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1956-05-24 第24回国会 参議院 内閣委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十四日(木曜日)    午前十時二十四分開会   ―――――――――――――   委員の異動 五月二十三日委員高橋衛君辞任につ き、その補欠として木村篤太郎君を議 長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            野本 品吉君            宮田 重文君            千葉  信君            島村 軍次君    委員            青柳 秀夫君            井上 清一君            木島 虎藏君            木村篤太郎君            西郷吉之助君            佐藤清一郎君            江田 三郎君            菊川 孝夫君            田畑 金光君            松浦 清一君            吉田 法晴君            高瀬荘太郎君            廣瀬 久忠君   国務大臣    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    防衛政務次官  永山 忠則君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁教育局長    事務取扱    都村新次郎君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    文部省調査局長 福田  繁君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国防会議構成等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○臨時教育制度審議会設置法案内閣  提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  委員の変更についてお知らせいたします。  五月二十三日、高橋衛君が辞任せられ、その補欠木村篤太郎君が選任されました。   ―――――――――――――
  3. 青木一男

    委員長青木一男君) 国防会議構成等に関する法律案を議題といたします。質疑を行います。
  4. 江田三郎

    江田三郎君 理事を通じて、本日の質問経済企画庁長官の御出席をお願いしておきましたが、それはどうなっておりますか……委員長、誰が答弁されるのですか。(「どうしたのだ、答弁」、「きょうの委員会じゃないのだろう」と呼ぶ者あり)きょうの委員会の私の質問に、経済企画庁長官の御出席をお願いするといっておる。
  5. 青木一男

    委員長青木一男君) 理事といってどなた……。
  6. 江田三郎

    江田三郎君 千葉理事を通じてちゃんと申し込んであるはずだ。
  7. 青木一男

    委員長青木一男君) 再度今連絡しておるそうですから。
  8. 江田三郎

    江田三郎君 見えますか。
  9. 青木一男

    委員長青木一男君) 再度連絡しておりますから。
  10. 田畑金光

    田畑金光君 この間も松浦君のあれでも、長官出席しなければ質問ができないというのがあったでしょう。これは前の国会のときでも、この内閣委員会国防会議法案を審議したときに、長官だけでなく、企画庁長官も、それから外務大臣も出てもらって何した。近く外務大臣も出てもらわなくちゃ質問できない点もあるだろうから、きょうはすみやかに委員長、手配して下さい。
  11. 江田三郎

    江田三郎君 これから質問します。そこで、自由民主党の方なり、それから鳩山総理としても、自衛のための最小軍備ということをいろいろ言われるのですが、私もせんだっても鳩山総理に、自衛のための最小の準備というのは一体どういうことなのかということをお尋ねしまして、若干答弁を得ましたけれども、きわめてぼうばくとした答弁なんで、その点を防衛庁長官としては、自衛のための最小限軍備ということはどういうこととお考えになっておるのか、それからお尋ねしたいと思います。
  12. 船田中

    国務大臣船田中君) これはただいま御指摘がありましたように、総理大臣からも答弁申し上げておりますように、わが国国力及び国情に相応する最小限度自衛体制を整備するといことを目標といたしておるわけでございまして、具体的に申しますれば、現在政府が整備しつつある自衛体制というものは、もちろん、その中に入るものである。すなわち、最小限度自衛体制であるということを申し上げることができると存じます。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 そうしますと、防衛六カ年計画、正確な名前は私よく知りませんけれども、あれで陸上自衛隊十八万とか、飛行機千三百とかいうあれがわが国国力及び国情からみての自衛最小軍備、こうなりますか。
  14. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛庁試案として持っておりまする昭和三十五年度において達成すべき陸上十八万、艦艇十二万四千トンといったようなあの最終目標だけが最小自衛体制限界であるということをここに明言するわけではございません。しかしながら、今まで政府がだんだん整備しつつある自衛隊現有勢力及び近い将来において達成することを目標といたしておりまする自衛体制、その程度のものは先ほど申し上げましたいわゆる国力国情に相応する最小限度自衛体制と申して差し支えないと存じます。
  15. 江田三郎

    江田三郎君 鳩山さんと違ってあなたはきわめて正確な答弁をされるたちなんですから、一つ正確に教えていただきたいと思うのですが、わが国の現在の国力及び国情から見たら、先ほど言われました陸上十八万、艦艇十二五四千というようなあれは自衛隊のための最小軍備なんですか。どうもそこをそうでないような、そうであるようなことをおっしゃるので、はっきりわかりませんので、重ねてお尋ねします。
  16. 船田中

    国務大臣船田中君) あれだけで自衛体制が十分整備されたというふうに明言することは私は今日はむずかしいと存じます。しかしあれよりも非常に大きな自衛体制を整備するということの計画は今日政府としては持っておらないわけでございまして、大体の目標といいますか、めどは現在防衛庁試案として持っておりまする昭和三十五年度において達成すべき最終目標、あの数字に出てきましたもの、あの程度のものでございまするならば、私は最小限度自衛体制と申して差し支えない、かように考えておるのでございまして、それをどの程度こしたらその限界をこえるかということはちょっと申し上げかねますけれども、まずさしあたりの目標といたしまして、防衛庁の持っておりまするのは、従来しばしばこの委員会において申し上げておりまする程度のことでございまして、この程度のものでありまするならば、私は最小限度自衛体制ということを申して差し支えない、かように考えておる次第でございます。
  17. 江田三郎

    江田三郎君 あなたはあの限度をこえると、またわれわれの方が憲法違反じゃないかというかわからぬと思って、はっきりさせないでおられるのかと思いますが、われわれはこんなものはもともと全面的に憲法違反だという建前を持っておるわけです。しかしその問題を議論しておったのでは始まらないから、もうそういうことはきょうは触れませんから、一つはっきりおっしゃっていただきたいのです。そうしますと、わが国国力及び国情から考えると、昭和三十五年度を目標にした防衛庁試案というものが自衛のための最小限軍備、こういうことでいいんですね。
  18. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛庁として考えておりまする現在の自衛体制というものは、大体その程度目標にしておるわけでございまして、従ってそれが最小限度範囲に入るというふうに考えておる次第でございます。
  19. 江田三郎

    江田三郎君 船田さんどうして言葉を濁されるのですか。あなた濁したんじゃなかったら、私が聞いた通りでいいんですか、何かその範囲に解れると、だけでというようなことをちょいちょいはさまれるのでですか、一つはっきりやっていただきたいのです。
  20. 船田中

    国務大臣船田中君) これは私は最小限度自衛体制という抽象的な表現でございますが、これを尺度ではかられるようにはっきり陸上何万になったら最小限度をこえるということは、私はそれをはっきり申し上げるということはできかねると思います。しかし防衛庁といたしましては、現在のところ大体今までお示ししているものを、昭和三十五年度に達成するということを考えておるわけでございまして、それから先のことをどうするかということについては、今のところまだ具体的な何ものも持っておらないという実情でございます。
  21. 江田三郎

    江田三郎君 そこで国防会議が成立しますというと、会議へかける議案というものは、議長の方で整備されて提出される、まあこういう形になると思うのですが、もちろん鳩山総理である議長がそんな資料を持っておられるわけじゃない。ですから従って国防会議成立の暁にかけられる長期防衛計画というものは、今計画されておられるものが出てくると、こうなりますか。
  22. 船田中

    国務大臣船田中君) 陸海空の自衛体制整備についての要求原案というものは大体防衛庁が作成いたしまして、国防会議事務局を通じて総理大臣の決裁を経て総理大臣が諮問をするという形になると思います。
  23. 江田三郎

    江田三郎君 そこでそういうものがまあできるときに、総体として陸上自衛隊十八万、それから飛行機千三百、艦艇十二万四千トンというのはわかりましたが、もちろん国防会議成立の暁に出されるときには、莫たるそういうものでなしに、もっとこまかに、飛行機ならばどういうふうな飛行機というようなことになってくるんだと思いますが、そういう内容はどういうことになりますか。
  24. 船田中

    国務大臣船田中君) 飛行機艦船種類、その数量等につきましては、今まだ具体的にはきまっておりません。これから十分検討して参りたいというふうに考えております。
  25. 江田三郎

    江田三郎君 しかしそれはちょっとおかしいことないですか。飛行機という場合に種類数量というものが正確にこまかな点はきまっていなくとも、大よそどういう種類、どういう数量かということは、これはわかるのじゃないでしょうか、これはないのですか。
  26. 船田中

    国務大臣船田中君) 昭和三十五年度の最終年度において達成する目標に掲げてありまする飛行機種類につきましては、これまたこの前申し上げたように、大体航空自衛隊につきまして千三百機というものを目標にいたしておりますが、その半分は練習機というふうに考えておるわけでございます。艦船十二万四千トンと申しておりまするものにつきましては、その艦種について、あるいはその艦種にいかなる大きさのもの、あるいはトン数がどうなるかというようなことはまだ実はきまっておりません。
  27. 江田三郎

    江田三郎君 千三百機の半数が練習機で、その残ったものは一体その中に爆撃機とか、戦闘機とかいうものがあると思いますが、その内訳はどうなりますか。
  28. 船田中

    国務大臣船田中君) 攻撃的な兵器を持つということは考えておりません。どこまでも国土防衛に必要なる兵器艦船を整備するということでございますから、爆撃機を持つというようなことは今のところ考えておりませんで、実用機といたしましても、これは大体戦闘機それから輸送機というものがわれわれの考えておりまする実用機内容でございます。
  29. 江田三郎

    江田三郎君 この何かあなた敵の基地をたたくとかたたかぬとか言うて問題が起ったということで、私ちょうどそのころこちらにおらぬものですから、正確に聞いておらんのですが、それはどうでもいいのですが、爆撃機は持たない、大体練習機あと戦闘機及び輸送機、こうなるわけですな。
  30. 船田中

    国務大臣船田中君) 爆撃機は持つという考えは持っておりません。
  31. 江田三郎

    江田三郎君 そこでこの艦艇の方はまだ全然わからぬ、こういうことですか。
  32. 船田中

    国務大臣船田中君) 今までは御承知通り警備艦につきましても大きいもので千六、七百トン、中型のものが千数十トンというようなもの、それから上陸支援艇とか、あるいは雑船というようなことになっておりますが、それをどういうふうに割合をきめるか、あるいはその艦艇の大きさ、トン数というようなことにつきましては、今まで整備して参りました実情もよく検討を加えまして、そうして将来の計画を立てて行かなければなりませんので、従って艦種トン数、大きき、型状というようなものにつきましては、まだきまっておらないという次第でございます。
  33. 江田三郎

    江田三郎君 それから飛行機と船のことはそういうことですが、陸上自衛隊の方の使う兵器というものは、今持っておる程度兵器以上に、まあいわゆる新鋭兵器というものをこの計画では予想されておりますか。
  34. 船田中

    国務大臣船田中君) もちろん新鋭兵器というものも考えて行かなきゃならんと存じます。ことにできるだけ経費を少くいたしまして、効果的な防禦のできるような兵器考えて行かなきゃなりませんので、そういう点につきましては、技術研究所において常に検討を加え研究を進めておる次第でございます。
  35. 江田三郎

    江田三郎君 大体どういう……それは将来ずっと先はわかりませんが、今考えられる新鋭兵器といのはどういうものが予想されるのですか。
  36. 船田中

    国務大臣船田中君) まずさしあたり考えられまするものは航空機の侵入に対してこれを防衛するための誘導弾といったようなものは、それは相当力を入れて研究をして行かなければならぬものと考えております。
  37. 江田三郎

    江田三郎君 それが例のスイスから買うとか何とか、それですか。
  38. 船田中

    国務大臣船田中君) それも一つでございます。アメリカ側に対しましてアメリカの持っておるアメリカの陸軍が持っております地対空誘導弾ナイクといったようなものが供与を受けられれば、私は大へんこれは国土防衛のためには有効であると考えられますけれども、しかしなかなかナイクを今日本の方に供与をしてくれと言って要求いたしましても、これは直ちに供与を受ける見込みはございません。さればと言って誘導弾研究ということはおろそかにできませんので、従来はいろいろな書面の資料によって研究を進めておりますが、しかしどうしてもこういうようなものは実物について研究をし、そしてこれをなるべく早い機会に試作する必要があると存じますので、そういう趣旨におきましてスイスエリコン社から誘導弾を一そろい買い入れたいという計画を立てまして、三十一年度の予算において御承認を得た次第であります。
  39. 江田三郎

    江田三郎君 誘導弾以外に、たとえばアメリカの方でオネスト・ジョンを持ってきているというような、ああいうものも漸次アメリカから貸与を受けるとかその他の形で使うということを考えておられるのですか。
  40. 船田中

    国務大臣船田中君) オネスト・ジョンについては、自衛隊がこれを保有するということは今考えておりません。その他の新鋭兵器につきまして、たとえば自衛隊の方で、防衛庁で従来研究し試作をいたしましたものとしては、百五ミリの無反動自走砲というようなものもございまして、これは昨年の秋試作いたしましてその成績も非常にいいようでございますので、これはやはり今後の一つ兵器として有力なものとして備えていきたいというように考えておる次第でございます。
  41. 江田三郎

    江田三郎君 まあそういうような内容を、まだもっと聞かにゃあわかりませんけれども、考えておられるとした場合に、この陸上十八万、飛行機千三百云々ということは、これは金額としてもきまっているわけですね。
  42. 船田中

    国務大臣船田中君) これはこの委員会でも申し上げたと思いますが、艦艇にいたしましても飛行機にしても、その種類、大ききとか型状とかというようなものがまだ具体的にきまっておりませんので、従ってそれにどれだけの経費を要するかという金額についてもまだきまっておりません。すなわち昭和三十五年度の最終年度において達成すべき目標は、一応これまで申し上げたようなことがございますけれども、しかし昭和三十二年度以降の年次計画というようなものについてはまだきまっておりませんので、これから検討を加えてなるべく早い機会にその金額あるいは総額につきましても決定をするように進めて参りたいというふうに考えております。
  43. 江田三郎

    江田三郎君 すると、今はきまっていなくても、国防会議ができた暁には、この計画はただ十八万というようなことだけでなしに、それに要する総経費幾らという形で国防会議議案になるわけですか。
  44. 船田中

    国務大臣船田中君) 国防会議にどういう要求原案を出すかということも実はまだきまっておりませんので、その金額をつけて出すかどうかということについても、今ここでお答えするだけのまだ具体的な資料ができておらないわけでございます。
  45. 江田三郎

    江田三郎君 日本経済自立長期計画というものが一方にあって、この国防長期計画というものもその中へ――中へと言ってはおかしいですけれども、それとの見合いできまっていかなければならぬと思いますが、そうすると、当然この国防長期計画についても、総ワクの経費がどのくらい、あるいは大ざっぱに見て年度別経費がどのくらいというものが出てこないと、片方の経済自立長期計画にしてもいつ来るかわからぬということになってくると思うのでして、これは常識で考えましたところで、ただいまあなた方が持っていられる計画というものは、それに見合う総経費はほぼどのくらいというものは出てこなければならぬと私は思うのですが、どうですか、それは。
  46. 船田中

    国務大臣船田中君) まことにごもっともな御質問でございまして、経済自立五カ年計画の中には、総額としては、御承知通りいわゆるその他の経費の中に全部含めて入っておるわけでございますが、その、その他の経費という費用内訳について、たとえば防衛費関係幾ら、それから賠償関係幾らというようなことはまだはっきりきまっておるわけではございません。これは全くおよその見当でございまして、そしてしかも総額におきましては防衛関係経費をまず従来の例に照らしまして、二%強という、国民所得に対する二%強というものを大体の腹づもりにいたしておるわけであります。ただそれをどういうふうに振り当てるかということにつきましては、今後十分検討を加えて決定をして参りたい、かように考えております。
  47. 江田三郎

    江田三郎君 そうしますと、少くとも船田長官なり鳩山内閣考えておられる計画でいくと、的確な数字はわからないが、この三十三年度目標長期計画というものは、国民所得の二%強という範囲内でやっていくのだ、三十五年以降は別にして。それだけははっきりお答えできるおけですね。
  48. 船田中

    国務大臣船田中君) 大体防衛関係費用国民所得の二%強の範囲にとどめたい、こういう考え、その方針で進んで参りたいと存じます。
  49. 江田三郎

    江田三郎君 今の問題は、まあ大体賠償関係の方も、フィリピンもきまりましたし、またインドネシア等もおいおいきまると思いますので、一体その他の経費の中で、どういうような配分を考えているかというは、経済企画庁長官がこられてから、なお、もう少し聞きたいと思います。あとからもう一ぺん聞きますが、一体今の三十五年度を目標にする計画というものは、まああなた方が答えられる限りのことはわかりましたが、その中にアメリカから貸与もしくは譲渡等の形でくる兵器というものはどの程度予想されているのですか。
  50. 船田中

    国務大臣船田中君) このアメリカ供与を要請する兵器種類数量等はまだきまっておりませんが、大体初度調弁に属しまする銃火器類、それから艦船飛行機のある程度のものはアメリカ供与にまつということに計画をいたしておるわけでございます。
  51. 江田三郎

    江田三郎君 私この間要求しておきました資料で、ここへ昭和三十一年度MDAP期待数量推定価格、こういう資料をいただいたわけですが、これによっていきますと、昭和三十一年度はいろいろのものがここに書いてあります。現在推定価格として四百四十四億六千四百万円ですか、こういうものが出ておりますが、大体三十五年度までは種類はいろいろ変るとしても、その金額としてはほぼこの程度のものを年々期待されておられるわけですか。どうでしょう。
  52. 船田中

    国務大臣船田中君) これは先ほど申しましたように、供与を要請する兵器その他の装備についての種類内容がまだきまっておりませんので、従ってその供与を受くべき兵器装備類推定価格というものもはっきり申し上げるほどの材料がございませんが、大体やはり一億数千万ドルという程度にはなるだろうと存じます。
  53. 江田三郎

    江田三郎君 だから今のこの程度のものを今後三十五年までは年々要請する、こういうことですね。
  54. 船田中

    国務大臣船田中君) 今までの大体の実績から見まして、過去警察予備隊が発足いたしてから、今日まで供与を受けておりますものを積算いたしますというと、やはり二千五、六百億ないし三千億円というふうなことになりますので、それとこの三十一年度の要請いたしておりまする供与装備品推定価格というものを比較いたしてみますると、大体今御指摘のありましたように、明年度以降においてもこの程度供与を受けるということになろうかと存じます。
  55. 江田三郎

    江田三郎君 三十一年度にここに出されているいろいろな種類数量がありますが、もちろんアメリカとしても、どういう種類のものをどれだけ出すにしたところで、これはやはり一応長期計画を立てて、日本を何年までにはどの程度軍備にしなければならぬという目標を立てていろいろなものを供与されてくると思うのでして、当然ここに頭が出ているものは、ちゃんとその胴体と尻とは出ていなければならぬ。それでなかったらまことにおかしなものになってくるわけですが、そういう大体三十五年度までに、どの程度のものがどのくらいということはまだ話し合いをなさっておらぬのですか。
  56. 船田中

    国務大臣船田中君) 三十二年度以降の供与を受くべき飛行機艦船あるいはその他の装備品というものについての話し合いはまだできておりません。
  57. 江田三郎

    江田三郎君 できておらぬという答弁もいいでしょう。しかしそんなことは通用しませんけれどもね。あなたの頭でそういう答弁がよければそれでよろしい。(笑声)将来のことはわかりませんが、今まで入ってきた兵器というものは、これは私たちが言うのではなしに、あなたの党の、自民党の辻さんあたりの指摘によっても、相当のお役に立ちかねるものがたくさんあるようですが、最近はどうですか。
  58. 船田中

    国務大臣船田中君) 私は辻君が言うように中古のもので役に立たないというようなふうには全然考えておりません。それは中には多少古くなったものもございます。(「みんな古い〕と呼ぶ者あり)あるいは日本人の体力あるいは体位から考えまして、多小手直しをしなければならぬといったようなものもあると存じますけれども、しかしアメリカからかような装備品供与を受けまして、そうして自衛隊を育成するということは、私どもの考えておりますように、国力に相応する最小限度自衛体制をすみやかに整備したいという考え方から申しますれば、決して役に立たないものではない。これがあればこそ、ここまでわずか五年有余の間にこれだけの自衛体制が整備されたのであるというふうに考えております。
  59. 江田三郎

    江田三郎君 まあ実際使ってみぬのですから、だれもそれを反駁できないでしょう。使ってみんというと、その実弾射撃成績が、辻さんが言っているようかもしれませんが、ほんとうにこれをもって人を撃ってみたりしないから、今のうちはあなたは何を言ってもいいでしょう。それで、三十一年度のこの期待数量というものは、これは全部入ってくるわけですか。
  60. 船田中

    国務大臣船田中君) この中にはまだ入らないものが相当たくさんございます。
  61. 江田三郎

    江田三郎君 どういうものが今むずかしいのですか。入らないものが相当あるということですが、どういうような、この中でどんなようなものが入らないのですか。それから見通しはどうなのですか。
  62. 船田中

    国務大臣船田中君) 先ほど私の答弁申し上げましたことが少し違っておりますので訂正を申し上げます。この今お示し申し上げておりますのは三十一度のMDAP期待数量推定価格でございまして、これはアメリカ会計年度から申しますると、七月一日から始まる一九五七年度のものになりますので、これは交渉はいたしておりますけれども、しかしまだ当方には入っておらないという状況でございます。
  63. 江田三郎

    江田三郎君 そうすると、アメリカの三十年度の千九百何年かまあよくわかりませんが、この六月で終る会計年度の分は、期待した数量と入ったものとはどうなんですか。
  64. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) 過去のMDAP供与の関係でございますが、三十一年度の今まで入りました実数は、まだ正確な集計はできておりませんが、警察予備隊が始まりましてから三十年度末までの総計といたしまして、供与期待をいたしましたのが三千二百億程度でございます。これに対しまして、入りましたのが二千六百億程度でございます。約八割くらい入っておりまして、三十年度も大体そういう実績でございます。時期的なずれもございまして、こういう実績でございます。
  65. 江田三郎

    江田三郎君 この間うち飛行機の期待しておったのが入らぬということを衆議院の方でいろいろ質問が出ておったりしましたが、向うの六月で終る会計年度で期待しておってはずれたというのはどういうものがありますか。
  66. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 衆議院でどういうふうに具体的に申し上げたかちょっと今覚えておりませんが、三十年度で一応期待をしておくれておりまするものは、海で使いまする対潜哨戒機、P2Vというものが予定よりおくれておる事情があります。
  67. 江田三郎

    江田三郎君 そういうものが入ってこない場合にはあなた方の計画というものはそれだけ違ってくるわけですね。何かそれを、入ってこなかったら、入ってこないで、すぐに補充の措置をとるわけですか。たとえば日本で作るとか、金で買うとか、何かそれはできないのですか。どうするのですか。
  68. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) この対潜哨戒機につきましては、日本で簡単に作るとか、ほかでまかなうというふうに参りかねるものでありまするので、入ってこなかった分については計画がおくれておるということであります。
  69. 江田三郎

    江田三郎君 そうなりますと、まあ今後三十一年度に四百四十四億、それから将来も昭和三十五年まで大体この程度のものを期待されるということになると、その中でもやはりあなた方が考えておられて入ってこないものが相当あると思いますが、向うのものが入ってこないときには、これはそれだけ計画というものは狂ってくるわけですね。
  70. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 当初は、期待いたしましたものと入ってくるものとのズレがありました分が現在よりは実は多かったのでありまして、当委員会でも、前に御審議を願いましたときに、艦艇相当供与期待と違って、相当大型の千六、七百トン程度のものが供与をされないというようなことになりまして、やはり計画を一部変更したというふうなこともございました。ただいま申し上げたP2Vもそうでありますが、本年度あたりになりますると、その点は項目的にごらんをいただきましても、今まで間違いのありました艦艇等はおおよそ数次の折衝でまずまず確定的なもののみを期待をいたしております。航空機も大体内交渉で確定的なものを期待をいたしております。その他のものも、航空自衛隊のF86その他、これも内交渉で大体確定的なものを書き上げておりまして、決してこの期待がはずれるということはまずないものというふうに見込んでおります。
  71. 江田三郎

    江田三郎君 今ここに書いてあるものが期待がはずれていたわけで、しかしこれはたまたまこうした話し合いでちゃんときまったのだから、これははずれぬというだけのものであって、あなたの方では、三十五年度までの計画にはこういうものも入れたい、ああいうものも入れたいというものがあると思うのですね。全然ないことはないでしょう。それが向うとの話でまだはっきり向うが承認した期待量ではないけれども、こちらの、向うへ持っていかない期待量というものがあるわけでしょう、腹づもりというものが。そういうものが今後の折衝でどうなるかわかりませんが、相当また狂ってくるのではないかと思いますが、特に先般新聞でわれわれ拝見したところでは、このアメリカの今後の方針というものは、日本に対してこういうでき上った兵器供与するのでなしに、日本の国内の兵器生産そのものを興さす方向へ行くのじゃないかということがちょっとありましたが、そういうことはどうなっておるのですか。
  72. 船田中

    国務大臣船田中君) それはただいま次長から答弁申し上げましたように、自衛隊の増強のために期待しておりまする、こういう既成の装備品というものにつきましては、大体下交渉をいたしたものを期待いたしますから、今後の狂いは少くなってくるというふうに考えております。しかしその問題と相並行いたしまして、日本防衛力を増強していくためにはどうしても防衛生産の方に力を入れていかなければなりません。ところが、防衛生産につきましては、終戦後一時ほとんど全面的に破壊、撤去されてしまったという関係で、相当長い期間空白がございました。ただそのうちで割合に早く復活いたしておりますのが、御承知通り船と――造船の問題と、それから通信器材の製造のこととでございます。従いましてその方面においての自衛隊の増強に必要な艦艇、通信器材というものは相当多くの部分を国産品に待つということで、現にこれはやっておるわけであります。ところが、その他の防衛生産に関する施設あるいは技術というようなことになりますというと相当おくれておりますので、この科学技術の導入ということもきわめて大切でありますので、これは別途御審議を願っておりまする技術協定というようなものによりまして、アメリカ政府の持っておりまするライセンスをなるべく日本にもこれを供与を受ける、また向うの民間人の持っておりまする技術上の知識も導入が容易になるようにいたしまして、そうしてわが国における防衛生産の水準を高めていくように努めて参りたい、かように考えておるわけであります。アメリカの方といたしましても、そのことにはできるだけの協力を惜しまないという従来方針をとってきておりますので、従いまして日本といたしましては、できるだけこの防衛生産の育成、強化ということに今後は努めて参りたい。しかしさればといって従来問題になっておりまする、今問題にもなっておりまする防衛長期計画を達成するのに、アメリカ側供与がなくなるなら、それにかわって日本防衛生産にまつのであるという、そういう関係にあるわけではございません。これは供与を受けるということと、それから防衛生産の育成強化ということと両々相待って日本防衛力の増強をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  73. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 ちょっと関連して。今の供与兵器についてですが、向うから供与された兵器は符号、それからそれに対する名称あるいは注意書、そういったものを全部英語で書いてあって、それは一切撤去を許さない、日本語にこれを書きかえることも許されないし、そのまま使わなければならぬ、こういうことになっておるということが言われておるのですが、事実みなそういうふうにしなければならぬのですかどうか。その点を一つお伺いしておきたいと思います。
  74. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) たとえば飛行機をもらいますると、これは向うの星は取りまして日の丸をつけるということに全部いたしておりますが、こまかい部品等に打ち込みましたような標記類、注記類はおそらくそのままで使っておる、部品の整理番号等は向うのものをそのまま使用しておるという形であると思いますが、表へ出ますような標記類は星のマークは全部取りまして日の丸をつけるということはごらんの通りいたしておるわけでございます。
  75. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 星のマークを日の丸にかえるのはいいが、たとえば入口には入口、便所には便所の符号がつくだろうと思います。監視艇でも何でも、寝台には寝台、それから士官室には士官室、こういうのは全部英語でそのまま書いておくのか、それから日本語に書きかえることを許されておるのかどうか、それを。
  76. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 今仰せになりましたようなことはもちろん日本語で書くのでありまして、許すも許さないもない、われわれの部隊でやりますことで、日本語で書いております。
  77. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、そういう標示は一切日本語に書き改めるわけですね。部品のこまかいところは除いて全部書き改める――今度土曜日に見せてもらいに行くことになっておりますので、そういうものはそれを全部書き改めることになっておるわけですね。
  78. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 今仰せになりましたのは寝台とか便所だとかいうところを英語で書いているかと言われましたので……。
  79. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いや、具体的にわかりやすく申し上げたので、英語で注意書その他を書いてあるのは日本語に全部書き改めて、それから使用させておるのですね。
  80. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) これは先ほど申しましたように、部品類等は向うでいろいろ部品としての標記を打ち込んだりその他書いて参っておるものはまだおそらくそのままの標記で使用しておると思います。整理等もその標記に従って整理をしておると思います。
  81. 江田三郎

    江田三郎君 先ほどの長官の御答弁によりましても、大体アメリカの方の考え方も既成品を供与するという考え方から防衛産業の育成という方向に変ってくるように私受け取ったのですが、そういうふうなお答えだったのでしょうね。
  82. 船田中

    国務大臣船田中君) いや、今江田委員の仰せられたように変って来ているということではございません。これは両々相待って行くようにしておるわけでございまして、当分の間わが自衛隊を増強するにつきまして、既成の装備品供与を受けなければならぬという方針において、それが大きく変るということは今日はまだ期待できません。しかし一方供与を受けますけれども、同時に技術、科学の知識というものも導入いたしまして、そうして漸次わが国防衛生産を育成強化するようにして行きたいという方針を立て、そうしてそれについてはアメリカ側でもできるだけ協力をするという態度をとって来ておるわけでありまして、今後もそういう方面に相当努力をして参りたいというふうに考えておるわけであります。
  83. 江田三郎

    江田三郎君 それではさっき話が出ました一億数千万ドルという兵器供与というものは、これはこれであって、そのほかに防衛産業の育成強化ということにさらに向うとしては力を入れて来るだろう、こういうことですね。
  84. 船田中

    国務大臣船田中君) 大体今お話のような方向に進んでおるわけでございます。
  85. 江田三郎

    江田三郎君 そこでこの防衛産業の強化育成ということについて、あなた方が今考えている基本構想というものはどういうことになっておりますか。
  86. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛生産、防衛産業のことにつきまして一応その具体的の構想を概略申し上げますというと、これは申すまでもなく防衛力増強の裏づけといたしまして、防衛産業の育成ということがきわめて重要であることは申すまでもないのでございますが、自衛隊の使用する装備品のうち、先ほども申し上げましたように、車両、通信機等についてはこれはその生産力が割合いに早く復活いたしておりますので、その大半を国内調達に待っているというような状況でございます。その生産体制を育成整備して参って来ておりますが、火器、特車、弾薬等はその初度装備のほとんどすべてが米側からの援助によっておりました関係上、今日までわが国の関係産業の育成ということは、主として米軍の域外発注を通じて行われて来たというのが、今までの実情でございます。しかし今日の段階では米側からの援助を期待のできないものはもちろんのこと、部品の発注、補給それから装備品の取りかえ、補充は漸次日本側で充足すべき段階に至っておりますので、これに対応する具体的な国産化計画を予算規模、装備品種類等とにらみ合せて個々について検討を加えつつある、こういう状況でございます。火器、特車につきましては本年度において、先ほどもこれは申し上げたことでございますが、百五ミリ、百五十五ミリの榴弾砲及び特車の試作、研究を行い、国産化の計画を進めております。弾薬につきましては、朝鮮戦争に伴う米軍の特需によりまして、すでに相当規模の生産体制が整備されておりますが、さしあたり防衛庁の大幅な発注は不可能でありますが、今後において防衛庁として発注、調達する必要が考えられますので、その生産設備の維持については諸般の事情を考慮して、何とかこれはそういう生産設備を維持いたして参りたいというふうに考えておりまして、これは主として通産省と緊密な連絡をとって研究を進めております。まだこれはしかし結論に達しておりません。それから航空機につきましては、メンター初等練習機はすでに国産化が進んでおりますが、ジェット機につきましては、先に締結されたF86F航空機の組み立て並びにT33Aの組み立て及び生産に関する日米間の取りきめに基いてその国産化に着手しており、さらにジェット中間練習機につきましても本年度においてその研究に着手いたしております。それから艦艇についてはすでに国内発注を行いまして、国内造船業者の活用と育成、それからその技術の向上をはかっております。これは現に昭和二十八年度に計上された艦艇も昨年の暮以来相当できつつあります。なお、防衛産業の、長期対策につきましては、防衛六カ年計画の策定に照応いたしまして、目下検討を加えつつある、こういう状況でございます。
  87. 江田三郎

    江田三郎君 この新兵器の試作研究ということですが、これにまあ力を入れるということですが、これはどこまでも民間にやらすのですか、あるいは国としてこれをやるという将来そういう考え方なのか、どっちなんでしょうか。
  88. 船田中

    国務大臣船田中君) これは国有国営がいいか、国有民営がいいか、あるいは民有民営がいいかということは、それぞれ防衛産業の種類によって個々に研究をしてみなければならぬことと存じます。それらの点につきましては、まだ防衛庁としてどうしたらいいという結論に達しておりませんので、これらの点は各種の資料をそろえて、国防会議ができましたときには、十分この国防会議の審議を待ちまして、そしてなるべく早い機会に方針を決定するという方向に進んでいきたいと考えております。
  89. 江田三郎

    江田三郎君 生産設備の維持ということをさっきおっしゃいましたね。これはやはり現在の兵器工場あたりの国有というようなことが問題になっているのですか。
  90. 船田中

    国務大臣船田中君) 銃砲弾の生産設備につきましては、昨年の暮以来、そういう点が問題になっておりますが、これをいかに措置するかということにつきましては、実は通産省ともかなり緊密な連絡をとって検討を加えてきておりますが、まだどうしたらいいということについての結論を得ておりません。防衛庁としては、できればああいう銃砲弾の生産についての設備が維持されることを希望いたしておるわけでございます。
  91. 江田三郎

    江田三郎君 維持といっても維持は非常に今困難になっちまって、結局はこの銃砲弾の施設というものは国有、これが防衛庁の基本的な考え方ですね。
  92. 船田中

    国務大臣船田中君) それらの点につきましては、関係省との間に共同に研究をいたしておりますが、まだ結論に達しておりません。
  93. 江田三郎

    江田三郎君 あなたに聞くと、長期計画内容はわからぬのだ。それから防衛生産もいろいろ問題はあるけれども、まだ話はつかぬのだというようなことだけで、ちょうどこの間の憲法調査会のやつを聞いてみると、ただ問題点を出しているだけであって、一向にわからぬのだ、こういう答えをして、さてそんなら憲法調査会法案が通ると、これはもう問題点というのはすぐ具体案になってしまうので、われわれは、今あなた方がわからぬわからぬと言っておっても、実際にこの国防会議というものができるというと、すぐこんなものが具体的な姿で出てくるのじゃないか、こう考えざるを得ないのですが、今ほとんど何もきまっていないということだったら、国防会議ができましても、あなたの答弁のような形で参りますと、国防会議ができても、早急に長期計画なり防衛産業の育成策なんというものは出てこないのですが、こう考えておいていいですか。
  94. 船田中

    国務大臣船田中君) 国防会議の設置の必要ということにつきましては、当委員会においてもしばしば総理及び私からも申し上げておりますような状況でございまして、そういう事情がございまして、この防衛生産についての他の産業とのいかなる調整をはかっていくかということも非常に大きな問題でございまして、これはぜひとも国防会議が設置されましたならば、そういう点について十分御審議願って、そしてなるべく早い機会わが国防衛生産についての方針を政府の方策として決定するように進めて参りたい、そういうことのためにも国防会議というものはぜひ必要であるというふうに私は考えます。
  95. 江田三郎

    江田三郎君 国防会議は必要だ必要だというけれども、われわれは必要なのかどうかということを判断するためにいろいろ御質問を申しておるわけだ。ところが憲法調査会のときでも、ただ問題点だ問題点だというだけで、一向に憲法調査会を早急に設置しなければならぬ緊迫性があるかどうかということはわれわれにわからなかった。今度の国防会議の問題でも、ただ三十五年度にはこの程度のものをしたい、しかもその内容を聞いてみるというと一向に要領を得ない。国防生産の育成についても、今あなたがおっしゃったようなことなら二つも具体的なものはありやしない。そんなら何もあわてて国防会議というようなものを作らなくていいじゃないかということになるのです。一つ船田さんお考え願いたいのは、あなた方は多数を持っているのですよ。そこでその多数を持っている諸君としては、やっぱり野党をもう少し納得さしてくれなきゃ困ると思うのです。何を言っておっても質問の時間はきまっているのだからして、時間さえかけておれば委員長が採決してくれる。井上君が動議かなんか出すだろう。(笑声)そういうことになれば多数横暴ということになる。もう少しはっきりしてもらわぬと、何も国防会議というものはあわてて作る必要はないじゃないか。もう少しあなた方の考え方がまとまってからやった方がいいのじゃないか、こういうことになってくるのですよ。一体、この間の新聞に、これは日本経済と毎日新聞に、国防産業の基本構想まとまると、こう書いてある。そうして日本経済によりますというと、これには防衛庁も通産省も、両当局が関与しておると書いてある。それから毎日新聞にはもっとはっきり書いてある。こういうものは一体あなた方は関与しておられるのですか、関与しておられぬのですか。船田長官はどうか知らぬが、防衛庁の事務当局はこれに関与して作っているのですか、どうなのですか。
  96. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま江田委員の御指摘になりましたことは、おそらく自民党の政務調査会の中にある国防部会で審議いたしておりますことが新聞に出たのを御指摘になったことと思います。(「違うよ」と呼ぶ者あり)それらの資料につきましては、あるいは防衛庁の持っておりまする資料を御利用になったという面もあるだろうと存じますけれども、防衛庁の者として関与して、そういう今新聞に出ておりますような案の作成に防衛庁が関与したという問題ではないのでございます。
  97. 江田三郎

    江田三郎君 鳩山さんは新聞を見ないということをよく言うのですけれども、私は船田さんはこういう御性格だからして、まず何をおいても新聞をよく見ておられると思いますが、この発表された、自民党の分か何かわかりません。わかりませんが、この発表されたものについては、あなたは大体これを肯定なさっているのですか、これは非常にけしからぬというお考えなのか、どっちなんです。まだ新聞を見ていないという答弁ならだめですよ、そんなことは。
  98. 船田中

    国務大臣船田中君) いや、新聞に出たということは承知いたしておりますけれども、それは自民党が成案として発表したものではないと私は考えております。大体の方向としては、別に反対すべきものではないと私は考えますが、しかし防衛庁がそれは面接関与したものでもなし、また私どもとして十分検討したものでもございませんから、その通りでよろしいか、あるいはそれはよくないとかいうことを具体的にここで意見を申し上げる段階には達しておらないものでございます。
  99. 江田三郎

    江田三郎君 どこから出ましたかということは、これはよろしいわけです。またしかし、あなたの方でそんなものは何だかんだというと、新聞社の方から一体何だということになって、問題になりましょうが、そんなことはよろしいが、今の答弁でいきますと、少くともこの基本的な方向としては、これであなたの考えと大体一致しておるのだ、こういうことですね。答弁はそうですよ。
  100. 船田中

    国務大臣船田中君) その研究の過程において、その方向において特に反対すべきものではない、こういう意味において申し上げたので、それを全面的に肯定するという意味で申し上げたおけではございません。その内容等については、まだ私十分検討いたしておりませんし、また防衛庁における事務当局から詳細聞いたわけでもございません。またこれが関与しておるものでもないのでありますから、ただ新聞に出たのを一覧したという程度でございますから、そこでこれに対する確定的の意見を申し上げるという段階には達しておらない次第でございます。
  101. 江田三郎

    江田三郎君 その研究の過程においては反対すべき筋合いじゃないというのは何ですか。どうもあなたは法制局長官をやっておられて、法制局なんというものは私は大きらいなんです。あなたのことを言うのじゃないのです。今やめておるのだから違うのですが、今は防衛庁長官ですから。法制局というものは総理大臣がおると、へりにおって何かつべこべ言って、要するにこの形式さえ整えばいい、こういうような時間さえ過せばいいのだという、そういう観点から総理にいつも入れ知恵するので、そこで私は癩にさわるのですよ。もうあなたは法制局を卒業されたのだから、もっとそういうふうな観点でなしに答弁を願いたいと思うのですが、これを今の答弁でいくと、これを一覧した限りにおいては、大体この考え方でいいということですね。法制局答弁でなしに防衛庁長官答弁ですよ、今度は。
  102. 船田中

    国務大臣船田中君) これはさっき私答弁申し上げたように、防衛産業の各種類によってその形態をどういうふうにする方がいいかということは、相当これは具体的に各工場、生産設備に当ってみなければならぬことでありまして、一がいに銃砲弾製造に関係する産業は国有民営がいいとか、あるいは燃料についてはどうというような、そういうふうにすぐきめてかかるということは、これは私はむしろ軽率になりはせぬかと存じますので、私は決して形式的な答弁を申し上げておるというのではないのでありまして、今御指摘になりました内容についても、今どこにどういうことが書いてあったかということは、はっきり覚えておりませんので、従ってそれについての具体的にいいとか悪いとかいう意見は申し上げられません。ただ一覧した私の記憶によってみますると、そういう研究をされておるということで、それは別に結論を出しておるものとは私記憶いたしておりませんので、そこでその研究の過程においては、そういう項目について研究しておるということは私はけっこうなことだと、こういう意味で大体反対すべき理由はないということを申し上げたわけでございます。
  103. 江田三郎

    江田三郎君 どうもちょっと今のところは法制局ですね。きょうはあなたは表情を持っておるということだけは……。(笑声)しかし私は何も具体的にこまかいことをどうこうというておるのじゃないのですよ。そんなことは私もようわからぬのですよ。これは基本構想なんですよ。基本構想というものを、われわれみたいなしろうとでなしに、あなたのような防衛庁長官という職にある者が一通りずっと挑むれば、これが基本線にはずれているかどうかということはわかってくるわけなんです。今、先ほどの、基本的にはこういうものに反対すべき点はないように思うということだけでいいのじゃないですか。どうも法制局を抜きにして、ちょっとはっきりやっておいて下さい。
  104. 船田中

    国務大臣船田中君) これは繰り返して申し上げるようで恐縮でございますが、国有民営とかあるいは民有民営がいいとかということは、これはなかなか具体的の問題になりましたときには、その形態というものは重要なことでございまして、なかなかそう簡単に結論は出せないと思います。ですから私はそれについての研究をするという段階においては賛意を表しますけれども、その結論がその新聞に出ておりますような結論であるといたしますると、これについて直ちに賛意を表するというわけには参らぬことが多いように思います。
  105. 江田三郎

    江田三郎君 賛意を表することができぬというなら、一体どういう点が賛意を表することができぬか。たとえば銃砲弾の生産なんかについて、あなたの先ほどの答弁でいくと、結局国有がいいような答弁をされている。これにもやはりそういうことが書いてある。どういう点がいかぬのですか。
  106. 船田中

    国務大臣船田中君) ですからこれは個々の具体的な防衛産業につきまして十分検討を加えないと、それが国有民営がいいか、あるいは国有国営がいいか、あるいは民有民営がいいかという結論は出せないと存じます。
  107. 江田三郎

    江田三郎君 こういう基本構想についてだけでも、あなた方の方は一向聞いてみても要領を得ない。そうして三十五年を目途にするところの自衛力増強の問題についても、内容というものは聞いてみると一向わけがわからぬ。それならあわてて国防会議を作ってみたところで、かける議案がないじゃないですか。何をかけるのですか。アメリカから言われたことだけかけるなら別問題だけれども、少くともこの国防会議を作ったときの基本的な、国防会議にかけなければならぬ問題については聞いてみたって何もないじゃないですか。これはゆっくりやったらどうです、国防会議を。防衛庁設置法にこういうことが書いてあるからしなければならぬということでいかなくても、その実体をきわめて見れば、一向要領を得ないなら、ゆっくりやったらどうかと思いますが、いかがですか。
  108. 船田中

    国務大臣船田中君) これはたびたび申し上げておりますように、防衛庁試案として持っております三十五年度において達成すべき目標、その目標をどういうふうにして達成するか。またその達成すべき目標種類内容、こういう問題につきましては、これはできるだけすみやかに政府の政策としてはっきりきめることが、私はきわめて必要であると存じます。そういう目標がはっきり政府案としてきまることによりまして、ただいま御指摘にありましたような防衛産業ということについても、これをいかにすべきかということがきまってくるわけでございまして、先ほど来申し上げておる、いわゆる国力国情に相応する最小限度自衛体制というものはどういうものだ、またどのくらいのことを政府考えているのかということによりまして、国民諸君もそれについて十分な関心を示し、またある意味においては安心もし、またそれに期待もかける、こういうことができると存ずるのでありまして、そういう基本的な問題を決定して参りますのには、どうしてもこれは防衛庁だけでなく、防衛庁要求原案を出すにいたしましても、これと関係の深い閣僚を議員として、そうしてまた閣僚という立場でない議員として、十分これを大所高所から審議をいたしまして、検討を加え、そうして適当な結論を出すということが私はきわめて必要である。そうしてそれはただのんべんだらりんとやっておるのではなくして、なるべく早い機会に、そういう目標を具体的にきめていくということが、これは他の政策、国策を遂行する上においてもきわめて大切な関係を持っておりますので、従ってこの国防会議というものは、一日もすみやかに設置いたしまして、そうして、そういう重要な基本問題についての審議を早く始めることのできるようにしていただきたい。かように考える次第でございます。
  109. 江田三郎

    江田三郎君 まあ国防会議を早く作って、国民に国防について関心を持ってもらい、安心をしてもらい、期待をしてもらわなければならぬと言ったって、聞いてみるというと、一向要領を得ない。内容というものはぼうばくとしてしまっておる。結局防衛問題について国民が一番知らされたことは、七万五千円のエンジンが千何百万円になるということや、ガソリンを入れればどうやら漏るということや、そういうことだけをわれわれは知らされたのですよ。鉄砲をもらったけれども、撃ってみると当らん鉄砲だったという、そんなことだけを知らされて、関心を持ちようにも、持つとすれば不安を持つ、さような関心だけですよ。安心を持つような関心を持ちようがない。期待をせいといったところで、防衛庁長官が早くやめてくれたらいいという期待だけであって、ほかの期待はしょうがないじゃないですか。そういうことをあなたと何べんやっておってもいかんから、問題を変えますが、とにかくあなたが答弁されたところによるというと、国防会議ができた場合に、これにかけなければならぬところの重要な案件というものは、一向にかけられるところまで熟していない。従って国防会議というものはあわてることはないということだけは強く私の印象に残りました。  そこで国防長期計画を立てるときに、国力国情ということを盛んに言われておるが、国情ということは、これは国内的な問題と国際的な問題と両方から出てくるのだと思います。国力というものについては、一応経済自立五カ年計画というものがあって、あれができるかできんか、わかりませんけれども、目標というものはあるのだから、まあどのくらいのものだという見当はつきます。国情という場合に、今後の対外関係が変れば当然この条件というものは変ってくる。で、あなたの立っているところの三十五年度を目標にする計画というものは、今後の国際情勢の変化によっては当然変ってくると思うのですね。
  110. 船田中

    国務大臣船田中君) 国際情勢の変化、その推移というものは、常に十分考慮していくべきものと考えます。
  111. 江田三郎

    江田三郎君 今、ソ連の方が百二十万の兵員縮小ということを言っている。まあこれをどう受け取るかということは、それぞれダレス的な受け取り方もありましょうし、ダレスさんに非常に似通った船田的受け取り方もあるし、いろいろ受け取り方はあるけれども、しかしこれは私たちは、お前の考え方は違うのだ、わしの考え方が正しいのだということは私は申しません。これは歴史が決定することですから、少々時間をかければはっきりしてくることなんですからね。もし世界の情勢がもっと軍備縮小というようなことが明確になってきた場合には、当然三十五年を目標にするところの計画も変ってこなければならぬわけですね。
  112. 船田中

    国務大臣船田中君) 私はその点においては江田委員のお考えと非常に違うと思いますが、国際情勢がここ数年の間に全くもう部分戦争もない、冷戦もない、手放しで楽観ができるという情勢にはならんと存じます。
  113. 江田三郎

    江田三郎君 なるならんは、だから今私はここではその議論はしない。しかし、なった場合には、少くとも国際的に、だれが常識的に考えても、もう戦争の方向でなしに、平和の方向がはっきりしてきたのだ。こうなった場合には、当然この三十五年度を目標とする計画というものが変ってこなければならぬわけでしょう。
  114. 船田中

    国務大臣船田中君) 私は過去数千年の歴史がそう変るとは存じません。
  115. 江田三郎

    江田三郎君 法制局からがぜん哲学者になってしまった。(笑声)ところが過去何千年間の人類は、原子爆弾だ、水素爆弾だというものが出るとは考えていなかったのです。そんな答弁じゃだめです。
  116. 船田中

    国務大臣船田中君) これは江田委員もよく御存じの通り、ノーベルが出てああいう強力なダイナマイトが発明されて、これでもってこんな殺傷兵器ができたから、もう戦争なんかやったら大へんだということをいわれて、ああいうノーベル賞金の制度もできた。しかるにかかわらず、その後において第一次大戦、第二次大戦というものが起っておるのでありますから、ですから私はやはり人間社会のことというものは、やはり歴史を考えて入る必要がある。歴史を無視して将来の計画は立たんと思います。
  117. 江田三郎

    江田三郎君 ちょっとあなたもだんだん清瀬文部大臣に似てきた。(笑声)そういう答弁もよろしいが、そんなことを言ったってしようがない。この間鳩山さんは、今の日本の三十五年までの防衛計画なんというようなことに関係して、日本としては大きな戦争というのを予想していないのだ。局地戦争というものに対処することを考えているのだ、こういうことでしたが、それはその通りでいいんですか。
  118. 船田中

    国務大臣船田中君) もちろん国際情勢の見方につきましては、総理大臣外務大臣が御説明になっておることを、私はその通りに受け入れておるわけでございまして、第三次世界大戦が、原水爆をもってするような大きな戦争が起るというふうには考えておりません。しかし部分戦争が起らんとはまたこれも断定はできんと存じます。自衛体制を整備することによりまして、日本侵略の意図を事前に阻止する効果がある、かように考えますので、最小限度自衛体制はできるだけすみやかに整備することが国家のために必要である、かような基本的な考え方に立って自衛隊の整備を努力しておるわけでございます。
  119. 江田三郎

    江田三郎君 その局地戦争という場合には、一体今どこが何をしそうな条件があるのですか。われわれはそんな条件はないと思うのですが。あなたはそんなものはないと保しがたいということを盛んに言われるのですが、どこがどういう条件があるのですか。
  120. 船田中

    国務大臣船田中君) これは、日本の周辺においてそういう事態が起るということを今予想してはおりません。またそういうことのないことを期待いたしておるわけでございますけれども、しかし先ほど来申し上げておるように、過去のわれわれの経験、歴史から見まして、そういうものが絶対にないとは私は保証できないと思います。ですからして、そういう意図がどこかに現われてくる場合に、日本自衛体制が整備されておりますれば、そういう意図を事前に阻止することができる。従って自衛体制の整備ということが、私はやはり日本の平和と独立を守るためには絶対に必要である、かように考えるわけであります。
  121. 江田三郎

    江田三郎君 日本を取り巻く周辺にそういう条件はない、今ないと言われるのでしょう、そうでしょう。そうなんでしょう。
  122. 船田中

    国務大臣船田中君) 日本の周辺にそういう事態が今起るだろうということを予想はいたしておりません。しかしそれが絶対にないという手放しの楽観は私は許されんと思います。
  123. 江田三郎

    江田三郎君 そんならどの辺に問題があるのですか。絶対にないというのは、どの辺が絶対になさそうなんです、どうなんです。
  124. 船田中

    国務大臣船田中君) それはその国際情勢の具体的の問題で、どこに日本侵略の危険があるかということは、この場合私ははっきり申し上げる材料を持っておりませんが、しかし少くとも最近に、近東の状況を見ましても、あるいは東アの情勢を見ましても、近い将来に全く部分戦争も局地戦争も絶対に起らないといって安心をしておるわけには参らぬと、かように考えるわけであります。
  125. 江田三郎

    江田三郎君 あなたは過去何千年来の歴史を持ち出されたり、それからノーベル賞を持ち出されたりして、いろいろなことを言われるけれども、やはり船田さん、これはお互い冷静に考えてみる必要があると思うのですよ。一体今度の朝鮮のあの選挙は何を物語っておるかということです。新聞の最初の予想は、野党はとても問題にならぬだろうと、こういう予想をしておったわけです。私はあの選挙の状況を、この間朝鮮の人に会いましたからいろいろ聞いてみた。ところが野党というものはラジオも持たないのだ、新聞も東亜日報が弾圧されていて、書きたいことも書けないのだ。そういう情勢の中で、大統領の方は有力候補が死にましたから、李承晩の方が当選しましたけれども、とにかく副大統領には野党の人が当選をされた。新聞が何も伝えることができぬ。ラジオでも伝えることができぬ。ただ民衆が口から口へ訴えたんです。口から口へ伝えたんでしょう。しかもああいうような結果が出ているのでナ。少くとも朝鮮の首都において、李承晩の得票よりもなくなった、幽霊になった人の得票数が多いということが出てくるのですよ。そういうところはもっとお互いに世界の動きというものを、とらわれた概念だけでなしに、二千年来の教育だけでなしに見ていかないと、大へんな間違いを犯すのじゃないかと思うのです。あなたは中近東の問題を言われますけれども、中近東の問題にしてもやっぱりああやっておさまっていきおるじゃないですか。絶対に侵略がないということは言えないのだから、自衛のための軍備を持っていなければならぬ、それも私は一つ考え方だと思います。しかし同時に、もっとお互いが侵略の条件をなくする別だ方法も考えなければならぬと思うのです。もっと日本の外交というものを戦争の起り得ないように……、時には私も講義をしますよ、あなたが講義をするから――。(笑声)これもやはり考えていかなければならぬ。あなたはきのうもインドが軍備を何ぼ持っている――。なるほどインドは軍備を持っていますよ。しかしそれはパキスタンという問題があるじゃありませんか。しかもインドは軍備を持っているだけじゃなしに、この二つの対立をなくするためにどれだけ献身的な努力をしているか、どれだけ国際的なリーダーシップをとっているかということです。そういう努力も何もしないで、ただ、いつ侵略があるかも保しがたいからというのでやられたんでは、これも余力がある国ならおもちゃを持ってもいいと思うのですよ。しかしわれわれにはそういうことは許されないのですよ。きのうも凍霜害の問題で旗がたくさん立ったんでしょう。それに対してもほとんど打つ手は打てないでしょう。そういうことは私はもっとあなた方にも冷静にお考え願いたいと思うのです。一つ二千年来の教育にとらわれぬ考え方をしてもらわなければならぬと思うのです。そんなことを今あんたと何ぼ議論したって、これはあなたは一定のコースの答弁しか考えていないのだから、まことにむだなことです。それが多数の暴力ということになるのですよ。一体あなた方は仮想敵国を持っていないということを盛んに言われるのですが、今の自衛隊をなぜそんなら北海道と九州へ重点を置いて配置をしているのですか。仮想敵がないのだ、ないのだといったところで、演習のやり方一つを見ても、兵力の配置の位置を見ても、常識的にはそんなことはちゃんと考えられますよ。あなたはもう盛んに、もっと国民が国防に対して関心を持ってもらわなければならぬと言うけれども、あなた方のように、何もかも大きなヴェールをかけてしまったのでは、これは関心の持ちようがないじゃありませんか。あなたはそういう答弁をされて、そうして何でも法案を通しさえすれば、日本国防は前進するんだというお考えかもしれないけれども、そういう答弁のたびに国民はむしろ無関心になる、むしろ不安を持つだけなんですよ。その結果はどこへはね返るかというと、今の自衛隊の諸君にはね返るのですよ。自衛隊の諸君を国民がほんとうに歓迎していますか。日陰者でしょう、率直に言って日陰者でしょう。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)そういうことをあなた方がもっと国民に率直に訴えないからですよ。何でもかんでも隠してしまうからですよ。もっとも議会中はそういう処女のごとくして、議会が済んだらとたんに脱兎のごとくやるのかもしれませんけれども、私はそういうことではいかぬと思うんです。まあこれはあまり言ってみたってしようがないから、私の時間もありますから、その程度にしますけれども、その次にもう一つお聞きしたいのは、今の日本の状態として、防衛出動という問題がありますが、その際にはアメリカから日本に出動を要請をするということがあるんですか。あるとすれば、それはどういう根拠、どういう手続でやっていくんですか。
  126. 船田中

    国務大臣船田中君) アメリカの駐留軍は日本防衛のために駐留いたしているのでありまして、アメリカが要請いたしまして、日本自衛隊防衛出動をするというようなことはないと、そういうことは起らないと存じます。
  127. 江田三郎

    江田三郎君 いかなる場合にもアメリカから要請されて出動するというようなことはありませんか。
  128. 船田中

    国務大臣船田中君) アメリカ側から要請されて、日本自衛隊が出動をするということはないと思います。むしろ日本の国土の防衛のためにアメリカ駐留用がいるのでありますから、こちらから働きかけるということが原則だと思います。
  129. 江田三郎

    江田三郎君 日本からアメリカにそういう要請ができるとしたら、これはどういう法的根拠でやるんですか。
  130. 船田中

    国務大臣船田中君) これは、これもたびたび当委員会においても申し上げましたことでございますが、日本の地域に侵略が起ったという場合におきましては、行政協定の二十四条の規定によりまして、日本政府アメリカ政府との間においていかなる共同措置をとるかということについて協議をしなければならない、こういうことになっております。そういう場合におきまして、おそらく日本側といたしましては、日本の憲法及び国内法に従って、日本自衛隊防衛の最も有効なる手段を講ずるということになりましょうし、同時にアメリカに向っては、アメリカの陸、海、空軍の出動を要請するということになろうかと存じます。
  131. 江田三郎

    江田三郎君 竹島の問題がありますね。あの竹島を韓国側の方で占拠しているということについては、これは今のあなたのお説によって、われわれとしてアメリカにしかるべく要請をすることができるんですか。
  132. 船田中

    国務大臣船田中君) 日韓問題は、これは外交折衝によって解決すべきものと考えておりますので、この行政協定二十四条の適用の問題とは政府考えておりません。
  133. 江田三郎

    江田三郎君 今あなたは、外交折衝の問題として考えているということですが、これをやろうと思えば、二十四条によってそういう要請をすることはできますか。
  134. 船田中

    国務大臣船田中君) 行政協定二十四条の適用される場合は、日本の地域に侵略が起った場合、あるいは侵略の切迫した脅威が加えられたという場合でございます。
  135. 江田三郎

    江田三郎君 竹島は日本が侵略されておるのじゃないでしょうか、そういうお考えじゃございませんか。
  136. 船田中

    国務大臣船田中君) 竹島の問題は、これは日韓の外交折衝によってどうしても解決していくべき問題でございまして、この行政協定二十四条の発動を待つべき問題というふうには政府考えておりません。
  137. 江田三郎

    江田三郎君 どういう方法でこれを解決つけるかということを私は聞いておるのじゃないのです。竹島は現在日本が侵略をされておると考えなきゃならぬのかどうかということを聞いておるのです。あなた方は竹島というものは……、じゃ、もう一ぺん初めから聞きます。竹島というものは日本の領土ですか、どうですか。
  138. 船田中

    国務大臣船田中君) 日本政府としては日本の領土というふうに考えておるわけでございます。
  139. 江田三郎

    江田三郎君 日本の領土が他国によって占拠されておるのは、それは侵略じゃないのですか。
  140. 船田中

    国務大臣船田中君) 行政協定二十四条の適用を受くべき該当要件として、すなわち日本の地域において侵略が起ったというふうには、政府は解釈いたしておりません。竹島の問題は、どこまでも日韓の外交折衝によって解決をしていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  141. 江田三郎

    江田三郎君 私はこの解決の方法を聞いているのじゃないのです。政府はどういう工合にしてこれを解決するかということを聞いておるのじゃなしに、あれは侵略であるかどちかということを聞いておるのです。あなたは、あれは日本の領土だというふうに考えておられる。鳩山内閣政府としてはそう考えておる。けれども、日本の領土として考えておるところに他国の軍事力かどうかしれませんが、とにかく占拠を受けておるでしょう。それを侵略と言われるのか、言われぬのかということを聞いておる。
  142. 船田中

    国務大臣船田中君) この点は歯舞、色丹についても同様でございまして、行政協定二十四条の適用を受くべき侵略行為が起っておるというふうには、政府は解釈いたしておりません。
  143. 江田三郎

    江田三郎君 この際一つ船田さん、余分なことは抜きにしましょう。簡明率直にいこうじゃありませんか、竹島は侵略されておるのかどうかということを聞いておるのです。余分なことは一切抜きですよ。
  144. 船田中

    国務大臣船田中君) しばしば申し上げるように、行政協定二十四条の適用を受くべき侵略行為が起っているというふうに、政府は解釈いたしておりません。
  145. 江田三郎

    江田三郎君 重ねて言いますよ、余分なことはよろしい。(「委員長、注意を与えろ」と呼ぶ者あり)竹島は日本の領土だとあなた方は考えておる。それを他国の兵力を使っているのかどうか知らんけれども、占拠されている。それは侵略かどうかということを聞いているのですよ。形容詞は一切抜きですよ。
  146. 船田中

    国務大臣船田中君) ですから、私は行政協定二十四条の適用を受くべき日本の地域に侵略が起ったというふうには見ておらないと言っておるわけであります。
  147. 江田三郎

    江田三郎君 これはわれわれは、委員長、あなたの厳重なる方針によって時間をきめられているのですよ。こんなことで何べんもやられるのはちょっと、委員部のあれは、今の時間を差し引くようにやって下さい。こんなもので時間をとられてはかなわないじゃないですか、もっと委員長注意して下さい。(「責任は与党にある」「審議が進まないじゃないか」と呼ぶ者あり)注意と同時に委員部へ今の時間を差し引くように言って下さい。委員長、注意をされぬのなら、これは私の時間はだいぶまたあとからプレミアムをつけてもらいます。これだけ先に木島君に申しておきますが、与党理事よく聞いておいてくれ、そういう問題も、大体あなた方は何を聞いたってだめなんだ。それで資料を要求しているのを出して下さい。汚職の方はあれはもらいましたよ。ところが批難事項の方はまだもらいません。
  148. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) こういう厚いのが参っておりませんか。
  149. 江田三郎

    江田三郎君 批難事項の方はもらっていないのです。汚職の方はもらいました。(「進行々々」と呼ぶ者あり)  それから委員長、僕の経済企画庁長官のはどうなりますか。
  150. 青木一男

    委員長青木一男君) 再三催促しましたが、からだの工合が悪くて、きょう一日は登院されないそうですから……。
  151. 江田三郎

    江田三郎君 そうすると私は、千葉理事との連絡が、きょう私の二時間というものを予定しているのですが、その中に企画庁長官にぜひ来てもらって、防衛産業なり日本経済自立計画国防計画との関連を聞かなければならぬのですがね、それじゃ企画庁長官は見えられないのですか。
  152. 青木一男

    委員長青木一男君) きょうは午後も登院されないそうです。からだの工合が悪いそうです。
  153. 江田三郎

    江田三郎君 だからそれは前もって理事から連絡もしてあるはずですから、あしたは見えるでしょうな。
  154. 青木一男

    委員長青木一男君) 多分お見えになると思います。
  155. 江田三郎

    江田三郎君 あえて審議を遅滞させようというのじゃなしに……、それじゃ休憩して下さい。
  156. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  157. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記を起して。  暫時休憩して、午後一時より再開いたします。    午後零時十二分休憩   ―――――――――――――    午後一時四十六分開会
  158. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引き続いて会議を開きます。  臨時教育制度審議会設置法案を議題として質疑を行います。
  159. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 臨時教育制度審議会委員に、清瀬さんの構想として、一体どのような委員を任命するか、まずあなたの構想はどういう人を嘱託するか、この間から御答弁を聞いておりますると、だいぶ親に孝に、国に忠誠を誓うという教育をやりたいというのでありますから、どちらかというと明治教育に復古するような、どうも懐古的なところをわれわれ感じましたのですが、そこで一体、この臨教審でそういうことを検討してもらうというのですが、今こういう人を一つお願いしたいという、ただそれがきまるかきまらぬかは別問題として、清瀬文部大臣として大体こういう人を一つ委員に選んだらいいものができるだろうという構想をお持ちになっていると思うのですが、一つおわかりになっておったら御説明願いたいと思う。こういう人を選んだらどうだろうという構想を……。
  160. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) お答えいたす前に今の親に孝に君に忠にという明治教育の復古を考えておりやせんかということですが、私はその考えはしておりませんです。よく私が反動思想とこのごろ批評されまするけれども、反動じゃないんです。今日国体がこの通り民主主義に変り、主権が国民にあるんですから、忠誠という観念毛国民に対して忠誠であります。それから道徳観念も明治時代のように外から押しつけた道徳では善が善にならない。自発的の行いを奨励しよう、こういう考えでこのことはあまり長く申し上げては時間も食うと思います。そこで私があの合同審査会の際申し上げた通り、大体三つの基準ですね。日本の道徳水準のあり方と、それから国の教育に対する責任、学校制度、わけても大学制度、六・三制には関係しないと思いますが、そういうことを研究してもらうつもりでありまするから、それにふさわしい人を嘱託しようと思うておりまするが、実際にまだ案ができておりますが、だれとも人を頭に描いておりません。まあこれではあんまりお答えになりませんから、基準じゃございませんけれども、私の感想を申し上げた方がすむと思います。
  161. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 感想でけっこうです。
  162. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そこで今言ったような三つの問題について学識経験を有する者でございまして、一つは学界からお願いをしようと思っております。教育関係、行財政関係等の学者その他学界の権威者をお願いしようと思っております、一つには。その次は教育界の国公私立の学校に御関係のうちで適任者を物色させたいと思っております。その場合でも世間でいう思想系統がどうのということはほんとうに考えておりません、各方面からの意見を聞こうと思っております。それから産業経済界からも来ていただかなければなりません。商業、鉱工業ですね。金融経済の方の権威者。それからそういう学問的基準じゃなく四番目には言論界の人も御参加願いたいと思っております。言論界といえば新聞、放送、評論、言論報道の、それで四組申したと思いまするが、五つ目に地方行政財政の関係者、学校といいますと御承知のように義務教育が大へん関係いたしまするから、地方行財政の関係者、すなわち地方公共団体に平素関係をもっている方。地方の教育、今は別の法案で教育委員会のことを御研究になっておりますが、そういうふうな人。むろんこれにはまらぬでも、どの部類に属するということにはならぬでも適当なその他のいい人はお願いしたい。それから国会議員を入れておりますが、これはやはり按分比例という、そんなことじゃございませんけれども、本人なり各所属党派の方々と相談してお願いしたい、こういうことに思っておるわけでございます。
  163. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 清瀬さん、将来大学を卒業した者ですね、大学卒業生でも労働運動の指導者になる人もあるだろうし、またそういう大学を卒業した連中でもどしどし労働運動の指導者になったり、あるいは経営者の中心になってやっていくということは好ましいことだと思うのです。そこで臨時教育制度審議会、かりにこれが通ったとした場合には、一つ労働運動というようなもの、これはも憂い間の日本においてはやっぱり見のがすことのできない一つの、言論界だとかあるいは産業経済界と匹敵して私は見のがすことのできない一つの勢力――勢力といっては語弊があるが、だと思う。この中からも一つ選ぶというだけの雅量はどうですか、それではちょっとおもしろうないですか。
  164. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) いや、この問題を除こうという考えは持っておりません。労働運動をしておる方を除こうなんという考えを持っておりません。それは産業経済界と今申した中に入るカテゴリーと思います。産業経済界だからと言って必ずしも大きな会社の社長というだけのことを私は想定しておりませんです。それより深くどういう人をということは、ほんとうにきょうは言えませんけれども、それはあなたのおっしゃることも考慮すべきものと思います。
  165. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に、このような学界から選ぶとしまして、一応一流メンバーといいますか……。名前の売れているというのは、産業経済界といってもすぐ何々銀行頭取であるとか、あるいは日経連の会長であるとか、あるいは言論界から選ぶにいたしましてももう名の売れたと言いますか、何々新聞社の社長である、そういったところを主として選んで、名前ばかりの人を選ぶ予定か、それともこれは中堅層――どちらかといいますと、学界におきましても少壮教授、あるいは教育界にいたしましても、新進の連中を選ぶか、それとも学長級、そういう連中をお選びになるつもりであるか、その点一つ清瀬さんの御希望はどんなところにありますか。
  166. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それは今ちょっと申し上げかねますが、御承知の年は若くても老成しておる人もあるし、相当年はとってもはつらつたる考えを持っておる人もありますので、老成か新進かということを今お問い下すっても、はっきりは申し上げられません。ただ、実際に内選考も何もしておるのじゃありませんよ。今抽象的に申し上げただけでございますから、先刻申し上げたようなふうに、日本の国論、教育に関する国民の希望がよく反映されるようにしたいと思っておるだけでございます。
  167. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に、お尋ねいたしたいのは、この大学教育に関して特に清瀬さんのお考えは、この臨時教育制度審議会は六・三制よりも主として大学制度について検討したい、こういう今のお話ですな。
  168. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そう申しました。
  169. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで明治以来の大学制度というものは、官吏の養成あるいは立身出世主義の教育であったと思うのです。人物をこしらえるという点において欠けるところがあったのじゃないか。ただいまのは新しい教育基本法に基きまして、人物をこしらえる、しかも国際的と申しますか、世界的な視野に立った人物をこしらえるというところに変ったように思うのでありますが、ここで反省しなければならぬのは、官僚制度というのは、やはり清瀬さんは官僚に対して抵抗をしてこられたところの古い闘士でありますけれども、依然として、日本にはまだ官僚制度が温存されて、だんだんとそれが元にもどりつつあるように思われるのです。それで大学に関しましても、検討される場合に、その官僚制度がまた復活するような方向へもってくるというのは危険だと思うのであります。なぜかと申しますと、これは外交の問題一つを取り上げてみましても、これはいつも申し上げるのですが、海外へ行ってちょっと見ただけでも、これが日本の外交を背負って立つ外交官かと思われるようた人はほとんどおらない。なるほどしかし、これは背の東京帝大を秀才で卒業して外交官試験をパスしているのですが、その気魄において全然日本を背負って立つような気魄のある者はない。今度の漁業交渉にいたしましても、本来ならばやはり外務大臣なり外務省から一つ乗り込んで行ってやるのがほんとうであるのに、まあよく野人あがりの河野氏が行って、とにもかくにもいろいろ意見があるけれども、曲りなりにもまとめて帰ってくるというところからいたしまして、私はよほど考えなければならぬ問題だと思います。そこで臨教審に清瀬さんが主として諮問せられようということは、あなたの説明をどう聞いておりましても、少し古い方へもどそうとしているのだが、今度は積極的に飛躍して、今よりも前進させるという考え方から、この臨教審をお出しになってきたらいいのだが、どうもこの間の御答弁を聞いておりますと、京都の旭ケ丘中学事件であるとか、この間大阪における高等学校の卒業式に先生の云々という一つのごく極端な一部に起った、好ましからざる例を引いて、これであるから困る、こいつを何とか直さなければ、矯正するために一つこしらえるのだということになると、いかにも取締り的な方向に向う危険性きわめて濃厚であると思うのですが、それよりも自由にのびのびと伸ばして人間をこしらえるという、こういう方向へ持っていかなければならぬと思うのですが、清瀬さんのお考えは一体どっちを向いておるのか、一ぺんここではっきりお知らせを願いたいと思います。
  170. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今菊川さんの御説の通り戦争を転機として日本の国民の民族的目標も、一つ一つの人間のあり方も転換したと思っております。ごく一口で申しますれば、戦争前、明治十年以後から戦争までは、日本の国家は東亜の大国となろう、ある時分はこれを極東の安全といい、また大東亜の形式者といい、そういうことが日本の国の目標であったのですね。こんな大きなことを一口で言っちゃ誤解を生じますけれども、淡白に申し上げますと、戦後は目標が変って、文化国家を形成しよう、やはり日本人はだれでももとの一流国にはなろうと思うておると思いまするが、それは文化国家としての英、米、ソ、仏に比するような国にしたいと、こう私は思っておると見ておるのです。お互いの友達、国会議員諸君とも会い、私の職業上の友人とも会うて、表現は違っても目標が転換しておるとこう思ったのです。個人としては戦争前は教育勅語が基準でしたね、あれは元田永孚さんの御草案になったもので、シナの朱子学の理想が非常に入ってきておる。で、書いてあることはみないいが、しかし大体服従といったような外からの教えですね、修身という名前は修身斉家治国平天下からきた言葉であるのです。ところが戦後は私はそれが変りまして、教育基本法というものは大体よくできておると思うのです。教育基本法は今の日本、すなわち文化国家の理想を持った日本の市民として完全な一つの人間像を描いて、これに近づけよう、この基本法自身を読むと、「平和的な国家及び社会の形成者」にしたいということです。それから「自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」にしたい、この平和社会の形成者、心身ともに健康な国民で、平出の信念としてはここにあげてありまする通り「真理と正義」を愛好し、また個人の価値、個人の尊厳を認める、こういう哲学を持った日本人を養成しようということで、戦前の教育勅語式の育成と戦後の育成とははっきりこれは違ってきたと私はこう思っておるのです。そこで戦後のやり方は私は反対じゃない、実際に自分の子供や孫を見ても、まあ生き生きとしたことはあるのです。世間のここで一つ批判は、政府自身はいいけれども、これだけでは日本ということが少しも響いておらぬ、これは独立前にできた法律ですからね。で、「心身ともに健康な国民」というけれども、心身ともに健康な独立国家の一員として価値があるというふうなことに、私は世間の人は思っておるのじゃないかと思います。それでそこのところに、これは非常にむずかしい抽象的なことで私は言葉を知りません。それでまあ審議会をお開き願うのもそこなんです。各方面の学者、学識経験家、あなたのおっしゃる労働運動をしている人、また会社の経営者も寄ってどういう日本人を作ったらいいのだということを一つ深く掘り下げて御研究願いたいと、これ以上私がこういうものを作ると言って、何も人に相談する必要はないのですから、世間の人はそこにちょっと不足を感じておると思うのです。学校の教員諸君にも私はよく会いまするが、やはりこの教育基本法に書いてある限度においてはだれも異存はないが、独立した以上もうちょっと他の標準が要るのじゃないかということは、私は共通の日本の今の望みじゃなかろうかと、こう見ておるのです。あとのところが私をもって反動政治家と言われるのかわかりません。
  171. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 わかりました。そこで清瀬さんざっくばらんにお尋ねしたいのだが、この審議会が答申案を出した場合、およそ清瀬さんの感覚とは相当隔たったものがかりに出たとした場合に、あなたはどういう処置をおとりになるつもりですか。かりにあなたのお考えになっているような構想のもとに出てくれば、それを今度は実践に移す場合にまことに勇気も出てこようが、こんなものを出させるつもりではなかったという結果も考えられる。まことにあなたの好ましいような結論が出るかもしれない。どちらが出るか、幸いにしてあなたのお望みになるような結論が出れば、まことにあなたとしては仕打はやりいいが、しかし逆な場合、逆と言っては語弊がありまするけれども、あなたのお考えになっておるより、およそかけ離れたものが出ぬとも限りません。そういう場合に一体どういうふうに……、それはなぜお聞きするかというと、選挙制度調査会のやり方とあれはよく似たことだと思います。選挙制度調査会は設けてうまいことをやってもらおうと思ったやつが、およそ違うものが出てしまったので、自民党でえらい勝手なやつをこしらえてあのようなミソをつけてしまった、これと同じような結果になることをおそれて一応聞いておきたいと思う。
  172. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それはすベての諮問機関に関して共通なことですね。私の思っておる通りを、まあある疑念を持たれちゃそういう諮問は望めません。しかしまあ私の考えておることと違うことだったら、良心に反した行動は私はできません。しかしながら諮問は全体として敬意を表し、それからしてこれほど多数の人がいいとおっしゃれば、それがいいのだろうと思います。諮問は私の考えと違うておりましても、これをやはり尊敬していきたいと思っております。しかし初めからそれをまるのみにしますということをここで言うことはできません。
  173. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そいつはできない。
  174. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) せっかく国家の経費を使って、それからまたこういう大家というものはみな忙しい方ですから、それを押してやってもらうのですからして、それを無視するということには私は考えておりません。
  175. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、今の御説明によると、これが答申が出た場合に、ある程度あなたのお考えになっておることとはずれておると申しますか、間隔があるとしても、こういう権威ある、せっかく国会でもこれだけやかましく言って、いろいろ議論しておられるのであるし、大家が集ってこしらえた答申案であるからというので尊敬して、あなたも多少の頭の切りかえを行なって、これに近づくようにすることにやぶざかでない、こういうふうに御答弁なさったと思いますが……。
  176. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) その通りです。
  177. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そこで次に伺っておきたいのは、清瀬さん先般来紀元節をいかにもまあやってもよろしいというお話もあり、そこで君が代を歌ってもよい、なるほどいまだに私ども明治教育を受けました者にとりましては、君が代という国歌を開きますと、何だか、しーんとすることは事実です。何となく身の引き締るのを覚える。しかし、あれは一つの魔術にかかっているので、あの文章を読んでみると、主権在民になっておりながら、「君が代」と言っておるのですね。「千代に八千代に」と言っているが、そんな所はどう考えても言葉としておかしい。われわれは魔術にかかっているのではないかと思うぐらいです。しかし、私らでも率直なことを申しますと、あの歌を歌っていると何となしに身が引き締るような思いがする。これは率直に認めます。われわれは明治教育を受けたものであります、毎年々々肝心なときには歌ってきたものでありますから。しかし、ここで考えなければならないのは、ああいう魔術にかかっているということが正しいものであるかどうかということを私たち考え直してみなければならぬ。紀元節につきましても、大胆率直に二千六百年ときめているが、果して二千六百年であるかどうか、あの神話から発して……。天の岩戸から天孫降臨、それから三種の神器をお持ちになって雲の上からお下りになって、そして神武天皇、あの金のトビがとまって、大和を鎮定になったということから紀元節は起っておるのですが、しかし、どう考えてみても、金のトビや天孫降臨というようなことは考えられないのであります。日本民族というのはどうしてできたのであるか、あるいは南方民族と北方民族の混血であるなら混血民族であると……、そこで初めて天皇というものができて、国を日本というふうに名乗った、世界に独立を宣言した、そんな記録もないのだから、一体いつを紀元節にするかということをもう一ぺん検討してみなければならないと思うのですが、清瀬さんがもう紀元節をそろそろやってもよかろうと言うこと自体が、あの二千六百年ということをお認めになって、あの神話から下った神武天皇の御東征をお認めになって、そういうことから紀元節を自由にやってもいいと言うことは……自由にやってもいいと言うけれども、やる以上は、これを臨教審あたりで一ぺん検討してやらなければならないと思うのですが、あなたはやるならやってもよいと言うが、それは自由ですから、霊友会を信じようと踊る神様を信じようと、それは自由といえば自由だが、そういう意味で紀元節を学校で取り扱わしては大へんだと思うのです。これらについてお考えを伺っておきたい。君が代と紀元節、この二つについて。
  178. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今お問いのうちに、これらのことも臨教審で取り扱うべきだとおっしゃるのは、私もその通りだと思っております。皆さんどう考えておられますかを……、(「あなたの考えだよ」と呼ぶ者あり)よく徴したいと思っております。お問いでありますから私個人として考えておることを申し上げてようございましょうか、これは文部省の意見でも政府の意見でもございませんから……、そういうことは諮問したのちにまたきまる。私は君が代はやはり時代とともに新たら感覚で解釈しなければならぬと思うのです。今の憲法では――天皇陛下、君が代の君は天皇陛下のことを言っておるのですね、天皇陛下は国民結合の象徴なんです。また国家の象徴でもあられるのです。そこで、君臨というと非常にこれも古い言葉でいけませんけれども、やはり天皇陛下が日本の……英語ではレーンと言いますかね。イギリンではキングはレーンするけれどもガバーンせぬと言っている。イギリスと日本とは違いまするから。ですが、まあ日本の伝統的の皇室であります。ですから、昭和時代は昭和何年と今でも言っておるのですね。今の天皇が御即位になってから。大正天皇のときが大正時代、そういう意味で昭和時代をレーンされておる天皇だから、この時代を私は「君が代は」というように言うてもいいであろう。イギリスのような民主主義の国でも、向うの国歌には、「ゴッド・セーヴ・ザ・クイーン」、また、男の時分には「ゴッド・セーヴ・ザ・キング」と言っております。それと同じように、やはり「君が代は」と、……日本の現在の時代、法律で言えば、民主主義で、主権は戦後違って、国民にあるけれども、日本の国民が主権を持っておる、民主国の民族的象徴として昭和時代ということで今の時代をレーンしておられるのだから、この天皇の御治世、治めるという意味、この天皇の治世をお互いに謳歌して千年万年どうか続けて下さい、こういう意味です。昔古今集にあった時分にはまた違う意味と思います。また、明治時代は違う意味でわれわれ歌ったんですけれども、この終戦後の日本の国家体制にやはり順応するようにこれを解釈していいじゃないか。あの施律は、譜は外国人が作りましたが、日本の雅楽からきているもので、簡単なメロディーだけれども、まあ非常にいい施律じゃと思っておりますから、私自身に問わるれば、君が代は歌いたいと思うんです。あのスポーツなんかのときでも、君が代を歌うて日本の国旗をあげる。(笑声)あのときには必ず歌うことじゃね。よくありませんか。これは私は否定する考えを持っておりません。  第二の紀元節ということですね。今紀元節は祝祭日じゃありませんから、これを祝祭日として人に押しつけることは私はよくないと思うんです。今日本は法治国家じゃから、法律でこしらえた祝祭日だけは、これは休日にして裁判上の期間の計算も祝日だけは日曜と同じように数えないでいく。しかし紀元節はそうじゃございませんけれども、まあ明治時代から八十年ほど紀元節と名づけてわれわれはわが国肇国の日と思っておるんです。このことになると、歴史、神話、すなわち歴史観、神話観ということに関係すると思う。私は神話とか伝説というものは、それをほんとうの歴史じゃと教えちゃこれは非科学的です。けれども、神話だ伝説だということを承知の上、伝説に書いてあることを紀元として一年の行事をすることは妨げないと思うのです。迷信でも何でもない。日本書紀に、庚辰春正月とちゃんと日本書紀というものにあって、これは必ずしもこのごろの歴史と言ったり、大東亜戦争で負けたとか原爆が落ちたとかいう、そういうような歴史じゃなくして、一つのレージェンドであり、マイソロジーである。ギリシャの神話でも、あれはあったことじゃありませんよ。キリストが天へ昇天したといっても、飛行機のない時代で天へ上られるはずはない。何ぼキリスト教の信者でも、そうは言えないでしょう。天へ上ったはずはない。お釈迦様だって生れたとき八歩歩いて天上天下唯我独尊と言った……。何ぼお釈迦様でも生れたときは赤んぼですからね。(笑声)それを知っておって釈迦誕生と言っておる。そういうような意味において、やはり日本書紀を基準として、もっとだれかいい研究者があって……。これだけは事実だと思うんです。神武天皇なんてああいう名前であったか、ウガヤフキアエズノミコトと言ったか知らぬが、大和あたりで肇国されたということはどうもこれは事実らしいです。いろいろこれは歴史家に聞いてみましたが、ただそれが二月十一日にあたるかどうかということは(「簡単にやって下さい。」「あなたの神話論を聞いているんじゃない」と呼ぶ者あり)ちょっと待って下さい。それでやはり新たなる歴史上の日が発見されぬ以上は、新たに科学的に精密な日が発見されぬ以上は、二月十一日を日本肇国の日としてお祝いは私はしたいと思っておるのです。現にいたしております。
  179. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで、今のお話聞いていると、清瀬さんの弁護士的な一つのこじつけですが、君が代にしても紀元節にしても、なるほどそういうふうに介護士というものは何でも自分が思うように解釈していく、しかもその大家ですから、すべて物事を……。これは法律じゃない、こういうふうな神話あたりはこじつけようと思ったらどうにでもこじつけられる、いずれあなたの考えておられることは、どうももとへ一つずつ戻していこうというふうに今お話を聞いていると、そういうふうなこじつけでもとへ戻していこうとすれば幾らでも理屈がつくわけであります。教育勅語だって、どこが悪いと言われたら悪いのは武勇的なところ、尚武的な軍国精神を鼓吹しているというのは悪いにしても、あとのところは別に、兄弟仲よくして隣り同士心やすくつき合えということは、これは悪いことじゃないのです。そういうふうにいきさえすれば。しかしこれはみんな悪用される。いわゆる天皇制と申しますか、天皇さんをみこしにかついで時の支配者が国民を支配するに便利なように活用してきた、考えようによっては一つの遺物だということも言えると思うのですよ。だから新しい主権在民の構想でそういうものも臨教審あたりにおいても一つ検討し直す必要があるのじゃないかということを私は申し上げたのですが、清瀬さんもその点については御賛成ですかどうですか。
  180. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) その通りにいたしたいと思います。賛成です。
  181. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでわかりました。  それから次に、海外の留学生、研究生というのは、戦前においても行われたのですが、戦前の各官庁あたりで法学士、工学士なんかは採用されるとすぐ在外留学生というわけで行ったんだが、あのときには研究ももちろんその通りにやったんでしょうが、中には遊び半分に行った連中もなきにしもあらず。中には優秀な二年間を十分研究してきた人もあると思うのですが、最近海外の研究留学生等についても、大正や昭和の初めごろよりももっと出さなければならない、大学卒業生にいたしましても、大学でまなんだものをさらにドイツなりフランスなりイギリスなりアメリカなりへどしどし派遣しなければならない、こういうところの経費は非常に少い。なおまた、大学の研究室の研究費の足らぬこと、われわれが大学を視察した場合に、いつでも学者が訴えるのは、研究費の不足です。精神論ばかりでもいかぬのでありまして、これはもう今の教育は金もかかるのです。教育に金をかけるのは、これは決して惜しくないと私は思います。研究費や留学生の費用に金をかけるのは惜しくないと思います。そういう意味から、これらにたんまりと金を出すというような構想の下にこの臨教審あたりにも取り組んでみる必要がある。ほかの方の金はたとえ節約しても、教育費に注ぎ込む、これは将来の日本のために非常に大事なことだと思います。そういう答申も求めるようにするお考えがあるかどうか一つ伺っておきたい。
  182. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この臨教審は今ここで御報告申しましました大学制度等の研究をいたしまするから、学問の研究、これをどうするかということは、これもおのずから答申されることと思います。しかしながら在外研究員のこの研究費のことですね。これは臨教審がおっしゃられるまでもなく、文部省では毎年拡大を主張しておるのです。しかしながら御承知通り経済が回復しておりませんから、大蔵省においてチェックされるのです。研究費などもことしはふやしましたが、ことしふやしたのは足りませんのです。大学の学生の授業料を上げたということと牽連しましてやりましたので、はなはだ乏しいのですが、在外研究員及び研究費のことは、むろんこの委員会で御建議にもなりましょうけれども、それに及ばず私はできるだけ尽力しようと思います。
  183. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで大蔵省あたりもせっかくこれだけ国会でもやかましくいろいろ各界の権威を集めて出した結論でありますから、この問題も、あなたは文部大臣として、通って、これが設置されたら、一ぺんよく意見を聞いてまとまったものを持っていけば、これは大蔵省において予算査定を行なった場合においても、一つの権威としてやはり尊重するというのは、あなたが尊重するばかりじゃなしに、政府みずから尊重して、これは大蔵省とか文部省という意味でなしに、それは文部省の下にあるのじゃないのですから、政府のもとにおける一つの諮問機関でありますから、その諮問には尊敬を表すという意味から、私は十分文部大臣としてもこういう問題とも取り組み、復古調ばかりじゃなしに、こういう問題とも取り組む用意があるかどうかということを一つお聞きしたのです。あなたがその決意と用意があるかどうか。
  184. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 御意見のごとく、いいたくみないき方だと思います。いずれ学者諸君に相談すれば、在外研究員のあり方などについても御意見がありましょうし、学界教育界から出られる方は自分で体験された方もおられましょうししますから、ほんとうに経験されたことに基いてりっぱな意見が出てくると思います。大蔵大臣というものはだれが大蔵大臣になってもけちなことばかり言うのです。それを押えようというのは――文部大臣が予算要求というよりも内閣の審議会でこうしておるのだと言えば非常に力にはなると思います。
  185. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次にお尋ねしたいのは、こちらから留学生なり研究生を出すと同時に、特に中国初め東南アジア、アフリカ地帯からの、一つ向うの留学生を、ある程度これは何と言っても、日本の方は財政的にもこれは向うよりは悪いとは言えぬと思う。従ってあの辺からも学生の交換、あるいはさらに、交換と言いましても、向うへそうたくさん行くわけにはいかぬと思うので、相当数各地域からの留学生を国費をさいてでも、今こちらへ招請するということも一つの意義あることだと思うのですが、こういうふうな点についても、教育制度審議会において一つ検討する用意があるかどうかお聞きしておきたい。
  186. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今のことは教育制度審議会をまつまでもなく、この国会が終りまして、来年度予算を作るじぶんには、私内閣へ持ち出してみたいと考える。かねてこちらにも言っておるのです。わが国が東南アジアを助けるといっても、ほかに助け方はありませんから、今御承知でしょうが、一つの国から一人か二人しかとっておらぬ、セイロンから一人、ヴェトナムから二人、インドネシアから二人あんなことでは話にならない。本人も淋しくて仕方がないからやはり少くとも十人、三年かかったら三十人になりますから、そのくらいなものを一国からとって、それからその待遇なども、以前戦争前に中国から来ましたね、あのときなど、まあ日本人はシナ人をちょっと軽べつしたようなことを言ったので、かえって反日になって帰っております。今度はよい待遇をして、わが国の明治以来得た技術をこれらにさずけると同時に、民族の親善をはかるというようにいたしたいと私は考えておるのです。この審議会でやって下さればなおいいが、それをまたず来年度予算にはやりたいと思っておるのです。
  187. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に大学制度についてというあなたの言葉の片鱗の中から、俗によく言われることですが、駅弁のあるところには大学あり、ヨーロッパ各国よりも日本には大学数が多いということを言われております。これは皮肉を言う人はよく言うのですが、清瀬さんのお考えでは、その大学を全部昔の東京大学並の水準に引き上げようというのか、Aクラス、Bクラス、 Cクラスというふうにしようと思うのか、また背の専門学校程度と大学とこういうふうに分けてしまおうという構想をお持ちになっておるのか。あなたのお考えは、一体、皆昔の東京大学あるいは京都大学並みにこの駅弁所在地の大学を全部そこまで持っていこうという意味で大学制度の検討と言われるのか。この点はどちらですか。どうも先ほどからの御答弁を伺っていると、清瀬さんのお考えでは、Aクラス、Bクラス、Cクラスと一つやってしまいたいというふうに伺えるのですが、どちらですか伺いたい。
  188. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) まあ東京大学並みというと、あなたのきょうの初めの話にあった役人製造所……。
  189. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いやそうじゃない。あれだけの設備と図書館を持ったという意味です。教授も……。何も役人製造所という意味じゃないので、誤解のないように。
  190. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そういう意味じゃありませんですけれども、まあ大学の制度をいろいろと私どもに献策される方があります。あんなにたくさん乱設しないで……。四百九十五ですか、この狭い日本に四百九十五もありまして、私の兵庫県には一県に六つある。しかしこれを統合するといっても、もう当りまえの方法じゃできません、地方に利害関係があって……。こういうふうな大きな機関で世論をそれに導いてやればできるかもわかりませんが、だれが文部大臣になったところで、文部省の方針でこの四百九十五をどうするということは不可能なんです。うっかりすればどんどん出てきます。五百ぐらいにはじきになるでしょう。で、これをどうしたらいいか、実は私思案に余っておるのです。一たん伸びたものは縮まりませんからね。これを統合でもしたらいいのか、あるいは現状維持でもうふやさぬということで、日本国力がどんどんふえてくればそれで間に合うようになるというふうな、どっちへやっていいか、私は思案はまだきめておらぬ。思案に余って皆さんに相談するのです。それからして、もう一つは科目ですね。科目が、人文系、法律とか経済とかいうのはどうも設備もたくさん要らぬ。それでまあ人文系の大学がプロポーションを越えて多いのですね。しかし日本の将来は、文化国家というと、やはりもとは産業、発明、技術という面が大切ですから、そういう方に転換するようにするということも一つじゃと思います。それからもう一つは、草間などここは統制といえるかどうかわかりませんけれども、日本では経済五年または六年計画というものを立てて、いつごろはどういう産業がどれだけできるということまでやっておるのですから、学科の割り振りも、日本の将来の経済を動かす、たとえば造船工業が今年は非常によろしいが、いつまで続くことかわかりませんけれども、造船科とか舶用機関とかこういうものはどうだろろとかこれは一例ですよ。それからまあ今世間で原子核、これで電気を起そうという人がある。それから抗生物質ですね、アンチ・バイオティックス。それから石油化学といったような新産業がありまするが、これも将来を見通してそれに適当するようなものに振りかえればいいじゃないかということは世間でも言っておる。それから今まあ六・三・三・四で一本の教育制度ですね。明治のやつは、一本の大学制度のほかに専門学校といって副のやつがありましたね。高等工業とか、ああいうふうな、一本の大学だけでなく二本にさしたらどうだという議論もあるのです。むろん、私今の任務を担当してから新たに教育法を研究しましたが、教育法ではいろんなことがあるのですね。文部大臣は教育行政を監督せずということになっておるのです。しかるにある法律では、監督庁というのは文部省の名前なんです。この法律において監督庁とは文部省をいうといっておるのです。監督庁という名前を一応出しておいて監督権がないのです。これらは法規の上においてもおかしいことじゃから、そういうふうなことをどうしたらいいかと、大学のことはいずれたくさん大学の経験者もお入り下さることだろうから、皆さんに相談して、問題のあるところだけをざっくばらんに言うてみて御研究を願いたい、こう思うておるのです。
  191. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 やはり今の御答弁を聞いていると、清瀬さんは、これはちょっと多過ぎる、だからふやすということはもうとめる方がよかろうと、それからなるべくならもう少し統合というふうなことも、そういうことをすると評判が悪くなるから、臨教審が言うてきたら待ってましたとばかり、そういうものにはすぐ飛びつく、予算の伴うものは見送るけれども、大学の数でも減らせということは、そういうことを言うてくれんかしらんというようなことを期待しているんじゃないですか、実際問題としては。
  192. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) まあ一たんできたものを減らすことは困難ですね。これをどう利用するかということに……。生まれた子供を腹へ戻すことはできませんから、これをどう利用するかということで、しかしながらたくさん学校ができまして、やはりどんな家庭でも皆大学卒業までいきましたから、国民の学力はこれで水準が上っておるのです。これは悪い方ばかりじゃありませんよ。これはよく利用すればいいのだと思います。
  193. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に、地方公共団体、いわゆる府県等で大学を持っておりますわね。まあこれについては文部大臣どういうふうなお考えを持っているか。これも、やはり一ぺん地方行政に関係する権威者を今度臨教審に頼むと言っているのですが、地方公共団体が大学を持つことがいいかどうかということを検討されようとするのですか。どういう点からこれを……。
  194. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これも検討しなければならぬと思います。今各大学を文部省で国立に移管しよう――移管しようという請求は国会議員からもたくさんくるのです。そうすると、移管すればこっちがまた金がありませんしね。しかしまあ、各地方で地方の実情に沿うた大学を持たれることもいいんじゃないかと思っております。ある織物の地方は繊維の大学を持たれ、また酒とかブドウ酒とかいったような産地には醸造大学というようなものもあり、必ずしも私は国立に一本にしなければならぬとは考えておりませんが、いずれ会議になれば必ず問題となる一点じゃと思います。
  195. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 この臨教審をお作りになる前に、政府としての文教政策、これはこういうふうになっているがこうした方がいいというものを、一応構想を国民の前に明らかにして、しかしこれを押しつけるようなことになってはいかんから、一応各界の権威者を呼んで、臨時教育審議会というもので呼んでこれを示して、これがいいということ、あるいはこれを直すが、あるいはこのままやってみようということになるが、一つこれを聞くのだと、こう出るのが責任ある態度だと思うのですが、何も構想もなしに、すべて清瀬さんがこうありたいと思うが、まあ一つ臨教審に聞いてみるのだ聞いてみるのだというが、その理由は、今も御質問申し上げてみると、清瀬さんの構想に近いような答申案を一つ出さぬかしらんというようなことを期待して、それに落ちそうな連中なら、はっきりこれが各界の意見だ、こう言ったからこうやるんだと、こう持っていかれそうな危険がきわめて今までのあなたのお話から聞いておりますとどうもうかがわれるのですが、一つ臨教審ができたら、この法御案がもし通ったら、こういうふうなことを清瀬文相としはやってみたいと思うのだ、だからこれをいいか悪いか聞くんだと、こういくつもりか、それとも構想も何にもなしに白紙で教育制度全部を研究してくれ、こういうおつもりか、どちらをおとりになりますか。
  196. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) その中間と思います。問題の所在は、今の日本の文教としてこういう問題があると、問題の所在は指摘いたします。こうしてくれということは言わないつもりです。それを言っては適当なる審議にかえって差しつかえがある。その予断はしないで、こうこうこういう問題がある。今、先刻あなたがお示し下さったこともまあ一例ですが、それを同時にか、逐次にか、こういう御審議を願いたい。そして御審議に必要あれば、資料は御要求によってどんどん出します。といって、この現状を把握せらるる人でありますけれども、現状をよくお調べ願って、こちらの出す問題について適切な御意見を伺う、こうなるだろうと思います。すなわち何もしないで何か言うことないかといっておるのでもなくて、僕はこうしたい、だからどうだといって自分の意見を言うのでもない、その中間の行き方がいいのじゃないかと思います。
  197. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次にお尋ねしたいのは、まあこの法律が成立することによって、一応清瀬さんの手で発足されることにたると思うのですが、そこでざっくばらんにお尋ねいたしておきたいのは、この臨教審というもの、一体この構想は、あなたは文部大臣に御就任になって、これは何とかしなければいかぬというお考えから一つこういう構想をお立てになって、そして閣議にお諮りになってお出しになったのか。それとも鳩山総理のお考えであなたに何とか清瀬君やってみよ、やってみよという話があったので、あなたはそれを受け継いでおやりになったものであるか、この点を一つ、重要な問題であるから……。
  198. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これは内幕のことでありまするけれども、さらけ出して申し上げます。ほんとうはこうなんです。昨年の十一月に御承知通りにもとの日本民主党、私はその方におりました。それから自由党の方と合同して今の自由民主党を作りましたのです。あの合同のときに、両方の党派から委員を出しまして、昨年の七月でしたか、七月の初めから終りまで、ここにいらっしゃる青木委員長はやはり自由党の方の委員でありました。私は民主党の方の委員でした。おのおの十名ずつ出しまして、合同とは言うけれども、何をするかということがはっきりしなければ合同にならないといって、双方とも寄って政策をきめたのであります。どういう党派だという党の性格とおもな政策をきめたのです。おもな政策は六つきめたのです。六つのうちの第一が、やはり日本の道徳水準を維持し、教育を改革するということが第一です。二、三、四、五はこれは省略しますが、憲法改正などもそこに入っておるのです。第一の教育改革のうちにまた緊急政策というものをきめたのです。緊急政策というもののうちに、有力な審議会を作って教育に対する国の責任、学校制度、特に大学制度、教育水準を研究しようということがあるのです。それがきまりましてのちに私は、それがきまったのは十一月十五日ですが、十一月の末に入閣いたしました。閣僚はみなそれを知っておるのです。で二回目くらいの閣議でありましたが、こういう公約がある。今は委員会、審議会は減そう、行政整理で減そうといっておるときだけれども、これはぜひやってもらいたいということを提案しまして、鳩山総理もほかの閣僚もそれはむろんだとおっしゃいました。翌日ちょうど衆議院に文教委員会がありましたから、昨日の閣議でこういうことをするようになったということを、私当時発表しております。私の思いつきじゃなくて、わが党が生まれたときから必要な案としておるところで、党としては実は大事な案でございますから、皆さんのおかげによって何とぞ成立させていただきたいと、こう存じております。
  199. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、この構想については清瀬さんがきわめて熱心かつ積極的な意欲を持っておられることは事実ですね。
  200. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) さようでございます。
  201. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると巷聞伝うるところによりますと、この国会が終ってから内閣改造が行われるというようなことをよく俗に言われているのです。そうすると、これが通る、成立したころには、内閣の改造が行われるのですが、まず改造が行われても清瀬さんは絶対お残りになって、せっかくこれだけ熱心なあなたは、予算委員会でも何でも、これを一本やれば、何でも文政についてお尋ねする、臨教審でやるのだ、臨教審でやるのだといってこられたのだが、おそらくこれはお残りになるのでしょうが、そういうことがかりにあれば、どうなるかわからぬけれども、あってもそういうことにならなければ、せっかくあなたのような積極的な意欲をもってこれを押し進められている人が、法律が成立してしまった時分に、今度改造になって、ほかの方にかわられる、文部大臣をやめてまた防衛庁の方にでも行かれるということになったら、さっぱり骨抜きになってしまうと思うのだが、やはりある程度の、今は政局も一応多数の上に立っておりますから続くだろうと、こういうふうに思うのですが、せっかくこしらえても、今度文部大臣がかわるということになると、くるっと今の御答弁も何も、これは同じ自由民主党の中でもいろいろ違うのだが、そういう点も大体見通しをつけてきょうは御答弁に出ておられるのですか、その点を一つ伺っておかぬと……。
  202. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今の内閣が改造されるということは私知りませんです。東京のある新聞で数日前にちょっと読みましたけれども、それはもう私の党の幹部から聞いたことでもなし、鳩山総裁からも聞きませんし、閣議または閣議後の世間話にも一ぺんも出たことはございません。しかしながら日々進歩するから、内閣の構成も、それはかわらぬとは保証できませんが、しかしながらこの案の出たのは私の案ではなく、今言った念の入った党の政策ですね、順序が初め終りということではございませんけれども、六つの綱領の一番初めに書いてあるくらいで、どなたが私の後に文部大臣におなりになるかしらぬけれども、わが党出身の文部大臣がこれを承継してやってくれる限りこれを承継してくれることは私疑いません。これを反対したといろのであったら、党を作ったときにさかのぼって意見がかわらなければなりません。
  203. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それではこれはあくまででも自由民主党の政策としてやるものであるから、自由民主党におかれては、あなたがきょう答弁なさったような構想で、教育制度と一つ取り組んでみようという積極的な意欲を党議としてお持ちになっているものである、変らないものである、こういうふうに承わってよろしゅうございますね。
  204. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そう思っております。
  205. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは次にお尋ねいたしたいのは、この臨教審がかりに先ほどもちょっと触れましたことでございますけれども、自由民主党の党議に基いてということになりますと、いきおいこれはやはり学界でも教育界でも、産業経済界、言論界にいたしましても、大体自由民主党の政策にきわめて同調しておられるというか、賛成しておられる向きと、これに対して批判的な向きが、これはあることは事実であって、民主主義だから当りまえのことです。どうしても臨時教育制度審議会を設けるにいたしましても、これに批判的なものを集めていてもいかぬし、そればかりだったら、およそかけ離れたものばかり出て、これは集めるわけにはいかぬ。だからといって同調的な者ばかり集めてしまったのでは、これはもう御用機関になってしまうと思うのです。その割合は大体……これはもうそんなことは学者や教育界には異論はないとおっしゃるかもしらぬけれども、この間も公聴会を開いてみると、教育界といっても、私らは俗にいいますると、東京大学の総長であるとか、京都大学の総長であるとか、一ツ橋大学の学長であるというようなところは、一応まあ権威者だと思っていますがね、もっと少壮教授たる権威者を考えれば別として、あの総長連中の話しを聞いてみましたら、どうもこんなものはどうでもいい――こんなものと言っちゃいかんが、あの連中を頼んできても、積極的な意欲は示しっこはないと思います。だからといって、自民党の政策に同調的なものを集めたら、清瀬さん大いにやれやれということになって、どっちに向いてしまうかわからないが、そのところはむずかしいと思いますが、この際清瀬さんどういうふうに処理されるか伺っておきたい。
  206. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) きょうの御質問の初めにもお答えいたしましたが、初めから一つの成案をもって、この人を入れて賛成させようの、これは反対じゃからして省こうのと、そういうふうなまあ第二次元の考えは持っておりませんです。世の中のことはまじめに、正直に見ても、自分のおる立場によってものの形は違って見るのですね。ですからして、教育界ばかりにおられるというと、国家の財政とか、あるいは産業とかでなく、一も教育、二も教育、先生の月給を上げろと、こういうふうになるのは順序やむを得ませんです。またこれに反して、まあ知事なり町村長というところにからだを置くというと、どうもこの赤字を解消しなきゃ教育もくそもないというふうに、またものを見るのですね。ですから各違った位置におられる相当バラエティのある人々に集まってもらって、公平な結果を得ようと思っております。本日の初めにお答えいたしました五つ、六つの基準でお願いしようというのもそれにほかならぬのです。世間で、学界というけれども、学者ばかり、象牙の塔ばかりじゃ世の中はこれはいかないのですね。そうかといって通俗に命さえもうかればという実業家の言うことだけでもいけません。しかしそれも参考にはしなければならぬ。各方面から……。世間でよくたとえて言う通り、富士山の形も駿河湾から見たものと、甲州の吉田口から見たものでは格好が違うもので、私はやはりそういうものがあると思います。
  207. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 先生の御答弁はなかなかよくわかるように答弁してくれるので、……(「答弁時間が長過ぎる」と呼ぶ者あり)そうすると、こういう利害相反する、今、清瀬さんもおっしゃったように、地方行政だと地方財政が健全に行った方がいい、赤字が出ぬようにという。一方言論会から集めるということになると、それはもう蜂の巣を突っついたようなことになる。言論界で評論家ということになると、大宅壮一、山浦貫一、阿部真之助というようなものを考えておるのだが、こんなものを集めて来たら、それぞれ勝手な説を吐いてしまって、とても一つのまとまった結論なんか出っこないのです。大宅壮一の、ちょっと書いたものを見ると、清瀬さんのごときは、明治の息のしみ込んでいる、これは叩き直しても、直らぬものだと言っている。反対も何もない。大宅壮一なんかざっくばらんに書いている。清瀬さんなんかとても叩き直しても、あれはあかん。あれはこちこちに固まっちまっているのだと言っているし、また矢内原さんなんかを頼んで聞けば、はっきりこの間の公聴会におきましても、この政治的背景がおそろしいと、こう言っているのです。この臨教審、その問題は大したことはない、この条文に表われたところを見ると、その紙背に目を注いだときに、まことに危険なものがある。危険だから、こんなことに成果を期待することはぼくらとしてはできないと、これらを集めて聞いて見ても、小田原評定に終ってしまって金だけを使うという結果になるのじゃないかということをおそれるのだが、一つのまとまった結論といっても、そんないろいろなものを集めて、多数決で採決するわけにもいくまい。そうすると、一体それは何だ、金と時間の空費に過ぎないのであって、盛んに談論風発、そうして収拾のつかない状態で、あなたの今の御答弁でもわかりますように、大いに論じられるだろうと思うのですよ。そうしてまた論客ばかり寄って、えらく論じ合って、結局結論を得ないようなものになるのじゃないかと思うのですが、先ほどから構想を伺い、かつは委員に委嘱するメンバーということを考えましたときに……。だからある、こういうふうに持って行こうという線を持っておって、そうしてこいつに合うような連中を集めれば、大体一致する。しかし各方面の意見を聞くと言ったって、こんな大きな問題を聞いたって、二年や、三年しゃべらしたって、しゃべり尽きないほど集ってくると思う。そこで問題がどういうふうに処理されるか。清瀬さんの能弁をもって丸めこまれるつもりか。私らを丸めこまれるように、弁護士的詭弁をろうしたってしようがない。そんなわけにいかない。一体どうするかということを伺いたい。自信がありますか、こんなものを集めて、こういう連中を……。
  208. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これは私の、堅白同異の弁でまとめるということじゃないんです。これは会長を別に委嘱しなければならない。副会長、それから専門委員、こういったような方もあられまするし、それらの手腕にまつのほかはありません。私や局長あたりは傍聴をして、また資料要求の時分に資料提出すると、こういうことになるのであります。昔、戦前に、よく委員会政府自身が行って内面指導というようなことで、自分の好む方へ引っ張ってきたこともあります、事実。それではせっかくこういうものを設ける値打ちがありませんから……。それからまたまとまらんでも、一々の、甲の論は甲、乙の論は乙と、こう必ずしも一つにまとめなくても、二色の、多数少数、甲論乙論であっても、参考に非常になります。政治の問題みたいに一つに割り切って、多数でぽんと行こうということじゃなくて私はいいと思っております。
  209. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そんなら、こうぎょうぎょうしくえらい法律なんか出してやらなくてもいいんじゃないですか。ちょっと一ぺん教育問題について集ってもらいたいと言って、臨時に総理大臣から招請状を出して聞いてもいいと思うが、清瀬さんが老の身の一徹から、何でもかんでもこれをやるんだと言って、予算委員会でもがんばってこられたが、がんばる必要はない。そんなものは内閣総理大臣から、今日は日本の教育全般について御高見を拝聴したいと言って集ってもらったらいい。こんな形式張ったものをこしらえる必要がどこにあるかちょっとわからぬのですが、今まで伺ったところによると、それでもいいと思うのですが、なぜこんなに形式張ってやらなくちゃいけないのか。公約だから、何でもいいからやらなければならぬのか。それともこれによって成果を得ようとしているのか。お伺いしていると、だんだんと必要ない、そうなると思うんです。具体的に言って、だれを選ぶか、まあ私も国会議員だから、ひょっとすると選ばれる。選ばれた場合に大いに論じ合って、一年でも、二年でも……こんなものは毎日開くわけにいかん。忙しい連中ばかりですからね。おそらく集ってこない。ようやく呼び集めても、談論風発に終って、さっぱり意見の統一ということはできない。おそらくだれが会長になっても、副会長になり、専門委員になってまとめようとしても、これはできないと思う。そうするなら、いそいでこんなものをぎょうぎょうしく押し通さなくてもいい。清瀬さん、そういうふうな方向でおやりになった方がむしろ自由で、かえっていいんじゃないかと思う。党の構想なら、党は党としてやられる方がいいと思う。党の政策の責任を、こういう連中を集めて、責任をそっちにかぶせてやって、いいところは取って都合の悪いところは捨てる。こういうふうに今後行く危険性は多い。選挙制度調査会のときでも、ぐっと参ったんですが、その方に一つ利用する。与論をここへ集中さして、国民の反撃というものをここで受け止める一つのカモフラージュに使うという危険を感じるのですが、そういう点いかがでございますか。こんな法律作らなくても、いいんじゃないか。
  210. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今の、将来の菊川さんの御予想に対しては、どうかそんな龍頭蛇尾に終らぬように注意しなければなりません。ただしかし教育のことは、ほかの部分と違って、非常に大切です。(菊川孝夫君「そうですよ。大切だ」と述ぶ)そうして今の教育制度を作る時分には、やはり内閣の諮問機関として、教育刷新委員会というものがございました。これは今回と同じものなんです。ともかくも茶話ではなく、刷新委員会日本の現教育を細み立てたのですね。それを法律に書いて国会に出した、あの当時あれだけの成績を上げておりまするから、私は今回も今度は初めから作るのではなくして、作ったものの、建物でいったら改築みたいなことなんですけれども、同じ熱をもってやって下さるならば、必ずいい結果は得るだろう、こういう望みを託しておるのでございます。あなたのおっしゃる通り、まあ総理官邸に来てお茶一ぱい飲んでくれといっても、茶話では思いつきということになりますので、ちゃんとやはり委員に御任命申し上げて、専門委員を作り、そうして議題もちゃんとこしらえて、考えてきてもらって、そうして討論の上まとめていく、あなたの話は、私も一本にまとめいでもいい、ある場合には多数と少数二つになっていいといったことから疑いが起ったようでありますけれども、しかし、私は二つ答申してきてもちっともそれはふやけたことになるものだとは思っておりません。ごく、一本にしようというと、そこに無理ができますから、どっちがよかろうかという二本立の答申も認めていいのじゃないか、それは将来のことを今からいうのはちょっと早いでしょうけれども、非常に問題になるというと、いわゆる進歩主義者の方とそれから私のような人間とは二つになって、これを融合せいというのは無理な場合が起るかと思います。
  211. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 出てきますよ、こんなメンバーでは出てきます。これは当然そういうようにもう二つにわかれてくると思うのです。大学制度は今のままがいい、このままでいけというのと、これはもっと減らせということは、これは必ず大学の数が今の四百九十幾つということからしましても、これは二つにわかれてしまって相反する結論が出ることを私は考えるのです。今のようにあなたのほんとうにすなおに御答弁になったような連中を委員に委嘱するといたしましたら二つの結論が出て、この名士だとか何とかいう人は、存外あまりきらわれるようなことをぽんといってしまうのは少いのです。だから、まあこれは減らせなんといったら、またたたかれて、あれは反動学者であるといってたたかれるから、工合が悪いようなところは、まあまあ式におっしゃる危険性があると思うのです。それもある人は、これは減らした方がよかろうという結論を出しましても、結局二つにわかれる、そう思いますが、そういったようなときになったときに、重要な問題で二つにわかれるということになったら、一体どうしますか。せっかくやってみたところで、これは多数で数が一票多いからこっちを採用するというわけにもいきませんでしょう。その点清瀬さんどういうふうに取り計らいますか。
  212. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それもむずかしい問題で、軽々しくここで私が申し上げることははばかりますけれども、やはり結局メリットによるほかはなかろう。いずれたった一本のことではなく、それに対する理由もつきましょうし、また資料も出てきましょうし、どっちの方が日本の国にいいだろうかということを、よく考える参考になろうと思います。
  213. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 清瀬さんはこの国会におけるまあ重要政治生命を非常にこれにかけているといっては、これはちょっと言い過ぎでありますが、清瀬文政としてはとにかくこれにしぼってこられたことは、あなたの何回かの答弁を伺っているときに、各委員会答弁を伺っているときに、この臨教審に非常に熱意をお示しになって、われわれの想像以上の熱意をお示しになっておるのです。しかしそれだけの必要を私らが間々お聞きしたときには、どうもこの法律まで作ってやらなきゃならぬ必要を感じないのですけれども、あなたは非常にこれは大切で緊急を要する問題であると、こういうふうに信じておられるならば、その理由をもう一ぺん一つ端的にお聞かせ願いたいのですが、いつもの、いろいろとまあ形式ばらずに一つお聞かせ願いたいのですが。
  214. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今お尋ねの予算委員会とか、文教委員会とかで教育に関するも大な質問がたくさん起りましたのです。わが国は過渡期でありまするから、ああいう質問に対して、文部省はこうするのだといって独裁的にやることはよろしくないと思うんです。幸いこの会を作りまするから、それらのことは審議してお答えする方がよかろう。こういうので、今あなたのおっしゃいまする、たとえばきょうの問題としては大きな問題じゃありませんけれども、わが国の刻下の問題でございますね。私がこうするのじゃなんて言ってしまわないで、みんなの学者諸君がどうおっしゃるかも聞くべきものだと思います。それから大学の数の問題でも、これもたびたび出てきました。それから科目の問題でも、わけても始終出てくるのは就職の問題ですね。大学卒業生十三万人出てくるのですよ。まだ五、六万ですか、今就職しておるのは、これがことし一年だけでなく、毎年この状態が続くのです。どうするかという問題は方々で起りましたけれども、ここで一つ考えろといって、私は無理に、隠れみののように、困ったら臨教審というのじゃございませんけれども、私のような知恵のない者が今立ててしまうよりも、せっかくこれができるのだから、そこで一つ協議をしてどうしようかと、朝令暮改でそう年中変えられやしませんから、そういうふうに臨教審で研究させますということをたびたび言うたことは事実なんです。責任のがれのつもりじゃない。ほんとうにそうしたらいいと、こう私どもも、私どもの友人も考えておるわけです。
  215. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それじゃこの大学卒業生の就職問題について清瀬さんのお考え――私は、大学卒業生であるから必ずしも各官庁なり会社へ入って幹部候補生になるという従来の考え方を、高文を通って局長までいくのだという考え方じゃない、それは警官、地方の警官も大学教育ぐらいを受けているように、あるいは鉄道の従業員も、電車の従業員も、それからほとんどの大多数の人間が、それぞれの職場に大学の卒業生がうんと配置される、こういうようになってこそ、これは決して不思議じゃないのです。大学教育したのだから必ず局長にならなきゃならぬ、大臣にならなきゃならぬというところに無理があると思うのです。だからして、そういうふうな指導をやっていかなきゃならぬし、それがまた日本のために好ましいことだと思うのですが、清瀬さんどう思われますか。
  216. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 同感です。しかしそういうことをみんなに知ってもらうのにも一つの施策が要るのですね。私は、ずっと古い昔のことじゃけれども、イギリスにおりましたが、イギリスの大学がそうですね。卒業したからすぐ就職というものじゃないのです。ところが日本は、日本の父兄諸君は、大学へやったら月給とれるとこう思っているのです。この迷妄をさまさせなければならぬ、打破しなければならぬ。ようても悪くてもまだそう思っている以上は、やはりこれに順応して国策を立てぬというと非常に無理をして……、昔、まああなたも私どもも昔の人だから、(笑声)あのころはやはり一定の基準、まあ財力的に余ったものでないとやりませんけれども、このごろはお父さんが炭焼きしておっても貯金して毎月一万二千円ずつ東京へ送るのです。今の日本の経済で一万円前後毎月送るというのはいなかの百姓としてはえらいことですが、これは何のために苦労して送るかというと、就職できると思っているのです。それがあぶれたら非常な失望で、お互いに国会議員の一番の悩みは有志諸君の御子弟をさばくことなんですよ。それでこれは間違っておる、お前ら間違っておる、子供を学校へやって就職なんていうのはと、そんなこと言えやしませんから、これにもやはり順応するということが道ですから、だんだんと日本人が頭を切りかえて、イギリス流になっていきますでしょうけれども、現在がこのままですから、そこも考えて大学制度を作らんならぬ。こういうふうに考えております、このことはですね……。
  217. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 清瀬さん、そうすると、やはり大学生は、あらゆる職場に大学卒業生が配置されるように、しかもそれが普通に考えられるように一つ持っていくというのも、やはりこの諮問に、一つ聞いてみたいと、こういうお考えですね。
  218. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) その通りです。この間高碕さんと話したのですが、あの経済五カ年計画を作るときに、実は文部省を入れなかったのはちょっとまずかったと高碕君は言っておられました。ですから経済計画にはやはり文部省も入って、日本の子弟、父兄の心も心として察して、どうするかということをちょっと考え直してもらいたいと思ったのです。あれだったら学校は学校でいく。五カ年計画は五カ年計画でいく。ですから人が要る時分になかったり、要らぬ時分に余ったり、いろんなことがあります。大体の基準は経済や実業の人をとる。技術の方の人をとらぬということで、みな商業とか経済ばかりがふえておるということは一致しております。
  219. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでもう一点だけお伺いしておきます。いよいよ公聴会を開いたときも、この臨教審の政治的背景ということを盛んに学者連中は指摘されたのです。ということは、憲法改正は現実の日程に上せようと多数党の自民党はやっておられる。それから再軍備というよりも軍備拡張の段階へきておる。だからその一つの足固めとして、教育制度をそれに順応させるべくこの臨時教育制度審議会を作るのではないかということを一番やかましく言っておったのですが、矢内原さんなんかは昔、特に若いときに軍備拡張の趨勢に逆らったために当時の追放を受けた。そういう苦い経験を持っておるから、今の世の中の動きをあるいは象牙の塔から眺めておって、その危険をひしひしと感じられたと思うのです。そういう意味から臨時教育制度審議会についてきわめて痛烈な批判を浴びせておったのは、清瀬さんもお聞きになったところだろうと思うのですが、そこでお伺いしておきたいのは、憲法改正の足固めとして一つの臨教審が利用されるというような危険があるのではないかということを私どもおそれるのでありますが、そういうお考えがあるのかないのか。これは率直に、もう清瀬さんは憲法改正論の主張者であるし、どうもちょっとうまいことを言っておられるのだ。君に忠義とはいわぬ、国のためにならというのです。あなたの御説明は、国のためにならというのだから、今の軍隊を盛んに軍備拡張にもっていっても、これは就職運動としての自衛隊に入るのではだめであって、その筋金としては、一つ民族のためには、天皇陛下のためには命を捨てるというのでなしに、今度は日本の国のために命を捨ててもいいというふうにしていく。その地固めをしていくのはどういうふうにしていったらいいか、こういう答申もされるおつもりですか。
  220. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) その考えは絶対にありません。そういう政策のためのことではないので、教育は教育独自のものとして、今言った日本が文化国家として方向を転換したことが一つ。それから今日の世の中のあるべき人間の姿ですね、新しき人間像を描いてこれに進みたいということで、憲法のことを言いますると、また話が長くなりまするけれども、しかし教育基本法はこの憲法の中で自由主義、進歩主義、人権尊重、この三つの柱からきておるので、たとえ憲法を改正しましても、人権尊重の主義はこれはとるのです。民主主義はこれをとるのです。進歩主義はこれをとるのでありまするから、教育に関係する部分の憲法は改正されてもされぬでも同じことだと私は思います。昔のように学校で軍隊教練をしようというようなことは一つ考えておりません。それからまた軍国主義の教育をしようなどということは言ってもできることではありませんし、私は考えておりません。
  221. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いやそれは軍国主義とは私は極端に言ったのではない。あなたの言われるのは、とにかく君に忠義とは言われないが、国家に忠誠と、これはアメリカでも盛んに言っていることです。イギリスでも言っていることです。民族に忠誠を誓うということはこれはいいですが、それが発展していくと、やがて日本が侵略を受けた場合には、この民族に忠誠を誓うために青年諸君よ銃をとって立て、そうしてまさかの場合には向っていくのだ、こういうことはお考えになっていますか。これはそうでないと、民族に忠誠といっても、一体どういう、最後の突き詰めたところをお伺いするのだが、民族に忠誠というのは国が侵略を受けた、いわゆるよくいわれることでありますが、急迫不正の侵害があったというようなときは、国に忠誠ということは、やっぱりそのときは、急迫不正の侵害があったときには、これは黙って手をあげて見ておれ、笑って見ておれとよもやお教えになるとは清瀬さんもお考えにならぬでしょう。そのときには勇敢に、青年よ銃をとって立ち向え、そういうふうな国に忠誠、民族に忠誠、こういう意味だろうと思いますが、どうですか。
  222. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 主権が国民にあって、その国民に忠誠を誓うというのは、現行憲法でも十五条第二項で国民全体のために公務員が働くということです。しかしながらそれが占領中にできましたものとそれから今の新教育というと、昭和二十二年から三年ごろに進駐軍が、西洋人が入って新教育はこうだと教え回っておりましたが、僅かなことですけれども、それはぴったりいたして上りませんです。しかし新教育でも旧教育でも個人の尊厳……道徳は個人の尊厳から発するというのであったら、急迫不正に侵害される場合には、尊厳を保つというのはこれは当り前で、刑法では正当防衛ということ、国際法では自衛権というように、これは私は憲法改正に関係ないことだと思っております。今の憲法でも、私は不正に敵がじゅうりんした時分に、ガンジーと同じように無抵抗で行けと極端な論者が議論のためにするのはありましょうけれども、現実としてそれはできませんですからね。憲法改正の論では私、一家言を持っておりますけれども、それを申し上げたら御迷惑と思いますから申しませんが……。
  223. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いやいやお尋ねしたいのは、そういうようなときには国に忠誠を誓う、これは共産主義でも教えておる。ソビエトでもソ同盟を守れということは、資本主義国から侵略があったときには、これを擁護せよ、若い者は銃をとらなければならぬといって教えておる。だからあなたのよく言われる国に忠誠を誓え、民族に忠誠を誓えということは、やっぱりそういうのと同じような思想で、今までは、天皇陛下に忠誠というように教えたが、今度は民族に忠誠を誓えというように教えて、ある程度こちらに軍拡景気に順応するような教育を取り入れよう、取り入れなければならぬというようにお考えになっておりますか、今の子にはほとんど教えていない、そういうことを教えていない。しかしそれが欠けるところがあるから――どっか欠ける、足らぬ、足らぬとあなたがいつも言われるのは、どうもそれが足らぬとおっしゃるのでしょう、実際問題として。
  224. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これは広範なデリケートな問題ですけれども、そこのところは私はこう考えておるのです。昔は天皇陛下に忠義というよりも、天皇が主権者でありましたから、国全体の主権者だったから、主権を認めて国に忠、今度は主権は国民全体にあるのだから、国民全体ということです。実質上は同じようになりましょうが、民族といっても、からだを持っておるジャパニーズ・レースという、こういう民族というのじゃなしに、やはり今回は新憲法で国民全体が主権者だから、それは主権者に忠義をしよう、アイゼンハワーあたりが忠誠の宣誓をして大統領についております。これは主権者が国民だからと思うのです。そういうふうに思っております。そうであってみたら、今でも主権者は国民であるし、われわれが憲法を改正しても、主権者は国民でありまするから、その理屈には変りはないのです。実際における学校の教授法とかあるいは教授内容ということになると、またこれは別の問題になりまするけれども、幾らか私は国という観念が日本の今の学校で薄いのじゃないかと思います、一般から見て。また特別から見たら、土佐の何か校長みたいに紀元節に並べて最敬礼さしたといったような人もありますけれども、全体からいって、少いということはすなおに認めなければならぬと思います。
  225. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それはアメリカでもまあ今野球の試合を見に行っても、やっぱり国旗を掲げて国民に皆起立さしているのです。ソ連はソ連でソ同盟擁護というので鼓吹して、青年少年時代から教えているのです。だからそういう諸外国の例から見ても、日本にはそれがないので、清瀬さんも軍国景気時代に順応して、やっぱりそこは足らぬと、こうおっしゃるのでしょう、すなおに言って。それだからそれも少しはたたき込まなけいばいかぬというのがねらいでしょう、清瀬さんのねらいは。私どもそういうふうに受け取れるのですが、ちょっとお話し伺っておりますと。それを言ったんじゃ言葉じりということになるが、言葉じりをつかまえるわけじゃない。すなおに腹の中をお伺いできればいいのであります、賛成反対は別でありますが。
  226. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) きょうもお答えの初めに――日本人のあるべき姿として教育基本法に書いてあること、それにみんな私は賛成なんです。平和的社会を形成し……、けれども、ただこれでは独立国家の国民としてということが私は少し足りないと思うのです、率直に言えば。
  227. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで、もしも急迫不正の侵害があったときには、一身を犠牲にしても青年連中は一つこれに抵抗するのだということを一本の筋金を入れたいというのがほんとうのねらいでしょう。こうお伺いしているのです。
  228. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 個人がみずからを守ると同時に国を守るのだということは、それは教えて悪いことじゃないと思います。それは非常の、一旦緩急ある場合のことであって、平生の行いですね、世間でいう、インフェリオリティ・コンプレックスといいますか、何だか卑屈民族で、米人だけがえらく見えたり、ソ連人だけがえらく見えては困るので、個人の尊厳があって、ちゃんとした民族、ちゃんとした子供ということになることを私は理想としているのです。このごろ別のところで売春防止法というものをやっているが、あんなパンパンが横行するということも、女が自分の自主権を持たぬからです。もっと個人の尊厳をちゃんとさすということのしゅんとした、まあ昔の言葉で言えば、ルネッサンス――文芸復興的の個人の尊厳というものがもう少し宣伝されるべきものであると、こう思っております。
  229. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いろいろと回りくどいことを言っておられますけれども、その背景は大体わかったのです。やはり侵略があった場合には、それを黙って見ているということではいかぬというのを植え付けたいといろのがほんとうのねらいであろうと思うのですが、それをざっくばらんにそうだと、そこが一番大きなねらいじゃないですか、実際は。足らぬ足らぬというのは、そこが足らぬというのでしょう。教育基本法でも教えているようなことはそこが足らぬからそこで……。あとでその問題について私も意見を述べますが、一つあなたの御意見伺いたいと思う。
  230. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それは独立国民の教養の一部分と思っております。一部分には、自分についても、人から頭をなぐられてありがとうというのじゃ、これはキリスト教はそうかもしらぬけれども、日本じゃそれはいけない。自分の人格を守る、そういうことは一部分でありまするけれども、全体として自主的精神ある独立国の民族にふさわしい子供を作りたい、こう御了解下さらぬというと、その一部分をあまり拡大してごらん下さると、軍国主義教育をするというふうにまた聞えるんですね。それは非常に慎しむべきことで、私どものこの案さえも軍国教育だといって新聞では盛んに言っているんです。そんな考えはこっちはないんです。
  231. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで清瀬さん、私どもが考えるには、確かに頭をなぐられて、ありがとうと言っているんじゃいかぬと思います。やはりそれは日本人としての筋金が入らなければいかぬが、今日本にかりに急迫不正の侵害をするような実力を持っている国というのは二、三よりございません、はっきり言って。そんなもう名前は上げることはここで差し控えますけれども、二、三よりない。それらの国の実力たるや、おそるべき実力を持っているので、これは頭をなぐられたから、一つなぐり返すということはトウロウのおのだと思います。それよりもなぐられぬようにするにはどうするか、きぜんとしておって、なぐられぬようにするのは、どうしたらいいかというふうに、教えていくのが、私はいいのじゃないかと思いますが、この点、清瀬さんはどうお考えですか。
  232. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それが政治ですね、それが政治です。それにはやはりどちらからも離れてしまうと、音信不通ということになると、やはり誤解も生ずるということになるから、平和的国是をもって、どこの国とも虚心たんかいにやらなければならぬといったような外交のこともありますし、これはまあチャーチルの言ったことですね、鳩山さんもよく引用になるのですが、ソ連ともまるっきり交通せぬというようなことはこれはいけないのだという、それが一つ。それからわが国のまあ実力を養うということですね。これは強い弱いじゃない。やはり経済的な文化的な、ちゃんとした大国の形を備えているというと、そう人はばかにしませんです。隣の半島の大統領が、始終わが国にいろいろなゼスチュアをするのも、わが国の力が足りないと見ているんです。日本の実力を、すなわち経済、学問、文化において高く示していくということも一つ。それから今の世の中に、一国の力だけで――もし第三次世界戦争でも起れば、一国の努力でこれをささえるという国はないのですね。アメリカといえども、自信がないものだから、方々とまあ友好関係を持っている。しかしそれも相手も考えなければならぬ。友だちも考えなければならぬ。前の戦争はヒットラーと組んだからこれは失敗したのですね。組む方も考えなければなりません。それをその一本で……、私が申し上げるのはとても微力で私のあとうるところじゃありませんが、そういうことでなく、精神として初めから卑屈で、英米人あるいはソ連人、中国人にはこれはかなわんのだといって、子供のときからインフェリオリテイ・コンプレックスでいくということはよくなかろう、やはりみずから頼むだけの節度を持っていかなければならぬ、こう見ているんです。
  233. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私はそれよりもむしろ臨教審なんかで考えなければならぬことは、とても一国でやれないということは、これはソビエトでも、アメリカでも、一国でやれる自信がないから味方の取り合いをしているのが世界情勢であることば事実ですが、ましてや日本はその中にあって、どう処置したらいいかということを教えるのは、これは必要だと思いますが、それはその考え方によって違うんです。違うけれども、ここで申し上げたいのは、どちらにしても、おれたちは頭をみがき、人格も全般にいい人格を持つ、平和を愛好する国民であって、それになお刃向うようなやつは世界の世論が許すものじゃないよ、やれるならやってみろといった態度をおそらく持つというのがねらいであるか、それとも来るんなら来い、来たら一つ将来といえども一戦やってやるぞ、という思想を植えつけようとするのか、どちらかということを聞いておるのです。
  234. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 第一が原則です。すなわち自分の個性をみがき、資質をみがいて国の経済力を大にし、道徳心を高揚して独立のきぜんたる国、たとえばスイスでもスウェーデンでも日本よりか小さい国です。それでもちゃんと独立国たる体制を保ち、またこれらの人に個人的に会うてみても、みなしっかりしております。そういうふうな、教育は子供自身を育てることですからね、世の中は、もう変転きわまりないことですからして、個人を、そういうふうな個人の完成といいますか、私はまあ教育学なんということは知りませんけれども、教育というのは教養を与え育成する、教育の本来は教養育成にあると思っておるのです。それがもとで戦争になったので銃を持つとか持たぬとかいうことは、教育としては二義も三義も四義ものことだろうと思うのです。
  235. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に、教育と政治の関係ですけれどもね。まあ政治的中立ということについては、これはだれでも実際には言うことです。そこで清瀬さん、今の憲法のもとにおいては、国家公務員は憲法を擁護しなきやならねと、こう書いてあるのですね。擁護するということはこの憲法のままを一つ守っていこうということが示されてるんだろうと思うのです。だからして公務員も国会議員も、こいつをなるべく改正しようとしまして毛、改正させないようにするというふうに直解するのが一番いいことだと思う。そこで学校の先生あたりは今の忠君愛国といいますか、愛国、民族を愛するということは何も基準がないのですから、憲法を守る者が一番国を愛する者だと、従ってこいつを改正しようという者は、これはどうも悪いんだといって学校で教えたら一体どうなりましょう。これは憲法を擁護しなきゃならぬと書いてあるのだから、憲法の条章に従ってわしは擁護しようと思って子供に教えてるんだ、子供に擁護しろ擁護しろと、こう教える教育、これについては、これは当然だと思うのです、そういうふうに教えるのは。しかしそれらについても何らかここで検討をさせようとしてるんですか。一つ伺います。
  236. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この憲法順守と、守るということと憲法擁護、これを改正させないということは、私は二つ別に考えておるのです。憲法を順守するという意味の擁護でしたら、私は憲法擁護論者です。憲法がかわるその瞬間までは現行憲法に従います。また人も従うことを希望するのです。しかしながら悪いところがあれば、これを改正することもこの憲法は認めておるのです。この憲法の認めておる改正規定に従って改正に尽力するということも憲法順守の一つなんです。
  237. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 手続の面においてね。
  238. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私どもは、あることでこの憲法は改正しなきゃならぬと思っております。けれども、これを改正するのは暴力だとか、そういう憲法第九十六条以外のことでやっちゃいかぬ。これを守って改正運動をすることは憲法を順守しておることと思っておるのです。どういう文字を使っておるか知りませんが、私は心のうちで現行憲法を尊重する、これが廃止されるその瞬間、その一分間前まではこれを守るということと、それからこいつが悪いときには改正する、悪ければ改正するということを言うておるのですから、改正運動することを憲法九十六条でする以上は憲法を順守しておる、こういうので、一方またこの憲法をいい憲法だとおぼしめす方が護憲運動をするのも、これは御自由で、それは悪いとは思っておりません。そういう方だというと、この憲法を改正させないように守るということと、憲法に従うということを二つくっつけて一緒にしておられるけれども、私どもそれを二つ別にしておるのです。
  239. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それではね、「その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と、こう書いてあるのです。その他の公務員とは教育、学校の先生もそうですわね、学校の先生の義務というのは、文部大臣は一体どういうふうに御解釈になってるんです。擁護する義務というのは、改正運動が起きてもなるべくその改正連動に抵抗してでもこれを守っていくというのが擁護するという義務であるか、こういうふうに解釈するのがいいんじゃないかと思うのですがな。しかしそれは負けた場合には、改正になってしまえば新しい憲法に従う、これがほんとうの、だからそういうふうに教える場合にはっきり教えとかにゃいかぬと思うのです、子供に教える場合、それをどういうふうに教えるつもりです。
  240. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) ここにこの憲法を尊重し、擁護というのは、この憲法が乱れぬように順守するように擁護という文字がありますが、これは私はこの憲法を守ることを擁護と、こう読んであるのです。この擁護するという義務があることは、改正運動なり改正の主張をするなということは言っておらないのです。
  241. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それは一部の国会議員など特別の者がこれを尊重し擁護する義務があると、こう書いてあるが、国民は自由だ、改正運動をやろうとどうしようと自由だと、国会議員やその他の公務員がこれを擁護する義務がある、特別に義務を負わされておるのです。この点が法律家としてどうお考えになりますか。従って大臣、公務員、その他の公務員も、教育公務員も中にある。これだけは尊重し擁護する義務が第九十九条で負わされている。国民にはその擁護の義務がないのであるから、国民は改正運動をやるもどうしようとも自由、けれども公務員である場合にはこいつを擁護しなければならない。こういうふうな解釈もできると思うのですが、これは。
  242. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そこで私のような解釈が起るのです。憲法を改正しようと思ったら、何よりもさておいて、国会議員の三分の二の賛成が要るでしょう。国会議員が改正しようと言わなかったらできはしませんよ。だから擁護するという意味は、改正運動禁止という意味ではないと思っているのです。
  243. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それはそうです。
  244. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それからしてこれはここに役人などを書いておりますけれども、日本国民は皆憲法を擁護し順守すべきものだと私は思っております。全体の法治国の主義、日本の憲法のもとにひそむところの理論からしてそうであって、この九十九条のことは、憲法を尊重して擁護すると、憲法第四十五条はあれはいかないのだと、二十四条は、家族のことはこれはいかないといったようなことで、こいつをやめたり、脱法行為をしたり、そんなことはせんで、この憲法が立案者の意のように行われるように擁護するというのが、間違っておるか知りませんが、私はそういうつもりでおりますから、自然これからのあなたへの答えもそのつもりで進むわけです。
  245. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは清瀬さん、九十九条でなぜ特定の者だけこうした義務を一体負わしているのか。それたらこのところは、この条章を、これは「天皇又は摂政その他国民は」とすればいいのであって、なぜこの特定の者だけが尊重し擁護する義務を負わしたというのはどういう意図があるのでしょうか。
  246. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私はこの起案には関与しておりませんので、どこでこんなことを、どうしてこういう規定を作ったのか、そこのところは私存じません。それからしてたとえばこれをホイットニーのところで入れたのか、どうであったのかということは……。詳しい研究は今されておりますけれども、そういうことには関係なしに、憲法思想全体から見て、この擁護というものは憲法を正しく守る、こういう意味と私は全体観として持っておるのです。これを私が学校の先生でありましたら、これは擁護といったら英語はこう解釈するとか、これは進駐軍でだれが書いたのか、こう直したのかといったような講釈もあるでありましょう。それからある人は、これを尊重する義務がないので、これは先生のことを言っておるのだというようなことを言う人もありますけれども、そんなこしゃくなことを言わないで、日本憲法全体の意味から言えば合法主義、それから憲法擁護主義、すなわち幾ら不満でもこの憲法がある以上、一般の法律でもそうですが、われわれが国会で反対したといっても、この法律がある以上はそれを守ると、このきめ方が民主主義だから、それを言っておるのだと私は思う。
  247. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは清瀬さん、これはいろいろそういう御解釈をなさっておるが、これは清瀬さんの憲法解釈だって必ずしもそれが決定的じゃないことは事実です。いろいろ解釈して、これをすなおに読んだときに、学校の先生はこの憲法を擁護する義務があるのだ、必要があるのだということは、学校の先生が擁護する義務があるということは、子供にこの憲法はいいのだからこれを守らなければいかぬ、これを擁護する義務があると、このままずっと解釈して学校で教えることは、必ずしも憲法違反だと言えないわけです。これはそう思うのですが、これはそういうふうに教えていってもかまわぬ、これはかまわぬどころじゃない、それがいいと思ってやっている。実はそれじゃちょっと困る。憲法改正の歌までこしらえてしまって、この憲法をのまなかったら、先ほど臨教審も自民党の政策だとおっしゃったが、露営の歌、愛馬行進曲にあわせて、この憲法をのまなければ天皇の御位置が危なかった、そこでこの憲法をのんだのだという歌を盛んに作って触れ歩いておるのですが、あの思想からいけば明らかにそういうことは困る。だから臨教審において一つ何とかこの点も考え直して統一したいというようなお考えがあるかないか。
  248. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今具体的にその考えを持っておりません。憲法論を臨教審に持っていこうとは思っておりません。このごろ私はあることで社会科の本をずっと読んでいるのですが、ある社会科の本では、憲法を擁護したければならないから改正運動は悪いのだというようなことを書いた本がございます。これをかれこれ言って教育内容に干渉することはよくなかろうと思って、その教科書はそのままに置いてあるのです。
  249. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 これは清瀬さんの今のお考えからすれば、この教科書はちょっと困るでしょう。そういう教え方をするのでは、文部大臣それはちょっとお困りになるでしょう。今のあなたのお考え方からすれば。
  250. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私の意見とは違っておりまするけれども、それは教科書の基準法にも載っておりませんし、それから学習指導要領にも載っておりませんから、そういう意見があることは、世の中に、現に尊敬するあなたのお説もそうなんだから……。
  251. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 お説ということじゃなく、私の説を言っているのじゃなしに、そういう解釈もできると言っているのです。
  252. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 失礼しました。そのどっちの憲法解釈をとるべきかということは、臨教審にかけようとは私今思っておりません。
  253. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 しかしこの段階になったら、清瀬さん、重要な問題だと思うのです。その解釈は、今言った社会科の本に載っている解釈と、あなたの言われるような解釈とが大きな食い違いをきたすと思うのです。段階はまだそんな問題が日程に上らない場合はいいが、もう憲法調査会まで法案ができてしまった、そういうときになって、どっちの解釈をするのかという、これは大きな問題だ。それは現に社会科の本に載っておる。それを臨教審には全然問うつもりはない、あなたは都合の悪いことはなるべくここでは言わずにと思っているが、大胆率直に言われた方がいいのじゃないですか。
  254. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 率直に、そう思っておらぬことをお答えすることもできませんから……。
  255. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 思っておらぬとすれば、大事なことは事実でしょう、今日の段階においては。
  256. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それは大切な問題には相違ないのです。あるいは公立の大学ですね、法科の大学においては二色の教授が行われておるかもわかりませんが、私は大学に行ったこともありませんからわかりません。しかしそのことは菊川さん、憲法調査会法というのがありますから、やはりああいうところでは問題になるのじゃなかろうか。新たな憲法を素案でも作ろうというのだったら、今の憲法の趣意をあそこで御研究願うのが適当で、臨時教育審議会で……。
  257. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 教育上の問題として……。
  258. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 教育にも関係しますけれども、実際は私はそれを、この憲法解釈を臨教審できめようとは思っておりません。
  259. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一つ憲法改正にからんでお尋ねしておきたいのは、五月三日は依然として国の祝祭日ですれ、清瀬さん、学校は皆国旗を玄関に立てて授業を休むのですが、一体普通悲しいときには喪章をつけて休むのが常識でありまして、あの日は祝っておるわけです。だからこれが改正されるまでは、この祝い日が改正されるまでは、清瀬さん、マッカーサー憲法だ、押しつけだと文部大臣は言っておられるが、学校を休むのは、めでたい日であって国をあげてお祝いすべき日であるから、これの是非なんかはやはりある程度臨教審も、学校は休ましてもらって、先生はこれはけっこうな憲法ができた日であって、まことに国をあげてお祝いすべき日であるというふうにどんなに言ったって、これは文句の言いようがありませんでしょう。ところが一方文教の責任者である清瀬さんがこれは悪い憲法だ、マッカーサー憲法だと言っているが、このズレを一体臨教審あたりでは何とかやろうと思っているのですか、こんなものは触れぬつもりですか、どうですか、その点。
  260. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それにはお答えしたことなんです。現行憲法が廃止になるそのときまではこの憲法を私は尊敬するのです。この憲法に従うのです。一国の憲法というものは大切なおきてでございまするから、憲法ができました日を祝日として今きめておることは異存はございません。その憲法をしかしながらさらによくしようと思って改正運動をする人は、やはり改正の熱のあまり、いろいろな演説もあり歌もありましょうけれども、今、今日、ただいまの瞬間においてはこの憲法を尊重し順守する、こういう意味で私の子供もおそらくは憲法の日には休ましてもらっておるだろう、あれは祭日じゃなく祝日ですから。
  261. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 祝日ですからな、そうするとこれを祝うということは、いいことがあったときに祝うのだと思うのです。悪いことがあったときには祝うという思想がおかしいと思うので、よほどいいことでなければ祝わないと思うのですが、いわゆる学校の教育におきまして、いいものができたのだから一つ祝おうというのであるから、大いにこれは……。これを変えようとする、いいものができて、国をあげて祝っておるものを、これを改正しようというのはこれはちょっと因ると、これを排斥するように教育していくのもこれはやむを得んでしょうな、その点お認めになるでしょうな。国が祝っておるようなときに、たとえば奉天が陥落した日は陸軍記念日で戦前に祝っておった。その祝っておるときに、あんなものはこしらえんでも、侵略戦争をやったのだというようなことをやったのでは、これはやはりその当時の風潮に合わぬ。ところが五月三日は依然として祝祭日、祝い日として祝う。そのときに一方はこの憲法は押しつけである、しかもこんなものはこれをのまなんだら天皇の御位置が危なかったというので楽隊でぶうぶうやっている。これをどう調整をするか。これの生徒に与える影響、特に大学においては相当真剣に取っ組んでいるときに与える影響は重大なものがあると思うのです。このズレをも調整しようというようなところまで、そこまでもお考えになっておらないのですか、臨教審において  は。
  262. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それには先刻も申した通りこれは答えを与えておると思うのです。すなわち、この憲法が存在する間はこれを守るのです。守るべき国家の基本法のできた日を祝日として祝えという日になっておるので、これも法律です。祝日に関する法律というのです。これも私は無視いたしませんから、そのお問に対するお答えにはなってくると思います。  それからもう一つ、あのマッカーサー憲法を私は徹底的にどこもかも悪いというのじゃございませんよ、現に日本が……。
  263. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 わざわざそういうことを言わなくてもいいですよ。マッカーサー憲法とそうあてつけに言わなくても、こっちは騒がんけれども、あなたの解任決議も出さんけれども(笑声)そういうあてつけ的なことを言わなくても。
  264. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 日本人が主権を得た、これは大きなことですね、(「ほんとうにそう思うか」と呼ぶ者あり)一民族として主権を得た、これは大きなことですよ。今までは服従だけだったのです。第一条で主権を得たということ。それから人権の尊重、昔は権利は与えなかった。人権の尊重、この道が開けたということが、日本憲法としては非常に大きなことだと思います。ですからしてこれを弔旗を立てて悲しむなんということはないので、祝日としてある以上は祝っていいことだと思います。けれども、別に政治家としてわれわれが見るところあってこの改革運動はしておる。改革のなる日までは祝日としてこれは尊敬します。
  265. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは政治論として、法律論としてはわかりました。それでは政治論としてこれを見た場合に、教育もこれは政治の一つだ、臨教審あたりにこれを出すのは、政治論としてこれを見た場合に、あなたもマッカーサー憲法と今はからずも口ばしられたその底には、日本国力をそがんがために、軍国主義を払拭するために、あなたから見ると日本を弱めるためにこの憲法を押しつけてきたのである。だからその日本を弱めるために押しつけてきた憲法ができた日を祝うということ自体が、一体政治論としてはおかしくなるのではないですか。これは悲しむべき日である。しかし負けたのだからやむを得ずのんだということになるならば、あなたのような解釈をするならば、負けたのだからやむを得ずのんだのだというならば、これはむしろ国辱記念日とするならばこれはいいと思う。えらいものを押しつけられた、いつか独立した暁には、これは直すのだといって教えてくる方が、あなたの思想だったらそういうふうに教えてくるのが正しいと思いますが、いかがですか。
  266. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私の思想では、将来できた憲法は守ってもらわなければならぬのです。その伏線として、今、今日のうちでは反対であっても、現行憲法である以上は徹底的にこれを守り、これを尊重するこの気分、これを養成するということはいいことだと思います。自分は改正運動もようせぬくせしておって憲法の悪口ばかり言って回っておるのは、これは卑怯です。政治論としては身命をとして日本の憲法の改正を将来の事業とするということを胸に畳んでおきながら、日本憲法はこれだ、きょうは憲法祝日として旗を立てるということは矛盾せぬです。
  267. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それならもう一つ伺っておきたいのは、それならばこの憲法ができたときに非常に謳歌した政治家が自民党の中にもたくさんおるわけです。いろいろの速記録があるが、これを見ると、まことに謳歌した人が自民党に入っておって、今あの歌を歌ってじゃんじゃんやっておるのです。こういうのは、この謳歌した連中は、いい憲法だからこれはどうしても守らなければならぬといって教えてきたのです。今まではいいのだいいのだといって、決してあなたのように悪いマッカーサー憲法だなんというようなことは、あの当時マッカーサーのおるころはだれも口に出す者さえおらなかったのです。あなたの論法のように、これはマッカーサーの押しつけたものである、悪い憲法であるということは一切言わない。まして学校の方ではそんなことを教えてないのです。今、大学に行っておる人も、いい憲法だいい憲法だといって教えられてきた。これは自民党の人もいいいいと言った。悪いと言ったのは、共産党の野坂参三氏の討論を見てみると、これはいかぬ、これは押しつけだと言っておるのです。これは清瀬さんもお認めになると思う、あの討論を調べてみますと。そこで私のお聞きしたいのは、あのときには、あの者のおるときには悪いということはよう言わずに、重石が取れたらば、待っていましたとばかりに、ああ悪いだ、悪いだと騒ぎ出すのは非常に日本人の事大思想と申しますか、きぜんたる態度を持てとか、あるいはきぜんたる態度を示せというのだったら、マッカーサーのおるときに悪いだ悪いだ、マッカーサーが押しつけたのだというようなこういう改正論を大いにぶってもけっこうだと思いますが、従ってここに子供に教えるのは、ああいう政治家では困る、マッカーサーがおるときには小さうなって、いいだ、いいだ、ちょうちん行列だ、祝祭日だといって、おらぬようになったらこれは悪いだ、悪いだ、そして勇気を出して、そういう政治家が筋金を入れる教育をやるというのでは、子供は納得しないのです。これはそういう疑問を子供が持ったときにこれらをやはり解明していかなければならぬと思う。あなた方は政策としてあの大きな問題をぶちまけてきた以上は、これも今の子供に与える影響、教育上に及ぼす影響に非常に重大なものがあると思うのです。これらの点については臨教審、一ぺん検討する必要があると思いますが、その点はそういう御意向はないのですか。
  268. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私の友人で、当時この院内で憲法改正に従事された人が、今その憲法を改めようという御論をなすっている人はございます。しかしながら、その心事は、心は私は承わりませんから、ここで非難も賞讃もできません。私はあのときから実に残念なことだと思いまして、日本では言論の自由がありませんでしたから、南米のサンパウロの新聞に、内容は民主主義になったけれども、この方法がいかぬということを書いて送ったことがあります。私は初めから、マッカーサーが圧迫したなんという具体的なことではなくして、占領されているうちに憲法を作るべきものじゃない、こういう論を持っておったのです、完全主権がないから……。
  269. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それならば最後にもう一言だけ清瀬さんに伺って、これで私はやめますから……。それはなぜ言うかというと、公聴会を開きましても、盛んにこの憲法の改正と軍拡と結びつけておそれておられますので、私はちょっとくどいけれども、清瀬さんにこの問題をお尋ねしておるのですから、その点御了解願いたいと思います。そこで最後にお伺いしたいのは、友人が言ったことはとやかくと言いますけれども、結局そういった問題もある程度統一したい。清瀬さんのような筋金の入ったお方はこれは別です。占領下当時でもとにかくそれだけ……。日本に言論の自由がない場合にはこれはいいのだが、その人がお扱いになるからいよいよもってもとへ戻ろうという危険を感じて……。あの大宅壮一氏あたりの書いているのはずいぶんひどいことを書いているのだけれども、あの頭ではどうもしょうがない、こういう連中がやるというところにえらい危険があるということを言っておるのです。あの大宅氏の、何もわれわれはその人の言うことを必ずしも全部受けるわけてはないけれども、まあ大体そういうことであると思う。矢内原さんの公聴会における意見にいたしましても、それらをひっくるめて考えるときに、とにかくそのときからもうこの憲法を筋金を入れている、そういうまあかたくななと申しますか、筋金の入った人が、いよいよもって明治的な頭がどうしても抜け切っておらぬ。そうやはり抜け切ろうといっても抜け切れぬわけで、そこへ教育制度もひっぱっていこう、こういうところに危険を感じておられるわけですから、この点について清瀬さんに伺いたいのは、決して政治に隷属させるというような……、政治的な中立はあくまでも守ろうとする意図を持っておることは間違いないし、さらにはたとえ臨時教育制度審議会の出した結論が、いかに清瀬さんにはかけ離れたもの、およそかけ離れたものが出ようとも、世の中はそこまできているのだというので、率直なお気持でそれをお取り入れになるところの勇気とそれから用意を持ってこの審議会をお作りになるかどうか、この二点だけをお伺いして私の質問を打ち切りたいと思います。
  270. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 二点とおっしゃるが、今の審議会の結果を私がどうするかということと、それから……。
  271. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 これは政治的に再軍備、憲法改正というようなことのために、教育をそちらへなるべくひっぱろうというような意図があるものではなくて、これはあくまでも教育をどう持っていったらいいか、教育自体を切り離して考えておられるかどうかということが一つ。それからもう一つは……。
  272. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) わかりました。
  273. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いいですね。その二つだけ……。
  274. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 大切なことだから、失礼いたしましたけれども……。第一のわが国の再軍備をするという目的のためにこの臨教審の設立とか、その他私が各種の文教政策をやっているのではございません。教育は人間個人を育てる、りっぱな人間像を作る、日本人一人々々をいい人間にしようという、もう少し広範なことでございます。  それから第二の臨教審の答申が私の考えと違った場合、非常に違って、これに従うことは私の良心に反するという場合には、これは従うことはできません。しかし私の政治的、道徳的の良心の許す場合は、多数の方がこさえて下すったことですから、これは尊重いたします。
  275. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それで、あなたの良心によって従うことができないときには、せっかく、これだけ国会でもいいか悪いかで論議して、これを重要法律案として作り上げて、そして各界の名士といいますか、泰斗を非めて意見を出さした。ところが、たまたまあなたの良心に反するときには従うわけにはいかぬと、こうおっしゃるのでしょうか。そういうことは重大な問題だと思うのです。そのときはあなた自体が善処されますか。
  276. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 全体的について、おそらくは同じ日本におって、同じ空気を吸い、同じ人間を見ておるのですから、全体的に正反対のものはおそらくは出ますまいが、条項々々について、どうもこれは、私の良心的にとり得ないというものが出てきましたら、良心に従うほかはないと、こう思っておるのです。
  277. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、こういう問題はけ飛ばしてしまうと、都合のいいところはとると、こういうことに最後はそれはなるんじゃないですか。
  278. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) け飛ばすという言葉を使うと不穏当でありますけれども、むしろ各条項のうちで、どうしても私の良心に恥じるということは、これはおとり申すことはできぬ場合もありまするが、全体としては、この大家諸君を集められた決議には従うつもりであります。
  279. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 関連ですが、先ほど菊川君から質問がありました中に、臨教審に案を示すわけではないが、こういう問題をということで、自民党の十一月十五日の新党結成大会のときの政策をおあげになりましたが、それが臨教審にかかると、こういう御説明、今、十一月十五日の新党結成大会のときの資料をもらったのですけれども、それにはあまり書いてありません。多少ありますけれども、ございません。これは文教部会での決定と申しますか、(「清瀬構想じゃないですか、うまいことを言って」と呼ぶ者あり)あるいは具体的に出ておるのだろうと思うのですが、それを二つお出しいただきたい。
  280. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今の臨教審のこと……。
  281. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私、今資料をお願いしているのです。これでは少し足りないから、文教部会での結論等がありましたらお出し願いたい。
  282. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) さっき申しましたのは、菊川さんのお問で、これを総理が命じてやらしたのか、君が一体考えてやったのか、出どころはどこだと、こういう意味だと思います。それに対して私が引用しましたのは、ちょっとごらん下さい。八ページというところです。八ページに六つ書いてありますが、六つのうちの一番初めに、「国民道義の確立と教育の改革」と、こういうことを党の政綱に書いてありまして、これは読みませんから、そのうちで、緊急なものとして十ページをごらん下さい。十ページに、「教育制度を国情に即応せしめるよう、教育に関する国の責任と監督の明確化、学制特に大学制度の再検討、教育行政組織の改革等をはかる。これがため、内閣に、調査審議機関を設ける。」、これが今の臨時教育制度審議会なんです。それできまったのがこの成文であって、このほかに何もありません。これをきめるまでにいろいろと意見もございましたが、速記も何もとっておりません。最後に両派の方で協定いたしましたのがこの第一項でございます。
  283. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私、質問しようとするのじゃないのですが、そこにはたとえば緊急政策の中に、「教育に関する国の責任と監督の明確化、学制特に大学制度の再検討、教育行政組織の改革等をはかる。」云々と書いてあります。ところが説明をされている中に、あるいは日本の伝統を維持するような云々とかいったようなことについて、この中にございませんから、そこで教育部会等でこのほかにまだこれをもう少し普遍化したもの等がおありになるのだろうと思ったから、そこでそれをあったら一つお出しを願いたい、こういうことを言ったわけです。
  284. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それはございませんのです。教育制度を国情に即応せしめるようというのが、菊川さんと私が、さっき別な言葉で質問応答したところになるので、これの参考資料というものは一切ありません。あの当時旧自由党の側の方もいろいろとおっしゃった、一カ月ほどかかったのですが、私もその当時言ったことはありまするが、速記も何もとらずに、取りかわしもせずできましたこの最後のテキストを、この通りによかれあしかれ解釈せんならぬ。
  285. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それじゃ別にはないわけですか。
  286. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 清瀬構想というわけでもないのだな。
  287. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そうじゃございません。
  288. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 民主党なり自由党なりの文部関係のあれで、これに即応するような別にあれがあるわけではございませんか。
  289. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) ございません。
  290. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それに関連してもう一つ……。清瀬さん非常に臨教審について御熱意をお示しになっておりますがね、だからやはりその両党の――これはここまでお聞きして答弁できなければできないでやむを得ませんけれども、両党の協定をされる場合に、やはりあなたは推進力となって、何とか世の中の趨勢を嘆わしい、これは一つ何とかしなければならぬというところから、これを強く御主張になり、そうして鳩山内閣組閣に当ってもこれを一つあなたやろうと、この嘆わしい世の中を一つ直してやろう、こういうふうな非常な意気込み、積極的な御意欲をもって御就任になったのですな。
  291. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これ全体は作成に当りましたから、私がいかなる立場にあろうと、これについては責任をもって実行しようと思いますけれども、入閣をするのに、臨教審やそういうことをやるから、鳩山さん文部大臣にして下さいなんと言ったことはありません。(笑声)
  292. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そんなことを言ったのじゃない、して下さいというのじゃない、嘆わしいから大いにやってやろう、これは政治家として当然のことです。自分の主張として、内閣に入ってやろうというのは当りまえです。僕はそれぐらいの意気込みを持ってもらわなければいかぬ、われわれのときになったらわれわれの考えでまた……。
  293. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 無条件にあなたのおっしゃる通りです、今に至るまで。世の中もそれから大した変化もありませんから、これに書いてあることは、今日の瞬間において私は全部やりたいと思っております。
  294. 田畑金光

    田畑金光君 先ほどの御答弁で、大体清瀬文相のお考え方は了承できましたが、この臨時教育制度審議会設置法案ですが、どうしてもこの国会で通したいという気持なんですか、それとも、この法律案は大事な法律案であるが、ゆっくり一つ審議してもらおう、こういう法律案なんですか、どちらなんです。
  295. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 初めおっしゃった通り、ぜひ御賛成願いたいと思っております。
  296. 田畑金光

    田畑金光君 新党発足の重要政策の一つの、しかもその中の緊急政策の一つとして取り上げられたのがこの教育改革の問題である、そのような御答弁があったわけです。それでこの法律案を出された、こういうことになっているわけですが、この法律案はまさに清瀬文部大臣が文部大臣としてまあ命をかけてやりたいという一つ法律案である、こういうような御趣旨を承わりましたが、もし、この法律案がこの国会で通らぬとするならば、これは当然清瀬さんのように責任を明らかにされる方ですから辞職をされるのだろうと、こう思うのですが、その点どうですか。
  297. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私は必ず通してもらえるとかたく信じておりまするから、まだ通らぬ場合のことを準備いたしておりません。(笑声)
  298. 田畑金光

    田畑金光君 それは大臣としては通したいし、通らぬことを予測されるということは審議の過程でありますので、軽率なお言葉は予期できぬと私自身も考えております。しかし、国民道義の高揚を叫ばれ、教育基本法で足りない何かプラス・アルファを確立しなければならぬ、こういう崇高な考え方を持っておられる文部大臣でありますので、要するに精神的な、道徳的な国民倫理の何ものかを新しい教育の中に入れていこうとする考え方だと承わっております。こういうような国民倫理の内容というものを考えてみました場合に、要するにそれは一つ内容は、責任を明らかにする、責任をとる、こういうような問題だと思うのです。でありますので、これは一つ文相といたしまして、われわれに国民道義というものはこうなくちゃならぬのだと、こう教える立場において、もしこの法律案が通らなかったとすると、当然これは国民の常識からしますと、文部大臣は責任をとられるだろうと、こう期待しておりますが、その点はどういうことになりましょうか。
  299. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) さきにも言ったように、必ずこれは通ると思っておりますから、通らなかった場合の身の振り方を考えてはおりませんです。しかし、一番大切なことは、党の主張の貫徹ですから、党の主張の貫徹はいかなる場合でも、私は生命といっても肉体的の生命ではありませんが、政治的の生命のあらん限り尽したいと思います。
  300. 田畑金光

    田畑金光君 党の主張というものは、あるいは党の政策を通すためには教育というものも犠牲にされる、あるいは別の言葉で言うと、教育というものよりも党の政策はより大きいものである、比重が大である、こういうような考え方ですか。
  301. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それがちょっと答えにくいのです。というのは、党の政策ということと教育ということは、全く同種類のものではございませんですからね。教育は、どこまでも教育内容は中立である。教育という言葉の中で一番大切なものは、子弟の訓育、教養の育成です。それは中立です。その教育をするための器は行政組織、あるいは予算と、そういうことはまた党の政策によるんです。二つ種類の違ったものですから、相交錯することもありますけれども、どっちが大切かとおっしゃられると、ちょっと一がいには答えられませんが、教育は何といっても教育内容が大切でありますから、教育内容が大切だと言わなければなりません。しかし、教育行政のことであったら、党のきめました教育行政はこれも尊重しなければなりません。どっちも大切だというより仕方がありません。(吉田法晴君「党略のために教育を犠牲にしようというのか」と述ぶ)党の方では教育の主として政治できめる部分だけをきめているのです。
  302. 田畑金光

    田畑金光君 文部大臣ね、あなたの先ほどの御答弁を聞いておりますと、党とか党の政策というものが教育よりもはるかに上にあるようにお聞きするのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは党というものは、あるいは政策というものは、これは私はある意味においては一時的なものであり、その生命というものはそう永続性のあるものであるとも見ていないのです。教育とか、あるいは民主教育のあり方がどうなければならぬとか、こういうような問題は、ある意味においては国家の生命と同様に一つの永久的なものでなければならぬと、こう考えておるのです。あなたの御答弁を聞いておると、党の政策のためにはいかなる教育の基本的なものでも犠牲にして顧みない、こういうような印象を受けるわけです。それはそれといたしまして、あなたはどうしてもこの法律案を通したいのだとおっしゃるのだが、この臨時教育制度審議会設置法案が参議院の方に回って、内閣委員会に付託されたのは三月の十三日です。もうすでに二月以上も経過しておるのです。憲法の五十九条第四項を見ますると、「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。」と、衆議院の側からいうと、この法律案はもう否決されたとみなしてもよろしいようになっておるわけです。会期末も近づいて、われわれの漏れ承わるところによると、この法律案を大へん清瀬文部大臣は大事な法律案として、通したいという希望を持っておられるということを承わって、むしろ野党の側から審議の促進を申し入れているわけだが、文部大臣はさっぱり出席なされない。総理大臣に対する総括質問が残っているのだが、総理大臣はこれに出席する気配がない。内閣委員長に承わってみると、私としては一生懸命に文部大臣に連絡をとっているのだが、なかなか文部大臣は出てくれないのだ。私はこの法律案に責任は持てないということすら私は内閣委員長から承わっているわけで、一体こういう経過を見たとき、清瀬文部大臣は、この法律をほんとうに大事な法律と思っておられるのかどうか、通したいと思っておられるのか、それとも世論も相当激しいから、これくらいは一つ流して、せめて罪滅ぼしの一端でもやりたい、こういう気持でこの法律に対処されておるのかどうか、この点を一つ承わりたいと思います。
  303. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっと田畑君の発言中、委員長に関することがございましたので申し上げます。  委員長は、この法案に責任を持てないなんて言ったことはございませんから、訂正しておきます。(笑声)
  304. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この法案はぜひお通しを願いたいと思っております。ただ、今期議会には、ほかにも法案を提出しております。条文の数がたくさんだから重要、不重要というのじゃありませんが、教科書法というのが七十カ条以上、それから世間で教育委員会といいますが、本名は地方教育行政の組織及び運営という、これも九十カ条ほどの条文がありまして、日夜そこへ出席いたしまして、午前中参議院へ行けば、午後は衆議院と、十五分間だけしか食事の時間が与えられておりません。刑務所の労働よりもなおえらいのですよ。昨晩のごときは、本会議でありましたが、夜を徹して、きまったのは朝の三時半です。四時半に家へ帰って六時まで寝て、きょうは朝から文教委員会へ出て、午後はこちらへ出ておるのであります。この法案を軽しとして出席を私はちゅうちよしたことはございませんです。非常に大切な法でありまするから、ぜひ御賛成を賜わりたいと思います。
  305. 田畑金光

    田畑金光君 先ほど委員長の名前を出しましたが、青木と、別に青木委員長と言ったわけではございませんで(「詭弁だ」と呼ぶ者あり、笑声)それで文部大臣にお尋ねしますが、あなたは飯の時間十五分しかないとおっしゃるけれども、われわれはほとんど寝るひまもなしに、次から次と重要な法案が出てきて、その勉強に、研究に追われているのです。
  306. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 承知しております。
  307. 田畑金光

    田畑金光君 そこで、実は再々出席を求めておいたのだが、何らの返事もわれわれは聞くことができなかったのです。きょう私は菊川君の質問に対する文相の答弁を聞いて、なるほどこの法律が大事な法律だというような印象も受けたわけですけれども、そういうことなれば、教育委員会制度の法律案も大かた近く質疑打ち切りをするんじゃなかろうか、こういう段階にきておるわけです。明日からは内閣委員会で要求されるときはいつでも出てきて、まじめにこの法律案の審議に取り組むだけの準備があるかどうか、これを承わっておきます。
  308. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) さようにいたしたいと思っております。
  309. 田畑金光

    田畑金光君 先ほど申し上げましたように、文部大臣はまた別の委員会には教育委員会法案、あるいはまたこれは衆議院を通って参りましたが、今まで衆議院においては教科書法案、この二つと取り組んで参られたわけです。いずれもそれぞれ一段落ついたような形になって参りましたが、この教育委員会法案が参議院において通るか、通らないかという最後の段階にきまして、新聞の伝うるところによりますと、十八の都道府県の教育委員の各位が、もしこの法律が通って、反動文教政策がどしどし進められる、こういうことになってくるならわれわれはもはや民主教育に責任が持てない、こうして総辞職をなされようとする。このような新聞報道もわれわれ見ているのです。そのような事態になって参りますると、これは大へんゆゆしいことだと思いまするが、教育行政は一日も欠けるわけには参らぬと思います。もしそのような事態になった場合文部大臣はどういう考えでおられるのか。これも責任をとるというような気持はないのか、そのようなことがないように願っておるということで糊塗されるのか、この点一つ承わっておきたいと思うのです。
  310. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) あなたの御指摘のような新聞を私もちらほら実は見ましたけれども、しかしこれが、教育委員の諸君はみな教育に非常な熱心な方であります。教育のことは一日もゆるがせにすることはできませんので、軽々に全部総辞職なさるといったようなことは私は信じておりません。
  311. 田畑金光

    田畑金光君 軽々に総辞職をするということは信じておられない、これはそうでしょう。しかし、もしこの法律案が、まあ教育委員会法案がもし通って、その通った暁には辞表を出す現実の問題になってきたような場合に、文部大臣としてはどういう処理を第一にとられるか。もし、参議院の文教委員会の方を見ておりますと、そろそろ質疑打ち切りが出てくるんじゃなかろうか。与党の方では早く教育委員会法は上げたい、こういう腹でいるようですが、そういたしますと、私が質問しているこの点は、もう来週にはあるいは具体的な現実としてそのような現象が起きてくるかもしれない。不幸な事態になるかもしれない。そういう場合に清瀬文部大臣はどういう措置をとられるだろうか、どのような責任をとられるだろうか、国民は注目しております。この際心境を承わっておきたいと思うのです。
  312. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 国の教育のために不祥なる事件が発せざるように十分努めます。   〔委員長退席、理事野本品吉君着席〕
  313. 田畑金光

    田畑金光君 答弁には非常に親切に、必要以上に長々しくなされるわけでありますが、私の今お尋ねしている問題の答弁は、ちと簡潔すぎて、どうも内容がどこにあるのかつかみがたいのでありますが、もう少し一つ懇切丁寧にお答えを願いたいと、こう思うのであります。
  314. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それが選挙された教育委員諸君ですね、任期はやはり任期満了まで御任務があるのです。九月三十日まではこの任期はあるのであります。それに自分の任務をほうって辞職すると言って御立腹でありまするけれども、おっしゃってはおりますが、まさか日本全体に、または一部に教育委員会の空白を生ずるというような大きな結果を生むことはなさるまいと思っておりますが、しかし物事はいきさつで思わぬことが起ることもあります。しかしながら、そういう事件が目睫に迫るということになりますると、私全力を尽して御留意を願いたいと、こう思っておるのです。あの法律が通過すればとおっしゃるのでしょう。通過すればすぐ新法になってくるのです。そういう軽々のことを通過前になされて、総辞職するぞと言って、幾らか私どもに重圧をお加えになることもあるだろうけれども、通過してしまっても、まだ九月三十日までは権利もあれば義務もある。それを腹立ちまぎれに放棄されるということはないと思いますが、私は言葉を尽し手を尽し、さようなことは起らぬようにしたい、こう思っておるのであります。
  315. 田畑金光

    田畑金光君 文相としては万策を尽されて慰留なされるものとわれわれも見まするが、しかし、にもかかわらず、多くの府県で府県の教育委員あるいは市町村の教育委員が辞職をなされて、政府の政策に真向うから反対の意思を明らかにされた、こうなって参りますると、一体それは辞職をされた人々の心がけが悪いのか、公選で出られた人がまだ任期を残しているにかかわらず辞職を軽々にするということは、選挙民に対して、あるいは国家のため、国民のための教育行政をあずかる諸君の責任とのみこれを指摘して看過できるかどうか。かりにそのような見方が一方にあるといたしましても、また一面においてはそういうように重大なる教育行政に空白をもたらしたというこの責任はだれが負わねばならぬか、こうなって参りますると、これは当然政府であり、当面の責任者として清瀬文相が負わなければならないと思います。この際悪いのは辞表を出した者だけが悪いんだ、おれは間違いがないんだ、こういうことじゃ、新しい教育の中に国民道義を確立しようとする清瀬さんのそもそもの方針に相反することになろうかと思うのです。そのような場合、私はこの際率直に清瀬文相が、それは責任をとるんだ、これくらいは言ってしかるべきものだと思うのですが、どうでしょう。(「そうそう、撤回々々」「それは理の当然だ」と呼ぶ者あり)
  316. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今申す通り、万策を尽して、かくのごとき事件が起らぬようにいたそうと思うのであります。(「できなかったときは」と呼ぶ者あり)待って下さい。万策を尽すのには、やはり人間のことでありまするから、説得し、あるいは勧説し、説明しなければなりません。(「弾圧しか」と呼ぶ者あり)今これらの人のなさっておることをここで批評したり、言うことを聞かずに、今おれはこうするなんということを言うことは、それを円満にまとめていく道じゃないと思いまするから、その結論だけはごめんをこうむりたいと思うものであります。あれらの方も、教育に熱心なればこそ反対運動をしておられるのであって、悪意でしておられるとは、考えません。(「当りまえだ」と呼ぶ者あり)一つの意見を出しておられるのでありまするから、それゆえに、私はこれをいいことだ悪いことだといったようなことを申し上げ、それが起ったら、それはおれの方でやめるなんということを言っては、これはおさまりませんから、その最後のお問だけは一つ御宥恕を願いたいと思います。(「うまいことを言うな」と呼ぶ者あり)
  317. 田畑金光

    田畑金光君 いや、私はそれは逆だと思うのです。もし自分のこの方針に教育委員の諸君が反対をして辞職をする、こういう教育界あるいは教育行政の混乱を招いたとするならば、文部大臣自身も腹を切る、(「そうそう、明鏡止水だ、清瀬さん」と呼ぶ者あり)これくらいは明言しておかれた方が、今世論が非常にわいておるわけですから、こういう世論に対し、納得のいく態度であり、文相らしい責任のとり方だと思うわけです。まあこの際重要な段階であるから、私は文相にもう少しこだわらない心境の中から、自分の決意というか、態度というものを明らかにしてもらいたいと思うわけです。なぜ私がそういうようなことを申し上げるかというと、この臨教審をわれわれが審議するにおいても、この審議会の目的は三つある。その三つの第一が、要するに国民道徳あるいは教育基本法の内容について再検討をやりたい。それが忠誠の義務でありあるいは孝養の義務であり、あるいは隣人の道徳である、こういうような一つの国民道徳というものを求めるのが、この法律案のねらいである、こういうことを考えたとき、たまたま私は実にこの法律案のねらっておるような、国民倫理を具体的に国民に知らせるいい機会であるから、一つ文部大臣にそのような場合には責任をとります、こう言っていただければ、われわれもこの法律案は喜んで審議を進めて参りたいと思うのですが、どうでしょうか。
  318. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そういうことというものは、その問題の起り方にもよりまするし、それからまた大きさ、すなわち、全国一せいにおやめになるのか、あるいは東京と京都だけおやめになるのか、また私の説得に対する応待等にも関係いたしまするから、それらのことをいまだ知ることあたわざるときに、こうしますなんということをここで言うことは、先に申しました説得工作にも害がありまするし、また私としても表明いたすことはできません。私がどうするかは、平生の行いから御推察を願いたいと、かように存じます。(笑声、菊川孝夫君「清瀬一郎晩節を汚さぬように、しっかりせい、清瀬さん与党ぼけしたな、清瀬さんのいいところは野党精神があるところなんだ」と述ぶ)   〔理事野本品吉君退席、委員長着席〕
  319. 田畑金光

    田畑金光君 おれの平素の態度から察してくれ、こういうお話でありますが、どうもその態度から察すると、あまり責任をとられないのじゃなかろうかという心配もありますので、しかしまた、もう一面においては、古武士のようにがんこ一徹で、(「そこがいいんだ」と呼ぶ者あり)また自分の信念のためには何が何でも断行する、こういう気魄を持っておられますので、そういう面から見ると、これは責任をとられるのじゃなかろうか、こういう印象を受けるわけです。(笑声)これはこの辺で、来週またどっちみち具体的に出て参りまするから、来週あらためてこの責任問題についてはお尋ねいたしますので、それまで私は保留しておきます。
  320. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ちょっと関連して。文部大臣は、今まあ非常に重大な事態が起りそうだから、説特なりいろいろ緩和をはかりたい、こういうお話です。そうしますと、これはあの教育委員会制度を、ああいう直接公選をやめておやりになろう、こういうことによって文部省の監督とか何とかということも幾らか生きるように、こういうおつもりだろうと思いますが、それに対して、そういうことでは今までの教育制度というものがこわれるということで、そういう自分たちの教育を守る、民主教育を守る立場がいかないならばやめる以外にない、こういうことで全国の県の教育委員会の辞職論が起って参ったわけです。そうすると、ただあなたが説得するということでは事態の収拾はできぬでしょう。それでは収拾をしたいというならば、あるいは今の参議院でここに至っております教育委員会制度に関します法律案の審議をしばらく中止をして、そうしてお話し合いになるというようなことなんでしょう。今のままいって、そうして話し合いをする、あるいはこの緊張した事態を緩和するというわけにいかぬと思います。強硬な法案のこの審議通過を与党を通じてやるという態度をやめて、お話し合いになる、こういうことを含んでいるんでしょうか。事態は非常に切迫している中に、文部大臣として先ほどのような御言明がございましたから、一つもう少し具体的に承わりたい。
  321. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今御審議願っておるものを中止して話し合うなんという考えはございません。これは一日も早く審議の御終了を願いたいと希望しておるのみであります。
  322. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 おそれ入りますが、それじゃどうしようというんです。まあ説得もいろいろあろうという今お話でしたが、そのことについての、たとえば修正なら修正に応ずるというか、これはあなたの言い分もありますが、それから教育委員の諸君の言い分もあるのであります。その話し合いをしようというならば、この法案審議あるいは法案の成り行きというものも関連をして、修正なり何なり応ずるということもあってお話し合いをされなければ、とうていこれは、この対立しております事態というものを緩和するわけにいかぬです。重ねてお尋ねいたします。
  323. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今あの諸君と法案の取扱いについて取引きをいたそうとは思っておりませんです。(「それじゃ問答無用じゃないか」と呼ぶ者あり)
  324. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それじゃどうしようというんですか。
  325. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そういうことをしてはあなた方にも相済まぬので、熱心に御審議願っておりますのに、委員会の者と取引きして修正するなんということはできません。しかしながら、これらも教育に熱心のあまり言っておられることでありますから、今皆さんがやめてくれることは、教育上非常に害があるからして、できてしまった以上は日本の法律であるから、これは引き続いて九月まではやっていただきたいということで説得するのであります。また中にはあの委員会法は非常に官僚主義の法律だといったようなことを考えておられるが、よく読んでみるとそうでもないんだといったような案の趣意を説明いたしたいと思っておるのです。案の趣意を説明し、教育委員の重大なる任務をお話しすることが限度でありまして、この案を君らがそう言うからそれは修正するなんということは、すでに国会法にもありまするが、衆議院を通った案でしょう。衆議院を通った案を撤回もできやしません。(吉田法晴君「そんなことはないよ」と述ぶ)ですから私お問いだから答えておる。私の心持は、説得はいたしまするけれども、この修正と引きかえをするという考えは毛頭ございません。
  326. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 重ねてまあ恐縮ですが、衆議院を通ってきたから参議院で修正できぬという話はないでしょう。だからそれはあなたが全国の府県の教育委員会がやめようという話があるのに対して、これに対してまあ説得なり、とにかく話し合いをしたいと、こういう話だから、それにはあなたの作られた原案を与党は支持している。それは議会政治だからそういう実際の形はありますから、しかも、とにかく参議院なら参議院で修正の動きもあるようであります。これはあなたの気持の問題を聞いているわけでありますが、話をしようというならば、参議院で修正されることもこれは一つの方法であろう。そういう点についても自分の方にも考えがあり、そうしてまあ弾力性をもって話をしたいというのか、それとも老の一徹、がんこそのままに、衆議院で通ったんだからとにかくもうしゃにむにここでは抑えつける以外にはないという話なのか、話し合いをするというお話だから、余裕があってお話し合いにならなければ話し合いにならないと思うのですがね。
  327. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 衆議院を通ったからと言いますのは、撤回はできませんということを言ったんです。国会法の五十九条で、一院を通ったものは撤回をすベからず、あのことを言ったんです。あなた方に修正の御権利あることは私もよく知っております。私の言い違いですからどうぞ……。(「いやこちらの言い違いだ」と呼ぶ者あり、笑声)しかしながら、教育委員会の連合の方と修正個所について話をしたり、修正するからして君らが辞職をやめてくれ、そんな考えはないのです。ないものをあいまいに言って、世間に誤解を与えてはいけませんから、私の手を尽そうというのは、通過したらやめるとおっしゃるのでしょう。やめるとおっしゃっても、辞表というものはまた撤回もできることでありまするし、通過してしまえば、実はこの案はこういうことなんだからこうなんだ。だからして君らはやめたら子供をどうしてくれるんだといったような、これらの人の職務の重大なることをよく話をして、辞職が一人や二人じゃない、大量辞職になりますと、教育の運行も悪くなりますから、そのことを言うのであって、今これらの人と修正の取引をするなんということはほんとうに考えておりません。
  328. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 取引をすると言われると大へん言葉が悪いが、あなた先ほど会って、いろいろ話をしようというお話でしたがね。今のように通過してしまって、それから先云々というのじゃこれは話になりません。これは説得かあるいは強圧か以外にあり得ない。で、今私は、それだけの気持を持っておられるならば、まあどうするかということはとにかくとして、今お会いになって、強行採決云々ということじゃなくて、今お会いになって、文部大臣としては、教育についてこれはあなたが責任を持っておられると考える。それから教育委員会の諸君はまた教育委員会の諸君で、教育について責任を持っておる、これはお認めになっておるように、向うは向うでやはり教育に熱心な結果ですよ。そこで今弾力をもってお話しになる気持はございませんかというのです。
  329. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 遺憾ながらそのことは考えておりませんです。あの質問もまた修正ではないのです。全部撤回せいと言っております。とてもそんなことはできるものではありません。
  330. 田畑金光

    田畑金光君 文部大臣は、この臨教審の答申というものについてどれくらい期間を予定されておるわけですか。
  331. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 最大限二年です。
  332. 田畑金光

    田畑金光君 二年で答申が出るものとお考えになっておられるのですか。(「かわってしまう」と呼ぶ者あり)
  333. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) その考えでおります。
  334. 田畑金光

    田畑金光君 先ほどの菊川君の質問に対して、答申をどの程度尊重されるか、もし文相の考えておることと食い違っておる答申内容等が出た場合に、それに対して文相はどのような態度をとられるか、これに対して自分の良心に従って処理されるというようなお話でありますが、どうも良心に従ってというだけでははかりかねますので、もう少し一つ具体的なと申しますか、わかりやすく御説明願いたいと思うのです。
  335. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この答申については全体として大いに尊重します。ただそのうちの個条で、もしもこれに従うことが私の良心に許さざるところがある場合にはそれはいたし方ございません。原則としては、私の本来の意見と違いましても答申の方を……。(「菊川孝夫君「二年先はわからない、政治情勢が変ってしまう」と述ぶ)
  336. 田畑金光

    田畑金光君 二年先だったら、今、菊川君が言うように、文相なんかは少し……まあそのときはそのときとして、私の良心に従ってというお話でありますが、これはあなたの良心だけで処理できるわけですか。文部大臣だけの良心で取捨選択ができるわけですか。
  337. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これは内閣の諮問機関ですから、詳しく言えば内閣が従うか従わぬかのことでありまするけれども、私に対するお問いですから、私自身がもし文部大臣としてそのときまでおりますれば、文部省としては、全体としてはこれを尊重するんでありますが、部分的にいかにも意見が違って良心に恥じるというところはこれはいたし方ございません。そうでない限り、私の本来の所論と違いましても、皆さんのおっしゃるところには従うつもりです。
  338. 田畑金光

    田畑金光君 お話のように、内閣の諮問機関でありますが、実際文教政策に関することでありますので、当然文部大臣がこの答申をどう見るか、こういうことになろうかと思うわけであります。そうなって参りますると、われわれといたしましては、またそのことが私たちは当然のことだと思うわけですが、いやしくも文教政策について万般の責任を負うておられる立場にあります清瀬さんが、その答申について一番重大な判断の衝にあるものとわれわれは考えておりますが、そういうように考えてみますと、内閣にこれを置いたということ自体そもそも問題であろうと思うのです。この点はどうなんですか。
  339. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) お問いの前段のところ、すなわち文部省が一番関係が深いということはその通りでございます。しかしながら教育の、ことに一番早く影響があるのは日本の財政ですね。それからまたその次には、学校は地方にもありまするから、地方財政、ただいま太田君の所管であります。各般にわたって、内閣全般にいろいろ関係もあろうと思います。今、教科書のことをやっておりまするが、とうとう運輸大臣に関係ができまして、教科書の運賃がなんとエロ雑誌より高いのですよ。(「それは月刊だから」と呼ぶ者あり。笑声)それから郵便のポストもそうです。ポストも新聞雑誌の四種郵便扱いにはしておらんのですよ。そういう関係で、郵政省とも関係ができるということが起りました。これはやはり内閣の諮問で、先刻あなたのおっしゃったように、大蔵省にも関係が出てくると思いますから、内閣に置いたというのは間違いじゃないと思います。日本の学校制度をきめたのは内閣に置いた刷新審議会ですから、同じレベルに置くということはあり得ると思うのですよ。この委員会を初めからなぜ内閣に継いだか、文部省に置いたらいいじゃないかという質問がたくさんありましたけれども、私はやはり内閣に置いた方がよかったと、こう思っております。
  340. 田畑金光

    田畑金光君 それだけの答弁でははっきりしないのです。これはどんなことがあっても、あなたのお話のような論法でいくならば、すべてが各省にまたがっているわけです。文部大臣の所管行政、文教政策のみならず、労働省の所管である労働政策であっても、大蔵省はもちろんであるし、すべてにつながっておるのですね。行政権は内閣が連帯責任で、国会に対して責任を負うて、国民に対してやっておるわけですから、これはそういうことを言ってきますと、すべてにこれは関係が出てくるわけなんです。ただ内閣法に基いて主任の国務大臣はだれか、それは文教政策については清瀬文部大臣だろうと思うのです。まきかあなたにはそれだけの能力がないから、内閣全体で相談せんと危なっかしいからということでこれはこういうことになったのではなかろうと思うのですが、当然これは文教政策の最高責任者である文部大臣の所管のもとにおいてやられて当然しかるべき問題じゃなかろうか、こう考えるのです。またあなたの御答弁を聞いておりましても、知らず知らずのうちに、答申については自分の良心に従ってどうしてものみがたいものはとるわけには参らない。全体は尊重するけれども、しかしいかがわしいものについてはやむを得ない。拒否しなければならん。それがやはり文部大臣として、文教政策をあずかっておる建前からいうと当然のことだと思うのです。ただこれはわれわれが見ると、すでに同じ内容のものができておる。中教審との違いを無理やりにこういうような形の中から作り上げるために、法律案の性格がこのような建前、構成になったと思うのですが、どうですか。
  341. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) あなたのようなお考えもそれは一つ考えで、私は悪い考えとは言いませんが、教育のことは、ことにこれは国民道義といったような抽象的のことにわたっておりまするが、日本の教育制度を戦後組み立てるにはどうしたかといえば、内閣の審議会でやっているのです、教育刷新審議会。そうして組み立ててしまって、解散する時分に、文部省に常設の諮問機関を置けといってこの中教審ができておる。常設の諮問機関をその通りやっておきまするけれども、今度新たに立てるのじゃないが、もと立てておった教育制度それ自身に、別の見方で改革を加えよう。大学制度というのは、これはまた大きなことなんです。今申しました日本の大学をどうするかということになるというと、高碕君のやっておる経済計画にも及びまするし、今言った各省の、さっき郵便、運賃なんて小さいことを言いましたから御異議が起りましたけれども、これはいろいろなことに関係しまするから、組み立てをするときに内閣に置いたと同じように、これが変改をするのも内閣に置いた方がよかろう、こう考えております。そうしてこの所管大臣はこれは内閣総理大臣なんです。私が今の内閣法の所管大臣じゃないんです。(田畑金光君「いやそれはわかっておる」と述ぶ)書いてありますから御承知だと思いますけれども、今の所管大臣のことですね、必ずしも文部大臣が所管じゃないんです。総理大臣が所管なんです。
  342. 田畑金光

    田畑金光君 第二条にいう「教育に関する現行制度に検討を加え、教育制度及びこれに関連する制度」、これはどういうのを指しておるわけですか。
  343. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 政府委員から関係の制度のことについて……。
  344. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまの御質問でございますが、「現行制度に検討を加え」と申しますのは、現行の教育に関する制度を申しておるのでございまして、これに関連する制度と申しますのは、行政制度あるいは地方の財政制度等に関連がございますので、そういった純粋に教育以外の制度を、しかも教育に関連する制度を指しているわけでございます。
  345. 田畑金光

    田畑金光君 今の答弁でも明らかでありますように、「現行制度に検討を加え」ということは、教育行政機構の問題あるいは教育財政上の問題、これらに関係する諸制度について検討を加える、こういう内容であります。文部大臣にお尋ねしますが、教育行政制度と申しますと何であるかというと、教育委員会制度だと思うのです。今の教育行政の制度としての大骨になるものは、根本になるものは教育委員会制度だと思うのです。教育委員会制度、これこそが現行の教育行政制度の中核であると考えるわけです。あとはなるほど大学をどうするかという学制制度等について、制度の面から改革を加える問題はありまするが、しかし教育行政の面から見た制度であるとするならば、教育委員会制度こそ一番大事な制度であろうと考えるわけです。ところがその教育委員会制度については、この間の答弁もありましたが、中教審の答申を完全に無視して、そうして自分の気に食わない点は、民主的な諮問機関等の議を経ることなく、あるいは国民の世論に耳を傾けることなく、あえて今回教育委員会制度の改正を提案されるに至ったわけです。こういうことになって参りますると、教育行政の面から見まして、あとどんな改正制度を清瀬文部大臣は考えておられるのか、これを一つ聞かしてもらいたい。
  346. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) なるほどお説の通り教育委員会の制度は地方教育行政のこれは根幹をなすものであります。しかしながら、そのほかに今回さらに研究していただこうと思いましたことは、たびたび申す通り、教育に関する国の責任の明確化といったようなこと、これはなかなかむずかしいことなんです。実際に文部大臣は修学旅行で子供がけがしようが、もう学校のことはみな責任を問われる。ところがこれに関する管理権は一つもないのです。こういうところをどう持っていったらいいか。学校制度、これは六・三に手をつけるものじゃないと思いますが、それ以外には大学制度、官立、公立、私立の大学制度の再検討もしなければならない。それから中央における教育行政の組織、こういうふうな重大な問題がたくさんありまするから、この内閣に置きまする調査審議機関というものは、これは相当広範な多忙なことをしていただかなければならないと思います。
  347. 田畑金光

    田畑金光君 今御答弁のような事項もなるほどあるかもしれません。しかし教育委員会制度というものが、少くとも今の教育行政機関としては根本になっておるだろうと思っているのです。あなたのお話のように、文部大臣が助言、指導する権能がなかった。そういうような点について国家の責任や国家の指導権を確立しなければならない、なるほどそういうふうな点もあるかもしれませんが、それは要するに国の監督権の強化であり、中火集権的な教育行政をねらっておられるわけです。地方教育行政において現行の教育委員会制度というものこそ教育行政の根本になっているわけです。これを今大事な諮問機関を作って、それに万般の制度について諮問をしようというそのやさきに、そのやさきにおいてすでに諮問すべき根本の大きな一つの柱を新たに除いておるのです。あとに残るものは何か、それは学制改革等についてはなお形式的には検討する余地がありましょうが、一番大事な行政機構の柱をはずしておるじゃありませんか。もし臨教審というものを作って、ほんとうにこれを文字通り公正な国民の世論の中から現行の教育制度について批判検討を加えようとするならば、教育委員会制度等についても、この法律ができて、もし中教審で足りないとするならば、かりにあなた方の主張を認めてですよ、臨教審でやり直すというならば、なぜそれまでの期間待てないという理由があるわけですか。
  348. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) あなたがおっしゃる教育委員会が地方教育制度の根幹になることはおっしゃる通りでございます。ただ教育委員会制度というものについては早くから世間で問題になっておるのですね。昭和二十七年の吉田内閣の解散のときに、偶然なことで一年延期ができず、施行されてしまった。それより以前からあるかもしれませんがね。あのころから各方面に異論が起りまして、政府の方も三つも四つも委員会検討いたしております。中教審も実は大連君のときに実は一ぺん諮問しておるのですよ。しかしそれは私はあまり言わない、時間がだいぶたっておるから。もう一ぺん諮問してもよかったのですが、そのほかに地方制度審議会や法令審議会とか、各方面でよく研究されまして、文部省内においてもこれをよく研究しておる吏員もおりまするし、私の属している党派の方にも非常にこのことのヴェテランがおります。しこうしてほうっておきまするというと、この十月一日に全国一せいに選挙が行われ、何千人という新教育委員ができる。これは任期四年です。そうすると四年間は選挙によって得た任期を打ち切るということが非常に不合理なことになりまするから、実はあなたのおっしゃる通り、時間さえあればこの中教審にも聞き、この臨教審にも聞いていく方がいいのでございましょう。あなたの論を決して御反駁申すわけではございませんが、大体世間の論の帰するところもわかりましたし、それを選挙が近づくということから切り離して案として提出したのであります。  そこで今期国会においては衆議院も参議院も非常に丁重に日をとって御審議下さっておりまするから、審議の疎漏というようなことはなしに済むのじゃないか。専門家の方にそういうふうに聞くことはありませんかったけれども、衆議院においても公聴会を開き、参議院においても公聴会を開き、それらのことで国務の渋滞がないように案は別に出したのでございます。
  349. 田畑金光

    田畑金光君 選挙々々とお話しになりますが、この法案を衆議院に出されたのは何月の何日でしたかな。
  350. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 二月一日です。
  351. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 二月一日だそうです。
  352. 田畑金光

    田畑金光君 二月の一日にお出しになった……。なるほど昨年の自民党の発足が十一月十五日で間に合いそうでなかった、こういうわけでまた実はそれにもかけなかったというのを一つの理由におっしゃるのでしょうが、この問題についてはすでに昭和二十八年でしたか、一応答申が出ておる。その答申の結果は、現行制度に改善を加える必要なしという結論であった。そういうことでありますなら、なお一そう世論を尊重するという気持がありますなら、民意に慎重に耳を傾けようとするゆとりがおありなさるなら、これは自民党発足の時期等からある程度の制約はあったにしろ、中教審という権威ある機関があるはずですから、当然そこに審議をかけても、私はおっしゃるようにこの国会に間に合わない、こういうことでもなかったと思うのです。ただおそれられたことは、今の中教審でもち一度答申を待っても、またこれまで自分たち考え方に反する結論が出てくるにきまっている、そういうおそれから中教審というものの機関を無視されたものと思う。またかりにこの十月選挙をやらなければならぬということの制約があったといたしましても、法律によって選挙期日を延長すればよろしいじゃないですか。あなた方が半数改選について二年前に当然選挙をやるものと国民一般は期待しておりましたが、法律でもって半数改選を二年後に延期して、ことしの十月まで任期を延ばしているじゃありませんか。やろうとすればできるはずです。やる意思がないからがきなかったものです。こういうことを考えたとき、臨教審をせっかく作られても、その答申を尊重するとかいうようなことは、ほんとうにこれは国民をごまかすための手段にすぎない、こう申し上げても過言でないと思うのです。この点文部大臣、少し私たちに納得のいくような理由を一つ御説明願いたいと思うのです。
  353. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 前にも申し上げました通り、各方面の研究は出ているのですね。それから今の中教習の話も、中教審の決議をとっておるのですよ。というのは昭和二十七年からこの方の世論のうちには、町村の教育委員会はやめろという意見も、強い意見があったのです。しかし、中教審はそれはやめないで、本質はそのままにせい、こう言っているのです。これは重要なことです。どうしてなれば、やめてしもうたら昔のような村長、助役が学校のことをやるのですね。ところが村長、助役とは別に独立の教育委員会を置く、これも議決機関じゃなく、執行機関として置く、これがまあアメリカの教育委員会の根底で、世界にまれなんです。ドイツ、フランス、イタリア、イギリスあたりの大陸系はそれをやっておりません。アメリカが持ってきた独立の、一般の町長、助役、収入役、町会議員のやっておる行政と別の執行機関を置く。これはなれませんから、各方面に、ことに町村会等ではやめてくれという強い意見があったのだが、しかし中教審じゃこれを置けとおっしゃるからこれを尊重して置いておるのです。一部の人は、中教審を無視したとおっしゃるけれども、一番根底は認めております。(「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)この選任方法を、直接選挙をやめて、しかし民主主義じゃから上から任命はできぬけれども、(笑声)選挙で出てきた町長が選挙で出てきた町会議員と相談して委員を作る。この委員は申立を保つために積極的な政治運動はせぬ。またそれでも行いが悪かったらリコールができる、こういう縦の委員会を作ったのです。ですからして中教審を全然ボイコットしたということでなく、一番根底は認めておるのです。(菊川孝夫君「公選制をやめるということが一番大事なんです。」と述ぶ)その点は今おっしゃる通りです。公選制はやめましたけれども、しかし中立を保つということは大きなことですよ。
  354. 田畑金光

    田畑金光君 今、菊川君からヤジの中にありましたように、(笑声)公選制か任命制かというところに問題はあると思うのです。あなたのお話は、単なる何と申しますか、形を整えておけばそれで民主的な教育が守れるのだという独断というか、それをしもこれで本来の姿が失われないというたらば、あなたの頭はやはり大宅壮一氏の批判じゃないけれども、まことにこれはどしがたきかな、こう申さざるを得ないのです。私はこの際文部大臣に、何のために教育委員会制度というものを設けられたのか、それが当初は府県のみに置かれたわけですが、間もなく市町村、あらゆる市町村まで地方教育委員会制度というものを断行されたのです。このとき清瀬さんはもちろん閣僚でもなし、与党でもなかったわけですから、その当時の責任を追及しようとは思っておりません。しかしそういう地方教育委員会というものをすベての市町村にまで設置をされたのが今の与党ではありませんか。与党の全部と言わなくても、有力な与党の構成分子になっておるでしょう。(菊川孝夫君「自由党だよ」と述ぶ)この地方教育委員会が設置をされたという目的はどこにあったかということを私はお尋ねしたいのです。これはもちろん、聞いてもまたわかったようなわからぬような御答弁になりましょうから、御答弁必要としませんが、(笑声)教育委員会法の第一条に明確に教育委員会を設けたその目的が載っておるのですね。しかしこの教育委員会を設置した目的というのは、きれいな言葉で第一条に述べられておるが、何が隠されていたかというと、結局その当時の与党のねらいは、あるいはその当時のこの法律に賛成された清瀬さんの所属された改進党のねらいは、教員組合の力をどう抑えるかというだけがこの法律を作る、改正する、廃止する中心であったわけです。市町村に教育委員会を設置する、市町村の実態が保守が圧倒的な勢力であるから、選挙をしてもこれは当然に保守系の委員が議席を圧倒的におきめるだろう、その中から一つ教員組合の力を圧迫して、そうして教員組合の行き方を押えよう、これがねらいであったことは周知の事実です。吉田内閣のときの文教政策というものは、すべてが文教政策ではなくして、いかに教員組合と取っ組みをするか、いかに教員組合の組織を弾圧し、あるいは自主的な動きを阻止するかということを中心としてめぐっていたということは、これは明らかな事実です。ところが、そういうようなことをやってみても、時勢の流れにはどうしても勝てない。国民の民主的な自覚の前には、いかに法律を持ち政策を立てても、保守党の行き方では間に合わなくなった。今度はまたそこで一つ考えたのが、教育委員会制度の改革であるわけなんです。そういうことを考えたとき、この際、清瀬さんにお尋ねしたいことは、審議会の構成等の中に、学識経験のある者三十人、これもいろいろな各界の人方を出される御方針のようでありまするが、教育に関係する諮問事項でもありますので、当然これは教員組合の代表等もこの委員会の中に入ってくるものと期待いたし、また当然の措置だと思いますが、この点はどう考えておられるのか。さらにこれに関連してお尋ねしたいことは、中教審の委員をお選びなさる場合には、人格は高潔で、教育、学術、または文化に関し広くかつ高い識見を有する者から文部大臣が内閣の承認を得て任命する、こうなっておりますけれども、この臨教審の場合はそういう規定がないのです。これはだれでもいいのか。極端に言うとですね、汚職にひっかかった議員でも差しつかえないのかどうか。この点もあわせて一つ伺っておきたいと思うのです。
  355. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 人格が高潔ということがありますが、汚職にも、それは汚職によりますけれども、大体真実ならば汚職にかかった人は人格高潔と押えまいと思います。世の中にはしかし無実の罪で後に無罪にもなる人がありますから、一がいに起訴されたからといって擯斥はできませんけれども、私の感覚では、汚職にかかった人は御遠慮願いたいと思っております。
  356. 田畑金光

    田畑金光君 もう一つ答弁を落している。教員組合の代表を入れるかどうか。
  357. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 教員組合の代表を入れるかどうかということは、それはほかのことも、代表というのは入れないつもりです。ですけれども、教員組合に属されているからといって入れないということは言えないと思います。実業界でも銀行界でも、およそ何界の代表という資格の者は入れないつもりです。人個人でいきたいと思うのです。それで教員組合運動をしているからそれをのけるということは考えておりません。けれども、組合代表じゃありません。
  358. 田畑金光

    田畑金光君 いや、私も別に組合の代表とかあるいは財閥の代表とか銀行の代表とか、こういうまさか代表を入れられるとは考えておりませんので、今までのこの種委員会の構成は、常に片寄った人だけで満たされておる、あるいは国民の片寄った層の代表のみが加わっておる。こういうやり方は是正しなければならぬと思うのです。そういう意味合いにおきまして、教員組合の代表でなくて、教員組合の指導者等の中からも、あるいはまた労働界の指導者等の中からも、あるいは財界の指導者等の中からも、当然国民各層の中からりっぱな人方をこの委員会の中に入れられるお気持があるかどうか。
  359. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そう考えております。しかしくれぐれも申し上げますのですが、これが組合の代表だといってやられちゃちょっと困るのです。ほかの方も代表せればなりませんかられ。その人個人に目をつけて、お入り願う時分に、組合運動をしているからこれはいかぬなんという考えは、そんな偏狭なことは思っておりません。
  360. 田畑金光

    田畑金光君 なお私は質問市項が多々ありますが、大へん文部大臣もお疲れのようですし、疲労の様子が見えてきましたので、きょうはこの辺で私の質問は終りたいと思います。  なお、時間もすでに五時半に近くなっておりますので、約束の時間もきたようですから、きょうは質問はこれくらいにします。
  361. 野本品吉

    ○野本品吉君 もう時間もだいぶたちましたし、大臣は昨夜から本朝にかけて非常に奮闘されてお疲れだと思いますから、きわめて簡単に要点だけを御質問申し上げたいと思います。  教育の制度、それから目的、内容、教師論、これらもろもろの教育問題に関しまして、国会の論議は私どもの知る限りにおきましては今日ほど盛んなときはないと思います。また一般世間におきましてもこれらの諸問題に関しまして、学者、報道陣、評論家、実業人、あらゆる人たちがいろいろな角度から見てその所見を発表し、意見を述べられております。教育論議の盛んなることいまだかつて見ることができない状態であろう。私は教育に関しまして全国の人々がかように深い関心を持たれることが、これは公正無私、純粋な教育本来の使命実現のためのそれであるならば、これはまことに喜びにたえないことであると思います。しかしながら、万一それが特定な政治勢力の拡張のため、あるいは思想の普及滲透のための方便手段としてならば、これは国家の将来のためこれに過ぎる憂いはないので、深憂にたえない。最近の国会におきまする論議あるいは対立の実情を静かに、しかもしさいに検討いたしますと、私は教育の問題がいわゆる政争の渦中に巻き込まれて、その本来の姿がゆがめられるのではないかということを非常に心配しておる者の一人であります。  教育基本法の第十条に示された、教育が不当な支配に屈することのないようにというこの新精神こそ、今全国民によって正しく理解され、正しく守られ、そしてその正しい考え方の上に教育の諸問題が論議、検討されることをこいねがってやまない。基本法の第十条のいわゆる不当な支配、これはいろいろ考え方があろうかと思いますが、いわゆる政治権力による支配、これも不当な支配だと私は思う。それから経済的な面からの支配、これも不当な支配だと思う。それから民間にあります組合あるいは団体等のいろいろな圧力というようなものも、これもまた排除さるべき不当な支配であると思う。特にこれをしぼって政治的に考えますと、私はこの教育の問題は、率直に申しますと、いわゆる自民的な偏向も許されないし、同時に社会的な偏向も断じて許されない。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこでこの点に関しまして、清瀬文部大臣はどのような信念に立って教育行政全般に当られるかということを私ははっきりお聞きしたい。
  362. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) まことに広範な影響を持つ重大な御質問でありますが、私は教育というもの――十条第一項は「教育行政」という表題がついておりますが、教育というものは、必ずしも行政に限らぬ、これは不当な支配に支配されることなく、国民全体に対して直接責任を持っておる。国民全体というのは何かというと主権者ですよ。国民全体を一つのボディと見て、国民全体に対して責任を持つ。国のためにいいことであればする。それゆえにある一つの団体、自民党にしろ、社会党にしろ、共産党にしろ、あるいはそのほかの場合にしろ、その都合によって教育を左右すべきものではない、こういうふうに解しておりまして、今お尋ねの前段と同じであります。  それで私は、各方面から非難を受けつつも国民全体に対して責任を負う、こういう考えであります。予算とか立法とか、これは純行政のことであって、党のおっしゃることも研究してやっておりますが、教育中心はこれはどの支配をも受けず中正公正なものにしていきたいと、こう思っております。
  363. 野本品吉

    ○野本品吉君 次に、私は学校教育法その他を通覧いたしまして、先ほど来ちょっとときおり大臣の口から漏れておりますけれども、たとえば文部省というものはどういうものだか、私には理解しかねる点が多分にあるわけです。時間がありませんから要点だけ申しますと、先ほどお話のありましたいわゆる監督庁とい言葉が……学校教育法の第三条に、学校の設置その他について監督庁が定める云々と書いてある。それから第六条に「国立学校における授業料その他の費用に関する事項は、監督庁が、これを定める。」云々と書いてあります。第八条に、校長及び教員の資格に関する事項はまた監督庁が云々と書いてある。十一条にも「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、」云々と書いてあります。それから十二条にも、身体検査及び衛生養護の施設に関する事柄に関しましても監督庁が云々と掲げてあります。その他第四十三条、第四十四条、四十七条、四十八条、四十九条、さらに八十三条の第四項、こういうふうに監督庁が監督庁がということが、至るところに書いてありまして、教育に関するもろもろの事柄が監督庁によって規定されておる。ところが私がわからないと申しますのは、その第百六条によりますと、「監督庁は、当分の間、これを文部大臣とする。但し、文部大臣は、政令の定めるところにより、その権限を他の監督庁に委任することができる。」、当分の間文部大臣が監督庁になっておる。文部省というところは一体どういうところなんですか、どういふうにお考えですか。
  364. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それが不明なので御審議を願いたいというのです。私も文部大臣になってから非常に不思議だと思っております。御指摘通り百六条に、「監督庁は、当分の間、」とはいっておりますが、文部大臣ですよ。ところが教育委員会法五十五条の第二項を見るというと、文部大臣は監督してはならぬという規則があるのです。(笑声、野本品吉君「その通り」と述ぶ)また、文部省設置法にも、文部大臣は監督せずとあります。しかし世の中の、日本の伝統としては、いやしくも文教について事件が起れば責任は文部大臣が負うのです。かつて伊勢の海で子供が死にました。監督は一つもできないのです。だけれども松村文相の責任だといって責任を追及しております。(「こわいね」と呼ぶ者あり)これらのことは徹底的にこれを見るというと、この法律は、学校教育法は、やっぱり文部省以外に何か外局のようなものを別に作って、そこで教育をやらすというふうな予定で進駐軍がやったのかもわかりません。一九四四年以前にもイギリスの法律――あそこでは教育委員会というものがあって、そうして教育をやっておったのです。ただイギリスの法律では、教育委員会委員長は閣議に出ております。そこでイギリスの民主政治にまねてできておるのです。今回社会党から衆議院にお出しになったのは、教科委員会というものを文部省の外局として、そこでいろいろなことをやろうといってこられたのです。ああいうふうなアイデアで進駐軍が日本の教育をやろうとして、まだ思う存分やらぬうちに日本から退却した。(「退却とは感覚が古い」と呼ぶ者あり)退却したと、こういうことです。ほんとうは監督庁で監督をするのです。監督は大事なことですから十分に、日本の教育の組織をどうするか、もし監督庁といったようなものを社会党さんのおっしゃるように外局でも作るのであったら、もう文部大臣などやめて、その委員長内閣に出ればいいのです。それなら強いのです。けれども教育というのはそう組織を変えるべきものではありませんから、現在の態勢で……。この点教育の専門家の人に聞いてみようと思うのです。それで私の方で教育の責任の明確化ということがありますね。
  365. 野本品吉

    ○野本品吉君 実はこの問題を私が申しましたのは、前の国会のある機会に文部大臣の責任として問わるべき事項について追及して参りましたところが、文部大臣は、もうそれ以上のことは何とも言えないのだというのです。だんだん見てみますと、今のようなことになる。当分の間文部大臣というそのことに対して、今まで各代の文部大臣はどう考えておられるのですか。
  366. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 前任者がどう考えておられたか知りませんが、私の直前の文部大臣は、やはり日本の教育についてみな責任を負わなければならぬという責任感で、あの相模湖で起った事件、紫雲丸の事件が起ったときには、それはもう責任は自分にあるのだということで大いに責任をとっております。だけれども調べてみたら、松村君はそのチャンスはなかったのです。
  367. 野本品吉

    ○野本品吉君 ただいま大臣からございましたから、これも深く繰り返しませんが、お話の通りに、文部省設置法の第五条によりますと、「大学、研究機関その他の教育、学術又は文化に関する機関に対し、その運営に関して指導と助言を与えること。」あるいは「地方公共団体及び教育委員会、都道府県知事その他の地方公共団体の機関に対し、教育、学術、文化及び宗教に関する行政の組織及び運営について指導、助言及び勧告を与えること。」、ここで私がはっきりお聞きしたいと思いますのは、指導、助言、勧告、この三つの言葉が使われておりますが、この概念というのは一体、指導と助言と勧告、どう違いますか。
  368. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいま非常にこまかい御質問でございますが、文部省設置法を作るときの気持と申しますのは、法律的には多少いろいろ解釈があろうと思いますが、この文部省設置法、あるいは他の法律にも同様なことが、指導とか勧告とか助言とかいうようないろいろなニュアンスをもって使われております。しかし概して申しまするならば、その中で勧告というのが一番軽いと申しますか、ただ勧告いたしましても相手方がそれを拒否する、少くとも別にそれに対して制裁を与えない。それからその次の助言でございますが、これは英語のアドヴァイスというような意味でございまして、勧告に次いで、これはそれに対しては相当相手方も責任を持っていかなければならぬという意味合いで、これはやや勧告より強い意味で使っております。最後の指導でございますが、順序は逆になりましたけれども、これは一般のいわゆる行政法上の指導という言葉と同じ意味で使っております。従って意味合いは若干違いますけれども、指導、助言といった場合は、これはやや勧告よりも強い程度になります。これは設置法あるいはその他の法律において使っております言葉の違いでございます。
  369. 野本品吉

    ○野本品吉君 私が今、指導、助言、勧告の概念というようなことをお聞きしたのは、先ほどお話がございましたように、勧告をしてはならぬということが一方にあり、指導、助言、勧告ということになりますと、これらのものは指導され助言され、また勧告される側の態度、気持のいかんによっては、これは頬かぶりも可能であるというふうにも考えられるのですが、その点についての見解はどうですか。
  370. 福田繁

    政府委員(福田繁君) おっしゃる通りでございまして、これは別に強制権はないわけでございます。そういった勧告上の個々のそれに対して聞かないことに対する強制と申しますか、そういう点につきましては別の規定を定めておるわけでございます。
  371. 野本品吉

    ○野本品吉君 まだいろいろ幾つか残っておりますが、皆さんお疲れのことと思いますから、また社会党の諸君の理解ある御協力によって質問を続けることにいたしましょう。
  372. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会    ――――・――――