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1956-02-23 第24回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席分科員    主査 山本 勝市君       植木庚子郎君    眞崎 勝次君       三浦 一雄君    古井 喜實君       田中織之進君    古屋 貞雄君    兼務 辻原 弘市君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  西村健次郎君         法務政務次官  松原 一彦君         検     事         (大臣官房経理         部長)     竹内 壽平君         検     事         (刑事局長事務         代理)     長戸 寛美君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         法務事務官         (公安調査庁次         長)      高橋 一郎君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君  分科員外出席者         検     事         (民事局第一課         長)      新谷 正夫君         検     事         (入国管理局次         長)      下牧  武君         検     事         (公安調査庁総         務部長)    関   之君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    吉国 二郎君         大蔵事務官         (管財局特殊清         算課長)    岩動 道行君     ――――――――――――― 二月二十三日  分科員河野密君及び田中織之進君辞任につき、  その補欠として淺沼稻次郎君及び西村榮一君が  委員長の指名で分科員に選任された。 同 日  第二分科員辻原弘市君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済企画  月を除く)、法務省及び大蔵省所管  昭和三十一年度特別会計予算総理府及び大蔵  省所管  昭和三十一年度政府関係機関予算大蔵省所管     ―――――――――――――
  2. 山本勝市

    山本主査 これより第一分科会を開会いたします。  昭和三十一年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣経済企画庁を除く総理府法務省及び大蔵省所管昭和三十一年度特別会計予算中、総理府及び大蔵省所管昭和三十一年度政府関係機関予算中、大蔵省所管を一括して議題といたします。田中織之進君。
  3. 田中織之進

    田中(織)分科員 私は三十一年度の総予算関連いたしまして、朝鮮銀行台湾銀行等発券銀行特別納付金歳入に計上されておることに関連をいたしまして、若干大蔵大臣並びに関係政府委員にお伺いをいたしたいと思うのであります。率直に箇条的に御質問を申し上げますから、それぞれお答えを願いたいと思うのであります。  これは前もって申し上げておきますが、特に朝鮮銀行関係並びにこの納付金の問題の立法化に伴う閉鎖機関令の一部改正法律案関係から申しますると、これまた朝鮮関係のありまする朝鮮殖産銀行の社債の問題が出て参りますので、このことが目下李ライン問題その他韓国との間に解決しなければならない外交問題、日本の対韓請求権の問題との関連がありまするので、その意味で本日は外務省の政府委員の御出席も願ったわけであります。そういう意味で対外的な関係もございまするので、もし私の質問に対する答弁でそういう対外的な関係を顧慮いたしまして、もしこの際速記録に載せることが適当でないというような部分がございますれば、委員長の方で適当に御処理願って差しつかえない、かように考えておりまするので、あらかじめ委員長においてもお含みおきを願いたいと思うのであります。  そこでまず第一にお伺いをいたしたいのは、今回の三十一年度総予算の編成に当りまして、朝鮮銀行関係から特別な納付金を納めさせるということが政府として決定をいたしましたことに対しまして、韓国側から何らかの抗議が日本政府申し入れがあったという新聞報道を見ておるのでございますが、果してそういう事実があったのかどうか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 山本勝市

    山本主査 ちょっと田中君に御相談いたしますが、大蔵大臣大蔵委員会の方へ呼ばれておるのですが、もし質問がありましたら、大蔵大臣の方を先にやっていただいたらありがたいと思います。
  5. 田中織之進

    田中(織)分科員 いずれ第三問目あたりから大蔵大臣お答え願わなければならぬことになるのです。その点は十分含んでおります。
  6. 中川融

    中川(融)政府委員 約一週間ほど前でございますが、韓国代表部から文書をもって、今回政府考えておるという措置新聞に出ておるけれども、それが事実であるかどうか。もし事実であるとするならば、自分らとしては日韓交渉がまだきまらないこの際、政府がそういう措置をとることについては重大なる関心を持たざるを得ない。こういう趣旨意思表示が来ておるのでございます。
  7. 田中織之進

    田中(織)分科員 韓国代表部から、ただいま中川アジア局長お答え通り申し入れがあったのが事実だといたしますれば、それに対して政府がどういうように今後処置せられていくわけでありますか。対韓交渉との関係において、この問題に対しましては既定方針通りやられるつもりでありますか。何らかそういう関係を顧慮いたしましてこの問題の取扱いについて処置をとられるお考えでありますか。この点は大蔵大臣からもお伺いいたしたいと思います。
  8. 中川融

    中川(融)政府委員 韓国側が、日本において閉鎖機関措置をとっております朝鮮銀行、主として朝鮮銀行でありますが、これの残余財産について関心を持っておるということは、前からわかっていたのでありますが、これにつきましては日韓交渉の当初から先方主張日本側考え方とは食い違っておるのでありまして、先方朝鮮銀行等朝鮮本店のあります会社在日財産というものは、全部自分の方のものであるという主張から全面的にこれに対して権利主張しておるのであります。日本側はこれらの会社財産というものは、一般既定方針に従いまして一般法人と同じように措置をすべきものである、 従って韓国株主が持っております分は韓国に返すけれども、それ以外の財産日本株主なりそれぞれの方針に従って返すべきものであるという主張であります。従って韓国側から朝鮮銀行在日財産についていろいろ口頭でも従来も申し入れがあったのでありますが、そういう際には、日本側としては韓国人株主権利というものは十分保証しておるのである、これは全く日本の法規に従って財産の整理をするということにほかならないのであるから、ごうも必配はないということを説明しておるのであります。しかしながら、先ほど申しましたような韓国側の根本的な主張ということから、先方はこれについて申し入れもしてきたと思うのでありますけれども、これにつきましてはさらに十分な説明をいたしまして、先方了承を求めるという措置をとりたい、従って日本側方針としてはただいま考えております措置を特に変更する必要はない、かように考えております。
  9. 田中織之進

    田中(織)分科員 そうしますと韓国側が、朝鮮本店を持っておる銀行内地資産を、韓国側の対日請求権との関連において、それを今回の予算的措置並びに法律的な措置に基いて処置することは困るという趣旨から申し入れてきたと理解できるのでありますが、これは台湾録行関係も今後問題が起ってくると思うのでありますが、特に韓国関係殖産銀行朝鮮銀行国内資産といわれるものは、先年のサンフランシスコ平和条約の第四条項に言う特別取りきめの主題である、こういう観点から申し出てきておるものではないかというふうに考えられるのであります。そのように理解していいのでありますか。
  10. 中川融

    中川(融)政府委員 御指摘通り先方考え方と申しますのは、サンフランシスコ条約四条(a)項によりまして、双方財産をどう措置すべきかということをお互いに取りきめしようということになっておりますが、その会議でそういう問題を持ち出そうという考えから、これに対して留保してきておるものと思うのであります。日本側といたしましてもサンフランシスコ平和条約四条(a)項による取りきめをしなければいかぬのでありまして、これに対する交渉をぜひ急速にやりたいと思って、韓国及び国民政府双方交渉したのでありますが、いろいろな事情でこれが延引いたしまして、すでに三年を経てもまだ解決しないのであります。一方日本側といたしましてはこれらの閉鎖機関財産措置というものをいつまでも遷延しておくわけにもいかぬということから、今回のような措置をさらに政府としては考えるに至ったのであります。日本側の従来とっております根本的主張考え方から申しますと、今回とろうとする措置は、サンフランシスコ平和条約第四条(a)項の交渉についての主張にはならないと考えておるのであります。
  11. 田中織之進

    田中(織)分科員 そういたしますと、ただいまのアジア局長答弁の前段は、サンフランシスコ平和条約第四条の(a)項にいわゆる特別取りきめの主題になるということも、これは韓国側主張でありますけれども日本側としてもそれを認めざるを得ない建前に立っているように理解されたのであります。この特別取りきめの主題となるということになりますと、三年前からやっておるが、その話し合いがつかないのが現状でございますが、今後この交渉が再開いたしまして、このサンフランシスコ条約の第四条(a)項に基いて両国間で何らかの取りきめをしなければならない性質のものであるといたしますと、その取りきめの前に特別納付金納付せしめるということによって起ってくる事態については、政府は全責任を持つわけでございますか。もしその取りきめの内容いかんによりますれば、韓国側主張を、われわれ日本側としては認められないけれども、あるいは認めなければらぬようなことになるかもしれない。そういうような場合に、もう国内資産特別納付金なりあるいはこの次の質問になるわけでありますけれども残余財産については不動産銀行等をこしらえるというような形になるといたしますれば、その取りきめの結果いかんによっては、この不動産銀行韓国の対日請求権のいわば責任をとらなければならぬようなことになる。あるいはもっと端的に言えば、閉鎖機関の持っておる国内資産が処分されてしまったあとにおいて、もし何らか韓国へ支払わなければならぬというような事態が起って参りますれば、国民全体も迷惑を受けることになると思うのでありますが、この取りきめの以前に、あくまで既定方針通りこれを計上するについては、私はそれぞれ財政上の根拠はあると思うのですけれども、この関係から見たら慎重に取り扱わなければならぬ問題だと思うのでありますが、果してこの取りきめがどういう結果になるかということは今予測できないのであります。その場合に、かりに韓国側へ払わなければならぬというような最悪の事態に立ち至った場合には、責任はあげて政府が負わなければならぬことになると思いますが、その点の御用意があるのであありますか。この点一つ大蔵大臣からお答え願いたいと思います。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御指摘の点につきましては、私はこういうふうに考えております。韓国日本との国と国との関係の今後の交渉というものはむろんのこと、ただしかし一つ会社債権債務処理というものは、私は法律の示すところによって当然どういう場合でも処理をしなければならぬと思います。法律に基いて処理をして一向差しつかえないと思っております。
  13. 田中織之進

    田中(織)分科員 そういたしますと私の質問そのものずばりのお答えにはならないのでございますが、かりに日韓両国間の取りきめの結果いかんによって――もちろん朝鮮銀行なりの預金者あるいは韓国側に負うておる債務の弁済という範囲に限られてくるわけでございますが、しかしそれに見合うところの財源というものが今回の納付金なりあるいは残余財産によって不動産銀行を作るというような形で処分されてしまったあとにおいて、万一韓国側に支払わなければならぬという事態が起った場合においては、政府責任においてそれは支払う、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。
  14. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答えします。お答えはただいま大蔵大臣から申し上げたことに尽きるわけでありますが、たとえば預金の点についてお触れになりましたが、預金も御承知のように内地におきまして、在外預貯金については、昭和二十九年の法律によりまして、お払いをいたしておるわけでございますが、ただいま田中委員の御質問は、今後日韓交渉の結果いかんによりましては、さような事態にまで影響を及ぼすようなことに相なるのではないかというふうな御懸念のようでございますが、これは私どもといたしましては、そういうふうな預金者にお払い戻しをいたしましたようなものをどうこうというふうな事態に相ならないようなふうに取りきめが行われるように、期待をいたしておるわけでございます。
  15. 田中織之進

    田中(織)分科員 それでは少しこの問題を角度を変えて、国内法との関係から若干お伺いをいたしまして、もう一度対韓関係の、現に私も多少資料を持っておりまするので、その点でお伺いいたしたいと思います。  その国内法関係からまず第一に伺いたいのは、旧発券銀行、具体的には朝鮮銀行――台湾銀行もあるわけですが、国内資産を今納付させる、あるいは残余財産で第二会社を作らせるといわれております。国内財産というものは、一体どういう性質のものでありますか。これはいわゆる私有財産でありますか、それとも私有財産以外のものでしょうか。
  16. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私有財産でございます。
  17. 田中織之進

    田中(織)分科員 私有財産だといたしますれば、この私有財産は、御承知のように憲法第二十九条で、たといこれが公共のために使われる場合においても、正当な補償が行われなければならない。ここに私有財産権保障憲法二十九条でされておるのでありますが、その保障は一体どういうことになるのでしょうか。今回のこの予算的な処置並びにこれを裏づけるところの閉鎖機関令の一部改正という形におきましては、これは大蔵大臣の定めるところによって政府納付させる、こういうので、二十九条にいうところの私有財産保障というものが、私は出てこないように考えるのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  18. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいま申し上げましたように、朝鮮銀行なり台湾銀行なりの残余財産というものは、私有財産に違いございませんが、この起ってきました沿革を考えますると、申し上げるまでもなく、鮮銀台銀いずれも発券銀行という特殊の仕事をやっておったわけでございます。そして発券銀行としての特殊機能を営んでおりましたゆえをもちまして、現在なお有効に存しておりますところの鮮銀法台銀法にはそれぞれ営業中の納付金規定がございます。今回政府予算歳入として計上いたし、なおおって御審議をお願いいたしまする閉鎖機関令の一部改正法律案の中におきましては、ただいま申し上げましたところのこの営業中の納付金規定に準じまして、この発券銀行としての特殊の機能を営んでおったことに基く特殊の残余財産の点に満目をいたしまして、国に対しまして納付をしていただく、こういう法律の御審議をお願いいたすつもりでございます。従いまして申し上げるならば、これは発券銀行としての特殊の残余財産につきましての、特別の措置というふうに御了解を願いたいわけであります。
  19. 田中織之進

    田中(織)分科員 たしか昨年この閉鎖機関令の一部改正案が出たときには、この国への納付金制度化に関する問題でございましたと思いますが、その旧法案では、確かに今管財局長がお述べになりましたように「第十九条第一項の規定により、在外債務の総額が在外資産の総領をこえる場合にはその超過額に相当する本邦内に在る財産を、その他の場合において同項に規定する政令で定める全額があるときはその金額に相当する本邦内に在る財産をそれぞれ留保した後の財産の二分の一に相当する金額を、大蔵大臣の定めるところにより、政府納付しなければならない。」という規定がございます。それが一昨日でありますか、閣議決定をしたと伝えられる新しい法案においては、「それぞれ留保した後の財産の額に、朝鮮銀行法第二十七条又は台湾銀行法第二十条の二の規定により納付すべき納付金のこれらの規定規定する利益金に対する割合を乗じて得た金額を、大蔵大臣の定めるところにより、政府納付しなければならない。」ということで、納付金の算定の基準も今回は変えられたように、この法律案からうかがえるのであります。そこで私伺いたいのでありますが、御承知のように台湾銀行朝鮮銀行閉鎖機関としていわゆる通常の業務を停止して、清算を命ぜられている。閉鎖機関令の第一条でそうなっている。しかも指定日において解放をさせられている。従って旧発券銀行納付金というものは、御承知のように毎営業年度利益についての国への納付なんです。従って閉鎖機関令に基いて閉鎖機関と指定された以後においては、通常営業というものはないわけなんです。ここに朝鮮銀行法台湾銀行法も、その意味から見れば、この閉鎖機関令の公布に基いて閉鎖機関に指定されたときには、その法律そのものも私は過去のものとしてなくなっていると思うのです。それにもかかわらず、今さらこの朝鮮銀行法なり台湾銀行法のそれぞれの規定に従いまして、納付金を納めなければならぬという根拠は、一体どこに出てくるのでしょうか。
  20. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいま御質問の中に昨年提案をしたというお話がございましたが、実は提案はいたしませんで、政府部内における案と御了承を願いたいのであります。本年のただいま準備をいたしております案のことは、大体ただいまお話通りでございますが、御質問趣旨は、営業中の規定清界段階にある現在準用することについての御疑問かと思うのであります。まず第一に鮮銀法合銀法というものは、現在もなお有効に存していることは、先ほど申し上げた通りでございます。従いましてこの規定からそのまま納めるという趣旨ではございません。そういう規定をもって営業いたしておりましたような鮮銀台銀というものの本質にかんがみまして、いわばその事物の本然の理念から申しまして、本来清算段階にあります残余財産につきましても、営業中の納付をいたしました規定に準じました納付金程度を納めていただくということが、ただいま申し上げたような特質から考えまして、当然ではないかという考え方をもちまして、今回閉鎖機関令の一部改正法律案を御審議を願うわけであります。すなわち、繰り返して申し上げますと、現在なお有効に存しておりますが、その鮮銀法合銀法規定をそのままそれによって納めるというわけではございませんので、これに準じまして納付割合を定めまして、納めていただく、こういう立法をお願いいたすわけであります。
  21. 田中織之進

    田中(織)分科員 確かにそういう形でありますけれども、問題はこの納付金というものの法的な根拠は、確かに朝鮮銀行法の二十一条であります。そういういわゆる営業利益の中から納付せしめるということに根拠を置かなければならないと私は思う。従ってこれは閉鎖機関として清算段階にあるものが、果して営業利益があるという認定ができるかどうかというところに問題があると思うのです。この点については、先ほど私は昨年国会提出したと申しましたが、それはあなたの言われるように、政府部内提出を準備されたけれども提出取りやめになったのでありますが、その取りやめになった根拠というものは、ほんとうはきょう出ていただきたいと思うのですが、たしか今の文部大臣の清瀬さんが民主党の政調会長であった当時、在野の法曹の権威として、特にこの点は憲法二十九条の私有財産に対する保障に違反する、こういう観点から、与党内部から猛烈な反対があって、せっかく大蔵事務当局が準備されたものが、ついに閣議決定に至らなかったという事情は、われわれも承知いたしておる。その慮味から申しまして、今度の納付金制度というものについては、私は法的な根拠というものはきわめて薄弱だと思う。もし営業利益の中から従来納められた納付金を、今度の閉鎖機関令の一部改正によってやる――この閉鎖機関令というものは、御承知のように、占領中に連合軍の総司令部から指示された法律なんです。その点から見て、これは一つ占領軍の至上命令的なもので、その点から見れば私は多くの欠陥を持っている法律だと思う。確かにこの閉鎖機関令が、たとえば財閥の解体問題であるとか、あるいはこの種の関係の面において、日本経済民主化の面において役立った面も、われわれは認めるにはやぶさかではありませんけれども、今日占領が解けて平時の状態に戻ってきているときに、占領中の特別な法制でありますところの閉鎖機関令に基いて、その第十九条の二にも、大蔵大臣は前項の規定にかかわらず閉鎖機関残余財産を特別処分することができるという視定がございます。こういうような大蔵大臣の強力な権限というものは、やはり私は現在のように占領が解けて平時に戻った段階においては、もっと実情に即した取扱いをしなければならないので、このままの形ではそういうものを納めさせることができないから、ほんとうは、もう占領がなくなったことによって、本来はまだいろいろ在外財産の問題だとかいろいろの清算が残っておることは事実でありますけれども、その閉鎖機関令をたてにとって、こういう納付金を納めさせるということは、私はどうしても納得ができないのでありますが、この点について重ねて、国に納めさせるという法的な根拠をお示し願いたい。
  22. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま御指摘閉鎖機関令ができました由来は、確かに占領中のものでありまして、そもそもの最初におきましてそういうような性格を持っておったことにつきましては、お話通り考えます。しかしながら私どもがこのたび御提案申し上げようという趣旨は、決して占領中の規定どうこうというわけではございませんので、これから国会においておきめをいただきます法律によりまして納付金を納めていただく、こういう趣旨法律改正をお願いいたすことにしておるわけであります。  なおこれを納めます法的根拠を重ねて明らかにせよというお話でございますが、いわゆる発券銀行としての朝鮮銀行あるいは台湾銀行につきましては、解散のときの法律規定がはっきりございません。従ってこれをこれからおきめを願うわけでありますが、やはり先ほど申し上げましたように、発券銀行としての特殊の機能を営む、また残余財産がその特殊の機能から大部分生じておるというようなことにつきましては、大体通念として認められるところかと考えます。従ってこれに対しまして妥当なる納付金をお納めいただくという法律規定をお作り願うわけでありまして、この点につきましては、たとえば日本銀行の現在の法律等にかんがみましても、一応妥当な法律の形を持ち、従ってその法律規定によってお納めいただくことは妥当なものである、われわれとしてはこういうような判断をいたしておるわけであります。
  23. 田中織之進

    田中(織)分科員 どうもその点はまだ十分納得がいきませんが、時間の関係もありますのでその程度にいたしておきます。  次に閉鎖機関令の第十九条の第一項の規定によりますと、在外債務の総額が在外資産の総額をこえる場合には、その超過額に相当する本邦内にある財産を留保しなければならないということになっおるのであります。ここでこの朝鮮銀行、あるいは朝鮮殖産銀行等の在外債務は、それでは現在確定いたしておるのか、それと、それの在外資産の総額がこれまた確定しておるかどうか、その両方の総額がきまって在外債務の総額がきまり、在外資産の総額がきまって、それを差引した超過額に相当する部分が本邦内にあるいわゆる在内資産の中からそれを留保するということになる。留保した残りの部分について納付金というものが、今回の計画によれば、初めて問題になってくるのでありますが、私が今申し上げました在外債務の総額、また在外資産の総額というものが現在的確に押えられておるのかどうか、どの程度の留保をなさろうと考えておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  24. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。私どもの手元にございます資料で、数字はまた別に申し上げますが、大体のところははっきりいたしております。すなわち先ほども申し上げました昭和二十九年の法律改正によりまして、在外預送金債務国内資産から払うことをお認めいただいておるわけでありますが、これによりまして鮮銀、合銀はいずれも資産が相当超過することに相なっております。この関係から申しましても、在外債務はそれだけ減少いたしておる勘定になりますので、さらに資産の超過を予想されるわけであります。
  25. 田中織之進

    田中(織)分科員 具体的な数字をお示しにならないと、これが一番最初にお伺いをいたしました韓国側の対日請求権の額等に関連を持ってくるので、どうもただいまの正示局長の答弁では満足がいかないのでありますが、そういう債務の総額あるいは資産の総額という場合の算定の基準は一体どこに置くのでしょうか。たとえば時価に置くものでありますか、帳簿価格といたすものでありますか。この点はいかがでありますか。
  26. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 簿価によって計算をいたしております。
  27. 田中織之進

    田中(織)分科員 帳簿価格によるということを今明らかにされたのでありますが、私はこれはきわめて矛盾すると思う。それでは国内財産の評価は一体何によってやりますか。
  28. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 国内資産につきましては、これは現実に処分をいたす関係もありまして、時価でやっております。
  29. 田中織之進

    田中(織)分科員 国内資産については、これは国有財産法の建前からいえば処分は時価によるということは私も承知しております。しかしこれが片一方は帳簿価格で片一方は時価で計算するというところに大きな矛盾があると私は思うのです。これは占領中にアメリカを中心とする連合国というか、アメリカ軍と育った方がいいのですが、当局が自分らに都合のいい、そういう使い分けをさせたのです。これは明らかにそういう点から見れば、私は外国人にきわめて利益を与える結果になると思う。その点についての矛盾はお感じになりませんか。
  30. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 御趣旨在外資産国内資産について評価のやり方が違うじゃないかという御指摘でございますが、ただいまも申し上げましたように、国内資産は現実に閉鎖機関令の定めるところによりまして処分をして参らなければなりませんから、これは当然時価ということになるわけでございます。そこで在外資産についてしからば時価によることはできないかということに相なろうと思いますが、これは申し上げるまでもなく再評価その他の方法は不可能でございまして、やむを得ず簿価によって算定をしておる。しかしながらただいま御指摘の点につきましては、私どもとしては決してさような結果にはならないのでありまして、先ほど申し上げましたように在外資産の点につきましては相当の安全が見込まれておるわけでございますから、これはそれを留保することによりまして残余国内資産を処分いたしましても何ら差しつかえない、かような考えをいたしております。
  31. 田中織之進

    田中(織)分科員 この点は具体的に韓国側から、いわゆる内地資産についての請求が、先ほど申しましたサンフランシスコ平和条約第四条(a)項による特別取りきめの主題となってきた場合に、国内の関係においては、そういうように処理して果して自分たちの場合にはどうするかという関連性を持ってくるのです。私はその意味から見てこの点はきわめて不合理だと思うのでありますが、この点もこれ以上、述べることは見解の相違ということになればそのままになりまするから、いずれまた閉鎖機関令改正案が出た場合に、大蔵委員会等で質問することにいたしまして次に移ります。  この閉鎖機関清算在外資産、在外会社の整理くらい大きな問題が残っておる例はないと私は思うのです。旧発券銀行に対する今回のような納付金の徴収というものは憲法違反であるという解釈は、これは与党の内部にもなお根強いものがあるように私は聞いております。またそれぞれの株主からは、そういう建前からの大蔵当局に対する陳情もあります。しかし昨日も、これは委員会外でありますけれども管財局長お話したのでありますが、もし株主が在内資産を全部持つということになれば、株主だけが非常な利益になるじゃないか、こういう解釈もできるわけであります。ところがやっぱりこうした在外会社の現在内地に帰ってきておる旧職員、役員等の退職金等の問題も、これまた大きな一つの社会問題で、今回のこの納付金制度の確立と並行して、あるいはそれに優先して、こういう退職金の問題についての点も、今回は解決するようでありますけれども、確かにそういう多くの人権問題をこの問題が含んでおるのであります。しかしこれは先ほど申しましたように、やはり占領中の特殊な例外的な法規であるところの閉鎖機関令というものに基いて行われたというところにこういう問題が起ってくるのでありますが、この際この納付金制度の問題を契機といたしましても、閉鎖機関令そのものについて、これは占領中の主権を無視したところの法律であるという観点に立ってお考えを改められる考え方はお持ち合せがあるかないか、この際もう一つ伺っておきたいと思うのであります。
  32. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 閉鎖機関令という形が、先ほどお話のように占領中からの形になっておりまして、非常にこれはどぎつい感じがするのではないかというふうなお話だと存じますが、実は先ほどもお答え申し上げましたように、在外預送金の改正その他今回の措置につきましての改正は、すべて法律といたしまして国会の議を経て定められておるわけでありまして、名称なり沿革から形として多少そういう感じがいたすのでありますが、突貫はその他の法律と何ら変りなくなっております。ただいま私どもといたしましてはこれを法律の形を変えるという考え方は一応持っておりませんので、今回も閉鎖機関令の一部改正法律案として国会に御審議をお願いすることにいたしたわけであります。
  33. 田中織之進

    田中(織)分科員 これは、これからさらに私がお伺いをいたしたいと思っておる朝鮮殖産銀行の社横の問題とも関連を持ってくるのであります。昨日委員会外で申しますと、朝鮮殖産銀行の社債の関係については、これは朝鮮銀行台湾銀行納付金のように予算関連がない、こういう意味管財局長が申されたのでありますが、私はそこでお伺いをいたしたいのでありますが、予算書の六十六ページに旧発券銀行特別納付金三十五億五千四百万円、これは朝鮮銀行台湾銀行発券銀行関係だと思うのでありますが、その上にあります金融機関調整勘定利益分配金二十五億円というのがございますが、この中には朝鮮殖産銀行の債券関係の問題が入ってくるのではないかと思うのであります。そこで一つ項目をあげてお伺いいたしたいのでありますが、その債券発行高は一体これは朝鮮殖産銀行関係でいいと思うのであります。それだけでけっこうでありますが、それが幾らか、それからそのうちの政府保証の債券高が幾らか、それからそのうち預金部でお引き受けになっている額は幾らか。それから金融機関再建整備法の大蔵預金部等引受債券特別措置法によって補償を受けた債券額があると思うのです。これは預金部に、簡易保険局、農林中央金庫、協和銀行、帝国生命の五つの金融機関が、それぞれ金融機関等再建整備令による補償をすでに受けているというふうに理解いたしておるのであります。そういう関係から、今申しました債券発行額、そのうち政府保証債の額、預金部の引受高、金融機関再建整備法の関係で手持ちしておったこの種債券について補償を受けた額、これを明確にしていただきますとともに、今申しました金融機関調整勘定利益分配金の二十五億の内訳がどういうようになっておるかこの際お示しを願いたい。
  34. 東條猛猪

    ○東條政府委員 私から二十五億円の金額について御説明いたしまして、あと殖産銀行関係管財局長からお答え申し上げます。二十五億円の金融機関の調整勘定納付金でございますが、これは田中委員承知通りに、保険会社について申し上げますれば、一万円以下の保険金を支払いますために、政府から補償を受けまして支払いをいたしたわけであります。今回のこの二十五億円はさしあたり保険会社の最近の経営の状況、特に調整勘定の整理の状況、また元旧勘定に属しておりました資産の処分状況がだいぶ進捗をいたしたという関係から、もっぱら生命保険会社の調整勘定の益金から二十五億円を納付せしめることが適当であろうというふうに考えた次第でございまして、今殖産銀行の社債の関係は面接にこの二十五億円とは関係がないということを申し上げたいと思います。
  35. 田中織之進

    田中(織)分科員 それでは殖産債券の発行高その他について伺います。これは銀行局長よりもあるいは主計局関係にお伺いをした方が適当かもしれないのでありますが、今度の閉鎖機関令の一部改正、これはこれから国会に出てくるわけでありますが、その関係から殖産債券がかりに返還をされた場合には、そうしますと予算上はその関係で、いわゆるすでに金融機関再建整備措置法でこの補償を受けた部分の返納金は、どういう形で予算面に現われてくるのですか。これは次の会計年度に繰り越されてくるものでありますか。それとも雑収入とかいうような関係で、この納付金は入ってくることになるのでありましょうか。二十五億円の中にさしあたり殖産関係の債券が含まれていないということになれば、別途特別納付金関連して規定せられている、今問題になっておる殖産債券の関係が返還されて、そうしてすでに農中にしても預金部にしても金融機関再建整備措置法によって補償を受けておるものは、当然国に返還しなければならぬことになるわけですが、それは予算面では三十一年度に出てくるのですか。それとも翌年度の会計年度に、今回の保険会社と同じような形で計上されてくるものですか。
  36. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 具体的な殖産銀行の例として、その進行状況はどうなっておるかということは私つまびらかにいたしておりませんが、この金融機関再建整備措置法の関係で補償せられました金額を、政府に返していただくというような事態が生じました場合には、歳入の雑収入の中の雑人、その中の金融機関調整勘定利益分配金、この項目に受け入れることになるわけでありまして、もしこの殖産銀行関係で、そういう事態が起って政府に納めるといたしますれば、その事態が起りましたときの年度の、今申し上げました歳入科目で受け入れるということになるわけでございます。三十年度におきましても、実は当初予算では見込んでおりませんでしたが、地方銀行関係その他の関係で約十七億円の金融機関調整勘定納付金を雑入の中の金融機関調整勘定利益分配金として受け入れておるわけでありまして、そういう時期が参って納めるということであれば、翌年度ということではなくて、歳入でありますから当年度で受け入れるということになるわけであります。ただし殖産銀行の具体的な処理につきましては、私はつまびらかにいたしておりませんので、これは管財局長からお答えいたします。
  37. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 殖産銀行の債券の償還その他の事務でございますが、これは先ほどお話があったように、従業員債務等の支払いをまず優先いたすわけでございます。従って具体的にどの程度三十一年度に行われるかということは、予測いたしかねますので、ただいま主計局長が申されたように、三十一年度の中には確定的に幾らというふうには見込んでいないわけであります。
  38. 田中織之進

    田中(織)分科員 従業員債務が、今度の改正案、これは近く国会提出されて出て参りますと、第二条第二項第八号の閉鎖機関の一番最初に優先的に処理することになっているのですが、朝鮮殖産銀行関係の従業員債務は幾らと押えられておりますか。なお、それらの質問関連があるのですが、朝鮮殖産銀行の殖産債券は、殖産銀行が存続中に幾ら発行されて、そのうちに政府保証債が幾らありますか。これは当然わかっていると思うのでありますが、お示しを願いたいと思います。
  39. 山本勝市

    山本主査 田中委員大蔵大臣にまだ質問がありますか。だいぶ向うから催促がきておりますから……。
  40. 田中織之進

    田中(織)分科員 あと一、二問で終ります。
  41. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 従業員債務については、これは申し立てを受けませんと、どの程度かということは、ただいまのところ私どもの方でもわかっておりません。  次に殖産債券でございますが、全体で約十億で、そのうち政府保証のついておるのは三億四千万円余りになっております。
  42. 田中織之進

    田中(織)分科員 そこで私は、大臣も大蔵委員会の方からお呼びのようでありますから、質問をしぼりますが、朝鮮殖産銀行の債券発行額が約十億、そのうちで政府保証債が三億四千万円ということでありますが、実は韓国の方では、日韓交渉のときに、向う側から出された資料によりますと、一九四七年、昭和二十二年対日賠償委員会というものを設置して、賠償要求の実数調査を開始いたしました。その中で財務部所管対日賠償要求資料に関連する帰属部財産調査表というものがございます。それの写しを私ここに持ってきております。それによると、この殖産債券は韓国側債務として計上しておるのであります。従来日韓交渉は、三年前に開始せられて、途中久保田発言の問題で中絶して今日に至っておるのでありますが、この間の事情は、政府の方ではどういうように把握されておりますか。
  43. 中川融

    中川(融)政府委員 日韓会談におきまして、先方から要求のありましたことは、私が先ほど申しましたように、韓国本店のある日本会社について、在日資産をみな返してもらいたいということを言ってきたことがあるのでありますが、詳細な内容、数字等については一切先方からの資料はまだ出ていないのであります。出ていないうちに主義上の問題で双方の意見が対立いたしまして、結局会議は決裂したのであります。従ってただいま御指摘になりました韓国側で一九四七年に作ったといわれておる資料は、われわれ会談においては提示を受けていないのでありまして、先方から何らそういう数字的な資料の提示はありませんし、またそれに韓国本店のある会社につきまして、たとえばそのうちの債務自分の方で引き受けるというような話も一回もないのであります。ただいま御指摘のような資料がどういう意味合いのものであるか、われわれには判断いたしかねるのであります。
  44. 田中織之進

    田中(織)分科員 この部分は速記に載せてもらわない方がいいと思いますから、速記をとめていただきたいと思います。
  45. 山本勝市

    山本主査 速記をとめて……。   〔速記中止〕
  46. 山本勝市

    山本主査 速記を始めて。
  47. 田中織之進

    田中(織)分科員 この問題は相手のあることでありますから、速記に載せないで、大臣の所見を伺ったわけでありますが、この問題は率直に申し上げまして、今後の対韓交渉の重要な一つの問題になるわけであります。しかもこの点から申しますと、債券の発行額が十億で、そのうちの六億五千万は向うの方で債務として認める、こういうわけでありますから、これはちょうど政府保証債を差し引いた額になる。問題は朝鮮殖産銀行関係内地資産というものが、聞くところによりますと大体七億、それに債券及び預金、それから先ほどお認めになりました従業員の退職資金、こういうような関係を除きますと、結局朝鮮殖産銀行関係においては、内地資産というものは今度はゼロになるわけです。そういうところに、実は殖産銀行の約五千名の株主諸君が、今回対韓交渉に深い関連を持つこの種の債券の返還を一挙にやるということについては、特に大蔵当局に御考慮を願わなければならぬということで、猛烈な働きかけをしておることは大臣も御存じだろうと思う。ことに私の調べたところによりますと、殖産銀行の七千万円の資本命のうちで、千二再五十万円は株式の未払い込みになっている。閉鎖機関令の条項はよくわかりませんけれども、その関係から申しますと、閉鎖機関令をたてにとれば、株主はこの未払い込みは最悪の場合払わなければならぬけれども、それかといって、株主に返還されるものと、一番当てにしている内地資産というものが、今度の社債の返済その他でなくなってしまうということになれば、これは私は深刻な問題だと思います。ことに朝鮮殖産銀行株主の大部分の人たちは、やはり朝鮮在住者であったわけです。そういう人たちは、それこそ着のみ着のままで、何十年か朝鮮で蓄積したものも、裸一貫で帰ってきていることは、これは大蔵大臣以下政府委員の諸君はもちろん、国民ひとしく同情している点だと思う。そういう点で、この際機械的にこの問題を扱うということは、非常に重大な問題だと思うのであります。この点について昨日委員会外でお伺いをいたしますると、社債権者との同等において、大蔵当局もきわめて好意ある立場で、従業員、株主、あるいは社債権者それぞれ同じ国民でありますから、その間の調整のために配慮せられておるようでありますが、私はこれだけ具体的な事実を申し上げたのでありますから、なお一段とこの点については大蔵当局において慎重な態度をもって臨んでいただきたいと思うのであります。この点に対する大蔵大臣の御所見はいかがでしょうか。
  48. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん今お話しのような点をできる限りにおいて考慮をいたしたいと考えております。引揚者のいろいろな方の同情すべきことは、やはり考えなければならぬが、それと会社の整理の場合における法律関係とは、これをごちゃごちゃにすると、そこに権利関係についていろいろな紛議が起ってくるので、それらを調整のできる範囲内において考えるという以外には方途はなかろう、こういうふうに考えております。
  49. 田中織之進

    田中(織)分科員 私が特に朝鮮殖産銀行関係を取り上げるのは、ほかでもございません。私の調べたところによりますと、朝鮮銀行関係では、今回の納付金を納めたといたしましても、あと国内資産で約十八億日ばかり残る。これを基本にいたしまして、不動産銀行の設立計画が進められておる。その厭味から見て、朝鮮銀行株主諸君というものは救われるわけです。台湾銀行関係におき幸しても、閉鎖機関令に基くところのいわゆる特殊消算法人として、第二会社が認められて、これは今回の納付金によって残りますところの約八億のものを中心にいたしまして、置場振興会社として第二会社ができて、それぞれ株主が実は保護されることになるのであります。端的に言えば、そういう国内資産残余の部分をそれぞれの第二会社が引き継ぐということになりますと、朝鮮銀行株主関係から見ますならば、五十円の株が実にその当時の貨幣価値の増加額にうんと近いような、そういう還元をする方法が講じられているから、案外朝鮮銀行なり台湾銀行株主諸君は、殖産銀行株主のように騒ぎ立てない。私はその意味でこの殖産債券の関係から申し上げますれば、これは対韓交渉が妥結するでは、このままの形において、ある意味から言えば、やはり朝鮮銀行なり台湾銀行と同じような形で、この際特殊清算法人を認めてやって、とにかく新しい法人が総額において八億や十億のものでありますれば、これは私は運用のいかんによれば、返済の責任をここへ持たせるというような政治的な解決の方法もあると思うのです。その意味から見て、朝鮮銀行台湾銀行関係株主諸君は、今回の納付金については、昨年、閉鎖機関令改正の出るときのような猛烈な反対運動は行なっておりません。この点は牛立の諸君とも了解がついておる。こういうふうに今度の納付金の問題は、与党の諸君が要求したところの予算の増額の財源として、この納付金で三十五億、この清算税の収入がこれに八〇%でありますか、増額して参りますから、納付金と合計いたしますと約六十億ばかりの歳入の原資になると思う。これを大蔵当局、財務当局の立場において取り上げられたということは、私はあえて反対をするものではございませんけれども、その同じような系列に置かれておる関係者の中で、不公平な――これは在外財産が少いのだから仕方がないじゃないかといえばそれまででありますが、私はそこに政治の運用の妙が残されておると思うのですが、いかがでしょうか。
  50. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま御指摘の中に、朝鮮銀行が十八億あまりと言われましたが、これは十七億でございます。それから台湾銀行は八億というお話でございましたが、これは五億弱でございますから、まずその点を訂正さしていただきます。それから政府保証のついた殖産債が三億四千万円ばかりと申しましたが、これは政府保証は効力を失っておりますから、これはついておったというふうに訂正いたします。  ただいまのお話は、鮮銀台銀についてはそれぞれ新会社を作るように進んでおるようであるが、殖産銀行については殖産債券を支弁いたしますと、とうていさようなことはできないという特殊の事情を御指摘になっておるのであります。これは閉鎖機関の中に、あるいは在外会社の中に、それぞれ事情を異にしておりまして、あるものは相当の残余財産が残りまして、これをもって第二会社を作り、あるものは債務の弁済にも足りないという、ふうになっておることは、御指摘通りでございまして、この点は私どもといたしましては、会社それぞれの実情からまことにやむを得ないと存じております。ただ先ほど大蔵大臣お話いたしましたように、法律をもって消算の手続をはっきりとおきめいただくわけでございますが、その法律規定の範囲内において、特殊の事情をできる限り考慮していくということは、この趣旨についてはわれわれもできる限りさようにいたしたいと考えております。実は殖産銀行につきましては、先般元の副頭取あるいは理事の方を三人特別に顧問といたしまして、清算事務所の方に委嘱をいたしておるわけであります。この顧問の方々は、今田中委員の御指摘になったような特殊の事情について十分御理解になっておられまして、それぞれ今回の法律が成立いたしました上においては、清算の進行に伴いまして、お話のような点について、いろいろと法令の範囲内においてごあっせんになるように承知をいたしておるのであります。その点は将来この顧問の方方の御努力、またわれわれといたしましても、できる限り顧問の方々の御活動に対しましてできるだけの御援助はいたしたい、かように考えております。
  51. 田中織之進

    田中(織)分科員 直接的には今度の改正案の二番目の九で、「第二号に掲げるものに対して本邦を履行地とする債務。ただし、省令に定めるものを除く。」こういう規定で殖産債券の返還が行われるわけであります。私の調べたところによりますると、この九号の適用を受けるものは殖産銀行と中支那振興の二社のように思う。社債を出しておるものは、この二社のように私は理解をいたしております。ことに中支那振興の方は社債発行額が三億八千万で、現在内地資産は一億三千万だ。従ってもちろんこれは社債の全部に対して返還ができるわけのものではありません。殖産銀行関係財産が七億五千万に対しまして社債が大体八億余りのものを返済しなければならぬ。この関係から先ほどの従業員の退職金あるいは預金関係等を差し引けば、社債権者に返還されるものも何分の一かに減額されて返還されることになると思うのであります。しかし先ほど申し上げました今回の社債で返還を受ける預金部、農中、協和銀行、帝国生命、これらの社債権者はそれぞれすでに金融機関に再建整備法によるところの補償を受けておるのです。その意味でこれらの債権者に戻った部分が、先ほど森永主計局長の御答弁によりますると当然国へ返還されてこなければならないことにるわけです。そういう関係から申し上げますれば、まだ補償を受けていないごく少数の社債権者ももちろんおりましょうけれども、そういう人と先ほどからるる申し上げますように約五千に上る株主、これは下手をすると閉鎖機関令関係から千二再五十万ですかの未払いを徴収されるけれども、積極的な利益が与えられない事態が起ってくるということになれば、これはきわめて不公平な結果になる。取り扱いではないけれども、結果的には不公平な結果が私は生れると思う。片一方では今後外務省を中心にしてせっかく御努力を願わなければならぬ。あくまでわれわれは日韓関係が早期に正常化しで、友好関係が深められることを希望いたしますけれども、何もわれわれが屈辱的な条件をのまなければならないというわけのものではないのでありますから、堂々と筋を通して日韓関係の諸懸案を一日もすみやかに改正してもらいたいという立場をとっておりますけれども、その日韓交渉にも深い関連を持ってくる問題であるだけに、これは要望でありますが、先ほど正示管財局長からお答えになりましたその点をさらに強化して、法案が両院を通過して成立するまでの間に、具体的に安心できるよう九案が大蔵省の肝いりで――これはあるいは法律以外の問題かもわかりませんけれども、ただ規則づくめでやるということだけが有能なる行政官吏のやることではないと思うのです。そこには行政の運用という面もあろうと思います。その点についての御努力をさらに要請いたしまして、私の大蔵関係質問を終りたいと思います。
  52. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 一言つけ加えて申し上げます。先ほどのお話の中にありました未払込徴収の問題でございますが、これは従来の閉鎖機関令の解釈からいたしまして、徴収はいたさないことになっております。また債券は、御指摘のように大口の金融機関その他のものもございますが、中には公募がありまして、相当個人としてお持ちの方もございます。この二つだけ申し上げます。あとの御要望につきましては、先ほどお答えしたようにいたしたいと思います。
  53. 山本勝市

    山本主査 午後一時半より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時六分休憩      ―――――・―――――     午後一時四十四分開議
  54. 山本勝市

    山本主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。古屋貞雄君。
  55. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 最初に公安調登庁の調査費用についてお尋ねしたいのですが、調査をなさいまする主たる調費の内容、具体的にどんなような調査をされて、どういう工合に調査されたものを処理されるか、大体でよろしゅうございますからお尋ねしたいと思います。
  56. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 公安調査庁の調査は、破防法にもございます通りに、団体規制のための調査ということになっております。それで調査の対象としております団体は、ほとんど現在のところ、日本共産党であります。これを破壊的団体の疑いあるものとして調査の対象としております。それから調査します事項といたしましては、そういう団体が存在すること、それから団体の活動として、破壊的な行動をやったこと、それから今後もそういうことに出る可能性、それからその団体の組織ないし構成員がどういうものであるかというようなこと全体について調査をいたしております。それから調査の方法は、これは破防法にもあります通り、ほとんど全く強制権というものはありませんで、いわゆる任意の調査でありますが、その調査の内容は多種多様でございます。
  57. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 調査された結果を国会に御報告するようになっておりまするが、国会に御報肯されておりまする内容などは、主としてどんなことが報告されるのですか。
  58. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 仰せのように、破防法の三十六条で、「法務大臣は、毎年一回、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、この法律による団体規制の状況を報告しなければならない。」こうなっておりまして、毎年このような手続で御報告をいたしております。ただこの法律にもございます通り団体の規制状況に関する報告ですから、今年は破防法によって団体の規制の処分を公安調査委員会に対して請求したものはないということで、ずっと御報告しております。
  59. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 大体それでわかったのですが、調査官が調査をいたしまするその具体的な調査報告というものは、何かただいま仰せになったような趣旨に基く調査官の調査報告は、定期的にまとめて報告でもされるように調査官から局長なり調査庁なりに御報告するようになっているのでしょうか その点を……。
  60. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 調査官がいろいろ調査をいたしました結果につきましては、これをその都度口頭または書面によりまして上司に報告をすることになっております。その結果につきまして公安調査庁の本庁で随時調査状況というものをまとめておりまして、これは必要に応じて大臣あるいは内閣等に御報告をいたしております。
  61. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 共産党に対する外部からの働きかけ、あるいは特に資金網などの働きかけがございましたものに対しても御調査なさっていると思うのですが、現在日本の共産党に対する外部などの働きかけの具体的な事実があるかどうか、なお資金などの提供があった事実があるかどうか、つまりコミンフォルムの指導の事実があるかどうか、なお国際的に資金網の援助があるかどうかという点を承わりたいと思います。
  62. 山本勝市

    山本主査 速記をとめて。   〔速記中止〕
  63. 山本勝市

    山本主査 速記を始めて。
  64. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 大体概括的な事情はわかったのですが、公安調査庁で調査いたしますときの費用の出し方、具体的にほかのお仕事と違って、調査は特殊な方法を講じなければならぬだろうと思うのです。従いまして普通の役所の公務員の出張旅費というような関係の紋切型の出張関係や調査費用ということで支出されておらぬように思うのですが、どういう工合に具体的にはやられておるか。たとえ何々事件なら何何事件とか何々の疑いの場合の渡し切り経費で調査官に交付するのか、それとも普通の公務員としての支給の仕方をやっておるのか、その点大体でよろしゅうございますから、お話し願いたいと思います。
  65. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 調査官の出張旅費だとか、あるいは使いますいろいろな消耗品というものは、通常の場合と同じように旅費あるいは庁費から支弁しております。そのほかに今仰せのようにいろいろ多種多様な活動をしなければなりませんで、そのためにいろいろな費目を、それもきわめて臨機応変的に使って参らなければならない事情にあります。それでそういう具体的な調査活動につきましては、単に資金の使い方というだけではなくて、調査対象の選び方であるとかあるいは調査の方法などにつきまして、調査官だけの主観にまかせておきますと、いろいろまた間違いもありますので、常に具体的に上司に報告をして、こういうやり方でやってよろしいかというようなことで指示を受けてさせるように、私どもの方の内部の規定を設けてやっております。そして使いましたものについては、これを活動費をもって支弁することになっております。
  66. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 私ども承知しております範囲においては、調査官は補助者を作って補助機関において相当な活動をさせて、その報告を自分が把握してから、自分の調査を進める方針をきめるというようなことを承わっておるのですが、そういうような補助機関などを持つようなことについての指示は、やはり中央でいたしておるわけでありますか。
  67. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 補助機関を持てというような一般的な指図はいたしておりません。やはり各場合に応じて解決していかなければならない問題であると思っておりまして、大体において第一線の実務につきましては、もちろん各地方局の局長がそれぞれ責任を持ちますけれども、全国八つのブロックにあります公安局の局長が御内の情勢をよく把握して、これを統制して参るようにいたしております。補助機関と申しますとどういうものを意味されておりますか、よくわかりませんけれども、民間の、党内あるいは党外の協力者の協力を求めるということは、これは普通にやっております。
  68. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 協力者に対しましていろいろの指図をして、命令をして協力をさせておる。調査をする場合に、破防法においては制限されてやかましく言われておるので、つい協力者を使いまするについても、相当な考慮を払っておるでしょうけれども、いろいろと協力者の選定などを誤まつたために、おもしろからざるような事象を引き起す場合がある。従って私がお尋ねしたいのは、協力者などを求めるについての基本的な方針でもあってやらせておるのか、それは調査官にいつも具体的にそのときに自由裁量でまかせておるのか、もちろんこれは調査官がやったことについては責任は上司が負うわけなんでしょうが、そういう補助者に対する選定あるいは方法について、何か指導しておる一定の方針がございませんか。
  69. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 先ほども申し上げましたように、調査官の主観にすべてまかせておくことはまずいという考えで、内部の規定で、調査官が調査をする場合には具体的に上司に報告して、その指示を受けてやるようにというふうにしてございます。
  70. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 私がお尋ねしたいのは破防法の第三条の関係なんですが、調査官の行き過ぎに協力する補助者、こういうような者たちの活動が破防法の第三条にしばしば引っかかるような、これで禁じておりまする制限規定を突破するような事象がときどき見受けられますので、そういう問題については上司は一応根本の方針を定めて、調査官の調査資料とし、指導方針としておるかということお尋ねしたいのです。
  71. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまの仰せの点は、もちろん第三条の精神ということを常に調査官に対して教育し、また具体的な場合にもこの点を気をつけて指示して参っておるわけであります。
  72. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 この問題は実はかって法務委員会で問題になりまして、石川県に起きましたできごとなんですが、新田という調査官が室橋という男を強要して協力をしいた。従ってそこに人権じゅうりんの問題が起きた。告訴事実もたしか起きたように承わっておるのです。従いまして、こういうような事例が諸々方々に起って参りまして、今後いろいろ憲法改正問題などになって参りますと、相当にそういう弊害が起きますことを私たちは憂えておるのであります。従いまして、しばしば御指導を願っておることは事実でしようけれども、調査官が告訴を受ける、人権じゅうりんをやる、そういう具体的な事象が諸々方々に起きて参りますと、この破防法に対する国民考え方というもの、むしろ人権をじゅうりんし、憲法保障された国民権利というものが、ないがしろにされるおそれがあるし、さような事実が具体的に起きて参ります。そういたしますると、あなたの方の目的を達するための活動も非常に国民から反撃を受ける、また国民の方から考えますと、非常に迷惑だというようなことの事象が、最近ぼつぼつ起きかけておりますので、それで私は具体的の例をあげてお尋ねしたのです。これは北産党の志賀君からたしか前回の法務委員会で問題にし、金沢の問題は梨木弁護士か何か告訴いたしました。そして告訴事実に基いて、この事実の有無――そういうような越権行為が行われた事実があったかどうかということを、たしか長官でございましたかにお尋ねをしたようなことを私は記憶がある。それでああいうような事例が最近各所に行われて、私どものところに不平だらだらな文書が参っております。従って私今お尋ねいたしたいのは、さような指導をするばかりでなくて、やかましくそういう事実の調査の監督をされておるかどうかということです。
  73. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 いろいろ調査官の調査につきまして問題が起きた場合などにつきまして、私どもの方でよく事実をそのつど調べまして、それについて措置すべきことがあれば措置するし、またその中から教訓をくみ取りまして全調査官に徹底するように、そのつど通達しておる次第であります。そういうふうにして気をうけて参っております。それで、ただいまお話の金沢の事件でございすが、これは私どもは事実が全く逆であるというふうに実は承知しております。これはある飲食店でもってきわめて平和的にある協力者と会って食事をしておりますところに、あそこの党員が四名ばかり入ってきまして、いわゆるつるし上げをして、それからかなり離れたところにある警察署まで連行したという事件であります。もちろん相手の方が被害者だというふうに主張して、告訴が出ておることも承知しておりますけれども、その後の調べでもってそのような事実はない、むしろ遂に党員の方が調査官のつるし上げを行なったものであるということで、この四人の党員は現益金沢の地方裁判所に起訴されて公判中でございます。従いまして、仰せのように、いろいろな問題が起ったつど十分注意しておりますけれども、ただいま例にお引きになりました石川の事件につきましては、私どもは正当なる職務行為であって、間然するところがないというふうに実は考えておる次第であります。
  74. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 今お答えいただいのは、それはあとの三回目の問題でございまして、前二回に協力を要求し、そうして金まで渡しておるというその前の二回の事案がある。室橋という男が刑事上の弱点を持っておりましたのに新田という調査官がつけ込んでこれを利用した。そうして二回にわたって、一回千円ずつの金を与えておる。こういう事実についていかがでございましようか。
  75. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 これは新田調査官が党員の室橋滝次という者と接触しておった点のお話であると思いますが、室橋はそれまでにいろいろ資料であるとか、あるいは口頭の情報を提示して参っておるのであります。その後において、党内の調べに対して室橋がどういうふうに言っておりますか存じませんけれども、この二回の接触につきましては、何ら新田調査官の方に強制であるとか、あるいは破防法の三条違反であるとかいうような事実はないというふうに考えております。
  76. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 それではもう少し進んで申し上げますが、その命を置いて参りましたのは、室橋が留守のときにその妻に押しつけて置いて帰っておるという事案なんです。従って私が今ここで問題を明らかにしてお尋ねしたいと思うのは、そういうようなことをやったこと自体が、果して第三条に違反であるか、行き過ぎであるかということよりも、その二千円の金を渡したという金の性格を聞きたいのです。こういう工合に調査官がいわゆる二億になんなんとする日本の公安調査費用に対して、本人が拒否しておるにかかわらず、それを無理やりに置いて帰ってくる、果してそういう使い方でいいのかどうか。さらに進んで私は調査官が金を使った場合においては、明確な領収書をとるような内規があるかどうか、この点を承わりたいと思います。
  77. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 室橋のいやがるものを無理やり置いていったということは、おそらく室橋がその後党内の査問か何かにあいまして、その際にそういうふうな表現を用いたのではないかと思うのです。それから私どもの方の調査活動費というものが、全部そのようなことに使われるのではむろんありません。前にも申し上げましたように活動の性格が多種多様でありまして、一々は申し上げられないのでありますけれども、すべてこういうような用途であるというわけではございません。  それから領収書の点でありますけれども、多極多様な場合に必ずしも領収書をとれない場合が実際にございます。そういう場合につきましてはその事情を具して、手続上領収書はとらない場合がございます。
  78. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 実は私の承わりたいのはそこなのでございます。領収書をとらなくて済ませる、そういうような取扱いをすることが、会計規則あるいは財政法かにきちんとあてはまるようになっているのでしょうかどうでしょうか。
  79. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 すべて財政法、会計法といったようなものに違背しないようにいたしております。
  80. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 具体的に承わりたいと思うのは、今のような領収書もない、単なる調査官の報告書によって処理される経済のやり方ということになりますると、監督の方法がないと思うのです。と申しますのは、その金のために非常な弊害を起しておる事実がほかにもある。調査官が自分の報告書を作りたいために報酬を与えて、でっち上げのものを、――目的は正しい方向のつもりでございましても、相手方になりました補助者と申しましょうか、金をもらって飛び歩かされた人間がでたらめのことをでっち上げて、そして報告書を調査官に出す、従って金をもらう、これは人情の常だと私は思うのです。金をもらえるのでありまするから、従ってでたらめのものを報告いたしましても謝金とか何かの名目でもらえる。そういうでたらめな報告をされて非常な迷惑をこうむる事実がございます。と申しますのは、共産党員でもない共産党に出入りをしておる、あるいは共産党の諸君の友人であるというようなところから、やはり共産党員として破壊活動をしておるというような疑いを受けて、非常に迷惑をした者がたくさんあるわけであります。従ってそういうものの生まれる原因は、ただいま申し上げたように金を与える、与えられるから金ほしさにでたらめの報告をするということが起きる。これは人情の常として私はあり得ることだと思う。最初にそういうものに報酬を与えたり金を与えるということ、そうしてそういうような秘密事項の報告をさせるということ自体に弊害があると私は思う。従って私は先刻から承わっておる。根本的な方針でもございまして、それに準拠してやらしておるのかどうか。お尋ねしたのはそういうことなのです。あなたが御答弁でそういう準拠すべきものはないのだ、当時の調査官の認定あるいは考え方によってやらして報告書をとっておる、こういうことの御答弁がございましたが、これでは明確な金の使い方とは私は言えないと思う。従って、この金の使い方が明確でない。私がこういうことを申し上げるのは、会計検査院の二十九年度決算報告の中には、二千数百の件数として不当不正の支出がある、五万円以下の不当不正の支出については褐上して報告ができないというような実情にございますから承わっておる。最も大事な国民の税金でございますから、ただいま御答弁のようなことでは私ども納得がいきません。従って今の具体的な例をただしたくて室橋の問題をあげたのですけれども、この室橋の二千円の問題については、これは無理に押しつけておるところを新聞記者諸君も陰で聞いておったというようなことを聞き及んでおる。従って三回目のときの、ただいま御答弁のあったような呼び出しを受けて飲食店で会っているというようなところが問題になったのでありますが、私ども国民の立場から考えますならば、受取りもとらない、ただ調査官の報告にまかせる、それの処理が財政法並びに会計法に基いておるものであるということは、どうも私は納得がいかないのです。この調査をさせるについて金の支給をする、これは謝礼でありましょうか実費であろうかわかりませんけれども、そういう問題については長官の方では部下に対して自由に、部下の申し入れによりまして金を交付するのでしょうか、それとも先渡しをなさるのか、こういう金の出入りに対する具体的の方法はどういう取扱いをなさっておるのでしょうか。
  81. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 まず最初にお答えいたしたいのは、私どもの方は単にいわゆる情報を集める役所ではございませんで、最初に申し上げましたように団体規制のための調査ということを目的としております。従って団体規制の調査と申します以上は、われわれの調査がそれ自体で何らかの効果を生むのではなくして、別の機関であります公安審査委員会でありますとか、あるいはさらに進んで裁判所の法廷でありますとかいうところで、十分批判に耐え得るようなものでなければ、われわれの方では役に立たないわけであります。そのような見地ですべて事実の調査もいたし、またその総合分析もいたしておるのでありますから、むろん金の使い方の面からもでございますけれども、決して今古屋さんのおっしゃるような、ただ何でも集めればいいというふうな考え方は、最初から持っておりません。ただもちろん数多くの場合がありますから、いつも過誤なきはこれはなかなか期し得ないと思います。またそういう過誤があってはならないと思って、日常心を砕いておる次第であります。  それから活動費の渡し方につきましては、その場合に応じましてあらかじめ渡しておく場合もありますし、それから調査官が緊急の場合に立てかえ払いをして、あとで請求する場合もございます。そういう場合につきましても、もちろん十分いろいろな事情を調査いたしまして、そしてその硬い方に疎漏のないようにというふうにやっておる次第であります。
  82. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 今の御答弁の金の問題なのですよ。金を渡して調査の補助をきせるという点に非常に弊害があるということを私は申し上げておるのです。従いまして調査官自身は、なるほど最初のお考えにおいては不確定なもの、でたらめのものではないという正確なものの報告を依頼いたしましても、ただいま私が申し上げたように、人間の常といたしまして金をもらうということ自体一つの何らかの報酬といえましょうから、無理な捏造をするということが、人間としてはあり得ることなんです。私はこの調査官が調査いたしますることが、第三条の問題に入ってくる一つの大きな原因になると思うのです。この点が私どもとしては納得がいかないんです。御自分が資料を求める、あるいは御自分自身が、自分の調査官の調査の事実によって資料を得るということとは別なんです。第三者をしてなさしめるところに、私ども納得がいかない点がある。しかも二億ですから莫大な金でございます。ことしの予算を拝見いたしましても、調査費用だけで二億なんです。これは国民の血税ですが、ただいま申し上げましたような一つの例から申しましても、一回千円のお礼を出した。拒否するのに、また二回目の千円を出した。こういう事実は、いずれにいたしましても金を出したことについては、うわさでない確実な事実です。でありますから、ここに非常な行き過ぎがあり、弊害が生まれてくると思う。今の、領収書はとらない、報告書で済む、こういうことでは、会計検査院の検査のしようもないと思うんですが、この点はどうでございましょうか。ただ神様のような、あなたのところの調査官じゃない。人間でございますから……。しかもただいま申し上げたような調査の方法が、金によって協力さしておる、こういうことでございますから、公正にその金が使われたと私は考えられないと思う。いかがでしょう。いま一回その点を御答弁願いたいと思います。私の申し上げるのは、自分自身が調査をし、自分自身が取り扱ったということにおいての費用といたしましては、これは当然だと思う。ところが金を与えて対価をもらう。報告書をとる。今問題になっておりまする具体的な事実として、小牧の基地反対闘争に対する資料をもらえば、一万円の謝金を払うと言った。それはそういう事実があったかないかは、私どもここに断定申し上げられませんけれども、室橋龍次自身はそう申しておられます。小牧の基地反対闘争に対する資料をもらえば、一万円のお礼を出してやる、金は国の予算で出すんだから、何でもないんだ、こういうことを言われた、こう言っておられる。こういうことは、私ども議員といたしまして聞き流すわけにいかないので承わっておるのでありますが、金の使い方、その点についてはいかがでしょう。
  83. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 石川の事件の場合につきましては、前提の事実が違って伝えられているように私考えております。先ほどのお話の中に、新聞記者のいるところで金を渡したことがあるというようなお話もありましたけれども、これは私の承知している限りでは、そのようなことはむろんなのであって、ただ新田調査官を党員がつるし上げて、警察署に連れて参ったときに、新聞社の方にも通知をして、そのときにいろいろ党員が質問するのを新聞記者が聞いておった、こういう事実があるようであります。それから小牧基地云々という問題につきましても、私どもの調査の目的は、要するに現在のところ共産党の組織なり、あるいは団体としての活動というものを調査しておるのでありまして、その中には、もちろん火炎びんを投げるというような、いわゆる破壊活動そのものという場合もありましょうし、あるいはそのこと自体は別にそういった破壊活動ではない、しかしながら、党の組織なりあるいは党員がだれであるかということを解明していくのに役立つということについては、やはり調査の対象にしている次第であります。それで、その協力者に金をやれば、協力者がでたらめなことを言う可能性があるのじゃないかという点につきましては、繰り返して申し上げますが、単にそういうふうな、ある協力者がどういうことを言ったということで、それを直ちに客観的なものというふうな調査の方針を、実はわれわれの方ではとっておりません。
  84. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 私の申し上げたのは、新聞記者が隣の部屋で、新田調査官が室橋の女房に、金を押しつけているということを聞いたということです。こういう事実がもしないといたしますなら、それはここで争っても仕方がありませんが、問題は、現に今私ども関係しております団体が経済闘争をしておりますし、あるいは私ども社会党の支部が党活動をしておりますが、こういうような活動、闘争をいたしておりますさなかに、やはりそこの党員並びに組合員、調査官が毎月一定の手当をやって、そしてその活動報告をさせているという事実を私どもは知っているわけです。こうなりますと、今後二大政党として選挙になって、党の正しい活動をいたす場合におきましても、そういうようなことによって事案を集約して、そして結局いろいろとこれに対する威圧を加えるというようなことになるわけです。特に手当をもらって補助をしております人々が地方に参りまして、お前たち何々政党に協力すると、あとでとんでもないことになるぞというようなことを、現実に宣伝していることを私どもは知っております。従って、金をもって調査をさせたり、協力させたり、そういうこと自体が、私はまことに弊害が伴う大きな問題であり、しかも第三条に基いて、憲法で与えられた国民の自由に対する制約がいろいろと行われてくる。なお、その金の支出については、単なる調査官の報告書だけで、何らの領収書も必要としないということになりますならば、そこに非常に大きな弊害がある。しこういたしまして、本年度の予算から見ましても、約一億九千万円という莫大な金です。この金の全部がそうではないでしょうけれども、その命がばらまかれて、そうしてこういうようなことになりますならば、相当大きな、思わざる事象というものが引き起されるのじやないか。こういう点を実は私ども心配してお尋ねをしているわけなんです。金に対する領収書がなくて、そうして報告書だけで処理されることが、どういう会計法の規定によって行われておりますか、納得のいくような御説明を願いたいと思います。
  85. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまお尋ねの、調査官が社会党員に協力を求めて社会党の活動を調査する、こういうことがもしありましたならば、それは私ども方針に違反しているものでありまして、これは直ちにもちろんやめさせなければならぬ問題であります。大体私はそういう事実はないと考えております。目標を誤るなということは、一般的にもまた具体的にも常に注意しております点でありまして、ただ漫然と調査の目標を選ぶようなことはいたしておりません。もしそういう事実がありましたなら、お教えを願いたいというふうに考えるわけであります。  それから会計法上のことにつきましては、私自分では正確に承知しておりませんので、ちょっとお待ちを願いたいと思います。
  86. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 なお、今の社会党の問題なんですが、これは共産党の六全協以来明確に共産党の党員などの活動についての調査が非常に困難になったために、調査の間口を広げまして、そして社会党の党員の活動などに手を伸ばされておるわけなんです。さような点はもし具体的に申し出るならばやめさせる、こういう御答弁をいただきましたが、これは当然の話なのでありまして、具体的に私の方でも事例をあげまして、いずれ書面で御質問する場合があるかもしれません。  実は、最近に至りまして、調査官の活動と申しますか、金を振りまいておるということ、これを私は取り上げておるわけなんです。それから、なお、これはうわさなんですが、どうも公安調査庁の調査費用というものは毎年よく残る、相当に便わなければこれはもう来年度の予算はもらえない、従って相当な金の乱暴な使い方をしておるというようなことを実は私どもうわさに聞いておるわけです。たまたま私ども関係する党員の一人を連れて参りまして、そうしてごちそうをしたり金を貸したり、いろいろのことをやっておる事実を私ども承知したために、実は御質問しておるわけです。こういうことになりますと、これは重大なる事案を引き起すことになると考えてお尋ねをしたわけなのですが、具体的にもう少しはっきりいたしましたならば、私どもの方では書面でもって御質問書を提出するようになるかもしれません。明確に御答弁を願いたいと思います。  それじゃ、なお今の予算の問題につきましての御答弁、御釈明を願いたいと思います。
  87. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまのお尋ねの中にありましたうわさのような事実はございません。
  88. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 入管に関する御質問を申し上げたいと思うのですが、現在入管の問題で一番問題になっておりますのは、強制送還をするために収容しておる収容者の処理の問題が大きな問題になっておりますが、強制送還をしなければならぬ人数はどのくらいございますか。もし国別におわかりになりましたならば、大体多いのは朝鮮と中国だと思いますが、お示しを願いたいと思います。
  89. 下牧武

    ○下牧説明員 二月二十一日現在の数字でございますが、大村と、それから横浜と浜松、三カ所の収容所に収容しております総人員が千七百五十二名でございます。そのほかに退去強制を受けて仮放免中の者が一千二、三百名あるかと存じております。国籍別に申し上げますと、朝鮮人がそのうち約千六百名ございまして、中国人が百二十名余りございます。そのほか第三国人はごく少数であります。
  90. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 そこで、お尋ねしたいのは、いずれにいたしましても、本件は国際的な関係を持っておりますから、国際的な信用、あるいはさらに相手国に日本の居留民がおる場合もありますので、相当にこれは国際信用を落さないような待遇を与えてやらなければならぬ、かように考えるわけであります。従いまして、収容所の設備、収容中の待遇、さような問題も相当考慮されて、少くも日本の国際信用を落さない程度のものでなくてはならないと私は思うのでありますが、大村収容所、横浜の収容所あるいは浜松分院などの収容所の状況は、私ども拝見いたしまして、まことに設備が不十分であるように思われるのですが、この点について当局ではいかにお考えになっておりますか。
  91. 内田藤雄

    ○内田政府委員 古屋委員の前段おっしゃいましたことは、私どもも全く同感に感じております。そこでわれわれといたしまして、そういう御趣旨のように努力いたしておるわけでございますが、しいて申し上げますならば、大村の施設につきましては、新しくできました方は、これはもうどこに出しても恥かしくない施設だと考えますが、収容人員が非常に多くなりました結果、旧収容所を使っております。この方面につきましては、でき得るならばこれを改善いたしたいと思っておる点はございます。また、浜松の収容施設は、これまた大村の収容人員が非常に多くなりました結果臨時的に開きましたもので、その意味において、見方にもよりますが、もっとよくした方がいいと、われわれ自身も感じておることは率直に申し上げなければならぬと思っております。しかし、われわれの考え方としては、あくまでも臨時的なものでございますし、その辺多少のところはごかんべん願えるのではないかと思っておるわけでございます。この点につきまして、むろんその角度から見ました場合には、いいに越したことはないのでございますが、ただ、本来のあらゆる収容施設があまりにも一ぱいであるという現象そのものは決して健全な状態ではないわけでございまして、一時的な外交関係のしわ寄せのために、ああいう事態を生じておりますことはわれわれ自身もはなはだ遺憾、に思っておるわけでございます。これが正常化いたしましたならば、そういうこともなくなるであろうという、あくまでも臨時的なものであるという考え方で行っておるものでございますから、もし多大の費用をかけて、あとから事態が急に変ってしまって、結局国費の非常なむだ使いになるということになっては、これはまた申しわけない、そういう気持も持っておるわけでございます。
  92. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 実は、私ども先ごろ大阪の事務所を拝見したのですが、大阪の事務所は職員だけで一ぱいで、審査官や警備官が、特に警備官が警備官としての職務を行うについてはほとんど不能な状態のように見て参ったのです。どうしても私どもは大阪の事務所の大拡張あるいは新営をしていただきたいと思います。あの付近に朝鮮の諸君が相当おるのでありまして、ただいま局長の御答弁のような趣旨なら、設備は必要だと思うのですが、いかがでございましょうか。
  93. 内田藤雄

    ○内田政府委員 大阪の事務所につきましては、実は、私どもといたしましても、できる限り今年度の予算で何とかごめんどうを見ていただきたいと思って、非常に努力をいたしたのでございますが、遺憾ながら今回の予算には計上せられておりません。それにつきましては、われわれの努力の不足もあるかもしれませんが、あの事務所を開きますときのいきさつとして、あの地区に神戸一カ所であったということが、ただいま古屋委員もおっしゃいますように、人口の密度などと比べまして当初から妥当を欠いておったと思いまして、昨年かなり無理をいたしました形で、ともかくあそこに事務所を開設いたしたいというようないきさつがございますので、追っかけて直ちにりっぱな事務所と申しますことも、われわれとしてはその必要を大いに感じておるのでございますが、諸般の情勢から今回の予算に認められなかったのも、まあ見方によってはやむを得ないかと思っておりますが、われわれの方の立場から申しますれば、古屋委員のおっしゃいますように、できる限りすみやかにあそこにりっぱな事務所が設けられることを希望いたしておる次第でございます。
  94. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 なお、収容所に関する関係については、人権の問題も非常な大きな問題になるので、ぜひ局長にお願いしたいと思うのです。これは大蔵当局がいらっしゃれば私からも相当御質問したいと思ったのですが、現在日本におります外国の居留民に対する取扱いが、ややともすると外国から非難を受けたり、居留民から相当な非難を受けているわけです。これは将来の日本の国際関係からいって、まことに悲しむべきことじゃないかと思います。なお、日本といたしましても、朝鮮にも中国にも日本の居留民がまだおりますし、戦犯もおりますし、これらの人人に対する待遇などから考えましても、私はこうした設備などは非常に緊急であると思う。この点は、局長にいかに申し上げても、これ以上むだだと思いますけれども、不幸にいたしまして大蔵関係の方がいらっしゃいませんから御質問できませんが、これはぜひ近いうちに何とか御希望のような設備が新営できますように、私は御努力を願いた、いと思うのです。  なお、大村の収容所におります収容人員の関係、それから浜松の分院に関する収容人員の関係は、私ども二、三のできごとから考えまして、警備官の方、審査官の方たちの職員の数が非常に足りよないのではないか、これは相当ふやしていただいて、そして親切丁寧に取り扱ってやっていただきたいと思う。特に大村の収容所におきましては、御承知通り昨年度からいろいろ忌まわしい殺人事件が起きておる。しかも、そこには、長い者は四年も置かれておるということになっておるのが実情らしいのです。私ども、近いうちに一応具体的に調査をいたしまして、政府にもいろいろと御要求も申し上げたいと存じておりますが、審査官、警備官が足りない、これは緊急にふやしていただかなければならないというように思いますが、局長のお考えはいかがでしょうか。
  95. 内田藤雄

    ○内田政府委員 われわれも、実は、収容所だけの問題ではないのでございまして、入管の仕事が実際上非常な勢いでふええて参っておる状況にかんがみまして、定員をふやしていただきたいということは、これも予算折衝におきまして繰り返しお願いしたのでございますが、遺憾ながらこのたびの予算では、常勤労務というような形で少数の人が認められました以外は、実は認められていないのでございます。古屋委員も御指摘になりますように、特に収容施設などにおきまして臨時的な警備員というようなものを使いますことは、われわれ自身最も好んでいないのでありまして、できる限りはある程度訓練され、またそういう施設の任務になれた者をもって当てることにいたしたいということを強く念願しております。ただ、先ほどもちょっと申し上げましたように、収容施設そのものが臨時的な考え方でおりますときに、そこに勤める人間をすでに固定した形で定員をふやすということは、なかなか建前からも困難であろうということも理解できないわけではございませんので、今後われわれとしましては、できるだけ人のやりくりをいたしまして、そういう臨時的な施設の場合におきましても、収容所に勤務するような者はなるべく正式の警備官を充てるというようなことでやりくりいたしたいと思っておる次第でございます。しかし、もちろん、古屋委員のお説のように、人員でもふやしていただけるということになれば、それはわれわれとしても最も望んでおるところでございます。
  96. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 ほかのところは、行政整理をされる時代ですから、人員をふやすことはどうかと思いますけれども、人権の問題と国際関係の問題にかんがみまして、今のような臨時のような、訓練をされない方が警備官としておることは改めていただきたいと思うのです。私はその点はぜひすみやかに実現するように要望申し上げておきます。  なお、最後に一つ、大村の収容所に相当数――千六百何人か収容されておるのですが、だんだんとふえて参ります原因はどこにございますか。この点をお伺いいたしたい。
  97. 内田藤雄

    ○内田政府委員 このふえます原因は、密入国と、それから犯罪等の理由によって退去強制者が出て参るというのと、大きく分けましてこの二つであろうと考えます。この場合、密入国は現在では数から申しますとほとんど朝鮮が大部分なのでございますが、これには非常に天候の関係がございまして、玄界灘の海の事情によって、非常に多かったり少かったりするというのが大体の様子でございます。それで、冬の間は大体密入国者は少うございまして、昨年の秋以来、先般新聞でこの密入国者のケースが現われましたが、あのころまでは新しい密入国者というものはほとんどなかったと申していいと思うのでございます。ただ、御承知のように、潜在しております密入国者が相当多数ございまして、これが、登録の不正というようなことを通じ、あるいは登録法の違反というようなことから追及して参りますと密入国であったというようなことで、密入国のケースというものは、新しい密入国者はなくても、絶えずあるわけでございます。もう一つは犯罪者の関係でございますが、現在刑務所に入っております者の約一割五分くらいが朝鮮人のように聞いておりますが、その人たちが懲役一年以上の刑による者でございますと一応われわれの方の問題になる。もっとも、われわれはただそれに該当したからということですぐ強制退去にいたすようなことはいたしておりませんが、毎月百五十から二百件くらいわれわれの方に回って参りますうちから、大体一割ないし一割五分くらい。一がいには申せないのでございますが、普通の犯罪でございますと四犯以上くらいで、その人の生活が犯罪の上に成り立っておるのではないかというふうに考えられますような者を退去にいたしておるわけございまして、そういうものと合せまして毎月ある程度の数がどうしても大村に送られるということになっておるわけでございます。
  98. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 これは所管事項じゃないんですが、これらの人々を朝鮮に強制送還をする道がいまだ開けていないということもその原因になっておるわけだと思うんですが、この点は外務省の関係もございますからお尋ねいたしません。前回しばしば私どもが御質問申し上げて御確答いただいておりますが、南北朝鮮に対する帰国者の自由意思の問題なども相当からみまして殺人が行われておる。しかも両者の間に、南に帰りたいという南びいきの入監者と北に帰りたいという入監者との間におもしろからざる闘争と申しましょうか、殺人事件などが起きておるようですが、これについては今の警備官だけで今後防げるような見通しはおつきでございましょうか。
  99. 内田藤雄

    ○内田政府委員 大村におきまして、昨年の秋ごろから、帰る場合には北鮮へ帰してもらいたいというような人が漸次ふえて参りました。現在では約七十名ほどになっておるように承知いたしております。そういった北鮮系なる人がふえるにつれまして――数で申せば韓国側の人がほとんど大部分なんでございますが、その人々の団結もまた強くなって参る。そこに気まずい感情的なものから、ややもすればいざこざと申しますか、ある場合にはそれがなぐり合い程度になったようなケースもあることは事実でございます。われわれといたしましても、これらの動きには十分注意して参ったのでございますが、ことしに入りまして、このグループを二つに分けまして、約七十名の北鮮系の人々は一つの棟のある階に集結いたしております。その結果、実はその人々が占めている場所というのは南鮮系の人々が占めている場所よりも非常に広い場所を少数の人が占領しておるというような格好になりまして、結果におきましては北鮮系の人々が優遇されておるような結果になっておるのでございますが、ともかく、ただいま申しましたようないろいろな事態を避けるためにそういう措置をとっておるわけでございます。先ほど古屋委員のおっしゃいました殺人事件と申しますか、ともかく傷害致死で現在起訴されておる人が一名ございますし、またその事件で暴行容疑で他の一名も起訴されておりますが、そういう事件がございましたことは事実でございます。ただ、私どもの収容所からの報告ばかりでなく、現在検察庁の方からいただいております報告によりましても、この事件は、民鮮と申しますか、今では総連合と申しますか、その方で宣伝しておりますように政治的ないしは思想的な背景によって起った事件ではないと信じております。それは、その被害者も加害者もともにいわゆる南鮮と申しますか韓国系の人々でございまして、殺されました姜東根という人物も、われわれの方で認定しました限り、いかなる機会におきましても北鮮系であるとか北鮮への帰国を希望するというようなことを申し出たことのある人物ではございません。それから、事件そのものも、一人の少年を問題といたしましてむしろ被害者であった姜東根がシャベルをもってなぐりつけたりしたことから、逆にその恨みから殺されたというような事件でございまして、大体事件の経過そのものを見ましても、そこに思想的ないしは政治的な背景のあった事件であるとはわれわれは考えておりません。しかし、いずれにいたしましても、そういった思想的、政治的な背景のもとにいろいろないざこざが起きようとしておるということに対しましては、われわれは非常に気を使っておる次第でございまして、今般別にいたしましたのみならず、その間の交通等につきましても十分留意いたしまして、南鮮派の者が多数の威力をもって少数の人々をいじめるとか害を加えるとかいうような事態が起らないように最善を尽したいつもりでございます。
  100. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 最後に、御要望申し上げたいことは、思想的な関係はないといたしましても、やはり長くおると牢名主みたいな勢力家が出て参りまして、それが中心になってけんかをするというような事例があるらしいのですが、どうかただいまの御答弁のような御趣旨で万全を期していただきたい。  なお、重ねて、大阪の問題は、どうしてもあの付近にたくさん朝鮮の諸君がおられますので、警備官の御職務を行うのに非常に不自由であると同時に一面相手方の調査を受けまする方面の人たちについても人権上全くよろしくないことが行われておると思います。従いまして、この点については、人権擁護の立場からも、国際信用の立場からも、これはくどいようでございますけれども、相当な設営をされまして遺憾なきを期していただきたいと私は御要望申し上げます。  以上入管に関する関係につきまして質問を終ります。
  101. 山本勝市

    山本主査 古屋分科員、先ほどの公安調査庁の会計法上の関係について説明がありますから。
  102. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 先ほどの調査官の調査活動に際しまして受け取りをとらない場合があるかというお尋ねに対しまして、私がとれない場合があるということを申し上げましたが、それは事実はその通りでございます。それで、それが財政法なり会計法上違反ではないかというお尋ねでありますけれども、これは違反ではないのであります。会計検査院の承認も受けておるそうであります。
  103. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 なお法務省の経理課長さんに営繕の関係を少しお尋ねいたしたいと思います。  法務局の関係でございますが、御承知通り、法務局の特に不動産の登記に関する登記所の問題で、不動産の所有権確認の一つの最も重大な役割を果す登記所の登記原簿の保存の問題、それから登記事務を迅速に行なっていただかなければならぬ問題、かようなことを考えますときに、終戦前の画師が戦災のために焼失しまして、国民はこれがために非常な迷惑をこうむったことは御承知通り、でございます。従いまして、その後におきまする登記所の問題なのですが、現在全国で登記所は何カ所になっておりますか。その中で賃借りをして借り上げた登記所があるように心得ておりますが、借り上げております法務の登記所は何戸、国有が何戸、区別しておわかりになればお知らせ願いたいと思います。
  104. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 法務局の出張所――登記所は今こう呼んでおりますが、出張所の数は金田で約千八百ヵ所になっております。そのうちで、民有の建物を借りて使っておりますところが百八十一カ所でございます。市町村等の公有の建物を借りて使っておりますところが千二百十四ヵ所ございます。裁判所と共通して使っておりますところが四カ所、法務省と公有との両方になっております建物が二十一カ所、現に国有として法務小官の所管になっております役所が三百七十六となっております。
  105. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 そうしますと、法務省所有の出張所が非常に少いのでございますが、この点はなぜ私が御質問申し上げるかと申しますと、借り上げ事務所はまことにおそまつなものであって、一たび火災が起きますと、大事な原簿そのものが非常な危険にさらされるというおそれがあるわけなんです。これは国民権利の確認の場所でありますから、非常に大事なところであります。しかも、かように大事な書類保管をしておきまする場所であるにかかわらず、ただいま御説明賜わりましたように、借り上げ事務所では完全な原毎の保管などが行われないというおそれがあるのでございまして、この点について、法務省といたしましては、現在のままでいいのか、それともこれは至急に堅牢な保管場所あるいは能率を上げ得るように必要な事務所が必要であるかどうか。必要であるとするならば、何がゆえに今日までこんなに放置しておるのか、その辺の事情を承わりたいと思います。
  106. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。ただいま御指摘通り、登記所の仕事自体、きわめて貴重な書類を保管するという仕事になっておりますので、堅牢なる倉庫、事務所が必要であることは申すまでもないのでありまして、この点につきまして、いささか私どもの営繕計画と申しますか考え方を御説明申し上げたいと思いますが、この千八百カ所の出張所は、非常に古い四十年もたっておる建物がそのうちの三分の一を占めておりまして、五百三十五カ所となっております。かような古いものでなくても、今御指摘のありましたように、民有のものなどは非常にちゃちな建物も多いのでありまして、こういうものが放任されていいとは思っておらないのでございます。そこで、戦後たくさん焼けましたが、まず営繕計画といたしましては、八つのブロックに法務局、そのまた下に各府県に地方法務局、さらにその両者につきましては支局というのがございまして、その最下級官庁が出張所になっておるのでございまして、この法務局、地方法務局が何と申しましても神経中枢になっておりますので、この方面の営繕を営々過去十年にわたりまして新低して参りました。今や支局の段階に入って参っております。支局の営繕に今最も力を注いでおりますが、出張所につきましては、これを全く放任しておるのではございません。実は、市町村の合併等が推進されておりますが、この出張所が数十年来ある役所が多いのでございまして、これがすでに経済的に見まして、新しい市町村の中心部と申しますか、必ずしも利便に適したところにあるとも思えない面もあるのでありまして、こういうものを総合的に考えまして、新しく作りますときには、新しい市町村の最も枢要な利便なところを考えるといったような配慮も実はいたしておるのでありまして、さような配慮をする必要のないもので、かつまた朽廃その極に達しておるというようなものを選んで営繕計画をいたしておるのであります。何と申しましても、重点が支局の方にありますために、出張所の新営はおくれておるような事情でございます。私どもとしましては、これをないがしろにしておる趣旨では決してないのでございます。よろしく御了承願いたいと思います。
  107. 古屋貞雄

    ○古屋分科員 最後に、御要望申し上げたいのですが、実は、私ども弁護士をいたしておりまして、しばしばそういう現実に突き当たるのですが、出張所の借り上げ事務所などは、バラックのようなところで、しかも一たび風が吹くと重要な書類が散逸するようなところで、実に気の毒な登記所が多いのです。ただいまのような御事情もありましょうけれども、ぜひすみやかに経済の許す限り相当なものを作っていただきたい。というのは、そのために、地方の人たちに対して、上級のところはどうでありますか知りませんが、翌記役場などでいろいろの費用が足りないために番付を求める場合もあるのです。従って、地方の方たちは、登記所のことですから、これに喜んで応じておりますけれども、筋から言えば、そういうことはあまりいいことではないと思う。私ども見て参りましたのも、七十年くらい経過したところもあるらしい。ほとんど、何と言うか、白アリなどに食われまして、国有の出張所が七十年くらいのものもあるように聞いております。ほとんど能率を上げるにも非常に困難だというような関係もありますので、能率の点から考えましても、また重要な書類の保管に対する国民の信頼から考えましても、努めてすみやかに相当なものに建てかえを願いたい、かように御要望申し上げて、私の質問を打ち切ります。
  108. 山本勝市

    山本主査 田中織之進君。
  109. 田中織之進

    田中(織)分科員 予算関連速して、法務省所管の事項について二、三お伺いいたしたいのであります。  まず第一にお伺いいたしたい点は、本年度の予算においても検察審査会のための経費が引き続き計上せられているわけでありますが、最近、検察庁のとりました処分が適当でないということで、審査会の方からこれは起訴すべきであるというように議決された事案が全国的に相当あると思う。そういうことが、検察審査会の権威のためにも、また、少からぬ国費を投じて審査会を設けておる以上、その審査会の活動の結果が検察行政の上にどういうように生かされておるかということについて、国民として深い関心を持っておることだと思いますので、まず一般的に検察審査会の活動を検察行政の上にどういうように反映しているかということについてお答え願いたい。
  110. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 検察審査会におきまして議決のありました場合に、もとより検察庁としましてはその意見を尊重いたすわけでございますが、ただ、法律上罪とならないような場合、あるいは、なるほど一見して犯罪になると思われましても、立証の関係から起訴するに足るというような場合でないことがございますし、また、犯罪の嫌疑がございましても、その他の事件との関係、バランスから起訴するに至らないという場合もございます。なお不起訴を維持することはございますけれども、根本理念といたしましては、検察審査会の議決を尊重するという態度で臨んでおります。
  111. 田中織之進

    田中(織)分科員 なるほど、検察審査会法の四十一条には、横平正の職責として、審査会の議決の通告を受けた場合には、ただいま長戸さんがお答えになるように、「その議決を参考にし、公訴を提起すべきものと思料するときは、起訴の手続をしなければならない。」ということで、検事正の裁量にゆだねられておるのでありますが、しかし、御承知のように、検察審査会で議決しました議決については、当該検察庁の前に一般に公示することになっておるのであります。もちろん、審査会の審査手続きの過程においては、担当の検事なり事件の当事者なりを証人あるいは参考人として独自の立場で、喚問して審査を続けることができるのでありますから、審査会の結論は、私は相当その意味国民の代表の意思として尊重しなければならないものだと思う。その意味で、具体的なケースについてお伺いをした方がはっきりすると思いますので、まず伺いますが、去る一月分二十五日に、和歌山の検察審査会が、昨年来和歌山県下を非常に震駭せしめました和歌山土木部にまつわる汚職事件について、当面の責任者でありました当時の鈴木土木部長に対しまして、この不起訴処分は不当である、当然起訴すべきものであるという具体的事実をあげて議決をいたしました。この点については本省に当然報告があったことと思いますが、その後どういうふうにこの議決が処理されたかについて、和歌山地検からの報告を受けられているか、伺いたいと思います。
  112. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 お尋ねの事件につきましては、すでに田中委員承知のように、昨年、五月から和歌山県土木部関係の汚職事件の捜査に着手いたしまして、十月までの間に六十三名の被疑者を検挙いたしております。その六十三名のうち、二十六名に対して公判請求をいたしました。十四名に対して略式命令の請求をいたしました。二十三名につきまして不起訴の処分をいたしております。お尋ねの当時の県土木部長につきましては、昨年十月二十九日に不起訴の処分をいたしたのでありますが、この不起訴の処分に対しまして、和歌山検察審査会が、その不起訴処分は相当でないという議決をされたわけであります。これは本年の一月二十五日であったかと思いますが、それに対しまして、和歌山地検におきましては大阪商検に指示を受けておりまして、現在のところ未定であります。要するに、大阪高検といたしましては、事件の重大性にかんがみまして検討を続けているという状況でございます。なお、たまたま本日大阪高検の安西次席が在京いたしておりますので、最高検からも慎重にこの事件を検討するようにという指示があった次第であります。
  113. 田中織之進

    田中(織)分科員 鈴木君の事件につきましては、ただいま長戸さんのお答えになりましたような経緯でございますが、鈴木君は、関係者として起訴されておりましてすでに懲役八カ月、三年間執行猶予の判決を受けている和歌山県有田郡岩倉村の土建業植木安一から、当時の県土木監理課長阪口稔君を通じて鈴木氏に渡された二十八年十一月の五万円の贈賄については、その収賄の事実を認めております。しかもこれは、贈賄者が起訴されて、執行猶予でありますが判決はおりております。また、鈴木君と同時にその植木から金を受け取った阪口君も、現に起訴されて、懲役四ヵ月、一年間執打猶予、追徴金五万円の判決を言い渡されております。この事実だけは鈴木君がはっきり認めている事案でありまして、この鈴木君の五万円の収賄の事実は疑う余地はいが、額が小さい上に、静岡、和歌山県等を通じて三十年に近い間官吏をしておったその官界の生活を彼が任点退職という形でやめたという情状の点から、これを不起訴処分にせられておったのでありますけれども、私は、金額は小なりといえども、贈賄者が、また同時に鈴木料と同じ立場において収賄をした片一方の監理課長が、両方ともが起訴されておるのに、鈴木料が起訴を受けないということは、これは審査会の決議の通り不合理だと思う。これと同時に、審査会の議決書が本省へ報告になっておることと思いますので明白だと思うのでありますが、市大な問題はむしろこの点にあると思うのです。鈴木君は、去る二十九年十月果土木部長に就任、去年の九月の二十九日に退職しているが、この間二十八年七月の大水害で県下に大きな被害があったが、これにからんで中央官庁職員の接待費や国庫補助金獲得運動費などで和歌山市和歌浦、旅館岡徳にたまった借財返済に充てるため、湯浅土木出張所長の矢野岩太郎――これは公判係属中でありますが、それに二百万円の調達を依頼いたしました。有田郡有田川にかかっております田殿橋のから工事二百万円を鈴木君が命じまして、矢野は上司の指令として二百万円をから工事でひねり出し、二十九年九月に当時次長であった鈴木氏に渡した。ところが、問題の岡徳の借財の二百万円は県の方で災害復旧費の中から百万円を岡徳に支払っておる。これは事実が明白になっておるのであります。従って、当然このから工事の関係で捻出した二百万円の鈴木君が受け取った金の行方がわからない。この点が一番検察審査会として重要視いたしておるところなのであります。この翼係は和歌山県議会での鈴木君の答弁でも明白になつておるのでありますが、そういう観点から、これらの事実が明白になっておるにもかかわらず――相当長期間にわたって鈴木君が検察庁へ喚問されて取調べを受けたことは私らもよく承知をいたしておりますが、しかし、このから工事に関する限りにおいては、鈴木君もその事実を県議会においても明確に申し述べておるのでありまして、このから工事がどういうふうに事後の処理がされておるかは別問題として、これ自体も鈴木君の責任であるかどうかは別問題といたしましても、当然検察当局としては取り上げなければならない問題だと思うのであります。和歌山県は、私らも昭和二十二年以来国会に和歌山県から出してもらっておりますが、毎年のごとく二回、三回という水害を受けて、国民の上血税の中から少からぬ災害復旧関係の補助金をもらっておるのであります。われわれは、国会の各委員会を通じて全国民を代表して出ておる同僚諸君の賛成と協力を得て和歌山県に持っていった金がこういう形で空費されるということについては、協力を願った同僚議員諸君に対して、またその根源が国民の血税であるだけに、これを明白にしなければならぬ。個人の情としては、私も鈴木直彦君というのはよく存じておりますが、清廉潔白な男です。これらの件によって鈴木君はやめて、さびしく和歌山県を去って郷里の浜松に帰るときに、われわれの社会党の関係の県会議員その他の諸君には、鈴木はどんなことがあっても曲ったことはいたしておりません、あくまで白だった、しかしその白である自分がこの県の汚職事件を適当に締めくくりをしなければならないという関係から責任を負ってやめていかなければならぬ心境というものをくんでくれと言って、彼はほんとうにさびしく和歌山を去っていっているのです。近く鈴木君からその心境をぶちまけた和歌山県の汚職に関する文書が発表せられる段階まできておると思うのですけれども、それだけに、われわれとしては、そのあとに隠されておる問題を国民のために追及しなければならぬと考えておるのであります。その無味で、気の講ではありますけれども、これだけ明白な事実になっておる関係責任をとっておる鈴木君は、これは涙をふるって馬謖を切る立場から、当然和歌山の地検においてこれを起訴手続をする――ほんとうは鈴木君より上のところへ行っているだろうということは、もう和歌山県民の常識なんです。それを鈴木君が食いとめているのですが、自分がいよいよ起訴されれば、裁判の結果懲役に行かなければならぬ、――むすこさんもいます。そういうことで、渇しても盗泉の水を飲まずということは鈴木君の身上であるとまで彼は言っているのでありますが、いよいよ起訴されるということになると、初めて和歌山県の汚職の真相というものがここに明白になったのであります。われわれは、その意味で、鈴木君は同情に値するけれども、この際鈴木君を起訴すべきであるという意味で、全県下にわたって汚職の真相の発表もいたしました。そうしたことがたまたま検察審査会の取り上げるところとなって、この結論になってきている。私は、その意味で、この問題については早急に結論を出していただかなければならないと思うのであります。なるほど安西さんは大阪高検の次席になられるまでは和歌山の検事正であった。これは私もよく存じ上げております。しかし、こういう形で和歌山県の汚職が、税金を納めた県民の立場から見るならば、どうも納骨のいかぬまま押さえられたということについては、かつてのいわゆる造船汚職に対する指揮権発動に似たような政治的な圧力が検察庁に加わっているのじゃないかということが、和歌山県民の中で常識になっておるくらい出てきている。私は、その意味から見ても、また検察当局の公正なる威信を回復する見地から見ても、この際審査会の結論を断固として取り上げて、これは起訴していただく、そうするとさらに新しい事実が出てき、明快になるものだ、かように私は考えておるわけでありますが、その点については、こういう事情をくまれて、積極的に和歌山地検に対してこの処置を――それは検事正の裁量によることでありますけれども、そういうを法務省として、和歌山地検に指示されるお考えがあるかどうかということを、この際伺っておきたいと思います。
  114. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 ただいまお話の件につきましては、やはり検察審査会において取り上げておる手柄でございまして、大阪高検といたしましては、その分をも含めて再検討するというふうにいたしております。私も本日安西次席に会いまして、これの重要性から、特に再調査すべきものということを申しておるわけでございます。  なお、一般的に申しまして、検察審査会が起訴相当の意見を出しました場合におきまして、さらにその不紀訴処分を維持するというふうなことにつきましては相当重大な問題でございますので、検察庁といたしましては、そういう場合には高検に相談して、その指示を受けて事を決するというのが現在の実情になっております。これは一般的にさようにいたしております。
  115. 田中織之進

    田中(織)分科員 この点は、この事件の検察当局の活動の過程において、私らも検察当局を激励いたします。和歌山県が今後も天災地変等のために少からぬ国からの援助を受けなければならぬという場合に、こうしたことをくさいものにふたをするというような形でなく、くさいものはこの際さらけ出して、きれいさっぱりになった和歌山県という姿を出してもらわなければ、われわれは中央において、国会において、各省の首脳部に和歌山県のためにということの主張をする根拠がくだけるとまで極論して参ってきておるのでありますが、しかし、たまたま事件がこういう形で、当年者の鈴木君は、おれはあくまで白だということを言い切りながら不起訴になって帰っていく。ところが、関係者の大部分の者が起訴されているけれども、鈴木君が認めておる関係だけでも、そのほかにも鈴木君が一応金を受け取ったということになっておる金額は七、八十万円あったように私も記憶いたしておるのでありまするが、そういう関係からあわせまして、金額の多寡にかかわらず、やはり一応明確なものは明確なものとして、裁判の結果が無罪になることは、これは裁判所の独自の判断でありますが、一応本人も認めてこれは犯罪事実として明確であるということになりますれば、私はむしろそこに政治的な考慮というものは避けるべきだと思う。こういう形で汚職戦事件をおさめるということについては、今幸い上京されておるようでありますが、安西さんが和歌山地検の検事正であったというような縁故をたどって、いろいろ大阪高検にも相当県の首脳部や小野知事をバックとしておる人たちが働きかけて、こういう形で抑えつけた、おさめたんだというようなことが、とかく和歌山県下では一般に流布されておるだけに、私はこれは安西さんのためにも、この人は実に清廉な人で、和歌山におられる当時には私も数回お目にかかって面識もある方でありますが、安西さんがたまたま和歌山の検事正で、今大阪の高検におるというので、安西さんに頼み込んでこういうふうにしたのだと言われておるもんだから、どうしたってこれは一ぺん国会でこの問題は取り上げて、大阪高検のためにもそういう不明朗な感じを持たせないやうにやってもらいたいという、実は党の決定に従って私が質問を申し上げておる。どうかその点をくみ取って明確にこの点は御処置を願いたいと思います。ただいま、大体審査会が理由を付して起訴すべきが相当であるという議決をした場合に、それを不起訴のままでおくということは重大な問題であるという長戸さんの御答弁で、私は大体この取扱いの今後の見通しがついたように思うのでありますが、引き続き、こういう問題は非常に恨の深い問題であるだけに、和歌山県にのためにも、また血税を負担しておる国民のためにも、明らかにいたしたいと思いますので、断固たる処置で臨まれることを希望いたしまして、私のこの点に関する質問を終ります。
  116. 山本勝市

    山本主査 辻原弘市君。
  117. 辻原弘市

    辻原分科員 ただいま松察審査会の関係における問題の点が明瞭になったのでありますが、なお、関連いたしまして、この和歌山県のいわゆる土木汚職と言われている昨年来からの一大不祥事件について、少しく具体的な問題をお尋ねいたしておきたいと思います。  大体の事情につきましては今田中分科員からお話がありましたので、また、高検、地検からの報告に基いて御承知なすっていらっしゃると思いますから、くどくは申し上げませんが、ただ、今大阪の高検の方で審査会の意見を尊重すべく検討中であるというお話で、ありましたが、この事案は、私ども承知するところによりますと、本年末で時効になる事案、こういうことを聞き及んでおるのでありますが、もしかりにそういう事態に至りますと、これだけの膨大な被疑者を出して、しかも相当数の起訴者を出しておる事件が、最終段階にその主たる責任の所在がどこであったかということが県民一般に明らかに知られないままに葬り去られるのじゃなかろうか、こういう危倶もわれわれ並びに県民の一般は持っておるわけであります。従って、検討しておるとおっしゃるのでありますが、そういった事情もありますから、少くとも検察当局の威信にかけても、そう長くこうした事案の検討をほうっておくということではなくして、できるだけすみやかに結論を出すよう、これはもちろん高検、それから和歌山地検の問題でありますけれども、最高検あるいは法務省の当局としても特別の御配慮があってしかるべきものとわれわれは考えておりますが、その点は時期的にどういうふうにお考えなすっていられるか、これを承わっておきたいと思います。
  118. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 事案は被疑者ごとに時期が少しずれるわけでございますが、二十八年の十一月ごろというのは土木部長かと思います。一番短かい時効から申しますれば三年ということでありますが、この種の事件につきましては、申すまでもなくすみやかに処理することが大体建前でございます。われわれといたしまして、補助金関係の事件につきましては特に重点を置いておりまして、各検察庁に特別刑事係検事というものを設置しておる関係もございますが、それに集中してやらせるというふうにしておりますので、この件等につきましても、なるべくすみやかに処理をしたい、こういうふうに考えております。
  119. 辻原弘市

    辻原分科員 今お話しのごとく、鈴木前土木部長に関する容疑の問題は本年の大体十月ごろが時効と想定されるわけであります。従いまして、それまでの間にこれは事実を明らかにしておいていただかなければ、先ほど申しましたようにうやむやに葬り去られる。現に、事件の発端は、すでにこれは古い問題でありまして、先ほども御説明がありましたが、捜査の開始されましたのも昨年の五月であります。そういう点から見ましても、これはもう相当時日がたっております。ところが、実際これによって明らかとなったのは、それぞれ出先ないしは下級の事務担当者、こういった部分だけの内情が明らかにされ、その部分だけが起訴ないしは処分に付されておる。従って、この事件全体に対する問題の根源というものは、検察当局の今日までの取調べにおいては全然明らかにされていない。ところが、先ほども田中分科員から話がありましたが、県民一般の受け取り方というものは、すでに検察庁の取調べを乗り越え、一般は、少くともこれだけの大がかりなものを、また多数の被疑者を出す限りにおいて、役所の機構から言っても、一事務公吏ないしは出先の土木出張所長が単独でやれないような事件であることは明らかである、その明らかである事件がなぜ明らかにならないのかという点に対して、今日非常な不明朗な空気が県内に充満しておるわけでありまして、この件に関する限りは、政労政派ということではなくして、非常な県民の義憤の火の手が今日上っておるわけであります。従来とかく、そういう問題が起きて、明々白々な取調べないしはそれに対する処分というものがない場合には、これは一般に与える影響というものが、たとえて言いますると、こまかい何でもない選挙の形式犯等については仮借なく処分する、しかしながら県民なり国民の血税を私した者に対しては必ずどこかでしりがすぼまってしまって、うやむやになっていく、こういうことだからわれわれとしてはどうも県政並びに国政に心から信頼することができないなどという、非常に悪い影響を与えていっておるわけなのでありまして、そういう点からも、そういう県民の空気を十分考慮の中に入れられまして、もちろん事実については事実を明らかにするということでありますけれども、これは当然事実があるし、当然責任者がなければならぬのに、その点が明らかにせられていないところに不明朗さがあるわけでありますから、先刻あなたが申された、検察審査会の決定というものは十分尊重しなければならぬと思う。いま一つは、当面明らかに被疑、容疑があって贈賄側が処分され、また同じように収賄側の一方が処分されておる。しかし、土木行政に関する相当な責任を有する木木部長が全然問題にされていない。しかも時日がたてば特効にもひっかかる。従って、そういう点も考慮されて、できるだけすみやかに結論を見出したいというお話ですから、私は、この二つの点から、検察審査会公正な決定というものをさらに検察当局が無視され、一般の私どもの目から見れば曲げた取り扱いをよもやなさるまいと思いますので、くどく申し上げません。こういう事犯については、われわれといたしましても個人の情はありますけれども、事政治に志す者といたしましては、かかる県民が義憤を感じ火の手を上げている問題については、そういう私情を投げうって、検察当局にも協力をして糾明をいたさなければならぬという決意でありますので、その点もお考えの上で、一つすみかに相当の決定をいたしてもらいたいもの、かように考えておるわけであります。  最後に、今申しましたような私の総合的な話に対して、長戸さんの御所見を承わっておきたいと思います。
  120. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 この事案は、われわれとしましても最初報告を受けましたときから相当重視しておる事件でございます。ただ、大阪高検におきまして今後再検討の結果いかなる結末になるかわかりませんけれども、妥当の処理をいたすようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  121. 田中織之進

    田中(織)分科員 その問題はその程度にいたしまして、民事局から第一課長がお見え下さったそうでありますから、登記の関係について二点お伺いいたしたいと思うのですが、時間を節約する関係から一度にお伺いたいたします。  それは、私、法作家ではございませんので、よくわからない点もあるのでありますが、一つは、衆議院の行政監察委員会で先ほど質問された古屋委員が取り上げておる問題でありますが、物納財産として大蔵省が収納した土地の払い下げの問題に関連いたします。実は、そこに鉄筋コンクリートのガレージが借地権者によって建てられておった。その土地をたまた地主が財産税の形で物納をいたしました。当然、鉄筋コンクリートのガレージが建てられておるので、通常のことでありますならば、この地上権者に大蔵省から払い下げがされなければならないのでありますが、当時大蔵省の管財の方で日本信託銀行か何かにその払い下げの事務を委託いたしておりました関係から起ってきた問題であります。その土地の払い下げに、ほかにも希望者があるというようなことがわかったので、そのガレージの所有有から、 国を相手に、この土地の所有権移転その他の処分をしてはならないという仮処分の登記をしておるのであります。これは登記簿を見ますと明白になっておるのであります。ところが、たまたまその人以外の第三者に、大蔵省から、日本信託銀行であったと思いますが、これを通じて国有財産の売り払いがされた。そこで、国を相手の仮処分でありますから、登記所ではそういう仮処分がついておるということが明白であるにもかかわらず、仮処分のついたまま所有権が国から第三者に対して移転をしたところの登記がありまして、現在これは定事訴訟で争っておるのであります。仮処分の登記手続と、それから所有権移転の答記手続とは、それぞれ別個なものであることは私もわかります。しかし、一応その仮処分の内容が、国が所有者なんですから国を相手になされておるという場合に、私はその仮処分というものはあとの所有権移転登記のときには当然やはり参考にするというか、当然これは考えられなければならない問題と思うのでありますが、登記所の方では、もちろん仮処分の日付と所有権移転の登記の日付とは、私は謄本をみましたが、違いますけれども、それをやっておる。そういうようなことで、結局その借地権者もやはり日本信託銀行との間に売り渡し契約ができて代金の一部を納めておる。それにもかかわらず、全額をあとから持ってきた者にやったというような、委託者としての日本信託銀行の不信行為もあるので、現に民事訴訟で争うておるのですが、翌記所の方の取扱いとして、そういう仮処分がついておる場合に所有権移転の登記というようなものを受け付けてやるように現在はなっておるのかどうか、これが一点。  それから、もう一つは競売であります。もちろん手形の不渡りか何かに伴う関係のものだと思うのでありますけれども一つは仮処分です。これが先にきております。その仮処分に関する本訴が三月五日の弁論です。ところが、別の関係で手形債権に基く強制執行の処分でありますが、それの競売期日がこの二十三日であります。こういう場合、登記とは関係ありませんけれども 仮処分なりあるいは強制執行、それに伴う競売という一連の民事訴訟手続でありますから一括してお尋ねするのでありますが、先にいわゆる仮差し押えというものがなされて、それの本訴が三月五日の弁論です。まだ債権額が確定しないから、一応保証金を積んで仮差し押えをした。片一方は、あとで、別の人間でありますが、おそらくこれは予形債権が不渡りか何かになったので拒絶証書でそのまま強制執行して競売日にちが決定されたのではなしかと思うのでありますが、留守宅のそこの奥さんに事情を聞いてみますと、その強制執行に来ましたとぎに、実はこういうように仮差し押えを受けておるのです。封印もされておるという事情を申し上げたのですけれども、それは両当事者で配当分配といいますかそういう形でやれるんだということで、実は競売処分に付せられておるのであります。これは裁判所に属する事項でありますけれども法務省の方としては、こういう場合の取扱いについてどういうような指導方針でやっておられるか、この機会に伺っておきたいと思うのです。
  122. 新谷正夫

    ○新谷説明員 具体的な事案についてつまびらかにいたしませんが、ごく一般的にお答え申し上げますと、最初の、仮処分債務者である国から当該の不動産を他に譲渡するという場合でございますが、仮処分は、御承知のように、仮処分債務者が処分禁止を受けた物件を他に譲渡その他の処分行為をいたしましても、仮処分債権者に対して対抗できない。絶対的に効力が発生しないというのでもなくて、一応当事者の間では効力を発生しますが、その仮処分債権者に対して対抗できないということになっておるわけであります。従いまして、処分そのものは必ずしも無効にはなりませんが、仮処分を受けました後にそのような処分をいたしましても、その処分が仮処分債権者に対して究極的には対抗できないという結果になるだけでありますので、登記所といたしましては、ただいまお尋ねのような場合におきましては、一応その処分の登記を受けざるを得ないという解釈になっておるのであります。譲渡を受けた者が究極的には仮処分債権者に対抗できないのでありますが、かりに仮処分が解放されるというような場合を考えますと、その譲受人の立場をも考えておかなければなりませんし、その面では、一応登記をいたしまして、譲受人の立場も確保できるというふうなことも考える必要があろうと思うのであります。登記をしたからといって必ずしも譲受人が何人に対しても絶対的に所有権を主張できるような結果にはならないのでございます。そういう意味で、一応仮処分がございましても、処分された場合の保存登記は受理するという取扱いになっているのでございます。  それから、あとお話でございますが、これは仮差し押えと強制執行の関係でございます。私どもの方は、御承知のように裁判所の方には直接関係がございませんのと、訟務関係の事務を民事局では取り扱っておりません。そういう関係で訴訟法についての運用の面には面接関係いたしておりませんので、私からお答えするのはいかがかと存じております。
  123. 田中織之進

    田中(織)分科員 あとの点は、私も質問いたしましたものの、これは裁判所関係のことでありますので、直接法務省の方ではタッチしておらないということになりますれば、いずれ裁判所側について事情を明らかにしたいと思うのであります。しかし、これは現在の民事の強制執行の手続上の問題として、常識的に考えると不合理な面が出てくると私は思う。こういうようなことについて直接本日御答弁をいただくことができないのはいたし方ありませんが、そういう実情にある点をよくくみ取られたい。もしそういうことが可能なような法制になっているのならば、われわれ法律にしろうとでありますが、権利関係をかえって錯綜させることになると思うのでこの点は一つ御研究願いたいと思います。  それから、第一の点は、法律上り効果としてはやはり仮処分が優先的に出されておるということになれば、その仮処分権者に対して、譲渡を受けた者も、たとい登記をいたしておりましても、その仮処分の範囲内においては対抗ができないという事情はわかります。ところが、私の伺いたいのは、それは国の所有でありますから、言うてみれば国が譲渡処分をする。登記手続をすることも、これは譲渡処分の最終的な完結行為なんです。国の使用行為そのものを禁止する仮処分がなされている場合に、その譲渡されたものの登記手続を登記所が受けつけるのは、これまた権利関係を非常に複雑にせしめるもとだと思うのです。そういうことになりはせぬかと思うのです。本日はその点ごく一般的な問題として伺っておきますが、具体的な事例は、実は国有財産の払い下げで、一種の委託者を通じてでありますけれども、二重売買のような形になっているものがある。鉄筋のカレージで、三十年以上五十年くらいの借地権が法的に出てきておるのにそのカレージのある土地を大蔵省が機械的に処分したというところに問題があるのであります。どうもその点不明朗なので、行政監察委員会で古屋委員が取り上げておりますが、今後そういう登記手続の関係で具体的なケースは研究になる必要があると思います。具体的な事実はよろしいければ別の機会にでも申し上げてよいと思っております。あとの問題も何ですが、権利関係を、登記という国民が一番信頼している点でかえって錯綜させるような取扱いについては、今後一つ検討していただきたいという希望を申し述べて、私の質問を終ります。
  124. 山本勝市

    山本主査 だいぶおそくなりまして、長いことお持たせして恐縮ですけれども、最後に私からも少しわからぬことを二、三お教え願いたいと思います。  法務省の方の簡単なことを先にお尋ねいたします。法務省歳入予算の中の諸収入というところに懲罰及び没収金というのが約八億六千万円計上されておりますが、これを見ますと、昨年の予算に比べて著しく増加しているようのであります。昨年三億五千四百二十二万六千円であった罰金及び科料が、三十一年度の予算額は六億二千二百九十八万六千円ということになって、五割近くもふえているようであるが、一年通いで懲罰及び没収金が五割以上ふえた理由、これをちょっと承わっておきたいと思うのです。
  125. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 これは一年の間に五割増加したというのではございませんで、今回の査定額は、大体過去三年間、二十七年、二十八年、二十九年の実績を見まして、その平均額に基いたものでございますが、昭和二十七年が三億五千四百万円、二十八年が五億九千万円、二十九年が九億二千三百万円の実績になっております。これを平均いたしますと六億になるのでございまして、昨年は私どもとしましてはそのように見積りをいたしたのでございますが、大蔵省の方としましては、ただいま御指摘のように三億五千四百万円と査定をいたしたのでありまして、この点少し実際に合わないということはその当時もわかっておったのでございます。実際の問題といたしまして、予算は小さくなっておりますが、現実に入って参りますものは、すべて歳入に入りますものですから、そのままにいたしておったのでございます。本年の査定はやや実績に近ずいておりますが、なお実績はこれを上回るものと予想いたしております。
  126. 山本勝市

    山本主査 三十年度の実際の懲罰・没収金の金額というのは、大体どれくらいになりますか。
  127. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答えいたします。三十年度の決算はまだ出ておりませんが、大体見込額を計算いたしておりますが、それによりますと十四億五千五百万になる見込みでございます。
  128. 山本勝市

    山本主査 そうしますと、予算と実際と開きがありますね。
  129. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答えいたしますが、この関係は、どういうふうに歳入の方を査定いたしますか、私どもとしてはこの関係をよく心得ておりませんが、この実績見込額は、常に大蔵省に通省いたしておりますし、また、この見積りによりまして、本三十年の決算見込みは十四億になりますが、それじゃ二十一年はさらにそれを上回るかということになりますと、必ずしもそう申せませんで、大体過去三年くらいの実績の平均をとりまして、見込額として見積りをいたしております。
  130. 山本勝市

    山本主査 そうしますと、年々の懲罰及び没収金はふえてくる理由はどういうところにあるのですか。年々この額が“非常なパーセンテージでふえていくという理由、大ざっぱな理由でけっこうです。
  131. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。これは主として刑事罰の罰金でございますが、大体ただいま未納になっておりますのが十二、三億ございます。これの徴収が励行されてきておりますのと、もう一つは、御承知の交通事件が非常な激増をいたしております。三十一年度におきましては百九十万件くらい見込んでおりまするが、この刑罰の主体は罰金でございますので、だんだんこの罰金額の徴収がふえてきておるという状況でございます。
  132. 山本勝市

    山本主査 それから、その次にもう一つ伺っておきたいのですが、法務省だけではない、裁判所も同じようでございますけれども、法務官署の施設費というのが、法務収容施設費と一緒に繰り越し明許費として請求しておられますが、その理由を読んでみますと、その性質上当年度内でこれを支出し切れない見込みだということでありますが、法務収容施設費というのは、おそらくこれは監獄か何かでしょう。これに書いておるように、土地を見つけたりするのにいろいろトラブルがあって、なかなか予想通り候補地が見つからぬということも考えられるのですが、法務官署の施設費というのは、どうも検察庁の難物を作るというふうなことでそんなに土地が児つからぬというふうにも考えられないのですが、これを繰り越し明許費として要求された理由はどこにありますか。
  133. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。収容施設につきましては、ただいま主査の御指摘のような事情――これを主として囚人を使いましてやりますために、計画通りに進まないという点もありますし、ことに、新営の場合におきましては、敷地につきまして、地元の反対等も起り得るのでございます。そういう点を調整いたしますために、予定通り進行しないということになりがちでございまして、この点は御理解をいただけると思うのでございますが、官署の施設、検察庁、法務局その他のものでございますが、この関係につきましても、年々歳々若干の繰り越しをどうしても認めざるを得ないような実情になっております。これはどうしてかと申しますると、たとえば、検察庁につきましても、一応予定をしております敷地があるいは裁判所と非常に離れておりますために、裁判所の近くに土地を見つけて、そうしてそれと交換をしてそこへ建てるというような動きがございますし、あるいはまた、ことに三十年度の予算におきましては、七月に成立いたしました関係上、実際に計画を立てますのがおくれて参りまして、現に東京検察庁のごときものも三十一年度に繰り越す予定になっておりまするが、こういう関係におきましては、いろいろ敷地の調整等になかなか時間がかかりまして、この点は事務をもっと進捗しなければならぬのでありますが、実際問題といたしまして、やはり官署の施設につきましても工事を年度内に完成するということが困難な状況になっております。ことに、寒冷地におきましては、コンクリートの固まる状況その他技術士の理由から、寒いときに予算を使うというようなことが技術上非常に困難が伴うそうでございまして、そういう事情から繰り延べになることがございます。それで、一括いたし三して施設費につきましては丙号の取扱いをさしていただいておるような次第でございます。
  134. 山本勝市

    山本主査 今の法務収容施設というのは監獄なんかでありましょうが、これは三億二千八百万円今度要求しておられるようですが、町のまん中に監獄、刑務所があるので、町としても非常に困るというような事例があるのですが、ちょうど町のどまん中に刑務所があるようなものに対しては、何かなるべくほかへ移すというような方針でもきめておられるのでしょうか。
  135. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。明治十年代に立ちました刑務所などが現在ございまして、そういう刑務所の中には、当時は城の中とかあるいは町の中央部――当時は中央部ではなかったと思いますが、数十年たって今日になってみますると都心になってしまっておるという状況になっておる刑務所が全国十数ヵ所に上るかと思うのでございます。最近そういうものにつきましては逐次改築、移築をいたしておりまして、現に、大分の刑務所のごときほ、御承知と思いますが、大分駅の煙のかかるところに刑務所があったのでございまするが、これを何キロか離れた郊外の方に移築をいたしております。そういうふうには実施しつつあるのでございますが、なお、山形とか新潟、徳島、浦和、福岡、名古屋等は都心にございまして、これを市の方から市の発展のために敷地を譲ってほしいという熱烈な御要望を受けております。この場合に、私どもとしましては、都市の発展のためにその敷地を譲って郊外地に出るというのが、これが本則でござい幸して、その考え方に変りはないのでございます。ただ、この実現の方法につきましては二つございまして、その一つは、すでに建物自身が古いものでございまして、つまり法務省側から、刑務所側から見ましても、予算さえいただけば移築をしたいという状況になっておる場合、それから、もう一つは、こちらの方には今のところ差し当って移築をしなければならない事情はないが、市の側で移築をしてほしいという要求になっている場合と、二つあるのでございまして、前の場合におきましては、市が要望しておるからどくというような理由をつけなくても、みずからの移築計画において実現ができるのではないか、特に市町がそういう要望をいたします場合には、一そう強い理由で移築を実現したいというふうな考え方で、予算考えておるのでございます。後の場合につきましては、さらにもう少し大きな利益に奉仕するという事情がございませんと、事務的には予算措置がいたしかねるような事情になっております。
  136. 山本勝市

    山本主査 ありがとうございました。  それで、今度法制局にちょっとお伺いします。なるべく簡潔にお尋ねいたしますが、法律の解釈問題についての法制局の見解を確かめておきたいと思うのであります。二十二日に政府提案で百貨店法案が衆議院に提出されたように伝えられておりますが、この百貨店法案については法制局の方で十分審査されたものと思いますが、審査されたのでしょうか。
  137. 西村健次郎

    ○西村政府委員 私どもは、各省から法律案の草案を持ってきました際には、いずれも十分時間の許す限り議論をし、精細に審査をいたしております。
  138. 山本勝市

    山本主査 それで、この百貨店法案についての御審議をされたと思うのですが、最初の政府が起草してわれわれが検討したものと、今度提案されたものとの間には若干の言葉の違いがあるようでございます。私は法制局長官にも個人的に実は自分考えを申し上げたこともあるのですが、第一が憲法の条文の解釈であります。申し上げるまでもなく、この法案国民の基本的人権の制限に関する法案だ、この点でいかがでしょうか、やはりそういう解釈をとられましょうか。
  139. 西村健次郎

    ○西村政府委員 今の御指摘の点につきましては、すでに山本委員から予算委員会等におきましてもあるいはなされたかに存じております。私の記憶違いかもしれませんが……。御指摘の点につきましては、この法案をいかに見るか、百貨店法案の一定の規模を持った百貨店の業務を許可制にせしめるということと、憲法の条項との関係をどう解釈すべきかという点は、われわれ法制局といたしましても最も慎重に検討したつもりでございます。結論を先に申し上げますと、なるはど憲法でいいます職業選択の自由、憲法二十二条の規定というものがあります。国民はみな職業選択の自由を保障されておるわけでございます。しかし、これも無制限に認められておるわけではございませんで、そこにはおのずから公共の福祉というものとの関連において限度があるべきである。しからば、この際におきまして果してどう考えるかということにつきましては、こんなことを山本委員に私が申し上げるのはむしろおかしいのでありますが、最近におけるような百貨店は、その巨大な資本力と大規模な売場面積というものを武器としまして猛烈に進出して参る、これは周知の事実であろうと思います。そういたしますと、その隔絶した経済力をバックにして進出するの余り、ひいては中小商業者の事業活動に重大な影響を及ぼす。そのまま放置しておきます場合におきましては、わが国の国民経済のバック・ボーンをなしておる中小商業者というものに対してはかり知れざる悪影響を及ぼす。従いまして、その悪影響を除去するために、必要にして最小限の規制を加えるということはやむを御ないことだ、その線におきまして職業選択の自由にある経度の制限を加えるということは、もちろん容認されてしかるべきであろう、こういうふうにわれわれは考えた次第であります。
  140. 山本勝市

    山本主査 もちろん、私も、憲法保障されている基本的人権も公共の福祉に反する場合にはこれを制限し得るし、制限しなければならぬという解釈をとっておるのです。ただ、中小商人と百貨店という問題というのは今日に始まったものではありません。また世界的にどこの国でも競争相手として常に問題になってくるのであります。結局、百貨店が栄えていくということは、消費者が選択するわけであります。百貨店というものを消費者が選択してそこへお客が行く、こういうことで、百貨店が栄えていく根本の理由はそこにあると思います。不当不正の取引というようなものは、もうすでに公取委でもこれは禁止されておるのでありますが、そうしますと、新しく制限するということは、不当不正というよりも、一般的に百貨店が栄えることが中小商業者の利益を害するということからこれを制限するということになるのだと思います。しかし、その公共の福祉ということの解釈になると、経済的に能率が高いとか、あるいは消費者の信用が厚いとか、あるいは合理化の機械を発明して採用するということによってそういうことが行われたときには、必ず、能率の低いものあるいは信用の薄いもの、そういうものの利益を害する。ことに合理化の程度が高ければ高いほど打撃が大きい場合があり得ると思いますが、そういうものを一般に公共の福祉に反するとして憲法上どう取り締まれるという御見解ですか。
  141. 西村健次郎

    ○西村政府委員 ただいまの山本委員の御説はまことに傾聴すべき御意見だろうと私も思っております。片一方から申しますと、合法的にと申しますか、不当な取引等を行わないで、合理化等によって堂々と業務を拡張していく、そのために消費者も利益を受ける、にもかかわらず、それが何で憲法上にいう公共の福祉との関連において規制されなければならないかということは、まことにその面から申しますとごもっともな御議論だと思います。また、反面におきまして、先ほど申し上げましたように、巨大なる資本力と売場面積というものを持っている、これは事実であります。中小商業者も生存権を確保されてしかるべきだ。しかも、わが国の経済のバック・ボーンを占めておる中小商業者の事業活動というものを、そういった直大な資本力と売場面積とをもって圧迫していく。もちろん、これに対して、中小商業者はそれではお前たちも団結すればいいじゃないか、いろいろその道も与えられているじゃないかということも言えましょうけれども、やはりそういった百貨店が非常な勢いで進出していきます場合におきまして、それと中小商業者の事業活動、その生存権との調和をはかるということは、やはりこれも憲法上公共の福祉という面から考えなくてはいけない問題じゃないかと思うのであります。仰せのような御庶見、ごもっともでありまして、その点の調和、いわゆる平穏かつ公然と正しい商売をやっておるにかかわらず規制を受けるということの不満と、また一方における中小商業者の生存権という問題をどこで調和させるかということは、このたび政府から提案しましたような百貨店法というような制度がやはり一番いいのじゃないか、片方に偏することもよろしくないのじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  142. 山本勝市

    山本主査 それで、お伺いいたしますが、二つの点があると思うのです。つまり、百貨店――六大都市においては千坪以上の売場面積を持っておるもの、その他の都市においては五百坪以上の売場面積を持っておるものを百貨店として押えるということで、果して法の目的としておる中小商業者の商業経営が安定するかどうかということについて、もし安定するということでありますと、確かに今おっしゃるようなそれらの生活を考える必要があるということになると思いますが、中小商業者が非常に窮境にあるということは、要するに小売商の競争が激しい。それに百貨店との競争ももちろんあります。購買組合との競争もある。四百坪とか三百坪というふうな百貨店は法の対象にならないのですが、そういうものとの競争も激しい。それから、何よりも小さな業者相互の競争が激しい。つまり数が非常に多過ぎる。こういうところにあるのであって、今の百貨店を押えるということが、憲法の基本的人権制限という一つの例外でありますが、そういうことをあえてして、しかもその結果として、その制限した目的である中小商人の安定ということが得られるなら、これは一つ考え方だと思います。それが得られるというふうに解釈されたのか。私は律られないと思う。そこには小さいものの競争がそのままに残っておる。それから購買組合との競争もそのまま残っておる。それから法の対象以下の百貨店もそのままである。こういう状況において、また、たとえて言うと、常陸山と梅ヶ谷を倒してしまっても、下の相撲取りの激しい競争というものは決して緩和されないと思うのですが、その点はどういうふうに解釈されておりますか。
  143. 西村健次郎

    ○西村政府委員 私が先ほど申し上げた趣旨は、この法律の制定によりまして中小商業者の経営が安定するということを直接のねらいにしておるというつもりではなかったわけであります。そういり点は、もちろん、この法律が制定されましても、別の中小企業の振興対策というようなことで考えていかなくてはならない問題であろうと思います。この法律のねらいといたしますところは、大規模な百貨店による中小商業者に対する圧迫をある程度除去する、そういうことによって中小商業者の事業活動の機会を確保する、そういう場を確保していこう。その場において中小商業者がどういう事業活動をするか、それはまた別の問題でありまして、今は中小商業者は一般的に非常に窮境にあえいでおるということは事実であろうと思いますので、それに対する対策はおのずから別途に考えられてしかるべきであると考えます。
  144. 山本勝市

    山本主査 その点、私もよくわからぬのですが、中小商業者が非常に窮境に陥っておる、競争相手である百貨店のために競争にたえられないで困っておる、それで商業者の経営をもう少し楽にさしてやりたいこういうことにねらいが、つまり、こういう制限をすることが目的ではなくて、商業者が幾ら数がふえて経営が困難でもいいが、ただ百貨店に売らせない、中小商業者に売らせよう、こういうところにねらいがあるわけですか。
  145. 西村健次郎

    ○西村政府委員 私が先ほど申し上げた趣旨は、中小商業者が幾ら困ってもいいということを言った趣旨では毛頭ございません。中小商業者の経営の安定ということは、それはまた別の問題であろうと思います。この法律のねらいとしますところは、百貨店の異常なる進出によって中小商業者に加えられる圧迫を除去することをねらいとして、その圧迫を除去した暁において、中小商業者の経営をどういうふうに安定さしていくかということはまた別の政策の問題であろう、こういうことを申し上げたのであります。
  146. 山本勝市

    山本主査 これは私にとってはいろいろ聞きたい重大問題で、私はほかでやる機会もないから、皆さんが済んでから伺っておるわけですけれども、もう時間もないようですから、別の機会に聞きますが、ただ、こういう場合に憲法違反にならぬかどうか、それを伺っておきたい。ほんとうに中小商人の経営を安定さすために、これは私の考えを申し上げて、それが憲法違反になるかならないかを聞いてみたいのですが、それは、中小商人の苦況を救うという目的も達せられ、そうして能率の高い、信用の厚いものを押えることによって低いものを助ける、これがそう無理もしないで済んで、憲法違反のおそれもない一つの方法として、こういう方法をやったらどうか、その方法が憲法上許されるかどうかということを聞きたいのです。それは、要するに破滅的な過度の競争が中小商業を苦境に陥れておるのであり、これを防がぬ限りはその苦境から救われないという考えを私は持っておるのです。従って、今日破滅的競争を防ぐ有効な方法として、たとえば、非常立法として、一ヵ年間小売り販売業を新しく営業をやろうというものは認可を要するということにして、それは原則として許可しない。ちょうど、自動車があまり多過ぎて、そういうときに新しい自動車を許さぬと同じように、そうして許す場合は特別に必要が認められたときにだけ許す。こういうことならば、確かに小さなものも救われる。そうして、しかも、ある規模以上のものと以下のものとの間に線を引いて、その線を境にして、上のものより下のものの方が信用が薄いにもかかわらず上へ上ってしまうというふうな、そういう不自然なことも起らない。そうして、それこそ公共の必要として破滅的競争を防ぐのだから、公共の福祉を守るためにという理由も立つのではないか。これは長くやりますとあとから出てくるものが困りますけれども、人口もだんだんふえていきますから、一定期間だけ、小売販売業でおよそ競争関係に立っておる購買組合も、小さな商人も、そうして百貨店も、百貨店の大きいのも小さいのも、全部競争者となって過激な競争をやっておるのですから、それを一斉に一年なら一年、一定期間新しい営業を禁止する。売り場面積については、小さなものは取り締ることもできないし、また大した影響もないのですけれども、たとえば五十坪なら五十坪以上の店舗とか、これは三十坪でもいいですけれども、売り場面積をふやすのも、それ以上のものは同じように許可を要することにして、原則として認めない。こういう一つの非常的な措置法律でありますが、これは法制局から考えてどうですか。私はそういうものがかりに考えられたときに、それは憲法違反にならないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  147. 西村健次郎

    ○西村政府委員 何といいますか、私ども今まで考えてもいない方面の御提案でありまして、私今とっさにそれに対してかれこれ言うのもいかがかと思いますが、私の今直感的に感じたことを言わせていただきますと、一般的に小売商を許可制にするということは、職業選択の自由で、そこまでやるということはいかがなものであろうか。これはいろいろその時代々々の要請と申しますか、客観情勢によって非常に変ってくると思うのです。だから、永遠にそういうことはできないとか、いつでもいいというわけにはいかないと思いますけれども、どうも私がそこまで言うのは――それが憲法違反でないということを言うのは、私個人としては非常にちゅうちょいたさざるを得ない、こう思っております。
  148. 山本勝市

    山本主査 これまでのものを禁止するのじゃなくて、新しい営業で小売商の競争に入ってくるものをそこで一年なら一年ストップするということなら、これは、私の調べたところでは、小売商ももちろん安定するから喜ぶし、その他のものもみな喜ぶいうことになると思うのです。
  149. 西村健次郎

    ○西村政府委員 その点は、実は、現にいろいろな事業についての許可制というものの批判と、だんだん議論が発展しますと関連すると思うのですが、ただ、一般的に物品の小売業という全国至るところで日本国民の中に相当のパーセンテージを占めているものにつきまして、現存のものについては認める、しかしこれからやろうとするものについては全部ストップだという立法をしますと、そこにはっきり大きな二つの断層を生ずる。既存の業者についてはこれは非常な保護で、安定のために非常に役立つかもしれないが、今後物品の販売、小売商人をやろうという者にはその機会が全般的に奪われる。ある特定の業種について、その特定の業種に関係する公共の福祉と申しますか、公益上必要があるという許可制は、これは現行法でもいろいろございます。一般的に小売商を許可制にするということになると、その合理性を理由づけることはちょっとむずかしいじゃないか。私は、今とっさでございますので、そこまで自分で自信を持ってお答えするわけにいかないのであります。
  150. 山本勝市

    山本主査 後日また別の機会にお伺いします。  他に質疑の通告がありませんから、これにて本分科会に関する質疑は終了いたしました。  この際お諮りいたします。本分科会所管予算各案に対する討論採決は予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 山本勝市

    山本主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これにて散会いたします。    午後四時三十五分散会