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1956-03-23 第24回国会 参議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十三日(金曜日)    午後二時七分開会   —————————————   委員異動 三月十七日委員吉田萬次辞任につ き、その補欠として西田隆男君を議長 において指名した。 三月十九日委員伊能芳雄辞任につ き、その補欠として大谷贇雄君議長 において指名した。 本日委員大谷贇雄君及び西田隆男君辞 任につき、その補欠として川村松助君 及び吉田萬次君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三輪 貞治君    理事            西川平治君            白川 一雄君    委員            上原 正吉君            古池 信三君            高橋  衛君            深水 六郎君            吉田 萬次君            海野 三朗君            藤田  進君   政府委員    公正取引委員会    委員長     横田 正俊君    通商産業政務次    官       川野 芳滿君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    通商産業省通商    局長      板垣  修君    通商産業省企業    局長      徳永 久次君    通商産業省重工    業局長     鈴木 義雄君    中小企業庁長官 佐久  洋君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君   説明員    大蔵省主計局主    計官      鳩山威一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選工業用水法案内閣送付予備審  査) ○中小企業振興資金助成法案内閣送  付、予備審査) ○計量法の一部を改正する法律案(内  閣提出) ○下請代金支払遅延等防止法案内閣  送付予備審査) ○輸出保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○機械工業振興臨時措置法案内閣提  出)   —————————————
  2. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいまから本日の委員会を開きます。  まず委員異動について申し上げます。三月十七日に吉田萬次君が辞任され、その補欠として西田隆男君が指名され、また三月十九日に伊能芳雄君が辞任され、その補欠として大谷贇雄君が指名されました。さらに本日大谷贇雄君及び西田隆男君がそれぞれ辞任され、その補欠として川村松助君及び吉田萬次君がそれぞれ指名されました。以上御報告いたします。   —————————————
  3. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次にお諮りいたします。高橋衛君及び古池信三君から都合により理事辞任いたしたい旨の申し出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  つきましてはその補欠互選を行いたいと思いますが、この互選方法成規の手続を省略してその指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「一異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 御異議ないと認めます。よって委員長西川平治君及び白川一雄君を理事に指名いたします。   —————————————
  6. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に予備付託になりました二法案及び本院先議法案についての提案理由説明を聴取いたしたいと思います。工業用水法案中小企業振興資金助成法案計量法の一部を改正する法律案、右三件につきまして通産省側より提案理由説明を求めます。
  7. 川野芳滿

    政府委員川野芳滿君) ただいま議題となりました工業用水法案つきまして提案理由を御説明申し上げます。  わが国経済自立を達成するためには、産業基盤育成強化をはかり、産業国際競争力を高めなければならないことは、あらためて申し上げるまでもありませんが、このためには、個々の企業合理化にとどまらず、道路、港湾、用水用地等産業立地条件を総合的に整備することが必要であり、政府といたしましては、経済自立五カ年計画におきましても特にこの点を重視している次第であります。  これらの産業立地条件のうちでも、工業用水は、原材料、動力と並んで工業生産上不可欠のものでありまして、豊富低廉な用水確保は、産業発展上きわめて重要な意味を有するものであります。  しかしながら、工業用水つきましては、従来ほとんど積極的な対策が講ぜられなかったため、用水事情は次第に悪化し、特に工場密集地域では、地下水の過度汲み上げにより水源枯渇塩水混入地盤沈下等事態が生じ、工業生産維持発展の上に重大な障害となっておる現状にあります。  このような事態にかんがみ、至急この対策を講ずることを痛感しまして、このたび、通商産業省といたしましては、工業地帯における産業立地条件整備総合的施策の一環として、この対策を講ずることとし、工業用水道布設を促進し、豊富低廉な工業用水確保をはかるため、工業用水道布設について、昭和三十一年度予算案に一億八千万円の工業用水道布設事業補助金を計上して、これに要する費用の四分の一の国庫補助を行う等必要な助成措置をとることといたしておるのでありますが、さらに、これと表裏一体の関係におきまして、地下水の過度汲み上げ防止し、工業用水の重要な水源である地下水水源の保全をはかるため、本法案を立案し、これにより工業の健全な発達に寄与するとともに、あわせて地盤沈下防止に資することといたした次第であります。  本法案のおもなる内容は、次の通りであります。  第一に、工業用地下水の過度汲み上げによる水源枯渇等の弊害が著しく現われている重要な工業地域を政令で指定し、その地域において新たに一定規模以上の井戸により工業用水を採取する場合には、通商産業大臣許可を要することといたしました。  地域指定に際しましては、代替水源としての工業用水道布設状況及び計画を考慮することとし、企業活動に不当な圧迫を加えることのないよう十分配意することといたしておりますが、なお事前に関係都道府県知事及び市町村長意見を聞くのはもちろん、工業用水に関する重要事項を調査審議するため通商産業省に設けることといたしました工業用水審議会意見を聞くことといたしております。  第二に、新設の井戸許可つきましては、その深さ及び規模が、指定地域ごと地下水水源状況等を考慮して定める一定基準に適合する場合に許可することはもちろんでありますが、この基準に適合しない場合におきましても、工業生産上の必要性等を勘案いたしまして、特に必要かつ適当と認められる場合におきましては、地下水水源合理的利用に著しい支障がない限り、許可をすることといたしております。  第三に、指定地域における既存の井戸つきましても、地下水水源の合理的な利用のため特に必要があると認めるときは、通商産業大臣は、工業用水道への転換、地下水使用方法合理化等について適切な指示をすることができることといたしました。  以上がこの法律案を提出する理由であります。何とぞ、慎重御審議の上、御賛同あらんことを切望いたす次第であります。  次に、ただいま議題とせられました中小企業振興資金助成法案つきまして提案理由法案概要を御説明申し上げます。  協同組合制度わが国中小企業対策として最も基本的な制度一つであることは、あらためて申すまでもないことでありますが、なかんずく生産、加工、検査、試験、輸送保管等のために共同設備を設け、組合員経営合理化をはかることは、中小企業育成振興上最も有効な方法でありますので、政府は、昭和二十二年度以来、都道府県と協力し、これらの共同施設に対して補助金を交付し、または無利子資金を貸与する方策を講じまして現在相当成果をあげて参ったのであります。  また、わが国経済的自立を達成するために、工業一般水準を向上させ、国際的競争に対処する方策を講ずることは目下の産業政策基本方針でありますが、これらの最も基礎となるべき中小企業者は遺憾ながら戦後はことに資力、信用が薄弱となっておりますために、自力で旧式設備を更新することがきわめて困難な状況であります。  よって政府におきましては金融上の援助その他諸般の施策によって、これらの隘路の打開に努めますとともに、昭和二十九年度以来都道府県の実施いたします中小企業設備近代化のための融資制度に対し、重点的にその経費の半額を無利子で貸与し、これを強力に援助する措置を行なってきた次第であります。  以上は従来政府が実施して参りました共同施設設置奨励及び中小企業設備近代化促進のための措置概要でありますが、現行制度はいずれも都道府県に対し国庫資金を貸与する制度でありまして、対象となる件数もようやく多きを加え、管理、回収も長年月にわたる関係上、今回この制度の根拠を法定し責任分野を明らかにするとともに、制度を一層拡充整備して資金反覆利用を可能ならしめ、かつ、国の産業政策上の方針産業地域的特殊性との調整をはかることによって、本制度の効果を最高度に発揮せしめる方策を講ずることといたした次第であります。  本法案中小企業等協同組合共同施設及び中小企業経営合理化のための設備を設置するのに必要な資金貸付を行うために、都道府県ごと特別会計を設けさせ、国は都道府県がこの特別会計分として負担する金額と同額以内の補助金をこれに交付し、両者をあわせて一つ特別会計として回転運用せしめることを骨子とするものでありまして、特別会計の存続する限り、国は都道府県ごとに適当と認める金額に達するまで補助金を与えていくものであります。なお、昭和三十年度までの間に政府の支出いたしました補助金及び貸付金回収分もその都道府県特別会計に繰り入れさせることにいたしてあります。  以上のほか、特別会計についての基礎的規定組合または中小企業者に対する貸付限度条件貸付に関する都道府県事業計画についての規定等を設けておりますが、細部につきましては次の機会にあらためて詳細に御説明申し上げることといたしたいと存じます。  何とぞ十分御審議の上可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  次に、計量法の一部を改正する法律案を提出いたしました理由について御説明申し上げます。  計量法が近年における計量器の著しい発達に即応して新しい計量器を大幅に取り入れ、また終戦後の法制民主化の線に沿った諸規定を盛りまして従来の度量衡法とは面目を一新した法律として施行されましたのは、昭和二十七年三月であります。以後現在までに約四年を経過いたしまして、関係法令も整備され、計量行政も充実して参りました。  しかしながら計量法の四年間の運用の結果、同法が計量正確性を保持するために設定した諸規定の中には、理想的ではあるが現状では早急に実施することが困難な点並びに計量器使用者の便をはかる上において不合理な点がありますので、これらの諸点につきまして、若干の修正と補完とをする必要が生じてきたわけであります。このような事情からここに計量法の一部を改正する法律案を提出いたしました次第であります。  この法律案のおもな改正点の第一は、正確に計量する義務規定つきまして、量目の公差を、生活必需物資のような重要商品から順次定め、正しい取引を促進することができるようにしたことであります。  第二は、容量検査を廃止し、これにかわる制度として容器型式を定め、その型式に適合する容器容量の正確なものを自動的に製造し得る設備を持った容器製造事業者指定いたしまして、その指定事業者にはさらに自己検査をさせ、これに合格した容器にその旨の表示をさせて、正確な容器使用により大量に取引されている商品容量を正確にするようにしたことであります。  なお、そのほかにはかりの販売事業者に対し、はかりについて簡易な修理権限を与えること、自動制御等合理化使用される計量器について、メーカーがアフターサービスを自由に行い得るようにしたこと並びに定期検査にかわる検査を受けることのできる期間を広げること等若干の条文改正を行うことといたしました。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容概要であります。何とぞ御審議の上御賛同あらんことを切望いたす次第であります。
  8. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 以上三案の審議は次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それではさよう決定いたしました。   —————————————
  10. 三輪貞治

  11. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法案つきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  下請代金支払遅延など親事業者下請事業者に対する取引上の思わしからざる行為つきましては、政府関係機関において、独占禁止法等措置によりこれが防止に努力してきたのでありますが、経済情勢が比較的好転した今日におきましても、遺憾ながらこの問題は改善されたとは必ずしも言い得ないのであります。  下請代金支払遅延など、親事業者の不公正な行為は、わが国経済において重要な役割をになっている中小下請事業者事業経営を圧迫することになり、ひいてはわが国経済の健全な発達を阻害することになるのであります。従って、下請事業者の利益を保護するためには、下請代金支払遅延などの防止について、さらに積極的な措置を講ずる必要があると考えられるのであります。  ここにおいて政府関係機関は、これまで本問題を処理してきた経験を基礎にして、これが対策を鋭意研究して参りました結果、本問題を解決するためには、独占禁止法のほかにそれと相並んで別個の法制を整えることが必要であるとの結論に達し、ここに本法案を提出いたした次第であります。  次に本法案概要について御説明いたします。  第一の点は、下請代金支払い中心にして四つの点について、親事業者の守らなければならない事項を明らかにしたことであります。  第二の点は、公正取引委員会は、これを順守しない親事業者に対してはその行為を改めるために積極的な努力をなすように勧告を行い、親事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができることにし、下請代金支払遅延などの機敏かつ円滑な解決をはかる方法を講じたことであります。  第三の点は、親事業者下請代金の書面による明示及び下請取引に関する必要な帳簿書類の作成、保存の義務を課しまして、下請取引公正化に資せしめるとともに、政府指導監督に便ならしめようとしたことであります。  第四の点は、本法の施行に必要な限度において公正取引委員会中小企業庁長官及び主務大臣報告徴収及び立入検査権限を定め、下請取引特殊性にかんがみ、政府が積極的にその監督を行い得ることとしたことであります。  以上の四点が本法案の要点であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
  12. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 右法案審議は次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それではさよう決定いたしました。
  14. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に輸出保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続いて質疑を行います。御質疑のある方は順次発言を願います。
  15. 高橋衛

    高橋衛君 輸出保険法関連いたしまして、外貨の現在の状況等についてお聞きいたしたいと思うのでありますが、御承知通り二十九年度非常な逆調であった貿易均衡財政の結果と、また海外情勢好転並びに輸出振興策成果といたしまして、二十九年度、三十年度引き続いて非常な好転を見せておることは御同慶にたえないところでありまするが、従ってまた保有外貨も飛躍的に増大をいたしておる次第でございますが、その保有外貨の中には、たとえばインドネシアに対するもの、韓国に対するもの、さらに近くはアルゼンチンに対するものにおいて相当焦げつきとなっているというふうな種類のものがあるように聞いておるのでありますが、それらの現在高並びにその発生した原因、またこれが将来の対策、さらにはその焦げつきになった原因輸出商社にあるのか、あるいは政府にあるのか、そういうふうな点についてできるだけ詳細に御説明をお願いいたしたいのであります。
  16. 板垣修

    政府委員板垣修君) ただいま清算勘定地域のうちで正確に焦げつきとなっております地域韓国インドネシアでございまするが、インドネシアつきましては現在約一億八千万ドルの焦げつき債権になっております。それから韓国つきましては四千七百万ドルの焦げつきになっております。それからアルゼンチンつきましてはまだ焦げつきとまでは言い得ないわけでありまするが、後ほど申し上げまするように最近アルゼンチン側から新しい決済制度についての提案がありまして、それによりますれば今まで貸し越しになっておるところの一部をたな上げする、長期たな上げしてなしくずしに返すという提案が参っておりますので、おそらくある程度は一種のたな上げになると思います。その金額がかりに三月末で締め切りますと五千四百万ドルから五千五百万ドルになるだろうと想像いたします。  それからこの三つの地域でこういうような焦げつき債権ができました原因つきましては、政府といいまするか、輸出商社といいまするか、そういう点ははっきりいたしませんが、いずれにいたしましてもこれらの地域に対しましては、一応アルゼンチンは除きまして、インドネシア韓国ともこの貿易のパターンが恒常的な日本出超態勢になっておる点でございます。従いまして日本輸出はうんと伸びていく、片やこれに見返りまする輸入は十分にこれをまかなうだけ買えないというところに結局焦げつきが発生したわけでございまして、インドネシアつきましては御承知通りそういう状態になりましたので、早目にこれが処理方交渉をいたしたわけでございまするが、インドネシア外貨事情が非常に悪化して参っておりましたので、やむを得ずただいま申しました数字をたな上げにして、この一部をなしくずしに返すという協定になっておるわけでありますが、その後インドネシアがこれを賠償問題と関連をさせまして支払いをやっておりません。従って日本側といたしましては、その当時からとりましたいわゆる輸出調整措置を今まで続行しておりまして、この輸出調整をとりました以後におきましては輸入に見返るだけしか輸出を許しておりませんので、その後債権累増はないわけでありますが、一昨々年に締め切りましたこの一億八千万ドルというものが現在たな上げになっておる状況でございます。  それから韓国つきましても、やはり同じような理由で、日本側輸出が多くて、輸入するものが特に非常に少い。特に韓国南北二つに分かれておりますので、南の韓国から日本輸入いたしますものは現在のところ朝鮮ノリその他数品目に限られております。しかも朝鮮ノリ、水産物などは、これを輸入いたしますと国内水産業と衝突いたしますので、これも十分に入れられないというような関係で、非常な輸出超過になって、これが今の累積債権になったわけでございます。しかしながら、昨年ごろから韓国側がいろいろ政治問題の関係からいたしまして、日本輸出をとめたり、解除したり、いろんな関係で昨年ごろから日韓貿易というものは非常に麻痺をいたしております。従いまして、日本輸出も伸びておりません。従って、最近はこの債権累増は事実上、すなわち政治的その他の理由から累増はとまっておるという状態でございます。これが解決も結局政治問題にからみまするので、今盛んに外務省で日韓国交回復問題として交渉いたしておりまするが、これとやはり関連をしなければこの累積債権の問題も解決しないんじゃないかというふうに考えます。  それからアルゼンチンつきましては、昨年日本側鉄鋼中心としまする輸出が異常な伸び方をいたしました。これはアルゼンチン側で非常に工業化建設計画が進みましたので、それに伴いましてヨーロッパあたり鉄鋼供給余力が少いという関係から、日本にもこの鉄鋼の発注が参りまして、その結果八千万ドル台の輸出になったわけであります。ところが一方これに見返りまする日本輸入は、アルゼンチン物資の割高、ことに小麦などの割高のために十分に買い付けが進まなかった、その理由から輸出輸入との差が非常に多くなったわけでございます。これに対しましては、政府側といたしましても非常に憂慮いたしまして、昨年の夏ごろからこういう問題についてアルゼンチン側交渉をしようという状態になっておったのでありますが、御承知通りアルゼンチンに革命が起りまして延び延びになっております。昨年の秋になりまして、アルゼンチン日本アルゼンチンとの間の問題について討議する段階ではないと渋っておったのでありますが、日本といたしましても放置することはできませんので調査団を派遣いたしました次第でございまして、その結果債権処理の問題までは話が進みませんでしたけれども、とにかくアルゼンチンからの日本買い付け促進ということによって輸出輸入のギャップをできるだけ埋めようということで、小麦と羊毛とについて輸入促進方について話が出た次第でございます。しかしながら、いろんな理由によりまして十分に日本側輸出超過を完全にカバーするというところまでは参っておりません。そのうちにアルゼンチンの新政府といたしましては、今後新しい決済制度をとりたい、すなわち多角的な決済制度をとりたいということで最近提案が参っております。それによりますると、清算勘定地域は廃止をして、アルゼンチン諸国間の貿易は、ドル地域及び南米諸国は除きまして、その他の地域との貿易は振り替え可能通貨決済をしたい、それから各国に持っておりまする貸し越し債権はこれを長期にたな上げして返していきたいと、こういう提案が参っておるわけでありまして、これに対しまして日本がどう対処するかをただいま検討中でございます。
  17. 高橋衛

    高橋衛君 この韓国インドネシアアルゼンチンの三国の、アルゼンチンについては今後の問題であるかもしれませんが、この金額を合計いたしますと二億八千百万ドルという非常に大きな金額になっておるのでございます。ことに聞き及ぶところによりますると、アルゼンチン等つきましては政変その他の関係で非常に危険だということが予想されましたが、他の諸外国においてはこの輸出について相当な手当をしておったということも聞いておるのでありますが、なぜ日本がその点について措置をとられなかったか、またはとっておられたのならばとっておられたその内容一つ説明を願いたいと思います。
  18. 板垣修

    政府委員板垣修君) アルゼンチンつきましては、ただいま御指摘の通り、昨年秋、ころから非常にアルゼンチン各国との貿易事情が悪化いたしましたので、ヨーロッパ諸国も軒並み輸出低下になり、輸出手形買い取り措置を講じたようであります。もちろんドイツなどは、講じたり、また解除したりしております。日本もその際、特にアルゼンチン向けということではございませんが、アルゼンチンに対する輸出の大宗をなしております鉄鋼つきましては、国内需給関係もありまして、全面的に輸出を停止いたしました。その反映といたしまして、アルゼンチンにもその措置がとられたわけであります。その後国内需給関係が緩和いたしましたので、一部につきましては緩和をいたしましたが、特にアルゼンチンつきましては、対外関係もございますので、表立って調整措置ということはとりませんでしたが、特にアルゼンチンに出ておるものについては運用において締めくくりをして参っております。昨年の暮ごろからアルゼンチン向け輸出の新たなる契約は非常に微々たる状況でございます。
  19. 高橋衛

    高橋衛君 次に輸出保険法の案にありまする第十四条の三には、いわゆる損害の填補率を百分の五十ということに規定しておるのでありますが、この填補率百分の五十につきましては、業界その他からこれをさらに引き上げてもらいたいという要望が切なるものがあるのであります。もしも輸出振興ということを中心に考えるならば、この填補率を引き上げることは、これは当然であろうと思うのでありますが、しかしながら同時に、将来これが国家の財政負担となるというようなことがあったり、または先ほど来御説明になりましたように、もしも不確実なところに行くことによって、せっかく外貨が累積しても、それがたな上げになる、焦げつきになるというような外貨になっては、これはまた全然意味をなさないことになると思いますし、また同時に填補率引き上げということは、反面においてその保険料率を引き上げるという必然的な結果になるのではないかと考えられますが、それらの点について政府としてのまとまった御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  20. 板垣修

    政府委員板垣修君) 実は通産省といたしましては、今後貿易振興も重要でありまするが、貿易振興と並びまして、やはり中南米であるとか東南アジアというところには投資も同時に促進すべきであるという考えから今度の法律案を御提案申し上げた次第でございまするが、従って填補率の問題につきましても、民間側の声もだいぶ強く響きまして、できますればできるだけ填補率も大きい方がよいということは、通産省に限りましては考えておった次第でございます。しかしながら、政府部内においていろいろ検討いたしました結果、ただいま御指摘の通り、この保険制度というものは世界でも制度としては初めてというような制度でもありますし、だいぶ財政上の負担の問題につきましては、不測の損害を受けないようにできる限り填補事由をしぼってはございますが、初めてのことでございまするので、あるいは不測の事態を招くかもしれぬということで、通産省といたしましては低いと思いましたが、百分の五十というところで押えた次第でございまして、この程度ならば財政上の不測の負担を受けることもないし、着実にこの新しい制度を今後培養していきたいという考えから、こういうところで政府部内で話がまとまりまして御提案申し上げた次第であります。
  21. 高橋衛

    高橋衛君 かりにこの填補率を百分の七十程度に引き上げるということを考えてみました場合において、保険料率を変更するとか、またはその他の財政措置を講ずる必要があるかないか、その点について御回答願います。
  22. 板垣修

    政府委員板垣修君) まだ責任を持ってお答えする段階にないのでございますが、かりに七〇%くらいがよいかというような場合に、現在の予算できめられました引き受け限度三十億におさまるかどうかということは、一にかかって今後の投資見込みの推定にかかると思います。現在の積算の基礎といたしましては、すでに投資連絡協会で許可をいたしました二十八億円、それにプラス、ビルマとの経済協力、あるいはタイの特別円に基く経済協力、これはまだはっきりいたしておりませんが、こういうものを含めまして幾分低めに見て計算をいたした次第でございます。しかしながら、もしかりにこの二十八億円以外の今後の新しい投資の見込みがただいま私どもが推定いたしておりますよりも今後一年間においてもう少し低いかもしれぬという推定が成り立ちますれば、あるいは現在の引き受け限度三十億円でもまかない得るのじゃないかという、これは通産省限りの推定でございますが、思っております。
  23. 高橋衛

    高橋衛君 ただいまの御説明は現在の三十億円をもってしては、保険料率を上げなければ填補率を七〇にすることは危険である、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  24. 板垣修

    政府委員板垣修君) 保険料率とは関係ございませんで、今後新しく一年間にどれくらいの投資が起るかという推定が問題かと思います。
  25. 高橋衛

    高橋衛君 なおこの輸出保険につきましてはすでに実行いたしまして、ある程度の期間を経過した次第でありますが、この投資保険そのものは全く新種のものであって、実績はございませんけれども、その他の輸出保険について実績が出ておるそうでありますが、それについて支払保険料と支払保険金との収支の結果を一応御説明願います。
  26. 板垣修

    政府委員板垣修君) 御承知のように現在六種の保険が実施されておりまするが、これを一応ごく概括的に申し上げますると、この輸出保険制度昭和二十五年から開始されましたが、二十五年度におきましては、保険料その他の収入が、ごくラウンド・ナンバーで申しますと、八千三百万円、これに対して支出が四千八百万円、差引入超、受超が三千五百万円、それから二十六年度が同様に収入が一億一千五百万円、支出の方が二億八千三百万円ということになりまして、この年は支出が多くなりました。これは中共向けその他の普通輸出保険に事故があったからでございますが、一億六千七百万円の支払超になりまして、前年度から合計いたしますと差引支払超は一億三千二百万円、こういうものが二十七年度になりまして大体また元に戻りまして収入の方が一億二千七百万円、支出が五千七百万円、差引六千九百万円の受超になりまして、前年度から累計いたしますと六千二百万円のまだ支払超ということになります。前年度の支払いが多うございます。二十八年度になりまして収入の方が一億六千百万円、それに対する支出が八千七百万円となりまして、受超七千三百万円、それで初めてここで二年前の支払超を消しまして、受超が一千百万円になりました。二十九年度になりまして収入四億九千三百万円、これは特に多いのはプラント輸出が非常にこの年ふえたからであります。それに対して支出が一億一千七百万円、受超三億七千六百万円、これを初年度から合計いたしますと、受超三億八千七百万円という状況で、収支状況は非常に良好な状況になっております。
  27. 高橋衛

    高橋衛君 この輸出保険の国庫の建前の問題でありますが、政府はこの輸出保険についてはある程度輸出奨励の趣旨をもって財政的にも補助をするという考え方でいっておられるのでありますか、それとも収支バランスをとって、要するに国家としてはこういうふうな制度を作ることによって金融の道を助け、その他各種の便益を与えるという趣旨に考えておられますか、その点……。
  28. 板垣修

    政府委員板垣修君) 輸出保険制度はあくまで保険でございまするので、これはいわゆる輸出補助金制度というような考えは毛頭持っておりません。ただ業界では、従ってまあ独立採算制をとっておるわけでありますが、業界におきましては、その独立採算制をとらずに、もう少し弾力的に運用してほしい、もう少し輸出補助的な形を加味してくれという要求が非常に強いのでありますが、私どもとしては、これはあくまで保険は保険であり、一般的な輸出入銀行その他で便益を与える、こういう制度として運営いたしていきたいと考えております。
  29. 高橋衛

    高橋衛君 大蔵省側の方に一応御意見を伺っておきたいのでありますが、先ほど来通商局長からも御説明がありましたが、業界の希望等においては、填補率をできるだけ引き上げてもらいたいという要望切なるものがあるのでありますが、これを百分の五十にとりあえずきめられた理由を一応伺いたい。
  30. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) 何分海外投資の非常危険を保険するということは、先ほど通産局長からお答えのあった通り、これはほとんど諸外国に例のないものであり、アメリカのMSAの場合やっております一つの例があるだけでありまして、一般の通商政策としてこういうものをとっているというものはまだない例と思うのであります。で、私どもといたしましては、こういった制度を果して国としてやるべきかどうかということを種々検討いたしたのでございます。そのときに一番問題になります点は、やはりこういう法律で特定の投資家を非常に保護するということが果して公正なことであるかどうか、その点が一番問題になるのでございます。で、これが非常危険が発生いたしました場合に、将来非常な財政負担を生ずるという危険があるわけでございまして、これを、将来そういった場合が生じましたときにおきましては、結局において、その一般の納税者の負担というもので解決するというふうな場合に追い込まれることがあるのではないかということが果していいかどうかということでございます。  それで私どもといたしましては、填補危険の範囲を極力、最初でございますから、しぼっていただきたいということを御要望いたしまして、通産省当局と種々折衝を重ねました結果、いわば海外投資というものは投資家の自己保険、まあ、そこに対して国家制度において補うという額が、その折半でいくという思想で五〇%ということにいたした次第でございます。
  31. 高橋衛

    高橋衛君 なお通産局長にお伺いしたいと思いますが、先般のアルゼンチンの政変は、第十四条の二に規定しているところの「革命又は内乱」というのに該当すると解釈しておりますが、どうですか。
  32. 板垣修

    政府委員板垣修君) 今度の投資保険制度規定によれば、内乱とか非常危険そのものでなくて、その内乱ないしその他の非常危険によって投資が重大な損害を受け、しかもその投資が処分されるというときに初めて事由が発生するわけでございます。先般のアルゼンチン革命は内乱であるかどうかという点は、私どもは内乱とは思っておりますが、小さな規模の……。しかしそれだけですぐ投資保険が発動するのじゃなくて、その結果によって日本の投資が重大な損害を受け、あるいは株式が処分をされるという場合に初めて非常危険の問題が生ずるわけであります。
  33. 高橋衛

    高橋衛君 そのことは、法律にそれだけは書いてあるのであります。私がお尋ねしているのは、この法律に書いてある「戦争、革命又は内乱により」、それに該当するかどうかということをお尋ねしておる。
  34. 板垣修

    政府委員板垣修君) 該当すると存じます。
  35. 高橋衛

    高橋衛君 先ほどの御説明によりますると、今後の海外投資見込みによっては、私の解釈が間違いであるかもしれませんが、海外投資の見込みが予想よりも少ければ、五〇%の填補率を七〇%に引き上げても保険料率を引き上げないで済むというふうな御回答のように伺えたのでありますが、その点もう一度念のためにお伺いいたしておきます。
  36. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) ただいまの御質問は、填補率を引き上げた場合に保険料を動かす必要があるかということでございますが、私どもの今の政府の原案といたしまして、填補率の五〇%ということで保険料率をきめてございますので、理論的に申しますと、この填補率を引き上げるということが、より危険な地域に対する投資がふえるというふうな結果を及ぼすということになると思いますが、そういった場合には保険料率としても若干引き上げを要することになるのではないか。ただ、その場合幾ら引き上げなければならぬかということにつきまして、何分従来ない制度でございまして、十分なまだ資料と申しますか、そういった持ち合せがないのでございますので、正確には申し上げられません。
  37. 高橋衛

    高橋衛君 ただいまの保険料に関する問題については、問題を二つに分けて考えなければならないと存じます。ただいまたしか〇・七五%の保険料になっておると思いますが、それは五〇%にした場合に〇・七五%でありますから、ただ算術的にはじけば、填補率を七割にした場合においては一・〇五%くらいにならなければならないと思うのであります。そのほかにもう一つの危険は、填補率を増すことによって、より危険の多い地域に投資が行なわれる傾向をどうしても持つ。その点の危険率をどう考えるかという二つに分析してものを考えなければならない。言いかえれば、算術的にはじかれた保険料率の引き上げだけでは済まないのではないかと考えるのでありますが、その点はどうお考えになりますか。
  38. 鳩山威一郎

    説明員鳩山威一郎君) ただいまの二つの場合におきまして、最初の場合は、これは現在の制度におきまして保険料率をこのままにいたしまして填補率を引き上げますと、当初の投資元本額に対しまして総比率において、要するに危険負担料として〇・七五%が一・〇五%に引き上るのであります。これは保険の填補率引き上げに基く当然の結果でございますが、第二の場合は、実際の投資が危険な地帯に選択されるようになるということによりまして、これは危険度が実際高まるので、そのままの保険料率でやったのでは非常に保険会計としては危険であるということになると思います。
  39. 海野三朗

    ○海野三朗君 初めにちょっと政務次官にお伺いするのですが、これはもう一言だけでよろしいのです。昨日の委員会におきまして、東北興業が建設委員会にかかったということは妥当ではないじゃないかという私の質問に対しまして、それは議運できめたんだからという御答弁でありましたが、あなた御自身ではどういうふうにお考えになっておるか、それを私は伺いたかったのです。これは通産にかからなければならぬ問題であるのではないか。あなたの御所見を私聞きたかったのです、昨日。あれはどうなんですか。
  40. 川野芳滿

    政府委員川野芳滿君) あの法律は、御承知のように建設省主管で作られた法律でございます。従いまして建設委員会にかかるのが適当でなかろうかと、こういうふうに私考えております。
  41. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは、あなたのお考えは、通産の方はあまり関係ない、建設の方であるというお考えでありますれば、あと私は請求しません。  次に私は韓国との輸出貿易のことについてでありますが、前から問題になっておりましたノリの輸入はどういうふうに問題が解決したのでありますか、韓国からノリを輸入する問題は。
  42. 板垣修

    政府委員板垣修君) 韓国のノリの問題は、御承知のように昨年一億枚入れる決定をいたしたのでありまするが、その後韓国政府輸出の差しとめを八月ごろいたしました。その結果、輸入が非常におくれておる間に生産時期にはいって参りましたので、われわれ国内産業者との約束にもかんがみまして、まだはいらないうちに実は非常手段としてとめてしまったわけでございます。従いまして、この四月になりまして生産時期が明けますれば、できる限り早い機会に解除したいということになっておりまするが、この点はいつ解除できるか、まだ決定はいたしておりません。
  43. 海野三朗

    ○海野三朗君 貸しがある場合でありますから、そういう場合にはノリなんぞでも入れて少しでも貸しを減らすように努力されるのがほんとうじゃありませんか。
  44. 板垣修

    政府委員板垣修君) 通産省といたしましては、その方針で、ほかに、先ほど申し上げましたように、韓国から買うものも少いので、ノリなり水産物をできるだけ入れたいということで進んで参ったわけでありますが、これは何分国内水産業者との間に摩擦を生ずる問題なので、いつも問題になっておることは、御承知通りであります。従って、ノリなどを大体生産時期をはずれた時期に一億枚程度というところでやっと妥結をしておる状況でございまして、国内のノリ生産者との関係から入れたくてもあまりたくさんの数量は入れられないという状況になっておる次第であります。
  45. 海野三朗

    ○海野三朗君 それからアルゼンチンとの貿易関係ですが、アルゼンチンは政変があってペソが非常に下落したという報告に接しておるのですが、ペソが下落したということは、何も金の下落というよりも、つまり下落したときにはアルゼンチンから品物を買った方が得になるのじゃないですか、どうなんでしょうか。ペソが下落したときにはこちらで品物を買った方が得になるのじゃないですか、どうなんですか。
  46. 板垣修

    政府委員板垣修君) ペソが下落したと申しますか、実は従来ペロン政権時代には、ペソの実質価値以上に不当に過高相場が行われた。すなわち一ドル五ペソという為替相場でありましたけれども、これをもっと自然な状態に直しまして、新政権になってから一ドル五ペソが一ドル十八ペソになったわけでございます。なお実は、実際相場はそれよりむしろ下でございまして、自由相場は四十ペソ以上になっております。いずれにいたしましても、為替の切り下げが行われたわけでございまして、この点は確かに日本としては物を買い付けるのに買い付けやすくなったということでございます。
  47. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういう際に、向こうからいろいろ品物を取るものはないのですか。
  48. 板垣修

    政府委員板垣修君) アルゼンチンから参りまするものは、小麦、羊毛、トウモロコシ、ケプラチオ、皮革、こういうものがおもなものでございまするが、何分にも距離が遠い、すなわち運賃の問題と、それからアルゼンチン小麦にいたしましても、品質、価格の点におきましてどうもよその地域よりは割高である、品質もあまりよくないという点が難点であります。羊毛につきましても、用途は多少違いますが、豪州羊毛よりもどうしても割高だ。こういう点から現在のコマーシャル・ベースの買付ではなかなか買い付けにくいというのが実情でございます。しかしながら、従来ともいろいろな手段を通じましてアルゼンチンヘの輸出を増大するため買い付けは促進して参りました。しかしながら昨年のように八千万ドルというような大きな輸出になりますと、八千万ドル分だけを買い付けるのはちょっと現在の計算ではなかなかむずかしいことでございます。数千万ドルまでは努力をいたしますればできるのじゃないかという計算をいたしております。
  49. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういう際になるべく、品物が安くなったならば、そういう方面からやはり輸入をするということに関しては通産省はいろいろ骨を折っておられるわけですか。
  50. 板垣修

    政府委員板垣修君) その通りでございまして、昨年の暮日本から調査団を派遣したのもそういう物資買い付け促進というところで行ったわけでありまして、一応相当割高の物資でもだいぶ価格その他につきましても有利に交渉いたしまして、まあ幾分買い付けやすいようにして参ったわけであります。
  51. 海野三朗

    ○海野三朗君 それからもう一つ私は伺いたいのですが、ミシンはどうなっておりますか。アメリカへ輸出したミシンは向うに相当数残っておるということを聞いたのですが、今どうなっておりますか。余っておりますか、日本から輸出したミシンが。
  52. 板垣修

    政府委員板垣修君) やはりストックが相当あるということでございます。ただどれくらいの数量があるかということにつきましてはどうもまだ——調査を命じておりますが——正確な数字が出ておりません。
  53. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういう際にミシンをつまり輸出をする、余っておる、そうして国内生産を制限しなければならないというようなあり方では通産行政としてはまずいのじゃありませんか、どうなんです。私はその売れない、ミシンをそんなに向うに売りつけてやるというようなことはそれこそ通産省がよく監督しなければならないので、アメリカに何万台か残って売れない、一台九ドル半でも売れなくて残っておる、品物が悪いのか、何か知りませんが、そういうふうなことは通産省がよく監督をしなければならぬ。監督不行届である結果、つまり国内のミシンの生産を制限しなければならないというようなことが起ってくることは通産行政としてはまずいことじゃありませんか、どうなんですか。
  54. 鈴木義雄

    政府委員(鈴木義雄君) ただいまのミシンのお話でありますが、アメリカにございますストック、ただいま通商局長からお答え申し上げました通り調べておりますが、ある程度あると思いますが、これは昨年アメリカ向けの輸出をある程度制限しております際カナダ等を経由して入ったものが多かったためそういう事態が生じておるわけであります。従いましてそういう際にある程度制限措置を強化するということはこの一月、二月、三月やっておりますが、これはやはり臨時的の考え方でございまして、何も未来永劫にこれを制限するという趣旨ではございません。ただ御承知通り一昨年からアメリカ向けの、ミシンの価格が相当ダンピングのきらいがありましたので、これに対してある程度そういうことのないようにという措置を従来とってきております。最近行いましたのはそれを若干強化したという程度でございます。さような次第でございまして、これはやむを得ざる措置であると、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  55. 海野三朗

    ○海野三朗君 これはミシンと限りません。まあ織物も同じことでありますが、そういうものがアメリカによけいにいくというと向うの業者が困る。従って日本品の輸入制限の法案を向うの議会に出すというようなことが起ってくる。そうすれば直ちにそれが日本産業界に響く。そういうふうなことを一体よく……商務官として通産省からアメリカにもいっておるでありましょうが、そういうことを調べて勉強しなければいけないのじゃありませんか。
  56. 板垣修

    政府委員板垣修君) 御指摘の通りでございまするが、ちょっと商務官の力の外の問題で大きな政治問題でございます。そういうアメリカの一部の関係者の声というものはわれわれから言いますれば非常に言い分があるわけであります。またわれわれはそれに際しまして外交のチャンネルを通じて、あるいはまた民間のベースを通じてアメリカ全体に対して啓蒙運動は開始しておるわけであります。何分向うの議会が輸入制限法案を取り上げようという問題でございますので、われわれといたしましてもこれに対する有効適切な手を打つにしましても限度があるわけでございます。ただまあ、できる限りそういう法案の通過に対しては阻止運動をやっておる次第であります。
  57. 海野三朗

    ○海野三朗君 私がお伺いしますのは、そういう……つまりミシンがよけいに向うにストックがあるとか、あるいはまた綿製品のダンピングが行われているとか、そういうふうな状況をよく視察されるのが、一体こちらから、通産省から行っているお方の監督すべきことじゃないかと私は申し上げるので、それをぼんやりしているものだからミシンなどがよけいに行き過ぎた。それから綿製品がよけいに行き過ぎたということがあると、向うの議会でもやかましくなるのであるから、その辺をよく勘案することがつまり通産省から向うに駐在している人の務めじゃないかと、私はそういうことを言うのであります。
  58. 板垣修

    政府委員板垣修君) その点はもう十分アメリカにおりまする大使館なり在外商務官というものが早目に情報をキャッチしましてわれわれは聞いているわけであります。しかし今のミシンの問題につきましても、ミシンは大したことはございませんが、綿糸布の問題につきましては、早くから日本政府の代表者からは向うでだいぶ問題になるという警告を受け取っているのであります。しかしながらそれを知ってこちらが有効適切にやりますためには、事前に出荷制限をするというような措置をとらざるを得なくなります。これは国内的にはなかなかむずかしい問題で、結局綿製品問題のように相当せっぱ詰まってやっとあれだけの自主的協定ができたというのが実情でございます。
  59. 海野三朗

    ○海野三朗君 私はそういうことこそ通産省としては監督なさるべきじゃないかということを申し上げているのであります。そうして緩急そのよろしきを得るというところに通産行政の生命があるのではないか。ただ制限するのが通産省の目的じゃない。そんなことならだれでもできる。そんなことは何もあなた方のようなお偉い方々にやってもらわなくてもいい。そういうことを監督なさるのが通産行政のあり方ではないでしょうかと私は申し上げている。それはどうなんですか。
  60. 板垣修

    政府委員板垣修君) それはもうその通りでございます。ただ、しかしながらその事実がわかって有効な措置をとるためには、国内的に生産を制限するとかいうことをすぐとらざるを得ないわけで、これが現在の企業の自由、貿易の自由という制度からいきましてはすぐ簡単にはできないというのが実情でございます。
  61. 白川一雄

    白川一雄君 投資保険についてお尋ねしたいのですが、もし海外へ投資するのに非常に危険があるということを言いながらやるような投機的な海外輸出ということにつきましては、これをチェックする何か機関があるのでございますか。
  62. 板垣修

    政府委員板垣修君) 海外投資はもう御承知のように外国為替及び外国貿易管理法によりまして政府許可を得なくちゃなりませんので、その許可の際に十分その点は取り締り得るわけでございます。
  63. 白川一雄

    白川一雄君 そうしますと私の主観が多分に入るかもしれませんが、今後の貿易ということを考えますと、各国がみな自給態勢をとる、工業立国という建前をとっていることから考えまして、単に売った買ったというような事柄で貿易が終始することはないときがくるのではないか。今のうちに手を打たなければその報いが五年先、十年先に深刻な形で現われてくるのじゃないか。また先般お話がありましたように移民の問題にいたしましても、工業移民というようなことを考えなければならぬというようなことを思い合わしてみますと、今回のこの投資保険に対する法律の趣旨というものはまことにけっこうなものだと考える反面、私保険のことはあまり詳しく存じませんが、少し不徹底な点があるのじゃないかという点を顧慮いたすのでございますが、ブラジル等には新聞でも伝えるように西ドイツが製鉄所も作れば自動車工場も作っている。かねて高碕国務大臣が南米を視察して帰られたときに、外国の工業的に進出している目ざましさに驚かれて、もしこのままでおったならば日本の将来は非常に心配だという、焦慮を感ずるというお話を承わったこともあるのであります。そういうことを考えますと、国内が少し景気がよくなってきますと、国内産業に力を入れるあまり、海外に進出するということが比較的薄くなってきやせんか、それを積極的に奨励する、また積極性を持たして海外にプラントとともに進出するという上におきましては、この法律を出す限りにおいては、もし諸種の事情が許すならば、また今お話のように、スペキュレーションの面をチェックするスクリーンがあるとするならば、五〇%の填補率というものを七〇%なら七〇%にして、他のこれに諸種の困難さを調整して、そこへ持っていくというような事柄を通産省として大蔵当局とよく話し合って了解を求めて、その方法をとるということは、現在の段階において困難なのでございましょうか、それともできることなんでありましょうか。
  64. 板垣修

    政府委員板垣修君) 投資の必要性につきましては、御指摘の通りと思いまして、通産省といたしましては、やはり投資を促進する意味におきまして投資保険制度も創設し、できるならば填補もできるだけ大きくしたいというところで、政府部内で折衝を続けてきておったわけであります。しかしながら一方不測の財政負担という心配も、新しい制度をしきます際にありますので、その点政府部内におきまして長い検討の結果、私どもとしましては、まだ幾分御指摘の通り、不徹底の点はあると思いますが、一応これで発足しようというところできまりました次第でございますので、これからまたあらためて討議をし直すという余地はさしあたりはないと存じます。
  65. 白川一雄

    白川一雄君 一般に現在工業的進出が非常ににぶっておるということは、各業界でも統計上も示されておるのでありますが、それを進出するためにもう一度大蔵省の方とお話してみる私は必要があるのではないか。また与党の方の政策審議会の方にも諮ってみるということは不可能なのかどうか。その点局長のこれに対する熱意によってある程度打開ができるような道があるのではないかというようにも考えるのですが、いかがなものでしょうか。
  66. 川野芳滿

    政府委員川野芳滿君) 本案を提出するまでにおきましては、通商産業省といたしましては、大蔵省と十二分の折衝をいたしたのであります。その折衝の結果、ただいま御提案いたしておりますような、こういうことで提案することになったのであります。従いましてこれを七〇%にするか、あるいは何%にするか、こういう問題につきましては、国会の審議にまかせる以外には仕方がなかろう、こういうふうに考えております。
  67. 白川一雄

    白川一雄君 政務次官個人の御意見を承わりますが、七〇%ということに引き上げるという事柄は、この法律の精神を積極的に生かすという意味においてとるべきであるとお考えでしょうか。御意見を承わりたいと思うのです。
  68. 川野芳滿

    政府委員川野芳滿君) 原案を作る際におきましてはそういう気持で大蔵省と折衝いたしましたので、従いまして予算等の関係上七〇%になると、こういうことならば通産省としてあえて異議を差しはさむべき問題じゃなかろうと、こういうふうに考えております。
  69. 白川一雄

    白川一雄君 大蔵省の方いなくなりましたけれども、このほかにも危険の場合は多分にあり、それは保険の対象になっていないのであります。この十四条の第二項にある三条件のほかに、天災によるというような場合もありましょう。特に危険の一番あろうかと思われるのは、外国の政情不安からくる為替相場の切り下げという面であり、実際上も起り得る多い場合ではないかということを考えますと、この十四条の三条件が対象となる危険の起る率というものはきわめて少く、また進出するときにチェックしておけばそう危険はないという考えを持っておりますが、その点について局長の御意見はいかがでありましようか。
  70. 板垣修

    政府委員板垣修君) 確かにそういう見解も成り立つと思いまするし、私どももできる限り財政上の負担を避けるためにこの条件等をしぼったわけでありますが、なお新しい制度を最初にやります場合にやはり不測の事態ということも考えられますので、先ほども申し上げました通り、やはり着実に安全な率に手がけていこうということになったわけでございます。
  71. 西川彌平治

    西川平治君 一つだけ伺っておきますが、この十四条の一の二項の三に「革命又は内乱により損害を受けて政令で定める期間以上の期間事業を休止した場合において、」こういうことでありますが、「政令で定める期間」というのは一体どんなになっておりましょうか。
  72. 板垣修

    政府委員板垣修君) 六カ月と予定をいたしております。
  73. 西川彌平治

    西川平治君 これは戦争、革命の場合でありますが、今白川委員からもお話があったように非常に大きな変革がありまして、会社がつぶれたというような場合もやはり六カ月でございますか。
  74. 板垣修

    政府委員板垣修君) 重大な損害を受けて解散した場合はそういうことになります。
  75. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  76. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をつけて下さい。  輸出保険法の一部を改正する法律案についての質疑はこれをもって終了したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それではさよう決定いたします。   —————————————
  78. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に機械工業振興臨時措置法案議題といたします。  初めに本法案についての提案理由の補足説明を求めます。
  79. 鈴木義雄

    政府委員(鈴木義雄君) 機械工業振興臨時措置法の趣旨については提案説明の際申し上げましたが、御承知通り機械工業輸出産業として、また基礎産業としてわが国においてその将来性が最も期待される重要産業でございます。特に東南アジアその他後進諸国工業化しつつある最近の趨勢にかんがみまして、この輸出については、今後も絶大な期待が寄せられるのでございまして、先に決定をみました経済自立五カ年計画におきましても、機械工業の発展には特に重点を置いているのでございます。しかしながらわが国の機械工業がこの大きな国民経済的な要請にこたえるに十分な力を持っているかどうかということになりますと、そこには解決を要すべき幾多の困難を問題を持っております。そのおもな点を列挙いたしますと、次のような四点であると考えます。すなわち機械工業は戦時中に相当発達をみましたが、戦後は長く苦難な道を歩んでおりまして、その結果設備の改善が非常におくれているために、その老朽化、陳腐化の程度がはなはだしい、これが第一点であります。それから第二点は、技術水準の上からも、商品の国際競争力や販路開拓の上からも、まだまだ先進諸国に比べて立ちおくれの点が非常に多いのであります。第三は、狭い市場で多数の企業が乱立しておりまして、それぞれ多種類のものを少量ずつ生産しているというふうな傾向が多くございまして、生産能率が悪く、従って品質コストに多大な悪影響を及ぼしている点が第三点でございます。それから第四は、機械工業のうちでもとりわけ、ことに基礎機械の部門、基礎的な部門、たとえて申しますと工作機械とか工具、そういったもの、あるいは部品部門、たとえて申しますと、ネジとか歯車、ダイカスト、そういう部門が他の部門より立ちおくれておりまして、また国際的に見ましても、この部門の立ちおくれが目立っておる、こういうふうな特徴がございます。  このような機械工業現状からみまして、その振興対策をどう考えるかという問題でございますが、それには輸出振興、国産化の推進及び生産基盤の充実、こういう三つの大きな方向があげられると思います。このうち輸出振興措置つきましては、政府といたしましては予算で説明申し上げました通り日本輸出プラント技術協会の育成強化を通じまして、プラント輸出の促進をはかり、あるいは海外サービスセンターの設置によりまして、軽機械類、あるいはモーター類等の輸出をはかり、あるいは海外有力関係者の招聘をはかりまして、日本工業力の実情を知ってもらって、これによって輸出の推進をはかるというようないろいろな諸基本対策を講じておりますとともに、輸出入銀行による金融政策等によりまして、できるだけ機械類の輸出を推進したいと考えております。また国産化の推進につきましても、従来試作、研究の補助金等を交付しております。今後もこれを続けていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  しかしながら真に機械工業振興をはかるためには、何と申しましても根本的に機械工業設備を近代化し更新し、またその専門生産体制を確立して国内における機械生産技術の向上、生産費の低下をはかる等その生産基盤が充実強化されることが大切でございまして、そのつちかわれた力があるいは溢れ出るような力で輸出となり、あるいは外国機械にかわって国内市場を開拓することとならなければならないと考えるわけでございます。  本法案は、このような意味で機械工業生産基盤の充実強化をはかるためのものであり、振興対策の中核となるものであります。本法の適用を受けます機械器具は提案説明にもありました通り当面機械工業のうちの基礎部門及び部品部門に重点を置いて運用したいと考えておりますが、これは先ほど申し上げました通りこれら部門が特に劣弱な部門であるという以外に、これらの部門が強化育成されることによりまして、その効果が完成機部門はもとより、機械工業全般にまで波及いたしまして、機械工業の全部門がその利益に均霑し、わが国機械工業の弱点の補正及び全体的なレベルアップにもなるというふうな考え方からであります。  そこでおもな条文につきまして、順を追って御説明させていただきたいと存じます。第一条は趣旨でございまして、これは機械工業合理化を促進するという措置を講ずることによって機械工業振興をはかるという趣旨のものでございます。そこで第二条以下でございますが、この機械工業合理化を促進するために、本法では、第二条から第四条までに合理化基本計画及びその実施計画について規定いたしております。第五条において資金確保、第六条から第十一条までにおいて合理化のための共同行為の指示、第十二条で生産技術の向上のための基準の公表についてそれぞれ規定しております。つまりこの法律のおもな内容は、政令で指定した特定機械工業つきまして、合理化計画を定め、この計画に基いて、資金確保共同行為の指示及び生産技術向上のための基準の公表という三つの措置をとり合理化を促進しようというわけでございます。  そこで第二条でございますが、第二条は中核となる合理化基本計画について定めております。第二条の第一項では、機械工業のうち特に性能もしくは品質を改善し、または生産費を低下させる必要がある機械器具または部品であって政令で定めるものの製造業、すなわち特定機械工業について、通商産業大臣が機械工業審議会の意見を聞いた上で合理化基本計画を定めなければならないことが定められております。この合理化基本計画は、単なる将来の見通しではなく、政策遂行の基本方針であり、本法に基く諸措置の根幹となるものであります。従って決定に当っては、十分慎重を期するため機械工業審議会の意見を聞かなければならない旨を規定しているわけで、運用に当っては十分検討の上万全を期していきたいと考えております。  特定機械工業として政令で指定する業種は、特に性能もしくは品質を改善し、または生産費を低下させる必要がある業種でありますが、先にも申しました通り機械工業中きわめて重要な地位にありながら、その合理化がきわめておくれている基礎機械及び部品部門がまず第一に対象とされることになるわけでございまして、こうした趣旨から見て当面主として歯車、精密ネジ、強靱鋳鉄、粉末冶金、ダイカスト、自動車部品などの部品部門及び工作機械、工具、金型などの基礎機械類等を中心としたいと考えております。  次に第二項は、基本計画内容規定したものであります。  第一号では合理化の目標を経済自立五カ年計画にも即応して、昭和三十五年度末における特定機械の性能、品質、生産費等について定めることになっておりますが、第二号及び第三号では、生産設備の新設と旧式設備の層化転用等による処理についての設備近代化計画とそれに伴う資金計画を定めることになります。老朽化陳腐化した機械設備の更新は、先にも申しました通り、きわめて緊要な課題でありますが、同時にこれに見合う設備の廃却を指導できれば一そう合理化に資するわけでございまして、この点もあわせて合理化計画内容に記していきたいと考えたわけであります。  第四号は、その他の合理化に関する重要事項でありますが、たとえば、専門化や分野確立の必要性、規格の向上統一の必要性、原材料購入対策や技術向上目標の設定の必要性などがそれぞれの機種に応じて記載されることになります。以上これら各号の事項が一つの業種について総合的にきめられるわけでございまして、従ってこれに基く措置も相関連して行うところに合理化計画の大きな意味があるかと考えます。  第三条の合理化実施計画は、基本計画の実施のための年次別計画でございます。  次に第五条は、実施計画に定めております設備近代化の実施に要する資金確保について政府方針を宣言したものでございまして、実質的にはこの点に関連しまして機械工業基礎部門及び部品部門に対する日本開発銀行の融資につきまして、提案説明にもございました通り昭和三十一年度は十五億円の資金確保し、低利、長期、担保条件の緩和等、特に有利な条件で融資が行われることとなっております。  第六条から第十一条までは、共同行為の実施に関する通商産業大臣の指示について規定しております。通商産業大臣合理化基本計画に定める特定機械工業合理化目標を達成するため特に必要があると認めるときに本条の指示をし、これにより合理化カルテルの締結が可能となるわけであります。  機械工業について、生産分野の画定、規格の統一、部品原材料の購入方法の改善等を行うためには合理化カルテルを積極的に利用すべき場合が多いと考えられるのでありますが、現行独禁法による合理化カルテルでは、機械工業現状に即してみますとなおカルテル種類の範囲が狭く、また企業相互の利害の錯綜のため完全に自発的な話し合いで協定に到達することが困難の場合も多くみられるのでありまして、本条によりまして、合理化基本計画を定めた特定機械工業については、合理化基本計画に基いて通商産業大臣が積極的に合理化をはかっていくことの意義は、きわめて大きいと考えます。なお本条による指示に当っては、第三項にありますように内容と期間とを定め、これを公表して行うのでありまして、これに基いて行う共同行為は、第十条の規定によりまして独禁法の適用を除外されることとなっております。  そこでこの第六条第一項の各号におきまして、指示される共同行為の種類が列挙されております。このうち、第一号の品種の制限及び第三号の技術の制限は現行の独禁法の合理化カルテルでも認められているものでございます。第一号の品種の制限では、生産分野の協定と製品規格の統一に関する協定がそのおもなるものとなる予定であります。第二号の品種別の製造数量の制限は、一般的には不況カルテルの手段として用いられる例が多いのでございますが、本法におきましては、特に第六条第一項ただし書きの規定を設け、本規定合理化カルテルの範囲として認めらるべき旨を明らかにしております。すなわち、機械工業現状からみまして、一挙にすっきりした形の生産分野の確立と専門生産を実現することはむずかしい場合も多いのでございまして、その場合に将来は生産しないこととなる品種のものも、さしあたりは一定量だけの生産は認めた形で、お互いに分野の協定をし合うということが、企業の利害を調整し、円滑に分野協定を進めて行く上にきわめて必要なので時に本号を設けたわけでございます。第三号の技術の制限では、主として使用する部品または原材料の規格の統一にかかわる共同行為が考えられます。技術の制限という表現はきわめてわかりにくいのでありますが、独禁法がすでに用いている言葉なので、そのまま採用したわけでございます。第四号の部品または原材料の購入方法では、主として中小企業者共同購入を考えております。購入方法という表現には、購入数壁とか購入価格とかは含まれません。  次に第六条第二項を御説明申し上げます。  本項は、特定機械の規格の制限が、その特定機械工業者の第一項による共同行為では目的を達することが困難なときに、その特定機械の需要者側の業種が協調的にその使用する特定機械の規格の制限にかかわる共同行為をする場合でありまして、たとえば、ネジの場合を考えてみますと、ネジの規格の統一は、ネジ製造業者の協定のみではとうてい不可能でありますので、このようなときに、ネジを使用するたとえて申しますと写真機メーカーや電気機器メーカーの方で使用するネジの規格の統一をいたしますときわめて容易にネジの製品規格が統一できるわけであります。もちろん、かような場合は、ネジ製造業者の合理化に役立つのみならず協調カルテルを結ぶ側においても合理化に役立つのでありまして、第二項ただし書きはそのことを明記し、合理化に役立たたないような指示はできない旨を規定しております。  第七条は、共同行為内容についての制限を規定したものであります。  第八条は、共同行為内容が適合しなくなったと認めるときの指示の変更または取り消しの規定であります。  第九条は、共同行為をしたとき、変更したとき及び廃止したときの届出義務規定であります。  第十条及び第十一条は、独禁法との関係について定めたものであります。第十一条によりまして、通商産業大臣は、指示をしようとするときに、公正取引委員会に協議することとし、また指示の取り消しや変更をしたとき及び届出を受理したときに公正取引委員会に通知することとしておりまして、法的にも両機関の円滑な連絡には十分配慮しているわけであります。  第十二条は、生産技術の向上のための基準の公表でありますが、本制度は、合理化基本計画で定められる合理化目標を達成するために、各工場においてどのような製造設備検査設備を備えればよいか、またどのような製造方法検査方法をとればよいかという具体的な工場の技術基準を公表いたしまして、この高い水準の目標を目ざして各工場が一段の改善努力をするように期待するものでございます。従いまして、運用面では、さらに本条の実施省令を制定してこの基準に到達した工場を具体的に認定するようなことを考えておりますが、こうすることはいろいろな意味でこの制度を一そう効果的ならしめるものであると考えます。本制度の適用対象につきましては、さしあたり、特に技術水準の向上を必要とすると考えられる業種でありまして、たとえば強靱鋳鉄、あるいはダイカスト、粉末冶金などについて実施したいと考えます。  なお、本制度はJIS制度とは異なっておりまして、規格化、標準化ではなくて、高い技術水準への引き上げをもっぱらねらうものでありまして、高い目標水準を定めまして、工場全体の生産技術そのものを総合的に認定するところに特徴をもっております。  第十三条から第二十条までは、機械工業審議会に関する規定であります。審議会は、合理化基本計画合理化実施計画及び生産技術向上のための基準など本法運用上の重要事項を調査審議いたしますが、その他機械工業振興に関する重要事項つきまして広く通商産業大臣の諮問に応じることとなる重要な機関であります。  委員は五十人以内となっております。  また審議会の委員の構成につきましては、広く機械工業に学識経験のある方々の参加を願って十分慎重かつ適切な審議ができるようにしたいと考えております。  最後に、本法は五カ年の限時立法となっておりますが、これは、本法運営の基本となります合理化基本計画経済自立五カ年計画と合せて五カ年計画となっている関係上、政府といたしましては、この間に最大の努力を傾注して所期の目的の達成を期しているからであります。  以上おもな条文について内容を御説明申し上げた次第でございます。
  80. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 本法案について質疑のある方は順次御発言を願います。
  81. 西川彌平治

    西川平治君 実は少し質問があるのですけれども、ちょっと約束がありますので、あとに保留させていただきます。
  82. 海野三朗

    ○海野三朗君 私ちょっと一つだけ伺っておきます。こういうふうに、つまり制限をされると一方においてはいいようであるけれども、一方においてはやはりいろいろできないことになってしまうのですね、仕事が。つまり認可制になるわけでしょう、どうなんですか。そうすると、それ以上のことも考えるような場合にはやはり一々認可さわるというと、いいようではあるけれどもまた一方においてその進歩、発達を阻害することになりやしませんか。その辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  83. 鈴木義雄

    政府委員(鈴木義雄君) 今の御質問は設備等の制限とかの御質問かと思いますが、この法案では設備等の制限は考えておりません。その点は自由でございます。大体この法案の趣旨は先ほど来申し上げております通り基礎部門とか、あるいは部品部門とかそういうふうなものを中心といたしまして、特に立ちおくれている機械工業部門を伸ばそう、伸ばすためにいろいろな措置を講じていきたい、こういう考え方でございまして、押えるというようなふうな趣旨のものではございません。従って設備の制限等はこの法律では規定しておらないわけでございます。
  84. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは伺いますが、大阪方面の伸鉄業者といいますか、鉄の切れ端をもらってそれを圧延して今日商売しておる者が相当あるようですが、そういうところはもう少し機械の設備をよくすれば能率的にいくというような場合には、そういうところにやはり金を貸して設備の改善をやらしていこうというようなことをこれはおやりになるわけなんですか。
  85. 鈴木義雄

    政府委員(鈴木義雄君) ただいまの伸鉄業者の問題は、これは実は機械工業を特に特定しておりまして、御質問の点は伸鉄工業鉄鋼部門に属するものではないか、こう考えるわけでございます。われわれの機械工業の中では、先ほど来申し上げております通り、機械工業の中で特におもなるもの、どうしても伸ばしていく必要がある重要な部門、それを主として基礎的な部門、あるいは部品部門というようなところに重点を置きまして、先ほど例を申し上げました基礎部門と申しますと工作機械とか工具とかそういうようなものでございます。それから部品部門と申しますと、精密ネジとか、あるいは歯車とか、あるいは強靱鋳鉄とか、そういうふうなところの、今後これを伸ばすことによって機械工業全体がさらにそれを通じてよくなるというふうなものを大いに伸ばしたい、こういうふうな考え方でございます。
  86. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をちょっととめて下さい。   〔速記中止〕
  87. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をつけて。  本法案質疑は次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ではさよう決定いたします。  本日はこれにて終了いたします。    午後三時五十一分散会