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1956-05-25 第24回国会 参議院 内閣委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十五日(金曜日)    午前十時三十二分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            野本 品吉君            宮田 重文君            千葉  信君            島村 軍次君    委員            青柳 秀夫君            井上 清一君            木島 虎藏君            木村篤太郎君            西郷吉之助君            佐藤清一郎君            江田 三郎君            菊川 孝夫君            田畑 金光君            松浦 清一君            吉田 法晴君            廣瀬 久忠君   国務大臣    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    宮内庁次長   瓜生 順良君    防衛政務次長  永山 忠則君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁教育局長    事務取扱    都村新次郎君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    通商産業省重工    業局防衛産業監    理長      金谷栄治郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国防会議構成等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○宮内庁法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより内閣委員会を開きます。  国防会議構成等に関する法律案を議題として、質疑を行います。
  3. 田畑金光

    田畑金光君 防衛庁長官に最初お尋ねいたしますが、今日、毎日新聞を読みますと、また防衛庁らしい出来事が起きておるわけです。アメリカから譲り受けた砲弾管理の不十分のために三年分も腐らして物の用にも立たなくなった。百五十億に上る損失をこうむっておる、こういう新聞記事が出ているわけです。中古エンジンの問題がまだおさまらないさなかにこういう大きな問題が次から次に出てくるということは、これは防衛庁のどこかに根本的な欠陥があると言わざるを得ません。この点につきまして、この問題の内容と、防衛当局がどのような対策をとろうとされておるのか、一つ大臣から承わりたいと思います。
  4. 船田中

    国務大臣船田中君) 本日の毎日新聞に、弾薬保管が非常に悪いという趣旨の記事がございますが、それにつきまして現在わかっておりますことをそのまま正直に御報告を申し上げます。  米軍から供与をされました弾薬は、昭和二十九年度以降がおもでございまして、これはMPAPによるものでございます。その前におきましては、極東軍が持っておりましたものを極東軍権限の範囲内において適宜自衛隊所要量について供与を受けておった、こういうことでございますが、二十九年度以降、すなわち二十九年の十一月から三十年の六月にかけまして約十二万トン近いものを受領いたしております。で、現在までに大体十四万三千トンほど受領いたしておるのでございます。で、その保管につきましては、こういう非常な危険なものでございますから、十分わが方といたしましてはこの保管については注意をいたし、十分な施設をあらゆる手を尽していたしておるのでございますが、北は北海道の安平、束千歳、旭川、それから東北において松島、それから関東において高崎、中部日本におきまして西山、千両、それから山陰におきまして舞鶴、それから三軒屋、九州の大分、こういうふうなところに保管をいたしておるのでございますが、何分にも急速の間に多量弾薬供与がございましたので、その貯蔵保管の十分な施設が整っておらないというきらいはないとは申し上げられないのでございます。私もそのごく一部でございますが、東千歳の貯蔵状況を見ましたが、ここには約四万トンくらいのものが保管されておりますが、土壌を作りまして、その中にハットメントを建造して、そしてその中に貯蔵しておると、こういう状況でございます。十分な保管施設ができておるところもございますけれども、ただいま申し上げたような事情で、ごく最近に、昭和二十九年度以降急激に多量弾薬を受領したような関係から、その施設が十分でないというところもないとは言えない。しかし新聞報道にありますような、あれほど保管が悪いとか、あるいはまた使えなくなってしまったものがあるというようなことはございません。受領いたしました後、この保管については最善努力をいたし、またそのうちには不良品もございますので、その不良品えり分け等については最善努力をいたしましてこれをえり分ける。そして修理可能のものと修理不可能のものとを分けて、修理可能なものについては十分にこれを修理を加えておると、こういうような状況でございまして、結局使用のできなくなるものがどれくらいあるかということは、また実数がはっきり出ておりませんけれども、本日の毎日新聞報道の中に、二割くらいは修理が不可能だと、使用不能品であるというように言われておりますが、しかしこれは少し誇大のように考えられます。そのうちで修理可能なものが大部分でございまして、全く修理不可能と見られるものは二百トン程度のものではなかろうかというふうに考えられます。しかしなおこれにつきましては、今後におきまして十分調査をいたしまして、不良品の出ないように、また修理可能なものはできるだけ修理をするということに努力をして参りたいと存じます。記事の大体につきましては、ああいう事態になっておるということの報道につきましては、決して間違っておらない。事実あのようなことがございますけれども、非常に誇大に書かれておるのではないかという点もございます。  それからアメリカから供与された、MDAP以前に供与されたものにつきましては、相当古いものがございます。大体アメリカの規格によりますというと、二十年という命数になっておるようでありますが、十年前後たっているというものもございまして、そのうちには、アメリカに比較いたしまして日本の方が非常に湿気が高い、高温多湿というような気候関係もございまして、アメリカ式保管であればアメリカにおいては差しつかえない、あるいは大陸において使用する場合には何ら差しつかえないものが、日本の特殊の気候高温多湿ということのために、アメリカ式保管状況では日本においてはこれがもたない、こういうものもございます。それらのものは、アメリカ軍から供与されますと、直ちにわが方におきまして十分綿密なえり分けをいたしております。不良品についてはこれを廃棄処分をするなり、あるいは修理可能なものについては修理に回すというような、最善努力をいたしておる次第でございます。  なお、ああいうような記事がたびたび防衛庁関係につきまして出まして、そして世間の疑惑を生ずるということは、まことに私遺憾に存じまするので、現在も引き続き殿軍にその厳密な調査をいたしまして、遺漏のないように保管の上において最善の手段を尽して参りたいと、かように考えておる次第であります。
  5. 青木一男

    委員長青木一男君) 田畑君ちょっと御相談があります。高碕長官が見えておりますから、衆議院外務委員公会議中、特に御要望によって短時間出席いただきますから、その分を先に願いたいと思うのですが、――じゃ簡単にどうぞ。
  6. 田畑金光

    田畑金光君 長官答弁を承わっておりますと、どうも責任をわきまえた答弁には受け取れないのです。古いものをもらったからとか、あるいは大陸ならとにかくだが、高温多湿日本のようなところでは非常に腐敗しやすいとか、施設が不十分で管理が行き届かなかった、こういうようなことでは、これはだれがしからばそういう管理施設を適切にし、高温多湿のところで不適当であるなら、それにふさわしい貯蔵管理をはかるか、これは防衛庁自身が当然やるべきことだと思うのです。長官責任であると思うのです。こういう多量の弾丸、砲弾を受領して、一体だれが管理責任に当るべきなのか、(「無責任だ」と呼ぶ者あり)だれが責任をとるべきなのか、これだけの事件を次から次に防衛庁が起しておられますが、あなたも今御答弁で認められたように、この毎日新聞記事自体は間違いないのだ、ただ二割というのが誇大に宣伝されておるだけで、二百トン前後にすぎない。しかし記事自体はこれはこの通りだと認めておられるのです。量が二百トンか二万五千トンであるかどうかは、これはこれから調査しなければわからんはずです。この記事を見て、あわてて修理可能が大部分であって、ほんとうに使えない、廃棄処分に付さなければならないのは二百トン前後にすぎない、これは一方的なあなたの答弁のための資料にすぎないと私は見ているので、この点は、幾らの量があったかということは、問題は別です。こういう事態を巻き起した防衛庁責任はどこにあるのか、保管管理責任者はどうするのか。さらにまた、一体なぜ十三万七千トンという、こう多量砲弾というものを無計画に持っているのか、これらの点をもう少し一つ大臣らしい責任ある態度でお答え願いたい。(「責任とれ、責任を」と呼ぶ者あり)
  7. 船田中

    国務大臣船田中君) 私は決して責任を回避するようなことを申してはおりません。米軍から多量弾薬を受領いたしまして、その保管につきましては最善を尽しているわけであります。(「何を最善を尽している」と呼ぶ者あり)しかし先ほど申し上げましたような事情もありまして、いかに最善努力をいたしましても、そこに気候変化気候の違い、あるいはその他の事情によりまして不良品が出てくるということは、これはどうしても免れない事情でございます。今、記事が出たから調査をしているのではなくして、私自身も本年の一月末に北海道へ参りましたときに、東千歳の弾薬庫を見ております。それは理想を申せば、りっぱな永久的な施設を作って、そうして保管すべきであると存じますけれども、これはまた相当に金のかかることでございますから、従ってそういうことができません。そこで土壕を築いて、ハットメントを建設して、そうしてその中に保管している、これが普通の状態であれば相当保管のきくものが、ことさらに雨が多かったとかあるいは雪が多いとかいうような関係で、さびが出るとかいうような事態も起ってきているわけであります。そういう事態が起ってきておりますから、そこで米軍側の方においては支障のなかったものが、日本に受領して、日本において保管する場合において、一本の特殊の事情から、命数においてもだいぶアメリカと違ってくる、こういう場合があるのでございまして、そういうようなことについては、こういう危険物でもございますから、十分注意をいたしまして従来もやっております。しかし今後におきましても、最善努力をして、保管責任を全うするようにしていきたい、決して私は保管責任を回避するとかいうことを申しているのではありません。実情を正直に御報告申し上げている次第であります。
  8. 田畑金光

    田畑金光君 いや、大臣はもう少し大臣としての責任もあろうと思うのです。また大臣責任を云々する前に、当面のこういう大事なというか、自衛隊にとって大事な砲弾貯蔵管理について、多面の責任者はだれなのか、この責任者に対して、どういう態度でもって大臣は対処されようとするのか。さらに最近この国会が開かれましてからも、次から次に防衛庁にまつわる国民疑惑を受けるような問題が起きているのです。こういう総合した疑惑国民の指弾を受けるような点に対しまして、防衛庁長官としては、どういう責任をとられようとなさるのか。  さらにわれわれのお尋ねしたいことは、一体十二万七千トンも現在持っているというのだが、これは平時において、演習用の他に使うのでしょう。どの程度のこれは使用にたえ得る分であるのか、何年くらい一体持っているのか、非常にわれわれが見受けるところ、よけいなものをかかえすぎているような感じがするが、なぜこんなよけいなものをかかえていなくちゃならんのか。MSA協定に基く供与砲弾であるので、こういうふうなものはただでもらうものだから、管理だろうと貯蔵だろうと、どうでもいいというような気持でやっているのじゃなかろうか、振り返ってみますと、国民は血の税金でもって防衛分担金を負担しておる。防衛庁の経費はすでに千億を突破しておる。こういうような国民の犠牲においてささえられておる自衛隊というものが、一番よけいに金を使って、しかも一番でたらめ経理をやっているのが今の防衛庁だ、これが常識です。こういうでたらめなことをやっていて、一体防衛庁長官責任をとらぬつもりでいるのかどうか、まず当面の責任者をどうするのか、私はこれを一つ明らかにしてもらわなければならぬ。はっきり一つ答弁して下さい、法制局長官みたいなその場限りの言いのがれの答弁じゃ、大臣ですからね、あなたは。これじゃ済まされぬと思う。もう一つ明確な責任ある態度を明らかにしていただきたい。
  9. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛庁関係につきましていろいろ御非難の出たということはまことに遺憾に存じます。私はその責任について何も回避することはございません。衆議院決算委員会においてもパッカード・マリン・エンジンの採用についていろいろ御非難がございます。しかしこの問題についてはいろいろ御非難がありましたけれども、しかしわれわれの責任者として調べたところによりますというと、その買い入れについて防衛庁として何ら不正不当がない、しかしそれをいかに説明をいたしましても御納得がいかぬということであれば、これは各委員会権限において、できるだけ真相を究明することに御努力を願いたい、むしろそのことをお願いをいたしておるような次第であります。  この弾薬保管につきましても、直接の責任者補給処処長、それから陸上幕僚監部、こういうものが責任を持っております。その責任のある者に対しましては、これを常に督励をいたしまして、そうして保管の十分なる責任を尽さしておるわけでありまして、もしそれに間違いがある、職務の慨怠があるということでございますならば、その責任者を解職するに決してやぶさかではありませんし、またそれが大臣責任になるものであるというならば、私は何も責任を回避するものではありません。
  10. 青木一男

    委員長青木一男君) この問題はあとから……。
  11. 田畑金光

    田畑金光君 じゃもう一点だけ何して……。これは繰り返し申し上げますが、あなた自身も新聞記市は認められたのです。私はそれが大事なことだと思うのです。二百トンか二万五千トンか、私は新聞記事をそのまま信用するわけでもないし、あなたの二百トンを信用するわけには参りません。これはまた国会の適当な機関等国政調査に基いて十分調査の上真相をきわめなければならぬ、こう私は考えるわけです。しかしながら、再々こういう問題が防衛庁を中心として起きてくるというこの事態です。何年分の軍服を買い入れたとか、何年分の砲弾をかかえ込んでおる、そうしてその貯蔵管理というものがでたらめをきわめておる、こういうことに対してどういうあなた方は国民に対し責任をとろうとしておるのか、きのうも文部大臣にお聞きいたしましたが、国民道義確立しなければならぬ、であるから現行の教育制度について再検討を加えるのだ。国民道義確立をはかるなら、まず、国民の払う税金が正しく国民生活安定に運用されることを政府みずからやって下さるなら、自然道義も振興されるでしょう。でたらめきわまる経理やり方、国費の乱費をやっていて、それでもって教育の刷新ができるか、国民道義確立ができるか、このことを私は防衛庁長官よく考えてもらいたいと思うのです。この貯蔵砲弾については、単に防衛庁当局のみならず、米軍調査をしなくちゃならぬ。米軍事顧問団も乗り出して、六月早々には日米合同調査を全国的にやって実情確めよう、こういうことも載っているのです。これは事実であるかどうか、アメリカ調査にまでお手伝いを請わなければならぬということは恥さらしだと思うのだが、防衛庁長官はどうお考えになられますか。
  12. 船田中

    国務大臣船田中君) 米軍がこの調査に協力するという話は聞いておりません。しかしただいま田畑委員は、防衛庁やり方を何でもでたらめだというようなお話ですが、でたらめであるか、でたらめでないかということは、よく御調査を願って、そうして国政調査権限を持っていらっしゃるのですから、十分御調査を願って、そうして弾薬庫保管状況でも何でも、私どもは決してそれを隠し立てをするというようなことはございませんから、十分現地についてごらんをいただきたいと思います。私は最善努力をいたしまして、そうして国損をかけないように、一銭一厘たりとも効率的に使うということに最善努力をいたしておる。しかし、昔から言う通り上手な手にも水が漏れるということがあります。(笑声)ですからそれは絶対に誤まりががないとは言えませんから、その誤まりがあった場合には、それぞれ責任をただして、そうしてその責任がもし大臣にまで及ぶということであるならば、私は何も大臣責任を回避するものじゃございません。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 経済自立五カ年計画の中で防衛費の大きさというものをどういうはじき方をしておられますか。
  14. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体は最近の情勢をこうはじきまして、国民所得の二%強ということで踏んでおるわけでありますが、戦争前のは、平均いたしますと約七%くらい、これは国防費でございますが、七%くらいになっております。これを二%強にとどめたい、こういう考えでおるわけでございます、五カ年計画におきましては。
  15. 江田三郎

    江田三郎君 戦争前との比較は、これは余分なことでありまして、それよりもむしろ日本国民生活の現状からいうべきで、そこであなたの方でお出しになった五カ年計画の中で、二十二ページに国の財政という数字が出ておるわけですが、その二十二ページに出ている数字の中で、国防関係費用はその他というところへ入ると思うのですが、このその他というものの内訳は一体どうなっておりましょうか。
  16. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 詳細の数字はそれを政府委員から答えますが、その他というものの中には賠償費だとか、今後対外債務の弁済すべきものが入っておるわけであります。
  17. 江田三郎

    江田三郎君 その賠償なり海外債務支払いというものはどの程度を見ておられるか知りませんが、たとえば日比賠償にいたしましてもああいう結末を告げ、これは高碕さんいろいろ御苦労されましたが、予想しておったよりは大きいのじゃないかと思います。いずれ今後インドネシアの剛胆も出てきますし、またビルマの問題も再燃するのじゃないかと思いますが、かりにそういうような賠償関係費用なりあるいは軍人恩給の増額というようなこともまた問題になっておりますが、そういうのがふえていった場合には、当然ここにあげている二兆二千億円の数字の中で予定しておる国防関係費用というものは減るわけですか。
  18. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体の私ども予想といたしましては、国民所得の〇・六%ぐらいはこれを対外債務支払いに充当していくと、それは賠償費も入っておるわけであります。それで防衛費を二・二%ぐらいに大体押えまして、全体におきましては大体三%以下でやっていくということになれば、これは全体の国民生活に影響を及ぼさない。また国の経済自立に差しつかえない、こういう考えで進んでおるわけであります。国民所得がふえますとそれだけ増加することになるかもしれません。
  19. 江田三郎

    江田三郎君 海外への支払いというものが〇・六%という予想が今後狂ってくるんじゃないかということをわれわれは心配しているのですが、そういうおそれはございませんか。
  20. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのところは狂うという考えはありませんです。
  21. 江田三郎

    江田三郎君 今狂うということを言えるわけでもないですが、もしこれがふえていけば、海外支払いがふえたときに、一体どこを削ってそれをふやすことになりますか。まず第一にその他という分頻になっておれば、その他の中から削っていかなければならぬと思うのですが、そうじゃないでしょうか。
  22. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 結局そういうことに相なると思っております。
  23. 江田三郎

    江田三郎君 従ってインドネシアあるいはビルマ等予想されているところの賠償支払いというものが、今あなた方の考えるよりも、予想よりも違ってくれば、今のお答えよりいきますというと、当然防衛関係の方を削らなければなりません。そうしないとこの自立計画ができない、こういうことになりますね。
  24. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その通りでございます。
  25. 江田三郎

    江田三郎君 それは今後の問題でございますからそれくらいにしておくだけでけっこうですが、もう一つ防衛産業の問題についてあなた方の方でどういうお考えをしておられるのか。まあ防衛庁の方、初度調弁についてはこれは米軍供与に待つというような方針をとっておられますが、防衛庁長官も昨日防衛生産というのですか、防衛産業というのですか、それの育成強化ということを言われましたが、これについて、この自立経済計画の中であなた方の構想ではどうなっておりますか。これを読んでみましてもそういうことが一つも書いてないものですからお尋ねします。
  26. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 防衛産業だけを特殊産業としては考えていかぬつもりでございまして、全体の産業の中に防衛産業というものを溶けこませていくと、この方針で今後進んでいきたい、こういう考えであります。従いまして、計画の中には防衛産業というものを特に考えておりませんで、全体の産業の中に含んで考えておるわけであります。
  27. 江田三郎

    江田三郎君 これは高碕さん少しお考えが違うのじゃないかと思うのでして、防衛産業というものと普通の産業というものは相当これは性格が違っていると思うのです。たとえば防衛産業過剰生産になったものを一体どこへ輸出するかというような問題が出てくる。普通の産業のような輸出とこの武器の輸出というものは相当違ってくるわけですから、従って防衛産業の規模というものは、これはそう普通の産業と同じように考えることは私は不可能だと思うのです。そうじゃないですか。
  28. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) そればその考えは私は間違っていると思うのです。防衛産業というものは、これははっきりこれだけの数字を必ず消費する、また消費を年々増加するというふうな考えでやるべきものじゃないと思う。普通の産業というものは年々この消費を増加さすとか、あるいは計画を立てるものでございますが、防衛産業というものは、国際情勢変化によってどう変化するかわからぬ、そういうわけでありますから、これはある場合には産業とボースに使いましょう。これは非常に多くなったときも、また少くなったときもある。ですから防衛産業というものは特殊に考えるということは私は将来の国の計画を誤まるものだと思っております。
  29. 江田三郎

    江田三郎君 そうすると、今のおっしゃることはよく私ものみ込めないのですが、そうしますと、たとえば兵器生産において、まあ特定の兵器において、これはまあ特車を作る場合でも、あるいはどういう問題でもよろしい、銃砲弾でもよろしいが、かりに一定の銃砲弾を作る場合には、その銃砲弾を最も効率的に作るのにはどういうような工場があればいいか、こういうことから出ていくわけですか。一本の銃砲弾消費量幾らかということでなしに、最も効率的な土産を上げるのには、どうしたらいいか、これだけの見地からいかれますか。
  30. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その通りでございます。
  31. 江田三郎

    江田三郎君 そうしますと、当然この日本が必要とする以上の規模で考えていかなければなりませんね。
  32. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ものによってそういうふうな考え方も起るでしょう。どれもこれもというわけじゃありませんが、たとえば砲弾というものになる、火薬ということになりますと、これは一般工業用の火薬というものの中で研究をしていって、そうして必要な場合にはこれは一部は防衛産業に回す、こういうふうに考えていきたいと思っております。
  33. 江田三郎

    江田三郎君 だけれど、竹やりの生産ならこれはもう簡単なんで、竹やりの生産工場というものがかりにあったところで、それを設備だけ持っておって遊休、遊ばしたところで、その年に消費量がなかったからといって遊ばせておっても経営は成り立ちます。しかし今後近代兵器ということになると相当膨大な投資をしなければ成り立たぬわけで、しかもそういう膨大なる投資をしても、実際に日本のこの自衛隊消費する物資というものがそう大きなものでないということになると、これは計算が合わない産業ということになるわけですね。資本家的計算に合わない産業ということになりますね。
  34. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これはただいま申しました通りに、生産物によって個々に考えていかなければならぬ問題でありまするが、大体におきましては、防衛産業に使います技術というものは、今度日米技術協定等によって取り入れたいと思っております重要な点は、一体従前の防衛産業というものに使われました技術的の研究というものは、すべての産業の最高点をいっておるようなわけでありまして、これが全体の産業の改善に、技術的の改善に使いますことは非常に大きな問題であります。まあたとえば原子産業の、原子爆弾のごときも、これは平和目的に使うということでありますけれども、研究のもとは、あれは一つの武器として研究せられたのであります。これは一例でございますが、そういうような工合に、そういうふうな方面の技術をわれわれはできるだけ持って参りまして、全体の産業の技術を向上するという方面に使っていく、できるだけこの防衛産業というものと一般産業というものとをよくつけ合していきまして、そうしてある意味におきましては、設備の都合によって、たとえばある一つの戦車を作るといった場合には、これは日本の需要だけでは引き合わぬ、これではそろばんが合わぬという場合には、ある程度輸出産業として立つべきものはやはりこれは輸出はすべきものだ。この輸出をすることによって世界の平和を撹乱するというふうなことになれば別でありますけれども、全体がある程度の自衛力を持つということがどの国においても必要だというようになれば、これはある程度輸出もする、こういうふうに考えていきたいと思っております。従いましてできるだけ従前のごとく、ある防衛産業というものはある防衛庁の直轄に属するとか、そういうふうなことに相ならぬように、一般産業の中に溶け込ませるということが、将来私は国としてとるべき一番大事な方針だと存じております。
  35. 江田三郎

    江田三郎君 今のお話の武器の輸出という問題は、これは最初に申しましたように普通の商品の輸出のように簡単なものじゃないのです。いろいろ外交的な問題が出てくるわけですから、何ぼ余ったからと言ってそう簡単にダンピングして売りとばす、こういうわけにはいかない。そうしてあなたのお話を聞きましても、防衛産業というものは技術のトップ・レベルをいくのだ、そして技術のトップ・レベルということは、これは私は当然それに伴った相当大規模なものでなければならぬと思います。技術というものをほんとうに生かすためには、一つの単位工場というか、何というのですか、それは相当大きなものでなければならない。どうしても日本自衛隊消費量というものを考えるというと過剰生産たらざるを得ない、そういうときに、まあ技術のトップ・レベルというものを、一般産業のためにそういう優秀な技術を持っておらなければならぬということになると、これは個人の資本家的企業ということじゃ無理なんじゃないか。当然そこには国有という問題が出てくるのじゃないかと思いますが、そういう国有なり国営なりという問題についてはお考えはございますか。
  36. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのところ、これを国有にするとか、国営にするとかいうことは考えておりませんが、トップ・レベルのものを作ることによって生産量も少いと、従ってそれはそろばんに合わぬけれどもやらなければならぬということになれば、そういう場合は新規産業としてこれを助成する方法を別に講じたいと、こう思っております。
  37. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっと江田君、御相談ですが、衆議院の外務委員長から二度催促がきたのですが、どのくらい時間かかるでしょうか、なるべく簡潔に願います。
  38. 江田三郎

    江田三郎君 簡潔といっても、今序の口をいきおるのでちょっと困るが……。
  39. 田畑金光

    田畑金光君 少し向うを持たしてもらったらどうですか。
  40. 江田三郎

    江田三郎君 何ならまた月曜にやってもいい。御承知のように高碕さんは企画庁長官として、この会議ができれば当然入られる人なんで、防衛産業のあり方というものは私はこれは非常に重要な問題だと思うので……。
  41. 松浦清一

    ○松浦清一君 私もこの間から高碕長官の御出席を求めておったので、なお約束通りの時間をやるとしても、もう一度長官の御出席を願わなければならぬのです。従って今御退席になれば、午後でもよろしうございますから……。
  42. 青木一男

    委員長青木一男君) 今、衆議院の外務委員会と午後のやつを打ち合せておりますから、その間質問を継続して下さい。
  43. 江田三郎

    江田三郎君 それは質問しますけれどもね、どうも高碕さん、もじもじしておられる形で……。
  44. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大丈夫、落ちついてやっているから……。こっちの方が楽なんだ、向うより。(笑声)
  45. 江田三郎

    江田三郎君 そこで、かりに将来まあ個人の企業としては無理だという問題があれば、特別な助成措置を講じなければならぬということになると、これはもう高碕さん、将来のことを私聞くのじゃないのでして、少くもこの経済五カ年計画程度の範囲で聞くのですが、一体どういうような兵器生産というものにさような特別な措置を講じなければならぬことが予想されますか。
  46. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これはざっくばらんに申しますと、まだ防衛計画の、五カ年の防衛計画はちょっともできてないのでございます。何にどうするとか、船に幾らやるとか、あるいは戦車を作るとか、何もできてないのであります。私どもは金高だけは、大体これだけはどうしても国の計画に阻害をしないという、その金の面だけしかやってないわけであります。どういうふうにするという御質問になりますと、こっちの方で早く防衛計画をやってもらわなければならぬ、これをやるとあれをやるということでやりたい。それにはやはり国防会議というものを早く通すように御尽力願いたい。これをやらぬとすっきりできないのです。それで困っておるのです、実際。
  47. 江田三郎

    江田三郎君 国防会議というものは早くやらなければ困るけれども、やってみても、今のようにあなたの方は一向わからない、防衛庁長官の方も一向わからないでは、やったって私はかける議案がないではないかと思っておるのですよ。(「全くだ」と呼ぶ者あり)ところでそれはそれとして、特殊なものについてはそういうような特別な措置を講ずるが、一般的にはこれはその他の産業とひっくるめての民有民営、こういう方式ですね。
  48. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その通りでございます。
  49. 江田三郎

    江田三郎君 今、あなたはこともなげに、余ったものは海外輸出するということも考えられるということを言われましたが、……(「考えている」と呼ぶ者あり)そう言ったのですよ、それが違うなら、もしそういう答弁……私はそういう答弁に聞いたから。一体あなたの方で防衛生産というものがもっと進んでいって、進まなくても、現在でもある極の兵器生産についてはもうすでに過剰生産、設備のフル運転をやっているというような状態がきているわけですが、一体どういう兵器をどういうところに輸出できるという見通しを持っておられるわけですか。
  50. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今申し上げました通りに、この現在兵器は、どういう兵器日本の防衛上必要であるんだということについては、専門家の意見を聞いて、これをどういうふうな規模において生産するかということを考え、この種類に応じて日本の技術が進んでおって、外国の方においてこれを買いたいというような希望があれば、これをよく打ち合せておいて、そして生産計画を立てるということに持っていきたいのでありまして、今余ったからといって、これはちょっと売れぬでしょうね、ほかの食料品と違って。その点においてはやはり初め計画を立てますときに、どれくらい値を下げられる、それではどこの国でどれだけをとるかというようなこともありましょうから、そういうようなことも、私は特に東南アジアの国々との間に話をつけて、それでわれわれの五カ年計画と東南アジアの五カ年計画とをマッチさしていきたい、こういうのが、私の趣旨はそこにあるわけでございまして、ちょっと私の言い方が間違っておって、余ったから売るんだ、そういうふうにおとりになったかもしれませんが、私はそういう考えではありませんので、初めから計画を立ててやっていかなければならぬ、それにはまず主体である日本の防衛計画を、どういうものをどういうふうに作るのだということを考えていかなければ、これは私はいかに考えても考えがつかんのです。これはざっくばらんに申し上げたわけです。
  51. 江田三郎

    江田三郎君 私は今の鳩山内閣の閣僚の中で、一番東南アジアというものに深い理解を持っておられるのは高碕さんだとかねがね敬意を表しているのですが、その高碕さんから、東南アジア等への武器の売り込みというような言葉が出るのは、私意外に思うのですが、実際東南アジアに将来――通信機やなんかは別ですよ、そうでない兵器があなたは売れるとお考えですか。
  52. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは東南アジアの五カ年計画をよく見たいと、こう思っておるのです。それとマッチしていきたい、こう思っておるわけでございます。必ずしもこれは向うの方の計画にないものを持ち込むわけでもありませんし、どの国でも幾らかずつ小さな防衛的の計画を持っておるわけですから、その兵器を提供する、こういうわけであります。
  53. 江田三郎

    江田三郎君 そういう答弁をするんだから衆議院に行くより気が楽だということですよ。衆議院の方の日比賠償はそういう答弁で済みませんからね。まあ一つ気楽にやって下さい。(笑声)一体今何も、どういう兵器がどれだけできるかわからんから、将来の見通しは将来のことだと言われますけれども、しかしこれは兵器輸出というものはよほど慎重に考えないと、特に日本のように防衛庁自体もどういう防衛計画を立てていいかわからんようなこういう状態で、絶対に局地戦争といえども巻き込まれてはならん、あくまで平和のうちに貿易に生きていかなければならぬ国として、いささかの兵器輸出したために、そのために外交関係を混乱さして、戦争に巻き込まれぬまでも、ほかならぬ平和産業輸出というものが阻害を受けるというおそれは多分にあるわけですから、そのことは私が今さらあなたに申す必要はないところなんです。そこでよほど兵器輸出ということは慎重でなければならぬ、そういうときに、防衛産業の将来の規模なり育成強化の策を立てられる場合には、私はやはり軽々しく、なに、できたらどこかへ売ればいいのだという工合のものじゃないと思うのですよ。
  54. 青木一男

    委員長青木一男君) 外務委員会から重要法案審議の関係ですぐきてもらいたいということですが……。
  55. 千葉信

    ○千葉信君 高碕さん、午後どうなりますか。
  56. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はずっとおりますから、両委員長の間でお話し願っていつでも、向うの方との話がつきますればこっちに参りますから……。
  57. 江田三郎

    江田三郎君 それじゃ午後にします。
  58. 青木一男

    委員長青木一男君) それでは田畑君の質問を……。
  59. 田畑金光

    田畑金光君 大胆にさらに先ほどの続きの、残っておる点を二、三お尋ねしますが、この当面の責任者補給処処長、陸上幕僚部とおっしゃいましたね。
  60. 船田中

    国務大臣船田中君) 陸上自衛隊の最高の責任者は陸上自衛隊の幕僚監部でございます。
  61. 田畑金光

    田畑金光君 そうすると調査の結果こういう新聞の記事のような事実が明らかにされた、もうすでにこの事実そのものは認めておられるが、一体どの程度の損失量があったのか、そういうようなことでもって真相が明らかにされた場合には責任をとらせる、こういう先ほどの答弁でしたが、それで間違いありませんか。
  62. 船田中

    国務大臣船田中君) もちろん保管上職務を懈怠しておる、あるいは間違った保管をしておるというようなことが事実明瞭になりますれば、それぞれの責任者に対して責任をとらせるということになります。なおこの問題につきましては、これは新聞記事が出たからあわてて実情調査したというものではありませんで、この相当多量弾薬供与を受けたということに対しまして、自衛隊といたしましては、その当時からこの保管につきましては非常に工夫をいたし、なお昭和三十一年度の予算におきましては、施設費として約四億三千二百万円、ほかに国庫債務負担行為として五億八千万円の要求をいたしまして、その予算も通過いたしておるわけでございます。なお器材費としては約二百八十六万円を計上し、その整備に万全を期しておりまするし、ほかに修理費用としては七百四十二万円ほど三十一年度の予算に計上を認めていただきまして、そうしてその万全を期しておるわけでございます。
  63. 田畑金光

    田畑金光君 先ほど御答弁がありませんでしたが、この調査に日米合同で当るということは、これも事実ですか。向うから軍事顧問団、米国の軍事顧問団からそのような申し出があったということも事実ですね。
  64. 船田中

    国務大臣船田中君) それは先ほど答弁申し上げましたように、米顧問団から調査のために連絡をするということはまだ私の方では何も聞いておりません。
  65. 田畑金光

    田畑金光君 自衛隊の保有している砲弾等というものは、一体平時の使用量からいうと、どの程度持っているわけですか。さらにまたおそらく戦争とか戦時とかいうことも予定して考えておられると思うのですが、どの程度使用量を貯蔵しておるわけですか。
  66. 船田中

    国務大臣船田中君) 従来米軍から供与されておりますものは、先ほど申し上げましたように、MDAP前におきまして受けておりますが、SFRP及びその後のMDAPで今日まで大体十四が三千トン受領いたしております。そのうち現在の貯蔵量は約十二万八千トンでございます。平時演習用として使用いたしますものは年間約八千トン、従いまして十二万八千トンの貯蔵量は、演出だけをいたしておりまするならば相当期間使えるわけでございます。しかしこれが非常事態ということになりますれば、その貯蔵量は数カ月の使用量にしか過ぎないということになるわけでございます。
  67. 田畑金光

    田畑金光君 戦争を前提とした場合、数カ月というと、これは何カ月ですか、三カ月ですか、五カ月ですか、どの程度です。
  68. 船田中

    国務大臣船田中君) まず二、三カ月というところだと思います。
  69. 田畑金光

    田畑金光君 この点は内局の直接の責任者おいででしょう。
  70. 船田中

    国務大臣船田中君) 装備局長がきております。
  71. 田畑金光

    田畑金光君 装備局長に一つお尋ねしますが、本年の初めから調査を初めておる、どういうような、これは内局で調査をなさった結果が二百トン程度だということになったわけですか。どうも私は国会答弁のための調査発表のように受け取れるわけですが、ほんとうに二百トンで廃棄量は抑え得るのかどうか、この点簡単でいいから、一つ時間がないので、御答弁願いたいと思います。
  72. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) すべて装備品は責任者からそれぞれの幕僚部を通じまして常時調査をいたしております。ものによって三カ月置き、ものによって半年置きというような在庫調査をやっております。特に装備品甲類に属しまするこういう弾薬等も含めまして、火砲とか弾薬とか、そういうものは常時調査をやっております。現在までの調査では、先ほど大臣からもお答えになりましたように、修理不能のものが約二百トンという調査は、幕僚部の方を通じましてわれわれの法の帳簿ではそういうことになっております。
  73. 田畑金光

    田畑金光君 この点は、先ほど申し上げましたように別の機会にまた追及しましょうし、またあるいは国会の適当な委員会等で取り上げられるものと期待いたしておりまするが、いずれにいたしましても、私は強く防衛庁長官に念を押しておきますが、日米合同調査というような点はまだ向う側から話がない、こういう先ほどの答弁でありましたけれどもアメリカからもらった砲弾でありまするから、そういう目的のために来ておるのが軍事顧問団の役割の一つでもあるので、こういうような事実が発生しておるとするならば、当然これは軍事顧問団も介入してきましょうし、日米合同調査ということにもなって参りましょう。そうなって参りますると、これは単に防衛庁一当局の問題だけでなく、大きく言うと、国際的な問題である。こういうようなでたらめなことが次から次と繰り返されているわけで、私は防衛庁長官が先ほどはっきりと言われたように、当然一つ責任の帰趨を明らかにしてもらいたいと思うのです。同時にまた、それに応じて防衛庁長官みずからも少しは責任らしい責任をわきまえてもらいたい、こう強く要望しておきまして、この問題はもう少し資料等が集まりました後日質問することにして、保留をしておきたいと思います。次に大臣にちょっとお尋ねしますが、今どういう方法で、この海外というか、外国の、特に当面皆さん方が侵略するかもしれぬ、こう言う共産圏の国々の兵力の調査、あるいはまた西南アジアの新興諸国における軍備の実情、状態――一昨日はインドの国防がこういう水準まできておるのだというような大臣のお話もありましたが、こういう西南アジアの国々や大陸諸国の軍備あるいは装備の実情について、どういう方法で調査をなさっておるわけですか。
  74. 船田中

    国務大臣船田中君) 今、お尋ねがございしましたが、これはたびたび申し上げておることでございますが、日本自衛隊といたしましては、仮想敵国というものは持っておりません。従って、共産圏内の用事情勢を特に調べているというようなことはやっておりません。ただいまお尋ねの国際情勢、またそれぞれの国の国内の一般情勢、特に軍事情勢等につきましては、これは主として海外の在外公館の手を通じて資料を収集する、それからその他専門の雑誌あるいは冊子等が相当たくさんございますから、そういうようなものを資料として調査をいたしておるのが大体おもな資料でございます。
  75. 田畑金光

    田畑金光君 砂田前防衛庁長官時代だったと思いますが、駐在武官制を考えたい、とらなければならぬ、こういうような構想も発表されていましたが、今のお話ですと、日本自衛隊というものが全くどういう基準から編成装備等を検討しておられるのか、暗中模索のようであります。あるいはアメリカの指令に基いてのみ作っておるんだということになれば、それでけっこうですが、駐在武官制、こういうふうなこと等は考えていないですか。
  76. 船田中

    国務大臣船田中君) 現在アメリカには、大使館の中に三人ほど、そういう情報の調査研究をし、情報を収集するという駐在員がおります。なお、ヨーロッパ方面にもぜひ出したいと考えておりまして、三十一年度の予算において、外務省の職員のうち、特に防衛庁のためにいろいろ国際情勢あるいは各国の軍事情勢等について調査研究をしてもらうために一人の予算をとりまして、これは御承認を得ておるわけでございますから、本年度中に実現することと思います。
  77. 田畑金光

    田畑金光君 一人予算をとったというわけですが、どっちにそれを置くつもりですか。それからこういう人方は、調査官なら調査官、どういう資格で向うに行くのか、アメリカの三名、これからヨーロッパヘようやく一名、だんだんこれは各国に駐在武官を設けるようなことになろうかと思いますが、そういうふうなことになっていくのかどうか。
  78. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) アメリカにおりまするものは、陸海空の自衛隊から隊員が一名ずつ、大使館の書記官の身分で自衛隊員としての身分を兼務する、本職は移りまして、大使官の参事官ということで参っております。今年は予算としては二人認められまして、そのうち一人がアメリカに行ったわけです。アメリカが三人になったわけです。もう一人は欧州、まだ明確にどこということを長官の決定は得ておりませんのであります。フランスあたりがよくないかというふうなことを研究としては考えておりますが、また長官の決定を得ておりません。
  79. 田畑金光

    田畑金光君 これはだんだんと、たとえばこれからフィリピンとも大使を交換する、大使館を設けるというようなことになってきますると、西南アジアの国々等にも置こうという考えに発展していくのですね。
  80. 船田中

    国務大臣船田中君) これは予算が認められることになりますれば、なるべく友好国にたくさんおる方が、私はよかろうと思いますが、しかしこれはそう考えましても、なかなか実際問題としては、せいぜいアメリカ、ヨーロツパというようなことでございまして、東南アジア等にも将来の問題としてはぜひ置きたいというふうに希望はいたしております。
  81. 田畑金光

    田畑金光君 時間がありませんので、次にお尋ねしますが、国防会議というものが設けられても、事務局はわずかに十五名、実際独立した機関として活動を期待することは不可能だと思うのです。まして国防会議に諮問するこれらの重要な仕事を、国防会議が自主的に活動する、あるいは計画立案をする、大局に立って、単なる防衛庁という一つの庁の立場でなくして、より広い視野から防衛計画、あるいは国防の基本方針あるいは産業計画、こういうような大きな方針を立案して、国の政策として進めていくには、今町提案された防衛機構のこの構成ではとうてい不可能だと考えられるわけです。試みに、アメリカとかあるいはイギリス、フランス等、こういう国々のこれに類する機関を見ますると、たとえばアメリカの場合は、付属機関として、中央諜報庁あるいは活動調整委員会計画立案委員会、こういうような実際活動する機関があって、こういう機関の活動がやがて国家安全保障会議において国全体の防衛計画あるいは国防の基本方針の立案、こういうようになっているわけです。イギリスの場合においても大同小異であります。このようなことを私たちが見て参りましたとき、今の政府考えておられる国防会議だけで所期の活動を期待するということはとうてい不可能だろうと思うのです。先ほど高碕長官のお話を承わっておりましても、防衛庁の方で早く計画を立てなければ、私の方として産業計画はとうてい立つものではない、こういうような話もあったようでありますが、やがて国防会議のみならず、付属機関等も設けられるという方針であるのかどうか、これを承わっておきたいと思うのです。
  82. 船田中

    国務大臣船田中君) 国防会議の事務局の構成につきましては、この前も御説明申し上げましたように、本年度の予算としては七百数十万円、そうして十五級以下の専任職員を十五人ということでございまして、決してそれは規模が大きいとは申せません。従ってただいま御指摘のありましたように米英等の諸国に比較いたしますれば、きわめて小さな規模だと存じますが、しかしなお関係の深い各省からは幹事として入ってもらい、あるいは兼務の者が十名ないしは十五名ほど入るということになりまして、従ってこの国防会議の議員が大所高所からこのわが国の防衛問題あるいは防衛関係産業の調整等の重要な問題について十分審議のできるように補佐する、こういうことになると任じますので、まあ取りあえず十五名の選任職員をもって構成する事務局というもので間に合うのではないか。もちろん関係の各省庁において、ただいま御指摘のありましたようないろいろな調査あるいは資料の提出というようなことは十分事務局と連絡をとりまして協力してもらうということにいたしたいと考えておる次第であります。
  83. 田畑金光

    田畑金光君 やってみたがうまくいかなかった。結局閣僚の数名が集まっただけで話もうまくいかなかった。そうなってくると行橋機関の設置というようなことになると思うのだが、わが国の場合は、英米のようなそういう膨大な付属機関等は将来とも置かない方針である、こう言い切れますか。
  84. 船田中

    国務大臣船田中君) 事務局の規模が現在予算にお願いした程度のもので、ただいま御説明申し上げたようなもので十分門に合うかどうかということになりますと、これは規模としてはもう少し大きな組織がある方がよかろうかと思いますけれども、しかし国防会議の運営をし、そして十分に目的を達するということのために、まずこの程度の規模の事務局で足りるのではなかろうか、かように考えます。
  85. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 時間の関係でまとまった質問ができるかどうかわからんのですが、まずこの間の……この間から、またあるいは今後も続いておるようでありますが、ビキニ環礁その他で行われております原爆、水爆の実験、これは水爆についても、兵器となった原水爆が実験せられたのだ、かように言われておりますが、兵器として実験せられたということになると、防衛庁においても何と申しますか、非常な関心を持っておられると思うのでありますが、防衛庁としてどのようにあの実験を見ておられますか。
  86. 船田中

    国務大臣船田中君) 原水爆が兵器として使われるという時代になってきておりますので、それに対するいかなる防衛措置を講ずるべきであるかというようなことについては、十分研究をいたして参らなければならぬと考えております。しかし原水爆を兵器として使うということは、自衛隊としては全然考えておりません。
  87. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは防衛庁長官にはそういう一般的なことしか言えぬのかもしらんと思いますが、専門家といいますか、出てきておられるのでは、防衛局長がまあその方面の専門家かと思いますが、どういう実験がなされ、どういうことをあの実験から考えたかという点を防衛局長に御説明を願います。
  88. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 今度の実験は私ども新聞の情報しか存じませんので、それからうかがいますと、水素爆弾の実験、水素爆弾を空中から投下した初めての実験であるというふうに考えております。
  89. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 水素爆弾を空中から投下した、爆弾として投下したということのようでありますが、それに関連してポケット型も可能になった、あるいはいかような大きさの水爆も兵器として使えるようになったと、こう報ぜられている。大体そういうことでしょうか。
  90. 林一夫

    政府委員(林一夫君) これも今申しましたように、新聞の情報より存じないので、どのくらい小型のものが現在考えられておるか、あるいは実験されておるかということについては、こまかいことは存じておりません。
  91. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 こまかいことは存じておられないでしょうけれども、これは兵器として実験せられたと、こういうのでしょう、どういうものも作られるというのですから……。ここに出ておられる中では専門家でしょうから御意見を求めておるわけですけれども、そうしますとどのような形の、大小と申しますか、十五メガトンであったのか、十五メガトン以上であったのか、その辺はわかりませんけれども、まあ十五メガトン前後のものであったろう。なお小さいものも可能、あるいは製造可能のみならず、使用可能になる、こういうことでありますが、そうしますと実験せられたように、航空機から、航空機は52であったのか、47であったのか、52から投下されたと書いてありますが、原子ロケット砲弾をもってもこういう大小任意の原子兵器が扱い得る、かようになったんだと解すべきかと思うのでありますが、それらの点はどういう工合に解しておられるか。
  92. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 水素爆発による兵器が小型化されるということについては新聞によって伺っておるのでありますが、それが今お尋ねの、たとえば誘導弾の頭につけられるようになったのかどうか、なるのかどうかということについては全然わかっておりません。
  93. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあわかっていないとおっしゃるけれども、それは正式には調査といいますか、知ろうとなさる努力はせられるだろうと思う。新聞の模様で、新聞で読むだけだということでありますが、正確な知識はどのようにしてそれでは得られるのですか。
  94. 林一夫

    政府委員(林一夫君) そういう問題につきましては、米国においても極秘に、秘密扱いにしておると思う。従って向うからそういうことを正式に聞くということもできません。結局一般に公表されておる範囲における知識より現在においては知ることができない実情であります。
  95. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 公開されておる知識というのは先ほどの新聞その他でしょうが、新聞において実験についても、これは日本の新聞のみならず、アメリカの新聞にも書かれてございます。それからアジアの各国の兵力配置についてもニューヨーク・タイムスを引いて堀君が質問をいたしておりましたが、そういう点も秘密ではない。そうすると何と申しますか、何かこうえらい秘密のように考えられておりますけれども、私が質問をしておる程度のことは秘密であるとは思いませんが、今お尋ねをいたしましたのは、そういう点が答弁できるようにあなたたちが知識を得られるのは、得られるか、あるいは得られるようになるのはいつどういう方法でやられるかということをお尋ねしたい。
  96. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 現在のところは公表されておる限りにおいて知り得るのであります。その範囲においてはできるだけ知りたいと、こういうふうに努力はいたしておるのであります。
  97. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それは先ほどの、まあ長官からお話がございましたが、こういう水爆が大小任意に作り得るようになった、あるいは使用し得るようになったということと、それから日本の防衛という問題とに関連をしてどのように考えられるか、あるいは考えておられるか承わりたい。
  98. 林一夫

    政府委員(林一夫君) これは水爆が現在どの程度のものができておるか、あるいは原子砲弾がどの程度のものまでできておるかということは、まだはっきりしていないのであります。これに対してわが方の防衛をどうするというような点については、別にはっきりしたことは考えられないと思います。もちろんばく然と今まで知り得た原子兵器に対するわが方の備えはどうするかということについては、もちろん今後研究していかなければならない点であろうと思っております。
  99. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今のお話の従来考えられておった、従来考えられておったというのは、まあここで出ましたナイキ、マタドール、あるいはその他ロケット、あるいはB52あるいは47等、運搬兵器を含みまして質問をし、あるいは御答弁を願ったわけでありますが、それらの爆撃機あるいはロケット砲でもってどの程度の水爆も使えるのだ、こういうことに、まあこれは明らかになったという点であろうと思います。これに対していかに、何と申しますか、対処するかと、こういうことについては、従来考えておったところはあるがと、こういうお話ですが、その従来考えておられてきたところを一つ説明を願いたい。
  100. 林一夫

    政府委員(林一夫君) ただいまの水爆が小型化されて誘導弾の弾頭にこれを装着できるというようになったということはまだ聞いておりません。私どもの今まで知っておるところは、まだそこまではいっていないと、こういうふうに聞いておるのであります。一般的に申しまして、原爆に対する防衛、あるいは原子兵器に対する防衛というような点につきましては、世界の各専門家がいろいろ研究意見を発表しておるようであります。そういうような点についてはわれわれも大いに調査し研究しておるのであります。
  101. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 どうも答弁が何と申しますか、遠慮しいしいで、秘密に秘密にというお話でありますが、そういう秘密的な態度については大へんな不満でございます。そういうことでは私は国民の防衛ということはこれは不可能だということを申し上げますが、できるだけわかっていることは率直に一つ御披瀝を願いたいと思うのです。  それでは、これは資料をもらいましたけれども、アジアにおける原子兵器の配置状況というのはございませんが、「米、英、ソの原子兵器の現状」というのはいただいております。アジアにおける原子兵器の配置状況というものをお教えをいただきたい。
  102. 林一夫

    政府委員(林一夫君) アジアに原子兵器があるかどうかという点でございますが、沖繩に原子砲が来ている、果して原子弾頭のものか、原子爆弾が来ているか、どうか存じませんが、原子砲が来ているということは承知しております。
  103. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それだけでしょうか。アメリカの原子砲が沖繩に来ているというだけでしょうか。その他については、米、ソ、それから中国、日本等についてはどのように御承知でしょうか。
  104. 林一夫

    政府委員(林一夫君) ただいま申し上げました沖繩だけにあるということを伺っております。
  105. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは先ほど来御説明を聞いて多少疑問を持つのですが、先ほど来御質問申し上げているようなことは、防衛局長に御質問して答弁を得るのが適当なのでしょうか。それとも防衛局長じゃなくて、別に統合幕僚会議議長なり、あるいは各幕の長なり、そういうところから御答弁を願うのがほんとうなんでしょうか。多少答弁を聞いて疑問を持ちますから、その点を長官にちょっとお尋ねをいたします。
  106. 船田中

    国務大臣船田中君) 各幕僚監部で持っております情報は、全部内局の者が知っているわけでございまして、ただいま防衛局長から御答弁申し上げたことが全部でございます。ことに原水爆ということは、国防のうちでも最も機密にされていることでございまして、これはアメリカ側においてもその内容等についてはほとんど何も公表したものがございません。従って米軍に連絡いたしましても、その実情を詳細知るということはその手段がないわけでございます。
  107. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは沖繩に原子砲があるということ、これは国防会議構成等に関する法律が流れた去年、私どもも知りました。その際にあわせて、日本にオネスト・ジョンが来ている、それからグアムでありますか、南方の島に原子兵器と申しますか、貯蔵をされておる、こういうニュースがございましたが、そのことと、それから今いただきました資料、ほかにもお配りをいただいたのだと思いますが、十分まだ読む間がないのですけれども、その中の3の「米、英、ソの原子兵器の現状」というところに、ソ連の原子兵器がアジアにあるということは書いてないのですが、あるいは「原子力潜水艦はないらしい」、こう書いてあるのですが、ソ連側においてはアジアに原子兵器がまあないと申しますか、あるいはあるということを聞いておらぬ、こういうことなんですか、その辺を一つ
  108. 林一夫

    政府委員(林一夫君) ソ連がアジア方面に原子力を持っておるというようなことは聞いておりません。
  109. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 グアムについてはどうです。
  110. 林一夫

    政府委員(林一夫君) グアムについても同様でございます。聞いておりません。
  111. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それではさっき一番初めにお尋ねをいたしましたけれども、この中に、「アメリカ空陸軍連合演習」の陸軍関係について、「原爆戦における効果的地上作戦実施のため陸軍は機動性の増加と柔軟性、敵の配置に関する情勢処置の技術等にその関心を集中している。」、こういうことで「機動性の増加と柔軟性」といったような点について研究がなされておる。で、日本においても、水爆もこれだけ任意に作り得る、あるいは運び得る、また使用し得るということにだんだんなって参りますというと、日本自衛隊なりあるいはあなたたちのいわれる防衛組織についてどのように対処していくというか、あるいは研究をしていくということをやっておられるか、あらためて伺いたい。先ほどの答弁では十分でございませんので。
  112. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 今までの演習の結果、またはこのごろのNATO方面の専門家の研究によりますと、原子兵器に対する防衛方法としては、ただいまおっしゃったように機動性ということと、総合力を与えるという点が大事な点であるというふうにいわれております。従いまして、今後このような部隊編成なり運用については、こういうような点を考慮して研究していかなければならないというように考えております。
  113. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 SEATOの演習について――これは十分検討する間がないから、あるいは的はずれをしておるかもしれません。片言隻句をとらえることになるかもしれませんが、しまいのところに「五〇〇〇キロを離れた日本より急速に所望の兵力を敏速に必要地域に集中できたというその機動力は大いに評価され」云々と書いてあります。言いかえると、日本からもSEATOの演習に参加されたということが書いてあるわけですが、私どもの聞きますところでは、これにはあまり書いてないようですが、SEATOの演習においてもあるいはNATOの演出においても、最近の演習においては、原水爆がその初期において非常にたくさん使われるという演習が行われておる、こういうことでございますが、さようでございますか。
  114. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 最近の演習にはやはり原子兵器を用いるということを前提として行われているようでございます。SEATOの演習は、これはいかにしてその加盟国の軍隊を早く集めることができるかというような点が一つの演習のねらいであったと、こういうふうに聞いております。
  115. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 その加盟国の軍隊がいかに急速に参加できるかというのが演習の主目的だ、日本からも敏速に必要地域に集中できるということが評価されたと書いてありますが、日本からも参加をしたかどうか。それからSEATOの演習についても原爆がたくさん使われた演習が行われた。放射能の残っております跡に相当の部隊が突っ込んで戦闘をやるという演習を行われた、かように聞いておりますが、その点はいかがでございましょうか。
  116. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 私どもの知っておるところでは、ここに記載してある程度のことでございまして、どの程度深く今おっしゃったような点が行われておったかということについては、まだ詳細なことは承わっておりません。
  117. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 詳細なことは承わっておりませんと、で、ここに書いてあることですから、日本からSEATOの演習に参加したということは、これはまあ間違いがないでしょう。  それから水爆かどうか知りませんけれども、原爆が使われたということはお認めになったのですが、水爆を含んで使われるような演習が行われたという点はどうでしょうか。
  118. 林一夫

    政府委員(林一夫君) そのようなものがこの演習に用いられるということを前提として演習が行われたということは聞いておりません。
  119. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それではここに書いてございますこの参加兵力の中に、たとえば第四十九夜間爆撃飛行団、その他空軍の参加があるわけでありますが、その空軍はどういう空軍、飛行機が参加したのでしょうか。
  120. 林一夫

    政府委員(林一夫君) ここにありますように、空軍は空輸部隊、夜間爆撃飛行団、海兵の飛行団、こういうものが参加しておる。どういう機種のものがこれに参加しておるというようなことは詳細存じておりません。
  121. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ここにお出しになったのには書いてございませんが、たとえばオーストラリアからは戦爆編隊、これは戦闘機、爆撃機両方でしょうが、あなたの方でこれを書かれた原本があるでしょう、情報があるでしょうが、どういう飛行機が参加したと聞いておられるかどうか。
  122. 林一夫

    政府委員(林一夫君) オーストラリアから参加しておりますのは、駆逐艦二隻と、大隊からの小部隊、戦爆の編隊が参加しておる……。
  123. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 書いてあることは何でもいいですよ。
  124. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 以上だけが大体はっきり申し上げられる点であろうと思います。
  125. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 書いてあることは、どこにどう書いてあるというのは、読めばわかりますが、これの原本にあったところで、あなたの方が知っておられるのは別にあるだろうから、どういう飛行機が参加したか、私どもはこれはまあ別のところを探してくればあるいはあると思いますけれども、B52あるいは47といったような重爆撃機が参加したと考えられる、あるいは原水爆が使われたということを聞くから、その点をあんまりあなたが否定されるというか、肯定されないから――簡単なことを肯定されないからそういう聞き方をするわけなんです。原水爆が使用せられたという点はお認めになったから、そのことをどの程度に使われただろうかということを御説明願えれば、質問の趣旨はそれで十分達成するわけです。どうなんですか。
  126. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 原水爆がこの演習で使われたということは聞いておりません。ここにありまする説明は、別に原本があって、その原本の中からこれだけを摘記したというのじゃなくて、私どもの方で知り得た情報でこれは間違いなかろうというような点をここに書き出しておいたわけであります。これ以上詳細なことは別にほかに知っているわけじゃないので、これが私どもの知り得たそのままでございます。
  127. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それではネバタの演習において、その演習の目的がこれは2の分、2の分についてはティーポットといいますか、新型原子兵器の諸効果というのが演習の目的でありますから、これでは原子兵器が使われたということはこれはもちろん否定するわけには参らない。そこで近ごろの演習において、あるいは戦闘を予想すると、原水爆あるいは原子兵器が使われたということをこれは考えざるを得ない、考えられている、こういうことでありますが、それが今の日本自衛隊にどのように影響をしてくるか。この間、これは局長でなくて別の人であったかもしらぬと思うのでありますが、富士学校で今やっておられることを承わりますと、バクテリアとかあるいは放射能について研究をし、あるいはそれの研究に基いて若干の訓練が行われている、こういうことでございますが、今後水爆についてもいかような型の水爆も使用できる、こういうことになりますというと、さらに自衛隊の中で現在行われております研究、訓練等が強化されて参ると考えるのでありますが、それらの点についてはどのような考え方をされているか、あるいはどういう御意見を持っているか、承わりたい。
  128. 都村新次郎

    政府委員(都村新次郎君) ただいま富士駐屯地にございます化学教育隊におきましては、万が一化学兵器が使われました場合これを防衛する必要がございますので、そういう見地から、お示しになりましたように放射能だとかあるいはバクテリアだとか、そういうものによって汚染された器物の識別状況、応急手当並びに化学装備品の整備補給等、化学防衛上必要な知識の修得に努めております。それに関しまして必要な資料といたしましては、米側からも供与を受けましたフィルムだとか、スライドあるいはチャート、こういったものを用いまして、おもに座学を中心に教育をいたしております。
  129. 千葉信

    ○千葉信君 議市進行について。高碕長官に対する質疑の関係もありますから、ここらで午前中は休憩にして、午後一時半ごろから再開の運びにしていただきたい。
  130. 青木一男

    委員長青木一男君) それでは暫時休憩して、一時半より再開いたします。    午後零時二十一分休憩    ――――・――――    午後二時十九分開会
  131. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  国防会議構成等に関する法律案を議題として、質疑を継続いたします。
  132. 江田三郎

    江田三郎君 午前中高碕長官にいろいろお尋ねをしたんですが、途中でしばしば水が入りましてはっきりしません点がありますので、今日午前中に言われたことは、兵器生産については原則としては民有民営でいくと、しかし特別の技術を必要とするものについては特に国が助成をすることもある、しかしどういうものかということは今は何にもきまっていない、こういうことですね。そこで、そこから関連してお尋ねするわけですが、今日本の現有の兵器産業の中で、特に銃砲弾については相当設備過剰というふうにわれわれ聞いてるわけですが、この点は一体設備能力と現在の生産量とどういう工合になっておりますか。
  133. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その問題になりますと、通産省の所管になっておりまして、今日は通産省のその方の人も来てもらうことになっておりますから、参っておると思いますから政府委員からお答えいたします。
  134. 江田三郎

    江田三郎君 それじゃまあ通産省から見えてから聞きますが、まあ実は私が高碕さんにお尋ねするのは、今度の国防会議には通産大臣というものはこれは会議の議員になっていないんでありまして、企画庁長官がなるわけなんです。従ってあなたの力が少くともこういう問題については窓口になるので、当然あなたの方で心得ておられると思いましたのは私の不労でございました。(笑声、「そうじゃない、高碕さんの不覚だよ、それは」と呼ぶ者あり)それじゃ一つ問題をかえて、午前中のあなたの答弁でいきますと、真意か、どうかしりませんが、将来の武器の日本の必要量以上の生産については、これは東南アジアヘの輸出というようなことを考える、こういうことでありましたが、そこでその点をもう少しお尋ねしておきたいと思うのです。たとえば先般あなたが手がけられたところのフィリピンとの賠償交渉、あれには当然今後の貿易問題もからんでおると思います。あるいはすでに成立したビルマとの賠償交渉、こういうものを通じて実際に東南アジアへの武器の輸出が可能と考えておられるわけでしょう。この点はまあしばしば過去において日本が東南アジアへの武器の輸出ということは言われてきましたけれども、こういうことはかけ声だけで私どもは一向実現しなかったと思うのですが、最近あなたがそうおっしゃるのは何か根拠があるわけですか。
  135. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この問題は、私は純経済問題として考えましたときに、日本の技術の水準が東南アジア諸国の技術の水準と比較いたしまして、相当上回っておる、進んでおる、こういう点から考えまして、防衛産業というふうなことにとらわれずに、全体の東南アジア諸国における機械類の中の高度のものはなるべく日本が供給し得るようにしていきたいと、こういう考えから持って参りまして、防衛産業の方においても日本と一緒にからんでこれを考えることはいいことだと私は経済的に考えておるのであります。しかしながらけさほど御質問になった、これは非常に政治問題とからんでおることであります。そういうふうなことの結果、ただ経済問題だけを考えた結果、相手国の戦争を誘発するとかあるいは戦争をしておるものを助けると、そういうふうなことに相なっても、東洋の平和を保つという上におきまして、できるだけ戦争を防止するということの方針がわれわれがとっておる方針であります。それと接触する、それと反するということになりますと、これは経済問題だけを考えるわけにいきません。非常にこの点はデリケートな点で、また重要な点だと考えておりますから、輸出をするということは単に経済的な問題だけを考慮すべきものじゃないと、こういうふうに思っております。
  136. 江田三郎

    江田三郎君 そうすると、まあ午前中のお答えと少々違ってくるわけですね。大体今の答弁でも、やっぱりちょっとはっきりしない点があるので、日本の技術の方が進んでおるんだからということで、東南アジア貿易を考える。そこであなたの答弁を聞いておりますと、武器といいますか、兵器といいますか、そういうものの輸出というものを非常に軽く考えておられるんじゃないか、一般の機械類と同じような考え方をしてるんじゃないか、その点はまああなたが経済界の出身ですから非常に気軽く考えておられるんじゃないかということを私感ずるのですが、しかしこれは同時に非常に危険なことなんでして、今日本がほんとうに平和を維持していくということを考えた場合に、どこかへ日本製の武器が出るということは、これは容易ならざる影響力を持ってくるわけです。そこでこの際私はあなたに一体日本政府としては武器の輸出について本木的にどういう方針を持っているのかということを、この際伺っておきたいと思うのです。先般中近東の問題もありましたから、それはまた外務大臣の問題かもしれませんが、しかし今これからこの問題でこの委員会に外務大臣を引っ張り出すといっても、河野農林大臣が帰っこられたりすると、外交問題がいろいろやかましいことになって、委員長の御機嫌が悪かろうと思いますので、あなたから答えていただきたい。
  137. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 午前中にお答えいたしておりましたことは純経済的の問題から考えてお話しておったようなわけでありますが、まあ今のお話のごとく昨年バンドン会議に参りまして、われわれがこの東洋においては、またアジア・アフリカ会議におきましても、どうしても将来は国際間の問題を、もちろん国内問題としても武力をもって解決するということはやめようじゃないかと、全部話し合いで行こうじゃないかと、こういうことを申し合せをした問題から申しますと、日本が経済だけの問題で注文があったので、売るというふうな工合にも考えられないというわけでございますから、その点につきましては、午前と午後と今私の考え方が変ったとあなたはおっしゃるけれども、私の考えはそこにあったわけでございまして、今朝経済問題だけにああいったような意見を言ったようなふうでございますので、もちろん将来の問題といたしますれば、平和を、どうして国際的の平和を保つかということについては、日本としてもこれに対して寄与することを十分考えなければなりません。しかるに一方において武器をどこかに商売だから、もうかるから供給しておる、それによって平和を撹乱するというようなきっかけを作るということは、厳に慎しまなければならないと思っておるわけでございます。ただ私午前中に申しましたことは、どこの国においても、この間フィリピンに参りましても、あるいはインドネシアに参りましても、どこの国も自衛というものについては、ある程度武器を持っておったので、そういうものは日本に安くできれは、これをやればいいじゃないかということを簡単に考えておるわけでございますので、深刻に十分に考えましたときには、今の江田委員の御質問のごとき御意見と私はもう全然一致しておるわけですから……。
  138. 江田三郎

    江田三郎君 そういう今の答弁だけを聞いて、午前中のやつは聞かなかったということにすればいいのですが……。そういたしますが、ただあなたが経済問題としてはごく軽くそういう考え方をするのだということが、実は私は非常に大きな問題だと思うのです。いわゆる死の商人というもの、死の商人の諸君にしたところで、自分の輸出したものによってすぐ国際的に紛争を起す、一方の側の力をとめることは、また国際的な一つの紛糾の種というふうなことを考えないで、おそらくそろばんだけから、純経済的に考えるのだろうと思います。しかし結果においては、それは死の商人という行為になるわけです。その点は特に経済企画庁長官としては慎重にお考えになり、慎重に御発言を願いたいと思うのです。そういうような工合に兵器輸出というものは軽々しく行なってはいかんということになると、またもう一つの問題が出てくるわけでして、午前中に問題にしました国内の兵器生産の能力、今の兵器というものを考えてみますれば、おそらくどういう兵器、まあ極端に例外的なものを除けば、どういう兵器にしたところで、現在の日本自衛隊の需要量ということを考えたら、これはとても私は資本家的な計算には乗ってこない。国が特別な補助をすればとにかくとして、資本家的な計算で優秀な施設を持って、近代的な施設を持って、それで今の自衛隊たけの必要とするものを供給したのでは、これはそろばんに合わんと思うのです。しかし一方において兵器輸出というものは、そう簡単にはできないということになると、もし私がいう今の前提を肯定されるとすれば、一体その調整はどうされますか。あなたはこれは、国有にはしないのだ、原則として民有民営でやっていくという場合には、一体これをどう調整していくのですか。
  139. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) そのお考えにつきましては、私はこの防衛産業というものを、別の仕事とせずに、全体の産業の中に繰り込んでいける程度においてやっていきたい。しかるに防衛産業の中に技術においてはトップをきっておる仕事もあるから、これを研究することはひとり防衛産業のためだけではなくて、全体の産業の技術を向上せしめるがために必要だと、こう存じております。しかしこれがために非常に大きな経費を費して、そしてその生産を日本でやるのがいいかどうかということは、これは全体的に考えなければならぬ問題だと存じまして、現在におきましても、西ドイツのごときは、いろいろな産業は復興いたしておりますけれども、防衛の産業だけは、これは自分の国で自給するよりも、ほかの国から買った方がいいんだと、こういう方針をとっておるようなこともありますから、そういう点もわれわれは考えなければならぬものと思っております。
  140. 江田三郎

    江田三郎君 私は何も抽象的なことを言っているわけではないのです。そこで先ほど銃砲弾の生産能力、それと現況ということを問題にしたわけなんでして、今私が言った問題は、現実にはすでに銃砲弾の生産の中に現われておると思うのです。そこでこのあなたの特殊な技術ということを盛んに言われますが、それと一緒に問題をされちゃいかんと思うのです。特殊な技術というものは、ただ兵器生産だけでなしに、日本の工業の近代化全体に役立つのだからということで、問題を逃げられてはいかんと思うのでありまして、そういうことでなしに、現実に銃砲弾の場合には、生産施設過剰という問題があるわけなんですから、一体こういう問題はこまかな数字はどうでもよろしい、通産省に聞かんでもよろしいが、現実に起きている銃砲弾のような施設過剰の問題は、どう解決されるかということをお尋ねします。
  141. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はこれは終戦面後この当業者が、日本政府との話し合いでなくて、むしろ進駐軍との話し合いによって、ある程度銃砲弾を作るということを実行し、それに適合するような工合の設備を作ったと、こういうように私は記憶いたしておりますが、当時進駐軍の注文が非常に多かったということのために、無計画に相当大きな設備をしたのだろうと、こう存じておりますが、それはどの程度にやっているかということは、通産省の政府委員が参っておりますから、それが今後の日本消費とどういうようにマッチするかということについては、政府委員から説明いたします。
  142. 江田三郎

    江田三郎君 私も時間がないのですから、数字説明されるのは、してもよろしいけれども数字説明を今聞かなくても、問題の性格というものははっきりしているのですよ。あなた自身のこの問題の解決方法は、一体どうなんだということなんです。国防会議委員として出られるあなたのお考えはどうだということを聞いているのです。
  143. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はこれは日本において将来消費するという見通しのついているものは、この設備を残す必要はありますが、その必要ない、以上のものはこれは整理すべきだと存じております。
  144. 江田三郎

    江田三郎君 しからばその整理、必要以上のものを整理するという場合は、これは業者の力が無計画にやったことであるから、従ってこれに対しては国としては一切責任をとらない、こういう基本方針でいかれますか。
  145. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その問題はよく現状を調べました上で、(江田三郎君「さあさあその辺からだ」と述ぶ)それで実行していくべきだと存じております。
  146. 江田三郎

    江田三郎君 この問題は高碕さん御承知のように、今始まった問題ではないのですよ。相当長く問題になって、そうして一部の人々からこれを国が買い上げるという意見も出たり、あなた方の力でも、この問題については個人的にもいろいろ相談を持ちかけられ、いろいろお考えになったと思うのです。で、やはりこういう問題について、早くきっぱりとした態度をとっていないと、御承知のようにこの兵器生産というものは、そうあなたの言われるように優秀な機械を作って、兵器のために入れた機械を、ほかへ転用するといっても、そう簡単にできるものじゃないのですから、一たんそれを作れば、作ったがために、その工場を維持してやるがために、この発注量をふやしてやらなければならんというような、防衛のための兵器生産ということが、兵器化産のための防衛能力という逆なことも出てくるわけなんですから、これはやはりもっときっぱりした方針をお示し願いたいと思います。今そういうことはまだきっぱりときまっておりませんか。
  147. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) はっきり申し上げますが、まだそこまで検討いたしておりません。十分早く検討いたしまして、お期待に沿うようにいたしたいと思います。
  148. 江田三郎

    江田三郎君 そういう御答弁だけだからあなたは気楽だと言うので……、困るのですよ。しかしまああなたは人柄を見ているというと、悪口言う気にならんから、私、あまり言わんのですがね。しかし私は自分の与えられた時間がありませんから、これでやめますけれども、とにかく防衛産業についても、それから国防の長期計画についても、何を聞いてみてもはっきりしたことは一向わからない。こういう状態では――それで国防会議を早く作ってくれ、作ってくれと言うのだけれども、私はそんなこういう状態では、国防会議を作ってみたところで、一つもかけるべき議案はないじゃないか。そこで頭をめぐらせば、結局自主的な案というものをかけるのじゃなしに、アメリカの方から示される案が国防会議にかかっていくのじゃないか。それ以外にないのだろう、こういうことも考えざるを得なくなるわけですが、しかし今の私の受け持ちの時間、ちょっと過ぎましたから、私はこれでやめておきます。
  149. 松浦清一

    ○松浦清一君 去年の特別国会に同じこの法案が提案されましたときに、ちょうど審議の過程にに経済自立六カ年計画というものを発表されまして、これは経済自立六カ年計画の中に、防衛産業というものが、防衛生産というものが含まれている、間違いないと思われるが、企画庁長官に御出席を願って、そのことを一つただそうではないかということで、あなたの御出席を求めた。その際にあなたのおっしゃったことは ただいまここに速記は持っておりませんけれども、私の記憶に間違いかなければ――今計画をしている経済自立六カ年計画というものは、まだ未定稿のものである、最終的に閣議の了承を得ていない、当時の経済審議庁の中で、こういう計画でやってみたらどうかということなので、このことを実現をするためには、まだまだ十分検討しなければならんし、国民全体の協力によってこれが遂行されることを念願としている、こういうふうな御答弁をされて、防衛関係のものがどの程度に含まれているかということを御答弁はなさらなかったのであります。それはいつごろできるのかと言ったところが、それは早急に一つ正確なものを策定する予定でいるという御答弁をいただいたと、私は記憶している。あなたがもし企画庁の長官の席を去られておれれば、そのときのあなたの御答弁はここでどうのこうのと言う筋合いではございませんが、幸か不幸か、再びこの国会に同一の法案が現われてきて、あなたと相再会する機会を得たのです。けさほどからの江田委員の質問に対する御答弁がどうも前の時と同じような御答弁をされておったように思うわけです。ところが、今度の五カ年計画は閣議で決定された、日付を私は覚えませんけれども、この計画書にしるしてある日付から言うと、昨年の十二月の二十三日、これがきまった日か、これが印刷された日か知りませんが、とにかくこの計画は閣議で正式に決定されたものと了承をしておるわけです。しかも、三十一年度の防衛予算は、国庫債務の義務負担行為を含めて九百十億円に達する、この中から一体どれだけのものが消費され、どれだけのものが設備されるのかということの数字は私は明確に知りませんけれども、それだけ大きな金を使われるのだから、いわゆる防衛生産がこの計画の中に含まれていないということはないと思うのです。そこで大へんあなたはお忙しいようだから、簡単に通り抜けの御答弁をされては席を立とうとなさるのかもしれませんが、その辺のところが得心ができないということで先般来御多忙中のあなたに御出席をお願いして十分御説明を願いたい、こう考えてきたわけなので、私どもの尋ねたい目的の核心をつかんでいただいて、その辺のところを一つ詳しく御説明を願いたいと思います。
  150. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この前の国会で御答弁いたしまして以来、経済六ヵ年計画、これを今度変更いたしまして五カ年計画にしたのでございますが、これはもちろん閣議の決定を経て五カ年計画を立てておるのであります。それで、その計画におきましては、大体五カ年における経済的の支出というものにつきまして、防衛産業にどれくらいの支出をし得るかということを、これを検討いたしたわけであります。この昭和三十一年度におきましては、防衛分担金を入れまして、かれこれ一千四百億円という、これは確実な数字でありますが、そういうふうに予算をきめておるのであります。それは国民所得幾らになるかと申しますと、大体二%強になっておるのでございます。それぐらいの程度で五カ年間はやっていって、日本経済自立計画の達成に対しても、またそのほかの社会保障制度におきましても、大きな差しつかえはない、こういうことでこの五カ年計画は進んでおるわけであります。しからば、この一千四百億円、つまり国民所得の二%強というものは、これをどういう方面に何に使うかという問題につきましては、これは五カ年間における防衛計画が完全にできまして、それに対して、その金をどういうふうに振り分けるかということにいたさなければなりません。ですから、防衛計画はいまだ完全にこの五カ年間の計画はできていないわけです。これは今作っておる最中であります。これは経済企画庁としてやるべきものではありませんで、防衛庁なり通産省なり、全体とよく協議した上できめるわけでございまして、それに対して負担する金額のワクというものだけは、ここにきめられておるわけでございます。
  151. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは防衛庁長官にも関係のあることですが、ただいまの企画庁長官説明でございますというと、国民総所得の二%は防衛関係費用に、言いかえれば防衛生産に出し得る……。
  152. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 二%強です。
  153. 松浦清一

    ○松浦清一君 二%強は出し得る、そういうことになると、これだけの防衛力を持つ必要があるということを前提にして二%強を割り出したのか、日本の経済余力が二%以上あるというところから、その防衛力の漸増というものを割り出してきたのですか、これはどっちなんですか。いろいろ判断の違いがありまして、私どもは今の日本の経済力の全体から判断をして……理屈を言えば、社会保障制度の拡充はもっとやらなければならぬ、水害、災害の復旧ももっとやらなければならぬ、そういうような面から判断をするというと防衛関係費用を出すということは困難だ、このような経済的な見地からいくと、そのように判断をしておるわけです。あるいは判断の相違があるかもしれませんが、防衛の必要のためにそれだけさいていくということは、それだけ余力があるから防衛力を漸増していくというのか、その辺の考え方はどういうことになっておりますか。
  154. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この二%強という数字は、過去四年間における実積を検討いたしまして、これをもって出た数字であります。そうすれば、それくらいの金額を出して、それを出すものとして日本の経済にどういう影響があるかというふうなことを検討いたしました結果、これならば国民経済自立計画を立てる上においては差しつかえないという数字でありまして、過去の実績と将来における国民経済の負担力ということから考えて割り出された数字であります。
  155. 松浦清一

    ○松浦清一君 日本の経済計画を立てていく上において、昭和二十九年度の千三百二十七億の防衛関係予算の中から三十年度に二百三十四億円も使い残してきた。あなたが一番御承知の通り日本の経済というものはまだ弱体です。まだまだほかになさなければならぬことがある。ところが、あなたの説明によると、これだけは出し得る、そういう見解から防衛予算というものは組まれていく、こういうふうに考えておるようなお答えでありましたけれども、それほど裕福でない日本の財政の中から、相当いろいろなスキャンダルが起るような問題を起してまで買いたいものを買いまくって、そうして二百三十四億円も使い残している、こういうような経済の立て方はあなたは正しいとお考えですか。
  156. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは過去の実績からいたしまして、その程度のものは負担できるかいなやということを検討いたしますわけでありまして、これを考えに入れて、あるいはこれは多過ぎるとか、あるいは少な過ぎるというような意見は個々にございましょうが、これくらいの限度ならば大体間違いない、間違いないということは、日本の経済の負担力として間違いはない、こういうことを断定したわけであります。
  157. 松浦清一

    ○松浦清一君 必要最小限度の予算を使っていく、こういうことなら防衛計画のよし悪しとか、あるいは防衛力を持つことのよし悪しということの議論は別として、それはまた許されるところもある。ところが、この貧弱な財政の中から、防衛関係予算というものを頭から一番の強い力で取っておいて、そうしてなおかつ使い残していく、だからといって、まだまだ使いたいほうだい使われても困るのですけれども、残してくるというような余裕のある、そういう余裕のある経済の立て方、予算の立て方ということは当然だとお考えになりますか。どうでありますか。
  158. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは防衛庁の実行におきまして、どういう結果になっておるということをよく検討いたしまして、そういうふうなものが年々たくさん残ってしまうとかということになれば、これは当然私は減じていくべきものだろうと思いますが、私の申し上げることは、現在の日本の経済力から申しまして、国民所得が増加してくれば、それに準じて自衛の力を持っていくべきのが順当だと存じます。国民所得の増加に応じて、あるいは減少した場合には減らさなければならぬ。国民所得に応じて二%強のものはこれは差しつかえない、こういうことを外国の例等もよく調べましてきめておるわけなんでございます。
  159. 松浦清一

    ○松浦清一君 国民の総所得がだんだんふえてくるに従って、現状から推して、大体総所得の二%強は防衛力にさき得ると、あなたは経済の立て方の上から判断をしておられる。そうすると、この五カ年計画が完了し、あるとかないとかいろいろ議論される点でしょうが、防衛計画の五カ年計画もあるものとして、今までは正式に決定をしておらんから、そういうものは単なる案に過ぎない、こういうふうに政府は御答弁になっておられるわけです。あるものと判断して、この五カ年が済めば、さらに国民所得に余剰が起きると、やはり二%強は防衛力増強にさき得るものとして、そういうふうに永久性のある計画をお立てになるつもりでございますか。五カ年でピタッととめるのじゃなく、将来ずっと……。
  160. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 五カ年先のことを今議論するわけにいきませんが、大体国家が独立している以上は、ある程度の自衛力というものを保持しなければならぬ。自衛力というものはどの程度にとどめればよろしいかということを経済的に見ましたときにおきまして、ある国は、インドのごときは国民所得の六%、ドイツは幾らとっておるとか、イタリアは幾らとっておるとか言われますが、私は日本の現状から見まして、天然資源も少く、そういう貧弱な国でありますから、大体二%強をもっていったならば、これは国民の生活に大きな影響なくやっていけるものと、こう存ずるわけであります。
  161. 松浦清一

    ○松浦清一君 そこでこれはまた防衛庁長官の御関係のあることですから、今の日本国民の立場からいって、政府であるとかないとかいうことをいってみても、それは昭和三十五年の末には、陸上の制服の隊員が十八万、それから艦艇が十二万四千トンですか、飛行機が千三百機ですか、総合計二十七万になる。数字の違いはあるかもしれませんが、とにかくそういう計画を立てておると国民は思っておる。幾らそういうことを国会の中では、政府としてはきめておらぬと、こういうふうに強調されても、しばしばこれは新聞に報道されて、現在日本考えておる三十五年末における防衛力の総力というものは、その辺のところだということを判断しておる。そこで今までたびたびそういうことを尋ねて、これは正式決定のものでないと言いますから、それをあるとかないとかいうことは、私は尋ねようとは思わんが、ここで国会の審議を通して、一体日本を防衛し得る力の限界というものは、いわゆる二十七万程度でもうとめるのだと考えておられるのか。今あなたのお説によるというと、三十五年がきても、やっぱり国民総所得の二%強くらいは日本の経済力の上から判断をして、防衛力漸増のためにさき得るものだとあなたは判断しておられる。五カ年計画が済んでもずっとそれはどんどんと延びていく、このように判断をされるような御答弁であった。そういうことでございますか。
  162. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私どもの申し上げましたことも、今おっしゃる通りでありまして、五カ年過ぎた後においても、国防といいますか、自衛力を持っていく上において、それくらいの国防費は負担していくべきものだと存じまして、でき得るものだと思っております。
  163. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうすると、国民の大多数が、大体三十五年末の日本の自衛力の総量というものを推定をして判断しておる。それから先も際限もなく、やはり国民所得の増大に従って日本の自衛力はふやしていく、増強していく方針だと、このように理解をして間違いないわけですか、今後の方針としては。
  164. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは増強になるか、あるいはもう初めに作ったものが五年、十年先には使えなくなる。そういうこともありますので、そういう点はよく考究することが必要だと思いますので、今日国防会議というものをやって、よく意見を検討してみたい、こう思っておるわけであります。
  165. 松浦清一

    ○松浦清一君 いやいや、それはいろいろな施設だとか、装備などという点は、それは何年かたてばやりかえなければならんということになるでしょう。だから相当その金をつぎ込んでいっても、増強にはならぬという点もあるでしょう。しかし兵力ですな。兵の数、隊員の数というものはこれはどういう法でそれをとっていくかこれはしりませんけれども、ふやそうと思えばふやされるのですね、そういう手段でやれば。それを尋ねておるのです。二十七万が三十万になり三十五万になり四十万になることも経済が許されればあり得るのかと、こういうことです。
  166. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私のお答え申し上げておりますことは、日本の経済力という全体の経済から眺めておるわけでありまして、その兵員の数を減らすとか、ふやすとかという問題は、これは防衛庁がきめるべきものだと思っておりまして、経済的の見地から、この程度のものならば出し得る、また出さなければならん、こう存じておるわけなのでございますが、ただいまの御質問でありますと、これは防衛庁長官からお答えした方がいいかと存じますが……。
  167. 松浦清一

    ○松浦清一君 防衛庁長官はずいぶんたくさん答えられて、それから先のことを今尋ねてみても、先のことはわからぬとおっしゃるだろうと思う。私があなたにここで尋ねておるのは、日本の経済力のまた経済計画の判断の上から、そういうことはなし得るものと判断しておられるのかということをあなたに尋ねた。しか水先ほどお話しがあったように、あなたは日本の経済企画を立てていかれる立場におられるし、また国防会議ができれば、この会議の議員として中に入られる人だから、今の国防会議の中に入られようとする閣僚五人のうちでは、あなたが経済的な面から、見た一番大きな責任をもった立場におられるのですから、経済面から見たことだけをお答え下さい。あなたどっかへ行かれるでしょうが、また行ったあとで防衛庁長官に別に尋ねますから……。
  168. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この経済力から判断いたしまして、先ほど申し上げました通りに、国民の総収入の二%強であれば、これは負担し得るということを私はお答え申し上げるわけなのでございまして、それ以上になるとまた問題になりますし、またできれば国防はそれ以下でこの防衛ができるということであれば、これはまた非常に楽なことでありますが、そういう意味から申しまして二%強ということは、申し上げたわけなのであります。
  169. 松浦清一

    ○松浦清一君 だから経済自立五カ年計画をあなたが中心になって立てられたものと思うのですよ。この五カ年計画が済めば継続してまたさらに三カ年計画が立てられ、五カ年計画が立てられると思うのです。あなたの将来への御構想としては、五カ年後の三十五年末でぴたりととまって、あとはなんの計画を立てる必要はないということはなかろうと思うのです。あなたがずっとやっておられれば、将来の日本の経済計画というものを立てていかれると思うのです。もし高碕という人が経済企画庁の長官をやめられても、またあなた方の内閣が長期に続いて行って、高碕という人が下崎になるか、長崎になるか、それはわからんけれども、とにかく違った長官が現われたとしても、日本経済自立計画というものは五年で打ち切られるべきものでないと思う。この計画をずっと延長して、先々のことを考えていけば、あなたのお言葉に従えば、大体日本国民総所得の二%強くらいは防衛力漸増のためにさき得るものと判断しておられる。ですから三十五年末に伝えられる二十七万で日本の防衛力というものはぴたりととまるのではなしに、それ以上際限もなしに延びていくものと経済的な立場から判断して了解をして差しつかえないかと、こういうことです。
  170. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 経済計画は五年で打ち切ることでありませんし、現在におきましてももう十年計画も一方において計画を検討いたしておるようなわけでありまして、で、五カ年計画は一年経過すればもう四年になりますから、それは引き続いてまた五年に建て直すというくらいにして、長期のものをこう立てていくということは経済計画の基本だと存じておりまして、これは私がやめようが、かりにどの内閣がこれをやられてもこれは絶対に必要なものだと私は信じてこれをやっておるのでありまして、そういう意味から申しまして、経済計画を立てるときに、どの程度の防衛支出をしても全体の計画に差しつかえないかということは、現在われわれが見ておる範囲におきましては、五カ年におきましては二%強であるということになっております。またこれで新しい立場から見て、あるいはこれを三%にするという政策をとる方もありましょうが、またこれを一%にとめるという方もありましょうが、それはそのときの立て方によって考えなければならないと思いますが、ただいまのわれわれの考えでは二%強が順当であるだろう、こう思うのであります。しからば五年後において毎年々々二%強ということになったら、非常ないきおいで軍備の増設になるのじゃないか、こういう御質問だと存じておりますけれども、私は必ずしもそうでないと思っておるわけなのであります。その点は非常な増額ということになれば、またそのときに考えられるのであります。私は五カ年間におきましては大体これくらいをもっていくことは正しいと思っております。
  171. 松浦清一

    ○松浦清一君 二%強というものは、現在の日本国民の総所得の上から判断をして適当であるとか適当でないとかいう議論は私は持っていないのです。ただ三十五年末に今とっておられるという防衛計画がそれでとまるのかまた前進をしていくのか、こういうことについてはその的確な判断がなかなかできないのです。これは国民の大多数の人が、今まで新聞に表れたところによると、日本の持つ自衛力というものは、今まで申し上げたように二十七万、艦艇何がし、あるいは飛行機何がし、それでとまるのだろうと思っているのです、そのへんで。ところが今までのあなたの理論から言えば、国民総所得の二%強は防衛力増強のためにさき得るのだという判断をあなたはとっておられる、だから五年でぴたりととまらずに、それから先もこれがその当時の国民の総所得から判断をして三%になるかあるいは一%半になるか、それはわからぬけれども、そういう判断がずっと続いていく限りにおいては、またそういう計画が続いていく限りにおいて防衛庁関係において、もし増強の必要ありとするならば、経済面からはそれに同意をして増強をやっていくのだろう、こういうことなんです、私が尋ねておるのは。二%多い少いという、そういう議論とは違うのです。将来の日本の長き経済計画を立てていく上において、必要とあれば際限なしに増強していくというおつもりか、こういうことなんです。
  172. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在において、国民所得の二%強持っていけば、かりに二十万、私は数字はちょっと責任を持ちませんが、二十万なら二十万の防衛力を保持することはできる。それを先になって、これは国民所得がふえてくれば、同じ二%強でも金額は多くなるから、二十万の人間がかりに一割ふえれば二十二万になるじゃないか、こういう御質問だと私は思っておりますが、その通りなんですね、こういう御質問なんですか。
  173. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうじゃないのですよ。今まで新聞等で報ぜられた――新聞等で報ぜられたと私はあえて申しますけれども、三十五年末に完成するといわれるいわゆる防衛五カ年計画、それは正式に決定されたものではないと、こういうことを総理大臣も防衛長官も今までおっしゃられた、この委員会で。だから私は政府は最終的の決定した五カ年計画という前提には立たないのです。国民新聞記事を通じて三十五年末の日本の持てる防衛計画の最終段階における量は、これこれだと判断しておる。だからそれで日本のいわゆる防衛力はそれでとまるのか、それともあなたの判断しておられる通りにいけばやはりずっと五カ年計画が済んでも、先々続いていくということになるのか。経済の面から判断されて特にあなたが国防会議に入られる人だから、聞いておるのです。それをするすると逃げないように、ここでとまるとかまた延びるのだとか、そうおっしゃって下さい。
  174. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 毎年この国民所得の二%強をかけますからといって、それは五カ年で完成するのだが、そんなにふえるものじゃない、そのものを持続するためにはそれだけの金額が要ると私はふんでおるわけであります。
  175. 松浦清一

    ○松浦清一君 毎年々々二%強ふえるでしょう。二%が、ちょっと言い方が悪かったんだ。国民所得は毎年ふえていくんですが、この計画により毎年ふえていく。だからことしの二%というものはたとえば七百億円であったとしても来年には九百億円になるかしれない。一千億円になるかしれない。それだけは延びていくわけですね。その防衛力増強に使い得る費用が延びていくと判断されるので、それはふえていくわけでしょう。だからその辺の話し合いはあなたは理解していただきにくかったかしれない。私の尋ね方が悪くって、ただ私の尋ねたい結論は、三十五年度に伝えられておる計画でぴたりととまるのか、延びるのかということがお尋ねしたい点なんですよ。
  176. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この国民所得は今のおっしゃるように必ずふえるということは私はふえればけっこうと思っておりますが、そうにわかにきめるわけにいかぬと思っておりますから、私どもは五ヵ年計画では大体ふやしていって、今現在六兆幾らだと思いますが、七兆台にもっていきたいと思いますが、六兆の時代に二%とすれば千二百億、七兆になれば千四百億、だからそれくらいの私は国民所得がふえれば、防衛力に使っても差しつかえないとこういうわけでありまして、だから五カ年後におきましても国民所得があれば、これに対してその比率は約二%というものは防衛に使っても差しつかえないと、それだけはこの防衛庁の方に渡してよい、こういうふうな数字を出しておるわけです。これは必ずふえるということも申し上げられませんが、減るということも国民所得に準じてやるべきものだ、こういうわけなんでございます。
  177. 松浦清一

    ○松浦清一君 くどいようですが、この計画によると、やはり毎年々々国民所得がふえるような計算になっておりますね、国民所得は同じ二%強でもことしの二%と来年の二%とは額が違うわけでしょう。総額がそれだけはやはりふえて行くわけでしょう。防衛関係費用に余計使って行くわけでしょう。それだから三十五年が来たら、もう経常費だけで、もう老朽で耐えないものだとか、あるいは装備の古くなったものだけを取りかえて行く、この現状を維持して行くだけにとまるのか、要求があればふやして行くということなんですか、あなたおっしゃらないが、その辺のところだけなんです。
  178. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それは防衛計画をよく見て、それによってやるべきものでありまして、大体の経済力とすれば国民所得の二%強はとれるわけなんですから、その範囲において防衛庁の方がこんなに使わないでも防衛できるというならけっこうな話で、それはそのときによってきめるべきもので、われわれの立場といたしまして、防衛の方にどれくらい払って差しつかえないかという限度をきめておるわけでありまして、まだ年々における国民所得がこういうふうになるという数字ははっきりいたしておりませんから、ここで来年は幾らになるということの数字は申し上げかねますけれども、今後できるだけ国民所得はふやしていきたいという考えでおるわけであります。というてこれは希望ではありますが、経済情勢変化によってどういうふうになるか、これもまた考えておるわけでありますが、必ずこれはこれだけの金額を防衛にさけるという言葉は申し上げかねるわけであります。所得に準じてやるべきものであります。こう存じます。
  179. 松浦清一

    ○松浦清一君 まことにくどいような質問ですけれども、あなたがするする逃げられるから繰り返して聞くようになるのですが、もう一ぺんだめを押しますけれども、三十五年までに国民所得が今よりも一兆円ふえた、そうすると、現在の国民の総所得が二%強は防衛力にさき得るとあなたは判断されるのでしょう。今の現在の三十一年度における二%強はなんぼであった、ところが三十六年の国民総所得の二%強は今までよりも五百億円ふえた、それでもそれだけはさき得るものとの判断に従って防衛力につぎ込んでいかれると、こういうあなたのお答えですな。そうすると、三十五年末に、伝えられている二十七万の兵力というのはそれでとどまるのでなしに、それ以上やはり日本の経済力に対応して伸びていくものと判断していいわけですね。
  180. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在よりも三十五年末におきまして、かりに国民所得が一兆ふえた。こういうことになりますると、数字的に申しますればその二%強というのは二百億ですね。二百億円は現在よりも防衛費を……現在千四百億円であるものを二百億円ふやすことができる。かりに一兆ふえればそうなる。そういうことはまさにその通りです。
  181. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうすると、今の防衛五カ年計画の二十七万という数字が正確かどうか存じませんけれども、それで日本の防衛力の将来への方針というものはとどまるものでない。やはりそのときの国民所得に対応して、それ以上やはり前進していくものと、かように理解してよろしいですな。  それから、先ほど来いろいろ質問が繰り返されました防衛産業関係ですが、これは最近私はある資料で見たのですが、朝鮮動乱が起ってから銃砲弾の特需が四百七十八億円あった、こうどっかで見たのですが、それは確かですか。もっと多いんじゃないかと私思うのですけれども、そういう数字が出ておったのですがね。
  182. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その問題ちょっと政府委員が参っておりますから、お答えさせます。
  183. 松浦清一

    ○松浦清一君 朝鮮動乱に関連した特需……。
  184. 金谷栄治郎

    説明員金谷栄治郎君) 昭和二十七年から三十年までの武器生産の実績の総量が二百三十五億だと思います。これは銃砲弾だけでなしに、その他の火砲等がありますけれども、武器全般を想定いたしたものがただいま申し上げた数字であります。
  185. 松浦清一

    ○松浦清一君 えらい少いですな。これは日本自衛隊が使った分も、それから朝鮮動乱に関連した特需に関係したものも全部含めて二百三十五億ですか。
  186. 金谷栄治郎

    説明員金谷栄治郎君) 生産実績といたしましては、そういう数字でございます。
  187. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは間違いありませんか。
  188. 金谷栄治郎

    説明員金谷栄治郎君) ちょっとお待ち下さい。
  189. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは、これからお尋ねするいわゆる軍需産業と非常に関係があるので、正しい数字をお答え願いたいのですがね。
  190. 金谷栄治郎

    説明員金谷栄治郎君) 数字が若干間違っておりました。武器関係の特需の受注実績額の数字昭和二十七年から今年の一月末までで四百七十八億二千六百万、かようになっております。
  191. 松浦清一

    ○松浦清一君 四百七十八億でしょう。これは私の調べたものによるというと鉄砲、銃砲弾だけで朝鮮動乱が始まってから本年三月までの特需の実績である、こういうことなんです。それでこの特需に依存しておった、たとえば神戸製鋼であるとか小松製作所であるとか、大阪金属であるとか、日平産業であるとか、そういうふうな会社が三十年度以来特需が激減したので非常に経営が困難になっている、こういうことなんです。三十年度になると、わずかに十五億円になって、それから三十一年度は恐らく三十年度の十五億円の実績を下回るのではないか、このように伝えられているわけですね。この数字はまあどっちでもよろしいが、とにかく急激に特需が激減しつつある。この現実だけは否定することはできない。日本の軍需産業というのはアメリカの特需に依存してはもはや経営が成り立たなくなっている。その方面から、これは政治的な問題になりまするけれども、すみやかに日本の再軍備強化をはかって、そして自衛隊から発注される武器生産でこの経営不振を建て直したい、こういう政治的な動きがある、こういううわさを聞くのです。これはこの間防衛長官にお尋ねをしたところが、自分に対してそういう働きかけが別にあったことはないというお答えであった。企画庁の長官としてはおそらくそういう尋ね方をすれば、そういう政治的な働きかけは別にあったわけではないというお答になるだろうと思う。で、これらも平和産業から軍需産業に切りかえて、そして経営が成り立たなくなりつつあるという、そういう産業方面に対して、通産省の関係になりますかな、どういうことですか。何か自衛隊の品物でもやって助けてやりたいという、そういう気持をお持ちであるらしく見えるが、そんなことはないですか。
  192. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その問題、私は去年、おととし、だいぶ前のお話でありまして、朝鮮動乱以来砲弾の注文が非常に少くなった、どうしたらいいのだろうという話を私は責任者としてでなくて、いろいろな方面から聞いたことがありますが、そのときに私はきわめて簡単に答えておったわけなんであります。実際日本政府責任をもって作らした工場ではなくて、あなた方が勝手にやっておったやつなんだから、自分の力でこれはあと始末をしていくのは当然ではないか、こういうふうなことを、これはその当事者に直接答えたこともありました。で、その後どういうふうになっているか私はよく存じませんが、あるいはこれをさっき江田さんの御質問のような工合に国営にしてやったらどうか、こういうふうな意見もありましたが、私はこれは国営にするということはいけないことだ、こう存じているわけなんでありまして、その点につきましてはさらに十分現状に即して検討いたしたいと存じておりますが、私の知っている範囲ではそれだけのことでございます。
  193. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは今からもう中古エンジン問題をここで再燃して申しませんけれども、そういうようなことになってくると、防衛庁だとか通産省だとかあるいはあなたの方に対しての政治的な、金を持ってくるとか、贈賄をするとか、そういう露骨なことは言いませんけれども、そういう動きが得てしてあるものですから、この辺のところは一つ十分御注意を願いたいと思います。  それから経済自立の五カ年計画のこの刷りものによりますというと、前書きの冒頭に「経済の自立を達成し、且つ増大する労働力人口に充分な雇用の機会を与えるということは、今日わが国経済に課せられている大きな課題である」、これがもう経済五カ年計画の前書きの冒頭に書いてあるので、あとずっと見てみましても、大体五カ年間に一年に百八万人ほど日本の労働力が毎年ふえていくことになっていますね、これによりますと。その自然に増大していく労働力人口をいかにして吸収していくか、完全雇用の態勢に置いていくかということが、この経済自立の建前の基本になっていると思うのですよ。
  194. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) そうです。
  195. 松浦清一

    ○松浦清一君 だからこの前のときにもこういう御質問を申し上げたわけですが、一体日本のこの産業の将来の見通しの上から判断をしていって、そうして、毎年百万に余る労働人口を吸収し得ると、そういう具体性が一体どこにあるかということを私は考えているのですが、これは計画を立ててそれに合うように、労働人口が吸収のできるように数字を合して組立てていけば数字は合うわけですね。数字は合うが、日本の現在の産業、貿易の全体の情勢の中から、これだけの労働力を吸収し得るその能力というものは、一体どこにあるのかということの具体的な問題ですね。これはまああなたのところで立てられた方針ですからあるんだろうと思うのですが、それをお聞かせ願いたいのです。私の判断によるというと、なかなか日本の現在、将来の産業、経済、貿易の判断をしていって、それだけの労働力がこのままの状態で吸収し得るという判断はなかなかできないのです。
  196. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この問題は非常にむずかしい問題であります。またこれを解決することが一番の重要な問題でありまして、経済五カ年計画もそこに重点を置いてやっていることは御承知の通りでございますが、で、大体われわれの計画におきますというと、人口は年々一%しかふえないが、労働力人口は非常な勢いでふえていくで、百何万というものを吸収する雇用の機会を与えなければならぬ。それには第一に輸出産業を振興して、鉱工業の生産をふやしていくということにしていって雇用の機会をふやすと、第一次産業の農業及び水産、林業というものに対するこの吸収率というものはそう大きく期待することはできないが、主として鉱工業生産にふやしていこう。そうしてくれば自然に第三次産業、つまりサービス業そのほかの人口にも吸収率がふえるということで、この比率を大体きめまして、どういうふうにこれを五カ年間に解決するかということの数字をもって計画を立てておるわけでありまして、詳細な数字政府委員からお答え申し上げます。
  197. 松浦清一

    ○松浦清一君 いや、政府委員答弁は要りません。政治的な面に関しての質問をいたします。この計画書の五十七ページの「主要経済指標」の表をたどっていきますと、労働力人口が昭和二十九年度四千四十六万、それが三十五年度に四千五百八十六万になって、一一二の増加率である。労働人口の一一二の増加率に対して、鉱工業の生産水準はやはり昭和九年から十一年までを一〇〇として、そうしてこれが一五三・七、こういうふうに増加していくという数字が示されているわけですね。これはテーブルの上で計算をすれば、こういう数字の組み立てをやれば、それでもって五カ年計画は一応でき上った格好になっている。どういうところに鉱工業生産の水準を高めるというねらいを置いているかということが重点なんです。たとえば軍需産業に置いておるのか、平和産業に置いておるのか、そして将来の世界の平和を求めることが、この経済計画の達成に役立つのか、どっちですかね。政治的方向としてはうんと軍需産業を高めていこうという方向なのか、平和産業を高めていこうという方向なのか、その方向についてなかなか問題点があると思うのですよ。
  198. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、これは五カ年間に五三・七という、こういう鉱工業生産の増加と、それに対して労働力人口が一二%、こうなっておるのでありますが、これは軍需産業などというものについては大きな期待を持っておりません。全体を、全部の日本産業ということを、特に平和産業、軍需産業なんということは頭に置かないでそしてやったわけなんでありますが、といって全然含んでいないかといいますと、これは幾らかずつ全体の産業の中に入っておるということもありますが、全体の産業としての鉱工業生産の増加率になっておるわけであります。
  199. 松浦清一

    ○松浦清一君 日本の鉱工業に限らず、一切の生産量が高まってくるということは、やはり貿易の関係と非常に密接な関係があるのです。だから将来これは平和か戦争かという問題につながるのですが、日本の将来の貿易が、このように生産量を高めていくことに並行して貿易量が高まっていくというそういう具体的な見通し、自信、そういうことを簡単に、時間がないと言ってせかれますから……。
  200. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは経済計画にも書いてあります通り輸出は五カ年間に六六%ふやしていくという考えであります。昨年のごときは十六億七千万ドルというたのが二十億五千万ドルになるという工合に、予定よりもふえておるというわけでありますが、これを昭和三十五年には二十六億六千万ドルですか、ということに考えておりますが、これは私は容易にできますと思っておりますね。むしろこれを上回ると思う。また上回るようにしなければならないと、こう存じております。これは可能の数字と存じております。
  201. 松浦清一

    ○松浦清一君 どういう品物をどこの国を目標にしてそれがふえていくという計算ですか。
  202. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは従前のごとく消費物資を、つまり繊維製品、そういうふうなものは、特に綿製品のごときは大きな期待はできませんが、繊維の方は化学工業の化繊を相当持っていきたいと思っておりますが、おもなるものは鉄鋼製品の機械類でございまして、プラント輸出に重点を置くということに考えておるわけでありますが、中には造船もありますが、主としてプラント輸出を持っていきたい。これはできるだけ東南アジアあるいは中南米、あるいはアフリカという未開発の国にこれを持っていくという考えでおるわけでございまして、これは賠償問題が解決いたしますと、東南アジアはもう現在に非常な勢いで増加しておるようなわけであります。これに伴って相当の技術者も出すことができると、これが一面において人口問題の解決になると、こういうふうなことでありますから、政府といたしましては、今後の方針はできるだけプラント輸出に重点を置いて、そして人もやり、アフター・サービスもよくやっていこうじゃないか、こういうところに重点を置いておるわけであります。
  203. 松浦清一

    ○松浦清一君 中共あたりとの貿易はどんなふうにお考えですか。
  204. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 中共貿易も幾らか増加する考えでおるわけでございますが、現状におきましては政治的の制約のために、これが歴史的にも地理的にもあの大事な相手方が解決できないことは非常に残念でありますから、これはできるだけ早くこの政治問題を解決していただいて、そうしてこれを手を広げていきたいと思っておるわけでありますが、現在におきましては非常な大きな期待は持っておりませんのです。しかしこれは持っておりませんが、なるべく早く解決したいと、こういう考えでおるのでございます。
  205. 松浦清一

    ○松浦清一君 大きな期待を持てないということは、現状のままでは大きな期待が持てないのですね。それはわかります。やはりココムの制限がありますから、今のような状態の中でココムの輸出制限物資のワクをだんだんと縮めていってやるという、こういう方法では中共貿易はそう望めないと思うのです。結局はやはり中共との国交を回復して、この間、去年の春ですか、中国の貿易視察団の連中が来たときに話をしておったと思う。機械類であるとか船舶であるとか、大型トラックであるとか建設資材というようなものは幾らでも要る、化学肥料も要る、こういうことは私ども向うに行ったときもそういう説明を聞いている。しかし実際取り引きをする場合になったら、どういう機械類が幾ら要る、トラックが幾ら要るというようなことは、大した量に達しないかもしれないけれども、あるいはまた今制限物資になっておりますからそういうことを言うのかもわからぬけれども、今の中国の、日本じゃないけれども経済自立五カ年計画もあと一年で第一期が過ぎますのでありますけれども、これは一切の生産の工業化がはかられておるということはあなたのおっしゃる通り、よく御承知の通りでございます。建設資材であるとか大型トラックであるとかいうことは、これはいよいよそこになってみなければわからぬけれども、相当輸出の見込みがあるものではないかと思う。船舶の問題もしかり、そういうところを貿易の相手先として切り開いていかなければ、あなたのおっしゃる東南アジアだとか中南米とかいう未開の土地にどんどんふえていくということは、それは貿易増大の方針としては、計画としてはちょっと甘いのではないか。  そこで私は最後に尋ねたいと思います。日本がとにかく際限もなしといったところで、大した力もないけれども国民の負担力が経済の面からいくと相当大きな負担になる。軍備を拡大していくという方向と、平和を回復していくという方向とマッチするかどうかという問題……ちょっと私は話が長くなりますが、結論ですから、おしまいですから許してもらいたい。一体この委員会でこの案件を審議するに当って、だいぶ長い時間総理や防衛庁長官に質疑を繰り返されておりましたけれども、局地戦争がどうとか、あるいは侵略をされたときにどうだとかというようなことが、具体的にこれは言えようはずもありませんけれども、どの国が侵略してくるとか、どの辺が危いという話はなかった。しかしながら、ただ独立国として自衛力を持たない国はないから、日本の経済力に対応した軍備を持つということは独立国として当然だということ、集約して言えば……。そうして局地戦争が起ったときにはその解決のためにその武力を使う、あるいは侵略をされたときにはこれを防衛しなければならぬ、集約をすれば、非常にたくさんの言葉で集約をされておるけれども、落ちついたところはその辺のところだ。そこで日本の国をやはり、日本の国の平和を維持していくという大きな方向から考えて、一体どういうところに危険性があるかということを考えてみる必要があると思うのです。これは国会で審議をすれば議事録になんか残ったらいけないかもしれないけれども、そこまで私は真剣に考えてみる必要があると思う。そこである人の判断によるとですけれども、これは間違いかもしれぬが、一昨年の暮に衆参両院各派から二十五人の国会議員が中国に行きましたのですけれども、あのときに帰り途だと思う。ただ一つ意見の一致したことがあるのです。帰ってきたらみんな各党に帰って各党の政策に従うことになってきますから、ばらばらになりましたけれども、香港で二晩泊ったその間に、将来の日本の中共対策というものをどう考えたらいいかということについていろいろ話し合って一致した一つの意見がある。もし日本が危険にさらされるということになったらどういうところから起ってくるか、こういうことなんです。それは中共に一ヵ月いる間に至るところで台湾解放、台湾解放ということをわれわれ聞いていた。どこに行っても台湾解放万歳というポスターが張られている。経済五ヵ年建設計画に協力しようというポスターと、その二つのスローガンに塗りつぶされている。産業は一切のものの工業化がはかられて自給自足態勢をとりつつある。台湾の武力解放にいくかいかないか、それは知りませんけれども、今のような日本アメリカ関係、それから中国とソ連との関係、このような態勢に置かれているとすれば、もしも中共がそういうことをやったときこれは非常に危険な状態になる。これは日本が二十万や三十万の兵隊を持っても何もならぬ。そしてまた彼らが何かの式典をやるというと、第一に中華人民共和国の万歳をやって、毛沢東主席の万歳をやって、中国共産党の万歳をやって、最後に台湾解放の万歳をやる。何回も聞きました。それに中国の国民がわあっと唱和していますよ。それほど今の中国の中では台湾解放ということが大きく渦巻いた一つの政治的な方針になっている。あるかないかは知らぬが、そういうことになればその辺は非常に大きな危険性がある、こういうことだ、それを防止するのにはということなんだ、問題はね。防止するのにはやはり日米安全保障条約と中ソ友好同盟条約とが背中合せになって対立しているところに非常に困った問題がある。日本のきわめて弱い経済力をもって、そして資源も何もないそういうところで、一生懸命になっていろいろな犠牲を国民に払わして、少々ぐらいの軍隊を持ってみたところで、こういう態勢にある限りにおいては、あるいは心配する人もできてくるだろう。その心配している人の心配を解消するのには、この二つの条約というものを解きほぐして、一つの日米、中ソの友好同盟条約か平和条約か知らぬけれども、そういうことを締結する方向に日本の政治、外交の努力を集中することが最善の道であるということに意見が一致した。帰ってきたら変りましたけれども、これは一つの話です。話だけれども、今の貿易の関係にしても、中南米や東南アジアを考え日本のこの五カ年計画を立てていくということでは考え方が甘過ぎる。やはり中共のそれに対する貿易、どれぐらいの量があるか知りませんけれども、やはり平和条約を締結して、そうして力一ぱい日本の労働力を活用していただく。いわゆる年二百万人もふえる労働人口の吸収のためには、その方面に活路を開いて産業を高めていという方針以外に経済計画達成の具体的な方法はない、こう私どもは判断をする。それには日本が、今まであなた方がおっしゃってきたように、とにかく国民の経済の実情というものはどうであろうと、国民の総所得を基礎にしてそうして二%強の費用は防衛の方にどうしてもさくのだという判断に立って、将来、際限もなく伸びていくという軍事計画の方向をたどるということは間違いであると私は想像する。あなたはどういうお考えですか。これでおしまいです。
  206. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は今のお説のごとく、中共との間の日本の国交回復というものは一日も早くできて、この間の経済関係が平常化するということは非常に望んでいるわけなんでありまして、これによって日本の経済の復興というか、日本の経済の発達というものについては非常に大きな寄与をするものだということについては御同感でございます。  最後のお話の、つまり国民所得に対して二%強を年々やっていくことは、無限に日本の防衛力を増加するゆえんである。それで反対だという御意見でございまするが、私の考えといたしましては、これによって決して無限にはいかないわけでありまして、ある一つのリミットがあるわけであります。それは国民所得に対しては相当の防衛費を出すだけの、支出をするだけの覚悟を国民は持っていただきたい。こという所論でございます。
  207. 松浦清一

    ○松浦清一君 最後であったはずだけれども、今あなたにお尋ねしたのは、その計画を基礎として立てたのでしょう。この計価の具体性と、単なる数字の積み重ねてあるかどうかという――それを基礎にして立てたのでしょう。そうすると国民の総所得がずっと伸びていくことになる、これでいくと……。非常に大きな世界経済の変動がない限りはこの計画の線はそのままいくものとあなた方は判断してこの計画を立てていられるに違いない。そうすると三十五年末までであるけれども、三十六年になればやはり一年だけ伸びていく計算ですね、国民総所得が。そうすると同じ二%強という数字をはじき出してやったとしても、だんだん軍備関係にさき得る金額というものは多くなっていくのです。それだけ伸びていくじゃないですか。
  208. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 防衛力もそれだけふえると同時に、国民所得がふえますれば、それだけ俸給の水準も上る、国民全体の生活水準も上る、こういうように国民の所得がふえるに従って社会保障もその比率によってふえて参りますから、私はこれは防衛だけのまず優先するわけでも何でもない。全体の水準が上ってきた場合には上る、全体の収入か減ってきた場合にはこれは皆がそのつもりで下げていかなければならぬ、こういうわけでございます。あまり御心配願うようなところはないと私は思います。(笑声)
  209. 松浦清一

    ○松浦清一君 また尋ねなければならぬようなことを言うから……、ただ一口だけ。今あなた、まだ社会労働委員会で審議している保険法の改正は何ですか、これは何ですか、社会保障制度を拡充強化されていないのですよ、これは答弁いいですよ。
  210. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いよいよまた会期末になってきて、内閣委員会で因縁の国防会議法は審議いよいよ、もうそろそろだいぶ進んできたのですがね。
  211. 青木一男

    委員長青木一男君) 菊川君、ちょっとお尋ねしますが、やはり高碕長官おられた方がいいですか。
  212. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私はいいです。きょうは。
  213. 青木一男

    委員長青木一男君) いかがでしょう。高碕長官、ほかに御用がありますが、質問がなければ退席願いたいと思います。(「きょうはいい」「また月曜においで願います」「また大いに議論しますよ」と呼ぶ者あり、笑声)
  214. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで船田長官にお伺いしたいのですがね。この前のときに国防会議、構成法が審議未了になりまして、杉原元長官がこれを契機に引責辞職といいますか、えらい怒られて、やめられたか何か知らぬが、その経緯はよくわかりませんが、まあ法案が国会において審議未了になったり、否決されたりすることは往々にしてあることであり、特に極端なのは、与党が修正をし、野党が政府原案に賛成していくというようなこともこの間もあったわけです。だからそうこだわられなくてもいいと思うのだが、しかしあれだけ杉原さんがこだわられて辞職されるということになったのは、何か提案理由のほかに大きな原因があるのじゃないか。理由があるのじゃないかと思うのですが、この点もしもおわかりになっておったら、一つ率直にお聞かせ願いたい。そういう大きな理由があるとすればわれわれは、(「笑いごとじゃないぞ」と呼ぶ者あり)そのつもりで一つ取り組まなければならない。何かなければ一つの法案が、それは国会であの当時与党の勢力がきわめて少なかったのでありまするから、それは無理に通らない場合もあり得ることだと思う。一体どういうところにその原因があるのか。わしらただではないと思うのですが、その点一つおわかりになっておったらお知らせ願いたい。
  215. 船田中

    国務大臣船田中君) 今、菊川委員のおっしゃったことは、私は実はその内情を承知いたしておりません。遺憾ながらそれについてお答え申し上げるような何ら資料を持っておりません。(「総理を呼んで聞くか」と呼ぶ者あり)ただ今回の提案いたしました国防会議法につきまして、これはかなり慎重に御審議を願っておるのでありますから、なるべく早い機会に通過できるように御協力を願いたいと思います。
  216. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いやいや、それを聞いているのではない。(笑声)それでは船田さん御存じなければ、増原さん当時次長としておられまして、杉原さんの心境を、少くともあなたには、あれだけ一緒にやって努力をされておったのですからお漏らしになったと思うのですけれども、そんな一々法案が通らない、あるいは否決されたというので一々大臣をやめているということは、そういう必要はないと思うのですけれども、増原さん何かお聞きになっておったら、当時の模様を。
  217. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 格別私も聞いておりませんが、特に提案理由に何か裏がありわしないかというような御質問がありましたが、提案に裏があるという話は全然聞いておりません。杉原元大臣がおやめになったのも、まあたんたんと、案が通らなくておやめになったというような心境は聞いたように思います。
  218. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 わしらの、これは新聞発表でありますから、必ずしも正しいかどうかわかりませんが、少くともアメリカに対して今度は必ず国防会議を構成するということを約束しておいた。その約束が守れなくなったので、対外信用の問題だというところから引責辞職をされたということを漏れ承わっているのだが、そういう辺のことはあるのですか、どうですか。
  219. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 私の承知しているところでは、これはたしか国会内の質疑応答で、元杉原長官がお答えになったことであると思いまするけれども、去年の予算編成前の例の分担金交渉の際等に、去年の国会国防会議構成法等を提出をして、これが通過をはかることに努力をするつもりであるということは米側に話をしたことがあるということを、国会の質疑応答の際に言われておったと思いまするが、そのことは私も開いておりまするが、約束をしたということは、そのことが伝えられたのではないか。すなわち、構成法案を提出をする、その通過をはかるということは、米側にも話をされたようであります。
  220. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そこで私らの伺うところには、よほど深い理由がなければならぬと思いますが、それ以上あなた方もお答えになるのは、非常に掘り下げた、想像の域を出ないというようなことになっては困るので、私は別の角度から一つお伺いしますが、先般防衛庁設置法の一部改正の際にもお尋ねしたのですけれども、やはり防衛出動を行う場合に、国防会議に内閣総理大臣が諮ってからやらなければならぬが、それが設置されてないために、かりに今、松浦君がお尋ねしました台湾あたりで事が起きた。そのときに防衛出動の要請をされた。されたけれども諮るところがないというので、アメリカとしては、今あっても防衛出勤もできぬ、国防会議がないために防衛出動もできぬ。そのようなところからとにかく使いものにならぬ、演習用にはなるけれども、実戦用にはならぬ。しかしいつ、今はそういう事情はおそらく薄らぎつつあるけれども、万一という場合がおるけれども、使いものにするためはどうしても国防会議だけは設けて置かなければならぬ、ここに一つの理由があったのではなかろうかと思うのですが、そういう点、その理由はございませんでしょうか、お伺いしたい。
  221. 船田中

    国務大臣船田中君) 今、台湾海峡の問題をお出しになりましたが、日本自衛隊はわが国土の安全を保つためのものでございまして、台湾海峡にいかなる事態が起りましても、自衛隊が出動するというようなことは全く考えられません。またアメリカ側の要請によって自衛隊の出動をするというようなことも、これは起り得ないと存じます。
  222. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次にお伺いしたいのですが、国防会議がかりに構成されますると、何といっても主任大臣は一応防衛庁長官が担当されなければならぬと思うのですが、次長はもちろんおられまするが、そこで防衛六カ年計画というようなものを、まあそれは防衛庁内の試案かもしれませんけれども国際情勢変化に適合してこの六カ年計画防衛庁試案なるものもまた変更を加えるものであるか、それとも一応今度国防会議が設置されたならば、今までよく言われておりました十八万の千三百機ですか、あの線はあくまでもあなた方の一つの既定方針としてお出しになるつもりであるかどうか、この点を一つ承わっておきたいと思います。
  223. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま菊川秀員の、防衛庁長官がこの国防会議の主任大臣になるであろうというようなお話は、これはちょっと違います。この会議法のこの法律案の審議につきまして、担当責任大臣として防衛庁長官国務大臣としてその担当をするということにはなっておりますけれども国防会議が設置されましたときには、その国防会議は、この法律案に規定されておりますように、総理が議長でありまして、副総理、外務、大蔵、企画庁長官防衛庁長官というものが議員になるのでございまして、従って防衛庁長官国防会議における立場は一議員として審議にあずかるということになるわけでございます。先ほど御質問のありました、国防会議ができたときにどういう原案を審議されるかということになりますと、もちろん国際情勢を十分に勘案して参らなければなりませんが、しかし最近に国防会議が設置されましたときにおいて、防衛庁といたしましては、従来持っております、防衛庁試案として六カ年計画を持っておりますが、それを要求原案として審議を願うということになろうかと存じます。
  224. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 警察予備隊ができました。マッカーサーの命令によってできた当時の極東における情勢と、少くとも今年のソ連の第二十回共産党大会を契機として以来の極東における情勢とには大きな変化があったんじゃないかと私は思うのですが、こういう問題を一つ防衛庁長官はどういうふうにとらえておるか、どういうふうに見ておるか。あのソ連共産党大会の巨頭連中の演説をどう受け取って日本の自衛力漸増に――もうこれはソビエトを全然度外視して、ソ連の方針を度外視して自衛力を漸増するというのだったらこれは何をか言わんやでありますが、これを考えておらないということでは、私は防衛庁の仕事は進まないと思うのでありますが、どういうふうにつかんでおられるか、一ぺん御披瀝いただきたい。
  225. 船田中

    国務大臣船田中君) この問題はたびたびここでも申し上げたことでございますが、根本的な考え方といたしましては、原水爆をもってするような第三次大戦というものが近い将来に起るというふうには考えておりません。しかし東アの情勢あるいは近東の情勢その他国際情勢全般を見渡しましたときに、全然部分戦争も局地戦争も、あるいはいわゆる冷戦というようなものも起らない、全くそういうことは終息してしまったというふうに安心するわけには参りません。そこでわが国の独立と安全を保持するためには、これは最小限度の自衛体制を整備していくことが必要である。すなわち国力に相応する最小限度の自衛体制を整備していく必要がある。こういうような根本的な考え方に立って自衛隊の整備をはかりつつあるという状況でございます。
  226. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私お聞きしたいのは、そういう考え方の上に立ってやっておられるのはたびたび聞くのでありますが、よく戸締り論というので自由党の諸君が院外において戸締り戸締りと言っておられるから、戸締り論から始めたいと思うのですが、一体、これは最終段階に近づきつつあるので申し上げるのだが、戸締りというのはどろぼうの入り得えないような戸締りであってこそこれは値打があると思うのですがね。日本に侵略してくると予想される国々がおそれて、これだけの力を持っておるのだから、行ったらひどい目にあうからちょっと近づけないというところに値打があると思うのです。くみしやすし、あんなものは鎧袖一触だというのでは何ら値打がないと思うのですが、そこで防衛庁長官の、急迫不正の侵略があった場合には敵基地をたたくというような答弁が問題になったのですけれども、果して日本が今、日本に侵入してくるであろうと想定される国々をこれかこれかというふうに考えてみて、これらが来得ないような実力を持とうとすれば、相当な兵力を持たなければならぬと思うのですが、最終目標としてはそのくらいな程度を保有するというのが防衛庁の理想案であるか。従って今案があるというのは、これは第一段階にすぎない。防衛六カ年計画というのは第一段階にすぎないのであって、やはり理想的には国力の漸増に従ってそこまで持っていくというのが理想的な案であるかどうか。
  227. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま戸締り論をお出しになりましたが、これは私はやはり戸締りをすると同時に警察力というものも必要であろうと思います。両々相待たなければ、個人の家につきましても十分安心するというわけにはいかぬと思う。わが国の独立を維持していき、平和を保っていくためには、どうしても国土の防衛ということについてある程度の力を持たなければならぬ。しかしそれは日本の現状においてはまだ十分でありませんから、従ってアメリカの協力を得て、日米安保条約によって国土の防衛をしてもらうということになっておる。ただ将来国連の警察軍というようなものがりっぱに整いまして、そうして日本の国土の防衛についても国際警察軍が全部守ってくれるのだ、こういうような体制にでもなれば、それはまことにけっこうでありますけれども、なかなかそれには行き得ないと思います。ですからどうしてもやはり国力に相応する最小限度の防衛体制は整えていく。しかしそれだけではとうてい十分と言えませんから、しばらくの間はどうしてもアメリカの協力を待つ、すなわち日米安保条約というものの規定によりまして、日米共同でわが国土の防衛に当る、こういう体制を続けていく以外に道はなかろうと考える次第でございます。
  228. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 お説よくわかりましたが、そこで私ども心配するのは、最後までそれじゃアメリカ軍が――あの日米安全保障条約があることはよくわかっていますが、その精神はよくわかっていますが、最後までそれなら日本にとどまって守ってくれるかということについて、これは必ずしも信頼できないと思うんです。というのは、この前もフィリピンからマッカーサ一元帥が一応退避した例もございます。だから第二のダンケルクになるんじゃないか。一応関東平野でやってみるけれども、関東平野がもしあなたの言われる急迫不正の侵略があって、ある程度の抵抗は一生懸命やってくれるけれども、いよいよこれは持ちこたえられないということになったら、第二のダンケルクとなることも必ずしもこれは夢ではないと、こういうふうに思うんですが、そういうような場合は全然あり得ないのであって、最後まで日本人と運命をともにしてやっていくと、そういう約束でもないように思うんですが、日米安全保障条約というものは……。この点、船田さんはどういうふうに考えておられ、かつ自衛隊に対してはどう指導しておられるかということを伺っておきたいのです。諸君は最後まで急迫不正の侵略があったら国土を一つ守るのだ、アメリカ軍も諸君と一緒にやってくれるんだ、こういうふうに教えてみたところで、現にフィリピンからはマッカーサー元帥はこの前のときには逃げている。それからイギリス軍もフランスにおったけれども、ダンケルクから逃げている。こういう例もあるんだが、果して、今の青年諸君がそんなことを知らないはずはないと思う。これはどう指導しておられるか、これを一ぺん伺っておきたいと思います。
  229. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま菊川委員のおっしゃるようなことは、第三次世界大戦ということを予想されているんじゃないか、こういうふうな感じを抱くのでございますが、さような場合になったときに、わが国土の防衛をどうするかということにつきましては、そのときになってみないとわかりません。しかし私ども予想しておりまする国際情勢に対処いたしまして、最小限度の自衛体制だけはぜひ整えておきたい。この最小限度の自衛体制を整備するということによりまして、よその国がわが国土を侵略する意図を事前に阻止することができると私は信じます。御承知の通り永世中立国であるスイスにおきましても、あるいはスエーデンにいたしましても、みな国防軍を持っております。またそれによって中立を維持することができたと私は信じます。これはもう歴史上の事実でございますから、疑う余地はないと思います。また昨年五月にオーストリアが独立いたしました。しかし独立して中立国にはなりましたが、同時にオーストリアは徴兵令を施行して、国防軍を建設する、現に建設中でございます。そういう欧米諸国の実情から見ましても、やはり独立国であります以上においては、最小限度の自衛体制を整備するということが、独立を全うし得るゆえんである。もちろん日本の独力で、大きな戦争が起った、侵略が起ったという場合に、この国土の防衛を全うし得るというふうには、それはなかなか考えられませんけれども、しかし自衛体制を持っているということによりまして、日本国土に対する侵略の意図を事前に防ぎ得るという効果があり、また現実に侵略が起った場合におきましても、これを日米共同で十分防衛し得ると、かように考えております。また自衛隊教育方針といたしまして、自衛隊員がそれぞれ国土防衛の重責を持っている、直接、間接の侵略に対して国土の防衛の重責を持っているということをよく自覚せしめまして、そうしてその自覚のもとに教育訓練を日常積んでいるような次第でございます。
  230. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 将来国隣会議におきましても、そのような、今、船田さんお述べになりましたような大体基本方針に基いてこれからの防衛計画をお立てになるものだと思いまするが、率直に申しまして、これはちょっとあまり端的かもしれませんけれども、飾りものと、一つはまあ飾りものと、ということはあなたの言われるように、自衛力さえあるならば来ないと言うけれども、こんなものはくみしやすしと見た場合に、かりに侵略する意図を持つている国があるとするならば、行ってみたところで簡単に一週間か十日でやっつけることができると思ったら、幾らでも来るけれども、なかなかとても強い抵抗を受けて、強いから寄りつけないということだったら、これは寄りつかない。ほんとうに侵略する意図を持った国があるとすれば、これは行ったら一週間や十日もかかったらやっつけてしまえる。現に日本がそういう侵略意図を持って、みな自衛力を持っておった。タイ国だって仏印だって持っておった。また今のインドネシア、当時の蘭印だって持っておったのです。しかしこれは行けると、強くないと見たものですから、どんどん侵略していったのです。それで日本に急迫不正の侵略をするような国があるとするならば、ちゃちなものを持っておったって、そんなものをおそれるということは――気やすめにはなるかもしらぬけれども、それによって日本に侵略して来ないということは、私はちょっと考えが甘過ぎるのじゃないか、将来国防会議でそういう御論議をされるのであったら、まことにこれは甘過ぎるのじゃないかと、こう思う。また、だからアメリカが一緒に共同防衛の任に当ってくれると、こう言ったところが、最後までアメリカだって頼むことができないということになった場合に、もっと別の角度から一つ自衛というものを考えてみる必要があるのじゃないかと、こう思うのですが、この点防衛庁長官の御見解はいかがですか。
  231. 船田中

    国務大臣船田中君) これはたびたび繰り返すようになりますが、なるほど大きな飛行機ができたというときに、自転車は全然要らなくなるかといえば、これは決してそういうものじゃないと思います。ですから原水爆というような非常に強力な兵器ができた場合において、わが自衛隊十八万、あるいは艦艇十二万四千トンというようなものは、それはなるほど世界一の強大国の軍備に比較いたしますればきわめて小さなものでございますけれども、しかし全然それを持たないということになりますれば、先ほど来得るし上げておりますように、将来あるいは部分戦争とかあるいは局地戦争とかいうような危険の起りましたときに、国土の防衛を全うすることはできない。少くともそういう侵略の意図を阻止するためには、どうしてもやはり最小限度の自衛体制を整備する必要がある、かように考えるのでございまして、もちろん先ほど来申し上げておりますように、大きな侵略が起ったというときに、日本の独力で国土の防衛を全うし得るというふうには考えない、考えられないのでありまして、それなればこそ日米安保条約によりまして、日米共同して、わが国土の防衛に当る、こういう建前をとっているわけでございます。
  232. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もうそれはそれで見解の相違ですから……。次にお尋ねしたいのは、台湾問題にからみまして、蒋介石が日本に亡命するとか、させようとして、すでに国内に蒋介石用の住宅を探しているというようなことがちょいちょい風聞として流れているわけですがね。一体これは防衛庁としても、そうすると先ほどの台湾の問題とからんでえらい中共に対するつら当てなると思うのです。これは日本の封建時代、よくあったことで、大名同士けんかしておるときに、相手の家老が逃げたときにこれをかくまって、えらいその藩同士の争いになった。これと同じことだ、国際関係は。日本にかりに蒋介石を逃がしてここにかくまう、鎌倉あたりにかくまうということになりますと、いかにも中共に対する大きな私はつら当てになるだろうと思うのですよ。こういうふうな情報は防衛庁のある程度重大な情報だと思うのです、自衛のために……。これはお聞きになっておるか、一ぺんお調べになる必要があると思うのだが、どうか一つ防衛庁長官は、そのくらいの情報が出たときには、少くともこれは重大な問題だと、ぴんと頭にこなければうそだと思う。真偽のほども一ぺん調べてみなければならぬ、少くともこの点について一つ答弁を願いたい。
  233. 船田中

    国務大臣船田中君) 日本政府は御承知の通り中国の正統政府としては台湾にある中華民国政府々承認し、お互いに国交を開いておるわけであります。従いまして、日本と台湾との間に政府の要人なりあるいはその他の市民、もしくは軍人の往来があるということはありますが、(「それはもういいですよ、当然です」と菊川孝夫君述ぶ)しかしただいま御質問のありましたような、蒋介石総統が、日本に亡命してくるというような話は全然私は聞いておりません。
  234. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 聞いておらぬし、新聞や何に載っておるということもまたあなたは知りませんですか、そういうことは情報として流れているということは……。
  235. 船田中

    国務大臣船田中君) 私はおそらくそういう情報というものはデマではないかと存じます。
  236. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それはデマとして、そういうものは一切考えの中に入れてない、こういうことですね。今のところは。
  237. 船田中

    国務大臣船田中君) その通りでございます。
  238. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 その次にお尋ねしたいのは、建軍方式と申しますか、これから軍備が大いに拡張される場合の方式についてお尋ねをしたいと思うのですが、自衛隊を、ちょっとまあ今度見せてもらうのは技術研究所と病院だけでございますので、よくほんとうのどういう方式になっておるかということは私らもまだつかめないので、いずれまた機会を見ましたら……、もう機会がないかもしれませんけれども、機会を見ましたら一つほんとうの今の自衛隊の第一戦部隊を見せていただきたいと思いますが、これはよくあったことでありまして、日本も最初に軍隊を作るときには、明治にはフランス式を採用した。それがドイツ式になったということがあるのですが、今の自衛隊はどうもやはり軍事顧問もアメリカからお願いをしておるようですから、どうしてもアメリカ式ということになると思うのです。アメリカ式でしたら勢いぜいたくと申しますか、物量にものを言わせて一戦をやるというのがアメリカ式やり方であったことは、大東ア戦争中に私どもが見せつけられたことであります。そのアメリカのような物量の豊富な国におきましてああいった軍隊をこしらえていくこともできると思うのですが、日本のような貧乏国、経済力の弱い国がアメリカ式な建軍方式をここで立てていくということは、国防会議においてもこれは重大な問題になる。どっちをとるかということになって、貧乏国は貧乏国並みのやっぱり建軍方式でいかなければならぬのじゃないかと思うのでありますが、船田さん、今の規定でいったらどうしてアメリカ式の軍隊になる。もう弾丸や爆弾も湯水のごとくに投げ込む。従って演習やるにしてもああいった撃ち方をしなければならぬ。ガソリンも湯水のごとく使うという淡州をやらなければならぬと思うが、これはちょっとこの辺でよく考えなければならぬ問題だと思うのですが、これは一体、今の想像するところによると、どうしてもアメリカ式な軍隊をこしらえようとしているが、これは身分不相応といいますか、国情に適合しないものではないかと、こう思うのですが、この点一つ防衛庁長官から伺っておきたいと思います。どういうふうに将来持っていくお考えか。
  239. 船田中

    国務大臣船田中君) 過去五年有余の間に今日の自衛隊が育成されてきたのでありまして、この育成につきましては、その初度調弁に属する火器類やあるいは装軌車両、飛行機、艦船というようなものにつきましてその大部分アメリカ供与に待ったということは、これは事実でございまして、御承知のことと存じます。従いまして、アメリカ式の軍隊といいますか、まあスタイルにしてもあるいは装備にいたしましてもアメリカ式のものであるということは、これは私も決して否定はいたしません。しかしながらすでに陸上自衛隊ができましてもう六年になりますし、海上自衛隊にいたしましてももうすでに三年余、航空自衛隊はまだ二年にしかなりませんが、しかしアメリカ供与艦船、兵器、装備というものを使ってはおりますけれども、だんだん日本式の教育になり、また日本の国情に相応するように訓練も教育もやっていくということでございまして、アメリカ兵器を使っておるからすべてがアメリカ式だということではございません。また、今御指摘がございましたように、弾薬やあるいはガソリン等の使用につきましても、もちろん国費をむだ使いしないように、わずかな金でも、また車両のガソリンや弾薬でも、それが十分効率的になるように心がけて使っておるわけでございまして、その点においてはどこまでも日本式に、日本の国情に沿うように今後もやって参るつもりで、また教育もその方針でやっておる次第でございます。
  240. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いや、私らこまかいむずかしい、新しい兵器についてはよく知識を持っておりませんけれども、一例をあげて申し上げますと、これはこまかいようでありますが、数が多いので大きな数量になると思うのですが、日本でこしらえましたトヨペットもやはりあれは人は五人乗るのです。ところがアメリカのクライスラーやキャデラックもやはり五人ということになって、そのガソリンの消費量のごときはおびただしい、またドイツから参りましたフォルクスワーゲンであるというような車になりますと、やはりその国情に適して、ガソリンをなるべく食わないようにちゃんとできておる。アメリカの車はなるほど快適であるけれども、これはとてもじゃないけれども、ガソリンをたくさん食うのです。だから同じように戦車にしたって飛行機にしたってアメリカのは、ガソリンがふんだんにあるのですから、いわゆるそういうふうなガソリンに糸目をつけない、スピードを出すというようなことに重点を置いたり、あるいは乗員の快適というようなことに重点を置いた特車が供給されてくると思うのです。ところが日本には、なるほどただでもらえますけれども、ガソリンは結局これは全部買わなければならぬのです。これはまあ今から前世紀、十九世紀の終りごろだと思いますけれどもアメリカの宣教師が中国の大陸へどんどんと布教に入っていきまして、西洋ランプをみんなにくれたと、中国人はえらい暗いところへ西洋ランプをくれたので、まことにけっこうだというのでランプを使い出したら、なるほどもらったが、石油を買わなければならぬ、そこでスタンダードの石油会社がどんどん中国に准出したということが言われておる。この例のように、結局日本自衛隊もますますガソリンを食うようになって、アメリカ石油資本の重要な市場になってしまう。これはガソリンが供与されないとそういうおそれがあるのじゃないかということについて、一つ国防会議等において検討するつもりはあるかどうか、ガソリンはくれるかくれないか、供与されるかされないかということが一つと、それから次に、私の申し上げたような点を一つ検討するつもりがあるのかないのか、この二点を一つ
  241. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 少し技術的な問題のようなので、私からお答え申し上げますが、例におあげになりましたガソリンを相当に食う車両という問題は、私の方でも早く十分検討を始めまして、ディーゼル化することを研究をいたし、相当の程度までめどがついておるのです。ガソリンを使わないで、軽油でディーゼル・エンジンで車両を動かしていく、もっともジープというような種類の小さいものはまだまだ今の技術ではディーゼル化することは困難だということでありまするが、これとてもやはりなるべくガソリンの消費儀を少くするという方面の研究を十分にいたしておるわけであります。ガソリンはもとより向うから供与される物品のうちに入っておりません。全体の兵器を通じまして、仰せのようにいわゆる物量豊富な米国のまねをするわけにはとうてい参りませんので、消耗物品等が少くて済み、全体も機構が簡易で取扱いも簡便であり、なるべく低廉に生産できるというふうなものを、技術研究の方向として取り上げて考えておる、そういうことで努力を続けていこうと思っておる次第であります。
  242. 船田中

    国務大臣船田中君) 今、菊川委員のお尋ねになった後段の問題ですが、国防会議が設置されましたならば、燃料問題はきわめて重要でございますから、そういうような問題についても十分審議をしてもらうようにいたしたいと考えます。
  243. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今、次長からも説明がありました、そういった日本式に、なるべく節約するようにやろうというのですが、配置されている軍事顧問や技術的な顧問もおると思うのですが、そういう連中との間に摩擦を生じないですか。やはり向うはそれで育っているのですから、それでなければ勝てないと向うの連中は教えられているのだが、こちらは金もないし、ガソリンもないからというので、その点の摩擦は起きませんか。
  244. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 現在おりまする顧問の職責というのは、御承知かと思いまするが、これはMSA協定に基いて日本供与しまする武器等が、供与の目的通りにうまく保管され、使用されておるかということをインスペクトする、そういうものを見ていくということが彼らの任務であります。いわゆる普通にオブザーブするということでありまするが、普通に顧問という名において呼ばれますると、何か平素の訓練、その他すべていろいろ教えられるというか、指図をするといいまするか、そういう感じが出やすいのでありまするが、顧問団というのはそういうものではありませんで、供与された兵器類が供与の目的に従ってうまく管理され、使用されておるか。すなわち自衛隊がりっぱにその訓練の成果を現わして、鉄砲なら鉄砲、大砲なら大砲としてよくこれを保持し、保存し、修理をして使われておるかどうかということを見ておるというものであります。  次の御質問の、連中は自分としてなれた兵器類を持ってやってきておるので、われわれの方でいわゆる日本人式の体格なり地理に適したようなものを作ることについて摩擦がないかという御質問でありましたが、これは彼らの方でそういうことは一向、何と申しますか、干渉するような態度はとっておりません。われわれが自分の方に適したものをだんだんと発達せしめていくということは、むしろ大いに歓迎をしておるということでございます。
  245. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次にお尋ねしたいのは特車、いわゆるタンクですが、今アメリカから供与されているタンクは、第二次大戦のときに北アフリカでロンメル将軍をやっつけるときには非常に威力を発揮したのだけれども、朝鮮へ持っていったらさっぱり、中共の対戦車砲の前にはこっぴどくやっつけられたのを今盛んに供与を受けてやっているということを言われておるのですが、今もらっておる特車隊の特車の経歴、これはどういう戦歴を持っているか、これを一つ増原長官から御説明願いたい。そういうことになれば、ロンメル将軍をやっつけるときはよかったが、朝鮮戦線ではさっぱりこれはあかんで、やっつけられてしまったというのですが、それをもらって今練習しているというのではどうも頼りないと思いますが、どうですか、御説明願いたいと思います。
  246. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 現在もらっておりまするタンクはまあ軽に属する――軽戦車と中戦車と二種類が大体ありますが、これは大体タンクとしての様式、最新式かどうかということになりますると、最新式には属せないことは仰せの通りであります。しかしこのタンクでいわゆる特車としての訓練その他をいたしまするにはもとより十分効果があるものでございます。しかし別荘におけるこれは日本の地理的条件その他を考えまして、部分的な争いがありまするときに想定をされるものは、やはり大体中の系統のものであろうと一応想定を専門家の間でいたしておりまするが、中型のタンクの最新式のものまでは、現在の各国でやっておりまするものはまあ相当に進んだものがございます。しかし特車は御承知の通り装甲とこれを撃ちまする砲との矛盾した二面を持っております。相手方を撃つために優秀な砲を持ちますと非常に重くなって動けなくなる。また防御力を強くして装甲を厚くするとやはり重くなって動けなくなるというので、この点は私どもは本年度の予算で研究費をちょうだいをしまして、去年からでありまするが、大体三十五トン程度の中型の特車を試作をするということを始めました。これは装甲と備砲との関係が非常にむずかしい問題で、各国の新しいものの例をとりつつ、今せっかく最後の決定を急いでおりまするが、これで中型のタンクとしてすぐれた形のものをぜひ作り上げたい。これは目下は試作の段階でありまするが、これが適切にできますれば、予算の許す範囲においてある程度のものを作って自衛隊に装備をする。そういう形でタンクの問題は研究を進めております。
  247. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それは今の実情だが、今もらったのはやはり朝鮮戦争のときにはだいぶやられた口ですか、率直な話をいって……。どうもそういう話で、自衛隊の諸君もよく知っているが……。
  248. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 朝鮮戦争でやられたというのはどういうことでありますか……。今申したような、やはり中型の戦車として最新式のものではございません。
  249. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 だから中共の持っている、ソビエトから供与された対戦車砲の前には相当抵抗力の弱かったものであるということは事実ですね。
  250. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) ソ連なんかにありまする最新式の対戦車砲からいいますると装甲はかなり弱い、比較的に見てかなり弱いと言えるものであります。
  251. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでもまあ三十トンから三十五トンというのですけれども、三十五トンあるいは三十トンで、これは日本国土において行動する場合に、練兵場で訓練しているうちはいいが、山間あたりへ出動するということになりますと、大体自衛隊の方でも調査されたと思うのですが、日本の橋梁は非常に悪くて、トラックでさえもかなりな道へ行きましても重量制限をしている橋梁が多いのですがね。これらを通せる橋が幾つぐらいあって、どこが通れなくなっておるということは、いつも調査をされて、この戦車隊が出動する場合に、東京都内で示威運動をやられる程度はいいでしょうけれども、実戦になった場合に使いものにならぬ。使いものにならぬということは、いわゆるずうたいばかり大きくても、それに伴わない橋梁が日本にありますので、そういう場合には自衛隊の方で十分調査をしておきまして、この範囲は行動できる、しかしここに橋梁の不備なものがある、これは直さなければならぬというような点を、もう建設省へ要求されて、ある程度計画ができておるものか、まだそこまできてない、まだ訓練の段階で使いものにならぬものであるかどうか、一つお伺いいたしたい。
  252. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 三十五トン戦車の単位におきましては、大体重要な道路は橋梁がどれくらいの荷重にたえるということは、調査も全部了しておりまして、また荷重にたえないものは、どの程度の臨時の補強をすれば通れるかということは、重要な道路については全部調査を終っております。
  253. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすれば、将来これは重要な道路ばかりじゃなく、いろいろな道路を通らなければならぬと思うのですが、この点はやはり国防会議等におきまして、今、高碕さんも退席になりましたけれども日本の道路網の完成、あるいは国土の総合開発ということと関連して考えなきゃならぬ問題だと思うのですが、当然そういうようなものを取り上げるつもりですか、その点伺っておきたい。
  254. 船田中

    国務大臣船田中君) おそらく、そういう諸般の問題、すなわち防衛計画を基本的にどういうふうに立つべきであるか、またその防衛計画を実行するのにはどういうふうにすべきであるかということは、おそらく関係各省庁から要求原案が出まして、それらのものを国防会議事務局において整理をいたしまして、その決裁を経て諮問されるということになろうかと存じます。
  255. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に食糧問題ですな。この前のときに、一番最後に参ったのは食糧問題です。だから急迫不正の侵略でもあって、少し長引いたということになったら、食糧問題で直ちに面くらうと思うのですが、そこで国防会議に農林大臣、特に食糧関係の担当大臣が入らないというのは、どういう意味で入れないのですか。この食糧問題はあまり考えてもない。まあ今のところは一週間ぐらいのところで、負けるのは負ける、早く片づけて、ちょっとやってみるだけだという程度にお考えになって、国防会議というものは設けられるものであるかどうか、ある程度持久戦も覚悟して自衛をやられる、急迫不正の侵略があったときには、たえるだけたえるんだと、そういう基本方針か、それとも、まあしばらく見て、もうあかんときには白旗をあげるんだと、こういう方針でやられるのか、農林大臣も入れてない、食糧問題もあまり重視しておられないようですが、この前のときに食糧問題でこりているのでお伺いしておきたいと思います。
  256. 船田中

    国務大臣船田中君) 国防会議におきまして、農林大臣委員ということにはなっておりませんが、しかし法案の第六条には、御承知の通り関係国務大臣その他の関係者というものは、いつでも議長が必要によって招集することができるようになっておりますので、今御指摘の食糧問題というようなことはきわめて重要でございますから、日本の防衛体制整備のために必要がある場合には、いつでも農林大臣にもその会議に出てもらいまして、そういうような食糧の根本問題についても十分意見を聞き、検討を加えるということになり得るわけでございます。
  257. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そんなことはまあわかっているのですが、それではわざわざこの大げさな国防会議という名前をつけて設けなくても、これはむしろ防衛庁設置法と自衛隊法を改正して、自衛会議ぐらいにした方がいいのじゃないか、国防と大げさに名を打って、国防という名前を聞きますと、すぐ戦争中の悪い夢がまたよみがえってくるのですが、一応大げさに大きく大上段にふりかざして国防という名前をつけたところには、何か因縁があるのか、今聞いてみますと、大したものをこさえぬで、ちゃちなもので、ちょっと気やすめ程度というふうにしかわしら受け取れない、金は相当使いますけれども、これで国防でございというような、国防会議という工合に大上段にふりかざして、対外的にもどうかと思う。だからむしろ自衛隊法を改正して、自衛会議ぐらいにした方がいいのじゃないか、これどうしても国防とせんことには工合悪いのですか。
  258. 船田中

    国務大臣船田中君) これは総理大臣からも御説明があったのでございますが、わが国の防衛問題というのは、相当重要な国策の一つでございまして、そうしてしかもその関係するところきわめて大きいわけでございます。先般来高碕長官がここで御説明申し上げたことをお聞き下さいましても、その重要性はお認めになられることじゃないかと存じます。従いまして、国防についての重要な基本計画あるいは防衛産業についての施策、ことに防衛出動の可否といったようなきわめて重要な問題につきましては、ただ内閣の閣議でいきなり論議をするというよりも、その前に十分に基礎的な調査をし、検討を加え、大所高所からいかにすべきかということについて十分に原案を練りまして、そうして最後の決定は閣議においてやるということになることがきわめて必要である、かような考え方からいたしまして、国防会議を設置するということになっておるわけであります。
  259. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 特別に国防という名前をどうしてもつけなければならぬのかどうかということを聞いたのです。国防会議を設置する理由を聞いているのじゃない。自衛隊法を改正して、自衛会議ぐらいにしておいた方がまた気がきいていいじゃないかと、こういう意味です。
  260. 船田中

    国務大臣船田中君) この防衛庁設置法の場合に、国防という字を使いましたことは、この国防ということは、わが国の安全保障という意味でございまして、政治、外交、経済等の面をも含んだ広い観念でございます。従いまして、単に防衛という、外部から侵略があった場合にわが国土を防衛する、そういうために実力的な行動をとるということを中心とした防衛という考え方よりも、もっと広い、ただいま申すようにわが国の安全保障、すなわち政治、経済、外交あらゆる面を含んだ広い観念を現わす意味におきまして国防という文字を使った次第でございます。
  261. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一つ尋ねて……時間もありませんから。  なるほど国防といってりっぱに名前をおつけになったが、たちまちこの法律案がかりに可決されて成立しました暁には、当面国防会議に御列席になるのは鳩山総理と重光さん、一萬田さんと船田さんと高碕さんと、このメンバーですがね。どう見たところで鳩山さんのあの弱々しいからだで、国防会議でござい、国防会議の議長でございとふりかざしてみたところで、重光さんもあれだし、一萬田さんの態度もあれで、それは日本銀行総裁としては一応なんですが、あの人たちが日本の国防をあずかるのでござい、まあ船田さんと高碕さんは一応いいでしょう。(笑声)それも戦争中に法制局長官もやってやられるので、一応多少は国防の「こ」の字ぐらいは知っておられると思うが、この顔ぶれで日本の国防の最高方針を決定されるというのでは、これはまるで、実際のことを言うて、私は率直なしろうと論かもしれません。しろうと論かもしれませんけれども、どうもえらいことになったものだと思いまして、いかにも自衛隊の実力に相当するものとしてお並びになった場合……。ということは、国防会議の議長ともなれば、少くとも自衛隊が発足したときには一つ勇ましく閲兵式にも出るというところに一つ意義があると思うのです。わしはそういうことはやらなくてもいいと思いますが、そういうところに勢いを盛んにする意義があると思うのだが、たとえば秘書の肩につかまってよろよろと閲兵台に上るところを見てごらんなさい。世界各国にはこんな姿はないと思う。これはまあ心眼の発達した人は、たとえば関ケ原の合戦のときには大谷刑部義隆のごときは、からだがくずれておってもかごに乗って指揮をしたということがあるから、まあこれは昔の話であって、今日国防会議の副議長に相当する重光さんがこの閲兵台にお上りになった姿というものは、それは実際どうもねと、私は思うのです。これはからだばかりを言うのじゃなく、これはやっぱり頭の問題も言うのでありまして、よそのスターリンが専制時代に閲兵している姿、それからムッソリーニが閲兵している姿を見ましても、――いつでもあなたは外国の例をすぐ引かれるものですから、引かれる以上は私も……(笑声)日本も独立して兵隊を持つのだというから、それで私も申し上げるのですが、毛沢東にいたしましても、アイゼンハウアーにいたしましても、イギリスにいけばイーデンにいたしましても、こんなのはどこにもいないと思う。それで国防でございなんてというふうに振りかぶるのはちょっとおかしいと思うのだ。それはやっぱり精神の問題だ。心眼でもって大谷刑部式の指揮をされるというならばもう何をかいわんやですが、これでほんとうに指揮ができるかということについて、当面の責任者である船田さんにお伺いをしたい。これで質問を終りたいと思います。
  262. 船田中

    国務大臣船田中君) 総理の健康あるいは重光外務大臣のからだについて非常な御心配をいただきましたことはまことにありがとうございますが、防衛の責任者といたしまして、最高の責任者はもちろん総理大臣でございますが、直接実際の責に当っておりますのは防衛庁長官でございます。国防会議が設置されましたならば、ただいままで御答弁申し上げておるような基本方針に従いまして、十分各般の事情を勘案いたしまして、わが国の国力に相応するような防衛体制、しかもできるだけ最小の経費をもって作り上げる防衛体制を整備するように一つ十分検討して参りたい存じます。
  263. 千葉信

    ○千葉信君 議事進行について。約束に基いて審議日程を切りかえて、次の議題に入って下さい。
  264. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでけっこうですが、私の質問中なので……。この次には一つ非常に大事なところに入ろうと思うので、船田さんも国費を非常に節約をしてと言われたのが、はからずもいろいろな問題が起っておりますので、それらの問題についてこの次の機会にぜひお尋ねしたいので、一つ保留しておきたいと思います。(「宮内庁来ておるのか」と呼ぶ者あり、千葉信君「来てなければ暫時休憩」と述ぶ)
  265. 青木一男

    委員長青木一男君) 千葉理事の発言の通り取り計らいます。  ちょっと速記をとめて。    午後四時四十五分速記中止    ――――・――――    午後五時一分速記開始
  266. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記を始めて。  宮内庁法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、質疑を行います。
  267. 松浦清一

    ○松浦清一君 先般の委員会でいろいろ御質疑がございました中に、宮内庁のいろいろな役職に非常にむずかしい名前があって、なかなか国民になじみがたいというようなことで、それぞれの役職についての御質問に対して宮内庁の方からいろいろお答えになりましたが、この法案の提案理由の第三のところに「特殊な名称の内部部局の長、すなわち侍従長、東密大夫」云々と、そういう「官職名及び権限をこの際明記する」、特に提案理由の中に「特殊な名称」ということを十分考えられて、この法案の立案をされたようですが、にもかかわらず、いわゆるこの特殊な名称に少しも変更を加えられなかったということは、非常に大きな支障がございましたんですか。たとえば侍従長、東宮大夫、式部官長、東宮侍従長、皇子ふ育官、書陵部長、こういうようなちょっと字だけを読んだだけではなかなか判断できないような役職名があるんですがね。これを特殊な名称があるということをお気づきになっておりながら変更をされなかったということには、何か大きな支障があったのでございますか。
  268. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 宮内庁のこういうような官職についての特殊な名称については、これは皇室のあり方が新しい時代に即応していろいろ改善をしなければいけないのですが、また根本に伝統を尊んでいかなければいかぬというようなところもございまして、それも無視できないで、ただ伝統だけを考えてもそれはいけないですけれども、その伝統も十分考えていかなければいけない点もございまして、英国の皇室あたりのこともいろいろ検討しますと、あそこはずうっと前からの、いろいろなこういう官職の名前なんかは昔からの名前なんかを使っている、これは日本以上なんでありますが、そういう点もありまして、その仕事が普通の官庁の仕事と幾らか違う特殊な仕事でありますものですから、それに応ずるようなやはり特殊な名称が従来から使われてきたのを、それをそのまま使った方がいいんじゃないだろうかという説もあります。しかし特におかしいものはこれは新しい時代に即応して直すということも考えなくちゃいけないのでございますが、そういうような点もございましたので、まあ今まで使っておりまする官職の名称を従来通りに一応ここへ書くことにしたわけでありまして、特にここに「特殊な名称の内部部局の長、」をここに「明記することともに、」、こうなりますのは、この特殊の名称でありませんと、行政組織法で何々局とか何々部――局には局長、何々部には部長を置くということがありますから、こういう名称を別の規定で明記する必要がなくて、行政組織法の方でいけるわけでありますが、しかし今申しましたようなことから、やはりこういう特殊な名称があり、それをすぐ変えるのもどうかというようなこともありまして、そういうようなことでありますると、ここに明記しておく方が行政組織法の精神に沿うことになろう、こう考えた次第であります。
  269. 松浦清一

    ○松浦清一君 そういういろいろの話し合いをなさる際に、ただいま御説明によりますと、変えた方がいいという御意見もあったように伺ったのですが、それはどういう職名について変えた方がいいというようなことがあったのですか。
  270. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 今度のこの改正案を考える際には、名称については特別にどれを変えるか、どれを変えないというようなことはなかったのであります。今度のこの改正をお願いするのは、実質的に能率をあげようというようなこと、皇宮警察との関係を一そう緊密にしようという点が主眼でありまして、その際に、行政組織法の精神に沿うように、その特殊の名称はやはりこの法律に書いておくのが本当だというような専門家の御意見もありまして、それじゃ書いておこうというのでここへ書かれたので、この点、今度の改正の際にあまり突込んで詳しく論議されたことはないのでございます。
  271. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は大体この法案に大局から言って反対の気持を持っているわけじゃないので、従って細かいことを聞きますけれども、この中に皇子のふ育官というのがありますね。この法律の中心じゃなくて、そういう職名がございますね、宮内庁の中に。
  272. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) あります。
  273. 松浦清一

    ○松浦清一君 これはどういうことをやってどういう字を書くのですか。私、浅学にして、ここに「ふ」という字が、平仮名の「ふ」が書いてあるので、わからないのですが。
  274. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) ふ育官これも元からずっとそういう名前で来たのでありまして、法律の中にはなくて組織法か施行令ですか、職制ですか、今度の法律と直接関係がないのではありますが、そういう名称のものもございます。「ふ」という字は当用漢字にないから平仮名になっている、こういうことでございますが、これは未成年の皇子の養育から教育をお世話をする係でありまして、従って義宮さんは昨年の秋に成年に達せられたものでありますから、ふ育官が今度事務官という名前に変っているのであります。ふ育官は未成年の方をお育てするという仕事を持っておるのでございます。
  275. 松浦清一

    ○松浦清一君 それは男性ですか、女性ですか。
  276. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 男性もあれば女性もあるのですが、今のところ義宮さんが一年前に成年に達せられたものですから、今、清宮さんにふ育官がついておられまして、これは女性のふ育官であります。
  277. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうすると、そういう人たちは、成年に達しられたら、もうそのふ育官は何かほかの事務官かなんかの方の仕事をやられて、そういう仕事から抜けるわけですね。
  278. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 成年に達せられますと、まあ、ふ育といったような関係よりも、もう少し違った意味でお世話をするというので、場合によると似たような仕事の面もございまするけれども、今度は、おとなの方を世話されることになって、未成年の方を世話されるのとは、気持の上でも違ってくるというような点で、子供を育てるという意味のふ育ですから、ちょうど境目で、きのうからきょう、くるっと変ってくるというような大きなものでございませんけれども、気持の上では変っていくのであります。
  279. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうすると、皇子のふ育官という職制は、あるときはあったり、ないときもあったりするというわけですか。
  280. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) さようでございます。
  281. 松浦清一

    ○松浦清一君 妙なことを聞くようですが、皇室経済法によると、皇室費の種類は、内廷費、宮廷費、皇族費という三種類に分けられて、内廷費という費用は御手元金になる。そうして「宮内庁の経理に属する公金としない」とある。その御手元金というのはどういうものですかね。これは公金じゃないのですか、全然。宮内庁の部局の経理面から離れて、じきじき天皇とか皇后とかのお手元に渡すことになるのですか。
  282. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) これは御手元金でありまして、じきじきおこずかいのようにしてお使いになるというようなものでありますが、それじゃ両陛下御自身でお扱いになるかといいますと、その方の仕事をする者として、内廷会計主管という仕事をする者がおるのでございます。これはやはり宮内庁の職員であります。これは皇室経済主管という、宮廷費とか、そういう公金の、公けの方の経理をする人がやはり内廷の会計主管を兼ねて、その人がお手伝いをするという形になっておりまして、この方の金で、へいぜいのいろいろお食事の経費ですとか、洋服を買われたり、皇后陛下の衣裳を買われましたり、それからいろいろ化物学の研究などなさいます、そういうような経費ですとか、それに関連して研究費のようなものですとか、そういうような、陛下のほんとうの私の生活にお使いになる経費というものでございます。内廷会計主管というものを置きまして、これは専用じゃありません。兼ねて、そういう資格でお世話をしておるというものでございます。
  283. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうすると、公金としての公けの金で、公けの監督を受けてはおらぬけれども、天皇や皇后の自由意思によっては使えないわけですか。天皇、皇后の意思に基いて、そうして出納をする係が秘書のようにして、ついていて、支払いをする。あの着物を買ったから幾ら払え、この洋服を作ったから幾ら払う、そういうふうなことになるのですか。
  284. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) これは両陛下の御意思によって使われるわけです。しかし年額がこの法律で三千八百万円ときまっておりますから、その範囲でまかなうために、お食事でしたらその予算はどれくらい、衣服代はどれくらい、研究費はどれくらい、これは私たち私経済の場合において、いろいろおこずかいの予算を立てる意味において、大まかな予算が考えられて、それを元にして陛下の御意思によって内廷会計主管がお世話をするということでございます。
  285. 松浦清一

    ○松浦清一君 天皇も皇后も皇太子も、皆それぞれ、やはり皇后も女性であれば、ああいうしま柄の着物を着たい、こういう格好の帯も買いたいというような希望が起るだろうと思いますが、そういう希望があれば、それを自由の意思にまかして、買って上げるというのか、買うというんですか、やはりもしも皇后がああいう帯を締めたい、こういう着物を着たいというようなことを言い出しても、それはちょっといけないとか何とかいう干渉する人があるんですか、ないんですか。全くの自由意思で希望されるものを作って上げる、そういう自由性はあるんですか。
  286. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 今の皇后陛下の御服装のような場合ですと、どういうものを作りたいというような場合には、女官長とか女官に相談される場合が多いのです。なお、その金額等のことになりますと、内廷会計主管が、予算がない場合には、もう予算がありませんから、まあ一つ待って下さいという場合もありまして、そういうようにお世話をする方の意見を聞かれながらなさるということでございます。
  287. 松浦清一

    ○松浦清一君 ただそういうことを伺っているのは、天皇はいわゆる人間天皇になったんですから、相当人間としての自由が宮内庁の中で認められるか、依然としていろいろな、ちょっと理解しにくいような職名が残っているように、昔の天皇時代と同じような習慣、ほとんどもう自由が抑制されて、人間らしいことはやれない、こういうような習慣というものは、憲法の改正によって天皇の地位が変り、またいろいろな点が変ってきたので、中の生活の状態というものは変っておりますか、依然として昔と同じ通りですか。
  288. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 私は二年半前に宮内庁へ入りましたので、ずっと古いことは知りませんが、古くからおられる方の意見を聞きますと、まあ以前ほどはやかましくなっていないと思います。この両陛下の御意思というものを尊重しましてやっております。たとえばピアノがいたんだ、そうすると、皇后陛下は音楽がお好きで、ピアノがお好きですが、その場合に、どうも、もう予算がないんじゃないだろうかというような心配なんかなさる場合がありますけれども、そういう場合に直している場合もありますし、そういういたんだものを無理にひくのはどうかと思う、お買いになりたければお買いになったらいいでしょうというふうに計らっておりまするし、古い昔のことはあまり知らないんですけれども、そうむずかしくはしておらないつもりです。ただ予算がありますから、予算を超過しては、これはいけないからして、予算の範囲内では御意思を尊重してその係が扱っておる次第であります。
  289. 松浦清一

    ○松浦清一君 皇太子は非常に馬が好きなようですが、たとえば馬に乗れば自由にどこへでも走られてみたいというような気持が起るんじゃないかと思うんですけれども、これは天皇皇后を含めて、皇太子のその自由を拘束する何かあるんですか。たとえば銀ブラでもしてみたいということを言い出されたとしたら、それはいけませんというようなことをやはりだれか言うんですか。
  290. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 皇居内での場合でしたらそういうことはありませんけれども、そとへお出になる場合ですと、やはり警衛というような関係もありましたり、時によっては、こういう時間においでになったのでは一般の人に……、ラッシュ・アワーなんかなるべく避けるようにされるとか、そういうようなふうにしていただいたり、あるいは今の銀ぶらのような話しは、銀ぶらをしたいということをおっしゃりもせぬのでございますけれども、先日申し上げましたように、これはやはり社会情勢と即応して、将来においてはもっと気楽になされるようになると思うのですが、もしお出かけになりますというと、交通上迷惑をかけるとかいうようなこともありましたりするもの場合に一般の、外部の社会の実情を知っておるわれわれが、ときには、今はこうだ、あるいはああだというふうに御相談相手になるということはございます。
  291. 松浦清一

    ○松浦清一君 まあ天皇、皇后、皇太子のごとき、そのほかの皇族方も同じことですけれども、やっぱり一般国民と別世界の人でないという、向うの立場からいっても、国民の立場から見ても、もう少し近づけて、普通の人間同士と同じようにつき合いができるように、順次やっぱり仕向けて行く必要が私はあると思う。そういうことにはやはり中の傾向としてはそういう方向が考えられておりますか。いつまでも宮城の中に閉じ込めて、だれかが作ったプランの通りに行動なさると、こういうことはいかぬのじゃないかと思うのですよ。皇太子が乗馬が好きだから、馬に乗って好きなところへどこまでも行っちゃいかぬが、たとえば三時間、五時間、山でも駆け回ってくるというような自由が許されると、そういうことになることは好ましいと思うのですが、そういうことに努力をされる傾向は今ないのですか。
  292. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 今おっしゃるような方向に努めつつあるわけですが、まあ一足飛びにいかない。一般の社会情勢もにらみ合せてやっておるわけです、たとえば天皇陛下の場合でも、以前はまあ映画の劇場なんかおいでになったことは最近まではなかったのですけれども、最近はおいでになります。それからお相撲がお好きなものですから、去年からお相撲に、国技館に行っておられます。近くもこの日曜日においでになりますけれども、そういうふうに、これは一つの例でございますが、今おっしゃいましたような線に向ってだんだんに取りはからいたいと、われわれは考えておる次第であります。
  293. 松浦清一

    ○松浦清一君 うかつなことを聞きますけれども、皇宮警察というのは独立しているわけですか。独立しているのでしょう。
  294. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 皇宮警察は警察庁の下部の一つの機関でありまして、宮内庁とは別の官庁であります。ですから、今おっしゃいますように、宮内庁から見ると独立のものと、こういうふうになります。
  295. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうするとあれですか、やはり警察庁の警官が出張っていると、こういう格好ですか。
  296. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) これは皇宮警察については、やはり警察庁の中の一つの所管でありますが、あそこの護衛官と言っておりますが、採用する場合には普通の一般警察の採用とは別に皇宮護衛官だけを採用しております。幹部の方は警察の、一般警察と人事の交流がございますけれども、下の方は、大体あそこを初めから希望して入って、そこでずっと訓練を受けてやっている人というのが大部分であります。一部やはり一般警察から入っている人もありますけれども、採用等は別に採用されていて、教育もまた別に教育されているというような点はありますけれども、もちろん警察庁の中であって、警察庁長官の指揮があるわけです。
  297. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうしますと、定員は警察庁の方の定員ですか。
  298. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) そうです。
  299. 松浦清一

    ○松浦清一君 宮内庁の方の定員じゃないんですね。そうすると、中の治安維持ということは、皇宮警察の中だけで治安を維持されて、そうして何か不測のことが起ったときには、警察庁に連絡して増強をしてもらうのか、そういうことですか。
  300. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) そういうことでございます。
  301. 田畑金光

    田畑金光君 ちょっと、それじゃあ時間が限られておりますので、またこの次に詳しくお尋ねしますが、まあ一、二の点を次長にお尋ねしたいと思います。  御存じのように、明治憲法のもとでは、大日本帝国憲法と皇室典範、この二つが成文憲法をなしていたわけです。しかし現在の憲法のもとにおいては皇室典範は法律事項になっているわけです。取り扱っている内容は、旧帝国憲法のもとにおける皇室典範と、日本国憲法のもとにおける皇室典範と、別段そう違いがないようにお見受けするわけですが、次長として宮内庁におられて、いろいろお仕事をやってみられた場合、皇室典範を法律事項として取り扱って行くのがいいのかどうか、あるいはやはり皇室に関することは古い時代と同じように、日本国憲法とともに成文憲法の内容を構成するように持って行った方がよろしいかどうか。これについて考え方を承りたいと思います。
  302. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 私としては現在の行き方、これがいいと思っております。
  303. 田畑金光

    田畑金光君 どういうわけでこの方がいいというお考えなのですか。
  304. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) これはいろいろ細かく個人的な考えを言えば長くなりますが、特にその根本を言いますと、われわれ公務員としましては、現在の憲法、法律を順守して行くということがわれわれの任務であり、そうした気持ですでにこうしたものを見ておりまするから、これでいいと、こういうふうに考えているわけであります。
  305. 田畑金光

    田畑金光君 私は現在の憲法と皇室典範というものをこう並べて、いろいろ検討して見ました場合に、特に問題となるのは皇位の継承の問題ではなかろうかと思うのです。というのは、これは旧憲法のもとにおいてもそうでありましたが、新らしい皇室典範においても、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」、こういうことになっているわけです。しかも典範第二条には、皇位継承の範囲というものが規定されておりますけれども、敗戦後、終戦後、多くの皇族の方々がいわゆる臣籍に降下されて、皇族の範囲というものが非常に限定をされているわけです。さらにまた新らしい憲法と、新らしい民主国家のもとにおいては、男女同権である、人間をどこまでも人間として尊重する平等観の上に立って憲法も、法律の諸制度もできているわけです。ことにまた日本の皇室がその範として見ているイギリスの王室等を見ましても、王女が皇位継承権を持っておる。こういうことを考えたとき、私は日本の皇位継承についても、やはりそういうように、王女も皇位継承権を持つというようなことにもっていくことが、歴史的な現実の姿ではなかろうか、こう考えるわけですが、この点はどのようにお考えになりましょうか。
  306. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) そうした問題になりますと、事務的なことでなくて、相当政治的な問題だと思いますので、そうしたことについては、私たちの立場として、とやかくこうした席で申すべきじゃないのじゃないか、こう考えておりますので、結局総理大臣なり、もっと上層の方で研究をされることと思います。内部的に言うことはこれはありますけれども、(田畑金光君「内部的でいいですよ」と述ぶ)ここは内部ではございませんから、外に向ってわれわれのような事務官吏が、公務員が、そうした問題は言わないのが、現在の憲法において、憲法、法律を順守していく任務にあるわれわれ公務員としての行き方ではなかろうかと思いますので、とやかく申すことを一つ差し控えさせていただきたいと思います。
  307. 田畑金光

    田畑金光君 なかなかこれは公務員としての次長の立場からいうと、お答えにくい点かもしれませんけれども、しかし実際宮内庁におられて、皇室典範等と取り組んでやって見られる、あるいは現実にいろいろな事態にぶつかってきますると、少し狭ま過ぎはしませんか。こういうような気持だけはお持ちになっていると思うのですが、どうですか。
  308. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 現在のところで考えますると、皇位継承権者として、皇太子殿下、義宮さん、それから高松宮さん、三笠宮さん、三笠宮さんのお子さんの親王と、相当おいでになりますから、そういうようなことは別に考えておりません。
  309. 田畑金光

    田畑金光君 それはこれ以上追及してもお気の毒ですからやめますが、一時終戦後天皇が退位をなされる、退位されるであろう、こういう話等もあったわけです。おそらく天皇としても、あの戦争の緒戦から終戦に至るまでの経過を見た場合、元首としての政治的な責任といいますか、政治的な責任はもちろん憲法上なかったにしろ、道義的な責任、元首としての道義的な責任、こういう責任というものは強く感じられておられたのではなかろうか、こう考えるわけです。あなたは二年半か前に来られたというから、あるいはそういう点を観察されていたいかもしれませんが、伝えるところによると、そのようなこと等もあったようにお聞きになりましたかどうか、一つ承わりたいと思うのです。
  310. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 天皇陛下としては、国政のことについては常に真剣にお考えになっておりまするので、今お尋ねのようなこともあるいはあったかとも思いまするけれども、直接私としては伺っておりませんが、真剣にお考えになっておったということは聞いております。
  311. 田畑金光

    田畑金光君 私はやはり人間の自由と申しますか、先ほど銀ぶらの話も出ましたが、天皇でありましょうとも、皇后でありましょうとも、やはり自由になって、人間天皇として私的な生活を持ちたいということは当然の理だと思うのです。また公人としても、やはり天皇の地位というものは、もう少し私たちは何らかの人間的な自由というものが保障されていてもいいのではなかろうか、こう思うのです。そういう意味におきまして、現在の皇室典範等を見ますると、皇位の継承というものは、天皇の崩御という事実がなければ皇位の継承ということは起らない。従って終生天皇は天皇として、公人としてその地位を守らなければならぬ、こういうようなことは少し新しい政治の行き方、政治のもとにおける天皇の地位のあり方としては酷過ぎるのじゃなかろうかというような気持も持つわけですが、まあそういう意味におきまして、たとえば道義的な責任を感じて、ああいう戦争のあとには退位をされるということも、これは人間天皇の自由だと思うし、あるいはそうでなくてもいろいろ精神上の、あるいはまたいろいろな問題等からして退位をされる。退位を認める。こういうことも皇室典範の上からいって大事じゃなかろうか、こう考えるのですが、こういうような点も、あなたの気持をお聞きするということもあるいは答弁に窮するかもしれませんが、あなたのもし何らか感想が伺えるなら感想を伺っておきたい。
  312. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) そうした問題も先ほど申しましたように、事務的な範囲の問題でございませんので、私の立場としてはとやかく申し上げることは御遠慮するのがほんとうだと思いますので、そういう点で御了解を願いたいと思います。
  313. 田畑金光

    田畑金光君 この間の吉田君の質問に対しまして、皇太子の配偶者を選ぶことについて、相当自由の選択ができるというような御答弁がなされたようですが、それに関連しまして、皇族が婚姻をなされる、あるいは立后と申しますから皇后になられるという意味でしょうか、そういう点は典範第十条によると「皇室会議の議を経る」ということになっておるわけです。皇太子が結婚なさるについても皇室会議の議に付さなければならぬ、こういうことになっておるわけです。そういうような点はいわゆる憲法の婚姻というものが両性の合意によって成立をする。戸主の承認を求めるという古い婚姻のあり方から両性の合意によって婚姻が成立する、そういうような点から申しますと、第十条というものは、少しこれは憲法の精神に反するような感じがするのですが、この間、あるいは質問があったかどうか知りませんけれども、この点どういう観察でしょうか。
  314. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 皇族の場合も両性の合意がこの婚姻の中心になることはいうまでもないのでありまするが、皇太子妃の問題などを考えますると、やはり皇太子妃というお立場の方は、将来天皇になられる方、その配偶者は将来皇后になられる、そういう方につきましては、やはり国民の納得のゆくような方でないといけないというようなこともありまして、こうした「皇室会議の議を経ることを要する」ということがあると思うのでありまして、これは「議を経ることを要する」とあるので、これは議決によってきまるというよりは弱い条文になっておるのでございまして、そういうような点で皇族については一般の国民の方とはやや違う、そうしたこともこれは現在の国民感情から見てやはり必要だというようなことで、こうした法律による規定があるものと思っております。
  315. 田畑金光

    田畑金光君 まだ質問はありますけれども、時間が制限されておりますから、今度吉田君に譲ることにして、次の機会に一つ詳しくまた御質問いたします。
  316. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この前お尋ねをいたしまして、今、田畑君が問題にしておりました皇太子の結婚の自由があるかという点について、瓜生次長に答弁をいただきましたが、この前の御答弁で、憲法と、それから皇室典範の制度とは必ずしも一致しない。やはり矛盾をするところがある。たとえば家柄についてどういうところの娘さんでもいいというわけには参らぬ、こういうお話があったわけであります。そうしますと矛盾をするところが、まあその点についてもあるわけでありますが、実質的に一応矛盾を認められましたので、私は新しい憲法のもとにおいて、皇室典範、その点についても、その他の点についても全般的に改訂をせられるべきではないか。あるいは改訂の議を起さるべきではないかと思いますが、もう一度重ねてこの前の初めにお尋ねをいたしました質問を申し上げたいと思います。
  317. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 皇族につきまして、一般の国民の方とやや迷う、幾らかそこに慎重を期するような扱いをするということ、これはやはりみな国民の総意に基く象徴であられる天皇並びに皇位継承権者というようなことからして、そういうふうになっておると思うのであります。われわれ憲法の学者の本なんかを見ますと、たとえば天皇も広い意味において、一般の国民の一人であるというけれども、憲法の第一条に象徴として天皇になっておられる方についても、ずい分一般の国民とはまた違う、違うのであるということは、予想されておるのだというように憲法学者は言っております。皇位継承権者についてもそうしたことがやや違うことがあるということを認めておるので、憲法の本を見ると、両性の合意によってというような条文のところにも皇室典範のこの条文についても、こうしたことは皇太子妃を選ぶ場合においては、これは国民の気持としてこれを認めておるのだというふうな解釈になっておりますので、従って私たちはその解釈によって事を運んでいきたい。この法律の改正云々については、私らとしては別に今考えておりません。
  318. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあそこのところは見解の相違かもしれませんが、実質的に前の憲法のときにありました皇室典範なりあるいは皇室令等と変りがない。皇室典範なりあるいは皇室令の中から再検討をする必要があろう、こう申し上げるのであります。それでは具体的にもう少し皇室典範といったような基本的な制度という点になると、問題が大きいですが、そこで私としては意見を述べる立場にないという今お話ですが、宮内省、今の宮内庁ですか、あるいは宮内官僚の形式主義あるいは事大主義というものは、これは名称その他と相関連を持って、私ども今問題にしておるところでありますが、大へん忙しい中でございますから、私どもも十分に資料を渉猟することができない、この前引き合いに出しました中央公論と、それからわずかに三笠宮の「わが思い出の記」程度でありますけれども、わずかに手元にあります資料を検討いたしましても、これは言葉は違います、言葉は違いますけれども、依然としてやはり形式主義があることが指摘せられておる。そこでその点についてお尋ねをいたしますが、たとえば三笠宮が「わが思い出の記」の、百六十九ページに、まあ養育掛長というのですか、養育掛長によって自分が、これは三十年前の話ですけれども、どうするかということについて老人との間に何らかの話が出たことを覚えている。そしてお母さんであられる貞明皇后には別に希望があったけれども、それが実現をしない。それから自分が養育掛長との相談によって陸士にいくと云々ということが、軍人になるということがきまった、こういうことが書いてあります。その中に、それは過去のことでありますけれども、しかし現在においてもそうした制度が、あとの方で「格子なき牢獄」という言葉が使ってありますが、それが破られたかどうか、現皇太子の将来の過程を見ないとわからない、こういうことで過去及び現状についての御意見が書かれておる。それから中央公論をお読みになったということでありますから、あるいは形式的な行幸について、あるいは皇太子が映画一つ見られるのにも会議が持たれる。これは過去のことだけでなく、過去の空襲下の宮城内の実情等については詳しく書いてありますけれども、現状についても書いてございます。従って典範あるいは皇室令といったような根本的な制度もですが、あなたは先ほど天皇、皇后陛下も相撲を見に行かれる云々というお話でございましたけれども、二つのものから見ましても、なお旧態依然たる形式主義が、あるいは事大主義が宮内庁の中にあるように考えられますが、それではその点についてはどのようにお考えなんですか。
  319. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 三笠宮さんの御本の前の方に過去のことがずっと書かれているので、宮さんとしては、現在はそうでなく自由に町にも出れるという意味で今がいいのだというようなことを書いておられるわけでありますが、その中に、現在においてもそれに似たことがありわせぬかということがちょっと書いてあるのも私拝見しました。前からみると、皇室のあり方はずっとお楽になっております。自由になっておりますけれども、しかし一般の方と同じようなふうにまではいっていない点はあります。これはわれわれお世話を申しているものの立場として、だんだんにそういう点を進めていきたいとは思っておりますけれども、やはり先ほども申しましたように、一般社会の情勢、一般国民の総意の気持というようなものと考え合せながら事を運んでいるわけであります。われわれが、この程度は、もう今までの慣例を破って、こういうふうになさったらというようなふうにやりましても、また古い方からはいろいろ非難もあります。これは常に両面からいろいろ批判を受けておりまするが、すでに国民の大部分の総意というものがどういうふうにあっていただきたいのだろうということを考えながら、お世話を申しておるわけでありまして、一般の方と同じようではないという点を言えば、まだ形式主義が残っておると言われれば残っておるだろう。それは今申したような気持で、それをあくまでももとのままを残していこうというようなことではなくて、だんだんには進んでいくべきだが、国民の総意に基いて象徴となっておられる。その国民の総意、国民の大部分の気持がどのあたりを期待せられるかということを考えながら、だんだんとそうした点を先に進めていきたいというふうに考えておる次第であります。
  320. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 両方の文章の中に出て参ります具体的な事例は、たとえば昔のこれは空襲下の防火施設あるいは祭粢料といったようなことが出て参ります。それから、これは文章の中には出て参りませんけれども、あるいはたばこだとかお菓子とかいったものについて、恩賜のたばこという制度といいますか、考え方があるいはあるように思うのです。ですから皇室典範なりあるいは皇室令が全体の制度がかわっておらぬから、そこであなたがまあ国民の総意として国なりあるいは国民の統合の象徴となられたというのですけれども、その間に矛盾があるのではないか、そういう国民の総意によって、国なり国民統合の象徴となられるという憲法の精神と、それから皇室典範なりあるいは皇室令との間に一貫して流れているというか、新しい憲法に従って再検討せられないから、末端においてなお形式主義、あるいは事大主義というものが残るのではなかろうか。それから三笠宮の「わが思い出の記」の前半の方に昔のことが書いてあるのですが、たとえばこの辺は大へん率直な事実の感情だろうと思うのですが、大きな敗戦の犠牲の結果、「格子なき牢獄」――不自然きわまる皇室制度から解放された。そうして「三十になってたった一人で町をあるく楽しみをはじめて知ったわたくしは、運命のふしぎさをかみしめながら、だれにも気づかれずにコツコツと町をあるいてみたものである。このごろまた地方に行くと警戒が厳重になりだしたので、ときどきあのころのほうがよかったなと思う」、こういう工合にやはり営内庁の中の逆コースというものがあげられておる。それからそのほかに、たとえば皇太子なら皇太子の将来を見てみなければ制度の打破がほんとうであるかどうかということはわからぬということは、あまりにも皮肉なことだと、こう書いてあります。まあ相当変った。しかしながら残っておるものがあり、また復活するものがある、こういう指摘であります。これはあなたの立場としては――宇佐美さんは前からの長官でもあり、従来の旧皇族の伝統をとうとぶという方向に動いておられると私は思うのですけれども、そういう意味で新しくお入りになった瓜生さんこそ、その点について再検討の推進にお役に立たるべきではないか。そうしてそのことが、これは読み上げませんけれども、従来の制度――伝統と、それから人間三笠宮との間の大きな苦悩となって出てきておる。何になろうかというときに、学者になることに落ちつかれたけれども、その学者になるときに皇族であることを続けようか、それともやめようか――「皇族は選挙権も持たないし、いわんや政治的活動をしてはいけないことになっている」、そこで「政治活動をするためには皇籍離脱という問題と対決せねばならぬ」ということで、非常に煩悶されたということであります。これは今後もその点が皇室典範なり、あるいは皇室令の改正がなければ、それぞれの人間としての皇族、あるいは皇太子にしても姫君にしても悩みがあるものだと思うのです。問題はこの形式主義や事大主義が残っておる、それを解決しなければ、それぞれの方たちの悩みを解決するわけにはいかぬと思いますが、重ねて御答弁をお願いいたします。
  321. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 何度も申し上げたことでございまするが、伝統を全然無視するということもこれは皇室のお立場、特に国民の総意が天皇象徴というふうにされておるのは、これは長い伝統を持っておられるということだと思いますが、伝統を全然無視するということはやはりいけないし、しかしながら改めるべき点は改めて新しい時代に即応するように民主日本の皇室であるようにお進みになるようにあるべきだということは私も考えております。従ってこのいろいろの点につきまして、社会の情勢とにらみ合せながら、だんだんと形式的な点とか、今言われるようなそのどうかと思う点は改めていかれるようにお世話をしたいと思います。これは一足飛びにやってもかえって国民から遊離する、国民の中の気持というものも常に考えていかなければならない、国民の中にはいろいろな考えの方がおられる、あるいは一つとは言えない、それでどのあたりがちょうどいいかという点は、これはわれわれの常に一番真剣に考えておることでありまして、そういうような点を考えながら、徐々に進んでいくということがいいのではないかと思っておるわけであります。
  322. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 国民の気持にいろいろある、そのどれがほんとうの気持であり、あるいは民主日本の皇室としていくのに取り上ぐるべき気持であるか、いろいろ考える、こういうお話です。ごもっともでありますが、この皇室のあり方というものと、それから三笠宮のこの本を読んでみましても、太平洋戦争――大東亜戦争についての批判と申しますか、反省というものが相当大きな部分をなしておる、これは当然のことであろうと思うのでありますが、憲法なりあるいは新しい憲法の下における皇室のあり方が出てきたものがそこにあったのでありますが、当然だと思うのでありますが、中央公論は私が申し上げるまでもなく、「天皇の戦争責任」という題で書いてございます。その中の戦争責任という問題についてはあとで伺いますが、その中に今度の太平洋戦争――大東亜戦争の最初の詔勅に、国際法規を順守といいますか、あるいは尊重ということがなかったために、なかったのも一つの原因であろうと思うが、かつての日清、日露の戦争の場合のように国際法規は順守されるということがなくて非常なまああれが行われた、若様の言葉でいくと「四悪」が公然と行われたと書いてあります。これらの点についてどういう工合に考えておられますか。あるいは天皇なり皇室において考えておられるか。これはまあ間接になるならば次長としてでもかまいませんけれども、お聞きしたいと思います。
  323. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 大日東亜戦争の始まりますときの詔勅の関係は、これは戦争の始まるころのことであり、だいぶずっと前のことで、その問題について今私からとやかく言うのは、これは差し控えるべきだと思います。また言える立場にもないと思いますので、その点は御了解願いたいと思います。
  324. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それじゃ伺いますけれども、これは自民党、まあ自由党と民主党が一つになられて自民党、その自民党が内閣を組織しておる実情でありますから与党であります。その国会で半分以上を占めております自民党で憲法改正ということを考えておる。これも御承知だと思う。その内容の中に、天皇を元首にする、象徴という言葉から元首にしたい、それから天皇の国事行為をふやしていきたい。そこでたとえば現在の憲法では認証という言葉が使われておりますが、そういうのをやめて、たとえば宣戦、講和の布告、これは元首になられた、天皇が宣戦、講和を布告される、あるいは国会の停会にしても天皇がやられる、条約の批准にしてもそうであります。また大臣その他の認証及び大公使の信任状の授与とかあるいは外国使臣の信任状の接受といいますか受理、大赦特赦等の復権等も書いてございますが、要するに天皇を元首にして――これは旧憲法と対比して見ますというと、二つか三つしか違わない。言い落しましたが緊急勅令、緊急の場合に命令を公布することができる、こういうことが書いてあります。これについてどう考えられるか、あなたは、私はそれらの点について判断し得る地位にないとこうおっしゃられるかもしれませんが、今の憲法ができます際の実際の経緯を読んで見ますと、最後には天皇の判断によって、今の憲法であれでいいじゃないか、こういうお話で、この憲法ができたといういきさつがございます。これは瓜生さんもそのときはおられなかったとしても、今は御存じになっておると思う。そして今憲法を改正したいあるいは改正するについては、こういう工合に天皇を元首にし、その国事行為をふやしたい、もしそういうことになりますならば、天皇の地位というものも大きく変るわけです。それからあるいは宣戦、講和の布告ということも、これはなさるようになる。今後できて参ります軍隊との関係は、今の総理大臣が最高指揮権を持っておるということでは、政局の変動等によって軍に不安、動揺を与えるのを考慮して、天皇が軍の名誉的な地位にあって、その精神的な中心となるという構想を主張される。これは決定的ではありませんけれども、そういう強い主張があったということも書いてあります。私はこういう動向が、一つはあらためて天皇の政治的な責任という問題を起して参ったゆえんだと思うのであります。人間天皇あるいは象徴としての天皇だということで今落ちついている――私は落ちついていると思う。ところがそれを逆コースにして、もとの憲法の時代に直そうといたしますならば、これは天皇の戦争責任という問題も起って参りましょう。それから天皇の憲法上の地位というものも、もし昔の憲法の時代のようなあれになりますれば、私はやはり反対の相当強い意見も出て参ると思うのであります。従ってそういうあれと関連してお伺いをしたいのでありますが、私はこういう点について、天皇の御意見をお聞きになるならば、おそらくそういうことについては反対だと言われると思うのでありますが、これらの点について、お聞き及びの点がありますならば、御意思をお漏らし願いたいと思う。あるいは瓜生さんのお考えでもけっこうでございます。宮内庁の責任者としてここに出られました瓜生さんの御意見を承りたい。
  325. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 憲法改正の問題でありますが、これは宮内庁の所管事項ではありませんので、私からは答えるべきじゃないと思います。特に政治問題につきましては、現在の皇室のあり方、特にその身近くに勤めている宮内庁のものといたしましては、とやかく言うことは、これはやはり間違いだと思いますので、これは何とも申し上げかねますから、その点はそういうふうに御了解願いたいと思います。
  326. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 しかし最後には、これはこの前の憲法問題について御意見を総理大臣が聞きに参った、そのときは幣原さんだろうと思うのですが。そうしますと、これは御意思を聞くか聞かんかは知りません、現在の憲法の建前から別の答えが出るかもしれませんけれども、御意思を聞くことについてはどういうふうに考えられますか。これは私は当時のあのいきさつから考えるならば、御意思は否定的だと思うのでありますけれども、瓜生さんの御解釈を承りたい。
  327. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 陛下の御意思というようなお尋ねなんですか、そこのところちょっとはっきりわからないのですが、今陛下は具体的な政治には関与されないお立場におられますので、従ってそうしたお立場であられる陛下の御意思がどうこうということは、われわれもせんさくしておりませんので、その点はそういう意味において御了解を願いたいと思いします。
  328. 千葉信

    ○千葉信君 本日はこれで散会していただきたいと思います。
  329. 青木一男

    委員長青木一男君) 千葉君の御発言、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  330. 青木一男

    委員長青木一男君) それではこれにて散会いたします。    午後六時九分散会