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政府委員(松井
達夫君)
首都圏整備法案につきまして、
逐条的に御
説明申し上げます。
首都圏整備法案は、
提案理由で御
説明いたしました
通り、
東京都と社会的、経済的に密接な
関係にありますその周辺の地域を一体としました広域につきまして、市街地開発区域を設定し、これを整備することによる工業都市の育成、近郊地帯の設定による広域緑地帯の整備等の措置を講じて、首都の過大都市化の傾向を防止するとともに、首都における重要施設の整備を一そう推進し、もってわが国の政治、経済、文化等の中心としてふさわしい首都圏の建設とその秩序ある発展をはかるものでございますが、以下同
法案の各規定につきまして、その概要を御
説明いたしたいと存じます。
第一章におきましては、総則といたしまして、この
法律の目的及び用語の定義についての規定を設けております。
すなわち第一条におきましては、首都圏整備
委員会が総合的な首都圏整備
計画を作成し、その実施の強力な推進をはかることにより、わが国の政治、経済、文化等の中心としてふさわしい首都圏の建設とその秩序ある発展をはかるために、この
法律を制定するものであることを明確にいたしております。
また第二条におきましては、首都圏、首都圏整備
計画、既成市街地、近郊地帯等の意義をそれぞれ定義しておりますが、これらの定義のうち、既成市街地と近郊地帯について若干の
説明をいたしたいと存じます。既成市街地とは、「
東京都及びこれと連接する枢要な都市を含む区域のうち政令で定める市街地の区域」をいうのであります。
東京都の二十三区、これと連接する川崎市及び横浜市等のうち市街地と見られる区域を政令で定めたいと存じております。近郊地帯とは、「既成市街地の秩序ある発展を図るため緑地地帯を設定する必要がある既成市街地の近郊で政令で定める区域」をいうのでありますが、この地帯は既成市街地を囲む地帯で、市街地の無制限な膨張を防止するとともに、風景地、生産力の高い農地等を保存するほか、公園、運動場等の施設を設けて既成市街地及び衛星都市の共同の利用に供する地帯であります。
第二章は、首都圏整備
計画の作成、その
計画の実施の調整及び推進等の事務を所掌するため、首都圏整備
委員会を設置すること、並びにその組織及び運営に関する基本的事項を規定いたしたものであります。
すなわち第三条は、この首都圏整備
委員会が、その所掌事務及び権限から見て、行政
委員会であること、及びその事務が広く各省にわたるものでありますので、これを総理府の外局として置く旨を定めたものであります。
第四条は、
委員会の所掌事務及び権限について規定したものであり、この
委員会が首都圏整備
計画を作成するとともに、
事業計画の作成及び整備
計画等の実施に関する
関係者への勧告等の措置により、
関係者がそれぞれの各
事業法に基いて行う
事業について、必要な調整及び推進を行う権限を有する旨を定めたものであります。
第五条から第十二条までの規定は、
委員会の組織に関して規定したものであります。まず第五条で、
委員会は
委員長及び
委員四人で組織するものとし、第六条で、
委員長は国務大臣をもって充てるものとしております。また
委員は、両議院の同意を得て
内閣総理大臣が任命し、その任期は三年といたしております。なお
委員は、この
委員会がその機能を十分に発揮し、権威ある科学的、合理的な首都圏整備
計画を作成してその強力な推進をはかりますため、常勤であることを原則とし、ただそのうちの二人は非常勤とすることができるものとしたのであります。
第十六条では、
委員会の事務局について規定したものでありますが、事務局の職員の定員につきましては、三十一
年度は予算の移しかえにより措置せざるを得ませんので、二十二名とするように本
法案の附則において行政機関職員定員法を
改正することにしたのであります。
第十七条及び第十八条におきましては、この
委員会に諮問機関として首都圏整備審議会を置く旨を規定するとともに、審議会は、国会議員、
関係行政機関の職員、
関係都県の知事及び議会の議長並びに学識
経験者で組織する旨を規定いたしております。
第三章は、本
法案の主眼をなします首都圏整備
計画の作成について規定したものであります。
まず、第二十条では、首都圏整備
計画は、基本
計画、整備
計画及び
事業計画とする旨を規定するとともに、基本
計画においては、整備
計画の基本となるべき事項として首都圏内の人口規模、土地利用等に関する
計画を定め、整備
計画においては、首都圏の中心部をなす既成市街地、その
外周に接する近郊地帯及び市街地開発区域ごとに、それぞれその整備のため必要な都市施設のうちで根幹となるべきもの、並びに既成市街地と市街地開発区域間及び市街地開発区域相互間の連絡をはかるため必要な道路、鉄道、軌道等の交通施設のうちで根幹となるべきものの整備に関する事項を定めるものであり、
事業計画においては、この整備
計画の実施のため必要な毎
年度の
事業で国がみずから行うもの、または国が補助もしくは投
融資等により財政的、資金的援助を与えているものについての
計画を定めるものといたしております。
次に第二十一条では、この首都圏整備
計画の決定手続について規定していますが、この整備
計画を実施する
関係行政機関及び
関係都県との連絡を緊密にする必要がありますので、
計画の決定に際しては、審議会の意見を聞くことはもちろんでありますが、
関係行政機関の長及び
関係都県の意見をあらかじめ十分に聞いて定めるものといたしました。なお、この
計画が決定されましたときは、これを広く公表することにいたしまして、利害
関係者に意見の申し出の機会を与える等の措置を講じたのであります。
第四章は、首都圏整備
計画に基く
事業の実施に関し、市街地開発区域及び工業等制限区域の指定、国の地方公共団体等に対する財政上の援助並びに整備
計画の実効性を確保するために必要な協力及び勧告等の措置等について規定いたしております。
まず、第二十三条について御
説明いたします。首都への過度の産業及び人口の集中とこれに伴う環境の悪化、すなわち首都の過大都市化の傾向を防止するためには、首都の周辺にある既存都市を中心として産業の立地条件その他の諸施設を整備し、これを工業都市として、ときには住居都市として育成し、ここに職場をあるいは住居を建設して、首都へ流入しようとする人口を吸収、定着させる必要が存するのであります。かかる必要に応じ、工業都市または住居都市として積極的に整備するため、既成市街地の周辺地域内の区域を指定するものとしたのがこの二十三条であります。さきにも述べました
通り、この指定された市街地開発区域については、おのおのの区域ごとに主要施設の整備
計画を作成し、これが強力な推進をはかることにしているのであります。
市街地開発区域においては、その人口増加に伴い、教育施設の新設または増設が大きな
一つの問題点であり、
現行の小、中学校の建設のための補助あるいは負担に関する
法律によりますと、現実に二部授業等の不正常
状態が発生した場合にのみ、それらの教育施設の建設に対し国が補助あるいは負担することになっているのでありますが、第二十四条におきましては、市街地区域内において
日本住宅公団等の
住宅建設が集団的に行われ、それに伴い人口が著しく増加することが予定されている場合に、この
住宅建設と並行して、地方公共団体が小学校または中学校の建設が実施できるよう国が補助をなし得る道を開いたのであります。
なお、衛星都市の建設を強力に推進いたしますためには、以上の小中学校の建設に対する補助のほか、種々の助成策を講ずる必要があろうかと存じますので、第二十五条におきまして、宅地の造成その他必要な事項について別に
法律を定めることにいたしました。
第二十七条は、整備
計画に基く実際の
事業については
委員会自体はこれを執行せず、それぞれ当該
事業に関する
法律の規定に従い、国、地方公共団体または
関係事業者が実施する旨を規定したものであります。
第二十八条及び第二十九条は、整備
計画及び
事業計画の実効性を確保するため、
関係行政機関の長、
関係地方公共団体及び
関係事業者はこれらの
計画の実施に関しできる限り協力すること、及び
委員会はこれらの者に対し勧告等をなし得ることを規定したのであります。
第三十条は、
事業計画に基く
事業の用に供するため必要があると認めるときは、国は地方公共団体に対し普通財産を優先的に譲渡し得ることを、第三十一条は、国は整備
計画または
事業計画に基く
事業を実施する地方公共団体等に対し必要な資金の融通またはあっせんに努めることを規定しております。
また、第三十二条におきましては、
事業計画に基き行う地方公営企業の建設、改良等に充てるための地方債について、
委員会と自治庁長官とが協議して定めるものについては、特別の場合を除き、地方自治法の許可を与えるものとし、企業債の円滑な許可をはかることにいたしました。
以上御
説明いたしました事項のほか、
本法の附則におきまして、
本法の施行期日あるいは施行のため必要な
関係法律の改廃を行なったのであります。
なおこのほかに、
衆議院におきまして御審議の途中にこの
法案につきまして修正がございましたので、この点をかいつまんで申し上げておきたいと思います。
その修正いたしましたのは、
委員会事務局の機構についてでございますが、第十六条に、「
委員会の事務局は、
委員会の事務を処理す。」、ほか二項目規定してございますが、この
法案を作案いたしますについて、当局といたしましては、とりあえず三十一
年度におきましては事務局を課制
程度と
考えまして、
法案の上におきまして特別に事務局の機構についての規定を設けておかなかったのでございます。その
理由は、先ほど申し上げましたように事務局の定員が、予算の
関係がございまして、一応二十二名という
程度で発足せざるを得なかった
関係で、さように取り計らったのでございます。しかるところ、
衆議院の建設
委員会で御審議の途中におきまして、この二十二名
程度の人員をもってこの重要な
事業計画を策定して参りますのに不十分ではないかという御意見が出まして、何らかこの事務局の人員をもう
あと三十名くらい増しまして、五十名
程度の人員をもってやるべきではないかという御意見が出たのでございますが、予算が成立いたしました現在、これを定員を増加するということができませんので、とりあえずその趣旨を体しまして、各省からの定員措置でありますとかあるいは常勤労務者の確保等によりまして、事実上五十名
程度の人員をもってこの仕事をやっていくようにすることにいたしたのでございます。
それにつきまして、一応この
法案の上では定員は二十二名でございますが、事務局の機構はその将来に備えまして、当初から整備しておいた方がよいという御意見になりまして、この事務局の機構につきまして、一条追加いたしまして、第十七条といたしまして、
委員会の事務局に、次の二部を置く。
計画第一部
計画第二部
あとは
計画第一部、第二部に関する所掌事務に関する規定でございますが、こういった一条を追加するように御修正に相なったのでございます。従いまして、本
法案の各条は一条ずつ
あとに送ることになるわけでございますが、かようにいたしまして、三十一
年度は予算の移しかえ、あるいは定員措置あるいは常勤労務者の確保等によりまして、事実上五十二名
程度の人員を整備していく、それから三十二
年度につきましては、予算的にも人員を確保して整備していく、こういうことに、
衆議院の建設
委員会におきまして段取りになったのでございます。その点をつけ加えて申し上げておきます。
本
法案の内容は以上の
通りでございますが、何とぞ十分御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。