○
政府委員(
竹内壽平君)
会計検査院から
批難に立てられました各
事項につきまして簡単に所見を申し上げてみたいと思います。
まず三十三号の
京都刑務所における
さく井工事の
批難事項について申し上げます。
批難の要点は、
京都刑務所が
昭和二十九年七月、
中島工業所に請負わせまして
さく井工事を
実施し、同年十一月その
工事を完了いたしましたが、その第一は
さく井工事の
計画に当りまして、約一キロ隔てました
鐘紡山科工場の
さく井工事を
参考といたしておりますけれ
ども、単に
地層図を
参考としただけで、三百尺掘れば
目的水量の六千石が得られるものと
判断をいたしましたが、その見通しを誤っているという点。次に三百尺掘さくいたしました際確実な根拠もないのに約六千石の
水量が得られないものとして
計画を変更して
増し掘りの
工事を進め、そのために
追加工事費に二十八万余円を支払ってしまったという点。第三としましては、
工事完了後
水量、
水質を
検査いたしましたところ、
水量は
目的量をはるかに上回る九千四百石を得たのでありますが、
水質が悪く、
鉄分や
雑菌が含まれているために、
飲料水としては不適当と
判断されて、
工事目的を達することができないというような点で、結局不経済な
国費支弁になってしまったということになるのでございます。
なお、
会計検査院は、特に
増し掘りの際に
水量から
水質の
試験を行わないで
追加工事を施行いたしました点につきまして、結果から見て全く余分なことをして不経済なことになっていると
批難をしておられるようでございます。
この
計画を立てるに当りまして大切なことは、三百尺掘れば
需要量の六千石が得られるかどうかという点、また
水質が
飲料水にも適するものであるかどうかという点でございます。六千石の
水量につきましては、
刑務所から一キロ離れた
鐘紡の
山科工場に四百五十尺の
さく井がございまして、これが
参考となるわけでございます。そこで同
工場の
さく井について
地層図を
参考にさせてもらいました。それによりますと、
地下百尺から三百尺までの二百尺の
区間に百三尺の滞
水層があるのでありまして、そこから一日約四千八百石の水が出ることがわかりました。すなわち、
尺当り四十七石の
水量となるわけで、
刑務所の位置が
工場に比べまして低い所になっております
関係上、地形のそういう
状況を勘案いたしますると、
刑務所の場合には二五%の
増加水量を見込んで差しつかえないということになりまして、百三尺の滞
水層は変化はないものといたしますれば、その
比率を乗じて
計算いたしますると、
刑務所の場合には六千五十一石の水が得られるという
計算になるのでございます。
次にこの
水質の点でございますが、
鐘紡では
地下百尺までの
区間の滞
水層の水をとって
工業用の水として使っておりますために、その
水質の良否は直接には
参考にならないのでございます。
刑務所では百尺までの
区間の滞
水層からは水を取らないことにしておりまして、一般的に申しまして、
地下百尺以下に掘り下げますると、
地表から水を浸透しない
粘土層が必ず百尺までの
地層の中にあるのでございまして、それ以下の水は
地表水が含んでおります
雑菌などは通さないのでございまして、
雑菌のまじらない水が得られるというのが常識になっておるのでございます。そこで
刑務所の場合には、
工場の前例を調べるまでもなく、
飲料水には適する水が得られるというふうに
判断をしたわけでございまして、この点は今日になって
考えてみますといささか軽率のきらいがあったかと思うのでございます。
雑菌の点はともかくといたしまして、
鉄分その他異味——異なった味の
有無等は、
工場の
水質検査をすることによってこの
計画実行の有力な
資料とすべきであったというふうに
考えるのでございます。
次にこの三百尺までに掘り下げましたときに
追加工事をした点でございますが、三百尺の
地点で滞
水層を調べてみますると五十五尺でございました。
鐘紡の場合には百三尺でありましたので、それに比べると半分にすぎないことがわかったわけでございます。これは
見込み違いでございまして、この五十五尺に対して前に申しました
比率で
計算をいたしますると、
推定水量は三千石になるのでございます。これでは
工事の所期の
目的を果しませんので、さらに百尺掘り
増し追加工事をすることにしたわけでございます。で、四百尺の
地点までに二十一尺の滞
水層がございました。これを
合計いたしますると七十六尺になるのでありまして、前の
比率をかけて
計算をいたしますると約六千石になる。そこで六千石という
目的水量に達するということからして、ここで一まず
工事を終了いたしたのでございます。ところが
水量をその
段階で
検査をいたしてみますると、滞
水層七十六尺で九千四百石も出ることがわかったのでございまして、
鐘紡に比べて
水量の多いことに実は驚いたわけでございます。こういう
比率からいたしますると、あるいは三百尺のところで
目的量の六千石を湧出していたのかもしれないということが
あとになって結果的には想像されるのでございます。そういう
意味で参りますると、
会計検査院が特に
指摘しておられますように、三百尺のところで
水量とか
水質の
試験をなぜ行わなかったのかという問題が起って参ります。で、まず結論的に申しますと、この右の
試験を行うということが技術的に見ましてすこぶる困難でありますし、また経済的にはほとんど不可能であろということでございます。この
さく井工事には
ローピング式を採用いたしておりまして、
さく井の
方法によりますと、この
さく井の中途において
水量や
水質を
検査することが実際上できないのでございます。すなわち三百尺の
地点で
水量、
水質の
検査をしようとすれば、それ以上の
増し掘りを断念するほかないのでございまして、前に申しましたように、三百尺の
地点までの滞
水層が
合計五十五尺というようなことから、先ほど申した
比率をかけて
推定水量を算出しますと三千石ということでありましたので、
通常の技術から申しますると、さらにここで掘り進んで
所要量を得るということに努力するのがこの場合適正な措置であるというふうに
考えるのでございまして、この点に関しましては、
会計検査院の御
批難の点は、多少情状を酌量していただきたいように思うのでございます。
これを要しまするに、
本件におきまして結局
批難を受けるに至りました重要な点は、
増し掘りまでして
さく井工事を完了したのに、結局
飲料水にも適しないような水しか得られなかったという点に帰するのでございまして、結果論的にはまさにその
通りでございますが、この
批難すべき結果を招来する過程においてどこが悪いかというふうに申しますると、今まで申し述べて参りましたように、
実施計画に当りまして、
鐘紡の
工業用水の
水質試験をしてみるとか、あるいはまた
専門学者につきまして地質の
検査を受けるとか、いろいろなまだ尽すべき手があったかと思うのでございますが、その点につきまして非常に慎重を欠いたということになると思うのでございます。もしもそういう慎重な態度をとっておりますならば、あるいはこの
さく井工事は取りやめたというような結果になるかもしれないのでございまして、その点まさに
会計検査院の御
指摘の
通り、私
どもとしては申しわけないと、かように
考えるのでございます。
つきましては、この
工事でございますが、その後
湧水を続けておりまして、その結果によりますると、ただいまでは
雑菌は
一つも入っておりません。ただ
鉄分がございますのと、
飲料水としては不適の
判定を受けたのでございますが、異質と——異なった質と書きまして、そういう
判定を受ける要素がまだ残っております。しかしながら、最近
気曝法と申しまして、空気で一
たん水をさらして、それを沈澱させるという
方法で、小さい規模のもので
試験をいたしました結果、
気曝法によって濾過いたしますならば完全に
飲料水になるという
試験の結果を得ております。従いまして私
どもといたしましては、本
工事について来年度約百二十万円の予算をもちまして、
気曝法によってこの
井戸水を濾過して、
飲料水及び
雑用水として使用いたす
考えをいたしておるのでございます。
次に
不正行為の
関係、第三十四号について申し上げます。その第一は、
長崎地検島原支部及び同
区検検察事務官津留愛生にかかる
罰金等の
徴収金及び
換価代金の
横領でございます。
犯罪の
期間は二十七年二月から三十年三月に至る約三年間にわたるものでございまして、
横領金額は九十七万九千四十六円ということになっております。
犯人の
津留は
島原支部及び
区検におきまして
徴収主任、
証拠品係、
領置物取扱い主任、分
任収入官吏、
歳入歳出外現金出納官吏というように五つの役を一人で兼ねていたのでございます。
地方検察庁、本庁のように、
職員の多数おりますところでは、それらの
役職は別々の
職員が担当しておりますから、
お互いに、いわゆる
相互牽制の結果、不正も敢行いたしにくいのでございますし、また長期にわたって
発見ができないというような事態も少いかと思うのでございますけれ
ども、
支部以下の小さい
出先機関におきましては、
職員の手不足からやむを得ず一人で幾つかの役を兼務せざるを得ない結果となっております。
会計検査院からも毎年このような
執務体制が
犯罪を誘発するということで御
注意を受けておるのでございますが、
本件はまたその好適例となってしまいました次第でございます。
御
承知のように、
会計法上
収入官吏、
歳入歳出外現金出納官吏という
職員でありませんと、
罰金とか
換価代金等の
現金を取り扱うことができないのでございます。
通常この
罰金の
徴収をしたり
領置物の
取り扱いをする
職員はさような
会計官吏ではないことになっておりますので、
現金の
取り扱いができないのでございますが、
津留は先ほど申しましたように一人で五役を兼ねておりましたために、
罰金納入者から
現金を受け取りまして処理する
権限を持っておったのでございます。まあ
証拠品の換価しました
代金をみずから取り扱うことができたわけで、この職務上の
権限を乱用いたしまして、納入された
現金の
罰金や手元にある
換価代金を
横領いたしまして、別の
帳簿を用意しておって、
正規の
帳簿にはそのようなことを記載しておりませんために、
正規の
帳簿を
幾ら検査をいたしましてもその面からは
発見ができなかったということであったわけでございます。
それからもう
一つのは、
札幌法務局の
鵡川出張所の
所長事務取扱、
法務事務官川島篠松にかかる
登録税の
横領でございます。
犯罪の
期間は二十九年六月から三十年四月に至る約十カ月にわたる
横領でございまして、
金額は三十四件、二十四万二千八百七十八円となっております。この
犯人の
川島は
出張所長事務取扱という地位でございまして、これは
鵡川出張所においては一人でございます。本人の心がけ次第でまあ自由自在というようなことになるわけでございまして、御
承知の
通り、この
登録税は
登録申請の際に原則といたしましては
収入印紙をもって納めていただくことになっているのでありますが、これは
登記官吏は
収入官吏、あるいは
歳入歳出外現金出納官吏というような
役職を兼ねておりませんので、
現金を扱うことが
会計法上許されておらないのでございます。その犯行の動機は、最初の
横領になっております一万四千円の
収入印紙でございますが、その
鵡川の土地の
郵便局にその
収入印紙がございませんでしたために、
申請者から何とか
便宜現金で受理してほしいというような申し出がございまして、これを入れて
保管をしておりまするうちについこれを流用費消してしまったということが発端に触りまして、ずるずると
あと何回か
犯罪を重ねてしまったのでございます。
で、この
事件はその当時、
昭和三十年の四月でございますが、特に
不正防止の
意味をもちまして管内の
事務監査をいたしたのでございますが、行なってみますると、
収入印紙の張ってない
登記申請書がございますので、これは直ちに
発見された次第でございます。
なおこの
不正事故に対しまする
防止対策につきましては、特に
所管の中に人の非違を糾弾いたしますところの
検察庁を含んでおりますし、その
検察庁の
職員がかような
犯罪を犯すということになりますると、
検察の威信を失墜いたしますことこれよりはなはだしいことはないのでありまして、私
どもとしては何とかこの
不正事故を、
検察庁はもちろん、
法務省所管の各
組織から根絶いたしたいという
考えをもちまして、いろんな
角度からこれの
対策を
考えて参りましたが、遺憾ながら今もって減少はしつつありますものの、なお根絶という
段階に至らないのでございます。たくさんの通知を出したり訓示をしたり、いろいろ手を尽しておりますが、特に申し上げておきたいと思いますことは、私
どもは昨年の六月、当
委員会並びに
衆議院の
決算委員会におきましても、特にいろいろな面から御
注意をいただきまして、それらの
資料をもとにいたしまして、
事故防止のために特に会同を開きまして、かなりの長い時間を費してこれの
対策を協議いたし、
お互いに反省をし合ったのでございます。その後
検察庁につきましては、
最高検察庁と
法務省経理部における
監査の業務とを有機的に結び合せまして、
両者共同の
監査を
実施をいたしまして、すでに数カ所試みたのでございますが、かなりいい成績を上げております。
それから先ほど御
説明申し上げましたように
徴収金の、つまり
罰金を収める人が
現金を持ってきた場合に、まだ受け取っていないかのようにつくろって、その実受け取って、それを
横領してしまうという形をとりますので、
罰金の
未納者について
調査をする必要がございますが、この
未納者の
管理について今日まで少し
組織上不備な点がありましたので、今回
法務大臣訓令をもちまして
徴収金事務規程というものを作りまして、本年四月から
実施いたすことになっております。さらにはまたこの一月から二月にかけまして、ことに
検察庁におきましては、各全国の
地方検察庁で
不正事故防止対策協議会というものを開きまして、
事故のありましたところにつきましてその
原因を究明するとともに、その
対策をそれぞれ打ち立てまして、直ちに検事正の命令で
実施に移しております。それから前国会の
決算委員会でも御
指摘のありましたように、
会計職員につきましてもっとみっちりした
研修を施す必要があるのではないかということにつきまして、大臣、政務次官も
同感の意を表されております。私
どもも全く
同感でございまして、これが
対策の一環としまして、
法務研修所に
検察研究という部門がございますが、部内の
不正事故防止に関する
検察研究を来たる四月に
実施いたします
予定でよりより準備を進めております。この
検察研究におきましては、
不正事故の
防止等につきましてはまず
人員の
配置の
適正化という問題、それから
事務機構の
合理化という問題、
監査の
励行という三つの問題をそれぞれの
角度から
考えたいということで、
人員配置の
適正化の問題、
事務機構の問題と並行いたしまして
監査の
励行の問題、特に
監査の
方法、そういう問題について実際的に
事故の
原因を探究いたしまして、それぞれの
事件について系統的に検討をいたしたい、そうしてそれをまとめて今後の指針といたしたい
考えで、ただいまその準備を進めておるような次第でございます。
なお最後に、これは本年はまことに異例なことでございましたが、留置人費の償還の取扱い処置当を得ないという
批難がございます。この点につきまして申し上げてみたいと思いますが、この
批難は二つに分れます。
一つは
代用監獄に対する留置人費の償還に当りまして、東京拘置所外三十三の一応の処理
状況を見ますると、支払不足と払い過ぎ、過払いとがありまして、結局内容算出に対する検討が不十分であるという点でございます。
それから第二は、
宮崎刑務所におきましては、法務
事務官の坂本秀雄が留置人費の償還業務を担当中に、正当の支出額に付け掛をいたしまして、小切手を振り出さして、二十六年三月から二十九年八月までの間に二百三十七万三千二百八円を着服
横領したということになっております。
この
指摘事実は
検査報告の
通りでございまして、特に弁明を申さなければならない
事項はないのでございますが、まずこの支払い過不足の点でございますが、
代用監獄に対する費用の償還は、匂留状が発せられた日から
計算いたしまして、出所の前日までの分に対して日額七十七円ないし八十三円を償還することになっております。従来
刑務所側におきましては、警察側の請求を一応措信して支払いしなければならないような事情になっていたのでございます。拘置所におきましては、
被疑者が拘置所に移管されて参りますると、必ず本人についていつ匂留状が出たかというような点を調べますので、その点は間違いはないのでございまするが、
代用監獄の留置人の中には、匂留状が発せられて起訴を受けたものでございましても、必ずしも全部が
刑務所あるいは拘置所に移管されてはこないのでございます。中途において、保釈によって拘置所には参らないままで起訴されてしまうものもあるのでございますが、それらの者についても留置人費を償還をすることになるのでございます。特に今申しました移管して参らない留置入費につきましては、支出官である
刑務所側において警察からの請求書を信ずる以外にはちょっと手段がないということになっておったのでございます。今回
会計検査院とわれわれ
当局において
調査いたしました結果によりますると、警察側の請求の中にもかなり誤謬の存することがわかりました。これはまあ警察制度の改革等によりまして、
職員の異動がひんぱんに行われましたために、一般的に申しまして、この種の
事務に不なれであって徹底を欠いておるように思いますし、たとえて申しますと、留置人名簿に誤記があって整理されていない個所がたくさんある。あるいは請求の際に起算日や留置
期間を誤って記載した例もたくさんある。月をまたがっているような場合には
計算に間違いがあったり、あるいは自弁の食糧分を誤って拘置所で
計算しておるものも見受けられる。まあ、極端な例を申し上げますると、栃木県の警察で一銭も請求してないというようなところもあったのでございます。
刑務所側としましては、この請求を検討する場合に、これまた不十分であり、遺憾のない点が見受けられたのでございます。何はともあれ、警察が請求するんだからといって頭から信用してかかるという風潮も見受けられましたし、また警察署が府県各地に散在しておりますために、実地
調査や連絡がすこぶる困難で、手を尽せないという点もうかがわれたのでございます。
かような事情でございましたので、今後この種の過誤を繰り返さないためには、警察側の
注意も喚起して協力を願わなければなりません。それからまた一方
刑務所に対しましても大いに
注意を促す必要がありますので、それぞれ各
関係庁に対しまして即時
所要の通達依頼をいたしまして、今日におきましては、現地においても相互に連絡を密にして、打合会を催するとか、着々改善をはかっておるのでございます。
なお、私
どもから見ましていささか不十分な点と思われますことは、警察の請求に対して
刑務所が支払うという
関係でございますが、第三者がこれを確認するという
方法はとれないものだろうか。その第三者といたしましては、匂留の
事務を扱います役所は裁判所、
検察庁でございます。この裁判所、
検察庁、いずれかの役所によって、この確認の
方法が得られないものだろうかという点につきまして、先般来まず
所管の
検察庁に対してお願いはできぬかということで、いろいろ
事務折衝をいたしておりますが、
検察庁もただいま非常に手不足になっておりまして、果して責任のある協力ができるかどうかという点につきまして、まだはっきりとここで、そういう
方法がとれるのだということを申し上げる
段階に至っておりませんが、いずれにいたしましてもそういう点につきまして、今後支払い足らず、支払い過ぎといったような過誤を再び繰り返さないように、万全の
対策を立てているのでございます。
次に、宮崎の
不正行為の点でございますが、
犯人坂本は、延岡警察署の留置人費の請求書を偽造いたしまして、
正規の償還金に付け掛けをして、付け掛けの分を騙服していたものでございます。二十六年の三月から二十九年の八月まで、回数にいたしまして二十回でございます。詐欺いたしました小切手は二十通、額面が三百三十五万五千九百四円でございますが、うち
正規の分を除きますると差引二百三十七万三千二百八円になるのでございます。
この犯行はどうして行われておったかと申しますと、本人の手口が非常に巧妙であったというだけでなく、留置人費の償還においての支出の形式が非常におざなりでございまして、内容をほとんど監督者が検討していなかったというように思われるのでございます。監督者側の責任もその
意味におきまして決して軽くないと思われるのでございますが、特に問題点と思われますことは、隔地債権者に対する支払い
方法が、予決令の
規定に定められた原則によらないで、記名式の持参人払いの小切手を振り出しまして、これを手元で
現金化して、正当額を書留郵便で小為替で送るというような
方法をとっておったことでございまして、かような措置が常に必ずしも違法ではないのでございますけれ
ども、そういう特別な場合に相当しないにかかわらずこういう特殊なやり方をやっておった。そうしてそれを放任しておったということが、結局
犯人をして
本件のような
犯罪を犯すようにまあ乗ぜしめたということに相なろうかと思うのでございまして、この点
事務運営上遺憾の点があったことを深くおわび申し上げなければならないと思うのでございます。この点につきましては、さっそくながら今のような隔地債権者に対する支払い
方法は厳重に訂正をさせることにいたしまして、それから公文書等は、すべて所長とか上級の責任者が監視して、公文書を私しないように
注意をさしておりますし、その他
本件の犯行の判だとか用紙とかというものを、
刑務所内の
工場を利用しておりますので、そういう点につきましての取扱い方を厳重に指示いたさしておるのでございまして、今後はかようなことは再び起るまいと、かように確信いたしておるのでございます。
るる申し上げましたが、
法務省側といたしましてはまことに遺憾に存ずるのでございまして、ここ数年来のいい傾向をますます徹底させまして、根絶を期したいというふうに
考えております。どうぞよろしくお願いいたします。