○
参考人(浜田光人君) 私
広島の呉地区におります八千の国連
労働者をもって組織します地区本部の
委員長の浜田でございます。
今回当院の先生におかれましては、呉地区の異常な
失業状態に重大な関心を持たれまして、私らを
参考人として召喚されまして、公述の
機会をお与え下さいましたことに対して、呉地区のやがて
失業するであろう一万に近い
労働者にかわり、心からお礼を申し上げる次第であります。
ただいま
委員の方から御注意もいただきましたので、私できるだけ具体的な問題について訴えたいと思うのでありますが、その前に、一、二だけ呉の
国連軍基地は、たくさん日本の国内にあるアメリカ
基地よりか異なっておるというその点を一つ述べさしていただきたいと思うのであります。
第一点は、
国連軍と申しましても
英連邦軍を主体とする四ヵ国でありますが、この国は非常に放漫に勝手にこの呉地区を使っておった、こういうことであります。と申し上げますのは、二十七年の四月の講和発効以来、米軍は、御承知のように、できるだけ都心地とかあるいは町の中心地の接収等を避けてきておったのであります。その現れが、御承知のように、
司令部が市ヶ谷に移ったり、あるいは横浜におきましても座間に移ったりいたしておるのであります。ところが、
全国でたった一つの
国連軍の最大
基地である呉市においては、依然として占領中と同じように、呉の町の平坦部の、どうしても解除してもらわなければ
企業誘致もできないというような重要な部分を占有いたしておったのであります。当時私
たち労働者は必ず一度は離職するんだ、
失業するんだという宿命を持っておるという
考え方が強くあったのでありますから、ぜひこの
企業誘致を実現するためには
地域の調整をしてもらうように、
機会のあるごとに地方公共団体はむろんのことでありますが、
関係諸機関に訴えておったのであります。また、当時は直接雇用時代でありましたので、これもこの
英連邦軍のみがやっておった制度でありますが、そういう直接雇用時代の団体交渉の席上におきまして、軍の労務司令官は、賃金問題あるいは
労働時間等の交渉をしております席上で、しばしば気に入らなければ君
たちはやめればいいじゃないか、やめたならば呉市にはたくさんの
失業者がおるのだから幾らでも明日からでも雇えるのだ、そういうことを平気で申しておったのであります。そうなりますと、私
たちも勢い軍側が呉市の
企業誘致をして新しい
労働市場を作ろうとする必要な部分を解除してくれないからこんなに
失業者がたくさんおるのだ、こう言って、いつも交渉がデッド・ロックに乗り上げておったのであります。そういたしますと、労務司令官はそれは大きなポリシーの問題であるから国と国と交渉してもらいたい、こういうことを言っては、いつも物別れになっておったのであります。そういう時代が御承知のように二ヵ年余り
国連軍との無協約、無条約時代でありまして、あの衆議院の外務、
労働委員会でも取り上げられましたように、呉市は暴力の町だというようになってきたのであります。従って私
たちは、そういうときにはいつも軍がもっと謙虚な立場に立って、呉市の必要な個所を、具体的に申し上げますと、呉の駅裏というところは非常に鉄道の便利もいい、しかも海に面しておりましていろいろな
企業家も来たいという希望を持っておる場所であります。あるいは工廠の跡地の第一、第二、第三突堤とか、そういう
地域、そういうところをぜひ返していただきたい、そうしたならば、
企業誘致をして新しい
労働市場を作りたいのだ、そういうことを申しておったのでありますけれ
ども、依然として返さない、こういう点が特に米軍とは講和発効後の
状態におきましても、
国連軍が気まま勝手な呉市の土地をあるいは建物を使ってきた、こういうことが非常に私
たちは今日の
事態になってみて実に残念でたまらない点であります。なおもう一点は、純粋な
労働問題でありますが、この
英連邦軍というのは
国連軍の中ではアメリカとは違いまして管理制度がなかったのであります。従ってささいな事故と申しますか——ことによって
解雇され、たとえば病院に勤務している一
労務者が、友だちの運転手が参りまして、前面の鏡をふくのでガーゼを少しくれないかというので、その病室から、ではこれでふきたまえといって渡す、そうしますと、あとからお前が勝手にガーゼをやったからといって、明日から来なくてもいいといって
解雇する、いろいろ理由を申し述べようとしますが、
解雇するに当って、その理由を聞かずして、明日から不必要だということになる、そこで仕方がありませんので、それを監督機関である監督署に訴えましていろいろ
調査の結果、結論を出してもらう、出してもらって不認定になっていざ支払いをしてもらおうとしますけれ
ども、なかなかさっき申し上げました管理制度がございませんので、一々軍のサインを取らなければならないので支払いがおくれる。長いのは一年二、三ヵ月もかかる。そういう
状態で、大
へんこの予告手当の問題にせよあるいは退職金の問題にせよ、支払いがおくれて参っておるのであります。もっと悪い例は、九十日という有給休暇制度がなくして非常に
労働者は無理をしながら働かなければならなかったような
状態であるのであります。そういう呉市の
国連軍の
労務者は、いろいろ困難な環境の中にあって、十ヵ年余りも言語、習慣の異なる外国軍隊の中にあって国家的義務を果してきたのであります。従って、今回も特にこの総引き掲げに対しまして一時金の少々と特に基礎の一ヵ月の精算、これは大
へん細部にわたった専門的な問題になりますが、担当の調達庁でもよく御承知と思いますので、ぜがひでもこの基礎の一ヵ月という精算の問題は、今日も軍と折衝をしておられると聞いておりますが、特にこれを獲得していただくように
お願いする次第であります。
次には、いろいろと具体的な問題に入って参りたいと思うのでありますが、第一に、
企業組合の育成と援助の件に関してであります。実はこの
企業組合を、私
たち二十何件というものを県に申請しつつあるのでありますが、何かこの
企業組合を作ることが
企業誘致をした新しい
町作りの障害になるというように誤解されておるのではないかと思うのであります。私
たち労働者は決して利権屋ではありませんので、こういう
企業組合を作りまして、土地や建物の権利を持って、それをどうしようかというような不心得は決して持っておらないのであります。従って大きな
企業が具体的に
誘致されるとするならば、いさぎよくそこはこの
企業組合の諸君は当然譲ってもよいし、むしろそれらを歓迎しておるような
状態でありますので、そういう点は
労働者諸君は実に何といいますか、まじめな気持でやっておるということを御認識いただきたいのであります。その
企業組合を実は作りましてやってきたのでありますが、現地では何といっても
国有財産の使用というものが問題になってきておるのであります。むろん全般的な問題ではございますけれ
ども、この
労働者諸君は、さっきも
委員長なり
山形地区の労組の代表の方が申されましたように、自分の退職金とか、わずかな金を持ち寄って何とかして食いつなぎの時期をかせがなければならないという真剣な気持でおるのでありますが、何さまそれ以上の資本といいますか、資力というものはないのであります。そこで融資の問題というものをいろいろ
お願い申し上げておるのでありますが、現地で国民金融公庫やあるいは県にいたしましても、市にいたしましても、いろいろな預託制度がありまして、そこに金融の
お願いにいくのでありますけれ
ども、いざ、どたんばになりますと実績がない、今まで
事業をやったその実績がない、あるいはこれは信用問題にも通ずるかと存ずるのでありますが、そういう点でどうしても融資という問題がうまくいかないのであります。従ってこの融資の問題は、むろん別ワクの問題もあるかと存じますけれ
ども、まずその基準の緩和ということをこの際ぜひともしていただきたい。今の基準の範囲内では、確かに私
たちは今日から出発しようといたしておりますから、実績とか何とかいわれますと、全然これのワクあるいはこの線に乗ってこないので、その点をぜひとも御
配慮願いたいのであります。
これに関連いたしまして
国有財産の問題でありますが、これは
知事さんあるいは市長さんも申されたかと存じますが、以前からいろいろ
お願い申し上げておりますように、この際、
地方自治団体に委託管理の方法を講じていただきませんと、やはりこの
企業組合というものも育成、援助、協力はしてもらうことにならないのであります。せっかくこの
閣議了解事項の四項の育成策を講ずるというようにうたってあるんでありますが、根本問題として、この
国有財産の問題は、さっき申し上げました方向に
措置してもらいませんと、最初からくずれていきますので、
お願いいたしたいと思うのであります。なお、この
企業組合あるいは
国有財産というものを私
たちが特に
国有財産を警備員を雇用されて維持管理をされる面から御
配慮願いたいのは、具体的に申し上げますと、去る一月に米軍が使っておりましたノース・キャンプという土地建物を
返還されておるのでありますが、
返還後二十日をたたずしてその
地域の機械設備というものがめちゃくちゃになっておるのであります。いわば配電盤等が使えなくなってしまう。というのは、わずかの警備員で警備いたしております間に、いろいろな金物類を盗んでしまうがために使えなくなってしまう。そういう点から、私
たちは
企業組合にこの
国有財産を維持管理さすという点から考えてでも、ぜひ認可をしていただいて、そういう土地建物を使用さしていただくならば、聞くところによりますと、維持管理するために警備員やその他の費用を加えますと四、五千万円も必要だということを聞いておるのでありますが、そういう点を考えて、ぜひとも
企業誘致の具体的になるまであるいは具体的に
企業誘致をどの場所にしようという場所以外は、この
企業組合に委託管理をさしてもらうことが一石二鳥ではないかと思うのであります。この点をぜひ
お願いしたいと思います。そういう点がかりにです、いろいろな支障がありまして果されなかった場合に、警備員を多数雇われるとするならば、これまた十ヵ年間にわたってその土地建物をよく承知いたしておりますこの
労務者に対して、優先雇用という
措置をぜひとっていただきたいのであります。これにつきましてもいろいろ御
配慮願っておるかと存ずるのでありますが、現地では、そうはいっても
駐留軍に働いておった人ばかりを雇うわけにはいかないというようなことで、なかなか具体的にならないのであります。一昨年こういうケースがあったのでありますけれ
ども、やはり
駐留軍に働いていた人があまり雇用されておらない。あるいは防衛庁の雇用の問題につきましても、中央では優先取扱いをするというような指示もなされておるということをしばしば聞くんでありますけれ
ども、いざ現地で採用というときにはやはりそういう
措置がとられない。いろいろ現地の担当の人々にそれを言うのでありますけれ
ども、そういう
配慮するようにとあるけれ
ども、具体的にどうしてもせなければならないのだというような指示はないのだから、こういうことで逃げられまして具体的にならないのでありますから、そういう点を今回の呉の場合には、おそらく何百名という警備員を雇用されると思いますから、ぜひとも具体的になるように強い指示を出していただくことを
お願いする次第であります。
次に、若干時間が過ぎますけれ
ども、いろいろ具体的に申し上げたいことがあるので
お願いします。埋蔵物資の古鉄の発掘払い下げ優先の件でありますが、御承知のように、朝鮮動乱以後スクラップ・ブームで、この接収
地域以外というものはほとんど発掘いたしているのであります。ところが、接収
地域だけは軍が発掘させなかったので、依然として呉地区はかつての軍需物資と申しますか、そういう物資並びにいろいろな古鉄等を軍が接収
地域ではトラクターでぐうっと埋めたりしているのであります。そういう発掘は、これは大した資力も要りませんので、ほんとうに
駐留軍の
労働者の一番手近な
失業対策になるので
お願いしたいと言っているのであります。ところが、これまた現地ではいろいろ先願といいますか、先に願いを出した者に許可するのだということで、
駐留軍労働者の方
たちがこの
事業をやろうとすると許可が下りない。この先願をよく調べてみますと、膨大な
地域を一括して、一千坪とかいうような
地域をこれこれしてもらいたいというのでやっている。ところが
駐留軍の
労働者はさっき申し上げましたように、十ヵ年間そういうことをやり、しかも整備のときに自分が埋めたりしているのでありますから具体的の場所等を知っているのであります。商人の方のように、膨大な
地域をばあっとぶっかけたりするのでなくして、具体的の場所を知っているので、これらも管財の方針からいきますと、おそらくこういう
人たちに許可することが方針にマッチするかと存じますので、ぜひともこの点を御
考慮願いたいと思うのであります。
最後にもう一点でありますが、
企業組合に関連しまして、実は車両
工場というのを非常に
労働者諸君が真剣になって考えている場所があるのであります。それは
調査団の方も見ていただきたいと思いますが、呉の河原地区には、関西でもないような流れ式のりっぱな車両修理
工場があるのであります。これをこの際軍から払い下げしていただいて、軍もそういう意向でありますから、これに防衛庁の車両の修理発注等をしていただくよう具体的に御
考慮願いたいのであります。特に呉地方は船舶エンジンのグレマリンという機械の修理はこの進駐軍のエンジニアしかおらないのであります。かつての日本の艦船のエンジンとは違いますので、そういう点も考えますと、最も適当な
地域で、しかもりっぱな設備があるということを勘案していただいて、ぜひとも防衛庁の発注等のあっせん方を
お願い申し上げたいのであります。なお外国軍隊の所有しております機械の払い下げ等については、軍自体が具体的にリストを出してくれているのであります。たとえば洗たく
工場等につきましては、今年一ぱいの仕事をどれだけ与えてやるからこれこれしたらどうかということを
知事に対しても公文書でくれておりますので、ただ問題は、その機械をどういう方法、あるいは価格の問題になるかと存じますが、ぜひともスクラップに等しい価格で払い下げてもらいませんと、これまた資力の乏しい
労働者でございますから、なかなか買うことができない。しかもスクラップにいたしませんと、関税等の問題もありますので、この点を大綱をぜひとも
政府の方できめていただくよう
お願いする次第であります。
以上が大体の
お願いでありますが、どうか呉市のこの一万に近い
労働者諸君は今日もう町で会うたびに、おお、お前いつ首かというのが合言葉になっているのであります。しかも、その家庭は非常に暗い戦々きょうきょうたるような
状態であります。特に一二月は入試の時期でもありましたが、お父さんやお母さんが
失業するので、私は高等学校の入学試験を受けるのをやめようかという子供があちらの家庭にも、こちらの家庭にもたくさんあったのであります。そういうような呉市の
失業状態でありますので、この際、何とか当院の諸先生方のお骨折りによりまして、
政府の具体的な
対策を樹立していただくよう心から
お願い申し上げまして、私の公述を終らしていただきます。