運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-05-26 第24回国会 参議院 地方行政委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十六日(土曜日)    午前十一時三十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員石黒忠篤君及び川村松助君辞 任につき、その補欠として後藤文夫君 及び西川平治君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松岡 平市君    理事            伊能 芳雄君            宮澤 喜一君            森下 政一君            小林 武治君    委員            井村 徳二君            大谷 贇雄君            佐野  廣君            西川平治君            堀  末治君            横川 信夫君           小笠原二三男君            加瀬  完君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            野田 俊作君   衆議院議員            青木  正君            三田村武夫君            藤枝 泉介君   国務大臣    国 務 大 臣 太田 正孝君   政府委員    自治政務次官  早川  崇君    自治庁次長   鈴木 俊一君    自治庁行政部長 小林與三次君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君   説明員    自治庁選挙部長 兼子 秀夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○公職選挙法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 会議を開きます。  委員石黒忠篤君は本日辞任せられ、新たに後藤文夫君が委員に任命せられました。以上報告しておきます。   —————————————
  3. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題に供します。質疑を行います。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  4. 中田吉雄

    中田吉雄君 この法案の審議の前に、先日太田長官に対しまして、高級公務員が退職した後の、あるいは前後の事前運動にからみまして質問申し上げましたところ、それについては十分善処する答弁がございました。昨日の夕刊を見ますると、閣議で、国家公務員地方公務員選挙事前運動について警告を発したいという御提案をなされ、閣議では了承されたように承わっていますが、それにつきましてのお考えを承わりたいと思います。
  5. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 昨日の閣議におきまして、中田委員が仰せられましたことをありのままに報告いたしまして、各省ともよく注意してくれということを申し述べました。昨日の会議のときに、官房長官から何か通達があったかと、これは口頭によって各次官会議において詳しく話されましたが、文書をもってはやっておりませんのです。今までの経過を申しますと、二十九年の十二月二十四日に閣議決定したことは今も生きておりまして、その案文を申し上げます。    選挙に関する公務員規律保持    について   公務員は、法の命ずるところに従い、全体の奉仕者として、職務に専念すべき義務を負うものであるから、いやしくも、その地位を利用して、選挙事前運動その他選挙運動又はこれにまぎらわしい行為を行い、国家公務員及び公職選挙に関する法規に違反するようなことがあってはならない。   政府においては、万一、このような行為をした者があった場合には、断乎として厳重な処分を行う所存である。   なお、地方公務員についても、同様の措置が講ぜられるように、地方公共団体に対し、この趣旨を連絡するものとする。  これが二十九年の十二月の閣議でございますが、先般参議院において議決されました選挙粛正に関する決議がありましたのに対しまして、それが三月十九日でございましたが、三月二十七日の閣議決定として   きたるべき第四回参議院議員通常選挙は、わが国の民主政治にとって重大なる意義を有するものであり、真に国民の意思を表明した公明な選挙でなければならない。今回参議院においては、選挙粛正に関する決議がなされ、政府に対しては、その趣旨を広く関係者に周知徹底せしめるよう要望されたので、政府は、この決議を尊重して、選挙管理委員会報道機関及び民間諸団体等と相提携して公明選挙運動を強力に展開してその趣旨の徹底を図り、もって公明選挙の実現を期するものとする。  先ほど申しました、官房長官次官会議において言われましたことにつきましては、次長をして御説明申し上げます。
  6. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) ただいま大臣が朗読になりました二十九年十二月二十四日の選挙に関する公務員規律保持についてというものが第一次鳩山内閣閣議決定の文案でございますが、これをさらに次官会議におきまして、官房長官から読み上げまして、厳重に、このようなことがないようにせよという強い指示があったのでございます。(「官房長官を呼ばなければだめじゃないか」と呼ぶ者あり)
  7. 中田吉雄

    中田吉雄君 私の発言並びに諸般の情勢を検討していただきまして、閣議でそういう措置をとっていただきましたことは、大へん時宜に適したことと思うわけですが、当委員会におきましては、選挙関係法案を審議する委員会としまして、昭和二十五年来絶えず主張してきて今日に及んでいるわけであります。そのつど政府とされましては、ただいまのような御答弁がずっとあってきたわけであります。御案内のように、昭和二十二年十月二十一日から施行せられた国家公務員法におきましても、さらに人事院規則等におきましても、この違反者に対しては、きびしい制裁規定があるわけであります。国家公務員法の百十条には、人事院規則に反して事前運動その他をやった者に対しては、三年以下の懲役または十万円以下の罰金を科するという規定があるわけですが、一度もその適用を受けた者もないようであります。ただ一つの訓辞的な警告に終って、これが実際効果を発揮していない面も多いと思うんです。特に政府とされては、昨日ですか、綱紀粛正の問題も閣議で取り上げられているようであります。特に公務員事前運動は、公職選挙法の二百三十九条の二に当る公務員等地位利用による、補助金をやるから一つ選挙運動というような、公務員等地位利用に関する重い刑罰が科せられるので、これについてはもっと早くからやっておくべきであったわけですが、もう選挙もあますところわずかになって、それについてはどうこうできませんが、ただ今後、国会が済みますと、必ずです。長い間の国会明けで、長官とか、局長、部長等出張もありです。必ず自分のところから出た、立候補された前の公務員の立候補者運動を必ずやって、これは出張と非常に深い関係があったりするわけであります。ですから、閣議決定を十分生かしていただくためには、国会明けのそういうことについても、十分政府とされては措置をしていただかぬと、実効があがらぬというふうに思うわけであります。前の二十八年の参議院選挙が済んだあとにおきましても、高級公務員出張等回数出張した出先等提出等も願って、いろいろ審議しましたが、かなり深い相関関係があるわけであります。一つ、昨日の閣議決定を生かしていただくためには、十分の措置を今後ともとっていただきたいことを重ねて御希望申し上げておく次第であります。
  8. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 御趣意の点、よく了承いたしました。その御趣意に沿うようにいたしたいと思います。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 この前、政府修正案提案者と、両者に対しましていろいろ御説明を承わったわけでありますが、いろいろ区割の問題、それから悪意に満ちた党利党略であるというふうな、大臣言葉をもってすれば、誤解を受けたというような点についての世論に対する政府の御態度、こういう点いろいろ承わったわけでありますが、次に私は、世論に対して区割等に対しましては、あるいは罰則規定強化等に対しましては、いろいろ考慮が払われたということでありますが、世論が強く反対しておった一つには、特定政治活動選挙運動にもわたることを認めるという条文がございますが、この特定政治活動についてのいろいろの世論の批判というものは相当強かったと思うのです。これらについて伺ってみたいと思います。そこで問題の出発でありますが、特定政治活動選挙運動にもわたることを認めるといわれる、その特定政治活動とは一体何でありますか。
  10. 早川崇

    政府委員早川崇君) 法文で明らかなように、特定政治活動というのは、選挙運動にわたってもよろしいという意味は、たとえば演説会を党として十回開くことができます。その席上で、だれだれさんをぜひ当選さしてほしいというようなことを言っても、このたびは差しつかえないようこなりました。また、演説会場ビラをまくこともいいし、さらに党の宣伝ビラを二千枚に限りまして、候補者ポスター以外に各所に掲示をいたしまして、選挙運動をしてもよろしい、それからトラックは、従来と同様、政党として別に三十台でありまするが、それぞれの候補者数によりまして使える。そういった範囲内で選挙運動をしてもよろしい、こういうことでございまして、無制限選挙運動をしてよろしいという意味ではございませんので、その点明かにしておきたいと思います。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、特定政治活動といいますのは、この法案の中にも記されておりまする演説会でありますとか、宣伝ビラでありますとか、あるいはドラックの宣伝のための政党活動における特別使用でありますとか、今御引例になったような点だけでございますか。
  12. 早川崇

    政府委員早川崇君) その通りであります。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 で、この選挙改正法案によりますと、政党がこういう政党としての選挙活動をすることは、候補者選挙費用の中には加算されないことになっておるわけでございます。選挙は、選挙法というこの理念的なものの考え方をすれば、政党が正しい勝負をきめるところでありますから、これは共通な土俵でなければならないということはだれも言われておる。でありますから、これは一党一派に非常な重点がおかれるとか、有利になるような選挙法であってはならないわけです。これは選挙原則でありますが、ももろん選挙の自由、選挙の平等、選挙の公正の原則が貫かれなければならないわけでございますが、この今のような場合でありますと、これは政党で使う費用というのは幾ら選挙活動にそれが使われても、結局選挙費用の中には加算されないということになりますと、金のある政党と、ない政党とによりまして、非常にこれは公正平等というものを欠いてくるという結果が出ると思うのです。これらに対してはどうお考えになりますか。
  14. 早川崇

    政府委員早川崇君) 政党選挙運動というものは、今申し上げましたように、あくまでもポスター二千枚、演説会場十カ所、トラックを別に利用できる、ビラをまける、そういった限られた範囲のものでありまするから、この費用というものは、非常に莫大なものに及ぶとは考えません。従来の選挙法によりますると、これ以外に数多くの団体が、これは選挙運動とは言いませんけれども、鳥取選挙の、参議院選挙に見られましたように、十何団体というものが憲法改悪反対とか賛成とか、膨大な費用をもって政党演説をやっておる実情から見ますると、今後は一つ政党以外からは、選挙運動や党の宣伝運動には来られないことでありまするので、彼此勘案いたしますると、このたびの選挙法によりまして現行法よりも費用が非常に大きくなる、政党活動費用が大きくなるということは考えられないのではないか、かように考える次第でございます。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 しかし、演説会回数というものは、幾らやったって政党活動としてはいいわけです。また演説会等で使う、あるいはその他に政党宣伝をするビラは、これはどれだけ数多く使っても政党活動としては認められるわけです。あるいはトラック活動も、これは台数は限られておりますけれども、別に回数は限られておるわけではありませんから、これはどれだけ延べ時間を動しても問題はない。こういうことになりますると、非常にこれは、今までよりも以上に政党活動というものが選挙運動オンリーのような形に使われることになる。これは今までは、推薦の自由があったわけでございますが、こういう今、後段の御説明のような点では非常に制限を加えているということになりますと、これは会派間の、あるいは党派間の有利不利というものには少し階段を生じてくるといいますか、ウエートのかかり方が違ってくるということになると思う。
  16. 早川崇

    政府委員早川崇君) 加瀬委員の御指摘の点は誤解がございます。ビラを無制限政党活動であっても張れませんのでございまして、
  17. 加瀬完

    加瀬完君 チラシは、
  18. 早川崇

    政府委員早川崇君) チラシをまくという程度ならよろしいが、あくまでも二千枚、しかも確認団体でなければできない、こういう規制がございますので、その点誤解のないようにお願いいたします。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 政党としての政策を訴えるパンフレット、あるいはチラシ、こういうものに対して制限がありますか。
  20. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 政党政治活動は、公職選挙法二百一条の五の規定する事項で制限を受けておるのでございますから、政策普及宣伝のためのポスタービラというカテゴリーに入らないものは、これは差しつかえないということになります。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 カテゴリーに入れば、
  22. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 入れば制限を受ける。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、たとえば演説会を開き、その演説会場において政党宣伝をするところのビラなり、あるいはパンフレットなり、こういうものを配るということを今度の改正案規定しておりますか。
  24. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 今回の改正案につきましては、二百一条の五の第一項第一号中という改正によりまして、第七号で「ビラ頒布については、その開催する政談演説会会場においてする頒布」、この規定の内容は従前通りでございます。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃ幾らでもやれるんでしょう。
  26. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 会場において頒布する枚数の制限はございません。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 ないんでしょう。だから会場をたくさん作れば、幾らでもそこでビラなりパンフレットなりという宣伝効果もねらうことができる。そうなってくると、資金の潤沢なところと、資金のない党派とでは、そこに選挙活動そのもの階段が生ずると、こういうことになりませんか。
  28. 早川崇

    政府委員早川崇君) 演説会場は、十カ所以上は認めません。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 政党活動としての演説会場もそうですか。
  30. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 各候補者が十回と、それから全国的に政党政治活動を認める必要がありますので、全国で五十回と、そういう計算をいたしております。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 宣伝トラックが回っていって、そこで宣伝活動をしてだ、そこでビラをまいたり何か、まあ集まった者にビラ頒布したり何かすることはどうなんですか。
  32. 早川崇

    政府委員早川崇君) それはできません。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、方面を変えて聞きますけれども、結局ですね。それは今御説明のように、演説活動によっては制限というものを一応加えるという形をとらなければ、法案としての体裁が整わないから、そういうことをおっしゃるでしょう。しかしですね。これは結局政党活動というものが選挙活動というものにプラスをされて、選挙活動そのものが非常に階段を生ずるということを防ぐためには、どうしても政治資金規正というものをきびしくして参らなければ、その効果というものは万全を期し得られないと思う。ところが、政治資金規正の問題については、いろいろ世論もきびしかったけれども、今度の修正案に対しましても、あまり手を入れておらない、この点はどうですか。
  34. 早川崇

    政府委員早川崇君) 政治資金規正の問題は、非常に公平を失してはできませんので、政府といたしましては、社会党からの御提案になっております、従来乱闘国会の直後にも問題になりましたが、政府から補助融資を受けている会社だけではなく、同時にアメリカでやっておりますように、そういった労働組合あるいは公務員官公労、日教組なんかの組合で、組合費を取っており、それを政治運動選挙運動に使うという場合をも一緒に規正しなければならぬのじゃないかという有力な御意見もありまするので、なお慎重に検討の上、政府としては考えなきゃならぬと、こういう段階でございます。今回これの提出というものは、そういう面からも慎重を期しまして、提案しておるわけでございます。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 有力な意見もあるので、後段の問題の、公務員に対する規定も合せて考えなければならないということは、一応ここにおくとしてですよ、政府として、政府特別関係がある団体からですね、政治資金を仰ぐということは好ましいことだとお考えになりますか。大臣だな、それは。
  36. 早川崇

    政府委員早川崇君) これは、われわれといたしましては、政府から補助金をもらっておるなり、あるいは融資を受けている会社法人というものにお金が渡っておる、それからそれと全然ギブ・アンド・テイク関係がなくて、浄財を出すというのでありまするならば、これは差しつかえないではないかという御意見公聴会経団連専務理事さんが申されておりました。そういう御意見もございます。しかし、われわれといたしましては、乱闘国会直後に社会党と当時の与党が折り合わなかった点は、会社という法人国家資金を何らかの意味で受益している会社規正されるのであれば、同時にアメリカ規正しておりまするように、その労働組合、これはまあひいては税金というものにつながるのでありまするから、これも規正する、個人労働者なり、個人の重役なり、研究室なり、何ら差しつかえないが、そういう団体の場合には、同時にやる方が公平ではないか。ところが、それは困るということで、流れたと記憶しておるのでありまして、そういう意味で、われわれは慎重を期しておる、公平にやらなければならないと考えるのであります。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 私はですね。政治資金規正法が公平に行われなければならないということは、御説明を受けるまでもありません。今伺っているのはそういうことではない。政府と特別の関係があると推定される、あるいは現実に特別の関係を生ずるようなおそれのある団体から、ときの与党政治資金を仰ぐということは、好ましいことかどうかということを伺っておる。大臣、これについては、ひとつ責任ある御答弁を伺いたい。
  38. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 政務次官に先に申し上げさせます。
  39. 早川崇

    政府委員早川崇君) この問題は、衆議院公聴会でも問題になりましたが、その……。(「大臣に聞いているのだ、大臣に」と呼ぶ者あり)
  40. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) いや、私はあとで申しますから。
  41. 早川崇

    政府委員早川崇君) 補助金が適正にこれが必要だということで、国家融資なり補助をした。その金額に何らの水増しもないという場合において、法人から別にそれのギブ・アンド・テイクじゃなくて、浄財を寄付するというのであれば差しつかえないではないかという有力な経団連の方の御主張もあり、これも考慮しなければならぬ問題でございましょう。しかしわれわれは、でき得べくんばそういった国家から補助金あるいは融資を受けておる会社という法人自体からはむろん規正した方が望ましい。しかしその場合は、先ほど申しましたように、公正でなければならぬというので、労働組合官公労組合というものをもあわせ規正する方がよりやはり公平ではないか。そういった論点を総合的に勘案いたしまして、政府といたしましては結論を出したいと、そういう意見でございます。
  42. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 政治資金について最も厳格にやっておるアメリカのやり方までいけばけっこうでございますが、たとえば法人は一切できない。個人でなければできないと、ここまで踏み切るまでには日本はまだいっておりません。  今、加瀬委員のおっしゃった、補助金を受けておるところから受けるがいいか悪いかということは、今政務次官もお話しになりました通り、直接その補助金関係が浮き上ってくる場合におきましては、これは私はよいことと思いません。そんな点におきまして、非常に複雑なる関係がございますので、ただいま政務次官が言われた関係におきまして、公平という見地からこのむつかしい問題を解決しなければならぬ、こう考えております。   —————————————
  43. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 委員異動がありましたから、御報告しておきます。委員川村松助君は本日辞任され、新たに西川平治君が委員に任命されました。   —————————————
  44. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、去る衆議院選挙におきまして、当時の民主党、当時の自由党がいろいろな方面から資金を仰いでいるわけでございます。この民主党なり自由党なりが資金を仰いだ関係におきましては、政府は、これは当然もらうべきものをもらったので、別に配慮をする必要はない、こういうふうにお考えですか。
  45. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 選挙のときの関係におきましては、不正でない限りは、私は差しつかえないと思います。実は、この問題で全部表を見ていきますと、保守党にも革新党にも、両方入れているような会社などもございまして、実はどうも判断に苦しんで、そのままにぶちまけて政府から申し上げたような次第でございます。そこも御了承願いたいと思います。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 私は、政治資金規正法通り献金をいたしておりますので、不正だとは申しません。政府として好ましいかどうかということを伺っておる。そこで具体的に伺いますが、石油関係会社のといいますか、石油業者献金というのが非常に多い。そこで、たとえば丸善は一千万を両党に献金いたしておる。少くとも昭和石油なり日本石油なりが四百万、三百万というものを献金いたしております。こういう石油会社政府献金を受けても、別に補助金その他においてこれが将来を左右するという関係は全然ない、こういうことになりますか。
  47. 早川崇

    政府委員早川崇君) むろんございません。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 機械設備等試作補助金というものが政府にはございますね。この中から、丸善石油日本石油にはこの補助金が出ております。これはどういうことになりますか。
  49. 早川崇

    政府委員早川崇君) それと正常な政治献金とは、別に因果関係はないと思います。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 それは因果関係がないとあなた方答弁するでしょう、もらっているのだから。しかし、たとえば四百万献金をされて千二百万補助金を出す、一千万献金されて幾ら幾ら補助金を出す、こういうことは関係がありと思われる。第三者にしてもそう思わざるを得ない状況というものを提供しているということにはなりませんか。もっと言うならば、瓜田にくつを入れずという言葉がございますが、疑われるような材料を政府は提供しているのではないかという誤解を生ぜしめる。一歩譲っても、誤解を生ぜしめる原因を提供しているということにはなりませんか。
  51. 早川崇

    政府委員早川崇君) 包括的な補助金でございませんので、それぞれの、たとえば機械近代化、いろいろ法律にきまった補助ということだと思うのでございまして、そういう意味では、私は刑事事件にひっかかるようないわゆる贈収賄的なものではむろんないのでありますから、何らそういう点で特にとやかく政府が申し上げる問題ではないと思います。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 私は、決算委員会の質問をしているわけでもなければ、別にあなた方をお取調べしているわけでもない。公正な選挙というものを期するためには、世論というものは、この政治資金規正というものをきびしくしなければならぬということが強く言われている。そこで、特に政府与党に対するところの献金というものに対しては、それがやがて何かの形で献金者に利益を与えられるという経過をとるようであっては、これはいつまでたっても選挙の公正というものは期し得られないということで、この政治献金というものに問題をわれわれは感じておるのです。そういう関係で、石油業者献金というものは非常に多いけれども、政府は、何らこれに対して別にあと補助金をやったというような関係はないのかと、こう聞いたら、そういうことはないとおっしゃる。こういうふうにあるじゃないかと言われれば、それは刑事的な不正はないという。刑事的な問題を問うているのではない。こういうふうな関係というものが現実に現われておるような、また将来現われるであろうということが予想されるような業者に対して、その業者から献金を受けるということに、政治の公正というものはますますプラスされていくであろうか、マイナスされてくるであろうかということを聞いておる。こういう方法が、私は最初の質問に申し上げたように、好ましい方法だとお考えになりますか、大臣
  53. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) むろん会社の計算といたしましては、貸借対照表その他が示す通り、入る金と出る金の関係になりますが、その補助金政党献金した金との関連がどうなるかということは、これは会社考えるところでございます。従って、政府といたしましては、この金が政党へ入った場合にどうなるかということは、因果関係をすぐつかまえることができないと政務次官が言われましたが、私もそう思います。しかし、世論のうちの一つとして、先ほど政務次官が引用されましたる経団連等の御意見もやはり聞かなければならぬところと思います。現状におきまして、政治資金の豊富なるアメリカ等と違いまして、日本におきましては、なかなか大きな問題でございます。従って、今、加瀬委員の言われたような、なきに越したことはないのでございますが、その政党を支持するために献金がありました場合におきましては、これを受けてもいいではないかと、私はかように思います。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 先ほどから政府は、経団連意見経団連意見ということを言われますが、国民の意見は、こういう政治献金は受けない方がいいと、こういう意見が圧倒的だろうと思う。この国民の意見経団連意見と、政府経団連意見をとるということに了解してよろしいのでございますか。
  55. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 同様の問題は、労働組合から受ける金についてもあるということを政務次官が言われましたが、いずれを問わず、入る金につきましては、実際はないがいいのでございます。しかし、その政党を支持するために寄付があった場合においては、これは受けて私は差しつかえないと、こう思うのでございます。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 私の伺っておるのは、労働組合から政治献金を受けることがいいか悪いかということを聞いておるのではない。そういう点について、あなた方に御意見があって言うならば、私も意見がある。しかし、ここで問題にしておるのは、政府と特殊関係を生ずる一種のリベートのような形に見られる政治献金というものを、時の政府は、受けるべきか、受けない方がいいかということを問題にしておるのです。そこで富士製鉄は一千五十万円献金をいたしておるが、富士製鉄には補助金はやっておりませんか。
  57. 早川崇

    政府委員早川崇君) 具体的の資料をもって御答弁いたします。
  58. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 本年度の予算におきましては、通産省関係で、鉄鋼関係補助金は費目に上っておらないように見ております。
  59. 加瀬完

    加瀬完君 確かに上っておりませんか。
  60. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) これは四月に、私どもの方で政府の予算費目について調べたのでありますが、われわれの調べでは、通産省関係では上っておらないのでございます。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 三十年度はどうですか。政治献金をもらった、その年にはくれていないのですか。
  62. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 追って調査の上、御回答申し上げます。
  63. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、それは調査の上、お答えいただきまして、また質問いたすことにいたします。  それから経済再建懇談会というものから自由党は六千七百万円、民主党は六千六百万円という献金を受けておる。この経済再建懇談会というものはどういうものですか。
  64. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 経済再建懇談会は、私の記憶によりますれば、前回の衆議院選挙の前に、経団連を中心として財界人が作った組織でございます。できるだけ選挙の、何と申しますか、政治資金を合理的にできるだけ縮小しよう。このようなねらいで作られたように聞いておりますが、このような組織を作って、政治家から財界に対して寄付をしてくれという申し入れに対して、そこでまとめて寄付をしよう、こういう行為に出られたように記憶しております。
  65. 加瀬完

    加瀬完君 先ほどから、大臣政務次官経団連の御意見々々々ということがたびたび出ておりましたが、一億二千万もこえる金をもらっておりますので、やはり経団連意見というものを尊重しなければならない、こういうふうにこの金額から受け取れますが、そのように解釈してよろしゅうございますか。
  66. 早川崇

    政府委員早川崇君) 思うに、経団連は別に補助金をどうこうというのではなくって、いわゆる、私をして言わしむれば、一つの資本主義的な、あるいはそういった政策を奉ずる政党に対して浄財を寄付するという観点だろうと思います。富士製鉄の場合に、私はちょっとわからないのですが、社会党の右派に二百万ですか、左派に百万をやはり富士製鉄は寄付している、こういうのは私はわかりません。時の与党にも寄付する、社会党の反対党にもそれぞれ二百万、百万というように寄付している、これは私は、その会社がどういうアイデアでやっているのか存じないのでありまして、やはり労働組合が社会主義を好むのであれば総評が寄付している。これは確かにある意味では妥当だと思うのでありますが、そういう意味合いでございまして、特にこれを補助金と結びつけたりしたり、そういうことは私はどうかと、かように思うのです。
  67. 加瀬完

    加瀬完君 私は、経済再建懇談会の一億二千何百万というものを補助金には結びつけておらない。あなた方の方で経団連の御意見々々々というものを再三申しますので、これだけの金をもらっておるその経済再建懇談会というもの自体が経団連関係であるとすれば、これだけの金をもらっておるので、御意見々々々と尊重しなければならないことになるのではないかと、こうあなた方のおっしゃった事実について伺っているのです。
  68. 早川崇

    政府委員早川崇君) 公聴人としてその専務理事が言われたことなんかは、他の公聴人の御意見と同様に、われわれは一つ意見として尊重する価値があるのではないかという意味でございまして、経団連の言うことを唯々諾々として何でも聞く、こういう意味ではございません。
  69. 加瀬完

    加瀬完君 しかし、先ほどから経団連の御意見をだいぶ尊重しているらしい。これだけの政治献金というものを受けて、補助金をやらないということは別にしても、その意向なり意見なりというものを尊重しなければならないということは、どうしてもこれはのがれられないことになると思う。しかし、日本の経済というものは、経団連の意向だけで果して動いてよろしいものかどうかということは、これは政府としては考えなければならないと思う。そこで、経団連というような特殊な団体から一億に余る献金というものをただ無条件に受けるということ、これは社会党ももらっていますよ、百五十万ですか。一億二千万に対する百五十万というこの比率から考えて、社会党だってもらっているじゃないかという理屈は成り立たないと思う。これだけの金額というものを無条件に受けて、それで日本の経済再建というもの、あるいは日本の経済の振興というものは、経団連というものから何ら制約されないで行われていくんだということが言い得るでありましょうか。政治が献金によって左右されないということが言い得るでありましようか。
  70. 早川崇

    政府委員早川崇君) われわれ、党のことには触れたくありませんが、政府は、与党に対してこれだけの献金があったということで、全然政策上左右されるものではございません。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 左右されておるかされておらぬかということは、幾らでも材料をこちらから出して、これだけ左右しているじゃないかということはわれわれは持っているのです。しかし、それはその次の機会にして、もう少し質問を進めます。  あなた方は、社会党ももらっているじゃないか、なにももらっているじゃないかと言われますので、それでは東亜燃料、あるいは東洋製罐、こういうものからは民主党だけしかもらっておりませんけれども、これは旧民主党とどういう御関係にあるのですか。東洋製罐だけでけっこうです。東洋製罐は一千万、民主党だけに献金しておりますが、どういう関係があるのですか。
  72. 早川崇

    政府委員早川崇君) 政府がそういう関係答弁する立場にございません。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 現在の政府は、鳩山総裁による民主党政府の延長でありますから、当然民主党が受けた一千万の東洋製罐というものとの関係は、聞けば答えなければならないと思う。大臣どうですか。
  74. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 党に寄付した金につきまして、政府がそれと関係を持っているかという立場におきましては、私自身もその時分落選しておりまして、全然関係がございませんし、また民主党関係については、私はここで申し上げることは、これはごかんべん願いたいと思います。わかりませんのです。実際知りません。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、東洋製罐というものから政府へ物品を納入したり、あるいはそういう東洋製罐に特殊な便宜を与えておったり、そういう事実はございませんか。
  76. 早川崇

    政府委員早川崇君) そこまで実は存じません。
  77. 加瀬完

    加瀬完君 わかっておらなければ、御調査をして、確実な御回答をいただきたいと思います。  次の問題は、これはわかりません、それは関係がありませんではのがれられないと思いますから、はっきり答えていただきたいと思う。  山一、日興、野村といったような証券会社は、政府とどういう御関係にありますか。法律的にも、経済的にでもけっこうです。特殊なこまかいことはいいのです。
  78. 早川崇

    政府委員早川崇君) 政府といたしましては、何ら法的に関係がございません。
  79. 加瀬完

    加瀬完君 経済的には関係がありませんか。
  80. 早川崇

    政府委員早川崇君) どういう意味かは存じませんが、政府の経済政策がそういう証券会社関係するという意味ならば、あらゆる産業が時の政府に関連を持つわけでございまして、特殊な別の意味の経済関係はむろんございません。
  81. 加瀬完

    加瀬完君 山一や日興その他の証券会社政府から便宜を供されるというような関係は何もございませんか。
  82. 早川崇

    政府委員早川崇君) 証券政策上のいろいろな関連というものはあるでしょうが、特に某々会社が利益するためにというような関係はございません。
  83. 加瀬完

    加瀬完君 証券政策上の関係というのはどういうことですか。
  84. 早川崇

    政府委員早川崇君) わかりません。
  85. 加瀬完

    加瀬完君 大臣、これは重要な問題でありますから、証券政策上どういう関係があるかということは、御調査の上お答え願います。
  86. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 大蔵省の所管事務といたしましては、証券会社の取り締りをすることは事実でございますが、その献金問題と、もしくは経済問題と直接の関係は断じてないと私は思います。
  87. 加瀬完

    加瀬完君 証券会社は、合計一千万円を時の民主党献金している。そこで今、言ったような政府政策上のことで関係があるといえば、この一千万円というものと無関係だとは言われないから質問している。そこで、先ほどの私の質問には詳しく御回答をしていただいて、また午後にでも質問をすることにいたします。
  88. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 特殊な会社が寄付したにつきまして、関係のないものをお調べして申し上げるということは、私は政府としてもできぬと思います。こういう金が入ったということと因果関係があるといたして、それがまた法律に触れる場合でございましたならば格別でございますが、どこへどう入って、どういう理由であるという事柄は、補助金を受けた、会社の計算でいえば収入に入ります、それでもって。寄付金を出したといえば、支出に入ります。その貸借対照上から、これが因果関係があるかというようなことは、その会社自体の判断であり、これを受ける方がそれをそれと知ってやりましたならば、問題が起ると思います。これを調べて御返事するということが、事務当局でできれば格別でございますが、私はかように判断いたしております。
  89. 加瀬完

    加瀬完君 私が先ほどお願いしたのは、そういうことじゃない。証券政策上証券会社政府はどういう……、もう一回言い直します。証券政策上、証券会社とどういう関係を生ずるか、証券政策上についてであると言うから、それについてどんなような具体的な関係があるかということを証券政策上の立場で答えていただきたいということでございます。
  90. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 大蔵大臣の所管といたしまして、証券政策考えることはもちろんあります。しかし、個々の会社につきましては、関係を持つことは断じてないと私は信じます。
  91. 加瀬完

    加瀬完君 断じてあるかないかということは、これから資料をいただきまして、さらに質問を重ねて、それから結論が出ることで、初めから断じて、あるからもらったと言うばかはないはずであります。そこで、さらに聞きますけれども、日本精糖工業会というものは、政府政策関係がございませんか。
  92. 早川崇

    政府委員早川崇君) 別に特殊な関係はございません。
  93. 加瀬完

    加瀬完君 これも政策関係がございませんか。
  94. 早川崇

    政府委員早川崇君) 先ほど申し上げましたように、政府の経済政策全般は、あらゆる産業に関連を持つので、加瀬先生の御指摘の関係はないと存じます。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 精糖工業というものに対して、精糖工業政策上、政府がどういう政策をとっておるか、それを明らかにしてもらえれば、二千六百万という献金が精糖工業の政策の上にこういう影響を及ぼすか及ぼさないかということがわれわれは判断できる。精糖工業が非常に問題になっていることは周知の通りであります。多額の献金があることも、これまた、今指摘した通りであります。そうなってくると、関係がございません、私どもにはわかりませんでは通らないと思う。これだけのものはもらっているのだから、もらっているならば、その精糖会社あるいは精糖工業会というものとはこういう立場だということも明言できないということはない。政治資金を取り締っているのは政府の責任なんです。取締りの政府がそれが明確にならぬということはあり得ない、どうです、この点は。
  96. 早川崇

    政府委員早川崇君) 先ほどたびたび申し上げましたように、そういう経団連なりいろいろの会社は自由企業、一つ政策に共鳴して献金したものでありまして、同じようなことは、たとえば労働組合なり、日教組なりが給料を値上げするとか、あるいはそれによって利益を得るという観点から社会党に御寄付なさっておるのと同様でございまして、これとギブ・アンド・テークの刑事事件的な関係は全然ない、こう申し上げておるのでございます。
  97. 加瀬完

    加瀬完君 あなた方は、苦しくなってくると労働組合とか、社会党とかいうものを持ち出しますけれども、労働組合社会党との関係と、政府に特殊関係のある会社政府に対する政治献金との関係は、全然これは立場が違うと思うのです。あなた方が自由民主党の立場として、日教組の社会党に対する関係、総評の社会党に対する関係ということを党としていろいろと攻撃をされ、あるいは指摘をいたしまして、政治資金規正の中に入れるということは、それは別のところです。別の機会でなすべきことで、私がここで問題にしておりますことは、時の与党なり、時の政権を持っているものに対して、その政権と特殊関係があり、特殊関係を生ずるおそれのある団体から多額の政治献金がいっていることは、果して選挙の公正、政党活動の公正というものが期し得られるかどうか、こういう立場で聞いておるのでございますから、そういうお立場でお答えをいただきたいのであります。  それならば、大臣にもう一度念を押しますが、今、私が、ごく少い例でございますが、あげましたけれども、われわれの立場からすれば、時の政権と特殊の関係を生ずるおそれのあるこういう献金というものは、当然これは政治資金規正の方で排除していかなければならないものだというふうに考えますが、大臣は、これは当然な取得であるというふうにお考えになりますか。
  98. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 国におきまして経済政策を立てます。その経済政策を実行いたします。しかし、それが個々の会社を相手にしたものでなく、また個々の会社と直接の関係がないものでございましたならば、政府としては、これにかれこれ言うべきものでないと私は思います。因果関係があり、具体的に悪いことをしたというならば、これはもちろんお言葉通りだろうと思います。
  99. 加瀬完

    加瀬完君 政党活動をする資金が、特殊関係のある団体から大量仰いでおって、全然その政策なりあるいは行政のもろもろの措置なんというものは、これらに動かされないで進む、こう言い切れますか。一歩下りましても、影響されるおそれがあるという心配を持たなければならないというお立場はお認めになりませんか。
  100. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 経済政策は、国のためにやるのでございまして、そういう特殊な関係を持ってすべきものではないと私は信じます。
  101. 加瀬完

    加瀬完君 それはそうですよ。そうやられてはたまりませんよ。しかし、そう称しながらも、動かされるおそれがあると、これは警戒をすべきではございませんか。全然もらうのはもらうのだ、やることば勝手だ、こういう立場で因果関係がないと言い切れますか。
  102. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 警戒するどころではなく、全然考えてはいかぬことと思います。
  103. 加瀬完

    加瀬完君 しかし、現実の改正法案によりましても、こうして得られた政治資金というものによって選挙活動を活発にできる党派、こういうふうな政治資金関係から、資金困難のために比較いたしまして政党活動が活発にできないところの党派、当然これは生じて参るわけであります。そうなって参りますると、これは、選挙の公平というものは、果して保たれることになるかどうか、こういう観点から私は、この政治資金というものを検討して参らなければならないと思うのであります。  そこで、今度の法案によりますると、政党活動というものは、非常に選挙活動というものに影響が多いのですから、かつ現行法によりましても、候補者政党及び支部に対する寄付というものは大幅に認められてる。そうなっておりますと、たとえば政党献金で集まった金を公認候補者に対する補助とか何とかいうことでもって支出をすれば、この資金というものは、非常に選挙の公正あるいは平等という原則からはずれるような原因を作ってくるということになるわけです。こういう点は、あるいはこういう点からこの政治資金についての検討というものは、私は当然もっとなさるべきはずであると思いますけれども、今度の法案につきましては、むしろこれが逆にいっているような傾向がございますけれども、一体大臣あるいは政府のお立場というのは、どういうお立場をおとりになって、今のような結論というものをお出しになったのか。
  104. 早川崇

    政府委員早川崇君) 先ほどから、加瀬委員のいろいろな御質問を総合してお答え申し上げますと、政府から補助金なりあるいは融資を受けている会社の寄付は遠慮しろ、これは一つの有力な御意見だと思います。同時に、しからば同じ税金からその俸給をもらって労働組合を形成しておる、しかもそれは、労組の費用として納めているので、個人のふところに入って自由に献金するのではないというような場合がありまするから、アメリカのやっているように、そういった補助金その他を受けている会社と同様に、税金によって何らかの収入を得ている組合として、個人としてはいいが、規正すべきではないか、そうしなければ公平な立場から、その政府としてはアン・フェアになる。公平な話し合いがつけば、乱闘国会直後にこの法案は成立しておったのであります。これが依然としてこのたび出て参りました社会党の案におきましてもそういう片手落ちがありますので、政府としては、なおこういった問題は慎重に考慮しなければならぬ、こう申しておるわけであります。  なお、今度の選挙法は、政党費用選挙運動に関する限りは、先ほど申し上げましたように、十回の選挙演説会、二千枚のポスター、それからビラという程度に限定されておりまするから、これも選挙費用に加算したらどうかという御議論がございまするが、この範囲のものでありまするならば、あえて政党費用まで選挙費用に入れる必要はないと判断いたしましたので、これは別にいたしております。
  105. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 暫時休憩いたします。加瀬君の質問は午後続行します。午後は、一時半から再開いたします。    午後零時四十一分休憩    ————・————    午後二時九分開会
  106. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 委員会を再開いたします。  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付案について質疑を続行いたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  107. 加瀬完

    加瀬完君 午前中、政治資金問題でいろいろ尋ねましたのは、期するところは結局政党活動というものが、大幅に選挙活動に及んでもいいという認め方をして参りますと、政党資金というものが選挙活動に、非常に金のある政党と金のない政党階段を生じてくる、そういう点から質問をしているわけです。具体的に午後伺ってみたいと思うんですが、結局百九十九条の二のただし書きによりますと、候補者が、政党及び支部に対して寄付をすることは、これは制限がないように私は記憶をいたしておるわけであります。そうすると、資金のたくさんある政党は、その個人なら個人にその資金を分配することによりまして、政党の支部といったようなものに潤沢に資金を流して、政党支部の活動として別の面からの選挙活動というものができる。極端にいうならば政治活動の名目で選挙活動ができるということになると思うんです。これでは法定費用というものをきめたり、あるいは候補者自身にどんなに選挙活動の金額的な上からの制限を加えましても、この制限というものは全然意味をなさないことになるんじゃないか、こういう点はどうですか。
  108. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 第百九十九条の二のただし書きの規定は、公職の候補者または公職の候補者となろうとする者は、政党その他の政治団体またはその支部に対し寄付をする場合は差しつかえない。このようなただし書きに相なっております。それから今度政府提案いたしました二百一条の十の第八項で、従来選挙におきます政党政治活動は、選挙運動と実質的には相当近いものがありましたが、今回小選挙区制の採用に伴いましてその間の区別がなしがたい。特定政党を支持するという、政党政治活動は、直ちに特定候補者選挙運動ということに非常に近接して参ります。そういたしますと、従来政党政治活動で認めておりました点が、小選挙区制の採用に伴って、どうしてもその間に制限されました範囲内において、政党政治活動が公認候補者のための選挙運動となることを妨げない、というふみ切りをいたしませんと、逆に選挙運動違反ということに理論的にはなる場合が起ってくるのでございます。そのような見地から第八項を規定いたしたのでございます。従いまして選挙運動になる、従来から見ますと、法規的には選挙運動になり得るということになったわけでございますが、ひるがえって考えてみますと、従来の政党政治活動におきましても、政党政治活動が、個々の候補者選挙運動に対して有利に働くということは、これは否定できないところだろうと思います。そのような見地からいたしまして、今回選挙運動となってもいいということにいたしたのでございますが、従来政党政治活動は、これは選挙の法定費用のワク外で別問題であって、今回選挙運動にわたってもよろしいということを規定いたしましても、政党政治活動の面では同じではないか、このような見地からこのような立法をいたしております。従いまして候補者が御質問の場合のように、金をもって政党の支部に寄付をして、その支部が選挙運動をやる、そのような不合理は起らないか、このような御質問だと思うのでありますが、これは従来政党政治活動が、金のある政党もありましょうし、そうでない場合もあろう。ただわれわれといたしましては、限られたる範囲内において政党政治活動ができるのでありますから、おのずからそこには限界がある、ワクがある。従いまして選挙運動の法定費用の方から、はずしておるのであります。この点は従来と同じという立て方にいたしたのであります。
  109. 加瀬完

    加瀬完君 そのワクがあるということはわかるんです。そのワクが伸びたか縮んだかという問題なんです、現行法から見れば。改正法は、結局政治活動選挙活動にわたってもいいというワクは拡大された、こう見られるのじゃないかということです。
  110. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) おっしゃるように、理論的にいいますれば、従来は政党政治活動選挙運動というものは区別しておりましたから、その面におきまして選挙運動にはわたってもよろしいという規定をいたしましたことは、これは法律的にワクが拡張になったわけであります。それから運動自体、政党政治活動自体、態様を見ましても、これは演説会回数とかそういうものにおきましては、従来よりも若干拡大されております。しかしながらこれは拡大されましてもその範囲内のワクでありまして、政党政治活動の経費というものは、これは政党に対して平等に解放されておる問題でありますから、これは公平の見地からいって差しつかえないんではないか、このように考えておる次第であります。
  111. 加瀬完

    加瀬完君 政府改正の意図というものは、一応政治活動の態様というものをも拡大をした、こういう立場はさっき御説明通り、こういうふうに政治活動をも拡大をする、しかも百九十九条の二のただし書きのような態様というものは、これは認めておられる。そうなって参りますと、政治活動は拡大したけれども、政党資金というものによって選挙階段を生ずることがないように、公平の原則のワクの中に当てはまるようにという、こういう配慮というものがなければ、拡大をしておいて、それで金の使い方というものはある程度無制限にしておく、こういうことであってこの資金関係というものを一つもしぼらなければ、公平の原則というものは、資金関係においては守られていかないという不公平を生ずるんじゃないか、こういう心配が当然生じてくると思う。私がここで再三質問をいたしておりますのは、政治活動選挙活動にわたるようにしていくということが悪いということを言っているんじゃない。そういうワクを広げると、それから一方は、また先ほど例にあげたような面はそのまま残しておく、そうすると、選挙と金というものの関係が、今よりもより以上に作用するんじゃないか。それでその資金関係というものは、それで制限を加えないということであっては、選挙の公平というものは、公平を政府が意図しても、公平というものの実現にはほど遠い結果が現われるという心配が当然生ずるんじゃないか、こういう点なんです。
  112. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 公職選挙法の第百九十九条の二の規定は、第二十国会において改正されました規定で、御承知の通りでございますが、この関係におきましては、候補者が自分の金を政党支部に寄付をして、それで選挙運動をやるということは不合理ではないかというような御見解のようでありますが、これは候補者本人が政党支部に寄付をしなくても、政党本部で資金を集めて、それで政党支部に金を流してくる場合が考えられますから、金額の多少ということの方にむしろ選挙の方の不公平があるんじゃないか。第二百一条の十の第八項の、選挙運動となることを妨げないと踏み切った点の不合理を御指摘になりますれば、むしろそっちの方に本質的な問題があるのである。百九十九条の二の寄付の禁止という関係、第百九十九条の二の規定から来る問題は、私はただそういう場合もこれは法律で認めておりますから、あるとは思いますけれども、それは直接の問題ではなく、二百一条の十の第八項の、選挙運動となることを妨げないということに踏み切ることの可否、ということになるのじゃないかと思っております。この点につきましては先ほど申し上げましたように、小選挙区になりますれば、どうしても踏み切りませんと、従来の選挙の実態から見まして、政党政治活動選挙運動というものは、これは非常に密接不可分になって参りますので、これは踏み切ることにいたしたのでございます。ただその場合に、なぜしからば政党政治活動についても選挙運動の法定費用の制度のようなものを考えなかったのか、こういう御質問ではないかと思うのでございますが、これにつきましてはたびたび申し上げております通り、従来より若干政党政治活動範囲が拡大されておりますが、従来はそれにつきまして政党費用制限というものはやっておりませんし、また演説会回数、その他ポスターの枚数等によって制限されておりますれば、おのずから費用というものはその中で制限されるのではないか。何十万円あるいは何千万円という厳密の数字をとらなくても、同じ平等に規定されておりますので、その点は従来と同様ではないか、このような判断に立っておるのでございます。
  113. 加瀬完

    加瀬完君 政務次官なり大臣なりがそういう選挙の事情に暗いことを御答弁なさるなら、これはしろうとだから仕方がないということにもなる。選挙部長は選挙部長という立場で、今までの中選挙区制ですら、たくさんの買収事犯あるいは供応事犯というものがあって、選挙の法定費用というものがきめてあっても、法定費用というものでは選挙が行われないということは百も承知のはずだ。それが小選挙区になると、あなた方の提出された資料によっても明らかなように、小選挙区は中選挙区よりも競争が激甚になるであろうということは、当然予想されることなんです。個人間の競争も激甚になれば、政党間の対立というものも激甚になる。これは一応客観的にそういう前提を私は認定せざるを得ない。政党間も競争が激しくなり、個人間も激甚になるということになれば、今までの事例から考えても、これは選挙の公正、平等を害するような事犯がたくさん生ずるのではないか、という一応の対策なりおそれなりというものは、これは持たなければならない。これはこの前提というものは、選挙部長お認めになると思うのです。そうなってくると、結局激甚になって一番起る問題は、選挙にたくさん金がかかるということ、金によって供応なり買収なりが行われるということをどう規制するかということを考えていかないと、最低段階の選挙の公正というものも期することができなくなるということも、これは客観的に言えると思うのです。そこで政党政治活動選挙活動に及んでいいというふうにワクを広げていけば、これは今までよりも政党選挙活動ができるわけです。政治活動という名のもとに選挙活動ができるわけです。従って今までよりも費用もたくさんかかるに違いない。それから政党間の激甚な競争になりますと、さらに費用を必要とするということにもなる。個人においてもやっぱり同じである。しかも百九十九条の二のようなものを残しておけば、これは幾らでも個人が金を出せるような逃げ道というものを認めておるというようなことになる。今まで以上に激甚な競争になってくる。小選挙区は経費が節減されるというけれども、歴史的な事実というものがその逆なんです。だけれども選挙費用というものは押えられるけれども、実際の選挙活動をするところの資金というものは、政党支部なり何なりに候補者が寄付できる。そうなるとどうしても今度の小選挙区が、あなた方の考える小選挙区制による選挙法によれば、これは相当金というものに規制を加えていかなければ、選挙に対する弊害というものは非常に起ってくるのじゃないかという予想を、当然私は立案者としては考慮をすべきだと思うのです。ところがその資金規制については非常にこれはオープンだ、こういうことでは、私は果して選挙の公平、公正というものが期し得られるか、あるいは党派間、あるいは会派間の平等というものを期し得られるか、こういう点に非常な大きな心配というものを新しく私は感ずる。私の伺っているのはその点なのです。
  114. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 政党政治活動が今回の政府提案によって若干拡大はされておりますが、演説会回数が増加されたこと等でありまして、これは従来におきましても政党がおやりになっていることでございます。でありますから、それが選挙運動にわたってもよろしいという踏み切り方をいたしましたのは、再三申し上げておりますように選挙運動との区別がつきかねます。これが選挙運動にわたってはいけないという従来の建前でありますれば、政党政治活動選挙運動の違反になるおそれが起ってくるということから踏み切ったのでありまして、経費の点におきましてはそれほど拡大にならないのではないかと、このように考えております。  なお百九十九条の二のただし書きの規定によって候補者政党に寄付をする。それによって政党政治活動をするということを再三申されますが、そのような場合もあろうかと思いますが、候補者が寄付をしない。ほかの第三者が政党に寄付をして、政党政治活動をする場合も考えられますので、私どもは、百九十九条の二があることによって選挙の公正が著しく害されるというふうには考えておらないのでございます。
  115. 加瀬完

    加瀬完君 これは政治的な問題でございますから大臣にお答えいただいた方がよろしいと思いますので、大臣にお伺いいたします。今の問題は、お答えの限りにおいては選挙部長のお答えも私ははずれておるとは思っておらない。私の言うのは、一応選挙活動にわたってもいいという幅に政党政治活動というものが許された、こういう一つの主体的な条件があると思う。で環境としては非常に政党の競争、個人間の競争が激烈をきわめるであろうという、こういう客観的な情勢というものがある。これがからみ合って参りますと、小選挙区によって公明選挙を期するという御説明もありましたけれども、公明選挙の反対の行為というものが頻発するのではないかというおそれというものを私は抱かざるを得ないと思う。これは小選挙区というものを実施をする、それで二大政党というものになりますか、一大政党、一小政党という対立になりますか、いずれにしましても政党の責任というものは非常に、現在以上に強化されると思う。従いましてその政党が健全でなければ、これはまた再びわれわれは政党政治の没落を覚悟しなければならぬ。この政党の健全化というものは与野党とも願っていかなければならない問題だろうと思う。それから小選挙区になりまして、選挙の公正や平等というものが期し得られなかったら、これはまるで暗黒政治です。こうなって参りますと、政党の健全化や選挙の公正を何によって一体維持していくかということになりますると、結局政治資金規正というところにねらいをつけなければ、この小選挙区制を実施する、公明選挙という一つの目的を達することができないということになると思う。そこで、部長の言われるように政治活動の幅を広めて選挙活動に及ぶまでしたことは悪いとは言わない、あるいは支部の活動資金を提供することが悪いとは言わない。しかしそれらのもろもろの条件が作用して、政治資金規正されておらないと膨大な経費を要する。それに従って膨大な献金をも要求するように政党がなってきたら、政治としては警戒を要する事態が生ずるのではないか。従って公明な選挙政党の健全ということを願うならば、なぜ一体資金規正というものに、もっときびしい態度で立案者は臨まなかったか。午前中から引き続いて私の伺いたいと思う点はその点なんです。
  116. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) だんだんのお話を伺いまして、結局するところ、今回の改正政党選挙運動に関する問題を広げていって、そしていろいろなことができるようになった。しかし午前に政務次官も、また今選挙部長も言いましたように、その運動の幅というものは従来よりは広がったのじゃございません。かりに広がらないとしても、一番根本の問題は、政治資金というものが不平等であってやったならば不公平という結果が起るのじゃないか、この点が非常に大きな問題だと思います。これはその政党を支持するためにいろいろな方面からのいろいろな資金が集まるわけで、この方面をどうこうしたということは根本論にわたり、あるいはアメリカのような個人寄付でなければならぬというやり方もございましょうが、今回の改正におきまして、小選挙区制度をすればいろいろ競争も激烈になり、その根本は政治資金にある。その政治資金についてもっと規正を厳格にしなければならぬということは考えられるところでございます。しかし午前にも申しましたが、一昨年の騒ぎ以来各党が集まりまして、そのときの資料などを見ますると、政治資金についてこの問題はどうする、たとえば先ほど御指摘になった補助金を受けるところの会社の問題をどうする、あるいは労働組合から入る問題をどうする、各党各派の意見がずっと出ておりまして、可とするもの否とするもの両方出ております。いろいろな問題を片づけていった後に残ったのが政治資金規正問題で、各党の間でまとまらずに今日に参っておるのでございます。これは実情でございます。  そこでこれをどうするかということにつきましての一つ考え方は、政党法を作ってそのときになって政治資金規正というものを入れたらいいという説もあり、また何とか調整をして政治資金につきましてのこの問題点を解決したらいい、こういう説もございましたが、そこまでまだまとまらずに検討中になっておる上に、政党法そのものにつきましても、今日は政治資金規正法の第三条にあるだけの規定で何も出ておりません。その幅の問題もあるいは組織の問題も、また運動の問題も、あらゆる点にわたって政党法を作らなきゃならぬが、そのときに政治資金規正というものを厳格なる姿において表わそう。今回見送りましたということは、小選挙区制度になれば激烈になるにかかわらずなお見送ったという問題につきましては、はなはだ私どもも案を得たいと思っておりましたが、そこまでいきませんので、今回政治資金規正につきましては手を触れなかったわけでございます。それなのになぜ政党運動の幅を広げたか、政党運動の幅はちょっと見ると非常に広がったようでございますが、従来の点より、あるいはポスターの数とかいう点につきましては広がっておりますが、全体としてそれが選挙運動に対しましての資金の幅というものは、私はそう広がったものでないと思います。中選挙区の現状とそんなに開きはないものではないか、かように考えるのでございます。また一面に政治資金を同額にしてやれば、これは一つの理想の選挙が行われるかもしれませんが、何といたしましても政治資金はその政党を支持しようというお方々から出るものでございまして、これを押える方法もない、かように私は思うのでございます。
  117. 加瀬完

    加瀬完君 政治資金の問題については、各党間の意見がまとまらなかったから、こういうことを一つの御理由になさっておられる。しかし区割なんかの問題では、各党の意見も、世論もまとまらなかったときに、これは区割案というものを現在は撤回いたしましたけれども、一応強行しようとして提案をいたしておるわけであります。これはいい悪いの判断は別といたしまして、政党なり政府なりが、選挙法なら選挙法、何々法案なら法案というものを出すならば、それはその党のあるいはその政府の立場として、はっきりと打ち出された方針というものがあってしかるべきことなんで、区割がこれでいいと思うならば、いいと思う区割を出すということに、私は何もその方法そのものに異存を唱えるものではないのです。従って各党間の意見がまとまらなくても、自由民主党として、あるいは鳩山内閣として、資金規正はかくあるべきだというものがあったら、当然選挙法改正に当ってはそれを打ち出すべきが私は至当だと思う。出さなかったということは各党間の意見がまとまらないというけれども、各党間の意見がまとまらないものも出しておるものもたくさんあるのだから、これだけをまとまらないと言って、各党の意見を引っ込める理由にはならないのじゃないか。  もう一つ、たびたび政府選挙制度調査会の意見、答申というものを大幅に受け入れてこのような案を作ったということがたびたび繰り返されて説明されるわけであります。そこで選挙制度調査会では、この政党資金規正の問題については答申はなかったのか、この二点伺います。
  118. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) その前に申し上げたいのは、俗にいわゆる自粛三法ということがあの、騒ぎのあったあとで起った問題でございまして、国会法と選挙法政治資金規正法とこれだけ三つありまして、幾たびかにわたる御会合をなさったようです。私はそのときはちょうど議員でありませんでしたが、記録を読んでみるとそうなっております。そのうちで選挙法は今度ここに出した。それから国会法については一部分を考えた。政治資金規正法は残ったのでございますが、その輪議のあとが記録資料を見てみましても、なかなかまとまらない点は先ほど申し上げた通りでございます。しからばまとまらぬ、まとまるというのは、区割はどうかと申しますと、これは私が申し上げるまでもなく、社会党の方々の考えは、中選挙区的の考えが強いのでございます。われ一われの小選挙区制度とプラットホームが違うわけでございまして、私は別に話し合いをするということをきらうわけでも何でもございませんし、昭和二十六年以来ずっと通した考え方、ことに政府が関与しておりまする、諮問しておりまする選挙制度調査会が小選挙区制度で進んでおりますので、これはお話し合いのもととして小選挙区制度、もう制度調査会の答申そのものは小選挙区制度でございますので、私はこの点については決して社会党との話し合いを故意に拒否したという意味でないことを御了解願いたいと思います。規正法につきましての答申案との差は、答申案は何を要求しておったかというと、「政治資金規正の合理化を図るため、次の措置を講ずる」というので、「会社等の法人からの寄附について、政治資金規正法に所要の改正を加えること。あっせん収賄罪に関する立法措置を講ずること。政治資金規正法の届出事項及びその公表方法を合理化すること。」それだけでございまして、その資料として差し上げましたところと相異なる理由を私どもの立場として書いております。すなわち政党の財政的基礎に関するものであるから一挙に大幅な改正をすることは適当でない。また労働組合の寄付の規正の問題もあるので次の機会に譲った、これは政務次官か午前にるる申し述べたところでございます。選挙制度調査会の答申案を見ましても、「あっせん収賄罪に関する立法措置」でございますとか、「政治資金規正法の届出事項及びその公表方法を合理化する」ということも大へん抽象的なお言葉でありまして、具体的方法についてこれはどうするかということは、しかもこれを法文化する場合に相当の検討を要しまするので、今日これが不採用された、こういう意味でございます。さよう御了解願います。なお法文関係その他については選挙部長から御説明申し上げます。
  119. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 政治資金規正法改正につきましては、ただいま大臣から御説明申し上げた通りでございますが、選挙制度調査会におきましても、いろいろと選挙に関するあらゆる問題を御検討願ったのでございまするが、政治資金規正法に関する検討は時間的にもかけておらず、十分その点の検討が行われたということは言えないのではないかと思います。ただ、ただいま大臣の御答弁にもありましたように、第十九国会以来の五党間の話し合いの結果の、政治資金規正法に対する態度と申しますか、各党の態度につきまして検討はいたしたのでございますが、その程度にとどまったのでございます。
  120. 加瀬完

    加瀬完君 大臣の御説明選挙部長の御説明では食い違いがあるのでこれをただします。大臣は、資金規正の問題については、そこでお読み上げになったように、法人関係の問題、あるいはあっせん収賄罪というふうな点について調査会から答申があったと、こうおっしゃる。部長は、具体的にそういう話し合いには入らなかったと、こういっておる。どっちなんですか。
  121. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 私が申し上げましたのは、調査会の長い間御検討いただきました、選挙に関しますあらゆる問題の審議経過につきまして、政治資金規正の問題に触れる時間が少かったという審議経過の内容を御披露申し上げたのでございまして、その審議の経過につきましては先ほど申し上げましたように、第十九国会以後の五党間の話し合いを基礎にして検討はされておりますが、時間的にみますと、選挙のそれ以外の問題にすこぶる時間がかけられまして、政治資金規正に対しては時間は割合少かったという経過を申し上げたのでございます。なお調査会といたしましては、先ほど大臣から御答弁がありましたように、答申には政治資金規正の強化の問題を取り上げておりますことは御承知の通りでございます。
  122. 加瀬完

    加瀬完君 政治資金規正の問題が時間的に取り上げられ方が少かったということは、一応了承できる。しかし、だからといって選挙制度調査会がこの問題を小さく扱ったということには私はならないと思う。そこであらためて伺うけれども、この問題を答申をいたしておるところからみれば、われわれは非常に重大に調査会としては扱っておると思いますけれども、部長はこれらに関係して、あなたの御説明だと扱い方が非常に少いということであるが、扱い方が少いということは、あわせて問題の取り上げ方も大した取り上げ方をしなかったということになるのかどうか。
  123. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 選挙制度調査会の答申についてのデリケートなお尋ねでございますが、この答申にここに書いてあって、大臣が先ほど読み上げましたように、政治資金規正法に所要の改正を加えることということが一項目ございます。それから資金規正法の届出事項及びその公表方法を合理化するということが第三項目にあるのでございますが、それ以外の選挙プロパーの方の、選挙の公正確保に関する事項の答申の方がやや具体的でありますが、政治資金規正法に所要の改正を加えることという大きな考え方をいたしておりまして、この辺のところの検討と申しますか、われわれといたしましては、調査会はその方向は示しておると思うのでございますが、どの辺まで改正をすべきであるか、本来いえば、これは政治資金規正にはその改正する方向だけでなく、大綱だけは御答申を願いたかった、このように事務的には考えておるのでございます。
  124. 加瀬完

    加瀬完君 大綱だけは答申をしてもらいたかったということはわかる。私の伺っておるのは、政治資金規正という問題を大きく取り上げておったか、それほどでなかったか、こういうことなんです。
  125. 兼子秀夫

    説明員兼子秀夫君) 答申の第三に、政治資金規正の合理化をはかるため左の措置を講ずることということになっておりまして、これはやはり取り上げ方は大きく取り上げておるのでございます。
  126. 加瀬完

    加瀬完君 よくわかりました。そこで政府にお尋ねをするのでありますが、その点は政府と修正者の両者からお答えをいただきたい。今、大臣が御説明の中にお読み下さいましたように、法人関係資金規正の問題、あるいは資金に対するところのあっせん収賄の問題、こういう問題だけでも大きく調査会は取り上げて措置をしてもらいたいという意向というのが明瞭になっておると思う。そこで私が午前中において幾つかの例をあげましたことは、調査会の答申の問題点を提供しておるような資料の一部にも当ると思うのであります。こういう事実もある。答申の必要もはっきりとわかります。にもかかわらず、これらを取り上げなかったという点は、一体どういう政府のお立場であったか。あるいは修正御関係の方は、問題は資金規正というものを外側にいたしておいて、選挙の公正とか平等とかいうのは期し得られない、選挙法改正は一番問題である、周知の事実である、しかしこの際は、やはりこの問題はワクの外にした。これだけを一体外にしなければならないという理由はどういうわけなんですか。私の方はその点が了解に苦しむのであります。この点をお答えをいただきたい。
  127. 早川崇

    政府委員早川崇君) 午前中お答え申し上げましたように、この問題は政党の財政的の基礎に関する問題でありまして、英国におきましては御承知のように、保守党は会社から大部分献金を得てまかなっております。労働党は労働組合というものからまかなっておるのでありますが、これに反しましてアメリカにおきましては、法人労働組合一切の政治献金選挙費用の寄付を禁止いたしておりまして、一切個人献金に限っておる次第でございます。そこで御指摘の問題は、国からあるいは補助金、あるいは特殊な融資をもらっておる法人の寄付を禁止しろ、こういう御意見でございますが、政府といたしましては、これだけでは公平でない、これだけでは公正ではない、どうしても労働組合というもの、特に税金によって俸給を得ておる官公労であるとか、また国家補助金をもらっておる会社労働組合というものは、結局は税金に影響するわけでありまするから、これをあわせて検討していかなければ公正ではないのじゃないか。それには問題が非常に重大でありまするから、今回はそれを提案いたさなかった。こういうわけでございまして、もちろん政府としても検討の要があるということだけは、十分問題点として考えておる次第でございます。
  128. 青木正

    衆議院議員(青木正君) 修正案に関連いたしまして、なぜ修正のときに政治資金規正の問題を取り上げなかったか、こういう御質問と考えるのであります。実は率直に申し上げまして、党内の問題になりますが、自由民主党におきましても、党内に選挙制度調査特別委員会を作りまして、そうして小選挙区の問題とあわせて、政党法の問題であるとか、資金規正の問題であるとか、そういう問題も検討いたしたのであります。しかしながら政治資金の問題につきましては、何と申しましても、政党の財政的の基礎に関係を有する問題であり、しかも現実の問題として考えなければなりませんので、なかなか結論が得がたく、私は実は調査会の委員をやっていないのでありますが、その委員の方のお話を承わりますと、初めの総会でその問題についても二、三の意見の交換をしてみたが、あまり早急に結論を出すわけには参らない。こういうわけでございましたので、党としてのこの問題に対する最終的な結論が出ていないわけであります。従いまして、今回の修正に当りましても、その問題を取り上げて修正に当って適当な考え方を現わすという段階まで至っていないのであります。しかし、その問題はまた何らかのお互いに政党の将来の発展のために十分検討をし、結論を得なければならぬという点におきましては、私どももぜひとも何とかせなければならぬと考えておりますが、なかなか早急に結論が出にくかったというのがまあ率直な今までの経過であります。
  129. 森下政一

    ○森下政一君 ただいま加瀬君が追及している点でございますが、選挙制度調査会の答申の中にも、政治資金規正の強化ということが大きく取り上げられておったことはお認めになっていると思う。ただしかしながら、具体的な内容をもっていない。これをそれなら何とか考究するにしては、ただいまの修正者の意見によると、早急に間に合わぬ、よほど時日のかかる問題である、自民党としてもこれという成案を持つに至っていない、政府もとよりそういう考え方だ。こういうことだと私は思うのですが、小選挙区というものを、二大政党育成のための捷径である観点から、これを実施しようとなさるときに、もし、政治資金規正の強化ということについて何らかの成案を得て、これも同時に行うということになるならば、より選挙が公明に行われる、よりわが国の政治の発展のために効果的であるという点は、必ず政府も修正者もお認めになるに違いないと私は思うのです。そこで、選挙法を見ながら政府並びに自民党の態度を考えるときに、そういった点に十分検討をして、同時にこれは成案を得て実施するということにすることが、より満足な政治の発展を促すゆえんである、ということはわかっておりながら、たって今この小選挙区制というものを実施することを急がなければならぬその緊急性というものは、私にはわからないのです。なぜこれを急がなければならぬのか。ことに鳩山総理以下閣僚のかたがた、並びに自民党の諸君は、二大政党の対立という関係にあるが、これを健全に育成するということのためには、小選挙区制を実施するにしかずということを言われる、またそうすることによって政治の安定を得られる、こういうことを言われる。私自身の見解では、今の政局というものは決して不安定な状態にはないと思うのです。安定していると思うのです。社会党の勢力に対して一対二ぐらいの割合で自民党は膨大な勢力をもっておられるというわけですから、決して政局というものは不安定な状態にないということを私は思うのです。そこで、しかもなお将来のために小選挙区制によることが二大政党を育成する上において、より理想的なんだと言われるが、それも一歩譲ってその通りだと承服するにいたしましても、今直ちにこれを実施しなければならぬという緊急性というものの必要が私にはわからない。なぜ今でなければならぬのか、もし、かすに時日をもってするならば、今にわかに政局が不安だといっているのではないから、調査会の答申しておる政治資金規正の問題についてもよく研究して、あるいは場合によったら、その点だけについて選挙制度調査会の成案を得られるような諮問をすることも、一つの方法であろうし、そうしてこのりっぱな案を得られて、同時にこの選挙法を実施されてちっとも不都合はないと思う。だのに今でなければならぬ、急がなければならぬと言われるその緊急性というものの必要が、どうも私には納得できぬのです。どういうわけなんでしょうか。かすに時日をもってせられたならば、この政治資金規正の問題も解決をしてりっぱな案を得られて、そうして小選挙区制を実施されたらいいじゃないか。それで大いにわが国の政治に貢献するのじゃないか。加瀬君が先ほど指摘しましたように、政治資金規正という問題が解決しなければ暗黒政治じゃないか、極端に言えばその心配があると言われる。また太田長官が言われたように、あるいは早川政務次官が答えられたように、会社等からの献金というものの規正をするならば、労働組合献金規正しなきゃならぬ。まことにそうかもしれぬ。そうなればそのような一つ成案を得られて、かすに時日をもってしても一向、今政局が不安だというわけじゃないのだから、差しつかえがないと私は思うのです。その緊急性の必要性というものがわからぬのです。   〔委員長退席、理事伊能芳雄君着席〕
  130. 早川崇

    政府委員早川崇君) お答えいたします。小選挙区は、われわれは、西ドイツのアデナウアー政権、またフランスの解散前の政権のように、突如として選挙法改正案を多数派工作のため出したのではないのでございまして、森下委員も御承知のように、小選挙運動というものはすでに六年の長きにわたって続けられたのであります。答申案あるいは緑風会自身もすでに御提案になりまして、さらに政府の諮問機関でありまする選挙制度調査会も、一年にわたりまして小選挙区の問題をるる研究をいたしまして、ほとんど小選挙区の論議というものは、六年にわたって尽されたとわれわれは考えておるわけでありまして、たまたまそこに二大政党の姿か出て参りまして、これを維持育成するという機会に恵まれました関係上、提案いたしておるわけでございまして、決してフランスや西ドイツのように突如としてあわてて出したわけではないと私は信じておるわけでございます。政治資金規正法をきめてから出したらいいじゃないかというような、こういう御意見でありまするが、われわれは先ほどるる申し述べましたように法人だけ規正するということはいかない。また政治資金規正法は、たとえば政治資金公開法、内容は公開法でございまするが、一切政治資金を公開しなければならぬというかなり進んだ線で、英国と同様な政治資金規正がなされておるわけでありまして、さらにそれより一歩進めるためには法人だけではいかない、労働組合も一緒にやらなきゃならぬという幾多の検討を要する問題が残されておるわけであります。決して政治資金規正法が遅れたものである、世界各国より非常に程度の低いものであるとは考えておらない。従って今回はそういうものを見送るということになったわけでございまして、決して私は小選挙区法が突如として出されたと考えておりません。
  131. 森下政一

    ○森下政一君 早川政務次官、私は政府選挙法改正を突如として出したなんてちっとも言うておらぬのです。それが二大政党育成ということに役立つということならば、それは大いにいいことだ。またその研究はもうすでに尽きておるくらい長い年月をかけたとおっしゃるのだから、それが何らの用意なしに突然出してきたじゃないかと言っておるわけじゃない。だけれども、今政局が安定しておるときに、不安だというわけでもないのに、政局安定のために小選挙区制を実施しなければならない、今出すのだという理由はないと思うのです。私は今安定しておると思う。自民党が今の勢力を持っておれば十分安定しておると思う。だからさらにかすに時日をもってして政治資金規正法というものに万全の案を得られて、そうしてこれを同時に実施するということになさることは、より以上に私はわが国の政治の発展のために効果的だと思うのです。だからそれを待つことができぬというほど緊急性というものがなぜあるのだ、なぜ必要なのだという点が私には理解できない、こう申し上げておるのです。そうお急ぎにならぬでもいいじゃないか、もっと時間をかけられたらいいじゃないか。小選挙区についてはもう論議は尽きておるとおっしゃるなら、政治資金規正法についてもさらに一そうの検討を重ねたらどうだ。それで世界各国のそれに比較して決して劣っていないとおっしゃるけれども、つまり世間の常識からいえば、たとえばあなた方も先年起った造船疑獄なんていうものは実に忌まわしかったとおっしゃるでしょう。いろいろな汚職があったなんていうことは、もうこの前の衆議院選挙あたりのときには、そのために自民党はずいぶん悩んだと私は思うが、そういった関係政治資金が調達されておるかのごとく世間では印象を受けておるというような状態なのだから、政治資金規正というものについてはこれをさっぱりするように強化して、おっしゃるように労働組合からの献金規正しなければならぬという観点もあるでしょう。それならそれでそれも研究して世間の納得のいく合理的な案を持たれて、同時に実施されてもいいじゃないかと、こう私は思うのですが、それをしも待つことができぬという緊急性とは一体何だ、なぜそんなに急がなければならぬのだ、そこがわからぬのです。   〔理事伊能芳雄君退席、委員長着席〕
  132. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 今政務次官が答えられた通りでございますが、何でこの運動が起ったかということからお考えを願いたいと思います。中選挙区のもとにおいて小党分立があって、そして政治がなめらかにいかぬということが昭和二十六年以来の議題となったことと私は信じております。従って二大政党あって中選挙区制と、二大政党あって小選挙区制と、どっちが政局安定になるかが大体の中心ではないかと思うのでございます。私どもがよくいう維持育成という意味も、二大政党はできたが、中選挙区制をもって、しかも日本の現状においては個人本位の立場が多いのであるから、それを答申案のごとくに政党本位にしていこう、そこに小選挙区制度の区割と並んでの大きな問題がございます。二大政党は現にあります。これも隠れざる事実でございますが、小選挙区制度をかかえての二大政党と、中選挙区制度をかかえての二大政党ということを考えるときに、私どもとしては小選挙区制度によるのが政局安定になる、こう考えた次第でございます。  政治資金規正法を作ってからやれと、実は逃げ文句で申すのじゃございませんけれども、非常にこの問題はどこの国でも、よその国のことを言う必要ございませんけれども、非常にむずかしい問題であり、一昨年のあの騒ぎのあとで五党の間の幹部が集まって相談したが、あのときの批評などを見ても、たとえば補助金のある会社から取るのをいいというのと悪いという説があります。それから労働組合のを取るのをいいと悪いと両方の説が出ております。私自身も非常に狭い経験でございますが、大正三年の古いことですが、あのときからずっと外国に行きましたつど向うの政治家に会いまして、政治資金のことを聞いたが一切わからないのです。私が勉強が足りなかったのかもしれませんけれども、床次竹二郎さんに頼まれて私は調べていたけれども、どうしてもわからない。最近になりましてイギリスもようやく労働組合資金関係が出てきた。またアメリカにおきましてもそういった問題が起って個人だけが寄付ができるようにした。こういう経過を見て日本の経済の発展の状況や政治とのからみ合いなどを見ますると、これを作るのには、現実にあの騒ぎがあったあとで、政治資金規正法を作ろうとしても、英知を集めたと思われる五党の間でもまとまらない状況です。まとまってからやるという考え一つ考えでございましょうが、私はこの点につきましてはさらに進んでいってやっていくほかない。これを待ってやるということも御意見でございましょうが、資金公開という、各国でもここまでやっているのは私はあまりないと思います。この公開の仕方、その資金の出元などについての議論はございますが、さらに一歩を進めて、これこれの資金はいけない、これこれの資金はこういう手続にしろという点が残っておるのでございます。私は問題点もそういう点にあるかと思いますが、この点についても問題としないから、すぐ小選挙区制度に移らなかったということにつきましては、かような過去の経過考えまして、今回これに触れる点がなかったのでございます。さよう御了承願いたいと思います。
  133. 森下政一

    ○森下政一君 今度の小選挙区制というものは、憲法改正とは何にも関係がないということを鳩山文相は言われるし、また皆さんも大臣以下そういうことを衆議院でもしばしば答弁をしておられる。過日の質疑においても総理は文教委員会でそういう御答弁をされた。そうだろうと思う。だけれども、どうも小選挙区制というものを今出さなければならぬ、提案しなければならぬということについての緊要性、緊急性の必要性というものがどうも私には納得ができないので、そうなってくるといろいろの客観的な事実を並べ上げてみると、憲法改正との関係があるのじゃないか。しばしば総理の言明にかかわらず、太田長官の言明にかかわらずそういうことを疑いたくなるというのが、私どもの偽わらざる気持なのであります。本年の一月の中ごろでしたか、共立講堂で鳩山総理みずからが演説をされて、憲法改正の必要性を力説され、同時に社会党は自民党ほどの勢力は持っていないでも、微弱ではあるけれども、憲法改正を妨害するだけの勢力を持っておるから、これをもっと減殺しなければならぬということを卓をたたいて強調された。これはまぎれもない事実であります。だから憲法を改正したいという意図を持っておられる。そのためには妨害をする社会党を現在よりももっと減らさなければならぬ。そのためには諸君一つ協力してほしいということを言うておられる。そうするとまあ万人の常識として、今は撤回されたけれども、自民党で用意されたような区割による小選挙区制度が実施されたなら、万人の見るところ将来はともかくとして社会党が激減するだろうということは世間の常識だと思う。それで自民党の区割というものはあまりに勝手過ぎるじゃないかという非難がごうごうとして世間に巻き起って、政府も反省され、自民党も反省されましてあの案を撤回するに至ったものだと思いますが、そうすると区割は撤回されたけれども、一応小選挙区制を実施しましたならば必ず革新に不利だということはいえる、こう私は思う。この機会に社会党を小選挙区制によって減殺して、憲法改正のかねての案件を達成しようという意図があるのじゃないかと世間も疑い、われわれもそういうふうに疑うというのも、これは私は立場を変えてお考えになれば当然だと思われるに違いないと思うのであります。  そこで先刻来私が申しますように、どうも今小選挙区制にしなければならぬということに対する緊急性ですね、急がなければならぬ、こうこうこういうので急がなければならぬという理由がどうも納得できない限りにおいては、私はそういう邪推もしたくなる。憲法改正のためにこういうことを急ぐのだというふうに、あなた方から見ればそれは曲げた解釈だとおっしゃるかもしれぬが、そういう解釈がしたくなってくるわけであります。  それから中選挙区制のもとにおいては小党分立になると言われるが、現在のように自民党という大きな政党、これに対立する社会党というこの二大政党でありますが、この二大政党をかかえておる場合の山選挙区制による選挙というものは、わが国では一ぺんも経験したことはないのじゃないですか。革新と保守とが対立しておるという二大分野に分れて、中選挙区制のもとに選挙したことは一ぺんもない。おそらく中選挙区制のもとにおいて一ぺん選挙をすれば、私は社会党はさらに躍進してくるだろうと思う。そうして自民党に接近してくるだろうと思いますが、太田長官しばしば英国ではということを言われる。私ははなはだ寡聞にしてイギリスのことをよく知りませんけれども、イギリスにおける保守党なり労働党の比率というものは、今のわが国における自民党と社会党のような比率ではない。もっと接近しているのではないかと思うのです。大体長年の訓練で、国民の色分けも、一部は保守を支持するし一部は労働党を支持する。ところが、どっちにもついていない中間層というものが、浮動票がある、それが時の政府あるいは政党のやり方を見ておって、大体勝敗をきめるということに非常に得立っておるのじゃないかと思いますが、そうだとするならば、私はもう一回か二回中選挙区制で選挙をやってもいいのじゃないか。両大政党をもっと接近させることの方が、かえって私は二大政党対立のほんとうの政治の発展を促すゆえんじゃないかと思います。今、自民党でもまだ選挙の洗礼を受けていない。自由党民主党が寄った寄り合い世帯に過ぎないことを考えてみると、私は一ぺん選挙の洗礼を受けていいのじゃないか。社会党も左右に分裂しておったが、合同して選挙の洗礼を受けておらぬというならば、これも一ぺん選挙の洗礼を受けてもいいのじゃないか。そうして私は大体中選挙区制によるところの選挙をやって、もう少し両方接近さすぐらいがいいのじゃないか。あるいは憲法改正に対する国民の総意を聞く。小選挙底制を実施したいと思うが、それに対する国民の総意はどうか、判断はどうかということを題目に掲げて、この中選挙区制のもとにおいて一つ選挙をやらしても、決して私は日本の政治が後退するとは思わぬ。二大政党対立の状態にあって中選挙区制のもとにおいて選挙をして、依然として小党分立という傾向が出てくるか、一ぺん対決してもいいのじゃないかというぐらいに私は考える。だからどうしても小選挙区制を提案して、今これをものにしておかなければならぬというふうな緊急性がわからぬので、ついそういう考えを持つわけなんですが、どうでしょう、私の考え方は違いますか、間違っておりますか。
  134. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) だんだんの、中選挙区制によって政党の力をもう少し接近させるところにまで行っていいじゃないか、あるいは憲法改正のためじゃないか、あるいは現状においてもすでに安定しているじゃないか。この問題につきましてはもう各方面の議論が昭和二十六年以来出尽しておりまして、私の見た、寡聞であるかはしれませんが、判断におきましては、個人本位である選挙が問題であるというところが、答申案もそうでございますし、批評界もそうであったと私は思うのです。だから中選挙区案を抱いての二大政党か、小選挙区案を抱いての二大政党か、どちらかということに議論の中心を置くべきだというのが私の先ほどから申し上げる点でございます。つまりいろいろなお見込みの御判断がございましたが、私は、二大政党が伸びていくのには決して安心したものでなく、組織の点においてしっかりしなければいかぬ。また公認制度なるものをしっかりしなければならぬ。もししからずば、今後大きい政党といわれるものの両立は結局だめになってしまうのじゃないか。そこに結局政党の大きな力が出ていかなければならないのじゃないか。はなはだ恐縮でございますが、イギリスの自由党、あの大きな政党がなぜこわれたかというと、今日十名足らずになってしまった、もとは一大政党でございましたが、私はやはりこういう点にあったのではないかと思います。実際そういう意味において政党の発展生成していく立場におきましては、私はどっちがどうということよりも、何としても組織をしっかりすることと、新しい人、婦人が出られるようにその公認の制度を持っていかなければならないと思うのでございます。従って今日いばっている政党が明日どうなるというようなことは、この道を誤まったならば私はいけないと思います。二大政党の立っていく道というものは、小選挙区制度というこの組織、それのやり方、これをやっていく組織の問題とこれを動かす問題についての平仄がそろわなければならぬと思うのでございます。私はこういう意味におきまして、今日私ども出している政党案は安閑に問題を取り扱うべきものでは断じてないと思っております。これは私どもも真剣でございます。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤喜一君 関連して。これは政務次官に、政党的な立場でなく、ちょっとそれを離れてお伺いいたすのでございますが、加瀬委員午前中から、補助金や交付金を与えられている法人なら法人から寄付を受けるということとの関連で、労働組合の方の問題もあわせて考えなければならぬとしばしば答弁しておられましたが、そのことは、関連の論理が、ちょっと自分の考えが足らぬためかわからぬのですが、どういう意味であれはおっしゃっておられたのでございますか。
  136. 早川崇

    政府委員早川崇君) 私の申し上げましたのは二通り意味がございます。官公吏の組合という場合におきましては、これは国民が税金によって彼らの報酬を与えている、それが一つ労働組合をなしているわけでございまして、これが官吏の服務は政治的中立でなければならぬという立場からの制約という面も一つあるのでございます。そういう面で寄付を禁止しているのはアメリカその他英国でも先例がございます。これが一つと、もう一つ労働組合は、労働組合費用として集めるわけでございまして、世上選挙資金をずっと眺めておりますと、組合員一人一人が自分のふところから承認を得た上で何党に選挙費用を納めるんだという姿でない場合が非常に多いわけでございまして、こういう場合は非常に問題が私はあろうかと思うのであります。従ってその労働組合各人個人組合員が自分のふところから献金する、こういう場合は何ら差しつかえないのであります。同じようなことは法人におきまして、会社の重役なりそういった者が個人で出すのはこれはむろん自由であります。ただ会社として、法人として別に株主総会の承認を得たわけでもないでしょう。ちょうど労働組合員が一人々々の政治的自由というものがあるのですが、それを組合として流している例が非常に多いわけでございまして、そういった面から言って、両者公平にしなければならぬという意味が私はあると思うのであります。そういう立場からアメリカにおいては団体としての寄付を禁止しているということが存在するのでございます。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤喜一君 これは非常に私が妙な質問をするようでありますし、お答えにくい点があるかもしりませんが、委員会の記録として残しておきたいのでお伺いしますから、そのつもりでお聞き願いたいのですが、そうしますと、なんでございますか、第一におっしゃったことは、たとえば官公吏の給与というものは国民の税金から出るものであるという点が一つある、そこでそうでありますから、官吏というのはたとえばアメリカの連邦政府の役人のように実際上は選挙に投票しない、政治的な中立というのでございますか、そういう慣行を確立するという、その問題は全然別といたしまして、そうではありませんで、——そういうことになれば、それはそれとしての論理があると思いますが、税金が給与になっているんだから、その一部が政治活動に出ていくのはそこに問題があるというようなことでありますと、それは出どころはどうであっても、自分の勤労に対する給与ですから、それがどういうふうに使われるかということは全くもらう人の自由であって、差しつかえないのじゃないかという感じが一つ。それから後段の徴収の方法が組合員の自発的なものでまああるかないか、源泉で天引きでやるとかいうことは、これは非常に割り切って言えば、組合内部の問題でありますが、本人の意思に反して金は取れるというわけのものでもありませんでしょうし、徴収方法がそうだからどうという論理はよくわからないので、二つともちょっと私論理がのみ込めないのでありますけれども。(「私ものみ込めない」「宮澤委員に賛成だ」と呼ぶ者あり)
  138. 早川崇

    政府委員早川崇君) 最初の官公吏の問題は、速記録をお調べ願えばわかりますが、税金でまかなわれておられる方は、公務員として服務の上で、ある政党なりそういうものに寄付したり、あるいは団体として干渉したりというようなことは行き過ぎではないか。こういうことは各国では規制しておるのです。私はこれは正しい一つ意見だと思います。みなが不承服かもしれませんが、そういう面からの規制ということをまずいたしておるのであります。もう一つは、要するによく世上労働組合費用としてみな納めておる、一人残らず。ところがその費用の合算したものがある方に流れておるという現状がよくないということを申しておる。それぞれ組合員は労働組合費用として納めておったのだから、政治資金に使われたりとか、選挙費用として使われたりというような姿では困るからそういう点も同時に改めなければいかぬのじゃないか、こういうわけでございます。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤喜一君 関連の範囲を逸脱いたしますから、これでけっこうです。
  140. 加瀬完

    加瀬完君 今、宮澤委員の御質問は非常に重大な問題を含んでいると思うのです。午前中から引き続いてのお話では、政府の御答弁は特に官公吏などは税金によって所得を得ているわけですから、この税金による所得の一部を政治資金献金するというふうなことはこれはけしからん、こういうお立場で説明が続けられたわけです。私どもの問題にしておりますのは、大臣の御説明あるいは政務次官の御説明とは少し基本的な解釈を異にしておる。宮澤委員も御指摘のように、労働の対価として得た個人の所得はどういうふうに使われようとも、法の中の制限内で使われるならば、それが政党献金であろうとも、これは個人の所得の分配を自分でどうきめようと、これは政府たりといえども干渉することのできない性質のものじゃないか。あるいは労働組合の問題を例に出しましたが、労働組合の問題はそれぞれ委任された決議機関によって決定をされ、本人が承諾をして、そういう取り運びをされるということならば、これはまた組合内の問題であって、政治的にどうこうという対象にはならない。私どもの問題にしております法人関係などは、これは法人の役員とか何とかが個人的に献金をしているのじゃない。特殊な政府関係のある法人法人として献金をしておることを問題にしているのです。たとえば法人には一つの事業目的というものがある。その事業目的というものは政府と非常な密接な関係にある。その法人政府与党献金するということはどうかと、こういったようなことを問題にしなければならないじゃないか。少くとも政治資金では規正しなければならぬじゃないかということを言っておるわけなんです。しかしこれは午前中から繰り返されたことで、宮澤委員の御質問でもわかっておりますので、私どもの聞きたい点はその次の問題なんですよ。今度の小選挙区法を制定するについて、安定政権といいますか、政局の安定ということを非常に強調いたしておりますが、政局の安定ということとともにもっと大事なことは、選挙法改正の目的は、いかにして選挙を公正にするかということでなければならないと思う。選挙を公正にするということであるなら、この政治資金規正というものは相当強く取り上げられなければならない問題だと思う。しかしこれは取り上げられ方が非常に弱くて、安定々々という安定政権にばかり意思が強く働いて、選挙法改正されるということになりますと、この安定という名のもとに党略がひそむということにならないか。具体的に言うならば、区割などというのが非常に問題になって、調査会の答申とはまるっきり違うような、二分の一以上違うようなものを安定政権のために、これは無理に出す。しかし答申があって政治資金規正は十二分に注意しなければならないと言うけれども、公正あるいは公明選挙ということに関係があることが割合に等閑に付されたりしておる、こういう取り上げ方というものに、私はどうも、政府の態度というものが政治資金というものをあまりに軽視しておるということに、極端に言うならば、これは党略選挙法だというそしりを受ける一因があるのだろうと思う。この点なんです、繰り返して伺っておるのは。
  141. 早川崇

    政府委員早川崇君) 先ほど申し上げましたように、政治資金規正の問題は、法人労働組合、また官公吏と国庫から補助金を受ける会社をどうするか、これは二年来の論争でありまして、もうこれ以上私も触れませんが、そういう問題が最終的結論が出ておらないので、このたび提案することを差し控えてさらに検討する。しかしながら資金公開法、言葉をかえて言えば、政治資金規正法資金公開法だと思うのであります。これは公開しなければ罰則がつく、かなりきついこれは規正法でございます。さらに小選挙区をやるとともに、政治資金規正法だけではなしに、たとえば連座制の付帯訴訟を設けるとか、その他このたび修正案で逃亡時効を延ばすとか、買収犯、いろいろな面におきまして非常に強固な取締り法規が完備いたしております。従ってさらにいたずらに罰則なり資金規正を強化すれば足りるという筋合いのものではありません。全体の程度と申しますか限度というものを勘案いたしまして、この程度の改正ということにとどめたのでございまして、決してわれわれは腐敗がしやすいように、これを立案したということは毛頭ございませんので、御了承を得たいと思います。
  142. 加瀬完

    加瀬完君 これは修正提案者にお伺いをいたしますけれども、この小選挙区制が実施をされるとすれば、政党間、個人間の競争あるいは対立というものが非常に激烈となり、従って一部の者が唱えるように、小選挙区制になれば選挙費用がかからないと、こういうことにはならないと思う。逆に政党活動の幅が許されるということになれば、これは政治資金というものは相当に要するようになると思う。こういう点はお認めになりますか。
  143. 三田村武夫

    衆議院議員三田村武夫君) 先ほど来御論議の御趣旨よく私了解できるような気がするのでありますが、ただ今回の選挙法改正、すなわち、いうところの小選挙法案、その趣旨は、太田自治庁長官もしばしば御説明になっております通り、われわれも選挙というものの新しい秩序を一つ確立したい。それは個人本位の選挙から政党と組織を通じ、さらに政策を中心にした争いにしたいというのが根本のねらいであります。従いまして御意見の、選挙区が小さくなって単一候補者政党が中心になった選挙になれば、従ってその選挙活動は激甚になり、費用も増大するではないかという御意見もごもっともだと思いますが、同時にまた党の組織と政策が基礎になり中心となって行われる選挙でありまするがゆえに、選挙そのもののあり方が軌道に乗ってくるというところに大きな私は目標があると思われるのであります。これは何と申しますか、世の中のことは一長一短でございまして、全部が全部いいものばかりではあり得ないと思います。お話のような弊害もあると思いますが、同時にまた、その弊害を克服しながら選挙の基礎を確立する、先ほど来御意見のありましたように、二大政党維持育成という問題も、政局の安定という問題も、要するに現実現象面の二大政党の維持育成あるいは政局の安定ということだけでなくて、選挙を通じて行われる政治の基礎的な、いわばその政治の安定という方向に、より大きなねらいがあるというところに、われわれはこの問題に対する深い関心と念願があるんであります。従いまして、今お話の選挙区が小さくなり、候補者が単二となり、政党が中心となっておるなら、この選挙なるがゆえに選挙が非常に激甚になり、従って費用も増大するということも、御意見として十分拝聴するに値いすると思いますが、さらにそれ以上大きなわれわれの念願というものは、党の組織と政策を通じて、一つほがらかな、堂々たる選挙をやりたいというところに趣旨があるということを御理解願いたいと思います。
  144. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私はさっき聞いておっても、国の財政的な援助が、直接間接そういう資金の回る会社法人労働組合との献金問題が続いて論議されるものと思って黙っておったわけですが、話がまた別な方に展開していくようですから、関連して質問させていただきます。早川政務次官は御意見として、先ほどの言うている意見の中では、会社法人労働組合と、両者公平にやらなければならぬという意味合いのことを言っておられる。何を称して公平というのか、そういう会社法人政治資金献金を禁止されるから、だから公平に労働組合の方もそれを規正しなければならない、何が公平なんです、私にはわからない。
  145. 早川崇

    政府委員早川崇君) この問題は小笠原委員も御存じのように乱闘国会直後に話題になりまして、私の申し上げるのはそういう有力な意見も片方にある。また、会社法人の、補助金を受けている会社だけをやれという社会党の御意見がある。アメリカには両者を全部個人献金にして法人労働組合という団体の寄付を禁じておると、こういう状況下において、ただ一方の主張の、補助金をもらっておる会社だけの献金を禁ずるということには、また慎重な検討を要するのではないか、私もそういう労働組合官公労組というものが、たとえば何々の執行委員会で形式的きまって——腹の中では困るけれども会議に出ておる関係上というような人の声も聞くのでありまするから——労働組合費用として納めたのが選挙運動なり選挙費用に使われるという実情も知っております。だからこういった問題をも考慮して妥当な結論を得るには、もう少しの慎重な検討が必要ではないか、かように考えておるわけでございます。
  146. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それがおかしいと思うのですよ。アメリカがどうしたというのですか。アメリカでそういうふうに禁じておるということは何のために禁じておるか、そのことがはっきり言われない限りは、理論的には私わからない。日本でそういう会社法人政治資金献金規正しようということは、それが汚職なり腐敗政治、こういう問題に直接間接つながってきておる。長い間の日本の政党政治裏面史として、そういうものがからんできておる。だからこれを断ち切ろうという根拠のもとに主張されておる、じゃ片方断ち切るならお前たち社会党の方に献金の多かろう労働組合の方も、これは規正しなけりゃならぬという、そういうことは論理ではない、筋ではない。こんな、国会で論議する必要もないことなんです。労働組合自身がそういうことをしてはならぬというならば、そういう選挙なり政治なりに関しないで、労働組合そのものの性格を規正し、規定していけばいい。政治献金や何とかそういうことから労働組合というものを考えることでなくて、労働組合自身のあり万というものを規正していけばいい。けれども今日この労働関係三法によって生きてきているものは、これは憲法から導かれてきている組織団体なのであって、そういう都合で、便宜で、この労働組合のそれをとやこうと動かすことではないのです。またその内部の問題がいろいろあることを聞いておるからといって、御親切にもこうしなければならない、ああしなければならないと、よけいなおせっかいですよ。一般の団体なり労働組合が国から補助金なり何なりもらっておるものでもなく、めいめいの所得によって仕事をしているのです。しかもその所得の中から組合費を徴収する、あるいはこれを政治献金としてこれを徴収する。これは組合内部のそれぞれの規約、定款によって行なっておることなんです。そういうことに関与しておるということそれ自身が、明らかに権力主義的な考え方なんです。私は断じてそういうことは承服し得ない。もしも、やりたかったら労働組合それ自身のあり方を規正するとか、所得がなお一そう高まるようにしたいとか、あるいは民主的な社会がもっと進展するようにしていきたいと、それが労働者自身のために、労働条件なり生活条件の向上の道であると、従ってこの法律案については反対をする、賛成をする、あるいはこういう規定を作ってくれと、それは金も使われるでしょう。究極においては金を出してでもその労働組合を支持する理由をよけい出したい。それはその労働組合自身の政策なんです。だからそれ自身がいかぬというなら、それ自身の方を規正すべきことであって、金の使い方を、動かし方を、けしかるとかけしからんとか、外部から、また一政府機関がとやこう言うべき筋のことではない。おせっかいな話です。私はそう思う。それを片っ方をやるから片っ方をやらなければ公平でないというようなことを言っているが、公平でないということはどういう意味ですか。
  147. 早川崇

    政府委員早川崇君) そういう御議論は同時に、経団連のこの前の公述人が、正当にたとえば開発銀行から融資をもらっておるという会社が、会社として別の意味で、それとの関連でなくて、重役会議その他でこの政治献金をするということまで干渉されては困るのだという、やはり同じ意見になりまして、この問題は、小笠原委員の言われる立場から、労働組合なり官公労組というものが選挙基金をしていかないという反対論も、私はよく承知しているのであります。従って片っ方の方にはまた片っ方の私はそういう主張もこれはあるわけでありますから、そういう関係でこれはもう少し検討をしなければならない、かように考えておるわけでございます。アメリカのようにすべて個人献金というように徹底すれば、これはまあ労働組合団体であるし、法人団体であるとすっきりいたしまするが、その点までは今問題になっておりません。従ってその政治資金規正の問題は、今少し検討させてもらいたい、こう思っております。
  148. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は何とあなたが言おうと承服しない。あなたはいつまでも片方が片方だから、片方が片方だ、こういうことを言う、片方じゃないですよ。会社労働組合が、片方だということではない。そういう会社献金規正することがいいか悪いかということは、それは独立して考えらるべきことです。だから経団連の御主張があるなら、経団連の御主張によってそれは考えればいいことなんだ。ところが会社がそういうふうにやろうというなら労働組合の方もやらなくちゃならぬという、片方と片方というような考え方がけしからぬというのです。確かにあなたが言う通り経団連の方ではそういうことは困ると言っている。それが理であるならば、そういうことはしないというならばいいのだ、そういう御意見をお持ちになればいい、必要なら必要だという御意見をお持ちになればいい。ところが片方だから、それは片方だけではまずいと、会社もやるなら労働組合もだ、こういう考え方が非常に政党間の政治的な扱いになる。何ら根拠がないということを私は思うのです。ですからわが党としては、そういう会社については拘束する意思はないがという主張をしておる。こういうことなら、あなたはそれに承服できないなら、このような、こういう理由でそれはできないということだけでいいんです。そして労働組合のことを持ち出すなら、労働組合会社と対比して論議されるのでなくて、労働組合のあり方としていいのか悪いのかということで議論を展開してもらいたい。それを会社がやられるならば労働組合の方もだ、そういう政治的な扱いの疑いを受けるようなものの言い方はやめてもらいたい。片方も両方もあったものじゃない。全然別個な話なんです。別個の問題なんです。それをいつでも片方だの、両者公平にだのと、何の必要がありますか。私はそういう意味で申し上げる。それで、主張は主張として、見解の相違のある点は私はわかりますけれども、ものの考え方として、対比して考える筋のものでないということだけ申し上げる。会社のことは会社のこと、国の金がそう動いているものについてどうするかということをお考えになればいい、そしてノーならノーでよろしいのです。その御主張はそれは見解の相違ということです。そういう意味なんです。
  149. 早川崇

    政府委員早川崇君) この問題は政府としてまだ結論を得ているわけじゃございませんので、このたびの提案というものは、なお慎重を要するということを申し上げたのでございまして、決定的な結論を得れば別でありますが、現在得ておりません。
  150. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だから、結論を得ていないのだから、対比してこういう有力な意見があるという経過報告にからんで、やはりあなたも個人的には、対比して片方が片方というような考え方をしているのは、これは軽率であるからおやめ下さい、こう申し上げておる。一つ一つの問題として、十分御検討の必要があるなら御検討なさい。理論的に根拠があるならお出しなさい。私はものの考え方として、そういう対比した考えでこの問題を扱おうとすること自身が、将来やっはり紛議をかもす、また不明朗なそれぞれの政党間の勢力によって問題を処理していくというようなやり方が起るから、そういうことではいかぬのだという意味で申し上げているのです。まあ早川さんの御意見はわかりましたから、関連は終ります。
  151. 加瀬完

    加瀬完君 三田村さんの御説明によりまして今度の修正者のお立場は私どもよくわかりました。御説によりますと、選挙秩序というものを明確にいたしまして政治の安定を得たい、こういう御主張でございます。私はその通りだと思います。この政治の安定を得るための選挙の秩序ということになりますと、一番の問題は、やはり繰り返されて質疑が取りかわされております政治資金の問題だろうと思います。それで、この修正案によりますと、結局選挙区の画定委員会の答申を得まして、次の通常国会提案をされまして可決されましてから六カ月ということになると、少くも一年半に近いものが経過期間として残るわけでございます。少くも作成の間が一年と見ても、あと一年間十二分に準備をして、それより半年後に施行するということになれば、なぜ一体、選挙秩序というものを重大視しているならば、この政治資金規正という問題を、選挙制度調査会からも答申のある問題でありますのに、十二分に練って出すというお立場にならなかったか、もっと率直に言うならば、選挙秩序の公正を期し得られるところの資金関係の明文もまだできておらないとするならば、一応これはこれで廃案にして、新しい整ったものとして、区割りを入れて御提出になった方が筋が通るのではないか、こういう私は見方も成り立つと思うのですが、これに対する御見解はいかがでございますか。
  152. 三田村武夫

    衆議院議員三田村武夫君) 御意見として、ごもっともだと思いますが、政治資金規正という問題は、先ほど来早川政務次官太田自治庁長官がお答えになっておりますように、わが党といたしましても、まだ実は率直に申しまして結論に達していないのでございます。これは非常に複雑であり、かつ難解な問題を含んでいると思いますので御想像いただけると思います。と申しますことは、早川政務次官も申しましたように、一面においては現在の政治資金規正法というものは資金公開法であります。社会党さんの方も御存じの通り、これはそのつど公開されます。どの会社から幾ら幾らと、衆議院における選挙法委員会におきましても、ずいぶんあの公開の資金調達の事実をあげられてたびたび私は攻撃を受けました。そういう面もあるのです。これをどのように選挙秩序の面から取り上げていくかということは、もとより重要な問題でありまして、十分検討をしなければならぬ、こういうことを党の立場として考えておるような次第でございます。従いまして今度の法案の修正に当っては、修正案を出す場合には、実は正直に申しまして、政治資金規正法に手を触れるだけの余裕がないということを率直に申し上げるのでございます。  それから今お話の、先ほど私が申しましたこの民主政治のもとにおいて一番大切なことは、選挙制度の秩序であります。選挙が公明に正しく、主権者である国民の意思を忠実に、すなおに反映するということが一番大切だと思いますが、その面から選挙制度調査会の答申にあります政治資金規正の問題、さらに選挙違反の取締りの問題、厳重な取締りをしろという、こういう主張も十分尊重していかなければなりませんが、私も二十年ばかり選挙関係して参りました経験者の一人でありますが、実は私率直に申しまして、今度選挙法委員会を通じてさらに深く感じたことは、政治というものは、ことに選挙を通じて行うという政治というものは、やはり選挙というものがおおらかに行われることが必要で、非常に窮屈な暗い感じを与えては、公明な選挙にならないと思います。もとより罰則の強化も必要でありますが、かつて非常に選挙運動に対する取締りの厳重をきわめた時代がありまして、そのころは候補者の立て看板が倒れている、その立て看板に手を触れてすら違反になるというおそれがあった場合があったのです。非常に窮屈な、暗い選挙になってしまうことは、私は好ましくないことだと思う。これは民主主義という政治形態が健全に育つためには、どうしてもわれわれともども選挙の公明というものを期するためには、何と申しますか、政治に対する良識というものが高まってこなければいかぬのです。そういう面にわれわれは懸命の努力を払うことがまず必要である。そしてどうしても押えなければならない。選挙悪というものはもとよりこれは厳重な手当をすると、こういう立場をとりたいのであります。そういう趣旨と申しますか、心がまえから、今度修正案考えたのでありまして、前段申しましたように、修正案提案の際には政治資金規正の問題、これは政府当局御答弁通り、わが党といたしましてもまだ十分なる準備は整えていなかった。お話しのようにこの法案はこの修正案に書かれておりますように、一本の整った形態として発動するまでには大体御計算の通り一年半ぐらいの期間が要ると思います。それは今一年半の期間があるならばこの間に十分練ってくれればいいじゃないか、むしろ廃案にして出直したらどうかという御意見はごもっともと思いますが、われわれはこの機会にせめてこの新しい選挙制度の足固めと申しますか、スタートだけでもしておきたい。これは修正案が通ってきますと、この次の通常国会までには区画委員会において新しい区画割を決定して提案することが法律上義務付けられてきます。それが一つの大きなスタートになりまして、今お話のようにそれを通じ大体一年ないし一年半ぐらいの期間がありますから、その間に今のお説の政治資金の問題その他の問題も、世論にかんがみて最善の努力を、方策をとっていきたいということが修正案提案者の立場でございます。
  153. 松岡平市

    委員長松岡平市君) ちょっと委員各位にお諮りをいたします。  太田自治庁長官は三時五十五分から少しばかりやむを得ない御用がおありのようですから、暫時退席していただきます。  なお、用の済み次第約三、四十分のうちにお帰り願うということになっておりますから、その間は質疑者は大臣以外の答弁者に御質疑を願います。
  154. 小林武治

    小林武治君 政治資金規定がないということについて、今いろいろの論議ありますが、私も選挙制度調査会に出ておりましたから、この間の事情を若干一つ御参考までにお話してみたいと思います。  この問題は、先ほど選挙部長がお話になりましたように、何とかしなければならぬということは委員もみな考えたのでありまして、これは英国にも政治資金規正法というものは例がありまして、これらを採用すれば一応まあ何か格好はつくであろうと思いますが、これらの問題について選挙制度調査会では深く検討して、そしてその具体的結論を出すひまがなかった、まあできなかった、こういうことは事実であります。従いまして、先ほど読み上げられたような、きわめて抽象論で政治資金規正しなきゃならぬが、しかしどういう具体的な規定を作ったらよいかというところまでは参らなかった。それで、これの草案につきまして、これは実ほどなたが作った草案か、草案の中に、今の政府とあるいは公共団体関係のある会社の寄付を禁止すると、これはまあ一般的によそにもそういう例があるので、それも一つの方法であるが、それに伴って先ほどからやかましい労働組合政治資金を寄付する、こういうことについても何らかの規正を加える。こういうのが実は草案の中にあったのであります。ところがこれは、正直に言えば、社会党の諸君がこれに対して非常な反対をした。それから全体としての結論を急ぎつつあった際でもあり、あまりやかましいので、とにかく一応それじゃ労働組合関係の字句は削っておこうということで答申案からの草案からこれは削って、政府に出ております。しかしその必要性は、きわめて常識的な考え方であるが、みんなそれはそういうことも考えるべきである、こういう意見が出たのでありますが、今言うように、社会党委員の反対で一応草案から削って出た。それで、先ほどからまあ小笠原君あるいは早川さんの間で議論があったのでありますが、私はこの政治資金というものが各党どこから出ているか、まあ保守党には会社等から出ておる。社会党には労働組合等の献金が主となっておる。従ってその結果だけを見て資金規正をするなら、両方これはすべきじゃないかということが一番端的にくる考え方からそういうことが言われておる。しかし深く研究すると、この問題は必ずしも性質は同じじゃない。すなわち私どもが前に考えたことは、小笠原君の言ったように、一体労働組合政治献金規正するのは労働組合の本質から出ておるのだ。すなわち労働組合というものは労働運動、労働運動というのは主たるものはこれは要するに労働条件、勤務条件、あるいは勤務時間すなわち労働者の生活を改善する、向上せしむるという運動が主たる運動である。従って政治運動そのもの、プロパーは、労働組合の主たる運動ではない、こういう趣旨からいって、もし政治献金をするなら組合費の負担を分けたらどうだ、一般組合費とそれから政治的の献金と。これは英国でその例があるそうでありますが、しかして一般組合費はこれは義務的にみんなとっておりますが、政治的献金に当る部分はこれは義務はない、組合員は……。そういうふうな方法でもって規正したらいいじゃないか、こういう考え方が一つあるのであります。  それから組合費の取り方について、これは組合費用を取るということは組合のプロパーの仕事であるが、今では労働協約もあろうし、その他の関係もあって、たとえば官公労については官吏たる会計職員がみんな取っておる。で、これは政府も役所も黙認しておる。その金がそういうふうに変るのはどうか、こういうふうな考え方もある。こういうふうなことからいろいろ議論があるのでありまするが、要するに、労働組合政治献金についても、労働組合固有の運動としてのその方面から規正したらいいじゃないか、こういう考え方が行われております。従って、ただ会社から献金をするから組合からの献金規正しろ、こういう議論はすぐ成り立ちにくいというので、私はやはり労働組合の本質的の面からしてそういうものは規正していくべきものじゃないかというふうにも考えておるわけであります。で、いずれにしましても、一つの今の保守党の政治資金というものに対して、今の社会党政治資金というその出所からして、二つ並べて議論をするということが、これはきわめて卑近と申しまするか、まあ深く考えないときの議論じゃないか、こういうようなことを今後みんな研究しなければならない、そういうわけで選挙制度調査会においては結論が出なかった。むしろこれは今後の問題としてやらなければならない。従って今回の政府の案を用意するに当っても、結論が出し得なかった。また政府が使い得るような答申が選挙制度調査会の中から出てこなかった。従って私はこの問題に関する限りは、この際はやむを得ぬじゃないか、こういうふうな考え方を持っておるということだけ参考のために申し上げておきます。
  155. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 まあこれはさっきから早川政務次官などの間に話があって、私も横から聞いていて感ずることは、やっぱり違ったカテゴリーのことを結果だけ、金を出すという結果だけにとらわれて議論をされているという感じが私すると思うのです。先ほど政務次官が言われた、たとえば官公労労働組合社会党献金する、それはまあ税金であるところの国家の金を賃上げとかあるいはベース・アップとかいうところに回してもらいたいといったような目的も持っているのだから、結局会社から献金することによって何か国家政策上の利益を得ることと同じような結果になるのじゃないかといったようなお話があったように思うのです。私が誤解ならそれでよろしいが、結果から見ると、なるほどそういうような結果が現われて参りますけれども、これは小林君が今明快に言ったように、組合資金を政治的に使うことを規正するということは、組合は経済団体、経済的な目的を達成しようとする労働者団体である。それを直接かあるいは間接か知らないけれども、この組合費というものを、組合の収入金というものを、政治的にすることがいいか悪いか、いいとしても、その形式はどういうことかということに議論があるのであって、会社から政党政治資金を提供するということのいい悪いの議論は、やはりそれが国の政策と結び付いて会社なりあるいはその産業なりが利益を縛るということの目的があるのではないか、あるいは世間はそういうことを心配するから、できるだけそういう直接の、ギヴ・アンド・テイクという言葉を使われましたが、そういう与えるもらうという関係から切り離した方が……、結局そういうことをしているうちに政治の腐敗であるとかあるいは疑獄であるとかといったような問題を起すから、そういうものはできるだけ規正しなければならない、こういう議論があるのであって、金が団体から政党に入るということをもって、同一な見地からこれを律すべきではない、こういうふうに私は考える。小林君の考え方と全然同一の意見であります。そこで小林君は選挙制度調査会の内輪の人ですから、ただいまお話があったのです。私はこの委員といたしまして先ほど来お話のありましたことに対して、結論的に政務次官のお考えをお伺いして、先ほど来懇談しましたけれども、基本的なものを解明してみればそういうことになるのじゃないか、こう思うのです。御見解をお伺いします。
  156. 早川崇

    政府委員早川崇君) 先ほど申し上げましたように、政府としては結論を得ておりません。ただこういう意見があり、またこういう見解があるということをいろいろ披瀝いたしまして、小笠原委員からいろいろ御質問がありましたが、先ほども宮澤委員にお答えしたように、私は税金で俸給をもらっておるから寄付はいかぬということを言ったのではございません。官公吏は服務の紀律上政治的中立を守らなければならぬという面から、まとまって一つ政党に、幹部が寄付を入れて、大量に行くということはどうかという一つの問題点、また先ほど小林委員が御指摘のように、労働組合というものはその主たる目的はこうこういうのだ、政治献金という場合には別に規定を設けてはどうか、すなわち労働組合の本質的な性格からの規正一つの問題となり、おそらくそうなっておるのでございましょう。そういったいろいろな問題、意見というものを総合調整して、政府一つの結論を得て正式に規正法の改正案として出すには、まだ意見がまとまっておらない。こういう実情を率直に申し上げたわけでございまして、今決定的な意見政府に述べろと申されましても、その点はちょっと時期が尚早じゃないか、こう思う次第でございます。
  157. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今早川政務次官のお話を聞いておりますと、穏健な、正鵠を得たお話なんですが、先ほど加瀬君が突っついたときには、長官もそうだったし、政務次官もそんな会社のことばかり、会社自由党ですか民主党ですか、その当時のことを突っつくなら、社会党労働組合関係はこうじゃないかと言わぬばかりの答弁があったのだから、これはちょっと本質が違う。カテゴリーが違う問題を一緒にして御議論せられておるという感じがしたのです。ただいまの御見解ならば、われわれもそう別に大して憤慨しなければならないということもないのであります。
  158. 加瀬完

    加瀬完君 提案者の三田村さんからおおらかな選挙というものであるべきであって、あまり罰則規定なんかをきびしくしてたとえば立看板が倒れたのも起せば罰則に触れる、こういう過去の選挙があったけれども、そういう選挙ではなくて、もっと自由な選挙、おおらかな選挙というものをわれわれは望んでの選挙法改正だ、こういうお話でございました。そこで私もそれには同感でございます。しかしそのおおらかな選挙ということは、これはやはりおおらかな選挙という前提として、いつも問題になる選挙の平等とか公正とか自由とかいうものが確保された土俵の上でのおおらかさというものでなければならないと思います。まあ平等感がはなはだないというので区割が問題になりまして、一応区割というものは削除をされたおけであります。それで区割に対する平等といいますか、公正をも含めて、主として政党間の平等性がないということで区割が問題になっておりました関係から、衆議院における選挙法案の審議におきましては、どうもこの公正という問題はそれほど強く取り上げられておらないように速記録で私どもは感ずるわけであります。しかしこうして修正されて出されたものを見ますると、一応区割というものがないわけでございますから、今度どういう区割が生まれてくるかということについては、どうしても公正の原則なり、あるいは自由の原則なりというものを確保してかからなければならない。その公正の原則というものをどう確保するかということになりますと、どうしても政治資金の問題に触れるという関係で、今まで私は質問を進めたわけでございます。選挙制度調査会のメンバーであります本委員会小林委員から、それらの経過についての御説明がありましたし、政府のお答えも大体その点はよくわかったわけでございますが、どうも基本的な提案の意思というものが、この公正なりあるいは自由なりといったようなものについては、これだけ観点を置いておらないのじゃないかというまた疑問が残るわけであります。たとえば泡沫候補の整理ということに非常に今度は念を入れております。しかしこれははなはだしく個人の立候補の自由をも縛ることになりますし、あるいは一応形づけられた政党に対しては忠実でございますけれども、新しく生まれ出るであろう政党というものに対しましては、これは非常に過酷な制圧ということにもなりかねない内容を持っております。こういう点が憲法ともいろいろ関係があるという衆議院におきましては公述人のどなたかの御意見もあったようであります。憲法の問題を取り上げませんでも、どうも私は選挙自由の原則というものから見れば、ちょっとこれは問題になるのじゃないかというふうに感ずるわけでございますが、これはもちろん先ほど提案者の方で修正された問題ではございませんで、原案の中にある問題でございますが、この泡沫候補者の乱立を防ぐ、あるいは公認制を強化する、こういう点は新しく生まれる政党というものに対しまして、あるいはまた個人立候補というものの個人の意思に対して、選挙自由の原則にそむいておるのではないかという点で、どのような御検討がなされてこういう結論を生み出したのでありましょうか。政府側と修正提案者と両者にお答えをいただきたいと思います。
  159. 早川崇

    政府委員早川崇君) ただいまの御質問は供託金の十万を二十万に上げたという問題に関係する問題だと思うのでありまして、これは長年十万円ということで来ておりまして、物価も非常に安いころのあれでございます。従って二十万、一人の候補者に対して大体このたびの選挙法では約六十万円近い国費を使うわけでございまして、これが全部取り上げられるのではないから、少くとも五分の一、全投票数の五分の一取れますなら、当然返してもらえるのであるから、この程度の供託金というものは必要ではないか、そうでなければ、いわゆる、いわゆるでございます、いわゆる売名的な泡沫候補といわれるものがばっこするのも、これまた今度の二大政党育成上困るのじゃないか、こういう趣旨で作ったわけでございます。
  160. 三田村武夫

    衆議院議員三田村武夫君) 今、政務次官が御説明されました政府原案には、供託金二十万になっておりました。これが衆議院委員会でもやかましい問題になりまして、いわゆる泡沫候補の整理のためだ、選挙の自由を害するのじゃないかという御意見も手痛くいただいたのでありますが、修正案でこれを現行法通り十万にいたしましたのは、そういった審議を通じての御議論もさることながら、選挙の実際にかんがみて、現在の経済情勢と申しますか、そういう点も考慮に入れました結果、特に今二十万にする必要はないじゃないか、現行法でさしつかえないのじゃないかというような結論に達しましたので、現行法通りにしたような次第でございますし、それから選挙の自由制限の問題でありますが、これはこの問題も衆議院委員会における非常に大きな論議の中心になったのでありますが、私たちは政府原案に対しても、実は与党でありますから、共同の責任があるわけであります。修正案を出した場合も同じでありますが、この点に関して、今度の改正案実体規定のうちに、政党活動に、従来二十五人、選挙制度調査会の答申にも二十五人とありましたのを五十人にした点も、おそらく問題の論点の一つと思います。しかしこれは先ほども申しましたように、われわれが新しい民主政治の基礎固めをする場合には、やはり政党という組織を基礎にし、政策を中心にした選挙があくまでも望ましいのであります。でありますから、それゆえに五十人にするということは、論理の点においては一貫性がないかもしれませんが、政党というものが自然発生的に育っていく過程をながめてみますと、必ずしも常に政府ないし法律上、制度上の保護を受けることを条件としないということが考えられるのであります。あるいは全然選挙法上の保護を受けてない小さな政治団体でも、やがては二十五人になり、五十人になり、百人になることもあり得るのであります。その場合の自由は一つも拘束も制限もしていないのであります。そういう意味から考えますならば、憲法の法の前に、個人はあくまでも平等である。あくまでも選挙は自由に行われなければならないという立場と矛盾してないというのがわれわれの立場であり、また見解であるということを御了承願いたいのであります。
  161. 加瀬完

    加瀬完君 一応供託金だけの問題を取り上げれば、十万円であったものを二十万円と引き上げられ、また十万円と戻ったわけでありますから、それで問題は解決しておるともいえるわけであります。私の伺いたいのは、そうでなくて、たとえば供託金問題にいたしましても、その他車の使用、いろいろの問題がございます。とにかく泡沫候補の乱立を防ぐという一つの方式が今度の改正法の中には強く生きておると思う。貫かれておると思う。そこで泡沫候補者の乱立を防ぐという線を強化して参りますと、どうしても個人の立候補の自由というものを得ることになる。そこで政府に問いたいのは、泡沫候補の乱立を防ぐというのは、単に売名的立候補者があるからこれを防ぐんだ、選挙経費の節減をはかるんだ、それだけによったのか、またそれだけによって候補者個人の立候補の自由というものを制限をしておるという御立場に立ったのか、これらの経緯をもう少し明白に御表示いただきたい。  それから修正者におきまして御修正をなさいましたときに、この泡沫候補者の乱立を防ぐという問題を、非常に非難もあったのでございますから、つどう緩和するというお立場に立たれて御審議を進められたのか、こういう点を重ねて伺いたいと思います。
  162. 早川崇

    政府委員早川崇君) 御説の問題は、憲法の政治の自由という問題との関連の御質問と考えます。立候補してはいかぬ、政治結社を作ってはいかぬというところまで進めますると、これは明かに憲法違反でございまするが、このたびの提案いたしました選挙法改正案はそうではございませんので、日本の二大政党を助長、育成するためには公認制度を設け、また二十五名から五十名という確認団体政党としての若干の利便を与えるわけでありまして、ほかの政党が決して結社をしちゃいかぬのじゃなくて、これが五十名候補者を出せる力がつきまするならば確認団体になれるわけでございます。そういう政局安定、三大政党の助長、育成のために若干の制限をいたしたのでございます。われわれといたしましては、そういう観点からこの問題をながめており、また根本的な憲法を侵すものではないと、こういう考え方でございます。
  163. 三田村武夫

    衆議院議員三田村武夫君) 修正案提案の場合の考え方といたしましては、衆議院委員会における審議過程の御意見もありましたが、さらに選挙制度調査会に出まして御意見を承わったのであります。泡沫候補云々というそういう立場でなくて、供託金は現行法通りでいいじゃないかという御意見の方が強かったのであります。修正案提案の場合も、われわれの考え方といたしましては、泡沫候補の整理云々と、こういう論点から全く離れた立場で、供託金は現行法のままでいいじゃないか、五十万円に特にする必要はないじゃないか、こういう立場で修正したような次第でございます。
  164. 加瀬完

    加瀬完君 選挙民からすれば、個人選択の自由というものは、政党本位に、政策による政党本位に投票すべきであるけれども、その中で——その中でというか、それとは別に、個人選択の自由というものも当然これはあると思う。こういうふうに一つの作為によりまして、二大政党の育成といいましょうか、あるいは安定政権の実現といいましょうか、こういうものをねらわれて参りまして、泡沫候補者の乱立を防ぐという名のもとに、個人選挙活動が非常に制限をされて参るといたしますと、どうしてもこれは一般的な傾向としては、やむを得ないといえばそれまでのことでありますが、たとえば一つの区で、ある政党の公認争いをいたしまして、むしろ選挙民はAならAというものに出てもらいたいと思いましても、Bが公認になったためにAは公認に漏れる。ところが選挙民はAに投票したいという傾向が非常に強くても、Aの選挙活動は非常に制限されるといったようなことも出現をするのじゃないか、こういう点についての個人選挙における権利といいますか、自由といいますか、こういうものは、あまりにも——単に泡沫候補の制限の問題だけでなく、今度の選挙法全体を通じてきびしく規定されておるのじゃないかと思うのでありますが、この点はこれは政府でもけっこうです。いかがです。
  165. 早川崇

    政府委員早川崇君) 御説の通りでありまして、小選挙区の場合には、極端な例を申しますと、全国区の大選挙区のように多数の候補者の中から選ぶという利点がなくなるということは申すまでもございません。しかしその面ではなるほどそうでありまするが、同時に候補者が識別しやすいとかあるいは関心が深くなるとかいわゆる小選挙区というそれ自体の利益からそうなっておるのであります。もう一つの理由は、小選挙区、このたびの改正案におきましては個人よりも政党という面が強く出ております。そういった面からもわれわれは若干のそういう候補者選択の範囲の狭小を忍んでおるわけであります。といって、何も公認されなかったら、Aという人が、あるいはBという人が立候補できないわけではないのでありまして、若干これはハンディキャップがつけられるという程度でございます。従って社会党と自由民主党と二大政党の公認候補者だけしか立候補しないというところまで制限しておりません。そうしますとこれは明らかに憲法違反になりますわけですから、その点は制限しておらないのでございます。今申し上げましたように、候補者選択の範囲が非常に狭いことは事実であります。それ以外のいろいろな利点からこれはやむを得ないと、かく考えておるわけでございます。
  166. 加瀬完

    加瀬完君 小選挙区制というものの実施に当っては、こういう方法がとられるということは、方法としてはそれは当然だと私も認めるにやぶさかではありません。しかしその計画される選挙法というものの内容としてとられていく方法が、あわせて国民の要望する選挙法であり、要望する選挙法内の方法ということでなければ、前提として私はいけないと思う。むし返すようで恐縮でございますが、区割というものが除かれておりますから、これは問題外といたしまして、残された選挙法というものがどれだけ一だれもが考えてみて、国民の一般の世論といたしまして、こういう選挙法であるならば選挙の公正がはっきりと確保できるというこの公正の確保ということに裏づけられた選挙法であるならば、その中で今いったような政党本位といいますか、極端にいうならば既成政党の本位、こういう選挙方法がとられても一般の国民は一応うなづくでしょう。しかし選挙法改正は国民の要望している公正な選挙あるいは公明選挙というものの諸条件というものが整備をされませんで、ただ政党本位の選挙だけが小選挙区の名のもとに強行されますと、ほんとうの意味における国民の世論というものを反映して代議士が選ばれてくることにならないという欠陥をも生じてくるわけでございます。そういう点からこの選挙法の全体を通じて見ますると、今いった政府の御説明があまりに作為的に動いておると、まあ意見がましくなりますが、われわれ判断せざるを得ない。ところが国民の要望する公明選挙選挙の公正を期したいという諸条件に対しては、どうもそれほど盛られておらない、こういうことになって参りますと、私は一年半の後に公布発効をするものでございますから、それならばここ半年なり一年なりの余裕期間を置いて、完備したものになって、選挙の諸条件が満たされるなら、これならおおらかな選挙ができるわいという国民の要望にこたえられる。そのような内容に作り変えられたものが出されてくる方が私は至当ではないか、こういうことを感ずるわけであります。質問がだいぶ長ったらしくなりましたが、先ほど結局選挙の公正を期するというためから、あるいは選挙の自由を期するというためから、自由ということについてはこういう制限もある、あるいは公正ということについてはいろいろ望みたいような条件があるにかかわらず、それらが全面的には取り上げられておらない、これではどうも二人政党の育成あるいは大政党による安定政権というものを考えましてもあまりにも国民が——これはあなた方にそういう意思があるとは申しません、あまりにもこの案は党略本位である、現在ある政党本位である、こういう考え方をしてこの選挙法に反発をするということになりますと、これは安定政権を望むこともできなければ、政局の安定を望むこともできない。これは三田村さんのおっしゃるように、選挙の秩序を、なるほどよく確保してあるという内容が、第一に国民にアッピールされるものでなければならないと思います。その点についてはどうも御説明を承わりましても、私どもとしてはしっくりとできない。そこでまあ修正者には、こういう声はこれは衆議院の方にも相当あったと思う、で、これは一部かもしれませんが、私どもの考えのような国民の声というものを、修正案の審議の間にどうお取り入れになりましたか、その点について詳しく御事情をもう少し御説明をいただきたいと思います。
  167. 三田村武夫

    衆議院議員三田村武夫君) ただいまの御意見はなかなか広範にして深い意味があると私は思いますが、簡潔に私われわれの考えておりましたところを申し上げて御参考に供してみたいと思います。今お話の、私が先ほど申し上げました選挙の公正な秩序を確保するということが一番大事だと、この点からいわゆる民主政治というものの基本的理念というものが浮び出してくるのでありますが、その場合どうしても選挙民、すなわち主権者の立場に立って考えてみました場合に、選挙を通じて自己の欲する政府を選択するのでありますから、これはやはりその政治を担当し、この運用の衝に当る政党というものが中心になることが必要の第一条件だと思います。同時にその政党の持つ政策というものが主権者たる選挙民の立場からするならば、やはり一番大事な一つの条件である。つまり党の方針、性格、さらにその党の持っておる政策、これを簡明直截に割り切って判断できる選挙というものは、一番公明で、一番民主主義のルールに適合しやすい選挙制度であるということが、われわれの考え方の基本になるのであります。そういう立場からわれわれは今度のいわゆる小選挙法案というものを提案したのでありまして、また審議過程にかんがみて修正をいたしました場合の考え方も、基本にあるものはそれであります。従いまして、その基本線をくずさないこと、それからこれはあくまでも生かしていくという立場からいたしますならば、原案に盛られました小選挙区制のシステムはそのまま生かしていく、そうして世論、とかくの論議のありました区割、われわれはこれを党利党略とは考えておりませんが、見る者をして批判の対象たり得るならば、第三者の公正な意見によって新しいものを作る、そうしてお説の通りに、これは今この法案を作ってもすぐきょう、あすからその効力を期待するのではありませんから、十分その間区割の作成と同時に、新しい選挙の秩序を確立する、選挙制度調査会の答申にあります選挙の啓蒙運動と申しますか、新しい選挙を通じて、国民が、主権者たる国民が自己の欲する政府を選択するというこの基礎固めをやっていきたいということがわれわれの念願であります。  それから今一つ先ほど来しばしば御意見にありました政局は安定しているじゃないか、この小選挙法案提案の理由として政局の安定ということが強く言われるが、現実に政局は安定しているじゃないか、この際何を好んでこういうものを出してきたかという御意見でありますが、われわれ実はその点についてあまり多くは言っておりませんが、昨年十一月、御承知の自由、民主両党の合同により、自由民主党が結成されて、衆議院における二百九十九名という圧倒的多数を持っております。これは客観的に政局は安定していることは厳然たる事実でありますが、われわれはこういう機会にこそ一番困難な問題に取り組みたい、いつかはやらなければならない選挙制度の秩序を確立するためには党内にも相当の意見があり、なかなか困難な問題であることは承知の上でありますが、そういう困難を覚悟の上でこの大きな問題に取っ組んだんだということを、私はこの際に御理解願いたいと思うのであります。
  168. 加瀬完

    加瀬完君 三田村さんのいろいろ御説明はるるわかるのであります。で、簡明直截に政党政策が判断できるような選挙というものを希望されると、これもごもっともだと思います。ただ問題は、簡明直截に判断されることが他の何らの力関係の影響もなく、個人の意思によりまして簡明直截に判断されることであるならば、これは公明選挙と言い得るわけでありますが、今までの選挙で一番問題になっておりましたのは、個人の意思が不当なる支配によりまして曲げられてくるという事実、それからもう一つは、政党政策、あるいは個人の意思、こういうものが簡明直截に選挙民に理解されなかったという事実、こういったようなものが今度の改正法の中には改訂されておらなければならないと思う。そこで区割というものによって、小さく区割を区分けいたしましたので、これで割合に政策政党的になりますし、簡明直截にわかるのじゃないかと、こういうことも小選挙区のねらっている一つの目的だということも私もわかります。しかしながら、一応将来区割選挙区画定委員会によって区割されました公正なものだということにいたしましても、その公正な区割の中で行われる選挙方法というものが公正でないのでは、この正しい判断というものは打ち出されてこないということにもなるわけでありまして、そこでこの区割というものが一応ワク外にされたならば、今度の選挙法の修正におきましては、いかに選挙方法を公正にするかという点に集中されて問題の解決がはかられなければならなかったのじゃないか、そういう点でいろいろの点あげられておりますことはわからないわけではございませんけれども、この提案説明の中にもございますように、とにかく私は昨日も——一昨日でしたか、質問をいたしましたが、世論の強い要望に率直にこたえると、こういうお立場をおとりになった。そこで、そうであるならば、区割ばかりを世論は問題にいたしておるわけではございませんので、選挙方法そのものについて、どういう公正さを維持するという点に極力御努力をされたのか、改訂いたした通りだとおっしゃるかもしれませんが、それをもう少しくわしく御説明いただきたいと思うのです。
  169. 三田村武夫

    衆議院議員三田村武夫君) これは今お話の通りでございまして、区割が別になりましたから、今度の改正案、ことに当院で御審議願います場合の対象は実体規定であります。この実体規定に対して、修正案提案の立場から申し上げますならば、今お話になりましたように、もとより世論を忠実に聞いたことも当然のことで、審議過程を通じまして、これは私その衆議院委員会でも、これは同僚議員の間で話し合ったことでありますが、修正案を出す場合に、与党提案——政府提案政府原案を与党たるわれわれが修正案を出すことはおかしいのじゃないかという意見があったのであります。しかし、これは旧憲法と現憲法とはよほど性格が違うのだと、主権が国家にあった場合と、主権が人民にある今の憲法は、議院内閣制をとっているのでありますから、政府国会は全然別個のものだと、憲法には国会は国権の最高機関であると書いておりますから、政府提案といえども、その審議の過程にかんがみて、修正すべき点は修正することが正しいと、こういう意見からわれわれは修正案を出したのでありますが、従いまして、その修正案の内容においても、今お話の別表を切り離した修正案、原案の中のいわゆる実体規定の中におきましても、たとえば立会演説会の問題、これは政府原案は廃止することになっておりましたが、やはり世論にかんがみ、さらに審議の過程にかんがみて、立会演説会、これは相当困難な問題があるけれども、一つこれも残そうと、それから先ほど来御意見のありました供託金の問題も、原案では二十万になっておったが、これも十万円にしよう。それから選挙犯罪者の逃亡の場合の時効の問題でありますが、これは御承知の通り、従来、しばしば六カ月逃げておった、一年逃げておった、それで現われて、遂にその事件は消えてしまった。こういう悪質な者もたまにはあったのでありますから、今度は時効も倍にしようという修正も加えたのであります。さらに連座規定の点でやかましい問題となりました付帯訴訟の点であります。これも政府原案では、付帯訴訟を検事がつけるという書き方だけでありまして、具体的にどういう手続をもってするかということは、いまだ未成案のままであったのであります。現在の段階でも未成案でありますが、少くとも修正案におきましては、この法案が成立いたしまして、この改正選挙法によって選挙の行われる場合は、それ以前に付帯訴訟に関する訴訟規定、訴訟手続を立法化して、その法律の成立と同時に本法全体が動くと、こういう建前をとっておるのでありまして、今お説のような世論並びに審議過程にかんがみた諸般の意見は、今度の修正案でわれわれの立場といたしましては、できるだけ全部と申すと語弊があるかもしれませんが、大部分、可能な限り修正案に盛り込んだ、こういう立場でございます。
  170. 加瀬完

    加瀬完君 特に公正な選挙を期するために、選挙制度調査会では、選挙違反に対する罰則といいますか、公正選挙を維持するためのいろいろの制約、条件といいますか、こういうことをずいぶん問題にいたしておるわけであります。今度の修正案におきましては、若干強化されておりますけれども、私どもの見るところでは、まだその調査会の意図しておるものから見れば、どうもそれほどまでにいっておらないというようなことが感じられるわけでございますが、この点、一応強化されては参りましたが、この調査会案というものを全面的に、あるいは調査会の精神をさらに一段飛躍してお取り上げにならなかったのはどういう経過でございますか。
  171. 早川崇

    政府委員早川崇君) この問題は、衆議院におきましても非常に論議された問題でありますから、私ども政府の見解を申し上げます。  それは連座制の強化という方針に対しましては、いわゆるおとり免責規定だけが残っておるのでございます。もう一つは、出納責任者、総括主宰者が犯罪を犯して刑に処せられた場合に、当然失格するのですけれども、当選無効の訴えを起さなければならぬ。それでは非常に年月がかかりますので、ここでは付帯訴訟の制度を設けまして、その弊害を除去した、それでわれわれは十分だと思うのです。なぜならば、英国の例をとって恐縮ですが、英国におきましても連座制の規定はありまするが、出納責任者なり、候補者の代理人が罰則を犯しましても、候補者が選任監督の義務を怠っていないという証明があれば、全部免れるのであります。日本の場合には、乱闘国会の直後におきまして、いわゆる出納責任者と総括主宰者が罪を犯した場合において、選任監督の証明ができれば免れるという規定を実ははずしたのであります。これは選挙制度の起草委員の中の有力な方々も御存じございませんでした。社会党鈴木義男委員なり、あるいは中村高一委員までも御存じがありませんでした。そのような状態で、すでにこれが除外されて改正されたということを政府説明で知って、皆が驚いたような次第であります。   〔委員長退席、理事宮澤喜一君着席〕  で、すでにわが国の連座制は、各国に比べまして行き過ぎるところまでいっておる、おとりの免責規定だけが残っている。西ドイツやフランスや、あるいはイタリアなんかには、連座規定はありません。連座という封建的な、あるいは共産主義国なんかでやるような、自分の無過失責任を問われるという言葉自身が少しおかしいのでありますけれども、すでにわが国では行き着くところまで来ているので、この選挙制度調査会の答申に関する限り、付帯訴訟の制度をとることによって十分に目的を達する、かように考えておる次第でございまして、この点は世間で知らないための誤解が非常に普及しておりました。この機会に一つ政府の公式の見解を表明しておきたいと思います。
  172. 加瀬完

    加瀬完君 その政府の公式の見解の立て方に、私は情勢判断の誤まりがあると思う。イギリスというのは、たびたび例に引かれますが、長い間の選挙の経験を経ており、あるいは民主主義的な訓練を経ております。イギリスの選挙と、現状の日本に行われておりまするこの選挙の状態というものを比べ分けまして、あるいは国民の民主主義に対する意識、あるいは選挙に対する国民の状態といいますか、こういうものを比べあわせてみて、イギリスにないから日本にも必要がない、あるいはイギリスでこうだから日本でもこうだということは、立地条件が違っているのですからね、選挙そのものの条件というものも違ってこなければならない、要は選挙における腐敗防止というものをどういうふうにするのが適切かという問題になってくる、三田村さんの御指摘のように、これは刑罰主義で、選挙はおっかないものだというような腐敗防止のための極端な刑罰主義というものを加えようとは、私どもも絶対に思っておりません。しかしながらイギリスにないからどうこうということでなくて、現状の選挙常識において行われる日本の選挙において、また小選挙区という方法において、一体腐敗をどうして防ぐかというこの問題は、単に連座とか何とかという言葉に限りません、この問題の解決というものをしなければ、小選挙区ということをやりましても、小選挙区による弊害というものは、また大正九年あるいは十三年の選挙のように繰り返される、その点ですね、これは日本の現在の情勢から判断をいたしまして、どういう腐敗防止の方針をおとりになったかという点を御説明いただきたいのです。
  173. 早川崇

    政府委員早川崇君) 加瀬委員すら誤解されておるのを私は非常に遺憾に思うのであります。英国の今申し上げました選挙法は、現在の日本の選挙情勢よりもはるかに腐敗しておったときのものです。ここに公明選挙連盟で詳しく載せておりますが、一八八三年腐敗行為防止法ができました。その腐敗行為防止法において、私は今申し上げましたように、英国においては無過失責任を問うておらないのです。候補者がその選任監督の注意さえ怠っておらなければ、助かるのであります。その後五、六十年たちまして、現在の英国は選挙違反がない、その現在の選挙法よりも日本が重くないのは当らないというのは、全く誤解されておるのでありまして、英国のそういう腐敗防止法は日本よりはるかに腐敗していたときに作られたもので、それだけで目的を達したのであります。何を好んで日本は英国よりもはるかに腐敗の少い現段階において、すでに英国などより重い連座制規定をとっておるのを、さらに広範囲の連座制を採用する必要がありましょうや。私はこの点の誤解は是非解いていただきたい。
  174. 加瀬完

    加瀬完君 イギリスの選挙法がいかに行われて、どういう連座規定があったということは、私は御指摘のように知りません。私が問題にいたしておりますのは、現在行われておる選挙法による選挙に伴う腐敗に対する防止の方法、こういうことが現状において完璧でないということは、これは選挙制度調査会の答申によっても明らかでございます。あるいは日本の世論といいますか、日本の良識を代表するといわれる新聞紙の社説におきましても、今度の選挙法の欠陥は、腐敗防止に対するところの打つべき手が完全ではないということをしばしば指摘いたされておるわけでございます。問題は、今まで行われておりました日本の選挙において、あのまま野放しの選挙をやっておりまして、腐敗防止がスムースに行われていくかどうかという認識の点だろうと思います。イギリスで一八八三年、相当、日本以上の腐敗選挙であったにもかかわらず、それほど強力な腐敗防止の規定というものを作らなくても、スムースに伸びたのだ、だから日本においても、それよりははるかに向上された選挙の環境の中において、イギリスよりも強い防止法を作る必要がない、こうおっしゃられますが、日本も何回かの小選挙区制も経験しておる。そのたびごとに小選挙区というものは、たちまちにしていろいろの腐敗条件が山積いたしまして、変えられておる。今度の小選挙区制は前のとは違うといいますけれども、だれだって提案するときに、前の選挙区制のときと同じ弊害がまた起ると、そういう提案説明をするばかはない。しかしながら選挙における弊害というものを、まだまだ十年一日ごとくといいますけれども、何十年の間日本においては依然として行なっておる。こういう問題を粛正してしまえなかったならば、選挙の公明さ、おおらかな選挙、あるいは国民の支持をする安定政権というものは生まれてこないと思う。たとえば先ほどから、選挙制度調査会ではあっせん収賄罪ということを問題にいたしておりますけれども、造船疑獄のようなあれだけの、法律は別としても、これは議員としては恥ずべきような行為というものがあったということは当然認められたにもかかわらず、あっせん収賄罪というようなものもありませんから、何も結局問題にならない、それで、これは自由民主党とか社会党とかという政党的な態度じゃなくて、日本のお互いの政党人として、政党の向上というものを期するためには、日本の政治の向上というものを期するためには、現行の選挙を野放しにしていいという見解に立つということは私はあり得ないと思う。そういう点で確信をもってお答えになられるそうでありますが、私も確信をもって、選挙に関する行動に対しては、もっと公明を期するような規制を現状においては必要とすると言わざるを得ないと思うのであります。
  175. 早川崇

    政府委員早川崇君) 加瀬議員と御議論するわけじゃございませんが、新聞の世論が連座制強化、罰則強化ということを言っておる、なるほどそういう政府案に対して批評もございました。ところがそのいわゆる世論というものの場合に、連座制については、それは誤解の上の非難でございまして、たとえば御手洗辰雄先生が読売で非難されました。その中に連座制強化の出納責任者、包括責任者に対する免責規定がなくなっておることを知らないで、これは候補者が選任監督しているという手紙一札入れたら助かるのだ、こんなことを残しておいてけしからぬじゃないかという御議論をされておりました。矢部先生もそういうことを何かの機会で言われていたように思います。堂々としていわゆる世論を指導される方御自身が、乱闘国会直後で、改正されたあれを知らなかったのです。知らない上の御非難であったのです。いわんや諸外国におけるいろんな実例も御勉強になっておらない。そこで(「誰が勉強していない」と呼ぶ者あり)われわれは確信をもって、連座制強化ということは個人の無過失責任を問うという憲法に関する大問題でありますから、誤解の上に立って、そういう改正があったということを知らない前提に立っての世論と、世論の指導というものに対しては、政府としてはどうしても誤解を解かなければならない。われわれはかように申しておるのでありまして、この機会に、すでに連座制の問題は限界にきているという点だけは、どうか一つ御理解を願いたいと思います。
  176. 加瀬完

    加瀬完君 私はもちろん連座制だけを問題にしておるのではない。現行の選挙法のもとにおいて行われました選挙におきましては、幾多の腐敗の要素があるのじゃないか。腐敗の事実があるではないか。この選挙によってかもし出される腐敗というものに対しては、これは防止をしていかなければならないじゃないか。その一つには、連座制という問題があるかもしれない。しかし、私の質問しておるのは、一つも連座制ということをやるようなことは言っておらない。あなたは、連座制だけでもって一体腐敗防止ができるというお考えなんですか。もう一度申し上げますが、腐敗がないというお立場にお立ちになるのか。腐敗があるとすれば、この腐敗を防止しなくてもいいというお立場に立つのかどうか。どうかして公正な選挙を行うために、およそ腐敗防止をしなければならないというなら、一体広い意味の、広域な立場に立っての腐敗防止対策というものが非常に完全じゃないじゃないかという国民の世論に対して、その世論が間違っておるのだと、こうあなたはおっしゃるのですか。
  177. 早川崇

    政府委員早川崇君) 一例を申しますと、社会党修正案は、出納責任者と総括責任者以外の責任者も選挙違反をする。これを情を知って候補者がさすと、連座にかけるというような御修正でありますが、ところが現行法においては、情を知って買収違反をやれば、現行法に違反して、当然候補者現行法違反にかかるわけです。だから、そういういろいろな誤解の上に立った御議論がありますから、われわれは一つ誤解を解いていただきたい。一般的な罰則に関しましては、これは日本の選挙法の罰則は、選挙行為という行政罰で罰しておる罰則でございまして、英国式でございます。ドイツとかフランスにおきましては、刑法において贈収賄とか、そういう刑法のみによって取り締っておる。多少の相違はございます。で、いろいろな問題を、これをさらに強化しようと言われましても、われわれといたしましては、この範囲のことでこれを実際実行すればいいのであります。腐敗というものは、この刑罰をただ科するだけでは腐敗を防止することはできないので、国民の啓蒙とか、また警察当局その他がその法に従って俊敏公正にやるとか、いろんなことが総合いたしまして、英国に見られるように四十年、五十年かかって初めて選挙法が行われるのでございまして、法律それ自身は、私は御指摘になるほどさらに広範な選挙罰則の規定を設ける、政治資金の問題は別でございます。先ほど御議論になりましたから触れませんが、選挙の罰則それ自身に関しましては、与党の御修正になりました程度においてまずまず限界に来ておるのでありまするから、あと選挙を公正にしていくためには、今言ったほかの要素もあわせて総合的に実行して、公明選挙の実をあげなければならないと、かように考えておる次第であります。
  178. 宮澤喜一

    理事(宮澤喜一君) ちょっと、答弁されますから……。
  179. 三田村武夫

    衆議院議員三田村武夫君) ただいま加瀬委員から、現在の選選をこのままでいいかという御意見でありますが、私も加瀬委員と同様に、このままではいけないという結論を持っている一人であります。ただしかし、現在の選挙界の現状というものをどうするかという、その問題に対しては、私は、先ほどもちょっと申しましたが、意見が二つあると思う。一つは、厳法酷罰をもって臨むというこの行き方であります。いわゆる厳罰主義であります。しかしこれは即効薬と申しますか、特効薬と申しますか、効果があるかもしれませんが、また逆作用、反作用がありまして、選挙が非常に暗くなってしまう、こういう問題があるのであります。およそ制度というものは、必らず長短両面があるのでありまして、厳法酷罰をもって臨めば反作用があって、選挙が暗くなってしまう。民主主義の国民の意思をすなおにくみ上げるという大きな目的と逆になるという方向を生み出すということをおそれるのであります。だからといって、それを野放しにするということは、これは許されるべきではありませんから、早川政務次官の御説明のように、現在の日本の段階において、可能な限界はこの辺だというところに一応の線を引いて考えておるのであります。同時に、先ほども申しました、われわれも選挙の第一線に二十年立ってきた者でありますが、   〔理事宮澤喜一君退席、委員長着席〕 この際れわわれの気持を率直に申しますならば、まずわれわれこそ反省しなければならぬ。選挙に携わるわれわれこそ、法を酷にするよりも、われわれ自身が反省をしなければならぬところに第一歩があるのじゃないかという気がするのであります。  それから先ほど、あっせん収賄罪の話が出ましたが、実はこれは、政治的な見解から申しますと、あっせん収賄罪というものもまことに必要だと思います。しかし、たしか私は、昭和十六年か七年ごろだと思いますが、当時私は衆議院におりまして、刑法の改正に手をつけたことがあります。そのときに、あっせん収賄罪を一つ改正規定の中に入れようじゃないかという意見が出まして、ずいぶん苦労して研究してみたのですが、非常に立法上困難であります。あっせん収賄罪というものを刑法のワクにはめて法律に書くためには、非常に困難な点がありますので、これは強い要望ではありますが、立法技術上なかなか困難な問題が残っておりますので、今直ちにこれをこの修正案の中に入れることもどうかと思いまして、なおその研究を将来に延ばしたという点を御了解願いたいと思います。  さらにもう一点、小選挙区制にすると、選挙が必ず腐敗するという御意見が強く述べられておりますが、大正八年の小選挙区の場合、これは九年に実際行われておるのでありますが、しかしこれは、私は選挙界の腐敗の大きな原因、条件として小選挙区が中選挙区に戻ったのだとは私自身は実は理解していないのであります。これは私も、政治を研究する上において、選挙制度というものは非常に重要だと思いましたので、最初の第一回の選挙のときから研究してみたのでありますが、最初の日本の選挙は小選挙区であります。これは、御承知のように、自由民権運動のほうはいたる世論のもとに国会が開設されまして、第一回の小選挙区制であります。当時は、御承知のように、主権国家でいわゆる明治憲法であります。これはほんとうに人民の意思というものが国会構成の上に非常に強く現われてくると、これは主権の競合と申しますか、やりにくいのであります。従ってこれは一人一区で、非常に強い国会構成というものは主権の競合できらわれて、藩閥官僚政権によってつぶされたということは、これは歴史上の事実であります。それから大正八年の小選挙区の場合も、これは原内閣で、政党の最盛期で、これは小選挙区を実施いたしました。けれども、これによって三百五名の圧倒的多数を占めて、いわゆる国会というものは、衆議院というものは、政府が全権力を握っておる格好になりますと、御承知の通り、護憲運動というものが起って参りました。そうして大正十一年の清浦護憲三派の内閣によって小選挙区というものは中選挙区、つまり三党、四党を国会場裡に浮び出させて、適当にこれをコントロールしていく、ここに権力政治の妙味があったということは、歴史の上に明らかであると思います。従いまして、過去の小選挙区が選挙界の腐敗のために中選挙区に変ったのだ、こういうことではないと、私はそう信じておるのでありまして、そういう立場から、私も、あくまでも民主主義の基礎的な条件である選挙界の秩序を確立する、こういうためには、相当の困難があっても、この小選挙区をどこまでも実現したい、こういう立場からの提案であり、また修正であるということをこの際に申し上げておきます。
  180. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 委員長お留守の間に、早川政務次官から、世論にしてもあるいは衆議院の議論にしても、誤解に立って議論するということは非常に困る、たとえば衆議院の議論にしても、社会党鈴木義男君、中村高一君、これはいずれも誤解に土台を置いて議論をしておる、世論々々と言うけれども、世論を形成しておる、御手洗辰雄君にしても、矢部貞治氏にしても、それぞれ誤解に立脚して議論をしておる、こういう世論というものは傾聴に価しない、そういったような発言があった。そういうことになれば、鈴木君にしても中村君にしても、あるいは御手洗氏あるいは矢部氏にしても、どういうところに誤解があるのかということを早川政務次官とはっきりと対決して、どの点が誤解であるかということを究明するか、解明してもらわなければ私はいけないと思うのです。この点は委員長において、その全部の人といわないまでも、場合によりましては鈴木義男君でもよいし、あるいは矢部貞治氏でもよろしい、この席上ではっきりと、早川政務次官がこの点この点は誤解である、こう言ったならば、それらの人々が、いや、誤解じゃないということを明らかにしてもらいたいと思う。一方的に、そういう人たちがいないときに、誤解である、誤解に立脚しておる議論というものは一顧も値しないというようなことを言うということは、まことに私はけしからぬ発言だと思う。
  181. 中田吉雄

    中田吉雄君 午前中のわが党の加瀬議員の質問に対しまして、例を鳥取県の参議院選挙にあなたは引いておられます。そしてその速記を調べますと、看過することのできない重要な発言をしておる。鳥取県の参議院選挙に見られましたように、十何団体というものが憲法改悪反対とか賛成とか、膨大な費用をもって政党演説をやっておる実情から云々、どういう根拠に基いて膨大な、そういうことをやっておるか。四月四日に選挙をやって来ました不肖中田としては、とうてい看過することのできない、どういう実態調査に基いてそういう発言をされているか、一つそういう実証をはっきりしていただきたいと思います。それらと関連して、きょうは時間がありませんから、日を改めて、どこにそういう膨大な護憲連合の費用を使って、どこにそんな根拠があるか。
  182. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 前段の部分について、私のたまたま理事が代理をせられておるのでありまして、聞いておりません。中田君の発言後段の部分については、私がこの席における場合の発言だったと思います。これは、私も速記録を見ておりませんから、どういうことだったか、しかし、まあ中田君の御意見は、速記録によっての御発言だろうと思うのです。政務次官におかれましては、もしあなたの所論に誤まりがあれば、御訂正なさるべきものだと思うし、もしまた御所論が正しければ、この点については、委員各位の御発言は相当根拠のあるものだと考えますから、委員長においては適当な措置を講じなければならぬかと思うのであります。これはまた、追って審議の都合で適当にしなければならぬと思うが、もし政務次官が所論に誤まりがあったということであれば、取り消さなければならない、かように思います。
  183. 早川崇

    政府委員早川崇君) 私は、御手洗さんが政府案の発表のあったあとの御批評を新聞紙上の中で明らかに、候補者が出納責任者または総括主宰者に対し選任監督すれば、たとえ彼らが違反で罪になっても、本人は助かるということがはっきり活字になっております。だからそういう連座制の問題で御答弁申し上げるときに、そういう誤解があるのだ。また、鈴木義男先生が本会議演説におきまして、政府案に対する質問をされましたときに、出納責任者または総括主宰者に対し選任監督をすれば、また監督の一札を入れておいたならば、候補者は、たとえ彼らが違反で罪せられても助かるということを堂々と御演説をされておるのであります。また、中村高一委員も、社会党修正案によって説明されて、そう言う。ですから、そういう誤解の上に立った御議論であるから、私は政府の責任において、この機会にそれは誤解である。それをもし世論というなら、誤解の上にその面に関する限りは立っておる。こう申し上げたのでございまして、その点は、別に私が捏造して、どうこう言うておるのではございませんから、新聞なり速記をよくごらんになって、いかようにも御判断願いたいと思います。  鳥取選挙の御指摘の面は、こういう私は気持で申し上げましたので、これが非常にお怒りになり、誤解になるなら、これは削除さしていただきます。私が申し上げましたのは、今度の選挙法の場合には、一つ政党よりも、そういう政党演説でありましても、応援にいけないという規定に、今度の小選挙区はなっている。ところが、従来の選挙法ということになると、中選挙区の場合には、たとえば鳥取県、私はちょっと聞いたのでありますから、それが間違いであれば直しますが、自主憲法擁護連盟の人がこうしてたくさんいる。また、社会党の方は労働組合の人がたくさん応援に行く。今度の小選挙区法ならば、一政治団体ができるのみですが、現行では、あらゆる政治団体がみずからの主張を述べ得るわけでありますから、それに要する費用とかいうようなものは非常に多くなるのではないか。それが候補者が出した出さぬという問題でなくて、それ自体の総計は、かえってそういう面では多くなるのではないかと申し上げたのでございまして、そういう事実を私が直接ある議員から聞き、また新聞紙上そういうように見ましたのを申し上げた次第でございまして、もし現実に戦われました中田委員に、そういう各団体の応援弁士がたくさんおらなかったという事実があればいさぎよく、私の誤解でありますから、委員長において削除をお願いいたしたいと思います。
  184. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 速記をとめましょう。    午後五時八分速記中止    ————・————   午後五時二十分速記開始
  185. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 速記をつけて。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十一分散会