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1956-06-03 第24回国会 参議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年六月三日(日曜日)    午前九時五十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梶原 茂嘉君    理事            小滝  彬君            鶴見 祐輔君            羽生 三七君    委員            遠藤 柳作君            大谷 瑩潤君            鹿島守之助君            黒川 武雄君            重宗 雄三君            津島 壽一君            苫米地義三君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            河井 彌八君            佐藤 尚武君            須藤 五郎君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    経済企画庁長官    官房長     酒井 俊彦君    外務政務次官  森下 國雄君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国フィリピン共和国との間の  賠償協定批准について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○継続調査要求の件   —————————————
  2. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ただいまから、外務委員会開会いたします。  委員の変更をちょっと御報告申しておきます。長谷部ひろ君が辞任されまして、須藤五郎君が委員になられましたから御報告申し上げておきます。   —————————————
  3. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 日本国フィリピン共和国との間の賠償協定批准について承認を求めるの件を議題といたします。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  4. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本社会党を代表して、この案に対して反対を表明いたします。私たち日本社会党は、われわれが戦争を通じて諸国に対して非常な災害を与え、物質的な災害のみならず、精神的な意味において非常な過誤を犯し、それについてわれわれは敬虔な気持で、過去の日本帝国主義的な、侵略主義的な政策に対して、根本的な批判と反省をなした上で、さらにでき得べくんば物質的な災害その他に対して、できるだけの補償をやり、賠償をやること、そういう物心両面を通じて新らしい諸国間の友好関係平和関係確立をすることが必要であり、しかもそれをなるべく早い機会に着々と実現をしていくことが絶対に必要であるという原則をとって参りましたし、今後もそれを実現することにあらゆる努力をしなければならないと、こういうふうに考えます。そういう見地から、ビルマとの賠償問題に対しては、われわれは率先してこれに賛成をし、これが実現することにいろいろな努力を尽しておるつもりであります。従って、それの延長として、今度の日比賠償に対しても、われわれは積極的に率先してこれに賛成をしたい非常に強い熱望をもっておるのでありますが、残念ながら今度協定をされました日比賠償協定は、この協定が成立する過程をいろいろ考えた場合に、さらには、成立した後の日本国民が長きにわたって負担をしなければならない負担の大きなことを考える場合に、われわれはどうしてもこの案自体に対しては賛成ができないという、まことに残念な態度をとらなければならないのであります。  そもそもこの案が成立をするときに、もう少しこの問題は慎重に検討をすべきであるということをしばしば主張をしたにかかわらず、その検討が何らなされないうちに、軽く、総理大臣フィリピン当局ネリとの間の軽い口約束から発端して五億五千万ドルの賠償、二億五千万ドルの借款、この二本建が確定をしてしまい、さらには現金賠償に類する二千万ドル、あるいは資本財の過大な比率を押しつけられるというようなことが既成事実として、その後の交渉においては、もっぱらこれをどうちびりちびりとくずしていくかということにあらゆる交渉主点がおかれたということは、最初の出発を誤まったがゆえにこういうことに相なったのであって、その最後妥結の仕方にわれわれは非常な反省と不満を持っており、これは総理なりあるいは外務大臣なりの重要な政治的責任であり、しかもこの問題を当初から取扱ってこられた高碕全権の発言なり、あるいは賠償負担その他海外支払いとの関連において問題を具体的に討議をし、具体的にその困難さを十分に説得をして、もっと合理的なもので出発をすることにほとんど力を注がれなかった大蔵大臣、そういうところの政治的な責任は、どうしても免れることができない点であると思うのであります。私どもは、そういう意味においてこの案に対しては何としても賛成ができません。  しかし、われわれは繰り返し申し上げましたように、賠償を通じて近隣諸国との友好関係を一日もすみやかに確立をすることはぜひ必要だと考えますし、特にフィリピンにおいては、この審議を通じていろいろはっきりいたして参りましたように、フィリピン自身建設計画を通じて、フィリピン自身が工業化し、経済自立を達成をしたい、少くとも国内消費の相当な部分を国内生産でまかないたいということを非常に強く主張をし、念願をしておりますし、それはアメリカ植民主義からの脱却であるわけでありますから、そのアメリカ植民主義からの脱却というフィリピンのナショナリズム、反植民主義希望その他は、われわれが経済協力その他をやることによって実現さしてやる一助にもなるという基本的な方針で、この運営が実施をされることを切望をいたします。そのために、この賠償がさらにアメリカ植民主義を合理化するような形において使われないように、十分な一つ配慮をしながらこの実現を期していただきたいし、同時に、この賠償負担は、二十年にわたって非常に大きな負担国民に与えるものであるということを十分に一つお考えを願い、それが今後実施の面において、国内負担としてはなるべく負担が少くなるように、しかもその効果は、先ほど申しましたように、フィリピン植民主義脱却方向に最も有効に遂行をされるように特段配慮をして、この実施をしていかれることの希望を切に申し述べながら、同時に、そういうことに配慮の足らなかった点を主点として、われわれはこれに反対の表明をいたすものであります。
  5. 小滝彬

    小滝彬君 時間も迫りましたので、私は簡単に自由民主党を代表いたしまして、賛成の意を表明するものであります。  今、佐多君からいろいろ過程についても申し述べられましたが、私も、昨年の今ごろ時分は、いろいろ政府に対して警告を発したのでありまするが、幸いにして、その後政府側の非常な努力によりまして、完全にわれわれが満足する段階には至らなかったといたしましても、われわれの表明した希望に近いものを非常な努力によってかち得られたという次第は、これは認めなければならないわけでありまして、私どもは、この協定ができるまでの経緯を考えましても、フィリピン側の方でこの程度で折れたということに対しては、これは満足しなければならない。フィリピン側のこのステーツマンシップに対して敬意を表しなければならないというように考えるものでございます。現に、この席に出席しておられまする津島委員も、かつてこの交渉に参与せられたのでありまするが、当時八十億ドルというものを要求しておる。事実フィリピン側が受けました損害を考えますときに、こうしたフィリピン側要求も、全然全く根拠のないものではないということも、当時の実情を知っております私は、これを常に頭に置いておるのでありまして、大体妥当なラインでこの協定ができ上ったという意味におきまして、この協定賛成するものであります。今後は、佐多君も申し述べられましたが、どうかこの協定を忠実に政府側が実行するように、空手形に終らないように、誠意をもってこの実施に当られますると同時に、これに付帯して、文化方面、あるいは一般政治関係、あるいは貿易関係について、特段努力をせられるように切望いたしまして、賛成討論を終る次第でございます。
  6. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 緑風会といたしましても、今回の賠償協定に対して全幅的な賛意を表するものでありますが、四年越しの長い交渉がここに妥結するに至りましたことは、まことに慶賀にたえないことでありまして、外務大臣初め高碕長官その他関係各位の御努力に対しまして、深く感謝の意を表するものであり、またフィリピン側ネリ大使初め、これに関係したもろもろの人々に対しましても、深く敬意を表する次第であります。願わくは、これが一つの大きな転換期となりまして、そして日本フィリピンとの間の国交がいよいよ回復されて、そうして親善関係増進していく上に、画期的な一つのエポックとなることを心から念願するものであります。これは、審議中にも私一言申し述べたことでありまするけれども物心両面に大きな損害を与えたフィリピンに対しまして、これから賠償を忠実に履行していく上におきまして、生産業者側でもその点を十分に考慮に入れて、そして、単にこれは生産物を提供するという意味でなく、ほんとうにフィリピン側との友好関係増進のために、こういうそれぞれの生産物を提供するのであるという深い意味を十分に了解をして、そうして賠償の契約の履行に当る、それによって日本の工業の信用を傷つけないように、十分の注意を払い、かくしてフィリピン側信用を得て、友好関係増進に資する、そういうような意味での努力を切に求めざるを得ないのであります。そういう意見を付しまして、私はこの賠償協定賛意を表するものであります。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、日本共産党を代表しまして、この協定反対をいたしたいと思います。本来ならば、委員会に出席して審議に参加し、いろいろいたしたかったわけでありますが、一昨日来、日本国会警官隊に包囲されて、重要法案審議しなければならぬというような、あのような混乱した状態に入っておりましたときに、私は、それを捨てて委員会に出席することはできませんでしたので、本日当委員会におきまして、最後に私はわが党の意見を述べたいと思う次第であります。その反対のおもな理由をあげたいと存じます。  第一は、本賠償協定の基準となっておりますサン・フランシスコ条約賠償条項は、アジアにおける平和友好回復平和経済の交流、アジア諸国経済自主的復興を妨げ、日本帝国主義戦争責任に対する国際的糾弾を無視して、むしろ日本を重要な一環とする中ソに対する敵対ブロック育成強化をはかろうとしたアメリカのさしがねでできたものであると思います。このアメリカ意図と措置は、戦争被害に苦しみ、植民地的後進性から脱却しようとするところのアジア諸国反対を買い、これが東南ア諸国との正常な国交回復をおくらせ、しかも一方、アメリカを中心とする軍事同盟、いわゆるSEATOに日本が組み入れられるという結果を招いているものであります。今回の日比賠償交渉に当りましても、アメリカは……。ちょっと委員長お許しを願いたいのですが、資料を一つ部屋へ忘れて参りましたので、今秘書に取りにやらせますから、ちょっとお許しを願いたいと思います。今回の日比賠償交渉に当っても、アメリカ日比両国に圧力を加えてきたことは明らかであります。それは、昨日のシーボルト氏の声明によって明らかになっておるところであります。シーボルト氏は、この鳩山総理との会談におきまして、「まずここ数日来の国会の事態が速やかに収拾されることを希望するとともに、日比賠償批准は他の東南亜諸国との関係からみても極めて重要なので、是非会期中に通過させてもらいたいと強調、さらに四日には朝鮮に赴くので、日本人抑留漁夫の釈放に努力する旨を付言した。」こういう記事が出ております。これからでもはっきりアメリカ意図を知ることができると思うのであります。政府はこれによりまして、東南ア軍事同盟をさらに強化しようとしているアメリカの力の政策に屈伏したものだと私は考えるのであります。  政府は、さきにビルマとの協定を結び、今回フィリピン交渉し、ついでインドネシアとの交渉を予定しております。しかし、一千万人以上の住民を殺し、十数兆億もの公私財産をこわし、何万人もの捕虜を内地に連れ帰って、奴隷労働を強制した中国については、完全に無視しておるのであります。これは、政府賠償問題の解決を総合的に考えていないことを示すものであるだけではなく、賠償戦争責任の償い、アジア諸国平和的発展という見地から考えずに、単なる責務の支払いに過ぎないと考えていることを示すものであります。これは、賠償問題を根本的に解決する道ではありません。アジア諸国全体と日本国民利益になる方向で、つまり全アジア平和共存アジア諸国経済平和的発展に寄与し、アジア集団安全保障体制確立する方向での解決策がとらるべきであると思います。そのために、政府は、中国をも含むすべての関係国賠償会議を持ち、話し合いを進めるべきであります。政府は、この日比賠償も含めてビルマ、さらにインドネシアとの賠償処理アメリカの軍事的、経済的庇護のもとでの東南ア諸国への経済進出、大独占資本の大もうけのてこにしようと考えております。これは植民地主義、すなわち外国の帝国主義の圧迫をはねのけて、民族の独立、経済自主的発展の道を進んでいる東南ア諸国の現状をあまりにも無視した、いわゆるめくらヘビにおじずという態度であると言わざるを得ないのであります。  賠償の根本であるべき戦争被害の償いと、日本の再軍備はまっこうから矛盾いたします。政府は、再軍備をますます強める一方、賠償を進めようとすることは、独占資本にのみ有利、利益を与えようとするもので、その負担はあげて国民の肩に負わせられるものであります。そのために政府は、増税、社会保障その他民生費の削減をさらに強化しようと企図しております。  政府は、日ソ交渉早期妥結を、漁業協定が取り結ばれた現在においてすら渋り、日中の貿易促進国交正常化を口先だけでごまかし通そうとしながら、一方このような協定を結ぼうとすることは、日比両国民にとって真の利益とならないのみならず、アジア緊張緩和平和友好促進を妨げ、世界の平和共存の態勢にそむくものであります。  このような見地から、私は、この賠償協定に対しまして、反対せざるを得ないのであります。
  8. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ほかに御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。日本国フィリピン共和国との間の賠償協定批准について承認を求めるの件を問題に供します。  本件承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  10. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 挙手多数であります。よって本件は、多数をもって承認すべきことに決定いたしました。  なお本院規則第百四条により、本会議における口頭報告内容、及び第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  それから報告書には、多数意見者署名を付することになっておりまするから、本件承認された方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     小滝  彬  鶴見 祐輔     遠藤 柳作  大谷 瑩潤     鹿島守之助  黒川 武雄     重宗 雄三  津島 壽一     苫米地義三  野村吉三郎     河井 彌八  佐藤 尚武   —————————————
  12. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) この際お諮りいたしますが、本委員会は、国際情勢等に関する調査を従来より調査して参りましたが、会期も切迫し、会期中に調査を完了することは困難でありますので、本院規則第五十三条によりまして、継続調査要求書議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  なお、要求書内容及びその手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。  それでは、暫時休憩をいたすことにいたします。    午前十時二十五分休憩   〔休憩開会に至らなかった〕