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1956-05-02 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二日(水曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————   委員異動 四月三十日委員西郷吉之助君、井上清 一君、最上英子君、中山壽彦君山本 米治君、西岡ハル君及び吉田法晴君辞 任につき、その補欠として加藤武徳 君、高橋進太郎君、紅露みつ君、草葉 隆圓君、深川タマヱ君、榊原亨君及び 藤原道子君を議長おいて指名した。 本日委員高橋進太郎君、相馬助治君、 藤田進君及び山本經勝君辞任につき、 その補欠として松原一彦君、赤松常子 君、竹中勝男君及び戸叶武君を議長おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            榊原  亨君            赤松 常子君            竹中 勝男君            戸叶  武君            藤原 道子君            田村 文吉君            森田 義衞君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 楠本 正康君    厚生省児童局長 高田 浩運君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生省公衆衛生    局環境衛生部食    品衛生課厚生    技官)     金原 松次君   参考人    朝日新聞社会長    代理東京本社    編集局次長)  長谷川健一君    朝日新聞厚生文    化事業団理事長 加藤 祗文君    朝日新聞東京本    社社会部部員  青木 榮治君    朝日新聞大阪本    社社会部部員  橘 榮一郎君    全国社会福祉協    議会会長代理  青木 秀夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (児童福祉事業、親探し運動に関す  る件) ○食品衛生法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査)   —————————————
  2. 重盛壽治

  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、社会保障制度に関する調査の一環として、児童福祉事業、親探し運動に関する件を議題といたします。  この機会に一言私からごあいさつを申し上げます。戦時中の爆撃に伴う一家の離散と、終戦後海外からの引き揚げ並びに経済情勢その他の社会不安によって親子間の隔離を余儀なくされ、終戦後十ヵ年子を探す親、親を探す子たちの切なる叫び声は、連日ラジオ新聞等おいて繰り返されて、叫び続けられて参りましたが、今なお多数の弧児児童福祉施設に収容されておるのであります。これらの子供の親を探し、そしてそのあたたかい手元に帰らせることはきわめて緊急事であり、しかも重要なことと信ずるのであります。しかしながら、この問題の成果をあげるには、幾多の困難を伴うことであり、繰り返し繰り返し根気よく国民への呼びかけを必要とし、血のにじむようなその努力は半永久的に行わなければならない大事業であるのであります。  今回朝日新聞におきましては、この難事業と取り組まれまして、すでにたくさんの成果をあげられたことはまことに感謝にたえないところであります。なお、委員会おいては、本事業の重大さを痛切に感じ、本問題を取り上げて調査を進めることとし、特に関係せられました方々の御出席を願って、親探し運動実情お話し願って、今後の対策に資したいと存じて、参考人方々おいでを願っておるのであります。  本日おい願いました方々にはお忙しいところ特に御出席下さいましてありがとうございました。どうぞ当委員会の意のあるところを御了承下さいまして、親探し運動実情について御発表下さいますようお願い申し上げます。なお御発表の事項につきましては、文書をもってあらかじめ御依頼申し上げてありまするが、これらの項目にとらわれることなく、忌憚ない御意見を御発表下さいますようお願い申し上げます。ただ、勝手でありまするが、時間の関係もございますので、重複する点を避けていただき、全部の方々の御意見発表が済みましてから、各委員の質疑にお答え下さるようにお願いいたしたいと思います。  次に、委員皆様にお諮りをいたします。時間の都合上、参考人方々意見発表が全部済んでから、御質疑願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。それでは順次御意見発表をお願いいたします。朝日新聞社会長代理長谷川健一君にお願いいたします。
  5. 長谷川健一

    参考人長谷川健一君) 御指名によりまして、一言申し上げます。  朝日新聞社が親探し運動を呼びかけましてからすでに二ヵ月たちました。幸い世の親たち関係機関の共鳴を集めまして、今や全国的の運動として力強く盛り上げられております。そうして今日までに千二百四十九人の親を探し求めておる全国施設子供たち友新聞紙上紹介をいたしまして、この中から今まで探しあぐねた父や母、姉たちがいとし子を見つけ出した数は百二十八人になりました。また、施設におる子供たちも、これまでもう肉親に会えないといったあきらめを捨てて明るさを取り戻しておることは知られておることでございます。  この運動朝日新聞社が始めたきっかけと申しますか、それは次のような事柄でございます。  戦後十年ばかりたちましたが、世の中はようやく平静を取り戻してきました。ところが、全国各地には、戦時中や戦後のどさくさにまぎれまして、親を見失ったり、親に置き去りにされた子供がたくさんございます。そうしてこの子供たちは皆父や母を探し求めております。また逆に、子供を探す親たちの姿もしばしば見受けられております。たとえば東京のトンちゃん事件や、尼崎の弘子ちゃん事件もその一つの例でございます。この悲しい姿を一日も早くなくして、幸福な家庭を結ばせようと、阪本兵庫県知事らの呼びかけで各都道府県が力を合せて手を尽そうという話を聞きまして、そこで朝日新聞社では、この運動を美しく実らせようという趣旨のもとに全国施設をめぐりまして、親を待っているいたいけな子を、二月二十五日からきょうまで十五回にわたり、延べ千二百四十九人を紹介して参った次第でございます。そしてこの間に百二組、百十人が親子対面をいたしました。また、親に会えないまでも連絡のついた十八人を含めますと百二十八人に達しております。何年ぶりかでわが家に帰った子供たちの中には、両親を助けて職場に励むようなほほえましいポーズや、喜び勇んでわが家から通学する笑顔も現在見受けられております。傷心の家庭に何年ぶりかでこのような春がよみがえって参ったわけでございます。この陰にはたくさんの人の協力がありましたからであります。区役所や市役所、厚生省の未帰還調査部など、それに、名前も告げずに電話で知らして下さった方もたくさんございました。このような協力のほかに、この運動を心から感謝し、激励する手紙朝日新聞社に二百数十通も寄せられております。そしてこの中には、気の毒なこの子供たちを一人でも二人でも引き取ってお世話をしたいという、いわゆる里親職親申し出もたくさんございます。このように、親探し運動は親探しばかりでなく、親に会えない子供にも里親職親探しにもなり、また一般には、養護施設の不幸な子供の現状を再認識させた効果は非常にあったように思われます。今後とも、この不幸な子供たちが一人でも多く、一日も早くあたたかい親のふところに帰れるよう運動を進めるとともに、皆様の御協力を心から願ってやまない次第でございます。
  6. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、朝日新聞厚生文化事業団理事長加藤祗文さんにお願いいたします。
  7. 加藤祗文

    参考人加藤祗文君) この運動趣旨その他につきましては、ただいま新聞社の方の代表からお話がありましたので、私は厚生文化事業団関係する部面の概略を申し上げたいと存じます。  朝日新聞厚生文化事業団と申しますのは、朝日新聞が設立いたしました社会福祉法人でございます。各新聞社本社の所在地にそれぞれ事業団があるわけでございます。この運動につきまして、事業団といたしましては、朝日新聞運動裏づけのために官公の社会福祉児童福祉関係ある機関と連携をいたしまして、全国的の体系ある運動をいたして参ったのであります。厚生省の御協力によりまして、都道府県都道府県児童相談所全国社会福祉協議会都道府県社会福祉協議会共同主催のもとに事業を進めてきた次第でございます。  この事業におきましてわれわれのやって参ったことは、ほぼ四点をあげることができると思うのでございます。  第一は、この親探し運動のための子供台帳でございます。これはちょうど朝日新聞に掲載しました子供写真その他の載りました紙面が台帳になるわけでございますので、事業団からこれを全国児童相談所に漏れなく配付したわけでございます。  次に第二は、親の台帳でございます。これは全国児童委員のもとに子を探し求めている親からの申し出を受けまして、カードによって子を探している親たち台帳を作ったわけでございます。全国にわたりましてこの児童台帳と親の台帳とを照らし合せまして、各施設をまんべんなく親探し運動を進めて参ったわけであります。  第三点といたしましては、親が見つかりましても、その親のもとに引き取られていくことが、果して当該の子供にとって幸福であるかどうかといったような問題が残るわけでございまして、その点につきまして、全国児童委員方々の非常な御協力を得まして、ほんとうにその親のもとに返すのがいい人たちを親のもとに返すというような計らいをいたしたわけでございます。  第四点は、引き取られた、新しく探し求めた親のもとに帰った子供たちが、親も子も幸福にやっていけるように、アフター・ケアーと申しますか、あとをみてあげるということ、これもまた児童委員方々中心といたしまして、かえって不幸なことになるというようなことのないように努力をいたして参った次第でございます。  この運動の結果、親子がめぐり会った成果と申しますか、数は、ただいま新聞社の方のお話に報告されておりますので省略いたしますが、中には親子がめぐり会う、あるいは親はわかったけれども、いろいろの社会的の事情環境事情などからいって、親のもとへ帰らずにそのまま各地施設に残る子供もたくさんあるわけでございます。これらの子供の帰って住む各種施設、これには親を探すすべもなくて、そこを最終のすみかとして住んでいるたくさんの子供があるわけでございます。そういう世界はこの運動の場面を離れまして、依然としてわれわれの、何と申しますか、社会福祉運動対象として残っているわけでございます。もっとわれわれは、この親探し運動を推進いたしますとともに、この各種施設にいる子供たちの幸福のため、いいおい立ちをするために、この運動とまた同様に力を尽していきたいと、かように考えている次第でございます。  これらの点につきまして、今後とも皆様の御協力をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。
  8. 重盛壽治

  9. 青木榮治

    参考人青木榮治君) 先ほど会長代理の方から申されました通り、親探し運動を始めましてきょうまでに、親子対面したり、また連絡のついたものが百二十八人に達しました。けさ朝日新聞静岡版にも、その親子対面の記事が一つ出ておりますから、参考のために読んでみます。  「喜び野口つや子さん」、これは十七歳でございますが、つや子さんは母親と一日午後二時、静岡県浜名郡の三方原学園で十年ぶりにうれし涙の対面をしました。「つや子さんのお母さんの正子さん(四四)は奈良県から吉国民生委員と二人でこの日午後一時上り急行浜松着学園に着いたのは二時近かった。学園応接間藤下浜松児童相談所長らと待つうちお母さんはもう泣いていた。十年間母親代りつや子さんの世話をしてきた三方原学園長夫人とし子さんに連れられてつや子さんが入ってきた。  『お母さん——つや子ちゃん大きくなったでしょう』と母親つや子さんを紹介すれば『まあつや子ちゃん』とかけ寄る。母親の胸につや子さんは顔を沈め母も子も泣く。『つや子ちゃんは小さい時霜やけで難儀してよく学校を休んだのを思い出しては冬になると母ちゃんは毎晩あんたのことを案じて眠れなかったよ。もしかしたらサーカスに売られたかと思って母ちゃんはどんなに遠くてもサーカスを見に行って探したり、一日だって忘れなかったのに、こんなに大きくしていただいて……』積る母親の話にまた母も子も泣き続げる。二十二年五月十八日の夕方マリを持って遊びに出たまま帰らなかったつや子さんは、そのころ消防団や近所の人が総出で探したがわからなかったという。つや子さんが二十歳近くなれば必ず元気で親子会えるからという〃うらない〃の言葉母親の細い望みをつないでいる十年間、つや子さんは三方原学園でこの日を待っていたわけだ。藤下児童相談所長も、吉国民生委員も『いままでにもラジオ新聞に頼んでずいぶん探したのですが分らなかった。交通機関の発達したいまは子供もちょっとの間で県外へ出てしまうから、それが身元の分らなくなる大きな原因だったと痛切に感じた』という。  なおつや子さん親子はこの日の夜行で奈良県の郷里へ発った。」  このほかにやはりけさの福島県版の方にも、親子対面一つありました。  このようにして、運動が美しく実を結んでいったということは、ひとえに全国のたくさんの人たちの御協力があったということは申すまでもありません。東京だけでみましても、毎日数通の手紙朝日新聞の方に寄せられています。で、すでに先ほど申しましたように二百数十通に達しています。私たちはこの毎日のたよりをというか、激励をきっかけに、その日の仕事につくのです。そうしてその願いというのは、ひとえにこの不幸な子供たちが一日でも早く、一人でも多く、あたたかい親のふところに帰れるようにということがただ一つ願いであります。この間つらいこともいろいろありましたですけれども、こういう親子対面のことが一つでも実れば、これによってつらさも一ぺんにふっ飛んでしまうわけでございます。  この二ヵ月間の運動から見まして、私は運動をやって非常によかったというようなことを思います。  その一つは、初め厚生省で私が聞きました限りでは、このような運動をやっても大した効果はないのじゃないだろうかというような気持だったのでありますが、しかしやってみると、百二十八人もの者が肉親に会ったり、あるいは居どころがわかったということであります。かりにこれが厚生省あたりで考えられていましたと同じような結果に終ったとしても、私は十年後の今日までこんなに戦争による不幸な子供が、外地でなく内地にたくさんいるということを世の人たち紹介したということだけでも、大いに役立ったのではないかと思います。  で、私は、外地引き揚げということが今重点に置かれていますが、それと同時に、この子供たち内地引き揚げということを今後とも十分やってもらいたいということをお願いします。  第二に、毎日寄せられる手紙や面会、それから電話などの中には、このような不幸な子供たちが親に引き取られたということはよいとしても、あとに残った気の毒な子供たちのために、一人でも二人でもお世話してあげたいというのがたくさんあります。これは一時的な感傷からかとも思いますが、しかしそれに対して私は、里親職親になるという手続のことについて、るるとお話ししたり、手紙を差し上げています。このようにして親探し運動というものは、並行して、残った気の毒な子供たちのために、この里親職親探し運動にも発展していくということがいえます。  第三に、厚生省の未帰還調査部でも、私たちのこの仕事に大へん協力を願っておりますが、同調査部でも、この子供たち紹介で、逆に今まで外地から帰ってきてないと思っていた子供が、すでに帰っているということがわかりまして、非常に大助かりしているということもわかりました。  それから第四番目は、この運動に刺激されて、各県ともに親探しや子探しの運動を活発に始めるようになったようであります。ことに施設では、これまでとかくひとり立ちで横の連絡を全然欠いていました施設ども、横の連絡を非常に密にやるようになったと思います。それから千葉の中央児童相談所では、予算も乏しいというので、職員たちが毎月一人百円ずつ出し合って、施設子供たち遊び道具といったものを何とかしてやりたいということから、不幸な子供たちへの愛の貯金というものを始めるようなことを聞いています。
  10. 重盛壽治

  11. 橘榮一郎

    参考人橘榮一郎君) 大阪での大体の運動実情というものを中心お話ししたいと思います。  親探し運動を始めるに当って、私どもが一番心配いたしましたのは、親のわからない子供経歴写真新聞に載せることによって、傷つきやすい子供の心をかえって卑屈にしやしないかどうかということが私たちの一番問題になった点であります。孤独な生活になれてきました子供たちは、心の中で思っていることをありのまま、また雄弁には語ってはくれませんが、子供たちの意思だけはあくまでも尊重してやらねばならないと考えたのであります。従ってほんとうに親を探してほしいという子供と、子供の居どころさえわかれば親が引き取りに来そうな子供、この二つの条件を兼ね備えた子供を厳選していくことにきめたのであります。だから小さいときに父親にいじめられ、二度と家に帰りたくないという子供は採用しませんでした。大阪府下の五十四施設には今親のわからない子供が約七百五十人おりますが、この基準でより分けていきますと、対象になった子供は三分の一に過ぎませんでした。いわば新聞に出た子供は厳選された子供であります。心の底から親を探し求めている子供たちであります。親が引き取りに現われれば、ためらうことなく親にすがりつく子供でもあります。すでに大阪では三十六組、三十九人の子供が親と対面し、ほとんどの子供家庭に引き取られておりますが、まだ一組も家庭悲劇に終った例はありません。これが私たち取材記者のただ一つ喜びでもあります。しかし、これだけの条件を備えた者をたくさんの子供たちの中から選び出す仕事というものは並み大ていではありませんでした。施設に備えつけてある児童台帳は必ずしも完全といえませんし、中にはいつどこで保護したかもわからず白紙に近い経歴表もありました。ですから台帳をくって見ればすぐにでも子供を選び出せそうに思えてなかなかできないというのが実情だったと思います。施設園長保母さんから推選された子供の場合でも、じかに子供に会って確かめてみた上でなければ、取材しないという慎重な態度で一貫してきたわけであります。捨て子であっても、捨て子という言葉は避けまして、保護したぐらいにぼかして表現をしております。一人でも多く親が現われてくるのがこの運動の目的でありますから、隣りの家に犬がいたとか、近くに川があったとかいった取りとめもない子供たち言葉でも記入をしました。傷あとやあざなど、からだの特徴も克明に聞き取って、できるだけ親探しのきっかけを見つけようとしたわけであります。しかし、この運動に取りかかった当初は、取材記者の私たちでさえ、果して何人この中から親が現われてきてくれるかということは、むしろかけに等しかったかもしらぬのです。ところが、二月二十二日の朝刊で第一回の写真を掲載しましたところ、早くもその日の午後、第一号の親子対面が生まれてきました。これにはほんとうに私たちも元気づけられ、疲れを忘れて連日施設をたずね回ったのであります。  次に、この運動が投げた波紋も決して小さくはなかったと思います。大阪府ではすでに十万円の追加予算を組んで、各児童相談所に備えつける一般公開用写真台帳を作り、近く完成します。また、今まで子供を育てることだけに追われておった施設でもこの運動に発奮して、若い保母さんが進んで子供の親探しにかけずり回っておる例もあります。最近では里子に出ている子供や、施設を卒業して住み込み店員になっている青年からも親探しをしてほしいという飛び入りの申し込みもあるくらいで、ほんとうに親を探している子供たちにとっては、今この機会をのがしたら大へんだという切迫した気持に心を奪われておるのではないかと思います。  この運動は、今世の親たちの心を強く打って全国的な愛の運動へと高まりつつありますが、これを機会に、厚生省でも予算裏づけのある組織的な運動へと発展させていただきたいと私たちは念願しておるものであります。
  12. 重盛壽治

  13. 青木秀夫

    参考人青木秀夫君) 今回の朝日新聞社並びに厚生文化事業団の「この子たちの親を探そう」という親探し運動につきましては、私ども社会福祉関係者といたしましては、心からその企画とその御功績に対しまして感謝をいたしておるものであります。  戦争が終ってからすでに十年にもなっているにもかかわりませず、肉親離れ離れになった子供の問題がなお解決されずにおるのでありますが、これらの問題は、社会福祉の面から見て、非常に重要な問題でありますが、このような子供をお預かりしておる児童福祉施設養護施設中心とした幾つかの施設が作られておりますが、その運営あるいは管理というようなことに没頭しておって、この大事なことがないがしろにされておったようなことは、私ども大へん申しわけないというふうに考えておるわけでございます。戦争後の孤児あるいは浮浪児等対策のために、養護施設その他の児童福祉施設の必要が痛感されまして、こういう施設が増設、充実されてきまして、現在では五百二十八ヵ所の養護施設ができており、その中に三万三千人に及ぶ子供が養育されておるわけでございますが、これらの養護施設におきましては、親にかわって家庭的雰囲気の中で子供を養育するということを目標にして運営されておるのでございます。親がなくなってしまったというような子供は別といたしまして、肉親離れ離れになっていなければならない事情が解消いたしましたならば、一日も早くその親元にお返ししなければならない、それまでお預かりしておるのだというのが、この養護施設の使命でございますが、この子供の健全な育成というものは、両親のもとで養育されなければならない、これが最も自然であり、また最も望ましいものであるということは、だれしも知っておることなのでございまして、児童福祉関係のものとしては、いかにしてこの家庭的の環境を作り出すかということに心を砕いておるわけでございます。養護施設の人々はこの親の愛情をもって、家庭的環境を作り出すことに渾身の努力を払って子供をお預かりしておるわけでございます。しかしながら、ほんとうの血のつながり、親子愛情にまさる何ものもないのでございます。こういうような意味合いにおきまして、いろいろな事情離れ離れになっておる親子が再び一緒になりたいという、その気持をつなぎ合せようという今回の朝日新聞の企ては、まさしく児童福祉の核心を突いたものと私ども敬意を表しておる次第でございます。  この朝日新聞の企画をお伺いいたしましたときに、実は私は二つのことを直観いたしたのでございます。その一つは、ただいま申し上げましたように、ほんとう児童福祉の本質から見まして、こういうようなことは、われわれ社会福祉関係者自身でやらなければならないことなのではなかろうかということでございます。われわれはそのことをやらずに、これを怠っておったのではないか、まことに申しわけのない恥かしいような気持になったのでございます。私どもは、養護の理論であるとか、あるいは養育の技術であるとか、あるいは施設の管理であるとか、あるいは運営であるとかというような事柄、これらの事柄はもちろん大事なことなんでありますが、そういうような事柄に心を奪われておって、本当の子供の第一の希望、親のもとに行きたい、母の手に抱かれたいのだというその切実な願いに気がつかずにおった、いや気はついておったのであるが、これを実現させる熱と努力とに欠けておったのではないかということを、深く反省させられたのでございます。  さらにもう一つの事柄は、この企画はまことにりっぱな、まことにけっこうなことである。しかしながら、果してこれはうまくいくかどうか、先ほど厚生省の御所見についてのお話もあったわけでございまするが、私どもといたしましても、児童福祉の面から見て、子供の仕合せとしてこういう運動がうまくいくかどうかということについては、やはり危惧の念があったのでございます。それはただいまお話がありましたように、施設子供たち、必ずしも全部が親を探しているというわけでもないのでございます。施設子供の親を探すことにつきましては、種々な制約があり、条件があるわけでございます。また、今直ちに親元に返すことがほんとう子供のために幸福であるかどうかということも考えなければならない問題もあるわけでございます。もし功をあせってこれらの制約を無視したり、あるいは用意が十分でないと、その結果はうまくいかないのではないか、あるいは子供に恥かしい思いをさせ、肩身の狭い思いをさせたりするようなことがないとも限らない、その取り扱いは十分慎重にしなければならないというようなことが心配されたわけでございます。ところが、だんだんお話を伺っておるうちに、実は新聞社におきましても、その辺のことは十分配慮されておるのでございまして、直ちに厚生省都道府県あるいは児童相談所というような方面とも十分な連絡をとられることはもちろん、全国社会福祉協議会、また民生委員児童委員方々とも十分連絡をとって、その機能を活用するということに注意をされますことはもちろん、児童福祉施設の管理者並びに施設長の意見や、また職員の方々意見も十分これをお聞き取りになり、万全の措置を講ぜられておるのでございまするし、さらにただいまお話を伺いますると、子供自身についても、本人の意向を確かめるという周到な用意をもってこの企画を遂行せられたのでございまして、私どもの杞憂を全くなくされましたことにつきまして、敬意と感謝を表しておるような次第でございます。  先刻お話のありましたように、担当記者の方々の深い思いやりによりまして、童心をそこなうことなく、しかもその陰には何べんもむだ骨折りをせられたのでありまするが、そういう労苦を一向苦とせずに熱心に周到綿密に、しかも新聞社一流の敏速さをもって事が運ばれたのでございまして、その成果の偉大なことにつきましては、私ども驚嘆をいたしておるような次第でございます。実は、本年は児童憲章が制定されまして五周年になるわけでありますが、この昭和三十一年のトップを飾るこれは大事業であったと思うのでございます。  実は終戦直後の混乱をしておりましたときにも、やはり親をなくした、親を見失った、肉親と離れたいわゆる孤児のために、親を探そうという運動が同胞援護会の手によりまして行われたのでございます。孤児写真展示会という名をつけまして、全国の主要都市においてこれを開催いたしまして相当の成果をあげ多大の感謝を捧げられたのでございまするが、経費の関係などで途中でやめなければならぬというような事情に立ち至ったことは、まことに残念なことでございました。しかしながら、よく考えてみますと、こういうことは単に経費だけでできる問題ではないと考えられるのでございます。国民のあらゆる階層の方々の関心と御協力とを盛りげなくては効果があがらないのでございまするので、いわゆる国民運動的な性格を持っておる仕事だと思うのでございます。朝日新聞社のごとく、全国にわたって強い組織をお持ちの組織体が、その全力を動員して初めてできる仕事でございます。貴重な紙面を惜しげもなく大々的に提供されまして、その有能なスタッフを動員して、報道力を十分に発揮されて初めておさめ得られる成果ではなかろうかと存ずる次第でございまして、私どもといたしましては、この運動の発案、その企画の実施の主体そのものが朝日新聞であったということが成功の最大の要素ではなかったかとさえ考えておるような次第でございます。  今回のこの運動の展開によりまして、百数十名の子供に真実の肉身を与え、数千名の親を求めておる子供に、心に明るい希望をお与えいただいたのでありますが、私はさらにこの企ては、世の親に子供の心持を教え、また子供に親の気持を教えたものであろうと存じます。社会の人々に忘れられた子供の問題について、あるいは児童福祉施設の存在とその働きとについてもよく教えられ、あるいはまだなさねばならぬ問題がたくさん残されておるということをお教えになったものでございまして、社会福祉の重要性についての啓発、認識に多大の寄与、貢献をされたものと存じます。私ども社会事業関係者が、あるいは児童福祉週間を展開するとか、児童福祉大会をやるとかいうようなことをやって、いわゆるPR運動ができるというようなことは、実はこれは自己満足に過ぎないとさえ考えるのでございます。実はこの五月の十六、十七、十八日の三日間にわたりまして、全国児童関係者が長野市に集まって児童福祉大会を開くことになっておるわけでございます。当面の問題といたしましては、ことしは児童憲章が制定されて五周年になるが、その憲章もどうやら空文化しようとしておるではないか。いかにしてこの児童憲章を生かすべきかというようなことがその主要議題とされておるわけでございますが、今回この親を探す運動子供の心情を実現させるという具体的な切実な問題をとらえまして、これを一つ一つ解決し、社会を啓発されました朝日新聞社のこの事業は、この児童福祉大会の協議にも多大な、また貴重なサゼッションを与えるものと私ども感謝にたえないところでございます。朝日新聞社並びに厚生文化事業団は、社会福祉児童福祉の問題につきまして年来御貢献になっておるのでございまして、私どもは平素からありがたく感謝をいたしておるのでありますが、今回さらにこの大きな御功績でございまして、衷心からお礼を申し上げたいと存じます。  社会福祉につきましては、おかげさまで漸次社会の御認識をいただいて参ってはおりまするが、まだまだ大きな問題がたくさん残されておるのでございますので、今後とも朝日新聞の指導的御活躍をお願いすることのお許しをいただき、お礼を申しますとともに、ここに私の所見の開陳を終らせていただきたいと思う次第でございます。
  14. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 以上で参考人方々意見発表が終りましたので、これから質疑に入りまするが、この際関連をいたしまして、政府関係者への質疑がございましたら同時にお願いいたします。
  15. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は本日のこの委員会で、朝日新聞社事業に対しましてるる聞かしていただきましたこの機会に、政府の所信を二、三ただしておきたいと考えます。  ただいまも参考人の方からお話が出ました通りに、児童憲章が作られましてからすでに五周年を迎え、終戦後に児童福祉法が制定されましてからすでに八年を経過いたしております。われわれが国会におきまして、あるいはまた、政府当事者は政府行政官庁におかれまして、児童の福祉について果して遺憾なきを得たであろうかどうかという点について、大いに反省してみる必要があるのではないかと考えます。全国至るところ、ひんぴんとして親子心中が続出しておりますが、これをどうしてとめることができないものであろうか。また、人身売買の犠牲になる児童が限りなくおりまするけれども、この数を減らすこともできないものかどうか。長期欠席の児童を救う道はないものかどうか。犯罪に走る児童、少年によい環境を与えることができないものかどうか。また、親を探して親を探し当て、子を探して子を探し当てればまだせめてもの仕合せでありまするけれども、その探すべき両親もこの世にはないというような、全くの孤児に対する対策はどうなっているのであるか。あるいは母子の福祉はどうなっているか。児童相談所の機能がわれわれは微弱であると思いまするけれども、どういう活動をしているかどうか。こういう点をわれわれはつくづく反省せざるを得ない次第であります。  すべての同胞子弟が、すみやかに明るく生きることができるような世の中を作ることが、われわれに課せられたる、また政府に与えられたる使命であると考えるのでありまするけれども、この点についてわれわれが反省を深くすればするほど、考えなければならぬ点が多々あると考えるのであります。  そこで、幸いにして小林厚生大臣が御列席でございまするので、私は三点について、大臣の所信をただしておきたいと思います。  まず一つは、今日全国で保護を必要とする児童が大よそどのくらいあるものと、厚生省おいては推算されているかどうか。  それらの児童に対する福祉行政について、どういう基本的な計画を立てられ、また決意をお持ちであるかどうか。  第三には、ただいま青木参考人からお話を、実は私ども青木参考人からのお話は、日本の社会福祉関係事業団体がどういう仕事をしておられるか、どういう考えをお持ちであるかどうかということを伺いたかったわけなのです。しかしながら、青木参考人お話は、ただ朝日新聞事業札賛のお話に尽きましたために、その点についてわれわれが納得できるようなお話を聞かしていただくことはできなかったのはまことに遺憾に思いまするが、政府においては、厚生省におかれては、これらの児童養護、あるいは一般社会福祉関係事業団体を、いかにその活動意欲を刺激し、指導されつつあるかどうか。私はこの三点について、小林厚生大臣の所信をただしたいと思います。
  16. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 高野委員のただいまの御質問につきましては、われわれ当局の者といたしまして、ことに本年は児童憲章が制定されましてから五周年に相当いたしておりまして、責任の重大なことを心に考えておるのでありますが、ただいま御質問の保護を要しまする児童が、大体全国で保育所の関係を除きまして、四十八万人と推算をいたしておるのでございます。そのうちで現在すべての施設に収容をいたしておりまする者が六万人、現在六万人でございます。そのほかこの四十八万人のうちで、緊急に施設に入れなければならない、こういう子供が十万人いるのでございます。すなわち、今入っておりまする六万人のほかに十万人いるのでございます。厚生省施設といたしましては、養護施設が先ほどお話のありましたように、五百二十八ヵ所、それから精神薄弱児童その他のいろいろな児童施設を入れますると、八百八十九ヵ所あるのでございます。厚生省児童に関しまする本年度の予算というものは、われわれといたしましても満足すべきものではないのでありまして、今後こういう児童の福祉の問題につきましては、できるだけ国の予算を取りまして、そうして十分な施設をいたし、必要な児童をこれらの施設に収容していかなければならないと考えております。ことに児童憲章の五周年を迎えまして、さらにその意を深くいたしておるのでございます。  それから同時にまた、施設をふやすだけでいいかといえば、私はそうではないと思います。これはもう第一線に働いておられます児童相談所であるとか、あるいは民生委員の諸君であるとかというような方々とも十分に意見を交換いたしまして、今後児童の福祉の万全を期さなければならぬと思います。同時にまた、全国社会福祉協議会のような団体ともお互いに意見を交換し、今後協力いたしまして、児童の福祉のために推進していかなければならぬものだと考えております。なお、こまかいことにつきましては、局長からお答え申し上げます。
  17. 高野一夫

    ○高野一夫君 一言大臣にお願い申し上げておきますが、今後厚生省におきましては、この児童憲章の五周年を迎えた機会に、さらに十分の対策を新たに立てられんことを希望いたしますが、特に、従来厚生省の庇護のもとにある児童養護、社会福祉関係事業団体が、ただ大会で気勢をあげるにとどまるというようなことでなくして、真に実のあるような事業ができるように、十分の具体的の指導をされんことを私は特にお願いを申し上げておきたいと思います。
  18. 竹中勝男

    竹中勝男君 この際、厚生大臣にもお尋ねしたいし、また社会福祉協議会については、私の希望を述べたいと思っております。時間の都合で簡単に申します。  厚生大臣は、まだ十万の少年少女たち、この児童が何らかの意味で施設に収容されなければならないような現状にあると言われております。また、ただいま朝日新聞社関係された方々の御報告の中にもありましたように、せっかく親があるにもかかわらず、親が発見されたにもかかわらず、なお施設の中にとどまらなければならないような児童があるわけであります。ところが、一体厚生省のやり方を見ておりますと、施設児童の給食費の値上げのことに関しましてすら、わずかリンゴ一個の値上げすらちゅうちょするようなやり方です。施設におるところの児童の食事の費用が、野犬狩りの犬の費用と同じだと世間で言われているじゃありませんか。私はそういうことは、児童憲章が幾らあろうと、幾らりっぱな児童福祉法があろうと、本気で児童を守るところの対策が具体的になかったならば、私はだめだと考えます。そういう意味におきまして、来年度の予算に、厚生大臣は、相当本気で児童福祉に関するところの予算を計上されるような、そういう考えがあるかどうかをお伺いしたい。一体児童福祉に関する予算は非常に少い。法律だけりっぱで、憲章だけりっぱで、そうしてどの国の児童福祉法よりりっぱかもしれないけれども、日本の予算はどの国の児童保護に関する費用よりも低いんです。また、保護の基準が低いんです。児童児童として扱っていない。人間の子として扱っていない。私はこの際、せっかく朝日新聞がこういうりっぱな仕事に着手され、そうして国民に向って児童福祉の重要な点を訴えてこられたこの機会に、厚生省ほんとうに反省してもらいたいと思います。現在の政府は、ほんとうに反省してもらいたい。なぜ子供が悪くなるか、犯罪をやるか、なぜ子供が家出をするか、家があっても帰れないような状態にあるか、こういうことについて、もっと突っ込んだところの立場から考えていただきたい。そうしてそういう予算裏づけを来年度においてやるかどうかを私はお伺いしたいのであります。  社会福祉協議会については、私は多少自分も関係者ではありますけれども、きわめて低調です、青木さん。社会福祉協議会は一体何をしているんです。児童福祉大会をやって何をしているんです。ずいぶん決議を毎年するじゃありませんか。そうして一体厚生省にあなた方が持っていって、一体実現する意欲がないじゃないですか。何か大会をお祭りみたいにだけやって、そこへ出てあいさつしようと思っても、私のあいさつを拒否したりしたじゃないですか。社会党にあいさつさせなかったじゃないですか。私は昨年無理にやりましたけれども、川崎厚生大臣は無理にさせましたけれども、そういうような低調な、お祭りのような協議会では私はだめだと思うんですよ。これはもっとしっかり本気でやってもらわなくちゃならぬと考えております。これは希望です。青木さんは私は長い間の友人で、こういう所であまりはっきりものを言うのは工合が悪いが、社会福祉協議会は私はだめだと思います。やり直さなくちゃだめだと思います。青木さんのような有能な人がおるんですから、奮起して下さい。それだけ。
  19. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 今の竹中さんの御質問の、児童の食費の問題等につきましては、私も当時極力大蔵省とも折衝いたしたのでありますが、本年はわずかに四円六十二銭しか上らなかったのでありますが、次の機会におきましては、ただいま御質問のようなことについて、十分に推進いたしたいと考えております。なお、本年は御承知のように、児童憲章の制定五周年記念でございまして、厚生省といたしましては、その諮問機関でありまする中央児童福祉審議会に対しまして、児童の福祉に関する諸案件につきまして諮問をいたしております。近く答申があるわけであります。それは一般児童の健康育成の対策、精神薄弱児対策、要教護対策里親制度及び庇護受託者制度に対する対策、母子衛生対策、身体障害児対策、乳児院及び虚弱児施設の運営に関する対策児童福祉施設に収容している幼児の処遇改善対策、こういうふうな問題につきまして、近く答申があることにもなっておりまするし、こういう問題等も十分勘案いたしまして、児童福祉の問題に善処いたしたいと思っております。
  20. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 質疑は大体この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。
  22. 山下義信

    ○山下義信君 私はこの際、朝日新聞社に対して感謝するの動議を提出いたします。  本日、朝日新聞社の親探し、子探し運動について御報告を承わり、ひとしお感激を深くいたしたのでございます。けだし、親子関係、その絶対の愛情は申すまでもなく、人倫の大本でございまして、一切の道徳みなこれより発露いたすのでございます。国家社会におきまして、最も重視いたさなければなりません。  当今世相を顧みますれば、幼にして親を失い、心を鬼にして子と離れ、人生最大の悲しみに泣く者なおいまだ多数を数え、われわれの胸を痛ましむること限りなきものがございます。  今回朝日新聞社におかれては、巨大なるその力を傾注し、親探し、子探しの大事業に邁進していただき、ついに驚くべき成果をあげられたことは、ただただ感謝感激のほかはないのでございまして、多くの親子に地上最大の幸福を与えて下さったのみならず、九千万国民にあたたかい心のともしびを点火していただいたのであります。われわれ児童福祉について国政審議の任にある者、この業績に対しとうてい黙過し得ないところでございまして、願わくは、本委員会の決議をもって感謝の意をいたすべきではないかと存ずる次第でございます。  よってここに委員会決議をもって、朝日新聞社感謝するの動議を提出いたし、その文案は委員長に一任いたしたいと存じます。
  23. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま山下理事から御提案になりました動議に賛成をするものでございます。今回、朝日新聞社がきわめて難事とされております、しかも特に親は子を思い、子は親を探す、日夜そのことに明け暮れしておる者が、しかも十年に及ぶ長い期間その苦しみにおる者を、特にそういう方々を見出すためにあらゆる機能を発揮されて、そうしてここに親探し運動を、画期的の仕事をされたということに対しては、まことに心から感謝する次第でございますし、特にただいまいろいろと御報告を聞くというと、きわめて精密なる、きわめて緻密ないろいろの方面のお考えをもってその運動をやられたということに対して、まことに何とも申し上げようのない感謝の念に耐えぬのでございます。従って、ただいまの山下君の動議に賛成する次第でございます。
  24. 森田義衞

    ○森田義衞君 私は緑風会を代表いたしまして、ただいまの山下委員の動議に賛成をいたします。私がむしろ緑風会の一員と申しまするよりは、人の親として、あるいは人の子としての立場から、私も実は朝日新聞を取っておりますが、この親探し運動の記事を常に見ております。そしてまた再見の記事も先ほども橘さんからお読みになったのでありますが、こうした記事を読みまして、全くあたたかい気持になりますが、同時に涙ぐましい気持になりまして、親としての感激に生きておるといったような気持になっておるので、ございます、私は幸いにいたしまして親子ともに同じ屋根の下に住んでおるのでありますが、私のような立場でない、多くの残された人々があるといったときに、まだそういったような人々が事実親を探しながら親を探し得ないといったような状況におかれる人がまだまだ残されておるということに対して、朝日新聞の美挙に対しまして、正直に申し上げまして、こういったことはだれも気がついておったのでありましょうが、進んでやる人がなかったのではないか。そのことは全く私は朝日新聞が犠牲的な精神をお持ちになりましておやりになった。同時にまた朝日新聞であるだけにその大きな力によりまして、今日の非常な成果をあげてこられた、私もなかなかこういった成果はむずかしいのではないかと想像しておったのでありますが、再見の記事その他を見まして、なかなかこういったことがこの皆さんの国民運動として、朝日新聞がお取り上げになったことに対する国民の理解といいますか、それとともに実を結んで、今日一割余にも及ぶような再見の機会に恵まれる人々があるということを聞きまして、さらにこの運動朝日新聞、あるいはこういったようなものが単に先駆者となった立場にある朝日新聞と申しますか、そのために先鞭をつけられたからほかの者はやらぬといったことなくして、各新聞も、新聞以外の国民階層も同じように協力してやっていただきたい。そうして一人として親を探すとか、現実に親があるならば、そういう事態がなくなるようにしてこそ、ほんとうに国民としての義務ではないかといった感じがいたします。もちろん中にはただ収容施設におりながら、親を探したくもないといったような不幸な人もおられましょうし、そういうようないろいろの社会保障的な施設が、将来においてもっとこういった親探し運動を契機として展開されることを望んでやみません。特に先ほども橘さんから御注文がありましたようなことは、単に朝日新聞運動といったことでなくして、やはり政府としても当然の責任として、予算裏づけとなるような組織的な運動にしていただきたいというような希望があったようでありますが、このことは当然のことではないかといったことを私も考えますので、政府におきましても、その点を十分考慮されまして、この運動が、朝日新聞のこういったような美挙が、ほんとうに実を結ぶようにされんことを私は特に期待いたしまして、私の賛成の討論といたしたいと思います。
  25. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいま山下委員の提出の、親探し運動に関する感謝を表する決議を本委員会おいて行うことの動議について御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。つきましては、案文は、提案者は委員長に一任せられましたが、この点御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。それでは委員長の手もとにおいて作成いたしました案文を朗読いたしてみます。    決議案   朝日新聞社におかれては、本年二月以来、全国児童福祉施設に収容中の親の判明しない児童のため、「親探し運動」を強力に展開されているのであるが、この劃期的運動は、たちまち一大反響を喚起し、世人の共感と関係機関協力を得て、輝かしい成果を収めつつあることは、我が国社会福祉の増進上誠に慶賀に堪えないところである。   参議院社会労働委員会は、朝日新聞社の今回の美挙とその御功績に対し、深甚の謝意と敬意を表するとともに、今後更に一段の御活躍を切望するものである。  右決議する。   昭和三十一年五月二日   〔拍手起る〕
  28. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。よって右決議案は、全会一致をもって決定をせられました。  本決議に関して、小林厚生大臣のあいさつがございます。
  29. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) ただいま本委員会におかれまして、この子たちの親を探す運動に関しまして、朝日新聞社に対する感謝決議が行われましたが、われわれといたしましても、本運動の相当なる成果をおさめられたこと、並びに社会全般に対しまして異常な大きな反響を呼ばれ、この運動児童福祉に寄与することの非常に大きなことを考えまして、衷心から朝日新聞社に対しまして感謝を申し上げたいと思うのであります。  厚生省といたしましては、都道府県に対しまして、管下の児童相談所児童委員等第一線の児童福祉機関をいたしまして、子を探す親の申し出を受理せしめ、親子関係の確認に当らしめる等、本運動の推進に協力しておるのでございますが、特に児童が親元へ復帰いたしましてから後、明朗な家庭の中で健全に養育されまするよう、かような自後の指導にも十分留意し、児童の福祉に遺憾ないように努めておるのでございますが、今日、朝日新聞社に対する当委員会感謝決議がございました。この機会におきまして、厚生省といたしましても、この運動に対しまして心から感謝をいたし、なお今後一そう児童福祉に万全の措置を講じたいと存ずる次第でございます。
  30. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に加藤さんの御発言がございます。
  31. 加藤祗文

    参考人加藤祗文君) 朝日新聞社を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。  ただいまの委員会皆様の決議をありがたく承わりまして、われわれのこのたびの運動に対しましてお示しになられた御理解に強く感銘を覚える次第でございます。われわれに対する御激励に対して厚くお礼を申し上げます。皆様の御激励にこたえまして、一そうわれわれはこの運動を推進いたしますとともに、広く社会福祉のために今後とも微力をいたしたいと存ずる次第であります。今後とも皆様の一そうの御協力をお願いする次第でございます。(拍手)
  32. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  参考人皆様方にはこの際私から一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、親探し運動の問題について、皆様方には長時間にわたり貴重な御意見発表をいただきまして、まことにありがとうございました。この機会に、委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。   —————————————
  34. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 委員異動報告をいたします。五月二日付高橋進太郎辞任松原一彦選任。  一応休憩にいたします。    午後二時五十二分休憩    ————・————    午後三時三十九分開会G理事谷口弥三郎君) それではこれより委員会を再開いたします。  この際、お諮りいたします。本日の公報に掲載の労働保険審査官及び労働保険審査会法案は、食品衛生法の一部を改正する法律案の誤まりでありますので、これより食品衛生法の一部を改正する法律案を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) それでは、食品衛生法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑を願います。
  36. 高野一夫

    ○高野一夫君 楠本さんに伺いますが、私はこの前に、第二条の第一項と、第二項の三ヵ所に食品という言葉がある。この食品というのは三つとも違う食品であるということで、なぜ同じ食品という言葉を使われたかということをただしたのでありますが、これについて、何かその後御研究になっておりますか。
  37. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) お答え申し上げますが、この食品衛生法におきましては、食品とはそのままで当然食べられるというグループがあります。次に、社会通念上当然食べるということが予想されるものがございます。これが第二でございます。それから第三は、多少手を加えるなり、形を変えるなりして、結果的には人が食べるであろうというものを見ております、従ってこれらおおむね三つの種類のものを一括して食品と称しております。従って、それぞれの立場でどれに該当するかということが若干の差が出て参るわけでございます。  なおそれらのうち、第三に申し上げました手を加えて当然食べるであろうと予想されますものは、つまり原料の観念になるものだと、かように考えてております。
  38. 高野一夫

    ○高野一夫君 その話はこの間も伺ったわけでありますが、だから私はここに食品というその三つの違った状態にあるものを一つの食品という言葉で表わすということがいかぬと、こういうわけです。それは第二条の第一項に、その食品なるものの定義が法律をもって定めてある。そこで第二項においてその「食品の製造」云々として、最後に、途中の製造過程にあるものがやはり食品になっておる。ところで、それは添加物そのほか混和物を入れなくても食べられる状態にあるのだから、第一項の食品の定義とごうも変らぬはずだとおっしゃるかもしらぬけれども、そうなれば、添加物ということが問題になるということ、それで先般来私がお尋ねしている添加物なるもののあなた方の考え方は、原料であるものやら、添加物であるものやら、全く混同している。それだから私は第二項に特に「食品に添加」云々とあるその食品というものが、第二条第一項の食品とは違うのだ。こういうことを言いたい。そこで私はここに、第二条第一項に食品の定義を法的に下して、第二項の方で、その過程にあるものにも第一項の定義をつけたものが、そういう言葉が使われているということが不適当であるということについて、しからば私は事例をもってお尋ねしたい。  この厚生省から配付されました法律案参考資料の一番うしろにいろいろなことが書いてある。添加物とは大体こういうものが添加物だという事例があげてある。そこで私は先般来合成清酒その他について、一体添加物か、原料かということについてお話しして、あなた方の話と私の話とは全く食い違っているわけです。そこでもう一ぺんお尋ねしますが、添加物というのは、原料は全然入っていないのでしょうね、あなた方のここにおっしゃる添加物というのは。
  39. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) この食品と添加物を法律では御指摘のようにはっきり区別してございますが、これは使用目的及びその機能の面からこれを区別してあるわけでございます。従って場合によりますと、多少例外的に添加物にもなり得るし、また食品にもなり得るような共通的な品物は現に存在しておるわけでございます。しかしながら、これはむしろ例外的な考え方でございまして、やはりその使用目的及びその働きというような点からは、これははっきり分けて考えておるわけでございます。
  40. 高野一夫

    ○高野一夫君 そうすると、第二項に添加物ということの定義が書いてありますが、結論として、この添加物は、原料はこの中には全然考えられていない。こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  41. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) なるほど原料と添加物とは区別してございます。原料は先ほどもお答え申し上げましたように、むしろ食品のうちに含まれております。しかしながら、実際問題となりますと、原料であるが、同時にそのものが場合によったら添加物の役目をなすようなものも品物によってはございます。
  42. 高野一夫

    ○高野一夫君 私の言うのは、同じものが場合によれば原料になり、場合によれば添加物になるということを聞いているのでなくして、この第二項に添加物の定義が下してあるのには、原料は含まれていないのでしょうということを確かめている。
  43. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) その通りでございます。
  44. 高野一夫

    ○高野一夫君 それじゃ、この資料についての最後のところで伺います。ここに水あめの例がある。アミニ酸しょうゆの例が引いてある。ここのところに硫酸、塩酸、これは添加物の事例としてここにあげてあるようでありますが、これは添加物ですか。
  45. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 硫酸、塩酸等は製造の過程に使いまする添加物でございます。
  46. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はそういう考え方ならば、絶対にこの食品衛生法を承認することはできない。なぜかなれば、水あめを作るのに、いうまでもなく、澱粉一つだけでできるわけではない。硫酸と澱粉と相待って初めて水あめができる。それから、そのほか大豆、麦の粉それだけをもってアミノ酸しょうゆはできない。それに硫酸なり塩酸を作用させて初めてできるのであって、これはケミカルの常識からいけば、当然そういう化学的の物質、硫酸なり、塩酸というものはこれは原料です。水あめにとっては澱粉が主原料、あるいは硫酸、塩酸は副原料というかもしらぬ。しかしながら、硫酸も塩酸も澱粉も、これは当然原料じゃありませんか。あなた方のこの第一項による添加物というものは、すでにその前に食品になる、食べられる状態にあって、それに色を漂白させる。あるいは防腐をするというようなものに使うのが添加物とされている。これは硫酸あるいは塩酸がなければ水あめもしょうゆもできない。りっぱな原料です。これを原料でないという考え方だったらば、これは全般的にもう化学というものの観念を捨てなければならない。教育の根本方針を変えなければならぬ。そういう事例がほかにもある。それで、こういうようなふうに原料と添加物とが全く混同されている。あるものがある場合には原料になり、ある場合には添加物になることももちろんそれはある。しかしながら、原料なのか、添加物なのか、そのもの一つ一つについての判定がこういうふうにむちゃくちゃだということについて、こういう考え方でこの改正案が起草されているところに、私のどうしても納得することのできない点がある。これはどうなんです。これをあくまでも、あなた方ここに事例があがっているように、この水あめを作る場合の硫酸、塩酸はあくまでも添加物で押し切りますか。押し切るならば、私は逐条的にこれからまたその問題に触れてお尋ねしなければならぬ。
  47. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) この法律におきましては、特に原料という規制方法は考えておらぬわけでございます。ただしかし、原料という観念はどこにあるかということになりますと、これは先ほど申し上げましたように、私どもは食品を広く考えておりますので、そのうちに原料的な観念のものも含めて考えておるということを申し上げたわけであります。従ってこの硫酸、塩酸等は、そうした考え方に立てば、これはきわめて食品衛生上重要なものでもあり、また製造過程になくてはならぬものではありますが、これは一応ただいま申し上げましたような考え方からすれば、原料とは言えないのじゃないか、従って私どもはこれを添加物の範疇に入れて考えておるわけでございます。
  48. 高野一夫

    ○高野一夫君 私、多少なりとも化学をやった——もう忘れましたが——者の持っておる常識として、あなたの説明は全然納得できません。従ってあなたがこれを添加物で押し切るなら押し切ってもよろしい。そのかわり私は、この添加物なるものの定義について、全面的にこれを承認することができない。この間、合成清酒についても、酒税法並びに酒税法施行令についての定義と、それからあなたの解釈と全然違っているという点を私は指摘して申し上げた。そこで、こういうふうに酒税法に基いて、酒税法の施行令で合成清酒の添加物か原料かが明瞭に定義されている、そういうものを否定をして、そうしてこの法律できまっている原料は原料でない、それは単なる添加物だ、こういうような解釈をもって食品衛生法を考えられるということになるならば、これは私は根本的に食品衛生法の法律そのものを否定したい、これははっきり私は申し上げたい。それで申し上げたいのですが、あなたがこの水あめを作る場合の塩酸や硫酸が添加物であるとどんなにあなたが言い張られようと、ここに学者を参考人としてお呼びになってお聞きになればすぐわかることである。そんなものは添加物であるか、あなたたちの言われるこの第二条の第二項に規定してあるような添加物であるか、原料であるかは直ちにわかることであります。そういう事例はたくさんありますよ。ここにおあげになっていることでもたくさんある、一々話は専門的になるからよしますけれども。そうするとそれじゃ、私はこの間も合成清酒のことを御研究願いたい、こういってお別れしたのですが、この間、酒税法と全然違った解釈をされたが、その違った解釈で、われわれが酒税法において原料と認めるものを、すべてこの法律においては添加物として考えていくという方針をやはり変えられませんか、そういう考え方は。これはあなたは専門家とよく相談をなさって、この食品衛生法と酒税法と定義が変っても差しつかえないかどうか、そうして定義が違うならば、あなた方の考えるようなこの酒税法と違った定義で、合成清酒というものを考えられるかどうか、研究しておいてもらいたい、こういうことを私はお願いしてある。これについてのあなたの結論を一応伺いたい。
  49. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) この間添加物あるいは原料というような点についてお答えをいたしておりますが、この添加物という一つの定義は、食品衛生法におきまする一つの定義であるわけでございます。なお原料につきましてもその考え方は、これはこの法律を運営をする場合の考え方というようなことに相なるわけでございます。従って、なるほど酒税法におきましては、食品衛生法おいては添加物と定義づけられておるものが原料と規定されておりますが、これは酒税法の場合の定義でございます。従ってこの法律目的が違っておりますので、従ってそこに定義を別な立場から明らかにいたしましても、別に不思議はないわけでございます。  なお先般お尋ねのございました裁判ざたでも起きた場合にはどう解釈するかというお尋ねでございましたが、その点につきましてもなお研究をいたしましたが、結局食品衛生上の問題で事件が起きたならば、これは食品衛生法の定義に従う、それから酒税法上の問題が起きた場合には、酒税法の定義において処理するということが妥当ではなかろうかということでございます。
  50. 高野一夫

    ○高野一夫君 法律の目的が違うのでありますから、酒税法の方は酒税法の定義に基き、食品衛生は食品衛生法の定義に基いてやればいいとおっしゃるけれども、同じものが、同じわれわれが作る法律によって定義があまりにもかけ隔たった定義が下されるということでもって、われわれ立法府の責任が果されたとは言えない。そこで合成清酒なるものの主体はどこにあるかというと、酒税法に基く、それから衛生関係の取締りは食品衛生法で取り締る。ところが酒税法の方で明確に原料と定義されておるものが、ほとんどその大部分が食品衛生法で添加物と、何がゆえにことさらに解釈しなければならない必要があるか。これを私は疑う。食品衛生法で添加物と解釈しなければならぬ必要があれば、それはそれでいいかもしれぬけれども、それでも私は納得できないのであります。なぜ、ことさらに酒税法と違った定義を食品衛生法でしなければならぬ必要があるかどうか、これが私はわからない。それはどうでしょうか。
  51. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 先ほど来お答えを申し上げておりますように、この法律におきましては、特に原料というものはうたってございません。ただ食べものの原料という意味ならば、それは観念的に食品という考え方を広げて含ませておるということをお答え申し上げておるわけでございます。  なお添加物というものを、食品あるいは原料から区別しております理由は、これはまれに両者が共通するものもございますけれども、しかし多くの場合、これは品物そのものからいっても、別個のものが多いわけでございます。つまり食品とか、あるいは食品原料として使われないものが大部分であります。あくまで例外的でございます。特に化学的合成品になりますと、これはほとんど大部分が、これは食品または食品原料でないものでありまして、別個なものでありますので、ここでは特にこの法律におきましては、添加物というふうに分けて考えておるわけでございます。
  52. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは私は金原さんがお見えになっておるので、金原さんから伺いたいのですが、あなたに伺いたいのですが、あなたは衛生化学の専門家と私は承知しておるのですが、今の楠本衛生部長の説明を承認されますか、化学者として。たとえば水あめの場合に、硫酸、塩酸は原料でなくして添加物である、合成清酒の場合の、この酒税法にあげてあるすべての原料なるものは、これは原料にあらずして添加物である、そのほか、化学的な合成品を食品に用いる場合は、原料として用いることはないのであって、それはすべて添加物として用いるのだ、こういうような非常識きわまるその解釈に対して、衛生化学の専門家たるあなたは、この環境衛生部長の答弁をそのまま正しいものと了承されますか。率直に今の——速記はとめて、やらないでおいて、率直に私はお聞きしたいと思います。
  53. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  54. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記を始めて。
  55. 金原松次

    説明員(金原松次君) 原料という言葉は大へん酒税法にもあまり原料という言葉の定義は書いてありませんので、いわゆる常識として原料とは何かということをまず考えなければならないし、また添加物というものが食品に使われる場合にどういうように使われるかということを考える、まず、先ほど申しました原料という通念にそれがあてはまるかどうかということを解釈しなければならない問題だと思います。高野先生のおっしゃったように、たしかに添加物は原料的に使うものだということは間違いない問題だ、こう思います。楠本部長のおっしゃった原料というようなお言葉は、でき上る食品の主体をなすような運命を持ったものを食品の原料とお考えになる、それに主体になっていかないで、ただ使われるのだというようなもの、たとえばまんじゅうという食べものを考えまして、それに色をつけるとかいうようなもの、つまり主体をなすのはアズキだとか小麦粉だとかいうもの、これは原料といい、色をつけるのは原料か原料でないかという問題になりますと、あるいは原料という言葉が該当する可能性も十分にある、考えようによってこれは主体をなしているものではないのだから、原料ではなく、材料だとか加工料とか、いろいろのほかに若干原料と違った概念のもとに整理することも可能じゃなかろうか、楠本部長のお考えになっておる、つまり添加物は原料ではないといいましても、それは材料とかあるいは要するにそのもとになるものであるということにおいては、やはり変りはないので、ただ若干、高野先生とそれから楠本部長との間の表現の違いに過ぎないのじゃないか、こういうふうに私ここにおりまして承わっておる次第であります。
  56. 高野一夫

    ○高野一夫君 全然違うのでありまして、私の言うのは、だから私は第二条の第二項の、この食品の言葉の使い方について詳しくただしているわけなんです。ここに添加物の定義があって、その添加物とは、部長の説明によると、すでに飲食のできる状態にある食品に添加をするようなものが添加物なんだ、ちゃんとここに書いてある、ところが水あめを作る場合に、硫酸を使うのは、これは水あめなるものがすでに食べられる水あめとしたそういう状態において添加するのではごうもないのであって、水あめというものは、食べられる水あめの状態に持ちこむ一番基本のものが硫酸なんです。ここにある定義とは全然違うじゃありませんか、第二条第二項。だからここに違った食品という言葉を使うというと、非常に間違いが起るということを私はこの間から言っておる。よくわかっているのです。楠本さんのおっしゃるのは、食べられる状態にある食品に加えるのがわかりやすく言えば添加である、私の言うのは、食べられる状態にもってくるまでの、もとに使うものが何か。そこで、ここに水あめを作る場合の硫酸は添加物として、それは食べられる水あめの状態にもってきてから加える硫酸ではないのであって、食べられる水あめにする大元に使うものである、これが添加物ということになるならば第二条の第二項の添加物の定義は根本的に変えなければならない。
  57. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 私は先ほど来食べられる姿のものに添加的に使うものを、添加物だと申し上げておらぬのでございまして、食品とは、この法律ではきわめて幅の広いものをとっております。従って、そのうちには原料的な姿のものも食品という概念に含めておるということを申し上げたわけでございます。従って、その原料的な姿のものに添加物を加えて、そうしてそれを食べられる形にするものは、これは当然この第二条で考えておるわけでございます。
  58. 高野一夫

    ○高野一夫君 どうも私はあなたのおっしゃることが実際問題としてわからぬのですがね、不敏にして。もう少し、私もそれじゃこれからまだ会期末六月三日まであるから十分勉強いたしますが、どうもおっしゃることがわからぬ。そこで食べられる状態にある原料ならばいいけれども、食べられる状態にないものから食べられる状態にある食べものを作る。そのときはどうなるのですか。これはすべて食品の原料が食べられる状態にあるとは限らぬ。水あめのもとはそれは澱粉でしょう。澱粉は澱粉として食べられる状態にあるということになるかもしらぬけれども、食べられる姿にない原料から食べられる姿に持ってくる食品がたくさんあるでしょう、それはどうなります。
  59. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) はなはだお言葉をかえすようでございますが、先般来私はこの法律では食品は食べられる姿のものもむろん考えておりますが、同時にそのままでは食べられない、手を加えて初めて食べられる姿になるであろうもの、つまり原料的な食品、原料的なものをも食品のうちに含めて考えておるということを申し上げておるわけでございます。従って、第二条を受けてきます、添加物の定義を受けておりますこの食品の中には、もちろんこの原料的な、つまりそのままでは食べられない姿のものをも含めておるものを考えるということは当然でございます。
  60. 高野一夫

    ○高野一夫君 どうも不敏にして私はよくまだ納得ができません。それじゃ仕方がないから具体的な例をあげて伺いますが、先般私はコカコーラの問題をあなたに対してお伺いをした。コカコーラをフランスにアメリカから輸入することの禁止法案が昨年の国会に出たが、これについてお調べになったことがあるかどうかということを伺った。それについて明確なる御答弁を得なかったから、それについてはきょうはお調べになっていると思う。そこでなぜコカコーラが問題になるかということになるというと、私はこれは非常なわれわれ日本にとっても大きい問題だと思っている。それはフランスでコカコーラの輸入禁止をしたのは、ブドウ酒関係の問題もありましょうけれども、このコカコーラを飲むと習慣性になって、コカコーラを飲まずにおられない。こういう習慣性がある。それだからコカコーラを愛用する人は引き続いてコカコーラを愛用する。これがコカコーラの特色でしょう。これはあなた方の方でよくお調べになっておる。そこでコカコーラの原料は何かということを調べてみると、コカの葉っぱと——コカインをとったコカの葉っぱと、それからコラという木の実と、それから合成カフェイン、こういうものが主原料でございます。その場合に今のあなたの、その原料だか添加物だかわからないけれども、それからいった場合に、私はこれからコカコーラの問題については、十分厚生省で新たなる問題として吟味してもらいたいことがあるのでこの際申し上げておくのだが、その場合にコカコーラのいわゆる原料なり、添加物というのはどういうことになるのですか。そのコカインをとったコカの葉っぱ、コラという木の実だそうです。これは私は学者から聞いた、それから合成カフェインを使う。すべて、それそのものとしては食べられる状態にないものだ。ところが、それをいろいろに操作をして持ってきたものは非常においしいコカコーラになる。こういう場合に、しかもそのコカコーラは何らかの食品衛生上取り締らなければならぬ事態が万一発生したとした場合に、あなた方はどういうふうにこのコカコーラを考えられるか、コカコーラの原料とか添加物はどういうふうにこの法律によって区別されて考えられるか、これは私は他日この問題について農林省と厚生省を相手に問題に供したいと思っているので、この機会にこの問題もあなたに研究しておいていただきたい、こう言っておいたから、きょうはその結果がわかっていると思うので、伺いたい。
  61. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) コカコーラにつきましては、いまだ市場に出る段階になっておりませんので、私どもの方といたしましては、特にこの点を調査してございません。ただ御指摘の点につきましては、この場合に水あるいは砂糖等がいわゆる食品でございまして、その中に加えられておりますカフェインあるいはコラ等はこれは添加物と考えているのでございます。
  62. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はこういう話を伺うと、食品衛生法を検討する勇気がなくなりました。それでもう質問を打ち切りたいと思いますが、もう一つ私は重大なる点を今感じたわけでありますが、コカコーラはいまだ市場に出てないから、ここで厚生省としては取締りの対象として考えてなかったというようなお話しがあった。なるほどそれは在留の外人相手だけにしか出てないでしょう。しかしながら、実際問題として横流しされて至るところでコカコーラは売られているじゃありませんか。それからさらにコカコーラと同じ種類のものが、同種のものが渋谷に工場があって作っているじゃありませんか。それで日本において作っているあれはウインコーラか、作っている。日本において作っているのは横浜あたりで作っている、これは外人専用。そういうように作って、しかも至るところに横流しされて、日本人もコカコーラもウインコーラも飲んでいる。この現実の姿に目をつぶって、市場に正規に製造発売を許していないから、今までこの問題について考えなかったというに至っては、私は厚生省が食品衛生というものについて何を考えていらっしゃるか、全く私は了解に苦しみます。従って私は厚生省を助けなければならない与党だけれども、この問題については、全面的に私は厚生省の考え方を了承することができないということをはっきり言明しておきます。  もう一、二伺いますが、この間私はCMCの問題を取り上げて伺った、こういうものは添加物としてある量を限ってお許しになったわけでありましょうけれども、こういうものとか、あるいはビスケットに炭酸カルシウムを入れる、それからジャムに珪藻土を入れる、こういうものが添加物でしょうかね。私どもに言わせるならば、いわゆるこれは昔、内務省時代に食品飲食物の取締りをやっておったときには、これは偽和物と称しておった。この法律は廃止になったから、今日こういう言葉はなくなったけれども、これはごまかしものですよ。ジャムにCMCを入れるのはジャムに色を添えるとか、味をつけるとか、栄養を強化するという添加物ではなくして、ジャムでないものをジャムであるかのごとく見せかける、これはごまかしです。それからアイスクリームにCMCを入れる、これもごまかし、ビスケットに炭酸カルシウムを入れるこれもごまかし、ジャムに珪藻土を入れる、これもごまかしものです。こういうものが添加物として同じように考えられてある量を限っては許可される。あるものは野放しに放置されておってなかなか取締りができない。これで食品衛生法を幾らお作りになったところで、これは二、三の例にすぎない。私はこれで食品衛生の取締りができるわけはないと思います。  従ってもはやここで私はあなたと添加物と偽和物についての論争をする勇気を持ち合せませんが、こういうようなまがいものは禁止して、そうして子供にまで炭酸カルシウムみたいなものの入ったビスケットを食わしたり珪藻土の入ったジャムを食わしたり、それからCMCの入ったアイスクリームを食わしたりするのはやめて、こんな食品の製造のごまかし物に使う材料は一切禁止する考えはお持ちでありませんか。
  63. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 珪藻土につきましては、これは御指摘のように、すでに禁止してございます。なお炭酸カルシウムにつきましては、きわめてわずかな量を加えますことを限度といたしまして、条件付で現在は許されております。なおCMCにつきましては、いろいろ研究をいたしました結果、毒性がございませんでしたので、この点はいわば偽和剤的な使用を認めたわけでございますが、しかしながら、これが最近はCMCにつきましては、かなりその使用目的を逸脱いたしましてごまかし剤に変りつつある。つまり防腐剤の域を脱してごまかし剤になるというようなことから考えまして、この点は目下この取扱いについて研究をいたしております段階でございます。
  64. 高野一夫

    ○高野一夫君 子供が安い小づかいをお母さんからもらって、それで安いビスケットを買って食べる。そのビスケットに全然不消化の炭酸カルシウムを入れてある。それをある量を限って許可されるとおっしゃるけれども、どうしてこれを押えることができますか。ジャムの中に珪藻土が入って、どうしてそれを研究して押えることができますか。ビスケットにわらのくずを入れる、わらを粉にして入れるそれを現在の法律でもって取締ることはできないじゃありませんか。しかもそういう品物が市場に横行して、子供は安い小づかいでそういうものを食っている。これは実態ですよ。
  65. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 珪藻土の挿入につきましては、これはすでに禁止してございますから、かようなものを使いました食品がありますならば、これは食品衛生法違反として処分をしなければならぬ。なお炭酸カルシウムにつきましても、一定量以上を加えましたものにつきましては、当然これは違法と相なります。また、泥が入っていた、石が入っていた、あるいはわらが入っていたというようなものは、これは当然第四条の違反となって取締りの対象となっております。しかしながら、これらのものの取締りにつきましては、今後も十分意を用いまして、かような違法的なものが世間に全く現われないように努力しなければならぬことは申すまでもございません。
  66. 高野一夫

    ○高野一夫君 ジャムに珪藻土を入れる。ビスケットに炭酸カルシウムを入れる。これはいつからそれを禁止されましたか。私の承知している限りにおいては、つい最近までは、これは天然物として、化学的合成品でないというような名目のもとに、あなた方の方は禁止されていないはずだと思うのだけれども、いつから禁止されましたか。
  67. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 珪藻土及び炭酸カルシウムを手当いたしましたのは昭和二十五年でございます。
  68. 高野一夫

    ○高野一夫君 それは何によって。あとで私調べてみますから、禁止した何か省令か何か基準があるかどうか、それを一応知らせてもらいたい。
  69. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 昭和二十四年五月七日第八十三号をもって地方に通達してございます。
  70. 高野一夫

    ○高野一夫君 それは単なる通達でありますか。
  71. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 第四条の違反行為の解釈として通達したわけでございます。
  72. 高野一夫

    ○高野一夫君 第四条の違反行為の解釈としての通達としての問題については、次回までに私は研究して参ります。次回はもう質問しないかもしれないけれども、一応調べてきます。  そこでもう私はきょうはいやになりましたから質問はやめますが、もう一点だけ伺っておきたいのは、この各条を見ますると、食品と添加物、器具または容器、包装、そういうものについては、いろいろの場合において、製造または販売、取扱い、そういうところに取り締ることができるようにあらゆる条文にわたって書いてある。ところで先ほど来の御説明により、また第二条第二項の添加物の定義によりまするというと、この中には原料は明確に入っておらぬものと考えます。そうすると、食品並びに添加物については、その食品の製造なり、添加物の製造販売なりは取り締るけれども、原料については何ら取り締る規定がどこにも見当らない。そこで一例をあげますと、牛乳をあなた方は搾乳者の所から運んできて、森永の中毒事件にあったがごとく、十何時間、二十何時間もかかって工場に持ってくる。そのときに搾乳したる原料牛乳については検査をする規定、取り締る規定がどこにも私はないと思うのです。これはどこでそういうものを何されますか。この乳製品を作る場合の原料に供する牛乳、あるいは二等乳とか三等乳とかいろいろあるようでありますが、この市乳に、市販の生乳に使わない悪い、少し品質の落ちた原料乳、この原料乳はやはり食品添加物の食品であり、添加物として考えておられるのかどうか。私は明確にこれは原料だと思って考えておるわけでありますが、それはどうなのでしょう。
  73. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 農家が搾乳をいたしますことは、これは食品衛生法おいては特に許可営業というような規制を加えておりません。しかしながら、これはもっぱら指導によりまして、衛生的な乳がしぼられて出荷されることを指導いたしております。ただ、これらが集乳されますと、そこで初めて集乳所から食品衛生法におきまする許可営業となり、それぞれ取締りを受けることと相なります。この場合食品といたしましては、当然しぼられた瞬間からが食品、この法律による食品でございますが、ただ取締りの対象といたしましては集乳以後、こういうことに考えておるわけであります。
  74. 高野一夫

    ○高野一夫君 それでは今の問題で伺いますが、具体的の例をあげて伺いますが、日本みたいな酪農の農家の分散飼育になっているようなところでは、あなた方が十分専門的にお調べになっておるはずだと思うけれども、悪い牛乳をいい牛乳に等級を上げるような操作をする、そして工場に運ぶまで長時間かかっても腐らないように化学薬品を加えたりいろいろ操作をしておる。しからば、こういうことは工場まで持ってくれば取締りができるのであって、そして工場まで持ってくる過程においては取り締ることができないのでありますか。
  75. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 現在許可営業あるいは取締りの対象とはなっておりませんが、もっぱら指導をいたしておりますが、ただ、乳には異物を混入してはならないということに相なっておりますので、何人といえども、乳に異物を混入するということはその面から違法に相なるわけでございます。しかしながら、御指摘のように夏場等になりますと、さような事例がときたまあるようでございまして、その点は今後一そう指導の徹底を期していかなければならぬものと、かように考えておる次第であります。
  76. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はあらゆる食品の事例を持っております。それは病気になった場合に医者にかかるとか、薬を飲むというようなものは、病気にかからなければ必要はない。この食品は、私が申し上げるまでもなく、病人であろうと、健康体であろうと、子供であろうと、大人であろうと、朝晩に口にするもりでありまして、私は厚生関係の法案としては、食品衛生法は一番大事に考えておるわけであります。それについて、われわれが常識的に考えて原料であるものやら、添加物であるものやらの区別もつかず、そうして解釈についてもあいまい模糊である、事例についても納得することのできないような答弁をせられておる限り、いろいろの質問材料を用意はしておりますが、委員長、私はこれでこの問題に対する質問はきょうはやめます。やめますということよりも、私は厚生省に率直に申し上げる。もうこれ以上質問を続ける勇気がなくなった。で私の質問はこれで終ります。   〔理事谷口弥三郎君退席、理事高野一夫君着席〕
  77. 田村文吉

    ○田村文吉君 あまり勉強もしていないで伺って恐縮でありますが、今度の改正のおもな問題の中に、第六章の営業という問題がございます。そこで、営業する人が、衛生管理者のような者を業種によっては置かなければならないということになりますが、これは中小企業に関係するところが相当ございますか、ございませんか。たとえば、どういう種類のものが政令で指定の中に入るのでありますか、私のおそれるのは、中小企業者がこれがために非常に当惑するような事態が起らなければけっこうだがと思うのですが、どうなんでしょうか。
  78. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) これは、現在私どもの考えております製造工場とは、つまりその製造の過程におきまして、きわめて高度の衛生的管理を必要とするようなものだけに限っております。従いまして、さしあたりは乳製品特に全粉乳あるいは調製粉乳、加糖練乳というようなものの工場及び先ほどからいろいろお話の出ております化学的に合成されました添加物の工場等をこの対象にいたしたいと考えております。
  79. 田村文吉

    ○田村文吉君 もう少しく具体的に、一般の中小企業で作っております菓子類、まあ日本古来のお菓子でございますと、米菓——米の菓子ですね。そういうようなものにいろいろの加工をする。そういったような問題の工業には、これは適用されることになりますか。そういう点が一番中小企業者として大きな影響を受ける問題でありますから伺いたい。
  80. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) ただいま御指摘のような営業は考えておりません。従って対象とならないことと相なります。
  81. 田村文吉

    ○田村文吉君 乳製品ということはおもに御指定になさるお考えのようでありますが、もうちょっとそこは限界がはっきりいたしませんですか。
  82. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) これは現在は全粉乳、加糖練乳及び調製粉乳だけに限る見込みでございます、この乳製品のうちですね。
  83. 田村文吉

    ○田村文吉君 大体それでわかりましたが、政令でどんどんこれが加えられていきますと、非常にけっこうなことではあるが、それがために中小企業者が一々食品衛生管理者を置かなければならないというようなことで、五人、十人使っておるようなところの工場が非常に迷惑をするということが起っては大へんだ、こういう考えなんですが、これもやむを得なければすべきでありますが、そういう点はもっとはっきりとこれをお打ち出しになっておくべきではないかと思うのですが、政令で定めるというところが非常に広過ぎるのじゃないかと、こう思うのですが、どうお考えですか。
  84. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) もちろん政令に定めることになっておりますので、政令で他の業種に広く及ぶということもあり得るわけでございますが、しかし私どもといたしましては、中小企業の建前もあり、またこれらにつきましては、農林省あるいは通産省等とよく連絡をして実施する約束になっておりますので、かような政令規定が行き過ぎて行われるというようなことは将来ともないものと確信をいたしております。
  85. 田村文吉

    ○田村文吉君 そういたしますと、現在のところにおいては、今御指摘になりました三種類のもの以外には、これを拡充するお考えはない、こう了承いたしてよろしゅうございますか。
  86. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) ただいま申しました乳製品の三種類と化学的合成品、これ以外には現在は拡張する意思は持っておりません。
  87. 田村文吉

    ○田村文吉君 ただ、繰り返してくどいようですが、現在はそうですが、それがどんどん拡張されて、しかし弊害がある場合には当然なさるのが当り前だと思うのですが、何かこういうものははっきりと法律でおきめになっておくべき性質のものではなかろうかと思います。こういう非常に大きな負担がかかることが一片の政令で変えられるということになるというと、非常にこういう事業に携わっておる人の不安を招くことになるのではないかと思うのですが、そうお考えになりませんか。
  88. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 現在は、ただいま申し上げましたような次第でございまして、特に政令の内容というようなものを具体的に考えておりません。先ほどお答え申した通りであります。ただ将来どんな事態が発生するかもしれないというようなことに備えまして、一応政令という点を残しておるわけでございますが、しかしこれとても今直ちにどれというような予定しておるものは毛頭ございません。
  89. 田村文吉

    ○田村文吉君 具体約にそういうものを摘記することができなかったならば、何か抽象的にでもけっこうですが、何かこういうことが起る可能性があるものとか何とかいうことをうたうことはできないものですか。
  90. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) これは政令の特に例示的にあるいは何かこういう事態に限るようなことを、もちろんそれは書くことはできると思いますが、しかしながら、これには農林省その他とも十分に相談をしなければならぬことでもございますので、そこまでまあ特別な場合と見越して書くまでは必要ないと存じます。  なお、きわめて抽象的ではありますが、「特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物」と、こう規定してもございますので、かような心配はないものと考えております。
  91. 田村文吉

    ○田村文吉君 一応それでけっこうであります。
  92. 高野一夫

    理事(高野一夫君) 本問題に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 高野一夫

    理事(高野一夫君) 御異議ないものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会    ————・————