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1956-05-25 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十五日(金曜日)    午後二時五十八分開会     —————————————   委員異動 本日委員加藤武徳君及び草葉隆圓君辞 任につき、その補欠として西岡ハル君 及び木村守江君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君            田村 文吉君    委員            紅露 みつ君            榊原  亨君            寺本 広作君            中山 壽彦君            西岡 ハル君            深川タマヱ君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            藤原 道子君            山本 經勝君            森田 義衞君            須藤 五郎君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    厚生政務次官  山下 春江君    厚生大臣官房総    務課長     小山進次郎君    厚生省保険局長 高田 正巳君    労働政務次官  武藤 常介君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○労働保険審査官及び労働保険審査会  法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動報告いたします。五月二十五日付加藤武徳君が辞任され、西岡ハル君が選任され、同日付をもって草葉隆圓君が辞任され、木村守江君が選任されました。     —————————————
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、審議の都合上、健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括議題といたします。  御質疑をお願いいたします。
  4. 山下義信

    山下義信君 前回の質疑で、本日は政府のいわゆる国民保険に関連いたす五カ年計画の御構想を承わる、こういうことになっておったのでありますが、その前に、昨日質疑をいたしました二重指定制度の問題につきまして、少しばかり残っておる点がありますから、その点を先に質疑いたしまして、前段の問題に移りたいと思うのであります。  今回政府は、保険医制度につきまして、登録制指定制という二つ制度を作った。これは昨日の政府の御答弁によりますと、いわゆるこの二重指定制は、今日のわが国の医療の実態からながめて、こういうシステムが適当だと思った、同時に、この中身の行き方については、保険医の、診療におけるいわゆる保険医独立性というか、診療独立性ということも考えたのだというような御答弁があった。それで本日お尋ねいたしたいと思いますことは、この登録申請をする、また指定申請をする。それによってその登録をいたし、または指定をする。その場合に、これを都道府県知事登録拒否し、指定拒否することができるようになっておる。私はその点について伺いたいと思うのです。関係条文はたしか四十三条ノ三——四十三条ノ三は指定に関する条文でありまして、四十三条ノ五は登録に関する条文であるように思います。それで伺いたいと思いますのは、指定拒否する場合には、都道府県知事地方社会保険医療協議会に諮らねばならぬということがある。「地方社会保険医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス」ということがある、この趣旨はどういう趣旨であるか。なぜ医療協議会に諮ることにしたかということをまず一つ伺いたいと思います。
  5. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 機関指定を拒みまする際に、「地方社会保険医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス」と規定をいたしました趣旨は、昨日も御説明を申し上げましたように、諮問ということよりはより強くいたしまして、民主的な手続法律上保障したという趣旨でございます。
  6. 山下義信

    山下義信君 より強くしたということはわかるのでありますが、なぜ医療協議会の議によることにされたかということです。  それでは質問を変えましょう。この指定拒否手続をする場合には「医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス」、こうある。登録拒否をするときには知事独断にできるようになっておる。拒否手続に、指定登録のこの二つの場合に、その手続を異にした理由はどういう理由であるか。
  7. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 登録拒否いたしまする場合におきましては、原則として、これは医師であればだれでも登録をするという建前になっておりまして、拒否いたす場合が法律上に「登録取消サレ二年ヲ経過セザルモノナルトキハ登録を拒むことができるというふうに、はっきりと要件規定しております。これ以外の場合におきましては、登録は、先日来御説明を申し上げましたように、医師歯科医師薬剤師であればだれでも登録をいたすということでございまするので、特にさよう機関の議を経るという手続を要せざるものと考えるものでございます。
  8. 山下義信

    山下義信君 私は登録をするときの手続を聞いておるのじゃないのです。登録拒否するときの手続指定の場合と異にした理由はどういうことか、言いかえれば、指定拒否するときには医療協議会の議を要すと非常に入念にされて、登録拒否はいわゆる知事独断にまかせて、だれに相談しなくても知事ができるということになっておるというふうに、差をつけられたのはいかなる理由かと、こう聞いておるのです。
  9. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ただいま申し上げましたように、登録はだれでもいたすということが建前でございまするので、特にさよう手続をむずかしくいたすという建前をとらなかったのでございます。
  10. 山下義信

    山下義信君 登録はだれでもすることになったから、その登録をすることの手続はそれはだれにも相談しなくてもできると、こういうことはよろしいのです。しかしながら、登録拒否するという場合は登録をするというときとは違うのであって、拒否するのには拒否する理由がなくちゃならぬ。またその拒否をされることを重大に見るかこれを重大に見ないかということは、これは考えなくちゃならぬ。「医療協議会ノ議ニ依ルコトヲ要ス」ということは、指定拒否するということは相当重大であると法律は見ておるのである。しかるに、登録拒否する場合には都道府県知事独断にできるようになっておることは、登録拒否ということは指定拒否というよりは事態が軽いとながめて差をつけたのかと、これはどういうわけかということを聞いておる。
  11. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 指定拒否登録拒否とが、片一方は重くて片一方が軽いという趣旨で区別いたしたわけじゃございません。登録拒否についてはこういう場合にしか拒否できないぞよということがはっきり法律上に書いてございまするので、これの運用に当りましては特別に医療協議会の議を経るというふうな必要がないと考えたわけでございます。
  12. 山下義信

    山下義信君 登録拒否要件は、二カ年を経過せざるものについては都道府県知事が拒むことができるという要件一つあるだけであって、二カ年以上経過した場合は私の質問と同じなんだ、もう知事独断拒否ができることになっておるのでありまして、私はただいまの答弁では、この要件以外の場合は、私の質問は依然として残るのですが、それとも、「二年ヲ経過セザルモノナルトキハ」というとき以外に何か要件がありますか。都道府県知事独断拒否ができる要件、他に書いてありますか、これ一つしかないと思いますが。
  13. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) これ一つしか拒否はできないのでございます。これに該当せざる場合には、いかなる場合におきましても都道府県知事登録をしなければならないわけでございます。
  14. 山下義信

    山下義信君 わかりました。そうすると、登録拒否ということは大体、二カ年を経過したらばもう都道府県知事には拒否権はない、こういうことですか。
  15. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) その通りでございます。
  16. 山下義信

    山下義信君 指定を取り消されたことのあるものが、指定の再申請をしようという場合は、これはいつでもできますか、指定の再申請は。
  17. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) できます。
  18. 山下義信

    山下義信君 登録の再申請は二カ年を経過しなければできませんか。
  19. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) できます。
  20. 山下義信

    山下義信君 二カ年を経過しなくてもできますか。
  21. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) さようでございます。
  22. 山下義信

    山下義信君 そうすると、ただ二カ年を経過せざるものについては、申請をしましても、知事が拒むことができる。指定を取り消されたものは翌百でもその申請はできるのであって、都道府県知事限りで拒否せられるということはないのですね。
  23. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御質問の御趣旨は、機関指定を取り消されたものが、翌日でも再指定申請ができるかと。それについては、できますと私はお答えいたしたわけでございますが、その場合に知事拒否することはないのかという仰せでございますか。
  24. 山下義信

    山下義信君 そうです。同じよう登録を取り消され、同じよう指定を取り消されたものが、再び申請をして指定を受けよう登録を受けよう、こういう場合に、登録の場合には二カ年を経過していない限りには知事知事限りで拒否される場合がある。指定を取り消されたものには、そういう二カ年以内とか三カ年以内とかいう、その期間において知事限りで拒否せられるかもわからぬというおそれはないのですね。それだけの差がありますね、ということです。
  25. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 仰せ通り、「医療協議会ノ議ニ依ル」ということに拒否はなっております。
  26. 山下義信

    山下義信君 そういたしますと、こういう私は心配がありはしないかと思うのです。指定を取り消されたものが再び指定を受けようと思うて申請をする、その場合には、医療協議会の議によるのでありますから、言いかえると、医療協議会委員に十分、露骨にいえば、運動して、そうして了解を求めたならば、翌日にでもすぐ指定してもらえることになっておる、法律が。それで登録の方では、取り消されたら二カ年以内には、なかなかどっこい、軽々しくこれは再登録はしてもらえぬようになっておる。こう私は思いますが、どうですか。そういう心配はありませんか。
  27. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) まあさような特別な場合を想定いたしますれば、さようなこともあり得るかもしれませんけれども、医療協議会というものは、私どもは各界の代表が出ておられまして、公正妥当にものを判断なさるものと信頼をいたしております。従いまして、指定を取り消されて、非常に不適当な医療機関が、直ちに翌日再指定を受けるというふうな事態は実際上あり得ない。もちろん機関指定を取り消すということは相当重大なことでございまするから、さよう処分を、同じ医療協議会取り消しの際にはやはり諮問を受けるのでございますから、医療協議会と御相談をしてやって取り消しをいたすのでございます。それが翌日再指定申請をいたしまして、そうしてこの再指定拒否いたしまする場合には医療協議会の議によるのでございますが、再指定をするという場合にはやはり医療協議会諮問にかかるわけでございます。従いまして、いずれにしろ、指定を取り消す場合にも、それから再指定をいたす場合にも、拒否する場合にも、医療協議会と御相談をいたすわけでございますから、私は実際問題としてはさようなことは起らないであろう、かように考えるわけでございます。
  28. 山下義信

    山下義信君 拒否する場合だけでなくして、指定の場合も医療協議会にもかけますか。
  29. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 条文にいたしますると、四十三条ノ十四の第二項でございます。諮問をいたすわけでございます。
  30. 山下義信

    山下義信君 第四十三条ノ十四の一項ですか。
  31. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 二項です。
  32. 山下義信

    山下義信君 わかりました。それでは次に伺いますが、第四十——これは条文をあげては済まぬのでありますが、条文をあげておく方が理解に便利だと思いますから、あげますが、これは逐条審議じゃないのでありますから、条文をあげることは申しわけないのですが、便利がいいと思いますから。第四十三条ノ十二ですね、第四十三条ノ十二の一号ですね、これは医療機関指定取り消しに関する規定ですね、この条文は。第一号はすなわち、その医療機関の中において保険医が不都合なことがあった場合には、その医療機関指定取り消し処分をするのですね、その通りですか。
  33. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) さような場合もあり得るということでございます。さような一人の医師が不正なことをいたしました場合には必ず指定を取り消すという趣旨規定ではございませんので、「指定取消スコトヲ得」となっておりまするように、さような場合もあり得るという規定でございます。
  34. 山下義信

    山下義信君 「取消スコトヲ得」でありますから、取り消すことができるのですね。それは取り消さない場合があるのでしょうけれども、一応は指定を取り消すことのできる規定なんでしょう。それをそういう場合もあり得るというような、これは軽い規定なんですか。そういう場合でない場合が、この一号は多く規定してあるのですか。
  35. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 一号は、さような場合におきまして、指定取り消し得るという規定でございます。ただし、ただし書きがございますることはごらんの通りでございます。
  36. 山下義信

    山下義信君 そういう場合に、ただし——えらい質問がこまかくなりましてから、済まぬと思いますが、これだけは聞いておきましょう。ただし、その違反を防止するために当該医療機関が相当の注意及び監督がなされてあるときはこの限りにあらずという規定ですが、どういう注意をし、どういう監督をしておればよろしいのでしょうか。私のお尋ねしたいのは、それなんです。医療機関指定を取り消す、その医療機関の中に働いておる保険医に不都合なことがあったときには、医療機関指定取り消しをするぞ、そういう場合もあり得るぞ、あなたの用心深い答弁からして、そういう場合もあり得るぞ、ただし当該医療機関が適切な注意及び監督がされてある場合はこの限りではない、こうきておる。その適当な注意、適当な監督とはどういうことをいうのかということを伺う。どうお考えになるか。
  37. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 医療法には、医療機関開設者並び管理者のいろいろな規定がございます。なおまた条文は、四十三条ノ四、一項の後段に、療養担当規定を定める根拠条文がございます。またそのほかには、民法の関係使用者責任というものを定めた規定もございます。従いまして、さよう各種の、開設者または管理者各種の法令によって要請されておりまする監督義務を果すについて、欠くるところがないということでありますれば、その機関責任は免れ得ると、かように申し上げたいのであります。
  38. 山下義信

    山下義信君 その管理者並び開設者が守らなければならぬという適当な注意監督関係のある、今局長答弁されたその規定を抜粋して、至急に資料として配付して下さい。
  39. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 後刻御配付をいたします。
  40. 山下義信

    山下義信君 指定取り消しのできる場合の規定は、第四十三条ノ十二でしたね。登録取り消しのできる規定は第四十三条ノ十三でしたね。間違っておったら指摘して下さい。それで私はこの登録取り消し指定取り消しのできる条文は、非常に重大だと思う。これは保険医生命線保険医の死命を制する点です。処分ですからね、処分するんですから。それでこの指定を取り消すことのできる第四十三条ノ十二に各号が列記してある。第四号はどういうことを違反したときに指定を取り消す規定でありますか、簡単におっしゃってみて下さい。
  41. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 四号は行政庁が行いまする検査に当りまして、報告または診療録その他の帳簿書類提出あるいは提示を命ぜられまして、これに従わなかったりまたは虚偽報告をいたしましたり、さようなときでございます。
  42. 山下義信

    山下義信君 わかりました。  第五号は、同じように、何か検査か何かの目的で、行政庁が出頭を求め、あるいは質問をいたしといったような場合に、それに従がわなかったというような場合に、取り消しをいたします条項ですね。
  43. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) さようでございます。
  44. 山下義信

    山下義信君 私は、その他あるかわかりませんが、これらの事項は、まあやかましくいえばへあなた方の命令に違反することになり、はなはだ不都合であるかしらぬけれども、一応はあなた方のいわゆる行政監督上の措置にまあいわばそむいたというか、意に満たなかったときのこれは場合のことですね。私はこの一号、二号、三号の違反の場合とは非常に性質が違うと思いますが、どうでしょう。たとえば先ほど一号を言いましたが、当然保険医療機関としての診療義務を尽さなかったとか、あるいは請求やその他に不正のようなことがあったとかいったような、俗にいう、ざっくばらんにいえば、悪質のような、その本分にそむいたような違法の場合とは、非常に性質が違うと思うのですが、当局はどう思われますか。
  45. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 仰せように、若干性質が違うと思います。しかし性質が違うと申しますることは、何もそれが悪質でないとかあるいは事態が非常に軽いとかいう意味で、性質が違うわけではございません。四号、五号は、前各号に該当するような場合におきまして、そのことが実際にあるかないかというふうなことを検査をいたしまするような場合に、その検査を拒んだとか、あるいはうそを報告したということでございまして、従いまして、その意味で若干の場合の相違があることは仰せ通りでございます。
  46. 相馬助治

    相馬助治君 関連して。私、大臣に尋ねたいのです。ただいま同僚山下委員質問に対して、第四十三条ノ十二の法文の読み方、これに対する提案者の考え方が局長より開陳されたのですが、これは実に重大だと思うのです。本法提出厚生省医療従事者に対する基本的心がまえが表明されているという意味合いにおいて、私は重大だというのです。これには、まざまざと保険医に対する弾圧精神が含まれております。弾圧というのは、するものが弾圧意思がなくとも、脅迫とか弾圧というものは、受ける側の感じ、印象というものが中心になることは、法律上の各種の判例で明らかです。で、四十三条ノ十二の一から三に至る条項は、明らかに保険医として守らなければならない義務違反事項ですから、これはびしびし取り締ってよろしい。指定取り消して差しつかえない。ただし四十三条ノ十二の四項目、五項目と相なりまするというと、きわめてこれは微妙でございます。特に必要上カルテ提出等を求めるようでありますが、これは医師法規定されるところの秘密保持責任ということが医師に負わせられております。会計上の疑念に対して、医師カルテ提出を求められたときに、悪意でなくて、医師法に忠実なるあまり、秘密保持責任を痛感するあまり、そのとった行為が結果的には四十三条ノ十二の第四の法律違反になる疑いが多いのでございます。従って、これは明らかなる威嚇法案であると、かように思いまするが、大臣のこれに対する御見解はいかがですか。
  47. 小林英三

    国務大臣小林英三君) この件につきましては、ただいま保険局長も御答弁申し上げておりますように、いろいろな問題で取り消しをされるというよう事態が起りました場合におきましては、その地方におきまする医師会とも相談をいたしまするし、またこの問題につきましては、四十三条ノ十四にもありまするように、地方社会保険医療協議会諮問をいたしまして、十分に検討してやることでございまするから、今相馬委員のおっしゃったよう切り捨て御免とか、そういうよう心配はない。要するに、法の適確なる運用をもって御心配ようなことは避け得るものと、こういうふうに考えております。
  48. 相馬助治

    相馬助治君 厚生大臣の御答弁はまことに筋が立っており、その通りであろうと思います。しかし、私が先ほども申しましたように、法律というのは立法された暁においては、立法者意図を離れて法律自体が権威を持ちます。そこで問題なのは、この四号の規定が存在するということ自体が、いわゆる帳簿あるいはカルテ、こういうものの提出を求められたときに、直ちに持っていかなかった、あるいは虚偽報告をした、そういう場合にはもう取り消しになるぞ、こういう法律自体が存在することが、相手に対して恐怖感を持たせる。そうしてまた、これは別な面からいえば威嚇法案である。さように思わないかと、こういうことを私はお尋ねをしたのです。厚生省はさように思わない。これは話としてはわかりまするが、そこで問題にしなくちゃならないのは、厚生省が従来、健康保険医に対してどういう態度をとってきたかということなのであります。  すなわち、先般ネコのごときおとなしい医師会が、総辞退を決意した。これは並々ならぬことである。そのときに厚生省は、昭和三十一年三月二十三日厚生省発保第五十二号によって、厚生次官名をもって都道府県知事に対して通牒を出しておる。これは言葉はきわめていんぎんにして丁重であるけれども、この通牒に流れておるものは、総辞退なんとがたがた騒ぐ医者があったならば、それを受け取ってしまえ、好きなようにやらせておけ、こういうよう意図に一貫しておることは明瞭である。そういう厚生省が、こういうふうな法律条文の中に入れておくということ自体が、健康保険医弾圧精神がここに出ておるのではないかということを私はおそれるのです。私は厚生省を責めるためにかようなことを言うのではない。私は今日、日本の国民医療の前進の上で、何を一番悲しみにたえない現実として見ておるかといえば、いわゆる三志会といわれるところの、医師会歯科医師会薬剤師会との間において、ただならぬ感情が一時ただよって、今日はこれは解消されつつあるけれどもそういう事態があった。そのときに、厚生省は指導よろしきを得なかった。これは天下隠れもない事実。今日この医師会歯科医師会等相手にして、健康保険法の改悪というような問題が出る場合にも、これら医療担当者の真実の声というものに耳を傾けていない。これら医療診療者組合等意思というものも、まじめに聞いていない。そうしてきわめて一方的に、政策としてやむを得ないという言葉のかげに隠れて、赤字負担という一つの大きな目的を持ってこういう法律を出してきたのだ。そうして医療担当者厚生省の間に非常に冷たいものが流れておる。この事実が私は問題だというのです。医師会の誤解もありましょう。しかし、この事実が問題になっておるのです。そこで今日、全国の医師諸君が、個人開業医医療を放擲して、中央に集まって政治運動をしなければならない。まさにこれは政治の貧困だ。厚生省が一半の責任を負うべきなんです。そういう意味合いにおきまして、私は四号というものは非常に問題だと思うのでありますが、従来の厚生省のとってきた態度、経緯から考えて、厚生大臣はどのように考え、そうしてこの法がかりに成立した場合には、これが運用に当ってどういうように考慮し、これを善用せんとするものであるか、見解を承わっておきたいと思います。
  49. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 相馬委員はただいまの御意見の中に、先般の医療担当者の総辞退をなさっておられますさなかにおきまして、厚生省次官通牒等があたかも冷酷な通告であるというよう意味に思われまする御意見があったのでありまするが、私はあの際に出しました次官通牒にも承知をいたしておりまするごとく、決してそういうよう趣旨で出したのではないのであります。私はこの際にそういうことを申し上げますると、非常に弁解がましく聞えるかもしれませんが、あの際に、あのあくる日でありましたが、ある一部の新聞に、いわゆる厚生省が総辞退を受け取れということをトップに書きました記事もあったのでありますが、私はこの問題につきましては、国会の委員会等におきましても御質問に答えて申し上げておりました通りに、十分に各都道府県知事に対しまして慰留してもらいたい、なだめてもらいたい、極力なだめてもらいたいということを前段に詳しくお願いをしてあるのでありまして、ただ、どうしてもお聞きにならぬ場合には受け取ってもらいたい、こういうことを申し上げたのでありまして、これはいろいろ相馬さんも、私の申し上げたことに対して、いろいろなお考えをお持ちになるかもしれません。私の方といたしましては、そういうようなつもりでいたしたのでありまして、受け取れということは、本来の私どもの考え方ではないのでございまして、極力慰留してもらいたいということが私どもの考えであったのでありますが、しかし、そういうことはただいま弁解がましくなるのでありますが、いずれにいたしましても、ただいまの御質問につきましては、法律には規定してございませんけれども、十分にそういうことのないように通達その他によりまして慎重を期したい。また今後、今相馬さんの御指摘になりましたような、いろいろだだいままで私どもが聞いておりますような点につきましても、十分に注意をいたしまして、今日までのようなことがないように、かりにあったといたしましても、そういうことのないようにいたしたいということを申し上げておきたいと思います。
  50. 山下義信

    山下義信君 ただいま相馬委員の関連の質問で、当局の保険医に対する態度というものの追及について大臣の弁明がありましたが、私は納得ができません。幾ら弁明なさっても、今回の健康保険法の改正案のこの中身を見ると、保険医保険薬剤師医療機関等に対してどういう態度をとっているかということは、法律自体が明白なんです。これはまたそのときにおきまして当局の真意を伺いますが、相馬君の質問に対する御答弁には私は納得ができない。  これで一つ私は一仕切りとしますが、この指定取り消しの、先ほど局長答弁もいただきましたが、一号、二号、三号、指定取り消しをするこの一、二、三号の場合は、これは保険診療のいわゆるそのものに関する違反、不都合、義務を尽さない、あるいはその診療の請求に不正なことがあるといったような場合の取り消し規定です。四号、五号は、あなた方が当然行政指導というか、行政監督上なさるることであって、相手に不正があるとか、あるいは診療上不都合なことをしたとかいうそういう場合でなくして、行政監督上、いささか当局のお気に入る通りにしなかったというだけの違反事項です。私は軽重は言わない。しかしながら、だれが見ても一、二、三号の、前半は、これは相当深い違反事項と見なければならぬ。四号、五号は常識上考えても、今言うたような、あなた方の行政監督上のその御命令に服さなかったというような場合、しかるに同じよう指定取り消しをする。同じよう指定取り消しということは、無期限の取り消しである。私はこれは意見になりますから言いませんが、ちょっと出てこいといって応じなかったり、質問したことに応じなかったりといったような、行政指導上の違反ような、いわば軽いときには——だれが見てもこれは軽いというようなときは、同じ指定をするのでも、どうですか、六カ月間とか一年間とか、いわゆる有期懲役といいますか、この指定取り消しの無期限を何か救済の方法がありませんか。清状によりまして、あなた方の方は積極的に救済するという道は講じていないでしょう。しかるにこの規定の上から見ると、罪の軽重を問わず、一律的に無期限に指定取り消しをするという条項になっておる。私はこれは実情に沿わない。軽き違反の場合には軽く処し、重き違反の場合にはどのような極刑になされてもこれはいなむことではないが、私はその点に対して、少しくこの各号については当局の御配慮が足りないのではないか、少し過酷に過ぎはしないかということを伺っておる。その点はいかがでしょうか。
  51. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 四号、五号がございませんと、当該医療機関が、今こっちの方はいいだろうと仰せになりました一号ないし三号に該当するかどうかということが調査できなくなる、こういうおそれがあるのでございます。(「そういうふうに信用しないことが問題なんだ」と呼ぶ者あり)従来の現行法の規定によりますると、四号ないし五号等のような場合におきましては、罰則をかげておりまして、六カ月でございましたか未満の懲役、一万円以下の罰金だつたと記憶いたしますが、罰則をかけておりました。今回の改正案におきましては、さような罰則等でこれに処するのはいかがであろうか。むしろ指定取り消しというふうな、保険の仕組みの中からどいていただく、こういう程度の扱いでまあいこう、(「それが一等残酷だ」「生活権の問題だ」と呼ぶ者あり)そういうよう規定の取扱いに相なっているのでございます。なお、先生方もよく御存じでございますように、従来におきましても、いわゆる監査拒否というふうなことで、いろいろな問題を起しておりますることは御承知の通りでございます。これらの現実の問題に処しまする意味におきましても、四号、五号は必要であろう、かように存ずるわけでございます。しかしかようなことが、今御心配ように、検査というようなものが非常に官僚的に行われまするならば、これはそのことは非常に避けなければならぬ問題でございます。従いまして、その点につきましては、先ほど大臣もお答えがございましたように、それぞれの診療担当者の団体と十分に御相談、御連絡をいたしまして、監査等につきましては、多くの場合立ち会いでやっているのでございまして、さよう運用方針は今後もとって参るつもりでございます。
  52. 山下義信

    山下義信君 今の御答弁の後段の場合はともかくといたしまして、これは当然のことだろうと思いますが、この前段の、中へ入ってみるというと、中身は悪いことをしている、悪いことをしたときにはこういう処分をする、様子見に行ったところでも同じよう処分するというのは、それは聞えぬのであって、様子見に入口へ行ったときには、ほんとうに悪いことをしておったのか、あるいはそれがそうでなかったのかわからぬのであって、その悪いことをしたときと、入口でのぞいてみたときと、同じよう処分するということは、処分の方法としては、これは私は少し過酷ではないか、こういう議論でありますので、この方の御答弁については、今は議論の段階でありませんから……、私は納得いたしません。
  53. 相馬助治

    相馬助治君 一点関連して。先ほど申したことは、いささか意見を交えてまことに恐縮でございましたが、私は事重大だと思ってさように申し上げたわけであります。具体的なことを言ってお伺いして、念を押したいと思います。四、五の取り消し規定に見合うところの救済規定というのは、本法に見当らないようですが、局長、そうですね。
  54. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 再指定、再登録の問題でございます。
  55. 相馬助治

    相馬助治君 第四と第五とにおいて指定を取り消される条項があるわけですね、そうすると、私が聞きたいのは、第四、第五というものは、かくかくの理由で私は取り消されたけれども、こういう不利益処分には従うわけにいかないのだと言って、訴えるところがあるとか、あるいはまたそれに類似の行為で抗議する、こういうふうなこの条文上の手続的な救済規定はあると思うんですが、直接第四、第五に見合うところの、こういう罰をするということに対するこれに見合うところの明瞭な救済規定というものがありますかと、こういうことをお尋ねしておる。
  56. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私がどうも御質問をよく把握いたしませんでお答えをいたしまして、まことに恐縮でございました。取り消しについて、どういう救済規定があるかという御質問でございますが、これは一般の行政行為に対する場合と同じように、いわゆる訴訟になるわけでございます。
  57. 相馬助治

    相馬助治君 保険局長は、実体論として、医師の場合に、一万円以下の罰金という刑法上の課罰対象として取り上げられるということと、それから六カ月あるいは一年間戸を閉ざせと言われるところの行政課罰の対象として取り上げられることと、これはどちらを重しとしますか。というのは、刑法論上からいえば、行政罰というのは、刑法上の課罰対象より下である、こういうふうに常識的に言われておりますが、医師という業態の実態から推して、一体いずれが保険医にとって痛いと思われますか。
  58. 山下義信

    山下義信君 相馬君の質問に私もついて聞きますがね、つまり本人が不服の申し立てをしたり、あるいは訴訟したりする、それは当然ここに書いてあろうとあるまいと行政訴訟ができる。しかしながら今言ったような、あなた方の行政監督上のちょいとした違反的なことに、この非常に悪質な深刻な不正の場合と同じように、指定取り消しという一律な処分をすることは、これは不当ではないかというわれわれの議論です。従ってこの軽い場合の指定取り消しをしたというような場合に、あなた方の方から積極的に、指定取り消したが、もうよかろうといって再びもとに復してやるといったような救済方法というようなものがこの中にあるかと相馬君が聞いた。あるならある、ないならないでいい。
  59. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) こちらから積極的に、先ほどのはひど過ぎたからこうしてやるというふうなことを規定した条文はございません。さようなことになりますれば、結局一度取り消されたものでございますから、再指定という問題になりまして、これは現実の上で向うとお話し合いをいたしまして再指定という手続になる、こういうことでございます。
  60. 山下義信

    山下義信君 いや、その場合に多少手心でもするというのですか。再指定規定規定であるのですから、そういうことを情報を酌量するとか、しんしゃくするということは一つも書いてないのですから、そういうような場合に、あなた方は運営上手心をする心がまえがあるというのですか。再指定の方法があるというのは、再指定の方法だけの説明をするのですか。そういう場合には、多少の運営上の手心をする心がまえがあるというのですか、そこをはっきりして下さい。
  61. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) かりに非常に過酷な措置が行われました場合には、次の再指定の際に、当然さようなことも考慮いたして、運用上再指定をいたすべきものと存じます。しかしながらこの取り消しをいたしまする際には、四十三条の十五に新しく新設されました規定がございまして、弁明の機会を法律上必ず与えなければならないことにもなっておりまするし、かつ取り消し処分をいたしまするには、先ほど申し上げましたように、役所の一存でどうこうということでございません。医療協議会にかけて御相談をいたして、その期間等もきめるわけでございますから、私どもとしましては、実際の運用におきましては、今御指摘のような、はなはだしく過酷になるというふうなことはないものと考えております。  刑法罰、行政罰というお話でございますが、罰というものは、罰則の方はこれはほんとうの罰でございますが、指定取り消しの方は、罰という考え方ではなくして、そういう方がそこにそのままおられると困るから排除するという意味合いのものでございます。従って、ちょっとものの考え方、性格が違うわけでございます。刑罰の場合には、罰金以上の刑に該当いたしますと、これは医師の免許証にも関係をいたして参るわけでございます。さよう意味合いにおきましては、刑罰の方が重大である、かように申し上げなければならないかと存じます。
  62. 山下義信

    山下義信君 この点はこの程度にしておきまして、私は、昨日当局の御答弁を要請しておきました、いわゆる政府の五カ年計画といいますか、昭和三十五年に国民保険を目標とする、それに対してのあなた方の方の大体の御計画はどうなのか、こういう問題なんですが、取りまとめてここで御答弁をいただきますか、あるいは一問一答で御答弁いただきますか、政府の方でその点の御答弁を願いたいと思います。
  63. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 昨日の委員会におきまして、山下委員から、私どもの目標といたしておりまする昭和三十五年を目途といたしまして、国民保険に向って参りたいというような点につきまして、いろいろ御質問、御意見があったのでございますが、私どもといたしましては、ただいま具体的の計画はございませんので、現在におきまして私どもが考えております考え方を申し上げておきたいと思うのでございます。  医療保障の達成につきましては、社会保障制度の推進をはかる上におきまして、当面最も緊急を要する問題といたしまして、私もその達成につきましては、具体的ではございませんが、しばしば申し上げたところでございまするが、なお、この際私の所信の一端を明らかにいたしておきたいと存じます。  御承知の通り医療保障を達成いたします上におきましては、疾病保険の拡充強化ということがその中核をなすものと考えるものであります。政府におきましても、当面最も問題となっておりまする政府管掌健康保険に対しましては、その財政対策といたしまして、本年度三十億円を一般会計から繰り入れ、その健全なる発展をはかったのでありますが、一方、現行制度のもとにおきまして、約三千万人に及ぶ疾病保険の未適用者があるのであります。これらの国民に対しましては、まず国民健康保険の普及をはかることを第一として推進して行きたいと存じておりまするが、五人未満の事業所の健康保険適用の問題がありますし、僻地医療対策等ともあわせ考慮すべきものと存じまするので、これらの関連諸問題とあわせまして検討いたしている次第でございます。  また結核対策につきましては、その医療費が各種制度の重圧になっておりまするので、国民保険の見地からも、国家財政の上からも、総合的施策を遂行いたしたいと考えております。この点につきましては、結核保険の実施という意見もございまするが、疾病保険との関連、疾病保険の未適用者の問題もありまする現在におきまして、公費負担制度を中心に考慮いたしたいと存じております。  なお、以上に述べました医療保障の具体的施策につきましては、近く社会保障制度審議会の勧告も予想されておりまするし、また一方、医療保障委員の任命も近く行う予定でありますので、おそくとも昭和三十五年実施を目標といたしまして、全国民を対象とする医療保障達成をはかるために、できるだけ早くその具体案を早急に作成いたしたいものだと存じておる次第でございます。
  64. 山下義信

    山下義信君 ただいまの厚生大臣答弁は、従来からまあしばしば繰り返しておられました抽象的な御答弁で、そのおあげになりました国保の普及とか五人未満の適用とか、あるいは結核の対策とかいうようなことについて、これからどういう段取りで、大体の段取りはどういうふうにして進んでいくということをお尋ねして、御答弁がいただけましょうか。いただけないのならいただけないでいいです。ただいま以上には答弁しないならしないでいいです。いただけるようでしたら少し伺いたいと思います。
  65. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまの後段に申し上げましたように、非常に各種保険もございまするし、この問題につきましては、ただいま申し上げましたような考え方に基きまして、今後医療委員等とも十分に計画を立てて、近く具体案を立て、あるいは年次計画を立てて進んで参りたいと存じておりまするから、どうかさよう御了承を願いたいと思います。
  66. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 その点に関してちょっと関連。厚生省が今度の健康保険の一部改正をする法律案を出された説明書に、こういうよう説明しておるのです。私読みますから、これを。「以上申し述べましたように、これら諸改革は単に健康保険の財政対策というような狭い意味のものではなく、社会保障制度特に全国民を対象とする医療保障制度の完全実施を前提としつつその一環として実施するものでありまして、わが国の医療保障制度が今後急速に健全に発達して参る上において一転機を画すべきものと考えております。」、こういう言葉をもって大体説明しておられるのです、この改正法案そのものを。すなわち全国民を対象とする医療制度の完全実施、これを前提とする、その一環として実施するのだというのです。そうすればこれは明らかに、何らかこの全体とこの部分との関係がなくてはならない。この改正法案審議する上には、全体の計画の何らかの姿がなければならない。計画性を持っていなければならない。すなわち総合的な計画性というものを、これが一環だ、一部分だというのですから、その他の残りとの関係説明されなければならないということは、これは常識です。こういう常識の点を、常識的にどういう関係を持つのかということをお尋ねしておるのです。昨日の発言の中にもほんとうに、これが今厚生大臣が言われたような五人未満のことが問題だとか、僻地の医療対策が必要だとか、国保の普及が必要だとか、結核対策が必要だとかいうことは、これは何にも、これは昔から言われていることで、一環としてだとか、前提としつつあるとかいうことにはならないのです。もう一度……。そんなことでは私は厚生大臣答弁としては受け取れない。少くともわれわれ委員審議してゆく上において必要なだけの答弁をしていただきたいと思う。
  67. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいま竹中委員から御質問があったのでございまするが、健康保険の改正につきましては、御承知のように今日までの、累年生じておりまする赤字、これをこのまま放任しておきまするというと、政府管掌の健康保険制度というものは崩壊に瀕することになると、それではなりませんので、私どもがただいま出しておりまするような改正案に基きまして建て直しをいたしたいと、健全にいたしたいと、そのためには、本年度は三十億円でございまするが、政府の補助というものを法制化いたしまして、そして日本の社会保障の中核とも申すべき医療保障の方の最も肝要なる、最も被保険者の多い政府管掌の健康保険制度の建て直しをいたしたいということであるのでありまして、ただいま山下委員の御質問に対しまして、私がただいまの考え方を申し上げましたことにつきましては、竹中さんも今御意見がありましたように、不満足で思召すことはこれはその通りであるかもしれません。私どもは、少くとも先ほど申し上げましたように、昭和三十五年を目途といたしまして国民保険の線に持っていきたい。それには今後すみやかに計画を立てまして、少くとも三十一年中には、すべての方向に対しまする計画を立てて、そして総合的に調査、研究計画を立てましてやって参りたいということでございますから、どうかさよう御了承を願いたいと思います。
  68. 山下義信

    山下義信君 私は、これ以上答弁をなさらぬということになりますれば、これはいたし方がありません。そういう御態度では良心的でないと私は思うのです。それは少しひどいと私は思うのです。しかし追い打ちはしません。武士の情です。(笑声)追い打ちはしませんが、一言申し上げておきますが、私は国会の御答弁として、しかも当該専門の委員会の御答弁として、それでお済ましになろうということには、少しく非良心的ではないかと思う。昨日私が伺って、当局には何か大局的な、まあ荒削りでも、プランはないか、何かそういうものを出したことはないかと聞くと、ないと、こうおっしゃった。あるかないかということを口争いをあなたといたしたんですが、昨年の十一月の二十日付の朝日新聞には、いわゆる厚生省の長期計画、五カ年の社会保障計画というものを、朝日新聞に堂々と大記事として掲載してある。もしそれが厚生省意見でもなければ、厚生省の中で作業をされたものである形跡でもないのであるならば、なぜ当時否定をされません。否認をされません。取り消しをなされません。また同様の記事が専門の社会保険雑誌に麗々と厚生省の担当官の署名で記事が掲載されてある。私は本日、朝日新聞のその新聞も、その掲載された雑誌も証拠としてここに持って参っております。しかしこれはおそらく省議を経た公式の厚生省見解ではないかもわかりません。ないかもわかりませんが、少くともそういう作業というか、試案というものをあなたが命じたのだか、前厚生大臣が命じたんだかそれはわかりませんけれども、公式の席でしばしばこれをちょうちょうとし、今申したような新聞雑誌に掲載されてある。またいやしくも国家公務員が部外の刊行物に掲載するときには、言うまでもない人事院規則によって上司の許可を受けなければならぬことになっている。上司の許可も受けずして当該担当官が私見を発表するということは、国家公務員法の許されざることである。しかしこれは省議できまっておらぬことであるからと言うて、あなた方がかりに逃げるならそれでよろしい。よろしいが、国保の将来への方針ということは、あなた方省議で相談なすったのでないのですか、なすったことはありませんか。将来の国民健康保険の強化拡充について、あなた方は厚生省部内において御相談なすったことはないのでありましょうか、これを伺いましょう。
  69. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 国保の問題につきましては、すみやかにこれの拡充強化をはかりたいと思います。そういうふうに考えております。(「考えているというのじゃなくて、省議で諮ったことがあるか、閣議で諮ったことがあるかということを聞いている」と呼ぶ者あり)
  70. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 今のは答弁になっておりません。(相馬助治君「省議で相談したか、閣議で相談したかということを聞いている」と述ぶ)
  71. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 国保の強制設立等の問題につきましても、その他全般の問題につきましても、省議で相談をしたことはあるのでございます。
  72. 山下義信

    山下義信君 あるのですかないのですか。
  73. 小林英三

    国務大臣小林英三君) あります。
  74. 山下義信

    山下義信君 あるのでしたらそれは発表していただかなければなりません。ですから私はあなた方の方で相談したある程度のものは御発表なさらなくちゃいけません。
  75. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今日まで、それらの問題につきましては、部分的にはいろいろ相談をいたしておりますが、まだ成案を得ておりませんので、発表をいたす時期になっていないのであります。
  76. 山下義信

    山下義信君 そんなことをおっしゃっていただいては困ります。政務次官もおられるのでありますが、大臣答弁できなければ、政務次官、御答弁いただきたい。それはどちらでもよろしいですが、大臣答弁下さればそれでもよろしいのですが。これはもう公然と、あなたの方は昨年の十二月の十四日に、国民健康保険のこの強化拡充の問題について、厚生省は省議をして大体このような方針でやる、このような計画でやるというものをきめて一般の新聞に御発表に相なっておる。私は、ここへ日本経済新聞の十二月十五日の記事を持ってきておる。また二月二十一日には同様の毎日新聞の記事も持ってきておる。これは厚生省が公式に記者団へ発表しておるものです。相当中身が具体的なんです。国民健康保険のいわゆる強制設置をいつやるか。またどういうふうなやり方にするかというととも詳細に具体的に出ておる。すでに昨年十二月にこういうものを発表なさって、ここで質問すれば、一向に知らぬ存ぜぬ、そういう計画はないという御答弁では、当委員会は私は承服しがたい。私は当局の答弁はまことに誠意がない。誠意ある御答弁を下されば私は質問を終了いたします。しかし、こういうような部外に過去において具体的な御計画も御発表になり、省議で決定したものもある。あるいはあなた方の一部の方で御計画になった、あるいは試作されたような試案を公然と公式に発表しておいて、委員会においては、これをノー・プランである、何にもそういうものはないとおっしゃったのでは、委員会としては承服しがとうございます。もっと具体的なものをお示し下さるか、どうなさいますかということがおきまりになりますまで、委員長、暫時休憩願います。(「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  77. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 私もそれがなければ、審議するということは、前提のことができておらないのだったら、これはできない。(「きのうは全然ございませんと言ったのです」と呼ぶ者あり)
  78. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は政府がちゃんとした五カ年計画なり何か立てて、そうしてその一環として今度これが出てきたというふうに理解しておったのです。ところが政府は何にも、それに関しては何にも計画は立っていない。たまたま出したものは何かというと、その五カ年計画に、精神的にも大いに協力してもらわなければならぬところのお医者さんを罪人扱いする、縛りつけるという生活を脅迫するよう法案をまず出してきた。こういう態度で今後の五カ年計画をあなた方が立ててみたところで、それが実際円滑に運ばれるかどうか、私は非常な疑問を持つのです。まず最初にこんなばかなものを出してくるべきじゃないのです。あなたたちはちゃんとした法案をまず示して、それに対していかにお医者さんを協力させるかということを、そこから出発しなければ問題は成り立たない。あなたたちのやっていることはまるで反対だ。こんな法案でお医者さんを縛ることを考えて、日本の保険制度がうまくいくと考えているのかどうですか。絶対うまくいかない。これは保険制度そのものを根本的に破壊するものです。(山下義信君「委員長において善処されんことを」と述ぶ)だから私は休憩した方がいいと思うのです。
  79. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 休憩しようという御意見が出ていますが、どういたしますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) じゃ暫時休憩いたしまして、引き続いて理事会をいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 委員会を休憩いたします。    午後四時十八分休憩      —————・—————    午後五時五十一分開会
  82. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それでは社会労働委員会を再開いたします。  引き続き御質疑をお願いいたします。
  83. 田村文吉

    ○田村文吉君 私、議事進行について発言いたしたいのでございますが、先ほど山下委員から政府に対して重要な問題についての御質疑があったのでございまするが、事きわめて重要な問題であるし、われわれもその中で知りたいという問題もあるのであります。しかし、会期も切迫している今日でございまするので、なるべく時間を節約していく必要もあると考えますので、明日さらに委員会を開きまして、質問の要領に対して政府の簡潔な御答弁、しかも明瞭な御答弁をお願いすることにいたしまして、本日は健康保険に関する質疑は一応打ち切りまして、次の、本日の懸案になっておりまする労働保険審査官及び労働保険審査会法案に移られることの動議を提出いたします。
  84. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまの田村委員の動議の通り、本問題に対する本日の質疑はこの程度にいたしまして、次に移ることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  86. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、労働保険審査官及び労働保険審査会法案を議題といたします。御質疑を願います。
  87. 山本經勝

    ○山本經勝君 前回御質問申し上げました際に、今回のは改正でなくて、新しい立法なのですが、労働保険審査官及び労働保険審査会法案の立法の目的、それから手続等につきまして総括的な御質問を申し上げて参ったのであります。そこで大臣並びに富樫局長の方からの御答弁によりまして一点考えられる点は、実際上労働者が災害をこうむって、それを法の精神にのっとって救済するという趣旨について、ややともすると、いわゆる審査官あるいは審査委員会というものが従来あった三者構成でなくて、いわゆる官僚的な取扱い、言葉をかえて申しますというと、三者構成による協議決定ではなくて、もっぱら審査官並びに審査委員という立場から法の解釈適用の点で統一をするというところに重点がおかれておるのであります。この点を中心にして法の精神にのっとった取扱いができるかどうかということについての懸念を持っておりますので質問申し上げた。ところが、それに対しまして労働省の方では、少くとも労働者の実情、実態に即した取扱い、並びに決して労働者の発言なりあるいは不服の申し立て等について不利益な取扱いをするものではない。特に今度の法文の中で明文になっておらない諸問題につきましては、政令等によってもさらに具体的に明らかにする用意があるのだというような御趣旨の御答弁がありました。そこでいろいろこれを検討して参りますというと、この法案そのものについては非常に問題がある。しかしながら、もし実際にこれを運用する面において考慮が払われて参るということになりまするなれば、あるいはそこに期待をかける余地がないとも言えない。それで本日はその点につきまして、大臣並びに関係政府委員の方に御質問申し上げたい。  まず第一の問題は、審査会を従来ありました——地方にある三審の制度が廃止されたかわりに、中央に審査会が設けられた。ところがこの法案を見て参りますというと、委員の任命の手続について何ら具体的に示されておりません。これは非常に問題がありますので、この点についてまず大臣の方から、どういう方法で任命するのか。つまり公労法の場合にも問題がございましたし、また、その他労働関係の問題につきまして、公益委員等の任命の場合に、いろいろ具体的な手続が示されておるのでありますが、これについては、全然触れられておらない。ただ学識経験のある者とか、あるいは労働問題に経験のある者というような抽象的な表現でなされておるだけであって、それではどのような人を、いわゆる国会の同意を得て内閣総理大臣が任命するのか、こういう点が問題であります。そこで大臣の方から懇切な御解明をいただいておきたい、かように考えるわけであります。
  88. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 本案を作りました私どもの側から申しますというと、そういう点を御心配願うほどのことはない、もちろん労働側に心配をしていただくようなことはないという考え方でやっておりましたのですが、やはり実は本日も労働組合側の方にお目にかかりまして、いろいろな御意見を承わって、なるほどそういうようなところに心配される節もあるのかと存じましたようなわけでありますが、原案第二十三条に示しておりますように、この法律ができましてから審査会の事務運営についても事務手続を詳細に作りますし、さらに政令を出しましてやるつもりでありますが、この審査会の委員につきましては、御承知のように、本案は国会の御承認を求めて内閣総理大臣がこれを任命するという慎重なやり方をいたしておるわけでございますからして、政府側といたしましては、その委員の人選に当りましては、労使双方の御納得のいくようなりっぱな人物を任命して、皆さん方に御心配をおかけしないように、御要望に沿うようにいたしたいと思います。なお各方面の御得心をいただくためには、最も弾力性のある態度で臨むつもりでございまして、労使双方に御納得のよくように弾力性ある態度で人選を進めて参りたい、こういうふうに考えております。
  89. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の抽象的な表現では、まあそういう表現しかないと思うのですが、具体的に申しますと、たとえば委員の任命をなさる際に、あらかじめ労働組合あるいは経営者の団体、こういったものに、委員の任命をしたいのだということで御連絡なさって、そこからそれぞれ適当と判断する代表者を推薦する、その推薦された者について大臣の方で一応検討を願い得るというような機会等が得られるかどうか、その点はどうでしょうか。
  90. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど申しましたように、国会の御承認を得て総理大臣の任命でやるというふうになっているものでございますから、ただいま山本さんの御指摘のようなことを法的にきめることは遺憾ながらできませんですが、その人選につきましては、もちろん労働省側としてはあらかじめ双方に御了解のいくような人物をお示しして、これは表向きそういうことをやりますと、たとえばどなたかを御推薦申し上げて、それが必要条がないということでその御承認が得られなかったというときには、その方の人格、声望も傷つくようなことになるのでありますから、内面的に十分事務当局で両者の方には御相談をしてそうしてきめて参りたい。こういうのが先ほど申しました弾力性ある態度をとっていきたいと申し上げたことであります。
  91. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこでちょっと突っ込んだ話になりますが、かりに一応推薦をするということになります場合に、その推薦をなさるということがわかりますと、かりに労働組合あるいは経営者団体等においてこういう人を出したらというので、申し出があったという場合には、一応それは大臣のお手元にとめられて、そうして選考なさる資料には十分お願いできると思うんですが、その点はどうなんですか。
  92. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 双方の、これならばと思われる方を御推薦下さることはしごくけっこうでございまして、私どもが人選を申し上げる資料にいたしたいと思います。
  93. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで地方における審査官の任命ですが、これは法案の中で非常に明確にこのこともなっておりません。そこでこれは事務当局の方でもけっこうなんですが、大体どういう人人を審査官に決定するというお考えを持っておられるのか、その点もあわせて一つ説明願いたいと思います。
  94. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 地方の審査官につきましては、法案に書いてございまするように、労働基準行政特に労災保険行政につきまして相当の実務を経た、そうして審査能力のある者を委嘱する、補職することになっております。先生御存じの通り、福岡におきましても基準局に現在五人の審査官がございます。相当の老練な人物を配置してございます。今後の人事の運用におきましては、一段と今後は単独でやるわけじゃなく、労使の代表参与と一緒にまあこの審査、調査なども実体的にやるわけでございます。一段と円熟した条理に通ずる人物を選考するよう注意したいと考えております。
  95. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで、今のこういう場合にも考えられるんですか、たとえば都道府県の知事が任命することになるようでありますが、その場合に、新しくそうした審査官を配置するということも考えられるのでありますが、そういう場合に、やはり問題が労使の中の問題である、その配慮の上から適当な人選等についてまあ希望が出ましたという場合に、お取扱いとしてはどうお考えになるんでしょうか。
  96. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 正式に、これは純粋な公務員の人事でございまするので、何と申しますか、先ほど大臣からもお話しがありましたように、公式にどうということをここで申し上げかねるのでありますが、ことに失業保険は別として、私の方の労災関係におきましては、労働基準監督官のうちからこれを補職するのを原則としております。この監督官は特殊の仕事に従事いたしますので、一番最初に監督官になるには監督官試験を受けてそうして合格して研修をいたします。そうして監督官として実務につき、そのうち相当、五年ないし十年たった老練な者が現在審査官になっているわけであります。実際問題といたしまして、審査官の審査事務の過程におきまして、しょっちゅう労使の代表参与との間に、何と申しますか、とげとげした関係などを生じますと、非常に事務処理に円滑を欠きまするので、先ほど申し上げましたように、そういうことのないようにする人事配慮を弾力的にいたしたい、こういう心持でございます。
  97. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで話は変りますが、この労使双方の審査に関する参与なんですが、これはきわめて重要な問題だと思う。前回の場合にもるる御説明をいただいたわけですが、ここで確認をしておきたいのは、労使双方は「意見を述べる」という条文に案はなっておるのですが、この「意見を述べる」ということは「意見を述べることができる。」のであって、意見を取り上げて必ずしも聞かなければならぬということにもなっておらない。そうしますと、実はほんの形式的な、労使双方の利害関係者が代表を送っておるけれども、ただそれは顔を並べておるというだけであって、実はその十分な審査に参与するという機会にならないと思う。むしろこの点は法そのものの条文から申しましても、たびたび御説明の中にありましたように、労使双方の意見を十分尊重し、そうして審査に参与せしめるという表現でもって大臣もまた局長も御答弁になっておる。そうしますと、単に「意見を述べることができる。」というよう条文では、これはその御説明と一致しないと思う。ですから、そこでむしろこの条文をそのような表現に直してなさることがもっと妥当な方法だと思うのです。その点はどうなんでしょうか。
  98. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 法律の立法技術上、条文には「意見を述べることができる。」と、率直に申しまして、私どももいかにもそっけない書き方だと感じております。しかし、これは法制局、社会保険審査会等との関係でこのようなことになったわけであります。前々から大臣も私も申し上げておりまするように、法の二十三条に基く政令等におきまして、いろいろと単にそういう冷たい扱いでなく、実質的にいわば会議的な形態をもちまして三者が一緒になって審議する。むろん事柄の性質が、最終的には裁判所で決定する司法的事案でございまするから、最終的な決定は審査会ないし審査官がやるという建前はくずすわけに参りませんが、そこでそれに触れない限り実質的に一緒に審理する、検討する、こういうことを条文の技術上可能なる限り盛り込みたいと考えております。
  99. 山本經勝

    ○山本經勝君 審査官の場合に、問題は労使双方の指名された人々が審査に参与するというのですが、その場合にはいろいろな具体的な問題が取り上げられる。たとえば、審査に必要な資料の提供とか、あるいはまた証人の喚問とか、実地の調査とかいったような問題が起ってくると思う。これは今までの三者構成の場合にはこのことがかなり公正に実態に即して取り扱われてきたから問題がなく、しかも円滑に運営がされておったと思うのです。ところが、一応今までの三者構成という機関じゃなくて、つまり官制化された審査官というものを中心にして、それに労使が何といいますか、参与するという形でありますから、その性格がやや異なってきておる。ですから、そこでたとえば具体的に申しますというと、何々の事件、まあ一つの事件を取り扱う際に、このことは何といっても現地調査が必要である、こういうよう意見を、いわゆる参与いたします労使の指名を受けた人が述べます。そうすると、そういうことは必要ないのだ、ぽんと審査官が打ち消してしまうというようなこともこれは可能なわけなんです、この文章の表現からいきますというと。そういうふうになりますと、実態に即する、つまり大臣局長がしばしば言われますように、実態に即して、決して労働者を見捨てたのじゃない、あるいは保護する基本精神には変りはないのだと強調されるならば、何らかの具体的な保障がなければ不安心なんですよ。たとえば政令等においてこのことを具体的に盛り込む用意があるのかどうか。
  100. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御指摘の証人喚問、鑑定とか事実審査等以下、それらの諸点につきましては、しばしば私も申し上げておりますように、元来この労災によって労働する人々を保護しようというのが私どもの建前でございまするから、命令を制定いたします場合に、御要望の趣旨に沿うように十分御意向を尊重して善処いたして参りたいと思っております。
  101. 山本經勝

    ○山本經勝君 この審査会の場合には、第四十五条に明記されておるように、「指名された者は、審理期日に出頭して意見を述べ、又は意見書を提出することができる。」というふうに審査会の場合はなっておる。そこでこれは最終決定——異議の申し立てをして最終決定をする機関でありまするから、これにはなかなか実際問題として、先だってから申し上げたように、相当多数の事件がかかる。しかも今までの実績から申しますというと、三審に回された、つまり審査会の審査段階に回されたものが二百十何件三十年度においてもあるようでありますが、さらにこれに加わって経営関係の問題も入ってくるのでありますから、勢いそれの審査も加わってくるということになりますと、相当件数がふえると思う。そこで三名の委員と、そうしてこれに配する大臣官房の方にある事務局の職員とが協力してやるという姿になろうかと思います。そこに新しく労使双方の参与する人々が加わってくる、こういうことになってくるので、あるいは現地調査あるいは文書審理もむろん毎日ひっきりなしにやられる状態になると思う。ところが、実はこれらの委員が非常勤のように承わっておる。そういう状態で果してこの審査が円滑に推進できるのかどうか、この点も大きな疑問がございます。この点一つ説明いただきたいと思います。
  102. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 前に私の説明があいまいでまことに恐縮でございますが、中央に設けられまする三人の委員は常勤で毎日お勤め願うことになっております。
  103. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで労使双方の指名を受けた人々が審査に意見を述べる、審査会に出て意見を述べる、あるいは参与するというような形になります。そうした場合に、参与するこれらの人々は調査活動を行なったり、あるいは何と申しますか、資料の提供を求めたりするような場合に、あるいはその会議に出てくるために費用がかかると思うのですが、これらの費用についてはどのような取扱いを受けるのですか。
  104. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) この費用につきましては、一応社会保険審査会等の例にならって、それぞれの予算を組んでございます。しかし実際に発足してみなければ、件数がどの程度でどの程度の調査、あるいは実地調査、鑑定、証人喚問といったようなことになるか見当がつきません。ざっくばらんに申しまして、当初組んでおる予算があるいは足りなくなる場合もないとも限りませんのでございまするが、その場合には、その当初予算に縛られることなく、必要な分は増額の措置を講ずる所存でございます。
  105. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の労使双方の指名を受けた人々が審査に参与する場合に、問題は先ほど申し上げたように、審査官がそのようなものは必要がないというのでぽんぽんはね飛ばされて、あるいは審査委員がけ飛ばしていくというようなことになりますと、ほんとうの意味において審査が納得いく状態になっていかない。そこでたとえば資料の提供なり、あるいは現場検証もしくはむしろここではこれらの労使双方の代表なる者は、いわゆる直接災害をこうむった異議申請をした当事者の、いわゆる弁護人的な立場に立つと思うのです。その場合に、代理権も必要になる場合もありましょうし、あるいはこの審査に参与するために必要な資料の提供等について、委員なりあるいは審査官が、それを拒否するというようなことのないような保障が何らか政令の中で明確化するというような御用意がございますかどうか。
  106. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) そういうことにつきましても、先ほど大臣が申し上げましたように、法制局その他の打ち合せにおきまして、立法技術上どういう表現になるか存じませんが、心持といたしましては、十分に仰せよう趣旨を盛り込む、こういう所存でございます。
  107. 山本經勝

    ○山本經勝君 この労使双方の、いわばこれがはっきりまた利益代表という形になると思うのです。災害をこうむった労働者の利益を擁護する便宜的な立場に立ちます。かつ災害の起った現地に直接関係のある使用者の代表にいたしましても、労働者と使用者が雇用関係を持っておって、しかも自分の職場でけがをしたというようなこと、あるいは同じ産業の中でけがをしたというような場合には、使用者も同情的な立場を今までとってきたことは御承知の通り、そのことが三者構成の中で非常に微妙に、しかも円滑に推進された、こういうことを考え合せますときに、問題はこの利益代表としての立場でありますが、しかし時々刻々に変る諸般の情勢や、あるいはまた地域的な配慮が必要でありますが、そのことから考えまして、委員といいますか、委員という名称は使ってないのですが、労使双方の指名された人の任期といいますか、そうしたものの期限の区切りがないのはどういうわけでしょうか。
  108. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 一応この労使の代表、私どもは参与と一応呼んでおりまするが、この方々は労使の関係団体の御推薦でございまするので、社会保険の例にならいまして、一応当方から任期を区切るということはいかがかと考えまして、法律には明文を置かなかったのでございまするが、もし関係方面におきまして御要望がございますれば、これを命令において規定することにやぶさかではない、こういう態度をとっておるわけでございます。
  109. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで重ねてお伺いしたいのですが、大体指名となっておるのですが、これは局長大臣のお話で、適当に指名されたというのでは、これは両者非常に納得しがたいと思う。ですからいやしくも指名をするためには、どういうふうな手続でなさるお考えなのか。たとえば労働者の団体から推薦を受けて指名をなさる、何らかそこに手続的な点もはっきりしておかないと将来に問題が残る、その点どうですか。
  110. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) これにつきましては、たとえば中労委とか地方の労働委員会あるいは基準審議会とか、そういう例と全く同様でございまして、中央におきましては総評、全労その他で結成しております各種審議会に対する委員の推薦母体がございますので、そこに公文で推薦方を依頼し、経営者側につきましては、日経連といったようなところに推薦を公文で依頼いたしまして、推薦された方を依頼する。地方におきましてもそれと同様の方式でやる。これは当然のことで、ここでそう確約しても差しつかえないことでございます。
  111. 山本經勝

    ○山本經勝君 この法文を見て参りますというと、それから同時に、せんだって来御質問申し上げたことについて、こういうことが御答弁になっている。つまり同一の事案であって、しかも何といいますか、その審査会における取扱いが、地域的に異なったりするような結果が生まれて、法の解釈上統一的に処理をすることが望ましいのだ、こういうような御説明があったように記憶をいたしておりますが、問題は、今申し上げたような具体的な問題がそれぞれ事業所つまりこうした鉱山事業所という広範な地域で、全国的にあるわけです。従ってそういう事態が、画一的にいわゆる悪い言葉で申し上げまするというと、官僚的な法規解釈の適用という事務的な処理に終るという心配が、今日なお消えておらない。ところがまあ政令でもって、この点先ほどお話のように、十分労働者を保護するという方式に従ってやっていくのだ、こういう御答弁ように承わって参ったわけでありますが、そうなりますと、この政令そのものがまた非常に重要な役割を果してくる。ところが政令は御承知のように閣議でもってどんどん変更したりいろいろなさるとすると、これは随時どんどん変更していただいたのでは、ここではどのような決定がなされ、あるいは法律として制定を見ても、実施になるという段階になりますと、これはおそろしい状態が考えられぬことはないわけです。特に本法において、私どもとしては少くとも従来やった三者構成による協議決定の機関が、民主的でありかつ運営上非常に差しつかえがなかった、支障はなかった、にもかかわらず、改正そのものの目的にも明白になっておらないし、何のためにこうした改正がなされなければならないかということさえも疑義がある。疑義がある中でもって、一応こういうふうに審議が進行して参ったのであります。  そこで今のいわゆる本法において当然うたわるべきものだと考えられる問題が、いわゆるこの政令の中に移された形になってくると思うのですが、この点から政令の改変と申しますか、そういう場合に、事前に少くともこの審議会がむろんございますし、それからさらにしかるべき機会に労使関係者の意見を徴するとか、何らかの具体的な安全弁が必要じゃないかというふうに考えますが、この点ではどうなんですか。
  112. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま御指摘のようなケース、すなわち命令を作ります場合には、もちろん事前に関係労使の方々の御意見を十分に承わった上で、これを参考にいたして参る所存でございます。
  113. 山本經勝

    ○山本經勝君 それでもう一点伺っておきたいのは、先ほど費用の点で申し上げたのですが、予算措置——つまり審査会なりあるいは審査官が事案を審査する際に、労使双方からそれぞれ中央、地方ともに二名ぐらいの何といいますか、人々が、代表として審査に参与するということですが、それは指名した人という名称でやっていかれるつもりか、何らかそこに固定的な名前があるのかどうか、その点を一点伺っておきたい。
  114. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 実はこの法案を立案する過程におきまして、そういう人たちの名前を、労使の利益代表者という言葉を使いまして労働省の関係審議会に諮問したのであります。利益代表者といいますと、いかにも白が黒であっても関係者の利益のためにがんばる、こういうことで、これはおもしろくない、この意見は、審議会に答申をした審議会の方の労使の方から御意見が出まして、労使の代表委員といえども、やみくもに労使ばかりの利益を代表するのじゃないから、そういう言葉を使っちゃ困るという答申がございましたので、法文におきましては、ただ「代表する者」こういう言葉を使っております。しかし実際問題として一々代表する者、代表する者という言葉では、実際上はっきりいたしませんので、省令等におきまして何か適当な呼称を考えて、その呼称におきましては、単に意見を述べろといったような冷たい表現にならぬように、たとえば労災保険審査参与といったよう言葉を工夫いたしまして、実際上言葉の表現の仕方におかしくならないよう注意したい、これは省令で書きたい、そういうことであります。
  115. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると参与委員にするのですか、参与という名称を用いられる、こういうことですか。
  116. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) これが保険審査参与というか、単に参与委員といった方がいいか、これらも先ほど大臣が申されましたように政令、命令の立案に際しましては、関係の労使の意見も聞くということでございますので、まあこの名前がいいやという場合には、何かこっちが特別にこだわることなく、何と申しますか、お気に入るいい名前を考えたい、今ある特定の名前を固執するということできめてはございません。
  117. 山本經勝

    ○山本經勝君 もう一点だけ、審査会ですがね、この審査会に労使双方の代表者を参与として加えるということは、その参与が加わって審査をするという先ほどから申し上げている幅が問題だと思う。単に顔を出して意見を述べることから始まって、意見を述べるということから始まってですよ、たとえばその委員が実はこう自分はこの事案について考えるがどうであろうかということを逆に参与に対して話しかける、そうしてまたそれに対する答えを出す、そうしたことが応酬される、つまり円卓式の、テーブルを囲んで話し合うという、ひざを交えて話し合うという性格に持っていかれるものなのかどうなのか、この点は非常に今後の運用上の上において問題になってくる。たとえば委員なりあるいは審査官が自分の考えている通りに問題を決定づけるために、これらの参与の意見は十分に取り入れないという危険があることはるる申し上げた通りなんです。ですから、実際のこの運用上の問題ですが、その点での配慮はどのようにお考えになっておりますか。
  118. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 今の点は実際の運用におきましては特にそういうふうに意見の交換をし合う。で、それじゃもう少し調べてみようとかいうようなことのやりとりは当然いたしませんと、せっかく決定したものの実質的な権威が失われまして、二審、三審に上る、あるいは裁判所に持っていくというような手数のかかることになりまするので、むしろ審査官、審査委員の方から積極的にいろいろと代表参与に意見を述べあるいは意見を交換するというようなことにいくことは私ども当然のことと考えておるのであります。これを政令、命令に、どういうふうにすることが、そういうことが書けるか存じませんが、少くとも施行当初の、次官がこういう場合には依命通牒を、運用上の依命通牒を出すことになっておりますので、その依命通牒等も利用して、先生のおっしゃいました趣旨を十分に伝えるようにいたしたいと考えております。
  119. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は中途から参加しましたので、あるいはこれまでに質問の済んだ問題があり、委員各位に御迷惑になるかもわかりませんが、一、二点私伺っていきたいと思います。  労働大臣にお尋ねするのですが、今日までずっとやられてきておる現行のやり方でなぜ不都合があるのか、なぜこういう法律を作らなくちゃならぬか、そこの点少し伺っておきたいと思います。
  120. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) このことはしばしば御論議になりましたのでございますが、御承知のように、社会保険の方のこういう制度などと見合いまして、私どもとしては労働保険審査会が御承知のように取り扱うものは、労炭及び失業保険関係でございますが、やはり地方の下において、窓口に起きました紛争は基準監督官が仲裁したりいろいろやりまして、そしてさらに審査官の手元において労使双方の御意見を十分に承わって、そこで十分に練りまして、今まで申し上げましたように、約三千件ほど一年に事案がございます。大体地方の審査官の程度で話は決定いたしておる。そして最終的になお二審制度と申しますか、上に持って参りましたものがそのうち約二百件程度、そこでこれを審査会で常勤の委員で、しかも従来と違いまして国会の御承認を得て内閣総理大臣が任命するという権威ある審査会委員において決定する、その場合にも先ほど来話のありましたように、労使双方の御意見を十分に承わって、実質的には三者構成と同じよう意味で、しかしながら準司法的な裁定を下すものでございますから、そこの裁定は中立の立場にある審査会の委員においておやり下さる、しかもそれが先ほど申しましたように、国会の御承認という権威ある制度にして、その委員会で最終判決を下していただく、しかもその、今までしばしばこれも話に出ましたが、非常に法の解釈等についてまちまちであったが、今度はそういうことなく、中央において統一した判定を下す、こういうことでやはり本案のようにする方が合理的ではないか、こういう趣旨でございます。
  121. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私がお尋ねした点は、重点は、現行、現在やっておるやり方でなぜ不都合があるのかという点なんです。むしろ労働者諸君は今度のやり方が官僚統制になるのではないかという一つの不安を持っております。なぜ今日のやり方でいけないのか、今日の方が民主的でいいのではないかという気持を労働者諸君は持っておるわけです。そこを私は解明してもらいたいのです。
  122. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 抽象的に申しますと、各県にありまする三者構成の審議会の決定にややときにまちまちができる、私ども審議会が、現在の三者構成の審議会の方々に非常に一生懸命にやっていただく、かつ多くの場合関係者の御満足を得ておると考えておるのであります。しかし、全部の事例を申し上げますと、ずいぶん時間がかかりますけれども、たとえば一、二の例をあげますと、労災給付におきまして、けがをした場合に、労使に重大な故意過失がありますというと、これにつきまして給付制限をすることになる、これにつきましてある審査会におきましては、五割の給付制限を受けた、それは気の毒だから七割にしてやろうという決定をする、ある審査会におきましては七割にするか五割にするかは行政当局の自由裁量であるからというので、これを審議会の審議事案ではないと言うて却下した、そういうような場合に、これは件数がそう多いとは言えませんけれども、それは当事者が不満であれば裁判所に持ってくるわけです。まあ二割か三割のことで裁判所にかけて金と経費をかけるのはどうだということで、これが泣き寝入りになるということは、私どもの立場としてはいかがかと考えるということで、中央にこういう制度を設けたわけです。ただそれだけじゃどうもまずいので、地方の審査会を廃止するかわりに、従来審査官が単独でやっておりましたその段階に労使の代表委員が参画して、そこで意見が十分に取り入れられていくという工夫を加えますれば、このまちまちになる、それから一方においては官僚統制にならぬかという、両方の工合の悪いところが現実に是正されるのじゃないかというふうにして、この法案を立案したわけでございます。
  123. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 審査会の調査といいますか、それは審査と申しますか、文書のみによってなされるのですか、それとも現地に出張して調査をなさるというふうに考えていらっしゃるのですか。
  124. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) むろん文書にもよりますし、法案にいろいろ書いてございますように、証人も呼び、あるいは鑑定人の鑑定を受け、あるいは医師の診断を求め、あるいは実地検証もする、いろいろのことをするように本案は組み立てられてございます。
  125. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今予算はどのくらい組まれておりますか。
  126. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) この予算は労働保険審査官の段階のものと、労働保険審査会のものと三つに分けることができますが、労働保険審査官関係の予算は、総額にいたしまして二千八百万円でございます。労働保険審査会関係の予算は約四百万円でございます。
  127. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ただ四百万円ですか。
  128. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) さようでございます。
  129. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 三人の委員の費用もこの中に含まれておると思うのでありますが、それはどのくらい見積っていらっしゃるのですか。
  130. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 約二百万円です。
  131. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、あと二百万円しか残らないわけでありますが、その二百万円で現地に出張していろいろ調査するというようなことが、実際にこれで足りるものでしょうか。私は予算の組み方を見まして、現地調査というものは非常に軽視されておるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、どうですか。
  132. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) このことは御承知のように、これから法が成立いたしまして年度半ばでございますから、いろいろ予算の関係もあってこの程度しかとれませんでしたことでございますが、これを運用いたして参りまする来年度からは、もちろん必要なる予算を増額してもらうつもりでおります。
  133. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ先ほど局長が例をとられましたが、それはこの法案の立場に立った例でありますが、実際また私たちの知っている例では、やはり中央において文書のみによってこれを審査していくという上には、またいろいろなむずかしい問題、欠陥が生じてくると心配される向きがたくさんあるわけなんです。やはり実際は現地へ行って親切にしてあげなかったならば、ただ単なる文書だけではなかなか私は不十分だと思うし、また文書でそう一々こまごましたことを、現地で調べ、現地で聞くようなことを、全部文書にしてこちらへ送ってくるということは、これはなかなか大へんなことだし、それをまた読むということも実際は事務の繁雑化をなくすためだということもこれの一つ理由になっておるようでありますが、そういう面からいったら、むしろ逆に非常な繁雑な問題になってくるのではないだろうか、そういうふうに私は考えますと同時に、実際労働者諸君はこのようなことで自分たちの権利が十分に守ってもらえるのだろうか、守れるのだろうか、こういう疑念が非常に強いわけなんです。ですからこの労働者の権利を十分に守るためにも、よほど私はそういう点留意して十分手を尽さなければならないことだと思うのですが、それに対します大臣の所感を聞いておきたいと思います。
  134. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ごもっともでございます。私どもこの労災なるものがそもそも労働者の災害を保護するという建前でできておりますし、労働省の使命もそこにあるわけでございますから、そういう点につきましては、長い間御審議を願いました過程においても、本法二十三条でその事務的なこと及び政令などで労使の方々の十分なそういう点の御心配のことも考慮に加えて、運営についてはこういうふうにやっていこうという両者の御希望を十分取り入れて、これから御相談の上で政令を作りまして遺憾なきを期していきたいと思っております。
  135. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一点、先ほど山本委員質問なさいましたが、この労使双方から二名の審査官ですか、委員ですか、委員を指名するということになっておりますが、これは単に指名されただけで、やはりこの四人から必ず意見を徴しなければならぬというくらいのところにちゃんとしておかないと、おそらく官僚諸君というものはえて独善になりたがるものでございますから、ですからほとんど私は意見を聞かないだろうと思うのです。それで単にこの条文というものはアクセサリーになってしまって、実際には効果のないものじゃないか、こういうふうに私たちは考えるのですが、大臣はこの問題に対してどういうふうに考え、どういうふうにしていこうというふうに強い熱意を持っていらっしゃるか、伺っておきたいと思うのです。
  136. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これはまあその見方によっていろいろ解釈もございましょうが、およそ政府というものは、やはり労働省なら労働省の建前で労災は労働災害に関する労働者の保護を目的といたすものでございますから、そういうことはあるまいと思います。私が在任中はもちろんでございますが、だんだん変って参りましても、そういうことはないことは当然期待されると思いますが、ことに本法の立法の趣旨というものはもうすでに衆参両院で長い間御審議を願いまして、速記録にも明確になっておることでございますから、後任者も、将来の政府も、十分この立法者趣旨は尊重せらるべきものであると思いますし、それが尊重されないような場合においては、私どものような、たとえば政府与党の者でもその欠陥は十分指摘して、この労災の法の目的を貫徹するようにいたしたいと思いますし、ことに先ほど来御説明申し上げておりますように、実質的には三者構成と同じように、いわゆる円卓で十分に話し合って、そうして最終的にだけその裁定は審査官がやると、こういうことでございますから、その点の御懸念はないと思いますし、御懸念のないよう政府としても努力をいたすつもりでございます。
  137. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 他に御発言もございませんようでございますが、質疑は尽きたものと認めることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  なお修正意見のおありの方は討論中にお述べを願います。
  139. 田村文吉

    ○田村文吉君 私は本案に対しまして、次のような付帯決議案をつけまして賛成をいたしたいと存じますので、用意いたしました付帯決議案を皆さんのところへお配りを願います。  まず付帯決議案を朗読いたします。    付帯決議案   関係労働者及び関係事業主を代表する者の審査官及び審査会における審査への参加に関しては、その意見を十分尊重し、事実上従来の三者構成の審査会における審査と同様な効果を得るよう運営を図り、労働者の保護に万全を期することを要望する。  私は本案がいわゆる合理化の一線として一歩前進されたことにつきまして賛成を表する次第であります。ただし、かようの問題は年をふるに従いましていろいろ研究もされて参りまするので、また、社会上のいろいろの慣習もでき上っていくことであろうと考えておりまするので、まずこの辺の合理化に一歩進めた線で本案を通していただいて、なお検討の上で足りない点がございましたらば、さらに修正するという時代もあるであろうと考えるのでありまするが、一応その意味において本案に賛成する次第であります。  なお付帯決議については先刻来御質問の中に十分尽きていると思うのでありまするが、どうかこれが運用に当りましては、いわゆる官僚主義にならないように、そういう点についてはすべてを円満に円滑に問題の進行ができ得まするように、こういうことについてはよほど政令を作る場合、あるいはまたこれが運用する場合におきまして、細心の注意を払われんことを希望するがゆえに、この決議案をあらためて追加して本案に賛成する次第であります。
  140. 山本經勝

    ○山本經勝君 私は日本社会党を代表して本案に対し反対の意を表するものであります。  本委員会で問題になって審議をして参りました労働審査官及び労働保険審査会法に関しましては、しばしば審査の途中におきましても申し述べて参りましたが、この法案に対しましては、全く労働者の立場に立ちまして反対の意見を表明するものでございます。  まず審査の際にしばしば繰り返し御質問を申し上げ、またあわせて要望等を強調して参りましたが、この立法の目的、あるいは立法の趣旨というものが非常に問題であります。労使ということは、労働者と使用者という関係の中から出発して参りますので、労働者が作業場におきまして作業中業務上の障害をこうむった。これに対する保護の立法が基準法並びにあるいは労災保険法等について明確に規定をされて、しかしながらその災害に対してどのような取扱いをするかということについての問題がしばしば起って紛糾いたして参ったわけでございます。で、これに対しまして労働者、直接労働者という立場で同じ組織やあるいは関係の中にありまして直接身をもってこの苦痛な労働並びに労働による災害というものに経験を持つたものと、それからまたこの労働者を使用して生産を営み企業を盛り立てて参っております経営者、使用者という立場とが現実の問題として労使の関係はやはりあたたかい血の通ったものでございます。従いましてそうした両者とこれに加えまするいわゆる学識経験者、第三者的立場に立ちましてた人々の御協力をいただいて、今日まで三者構成によるこれらの問題の審査やあるいは不服の申し立てについて懇切丁寧な調査取扱い等が行われて参ったことは、単に労災の問題あるいは失業、職業安定の問題、あるいはけい肺の審議会、こういった問題だけではございません。おしなべて申し上げまして、労働関係の諸問題につきましては、労働者、使用者それに公益という三者の構成による機関が協議決定をする。そのことは労働者みずからも責任をもってやっていくということでございますし、また納得ずくで問題を処理するという非常にいい制度でありしかも民主的な機関である。こういうよう機関が廃止されて、中央は労働大臣の推薦の委員が国会の同意を得て内閣に属する官制の中に織り込まれ、そうして審査委員という名においてやる最終決定をする機関。さらにその下にそれぞれ都道府県別の地方に審査官と称するいわゆる官職を配置する。そこでこれらの人々が今度は労使双方の代表二名ずつそれぞれ指名された人々が参与をしてやっていくというのでありますけれども、これは従来こういう三者構成による協議決定ではなくて、いわゆる特権を持った官制の中で、職制に従って運営される官吏の手でもって実際上イニシアティヴをとっていく、こういうことになりまして、条文の中にも明記されておりますように、労使双方の意見を聞くというだけにとどまって、先ほど局長並びに大臣の方から御答弁をいただきましたように、政令でもってこれらの問題を円滑に運用面で合理的にやっていく、こういうふうに言われておりますけれども、実際は一たびこれが職制の中に入って官制でもって押えていかれる、こういうことになりますというと、労働者の現実的な利益は私はどうしても完全に守れるというふうに考えられない。しかも三者構成による民主的な協議決定機関がそうした官制に切りかえられるということについてまず第一点大きな不満を持つものでございます。しかもこの頃向は単にこの労災審査会のみではございません。本委員会でせんだって通過成立を見て衆議院に送り、すでに衆議院でも成立をいたしましたが、公労法の問題におきましても、調停、仲裁あるいはあっせん等をやって参りましたそれぞれの委員会を統合して、あのような公共企業体等労働委員会の設置を見たわけでございますが、その労働委員会はよろしいといたしましても、労使双方の同意を基礎にした公益委員の任命手続が、これがまた抹殺されまして、単に意見を聞くという範囲にとどめて、国会の同意を得て総理大臣が任命をする、こういうふうな切りかえ方が行われております。しかもしばしば質疑等の途中におきましても、大臣の御答弁にもございましたことでございますが、労働委員会、つまり労働組合法に基く労働委員会、これにいたしましてもいわゆる公益委員は従来ありました労使双方の同意を基礎にした構成、任命、手続、こういうものを廃止して、むしろ公労法の場合の労働委員会と同様に、国会の同意を得て総理大臣が任命する外局の、つまり特別職の国家公務員という形に切りかえようとなさる意図があることを伺っておる。こうして考えて参りますというと、今日まで終戦後十年間いろいろな意味で貴重な経験を積み、しかも単に法律条文というよりも、労働関係一つの自然のルールとして打ち立てられて参ったこうした民主的な機構が一つ一つ削り取られていくという姿がまざまざと見せつけられる次第でございます。こういう点から申しまして、どうしてもこういうよう法案については御賛成申し上げるわけには参りません。それからさらに私は審査の途中でこれまたしばしば申し上げたことでございますが、局長の御答弁の中に非常にはっきり言われたことは、何のためにこうした法律を制定する必要があるのか、現在の基準法のもとでもって総括的に申しまして十分運営ができて参る、しかもそれに重大な故障がある、あるいは正当な、なるほどとうなずけるような改正の理由がないではないかという質問に対しましては、局長の方からの御答弁は同一の事案が地域によって変った審査会に諮られ、そうして変った決定がなされるために本来一本である法律の解釈適用という面で非常に不都合があったということを言われておりますが、私はこのことはむしろ当然なことである、あるいは同じ懸案にいたしましても、また医者の診断等におきましても医者の能力にも相違がございましょうし、あるいはそのときどきのいわゆる患者に対する見方が変るということもあり得るわけでございますから、むしろそうした事案が画一的に法規の解釈適用上統一するということ自体の方がはるかに無理があることであるというふうに考えざるを得ぬわけでございます。でありますから申し上げますようないわゆる改正の理由というのは、決して局長がおっしゃるようなものではないのでございます。むしろそのほかに意図がありゃしないかということも追及いたしたわけでございますけれども、これについては明快なお言葉がございません。先ほども申し上げまし。たように、むしろそのことは労働慣行として、あるいは法令として今日まで運用をされて参りました不都合のない制度を変えて、いわゆる法規の解釈、適用の事務的処理によって簡単に問題を処理したいというだけの望みのように、あるいは目的ようにうかがわざるを得ぬわけでございます。でありますから、こういう状態において法案改正を次々となさることによって、労働関係諸法の中から民主的な協議決定の機関が、話し合いによって問題を処理するという機関が消えてなくなっていくということを指摘せざるを得ぬわけでございます。そこでこれは具体的な内容に入って一言申し上げますなれば、先ほどの政令の中で具体的取扱いを明確にして運用面で十分やると言われますけれども、少くとも労使双方の代表が参与としてやっていく、この状態についてその参与の度合いがどのようなものであるか、こういう点について非常に問題がございます。なぜかと申しますと、条文には意見を聞くとなっております。あるいは意見書を提出するとなっております。ところがそれはただ提出するものであり、意見を述べるものである。それに従ったりあるいはそれを取り入れて検討をする必要があるという義務づけはございません。そうしますと、これは勢い官制の中にございますから、どうでもいい、事務的に早く処理すればいい、こういう結果に陥ることは火を見るよりも明らかなのでございますが、もしただいま出されました付帯決議の内容等にもとり入れられておりますように、運用の面で少くともそのことが労使双方から出た代表の参与によってほんとうに円卓会議、ひざを交えて話し合って、真に立法精神である労働者の救済に最も適切な措置が講じられる、こういうことに期待がかけられるかと申しますというと、必ずしもそうではないと思う。大臣大臣の任期中においてこのような、さらにこの問題の改悪やあるいは政令の変更などあわせてやるようなことはないと言われますけれども、倉石労働大臣が永久永劫に労働大臣としておられるものではございませんし、あるいはまた、よしおられたといたしましても、やはり大臣の所属される自民党という政党に所属されて、政治情勢の変化や客観情勢の変化とともにそれらの改正が果して大臣の言われるような保証ができるかどうか、これは全く疑問でございます。そうして考えてみますというと、この改正につきましては、私ども徹底的な反対を叫ばざるを得ないわけであります。もし将来この政令によりまして、運営の面でほんとうにこれが合理的にしかも的確に運用されてゆくということでございまするなれば、われわれがいろいろな角度から今後この運営を見て参るのでありましょうし、また必要に応じ十分意見も述べると考えますが、特に下部末端におきます基準局の実情を伺いますと、現在ある三者構成の協議決定機関が非常に好都合である、しかも経費の面から申しましても、何ら不都合がないということを言っておる。むしろ今後この法律の制定と同時に、紛糾が審査官を中心にしてそれぞれ各地方において労働者が押しかけて何とかしてくれ、これは不当であるというので不当性を鳴らしてむしろ抗議する、あるいはいろいろな意味での紛争がむしろ惹起する種になるというふうに断ぜざるを得ないわけでございます。  以上のよう趣旨から結論づけますならば、この法案に対して私どもは少くとも運営の面でいかに合理化するという言葉がありましても、それが保証ができるかどうかということに疑問を持っている。従って力をもって極力審査官の審査あるいは審査委員会の審査、こういう場合に労使代表の参与を通して強力に戦わなければならない、こういう課題が新しく提起されたものと解せざるを得ぬわけでございます。  以上申し上げました趣旨に立ちまして反対をいたすわけでございます。
  141. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は自由民主党を代表して、簡単に本案に対する賛成の討論をいたしたいと思います。  本法案は第一に、現行の審査制度のもとにおいて、労災保険については、第一審、第二審とも地方にあって、また失業保険については、第二審は中央の労働省に設けられているのでありますが、労災保険につきましては、ことに中央に審査機関がないためにややもすれば同一事案にかかわらず審査がまちまちとなり、審査の統一性が失われがちであったので、労災保険についても中央に審査機関を設けることとし、従来から中央にあった失業保険審査会を、これと統合して、労働保険審査会を設置しようとするものであります。  第二に、労災保険も失業保険も、その給付決定等に対する異議申立の審査につきましては、いわゆる判定的ないしは準司法的ともいうべき機能でありますので、従来の三者構成の制度をやめ、中立の公益委員をして、この機能を果さしめることとしていることであります。これは直接労働者と使用者の間の争点を解決する役割りを持っている労働委員会におきまして、そうした争点が不当労働行為事件である場合には、公益委員のみでこれが審査に当っているのと同じ趣旨のものであると存ずるのであります。本法案につきましては、特に従来地方に置かれていた審査会を中央に持ってくることによって、労働者の訴権が制限されるということ、及び三者構成を廃止することによって労働者側の意見が排除されるということの二点について、種々の懸念があるやにうかがわれるのでありますけれども、これらはいずれも運用いかんによって解決される問題でありまして、制度としては、本法案のごとくに措置するのが適当であると考えられる次第であります。しかしながら、また運用のいかんによっては、かえって従来の制度と何ら変るところのないものとなってしまいはしないかというおそれもあるのであります。この際政府においては、地方の審査官の段階でも、中央の審査会の段階でも、労使代表者の意見を十分に述べさせるとともに、これを尊重し、もって実質的には三者構成の実をあげることができるようにいたしたいと答弁もされているのでありますが、政令で必要な事項を定める等の措置がとられるならば、そういう措置をとられることを特に要望いたしたいのであります。また、訴権が制限されるという懸念に対しましては、審査官の段階で従来以上に一段と慎重に、そして万人を納得せしめるよう審議が行われることを期待いたしまするとともに、必要に応じ、審査会の委員の機動性ある活動によって対処せられたいと思うのであります。  以上政府に対し、若干の要望を申し述べまして、本案に対する賛成の討論といたしたいのでございますが、先ほど田村委員提出の付帯決議案も、以上私の申し上げましたよう趣旨をそのまま表現しているものと私も感じまするので、もちろんこの決議案に対しても賛成の意を表したい次第であります。
  142. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 簡単に私は反対の意思を表明したいと思います。  先ほど労働大臣はいろいろ質問にお答え下さいましたが、結局この法案のねらいというものは、労働者の当然の権利を守るために、国が保険者となっている労災保険や失業保険保険給付などに関する審査機構の官僚統制であると私たちは考えます。労働三法によって保障され、守られているところの労働者の利益、権利というものは、この法案によって決してプラスとはならない。むしろマイナスになっていく性格を持っていると思いますので、この労働者の権利と利益を守る立場におきまして、私はこの法案に反対の意思を表明いたします。  従って田村委員からせっかく出されました付帯決議案に対しましても、私は遺憾ながら賛成の意を表することができません。
  143. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 先ほどの田村君提出の付帯決議を付することの動議は成立をいたしております。  他に御発言はございませんか。——他に御意見もないようですから、討論は終結したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  それではこれより労働保険審査官及び労働保険審査会法案を採決いたします。  本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  145. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 多数であります。  よって本案は多数をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  次に討論中に述べられました田村君提出の付帯決議案を議題といたします。  田村君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  146. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 多数と認めます。  よって田村君提出の付帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするから、本案を可とせられた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     谷口弥三郎  高野 一夫     深川タマヱ  森田 義衞     中山 壽彦  寺本 広作     横山 フク  西岡 ハル     紅露 みつ  榊原  亨     田村 文吉
  148. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) なお、本付帯決議に対しまして、倉石労働大臣の発言を許可いたします。
  149. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御決定願いました付帯決議の御趣意につきまして、政府といたしましてもまことに御同感でございまして、法の運用については、御決議を十分尊重するように努めたいと存じます。
  150. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 以上をもって本日の委員会は散会といたします。    午後七時十七分散会