運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-04-24 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十四日(火曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            榊原  亨君            深川タマヱ君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            山本 經勝君            森田 義衞君   衆議院議員    社会労働委員長 佐々木秀世君            藤本 捨助君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生省医務局次    長       河野 鎭雄君    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   衆議院法制局側    参     事    (第二部長)  鮫島 眞男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件   —————————————
  2. 山下義信

    理事山下義信君) これより社会労働委員会を開会いたします。  参考人出席要求についてお諮りいたします。  社会保障制度に関する調査の一環として、母子福祉並びに児童福祉に関する件、特に親探し、子探し運動について関係者意見を聴取するため、参考人出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないと認めます。  なお期日は五号二日とし、人選、手続等委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないと認めます。よって参考人から意見を聴取することに決定いたしました。   —————————————
  5. 山下義信

    理事山下義信君) 本日の日程に入ります。健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  御質疑を願います。
  6. 竹中勝男

    竹中勝男君 私は去る十九日に、鳩山総理に対しまして、保険医辞退をしておる県が数個ある、また、全国的には辞退を決議しておる、辞退を用意しておる状態国民がそういう状態の前に非常に不安を感じておる。被保険者病気の場合にどうしたらいいかという不安が全国的に広がっておる、こういう事態前提として、この医療不安に対して政府はどのような当面の対策解決処置を持っておるかということを質問いたしましたところが、小林厚生大臣総理にかわって、公的医療機関に全面的に協力を求めてこの医療不安を解決したいという答弁でありました。そこで私はさらに公的医療機関には一定の限度があるので、今まで保険医、開業医にかかっておったところの患者が全面的に公的医療機関に依存することはとうてい不可能である、従ってそれに対してどういう処置考えられるか、医療費払いの問題はどうであるかという質問をいたしましたところが、小林厚生大臣は、公的医療機関諸君の御協力を仰ぐことはもちろんだが、また他面においては、医療費払いなどの措置によって国民にはできるだけ御不便をかけないようにしたいという返事がありました。そこで、これは前に山下委員に対する厚生当局意見よりも一歩進んだ考えでありましたので、私はさらに念を押すために、小林厚生大臣医療費払いをする、総辞退という前提をもって私は質問しておるのですから、総辞退の場合にも医療費払いをすると言われたことについては、私も一応これによって患者がその心配を緩和されることになりますので、大へん私は明るい気持になった。それでこういうように、この四十四条を解釈されるという……、緊急の事態、やむを得ない事態ということを解釈されるということについては、私は大へん満足な気持を持つということをさらに重ねて強調いたしました。これに対しては厚生大臣あるいは政府当局は、何らそれに対してさらに詳細な点については御返事がないということは、これを厚生大臣が言われたことを承認された、そういうように解釈しておったのであります。ところが、その次の委員会におきまして、高野委員から、さらにこの療養費払いの点について質問がされました。それに対する厚生省当局御返事は、療養費払いということを、在来の法律解釈から一歩も出ないものであるというような説明があって、あることを、私はそのときここにおりませんでしたので、後に速記によって承知したわけであります。でその間の事情について、私の質問に対する大臣答弁高野委員に対する厚生省当局答弁との間に何か変ったところがあるのですかどうかということをまずお伺いしたい。
  7. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 保険医諸君の総辞退という問題につきましては、できるだけ現在の健康保険改正案に御理解を願いまして総辞退のお取り下げを願いたい、こう考えておりますることは申し上げるまでもないのであります。先般の竹中委員の御質問に対しまして私が、ここに速記録がございますが、確かにこの通りの御答弁を申し上げておるのであります。そういう最悪の場合におきましては、できるだけ公的医療機関諸君の御協力を仰ぐことはもちろんであります。他面におきましては、医療費払い等措置によりまして、国民皆さんにできるだけ御不便をかけないようにいたしたいということを御答弁申し上げたのでございます。これはもう今の竹中さんの御質問に対しまして、その後、この問題につきまして御質疑のございました高野委員に対する私の答弁と少しも食い違っていないと私は考えておるのであります。
  8. 竹中勝男

    竹中勝男君 私はその総辞退ということ、総辞退といっても全国が一様に総辞退といっておるのじゃないんですが、私も社会党の議員としてもむろん総辞退を取り下げてもらいたいということは同じ……総辞退を取り下げるということは言いすぎかもしれませんけれども、何とか総辞退状態を解決するような措置を早く講じて、その混乱が起らないようにしたいということについては、厚生省政府当局と同じ考えを持っております。しかしながら、現実にもし万一の場合ですね、特定の府県において依然としてこの辞退届が引き下げられないで、そのまま五月一日に入るようなことがあった場合には、そこからくる医療不安をどういうように解決するかということが主眼で、こういう緊急な事態主眼で私は質問をしておるんです。十九日はそういう事態であって質問をして、一般的のこの四十四条の解釈を私が聞いておるのじゃないんです。それに対して、厚生大臣医療費払いをするということを言われたことは、総辞退ということから起る混乱に対して療養費払いをすると言われたことだと私は解釈したんですが、それでいいでしょうか。
  9. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 私が竹中委員のあの際の御質問に対しまして、ただいま私が申し上げましたような御答弁をいたしましたにつきましては、これは先般の当委員会におきまして、山下委員から四十四条のいわゆる療養費払い解釈につきまして御質問がありました、これにつきまして厚生省保険局長からも山下委員の御質問に対して繰り返し見解を申し上げておりましたのですが、私は療養費払いというものに対する解釈というものは十分に御了承願っておると、私ども見解につきましては御了承願っておるという私は考えもございまして、この際に公的医療機関の御協力を願う、その一方におきましては、いわゆる療養費払いというものを活用いたしまして、国民皆さんにできるだけ御不便をかけないようにしたい、こういうように申したのであります。もちろん今日のような事態でない平静な場合におきましても、療養費払いというものはこれはあり得ることでございます。医療担当者の総辞退という現実場面に直面いたしますれば、もちろん療養費払いというものもある程度相当拡大されて考えなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。しかし、あらゆる健康保険医辞退しました場合に、すべての健康保険医に全部療養費払いをそのままやるということではないということを、高野委員のついでの御質問に対しましてお答え申し上げた次第でございます。
  10. 竹中勝男

    竹中勝男君 今の御答弁の中に、山下委員に対する答弁を了承した上の私の質問だというので、そういうように答えたと言われるわけですが、私はもう日にちが切迫、山下委員質問されたときとはもう日にちがたっている。もう五月一日が間近にきておって、まだその辞退届を引っ込めるという情勢が出てこないものですから、特に総理に対してこれをどうするかということを私は総理質問したわけなんです。むろん総理はこういう法律健康保険法法律の四十四条なるものについては詳しいことは知らないわけですから、厚生大臣がそれを引き取って親切に答えられたと私は解釈している。私の念頭にあるものは、また当然なければならないものは、この六府県においてすでに辞退届が受理されておる、ここの府県人たちは特にどうなるだろう、患者はどうなるだろうということを心配しているので、私は京都府の出身ですが、京都府のごときは知事以下非常に心配していろいろな対策を立てております。混乱の起らないように、自治体において十分の考慮を払っております。そういう事態を面前において、政府療養費払いを、困難な場合にはすると言われたことについて、私は非常な安心をしたわけです。新聞にもすでにそういうように発表されたわけなんです。そうすると、今度後にはやはり法律に従ってやる、むろん法律に従ってやることは当然なことで言う必要もないことなんですが、私はその法律に対して、これは全く新しい事態なんですね。相当困難な事情というものが新しい形をもって、これは集団的とは私は言いたくないんですが、集団ではなく、個々の保険医辞退しているのですから、すなわち大量に困難がふえてきたわけです。そういう困難の解決策として、大臣療養費払いによってこれを解決する、こういうように言われたのであるというふうに今も解釈しているのですが、それでいいでしょうか。
  11. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 私の竹中委員に対しまする当時の答弁というものに対して、今竹中委員がお考えになっておりまするように誤解を招いているといたしますれば、私の答弁があまり簡潔であって、そういうふうになったかとも思いまして、非常に遺憾に存ずる次第でござまいすが、(「相馬助治君向うが、誤解しているから向うが遺憾なんですか」と述ぶ)私の方で遺憾に思っているのであります。総辞退というような場面に際しましても、やはり四十四条の法の解釈、つまり緊急やむを得ざる場合ということも、やはり四十四条にございますように、「被保険者緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合ニ於テ」、こういうことでございまして、ただ総辞退というような場合におきましては、こういうふうなケースが多くなる、そういう場合が多くなるというふうに考えているのでありまして、竹中委員に対しまする私の答弁、並びに次いで御質問のありました高野委員に対しまする掘り下げての私の答弁、これは私といたしましては食い違ってはいないつもりでございます。どうか御了承願いたいと思います。
  12. 相馬助治

    相馬助治君 ただいま竹中委員質問に対する厚生大臣お答えを聞いておりますると、竹中委員に対する答え高野委員に対する答えとは食い違っていない、かように説明をされておりますが、問題なのは、これが新聞に発表されたことだけみてもはっきりいたしておりまするように、一方は、健康保険法四十四条の規定をできるだけ患者右利解釈して、療養の給付にかえて療養費を支給することができると報告されている。一方は、療養費を支給せずと朝日新聞は大見出しにも書いてあるのでございます。これは新聞の書いたことだというふうに軽くわれわれはいなすわけには参りません。というのは、どちらにウエートがかかっているかという問題なのでございます。そこで、私はその点を明確にしたいと思うのですが、竹中委員のあの質問は唐突に現われたものではないのです。総辞退という事態は非常に困ったことだ、その場合にはどうするんだ、その答えとして、公的な医療機関を動員し、その他の方法をもって患者に迷惑をかけないようにしたい。そこで竹中委員が、その他の方法とは何をさすかと言いましたら、法の適用拡大解釈して——そういう言葉は使っておりませんが、拡大解釈をしてできるだけ面倒をみてやるつもりだ。それで竹中委員が、よく了解した、こういうふうに申しているのが、十九日の委員会の事の始末です。しかも竹中委員は、内閣総理大臣に対する質問でございましたが、問題が具体的であったために、厚生大臣がそれを引き取られて、鳩山首相にかわって、小林厚生大臣答えられております。ところが、その翌日の高野委員との質疑応答を私は速記録によって詳細にけさほど拝見いたしましたが、それを見まするというと、竹中委員に対する答弁を否定してはおりませんけれども、むしろウエートは、第四十四条の規定というものはごくやむを得ざる場合であって、同時に、この法律案保険医が総辞退をするなどという事態期待もしていないし、予想もしていない角度において立法されているのであるから、さようなことはほとんど類例の少いことであって、そういう拡大解釈をされたのでは困るという意味合いをそこに含めて四十四条の規定に対する解釈高野委員に与えられ、高野委員もこれを了解している、こういうことだと思うのです。私は公正に第三者的な立場からみますと、まさに四十四条は保険医が総辞退をするなどという事態期待もしていないし、予想もしていないと思います。で、執行機関としての政府が、この法律に忠実であるためには、高野委員に対するようなお答えも当然に出てくると私は考えます。しかし問題は、鳩山首相に尋ねたあの質疑の経過です。御承知のように、第一段におきましては、山下委員鳩山内閣性格を論じているのです。いわゆる軍事優先の国柄を作るのか、それとも社会保障制度というものを中心として、いわゆる鳩山さんが言った愛情に満ちた政治というものを作り上げるのか、鳩山内閣性格はどちらなんだという基本的な問題について、山下委員が触れておるのです。それから発展していって、竹中さんの意見になっておるのでありまして、私どもはあれを聞いた場合には、鳩山内閣の本来の性格から、四十四条をできるだけ広義に、広範に解釈して、療養費払いをして、不幸にして総辞退の事実が公示されて患者不便をこうむる場合には、大幅にこれを支払う用意ありとかように了解をしたのです。かように了解をすることは当然であると思うし、私は小林厚相、あなたも当代音に聞えた苦労人であって、あの返事をするときには、私が解釈しているように答えていたと思うのです。ところが午後になって、おそらく厚生省事務当局がこれにあわてられて、私は厚生省事務当局の問題になったと思うのです。私は厚生大臣がそれに動かされたとは思いません。しかしながらいろいろ諸般の事情を勘案いたしまして、その翌日ちょうど待ってましたというような調子にうまく高野さんが質問されたので、あそこですぐに訂正されたのだ、こうだと思うのです。  そこで私は結論を聞きたい。一体どちらにウエートを置いてあなたは答えられ、政府はやろうとしておるのか、すなわち竹中委員高野委員答えたことについて矛盾がないというお答えであります。内容的に矛盾ありと思いまするけれども、私は矛盾なしとしばらく了解いたします。その場合においても、いずれを主とし、いずれを従とするのであるか、あらためて法第四十四条の解釈並びにこれが実施についての最終的な見解一つ事務当局からも承わり、これに加えて決意を厚生大臣からこの際明瞭にされたいと思うのです。
  13. 高野一夫

    高野一夫君 関連して……。大臣の御答弁になる前に、私の質問のことが中心になっておりますので、一言私が質問した気持を申し上げ、それに対して大臣が御答弁になった点について、あらためて私は確認しておきたい意味において、お尋ねしておきたいと思うのですが、先ほど来、竹中委員並びに相馬委員からお話があった通りに、竹中委員に対する大臣答弁と、それから私が確かめたところによって得た大臣の御答弁とは、結果的にみて私は矛盾がごうもない、こういう感じを実は受け取ったわけです。それは竹中委員に対する大臣の御答弁は、療養費払いの点が、あまりに大ざっぱな言葉であったために、これは非常に誤解を招くのじゃないか、こういうことを私は懸念したわけなんです。しかし誤解を招くということでなくて、むしろ誤解をするのは私の方であるならば、それはそれでけっこうなんでありますが、そこで大臣答弁の真意が誤まり伝えられるのではないか、誤解されるのじゃないか、こういうことを感じたために実は確かめたいと思って質問を申し上げたわけです。従って先ほど来、竹中委員質問の中にありまする通りに、私は健康保険法の四十四条の法的解釈についてただしたのではないのでありまして、保険医の総辞退ということを中心にしてその四十四条をいかに適用されるつもりかと、こういうことを私はただしたつもりです。そこでもしも誤まり解釈されているがごとき大臣答弁であるとするならば、四十四条は、保険医辞退の場合に全面的に発動されることになる、こういうことになりますれば、これはまた別な意味でゆゆしい事態になるし、おそらく政府当局にしても、それに対処することが実際としてできなかろう、こういうふうに考えて実はお尋ねして、これに対して速記録に載っておるような大臣の御答弁を得たわけであります。これについて繰り返しませんが、私はそういう意味において、大臣の御答弁を得て、別に大臣答弁を弁護するわけでも何でもありませんが、結果においては、竹中委員に対する御答弁をはっきりと細目にわたって答弁を得たように私は受け取ったわけであります。この辺も私の受け取ったことが間違いであるかどうかということもあわせて頭におかれて、両委員に対する御答弁を願いたいと思います。
  14. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 相馬委員高野委員との御質問に対しまして、率直に御答弁を申し上げたいと思います。  まず相馬委員最初前段におっしゃいました、私の竹中委員に対する答弁につきまして、ちょっと食い違いがあるようでございまするから、これをあらかじめ申し上げておきたいと思います。私が答弁申し上げましたのは、また他面におきましては、医療費払い等処置によりまして、国民皆さんにできるだけ御不便をかけないようにいたしたいと考えております、こう申し上げておるのでありまして、今相馬委員の御質問の中に、この法の拡大解釈というようなお言葉がございましたが、これは私の考えはそうではないのでございます。  それから竹中委員に対する答弁と、高野委員に対する答弁と、どちらが主であってどちらが従であるかという御質問でございまするが、これは竹中委員の御質問に対する答弁が、これは総括的に私が御答弁申し上げたのであります。しかも先ほど申し上げましたように、私の心境といたしましては、すでにこの四十四条の解釈につきましては先般の当委員会におきまして、山下委員から相当の突き進んだ御質問がございましたし、これに対しまする保険局長答弁もいたしておりまするもので、大体この四十四条の解釈等につきましては、相当了解願っているとこう考えておりまして、簡単にお答え申し上げたのであります。次いで高野委員の御質問に対しまして、竹中委員に対する私の答弁に関連いたしまして御質問がございましたので、これを掘り下げていろいろ御答弁申し上げ、またそれにつきましては保険局長からも補充的な御答弁を申し上げたのでございます。
  15. 竹中勝男

    竹中勝男君 高野委員に対する答弁と私に対する答弁とが矛盾がないかということは、形式上あるいは理論上は矛盾がないのですが、実際上には矛盾が出てくるわけです。すなわち療養費払いということを、私はその総辞退という現実に対して、総辞退といっても具体的にはそんなに全国の医者が総辞退しているわけではないのですから、特殊なケースとしてです。そういう保険医辞退ということが前提となって、療養費払いをどうするかというときに、鳩山内閣社会保障を徹底的にどこまでもやる内閣だという立場から、そういう場合には、医療費払いをやってこの事態を解決する、こういう建前が今でも変っておられないわけなのですが、適用の場合は、しかしながら必ずしも総辞退保険医辞退ということを全面的には取り上げておらない、というと、現在の法律で、厳格に現在の法律を狭く解釈していくならば、現実にはやはり保険医辞退ということからくるところの混乱、あるいは医療不安というものは解消されない。実質的には答弁食い違いが現われてくるわけなのです。この点について、厚生大臣はどういうふうに……。だからあらためて問題が出てくるわけですが、そういう医療不安をどうされるかということをもう一度お尋ねしたい。
  16. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 総辞退によりまして、その地区におきまする国民皆さん相当の御不便をおかけになることはまことにお気の毒に存じておる次第であります。この問題につきましては、やはり私どもが先般竹中委員に御答弁申し上げましたように、あとに残っておられます——最悪の場合におきましては、あとに残っておられます医療担当者諸君、あるいは法的医療機関の御協力、そのほかに先般も御答弁申し上げましたように、他面におきましては、療養費払い等によりまして、御不便を与えないようにいたしたい。ただ竹中委員の今おっしゃったように、法の解釈という問題に対してどう考えるか、法の解釈をどう思うかというような点につきましては、私は法の解釈というものは、法はやはり法でありまして、法の解釈を正しくすることはもちろんでありまして、ただ、総辞退というような緊急な場面に直面いたしました場合におきましては、もちろん平素とは違いまするから、療養費払いケースが非常に多くなる。このケースが多くなりまするから、従いまして私が先般も、これも一つの、できるだけ療養費払いも利用して御不便をかけないようにいたしたい、こういう意味で申し上げたのでございまして、竹中委員のお考えと私の答弁に、考え方が非常に違ったようになりましたことは、私といたしましてもまことに遺憾千万に存じておるのであります。竹中さんに対する答弁、それから高野さんに対する答弁、これは私といたしましては少しも食い違いはない、こういうふうに考えておるのであります。
  17. 相馬助治

    相馬助治君 そうしますと、本質的な議論竹中先生が拡大して、むしろ自己に有利に解釈したきらいがあるというようなことが大臣答弁の中にはうかがわれるのですが、まさかそこまでは思っておられないと思うのですが、私はそれでは、本質的な議論をいささか解明するために、ただいまの竹中委員質問に関連して具体的に一点あげて、解釈厚生省から承わって、そうしてまた竹中委員質問したところまで戻りたいと思います。  そうすると、今竹中委員答えておる厚生大臣お答えは、療養費払いケース・バイ・ケースで、あるケースは払い、あるケースは払えない、こういうことなんですか。
  18. 小林英三

    国務大臣小林英三君) その通りでございます。
  19. 相馬助治

    相馬助治君 わかりました。そうすると、患者は自分の病気が支払われるケースに属しているか、支払われないケースに属するのか、一々判断しなければならないと思うのですが、そういうことは患者にとって困難なことだと私は思うのですが、問題は大したことではないと、かように大臣はお考えでございますか。
  20. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 相馬委員の御質問はごもっともだと存じます。こういう事態が起りました場合におきましては、療養費払いというものに対する考え方を十分に周知徹底いたしたいと存じます。  なお、ケース・バイ・ケースということでございまして、具体的な問題につきましては局長から御説明申し上げたいと思います。
  21. 相馬助治

    相馬助治君 それでは局長にお尋ねしますが、私が結核でA病院に入っておった。ところがA病院の院長が総辞退でもって保険医でなくなってしまった。しかし後に何らかの方法でもって復活した。その期間がちょうど三日間あったと仮定しますと、五月三日に復活した。そういうときには、入院しています場合には、私は当然療養費は支払われると常識的に考えますが、それはそうですか。
  22. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) ケース・バイ・ケースということは、今相馬先生が御指摘のように、その場合、その場合考えてこれをやらなければならぬ。それで今御引例のような場合には、入院患者を、今入院している者を、それをすぐよそへ移すというふうなことは、これは非常にその被保険者にとって迷惑な話で、総辞退をされてそれが保険医でなくなったということは、被保険者には、入院患者には関係のないことです。しかも、その入院患者をよそに移すというようなことが非常に困難なことだということになりますれば、さような事態におきましては、四十四条に該当いたすものと私は考えております。  そこでもうちょっとつけ加えておきたいと思いますが、院長がやめたというお話しでありますが、院長がおやめになりましても、ほかに保険医がおりますれば引き続いてその医者の診療を受けられる。今回のいろいろな府県の例を見ますると、そういう五人医者がおいでになりまして、三人はお出しになっておるけれども、二人は残っておられるというような事例が相当あるようでございます。そういうふうな事例があります。
  23. 相馬助治

    相馬助治君 わかりました。私は聞く必要もないことを実は聞いたわけです。そういうようなのは当然常識的に療養費払いはされる例だと思うのですが、念のために聞いたのですが、次のようなのはどうなりますか。私はAという医者をこよなく信じて、この医者にかからなければなおらないと私は思っておる。ところが私が初診でありますが、見てもらいに言ったら、その日は保険医辞退していて保険医でない。その日は明瞭に保険医でなくなっている。しかし私はどうしてもあなたでなければなおしてもらえないと思うので、あなたにかかりたいのだといって私がかかった。こういう場合には療養費は支払われますか。
  24. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 非常にデリケートな例でございますが、結局四十四条に該当するかどうかということは、単にその患者の希望のみでこれを判定するわけには参るまいと存じます。それが客観的にと申しますか、医学通念上、その患者は従来の診療の関係からして、今までのお医者様にかからなければこの患者の治療はできないというふうなことが判定されまする場合は、これは保険者といたしましても療養費払いを認めると思いますけれどもへただ単に、患者が今までのかかりつけのお医者様であるからといってそこへ参りまして、それを全部療養費払いにいたすということはちょっとできないかと存じます。
  25. 相馬助治

    相馬助治君 ですから私は問題だと言っているんです。ケース・バイ・ケースということになると、該当するかしないかという判断が、保険者患者が一致した場合にはこれは問題ない。ところが、これは一致しない場合の方が私は多かろうと思う。それで保険者患者との判断が一致しない場合には非常な混雑を来たします。異常の混乱というものが罪のない患者にこれは全部かぶさって参ります。そういう事態考えますと、私は竹中委員が言っているように、理論的には、形式的には、高野委員答えたことと竹中委員答えたこととは違わないけれども、法の解釈と、ケース・バイ・ケースの基本的な厚生省側のものの考え方の実質的な相違によっては内容的に非常に違う。従って今のお説からいたしますと、厚生大臣は善意の意思をもって間違いないとおっしゃっており、また、そのことを確信しておいでになると思いますが、現実に医療の面に現われる混乱予想いたしますと、実質的にはこれは両者に対する答弁の内容というものは影響するところが非常に違うと思う。私はこのことだけははっきりと申し上げなければなりません。  まあ私のまだ質問になっておりませんで、私は関連質問だからこれだけのことを念を押して、私は竹中さんが違うと言っているように、違うと思うという見解を付して、私の関連質問だけ一時やめておきます。
  26. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほど相馬委員の御答弁に対しまして、たとえて申しますると、結核で今まで入院していた。ところが、その保険医がやめた。そこで三日後にまた総辞退が取り消されたので、その三日間というものは療養の給付が困難なる場合と認めて療療養の給付をする場合だとこういう御判断でありますが、私は政府のお考えが正しいかどうかはわかりませんが、ただいままで政府の御答弁通りであるといたしますならば、その三日間は療養の給付をすべきじゃないと思うのでありますが、と申しますのは、その保険医辞退するということが起ります一カ月前の猶予期間があるわけでありますから、当然その結核の患者に対しましては、ほかの保険医にこれを転送するなり措置を講ずべきでありまして、そのときになりましてから、いやこれはどうも困難だというようなことはできないのでありますが、どうもその点と、先ほど竹中委員お答えになったところと思想的に統一がまだ十分できておらないのじゃないかと私は思うのでありますが、ことにこの間高野委員に対します御答弁の場合に、この緊急やむを得ない場合の療養費の給付ということは、もうこれはどなたが御判断になってもはっきりしているのでありますが、先ほど相馬委員が言われましたように、療養の給付の困難なる場合という判定が、非常な食い違いができるということは非常に混乱を来たす。そこで地域的に、全般的にここには療養費の給付をやるのだ。たとえば京都の左京区だけは療養費の給付をやるのだ、左京区はしないということで、地域的な区分はむずかしいかもしれませんが、そこにある程度の便法なり、ある程度のお考えがなければならぬが、それを御研究の上、今日ここで一つ当局からお話を願いたいと私はこの前の委員会で申し上げたのでありますが、その点に対する当局のお考え、今のたとえば結核で三日間入院しているという場合についても、私は法の解釈が違うと思うのでありますが、どうもそういうことがはっきりしておらぬ。従いましてこういう点を一つも御研究にならないで、やれ療養の給付はどうの、こうのというような御議論が行われますと、これは非常に世の中の人を迷わす。世の中の人が非常に心配になる、不安を来たすということになると思うのでありますが、一体厚生省当局はこの療養の給付に対するお考えは、コンクリートになっておるのでありましょうか。これはまあ厚生大臣にお聞きしても、これは無理な話でありますから、一つ保険局長からもっとはっきり……。
  27. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 四十四条の運用についての私ども考えは、先ほど来、なお前回、前々回から大臣が御答弁になっておりますように、はっきりいたしております。先生の今御指摘になりましたのは、個々の具体例をずっと並べてそれについて仕分けをしろというふうな御趣旨かとも存じますけれども、なかなかいろいろな場合が、これは榊原先生が一番よく御存じのように、病人、医療というものでございますので、いろいろの場合があるのであります。(相馬助治君「しろうとでもわかるよ」と述ぶ)従いましてさような点を一々具体例をあげまして、これはこう、あれはああというふうに仕分けをいたしますことは、これはなかなか困難かと存じます。さようなわけで、私どもといたしましては考え方がはっきりいたしておるのでございます。ただ先生に御不満を与えるかもしれませんけれども、一々仕分けをしろとおっしゃいましてもいたしかねる、かようなわけであります。
  28. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほど相馬委員お答えになりました、三日間の結核の入院についてのお考えは、これは厚生当局考えが正しいとお考えになりますか、私の考えが正しいのですか、そこをまずはっきりさしていただきたいと思います。   〔理事山下義信君退席、理事谷口弥   三郎君着席〕
  29. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) たとえばある一人のお医者様が、さような保険医辞退したいというふうに届出があったという場合におきまして、いわゆる平生の場合でございますが、御事情もどういう御事情でやめたいとかなんとかいうこともよくわかりますし、これは転院をできる者は転院を、重態で動かせない者は別でありますが、できる者は転院をお勧めして、しかるべき他の保険医の方に御収容を願うというのが筋であろう。ところが今回の場合におきましては、非常に事態が変っておりまして、非常にたくさんの方々が、しかも代表者を通じて御提出になったというふうな特異な状態でございまして、しかも繰り返し大臣お答えを申し上げておりますように、私ども厚生省当局考え方は、何とか一つさような非常な事態ということにならないように御再考をお願いしたいということを、終始一貫お願いを申し上げておるようなことでありまするので、従いまして今日この事態に対しまして、一々転院を求めるというふうなことは政府管掌といたしましてはいたしておりません。これは今回の特殊な事情でございます。正常な場合でありますれば、先生が御指摘のようなことをいたすことが普通であるかと存じます。
  30. 榊原亨

    ○榊原亨君 そういたしますと、今度は今回のような保険医の総辞退のような非常な予想もしがたいような事態になったから、一つの便法をしておられるということであると私は思うのであります。法律の上からいきましたならば、さっき私がお話し申し上げましたようなことはしなければならぬのであるが、それがなかなかむずかしい。そこで便法を講ずるということになっておるのでありますから、そうしますると、先ほど竹中委員が言われましたような便法もここに考慮され得るのではないかと思うのであります。私の考えはまた別でありますが、一応法律はこうだからこれで割り切るというようなことであって、罪もない保険医が総辞退するのはいいか悪いか、これは論外であります。論外でありますけれども、そのことによって引き起された患者の迷惑というものを中心考えましたならば、厚生省はこれに便法的な措置を講ずべきではないか。たとえて申しますならば、たとえば指が曲った。指の曲った患者が、左京区には全然保険医がない、右京区にはあるという場には、これは行っていいのですね。これは療養の給付を認めなくても私はいいと思う。ところが胃が痛くて左京区から右京区に行けないという患者には、療養の給付を左京区で認めなければならない。従いましてある程度病気の程度を限って、こういう程度のものは右京区においては療養費の支払いを認める。こういうものは左京区に行かなければならぬというふうな一つ一つの事例についてはこまかくきめることはできませんが、病気の程度に応じて療養の給付がこの地区においてはできるできぬということは、あらかじめ患者に知らせておくという便法を講じておきませんと、先ほど相馬委員が言われましたように、全く療養の給付を受くべき病気か受くべからざる病気かということは患者自身が判定しなければならぬ。患者自身がわからぬから医者に見てもらうのでありまして、患者自身が判定ができれば、初めから患者は医者に行かなくてもいいのだ。そこでこれはどうしても患者自身が判定しなければならないことでありますが、あらかじめこの程度のものは、これは療養の給付をこの地区においては認めることができない。この町内においては、療養の給付はこの程度のものは仕方がないとか何とかいうような大体のめどをあらかじめ示しておかなければ、これは非常な混乱を来たす。そういう混乱を来たしますから、私どもはぜひ総辞退はこの際はやめてもらわなければならぬということを主張しているのでありますが、なおかつそれにかかわらず、総辞退が行われるという場合におきましても、この辞退を、この困難をできるだけ少くするというのは厚生省のお考えでなければならぬ。保険医が総辞退したから、保険医の罪だから仕方がないから療養の給付は認められぬということでは、この事態はおさまらぬ。そういうような厚生省当局のお考えでなければなんぼ議論してもつまらぬ。一体どういうお考えですか。
  31. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 今、榊原先生仰せのように、また先ほど大臣がさような事態はできるだけ避けたいと思うけれども、どうしてもさような事態に突入をした場合には、療養費払いというものの趣旨というものを被保険者の方に十分徹底させたいということを仰せになっておりますけれども、それは結局今、榊原先生が仰せになったようなことに近い意味になると思うのであります。ただしかし、なかなか一定の何というか、ものさしというようなものを作るにいたしましても、これは非常にめんどうなことになりまするし、また作りましてもやはり混乱は私は起ると思うのであります。なかなか抽象的にしか言えません。抽象的にしかこれは申せませんので、そういたしますれば、そのものずばりのことはとうてい被保険者側からは判断できないということになりまするから、結局は混乱が起ると思うのでございます。その混乱はできるだけ役所側としては避けたいと存じます。しかし結局は混乱が起る。従って被保険者には御迷惑を大なり小なりお与えすることになると思うのであります。それは保険というものが、結局建前が、現在の建前では現物給付という建前をとっておりまして、療養費払いというものは非常に例外の場合という建前をとっておりまするので、それが今日の保険の建前でありまする以上は、どうしても混乱が起るということでございます。その混乱を絶無にいたすことは、これは保険医が総辞退をされたというような場合におきましてはむしろ不可能であろう。かりに仮定を置きまして、全国保険医の方々が総辞退をなさったならば、これは現在の建前の保険であるならば、運用が一時麻痺してしまうというようなことを申しても過言ではないと、かように私は思うのでございます。従って若干の混乱が起ることはこれはやむを得ませんので、できるだけさような事態は避けたいということをわれわれの念願といたしておるわけでございます。
  32. 山下義信

    山下義信君 今竹中委員のせっかくの御質問中でありますが、今保険局長は、この場合にどうしても混乱は避け得られないということです。その通りです。それで、その混乱を絶無ならしめることは不可能であっても、最小限度に食いとめるということは考えなくちゃならぬ、政府考えなくちゃならぬ。今のような政府の態度であるならば、混乱はますます混乱するばかりであって、これを最小限度に食いとめるということ、そのことが不可能です。でありまするから、この混乱が何によって生ずるかということになりますと言うまでもなく、保険医の総辞退ということがあるからです。それで保険医側においては、その混乱を最小限度に食いとめるために、療養費の支払いは受けられるのだ、被保険者は迷惑は少いのだということを言っていることは、この保険医辞退によって起るであろう混乱をできるだけ避けようとする考えで、保険医側は言っておるのです。その通りであるというならば混乱は起きないのです。従って、竹中委員質問は、総辞退を行わんとしておるところの保険医側が言うがごとく、被保険者療養費の支払いが受けられるのだ、従って混乱はないのだ、政府はその方針であるか、こう聞いたのです。ところが療養費払いということをいたしまして、混乱を避けるようにいたしますという、きわめて抽象的な一般論の御答弁があったので、この答弁も間違ってはおりませんが、相馬委員の指摘するがごときその具体的内容を含まざるがゆえに、一般的な抽象的な御答弁でありますから、療養費政府は支払う方針であると竹中委員は了承されてきたのです。しかし、最初に私が質疑いたしました第四十四条の解釈並びに高野委員が再び念押しをされたこの療養費払いの方針に対しまする、正確といいますか、具体的な答弁と、そこに受け取り方が違い、説明の仕方が違うものでありますから、ここにそのことを再確認するため、先般来から質疑が展開されてきたのです。それで私は、法は曲げることはできません、従って第四十四条の解釈いかんということを一番最初に伺ったのです。先ほどからの答弁を承わっておるというと、政府の第四十四条に対する解釈は終始一貫しておると思う。そのことのよい悪いは別として、依然として一貫しております。ただ、この四十四条を拡大解釈というか、活用というか、それはわかりませんが、もし四十四条の運用の上に幅があるならば、弾力性があるならば、それは政府当局がこの事態に対処する唯一の混乱防止策で、私はそれ以外にはないと思うのです。従って、私はこの際政府が示すべきは、療養費払いをなすべき場合はどういう場合であるか、この事態に対してですよ。保険医辞退というこの事態に対処して、第四十四条の適用ができて療養費を支払い得るケースはこういうケースであるということを少くとも——多数のケースを一々あげることは先ほどから質疑があるように困難です。その認定は、その場合々々困難でしょう。しかし原則はおそらくあるはずです。私が一番初め質問したときに答えられたのも一つの原則です。今榊原委員との間に質疑応答がかわされた、ある地区、きわめて密集した市街地において、そこに保険医辞退して他にかわるべき医療機関があるがごとき場合には、この四十四条は適用しないと、私の第一回のときに答えた、今もまた右京、左京の例をあげてそれに答えられたのであります。同様の答弁でありました。これも一つの原則です。従ってこういう場合には療養費が払い得られる、こういう場合には払い得られないという少くともその原則を、第四十四条のこの適用する原則を、私はこの際政府が一刻も早く示すということが、私はこの混乱——まだ一週間あるでしょう、この混乱を最小限度に食いとめる最良のとるべき方法だろうと私は思う。それをいまだにそういう原則を、こういう重要な質疑応答の際に政府当局が示されないということは、この事態を甘く見ているのか、五月一日までにはみな取り下げる、京都も大阪もみなやめるだろうと見ているのか、どう考えているのか。怠慢と言わざるを得ない。怠慢と言わなければ無見識です。無方針です。でありますから、一応五月一日以後に好ましからざる事態があるいは発生するかもわからぬという予想のもとに、少くとも第四十四条を適用して、療養費が支払い得られる場合はこういう原則の場合であるということを、数原則、数例でも、私は早くその見解を示す必要があると思うのです。従って端的に申しますと、第四十四条は、被保険者を相手にしての話である、被保険者に払うということです。保険医が唱えていることは、その被保険者療養費の支払いを受けたらそれがことごとく辞退した医師のもとにこれが支払い得られるという間接的な経路を、わかりやすく費用は払うてもらえるのだと端的に言っているのです。でありますから、この四十四条の適用によって、総辞退を声明している保険医側の言うがごとく、しかく容易に療養費というものがぐるぐるぐるぐる支払われて、ぐるぐるぐるぐる医師のところに支払い得るように、しかく簡単にいけるかいけぬかということは、これはすみやかに政府が、この要領を得ざるがごとき答弁をしていないで、早く示して、そうして被保険者国民にこの事態というものの与える影響、そういうものを明確に認識させるように私はすべきだろうと思う。従ってこの四十四条の適用を受けられる場合、適用を受け得られない場合の少くともこの原則を、これを示す用意があるかどうかということを承わりたい。もしここで即座にそれができなければ、至急に、本日委員会が開かれておりますから、本日中に、政府はこれを委員会に意思統一を示されたいと、私はかように思うのです。
  33. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまの山下委員の御質疑並びに先ほど榊原委員並びに相馬委員等から大体同様なような趣旨の御意見、御質問がありました。私は先ほどこの問題につきまして、法の四十四条の解釈につきまして、周知徹底いたしたいということを申し上げておる次第でありまして、今の山下委員の御意見ごもっともと存じます。すべてのあらゆるいろいろなエクザンプルと申しますか、例を、こういう場合にはこうだというようなことを、できるだけ見解を明らかにしまして、周知徹底するようにいたしたいと存じます。
  34. 山下義信

    山下義信君 それでは本日中に政府の公式な見解の御発表を当委員会にお願いする、その際私が念のために伺っておきますことは、先ほど厚生大臣は、速記に残っておると思うのですが、この保険医の総辞退という事態を、これを第四十四条の「緊急」の場合という言葉を使われたのです。これを「緊急」の場合と認めるかどうかということも、所見をこの際明らかにされたいのであります。重大な事態であるか、「緊急」の事態ということに該当するかどうかということも、明確にされたいのであります、それが一点。  それからもう一点は、この辞退した保険医が被保険者を診療した場合に、いわゆるその慣行料金で費用を計算した。それでその療養費はあなた方が保険で定めるところの診療報酬で査定するのでしょう。ですから慣行料金で診療してもいいんですね、あとの払いはあなた方が、費用の査定、認定をすればいいんですから、保険医でなくなったものが、何も保険の定められた医療費で計算せねばならぬことはない。一応慣行料金で計算をしてもいいんですね、とにかく支払いは、あなたの方が、保険で定めた診療報酬で、査定すればいいんですから。そういう場合にはどうします。そういう場合のたとえば被扶養者などの半額負担などはどういうふうに取り扱います。それもあとで御見解を承わりたい。  それから保険医が総辞退しますと、優生保護法で指定してある指定医師はどうなります。これは関係がありませんね、ところが被保険者が優生保護法に定められてあるところの給付を受けようとする場合にはどうします。保険医辞退した優生保護法の指定医師、しかも被保険者保険によって優生保護法に定められてある、しかも保険で認められた給付を受けようとする場合には、保険医辞退した優生保護法の指定医師からは医療給付を受けることができませんかどうか、この点も明確にしていただきたいのです。私は政府見解を表明せられる機会に、そういう点につきまして、あわせて遺漏のないように、この保険医辞退したその医師が、各般の場合に及ぼす影響等も調査せれらて、あわせて具体的な明確なる政府の方針を、いわゆる周知徹底、残りなく御発表を願いたいと要望しておきます。今答弁されますか。——あとでまとめて私は御発表願いたいことを申し上げておきます。
  35. 小林英三

    国務大臣小林英三君) なお、ただいま山下委員から四十四条のケース・バイ・ケース等に対しまする政府見解、今日中にというお話がございましたが、今日中ではちょっと発表しがたいと思いますが、もうしばらくの間御猶予を願いたいと思います。
  36. 竹中勝男

    竹中勝男君 関連質問で、大体私の本論といいますか、きょう主として御質問したい点に触れてきたわけなんですが、大へん私はそういう点では関連の質問に助けを得ているわけですが、問題の点は、先ほど厚生大臣はこういうふうに言われているのです。私に対する答弁の中で、療養費給付を相当拡大して考えるということを申されました。速記録にあります。私もそのときに書いてある。ですから。そうしてこのこういう緊急な重大な場合の混乱を最小限度に食いとめよう、健康保険法の運用の麻痺が起らないようにする、こういう点について私はさらに確認したいのですが、すでに了承してもこれは差しつかえないと自分で考えておりますが、結局それは具体的にはケース・バイ・ケースとして取り上げるんだと、しかしケース・バイ・ケースといっても、何かの一定の標準がなくてはならないのじゃないかという榊原委員、それからその標準を具体的に示してくれと言われる山下委員質問ですが、私はこれについて多少異論を持っているわけなんです。と申しますのは、ケース・バイ・ケースということでも、むろんそれは客観的な何か基準を設けるということはむろん必要でしょう、それがなければそのケースというものの意味がないわけですから。ところが、先ほど榊原委員の御質問を聞いておりますと、むろん患者が緊急の場合、非常に急に盲腸が痛み出したというような場合に、左京区の方では保険医辞退しているから、右京区まで行く。まあ盲腸のような場合は、辞退している医者に行ってもこれは療養費払いは当然受けると思いますが、指が曲った場合というのはどういう場合かわかりませんけれども、まあ右京区まで行くひまがあると思いますけれども京都の場合は左京区も右京区も一律に辞退している、九割五分ぐらいまで保険医はいないわけなんです。そうすると、緊急の場合ということが、非常に一般的になっているのですね。どの患者病気をした。何の病気かわからない。ところが保険医がいない。公的医療機関では往診はできない。あるいは夜間の診療もできないというような場合は、緊急の事態が非常に拡大してくるわけなんです。事実上拡大するわけです。また療養の給付が困難の場合ということも非常に一般的な形になるわけなんです。従って基準を示されても、またその基準はきわめて一般的なことになるし、基準を非常に具体的に述べようとすればケース・バイ・ケースということになるわけですが、そこで私はその基準を患者の不安を除く意味において、もしできるものであったならば、なるたけ早くこういう場合は療養費払いができるのだということを示していただきたいのです。その点は山下さんの要求と同じなんですが、しかしながら、その前提として、その四十四条の拡大解釈ということは、私はこの際そういう言葉は避けたいのですが、この混乱を最小限度に食い止めるという意味におきまして、また自民党内閣が、鳩山内閣国民に公約しております建前上、四十四条を好意的に、実際的にこういう事態を解決するのに対して、実際的に解釈していただきたい、解釈する意思があるかどうか。すなわち高野委員に対しても、保険局長ケース相当ふえるだろうということを言っております。また、厚生大臣は今朝相当療養費払いは拡大して支払われるだろうということを言っております。この点は政府としては、この目前の混乱を最小限度に食い止めるのは当然であり、また現在の政府の建前としても当然であると思いますが、そういう意味におきまして、ケース・バイ・ケース解釈相当拡大して考えられる、そのケース相当ふえるということを覚悟して対処されるということについては、そういうように確認してようございますか。
  37. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいま竹中委員のおっしゃいました先ほど私の答弁、拡大という言葉を用いていたと思うのでありますが、これは法の解釈を拡大するというような意味で申し上げておるのではないのでありまして、いわゆるケースが拡大されるという意味で申し上げておるのであります。しかし、ただいまの御質問でありますいわゆる好意的にできるだけ法の解釈を被保険者に親切をもって解釈をするということは、私どもはそういうような一つのいろんな基本的の例を作る意味におきましても、これはもちろん好意的、親切に考えることはもちろんであります。
  38. 竹中勝男

    竹中勝男君 保険局長はその基準を具体的に最近に示されることができますか。ケース・バイ・ケースということの基準を、きっき山下委員が要求されたことに対してはそれをやられるお考えなり、またできるとお考えになりますか。
  39. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 相当困難なことだと思いまするが、大臣から山下先生に先ほどのようにお答えをいたしておりますから、私どもといたしましては努力をいたしたいと思っております。
  40. 竹中勝男

    竹中勝男君 この総辞退という非常に不幸な遺憾な事態が起ったわけですが、しかしながら、私は医者でありませんけれども療養担当者がこういう決意をしたということについてはやはり相当の理由がある。すなわち良心的な治療、すなわち今まではそれじゃ良心的な治療がしていなかったのかと言われますかもしれませんけれども、そうではなくて限度がある。この一部負担が強化されて、これは確かに逆行です。一部負担が強化されているということは、保険経済上から一部負担がふえたわけですから、そうすると患者がお医者さんのところに来る数が少くなる。早期診療ができない。どうしてももう一度見なくちゃならないような患者がいても、再診料があるためにその患者が来ない。これではほんとうの国民医療担当者として良心的な治療はできない、こういう非常に鳩山内閣社会保障の拡充強化という線に協力しようとして、医師会はこの固い決意をもって日本の社会保障制度を、医療保障制度を促進しようとしておるわけであります。こういう医師会のそれが不幸に総辞退という形になって、患者に対する不安を与えておるわけなんですが、そういう事態であるということを十分にやはり厚生当局は認めた上で四十四条というものを解釈していただきたいと思う。京都市のごときは、実は蜷川知事がこれを受け取る際に、この問題が解決の見通しがついていたらば復帰してくれ。のみならず、今まで保険医でなかった医者も全部京都においては保険医になってくれという条件をつけて受け取っておるのであります。これは実は不幸な事態ですけれども、この不幸を一つの契機として、さらに日本の医療保障制度を強化していくという動きにほかならない。決して医療担当者が自分の利害関係のためにやっておる、いわゆる労使の関係のストライキというようなものでは全然ない。国民的な立場からこの国民医療の促進、社会保障制度の促進という立場からやっておるのであって、いわゆるこれを労働争議のような性質の実力行使とは全然違うという建前に立って、やはり四十四条というものは医療担当者に対しても、患者に対すると同じようにあたたかい解状をもって適用されることを私は要望して、質問を終りたいと思います。
  41. 山下義信

    山下義信君 先ほど大臣政府の公式見解の発表はきょう中には無理だと言われたので私は了承した。無理なことはしいられませんからね。しかし、なるべく早い機会にその見解を御表明にならねば、本案の審議に重大な支障があるということだけは申し上げておきます。  それから委員会は御承知のように、二十七日には大阪地区におきましていわゆる聴聞会を開くということになっておるのでありまして、私どもといたしましては、その以前に政府見解を明確に承知しておく必要があると思います。できるだけ早い機会に政府見解を、公式見解を発表せられるように希望しておきます。
  42. 相馬助治

    相馬助治君 私は質問があったのですが、関連質問の段階で、各委員の熱心な質問ですべてわかったので、内容的な質問をいたしません。ただ一点、この際厚生大臣に申し上げておきたいことは、保険医が総辞退をしたというあの事態に対して、よい悪いは別として、健康保険法四十四条を適用して療養費払を全部するのだから総辞退をしても平気なんだと、かりにそういうふうに厚生省が言ったとしたら、逆に言うたら医者の総辞退ということは何ら政治的な意味がなかったわけなんですね。そこで私は厚生省側が、とにかく健康保険法四十四条の法解釈をかようにされているということは、執行部として一面当然だと思っているのです。それで山下委員質疑されて、要望されたことに対する、いわゆるケース・バイ・ケースの具体案が明瞭になるのですが、その際にも患者に迷惑をかけないという角度から、なるべくこれは拡大して出されることを要求いたします。と申しますのは、私は具体的な一例をあげますと、栃木県も総辞退いたしております。ところが竹中委員との質疑新聞で明瞭になりましたところが、率直な話、栃木県の医師会の幹部諸君も、厚生省がこれだけに考えているのでは、われわれは総辞退をもって対抗を最後までするという事態は、これは考えなければならない、かような態度に出ておるのです。おそらく厚生省期待したのとは私は逆だと思う。やはり医者は、これは栃木県の医者だけが良識があるのじゃなくて、私はやはり医者は良識があると思うのです。そういうふうな意味で、どうか山下委員の求めに応じて出されるケース・バイ・ケースも、辞退されてしまったときには、法解釈をこんなに拡大してやるのではいまいましいというようなことでなくて、十分その諸般の事情を勘案されて、事態がおさまるように、患者も迷惑をこうむらぬように、一つ格段の要望を私はいたしておきます。
  43. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  44. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記を起して。  それでは午前の質疑はこの程度でやめておきます。午後は一時半から再開いたします。  それでは休憩いたします。    午後零時二十三分休憩    ————————    午後一時五十九分開会
  45. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) それではただいまから再開いたします。  初め本日の理事会の経過について御相談いたします。  健康保険法の一部を改正する法律案ほか二件の審査上の参考に資するため、大阪において地方聴聞会を開く場合の出席者といたしまして、重盛委員長山下、谷口両理事、ほかに森田、横山の各委員出席することに決定いたしました。なお、正式の委員以外に、御出席御希望の向きは多数御出席をお願いしたいと存じます。  次に、埼玉県下に起きました労働基準関係の問題について、当委員会からの調査として山本委員がおいでになって調査していただくことに異議ないと決定いたしました。  次に、原水爆実験の予防対策について、外務大臣説明を聴取することに異議がないと決定いたしました。  次に、製薬会社の製薬の実情を、適当の機会に二、三のところを選んで視察することにいたします。以上の通りでございますから御了承を願います。   —————————————
  46. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 次に、午前に引き続きまして、健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題として質疑を願います。
  47. 山下義信

    山下義信君 衆議院におかれて修正せられました諸点についてお伺いをいたします前に、今回の御修正の点が数点あるわけで、一部負担の金額の変更、立入検査の点の削除あるいは罰則の軽減等あるわけであります。それらの諸点につきまして、御修正の御趣旨につきまして伺いたいと思うのでありますが、その前に、御修正をこの諸点にのみとどめ置かれましたのはどういうわけでありますか、その他の諸点について御修正の必要はなかったのでありましょうかという点を、一応総体的に承わっておきたいと思います。
  48. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 私は、衆議院の社会労働委員会におきまして、健康保険法等の一部を改正する法律案等につき、政府原案に対して、修正案を提案しました一人でございます。ただいまの山下先生の御質問に対してお答えいたします。  御指摘のごとく、政府原案に対しまして数点の修正をいたしました。その点につきましては、後刻いろいろ御質疑がございましょうが、その他をなぜ除外したかということでございますが、実は御承知のように、今度の健康保険法等の一部の改正につきましては、私どもといたしましては、これを起点にいたしまして社会保障制度の確立、その中心課題でありまする医療保障の確立前進というようなことを考えておるのであります。そういう点について、政府はいろいろ法制的、財政的の措置をとったのであります。それを慎重に検討いたしましたが、いろいろな事情からいたしまして、これが山下先生よく御存じのように、非常にりっぱなものとはことごとく申されない点もあるのであります。しかしながらとりあえず現状におきましては、政府原案につきましてもこの程度のことは、現在の財政その他の事情のもとにおいてはやむを得ない、また適当のものであろうというように考えまして、それからさらにそれ以外の点につきましては、二、三の点につきまして、あとでも申し上げたいと思いますが、被保険者の負担を軽減する、あるいは医療担当者等にできるだけ御迷惑がかからぬようにするというような意味におきまして、修正いたした次第でございます。
  49. 山下義信

    山下義信君 私の伺いますことがあるいは少し御無理かと思うのでありますが、しかし、これはどうしても伺っておかなければならない、私ではありません、参議院として伺っておかなければなりませんと思う。それは前国会におきまして、健康保険法の一部改正案が提出されたのであります。その際、あなたの方では、被扶養者の問題の点、継続資格の問題の点、標準報酬の問題の点につきましては衆議院において御修正に相なったのであります。それが当院に回付せられまして、現厚生大臣小林氏が委員長のときに、審議の時間なくして、これは審議未了になったのであります。しかるに今回は、その点について御修正なくいたしまして当院に御送付に相なったのであります。これはどういうわけかということを伺っておかなければならぬと思うのであります。それで、いやしくも一院におきまして、数カ月以前にはその点を修正し、いまだ幾ばくも時日を経ないのに、その見解を異にせられて、今回はお触れにならなかったということの意図を当院に向って明確にしていただく必要があろうかと思うのであります。この点を一つ説明願いたいと思います。
  50. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) ただいま御指摘に相なりましたような点が、第二十二国会でございましたことは仰せの通りであります。しかしその際に、政府といたしましても、また党といたしましても、何とかして医療保障制度に対する国家の責任を明確にするという意味におきまして、政府の負担——定率か定額かは別といたしまして、政府の負担ということを考えたのでございますが、それがついに御存じのような事情になりましたのであります。その他の点につきましてもいろいろございましたけれども、今度の改正は、先ほど申しましたような医療保障の確立前進というような画期的なことをやるというような意味で、今度、前国会におきましての改正についても練り直せ、出直せというような御注意もございましたし、今度は今申しましたような根本的に一つ立て直しをやる、そうしてこれを基盤として医療保障、社会保障の前進をはかりたい、かような意味におきまして、今お示しのような点に触れた次第でございます。
  51. 山下義信

    山下義信君 第二院でありますわれわれ参議院といたしましては、本案を審議いたします上にどうしても検討いたさなければなりませんことは、政府原案、あなたの方の修正案、それと前国会において提案され、しかもあなたの方で修正されまして、審議未了にはなりましたけれども、そのときの前国会の案、この三者を比較検討いたさなければならぬと私は考える。これは私個人の委員ではなくいたしまして、院といたしまして事態を明確にいたさなければなりません。前国会に提案されましたものと異なる点につきましては、これはそのときの御事情で、また御審議がどういうふうに変化してもよろしゅうございますけれども、しかし、前国会の提案と同じ点につきまして、衆議院側が今回態度を異にせられましたという理由、これは明確にしていただかなければならぬと思います。もとより法律案でございますから、諸情勢の変化に伴いまして随時立法府が見解を異にいたしまして、しばしば改正いたしますことは、これはまあ恒例でございますけれども、しかし、この種健康保険の改正の問題は昨年来起きて参りまして、今藤本議員の御説明通りに、もう既定の宿題でございます。それに対しまして、前国会に一つの案が出たのであります。その際、ただいま申し上げました諸点につきましては、衆議院が修正をせられて当院に御回付になった、今回はその点は御修正なしで当院に御送付になっております。どういう見解の変化を来たされたのであるかということは、これは明確にしていただかなくちゃいかぬ。社会保障の前進、医療保障の確立のためとおっしゃいましたが、それだけでは、衆議院が同じ問題につきまして、前回はこれを非とされた、今回はこれを可とせられたということは、どういう御理由であったかということは、私ども明確にしていただかなければ、衆議院の修正案を当委員会で扱うことができません。
  52. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) いろいろ御指摘いただきましたが、前回は根本的な改正をやるというような構想のもとに行われましたけれども、御承知のような暫定的な結果に終りましたので、今回は一つ根本的に今までのいろいろな懸案なり、問題点を再検討いたしまして、そしてある程度の修正をいたし、また新たにつけ加える点もございまして、御承知のような結果に相なった次第であります。
  53. 山下義信

    山下義信君 私はただいまの御答弁では遺憾ながら納得いたしかねるのでありますが、被扶養者の範囲の問題、継続資格の期間の問題、標準報酬の引き上げということは、これは健保の対策の中での根本的な問題の一つなんです。前回の案が暫定的であろうと不完全であろうと、衆議院が御修正を加えられたこれらの諸点は、保険制度の上においては骨格をなす相当重要な問題、しかも今回の提案はそれらの諸点については全く同じ提案であって、二十二国会のときの提案と一字一句異なっていないのであります。それに前回はこれらの根本的な問題について修正を加えられて、非としている、削除されている。今回はこれを是としてお入れになったということが、どうしてもわれわれには会得せられない。前回非としている点は、今回もまた非とすべきであろうと私どもは思う。衆議院の御意思がどうであったのか、前回非とせられているのが誤まりであったのか、今回の是とせられるのが正しいのであるか、それならばどういうわけであったのかという点を明確にしていただかなくちゃなりません。御無理を申し上げては恐縮でありますから、私はそれらの点について、貴院の社労委員会におきましては、これらの諸点にいかなる御審議が加えられたかということを明確にしていただきたいのです。どういう御議論をなさったのであるか。私ども参議院におきまして、この委員会で、前国会におきましては修正すべしとしてそこを削除し、今回においては修正すべからずとして是としたならば、十分論議を戦わして、前国会と異なる議決を委員会がするのでありますから、われわれは心血を注いで、顔を赤らめて、お互いに議論をいたしますのを通例といたします。おそらく貴院におかれましても、前回削除したところを、今回はこれを認めていこうというのには、おそらく御審議があったと思うのでありますので、御審議の模様を承わってもよろしゅうございます。どちらでもよろしい。これは何か深い御理由がなくちゃならぬ。前回削除せられたのにも深い理由がなくちゃならぬ。漫然とということはございません。今回これを認めるかにつきまして、前回の議決に反して、立法府が意思を翻すには、重大な私は理由がなくちゃならぬと思うのであります。これは私は国会の審議において、一会期ではございませんから一事不再議とは申しません。しかしながら周知のごとく、半歳もたたない前国会におきまして、この重要なる問題点について、衆議院側の意見がここに変ってきたということについては、当院に対してその理由を明確にお示しをいただかなければ、この修正案の審議を進めるわけに私はいかぬと思います。明確にしていただきたいと思います。
  54. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 前回の場合と今回の場合といろいろ相違がございますが、先ほど申し上げましたように、今回は根本的な改正をやりまして、社会保障の前進をはかるというような意味におきまして、これは政府一つ社会保障に対する義務として、国庫が負担する。さらにまた事業主におかれましても、これに協力するというような意味におきまして、標準報酬の等級区分等も今度取り上げました次第であります。さらに健康保険が御承知のように、大体中小企業、零細な中小企業を対象といたしておりますから、いろいろ今お話のごとく、衆議院におきましても、標準報酬に対するこの保険料率ですね、それを一つ取り上げたらどうか、千分の六十五になっているのをもう少し上げたらどうかというようなお話もございました。しかしこの千分の六十五というのが、もうすでに最高度に達しておりますように考えましたし、相手は中小企業であるというようなことを考えましたから、これは前回に引き上げましたけれども、今回は据え置きにいたしました。その他今回は——前回は暫定的であった、今回は一つ根本的にあらゆる点を検討いたす、かような意味におきまして、御指摘のごとく、前回取り上げなかった問題も、今回取り上げるというようなことにいたしました。それからいわゆる被扶養者の範囲につきましては、これまた実は問題になりまして、一つもう少し被扶養者の便宜のために、政府の原案を変えようじゃないかというようなこともございましたけれども、いろいろの点から考慮いたしまして、これに手を触れなかった次第でございます。
  55. 山下義信

    山下義信君 私の記憶によりますと、前回衆議院側から修正案の説明にみえました方は、この被扶養者をしぼりますことも、継続資格の期間の延長も、これは被保険者側の非常に反対もあるし、不利益も与えることもあるし、いろいろ勘案して、これは今回は削除することにした。標準報酬の引き上げにつきましても、労使双方とも強い反対があるので、これらの意見を聞いて、これは削除することにしたと、こういうその当時の理由もあった。前回の案が暫定案であって、今回の案が根本的な対策であるからといいましてもですね、被保険者の不利益になる点は同じことです。医療担当者の不利益になることも同じことなのです。暫定案ならば被保険者の不利益になる点は削って、根本対策ならば被保険者の不利益になる点は認めるというようなことは、私は意味をなさぬと思うのです。これはどうしても前回の修正せられた理由と、今回はそれを否定せられて、衆議院側がこれらの諸点について考え方を変えられたについては、全般的な、暫定とか根本とかいうようなそういうばく然たることでなくして、私は相当な、何か理論的な根拠をお持ちだろうと思うのであります。
  56. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) いろいろ御指摘いただいたのでありますが、継続給付につきましても実は論議がありましたけれども、ほかの事情等も勘案いたしまして、実は引っ込めたのでございます。そして原案通りとしたのでございます。また、標準報酬等の問題も含めまして、これは国庫の負担等の関係もございますので、今度は若干改訂してこのようなことにいたしたわけでございます。
  57. 山下義信

    山下義信君 私は、この衆議院の方の前回の議決の御意思と、今回議決の御修正にならなかった理由と、ただいまの御説明では納得いたしかねます。それで、こういうことにお願いしましょう。その方がいいと思うのです。衆議院の方の速記を拝見いたそうとも思い、いたしかけてみたのでありますが、そういうことでなしに、一つ、この点につきましてですね、あなたの方の社労委におきまして、資料として前回御修正なされた理由、今回その点に触れないで、修正しないでこっちへお回しになった理由、一つ資料としてちょうだいしまして、きょうは御出席のない委員もおられますから、明確にしていただく、こういうことでお願いをしておきたいと思います。なお、この点につきまして、どういう論議がありましたかという点もあわせて資料としてらようだいいたしたい、かように考えております。その上であらためて伺うことにしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  58. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 御趣旨のごとく、少し時間をいただきたいと思いますが、差し上げたいと思います。
  59. 山下義信

    山下義信君 それでは、これは国会の審議上におきましては私は非常に重要な問題と思う。一院が同一種類の——全く同一とは言いません、同一種類の法案、しかも全く同一事項に対して幾ばくもその間を経ていない隣接する国会において、前国会におきましてはこれを修正し、今回においてはこれを修正しないということにつきましては、立法府の意思の変更については明確にしておく必要があろうかと思いますので、ただいま提案者の御答弁がありましたように、次回、その点に関する衆議院の見解を資料としてちょうだいするということにして、これは他日の機会まで保留することにいたしておきます。  それでは、今度修正なされた点につきまして伺うのでありますが、第一点は、立ち入り検査の点でございますがね。これは、まず修正せられた部分の御説明を願って、そうして修正せられました理由を私は承わることにします。
  60. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 御承知のように、政府原案によりますと、「立入ルコトヲ得」という規定になっておりました。これでは強権を発動するような感じを与えまして、不必要に医療担当者に不安感を与えるというような意味にとれますので、これを修正いたした次第でございます。なお、現行法によりましても、質問、検査等に必要な措置はとり得るようになっておりまするから、修正いたしましても、その点においては変りない、かように考えておる次第でございます。
  61. 山下義信

    山下義信君 そうすると、衆議院の方で修正なされたのと政府原案とでは、実際の上におきましては、実際の効果といいますか、この検査の効果につきましては変りないという御見解でございますか。
  62. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) さように考えております。
  63. 山下義信

    山下義信君 一体原案はどういうふうにやろうとしていたんでございましょうか。それからあなたの方の修正ではどういうふうにそれを改められたのでございましょうか。
  64. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 原案は御承知の通りでございますが、事業所とか施設に立ち入ることを得ということでありますから、これを「事業所ニ就キ」、それから何々「ニ就キ」というふうに改めた次第であります。それによりましても、法の目的といたしておるところの効果におきましては変りはない、かように考えた次第であります。
  65. 山下義信

    山下義信君 それでは私は変りのない模様を承わりたいと思います。これは非常に問題になった点でございますね。立ち入り検査というようなことは、もうこれは関係者が絶対に反対いたしましたですね。これは健康保険の問題における一つの名所でございます。名所が数ヵ所ございますが、これは一つの名所でございます。立ち入り検査ということは、絶対に中へ入って調べる、事業所の中へ入って、ずかずかと入って調べる、私はこういう職員だという証明書を見せて中へ入って調べるですね。そうすると、あなたの方で今度修正なされた「事業所ニ就キ」というのも中へ入って調べるのですか。
  66. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) これは現行法によりましてもさようにいたしておったようでありますから、それに戻りました次第でございますので、結果においては変らぬと思います。
  67. 山下義信

    山下義信君 法制局はおりませんかね。法制局おりましたら、その「事業所ニ就キ」とあっても中に入れる……、今提案者は同じであると、こうおっしゃったのですね。それを法理的に一つ説明下さい。私は違うと思うのですが。
  68. 鮫島眞男

    ○衆議院法制局参事(鮫島眞男君) お答えいたします。従来この種の行政法につきましてはいろいろ検査の規定があるのでございますが、それらの規定を拝見いたしますると、今度の改正案政府から提出されました改正案にございますように、立ち入り検査をすることができる、そういう想定がございます。それからまた別な立法例にいたしますとそういうことはございませんで、ただ、帳簿書類その他の物件を検査することができるというだけの規定になっているものもあるのであります。それからもう一つは、この衆議院で修正いたしましたような「事業所ニ就キ」というような、そういう「就キ」という言葉を用いまして、検査ができる、そういった立法例もあるのでありまして、まあ大体三通りの立法例があるのではないか、こういうふうに私は記憶しております。そこで、その三者の間にどういう違いがあるのか、あるいは違いがないのかということでございますが、これにつきましては、別にこういった規定につきまして何か違反がございまして、そうしてそれが裁判ざたになったというような例を聞いておりませんので、裁判例としてもそういう場合の解釈がどうなるかというのはまあないのではないか、寡聞にして知らないのでございますが、おそらくそういう判例はないのではないか。それからまた、ものの本にもそういうことを区別して説明したのも見当らないのでございます。ただ、私が多年立法事務に参画いたしておりまして、立法事務といいますか、法律案の起案に関係いたしました際に、いろいろ失費から聞いておりましたことは、立ち入りは大体文字通りその場所に立ち入って検査するというので、大体言葉ははっきりしていると思うのでございますが、問題はその「就キ」、何々に「就キ」という場合の一体「就キ」というのはどういう意味合いかということを、これはまだ私が内閣におります時分に先輩から聞いたことでございますが、それは場所に行ってというぐらいの意味合いであるというようなことを聞いたように記憶しておるのでございます。それからもう一つの何も書いてございませんで、ただ検査することができるというのは、ただ検査することができると、まあその通りでございますが、そこでそれでは一番問題になりまするのは、そういう場所に入るという場合に、妨げる場合に、よく違反としまして検査を妨げるとかというその違反に対する罰則があるのでございますが、その辺の関係が一番問題になると思うのでございますけれども、やはりその検査を妨げるという意味合いでございますれば、いずれの場合でもそこに行こうとするものを妨げるということは、いずれも検査を妨げるということになろうかと思うのでありますけれども、ただ立ち入りすることができるというふうに書いた場合、あるいはついて検査をすることができるといった場合におきましては、法の趣旨といたしまして、その場所に入ることの権限が非常に強くこの法律で打ち出しているかどうか、あるいは多少ニュアンスを弱めてそこを規定している、そういう違いはあると思うのでございますけれども、その検査を妨げる点からいうと、そこは結果としては同じことじゃないか。ただ法の趣旨といたしまして、立ち入り権のことを規定してある、あるいは規定していないにおきまして、そこの実際の検査をいたしまする監督権限というものを、その法律で強く見ているかどうかというその法の趣旨といいますか、ニュアンスの差といいますか、そういう点に差があるのだろうと思います。従ってそういうことから申し上げますと、その検査を具体的に妨げた場合を考えますと、まあ法律的にいえば犯罪の情状なり、その点からは非常に違いはあると思いますけれども、その妨げたことになるという点から申し上げますと、あまり差異はないのじゃないか、まあこういうふうに理解いたしまして、今度の修正案を作る場合におきましても、そういうニュアンスの差ということを考えて、こういう修正案でけっこうであろうという私の方の見解なのでございます。
  69. 山下義信

    山下義信君 具体的に伺いますが、まあ御承知のごとく私も専門家でないので、門外漢でありますが、新国会以来、すべての検査におきまして立ち入り検査ということをやる。非常に人権が尊重せられて、新憲法の精神に沿ってこういう場合における用意のために、当該職員が身分証明書を提示しなくちゃならぬ云々というような事柄が十分規定されるということは、おそらく終戦この方の多分多くの、特に多くとは言わないが、立法例として私どもも見聞してきたのであります。それで、従ってこの立ち入り検査の問題が関係者からごうごうと論難の声があがってきたことも、やはりこの人権尊重という建前から、また、一般的には保険医というものを初めから不正ありと犯罪視するきらいのあることについて、反対的な意見が強いことは自他周知の通りです。それでその立ち入り検査をするということと、これは検査を徹底しようとすれば、どうしてもこれをやらなくちゃならぬので、今回政府の原案はこの検査に当って立ち入って、そうして十分その検査の目的を達しようというのが提案の理由であった。提案の理由にもそう説明されてある。それで「事業所ニ就キ」という表現をしても、同じように立ち入ることができるということが、「事業所ニ就キ」というのは、その事業所を対象としてという程度のことであって、具体的にいえば、その事業所の前に行ってうろうろするだけ、この第九条によって当該の関係の職員が中に入る権利ありと立法者は認めるのか。中に入る権利は認められていない。ただその事業所そのものに向って帳簿を出せとか、どうせいとかいうことが言えるのであるか。その事業所について検査をするということができる、この「事業所ニ就キ」ということは中に入ることも意味するのか。その事業所に関係があるから、その事業所を検査の対象としてやれるという対象であるというだけのことか。また今申し上げたように、具体的にいえば、行動からいえば、中に入れなくて外から、ただうろつくだけ、あるいは通知を出してこういうものを持ってこいというだけのことか。入れるのか入れないのか、それだけ明らかにしてもらえればいい。今提案者はこういうふうに修正しても、言葉をやわらげただけで、中に入って調べることができるのだ、原案と違わないのであるということを言われたのであるが、全くそれであるかどうか。それならば、なぜ「事業所ニ就キ」というあいまいな言葉を使ったのか。原案通りの方がはっきりしていていいじゃないか、原案のどこが悪いか、ただ言葉が少しきつ過ぎるというだけで、……。実際は「事業所ニ就キ」では、その方が解釈はあいまいである。立ち入ってということの方がはっきりしていいじゃないか一立ち入るということができないということがあって、私どもは「事業所ニ就キ」と修正されたと、その理由をそう聞いておいた。ところが同じだ、立ち入ることができるのだということならば、ただ条文をやわらげて、いかにも立ち入るというのをやめたように見せておいたが、実は職権としてはできるようにしてあるというのなら、実にうまい修正である。こうおほめしなければならない。それならそれでよろしいが、それならそれでそのことの是非善悪は別として、修正の理由がはっきりする。私はその事柄のよしあしを議論しようとは思いません。今は質疑でございます。修正のこの御意思が明確であればよろしいわけであります。その辺の動機はいかがでございましょうか。
  70. 鮫島眞男

    ○衆議院法制局参事(鮫島眞男君) 先ほども申し上げましたように、この「事業所ニ就キ」ということの公権的解釈といいますか、そういうものは裁判例になりましたこともございませんので、その裁判所による解釈というものは、この際わからないのでございますが、ただ私がこの「就キ」という言葉は、御承知の通り、現在の健康保険法の中にある言葉でございまして、この「場所ニ就キ」という用例は、ほかの場合に私らはそういうのに二、三ぶつかった経験があると思うのでありまするが、その場合の「就キ」というのは、場所に行ってというくらいの意味であるということを、先輩から聞いたことがあるということを申し上げたのでありますが、今回の修正におきましても、この立ち入りということに書きますというと、厚生大臣なり都道府県知事の立ち入り権というものが、実にはっきりと法文の上で明確になるわけでございます。しかし、その場所に行ってという解釈が、これは私どもも先輩から聞いた意味を申し上げておるわけでございますが、その場所に行ってという意味でございますれば、そこに積極的な立ち入り権ということを正面からいったのではなくて、法の趣旨としては、その場所においてその検査ができるというので、そのあたりに非常に監督権に対する法の趣旨というものがうかがえるのではないかというようなことから、たまたま現在の現行法がそうなっておりましたことと関連いたしまして、こういうような修正でけっこうでございましょうということを申し上げたのでございます。
  71. 山下義信

    山下義信君 その「場所ニ就キ」ということは、現行法にあります。しかし私が言ったのは、今回の政府原案とは違う。政府原案は立ち入りとありますから、立ち入りということが「事業所ニ就キ」という現行法に戻されてある。それで裁判所の判例がない、前例がないというので、よってもって規範とするところがないとおっしゃいますが、あなたの御答弁が、今度は判決の基礎になる、逆です。裁判所の何も前例を顧慮なさらぬでも、あなたの御答弁が今度は裁判所がそれによって判決のもとになる。ここで立法するのですから、立法意思をこれが裁判所の判決の根拠となる。それを明確にしていただかなくちゃならぬと私は思う。これは現在の「事業所ニ就キ」という現行法の第九条のこの規定の運用に、政府当局は疑義があったのでしょう。この現行の九条で立ち入りができたかできなかったか、現在。その点を政府から明確にしていただきましょう。争いがあったか、疑義があったか。この「事業所ニ就キ」ということでりっぱに立ち入りができたかできなかったか。トラブルが起きたことがあるのではないか。もし現行法の第九条の「場所ニ就キ」ということでも、りっぱに立ち入ることができた。前をうろうろもしたであろう、こそこそもしたであろう。入ろうと思ったり、入るまいと思ったであろう。ちゅうちょなく入ってみたか。何しに入ったかといわれたこともありはせぬか。これはすでにこれからそれらについて紛議が起きるのでなくして、すでにそういうような解釈について争いがある、実例があるのではないかと思うのでありますが、ない。また、できたのか、その点を政府から明確にお答え願いたい。
  72. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 九条の現行法に「勤務場所ニ就キ」と書いてありますが、これにつきましては、解釈上におきましてもまた、実際問題といたしましても、トラブルが起ったことはございません、というのは、検査の必要のためにはそこに、その場所に行くことができる。すなわち、立ち入ることができるという解釈に相なっておりまするし、またさように運用をいたしております。ただ、今回政府原案におきまして、立ち入りということをはっきりいたしましたゆえんのものは、先ほど山下先生もちょっとお触れになったようでございますが、新しい立法例におきましては、かような国民と申しますか、何といいますか、官庁が国民に対していろいろ強権的な権限を有する場合におきましては、法律でそれを明確にいたすという傾向が最近の立法例の傾向でございますので、その意味におきまして、原案のようなものを御提出、御審議をいただいたわけでございます。
  73. 山下義信

    山下義信君 そうですか。現行法に、「事業所ニ就キ」というのでも、りっぱに立ち入り検査の職務が行い得られるというのですか。ただ、最近の立法例や、それでは字句がはっきりしないからという、用語上の、ただ入念のために立ち入りということにしたのですか。その程度ならばあなた、何も関係者を刺激させるような原案を作らぬでもいいじゃありませんか。また、衆議院の修正が「事業所ニ就キ」と現行法に戻した。戻しても立ち入りができるというならば私はこれは問題じゃないかと思う。私どもは門外漢であるが、世間ではこの立ち入り検査ということはやらさぬことにした。衆議院の修正でその点をもうみなとってしまったのだ。これから保険医が立ち入り検査などということをされる心配はなくなったので、この点は非常に緩和せられたと解釈せられた。ところがそうではなくて、字句はゆるやかにしたけれども、立ち入りができるのだということならば、立ち入りという字句をとった意味は何もないじゃありませんか。ごまかしじゃないか。今の答弁でいえばごまかしであります。いわば、私は何も医師会を代弁するのじゃありません。保険医の代弁も何もするものではありませんが、ごまかしである。やはり「事業所ニ就キ」ということは、後にこれは一つの争いが起きはしませんか。争いが起きる心配はないという保証をしますか。保証をするならば、ここでりっぱにこの「事業所ニ就キ」ということは立ち入りができることであるということも明らかにしていただきたい。再確認を私は願う。それならば、何も立ち入りという文句を法例、立法例で使う必要もないのである。それからここでもし……、まあその点を明確に一つしていただこう。それからにしよう。
  74. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私の言葉が少し足りませんのでございまして、若干先生と違っておるようでございますが、私は第九条の問題を実は申しておりました。先生の御質問の中に保険医ということのお話が出ましたので、現行の保険医についての監査等に関連いたしましては、九条の二が現行の規定でございます。ところが九条の二の方につきましては、何々「ニ就キ」という条文が現行ではないのでございます。「当該官吏吏員ヲシテ診療録其ノ他ノ帳簿書類ヲ検査セシムルコトヲ得」という規定だけであります。それで私どもとしましては、現行の九条の二につきましては、監査の必要上立ち入りをいたす必要ありと、かように考えまして、この九条の二が、新しい改正法によりますと、九条の二の一項と、四十三条の十に分れております。九条の二の一項、これには立ち入り等がございません。これは保険医ではない一般の医療機関に、まあこれはむしろ検査というよりは、調査の権限を規定したものでございますから、ここには立ち入りはございません。ところが四十三条の十、これがいわゆるこの保険医療機関に対する保険と特別の関係にある医療機関についてのいろいろな検査の規定でございます。いわゆる監査というものであります。ここと、それから先ほど来御引例になって御論議が行われておりまする第九条でございます。これは事業主とか被保険者の異動、報酬、保険給付並びに保険料に関し必要あるときは事業主に対するあれでございますが、その場合には、いずれも立ち入りの事項を明らかにいたしたわけでございます。それでさらに衆議院の修正におきましては、今はっきり立ち入り権限というものを規定いたしておりまするものを削りまして、いずれも「事業所ニ就キ」とか、「保険医療機関ニ就キ」というふうに修正がいたされております。なお、それに関連をいたしまして、ここで若干この法律の面におきましては、相違が出てくるわけでございますが、この九条には罰則がついております。それから四十三条の十、いわゆる監査の規定には罰則はございません。これはこの契約の解除をいたす、すなわち指定の取り消しという問題になるわけでございます。それらの条文におきましては、それぞれ立ち入るということについて拒んだ場合に、罰則をかけたり、取り消しをいたしたりする要件の中から削ってございます。条文の方で削ってございます。該当の条文をあげてみますると、四十三条の十二が取り消しの場合でございまして、それの一項の五号に、衆議院の御修正では、五号をちょっと読み上げてみますると、「当該保険医療機関又ハ保険薬局ノ開設者又ハ従業者ガ第四十三条ノ十第一項ノ規定ニ依リ出頭ヲ求メラレテ之ニ応ゼズ、同条同項ノ規定ニ依ル質問ニ対シテ答弁セズ若ハ虚偽ノ答弁ヲ為シ又ハ当該職員ノ同条同項ノ規定ニ依ル検査」その次が削られております。「若ハ同条第二項ノ規定ニ依ル立入」ここまでが削られておりまするので、立ち入りを拒んだこと自体について、指定の取り消しとか、あるいは同様な改正が罰則のところで、九条に関連をいたしまして罰則の改正がございますが、そういうふうな修正が行われておるわけでございます。
  75. 山下義信

    山下義信君 その通り。罰則のこともあとで承わろうと思いましたのですがね。九条の二の場合も、四十三条の十の場合も、私はまだこれを十ぺんぐらいしか読み返しておりませんから暗記しておりませんが、もう二十ぺんぐらい読むとすらすらと出ると思いますが、しかし私の質問は間違っていない。何となれば、第九条には原則が、事業所についてではあるけれども、しかし、ここで立ち入りやその他についての原則がしてあって、第九条の二でも、四十三条の十でも、みな準用がしてあるのであります。この第九条のあとの二項というか三項というか、これらはみな準用がしてあるのでありまして、これは事業所の場合であっても、立ち入りということと「事業所ニ就キ」ということとの関係は、その他の医療機関についても、保険薬局についての場合も、同じことなんです。でありますから、いましばらくは第九条で私は御所見を承わっておきます。その他の場合でも、「事業所ニ就キ」と立ち入りとの関係が同じであるならば、みな同様でありまして、今私が医師側の、いろいろな保険医のことを出しましたのは、これはなるほどほかの条文が、それに該当の条文でありますが、今ここで九条で議論する場合にも、それを出しても差しつかえない。第九条はすぐ保険医のことと私ども言うておるのじゃない。この解釈でずっとほかの方も、みな罰則も、それで行政処分のところもそれを抜かしてある。とにかく要するところ、衆議院の修正では、医療機関や、あるいは保険薬局やその他へ、療養担当者のその機関の中へ立ち入ることはやめになった、そう思う。ところがこれはただ文句を変えただけで、立ち入りはできるのだというなら、それでよろしゅうございます。提案者にもう一度伺いますが、その通りでありますか。立ち入りができるのでありますか。
  76. 藤本捨助

    衆議院議員(藤本捨助君) 先ほどお述べになりましたように、私ども医療機関に対しまして、人権の尊重、あるいは質問検査等を行う場合におきましても、何か違反があるというような、嫌疑をもって臨むことはよくないというようなことを始終、先ほど御質問のごとく考えております。それに対しまして、立ち入ることができるということになりますと、先刻申し上げましたように、強権の発動、しかして医療担当者等に対しまして不必要な不安感を与えるというようなことがございますので、これは何とかやめたい、しかし必要な場合に書類、帳簿等につきまして、あるいは質問し検査することが必要だ、これにつきまして現行法はどうであったのかというようなことも一応調べてみましたし、先ほど法制局の御意見もございましたように、そういうことについては、実際においては行われておったのでありまして、その目的は達しておった。しかし先ほどお述べになりましたような、はっきりさすというようなことで政府原案となったのでありましょうが、それによりまして、いろいろな思わざる不安感を与えたり、いろいろな点が出てくる。でありますから、質問検査も従来事実上、場所について、また中へ入っていろいろやっておったというようなことでもございますし、その程度ならいいのじゃないか、こういうような意味におきまして、誤解といいますか、非常に不安感を与えるようなニュアンスの、立ち入ることを得るというようなことをやめて、現行法の規定の方式に戻した次第であります。
  77. 山下義信

    山下義信君 それは大へんな、私は誤解をしておりました。私の誤解も明確にしておく方がよろしい、私の誤解が、従来事業所あるいは保険医その他について、関係職員が検査のために立ち入ろうとしてもなかなかその権限が明確でないために十分検査の実を上げることができない。一方にはまた検査を拒否することも、その職員の権限についてこれを認めないで相当力強く拒否をするというような事態等があって、検査の目的を達することができないために、今回はそれらの関係者に立ち入り検査ができるようにして、十分調査並びに検査の目的を達するために、こういう改正が政府原案として出されたのである、こう理解しておった。ところが、今保険局長が言うのには、現行法でも立ち入り検査ができて一向不便は感じなかった。それがために当該職員の権限その他検査権等についてトラブルの起きたこともなければ、不便をかけたこともない、こういうことである。提案者にしても「事業所ニ就キ」ということで立ち入りができるのである。で、はっきりさせるということになると、関係者を刺激するからこれをもとへ戻してはっきりささぬことにしたのである、表現はやわらげたが、しかし立ち入りということはできるのであるということになると、私は二重の誤解——一つには現在の状態が、この政府原案のごとき改正を必要とする事態、実績というか、状況というものがあったのであると思ったが、これがない。それから第二には、衆議院の修正は、立ち入ることをやめて、そうしてこういうような強い権限を与えないことにしている。その点は関係者の非常な非難、反対を取り入れて、立ち入りというようなことは権限としては認めないことにしたのである、こう解釈したのであります。ところが、私のは非常に誤解であった。ですから、現在においても、現行法で何ら差しつかえがない。現行法で差しつかえがない。今日まで検査の職務を執行するについては何ら不都合も感じなかった。何の必要があって改正しようとしたのか。また立ち入り検査ということをやめても事業所については同じように立ち入りができるのだ、立ち入り検査権を認めたのだということになれば、関係者の反対に耳を傾け緩和したことにはならぬのである。私は、私の誤解であるのか、政府がただこの場合のみを答弁するために、現在の検査で不自由を感じつつも一向不自由はございませんと言うのか。もしそれならば、私どもは今後審議の上に、また過去に起きたいろいろな事例についても考え直しをせなければならぬ。私どもは不正があるなしは別として、正々堂々と正しきであるならば、不正がないのならば、幾らでも入って調べて下さいという態度をとってよろしい。ただ、それが人権侵害のおそれあるならば、法律において明確にしておかなければならぬ。その権限というものを明確にしておかなければならぬ。権限なきにかかわらず、当該職員がこの法律にも許されざるところの権限を行使すれば越権である。人権侵害のおそれが多分にある。不正があるから拒否をしたのであるからして、そういう保険医の権限に逸脱した行為を非とするのは当りまえである。それを保険医が拒否した。暴力をもってすらも当該職員の官吏の検査を拒んだということを世上にも伝え、患者がさようなことを誤解しては大へんな間違いが起きてくる。私どもは、従来しばしば保険医の検査拒否の問題をこの委員会が扱ったのである。当該職員が必要以上の尋問をする、必要以上の検査をする、法律のどこにその権限が許されているかということを議論したのである。従って保険医の検査については現行法においては明確にされてないのだから指導監査というか、できるだけ行政によって運用のよろしきを得るようにといって当委員会議論したことがあるのである。この当時からこの保険医の検査方法とか、当該職員の権限については明確にしておく必要があると考えたのであるが、その事のよしあしは別として、その政府原案のよしあしは別として、そういうことを明確にする必要は何もないのだ、ということは、現行法でも一向差しつかえない、不便は感じない、また立ち入る、立ち入らぬでトラブルを起したことはない、この第九条の当該官吏職員の立ち入り検査等についても疑義があったこともなければ、何も問題になったこともない、というような天下泰平なことならばめでたいことである、めでたしめでたしできょうのところはやめておこう、それでめでたいなら、それでいいのならもう終始一貫だ。
  78. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私の説明が悪かったので、山下先生決して誤解をしておられたのではないのでございます。先ほども私がお答えをいたしましたように、九条の方には「勤務場所二就キ」ということがございますが、九条ノ二の方にはそれが全然ないのでございます。保険医の監査につきましては、いろいろなトラブルがありますることは御指摘の通りでございます。このトラブルがありまして監査が円滑に行われない、それをどうしても明確にいたすべき必要ありと私ども考えておるのでございます。従いまして、現行法のままで何も差しつかえはないのだと私どもが申し上げた意味は、決して今先生御指摘のような意味ではございませんで、この九条の方の適用については条文に「勤務場所ニ就キ」という条文がございまするし、また実際問題といたしまして、事業所に行っていろいろ賃金台帳をひっくり返してみたりそういうふうなことにつきましては、九条の方の適用につきましては、今までトラブルが起きたということはなかったということを申し上げただけでございまして、決して先生が誤解をしておられたということはないのでございます。なお、これは先ほど鮫島法制局部長からお答えがございましたが、政府の原案と修正案とはそこにニュアンスの違いがあるのでございまするが、さらにこの罰則なり、機関の指定の取り消しなりというふうな問題の起ります場合、すなわち違反のありました場合にそれをどう処置するかという場合になりますると、修正案と原案とでは先ほど申し上げましたような差があるわけでございます。しかしながら、そこでも鮫島部長がおっしゃいましたように、検査を拒んだということは修正案でも残っておるわけでございますから、結局立ち入りだけを拒んで検査を拒まなかったというような場合がかりに理論的に抽象的にあり得たといたしました場合には差がございまするけれども、しかし立ち入りを拒んで、結局検査を拒むことになったということになりますると、検査を拒んだということになりまするので、その辺の実際上の適用におきましては、あるいはさしたる相違が出てこないかもしれません。しかしながら、法律の建前といたしましては、違反のありました場合に、その取扱いにおいて原案と修正案では差ができておるわけでございます。
  79. 山下義信

    山下義信君 きょうはこの程度にとどめておきましょうかね。それで私は九条で質問しまして、現行法では一向差しつかえないかということを四十三条の十のところで保険医の問題とからんで聞きましたので、保険局長はそれを適当にさばいて、しかも違反した場合の処分の仕方で、裏の方からからめて適当な答弁をしておられますが、それじゃ四十三条の十と同じことです。九条で事業所で聞くのも、四十三条の十で聞くのも同じです。四十三条の十で聞くこの第一項にあるところの「保険医療機関若ハ保険薬局ニ就キ」というのは中に入れるのですか、入れぬのですか。それで、第二項は全部削ったのですね、衆議院は。全部第二項を削ってしまう。それから従って第三項において「立入」ということを削った。要するところ、第四十三条で保険医のところ、保険薬局のところ、その中へ正面切って入っていくということを削っちゃったのです。それで「就キ」という言葉にしたのです。その「医療機関若ハ保険薬局ニ就キ」、この「就キ」というのは中に入れるのは、門口までか、それを言うてもらおう。中に入れるのか、中へ入ることは権限としては認めていないのか、中へ入るのはやはり示談でどうでしょうか、調べにきたのだが中へ入らして下さいませんかどうでしょうか、相対ずくでなければ入られぬのか、正々堂々ときょうは検査にきましたからといってすっと入って、職員の身分証を見せればさっと入れるのか、そういうことは、今回の修正においてはできないのか、その点をしろうとにわかりやすく言うてもらったら、それでいいのです。
  80. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 四十三条ノ十に「医療機関若ハ保険薬局ニ就キ」これこれこれ、「其ノ他ノ物件ノ検査ヲ為サシムルコトヲ得」と書いてございますのは、この検査の必要な場合にはその中に立ち入れるものと私ども考えております。なお関連をいたしまして、今先生が、向うがいかぬと言ったような場合はどうかという御質問がありましたが、向うがこれを拒否いたしました場合におきましては、政府の原案のような場合におきましても、それから今回の衆議院の改正の表現におきましても、いずれの場合におきましても、それを押しのけて入ることはこれはできません。これは行政上の法規でございまして、直接の強制力はございません。いずれの場合におきましても、入ることはできません。ただ、それは四十三条ノ十の場合におきましては、この指定の取り消しあるいは前の条文におきましては、九条の場合におきましては、罰則というふうなことで担保がされてあるだけでございます。
  81. 山下義信

    山下義信君 これは事業所であろうと、住居であろうと、要するところ、何というか、わかりやすく言えば、居住権を侵害することは、これは住宅に限ったことではなく、事業所でありますから専門語でどういうか、憲法の保障しているところに従ってその立ち入ることについても正当な理由がなくちゃいかぬことは言うまでもないことである。公共の福祉に必要な理由がなければならない。それで従って拒否するのにも拒否の理由を認めておる。それを立ち入ることを拒否した、拒否する場合はいろいろある、拒否した場合にはすぐ指定の取り消しができるから、制裁があるからというのは飛躍しませんか。そういう場合には、そんなら拒否の許される場合はずっと列記しておかなければならぬ。重大な人の権利です。拒否した場合には、すぐ検査の目的が達せられないから、そういうものをもう保険医保険薬局の指定も取り消すというのなら、いやおうなしに権利を押し付けて行使できる、言いかえて見れば、拒否したら取り消すぞという武器があるからといって威嚇すれば、向うに拒否の理由があっても泣く泣く立ち入ることが許されるから、正面切って立ち入る文句は使わなくても、その目的は達し得られるのと同じじゃないか。三百代言みたいな理屈じゃないか。そういうことでなしに、堂々と立ち入ることにして、そうしてその立ち入りの権限も何も明らかにしてそうして職務が円滑に執行されるようにした方が私はよいと思う。立ち入りの賛否、よしあしは別として、私はこの「就キ」というのでは、立ち入りを表向きにその権限を認めたのとは非常に大きな差があると思う。どうしても差があると思う。それが大して差はないのだということでは了解しがたいのですがね。私は大した差がないというのでは「保険医療機関若ハ保険薬局ニ就キ」こう修正しても立ち入りができるのだ……、その点は私は了解できにくい。保険局長が今の答弁で、相手方が拒否した場合には立ち入られないのだ……、非常に大きな違いがあると思うのですがね。それからすぐそれにもっていって、拒否した場合には指定取り消しがあるからおそらく拒否はせぬじゃろう、だから実際の目的は達せられるというのではちょっとたちが悪いのじゃないかと思う。
  82. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) ちょっと言葉を補足さしていただきますが、私が今、拒否をした場合に実力を行使してそれを排除して入ることはできないのだ、その場合にはそれじゃ何にもならぬじゃないかということであれば、それは罰則なり、指定取り消しなりということで担保がされているのでございますと申し上げたのはその通りなんでございます。それは「就キ」であろうと、それから立ち入り権限というものが明確に規定してございましょうと、同じことでございますということを実は申し上げたつもりでございます。それは刑事訴訟法的ないわゆる令状を持った場合におきましてはこれは別の手続でございます。かような場合には直接強制の権限があるわけでございますが、行政上の立入権というものはいかに法文で書きましょうとも、その点につきましては相違はございませんということの法律解釈を御参考のために申し上げたわけでございまして、私の言葉の足りませんところは一つ補足さしていただきたいと思います。
  83. 山下義信

    山下義信君 わかりました。それで鮫島部長とは長い間のなじみですが、一つこれは衆議院側の修正は「立入」ということを削っちゃって「就キ」にしたということは実際重大ですから、これはきょう私は質問をしましたが、おそらくこの点は皆さん質問されて明確にされると思いますが、これは私がここでわかるように明確にしていただきたいと思う。それが明確になりませんでしたら、これは一つ一ぺん私の方も研究さしてもらう、勉強さしてもらいます。
  84. 鮫島眞男

    ○衆議院法制局参事(鮫島眞男君) 補足的に申し上げるわけでございますが、先ほどから私はこの「立入」と書いてございます場合と、今度の修正案のように「就キ」と書いてあります場合とでニュアンスの違いということを申し上げているのでございますが、この「立入」と書きます場合にはやはり立ち入りは、その検査のための立ち入りであることは、これはもちろんでございますけれども、しかし、罰則違反の場合におきまして、立ち入りを拒んだ、そのこと自体を罰する。さらに今度中へ入りまして検査する場合に、検査を拒んだ場合には、また検査を拒んだということそれ自体を、また別の犯罪として処罰しているのであります。ところがこの立ち入りということがございませんで「就キ」という表現に改めました場合には、その立入権というものが独自に認められているのではございませんで、先ほどから非常にあいまいに申し上げて恐縮なんでございますが、検査する場合におきましては、帳簿を出さして検査する、あるいは先ほど山下委員もおっしゃっていましたが、外から叫ぶとか、これはまあ私なんかもときどきそういう冗談を言ったことはあるのでございますけれども、そういう事務所の窓から中へ首を突っ込んで見ることもできるというようなことをよく言うのでございますが、そういう「就キ」の場合でございますと、その立入権そのものを独自に認めたのではございませんで、行って検査する、むしろその検査の方に非常に重きを置いておるのでございますから、入ろうとする場合に拒んだという場合は、直ちにそれだけでもって立入権の防止とか、立入権の拒否とかいうことではないのでございまして、それがひいては検査の拒否になったという場合におきまして検査の拒否になる。一方の場合においては、立ち入りを拒んだこと自体が直ちに立ち入りの拒絶でありますし、さらに入って検査を拒んだ場合に、それが検査の拒みであるというふうに、ニュアンスの違いがこの違反の場合におきましても明白に出てくるのでございまして、まあそういう意味から言いますと、ニュアンスの差が非常に違反の場合において大きな差が出てくる。ただその検査をするにつきましては、いろいろな方法が、窓から顔を突き出して、部屋の中に首を入れてのぞき見して検査するということも、まあ場合によってはできる場合があるかもしれないのでございますけれども、そういう検査では十分でないので、やはり場所に入って検査ができるということをこの法律はいっているのでございまして、そのニュアンスの差というものが、単なるニュアンスの差で、結果は全然同じだというふうにはやはり私も言えないと思うのでありまして、やはり違反の場合においては相当な差異を生ずると、ただ中に入って検査するという単なる検査とは違った意味合いの検査をこの場合に認めているのだ、そういうことを先ほどからニュアンスの違い、それから場所に行って検査するというふうに申し上げているのでございます。
  85. 山下義信

    山下義信君 懇切な御答弁をいただいたんですが、私はまだ十分了解しかねますので、この問題は次回にしていただきたいと思うのですが、それでただ最後にもう一つ伺いますが、実際において立ち入り検査をする場合と、「就キ」の検査をする場合と私は非常な大きな実際上の差があると思うのです。一体立ち入り検査権というものを認めるのは何の目的ですか。
  86. 鮫島眞男

    ○衆議院法制局参事(鮫島眞男君) これも先輩から聞いたことを申し上げて、非常に権威のない答弁だとおっしゃるかもしれませんが、その点は御了承願うことといたしまして、行政法規の中で、立ち入りということがよくあるのでございますが、その場合の立ち入りを拒むということは、これは本質においては公務執行妨害だと、その検査に来た者の公務に対する執行妨害であるということもたびたび私は聞かされておるのでございます。それから単に検査でございますと、そういう本来刑法犯的なものではなくて、行政目的を達するための一つの権限を法律は与えて、そしてそれに対する妨害に対して行政目的のためから罰する、ところがこの立入権を、立ち入りしてどうと書いた場合においては、それはやはり目的としましては、この場合行政目的のためのものではございますけれども、しかしその場合の立入権、立ち入りの妨害というものは、これは実質において刑法犯的な公務執行妨害に該当するものだと、そういう意味で立入権というものは、この行政法規の中でも規定する場合には、それは相当強力な権限として観念すべきだということもいろいろ教えられたことがありますので、その点も御参考までに申し上げたいと思います。
  87. 山下義信

    山下義信君 私は政府原案が、この関係者の調査、検査のために立入権を要求して原案を変えた、これを変えたということの政府の真意が那辺にあったかということで、この修正点の議論が済んだら、今度は政府原案を聞かなければならぬ、それを今度は衆議院が大きに修正をしたということについては、また大きなその理由がなくてはならぬ、これがただ文句を変えただけで同じようなことでは——大差はないんだ、ちょっとしたニュアンスの差だというようなことでは、私は納得がいたしかねる、この立入権を認める、こういう検査の方法をとる、「事業所ニ就キ」だのというようないき方と、立ち入り検査権があって検査ができるということとは、私は検査の仕方が非常に違うと思うのです。そのことのよしあしは言いませんよ、本質的に違うと思う、今処罰の点や、その他の点について御理論を述べられて、部長が懇切な説明をされましたが、立ち入り検査権を行使する、正しい行使をされた場合のこの検査のなし得る——どういいますか、その権査のなし得る方法、なし得る利便といいますか、特徴といいますかというようなものは、その「就キ」の検査とは格段の差があると私は思う。その最も著しいものは、俗に昔から臨検と称しておる、ふいに立ち入る、ふいに行って調べることができる、即座にできるのです、たちまちできるのです、それとは違うのです。その「就キ」というようなことは、さようなことを許されぬのです。だまって身分証を見せて、そして検査、調査権の権限の行使として、ずかずかといってやることはできないのです。いわゆるそれは案内も請うし、ものも言うのでありますけれども、私は「就キ」という検査は、さようなことはできぬのであろうと思う。運営の上において非常な差がある、私はそう思うのです。それがわずかなニュアンスの差であるとか、ちょっとした気持の差であるとか、感じであるとか、大差はないんだということでは納得しがたいので、ほかの立法例その他を委員長調査をいたしまして、この問題について、次回なお質疑を続行いたしたいと思います。本日はこの程度にとどめさしていただきます。
  88. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記をちょっととめて。   〔速記中止〕
  89. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記起して。  本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。  本日はこれで散会いたします。    午後三時二十九分散会    ————————