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佐多忠隆君
日本社会党を代表して、この案に対して
反対を表明いたします。私
たち日本社会党は、われわれが
戦争を通じて
諸国に対して非常な
災害を与え、物質的な
災害のみならず、精神的な
意味において非常な過誤を犯し、それについてわれわれは敬虔な気持で、過去の
日本の
帝国主義的な、侵略主義的な
政策に対して、根本的な批判と
反省をなした上で、さらにでき得べくんば物質的な
災害その他に対して、できるだけの補償をやり、
賠償をやること、そういう
物心両面を通じて新らしい
諸国間の
友好関係、
平和関係を
確立をすることが必要であり、しかもそれをなるべく早い機会に着々と
実現をしていくことが絶対に必要であるという原則をとって参りましたし、今後もそれを
実現することにあらゆる
努力をしなければならないと、こういうふうに考えます。そういう
見地から、
ビルマとの
賠償問題に対しては、われわれは率先してこれに
賛成をし、これが
実現することにいろいろな
努力を尽しておるつもりであります。従って、それの延長として、今度の
日比賠償に対しても、われわれは積極的に率先してこれに
賛成をしたい非常に強い熱望をもっておるのでありますが、残念ながら今度
協定をされました
日比の
賠償協定は、この
協定が成立する
過程をいろいろ考えた場合に、さらには、成立した後の
日本国民が長きにわたって
負担をしなければならない
負担の大きなことを考える場合に、われわれはどうしてもこの
案自体に対しては
賛成ができないという、まことに残念な
態度をとらなければならないのであります。
そもそもこの案が成立をするときに、もう少しこの問題は慎重に
検討をすべきであるということをしばしば
主張をしたにかかわらず、その
検討が何らなされないうちに、軽く、
総理大臣と
フィリピン当局、
ネリとの間の軽い口約束から発端して五億五千万ドルの
賠償、二億五千万ドルの借款、この二本建が確定をしてしまい、さらには
現金賠償に類する二千万ドル、あるいは
資本財の過大な比率を押しつけられるというようなことが既成事実として、その後の
交渉においては、もっ
ぱらこれをどうちびりちびりとくずしていくかということにあらゆる交渉の
主点がおかれたということは、最初の
出発を誤まったがゆえにこういうことに相なったのであって、その
最後の
妥結の仕方にわれわれは非常な
反省と不満を持っており、これは
総理なりあるいは
外務大臣なりの重要な
政治的責任であり、しかもこの問題を当初から取扱ってこられた高碕全権の発言なり、あるいは
賠償負担その他
海外支払いとの関連において問題を具体的に討議をし、具体的にその困難さを十分に説得をして、もっと合理的なもので
出発をすることにほとんど力を注がれなかった
大蔵大臣、そういうところの政治的な
責任は、どうしても免れることができない点であると思うのであります。私
どもは、そういう
意味においてこの案に対しては何としても
賛成ができません。
しかし、われわれは繰り返し申し上げましたように、
賠償を通じて
近隣諸国との
友好関係を一日もすみやかに
確立をすることはぜひ必要だと考えますし、特に
フィリピンにおいては、この
審議を通じていろいろはっきりいたして参りましたように、
フィリピン自身の
建設計画を通じて、
フィリピン自身が工業化し、
経済自立を達成をしたい、少くとも
国内消費の相当な部分を
国内生産でまかないたいということを非常に強く
主張をし、念願をしておりますし、それは
アメリカ植民主義からの
脱却であるわけでありますから、その
アメリカ植民主義からの
脱却という
フィリピンのナショナリズム、反
植民主義の
希望その他は、われわれが
経済協力その他をやることによって
実現さしてやる一助にもなるという基本的な方針で、この運営が
実施をされることを切望をいたします。そのために、この
賠償がさらに
アメリカの
植民主義を合理化するような形において使われないように、十分な
一つ配慮をしながらこの
実現を期していただきたいし、同時に、この
賠償負担は、二十年にわたって非常に大きな
負担を
国民に与えるものであるということを十分に
一つお考えを願い、それが今後
実施の面において、
国内負担としてはなるべく
負担が少くなるように、しかもその効果は、先ほど申しましたように、
フィリピンの
植民主義脱却の
方向に最も有効に遂行をされるように
特段の
配慮をして、この
実施をしていかれることの
希望を切に申し述べながら、同時に、そういうことに
配慮の足らなかった点を
主点として、われわれはこれに
反対の表明をいたすものであります。