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1956-02-07 第24回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月七日(火曜日)    午後一時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三輪 貞治君    理事            河野 謙三君    委員            小野 義夫君            西川彌平治君            中川 以良君            阿具根 登君            海野 三朗君            上條 愛一君            藤田  進君            上林 忠次君            石川 清一君   国務大臣    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    経済企画庁長官    官房長     酒井 俊彦君    経済企画庁審議    官       森  誓夫君    経済企画庁審議    官       金子 美雄君    経済企画庁審議    官       細田茂三郎君    経済企画庁調整    部長      小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君   説明員    経済企画庁企画    課長      川瀬 健治君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○砂利採取法案衆議院提出)(第二  十三回国会継続) ○経済自立方策に関する調査の件  (経済自立五カ年計画に関する件)   —————————————
  2. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいまより本日の会議を開きます。  まず最初に、公報で御通知申し上げました通り砂利採取法案を議題といたします。本案については、一応質疑はつきているようでありますが、阿具根登君から修正案が提出されておりますからこの際説明を願います。
  3. 阿具根登

    ○阿具根登君 砂利採取法案につきまして先国会からいろいろと問題になっておりました修正試案をただいまお手元に配付いたしましたが、まだわが党といたしましてもこれが決定を見ておりませず、ほんの試案でございますので、その点御了承の上お聞き取りを願いたいと思います。  砂利法案につきましては、先国会でも相当論議のありましたごとく、小工業者圧迫になる利権法案でないかということが非常に大きく論議されたわけでございますが、この点につきまして修正しました点を御説明申し上げますと、まず一部に言われましたようなそういう利権法案のにおいのある字句をまず取り去るべきである、かような考えからいたしまして、業者あるいは経営、あるいは監督等字句を変えたのでございます。一条はその点で御了解願えるかと思います。  その次に問題になりますのは、作業責任者の問題でございますが、ただいま申し上げました採取管理者という名前は、いわゆる業者に対して監督の権限を与える、しかも土木事業につきものである監督というのは、いかにも今までのボス的なあり方をそのまま認めた形になりますので、こういう監督ということでなくて、その作業責任者、こういうことに変えたわけでございます。なおまた、その中で特に御了解願いたいと思いますのは、その作業責任者をきめるにいたしましても、実に小さい手掘り業者等は、わずか二人ないし三人でやっておるところにわざわざ作業責任者等をきめる必要もないではないか、こういうことで修正をいたしまして、御手元に配付いたしましたように、五条以下の問題を書き込んでおるわけでございます。  次に、最も問題になりました十一条の問題でございますが、私ども休会中に現地へ参りまして、それもごく一部でございますが、事情を調査した範囲内におきましては、たとえば福岡県の例をとりますと、この砂利の払い下げによって税外収入が一年間に約一千万円ございます。ところが払い下げられた砂利はその十倍をこえておる、こういうことでございます。そうすればその十倍をこした砂利はどういうふうに使われておるかということを調査いたしますと、直営事業による無許可業者によってこれが使用されておる。直営事業でございますので、当然そういう税外収入はございませんが、その場合に一般地方業者圧迫しておいて、直営事業に使った砂利に、数倍する砂利は横に流されておるという実情がございまして、現地責任者にお聞きいたしましても、少くとも少し注意をするならば、二千万くらいの増収にはなるだろう。地方財政がきわめて貧困な今日、そういうむざむざと一部の人に利益を取られておるということも判明したのでございまして、何とかしてこの点を除去したい、こういう考えで十一条は皆さんのお手元に配付いたしましたように変えたのでございますが、これでも決して私ども考えておるような満足すべきものではないと思っております。しかしこの法の精神ほんとうにくんでいただいて、今後この法案によって各県の条例等をきめていただくならば、今までのようなずさんな砂利事業、あるいは直営事業等の仕事はできないのではなかろうか、かように思って変えた次第でございます。  以上きわめて簡単でございますが、すでに皆様事情了承のことでございますので、一応簡単に御説明を申し上げまして御賛同をいただきたい、かように思う次第でございます。
  4. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記とめて下さい。   〔速記中止〕   —————————————
  5. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記始めて、ただいまお聞きいたしました砂利採取法案に対する修正案に関する質疑は、後刻にこれを譲りまして、経済企画庁長官に対する質疑を今から始めたいと思います。先ごろ聴取いたしまして質疑をいたしておりました三十一年度経済計画大綱及び経済企画庁関係提出法案等について、御質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先般当委員会には政府委員の方で大体の御説明を申し上げたのでございますが、この機会にこの経済五カ年計画につきまして、簡単にこの商工委員会閥係の分だけについて御説明をさしていただきたいと思います。経済五カ年計画は前の六カ年計画目的等を大体そのままつけてやっておるわけでありますが、昨年一月に六カ年計画を立てまして約一年間その経過を冷静に判断いたしますというと、初めの三十年度の計画相当実績によって矛盾をきたしておる、計画と違いがあるというふうな結果がわかったのでありますが、そのおもなるものは何かと申しますと、御承知世界の景気が非常によかったがために、最初輸出を十六億五千万ドル、こう見ておりましたのが、今日の状態では二十億五千万ドルくらいになる。こういうふうな状態でありますが、これは幸いに非常にいい方に向いておりますけれども、こういう予測が誤まりがあるということは、また悪いときも考えなければならぬ、こういうわけでありまして、この点につきましてはわれわれの予測相当誤りがあったということは、これは率直に認めていただかなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。しからばどうしてそういうふうな誤りをきたしたか、こういうふうな問題になりまして、いろいろ検討いたしまして今度は三十一年度の計画を立て直しておるようなわけで、いずれにいたしましても、商工政策に対しましても日本の全体の政策というものが大体輸出産業のいかんによって負うところが非常に多いのであります。輸出産業がよくならなければ工業生産もふえない。従って雇用関係も解決しない。こういうふうな状態でありますので、いかにいたしましても今後の五カ年計画を完成いたしますためには、輸出に重点を置いてどうして輸出をするか、増進するかということ、これはどうしても曲げることができない根本方針でございます。それにつきましては、この産業基盤をどういうふうに強化するか、つまり生産基盤をどういうふうに強化するかということは、当然起る問題でありまして、生産基盤の強化に伴ってあるいは合理化のために、あるいは生産能率向上する等のために、一時的に起る失業問題等も考慮しなければならぬというので、この失業対策ということもそのときどきによって講じていくというのが根本方針でありまして、そういう根本方針のもとに、今度は三十五年における経済目標を達成するために三十一年度の予算を編成いたしましたようなわけなんでございます。詳細のことはお手元に配付いたしました経済自立五カ年計画ないし昭和三十一年度経済計画大綱等について御高覧を願いたいと存じます。これについての御質問をしていただきますれば、お答えいたしたいと思います。
  7. 阿具根登

    ○阿具根登君 御質問申し上げますが、経済企画庁監修の五年後の日本経済というので非常に懇切丁寧に冊子まで出ておるようでございますし、ただいまの説明でも五年後いかにも明るい見通しのようなことを言われておりますが、五カ年計画の前提になっておるものに、中共及びソ連との貿易に関して政治的、経済的において改善されるということを言っておられますが、現在政府のとっておられる態度は、中共ソ連との経済の改善どころか、かえって避けておられる。民間からこれをやっておるというような現状であるが、どういう見通しで、どういうことをするためにそういう明るい見通しが出てくるか、詳細に御説明を願います。
  8. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 中共に対する輸出の増進は年次ぼつぼつながら増加しておるわけでございまして、実数におきましてその詳細の数字は御説明申し上げてもよろしゅうございますが、これにつきましては根本の政治的の問題がいまだ解決していないときでございまして、ここに飛躍的に大きな発展をし得るということは、これは当分は無理だと思いますが、この政治的の欠陥は、逐次これは緩和されるものと、こういう予定をもって進んでおるわけでありますが、ただここに中共及びソ連に対する貿易が、戦前こういうふうな大きな数字であったから、戦前数字並みにこれは伸びるかということは、これは今日の中共状態ソ連状態等を見まして、あれだけの国を工業化しておるというときでありますから、非常に大きな期待はかけられない。こういう考えで大体の計画を立てておるわけなんでございますが、逐次よくなってくるというわけなんでございますから、非常に大きなウエイトをかけるわけにいかない、こういうのが現在の私ども見通しでございます。
  9. 阿具根登

    ○阿具根登君 長官お話を聞いておりますと、ここで述べられておるような積極性は全くなくて、これは世界の動きにおいていわゆる逐次よくなっていくだろうというような見通しでございますが、きのう私たち国産自動車の視察に参りましたが、そのときに中国に行かれた方の話を聞いてみても、すでにオースチンという軍は中国の中に非常に走っておる。今時分にそういうなまぬるい政策を立てられたのでは、諸外国貿易政策というものは、そんなにいつまでも待っておらない、おこぼれをもらうようなあり方であっては、とうてい不可能だ、こういうふうに感ずる。一つの問題といたしましては、中国に見本市を開くというようなことを言っておられますが、政府はやっておられない、政府はこれに反対している。そういうことで実際の貿易考えておられるものかどうか、そういう点についてどういうお考えですか。
  10. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これはいろいろ複雑な外交問題があるわけでありまして、単純にこの輸出を増進したい、これは増進したいというのは当然のわれわれの希望でありますけれども、そのほかの外交上、政治的の制約等受けまして思うように進まないというのが、これが今日の現状でございまして、これは日本がやはり国際的の地位を保っていくという上においては、その点も考慮されなければならぬ、こういうのでやむを得ない事情だと私は存じております。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 たとえば長官中共ソ連との貿易を拡大したいということを言っておられる。特に中国の方からは、三回にもわたって日本に対して国交の正常化を叫んでおられる。そういうことも故意に避けておられて、言っておられることと、しておられることは反対ではないか。とすれば、長官はそういうふうにしたいけれども国際情勢から日本立場上できないということはどういうことであるか、あるいはそういうことができないようにアメリカその他から圧迫を受けているのかどうか、あるいはそういうことをしたならば日本にどういう弊害があるのか、そういう点をお話し願いたいと思う。
  12. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御承知のごとく、日本といたしましては、現在中国を承認いたしておりますのは台湾政府を承認して、これを中国の代表と認めているというのが現状でありまして、実際の力は今日常識的に考えて、台湾政府よりも中共政府のほうがほんとうの力があり、また、これが実力がある政府というのが当然だろうと、こう私ども考えておりますが、そこに従前のいきさつ、従前外交経過等があるものでありますから、ただいま申し上げました通りに、簡単にきめられないというのが現状だと思います。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 この五カ年計画目標にもうたわれておりますように「完全雇用の達成」ということが言われております。今の政府で今言われたような立場は私はわからぬではありません。しかしいつもおっしゃっている貿易さえ伸びれば、失業者も減るのだと言われている。しかも、お隣ですぐ貿易ができる、しかも台湾政府よりも強力な実権を持っている政府である。こういうことになると、それでは台湾政府を認めているために日本に七十万から八十万の失業者がいるんですね。こういうのも耐え忍ばなければいけないのか。こういうことになってきますなら、そういう交渉をやられたことがあるか。たとえば台湾政府に対して台湾政府は認めているけれども貿易だけは中共とやらなければ日本失業者はどうしても減らないのだ、日本の復興はできないという交渉をやられたことがあるのかどうか。また、そういう貿易を向うから手を伸ばしている、民間でも盛んに貿易を叫んでいる。それに対してやれない、やったならばどういう弊害があるのか、こういう弊害があるから、やむを得ずに日本失業者はわんさと出てくるのだ、日本生活水準は上らないのだ、こういう納得する事情があるなら聞かしていただきたい、こう思う。
  14. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 中共との貿易を促進することによって、日本の失業問題が解決し得るということも、これは確かにその一理由があると存じまして、そういうふうに進めていきたいと存じておりますが、ただいま申し上げました通りのような工合で従前外交方針外交経過外交約束等、いろいろな事情に迫られまして、今にわかにこれを推し進めることはできないと思っております。しかし方針といたしましてはできるだけ国際の条約に違反しないというような状況のもとにこれを伸ばしていきたいという所存各種手段各種方策外務省を通じて講じておるのでございます。
  15. 阿具根登

    ○阿具根登君 それではもう一つ質問いたしますが、最近米英巨頭会談がありました場合にも、中共貿易緩和ということが言われておったように報じられております。そうするとまたアメリカの方でも緩和するであろうというようなことを盛んに言われておる。こういうときに日本政府はただ黙ってそれを見ておるのか。最も近い、最も貿易を欲しておる中国に対して貿易緩和を積極的に働きかける御意思があるのかどうか。ダレスさんが見えた場合にどういう態度でその辺はお進めになるつもりか。ただ向うから何々を送ってよろしい、何々を緩和するのだと言うのを待っておられるのか。日本自立上、日本産業経済を復活する、それをもっと強く押し進めるためには、これだけのものは緩和してもらいたいというお腹がおありになるかどうか、その辺をお尋ねいたしたい。
  16. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) どうも外交上の問題につきますというと、相手方があることでありまして、今ここで、こういう方針でこういうふうにやっていって、こういうふうな談判をしたいというようなことを、今ここで私は政府の一員として言明することは避けたいと思いますが、しかし方針、こちらの希望というものは先ほど申し上げました通りでありますから、この希望を貫徹することが目的でありまして、達成することが目的でありまして、その手段等につきましては今どういう手段を講ずるかということにつきましては、今日ここでお話を申し上げることはちょっと遠慮さしていただきたいと思います。
  17. 海野三朗

    海野三朗君 今のに関連して私はちょっとお伺いいたしたい。この経済五カ年計画に対して大へんな御熱意のあることはよくわかりますが、この中共に対しての輸出の問題でありますが、これは昨年この商工委員会でもるる論議された問題でありますが、このカーボンブラックに至るまで輸出を制限されておった。ところが今回に限り国内に余っておるカーボンブラック中共にやりたい、中共が買いたいというので、外務省を通じてココム許可を仰いだ。そうしたところが許可がきた、そのときまでには約八カ月も要しておる。それから中共に話しかけたところが、中共はほかから買ったから要りません、こういう返事であるのです。ヨーロッパから中共は入れておるのです。そこでそのココムをよく守ってやっておる日本がいいばかみておるのです。前に統制のときに、配給統制をよく守っておって栄養不良になって死んだ裁判官があることは御承知通りであります。このココムのあれを守っておるというと死んでいくやつが出てくるのです。それでも国際間の信義をお守りになるというお腹か、もう背に腹はかえられないというような場合には、何とかもう少しここに弾力性のある態度政府がとらなければならないのじゃないか。規則を守ってわれわれ同胞の死んでいくのを見ても、いや、規則を守ったのだからと言っても私は始まらないのじゃないかと思うのです。この点に対して長官はいかなる御信念を持っておられますか。約束したならば命がなくなっても、その約束を、ココムを守る、国際間の信義を守るという御精神であるか。死んでも守るのか、あるいはいかなる法律といえども、今日人間が生きていく生存権を脅かすところの法律はないのであります。その見地から考えると、もう少し私は敢然たる御決心があってもいいのではないかと、こういうふうに思いまするので、今阿具根君の、同僚委員の御質問をもう少し私は掘り下げていきたい。カーボンブラック一つの例でありますが、これに類似したことがまだまだたくさんある。これはもう御当局はよく御承知のことだと思うのですが、いつまでもわれわれ同胞が食っていけない。これもココム約束で縛られておるからと言っておりますが、ヨーロッパの方からは手をかえ品をかえ、まあ、ちゃんとカーボンブラックは入っておりますから、日本からは入れません。ばかみたのは日本ばかりですよ。その点に対してはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。一つ長官の御信念のほどを私は承わりたい。
  18. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先ほど法律的なお話もございましたし、またカーボンブラックお話もあったような次第でありますが、われわれが手をこまねいていれば、これはほかの方に食われてしまう。それで相手方はどうかというと、日本とは取引したいという希望がこう然として沸いている。そのときに政府は手をこまねいているのじゃないかというふうなことについての御質問と思いますが、これはどうもいろいろ日本立場もございまして、自由主義国との間の取引関係、そのほかに現在の日本国際的地位等もいろいろ考慮いたしまして、どの程度にこれを主張していくのが国全体のために利益であるかというふうなことは、非常なこれはデリケートな問題でありまして、その点は現在政府のやっておりますことにつきましては、一つある程度の御寛容の態度をもって見ていただきたい。しかしながら、政府はどうしても中共との従来における——中共と申しましょうか、中国との従来における歴史的、地理的関係から考慮いたしまして、これは両国民のために、こういうふうな法律があって、あるいはココムとか何とかいうふうなことのために、当然両国民が手を握らなければならん、握りたいという希望でいるにもかかわらず、これが阻止されているということは、これは根本における大きな誤りである、これを打開するということが、中日両国に最も重要であるというこの信念を十分抱いて、それに従っていくように現在国際時局に適応しつつ進んでいきたいという所存でございます。
  19. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこでいつも言っておられるように、貿易が伸張すれば日本経済も明るくなってくる。これは当然わかりますが、その貿易の伸張の一つとして生産性本部をお作りになって、そうしてこれに千億からの資金をかけてやっておられる、この前これは局長にちょっと質問いたしましたが。そうしますと日本貿易の原則というものは、また戦前のように生産性を上げて、そうして日本の商品をできるだけ安くして貿易戦に臨むのだと、こういう腹がまえですか。生産性の問題について……ちょっとおわかりにならなかったら、生産性を上げていくことを非常に大きな一つの眼目とされている、もちろんそれもわかります。そうしますと、日本生産性と諸外国生産性を比べた場合にどれだけの差があるか。もちろん生産性は上っていきましょう。しかしそのために今度はそれが返ってきて国民生活が明るくなるというようなことを言っておられるが、アメリカ皆さん監修で書かれた本に書いてあるように、日本人生活の十四倍の生活をしている、英国は七倍の生活をしている。こういうときに当って、皆さん計画されているこの数字を見てみても、はね上返りでそれだけ明るくなるとは私たちは思えない。それだけの失業者が救われるとは思わない。なぜかならば、やはり生産性に伴って日本人生活も明るくなっていかなければならないけれども、そうすると失業者の数というものは減っていかない。あまりばく然とした、ただ明るい見通しだけ立てておられるが、何をどれだけ伸張して、どこまで失業者を救っていくか、この点について何か具体的案をお持ちでしたら、お知らせ願いたいと思います。
  20. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この根本的の問題といたしましては、生産性向上さして生産を増加していかなければならないということは当然でございまして、そうでなければ雇用問題も解決しない。作る物がふえれば、雇用関係も、それで就業機会が多くなるということは、これはわかるわけであります。しかるに今度は生産向上して、物がよけいできたということになれば、これをどうしてその物をはかすか、売るかということが根本の問題でありまして、いわゆる生産過剰になってしまってそれが売れなかった場合には困る。売るためにはどうしても生産原価を、コストを下げていかなければならん、生産原価を下げていかなければならん。そこでつまり生産性向上をいたしますためには、工業合理化ということになる。合理化すれば、そうすれば、ここで一つ工場にたとえましても、十人を使っている工場が、これは従前ハンド・オブでやっておれば十人であった。オートマティックで、オートメーションでやれば五人で済んだということになると、五人の人間が失業するじゃないか。こういうことは一時的にはこれはやむを得ないと思いますが、しかし、一国の経済一つ工場にたとえるということは、多少間違いがありますけれども、かりに一工場について見ても、一つの会社について見ても、工場の方で働いている人たちは、あるいは十人のところが先ほど申し上げました通りに五人に減りますけれども、そうして販路が拡張していけば、原料を仕入れている係の人、あるいは部分品を売っている人が相当ふえる、またできた物を倉庫に入れ、運搬をし、輸出をし、販路を拡張するだけの販売員もふえるというふうになってきますから、終局はこの生産原価を下げて、そうして売りやすくしていかなければ生産がふえない。ふえた結果、多少の生産をふやした結果、各方面の就業者機会が多くなる。これが根本政策でございますが、ただいまお話しのごとく、それじゃ原価を非常に下げて販売競争をしていくということになれば、外国の例と比較すれば、日本生産者の賃金は非常に下るんじゃないか、こういうわけでございますけれども、そうでなく、一人当りの賃金というものは、生産をふやすことによってどうしても増加していく、これが根本方針でなければならぬ。こういうわけでございまして、経済五カ年計画におきましても、個人の所得というものは年々増加していく、こういう方針で進んでおるわけであります。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 戦前に私どもが十分生産の問題について聞かされたようなことを今も聞かされるのでございますが、労働問題については、まあ別なところでもお尋ねすることがあると思うのですけれども、諸外国生産性向上につれて労働者の労働時間を短くしなければならん、こういうことがILOでも言われておる。しかし今の高碕長官の話であるならば、その生産性向上につれて生き残った人はいいかもしれないけれども、これがはね返ってくるまでは、犠牲者が出るのはしんぼうしなければできない、こういうことを言っておられる。そうしてその結論としては、そういうのが社会保障で、失業対策で救わなければならん、こうおっしゃるだろうと思う。それなら自分の所管を逃げておられる。労働省にそれだけ受け入れる予算があるか。予算審議される場合にやられたかどうか。決して受け入れるだけの予算は持っておらない。失業者をそれだけ優遇することはできない。そうすれば一部の人間を犠牲にして立っていくということ以外にしかないと思うのですが、その点どういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体この計画にもありまする通りに、五カ年間を期しまして、全体の鉱工業生産につきましては五三・七%、この五カ年間を期しまして増加しておるのでありまして、それに対して第二次産業の方で人間は一七・九%持っておる。こういうわけでありますから、生産の数量に比較いたしまして人間の増加する数は少くなっておりますから、それだけつまり各個人の所得が増加して参るわけであります。一人の生産量も約三〇%ふえる、こういうことになっております。それだけの収入がふえるわけであります。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 その考え方を私は言っているつもりなんですが、諸外国ではただいま申し上げましたようにアメリカにおいて日本生活の十七倍の生活をしておる。私はアメリカ生活をまねしたいとは思っておりません。また英国においては七倍の生活をしておる。その人たち生産性を上げていく場合には、自分たち生活を落さないために、今度は労働時間まで短くしていくということは、あながち商品の値段を下げて国際貿易で戦うということだけじゃない。ところが日本政府考え方は、戦前のように労働者の賃金を下げておいて、たとえば下げられない場合には失業者を出しておいて、それは失業対策で何とかしましょうと言っておいて、いわゆる商品を下げるということになってくるならば、諸外国日本に対していい目で見るかどうか。いわゆるそれは日本の勤労者の、日本国民生活向上するためである、そのためには人間が時間を短縮してでもやるべきだというお考えがあるならばいざ知らず、そうではなく時間は延長してもかまわない、またこれを合理化するなら、人間は減ります、当然なことである。そうしていって失業者を出していくということは、私は当を得た政策ではないのではないかと思う、こう思うのです。そこを聞いているわけなんです。
  24. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 終局の目的といたしましては、歩み方とすれば労働時間はなるべく短縮して、そうしてできるだけその生活向上せしめるというのが政治の根本方針でなければならんと、こう存じますが、ある一時期については忍ぶべきところは忍んでいかなければならない、こういうのが私ども考えでありまして、今アメリカにおきましても、イギリスにおきましても、先般私はガットの会議に参りましても、各国の日本に対する希望はそこでございまして、フランスの代表が言いましたことには、日本の労働者は一万五千円から一万六千円で働いておる、女は九千円で働いておる。フランスの労働者の四分の一だ、これと競争されては困る。これは各国が前からよく言った議論でございますが、ただそういうことになりますと、これをもって攻撃されますけれども日本は御承知のごとく今日の金利水準等におきましても、やはり中小工業者は一割近くの金を使っていかなければならない。大きな業者でも八分くらいの金を使わなければならない。アメリカにしても、イギリスにしても、フランスにしても二分か三分の金を使っていっておる。こういった工合に資本の潤沢の国におきましてはそれだけ資本が安く使える。われわれは忍ぶべきところは忍ばなければこの競争に勝っていけない。こういうわけでございますから、従いまして終局の目的はどこにあるかといえば、個人の所得というものをふやし、労働時間をなるべく短縮して生活向上するということが目的でありますから、そこに向って進むということには、決して曲げない方針でありますけれども、至らない間には、ある程度のしんぼうをしていただかなければこれはいけないであろう、こう思うのが現在の私どもの心境でございます。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 例を申し上げるのはまずいかもしれませんけれども、高碕長官のその一時の間は忍んでもらわなければできないという、一時の間にどれだけの犠牲者ができているか。十軒長屋、御存じですか。ハーモニカ長屋、ハーモニカ長屋には口が幾つもある。あのハーモニカのように入口が幾つもあるのをハーモニカ長屋というのです。今度九州の一炭鉱ではそのハーモニカ長屋に、自分の主人が脊髄を病んで、それで仕事ができないから社会保障で助けてもらいたい、救済してもらいたいと言ったけれども、それは予算がないからできないといってはねられた五十何歳の女の人がある。いわゆるタヌキ掘り、これもおわかりにならないかもしれませんけれども、炭を掘るために小さい穴を掘っていく。日本の女がそういうことをすることができないのは御存じの通りですが、その穴の中に入って死んでいっておる、こういうこともある。それではそういう生活をしておる人たちのことを考えて、その人たちにもっとしんぼうしろとおっしゃるのかどうか。一つのふとんをまん中に置いて、そのまん中に湯タンポを入れて親子六、七人足を突込んで寝ておるのです。そういう人たちにあなた方はしんぼうしろとおっしゃるか。私は長官立場としては失業者を、そういう人たちを出さない政策を立つべきだと思う。そういう人たち失業対策で救え、それは労働省に回せというのは責任回避だ、それではやっていけない。それだけ予算に組んで下さるならいいけれども、実際それをやってもらっておらない。現在失業者はただ生きるばかりの生活である。それをしんぼうせよと言う。これでは私はあまりにひどいと思うが、どういうふうにその対策を考えておられますか。
  26. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) このそういうような工合に炭鉱のごとく、あるいはある種の事業におきましては、今のハーモニカ長屋のことも私はよく存じております。タヌキ掘りのことも自分は実際にやって経験のあることでありますから、よく存じておりますが、この悲惨な生活をさせていくということは、いかなることがあってもまずもって解決されなければならない。それがためには社会保障費というものを十分みなければならん。私どもは一方生産性向上せしめて輸出を増進せしめると同時に、社会保障というものにつきましては、相当の考慮を払いまして、現内閣といたしましても社会保障費は国民所得と比較いたしまして、本年のごときは国民所得に対する一・六%という数字をみておるのでありまして、今年は一・六三%、昨年は一・五二%でございまして、その前の年のごときは、一・三四%こういう工合で年々この社会保障費というものは、国民所得に比較いたしまして増加しておるわけなのでありまして、それでもなおかつ、おっしゃいましたような工合に、そういう、手が落ちておったところはたくさんあるだろうと存じますが、それはよくそのそういう事情を検討いたしまして、特に九州の炭鉱のごときは、今度炭鉱の合理化をいたしました結果、地方として川崎線を通じてわずかではありますけれども、二千人ぐらいの失業者を吸収しようじゃないかという工合に、ところどころはさせておるわけでございまするが、全体に行き届かないという点は相当あるだろうと考えて、われわれとしても苦心いたしておるわけでございます。
  27. 海野三朗

    海野三朗君 私は企画庁長官にお伺いいたしたいのですが、この計画達成のために必要な施策として大へんりっぱにお書きになっておるようですが、産業基盤の強化といい、貿易の振興といい、またこの二十七ページには、科学技術の振興ということをうたっておられますが、この科学技術の振興をするためには「一連の諸政策が強力に推進されなければならない。」こういうふうに述べてあります。そこで私は、この計画表を見て思いますことは、この科学技術の大切なること、貿易の振興をはからなければならないことは、この五カ年計画のほとんどバック・ボーンになっておると私は思うのです。しかるに今日のこの政府あり方、特に企画庁、また通産省においては、課長というものがみな事務官ばかりからなっている。いわゆる法科万能と申しても過言ではないのです。この法科万能の姿が民間よりもおくれておるのです。こういうあり方が、で、その法科万能をやって、てんとして顧みないで、そうして科学技術の振興とか何とか、いや貿易をふやさなければならないとか何とか、品質の向上で値段を安くしなければならんとかいうことをうたうけれども、この行政官庁のあり方というものは、この技術者をほとんど眼中においていない状態でありますが、こんなことでは法科万能でもってこういうふうなことを作文を作っておる、私はあえてこれを作文と申し上げたい。こういうあり方自体を私は即刻改善することが必要なのではないか、私はこう思うのです。昔は、私が申さんでもよく御承知のように、軍閥、官僚、これがばっこをした。その結果はどうなったかというと、軍閥というものは敗戦によってたたきのめされたけれども、今日官僚の牙城は依然として、牢固として抜き得ないのである。こういう際にこの官僚の、いわゆるあり方というものは、言葉をかえて申しますならば、法科万能である、はなはだしきに至っては、高文を通った者がもう次から次といくポストはきまっておる。そうして一年間、長くても一年半ぐらいおると、もうすぐ一段すぐれたる位置に高飛びしてしまう。こういう人たちが案を作ったりなんかしておる。私はそういうあり方に対しまして、この科学技術の振興という点からも、この技術出身の技術的な頭脳を持った幹部が、やはりこの行政官庁に位置を占めていなければならないではないか。こういうふうに思いますんで、この五カ年計画はまことにごりっぱなことでありまするけれども、この基を私は是正しなければならないのではないか。そうでなければ幾ら笛を吹いたって科学技術の振興がどうだこうだと言ってみたところで、本省をながめてみるというと、技術者というものはもう踏みつけられておる。こういうあり方は私は穏当ではないと思いますが、こういう点について長官はどういうふうにごらんになっておりますか。私はきょうもこの官公庁職員の抄録を持ってきておりますが、各省を見ると実にひどい。ことに通産省などはひどいんでありますが、こういうふうな課長、しかも技術的な頭を持った人が課長になって、そうしてこの輸出入の品物についてもいろいろと世話をしてくれなければならないのではないかと思うのに、全部法科出身の人ばかりで、このあり方が私ははなはだいけないのであると思いますが、一つ長官の御所見を私は承わりたい。
  28. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私も従来からそういうふうな傾向のあったことは、私ども考えないことはありませんが、私ども経済企画庁におきましては、やはり技術官を逐次優待いたしまして、それで部長等に技術官をあてるという考え方で進んでおるのでありまして、ことに今回発足いたさんとする科学技術庁のごときは、今の御心配になっておったような形を、十分考慮してやらなければならんと存じておりますが、従来の行政官庁といたしましては、事務系の方々が主体になっておるということも事実でありますが、なお詳細の数字等につきましては、政府委員から説明をいたします。
  29. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) ただいまお手元経済企画庁の幹部の職員名簿を御配付いたしたかと思いますが、これをごらんいただきますと、一枚めくっていただきまして二ページ目の裏のところでございます。総計といたしまして私どもの方の課長以上の職にあります者の割合でございますが、事務系統の人が四十名技術系が十六名でございます。それで仕事の性質上、ことに開発部等におきましてはこれはほとんど技術官出身の方が課長になっておるんです。なお、計画部におきましても、ただいま先生からお話がございましたように、単に事務系統の者ばかりで作っておるのではないのでございまして、ここに坐っておられまする計画部長以下技術官の方、計画部には相当おられまして、まあ技術官の方も御一緒になってこの計画を立ててもらったというようなわけでございます。もっとも、私どもの方の人事が各省との交流が多うございますから、そういう意味で独自に技術宮を特に優遇するとか、あるいは事務官で占めているとかというようなことがわれわれの独自でやられることは少いのではございますけれども、しかし、一応技術官の方々も主要なポストに就いて、それぞれ仕事に参画していただいておるという現状を御了承願いたいと思います。
  30. 海野三朗

    海野三朗君 しからば私は官房長にもう一つお伺いをいたしたいのですが、昇給はどうなっております。昇給は事務関係の人が早いでしょう。
  31. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 昇給の関係におきましては、これは先ほども申し上げましたように、私の方では特に相当の数の方が各省との交流でおいでになっておりますので、それぞれもとの省の関係できめられておる点が多うございます。われわれのプロパーと申しますか、経済企画庁の本来の職員から申しますれば、技術官だからといってそうおくれておるわけではありません。
  32. 海野三朗

    海野三朗君 半年ずつ内規でおそくなることがきまっているのじゃないですか。
  33. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) そのような内規は私の方はなかったと思いますが。
  34. 海野三朗

    海野三朗君 それは今日までそういうふうなことをあなたは御承知ないのですか。文官を通ってきた者と技術官との昇級の時期が違う。もう公然と違っておるのが今日の常識でしょう、本省では。
  35. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 各省におきましてはそういう傾向があるところもあると存じます。従いまして各省から派遣いたされる職員につきましては、やはりそういう開きが若干できるということもございますが、私の方独自といたしまして昇級時期を技術官の方をおくらせるというようなことはいたしておりません。
  36. 海野三朗

    海野三朗君 私は微に入り細にわたって一つお伺いしたいのですが、事務官の方は一年半、技術官は二年というのはもう本省の常識になっておる。今各省から、派遣されておるとおっしゃったのでありますが、この科学技術庁の問題が起っておるが、技術庁長官はだれ、次長はだれとちゃんとあなた方の間でお話になっておるでしょう。事務官の間で枢要なるポストはだれだときまっておる、それをあなたは御承知ないのですか。
  37. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 新しくできます科学技術庁につきましての、そういうポストをどうするというようなことは私全然承知いたしておりません。
  38. 海野三朗

    海野三朗君 あなたが御承知ないならばそれはまあそういうふうに聞いておきますが、通産省からはだれを出す、農林省からはだれを出すと、事務官の方でもうちゃんと案をこしらえてあるのですよ。その事務官の人たちが長くおって、ほんとうに行政を見ていくならいいけれども、一年か一年半、まあ長くとも二年はたたない。そうしていいポストがあるというと、民間にちゃんと飛び込むのです。民間に飛び込むのを私は悪いというのではない、民間に入ってからほんとうの仕事になるのです。私はそういうことは根本的に改めなければ、日本の科学技術というものがほんとうに発達するわけがないと思う。ですから事務官の方はぽんぽん位置を変っていく、そういうことは私ははなはだよろしくないと思うのですが、一つ官房長あたりはどういうふうに考えておられますか。あなたが官房長におなりになってから何年になりますか。
  39. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 私個人のことについてお尋ねで非常に恐縮でございますが、私は一昨年の八月に経済企画庁に参りまして、それ以来名前は変りましたけれども官房長と同じ仕事を続けております。
  40. 海野三朗

    海野三朗君 そこで私は企画庁長官にもう一つお伺いいたしたいのは、こういうあり方では、幾らあなたの方で笛を吹きなさっても、技術者の盛り上る気持というものは出てこないのですよ。私はもう少しこれをうまくやるならば、この技術出身の人と事務出身の人とが、車の両輪のごとくにいって初めて全きを得るのである。ところが技術出身のものはいまだかって長官になったためしがない。またある省のごときは局長になったためしがない。そこで私はこの前も通産省の官房長に言ったのでありますが、局長になったためしがないのですから、一体技術官というものは人種が違うかといって私は詰問をしたのでありますが、こういうふうに技術をつまり劣等視する、いわゆる職人扱いにする。こういう仕組みを全然改めなければ、日本の科学技術というものがほんとうに発達するものではない、私はそういうふうに考えておるのですが、長官はいかようにお考えになっていらっしゃいますか。
  41. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのお説のような見方もございますが、私はこう感じております。技術者というものは、やはりどうしても技術そのものについてほんとうの自分の使命を感じて、それに猛進しておるというところに、技術者のほんとうの使命があると思います。そうかといって、技術者がそうかまえておるから、これを虐待して適当な地位を与えないということも、これは大きな誤りだと存じます。今後科学技術を振興するということがどうしてもこの持たざる日本のような国としては、一番大事な点だと私は存じております。これにはどうしても技術者を数多く作る。それにはやはり国家といたしましてもできるだけ優遇するということの考えをしていかなければならぬ。それにはつまり行政庁におきましてもできるだけ優待の道を講ずる、あるいはこれは長官だからといってえらいわけでもなく、長官でなくても、少くとも物質的に恵まれるような方針を講じていくとかいうようなことはせなければならぬことだと、私は存じております。私こう申しますが、私自身も技術者出身でございます。技術者の私が長官をいたしておるようなこともあるわけでございますから、今のお話とはだいぶ違っておるようでございますけれども、できるだけそういうふうにして技術者を優待するということだけはやっていきたいと存じております。
  42. 海野三朗

    海野三朗君 最後に、もう一つお伺いしたい。今の技術者は技術の方に専念してもらわなければならぬというお話はよくわかりますが、技術の素養を持った人が頭に立っていないと、とんでもないへまばかりやる。たとえば昨今のミシンの問題などもその一つの例です。アメリカに十万台も余っておる。九ドル半であって一台も売れない。日本から輸出したミシンはアメリカでは売れない。そこで国内のミシンの生産制限をする。お前あまり作るなというようなことをやっておる。そんなへまをやっておる。またカーバイトに対する融資の問題にいたしましても、カーバイトに一番先にやらなければならぬかどうか、ほかの産業がまだもっとあるじゃないか、そういう方面に対してももう少し技術的な、科学技術の基礎に立った頭でそういうことをやっていかなければならぬのに、全部がいわゆる事務的にばかりさばかれておるから、とんでもないことになってしまうと、私はこう思うのです。私は技術官であったからかく申すのでなく、日本の将来を思い、日本は科学技術の振興に待たなければどうしても立っていけない。私はそれを思いますからして、何としてでもこの技術者の盛り上る気持を待ってそして立ち上らなければならない。この見地から私は激しく長官に再三食い下っておるわけであります。こういう見地からすると、通産省ばかりでなく、あるいは農林省といい、あるいは建設省といい、技術官でなければならぬ問題がたくさんあります。ところがそれをみな事務官に置きかえておる。こういうことは順次改めていかなければならないと私は思いますが、閣僚のお一人としまして長官はいかようにお考えになっていらっしゃるか。これを機会あるごとに改めていこうという御決意があるかどうか、私はその御真意を一つ承わりたい。
  43. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは各省によって軽重はありますけれども、省によれば技術者を今日よりも優遇していかなければならぬというふうな考えもあるのでありますが、特に今回できます科学技術庁におきましては、そういうふうな見解をもちまして十分技術者を活用する、技術者の燃えんとする意識を発揮せしめて、そうして技術の向上を期していきたい、こういう所存でございます。
  44. 河野謙三

    ○河野謙三君 ちょっと長官に簡単に一つ伺いたいのです。いただいた資料を私見ている間がなかったものですから、資料を見ればわかるのかもしれませんが、五カ年計画というのは、言葉をかえれば、日本産業構造に変更をきたそう、こういうことだと思うのです。五カ年後には工業、商業、農業というような関係においてどの程度に産業構造が変ってくるか。
  45. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 産業構造を根本的に変えるという意味でもないわけでありますが、五カ年後においては、日本生産はこれだけにせなければならぬ、総生産はこれだけにしなければならぬ、しからばその総生産をそれまでの数字にもっていくには、鉱工業においてはどれだけの生産をしなければならぬ、鉱工業を各産業に分けまして、これはこういうふうにやっていかなければならない、農業の生産はこの数字に持っていかなければならぬということにいたしまして、その終局の数字に合うように、その生産に合うように各産業を整備していくというのがこの目的なんです。従ってこれを根本的に変えるというわけでもございませんですが、進み方の目標を示して、その目標に沿うように産業基盤を強化し、配置を変えていきたい、こういうふうに考えております。
  46. 河野謙三

    ○河野謙三君 一つの努力目標ですから、その努力目標にもし達成した場合には、現在の工業、商業、農業の比率を五カ年後にはどういうふうに比率が変ってくるかということをお尋ねしているのですが、それは大体仮定した数字はないのですか。
  47. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体これは現在と比較いたしまして、五カ年後にはどういう比率でこれは増加していくかということになりますから、これではっきり進む道が、現在と五カ年後との数字がわかるわけでありますから、それを簡単に数字説明させていただきます。
  48. 河野謙三

    ○河野謙三君 その数字は資料で私あとでちょうだいいたしまして検討さしていただきますが、私は結局現在よりも工業に非常にウエイトがかかってくるのじゃないかと思うのです。その場合に、一つの条件として土地の問題があると思うのです。そこでその土地の間脳でも、特に私は速急に政府考えていただかなければならぬのは、すでにお考えになっておられると思いますが、現在の接収地というのはいずれも工業適地だと思うのです、大体において。飛行場、その他ありますけれども。各港の接収地、こういうものにつきまして年次計画を立てて、まあ相手方があるのですから、なかなかむずかしいのでしょうけれども、現在個々の自治体において接収解除の陳情等をしておるということにまかせずに、国全体として五カ年計画の裏づけとして、接収地は年次別にかくかくに一つ返還を求めるのだという一つの企画庁の希望図というようなものはないのですか。
  49. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまはまだそこまで五カ年計画の中には、接収地を計画的にこれを解除せしめていくというような数字はまだ出ておりません。
  50. 河野謙三

    ○河野謙三君 しからば長官はその必要はお認めになりませんか。私は実はこの問題は非常に大きな問題だと思うのです。あなたの方で幾ら五カ年計画、特に工業の五カ年計直を立てられても、立地条件を無視しては、工業というものはもう終戦後十年たちますが、あり得ないわけですね。現在ある工場でもこれは立地条件が不適当であるから、もっと立地条件の合った所に移そうという時代になってきた。そこで一番ぶっつかるのは、接収地の問題です。私の地元の県の何も陳情するわけじゃありませんが、地元だから比較的明るいから申します。たとえば横須賀に接収地が何百万坪ある。これはいずれも工業としての適地であります。ところがこれは地元と当該の大蔵省なり、また接収地の関係を扱っている役所へ陳情しても、らちがあかないわけです。こういう場合には、大きく政府の最高の責任において、まずアメリカに個々の問題は別として、大きくこの年次別接収地の解除の計画を立ててぶっつける。こういうことをしませんといけないと思うのですが、その必要はお認めになりませんかしら。
  51. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説は私ごもっともと存じます。今日工場を拡張するというところもあると思いますが、それもイージーな方法をとって都市の隣接地を使う、ところが隣接地は都市の工場として認められていない所が使われる、こういうふうな事実があります。これを見ましても、今日接収地であるところを計画的に持っていって折衝をするということは、私は非常にいいことだと思いまして、さっそくこれは実行に移したいと思います。
  52. 小野義夫

    ○小野義夫君 関連して、接収地ももちろんでありますが、私ども地方に行くというと必ずといっていいほど工場誘致の議論がありまして、工場を持ってこいという要請があるのです。それはだんだん調べるというと、そこは普通の工場を誘致しても、採算に合わないような場合が少くないのです。そこの土地のたとえば労働力にしても、これは京阪神に比べれば非常にまだ工業的に幼稚であるとか、あるいは土地が寒冷に過ぎるとか何とかあるのでありますけれども、結局この府県の非常に熱望しておるところの工場誘致、それには土地を提供してもいいし、場合によっては税金を、地方税を相当免除してもよい、その他いろいろな便宜をしてやるというような条件を出しておられるのにもかかわらず、これの実現が困難であるというのが実情であるのでありますから、今の同僚の質問、いわゆる接収地の問題も、もちろん大いにこれから努力してゆかねばならぬと思いますけれども、府県の財政の上から見ても、工場誘致をそれだけ熱望しているものに対して、一体政府はただこれを民間企業家の適しないという判断に一任してよいのか、それとも何とか国策的にこの問題を解決しなければならぬという意思があるかということについて一つ長官の御見解を承わりたいのですが。
  53. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは国家全体として考えて、開発部の方でいずれが工場適地であるか、何工業にはどこが適地であるかというふうなことは、総合的にいろいろ研究をいたしておるわけでありますが、これに対して政府は、じゃここへ何々工場を持ってゆこうということまでのことはまだ実行いたしておりませんが、大体工場の適地を検討いたしまして、特に工業用水なんというものが非常に今日重大な問題になってきておりますから、ただむやみに地下水を掘る結果、地盤が沈下するというような場合をおもんぱかりまして、そこには工業用水を引くとか、工業用水のない所には、工場を設立することは遠慮してもらう、そういうふうな大体の指導方針はとっているわけでありますが、それが現在の状況であります。
  54. 小野義夫

    ○小野義夫君 これは一つ根本的に一つ政府としてお考えを願いたいのは、今の問題に関連して実際言うたら、今埋め立てをやっている土地は各地に相当あります。これはその工場を誘致するのが目的というよりは、むしろ農地をふやそうという意味の農林省その他の計画に属するものが多くて、あれではほんとうの意味において日本工業を非常に盛んにしようというところの交通網にいたしましても、進んでここに鉄道をつけて、進んでここに港湾を作って工場の輸送費を節約するという方面の計画経済の基礎が、これは昨年も申し上げた通り、人口がふえるということだけは、もうこの五カ年計画の中の確定線であるけれどもその他の条件はおおむね失礼だけれども、これは年年五カ年計画を作らなければ、貿易でも昨年の例を見ても、すでにああいうふうに非常に狂いがくる。これはけっこうな狂いであるけれども、また反対の狂いもくるというのでありますから、なかなか長官の五カ年計画というものは、おれが絶対に責任を負うというお言葉は得られないと私は思うのですが、そのように社会の大勢が動く。そこで問題は何としてもそういうよりは、もっと工場計画するのについては、交通はどうする、あるいは埋め立てはどうする、あるいは中央に鉄道を通せば、そこに工場敷地が幾らできる。これは私の一つの夢でありますけれども、茨城県の霞浦などはりっぱに掘り切って、一万トン、五千トンの船を誘致するくらいな百年の大きな土木計画工場敷地を計画するのじゃなければ、今世界の動きを見るというと、土木の方から見ても、いろいろな建設から見ても、驚くべきことを共産国は主としてやっておるのに、日本は実際その日暮しのことしかやっていないので、これで世界産業国として立とうということが、私は根本的に日本の施策の上にないということを申し上げたいのです。その責任は私どももむろん分担しなくちゃならぬけれども、何とか一っ長官のように民間事情に非常に精通せられておって、そうして工業に対して非常に熱意のあられる方が御在職中に一応そういう単なる国土開発なんというぼんやりした、荒蕪地を耕してそこへ豆を植えるようなそういう幼稚な国土開発じゃなくて、いま少し工場根本的の施策についてこういうふうにやるのだ、交通、運搬、あるいは港湾、その他大きな道路等について一貫した一つの五カ年計画、十カ年計画というか、夢というか、そういう一つのプランを私はお作りになることをお願いしたいと思うのであります。いかがでございますか。
  55. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 総合的に開発するという点から見まして、さしあたり私どもが取り上げております問題といたしましては、たとえば東北地方のごとく年々東京の人口よりも増加率が多い。そうしてどうだというと、あすこに相当の天然資源がありながら、その資源を遠方に運んで加工する。たとえば八戸に行ってみると、あの附近でできるタイライトを八戸の埠頭まで運んで行ってそれを神戸、大阪に送って加工するということは間違いである。あすこで硫安工場を作るとか、硫酸工場を作るとかということにすれば土地の工場がふえる。これは人口配分という点から考えなければならぬ。あるいは砂鉄がある。砂鉄をやっていて、砂鉄の原料を遠方に送ってこれを加工するというよりも、地元において水もあれば電力もある、そういうようなものを利用する。そういうことにつきましては政府は全体的に考えまして、工場の配置ということについて相当強力に業者に呼びかけて、それに実行しやすいような方針をとりつつあるわけであります。今小野さんのおっしゃったように、非常な夢物語をやればこれはいろいろありますけれども、これは一々予算が伴わなければ、金がないとできないことでありますから、夢物語だけは私は今日は他日に譲りまして、一つ実行に移すということだけ申し上げておきます。
  56. 河野謙三

    ○河野謙三君 長官から大体御理解をいただいたと思いますが、今接収地の問題について私が考えることは、アメリカの出先の機関と民間と折衝しておってもらちがあかない。でありますから、日本政府アメリカの本国政府との間に、たとえば名古屋は三カ年の間にどうしてもらいたい、神戸はどうしてもらいたい、横浜はどうしてもらいたい、こういう大きな一つこちらの計画を向うにぶっけて、そうして大きく接収解除の手を打っていただかなければ、これは今の五カ年計画の裏づけになる工業計画というものは土地の問題から大体うまく進まない、こういうふうに考えるのであります。  もう一つ私はこの機会長官に、これは希望ですが、今しきりに工場誘致をやって、自治体が税源を求めておる。その裏づけになるところの農地がしきりにつぶされておる、こういうことなのです。これも必要によってやむを得ないと思いますけれども、われわれはいなかにおりますと、戦争中の軍の工場、いわゆる今の大蔵省の管財局所管の管財、これが一部の利権屋によって、一時使用の名においてつばをつけておるという。十年間何もしないで、またしても、たまに煙突から煙が出るという程度のことをしておって、これが全然利用しておらない。一方においてりっぱな農地がつぶされておる。こういう事実はこれは長官の大阪の方も同様だと思う。これについて単に官有地、管財の管轄の問題は、一大蔵省にまかさずに、大所高所から、一覧表を作って、官有地が有効に使われているか、それから全く遊んでおるか、これをまず御調査願って、遊んでおるところについては一時使用を取り消すとか、かりに払い下げをしましても、これについては適当の措置をとるとかいうことについて、農地に向っていろいろ突進する前に、まず遊んでおる官有地について百パーセント利用という道を私は開くべきである。こう思いますが、そういうことはすでにやっておいでになるかどうか。われわれの目にはそういうことは映らない、これはどうですか。
  57. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今の河野さんのお説は私はごもっともだと思います。特に戦争中使っておりました大きな工場をある利権屋が取って、つばをつけてほかに利用させない、こういうふうなことはすでにある事実もあったのであります。これを認めた私どもは、これを早く利用するということをやった事実もあるわけでありますから、そういう点につきましては、大蔵省ともよく打ち合せまして、実行に移っていきたいと存じております。ただいまの御趣旨は最も私は感謝いたします。
  58. 河野謙三

    ○河野謙三君 重ねて申すのではありませんけれども、何千万坪、何百万坪の各管財、四日市、岩国というところは世論の対象になってわれわれの目に映ってきますので、そうでない何千坪、二、三万坪というところは非常に多いのです。遊休な施設がそのままになっておる、また土地がそのまま草原になっておる。これは私は委員長にもお願いしますが、大蔵省から現在の官有地の中で払い下げをしたものと、一時使用したものと、それからまだ払い下げも一時使用も何もしていないというものについて、資料を求めていただきたいと思う。かように資料の要求をして下さい。  それから長官にもう一つ伺いたいのですが、官有地を百パーセント利用しても、なおかつ今後五カ年計画の裏づけとして農地というものは加速度を加えてつぶれていくと思う。この農地は五カ年後にはどのくらいつぶれるのですか。
  59. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今政府委員から数字を御説明申し上げます。
  60. 細田茂三郎

    政府委員細田茂三郎君) 大体予定しておりますのは、一年間に二万五千町歩程度の壊廃地ができる予定であります。
  61. 河野謙三

    ○河野謙三君 昨年度の実績をとると、どのくらいになりますか。
  62. 細田茂三郎

    政府委員細田茂三郎君) 農林統計によりますると、農地法で農地の壊廃の許可をいたしました実面積は、二十八年度が五千百八十町歩、それから二十九年度が五千六百四町歩でございます。
  63. 河野謙三

    ○河野謙三君 それでこれからの計画の二万五千町歩と非常に隔たりがありますが、これはどういうことですか。
  64. 細田茂三郎

    政府委員細田茂三郎君) これは実は農地でいわゆる正式な手続をとりまして、農地法の許可をとった数字でありまして、そのほかにやみ地といいますか、事実上つぶれておるけれども、手続がおくれておるというものが相当あるということになりまして、最近では二万五千町歩をもっと上回っておるのじゃないかと思います。実際のものは。
  65. 河野謙三

    ○河野謙三君 私が承知しておるのは大体三万町歩下らんということを聞いておるのです。かりに三万町歩が下らんということになりますと、一方において開墾、開拓等をやりまして、新しく農地を造成いたしましても、これらはいずれも既墾地と違いまして、非常に経済効果が薄いわけです。だからかりに三万町歩つぶして、三万町歩開墾いたしましてもこれは数字上はパーでありますが、実際食糧増産の効果からいけば二分の一にもならんわけです。そこで経済五カ年計画の遂行と食糧の増産五カ年計画、これと非常に私は問題が起ってくると思うのですが、そういう点は長官はどういうふうにお考えになりますか。
  66. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 食糧増産計画から申しますと、五カ年間に米麦で千三百万石、こういうことになっておりますが、これに対しては実際のつぶれ地の方とそれからそれに対する実際の増産というものにつきましては、政府委員から詳しく御説明を申し上げます。
  67. 大来佐武郎

    政府委員(大来佐武郎君) ただいま細田審議官が申し上げましたように、年に二万五千町歩の壊廃を見込みまして、それによる減産分を見込みまして、一方におきまして増産量を新たな開墾、あるいは耕法の改善等による増産量を見込みまして、その差し引きの計算が五年間で千三百万石という数字になっております。
  68. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は長官と議論すべきじゃないと思いますが、一応申し上げておきますが、今三万町歩の土地が、これは仮定ですけれども、つぶれていく、一方において開墾、干拓その他によって三万町歩毎年造成していくという計画はないはずです。またそんな予算の裏づけはないはずです。だから現につぶれていくものと作るものとの間の数序さえも追っつかないのです。そこへ持っていって、先ほど申し上げたようにこちらは既墾地である、片方は開墾地である、経済効果が全然違う。そこでしかも五カ年計画の食糧の増産計画は現在の食糧の生産量にさらにプラスする数字、これは全く何か原子力か何か知らんけれども、そういうものでも持ってきて土地に頼らずに技術的に食糧増産をやるということになれば別でありますけれども、そうでない限りこれはどうしても納得いかない。
  69. 細田茂三郎

    政府委員細田茂三郎君) 二十九年度を基準年度にしまして三十五年度までの六カ年間に千三百万石の米麦を増産するという計画に相なっておりますが、その千三百万石の増産量と申します中には、今河野先生が御指摘の壊廃地によりまして減産するもの、それから土地が老朽化しまして、減産をする分が年額八十万石ずつありまするから、四百八十万石というものはほっておけば減産する。それの補充分が入っているわけでございますから、純増産量としましてはその差額でありまする八百三十万石に相なるわけであります。この八百三十万石のうち、今御指摘のように大体三万町歩程度の実際のつぶれ地があると存じますが、この計画におきましてはその八百三十万石の増産計画のうち、新しく土地を造成いたしまして、そうして増産をする分もございまするし、それからそうでなくて従来の土地の土地改良をやることによって反当収量を増していくという考え方の、いわゆる土地改良事業によりまする増産分と、もう一つは御承知の耕種の改善部門におきまして、この計画は非常にウエイトを置いておりますので、そういう部面において増産をはかりますもの等、合計いたしまして今の千三百万石という計画に相なっております。
  70. 河野謙三

    ○河野謙三君 最後に私は、五カ年計画というものはぜひやってもらわなければいかんと思うんですが、これを遂行する場合に長官の権限の問題があると思う。計画長官手元で立てられ、各省の行政は各省の大臣がそれぞれやっておりまして、現在の形においてはこれは計画の裏づけというものはいつまでたってもできない。でありますから、一応政府が一体になって五カ年計画を立てました以上は、長官の五カ年計画の裏づけは、長官の勧告なり、指導によって、各省はそれぞれ予算の裏づけをさせるということにならなければならん。それを具体的に言うと、たとえば工業立地条件からいって、接収解除はどこまでやらなければならんかとか、官有地はどこまでこれを工業的に実際に利用させなければならないとか、農地はどういうふうにしなければいかんということにつきまして、長官のやはり発言権といいますか、長官の権限というものが、現在の形においてはこれは私はだめだと思うんですが、長官は将来この五カ年計画遂行上、自分の権限は現在のままではだめだということをお考えになっておるか、これに対しまして企画庁の長官が私が申し上げるように各省を叱咤勉励し、同時にこれに対して勧告もし、監督もするというぐらいのことの必要はお認めになりませんか。
  71. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この長期の計画を立てますのには、経済審議会というものがありまして、この中に各省が入りまして、そのほかに民間人たちの学識経験者が入って、それでこれを一生懸命検討するわけでありまして、もうすでに五カ年計画においても前後八十回会議がありました。各省の意見がそこでみんな現われておるわけでありますから、この計画はひとり経済企画庁が立てたんではなくて、総合的に各省がみんな寄って立てたものでありますから、これは当然各省とも異論があるわけではなく、これを実行に移す場合においても、これでいかなければならんものだと思いますが、ただいよいよ予算を実行することになりますと、その年の歳入というものが大きな問題になりまして、歳入の結果、それによって分配するということにつきましては、多少の意見の相違があるだろうと思いますが、それにつきましてもやはりその年の予算を編成するにつきましては、五カ年計画というものが基礎になって立っていくというふうに私は存じておりますから、ただいまの勧告権というものと、それから各省から取ります材料、これを取るだけの権利、この二つをもってまず一年は実行いたしておるわけでございますが、現在のところやはりそんなにむずかしい問題じゃないだろうと、現在の状態でよく話し合いで話がついていけるだろうと、こう存じております。
  72. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は、答弁は要りません。ただ最後に申し上げておきますが、予算の関係はなかな長官の指導通りにはいかんでしょうけれども、しかしあまりに五カ年計画と距離の遠いものが出た場合には、少し私は直さなければいかんと思うのですが、たとえば本年度の土地改良の予算は一体どうなっておるか、減らしているじゃありませんか。今の大蔵省の管財の土地もやればできることでありますけれども、大蔵省はやらないじゃありませんか。接改解除の問題もアメリカと私はほんとうにそういう折衝をしていないと思う。こういうものは、もう少し長官に指導力があり、もう少し長官に権限というものがあったら——長官がお気づきになっておっても、今の長官の権限においてはできない形になっておる。これを長官がお気づきになっておることは長官の力によってできるようにしたら、もう少し五カ年計画というものは権威のあるものになる、かように私は思うのですね。せっかく長官の御奮発を私は希望いたしまして質問を終ります。
  73. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいまの河野謙三君の発言のうち、私に対する大蔵省の官有地に関する資料につきましては、御要求の通り処置いたします。
  74. 藤田進

    ○藤田進君 経済自立五カ年計画について長官にお伺いいたしたいと思うのです。この決定が十二月二十三日に閣議でなされて、私どもその直後拝見いたしました。ところで、今の鳩山内閣が、その政策としてとり行われるところの重大なやはり計画であろうと思っておりますが、ただ、いわゆるこの計画計画経済の範疇なのか、やはり自由主義経済という従来の観念の中のものなのか、まずこれについてお伺いいたしたい。
  75. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは計画経済というものでなくて、経済計画性を持たす、計画を持って自由主義の経済のもとにこれを進行していきたいと存ずる次第でありまして、現在の日本といたしましては、いろいろな多数の天然資源があり、これをもって自給自足の経済を立てるということになれば、計画経済を実行していく上においてもきわめて容易でありますけれども、御承知日本経済が大体輸出に依存しなければならぬという、こういうところがありますから、これは海外の情勢によって非常に左右されるという点があるのであります。そういう点から考えまして、今の計画経済を立てるというのでなくして、経済計画性を持たしていくということの建前で進めていきたいと思います。
  76. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、政府としては、この計画並びにこれが裏づけとなる諸般の数字、これらはあるけれども、自由主義経済の建前をとるのであるから、別に今日の各企業においては、それぞれの頭でそれぞその計画がなされて、損益を考慮しつつ、産業がやはり運営せられていくということになるだろうと思うのですね。政府は期待せられていいと思うのですよ。およそ経済計画性を持たせるということは、ここにかなり詳しく書かれ、これが計画として発表せられるまでには相当なやはり衆知を集められたと言われていいわけです。これが単に各日本産業経営者に対して、あるいは地方自治団体の長、議会に対して訓辞的なものを意味しているということにしかとれないのですね。単に行政的な指導で、これだけの経済五カ年計画なるものが実行できるのかどうか。わずか一カ年間に国の予算、これも一種の一カ年間に関する限りは計画だと思う。これでさえ補正予算を組み、あるいは貿易収支、これらについても、予想し得ざる今回は好転の見込み違いだったのですが、わずか一年でそうなんだから、ましてや五年間という長期にわたる計画がかなり数字的にあげられておるが、これが今いわれる自由主義経済で、これは単に訓辞的な一つ目標、目じるしというもので一体実行が可能なのかどうか、私は不可能だろうと思うのです。各産業においては、それぞれの産業利益を度外視して、国のためではあろうけれども貿易のためにはということはこれは期待しがたい、それが自由主義経済だと思うのですね、やはり。損益を度外視して、ある産業において国が犠牲を払い、ある産業においては相当利益を上げるから、これをある程プールしてというところまでいけばいいが、まあそこまでいかないにしても、もう少し予算、財政投融資の裏づけとか、そしてこれには所要の立法を裏づけとして持つとか、こういうことでなかったならば、これは全く文章にすぎない、期待せられている単に訓辞的なものにすぎないというように思うわけですが、それが実際にどういうようにして行い得るか、お伺いいたしたい。たとえばかような立法を用意していると、私今各省庁にわたる一応今国会に出されんとするものは全部ここに持っております。法案をですね。この中にはおよそこの五カ年計画は長期にわたって多少の内外の変動その他によって狂いはあろうと思います。けれども大筋としてこれを遂行するというその用意は、これはもう立法その他から見てもないような気がいたすわけです。その点をお伺いいたしたい。
  77. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説の通りでございますが、ただいま政府がこの五カ年計画を遂行いたします上におきまして持っております政府の力というものは、財政投融資面においてこの政府方針を示すということと、もう一つは為替を管理することによって輸出入を統制する、こういった意味の力しか持っておりませんが、私はこれでもよく国民諸君の御了解を得て支持を得れば、ここれは逐次この計画に近寄っていけると、こう思っておるわけなのでございまして、何もかも法律をもって何もかも力をもってこれを押えていくと、こういうふうな考え方はむしろ現在のところとらない方針でありますが、どうしてもこれは非常な間違いが起って、どうしてもいけないというときになれば、そのときの政策としてある程度の力を持たす必要もあるかと存じますが、ただいまのところはそんな勘定はせずに、できるだけ自由主義のもとに、また個人の創意工夫を生かして、そうして国民諸君の御支持を得て実行に移していけば、大体この計画は実行に移せるだろうと思っておりますが、何しろ計画そのものにつきましても、先ほど申し上げました通りに、大体海外依存が多いのであります。今日、昨年の今ごろ輸出がこんなにふえるというふうなことも想像もしなかったし、その上にまたあの米がこんなにたくさん豊作になるというふうなことも想像しなかった。こういう事情でありますから、従いましてそういう先のわからないものをもって、政府の力をもって、押えてやっていくというところには、かえって間違いが起るだろうと存じますが、といって、全然無計画に無方針でやるということは、これは間違いである。少くとも五カ年後における日本経済はかくあるべきだと、かくかくすることによって増加する人口の就業機会も与えられるのだという、この目安だけは間違いなくこれを掲げてもっていきたい、こういうふうに存ずる次第であります。
  78. 藤田進

    ○藤田進君 ところがこの間通産大臣に対して同僚委員の方からも質問があったわけですが、当面している鉄鋼だけ取り上げてみても、これはやはり価格を上げないとすれば、なかなか市場に姿を現わしてこない。ことに中小企業というものはこの鉄鋼にありつけない。しかし自由主義経済だからということでおやりになるというと、いつまでたってもそれが打開できない、こういうこと、あるいはかっての重油等液体燃料についても、行政指導でうまくやると、石炭と液体燃料との関係においてもうまくいかなかった、いかないから立法を要請されてきた。ですから、だんだんとこの計画経済というものを実際に移してみるというと、そこに初めて行き当って、そうして立法を必要とし、かなりのコントロールをする必要がある。これもよその例を見ても、今言われたような自由主義経済というもので、たた旗じるしとして五カ年計画というものはこういうふうなものだということを示すだけでうまくいかなかった。吉田内閣においても過去少くとも十年に近い間、五年じゃないですよ。十年に近い間というものはこれは経済計画性とか、そういうことは云々ということを、吉田さんはああいう御承知のように御答弁になったけれども、しかしある程度先の見通しは御承知のように電力にしても石炭計画にしても、それぞれの産業別についてはわれわれ委員会ではかなり長期的な見通しというものもやはりあったのですね。ただ、その場合一つの印刷物になって各方面のものが載ってきておりますけれども、これがただ違うだけであります。しかしそれはうまくいかなかった。ここに書いてある産業基盤の強化という、そうして貿易の振興というような問題は、これはどこが基点になるかということは同時的に解決しなければならない。まず産業基盤を強化しておいてしかる後に貿易の振興をして、しかる後に——というようなわけには、今日忽ちにはなかなかいかないんですね。ところが産業の合理的な再編成を推進するというので、これはかなり重大な問題が含まれておるんですね、まじめにこれが実施せられるとすれば。そのやり方が自由主義経済の中でということでおやりになると、これこそ非常な悲惨な結果になりはしないか。それは財政投融資その他の補助等等の施策によってもたもたしているものはつぶす。自然にそこに弱肉強食で強いものが残って再編成がなされるんだという考え方じゃないかとこれは思うんです。どうなんですか、そういう点を今後具体的にどういうふうに……。今申し上げた合理的な産業界の再編成だと思うんですが、第一の産業基盤の強化というところの僕は骨になるだろうと思うんです。これはどのような手順でまた具体的方法で行わんとせられるのかお尋ねいたします。
  79. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は産業基盤を強化するために合理化をしなければならない、合理化を自由にやれば、弱肉強食となって悲惨な状態になる、こういう御質問でございますけれども、私はそうせんようにするために、やっぱり経済計画性を持たすわけでありまして、やっぱりこれは各自の理解ある御了解のもとにやっていかなければならない。むしろドラスティックな政府の力をもってそれを無理をしてやるよりも、もっと自由にやった方が円満に、そうしてスムースに、そうして所期の目的を達し得るだろうと私はそう考えております。
  80. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと産業の合理的な再編成、これは確かに私はそうだと思うんですよ。ここに書いてある案がまだはっきりいたしませんから、直ちに賛成するわけには参りませんが、いろいろの産業を見まして、肥料を見ても、八戸に行って調べてみると、名古屋で生産しているものが八戸に輸送されたり、八戸の肥料が名古屋方面に輸送されたり、これを同時的にこれを見ますと、輸送力の非常に乏しい現在、まことにむだな一例ですが、そういうむだが確かにある、これは生産においても、二重投資だとか、過剰投資だとか、昨日来また明日もですが、自動車産業を見ましても、あるいはその他の基幹産業だけ取り上げても、石炭を取り上げても、御承知通り新しい法律をもって合理化をするという状態になっておりますね。それぞれ再編成をし、そしてその運営についても今言われたような能率の増進、コストの切り下げ、一方しかも完全雇用という、こういう要請がここにあるわけです。その合理的な再編成というものはどういうやり方でおやりになるわけですか。産業基盤の強化の大前提に私はなろうと思う。皆さんの協力を得るといっても、どうも過剰投資であるし、おれのうちで工場をつぶそう、政府から何の補助も要請いたしません、どこそこに協力いたしましょうという産業界はなかろうと思います。今の状態では損益を無視して、また株主を無視して会社の運営はありませんし、そうなるとこの再編成というものがどういう形で行われるだろうか、また私はこれなくしてはとうてい問題にならないということは再三申し上げた通りです。ことにインドを見ても、パキスタンを見ても、あるいは今度賠償のビルマあるいはフィリピン等御承知通りどんどん現地開発を進めてプラント輸出を進めておりますが、現地民がどんどん現地の物を送るようになってきつつあるんですね。これはお隣の中国が六億あるといいながら、これもどんどん産業開発を進めている。今五カ年計画はうまくいきそうにないと私は思うのですが、ぐずぐずしているうちに、とうてい太刀打ちもできなければ、これは島に閉じ込められてしまうような気がする。今のうちに早く初年度、三十一年度、あるいは二年度あたりに、前半、後半に分けられているが、この点はどこからどこまでが前半で、どこからどこまでが後半か私よくわかりませんが、こういう点、特に産業界の再編成というか、資本の系列的な整理というか、特に大資本集中的な傾向に流れておりますが、中小産業は手をあげつつあるのです。これはどうなさろうとするのか。これは文書でなしに聞かしていただきたい。
  81. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 実際問題といたしますると、たとえば繊維工業のごときも、つまり天然繊維だけ用います工場につきましては逐次整理統合いたしまして、少数のものはこれを強化していきたい。それで不要のものはこれを取りやめたい。また化学繊維におきましても、このままおいておけば、むやみに必要以上の金融投資をするだろう。そういう化学繊維につきましては、同業者を呼び集めましてこれに対する対策をよく協議し合おう。また今日輸出産業として今後政府が一番方を注いでいきたいと思っておりまする機械工業のごときにおきましては、また中小工業におきましても、悪い機械を持っております人たちのこれを買い占めてしまって、そうしていい機械にかえるような金融の方針を講じていきたいという工合に、投資関係というふうなものにつきましては、十分政府は調査を基礎といたしまして、そうして同業者を協議の上導いていきたい、こういう考えで進んでいきたいと思っております。それじゃなまぬるいじゃないか、もっと力を用いてやれ、こういうふうな考えもありますけれども、ただいまのところ、そこまで進んでやらなくてもこれで実行できる、こういうふうに考えておりますわけであります。
  82. 藤田進

    ○藤田進君 今具体的に例を聞いたので、抽象論について明らかにしていただけば、たぶん明らかになると思うのですが、かりに繊維産業にしても、化繊等については現状かなり捜査せられていると思います。設備もこれは今言われたように過剰投資の感はなきにしもあらずです。国内消費もこれに切りかえたいということで比率が出されておりますね。ところがその業者を呼んで君のところは操短をしろ、君のところはフル運転をしろと言ってみても、これはやはり当該産業には死活問題であり、あるいは鳩山内閣高碕さんが産業界の重鎮であろうとも、そう簡単に操短をしようというわけにはいかないだろう。その点は直ちに私は疑問を持つのは、それでかけ声の協力をお願いせられて、協力しましょうということになるだろうかという気がいたします。業界の必要性においても操短をいたします。あるいは設備も何かに転換もしましょう。しかし、ここに裏づけとなる綿業関係でいえば、外資の割当の問題とか、そういう形で操作をするということになれば、いずれもここには長期的な話し合いも必要でしょうし、計画も必要なんですね。それが自由主義経済の形でやっていこうと言われるのですが、さような財界、産業界というのはすなおに損益を度外視してやるものだろうか、どうだろうか。今までは、少くとも長い吉田内閣の時代から今日鳩山内閣に至るまでなし得なかったのですね。何かのショックに鉄鋼は上ってしまう、重油は上ってしまう、あるいはまたその他砂糖だって、一々申し上げませんが、うまくいかないのですね。どういう物価体系を策定してみても、ここに自由主義経済という放漫というか放任主義経済というか、そういうそしりも実はあったが、そういう従来の考え方ではうまくいかない。それが鳩山内閣において初めて長期計画を立てるというかけ声、これにかなり国民は期待していると思うのです。それが今明らかになったものを見ると、従来の自由主義経済と変らないで、ただお願いをするのだということでは、綿業界においても、繊維関係においても、それがうまくいくだろうかと思う。いろいろとおっしゃるから、これはまあ今さら仕方ありませんけれども、けっこうだと思いますけれども、もう少し私どもが了解のいくように、通産委員会でわれわれ議論している問題は、何か財政投融資、あるいは今度の財政投融資を見ましても、多くの場合市銀に肩がわりせられて、これも御承知通り金利が下ったといっても、犠牲を払って合理化はできない状況にある。それが各省の予算をこう見るというと、ことに通産関係八十億でしたかを見ても、中小企業の振興その他ずっとこうありますが、とうていこの五カ年計画の今言われる経済再建のてこ入れになるとか、自立のてこ入れになるということは考えられない状態にある。一つ率直にこの点を、われわれが協力できる点は協力したいと思っております。これはもう超党派で経済自立に邁進していかなければ、日本経済は置き去りになると思います。ですから、安心のできる具体的内容をお伺いしたいのであります。
  83. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この問題は緩急相応じていくべきもので、政府といたしましても、これはどうしてもできない、当業者の自由意思だけでは目的を達成できないというときには、相当やはり法律も出していきたいと、こういう考えでありまして、今度の繊維関係におきましても、これに対する立法を考えている、こういうふうなわけでありまして、必ずしもそれは、政府計画を立てて、これを全然業者が無視して実行していったときに、手をつかねて待っているということは、とらないつもりでありまして、できるだけ法律の力によらずに、各業者の協力を待ちますが、どうしてもできないということになれば、そのときにはまた方法を講じたいと存じておりまして、実行に移したいと思っておりますから、御協力を願いたいと思います。
  84. 藤田進

    ○藤田進君 もとに返りますが、これが十二月の二十三日に閣議決定した以上は、これは同時に、こまかい数字は別としても、予算の裏づけ、ことに長期の見通しに立った予算の裏づけ、その初年度、三十一年度予算ということがこの計画とうらはらになってやはりきまらなきゃならぬと思うんです。ところが、非常に予算の編成もおくれてきたわけですが、その経過をずっと見ておりますというと、各省それぞれぶんどりといいますか、先ほど河野さんの方からも指摘せられたように、あなたがやはりこれを責任をもって計画を立てられ、これが閣議了承になったとするならば、予算編成の舞台の裏表においても、あなたの役割というものはかなり重要でなければならぬ。二十三日にこれがきまったけれども、その後年が明けてかように予算がきまった。そのきまった過程が、今申し上げるように一兆数百億は組んでおる。かりにその縮図として、これにある程度の比例した予算であれば別として、かなり各省大臣も積極的になられて、原子力関係は一生懸命原子力、防衛庁は九〇%、百三十億でしたか増額修正を出すというようなことで、私ども見たところ、この計画と今後のこの予算説明等から見て、まあ多少頭の中には閣僚の方もあったかもしらぬけれども、予算は予算、計画計画という感が強いのであります。この調節はどのように企画庁長官としておとりになったか、お伺いいたします。
  85. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは計画を立てますときには、各省とはすでに打ち合せて、各省の意見で立てておるわけでありまして、いよいよこの予算を組みますときになりますと、予算は歳入の関係からその数字を一々きめるときにおきましては、各省の意見をよく検討し、また根本におきまして五カ年計画というものから割り出した場合にはこうしなければならぬという強力な主張をいたしまして、大蔵省とも十分折衝いたしました結果、今日の三十一年度の予算が組まれたわけでありますから、決して私どもは、計画計画だ、予算は予算で別だと、こういうふうな感じでは全然進んでおりません。さよう御承知願います。
  86. 藤田進

    ○藤田進君 これは事実が証明することで、最終的には党幹部の方と話をつけられたようでありましたが、必ずしも私はこれが裏づけになっているとは思いません。これはまあ今後具体的に質疑を通じて明らかになると思います。  そこで他の委員質問もあろうかと思いますから、その問題はそれといたしまして、今必要に応じて自後逐次立法の措置をしたいと、こういうお説でありましたけれども、御承知通り、これが初年度、三十一年度は少くとも四月から三月までだろうと思う。ところが、この国会も五月十七日には一応会期が終了することになる。そのあとは、特に今年は参議院の選挙もありますし、例年の通りなかなか臨時国会等も容易に召集できない状況にあるように思う。こうなってきますと、初年度に関する限りは、今言われたような立法措置をと言われても、ここ早晩、少くとも今日一ぱいかおそくとも三月早早に必要な立法措置があるとすればお出しにならなければ間に合わないと思う。初年度についてはどうお考えでしょうか、まずこの一年の見通しについてですね。これだけの計画を初年度、三十一年度実施されようとすると、立法措置については初年度は考えないと言い切れるのかどうか。考えるとすればここ当分出すのか出さぬのか。ついでに経済企画庁として本委員会関係の予定せられておる法案その他案件があれば、それもお出しいただきたい。これは通産省についてはすでにお聞きいたしました。
  87. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは通産大臣から御説明申し上げただろうと存じますが、本年度におきましては、繊維関係と機械工業関係につきまして、経済計画を実行するために必要なる法案を通産関係から提出することに相なっておりまするが、経済企画庁といたしますれば、経済企画庁の法案は今回は提出することに相なっておりませんですから、御了承願いたいと思います。ただし小さいものといたしましては、国土総合開発の調査をいたしますので、これについての法案を出します。国土調査法の一部改正法案であります。従前国土の開発が各省てんでになっておりますものを、総合的にこれを見まして、国土調査法の一部を改正いたしたいと存じます。それから電源開発の方でこれの促進法を今度出したいと思っておりますが、これは政府補償等が、民間の資金を流す上において、外資だけは政府が保証することになっておりましたけれども、今後電源開発等の国家的に必要な施設に対しては民間資金を持っていきたい、そういう場合には政府はこれを保証し得るようにしたいというようなことであります。それで電源開発法の一部を改正したいということになっております。
  88. 藤田進

    ○藤田進君 何か当初は出す法案がなかったのが、瞬間に二案出てきたのでありますが、これはまあお忘れになっておったのだろうと思いますが、大体企画庁としては予想するで限りではこの二案件だけになりますか、ほかにはありませんか。もう二月でありますから……。
  89. 川瀬健治

    説明員(川瀬健治君) 私からかわってお答えいたしますが、ただいま考えられておりますのはこの二件だけであります。そのほかにあるいは、現在行政審議会の方でいろいろ機構の問題を論議しておりますが、その関連において設置法の関係が出るかもしれませんけれども、これは今のところ予定しておりません。従いまして、ただいま大臣が申し上げました二件だけが一応の予定になっております。
  90. 小野義夫

    ○小野義夫君 ちょっと一つ伺いたいのですが、五カ年計画日本の林業の問題、これは農林省に林野庁もあるのでありますけれども、今地方の振興問題に関連いたしまして、だいぶ植林が浸透いたしておりまするけれども、まだなかなか各所に官有地、あるいは県有地等が相当にたくさんありまして、これは植林というものが一体どういうふうに五カ年計画では計画を立てておりますが。表をみればあるでしょうけれども、ちょっと大体の計画をお伺いいたしたいと思います。
  91. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 林業に関係いたしましては、どうも過伐量が非常に多くあります。これを逐次低下していきたいという方針をとっております。それと同時に林道を千分開きまして、そうして森林資源の開発をすると同時に、過伐したあとに対してはよく新しい植林をするという方針でやっていきたい。また木材を合理化する木材の使用を合理化するということに重点を置いて進んでいきたい。詳細の数字につきましては政府委員の方から説明をいたします。
  92. 細田茂三郎

    政府委員細田茂三郎君) 今大臣から申し上げましたのを数字的に申し上げますと、用材につきましては、二十九年度を一〇〇といたしまして、三十五年には一一三・三一%にまで伸ばしていきたい。それから薪炭材につきましては一〇一・三〇%程度、大体現状程度にとどめたい、総合いたしまして約一〇%程度生産を伸ばすという程度でやって参りたい。そこで結局過伐度の問題になるわけでございますが、現在の過伐度は大体二九〇−一〇〇程度が合理的であるわけでありますが、それが二九〇、あるいは三〇〇近いというような、非常な過伐になっておりますので、そこで今大臣が申しましたように、奥地林の開発というようなことによりますと同時に、造林ということにつきましてさらに力を入れまして、そうしてこの過伐度を大体二十九年度程度に押えたい、こういう計画に相なっております。
  93. 小野義夫

    ○小野義夫君 この際企画庁の長官にお願いしたいのは、私ども地方の市町村の財政問題とからんで、植林事業でありますが、今林野庁というものが存在して特殊行政をやっているのですけれども、これが非常に、林野庁のやり方を悪く言うのではありませんけれども、なかなか自分の手が届かんので、いたずらにやはり収入をふやすというような、商売的な見地の方に多く働いてきて、国家百年の大計という方は、むしろ閑却せられているおそれがあるのですが、そこでいわゆる予算の上においても、収入に比例してというような意味になっているので、私どもは各市町村は原則として、自分の裏山なんというようなことは、今度はもうあり得ないのだから、たとえそれが五里十里の奥山であっても、その町村に所属するいわゆる町村有の植林を、政府と、それから自治体が相待って、そうしてやるならば、三十年後の地方財政は、学校を作る、その他の公共事業のような金は、輪伐制によってほとんどこれがまかなえるということが明々白白なんであります。そこでどうしてもこれは今いろいろ払い下げ運動に終始しておるけれども、その中には悪質の払い下げ運動もあるようでありますが、そうでなくて、払い下げを要望せんでも、それをある程度市町村に割つけるような、そうしてそこに植林を、ある程度の輪伐制をおきまして、そうしてやったならば、私はある年限がたちますれば、ちょうどこれは非常に日本の山の、林業の収入というものは莫大なものなんだから、もう政府はあえて林野庁を置いて、みずから持つという時代はすでに過ぎ去っているので、これを市町村化するというのが、私は地方財政とにらみ合せて、また林業政策とにらみ合せても、速力が早まるのではないかという考えを持っているので、この点一つ企画庁においても、特に一つ経済企画と関連いたしまして御研究をわずらわしたいことをお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  94. 阿具根登

    ○阿具根登君 一つだけ残っておりましたから御質問いたしますが、経済五カ年計画をまあ今御説明願って質問を続けておるのですが、これは三十一年度の一年分の計画であって、この前の御説明のときに、五年間の年次別の計画は示されないという、こういうお答えがあったと思いますが、五年間でこれだけの計画をやられるならば、各年次の計画があるものと思いますが、長官からその点を御説明願いたいと思います。
  95. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 五カ年後の目標をここに書いて、これが経済自立五カ年計画と、こうなっておりますが、これで各年度別にこれを分けますというと、そうすると昨年はそれはいろいろ実行してみたのでありますが、実際問題といたしまして、不安定なる数字を実行可能なものに持って行ってしまった結果、あやまちを起すことがはなはだ多くないだろうかということの懸念をいたしておるわけでありまして、五年先の目標というものは変えることはできません。これはもう不動なものといたしますが、しかしその五年の計画は、あるいはものによれば三年に完成し得るというようなものもあるかと存じます。それはこの日本経済根本におきまして海外依存の度が多いわけでありまして、海外の景気いかんによって動揺する、こういう浮動性のあるものでありまして、一年間の経験の結果、個々に各年度ごとにこれを分けるということは、かえって誤まりを起すだろう、こう存じまして、これは立ててはいけない、こういう方針で進んでおります。
  96. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう答弁をこの前もお聞きしたのですが、一年々々ごとの計画は立てられずにおいて、どういう世界経済の変化があるかもわからないから、変動をきたすおそれがある、そういうことなら、五年後の計画は立てられっこはありません。そういう一年先、二年先、三年先の計画が立てられずに、五年後の計画が立てられるのはおかしい。しかも非常に不親切なことには、たとえば住宅の問題にいたしましても、今二百八十四万戸足らないと言われている。三十一年度は六カ年計画の一環として、四十二万戸が計画されたと思う。じゃ四十二万戸の計画の家がどれだけできたのか、また、ことしは四十三万戸と言われているのですね。これに対してどれだけの自信と対策があるのか。それから実際その二百八十四万戸のほかに老朽化して使用にたえないようなものが百八万戸あるというようなことも、市販には出しておられる。ところがわれわれの質問には答えられないような口実じゃありませんか。これをもってするならば、たとえば失業者の問題は、三十年度は六十七万人である。これを三十一年度で六十五万人にしたい、こういうことを言われるならば、住宅の問題とにらみ合せていかれるならば、終局の目的が四十五万人と言っておられますけれども、一番景気のよかったとき、農業も豊作であったし、世界経済も好況であったときに、わずか三万人しか伸びていない。で三十一年度はそれよりも下るだろうと言います。で二万人組んでおられるとするならば、このままでいっても二万人しか減らない。あるいはそれ以上に、今度は労働力人口がふえてくるようになってくる。そういうふうにするならば、五カ年計画というものは何を目標にされて、何を資料にしてやっていらっしゃるか、われわれにはわからないようになってくるのじゃありませんか。五カ年間の計画をこれだけにされるならば、それだけの資料を寄せておられるはずであります。そうするならばその資料をわれわれに渡してもらいたい、できますか。
  97. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 五年後の目標につきましては、動かすべからざるものはあるわけなんです。たとえば人口の増とか、それから就労者の増というものは動かすべからざるものでありまして、それに対して失業者の数を四十五万人にとどめたいということにすれば、どれだけの生産をしなければならない、どれだけの輸出をしなければならないということはおのずからそれで出るわけでありますから、その数字がいわゆる目標になっておりますから、これはここに目標を変えることはできない、こういうわけであります。これに近寄るために毎年やってゆくわけであります。本年のごときは昨年の実績によりましてここに輸出というものが非常に増加しております。去年立てました輸出の予定からゆけば、三十一年度のごときは二十二億ドルという大きな数字になっていないわけであります。それで去年の立てた数字を基にして三十一年度を立てるということになれば、これは予定を下回るようなことになってくれば、かえって計画を阻害するというふうなことになりますから、これは非常に危険性があるという意味なんでございます。五カ年後の目標というものはこれはもう間違いないものを出しておるわけであります。これに近寄るように進んでゆきたい、こういうのが方針なんであります。
  98. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはわかりますが、それでは、かりにそれが動いた場合、五カ年後の目標だけは動かない、そうした場合に五カ年後の目標を達成するということは不可能になってくるわけです。それを一年後はぜひこれだけやりたい、二年後ではこれぐらいやりたい、三年後はこれくらいにならなければできないという数字があって初めて五カ年計画というものは立つわけであります。  私が最初不親切と言ったのは、たとえば住宅の問題にいたしましても五カ年間に二百三十二万戸を建てるという計画はちゃんと立てておられるわけです。そうでしょう。しかも老朽した住宅が百八万戸からできるということもちゃんとこういうことまで立ておられるわけです。そうするならば失業者の問題になってきたら、何にも立てておられない、そうでしょう。何かほかに資料があるならばいただきたいと思うのです。そうすれば、ある一部には一応の目的を持っておられる、いわゆる住宅問題についてはこの住宅問題を解消するには十年かかる、十年かかるけれども、五カ年の間に二百三十二万戸だけは建てたい、こういうことを言っておられる、この数字だけ見てゆけば、また皆さん計画された通りゆけば前年度で四十二万戸建っておるはずになっておるわけです。今年度で四十二万戸建て、そうすれば来年から二十二万戸建ててゆけばそういうようなことになってくる、それだけ見ただけでも、われわれはそれでは去年もことしも四十万戸かの計画を立てておられて、そして第三年度から二十万戸に減らさなければならないかということでもっともっと質問はあるわけです。そういう数字も出していただきたい。それから失業者の問題は当初から言っておるように六十五万人から四十五万人に二十万人減らす計画はどこにあるか。それも私は市中を探してみたけれども、市販にも出ておらない、しかし皆さんは資料を持っておられるはずなんです。そういう資料をそれじゃ渡していただきたい、それはできますか。
  99. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これはただいま申し上げました通り、この資料を公表していろいろなことを出すということは、かえって誤解を招くもとである。間違いが起りやすいという考えでございまして、三十五年に対する数字というものは基礎があるわけでありますから、ものによればこれを年次別に分けるということもできますけれども根本において大きな狂いのくるべき心配のあるものは輸出問題であります。これが大きな狂いをきたせば、数字の変更をしなければならぬ、そうすれば新たにあるいはふやす、少くするという点もあるでしょうが、しかし最終の三十五年度の目標には変りないという方針で進んでゆきたいと思います。輸出入の変更に応じるというようなことからゆくと、いろいろな数字が変りがくるわけでありますから、これを示すということは間違いが起るもとだと存じております。
  100. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は長官の言われることはわかるのです。しかし五年後の計画が立っておる。そうして一年後の計画が立っておる。中の計画が立てられないということは、五年計画ではないということなんです。それは一年々々の計画なんです。五年後にこうしたいという、しかもその第一歩として一年後にはこうなること、あとの中間の計画がなくて、どうして無鉄砲に五年計画と言われるか、それは人間の作った計画だから狂いはあると私は思うのです。狂いはあると思うけれども、五年間にこうなればここまではゆくのだという計画がなくては、五年計画と言えないと思う。だから五年計画のその資料を渡して下さいというのです。
  101. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この五年計画は五年後における人口の数、これに対する雇用関係をふやすということと、それから経済自立をするということのこの数字をもちまして、それによって作った五カ年計画であり、それが目標であります。ただいまのおっしゃったことは積み上げ式でやってゆかなければならない。この積み上げということは現状に即した、あるいは過去の実績に即したものをもってできるだけそれに近いものをよってゆかなければここに間違いが起るだろう。一年先のものはここで大体の日にちが経過するに従って新しい数字ができるわけでありますけれども、ここにその間の、五年の間を年次別にやるということになると、そこの間違いが起るだろうと思って、その心配で発表しないわけなのであります。
  102. 阿具根登

    ○阿具根登君 長官のその言われる心配はわかると僕は言うのです。しかしそれでは失業の問題についてそんならこの二カ年間、これは六カ年計画でした。二カ年の間には五万人減るという計算なんです。そうするとあとの方のは、計画では四十五万人に減るためには二十万減らさなければいかぬ、実際の実績から考えてみても、五万人減らして十五万人、算術計算でゆけばあとの四年間に十五万人減るということになるのです。ところが長官がおっしゃるように、ふくれたり縮んだりするからどうにもならないというなら、見通しとしてこの一年間やったならば、この次はどのくらい鉱工業が伸びるのだ、貿易は少くともこのくらい伸びるはずだ、そうすれば失業者は今年二万人だったけれども来年は四万人になります。あるいはこれが非常に来年は伸びない、だから一万人になるというならその次は六万人から七万人にもふやさなければいかぬようになってくる、その次もふやさなければいかぬというようなことになってくるから、一応平穏なところで線は引いておられると思う。その間にどういう経済の変化があってそういうことができないようになるかもしれません。しかしそれは先のことでわからないのです。五年後の見通しを持って、三年後の見通しがないということは成り立たないと私は思う。
  103. 大来佐武郎

    政府委員(大来佐武郎君) お答え申し上げます。実は計画の立て方の方法論の問題なのでございますが、今度のやり方は五年後の人口推算をしまして、それから生産年齢人口、労働力率を掛ける、労働人口二人当りの生産を掛けて経済の規模の全体を出しましたので、今御質問の点は毎年々々積み上げて五年後がこうなっておるはずだ、それでは毎年の資料があるはずだという御質問なんでございますが、実はこの方法論が五年後の人口から推算しておりまして、その際に失業をたとえば四十五万という程度にする。そうすれば何人働かなければならないのであるという数字が出まして、それに一人当りの生産高を掛けて日本経済の大きさを出す、そうしますとその大きさの経済に達するためには、工業でどのくらいの規模が必要だ、農業生産もこのくらいやらなければならぬ、またこの必要な物資をまかなうための輸入、それの裏づけとしての輸出もこの程度しなければならない。いわば演繹的な形で計画が組み立てられておりますので、実際のところ毎年の年次別計算をやっておりません。三十一年の計画というのはすでに提出いたしましたように、これは確実なデータが三十年度について大体出ておりますので、それには提出してございますが、その中間の年次は、たとえば三十二年度につきましてはまた来年の今の時期に作成いたす、そういう計画の方法論と申しますか、そういう手続になっておるわけでございます。
  104. 藤田進

    ○藤田進君 今の点つじつまが合わぬように思います。つまり人口の累増にしても、これに関連する完全雇用の過程における失業者数にしても、国民総所得、生産指数、これなどについても今阿具根委員からいろいろ総括的に聞いた結果、高碕さんの方では、そういうものを、中間のものですね、第二年度、三年度、これを持ってはいるけれども、発表するといろいろ誤解を受ける、それではまずいから発表しない方がいいということを発見したと、これは本会議の答弁のときもそういうふうに言われていたし、今も言われていた。ところが今政府委員の方の答弁を聞くと、そういうものは手持ちはないんだ。演繹法等で二十九年を押え、そして六年後の、三十一年から云えば五年後ですが、それを押えて、そしてこれこれのものが必要だということをやっているということなんですが、それはどちらなんですか。
  105. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま御質問の点でございますが、各年次ごとにこれは作れば作れぬことはないのでありますが、そういうふうなものを作っても、かえってこれは間違いが起るもとだ、こういうことで、これは全然取り上げていないわけです。これはいろいろな数字は作ろうと思えば作れるわけです。ほんとうに発表し得るものは、一番最終年度における目標と、それから実際に即した過去の実績、及び現在の過去の実績に徹した数字をもってすることは間違いのない積み立て式になりますから、これだけは間違いないと思います。
  106. 阿具根登

    ○阿具根登君 失業問題ばかりつついておるのですが、失業問題にしましても、五カ年計画を見てみると、第一次産業に五年後にはどのくらい、第二次産業にどのくらい、第三次産業にどのくらいという数字をもう出しておられるのです。そうすればその計画は十分あるはずなんです。第一次産業にどれだけの人間を吸収するのだ、どれだけの労働力を第二次産業に入れるのだ、第三次産業はどうなるのだという数字まで、これは市販のものに発表されておられるのです。そうすれば、そこまでやっておられるのなら、その計画は発表できぬことはないだろうと私は考えるのですが、これは市販に出ておるものにちゃんと第一次産業に、第二次産業に、第三次産業にとちゃんと書いて発表してあるのです。
  107. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 五カ年後においてはこうなるという数字はついているわけです。五年後における生産がそこまで伸びるという計算が前提とされておるわけです。
  108. 海野三朗

    海野三朗君 長官に、さぞお疲れでしょうがお伺いしたいと思いますことは、二十八ページにあります科学技術の振興について「実効性のある一連の諸政策が強力に推進されなければならない。」これはどういうふうな政策でありますか、一つ長官のお考えを承わりたい。二十八ページです、この経済自立五カ年計画の中にあります「実効性のある一連の諸政策が強力に推進されなければならない。」これはどういうことをお考えになっていらっしゃいますか。
  109. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その内容はその次に書いてあります。「そのためには、基礎、応用、実用化」、これが説明になっているわけです。
  110. 海野三朗

    海野三朗君 それからもう一つお伺いしたいのですが、三十二ページに鉄鋼業のところにありますが、「材質の向上及び鉄鋼価格の安定に努めるものとする。」造船所の方なんかでは鉄板の価格が安定しないから、非常に困るというところの強い要望があるようですが、世界市場によって、どうしたってこれは日本は影響されるのであります。で、その影響を少くしようというには鉄鋼価格の安定に努める、この安定はどういうことをしたらいいとお考えになっていらっしゃいますか。その一つ御抱負を承わりたい。
  111. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 政府のとっております低物価政策というものは、どうしてもこれはやっていきたいと思っておりますが、これは低物価政策をやりますもとは何かといえば、インフレーションを防止するということが一番の目的なんでりあます。ただ鉄鋼のごとき、非鉄金属のごとき、これは世界的の市場によって左右されることが多いのでありまして、世界の市場によって左右されるものについて、これは実は日本の国内のインフレーションにはそんなに大きな影響をきたさないと思うのでございます、輸出をいたしますから……。そうでありますけれども、どうしてもやはり国内の市場、これを考えたときには、これはある程度安定しなければならぬ。しからば安定するにはどうしたらいいか、こういうお話でございますが、日本の鉄鋼業というものは大体外国から原料である鉱石とか石炭を持ってくる、こういう状態であります。この外国の原料をどうして安くするか、原料等を確保するか、この問題が一番大きな問題であります。その点につきましては、さきにも中共とのお話もありましたが、中共の海南島の鉱石をどういうふうにして合理的に持ってくるか、こういうふうなことも考え、あるいはフィリピンから来ております鉄鉱石をそのまま送らないで、フィリピンにおいて加工して、もっと選鉱して、鉄の含有量の多いものを持ってくれば運賃がセーブできる、こういうようなことも考えております。こういうふうなことをいたしまして、高くなる運賃等も考慮して、そうして、いいものを安く近いところから持ってくるという原料確保の方針をとりまして、鉄鋼業の原価を引き下げていきたい、こういうやり方で進みたいと思っております。
  112. 海野三朗

    海野三朗君 昨今鋳物品が非常に品不足で、製品は注文に応じきれない状態でありますから、鋳物品が非常に暴騰しているのです、闇値が。そういうふうなものに対してはどういうふうに長官考えになっていらっしゃいますか。昨今、鋳物品が川口あたりでも非常に値が上っているのですが、鋳物品が足りない……。
  113. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは現在の市場価格から申しますというと、各製鉄会社が発表いたしております、いわゆる建値価格よりも非常に上回っておって、そうして原料が手に入らぬというふうなことも事実であります。これに対してどうするか。つまり原料を安くできるかということは品物を潤沢にするより方法がない。こういうふうに考えておりますから、できるだけ供給の道をよくふやそうじゃないか、こういうふうな方針をとっていきたい、こう存じております。
  114. 海野三朗

    海野三朗君 それから三十四ページの「新産業の育成」というところに、次のページにわたりまして「財政資金の投入」ということがありますが、事業そのものをよく理解して融資をし、資金を投入してやるような方向へ持っていかなければならないのじゃないか、こういうふうに思いますが、昨今の日本のいわゆる財政投融資の問題なんぞについては、長官は大へんよくいっているとお考えでありますから。さらに検討を要する点があるとお考えになっていらっしゃいますか、その御所見を一つ承りたい。
  115. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 政府が直接監督いたしております開発銀行の資金のごときは、どうもそのままで放っておくと楽な方面、つまり回収の楽な方面に持っていかれる形勢があるものでありますから、これは厳に政府はこれを監督し指導をいたしまして、話し合いをして、そうして民間資金でまかなっていけるような、あるいは製鉄事業だとか、そのほかの産業につきましては、これは民間資金に肩代りをしたもので、開発銀行の資金でできるだけ新規産業の、多少危険性があっても、国としてはこれを開発しなければならないというような方面の事業に出さしめるように指導していきたいし、またそのように命令していきたいというふうに考えておる所存でございます。
  116. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 皆さんにお諮りいたします。経済自立五カ年計画、なかんずく昭和三十一年度の計画経済の御質疑はこの程度に終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 御異議ないと認めさよう決します。  本日の委員会はこれをもって散会いたします。    午後四時二十一分散会