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1956-05-17 第24回国会 参議院 社会労働委員会保険経済に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十七日(木曜日)    午後一時四十六分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     山下 義信君    委員            榊原  亨君            谷口弥三郎君            相馬 助治君            田村 文吉君   政府委員    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生省保険局健    康保険課長   小沢 辰男君   参考人    日本医師会副会    長       丸山 直友君    栃木県医師会  成田  至君    日本炭鉱労働組    合厚生部長   佐々木正男君    全国繊維産業労    働組合同盟本部    長       上田 豊造君    全日本国立医療    労働組合書記長 亀山 担二君    全日本造船労働    組合厚生部長  小西 昌二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○保険経済に関する件     —————————————
  2. 山下義信

    委員長山下義信君) これより社会労働委員会保険経済に関する小委員会を開会いたします。保険経済に関する件を議題といたします。  本日は本問題に関して参考人方々の御出席を願っております。小委員会を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々にはお忙しいところを御出席下さいまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  当小委員会におきましては、社会労働委員会において目下審査中の健康保険法の一部を改正する法律案審査上の参考に資するため、保険経済の各方面から見た基礎資料検討を行う目的をもって調査を進めているのでございます。何とぞ当委員会の意のあるところを御了承下さいまして、御意見を御発表下さいますようお願いいたします。  これから御意見発表を願うのでありますが、その事項につきましては、あらかじめお願いいたしておきました事項につきまして御発表を願い、後ほど委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。ただ時間の関係もありますので重複した点は御省略を願うことにいたしまして、なお主として数字に関することでございますから、なるべく簡潔に重点的にお願いいたしたいと存じます。  佐々木さんはお急ぎになるとのことでございますから、佐々木さんからお願いすることにいたしたいと存じます。  日本炭鉱労働組合厚生部長佐々木正男さん。
  3. 佐々木正男

    参考人佐々木正男君) 佐々木でございます。  参考人に来てくれということで資料もいただきました。検討を加えてみたわけでございますが、何しろいただきまして日も浅く、しかも御存じのように、私たちの所管する場合、政府管掌の分が非常に少いのでございまして、そうした面で数字に対する突っ込み方に対しては他の参考人の方よりもあるいは不足の点があるかと思います。しかし、現在まで考えて参りました、それからいただいた資料検討の中で思いつきましたことを申し上げてみたいと思います。  今回いただきました資料を見ますというと、この資料が私どもの立場から、政府側資料であるから、あるいは統計であるから信じないと、こういうわけではございませんけれども、当時論議されておりますいろいろの保険財政との関係の中で考えますというと、数字そのものにまず第一に疑問が持たれてきたわけでございます。一例として申し上げますと、この昭和三十年度の予算と決算見込み、それから二十九年度並びに二十八年度とさかのぼって参りますと、三十年度の予算に対する決算見込み、これをいつの時期で推定いたしましたか、具体的に出ておりません。私どもの判断では、ごく最近の状態の中で推定されたもの、このように判断するわけでございますが、そうなって参りますと、収支のバランスの状態は大体この数字では赤字二千八百万程度と、このように見込まれております。三十年度の決算見込額赤字二千八百万円である、こういう状態数字の上で表われており、しかもこういう実績とみなされていいような資料基礎にいたしまして、三十一年度の推定見込赤字六十六億、こういう膨大な開きというものについては、われわれから見まして非常に疑問がわいて参るわけでございます。もちろん出されております予算その他を見ますというと、被保険者の数の増大、あるいはまた医療給付内容の充実、あるいは入院もしくは入院外のそれぞれの支出増加、いろいろあるわけでございますけれども、それにいたしましても、そういう支出の増に伴って当然収入の増というものが、機械的に比例はいたしませんまでも、上昇して参ってきておることも事実でございます。そういう全体的な傾向から見まして、三十年度二千八百万の赤字が三十一年度でいきなり六十六億にはね上る、しかもそれが一切が被保険者負担の中で消化されようとしておる、こういうことについては、非常にわれわれとして不満な点でもあり、また数字の上からも、一体この数字のこまかい内容というものが何を基礎にして、どういう組み立ての中で出たものか、こういう点で疑問を持つわけでございます。特に考えられますことは、医療給付の例の今回の別に資料としていただきました予算書ですか、この数字から見ますというと、医療給付内容、十五ページ、もしくは六ページから始まりまして以下ずっと基礎計数というものが出ております。これらを全体を総合しますというと、受診率は三十年度と同じかあるいはこれをこえておる。平均しますというと、大体三十年度に比べて三十一年度は上昇しております。また、被保険者数も同様これもふえて参っております。大体四%あたりかと推定いたします。さらに一件当り点数、これにつきましては十六ページかと思いましたが、これには全然三十一年度の見込みとの対照というものが載っておらない、こういう資料の下足などもこの中にあるように思うのであります。これは、三十一年度の見込み数が載っておらないということは、言葉をかえて言うと、三十一年度にはそう大きな異同がないと、このように判断されておるのではなかろうか、こう思うわけであります。そうしますというと、これを一定のものとすれば、受診率が上り、被保険者数が上り、しかも一件当り点数一定状態、こうなって参りますというと、総体的には一応医療給付がふえるということはわかるわけでございます。しかし、ふえる医療給付内容が果してどこまでの基礎数字——伝票一枚々々当るわけでございませんので、どういう基礎数字の中で出てきたか、こういう点につきましては、特に三十一年度のわれわれに出されております収支予算見込み、この膨大な開きというものと関連して考えるというと、ますます疑問が大きくなって参るわけでございます。特にそういう支出は上廻る状態にありながら、この四ページの保険給付費、これを見ますというと、三十一年度の方が減るというような形で出されておる、こういう矛盾もこの中にあるのではなかろうか。もしこれが医療給付内容の締めつけという形で減るという結論を出したとすれば、われわれの方が叫んでおるように、改正は思いとどまっていただきたいという結論になるわけでございます。これは数字の上ではいろいろなつじつまは合せられるのでございましょうけれども、実際問題としては、保険医療全体に対する後退だと、このように判断されるわけでございます。また、もし数字をさらに細部にわたって突っ込んでいくとすれば、この一人当り金額、これに対するできるならばもっと具体的な、あるいは地域別とか等級別とかいう形で分類された、組み立てをなすに至った基礎的な数字というものが同様示されていいのではなかろうか、これがないところに、私どもとしては個々数字を突っ込んでいくという努力のいたし方がないわけでございます。  いろいろ数字の上では申したいことがございますけれども、特に私は三十年度の収支見込みと三十一年度の収支見込みとの差が、二千八百万に対する六十六億、こういう膨大な開きが出ている、このことに問題を置きたいと思います。戻るようでございますが、二千八百万という赤字見込みがもし正しいとするならば、わずかこれだけの赤字を患者に負担させるという方法をとるよりも、従来までの保険の上の中でこれをもっと何とか別の形で合理化することによってこれをゼロにするという可能性もあるわけでございます。二千八百万の赤字はこれを消すという可能性がある。その可能性がある限り、これを黒字に転化するという可能性もまたそこから出てくるのではなかろうか、このように判断いたします。以上、特に三十年度の見込みと三十一年度の見込みとのあまりに大きな食い違い、これについての私なりの考え方、非常に抽象的ではございますけれども、申し述べて参考にしていただきたいと思います。  最後に、私ちょっと急用がございまして途中で帰るわけでございますが、もし御質問いただけるならば、その質問の中でさらに個々の例、もしくは私なりに考えておりますことを、その質問に対してお答えするという形で意見を申し上げてみたいと希望しております。
  4. 山下義信

    委員長山下義信君) ただいま申し上げましたように、佐々木参考人は所用のため先に退席されますので、佐々木参考人に対する御質疑がございましたらお願いいたします。
  5. 相馬助治

    相馬助治君 ただいまの昭和三十年の赤字が云々とおっしゃったですね、それは赤字でなくて、この財政上の赤字であって、実態の赤字はもっと大きいことは認めていらっしやるわけですね、事実問題として、十億政府が出し、六十億の資金繰りをし、そうして今度は今佐々木参考人おっしゃったような差が出てきておりますですから。
  6. 佐々木正男

    参考人佐々木正男君) ここで出されている——隣りの参考人の方には来てないらしいですが、私の手元にいただいているこの健康勘定年度別予算決算比較表、これでは確かに借入金六十億を見込んで、二千八百万の赤字、こういう数字が出ているわけです。六十億の借り入れはこれは当然国家としての、政府としてのいわゆる日本社会保険に対する協力のあり方として、当然と言っては言葉が過ぎましょうけれども、当然ではなかろうか、こういう一応の考え方に立って、私ども結論としてこの二千八百万という赤字を知っているわけです。
  7. 相馬助治

    相馬助治君 わかりました。さようでしたらわかりました。この資料はごらんになってのあれですか、厚生保険特別会計……。
  8. 佐々木正男

    参考人佐々木正男君) いただいております。きのういただきました。
  9. 山下義信

    委員長山下義信君) 他に御質疑ございませんか。——質疑がなければ佐々木参考人の御意見の聴取は終ったことにいたします。ありがとうございました。  次は、全日本造船労働組合厚生部長小西昌二君の御陳述を願います。
  10. 小西昌二

    参考人小西昌二君) 全造船小西です。私もきのう厚生当局の出されました予算明細書をいただいたのですけれども、この中で、故意故意でないか知りませんけれども、大きな問題点があるので、先に厚生省にお伺いしたいと、かように考えております。と申しますのは、保険財政はすべて収入から考えなければできない。その場合に、昭和三十年の三月の被保険者数でございまするが、四百九十四万六千八百三十三名とここにしるされております。しかしこれがそうであるかどうか知りませんけれども、私たちもいただいておるところの事業月報によります三月分の累計によりますと、男が三百五十三万九千九百七十九名、女が百四十万八百五十四名、計四百九十四万八百三十三名となっております。そうするならば、これは八月分から二月分をマイナスして、それを六等分して一カ月分を出しております。このような場合には分子はその数が少くなればそれだけ被保険者の数が増加しておるということになるわけですが、その点を明確にしてもらわぬと、私の方の意見が出せないわけでございます。一つ先厚生省当局からお答え願いたい。
  11. 山下義信

    委員長山下義信君) ちょっと小西参考に申します。参考人の方と政府と直接の質疑応答は、議事規則でできませんので、一応疑問点をおっしゃっていただけば、あとで議員の方で適宜審査をするかと思います。
  12. 小西昌二

    参考人小西昌二君) もしも四百九十四万六千八百三十三名がそうであるならば、これにつきましての一万五千の増加率ということは、私の計算からいきますと、やはり標準報酬月額の場合には、これを出す場合には、三月から十月の実績で出しております。しかし、被保険者の数を出す場合には二月から出しております。これは大きな矛盾があるのではないか、やはり標準報酬月額を、実績が十月までわかっておるならば、やはり被保険者の数の実績も十月で出すべきである、かように考えております。それでまず月報が参りましたのが九月分まででございますので、三月から九月分までの六カ月分として計算をしてみました。そうすると、九月分の実績は、九月分ではここでは五百十三万二千四百七十三人ということになっておりますけれども事業月報の方では五百十四万六千七百七十六名……オーバーしております、若干一万四千三百三名オーバーしております。九月の実績は、三月の分をこれは四百九十四万八百三十三名とし、九月分の実績を五百十四万六千七百七十六名、こういたしますれば一カ月三万四千三百二十四名という数字が表われて参ります。そうすると、安全度を二分の一求めましても、一万七千百六十二名というのが出てこなければならない。それを厚生当局収支の分につきまして、どのように考えておるかしらないが、一万五千九百七十一名ということを出しております。そうすると、これを概算いたしましても、二千名という数字がここに違って参りますと、一カ年には二万四千名という数字が違って参ります。そうすると、非常にここで二万四千名のこれを、標準報酬を、保険料を納めるということになりますと、若干の支出が多くなってもこれはかぶされるのじゃないか、かように考えておるわけでございます。  それから第二点でございますが、健康保険法の四十六条でございまするが、四十六条の場合には、独身者入院した場合は百分の四十、このようになっております。しかし、十八ページの四の傷病手当金の中では、あくまでも十分の六といろ数字で概算が出されております。まず標準報酬を見た場合に、三千円から六千円までの人は、大てい独身者だと私は考えております。その場合は九月現在でございますが、女は九十八万七千二百四十八名、三千円から六千円までで。男の場合には六十万九千七百八十三名、合計百五十九万七千三十一名という数字が六千円以下の人であります。そうすると、被保険者数が五百十四万六千七百七十六名からいきますと、三十一%という人が独身者とみなしても差しつかえないのじゃないか、そうしますと、ここで百分の六十ということが四で書かれております炉、三一%それからマイナスかけまして、それで百分の四十、こういうふうにかけて、それを計算を出さないといけないのじゃないか、かように考えるわけであります。そうすると、現在出されておりますところの数字を見ますと、七十九億という膨大な傷病手当金になっておりますけれども、その二〇%というものを削除することにいたした、これはどのようにこれが可能であるか知りませんけれども、まだはっきり数字を出しておりません、計算器は持っておりませんので、自宅でやりましたので、計算器でやっておりませんからわかりませんが、相当の範囲で削減されるのじゃないかと、かように考えております。  次は事務費の問題でありますが、この事務費の問題で若干私は疑問を持っているわけであります。と申しまするのは、本法の中にも事務費国庫負担でやるということが明記されております。第七十条は「国庫ハ毎年度予算範囲内ニ於テ健康保険事業事務執行ニスル費用負担ス」と書いてあります。明らかに明文化されております。しかるに、支払基金部におきましては、ここに出されておりますのは五徳、小さい数字は省きますが、五億というこの十七ページの方に「基金事務費を含む」ということで、これが療養給付費の中の総額の中に含まれております。そうすると、支払基金によりますると、支払いはすべてこの被保険者保険料の中から納めなければできないのか、第七十条でははっきりと国庫負担ということを明示しながら——組合管掌の場合は違いますが、政府管掌の場合にははっきりと出ている。それで事務費については十三円——、この膨大な数字を、五億九千万円という数字をこの中に包含して、支払いをわれわれに課するということについては、若干問題があるのじゃないかということを考えております。  次は、これは厚生省当局はどのように考えておられるか知りませんけれども、この総医療費のワクを作るときの考え方でございますが、まず労災法との関係も考えなくてはできないわけであります。労災法の中で十二条の第二項には、公傷の場合にはこれは七日未満の場合には会社が負担し、七日以上はこれは労災で適用するということになります。そのため使用者側公傷であるべきものを、最近は七日間の間に治療ができるようなものは全部健康保険法の中で振り込めるような行動をとっております。これにつきまして若干事例があがって参っておりますので、読み上げてみたいと思います。これは私の造船関係だけで出したデータでございますが、その中であがっていますのは二百五十三件、これは安全競争という問題でアンケートを出しました、その中でこのようなことが全部北は北海道、南は九州から参っております。読み上げてみます。  これは石州島、東京であります。  「確かと公傷私傷にされた例は私の知っている人であります。  唯、私の職場では仕事中でケガをした場合でも公傷手続が非常にやっかいなので、小さい傷ですとほとんどの人は私傷にしています。亦、大ケガをして休む様な場合ですと、あいつはもたもたしているとか云われ皆個人の責任にされてしまう傾向が強いです。」その次は年令二十四歳の男です。「或る人は、目に砂を入れたと言って私と一緒に第一病院に行きましたが公傷だったが私傷でかかったと言っています。それも二カ月もかかったと言うのでおどろきました。」次は二十一歳の工員ですが、「安全競争とは自分には良く解からない。あの様なことは止められるがいい。却って公傷私傷増加するであろう。  公傷をした際に他人に悪いから病院は行かずにしまって其の傷が終りで取返しのつかない事になる。此の様な事があるかも知れない。」私は非常に心配しております。このように二百五十三件という事例がここにあがってきておる。これから見ましても、公傷というすべて職業病——職業病でなくても、職業によりましてできている疾病健康保険めんどうをみていると言ったら失礼ですが、めんどうをみて、この中に、総医療の中の六〇%が結核であり、四〇%が一般診療であるならば、四〇%のその一〇%はこういう公傷病であるべきものを健康保険でこれはまかなっておるという傾向が現われておるのじゃないかと、私はかように考えております。そうすると、必然的に生じますのは、百分の六十の傷病手当金をもらう場合に、これは三日まで——法律で申しますと、若干めんどうになりますが、労務に服することあたわざりし日より起算して四日目からと、こうなっております。それで治療は受けられまするが、傷病手当金はないとしても、すべてやっかいでないというような健康保険の方にいくのではないか。やはり支払基金部が担当してこれをやっていく。よく監査制度をやっているというが、果してその事業によって起った疾病であるかないかというところまで、支払基金部は、はっきりとそこのところを調査しているのか、この点で私は非常に不満を持っておるわけでございます。  次にやはり、ただいまのは公傷私傷でございますが、これからお話ししたいことは、医学的な問題になって、私はお医者さんでないのでよくわかりません。しかし現在におきましては、ベンゾール中毒とか、これは塗装関係でありますが、土建総連とか、いろいろ労働者の中にありますペンキ屋さんの仲間でありますが、ペンキ屋さんの仲間ではベンゾールとか、アセトン、こういうものを使っております。そのために中毒症状を起しております。それが発作的の中毒症状であるならば、公傷ということで病院にやることもできまするが、微量なものを体内に備蓄しますると、これが必然的に長い間にやはり中毒症状を起しておる。しかしその中毒症状を起しておっても、実際上においては工場内でやっておるのでないから、工場内で発病しておるのではないから、必然的によその病院に行くわけです。そうすると業務上だと見る。このベンゾール中毒そのものが私病でこれがなされておるということは、塗装関係東京関係でも現在土建総連仲間の五〇%は、これは全部健康保険でやられておるという実例があがっております。  このようにして保険財政を見た場合に、そういうところまで労働省厚生省当局とがはっきりと妥結してそういうことをやっているのか疑問でございますが、実際上におきまして、こういうことは保険財政を審議する場合には、許すべからざるところの行動ではないだろうかと私は考えております。  それで第二点、職業病でございますが、歯医者さんの場合でもはっきりとこういうことが言われるわけであります。歯医者さんの場合でも、これは硫安工場でございまするが、硫安工場の中では歯牙侵蝕症という、歯がぼろぼろぼろぼろいってしまうという病気があるわけであります。この場合ではやはり硫安工業ではその対策として職業病に扱うかもしれません。だけれども、普通の一般産業のこういう硫安を使っている人、またこういう有機物を使っている人につきましては、やはり歯が参っております。その場合には歯医者さんに行く場合には、全部私病という格好でやられております。これがずっとそのような問題を摘発しましてデータに表わすと造船関係だけではわかりますけれども、よその産業のやつはそこまで表われておりません。また、厚生省当局も、労働省当局も、そのデータは持ち合さないだろうと考えております。もしもそのデータがありましたならば、そのデータに基きまして総医療費体系がどれだけこれは浮いいてくるという御説明はできると思いますが、私の意見としてそれだけを申し上げたいと考えております。  それから次は、昨日参考人の中にもございましたように、八月をピークとして疾病が高いじゃないか、かようなことでございまするが、これはやはり日射病、それから七月、八月になりますとやはり身体の疲労度から参りまして、やはり疲労度に基きまして疾病が多くなっております。そういう予防上の処置はやはり工場内で講すればいいのですが、このわれわれのような大きな単産、私は長崎造船所でございまするが、大きなところではいろいろの薬物をあてがっておりますけれども政府管掌の分に該当するような三百名以下の事業場についてのそういう衛生対策というものは、おそらく行われておらないのじゃないか。そうするならば、必然的に八月のピークが出てくるということは明らかになってくるわけでございます。それに対する予防上の処置として何らかこの法案に予防上の問題が取り上げられておるならばけっこうなんですが、現在の健康保険法ではこれは予防上の処置は認められておりません。そのために病気になって初めてかかる法律でございますので、そういう疲労度に重なりまして必然的に出てきた疾病がこういう工合にピークになって出てくる、かように考えております。それから総医療の中で一番問題になります今度の支払いの総医療費でございまするが、この総医療、これを見まするならば、これはピークの高くなる時分から算定しております。まず算定を出します原因は、保険者数の出し方といたしましても、四月から十月まで、やはり療養の場合でも私は四月から十月になるんじゃないか。そうするならば、このカーブを見ましても、やはり四月から上りまして、八月、十月ではややというところで下っておりますが、それ以後はぐんと下っております。それを平均してやるならばよろしゅうございまするが、四、五、六、七、八、九、十と七カ月分、五カ月分の低いところはカットしてしまって、高いところだけの計数を出して表わすことについては若干これは疑問があるんじゃないか、かように考えます。それで数字的に表わせと言いいますと、しばらく余裕をかしていただきますと数字的に表われてくるかもわかりませんけれども、まず問題になりますのは、収入の分を減を多くして、支出の分を多くふくらまして、これを予算化しておる、こういう雑な収支決算の明細表ではわれわれとしては納得しがたいので、かようにしまして結論といたします。いろいろ問題がありましたねらば、その問題点質問によりましてお答えをいたしたいと思います。
  13. 山下義信

    委員長山下義信君) ありがとうございました。それでは御質疑はあとで願うことにいたしまして、次に全国繊維産業労働組合同盟上田豊造君にお願いいたします。
  14. 上田豊造

    参考人(上田豊造君) 委員長から紹介を受けました上田でございます。私の意見を申し上げたいと思います。  社会保険収入の面や運営等につきましては、実は私社会保険審議会の一委員といたしまして、今までいろいろと当局の御説明等を拝見いたしまして、それに伴いましていろいろと意見等も申し上げてはおるのでございますが、財政問題につきましては、先の佐々木参考人も申しましたように、実はそういう委員会の一委員といたしまして、関係はしておりましても、実際的に私どもがこの収支につきまして一つ一つ伝票をは繰ってみて、あるいはそれに伴いましていろいろの実際の実情を調べて、その上で結論を出したという過程ではございません。従いまして、当局の一応出されました収支の決算書といいますかあるいは予算書なるものをば、一応正直に間違いのないものであるという基礎の上に立ちまして検討を今まで加えてきて参っておりまする関係から、十分なる意見の開陳は困難かもしれませんが、まあそういう過程から考えまして、今の私が疑問にしておる点の一つは、収入の点におきまして、標準報酬の最低、いわゆる三千円以下の低額所得者というものが非常に数が多い。大都市と地方とは多少違いがあるかもしれませんけれども、たとえば東京都内事なんかを考えてみましても、中学校の卒業生すら大体三、四千円という給料をもらっておって、従いましてこれが一年、二年たっていけば、必然的にいわゆる定期昇給というものが伴いまするから、その者の標準報酬というものは高くなっていくという関係になるのでありまするが、昨年の示されました数字から見ていきますと、これが大体約十六万人という相当な数字を示しておる。これはおそらく季節労働とかあるいは区切られた、何といいますか、短期間の人の分がこの面の大きなウエートを占めておるであろうと思いますけれども、それにいたしましても、三千円以下の標準報酬の者がなおこれだけあるということにつきましては、非常に私どもといたしましては、いつも絶えず疑問に思っておる点でございまして、この三千円以下の標準報酬に対する、標準報酬の押え方といいますか、これは一つは事業主側がごまかしているとも悪く言えば言えるかもしれませんが、そういう点あるいは申告の手違いの点、こういう点につきまして当局の指導といいますかあるいは監査といいますか、そういうものが今まで十分でなかったのではないかと、こういうことを私は指摘したい。従いまして、そういう点をもっと厳重に指導していただきましていくならば、この数字は相当変っていくのではないかとこういう点を考えまして、この問題につきましては、一つ十分なる指導と調査をばお願いをしたい、する必要があるということをば力説したいのであります。そのことは、もう一つは、社会保障というものは今さら申すまでもなく、いわゆる持っておる者が持たない者の負担をしてやる、こういうのが私は原則ではないかと考えます。そこで今申しましたようなことからいたしましても、なおかつ、こういう低額所得者がどうしても残るという場合の私はその対策といたしましては、やはり先ほど申しました原則からいきまして、たとえばその者につきましては保険料率の低減をはかっていく、あるいはその折半負担事業主側だけがその者の分を負担するとか、あるいは国庫におきまして低額所得者の保険料を肩がわりしてやるとか、何らかのやはり対策というものが私はあって初めて社会保障の一環である社会保険の意義が生きていくのじゃないかと、そういう点からこれに対するやはり救済方法を一つ御考慮を願はなければならぬ、かように考えております。  第二点といたしましては、この間の衆議院の政府原案に対する修正点を見てみますと、どうやら政府原案の一部負担の額をば引き下げになって、その引き下げた額に対する金額のもって行き所はどうやら予備費をもって充当されるように私は聞いておるのでありまするが、さように予備費を動かすことができるといたしまするならば、もっともっと、予備費全体をば私はこの面に充てるといいますか、この面に充当をして、そうして一部負担の方へ回して患者や被保険者負担をば軽減するということが、これが一番私は望ましいのではないか、かように考えます。  第三点といたしましては、先の小西参考人も申しましたように、これは従来私どもも強く何年間か主張して参りました。いわゆる支払基金事務費が依然として医療給付の中の一つの項目かのごとくにして多年支出されてきておる。私の言葉で言うなれば、これは明らかに政府法律できめておるものに違反しておるのでありまして、法律違反ではないかと、かように考えます。このものを、一日も早く法律に明記されておるごとく、政府がすべからくその面をば負担すべきであって、従いまして今までの分も合せてこれは政府負担をして、医療費からの支出をばこのあたりで終止符を打つことは、これは私は当然の措置ではないか、これがいつまででも残されておるという点につきましては、実は厚生当局ともいろいろな会議で再三再四押し問答を繰り返してきましたが、何といいますか、大蔵省が一向言うことを聞かないという簡単に言いますとそういう理由で、いつまでも看過され、放任されておったということは、これは大きな行政上の怠慢ではないかとかように私は指摘したいのであります。  第四点目といたしまして、私ども財政を考える上に注目されなければならぬことは、いわゆる予算なるものは入るをはかって出ずるを制するという言葉でございまするが、そこで最近のごとく、いわゆる赤字財政になって参りましたときに、今さら言うまでもなく、これが民間企業でございますと、結局早い話が産業の合理化を行なって、やはり企業の継続をはかっていかなければならぬ。そのためにたとえば冗費の節約をはかるなり、あるいは悪く言えば、われわれに転嫁いたしまして人員の整理が出てくる、あるいはひどくなると、賃金の値下げが出てくるということで、とにもかくにも合理化というものが行われておる。ところが不思議にこの公共事業の中におきまし七は、その点が欠けておりまして、特に今日問題になっております社会保険健康保険赤字なるものに対するいわゆるそういう支出面に対する、今の申しました企業努力というものが一向に現われてないように考えまして、この点を非常に私は悲しく考えておるのであります。たとえば、まあ企業努力と申しましても、患者をば数を押えるとか、あるいはお医者さんの診療報酬をば下げるということはできませんが、たとえば一つの例といたしまして、薬価については余りにも努力が私は少いように、この点は強く感じております。皆さんも御承知のように、いわゆる大体毎年薬価基準というものを三月の月度をもって押えて、それをば公示されて、それが大体ほとんどが一カ年そのままの薬価として施行されておる。ところが最近ここ四、五年は、四、五年間ほとんどは薬というものは年々歳々低下しておる。私が実際各国立療養所やその他の療養所に参りまして、その点を調べましても、なるほど適切なる数字が表われておる、もちろん大きな病院になりますと、大量に買い入れますので、薬の購入につきましては、たとえば何といいますか、入札制度だとかあるいは共同購入とかいうようないろいろな便利な方法といいますか、なるたけ安く買えるようないい方法を講じているところと、それからまた、そこらの小さな療養所との比較で十ぱ一からげにはできませんが、それにいたしましても、厚生省説明を聞きましても、年々歳々これは月々薬価が変ってきておる、下ってきておる。それに三月の薬価の基準で、支払い基準で請求されてきて参りますから、たとえば去年の三月の薬価が下っておっても、なお十月や十二月に幾ら下っておっても三月の薬価の基準で請求ができる。こういう点は非常に私どもとしては合点がいかない。これは役所の仕事を専門にやっておる人はそれでいいかもしれませんけれども、われわれ民間の企業や事業所では、そういうばかなことは許されないことでありまするから、この点に対するもっともっと積極的なる合理化が望ましい。この点が一番大きなやり得る合理化の一つの方法ではないか。こういう点をば看過されておるということは私としては非常に困る。われわれ被保険者としては非常に困る。そのためにその被害が一部負担保険料率の上にまでのしかかってこなければならないということは、はなはだ迷惑でございまするから、この点に対する一つ対策をば積極的に本国会において十分おとりを願いたい、かようなことをば申し上げたい。  その他には、よく言われまするように、たとえば、不正受診とか不正請求というような点につきましてもいろいろと先ほど申しましたまあ企業努力の一つとも思える点もございます。こういう点につきましても、是は是、非は非としてやはりあくまでも合理的な運営といいますか、合理的なる状況のもとにおけるやはり適用ということにつきましては、積極的な当局の指導、監査というものがやはり十分に行き渡っってもらいたい。当局のお示しになった資料に基きましても、たとえば去年の一月、二月、三月には大体これだけの支出が、今までの状況からいきますとこれだけの支出というものが、監査を厳重にしたことによりまして、一カ月一億五千万円近い支出の抑制ができたという数字等も実は承わりましたが、そういうことでいきまするというと、年間十八億円という膨大なるものの冗費——冗費といいますか、不正な支出の節約ということもそれによって考えられるのでありまするから、そういう点に対するやはり政府事業の企業努力、従って健康保険に対する合理的な企業努力という点につきましては一つ努力を惜しまないように、大いに積極的にしてもらわなければわれわれとしては困るということをばまず申し上げておきたいと思います。  最後に、実はわれわれ被保険者といたしまして、毎月月給の中から社会保険料が引かれて参りまするが、そこで実は不思議に考えていろいろ調べました結果、なおかつ不思議なのは、政府事業政府管掌の、各種保険の中の標準報酬、同時に標準報酬の中に含まれておりまするいわゆる現物給与等のとり方がそれぞれ違うような、労災保険、あるいは失業保険健康保険、厚生年金と、こう四つのものをわれわれはいや応なく適用されておりまするが、これの被保険者標準報酬のとり方が、どうもそれぞれこまかく調べて参りますと相当に違いが出て参ります。これはよく私どもも経営者、事業主からも言われまするが、たとえば、今日では一つの企業がベース・アップをいたしまする場合に、昔と違いまして一斉にベース・アップでございますから、年令によりましてそれぞれお互いが同じ率で大体給与が上る。ところがそれに対しまする保険料も同額の給料の者は、もちろん扶養家族の相違にもよりまするが、大体同額の者が、同じ家族であれば大体同じ保険料が徴収されるのが当り前でありまするが、それが各府県に労働者が散在しておりまするために、それぞれが違ってきているというのが現状である。これはわれわれといたしましても、たとえばベース・アップをする場合の、変な話でありまして恐縮でありますが、ベース・アップの要求をするための基準のいろんな数字を持ち寄る場合に、お前の方はこれだけで、おれの方は保険料がこれだけで、違うのは一体どういうわけだと、こういう質問を実は私どもの組合なんかでは、厚生を担当しておりまする私がよく質問を受ける。その場合の説明に困りましていろいろ調査をいたしました結果、今申しましたような非常な違いがある。これはそれぞれの保険がまあ別だから、労働省厚生省とが違うから、違うところでとっているから違うのだと、こうまあ片づけられればそれまでかもしれませんが、私どもいわゆる人民といたしましては、政府は一つのものだ、国家は一つのものだと、かように考えておりまする関係から、省が違うから別々のものだと、こういうようなきめ方ではわれわれは納得しかねるので、こういう点に対しまして一つ同一のものをばやってもらいたい、かように考えております。  以上簡単で要点を得ませんかもしれませんが、私ども意見といたします。
  15. 山下義信

    委員長山下義信君) ありがとうございました。  それでは次に全医療書記長の亀山担二君にお願いいたします。
  16. 亀山担二

    参考人(亀山担二君) 全医療の亀山であります。私は主として私の所属しております、共済組合の保険財政から見ました健康保険保険経済という点について、二、三意見を申し述べたいと思います。その前に、意見聴取事項になっております医療給付費の増減見通しという問題について、私の所属も国立療養所、病院のものでございますので、この点についていろいろ考察をしてみたわけでございますが、保険経済の面で医療給付費がどのように増減するかということを簡単に出すことは、非常に困難があるというふうに考えるわけです。で私どものやっておりまする共済組合の給付費の増減等をとります場合は、約過去五年間の実績等を参照いたしまして、その平均値に毎年の増加率というようなものを機械的にかけていく、こういうふうな算式をやっておりまして、特に一点単価の値上げとか、今回の場合、新医療費体系に伴う増減等も若干考えますが、やはりなかなかそういうものをパーセントとして出すことは非常にむずかしい。そういう点でいつも過去五年間の医療給付費の推移を勘案いたしまして、それにプラスするという方法をとっております。で共済組合の場合は、大体三十一年度事業計画を立てます場合、五%の増額を見込んでおります。で、医療の機関の立場といたしまして、現在の保険医療を見ました場合は、明らかに制限医療であるという感じを持っている者でございます。特に今回のように一部負担というような制度が加わりますと、被保険者そのものもますます医療機関にかからなくなることは当然でございますが、現在の保険医療というものが必ずしも最高の、また患者が喜んで受けておられる医療ではない。医者が非常に良心的な診療をしようといたしております場合、現在の保険ではなかなかその薬が使えないとか、そういう事態がたびたびあるわけでございます。その点は本日の議題でございませんので省くといたしまして、いずれにしましても、この医療給付費というのは、医学の進歩とともにますますふえていくということは、これはもう当然のことでございますし、また現在一点単価が不当に低いものであるということも事実でございますので、そういう形でいけば、医療給付費というのは当然ふえるということの上に立って、今後の保険経済を考えるべきではないか。しかし、この医療給付費を押える方法としては、やはりいろいろ共済組合等では内部診療機関を設けるとか、また健康管理を十分にやって、結核の発病を防ぐとか、いろいろ方法を内部としてはとることはできると思うわけでございますが、何分にも政府管掌については中小企業の多い現状、健康管理も不十分でございましょうし、また内部の診療機関というものも持っていない。こういうふうに考えますれば、当然自然増加する医療給付費については、これはその保険者負担によってなされるべきものではないのではないか。一部には、もちろん被保険者負担によってなされるべきものもありましょうけれども、やはり中小企業のそういう健康管理の問題、またそういう医療機関の問題、こういう点を十分考えながら対処しなければ、政府管掌の被保険者のみが、保険料も高いし、またいろいろの点で制限を受けてくる、こういう先ほどの他の参考人の方も申された点がやはりあるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。特に保険経済を考えます場合、もちろん給付費の予定と、それから保険料率及び国庫負担の見通し、それから保有積立金の推移と、大体この三つのものを、保険経済というワクだけで問題にする場合に考えてみるのが常識のようになっているように考えます。しかし、現在の医療保険について、単に保険経済のワクだけで物事を考えるということは、非常に大きな誤まりを来たすのではないかと、こういうふうに考えております。この点につきましては社会労働委員会等で、十分に今後の医療保障また社会保障との関連等において御検討になっておられると思いますので、本日は保険経済というワク内だけで問題を考える、こうい点に立ちまして、若干共済組合と比べまして気がついた点を申し述べたいと思うわけです。  で、私の持っております資料で、昭和二十六年度から二十九年度までの各保険別の標準報酬の指数というのがございますが、それで政府管掌健康保険を見ますと、二十六年を一〇〇といたしまして、二十七年が一一五、二十八年が一二六、二十九年が一三一と、こういう指数に標準報酬がなっております。これを健康保険の組合管掌を見ますと、二十六年を一〇〇としまして、二十七年が二七、二十八年が一三五、二十九年が一四一と、このように健康保険の中で、政府管掌と組合管掌だけ見ましても、二十七年度において、すでに二、それから二十八年度においては九、二十九年度においては一〇という、この標準報酬の指数の開きが、政府管掌と組合管掌にあるわけであります。また、これを特に共済組合の公社等を比較いたしてみますと、公社は二十七年度は一二八、二十八年度は一六二、二十九年度は一七七、このような高額な標準報酬増加と申しますか、指数の増加を見ているわけでございます。この点は、当然この保険財政というものが、保険料によってわずかな収入財源になっております関係上、どうしても賃金という問題をおろそかにできないのではないか。従いまして賃金が、いかに政府管掌関係のものは安いか、しかもまた、その賃金の上昇率が、非常に他の保険の組合員の場合と異なっている。ここらがやはり十分考えてみなくちゃならない問題を含んでいるのじゃないかと、こう思うわけです。特に共済組合から見ました健康保険保険経済赤字というのは、二十六年ころ一度膨大な赤字が出ました。それからまた二十九年に一度若干出ております。このとき共済組合の方では、もちろんベース・アップ等によってこの赤字を救うことができましたけれども国庫負担を相当やっております。二十六年度においては約七億、二十九年度においては二億の国庫負担を、共済組合に対してはいたしておりました。それと同時に保険料率の値上げをいたしておりますが、主として赤字の解消を見たのは、先ほど申しました標準報酬が、二十六年度から九年度にかけて指数的に上旬を見ておるということに基因すると思うわけであります。この指数の関係医療給付費で見て参りますと、政府管掌の方は、二十六年度を一〇〇としまして、二十七年が一二九、二十八年が一五三、二十九年が一八九となっておるのであります。ところが組合管掌の方は、二十六年を一〇〇としまして、二十七年が一二三、二十八年が一四六、二十九年が一六〇、このように標準報酬の指数とは逆に、政府管掌の方は医療給付費の指数が上っておる、組合管掌の方も上っておりますが、政府管掌より低いし、その上り方も非常に緩慢である。ことにこれを公社等に見ますと、なお上り方が緩慢でありますし、公社の一番高いのをとりましても、二十九年度は一七六という指数を示しております。これは政府管掌の、二十六年度を一〇〇として、二十九年度一八九に比べますと、公社は二十六年度一〇〇に対して、二十九年度一七六である。このように給付費につきましても、公社等においてはさほどの増加率を示していない。これほど、政府管掌医療給付費の支出の指数というものは、指数だけから見ましても、給付費というものが実際に増加しておる。この点は十分考慮していく必要があるのではないか、このように考えております。  特にもう一つこういう点で言えますことは、どうもやはり政府管掌保険財政といいますか、財政計画を立てるに当りまして、他の保険等から見ました場合には、先ほど全繊の方もおっしゃられましたが、企業努力、企業内部の努力というものが、他の保険に比べて非常に少いのではないか。また財政計画等の立て方につきましても、何分被保険者の数が多いということで、なかなか計画が立てられないのかもわかりませんが、非常に綿密さを欠いておる。また他の保険に比べて、非常に計画の立て方が違うのではないか、こういうことを感じるのであります。  私の調べました資料で見ますと、政府管掌赤字というものは、二十八年から九年にかけて、一応決算の上では出てきておるように感じられるわけであります。二十六年度、二十七年度は少くとも二十億、十億程度の黒字になっておる。八年から九年、三十年にかけて急激に出ておるのです。ところが先ほど申しましたように、共済組合等におきましては、二十六年までが非常に赤字が多かった。これはやはり結核が非常にふえたということが最大の原因でございますし、また賃金も若干のくぎづけがあったということが原因しておると思いますが、いずれにしましても、二十六年、七年にかけて、どの組合でも赤字炉出て、その赤字対策に非常に努力をいたしたわけであります。  こういう点を見ますれば、非常に広範な被保険者を持っておるということで、共済組合のように、事業計画を作りますにしても、また実績をとるにしても、そう簡単に参らない。こういうことでその赤字の累積が翌年度、また二、三年度に持ち越さなければその対策が立たないということかもわかりませんが、いずれにいたしましても、こういう状態については若干他の保険と違う。こういう点についてわからないのであります。  それから標準報酬の月額と、それから医療費との割合を、一人当りの所要財源率で指数存出した資料を見てみますと、やはり政府管掌のこの所要財源率というのは、二十六年、七年、八年等については非常に低いわけでございます。それで二十九年になりまして五・五%こういうふうに上っていっておりますが、この所要財源率というのが非常に二十六年度においては三・八%、二十七年度においては四・三%、二十八年度には四・六%、二十九年度が五・五%というふうになっております。ところがこれを共済組合で見ますと、二十六年度は四・六、二十七年度は四・八、二十八年度は四・四、二十九年度は四・六、こういうふうに所要財源率というのが非常に均衡をもって各事業年度やっておる、ここいらにも財源率から見ましたこの政府管掌保険財政計画が不安定なのか、それともこういう財源率に問題があるのか、こういう点が私も詳しくまだ分析ができませんので、非常に残念なんでありますが、資料から見ましたらそういう不均衡を感ずる。これは健康保険、組合管掌の健康保険の方は非常に率は低いのでありますが安定をいたしておれまして、二十六年度は三・〇、二十七年度は三・一、二十八年度は三・三、二十九年度は三・四、こういうふうに所要財源率は非常に安定をいたしておる。これは組合管掌の健康保険の方は従来から内部診療機関を持っておるし、健康管理等についても十分気をつけられて、その他ベースも他の機関は先立ってベース・アップが物価に追いついてどんどんされていっている、こういうことが財源率の安定を見ているのではないか。共済組合の方は若干政府のベース・アップの処置がおくれます関係で、若干の上り、下りはございますが、しかし、いずれにしても安定をしておる。この点が政府管掌については非常に二十六、七、八と九と比べまして、三・八から五・五と幅がある、こういう点は十分考えてみる必要があるように思います。こういう点で私としましては、やはり保険経済は幾ら短期計算方式をとるといたしましても、五年くらいのものをもってその趨勢を見、またそれを分析して十分対策を立てなければ、単に二十九年度と三十年度と三十一年度に赤字が出る、しかもその赤字については非常に不確定な資料とまたその見込みしか立っていない、まあ聞くところによりますれば、今年度の予算要求のときには約三十億の赤字だというふうに、厚生省は大蔵省に予算請求をしたというふうに私たち聞いております。ところが、だんだんまた赤字がふえ、実際に国会に法案が提出されるときには、それが七十億になり、結局三十億の国庫負担をしてもなおまだ赤字だ、こういう点でこの赤字の問題が非常に数字的にはっきりいたしていない。また、最近この社会保険についてはどうも黒字になっていくんではないか、こういうことがうわさをされております。聞くところによりますと、東京都のある社会保険事務所では徴収を待っている、あまり徴収をしないでおこうじゃないかというようなうわさも聞いておるわけでございまして、こういう点は、私たち単なる政府炉七十億の赤字があるということをもって健康保険の患者、医療機関の反対にもかかわらず、一部負担を強行されようとしておられますし、また、三十億の国庫負担をとられたことでございますので、そうこれを赤字なり、財政計画については間違いはないと思いますが、しかしいずれにしても、この他の健康保険なり、共済組合が現在の段階において赤字をそう出していない、また漸次赤字の出ている組合も共済組合については若干ございますが、そういうところも赤字解消の方に向っておる、そういうことでありますればですね、やはりここに何らか問題があるのではないか、このように考えるのでございます。  次に、では、共済組合の赤字が二十六年度ごろどうして出たかというので若干考えてみたわけでございますが、そのころ私たち赤字の原因としてやはり分析いたしましたのは、結核患者が非常に多い、特に終戦後若干安定しました二十六年ごろに結核患者がずっと出てきて、それの療医費が膨大を占めた、また国家公務員全体の賃金が安い、こういう中におきましてまだ健康管理も十分でない、また職場環境も最近やっと各省とも、大蔵省のごとくあちらへ行ったところもございますが、いずれにしても職場環境も非常に悪い、こういう中でこれは出したのである、そのために私たち国庫負担をしろということで大蔵省当局に強く要求をいたしまして七億の国庫負担をしたことがあるわけでございます。もちろんしかし国庫負担だけにたよらず、料率の引き上げを、黒字が出たら掛金を下げるという条件で千分の二十五から約三十八程度に上げて二、三年運営をいたしてみましたが、いずれにしても国庫負担を取ったということ、それからそれと同時に、私たち国庫負担保険料率を上げるということについて特に強く当局に要望して、なお実施して参りましたことは、何といっても健康管理の充実であったわけです。それからまた、内部診療機関を極力設けていく、こういうことに重点をおきまして、非現業ではこの対策をいたしております。もちろん非現業以外の鉄道それから郵政等についてはこの二十六年、七年等の赤字の出たときも、何らそういう処置をあまりいたさないで解決を見ているわけでございます。この点は長い保険としての経歴とまた診療機関をたくさん持っている、また健康管理も十分である、こういうところからくる保険経済が安定をいたしておりますし、また、そういう職員の健康管理が十分にできている、こういうことでちょっとやそっとの赤字では驚くことなく、十分運営していって、現在、先ほど申しましたような比率でどんどんやはり黒字が累積していって、むしろこの黒字の処置に困っているといいますか、あまり黒字が多いと、これではやはりそこの共済組合が持っているのは問題だから、大蔵省に引き上げようとか、また黒字を少くするために大蔵省の方から保険料率を下げてはどうか、こういうことが言われているくらいな保険経済状態であるわけでございます。特にこの国民健康保険等につきましては二割の国庫負担の措置がとられておりまして、五十三年度が四十一億、五十四年度が四十七億というような多額な国庫負担がなされておりますし、また、国民健康保険については三千三百四十二施設というふうな直営診療機関を持って運営をしている、こういうようなものの運営をしながら、しかも国庫負担をしている、こういう実態と政府管掌を比べますと、あまりにもかけ隔てがあるわけでございます。こういう点で、何としても医療保障という問題につきまして、医療機関の充実も必要でございますし、またこの社会保険というものを社会保障という立場から広く検討していくということが急務でございまして、単に赤字が何億出たからそれについてこういうふうに一部負担をするのだ、手当をするのだということでは問題は解決しない、この点を特に強調いたしまして、非常におわかりにくかったと思いますが、共済組合から見たごく小部分の見解でございましたが、保険経済についての意見といたしたいと思います。
  17. 山下義信

    委員長山下義信君) ありがとうございました。佐々木参考人の御陳述並びに質疑は済みまして、ただいままで小西参考人、上田参考人、亀山参考人の主君から御意見を承わったのでございますが、この際、この御三人に対しまする御質疑がございましたら一応していただきまして、一区切りいたしたいと存じます。御質疑がございましたらどうぞ。なおこの際ですね、先ほど小西参考人から二、三の点が問題となって出されておるのでありますが、私の方から厚生省にお尋ねしますが、今の被保険者計算の仕方について小西参考人は、一万七千人の増加という数字が出やしないか、それを基礎にして計算するのが正しいのじゃないかという意見が出たのです。これが一点です。それから政府資料の中にある傷病手当金計算をしておるところに、十分の六という六割の給付の分が出て四割の給付の分が落ちているように思うがどうかという点があったのですね。それから労災関係が健保の方に食い込んではいないかという、その点の調節は何か努力しているかどうかというような三点の点がありましたから、これはこの際、厚生省の所見を明らかにしておいていただきたいと思います。
  18. 小沢辰男

    説明員(小沢辰男君) まず第一点の被保険者数見込みでございますが、確かに小西参考人のおっしゃいますように、二十八年の十月から二十九年の十月までの一年間、それから二十九年の十月以降三十年の十月までのこのいわば純二カ年間の増加数を見ますと、まず二十八年の十月から二十九年の十月までの増加の実数は月二万一千六百八十二人でございます。それからその後三十年十月、すなわち二十九年の十月から三十年の十月までの増加の月平均の増加数は一万四千五十九人、従いましてこの二つを二カ年間の実績といたしましてこれを平均いたしますと、一万七千八百七十人ばかりの月平均実数になるわけでございます。私どもが実はそれで計算いたしますと五百三十一万の予定の数が、もしそれをそのまま使ったといたしますと、約五百三十二万九千人という数字になるわけでございます。約一万九千人ばかり、約二万人ばかりこの私どもの見込んだ五百三十一万人よりはふえる勘定になります。しかしながら、御承知の通り、三十年の一月に市町村職員共済組合等の関係政府管掌から約八万人程度の移行がございましたりいたしましたので、今の申し上げた一万七千人平均数、二カ年の平均の増加数にはそういうような要素を考えていかなければいけないわけでございまして、その点とそれからもう一つには、実は被保険者数の増というのは、昨日も御説明申し上げましたように、一人当り収入と一人当り保険給付費というものを明らかにアンバランスでございます。これは被保険者数が多くなればなるほど実は赤字要因がふえるわけでございます。従いまして、これは被保険者数の問題というのは景気のいろいろな状況に相当大きく左右されて参りますので、必ずしも過去の二カ年なり、あるいは一カ年なり、何カ年なりの平均だけで考えていくわけにはいかないのでございます。そんなところからいたしまして、大体そういうような、今申し上げましたような過去二カ年の大よその平均数字を一方の頭におきつつ、今年度の被保険者数の五百十一万程度のものから一〇四%増の五百三十一万人という推定をして、それを被保険者数基礎にいたしたという実情でございます。  それから第二点は、傷病手当金の昨日お配りいたしました資料の十八ページの計算の内訳算式を見ると、十分の六を最後にかけてあって、十分の四の独身者の割合が全然かけてない、それをネグレクトしておるのじゃないかというお尋ねであったわけでございます。  ところが私どもは、この表を見ていただきますとわかりますように、平均標準報酬月額にまず八割八分をかけておるのでございます。この八割八分をかけた中には、これは二十九年の実際の傷病手当金の支給額の実績からいろいろと逆算をいたしまして、特に傷病手当金の支給を受ける人が、この二十九年の実際の状況を見ましても、これは毎年の例でもございますが、比較的標準報酬月額が平均以下の人に多く、それからこの中に、この〇・八八という数字をかけた中に、いわゆる十分の四の支給を受ける独身の、そういう支給を受ける関係のものもこの中に考慮いたしまして、標準報酬月額にすぐ三十分の一、あるいは十分の六をかけないで、〇・八八というものをかけることによりまして、その中にそういうものを織り込んでおるわけでございますので、決して六割の支給の対象だけをここに出しておるのではないということだけを御承知願いたいと思います。  それから第三点の関係は、医療費の中に公傷が含まれておる、すなわち、労災でまかなうべきものが健康保険でまかなわれておるのは、いろいろな当初からはっきりしておる、また現実にそうした職場では例があるのだというお話でございます。これはいつかの委員会にも委員の先生方から御指摘なり、あるいは御意見がございました点でございますが、私どもとしては、公傷関係は国の請求を通じまして、この請求書が保険官署に参りましたときに、昨日も出張所長から申し上げたと思いますが、レセプトを整理し、調査をいたしまして、それがもしも健康保険の対象でない、労災の対象に入るべきものと考えるものはできるだけそれを整理して落しておるわけでございますが、なお確かにこれが確実に把握をされまして全部が確実に落しておるということを自信をもって言えるかといいますと、これはどうしてもいろいろな点で、あるいは現実には若干のそういう重複面が起っておるということを、必ずしもわれわれは自信をもって否定できないのでございますが、わかりました場合には、できるだけこれを労災の方へ戻すようにいたす努力は、審査並びに調査を通じましてやっておる次第であります。  以上お答えいたします。
  19. 山下義信

    委員長山下義信君) 他に御質疑はございませんですか。——質疑がございませんようでしたら、御三人の御陳述は終了したことにいたします。御都合で御退席下すってもけっこうでございますし、そのまま御在席なすってもよろしゅうございますから、御随意にしていただきます。  それでは次に、日本医師会副会長丸山直友君から御陳述をお願い申し上げます。
  20. 丸山直友

    参考人(丸山直友君) 丸山でございます。意見聴取事項としてお示し下さいましたものの中で、今までの参考人のお話になりましたような保険経済の運営がどういうふうにいくかというような、行政的のいろいろな面からの訂正というようなことは全然私はこの際除外をいたしまして、実数につきまして、実はお示しをいただきましたのは日数が大へん少うございました。非常に実は二日ばかり徹夜をいたしまして実数に当りまして、ここに印刷物を作りまして皆様方の御了解を得たいと考えて持参しておるわけであります。念のために申し上げますが、これは厚生省が御計算に相なりました赤字というものの見込額、つまり保険経済の見込額、これが正しいとか正しくないとかいう意味で申し上げるのではないのであります。また厚生省がこれを御計算になりました時期は、予算編成期及び社会保険審議会に厚生大臣から諮問がございましたのが、一月の三十日、そういうようなときにこれがすでにできておりましたものでございますから、当然見込額というもので計算をなすってああいうものが出て参ったということは、これは当然なことでございまして、私どもはただ時期がズレて今日に至っておりますので、昭和三十年の見込額というものが、実数でこれを算出して検討してみることが可能な段階に相なりました。従いまして、私どもが使いました資料は、厚生省から出された月報及び月報の間に合いません部分につきましては、中央保険診療報酬を支払基金、この方からの資料をもちまして厚生省が考えておられる通りの方法で、そうして運営も厚生省が今持っておられる把握率でございますとか、その他の一切の業績はそのままでおやりになると、こういうことを前提といたしまして、検討してみたのであります。  資料を一つお手元に差し上げてございますので、三種類の資料が実は差し上げてあるわけであります。ちょっと厚くとじてあります資料が、昭和二十六年度から昭和三十年度までの年度別、月別医療給付の状況、これも全部確実なる資料によりまして、一枚おめくり下さいますると、その実数が全部カッコの中にございますので、そういうふうなものからとったものであるというふうに一つ御了解を願いたいのであります。  それから一枚刷りのものがお手元に差し上げてございます。主としてこの一枚刷りのものに関しまして御説明を申し上げるのでございまして、それよりも薄い年度別診療状況の図表と申しますものは、最初の厚い資料を見やすいために数字をグラフに書きましたものでございますので、これは最後にお話をいたすようにいたしたいと考えます。  それで、政府の方から私どもの方へ、参議院の事務局を通じていただきました、厚生保険特別会計〔健康勘定〕歳入歳出予算明細書、これと比較して私の口述をお聞き取り下さいますとよくおわかりになっていただけるかと考えておるのであります。なお申し上げておきますが、一枚刷りのものの表が、箱のような中にはさめたような形になって数字が羅列してございますが、その中の左側の政府予算というものが、上のものにもあり、下のものにもございますが、これはこのいただきました、ただいまお話申し上げました歳入歳出予算明細書からそのまま転記いたしたものでございますので、比較の便宜のために、ここに並べてあるわけでございます。そういう一つ予備的のお話を申し上げまして、私の説明をさせていただきます。  最初歳入に関しましては、これは政府のお考え下さいましたことに関して私どもは別に批判をいたしましたり、検討いたしまする資料を得ることができませんので、これは略さしていただきたいと思います。このまま信用して、この数字を使つて算出をして進めて参りたいと思います。ただ被保険者の数の問題が先ほど来言われておりますが、この被保険者の数の予想は、これは要するに予想でございまして、いかようなる考え方をせられましても、最後の結果が出て参りませんと、それが正しいとか正しくないということの判定はできません。ただ、政府がこの四%増と言われまする資料の基本となっておりまするのは、政府資料の六ページに示されております三十年の八月以降月平均の増加数というものをとられまして、一カ月間の増加の実人員が三万一千九百四十二名であったということ、それを二で割つたのでございますので、実はその理由が完全に私了解しておりませんので、先ほど来いろいろここに参りましてから伺いましたところ、これは従前の例によって、年の初めの部分と終りの部分においては被保険者の増減に差異があるので、従前の例により安全率が二分の一と、これを計算するのが最も正しいと、こういうような考えからこれを二分の一にして、一万五千九百七十一名と、これを簡略にして月の増加を一万五千名と見たと、こういうお話なのであります。一応筋道としては通っておるお考え方で、これに対して批判を実はしようと思う意思はないのでございます。  それかごらん願いたいのは、私どもの方でこしらえましたこの厚い資料の二千ページをおあけ願いますと、そこに二十六年度から三十年度に至るまでの被保険者数の被保険者数増加いたしました実数でこれを示してございます。右の方にそれを指数で示してございます。二十六年度から二十七年度に増加いたしましたのは一〇・七%ふえており、二十七年から二十八年には一一・九七%ふえており、二十八年度から二十九年度には六・九四%ふえており、二十九年度から三十年度にわたりましては一・二五%の増、こういうふうな、これが指数といたしましての増加の率でございます。こういうふうなことになっておりますので、果して四%の増というものが正しくあろうか、正しくあるまいかということは、私先ほどから申し上げましたように、これを批判したり修正したりしたいとは考えておりませんが、これの数字をごらん願いまして、大体において二十九年度から三十年度には一・二五%しかふえておらなかった。その理由は先ほど御説明のございましたようなことが理由であるかもしれませんが、今後の増加というものを四%に見ることが正しいかどうかということは、一つ国会側において御検討を願って、この歳入の面において、御検討願いたいと考えておるのであります。  そこで、主といたしまして、私どもの方で選定をいたしましたものは、政府が出されておりまする資料の十五ページでございます。この十五ページの数字、つまり受診率というものがそこに示されております。これが政府が作られました三十一年度のこの率をもって計算をいたされまして、こういうふうな給付の増額であろう、こういう数字が出て参ったわけであります。一番上の欄を読んで見ますると、被保険者の分の入院が三十年度の見込みが〇・二一一四五であり、増加の割合は一・一二六であり、従って一と二をかけた三十一年度の見込は〇・二三八〇九であると、かように示されておるのであります。それが私先ほど申し上げました、私どもの作りました一枚の資料の一番上の欄にそれがそのまま転記してございます。そこで、私ども政府としてはすべて見込みと、増加の割合も見込みというふうな形で示されておりましたが、これを先ほど申し上げました実際の数字資料につきまして実数でこれを計算して出したのであります。その結果得ました数字はその右の方の欄にございます三十年度の実績からそれがそのまま三十一年度にその実績の通りにあるものというふうな考え方、もちろん政府も三十年の見込み増加割合というものを見られまして、それをかけたものを三十一年度の見込にしておるわけでありますから、それと同様な考え方で、私どもは同様のやり方で三十年度の実績増加割合というものを、先ほど申しました資料に基きまして、実際に計算をいたしました結果として表われました数字は、三十年度の一番上の欄で政府が〇・二一一四五と示されましたものが、実績から得ました数字は〇・二〇七二四という数字に相なって参ったのであります。また増加の割合が一・一二六と計算をいたされましたものが、実際の数字は一・一一五二という数字に相なったわけであります。従いまして、この二つをかけ合せましたものを政府と同様の方法で三十一年度の見込みといたしまする場合には、その数字は〇・二三一一一という数字がここに生まれてくるわけでございます。同様の方法をもちまして、以下入院入院外、歯科、被扶養者における入院入院外、歯科一いうものを同様に計算いたしました。  また、一件当り点数にいたしましても、ただいま申し上げましたような同様の方法をとりました。私どもが実際の数字を用いましてその率をはっきりと出しました結果、左側の政府予算として計算せられました数字は、右側の実績から生じました数字に修正せらるべきものであるというふうに相なったのであります。  そこで、御注意までに申し上げたいことは、入院外の一番右の方と歯科のところと被扶養者も同じく入院外と歯科のところにまるがつけてございます。このまるがつけてございます理由は、増加の割合を、これを増減させましては、つまり言いかえますと、一件当り点数が減ったからその減った率と同様の率で本年もまたどんどん下るのだというふうな指数を用いて参りますと、この方法を年々用いて参りますと、しまいにはこれはゼロになってしまう、何もないという結果が生ずるわけで、決してそういうような結果の生ずる理屈ではございませんので、それで左側にありまする数字と、右側にありまする数字と、同様な特別な修正を加えないものをかけまして使った、その結果、こういうふうな数字に相なって参った、こういうことでございます。  それからその下の欄の一人当りの金額、ちょっと申しますが、政府予算の一件当り点数には誤植がございます。一件当り点数の方の入院と申しまする欄の三十一年の見込み額が一・〇六八三四六となっておりまするのが、六八の誤まりであろうと考えております。それは後ほど一つ御検討を願いたいと思います。  一人当り金額基金事務費を除く)というのにつきまして、やはりこれを同様の計算をいたしました。その各項目につきまして、全部実際に得ました実数から計算をいたしましたものがここに掲げました表でございます。一番左が政府の一人当りの金額の予算でございまして、これを補正いたしまして——補正いたしましたということは、勝手にしたのじゃない。先ほどから申しましたように、実数をもとといたしまして、その実数をその通りに計算をいたしました結果できた数字でございます。  そこで一番注意してごらんを願いたいのは、政府予算の一番しまいにございます合計の数字でございます。八千二百四十五円十五銭三厘という数字が一人当り金額として、これが政府予算基礎になっております。ところが、私どもが得ました実際の三十年度の数字を全部これに当てはめまして、右の方に該当いたしまする欄の通りに計算いたしますると、その結果得ました数字は、一番右の一番下にありまする七千九百八十二円三十一銭一厘という数字が、これが正確な三十年度の実績から得ました三十一年度の見込み額でございます。従いまして、政府の考える予算として使われました八千二百四十幾らというものから七千九百八十幾らというものを引きますと、政府は二百六十二円八十四銭二厘というものを一人当りよけいな給付費が必要であるという基礎のもとにこの計算ができておるということでございます。そこで二百六十二円八十四銭二厘というこの一人当りの金額を、これは平均でございますから、それを政府の言われる通り五百三十一万人あるものといたしましてそれをかけますると、実際の数字の差というものは十三億九千五百六十九万一千二十円というものがそこに浮いて出て参るのでございます。そういうふうにこの表をごらん願いたいのであります。  そこでこの増加率その他に関しまして、薄い方のとじました診療状況図表をごらん願いたいと思うのであります。この図表は、全部厚い方の資料数字をカーブに示しましたものがこれでございます。一枚目のものは、被保険者数、診療報酬決定点数及び金額のカーブでございまして、それをごらん下さいますると、年々増加いたしておりますということ自体においては盾違いございません。二十九年度から三十年度に向ってただその上昇角度が非常に鈍角になってきておるということがおわかりになるだろうと思います。すべて鈍角に相なっております。上昇の速度が鈍っております。これにはいろいろの理由はございますとは思いまするが、ともかくも医療給付費、その他金額でございますが、金額、点数ともに増加率は、増加しておるが、大へんに鈍ってきておるということでございます。  同じく二枚目をごらんいただきましても、これは受診率でございます。受診の率といたしましても、これは被扶養者及び被保険者を合計いたしましたものと、それからそれを分けましたものと三つになっておりまするが、これをごらんいただきましても、大体においてただいま申し上げましたカーブの角度が鈍化しておるということがごらん願えると思うのであります。ほとんど同じ方向、一直線に進んでおるのではないかと一見見えますのは、一般人院外が、つまり赤く示したものが、一番右の被扶養者の分において、二十八年度から二十九年度に移りまする推移はやや一直線の方向で増加しておるというような形でございます。その他は全部これが鈍化しておるのであります。  その次のグラフは、一件当り点数が、一件当りというのは一人の患者に対して、一体点数がどんなふうに推移しておるかというカーブでございますが、被保険考及び被扶養者を合計いたしましたものが図表三、これは点数でございます。右の方はそれを金額に直したものでございます。それでもこれは非常に明確にごらん願いまする通り、二十八年度から二十九年度に向って急カーブで上昇いたしましたものが、三十年度に向ってはむしろこれが上ってもごくわずかであり、あるいは場合によりますと、これは下っております。左の一件当り点数のごときは、五五・四が五四・五に下っております。あるいは歯科におきましては、九七・八が九四・一に下っております。この図表は少し下り方が水平のように書いてありますが、もっと下っておるのであります。右の方はごらんのように、一般入院においてだけは角度は鈍りながらも若干上昇しておりますが、その他は下降しております。それをその次のページの、一件当り点数の被保険者分のみにつきまして、被扶養者分を除きまして別々に分解してグラフを作りましたのはごらんのように、やはりほとんど同様の趨勢を経てきております。  その次に、被扶養者分を分けまして、同様にこれを図表にいたしました。これもまた同様に下っておるということがわかるのであります。そういたしますと、現在の動向は、大体において総金額において上昇はしつつありますけれども、その上昇角度は非常に鈍ってきておるということでおります。そうしますと、三十一年度の見込みを立てまする場合において、今までの考え方よりは上昇速度というものは、実績においてすでに私が先ほど数字でここにお示しいたしましたように、そう非常な今急カーブでは上昇しておらぬという結果が自然そこにはっきりわかって参ったと思うのであります。政府が、最初に冒頭申し上げましたように、予算を編成いたされましたときの、その当時の基礎資料は、医療の給付の状況は昭和二十九年三月から十月までの八カ月分、昭和三十年三月から十月までの八カ月分、この両者を比較して作られたものでございます。私どもは毎一カ年、普通の健康保険等におきましては二月を基準として一カ年分の計算をいたしておりますので、政府と同様の方法をもちまして、三月年度でなくて、二月年度の計算をもちまして、毎一カ年間の実数をもって政府と同様計算をいたしております。それを御了承を願いたいのであります。そこで、これは受診率の変化というようなこと、あるいは実際上の数字はもう少し小さくなるのではなかろうかというようなことに関します影響は、医療給付費だけではございません。当然これは傷病手当金支出の減ともなって表われてくる理屈でございます、当然。しかし私どもは、ただいまその検討する時間がございません。医療の給付費に関しましては、私ども職業柄調査いたしまする資料を持っております。医療給付費のみに関しまして、政府の見積額はやや過当である、支払いが過去である。従って赤字計算は少し余分に数字が出て参ったのである。しかしこれは悪意、あるいは故意にやられたものでなくて、その当時の予算編成の技術としてはこれは当然の方法をおとりになったものである。しかし、今の段階におきまして、私どもはそういうように相ならぬという確信を持って今申し上げておるわけなのです。従いまして、赤字対策といたしまして、十四億くらいのものは特別な措置を講じなくとも、自然にここに対策が講ぜられるわけなのであります。これを振り返って今度見ますと、衆議院における修正の財政効果が、大体十七、八億というような数字で見積られておるようでございます。十七、八億というものに、さらに私ども計算によりまして実質十四億ぐらいのものがここに浮いて、黒字——黒字ではございませんが、赤字の減少となって参りますので、衆院の案をこのまま直さないで参議院を通ったとかりに仮定いたしますと、衆議院における財政効果の処置が十八億である。さらに政府計算と違った黒字的のものが十四億である。そういたしますと、これを合せますというと、財政効果は、三十二億ぐらいの財政効果が自然に減少して参ります。そうしますと、最初に考えられておりました政府原案の二十三億五千万円というこの赤字の補てん、それに関しましては、過当な徴収と相なる、こういう結果になります。必ずこれは黒字が出るであろう。取り過ぎである。衆議院のあの案そのままでやりまして、そうして私がただいま申し上げました実績の通りに推移いたしますと、大体八億五千万円ぐらいの黒字がここに生じて参ります。そういう結果になります。  そうしますと、この八億五千万円黒字になり過ぎるということはどこで調整するか、これは私どもは政策として今申し上げることは慎しみたいと思いますが、いろいろな方法が考えられておるようでございます。その方法の中で最も被保険者に対し、あるいは診療担当者に対し、最も不便である、不愉快である、負担として過重であるというふうに考えられる部分を何とかして、少くとも八億五千万円、あるいは九億くらいのものはおやめを願いたい、これが私ども結論となってくるわけでございます。  それだけ申し上げまして、なおおわかりになりません点は、後ほど御質問によってお答えいたします。
  21. 山下義信

    委員長山下義信君) ありがとうございました。  丸山参考人に対して御質疑がありましたら、どうぞ御質疑を願います。
  22. 相馬助治

    相馬助治君 保険財政の問題については、次の成田参考人にもお尋ねしてから一緒に質問をしたいと思うところですけれども、ただいまのこの日本医師会が作られた資料によると、政府と同じ計算の様式と、同時に同じ資料によって、しかも一方は見込みであり、一方は実態の調査である。そうしてその差が実に驚くべき巨費である。この事実は当委員会としても見のがしがたい大問題であって、ただいま審議中の健康保険法の一部改正の帰趨にも重大なる連関のある問題でございますので、私は丸山参考人質問をするというより、小委員長に対して特段この点について厚生省側の見解もこの際ただし、しかも本日は夜を徹してでもこの問題について詳細をきわめた調査をいたし、同時に丸山参考人にも御苦労でございまするけれども、われわれの質問にも重ねてお答えをいただき、厚生省日本医師会との彼我対照して、この問題の本質を突き詰めて参りたいと、こういうふうに思っておりますので、議事進行上、特段委員長において考慮されますることをこの際要請しておきます。
  23. 山下義信

    委員長山下義信君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  24. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記起して。  ただいまの相馬委員の御提案は、小委員長において善処いたします。  続いて成田参考人の御意見の陳述を願います。
  25. 成田至

    参考人(成田至君) 御紹介いただきました成田でございます。私いなかにおりますので、実は本日当委員会出席いたしますまでに私の手元に届きました資料というものは、健康保険法の改正に関する法律参考の文書と、昭和二十九年度の被保険者数の推移と、そういう二つの資料だけでございまして、本日お昼過ぎに東京に参りまして、初めて歳入歳出予算明細書というものが私の手元に渡ったわけでございます。従いまして、歳入歳出予算明細書としていただいております資料と、私がこれから陳述いたします資料との関連につきましては、十分に触れることができないのを大へん残念に思いますけれども、御了承いただきたいと存じます。  私はこれは丸山先生と全く同じように、政府で出しております事業月報をもとといたしまして、その他厚生省保険局で出されております資料をもとといたしまして、いろいろ計算を続けてきたものでございます。三十一年の収支の状況がどのように推移するかということを推計いたしますためには、まず三十年度の収支はどのように推移したかということを明らかにしなければなりません。なぜかと申しますと、三十一年の予算というものは、それまで歩んできました医療費の足取りに従って推計されなければならないからであります。  まず収入について見て見ますと、収入の中で一番中心になりますものは、申すまでもなく保険料収入でございます。保険料収入というものは、標準報酬と被保険者数保険料率と、その積算によって得られまする徴収決定額に収納率をかけましたものが、保険料収入と申すことができると思います。  まずその要素となります標準報酬についてみますると、三十年度の標準報酬につきましては、昭和三十年十二月まで明らかになっております。三月から十二月まで明らかになっております。政府の三十年度の見込みをみますと、一万一千四百四十九円と相なっておりますけれども、十二月までの平均は一万一千三百七十七円八十銭でございますから、一万一千四百四十九円見込むということは、一月と二月の平均を一万一千八百五円と見込むということになるわけでございます。ところで、この十月以前の毎月の減少額というものの平均をとってみますと、ほぼ十三円ということになります。従って、その数字から換算して参。ますと、この一万一千四百四十九円というものは、わずかではございますが、少しく多く見積られていたのではないかという疑いがございます。で、その毎月の平均減少額から推算いたしますと、一万一千四百四十六円という数字が出てくるわけでございます。  次に被保険者数につきましては、これは先ほど来多くの方からお話が出ましたので、私の意見は差し控えます。私の計算でもほぼ三十年度の分といたしましては五百十一万一千人、これに近い数字が出て参りましたけれども、省略させていただきます。  次に保険料率は、三十年の六月から千分の六十五に引き上げられております。従ってただいま申し上げましたものの積算といたしまして、保険料徴収決定額というものは、前年に比べましてどういう足取りをとっておるかということを調べてみますと、六月までの間は平均四・五一五%上回ってきております。七月以降は、これは料率改正の影響を強く受けまして、一七・一一%前年よりも上回ることになっております。従って十二月までの徴収決定額は、これはわかっておりますので、それ以後の一月、二月、それから四月までの徴収決定額というものを、それまでの後半の保険料の足取りに従いまして推算して参りますと、四百八十一億三千万円何がしとなるわけでございます。これは徴収決定額でございますので、収納率は果してどのような推移をとるかということを推算する必要があるわけでございます。収納率につきまして、同じく二十九年と三十年を比較して参りますと、二十九年の当初から三十年の後半に至るに従いまして、収納率は次第に前年に比べてよくなってきております。三十年の十二月、今私にわかっております一番最後の三十年の十二月では、前年よりも一・四%収納率が高くなっております。さらに収納率をみますときに重要なことは、過年度からの繰り越しの保険料というものがどれだけ入っておるかということは、これは大へん重要でございます。というのは、過年度分の徴収という二とは、現年度に比べまして非常に困難だからでございます。ところが三十年度におきましては、事業月報から読みますと、二十九年度よりは徴収決定額中過年度分の比率は少くなっております。そういたしますと、全体の収納率といたしましては、二十九年度の九一・五%を上回ることは、ほぼ確実であろう。四月の末日におきまして九一・五%を上回ることは、ほぼ確実であろうということがいえると思います。現に私の出身でございます栃木県におきましては、本年の決算をちょうど締めたわけでございますけれども保険料の収納率は九五%をこえております。これは昨年よりも一段と上昇した数字となっておるわけでございます。従いまして、その収納率を乗ずることによりまして保険料収入を予想いたしますと、三十年度の保険料収入は、厚生省の見方は多少少な過ぎたのではないかという結論が出てくるわけでございます。  次に支出でございますが、支出につきましては、ただいま丸山先生から全体の支出がわかっておるということのお話がございましたけれども、これは医療給付費については、療養の給付につきましては全体の数字がわかっておりますけれども保険給付総体をとってみますと、私どもにわかっておりますのは、全保険給付費の九七・二八%程度がわかっておるわけでございます。ということは、現金給付につきましては、これは十二月分までしか手元にございませんので、一月、二月のものは、これは推算する必要がある。結局その現金給付のごく一部でございます一月分と二月分というものが、全体に対しまして二・七二%、こういうことになるわけでございます。そういたしますと、その全体の保険給付費の中の二・七二%につきましては、これはその年に歩んで参りました現金給付の足取りに従って推算するのでございますから、五%以上の誤差ということはとうてい考えられませんので、大体誤差率を推定いたしますと、おそらく私の出します三十年度分の保険給付費の全額につきましては、私の出します数字は〇・一%下回る誤差率であろうと推定されるわけでございます。そういたしますと、これを金額に直しますと、数千万円程度のものではないか、まあ財政的にあまり問題にならない少額になるのではないかということが推定されるわけでございます。  次に支出につきまして、まず支出の中で一番大きな位置を占めておりますのは、申すまでもなく、ただいま丸山先生から詳細に御説明がございました療養の給付費でございます。それを積算して参りまして、これは全額わかっておりますので、その金額と、厚生省が三十年度分といたしまして予算書につけまして出されております見込み額と比較いたしますと、基金事務費を除きました医療給付費は、私の計算では三百七十六億四千八十五万六千円ということになっておりまして……。
  26. 相馬助治

    相馬助治君 どこにその資料がありますか、どこを説明しているかわかりますか。ないですか。
  27. 成田至

    参考人(成田至君) 三十一年度保険給付費の推計の一ぺージでございますか、ちょっとこちらの三十一年度保険給付費の推計というのは、少し時期が前になりますので、二月分を推計しておりますので、私のこれから申しますものは、全部わかりましたので、わかったものを申しますので、多少ズレがございますけれども、ほとんど変っておりません。数字といたしましては、その大体今の療養給付費につきましては一ページから二ページにかけて書かれております。基金事務費は約四億九千四百九十七万一千円、これは私支払基金に問合せいたしまして、支払基金では三十年五月までは一件当り十二円五十銭、五月以後は十二円に下っておる、こういうお返事がございましたので、その通り積算いたしましたところが、本日厚生省資料を見ておりますと、十三円と出ておりますので、これは何か基金の方が勘違いをされたか、あるいは私が聞き間違ったか知りませんけれども、いずれにいたしましても、その誤差というものはきわめてわずかでございますので、問題にあまりならないと思いますが、そういたしますと、医療給付費の総額は三百八十一億三千五百八十二万七千円と、こういうことになって参ります。そうしますと、厚生省との見込みの差が、医療給付費につきましては、三十年度分といたしまして五億六千四百十八万九千円と、これだけのものが計算で出て参りました。次に現金給付について見ますと、現金給付では同様にいたしまして三億八千七百九十四万円というものが出て参ります。合計いたしますと、九億五千二百十二万九千円と、こういうものが私の計算からでは出て参ったわけでございます。  次に、それで三十年のことは大体わかって参りましたので、三十一年について見ますと、まず収入の部でございますけれども、被保険者の数というものは、これは中小企業の雇用と深い関係のあるものでございますので、私の専門外でございますので、あまりはっきりしたことを申し上げない方がかえってよろしいのじゃないかと思うわけでございますけれども、一応参考となりましたものは、七人委員会の報告書についております付属論文に稲葉秀三先生が書かれておりますけれども、それによりますと、中小企業の日本の経済構造から申しまして、大企業では、生産は伸びても雇用の吸収というものは少いであろうということが一つ。それから今までのずっと数字を見て参りますと、中小企業の全工業に占めております比率というものは、特に従業員の数から見ていきますと、年々上昇の傾向がある。二十七年には六六・四%に上ってきている。結局中小企業の方の労働者の数はどんどんふえていくけれども、大企業の場合にはそれほど伸びないと、こういうことだろうと思いますけれども、それと年間の新たにふえて参ります労働力を六十万ないし七十万と見ておりますので、そういったものから換算して参りますと、政府の出しております五百三十一万という数は、私よくわかりませんけれども、あまり違わないような数字じゃないかと考えられるわけでございます。  標準報酬につきましては、これは三十一年におきましては多く上ることは期待できないということをいろいろなところで申しておりまして、私もさように考えますけれども、ただ七人委員会でも述べられておりますように、標準報酬として厚生省にとらえられております数字と一般の統計と比較いたしますと、少くとも一割ほど捕捉できないでいるのじゃないか、一割ほど低く捕捉しているのじゃないかということが言われておりまするので、完全捕捉という問題がこの中に入って参りますと、標準報酬のこの額をこのように見込んだということもまあ納得がいくのじゃないか。いずれにいたしましても、今まで申しましたことは、私の専門でございませんので、はっきり断定することは避けたいと思います。  次に支出でございます。支出につきましては、先ほど来参考人の皆様が申しておられますように、単に三十年度だけをとって見ましては、三十一年の推計というものは非常に困難でございます。私は、三十年におきましては、二十九年に比べまして療養の給付というものは非常にふえたけどれも、ふえたのは一体何がふえたのかということを分析いたしまして、まず入院入院外と歯科の、そのいすれがどれほどふえたかということを算定してみました。それによりますと、三十年度にふえました療養の給付費の六二・二二%はこれは入院の費用がふえたのである。入院外費用は三八・五三%、歯科の費用というものはむしろ〇・七五%減少していると、こういう数字が出て参ります。そこで入院の費用は一体どうしてふえたのか、入院外の費用はどうしてふえたのか。結局件数がふえたのか、金額がふえたのか。一般に経済で申します一つの物の単価が上りまして、その売り上げの数量も上ったような場合に、総売上高の増加というものが単価の値上げによるものであるか、それとも売上個数の増加によるものであるか、そういう影響を調べる算出の方法がありますので、その方法によりまして計算いたしまして、三十年度における医療費増加のうちで一番強い影響を持ったものは何かと申しますと、被保険者入院件数でございます。これは増加の四九・二五%はこの被保険者入院件数の増加のためにふえたものである。その次にきますものが被保険者入院外の件数でございます。以下扶養家族の入院外件数、ずっと続いておりますけれども省略いたします。そういうことを念頭に置きまして三カ年間の毎月の療養給付費というものをこれを入院入院外、歯科別、被保険者、扶養家族別に分けて数字を取って参りまして、その病気というものはこれは季節の函数でございますから、前年の同月に比べてみますと一番よく事情がわかると思いまして、前年の同月に対する増加率を取りましてグラフにいたしましたものがお手元に差し上げておりますグラフでございます。そういたしますと、今まで申し上げましたことで明らかのように、増加に最も関係をいたしております入院の件数の増加率というものは一体どういう足取りをとりているかということが問題になるわけでございます。第十四図を見ていただきますと、その増加率の推移がしるされてございます。これを見て明らかなことは、二十九年におきましては非常に高い増加率を示しておりましたものが、二十九年の末から三十年の初めにかけまして非常に険しい谷を作っている。三十年におきましては件数の増加率というものは減少ないし横ばいの状態を続けているということが言えると思います。これはどういうことかと申しますと、実は医学的に申し委すと非常に不思議な二となのでございます。厚生省の調査によりますと、わが国の結核の患者の中で即日入院しなければいけないような容態の者炉どれだけいる。それに対して現在の健康保険の件数はどれだけだ。そういう数字から計算して参りますと、推計されます政府管掌の被保険者入院件数、現在の入院件数というものは、入院しなければならない件数の約四分の一でございます。といたしますと、入院増加率というものはベットの増設を待ち切れないほどどんどんふえていくべきものだ。増加率というものは今後ともふえていくべきものだと思われるのでございますけれども、実際にはこういうふうに減少ないし頭打ちの状態を示している。これはどういうことかと申しますと、結局先ほどもどなたかお話があったかと思いますけれども政府管掌の被保険者入院というものが被保険者の経済的な理由によりましてこういう増加率の低下ないし頭打ちの状態となって表われてきているのじゃないか。たとえば政府管掌健康保険組合というものはこれは中小企業を対象としておりますので、中小企業の労働者にとりまして入院いたしまして長期の療養をするということは、同時に失業を意味することがしばしばございます。従って政府管掌におきましては、継続給付というものは組合管掌に比べて非常に多いと、こういう数字でわかると思います。  第二に、入院いたしますと、たとえば傷病手当をいただくといたしましても四割収入が減って参りますので、非常に経済的に苦しい状態になってくる。そのほか家族の手をとりましたり、いろいろな原因かう経済的に苦しくなって参りますので、経済的な理由が被保険者入院増加率をこのような形に押えているのじゃないかということが推定されます。そういうふうな被保険者の経済的な条件というものが、三十一年におきましても格段変るとは思われませんので、この増加率から三十一年を推測いたしますと、三十一年の増加率というものは三十年度が先年に示しました増加率よりはむしろ低いのではないかということが言えると思います。  その他時間が長くなりますので省略いたしますけれども、統計のどの表を見ましても、歯科の分を除きましては、一斉に三十年度におきましては増加率は低下ないし横ばいの状態を続けているわけでございます。ということは、三十年度におきましては、医療費というものはふえてはおりますけれども、そのふえ方が年度の初めから年度の終りにいくに従いまして、次第に少くなってきていると、先ほど丸山先生のおっしゃったのと同じ結論になるわけでございます。従いまして、三十一年の療養の給付費というものを推計するに当りましては、当然その下ったゆくえを探りまして、その増加率の下ったゆくえに従って推計するのが当然でございますけれども、この低下していく波がどこでその頂点に達しまして横ばいの状態に入るかということは、必ずしも簡単に計算できませんので、従いまして、かりに三十年度の二十九年に対する増加率を考えてみますと、この増加率のカーブからは、三十一年度におきましてはこれより低いと想定されますので、三十年度の二十九年に対する増加率を三十年の給付費にかけますと、一応これだけ見ておけば、三十一年度におきましてはこの予算を超えることはないだろうという、いわば限度額ともいうべきものが算定されると思います。従いまして、そのような方法によりまして積算いたしまして、また、現金給付につきましても同じような方法に従って計算をいたし、ただ傷病手当につきましては、増加の原因というものを標準報酬増加によるための原因と、それからその他の原因によるものとに分けまして、おのおの別々に積算して参りますと、三十一年の予想されます療養給付費の推計というものは、限度額といたしまして四百八億六千九百八万二千円と、こういう数字が出てくるわけでございます。これに現金給付を加えまして、厚生省数字との差をとってみますと、現金給付費にはこれは標準報酬の区分の改訂がございますので、その影響も一応考えまして、そして差額をとってみますと三十六億六千二十四万と、こういう額が出て参るわけでございます。先ほど申しましたように、三十年度におきましても九億五千万円の見込み違いが私の資料からは推定されるわけでございますから、それにこれを加えますと四十五億程度の見積りの、何と申しますか、過剰の分と申しますか、過剰の分が推計されるのじゃないかということが考えられるわけでございます。一体なぜこういうような大きな差が出てきたかということは委員の皆様にも非常に御不審に思われる点があると思います。ところが、こういう実績が判明するに従いまして、予算の値が相当変ってくるということは、これは厚生省自身が以前におやりになっている資料があるのでございます。これは三十一年度の予算の基調となりました数字というものは、三月から十月までの実績に従いまして算出したものでございますけれども、いわば三月から十月にかけてのペースに従って推算していったと言われるものと思われますけれども、この一カ月前に三月から九月のペースに従いまして厚生省が算出いたしました三十年度の見込みと、三十一年度の予算見込みというものがございます。それを調べてみますと、まず支出の面では、三十年度分といたしましては七億五千万円の差が出ているのでございます。結局三月から九月までを基調といたしまして推算いたしました三十年度の費用と、三月から十月までを基調といたしまして計算いたしましたものとの間には七億五千七十四万五千円の差が出てきているのであります。こういう差が出てきましたために、当然見込みが、三月から九月ペースでみましたときにはこの増加する波というものを強く見ていたから、こういう見込み違いが出たわけでございますから、新たに出て参りました数字に従いまして、その増加のカーブというものを変えなければいけない、従ってそれが予算の面にも響いてくるわけでございます。どれだけ響いているかと申しますと、三十一年度の予算におきましては、支出の面におきまして保険給付費は十四億四千四百十六万九千円、これだけの差が出ているわけであります。そのほか厚生省のこういう何と申しますか、予算を推計する一人当りの費用を出しまして、それに被保険者の数をかけていくという予算の出し方自身に実は非常に大きな矛盾がごさいまして、そういう矛盾のためにこういう見込み違いというものが出てきているものと私は考えておりますが、時間も長くなりますので、後ほど御質問がございましたときに、なぜこれだけ巨額な差が出てきたか、どういうわけでこういう開きが出てきたかということにつきまして御説明いたしたいと思います。これで私は終ります。
  28. 山下義信

    委員長山下義信君) ありがとうございました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  29. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記を起して。
  30. 相馬助治

    相馬助治君 議事進行上の発言を求めますが、ただいまの成田参考人の陳述をお聞きいたしますと、政府赤字見積りはやや過大ではないかということが指摘されたようでございます。なお、先ほどの丸山参考人の陳述は実態の調査の上に立って、しかも政府資料政府が考えた計算の方式をそのまま採用してその出た数字は見込額とはなはだしく相違いたし、しかも十四億に近いものの差があるということが明瞭に指摘されております。この丸山参考人の公述されたことに誤まりがあるならば別でございまするが、一応その御意見をお聞きした私どもは、政府に対してこの丸山資料の信憑性並びにこれに対する批判、反駁材料あらばとくと小委員会としては承わるべき段階が来たとかように存じます。従って直ちに政府側からこれに対して述べ得るならばここで承わるべきであろうと思いまするが、これは小委員長において政府側に尋ねていただきたいことですが、むしろこの場において指摘することができないとするならば、明日あらためて緊急に当小委員会開き、丸山参考人にははなはだ御迷惑でも御出席を求め、政府側と対決されんことの私は見解を持しておりまするので、委員長において小委員に諮っていただきたい。それから本日のところは丸山氏の陳述も時間を大分区切っておりまするから、特にこの際丸山氏並びに成田氏に対して納得のいくまでこの委員会を続けてこの資料説明を受けるべきであろう、かように二つのことを委員長に対して申し上げ、善処方をお願いいたします。  なおこの対決の結果によっては、山下委員長は当然社会労働委員会に中間報告をなすべき義務が小委員会として生ずべきものであろうと存じますので、これらを含めて、以上私が提案申し上げた通りに議事の進行をはかられますように動議を提出いたします。
  31. 山下義信

    委員長山下義信君) ただいまの相馬委員の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 山下義信

    委員長山下義信君) 御異議ないものと認めます。  それでは政府にお尋ねしますが、この席でただいまの丸山参考人意見に対しまして、何らかの見解の表明ができますか、あるいは若干の時日を要しますか。この点。
  33. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 今この席で一、二気づいたところもございますが、しばらく時間をおかしいただきまして、ただいま拝見した数字でございますから検討いたし、さらに私どもの考久方を申し述べさしていただきたい、かように考えます。
  34. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは議事の都合によりまして、小委員会はただいまから秘密会に入ることにいたしますから、議員の関係者以外の方は御退席をお願いいたします。なお、小西参考人並びに亀山参考人は御在席いただいてよろしゅうございます。丸山参考人、成田参考人お残り願いたいと存じます。
  35. 丸山直友

    参考人(丸山直友君) 実はこの基礎となりましたものを全部持って参りまして、資料説明その他に関しまして、随行の者が資料の作成に当っておりますので、その者の在席をお許し願いますかどうですか、お諮りを願います。
  36. 山下義信

    委員長山下義信君) よろしゅうございます。さように願います。
  37. 丸山直友

    参考人(丸山直友君) それからなお、先ほど私の申し上げましたことをごく簡略にいたしました一枚刷りのものを持っておりますので、それを御配付してよろしゅうございましょうか。
  38. 山下義信

    委員長山下義信君) よろしゅうございます。  午後四時十八分秘密会に移る。
  39. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  40. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記を始めて。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時二十一分散会