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1956-02-16 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十六日(木曜日)    午前十時十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            草葉 隆圓君            榊原  亨君            寺本 広作君            相馬 助治君            竹中 勝男君            山本 經勝君            田村 文吉君            森田 義衞君            長谷部ひろ君   委員外議員            木村 守江君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省薬務局長 森本  潔君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁已君   参考人    日本医師会副会    長       丸山 直友君    日本医師会理事 古畑 積善君    日本歯科医師会    常務理事    竹中 恒夫君    日本薬剤師協会    専務理事    谷岡 忠二君    日本病院協会副    会長      神崎 三益君    大阪府医師会理    事       桑原 康則君    岡山県医師会内    科医師     加賀 呉一君    広島県医師会会    長産婦人科医師 正岡  旭君    京都府医師会眼    科医師     中野 信夫君    栃木県医師会内    科医師     成田  至君    日本精神病院協    会理事長精神科    医師      金子 準二君    東京都杉並区医    師会耳鼻咽喉科    医師      佐藤 次夫君    東京歯科医師    会専務理事   宮沢  進君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (新医療費体系に関する件)   —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  社会保障制度に関する調査の一環として新医療費体系に関する件を議題といたします。
  3. 山下義信

    山下義信君 私は、本日の議事を開始せられるに当りまして、議事の進行上特に厚生大臣出席を求めまして質疑をいたしたいと思いますから、御許可をお願いしたいと思います。
  4. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) けっこうです。
  5. 山下義信

    山下義信君 本日は、新医療費体系につきまして、当委員会の従来かって見ざる多数の参考人を招致せられまして、この問題に対する意見を聴取するのでございますが、申すまでもなく本日の各参考人から意見を求めますのは、先般政府が提示いたしました新医療費体系原案について、われわれは意見を聴取いたすのでございます。  しかるに先般来、各有力な新聞紙その他地方におきましては、特に各種新聞紙に報道せられたのでありますが、今回政府の提案せられました新医療費体系は、あるいは関係団体との話し合いがつき、あるいは政府与党の間にいろいろとお話し合いができて、政府原案相当修正をせられたということが新聞紙に報道せられておるのであります。もしこれらが事実といたしますならば、政府原案について参考人意見を聽取しますことが、非常に意義が薄くなるのであります。政府におきまして、そういう事実がありましたならば、この際、その真偽を明白にお願いしたいと思うのであります。それが第一点であります。  第二点は、この機会政府はこの新医療費体系につきまして、虚心たんかいに意見を聴取し、不合理の点その他改むべき点は、またこれを改むるにやぶさかでないという態度をお示しに相なってきたのでありますが、政府は、この新医療費体系につきましての最終的態度を、いつごろ結論をお出しになるというお考えでありますか。こういう点につきまして、政府の御方針を明確にせられたいと思うのであります。この問題に対しまする政府最終態度が、その御決定が非常に遷延するということになりますると、自然、好むと好まざるとにかかわらず四月一日から実施が予想せられております医薬関係法案実施に多大な支障を来たすと考えられるのでありまして、政府が新医療費体系に対する結論をお出しになる時期いかんに関連いたしまして、相当重大問題と考えますので、以上の諸点につきまして、本日参考人の御意見の陳述を聽取いたします前に、政府態度を明確にお示し願いたいと思うのであります。
  6. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいま、山下委員から御指摘になりました問題につきまして、答弁をいたします。  先般読売新聞でございましたか、あるいは地方のいろいろな新聞であったかもしれませんが、読売新聞等におきまして、新医療費体系に対して、厚生省がこういうふうな内容のもとに意見を変えてきた、あるいはひらな言葉で申しますと、妥協と申しますか、あるいは修正したと申しますかというようなことが、新聞に出ておりましたことは、事実でございます。私はさっそく厚生省幹部を集めまして、その出所等につきましても、いろいろ調査したのでありますが、厚生省幹部におきましても、こういうことを新聞その他でも、しゃべったことはないということでありました。これは私自身としても、今日ああいうふうな記事に示されましたような問題については、今日は考えていないわけであります。  しかし今御質問にもありましたように、また私がたびたび委員会において表明いたしておりますように、新医療費体系というものは、なかなか画期的な改正でございますから、できるだけ民間各方面あるいは関係団体あるいは関係者各位意見も、十分聴取いたしまして、そうして最善の方法でいたしていきたい、こういうことを考えておりますことは、今日も変らないのであります。今、山下委員が御質問になりました、しからばそういうような最後の断案をいつ下すかということにつきましては、御承知通り四月一日から医薬分業がスタートするのでありますから、少くとも私は三月の初旬までにはそれを決定いたさなければならないと考えておるのでございます。  以上御答弁申し上げます。
  7. 山下義信

    山下義信君 私の質疑は終りました。
  8. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 新医療費体系に関する点については、過日の当委員会の要求によりまして、本問題に関しまして、参考人に御出席を願い、本日及び明日の二日間意見を聽取することになっておりますが、人員の都合で午前と午後に分けて御出席を願っております。  この際委員会を代表いたしまして、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  どうもきょうは御苦労様でした。参考人方々には非常においそがしいところを御出席下さいましてまことにありがとうございました。本問題は厚生行政、特に医療行政に関する重要な問題でございまして、国民健康の向上に直接関係を有しまする各種の要素を含んでおりますのでございまして、当委員会におきましては、厚生省当局から説明を聴取いたしまするとともに、直接本問題に関係のございます皆様方に御意見をお聞きいたすとともに、なお学識経験者方々の御出席を願いまして、隔意のない御意見を拝聴いたしまして、調査上の参考にいたしたいと存じておる次第でございます。どうか忌憚のない御意見をお述べ下さいますよう、お願いをいたす次第でございます。  私委員長重盛でございます。ただいまから御意見を拝聴いたしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。お手元に差し上げました新医療費体系に関する皆様方意見聴取事項というのがいっておりまするが、大体それに準じまして御意見をお述べ願いたいと存じます。時間はいろいろの関係上、十五分程度で、一つ勝手でありますが、お願いいたしたいと思います。  委員の皆さんに御相談いたしますが、午前中に予定いたしておりまする方方にきていただいておるわけでありますが、一応御意見を全部御発表をいただいて、あと質疑に入りたいというふうに考えますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) では、そういうふうにいたします。  それでは、日本医師会会長丸山直友さんからお願いいたしたいと思います。
  10. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 私、丸山でございます。このたび新医療費体系に関する意見を聽取していただく機会をお与え下さいましたことを、厚くお礼を申し上げます。  最初にちょっと申し上げておきたいことは、先年来のように新医療費体系というものが医務局の所管として、私どもの方にお示しをいただけるものと存じておりましたところ、それがお示しをいただいておりません。「新医療費体系に基く健康保険及び般員保険の新点数表等について」というものをお示しを願っておりますので、これに関して意見を申上げたいと存じております。また私がこれから申し上げますことは、ただいまの山下先生のお言葉にもございましたように、何らか関係団体がこれに対して意見を述べる、そうして相当修正が行われ、その意見が盛り入れられていくというふうにお考え下さる方もおありになるかとは思いますが、実はそういうふうな手続が今までとられておりませんでしたということを明確にいたしますとともに、光だいまの厚生大臣の御答弁にも関係団体意見を聴取したいと思うと、こういうふうな御発表でございまして、十分なる調整がとれたものであるという御答弁がなかったということでも、これがはっきりしておると私は存じておるのであります。そういうような意味から申し上げておることをまずおくみ取り願いたいのであります。それで、大体総括と申しましょうか、詳しいことは申し上げる時間がございませんのでお示し下さいましたこの課題に従いまして、この順序で、ごくあらましの意見を申し上げたいと思います。  第一番目と第二番目は関連してございますので、これを一括して申し上げますが、お示し下さいましたように、ここの点数表は専門的の技術に対する適正な報酬が得られるためとございますが、得られるようにできておらないように私には考えられます。  それからまた物と技術に対する報酬分離が十分に表現されておると考えておりません。物の値いは正しくなく、技術にも正当でなく、必要経費も正しく評価した点数表ではないと私ども考えております。ましていわんや診療行為個人差とか難易度というものは、全然、全然と申しては少し言い過ぎでございましょうが、一部分を除いては、ほとんど考慮せられておらないように存ずるのであります。その一、二の例を申し上げますと、物というものが完全に払われておらない一つの簡単な例といたしまして、注射液あるいは内服薬に、一つの十五円段階のきざみをつけた標準価格というもので払われることになっております。十五円以下のものは、全部十一円、私は田舎でございますので乙地標準にして申し上げますが、十一円五十銭、十五円以上三十円のものまでは二十円二十銭という実価で払われる。これは注射液でございます。皮下の場合です。それから内服薬の場合は、十五円以下のものは全部九円二十銭の、平均価格で払う。三十円のものまでは全部二十一円八十一銭の価格で払われるというふうにやられているのであります。すなわち注射液では実価が十一円五十銭を上回るものといえども、また十一円五十銭を下回るものといえども、全部十一円五十銭で払われる。すなわち実価十五円のものは三円五十銭損失が出る。しかし十一円五十銭以下のものは不当な利得がそこに与えられる。しかしこれは払われる側の方といたしましても、当然標準一つ価格というものが必要ではございましょうが、しかしそれに対してなぜ十五円きざみにしなければならないかという確実なる理由が示されておりません。これは十円きざみにすれば、もう少し誤差が減るわけでございますし、五円にすればなお正確になるわけでございます。そういうふうに物の対価というものは、そのままの形では払われない。従ってその場合には、人情といたしまして、比較的その標準価格を上回るものの使用というものに対して、何らかの制限とまでは申し上げませんが、何らかのことが起るのではなかろうかということは、医療内容に対して何らかの低下という現象が現われはしないか、これは人情でございますが、そういうことをむしろ私どもはおそれるのでございます。  また注射技術といたしましても、先年示されました原価計算表厚生省から示されました原価計算表といたしましても、注射液価に対しては、原価が二十五円八十銭必要であるということが明確に示されておるのであります。この中には医者の技術と示されておりますものが七円四十二銭でございまして、その他アルコールとか、綿とか、煮沸するガスだとか、いろいろ針の消耗等々の、つまり物に必要なものが十八円三十八銭と明確に示されておるわけであります。それが今度一点と計算されますので、現実に十八円三十八銭の実価を必要とする。注射技術に対しては十一円五十銭ということになりますので六円八十八銭の損失があった。そしてその七円四十二銭というものが再診料の方に回されているのだというふうに相なっているのであります。  こういうふうに物と技術分離が完全に行われておりません。そうしてしかも物に対する対価というものが正確に払われるような形には相なっておらぬのであります。再診料が三点でございますので、乙地では三十四円五十銭と相なります。こういう物の中に追いやってあるということでございますが、今までの再診料は二点でございますので、これと比較いたしてみますとわずか十一円五十銭だけしか余っておりません。この十一円五十銭というものが余って、それだけ余計いただけるものに対して、もし注射が一回あれば損失相当に、六円八十八銭という損失が立ちますので、そういうふうな行為に対しては、多額な損失が立つのではなかろうか。また初診料というようなものに対しても、そういうふうな不足分が、全部初診料の方に追いやったために十二点という大きな点数を見ている。つまり前払いである。あるいは点数概算払いというようなもの、このように説明されておりますが、私どもは、点数形式と申しますものは、物の対価はその行為ごとに正確に払われるということが点数単価方式の、計算方式の特徴でございますので、そういうものの混乱ということは、私どもとしては一応望ましくないのではないかと、かように考えておるわけであります。そうしてこの初診料に非常にたくさんの点数を追いやっておるということは、初診というものが頻度は大体一回にとどまりますので、頻度の少いものに対して割合に高い点数をやっておる。頻度の多いものに対しては損失を与えるような、正当に払われ得る以下の損失を与える形であるということは、これはどういうことになりますかというと、重い病気でいろいろな処置がしばしばゼロになっておりますので、処置とか注射とか投薬とかというものを余計しなければならないものに対しては、損失が多くなる。非常に簡単になおって、初診最初にもらってしまって簡単になおる病気というものに対しては、非常な医師が得をするというような形に相なっておるのであります。こういうことは果して正しい医療というもののあり方であろうかどうかということに対して私は疑問をもつのであります。むしろどちらかと申しますと、重い病気を預かる、長くかかる非常にむずかしい病気を預かる人は、技術等においても高い人に比較的そういうことが起るのではないかと、かようにも考えられますので、もしそういうようなことに相なりますれば、むしろ診療行為個人差というものは逆になります。そういう人に対して損失が多くなって、そうでない人の方がかえって得をするというような形が現われはせぬかということをおそれておるのであります。  第三の、頻度変化がなければ、国民医療費は変らないとしているが、果してそうであろうか。これは向うがそう言っておられますので、たぶんさようでございましょうとでも言うよりほかには、私どもとしてはお答えの仕方がないのであります。ただそのあとに、かっこにありますように、頻度変化が予想されないということは、これは当然考えられることでありまして、むしろそういう頻度を抑えるということが、今度の点数表を組み立てられましたおもなる狙いではありゃせぬかと私ども考えておるのであります。これは果して医療というものが正しく行われることに対して支障を起さないかということに関しまして、多大の疑問をもっておるわけであります。  四番目の新体系実施によって、将来医師所得を確保することができるか。私は、ただいま申し上げました理由によりまして、正当に確保し得られないであろうと御返事するより仕方がないと思います。ことに、この点数表をもし通過するような、さようなことに相なるような場合があったといたしますと、これは国民健康保険にも当然利用されなければなりません。国民健康保険は、健康保険点数表に準じてこれを契約することになっておりますことは御承知であろうと思います。しかるに初診料の方に多額のものを追いやったというような形、つまり物行為が正しく一つ一つに対して評価せられておらないというこの形では、ただいまの国民健康保険では、初診料は全然負担せずに、本人負担になっておる組合も相当多いのでございます。あるいはストマイ、パスというようなものも本人負担になっておる。あるいは往診料を除外して給付しておるものがある。その給付というものは政府健康保険とは違いまして、国民健康保険給付状態がばらばらでございます。その場合に、こういうふうな総合的の、全部を合せたものが一つ医療からはみ出さないのだ、変らないのだという考えであるか、その給付の配分というものに対しましては、非常なばらばらになっておる状態のものを部分的に利用するところの国民健康保険というものは、これによって大混乱が起りはしないかというふうに、私どもとしては考えておる次第でございます。従って国民医療費負担軽減を期待することができるかというふうな御質問でございまするが、私はおそらくそれは不可能であろうというふうに申し上げるより仕方がないと思います。  その次の五番目でございますが、社会保険にこれを実施した場合に、保険経済にはどうなるかということであります。保険経済は御承知のように大へん赤字を続けておりますので、皆様にもいろいろ御心配をいただいておると存ずるのでございますが、これは先ほど申し上げましたように、頻度に関する故意の圧縮が行われまして、それが実現いたしますという形になりますれば、おそらく健康保険経済といたしましては、プラスになるという結果が自然生ずるかもしれません。これがすなわち最初厚生省が言うておりました医師所得に対しても、あまり旧点数変化が起らないだろうということに関する説明とは矛盾する結果を生ずるのであります。また先ほど申し上げましたような、いろいろなバランスの違いから医療機関の種類によっての平均はくずれないのであると最初から御説明になっておりまするが、そういうことも実現はいたさない。相当の開きを生ずることに相なるのではないかと考えております。  事務手続は、はなはだ複雑化すると考えております。これは一々例をあげて申しませんでも、おわかりであろうと存じます。  診察料検査料調剤料注射料等とこまかい一つ一つのものに関しまして、全部を一々申し上げますると時間がかかりまするので省略いたしますが、最初申し上げましたように、初診というものに対しては、非常に、われわれに当然与えらるべき対価以上の点数が盛られておるというようなこと、再診というものに対しては、正しく評価せられておらないこと、往診に関しては申しません。検査料に関しましては、従来よりは、ややよろしくはっておるように思うのでございます。調剤料に関しましては、むしろこれは薬剤師協会の方からおいでになっておりますから、その辺からお話がなされるかと存じますが、処方せん料は一点と計算してございますが、これは紙代でございましょうか何でございましょうか、実際のことは、私どもは了解に苦しんでおる次第でございます。  注射料につきましては、先ほども申し上げた通りであります。物を分離して払われると申しまするが、その物は、注射液というものが先ほど申しましたようなことで、実態的に損失の出るというものが相当数ある。静脈注射皮下注射を区別しておりませんので、はっきりした数字には誤まりがあるかもしれませんが、大体平均単価を上回るものと下回るものの注射液薬価基準表で数を調べてみますると、その差はあまり大差がないという結果になっておりまするので、この標準価格以上のものと以下のものとの使用度がどういうふうに変化するであろうかというふうなことも心配の種であります。  処置料は、耳鼻、眼科等においては、処置料はほとんど再診料に含まれてゼロとなっておりまして、当然払われるべき処置というものに関しては無料となっております。再診料の中に含まれておる、そういうことであります。これはどういう意味でございましょうか、つまり眼科の方で患者をごらんになった、見たという行為に対しては三点が払われまするが、洗ったとか点眼したとか、いろいろな行為がそれに加わりましても……、こういうようなことが起るのであります。つまり処置料に関しましては、正しく評価せられると考えております。手術料に関しましては、やや高く評価せられております。これに関しまして初めて個人差というものがある程度そこに盛られておりまするが、このプラス・アルファというものの見方が正しいかどうかということに関しましては、全然私は外科的の知識がございませんので、正確には申し上げかねまするが、相当に不満があるのではないかと、かように考えております。  入院料も、相当にこれは今までよりは上っております。大体において入院をたくさんお扱いになる病院においては、入院料の増収が起るかもしれませんが、三つの段階が作られましたことに関しましては、なおその理由は、私どもに十分な納得がついておらぬのであります。大体そのあとの問題に関しましては、総医療費ワクの問題は、お示し下さいましたものは、ワクに対してはあまり変化がないのであるというふうにございましたが、先ほど申し上げしたような理由で、あるいはそのワク圧縮を受けるかもしれないと、私ども考えております。  社会保険赤字対策に関しましては、これは保険法改正でございまして、この新点数表に対しては、赤字対策意味は何ら含んでおらないと政府説明しておりますので、これは私も問題外で、健康保険法改正の場合においてお話しをいたさなければならぬことがあるのじゃないかと考えております。  一点単価との関連問題に関しましては、もちろん医療報酬は一点単価点数相乗積でございますので、当然問題にいたさなければなりません。この前に示されました一点単価というもののきめ方から、その後のCPSの異動等考えまして、変動が起るべきものと私ども考えておりますが、現在の赤字のこの保険経済のときに、こういう問題が山積しておりますときに、今直ちにこの一点単価を検討しようというふうなところまで進んでおりません。これは当然臨時医療保険審議会において取り上げられるであろうということを信じております。  最後に一言申し上げたいことは、国民が皆保険に向うというような動向から考えて参りますと、社会保険というものの医療に関しましては、純粋な医学的な要請のほかに社会医学的な要請というものを取り入れていかなければなりませんので、この間には必ずしも一致しておりません面がございますのでその結果規格診療ということが起ってくるかもしれません。あるいはおそらく必要とせられる時期が参るかもしれませんが、しかしこういうふうな形で参りまして、ただいまのままで参りますというと、医療内容進歩向上を阻害いたしまして、むしろ医療内容は低下していくのではないかということをおそれておるのでございます。これを取り去るためには、当然医療費ワクの拡大ということが必要と相なってくるという段階に参るでございましょうが、現在の保険の財政から見ますると、これは国費をこの中に導入いたさざれば、とうてい完全な医療というものは遂行し得ないというような状態にだんだんなっていくのではないかと考えております。  次に、はなはだ卑近なことを申し上げておそれ入りますが、私ども保険者あるいはその他の方におわかりやすいようにつまらないたとえで申しておるのでございますが、今の住んでおる家は、お座敷も台所も居間もごちゃごちゃになっておってはなはだ悪いから、一つ家を作ってやるから、そこへ引越せというふうなものが、この新医療費体系ではないかと、かように考えております。その家をお作りになるのには、もう少しオープンにお作りになるかと思っておった、ところが先日まで、秘密のうちの秘密で三年とその後七カ月の間というものは、厚生省内で秘密で、まわりに高いへいをお建てになって、中で御普請なすっておったという状況でございます。さてそこへ引越そうと思って住民たる私どもがお伺いしたところが、めったに使わないお座敷は、いたずらに千三百畳もあるというお座敷ができておりまして、居間や台所は相当ごちゃごちゃしておるということが今現われておるのでございます。これはどうも困りますから、何とか一つごめんを蒙りたいというのが、今私ども考えである。それなら現在住んでおる家が居心地がいいかというと、決して居心地がいいとは申せません。私どもは立派な建築ができて、そこに移りたいと望んでおるのであります。新医療費体系のはなはだ立派なものができることを望んでおるのであります。しかしそれをお作りになるには、大工さんや左官屋さん、経済学者もおりますし、被保険者というのもおります。その家に住む医者もおります。それらの者の意見を全部お聞きになってオープンに、へいの中でなく立派なものを一つお作りいただきたい。その協力は、私どももいたしたいと思っておるのであります。その結果でき上った立派なビルディングに移り住むことのできる時期を私どもは待望しておる次第でございます。  はなはだつまらないことを申し上げまして失礼いたしました。おわかりになりませんでしたり、あるいは不審とお考えになれば、後ほどまた質問のときにお答えいたします。
  11. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、日本医師会理事の古畑積善さんにお願いいたします。
  12. 古畑積善

    参考人(古畑積善君) 前参考人が非常に詳細にわたって説明されましたから、私の申し上げることは、きわめて少いようになりまして、はなはだ恐縮しておりますが、一、二の点につきまして、自分としての考えを述べてみたいと思っております。  まず第一に、初診料について先払いの考えを取り入れたと、こういうことでございます。これは医療協議会において私が質問いたしましたときには、さようなお答えがないのでございます。参議院その他の速記録を拝見いたしますと、先払いの考えを入れたという御答弁のようでございましたが、少くとも私が医療協議会で質問をした場合には、初診料に対する高等の技術考え、その経過の途中には、いろいろのことを考えてみたけれども、これは、初診料そのものに与える対価である。こういう御答弁でございました。これは速記録にもはっきりとしておるわけで、私がここでうそを申し上げるわけではございません。で、まずその先払いという考え方を、これも私はばかでございますから、立派な言葉を使えないで、はなはだ議員諸公の前に恐縮でございまするが、ものにたとえて申しまするというと、月給でございます。月給というものが、今までは本給は割合に安かった、ところが家族手当というものがあって、そうしてその子供が多くなれば、家族手当を十分に頂戴して、十分でなくても余分に頂戴して、そうしてまあ生活がどうやらできておった、こういうことだろうと思うのです。ところが今度は、月給をふやしてやろう、こういうお話でございます。まことにけっこうなことでございます。私どもも、双手をあげてこれには賛成をいたすのでありますが、さてその月給の算定となると、どういうことになるかというと、平均して子供は一人と見るか、二人と見るか、三人と見るかという問題だろうと思うのです。ところがわれわれの方の計算からみまするというと、二人半から三人くらいは見てもらわなければならない、こう思っているときに、一人分の子供のものを入れてある。そのような状態じゃないか。そうしてお前たちは、月給をふやしてやった、それは家族手当もその中に含んでおる、こういうふうに言われますけれども、事実を調べてみるというと、どうもその点がうまくいっておらない。看板に偽りありというような気がいたすのであります。われわれは今までは、たとえば注射をしましたとか、あるいはお薬を差し上げたとか、そういう行為ごとに多少ともそこに家族手当に相当するような利潤と申しますか、何かが、報酬と申しますか、そういうものがあったのでありますが、今度は、それが全部なくなる。前参考人の申し上げました通りに、注射をすれば、俗な言葉で言うと、一ぺん注射をするごとに十円の罰金を払われければならないというような結果になるのでございます。これは厚生省がはっきりと二十何円といり注射料がかかっている、薬は別にして注射の代が二十何円かかったのに与えるものは一点である、つまり十一円、十二円五十銭である。そういうことになりますと、注射をしまする際に、十円の罰金を払う、犠牲を払うというような結果になるのでありまして、この点につきまして、私どもはどうも納得がいかない。またこのために、われわれ会員の中には、多少とも不穏の空気があるのでありまして、医は仁術とは申しながらも、これを納得せしめることが、われわれとしては務めでありますけれども、納得させることができないのでありまして、この点どうぞ英邁なる議員諸公に十分御勘考を願いたいと思う次第でございます。  それから次に、事務の簡素化ということについて申し上げます。事務の簡素化というのは、この何点々々と申し上げましても、あるいは議員の先生方には御承知いただけないかと思うのであります。一点が十二円五十銭、とにかく銭単位がついておるのでございます。郵便局でも銭単位は扱わないのであります。家族になると、またその半分になるということである、一点であると六円二十五銭というものを家族からはもらわなければならない。そういうのが今までの状態であります。今度はお薬の場合には〇・七点、調剤料が〇・六点、こういうようなことになりまするというと、さあわれわれのような頭の悪い者には、一体どれだけ頂戴したらいいのか、間違いなく頂戴するということにも困難を来たすわけであります。またその日その日を困難にするばかりでなく、これを一括して請求するというときになりまするというと、治療よりも、そろばんをはじかなければならない。私どもは遺憾ながら大学におきまして医学は習いましたが、簿記学は習っておらないのでありまして、この点も英邁なる諸公に十分御勘考を願いたいと思う次第でございます。  それから今度の問題につきまして、大変厚生省方が御苦労なさった。その点をまずここでもって、あらためて議員諸公の前に申し上げます。それはどういうことであるかと申しますと、三月の医療費ワクは変えない、科学技術は尊重します、そうして物に対する対価は十分にお払いします。そうして各科の取り分も違いません、また医者の取り分もおおむね変らない、そうして初診料は十二点、再診料は三点、こういうような条件をはじき出した。どういう数学をお使いになって、これだけの技術がおできになったか。私どもはここにあるまんじゅう一つを分けるのにも、なかなか平等には分けにくいのであります。それをこういう立派な数学——数学と言いますか、高等数学と言うか、超高等数学をおもちになって、われわれの前にお示し下すったことに対し、私どもは満腔の敬意を表する次第であります。  ただ私は、こういうことだけを申し上げます。私が、この数学がわからぬと言っておったならば、かたわらにいた中学一年生の子供がお父さん、そんなめんどうくさいこと考えなくてもいいじゃないか、手術料が上って、入院料が上ったというなら、病院が儲かるねと言う、それだけのことである。三月のワクが変らないで手術料を上げた、入院料を上げたと言う、どこからももって来るところがないから、普通の病床を持っていない医者、そういうものは、これは苦しいにきまっている。これは、中学一年生が私に教えたことだ。簡単な数学の方が私の単純な頭にはぴんと来たのであります。  しからば、今まで医師は食えない食えないと言っておったが、どうして食って来たか。この手品を一言皆さま方にお知らせ申し上げます。われわれ医者が食べられない食べられないと言いながら、まあ私のようなデブの者もありますが、今日皆さまの前にお示しいたしましたこのデブも、私は三十年開業しておりまするが、少くとも元日は私は一日も休んだことがありません。元日はほかの先生方がお休みになるだろうと思って、私は三十年の間、元日というのは一日も休んだことがありません。そうしてなお日曜は無休でございます。日曜は官公立の病院は休みましょうから、せめてこの日はかせごうと思って働いております。そうして古い自転車に乗って、人の休むときにボロ・カバンを下げて、自転車に乗ってかけずり回って、ようよう妻子を養っている。つまりオーバー・ワークによってやっているので、人並みの生活態度であったならば、医者は食っていけない、こういうことを身をもって体験して来ました。しかしもう年令も、まさに六十近くなりますと、その自転車にも思うように乗れず、今後のことを考えると、うたた感慨深いものがあります。  私の申し上げたことは、非常に雑駁でございまして恐縮でありますが、以上であります。
  13. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ありがとうございました。  次に、日本歯科医師会常務理事竹中先生にお願いいたします。
  14. 竹中恒夫

    参考人竹中恒夫君) 医療担当者といたしましての総括的な意見は、丸山並びに古畑参考人から申されましたことと、大体におきまして総括的な見解は同様でございまするから、その点は、時間の制約もございますので省略いたしますが、同様の意見日本歯科医師会ももっているということを一応御承知置き願いたいと存じます。  なお、御質問いただきましたこの順序に従っての説明は、午後東京歯科医師会の宮沢専務理事から申し上げることと存じますので、私は、御質問の要綱の順序によらずして、意見の開陳をさしていただきたい、かように存じまするから、その点も御承知置きを願いたいと、かように存じます。  そこで、総括的な考えでございまするが、今回の新医療費体系の基本的な考え方、すなわち物と技術とをそれぞれ分けまして科学的に算定するのだという、このお考え方に対しましては、私ども日本歯科医師会といたしましては全幅的な賛意を表するものであります。しかるにその基本的な理念に沿わないところの今回明示されましたる原案そのものには、遺憾ながら絶対反対の意思表示をしなければならない、かように存ずるのでございます。  その理由といたしましては、きわめてその盛り上げたるものが非科学的なものであるということ、あるいはまた医療の特殊性を無視されておるものである。単なる単純労働対価によるところの計算法によってなされておる。聞くところによりまするというと、ソビエトのノルマ制におきましても、その仕事の本質を考えられまして、ただ単なる時間測定以外に、仕事の本質を考えてノルマ制がきめられておるということを聞いておりまするが、同様にわれわれの医療報酬金をおきめになる場合におきましても、その医療の本質をお考えの上の決定でなければ、われわれは賛成ができないのでございます。あるいはまたワク内操作にいたしましても、ワク内操作というものがすでに無理でございまして、正しい医療費の算定をする場合において、あらかじめワクをきめてするということが、すなわち非科学的な面を暴露し、われわれ医療担当者の納得、得心がいかないことに相なるのであります。あるいはまた医療技術に対するところの主体性に欠けるところがございまして、主として物の対価ということを重点に考えられておって、医療報酬金の主体性が医療にあるということでないような、逆な考え方が結果的に現われておるということに対しましても、私どもははなはだ遺憾に思うものでございます。特に今回のこの原案作成に当りまして、結果から見まするというと、御当局にその意思があったかどうかは別といたしまして、結果的に申しまするならば、官僚の独善的な考え方によって、しかも昨年の十二月の二十七日以後のわずかな期間の間に、時間的に非常に窮屈な間に、これをわれわれに審議をしろということで、どうでもこうでも、二月の中旬までに答申をしろというようなことを中央医療協議会の方にも言われておるわけでございまして、その意味から申しましても、全く独善的なものを無理やりにのめというような結果になるということを私どもは非常に不満に存じておるのでございます。そこで先日も大臣にお会いいたしましたときに、十二分に関係方面とは相談したというお話しでございましたが、決してそうでないということの立証をこの機会に申し述べておきたいと思うのでございます。  昨年の十二月二十六日に、実は日本歯科医師会といたしましては、四つの条件を付しまして意見書を当局に提出いたしました。同時にその意見書提出とともに、私が参りまして、口頭で厳重に意見並びに抗議を申し込んだのでございますが、そのときのわれわれの申し分は、前年発表されました新医療費体系に対しまするところの反対の理由が、そのまま解消されずに今回の原案において見られるということでありまするならば、遺憾ながら反対せざるを得ないのであるということが一つと、いま一つは、医療報酬金をきめるのに、医療担当者であり臨床家であるところのわれわれの意見を徴せずして、御当局にも歯料医師の方がおられまするが、最近の開業の経験のない方々によって作られるということでありますならば、十二分にわれわれの意向、民意が反映しないのであるからして、事前にわれわれの意見を徴していただきたいということを申し出たのが十月の二十六日でございました。当局のそのときの御答弁は、今回の体系を作るに当っては、絶対に外部に漏らすわけにいかないのだ。従って諸君の意見というものは医療協議会において出してもらいたい。こういうような御回答であられたわけです。その医療協議会が、先ほど申し上げましたように、十二分なる時間的な余裕がございまするならば、あえて私官僚独善と申しませんが、結果的に申しまするというと、非常な短時間でありまして、すでに昨年来正月も休みなしに八回開いておりまするが、もう今月もあとわずかでございまして、あと二、三回しか開かれないというようなことで、しかも一回の医療協議会が三時間程度でありますならば、とうていこの医療革命というような大きな問題を審議するのは不可能である。こういうように考えられるような条件下において、これを決定するということが、はなはだ私は遺憾に思うのでございます。この十月二十六日の申し出に対しまして、一カ月たちまして十一月の二十五日に、曾田医務局長、牛丸企画室長が初めて日本歯科医師会においでになりまして、中間発表をしていただきました。これも発表だけでございまして、まだ全貌ではございませんので、初診料注射料往診料入院料程度の御説明をいただいたのが十一月二十五日でございまして、こえて十二月十日に次官公邸におきまして、正式の第一次発表があり、二十日に企画室におきまして最後的な発表があったというのがこれが経緯であるわけでございます。  私どもが反対いたしておりまする総括的な理由は以上でございまするが、少しく内容的に、反対理由をこまかく申し上げておきたいと思うのでございまするが、まず私実は中央社会保険医療協議会の歯科関係の唯一の委員をいたしておるわけでございまするが、従いましてこの委員会におきまするところの私の質問なりあるいは反対の理由をそのままここで御披露申し上げることが一番正しいのじゃないかと思いまするので、ごくかいつまんで申し上げたいと存じまするが、私が医療協議会で質問いたしましたうちの重要な点は、まず第一に、われわれの医療報酬金を科学的に算定するということ、新医療費体系におきまして、先ほども丸山参考人がおっしゃいましたように、医療報酬金というものは、点数単価相乗積ということは、これは社会保険におけるところの定め方である。しかるに単価というものは、昭和二十六年十二月八日以来、暫定単価として今日まで据え置きにされておるのであるが、他の諸物価から考えまして、果してこれが適正か不適正かということについて、当然点数の審議とともに並行的にこれを審議し、科学的なメスを入れなければ正しい医療報酬金というものを算定はできないのである。ただ現段階におけるところの保険財政の見地からいたしまして、必ずしも今直ちに単価を上げるという意味であるのでなくして、適正単価が幾らであるかということの算定だけは、この機会にする必要があるのであって、その結果、単価が上ったといたしまするならば、それは国庫から投入その他の財的な裏づけがあるまでは、現行単価でわれわれは、しんぼうするのだ。しんぼうするということを医療担当者は理解し得る見込みがある。が、これを審議せずして、あたかも適正単価のごとくにたな上げしておいて、点数だけを論じるということでは科学的な医療報酬金のあり方でないということが私の強い主張点であり反対の理由であったわけでございます。  第二番に私が申しましたのは、先ほどもちょっと触れましたが、ワク内操作の問題でございます。医療報酬金というものは、物の対価関係を科学的に計算いたしまして、同時に別に医療技術対価関係を科学的に計算してもらいまして、この合計されたものが医療報酬金である、こういうのが正しいのでございまして、この合計額が、ワク内で操作できる場合もあるかもわかりませんが、ワク内で必ず操作しなければならんという前提でやるということでございまするならば、決してこれは正しい考え方でない、私どもは、さように考えておるのでございます。ところが、現実の問題といたしましては、過去の各科毎の実績を一〇〇%といたしまして、その実績から物の対価を控除されまして、残額が医療技術料だと、こういう逆算をなさって、その逆算した額を各点数項目に、単価でもって割られまして、点数出して配置転換をしたにすぎないのである、こういうような点が、私どもといたしましては、はなはだ不満な点であるわけでございます。  なお私の質疑応答に対する当局の御答弁の中で、私が非常に驚きましたことは、医療費の絶対値ということは考えられないという暴論を吐かれたことでございます。もちろん絶対値というものは、哲学的血意味から申しますというと、相当むずかしい解釈であろうと存じまするが、いわゆる常識的な絶対値をわれわれは求めるわけでありますが、医療費の絶対値というものは、この場合には考えておらないということでございます。新医療費体系というものが、正しい医療費の算定をするということを前提としておるにもかかわらず、絶対値は考えられないという事柄は私どもといたしましては、まことに憤激せざるを得ないところのものであるわけでございます。もっともその理由が、財政的な理由からして絶対値は出せないというのでありますならば、先ほどの単価問題同様に、われわれは了承するのでありますが、そういうことの説明がなくして絶対値が考えられないということでありますならば、この原案というものは、全くほご紙同様のものであると、かように私は考えるのであります。  その次に、私どもが反対いたします最大の理由は、医療技術の難易差というものが少くとも歯科においては入っておりません。歯科は、技術をもって、手技をもって生命といたしておりますにかかわらず、この手技に対しますところの難易差が入っておらないということを、はっきり御当局は言っておられるのであります。考えては見たが、資料がないから今回は取り入れておらないということでございます。むしろそうでございますならば、従来の点数表の方が、ある程度の難易差ということが入っておるのでございまして、われわれの生命でありますところの医療技術に対します難易差を考えられないという、この体系は、何と言いましても、われわれはのむわけには参らないのでございます。  それから、その次の問題は、先ほどノルマのときに触れましたが、時間測定によってのみこれがなされておるのである。各科のバランスを考えて、ただバランスを考えた上での時間測定のみによってなされておるのであります。しかもその時間測定に使用いたしますところの医療コストというものは、時間的な医療コストというものは、歯科におきましては三円八銭ということでございますが、これは臨時医療報酬審議会で御決定になりましたS方程式をお使いになるときの一つのこれは目安でございますが、われわれ歯科医師の労働対価が一分間三円八銭ということでございます。これは靴磨きなりあるいはその他の方々の労働対価に比べ、散髪屋さんあるいはあんまさん等の労働対価に比べまして、これよりも安いところの一分間の労働対価をもって点数は算出されておるのでありますから、時間測定のこの不合理と、同時に時間測定するときの医療コストは、めちゃくちゃなコストであるということを、この機会に皆さん方に告白と申しますか訴えたい、かように考えるのでございます。  なお、出されましたところのこの点数表はバランスのみをもって、この点数表が出されておる。もうすでに、この社労委員会において質疑がございまして御承知通り、例をとりまするならば初診料でございますが、たしか山下先生の御質問のときの御答弁かと存じますが、初診料が各科のバランスをとって、各科の実績を下げないために考えるということと、各科のバランスをとるために初診料が第一次的に二十二点でなければならない。この二十二点というものの初診料に対して、再診料が、初診料とのバランスから見て二点であった。ところが再診料を三点にするためには、財源をどこからかもつてこなければならないので、二十二点の初診料を十七点に下げて再診料を三点にした。こういう意味の御説明を当局はされておられたように私は記憶しております。初診料二十二点、再診料が二点でありますから、十一対一でございますから、再診料が三点になれば、初診料は三十三点にならなければならない。それがバランスの上から、最初二十二対二というものをきめておきながら、今度は財源の面から、そのバランスを破られまして、初診料を十七点に下げられた、しかもこの十七点では夜間等の時間外の増点の財源がないからということで、その十七点からまた一点引きまして十六点にされた。十六対三の初診料と再診料との関係に置いておられたのでございまするが、注射時のアルコール代あるいは脱脂綿というような注射時に、皮下注射、筋肉注射一点、静注二点という財源を求めるために、三たびこの十六点からまた四点を財源の方に振り向けられて十二点の初診料にしたのだということが、速記録によって私知っておるのでありますが、今申し上げましたように初診料十二点も、それから再診料三点も、いろいろの医療技術ということを勘案したのではなくして、ただひたすらバランスのみを考えて出されたというのでございまして、私どもといたしましては、はなはだこうした点が不満であり、同時に歯科におきまするところの初診のコストということから考えまするならば、七、八点も上回っておるところの十二点であるわけです。その説明を求めましたところが、これまた丸山参考人がおっしゃったように、初診料を高くもっていったということは技術料の先払いという考え方がこの中に入っておるのであり、潜在技術料というものを初診料に持っていったのだ。こういう御答弁であるわけです。注射料注射技術料そのものを注射技術料として払うのが新医療費体系考え方であるにかかわりませず、注射技術料としては、一点ないし二点の資材費だけを注射料として表示いたしまして、その注射技術料というものを潜在技術料と称して初診料の中に組み込んでいく、このようなことであるわけです。  特に、私どもの最も遺憾に存じますることは、この初診料の中には、歯科におきましては、注射、投薬、処置、手術と同時に、補綴——義歯等でございまするが、補綴の技術料が八%この初診料の中に持っていかれてあるわけです。ところが実際におきまして、取り扱い件数から考えまするならば、補綴がある頻度というものは〇・一%ということが出ておるわけなんです。それで件数から申しますというと、金額は別でございまするが、患者の頻度から申しますというと、ごくわずかですから、結局百人来まして一人義歯が、補綴があるやないやわからぬというような、その補綴の潜在技術料と称して八%とって初診料に持っていくということは、千人に一人の人はいいのですが、あとの方方は補綴をしてもらわないのに、補綴料の八%を潜在技術料あるいは先払い料としてとられるわけです。しかもそのとられる初診料というものは、今回の改正法律案では、どうやら一部負担として高額なものがとられるということでございます。そういたしまするというと、被保険者は、歯科に関しまする限りは入れ歯を入れないにかかわりませず、歯科医に行けば入れ歯の技術料を八%以上のものを先払いしなきゃならぬというような、きわめて矛盾があり、被保険者が聞けば、承知し得ないような状態であるのでございます。そういうような事柄が、ただ単にバランスの上から考え点数をおきめになったということで、そういう結果が出て参るのでございます。  なお私が先回の協議会で質問いたしましたことは、そのバランスの上からできた点数表であるといたしましても、その点数をおきめになったところの基本的な資料と、決定になった経過的な資料とをお示し願いたいということをお願い申し上げたのでございまするが、その基本的な資料並びに経過的なものに対する資料の提示がいまだに私ども協議会には出されておりません。ただ物の対価を計算なさったいろんな資料はございまするが、外国とのいろんな資料はございまするが、肝心の、こういうわけで歯料の点数はこうなったのだという基礎資料なり、決定になった経過資料というものは、われわれの得心がいくような資料は出されておらないのでございまして、すなわち(1+アルファ)gtというところのS方程式によりますところの資料が、いまだに出されておりません。これは出されないのがほんとうだろうと思う。バランスのみによって御決定になったのでございまするからして、そういう方程式、公式に当てはめたところの資料はないのがほんとうだろうと思うのです。そのためにいまだに出されておらないのでございます。  なお私どもは、同時に関係法規の改正との関連が非常に深いのであるからして、この新医療費体系原案審議は、関係法規の審議が国会においてなされて決定後でなければ正しい点数表は審議できない。一部負担等の関係もございまするし、できないのであるということを強く申し入れたのででございまするが、卵が先か鶏が先かというところの議論になるからして、もとより国会の御審議が近くあることであるから、それをにらみ合せながらやってもらいたいということでございまして、最近には社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会等で大体政府原案の全貌がわかって参りましたが、自民党方面におきまする最後的な原案がきょう新聞に出たようなことでございまするが、いまだに十二分にわからないことでございますので、この審議をいたしまするのに正鵠を失するということで、強く私どもは中央医療協議会の審議を一時休憩してもらいたいということを申し上げた。これは一つにかかって正しい点数表を作成したいという熱意によって私どもはさように申したのでございます。なお私が当局に質問いたしましたことは、この新医療費体系実施することによって国民にどういう影響があるかということを質問したのでございまするが、御当局は別に国民には何らの影響はない、すなわち悪影響もあるいはよい影響もないというような意味でございましょうが、影響はないということでございました。しかし私ども医療担当者からいたしまするならば、国民プラスするところもございませんが、マイナスの面がきわめて多大であると思うのでございます。すなわち医療内容が低下するとか、あるいは医療行為の非常に頻度の偏重を来たすとか、またわれわれ医療担当者が診療意欲の減退を来たす、あるいは医学の進歩を阻害するというような、いろいろなその他悪影響があるのでございます。  特に私はこの機会に申し上げておきたいことは、歯科医療におきましても、先ほどの丸山先生なり古畑先生のお話のように出血がある部面が点数表にあるわけでございます。それが歯科の補綴にあるわけでございまして、義歯で一歯増しますごとに三点を出すということでございまするが、これを歯科技工士に出しますと、一歯増すごとに四点、すなわち五十円の技工料をとられるのでございます。こうしたことは各所に私はまだまだあると思うのであります。その一例でございまするが、仕事をすれば、医療をすれば損をするのだということでございまするならば、診療意欲というものは非常に阻害されるわけでございます。もとより私どもも慈善事業をしておるわけではございませんので、あくまでも自己の生活を保ち得る範囲内におきまするところのものでなければ、医療報酬金としてはわれわれは受け取れないのでございまするが、そうした点が散見するということがこの中に多数あることをはなはだ遺憾に思うのでございます。なお最後に特に歯科の立場からお願い申し上げておきたいことでございまするが、歯科医療医薬分業関係でございます。私はこれが可分であるか不可分であるかということの議論も医療協議会でいたしましたが、今日はそういうことを申し上げるのではなくて、歯科におきましては薬治料というものは取扱い件数では〇・一%である。金額にいたしましても現行点数で〇・三%・新点数で計算いたしますると〇・二%しか関係がないわけでございます。従いまして医薬分業実施に対しましては全面的に協力をする気持を持っておるわけでございまするからして、この四月一日から行われまする医薬分業支障を来たさないようにするためには、歯科におきましてはいかような方法をとることも私どもは一向に異論がないのでございまして、むしろ拙速主義に、どうでもこうでもこの不完全なこの原案医薬分業実施のためにこれをのめというような御当局の考え方に対しましては、絶対に私どもは反対の意思を従来も表示いたして参ったのでございまするが、賢明なる国会議員の諸先生方にその点を特に御認識していただきまして、御理解のありますところのお取扱いを願いたい、かように存ずる次第でございます。  なおいろいろと申し上げたいことがございまするが、時間も来たそうでございますので一応以上をもって私の陳述を終りまするが、結論的に申し上げますると、歯科医療報酬金の大革命を今回行われるにつきましては、歯科医師の理解と納得と得心がいくことによって協力しなければ決してこれはうまくいかない。この大革命が流血革命に終るようなことは、国家といたしましても、われわれ医療担当者といたしましてもはなはだ残念でございますので、どうかかすに時日をもってしていただきまして十二分なる討議の時間を与えていただきまして、この大革命が平和のうちに行われますることを念願いたしまして私の陳述を終りたいと存ずる次第でございます。  どうもありがとうございました。
  15. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) では次に日本薬剤師協会専務理事谷岡さんにお願いいたします。
  16. 谷岡忠二

    参考人(谷岡忠二君) 日本薬剤師会の谷岡でございます。  まず冒頭にお断わりをいたしておきたいと思いまするのは、本日御出席になっておりまする参考人方々、諸先生、みなわれわれと同一の医療担当者であります。しかしながら、この薬剤という立場からこの新医療費体系の問題を考えまする際に、必ずしも御意見が一致しないところもあってお聞き苦しいことがあるかもしれませんが、それはどうかお許しを願っておきたいと思うのであります。  総括的に考えまして、今回の新医療費体系を作成しますに当りまして、政府では一つの根本の理念を立てて、その理念、方向に従ってこれをお作りになった。その根本の方針の中で一番大きなものは、物の対価技術に対する報酬をはっきりと分ける。第二には一定の時点における同一要素である場合に総医療費は増加しない。この二つのことは一番大きな基本の御方針であったと思われるのであります。この御方針については竹中参考人からも述べられましたように、絶対にこれを肯定するものであって賛意を表します。ただ各立場にある人が、それではこの根本の方針が果してはっきりと適正に行われておるかどうだかということについては、おのおのの立場から観察いたしまして必ずしも適正でないという御批判もあることと思います。しかしながらこの基本の御方針というものを頭に置いて今回の新医療費体系を見まする場合に、現在の行われておりまする医療費の体系とこれを比べて、そうしてどちらが一歩でも半歩でも合理化されておるかということを問われるならば、私どもの立場といたしましてはとにかく現在の体系よりも一歩でも半歩でも進歩しておる、こう言わざるを得ないと思うのであります。ここにあるいは第三案、現在の体系と政府が今回お出しになっておりまする新医療費体系、またあるいはほかから出る第三案とがあって、この三つを比べてどれが一番合理化されておるかということになると、それは問題が違ってくるのでありまするが、少くとも現在の体系と新しい体系とを比べてどちらが合理化されておるか、これが方向として私どもの立場として見るときに、これはたとい一歩でも半歩でも合理化されておるのじゃないかと、こういうふうな感じがいたすのであります。それではわれわれのタッチしておりまする薬治料法、これはこの原案で満足か、決してさようではございません。私どもはこれを修正していただきたい点が二、三あるのであります。  まず第一に、この原案でわれわれが修正をしていただきたいと思いますることは、調剤の技術料、薬品の原価の計算法において、医師の方が調剤された場合と、薬局で薬剤師が調剤した場合に、その薬治料が異なるという点であります。医師の方の調剤は点数表示になっておりまするし、薬剤師の方の調剤は金額表示になっております。しかもその表示の方法だけでなくして、計算の根拠が医師の方は六十円までは四段階刻み、すなわち十五円ごとに平均値をとって平均値に〇・六点を加える。薬剤師は薬品の原価に七円を加える、これは散剤、水剤でありますが、この代表的な散剤、水剤を初めといたしまして、他の剤型においても皆かような差があるのであります。試みに従来保険で扱いました処方せんをこれに当てはめてこれを計算いたしましても、その差のはなはだしいものは倍額以上の差があるのであります。昨年本院でも諸先生方の御苦労を煩わしておきめ願いました、あの四月一日から行われる医薬分業関係法案におきましても、患者はそのみずから好むところによって医師からでも薬剤師からでも調剤を求めよ、すなわち患者の自由によってどちらでも選べ、こういう法律になっておりますにかかわらず、医師の方で調剤してもらったときと薬局で調剤してもらったときとは値段が違う、あちらが高いとかこちらが安いとか、これはこの法律をおきめ願ったときの御意思とは相反する結果を来たすものではないかと私は思うのであります。こういう点におきまして先ほど丸山先生からもお話がございましたように、十五円刻みというような大ざっぱなことでなくして、この刻みを小さくして、そして実際の原価計算を誤差を少くするというようなことによりまして、医師も、それから薬局で薬剤師が調剤しましたときにもその薬治料が同一になるということでなければ、患者の自由によってどちらからでも調剤してもらえという法の精神は私は全うされないのじゃないか、かように考えるのであります。  第二の私ども修正をしていただきたい点は、処方せん料の問題であります。従来政府は国会でも過去においてしばしば処方せん料というものは調剤料に含まれるべきものだ、もしその料金を払うとするならば紙代、インキ代を払うのが当然だ、こういうふうなお考えで御答弁をなさっておったように私どもは速記録を拝見をいたしております。ところが今回のこの原案によりますと、患者が薬局で調剤してもらったときだけ処方せん料が一点つくということになっております。この点について私がせんだっての中央社会医療協議会で厚生省の方に質問をいたしましたところが、これは文書料である、こういうふうに簡単にお答えであったのであります。文書料であるとするならば、医師の診察を受けてその医師の方から調剤をしてもらう患者といえども、除外例以外は一応処方せんを医師は交付し、患者はもらうべきが法の建前であると思うのであります。その文書料を出すのが妥当だとするならば、薬局で調剤したときだけ処方せん料一点をつけるということは、私はこれはおもしろくない結果を来たすものではないかと思うのであります。患者の自由意思によって医薬分業が行われるということが法の期待であります。しかるに薬局へ行って調剤してもらうというときに薬の計算法は違う、処方せん料は一点とられる、こういう患者の直接ふところに響くところの方法をこの新医療費体系でおきめ願うということは、いわゆる患者の任意意思による医薬分業を阻害する一つの要素になりはしないか、こういうことが考えられるのであります。これらの点について修正をしていただきたいというように私どもは強く要望をする次第であります。  第三の点は調剤料が薬剤師の場合七円、医師の場合が〇・六点、この値段が果して妥当であるかどうだかという問題であります。医師方々には医師方々のお考えがございましょうが、私薬剤師として調剤をいたす場合に、七円が妥当であるかどうだか、これはもう申すまでもなくこまかく計算をすれば七円は安きに失する、こういうことを申し上げたいのであります。しかしながらこの医療費体系がすべてバランスでできておる。バランスの関係上あるいは社会保険経済上、お前たちはこれでがまんしろというお話であるならば私ども薬剤師は七円でがまんをいたします。しかしそのバランスを変えるというような機会があるとするならばこの点も一つ御考慮を願いたい。おおよそ薬治料に関する点で私が申し上げたいことは以上の点であります。  総合して申しまして、これらの修正をしていただきたい点はあるのでありまするが、願わくはこのりっぱな新医療費体系編成の御方針を堅持されたという厚生省は、これらの不合理な点を一つ是正され、そうしてりっぱな新医療費体系をお作りになって、四月一日から実施されることを私は熱望してやまない次第でございます。  以上簡単でございますが、私ども関係しておりまする範囲が狭いものでございますから私はこの程度にとどめて他は他の参考人から申し上げることと思います。
  17. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ありがとうございました。  それでは次に日本病院協会会長の神崎三益さんにお願いします。
  18. 神崎三益

    参考人(神崎三益君) 病院協会の神崎でございます。参考人として意見を申し述べる機会をお与えいただきましたことを冒頭お礼を申し上げます。  日本病院協会といたしましては、すでに数次にわたって新医療費体系の精神には賛成であるという声明を出しております。昨日新医療費体系の問題を中心に全国都道府県病院会長並びに理事者の合同会議がございました席上、はなはだ遺憾な声明がなされたのであります。それは趣旨は大体日本医師会歯科医師会等の趣旨と同様で、最後にかような声明をもって結んでおります。「よって吾々は本点数案の強行を絶対に阻止する決意を表明すると共に総医療費の増減等に捉れることなく慎重協議の上真の新医療費体系に基く点数案を樹立すべきものと信ずる。」こういうようなわけで一応今回お示しの案には絶対反対である。ただし合理的な真の新医療費体系というものはぜひみんなで協議して作りたい、こういうことなんでございます。  それから先ほど古畑参考人から冗談まじりで、入院料手術料がふえたので病院の方はふえたろうというようなお話がございましたが、これまたぼつぼつ集まって参りまする資料を見ますると、よいところで減らない。多くは若干ずつ旧点数に比べて減っておるというようなわけで、別段それを建前にとって本案に反対するというのではございませんが、そういう資料が集まっておろということをこの機会に申し上げておきます。  で、大体、共通する部面におきましては、日本医師会の代表者として御両者が申されたので、私は病院の立場から、何がゆえに今回の点数案に反対するかということを若干申し上げてみたいと思います。それは一番われわれの立場で大切な入院料の問題でございますが、これが御承知のように、一般の病気に比べまして結核は二点、東京で申しますとこれは二十五円、それから精神病になりますとまたもう二点下りまして、要するに一般に比べて結核という病名がついた病気入院料が二十五円安いのだと、それから精神病になりますと、五十円安いのだと、こういうことなんでございまして、これはどう考えても納得いかない。これはたびたびこの点はわれわれの方から声明しておるのでございますけれども、結核といいましても療法が変りまして、御承知のように手術が非常にたくさん行われるようになりました。これは一般の盲腸の手術とかそういうものよりも一そう手のかかる手術なのでございます。こういう患者がたくさん入ってきておるということ。それから結核は伝染病でございますので、従業員にはそれぞれ危険手当を与えなければならない。こういう点から一般の看護よりも看護の人件費、あるいはその他の従業員もさようでございますが、人件費がふえる。それから物件の消毒をしなければならない。こういうふうな問題で、これが一般よりも下げられておるというところにわれわれの納得できない点があります。精神病もまたさようでございまして、昔のように長くただ監禁しておくということでなくていろいろ新しい療法が取り入れられまして、精神病のなおる期間も非常に短くなって、それだけに大へん手がかかるというようなことで、その上にふとんは破かれるとか畳をこわされるとかいうようなものが、これがかなり負担になるわけでございます。以上さようなことで、いま少しく入院治療の実態をお考えいただいて、そうして、適正な格差のついた入院料をきめていただきたいと、かようなことが今回の点数案に対する病院協会としての大きな不満の一つでございます。  次に昭和二十七年に医療経済精密調査ということをこまかになさいまして原価計算ができております。今回の厚生大臣医療協議会に対する冒頭のあいさつにもそれらのものを参考にして点数表を作ったのだと、こういうことを言っておいでになるのでございますが、先ほど来、注射の問題とかその他について必ずしもそれがその通りになっていないということでございましたが、私ども多数の従業員を持っておるものからいたしまして、これはまあ個人の先生でも同じでございますが、それらの従業員、医師以下の従業員の人件費のスライドがなされていない。そういうものを元にしてやっておられるということでございます。私が統計で調べてみますると、公務員は昭和二十七年、その医療経済調査がなされたときから今日では五五%ベース・アップしております。一般の勤労者は二九%、しかるに医療保険業者、いわゆる医師、看護婦等々でございますが、これは二四%しかベース・アップされておりません。この二四%という、今私が上げました三者のうちで一番低いということについては、いま少し申し上げたいのでございますが、それはともかくといたしまして、その二四%のペース・アップも今回の原価計算の上で補正されていない。衛生材料、燃料費等々経費に属するものも、あるものは下っておりますが、おおむねは三%から二二%の程度で上っております。それはわずか血ことだからがまんせよとおっしゃれば別でございますが、主要なる要素である人件費においての補正がなされていないということは、これははなはだ不満なんでございまして、今回補正点数をおきめになるにつきましては、一つその人件費をわれわれは最低公務員なみにベース・アップして、その補正の上にいろいろな報酬をおきめいただきたい、その上で技術料のバランスをとっていただきたい、こういうことなのでございます。  つけ加えまして、何がゆえに医療従業員の給与ベースが二四%という、三者比べ合せて最低のところをいっているか。これを考えてみまするのに、なるほどよく新聞その他で、わが国の総医療費は、国民所得と比べて三・五%かあるいは三・六%、もう世界の最高水準にいっている、頭打ちをしているということをよく言われるのでございますが、これは先生方は申し上げないでもおわかりのように、わが国の国民経済力というものは、アメリカの十一分の一、古い統計ではございましたが、私順番を繰ってみると二十三番目に位しておる、経済力においては。ところが国民が受けているところの医療内容というものは、おこがましい言い方でありますが、われわれは世界一流の水準に達していると思う。それをしかも保険が完全に給付するために、非常に豊かな質のいいものを日本の国民は受けておるのでございます。しかもたびたび厚生省が言われますように材料が非常にたくさんかかっている。こういうことをおっしゃいますと、一体そのしわ寄せはどこへくるか、これはもうわれわれ医療従業員の上にしわ寄せがくる。たとえ話で失礼なんでございますが、アメリカ人は、国民二人に一台の自動車を持っておる、日本人は二人で一台の自転車、これがちょうど国民の実力に相当しておる現象でございます。ところが医療においてはパッカード、シボレー、こういう医療を受けておる。これで三・五という世界の一応の水準でとどまっておるということは、要するにしわ寄せがみんな医療従業員の上に来ておるこの現れであります。従ってわれわれも公務員なみに三年間に五五%も上げてやりたいのでありますが、低い単価という縁の下にくぐらなければならないので、十分頭を上げて歩けない、これがこの給与ベースカーブの上に現れておる。  なおその病院状態、これがそれでは理想の線に達しておるかと申しますと、残念ながら医療法の示す線にも達しないという病院の数の方が多いのでございます。そうしてしかも実態は赤字経営をしておる。大体二十七年の調査でもそうでございますが、最近の新潟県立病院十七の原価計算でも約四%の赤字。これはちょうど減価償却費に当るので、このままで推移していきますと、日本の病院は自滅いたします。  また医療従業員は国家公務員よりも三割以上低いベースでしんぼうをさせられておる。これが続くと今度は中で働く人間の自滅が起きる。どうぞさような点を諸公においてお考えいただきまして、われわれの申すことの当であるか不当であるかということの御判断をいただきたいと思いします。
  19. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) どうも御苦労様でございました。次に大阪府医師会理事、桑原康則さんにお願いいたします。
  20. 桑原康則

    参考人(桑原康則君) 桑原でございます。ただいま神崎参考人病院の立場から、病院の数字でいろいろな御説明がございましたが、私はまあ日本の医療施設の約七割を占めると言われるいわゆる入院施設を持たない開業医の数字を基礎にして意見を述べさしていただきたいと思います。  今度の厚生省発表しました新しい点数の不合理な点は、突けば数限りもなくございますが、ただ私一点だけ申し上げたいと思いますのは、今度の新点数医療費ワクをきめてしまって、その中にこれからの医療を一切押し込んでいこうという、しかもこのワクが非常に小さくきめられておる。こういう点について御説明したいと思うのでございますが、昔軍隊ではちょうど靴を兵隊に与えて、合わないと言ったらこの靴に足を合せよ、こういうことを言っておりました。それと同じようなことを言っている。しかも軍隊では足よりも小さい靴はくれなかったのです。ところが今度厚生省は足に合わない小さい靴を放り出して、これをはけと言っておるのが今度の新点数だと私は考えております。今まででもすでに私たちがはかされておった靴は小さかったのであります。大体昭和二十六年に医療費がきまりましたときから今日まで物価もいろいろ変動しておりますが、中には下ったものもございますが、人件費なんか相当上ってきている、そういうものが昔のまま踏襲されてきておる。ところがこの間医療というものはどんどん成長してきておりますので、靴もますます合わなくなって今は豆だらけになっておる、にもかかわらず今度はその靴よりももう一つ小さい寸法の靴を放り出してきておる、こういうことでございます。なぜこんな小さな靴をはけというのかという点で、いろいろ厚生省の資料を調べてみましたところ、その原因はいろいろございますが、一番肝心なことは、患者一人当りの治療費というものが今までよりも今度の新点数は非常に低く見積られておる。今度の医療費は一人当り約五百二、三十円に見積られておるのですが、これを従来と比べますと、もちろんこの一人当りの医療費というものは月によって非常に相違ありますので、どこと比較するかということは標準の取り方でいろいろ違いますが、その前後の月、あるいはその前年度の当月、こういうものと比べてみますと大体今までよりも一割余り低い医療費を一人当りに見積っている。そういう一人当りの少い医療費で総ワクがきめられている、ここに矛盾があるのじゃないか。じゃ、なぜそんな少い医療費が数字的に出て来たか。これまたいろいろ調べますと原因がいろいろ発見できましたが、一番おかしいのは、今まで健康保険医療費をきめますのは、特に政府のやっている健康保険の財政状態とにらみ合せてほぼやられて来たわけでございます。ところが今度新しい点数の一人当り医療費を出すには、政府保険とかこういう一般の健康保険でなくて、国民健康保険医療費というものを突っ込みで出して来ているということであります。御承知のように国民健康保険というのは非常に貧乏でございますし、一般の健康保険よりも内容が非常に思うございます。そうして患者の自腹をきらねばならぬ部分が多いので、日数も少いし、結局一人当りの医療費というのは健康保険に比べてはるかに低いわけでありますが、今まではこの高い健康保険医療費で一人当り医療費というものが基準になっておったのに、今度は低いところの国民健康保険医療費を合せてそれを平均した。従って新点数における一人当りの医療費が非常に低くなっているのでございます。これは統計学的にいってもこんなむちゃな取り方はないということを言われておりますが、とにかく私たちが発見したことは、たしかに今まで一反のきれで着物ができておったはずだ、今度もこの一反で作れと厚生省が投げてよこしたので作ってみるとどうも寸法に合わない、しかし一反はあると厚生省は言っている。よく調べてみたら私たちの着物に合うのは鯨尺ではかった一反で、厚生省の投げてよこしたのはかね尺ではかった一反だった。こういうことになっているのでございます。結局そうなりますと寸法がどうしても足りない、この一反というワクの中で着物を作れと言ったって袖丈だけを合せようとすると身丈が合わない、身丈を合せようとすれば身幅が狭くなる、こういうことでつじつまが合いっこない。従って内容のあそこがいいとかここが悪いということは今は論外のさただ。とにかく反物の寸法を身に合うような寸法にしてもらわなければならない、足に合うような靴をもらわなければならないということで、見積っている国民医療費というもののワクを広げてもらわなければ今度の新点数はいただけませんというのが、大阪における医師会態度であります。  なおもう一つつけ加えたいことは、厚生省がお送りになりましたこの文章の第五項にもありますように、今度の点数実施してもいわゆる注射の回数とか投薬の回数、手術の回数、こういう回数が変らなければ総医療費も変らないし、医師所得にも変りがたいはずだということを言っております。ところがその後段にいきますと、今度の点数実施すると注射の回数とか投薬の回数は減って来るだろうということを書いている。回数が減らなければ所得には変化ないと言いながら、事実はこれを実施して回数を減らすのが目的だ、こういう自己撞着をやっているのであります。  第二には、それではこの新点数実施いたしましたならば、どういう結果が出るかということでございますが、先ほど申し上げましたように、全般的に見ますと、高いところの健康保険と安い国民保険とを合せて二で割ったようなやり方をしておりますので、実施しますと健康保険の方はマイナスになります。しかし国民保険の方は医療費が上ってくるわけでございます。これは厚生省の資料にもはっきりそのように出ております。都市におけるように国民健康保険のほとんどはい所ではすべてが減収になる。しかし国民保険のある農村では増収になるという成績があるいは出るんじゃないかと思います。しかし国民保険の方は増収になると言いましてもこれは数字の上だけでありまして、現在でも国民保険は金がありませんのでこれ以上支出を増加するということはできない。そのためにもしそういうことになりましたら、ますます国民保険医療内容を制限してくるだろうと思われますので、どちらに向いても医師にとって今非常な減収になるだろうと思います。  個人のことを申し上げておそれ入りますが、私は耳鼻科の小さなところをやっておりますが、私自身の十二月の請求点数三百三十四枚でございますが、これに当てはめてみますと一九・二%の収入減に触ります。私の請求は全国の平均よりも一人当りの金額が低いのでございまして、基金の審査委員会でも私の請求は無審査で通してもいいというくらいに、まあ悪く言えばあるいは萎縮診療になっておるのかもしれませんが、そういう状況で私の請求書がそういう結果になります。それはどういうことかと言いますと、一カ月に十万円の収入があったとしますと、このうちから二万円が新点数実施されればなくなるということです。これは収入十万円のうち三万円がもし私の所得だとすれば、減る二万円はこの所得の三万円の中から引きさかれる。必要経費は変りないわけでございますから、所得の中からこの二万円が減るわけで、今まで三万円であった私の所得が一万円になるということになるのでございます。おそらくこういうことをやられましたならば、私自身はこの新点数実施された月からは医業を閉鎖するか、あるいは閉鎖しなければ悪いことをしなければ経営が立っていかないというところに追い込まれます。  大阪府が二十九年に調査いたしました開業医の実態調査、これは経済学者に集計していただいたものでございますが、これも近日発表されると思いますが、その成績によりますと、大阪府下の開業医の七一%は経営がとんとん、どうなりこうなりやっておるか赤字というもの、これが七一%にも及んでおります。おそらくこの七一%の開業医というものは新点数実施によって崩壊してしまう、生き延びようと思えば悪いことをしなければならない。もし開業医というものがそういう状態に追い込まれたならば一体どういうことになるか。これは私たちが医師の現役として働いておる間にこういうことを実施さしては絶対にいけない。どんなことがあってもこれは阻止しよう。そしてこういうことを強制されるくらいなら、そして悪いことをしなければ生きていけないような、経営ができないような状態に陥れるなら保険医をやめるより仕方がないじゃないかというのが、実は私たちの偽わらざる気持なんでございます。  以上私の意見を述べさしていただきへありがとうございました。
  21. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それではただいままでの参考人方々の御意見に対しまして質疑をいたします。
  22. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 私から一、二質問をしたいと思います。ただいま各参考人からいろいろと質問事項についてお話を聞きますと、今度出されました新医療費体系というのを、もしこれを行ったら現在非常な問題になってくる、あるいは医療向上を企図してこしらえたものが全然医療内容向上どころか低下する、あるいは医療関係者までやめてしまわなきゃならぬというようなお話をお聞きしたのでございますが、この医療費体系調査をいたします場合に、質問事項には出ておりませんが、調査をいたします場合に、厚生省からあるいは医師会のどこそれの部分に対して、こういうことを調査するから協力してくれとかいうようなことがこれまでありましたでしょうか、全然なかったでございましょうか。その点をどなたからでも御説明をお聞きしたいと思います。
  23. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 今度の新点数表の作成そのものにつきましては特別な御相談にあずかっておりません。その資料となりました経済調査あるいは頻度調査、ああいう一部分の資料に関しましては、たしか御協力申し上げたことがあるように思います。
  24. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 第二にお聞きしておきたいと思いますことは、新医療費体系なるものが出ましたら、もちろん中央社会保険医療協議会に諮問することは、これはもうきまった事実でございますが、その前に各団体の方面に対しまして、こういう新医療費体系出したいとか、あるいは出す予定であるとかいうような、内容について内相談か何かあったことがございましたでしょうか、あるいは全然そういうことはなかったでございましょうか。
  25. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 内示をしていただきたい、できますということを聞いておりましたので、内示をしていただきたいということの申し入れは、日は覚えておりませんがいたしております。医療協議会に出されます前に二回でございましたか内示を得ております。そのときには作成の順序であるとか、あるいは点数表内容であるとかいうものをお示しを願いまして、それに関する向う様の御意見、どういうわけでこういうものをきめたかということを主に御説明を願ったということが、二回でございましたか三回でございましたかあります。こちらのしからばそれに対してどういうふうにしていただきたいとか、あるいはこれはよろしくないとか、あるいはこの点は大へんけっこうだとかというような意見を申し述べたようなことは一度もございません。
  26. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 もう一つお願いいたしますが、ただいまいろいろと御陣述を聞いたのでは、現在のような新医療費体系ではとうていこれは実施が困難であるというようにもしなりましたら、かりに今後現在のやつはとうていだめであるから、新たに新々医療費体系とでも申しますか、そういうものを作るということになれば、もちろん担当者の方々厚生省が同格の程度でいろいろと調査を始めんければならぬと思うのでございますが、そういう場合に実際に皆様方のお話のような、あるいはお考えのような医療費体系を作るのには、むろんこれには経済方面も勘案いたさねばなりませんが、大体どのくらいの期間があったらそういうようなふうの体系ができるというような、これはむろんすぐここでどれだけということのお示しはなかなかできまいと思いますけれども、ほんのお考えの程度でけっこうでございますが、そういう場合を一つ予想してお答えを願いたいと思います。
  27. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 実はこの医薬分業に関しまする法律は、たしか昭和二十六年で三年間の猶予期間を持ってできておったと思います。その後さらにその当時できました新医療費体系が非常に不完全、不備なものであるというふうに国会でも問題となさいまして、さらに一年三カ月の延期が行われたということでございます。千三百万以上の費用をお使いになりまして、多数の優秀な方々がお作りになりまして、しかも結果といたしまして、こういうものが今日現われた。こういう状況から考えますと、私ども医薬分業が行われます以上は、正しい医療内容に関する正しい方式が与えられますれば、新点数表のできますことは希望しております。しかしこれを作りますには、先ほどつまらないたとえで申し上げましたように、オープンに、まわりをへいで立てまわさんで、へいの中で大工さんと左官屋さんがけんかするようなことをなさらはいで広く知識を集める。そのためには私ども一応、今谷口先生は同格とおっしゃいましたが、何も同格を主張しておるわけではございませんが、私ども意見も聞いていただきたい。あるいは学会というものもわれわれの傘下にございますので、学者の意見も聞いていただきたい。さらにまたこういう医療費ワクということを無視するわけにも参りませんので、経済学者、あるいはこれによって医療を受ける方面の方、そういう各方面の方々の知識を結集いたしまして、非常にりっぱな新医療費体系ができることには御協力申し上げたい。  これは一体いつごろできるか。これは実は私としては見通しつきませんが、今までの厚生省のおやりになりました日数とにらみ合せまして、そう簡単にはできないのではないかとは考えておりますが、衆知を集めましたら、また案外早くできるということもございましょうし、半面衆知を集めるために議がまとまらぬということもまた考えられましょう。どういうふうになりますか、これはやってみなければほんとうの見通しは立たぬということでございます。
  28. 高野一夫

    ○高野一夫君 丸山さんに伺いたいのですが、新医療費体系というのは、お互い十分承知しているつもりなんですが、これは厚生省考え方でなくしてあなたも十分御承知通りに、当時昭和二十五年から六年にかけての厚生省の臨時診療報酬調査会で答申をしたそのものが新医療費体系だと思っております。そのときに、日本医師会の各代表員がこぞってこの新医療費体系の作成に参画されて、全部賛意を表せられた。従って今日私は、新医療費体系の個々の問題についてはいろいろ修正したい希望もあるだろうけれども、先ほど神崎さんから新医療費体系そのものには反対でないというお考えを聞きましたが、新医療費体系考え方には現在あなた方は反対をなさるものではないと思うのでありますが、その点が一点と、それからただいま谷口さんからお話がありましたが、ちょうどまた各五名の医師会関係のお話を伺っておりますというと、結局基本において厚生省側の調査不十分というようなことが言われているように思いますが、ところでこの二十六年に医薬分業関係の三法律が改正になったそのときに前後してできた新医療費体系、これの調査、算定に厚生省がかかろうとして、それにはどうしてもあなた方の協力を得て、ほんとうに医療経済調査をしなければできないと、こういうことで協力を要請したはずです。ところが当時日本医師会は、代表が厚生省においでになって、これは医薬分業実施の準備だから協力することはできないと、こうはっきりした意思表示をされた。それでその当時は、全国の衛生部長がやむを得ず、国立、官立の病院についての調査しかできなかった、こういう事実が厳として存在しておったわけです。そこでその後も厚生省がいろいろな調査をする、私は厚生省の弁護をするわけじゃないけれども、その事実を承知しておりますから伺いたいわけでありますが、また今後そういうことがあってはいかぬと思うから伺いたいのでありますが、こういうふうに調査をしようと思っても、関係団体が、特に三志会の団体が協力をしてくれなければ、ほんとうの調査はむずかしかろうと思うのです。そうして今後また新々体系を作るとか何とかいうお話、これは単なる御意見でありましょうが、いずれにしましても、今度の問題を検討するにしても、その根本の調査不十分とか何とかいうことの前に、やはりさらにこの三志会関係方々が、心から厚生省のそういう調査に協力していただく必要がある。しかも協力していただかなければならないという新体系に対する義務をお感じになっていなければならないはずだと私は思う。これはその三志会が中心になりまして、そのほかの関係医が中心になって調査会で打ち立てた新体系、そこであなた方の代表者は全部賛意を表している。むしろ中枢になってこの作成にお当りになった。従って新体系に沿うようなほんとうのいい点数なり、そろばんをはじくというなら、その調査についてはそう拒否しないで、率先して協力していただきたい。これは実に私は残念に思う。こういう点についてのあなたのお考えを——あなたは当時は役員でなかったかもしれませんが、現在引き継いでそのあとをお受けになっておるわけでありますから、十分御理解があろうと思いますので、以上の二点について御意見を聞かしていただきたい。
  29. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 新しいりっぱな医療費体系を作るという考えであろかどうか、こういう御質問のようでございます。先ほど申し上げましたように、りっぱな新医療費体系というものができますことを、りっぱなビルディングができることに関しましては御協力を申し上げたいということを先ほどから数回申し上げておりますので、御了解願いたいと思います。  第二の点、協力を要請したけれども断わっておるじゃないか、それは分業のための調査であるから断わった、こういう与りに御説明相なりましたが、私が存じておりまする範囲では、お断わりいたしましたのは、そういう理由ではなかったように承わっております。調査いたしまして正確なことをまたさらに申し上げる機会がありましょうが、ただいまその当時の書類を持っておりませんので、往復文書等ははっきりわかりませんが、私が知っております範囲では、その調査の方法等において異議があって、ある一つの条件を出した、医師会が条件を出した、その条件に対して厚生省が、それではいかぬと言ってお断わりになったがゆえに、協力をお断わりした、こういうことで、分業のための調査であろがゆえに断わったという理由には、たしかなっておらないと記憶しております。  それから参画したとおっしゃいますが、臨時何とかいうものに、もちろん入っておりますので、いろいろな意見を申し述べておりますが、基礎資料となりましたものは、その中の昭和三十年の資料に対しては、確実に協力して資料も提供しておりますし、経済調査などにも応じております。その資料は用いられております。  なお、これからも参画したいと思いますが、先ほど数回申し上げましたように、今度の点数表作成に当りましては、鉄壁をめぐらしまして、私どもに全然参画する余地を与えなかった、全然見せなかった、その内容を聞きたいと言っても聞かせなかったという状態、それでは協力の仕方もないという状態であったことを御了承願いたい。
  30. 高野一夫

    ○高野一夫君 ほかの委員の方もたくさんありましょうが、あと一点だけ。
  31. 相馬助治

    ○相馬助治君 議事進行について。
  32. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は発言の許可を得た。
  33. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は議事進行で発言する。
  34. 高野一夫

    ○高野一夫君 委員長にまかせよう。
  35. 相馬助治

    ○相馬助治君 私、議事進行でちょっとお願いしたいと思うのは、こういうことは当りさわりがあるのですけれども一つ、時間も限られておりますから、私は、この参考人の方が述べられたことで、どうしても不審で尋ねなければならないことがあるのを委員長においては先に取り扱っていただきたい。なぜ当りさわりがあるかというのは次の点ですが、御承知のように高野委員は、これは日本薬剤師会の会長です。従ってここでお医者さんと薬剤師さんの間で討論なんか始められたのでは、実際の話、私どもは困ると思います。しかし高野委員はそういう常識にはずれたことはしませんと思いますけれども、その点は委員長において確認をされて、しかも参考人諸君に述べたいことを腹蔵なく述べさせ、そうして述べたことに対して委員が疑念とするところは、限られた時間内において晴らしていただくように、委員長において議事進行上の措置をしていただきたい。
  36. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それぞれのお立場に立たれておる方の良識を信頼して私は発言をさせておる次第でありますから、どうぞ御了解を願います。
  37. 高野一夫

    ○高野一夫君 ただいまのそういう御発言をされると、釈明をしておかなければなりませんが、私は一方においては会長ではあるけれども、私はここでは一人の委員として聞いている。従って先ほど来、各参考人からいろいろな御意見があったので、それにまた谷口委員の御質問もあって、私も不審な点があったから確かめたにすぎないのであります。別に医師会と薬剤師会が討論するということは毛頭ありません。それはあらためて別な席が幾らでもありますから……。
  38. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は御質問する前に、一つ資料の提供がお願いできるかどうか、特に竹中参考人丸山参考人にお願いしたいと思いますが、竹中参考人の公述された中に、ある医療行為をやると、医師技術料が正当に評価されないどころか出血になるところがある、こういうことで一例をあげられました。これはきわめて今度の新点数表では重大なことであって、この委員会においても、こういう点については厚生省質疑がなされておりまするが、具体的なそういう事実を私ども知りたいと思うので、日本歯科医師会並びに日本医師会では、そういう点は出血になるというような資料を文書において委員長に御提出願えるかどうか。いかがでしょうか。
  39. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 御提出申し上げたいと思います。しかしお手元に存在するであろうと私は存じておりまする資料の中に、それは明確になっておるものもある、ただいま私が申し上げましたのは。それは厚生省出しました新医療費体系関係資料抜粋という、昭和三十一年二月の二日付のものが、医療協議会の名前で配付されております。これは多分お手元に上っておると思いますが、行っておりませんでしょうか。
  40. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は見ておりません。
  41. 丸山直友

    参考人丸山直友君) これが私の原価計算において、注射内服薬等について、現実な損害が起るのであるということの数字がここに出ておりますから、それと点数表も多分お手元にあると存じますので、それを照し合せ下さいますと、大体さっき私が申し上げたくらいの範囲ならば、それくらいでおわかりであろうと思いますので、なお御要求ございましたので、なるべく私は皆様方に、私の申し上げましたことの裏づけをいたしますような、よくおわかりいただけるような簡明なものを作りまして差し上げたいと思います。
  42. 相馬助治

    ○相馬助治君 医療審議会に関連のある先生方もおいでになっておるので、私はお尋ねしたいと思います。二点です。  まず、丸山さんに一つお尋ねしたいと思いますことは、何と申しましても、今度の新医療費体系は、社会保険と重大な関連を持っております。丸山さんは、社会保険審議会の委員でいらっしゃいますか。
  43. 丸山直友

    参考人丸山直友君) はい、さようでございます。
  44. 相馬助治

    ○相馬助治君 実はこの点について、社会保険審議会が、医療関係代表者として、先生一人おいでになっておる。従来、薬剤師協会及び歯科医師協会等から、ぜひこの社会保険審議会にも委員出していただきたいということが、厚生省にしばしば要請があった。その後それが実現していないのだがどうなのだという質問を、二月七日の本委員会で私がやりましたところが、小林厚生大臣は、努力しているけれども、まだ実現していない。これは社会保険審議会の末高会長以下委員諸君がそういう必要は認めないというて、け飛ばしているのだ、こういう発言でございますが、しかとさようですか。
  45. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 保険審議会で、そういうものが必要ないというようなことを申しました事実はございません。多分こういうことの誤まり伝えられた言葉ではないかと考えまするのは、実は保険審議会に出ておりますのは、医師会の代表として出ているのではございません。私は公益代表として出ておるのであります。公益代表委員というものの数が、現在法律できまっておりますので、それをただいたずらに、法律を改正せずして委員をふやすことができません。そこで、歯科医師会あるいは薬剤師協会でございますが、やはり保険というものと、非常に密接な関係を持っており、ことにこういうような新医療費体系というものに名を借りた新点数表が出ている現在、法律とやはり関係があるのでありますから、保険審議会にも発言の機会を与えてもらいたいというお申し出があったはずでございます。そのときに末高会長が、それを受けとりましたときに、実は懇談会の形でみんなに諮ったのでございますが、諮ったときの諮り方が、そういう内容を明確にせずに、法律改正が多分私の想像によりますと、法律改正は簡単にできないから、人員をふやすわけにいかないから、何か他の方法でその人たちに発言の機会を与えることができないかということから考えられたものと思います炉、専門委員制度というものがあるから、専門の人をここへ入れて、発言させてはどうであろうかという、ただそれだけの言葉をもって皆さんに、懇談会の形で御相談になったのであります。こういうふうな言葉内容を示されずに御相談になりますと、お前たち委員は知識がないんだから、ほんとうの専門の知識を持った人間を入れてその意見を聞こうではないかというように全員が解釈したのでありますが、そのために委員は、われわれはそんなものの意見を聞く必要はない、そういう人たちに入ってもらって特別に教えを請うほどの必要はないという心持になりまして、その必要なしということの申し合せが懇談会において行われた、こういう事実はございます。多分その事実が誤まり伝えられたのではないかと考えております。私その席上におりましたので、ただいまの会長の発言は——実はその内容を詳しく知っておりますので、内容、つまりその申し込まれた団体名及び申し込まれました真意を皆様によくお話をしまして一つ円満に進めたいと思いますが、その名前を会長が御発表になりませんので、私独断でそれを発表して皆さんに御相談してよろしいかと言ったら、それに及ばずというお話がございましたので、私は遠慮して黙っておった、結果としてそういうことになっております、この事実がございまして、これを誤まり伝えられたのではないかと思います。
  46. 相馬助治

    ○相馬助治君 現行法によれば、この委員会は被保険者代表と事業主代表と公益代表で、先生も診療担当者代表という肩書でこれに入っておるのでないということは私も承知しております。将来を考えましで、社会保険というものが問題にいよいよなってゆくこの際に、先生は法律を改正してもこの委員構成というものを改めて、この際医療担当者であるところの医師歯科医師、薬剤師等は出すべきであるというふうな御意見を現在お持ちでございますかどうか、一つ御指導をいただきたい。
  47. 丸山直友

    参考人丸山直友君) さように私は考えております。
  48. 相馬助治

    ○相馬助治君 わかりました。
  49. 竹中恒夫

    参考人竹中恒夫君) ただいま相馬先生の私に対する御質問でございましたが、技術料等につきましての出血に対するデータがあれば出していただきたいということでございましたが、それは近く提出さしていただきます。  それから社会保険審議会の委員の問題でございまするが、これは私中央医療保険協議会で局長との間に一問一答を行なったのでありますが、もとより私どもは数年前から社会保険審議会に歯科関係委員が一人も出ておらないということは、やはり社会保険の中の一つの大きなウエートを占めておりますのが医療保険でありますので、ぜひ私どもの代表も加えていただきたいということを再三公文書をもって申し入れておったのでありますが、いまだに実現をみなかったのであります。特に今回医療協議会におきましては関係三法の改正案が近く論議されるという機運にございましたので強く要望をいたしまして、局長にも善処を約していただいたのでありまするが、残念ながらただいま丸山参考人がおっしゃったような経過をもちまして、当局からの御相談ということでなくして、会長さんから御相談を委員会に諮られたということで、諮りようが少し徹底を欠いておったということのためにその実現をみなかったのでありまして、今後私どもは法律の改正をしていただくか、あるいはあの法律の中にございまする専門委員を置くことができるとか、あるいは小委員を置くことができるとか書いてございますので、その方の活用等によりましてわれわれにも発言権を与えていただきまして、医療保険の完璧を期する上においての私ども意見を開陳さしてもらうというような機会をお作り下さることをこの際にお願い申し上げたいと思います。  それから谷口先生の御質問医師会の御答弁がございましたが、歯科医師会の方におきましても、例の調査の問題でございますが、前年の調査には日本歯科医師会は協力いたしましたが、今回の調査につきましては、私どもと御当局の間に調査内容につきましての意見の相違を来たしました。と申しますることは、ただ今回の調査は物の対価調査をする、つまり歯科におきます資材とか薬品の使用料とか使用価格とかいうものを、主として経済調査をやられるという御意見であられた。私ども医療行為群の各頻度を同時に調べまして、私ども自身でも持っておりますが、今度は権威のある官民合同協力して医療行為群の頻度を調べたいということで一応よかろうということで協力態勢をしいたのでありますが、予算その他の関係と、いま一つ厚生省予算で厚生省でやるものに対して、日本歯科医師会が一緒にやって一枚の紙、一つの冊子のうちで官民の調査資料が載るということは困ると、これは官僚的なお考え方があったために話がつきませんでしたので、残念ながら今回の調査には、前回は協力いたしましたが、今回はできませんでした。従いましてその調査内容も私どもといたしましてはどうしても承認のできないような調査内容でございますことが一つと、調査客体が、私どもが協力いたしませなんだ関係からいたしまして、あとで客体になった方々から聞いたのでございまするが、例をとりますと、私兵庫県の会長をいたしておりますが、兵庫県の会員の中で七十何才でもう歯科医業をやっておらないというような人、あるいはまたいま一人の人は病気でもう一年もやめておるというような人がいわゆる帳簿上で調査客体を選ばれましたので、当っておったというようなことがございまして、調査内容そのものの権威に対しましては私どもは現在疑点を持っておるということをこの機会に申し上げておきたいと、かように存ずるのであります。  それからいま一つ、この原案の作成に対して何らか相談があったかということでございましたが、私最初陳述いたしましたように、十月二十六日にぜひ相談してもらいたいということを申し入れたのでございますが、残念ながら内示もなければ御相談もございません。先ほど申し上げましたような経過をとりまして、原案ができ上りましてからこれが明示されたのでございまするからして、日本歯科医師会の立場におきまするところの説明をさしていただく次第であります。
  50. 相馬助治

    ○相馬助治君 医療協議会で議論されたという内容について、この国会で審議上非常に必要なことがあるのでお尋ねしておきますから、丸山先生でも竹中先生でもその他関係のある先生どなたかお答えを願いたいと思います。  先ほど竹中さんの公述された中に、厚生省が、関係法規との関連を考えてやってほしいという質問に対して、十分にらみ合せてやってほしいということを委員の皆さんに要求されたということですが、この新医療費体系は近く改正をうわさされておる健康保険法その他と重要な関連のあることは、これは何人も認るところです。そこでこの医療協議会には厚生省としては素案のような形で、こういうふうに改正するのだというような健保改正案というようなものを素材として出しておるのですか、それともそういうことを出さずに、まあ一瀉千里に、伝えられるように二月二十日までには何とか答申してくれというふうに強引に出てきておるのですか。私どもこの立法府にある者としては、関係法規の整備なしには新医療費体系をうまく実施することは必ず困難でないかということを指摘しておる際でございますのも、一つ医療協議会の審議の過程並びに厚生省態度、あなたたちの見通し、これらについて簡単に承わっておきたいと思います。
  51. 山下義信

    山下義信君 関連してお尋ねしたいと思います。私は少し相馬委員とは質疑の観点が違うのですが、御注文しておきますが、答弁一つ簡潔に願いたい。竹中さんが先ほどお述べになりました中に、今相馬委員の尋ねられたように、健康保険改正を先議しなければ新医療費体系のきめようがないという必然的な論理はどういうところにあるのでしょうか。関係があるということはわかりますが、先議しなければならぬという理由は。健康保険改正が先にきまったならば新医療費体系点数のきめ方がそれでできるのだという必然的な関係一つ簡単にお答えを願いたいと思います。
  52. 竹中恒夫

    参考人竹中恒夫君) 今山下先生の御質問でございますが、それは私どもといたしましては、一部負担の問題に関連いたしまして、初診料の問題でございます。初診料の、現行によりますると、初診料全額負担となっておりまするが、この初診料というものは、国会の方で全額負担というような線でおきめになられまするのやら、あるいはいろいろなおさめようがあられると思いますので、そのきめ方によりまして、初診料でも私どもといたしましては決定するのにちゅうちょするわけです。どういうような一部負担の率でもってやるのかということがわからなければ、初診料に対する意見を述べにくいというような気持がございますので、いわゆる関係法規の決定によらなければやりにくい、特に被保険者の医療費の負担の増減がないということが一方新医療費体系では前提でございますが、一部負担金のあり方によって医療費の増減を来たさないようにするとするならば、その点数をおのずから操作をしなければ医療費の変更があるわけです。そういう意味合いで法律を先におきめ願ってからやりたい、こう申し上げたわけです。
  53. 山下義信

    山下義信君 私も関係がないとは思いません。その点は当委員会でも議論したのでありますが、しかし技術料の評価ということと、一部負担というもののあり方ということで技術料の評価が変なければならぬという理由はどこにあるのでしょうか。点数一つ対価ですね。それが患者の負担の仕方によって高くも評価し、低くも評価しなくちゃならぬという必然的理由というものは私は割合に乏しいのじゃないかと思う。この一部負担の方がたえられるか、たえられないかということは被保険者の利害の問題でありますが、点数表というものは、つまり言いかえれば物であろうと技術であろうと、その対価のきめ方はこれは被保険者の一部にそれをどういうふうに負担させるかさせないかは別にして、適正な評価としては独立して考えるべきであって、一部負担の方が先にきまらなければ点数評価もきまりにくいということの必然的論理はちょっと乏しいように思いますが、どうでしょう。
  54. 竹中恒夫

    参考人竹中恒夫君) その点、私の答弁が足らなかったのかもしれませんが、新医療体系が総医療費の著しい変革を来たさないということが前提でございます。従いまして、先生のおっしゃった医療事業そのものだけの範囲内でわれわれが審議をするならばお説の通りでありますが、われわれの任務はその新医療費体系というものが、果して医療担当者にも被保険者にもこの原案で増減がないかということもあわせて審議しなければなりません。そういたしますと、その点数のきめ方いかんによりまして、すなわち一部負担のきめ方と点数のきめ方というものは不可分のものでありまして、一部負担のきめ方いかんによって、基金から支払います総点数には変化ございませんが、国民の総医療費、被保険者の医療費そのものには変化がある。こういう意味合いで、どうしても私は一部負担のあり方が決定してからでないと正しい意味の新医療体系の審議はできない、かように私は存じているのであります。  それから相馬先生の御質問ございました、関係法規を先にきめていただくということに対する当局の態度ですが……、どうおっしゃったのでしょうか。
  55. 相馬助治

    ○相馬助治君 健保改正案その他と今度の新医療費体系関係がある、その通りです。そこでこれとの関連はどうなっているのだというあなたたちの質問に対して、厚生省がこれらをにらみ合せてやってくれ、こういう意味のことを言ったのでしょう。にらみ合せるものがなくちゃならぬ。それで健保改正案とか何とか、われわれ国会はまだ見せられていない。しかしあなた方の方にはこういう素案があるのだということを厚生省が示されたのかということです。
  56. 竹中恒夫

    参考人竹中恒夫君) それは、こうでございます。十月二十七日の第一回のときに私はそれを質問いたしましたので、あの当時はまだ社会保険審議会でも、あるいは社会保障制度審議会でも関係法規改正原案なり、あるいは御相談なりしておられないときでございますので、全然ございませんでした。従いまして、そのときの御答弁では、いずれ近いうちに政府原案となるべきものがこの両審議会にかけられることであろうから、それと並行してやってにらみ合せながらやっていただきたいということで、資料はございませんでした。その後私どもはいまだに資料はいただいておりませんが、新聞等によります発表によって、私ども一つの想像と申しますか、考え方をもって審議いたしているようねわけでございます。
  57. 山下義信

    山下義信君 私三点ほど伺いたいと思うのでありますが、神崎先生に伺いたいのですが、病院の格差の問題でございますね、今政府原案の不合理なことをお示し下さったので、よくわかったのでございますが、この格差をできるだけ縮めるようにという御意見があったのでありますが、やはり各科別の病院の格差は小さくてもある方がよろしゅうございますか、それが一つであります。やはり今の格差が二点だ四点だというようなのは開き過ぎる、もっとその差が縮まればいいのだというようなお考えでしょうか、差がないという方がいいというんですか、それが一つ。それからもう一つは、各科別の病院でなしに、病院の、大病院といいますか、小病院といいますか、設備のよい病院といいますか、悪い病院といいますか、これはたとえば一部でありますから当らんかもしれませんが、まありっぱなホテルへ泊るのと木賃ホテルでは宿賃も違いますので、病院の設備によって、優劣によって差をつけるのが合理的のような気もします。これは政府原案にはございませんが、そういう点については、先生はどういう御意見でございましょうか、できるとお考えにねりましょうか、それは不可能丁とお考えになりましょうか。
  58. 神崎三益

    参考人(神崎三益君) お答えいたします。山下先生のお尋ねでございますが、絶対的のむのはできないと、こう申し上げるよりほかはないと思います。しかしわれわれは努力によりましてある程度合理的な格差は設けられるのではないか、かように考えております。現に病院の格ずけ検査というのを厚生省ではなさっておいでになります、御承知のごとく。これも一種の格差でございますが、しかしながらこれは必ずしも病院の真の価値をあれできめられてはまことに迷惑するのでございまして、そこでこれは提案は、意見は申しましたが、それを組み立てますにつきましては、相当慎重は考慮を必要とすると思います。で、なお機会でございますから一言つけ加えさせていただきますのは、ただいまの格ずけ検査というのは、これは衛生部の所管で、いわゆる官の手によって一方的になされておる。アメリカでは、アメリカ病院協会というものがこれが独自に自発的に病院の格ずけをしておると、こういう話もございますので、今後民主的に運営して行く上につきましては、私は官の手による一方的な格ずけというようなものには反対でございます。
  59. 山下義信

    山下義信君 もう一つは谷岡さんに伺うのでありますが、これは非常に重大な点で、ことに関係団体の代表の御意見としては傾聽しなくちゃならぬと思いますが、処方せん料ですね、処方せん料はもし点数をつけるとするならば、薬局に出る処方せんであろうと診療所内で使う処方せんであろうと、すべて出すのがよろしゅうございますか、あるいは無料であるのがよろしゅうございましょうか。私は無料というのはどうしても納得しがたいのでありますが、谷岡さんは無料を御主張なさいますか。今その技術やそういう点の評価を適正にやろうということになれば、私ども常識として処方せん料を無視するなんということは、ほとんど一つの紙きれ代のような、あるいは文書料のようなへ手続料のような考え方というものは、どうもしろうととしても納得しがたいので、相当評価いたしたいような気がするのでありますが、これは谷岡さんのお考えではどうでございましょうか。
  60. 谷岡忠二

    参考人(谷岡忠二君) 今のお話でございまするが、私どもは処方ぜん料というものは診察料の中に加わるべきものである、評価するといたしましても、それはその評価は診察行為の最終段階報酬として診察料の中に加わるものでは意いかと、かように考えているわけでございます。従って診察料と別個に独立して処方せん料を患者が支払うということに対しては私どもは賛否を表しがたい、かように考えております。もし厚生省が文書料として支払うのが妥当であるとするならば、薬局へ行く者だけでなくして、医者の家で調剤にする者に対してもそれは支払うべきではないか、そこに矛盾がありはしないか、こういう考え方でございます。
  61. 山下義信

    山下義信君 お尋ねだけするのでありますから議論はいたしませんが、少し見解は私どもと異にするかもしれませんが、処方せんは外に出て、これが患者の手に渡って何回でもそれが行使せられて他に転々とし、あるいは公衆にそれを見せることもでき、外に出た場合のいろいろ物の価値というものと、診療所内でただ自分の家の中をぐるぐる回るときの処方せんの価値というものとは、私はまたいろいろ性格の異なる点もあると思いますから、議論はいたしません。これは大いに私どもも研究さしていただきます。  それから最後丸山先生に私は伺いたいのでありますが、こういう公衆の席で伺いますことはどうかと思いますが、むしろいいのじょやないかと思うのでありますが、先生は本日は医師会の代表というお立場でお出ましいただいたのでありますので、そういう点で伺うのでありますが、私はこのたびの新医療費体系並びに関連する諸問題につきまして、全国の保険医の方々が非常に反対をされまして激高しておいでになりまするこの諸情勢を非常に憂慮いたすものでございます。ことに一日休診、あるいは保険医総辞退というがごとき事態につきましては、国民も非常に不安を感じまするし、心配もいたしておりまするし、好ましからぬごとであると私どもは憂慮いたしております。政府の当局にもかかる事態の発生するまでに努力して手を打つべきではないかということの苦言も呈しておるのでありまするが、ともかくも私どもはこういう事態の発生いたしませんように、できるだけこの新医療費体系を中心としての問題も円満に解決することを望んで、期待しておるのでございます。日本医師会代表の丸山先生とされましては、何かいいお考え、解決ねさるにつきましていいお考え、何かの御方針が、そういう非常な事態に立ち至らないように、そういう不祥事態の発生しないように御努力の願えるような御方針はないものであろうかということが一点であります。  また第二点といたしましては、厚生省が、政府が御相談申し上げなかったということは、私はこれは徹底的に悪いと思う。しかしながら事ここに至りました以上は、過去を追及してみてもいたし方ございませんので、でき得れば私はこの際何とか医師会の方からも、こういう案ではどうだ、われわれの方ではこう考えておるんだがという、具体的に、何と申しますか、代案といいますか、医師会の御主張なさる具体的な代案を一つ示しを下すって、政府案と医師会の案というものを二つお出し下すっで、私どもも比較検討して拝見をいたし、国民もまたいずれをとるか、いずれがいいかという可否の判断のできまするような、医師会の方でも積極的な何か具体案でもお示しにはりまして、この事態を打開をして、国民の不安を解消して、この重大な問題に対処していただきたいような気がするのでありまするが、そういうおぼしめしはございませんでしょうか、いかがでございましょうかという点が一点であります。
  62. 丸山直友

    参考人丸山直友君) 山下先生のおっしゃいました通り、実はこの保険医の反対が非常に熾烈でございまして、種々な思わしくないことがあったというわさも私どもの耳にもしばしば入って参ります。これは日本医師会として口承国民に不安を与えるからとか、あるいは実際診療を受ける国民方々に何らかの御不安を与えるということがこんなことで起っては相ならぬと私は考えております。従いまして私ども日本医師会といたしましては、この反対のためのそういう具体的の世間をお騒がせするようなものをやりたい、あるいはやろうというようなことは全然考えておりません。ただここでよく御承知おき願いたいのは、ただいまの医師会というものの組織が、占領後戦前の状態がぶちこわされまして、民主的という名のもとに個々おのおの独立した医師会という形で発足しろという強い命令がございまして、自由加入の制度で日本医師会は各都道府県医師会を自分たちの下部組織として指揮する権限は与えられておらないのであります。従いまして、この人たちの動きに対してけしからぬとか、やめろとかいうふうなことを言う権限がない、これが一つの隘路でございます。ただしかし私ども日本医師会として責任を感じますので、実際しかしそういう問題がたとえ権限炉ないといえどもそういうことが起っては困りますので、一番問題になりました大阪方面の一日休診ということが私どもに最も強く響きましたので、これは大へんだと考えまして、実は調査をいたしました。しかるに大阪の方の医師会のおやりになりましたことは、非常に急な病人に対してはある特定の病院あるいは診療所を指定してそこでやろう、それを運ぶには自動車の用意もしょう、その連絡も十分にとろう、そうしてこのやり方については公安委員会に御相談になった、しかもこれが問題に触りましたときには府の議会において、府議会から質問が出たのでありますが、今の大阪の医師会のやり方は実際上の被害を国民に与えない、また公安上の不安も起らないということを警察本部長と衛生部長が議会において答弁をしたということを聞きまして、実はそれだけの手当が行われておって、そうして一日休診ということがあるならば、これもやむを得ないかもしれないというふうに、一応国民が直接の被害がなかったという点において私どもは了承して安心したと、こういう状態でございます。ところがそんなふうなものならば、何も一日休診なんていうことをやらなくてもいいじゃないか、実際国民の人たちが御迷惑を受けないような形でやる一日休診というものは、むしろかえってそんなことはやらない方がいいのじゃないか、児戯に類するのじゃないかという批判もあった、しかし私どもは、これに反対をしておりまするいろいろな運動というものは、今までのやり方ではどなたもあまり医師会の反対というものには耳を傾けられなかったことが多かった、ちょうど山下先生から今この席でそれを問題として取り上げていただいたということは、医師会の反対というものが地方にをいて相当熾烈に行われておるということの私は一つの証左を得たと考えておりまして、その意味においてあるいは一日休診ということも意義があったのじゃないかという心持で実は眺めておる次第でございます。もちろん今後これが社会の不安をもたらすようなことが行われましたならば、われわれは十分注意いたしまして自粛自戒いたさせるつもりでおります。  第二の代案を出さないか、これを比較したい、こういうことでございますが、ごもっともなお話であります。厚生省でお作りになりましたものはあれだけの努力とあれだけの費用をお使いになったことは御承知通りであります。あれに対抗し得るようなものはなかなかわれわれの微力としてはむずかしいということはもちろんでございますが、私どもの前任者時代から医療費はかくあるべしという一応の理念のもとに作りましたものは持っております。これは臨時医療協議会でございますか、あの席上にはこれは確かに出してあるはずでございます。しかしこれは、私が先ほど申し上げました医療と申しますものは、純医学的要請と社会医学的要請がございます。あれは純医学的要請によって作りましたものでございまして、社会医学的の要請が入っておりません。従ってその医療費の総ワクに関する経済上の考慮が払われておりません。こういうものをお示しいたしまして代案でございますといったところで、現在赤字のこの健康保険にそのままにこれが問題として、一つの代案としてお取り上げを願えるという自信が私は持てませんので、それで今回は私どもは——私どもはまだ新任早々でございまして——それを作るひまはございませんが、前任者時代に作りましたものを臨時医療保険審議会でございますか、その方でごらんを願ってよく御検討を願うことにしまして、皆様の前にお目にかけるまでにはなっておりません。そこまでの自信は持っておりませんから、そういう次第でございます。もちろん私の先ほど申し上げましたような線で御協力を申し上げたいと思っておりますので、今後そういう方面に政府が受け入れていただけるならば、その御相談にあずかって、私ども意見は十分に述べたい、かように考えております。
  63. 榊原亨

    ○榊原亨君 私ただ一点だけ竹中先生に承わらしていただきたいと思いますが、日本医師会とされましては、政府が今回提案いたしましたいわゆる新医療費体系、まあ点数表でありますが、それには御反対である、しかしながら新医療費体系というものの、物と技術を分ける点においては賛成であるというようなお話がございましたが、ただ一点私は承わりたいのは、それにからみまして医療費ワクを今回政府がやりましたように一定といたしまして、物と技術を分ける新医療費体系を作るということについは、どういうお考えであるかということだけを承わらしていただきます。先ほど竹中委員歯科医師会も同様であって、この物と技術を分けるということと、大体ワクを一定にするということについては、歯科医師会の方も御賛成だというふうに、私は聞きとりにくかったのでございますので、作業の中におきましてワクを一定にするということについては、日本歯科医師会は御反対であるか、御賛成であるかという一点だけを簡単に一言葉でよろしゅうございますが、お答えを願いたいと思います。
  64. 竹中恒夫

    参考人竹中恒夫君) お答えいたしますが、一言葉とおっしゃられると困るのでありますが、物と技術を分けるのでございますからして、ワク内ではこれはできないと思います。
  65. 高野一夫

    ○高野一夫君 桑原さんにちょっと一点伺いたいのですが、先ほど来いろいろなこの新体系に基く点数算定のことについてお話があったときに、小さいワクに押し込められているというお話でございましたが、これについてのお考えをもう少しちょっと具体的に聞かしていただきたい。
  66. 相馬助治

    ○相馬助治君 桑原さんに私は一点関連して、追加して、桑原さんは特に耳鼻科の先生でいらっしゃるので、私この点だけ具体的に聞きたい。今度の点数表では目、鼻、耳がゼロになっていますね、処置料が。あれは耳鼻科の先生方からどういうふうに考えられるかということを高野委員質問に付加してお答え願いたい。
  67. 桑原康則

    参考人(桑原康則君) お答えいたします。総医療費ワクが狭くされておるというととは、先ほど申し上げましたように今までの健康保険の患者一人当りの医療費の計算というようなものは、結果的には政府健康保険の財政とにらみ合わして作られておった。この政府健康保険の患者一人当りの治療費、特にこれは外来患者の場合ですが、これは国民健康保険に比べると非常に高かったわけなんです。ところが今度これも結果的な逆算になるわけですが、今度の総医療費というものは、その国民健康保険政府健康保険の患者の医療費平均した額で総額が割り出されておる、今までは国民健康保険政府医療費に準じてやっておったものが、今度その政府のものに準ぜずに国民保険政府との平均の額で出されてきたというところにあるわけなんでございます。非常に統計的にへんだと思うのですが、国民保険の一人当りの治療費というものは、これは非常に府県によっても違いますし、また非常にときどきで変動するもので、こういうものを算定の基礎に入れるということ自体が非常におかしいわけでございます。そういう関係で今度の医療費は数字で申し上げますと、約五百二、三十円というふうな少い一人当りの医療費ワクがきめられておるという結果になっておるわけでございます。  相馬先生の御質問については、今度はそういう処置料にかわって再診料というようなものが三点設けられたということになっております。処置というのは、外来では治療の基本的なものになっております、これが削除されるということはどうもどう考えてもおかしい。しかも今までの平均処置料よりもこの三点というものが非常に低いという点に問題がございます。
  68. 竹中勝男

    竹中勝男君 桑原さんに先ほどの関連の質問になりますけれども、あなたがここに代表の一人として参考人に来ていただいておる肩書の下に最初ども委員会で見ましたのは、実力行使という代表になっておられるわけであります。実力行使の代表にお尋ねしたいのですが、先ほど医師会会長はまあ中央においてはそういう統制力はないのだ、各府県の医師会というものが独自の行動として起される場合には、中央においてそれを停止さすとか、あるいは奨励するとかいうことはないのだという御返事でありましたが、まあなるたけ穏便にいくことを望んでおるのだという御返事でしたが、国民はやはり一日休診だとか、保険医総辞退という声に対しては相当敏感にこれを聞いておるわけでありますが、従ってまあこの委員会としてもそれを重大な問題の一つとして取り上げておるわけでありますが、あなたの御陳述によりますと、大阪府では七一%が現在ほとんど医師として生計を営む上において、すなわち医療の経営においてとんとんのところである。非常に経営が困難である。従って一二%コンマ二の減収になるという医療費体系実施されるならば、こういう七一%の開業医の将来はきわめて不安である。やむを得ないからしてこういう医療費の、新医療費体系に対する抵抗の方法としてのことが考えられてくるわけだという御陳述でしたが、この点については変らない態度を大阪府の医師会ではとっていかれますか。
  69. 桑原康則

    参考人(桑原康則君) 実力行使ということは過日の一日休診のことを言われたのだろうと思いますが、実は医師が一日休診をするということは、私たちとしてもほめた話ではございませんし、またあんなことはやりたいことではないのでございます。しかし大阪の医師がなぜああいうふうな挙に出なければならなかったかという、そこの原因をもう一回よく御究明をお願いいたしたいと思うのでございます。たとえばあの新点数発表されましたときに、新聞は値上り分だけを大々的に取り上げました。初診料の五十円が百五十円になった。今までやらなかった再診料というものを七十五円ずつやるのだというふうな報道ばかりされまして、患者は皆これでお医者さんは楽になりますな、全部が皆こういうことを言われます。ところが医師は決してそういう状態ではない。これを幾ら説明しても新聞にも書いてくれない。だれも耳をかしてくれない。国民に訴えようと思っていろいろな機会を作っても一向お集まり願えない、こういう状況でございました。ところが実情は先ほど申し上げましたように、医療施設が破壊するだけじゃなくて、開業医がもう十分に責任のある治療ができない状態に落ち込む、これを改革するにはどうしたらいいかということになりますと、どうもうまい手が見つからない。で、私たち医師会幹部としましては極力こういう声を押えてきたのでございますが、じゃどうしたらこれが打開できるかということを会員に詰問されると私たちにも適当な手段がなかったわけでございます。それでまあああいうふうにきめまして、これは一日休診が目的じゃなくて、一日休診するとともに、この機会国民の皆さんに十分この新点数及び今度の法の改正について私たちが考えておるところを理解していただくということ、そういう二つのねらいでやったわけなんでございます。これには賛否こもごもございました。相当非難される方もございましたが、非難される方はされる方なりにこの問題に関心を持っていただけたわけでございまして、そういう結果府会でもこの問題を取り上げていただきましたり、また私たちが接触いたしました国会の先生方もこれを取り上げていただきまして十分私たちの言うことを聞いていただけるようになりました。そういう結果から見ますと、あれは私たちは局面を打開するためにはやむを得なかった手段ではなかったかと現在考えております。ただこれをなお続けるかどうかというようなことの御質問だと思うのでございますが、一日休診というものは、私たちはあれによって国民皆様に取り上げていただいたということで効果はありましたのですぐこれを継続するというような考えはございませんが、問題はまだ少しも解決されておりませんのでこの経過に従っては、またどういうことになるかということについては今決定的な意見は申し上げかねるのでございますが、ただ私はお願いいたしたいのは、どうか、医師がこういう企てをしなくても、こういう激しい運動をしなくても私たちが責任のある治療ができるような状態におれるように国会の先生方にも十分御尽力をお願いしたい。これだけが偽わらざる現在の気持でございます。
  70. 森田義衞

    ○森田義衞君 ちょっと桑原さんにお尋ねしたいのですが、先ほど例でございましょうけれども、何といいますか、私経済的にもごらんになりまして収入が十万円あると、そのうちで三万円が手取りとすれば今度の点数によって二万円減れば、一万円じゃ食っていけない、そうなればとてもやっていけない、そうすればやむを得ず医者で悪いことをするやつが出てくる。かりにこの医者に悪いことをされたのじゃたまったものじゃないと、実はもしこのワクできめられてしまったら悪いことをする方法にはどんな方法があるか。しろうとなものですからしろうとらしい質問をするのですが、それで私心配するのですが、たとえばこの患者ならこの薬はどうしても使わなければならぬのだが、この点数ではこの薬は使えない、やむを得ない、安い薬を使って完全治療はできない。これじゃ幾ら医者にかかっても役に立たないのじゃないか。これらも一つの悪い例になるのじゃないかといった心配もありますので、ワクにはめられたらどんな結果になるか、患者の立場から心配しましてお尋ねするのであります。
  71. 桑原康則

    参考人(桑原康則君) 悪いことをするといいますが、医師もやはりこれは一種の商売といったら語弊がありますが、一つの人気稼業のようなものでございまして、患者が来る以上これを助けなければ、なおさなければこれは医業として成立しないわけです。だからこの医療内容を落して病人が悪くなるとか、あるいはこれがよそのお医者さんに行ったよりもおれのところへ来ると長くかかると、こういう結果が生じましたならばこれは医師にとって致命的なものです。だから何を犠牲にしましても患者さんの疾病をなおすということは最後最後までがんばるだろうと思います。それが医師の生命だろうと考えております。ただそのほかの面で、ただそれをなおすためにはやはり経営も十分やっていかなければならぬ、設備も要るとなりますと、そういう悪いことといいますと、何といいますか、つじつまを合わせる方法は別の手段に求めざるを得なくなるのじゃないか。現在いろいろ、厚生省の方から医師には水増しがあるとか、つけ増しがあるとかかなり言われております。確かに一部分にはございますが局部的なものでございます。しかしこういう点数ができればそういうことが多くなるだろうということは想像できるわけであります。これはまあちょうど配給がなければ法律違反でもやみ買いをしなければならぬというのと同じことじゃないかと思います。どうかそういうところへ陥れないようにお願いしたいと思うのであります。
  72. 森田義衞

    ○森田義衞君 わかりました。
  73. 木村守江

    委員外議員(木村守江君) いろいろお尋ねしたいのですが、先ほど議事進行の発言によって、きょうの話の内容だけを聞くというような話でありましたので、特に委員外発言でありますので、簡単に一点だけお伺いいたしたいと思います。谷岡さんにお尋ねしますが、先ほど新医療費体系というものは、今までより一歩前進して向上した合理化されたものだというような話を聞きましたが、そのすぐ次から、しかしどうも満足はできない、賛成できないというような、ちょっと聞きますと、矛盾したようなふうに聞かれる点があるのですが、御承知のように新医療費体系の理想というものは、やはり医療向上によって社会保険実施の前進した姿を作るというのがその理念でなければならないと思うのです。そうした点から考えて、医療向上によって社会保険実施の前進した姿を作り得るかどうか、新医療費体系によって。そういうようなことから考えますと、この点について果してあなたが言われるように一歩前進したと、いわゆる向上した姿と言えるかどうか。ややもすれば、今回厚生省が提出した新医療費体系というものは、あるいは予算のワク内において今までの割り振りを変えたというような点において保険財政の赤字を解消するというような意味を含み、または医薬分業実施一つの手段として考えなければいけないというような点から、この新医療費体系をこういうふうにつじつまを合わして、世間の非常な反対があったにもかかわらず、出さざるを得なくなったというようなこと、谷岡さんは医薬分業実施の点については一歩前進した向上した姿だというようにお考えになって、いわゆる新医療費体系が一歩前進した向上した姿と言われるのであるかどうか、ちょとつじつまが合わないところがありますものですからお伺いいたします。
  74. 谷岡忠二

    参考人(谷岡忠二君) お答えをいたします。私が先ほど申し上げたのは、前提としてどこまでも現行の医療費の計算法、すなわち現行の体系との比較の問題でありまして、この今回の新医療費体系が現行の体系と比較してみて一歩でも半歩でも前進しておるということを申し上げたのでございまして、もちろん今回の新医療費体系が全面的にわれわれが理想としておる体系であるということを申し上げたのではないのでございます。従ってそこに今回の原案についてもわれわれは修正していただきたい点があるというその点を指摘したわけであります。医薬分業との関連性につきまして、ただ単にこの新医療費体系医薬分業との関連性だけで一歩でも半歩でも前進したというような意味とはおのずから意味が違ってくる、かように考えます。
  75. 木村守江

    委員外議員(木村守江君) まことにすみませんが、新医療費体系というものは、現在の医療費体系と比較して向上した、一歩でも前進したものだというようなことでありますが、いろいろなことを議論しておるひまはありませんので、私は大体において現在の医療費よりも比較して向上しておるというよう意考え方、これは意見の相違であるかもしれませんが、そこが問題だと思うのです。これは大体において、今医療担当者の方々が言われたように、大体においては向上していないのじゃないかと言われるときに、先生が向上しておるというのはどういうところを一体……。
  76. 谷岡忠二

    参考人(谷岡忠二君) 私は例として薬治料の点を取り上げてみましても、現在の計算法と今回の計算法におきましても、その計算法にはわれわれ不満があるのではありまするが、それと比べましても、患者の負担は減っていくんじゃないか、かように考えております。
  77. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それではただいままでの参考人方々に対する意見の聴取及び質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  じゃ、この機会参考人の皆さんに申し上げます。非常に皆様方には長時間にわたりまして貴重な御意見を開陳して下さいましてありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  では、午前中の調査はこの程度にいたしたいと思います。  休憩をいたしたいと思います。    午後一時十七分休憩    ————・————    午後二時十八分開会
  79. 山下義信

    理事山下義信君) 休憩前に引き続き新医療費体系に関する件につきまして参考人の御意見を聴取することにいたしまして委員会を再開いたします。  この機会委員会を代表いたしまして参考人方々にごあいさつを申し上げます。  参考人方々におかせられましては御多忙のところ特に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。新医療費体系の制定は厚生行政、特に医療行政に関する重要な問題でございまして、国民保健の向上に直接関係を有します各種の要素を含んでおるのでありまして、当委員会におきましては厚生省当局から説明を聴取いたしますとともに、本問題に関係を有せられます各位の御意見を拝聴いたしまして、調査上の参考に資したいと存じておる次第でございます。何とぞ忌憚のない御意見を御発表下さるようお願い申し上げます。  次に御意見を御発表いただきます事項につきましてはさきに文書で御通知いたしてございますが、その項目にとらわれることなく率直にお話を願いますれば幸いと存じます。ただ時間の関係上お一人当り十五分程度で御発表をお願いいたしまして、後刻委員からの質疑がございますから、これに対ましてお答えを願いたいと存じます。  なお委員方々にお諮りいたしますが、時間の関係もございますので、午前と同様に参考人意見の御発表が全部終りましてから御質疑を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより順次御発言を願います。岡山県医師会加賀呉一さん。
  81. 加賀呉一

    参考人(加賀呉一君) 冒頭に当りまして、権威ある国会に本日お召しいただきまして、われわれに発言の機会を与えられましたことにつきまして、深甚な謝意を表します。  私は今回の新医療費問題その他につきまして、その基本的な問題あるいは具体的に内容に関する問題、その他につきまして多くの意見を持っておるのでございますが、その前に、今回の厚生省の提示されました新医療費体系なるものの算定されました、その昭和三十年三月という医療実績に基く算定でございますが、その三十年三月の医療実績そのものに大いなる矛盾ありということにつきまして一言お聞きとりいただきたいと思うのであります。このことを簡単におわかりいただくために、そこに一枚、表を差し出してありますので、その表について一つごらんいただきたいと思います。一番下の五番目の欄がございますが、表をちょっとごらんいただきます。これは入院入院外、すなわち外来と二つに分けまして一人一カ月分の医療費平均出したのでございます。左側が入院でございまして、右側が外来、すなわち入院外でございます。で、一番上の数字は昭和二十四年の一件あたりの平均医療費でございます。単価出してございます。その次は昭和二十九年の平均点数でございます。こうして比べていただきますと、その三番目にございます増減というところにおきましては、入院プラス一七六、被扶養者におきましてはプラス一五八という増加率を示しておりますが、外来におきましては一〇〇と九九でございます。従いまして最後の行の増減率というところにいきますと、六七%、入院プラスでございますが、外来におきましてはプラス・マイナス、ゼロということに相なります。このことは重大な問題をたくさん含んでおると思うのでございますが、まず第一に、入院がなぜふえたかということでございますが、これはふえるべき理由がある、と申しますことは、御存じの通り、いろいろな給付内容が、幅が大きく広がっていった、たとえば衣食住に関連したような豊富な給付内容を持っているということ自体、特に結核におきましては完全看護、完全給食その他に類似した医療給付のほかに、衣食住を含めた三重、四重の給付がある、しかもそれがそれらのものは医療費とは別に、いわゆる本質的な医療費とは別に、物価指数によって大幅に価格が増高しておるというものに即応するためには、この程度の広がり方ではまだ不足なのでございますが、ともかくそういう形において必然的に広がったという姿でございます。ところが一方外来におきましては、この姿が全然みられません。昭和二十四年から現在に至るまで同じでございます。ということは、これも世界の奇蹟だと私は申しておるのでございますが、その奇蹟にも例外ありで、これが日本でただ一つという、世界でただ一つという例外的奇蹟だというのでございますが、こういう奇蹟の上にこのままにして普遍性の多い医療費体系を築き上げるということは、おそらく私は不可能じゃないかということを考えております。特にここで御認識いただきたいことは、ともすれば当局から医者は乱診乱療するから医療費はふえるのだと、こうおっしゃるし、七人委員会もそういうおぼしめしのような発言が報告書の中にございます。にもかかわらず外来等におきましては乱診乱療どころか、むしろ減る傾向にある。これは実際にはこの外来費の中に結核の外来費用というものは昭和二十四、五年に比べておそらく二〇〇%、一九二%くらいに膨張しておりますから、それによる補正をいたしますと、おそらく七、八%のマイナスになっておる、実質的には。そういうことから考えますると、この外来医療費に限って昭和二十四年以来上げずによいという数字は、よいというものはないと私は思うのです。なぜなれば国家経済はますます進展しつつあるし、国民医療費も膨張していく。拡大均衡とかいうようなことで経済界も発展の一途をたどっておるというそのさなかに、世界水準の、いわゆるニューヨーク、ロンドンと同じような医療内容給付をしたというこの外来の治療費において、不拡大であり、不均衡であるということは、私はどうも合点がいかない。この理由についていろいろ検討いたしてみますと、直接ないわゆる注射であるとか手術であるとか処置であるとかというような、直接的な本質的な医療費というものは、おびただしく削減されておる。押えられておる。その半面従属的な医療費が膨張しておる。この比率はどういう形が正しいのかということにつきましては、おのおの見解の相違でございまするが、本質的な医療を押え、削ってその財源がそういう従属的なものに移りつつあるという動向は、これは明らかな事実であります。と申しますことは、年々の医療費内容分析による経過を観察いたしますと、その現われは顕著でございます。こういう医療費の形で現在の厚生省の提示されましたような新医療費体系そのものを考えますときに、こういうものの内容に基く基礎の上に打ち立てられた医療費体系が、なお矛盾を大きくし、あるいは不均衡を増加したという事実は覆いがたいのでございます。特に御認識いただきたいことは、外来医療費と申しますものは主として病院にあらざる開業医機関がおそらく大部分を取り扱うという形のものでございます。たとえて申しますと、数はかっちりそのままとは申されませんが、大体におきまして全医療機関の八割以上は開業医機関でございます。しかも国民医療費の七割以上を分担してございます。しかもその八割以上の開業医が七割以上の医療を分担しながら受ける医療費報酬は総医療費の四割でございます。その比率におきましておびただしく減少しておるということは、この医療費内容がいかに狭められ、いかに圧縮されておるかということに尽きるのでございまして、こういう医療費の偏在、不均衡というものが、どういうわけで起きたかという原因につきましては、先ほど申しました従属的な医療費が比準を大きくしたということですが、その理由の中に結核という問題を見逃すことはできないのであります。一口に申しますれば結核対策を考えずして健康保険その他医療制度の解決をはかろうとすることは不可能であるということを私は申し上げたいのであります。なぜそう申し上げますかと申しますと、御存じの通り結核の医療費は総医療費のおそらく四〇%に近いものと推定されます。しかもその四〇%という医療費を消費するいわゆる結核というものは、御存じの通り結核予防法によって基礎づけられております。結核予防法は予防から治療・後治療からさらに職業補導というような面にまで給付内容を持っておりますし、全国民を対象としたいわゆる保障制度的な医療法でございます。ところが一方健康保険と申しますものは職場あるいは地域でございますが、それを基盤として生産向上を目的としたいわゆる勤労者の保険料、これを唯一の財源とした相互扶助医療組合的なものでございます。保障的性格のものが優先してこの相互扶助機関の中へ割り込んで、食いも食ったり四割という経済を食いつぶすという段階におきましては、健康保険は危機に瀕せざるを得ないということがはっきり言えるのであります。私はこれを批評してネギを一把下げてすき焼を食べにきた居そうろうだと、こういうのでありますが、そのネギ一把にも値しない一部の国庫補助を持ちながら、それに何十倍にも相当する健康保険保険料を食っておるという姿をまともな姿に是正しない限り、医療制度の発達は決してあり得ないのであります。私は結核が憎いから申し上げるのではございません。結核というものは、これは国策として何百万の対象を国家がもうすでに調査しておられます。そのものに対する治療、予防その他の法を適用なさることは、これは国家のある意味での義務だと私思っております。そのものに必要な医療費を健保の中から食うということはもう断じて私は不賛成でございます。一方におきまして国家は結核床を毎年何万床とふやしております。これもけっこうな話でございますが、結核一人が一年間に十五、六万円も食うということは、二万床ふえれば何十億か赤字がふえるというこでございまして、年々ベットが二、三万床ふえれば何十億かの赤字は累増するのでございまして、やはりこれは防衛費と同じ形で年々累増する赤字でございまして、今日ある六十億何がしかの赤字のために、健保の法律一部改正その他を含めた医療費体系等大きく赤字対策に踏み出していらっしゃる、この姿がおそらく毎年々々繰り返されなければこの問題は解決つかないということが逆に言い得るかと思うのであります。そういう意味におきまして結核の対策はどうしても医療費及び医療制度そのものの根本的な改革の内容に含まれる問題だと私は思っております。こういういわゆる医療費のあり方、そうして医療費の分布と申しますか、配分のあり方、不適正な不合理なもの、こういうものにつきまして医療費体系調査検討なさる資料としてもすでに三十年の三月の医療費のあり方というものに私は矛盾を感ぜざるを得ない、こういうことを御考慮いただくことが先決問題だということを特に申し上げておきたいと思います。  簡単でございますが以上で私の陳述を終ります。
  82. 山下義信

    理事山下義信君) ありがとうございました。  それでは次に広島県医師会会長、正岡旭さんにお願いいたします。
  83. 正岡旭

    参考人(正岡旭君) 私広島県医師会長でございます。今日この委員会に一お招きいただきまして、陳述の機会を与えられましたことをありがたくお礼申し上げます。私は県の地方医師会会長として、また同時に専門的には産婦人科の医師でありますので、地方医師会会長とし、また同時に産婦人科医といたしまして、その立場からお話させていただきたいと存じます。  大体総論的な問題は午前中に御陳述あったように承わっておりますので、いささか具体的に各論的な面に触れてお話申し上げてみたいと考えます。まず私お話申し上げたいことは次の三点についてお話申し上げさせていただきます。第一に厚生省のおっしゃる今度の新医療費体系技術料の面であります。第二は国民健康保険と、今回の新医療費体系との関係であります。第三に地方医師と今回の新医療費体系との関係であります。医師経済状態と今回の新医療費体系との関係について申し上げたいと考えます。  第一の技術料の面でございますが、これは厚生省の言をかりまするならば、技術料を適正に評価して、しかもその技術料には適当なる技術差の考慮を払うということであります。これを、ほかのものも同様であると思うのでありますが、私専門の産婦人科の領域だけについてみまして、大小幾多の矛盾のあることを発見するのでありますが、時間の都合上、ただわかりやすい例を四つだけ具体的にお話申し上げて御了解を得たいと考えます。  第一に、手術の技術差でございますが、おそらく委員方々のお手元に、診療報酬点数比較表が届いておると思うのであります。この比較表によって見ますと、六十ページでございますが、子宮の腫瘍摘出術、子宮腔上部切断術、病気の名前で少しおわかりにくいかもしれませんが、単純性子宮全剔出術、この三つの手術がいずれも等しく五百点ということになっております。これら三つの手術は手術の実情を一目でもごらんいただいたならば、たとえしろうとであっても、いかにその技術の間に大きな差異があるということは一目瞭然たるものがあると思うのであります。  第二番目に分べん時の止血処置ということが、これは六十二ページの上から二段目にあるはずでございますが、これは従来三十点の技術料が、処置料が認められておったのでありますが、今回はどうした理由によりますものか、これがゼロになっておるのであります。削除されておるのであります。この分娩時の出血と申しますのは、簡単な注射程度のもので止血するものは問題ないのでありますけれども注射などではとうてい及ばない、しかも分娩が無事に済んだその直後突然起る大出血でありますので、寸刻を争う重大な処置であります。赤ん坊が生まれた、一家をあげて喜びにわいておる途端に、母親の死によってたちまちにして家族全体が悲嘆のどん底に陥るということは、しばしばわれわれの遭遇する場面であります。こうした迅速的確な処置を要する、しかも生命に直結する重大な処置炉全く削除されておるということは、どんな面から考えても納得いかないのであります。  第三番目に新産児、生まれた赤ん坊の介補料というものでございますが、これは従来とも今回もひとしく二点ということになっております。赤ん坊はものを言うことができません。それでこの赤ん坊の監視というものはわれわれ産婦人科医といたしましては、ものを言い得るおとな以上に常に細心の注意を要するものであります。しかも生まれたばかりで、生命の浮沈は紙一重にかかっておるのであります。こうした多大の細心の注意を要する新産児の介補料というものが、いかに低評価されておるかということであります。  最後に第四番目に、今日政府が国策として産児調節を唱導しておられる折柄、またわれわれ産婦人科専門医といたしましては、全国的にこの国策に協力をして、日夜その指導に当っておるものでありますけれども、どうしたことか、この指導料は全く今回の医療費体系には織り込まれていないということであります。  以上きわめてわかりやすいと思われるものを四つお話申し上げたのでありますが、これらを総括いたしますと、今回の新医療費体系厚生省でいかに、ただ経済ワクにだけ立って一方的に、何ら専門家の、りっぱな専門学会もありながら、こうした専門の学会、専門医というものの意見を全く徴することなく、単に事務的に処理されたということは明瞭なものがあると思うのであります。従って技術料の評価、技術者の能力ということは、全く看板に大いに偽わりありと言って差しつかえないと断ずるものであります。  第二番目に、国保と今回の新医療費体系との関係でございますが、医師会長といたしまして、この国保の問題には今日すでに多大の苦慮をいたしておる問題であります。御承知のごとく国民健康保険医療費は、従来健康保険医療費がそのまま準用されておるのであります。ただしかし健康保険と大きな相違点は、国民健康保険におきまして、その給付内容が各組合ごとに、はなはだしくまちまちであるという点であります。これを考えまするに、しかも国民健康保険経済はいずれも非常に困難な状態にありますので、われわれ地方におきましては、この国民健康保険医療費の支払いはほとんど三カ月ないし六カ月は遅延しておるのが約七〇%であります。しかも窓口徴収を要請されておる国民健康保険組合におきましては、その初診料の未収は七〇%以上に達しております。こうした国民健康保険の現在の実情を十分に御検討いただくことなくして、しかもこの国民保険給付内容あるいはこうした未収入の最終的責任者の決定とか、この基本的問題を解決することなくして、このままもしこの新医療費体系、加うるに近く上程されようとする健康保険法改正案が国民保険の上にそのまま移行されたならば、国民保険医療というものはたちまちにして一大混乱に陥ることは必定だと信ずるのであります。  第三番目に地方医師経済的実情でありますが、これはただいまお手元にお配りいたしました資料についで・時間もございませんので、簡単に説明申し上げたいと考えます。  第二ページの表は産婦人科だけを取り上げまして、診療所における旧点数と今回の新点数とを当てはめまして、診療費がどう動くかということを見たものでありまして、これは他府県とも同様一様に診療所の収入は減になっております。  途中を省きまして、第七表をごらんいただきたいと思います。これによりますと、地方開業医の保険収入というものが月額六万円以下のものが五七・七%に及んでおります。さらに十五万円以下を見ましても九〇・七%という割合になっております。これを大病院とこうした無床の診療所との数並びにその医療費収入の面からあわせ考えますと、病院と無床診療所との数は約十一対一になっております。診療所の十一に対して病院一つ。これを医療費の面から見ますと病院が五四%、診療所の受け取る医療費は四六%であります。しかもその総医療費の四六%を数において十一倍に達する小さな診療所が分けておるわけでありますので、ただいま第七表にお示しいたしましたような、きわめて診療所の経済というものは零細なものであります。  第九表でございますが、九表は全科にわたってあらゆる医療行為に分けまして、今回の新点数を当てはめた結果でありますが、その結果から見ますと、わずかに外科と耳鼻科においてプラスが出ておるのでありますが、ほかの科はすべてマイナスであります。  以上はなはだ簡単でございますが、こうした地方の無床診療所すなわち開業医の経済というものは、おそらく皆様の想像だに及ばないほどきわめて零細なものであると考えるのであります。これが今回の新医療費体系とさらに健康保険法改正と結び合せて考えますときには、こうした大部分の小さな開業医はただ壊滅するのほかはないと考えるのであります。  以上まことに簡単でございますが、私の陣述を終ります。ありがとうございました。
  84. 山下義信

    理事山下義信君) ありがとうございました。  それでは次に京都府医師会の中野信夫さんに願います。
  85. 中野信夫

    参考人(中野信夫君) 私は眼科をやっております一保険医でございます。医師会の方の調査の方をやっておりますので、本日は眼科の件につきまして若干申し上げたいと思います。  新医療費体系に構想を置いた新点数が昨年暮に厚生省から発表されまして、京都府におきましてもこの点数が実際開業をしている保険医にどんな経済的な影響を与えるか調べてみようということになりまして、京都では昨年の十二月の実際の私たち保険医の診療の内容を現在の医療費と新点数を当てはめてみましたときの医療費と比較してみようと思いまして、その調査をやりました。方法は、保険医にもピンからキリまでありまして、三万円以下の総収入しかないという零細な者から六十万円も一月にあるような、いろいろな段階がございますから、これを階層別に考えまして、最もありきたりなモデル的な収入のあるそこら辺の保険医をグラフで出しまして、その中から十二の保険医の十二月分の診療を調べたのであります。調べました方法は、保険医は毎月前月分にやりました治療を請求するのでございますが、翌月の初めに先月に来られました患者さんの診察内容を全部一人一人に請求書をこしらえまして、この患者は初診が何点、処置が何点、何回何点、注射は何点の注射を何回、こういうことを一々明細を書きまして、それをトータルいたしまして、総括表を付けて、府県に一つあります、京都では基金と申しておりますが、基金事務所へ差し出します。この十二月分の請求をこの十二の対象になりました保険医が一月の十日に出したのでございますが、それと同じものを医師会からお願いしまして、全く同じ請求書をいただきまして、そうして厚生省の御発表になりました新点数を一々置きかえまして、初診四点を十二点に赤鉛筆で入れ、お薬は二点のものを〇・七点の原価とそれから調剤料〇・六点、それから注射原価皮下注射であれば一点の技術料、そういうふうに分けまして、それをトータルいたしまして、一枚々々で何点違うか、また一診療所につきまして句点違ってくるか、つまり何割ふえたり減ったりするか、そういうことをトータルいたしましてデーターを作ってみたのでございます。ところが、その十二診療所の合計が現行の治療費と新点数を当てはめた場合の治療費と非常に開きまして、新点数を当てはめますと現行点数の八五・三%、約一五%の減収になるという結果が出たのでございます。そして他府県の状況も聞いてみますと、大阪でも同じようなことをやられまして、これは全部の方が十二月分に当てはめられまして、その結果三十六の眼科保険医の診療所がおのおの点数を変えましたその平均がやはり一八・一%減と、こういう数字が出てきております。それで全度は農村を主体とします香川県の方の資料をいただいたのでございますが、これも眼科がぐんと減りまして一三・五%減と、こういうような数字が出て参りました。ところが、厚生省の方の御発表を見ますと、これは厚生大臣やらその他の厚生省方々がよく御発表になっておりますが、眼科あたりは、入院設備のない眼科診療所は四%ふえる、あるいはベットのある診療所は三%ふえる、こういう、こういうようなことを大体おっしゃっておられます。厚生省はふえるとおっしゃる、私たちは減ると言う、これはどこに原因があるかということを探究してみたのであります。厚生省方々は、新点数を適用して減るのは、それは医者の当てはめ方の操作に間違いがあるのだ、こういうような御説明であります。ところが私たちも、厚生省のお出しになりました点数表を使い、その点数表の当てはめ方でいろいろ解釈の分れるところは、日本医師会がこしらえました当てはめ基準というものを使いまして、この日医のこしらえました当てはめ基準というものは、これは厚生省の一万田技官とか松本技官とかあるいは大村技官など、おもに新点数をおこしらえになりました作業にタッチしておられた技官の御意見を聞いてこしらえたものでございますので、この当ではめ方の操作は、計算の間違いさえなければ同じ対象でやった場合にはそう違わない、要は対象が別だということがわかったのであります。厚生省眼科が四%ふえるとおっしゃいました対象は、御承知のように、厚生省が膨大血費用をかけて作られました三十年三月の調査、いわゆる三月調査、社会医療調査とも言っておられますが、これの無床の診療所に今度の新点数を当てはめて四%ふえるのだと、私たちは京都の眼科が三十年の十二月にやりました実際の診療内容に当てはめまして一五%減ると、こういうことで、要するに対象が違うのだと。それでは、これから全国の眼科診療の診療費のあり方をきめようという新点数をおきめになるのに、この厚生省のおとりになったようなああいうやり方の、十一診療所でございますが、三月調査のベットのない診療所十一、これを基準に新点数をきめた方がよいのか、あるいは私たちの調べたような、こういう実際の対象になったものの、そういう治療内容を基準に考えるのがよいのかということでございますが、これの参考になることがあるのでございます。厚生省の十一診療所の請求書一枚当りの治療費を計算いたしますと四百十円になっております。私たちの調べました請求書一枚当りの平均は五百六十円になっております。正確に申しますと五百五十六円になっております。ところが、この請求書をいつも扱っております支払基金事務所というのが全国的にございますが、これがはっきりしたデータを出しております。二十九年度の一年間に眼科の診療所、これは有床も無床も含めてございます。これが三百万枚の請求書を出しておるのでありますが、この請求書の一枚当りの平均がやはり五百六十円、こういう数字が出ておるのでございます。厚生省が今度の三月調査にお使いになりました四百十円の治療内容を持ったそういうものに当てはめますと、なるほど新点数は四%ふえる。ところが、私たちの調べました五百六十円という請求書一枚の平均をこれに当てはめますと一五%減る。それから、これは二十九年度で古いと思いまして、本年度の六月のやはり同じく支払基金のを調べますと、これもやはり申し合せたように五百六十円になっております。ですから、どうも厚生省のふえるとか減るとか、その基準にしておられます三月調査眼科のいわゆる調査対象が非常に一枚当りの治療費の低い請求書によってこの数字ができておる。そうして厚生省はすべてこの三月調査に当てはめましてふえるとか減るとかおっしゃっておる。ところがそれが少くとも眼科の場合には現在実際の診療所の出します請求書とは非常に開いておって当らない。厚生省の十一の診療所のデータは千六百枚でございます。ところが今年の六月、先ほど申しました基金のこれは一カ月分でございますが、三十万枚の眼科の請求書でございます。やはり厚生省のお取りになったのが三月調査に限ってはこれは非常に偏しておった。そうしてこの偏した四百十円の一枚の治療費を基礎としたこういう対象の数字で新点数をおきめになりまして、それが増減ないように作ってございます。従いまして非常に普遍的な私たちの対象は、厚生省のお作りになりました新点数でやりますとどうしても減る、こういった結果が出てくるのでございます。やはり最も普遍性のある対象でこういうものをきめていただかないと、医療機関はその収入に非常に大きな打撃を受けるということを私は申し上げたいのでございます。  そうしてもう一つ、この新しくおきめになりました新点数は、初診が十二点と一躍三倍にはね上っております。ところで、従いまして非常に短期間に済みます病気は、眼科医の方にとりましてはこれは収入の歩が比較的よろしい。ところが従来患者さんをみまして一回四点ずつくらいの平均になっておりますこの処置がすっかり消えまして、そのかわりに三点の再診料をやろう、つまり五十円の処置料を減らして三十七円五十銭の再診料をやろう、こういうことになりまして、二回目からの診察は従来よりも歩が悪くなる。これは日がたつに従いまして悪くなりまして、短い、短期間になおる微疾病ほど歩がよい 長期にわたるうるさい疾病ほど歩が悪い。そういうふうに新点数は仕組んでございます。  それからもう一つ点数でございますが、この新点数そのものは決して赤字対策でないというふれ込みでございますが、私たちが最近いろいろ心配しております一部負担制というようなことも絡み合わすと、どうも私たちの立場からこのデータから考えても赤字対策ではないかという疑念を非常に深くいたしております。この新点数を翻訳と申しますか、置き換えまして非常に激減するということがわかりました。近畿の眼科医は先日集まりまして、総会を開きまして、けしからぬ、新点数には絶対反対だ。そうして特にその中で再診料は認めておるが、処置料を全然認めておらない、けしからぬ。それからなお眼科のこれは専門的なことになりますが、白内障という手術がございます。またもう一つの紅彩切除術という手術がございます。これの評価の仕方が非常に私らの考え方とは、眼科医の常識とは全然逆な評価がしてある。こういうことはどうも眼科専門医がこの点数をきめたとは思われない、少くともこういうものをおきめになる場合は、もう少し眼科専門医のその道の権威者の団体がございますから、そういうものに十分御意見をお聞きになったらどうか、こういうような点で非常に集りました会員二百名が激高いたしまして、もしこんなものが通ったならば日本医師会がどんなことをいっても私たちだけでも争議をやろうではないかという固い決意が、強い意思が反映したのでございます。同じく日本眼科医会という会合がございますが、これも同様の決議をなさっておられます。眼科医が、一般保険医でも同じことだと思いますが、この新点数が非常におそろしいものであり、これに対する反感が非常に強まっております。しかしこの新医療費体系に対する反発心というものは決して新医療費体系だけのものではなかろうと私は思うのであります。私たち保険医の現在まで受けてきました境遇は非常にみじめなものである。過去数年間の保険行政が、まことに私たちは一医師として保険者と対等の契約をしたつもりでおりました保険が、いつの間にか保険におきましては保険医は完全に厚生省使用人に転落しておる。しかも点数はこうだ、治療費はこうだ、薬価基準はこうきめる、それで言うことを聞かぬ者は審査もしなければ監査もしない。また非常に繁雑な事務を課せられる。それに不服を言うとまたこわい。言うことも言えないというような形で、だんだん経済的な精神的な圧迫が連続しております。しかも今後もそれがますます厚生行政の面において保険医を政府の一使用人として意のままにこれを使ってゆこう、文句を言う者はもうやらせない、こういう重苦しい気分が今までに累加してきておりまして、これがやはりこの新点数機会に爆発しまして非常に反発心が現在表面化しておるのでは血いかと私はその一人として考えるものでございます。非常に保険医は今申しましたように多量な事務を背負わされておりまして、時によってはこれは診療のために事務をやっておるのか、事務のための診療かというような錯覚さえ起るくらい実に膨大な事務がございます、個々につきましては申し上げませんが。そうして出しました請求書はどんどんまた工合の悪いものは削られますし、一方的に治療方針などもどんどん出てくる、こういうものに対する不満がございますが、最近も保険医は乱診乱療だというような言葉をよく聞くのでございますが、二十四年でございましたか、あのときも保険の財政が赤字になりましたときも、この乱診乱療保険医は悪いといったような、あるいは計画的の宣伝ではないかと思われるような風評が、私らは非常にこれに対して不満を感じたのでございます。今回もやはり保険財政が赤字になり、これの対策を講じるという段になりますと、再び保険医の乱診乱療ということがことごとに取り上げられまして放送されておるといったようなことに対しても、非常に深い不満を持っております。  赤字の対策でございますが、これは七人委員会でも御指摘になりましたし、先ほどもだれかこちらでおっしゃいましたように、保険財政はなるほど赤字に転換した、しかし外来の支出と入院の支出と考えると明らかに入院の支出が圧倒的に大きい。ふえ方がひどい。しかもそのうち結核入院患者の占める率が非常に大きい、こういうことが、これがほんとうの赤字の原因である。こういうようなことを七人委員会でもたしか指摘しておられたと思います。ところがそれに対する対策というものはどうも筋違いのように考えられます。すべて乱診乱療ということをいって開業医の、保険医の診療を抑制するような格好に持ってこられております。この結核の入院患者が飛躍的に膨大になって、それが赤字の原因であるというならば、これを認めるならば、おそらくその対策は、はっきりしてくると思うのであります。厚生省は毎年二万床のベッドをふやしております。このふえたベッドには従来外来として通っておりました結核の患者が、つまり一月に千円ぐらいの治療費で治療しておりました患者がそのふえましたベッドに入って参りまして、この入院しました患者は一躍入院後は月額一万円あるいは一万五千円というような費用を使うのであります。これが毎年ふえます一万床ずつのベッドをみましても年額二十億になるのではないかと思います。これではこのベッドの増床が二万床ずつふえてくる限り、毎年々々ふえてくる数字でございます。国家が結核対策としてお作りになりました増床はけっこうでございますが、すべからくそのベッドに入ります治療費もこれまた結核対策として、別の面から出さるべきものだと思いますのに、その財源につきましてはすっかりこれを保険財政におぶさっている。そして保険財政が赤字になると、これは乱診乱療である。結局のところこれをつじつま合わすように命ぜられるのが、かよわい開業保険医のところにしわ寄せが出てくるといったのが、現在の厚生省赤字対策のような気がいたします。こういうよう血保険医の非常に不満な気持、これをどうかこの機会に私がぜひとも訴えてくれという同僚の願いでここに申し上げたのでございますが、今後はどうか国会の代議士の先生方も私たち末端で日々患者を見ております保険医が本当に安心してその天職に従えるように、そういうような保険制度にどうか政策の面でこれを是正していきたいというのが私たちの切なる願いでございます。ありがとうございました。
  86. 山下義信

    理事山下義信君) ありがとうございました。  それでは次は栃木県医師会の成田至さんにお願いいたします。
  87. 成田至

    参考人(成田至君) 参考人成田でございます。私は栃木県のいなかの保険医でございます。名簿ですでに御存じのように、電話の設備もない診療所の保険医である私に、重要な国政の御審議に当っておられます本委員会におきまして特に意見を述べる機会をお与え下さいましたことは、ひとえに本委員会委員皆様が、今日の社会保険医療におきまして、私のような診療所の保険医が果しております役割の重大さを十分御理解の上でのお招きと存じ、心からお礼を申し上げる次第でございます。  お手元にお届けいたしました資料のとびらを開けていただきますと、第一ページに(一)といたしまして「社会保険医療における診療所の位置」とございます。以下順を追って御説明申し上げたいと存じます。  支払基金の三十年五月の調査によりますと、そこに数字で示してございますように、社会保険診療の七三・四%は診療所で行われております。特にその九〇・四%は個人立の診療所で行われているということがわかります。なるほど病院が今日の国民医療で果しております役割もまことに重大ではございますが、診療所がその一つ一つは小さいとは申しましても、総体としていかに大きな役割を果しておるかということは御理解願えるかと存じます。  次に診療所における医療費が従来どのように支払われていたかと申しますと、(二)の下に数字で示すように、治療に関する費用が大部分を占めておりまして、今回の新医療費体系では診療所に対しましてはこれを一言で申しますと、この治療に関する費用を大幅に削りまして、特に診察料に盛ったということでございます。そこで新医療費体系の効果ということになって一参りますと、高く評価された診察料がいかなる医療効果、いかなる経済効果を与えるか、著るしく切り下げられました治療に関する費用がいかなる効果をもたらすかということでございます。ところで著しく費用を切り下げられましたという治療は診療所においていかなる形で行われているかと申しますと、(三)に示す通りでございます。費用から申しますと、投薬と注射処置の費用をあわせましたものは治療に関する全費用の九七・三%を占めております。しかし費用で見ました場合には注射料、薬治料の中には在来は潜在技術料というものが入っていたのであるからふえるのは当り前だ、非常に大きな数字を占めるのは当り前だという御意見もあると思います。これを行為回数から見ましても二ページにございますように、全回数の九九・三%を占めておるのはこの三つの項目でございます。すなわち、もちろん治療の中にはあるいは手術あるいは指導ということもございますが、規模の小さい一般診療所では、この頻度は非常に小さいということでございます。  ところで新体系におきまして、治療の大部分を占めております投薬、注射処置がどのようになっているかと申しますと、二ページの中ほどの(四)に示す通りでございます。薬治料はすでに御存じのように、薬の費用と調剤技術料にわけて支払われることになっております。薬の費用としては買い入れた価格だけを支払うことになっておりますので、薬品の損耗等はその薬の費用の対価としては全く考慮されておりませんので、買い入れた値段だけ支払うということは、薬の原価を割るということになって参ります。一方調剤手数料はどうかと申しますと、これは昭和二十七年十月の原価計算によっておりますので、二ページの下から三ページに書いてあります表をごらん願います。費用の合計といたしまして、調剤手数料の原価は、一般診療所では二十七年十月において七円六銭となっております。新体系ではこれに基きまして七円支払うことになっているのでございます。ところで御注意をお願いいたしたいのは、人件費の項でございます。この費用は、たとえば医師一分当りの費用は幾らである、この仕事には何分かかるから医師技術料は幾らあればよろしいと、こういうふうな計算でできております。ところで一体調剤をいたしますのに、医師なり薬剤師なりの時間をいかほどに見たかと申しますと、表のまん中に書いてございますように、医師の調剤時間としては一・八秒、秒でございます。薬剤師の時間といたしましては、ほぼ二十三・一秒でございます。一体一・八秒で調剤ができるかどうか、薬剤師の時間を加えましても二十五秒でお薬ができるかどうか。委員皆様病気の際、病院なり診療所なりの待合室でお薬ができるまでお待ちになったことがあると思いますが、常識から申しましても、一剤二十五秒とはいかなるものでございましょうか。これが新医療費体系の基礎となった厚生省の申す原価計算でございます。薬剤師協会の報告によりますと、これは先ほどまで御出席になっておりました高野先生が、昭和二十六年でございましたか、本国会におきまして意見を述べられましたときにおいても、七分三十秒ということでございました。最近の薬剤師協会の報告によりましても大体さようなことになっております。従って、いかに実働時間と申しましても、いかに医は忍術と申しましても、これが二十五秒ということは不可能なことでございます。これを常識的な数値に直しますと、調剤技術料の原価計算は、全く姿を変えてくることになって参ります。厚生省のお示しのままの忍術的調剤手数料によりましてさえ、昭和二十七年から今日までの物価、賃金の変動を考慮いたしますと、調剤技術料は原価はおろそか、医師技術料を全く含まない経費を割ることになって参ります。お薬の費用、調剤技術料がともに経費を割っているということは、投薬はすればするほど欠損が累積するということでございます。  次に注射料はどうなっているかと申しますと、注射薬の費用のほかに注射という行為対価として、皮下注射は十一円八十三銭支払われることになっております。ところで厚生省原価計算によりますと、これも三ページの下から四ページの上までの表をごらんいただけばわかりますように、原価はおろか二十円十八銭という経費を大幅に割っていることになっております。たとえば十七円二十銭で仕入れたものを十一円で売れということでございます。経費を割る以上、皮下注射は行えば行うほど欠損が累積することになっております。これは静脈についても同様であります。処置料となりますともっとひどいことになっております。四頁の表でおわかり願えますように、外科処置においても皮膚科処置においても洗眼、耳処置等においても、原価はおろか経費を大幅に割っているのです。たとえば足一本のやけどの場合、その処置料は三十五円四十九銭となっておりますが、これでは包帯代にもなりますまい。眼科におきましては処置料の八割を占めていたものがただとなっております。ただほど安いものはございません。ただではもちろん経費を割るわけでございます。ほとんどの処置料が経費を割るということは、新医療費体系では処置をすればするほど欠損が累積するということでございます。つまり診療所の治療の九九・三%を占めるものは、すべて原価はおろか経費を割っているわけです。新体系では治療をすればするほど、治療に努力すればするほど努力に比例して罰金がつくということでございます。従って一人の医師について申しますと、かぜのような治療にさほど努力を要しない軽い病気の場合には新体系では著しい率で収入が増加いたします。逆に治療に著しい努力を要する重い病気、たとえば重症の疫痢、脳炎、肺炎、頑固な胆石の場合は収入は激減いたします。何となれば、軽い病気はそんなに注射をしなくてもよいから罰金が少い。重い病気は命を助けるために治療に努力をすればするほどその度に従って罰金がつくからでございます。実例を挙げるとよく御理解願えると思います。七頁と付属資料に実例が計算してありますのでごらんを願います。付属資料、一番うしろについております。かぜの場合は新体系になりますと七七・三%も収入が増加することになっております。ところで胆石の場合は患者の苦痛を取り去ろうと注射するたびに、患者の命を助けようと注射するたびに、助けようとするたびに罰金がついて収入が激減しているということでございます。表を御覧になりますと原価を割らないのは第一日だけでございます。とのプリントの方を御覧いただきますと、左端に項目がございまして、その次に原価が書いてあります。その次に経費、現行点数と新点数、こういうふうに分れております。それをごらんになりますと、原価を割らないのは第一日だけでございます。第二日目には診察料を入れても経費を割っております。つまり第二日目にはそれだけ努力をいたしまして入ってくる収入は支出以下だということでございます。第三日目に参りますと、そこに書いてありますだけのたくさんの治療をいたしまして収入から経費を引きました医師の手に残りますものはわずかに十円でございます。ところがお手伝いの看護婦の方は百六十二円でございます。これではあまりひどいではないでしゃうか。新医療費体系では軽い病気を治療した場合には収入が増して、重い病気を治したときには欠損が累積いたします。努力をそれほど要しないものの収入は増加し、非常に苦労しで治療した場合には欠損が累積し収入が激減するのです。  次に技術の高い医師と低い医師の収入はどうなるかと申しますと、一体技術の高い医師の診療の特色の一つは比較的重症の患者が多いということであります。かぜなら近所のお医者さんのところに行ってみてもらうけれども、重い病気なら遠くのどこどこの博士を呼ぶということがその理由でございます。第二の特色は技術の低い医師が十日で治すところを技術の高い医師は的確な診断をし、適切な治療を行うことによって三日でなおすというがごとき、早期に治癒せしめるということがその特色でございます。ところで新体系におきましては重症の患者を治療すればするほど欠損が累積することは前に述べた通りでございますし、早く治せば新しく設けられました再診料がとれませんから収入が減少いたします。つまり二重の意味で、新体系では技術の高い医師の収入は激減し、技術の低い医師の収入は増加いたします。同じ理由医療の進歩を取り入れれば入れるほど欠損は累積し、収入は減少いたします。医学の進歩はただ保険医の犠牲によってのみ取り入れられることが可能となるのでございます。結局新医療費体系医療行為の費用のつりあいだけに気をとられまして、小さなワクの中でやりくりしたためにかえって医療の進歩をはばみ、保険医の治療の意欲を減殺せしめ、治療内容の低下を来たすという仕組みになっておるのでございます。新体系への移行において診療所の所得に減少を来たさないようにしたと厚生省は申しておりますが、実際に当てはめてみますと、総体としても減少して参ります。しかし減少しては参りますが、そのバランスさえ技術の高い医師は欠損が累積し、技術の低い医師はかえって厚く報いられるという著しい矛盾の平均の上に保たれているのでございます。従来からの支払い方式では、あるいは稼働払いという建前から、あるいは物の対価として支払うということから幾つかの欠点があることは私十分承知しておりますが、新体系におきましてはその欠点がかえって拡大されているのでございます。本体系は新らしい医療報酬の体系と申しますよりは、むしろ新しい医療懲罰体系であると私は申すことができると思います。私は今日の診療所の医療がむしろ萎縮診療と推定さわる面さえ非常にあると考えておりますので、本体系が実施されますと、国民医療の根底がゆるぐと考えております。これが私が何といたしましても新医療費体系に賛成できない理由でございます。いかがなものでございましょうか。
  88. 山下義信

    理事山下義信君) ありがとうございました。  それでは次は日本精神病院協理事長金子準二さんにお願いいたします。
  89. 金子準二

    参考人(金子準二君) 本日はとかく忘れられがちであるところの精神病の方の、この参議院の方の委員会出席を求められたことは私どもが非常によろこばしく感ずるところであります。皆さんからいろいろの声が出ているようでありまするから、私はごく精神病に限ったことになるべく触れて皆さんの御理解を願いたいと思うのであります。  その一つは、この新医療費体系というものが出てきまして、物と技術と分けるということにおきましては私どもも賛成をするのであります。しかしそのほかにおきまして、この医療行為と申しますか、医者の診療行為におきましては精神の苦痛ということを一つ考えていただきたい。これを一つ考えていただかなくてはならない。ことにある診療行為が物と技術としては簡単なるものでありましても、その結果が及ぼすところの、患者に対しては生命の危険のあるというような場合におきましては、これを相当考慮すべきものではないか。それからもう一つは医者そのものが受けるときの苦痛というものも一つ考えていただきたい。おそらく医学のうちにおきまして、おい、お前人殺しだぞ、おれが退院したら火をつけてやるぞ、といっておどかされる商売は、私どものほかにないと思うのであります。こういうような点は、やはり何かの形式において相当考慮をしていただきたいと思うのが私の願いであります。それから今度の新医療費体系を概括しますといろいろのことを言っているようでありまして、一番新医療費体系で盛り込まれておりませんのは、精神病院に関することは比較的今まで忘れられていたという加減でありまするが、専門家が多くお入りにならなかったということが、この保険診療の点数になっておることが少ないのであります。たとえば今の作業療法ということはどこへ行っても奨励しております。海外におきましても日本においても非常に奨励していることであります。それからスポーツ療法というものも利用すべきものだ、これは学校の教科書にも書いてあるのでありますけれども、今度の保険診療というようなものは、こういう点はちっとも載っておらぬ。こういうようなことはやはり新医療費体系に確かに欠陥があるということを私は明らかにしておる点だと思うのであります。  それから物の方面を相当考慮してやったといいまするけれども、ことに精神病院は非常な危険を持っているものだ。御承知のように、病院の火災統計によりまするというと、非常なる危険率を持っておるものだ。そうしまして、保険会社でも、ほかの病院よりは確かに保険料を高く支払わなくちゃ契約をしてくれないというような事情であります。こういうような物の方面につきましても、どれだけ新医療費体系は考慮しておるかという点については、私は疑問を持たざるを得ないのであります。  それから精神病のことに関しましたことで申し上げますというと、診察料ということを一つ申し上げておきます。これは難易ということと、一つは時間ということと、やはりこの場合においても危険性というようなことを相当考慮されるべきものだと思うのであります。私ども実際におきまして、往診を頼まれて刀を抜かれて刃向ってこられたというようなことが実際あるのであります。刀を抜いて、この野郎だといって向ってこられるというようなことがある。しかも、往診でもいたしまするというと、患者はいやしない。どうしましたと言うと、出かけてしまいました、家におりますと言うから、いるかと思いまするというと、探してもいない、蔵の中に入って錠をみずからかけていて二時間も三時間も待たされるというようなことがある、こういうようなことであります。また片一方におきまして、実際において、精神病を診察するというのには、これは日本病院協会でも公認というか、しごくごもっともだと言っているのは、少くとも精神病の初診料というようなものは、これは普通の倍以上にするのが相当だ、それは一つは時間がかかるということを主張しておるのであります。そうして片一方におきますというと、このごろの情勢によりますというと、時間がひとりかかるばかりでなくて、いろいろの人権上の問題が起ってくる。ことに入院をさせるかどうかということになりまするというと、あとに不法監禁をしたというような訴訟を受けるのであります。しかもそれは相手は病人でありますからして、法外な要求をしてくる。しかも民事訴訟の損害賠償の形で来ますからして、応訴しないとあれは負けるそうですから、応訴しなくちゃいかぬというようなことになって、相当このごろ新聞でにぎわしていましたある学校の先生の事件なんかにつきましても、相当の訴訟費用というようなものがかかる。きわめて診察というものについては慎重にやらなくてはいけないしというような点で、初診料がほかの科と同じということにつきまするというと、これは相当考慮を要する。ことに入院の要否をきめるということにつきますると、さきに申したような人権の関係におきましても非常に慎重を要するものでありまして、ほかより以上に時間もとるという点において、ぜひこの初診料というようなものについては御考慮を願うべきが当然であると信ずるのであります。実際におきまして、私が朝早く行って、そうして四時までみておりましても、一日に五人くらいで、それでも私どもの満足いくようにはみれぬのが実情であります。こういう点は一つ考えを願いたいと思うのであります。  それから初診料が今のようなわけでありまするが、この今の新医療費体系では、初診さえ済めば再診というようなものは比較的ごく楽だというような立場をとっておられるようでありまするが、実際におきまして、皆さんがよく新聞なんかで御存じのように、鑑定というような場合でもおわかりになるでしょうけれども、精神病はことに一度みただけで、初回に会ったというだけでは、相当診査をしましても、なかなか診察ができぬことがある。初診以後の再診に重きをおかなくてはいかぬというような事情もあることでありまして、これはほかの科におきましても、再診料を特にこんなに差別をつけるということは私はむしろ反対の意見を持っておるのでありまして、やはりこれは難易その他について考慮すべきものだと思うのであります。  それから往診料でありまするが、これはさきに申したように、ことに往診というのは、精神病では病院に来た者はまだ安心が相当できますが、それでもなぐられたというような人があったり、私もなぐられたことがありますが、相当注意をしているのでありまするが、ことに往診というようなものは命がけの場合がほんとうにあるのでありまするから、こういうような特殊の場合を御考慮を願いたいと思うのであります。  それからまた注射料というようなものは、ある科におきまするというと、差別を設けるといいまするか、精神病というような病気になってきますというと、これは普通の病人に注射する以上の困難を伴い、いろいろの手間を要し、危険もあるのだということを御承知を願いたいものであります。  それから入院料の問題であります。従来はほかの病院と同じの待遇をするということになっております。ところが、今度の新医療費体系というのにおきましては、精神病に対しては二十八点。この点は、まあ診療所には非常にいい診療所もあることは認めますけれども、診療所というものの一番悪い最低の診療所よりは四点安い二十八点ということになっておるのであります。その理由は私どもには納得がいかない。どうも、そうしまするというと、精神病は二十八点の待遇より上げることはできないということは、ある意味においては精神病者はそういうような低い待遇をすべきものだということを国の方で公的にして、それ以上病院を改善するということはむだのことだということを明らかにするような趣旨を含んでいる。そうしまして、保険料の方を取るときにおきましては、やはり普通に取っておる。しかもこれは精神病であるがゆえに保険給付の期間を特に長くしてやるという特例も持っていないのであります。この点はどうも私どもに納得がいかない。精神病院というものにおきまして施設が普通の規格になってきたならば、これに対しては三十二点とか——三十二点がいい悪いということは言いませんが、少くともほかのものと同じ施設の待遇をしてくれるが当然ではないか、こう私ども考えるのであります。ことに、今度の病名で差別をするということになりまして、私どもの方へは結核病院からよく結核プラス精神病というもので入院をしてくる事例が多いのであります。ところが、今まで結核だけでおったときには三十点の待遇を受けて——三十点がいいとは言いません。けれども、三十点の待遇を受けて、内科へほかの病気で入ったときには三十二点の待遇を受けた。それへプラスのある精神病が起ってくるというと、今後は本人は二十八点の待遇を受けなくてはならぬということは、確かに不合理じゃないかと思うのであります。ことに精神病に併発症というものが起ってきた。今度は逆の場合にもやはりそれだと言われるのは、そういう患者に対しては精神異常のあるのは国の立場としてはこれは低格なる扱いをすべきもんだということを明らかにせられるということは、私どもは文化の上においても反対をせざるを得ないのでありまして、こういうことになってきますというと、精神病院というものは低格病院より作ることはだめだぞということになってきますと、将来におきましては、ここに従事するところの医者というものもやはり入院料が安ければそんなに待遇ができぬぞというようなことになってくる。従ってあとにおきますこの学問に対するところの、学問の発達という方までも影響してくると考えるのであります。どうかこの差別待遇、私どもはあらゆる病院とか何かにこの差がつくということになってくるという場合においては、これは理論的には私は一応認めるものであります。ただしこうしますると、地方のいろいろの病院、これは精神病院ばかりじゃなくして、いろいろのところにおいて今の制度におきます発達をかえって阻害するような点がありまするからして、適当なる長期低利資金というようなことをお考えになって、そうして適当なる方法によって格差をつけられるということならば、これは一応理論的には成り立つものだと私は考えるのでありまするが、精神病院というものはいかなる施設とし、いかなることをやってみても二十八点より払わないということの説にはどうも私どもは賛成ができぬ。これは非常なる禍根になっていくであろう、精神衛生の振興の上においても禍根を残すものだ、そうしまして、この実施した結果によりますものは、材料がまだ十分集まりませんから集計ができませんで、持って参りませんが、やはり精神病院におきましても非常に治療成績が私どもいいと見ておる所、退院率がいい、治療をよくしてなおる所がかえって総収入が減っているという報告を多く受けているのである。ということは、これは新医療費体系に確かに先に成田さんからお述べになったように、やはり精神病におきましても治療をすればするほど減収になるという新医療費体系は欠陥を持っているということを一つ御了承を願って、どうか参議院の方におきましてこういう欠陥を是正をして、実際に真のだれもかれも協力ができる体制の新医療費体系というものを成立される、今まで私どもが見たところによりますというと、結局新医療費体系というものは額がきまっている、各個人の収入も同じだということならば新医療費体系じゃない。サルの話でありまするが、朝三つやって夕方四つやるというとサルが反対した、ところが朝四つやって夕方三つにしてやった、朝三暮四ということと同じであって何らの進歩がなく、むしろ手数をふやし欠陥をふやすというような点があるだろうと思うのであります。この点は一つ御是正をぜひ願いたいと思うわけであります。
  90. 山下義信

    理事山下義信君) ありがとうございました。それでは次は東京都杉並区医師会の佐藤次夫さんにお願いをいたします。
  91. 佐藤次夫

    参考人(佐藤次夫君) 私は耳鼻咽喉科を診療科目といたしておりまする末端の一開業保険医というふうな立場と、それからまた日本耳鼻咽喉学会の一会員であるという立場をかねまして、新医療費体系についての陣述をこれから行いたいと存じます。  前段に学会の考え方を申し上げたいのでございまするが、私は日本耳鼻咽喉学会を代表してということじゃなくて、耳鼻咽喉学会はこの問題についてどういうふうに考えておるかということを御紹介申し上げるという点にとどめるわけでございます。学会といたしましては、一昨年新医療費体系発表になりましたときに、すでにこの医療費体系というものは医学、医術の進歩発展を阻害するもので、その意味において絶対反対するというふうな決議を作りまして、関係各方面に陳情を行なったのでございますが、そのときに今後こういうことをいたしますにつきましては、厚生省は必ず学界に御相談申し上げるというふうな約束がされておったのだということを過日、四日前の十二日でございますが、日本耳鼻咽喉学会の社会保険委員会がございました席上、慶応の西端教授、社会保険委員長をしておられるのでございますが西端委員長から話されたのでございます。しかるにもかかわらず、今回の新医療費体系の作業につきましては、一言半句の相談も学会は受けておりません。そういうふうなところから考えまして、しかもでき上ったものを拝見いたしまして、まことにこれは遺憾で、今回もその十二日の社会保険委員会に引き続きますところの緊急理事会におきまして、新医療費体系による点数案には絶対反対するというふうな決議をまた作りましたので、日ならずして国会の諸先生方のところにもその趣旨に沿った陳情炉おそらく行われるだろうというふうに考えられます。その根拠といたしますところは、要するに今度の新医療費体系、今度といわず一昨年以来の新医療費体系の構想がございますが、これには三つの基本的な条件がございます。第一番には物と技術分離するという考え方、また二番目が総医療費ワクを変えないということでございます。第三番目が各診療機関別、それからまた各科別の診療報酬に大きな変動を与えないということであると存じます。その第一番目の物と技術分離するという考え方、その理念そのものにはこれはおそらく何人も反対ではないと存ずるのでございますが、第二番目の総医療費ワクを変えないのだ、これは国民経済というものも当然考えなければなりませんが、およそこういう新しい医療費体系を組むに当りましては、総医療費の中から薬価であるとかあるいは衛生材料、その他の値段というものを取り出してしまって、その残ったもの、その中で再配分するという形は決して好ましいいき方ではないというふうに考えられるのでございます。と申しますのは、およそ各国の例を見ましても、生活費の中に占める医療費のパーセンテージと申しますか、ウェートというものはおそらくある定率を持っておるのだろうと考えられます。そういうふうなことを比較いたしましても、各診療行為群ごとの適正なる対価と申しますか、診療報酬というものがまずきまりまして、物の対価をそれに加えたその総和があらかじめ設けられておるところの総医療費ワクからはみ出そうが、あるいはその内輪で済もうが、これは別問題であろうと考えざるを得ないのでございます。しかも医学、医術というものを尊重したというふうに言いながら、実例を申し上げますとたとえば耳鼻咽喉科方面におきましては咽後膿瘍、瘍後膿瘍と申しますのはのどの突き当りのところ、特にこれは乳幼児に多い病気で成人にはございません病気ですが、そこが化膿いたしますと非常に危険な病気でございます。この病気につきましては、切開排膿ということがもう喫緊な救命的な手術になるわけでございますが、この医療費体系の中で、じゃどれだけその技術料を評価しておるかと申しますと、この技術の価値というものは、医科大学を卒業してインターンが一年ある、それから医師免許状を取った、そうして耳鼻咽喉科の修業を一年いたせばできる手術であるというふうなことで、いわゆる1+アルファダッシュこの中のアルファはゼロというふうに考えておられるのでございまするが、対象が乳幼児であるという点、しかも用意なしに切開をいたしますると噴出いたしまする膿のために子供を窒息させる、窒息死に陥らせるというふうな危険がございますので、非常に慎重に、子供の頭をたれ下げまして、さかさにして切開をしてのどの方にそれが行かないように防ぎながら気をつけなければなりませんし、助手を使って出てくる膿を片っ端から吸引いたしますということが絶対の要件でございます。それに与えられました技術指数というものが、物の方が十六点、つまり甲地で申しますると東京の例で申し上げますると二百円というものが与えられておりまするが、その医療技術に対する対価といたしましては四点、わずかの五十円でございます。また気管切開におきましては、これも特に喉頭ジフテリイというふうな病気の場合に、窒息を防ぐために少しでも早くその目的を達するという意味で非常に時を尊重いたさなければならない。早ければ早いほどいい。時を失すれば殺してしまうというふうな手術でございまするが、その場合にもM+N という経費の方は四十点、五百円というものを見積っておりまするが、その手術を施行する技術料に対しては十五点、百八十七円五十銭でございまするか、そういうふうなわずかな値しか認めておらないのでございます。またへんとう腺の摘出手術というものがございまするが、この場合も、従来は一側が五十点、六百二十五円である。両側やった場合には倍に計算されたのでございまするが、今度の新医療費体系によりましては一側が五十点である。両側一時にやったときには、残った片側につきましては半分の二十五点しか与えない。総計いたしまして七十五点しか与えていないというふうに解釈されておるのでございます。厚生省説明をそのまま受け取りまするとそうなるのでございまするが、しかも、じゃあへんとう腺摘出手術についてはどれだけの経費が必要かということになりますと、厚生省の計算によりますると、これは二十八点である。二十八点というのは三百五十円になりまするか、三百五十円の経費がかかるのだ、しかるに二十八点の経費がかかるのに反対側の手術を行なった場合には二十五点しかくれない。つまり三点の経費を割れ、一側でやめておけば五十点くれまするが、両側一時にやりますると、三点の三十七円五十銭というものを損し広ければならない、経費を割るということになっておりまして、これは技術の尊重ということは絶対に考えられないのでございます。こういう意味におきまして、学会といたしましては今度のものは絶対にいただきかねる。従いましてここ二年でも三年でも時をかしまして、十分関係各学会に厚生省といたしましては相談されて、それで外国の医界から見られても恥かしくないような医療費体系というものを打ち立ててもらいたい。そのことについては各学会とも十分なる御援助なりあるいはアドヴァイスなりいたしたいというふうな考え方でございます。  それからまた一昨年の新医療費体系におきましては、当っている当っていないは別問題といたしましても、一応二十七年の三月と十月に医業経済調査並びに医業経済精密調査というものを行いまして、ストップ・ウォッチを片手にある医療行為については物の値段が幾らかかる、経費が幾らかかる、そのほかに医療技術費でございますか、医療技術報酬でございまするか、そういうものを 1+アルファ’難易度に単位時間の医師技術料、つまり一分間四円三十六銭というあれでございます。それに所要時間、こういうものをかけて出しましたのが初診料の六点であり、そしてまた再診料の四点であったわけでございますが、これをすべて御破算にいたしまして、これは厚生省の御説明によりまするとポリシィだそうでございまして、初診料を十二点とし、再診料を一点削って三点にいたした、注射料の場合は一番端的な例になるかと存じますが、注射の場合にも、一昨年の原価計算によりまして静脈注射については三点というものが必要だ、皮下筋肉注射については二点が必要だということが出ておったのでございますが、今回はそれを一点づつ削った、しかもその説明が一昨年と変えた理由といたしまして、注射料の中に含まれておりますところの診察料的部分を取り除いたというふうに言っておられるのでございまするが、一昨年の三点、二点というものが実際にストップ・ウォッチ片手に調査いたしました原価計算から出て参ったものでありますならば、その中には絶対に診察料的部分は入っておらないはずでございます。厳密にこれは注射に要する経費と、そして技術料のみが入っておったわけでございまして、その中にかつそれに一点づつの診察料的部分があったということはどうしても考えられない、理解できないところでございます。また諮問と申しまするか、お問い合わせを受けました中に今度の新医療費体系というものが医業収入にどういうふうな影響を与えるかというふうな条項がございましたので、各参考人から今度の新医療費体系が産業経済に及ぼす影響というものがたくさん例として出されておりますが、これは医業経済を脅かすばかりじゃなく、その他に国民医療というものが崩壊するのじゃないかというおそれが私は多分にあると存ずるのでございます。また一面医業経営が崩壊いたしまして、そこに国民医療というものがあり得ないというふうにも言えるかと存じます。その意味におきまして、こういうふうな新医療費体系というものが強行されるということは、われわれの収入減、ひいては施設の向上であるとか、あるいは新しい機械の購入費というふうなものもここに出て参りませんために、国民医療というものは実際大きな打撃というものを間接直接受けざるを得ないということを憂慮せざるを得ないのでございます。また、問題が離れるかもしれませんが、私は新医療費体系というものがある前に、あるいは並行的に新医療体系というものがなければいかぬのじゃないかというふうに考えるのでございます。よく国民経済ということをおっしゃられて、そのために国民の総医療費を変えないというような前提条件が立つのでございまするが、しからば国民医療を守るために、あるいは国民経済医療費というものが大巾にふくれることによって悪い影響がいかないようにということであるならば、果して合理的な医療行政ということが行なわれているかどうかお考えいただかなければならないと存ずるのでございますが、早い話が東京におきましては、飯田橋に厚生年金病院というのがございます。あれは一病院十三億費やしております。ベット数は五百足らずと思っておりますが、一ペット当り二百数十万円という巨額なものでございます。しかもあの附近には日本医大の第一医院もございまするし、また国立第一病院もある、また河田町には東京女子医大の病院もございます。線路をはさみまして、あすこに逓信病院、警察病院もあるというふうな所に、ああいうふうな輪喚の美を誇った大病院を建てる必要があるかどうか、私をして言わしむるならば、一昨年の結核白書を見ましても、国内に三百数十万という結核患者がいる、しかもその中に百三十七万人という入院を要する患者がある、にもかかわらず結核病床というものは十七万八千床しかない。つまり入院を要する患者が家族感染という危険をそのままほったらかされて自宅療養をやっているのだということがございますので、実際に厚生省がこのことに思いをいたすならば、一億円くらいをもって十三の結核病院を建てられた方が、国民の保健衛生上からもはるかにこれは重点的な金の使用の仕方ではないかというふうに言わざるを得ないわけでございます。また最近私ある医政雑誌で読みましたのでございまするが、金沢市には従来から金沢大学の病院がございます。そのほかに市立病院があります。そのほかに三種の公的医療機関が建ち、あるいは建ちつつあるということであります。また一方におきましては、これは所管が違うという意味でございましょうか、労災保険病院、労働者災害補償保険による病院が建つ、また自衛隊も自衛隊自身の病院を建てようとしておるというふうに、全国に無医村があるとか、あるいは医師が都市に集中するというふうに言われながら、公的医療機関の配置というものが果して適正であるかどうか、その間にむだな費用の使い方がないであろうかということも一つあわせてお考えおき願いたいと存ずるのであります。
  92. 山下義信

    理事山下義信君) ありがとうございました。  それでは次は東京歯科医師会専務理事宮沢進さんにお願いいたします。
  93. 宮沢進

    参考人(宮沢進君) 本日、本委員会公聴会に出席いたしまして、御諮問の事項に関しまして発言の機会を与えられましたことはまことに光栄の至りであります。東京都歯科医師会会員四千名を代表いたしまし工厚く感謝の意を表するとともに、委員各位に対し最大の敬意を払うものであります。時間の点もございますので、可及的簡単に御諮問の事項に従いまして述べさせていただきます。  第一項に関しましては、御諮問の「考えるか。」という点につきましては考えられないのでございます。今回の医薬分業法の実施に伴いまして、適正なる医療報酬を算定するという必要に迫られまして、厚生省は臨時診療報酬調査会に諮問いたしまして、いわゆるS式方程式によって物の対価技術料を分離いたしまして、適正なる医療報酬を評価するという根本原則の答申を得たのは御承知通りでございます。これがS式方程式で、S=M+N+(1+アルファ)gtであります。しかるに当時の新医療費体系におきましては、この式の中の最も重要であります、アルファ、g、t、についてはすべてわれわれ歯科医師の納得し得ざる一方的な価をもって決定をいたしております。  以下この点につきまして少しく申し上げますが、今回発表せられました新医療費体系に基く点数改正案におきましても、ほとんどが前回の医療費体系の思想、構成をそのまま踏襲しております。若干の補正をなしたと申しておりますが、それは昭和三十年の三月と九月の社会医療調査及び同精密調査に基いて作成せるものと言われでおります。従ってこのアルファ、g、tについて申し上げますと、まずS式方程式の中のアルファ、すなわち診療行為ごとの難易差を全然考えていない、放擲をいたしまして考慮していないことであります。  第二は、昭和二十七年の十月の調査に基きまして、歯科医師一分間の稼働対価三円八銭、これをそのままスライドしたということであります。その後の経済状況その他については何ら考慮を払ったということはまだ寡聞にして承知せざるところでございます。この決定に当りましては生計費のみに基礎をおいております。その他の因子については何らの考慮を加えておりません。まことにずさんなるもので、この三円八銭についてはとうてい私どもの承服し得ないところであります。ちなみに私ども東京歯科医師会新医療費体系研究委員会調査研究の結果によりますれば、適正なる歯科医師の一分間の対価は六円七十八銭となることをあわせて申し上げたいと存じます。また技術料の算定におきましてはアルファ、難易差を考えずに、ただ単に診療に要した時間と、一分間対価相乗積のみをもってこれを行なったことは、歯科の特殊性を顧慮せず、また機械が物を生産するようにこれを考え、真の技術の尊重ということは一顧だにされていないのであります。如上の見地から今回発表せられました新医療費体系は随所に非科学性、非論理性を露呈してをります。われわれ歯科医師の診療意欲を極度に抑制する結果となることを考えますと、何がための適正化であり、合理化であるかまことに不可解なことでございます。  また第二項の点につきましては、全然考慮されておりません。この方に関しましては先ほど申しました点と重複する点もあるかと存じますが、この新医療費体系の基本原則でありまする物の対価技術料を分離するということ、これは臨時診療報酬調査会も、適切なアルファを決定して初めて適正ね医療報酬が打ち出されると答申しておりますごとくに、これを考慮しないで診療報酬を決定することは無謀であります。  すなわち医療技術の算定におきましては、一般労働技術料とこれを同じく見て、少くとも人体を対象といたします医療行為ということを全然無視して、単に時間測定によってこれを算術計算的に割り出したということに過ぎないものであります。またこの項に関しましては、総医療費ワクがこの新体系実施後も変化なしという仮定のもとになされたために、最小限度の物と技術分離を行い得なかったのであります。単なる点数の配置転換に過ぎないものでありまして、この点につきましては第六項のところで述べたいと存じます。  また私ども歯科の特殊性の一面からこれを考えましても、歯科医療は一般の医療と異なりまして、疼痛、腫脹等の症状が軽快いたしましても、歯牙というかたい組織の疾病は、歯の一部あるいは大部分が欠損するとか、または全然抜けてしまうために、必ずと言っていいくらいに実質欠損を伴うものであります。またこれに随伴いたしまして起ります発音、そしゃく機能の回復、こういったものをもちまして初めてなおったということになるのであります。しかしたびたび申し上げてありますように、このアルファを全然考慮しない結果、私ども歯科医療の重要な部分であります義歯、金属冠、インレー、充填等の技術を必要とする点数を著しく低下させて、私どもの診療意欲を喪失せしめんとしているのでございます。  第三項、これは前段の「各診療行為の種類別頻度変化がなければ国民医療費は変らない」ということ、おそらく総医療費が変らないということになりますればその通りでございます。しかし後段の「各診療行為の回数に変化は予想されないか。」というこの質問に対しましては、次のデータに基きまして予想されると申し上げるのでございます。  すなわち私ども東京歯科医師会新医療費体系研究委員会の第三分科会の発表じた診療行為群の頻度、これにつきまして調査いたしました結果、初診及び注射におきましては、厚生省発表いたしたものは百七十三、東京歯科医師会におきましては、四百二十七プラス二百五十四であります。また処置におきましては、厚生省では一万八千八百七十九、東京歯科医師会におきましては、四万一千九百二十七プラスの二万三千四十八でございます。その他手術、充填、補綴におきましても、相当頻度数の変化がみられるのであります。これはただ東京という一つの都市生活者の文化性のみを考慮に入れましても、頻度の無変化ということは申せないと思うのでございます。  第四項に参ります。第四項、この御諮問はなかなかむずかしい問題であります。今回は新体系だけでなく、これに重要な関連を持つ一連の赤字対策、これも当然からみ合うものと考えます。一応新体系のみに考えを置きましても、この体系を構成いたします重要因子であります難易差のアルファ、一分間に対する報酬g、診療行為の時間t等にみられる矛盾・非合理性を考えますと、国民医療費負担軽減を求むることは、まことに急にいたしまして、国民医療の低下という重大なることが起るのではないかと考えられる次第であります。もしかかる状況に相なりますれば、角をためてかえって牛を殺すの言葉のごとく、国民の上によってくるであろう将来の禍根については感なきを得ないのであります。なお新体系実施によりまして、各医療機関所得には変化なしということでありますが、昭和三十年十二月、診療分につきまして東京歯科医師会が行いましたこの新医療費体系改正点数と、現行点数の試算におきましては、対象は無作為抽出による百八十八個所でございます。総件数は一万二千六百九十六件、総点数は現行におきましては百三十八万九千四百七十七点でございます。これを新点数におきかえますと、百三十二万七千二百十点五という数字でありまして、その減点は六万二千二百六十六点五であります。これをパーセンテージにいたしますと、マイナスの四・五%であります。またこれと同様な試算を岡山県におきまして行いまして、マイナスの四・九%、兵庫県におきましてはマイナスの二・八%となり、パーセンテージの増を来たすという厚生省の資料は納得しがたいものがあります。  第五項におきます保険経済につきましては、現在確実なる予測をなすことは不可能でありますが、国民医療の低下、医療担当者の意欲喪失と、前述せる試算の結果によりまして、発足短期間においては、経済の縮小を来たすのではないかと思われます。しかしまた半面、事務手続につましては、実に憂慮すべき点があると考えるのであります。医療担当者が常に数字上の問題につきまして原価計算という点から頭を悩まし、点数表、索引に現在より過重の労苦を払わなければなりません。基金におきます審査におきましても相当大なる事務量の増加を見ることが必然なりと言われております。現在におきましても保険医は社会保険診療に対する保険事務に忙殺されまして、真の医療をなすというエネルギーをその方面にさかければならない現状でありながら、これ以上のデクス・ワークが増加するということは一考を要することであろうと考えます。  第六項のこのうちの検査料調剤料注射料手術料等に関しましては、医師会の諸先生方の御意見と同感でございます。初診料、再診料、処置料、補綴料につきまして少しく申し上げたいと存じます。新体系初診十二点ということはいかなる因子によりまして構成せられたものでありましょうか。これは中央医療協議会におきまして厚生省側の説明によりましては、科学的に明快なる答弁はまだなされておりません。歯科におきまして大体一初診行為ごとに八点が増加しております。この十二点への作業完成のために、すべての各診療行為の現行点数八%をとってこれにあてたと申されております。何がゆえに八%をとったかということに関しましては、何ら説明がなされておらないのであります。また再診につきましても歯科においては、治療別再診であるとの考え方から、再診を認めずということでありますが、長時間を要します診療行為、たとえば充填の際の模型の形成、採得、アルマガム充填の研磨、義歯製作中の各種行為に対しまして、再診療を認めずということは不満を禁じ得ないのであります。  ここで歯科診療の特殊性につまして、重点的に言及いたしますと、まず第一といたしましては御承知のように、鋭敏な神経繊維を包蔵しております実にかたい組織と、常に狭い視野、そういった中で診療を行わなければならないのであります。また前に述べましたように、歯牙の崩壊と欠損というものによりまして、いろいろ起きて参ります発音機能とそしゃく機能に対します回復をはかるということ。第三といたしましては容貌、特に百人百色という各人特有なる審美的なる容貌の回復。四といたしましては、理学及び工学と医学の総合学問であるということ等であります。  次に処置料はどうかと申しますと、現在の原価計算によりますと、歯科医師の犠牲のものとにとれがなされているということ、すなわち現在の点数においての処置はほとんどが赤字に終始していると言うことができます。しかるに厚生省の新点数の設定経過によりますと、原価計算上普通処置六・一点は五点となっておりますが、この中の八%に当るものはこれを初診料に移しまして、その他の約〇・五点はその他に配分したというのでありますが、かくのごとくに真の原価計算によりまして出たものまでもこれを不当に削って、理由の明らかでない他の面に移したという一事をもってしましても、今回の新医療費体系の新点数作成基礎がいかに非合理性であるかということを御理解願えると思います。歯科医師会が犠牲のもと、すなわち赤字のもとに果しております歯科的処理に対しましては、十分なる考慮がなされてしかるべきでないかと痛感する次第でございます。  また補綴料につきましては当初より申し述べましたごとくに、この難易差の無視、いわゆるアルファの無視と、一分間に対しまする報酬g、診療行為の時間tに対します不当なる計数によりまして著しき低下を見たのでございます。歯牙は御承知のように上下顎二十八歯でございます。一顎は十四歯ずつでありますが、十四歯欠損の総義歯は今回の点数におきまして百五十八点、金額に換算いたしまして千九百七十五円でございます。今までの現行点数は二千七百円でございまました。十三歯欠損の義歯は今回の点数改正によりましては百十一点、千三百八十七円、今までの点数におきましては二千五百五十円であります。しかし今回におきましては、この一歯の差におきまして、十四歯の総義歯におきましては百五十八点でございますが、十三歯の欠損の義歯は百十一点であります。一歯の差で四十七点の差が出ております。しかるに基本原則におきましては一歯増すごとに三点、現行におきましては十二点であります。四十七点と三点の差の矛盾はどうしてこういうふうな点になったのでございましょう。また一般外科におきましては、頻度の少い手術に対しましては大幅な増点をしている仕組みが、歯科においてもなされてよいのだと考えます。要するに、補綴の潜在技術料の多き部分の平均化ではなく、これを全く無視したという現実に目をおおうわけには参らぬのであります。百人百様の口腔状態はそれぞれ異はる補綴を要求しております。このように各特徴に合せまして製作することの複雑と困難性を単に時間によって解決せんとするととは、義歯が機械により製作されるというような考え方でありますし、歯科医師に対します認識の欠除というほかはありません。  最後に総括的に結論を申し上げたいと存じます。このたびのいろいろ起きております問題につきましては、非合理的な新医療費体系に基く改正点数案を強行して、赤字対策という一連の施策の網によってこれを完遂しようとし、また保険財政上の現在の赤字を克服せんとしていることによるものでありまして、われわれ医療担当者といたしましても、納得のいく赤字克服に対しましては協力を惜しまないのでありますが、現在のごとく医療報酬の大革命ともいえますこの難事を遂行せんとするに際しましては、ただ秘密独善の中に事を進め、また発表するや、僅々三カ月という短期間にこれを押し通さんとするような非民主的な方途にはふんまんを禁じ得ないのであります。すべての関係者が大乗的な見地に立脚いたしまして、十分なる日時をかけてこの研究を行いまして、円満なる新医療費体系の発足を念じまして、私の発言を終ります。
  94. 山下義信

    理事山下義信君) ありがとうございました。  それでは参考人の方の御意見の陣述が済みましたから、ただいまの御意見に基きまして御質疑のある方はお願いをいたします。
  95. 竹中勝男

    竹中勝男君 午前、午後にわたりまして、それぞれの専門の分野を代表される専門の権威者の方々のこの新医療費体系に対する陣述をお伺いいたしておりますと、どうも一人として新医療費体系に、積極的にこれが実施を肯定される方がないのに実は驚いておる次第であります。私はもっと厚生省の当局の方々がりっぱな準備と力をもってこの体系を発表されたものと信じておるわけなのでありますが、十数名の方方の陣述を聞いておりますと、まあ厚生当局はおサルにリンゴのえさをやる人のようにも聞えるような態度で驚いているわけで、どういうように判断していいか、実は私はそれを第三者として判断に迷っておるわけです。  そこで一、二お尋ねいたしたいのですが、中野さんにまずお尋ねしたいのですけれども、中野先生は非常な勉強家なことを私はよく知っておりますし、また慎重な学徒であったことも知っております。この統計の点は厚生省発表眼科では四%収入の面でも増加するというふうな結果が出ているのに対して、京都であなたがやられたのは一五%の減収になる、大阪では一八・一%の減になる、香川県では二子五%の減に一なるこれは厚生省の統計と、それからそれぞれやられたところの統計の対象といいますか、データが違うのだ、対象のとり方が違うのだという点でも御説明はわかったのですが、しかしこれはあまりに統計をやっているものの常識としては、調査方法に、どちらかに非常な欠陥があると私は見なければならないように考えております。で、これはとにかく対象が違う、対象のとり方が違う、選び方が違うということで一応はわかったわけでありますが、究極的には私は非常に疑問を両方に持たざるを得ないわけでありますが、ただこの眼科の専門の方が、私は聞き落したのですが、白内障と、それからもう一つ何かそういう大へんむずかしい病気というものに対する厚生当局と眼科専門医の見解が逆になっているということについては、なぜそういうふうに逆の判断を厚生省がされるのか、あなたはなぜそういうふうに厚生省が判断をされると思われるのですか、まずその点。
  96. 中野信夫

    参考人(中野信夫君) まず第一番に厚生省のお使いになった入院設備のない眼科の分の数字が、これは対象は三月調査に出ております対象が四百十円というような低い請求書の対象ばかりをお選びになっておる結果におきまして、私たちのは対象が五百六十円、そういうような私らの調べました対象はそんなに上っている。そんな場合私の方は下る、厚生省の方は上る、どちらが正しいかという点に、両方に疑問があるとおっしゃいましたが、私たちは私らの方が正しいと思っております。と申しますのは、厚生省の四百十円というものは、これは現在眼科入院設備のあるところも入院設備のないところもひっくるめまして、そうして出しております。月々三十万枚の請求書がございますのですが、これをきちんと一々その集計ができてくるわけであります。その方の集計がやはり私らの数字に非常に近い五百四十円という数字が出ております。従いまして、私らの方の数字の方が一般の現在行われておる眼科の診療に近い内容を持った対象が私らの対象です。どうしたことか、厚生省の三月おやりになったいわゆる社会調査、これを基準にして新医療費体系がふえるとか減るとか言って計算されておりますが、眼科のベットのない方が四百十円、ベットのあるのを計算いたしますと、これもたった一点上りの四百二十何円、こういう低いところばかりお選びになっておる。こういう点にどうしたことか、つまり調査の対象の選び方が全国の水準の非常に低いところをお選びになったということは私はふに落ちない。従いまして、この点に関する限り、ほかの点もいろいろございますが、少くともこの点に関しましては、新医療費体系をお作りになった基準になっております、いわゆる厚生省の金科玉条と申しますが、あの三月の調査自体に僕は大きな欠陥があるのじゃないか。従いまして厚生省調査と私らの調査と食い違いが出てくるのではないかと、こういうふうに考えております。  それから第二段の点は、白内障と申しますのは、これは老人になってくると起りますめくらでございますが、これは一名開眼術とでも申しますか、これの手術をやりました結果、〇・九とか、ときによって一・九になるのでありますが、これは非常に眼科でも代表的な手術でございますが、これは従来は二百五十点、それが今度では二百点ないしは百八十点と二様に分れておりますが、そういう工合に非常に下げられております。  それでもう一つ申しましたのは、虹彩切除と申します茶色の目をちょっと切る手術でございますが、これは百七十点であったのが非常にこれはデリケートな手術だというので上げていただきましたのが二百点になっております。そうして幾ら上げましても、この虹彩切除という手術によりますと、どうしても眼科の専門家が考えますと、開眼術ではこの白内障の方がはるかに評価されべきであり、その結果ということにについては、一つ間違えばめくらになり、一つ成功すれば優秀は視力を得るという点につきましても、その技術的な面におきましては非常に大きく評価されなければならないのでありますが、それが逆になっておる。こういう点はこれはここで申しましても並んでありますが、眼科の専門医が考えますと非常に矛盾を感ずるのであります。もともと眼科の白内障というものは、その虹彩切除をやりまして、それから中の水晶体を取り出すということで、当然その白内障をやる場合には虹彩切除をやって出すということになっておったのですが、この場合なんかは前者の手術を行うためには、後者の手術を行いまして、しかる上にまたプラス・アルファの手術を行わなくちゃいかぬにもかかわらずその後者の方が低く評価されている。こういう点がどうも眼科専門医の方々は、末端の私たちのような未熟のようなものから各大学の眼科の教授あたりまでが口をそろえてこれはおかしいということを言っている次第であります。専門的なことばかり申し上げますが、評価の仕方が非常におかしいという点があるということを、その点で特にはっきりしておりますので、代表的にこれをあげまして御説明申し上げた次第であります。
  97. 竹中勝男

    竹中勝男君 私がわからぬのは、なぜ厚生省にも有力血医学の専門家がおられるのに、眼科の専門の人とそういうように評価が違ってくるのでしょうか。なぜですか。
  98. 中野信夫

    参考人(中野信夫君) 厚生省にもお医者さんがおられますし、技官がおられます。その方もかっては眼科をお習いになったこともあったかと思いますが、専門家であるかどうかということは私は知らないのでありますが、専門家はおられないだろうと存じます。また専門家がおられるといたしましても、現在技官としてやっておられる仕事は、どうしても実際の臨床から遠のきます。この点で考え方が非常に変ってくるということ、それからそのほかのやはりいろいろなモーメントがありますから、点数作成のときにはほかの要素をやはり考えますので、そういう矛盾に気がおつきにならなかったのじゃないか。言いたいことは、やはりこういう実際に手術に当っておる者の御意見を徴されてもいいのじゃないか、それにはちゃんと機関があり、その受け入れ態勢があるにもかかわらず今度は独善的にやった。しかしてこれを押しつけられたということに対して非常に不満を持っている、こういうことを私は申し述べたいのであります。
  99. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほどからいろいろな優秀なる御意見を拝聴しておりますが、これに対して厚生省の御感想を今お聞きするという段階ではありませんが、ただ数字の上で一、二私疑問に思っておりますので、先ほどお話のありました一剤薬を合わせるのに二秒なんぼとかというようなお話がありますし、また国民健康保険健康保険とあわせたために客体点数が減ってきたという御意見があったようであります。これに対して厚生省の御当局はどんなふうにお考えでありますか。ただ数字の問題だけ、意見の問題はまた別の機会に拝聽させていただきたいと思います。その数字がどうしてそうなってくるか、御見解はどうでしゃうか。
  100. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 今二つ申されましたので、意見は別といたしましても、数字の御説明についてお考え方がちょっと違っているのじゃないかと思う点だけを申し上げますと、栃木の成田さんでございますか、調剤の時間が医者が一・八秒で調剤する、これは忍術だというふうにおっしゃったのでありますが、これは成田さん御自身は十分ご存じじゃないかと思うのでありますが、お聞きになった方は妙だとお考えになりますのは、これは医師が調剤した場合もございますし、それから看護婦さんが調剤した場合もあり、薬剤師さん方が調剤した場合もあり、これはたとえば百剤でございますれば、そのうちの一剤だけはお医者さんが調剤なさった、そうして八十剤は看護婦さんがやった、それから十九剤は薬剤師さんが調剤したというような場合に、一剤平均に直してゆきますと、どれくらいこの調剤にかかったかということでありまして、たとえば百剤のうちでもお医者さんが実際に調剤されたのは一剤だけしかしていない、それを一剤平均に直しますと、百分の一に縮んでしまうというような事情がここに出ておりますので、さようにお考え願いたい。そうしますと、この医師の一秒八それから看護婦さんのやる、それから薬剤師のやる、その他のやるというそのおのおのの全部を加え合わせますと、平均一剤をなれた薬剤師さんもなれない看護婦さんもみんな平均して現在この調剤に当られた方の総平均で一剤にどれくらい時間がかかったかということが、この合計になるのであります。それにいたしましても、これに一分半かくらいで、非常にこれもやはり相当な名人芸だとは思うのでありますが、それに対しましてここで看護婦さんの一剤当りの調剤料が一円五十六銭と出ておりますが、これが三五・七秒になっておる。ということは、看護婦さんの一分当りの報酬医師の大体半分以上というふうにここで見積られているのでありますが、これは私も、もう一ぺんほかの資料についてあれしてみませんと、このへんの計算もどうかと思のであります。  それからもう一つは、一剤ごとに調剤をいたします場合には相当手数がかかるのであります炉、これは極端なまた逆の面を申しますると、たとえば四日分、五日分というものを一ぺんに調剤をいたしますと、この一剤あたりの時間というものが非常に短くなってくる、かような事情も入って来ておるということでただいまお示しになりました数字を私どもも検討してみたい、こう思っております。  それから国保と健保と合わしたのはおかしいじゃないかというような御意見で、これは意見は申し上げませんけれども、私ども考えましたのは、大体ただいまの社会診療と申しますか、こういうものは国保も健保もみんな含んでおるというふうに考えまして、健保ではとんとんになったのだけれども、国保の方では非常な支払い増になったというようなことでも困ると思いましたので、私どもとしてはこの両者をやはりにらみ合せたわけでありまして、ただしその際に検討をいたします際は国保は国保としてこれが一割も二割もはね上る、健保は健保として一割、二割下っちゃうというようなことになっては、これは大へんだと考えたのでありますが、私ども大体の幅を大体三%程度の上り下りくらいならばこのおのおのについてもまずまず大影響はないというふうに考えられるのじゃないか、さらに時間でもございますれば私どもこの三%というのはもう少し小さくするようにいろいろ作業ができたと思うのでありますが、おおむね三%くらい以下にこの上り下りが縮んで参りますれば、この辺のところで皆さんのお目にかけて御意見を拝聴したい、こういうふうに考えた次第であります。
  101. 榊原亨

    ○榊原亨君 そういたしますと、この医療費をやりますと、医療法違反をやって看護婦に薬を合わせさせるということを大体お認めにならなければならんのですが、この問題についてはまた日をあらためて何いたします。
  102. 竹中勝男

    竹中勝男君 これは私も陳述を聞いていると、いろいろ厚生当局に質問したいことがたくさん出てくる。しかしきょうは参考人諸君の御意見を聞くということが目的なので、なるべくそれにしぼって議事進行していただきたいと思います。
  103. 山下義信

    理事山下義信君) まことにその通りでありますが、関連しましてこの際厚生当局の意見をお聞きにねるのが適当と思われることがありましたら、差しっかえない程度で発言を許します。竹中委員発言して下さい。
  104. 竹中勝男

    竹中勝男君 もう一点、それでは成田さんの御発言が大へん理論的にも整然と私には受け取れたので、非常にこれは重要な陳述であったと考えております。それで要点はこういうように理解してよろしいですか。軽い病気を適当に治療しておれば医師の収入は大体においてよくなるけれども、重い病気を熱心に治療すれば医師の収入というものは減少してくる。これは個々の病気についても、あるいは個々の医者についてもそういうようね大まかな結論が出せると新医療費体系のもとにおいては考えていいですか。
  105. 成田至

    参考人(成田至君) それは私がこういう疑問を持ちましたのは、先ほど山下先生がおっしゃいましたように、厚生省で御発表になっております数字と医師会からいろいろ集まって参ります数字との間にあまりに違いがあり過ぎる、たとえば大阪を今例にとって参りますと、大阪は非常に中心都市でございます。周辺に衛星部市はたくさんございますので、大阪の専門的な眼科の方のところには比較的むずかしい病気が集まってくるだろう、ところがそういうところから出てくる数字を見ますと、非常に減っている。これは何か原因があるのじゃないかと思いまして、私は原価計算をいろいろ見ておりますと、先ほど申しましたように診療所に関しまして申しますと、治療のほとんどを占めているものが経費を割っておる、こういうことになりますと再診料というのは二回目からでございますからへ再診料を請求いたしましてそのあとに欠損になっておりますものが幾つつくかということによりまして、その日の費用というものがきまってくる。こうなりますと先生が先ほどおっしゃったと同じように軽い病気を見た場合には比較的厚く報いられるけれども、重い病気を受け持ったら非常に少くなって来まして、机の上で計算すればその晩働いたということがみな罰金となって現われてくる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  106. 竹中勝男

    竹中勝男君 なお成田さん先ほど厚生省医務局長の申したことについて何か……。
  107. 成田至

    参考人(成田至君) それは医務局長のおっしゃることはよく存じております。存じておりますけれども、今榊原先生がおっしゃいましたように、私は実は医薬関係審議会がございましたときに傍聴しておりまして、そのときに薬剤師側の委員でございます野澤委員から再三再四当時の薬務局長に対しまして、現在はどうも看護婦さんが調剤しておるような傾向も耳にする、四月一日から医薬分業実施されましたならば、この医薬分業というのは、その専門の技術の尊重ということを非常に重く見ての措置でございますから、当然四月一日からはそういう点を重く見て、いろいろ行政的な措置をおとりになるかということを繰り返し申しましたところが、当時の高田局長も、そのように特にきびしく考えるというふうな御答弁がございました。従いましてこの原価計算を見ておりますと、私も考えましたのは、こういう数字が出てくれば、これは多分看護婦さんがおやりになったんだろうと、こういうことを想像いたしましたけれども、新しく分業が実施されまして、それに対しましてその専門の技術に対して評価するという、一番今度の医療報酬の中でも大切なところでございますので、調剤技術料というものに対しましては、専門の技術というものに対する評価がされているに違いない。そういたしますと、この今出ております資料の中で、法律で許されております調剤することができる人は、診療所の医師と薬剤師でございます。その時間を合計いたしますと二十五秒にしかならない、これはどういうことか、結局二十五秒というものは、もっと一分当りの費用の安い看護婦の費用で計算するとこういうことになるけれども医師の調剤の調剤手数料として換算いたしますと、薬剤師、医師の常識上考えられます時間に換えますと、これはもっと上るんじゃないかということを申したわけでございます。その私が申しました中で薬剤師の調剤時間だけは何円とす、一分当りの費用を何円とすとありますけれども、これは推定でございます。というのは、私四回ぐらい厚生省にお電話いたしまして、この薬剤師の一分当りの費用というのをお聞きしたのですけれども、どうしても教えていただけませんので、大体看護婦さんの費用よりは高いだろう、医師の費用よりは少いだろうと推定したのがこの二、三の資料でございます。その辺の数字は多少違うかもしれません。で、そういうふうに、これは私こういうことを特に取り上げたのは、もう一つ目的があったのでございます。というのは、厚生省原価計算には、いろんなこれは私言いたいことがございますですけれども、特に一番今日申し上げておきたいのは、今申しましたような一・八秒というものがなぜ出て来たかと申しますと、これは厚生省が行いました原価計算によって売価を決定するという方法でございますけれども、その原価計算の方式というものは事後原価計算という方式をとっておるわけでございます。今日の経済界におきましては標準原価計算というのがございます。事後原価計算というものは、今申しましたようないろいろ間違いが起って参りますので、売価を決定いたします場合には標準原価計算によるのが正しい、こういうことが通説になっていると、私しろうとでございますので、聞いておりますが、そういう事後原価計算の誤りがここに出て来ているのだ、これはほかにも出て来ておると思いますけれども、その一例として申し上げたわけでございます。そういうふうな計算をいたしまして、非常に大幅に原価を割る、そういうことを念頭に入れませんで、今申しました厚生省の何といいますか、魔術的な調剤時間というものによりまして計算いたしましたものでも七円六銭から十一銭、医師の費用としてあります十一銭を引きましたものがこれは経費でございます。経費の中の半分はこれは人件費になっておりますので、もちろん物の値下りということも多少ございますけれども、人件費のその上昇を考えますと、この六円九十五銭というものは、今日の値段にいたしますとこれは七円をこえているだろう、そういたしますと何と申しますか、経費を割っているということはやはり言えるのじゃないか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  108. 山下義信

    理事山下義信君) 他に御質疑も−ございますか。
  109. 相馬助治

    ○相馬助治君 成田参考人にお尋ねしたいと思うのですが、これは竹中委員からもお話がありましたように、参考人は一開業医の立場からこういうふうにしさいな統計を作られて、これを科学的に系統的に結果を出されたことに対して大いに敬意を表します。  で、この問題でございまするが、午前中山下委員から丸山参考人に対して、今日問題になっておりまするところの新医療費体系のいわゆる新点数についてこれを否とする場合に、これに対して医師会側としては対案を出し得るかという質問に対して、丸山参考人から至急にはそういうことはかなり困難であると思うという話がございました。私もその間の事情はそうであろうと思いますが、そこで一つとり得ることは、旧点数表の中から医薬分業の精神を入れて薬治料だけ差し引いて、そうして旧点数表を生かしてやっていったといろ場合と、それからいろいろ不満はあるけれどもといって、新点数表を押し付けられた場合とでは、これはいかがなことになりますか。もうちょっと角度を変えて言えば、こんな新点数表が押し付けられるくらいならば、旧点数表から薬治料を差い引かれたものの、そのものを与えられた方がよりわれわれとしては暫定的ですけれどもやりいいと、こんなふうな御意見をお持ちですか。これらについて一つ何かお考えがあったらお聞かせ願いたいと思います。
  110. 成田至

    参考人(成田至君) 私はただいまの一相馬先生のお話は、中央医療協議会におきましてもたびたび討議された問題だと存じておりますけれども、この医薬分業に特に関係のあるところだけ分離できるかどうか、こういうお話でございますね。私はそれはできないと思っております。これは非常に何と申しますか、まあいろいろ私欠点を申しましたけれども一つ考えに従いまして精巧に組まれておるものでございますから、その一番骨となりますものを抜きますと、全体の形がくずれてくる、こういうことは言えると思いますので、それは不可能だと思います。  それからもう一つ何か……。
  111. 相馬助治

    ○相馬助治君 そういうふうに明瞭なお考えがあれば、私それでいいのです。というのは、私が聞いたのは、お医者さんの中に、こういろ新点数表ならばむしろ薬治料だけ差し引いて旧点数表でやっていった方がいいのじゃないかというお話も聞いたのです。なるほどそれでもやむを得ないと思うが、理論的に言ってみて、それは実際にはなかなかその通りにはいくまいと私も考えていたから、そういうふうにお尋ねをしたのです。  で、ついでにもう一点聞きますが、ここ一、二日の新聞等に現われておりまするところのいわゆる妥協案というようなもの、そういうものについてあなたは研究されておりますか。またしていたならば、それに対する批判をちょっと聞きたい。
  112. 成田至

    参考人(成田至君) 私は読売新聞でございましたか、ああいう案が出ておりましたので、さっそくペンをとりまして、実際に私が先ほど申しましたように、新医療費体系に根本的な欠陥がございますので、それが払拭できるものであるかどうか、試算いたしましたけれども、これは絶対にできません。ということは、今の体系というものが非常に小さなワクの中で操作されておる。これはたとえて申しますと、女の方の洋服を例にとってみると大へんわかりいいのじゃないかと思いますが、というのは今の旧体系、今やっております在来の医療報酬の体系というものは七分袖のブラウスであります。それにひだのないスカート、短か目のスカート、それをはいたような形のものを考えてよろしいのじゃないか。ということは、七分袖の、手の先までおおっていないということは、検査料手術料というものをさしているし、足が出ているというのは診察料をさしていると思うのです。短いけれどもスカートにひだがあるということは、これは薬治料はり注射料をさしておると思うのです。この足りない布地がちっとも買えないというのが今の状態です。私は着物の作用は二つあると思うのです。このごろの寒さでは足が冷たいから足をおおってやらなければならぬ、この一つの作用と、もう一つの作用がある。それは寒さから防ぐことと隠すべきところを隠す、この二つの機能を着物は持っておりますけれども、足が寒かろうというので布を使いまして、足の方をおおうズボンを作ったところが、もともと生地が足りないためにおなかが出てしまっておへそがまる出しで、人さまの中で出してはいけないところを出してしまっているというのが、これが新医療費体系です。この新医療費体系というものは費用というものを、物のかかりというものをおおっていかなければならない性質を持っておるわけでございますけれども、経費を割ったということでおへそが出てしまっている。そういった問題のいろいろな矛盾が出てきております。私はそういうように考えております。修正案を検討いたしましても、おへそは絶対に隠れて参りません。
  113. 田村文吉

    ○田村文吉君 ちょっと中野さんに伺いたいのでありますが、中野さんのおあげになった数字を厚生省の当局としてはお認めになっていただける数字なのでありますか、たとえば大阪では一八・五減ったとか。香川で一三・五減るとか、京都では一五%減るとかいう数字ですね。厚生省で、三月調査というものでやった数字でやったからそれで食い違いはないと、こういうことをお述べになったのですが、これは実は厚生省当局の方で、その数字は大体肯定のできる数字なのでありますか。
  114. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 実は私ども計算いたしましたのはできるだけ皆さん方にお目にかけるように努めておるわけであります。しかしまだ御要望の部分があるかと思いますが、今後も差し上げるつもりでおります。また私どももいろいろと結論的なことをお伺いするのでありますが、それを計算なさったもとの資料を実は私どもの方にちょうだいいたしたい。中には若干ちょうだいしたのもございまして、御自身で御計算にねった結果をつけて見せていただいておるものも若干ございます。それについて私どもは検討をいたしておるのでありますが、こまかい修正は必要かもしれませんが、今までのところでは、私どもやはりこの点数の計算漏れがあるように今まで拝見したのでは思っておるわけでございますが、今後とも私どもできるだけ一つさような資料をちょうだいいたしたいというふうに考えております。
  115. 田村文吉

    ○田村文吉君 そこで中野さんに…。そういう非常な常識的に考えてもあり得べからざるような食い違いがあるのですね。そういうものについては厚生省においでになって、そういう問題の食い違いのあるということをお話いただくことはできるのでしょうか。
  116. 中野信夫

    参考人(中野信夫君) できます。できれば私やりましたのを全部持って参りたかったのです。けれども、五日前にいただきまして、私どもの作業がまだ中途半端でございまして、厚生省のようなお金も人手もございませんので、ようやくこの問題だけをまとめてきたというわけでございます。内容につきましては、点数の差とか、そういうものにつきましては、私自身が目を通しておりまして、これは絶対に間違いないという確信を持っておりますが、ここで一つ厚生省のおやりになりましたベットのない診療所が十一診療所でございまして、請求書の枚数が千六百枚からございます。それでこれで点数を割りますと、やはり四百十円というふうに出て参ります。これはもうたくさん一般に出ております数字でございますし、厚生省の皆さんの御発表なすった数字でありますから、この点間違いないと思うのです。これが四百十円の場合にはプラスになる。私らの方では先ほど申しましたように、一件一名当りの費用瀞五百六十円でございます。これは当然同じものを使いますと減るように今の新医療費体系はできておるのでございます。これは私の方でやりましたのが五百六十円であるということが事実であれば、これはこの新医療費体系はそういうふうにできておるのでございますから、減るのが当然でございまして、今さら検討の余地なく、差が出てくる。高いものは減るようにし、一人当りの治療費の安いものは上るようにちゃんと仕組まれてございます。これは当然の帰結で、今さら資料を検討さして、もちろんけっこうでございますけれども、私どもの方で調べました資料が五百六十円であれば一五%の差ができるということは、新点数で当然の帰結でございますので、これは今さら論議の余地のないことであると思います。ただその対象が全国の平均と、つまり厚生省の対象の得られました現在行われている、現下の診療所がやっております請求書の標本として、代表的なものとして取り上げられるような数字かどうかということなんです。それは基金のもの、全国の社会保険の診療所が一般に扱っております基金のものでございまして、これを対象として私どもはむしろ五百六十円で出ておりますが、厚生省の方が四百十円の低いものばかりをおよりになったのじゃないかという無作為抽出じゃなくして、何かおよりになったのではないかと、ひがめに感じられるほど非常に片寄った対象をおつかみになっていることを私は特に申し上げたいと思う。もちろん資料につきましてはおっしゃるように一緒に差し上げたいと思います。
  117. 竹中勝男

    竹中勝男君 その点はこれは初めから問題なんです。多少統計をかじったものが、そういう、とほうもない基準で統計の結果を発表するということについては、どうもきつねにつままれたような気がするわけですが、まあ常識的にいえば三万件に達する一枚点数五百六十円というものを標準に京都で抽出したものが明らかになってきた、それによって出たところの結果というものの方が信憑性が高いというふうに私ども考えますけれども、どうして厚生省は低い一枚点数四百十円ですか、そういうようなもののところを選ばれたわけですか。どういう統計学的な抽出法によってそれをやられたわけですか。
  118. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) これはあまりこまかいことで時間を食いますことは非常に恐縮だと思うのですが、簡単に申し上げますれば、私ども前にも当委員会でお話申し上げましたように、昭和二十九年の年末にこの届出のありました病院、診療所の施設がございます。この中から診療は無作為に百分の一ずつ抜きました。この際に各専門科別に相当数を抜けるように考えようかということも検討いたしたのでありますけれども、いろいろ手数の問題もございますし、あとでこの処理の問題のめんどうさもございますので、簡単に診療所全部から平等に百分の一を無作為に抜いた、こういうような状況でございますので、ここに上ってきました私も数は覚えておりませんが、診療所の眼科の無床診療所の数は非常に少かったと思うのでありますが、これを作為的に抜いたものでは絶対にございません。ただ何分施設の数が少うございますから、この出てきた平均的な数字の信頼度ということになりますると、かなり誤差の広いものであるということは考えられるのでございます。  ただちょっとつけ加えさしていただきたいと思いますことは、今お話ございまして、たまたまここで出ておりました診療所が平均的に何と申しますか、平均一件当りの診療点数が低かったものだということを申されますけれども、従って今度出し平均というのは厚生省出したものよりも上になるし、それから平均診療点数の高かった施設では低く触る、こういうふうにお考えになるのはこれは非常に論理の飛躍だと私思うのでありまして、高いところは高いとこなりで旧点数も高かった。しかし新点数を当てはめましたときにやはり高い点数が出てくる。それから低いところは前も低かっただろうが、新点数をもってきましても低いことは低いのであります。従いまして、旧点数で請求したときと新しい点数で請求した場合とその間に差があるかどうかということを見ます場合には、今の平均の診療点数が多いか少ないかということだけで直ちにこの資料を信用すべからずということにはならないと思うのであります。その場合には、比較的一件当りの診療点数の多い施設、それから低い施設、かようなところでは新旧の差が大きく出るか小さく出るかということはこれは別個の問題でございまして、提起されました問題としては私どもまともに御意見を拝承いたしまして、これは十分検討はさせていただきたい、こう思っております。
  119. 相馬助治

    ○相馬助治君 資料の問題で一点お願いします。田村委員から中野参考人に対して数字上の誤差のひどいものについては厚生省に行って話したらどうかというお話ですが、それを私はこういうふうにしていただきたい。今度の基礎になった資料については、私はもう委員会の数を重ねるごとに厚生省に対して不信の念を強めておる。従って中野さんがどんなまじめな資料を持って行っても厚生省へ持って行くというと、その厚生省にとって不利な資料はやみからやみに葬られる危険性なしとしない。いやこれは事実……。そこでこれは一つ委員長において預かって、そして当委員会が仲人の役をして向うに見せますから、ぜひとも中野さんだけに限らないけれども、今日公述された方で、こういう資料も出したいという方は、一つ委員長のもとに資料を出すようにしていただきたいと思うので、そのことを委員長から一つ発言しておいていただきたいと思うのです。
  120. 山下義信

    理事山下義信君) お諮りいたします。ただいま相馬委員の御提案の通りに取り計らいますことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないものと認めまして、さように決定いたします。  別に御発言もないようでありますから、本日の委員会はこの程度で終りたいと思いますが、御異議ございませんか。
  122. 成田至

    参考人(成田至君) 資料の説明をしていなかったのですが……。
  123. 山下義信

    理事山下義信君) 資料の御説明その他は適当な機会に承わることにいたしたいと思います。十分皆さま方の御資料は検討させていただくつもりでございますから、御了承願います。
  124. 中野信夫

    参考人(中野信夫君) ちょっとつけ加えたいのですが、点数の一枚当りの平均点数の請求額の多いものをとるということは、厚生省で各所で御発表になっておりますし、ちゃんと医政雑誌にも載っておりますし、これは事実だと思います。
  125. 山下義信

    理事山下義信君) よろしゅうございますか……。それでは御発言は終了したものと認めます。  最後にごあいさつ申し上げます。本日は長時間にわたりまして非常に有益な御意見を御開陳いただきましてまことにありがとうございます。御提出の資料並びに御陳述の御意見等につきましては、当委員会は慎重に検討させていただくつもりであります。まことにありがとうございました。  本日はこれをもって散会いたします。    午後五時八分散会