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1956-02-03 第24回国会 参議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月三日(金曜日)    午後一時三十八分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員栗山良夫君辞任につき、その 補欠として藤田進君を議長において指 名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     三輪 貞治君    理事      高橋  衛君    委員            上原 正吉君            西川彌平治君            白川 一雄君            中川 以良君            西田 隆男君            深水 六郎君            阿具根 登君            海野 三朗君            上條 愛一君            藤田  進君            上林 忠次君            石川 清一君   国務大臣    通商産業大臣  石橋 湛山君   政府委員    経済企画庁長官    官房長     酒井 俊彦君    経済企画庁審議    官       金子 美雄君    経済企画庁審議    官       細田茂三郎君    経済企画長調整    部長      小山 雄二君    通商産業政務次    官       川野 芳滿君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   説明員    経済企画庁次長 上野 幸七君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○経済自立方策に関する調査の件  (経済自立五カ年計画に関する件)  (通商及び産業政策基本方針に関  する件) ○委員派遣承認要求の件   ―――――――――――――
  2. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいまより本日の会議を開きます。  公報をもって御通知申し上げましたように、経済自立方策に関する調査の件を議題といたします。一、二の件につきましては通商産業大臣衆議院予算委員会出席をしておる都合がございましてこちらの出席がおくれますので、第三番目を始めたいと存じます。経済自立五カ年計画に関する件につきまして、経済企画庁次長上野幸七君より説明を求めます。
  3. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 経済自立五カ年計画並びに昭和三十一年度経済計画大綱につきまして御説明を申し上げます。  御案内のように、昨年の一月に経済自立六カ年計画というのを作成いたしまして、そのあと昨年の一月になおこれを精細に検討いたしますために、経済審議会を設けまして、関係の方面の大ぜいの方々の衆知を集めまして、前にあげました六カ年計画の再検討をいたしまして、それによって改めてまた経済自立六カ年計画というものを作りました。この計画の答申をさらに与党並びに政府側で検討いたしまして、これに若干の修正を加えましてできましたのが経済自立五カ年計画でございます。かような計画を立てましたゆえんは、御承知のように日本経済が非常にむずかしい問題を内包いたしておりまして、経済バランスがとかくこわれやすい性格を持っておるのでございます。たとえて申しますと、まず輸出入のバランスでございますが、これがなかなかうまく調和がとりにくい事情があります。それからまた雇用関係につきましても、雇用面需給アンバランスがとかく尖鋭化しがちでございます。さらにまた、資本の蓄積も不十分でございますので、どうかいたしますと、すぐインフレになるというふうなアンバランスを露呈しがちでございます。かように、ほかにもまだいろいろあるのでございますが、とかく無理をしますと、すぐどこかに破綻が現われまして、それが経済全体の運営の上に悪い影響を及ぼすということになりがちでございますので、さようなことが起りませんように、いろいろな経済誌事情を総合的に勘案いたしまして、経済施策を、そういう調和のある形で行なっていきたい、そういう見地から、この経済自立五カ年計画というものができたと思うのでございます。  その計画の、この経済自立五カ年計画の前の計画、すなわち経済自立六カ年計画の昨年の実績を申しますと、昨年は非常に輸出が好調でありましたことと、農村の豊作と相待ちまして、非常にいい実績をおさめております。輸出について申しますならば、これは計画に対しまして二四%もふえておる。また鉱工業生産につきまして申しますと、約計画よりも一〇%ふえておる。それから農林水産生産におきましては、これが伸びが、計画に対して一一%に伸びておる、国民所得は約六%伸びておる。こういうふうに非常に昨年は目標を大巾に上廻る発展をとげた次第でございます。そこで、これらの事情も勘案しまして、先ほど申し上げましたように、七月以降経済審議会審議を経まして、昨年の十二月の終りごろに経済自立五カ年計画を策定いたしました。この五カ年計画の策定の仕方は、こまかく申しますと非常にごたごたいたしますので、省略をいたしますが、ごくかいつまんで申し上げますと、要するに国の経済全体を国民所得という面からつかまえていく。御承知のように国民所得三面等価原則と申します。生産国民所得と、それから支出国民所得分配国民所得は大体等価になるという原則がございますので、その原則に基きまして国の経済の全循環過程を組み立ててみまして、それからいろいろな政策的なものを引き出してくる、こういうやり方をとったのでございます。  非常にこまかい複雑な作業をいたしまして出てきました昭和三十五年度の主要な目標はそれではどういうことになったかと申しますと、国民の総生産では、三十五年度におきまして九兆六千七百三十億円という目標を立てております。この目標は、基準といたしました年度が二十九年度でございますが、この二十九年度に対しまして約三四%の伸びになっておりまして、年率にいたしますと、大体五%くらいな伸びになっております。国民総生産伸びが五%と申しますと、決して低い伸びではないのでございまして、大体諸外国の例等と比べてみましても、かなり高い水準伸びでございます。しかも、この伸びは毎年上に上にと重なっていくわけでございますので、いわゆる複利計算式なことになりますので、こういう伸び方でいきますと、かなり高いスピードで国民総生産伸びていくということになるわけでございます。  これを支えます輸出でございますが、輸出は三十五年度目標といたしまして、二十六億六千万ドルという目標にいたしております。これは基準年二十九年に対しまして六六%の増になっておりまして、年率にいたしまして一〇%くらいな伸び、すなわち、総生産伸びよりもはるかに高い伸び輸出を伸ばすということが、この計画一つ基本になっております。  かくいたしまして、それでは貿易外収支等を含めました国際収支バランスはどうなるかと申しますと、大体目標年次におきまして二十九億六千万ドル、約三十億ドルのベースバランスをさせるというのでございます。  かような貿易規模で支えられました日本国民総生産が吸収いたします就業者の数は四千四百八十六万人と概定いたしておりまして、基準年次に比べまして一二・七%の増ということになっております。これが経済五カ年計画の三十五年度における目標数字のごく主要なものでございます。  ここでちょっとこの五カ年計画性格というふうなものにつきまして一言触れておきてたいのでございますが、この五カ年計画は、いわゆる計画経済というふうな意味のもので、社会主義国家におけるがごとき国の計画経済ではないのでございまして、個人や企業の創意、自主性を尊重するという、いわゆる自由企業体制を建前とした計画でございます。そういう根本的な性格を持っておりますので、これらの目標数字が一応数字としては非常に固いようにお思いでございましょうが、必ずしもこれを固定的に考えないで、そのときどきにおける経済情勢に即応しながら、弾力的に運用するということを考えております。従いましてこの五カ年計画には、年次別計画というものは作成いたしておりません。大体年次計画というものは、そのときそのときの非常に無数の経済変数に影響されるものでございまして、とうてい先の年度計画をあらかじめ立てるということは、理論的にも実際的にも不可能なことでございますので、年次別計画というものは立てておりません。ただそのとき、その年度ごとに後刻説明申し上げますように、ことしはとにかく三十一年度実施計画を立てる、こういう行き方をいたしておるのでございます。そうしてしょっちゅうもう言われておることでございますが、この計画目標は、経済自立完全雇用達成をはかるというのでございますが、この経済自立と申しますのは、決して低い水準自立をするという意味じゃなくて、できるだけ高い水準で、つまり国経済の総循環バランスをこわさない限度においてできるだけ高い水準経済自立をはかるということと、それから完全雇用、これは非常に言葉が、概念のきめ方が非常に窮屈になっておりますので、とかく誤解されがちなのでありますが、言ってみますならば、就業機会増大というふうに言った方があるいはもっとぴったり合うかとも思うのでございますが、そういう就業機会増大達成をはかるというのがこの計画目標でございます。さような性格を持った経済計画でございますので、従ってその計画方向といたしましても経済自立雇用増大、それから経済の安定……、配付の資料の自立五カ年計画の中に書いてございますように、経済自立雇用増大を考えておるのでございますが、これを達成いたしますのには、やはりこの経済の安定の問題を当然考えなければなりません。これはさっき申し上げたことと関連いたすのでございますが、バランスをこわさないように、もっと俗に申しますならば、インフレを起さないように今申し上げた目標達成するということでございます。  それからさらに、かような目的達成いたしますために、もう一つ考えなければならないことは、経済の質を改善するという問題でございます。ただ量的に発展するというだけではいかん、と申しますか、量的発展は、質の改善が伴わなければ、先ほど申し上げましたような量的発展は望めないわけでございまして、輸出を大いに伸ばしたいと思いましても、やはり産業基盤が質的に改善しないと、そういう目的が達せられないわけでございますので、質の改善をしていかなければなりません。また、質の改善は同時に反面からいいますと、量的な発展前提になるのでございまして、この量的な発展がないと質の改善も思うように参らない。つまり有効適正な有効需要前提にしませんと、経済の体質を改善していくこともできない、こういう質の改善の問題と、量的発展の問題は相互に密接な関係を持っておりまして、これを同時に達成していこうという、これがこの五カ年計画方向とも申すべき事柄でございます。  これが五カ年計画のごくあらましでございますが、しからばこの五カ年計画に基きまして初年度としての昭和三十一年度、つまり明会計年度はどういうふうにするかということでございます。この三十一年度経済計画はことしの一月の二十日に作定いたしました。その主要目標は以下申し上げます通りでございます。  まず、国民総生産でございますが、これは八兆二千六百三十億円という目標を掲げております。これは三十年度に対比いたしまして四・二%増ということになっております。年率伸びに比べますと若干落しておりますが、これは昨年三十年度が非常に発展の度合いが高かったために、三十年度に比べますと若干伸び悩みになるのでございますが、しかし趨勢全体といたしましては、五カ年計画趨勢線よりも高い線にあることを御承知願いたいと思います。この総生産を支えますのに、鉱工業生産指数は一九六の指数になっておりまして、三十年度に対比いたしまして七・二%の増、それから農林水産生産指数が一一四・二になっておりまして、これは大体平年作を考えております関係上、昨年三十年が非常な豊作でございましたので、これに対比いたしますと五・九%減ということにいたしております。それから輸出は二十二億ドル、三十年度に対比いたしまして七・三%の増をみております。これも昨年の輸出伸びが非常に高い水準でございましたので、若干昨年に比べますと、低めになっております。輸入は二十二億二千万ドル、八・六%の増になっております。かような貿易に支えられた……、今ちょっと、後刻詳細の御説明を申し上げますが、今申し上げておりますのは、この三十一年度経済計画大綱という中に、主要計画目標というのがございます。二ページでございますが、この中に国民総生産でありますとか、あるいは鉱工業生産水準農林水産生産水準というふうに書いておりまして、国際収支のところで、ここに輸出輸入というふうなのがございますが、そのことを申し上げております。それで就業者四千二百万人の就業を考えておりまして、これが三十年度に比べますと二・三%増、こういうことに相なっております。かような目標を置きまして経済の全循環の構造それから発展の道筋を想定いたしまして、これにいろいろな諸経済施策を集中して参るわけでございます。そうしてこれを達成いたしますために、経済正常化傾向を一層促進しつつ、いわゆる安定経済の基調のもとに産業基盤強化輸出振興雇用機会増大をはかって参ろう、こういうのが三十一年度経済計画大綱でございます。  ごくあらましは以上申し上げた通りでございますが、なお引き続きまして、調整部長から三十一年度経済計画大綱中心を置きまして必要な限度において五カ年計画に関連せしめつついま少し説明さしていただきたいと思いますが、私のごく大まかな説明は以上で一応終らしていただきたいと思います。
  4. 小山雄二

    政府委員小山雄二君) それでは私から今の次長説明を補足する意味におきまして、この三十一年度経済計画大綱の二ページのところの指標中心といたしまして、これはただ指標がずっと並べてございますが、これがまあ総合的な関係を多少持つわけでございますので、そういう関係中心といたしまして御説明申し上げます。  三十一年度経済規模を端的に総合的に表わすものといたしましては、国民総生産分配国民所得、六行目、七行目のところにございますが、これにすべてのものが集約されるような形になっております。そこにありますように、三十一年度八兆二千六百三十億、三十年度に対して四・二%増、分配国民所得六兆九千七百十億、三十年度対比四・三%増、こういう計画にいたしております。経済自立五カ年計画ではこの年の伸び率を五%とみております。これよりやや少いわけでございますが、昨年が非常に、そこにありますように、それぞれ七・八及び九%、この辺の一%というのは非常に大きな金額になりまして、一%上げるためには、非常に経済発展をみなければならぬというような関係にありますが、昨年はそのように高かったために、両年合わせますと十分五カ年計画でいう五%の数字達成して若干余りがあるというような状況になっております。これは厳格に申しますと、毎年五%ずつ積み重ねて参りますと五カ年計画目標達成するわけでありますが、ある一年高い水準がありますと、それから伸び率が、計算が高くなりますので、三十年度非常に経済の調子がよかったということは、そういう意味生産伸び率が低くて済むということになります。  この総生産国民所得を支えます経済所要について順次申しますと、まず需要の面でございますが、需要の面の第一は輸出でございます。輸出は下の方にございますように、昨年の三十年度の二十億五千万ドルから二十二億ドル、最近の海外情勢海外景気の上昇が多少鈍化するのではないかと考えられます上に、ものによりましては、また海外市場状況によりましては、わが国の方で輸出調整をしなければならないというようなものも、ぼつぼつ出てきておりますので、三十年度のような勢い輸出伸びるということは手放しでそういう楽観はできないのでありますが、何と申しましても経済発展の支柱と申しますか、これは輸出に求めて参らなければなりませんので、積極的な輸出振興策を講ずることによって、こういう数字輸出達成したいと、こういう計画をいたしておるわけであります。特需は漸減して参りまして三十年度の五億五千五百万ドルから四億五千万ドルくらいに減ると予想しております。  需要の第二番目は、投資の問題でございます。投資面では二十九年以来緊縮政策がとられまして、投資が減退を続けて参っておりますが、最近では輸出が非常に好調であり、経済正常化が行われておるというようなことからいたしまして、民間投資意欲というものも順次回復しておるようであります。この産業基盤強化ということを五カ年計画でも、前半期において相当経済の地固めをしていくという考え方をとっておりますし、三十一年度計画でもそういう意味産業基盤強化をはかるということを主要目標としておりまして、なるべくむだな消費は押えて投資の方に重点を置いていくというような線で計画をいたしております。かたがた来年度政府としましても積極的に民間資金を活用して参るというような計画を立てておりますので、投資相当に進みまして、ここにもございます民間資本形成というものは三十年度に対して八・七%程度増加をはかろうということにいたしております。  需要の二番目は、消費支出でございます。消費支出は大体経済発展伸び程度がいいのではないか、そういう形であることが望ましいわけでありまして、三十年度に対しまして四%の増加を計上しております。で、消費支出をそう見て参りますと、人口が一%程度ふえますので、物価横ばいと考えまして、国民一人当りの実質消費水準は約三%伸びるという勘定になっております。  以上のような需要面に対しまして次には供給面でございますが、鉱工業生産昭和九年-十一年を一〇〇とする指数で一九六に三十一年度はなっておる。三十年度に対しては七・三宅伸びるというような計画になっております。これは五カ年計画では年率七・四%伸びるということにいたして、ちょっと少いわけですが、これも三十年度相当伸びておりますので、水準としては三十一年度計画通りの、あるいはちょっとそれを越した水準で進んでいくと、こういうことに相なります。  次は、農林水産生産でございますが、三十年度に対しまして三十一年度は五・九%、約六%減ることになっております。これは、今年が非常に豊作でございましたが、計画といたしましては来年は平年作で考えております。従って畜産、林産、水産の、これは相当増加を見込んでおりますが、農林水産生産総合いたしますと、どうしてもこういう数字にならざるを得ないというような計画になっております。  このように内外の需要、これに伴う生産伸びますために、供給面一つとしての輸入でございますが、輸入相当程度増加いたします。輸入の面は、そこに紙が一枚はさんであると思いますが、実質は表と変らないのでございますが、表現がまずいので、紙で補足説明しておりますが、三十年度為替ベース実質輸入二十一億二千三百万ドルでございますが、これは輸入に対して為替を払う額が十九億ドル、物は入って来ますが、ユーザンスによって繰り延べるものがございまして、実質的にはこれも輸入でございますが、輸入ユーザンスによる支払い繰り延べの前年度増加は一億四千五百万ドル、それから綿花借款といたしまして、これも綿花が入ってくるが支払いは先に延びるというものが七千八百万ドル、加えますと二十一億二千三百万ドルでございます。それが同じベースでとりまして三十一年度は二十二億九千万ドルになりまして、その差が一億六千七百万ドル、一億六千七百万ドル為替ベースにおいて実質的な輸入がふえるとこういう関係に相なります。二ページの表の整理は、実質は同じでございますが、そういう整理を欠いておりますので、これに説明を加えたわけでありますが、輸出が一億五千万ドルふえるに対して輸入は一億六千七百万ドル、少し輸入増加する、こういう関係に相なります。輸入もこういうように多少増加いたしますので、国際収支じり、二ページの表の一番下にございますが、これは三十年度よりやや悪くなります。カッコ内の数字実質バランスでございますが、三十年度二億四千四百万ドルに対して三十一年度一億七千五百万ドルでございますが、実質的にはこういう数字が残るという関係になっております。  さてこういうような経済循環の中におきまして、就業関係がどうなるかという問題でございます。これは二ページの上の方にこれを比を並べてございますが、人口は総人口で三十年、三十一年この間の比率でございます。それから生産年令人口、満十四才以上の人口、この三十年、三十一年の差が百三十四万であります。わが国では当分の聞こういう形になっておりまして、よそにも例を見ないような勢いで、生産年令人口がふえてくる過渡期にあるわけでありまして、ここに非常に矛盾があり、これが経済に対する圧迫になるわけであります。生産年令人口のうち労働力人口はこの差が、八十八万でありますが、来年は経済発展によりまして八十八万ぐらい……、この労働力人口というのは、働く意思と能力を持っておる人の人口でございますが、これは約八十八万人見込んでおります。この労働力人口増加に対しまして、先ほど来申しまする経済発展伸び等によりまして、鉱工業関係あるいは商業サービス、その他の就業増加を見込みまして、三十一年度では四千二百万の就業が見込み得るということにしております。ただ、これでは必ずしもまだ十分というわけにはどうしても参りませんが、一方雇用機会就業機会増大といいますか、そういう問題は五カ年計画でも、ことに前半期では過渡的にそうならざるを得ないので、特に重点を置くべしという考え方をとっておりますし、三十一年度計画でもこの点を一つ重点といたしておりまして、三十一年度では特に失業対策事業臨時就業対策事業等を増強いたしまして極力吸収をはかりまして、その結果完全失業者は若干減少させるというような関係計画いたしております。  最後に、物価関係でございますが、物価はこの表の国際収支の方の欄に書いてございますが、指数としまして卸売物価九七・八、三十一年度も九七・八、CPIとございますのは消費者物価でございますが、これも一一六・四、一一六、四、来年度物価は三十年度横ばいと考えております。で、物価関係、これは計画を完全に果すための、何といいますか、前提条件とも考えるべき問題でありまして、との物価がくずれますと、輸出関係を初めといたしまして、経済安定全般にひびが入ってくるという危険があるわけでございます。この計画自体経済消費の中には、それ自体物価を上げるような、上昇させるような要因はないのでありますが、たとえば経済投資消費が急激に、過度に伸びるというような事態が起りまして、この計画で考えております需要供給とのバランスがくずれるということになりますと、計画全体が破綻をきたすおそれがあるわけであります。このために物価を極力安定させて、資金需給の均衡を保持して通貨価値を安定さすとか、食糧、原材料等輸入物資につきましては、これを十分確保をはかりまして、その需給を安定さすというような考え方でこの計画を組んでおります。従って今後の経済運営に当りましては、この計画目標数字からあまり大きく逸脱しないように生産を調整していくということが必要であろうかと、こう考えておる次第であります。  以上簡単でございますが、三十一年度経済計画大綱について御説明いたしました。
  5. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 以上の説明につき質疑のある方は順次発言を願います。経済企画庁長官は現在衆議院予算委員会出席中でありますので、当委員会出席ができません。政府側説明員はただいま説明を願いました経済企画庁次長上野幸七君、同庁官房長酒井俊彦君、調整部長小山雄二君、ほかに説明員として審議官細田茂三郎君、同じく金子美雄君、官房企画課長川瀬健治君が出席せられております。
  6. 阿具根登

    ○阿具根登君 今資料をもらって聞いたので、もう少し勉強さしてもらいたいと思うのですが、一、二質問いたしますと、ただいまの説明にもありましたように、三十年度は国際的な経済の伸長もありましたでしょうし、国内的には未曾有の豊作でもあった。にもかかわらず、国民所得のふえ方は非常に少い。また言われておる完全雇用という立場、就業機会増大、この面からいってもわずか三万、こういうことになっているのですね。そうすると、三十一年度は農水産等は約六%の減少まで見込んでおられるのだと思うのです。それに対して二万の減少になっておる。こういうことがあり得るかどうか、その点一つ詳しく御説明願いたい。  それからもう一つは、五カ年計画の、この一カ年のやつだけは見せてまあ説明をお聞きしたわけですが、年度別の計画は非常にむずかしくて立てられない、こういう説明であったと私は思っております。それもわかりますけれども、その分でいくならば、一年一年の計画であって、それは五カ年計画と言えないはずだ。この一年々々の数字が固定したものとは私は思わない。しかし、五年間の計画はあるはずであります。そうしなければ、五カ年計画と言えない。五カ年後には、たとえば完全失業者が四十五万なら四十五万に減るということを考えておられるにしたところで、一年々々の数字計画されておらないということになれば、これは五カ年計画ではなくて、一年計画だと私は言わざるを得ない。その点について少し説明をしていただきたいし、資料もいただきたい、かように思います。
  7. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 前の御質問に対しましては調整部長から答弁いたしますが、あとの御質問でありますが、年次別の計画の御質問でございますけれども、大体この五カ年計画におきましては、一応人口伸びに対しましてある生産係数を乗じまして、それから総生産をはじいておりまして、その総生産国民所得分析の方法によりまして、需要面供給面とに振り分けて参ったのでございます。従いまして、年次別の計画という作業は、作業としてはいたしておりませんので、これはそのとき、ことしでありますと、来年度計画を立てる。来年の終りになりますと、再来年度計画を立てる。そういうふうに計画実施計画として年度計画を立てても、その実施計画を立てます場合は、正年計画のある趨勢線と申しますか、趨勢値というものが常に考慮の中に取り入れられて計画を立てるわけでございまして、毎年々々のものを計画を立てて積み上げていって工年計画を作るというような作業のやり方になっておりませんので、先ほど御質問のような、いわゆる年次別計画というものは、いたしておりません。
  8. 小山雄二

    政府委員小山雄二君) 第二番目の御質問の点は、三十年度は非常に経済伸びたのに完全失業者はかえってふえているのじゃないか、よくなっていないのじゃないか、一般的に考えてもそうじゃないか、という御質問であったと思いますが、この表でもありますように、二十九年度から三十年度にかけましては、いわゆる生産年令人口というものは百三十五万これでふえているわけであります。そのうちの労働力人口というものは百三十一万ふえております。これに対しまして就業というのは、百二十八万ふえている。この数字の差がそういうことになるのであります。それだけ就業も非常にふえたわけであります。就業がふえたということは、非常に経済状況がよかったわけでありますが、それもなお及ばないほどの生産年令人口労働力人口増加がございまして、完全失業者というものはかえってふえた形になっております。三十一年度につきましても、やはり生産年令人口というものは相当増加を示しますが、労働力人口の方は、何と申しますか、非労働力人口が、所得が低いような世帯等におきましては、景気がいいと、完全な一人前の働きということでなくて、働き口がふえる関係で非労働力人口労働力人口になって出てくるという関係で三十年度はこうふえたのでございましょうが、三十一年度はそういう点は経済伸びが少し少くなりはしないか。従って非労働力人口がむやみやたらに労働力化するということは減りはしないかということを考えておるわけであります。失業者の数というものは、むしろ勧めておったのが失業して働けないとか、あるいはどうしても働きたいのが働けない、働く意思、能力があるのに働けない、こういう人の数でございまして、この数は、さきほど申しましたいろいろな対策を盛っていって多少とも減少させたい、こういうことを考えておるわけであります。
  9. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、最初の答弁の方から入りますが一年々々の計画であるなら、これは五カ年計画ということは言えず、このまま見ていっても、三十年度に三万ふえ、三十一年度で二万減っていく。この分でいっても、いちばんふえるべき三十年度に三万しかふえておらない。それで今言われたように労働力人口も多くなっております。三十一年度も百万近くの労働力人口がふえておる。そうしてしかも生産性は莫大な金を十億からの金をつぎ込まれておられる。この説明の中にも非常に苦しい言いわけをしておられる。生産性向上に対して大きな力を入れていくから、生産は上っても労働人口はふえない、失業者は減らない、ということを言っておられる通りに、ここで五カ年たっても失業者は減らんからこうなってくる。しかもこの六十七万から六十五万というのは、完全失業者で、一時間も仕事をすることのない人なんです。この完全失業者というのは一番私は数字の魔術だと思う。実際の失業者というものは何百万おるかわからない。おそらく一千万近くおるでしょう。それでも完全に近い一週間に一時間も仕事をせんで食える人というのはほとんどありません。これは衆議院の代表質問でもやっておりましたが、そんなものはごくわずかの人なんです。そうしますなら、完全雇用ということを打ち出してやっておられる根拠はどこにあるか。生産性向上はうんと叫ばれて金をうんとつぎ込んでおられるけれども、労働力はどこに吸収するかといえば、サービス業くらい考えておられる。そういうことで労働力を吸収できるかどうか、その点御説明願いたい。
  10. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 完全失業者数字でございますが、御指摘のように、完全失業者という概念規定は非常に厳格なこれは規定になっておりまして、この数字だけで見ますと、全くお説のごとく、わずか二万ほか減っておらんじゃないかということになるわけでございますが、さきほども申し上げましたように、この計画はもちろん完全失業者の減ることをこいねがっておるわけでございますけれども、その前にできるだけ就業者数を多くする、つまり労働力人口増加の圧力を、できるだけ就業者数を多くすることによってそこに吸収していくというふうな考え方を強くいたしておるのでございます。完全失業者の数は非常に統計的にもいろいろ議論があるそうでございまして、現にこの十一月のごときは非常に完全失業者の数としては減っている。しかしその減っていることが果して今の雇用状態を正しく反映しているかどうかということについても、だいぶんこれは統計的にも非常に議論のある点でございまして、実は率直に申し上げますと、完全失業者の数で私どもはあまり議論をやりとりするのを好まないような次第でございます。先ほど御指摘の完全失業者だとか、非常に不完全就業者が大ぜいおる、それは一体どうするんだという御質問でございますが、まさにこの点はおっしゃる通りでございまして、その数がどれだけあるかということにつきましては、いろいろ統計資料がございまして、的確などうも数字を把握するのに苦しむのでございますが、大体この長期計画考え方といたしましては、できるだけ国民所得をふやす、それによりまして一人当りの所得増を持ちきたすことによって、その不完全就業者の生活水準を向上するというふうな方向に持っていきたいというのがこの計画の大体考え方なんでございます。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 それに先ほどもちょっと触れましたが、危惧いたしますのは、まあ神武天皇以来の三十年度豊作だったのですね。一般に言われることは豊作のあとには飢餓があるということまで言われておる。しかしここでは平年作を見込んでおられる、それでもいいと思うのです。ところがこういう不完全就業者はほとんど農村に吸収されておるわけなんです。そうしますと三十年度は農村に非常に吸収力が多かったのです。三十一年度はそれを吐き出すことになってくる。そうすればこの労働力人口もこれは幾分二十九年度と三十年度は減ってはおりますけれども、それ以上に私は完全失業者が出てくると思うのです。そうすればこの数字はみんなうそになってくるじゃないか、そういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  12. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 先ほども申し上げましたように、不完全就業者の生活水準を向上いたしますために雇用機会増大をするということを専心やるわけでございますが、それでもなおかつ雇用がないと思われますので、この点はどうしても社会保障制度の整備拡充、そういうふうなことを積極的にやらなければいかぬと思うのであります。来年度どういう面にそれでは吸収されるであろうかという点でございますが、この点につき検しては三十一年度計画ではいわゆる一次部門、農林水産部門でございますが、この部門に対する雇用吸収の割合というのは非常に少く見積っておる。大体その面にはあまり期待しないという建前になっておりまして、二次部門と三次部門、これも決して三次部門に無理やりに押し込むというのではないのでございまして、二次部門の方の産業規模が広がって参りますし、輸出伸びは少し落ちるかもしれませんけれども、なお依然として相当伸びることを考えておりますから、そうしますと二次部門と貿易部門を中心にしまして、日本経済のスケールというのは一回り二回り大きくなり、そうすればおのずからその連鎖反応をもち幸して三次部門というのも相当取引活動が活発になる。そうすればそこへ吸収する余力というものも出てくるのではなかろうかということを計算いたしておるのでございまして、結局余るものを無理やりにその三次部門へ突っ込んでつじつまを合せるというふうなことは考えていないつもりでございます。
  13. 海野三朗

    ○海野三朗君 私はちょっと違った角度からお伺いしたい。きょうは経企長官は出られないのですか。
  14. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 先ほども申しました通り、現在衆議院予算委員会出席中で、この委員会出席は不可能でございます。
  15. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは経企長官をとつかまえてこれは意見を聞かなければいけないのかもしれないけれども、まず私はきょうの高級官吏の方々に一つお伺いしたい。八ページに「科学技術の振興」という銘を打ってありますが、この科学技術の振興に対して経済自立五カ年の立場からどういう科学技術を見ておられますか。今日政府のあり方を見ますというと科学技術の振興とか技術尊重ということは歌だけにうたっておって、そうして実質がどうだとかこうだとか根本はこの品物のよしあし、進歩改良にあるので、技術が根本にならなければいけないので、それであるのにこの行政管理庁を見ますとことごとくが事務官ばかりでやっておられるようで、そうしてラッパを吹いておられるように私は思う。そこでこの科学技術の振興の立場からしてこの技術の方面をどういうふうに、技術者の待遇とかそういうふうなことも出てきますが、それはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。それを私はお伺いしたい。
  16. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 大臣に対する御質問だと思いますので、私が答えますのはいかがなものかと思いますが、科学技術の振興の問題は、実は非常に重大かつ深刻な問題であると思うのでございまして、現在先進諸国におきましてはもっぱらこの経済発展を科学技術の何といいますか、発展に依存しておると言ってもいいくらい最近の科学技術のイボリューションは激しいのでございます。そういたしますと日本でもこういう長期計画を立てます場合、当然その科学技術の発展の動向というものを長期計画の中に取り入れるのが、理論的にはまさにお説の通り筋でございまして、単に抽象的文句だけではいかぬので、具体的な数字を中に織り込むべきだというのはまことに御趣旨はごもっともでございますが、この科学技術を数字に還元するということは非常にまたこれはむずかしい問題でございまして、この計画では科学技術の問題は科学技術の水準一般の問題としまして各業種部門の生産伸び計算いたします場合に、生産性がどれくらい伸びるだろうかということを配慮いたしまして、個別の生産数字計算いたしております。そういう意味では科学技術というものをこの計画の中にも取り入れてはおるのでございますけれども、それではどういう技術をどのくらい数字としてこの中に入れたかと申しますと、これはどうも非常に的確には申し上げかねますが、大体技術振興の問題と長期計画数字的な作業というものはそういうふうに結びついておるものと御了承願いたいと思います。なお科学技術振興の対策一般のことにつきましては、まさに御指摘の通り今、日本は何をおいても科学技術の振興のために全力を傾注しなければならぬことだと思います。経企長官としても当然その決意でやっておられると思うのでございまして、今回国会にもだいぶんこの科学技術の振興に関連した機構の問題、あるいは予算の問題が出て参ると思いますので、さような機構の改正なりあるいは予算の御審議に当りまして十分お考えをいただきたいと思います。
  17. 海野三朗

    ○海野三朗君 それではお伺いいたしますが、あなたの方の役所には技術者であって課長以上のものは何名、事務のもので課長以上のものは何名くらいの割合になっておりますか。
  18. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 数字は後刻わかりましたら申し上げますが、私の役所は、実は御案内の通りに、経済企画庁というのは現実の行政をあまりやらない役所でございまして、その関係で私のところにおります技術家も現実の行政をやる技術家ではなくて、いわゆる技術的な考慮をこういう諸計画に織り込むことをやっておる人でございますので、他の一般行政官庁に比べますと技術者の数は少いのじゃないかと私思っておりますが、少し役所の性格が違うものでございますから、その点お含みおき願いたいと思います。
  19. 海野三朗

    ○海野三朗君 つまり技術の方面に詳しいそういう人々がこの計画を立てるにしても、技術的の素養、つまりそういうところから生み出てくる知識が必要なのではないでしょうか。それでありますから、単にあなたが今おっしゃるように、他の行政の方でやるとおっしゃるから、こういうものがただ一つの作文にしかならないおそれを私は多分に持つのであります。技術的な素養のある見地に立ってこういうことは立案しなければならないのではないかというふうに私は思う。ただ事務的に取り扱ったのではいけないのじゃないかと私は思うのですが、あなたのお考えはいかがなものでございましょうか。
  20. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 現に計画に参与をしております、一番中核になっております計画部長は、これは電気の技術屋でございます。なおその下の課にも相当の技術屋がおるわけでございまして、決して技術屋を軽視するというふうなことは毛頭ございません。
  21. 海野三朗

    ○海野三朗君 それではこの次まででけっこうですから、あなたの方の課長以上に何人の技術者があり、そうしてその待遇はどんなふうになっておるか。私は総じて今率直に申しますならば、今日本の行政のあり方は法科万能であって、そうして技術振興だとか何とかいうてらっぱを吹くけれども、一つも技術者を優遇しておらぬ。はなはだしきに至っては、同じ卒業年度で調べてもわかる。事務官の方がぐんと待遇がいい。早いです。しかも内規というものがあって技術者は二年で昇級するが事務官は一年半というような勝手な内規を作ってやっておるのが今日の日本政府のあり方なのです。そうしてそういうようなのはどうして出てくるかというと、官房長というものは皆事務官にきまっておる。(笑声)そうなんです。官房長いうものは専売特許なんです。そうして官房長が内規を作っておる。たとえば高等文官を通ったものはちゃんとメモがあって、緻密なメモがあって今度はだれそれがどこどこの位置に行ったから、跡継ぎはだれだというふうに、はなはだしきに至っては一年もたたないうちにぽんぽんとかわっている。私は今名前を率直にあげることはよしますけれども、事務次官になるというと、半年か一年でかわってしまう。事務次官になったら最後民間のどこかの会社に入っていく。ぽんぽんと入っていく。それからの仕事がほんとうの仕事になっておる。また私はかってのある局長をこの委員会においてどなりつけたことがあるのです、はなはだ不届きな言辞を弄したから……。ところがそれがどこにとんでいってしまったかと思ったら外交官に早変りしてしまった。冗談じゃない、通産省から外交官に入っていった。そういうあり方は、事務官はだれでもやれるということなんです。結局は、そうしていけなかったらぽかんと外交官にくらがえをしてしまう。そういうふうなつまり法科万能のあり方がこの日本の科学技術の振興に対して一大障害になっていると私は考える。それでありますから同じ大学を出ておりながらも、技術者と事務官とを比べますというと、実際調べてごらんなさい。皆級が一級ないし二級くらい違う、同年度の卒業者にしてです。そういう点は、私ははっきりとあなたの方の役所の内部における技術官と事務官との待遇、それからまた、さきに申しました課長以上の技術者と事務官、そういうふうなものをお調べになって、その資料の提出をお願いいたしたい。
  22. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 今数の点だけわかりましたのでお答えいたしておきますが、課長以上五十七名中十一名技術屋でおります。あるいは後刻正確に調べまして間違いましたら、また訂正御報告いたします。
  23. 海野三朗

    ○海野三朗君 それから待遇もお調べを願いたい。私はついでだから申し上げておきますが、あなたの方のお役所はそういうことは少いでありましょうけれども、ほかの方を見るというと、もう実に言語道断であって、そうしておいて今日の、いや実質がどうだとかこうだとか、よくもそういうことを言われたもんだ。技術者をもっと優遇しないでおいて、そうしてそういうことをお考えになることは、私はもう少し根本に立ち返って、日本はこの科学技術の振興によらなければならないのだという信念に立って、今日の事務官の方々もとくと私はお考えいただきたい、こういうふうに思いますので、その資料の提出、待遇の問題、それを卒業年次と比較した一覧表の御提出をお願いいたします。
  24. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 他に御質疑はございませぬか。
  25. 上條愛一

    ○上條愛一君 阿具根委員の質問に関連してですが、労働人口が年々八十八万、昨年より今年はふえるということですが、しかるに完全失業者の数は二万に減るという予定なんですが、お尋ねしたい点は、生産力が増強しつつあることは事実でありますが、その生産力の増強というものが、労働人口がふえる、就業者がふえるということで生産増強が行われているか、あるいは機会の改善、産業合理化等によって生産力が増強されておりまするか、その点についてまずお伺いしたいんです。
  26. 上野幸七

    説明員上野幸七君) ただいま御質問の点は非常にむずかしい問題でございまして、うまくお答えできるかどうかわかりませんが、生産増加は労働力の増加と、それからいわゆる生産性の増加との相乗積になるわけでございまして、そのうちでその生産増加がどれだけが労働力の増加によるもので、どれだけが生産性の増加によるものかということは非常に一般的にはなかなかお答えしにくい問題で、個々の業種ごとにあるいは検討をしなければわからないのじゃないかと思いますので、ちょっと御答弁を保留さしていただきます。
  27. 上條愛一

    ○上條愛一君 たとえば繊維産業においてはここ四カ年くらいは新しく募集いたしておりません。しかるに実際の生産力は相当増加を来たしておるわけであります。こういう点から見れば、ここにありまする国民総生産あるいは個人の消費支出というようなことがふえておりまするが、われわれの観測では、生産力の増強は労働力人口のふえたことによって生産力が増強しているよりも、これは生産設備、産業合理化等の方面において生産力が増加しておるもので、かえって労働力人口というものは減っておるという現状だと思うのです。もしふえておる産業がありまするならば、これは後ほど御発表願いたいと思うのです。
  28. 上野幸七

    説明員上野幸七君) 今の御質問のお答えにぴったり合いますかどうか疑問でございますが、大体この五カ年計画の作業におきまして、こういう考え方をいたしております。それは国民総生産伸び年率にしまして五%の伸びということになっておりますが、この総生産伸びを発生いたしますファクターが、就業者の増によるものと一人当り生産額の増によるものとの和になっております。これは理論的には実は和より多いのでありまして、AプラスBプラスABということになるのですが、ABが非常にネグリジブルな数字でありまして、これをドロップいたしますと、今の就業者の増に当るものが五%の総生産伸びの中で二%、それから一人当りの生産高、つまり生産性の伸びでございますが、これを二・九%に見ております。これはしかし総生産全体についての話しでございますので、もう少しこれを具体的にいたしますためには、各産業ごとにこれを作業して参らなければならんわけでありますが、それは非常に繁雑でございますので、一次産業、二次産業、三次産業と三つに分類して計算しております。一次産業の生産伸びは三・二%、このうちで就業者の増が〇・七%、それから一人当り生産額が二・四%、両方合せまして三・一になっておりますが、大体三・二に近似した数値になるわけであります。二次産業、これは鉱工業、建設業でございますが、二次産業の生産伸びが七・四%、このうち就業者伸びが二・七%、一人当りの生産性の伸びが四・五%、こういうことになっておりまして、これを両者合せますと、七・二%でございまして、少し誤差がございますけれども、大体近似しております。三次産業は生産伸び四・二%、その中で就業者の増が三%、それから生産性の伸びが一・二%、両者合せまして四・三%、こういう数字になっております。もっと正確に今の御質問にお答えいたしますためには、この一次産業、二次産業、三次産業をさらに細分しまして、各産業ごとにこの計算をしなきゃならんわけでございますけれども、これは非常に繁雑な作業でございますので、現在いたしておりませんので、こういうごく巨視的な分析を使っております。
  29. 上條愛一

    ○上條愛一君 困難ではあろうけれども、もしこの御発表になっている表から考えまするというと、完全失業者の数が二万も減るということを出すためには、今の点を明らかにしておかなければ出ないのではないかと私は考えるのです。従ってこれを出す根拠というものが明白に示されなければ、完全失業者の数が減るとは言えないと思うのです。われわれの観測によれば、この一年に百二万ほどふえる人口の結果、労働力人口というものが相当量ふえてくることは明白であります。しかも産業の実態から言えば、今申し上げたような点が明確になってきて、生産量の増加とは、労働人口の方がどれだけふえて、機械設備、産業合理化の方面ではどのくらいの数字になるかという点から出してこなければ、この数字は明確にならんのではないかと考えます。で、私どものしろうと考えから申しますれば、今の産業の実態から見ますれば、生産増加というものは労働力人口増加というよりも、むしろ設備その他の産業合理化方面があずかって力があるのであるから、従ってここに生産量がふえたからというて、それによって完全失業者を救済するようなことは不可能じゃないかというので、この点についてもう少し明確な資料を出していただきたいと思います。
  30. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 資料の要求ですね。
  31. 上野幸七

    説明員上野幸七君) ちょっと各業種ごとの作業がないように申し上げましたが、あるそうでございますが、ただ非常にこれはこまかいあれでございまして、数字の何といいますか、信頼度がどの程度であるかということになりますと、多少われわれ懸念を持っているものでございますから、一般に公表するのを差し控えておりますが、もし何でしたら、別にその資料によりまして御説明申し上げたらいかがなものかと考えます。
  32. 上條愛一

    ○上條愛一君 お差しつかえない範囲で出していただきたい。ということはわれわれ繊維産業の一点をもって見ても、四カ年間ほとんど新しく採用せずしてしかも生産がふえている。繊維の離職者のスピードというものは相当な高いスピードで離職しているわけなんです。しかるに生産増加している、こういう現状をもって見ますれば、今日お出しになっているような根拠がわれわれは合理的なものとして了承することができないのでありますから、そういう点は資料に基いてお出しを願いたいと思います。  それからもう一つお伺いしたいのは、この完全失業者は別といたしまして、今日ボーダー・ラインの生活を送っておりまする国民の数は厚生省の発表だかによりますると、百二十万世帯、六百万人に及んでいる、こういうことでありまするが、これらの人々の救済については公共事業費が中心になると思われるのでありまするが、三十年度と三十一年度の予算で、たしか百三十億円ほど公共事業費が削られていると考えまするが、そのような予算によって、政府は果してそういう不完全失業者の救済ができる、数を減らしていくということができるかできないか、この見通しについてお伺いしたいと思います。
  33. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) 先ほどの産業別の就業者伸び生産性の問題、次長が申し上げました数字は六カ年計画数字でありますが、これを算定いたしまする場合、経済審議会でただいまの御質問のような趣旨でもう少し積み上げた、チェックをしなければいけないという御意見がありまして、非常に短時日にやりましたので、一応のチェック程度のものと御承知願いたいのであります。特に第三次産業等につきましては、これは非常に生産性というものの観念からして困難であります。ただいまの御質問の趣旨は特に二次産業についての御質問だと思いますので、二次産業につきまして二、三の例を申し上げてみたいと思います。  これは産業によって生産伸びが、生産性と就業伸びでどう変るかということは、産業によってみな違うことであります。製造業全体で申し上げますならば、生産伸びは六カ年計画で五六・一%と見ておりますが、その中で就業者伸びは一六・二%、そして生産性の伸びが三四・二%、こう見ております。生産性の伸びの方が就業伸びの約倍の伸びになっております。産業別に見ますと非常に違うのでありまして、たとえば化学工業でありますと、生産が八三%伸びるという計画でありますが、就業伸びが二六・二%で、生産伸びが四五%、繊維工業はただいまのお話しの中にもありましたように、就業伸びが非常に少くして生産性の伸びの大きな産業に属しております。繊維工業全体で申しますならば、生産伸びが三二%と見ておりますが、就業伸びはわずか七・三%、従って生産性の伸びが二三%となります。繊維産業の中でも特に紡績業は、これは大体計画で八%くらいの伸びになっております。雇用はむしろ六カ年の長期の見通しでは減少するであろうと見ております。大体一二・一%くらいの減少、従って生産性の性びは二二・九%の伸びというふうに見ております。最初申し上げましたように短時日の間にやりました非常な粗雑なチェックでありますので、必ずしも正確とは申し上げられませんが、先ほど次長が申し上げましたように、生産性の伸び就業伸びというものを考えます場合に、審議会ではこの程度のことを一応考えてみまして、あの数字を出したのであります。  ただいま申し上げました通り、それぞれの産業によって非常に状態が違いますけれども、産業によっては、石炭でありますとか、あるいは紡績のごとく、むしろ雇用伸びないで生産性の伸びだけで生産伸びるというようなものも、それぞれの事業の違いによりまして一応算定してございます。
  34. 上條愛一

    ○上條愛一君 今御説明になったようなことを総合して、これは完全失業者の数が二万減るという結論になりますか。
  35. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) 六カ年計画では一方で就業伸びを見まして、そしてその伸びと、それから労働力人口との差額を完全失業者数と考えているのであります。これの考え方についてはいろいろ批判もありますし、いわゆる雇用理論として非常なむずかしい点であろうと思いますが、ただいまの御質問の点は、そういうふうに生産性が伸びて失業者がふえるのじゃないかという御趣旨だと思いますが、そういうふうにまあ一部の産業では雇用が減少するのはありますけれども、大部分の産業は先ほどの例でも申しましたように、生産性が上りましても、それ以上の生産伸びを考えておりますために、全体としての雇用伸びるということになっております。すなわちそれが、六カ年計画基本としています生産性を上げてそして輸出増大し、全体の生産の量を、生産規模を上げることによって、雇用量をふやそうというところをねらっておるわけでありますから、全体としては生産伸びによって雇用がふえる、こういうふうに考えておる次第であります。
  36. 上條愛一

    ○上條愛一君 これはこのくらいにとめておきます。もう一点お伺いしたいと思う点は、人口増加によって新しく就労戦線に浮んでくる数が正確にどのくらいあるか知りませんが、約六十万から七十万といわれておりますが、これらの人々は、これは失業者と見るのですか、どういうふうに、この統計などではどこへ入れてお考えになっておられるのですか。
  37. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) 人口伸びが直接雇用関係に影響して参りますのは、いわゆる生産年令人口というものとして現われてくるわけであります。十四才以上のそれが人口の変化というわけでありますが、これは御承知のように最近では年間約百三十万、三十五年度では九十万程度に下りますが、その後においてはまた再び伸びる傾向にあります。この百三十万の生産年令人口増加が全部が労働力としては現われないわけであります。すなわちその中には十四才以上でありますから、学校に通学する学生も含まれておりますし、それから家庭に入るものも含まれております。いわゆる労働市場に出てくるものと、それから労働市場に出ないもの、すなわち労働力と非労働力に分れるわけであります。現在では大体これが三対七くらいの割で、大体七〇%近くのものが労働市場に現われるものと考えておりまして、これは労働力人口と考えるわけであります。三〇%は非労働力人口と申しましてもう労働市場に現われてこないというふうに考えます。
  38. 上條愛一

    ○上條愛一君 そうするとこれらの人々は完全失業者の中へは入らずに、潜在失業者の中に入る、こういうことになるわけでありますか。
  39. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) これは算術的に申しますと、労働力人口の中で現実に就業していれば就業人口になり、就業していないものは失業人口になり、一方の非労働力人口の方はもともと労働市場に現われないと考えるのでありますから、それは全然就業とか失業という関係に入らないと見ておるのであります。しかし問題は、実際は非労働力人口就業人口になったり、失業人口になったり、また失業者が非労働力人口になったり、三つの間には始終流通関係がありまして、それがどういうふうな関係で変っていくかということが、一般経済情勢によって非常にその間の動きが激しいわけであります。先ほど申しました七対三というような割合も、最近の情勢においてそういう割合になっておるということでありまして、この割合も大体長い目で見ますと相当変化して参ります。
  40. 上條愛一

    ○上條愛一君 私のお尋ねしたいのは、今まで就労しておって職を失ったというのはこれは完全失業者ですね、しかし学校を出て職がない、それからまた成長してやはり労働によってその生活を支えなければならないという人口が今七〇%ある。こういうことですね。これらの人々はこれを失業者とみなさないかみなすかという問題ですね。これはここの統計などによって、こういう人々はこれを失業者と認めないのか。失業者というのは、今まで仕事に就いておって、職を失った者だけを考えて政府は対策を立てようとしているのか。
  41. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) われわれの失業者という定義から申しますと、今まで全然職につかない、新しく学校を出た者が職を求めて得られなければ、それは失業者に入ります。
  42. 上條愛一

    ○上條愛一君 そうすると、この六十五万というのはそういう者を入れての数ですか。
  43. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) その通りであります。ですから、その中には一度職に就いて、離職した形における失業者と、それから全然従来職に就いた経験を持たない失業者と両方が入るわけになります。
  44. 上條愛一

    ○上條愛一君 両方を入れてこれは六十五万、この数になる、こういうことですか。そうするとそういう数はどういうふうにして調査しておりますか。たとえば職に就いた者であって失業したという者の調査はきわめて合理的に行われますが、学校を出て職に就けない者、あるいは学校を出ずとも成長して、それで就労したいというそういう数は、やはり明確に数字に表わすほど政府調査の機関を持って表わしておるかどうか。
  45. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) われわれが用いております、先ほど来申しております労働力人口とか、あるいは非常労働力人口とか、あるいは完全失業の数というものは、すべて総理府統計局が行なっております労働力調査という統計調査をもとにして論じておるわけでございます。この労働力調査というものは、統計の種類から申しますと、人口統計の一種になるのでありますが、実際のやり方を申し上げますと、全国で一万二千世帯程度の世帯を統計的に抽出いたしまして、そしてそれぞれの家について、つまり働く先でなくして、世帯について、その世帯に含まれる人口について就業の状態、あるいは失業の状態というものを調べまして、大体この人間の数が五万人程度になりますが、それを統計理論に従って全人口に拡大するという方法であります。そういう抽出統計でありますから、相当大きな誤差が含まれておりますけれども、大体の傾向を見る統計としては 国際的にもこういう方法でやっているのであります。
  46. 上條愛一

    ○上條愛一君 もう一点だけお伺いしたいのですが、そこでお尋ねしたいのは、職に就いておって職を失った者は、これは失業保険によって三等級の区別はありまするが、若干最長九カ月までは救済されると、こういうことですが、その後においてはこれは全く収入の道を閉ざされるわけです。それからまた、おっしゃるように、新しく学校を出、また成長をして職のない人々これらも失業者の中に追いやられるわけでありますが、それらの人々の救済策としては公共事業費が中心で、これらの生活を多少保障しておると思いまするが、そのほかに政府としては、これらの潜在失業者に対する対策というものをお考えになっておるかどうか。
  47. 金子美雄

    政府委員(金子美雄君) 最後に潜在失業者ということのお尋ねでありますが、完全失業よりも、むしろ潜在失業の方に今の日本雇用問題のむずかしい点、重要な点があると私どもは考えております。今回の五カ年計画ではそういう点も特に重視しておりませんが、これに対する対策を考えているわけでありますが、一番根本的な対策としては、やはり所得をふやすということであろうと思います。そういう潜在失業が発生する原因の中でも、一番大きいことはやはり低所得の階層で、家庭の主婦が勤めているとか、そういう低所得が最も大きな原因になっておる。所得をふやすということが一番根本的な対策であろうかと考えております。これはしかし六カ年計画自体が先ほど御説明申し上げたような経済規模の拡大と国民所得の上昇ということを考えているのでありまして、先ほど生産性の向上の率を申し上げた次第でありますが、生産性の向上というものと所得というものとは、直接は関係のないものでありますけれども、あれだけの就業がふえても、一方生産性の向上もはかられていくということからすれば、所得もそれに応じて上昇し得るものと考えております。そういう所得の上昇ということが、根本的にそういう潜在失業の数を減らしていく対策ではないかという点が一点であります。  それから第二点は、労働市場の改善合理化、これが潜在失業と完全失業とを問わず、就業人口が一カ年間に四百八十万もふえるということで、相当大きなふえ方をするのでありますけれども、一方においてやはり完全失業も残りますし、また日雇い労働市場関係の数もふえていくということのおそれもあるわけであります。健全な労働市場を育成していくことが、いわゆる労働の質を向上させることであろうと思います。六カ年計画の政策の方針としましては、そういう健全な労働市場を育成していくという意味におきまして、職業補導でありますとか、技術指導でありますとか、あるいは職業紹介について、その今後の強化をはかっていくということを考えております。  第三は、そういういろいろな方策によりましても、脱落する部分がどうしてもあるわけであります。その点は社会保障を強化していく方向によらねばならない。こういうふうに考えております。
  48. 上條愛一

    ○上條愛一君 私の結論を申し上げれば、鳩山内閣は経済五カ年計画によって完全雇用を果すんだとこう声明しておりまするが、今回のこの三十一年度の予算を見ましても、実際において生産量が増加しても、お話しの説明を聞いても、これは労働人口がふえることによって生産増加をきたしておるよりも、むしろ機械設備の改善、産業合理化等によって生産がふえておるという現状でありまするから、これによってどうして完全雇用の第一歩を踏み出し得るかということが問題であります。しかも潜在失業者を救済する唯一の公共事業費を見ても、百三十億昨年度よりも削るということで、どうして一体完全雇用を具体的にその一歩々々、果して五カ年後には完全雇用をやるのだという点が明確になっておらんではないかという点が私の不満な意でありますが、そういう点についてはまた後ほど辞しくは御質問したいと思いますので、きょうはその程度にとどめます。
  49. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  50. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記を始めて下さい。  本件に関しまする質疑は本日はこの程度に終了いたしたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。   ―――――――――――――
  52. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) この際、通商産業大臣より通商産業政策基本方針について発言を求めておられますので、これを許します。
  53. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 今日わが国の財政経済に課せられております最大の任務は、一面においてインフレーションの発生を防止しながら経済自立発展をはかり、雇用をできるだけ急速に増大して、理想としては失業の絶滅を期することであると存じます。これがためには総合的かつ重点的に経済運営し、その目標に向って一歩一歩着実に前進していくことが必要でありますが、昭和三十一年度におきましては先般策定を見ました経済自立五カ年計画の初年度といたしまして、最近ようやく達成せられました経済安定の基調のもとに、積極的に経済規模の拡大をはかっていきたいと考えております。かような見地から通商産業省といたしましては特に貿易振興産業基盤強化、科学技術の高上及び中小企業の育成という四点に重きを置きまして、諸般の施策を総合的に推進をいたしていきたいと考えております。  まず貿易振興でございますが、幸い昭和三十年度国際収支輸出貿易が前年度に引き続きまして終始好調裏に推移いたし、総額約二十億正千万ドルになりまして、昨年度に比べ約四億五千万ドルの著増を示す見通しでございます。従って輸入総額が約十九億ドルとなりまして、約二億ドルの増加が見込まれておるにもかかわらず、貿易外収支を含めまして約三億八千八百万ドルの黒字を記録し、手持ち外貨も十四億ドルをこえるものと推定をいたされておる次第であります。  しかし、このような輸出の好調は一直におきましてはもとより一昨年以来の経済健全化政策の効果にもよるところでございますが、実は主としては海外経済の未曾有の好況に負うところがきわめて大であったとこう考えなければなりません。従って海外景気の今後の動向いかんによりましては、三十一年度と同様の状況が継続するというようににわかに楽観はできないのであります。従ってわが国といたしましては目前の輸出の好況に幻惑されることなく、わが国産業の実力を養い、さらに輸出振興に総力をあげて努力していくことが肝要であると考えておる次第であります。  これが根本的な対策といたしましては、まず基礎産業と輸出産業とを充実整備いたしまして、わが国産業の国際的競争力を培養すると同時に、輸出振興上直接必要な施策を講じていきたいと考えております。  第一に、経済外交をさらに強力に展開して、通商航海条約の締結を促進いたしますとともに、ビルマに引き続きまして、東南アジア諸国との賠償問題等の早期かつ合理的な解決をいたす、そして正常な通商関係の確立をはかりたいと考えます。また、わが国の重要な輸出市場でありますところの東南アジア、中南米等の諸国との国際経済協力を強化し、海外投資、技術援助、プラント輸出等を通じましてその経済開発に積極的に協力いたすことが、わが国貿易発展上きわめて有意義と考えられますので、日本輸出入銀行による円滑な輸出金融を確保いたしますとともに、あるいは技術指導、技術相談等に関する海外施設を拡充いたしますとともに、新たに海外投資保険制度を創設して、これが促進をはかる方針でございます。  また、対共産圏貿易、特に中共との貿易につきましては、国際的協調の範囲内におきまして、できる禁輸品目の緩和に努力いたしますほか、今般設立されました輸出入組合の運営を通じまして取引態勢の整備、決済条件の改善等をはかりまして貿易規模の拡大均衡をはかりたいと考えております。  次に、今後における貿易自由化と国際競争の激化の趨勢に対処いたしまして商社機能の強化をはかる必要がありますが、これがため輸出承認品目の整理、自動輸出承認品目の拡大、輸入割当品目の買付先制限の緩和あるいは商社外貨保有制度の拡充等、貿易為替管理制度の簡素化、その運用の機動化についてさらに一そうの工夫を加えたいと考えておる次第でございます。  同時に、最近海外市場においてますます激化しておりますところのわが国の商社間の無用の競争が、わが国貿易条件を無益に悪化させておることにかんがみまして、またこれが相手国側にわが国輸出品に対する反発的傾向をも惹起しておるような事態にかんがみまして、先般改正をみました輸出入取引法の逆用により貿易取引秩序の確立には万全を期したいと考えております。  さらに、わが国商品の海外市場への進出の道を開拓し、かつこれを維持していくためには、綿密な海外市場調査、活発な海外広報宣伝を絶えず行なっていく必要がありますので、政府といたしましては引き続きこれらの事業を積極的に援助、助長をいたしたいと存じております。  以上申し上げました見地から昭和三十一年度予算案におきましては、プラント輸出振興に必要な輸出資金として、日本輸出入銀行に財政資金として二百四十五億円を計上し、自己資金を含めて総額五百四十八億円の運用を予定いたしましたほか、貿易振興予算として海外広報宣伝の強化のため一億五千万円、国際見本市に積極的に参加するため二億円、貿易あっせん事業の拡充のため一億七千万円、重機械振興技術相談事業の強化拡大のため一億八千万円、農水産輸出振興事業の育成をはかるため一億一千万円、海外市場調査事業の充実のため一億円等を計上いたしまして、総計十億七千九百万円を予定をいたしておる次第であります。  次に、わが国国際収支の均衡を真に安定した基礎の上に達成していくためには、以上申し上げましたごとき輸出振興策を強力に推進すると同時に、わが国産業の基礎を強化安定し、輸出産業の国際競争力の強化をはかることがきわめて重要であります。  しかしてこれがため第一に、輸出産業及び基礎産業の設備の近代化、生産体制の整備及び生産性の向上をはかることが必要と考えます。  まず、これを特に重要な若干の産業について見ますると、機械工業につきましては、わが国産業の国際競争力強化と、産業構造の高度化の要請から、その合理的再編成と近代化が焦眉の急になっておりますので、生産分野の確立、生産技術水準の向上、生産設備の近代化等所要の合理化措置を総合的に実施したいと考えまして、これがため必要な資金の確保をはかるほか、立法措置も講じたいと考え、目下慎重に考究中であります。  次に、輸出産業の大宗であります繊維産業については、設備の登録制と過剰設備の処理を実施いたしまして、その安定をはかり、繊維製品輸出の円滑な運行を確保する方針であり、これがため昭和三十一年度予算案には、織布部門等中小繊維工業の設備調整の助成のため一億二千万円の予算を計上するとともに、繊維工業臨時措置法案を本国会に提出いたして御審議をわずらわしたいと存じております。  石炭鉱業につきましては、第二十二国会で成立をみました石炭鉱業合理化臨時措置法の有効適切な運用によりまして、石炭鉱業の生産体制の集約化、縦坑開さくを中心とする工業の実施等を強力に推進するとともに、他方低品位炭の利用による石炭需要の開拓にも配慮いたしまして、基幹産業としての石炭鉱業の健全な発展に極力努力して参りたい考えでございます。  鉄鋼業につきましては、わが国産業の国際競争力強化の上から、その合理化と価格安定が強く要請されておりますので、第一次合理化計画による投資効果の拡大に留意いたすとともに、本年度から開始された第二次合理化計画を強力に推進いたしまして、圧延部門を中心とする設備の近代化をはかる方針であります。さらに鉄鋼価格の低位安定を期し、製銑能力の拡充と鉄鋼原料の確保に格段の努力を払って参りたい考えであります。  次に、産業の合理化を促進し、産業基盤強化をはかるためには、個々の企業または産業内部の合理化をはかるばかりでなく、産業立地条件を改善するため、鉱工業地帯における港湾、道路、水道等の産業関連施設を計画的かつ総合的に整備することが必要でありますが、昭和三十一年度におきましては、さしあたり工業用水道施設の整備に着手することといたしまして、工業用水道事業費補助として一億八千万円を予算に計上いたしました。それとともに、地下水源洞渇の弊害が著しく現れております。工業地域につきましては、地下水源の合理的利用を確保し、その用水事情の悪化を防止するため、工業用地下水の汲み上げについて、ある程度の規制を行う等の措置について法律の制定を行いたく研究中でございます。  さらにあらゆる産業を通じてその合理化を促進するためには、生産性の向上に対する認識と熱意が基本前提になるものと考えられますので、この意味生産性向上の国民運動の中核体として、かねて設立されました日本生産性本部の活動に対しては、多大の期待を寄せている次第であります。最近ようやく労使双方の理解、支持とが高まりつつある状況にかんがみ、この機会をとらえてこの運動を積極的に育成していきたいと考えております。昭和三十一年度におきましては、これが補助として七千五百万円の予算を計上するほか、余剰農産物見返り資金十億円の運用利益を生産性本部の運動に充てる予定であります。  産業基盤強化をはかるための第二の方策は、エネルギー資源及び地下資源を計画的に開発し、その利用度の向上をはかることであります。これがため生産規模の拡大に伴う電力需要増大傾向に即応して、前年度に引き続き電源開発計画の実施を促進していく考えでありますが、特に今後の水力電源の開発は、大規模貯水池式に重点を置き、開発に伴う電力原価の高騰を極力抑制するとともに、電源コストの低減及び石炭資源の有効利用の見地から、新鋭火力発電所及び低品位炭による発電方式の拡充に重点を置きたいと存じております。  次に、国内資源の活用をはかるためには、未利用地下資源を急速かつ計画的に開発することが肝要と考えられますが、石油資源については、先般設立されました石油資源開発会社に対し、三十一年度予算において、産業投資特別会計から七億円の出資を予定しております。さらに天然ガス、砂鉄、磁硫鉄鉱、ゲルマニウム等の新資源及び銅、鉛、マンガン等の新鉱床の探査開発を促進するため、相当額の経費を計上いたしますとともに、三十一年度の新規予算としてウラン鉱、トリウム鉱の探査費用一億円を計上いたしておる次第であります。  なお、資源活用策の一環といたしまして、低品位炭の有効利用、石油化学工業、合成繊維及び酢酸繊維工業、木材利用合理化等のいわゆる新規産業については、引き続きこれが重点的かつ計画的な育成に当って参りたい所存であります。  以上述べました諸施策を実施するためには、有効適切な相当量の投融資が行われることが必要でありますが、資本蓄積のいまだ十分でないわが国産業の現状におきましては、財政投融資の果す役割は依然重要でありますので、予算の許す範囲内で財政資金の最も効率的な使用をはかることであります。昭和三十一年度におきましては、開発銀行については、財政資金八十億円と自己資金二百八十億円を合せて計三百六十億円、電源開発会社については、財政資金三百一億円と、自己資金六十三億円を合せて計三百六十四億円の運用を予定いたしておりますが、このほか貿易関係、中小企業関係を含めた通商産業者関係全体としては、財政資金七百八十八億円、自己資金を加えて総額千五百八十九億円の運用を予定いたしておる次第であります。なお、最近における金融情勢の緩和と金利の低下傾向によりまして、相当多額の民間資金の活用をはかることといたしたいのでありまして、資金総量としては、所要の投資額は充足できるものと考えておる次第であります。  以上述べました貿易振興、産業の合理化、資源活用等の諸施策を推進していくためには、その基礎的条件として、科学技術の振興に待つところがきわめて大であることは申すまでもありません。しかるにわが国の工業技術は、戦時、戦後を通じて欧米諸国に比し著しい立ちおくれを示しております。そこでこれをすみやかに向上回復させ、諸外国における技術の進歩に拮抗いたさせるためには、新技術の研究及びその研究成果の活用と普及等に画期的な措置を必要とするものと考えられますので、国立研究機関の研究態勢の整備強化民間試験研究の助成、新技術工業化のための資金確保等に関し、総合的な技術振興策を講じて、これが克服に努力していきたい考えであります。特に原子力の平和利用につききましては、これがわが国の資源、産業、民生に与える貢献の重大性にかんがみまして、その研究開発の推進には格段の努力を払う方針でございます。  このような見地から、昭和三十一年度予算案の編成に当りましては、科学技術振興関係予算の充実にはできるだけの配慮を加えた次第であります。  通商産業省所轄の国立試験研究所の特別研究費といたしまして六億二千四百万円、これは本年度の約二倍でございます。原子力関係研究費二億一千五百万円、これは本年度の二・倍であります、を計上いたしましたほか、民間に対する鉱工業技術助成四億五千万円、発明奨励に関する補助三千万円、工業標準化事業に関する経費四千万円等、総額十四億九千五百万円の予算を計上いたしております。これは本年度に比べ約五割の増加に当るのであります。これによって技術研究の飛躍的向上を期待したいと存じております。  なお、科学技術の画期的振興を期し、昭和三十一年度から科学技術行政に関する中枢的機関として、科学技術庁を設置するという考えで、その法案も準備しておるような次第であります。  中小企業につきましてはわが国経済、なかんずく輸出及び雇用に占める重要な地位にかんがみまして、この際新しき認識に立ってその育成強化をはかる方針でありますが、これがため中小企業の組織化及び安定化を一そう推進して、その経済的地位の向上をはかるとともに、輸出産業を中心とする設備の近代化、技術の向上、経営の健全化を促進助成してその質的改善をはかり、さらにまた、中小企業金融に対する資金を確保してその運用の改善をはかって参りたいと考えております。すなわち中小企業の組織化をはかり、その団結を強化するためには、中小企業等協同組合法及び中小企業安定法の運用に一そうの改善を加える必要がありますが、特に協同組合につきましては、さきに法制化されました中央会の設立完了を待って、これを緊密な連係のもとに、その活動を指導助成していく方針であります。  次に、中小企業の合理化につきましては、中小企業者の自立意欲を高めることを主眼といたしまして、従来顕著な効果をおさめてきました企業診断制度を一そう拡充強化するとともに、中小企業の機械設備の近代化及び協同組合の共同施設の設置につきまして引き続き助成を行うことといたしまして、三十一年度予算案には四億七千万円の国庫補助を計上いたしておるのであります。さらに、一般零細企業の経常指導に関し適切なる助言を与える機関として設けられております中小企業相談所については、その顕著な業績にかんがみ、三十一年度においては本年度より二千万円増額して五千二百万円の予算を計上いたし、その機能の拡充強化をはかりたいと存じております。  なお、繊維製品、雑貨等の中小企業製品がわが国輸出貿易に占める重要性にかんがみまして、これら輸出適格中小企業の合理化、近代化が特に強く要請されていますので、品質の改善及びコストの引き下げのための技術研究の助成、デザインの向上と創案の促進、新規輸出品の試作助成等につき、三十一年度におきましては、本年度に引き続き助成を行う方針であって、これがために約四千万円の予算を計上いたしておる次第であります。  次に、中小企業金融につきましては、昭和三十一年度予算案において、中小企業金融公庫については財政資金百三十五億円に自己資金百六十五億円を加えて、計三百億円、商工中金につきましては財政資金二十億円、国民金融公庫につきましては財政資金百二十五億円に自己資金四百億円を加えて、計五百二十五億円の運用を予定しております。いずれも本年度以上の貸付を行い得るように資金源の充実をはかっておる次第でありまして、さらに中小企業信用保険の保証限度につきましては、小口保証保険の保証限度の引き上げ及び包括保証保険制度の創設によりまして、保険料率の引き下げと填補率の引き上げをはかる考えでありまして、必要な法案を本国会に提出する予定でございます。  最後に、中小企業の置かれております経済的地位にかんがみまして、その育成強化をはかるためには、その事業分野を確保するとともに、大企業との間の取引関係を適正に調整することが必要と考えられますので、この見地から本国会には百貨店業者と中小商業者との間の事業活動を調整するための百貨店法案を提案する予定であります。このほか大工業の中小工業に対する下請代金の支払いを促進するため、できれば法的措置を講じたい考えで目下慎重検討中でございます。  以上今後における通商産業省の施策の概要を申し上げた次第でありますが、本委員会に対しましては、今後逐次種々の法案を提出して御審議をわずらわす次第でありますから、どうぞよろしくお願いいたす次第であります。
  54. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいまの通産大臣の通産行政の基本方針に関する御説明に対して質疑のある方は御発言を願います。なお、先般の委員会において聴取いたしました川野政務次官並びに岩武官房長よりの通商産業省関係三十一年度予算に関する件及び三十一年度財政投融資に関する件も総括して御質疑をお願いしたいと存じます。
  55. 藤田進

    藤田進君 今の基本方針ですが、これは従来われわれの手元にプリントをいただいて直ちに質疑を行なってきたわけですが、今回はその御用意がないように思いますし、総理その他の施政方針演説等では、あらかじめいろいろの方法でわれわれのところでわかっておるしいたしますが、今回の場合かなりの数が出ております。それから関連する法案もかなり指摘せられておりますしいたしますので、私は後刻でもけっこうでありますが、速記ができますのはかなり時間がかかると思いますので、一つ事務当局におかれてしかるべき部数をよこしていただくように委員長を通じてお願しておきます。
  56. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 承知いたしました。間に合いませんで相済みません。
  57. 藤田進

    藤田進君 それから次の点ですが、ただいま大臣の御発言、演説がありましたが、内容にかなり法案が例示されておると思います。この際本国会に提出せられようといたします諸案件について一応の御説明をいただきまして、これについて若干の質疑をいたしたいと思います。これは御用意があるかどうか。
  58. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 用意しております。  それでは本国会に提案を予定されておりまする法律案の概要を御説明いたしたいと思います。  お手元に第二十四回通常国会提出予定法律案調というのがございますが、一応通産省といたしましては、これだけを考えておりますが、逐次内容を御説明して参りたいと思います。なお、これはほんの予定でございまして、他省関係の法律との調整、あるいは法制局におきまする審議関係等で、あるいは若干提案が見送られ、あるいはよそに合併されるものがあるかと思います。なお、法律案の名称等につきましては、未確定のものもございますので一応そのお含みでお願いしたいと思います。  最初の特定物資の輸入に関する臨時措置に関する法律案でございますが、これは前々国会に提案いたしましたと同じ題名の法案でございまして、内容も同様であります。趣旨といたしますところは、バナナ、パイナップル等のように通商協定の関係、あるいは国内産業の関係等で輸入が制限されておりまして、その結果輸入に当りまして異常な利益が出る、いわゆる差益というものであります。それを国庫に吸収したらどうかということで、その手続等に関しまする法律案でありまして、これはすぐ国庫歳入はその次に書いてあります特定物資納付金処理特別会計法案という特別会計に繰り入れられまして、これを産業投資特別会計に入れまして、一般の産業投資の財源といたしますという考えであります。前々回と違いますのは、この特別会計につきましては、砂糖の輸入処理に伴います差益もこれに吸収するというような案でございましたが、今回は砂糖関係の差益等につきましては、これは関税あるいは消費税によりまして徴収いたしまして、国内の農産物価との調整をはかって参ろう。つまり一般会計に税の形で吸収するという考えであります。従いましてバナナ、パイナップルその他に限りますると、前々回の国会の当時の七十億というふうな一応の数字は今回ははるかに減少いたしまして、一応十五億というふうに予算を見ておる次第であります。この特別会計法案は、今回は前々回と違いまして、通産省においてこれを管理することになっているのでありますが、法律案自体はこれは多分大蔵委員会の方の御審議に相なろうかと存じております。  それから高圧ガス取締法の一部を改正する法律案でございます。これは最近高圧ガス関係のうちで、特に鉄鋼業その他におきまして液体酸素を使う仕事がふえて参っております。そういうような関係で、この液体酸素をこの法案の対象といたしますとともに、若干の手続的な問題につきまして規定の整備をいたしたのであります。なお、これに関しまする事務の一部を地方公共団体に委任いたしまして、手数料収入の一部を地方に移譲するというような措置も考えております。  その次の百貨店法でございますが、これは先刻大臣の御説明がありましたように、百貨店の活動をその量的な面から規制しようというのであります。これによりまして、中小商業者と百貨店業者との関係の活動を調整して参りたいという趣旨のものであります。あわせまして仕入あるいは販売面におきまして、中小商業等の関係も若干の規制を行い得るような措置を講じたいというふうに考えたわけであります。  それから次のページに参りまして、中小企業関係の法律案二つございますが、その最初の中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案は、これは中小企業金融公庫につきましては、今回は政府出資はございませんで、資金運用部からの借り入れが主になっておりますが、他方商工中金の金利引き下げの問題がございまして、これも低利な資金を、政府資金を回しまして、その責任を果したいと考えております。商工中金は御承知のようにこれは政府機関ではございませんので、直接資金運用部からの借り入れができませんので、変態的なやり方でございますが、中小企業公庫を通じて商工中金に政府資金を入れたい。つまり資金運用部の六分五厘というのをこの公庫を通じまして、商工中金に回そうという関係の法律案でございます。  それからその次の中小企業信用保険法の一部を改正する法律案は、これは先刻御説明ありましたように、一つは保証保険の制度を包括的に行い得る制度を開きたいという問題、それからもう一つは、現在ありまする小口保険の制度のこの保証限度を引き上げ、保証金額を引き上げるというふうなことになっております。現在は保証限度は十万円になっておりますが、これを二十万円に引き上げようというのが小口保険の改正の概要であります。  それから輸出保険法の一部を改正する法律案、これは海外投資につきましてはいろいろな危険も予想されますので、この投資保険という制度を設けて、経済協力、あるいは海外投資を促進して参りたいという趣旨でございます。ねらいといたしましては、この投資に伴います元本が戦争内乱等の危険、あるいは経済政策の変更によりまする企業の収用というふうな、こういう、もとの元本に対する危険の填補をいたしたいというふうな考え方の法律案でございます。現在の輸出保険特別会計法の引き受け限度を、この制度に伴いまして引き上げますとともに、輸出保険法の一部を改正してこれをやって参りたいという考えでございます。  それから工業地域における工業用水の確保に関する法律案、これはちょっと御説明を要しますと思いますが、現在主要な工業地帯のうちで地下水を過度に汲み上げますために、地盤沈下を起している地帯が若干ございます。尼ケ崎でございますとか、あるいは川崎方面でございますとか、その他いろいろございます。それに対しまして、一方におきまして井戸によりまする地下水の汲み上げをある程度規制いたしまして、そうして地盤沈下を防ぎ、他方それにかわる水源を確保するという措置が必要になってきます。その水源の措置の方といたしましては、先ほど大臣御説明ありましたように、工業用水道を地方団体が設けます際に、これに対しまして四分の一程度を国家が補助をいたしまして、代替水源を与えながら、片方水の汲み上げを規制して参りたいという趣旨の関連の法律案でございます。  それから繊維工業設備臨時措置法案でございますが、これは繊維工業におきましては御承知のように綿関係あるいはスフ、人絹関係等におきまして設備が紡績織布段階、あるいは染色段階、ともに過剰でございます。それが結局この関係産業の不安定な原因になっていて、あるいは勧告操短であるとか、あるいは中小企業安定法の発動であるとかいうふうな措置によりまして、取りあえずの安定措置を講じておりますが、根本的にはやはりこの設備の問題に手をつけざるを得ないわけであります。つまり設備を封緘いたしますとか、あるいは買い上げをいたしますとかいう形で整理いたしますと同時に、新増設を抑制するという措置をとるわけであります。その関係の措置の一環といたしまして、ここにこういうふうな名称の法律案を用意しておるのでございまして、内容といたしますところはこの繊維設備につきまして登録制をまず施行いたしまして実態を確認し、そうしてその設備の処理に当りましては、紡績段階のものはこれはそれぞれある程度の負担力もございまするから、それらの相互間におきまして必要な協定を結びまして、この整備の促進をはかって参りたい。それには協定を結ぶことにつきまして独占禁止法の例外規定を要しますので、その関係の法律措置を考えております。また登録措置につきましては、これは既存設備の登録の問題のみならず、新増設の抑制、つまり登録の拒否という問題もございます。そういう形で設備の調整をはかって参りたい。それから織布部門につきましては、これは御案内のように現在それぞれの調整組合を作って登録制を行なっておる状態であります。この措置は中小企業安定法に基きます調整組合の活動の範囲で一応処理できまするが、しかし設備の処理となりますと、業界の負担力の問題もございまするから、織布部門につきましてはここに若干の補助金を用意いたしまして、この整備の促進をはかって参りたい、こういうふうに考えております。従って法案の内容は、主として紡績段階のものが中心でございます。それと若干染色段階のものが入るわけでございます。織布部門の方は、これは主として中小企業安定法の運用によりまして措置いたしたい、こういうふうに考えております。  それからその次の核燃料資源開発促進法案、これは中小企業法の一環といたしまして、ウラン鉱、トリウム鉱の探鉱を促進して参ろうという趣旨の法案でございまして、前国会におきましてウラン鉱並びにトリウム鉱につきましては、鉱業法の法定鉱物追加の御審議を得たのでありますが、その鉱業権者が探鉱開発促進のために、あるいは通産省の傘下にあります技術調査庁もしくは目下設立の議がございますが、原子燃料公社をして土地、あるいは事業所を一時使用し、場合によりましてはいわゆる休眠鉱区と申しますか、鉱業権を持ちながら十分な探鉱活動をいたさないものには、かわりまして租鉱権を設定して、この採鉱を促進するというふうな措置を考えまして、それらの諸条項がこの法律案のねらいになっております。  それから機械工業振興法案でありますが、これは御承知のように現在わが国の機械工業のうちで、長も設備が過剰かつ老朽でしかも影響の大きい工作機械工業、あるいは軸受け、歯車工業あるいはその他の共通部品工業を中心にいたしましてその機械の入れかえ、合理化カルテルによりまして機械工業の発展をはかりたいという趣旨の法案でございます。  それから日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案、これは日本製鉄株式会社法が戦後間もなく廃止になりましたので、その際付則の規定によりまして従来社債の発行の際におきまして、一般担保、つまり財団抵当に代りまする一般総財産の上に担保権を設定するという措置がとられております。ところがその特別措置の期限が本年の八月四日で切れますので、これを延長して参りたい。これは他方法務省におきまして一般担保に関します法律案も先年来考えられております。まだ本国会の提案の運びになっておらないと思います。その法律案が出ますまでの間のつなぎというように考えております。  それから通商産業省設置法の一部を改正する法律案、これは先ほど申し上げました工業用水道の権限に関する問題もございますし、それから今度の予算におきまして、四国の通産局が現在丸亀にありますが、高松移転の問題、あるいはその他科学技術庁設置の関係におきましていろいろ設置法の改正問題がございますので御提案いたしたいと思っております。  それから下請代金等支払促進法案、これは十分中身も整備しておりませんが、大工業者が中小工業者に対しまする下請代金その他の支払いをいたしますときに台帳を整備いたしまして、必要があればそれに関係官吏が参りまして点検いたしまして、不当に遅延いたしますものは、支払い方を促進するというふうな内容の法律案を考えております。  計量法の一部を改正する法律案、これは御承知のように計量関係の法律の政令の中で、特に容器関係が少し精密過ぎまして若干現状に即さない点がございますから、それらの関係を改正して参りたいという趣旨のものでございます。これは実は提案が相当おくれる見込みでありまするので、あるいは今国会に間に合わないかとも存じます。  それから中小企業及び中小企業等協同組合の近代化設備の助成等に関する法律案、長い名前でございまするが、簡単に申し上げますると、これは現在中小企業関係の協同設備の助成金、あるいは設備の近代化の助成金でございますが、これは現在無利子の貸付という格好になっておりますが、この金は府県の補助金と合せまして貸し付け、府県でこれを回収金と合せまして貸付いたしまするように、府県をして、たとえば特別会計といった形の基金的なものとしてやっていきたいという趣旨の法律案でございます。  開発工事促進臨時措置法案、これは実は現在電源開発の関係でいろいろ問題になっておりまするように、補償にからみまして手続が繁雑であり、あるいは時期がおくれる、あるいは補償の額につきましていろいろ合理的でない問題もあるようでありますから、それらの関係の手続を簡素化し、また補償を合理的な基準にそろえたいというふうな内容の法律案でございますが、これは別途建設省の方でも土地収用法の特例を、特定の事業につきまして設けたいということで、法律案も用意中のようでありますから、あるいはそちらの法案と一体になって出るかと存じております。  それからその次の三件は、これは関連の法案でございますが、中小企業の協同組合で現在共済事業として火災保険を行なっておりますところが、全国で相当あるようであります。ところがこれにつきましては、実はその性質上現在まで十分なる監督法規もございませんし、またあり方等につきまして、必ずしも適正なものばかりでもあるいはないかと思いまするので、むしろその関係を適正な組織のもとに行わせ、かつ所要の監督を行わせた方がいいのじゃないかというようなことで、実は大蔵省と目下そのやり方について相談中でございます。成案を得ますれば、この関係の法律案の御審議をお願いしたいと存じます。なお、一番最後のものは、これは法案の性質上、あるいは大蔵委員会の方にいくかと存じております。概略御説明申し上げました。
  59. 藤田進

    藤田進君 企画庁どなたか来ておりますか。実は企画庁関係では本委員会に提案する案件の内容、件名等がわかればこの際お答え願いたい。
  60. 小山雄二

    政府委員小山雄二君) 今開発部の関係等に一、二あると思いますが、整理して持ってきておりませんので、別途御報告いたしたいと思います。
  61. 藤田進

    藤田進君 本日官房長官の方から出されてきたものには、一件ずつあるわけなんです。これがどうも今の通産省関係と照し合せて見ると件名もまちまちだし、こちらにあったり、こちらにあったりして、これを各委員会で確めようと思って実はそれを試みてみたところ、どうも今度の場合、件名自体も違っていたり……、これは各省がまとめられて官房長官の手元にいったものだと解したのですが、そうじゃないのか。この点は一つすみやかに統一していただきたいと思います。審議上非常に繁雑になりますから……。同じ件名でも内容が違ったりして従来出ておりますから、違った案件だと考えて審議日程を組んでみたところが、内容は同じだと、これでは非常にまずいと思います。  それから大臣にお伺いいたしますが、先ほどの生産関係の再編成ということで、この際所要の立法を考慮するという意味の御発言があったように思いますが、それらのものがこれから新たに出るのか。どうも見受けたところここにそういうものがありません。御承知のように、今国会はいずれにしても会期は十七日以後そう大幅な延長ということは、事実上選挙等も控えているし不可能だろうと思います。それが重要な法案がここにも出ているように、三月、あるいは未定で、それがまた出てくると、しかもそれを継続案件その他でなくて、本国会にどうしても政府としては通してくれというようなことになりますと、勢い審議も不徹底のままということになるし、ぜひ早くに出すべきものは出す、出さないものは出さないということをきめていただきたいということをあわせてお願い申し上げます。
  62. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 今のお話しのやつは、繊維工業設備臨時措置法案というのが二枚目にあります。それから三枚目にある機械工業振興法案、この二つだと思います。これは鋭意今急がしておるのですが……。
  63. 海野三朗

    ○海野三朗君 通産大臣にお伺いいたしますが、先ほどお読み上げになった中に、科学技術の振興ということをだいぶんうたっておられますが、通産省のつまり組織ですね。この組み立てを見ますというと、ほとんど事務官万能ですね。産業技術の行政機関であるこの通産省が、ほとんど事務屋でもって課長のいす、それから局長のいすを全部占められている。そうしてしかも技術者の側から申しますると、同じ年度の大学を出た人でも、はなはだしく事務官とは違うんです。ことに高文を取った事務官というものは、もうちゃんとリストに載っておって、次はだれが官房長になる、だれが事務次官になるということは、ちゃんときまっているのです。そうしてしかも局長あたりが、一年、長くも一年半ぐらいでぽんぽんかわっている。こういうふうな腰かけ的な行政をやるようになったのは、過去のいろんな事柄がありましょうけれども、これを一言にして申し上げまするならば、法科万能である。これが日本の技術の方面に対してあるし、世界の科学政治に劣っておるということも聞く。確かに私はその一原因をなしておるとこう思いまするので、たとえば事務官の人が機械課長とか、技術方面の者でなければならない、つまり技術的な自然科学の基礎の上に立った見識なり、識見を持っておるそういう人と、人文科学の方面に立った人とが車の両輪のごとくにいかなければならないのが常道であると私は思うのですが、この人文科学の方面の人たちが常に上の方に立って人間を左右し、そうしておいて技術振興だとか何とかいうことを盛んにラッパ吹くのだけれども、徹底していない。たとえばミシンの問題にしてもそうです。アメリカに十万台余っている。これはなぜかというと、輸出入組合が事務官の方からでき上っている。それでありますから、値段の点なんぞばかりに重きを置くから、こういうへまをやっておるのであると私は思う。で、そういう点については、私はここに通産行政のあり方についてこれが根本の問題であると思うのでありまして、よく調べましたところが、技術官と事務官とは、はなはだしい待遇において差があります。事務官の方はずうっと上をいっています。同じ官吏にしてみましても、技術官はその下です。でありますから、本省に残る技術者というものは、足元の明かるいうちにみなほかに逃げて行ってしまうんです。従って、本省あたりに残る技術者というものは、みなかすばかりになっている。この前の臨時国会の終りにおいて、官房長の答弁の中にありましたが、これは人材によるのだとこう言われた。これも一理はありましょう。ありましょうけれども、大体そういうようなあり方自体が間違っているものですから、技術者のえらいやつは残りっこないのです。みな足元の明るいうちに逃げてしまうのです。私は通産大臣に要望いたしたいと思いますことは、何とかもう少し技術者を重用していただかなければならないのではないか。この調査表を見まするというと、はなはだしく技術者が虐待されております。そうしておいて、一方においては、科学技術の振興だとか、輸出振興だとか、経済五カ年計画だとか、大きなことばかり立てたって、輸出振興はどうしてやれるか。品物はよくて安い品物を作らなければならぬ。これは技術者がほんとうに働かなければだめなんです。それを事務官万能であるから、こういう方面に幾ら号令をかけても、十分なる発達を期し得ないのであると、私はこう思うのでありまするが、この点について一つ通産大臣の御所見を私は承わりたい。深長の数は百何十人とおりまするが、ことごとくが事務官であって、そうしてしかも昇給の割合も、技術者は二年、事務官は一年半というような内規もあるやに私は聞いておる。それを握っているのはだれであるかといえば、官房長であって、官房長は事務系の人である。そういう内規を作っておる。そういうような法科万能では、決して日本の産業の健全なる発達を期することはできないのです。ちょうど戦争中において軍人万能の時代がありました。その結果はどうなったかというと、日本が今日のような敗戦の状態となった。私はそういう点からして、この技術官と事務官というものとの待遇の点においても、もう少し通産省山体のあり方を気をつけていただかなければならないのではないかと、こういうように私は思うのですが、大臣の御所見を承わりたい。
  64. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 昔から法科万能とよく言われまして、御指摘の点は弊害もあると思います。けれども私は、これは根本は今の行政機構全体の弊害だろうと思うのです。私は技術者必ずしも課長にしなければならぬ、局長にしなければならぬとは思わないのです。技術者は技術者として伸びていただきたいと思う。ただ、今は課長にしなければ、局長にしなければ俸給が上らぬとか、待遇と位置とがくっつき過ぎておる弊害ではないかと思っておりますので、今度行政機構の改革等の場合には、十分技術者が伸び得るような処置ができるように主張をするつもりであります。むろん通産省内部においてやれることはやるつもりでありまするが、そうその通産省内部において特に技術者を不遇の境遇に置くというような、へんぱなこともしておらないだろうと思っております。
  65. 海野三朗

    ○海野三朗君 今大臣はへんぱなこともしていないだろうと思うとおっしゃるのでありますが、この表を一応ごらんいただけばわかるので、それは官房長みな知っておりますよ、事務官と技術官との待遇の差があることは……。  それからただいまのお話しに、技術者は技術者として伸ばせばよいのではないかとおっしゃるのですけれども、やはり仕事をやっていく上におきましては、待遇と同時にその人の相当なる地位もやはり認めてやらなければならないのではないかと私はこう思うのですけれども、脱落した人はそれでもよいかもしれませんが、私らのような者はとてもそれでは満足できません。私らと同じように技術という立場に立っている者は、やはり技術を認めていただくと同町に、その者の地位ということもお考え願わなければならないのではないか、私はこう思うのです。それで今直ちにどうこうということを私はあなたに責めるのではありませんけれども、よくそういうことをお考えになって、この人声の交流にいたしましても、よくその点を御考慮になっていただきたい、こう思うのですが、この事務官の課長の数と、技術者として課長になっている数をごらんいただけばわかる。実にひどい。そこで今度は特許庁の問題なんかも同様です。特許庁には技術官が非常に多い。その多い人たちが通産省の下にあることを喜ばない。これは何がゆえであるか。これは一つ官房長あたりにも考えてもらわなければならないのではないか。私はこう思うのですが、特許庁のつまりあり方というものは、通産省とどうして必然的な関係がそういうところにあるのでございましょう。どこにあるのでしょうか。これは一つ官房長に伺わなければならない。特許庁というものをなぜ通産省の何に置かなければならないか。そこのところの必然的な関係はいかなるものでしょうか、官房長……。
  66. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 特許庁の問題は、名前が特許庁と申しますから、これは特許、発明ないし実用新案の関係をやっておるように誤解されておりますが、実は事務量を出願件数なんかでずっと見ますと、そのほかに意匠並びに商標等の出願登録件数が、実に全事務量の半分近くになっております。これは御承知のように、発生から申しましても、実際の機能から申しましても、これは全然技術とは関係はありません。これは不公正取引をいわば取り締るという問題が、いわば中心でございます。それから全体を通じまして、技官の問題はお話がございましたが、特許庁全体といたしましても、御承知のように工業所有権四法あるわけであります。その関係の法律に即しまして事務処理をいたしまして、審査段階、あるいは審判段階におきましては、これは技術的な判断が、特許発明、実用新案につきまして必要でございますが、その他の出願の受付、あるいは公告、その他の限りにおきましては、これはむしろ技官であるということを要しないというふうなことは、これは御承知通りであります。いわんや意匠並びに商標におきましては、これは純然たる民間のいわば公正な取引秩序を確保するという見地から判断すべきだと思っております。従って御承知のようにあそこでは技官の諸君も法律問題には精通しておりますし、また事務官の諸君も、これは直接審査、審判にはその責任者ではありませんが、やはりその陰におって補佐しているということでありまして、そういう関係でございますから、海外の諸国におきましても、特許庁という名前、――大体実用新案は海外にはあまりありませんが、意匠、商標と合せまして、どこの国でも商工系統の省で所管しておるというのが、これは各国の例でございます。たしかドイツだけが法務省になっております。あとは御承知のようにほとんど大多数の国におきましては、商工業を所管している役所にくっついておるというのが実例のようであります。御質問はなぜ通産省に置かなければならないかという趣旨と考えますが、むしろわれわれといたしましては、そういうふうに取引関係を所管するところに置いた方がいいのではないかと思っておるわけでございます。  それからもう一つは特許権の存続期間の延長等の問題は、これは御承知通りあると思います。そういう際は、単にその特許発明が技術的に優秀であるというだけの理由で、これを延長するというよりも、むしろそれを延長した方が日本の技術水準を維持し、産業の発展に寄与するというふうな見地から、むしろ産業政策的な見地から、この延長の可否を決定するのがほんとうじゃないかという問題もあるわけであります。その他発明奨励等の問題におきましても、やはり産業関係と密接の連関をもってやった方がいいのではないかと思いますので、むしろ外国の例にならいまして、やはり商工業を所管している官庁に置いた方がいいのではないかと、こう思っております。  それから内部の構成で申し上げましたように、単に技術的知識だけで処理し得る問題でないことは、これは御承知通りでございます。いかにその発明が優秀でありましても、これは海外の工業所有権同盟条約等との関係もありまして、そういう先願、後願の関係、あるいは発明奨励の関係の問題もございまして、相当高度な法律的知識も要るわけであります。従ってあすこの諸君は、先ほども申し上げましたように、技官、事務官という区別なく、一体となっております。技官の課長諸君も、相当われわれよりも法律的知識はあるようであります。また事務官の諸君も、この技官たちと一緒になってやっておりますが、ある程度の技術的知識もやはり自然的に持つようになっております。今特許庁の一部の技官の諸君が所属云々ということを申しますのは、私ははなはだ心外でありまして、むしろこれはあすこではそういうふうな技官とか、事務官とかいう区別はなくて一緒になって仕事をやっていると、こういうのが実情でございますから、そういうふうに御了承願いたいと思います。
  67. 海野三朗

    ○海野三朗君 いや、ただいまのお話は、事務官も技術官も区別なしに働いてもらいたいと、大へんいいお話しでありますが、通産省当局においては、事務官と技術官をはっきり区別しておりましょうか、通産行政の上では。
  68. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 前回にもその御質問がございましたが、これははっきり申し上げますが、本省の行政部門では区別しておりません。で、これは二つ問題がございまして、先ほど大臣に対します御質問を聞いておりますると、待遇の問題、それからポストの問題、二つに分れてございます。待遇の問題は、先ほど大臣が申し上げましたように、これはわれわれとしましては、むしろポストと切り離して、この俸給等を上せるという制度が望ましいのじゃないかと思っております。そういたしませんと、あるポストはやはり課長、あるいは局長といいますようなポストは、これは御承知のように、ある範囲の人間を掌握いたしまして、その事務を統轄し、かつ外部に向ってその実現を期するというふうな、渉外的な能力も要りまするので、従ってこれは技官といわず、事務官といわず、適所適材というのが、これは人事の要諦だろうと思っております。そういう趣旨で大臣を補佐いたしまして私としてもやりたいと思います。単にその課の仕事が、技術的関係が多いということだけで、技官がすぐ適任だということには、これは参りません。でいろいろ個人の能力問題もございまするので、従って一番適任者を、これはもう事務官、技官の区別なく、適任者をそのポストに据えるというのが、これは普通の行政官庁における人事の要諦だろうと思っております。それから試験所は、これは違います。これは御承知のように、ああいうふうに特定の範囲の仕事に、研究に専念するという問題がございまするから、これはわれわれも現存の公務員法の建前がいいとは思っておりません。先ほど申し上げましたように、これはたとえば研究室の主任が課長にならなければ月給が上らないというふうな現在の建前は、これはどうかと思われるのでございます。むしろそういう課長とか、部長とかいうふうな管理能力には欠けましても、特定部門の研究には、十分な能力を持っているという人は、そういうポストに就かんでも、月給がある年限たてば上るというふうな制度が特に望ましいわけであります。これは研究公務員という、一つの職階の問題であり、かつそれに伴う俸給の問題でございます。一時人事院でもそういう案がございましたが、まだ実現の機を見ておりませんが、これは今度の技術庁でありますか、の設置を機に、そういうふうな試験研究公務員の法制の整備ができることは、これは非常に必要だと思っております。そういう点につきましても、これは御協力をいただければ大へん幸いだと思っております。
  69. 海野三朗

    ○海野三朗君 今適材適所というようなことは、まことに御便利なお話としか私は受け取れない。重工業局、軽工業局、繊維局のような日進月歩の近代産業、科学技術を主とする行政に、商工省開設以来自然科学系の町長が今まで何人おりましたか。いかに人材がない、人材がないといっても、この重工業、軽工業、繊維局のような最も近代産業の科学技術を主とするこの行政に、商工省開設以来、自然科学系の局長が今までおったことがございますか。いかに人材がないといったって、商工省始まって以来何十年になりますか。その間にただ一人の自然科学系の局長もいないということは、何といっても、適材適所とあなたはおっしゃるけれども、私はあなたのお説に賛成したいのだけれども、そういうことが今まで何人ありましたか。それから見たら、局長には技術官は決してなれないという内規がある。そうでしょう。ここを私は突くのです。あなたが幾ら詭弁を弄しなさっても、今まで何人ありますか、開設以来、私はそれをお伺いしたい。
  70. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) まあ商工省開設以来のことは私調べておりませんが、ただ局長には技官がなってはいけないというような内規はございません。これは前回申し上げましたが、戦後の通商産業省になりましても、たとえば鉱山保安局という局の局長は技官であった方がむしろ、多いとは申しませんが、技官であったこともございますし、また地方の通産局長でも、技官でちゃんとつとまっております。これは本人のいわば能力問題、言葉は悪いですが、いわば能力問題。従って適任であれば、これはひとり鉱山保安局と限らず、他の局でも、局長たるべき人は局長にしてけっこうだと思っております。別段そういうような不文律も内規もあるわけではございません。ただ不幸にしまして、現在重工業局長、あるいは軽工業局長という適任者があるかどうかということは、これはなかなかいろいろ御意見の分れるところだと思います。ただお答えしておきたいのは、事務官といえども、そういうような新しい技術に対する理解がない人が、これはそういう局の適任とは言えないと思います。逆にその専門の分野の技術的な知識がありましても、たとえば機械関係全般のあり方について部下を指揮し、対外折衝に当るという能力のない人は、これはいかに専門の分野の知識があっても、私は局長として適任ではないだろうと思いますということでありますので、これは単に技術的知識の有無ということよりも、そういうような管理の職にあります者は、広い視野に立って部下をうまく指揮し、人の話をよく聞き、そうしてこれを自分のものとして正確にこなしていくという人が、これは一番適任だと思っております。お言葉ではありますが、私必ずしも技官職でなければならぬとは思っておりません。
  71. 海野三朗

    ○海野三朗君 鉱山や石炭や鉱山保安局も現在一名も技官の局長がないでしょう。ときおりたまにその懐柔策として鉱山の保安局長を技官をもって充てたためしも今日までないことはないのです。で今お話しのように適材適所だとおっしゃる。これは最も必要なことでありますが、通産省開設以来、そういうふうな局長を自然科学系の者をもって充てたためしがないところからすれば、技術者というものは一体劣等人種であるか、そういうことになるでしょう。同じ人間でしょう。それを局長にしないというのはどういうわけであるか。ここに私は非常な疑問を抱くものである。何ぼ人がいない、人がいないといったって、通産省始まって以来何十年になりますか、その間に局長に技術者を充てたためしがないというのはどういうわけですか。それからまた、事務次官についても同様である。その点を私はとくと虚心担懐に考えていただきたい。私らは自分たちが事務官であるからとか、技術官であるからとかいう狭い視野に立って私が言うのではなくして、今現在のこの日本の状態を考えて私は申し上げておる。あまり偏重し過ぎておる。ことに通産省に至っては、この資料を提出されておりまするが、だれが見たって、適材適所だと言ったって、それは通らぬですよ、このざまでは。そうして局長というと一年半か二年でぽんぽんぽんぽんかわっていってしまう。よくしかし覚えられるものだな、私は感心した。そうかと思うと、通産局長、こんどは外交官にとんでいった。いや大したものだ。そういうふうな事務官のあり方がいけないと私は申し上げる。日本のためにはならない。今、日本はこの科学技術、技術者を総動員して、ほんとうに盛り上がる力をもって、この科学技術の振興をはからなければならない、貿易振興をはからなければならないときに、この技術者を頭打ちしておって、局長の地位も与えなければ課長の地位も与えないでおいて、そうして一方で技術の振興とか何とか言ってラッパを吹いたって、笛吹けどもそんなに私は踊らないのじゃないか、踊り得ないのじゃないか、私はその点を憂うる者なんです。私が技術出身であるからかく申すのではありません。日本の今の現状を考えてみると、科学技術をおいてほかに立ち上るべき道がないと私は考える。何と言っても科学技術の、これを振興しなければ日本の立ちゆく、九千万の人が食うていく道がないのである。雇用関係でありますとか何とか、さっきいろいろ論じられましたけれども、次々新しいこと新しいことと、この科学技術の方で分野を開拓していかなければ食うていけないのじゃないかと私はこう思う。こういう広い見地から立って私はあなたに対してもまことにいやなことを言って、私もこんなことを言いたくない。通産大臣にこんなことは申し上げたくない。本当はそうだけれども、そうしなければいけないのじゃないか。通産省はことにはなはだしいのですから、実にあきれかえってしまう。この技官のいわゆる虐待の仕方だと、私は一言にして言えばそうです。事務官の方は権力のある地位について、そうしてその待遇もよくて、いわゆる法科万能の弊があまりに激しいのではないか。これを何とかして改めていこうという考えが官房長あたりにもおありになるかどうか。大臣はその辺はよくおわかりになっておると私は思いますけれども、あなたが立案される、あなたは俸給でも何でも、昇給でもあなたが立案される。この次の課長はどこに行く、この次の局長はどこに行く、公文を通った人は皆リストに載っておる。それでわが党を謳歌することはいいかもしれないけれども、課員全体を考えていただかなければならないと私はこう思います。官房長、どういうふうにお考えになりますか。私はそういう見地に立って、適材適所とおっしゃるのは、ごもっともですが、適材適所といったって、開設以来いわゆる技術官の局長が一人もなかったということは、しからば技術者というものは劣等人種か、事務官に比べて……。それを私は聞きたい。今まで何十年という間にただ一人の局長も自然科学系から出していないということは、この組織がいけないのである。なぜいけないかというと、官房長自体、その人がもうそれ自身高文を出た連中によって固まっておる。これは通産省ばかりじゃありません。農林省だって皆全部こうなんです。その中でも、量もはなはだしいのが通産省です。それでありますから、このミシンのざまをごらんなさい。まるで鼻持ちならない状態です。通産行政のあり方というものは、これは技術を虐待しておる。結局そうなんです。事務官の人はわからない。それをわかった格好をして事務的にさっさとやってしまう。それを一つその例を申し上げるならば、過日ミシン業者が通産省に行きまして、生産のワクを締められましたので、実に私ども今生活に困るということを訴えたところが、通産省のある事務官の課長が、ほほう、君の方で売れ方が少くなった。それじゃほかの方から売れるからいいじゃないか、こういう同情もなき言葉を放っておるのであります。どうでしょうか。官房長、それはよくお調べ下さい。そういうことを言われたというて、ミシン業者が泣いて私のところへ来ておった。何という情けない同情のない言葉を言われるか。君のところで売れないったって、ほかからどんどん売れるから、結局同じことじゃないか、こういう言葉を言われたと言っておりました。官房長、そういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  72. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) ミシンのお話し、これは前回もお話ありましたが、課長が事務官だからそういうことを申したかどうか、私もよく存じませんけれども、ただこれは御承知と思いますが、ミシンを所管いたしております産業機械課の配置を見ますると、これはむしろミシンの担当は古参の練達堪能なる技官がやっているわけであります。外資導入の問題にいたしましても、これは別の人間でありますけれども、やはり相当年数役所におります連中がやっておりまして、むしろまあ重工業局のほかの課の編成も大体これに近いようであります。事務官の課長は、むしろ技官職員の上に乗っかって仕事をしておるという態勢でございまして、事務官、技官といわず、これは一体になって仕事をやっておるということは、この前も申し上げた通りでございます。今のような言葉を申したとすれば、これはまあ何かの言葉の行きがかりか、あるいはあやからかと存じますので、この点はなお十分注意はいたしまするが、役所の仕事はそういうふうに、たまたま課長なり、班長の地位に坐っております者は、事務官であっても、内部の組織はやはりそれぞれ分担に応じて必ず練達な技官が補佐しておるというのが、まあ重工業局あたりの実情でございます。軽工業局もおそらく同様だろうと思っております。それから局長になれぬでも人種が劣等とは私は考えておりません。局長になる、なれぬというのは、これはむしろ別の見地からの問題でございます。先ほど申し上げましたように、人間としましてはりっぱな方でも、これは局長としての管理職的な才能があるかないかということは、これはむしろああいうふうなある組織の上に立つ人の能力だろうと思っております。それがないからといって、人間が別段どうということは、これはないと思っております。それからまあ局長になったことがないというお話しでございましたが、まあ私の記憶します範囲では、あるいはないかと思っております。ただ鉱山関係なんか、御承知のように鉱山局長、あるいは石炭関係の局には、これは技官の局長等が出たこともあるようであります。あるいは石炭庁あたりの次長というような要職にも技官諸君はついております。これはもっぱら申し上げましたように、その人の適所適材でそういうふうな地位につく、ある職場を管理する能力があるかどうかということが、適所適材の判断の仕方だろうと思っております。だから別段どの職は技官でなきゃならぬ、事務官でなきゃならぬのかというふうに考えますと、これはまた適材適所を得るに障りになりますので、全体を考えまして一番いい適任者をその地位に据えるというのが、前々から申し上げましたように人事の要諦だろうと、こういうふうに思ってやっております。
  73. 海野三朗

    ○海野三朗君 あなたが適材適所とおっしゃるのは、それは逃げ口上なんですよ。実際はこれはごまかしもはなはだしいですよ。通産省始まって以来何十年という間に、ただ一人の自然科学者も局長になったためしがないのです。それを言うのです。私は適材適所とあなたはおっしゃるけれども、一ぺんも局長になるような技術官がなかったとすれば、科学技術者というものは劣等人種じゃないかと私は言うのです。一人ぐらい二人ぐらいはたまには局が幾つあるか、その局のうち二人や三人局長にはあるいは技官がおってもいいのじゃないか、私は常識から考えてですよ、あなたは適材適所であるから人がいないと、こうおっしゃるが、それは私はどうしたって詭弁としか思われない。何十年の間を通しても、技官の局長というものはほとんどないのであります。これをどういうふうにお考えになるか。いかにあなたが詭弁を弄しなさっても、これは少し考えてみなきゃならないのじゃないかとあなたはお考えになりませんか。もう少し、これは過ぎておったなというふうにお考えになりませんかどうなんです。何十年という間に一人もいないということはないと思う。
  74. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 過去の事実のことは私はよく存じませんが、まあそれは過去におきましてはいろいろ高文制度というのがございまして、現在とまるで違っております。旧商工省時代、あるいは敗戦後の公務員制度の改革まで、だいぶ違っております。ただ現在のことを申し上げれば、先ほど申し上げましたように、局長になった諸君もだいぶおります。これは先生がいないとおっしゃいますけれどもおります。たまたま重工業局長であったり、軽工業局長であった人はおりませんけれども、鉱山関係その他におるわけであります。従ってこれはもっぱらそのときの何といいますか、に適当な人がいるかどうかという問題であろうと思っております。
  75. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  76. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をつけて下さい。
  77. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 大臣に一つ伺ってみたいと思いますが、大臣は先ほど貿易振興ということに対して強くお話がございましたので、私も非常にこの問題については心強く考えておるわけであります。また、今日の日本として私は当然そうあるべきことであると考えております。ところがまた最近の、実は造船の、外国船の受注でございますが、たくさんに入って参りましてかなり造船界は活況を呈しておるようでございます。まことにけっこうなことでありますが、ところが最近の世界的景気とでも申しますか、鉄鋼材料が猛烈な暴騰をしておるわけであります。私が調べてみますると、昨年のちょうど今ごろと今日とは約五割も暴騰をしておるように考えております。また銅等におきましても、かなりの暴騰をしておる。ところが外国船の受注の状況を見ますると、かなり安い値段で引き受けておるのでありまするが、こういうふうに非常な鋼材が暴騰し、またその他の物が暴騰いたしておりまする際でございまするので、そのいわゆる造船メーカーは非常な四苦八苦でこれをやっておると私は考えております。ところが最近の状況を見ますると、その受注工場はこれを何とかやはり赤字をなくこれを仕上げたいということからいたしまして、下請に対して猛烈な値段の引き下げを行なっておるのが、今日の現状でございます。鋼材が上っておりまするから、船体自体のことはかなり自分の所でも他の鋼材の値上りのためにお困りになっておるでございましょうが、その下請をしておるところの補機とでも申しますか、補助機械ですな、補助の機械の下請工場等は今材料費を払いますると、工賃が全然なくなるというような状態になっておるようであります。その材料の仕入れに当りましても、今日の場合鋳物類などはほとんど銑鉄がないために、事業を休んでおるというような中小企業がたくさんに今日あるのであります。こういうふうに幸いに貿易伸びた、貿易伸びたし、大工場は仕事がある。その仕事があるために中小企業に対してもかなりの仕事が流れておるのが、事実上において今日ではもうやれないような状態になっておるのでありますが、この鋳鉄なり、鋳物なり、あるいは鉄鋼なりの対策に対してはどういうふうなお考えをお持ちになっておりますか、伺っておきたいと思います。
  78. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 鉄については実際困るのでありまして、今の日本状況ではまあいわば簡単には手の打ちようがないというくらい、もう国際的に上って参りました。ですから現在はできるだけ一つ国内の価格も押える措置も講じておりますが、これは需給関係ですから、実は建値を抑えても市中で上ってしまうというようなことになっておりまして、実は困っておるわけであります。でありますからまあ輸入できる限りはできるだけ輸入を許す、あるいはスクラップのごときは今大蔵省の方を督促して最近はだいぶん順調にいっておるようでありますが、政府手持ちのスクラップは思い切って吐き出させるというような処置を講じておりますが、これは残念ながら根本策とは申せないのです。造船会社にも、鉄の価格というものは動くのでありまして、日本のような一定価格でなく、国際価格が上った場合は、引き受けた請負の船価も変えられるような、何らかエスカレーター方式をとらなければいかぬということが、昨年来強く造船会社に言っておるのでありますが、どうもまだ日本の造船会社が弱いためでありますか、そのようになっておらぬようであります。従ってお話しのようにそのしわ寄せが中小企業の機械のメーカー等にいくということもあるかと存じますが、実情はさようなわけでありまして、先ほどここへ法案をできれば出したいと言いましたのは、下請企業に対する支払いの問題なども、そういうことにも幾らか結びついて考えておるわけであります。
  79. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 私手近な例を申し上げますると、川口等における鋳物業者はだいぶん今休業をいたしておるのであります。そうして鋳物用のいわゆるズク並びにスクラップでございますか、こういうものがどうも実際にはかなりまだあるのではないかと思われる節があるのであります。ということは、いわゆる売り惜しみをしておる傾向がかなりあるのではないか。現にこの二月に鋳物用の銑鉄は二千円の値上げが発表されております。そうするとこの二千円の値上げが発表されただけでも、ぼつぼつ銑銑が動き出しておるのであります。同じように銑鉄が上ると、スクラップもそれにつれて上って、ぼつぼつ動き出しておるというようなことでございますから、そういうことはまあ商売というものでありますから、だれも儲けたいということは、これは人間のあれであるとは思いますけれども、何かこういうことに対して、通産省としてはそういう原料を売り惜しみをするというようなこととか、あるいは大製鉄所からじかに引き受けてきますところの問屋筋、こういうところに対して何か手を打っていただく方法はないか。
  80. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 大きなメーカーとか大きな商社に対しては、相当始終、法律的な根拠があって強制するというわけにはいきませんけれども、注意を促してそういうことのないように、たとえば鋳物業者でも個々に訴えてくるものもございます。そういう場合には富士製鉄なり、どこなり連絡をして、その材料がなるべく入るように通産省が仲介をするというようなことをいたしております。どうもちょっと考えるのに、われわれは物の上るのはいやですから、建値を押えるなんということをしておるが、あるいはかえって価格を押えようとして、実際には需給関係が悪いにかかわらず、価格だけを抑えようという現在の政策にどこか誤まりがあるかもしれません。
  81. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 これもまあ関連いたしますので、大臣に伺うのがあるいはどうかとも考えますが、大工場から中小企業のしわ寄せの問題でありますが、まあ仕事の量はかなり多くなってはおりまするけれども、いわゆる支払いの面でございますが、大工場からの支払いが非常に最近むしろ悪くなってきておる。十二月に六月、七月という手形がかなり出ておることを私はたくさん知っておる。しかも相当の会社が六月、七月の手形を出しておるのを知っておるのであります。こういうふうに大工場がよくなりつつあるのに、そうしてそのよくなったところは金利の立つところの銀行に対してどんどんと金の返済をしておる。そうして金利の立たたない中小企業に向ってどんどんと長期の手形を発行しておるというこの現在の状態に対して、何かやはり通産当局としてお考えなり、手を打つ方法はございませんでしょうか。
  82. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 非常に名案というものはなかなか実はないのです。ないのですが、ここにまだ未定になっておりますが、中小企業に対する支払いの何ができれば、この下請代金等支払促進法案という妙な名前がついておりますが、まあこういうものを出してみたらどうかというので今研究しておるのであります。
  83. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 まあこういう問題はいかに大臣であろうとも、なかなかそうちょっと簡単にこうだというようなことはおっしゃれないことは私もよくわかります。わかりますが、このままで参りますると、まず少くとも造船関係の下請、それから車両関係の下請、特に自動車関係であります。自動車関係の下請等はほとんど、これは世の中がよくなった、よくなったというその声ばかり聞きまして、その実皆倒産をしなければならないというような私は現状であると思います。まあかようなことをお考え下さいまして、一つ通産行政に対しましても格段に一つお骨折りをいただきたいということをお願いいたしまして、私は質問を終ります。
  84. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  85. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記を始めて。  本日の通産行政の根本方針に関する質疑はこの程度で終了いたしたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 御異議ないものと認めましてさよう決定いたします。  速記ちょっとやめて下さい。   〔速記中止〕   ―――――――――――――
  87. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をつけて下さい。  前回の委員会において委員長に御一任を願いました委員派遣日程についてお諮りいたします。委員長はこの際委員派遣の編成を第一班、第二班といたしまして、第一班を関西地区、第二班を北九州地区といたしまして、現在懸案になっておりまする問題、本国会に提案される予定であります案等に関係のある業種等について、限られた日程において十分なる効果を上げるように日程を編成いたしたいと思いまするので、委員長に御一任を願いたいと思いまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それではさように取り計らいます。なお派遣人員は一班三名、二班三名といたしまして、自由民主党、社会党、緑風会より各二名ずつをもって編成をすることにいたしましたので、事務当局に希望の向きはお申し出を願いたいと思います。  それでは本日はこれをもって散会いたします。    午後五時十一分散会