○衆議院法制局参事(鮫島真男君)
前回、
山下議員から御
質問がございまして、一応の
法律的な解釈は申し上げておいたのでございますが、その後
委員会が終りましてから立ち帰りまして、いろいろ調べたり、また考えたのでございます。しかし、これは
前回にも申し上げたのでございますが、この点についての解釈を与えた、まあ裁判所の判例とかあるいは著書とか、そういうものがございませんので、結局従来の立法例に当りまして、そして私個人の
考え方をまとめたのでございます。それをただいまから申し上げ
ようかと思います。
これは
前回にも申し上げたのでございますが、従来の立法例によりますと、検査に関する規定はいろいろな行政法規の中にあるのでございますが、それを見ますと、まあ用例が非常にまちまちになっております。その一つといたしましては、事、検査に限って申し上げますが、単純に検査することができるというだけの規定になっておるもの、それからもう一つの例といたしましては、これこれの場所に立ち入り検査させることができる。それから、これは古い
法律、主として旧憲法時代でございますと、立ち入りというところがこれこれの場所に臨検し、検査させることができる。これはまあ大体立ち入りも臨検も大体同じ
ような表現だと思いますが、その旧憲法時代の
法律でございますと、場所に臨検し、検査をさせることができる。近ごろの
法律でございますと、場所に立ち入り検査させることができると、こういう立法例も少くないのでございます。それからまた、今問題になっておりますこれこれの場所につき検査させることができる、これの用例は、どちらかというと、あまり多くない用例でございますが、この場所につき検査させることができるとこういう立法例もあるのでございます。
それから、今度は違反の場合の規定がどうなっておるかと申し上げますと、それがまた非常にばらばらでございまして、単純に検査を妨げたものというふうな表現で処罰している。それから、あるもう一つの例は、立ち入り検査あるいは臨検検査、字を続けて書いてあるのでございますが、立ち入り検査、臨検検査を妨げたものというふうに表現しているものもあるのであります。これはお尋ねによりましては、その立法例を、その
法律の名前を申し上げてもよろしゅうございますが、それからまた別の例によりますと、立ち入り、検査これこれをこばむと、結局これは立ち入りをこばみあるいは検査をこばみというふうに読むのだろうと思いますが、立ち入り検査をこばみと、こういう
ような表現になっているものもあるのでございます。そしてこれは、この今の本体の検査ができるという規定と罰則との規定とのコンバインを見ますと、これは非常にまちまちでありまして、単純に検査することができるとなっている場合の罰則が、ただ検査をこばむというふうになっているのは、これはまあ当然でございますが、その本文の方には、立ち入り検査をさせることができるというふうになっておりながら、その罰則の方では、単純に検査を妨げるというふうな表現を用いているもの、また同じ場合に、先ほど申し上げました立ち入り検査を妨げるというふうになっているもの、また同じ場合におきまして、立ち入り、検査をこばみというふうに、刑罰の方が規定してあるというふうになっておるのであります。
まあ結局今申し上げました
ように、従来の立法例はその点を立法者としましては、それぞれ何らかの意味合いを持ってお書きになったのだろうとは思いますが、
あとから読むものからいたしますと、どういうわけでそういう
ような違いがあるのか、非常に理解に苦しまざるを得ないのであります。しかし、一応成立した
法律でございまするので、そういういろいろな立法例がございますが、それらを統合して理解しなければならないわけでありますが、それらを統合しての私の理解を申し上げますれば、結局この検査という言葉の中に意味があるのではないか。結局帳簿書類その他の物件を検査することができるという、その規定のその検査ということの中に意味がむしろあるのではないか、結論に急ぎますけれ
ども、立ち入りとか臨検とかというところに、そのことから検査の内容が出てくるのではありませんで、検査することができるというその検査の文字の中に意味があるのではないか、と申しますのは、帳簿書類その他の物件を検査することができるというその検査はどういう意味かと申しますと、帳簿書類の内容を検査することはもちろん入りますが、そのほかに帳簿書類なる物件のある場所に、そういう帳簿書類なり物件がある
状態、あるいはあり方と申しますか、そういうものも検査する、その内容を見て調べるということではなくして、その帳簿書類なり、物件が本来の場所にどういう
状態に置いてあるか、どういうふうな
状態において存在するかということもこの検査ということの中に入っているのではないか、従いまして、そういうふうな
考え方からいたしますと、帳簿書類その他の物件を検査するためには、その帳簿書類なり、物件が存在する場所に参りまして、そうしてその書類、物件の内容なりあるいは今申し上げました
ようなそういうもののあり方すなわちその存在する場所との関連においてそういうものを調べるということもこの検査ということの中に入っているのではないか、結局そういうふうな結論に達したのでございます。従いまして、先ほどから
お話しございますところのその場所に立ち入るあるいはその場所に行くということも、その検査ということの中からそういうことは出てくるのでありまして、その立ち入りという文字があるからその場所に行けるのだ、あるいはこれこれの場所につきというふうにあるからその場所に行けるのだ、それではまた何もなくて検査することができるという場合には行けないのかというと、そうではありませんで、検査するためにはその場所に行くことができる、こういうふうな結論に至ったのであります。それからそれならば、その問題は単純に検査するという場合と、立ち入り検査する場合との区別はないのかと申しますと、ここには意味があると思うのであります。と申しますのは、単純に検査することができるという場合に、先ほど申し上げました
ように、その場所に行って調べる、検査することはもちろんできるわけでありますが、場合によりましては、任意にそのものを出さして、もし、持ってくるなら、その相手が持ってくるなら、別な場所において検査することも可能であろうと思います。ところが、これこれの場所に立ち入り検査することができるという場合におきましては、結局その場所において検査するというのがその法の趣旨である、あるいはこれこれの場所につき検査することができるという場合には、その場所に行って、あるいはその場所において検査することができるというふうになるのでございまして、単純に検査することができるという場合に比べますと、かえって検査の方法に制限があるのだというふうなことになるのではないか、こういうふうに考えます。でございますから、検査の場合には、立ち入りとか、何々の場所につきとか、あるいは何もなくて、単に検査するという規定は、その場所との
関係においては差異ないではないかというふうに考えるのでございます。ただ、これはちょっと検査と違いますが、
質問の場合になりますと、先ほど藤本議員からも
お話しがございましたのですが、単純に
質問の場合でございますと違って参りますのは、その違反の場合において違いが生ずるのではないか、と申しますのは、制裁の方を見ますと、
答弁せずあるいは虚偽の
答弁をし、というふうにこの罰則にはなっておりますので、具体的にこちらから参った者がある人に面と向って
質問を投げかけてそうして相手が
答弁しなかった、あるいは虚偽の
答弁をしたというふうな場合にはそこに間接強制でありますところの罰則が働くのであります。その場所に入る前提において入ることをとめられたという場合には、結局こちらから
質問する方法がございませんので間接強制をすることができない。ところが、立ち入って
質問することができるという
ような規定でもございますと、その入らせないということによって、その立ち入りを妨害したという点で間接強制ができる。しかし、その場合も、
答弁しなかったという点では、間接強制したのではなくて、結局もう一歩前段階におけるその場所に行って
質問し
ようとするその場所に入ることを妨げたということにおいて間接強制ができる。こういうふうに
質問の場合には、立ち入りの言葉があるのとないのとで制裁の点において大いなる違いがあるのでございますが、この検査の場合でございますと、結局検査という言葉の内容から考えればできるので、立ち入りとかその他の言葉のありなしで、その法の運用の点は別でございますが、法の解釈の点からいうと違いはないのではないか。こういう
ような考えでございます。