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1956-05-22 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十二日(火曜日)    午後二時六分開会     —————————————   委員異動 本日委員赤松常子君及び須藤五郎君辞 任につき、その補欠として山本經勝君 及び長谷部ひろ君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            紅露 みつ君            榊原  亨君            寺本 広作君            相馬 助治君            竹中 勝男君            藤原 道子君            田村 文吉君            森田 義衞君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生省保険局健    康保険課長   小沢 辰男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を御報告いたします。五月二十二日付須藤五郎辞任長谷部ひろ選任、同日付で赤松常子辞任山本經勝君選任、以上であります。     —————————————
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括議題といたします。御質疑を願います。
  4. 藤原道子

    藤原道子君 私は過日関連質問大臣にお伺いしたのでございますが、そのときの御答弁で、なお納得が参りませんので、あらためてお伺いをしてみたいと思います。先日、まあ一部負担入院料の場合、もしこれができない人はどうするかということを申し上げたら、別途考慮するというお答えがあったのです。別途考慮するとはいかなることかとさらに進んでお伺いしたら、生活保護法等もあるじゃないかというような御答弁だったと思うのでございますが、これに対してさらに大臣の御所信を伺いたい。
  5. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 私の考えといたしましては、先般来藤原委員に御答弁を申し上げた通り考えております。
  6. 藤原道子

    藤原道子君 私はこれは健康保険の性質からいって、これは自民党だとか社会党とかいうのでなくて、実際の上から立って可能かどうか、無理であるかないかで御決定を願わなければならないと思うのです。今度収入がかりに三千円の人でも最低基準を四千円と改正されるわけなんです。そこでも少し負担の増となって参るわけです。それから四割給付といたしますと、千二百円しかないのですね。そういう場合にも九百円の入院負担をさせられますと、結果において手に残るものは三百円しかない。そして入院して全部完全看護完全寝具完全給食というので、ほんとうにそうなっているとお考えでございましょうか。若干の給食もあろうし、たまには栄養剤もとりたいという場合には一体どうなるのですか。それでも生活保護法適用があるのですか。
  7. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 健康保険改正につきましては、入院料について一日三十円をとることにつきまして、負担力についていろいろ御心配の御質問のようでありますが、これは藤原委員の御心配になっておりますようなケースもあり得るかと思います。しかし、私は今日の情勢におきまして、外来者とのバランス等から考えまして、入院者といたしましては一日三十円、三カ月くらいは出していただけるものだと、こういうふうに考えておるのでありまして、どうしてもそれが出し得ないような特別のケースにおきましては、生活保護法等におきまして救済ができると、こういうふうに考えておる次第であります。
  8. 藤原道子

    藤原道子君 私、その生活保護性格保険性格とは全然違うと思うのです。保険に加入している患者さんは、ずいぶん苦しい中から掛金をしているわけなんです。ということになれば、病気になったときに当然その保険で安心して診療を受けられる建前でなければならないと思う。ところがそれに対して保険保険として掛けておいて、困る者へは生活保護適用するというようなことは、私はこれは保護の精神からいって間違いだと思うのですが、それはそれでよろしいとお考えでございますか。  それから、そういう御心配になっておるケースもあるかと思うけれども、という御答弁でございましたが、先日も申し上げましたけれども外来患者でも、入院を要する人は当然入院ができるように扱うのが、これは医療の上からいって当然のことなんです。ところが外来の人と入院の人とではこれだけ負担のアンバランスがあるから、当然入院した者にはこれだけ負担させるのはあたりまえだという考え方に私は間違いがあるのじゃないかと思うのです。そうであれば、こっちに貧乏人がいるのだから、お前たち月給が多いから減らしていいんじゃないかというのと同じ結果になる。私はそういう物の考え方厚生大臣その人がお持ちになるということに私は悲劇があると思うのです。たとえていえば、一万二千円の給与親子五人暮している。主人公は入院する。一万二千円で親子五人が生活していたのに、これが六割の給付になる。それで入院して、入院料九百円支払って、これで親子四人の生活が立つかどうかと言うのですよ。物は実際の面から考えていただかなければ困る。けれども、それに対して大臣はあくまでそういう人には生活保護適用するんだと、それでいいんだとお考えでございましょうか。生活保護法建前からいって、入院患者が、まあリンゴ一つ食べたい。けれどもその余裕がないというような場合に、生活保護で出しますか。卵を補給しようとする、生活保護で出してくれますか。今の生活保護はそんなゆるやかな適用ではないのです。それに対して大臣はどうお考えでしょうか。やっぱり貧乏人は麦を食えと、金持が米を食うのが経済の法則だというお考えのもとに立っての御答弁でございましょうか。その点明確にしていただきたい。
  9. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 私は健康保険の健全なる発達のために被保険者にも一部負担をしていただくというような、健康保険全体の立場からいたしまして、入院をしている方に対しましても一日三十円を出していただく、こういう建前でございまして、それにはやはり私はそのくらいな程度のものは外来者等バランスからいいましても出していただけるものだと、こういうふうに考えておるのでございまして、藤原さんの御心配になっておられまするようなケースがありました場合においては、それは別途の方法で救済できるものだと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  10. 藤原道子

    藤原道子君 その別途の方法というのが、あなたに言わせれば生活保護だとおっしゃるんです。その生活保護がそういう際に適用ができると大臣はお考えですか。今の生活保護適用がそんなに伸縮自在なものとお考えでございましょうか。それを伺いたい。
  11. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 生活保護法適用は、これは一般的な基準がございまして、その基準によって運用されておりますることは、藤原先生御存じ通りでございます。従いまして、一部負担に相当する九百円というものが、今、仰せのように払えないという仰せでございまするが、その払えないか、払えるかということにつきましては、生活保護法の一般的な基準によって判定をいたしまして、その人が果して九百円というものの負担にたえ得るかどうかという判定生活保護法の方の基準判定をいたしまして、そうしてそれが払えないということであるならば、生活保護法の発動というふうなことも考えられるという趣旨大臣の御答弁であると存じます。
  12. 藤原道子

    藤原道子君 さらに、じゃあそれならお伺いしたいですが、生活保護基準というものは、あれは労働の再生産費は含まれていないのですよ。御案内のように……。やっと生き得るだけの給与より与えられていないことは、もう社会局との応答ですでに明らかになっている。ところがこちらは、労働者として働いているんです。たまたま不幸な病気となったために入院しているのです。ところがその生活保護のその労働者保険を払っている被保険者なんですよ。だから病気のときに当然保険で療養が受けられるのでなければならないはずです。その労働者の家庭もそれによって生活ができるだけのものでなけなればらない。ところが、生活保護労働の再生産費が含まれていないから、その適用は非常に苛酷なのです。でございますから、そこのうちに自転車が一台あっても、今、生活保護適用はさしておりません。ということになると、その自転車も売っ払ってしまわなければ適用ができないのです。しかしその労働者病気が回復して、そうして今度働くのに、自転車は絶対に必要品だという場合がある。そういうことも考慮に入れてくれないんです。今の生活保護法適用はだからこの保険に対して足らざるは生活保護で補うのだという考え方に私は間違いがあると言うんですよ。そういう無理な負担をさせるところに間違いがあると同時に、そのくらいのものは負担できるとおっしゃるけれども中小企業対象ですね、この政府管掌保険は。そうすると、中小企業平均給与はどのくらいになっていますか。
  13. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 政府管掌健康保険標準報酬でつかまえました月平均標準報酬月額は、来年の予算では一万二千二百何円であったと思います。
  14. 藤原道子

    藤原道子君 そこに心配があるんですよ。そうすると、一万二千円以下の人も相当いるわけでしょう。それでもさらにあなた方は九百円の負担ができるとお考えですか。これは無理な改正だとはお考えにならないでしょうか。三カ月の負担だから、九百円くらい当りまえだとおっしゃる。あなたの給与から言えば九百円なんてへえちゃらです。けれども対象中小企業労働者なんですよ。平均給与が一万二千円以下でございましょう。その人たち妻子持ちが相当あると思うんですよ。そうすると、その妻子持ちの場合に、夫が入院したことによって妻子生活が立たぬじゃありませんか。一万二千円で、親子五人が食ってるんですよ。そうして今度主人入院すれば給付は六割になるんですよ。それで妻子が食っていって、その上に九百円の負担ができるとお考えですか、ということを聞いているのよ、私は。
  15. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 前回でございましたかにも、私ちょっとさような意味の御答弁を申し上げたのでございますが、月九百円の入院患者負担、これは私は決してそんなものはへえちゃらで御負担願えるというふうには考えておらないのでございます。もちろん月九百円の御負担というものは、今までのあれから申しますれば、それはその方に対してある程度の御負担の過重ということになることは、これは自明の理でございます。従いまして、それぞれお苦しいものと私ども推察いたすのでございます。ただ私どもといたしましては、保険料——藤原先生のお言葉のように、保険料を掛けておる人なんだから生活保護対象者とは少し事情が違うぞということにつきましてもよくわかります。保険料を掛けていただいておるのでありますから、それは生活保護法対象者とは、その反対給付として保険給付を受ける場合に事情が違うということもこれはよくわかります。ただ保険料を掛けていただいておる保険料だけでは、給付の方がまかなえないという現状に立ち至っておるわけでございます。その際に保険料をそれでは上げていただくか、あるいはその足りないところを全部一般納税者税金で、言葉をかえて言えば国庫で埋めてしまうか、あるいは給付の方を切り下げるかというふうな方法がいろいろ考えられるわけでございます。しかし、最初大臣から提案理由の御説明に申し上げておりまするように、保険料を上げるということももちろん考えられるけれども、昨年上げたばかりでございまして、しかもこれが相当高い保険料である。従ってこれをこれ以上直ちにまた本年上げるということは、昨年いろいろと反対を受けました経緯から見ましても非常に無理ではあるまいか、従ってなおまた保険給付の内容をそう切り下げるということにつきましても、これも給付のいわゆる保険給付する医療の水準というものはこのまま維持して参りたい。それもどうもあまりとりたくない。従って全額国庫で埋めてもらうか、あるいは一部負担というような形で患者の方に御負担を願うかというふうな方法が残っている。そういたしますれば、全額国庫で埋めるということもこれは理屈の上でいろいろ問題もございましょうし、そういう御意見ももちろんあります。しかしながら、なかなかそれも問題であろうから、だから国からも一般税金を出していただいて、患者の方にも一部御負担を願おうと、こういう物事の処理の方法考えたのが御審議をいただいておるこの健康保険改正案なのでございます。  さような意味合いでございまするので、決して先生指摘のように、私どもは月九百円というようなものを三カ月というものはへいちゃらで簡単に負担できるんだというふうには考えておりません。確かにお苦しい方々があろうと存じます。しかなしがら、そこは今のような全体のからくりのものをよく私ども考えまして、さらに前回もちょっと触れましたように、在宅患者との均衡考えること自体が先生は今けしからぬとおっしゃいましたけれども、しかし、いい方に全部合せるということになりますと、ますます足らずは大きくなってくるわけでございます。保険財政というものは健全化させられないことになるわけでございます。従いまして、おしかりは受けますけれども、それらの均衡等を頭に置きまして、お苦しいところではあろうが、まず一日三十円程度の御負担をお願いしたい、こういうのがわれわれの気持なのでございます。
  16. 藤原道子

    藤原道子君 それならば、この保険というものを全然保険財政だけでやっていかなければならぬとお考えなのですか。しばしば大臣社会保障という言葉をお使いになる。その性格はどうなんですか。  さらにあわせてお伺いしたいのは、保険経済赤字のその原因の中には結核対策も入っていると思う。国の結核対策はなってないじゃありませんか。しかも結核対策費を国では出しておるけれども、その大部分は再び入院費として国に還元されてくるのですよ。結核対策の本源的な対策がないから赤字が非常にふえてくるということも言える。そうすると、これは今度の改正によって結局苦しい、入院したいけれども九百円の入院費では負担できないからということのために、逆に在宅患者がふえている。入院できなければ入院しませんよ。あなた方は簡単に生活保護法とおっしゃるけれども生活保護医療給付が最近締められてきていることはあなたも承知と思う。そんなことかできることでないことは私ははっきりわかっておる、あなたもわかっていると思う。けれども言を左右にして逃げようとするのは、保険経済が苦しいから、負担ができなければ入院者が減るであろう、こういうずるい考えがあると思う。その結果国民はそれこそ保健衛生上非常に大きな悲劇が起って参ります。患者はいよいよ重くならなければ医者にかからない、死ぬまで入院ができない、こういう結果になったらこんなものは意味がなくなるじゃないですか。お困りになる方もあるでございましょうがとおっしゃるが、平均一万二千円以下の給与であるならば全部が困るんですよ。困ることは明らかであるけれども、まあ生活保護で何とかいたしますなんということで、ずるい答えで逃げている。医療扶助は今日非常に締められている。ばたばた入院患者医療券の打ち切りが行われている。病院において患者自殺事件さへ起きている、こういうときに医療券で補助しますということでは私は納得いきません。そういう場合には医療券というもので必ず補助できるとここで言明できますか。
  17. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私がお答えをいたしましたように、生活保護法運用につきましては、生活保護法の一般的な基準によりまして、(藤原道子君「その基準が問題なんですよ」と述ぶ)運用するのが当然でございます。従いまして一部負担が私は非常に苦しいという人の全員に対して生活保護法でカバーをするということに私は相ならぬと思います。苦しいとおっしゃる、それではどういうふうに苦しいのでございましょうかといって、その苦しい程度判定いたしまして、そうして適用するかしないかをきめるのが生活保護法運用であることは先生指摘通りでございますから、私は決して苦しいという人の全部に一部負担生活保護法でカバーするなんということは起り得ないものと考えます。大臣の御答弁も私どもが申し上げておる通り意味のことをおっしゃっておるのでございまして、私はただそれを敷衍し補足をして御説明を申し上げておるのに過ぎないのでございます。
  18. 藤原道子

    藤原道子君 押し問答していても——あなたの考えは何とか合理化しようとするところにあるから、これは押し問答になるでしょうが、一つここでさらに重ねて伺っておきたいことは、一万二千円の収入の人が親子五人であっても入院すれば七千二百円ですか、そうすると七千二百円から九百円引きますと幾らになるのです、六千三百円ですか、それで親子四人の生活ができるとお考えですかと言うのです、私は。現実なんですからこれは。そうすると、お苦しい人が出てくるどころじゃない、全部苦しいことになるじゃありませんか。どうなんですか。
  19. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 一万二千円の、もちろん御主人が御病気になられ、収入が減りますれば生活はお苦しいものと私は思います。
  20. 藤原道子

    藤原道子君 お苦しいものと思うから……、こういう場合にすぐに医療券給付はできないんですよ。お前のうちには自転者があるじゃないか、お前のうちには洋服だんすがでんとしたのが控えているじゃないか、こういうところまでこのごろはまじっているんですよ、生活保護法適用に。そういう場合に、そこまで苦しい状態にならなければ医療が受けられないんですよ。だから被保険者である人にそういうむごい扱いをしてもなお三十円の負担をさせることが妥当だとお考えですかという点を私は聞いておるのです。
  21. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) かりに一万二千円の例をとってみますれば、六割として七千二百円ということになるわけであります。(藤原道子君「九百円引くんですよ」と述ぶ)七千二百円でもお苦しいわけですね。それにさらに九百円をこれから控除されればさらにお苦しさは増すわけでございます。これははっきりしたことであります。しかしながら、七千二百円ならば仕方がないけれども、九百円ふえたためにそこでもうその人が、非常にその家族生活困難になるというふうな状態でありますれば、その判定は他の一般国民と同じようになりまして、生活保護法基準に当てはめるものであるならば、それは生活保護法が出ていくであろう。しかしながら九百円減ったぐらいでは、従来であれば生活保護法対象ではなかった。しかし九百円減ったぐらいで生活保護法対象にはできないから、諸般の情勢を考慮してというような場合には、これは生活保護法対象にはならない。なおこの一万二千円でおやじもぴんぴんして働いておるときには、生活保護法適用家族生活保護法適用対象にならなかったけれど、病気になって収入が七千二百円に減った、そのために一部負担とか何とかいうことは別問題にしても、七千二百円に減ったため生活保護法対象になり得る場合もあり得るわけであります。さようなわけでございまするので、藤原先生の御質問の御趣旨なりお気持なりというものは、私ども決してわからぬものではございませんけれども、しかし私が先ほど申し上げましたように、全般の、何と申しまするか、考え方あるいは均衡というふうなものから、月に一万二千円も一万五千円もする給付を受けておる方から、九百円程度、しかも一日三十円程度のことであれば、まずまずこの辺で妥当な数字ではあるまいか、こういうことをわれわれは考えたものでございます。
  22. 藤原道子

    藤原道子君 根本的に違っているんですよ。一万何千円の手当を受けておるから、九百円くらいを負担するのは当りまえだというけれども入院すればそれはかかるんですよ。本人がぜいたくしてそれだけ使っていないのです。入院すればそれだけかかるのです。しかしこれは押し問答ですからこの質問はあとに残しまして、厚生省社会局から今度御出席を願って、さらにこの点ただしたいと思います。  そこでお伺いいたしたいことは、けさ小委員会で私お伺いしましたら本委員会の問題だということになりましたので、その点重ねてお聞きしておきたいと思います。無理に一部負担をかける結果、もしも一部負担のできない患者医者にかかりに行った場合、医者は正当な理由がなければこれを断わることはできない、当然医者はこれを診察しなければなりません。しかし、この患者は一部負担ができません。できない場合には一体しわ寄せはどうなるのか、その犠牲はどこにかかってくるのか、これを一つお伺いします。
  23. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 前段の御質問に対しまして、もう少し別の面から御説明をつけ加えさしていただきたいと思いますが、外来患者として傷病手当金を受けている者は、全部の生活費を、家族自分生活費自分でまかなわなければならないのでございます。これに比べまして、御主人が今御指摘のように入院しておられるとすれば、同じ生活費家族の方だけが御生活になればいいという理屈になるわけです。(藤原道子君「理屈はね」と述ぶ)従って、七千二百円で生活ができるかどうかということは、むしろ傷病手当金の額が低過ぎるじゃないかとか何とかいうことに関連のある問題でございまして、外来患者入院患者との均衡、それ二つを比べてみた場合には、今私が申したようなことになるのでございます。これらの点は十分御了解をいただきたいために補足を申し上げておきたいと思います。  それから一部負担が貧乏なために払えなかった場合にはどうなるのか、こういう仰せでございます。私どもといたしましては、今私どもが御提案を申し上げておりまするような一部負担程度であるならば、まずまずお支払を、払ってやろうという御意思があればまずまずお支払いをいただける額だと、そういう額でなければ、この一部負担制度としては取り上げられないという考えのもとに、この程度であればまずまずお支払いをいただける額だという考え方で御提案を申し上げておりまするので、さような例は非常に少いものと私どもは見ております。しかしながら、たとえ少いといたしましても、さような場合にはどうなるかということにつきましては、先ほどもちょっと御説明を申し上げましたように、結局もう結論から申せば、医師の方にそれはしわ寄せになる、こういうことに相なるのでございます。
  24. 藤原道子

    藤原道子君 そうすると、一方では医者診療の義務を負わしておく、他方においては一部負担ができない患者は相当出てくると私は思っております。現在入院しておる患者でも、一部負担をかけられたためにどうなるかということは、どれだけ不安に思っておるかわからないのです。そういう結果から、それは一部負担を払えない人がたくさん出てくるということは、結果を見なくても私は明らかだと思うのです。ところがそうして義務づけられておるから診察をせざるを得ない、治療をしなければならない。ところが支払いができない。しかしながら、医者の場合には課税は、税金が一部負担の未収入であるないにかかわらずかかってくるでしょう、そうすると、お医者さんは二重の負担をしなければならないということになれば、そこへ現われてくる結果を考えると、私は非常におそろしいものがあると思う。やはり貧乏人医療から締め出される結果になるのじゃないか、これを憂うるのです。そうして医者は医師法で義務づけられておるからこれは仕方がないのだと、こういうことで進めていられるのでしょうか、法律で縛っておいて、そうして犠牲を負わしてその上に税金は取り上げるのですよ。これが妥当だとお考えでしょうか、もしそうである、妥当だとお考えであるかどうか、もしそうでないならば、何とか不当でないような施策を講ずるのが国の責任ではないかと私はこう思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  25. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 税金の点等について私もあまり詳しく知りませんのでございますが、この貧乏で金の払えない人についても医師はそれぞれの、これは場合々々によって違いましょうと思いまするが、ただ貧乏で金が払えないからということだけを理由に、ただそのことだけを理由診療を拒否してはならないということを、医師法の現在の解釈ではさような解釈になってありますることは、藤原先生指摘通りでございます。しかし、そのことは保険の一部負担とか何とかいうことに先行いたしまして、そういうものよりはそういう原則が先に医師法によって、医療全般について立てておるわけなんでございます。そこで藤原先生のお説によりますれば、しからば、今度そういうふうな前提を頭に置いてそうして保険の方の制度を考える際に、そういうことを前提に置いて医師のしわ寄せにならないようなことを考えていくべきではないかというふうな御趣旨の御質問のように私拝聴いたすわけでございます。一応ごもっともな御意見と思いまするけれども、しかし現在の一部負担の制度も、今回改正案を御審議をいただいておりまする一部負担の制度と同じ建前にその点はなっておるわけでございます。現行法がすでにそういう建前になっておるわけでございます。家族の半額の負担につきましても同様でございます。そういう現在すでに建前になっておるということと、それからやはり私先ほど申し上げましたように、今回御提案を申し上げておるような程度の金額であるならば、とる意思と払う意思があれば大部分の方々はお払いをいただけるものと、こういうふうに私どもはものを考えておるわけでございます。さようなこと等からいたしまして、現行法の制度そのものを踏襲をして参ったということにいたしたのでございます。
  26. 藤原道子

    藤原道子君 それはまことにおかしい御意見だと思うのですよ。現在がそうなっておるからといって、さらに現在でも未収が相当あるでしょう、医者は。そこへさらに今度苛酷な改正をするのですよ。負担に耐えられないような改正をするのです。そうすると、未収はさらに倍加されてくるのです。ところが、現在そういう建前になっておるからさらに改正しても差しつかえないのだと、犠牲がさらに倍加されても仕方がないのだというような考え方は、これはあまり一方的な考え方じゃないでしょうか。厚生当局としてのお考えとしては私は受け取れないと思うのです。それで一方においては保険医の指定等の問題も起きている、一方ではさらに縛って強化していると、一方じゃ犠牲をさらに倍化している。それで赤字負担を逃げようとするような考え方は私は許せないと思うのです。どうなんですか。今まででも無理だったのですよ。今まででも未収が相当あるのですよ。ところへまた今度無理な改正をするのです。で、医者は一方で義務づけされておる。それはこの保険法ができる前からの規定だとおっしゃる、ところが自由医療の場合と保険診療とはまた違うのだ、保険ならば保険収入は低額であるけれども、安心して保険収入はあるものというのが、これが当りまえの考え方でしょう。そこで保険がだんだんふえていっておるのです。にもかかわらず、こういう無理な一部負担を課する結果が医者収入医者負担というものが非常に犠牲が多くなってくるということになるから、そういうことをしないように国が対策を講ずるべきではないか、こういうのですよ。これは保険から生ずる赤字がふえてくるという私たちの考え方なんです。一部負担が当然できる患者ができる、余裕があるという考えに立てば私たちはこんな心配はいたしません。
  27. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今回いろいろな、一部負担以外に今藤原先生御引例のようないろいろな他の面の医療機関についての改正も同時に御審議をいただいておりますが、私どもはそれらのものは決して診療担当者に犠牲をお願いするというふうなつもりでさような立案をいたしておるものではございません。あくまでも今御指摘のように、非常に中小企業労働者である世帯の苦しい中から保険料をいただいて、それをまあいわば保険者がお預りをして管理をしておるわけでございますから、なるたけ保険の運営についてはむだがないようにと、その金の使い方についてむだがないようにという私どもの責任の上から果すべき事柄につきましてのいろいろな根拠規定等を書いて改正案として御審議をいただいておるのでございます。決して診療担当者あるいは医療関係者に犠牲をしいるというふうな意図は全然ないのでございます。医療保険の運営はこれらの方方の全幅的な御協力があってこそ初めてこの運営の全きを期すべきものでございまして、これらの方々に不当な、何と申しますか、犠牲をしいたりいたしましては、結局は保険の運営というものはうまく参らないということを私どもも重々承知をいたしておるのでございます。一部負担の問題について、しかしお前はそう言うけれども、結局実質的に犠牲をしいることになるじゃないかという仰せが次に、二段に出てくると思うのです。先ほども申し上げましたように、結局まあ私どもは支払っていただけるものというふうに考えておりまするけれども、そういうふうなケースが出た場合に一体どうなるかということを突き詰められて参りますと、私がお答えしたように、現在のこの建前お答えしたようなことになっております。しかしそのことは前にお答えいたしましたように、私どもとしましては、保険財政の健全化あるいは保険運営の適正化というふうなものをあらゆる観点から考慮をいたしまして、さような建前にいたして御審議をいただいておる、こういうふうにお答えを申し上げたいと存じます。
  28. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 関連保険局長の御答弁を聞いておると、結局はこういうことになるのです。事実上厚生省は必ずしも医者に犠牲をしいるつもりでやっておるのではないけれども、しかし結果としては、医師に、医療担当者に犠牲をしいることになるということを認めているわけであります。それを全般的の保険経済の健全化のために仕方がない、こういうように返事しておられる。私はこれはあらゆる観点から考えてみて、結局医療担当者に犠牲をしいているようになることはやむを得ないという、こういうものの考え方は、私はきわめて危険だと思う。なぜなれば、保険局長も認めておる通りに、実際、事実において初診料の五十円というものをとれない医者がどれくらいあるかといいますと、大体私どもの市で、京都で調べた医者について見ますと、一割くらいはとれないのです、初診料が、それは大へんいいお医者さんで、はやっておるお医者さんです。どうしてもこれはとれない。そうしますと、再診料をとるということになると、一割以上の今度はさらに犠牲をしいることになる。もし入院の設備を持っておる医者であるならば、さらに多くの犠牲を負担することになる。そうして税金はとられています。初診料が入ったものとしての税金がとられています。そうすると、これは医者に、医療担当者にとっては、非常な大きな犠牲をさらにしいることになるのですな。まずその点について局長の御意見を伺いたいと思います。
  29. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 現行の初診料につきまして、未収がどの程度あるかということにつきましては、実は私ども率直に申しまして、さような資料、調査をいたした的確な資料を持ち合わしておりません。いろいろ場所によっても違いましょうし、あるいはお医者さんによっても違うと思うのでございます。ただ私は従来の未収になっておる、かりに、今、先生が一割という御調査を持っておいでになるようでございますが、この一割というものが全部が全部、その患者の方がほんとうにもうそれを負担したら生活ができないというふうな、いわゆる負担力がなくして未収になっておるのかどうかということにつきましては、私はこれは調査をしたことはございませんので、私の推測にすぎませんけれども、私は必ずしもそうではないのではないか。先ほどちょっと申しましたように、現行であれば、初診料の一部負担というものは払うべきものなんだという患者の意思といいますかそれと、それからこれは取るべきものなのだというふうにお医者様の方が考えていただくことによりまして、この一割というものは相当程度パーセンテージが落ちてくるのではあるまいかと、これは私の想像でございますから何も根拠のあることではございませんが、私はさように考えておるわけでございます。もし、今回御審議をいただいておりまするようなこの法律案法律として成立をいたしました場合におきましては、私どもといたしましては各事業所等におりまする連絡者として、保険委員というものがおるわけでございますが、事業主なり、あるいはその保険委員なりというようなものを通じまして、一部負担というものは必ず一つ払うべきものなんだということについての趣旨の徹底といいますとか、啓蒙というふうなこについて、従来は実はほとんどやっておりません。今回、法律としてかりに成立をいたしますれば、私どもはその点については格段と努力をいたしたいと、かようなつもりではおる次第でございます。
  30. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今、局長の御返事については大へん残念なことがあると思うのですが、それは一部負担の実情について全然調査がないということですね。これはやればやれることなんです。標本的な方法によってもどれくらい一部負担の未収入があるかということは、一部負担をさらに増強するという政策を立てる場合には調査をすべきだと思うのですね。それもやっていない。全然わからないというような保険局長の返事では、これは実に残念なことで、非常に怠慢だと思う。また、こういう具体的な政策を立てる際に慎重を欠いておるという点が一つ。  それから私どもは別に職業柄、調べる必要はないのだけれども、これが心配なんで京郡において調べたんです。京都の医師会についても調べたんです。それから地域についても調べたんです。私の一割というのは、ちょうど西陣の京都住宅地区におる私の親友の医者の統計なんです。彼らは不徹底じゃないのです。一部負担はすべきだということはすでに知っております。しかしながら、払えないとか払わないとか、いずれにしても医者は取れない。それを請求すれば患者が来なくなる。それは五十円取り立てるために人を雇ってその患者のうちに行けば、それは何とか払うかもしれない。あるいは西陣のように不景気のときには払えない。五十円もないのです、これは。これはもう広報活動というものは相当できておるのですよ。今の保険患者は一部負担があるということは知っています。それでいて医者が、事実上医療担当者が取れないのです。取れば医療が低下するのです。医療が低下するというのは患者も遠慮して来なくなるのです、催促すれば。こういう状態であるということもあなた方がわかっていないということは、これはゆゆしい問題だと思う。その上にさらにこの一部負担が再診料になってくるという場合には、これを払わなかった者は、初診料も今まで一割のものが払えなかったとすれば、そうすれば再診の医療が要るという場合には、再診に行きたくても行かなくなるということを考えなければなりません。この医療というものが、ほんとうに必要な医療が社会に行われないということになる。そういう人たちは売薬を飲むとか、あるいは神様参りをするとかというようなことになる、すなわち、早期診療だとか、早期治療だとかいうようなことはから念仏です、これは。そういう現実をしっかりあなた方が客観的に把握しているかと思うと把握していない、こういうことを私が伺ったのでは、実に厚生省保険局の怠慢だと思いますが、これはどうです。そういう点もっと深く掘り下げて考えられておりますか、伺いたい。
  31. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今の竹中さんの、現行法における初診料相当額について、医療担当者が取る上においてどのくらい取れなかったかというような問題につきましては、これは今、保険局長から申し上げましたように、厚生省といたしましては、そういう資料は持ち合せはないのであります。また、かりにその資料を集めようと思いましても、これはなかなか困難なことだと思います。
  32. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 困難なことはないんです。困難なことはないんですよ。一人一人全部を調べるというそんな調査方法ではないんです。これは幾らもサンプリングの方法があります。標本抽出で、非常に貧乏な地区の医者、あるいは裕福な地区の医者、あるいは住宅街の医者、いろいろな方法があります。あるいはABCの名前で任意的に標本的に調べることもできます。こんなことは調べることは大した費用もかからない、労力もかからない調査方法があるのです。その調査方法があるにもかかわらず、しかも一部負担をさらに増強するという政策を実行しようという場合に、これをやらないというのは、大臣はこれは当然だと思っておるわけですか。もう一度大臣に。そういう返事をされたらこれはどうにもならぬ。
  33. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 竹中さんのせっかくの御意見ではございますが、私はそういう問題につきましては、正確な資料を得ることはきわめて困難であると思います。
  34. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 正確な資料が得られるのです。それで得られなければあらゆる今までの調査だって正確な資料とはいえません。こんなたやすい調査、これはもうアルファベットですよ、できるのです。すでにわれわれはやっておるわけです。やっておって一割という結果が出たわけです。それもだめだと言われるのですか、大臣。御答弁を願います。
  35. 小林英三

    国務大臣小林英三君) まあ正確の資料をとり得るような事項は他にたくさんあると思いますが、そういうような問題につきまして、正確なる資料をつかみ得るということは困難であろうということを申し上げたのであります。
  36. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 これはできるんですよ、できるのです。やらしましたかということを聞いているわけです。厚生大臣は調査のことはそれはあなたは知らぬと思いますが、しかしあらゆる調査をやっておるわけですよ。基礎になる調査はすべて調査方法に従ってやったわけです。どうしてその一部負担の初診料の調査だけが、これはできないものだと厚生大臣は判断するわけですか。厚生大臣どうです。あなたの言うておることに矛盾がありますよ。それじゃそれができないと局長思いますか、そんな正確なものができないと。それが正確でなければ、みんなあなた方の出したものは不正確ということになるじゃないですか。大臣がそれを証明しています。調査は、そんなことでは正確が期せられないということになれば、あなた方のここへ出しておることは全部不正確ということになりますよ。
  37. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 大臣仰せになっていることは、さようなことではないのでありまして、事柄の性質によっては、役所等が調査をしても、なかなか的確な、正確な資料が得られないような事柄と、そうでない事柄とあるというふうな意味のことを申されておるわけでございます。
  38. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 そうすると、保険局長ではこれはやれない事項だと思うんですか。
  39. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) これを役所がかような時期に調査をいたしまするといたしましても、相当骨の折れることであり、また正確性等につきましても、相当疑問を持ち得るような結果が集まってくるのではないだろうか。やってやれないことはないと存じます。
  40. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただいままでの応答その他を聞いておりますというと、保険医の側における未収を調べるということは、こういう問題も起っているとき調べるということは、なかなか税金対象収入額を調べるのと同じように、非常に不正確な結果が出るだろうというようなことの意味大臣お答えになっておるのでありますが、ついては、そうでございますならば、厚生省の御関係になっておられるところの官公立病院並びに社会保険病院、それらの点におきまして、これらの一部負担の額が、どんなふうに未収の状態になっておるかということは、あなた方の御監督のもとにある病院でございまするから、結論的にわかっておらなければならぬと思うのでありますが、この点は一つ大臣はもちろんそういうことはおわかりにならぬと思いますが、こういう問題をなさる以上は、十分御調査がいっておるはずで、一般の開業医はうそをつくかもしらぬけれども厚生省の傘下にあるところの病院その他の診療所におきましては、御調査がいけるはずと思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  41. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 官公立病院あるいは社会保険病院等の資料は、これは取れば取れるわけでございます。まことにこれはまたおしかりをこうむるかもしれませんが、今日までさような的確な資料を収集いたしたことはございません。
  42. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほど竹中さんに対するお答えとしましては、事実上そういう信憑性がある資料を取ることができないから、この一部負担の問題を法律化する場合におきましてもできなかったという御答弁でありますが、そうではなしに、今の御答弁であると、そういう資料がとれるにかかわらず、まあとっておらずにこういう一部負担の問題に対する法律を立法化するのであるということになりますと、事は重大でありますから、その点はもう一度承わりたいと思います。
  43. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ただいまのような資料は、私ども今日手元にございません。
  44. 藤原道子

    藤原道子君 私は、政府当局は一体何を考え、何を調査しておられるのか、これじゃまじめな審議ができないと思うんです。結局保険局の責任になる。赤字の点はあらゆる調査資料を出しているんですよ。ところがこの一部負担の未収ということは、これはお医者さんの負担になり、その犠牲が加重されることになる。しかしこれは医者の問題だから、調査しなくてもそれで押し切ろうとするというその考え方に問題がある。これだけの資料にも信憑性はないんですか。無理を承知であらゆる一部負担をかけてきておきながら、それの未収の程度がどうであるかということの調査がないなんということは許せないと思います。どこからこういう……じゃ改正に対する一部負担はこのくらいなものが適当だろうという腰だめなんですね。三十円くらい何でもない、再診料を払うのに、一日二十円くらい何でもなかろう。しかしそれらの人たちの一日の給料は幾らなんですか、われわれの立場とは違うんです。あまりにも思いやりがないし、無責任だと思う。さらに私は重ねて御答弁を願いたいと思う。従来の資料もこれじゃ信用できないという結果になる。
  45. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私どもが御提出を申し上げて御審議の参考に供しておりまする資料は、私どもといたしまして御信用願って差しつかえない資料というものを御提出をいたしておるつもりでございます。
  46. 藤原道子

    藤原道子君 私はどうしても逃げよう逃げようとしているような答弁に聞えてならないのです。どれだけの真剣味を持っているのか、わけがわからない。これは私も、現にこの調査資料を出してもらわなければ私納得参りません。直ちに手っとり早くわかるところの、官公立の病院だけでもけっこうでございますから、至急に資料を出してほしいと思いますが、いかがでございますか。
  47. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 果して先ほど私が申し上げましたように、負担能力がないから……。
  48. 藤原道子

    藤原道子君 それはあとでいいのですよ。ただ官公立の未収になっている点を、どのくらいの割合になっているかということを、資料として出していただきたいというのです。
  49. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 相当な資料、それを整えまするには、今からやるといたしますれば、相当な時間を要するものと思いまするので、ただいまさようなものをお約束を申し上げることはごかんべんを願いたいとかように思います。
  50. 榊原亨

    ○榊原亨君 これは中をとるようですが、せっかくのそういうお話しであれば、厚生年金病院の中央の、あれだけでも、今電話をかければ未収がどれくらいあるかわかるはずですから、それだけでも大体腰だめはわかると思うのです。いかがですか。
  51. 藤原道子

    藤原道子君 榊原さんのおっしゃる厚生年金病院とそれから国立の、東京に第一もあれば第二もありますから、その手近なところだけでもけっこうです。
  52. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  53. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をつけて。
  54. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 従来初診料の一部負担というものがございますが、これがどの程度未収になっておるかどうかというふうな資料につきましては、先ほど来繰り返しましたように、私どもの手元にございません。従いましてこれを今全般的に調査をいたすというようなことはとうていめんどうなことでございまするので、一、二の抽出調査というふうなことができまするかどうか、その点につきましては後刻お答え申し上げさしていただきます。なるべくやりまするように私どもとしましても検討をいたしたい。しかしながら、そのことにつきましては後刻お答えをさしていただきたいと思います。
  55. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 一、二の病院について抽出調査をやることができるかできないかわからないと言う。なぜそんなに困難なのですか。その理由説明して下さい。
  56. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私も病院経理の実務には通じておりませんので、一度病院当局とも相談いたしまして、さような資料が直ちにでき得るものかどうかということを相談をいたしたい。何とかしてできるような方向で相談いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  57. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 初診料としての収入の経理は病院にはないだろうという見通しなのですか、局長にお尋ねします。
  58. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) あるものと私も予想をいたしまするが、実際に私が実務に通じておりませんので、ただいまこの席で私の見込みによりまして直ちにお答えを申し上げることもどうかと存じまするので、御猶予をいただきたいと、かようにお願い申し上げておる次第でございます。
  59. 榊原亨

    ○榊原亨君 社会保険におきましては、初診料を現金収入いたしました場合には、必ずこれをカルテに記入すべきものと診療方針に明記されておるわけです、保険局長は御存じないかもしれないが。従いましてそのカルテを何枚か抽出されまして調べれば直ちに未収かどうかということがすぐ累計ができると思うのでありますが、その点は局長も御存じなければ、係の方でも収入をされたことをカルテに書くということをわれわれは明示されておるのでございますが、その点いかがでございますか。あまり雲の上でわからぬか……。
  60. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私、ただいまどうも実務に非常に暗くて申しわけないのですが、初診の有無をカルテに書くことは要求しておりますが、それが未収であったかどうか、受け取ったかどうかということは、あるいはその点については、記載義務はないのじゃないかと一応私考えますけれども、なおそこいらの点はもう少し研究をしましてお答えいたしたいと思います。
  61. 榊原亨

    ○榊原亨君 御研究になりまして、私ども保険医でございますから、必ず患者から取った金はカルテに記入しなければならぬということを規則にあるか何か知りませんけれども、命令されておるわけであります。もしその義務を怠りました場合には、監査の場合に一つの事故としてやられるわけでございます。もしも今そういうことをしなくてもいいということでございますれば、直ちに私は日本医師会に通知をいたしまして、今後現金の徴収をいたしましてもそれはカルテに書かなくてもいいという当局の御見解だということを明らかにしなければならない。次回までにはっきりとその点をしていただかないと、もしも今私がお話し申し上げましたような点がございましたら、これは御調査なさることは、一病院の抽出統計をなさいますならば、あるいは一カ月あるいは十日ぐらいのものを御調査になればすぐ資料は出ることと思います。
  62. 相馬助治

    ○相馬助治君 この点は高田保険局長も管轄が違うので、あるいは実務上のことはわからないということは首肯できますが、藤原委員並びに竹中委員が要求しておりますのは、思いつきで言っておるのではなくて、高田保険局長もおわかりのように、きわめて大きなポイントをなしておるのです。私から敷衍いたしますれば、某政党においては某氏案なるものをもって初診料のウエートをどうするか、こうするかということが議論の焦点になっておることは、あなたも御承知の通りであります。従って管轄外の問題については管轄の局長とよく照合され、同時に、両委員が満足でき得るような資料を出すべく万全の努力を払われて、並びに要求した議員も、次回があるのですから、この問題はこれで納得しないままではあるけれども、次回に回し、そうしてあらためてその場合によっては資料を要求する、こういうことにして議事を進められる動議を提出いたします。(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)
  63. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今のに関連することでございますが、医師会の現在の不安な点は、再診料が取れるだろうか、取れないだろうかということが不安なんですよ。
  64. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと待って下さい。今の相馬君の議事進行に関してのそういう意味合いで、そこで一ぺん……。
  65. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 その点私が結論づけます。再診料が取れるか取れないかということが非常な不安です。むしろ初診料に集めてしまった方が取れやすいのじゃないか。取り立て方法が問題になっておるほど一部負担というものは事実上困難な問題とされておるのです。そういうところであるからして、私は一体初診料で今までどれだけ未収があるか、取れなかったか、それが私どもの関係しておる医師会のお医者さんたちの友人あるいは仲間のお医者さんたちの一番大きな問題になっておる点です。そうしてすでに調査もしておるのです。それなのに厚生省がそういうものがない、そういうものはできない、そういうことを言われるからして私は憤慨しておるのです。憤慨しておるのじゃない。非常な不安で仕方がない。どうしてこの法案を審議すべきか私は知らないのです。だからその点慎重に一つ重大に考えてもらいたいと思います。
  66. 藤原道子

    藤原道子君 私は納得できないままに問題はあとに譲りまして、質問を続けさせていただきます。もう少し政府当局もまじめに真剣にお考えいただかなければ、われわれ委員として審議する意欲を失うのです。この点十分お考えの上、御答弁を願いたいと思います。
  67. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと待って下さい。そうすると、今までの問題は、相馬委員からの動議のような形で次回までにそういう資料を出すとか、次回に答弁するということで次の質問に移るということでよろしゅうございますね。(「打ち切りですか」と呼ぶ者あり)打ち切りじゃありませんが、今の問題からはずれておりますから、議事進行の動議が出ましたので、そういうことに扱ってよろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それじゃどうぞ。
  69. 藤原道子

    藤原道子君 私はこの際、いま一つ実際に実際面のことをお伺いしているのですから、どうぞ真剣に御答弁願いたい。私がさらにこの問題を突き進めまして、診療義務の点につきましては、診療に従事する医師に課せられておるものと思いますが、そうですね。
  70. 相馬助治

    ○相馬助治君 ちょっと委員長、どうもそういうように重要な資料が出ないということで審議の意欲を失うと藤原委員指摘した通りで、私はきょうはこれ以上やりたくなくなり、政府も何だか答弁しづらいようだが、この辺で散会がいいのじゃないか。
  71. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  72. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。
  73. 藤原道子

    藤原道子君 今の点を御答弁願います。
  74. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 診療の義務は医師個人が負っておるものと思うがどうかという仰せでございますが、医師法に取り上げておりまする先ほど問題になりましたような診療の義務というものは、医師個人でございます。それから今回私ども保険診療をお願いする相手方としては、医療機関をつかまえたわけでございます。従いまして、こういうふうな条件でということは大体法律で課せられておるわけでございますが、こういうふうな条件で保険診療に従事していただけますか、よししよう、従事したい、して下さい、こういうふうにお約束をしまして、そうして保険診療を取り扱っていただくわけであります。その相手方は医療機関でございます。そうしてその医療機関の中に勤務しておられまする保険医の方々は、それぞれ診療担当規定によって、ルールに従って個々の診療をしていただくと、その契約が結ばれますれば、そこに勤務しておられまする保険医の方々は、保険のルールに従って個々の診療行為を行なっていただくということに相なるわけであります。
  75. 藤原道子

    藤原道子君 そういう場合に、もしも診療機関ですね、診療機関が諸般の事情によってもしも患者診療を引き受けなかったというような場合の責任はどこへいくのですか。診療をお断わりした、しかし医者じゃない、医者にあらざる開設者と申しましょうか、そういう人が診療を断わったというような場合、やはり医師法の適用を受けるのでしょうか。
  76. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 保険の関係の医療機関の開設者が保険診療を拒否されたという場合には、この御審議をいただいておりまする健康保険法の諸規定の問題になってくるわけでございます。やりますというお約束でそういう関係を結んでおるわけでありますから、保険の問題になって参ります、そういうことでございます。
  77. 藤原道子

    藤原道子君 そうすると、ますますもって一部負担というものは余ほど慎重に扱わなければならないということにもなるわけですね、それだけの医師法においては、医師にその義務規定が課せられておる。拒否した場合には医師が処罰されるわけです。ところが医師でない者がやっていても、一度引き受けた以上はどんな患者であろうともこれを拒否することはできないということになるなら、ますますもってこの際慎重にこの問題を審議されて、その趣旨の欠けることのないように本法を改正していかなければならないということになるわけですね。断わることはできないのでしょう、診療機関は。この人は一部負担をやる能力がないと見た場合でも、この診療機関はこの患者を断わることができない……。
  78. 山下義信

    ○山下義信君 関連して……。先ほど藤原委員質問が二つあったと思うのですが、政府の答弁を私は聞きのがしたのですが、大事な点は、医師にあらざる非医師が開設者である医療機関、その場合において開設者の非医師は一部負担を払わなかったといって患者を拒否することができるかどうかということを聞いているのです。その患者を拒否したときに一体どう処分ができるか、それに引っかけてどう処分ができるかということは一応明白にしてもらわなければならない。藤原委員はすぐそれで一部負担支払い云々と第二の質問にお移りになったが、その一つ質問を明確にしておいてもらわなければならぬ。どうするか、非医師の開設者は。拒否したときにはどうするか。
  79. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) その場合には、結局約束通り保険診療を行なってもらえなかったということになりまするので、まあ一例をあげますれば、四十三条の十二で、その保険診療をするという関係から外へ出てもらって、普通の医療機関になっていただく、言葉をかえて申しますれば、医療機関の指定の取り消しをいたすということに相なると存じます。
  80. 山下義信

    ○山下義信君 これは藤原委員質問ですから私は聞いておるのですが、私も自分質問の番がもう一度与えられたら、参りましたなら伺おうと思ったのですが、一体一部負担を支払わない場合に、保険医がその診療を拒否することができるかできないか、政府は断わってもいいのだ、こういうことを前から答弁している。それを政府の方では医師法と健康保険法と両方にかけて裁いていくというのですね、答弁は。今非医師が開設者である場合の医療機関がその一部負担を支払えないからという理由で拒否した場合には、健康保険法で今引っかけようというのですよ、これはきわめてあいまいであるが、引っかけようとするのですよ、一般保険医の場合は医師法と保険法と両方にかけて処理して、非医師の開設者の場合には医師法はかぶらないでしょう。かぶせることはできないでしょう。保険法の中だけでその拒否し得られる正当な理由ということを認めることができますか。
  81. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 四十三条の四に、略して読みますが、保険医療機関は、保険医療機関において診療に従事する保険医をして四十三条の六第一項の規定による命令の定むるところにより診療または調剤に当らしむるのほか、命令の定むるところにより療養の給付を担当すべしということに相なっておるわけであります。それで今のような場合に、ただ貧乏だからといって、保険医療機関が保険診療を断わりました場合には、これに当るわけでございます。義務を違反したということに、四十三条の四の義務に沿わなかったということになりますので、第四十三条の十二によりまして、情状によりましてはこの機関の指定の取り消しというところまでもいき得るということでございます。  それからもう一つ一部負担を払わなかった場合ということにつきまして、払わなかった場合には、診療を断わってもいいというふうに私どもが申し上げたというふうに、他の席におきましてさようなことが出たのでございますが、その点は、私たしかこの委員会で御説明を一度したことがあると存じまするが、払わなかった場合と、ほんとうは払えるのに払わなかった場合と二つがあります。それで前者の場合には、診療はやっていただかなければなりませんという解釈になります。後者の場合には、どうも今の解釈ではそこまでも医療機関あるいは医師にさような義務をお願いするのは酷であろうと思われるから、その場合には断わっていただいてもいいと解釈いたします。こういうふうにお答えをいたしておりまするので、そのこともつけ加えておきます。
  82. 山下義信

    ○山下義信君 一部負担を払わない場合は、診療を拒否してもいいというのは、言葉を略したのです。今あなたのおっしゃったような、払う能力があるのに、払う力があるのに、金も持っているのに払わないといった場合はどうかというときには、あなたはそれは医師法のいわゆる正当な理由というものの中に入って、そういう場合には断わっていいというように医師法も認めているから、だからこれは断わってもいいんだ、こういう答弁をしたのです。そしたら榊原委員が、じゃその金がありて払えば払えるという支払い能力の判定はだれがするのかという、きわめて適切な言葉が途中で入った、それはいい。それは医師の場合は、保険医の場合は、あなたは医師法と引っかけて、健康保険法と両方をお硬いになって御答弁をなさるのです。医療機関の開設者が即保険医であるという場合にはそれでいい。今医師であらざる非医師が医療機関の開設者であるという場合には、正当な理由で拒否するといったって、医師でないんだから、医師法で許しておる十九条は適用することはできないでありましょうが、非医師が開設者の場合、ですから医師法を使わないで、今回の健康保険法の改正案の中で、非医師が開設者の場合には、金があっても払わない場合には、診療を拒否していいということをどこで許しておるか、健康保険法の方で御答弁願いたい、さばいてごらんなさいと、こういうことです。それを明らかにしておかなければ、処罰は非医師の開設者でもあなたの言うがごとく、医療機関の指定の取り消し処分ということになるのですから、そういう場合には正当な理由——医師が医師法で適用されると同じように、そういう場合は認めてやるぞということは、健康保険法の方でさばいておかなければいけません。今の質問は、一部負担を払わんからといって、非医師が開設者である医療機関が診療を拒否した場合はどうするかということを言っているのです。
  83. 小沢辰男

    説明員(小沢辰男君) 健康保険法の四十三条の四で、先ほど局長が読み上げましたように、保険医療機関というものは、勤務する保険医をして療養の給付を担当せしめる義務があるのでございます。この保険医療機関の最高の責任者はその医療機関の開設者でございます。これは医療法におきましても、やはり医療機関の病院、または診療所、他の医療機関の最高の責任者は開設者というのでございます。この場合にこの開設者が非医師の場合には、その人の個々の行為はやはり保険医療機関の最高の責任者としての責任ある行為になるわけでございます。四十三条の四で、保険医療機関が保険医をして療養の給付を担当せしめる義務がある、四十三条の四の規定にあるのでございます。一方医師法におきまして、医師法の十九条でございましたか、応招の義務があるのでございますが、その医師法の規定は、保険医たる勤務の医師に当然にかかってくるわけでございます。従いまして、もしも医療法で正当なる理由ありとして応招の義務のないような場合には、この保険医療機関が療養の給付を担当せしめる場合のその療養の給付を、担当診療または調剤に当る保険医または保険薬剤師というものが、一方医師法において正当なる理由として応招の義務を排除し縛るというような場合には、当然これはこの保険医療機関が、一部負担を払わないというような場合でも、もしも医師法の規定で正当なる理由と認められるような事例のような場合でありましたならば、そこに勤務する保険医等はこの医師法の規定の義務を免れるわけでございますので、従って保険医療機関の方でもその四十三条の四の違反としての四十三条の十二の適用がなくなる、こういうことでございますし、また一方、医師法に規定されております応招の義務を免除し得るような理由ではない、従って正当なる理由ではないというような場合には、当然保険医療機関は、医療法上に、いわゆる応招の義務というものを適用される保険医をして、療養の給付を担当せしめなければいけないということになるのです。それを開設者が拒んだ場合には、その保険医療機関は明らかに四十三条の四の規定の違反になる、こういう解釈で私ども健康保険法で今おっしゃいましたような問題は解決していってしまうと考えております。
  84. 山下義信

    ○山下義信君 それは非医師が開設者である医療機関に勤務する保険医のことにつきましては、これは今の前段の御答弁はそれでよろしい、非医師が開設者である、その開設者が診療を拒否するような扱いをしたときはどうするか。(「藤原道子君「医師が断わったのではないですよ、開設者が断った……」と述ぶ)
  85. 小沢辰男

    説明員(小沢辰男君) 非医師たる開設者が断わった場合といいますのは、結局……。
  86. 山下義信

    ○山下義信君 もう一ぺん質問がわかるようにしましょう。その一部負担を受け取るものは、その医療機関の中の保険医が受け取るのじゃない。開設者が受け取る。その医療機関の経営者が受け取る。これは金があっても払わぬ患者だなというときには、医師法十九条で、正当な事由として応招の義務を免除しようとする、そういう立場と同じ立場に立つのだけれども、しかしそれは非医師だから医師法で許すということにはいかぬ。医療機関の開設者である。その医療機関には医療給付給付の義務が義務づけられておる。しかるに開設者は断ったわけです。それをどうこの健康保険法の改正はさばいていくかということです。そういうことを言っておるのですよ。その答弁ができたらその先がもう一つある。それは伺ってもよし、伺わぬでもよし、この次に回してもよい。
  87. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今の山下先生の御質問に対しましては、さっきの小沢健康保険課長説明で十分法律的な説明がつき得るものと、私は今一応考えます。しかしながらかりにそういう説明——法律的にもう少し研究をいたしてみまするが、かりにそういう説明では法律的にがっちり固まらないということでもございました場合には、診療担当規程というものが機関にもございます。条文をおあけいただきますと、四十三条の四の第一項の一番最後のところに「命令ノ定ムル所ニ依リ」ということがございますが、これはいわゆる診療担当規程でございますが、この診療担当規程は、これは機関を、すなわち機関の開設者を縛ばる規定でございます。従いましてこの中にさような趣旨のことを書き込んでおきますれば、かりにただいまの説明法律的に遺漏がない、遺漏がないと存じますけれども遺漏があった場合にはさような措置をとりますれば、健康保険法の改正案の中で十分さばき得るものと、かように私は考えます。
  88. 山下義信

    ○山下義信君 それでは速記に残っておりますから、速記で一ぺんただいまの政府の見解をよく見せていただいて、私がざっと聞いたのでは、いわゆる非医師の開設者にも医師法の準用というか、その運用適用していくのだというような意味のことが回りくどく説明されてあったと思うのですが、それがこの健康保険法の改正案の条文にぴたりと合法的な答弁になるかどうかということは、私も一ぺんこれは答弁を見せていただきたい、速記で。それで今それを補充された局長の命令の定むるところによって、もし不備ならば、そういうところできめておこうと言われたが、これは大事なことは法律できめなければならぬ。権利義務に関することは——それの手続は命令で定められてもいいが、そういうような非医師の開設者のいわゆる義務規定、それに違反すれば罰則がある、そういうような場合の基本的なものは、法律事項でなくっちゃならぬ。命令事項でない。私は関連質問だからここにしておきまして、今の答弁をもう一ぺん拝見して、この次の私の質問の楽しみに残しておこうと思います。
  89. 榊原亨

    ○榊原亨君 今の問題、しかし重要でありますから、この次までに当局のはっきりした御見解をコンクリートにして一つやっていただくことが一つと、私ども法律はしろうとですから、一つ参議院法制局の意見を一つこの次までに聞かしていただく。
  90. 藤原道子

    藤原道子君 それに続いてもう一つ伺っておきたいのです。山下さんの楽しみがもう一つふえるかわかりませんけれども、支払能力があるのに払わない場合には診療を拒否することも正当なる理由になると思うのでございますが、医師の方で支払能力があると考えて拒否したのだといった場合には、一体どうなるか。医者には支払能力について認定すべき義務とか、あるいは認定の基準というようなものはないと思うのです。というような場合に、服装だとか、そんないろいろな面から推定して、支払能力があるのに払わなかった、払わないから、だから拒否したのだというようなことになったときには、これは正当な理由になると思うのですが、こういう場合にはどうですか。
  91. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 純粋な法律解釈の問題でありますが、法律には「正当な事由」ということになっておりまして、別に支払能力があるとかないとかいうようなことは、法律自体に書いてないわけであります。しかしその解釈といたしまして、「正当な事由」の中にもう明らかに支払能力があると思われるような方が、自分はお医者様にお金を払うのはいやなんだというようなことで払われない。はっきりそういうふうに声明しておるものまでもお医者様に必ず見てもらわなければならぬのだというふうな解釈をすることは、これはあまりにもお医者さんに対して酷な解釈ではあるまいか。従ってさようなものは「正当な事由」に入るであろうというふうな解釈になっております。ということを申し上げた。その際に、一体その支払いの能力があるかないかということにつきましては、これはやっぱり具体的な問題としましては、お医者様のその場合の認定ということが、まずそれに従うよりほかには方法がないと思いますが、それがただいま申し上げましたように、法律では「正当の事由と」こうなっておるわけでございますから、そういうふうな認定をなさったことが諸般の情勢から見て正しかったかどうかというふうなことにつきましては、あとでかりにまあ訴訟でも何でも起ったような場合には、そういうふうなことが総合的に見ていわゆる社会通念上どうであるかという観点から、裁判等は行われるものと法律的にはさようなことになります。しかし実際問題としましては、お医者様よりその席には判定なさる方がいないわけでありますから、お医者様の認定に従って行動をなさるということに相なるかと思います。
  92. 藤原道子

    藤原道子君 そこが非常に問題なんですよ。お医者様にはだんだんとそういうふうにがんじがらめにやっておるのだから、だから結局は一部負担を過酷にかけることは非常に問題だと思う。服装等によって能力があるから断ったのだというようなことは私は起り得ると思うのです、こういうことは。そういう場合に結局払えないものは医者に行きにくい。たださえ行きにくいのですから、払えないで行くということは、余ほどのことでなければ行けません。結局医療から支払能力のないものは除外されてくるという結果になるのじゃありませんか。だからやはり貧しいものは仕方がない。在宅患者さえこれだから、今の待遇なんだから、入院者はこれだけ払うのは当りまえだ、まあ再診料が二十円や三十円であればこれは当然払えるのだ、こういう仮定に基いてあなた方はやってきておる。だからさっきのような未収がどれだけあるのかと言われたらすぐ答弁に詰ってしまう。あなたがここで作らんとしておる責任を持っておる法律の及ぼす影響がいかに重大かということをどうぞお考えになって、面子じゃなくて真剣に考えてもらわなければならないということはここに起ってくるのです。私はまあこの次に質問を譲ります。留保しておきます。
  93. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 藤原先生の御意見別に反駁を申し上げるようなつもりで御答弁を申し上げるわけではございません。ただ私どもまじめに一部負担の問題につきましては真剣に取り組んで研究をいたしたつもりなのでございます。それで、お医者様の窓口で一部負担を徴収をしていただくということにつきましては、これをいたしませんと、何と申しますか、保険の一部負担の制度あるいは保険の制度全般がくずれてくるおそれが私どもあると考える。従いまして、私どもとしましては、一部負担制度というふうなものを考えまする以上は、必ずその前提といたしまして、それは窓口で徴収をしていただくのであるということを実はイコールに考えておる次第でございます。言葉が足りませんのでございますが、私どもといたしましては、一部負担というものを実施いたしまするならば、やはりそれは窓口で徴収する。そういたしませんと、これを他のものが徴収するということになりますと非常にめんどうなことになって参りまして、保険建前というものがくずれていく、あるいは一部負担建前がくずれて参るというふうなことになるかと存ずるのでございます。しかしこのことは一部負担の可否を論じられることとは別でございます。このことは一部負担がいいか悪いかということを私は今申し上げておるのではなくて、この問題とは別に一部負担制度というものを考えるならば、保険のテクニックといたしましては、窓口で徴収していただくことが一番徴収しやすいことである。またそうしませんと、一部負担趣旨というものがくずれて参るように私ども考えているのでございます。
  94. 藤原道子

    藤原道子君 私質問を次回に譲ります。どうしても納得のできない点がございますから。
  95. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  96. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を起して下さい。  本問題に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  委員会を散会いたします。    午後四時三分散会