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政府委員(秋山武夫君) 火災共済組合の問題につきましては、かつて先生、商工
委員会に御在席の当時にも御
提案があったくらいでありまして、非常にお詳しいわけでございますが、私から申し上げるほどのことはないと思いますが、最近大蔵省からこの国会の初めにもう一ぺんこの
法案を出したいという御相談を受けまして、基本的には私どももやはりこういう
制度はあった方がいいという判断の
もとにいろいろお打ち合せをしておったわけでございます。ただ当時、と申しましても二年あるいは三年になりますが、たちました間に周囲の情勢、ことに当時非常に高かった火災保険料金が最近非常に下ってきておるということから、実は当時はあまり考えなくてもよろしかった点につきましてもある程度の検討をしなければならん。すなわち、一体組合
制度でこういう現在の
状況下において火災保険
事業というものは成り立つものであろうかどうかということを組合経理というような面、あるいは協同主義という立場からも一応の検討をしなければならんというような問題が新しく発生したというような事情もございまして、私ど
もとしても検討にやや手間取ったわけでございます。結論といたしましては、現在でもやはりないよりは確かにあった方がよろしいという結論になりまして、その後数回大蔵省とのお打ち合せもいたしたわけでございます。大体おもな点についてはおよその
意見の一致を見たわけでございますが、実は私どもが非常に重視しておりました点について若干
意見の食い違いがございました。これは同じく中小
企業者の保護という立場から見ましても、少し大蔵省と私ど
もとは観点の相違がございます。御
承知のように協同組合法を作ってもらいたいという
意見が出ましたのは、ただいま申し上げましたような主として保険料率負担という面から、中小
企業者の負担を軽くしたい、お互いの力でそれをやりたいということが直接動機になったというふうにわれわれ思われるわけであります。保険業法を扱っておられます大蔵省の立場としては、一種の契約者保護といいますか、単に中小
業者なるがゆえにかかわらず、およそ契約をした者が不測の損害を受けることはいけないという立場がかなり強く出てくるわけでございます。その若干のニュアンスの相違というところが実は結論においてなかなか一致のできない問題を起しておる場合があります。それが今日まで実は
提案をみるに至らなかった主な
理由であったと私は心得ております。一番の問題点はやはり何といいましても、一件の契約限度をどのぐらいにすることが適当かということでございまして、これはまあかつて
小林先生が御
提案になりました当時は、たしか三百万円ぐらいまでというようなふうになっておったかと思います。私どもも実はできればそうしたいという
気持で、大体三百万円ぐらいまでを契約をとれるようにしたいという
提案をしておったわけです。これは組合の、何といいますか、資力、あるいは加入の見込み、蓄積できる範囲の見通し、
資金の見通しというようなことから、どうもちょっと高すぎるというような
意見もございまして、まあ妥協というわけでもございませんが、二百万円ぐらいまでならあるいはというふうなことも考えておったわけでございます。
もう
一つ大きく食い違っておりました点は、共済
事業ということの性質でございます。つまり単なる見舞金、あるいは多少それが大きくなるかもしれませんが、要するに火災の起りました際、金は受け取るのでありますが、それは厳密な
意味の保険といい得るかどうか、一種の見舞金程度にしかすぎないと思われる程度のものは、
一つ何とかして大目にみるということで、この点も前回の
法案のときにはたしか論議に上ったかと思いますが、私どもは現在前回に
提案されました十万円までの契約については共済
事業と認めるという点を、二十万円ぐらいまでせめて上げたいという考えでおるわけでございます。この二十万円と申しますのは、特に
意味があったわけでもございません。ただいま厚生省からもお話がございました生活協同組合の方のまあ通牒による一応の指導基準が大体二十万円というようなことになっておるというところから出た数字でございます。ただ、私どもの考えております二十万円と、生協の二十万円とは、実はだいぶ実際違うのでございまして、生協の方ではたしかあれは一物件について二十万円というような制限を一応基準にしておるかというふうに
承知しておりますが、私どもが考えました二十万円というのは、実は一契約者当り、一
企業者当り二十万円ということでございますから、それからしてみればずいぶん小さなものだというように思えるのでございますが、これもどうも大蔵省となかなか話し合いがつかぬというようなことで、かたや
農林協同組合関係では全然制限がされておらぬということで、一方には商品をかかえておりますから、資産価値からいえば中小
企業者の方が大きな保険を要求するわけでございます。共済
事業としても大体同様でございます。そういうバランスから考えると、むしろ逆のような感じもしないでもないということで、まあせめて共済
事業としては二十万円ぐらいまでは認めたいというのがわれわれの考え方であったわけでございます。
もう
一つ、これはそう根本的と言えるかどうかわかりませんが、兼業でやっております組合、たとえば米屋でございますとか、たばこ屋でございますとか、風呂屋でありますとかというようなものが、
業種別に、しかも適当に分散をせられておりますので、現に盛んにいわゆる共済
事業をやっておるわけでございます。また現実にこれらもかなり大きな額に上るのでございます。ただその場合、うまくいっておる
一つの要素としては、兼業であるという点が実は非常にうまくやっておるかなりの力になっておるのではないかというふうに考えられますので、こういうものはある程度危険もはっきり分散され、兼業ということで経費も比較的安く済み、歴史も比較的古いというような場合について、今のこの共済
事業としての二十万円の限度を適用するという点が果して適当であろうかという疑問を持っております。これらの点が実はもう少し話し合いが進むとよかったのでございますが、ほかの
法案の関係等からもだいぶ折衝に手間取りまして、まあ新たに定めた期日に間に合わなくなったというようなことでおそらく大蔵省としても、それほどその後積極的にわれわれの方に持ちかけられてこなかったんだろうと想像はいたしますが、いずれにいたしましても、われわれとしては実は話し合いがうまくつけば、この国会にこういう
法案が出るということについては、まことにけっこうだと考えておるのでありますが、いきさつを申し上げると以上のようなことになります。