○
政府委員(鈴木義雄君) 機械
工業振興臨時
措置法の趣旨については
提案説明の際申し
上げましたが、御
承知の
通り機械
工業は
輸出産業として、また
基礎産業として
わが国においてその将来性が最も期待される重要
産業でございます。特に東南アジアその他後進
諸国が
工業化しつつある最近の趨勢にかんがみまして、この
輸出については、今後も絶大な期待が寄せられるのでございまして、先に決定をみました
経済自立五カ年
計画におきましても、機械
工業の発展には特に重点を置いているのでございます。しかしながら
わが国の機械
工業がこの大きな国民
経済的な要請にこたえるに十分な力を持っているかどうかということになりますと、そこには
解決を要すべき幾多の困難を問題を持っております。そのおもな点を列挙いたしますと、次のような四点であると考えます。すなわち機械
工業は戦時中に
相当の
発達をみましたが、戦後は長く苦難な道を歩んでおりまして、その結果
設備の改善が非常におくれているために、その老朽化、陳腐化の程度がはなはだしい、これが第一点であります。それから第二点は、技術水準の上からも、
商品の
国際競争力や販路開拓の上からも、まだまだ先進
諸国に比べて立ちおくれの点が非常に多いのであります。第三は、狭い市場で多数の
企業が乱立しておりまして、それぞれ多種類のものを少量ずつ
生産しているというふうな傾向が多くございまして、
生産能率が悪く、従って品質コストに多大な悪影響を及ぼしている点が第三点でございます。それから第四は、機械
工業のうちでもとりわけ、ことに
基礎機械の部門、
基礎的な部門、たとえて申しますと工作機械とか工具、そういったもの、あるいは部品部門、たとえて申しますと、ネジとか歯車、ダイカスト、そういう部門が他の部門より立ちおくれておりまして、また国際的に見ましても、この部門の立ちおくれが目立っておる、こういうふうな特徴がございます。
このような機械
工業の
現状からみまして、その
振興対策をどう考えるかという問題でございますが、それには
輸出の
振興、国産化の推進及び
生産基盤の充実、こういう三つの大きな方向があげられると思います。このうち
輸出の
振興措置に
つきましては、
政府といたしましては予算で
説明申し
上げました
通り、
日本輸出プラント技術協会の
育成強化を通じまして、プラント
輸出の促進をはかり、あるいは海外サービスセンターの設置によりまして、軽機械類、あるいはモーター類等の
輸出をはかり、あるいは海外有力
関係者の招聘をはかりまして、
日本の
工業力の実情を知ってもらって、これによって
輸出の推進をはかるというようないろいろな諸基本
対策を講じておりますとともに、
輸出入銀行による金融政策等によりまして、できるだけ機械類の
輸出を推進したいと考えております。また国産化の推進に
つきましても、従来試作、研究の
補助金等を交付しております。今後もこれを続けていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
しかしながら真に機械
工業の
振興をはかるためには、何と申しましても根本的に機械
工業の
設備を近代化し更新し、またその専門
生産体制を確立して
国内における機械
生産技術の向上、
生産費の低下をはかる等その
生産基盤が充実強化されることが大切でございまして、そのつちかわれた力があるいは溢れ出るような力で
輸出となり、あるいは外国機械にかわって
国内市場を開拓することとならなければならないと考えるわけでございます。
本
法案は、このような意味で機械
工業の
生産基盤の充実強化をはかるためのものであり、
振興対策の中核となるものであります。本法の適用を受けます機械器具は
提案説明にもありました
通り当面機械
工業のうちの
基礎部門及び部品部門に重点を置いて
運用したいと考えておりますが、これは先ほど申し
上げました
通りこれら部門が特に劣弱な部門であるという以外に、これらの部門が強化
育成されることによりまして、その効果が完成機部門はもとより、機械
工業全般にまで波及いたしまして、機械
工業の全部門がその利益に均霑し、
わが国機械
工業の弱点の補正及び全体的なレベルアップにもなるというふうな考え方からであります。
そこでおもな条文に
つきまして、順を追って御
説明させていただきたいと存じます。第一条は趣旨でございまして、これは機械
工業の
合理化を促進するという
措置を講ずることによって機械
工業の
振興をはかるという趣旨のものでございます。そこで第二条以下でございますが、この機械
工業の
合理化を促進するために、本法では、第二条から第四条までに
合理化基本
計画及びその実施
計画について
規定いたしております。第五条において
資金の
確保、第六条から第十一条までにおいて
合理化のための
共同行為の指示、第十二条で
生産技術の向上のための
基準の公表についてそれぞれ
規定しております。つまりこの
法律のおもな
内容は、政令で
指定した特定機械
工業に
つきまして、
合理化計画を定め、この
計画に基いて、
資金の
確保、
共同行為の指示及び
生産技術向上のための
基準の公表という三つの
措置をとり
合理化を促進しようというわけでございます。
そこで第二条でございますが、第二条は中核となる
合理化基本
計画について定めております。第二条の第一項では、機械
工業のうち特に性能もしくは品質を改善し、または
生産費を低下させる必要がある機械器具または部品であって政令で定めるものの製造業、すなわち特定機械
工業について、
通商産業大臣が機械
工業審議会の
意見を聞いた上で
合理化基本
計画を定めなければならないことが定められております。この
合理化基本
計画は、単なる将来の見通しではなく、政策遂行の
基本方針であり、本法に基く諸
措置の根幹となるものであります。従って決定に当っては、十分慎重を期するため機械
工業審議会の
意見を聞かなければならない旨を
規定しているわけで、
運用に当っては十分検討の上万全を期していきたいと考えております。
特定機械
工業として政令で
指定する業種は、特に性能もしくは品質を改善し、または
生産費を低下させる必要がある業種でありますが、先にも申しました
通り機械
工業中きわめて重要な地位にありながら、その
合理化がきわめておくれている
基礎機械及び部品部門がまず第一に対象とされることになるわけでございまして、こうした趣旨から見て当面主として歯車、精密ネジ、強靱鋳鉄、粉末冶金、ダイカスト、自動車部品などの部品部門及び工作機械、工具、金型などの
基礎機械類等を
中心としたいと考えております。
次に第二項は、基本
計画の
内容を
規定したものであります。
第一号では
合理化の目標を
経済自立五カ年
計画にも即応して、
昭和三十五年度末における特定機械の性能、品質、
生産費等について定めることになっておりますが、第二号及び第三号では、
生産設備の新設と
旧式設備の層化転用等による処理についての
設備近代化計画とそれに伴う
資金計画を定めることになります。老朽化陳腐化した機械
設備の更新は、先にも申しました
通り、きわめて緊要な課題でありますが、同時にこれに見合う
設備の廃却を指導できれば一そう
合理化に資するわけでございまして、この点もあわせて
合理化計画の
内容に記していきたいと考えたわけであります。
第四号は、その他の
合理化に関する
重要事項でありますが、たとえば、専門化や分野確立の必要性、規格の向上統一の必要性、原材料購入
対策や技術向上目標の設定の必要性などがそれぞれの機種に応じて記載されることになります。以上これら各号の
事項が
一つの業種について総合的にきめられるわけでございまして、従ってこれに基く
措置も相
関連して行うところに
合理化計画の大きな意味があるかと考えます。
第三条の
合理化実施
計画は、基本
計画の実施のための年次別
計画でございます。
次に第五条は、実施
計画に定めております
設備近代化の実施に要する
資金の
確保について
政府の
方針を宣言したものでございまして、実質的にはこの点に
関連しまして機械
工業の
基礎部門及び部品部門に対する
日本開発銀行の融資に
つきまして、
提案の
説明にもございました
通り、
昭和三十一年度は十五億円の
資金を
確保し、低利、
長期、担保
条件の緩和等、特に有利な
条件で融資が行われることとなっております。
第六条から第十一条までは、
共同行為の実施に関する
通商産業大臣の指示について
規定しております。
通商産業大臣は
合理化基本
計画に定める特定機械
工業の
合理化目標を達成するため特に必要があると認めるときに本条の指示をし、これにより
合理化カルテルの締結が可能となるわけであります。
機械
工業について、
生産分野の画定、規格の統一、部品原材料の購入
方法の改善等を行うためには
合理化カルテルを積極的に
利用すべき場合が多いと考えられるのでありますが、現行独禁法による
合理化カルテルでは、機械
工業の
現状に即してみますとなおカルテル種類の範囲が狭く、また
企業相互の利害の錯綜のため完全に自発的な話し合いで協定に到達することが困難の場合も多くみられるのでありまして、本条によりまして、
合理化基本
計画を定めた特定機械
工業については、
合理化基本
計画に基いて
通商産業大臣が積極的に
合理化をはかっていくことの意義は、きわめて大きいと考えます。なお本条による指示に当っては、第三項にありますように
内容と期間とを定め、これを公表して行うのでありまして、これに基いて行う
共同行為は、第十条の
規定によりまして独禁法の適用を除外されることとなっております。
そこでこの第六条第一項の各号におきまして、指示される
共同行為の種類が列挙されております。このうち、第一号の品種の制限及び第三号の技術の制限は現行の独禁法の
合理化カルテルでも認められているものでございます。第一号の品種の制限では、
生産分野の協定と製品規格の統一に関する協定がそのおもなるものとなる予定であります。第二号の品種別の製造数量の制限は、一般的には不況カルテルの手段として用いられる例が多いのでございますが、本法におきましては、特に第六条第一項ただし書きの
規定を設け、本
規定が
合理化カルテルの範囲として認めらるべき旨を明らかにしております。すなわち、機械
工業の
現状からみまして、一挙にすっきりした形の
生産分野の確立と専門
生産を実現することはむずかしい場合も多いのでございまして、その場合に将来は
生産しないこととなる品種のものも、さしあたりは
一定量だけの
生産は認めた形で、お互いに分野の協定をし合うということが、
企業の利害を
調整し、円滑に分野協定を進めて行く上にきわめて必要なので時に本号を設けたわけでございます。第三号の技術の制限では、主として
使用する部品または原材料の規格の統一にかかわる
共同行為が考えられます。技術の制限という表現はきわめてわかりにくいのでありますが、独禁法がすでに用いている言葉なので、そのまま採用したわけでございます。第四号の部品または原材料の購入
方法では、主として
中小企業者の
共同購入を考えております。購入
方法という表現には、購入数壁とか購入価格とかは含まれません。
次に第六条第二項を御
説明申し
上げます。
本項は、特定機械の規格の制限が、その特定機械
工業者の第一項による
共同行為では目的を達することが困難なときに、その特定機械の需要者側の業種が協調的にその
使用する特定機械の規格の制限にかかわる
共同行為をする場合でありまして、たとえば、ネジの場合を考えてみますと、ネジの規格の統一は、ネジ製造業者の協定のみではとうてい不可能でありますので、このようなときに、ネジを
使用するたとえて申しますと写真機メーカーや電気機器メーカーの方で
使用するネジの規格の統一をいたしますときわめて容易にネジの製品規格が統一できるわけであります。もちろん、かような場合は、ネジ製造業者の
合理化に役立つのみならず協調カルテルを結ぶ側においても
合理化に役立つのでありまして、第二項ただし書きはそのことを明記し、
合理化に役立たたないような指示はできない旨を
規定しております。
第七条は、
共同行為の
内容についての制限を
規定したものであります。
第八条は、
共同行為の
内容が適合しなくなったと認めるときの指示の変更または取り消しの
規定であります。
第九条は、
共同行為をしたとき、変更したとき及び廃止したときの届出
義務規定であります。
第十条及び第十一条は、独禁法との
関係について定めたものであります。第十一条によりまして、
通商産業大臣は、指示をしようとするときに、
公正取引委員会に協議することとし、また指示の取り消しや変更をしたとき及び届出を受理したときに
公正取引委員会に通知することとしておりまして、法的にも両機関の円滑な連絡には十分配慮しているわけであります。
第十二条は、
生産技術の向上のための
基準の公表でありますが、本
制度は、
合理化基本
計画で定められる
合理化目標を達成するために、各工場においてどのような製造
設備や
検査設備を備えればよいか、またどのような製造
方法、
検査方法をとればよいかという具体的な工場の技術
基準を公表いたしまして、この高い水準の目標を目ざして各工場が一段の改善努力をするように期待するものでございます。従いまして、
運用面では、さらに本条の実施省令を制定してこの
基準に到達した工場を具体的に認定するようなことを考えておりますが、こうすることはいろいろな意味でこの
制度を一そう効果的ならしめるものであると考えます。本
制度の適用対象に
つきましては、さしあたり、特に技術水準の向上を必要とすると考えられる業種でありまして、たとえば強靱鋳鉄、あるいはダイカスト、粉末冶金などについて実施したいと考えます。
なお、本
制度はJIS
制度とは異なっておりまして、規格化、標準化ではなくて、高い技術水準への引き
上げをもっぱらねらうものでありまして、高い目標水準を定めまして、工場全体の
生産技術そのものを総合的に認定するところに特徴をもっております。
第十三条から第二十条までは、機械
工業審議会に関する
規定であります。
審議会は、
合理化基本
計画、
合理化実施
計画及び
生産技術向上のための
基準など本法
運用上の
重要事項を調査
審議いたしますが、その他機械
工業の
振興に関する
重要事項に
つきまして広く
通商産業大臣の諮問に応じることとなる重要な機関であります。
委員は五十人以内となっております。
また
審議会の
委員の構成に
つきましては、広く機械
工業に学識経験のある方々の参加を願って十分慎重かつ適切な
審議ができるようにしたいと考えております。
最後に、本法は五カ年の限時立法となっておりますが、これは、本法運営の基本となります
合理化基本
計画が
経済自立五カ年
計画と合せて五カ年
計画となっている
関係上、
政府といたしましては、この間に最大の努力を傾注して所期の目的の達成を期しているからであります。
以上おもな条文について
内容を御
説明申し
上げた次第でございます。