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1956-04-26 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十六日(木曜日)    午前十一時一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            草葉 隆圓君            榊原  亨君            寺本 広作君            深川タマヱ君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            藤原 道子君            山本 經勝君            田村 文吉君            森田 義衞君   衆議院議員            藤本 捨助君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生大臣官房総    務課長     小山進次郎君    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 楠本 正康君    厚生省医務局次    長       河野 鎭雄君    厚生省保険局長 高田 正巳君    運輸政務次官  伊能繁次郎君    中央気象台長事    務代理     吉村 順之君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   衆議院法制局側    参     事    (第二部長)  鮫島 真男君   説明員    中央気象台測候    課長      太田 正次君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (原水爆実験に伴う予防対策に関す  る件) ○派遣委員報告健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  去る十九日の当委員会において、山下委員より、鳩山内閣総理大臣に対し、原水爆実験に伴う予防対策について質疑を行なったのでありまするが、詳細は外務大臣質疑していただきたいとのことでございましたので、本日重光外務大臣出席を願っております。この際、社会保障制度に関する調査の一環として、原水爆実験に伴う予防対策に関する件を議題といたします。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それでは外務大臣に対し御質疑をお願いいたします。
  4. 山下義信

    山下義信君 ただいま委員長議題にせられましたようなわけでございまして、いよいよ米国水爆実験が旬日の間に迫ってきておるのでありまして、国民の非常な関心を集めておるわけであります。同時にまた、相当の不安に襲われていることも事実でございます。実験区域とされる南太平洋のエニウエトックは、日本が一番世界各国中近い国でございまして、そして危険水域と指定されますこの区域も百二十万平方キロすなわち日本の約三倍の広さであるということであります。実験される爆弾は数千万トンの高性の火楽に匹敵いたしますもので、広島の原爆の約五百倍する威力のあるものであるということであります。このたまだけでも直径五マイルに達するであろうと四月十六日付のワシントン発のINSが報道しておるわけでございます。こういう実験が行われようとしておるのでありまして、われわれはこの実験中止を極力要望いたしましたが、徒労に帰していよいよ行われるようでございますが、これに対しましての万遺漏のない対策政府としてもとられていなければならぬわけであります。そこでわれわれといたしましては、社会労働委員会といたしましては、国民生活保健衛生というような面の関係委員会といたしまして、この面について十分検討しておかなければならぬことであると考えたのであります。たまたま、過日総理大臣出席機会にお尋ねいたしましたところが、全然御承知がないのでありまして、外務大臣に聞いてくれというようなことであります。従って本日は、厚生大臣と御一緒に水爆実験影響、それの被害等につきまして、国民としてどう考えていればいいか、何かあらかじめ注意しておくことなどがあれば、この際政府として言っておいてもらいたい、こういう実は趣旨なんであります。外交のことや漁業のこと等につきましては遠慮しておくことは当然であります。ただ順序といたしまして、次のことからお尋ねいたしたいと思うのであります。  五月一日に予定せられましたこの実験が、五月八日に延期されたということでございますが、これは正式に通知があったのでございますか。
  5. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは正式に発表になりましたことを正式に報告を受けていますから、それではっきりいたしております。
  6. 山下義信

    山下義信君 それでは延期理由は何かあったんでございましょうか、どうでございましょうか。
  7. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 延期理由については、アメリカ側は、実験準備に関する技術的問題に基くものであるというふうに言っております。それと日本側から聞き合せたのに対しても同じ説明でございます。そこで延期米国側の技術的の都合によるものと考えられます。
  8. 山下義信

    山下義信君 それでは別に延期につきましては、政治的と申しますか、深い理由、たとえば最近四月二十一日にスティヴンソンが実験中止したらどうだろうかというような提議をしたとか、あるいはソ連が太平洋地域の使用について抗議したとか、ともかくそういうよう事柄が考慮されて一応延期したというような深い理由はないんでございますね。
  9. 重光葵

    国務大臣重光葵君) さように思っております。そういう何か特別の理由ということはないようでございます。予定通りにやはりやる、ただ技術的にそれを延期した、こういうことのようでございます。
  10. 山下義信

    山下義信君 そういうことでございますと、続いて何と申しますか、再度の延期というようなことがあって、またこれが再び延びていくというような、そういう気配もございませんか。
  11. 重光葵

    国務大臣重光葵君) どうもさような希望をつなぐことができないように観察をいたします。
  12. 山下義信

    山下義信君 一部におきましては、今回の実験をもっておそらく米国側水爆実験は最後になるだろうというようなことが伝えられておりますが、そういう点につきまして、外務大臣何か御所見ございましょうか。
  13. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御承知通りに、原水爆実験はやらない方がいいという考え方が、単に日本だけでなくして、世界的に相当力を得つつあるよう観測をいたしております。これは日本の主張も影響したものでありますから喜ぶべきことではございますが、今すぐ直ちに実験中止をするという空気はどこにもまだ見えておりませんことを遺憾といたします。しかし、さよう一般的な空気が醸成されつつあるのでございますから、国際連合等においても漸次にこれが問題となることと思われます。従いまして、大国の間にさような禁止の気持が動けば、何らかの協定ができ得るだろうと思います。特に軍縮方面の動きも注意しなければならぬと思っております。ただ今回限りに、あとは行われないようになるかということについての見込みは、さようなわけでございますからはっきり申し上げかねるのでございます。
  14. 山下義信

    山下義信君 今回の実験が五月八日に行われるということになりますと、それから七月一ぱいでありますか、八月にかけてでありますか、相当長期にわたって行うということでありますが、従いまして何回もまあ伝えられるところによりますと、一週間に一回というような割合でおそらく十二回ぐらい行われるのではないかというようなことも報道されておる。国民は、私ども水爆実験は五月八日に一回だけ行われるかというふうに思っておりましたところが、十数回に分れて天候気流関係を考えながら行われるということでございますが、そういうことになっておりますか。
  15. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えいたします。米国側発表及び通報によりますというと、今お話通り、五月から八月までの期間実験を行う。引き続きかあるいはとぎれとぎれに何回かわかりませんけれども、その間が実験期間であるとこう申しております。そこで、少くとも一回でないことは予想ができるのであります。  なおついでに申し上げますが、実験規模については、米国側発表しておりますところによりますというと、一昨年のビキニ実験よりも規模爆発力は小さいとこう言っております。そしてエネルギーの放出量も、ビキニの場合よりも従って実質的に下回るものと予想されるというふうに言っておりますが、しかし、原水爆は一回ごとに発達するのでありますから、その威力もずいぶん大きいものではないかと想像いたされます。なお、米国側はこの実験関係する事柄につきまして、ずいぶん長いもので、一般注意を出しております。そして日本側にもそれをよこしております。これはごく最近のことでございます。そしていろいろの予防措置をとることを詳細にこの中に述べておる模様でございます。そのうちのおもな点はかような点などでございます。災害予防のために、天候予測に今までの実験よりもはるかに充実した組織をもってこれに当り、注意をするようにするということが一点でございます。また、実験前に、危険区域周辺パトロールを非常に強化して、災害少いようにするということも言っております。実験直後に六月十日ごろからだと思いますが、米国海軍の船でテスト区域西方、北緯十度から十四度までの海面及び海水放射能を詳しく調査するというようなことがそのうちにはあるとこう言って、その中の重要な部分であると言って、それを摘録して編集報告を受けております、今朝ほど。まあさようなことで注意は非常にしてくれておることは事実でございます。でございますが、長期にわたる実験でございますから、これに対して日本側においても非常に心配だし、またあらゆる予防措置注意をしなければならぬと思っております。
  16. 山下義信

    山下義信君 数回にわたって行われるということになりますと、やはりそのつど実験日時等につきましてはわが方に通報があるのでございましょうか。
  17. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そのことは米国側によくまたこちらで打ち合せをすることができると思います。ただ、今までのところでは、五月から八月までの間に実験する。そして実験区域等を明示してきたのでございます。なお、その範囲内において、さらにわが方において必要と思えば、また照会をいたしていきますから、そうやって差しつかえはございません。
  18. 山下義信

    山下義信君 今回の実験される爆発程度等につきましては、アメリカ側から連絡のありましたことを今外務大臣概略はお示しになったのでありますが、このビキニのときは私ども専門家でないからよくわかりませんが、いわゆる地上爆発でありまして、放射能が灰にまじって俗にいう死の灰というものが非常に降ってきた、こういうことになっておる。今回の爆発がやはりビキニのときのよう地上爆発をするのかという、そうでなくて高空爆発をするのかということによりましては、受くるところの被害といいますか、影響といいますか、相当非常に違うのではないかとしろうとでも考えられるのですが、そういう点につきましては、何らか外務大臣承知の点がございましょうか。
  19. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そういう点は一般新聞記事等以外には承知をいたしておりません。米国側も、そういうことについて、発表のできる時期には発表をするだろうと思いますが、今日までそういうことについて明確な発表がない、秘密にされておるという状況と思っております。
  20. 山下義信

    山下義信君 それでは何でございましょうか。外務大臣から、米国へ一月下旬に照会されました回答の項目の中に、被害についての御照会があって、アメリカ側がそれに対して、まあ危害はないというよう回答が、今も大体予防措置その他についてのごく概略な御答弁があったのでありますが、大体どういう被害があるだろうかというようなことの推測も、予想も大体つかないのでございましょうか。
  21. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは非常にまあ専門的な知識を要すると思います。私がその知識を持っておるということを申し上げるわけには参りませんが、十分できるだけの情報を受け取りまして、今申し上げました通り、ずいぶん詳しい情報日本の大使によこしたようでございますから、そういうものをさらに取り寄せまして、東京において専門家研究にこれを移しましてですな、そうしてそういう予防措置について必要なことを考えなければならぬと思います。それはまたおのずからそういう専門家の機関があると思いますから……。そういうことにいたしております。
  22. 山下義信

    山下義信君 それでは、五月八日の実験の前までには、これらの点につきまして政府は適当な、今おっしゃったよう方法等をおとりになりまして、大体のことは国民にもお知らせなさって下さるという御用意があると、こう了承してよろしゅうございますか。
  23. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそれで……、そういうふうに関係当局も努力しておると、こう承知をいたしております。  厚生大臣のお答えも必要でございましょうから……。
  24. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今、山下委員の御質問がありました、大体このエニウエトック環礁地帯におきます原爆の第一回の実験は、今、外務大臣がおっしゃったように、大体五月の八日が第一回である。そこで厚生省といたしましては、近く、多分五月の十五日前後におきまして、俊鶻丸という農林省の船に、厚生省農林省気象台のそれぞれの専門関係者を十六人、調査船に乗り込ませまして、そうして南方諸地域におきまする十分な調査をいたしたいのでございます。もちろんこの調査船が参りました場合におきましては、魚類捕獲物汚染状態でありますとか、あるいはプランクトンの問題でありますとか、雨水、海水状態でありますとか、あるいは船の各部分に対する原爆放射能影響でありますとか、あるいは人体につきましては尿、白血球というようなものに対する影響でありますとか、こういうふうなものにつきまして十分な調査をいたしまするし、また、この地帯におきます灰等集塵装置を携行いたしまして、それらの灰も集塵装置によりまして集めまして、そうして現地において調査をすると同時に、内地に持って帰りまして、そうして予防衛生研究所におきまして十分にこれを調査いたすのであります。もちろん、従来の、前回経験によりましても、魚類汚染度というものは、原爆実験の行われましたときよりも、だんだん、だんだん時を経るに従いまして激しくなりまして、そのピークは大体原爆実験の行われましたときを基点といたしまして、六ヵ月後が一番のピークである。こういうふうに前回原爆実験の際に経験をいたしたのであります。それから従来のときにおきましてもそうでありまするが、この現地実験並びに内地に持って参りました実験等によりまして、これの人体に及ぼしまする影響魚類等もその汚染度人体に及ぼしまする影響等につきましても、それぞれの漁港におきます十分な調査をいたすことはもちろんでございます。しかし、前回は大体二千数百万貫の魚類につきまして、各漁港について検査をいたしたのであります。その廃棄いたしましたものは大体十万貫を廃棄いたしたのであります。しかし、前回経験にもかんがみまして、いろいろ廃棄いたしましたものにつきましても、最初は十分な調査研究というよりも、経験がなかったものでありまするから、十万貫からのものを廃棄いたしましたけれども、その後の調査によりまして、魚類心臓部であるとか、あるいは表面の汚染を除けば、これは人間の食物にしても差しつかえないというような、いろいろの経験も得ているのでありまして、いずれにいたしましても、調査船を派遣いたしまして、十分な調査をいたしまして、そうして国民人体被害を与えないようにいたしたいと、こういうように考えております。
  25. 山下義信

    山下義信君 外務大臣に対する私の質問は大体済んだんでありますが、結局のところは、だいぶ詳しく御説明をいただいたのでありますが、結局実験されるものがどういうものであってということもわからぬ。従ってその被害影響予想することができぬ。従って私の伺いたいのは、予防対策というものが、何かあるのかということを伺いたいと思ったのでありますが、どうも予防ということもできない。今、厚生大臣の御答弁は、大へん懇切にいただいたのでありますが、結局あと調査は事後の処置、予防することが何かないかと伺ったのでありますが、そういうことがどうもないということであるならば、もうどんときて、何がくるのか、どうなのか、死の灰をこうむるのか、どういうことになるのか、まあ当って見なければわからないということになって、わかってない。  ただ一つだけ、外務大臣の御答弁の中で印象に残ったのは、いろいろ気象観測、その他について、アメリカ予防措置として、十分強化拡充してやっておかなければならぬ。いろいろ……。危険区域パトロール等もありますが、それをおっしゃった。それで、これはアメリカはこうおれの方もするとこういうので、参考に言ったのでありましょうが、日本の方でもそうした方がいいんじゃないかということが、おのずとまあ示唆になった。  結局予防というものがないんですね。ですから今、世界ではごうごうとして、今度はひどいぞ、相当なものだぞ、いやそうじゃないぞ。文芸春秋の四月号にも、なかなかそういうことについて出ているのでありまして、余り恐怖し過ぎてもいかぬが、余り無対策で、のほほんとしていることもこの実験地に一番近い日本として、しかも日本国民として、その国民の安寧の責任を持つ日本政府として、余り無知識で、のほほんと無対策というのもどうかと思う。それでこれはよほど注意もせにゃならぬ。たとえば、そんなことはちっとも神経にとめんでもいいんだ。全く何らのこともないんだというのであると、実にあいまい模糊として、結局わからない。何かお考えがあれば承わっておきたいと思うのでありますが……。  それから、それはあと外務大臣からも総合的にお答え下さればよろしいんですが、今の気象観測のことです。所管の運輸省からきていただいたのでありますが、何かただ単なる天気予報でなしに、いわゆる放射能を含んでいる放射能雨の、そういうよう予報をやったらどうかという意見があり、また気象台においては若干特別の研究がなされているということでありますが、政府においては放射能雨予報というものを公式に、定期的に、計画的にやるという御計画なのかどうかということを承わっておきたい。
  26. 伊能繁次郎

    政府委員伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいまお尋ねの放射能観測の仕事につきましては、現在日本全国におきまして主要な気象台基準観測関係が五ヵ所、簡易観測が十ヵ所、さらにそのほかに力圧震動観測所を八カ所設けまして、原水爆等爆発に関する気象関係気流関係、また空気の中に包含される放射能、あるいは雨の中に包含されます放射能等観測を実施をいたしております。と同時に、気流観測もそれによってたえずいたしておりまするので、現在におきましては、毎日四回中央気象台から気象無線通報によってその実情を放送いたしておりますが、そのうち二回は気流観測の放送をいたしておるよう状況でございまして、今回のよう原水爆実験に際しましては、特にそれらの気象観測所を動員いたしまして、気流関係等によりまして放射能を含有しておる濃度の関係等によって、船にその気流から離れるよう措置気象無線通報をするというようなことでやって参りたい、かように考えておりまするが、なおさらに、もう少々予算上の措置が得られますれば、さらにこれらの点について強化をして参りたい、かように考えております。さらに、さいぜん小林厚生大臣から御説明申し上げました今回の原水爆につきまして、厚生省を中心に、水産庁の俊鶻丸によりまして、現地でいろいろと調査をする予定になっておりますが、運輸省といたしましても、俊鶻丸には三、四名の技術者を同乗させまして、気象観測予報並びに放射能等に関する化学分析等のために同乗して、これらの関係調査して万全を期したい、かよう状況であります。
  27. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 私はこの機会外務大臣がおいでになっておりますので、一言だけお伺いしておきたいと思います。  現在特に九州、中国方面方々は、朝鮮にいまだに多数の方々が拿捕されておるのに対して非常に御心配をいたしておるのですが、今現在どのくらい拿捕されておりますのでございましょうか。またなかなか見通しもおつきになりますまいれけども、いつごろになったら帰してもらえるようなお見込みでございますか。それを一言ちょっとお伺いしたいと思います。
  28. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えします。韓国の問題でございますが、今、日本漁夫の抑留されておる者が六百五名でありますそうです。そうしてそのうちで、刑を終えた者が約三百名、二百七十何名ということであるようでございます。そうして今交渉の題目になっておるのは、韓国側がどうしてそれを刑に処したかというようなことを本質的に論ずるのは、まだその問題はあとにしまして、さしあたって刑をすでに終えた三百名足らず、これはもう一日も早く帰してもらいたい、こういうことに交渉が集中しておるわけでございます。  そうしますと、韓国側の方は、日本側韓国人大村に収容しておる、それは刑を終えた者を収容しておるのでありまして、だからそれも釈放してもらいたい、それなら韓国側も釈放しよう、こういうことになっておるのでございます。その韓国側の要求というものが、ほんとうに正しいものかどうかというまた議論もございましょう。しかし私といたしましては、漁夫を一人でも、また一日でも早く帰してもらいたい、こういう関係から、大村収容所における刑を終えた韓国人収容者を釈放するということを承諾いたしまして、そうしてこの問題の解決をしたい、こういうことに進んでおるわけでございます。まあその考え方は閣議においても決定をいたしたことでございます。しかし、大村収容所における韓国人と申しますか、朝鮮人を釈放するということは、相当法務当局としては難色があるのでございます。これはまあ御想像にかたくないと思います。それをよく調整しまして、外交問題としましては実際的にそれを調整する、日韓の間で委員会をこしらえて調整するというところで、つまり解決をいたしておるわけでございますが、その実際的調整に非常に苦労をしておる状況でございます。  以上でございます。
  29. 相馬助治

    相馬助治君 先ほど山下委員質問に対して答えられた外務大臣お話を承わっておりますと、今度のアメリカ水爆実験については、日本政府からもアメリカ側実験の時期及びそれによって起きる災害等についての補償、そういうものについての申し入れをされ、それに対して返事が参っておることはよくわれわれ承知していたのですが、それがきわめて具体性を欠くと思って心配をしておりまして、その上に立っての山下委員質問だったと思いますが、これに対する外務大臣の御答弁を承わっておりますと、まことにたよりなくて、一体心配していることが杞憂なのか、それとももう少し本気になって心配をしなければいけないのか、それすらもどうもさだかでないように思えてならないのです。  私はそこでこの際一点お聞きしておきたいと思いますことは、外務大臣として現在の日米友好の建前から、例の綿製品ボイコットの問題と、今度の水爆実験の問題は相当お困りであろうと、かように考えておるのですが、これらに対する基本的な御見解をまず念のために伺って、その次の質問に入りたいと思うのですが、これに対して御見解を簡単でよいですからお聞かせ下さい。
  30. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 原水爆の問題や今の綿製品ボイコット法案問題等について、外務当局としていろいろ困ったことに考えておるだろうというお察しでございますが、それは全くその通りでございます。ほんとうにこれは困っております。困っております第一は、原水爆の問題につきましては、お話通りに、これは原水爆というものは科学の先端を行っているものでございますから、これがどういうふうな正体をもってどういうふうにこれに対処していけばいいかということが確定していないということ、これが非常に困ったことであり、またそうでありますから実験が必要になってくる、非常に重要になってくるとも言われましょう。そこで今日までの科学的な知識によって予防処置等についてはあらゆる努力をし、つまり最善を尽すということでやるよりほかに方法はないのでございます。  それからまた、この問題に対する外交の処置につきましても、今日不幸にして国際情勢は原水爆実験をまだとめる、禁止するというところまできておらぬ。それでこういうことが起る。これは将来原水爆実験を禁止する国際法を作っていきたい、こういう考え方で努力をしておることは、これは言うまでもない、御承知通りでありますが、まだその時期に達しておらぬから実験を見る。そこで、その実験についてはあらゆる情報を集めて、できるだけ広く集めて、そして予防処置等についても最善を尽すことにしたいということを申し上げるよりほかにないと思います。  まあさようなわけでございますが、また今の綿製品の問題について、要するに御質問の点は、アメリカ関係と思います。綿製品ボイコット法案等については、これは条約上の問題であります。日本側は条約にこれは反する問題であるとして抗議もし、先方の注意を強力に促しておるということは御承知通りでございます。米国政府は非常に困惑した状況でありまして、何とかしてこの問題を日本側の納得のいくように、また満足のいくように処理をしたいといって、米国の最高首脳部においても非常に努力をいたしておるその誠意は認めざるを得ません。これは日米関係の基本を考慮した措置だと思います。そこで日本側といたしましては、米国との関係が非常に重要になるのでありますけれども、しかし条約上の問題だとか、当然主張すべきことは私は十分に主張もし、必要があれば抗議をするということもこれは当然であると考えております。また、さようなふうにして先方の注意を促してわが方の利益を擁護するということは、これは外交の義務でございます。そういうふうに見て少しも差しつかえはないと思います。また、そういうことによって、日米関係の基本が私は動くとは考えておりません。しかし、根底においては日米関係を重要視して、いつも申す通りに、日米協力関係は私は進めていくべきだとこういう基本的な考えを持っておるのであります。しかし、抗議をするとか、いろいろな要請をするとかということは、その基本精神に合するものだと考えて進めておるわけでございます。
  31. 相馬助治

    相馬助治君 私も正当な問題について抗議することが、日米友好促進のためにも効果がある措置であるという外務大臣見解と同じ立場を私自身もとるわけです。それで、一月二十五日の政府から、アメリカ政府に手渡した原水爆実験に関しての申入書というものはきわめて当然であり、また三項にわたる申し入れの内容も私は妥当であると考えておりますが、これに対するアメリカ側の返答というものは実に長い文章ですけれども、しみじみと読んでみるというと、どうも最後の段階において紛争の種になるのではないかというようなことがあちらこちらに見受けられるのですが、その一つの問題だけ取り上げて、外務大臣見解を承わって、これを参考にしたいと思うのですが、生じ得べき損害についての補償の問題ですが、アメリカ側回答によりますと、「日本国または日本国民が実質的な経済的損失を受けたという証挺が公式に提出された場合には、右の証拠に基いて補償問題に対して」云々、こうありまして、「証拠が公式に提出された」こういうことになりますと、あることを予見して政府自身は運輸省が海運局長の名前をもって通達して、こういう危険に会わないように逃げ回れということから二歩突き進んで、こういうときにはこういう証拠を収集しておかなければならぬぞということまで、実は指導しなければならぬのではないかというような不幸なことも考えられるのでございますが、今の「証拠が公式に提出された」云々というアメリカ回答は、文書以外に何か口頭あるいは申し合せ事項等で外務省に入っている情報等があるのでございますか。また、このアメリカ回答をもって十分であるというふうに今のところは外務大臣はお考えでございますか。私は前の例によってみてこの返答だけでは……もう少し細目協定めいたものをしておかないと紛争が予想されるのではないかということを懸念して、かく質問しているわけですが、御回答をお願いしたいと思います。
  32. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 米国回答を詳細に御検討下さっての御質問でございます。この三項に「日本国民が実質的な経済的損失を受けたという証拠が公式に提出された場合には、右の証拠に基いて補償問題に対して更に考慮を加える」こういうことになっております。証拠がなくても補償してやるというふうにはっきり書いてくれればなおよかったというふうに、こうも言い得るわけでございます。しかし、ここに書いてある意味は、証拠を出してもらわなければ補償ができないということは当然のことで、その証拠も公式なものでなければいかぬということもこれも普通の文字でございます。その証拠力のないようなものでいくわけにはいかぬということがあるのでございますから、これは普通の文字でございます。この英文をまたよく検討しなければなりませんが、そういうわけでございますから、つまり証拠が出ればそれについて考慮を加えよう、こういうことでございます。考慮を加えたからすぐこっちの言った通り賠償するとは書いてございません。これも何と申しますか、不満であると言えば不満でございます。しかし、それは交渉の結果こういう証拠があるからこれまでは補償をしてもらわなければいかぬ、向うも全然補償をしないというのではない、考慮しようというのでありますからその交渉に応ずる、こういうことでありますから、まず国際間のことというものは大体そういうものであろうかと考えます。私はこの米国回答が全部満足なものであるということにはそれは考えておりません。また、そう満足なものを初めからこちらの思う通り期待するわけにはいきません。こちらの意見を十分向うに突っ込んで、そうしてこちらの立場をこしらえておくということが重要なことであります。しかし、それに対して、大体これまでの返答を、向うは意思表示をしたのでございますから、そのきっかけはできるわけであります。さらにまた検討した上で、こちらの立場を突っ込んでいく必要を認めますならば、認めます点についてやります——やりますが、今の点は大体そういうことでよかろうかと、まあ考えるのでございます。
  33. 相馬助治

    相馬助治君 この点についてなお突っ込んで聞きたい点もあるんですけれども、これは社労委でありまするし、山下委員の関連質問でお尋ねしたので、他日機会を見て、この点については詳細をきめて尋ねてみたいと思いますので、私の質問はこれで打ち切ります。
  34. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 先ほど山下委員からの原爆実験に対しまする国民の不安というものに関連いたしまして、私ちょっと申し上げることを落しましたので、ちょっと申し上げておきたいと思います。御承知ように、放射能でも種類によりまして人体に及ぼす影響はきわめて大きいことは申すまでもないのでございます。たとえばストロンチウムに関係するものは猛毒がありますとか、あるいはバリウム、亜鉛に関するものは人体には大して影響がないというようなことでありまするので、放射能の灰の成分の分析ということは、水爆実験影響調査に関しましては、全くこれが核心であると考えておるのでございます。ただ、前回ビキニの際におきまする魚等につきましては、人体に対しますることの結果が学者によって得られておりまするので、この際国民の安心感といいまするか、そういうことに対しまする一つの、一助といたしまして申し上げておきたいと思いますことは、先般のビキニにおきまする原爆実験は主として亜鉛というものが多かったように考えるのであります。かりにこれを、ストロンチウムというものが多量あったよう原爆実験と仮定いたしましても、人間がそれらの魚を二百五十グラムずつ毎日食って、一生涯食いましても、人間の生命には支障はないんだということが、先回の原爆実験の結果得られておりまするので、原爆実験は避くべきものでありまするけれども、そういうことであるということだけを山下さんの質問に関連いたしまして申し上げておきたいと思います。
  35. 山下義信

    山下義信君 厚生省の所管のことはあとでまたちょっと聞きます。議事を進行して下さい。
  36. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はこの水爆実験汚染されたマグロなんかの処分について多少疑義があるので、これは食品衛生法の審議のときに詳しくお尋ねしたいと思っているのですが、基本の問題としてこの機会に一点伺っておきたいのは、先年、これはこれからも起ることであろうと思いまするけれども水爆実験みたような特殊の場合に、汚染されたああいうマグロの処分は厚生省がお当りになったわけですが、何によってなされたのであるか、多分食品衛生法に基いた処分と思うけれども、何らか一定の、たとえば放射能の検出量についての規格を設けて、新たに作られて処分をされたのかどうか、そのほか特殊な場合として、この食品衛生法に基かずに、法律に基かずに、何か行政的の臨時の措置として廃棄処分とされたのであるかどうか、この点を一点伺っておきたいと思います。
  37. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 先回のマグロの廃棄につきましては、今高野委員の御質問になりました食品衛生法に基きまする行政処分によって廃棄さしたものではないのでございます。廃棄を勧告いたしまして、自発的に実施したものでございまして、その補償といたしまして、補償につきましては、米国の補償費の中で時価に見積りまして、当時損害賠償といいますか、損害の補償費を支出しておるのであります。
  38. 高野一夫

    ○高野一夫君 食品衛生法みたよう法律に基かずして勧告したという話でございますが、勧告するについては、はやり一定の、これは食べちゃいかぬ、廃棄しなくちゃいかぬという限界といいますか、基準がなければできないはずだ、それが一つと、それからこまかい点はいずれまた他日伺いますが、その点が一つと、勧告であるならば、もしも漁業者がその勧告に応じない場合はどうされるか、その点が一つ、あわせて伺いたい。
  39. 小林英三

    国務大臣小林英三君) この問題は、私がここで御答弁申し上げるよりも、当時関係いたしました事務当局から詳しく説明させたいと思いますので、御了承を願います。
  40. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 前回は、何分にも私どもも従前経験のなかったことでございますし、また、世界の文献等にも見当らない新しい事態でございましたので、早々の間に一応基準といたしまして、十センチの距離からカウンターではかりまして、毎分百カウンターを数えるものを、それ以上のものを一応廃棄処分の対象といたしたわけでございます。なお、この場合、ただいま大臣からもお答えを申し上げましたように、特に食品衛生法による行政処分ではないのでありますが、あらかじめ業界とよく話をいたしまして、関係者とよく相談をいたしまして、これを勧告によってやることに実施をいたしたわけであります。
  41. 高野一夫

    ○高野一夫君 もう一つ、そうすると、近く水爆実験が行われる場合が予想せられるといたしまして、その場合に、いわゆるマグロその他の魚類に対しては、過去においてやられたような規格、基準によってやはり勧告の方法をとられるわけですか。
  42. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) この前の作られました基準は、何分にも私ども資料不足の状況でございましたので、ただいま申し上げましたような基準を一応定めましたが、その後いろいろ研究が進みまして、もっと合理的な、科学的な基準を作る必要があるわけでございます。この点に関しましては、目下学術会議におきまして、その後引き続き、計測方法等について研究をいたして、間もなくその計測方法がこちらに答申になることになっております。一方、これらの計測に基きます基準につきましては、これまた学者の御意見によって研究をいたしていただいておりますが、この点もおおむね結論を得まして、目下私の手元におきまして、これを事務的に整理をいたしておる段階でございます。新しい基準で今後は実施をいたしたい、こう考えております。
  43. 高野一夫

    ○高野一夫君 そうすると、これは五月八日予定されたのが延期になるかもしれぬ、けれども、いつ水爆実験が起るかもわからないが、その学術会議の答申といいますか、それを厚生省が採用して、それに従われるとしても、それは一体いつごろ結論が出るつもりであかる、それともう一つは、シベリアあたりで水爆実験が行われるというような場合に、今度は日本内地の蔬菜類そのほかそうい飲食に供する植物類に対して、いろいろな汚染が行われた場合、これに対しても、やはりマグロの場合と同様に、そういうふうな基準を設けて、一種の行政処分でない、法律による取り扱いでなくして、単なる勧告的の方法をおとりになるつもりであるかどうか、あわせて御答弁願いたい。
  44. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) ただいまお答えを申し上げました基準につきましては、今月のうちに必ずこれを一つ固めたい、かように考えておる次第でございます。  なお第二点の内地の蔬菜、水、その他の問題につきましては、一昨年以来しばしば放射能あるいは放射能塵というような問題が出ております。しかしこれらをいろいろ元素的に分析したり、あるいは現実に蔬菜、その他の汚染状況を調べてみますると、いずれも許容さるべき基準をはるかに下回っておりまして、現在までのところは幸いに何ら国民生活に支障ないという結論を得ております。ただし、それらのうち、比較的最近ソ連の実験によりまして、放射能雨が降りましときには、比較的多いカウントが、きわめて一部の、天水をそのまま使用しておる地帯につきましては、若干心配予想されましたので、これらの点につきましては、この行政指導によりまして、たとえば降り初めの雨を避けるとか、あるいは念のために濾過して水を使うこと等を指導をいたしました。しかし、これもきわめて天水を使うという特殊な地域でございまして、かような指導を実施いたしたのであります。
  45. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はこの問題に実は食品衛生法の改正案に結びつけて非常な疑義を持っておる。これは詳細そのときの審議のときに伺って、きょうはやめますが、現在、たとえばソビエト方面の実験による内地のものの汚染度内地においてできた飲食物の汚染度、こういうものについては、過去においては大したことはなかったという、こういうお話しであるが、今後いかなる事態が起るともわからぬわけですから、従ってビキニ方面の水爆実験と相待って、この点についても十分の対策を今のうちから用意されておられるべきだと思います。その点天水、その他につきましても、あるいは水道の水源地につきましても、野菜の点についても、そのほかあらゆるものについて、この点はマグロだけでなく、あわせて対策を至急講じておかるべきだと思います。  それからこの勧告処分ということについては、私は非常な疑義を持つのであります。この点について、もしも今後、たとえば蔬菜を作っている人たち、あるいはマグロの漁業者たちが勧告に応じない。これは別の学説によれば、これは差しつかえないのだという、こういうようなことで、紛争が起らぬとも限らない。そういう点について、将来の場合を考えれば、私はこの勧告によって廃棄処分をなさしめるということについては、非常な不安を持っております。従ってこの点について、いずれ他日伺いますが十分厚生省の方でも御研究おきを願いたい。
  46. 相馬助治

    相馬助治君 私はこれは先ほどの山下委員の議事進行の発言のときのように、後にとっくり伺う機会があったらばと思っていたのですが、今具体的に高野委員から開かれたので、この際私の方も事を急ぐからお伺いしておきたい。四月十七日の夕刊の読売を見ますと、「原爆魚に頭の痛い都衛生部」という記事が出ておるのです。このことは要約しますと、今まで厚生省がはっきりした態度を示さないから、東京都の衛生部が非常に困ってしまっている、こういう記事なんです。全く今まで厚生省何をしていたのだということを第一点として聞きたいのです。  それから第二点は、百カウントだと言いますけれども、全くこれは学界でも異論があって、毒性の比較的軽いといわれるコバルトの場合と、毒性の強いというストロンチウムの場合では基準量が違ってくるということは、これはもう学界の定説になっておりまして、ただ単にカウントだけで物事を判じられないということも明瞭です。従って、今月中には何とかしますと言うけれども、それも今まで結論が出なかった経過から考えてみると、はなはだ心もとない。また東京都民がマグロを食ってしまってから、ああでもない、こうでもないという大騒ぎになることが予想されますが、今まで何していたのかということをまず第一点に聞いて、それから現在学者がどうとかこうとかいうことだが、どんな結論が出ているのかということを第二に承わって、第三には、明瞭にいつまでに結論を出すかということと、それから勧告処分では、業者が抵抗した場合には行政処分が可能であるかどうかという問題に立ち至りまするから、いかなる法律を基礎として勧告処分をするつもりなのか、こういうことについて、この際明瞭に一つ事務当局から承わっておきたい。
  47. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 最初に、厚生省は今まで何をしておったかというお話でございますが、私ども原爆実験がやられるであろうということが明らかになりますると、直ちに各方面と十分な連絡をとりまして、どういう基本的対策が最も正しいかということを十分検討いたしました結果、まず今回は取りあえず現地を十分調査して、その結果、万一にも問題があればそのとき国内態勢に移っていこう。しかし、いつなんどきでも適切な対策がとれるような準備だけは整えておこうというのが今回の基本的な方針でございます。ただ、これらの問題に関しまして、各府県におきましてはいろいろ他から質問される等の関係がありまして、必ずしも答弁が一致をしなかった点をはなはだ遺憾に思っておりますが、これらの点に関しましては、すでにこの方針を各府県にそれぞれ示しておる次第でございます。  次に、第二点に御指摘のように、放射能の種類によりまして毒性の違うことは申すまでもございません。しかし、私どもが実際問題を処理いたします場合には、放射能の種類を決定いたしますには、微量分析等の処置を要しますので、相当な時間がかかります。そこで従来世界各国を通じて行われておりますやり方は、まず最初にどんな元素が入ってきても差しつかえないという一応の基準を定めるわけでございます。それでまず調べまして、その結果、ある一定の基準量以上であったような場合には、そのときに元素分析を実施する、さらにその結果か得られましたなら、そのときにまたそれをゆるめるなりする。というやり方が行われております。従って、今回もどういう元素かわからないときには、まず全体の総括的な基準で押えまして、さらに若干の時間の後に元素分析によってその本体を確かにしよう、こういうやり方で進んで参っております。従って、第二の御質問ような点は、十分に一つ御安心をいただいてしかるべきだと存じております。  第三に、これら個々の問題の許容量の基準ということにつきましては、今日学界においても、世界各国ともいろいろな意見もございます。そこで、今回の外国のいろいろな研究成績並びに日本の学者の研究成績等を総括して、先ほどもお答えを申し上げたように、今月一ぱいで必ずこの基準を確立いたしたい、かように考えておる次第でございます。  第四に、勧告で前回実施いたしましたのは、前回は何分にも早々の出来事でございまして 直ちにこれを実施するというよう関係もございましたので、さような方法を前回はとりました。今後はさらに事態の推移を十分見まして、今後いかなる対策が、いかなる方法が最もいいかということをもっと深く検討をして、さらにいい方法をとりたい、かように考えておる次第でございます。
  48. 横山フク

    ○横山フク君 ただいま楠本部長の御答弁の中で、各地方庁に基準を示したということですけれども、それはいつそういう通知を出されたのか、それを伺いたい。そうして南方に監視船を出される。もちろん原水爆実験があった後に出されるのでしょうけれども、先ほど厚生大臣被害ピークは六カ月後だということをおっしゃいましたけれども、害の強さは直接その灰をかぶった魚に強くある。そういうことから見ますと、灰をかぶったときは六カ月後でなくてその直後だと思う。ところが原水爆が済んでから、その監視船を出して調査した、報告を受ける前に、もう今度の被害がどこら辺までいくか、灰がどこら辺まで及ぶかわからない。その辺のところでたまたま帰ってくる途中で灰をあびたのが、報告がこないうちに内地漁港にくると思う。その場合にまだ調査ができていない、巡視船が行っているからということになると、その魚に対して監視の目は届かないと思う。こういうことに対して、実は地方庁ではその処置に困っているということは事実なんです。しかもこの前のビキニのときに百カウント以下であったならば差しつかえないということであったし、厚生省の方では、事実このガイガーの検査をやめるということで、そういうことは心配ないのだということを楠本部長は新聞で発表された。しかし東京都はまだそのとき調べておった。ところが、新聞でもってああいうことを発表されたために、東京都はあの処置に困った。しかもその費用等においても、厚生省の方でああいうことは無意味なんだということを新聞に発表されたために、その費用等に対しても非常に困ったということは私も直接聞いている。こういうことがありますと、この前の例もあったからということで各地方庁でも非常に困る。食品衛生の方でも、厚生省の方でも取締り等において基準がないということになると、今度は地方庁の方においても、なおそういう点に対してそれぞれ県会あるいは都議会等の協賛を得なければならぬということになって、これは困る問題なんで、こういうことに対してどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。それでもまだ都民の、あるいは県民の心配がないやり方ができるのだ、大丈夫だという御確信をお持ちなのかどうかということを伺わせていただきたい。
  49. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 府県に通牒いたしましたのは、基準を通牒したわけではなく、先ほどもお答え申し上げましたように、厚生省の今回の実験に対する対策の基本的な方針を通達をいたしたわけでございます。ただこの方針は、当初から研究の結果固まっておったわけでございますが、ただ、船を具体的に派遣するという問題につきまして、適当な船を選ぶのに時間がかかりましたために、この通達の出ましたのは比較的おくれまして一週間ばかり前かと存じております。  それから次に、この調査船を出して、その間はのほほんとしてマグロを陸揚げしているのが危険ではないかという御趣旨かと思いますが、私ども前回の例にも見まして、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、魚が最も汚染されますのは、これはもちろん灰をかぶるというようなことでなく、むしろ食べものが二次的に汚染をされる。プランクトンその他の食べものが二次的に汚染をされる。それを食べてマグロの中にだんだん放射能が蓄積してくるという経過をとっておりますので、ピークはやはりこれは六ヵ月後というようなことになるわけでございまして、従って爆発の直後におきましてはまずまず危険というものは予想できない。しかしながら、これとても先ほど来お話しを申し上げましたように、前回の実例ではもちろん大した心配はなかったが、今回はこの爆弾の規模、性質、放射能の種類、かようなものによっても違いますので、この点に関しましては、とにかくとりあえず南方に行ってその点を確かめようということでございまして、きわめて合理的に、まあむだなく安全な対策を講じていきたいと、かような考えでおります。
  50. 横山フク

    ○横山フク君 私が聞いたところによりますと、直接に灰をかぶったその魚は非常に危険度が強いけれども、そのえさを食べた魚は、そのえさを食べたマグロにおいては、内臓器官を食べたらば危険があるけれども、その肉を食べたときは、危険度は直接に灰をかぶったものよりはないということは学者の報告に出ておる。しかし楠本さんのお話しにはえさとして魚を食べる、その方が危険だ、直接灰をかぶった魚よりもその方が危険なんだとおっしゃるのですけれども、これは楠本さんのおっしゃるのが事実なんですか。
  51. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) その通りで、これは学界の通説でございます。
  52. 横山フク

    ○横山フク君 そうすると重ねてだめを押しますけれども、灰をかぶった魚を食べるよりは、その水中に泳いでいる魚をえさとして食べたマグロの方が危険だということになるのですか。
  53. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) これははなはだ専門的なことになりまして恐縮でございますが、マグロは当初は灰をかぶるとか、あるいは灰の多少含まれている水をまあ呼吸するというために、表面、外表がよごれたり、あるいはえらがよごれたりするだけでございます。そのうちにだんだんマグロがプランクトンその他の食物を食べますから、こういったものが二次的にいろいろ汚染をされてきておりますが、これを食べるためにだんだんに体内に放射能が沈着をして参ります。その場合に肉には沈着せずに、主として内臓あるいは骨髄等に沈着をいたしております。しかも前回の場合は沈着するものもこれは主としてアエンであって、ストロンチウムというものは、痕跡であったということが明らかになっております。なおこの場合筋肉等にはほとんど痕跡すらも沈着はない、ようやくこれを感知できる程度でございます。これらのものはもう当然食品としての許容度をはるかに下回らておるという性質のものでございます。
  54. 横山フク

    ○横山フク君 そうすると、今の楠本部長お話しを敷衍いたしますと、ビキニの灰をかぶったその漁民よりは、日常、常に原水爆のあの灰、あるいは雨水によって汚染されている野菜も常に食べていて、一年、十年、二十年と食べている私たちの方がもっと健康的に危害があるということになるわけですね。
  55. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) この雨水あるいは放射能塵等によって汚染されたものをかりに食べるとすれば、これはその量によっては確かに危険はありましょう。しかし、今まで私どもが過去二ヵ年間各方面と協力をいたしまして、いろいろ現状調査をいたしてきておりますが、この結果は幸いにも人体に支障のある程度のものは何ら見知されなかったのであります。
  56. 横山フク

    ○横山フク君 どうも私おかしいのです。しかしまあ私もしろうとですから、これは各方面から確かめて、いずれ食品衛生法のときにこの問題に触れるそうですから、そのときにゆっくり伺わせていただきます。
  57. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、本件に関連して放射能を含む降雨の状態について、現在までの状況等を吉村中央気象台長代理から御説明を願いたいと思います。
  58. 吉村順之

    政府委員(吉村順之君) 中央気象台の総務部長でございます。  先ほど運輸省の政務次官が話しました通り気象台では、大気放射能観測を全国で十五カ所でやっております。現在まで大体千カウント以上大気または雨水の中に放射能を見つけました場合には、直ちに発表いたしておるような次第でございますが、現在までのことにつきましては実はここに専門の測候課長が来ておりますので、測候課長から話をさせてもらいたいと思います。
  59. 太田正次

    説明員(太田正次君) ただいままでの雨水に含まれました放射能の概要を申し上げます。  中央気象台で……。
  60. 山下義信

    山下義信君 私が中央気象台の意見を求めたいと思ったことは、過去のデータのこともけっこうですが、これを資料としてあとで配っていただいて、今回の水爆実験に対処して、これから放射能雨のただ単なる天気予報でなくして、放射能雨に関する中央気象台の諸般の予報というか、天気予報と同じようなものを放射能雨に関する限りそういう特別の発表をするか、そういう計画があるかということを明確にしていただきたいというのが私の質問の趣旨です。今までどうしておった、こうしておったということも、これもきわめて貴重な資料でありますから、これもちょうだいいたしたい。しかし今回の水爆実験以後、あすは放射能を非常に含んだ雨が日本に降るという見込みだというよう予報をする必要があるじゃありませんか。済んだことばかりの調査は、それも非常に貴重で、今後の学術研究には非常に大切じゃが、あさっては大へんな暴風雨で非常に放射能を含んだちりを含んだそのものが降ってくるぞという予報をする必要がある。そういう計画が中央気象台にあるかという、それをするかという、そういうことをしなければ何の足しにもなりません。今までのよう天気予報の晴か曇りかというのもいいが、今度水爆実験をした以後にその被害をこうむるその天候とからんでそういう予報をすることが必要じゃないか。ただいまそういうことが計画されているんじゃないかということを聞くのです。何か中央気象台の一部でそういう観測的な機械器具の研究とかそういうものの実験をするんだということを聞いているから、もう正規にそういうことをやる計画があるかということを聞いたのです。
  61. 吉村順之

    政府委員(吉村順之君) 御質問放射能の雨が降るという予報でございますが、これは現在の科学技術では非常に困難でございまして、そこまではやり得ない状態でございます。現在では放射能の雨が降りまして、測定してそれを発表しておりますが、なおその測定については新しい機械とおっしゃいましたが、実は気象研究所の方で研究しておりまして、最近放射能ゾンデといいまして、気球を上げて、高い空気中の放射能どもある程度測定できるようになっておりますので、そういうものを今後使って、その汚染度を早くとらえて発表したい、こういうように考えておるわけでございます。
  62. 山下義信

    山下義信君 それは中央気象台で実施するのですね。今度実施するのですね。
  63. 吉村順之

    政府委員(吉村順之君) それは現在の厚生省やその他関係の方と打ち合せをやっておりまして、実はまだ最近そのことが可能であることがわかりましたので、今度予算措置をやりまして、できるだけ早く間に合せたいと、かように考えておる次第でございます。
  64. 山下義信

    山下義信君 私の質問はそれであったのですから、それでようございます。今の過去の報告は、資料として委員会に配付して下さればそれでよろしいです。
  65. 相馬助治

    相馬助治君 一点だけ。何ですか。それは非常に予報は困難だということですが、それはまあ困難であるには違いないが、私どもしろうとが雑誌、新聞、ラジオ等から入れたニュースだけででも、大体台風の通過する道に沿うて日本の国土の上に襲ってくる。だから、ある一定の場所に進んでくる風が持っている放射能と、それからその進路とを明確にすれば、大体の予報は可能であると、こういうふうに何か私新聞で読んだように思うのですが、それを今から各課長と相談をして、それから予算をとってということじゃ、ことしのことにはまるきり間に合わぬと思うのだが、いつ予報をやり得る見込みですか。
  66. 吉村順之

    政府委員(吉村順之君) 予報としまして、先ほどお話がございました台風の進路と、大体大気の変動が同じように動いて参りますので、それに乗って多分原水爆の灰が飛んでくるだろう。そういうような大体の予想はつくのでございますけれども、どの辺にいつくるかというはっきりしたそこまでの確かさは、それはつかみ得ないのでございます。そういうような傾向にあることは申し上げることができると思います。そういうような実情でございまするので、なお南方方面におきます気流等につきましても、今後資料を取りまして、船その他へ気象放送をやります際に、加えてそれを発表する予定であります。
  67. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  68. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をつけて下さい。  委員会はこれで暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩    ————・————    午後一時五十七分開会
  69. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それでは午前に引き続きまして、社会労働委員会を再開いたします。  先に派遣委員報告議題といたしたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 北鮮地区引き揚げ実情調査のための派遣委員報告をお願いいたします。
  71. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 このたび北鮮地区からの引揚者を出迎え、かつその事情を調査するため、長島、竹中両委員が舞鶴に出張して参りましたので、その概況を御報告申し上げます。  日本の出迎え船を待って、北鮮の東海岸にある遮湖というところに集結していた引揚者三十六名が海上保安庁の練習船こじま丸に乗船して、去る二十二日午後三時舞鶴に入港帰還いたしましたのであります。  北鮮地区からの引き揚げは、終戦後昭和二十二年、二十三年にかけて三回、約二千三百名ほどありましたが、二十三年七月以来とだえていたのでありまして、今回は約八年ぶりの引き揚げであります。  今回の引揚者は十六世帯三十六名でありますが、そのうち子供が十八名で、おとなは男子が一名、婦人が十五名で、その大部分があちらで朝鮮人と結婚していたのが、あるいは夫の死亡、これは六世帯、夫の行方不明四世帯、あるいは離婚した者、これは三世帯などであります。なお妊婦——妊娠しておる婦人も二名おります。また、そのうち満州から北鮮に移動してきて  いた者が四世帯ありますが、他は従来から北鮮に住んでいた者であります。  今回の引き揚げは北鮮赤十字社の事業として行われたのでありますが、日本の出迎えに行った一行に対しても非常に友好的で、いろいろ歓迎の催しもあったようであります。しかし、入港、出港の手続が非常に厳重で、北鮮の軍艦が沖の方まで警備するという状態であり、そのために出港の予定が約  一日半おくれたのであります。  引揚者の北鮮での生活は、精神的な面は別として、衣食住についてはさほど不自由もなく、特に昨年九月以来待遇が非常によくなったとのことであります。  今回帰還した者は、非常に日本に帰ることを熱望していた者でありまして、中には日本の土を踏めば死んでもよいという人もあったとのことであります。遮湖港に集結していた者の中にも帰国を希望しない者もあり、そういう人は帰還しなかったのであります。  今回の引揚者に対しては、おとな子供を問わず、一人あて米ドル百四十ドル、約五万円ずつ支給し、それを持ち帰ることを許可しております。  引き揚げ途中は、引揚者相互も非常にむつまじく、海上も静かで和気あいあい裏に舞鶴に入港したと船長も喜んでおりました。  今回の引揚者の特徴として、日本に帰国後落ちつき先の確定しない者、全然ない者が多く、これらの人々は非常に将来、今後の生活に不安を抱いております。この点団長、また日赤外事部長、出迎えに行った日赤の代表者、あるいはこじま丸船長から特に国会においても尽力してもらいたいという要望がありましたので、政府におかれましても、適当な御措置をしてもらいたいと存じます。  以上簡単でありますが、報告を終ります。
  72. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 別に御発言がなければ、ただいまの報告を御了承願うことにしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  74. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  なお前回委員会において、療養費の問題についての山下委員質問について、次回に厚生大臣から発表せられることとなっておりましたので、この際、厚生大臣からの御発表を願いたいと思います。
  75. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 前回の当委員会におきまして、山下委員その他の委員から、健康保険法第四十四条に規定してありまする療養費払いの周知方に関しまして、厚生省のこれに対する所見を求められておりましたので、この機会厚生省といたしましての所見を申し上げたいと存じます。  つきましては、保険局長から所見の発表をいたしたいと思います。
  76. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 専門的なことにわたりますので、私から申し上げたいと思います。  健康保険法第四十四条療養費払いの基本的な考え方、解釈ということにつきましては、前回委員会で大臣より御答申し上げました通りでございますが、さらにその具体的な例等について重ねてお尋ねがございましたので、お答えを申し上げたいと存じます。  その具体例のおもなるものをあげますると、おおむね次の通りでございます。まず(1)といたしまして、療養の給付をすることが困難な場合、(イ)、(ロ)、(ロ)と分れますが、(イ)といたしまして、輸血用の生血代、生血代につきましては、医療機関に供血者の準備がございませんために療養の給付ができませんので、療養費払いの取扱いということに相なります。  それから(ロ)といたしまして、看護、移送の給付につきましては、これも同様に現物給付の組織がございませんために、療養費払いの取扱いと相なります。  それから(ハ)といたしまして、僻地あるいは離島等であって、保険医療機関がないために非保険医に受診した場合も、療養費を支給するという取扱いに相なります。  それから(2)といたしまして、緊急やむを得ない場合の具体例でございますが、それの(イ)といたしまして、吐血、胃痙攣等の緊急な病状で、最も手近な医療機関に診療を受けざるを得なかった場合で、そこが保険医でなかった場合。  (ロ)といたしまして、交通事故で負傷をし、もよりの医療機関にかつぎ込まれた場合、そこが保険医でなかった場合、以上が緊急やむを得ない場合と考えられます。  それから(3)番目に、その他やむを得ない場合、それの(イ)といたしまして、入院を必要とする病状であるが、保険医療機関はいずこも満床で入院できない場合に、やむを得ず非保険医のところに入院した場合。  (ロ)といたしまして、特殊の手術を必要とするけれども、その手術ができるのは保険を取扱わない特定の病院だけである場合に、その病院で診療を受けた場合。  (ハ)といたしまして、これは御質問の中で別に指摘されたのでございますが、優生保護法の指定医との関係でございます。優生保護法では指定医制度をとっておりまして、指定医でなければ人工妊娠中絶を行うことができないこととなっておることは御存じの通りでございますが、遠隔地でなければ保険医である優生保護法指定医がいない場合に、付近の非保険医である指定医について人工妊娠中絶を受けた場合。もう一ぺん繰返して説明的に申し上げてみますると、遠隔地でなければ保険医である優生保護法指定医がいない場合に、付近の非保険医である優生保護法の指定医について人工妊娠中絶を受けた場合。  以上がその他やむを得ない場合というふうに考えられるわけでございます。  以上分けて、療養費払いが認められる具体例のおもなるものをあげましたのでございますが、次に、支給されないこういうふうな場合には支給されないという具体例のおもなるものを申し上げてみたいと思います。  (イ)といといたしまして、保険医に受診することが可能であるにもかかわらず、隣近所の非保険険の方が便利であるという理由で、非保険医に受診した場合。  それかろ(ロ)といたしまして、非保険医であるが、他の保険医よりも評判がいい、あるいは名医だというふうな理由で、その非保険医に受診した場合。まあ評判がいいとか、名医だというわけで非保険医に受診した場合。  (ハ)といたしまして、保険医が近くにあるにもかかわらず、そのお医者様が顔見知りであるとか、あるいは従来からのかかりつけであるとかの理由で、非保険医に受診した場合。  (ニ)といたしまして、付近に保険医がいないから、非保険医に受診しても療養費が支給されると一応考えまして、保険医療機関よりはさらに遠隔の非保険医に受診した場合。  かような場合には療養費払い、四十四条の適用がなきものと、そのおもな、気のつきましたような事例を列挙御説明申し上げた次第でございます。  療養費払いの取扱いはおおむね以上の通りでございまして、この取扱いの法律解釈は、保険医の総辞退というようなことによって特に変更され、拡張解釈されるものではございませんが、従来のように、保険医療組織網が十分でなくなりますために、前に申し上げました療養の給付をすること困難な場合の(ハ)に相当する事例並びにその他やむを得ない場合の(イ)及び(ロ)に相当する事例が多くなるものと予想がされます。  すなわち(イ)といたしまして、付近に保険医または保険者の指定する者がなく、最も近いところで交通機関を利用しても長時間を要するような場合は、療養費が支給される。  ロといたしまして、保険医または保険者の指定する者について診療を受けようといたしましたけれども、いずれも患者が多過ぎて、診療能力がないという理由で、診療を拒否されたことが明らかな場合、これも療養費の対象になり得ると思うのでございます。  ただし、ここで補足的に、もちろんのことでございますが、つけ加えて申し上げておきたいことは、多分混んでいるだろうということで、非保険医にかかったという場合は、療養費払いの対象にならないと、かように考える次第でございます。  それから(ハ)といたしまして、これまで入院していた保険医が辞退した場合、病状から見て転医が不可能な患者は、その病状が続く限りそのままそこに入院していなければなりませんので、この場合は療養費が支給されると考えます。また、病状から見て、転医が可能でありまするときは、患者の方で一時的にも現金支払いをしたくないという患者の要望のありまする場合には、保険医療機関に転医できるように、できる限り保険者としても努力いたすべきである、いたすつもりでございますが、なおかつ、いずこも満床で転医できないというようなときは、やむを得ずそのまま入院していなければならない結果と相なりまするので、かような場合にも療養費が支給されるものと考える次第でございます。  以上が、大体の具体例等についておもなるものを列挙してみよという御質問に対するお答えでございまするが、その他二点ほど、やはり療養費払いに関係をいたしまして、御質問がございましたので、つけ加えてお答えを申し上げておきます。  その一は、今回の保険医総辞退というふうないわゆる普通でない事態が、四十四条にいう「緊急其ノ他己ムヲ得ザル場合」と全般的に認められるかどうかという問題でございますが、「緊急其ノ他己ムヲ得ザル場合」とは、被保険者が保険医について、療養の給付を受けることができなかったことについて、緊急やむを得なかったかどうかを判断するのでございまして、保険医総辞退が緊急状態かどうかということではなのでございまするから、今回のような保険医総辞退をもって、すべて療養費払いが認められるという解釈には相ならぬものと考えます。  それから第二点といたしまして、療養費として支給される額についての御質問がございましたわけでございますが、療養費として支給される額は、健康保険法の第四十四条の二の規定によって定められているのでございまするが、保険医について受けた診療が、もし保険医から受けたとすれば、療養の給付としてその保険医に支払われるであろうところの療養に要する費用、むずかしく申し上げましたが、これを要約して申し上げますならば、療養担当規程及びいわゆる点数表によって算定されるもの、こういうものでございますが、この費用から一部貨担金を控除した額と、実際に非保際医に支払った額とのうちいずれか低い方を支給するという取扱いに相なっております。従って非保険医が慣行料金で診療をした場合に、被保険者はその診療が社会保険診療であったものとして算定される額を療養費として支給されまして、慣行料金と支給額との差額は被保険者の自己負担ということに結果的には相なるわけでございます。  大体以上の点が前回宿題にされました御質問の点に対するお答えでございます。
  77. 山下義信

    山下義信君 私はこの内容の質問は別といたしまして、ただいま御説明になりましたこれらのいわゆる問題は、当面の保険医総辞退の場合、保険医でなくなった医者が治療費がどういうふうに受けられるかという場合でありますが、この原則は、いわゆる基準は今御説明になりましたが、これは取扱いとしては、この基準の取扱いとしては、これは厚生省の方の規則というか、施行令の中にもないので、施行細則の中にもないので、何にこれを入れていくか、施行細則の中に入れていくか、何に入れていくか、通牒で明確にするか、これを正規の規定とする場合にはどういう扱いにされるという考えですか。
  78. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 従来の断片的と申しますが、疑義解釈等の通牒がございまするし、いろいろ不服の問題が起りました際には、審査官並びに審査委員会の不服処理の具体例の事実がたくさんございます。まあ行政上の判例でありますとか、そういうふうなものを総合いたしまして、今のような御説明を申し上げたわけでございまするが、これを総合的に流すといたしますれば、通牒として、法施行上の通牒として私どもは取り扱ったならば妥当なのではあるまいか、かようにただいま考えております。
  79. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今一通りお伺いして大体わかったようでもありますが、この中で、さつき局長が説明された中にもあったのですけれども、もう一度……。はっきりしないのですが、特に今の三つの場合ですね、この総辞退というふうな不幸な事態がもし万一発生……、実際に総辞退に直面するような事態が起った場合に、どの条項、1、2、3と(イ)、(ロ)、(ハ)とあるわけですが、どの条項が特にこの総辞退という状態を考慮してあげられた点になりますか。
  80. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私といたしましては、最初に何と申しますか、具体例のおもなるものを一応法律の各段に、前段、後段等に従いまして申し述べ、さらに一番最後のところで、大体その原則は以上の通りであるけれども、今回のかりに事態が発生したというふうな場合には、こういうふうなものが予想されるであろうという意味で、一番最後に(イ)、(ロ)、(ハ)と三項目並べたわけでございます。従いまして、特にどの項が総辞退に対して云々というふうな実は考え方をいたしておりません。今申し上げました前段の原則的なもの、それから一番最後に申し上げました(イ)、(ロ)、(ハ)、この三つが総合的に総辞退というような事態に対しましても当てはまる項目ではないかと、かように考えるわけでございます。
  81. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 この前の委員会のときに相当数のケースが、ふえるものと思われるという御答弁があったのですが、これの中で、それはどれに当てはまりますか。
  82. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 先ほどの御説明にも申し上げましたように、療養の給付をすること困難な場合の(ハ)に相当する事例、それからその他やむを得ない場合の(イ)及び(ハ)に相当する事例が多くなるかと私ども予想をいたしておるわけでございます。
  83. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 この支給されない場合というその次に(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と言われたと思うのですが、この(イ)の遠隔の地というところはふえると思われませんか、ケースが。もう少しわかりよく言えば、私はこの総辞退が発生することを望んでおるのではなくて、むしろこの総辞退というものをなるたけ五月一日以前に解決しなければならないというふうに考えておるものですが、万一の場合のことですが、たとえば、京都府のごときはほとんど九割以上の医師が総辞退してしまいますと、ほとんど非保険医ばかりになる。保険医が何十人、何人になるかわかりません。京都は遠隔の地ですから、一人いると仮定しますと、すべてこれ遠隔の地になるわけですが、大体その近所の人以外には遠隔の地になりますが、そういうことをこれは言っておられるわけでしょうか。
  84. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私はそういうような場合は、療養費払いの対象にならないと申しまして(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)とあげました中に遠隔の地、遠隔という言葉が入っておりましたが、それはこういう意味でございます。付近に保険医がいないから、保険医でない方に受診してもらっても療養費が支給されると本人が考えている。しかし、途中にある保険医療機関を飛び越えて、さらに遠くの非保険医にかかったというふうな場合にはこれはだめなのですと、それならば自分の身近になくても、より近いところに保険医なりあるいは保険者の指定するものという保険を扱う機関がある。それをさらに飛び越えてずっと向うの保険医でない方のところへ行って診療を受けたという場合にはだめでございますというときに、遠隔という言葉を使っておるのでございますが、そこはさような意味で申し上げた次第でございます。なお、先生の御質問の保険医に行くのが遠くなるような場合がふえやせぬかということでございますが、それは確かにさような場合が言えるということを先ほどの御説明の中にも全般的に申し上げております。
  85. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 京都の例だけを言うとなんですけれども、特殊な事態に対することを念をおいておきたい。万一の場合、万々一の場合、途中で飛び越えるにも何も保険医がいないわけですね。全部が保険医でなくなったわけですから。そうしますとどこの程度が遠隔ということになるか、まあ病院の隣——公立病院の隣の人は遠隔とは言えないでしょうけれども、まあ一里、二里というようなところがたくさんあるわけです。京都市の中には——京都市といっても叡山の山の奥まであれは京都市になっておりますから、八瀬の大原女のおるところもあれはみんな京都市です。そうしますと、府立病院だとかいうようなところに、あるいは療養所に行くといっても飛び越えるも何もない。初めから遠隔なのですが、そういう場合には遠隔の地という場合がほとんど全般的に遠隔の地、その近隣の人は別として、そうでないところは大体遠隔の地になってしまいますが、そういう場合のことも考えられてこの遠隔の地というふうな、飛び越せない遠隔の地です。そういうことをはっきりしておいていただきたい。
  86. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 京都の場合におきましても、たしか保険医として指定を受けておられますお医者様の八〇%程度がお出しになっておるように記憶しております。それから別にいわゆる保険医の指定を受けておらないで保険を担当しておられまする医療機関が相当多数ございます。いわゆる保険者の指定するものというものがございまするし、なおまた辞退届を出されました場合におきましても、前回委員会で申し上げましたように、たとえば、一つの医療機関に五人のお医者様がおられてその中で三人がお出しになって、二人は残っておるというふうなものもございまするので、それらのことを総合的に考えました場合には、今竹中先生仰せのようにもうほとんど全部が遠隔の地になってしまうということは申せないかとは存じまするけれども、しかし、従来のように保険医療機関というものが整備をしておりまする現在の状態から比較いたしますれば、非常に遠くて、被保険者のために非常に何と申しますか、この四十四条の適用を受けるよう状態が、ケースが多くなるであろうということは申せるかと存じます。ただそれが一体何里と言われましても、これは交通機関の発達をしております所もございますし、徒歩で行かなければならない所もございましょうし、一がいには何里とは申せないと存じます。さらにまた、先般の委員会でも他の委員の先生から、病気の状態によってもいろいろ違うのじゃないかという御指摘がございましたように、さような病気の状態に応じましてもこれはまた別に考えなければならないということに相なりまするので、そこは画一的に一つのものさしはなかなかできがたいものとかように考えまして、先ほど申し上げましたように、最も近い所で交通機関を利用しても相当長時間を要するような所という程度の筋しか抽象的には引き得ないのじゃないか、さように考える次第でございます。
  87. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一つお尋ねしますが、補足して二つだけ言われて最後に御説明になったのですが、この四十四条の緊急の場合というのは、総辞退というこういう事態を前提としたものではない、それは被保険者が医療を受ける、治療を受けられないところの緊急な事態だと、そういう意味における緊急な場合という解釈というふうに今局長は言われましたが、それはその通りと思います、法律上。ところが、それが被保険者が治療についてもし総辞退というようなことが起れば、それ自身がすでに緊急な事態だというふうに現実的にはなるわけですが、そういうふうに解釈して差しつかえないと思われますか。
  88. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) その点につきましては、先ほども一応具体例をお示しいたしましたあとで、その他の御質問として二つほどワクの問題、今、竹中先生が御指摘になりました問題とについてお答えをいたしたのでございます。今、先生が仰せのように保険医の総辞退、まあ総辞退と申しましても大部分が辞退をしておるという状態ですが、そのこと自体が常でない事態であるから、従ってその事態全体を四十四条の「緊急其ノ他己ムヲ得ザル場合」というのにすぽっとはめ込んで、この事態であれば全部療養費払いをするのだ、四十四条が適用になるのだというふうな解釈は法律上成り立ち得ない、四十四条の解釈といたしましては、個々の患者が保険医について療養の給付を受けることができなかった、さような場合に、そのできなかったことが緊急やむを得なかったかどうかをこの法律は規定しておるのでありまして、今仰せのように、全体がもうこの事態に当るんだ、だからかような事態が起ったならば、全部四十四条がさような解釈から全体に適用されるのだ、こういう考え方は成り立ち得ないと私どもは信じておるのでございます。
  89. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 その解釈は私は賛成しておるわけなんです。賛成というか、肯定しておるわけなんです。ただ被保険者の立場から、被保険者の緊急やむを得ざる場合ということが相当ふえる、辞退が行われた場合は相当ふえる、その点を確認されて、それは結局緊急やむを得ざる事態、医療についての緊急やむを得ざる事態を内容的に構成しておるということを私も認めるわけですが、当局としても認められざるを得ないだろうと、私は結果的にはそうなるだろうということを念を押しておるわけなんです。  それで最後にお伺いしたいのですが、今御説明になった点、私もちょいちょいと要点だけ書いたのですが、よくまだわからないのですがね。これは患者が一体どういう場合に療養費払いができるだろうかということについて医療不安を起しておるわけなんです。そこでこれをはっきり患者にもわかるように一つ書類にして公示される方法は、どういうようにして徹底されますか。今これを私どもこのままいいとか悪いとか言うているのじゃないのですが、少くともこういうような点があげられておるわけですが、もっと患者にわかりやすく医療不安を除く意味で、これを徹底さす方法をお伺いしたい。
  90. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) かようなことにつきましては、先ほど山下先生の御質問に対してお答えを申し上げましたように、私どもとしましては、都道府県知事に対して、必要があれば通牒というふうな方法によりまして伝達をいたしたい、かように考えておりますが、それを一般被保険者にどういうふうに周知させるかということにつきましては、これは結局広報と申しますか、啓蒙宣伝と申しますか、そういうふうなことに相なると存ずるのでございます。従いまして、その方法は、それぞれその地方々々におきまして、最も効果的な方法で都道府県知事が啓蒙宣伝をいたすものと私どもは考えております。
  91. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 私どもきょうお伺いしただけでまだはっきりのみ込めない点が多いのですが、早急にこれを何か書き物にして配付していただきたいと思うのですが、あした聴聞会もありますし、そうしていただけますかしら。
  92. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) ぜひともさようにしろという委員会の御要求でございますれば、もちろんこれをガリにでも刷りましてお渡しいたしたいと存じますが、今申し上げましたように、私どもとしましては、非常に実は委員会の御要望が至難な御要望でございまして、前回も、非常に困難でございましたが、しかしながら、大臣がああいうふうに御答弁をなさいましたので、事務当局としては大いに努力してみますと、こういうわけで今日まで時間が足りませんところを一生懸命になって実はやったような次第でございまして、できましたならば、今お答えをいたしましたことが速記にも残っておりまするので、公式なものとしてはそれでお済ましいただけますれば、私ども事務当局としては非常にありがたい、かように考えるわけでございます。さようにお願いできませんでしょうか。
  93. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 これは参考のために、私はなるべくあしたに間に合うように写しでもほしいと思うのです。ガリ版でも何でもけっこうですが。
  94. 山下義信

    山下義信君 今資料としてのプリントの要求があったのですが、私も大体それがよかろうとは思うのです。よかろうとは思うのですが、これは委員会全体としても考える必要があるのじゃないかと思う。一応政府の方針を説明して、この取扱いは通牒その他で分けのものにする、こういうことの方針はわかったのですが、中身については委員会はまだ検討しなくちゃならぬ。場合によっては、これが正規の布告になるまでに、われわれ委員会の審議の模様によりましては、専門の議員同僚諸君もおられるのでありますから、どういう意見によってあるいはこの内容について、また政府に対して変更の要求をしなくちゃならぬことがないとも言えない。一ぺんプリントにすると、しかもそれが外に出てゆくということになると、大要はこういうふうな程度なら私は一応はいいと思いますが、プリントになりますと、委員会があたかもそれを承認した、もう審議が済んでしまったような印象を与えてもいけないと思いますので、非常にそういう点に慎重な態度をとるという意味におきましては、私は、どうでしょうか、われわれが聞いておいて、われわれがメモをしておいたという程度できょうのところはいくのがいいのじゃないかという気持がするのですが。
  95. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 これは何も最後的なものだとも、決定したものだともいう意味じゃむろんないのです。私は参考のためにと言っているのですが、いろいろ質問された折りに、自分のメモではどうもたよりないのです。今の説明を筆記することができなかった。それで大要でも何か書いておいていただく、そういうものがあれば、かえって間違いがなくてその方が誤伝がないだろう、そういうところから求めているわけです。
  96. 相馬助治

    相馬助治君 私はこの段階では、山下委員の説に賛成なんです。と申しますのは、間違いがなくこれで押しつけられたのでは実にたまらぬので、私はケース・バイ・ケースというものの答えが、今のような答えであることに先ほどから憤慨しているわけです。というのは、健康保険法の立法精神から申して、第四十四条の規定というものは、当然健康保険医の総辞退などという事態を想定もしていないし、もちろん期待もしていない立法であることは、これは明瞭ですけれども、しかし、あの四十四条の規定を設けたというのは、網の目のように張りめぐらす健康保険医の制度ではあるけれども、そこで漏れる場合にはということを考えて非常に温情あふれる精神があって、そういう不測の事態に援用するためにあの規定が設けられていると思う。ところが、厚生省がこの問題に対する、われわれに対する回答が統一されていなかったために、十九日、二十日、そうして二十四日の委員会を通じて、最終的にケース・バイ・ケースだというのでは問題は解決しないから、しからばケース・バイ・ケースというならその具体例を示せという山下委員の資料要求と、こうなっているのであって、私はこれはあくまで資料だと心得ている、これでもって各府県知事に最終的な通達をするのであるとするならば、これはもちろんコンクリートされたものでない、委員会の求めによって事務当局としてはかくのごとく今のところは考えているというものであろうと、かように了解しておるのでして、そういう意味では私はやはり刷りものに刷って、何か権威のあるもののように、そしてこの委員会の審議を経たものであるかのごとき手続をとることには全く疑問なきを得ないので、この段階では私はこの取扱いは山下委員ようにしておくことが妥当であろうと、かように考えるわけであります。
  97. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 えらい繰り返すようですけれども、これは総辞退というような事態を早急にやはり何とかこれはしなくちゃならないというような、これも日が迫っておるのです。これを慎重審議しておるというのは……、審議しなければならないのです。これから審議しなければならないのですけれども、一応こういう厚生省の考えということをやはり伝えなければならない、厚生省報告を求めたのですから、それに対して厚生省の意見がこういうように出てきたのですから、これをメモの形でわれわれが持っておるということは、何も差しつかえはないと私は思います。
  98. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  99. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。  引き続いて御質疑を一つ願います。
  100. 相馬助治

    相馬助治君 今問題になっておる厚生省が示した具体案の問題ですが、どうも私は総括的に見て、健康保険法の立法の真精神を体した解釈だと思えないような気がするのですが、厚生省自体は、やはり時間は短かかったけれども、正規の省議を開いて、この案をきめて、ここで御説明になったのだと思いまするが、総括的にお尋ねをしますが、総辞退というようなことの発効のないことを天下の者は期待しておることは事実ですが、厚生省自身は、ただいま保険局長説明通り、ある程度コンクリートされたものだというふうにお考えですか。前後の事情、その他を勘案して、今後もベターなものに直していこうとするまだ修正の余地をもったものという態度で、ともかく当委員会山下委員の要求に基いて、本日は説明したというものでございますか。この辺を、私はあげ足をとろうとするのじゃなくて、どういうお答えでも、それはけしからぬということは申しません。ただ率直にその見解をこの際承わっておきたいのです。
  101. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) ただいま御説明を申し上げましたのは、あくまでも四十四条の適用は、前回申し上げましたように、ケース・バイ・ケースで適用すべきものである。これはもう動いておらないのでございます。そんなことを言ったんではわけがわからぬじゃないか、できるだけ一つ具体例をあげてみろ、こういう仰せでございましたので、私ども前回委員会から本日までの時間的な余裕の間に考えつきました具体例というものを、できるだけ、何というか、ものさし的に整理をいたしまして、そうして申し上げたわけでございます。従って想定される具体例というようなものがこれ以上ないとかなんとかいうふうなことではございません。具体例としては、ケース、ケースとしましては、いろいろと千差万別のケースがあるだろうと存じます。しかしながら、私どもとしましては、大体以上先ほど説明をしましたような中に、一応全部含まれてしまうのじゃないかというふうにはただいま考えておりますけれども、しかし、また別の例が絶対にないというふうなことは申し上げるつもりもございません。
  102. 相馬助治

    相馬助治君 現在示されたケース・バイ・ケースの判断の当否をしばらく私はおいて、心配になりますのは、具体例と具体例の間の問題、あらゆる場合が、具体例が持つところの範疇と範疇の間に空間がない、こういうことは、これは論理的に主張できないわけである。ケース・バイ・ケースということになりますれば、もうこれは当然ある別なケースも予定しなくちゃならないわけです。その新たなるケースが判断に非常に困った場合には、かりに知事に通告してしまった後において、ある府県で生じた場合には、最終的な判断はどこのだれが、どのような責任をもってやりますか。
  103. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 今申し上げましたような例で、これは大丈夫だというものは、これは大丈夫療養費払いの対象になる。だめだというものに当ればだめである。ところがその中間的なと申しますか、かような例が起りまして、これをどうするかというようなことになりますれば、これは結局保険者が認定をするわけでございまして、従いまして、政府管掌では一応知事、具体的に申せば保険課なり、保険官署、出張所というものが、知事の補佐役として認定をいたすわけであります。組合管掌におきましては、各組合が認定をいたすわけでございます。それで、その認定をいたす際にいかがいたしたらよかろうかと判断に迷うような問題は、まあ従来の例によりますれば、これは中央に聞いて参るというのが普通の法律運用の例であります。さような手続を踏みまして、それがもし全体の府県に知らせるような必要のあるティピィカルな一つの例であるということになりますれば、これを例規の通知としまして照会をしました県に回答をいたすと同時に、他の府県にも参考のために流してやる、こういうことが実際の行政運用の実情でございます。さような手続を経ました上で、さらに実際に療養費払いを切られたとかなんとかいう問題の、もうすでに保険者が認定したあとのトラブルの問題につきましては、これは前回申し上げましたように、地方に保険審査官それから中央に保険審査委員というものが別の法律で設置をされておりまして、これがさような不服処理の機関でございます。ここに文句を言ってくるということに相なるわけであります。
  104. 相馬助治

    相馬助治君 法律の具体的な説明をして、その運用の規定をきめて、これを知事に通達するということになりますと、厚生省が出す一片の通牒は、法律と同等の効力と制限力とを持っておるわけだと思いますが、こういうふうなものを厚生省は、厚生省自体が持っておりますところの各種審議会、そういうふうなものにも諮問することなく、かつまた医療担当者でありまする薬剤師協会、医師会、歯科医師会、こういうふうなものの代表の意見を聞くこともなく、しかもまた、国会に対しては報告程度によって、このようなものを地方長官に通達として出し得る権限を厚生省はお持ちだとかように考えておりますか。この場合妥当とお考えでございますか。
  105. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 法律で定められておりまするその法律を執行いたすのは行政府の責任でございます。従いまして、この執行についての諸般の通達を出しますることは、これはあらゆる法律に関連をしてあるわけでございます。従いましてその通達等を出す場合に、特に諮問機関に諮問をして、後にさようなことをしなければならないというものにつきましては、今回御審議をいただいておりまする健康保険法の中にもたくさんございますけれども、それぞれ法律に明記がいたしてございます。従いましてこの場合におきましては、私どもといたしましては、法律運用の責任を持っております行政官庁が下級の行政官庁にこれをいろいろ通知をいたしますことは当然許されたことであり、またなさねばならぬ責務だと考えておるわけでございます。相馬先生の御質問の趣旨にぴたりとお答えしたことになるかどうか存じませんが、私どもように考えております。
  106. 相馬助治

    相馬助治君 おっしゃっていることには、私は疑義がありますが、私の聞きたいと思うことに局長は答えておるわけです。通常の場合は、私は立法府の関連からさようであろうと存じますが、このたびは特段、特殊な場合だと思うので、念のために伺ったのです。私は質問をここで打ち切ります。打ち切りますが、私は一言見解を添えておきます。と申しますのは、この委員会にこのことが報告されたが、私どもはこれをもって厚生省が示した法解釈が妥当なりと認めておるものではないということです。少くとも私は認めておりませんし、他の委員においてもこれはこの資料をじっくりと考えた場合にそれ相当の意見があろうと思います。従いましてこの問題については、意見その他は私は保留いたしまして、厚生省自体が早まったことをしてくれないように念のためにそれだけの御注意を申し上げて私は一応この問題に関する質疑を打ち切っておきます。
  107. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  108. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。
  109. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 前回委員会におきまして、山下委員から、第二十二国会におきまして衆議院で修正削除された個所を今回これを認め、政府原案を修正しなかったのはどういうわけかというしごくごもっともな御質問がございましたが、その点につきまして重ねてお答え申し上げます。  御承知ように、第二十二国会におきまして提出されました政府案は、改正点が六点でございました。その中で第一点の被扶養者の範囲、第二点の標準報酬の等級区分の改訂につきましては全部削除いたしました。第三点の九条。九条の二に規定されております検査関係の規定につきましては、九条の二にありました医療施設につきましての立ち入りを削ることといたし、修正をいたし、他の三点につきましては、原案通り承認いたされたのであります。そうしてその無修正の個所につきましては、今回も提案された原案を修正いたしておりません。また立ち入り云々の検査関係の規定につきましては提案理由で申し上げましたごとく、ほぼ前回考え方を踏襲いたしておるのでございます。従いまして、山下委員の御趣旨にお答え申しますのには、被扶養者の範囲及び標準報酬に関する改正規定を削除いたしました前回考え方と、今回は原案通りといたしました考え方との差異を申し上げればよいのかと存ずるのであります。前回この規定を削除いたしました理由につきましては、第二十二国会で衆議院では次のように述べられております。すなわち「健康保険法の修正の第一及び第二は、被扶養者の範囲及び標準報酬を現行通りとするものであります。これらの修正は、健康保険が赤字で困難をきわめておりまするので、それがため、いずれ近い将来において、健康保険財政の再建のための根本的方策が講ぜられて、新しく法案が提出される見通しでありまするので、これら改正部分については、その際再考慮することが至当であると考えたによるものであります。」云々とございます。これは昭和三十年七月三十日における衆議院社会労働委員会の会議録によるのでありまするが、要するに内容の是非の問題よりもむしろこのような改正は、健康保険財政再建の根本的方策が講ぜられる際にあわせて考慮すべき問題であるといたしまして削除されたわけでございます。今回は、今回の改正案が健康保険財政再建のための根本的、総合的方策を講じておる案でありましたので、法律案中にあらためてこの点に関する改正が取り上げられていることにつきましては異論がなく、その結果、原案を妥当のものと考えた次第でございます。  次に、事務所、保険医療機関または保険薬局の施設への立ち入りの修正につきまして重ねてお答え申し上げます。立入検査につきましては、前回において申し上げましたように、政府原案、修正案とにも法律的効果は全く同一でありますが、政府原案では、当該職員は事業所、保険医療機関または保険薬局に立ち入ることができると特に項を新にたして規定されておりますために、立ち入りのみが強調されているきらいがあり、関係者に不安と疑念を与え、また、行政庁の乱用を招きやすいような規定の仕方でもありましたので、これを現行法九条の規定と同様に何々「ニ就キ」という表現に改め、関係者の不安と疑念を除いたものであります。しかし、上述のように修正案によりましても、政府原案ないしは現行法と同様に、立ち入って検査することはできるわけでありまして、むしろ不正不当を排除し、適正な保険運営を確保するために立入検査は必要なものと考えているのであります。なお、修正の結果、質問のために立ち入る権限はなくなる、従って質問のみを目的とする立ち入りを拒んでも罰則または指定取り消しの事由にはならないという相違が政府原案との間に出てくるのであります。しかしこれは、質問は検査と異なり、その場所に立ち入らなくともできると考えました趣旨からでございます。
  110. 山下義信

    山下義信君 ただいまの藤本議員の御答弁は、前段は、私が第二十二国会における衆議院の修正の理由、今回それを無修正できたということの理由を承わって、それらの御答弁をいただいたんです。後段は今回の修正点について立入検査のところを修正せられたという点についての御答弁を一括していただいのであります。第二十二国会における衆議院の御態度と今回の御態度との相違につきましては、その問題が出ましたときにあらためて重ねて御真意を伺うということにいたしまして、それで審議は従来に引き続いていたしたいと思いますが、相馬委員が衆議院の方の御修正につきまして総体的な御質問があるようでございますから、私の質疑の途中で関連して相馬委員に御質疑を願いたいと思います。
  111. 相馬助治

    相馬助治君 藤本議員に対しまして、この際基本的な問題について、衆議院修正案のいきさつその他についての質問をしたいと思います。御案内のように現在の日本の議度会制は議院内閣制をとっております。従いまして、政府か原案として出しますためには、当然与党でありまするところの自民党の政調会その他関係機関の一応の基本的な議を経て政府は原案を提出するというのが普通であろうと思います。藤本先生は社会保障関係の政調会の重鎮でありまして、従いまして私はその辺のいきさつをお尋ねするのですが、政府が健康保険法改正の原案を出しまするというと、きゅう然として天下の悪評がこの改正法案に集まりました。そうしますと、衆議院の自民党は何かおためごかしのような顔つきをして、修正をこの程度にしてやるというて政治的な手を打たれたのであります。承わりますところによりますれば、参議院の自民党の諸君は、その修正いまだ完全ならずとして反対されたやに承わっております。そういたしますと、一体政府原案に対して、こういう同じ党の中の参議院側の不満をよそにして、中途半端な修正をあえてせざるを得なかって衆議院の自民党の諸君の苦衷というものは同情に値すると、かように私は考えております。従いまして、政府原案と衆議院修正案の関連、及び衆議院修正案を出さんとするときにおける参議院側の、うそかほんとうか、伝えられる自民党諸君の反対論の根拠、及びこれを取り上げることのできなかった経緯、それらについてこの際大胆率直に御説明を承わって、審議をスムースならしめたいと存ずるので、あえてお尋ねをいたします。
  112. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) お答えいたします。ただいま相馬委員からの御指摘のございました前段につきましては、まさにその通りでございます。やはり政党内閣でございますから、政府の原案に対しましては政党の態度といいますか、政策といいますか、これを十分に盛り込みまして法案化する。財政的の措置においてももとよりでありますが、さような態度をとりまして一応政府原案ができたのでありますが、しかし今回の改正なるものは、御承知ように、医療行政また医療保険といたしましてその中核であり、中心課題でありまする健康保険の問題がきわめて重大に画期的に、取上げられるためにまた今後の社会保障制度が全面的に確立推進される上に一大転機となるものでありますので、私どもは非常にいろいろな方面の御意見を慎重に拝聴いたしまして、そうして直すべきところがあればいつでも直すというような態度を始終考慮いたしておりました。また全国的にいろいろな方面から御陳情もいただき、そうして貴重なる御意見も拝聴いたしております。でありますので、一応、お示しのように、党といたしましては政府原案ということになりましたか、その後相当日もたちましたし、今申し上げましたような趣旨によりましてあれこれと天下の声といいますか、御意見といいますか、それをしんしゃくいたし、今回のような修正の挙に出たのでございまして、あえて政府原案に対して、非難があったから党があわててこれを修正したということではございません。  なお参議院からおいでになっていただいておりました党の議員諸君からいろいろの御意見がございました。で私どももこれを尊重いたしまして、できるだけこれを修正その他に尊重いたしたいと始終考えておりました。しかし党の政務調査会の社会部会、審議会、それから総務会等におきまして、これでいこうというような最後の決定をみましたので、ここに党としての修正の提案と相なった次第でございます。
  113. 相馬助治

    相馬助治君 審議に便ならしむるがために、いささか執拗で恐縮でございますが、もう一ぺん突っ込んでお尋ねしたいと私います。公的な答弁としては、ただいま藤本議員おっしゃる通りであろうと私は考えておりますが、この健康保険法の一部改正法律案なるものについて、世論の声に耳を傾けるといたしまするならば、当然これは、この提案を撤回すべきであったと私どもは思えるのです。よしんば撤回できなかった場合には、むしろこの際一歩進んで、現在三千万人といわれる社会保険制度の恩典に浴し得ない国民を対象とした新たなる別個の立案をいたし、それとこれとの統一連関を保って、この際日本の社会保険の制度を抜本的に整理し、改正し、あるものは進展せしめて、しこうしてそのような統一案を持って天下に示すならば、私どもといたしましても、また医療担当者でありまする医者、歯科医師、薬剤師その他の人々におかれても、また直接患者でありまするところの一般国民においても、納得するものがあったと思うのですが、いろいろ理屈は言っておりまするけれども、赤字救済の目的をもって、このような改正案を提案したというところに実は大きな問題があろうと、かように考えておるのでございまして、天下の声に耳を傾ければ、この法律案は上程を撤回すべきであったろうと思うのでありますが、この点はどのように考えますか。  また、話としてはそうなのだが、このような事情によって、それは不可能であったのであるというならば、この際それらの点についての立場を御説明願っておいた方が便利だと、かように考えます。  それから、参議院の自民党の諸君は、天下に向っては私たちは反対をしたのだ、衆議院の修正案を不満としているのだ、われわれにはわれわれの腹案があるのだと、かようにおっしゃっていることを二、三耳にいたしました。これは尊敬すべきある同僚議員の言葉でありまするがゆえに、私は単なる強がりのはったりとは思っておりません。従って、参議院自民党が特に賛成し得なかった面というのはどのよう部分でございますか。ただし、これは党内事情であるからして、絶対に答えられないというのでございましたらば、私はあえて強要するものではございませんで、その場合には、自民党というのはさような伏魔殿に類するものであって、吾人の内容をうかがい知らざるところであるとして、今後私は警戒するという意味で、それもただ参考にしたいと思いますので、あえて答弁を強要するものではないのですが、ざっくばらんに承わっておきますると、ははあ、参議院としては、この法律案はこの程度の修正と、この程度の腰だめでもっていけば、こんなことになるなあというある見通しも出て参りまするものでございまするから、私は本来法案を流産せしめんとして努力している一人でありまするけれども、事と次第によってはあえて話がわからないわけでもありませんので、そこらの点についてお聞かせ願えれば、ざっくばらんに一つ承わって参考に資したいとかように存じます。(「非常に誤解があるようですから説明しておいて下さい。」と呼ぶ者あり)
  114. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) また前段におきまして非常に傾聴に値いする御意見がございましてつつしんで拝聴いたしました。お述べいただきましたように、実は私どももこの健保の財政立て直しということを起点にいたし、医療保障、社会保険の全面的な総合的な案を立てまして、社会保障の確立というわが党の重大政策の一環といたしたいと考えまして、社会部会におきましても、党におきましても、この点につきましていろいろ検討いたしておったのであります。また、こういうことのために必要な予算も若干いただいていることは御承知通りであります。でありますから、この根本的な、総合的な、画期的な施策につきましては、いずれ近くまた御協賛を願わなければならぬ時期があると思いますが、現在では今、相馬さんの仰せのごとくその段階には参っておりません、しかし、近い将来においてさような御配慮を賜わるときがくると思いますが、さてただいま参議院のわが党議員との間におきますることについてお述べになりましたが、御承知のごとく、国会は国家の重要な最高機関でありますので、その審議とか話し合いにおいては、決して伏魔殿的なことはあり得ないのであります。従ってわれわれといたしましては社会部会におきましても、それからまた参議院の方々を交えまして、いろいろ御懇談をいたしましたときにおきましても、いつも天下の公器としての使命を忘れず、堂々といろんな意見をいろんな角度から検討いたしましたことは事実でございます。その際に特に参議院におかれましてはその道のエキスパートがたくさんおられますので、いろいろな御意見を拝聴いたしましたが、しかし再々部会その他をやっておりまする間に、おのずといろんな情勢がわかりまして、われわれのこの考え方に対しましては、被保険者の一部負担の範囲拡大といいますか、それの程度というかただ一点を残しまして、他はみな御了承いただいておるのであります。しかし、これまたいろいろ天下の世論といいますか、いろんな御意見がいろんな角度から、従っていろんな方面に出るということになりまして、これはいわゆる天下の世論というのでしょうが、それをお考えになられておられるということもあるかもしれません。しかしとにかく私どもといたしましては、先ほど御注意をいただきましたように、天下の世論それはお聞き及びのような御批判もありましたが、私どもも不断いろいろな方々またその道のエキスパート、そういった方にお会いいたしまして、ぜひこれを推進してくれ、この案を成立してくれというような強い御要望を各方面から承わっておったのでございます。でございますので、今御指摘に相なりましたように、この案は決して取り下げるのでなしに、この程度のものを参議院におかれましても、御慎重御審議の上ぜひとも御協賛を仰ぎたい、かように考えておる次第であります。
  115. 山下義信

    山下義信君 私は前回、この法案の第九条、   〔委員長退席、理事谷口弥三郎君着席〕 関係しましては第九条の二、第四十三条の十、いわゆる事業所——医師、保険医、保険薬局等を含めての保険医療機関に対する立ち入り検査の点を衆議院で御修正になっておられますので、それでその点についてお伺いをいたしたのであります。先ほどまとめて御答弁になりまして一応承わったのでありますが、この立ち入り検査の点は、今回の健康保険改正案の中の言うまでもなく問題中の問題でありまして、関係者が非常に問題としておる点なんであります。率直に申しまして、衆議院の方では医師側が反対しておる立ち入り検査というものはやめにしたのだ、それで立ち入り検査というところはみな削除してしまった、そうして「事業所ニ就キ」という言葉に変えて、この反対の意見についてはその意見を聞いて衆議院は善処したのだ、こういうふうに世間ではとっておる。また、おそらく関係医師諸君でもさように了解をしておったのではないかと思うのです。それでわれわれもそういう意味の修正ならば、しからば立ち入り検査ということをやめて、「事業所ニ就キ」と、こう修正せられたこの「就キ」というものは、いかなる意味を有するのであるかということを御質問申し上げて、いろいろ前回に御答弁がありまして、御答弁を振り返ってみて考えてみますというと、非常に複雑でありまして、お別れのときに、一つはっきりとわかるように次回にはしておいていただきたいと申し上げた。ただいま取りまとめて結論的の御答弁として、立ち入り検査ということも、「事業所ニ就キ」検査するということも同じことじゃ、こういうことです。ただ字をかえただけである。感じが非常に鋭くなるので、いわゆるニュアンスを改めるつもりで「事業所ニ就キ」という比較的おだやかな表現を用いたのである、中身は全く同一であるという御答弁です。その通り前回もおっしゃったのであります。大体そうおっしゃったのであります。それで立ち入り検査の場合におけるところの質問ということはできないことになっておりますことは御指摘の通り。そこできょうは、その質疑の続きをもう少し伺うのでありますが、私も法律学の専門者じゃございませんので、また御答弁を承わりましては考えさせていただくようになりますから、質問が少したどたどするかもわかりませんが、そういう法律学的な、法理論的な質問というよりは、こういうふうに御修正になりまして、何か運用の上に異なるところがあるか、また修正された関係個条の運用の面ではどうなるのかという、そういう点に重点をおいて伺った方がいいのじゃないかと、かように思う。従いましてこの「事業所ニ就キ」同様に立ち入ることができるというその権限の根拠がどこにあるのでございましょう。私は「事業所ニ就キ」とあろうと、立ち入り検査とありましても、無条件にはその事業所なり医療機関に当該職員が強制的に立ち入ることは実はこれはできぬのじゃないかという気持がするのでありますが、この立ち入ることのできるという権限は一体どういうところに根拠があり、ただいま申したように、立ち入ることができるのであるかどうかということを明確にしていただきたい。
  116. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) ただいま御指摘の通りのことについて前回にも申し上げたのでございますが、政府案によりますと、立ち入ることができるということは、実は非常な強権の発動あるいはまた医療担当者に対しまして不必要な不安、疑念をお与えするということもございます。であるが、必要な場合に検査をする、その場合にその検査の目的を達する上に支障があってもならぬのでありまして、これをのけるとするならばどういうことになるかということにつきまして、いろいろのことを研究いたしました。ところが、まず現行法においても、必要な場合には立ち入って、すなわち場所へ入って、やっておる。そうして何らトラブルもないのだ、こういうことを聞いたのであります。ですから、いろいろ誤解を与えるとか、不安感を与えるということもさることながら、私どもは始終申し上げておりますように、この社会保険を円満に効率的に遂行いたすためには、どうしても医療担当機関を御信頼いたしまして、その心からなる御協力を願わなければならないということが根本であります。そういう観点から、かような誤解を与えるようなものはのけてしまおう。またのけましても現行法において問題なく、トラブルなく行われておるのであるからそれでよいのじゃないか。こういうことで、実は現行法のごとき規定に戻した次第であります。ただし、現行法の方式と違います点は、質問の場合には今御指摘のごとくのけておるのでありますが、それはまた先刻申し上げましたように、何も立ち入らなくてもこれを十分に済ますことができまするので、当然のことであるのであります。さような観点から立ち入るという点を削除いたしましたが、その法的根拠に至りましては、私もいろいろ調査をいたしましたけれども、むしろ私がお答え申し上げますよりも、法制局の御見解を重ねて述べさせていただく方がむしろ妥当かと思いますから、この点御了承をお願いいたします。
  117. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 前回山下議員から御質問がございまして、一応の法律的な解釈は申し上げておいたのでございますが、その後委員会が終りましてから立ち帰りまして、いろいろ調べたり、また考えたのでございます。しかし、これは前回にも申し上げたのでございますが、この点についての解釈を与えた、まあ裁判所の判例とかあるいは著書とか、そういうものがございませんので、結局従来の立法例に当りまして、そして私個人の考え方をまとめたのでございます。それをただいまから申し上げようかと思います。  これは前回にも申し上げたのでございますが、従来の立法例によりますと、検査に関する規定はいろいろな行政法規の中にあるのでございますが、それを見ますと、まあ用例が非常にまちまちになっております。その一つといたしましては、事、検査に限って申し上げますが、単純に検査することができるというだけの規定になっておるもの、それからもう一つの例といたしましては、これこれの場所に立ち入り検査させることができる。それから、これは古い法律、主として旧憲法時代でございますと、立ち入りというところがこれこれの場所に臨検し、検査させることができる。これはまあ大体立ち入りも臨検も大体同じような表現だと思いますが、その旧憲法時代の法律でございますと、場所に臨検し、検査をさせることができる。近ごろの法律でございますと、場所に立ち入り検査させることができると、こういう立法例も少くないのでございます。それからまた、今問題になっておりますこれこれの場所につき検査させることができる、これの用例は、どちらかというと、あまり多くない用例でございますが、この場所につき検査させることができるとこういう立法例もあるのでございます。  それから、今度は違反の場合の規定がどうなっておるかと申し上げますと、それがまた非常にばらばらでございまして、単純に検査を妨げたものというふうな表現で処罰している。それから、あるもう一つの例は、立ち入り検査あるいは臨検検査、字を続けて書いてあるのでございますが、立ち入り検査、臨検検査を妨げたものというふうに表現しているものもあるのであります。これはお尋ねによりましては、その立法例を、その法律の名前を申し上げてもよろしゅうございますが、それからまた別の例によりますと、立ち入り、検査これこれをこばむと、結局これは立ち入りをこばみあるいは検査をこばみというふうに読むのだろうと思いますが、立ち入り検査をこばみと、こういうような表現になっているものもあるのでございます。そしてこれは、この今の本体の検査ができるという規定と罰則との規定とのコンバインを見ますと、これは非常にまちまちでありまして、単純に検査することができるとなっている場合の罰則が、ただ検査をこばむというふうになっているのは、これはまあ当然でございますが、その本文の方には、立ち入り検査をさせることができるというふうになっておりながら、その罰則の方では、単純に検査を妨げるというふうな表現を用いているもの、また同じ場合に、先ほど申し上げました立ち入り検査を妨げるというふうになっているもの、また同じ場合におきまして、立ち入り、検査をこばみというふうに、刑罰の方が規定してあるというふうになっておるのであります。  まあ結局今申し上げましたように、従来の立法例はその点を立法者としましては、それぞれ何らかの意味合いを持ってお書きになったのだろうとは思いますが、あとから読むものからいたしますと、どういうわけでそういうような違いがあるのか、非常に理解に苦しまざるを得ないのであります。しかし、一応成立した法律でございまするので、そういういろいろな立法例がございますが、それらを統合して理解しなければならないわけでありますが、それらを統合しての私の理解を申し上げますれば、結局この検査という言葉の中に意味があるのではないか。結局帳簿書類その他の物件を検査することができるという、その規定のその検査ということの中に意味がむしろあるのではないか、結論に急ぎますけれども、立ち入りとか臨検とかというところに、そのことから検査の内容が出てくるのではありませんで、検査することができるというその検査の文字の中に意味があるのではないか、と申しますのは、帳簿書類その他の物件を検査することができるというその検査はどういう意味かと申しますと、帳簿書類の内容を検査することはもちろん入りますが、そのほかに帳簿書類なる物件のある場所に、そういう帳簿書類なり物件がある状態、あるいはあり方と申しますか、そういうものも検査する、その内容を見て調べるということではなくして、その帳簿書類なり、物件が本来の場所にどういう状態に置いてあるか、どういうふうな状態において存在するかということもこの検査ということの中に入っているのではないか、従いまして、そういうふうな考え方からいたしますと、帳簿書類その他の物件を検査するためには、その帳簿書類なり、物件が存在する場所に参りまして、そうしてその書類、物件の内容なりあるいは今申し上げましたようなそういうもののあり方すなわちその存在する場所との関連においてそういうものを調べるということもこの検査ということの中に入っているのではないか、結局そういうふうな結論に達したのでございます。従いまして、先ほどからお話しございますところのその場所に立ち入るあるいはその場所に行くということも、その検査ということの中からそういうことは出てくるのでありまして、その立ち入りという文字があるからその場所に行けるのだ、あるいはこれこれの場所につきというふうにあるからその場所に行けるのだ、それではまた何もなくて検査することができるという場合には行けないのかというと、そうではありませんで、検査するためにはその場所に行くことができる、こういうふうな結論に至ったのであります。それからそれならば、その問題は単純に検査するという場合と、立ち入り検査する場合との区別はないのかと申しますと、ここには意味があると思うのであります。と申しますのは、単純に検査することができるという場合に、先ほど申し上げましたように、その場所に行って調べる、検査することはもちろんできるわけでありますが、場合によりましては、任意にそのものを出さして、もし、持ってくるなら、その相手が持ってくるなら、別な場所において検査することも可能であろうと思います。ところが、これこれの場所に立ち入り検査することができるという場合におきましては、結局その場所において検査するというのがその法の趣旨である、あるいはこれこれの場所につき検査することができるという場合には、その場所に行って、あるいはその場所において検査することができるというふうになるのでございまして、単純に検査することができるという場合に比べますと、かえって検査の方法に制限があるのだというふうなことになるのではないか、こういうふうに考えます。でございますから、検査の場合には、立ち入りとか、何々の場所につきとか、あるいは何もなくて、単に検査するという規定は、その場所との関係においては差異ないではないかというふうに考えるのでございます。ただ、これはちょっと検査と違いますが、質問の場合になりますと、先ほど藤本議員からもお話しがございましたのですが、単純に質問の場合でございますと違って参りますのは、その違反の場合において違いが生ずるのではないか、と申しますのは、制裁の方を見ますと、答弁せずあるいは虚偽の答弁をし、というふうにこの罰則にはなっておりますので、具体的にこちらから参った者がある人に面と向って質問を投げかけてそうして相手が答弁しなかった、あるいは虚偽の答弁をしたというふうな場合にはそこに間接強制でありますところの罰則が働くのであります。その場所に入る前提において入ることをとめられたという場合には、結局こちらから質問する方法がございませんので間接強制をすることができない。ところが、立ち入って質問することができるというような規定でもございますと、その入らせないということによって、その立ち入りを妨害したという点で間接強制ができる。しかし、その場合も、答弁しなかったという点では、間接強制したのではなくて、結局もう一歩前段階におけるその場所に行って質問ようとするその場所に入ることを妨げたということにおいて間接強制ができる。こういうふうに質問の場合には、立ち入りの言葉があるのとないのとで制裁の点において大いなる違いがあるのでございますが、この検査の場合でございますと、結局検査という言葉の内容から考えればできるので、立ち入りとかその他の言葉のありなしで、その法の運用の点は別でございますが、法の解釈の点からいうと違いはないのではないか。こういうような考えでございます。
  118. 高野一夫

    ○高野一夫君 ちょっとお伺いしたいのですが、ただいまあなたのお話しを聞いていると非常に詳しいようであるけれども、私は非常にあいまい模糊たる解釈じゃないかと、私今静かに伺っていると実にわけがわからない。なぜかというと、ある場所に検査に行った場合に、たとえば一つの店に検査に行く、あるいは病院の診療所に検査に行く、あるいはどっか工場に検査に行くという場合に、立ち入りとかなんとかいうことは書いてなくて、検査の規定がある法律がある。その場合にその店の先まで、工場の入口まで行く、診療所の入口まで行って検査をすることはできるけれども、一たびもう少し家屋の中に立ち入って、その中に入って検査をしたいけれどもそれはできないからというので、わざわざ警察官を呼んで、警察へ連絡をとって、そうして司法権を持っている者を連れていかなければ中に立ち入っての検査はできない。これは麻薬取締りにおいてもそれで非常に困っている。だから麻薬取締官に司法権を与えろというのもそれなんであって、現にそこに証拠物件があるのだけれども、それを押収するところまで立ち入って検査することができない。従って司法官憲と連絡をとって一緒に行かなければ立ち入り、ほんとうの検査ができない。そうするとあなたの今の解釈でいけば、この場合の立ち入りということは、あってもなくてもさして意味はないのだ。検査ということはあるべき場所に行って検査するのだから、その内容のいわゆる検査ということであって、当然立ち入るのだというが、あるかのごとき、行われるもののごとき、あるいは行われないもののごとき、何だかわけがわからない。ここを、そういうむずかしい法律論もけっこうですが、実際問題として私は伺いたいのだが、これはある場所に行ってどの程度までうちに入れるのか、どの程度まで入るのですか。たとえば私は具体的に言いますが、工場を検査する場合に、立ち入りという言葉がなくて検査する場合に、工場のどこまで入る、病院診療所に薬事監視員が行って、そうして検査をする、あるいは薬局に行って検査をする、その場合にどこまで入れる、もっと突っ込んで入って検査したいけれども、それは現段階においては法律で許されないというので司法権を持ったところに連絡をとっていく。だから証拠物件もみんななくなっちまう。こういう非常な不都合な事態が現在起っているけれども、あなたの解釈でいけば、もはやそういう必要もないのであって、もう立ち入りがあろうとなかろうとかまわず家屋のどこの部分にでも入っていって検査してもいいようなふうに、私はあの説明では聞けるのだけれども、そこのところはどうなりますか。
  119. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 私の説明が十分でなかったかもしれませんが、私の申し上げる趣旨は、その検査することができるという権限を与えられている場合には、当然にその場所に行って検査することができるこいうことを申し上げたつもりでございます。しかしその場合におきまして、その相手方の意思に反してまで入れるかどうかということは別でございまして、それはそのいずれの場合におきましても、相手方の意思に反してまでは入ってはいけないのでありまして、ただ相手方が通してくれない場合においては、結局検査を妨げたということの間接強制でいくよりほかはないんで、それ以上相手方が入れてくれないという場合には立ち入ることはできない、そういう趣旨で申し上げているのでございます。
  120. 山下義信

    山下義信君 ここは私がもう審議の初めに申し上げましたように、憲法の改正案の名称の一つですから、ゆっくり一つあわてて見そこないがあってはいけませんからゆっくりやりたいと思うのでありますが、法律論はある段階、ある程度以上は、これはもう議論でありますから、際限のないことでありますが、しかし今の御答弁ですと、要するところ、検査というものの中にはもう立ち入りも入っているのだ、私どもは検査ということと立ち入りということとは別だと思う。「事業所ニ就キ」ということと、立ち入りということの今度は議論をしておるのであって、これを同じだというて、今度は立ち入りということと、検査ということと同じだ、こうくる。立ち入らなければ検査ができぬから立ち入りは検査の内容である、こういうのです。従って、検査を拒んだならば罰するということをつけておきさえすれば、立ち入りを拒んだときの罰則ははずしても、今度はあなたの方ではずしておる。はずしても強制的に立ち入ることができる、こういう解釈で、従って表現を見るというと、しばしば繰り返すように、強制的な立ち入り検査はやめたようであっても、巧妙に検査の目的を妨げた場合は罰するということになっておるのですから、立ち入りを拒むことができぬ。何となれば、立ち入りは検査の中身の一つであるからと、こういう解釈なんです。これは一つの法理論でありますから、いろいろその点はわれわれも研究さしてもらって、また御意見を伺わなければなりませんが、私はこれは非常に無理だと思うのです。無理だと思う。立ち入りとか、質問とか、それはここにありますように、各関係箇条にあるように、「提出」だとか、「提示」だとかというようなことは、これも一つの別々の場合、別々の段階であって、それがみな考えようによっては検査の方法でもあるし、検査の中身でもあるし、また区別したらば別々にもなるのですね。関係の法文の中には別々に扱ってある。しかるに立ち入りということだけが検査の中身ということはどういうことですか。質問というのも外に出してある。提示するということも外に出してある。提出するということも外に出しておいて、立ち入りということだけが、私はこの絶対不可分の検査の中身だ、従って検査とあればもう当然立ち入ることができるのだということは、すでにこの関係個条において検査するためには帳簿も提出させなければならぬでしょう。他に質問しなければならぬでしょう。何にもささずにおいて、見ただけで検査する場合がある、場合によって質問しなければわからないこともある。そういう場合には、別に出しておいて立ち入りということだけが検査というそのものの中身だ、必然的な中身だということの御議論には私は納得いたしがたいのである。これはいろいろ用例等も示されて法制局、いわゆる衆議院側の御解釈でありますから、その解釈が妥当なものなのかどうかということは検討しなければならぬ。  それではその点は問題に残しておきまして伺いますが、次には、私は常識的にはこう考えるわけです。「事業所ニ就キ」という場合には、中に入るのであろうと、これは要は一つ納得をしてもらわなければ入れぬぞ。もう立ち入り検査としかつめらしく厳格に書き現わしていって、しかもそれを罰則をつけておくということは、これは強制的に立ち入りができるのだ、こう思ったところがそうでない、そうでなくて「事業所ニ就キ」といっても立ち入りができ、立ち入り検査というのと同じことであって、いずれにしても入ることができるのだということですね、これはその通りなんです。ところが、相手方が承諾しなくてもずかずか無理にでも強制的に入れるのかということになると、「事業所ニ就キ」とあろうと、立ち入りができるとあろうと、いずれもできないんですね、相手方が承諾をしなければできないんですね。そうするとその検査の妨害というのは、つまり立ち入りということを拒む、即検査の妨害ということになると、そうすると承諾をしなかったことは検査の妨害になりますかなりませんか。中に入ることを拒むことは、承諾を受けなければいかなる場合であっても強制的に入ることができない、これはできない、そうすると検査を拒むということと、承諾しないということとの関係はどういうふうに衆議院の方では解釈されますか。
  121. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 立ち入り……検査のためにまあ立ち入るわけでございますが、その場合に、検査のために参ったと言うわけでございますが、それをその中に入れない、承諾しないというのは、結局中に入って検査することを承諾しないということになりますれば、結局それが検査を妨げたという、その間接強制の道に通ずるということになろうかと思います。
  122. 山下義信

    山下義信君 それでは中に入ることを拒む、正当な理由があったときにも検査を拒むということになりますか、検査を拒むと言えますか。
  123. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) これはその刑罰の場合の解釈になるわけでございますが、やはりその場合にはゆえなく拒むという条件が加わるだろうと思います。
  124. 山下義信

    山下義信君 それではこの検査は、事業所につき検査をする場合、もろもろの検査の場合、これはいかなる場合でも必要ありと認めた場合と、非常に広範にしかもばく然と規定してあるんですね。この必要ありと認めた場合というのは、この種の今回検査ということを非常にきつく政府は改正するのでありますが、これはいかなる場合でも必要ありと認めたならば広範にこの種の検査ができる、立ち入りもできる、こういうことですか。何か罰則の伴うような、一面しかも検査を妨げたらたちまち保険医の登録を取り消し、医療機関の指定も取り消すというがごとき、その他においても罰金科料がある、そういうような強い検査をするというような場合には、これはできるだけしぼるべきであるとわれわれは考えるが、しかしながら衆議院送付案、すなわち原案等において「必要アリト認ムル」というようなきわめてばく然とした理由で、この種のことが強制的にできるようになっておるということは妥当ではない、不穏当ではないかと思うのですが、これは衆議院の方はどういう解釈をとっておられますか。
  125. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) そういう場合の規定におきましては、これこれのために「必要アリト認ムルトキハ」という要件がほとんど大部分書いてあるわけでございます。それからまた書いてございませんでも、いずれもその法律の施行のために必要ありと認むるというわけでございまして、そこはやはり何といいますか、その法の精神のもとに検査をする、従ってまた相手方が拒んだ場合に、それがゆえなき拒絶であるか、その場合に正当の理由があるかというすべてその各条の法の精神に基いて必要であったかどうか、ゆえがあったかなかったかということを判定することになろうと思います。
  126. 山下義信

    山下義信君 一応そういう表面的なただ法文の解釈ということだけでいえば、味もつやもなくその通りでありますが、必要と認めたら、何でもできる、この健康保険法の広範なあらゆる場合を皆ことごとく必要ありと認めるというようなことでやるということになれば、端的に申しまして、立入検査権の乱用になりはしませんか。なりはしませんかというと、また法律的にいかぬから、乱用になるおそれはありませんか。おそれはありませんかと言ったら文字の解釈ではないのでありますから、運用上になりますから、おそれはありませんか。
  127. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 御指摘の点に対しまして、法制局当局の御見解の開陳があったのでありますが、私どもは罰するとか何とかいうのは決して目的でございません。実は検査なり、質問の目的を達すればいいのでありまして、それが現行法のごとき方式によってもそれができるということでありましたからこれを削ったのであります。なお、政府は誤解を招いたらいかぬから、また入れぬのだ、中へ入ったらいかぬのだというようにとられるかもしれぬというので立ち入ることができるという規定を入れたのでありますが、それがなくても入れるということならばいいじゃないかということでのけたのであります。私は要するに法は運用にあり、運用は人にありと思うのであります。でありますから、いろいろお示しの点はまことに傾聴いたしておりますが、今後一つの運用、人を得る、また得なければ、これは国会といたしまして大いにこれを是正するということができるのじゃないかと思います。私どもはさような意味において別段巧妙とは思っておりませんが、できるだけトラブルがないように、そうして円満に検査なり質問の目的を果したらいいのだと考え、断じて処罰とか何とかいうことは目的でございませんから、その扱いにおきましては特に注意を要するということをすでに幾たびも当局に申しておるし、また部会におきましても、これを繰り返しておるのであります。
  128. 榊原亨

    ○榊原亨君 関連質問……。鮫島法制局部長に私一点お伺いいたしたいと思うのでありますが、医療機関をかくのごとき場合に立ち入り検査をいたします、その立ち入りということと飲食店等に対しまして検査をするために立ち入りいたします立ち入り検査という点におきまして同様に鮫島部長はお考えになっていらっしゃいますか。その点を一点だけ承わりたいと思います。
  129. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) これらはいずれもこの行政上の目的のための立ち入りでございまして、犯罪捜査のための立ち入りとかそういうものでは、いずれもそうでないのであります。いずれもその行政上の目的のためにそこに立ち入るというのでございます。
  130. 榊原亨

    ○榊原亨君 その場合に、両者におきまして立ち入り検査に対しまするところの重さと申しまするか、立ち入り検査が及ぼしまする影響と申しますか、そういうものが同等であるというお考えのもとにかくのごとき立法をされたのでありますが、その点もさらにもう一回、鮫島法制局部長にお願いいたします。
  131. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 私の立場は衆議院の法制局でございまして、政府から提案になりました法案の修正につきましてはその点にタッチいたしたのでございますが、この原案の方は、政府の方でございませんので、その点は政府の方にお願いいたします。
  132. 榊原亨

    ○榊原亨君 私は鮫島部長の法の御解釈を承わっておるのであります。立法されたのはあなたでなくても、この法律の御解釈は法制局部長としてちゃんとされなければいかぬと思うのですが、どうでございますか。
  133. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) ただいま零し上げ美したように、この健序保険法も、それから食品衛生法でございますか、いずれもそれは行政法の部門のものでございますし、それからそれぞれのこういう場合におきましては、それはいずれも犯罪捜査のためではないのだという明文がございます。これはまあ別に明文がなくても当然そうあるべきだろうと思うのでありますが、そういう明文があるわけでございますが、いずれもそれぞれの法の趣旨の達成のための権限の行使としてこういう規定があると、こういうふうに理解しております。
  134. 榊原亨

    ○榊原亨君 もう一点だけ。どうも法制局部長の御見解がはっきりしないのでありますが、同じ立ち入りをいたしましても、立ち入り検査をいたしましても、たとえばその場合に、当該官吏がその業者の秘密を漏洩するというような場合を考えてみましても、医療の場合には、もしも秘密が漏洩されますならば医療そのものが破壊されるのであります。うどん屋の場合に、飲食店の場合に、もしも飲食店の秘密が漏洩されましても、それはその営業そのものが破壊されない、そういう点から申しまして、その医療の場合と、そのほかの飲食店その他の場合との立ち入り検査のウエートというものは非常に違う。そういうことをお考えにならずに、ただ検査の場合はこうだ、検査の場合は立ち入りと同じだという御議論は、医療の本質そのものを御存じないのではないかと疑うのでありますが、その点いかがでございますか。
  135. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 私はその質問の御趣旨を十分に理解できずにお答えしておったかもしれません。そういう関係で、この犯罪的捜査のための権限との区別を申し上げたのでございますが、ただいま御質問ような趣旨でございますれば、それはおっしゃる通りでございまして、それぞれの法規の目的を達するための最小限度のことでありまして、ただいま仰せになりました秘密の点は、これはもう法の解釈として当然のことであろうと理解しております。
  136. 高野一夫

    ○高野一夫君 ちょっと関運して。鮫島部長に伺いますが、しからば、医者が検査を受ける場合に、この帳簿はこの医療の秘密を守る上に大事なものだからごらんに入れるわけにいかない、こういうふうなことになりました場合には、そうすれば、その帳簿を見なければ不正行為をやっているかいないか検査はできない、こういう場合には全然検査ができなくなりますか。あなたのお考えではどうです。
  137. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) その検査に参りましたのがやはりこの法律のための検査であります以上は、そのただいま御質問ような場合でありましても、それはやはり検査を求めることができる趣旨であろうと思います。もちろん検査いたしましたものは、その職務上知り得た秘密を守らなければならない、あるいは漏らしてはならないと、これは国家公務員法の規定からなるのでございまして、この法律の検査のために参って、ただいまおっしゃったようなことだけで検査ができないということはないのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  138. 高野一夫

    ○高野一夫君 この問題については、私は、これは直接私が見聞したのでないのでわかりませんが、たしか衆議院の社労委員会においても、この点についての質疑応答があったように聞いておりますが、あったかどうかわかりませんが、藤本さんにお伺いすればわかると思いますが、これで私が、その非常に心配しておるというのは、この帳簿あるいは診療簿、そのほかを見なければ果して不正の事実があったかどうかわからぬというような場合に、一方においては、医師は診療の秘密を守らなければならない義務を法律によって負わされている、その法律の義務を守らんがためにはこの帳簿をお見せすることができないと、こういうことを言い得るのではないかというふうにも、私は伝え聞いたわけなんです。そうすれば、個々の健康保険に関する限りその点の詳細なる、適正なる検査ということが行われなくなる、こういうふうに私は考えておったので、そこで今あなたの、鮫島部長の御説明では、それは検査官が知り得た秘密は、検査官の義務として守らなければならないのだと、こういうようお話であって、従ってそれをさかのぼれば、検査官は、医師の方がそういう診療の秘密を守らなければならない義務を負わされているから拒絶するといっても、その拒絶は拒絶にならないのだと、こういうことになるわけでありますが、この点について藤本先生何か衆議院の方で、たしかこういう問題が起ったと思うのですが、御記憶がありましたらばお知らせ願いたいと思います。
  139. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 今御指摘になられました点につきまして、いろいろ考慮いたしておりまして、私も大ていの委員会には出ておりますが、ちょっと今記憶にございませんですが、なおもう少し考えさしていただきます。
  140. 高野一夫

    ○高野一夫君 それじゃ高田保険局長は、何かそういう問題について、衆議院の委員会において質疑答弁があったことがありますか、それとも私がそういううわさの聞き間違いであったかどうか、いずれ聞き間違いであれば、きょうは時間もありませんから、次の機会にでもまたあらためてお伺いしたいと思っておりますが、もし衆議院の社労の委員会であったとするならば、概略その経過だけ、局長の方から御記憶があれば教えていただきたい。
  141. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私の記憶によりますれば、検査に行った者が知り得たその秘密というものを漏洩した場合には一体どうなるのだ、秘密を保持する義務があるかどうか、それから漏洩したらどうだというふうな点についての御質問があり、私がお答えしたことは記憶にございます。ただ、今の高野先生のような、医師の方が秘密保持の義務を持っておる、だから検査を拒否してもいいのかどうかというふうな点についての御質疑は私の記憶ではございません。それでなおその点については鮫島法制局部長がお答えになった通り法律解釈であると私は、私自身もさように考えておりますが、その際におきましては、医師の方は秘密を漏洩したということで、そちらの方の秘密保持の罰則を適用されたり、あるいはどうこうされるようなことはない。他人に知らしたけれども、それは検査ということを受けるために診療録等を見せたのだ、それは当然正当な理由として医師の方が処罰をされたりあるいはどうこうされるというようなことはない、さように私は理解をしております。
  142. 榊原亨

    ○榊原亨君 大へん質疑者の途中で失礼でありますが、今私が例示いたしましたのは、医師は秘密を保持するということの義務があるから、そこで立ち入り検査を拒んでいいというような考えで私申し上げたのではないのであります。一般の事業所に対する立ち入り検査と、医療機関に対する立ち入り検査とは、その及ぼします影響が非常に違うのだと、たとえばその秘密を漏洩された場合に例をとってみても、その及ぼすところの影響が重大であるから、そこで医療機関に立ち入り検査をするのにはよほどのことがなければならぬ、よほどのことがなければならぬということは言いかえますれば、疑うに足る相当理由がなければ、立ち入り検査ができないというふうにお考えを願わなければならないのではないか。ただ検査をしたい。それから帳簿をちょっと必要があるんだからということではいかぬのではないかということの例に私は申し上げたのでありまして、この秘密漏洩ということをもって、それだから医者はそれは拒んでいいということで私は申し上げたのではない。その点の同じ立ち入り検査でありましても、その及ぼします影響ということについて、法律上同じであるというふうに鮫島部長はお考えになっておるか。またはこの医療というものの特殊性をお考えになっていらっしゃるかということを、私はこの立ち入り検査ということを検討いたしまする上において必要でございまするので、鮫島部長に私はこういうことを伺った。
  143. 山下義信

    山下義信君 時間もだいぶん移りましたから、この程度にいたしたらと思いますが、私の質疑のですね、きょうのところは実はこの疑問点を、検査ということにすぐ立ち入りが含まれておるということの見解からして、前回の終りからの引き続いてのその点をまだ納得いたしませんので伺ったのであります。それで結局立ち入るということは検査の中身ということになれば、かりに職員が事業所あるいは診療所の中に入ろうとするという、入ってもらっては困ります。ということで、入ってもらうては困りますというて断りますと、それがすぐ検査の妨害ということになる。あるいは口で今のように、いやきょうは入ってもらうては困ります、きょうはうちにごたごたもありますということで、口で言うただけでもそれが立ち入りを拒んだことになれば、すぐに検査の妨害、それから係員の、関係職員が、関係官吏、関係吏員がそれでも中へ入ろうとする、いやそう無理に入ってもらうては困ります、今言うたんではございませんか、きょうは困るというんでありますからというて、外へちょっと手でも出すとすれば、それはもとより立ち入り検査を拒んだということになる。検査の実態そのものを、あるいは帳簿その他につきまして、それに手をかけられることを拒み、そのいろいろ書類を見ることを拒むのじゃない、すでにその事業所、その診療所に入る、入らぬということの争いそのものが、すでに検査を拒むということになるという衆議院側の解釈、それに罰則がある。登録を取り消し、指定を取り消す処罰がある。事業所その他については罰金がある、科料があるのだ。それはですね、この「事業所ニ就キ」という場合でも、いかなる場合でも、立ち入ることができると解釈はしてもです、強制的に立ち入ることのできないということは、これは自他共通にわかっておることなんだ、ですからゆえなく拒んだ、拒むことは罰に触れるが、ゆえなく拒むことは罰に触れるけれども、その反対を言うと、正当な理由がある場合には、それを排除してまでも入ることはできない。入ることはできないということは、あなた方の解釈でいえば、検査することはできないということだ。それでしかるに、法律の上においては必要ありと認めるときはと、非常に広範に検査をする場合を、こんなにぼうばくとして広げておくと、今関連質問があったごとく、これでは非常に検査権の乱用になるおそれがありはしないかと、運用の面でお尋ねしておるのである、いかなる相手方に悪影響を与えようと、たとえば今榊原委員の関連質問は、医師は医師としてなすべき業務がある、責任もある、その医師の責任、業務が破壊せられても、どのような悪影響を受けても検査を拒むことはできないのであるかどうかということを関連質問で出されたので、私またその点を伺おうとしたのであるが、それはできないはずである、できないと私ども常識では思う。運用でさようなことを許すべきではない。そんなことをしては医業の破壊である。医業を破壊してまでもやってよろしいということは特定の場合でなくちゃならない。犯罪の疑いあり、不正の疑いあり、少くとも不正犯罪の確証を握るか、相当の事象を握った、そういう特定の場合には万やむを得ない。かくのごとき法の規定による検査をしなければなるまいけれども、そういう場合でないというと、いかなる場合でも、相手方にいかなる影響を与えても、いかなる理由があっても、それを排除して検査をするということは、私どもは運用上なすべきでないと考えるのであるが、立法者はどう考えるか、修正者はどう考えるか。これは原案でもあるが、しかしながら罰則というものをあなたの方がこれは手を入れてある。そして「事業所ニ就キ」という修正をされた以上には、そういう運用の面において衆議院はどう考えてきたかということは答弁する義務がある。私はそう思う。その点はどういう解釈をとっておられるかということを明らかにしていただきたいと私は思う。従ってその正当な理由、すなわち検査を拒み得る、言いかえれば、立ち入りを拒み得る場合はいかなる場合をあなた方は許すつもりであるか。どういう理由を正当と認めるか。またそのケース、ケースにおいては断わることはゆえなき拒み方であるとするのかという限界というものは明確にする必要があるのではないか、この本案のごとき、非常にぼうばくとして無制限にいかなる場合でも一方的に必要ありと認めたならばどんな場合でもできるのだ、そうしてきょうは入ってもらっちゃ困りますと言っただけでも、これは検査を妨害したとあなた方が認定すれば直ちに処罰を受けることになる。たとえば今専門家が言われたように、非常に患者が立て込んでおる。こういうところでやられては困ります。今患者を診療中である、治療中である、あるいは急患があって往診に出かけておるからこの場合困りますと言っても、これは検査を拒むことになる。こういうような場合に、多数の患者が来ておる。患者は医者を信頼しておる。そこにどかどかと調べに来ると、はあ、あの先生何か悪いことをしてそれで検査されるのだなと、非常に信用に関係し、名誉に関係する。今そうされては困りますと言っただけで、検査を拒んだことになる。しかも検査の吏員は何人でなければならぬという限定はない。十人でも二十人でも行けるようになっておる。大勢の者がまるで捕方陣を展開するように、捕物のようにどかどかと、その診療所に十人も二十人も押しかけていくことができるようになっておる。そういうことをされたのでは、もし犯罪ありとするならばよろしいが、検査した結果何らのことがない場合には、相手方の非常に信用と名誉を毀損することになります。そういう場合でも検査ができるような規定であるということは、私は検査権の乱用のおそれがありやしないかということを伺っておる。それを衆議院はどういうふうにその点を考えておられるか。要は立ち入り検査の内容であろうと思う。私は一応それを二段に考える。検査の前提に立ち入りということがあるが、少くとも受ける方の側で立ち入りを拒む場合もあるであるだろうし、内に入っては困ると拒む場合もあるだろう。それは正当なる場合には拒み得ると私は解釈する。しかるに、この法律では正当なる場合は拒み得ると許してない。なぜならば、検査権を執行する場合を規定してない。いわゆるしぼってないということは、相手方に正当な理由をほとんど認めないという法の建前になっておる。衆議院はどういうわけで、どういうふうにその点を検討されて、立入検査権を「事業所ニ就キ」というふうにそのまま、文字は変っても中身を同じようにされ、しかも罰則をそのまま認めてこられたということについて、私はその御所見を明確にしていただかなくちゃならぬ、かように思う。
  144. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) ただいま榊原、山下両先生の仰せの点は非常に私傾聴いたしました。  医療、従いまして診療等に対する特異性に対する尊重といいますか、扱いは特に慎重を要すると思います。一般の場合とウエートの違いますことも仰せの通りであります。従いまして、その秘密あたりを漏洩した場合には、その者に対して処罰規定のあるのはそれからくると思うのであります。であるから、今お述べになりましたような点について、立ち入りを拒むあるいは検査を拒むというその理由が、その内容においてどういう意味であるかということが問題であろうと思います。今両先生の仰せのごとく、正当な理由があるというような場合には、これは大いにその理由を尊重すべきではないか、私はさように考えております。そういう場合と、あるいは何かいわゆるくさいところがあってやられては困るという場合と、おのずから良心的に考えれば、ただ意地になってどうしてもやるのだということでなしに、良心的に行政機関にいたしましても、国家の行政機関だというような意味でいろいろ意地っぱりやなんか抜きにして、良心的に考えたら、おのずから解決がつくのではないか。つまり私が先刻申し上げた運用にあるのだ、人にあるのだということで、私どもは今まで考えて参ってきたのでございますが、お示しの点はしごくごもっともなことと存じております。
  145. 山下義信

    山下義信君 幸いに、修正案提案者でありまする衆議院の藤本委員から、運営の趣旨については同感の意を表せられましたので、私も了承いたします。しかし、せっかくそういう正しい考え方がありましても、法律の表現がそうなっておりませんというと、言うまでもなく解釈、運用その他で、それらをめぐりまして紛議をかもすことも避け得られないのでありまして、私は次回の審議までに、衆議院側において、せっかくの提案者が持っておられるその正しい、そういう運用上の留意せられるその御趣旨を、その立ち入りと検査とがこれは一段階でもよろしいとして、衆議院側の御見解では一段階であります。一段階でもよろしゅうございますから、要するところ、その立ち入りを拒み、検査を拒み得る正当な理由、いわゆる拒み得る場合というような点について、どういう御見解を持っておられるか。こういう場合には検査権を乱用すべきではない、こういう理由は正当な理由と思うという、この本法のしかも御修正になりましたそれらの趣旨から推しまして、衆議院側の持っておられまするその御見解を、具験的なその場合をできるだけ私どもにお示しを願いたい、かように思う。その御解釈によりましては、いわゆる立入検査権の修正点につきましては、私どもも十分御趣旨を納得することが容易になるのではないかと思うのでありまして、次回までに取りまとめて具体的にお示しを願いたい、かように思っております。私は本日はこの程度にとどめておきたいと思います。
  146. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  147. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 速記を起して。  それでは本日の質疑はこの程度で終りまして、本日はこれで散会いたします。    午後四時四十分散会    ————・————