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1956-04-20 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十日(金曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————   委員異動 本日委員紅露みつ君辞任につき、その 補欠として長島銀藏君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    理事            谷口弥三郎君            高野 一夫君            山下 義信君    委員            榊原  亨君            高橋進太郎君            寺本 広作君            深川タマヱ君            横山 フク君            竹中 勝男君            山本 經勝君            長谷部ひろ君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生省保険局長 高田 正巳君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○労働保険審査官及び労働保険審査会  法案(内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件   —————————————
  2. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) それではただいまから開会いたします。  まず、委員異動を報告いたします。四月二十日付で紅露みつ君が辞任されまして、長島銀藏君が選任されました。   —————————————
  3. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 次に御報告いたします。本日の委員長理事打合会におきまして、左の通り申し合せをいたしましたから御報告いたします。  四月二十四日及び二十六日の委員会において、健康保険法等の一部を改正する法律案質疑をいたします。二十七日に、大阪におきまして健康保険法等の一部改正につきまして、現地の意見を聴取することとし、委員派遣を行います。  なお公聴会は開きませずに、大阪における意見聴取及び東京における参考人意見聴取によってこれにかえる審査とすることにしたいと思います。なお、東京における日時は追って決定することにしております。  四月二十八日、駐留軍労務者失業対策に関する参考人意見を聴取することにいたします。  以上の申し合せの通り異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  5. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 次に、参考人出席要求につきましてお諮りいたします。  健康保険法等の一部を改正する法律案審査のため、参考人から意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 御異議なきものと認めます。  参考人人選日時及びその他の手続につきましては、委員長及び理事に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。そのように決定いたします。   —————————————
  8. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 次に、委員派遣承認要求についてお諮りいたします。健康保険法等の一部を改正する法律案審査上の参考に資するため、地方の実情を調査することとし、委員派遣承認要求書議長に提出いたしたいと存じます。日時人選手続その他の事項等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。よって委員派遣承認要求書議長あて提出することに決定いたしました。   —————————————
  10. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) この際お諮りいたします。昨日の当委員会におきまして、健康保険法等の一部を改正する法律案に対する竹中委員質疑中、厚生大臣答弁について不明確な点があり、これを明確にいたしておくため厚生大臣質疑を行うことといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  11. 榊原亨

    榊原亨君 ちょっと速記を。
  12. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記とめて下さい。   〔速記中止
  13. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記始めて。  それでは健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたしまして、昨日の竹中委員質疑に対する厚生大臣答弁中、不明確な点について御質疑を願います。
  14. 高野一夫

    高野一夫君 昨日竹中委員の御質問に対して、小林厚生大臣から御答弁があったのでありますが、その中で、あとで精査いたしまして多少意味が不明確であり、また多分誤解を招くような言葉でもあるやに感じまするので、この際、緊急にこの点についての大臣の御見解を明確にしておいていただきたいと考えたわけであります。  それは竹中委員質問に対して大臣の方から「できるだけ公的医療機関諸君の御協力を仰ぐことはもちろんでありますが、また他面におきましては、医療費払い等処置によりまして、国民皆さんにはできるだけ御不便をかけないようにいたしたいと考えております。」こういうお言葉があったわけであります。そこで、この、他面においては医療費払い等処置によって、国民皆さんにはできるだけ御不便をかけないようにすると、このお言葉が、現在保険医の総辞退にからみまして万一総辞退が決行され、発効したというような場合等において、この事態がどういうようなふうになるかということについて、すでに昨日来非常な誤解が世間で行われておるように承知いたしております。この点についてどういうお考えであるか、具体的にはっきり御見解を伺っておきたいと思います。
  15. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 高野委員の御質問ごもっともと存じます。昨日の竹中委員の御質問に対しまして、保険医の総辞退に対処する問題につきまして、私は今高野委員がおっしゃったように、公的医療機関諸君の御協力を仰ぐことはもちろんでありますが、また他面におきましては、療養費払い等処置によって、できるだけ国民諸君には御迷惑をかけないようにいたしたいということを御答弁申し上げておきました。この問題につきましては、私の考えといたしましては、先般の本委員会におきまして、たしか山下委員からの御質疑だったと思いますが、これに対しまして私どもの方から、保険局長から、療養費払いの点につきましてはかなり突き進んだ質疑応答があったのでありまして、私もそういうような意味でこの問題にも触れたのであります。しかし誤解があると困りまするから、この機会高野委員の御質問に対しましてはっきりといたしたいと思っております。  健康保険療養給付につきましては、どこまでも現物給付が建前でありまして、現金給付すなわち療養費払いをすることができる場合につきましては法律で限定されておるのであります。健康保険法の第四十四条によりますると、療養費支給される場合といたしまして、保険者療養給付をすることが困難なりと認めた場合、及び被保険者が緊急その他やむを得ず保険医以外の医師または歯科医師等診療を受けた場合でありまして、保険者がその必要ありと認めたときのこの二つの場合が規定されておるのであります。従いまして、従来その地域保険医がないために現物給付を受けることが困難であると認められた場合とか、あるいは急病等の緊急の場合でありまして、保険医を探す余裕がなかったことが認められた場合にのみ療養費支給が認められておるのであります。  以上の考え方は、今回のような場合におきましても何ら変更はなく、ただ被保険者療養給付を受けることが困難なる場合が多くなるというに過ぎないと思われます。すなわち健康保険法第四十四条の適用ケースが多く出てくるということが予想されるのでありまして、法の解釈を総辞退という特殊な事由で曲げることはできませんし、また曲げようとも考えておらないのであります。また総辞退と申しましても、保険医の中には辞退届を出していない方も相当残っておりまするし、また公的医療機関社会保険病院健康保険組合病院診療所等多数存在しておりまする現状におきましては、保険者はこれらの保険医あるいは病院等における医療給付が受けられるように、単に従来からかかりつけだというような理由で、保険医辞退した医師の診断を受けたような場合におきましては、医療費払いをいたしますることは法律上認められないわけでございます。要するに、法第四十四条を適用し、医療費払いと認められるかいなかは個々事例によりまして判断さるべき事柄でありまして、個々ケースにより医療給付が困難であったか、または緊急やむを得なかった場合であったかということを判定して参るわけでありまして、従いまして一部で言われておりまするように、総辞退後におきましても療養費払いが全面的に行われるから従来と少しも変りがないというようなことはあり得ないことであるのであります。
  16. 高野一夫

    高野一夫君 非常にきょうははっきりした御見解で了承できると思いますが、大臣または局長いずれからでもけっこうでありますが、もう一つ伺いたいのは、われわれは保険医の良識と道義心に訴えまして総辞退のごときふるまいはやめてもらいたい、こういう考え方で、ほとんど各委員一致しておると思います。従って、さような不祥事は実際的には効力を発生する前に解消するものと信頼をしたいのであります。しかしながら、万一の場合を考えましてある府県なら府県、ある都市なら都市にかような不祥事が起った、効力を発生するようなふうに起ったということになりましたときに、そのケースバイケース療養費支給することをきめたりきめなかったりすることは、どういうようなふうにしてきめられるか、全般的の問題になりました場合は、この四十四条の判定の仕方によって療養費を引き受けたり引き受けなかったりするということを多くの被保険者について、集団的の被保険者について、どういうようにその区別をつけてやることができるかどうか、こういう点について局長からでもけっこうでありますから、なお先ほどの大臣の御見解を裏づける意味においても、何か御説明があれば説明を伺っておきたい。
  17. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 具体的な問題でもございまするから、局長から答弁さした方がかえって適当と思いますから、局長から答弁いたします。
  18. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 大へん申しわけないのでございますが、高野先生が今お聞きになりましたことをちょっと私聞き漏らしておりましたのでございますが、その具体的な事例の例でも上げろというような御質問でございましょうか。それとも保険医辞退というふうな事態がこの法律に「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」と書いてあるが、「巳ムヲ得ザル」というようなことは、総辞退というような事態そのものが集団的に当てはまるかというふうな意味の御質問でございましょうか、その点を……。
  19. 高野一夫

    高野一夫君 そういう意味でございます。
  20. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) そういう意味でございますか。ただいま大臣が御説明になりましたようなことで尽きておるのでございますが、この四十四条には二つの場合が書いてございまして、「保険者ハ療養給付ヲ為スコト困難ナリト認メタルトキ」というのが一つでございまして、一つは「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合ニ於テ保険医」以外の者にかかった場合に、保険者療養費払いをすることが必要であると認定したときということになっておるわけでございます。従いまして、従来のこの規定適用につきましては、たとえばその地域保険医がないというふうな、全然いないというふうな地域におきましては、これは療養給付をなすことが困難であるという場合に当りましょうし、それから急病になりまして保険医を探しているいとまなんかない、とりあえずその近所のお医者さんに飛び込んだならば、それがたまたま保険医でなかったというふうな場合が後段の場合に当るかと思うのでございます。それで、今回のかりにそういう事態が万一起りました場合に、どういうふうなことになるかといいますと、結局そのケースバイケースの問題でございまして、これは個々患者がかかった場合に、この二つのどちらかに当るかということをケースバイケース認定をいたしていくよりほかに仕方がない、かようなことに相なるかと思うのでございます。それでこの「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」ということが書いてございますが、この「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」というのは、この個々患者診療を受けます場合に、保険医の方にはかからなかったということが緊急であるとか、やむを得なかったという意味でございまして、その保険医辞退というようなことが非常に全体的に異常な状態であって、そのこと自体がこの「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」というふうに、この文句に該当するというふうには、この規定としましては、さような趣旨でこの規定は運用いたすべきものではない。個々患者がかかった場合に、それが緊急その他やむを得なかった事情であるかどうかということについての規定である、かように私ども考えざるを得ないと思っておるのでございます。御質問の御趣旨にぴたりといたしませんかもしれませんけれども、そう考えております。
  21. 高野一夫

    高野一夫君 今の局長お話で、またある一点が非常に意外なる明確さをもって浮び上ってきたわけであります。それはどういうことかというと、「被保険者ガ緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」において療養費支給を受けることができるのだけれども、その「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」とは、被保険者としての立場からの問題であって、保険医が総辞退をなしたというようなことは、そういうような事態が起って、保険医がなくなった、あるいはまた一方に保険者が指定する医者が不幸にしてなかった。それはともかくとして、少くとも保険医がなくなった。それはこの「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」には入らない、こういうことになりますならば、この四十四条の適用によって療養費支給を施し得る場合は、総辞退のごとき場合においては、そういう地域においてはあり得ないということになってくると思うのですが、それはどうなりますか。
  22. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私が若干申し上げ方がへたでございまして、誤解を招いたようでございますが、保険医辞退というふうな事態というものは、これは確かに異常な事態でございまして、従って社会的に見てそれが異常な状態であるということは、だれも考えるわけでございます。その際に、異常な状態であるから保険医辞退のような場合におけるこの「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」というのがその辞退そのものにぴたりと適用されて、いかなるその患者の場合においても療養費払いが、保険医辞退という事態の場合には、いかなる場合においても、療養費払いが払われるのだ、行われるのだというふうに解釈をいたすのは、さような解釈はできないということを申し上げたわけでございます。従ってその「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」というのは、患者の側からある医者にかかったが、それが保険医でなかったと、しかしながら急病その他やむを得ざる場合でそのケースがあったというふうに、その場合々々で認定すべきものであると、こういうことを申し上げたわけであります。従って保険医が総辞退というようなことになりまして保険医の数が非常に少くなりますと、結果的には、この「療養給付ヲ為スコト困難ナリ」であるとかあるいは「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」に該当するケースというものが、今まで保険医はどこにでもおられるが、今までの状態よりは結果的には多く発生するであろうということは、これは言えるのでありまして、従って今先生が私のへたな説明でおとりになりましたように、保険医辞退というような場合には、もう絶対に療養費払いというようなことは考えられないのだというふうに申し上げたつもりではないのであります。
  23. 高野一夫

    高野一夫君 それは、保険医が総辞退して保険医がなくなったというその場合においても、被保険者の緊急やむを得ざる場合はあるんでしょうけれども、しかし集団的にその地域全体にわたって保険医が一人もないと、しかし被保険者として、医者にかかるのには別に緊急の急病でも何でもないと、ただやはり持久的にでも慢性的にでもかかりたいのだと、急がないのだけれども、かからなければならない。けれども保険医辞退しておってなくなっておると、こういうような事態は、これは被保険者から見て、この「緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合」という、こういうことに一応とにかく全体として該当しますか、しないか。
  24. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ある地域にもう全然保険医が全部いなくなって、その保険医にかかろうとしてもその地域では不可能であるというふうな場合には、前段の「療養給付ヲ為スコト困難ナリト認メタ」という場合に該当するかと思うのであります。しかしながら、私がケースバイケースでそれは認定しなければならぬと申しましたのは、ある地域と申しましても大都市のような場合に、たとえば何々区には一人も保険医がいなかったと、その場合にその何々区の住民は全部その地域保険医がいないものとして全部が療養給付をなすこと困難であるというふうに認定すべきだというふうには参らぬと思うのであります。都会であれば、隣りの区へ行けば幾らもおるというふうな場合、あるいは社会保険病院やあるいは公的医療機関等が存在するというような場合には、これはさような前段の、四十四条の前段には該当しない。ところが極端な例をあげますると、炭鉱地帯等であって非常に離れておる、そしてその地域に今まで保険医がおられたのですけれども保険医辞退されて全然いなくなったというふうな場合には、その地域におきましては、これは療養給付をなすことが困難であるというふうに認定をすべきものとなっておるというふうな場合のことでありまして、一がいにその地域と申しましても、そこは療養給付、いわゆる現物給付をなすことが困難であると認めるかどうかということで、いわゆるこのケースバイケース認定をいたしてゆくべきものである、かようなことに相なるかと思うのであります。
  25. 高野一夫

    高野一夫君 この問題につきましては、なおもっと具体的にわたって、次の健康保険改正案についての正式に審議に入りましたときにお尋ねして、今日は質問をやめたいと思いますが、ただ私は本日この労働関係をやることになっておって、時間をちょうだいさせていただいて、特に大臣に御出席を求めて質問しましたゆえんのものは、昨日の大臣の御答弁が私は先ほどのあらためて伺った御見解から比べれば非常に誤解をされる。そうして非常にそれが誤まって外部に伝えられた。そうして大臣のそういうような御意見のごとくであるならば、総辞退をやったって一向差しつかえないじゃないか、やっちゃえ、やっちゃえというような気分が多分に一部に出たやに私は聞いております。そこでわれわれはこの問題につきましては、総辞退はどうか一つそういうことはやめてもらいたいということを、この社会党以外の各党所属有志委員をもって実は勧告をいたしているようなわけでありますので、もしもこの見解が誤まり伝えられて、別な方向解釈されるということになることを私は非常におそれたわけであります。しかし先ほどの大臣の御見解で、少くともきのうの御答弁はこういう意味であったということがはっきりわかりましたので、私は一応これで了承いたしました。  なお具体的の問題について多少疑念もありますが、それはいずれ局長に次の機会に伺うとして、きょうは質問を私はやめたいと思います。
  26. 榊原亨

    榊原亨君 ただいま大臣並びに保険局長高野委員に対する御答弁のうちで、二点だけ私は疑義がありますので、関連の質問をいたします。その一つは、保険医のない場合には療養給付をするのだ、ケースバイケースでするのだというお話でありますが、それは保険医がたとえございましても、その保険医能力では給付の万全を期し得ないという場合には、保険医がありましてもやはり療養給付をしなければならぬのじゃないかと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  27. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今の御趣旨は、保険医が存在しても、あるいは他の保険者の指定するものというふうな機関が存在しても、その能力に余れば、療養給付をなすこと困難なりと認めてそれに該当をして療養費払い、いわゆる現金払いの方をやる場合があるのじゃないかという仰せでございますが、さような場合もあり得ると存じます、理論的には。
  28. 榊原亨

    榊原亨君 第二点といたしましては、給付の困難なる場合にケースバイケースというお話がありましたが、これはちょっともう少し実際上お考えおき願わなければなりません。これらのものの判断は全く保険者自由意思によって、自由な裁量によって決定すべきものであるということは私もわかるのでありますが、しかしながらケースバイケースでそれをきめていくということになりますと、実際には非常な混乱を来たします。被保険者は何も知らないのでありますから、どうも被保険者判断で、これはまあ給付の困難な場合だろうと思ってある医者にいくと、実際上行って、受け取りをもらって療養給付療養費払いを受けようといたしますると、そこでもらえないというようなことになってくるのでありまして、これは緊急やむを得ないという場合には、これはケースバイケースで判定できますが、またその他の特殊の場合は別でありますが、今回のような保険医がその地方で総辞退しているというような場合には、あらかじめその土地においてどうも療養給付が困難であると認めざるを得ないという場合には、この地においては療養給付ができますぞ、この地によってはできぬぞということをやはり被保険者に知らせておきませんと、被保険者側の迷惑というものが起るのじゃないかと思うのでありますが、その点の御考慮はあるのでございますか。  なお念のために私申し上げておきますが、ただいま高野委員が御心配になりましたように、法律上はっきりしております。どうしてもあくまでも保険者判断によってやるべきものであって、一様にこの給付ができるというようなことは私ども考えられぬのでありますが、しかしながら、ケースバイケースということだけでこれを割り切ろうということは、実際上困難な面が起る。困難な面は、保険者の困難でなしに、被保険者の困難になると思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  29. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ごもっともな御質問でございます。このケースバイケースと申しましたのは、私の気持では保険者側が恣意といいますか、自分勝手にケースバイケースという意味ではございませんで、ケースケースによりまして、いろいろ事情が違うものでございますから、さような意味合いでケースバイケースということを私は申し上げたので、その場合に認定をいたしまする場合には、客観的といいますか、あるいは社会通念上妥当なりと認められるといいますか、そういうふうな一応の基準をもってこれを認定しなければならないものと存じます。ただその客観的な基準と申しましても、画一的に、先ほどちょっと例をあげて私高野先生にお答えをしたのでありますが、たとえば大都市で、ある区の住民は全部が療養費払いに該当するのだと認められる場合に該当するのだというふうなきめ方は、これはなかなかできないと思うのです、そういうふうなきめ方は。従いまして、今榊原先生の御質問趣旨は十分に私わかりますけれども、なるべくさような方向に事前にいろいろ被保険者の方に徹底をするように努力はいたしたいと思いまするけれども事柄の性質上、今のように画一的にどうこうという区域を定めたり何かすることはできない場合が多い、まあかように考えられるのでございます。従ってさような場合には、今先生の御趣旨のように、被保険者の方は療養費払いが受けられると思っていった、しかるに保険者の方では、それは療養費払いに該当しないというふうなことになって食い違いが起って、被保険者に迷惑がかかるのじゃないかという御心配でございます。これは仰せの通りだと存じます。さような場合があり得ると思うのです。それで、私どもとしましては、今先生が御指摘になりましたような気持で、なるべくこういう場合、ああいう場合は大丈夫ですけれども、その他はむずかしゅうございますぞというふうな、なるべく被保険者にさような何と申しますか、食い違いのないようなことを事前にいろいろ徹底をさせたいとは存じまするけれども、要はいかなる場合でも療養費払いという手があるんだという誤解をまず解いていくことが大事であろうと存じます、かりに誤解があるとすれば。その上で、さらに食い違いが起りましたような場合には、これはもうまことにお気の毒な状態ではございまするけれども、結局御存じのこの不服処理機関が別に法律で定められておりまして、その審査手続を経て不服を処理していくというよりほかには現在のところ道がないのではないか、かように存するわけであります。
  30. 榊原亨

    榊原亨君 いずれこれは健康保険法改正のときにもう一度私どもから出したいと思いますが、保険医辞退のごとき不祥事はそれまでには解消すると私どもは信じておるのでありますけれども、今のような保険局長が御答弁になりましたようなお考えで、被保険者に対しておられるということになりますと、これはまた重大な問題になると私は思うのであります。なるべく被保険者がそういう場合に立ち至らないように、被保険者はこの総辞退ということには責任も何もないわけでありますから、被保険者は何も罪とがはないわけであります。従いまして当事者、保険者とされてはいかなる場合におきましても、被保険者給付に支障を来たさないように考えなければならぬわけでありまして、どうもそういう場合になっては仕方がないというようなことは、これはどうも考えものだと思うのであります。従いまして問題となりますのは、給付の困難な場合をいかに事前に判定して、そうしてそれを被保険者に徹底させるかということに問題があると思うのでありますが、この点はなお御当局のお考えもコンクリートになっておらぬと思いますから、十分御研究を下さって、またこの次の健康保険の審議の場合に御回答をお願いいたしたいと思います。
  31. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 本問題に対する本日の質疑はこの程度にして、次に移りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。速記をとめて。   〔速記中止
  33. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記を始めて。  それでは、労働保険審査官及び労働保険審査会法案を議題といたします。御質疑を願います。
  34. 高野一夫

    高野一夫君 政府委員に伺いますが、この種の審査官とかあるいは審査会の法律改正というような場合には、多くは非常に簡素化をはかったとか、この間の公労法みたいに簡素化をはかったとか、能率をはかったとか、あるいはこの審議の結果を効果的適正ならしめるためにやったとかいうようなことがよくあげられるわけでありますが、現行のあり方と改正案のあり方とを見比べてみて——私は今この表を見ているのですが、見比べてみて、果してこういうような組織として審査官あるいは審査会としてこの組織、構成としてどの程度のこれは能率化がはかられているのでしょうか。簡素化がはかられているのでしょうか。その点は全く簡素化、能率化というようなことについては別に留意していない改正の仕方であると、こういうわけでしょうか。ちょっと伺ってみたいと思います。
  35. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ただいまの御質問の点でございますが、具体的に申し上げますると、現在の審査機構におきましては、都道府県労働基準局ごとに労災保険審査会がございます。つまり四十六あるわけでございますが、それといま一つ、労働者災害補償保険審査会というのがございます。これが四十六あるわけでございます。今回の改正によりまして、労働保険審査会ができますとともに、その都道府県労働基準局ごとに置かれます審査会が廃止されまするので、数といたしましては九十二の審査会の廃止が行われるわけであります。それからいま一つ、失業保険につきましては、中央に失業保険審査会がございます。それが廃止されまして、労働保険審査会に吸収されるわけであります。数の上から申し上げますると、九十三の審査会が廃止されまして一つ労働保険審査会に統合される、こういう形になるわけでございます。そういう点が形の上における簡素化でございますが、能率化という面から申し上げますると、今度の労働保険審査会におきましては三人の委員が置かれまするが、それは専門常置の機関として、常勤の委員が置かれることになりますので、審査事務がたえず円滑に審理促進されるということになりますので、そういう事案処理の関係におきましても事務の能率化が促進される、かように考えておる次第であります。
  36. 高野一夫

    高野一夫君 この失業保険の場合には、現に中央にある失業保険審査会と地方とのつながり、これが中央においては労働保険審査会に吸収されておるということになりましても、中央から地方の仕事の系統組織を見れば、ただ中央において吸収をしておるという形をとっているだけであって、実は地方における審査の工合、あるいは職安の工合というようなことについてはそう変らないのじゃないかしらと思いますが、これは相当何か変り方があるのですか。
  37. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ただいま御指摘の通りでございまして、審査の段階といたしましては、原処分庁の処分に対しまして不服がございますとき、まず第一審機関として労働保険審査官が事案を審査いたします。この関係は現在もその通り行われておるわけでございます。次に第二審の機関といたしまして、現在は失業保険の場合は中央の失業保険審査会、それから労災保険の場合は、地方の労災保険審査会が第二審機関として置かれております。一応この審査機構としましては、その第二審機関で最終的な審査がなされるわけであります。で、その第一審、第二審の二つの段階を踏むことにおきましては、現在も改正後の審査機関におきましても同様でございます。
  38. 高野一夫

    高野一夫君 そうすると、今もお触れになりましたが、この労災関係の審査についても失業保険の審査の場合と同様に、あまり変っていないように思う。ただ中央において多少一緒になっているという形に過ぎぬように思うのであって、非常にその点に、これもまあ大いにけっこうなことでしょうけれども、多少なりとも改善すべきは改善すべきでありますが、はなはだしくここに特徴のある改正考え方でしょうか。中央において双方が一つになったということの利害得失、従来の場合と今度の場合とですね、中央における審査の工合はどうなんでしょうか。
  39. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 今総務課長から御答弁申し上げましたが、失業保険の場合は、これは従来第一審が都道府県に労働省直轄の審査官を置いておりまして、第二審としまして本省に審査会というものがあるのでございます。ところが労災の場合は、これは第一審、二審とも地方なんでございます。中央にはないわけでございます。今度はその点を労災と失業保険、歩調を一にしまして、地方に第一審を置いて、第二審を中央に置く。しかも中央の第二審の審査会は労災と失業保険を一本にしまして、そうしてこの専任の審査官を置きまして処理をする、こういうことになるわけでございます。
  40. 高野一夫

    高野一夫君 ほかの方の質問がなければ、大臣が見えるまでもう一、二点ただしておきたいのですが、私も知らなかったんで勘違いしておったのですが、労災に関する審査を中央でやらなかった、地方のみにおいてやっておったということを、今度中央の労働保険審査会の方へ持ち込んでくるということについてのお考えはどうでございますか。これはそうされたことについての特別の理由ですね。非常にその審査の工合が円滑に、あるいは総括的に甲乙なく、全国統一的にやれるとか何とか、そういうような考え方からでありますか。それともいわゆる仲裁裁定みたような格好の、多少そういう意味も含んでのことなんでありますか、何らかその点について御説明を聞いておきたいと思います。
  41. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 労災保険につきましては、まず監督署長が決定いたしまして、それに不服がありますと審査会にきて、それに不服がありますと、地方審査会で決定して、それで行政救済の手続は終結してしまうのでございますが、従来の例によりますと、最終決定機関である地方審査会の決定が各府県審査会ごとにいろいろ甲乙ができておる、こういう例が相当ございます。元来これは司法的事件でございます。最終的には裁判所で決定すべきことでございます。従いまして、理屈から申しますと、各府県審査会の決定が甲乙ある場合には、利害関係者は裁判に訴えればいいわけでございますけれども、しかし実際問題といたしまして、多くの場合利害関係者と申しますのは労働者でございまして、労働者がなかなか弁護士を雇って裁判に持っていくというようなことは事実上非常に難渋いたします。そこで行政救済の段階において、そういう甲乙のないようにいたしたい。そこで失業保険なり社会保険がこういう制度になっておりまするので、今日その例にならった改正をいたしたい、こういうことでございます。
  42. 高野一夫

    高野一夫君 非常によくわかりまして、大体その点は納得ができるように思うのですが、ところで、その労働保険審査会委員は六名であるわけですか、この労災、失業、けい肺、各二名ずつ。全国のいろいろな問題が起る数とか、あるはい頻度というような点から考えて、こういう失業保険とか、労災とか、けい肺とか非常に大事な問題について、おのおの二名くらいの委員をもって中央の労働保険審査会の仕事が十分なし得られるものと考えていいわけですか。
  43. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) お尋ねの点でございますが、労働保険審査会の構成は委員が三人となっておりまして、そのほかに労使の関係者を保険ごとに二名ずつ置いておるのでございますが、これらの方々は、いわば一種の参与といったような形で、労使それぞれの側からの意見を述べると、こういうことにいたしておるのでございます。で、そういう構成をとって果して迅速妥当な審査がなし得るかということでございますが、現在までの実績を見ますると、大体年間約二百件程度の審査件数でございまして、今後におきましても一応その件数を基礎にしまして、審査のやり方を一応考えておるのでございまするが、厚生省に設置されておりまする社会保険審査会も今回の労働保険審査会と全く同じ構成をとっておるのでございますが、取扱い件数その他の関係から考えましておおむね適正に処理できるのではないかと、かように考えておる次第でございます。
  44. 高野一夫

    高野一夫君 今のお話の二百件というのは労災、失業、けい肺合せてですか。
  45. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) さようでございます。ただ年によりまして若干の異同はございます。出入りはございますが、おおむねその程度の件数であると、かように考えております。
  46. 高野一夫

    高野一夫君 それではもう一つ伺いますが、その総計二百件といたしまして、そのうちで一番問題の多い件数、それはどれでしょうか、労災か、失業か……。
  47. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 件数の上から申しますと、ほとんどが労災保険関係の事案でございます。
  48. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) ほかに御質疑ありませんか。
  49. 寺本廣作

    ○寺本広作君 大臣の御出席が大へんおくれるようでございますが、議事の進め方について、ここらで速記をとめられて御相談願ったらいかがなものでしょうか。
  50. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  51. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記を起して。
  52. 山本經勝

    ○山本經勝君 基準局長の方にお願いをしておきたいのですが、労災関係の審査機関の取扱い件数ですね、これはおわかりだと思う。それで内容からいいますと、業務上の決定を求めるとか、要求項目別に一応数字が出ていると思う。これと、それから災害実態については、先だって全産業のあれを一応いただいておりますが、きわめてこれは簡単な、あまり要領を得がたいので、もう少し内容のある、産業別の災害実態ですね、一つ御提出をお願いしたいと思います。この資料の中で、審査官が受理して処理したもの、それから今度、審査会に回されたものという工合に、項目を分類した調査表があるようですから、それを一つお出し願いたいと思います。それだけです。
  53. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) それでは本問題に対する本日の質疑その他は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後二時四十九分散会