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1956-02-23 第24回国会 参議院 建設委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)    午前十時四十五分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     赤木 正雄君    理事            石井  桂君            小沢久太郎君            鮎川 義介君    委員            入交 太藏君            斎藤  昇君            近藤 信一君            田中  一君            北 勝太郎君            村上 義一君   政府委員    建設政務次官  堀川 恭平君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   参考人    中小企業助成会    嘱託      橋本元三郎君    東京大学教授  今野源八郎君    茨城県知事   友末 洋治君    富士銀行調査部    次長      紅林 茂夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本道路公団法案内閣送付予備  審査) ○道路整備特別措置法案内閣送付、  予備審査)     —————————————
  2. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) ただいまから委員会を開会いたします。  本日御出席をいただきました参考人各位に、まず、ごあいさついたします。本日は、非常に御多忙のところを貴重な時間をおさきいただきまして、御出席を願ったことを、厚く御礼申します。  ただいま政府は、二十七年度から実施して参りました有料道路の制度を整備拡張しようといたしまして、日本道路公団法案道路整備特別措置法案の二法案を上程されたのであります。この法案道路交通政策に及ぼす影響の重要性にかんがみまして、まず権威あるあなた方の御意見を拝聴いたしまして、本委員会審議に遺憾ないようにいたしたいと存ずるのであります。大へん御迷惑のところ、参考人方々にはそれぞれの御専門立場から、率直に御意見のお述べをお願いいたします。  なお、御参考人方々に申します。大体御一人二、三十分内外の程度にお願いいたしたいと思います。  また委員方々にお諮りいたしますが、参考人全部の発言を終ってから、各位から御質問をお願いいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) 御異議はないと認めまして、さよう取り計らいます。  それでは、まず最初に、中小企業助成会嘱託橋本参考人の御意見を承わります。
  4. 橋本元三郎

    参考人橋本元三郎君) ただいま御指名を受けました橋本でございます。私は鮎川道路調査会におきまして道路経済研究にお手伝いを申し上げましたことを基礎といたしまして、この両法案に対しまして若干感ずるところを申し上げまして、御参考に供したいと思います。お手元にその要点を取りまとめましたガリ版を差し上げてございますので、大体これによってお話を申し上げたいと思います。  申し上げるまでもなく、ただいまわが国道路整備という問題は朝野の話題になりまして、わが国産業経済基本推進力として、これを一日も早く大整備、大修理をしなければならないというようなことが、しきりに論ぜられているのでありますけれども、政府道路予算がなかなか、その道路整備を要求する側の人たちの言うがごとく、多額の投資をするということができない状態にありますので、ただ声ばかり大きくて、実行がなかなか進まないというような状態にあると思うのであります。こういう場合に、有料道路制によりまして若干でもその道路整備を促進するという考えのもとに、この両法案が用意されて、今日国会に出されるというような考えに対しましては、原則的に私は賛成をするものであります。しかし法案でございますから、一ぺんそれが作られますと、それを立案した人たちが変り、時間が移りますれば、単に活字がものを言うということになりますので、私は法案活字の上から受けました印象につきまして意見を申し上げたいと思うのであります。  その第一番といたしまして、一般道路網整備計画有料道路計画との関係につきまして意見を申します。  今回用意されておりまする特別措置法、つまり前からありますものに対しますればこれは新法というように言われているようでありますが、その新法第三条に、有料道路はどういう所を有料道路とするかという条件が指摘してございます。それによりますと、近道をやるという一点にかかっておるようであります。そしてその構造とか、あるいは区間をいかにして選定するかというような、大局的な条件が示されておりません。  言うまでもなく、道路綱は、ネット・ワーク、全体の網として有効なものでございまして、ところどころつまみ食いをしたように、ちょいちょいよいというようなものは経済価値が少いのでありまして、ちょうど古い網のところどころを新しい糸で直す、そのような網は大した使いものにならないというのと同じことでございますので、しかも有料制でありますから、その結び目ごとに車をとめて切符を買わなければならぬということを、再々行わなければならないというような道路でありますならば、今回企図されているような効果を得られないのじゃないかという心配をするものであります。従って、有料道路区間選定ということに対しましては、大局的な見地からそれをおきめになる。それを行なってほしいという土地からのいろいろの陳情とか、ほかの局部的な利便というようなものにわずらわされることなく、またそういう拾い食いにならないというためには、その実施される有料道路が入る区間全体にわたって、基本的な道路整備が行われなければならない。従って、政府道路整備計画というものの推進される一部分として、並行的に行われるというふうな考え方が必要であると思われますので、そういう考えを明らかにするために、せっかく用意された新法第三条に追加といたしまして、「有料道路として選定されるべき区間は、政府道路整備基本計画面に策定された、区間又はこれに準ずる区間とする。」というようなふうにでも示されたならば、その間の事情がはっきりするのじゃないかということを考えるわけであります。こうすることによって、初めて有料道路というものが道路網としての経済効果を発揮する、こういうふうに考えます。  それから第二番、公団業務種目規模について。  公団設立目的は、両方の法律の第一条に明らかにされておりますように、有料道路建設、保守ということを行うために設立される。これは申すまでもないことでありましょう。しかるに公団法第十九条には、そういうことをやるほかに、有料自動車駐車場建設と管理をする。それからまた副業のような立場から、公共の委託によって一般道路工事を行うというふうに明示されてあります。これは公団資金と機能というものが副次的な目的に対して、つまり主目的以外に分散流失するというおそれがあると思います。もとが枯れて枝葉だけが茂るということになりはしないかという懸念を持つものであります。それから、またそのようなことをやることは、現存の民間業者との間に複雑な関係を生ずるのじゃないか。複雑な関係と申しますのは、どれを民間でやり、どれを公団でやるかというようなことや、それから下請とか孫請とか、そういうことに公団が介入するというようなことはあまり望ましくない。そういうことによって公団のエネルギーというか、公団の幹部の頭が食い散らかされるということは好ましくない。よろしく、この公団というものはそういう副業的な看板を削除いたしまして、この設立目的達成のために専念するということになっていただきたい、こういうことを希望するのであります。  それから、公団業務というものの種目はただいま申し上げましたのでありますが、規模、どの程度仕事をするのかということの範囲が、両法の文面からは推察できません。そこで昭和二十七年から過去四年間にわたりまして、有料道路制によりまして政府が行いました、あるいは政府貸付をいたして進めております道路というものは、ほかの文書によりますと、完成十三本、進行中十六本というふうに書いてございます。つまり、およそ十本の道路が四カ年間にわたって着工されたと考えます。今後この公団発足とともに、どのような路線数を手にかけるかは、計画が私どもにはわかりませんから、申し上げるわけには参りませんけれども、二十一年度の予算について考えますと、過去四カ年の予算が約八十億円、それに対して同額的な予算を一年間に消化するというふうに見えますので、やはり四、五十本の道路を手にかけるということになりはしないか、まあその半分にしましても、二、三十本は予定されているのではなかろうかと、こう思われます。そうしますと、有料道路でございますから、十五年、二十年間にわたって料金をとるということになると思うのでありますが、十年間もたちますと、日本中に数百カ所も有料道路区間というものの成立が想像されるのであります。そして有料道路区間選定建前から申しますと、交通量が多くて交通経済上重要な所ということになりますので、そういう所を数百カ所、ばらばらとふりまかれているというような道路網、これは道路経済上から見ますと、これは悪道路であります。非常に煩瑣な、経済効果をかき回すような道路になるのであります。それで、おそらくそういうことにはならないだろう、立案者はそのような形は考えておらないだろうと思いますので、本案は、文面からかかる誤解を受けないように、公団業務基本的性格を明らかにして、その規模というようなものや、有料道路の運営というものについて、何か適切な表現を添加される方がいいんじゃないか、このように考えられます。  それから第三といたしまして、有料道路解放条件有料道路を解除する、無料で公開するという条件について申し上げます。  法文中には、料金徴収期間という字がありますから、それが過ぎれば、当然無料解放となることは明らかなように思われるのであります。しかし、新法第三条には、収支予算の明細の変更は単なる届出である。どうも思うように収入が上らない、あるいは案外経費がかかったというようなことは、届出をしさえすればいいというふうに読めるのであります。従って、なかなか追いつかぬから有料期間を延ばそうというようなことは、一応の理由となると思われるのであります。  それから第五条に、維持修理費大なる場合は料金期間を延長することができると書いてございますが、道路でございますから、一般構造物と同じように、十五年、二十年使えば、必ず大修理をしなければならない時期に達するということは当然であります。あるいは拡張しなければならない。それを理由といたしまして有料制が続くならば、いつになったら解放されるか、全然目当てがつかないということが一つ。  それから第二十八条に、公団工事のために民間資本を借り受けて買い取った道路の敷地その他の物件は公団に帰属するとあるが、それは料金を返してしまえば一体どうなるのか、公団の所属ということにいつまでもくっついているのかどうか、そういうことが無料解放ということの時期に対して、何か一つの阻害になるんじゃないかというようなこと。  そういうようなことをいろいろ照らし合せて考えてみますると、一たん有料道路として出発した道路は、いつ一般公共無料道路とし解放されるかということは、法文の上から推察できない。こういうふうに考えられるのであります。これらを立案者におかれまして、あるいは審議議員各位におかれまして、何か整理をされまして、有料道路無料解放というような条文を付加されて、こういう条件で解放する、あるいはいかなる条件があっても二十年、十五年においては解放するといったような、何かそこに一つ表現をされることが望ましい。これは道路使用者の側からそういうことが望ましいと思うのであります。  その次に、第四として有料道路経理計画について申し上げます。  三十一年度予算道路債券五十億、資金運用部から十億、ガソリン税二十億が引き当てられておるように思われます。前の二つは、つまり道路債券五十億、資金運用部から十億というのは、明らかに民間資本運用でございますので、この公団設立の趣旨に沿うものと思われるのでありますけれども、公団要綱第二十五条によりますると、ガソリン税によって行うはずの五カ年計画の一部を、そのガソリン税をとって有料道路として建設するように読める条項がございます。そういたしますと、ガソリン税立法建前と、それから納税者が、つまり実際はガソリン税ガソリンを売る方にかかりますけれども、買う方にかかるわけですから、トラックとか自動車、そういうふうな人たちは、一たび自分たちガソリン税を納めて道路建設修理に寄与している、その上を走るときにまた料金を払うというようなことは、何か二重に払うような複雑な印象を与え、将来道路債券というようなものを発行する、あるいはガソリン税を拡張する、値上げする、延長するというようなときには、そういうことをした金でまた料金をとる道路を作るのかというようなことになりますと、国民の資力というものを道路運用する場合に、何か好ましくない印象を与える要素になるというような気がいたしますので、予算措置上この点は再考を望ましいと思います。  それからこの項の二番目といたしまして、法文の中で、公団経費に関しましては政府補助をすることができる、元利償還に対しましては政府が保証する、債券は売れなかったら政府が引き受けよう、長期短期貸付もめんどうを見てやるというふうに、はなはだ資金源に恵まれまして、公団ふところ手で安心して、損をしてもしりふきがおるというような格好で、仕事ができるというかまえになっております。非常に安定した、金のことで心配しない、十分にお働きになれる機構であることは、道路そのものの上から見ますとけっこうでありますけれども、従来このように、座ぶとんの上にすわり込んで、からだを動かさないで、あごで指図をするようなかまえの仕事は、士族の商法のごとく、成績が下っておる例がたくさんあるのでありますから、ことに公団はそれほどの資金源が保障されなかった過去四年間の努力において、すでに赤字を三〇%出しておるというのが、実績として数字を見せられておりますので、今後ぬくぬくとした姿で出発をし過ぎると、何かそこに油断ができまして、赤字という本のを気にしなくなるというようなことにでもなりやしないかしらんということを心配するものであります。公団はこのような資金源に恵まれて出発するのでありますので、そういう点で赤字を出すということにこだわる必要はないかもしれませんけれども、従来そういうことで何かあと味の悪くなったたくさんの公団公社的機構、営団、そういうようなもののあとを追わないように、この経理につきましては十分に御配慮を願いたいということを希望するものでございます。  それから第五番、本案成立に伴う道路基本計画去勢の危険につきまして。  この措置法公団法ができますれば、一部分道路——作りたい作りたいと思っておった道路一部分は、有料道路として出発いたしますので、今までの道路整備計画からははずれてしまう。その部分は解決したということになるわけであります。それで、何となくゆるむ。急所が有料道路で次々と作られていくので、ほかの方はそんなに急がなくてもいいのじゃないかというような気がするのじゃないか。もしそのような錯覚を生じまして、政府あるいは国会、あるいは道路に関する国民の多数の人たちの熱意が失われるようなことがありやしないかということを心配するものであります。  今回の有料道路がかりに実現いたしましても、一年に数十億というような程度工事幅でございまして、道路計画上の研究によりますと、少くとも年額一千億ぐらいかけまして、五、六年間は日本主要道路網というものをまっしぐらに整備しなければ、年々三千億近いロスがある、道路の上にむだがあるくらいに逼迫しておる道路に、五十億や八十億かけたところで焼け石に水のようなものであると思うのでありますから、この有料道路公団が出発するというと、何か安心感の伴うということは、道路整備に対して非常に危険なものでありまして、公団成立によって得られるところの若干の利益の何十倍、何百倍にも上回るような日本産業経済上の損失は、現在のままで継続しまた増大していくというおそれがあるのであります。従って、公団成立いたしましても、これは本来大いに促進しなければならないはずの道路計画中のほんの一部分を、幸い民間資本というものの融資の便を借りまして、先発をされるのである。これを先駆として、本格的な道路網整備というものは、大いにその努力を増して、実現をはからなければならないということにつきまして、私はこの案がもしやそういうことを去勢することがあってはならないということを申し上げたいと思うのであります。  最後に、公団設立必要性と通用について申し上げます。  以上のようなことを総合いたしまして、公団は、国家道路網の基本的大整備の発動が今日かけ声だけが大きいのでございまして、容易に実施の緒につかないという現状においては、とりあえず民間資本の活用によって幾分の整備を推進するという補動的な傍系的な機構であると思われまして、その意味においては設立は大へんけっこうである、こういうふうに考えられるのであります。しかしながら本格的な大整備が発足いたしますならば、次第にその業務範囲というものは基本計画に収容されるべきもの〜思われるのであります。申し上げるまでもなく、有料道路をほんとうに活用しておるのはアメリカだけでありまして、その他の国々においては、そういうようなものはほとんど言うべきほどのものはないようであります。つまり基本計画というものが順調に進んでおりますならば、有料道路のごときは何ら必要のないものであります。非常措置補助措置として、仕方がないからそういうものでちょいと間に合せる、こういうような考え方のものが、短区間、あちらこちらに振りまかれる有料道路であると思います。アメリカのようにえんえん二千キロにも及ぶような大幹線路を作るというようなことば、全然そのちょいちょいとしたものとは考えが違うのでありまして、本公団におきましても、東京——大阪間の有料道路も、場合によってはこういう公団を拡大してやるかもしれないというような意図が、先般の建設大臣建設委員会でのお話によってうかがわれるのでありますけれども、しかしそういうものはかりに一本二本あるとしましても、全国の幹線道路網有料で終始するということは考えられないのでありますから、あくまでも今考えられるであろう公団というものは大道路整備網に対する補助的な位置にある、こういうふうに考えるのでございます。従って、公団運用というものは、この大整備をまぎらわしくするような、あるいは手足まといとなるようなことのないような配慮をもって、行われることが望ましいということでございます。  私がお呼び出しを受けまして申し上げたいことは、以上の通りでございます。
  5. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) 次は、東京大学教授今野参考人にお願いします。
  6. 今野源八郎

    参考人今野源八郎君) ただいま御指名をいただきました今野でございます。私は東大において交道政策を担当いたしておりますものでございます。従いまして、本日私が申し上げますことは、条文一つ一つに関するものよりも、この二つ法律の底を流れております有料道路の可否の問題、それらの点につきまして、いささか意見を述べさしていただきたいと存ずる次第でございます。  お手元に御参考までにプリントしたものが届けられてあると思いますが、それに従いまして申し上げさしていただきたいと存じます。こういうことを申し上げますことは釈迦に説法でございまして、恐縮でございますけれども、一応申し上げることを許していただきたいと思います。  道路無料であるべきか有料であるべきかという問題は、長い間議論された問題でございます。元来無料であることが伝統的な考え方でありますことは明らかでございますけれども、それが有料制として発達するようになりましたことは、資本主義発達に伴うものであります。つまり交通網資本主義的な企業のために利用されるようになりますと、道路もまた無料であり得なくなってきたということは、やむを得ない資本主義発達の必然の魔物であります。  その点は、私、この第二というところに書いてございますのでありますけれども、ここに道路の商業的な概念と申しますか、コマーシャル・コンセプト・オブ・ロードという考え方発達して参りましたのは、大体初期資本主義時代イギリスで申しますと一六〇〇年代で、郵便道路発達によるものであります。その以前におきましては、封建的な地方経済のもとにおきましては、農民は各自の道を作るということは当然のこととして考えて参ったのでありまして、道路を作るということが当然であるという考え方は、ローマ法以来の伝統的な考え方でございます。  しかし商人がその道路自分利益のために利用するようになりますと、農民はその商人利益のための道を作ることを拒否するようになりまして、反対運動を起します。政府は、道路がこわれますので、馬車の重さを制限いたしましたり、馬車の車輪の幅、タイヤの幅を制限いたしましたりいたしますが、商人の方では、そういう無理なことをいたしますと、運賃にこれが転嫁されるということからしまして、むしろ有料道路にして、そして道路整備して、しかも道路交通制限をしないことが望ましいというような運動をするようになりましたのが産業革命ころでございます。従いまして、突然有料道路制というものがただいま現われましたものではなくして、すでに産業革命、つまり交通革命の当時現われたものでございます。  そのようにいたしまして、イギリス交通革命鉄道が現われます前の道路、約十二万マイルございますが、そのうちの二万マイルという幹線道路のほとんどが有料道路化されたことが歴史の教えるところでございまして、やむを得ない処置であったと思います。道路技術革命を呼びましたマカダム道路発達いたしましたのも、そういったような式のもとであの技術が取り入れられまして、近代的な道路の糸口がつけられたのでございます。  しかし、それがまた弊害もございまして、道路の伝統的な自由使用というものを非常に制限することはけしからぬ。また一々料金を払うことの繁雑さということが問題になりましたので、反有料道路運動という運動すら起ったことがございます。しかし、その後鉄道ができますときに、鉄道料金をとるかとらないかという問題がございまして、鉄道有料道路として初め発達したものでありまして、レールロード・アズ・ターンパイクということが言われたのでありまして、つまりレールロード・アズ・トールロード、高価な鉄道を作った場合に、その代価をだれが支払うかというときに、利用者が支払うという考え方有料道路考え鉄道に移されたものと言われている。  そのようにいたしまして、イギリスに起りました有料道路というものがアメリカにも移りまして、アメリカの独立後におきまして、アメリカ幹線道路のかなり多くの部分が、約二万マイル程度有料道路化されたのでございます。で、これは従来の馬路、馬道、馬の通っております道から馬車道に発展するときに起った問題でございまして、アメリカ有料道路はその後大部分無料道路になりましたのでございますが、依然として、最近の自動車道路まで続いておったものも若干あるようなことでございます。問題は、道路利用者負担を大衆に転嫁することが公平であるかどうかという問題でございまして、結局自分の足代は自分で払うという考え方が強い資本主義社会におきましては、当然として利用者負担という考え方になったことだと思われます。  で、最近の自動車時代になりまして、また高価な道路を作る必要が生じましたときに、だれがその道路を作るんだ、道路費を払うんだという問題が起きたわけでございまするが、そのときアメリカで、道路改良の資金をどうするかという問題につきまして、有料制無料制の議論が一九三〇年代の議会の論争としまして、十年間論争を続けられたわけでございますが、結局アメリカの例で申しますと、決定的な結論が出ないというままに、それでは無料の公道と有料道路と、二本建で行く方がよろしいというような結論に落ちついたように思われます。  元来アメリカには、そのようにしまして、有料の橋、トンネルがおのおの数十ございます。橋やトンネルが有料でありますならば、道路もまた有料であるという考え方は、英米におきましては、自動車時代におきましても容易にとられた政策でございます。  そのようにしまして、歴史的に見ましても、また経済学的に見ましても、高価な道路建設費、維持費を利用者が負担するという考え方は、ある程度当然だと思われるのであります。そうでありませんと、一般大衆の負担に結局転嫁されて、交通資本というものが一般大衆の作った道路を無償で利用するということが、著しく不公平でないかという問題が生じてきたのであります。  もう一つは、鉄道との釣り合いの関係でございまして、鉄道有料であるのに、道路無料であるということは、それも程度問題だと思われますけれども、これも不公平であるということであろうと思います。最近の自動車のための道路と申しますか、広く申しまして自動車道路の必要が増すにつけまして、そういったほとんど鉄道と同じ建設費を要する道路無料で利用する。ことにそれを営業として利用する場合、あるいは自動車を持ち得るような有産階級が無料でそれを通り、大衆課税にそれを転嫁することの不公平ということからいたしまして、やむを得ず有料制というものが、この自動車時代になりまして、大規模資本主義国において採用されようとしているわけでございます。  しかし、おそれ入りますが、プリントの二ページ目の4というところに参りますが、そうような有料制ももちろん限界があるわけでございまして、すべての道路有料制になることは決して望ましいのではない。理想としては無料であるべきだと思っておるのでありますが、負担の公平ということから、利用者負担主義という考え方から、やむを得ずとる制度でありますので、それはおのずから限界があるということであります。で、国家の作ります交通路におきましても、みずからその費用を支弁しなければならないという、何と申しますか、セルフ・サポーテング・システムとか、セルフ・リクイテング・システムという考え方が非常に強いのでございまして、その利用者負担主義と交通路の独立採算主義という考え方は、道路のいかなる部分においても原則的にはとられることが、国家負担を少くするという意味においては、望ましいと考えられるのであります。従って、有料制はやむを得ない場合に限るということと、この法律条文にもありますように、ほかの人々が通り得る普通の道路があるということを条件にしておられるのは適当だと思われます。  それからまた、費用が、元本が償却された後においてはその有料制を廃止するということも当然のことでございまして、先ほど橋本参考人から話がありましたように、何年かの期限ということはいろいろなケースによって違うのでありまして、その次の有料道路の史的考察というところに、ターンパイク・チャターということをちょっと触れたのでございますが、アメリカにいろいろのターンパイク・チャターがございまして、ターンパイクの特許許可証でございます。州によりましていろいろまちまちでございまして、永久的にそれを有料道路にするという道路、あるいは三十年、四十年、あるいは可及的すみやかにそれを無料の公道にするという例もございまして、約十種類ほど違ったチャターができておったわけでございます。で、イギリスのターンパイクの場合におきましては、ターンパイク・トラステイ、受託者という形をとりまして、非営利的な団体として経営されたのでありますが、アメリカの場合におきましては、ターンパイク・コーポレーション、ターンパイク会社という形をとりまして、株式を募集し、あるいは社債を発行いたしまして作られた例が多いのでございます。それで、歴史的に申しますと、そういった産業革命期から自動車交通発達前のターンパイクが二万マイルも発達したわけでございますが、それが廃止されていく形が、ディス・ターンパイク・ムーブメント、ターンパイクが成り立たなくなりまして、そうして廃止されていくという例を私たち見ておるのでございますが、その後、ターンパイクが再び自動車時代になって復活してきておることは、御存じのような状態であります。  わが国におきましても、明治四年、太政官布告におきまして、川崎の六郷橋その他の橋につきまして、あるいは道路の一部を有料制にするという布告が出たことがございますが、外国のように大規模には発達せず、公道主義が貫かれてきておるわけでございます。  最近、鉄道建設費以上のりっぱな道路アメリカ発達するようになりますと、これを有料制にするということが当然としてアメリカ考えられるようになりまして、そのプリントの二枚目に現代米国の有料道路制道路公社というところに、ちょっと名前だけ書いてございますように、ほとんどニューイングランドから国道第一号線に沿いましてフロリダに行く東部の幹線道路に沿った道路、及び東部からシカゴ方面に抜けます幹線道路が、有料道路として経営されるような形をとりつつございまして、私たちに非常に考えさせるのでございますが、わが国の今回の法案を拝見いたしますと、アメリカにとられておるペンシルバニア・ターンパイク、一番先に書いてございますが、ちょっとプリントがはっきりしませんが、このターンパイクを州が直接ペンシルバニア・ターンパイク・コミッション、委員会を通じまして経常するやり方と、ニューヨーク州が、ニューヨーク・ステイト・スルーウエイ・オーソリティ、ニューヨーク州有料道路公社——オーソリテイと申しましても実際には公社でございますが、公社を通じてやるやり方の中間をとられているように思われるのでございます。  従来の道路のやり方に対しまして、有料制をとることが特に必要であるかどうかという問題に対しまして、間接的ではございますけれども、流れとして世界的に見まして、特に英米資本主義国の考え方としまして、やむを得ないとり方であるというふうなことが考えられると思います。  なお、後進国としての日本におきます道路整備計画において、この有料制を利用することが有利であるということについて申し上げますならば、四というところでございますけれども、後進国と世界では日本を最近申しておりますが、その後進国の交通条件の改良ということが農業、工業の近代化の基本条件として必要があるということも、英米の学者、各国の学者が共通して指摘しているところでございまして、古くはマーシャルが述べているところでございます。  その後進国の特徴といたしましては、資本の供給が慢性的に不足であるということが一つ。これは資本の蓄積が少いということ、資本の蓄積が少いということは所得が少いということであり、所得が少いということは産業の近代化がおくれているという、つまり悪循環から来ておりますから、それらの悪循環を断ち切るためには、やはり道路を含む交通条件を同時に解決することが必要である。この同時改良ということが必要であることは、学者の最近非常にやかましく言っているところでありまして、ただ鉄道を作る、あるいは船だけを作る、改良すればいいのだということではなくして、一つだけ改良しても、それが何といいますか、失業者が多いとか、あるいはその他の理由からしまして、その効果が現われない。現われ方が非常に弱いのでございまして、同時に、全面的に改良したときに初めてその効果が顕著に現われるということは、産業の連関論その他からりしても、乗数の効果からしても、言えるところでございます。そういう意味から申しましても、道路の改良も鉄道の改良も並んでやっていただきたいということと、道路の改良におきましても、国道だけを、国道の従来のやり方だけじゃなくして、こういう有料制による改良政策が望ましいということになると思われます。  有料制効果といたしましては、ただいま申しましたように、交通路改良に対する同時投資の効果が現われるということであると思います。もう一つは、道路建設金融策としても、経済的に恵まれている交通利用者自動車を持っている人が大部分だと思いますが、この場合におきましては、そういう人たち資金を利用いたしまして交通路を建設させるということになるわけでありまして、その点で道路金融政策として近代的な一つの政策である。もう一つは、フォアヒナンツと申しますか、あす必要な道路をきょう作る、ツモロウズ・ハイウェイ・ビルト・ツデイということでございまして、その点でも効果を持っておると思われるのであります。  このようにいたしまして、基本的な考え方といたしまして、私はこの両法案はまことに時宜に適したものだと存ずるものであります。ただ心配いたしますのは、規模が大きくなるようでありますけれども、小さく終ってしまうような心配もございますので、これをむしろ育てていくということが、日本の非常におくれております道路発達上必要であろうと思われるのでありまして、八十億の資金と申しましても、実際に使う、新規事業に使われますのは二十億ということが、いかにも少いというふうにも考えられるのでありますし、それから副業を認めるか認めないかということもございますけれども、外国の例から見ましても、ある程度の付帯した副業と申しますか、関連の事業は認めざるを得ない、認めるべきではないか。そうでありませんと、どうも独立採算性がとれないような心配もあるのであります。  なお、関連的に申しますならば、土地の収用法をもう少し近代的にしていただきたいということと、この二つ法律との関係からしまして、道路法の改正をすることによって、道路の改良に関する、あるいは道路に関します法律の法的な体系を整備していただきますならば、非常に一国民として幸いだと存ずる次第であります。  御清聴、ありがとうございました。
  7. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) 引き続き、茨城県知事友末参考人にお願いいたします。
  8. 友末洋治

    参考人(友末洋治君) 今回政府国会に提案されました日本道路公団法案並びに道路整備特別措置法案、これにつきまして、主として日々道路を管理いたしておりまする道路管理者としての立場から、意見を申し述べたいと思うのでございます。  まず、結論から申し上げますると、この両法案は、まことに時宜に即したものといたしまして、一日も早くその制定実施せられますることを熱望いたしておるものでございます。  その理由の第一は、道路整備ということがまことに緊急を要しまする事態に相なっておるということでございます。  すなわち、道路整備の事業は、申し上げるまでもなく、これが産業、文化等の各般の基盤となるものでありまする重要なものでございまするのにもかかわらず、その他の各種の施設、事業に比較いたしまするというと、はるかにおくれておるのでございます。一般的に申しますれば、はなはだしくその均衡を失っておるという現況にあるのでございまして、最近の全国的な統計についてこれを見てみましても、国道、府県道のうち、改良済みの延長は約二二%にすぎません。舗装に至りましてはわずか六%にも達しない貧弱な状態に相なっております。さらに橋梁におきましては、その四五%がほとんど老朽化いたしました危険きわまりない木造橋によって占められておりまするというこの事実を見ましても、はっきりいたすのでございます。  一方、自動車交通の急激な発達は、その車両の大型化、重量化を促しまして、さらにこれに加えまするのに、長距離輸送の普及と自動車路線網の僻地への進出は、修繕を要しまするところの道路範囲をますます拡大いたしまするとともに、道路破損の程度をも著しくして参っておるのでございまして、現在の地方行政の上におきましては、まず何はさておきましても、道路、橋梁の維持修繕をいたしますること、さらに自動車交通に即応いたしまするところの道路の改良並びに木造橋の永久構造化ということが、最も重要かつ緊急を要しまする事業と相なっており、年々の地方議会におきましてもまことにやかましい問題に相なっておるのでございます。  道路審議会におきましては、かくのごとき道路の現状にかんがみられまして、昨年の末に日本道路公団設立すべきであるという答申をいたされ、今回政府がその答申をも尊重せられまして、右画法案を提案し、これによって道路整備を今後強力に推進せられんといたしますることにつきましては、大いに双手をあげて賛意を表するものでございます。  賛成の第二の理由は、地方財政上の事情に基くものでございます。  御承知の通りに、地方財政の窮状は、年を重ねるに従いましてはなはだしく相なり、昭和三十年度末の地方自治体の赤字見込額は約六百億円が予想せられ、大部分の府県におきましては、行政機構の簡素合理化、職員の整理、昇給の停止、各種経費の大幅な節約等、全く四苦八苦の窮状に陥っておるのでございます。このような財政事情のもとにありまするために、国道を初めといたしますすべての通弊管理者は、いかに努力いたしましても交通上の要請に応じ切れないのでございまして、このことは、その任にあるものといたしまして、まことに遺憾至極に存じておるところでございます。  例を茨城県にとりますれば、県の国道、県道に架設せられておりまする橋梁の数は、約一千九百橋でございまするが、このうち木造橋は約一千橋でございます。木造橋の耐用年数をまず七年といたしまするというと、年々約百四十橋のかけかえを必要とするのでございますが、現実におきましては六十ないし七十橋、所要数の約二分の一程度整備にこれをとどめなければならないのでございます。このために、やむを得ず現在百橋をこえまする橋梁の交通制限を行い、場合によりましては、交通どめの箇所さえも現出いたしておる有様でございます。また砂利道の修繕におきましても、三千六百キロに及びまする国道、県道を補修いたしまするためには、年間少くとも十二万立方メートル程度の砂利を必要といたすのでございますが、辛うじて六万立方メートル、これまた所要量の約二分の一程度の供給を行なっておるのにすぎないのでございまして、この結果、一雨降りますれば路面はどろ田のごとき惨状を来たし、交通を著しく停滞せしめておる実情でございます。従いまして、関係者に日々非常な御迷惑をかけ、道路管理者といたしましてまことに申しわけないと日夜苦慮しているところでございます。  昨年地方道路税の創設をみたのでございます。さらに本年は軽油の取引税の創設、あるいはまたその他若干地方税財源の充実がはかられて参るのでございますが、これらは今後の赤字を出さないという程度の応急掛盤でございまして、積極的に大いに財源を増強して、そして仕事をどんどんできるという状況には相ならないのでございます。今日の交通情勢に即応いたしますところの必要最小限度の財源確保にはとうてい及ぶべくもないという状態でございます。  かかるときにおきまして、両法案が制定されますことは、地方財政の現状とにらみ合せましても、きわめて適切な措置であると考えます。  以上申し上げましたように、両法案につきましては原案に賛成し、ほとんど異論はないのでありまするが、しいて取り上げて申し上げますならば、その内容と実施上の問題に関しまして、若干の考慮を要するものがあるかと存ずるのでございます。  すなわちまず第一点といたしまして、このたび創設されまする日本道路公団が、昭和三十一年度に施行すべき事業に必要な資金の一部として、一般会計からの補助金二十億円を予定いたし、これに対する財源といたしましては、当該年度の揮発油税法による揮発油税の収入額の予算額に相当する金額の一部を、道路整備五カ年計画にかかる道路に関する工事で、公団が実施するものに要する経費の一部として振り当てることに相なっておるのでございまするが、この財源はすでに、道路整備費の財源等に関する臨時措置法の規定により、道路整備五カ年計画に基く地方道路整備のために充当すべきものであるとされておるのでありまする以上、もし許されまするならば、道路整備五カ年計画にかかる道路のうちには、日本道路公団の実施いたしまする有料道路を含めず、これにはもっぱら右の揮発油税の収入額の予算額をもって充てることとし、一方、公団の実施されまする有料道路に対しては、全く別の財源をもってその補助金とされまするのが妥当ではないかと考えるのでございます。  次に、第二点といたしまして、日本道路公団業務内容の範囲に関しまする点でございまするが、法案の規定によりまするというと、公団道路法による道路の改良等を行うことをもってそのおもな業務といたしておるのでございます。従って、この道路法にいうところの道路は、一般公共の用に供しまする道路を指さしておるのでありまして、これに対し、一般公共の川に供するものでない私鉄でありまする自動車道の新設は含まれないものと解釈されるのでございまするが、この例外的な解釈は、道路行政の総合統一の観点から、あまり拡張すべきものではなく、まれな場合におきまするものとして局限いたしますることが適当であると考えられます。  たとえば、目下参議院において継続審議に相なっておりまする国土開発縦貫自動車建設法案において建設を予定しておりまする高速幹線自動車道のごときは、専用自動車道の範疇に入れるべきものではなく、また建設の能力をも持っておりまする本公団業務内容に含ましめることが適当であると考えます。これにつきましては、今後建設省と運輸省、この両省間の権限争いになる問題とも考えられまするので、この両法案審議に並行されまして、その解釈をこの際調整統一しておきまして、今後無用なる争いをなくいたしますることが望ましいかと考えるのでございます。  第三点といたしまして、公団業務実施上の希望意見を申し述べますると、昭和二十一年度の事業資金は八十億円とされておるのでございまするが、これはきわめて過小ではないかと考えます。既存の道路網が飽和状態に達し、かつ非常に道路そのものが荒廃しておりまする現在、道路整備の行政はあらゆる国策に優先して拡大すべきものであり、その意味においては、今回の公団設立はきわめて意義深いものがありまするのにもかかわらず、その事業資金八十億円のうち少くとも五十億円は、現在すでに着工いたしましてその工事が継続されておるものに振り当てられるべきものといたしまするというと、新規事業に振り当てまするところの資金といたしましては、諸費約十億円を除いて、わずかに二十億円にすぎないことと相なるのでありまして、これでは、いかにも過小であると言わざるを得ない次第でございます。  現行の道路整備特別措置法によりまする有料道路建設の希望は、各地に非常に強いものがありまするのにもかかわらず、資金の都合上、許可を得まするまでに長期間を要し、はなはだしきに至りましては、申請いたしましてから四年を経過いたしましても、いまだその許可のワクに入れないものがあると聞いており、従って地方の強い要望がはなはだしく押えられておるのが実情でございます。これらの要望にこたえまする公団といたしましては、その事業資金をさらに拡充し、今後新規のものを積極的に取り上げるべきだと考えるものでございすいす。  最後に、公団運営に関し一言つけ加えさしていただきまするならば、道路はその本来の性格から申しまして、無料公開をその生命といたしますることは、申し上げるまでもないところでございます。従って、企業といたしまして道路整備を行います場合には、できるだけ短期間のうちに工事の完了、料金の徴収及びこれに要した賞用の償還を期するということ、すなわち経済速度の厳守と経済原則の完全な適用こそが、使命達成上強く要請されなければならないと考えるのでございます。この意味から申しましても、工事の取り上げ方につきましては慎重に考慮さるべきであり、一つ工事につき、いかに長くとも着工後三年以内ぐらいには完了する程度を目標とすべきではないかと考えるものであります。  なお、これに関連いたしまして、現在継続中の工事につきましては、今後公団が引き継いで処理いたしまする場合、その後一、二年のうちにはぜひとも完了するように配意さるべきであると考えられます。  以上、主として道路管理者といたしましてのこの両法案に対する意見を申し上げました次第でございます。
  9. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) 最後に、富士銀行調査部次長紅林茂夫君にお願いいたします。
  10. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) 最初に、一般論といたしまして、公団債の発行の是非と民間資金活用の是非の問題について意見を申し上げ、第二に、道路公団債の是非と消化のための条件について意見を申し述べてみたいと思います。  まず最初に、一般論としてでございますが、明年度の予算を編成するに当りまして、いわゆる一兆円の財政規模が適当であるという世論が支配的でございましたので、政府並びに政党におかれましては、この世論に聞かれまして、一兆円の財政の原則というものを打ち立てるべく努力をされたわけでございまするが、何分にも支出が非常に大きいために、十分にこれを圧縮することが困難であったと考えられますが、そのために、初め予算の一部につきまして、本来は公共事業費をもって支弁すべきものにつきまして、民間資金を活用するという方途を開かれたわけでございます。すなわち幾つかの公団設立されまして、その事業資金公団債を発行することによって調達し、これを民間の余裕資金で消化させるという方式をとられたのでありますが、これは原則論としては私の賛成しがたいところでございます。  なぜかと申しますと、まず第一に、公共事業は企業としての採算に乗らないものが多いのでありまして、事業自体としてこれを見ます場合に、投下資金についての収益性はもちろんのこと、回収性すらほとんど欠いているという場合が多いわけであります。それゆえに、かかる公共事業は投下資金の回収を必要としない財政資金をもって支弁すべきが至当でありまして、これを民間資金に依存するということは、民間資金が若干の収益性を求め、また完全なる回収を予定して国民の貯金として集められてくるものでありますゆえに、これらの性格から考えまして、好ましくないと考えられるからであります。  第二に、従いまして、このような民間資金の利用の仕方は、これは民間資金の財政資金化と申さなければならないのでありまして、実質上、民間資金を活用したという形で財政規模が一応圧縮されたがごとく見えますが、実質的には財政規模の膨張を来たしたものにほかならないと認めざるを得ないのであります。  第三に、また公共事業は、その性質上当然に長期の継続事業となる場合が多いわけでありますから、民間資金の利用は実は当面の一、二年の間の利用ということにとどまるものではないのでありまして、結局相当長期にわたらざるを得なくもなるのでありまして、また必要資金量も年々に累増を免れない性格を持っております。従ってさしあたって公団債を発行し、民間資金を利用するということが、たとえば本年について考えます場合に、民間資金を圧迫するという事実が起らないといたしましても、数年の間には、これらの資金の量が増大することによって、民間資金の余裕が非常に小さくなるということにもなり、ひいては、そのために、せっかくの金利低下の傾向が悪影響を受けるということも考えなければならないのであります。  第四に、そこでもし将来民間資金の利用が困難となるような場合が生ずるおそれがありましても、そういう場合にも事業を中断するということはできないのでありますから、結局その場合には財政支出をもってまかなわなければならないことになりまして、その場合には財政規模自体が膨張することになります。すなわち、この場合には租税負担の一そうの過重を招来するということになるわけでありまして、今日の財政上の最大の問題は、私は租税の負担過重をいかにして軽減するかというところにおかれていると考えますので、このようなことが将来起るようでは非常に問題であると考えるのであります。  第五に、公団方式がとられ始めますと、今後の公団の利用が自然多くなるおそれもありまして、公団債の総額が不当に膨張いたしまして、公債発行の弊と何ら異ならなくなるおそれがあるのではないかと思われます。  以上のように、本来財政資金でまかなうべきものを公団形式によりまして公団債を発行し、民間資金でこれをまかなうということは、結局その元利につきまして政府保証をすべきは当然でありますから、すでに事実上これは公債発行と異なるところがないと言わなければなりません。ただ公団債の形式をとりましたことに非常に有利な点があることは、これを認めることができるのでありまして、つまり公団債はいわば目的公債というべきものでありまして、一般の公債発行の場合のように、これがともすれば無限軌道に乗りまして、巨額な債券の発行という事実に転化するおそれが非常に少いと見られるのでありまして、この意味におきまして、一般の公債発行による場合はもちろんのこと、いわゆる建設公債あるいは産業公債といわれております公債の発行の仕方、これに比較いたしましても、はるかに公団債によることは妥当である、こう考えることができます。従いまして、公団債発行が公債発行の弊に今後陥らないためには、安易に公団設立を許さないということが最も必要であると考えます。  次に、道路公団債の是非と消化のための条件につきまして申し上げたいと思います。  以上申し上げましたことは一般論でございますが、日本道路公団は、これは有料道路を取り上げまして、公団として、長期ではありますが、採算がとり縛ることを運営の基本方針としているものと考えます。その限りにおきまして、道路公団資金の一部を民間資金に依存するということは、必ずしも不適当ではないと考えます。この意味におきまして、日本道路公団債は一般の公共事業の民間資金利用の場合とは異なるものを持っておりまして、その意味において、道路公団債の発行ということは賛成し得るものであります。  かつ、わが国の自立経済達成のためには、商品貿易のほかに、観光事業による外貨獲得が今後きわめて重要なものになると考えられますが、遺憾ながら現在の道路の不完全、劣悪は、外人招致の重大障害となっているわけでございますので、道路の開通、補全は、これらの観点からも非常に重要な問題であると考えられます。それのみならず、国内輸送の便をはかりますことは、産業の発展とコストの低下のために、不可欠の要件でありまして、国民経済的に見ましても、通路の改善は経済の発展充実のために非常に重要であるといえます。  これらの意味におきまして、道路公団設立は妥当と考えられるのでありますが、しかし道路公団公団債を発行し得るだけの特異性を持ち、そしてこの公団公団債の消化が円滑に行われますためには、次のごとき諸点に特に留意をすることが必要であると考えます。  第一点は、公団としての採算性に常に留意をするということであります。そのためには、特に国民経済的な意義を持ちますものはこれを別といたしまして、道路公団の取り上げます道路、橋梁等は、原則といたしまして、一定期間の間に採算がとれるということをその取り上げる範囲としてほしいと、こう考えるのでありまして、全体の公団経理を常に良好ならしめることが必要であると思います。そのためには、現行の料金はもっと引き上げることが望ましいと思います。現在の料金は受益限度の平均六〇%くらいにとどまっておりますが、この受益限度の六〇%という程度では、なかなか公団資金の回転がおそくなるわけであります。収益性においてもやや欠けるところがあると考えるのであります。その意味におきまして、受益者が相当の利益を受けるのでありますから、その限界内においてもう少し商い料金が課せられても適当である、こう思うのであります。  なお料金期間経過後は、無料開放になるというのは原則であるかもしれませんが、しかし我が国のように、今後多くの道路をさらに開発し、国全体としての道路の完備を考えなければなりません場合には、有料期間が経過いたしましても、なお受益の事実は残るのでありますから、若干の料金をさらにとるということも、必ずしも不適当でないと思うのでありまして、むしろこの資金をもってさらに公団の自己資本を充実し、公団経理自体をよくしてゆく、そしてその資金をさらに次の道路の開発に振り向けるということが、国民経済的に見て結局得策である、こう考えるのであります。  第二点は、公団の事業は、そうは申しましても、決していたずらに膨大なものとすべきではないと思います。と申しますのは、この資金が非常に膨大に必要でありますので、資金調達について特に長期の見通しと計画とを樹立しておきませんと、将来資金調達上困難に直面することは明らかであります。  第三に、公団債の発行条件といたしましては、現存の国鉄公社債あるいは電電公社債並みと伝えられておりますが、国鉄、電電公社はすでに公社としての基礎も確立しておりまして、豊富な自己資本を有しておるのでありますから、公社債としての安全度はきわめて高いと申せます。しかし日本道路公団はいまだその基礎もありません。これから発足するのでありますから、資金はすべて政府資金並びに借入金をもってするのでありますから、本来その債券は、既存の公社のそれに比べまして、発行条件が若干異なるべきが当然であると考えます。現在の採算におきましてそれが不可能でありますれば、先ほど申しましたような意味においても、受益者負担を若干増加いたしましてでも、応募者利回りを有利にすることが望ましいと考えられます。  第四点といたしまして、さしあたって道路公団債の消化は銀行の余裕金をもってするという予定になっておるようでありますが、今後は銀行以外の金融機関の消化も考慮することが、当然膨大な資金を要する公団としては必要であると考えるのでありまして、そのためにも、資金コストの点を考えますと、債券の応募者利回りは若干考慮を要するものがあると考えられます。  第五点といたしまして、もし受益者負担の範囲内で償還すれば足りる程度の低利かつ長期の外資を利用することができるといたしましたら、将来外資導入による資金調達も非常に望ましいと考えられます。特に利用者の多い幹線あるいは観光的な目的のものにこれを利用いたしますならば、内外人に若干高い受益者負担を課しましても、結局経済発達を促進し、また観光的目的のものにつきましては外貨収支がプラスとなりますから、国際収支改善にも役立つことと考えるのであります。特に今後の巨額な資金の必要を考えます場合に、低利な、有利な外資を導入するということが考えられてもいいと思います。  第六点といたしまして、公団債の元利支払いにつきましては、これはすでに内定しているところと存じますが、政府保証をすることが必要であります。  以上をもちまして、私の意見具申を終る次第であります。
  11. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) 以上をもちまして、参考人の御意見は終りました。  つきまして、各委員から参考人に対して質問があれば、順次お願いいたします。
  12. 田中一

    ○田中一君 紅林さんには後ほど伺いますが、橋本さん、今野さん、友末さんのお三方にお伺いいたしたいのですが、これは結局国が財政支出で建設すれば最善であるという前提のもとに、今のような日本道路公団ができるんだという現在の御意見と解釈して、よろしゅうございますか。ということは、国が国民の租税によるところの財政支出によって道路整備をはかるならば、それが最善だという前提のもとに、そういう考え方のもとに、今当面する日本道路公団設立に対しては、次善の策として賛成するというような解釈を私はしておるのですが、それでよろしゅうございますか。
  13. 橋本元三郎

    参考人橋本元三郎君) 私はそう思います。
  14. 今野源八郎

    参考人今野源八郎君) 私、ちょっとそれに補わさせていただきますが、最善ではございますが、現在におきましてはこの有料制はやむを得ないと、今のところ申し上げたいわけでございます。
  15. 田中一

    ○田中一君 友末さん、いかがですか。
  16. 友末洋治

    参考人(友末洋治君) 私も同じように思います。
  17. 田中一

    ○田中一君 今野さんに伺いますが、結局今の有料道路制発達といいますか、これが資本主義的にも高度の発達によってもたらされたのだというような御説明がございましたが、現在の日本資本主義社会であるという前提のもとに賛意を表するという意味に解釈して、よろしゅうございますか。
  18. 今野源八郎

    参考人今野源八郎君) よろしゅうございます。しかし、ほかの交通機関が有料であるのに、道路だけを無料にするということは、結局大衆負担を多くするという矛盾がございますので、資本主義が続く間、すべての交通機関が無料になれば別ですけれども、だれかの費用で交通機関を作らなければならないとすれば、利用者がそれを負担する、あるいは資本家が、営業的にそれを利用する人がより多くそれを負担するということは、公平なことだと思います。
  19. 田中一

    ○田中一君 交通政策の面から見て、今野教授は社会主義社会ではどのような形が望ましいとお考えになりますか。学問的に、あなたの学者としての良心からお答えを願いたいと思うのだが、ただいまおっしゃったような、鉄道もあらゆるものが全部無料公開の原則にのっとった方がいいというのか、あるいは——社会主義国は全部鉄道などの料金無料でやっていないということは、御承知の通りです。そこであなたのお考えになるところの社会主義社会というものは、どんなものが望ましいかというのを、学問的見地から一つ……。
  20. 今野源八郎

    参考人今野源八郎君) 究極的には無料であることが望ましいのでございますけれども、それは実際問題としては夢のようなことでございまして、やはり自分の足代は自分で払う、ただ中間の利潤の排除と、そうしてコスト・プリンシプルでいく、原価だけの費用は払うということは、これは社会主義の社会になっても同じだと思います。
  21. 橋本元三郎

    参考人橋本元三郎君) 田中さんに申し上げますが、私の申し上げました国費によって、国家予算によってやることを原則としまして、その補助的なやむを得ない方法としてこれに賛成すると申しますのは、ここにいう道路法の道路、つまり国民一般が通る道路についての話でありまして、特定者だけが使う道路はもちろん特定者が負担すべきだと思います。
  22. 田中一

    ○田中一君 私もそういうふうに解釈しております。そこで橋本さんにもう一つ伺いたいのは、鮎川構想による道路というものと、この公団法に盛られている構想というものと、むろん現われた結果の現象というものは、道路はできるのであって、変らないと思いますけれども、方法論として、短かい言葉で説明して下さい。是か非かという言葉で対比しまして、どちらが好ましいとお考えになっておられるか。
  23. 橋本元三郎

    参考人橋本元三郎君) 私は、鮎川構想は道路網の一斉大修理でございまして、公団法はその中の特に有料にするに適した所をちょいちょいつまみ食いにするものだと、こう考えておりますので、比較にはならないと、こう考えております。
  24. 田中一

    ○田中一君 あなたの説を伺いまして、結局基本的な道路計画というものからこの公団の施行する範囲というものは逸脱してはならない、この中の基本的な計画の一部であり、かつそれを効率的に実施しなければならないというふうに、そういう工合にとってよろしゅうございますね。
  25. 橋本元三郎

    参考人橋本元三郎君) その通りでございます。
  26. 田中一

    ○田中一君 紅林さんに伺いますが、お説の第一の問題、公債と同じじゃないかという御見解は、私も同様に思っておるわけです。そこで、採算がとれるものならいいじゃないかということならば、採算がとれるものならあなたはいいと考えておりますか。
  27. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) はあ、そうです。
  28. 田中一

    ○田中一君 公共事業というものは採算に乗らないものが多い。だから、そうすると、採算に乗るものならば、民間資金で卒業することもいいというお考えなんですか。
  29. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) そうです。ただし、それには非常に長年かかるものということになりますと、採算といいましても問題がございますが、数年の間に採算がとれるというものであれば、民間資金の活用に差しつかえないと思います。
  30. 田中一

    ○田中一君 預金部資金もこれは民間資金というお考えですか、それとも、これは国が管理するものだから、別の問題だとお考えですか。
  31. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) 私は民間資金と性質は同じであると考えております。
  32. 田中一

    ○田中一君 あなたもやはり、こうした公共事業というものは、国が今まで通り財政支出でやった方がいいというお考えに変りはございませんね。
  33. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) はあ。この道路公団の問題に関する限り、これは現在の受益者がこれを負担していくという考え方が至当であると思いまするし……。
  34. 田中一

    ○田中一君 道路整備に関する限りですね、あるいは道路の開設に関する限り、受益者が負担するのは当然だというお考えなんですね。
  35. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) そうです。
  36. 田中一

    ○田中一君 そうしますと、現在われわれが通念として持っておりますところの公道の無料公開の原則というものは、これは間違いであるというお考えですか。
  37. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) 決してそうではございません。日本道路公団が取り上げようとしているような道路については、特にそれを有料にする理由があると思うからです。あらゆる道路有料であるべきであるとは考えておりません。
  38. 田中一

    ○田中一君 あなたは、日本道路公団が取り上げようとする道路は特異なものであって、これは当然有料にすべきだというお考えは、どういう観点からおっしゃっていらっしゃるのですか。
  39. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) つまり、その道路を利用することによって非常に経済的な効果が上げられる。時間的にも利用者にとってプラスであり、そして経済上のコストからいっても、その道路を利用することによって経済的な採算がいいという、こういうものをお取り上げになると考えますので、その限りにおいて、それは受益者が負担すべきである。一般大衆の租税によってやるよりは、むしろ有料であることが適当である、こう考えております。
  40. 田中一

    ○田中一君 先ほど橋本さんが、預金部資金を使ってやる場合でも、結局二重負担というような印象を受けるのではないかということを指摘しておられたのですが、そこで、あなたが考えられる有料道路の方がいいのだということは、具体的な考えはお持ちになっておらないでしょう。ただ、日本道路公団がやろうというものが法案に盛り込んである、またあるいは参考資料として提出されたものを見て、あなたはそうお考えになっているのでしょうね。
  41. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) それは、そうです。
  42. 田中一

    ○田中一君 やはり、日本の財政が豊かになって、国民全部がどの場合でも一あなたは採算、採算とおっしゃるけれども、遊んで通るのでも、ドライブでもなんでも、採算も何もなしにして、その道路というものを、国民自分の生活のために、あるいは内分の幸福のために、共有するということには賛成なんですね。
  43. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) もちろんそうです。そうなれば大へんけっこうだと思っております。
  44. 田中一

    ○田中一君 このような形の道路債というものは、最後にあなたは、当然これは元利支払いに対しては政府保証がなくちゃならないということを強くおっしゃっておられました。これは法案にも盛り込んであります。しかしながら、あなたは一方においては、政府保証というものはこれは公債と同じではないか、という御見解を表明していらっしゃる。そうすると、あなたは——あなたはというより、金融界は、当然これは公債と同じであるという観点で引き受けるつもりなんでしょうか、引き受ける場合には。
  45. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) 公債と考えて引き受けるかどうかということは、必ずしも申し上げられませんが、目的公債のような性格のものであるということは言えると思います。
  46. 田中一

    ○田中一君 一方、あなたは、御説明の第二項ですかで、単なる銀行ばかりを対象にしないでくれということが一つと、それから、現存の債券を発行している国鉄公社、電電公社その他よりも基礎が弱い、採算も危険率が高い、だから、利回りをよくしてくれ、こういうことをおっしゃっている。そうすると、公債というものは結局、電電公社も国鉄も何もかも全部入っている、これをひっくるめた国というものになっているわけです。国家保証をすればいいということならば、この日本道路公団だけがもっと利回りをよくしてくれというような考え方は、どこから来ているのでしょう。
  47. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) これは、おそらく民間資金の利用度が非常に高くなるであろうと考えます。現在の財政の状態から考えまして、それほど一般会計から道路公団に多くの金を投入することはできないのではないかと思います。従って、民間資金依存度が漸次高くなっていくように考えられるのです。そうなりますと、やはり保険会社その他の金融機関の資金を相当程度利用せざるを得なくなると思います。そうすると、保険会社とその他の金融機関は、銀行よりもさらに若干コストの高い資金でありますから、それに消化させるというためには、やはりある程度利回りを考慮しなければならなくなるであろう、こういう意味であります。
  48. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) ちょっと、参考人の方に御注意申し上げますが、御発言の際には、委員長の許可を得てからお願いいたします。
  49. 田中一

    ○田中一君 今度発行しようという道路債券の額面、売出価額、利回り、それから償還期間などは、むろん御承知の上でございますね。
  50. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) そうでございます。
  51. 田中一

    ○田中一君 従来出しておりますところの国鉄並びに電電公社等の債券の発行は、どういう利回りになっておりますか、御承知だったら。
  52. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) 国鉄、電電公社債の表面金利は七・五%、発行価額が九十九円五十銭で、七カ年でございます。従って、利回りは七分六厘ということに相なります。
  53. 田中一

    ○田中一君 道路公債で政府が、予定というか、計画されているものは、額面百円で、売出価額が九十九円五十銭、金利が七分五厘、一年据置の六カ年償還、こうなっておりますけれども、これはもしあなたが考えられるならば、どの程度に利回りをよくしたならば消化するであろうとお考えになります。
  54. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) この問題は現実の問題でありますから、どれだけのものを今後さらにどのような金融機関に消化させるのかという計画によって、考えなければならないと思います。たとえば、もちろん現在の社債や金融債と同様であるというふうには考えておりませんが、社債は現在応募者利回りが八分二厘二毛であります。金融債は七分六厘三毛になっております。地方債は利回りが年八分ということになっておりますから、これらとの振り合いを考えてみればよろしいかと思います。
  55. 田中一

    ○田中一君 政府はわれわれに、この一法案の提案に当って、この日本道路公団の発足した後には約三千億程度の事業をしたいということを漏らしておるのです。あなたは、三千億程度のものは、何カ年か知りませんけれども、日本の今日の大体の産業のあり方から見て、可能とお考えになっておりますか。何年か知りませんよ、政府ははっきりいたしませんから。五百年か千年か知りませんけれども、三千億程度のものをやりたい、そういう答弁をしております。それが、かりにここ十カ年と考えたならば、可能とお考えになりますか。
  56. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) そのような膨大なものにとかくなりがちであると考えますので、そこで道路公団といたしましては、その事業をいたずらに膨大なものにすることは避けてほしい、適当なるものを適当な期間において消化していくということを、さしあたっての運営方針にしていただきたい、かように考えております。
  57. 田中一

    ○田中一君 今のようなあなたの御意見を通じて私が受け取るのは、このような構想の債券の発行、いわゆる資金募集という形態では反対だ、困る、あるいは消化もし切れぬじゃないかというような結論のようにうかがえるのですが。
  58. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) 必ずしもそうばかりではございません。この日本道路公団が採算を維持し、そうして適当な運営を行う限りにおいて、その公団債は当然に消化し得ると思いますし、私どもも引き受けられると思います。ただ、それがらち外に出ました場合には、非常に問題になる。こういう考えであります。
  59. 田中一

    ○田中一君 らち外というのは、どの程度を言っておりますか。
  60. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) それはちょっと、具体的にどのくらいであるかということは、私には現在のところはわかりません。
  61. 田中一

    ○田中一君 私はこういう見解を持っておるのです。この日本道路公団というものは、これは皆さん御承知ないから申し上げるのですが、この構想が生まれたということは、先ほど言ったように、あるいは一兆円とか、一兆二百億とかいう抑え方をしておるところの国の予算の編成方針といいますか、財政規模といいますかね、こういうものは政治的なある限界があるのですね、鳩山内閣としては。これから出れば政治的な責任を負わなければならぬというところに、このような公団の乱造といいますかね、を企図しておるものだと思うのです。そこで、こういう形でもってやって参りますとね、これはもう国民生活というものはますます、今まあ、総評その他は一律二千円ベース・アップの問題で戦っておりますけれども、こういう問題が出てくれば出てくるほど、国民負担が重くなってくるわけですね。で、こういう点から見て、政治的な面から見てですね、こういうものの乱造というものは好ましいか好一ましくないかの問題を、一人ずつお答え願いたいと思うのです。もしも、将来また何かの公社ができるらしいですよ、また何かの公団ができるらしい、こうなった場合には、こういう傾向がいいか悪いか。いいか悪いかよりも、皆さん方の是非のお答えを一つ願いたいと思うのですが、どうでしょう。
  62. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) 田中委員、どなたですか。
  63. 田中一

    ○田中一君 それでは、橋本さんから一つ
  64. 橋本元三郎

    参考人橋本元三郎君) これは公団の性格によると思いますが、国民生活を緩和して増大するような公団ならば、百でも千でも、お作りになったらいいと思います。ですから、たくさん作ることがいいか悪いかでなしに、いかなる公団かと指摘されなければ、お答えできないと思います。
  65. 田中一

    ○田中一君 私は野党でございまして、(笑声)いろいろ構想を持っておりますが、私が発表しても困るので、従って現在作られた、この鳩山内閣発足以来第三次鳩山内閣に至るまで、あなた御承知の、四つか五つ、六つか作っているのですよ、この種のものは。かかる公団設立に当ってですよ、国民生活のますます負担を重くするものだという気持を持っておるのです。それで、今紅林さんが指摘したように、融資というか、起債の方法とか、あるいは資金資金を使うとかいうような方法でやった場合ですよ、これはどう考えておられるかというのです。
  66. 橋本元三郎

    参考人橋本元三郎君) 私もそういうことは深く研究はしておりませんけれども、国会におきまして多数の国会議員が賛成される案は、現在は国民の声であって、それを賛成されたものと思われます。(笑声)従って、野党が特に反対の理由があったにもかかわらず、押し切られたというならば、多数党が決定した公団、公社のその後の実績はどうか、そのときに多数党が公約し大いに成績を上げるといったことが、実際その通り上っておれば、国民の多数の要望通りに運営されておると考えられるべきだと思います。それが、もし赤字を出したり、破綻を生じたり、横流れになったならば、直ちに実績をもって多数党を攻撃されたらどうかと、こう思います。
  67. 田中一

    ○田中一君 まあ、あなたの政治的な含みのある御答弁ですが、(笑声)私なども鮎川構想による道路計画というものに賛成なんです。あなたは、今鮎川さんが同僚議員としてここにおられますけれども、非常な苦労をして、自分意見自分考え方というものを国民に知らせようとして、今日努力なさっておられる。しかし、どんないい構想、どんないい着想、どんないい計画も、多数でなくては通らないという民主主義のルールでございましょう。しかしながら、あなたからそういう御弁弁を聞くとは思わなかった。(笑声)あなたは少くとも鮎川構想の実際的な事務の計画に携わっておる方と伺っておるが、その方からそういうあいまいな御答弁だと、私は鮎川さんは大へんな人をその事務の担当者に持ってきたという気持しか持ちません。そういうことを言わずして、短かい言葉でけっこうですから、お答え願いたい。これはもう伺いません。今野さん、どうお考えになりますか。
  68. 今野源八郎

    参考人今野源八郎君) 公団を作ることが国民生活を圧迫しやしないかという御心配、公団に全くよりけりでありまして、道路を作ること、特に大事な道路を作ることは、重要なる産業に役に立つことであり、いわば生産的な機能を持っているということからしまして、道路公団に関しましては、その御心配が少くていいのじゃないかという気がいたします。  もう一つは、どんなに生産的な事業を営む公団であっても、その独立採算なり何なりが確立しておりませんと、結局大衆負担に転嫁される心配がございますので、独立採算制を十分持たせるということが重要だろう。生産的な事業であり、採算がとれる限り、それは国民生活を圧迫する種類の事業にはならないと私は思います。  なお付帯さしていただきます。先ほど受益者負担のお話がございましたのですが、あれに対してちょっと答えさしていただいて、よろしゅうございますか。
  69. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) どうぞ。
  70. 今野源八郎

    参考人今野源八郎君) 有料制にするということよりも、税金を取り立てて道路を作るべきだというお考え方は、ごもっともでございますけれども、その税金と申しましても、従来は受益者負担で、沿線の土地にかけておったということでございます。それだけでなくして、通行人から料金をとるというふうな考え方が、世界各国でだんだん多くなってきていると思うのです。ですから、やはり一極の税金だと思います。それですから、税金を消費税その他でとらずに、受益者に負担させる、受益者の中でも、ただ、道路ができたり交通路ができて沿線の土地が値上りするから、そういう形の転嫁の仕方に対して、直接スペシャル・ユーザーから取るという考えの方が、税金のとり方としても公平じゃないかという気がいたします。特にそれが資本家的な人が利用するとすれば、資本主義社会でもそれはやはりかえって社会性のあることじゃないかと私は思います。
  71. 友末洋治

    参考人(友末洋治君) 一つの必要な政策に、財政投資でいくか、あるいは民間の融資を振り当てていくかという問題になってくるかと思いますが、これがいいか悪いかという問題は、なかなか複雑な問題でございまして、その時代々々におきまするところの国民の所得の状況、あるいはまた国民の負担の状況、あるいはまた民間資金の状況といったようなものを、総合的に判断して考えなければならぬことでありまして、一がいに民間資金というものの吸い上げ投資ということが悪いというふうには、実は考えるべきものではない。時代々々におきまするところの、これら総合的にすべての事柄を判断して、考慮しなければならぬというように私は考えるものでございます。
  72. 紅林茂夫

    参考人(紅林茂夫君) 公団設立することがいいか悪いかという問題につきましては、これは財政投資で公共事業費ならば当然にやるべきものでありますが、また十分に採算がとれて、コンマーシャル・べーシスでやれるものならば、民間の事業として行うものに属すると思うのであります。公団は結局その中間にあって、相当長期を要すれば採算が考えられる、あるいはその使用の内容が相当に公共的なものである、こういうようなものに限って、公団設立されるべきものであると考えます。その意味におきまして、日本道路公団は一応そのような範疇に入り得るものと、こう思っているわけであります。
  73. 田中一

    ○田中一君 申し上げておきますが、この法案では、単にですね、自分で土地を取得してそこにハエ・ウエイを作るということでなくして、一級国道、国が所有する一級国道の上もやるし、二級国道の上もやるし、あるいは府県道の上もやる場合がある。市町村道の上をやる場合ということもあり狩るわけですね、現在。これはおっしゃる通り自分の持っている土地へ国民の利便のために相当多額の金を注ぎ込んで、新道を、近道を作るといった場合に、これを有料道路にするということは、現在、何ですか、箱根の十国峠ですか、やっておりますね、これはいいと思うのですね。しかし一級国道の上とかあるいは二級国道の上、都道府県道の上、市町村道の上に道路整備をやって、それが有料道路になるのだということは、ちょっと考えられないのですよ、僕には。これはそういうケースのものが考えられておる。現在も主としてそういうものをやっておるのです。ことに一番重大な問題は、関門隧道なんというものを、あれは高い料金をとろうということを考えておるのですから、これなんか相当われわれとしては問題があるのじゃないかと考えておるのです。  まあ、これで質問を打ち切ります。
  74. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) まだほかに御質問ありますか。——じゃ、参考人に対する御質問はこれで終ったものと認めます。  参考人の諸君、ありがとうございました。輝なお、この次の委員会には大臣に対する質問をやりまして、なお時間がありましたら、東北興業株式会社法の一部を改正する法律案、これの予備審議をいたします。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 赤木正雄

    委員長赤木正雄君) それでは、本日の委員会は、これをもって閉会いたします。    午後零時三十三分散会