産については、先ほど増原次長から答弁申し上げたように、これを国産化するかしないかということは、全然まだきまっておりません。御承知通り昭和三十一年度の予算においてそういう研究をするために五百数十万の調査費を要求いたしまして、そうしてそれが認められておりますので、三十一年中に十分そういう点を調査いたしまして、適当な結論を得たい。なるべく早く適当な結論を得たい、かように考えております。
  59. 吉田法晴

    吉田法晴君 P2Vの問題についてはその程度にいたしておきますが、防衛庁長官防衛費の不当使用の問題については、あるいは汚職の問題については、防衛庁長官の責任ある答弁が願えません。ほかの問題もございますけれども、内閣の責任者鳩山総理の出席を求めて明確に答弁をお願いいたしたいと思います。
  60. 江田三郎

    ○江田三郎君 今の吉田さんの要求している汚職等の問題について防衛庁長官だけではほんとうにわれわれの納得する答弁がないから、総理を午後の委員会ヘ出てもらう、こういうことについて一つ休憩をされて、理事会を開いてもらいたい。
  61. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩    ————・————    午後一時三十八分開会
  62. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日石井桂君が辞任されまして、その補欠小幡治和君が選任されました。
  63. 木島虎藏

    ○木島虎藏君 議事進行。私は本法案に関する質疑を打ち切ることの動議を提出いたします。(「何だ、話がまだつかないぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
  64. 青木一男

    委員長青木一男君) 木島君の質疑打ち切りの動議に賛成の諸君の挙手を求めます。   〔賛成者挙手〕
  65. 青木一男

    委員長青木一男君) 挙手者多数と認めます。  よって質疑は打ち切ることに決しまして、質疑は終局したものと認めます。(「そんなばかな話があるか」「不信任が出ているぞ」と呼ぶ者あり)  私に対する不信任の動議が出ましたから、この席を宮田理事にかわっていただきます。(「不信任が出たものが、……まだ採決済んでいませんよ」と呼ぶ者あり)   〔委員長退席、理下宮田重文君着席〕   〔「質疑が残っているじゃないか」「休憩しなさい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然〕
  66. 宮田重文

    ○理事(宮田重文君) 内閣委員長青木一男君の不信任に関する動議を問題に供します。(「進行々々」「休憩さしたらどうだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)動議が出ているのです……。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)休憩については諮っておりませんから……。(「席に着け」「話し合いをしなさい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)趣旨説明をやりませんか。(「休憩だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)反対の方の御意見ありますか。
  67. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は自民党を代表いたしまして委員長の不信任案に反対いたします。(「何を言っている」「まだ趣旨説明を終っていないじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  68. 宮田重文

    ○理事(宮田重文君) 討論は尽きたものと認めます。(「そんなばかな話はない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)不信任案を提出された青木委員長に代って不信任案動議を採決すればよろしいのです。(「趣旨弁明もあるだろう」「進行々々」「なぜ話し合いをしないのか」と呼ぶ者あり、議場騒然)青木委員長を……。(「休憩々々」「手を出すな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)話をするなら青木委員長の……(発言する者多く、議場騒然)不信任案を出しておいて休憩なんて、ばかな話があるかい。(「休憩して話をしよう」「これじゃだめだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)不信任案をすなおに受けて提案理由の趣旨説明を求めたのに、君たちが応じないのだ。(「こんなときに趣旨説明をやっても聞きませんよ」「議場整理」「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)衛視にお願いします。衛視にお願いしますが、委員会の中におる……(発言する者多く、議場騒然)話し合いに支障があるから退出を求めます。(「衛視出せ、委員長が命じているじゃないか」「だれだ、よけいなことを言うのは」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)当該委員、報道班の方以外の方は退出を願います。衛視の方は整理して下さい。(「何もやってないじゃないか」「衛視を出せ」「休憩中だ」と呼ぶ者あり)休憩じゃないよ。休憩じゃない。(「さっきからあなた何もやっていないのだよ、宮田さん」「君たち出ろよ」と呼ぶ者あり)いやよろしいよ。僕ら防禦してもらっておる。(「だれが手を加えておる」と呼ぶ者あり)手を加えているじゃないか。よろしいよ……あなたの命令を受けない。(「まず委員長、衛視を出しなさいよ」「宮田さん、話し合いをしているのだから」と呼ぶ者あり)だからね、まず当該委員以外の人を出しなさい。(「話し合いなら話し合いで……」と呼ぶ者あり)話し合いをしている。(「法規を正しく運営しなければね、委員長に進言に来たのだよ」と呼ぶ者あり)君は進言しなくてもよろしい。衛視の人出て下さい。衛視の人、出て下さい。(「おいおいそばでやるな。離れてやれよ」「二十二国会以来のうらみをはらしたつもりでいるんだろう」「そうだな、因縁だよ、こんな暑いときに」と呼ぶ者あり)
  69. 宮田重文

    ○理事(宮田重文君) 速記を停止して。    午後二時二十一分速記中止    ————・————    午後四時五十八分速記開始
  70. 宮田重文

    ○理事(宮田重文君) 速記をつけて。  内閣委員長青木一男君不信任の動議が提出されております。右動議の趣旨説明を求めます。
  71. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されております内閣委員長青木一男君の不信任案動議の趣旨説明をいたします。  二十四国会以来、本内閣委員会は前小柳委員長のもとに法案審議の促進をはかって参ったわけです。参議院の良識と権威を発輝いたしまして、この委員会が円滑に運営されてきたことは議事録等によっても明らかであるわけであります。ことに問題の多いと見られております防衛二法案についても、四月十三日には円満に採決を終了して参ったわけであります。委員会の連帯がうまく行くかどうかということは、もちろん法案の内容にもよることでありまするが、より大きくは委員長にその人を得るかどうか、これが問題のかぎだと思います。院全体の運営について議長、副議長の人格、識見が立派であるかどうかということが、院全体の運営の根本につながる問題でありまして、この委員会がうまく運営されるかどうかということは、一に委員長の人のいかんというものが大きく左右すると言わなければなりません。内閣委員会は小柳委員長のもとにおきまして、先ほど申し上げましたように、非常に円満に終始して参ったのでありまして、ことに四月二十日に小柳前委員長は次のようなあいさつをいたしておるわけであります。「私は先般来一個人の理由によりまして辞任を申し入れておったのでありますが、幸いに本日皆さんの御承認を得ましてまことにありがとうございました。私が委員長を引き受けて以来、常に皆さん方の格別の御支援によりまして、常に内容のきわめて充実いたしました会議を続けることができまして、私としましては、自分の良心に従い、所信によって会議を進めていくことができまして、心から喜んでおった次第であります。かくのごとくいたしまして、本委員会が参議院のあるべき姿によりまして、大へん権威のある委員会として、その誇りを維持することができましたことは、一に皆さん方の御支援のたまものと厚く御礼を申し上げる次第でございます。しかし、私はきわめてこういうことは不なれでありまして、いろいろ手違いも多かったようでありまするが、大したおしかりもなく、かばっていただきましたことを顧みて厚くお礼を申し上げる次第であります。幸い今度練達堪能の名委員長を迎えまして」云々と、あいさつがあるわけでありまするが、この名委員長がとんでもない委員長になってしまったわけであります。(「ノーノーと」呼ぶ者あり)  具体的な事例について簡単に顧みてみますると、青木委員長は四月二十日に就任し、四月二十三日にはすでに委員長職権による委員会開催を強行されているわけであります。重要法案、憲法調査会法案は、最初委員会、しかも鳩山総理出席の最初委員会でありましたが、社会党の委員が全部欠席しているところで強行されたわけであります。私たちは翌四月二十四日、内閣委員会開催の初めにおきまして、吉田法晴君や私から、委員長の措置を激しく糾弾したわけであります。そうして委員長は、今後の委員会運営については、理事会の運営を尊重して参りたい、こういうような説明も答弁もなされたわけでありまするが、しかし、それはまた日がたつとともに無視されて参ったわけであります。憲法調査会法案の審議に当りまして、当然われわれは公聴会を開くべしという主張であったわけでありまするが、五月四日の内閣委員会等においては、これまた公聴会を開くという理の当然な主張すらも抹殺されて、参考人を呼ぶというような決議が多数によって強行されて参ったわけであります。さらに五月十日の内閣委員会の運営はどうであったでありましょうか。質問はしごく平静に、しかも建設的な意見が次々に進められて参ったわけであります。緑風会の梶原茂嘉君が、傾聴に値する質問を展開されて参ったのでありまするが、ようやくその質問が一段落しようといたしましたときに、質疑打ち切りでは専売特許的存在である井上清一君から(「その通り」と呼ぶ者あり)突如、質疑打ち切りの動議が提出されて、約束の慎重な審議というものも全くじゅうりんされて参ったわけであります。後日明らかにされたところによりますと、この質疑打ち切りの動議は、緑風会の理事はもちろん、与党の理事諸君も全然相談にあずからなかった、まことに独善的な運営であったと言わなければなりません。こういうような重要な法案を審議するに当りまして、議事日程その他について、最終段階においては、当然鳩山総理に対する総括質問等が行われるべきであるにかかわらず、しかも、その当時においては、会期が大幅に延長されるという情勢をよく承知しておりながら、このような暴挙をあえて青木委員長は試みて参ったわけであります。このために、五月十一日から内閣委員会は紛糾を始めまして、五月十四日まで、事実上委員会審議は停止し、ひいては参議院全体の運営の渋滞を来たしたことは、各位御承知通りであり、委員長よく御承知のはずであります。こういうような態度というものは、東条内閣時代の軍閥的な、権力主義的な行き方を、まだまだわが青木委員長は抜け切れないという証左でありまして、われわれはまことに院の今後の運営のために悲しむ次第であります。  今、国防会議構成法案が審議されて、この法律案に対し国民は非常な注目を集めておりますことは、周知の事実であります。私たちはこの法律案というものが、まことに今日の時代から申しますると、逆行する法律でありまするし、憲法に違反し、そうして従来のなしくずしの軍備体制というものをさらに堂々と押し進めようとする反動的な法律の頂点に立つものでありますゆえに、聞くべきは聞き、ただすべきはただし、国民の不安に思うことは、その真相を明らかにして、私たちはこの法案の慎重審議を要求して参ったわけであります。質問時間もなお二時間有余残されていたはずであります。ところが、また私たちも内々不安には思っておりましたが、しかし約束でありまするから、党と党との約束であるし、理事会の約束は尊重する、そういう態度で臨んでおられましたから、まさか、このようなことはあるまいと期待しておりましたが、本日重要な質疑を残して打ち切りに至ったわけであります。  今政府の考えておる再軍備の体制、これはちょうど憲法改正の意図とうらはらでありまするが、要するにアメリカに押しつけられた傭兵的な軍備をさらに進めようとするものであります。今日政府与党の諸君は、現行憲法をマッカーサー憲法と呼び、あるいは翻訳憲法と呼び、そうして独立国家には独立国家にふさわしい自主憲法を持たねばならぬ、こう主張しておるのでありまするが、一体、自主憲法制定の意図はどこから来ておるのか、申すまでもなくアメリカの要請によってきておることは明らかであります。今日の自衛隊のできるまでの経過を見ましても、一九五〇年にマッカーサーの指令に基いて警察予備隊ができた、さらに昭和二十七年四月サンフランシスコ平和条約が効力を発生しますると、その年の十月には警察予備隊は保安隊に発展的解消を遂げているわけであります。かくて軍隊的な色彩は一そう濃厚を加えて参ったわけであります。昭和二十八年すなわち一九五三年十一月には例のニクソン副大統領が日本にやってきて、日本軍隊否定の平和憲法を持たしめたということは占領政策の最大の失敗である。これで保守党の諸君は勇気百倍して憲法改正と再軍備を押し進める段階に拍車をかけて参ったわけであります。かくて昭和二十九年法律百六十五号によりまして保安隊は自衛隊に発展し、質的にも量的にも一大躍進を遂げて参りました。かくて間接侵略に対処する任務を持つに過ぎなかった保安隊が第一義的に直接侵略に対処するというようなことになって参ったわけであります。当時の吉田内閣は、これを軍隊と呼ぶのは自由であるが、戦力のない軍隊である、こういうような奇妙な言葉で逃げていたわけであります。しかるに、鳩山内閣になりましてからどうでありましょうか。ことに鳩山現内閣の総理大臣は、かつては警察予備隊すら憲法違反である、こう申して吉田前総理を激しく糾弾していた一人でありまするが、一たび政権の座につきますると、昨日までの言葉を全く忘れてしまって、政治家としての節操等は全く放棄してしまって、そうして現行憲法の下においても自衛軍隊を持てる、現行憲法の下においても自衛のためなら戦争は可能である、交戦権否定されておるが、国際法上の交戦権否定されておるに過ぎないのであって、事実上の交戦権は許されておる、まことに得手勝手な解釈を下し、今日の憲法をじゅうりんし、法律をじゅうりんする態度をとって参ったことは明らかであります。  こういうようなわが国政治において最も問題があり、国の将来を最も危うからしめる内容を持つ国防会議構成法案でありまするがゆえに、私たちは当然慎重審議がなされるべきものであると信じて参ったわけであります。しかるにこの法律案審議のさなかにおきまして、先ほど私が指摘いたしましたように青木委員長の古い思想と、古い戦前性格と申しますか、人間的なあくの強さというものがこの委員会を再び混乱の中に陥れて参ったわけであります。  さらに私たちはこの法案についてたださなければならぬ大きな問題は、国防会議構成の問題であったわけであります。本法律案が第二十二国会に提案された当初はいわゆる民間人を加えるということになっていたわけであります。文民優先とか、軍事に対する政治優先原則とかは言葉の上では論議されて参りましたが、さらにその前に、言葉の前に考えなければならぬことは、軍の政党化やあるいは軍が党利党略の具に供される危険性をどう排除するか、こういう問題であろうと思うわけであります。第二十二国会においては当時の民主党内閣はこの法律案に関し民自共同提案を考えて参りましたが、これが不可能と見るや、政府提案といたしまして、しかも政府原案の中には民間人の五名以内を加えるというようなことになっていたわけであります。ところが自由党との妥協をはかるために、遂にこれは削除されたわけであります。本国会に提案されるに当りましても、この点は最後の瞬間まで政府部内、与党内において論議を重ねて参っているわけであります。二月十日の五者会談——岸幹事長、石井総務会長、芦田均、木村篤太郎、根本官房長官の間では、二十二国会修正案通り民間人は加えない、こういう方針であったのでありますが、その後自民党の政調会の国防部会においては参議を諮問機関として入れる、こういう方針に変ったわけであります。ところがまた参議という名称がおかしいというので、二月二十一日の自民党総務会は顧問を置くということにきめ、この趣旨に基き法案を作成することを政府に申し入れいたしておるわけであります。しかるに政府部内は顧問設置に反対を表明し、二月二十五日に鳩山総理の裁断を仰ぐということになり、鳩山総理は顧問制度を認めない、こういう結論を下しているのであります。ところが鳩山総理のこの決断こそわれわれは不可解至極な決断と言わなければならぬわけであります。二十二国会の折、衆議院の修正案が送付されて、七月の二十九日に当内閣委員会において審議をされました節に、緑風会の豊田委員から、なぜ民間人を削除したか、こう質問したところが鳩山総理は自分としては民間人を入れておくべきであると今日でも考えておるが、自由党の妥協上やむなく一日でも早く本法律案を通すためにやむなく削除するに譲歩したわけである。ところがその総理が今回はみずから民間人を加えることを削除することに断を下しておるわけであります。私たちの心配することは、政党内閣による政治的中立性を侵されはしないか、自衛隊が政党化される、あるいは政治的な干渉によって、ほんとうに国の防衛のためであるのか、党の私兵に堕しはしないか。これを私たちはおそれておる一人なのであります。ことに現内閣のように、自民党という名の保守政党のように、目的のためには手段を選ばない。政権維持のためには世論がどうであろうと、国民の批判がどのように激しかろうと、数が正義であり、数が真実であると、こういう前世紀的な政党内閣のもとにおいて、私たちは国防会議というものの性格構成、これをしっかりとした土台に据えなければまことに危険である、こういう感じを強く持って参っているわけであります。なるほど現行の憲法あるいは自衛隊法等の法律制度のもとにおきまして、政党内閣の行き過ぎた行動は軍事面においても国会の規制を受ける、こういうことにはなっておりますが、しかし国会によってさえもこの規制をはかることは困難であり、ことに機動力あるいは時間、こういう面を必要とする軍事行動等は、国会の規制を受けると申しましても、限界があることを知らなければなりません。自衛隊法七十六条、すなわち防衛出動等の場合におきましては国会の承認を求める、こういうことになっておるわけでありますが、緊急の場合はその例外とされておるのでありまするが、この例外こそ普通の場合になり得るということを私たちは不安に思いますがゆえに、国防会議構成等についてさらに鳩山総理に——たよりない鳩山総理でありますが、いやしくも総理として責任の地位にある以上は、われわれはさらに総理に対してただすべきはただしたい、こういう正当な私たちの今朝ほど来の主張というものが、与党の諸君には理解できなかったのか、委員長はこの主張に対しどういう解釈をされたかしらぬが、突如として質疑打ち切りを提案されて参ったわけであります。まことに遺憾きわまる態度と申さなければなりません。  われわれは今日の情勢を考えましたときに、一体今日の日本政府与党の諸君の考えるがごとく再軍備をしなければならぬ情勢にあるのかどうか、このことを深く反省願いたいと思うわけであります。昨一年間の国際政局の動き等は、保守党各位もよく御承知通り、あるいはバンドン会議、あるいはジュネーヴ会議、こういう会議等を経て国際緊張が緩和の方向に進んで参ったということは否定できないと考えるわけであります。  昨年の十二月、わが国は国民の心からの念願であった国際連合へ加盟するということもとうとうできなかったわけでありまするが、なぜこれができなかったか。すなわち今日の国際連合を構成する中小国家群の支持をわが国は受けることができなかった。ここに国際連合加盟の失敗があったということをわれわれは反省する必要があろうと思うわけであります。ことに今回日ソ漁業条約あるいは海難救助協定等が締結されたのでありまするが、しかもその内容等については国民はいろいろな考えを持っておるのでありましょう。昨年の六月一日から始まったロンドンの平和条約交渉が結局与党内の内紛のために、意見の衝突のために、二十数回会議が持たれたにかかわらず、ついに決裂するに至った。もし平和条約が、あるいはロンドン交渉が軌道に乗って、誠意ある交渉が進んでいたと仮定しますならば、今回のようなああいう周章ろうばいして、あわてて河野全権を派遣しなければならない、しかも内容において幾多の問題を包蔵する漁業協定、漁業条約、あるいは海難救助協定の締結等は未然に阻止できたものとわれわれは考えるわけであります。  私は参考までに読み上げたいのでありますが、中央公論の五月号に愛知大学の教授の入江啓四郎氏が次のようなことを述べておられるわけであります。結論だけを簡単に申し上げますが、(「了解々々」と呼ぶ者あり)よくその点は政府与党の諸君、耳を傾けて聞いてもらいたいと思うわけであります。(「簡単々々」「ゆっくりやれ」と呼ぶ者あり)  第一に、「戦争放棄条項は廃棄すべきか」、こういう題で掲げておる論文でありまするが、その結論を申しますとこういう内容になっておるのであります。  「第一に独立立権国は、個別的及び集団的自衛権の裏づけとして、当然に軍備を拡充しなければならぬというようなことは、あまりに素朴である。『文事アルモノハ、必ズ武備アリ』(孔子)といった教は、二国間戦争時代のものである。今日では、もはや戦争は、二国間に限定されない。日本が侵略されるような戦争は、必ず世界戦争になる。しかも原水爆戦争である。「原子爆弾というものの発見以来、武力の問題についても、従来の考え方というものに革命が起って来ている」とは、制憲国会当時にも十分認識されていたことである。原爆戦争に備えるなどということは、日本の実力で間に合うことではない。児戯に類する軍備よりか、日本は世界集団安全保障体制のなかで、別途に寄与する工夫をすればよい。それは軍備にはかぎらない。第二に、戦争不可避論を再検討する必要がある。第二十回ソ連邦共産党大会で、フルシチョフが、現在の事情では、平和的共存か、あるいは史上最大の破壊的な戦争か、二つの道しかなく、第三の道はないといい、またミコヤンが、戦争は勃発し得るが、しかも戦争の開始を許さず、かつ強固な平和を確保する条件と可能性が備っているといって、ともに戦争の宿命性を否認したのは、単に原水爆戦争は避けられるというだけでなくて、絶対に避けねばならぬという見地からである。しかしこれは世界共通の課題であって、モスクワだけの主張ではない。あまり好ましい論理ではないが、原水爆の発達、原水爆独占の終止は、世界戦争の勃発をいちじるしく困難にし、ほとんど不可能にした」以下省略いたしまして、「第三に日本は、日本としての歴史的使命を再認識することである。第二次世界戦争では、よかれ悪しかれ、日本は世界史の上で、破天荒の役割を演じた。破壊の上で、あれほどの威力を発揮した日本国民であれば、次は百八十度の転換をして、同じ偉力を世界平和の確立に寄与することである」、私はこういうような考え方をもう少し保守派の諸君は勉強なされたらどうかと、こう考えるわけでありまして、まさにこのような傾向にそむいておるのが今回の国防会議構成法案であるということをわれわれは申し上げたいのであります。  さらに私はもう一つ与党の諸君に、政府の諸君に耳を傾けてもらいたいと思うのでありますが、これは東大の矢内原総長が、去る五月十九日に、東大の五月祭で講演をされておるわけであります。「世にもフシギな再軍備」こういう題であります。これは毎日新聞の記事を私は借用するわけでありますが、言わんとするところがよく尽きておるので、これもまた参考までに申し上げたいと思います。(「題だけでいいよ」と呼ぶ者あり)「最近の国際情勢は二つの大きな変化をとげつつある。第一はソ連が政策を変更した結果、両陣営が話合いで軍縮しようという傾向、第二はアジア、アラブ、北アの植民地で民族独立運動が盛んに起りつつあることだ。国内に目を転ずると三つの顕著な動きがある。再軍備と憲法改正、言論、教育の国家統制、追放者の復活である。世界の危機が去り、軍縮が行われる時、日本が軍備するのは実に不思議だ。また民族独立運動が盛んな時に、日本人が帝国主義に郷愁を感じるのもまさに「時代錯誤」だ。ヒットラーの暴挙により国を分割されたドイツの悲劇をくり返そうという方向にあこがれるのはまことに危険千万な思想である。このように日本の現状は国際情勢と実にチグハグである。日本は世界の大勢をよく認識してその流れに沿って進まねばならぬ。そうなれば再軍備は当分必要なく、平和への道を歩まねばならない。国の平和への大方針を決めれば手段はおのずと開ける。限られた国費の使い方を再軍備に向けるか、教育、学問に注ぎ込むか、社会保障に向けるか、経済復興に向けるかは政治の問題であると同時に学問の問題で、学者の意見を参考にして政治を行うべきだ。平和によって国を建てるには日本の民主化がぜひ必要だ。民主化がゆき過ぎという主張は力による復興という思想に通じている。ヒットラーの政策は——戦争を知らない若者の教育2軍隊の再建3賠償の破棄だった。日本の現在の再軍備、教育統制、戦前への郷愁をならべてみると、関連性はあるし必然的に結びついている。独立したから自主的に諸制度を再検討せよとの主張は一応もっともだ。しかしその内容と方法をよく考えよ。日本人はいまこそ自分のハラの底で平和国家の建設を考えるべきだ。平和と民主の子どもを育てるのが日本の祖先に対して、また世界に対して果すべき義務である」。まことに私は今日の日本の世相を洞察され、今日の政治の方向を憂えられる精神がよくみなぎっておると思うわけであります。このようなことを考えて参りましたとき、私はいやしくも今日の日本の良識あるいは知性あるいは国の良心を代表されたこういう先覚者の言葉に、教えに耳を傾ける、世論に率直に耳を傾けるところに議会政治の姿があろうとこう考えているわけであります。  しかるに不幸にしてこの委員会等におけるこの国会となりまして取り扱われた憲法調査会法案、国防会議構成法案等は、数の前に、聞かんとすること、国民の不安とすることが、すべて聞かれざるうちに葬り去られてしまったわけであります。まさにこれは青木一男、わが委員長の独断横暴な性格のもたらすものと言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)  「参議院要覧」を拝見をいたしますと、「青木一男全国選出自由党」という欄があるわけであります。実はどういう経歴の持ち主かと思って、これは拝見をして見たわけでありますが、こういうことが書いてあります。「明治二十二年十一月二十八日長野県更級郡牧郷村に生れ、長野中学校、第一高等学校を経て大正五年東京帝国大学法科大学卒業、同年大蔵省に入り翌年ロンドン財務官事務所に赴任す、八年全権随員としてパリ講和会議に参加す、講和会議終了後賠償に関するブーロニュ会議及びスパー会議並びにブラッセル国際経済会議に出席す、九年平和条約実施委員を命ぜられ、ドイツ、オーストリー等へ出張す、十年帰朝理財局勤務、爾来預金部運用課長、大蔵大臣秘書官、理財局国庫課長」等々こういう経歴を経て、「十七年九月帰朝して国務大臣、十一月大東亜大臣に就任す、十九年七月内閣総辞職により退官、二十年十二月戦犯容疑者として巣鴨拘置所に収容さる、二十三年十二月釈放、現在弁護士(第一東京弁護士会所属)である。」私は青木内閣委員長の前歴を見まして、まことに多彩な経歴の持ち主であることを知り、敬意を表しますが、また私が心配いたしますることは、その多彩な経歴、前歴を持っておられるがゆえにこそ、果して今日の平和憲法のもとにおける民主的な議会の運営に当られるべき内閣委員長として、その任にふさわしいかどうか、非常に不安を持つわけでありまして、私は四月二十日に青木委員長が当内閣委員会委員長に就任され、今日までの議事運営を観察して参りましたときに、これは全くその任にあらず、不適性の委員長である、もはや青木委員長のお年ごろからいうと、もうあれだけ戦争前に頭にしみ込んだものの考え方やあるいは政治に対する考え方をもっていたしましては、今日の民主的な政治の運用には不適当であり、ふさわしくないということを申し上げざるを得ないわけであります。  以上私は今日までの当委員会の運営の不手ぎわ、委員会運営における独善的な態度、重要法案に対しまして、野党の立場というものを頭から無視してかかりましたところの委員長の今日までの業績、これらの数々を事例としてあげまして、委員長不信任——委員長は今後委員長の席にとどまることはまことに不適当な人であるということを強く申し上げまして、私の提案理由説明を終ることにいたします。
  72. 野本品吉

    ○野本品吉君 ただいま青木委員長不信任の動議が提出されまして、その提案理由の趣旨につきまして社会党を代表いたしまして田畑委員から文字通りるる数千言、あるいは幾万言を費しまして、(「そんなになっておらぬ」と呼ぶ者あり)その趣旨の説明がございました。私は田畑委員のおっしゃる通りきわめて謙虚に、きわめて冷静にあなたのお言葉に耳を傾けて参ったのでありますけれども、遺憾ながらそのおっしゃる事柄は、委員長を信任せずという理由といたしましては、私どもはこれをうなずき、これを承服することができません。よって私は事由民主党を代表いたしまして、ただいまの不信任案に対して反対の意思を明らかにします。
  73. 吉田法晴

    吉田法晴君 私はただいま議題となりました田畑金光君ほか数名提案になる内閣委員長青木一男君不信任の動議に対して賛成の討論をいたすものであります。  きょう青木一男君の不信任の動議が提出せられました直接の理由は、国防会議構成に関する法律案審議中、理事会の話し合いによって審議をし、なお、社会党において三時間有余、労農党の堀君の質問を加えますというと四時間をこえる質疑時間があるにもかかわらず、突如として再開劈頭質疑打ち切りの動議を自民党から提出し、これを取り上げようとしたところにございます。なお、その際自民党においては討論をもこれを封殺しようとしたということでありまして、国会は参議院も民主主義の原則のもとにおいて構成をせられております。審議権は、あるいは質疑を行いますことは、これは委員会あるいは国会の基本的なこれは使命でございます。あるいは権能でございます。それを何らの理由なくしてこれを制限をする、討論をも行わしめないということを多数をもってあえてこれを行おうといたしますことは、全く民主主義をじゅうりんし、民主国会を扼殺しようとする企てでなくて何でございましょうか。しかも問題は国防会議構成に関する法律に関連をいたしまして、防衛庁自衛隊で行われておりまする汚職あるいは国費の乱費についてこれから行われようとする、行われる危険性のありまする汚職、国費の乱費について大臣の責任を追及しておる最中に、そしてその担当の責任者であります防衛庁長官の責任を追及し、総理の出席を求め、内閣の責任を明らかにしようとする企てのやさきにこの質疑打り切りが行われようとしたのであります。私が申し上げるまでもございませんけれども、国費は国民の血税によってなっております。一千億をこす防衛庁予算の中で、昨年のごとき、二十九年のごときは四百億も不当支出があり、あるいはむだづかいが行われておったということが指摘せられておりますが、これらの点について防衛庁長官はてんとして恥じず、上手の手から水が漏ったと広言をいたしました。(笑声)あるいは弾薬を腐敗せしめ、あるいはさびさせて以用不能になった事案に対しても、何ら責任を感じようといたしておりません。問題にいたしましたこれからの汚職、国費乱費のおそれあるものはP2V——対潜哨戒機がアメリカの供与が予定通り期待できないからわが国で国産をしたいという方針が有力に防衛庁の中で育ちつつある。しかもそれが自民党の保科善四郎氏を部長といたします防衛部会において強力に押し進められる企てをせられしましたけれども、前の装備局長久保君、現在の管理課長も出席をして、そうして先ほど新聞に発表せられましたような防衛産業についての方針論議をし、あるいはP2Vの生産をも推進しようとしておる。そのP2Vは三、四億の価格なのか、あるいは六億を要するのか明らかではない。そうしてこのP2Vをロッキードと契約をした技術協定をやろうとする新明和にやらせるのか、あるいは新三菱にやらせるか、あるいは川崎にやらせるか。こうした、どの会社にP2Vを生産せしむるか。もしもあるいは開銀融資等にまつわっておりまするように、防衛生産を請け負わせるということによって一割の、何と申しますか、コミッションがとられるとするならば、六億とすれば、価格六億とすれば六千万円になんなんといたします。くつの問題については先ほど来大野伴睦氏の名前もあげて責任を追及いたしましたが、これに対してもてんとして恥ずるところがない。ということは、今後あるいはP2Vについて、あるいは艦船について、PDE等についてもおそらくは汚職あるいは不当支出が行われるでございましょうが、そうした防衛庁長官なり、あるいは防衛庁防衛庁をめぐりますところの自由党の諸君あるいは防衛庁の責任者について汚職の危険があることを指摘をして、その責任を追及しようとするやさきに、この質疑の打ち切りが行われたのであります。これは汚職をおおい、あるいは不当支出をあえてせんとする、自民党の不当暴戻をあえて行わしめようという、あえてせんとする私は意図の現われでなくて何であろうと考えるのであります。あるいは国防会議任務に関連をし、防衛生産についても防衛庁長官の、防衛庁当局の国有国営等についての言明と、経済企画庁長官の民有民営論とは、政府の閣僚であるにかかわらず、言明は食い違っております。あるいは防衛五カ年計画の三十五年度についても、経済企画庁長官はなお国民所得の二%強、二・二%程度のものが防衛生産に、あるいは防衛費に許容し得る部分があるという言明をいたしましたが、防衛庁長官は五カ年計画後の点については答弁をあいまいにして参りました。これらの政府の閣僚の間における答弁の食い違い、方針矛盾等を当人の出席を求めて明らかにしようとするやさきに、質疑の打ち切りが行われようとしたのであります。まさに内閣委員長青木一男君がその性格を露骨に現わしましたのが国防会議構成に関する法律案に関連をいたしましたことは、まことにこれは意味深いと言わなければなりません。すでに今日までに、あるいは憲法調査会法の審議の打ち切り、あるいは討論をも行わせなかったこと、あるいは憲法調査会法の審議について、重要法案として公聴会を要求したにかかわらず、この公聴会をも多数をもって否決したということ等々、就任以来、更迭以来ことごとにこうしたいわゆる戦犯的な(笑声)考え方をもって、戦前的な、戦時的な考え方をもって委員会を運営し、あるいは参議院の伝統をじゅうりんし、その審議権と、あるいは発言の自由を扼殺しようといたして参ったことは、先ほど提案者からもるる説明がございましたが、そのたび重なる血ぬられた手によって、ここに国防会議構成に関する法律案がふたたびその審議権を扼殺されたことは、まことにこれは重大な意義を持っておると考えるのであります。まさにこれは日本の民主主義、あるいは日本の平和主義が危機に瀕しておるだけでなしに、参議院の民主主義が、参議院の存在が危機に瀕しておると言わなければなりません。  私は内閣委員長青木一男君の、その戦前的なあるいは戦犯的な非民主主義が国防会議構成に関してその審議権を扼殺するに役立ったのはきわめて意味深いと申しましたのは、先ほど来この法案の審議に関連をいたしまして、防衛生産についていろいろ質疑が行われました。あるいは防衛国防会議の下部機構として、おそらくは防衛委員会的なものが作られるんではないかという点を明らかにしようといたしましたが、その国防会議のもとにおいていろいろ統制をせられて参るであろう軍需産業その他の姿を、昭和十二年以降、いみじくも青木一男君はやってこられたのであります。先ほど来提案者は昭和十一年から昭和十七年、あるいは十九年退官に至るまでの、大東亜大臣退官に至るまでの大事な青木君の経歴を挙げることを省略をいたしました。これは不注意に省略をしたものかと思いますが、青木君の経歴の中に、昭和十一年対満事務局次長として満州事変後の満州かいらい政権を作って参ることに大きな戦前の功績を果してこられました。昭和十二年には企画院次長になり、十四年には企画院総裁に就任をしておられますが、阿部内閣のもとにおいては大蔵大臣と企画院総裁を兼任されました。その間に、昭和十二年には軍需工業動員法を実施しておられるのであります。同じく十二年の九月に臨時資金調整法が公布せられております。軍需工業動員法は私どももすでに忘れかけておりますけれども、これは欧州第一次大戦経験から国家総動員の必要が痛感せられ、わが国最初の立法として作られたものであります。それが青木君の手によって実施せられました。その第一は簡単に申し上げますが、軍需工場事業場、附属施設の全部または一部の管理、使用、収用をなすものであります。第二は、軍需品の生産、修理または貯蔵のため、土地家屋、倉庫その他工作物及び付属設備の全部または一部の管理使用、収用をなすものであります。第三は、軍需品または軍需物件の原料、燃料の譲渡、使用、消費、処理、移動または輸出入に関する必要な命令を出すことができる。第四は、徴兵令の規定にかかわらず動員、勅令の定むるところによって召集し、軍需輸送機関または政府の管理工場または事業場に従事せしめること、また兵役にあらざるものを徴用して右の業務に従事せしめること、これが軍需動員法の内容であります。これを青木君は実施したのであります。こえて昭和十三年、これは企画院次長としてでありますが、同じく企画院総裁をしておりますが、これらの集大成として完成として国家総動員法を公布せられたのであります。国家総動員法に基いてどういうことが行われたか、これは人的資源の統制及び利用に関するものとしては、学校卒業者使用制限令、従業者雇入制限令、青少年雇入制限令、従業者移動防止令、労務調整令、重要事業場労務管理令、繊維使用統制令、国民徴用令、そういう基本的人権を侵すものが実際に青木君の手によって行われたのである。物的資源の統制及び利用に関するものとしては、物資統制令、生活必需物資統制令、価格等統制令、地代家賃等統制令その他十五の勅令、物資の統制及び運用に関するもの、利益配当及び資金融通令その他数件ございますが、省略をいたします。事業の統制及び運用に関するもの、これも重要産業あるいは金融統制、海運貿易、工場事業場の管理あるいは陸運統制令、それから文化の統制及び運用に関するものとして、新聞も統制されておる。新聞紙への掲載が制限されており、試験研究が総動員されておる。これはシナ事変またはこれに際しということでございますけれども、一切の人それから物、施設、事業が戦争のために動員されておる。あらゆる基本的人権を制限し、あるいは諸君の中にも工場を取り上げられたり、あるいは設備がスクラップにせられたり、しかもその機械が途中で私されたり、ありとあらゆる戦争下における人権のじゅうりん、あるいは所有権のじゅうりん等も行われて参りましたが、その基礎をなします国家総動員法が軍需工業動員法に続いて青木一男君の手によって昭和十三年の四月から公布せられておるのであります。なお、十五年には退官をして南京に行っておられます。南京の経済顧問として聯銀券を発行して中国における戦時下のインフレ、無責任なインフレをつくる原因を作っておられます。十七年に帰って国務大臣にたるや、これは大東亜大臣としてこの参議院の建物の中において大東亜会議を主宰せられ、そして大東亜共栄圏を誇示せられたのであります。こうしたこの経歴の持ち主が、国民に対して大きなこれは私は犯罪であると思いますけれども、経歴を持っておられる青木君が内閣委員会で憲法調査会法、あるいは国防会議構成等に関する——重要ではございますが、まさに日本の民主主義、あるいは平和主義、憲法をじゅうりんし、そして国防会議によって戦争を再び行おうとする法律の推進、しかも国会の権限をもじゅうりんして、基本的な国会の使命、あるいは権限をもじゅうりんして、これを強引に通過させようとする役割を果されるということは、まことにこれは因縁浅からざるものがあると思うのであります。  私はここに四月の十五日文化放送によって全国民の耳に入れられましたA級戦犯という録音の記録を持っております。この詳細を読み上げることは省略をいたしますけれども、その中にはきわめてこれは私どもがりつ然とする発言がございます。あるいは橋本欣五郎君は今度の参議院選挙にも立候補するということでありますけれども、彼もまた大東亜戦争、太平洋戦争について責任を感ぜず、「王手がないいくさをやっとるんだ。それなら飛車角を行きゃよかったんだ」、これがまだほかにもありますが省略いたしますが、「これが非常に僕は悪かったと思うネ」、戦争についての責任じゃなくてやり方が悪かったのだ、誤算だというお話しであります。全部は読み上げませんが、鈴木貞一君のごときは、戦争責任は国民にあるのだ。「責任というかね、もし国民が戦争を本当に欲しないというそれが政治の上に本当に強く反映しておればだね、それはその出来ないワケなんだ」「例えば、治安維持法があったとか、言論の自由を許されておらなかったと、そういう点を考えるとやはり、そんなことはありえなかったのだと」という行い分に対して、「治安維持法にしたところが、総動員法にしようが、議会でやるんだな。ネー議会でやるんだから、その政治力が、そういうものはいかんということであればだね、その出来ないわけなんだな。そういうものを作ったということはつまり、自分がそれを承認してだ、そういうものに服するという事にしたんだから、自らが自らを縛っているような恰構になっているんだよ、と僕は思うんだ。」荒木貞夫君が、「ジャングルの中に入ったヤツが一番脱け出すためにいいのは逆コースをとるんだ、と。こりや困ったナと思ったら、もとの道をズーとやらして大通りに出て、もう一回考えなおして、出ていくんだ、と」だから「憲法の問題、グズグズ何か云うなら、五ケ条の御誓文でいいじゃないか、と。」「教育勅語によって教育の根本を、たてるべきものなり。と、こう結論します。教育勅語というものは、立派な最高道徳、標準を示されておるんだ」、こういう工合に巣鴨から出てきましたA級戦犯の諸君が異口同音に戦争はわれわれの責任じゃない。負けたとは思っていない。国民が戦争を欲していたのだ。こういう言葉を全部述べております。それに対して原爆被災を受けた娘さんが、戦争を起してもいいなんて考える、そういう人があったら、この際私の顔私のからだをその人に見せてやりたいという広島の少女の悲痛な叫び声があとで放送されておりますが、私どもはこの録音、A級戦犯の声、これがそのまま今日において内閣委員会に、自民党から内閣委員長として来られた青木一男君の行動としてこの委員会に現われ、私どもは原爆の被災を受けた娘さんの声をここに国民の声として強く提出をしなければなりません。  繰り返して申しますけれども質疑をすること、審議をすることをじゅうりんをするといたしますならば、あるいは討論をもやらせないというような動きは、あるいは企ては、これは民主主義の扼殺である。あるいは現在における参議院のこれは自殺であり、憲法のじゅうりんだと思うのであります。しかも、その民主主義のじゅうりん、参議院の使命の剥奪、自殺……これが戦争をやろうという戦争機関であるという点は船田防衛庁長官認められましたが、これからあるいは防衛出動についても、あるいは産業その他についても、一たん防衛出動の必要が起って参りましたのちにおいては、戦争を遂行する最高の機関となるという点は認められましたが、そういうことが法案の審議において現われて参りましたことは、きわめて意義深いと思うのであります。言いかえますならば、青木一男君の経歴において、あるいは軍需工業を動員し、あるいは国家総動員法によってあらゆる国民の権利義務の制限剥奪、あるいは戦争目的としてのあらゆる人、物、施設、金等の動員が、ふたたび国防会議によって今後行われようとすることがこの法律の審議の際に、露骨に現われて参りましたということは、原爆被災を受けた娘さんの声ではございませんけれども、この法律案に対して、法律案をめぐっての審議権、あるいは参議院の使命を扼殺しようとする動きに対し、まさしく先ほど来の私のこの顔を、このからだを見せたい、こういう声をもって私は抗議をし、そうして青木一男君の不信任動議を提出せられました田畑金光君外数名の動議に賛成をしなければなりません。もし議員の諸君が、委員の諸君が常任委員会を守りあるいは参議院を守り、そして参議院の審議権と、それを通じて日本がふたたびあの太平洋戦争、そしてその終末を原爆をもって終らしめましたような失敗を、ふたたびこの国防会議によって原爆戦の下に、水爆戦の下に日本をさらさないというのであるならば、私は皆さんがこの青木委員長のやり方に対して抗議をし、委員長をやめさせることに、委員長を信任しないことに御賛成賜わることを心からお願いし、参議院の名において賛成討論をするものであります。
  74. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は田畑君、ほかの方々から提案になりました内閣委員長青木一男君の不信任動議に対しまして賛成を表するとともに、この際私は参議院、特にこの内閣委員会の運営の上から、多数党である自民党の方々に、この際一言いたしたいと思います。  国防会議構成法案といい、あるいは憲法調査会法案といい、それに対しては与野党とも根本的な立場の相違を示しております。もしこのように与野党とも根本的に対立する立場で、しかもそれが多数党によって押し切られるということになりましたならば、一体民主政治というものが完全に行い得るでありましょうか。多数と少数とがそれぞれの意思内容が異なっており、しかもその意思内容が相互に何らの妥協点も見出し得ないものとするならば、結局は分裂する以外にはないのであります。この分裂の危機を避けるためにこそ、多数決というものが民主主義の原則として採用されたものと見なければなりません。イギリスには古くから多数党は何でもすることができる、男を女にすることができないだけであるという古いことわざがあります。これを引用いたしまして、かつてダイシ教授は、民主主義の政治においては多数党はそのやろうと思う行動に対しては十分慎重でなければならぬし、ことに少数党に対してはその意見を十分自分たちの考え方の中に反映するのでなければ、民主政治は破れてしまうのだということを述べております。またドイツの有名なイエリネク教授も少数党の原理を主張した有名な論文の中で、民主主義政治の根本は要するに多数と少数との対立する意見が十分に審議を通じ質疑が行われて、その間に両者の了解が達せられる、それによってのみ民主政治が行われるのである。もし多数が数によって少数を圧殺しようとするならば、もはやそれは民主政治ではないということを述べたのは十九世紀の末であります。またドイツのカール・シュミット、これは後にナチスの御用学者になったカール・シュミットでありますが、彼が一九二〇年代の議会主義の精神史的基礎の中で近代議会主義がなぜ危機に陥ったか、危機と呼ばれるその原因はどこにあるかといえば、それは公開の場でお互いに討論をするということが多数党によって圧殺されておる結果が議会主義の危機となって現われてくるということを主張しておるのです。  私は何もここにペダンチックにそういう学者たちの意見を申し上げたのではない。今日参議院の内閣委員会において行われている多数党の方々の議会の運営、民主政治の運営の仕方について、私は若干思い出すままをここに申し上げて参考にいたしたいのであります。  多数党は確かに多数によって支持された政党であることは間違いありません。そのゆえにこそ多数党の意見が尊重されるのであります。しかし多数によって支持されたからといって、多数決の原理が機械的に適用されるならば、必ずしもそれが社会的に妥当性を持つものだとは言うことができないのです。多数決はなるほど社会的な妥当の原理ではある。しかしその適用いかんによっては多数決の原理は反社会的な、アンチ・ゾチアールな結果をもたらすこともまたわれわれは見のがすことができないのであります。今日まで内閣委員会においてとられてきた多数党の立場というのは全くそうではないか。十分にお互いに審議し合い、根本的には対立する立場であっても、その審議を通じて両者の間に了解が得られないというようなことは、今の場合においては考えることができない。ところがこれまでの運営の仕方を見ますというと、憲法調査会の場合もそうであります、今度の場合もそうであります。なお、質疑の時間を余し、質疑者も余しておるのでありますが、それを打ち切って、そして多数を頼んで、数にものを言わしてこれを押し切ろうとする、私はこれは、民主主義のこれこそ自殺ではないかと思う。多数によって支持されている自民党の諸君が、この内閣委員会においてみずから自分の民主政治家としての行動を縛るというようなことをするならば、一体結果はどうなるでありましょう。参議院の良識ということがよく言われる。衆議院に比べて参議院は十分に議案に対して審議する、今日まで審議してきたということが参議院の良識だということが言われている。ところがその参議院の良識が内閣委員会においては、この四月以来ほとんど停止されたような形になっておる。私はこの点青木委員長を中心としている自民党の諸君に十分反省してもらわなければならぬと思います。そうでなかったならば、参議院の良識はおろか、私は日本の民主主義の政治というものも非常な危機に瀕するのではないかと、その意味におきまして私は田畑君らによって提案されたこの不信任の動議に賛成せざるを得ないのであります。
  75. 宮田重文

    ○理事(宮田重文君) 別に御発言なければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 宮田重文

    ○理事(宮田重文君) 御異議ないと認めこれより採決に入ります。  内閣委員長青木一男君不信任の動議に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  77. 宮田重文

    ○理事(宮田重文君) 挙手少数と認めます。  よって本動議は否決せられました。  委員長の復席を願います。   〔理事宮田重文君退席、委員長着席〕   —————————————
  78. 青木一男

    委員長青木一男君) これより国防会議構成等に関する法律案の討論に入ります。  暫時休憩いたします。    午後六時十八分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕