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政府委員(高田正巳君) その第一ページに
法律案要綱がございますが、これに沿いまして御
説明を申し上げたいと思います。
改正の要点といろところが四行目にございまするが、その第一は、「
国庫は
予算の
範囲内において
政府管掌健康保険事業の
執行に要する
費用の一部を補助するものとすること。」これは条文といたしましては七十条の三でございます。これは、今まで
国庫から
健康保険の
給付の財源といたしまして、援助をする
規定はございませんのでございますが、今回新たに挿入いたしました
規定でございます。この
規定の
趣旨は
赤字補てんという
意味ではございません。社会
保障を確立する
見地に立ちまして、
健康保険事業の健全なる
発達を促進するという
趣旨において挿入をいたしました
規定でございます。なおまた、この
規定に基きまする
国庫の補助は、補助すると書いてございまするので、三十一年度限りのものではなく、今後も引き続いて補助されるものの
趣旨でございます。
それから
改正の要点の第二点でございますが、これは
標準報酬の
等級区分を
現行三千円から三万六千円という
区分でございましたのを、
最低を四千円に引き上げまして、
最高を五万二千円にまで引き上げる、そうして十九
等級ございましたのを二十四
等級に
区分をする、こういう
改正でございます。条文といたしましては三条の一項でございます。この四千円から五万二千円というワクに
標準報酬をいたしましたことにつきましては、
昭和二十四年に
標準報酬の
改正をいたしておるわけでございますが、その
改正の当時の平均
標準報酬と、三十一年度に見込まれます平均
標準報酬との指数をとりまして、そうしてその当時の二千円及び二万四千円という
最低最高の金額にこの指数を乗じてみますると、大体四千百八十円及び五万百六十円というふうなことに相なりまするし、なおまた、当時の毎勤統計による平均賃金とそれから
昭和三十年四月、最近の毎勤統計による平均賃金との指数をとってみますると、これは先ほどの平均
標準報酬の指数よりは上回って大きい指数になっております。かようなことをにらみ合せまして、四千円と五万二千円ということに決定をいたした次第でございます。
それから
改正の第三点は一部
負担の問題でございます。
現行の
規定におきましては、いわゆる点数表に定められまする初診料相当額が患者の一部
負担ということに相なっておったわけでございますが、その一部
負担の
範囲を拡張いたしまして、そこに書いてございまするような
内容にいたしたいというわけでございます。一部
負担の
方法につきましては、いろいろな
方法が考えられるのでございまして、それぞれ長所もあり、短所もあるわけでございます。私ども当局といたしましては、相当長
期間にわたりましていろいろな
方法につきまして検討をいたしまして、ここに書いてございまするような
方法が最後的に妥当であろう、こういう見解に到達をいたした次第でございます。初診の日、五十円以下において
厚生大臣の定める額、この
趣旨は、五十円以下と申しまするのは甲地五十円、乙地四十六円と定めるつもりでございまして、言葉をかえて申せば、
現行の
規定によりまする初診料相当額という一部
負担と同じものにいたす予定でございます。それから外来再診の日、一日、十円、ただし、処方箋の交付、薬剤の支給、注射それから歯科におきまする補綴等、これは補綴インレー等を考えておりまするが、補綴等の
給付を受けました日は三十円という金額に相なっております。それから入院をいたしました場合には一日三十円、ただし、長期の患者はいろいろとお気の毒でございまするので、六カ月をもって打ち切るということにいたしてある次第でございます。なお、この点につきまして
衆議院で
修正をいたされましたのは、先ほど御
説明がございました
通りでございます。
それから
改正の第四点は、
保険医療組織についてのことでございまするが、そこに1から5番まで書いてございます。その第一点は、
現行法におきましては、
保険医という個人をとらえまして
保険医の指定という形式をとっておるわけでございますが、今日の
医療の
実態を考えてみますると、すなわち初診から、保険といたしましては金を請求するまでのことを考えてみますると、むしろ
実態といたしましては、
医療機関というものをつかまえた方が
実情に即する、こういうふうな観点から、
医療機関を指定するという建前に変更をいたしたいというのごでざいます。すでに御
承知のように、
生活保護法なり、あるいは身体障害者福祉法なり、あるいは結核予防法でございますか、これらのものは、機関をつかまえて指定をいたしておりますことは御
承知の
通りでございます。そういたしまして、その指定の
期間は二年とする、かように
改正をいたしたいということでございます。なお、この点につきまして
修正が
衆議院で行われましたことは、先ほど御
説明のあった
通りでございます。
それから従来の個人を指定していくという
制度はやめました。今申し上げましたように、機関を指定するという建前に変更をいたしましたけれども、この個人につきましては、
医師、
歯科医師、薬剤師等の個人につきましては、登録ということにいたしまして、これは指定ではございません。登録ということにいたしまして、
原則として
医師、
歯科医師または薬剤師であれば、だれでも申請があれば登録をする。しかも、この登録には別に有効
期間等はございませんで、一生涯その登録の効果はある、こういう建前にいたしたわけでございます。この点は建前といたしましては、機関をつかまえて、機関との間に診療担当契約を締結して参るという建前にいたしましたけれども、やはり個人の
制度を何らかの形におきまして残しておくことがいろいろ長所もございまするので、かような登録の
制度を残したわけでございます。
それから3は、従来もございましたように、これらの
保険医療機関または保険薬局は、
療養の
給付を命令の定めるところにより担当しなければならない、これはいわゆる
療養担当
規定でございまして、従来もあるのでございまするが、これを明らかにいたしたい。
それからその二項は、
保険医療機関において保険診療に従事する
医師又は
歯科医師、保険薬局において保険調剤に従事する薬剤師は、それぞれ
保険医及び保険薬剤師の登録を受けたものでなければならないものとすること、これは当然な
規定でございますが、さような
趣旨のものであります。
それから三項は、個人の
療養担当
規定の根拠の
規定でございます。
それから4は、「
保険医療機関及び保険薬局並びに
保険医及び保険薬剤師は、
療養の
給付に関し、
厚生大臣又は
都道府県知事の
指導及び監査を受けなければならないものとし、
保険医療機関及び保険薬局に対する監査のための
検査権を
明確化すること。」
指導及び監査は従来ともそれぞれ条文がございまして、
実施いたしておったわけでございます。今後におきましても、従来の
指導要綱なり、監査要綱なりに従って
実施をいたしていくわけでございますが、どうも
規定が若干明確を欠いておりましたので、これらのものを明確にいたす
改正を盛り込んであるわけでございます。
それから5番目は、これも従来ございました指定の取り消しの関係のことでございます。並びに個人の場合におきましては登録の取り消しという問題がございまするので、そのことを第二項に書いてございます。
なおこの第三項といたしまして、指定を取り消したりあるいは登録を取り消したりいたすような場合におきましては、この
医療機関あるいはその本人に対して弁明の
機会を与えなければならないという
規定を新たに挿入をいたした次第でございます。
以上が
医療組織に関する一連の
改正の要綱でございまするが、次にこの第五点といたしまして、継続
給付、すなわち被
保険者の
資格を喪失した者に対しましても、引き続き
療養の
給付が受けられるという
制度を継続
給付と申しておりまするが、従来の
規定によりますると、半年以上継続して被
保険者として保険料を払い込んだ者でなければいけないということになっておりました。その半年を一年に延長をいたしたいという
改正でございます。これは
療養の
給付期間が御
承知のように、二、三年前に二年から三年に延長をされた際に、むしろ
措置すべきことであったかとも存ずるのでございまするが、三年間も
療養の
給付を受けられるのでございまするので、少くとも過去一年間くらい継続して保険料を納めたものであるという要件にいたしたい、これは現在の被
保険者と、それから被
保険者の
資格を失った者との
均衡等からも、さような
改正を意図いたしておるわけでございます。
それから五の二番目に書いてございますることは、若干この
内容がだいぶ違っておるわけでございますが、すなわち不正の
行為によって保険
給付を受けた者がある場合に、その
費用を
保険者は徴収することができるという
規定を新たに設けたい、しかもその不正の
行為によって保険
給付を受けたという事実が、
事業主の虚偽の届出とか証明に由来をし、あるいはまた、
保険医療機関が虚偽の届出もしくは証明をしたためにさような
事態が出現いたしたというふうな場合には、それらの者も本人と連帯をして
費用を弁償する責任を負う、かような
趣旨の
改正でございます。
それから
改正の第六点の一番は、被
扶養者の
範囲でございますが、これは
現行の
規定の一条の二項に書いてございまするが、
現行の
規定では非常に被
扶養者というものの
範囲が不明確でございまするので、この
範囲を明確にいたしたいという
趣旨の
改正でございます。ある部分におきましては
範囲がしぼられ、ある部分におきましては拡張されたというふうな関係に相なっておりまするが、要はこの被
扶養者というものの
範囲を
法律上明確にいたしまして、各取扱いが区々にわたらないようにいたしたいという
趣旨でございます。
それから2に(イ)(ロ)(ハ)と書いてございまするが、これらは
事業主あるいは保険
給付の受給者に対していろいろ調査をいたしまするための
規定の
改正でございます。
それから3と書いてございまするのは、これは
医療機関もしくは薬局に対する調査権限の
規定でございます。
それから
改正の第七点は、支払基金法の一部
改正でございまするが、今日、
現行の
状態におきましては、
診療報酬請求書の
審査委員、これは診療担当者代表、
保険者代表及び学識経験者をもって組織されておりまする
審査委員会が請求書の
審査をいたしておるわけでございまするが、それを
改正いたしまして、基金の職員である
審査委員が
審査をいたすということに
改正をいたしたい。そうして別に
審査協議会というものを設けまして、この
審査協議会は従来の
審査委員会と同じような三者構成のものでございまするが、この
審査協議会におきまして
審査に関する重要事項について諮問を受けて調査、
審議し、または幹事長に勧告を行うことができるというふうな権限を持った
審査協議会を別に置く。それから
審査委員の任命につきましては、幹事長が
審査協議会の意見を聞いて任命をするようにしたい。かような
趣旨の
改正でございます。
それから
改正の第八点は、必要な条文の整理ということでございまするが、たとえば
改正案の十一条の二項に、保険料の徴収関係の
規定の
整備というようなものがございまするが、さような必要な条文の整理でございます。
以上がごく要点だけを簡潔に御
説明を申し上げました
改正案の
内容でございますが、ちょっとつけ加えまして、
法律案の方に付則がついてございまするが、この付則の中で重要な経過
規定等がございまするので、ちょっと付則につきまして御
説明申し上げたいと存じます。
付則の一条は、
施行期日を五月一日というふうに書いてございます。
それから第二条は、被
扶養者に関する経過
措置でございまするが、これは被
扶養者の
範囲が、先ほど申し上げましたように
改正されまするので、現に旧法によっていろいろ
給付を受けておるような者につきましては、この経過
措置としてその者を
保護いたして参りたい、さような
趣旨の
規定でございます。
それから主要な点といたしまして、第五条、これは法
施行当時入院をしておりまする者からは、先ほど申し上げました一日三十円の一部
負担金をとらないという
規定でございます。
それから第六条は、これは一部
負担を
健康保険組合にも同じように
適用をいたしまするので、ただし、
健康保険組合におきましては、いろいろと
事情が違ったところがございまするので、一部
負担金に相当する額の
範囲内において、
健康保険組合の規約をもって定める額の支給をすることができる、しかもそれは当分の間、こういうふうに
健康保険組合の
特殊事情によって自主的な取扱いを認めました
規定でございます。
それから第七条は、
保険医及び保険薬剤師に関する経過
措置でございまして、これは先ほど申し上げましたように、
保険医療機関というものについての
改正がございまするので、今日
保険医の指定を受け、あるいは
保険医が診療に従事をしておりまする
医療機関の取扱いにつきまして、それぞれ経過的な
措置を講じて、取扱いの妥当を期した次第でございます。大体付則の中で主要な点は、以上御
説明を申し上げましたような点であろうかと存じます。
以上をもって補足
説明といたします。