○吉田
公述人 申すまでもないことなのですが、どの国でもその国の
国家予算の仕組みは、その国の運命を左右するものだと思っております。またその
国家予算がどういうことに、どういうふうに使われるかということにつきましても、非常に
国民大衆の
生活に多大の
影響を持つことは当然なことであります。私、今度の
予算を見まして、その点で
二つの点を非常に心配しております。今度の内閣によります三十一年度の
国家予算は、大体この人なら国会に出しましても、国政をゆだねても大丈夫だろうとみんな信頼し、支持をしまして投票しました幾千万の
国民大衆か、
政府が公約
通り非常に誠実に
国家予算を組んでおるかどうかということに対しまして、多大の期待と不安とを持って見守っておるわけです。この
予算委員会はその
国民審判の俎上にあると思っております。率直に申しますと、少くとも社会保障の拡充とか、あるいは鳩山総理の言う福祉
国家の建設という点になりますと、これはあまりにも縁の遠い、非常に再軍備に偏重した
予算ではないかと思っております。大体私の注文は、社会保障分野について
意見を述べろということでありますので、以下主要点だけについて申し上げたいと思います。
予算を見まして非常にふつり合いの点と思われますのは、やはり防衛
関係費の
予算千四百七億円と社会保障
関係費の千百三十四億円であり、さらにある特定の少数の人たちに対して支給されております旧軍人恩給費の八百九十九億円と社会保障
関係の
予算のアンバランスの問題だと思います。確かに社会保障
関係の
予算の千百三十四億円という金額は、前年度から見ますと百二十二億円ふえております。これは歳出
総額の中に占めるパーセンテージからいいますと〇・八%ふえたことになるそうですか、その内容を検討してみますと、これは前年度よりはむしろ後退しておるのではないかと思っております。たとえば非常に卑近な例で恐縮なんですか、
人口の
増加率が約一%といわれております今日、この
程度の
増加では、
人口の自然
増加分に伴います当然の経費の
増加という金額にも及ばないというような感じがいたします。
それでまず第一に問題にしたいと思いますのは、現在非常に大きく、社会的なあるいは政治問題になっております健康保険の問題であります。ところかこの問題は、これに関連しまして非常に密接な関連のあります、あるいは実際に四月一日実施の医薬分業というような問題の前提
条件とされてきました新医療費体系の問題もあるわけです。ところが新聞紙上や、あるいは仄聞しますと、この分業に
関係しました新医療費体系の問題は、全面的な実施は当分延期だという措置を講ずるかごとき話を聞いております。もしこれがほんとうだといたしますと、これは参議院選挙を前にしまして約十二万人の医師、歯科医師をあまり刺激しては、あるいは損ではないかという御判断のもとで、非常に賢明な措置をおとりになるのではないかと推察されますが、このことは私も実は賛成なんであります。なぜかと申しますと、大体同じ社会保障の医療費のワクの中で操作をしまして、医療費という特別な
一つの対象を物と技術とに分けまして、その中で医師と歯科医師の技術料をまともに評価していくというようなことは、
日本の現状におきましてはほとんど不可能なことだろうと思います。その意味で去年の十二月の末に発表されました新しい社会保険の点数改正案によりますと、これは全国十二万人の医師、歯科医師、あるいは病院、療養所の大部分が当てはめ作業をやっていたようでありますが、これをいろいろな新聞や雑誌で拝見をいたしますと、軒並みに非常に減収するというようなことでありまして、これは必然的に社会保険の持つ医療内容、これがきわめて劣悪な低いものになるのではないかということをおそれるからであります。ところが健康保険の問題につきましては、一部負担するすなわち被保険者本人が病気になって医師あるいは医療施設に行くたびに三十円ずつとられるというようなこと、あるいは入院の場合には一口三十円、これは米代だという話がありますが、これを半年間徴収する、こういう一部負担を、
政府管掌の健康保険に対する国庫一時補給金、この金額約三十億と引きかえにどうも必ず
政府は実行するというふうな態度があるのではないかと思います。もちろん権威ある衆議院のこの
予算委員会におきましては、健康保険がなぜ赤字になったか、あるいは三十年度の赤字の実績はどうだ、あるいは一子一年度の赤字の
見通しはどうだというようなことにつきましては、十分に審議を重ねまして、その所在や、ほんとうの数字等もすでに検討し、把握されていると思うのであります。
私はこの点が一番大事なことだと存じております。これらの点につきまして詳しく申し上げる時間がないことは非常に残念でありますが、二、三触れますと、たとえば赤字の原因というのは、
政府のいろいろな
経済政策その他の施策のゆえでありまして、たとえば
経済政策の貧困のために現在
日本の数十万と言われますいろいろな中小企業が非常に不
景気で困っておりますし、またそこに働いております、特に
政府管掌の零細事業所に働いております五百万人の労働者が非常に安い賃金で働きながら、最近は給料の遅配、欠配というような
状態は普通のことになっております。大体そういう零細企業の労働者の保険料一本に依存しましてやつておる
政府管掌の健康保険の
財政が、非常に貧弱なものにならざるを得ないということは当然なことでありまして、そのことによりまして、低賃金と労働強化によりまして当然病気も非常に増大します。そのことは去年の十月十日のいわゆる川崎前厚生大臣の諮問
委員会であります七人
委員会の分析の
通り、病気になって医者にかかる率が非常にふえたということであります。ところが一方昨年は九月に、一昨年は四月に、はしなくも厚生省前すわり込みというような非常にゆゆしい事態を引き起しましたが、社会保険の点数の引き下げやあるいは薬の値段のかなり大幅な引き下げというようなことを上たにもかかわらず、ストマイ、ペニシリン等の一抗生物質の全面的な適用によりまして、外来の場合も入院の場合も一件当りの点数が上っております。特に入院料の引き上げとともに、この健康保険の赤字は結核患者にある、その中でも入院患者にあるということは、七人
委員会の報告書にもあります。それから非常に安い賃金の被保険者の適用を
相当また拡大しまして保険に入れたこと、さらに今までの給付期間二年を一年延長して三年にしたこと、こういった
政府のいろいろな施策によりまして収支のバランスがとれずに、とうとう
昭和二年に健康保険ができて以来初めて赤字という事態になったわけであります。もっとはっきり申し上げますと、昨年の三月ころの
政府の資料によりますと、大体平均二十一人前後の非常に零細な
政府管掌の対象になっておる事業所二十三万カ所、ここに働いておる労働者四百九十四万人、約五百万人、この五百万人の労働者の標準報酬が、御承知のように最低三千円から最高三万六千円の十九階級に分れておりますが、その中で標準報酬一万円以下という労働者の数が六〇・七%もあるということです。ところが一方大会社、
銀行あるいは大
産業等の約九百の健康保険組合、ここに働いておる労働者が約三百二十八万人ということでありますが、この大企業に働いておる労働者の標準報酬は、二万円以下というのが二九・三%きりないわけです。これでは零細企業対象の
政府管掌の健康保険が赤字になるのは当然であります。もともと医療保険というものは、日進月歩の法学技術あるいは薬学の進歩に合せてその医療内容が規定されますから、従ってしばしば保険
財政のアンバランスをもたらすということは、これは他の社会保険にあまり見られない宿命的な特別な姿ではないかと思います。だからといいまして、たとえば七人
委員会のように、診療の内容を少し抑えて、規格診療だとかあるいは言われますように
制限診療だとかいうことで科学の進歩を押えるというわけにはいかないと私は思います。
さらに三十年度の
政府管掌の健康保険の赤字は、どうもいろいろなものを相殺しましてわずかに六億円
程度の赤字になるだろうということを発表しましたのは、去年の十二月です。しかるに三十一年度の赤字
見通しになりますと、
政府の昨年十二月に公表した資料によりますと、九十五億円だと言ったり、また仄聞しますと、衆議院の社労
委員会では八十億円だというように答弁があったということや、大蔵省との
予算折衝におきましては七十一億であると言われたり、最近は少し答弁を統一したかどうかしりませんが、六十七億五千六百万円というふうに言われていたり、私のような部外者で、非常に関心の深い立場にある者にとりましては、一体肝心の三十一年度の赤字がどれくらいな数字なのだか、それがどういう理由でくるのか、さっぱり見当がつかないような
状態であります。ことに社会保障の碩学大阪市大の近藤文二先生のある雑誌の巻頭論文を拝見いたしますと、大蔵省は三十一年度の
正味の赤字は四十億円だと踏んだから、国庫負担あるいは国庫補助は全然要らないと当初計算したということであります。もしこの
程度のことでありますれば、参議院選挙を控えております今日、何を好んで、健康保険の一部負担を含めましたいろいろな改正案を強行に実施しなければならないのか、そういう理由は私はないのではないかと思っております。
それからもう
一つ、
昭和二年から今日まで、特に終戦後七人
委員会の報告によりますと、年々保険給付の二割前後を余してきたということであります。大企業の健康保険組合の
財政状態はどうかと見ますと、ここ一、二年あるいは三年の間に医療費をいかに節約するかということにいろいろと非常に抑止的な対策を講じてきましたので、どうやら
健全財政だということだと私は思います。ところが最近の様子を見ますと、ある工場で労働基準法
通り集団検診をしますと、
相当結核患者が出るわけです。そうしますと、その結核患者に対しましてまたいろいろな給付やあるいは対策をしなければなりませんので、非常に金がかかるというのであります。まともに法律
通り健康診断すらもできないので、なるべくさぼってやろうという組合もあることを聞いております。この点からいいますと、非常に健全なという健康保険組合でもほんとうの台所は
相当苦しいのではないかとさえ考えられます。従ってこの際二十五年以来の社会保障制度審議会の勧告の線であります最小限度保険給付の二割
程度の国庫負担はどうしても定率化して、社会保障制度の一環として健康保険の確立をいたすべき時期ではないかと思っております。
少し健康保険の問題に触れすぎたきらいがございますが、このことはすでに御承知のように、健康保険改悪反対という目標やスローガンのもとに現在まで、あるいは現在も全国各地で、あるいは中央の場合でも医師、歯科医師会の大会が持たれたり、さらには被保険者、労働団体などとの提携によりますいろいろな運動がかなり台頭し高揚しております。また伺いますと、あくまでも健康保険改悪に反対するのだというので、このような事態は社会的にも政治的にもまた社会保障の歴史からいいましても、非常に好ましいことではないのでありますが、保険医が集団的に辞退をしようという動きさえもあるということを聞いております。もし近代的なあるいは聰明な為政者あるいは政治家ならば、このような
外国にも全く例のないような最近の動きにつきまして適切な処置、すなわち二十三億や二十五億
程度の赤字補てんは全部国か責任を持つべきであるというような感じがします。この
程度の金額はジェット機二十機くらいの生産を節約しますと十分に出る金だと私は思っております。
さて次に、
生活保護費の
予算にしましても三百六十二億円であり、昨年に比べますと十四億千二百万円ふえておりますが、三十年度の
予算を組む場合には、要
保護人員を前年度に比べまして五%ふえるということにしまして、百九十五万人と見積ったというふうに聞いております。ところが三十一年度の場合には、要
保護者の対象人員が前年度に比べまして
増加比率が二・五%、半分にしまして百九十九万八千人と見積っているにすぎないわけです。これは周知のことですが、厚生省の調査によりましても
生活保護を、要するボーダー・ラインの階層いわゆる低消費水準の世帯人員千百七十万人といわれているのに、年々
人口に対する
保護率が減少の傾向にあるというのは一体どういうわけであろうかということであります。これは貧乏人が非常に減ったということではなくて、ここ二、三年来のあらゆる次々の行政措置等によりまして、たとえば
生活保護関係の扶助の打ち切りあるいは一部負担の増大、監査の強化あるいはおととしは入退所基準の実施ということで患者のすわり込みがございました、またつき添い婦の
制限ということのために、
人口に合わした貧乏人の適用者の
保護率が非常に減少している、そういうことだと思うわけです。
さらに今一番問題になっておりますのは、
生活保護費の金額の問題ですが、これは農村地帯では御承知のように五人家族月五千八百円
程度、大都市では約九千円を若干上回っているというような低さにありましても、もう少し
保護費を上げてもらいたいという要請が絶えず各種団体、特に貧困者から出ているわけであります。そういう中で、
生活扶助と医療扶助との
関係でありますが、御承知のように一九五一年、五三年ころまでは大体
生活扶助と医療扶助は
生活扶助の方が多かった。ところが五一年以降、
生活扶助と医療扶助のバランスが変りまして、医療扶助の方が多くなっております。これはどんなに貧乏でも
生活扶助を受けるということではなしに、病気にでもならなければ実は
生活扶助も医療扶助も受けられないというような
状態になってきておると思うのです。大体病気と貧困の密接な
関係につきましては申すまでもないことでありますし、結核のように非常に長期の療養と多額の療養費のかかるような病気が大きな原因であるということは、これは厚生省の統計にもはっきり出ております。たとえば
生活保護を適用されております原因の中で、生計の中心者になっております人の病気によるのが全体の被
保護者の中で三八%、家族の病気のためにやむを得ず
生活保護を受けなければならないというのが二二・八%、これはいずれも一昨年の三月現在の調査でありますが、そのようなことを示しております。それほど最近は医療扶助の占める比重が多くなっているのであります。
それから最も恵まれない社会福祉事業
関係におきましては、側々の項目につきましては私は毎年々々の
予算を拝見しまして、あまり零細な金額でありますので、いつも一体どういう気持なのだろうかと思わざるを得ませんでした。この制度は一種の社会的な悪に対して個人的なあるいは団体の責任でそれを救うのではなしに、公けの、特に
国家の責任でそういうものを救護し、援助するものであるというふうに社会福祉
関係のいろいろな法律はなっておるはずであります。にもかかわらず大体歴代
政府、あるいは今度の本
予算の内容を見ましても、この点は非常に少くなっております。最近のニュース映画を見ましても、一日一円何がしふやしたというみなしご、ことに
保護児童の、非常に胸を打つような
保護施設の給食風景と一緒に、大砲や飛行機を生産している再軍備の姿が非常に皮肉な形で出ております。またこの子供たちの食費が六十一円六十八銭だというのに、野犬狩りをした場合につかまった野犬の食費が五十七円で、たった四円六十八銭きり上っていないということか、もうすでに宣伝材料に使われております。社会保障制度の関連の中で、特に失業対策事業とか住宅対策に
関係のあるいろいろな
予算もありますが、これはおそらく他の
参考人が
意見を述べられることだろうと思いますので、ここで私は省略したいと思います。
最後にどうしてもつけ加えたいと思いますのは、結核の問題であります。御承知のように、結核の死亡率が半減したというので盛大な祭典を開きましたのは二十八年でございました。ところが二十九年の春、千年の、一月と厚生省は相次いで膨大な画期的な結核の実態調査あるいは動態調査なるものを公表しました。これも御承知のように医療を要する、あるいは監視をしないと結核になるというような人が五百五十三万人、即刻入院しなければならぬという患者が百五十万人ということが実態調査の場合に出ておりますし、また動態調査の場合には、一年間結核と診断されておりましても、一ぺんの医療をも受けなかったという人たちが調査の対象になりました中で六三%もある。そういう驚くべき事実をこの調査は物語っております。一体国が非常にたくさんの金を投じてやる調査というものは、その調査が把握しました実情に合わせましていろいろな
政策を実施するということを予定しての調査だと思うわけであります。ところがこの画期的な調査は、結核対策に重点をおけということを要請しておるにもかかわらず、また今日の健康保険の赤字、あるいは医療扶助の増大による破綻やその他の社会保障の諸制度の危機といわれるものの大半は、実は結核によるという事実にもかかわらず、また結核になりますと、結核患者であるというので、いろいろな犯罪も起きておりますし、また一家心中というような非常に悲惨な事実も現われてきております。さらに昨年の三月に、内閣の社会保障審議会は、きわめて不十分でも結核の改善に関する勧告をなしております。またいわゆる七人
委員会の六百七十七ページの膨大な報告書の中でも、健康保険の国庫負担を否定したり、あるいは明らかに改悪の方向だというような点につきましては、私は賛成できませんが、ただ結核が全
国民、全階層に共通な問題でありますから、結核予防法強化のために、今まで四分の一の国の負担と四分の一の地方費の負担を、今度は五割国で負担しまして、そうして地方の負担は二〇%にしまして、合計七〇%を公費負担にしたらどうかということを七人
委員会はきめました。その他おびただしい各団体が、結核対策の強化、あるいは結核の治療費は全額国で持てという要請さえも出ておるような昨今であります。このような世論に対しまして、今回の
予算は全くこたえないばかりか、逆に私は後退の方向すらあると思うことであります。結核対策百二十三億六千万円、前年度より二億円しかふえておりません。その中で
国家が当然持つべき四分の一の予防法の負担は、十四億円から十三億円に逆に減っております。おそらくこういう調子でやりますと、今までも地方
財政は非常に破綻しておりますから、結核予防法というのは、全く有名無実な制度になってしまうのではないかと心配する次第であります。
一体
政府は、そのような疾病といわれております結核の問題をどうしようというのであろうか、その点が非常に不安であり不満であります。死亡率が半減したというようなことは、パス、マイシンその他の新薬、抗生物質の効果が非常に大だということでありまして、現在こそ横木的な結核対策を大幅な国庫負担によりまして徹底的にやる絶好のチャンスだと思います。もしこれをやりますと、五年ないし十年の先には、結核の問題は好転して、そのことによって国費が
相当電圧を受けるという
状態は、
相当改善されるのではないかと思います。ところが歴代
政府におきましては、その絶好の
機会を一年、二年、三年と延ばしておりまして、逆に患者をふやしているような
政策、そういう
予算の組み方をやっているのではないかとさえ思うわけであります。
大体社会保障制度そのものは、その内容の
充実いかんによりましては、その国の文明社会のバロメーターだといわれておりますし、またいろいろな各種の現金給付あるいは
生活保障のいろいろなそれぞれの制度によりまして、一応の最小限度の購買力を確保し、市場の一応の安定にも害与するというような問題もありますし、またもろもろの犯罪や社会悪に対しましてもこれを減らすという方向もあります。またいろいろな労働不安や社会不安を非常に緩和する、その他いろいろな意義があると思うわけです。ところがそれにしましても社会保障制度を完備することによって
国民の貧乏がなくなったり、あるいは
国民生活が確保されて全面的に向上するのだというような、そういう万能薬ではないと思います。これはどうしてもそれに関連する問題といたしまして、賃金の問題なり、雇用の問題なり、住宅の問題なり、その他もろもろのいろいろな広範な関連的社会
政策がたくさんあるわけです。ところが現在の健康保険を初め、もろもろの制度の危機あるいは非常に困難だというような現状に対しまして、社会保障制度のワクの中で、個々のいろいろな制度のワクの中で、これを解決しようというような方向が最近非常に強いわけであります。そういうことでは絶対にいろいろな制度の危機は解決がつきませんし、あるいは打開もできないと思っております。
四、五年前に
フランスは再軍備と社会保障の板ばさみにあいまして、再軍備強化、軍事力強化のために社会保障に非常に大なたをふるったということのために、一年間に数回
フランスの
政府は倒れ、その都度
あとの
政府を作るのに非常に苦労したというような例もあったわけであります。イギリスのチャーチル氏さえも、赤ん坊にミルクを飲ませるようなそういう気持を持った政治をしたいと言っております。そういう点で、来年度の
国家予算につきましては、
国民大衆に対する愛情が一体どこにあるか、非常に私は疑わしいと思っております。特に今回の
予算は、憲法を改正しあるいは再軍備をもっと積極的に強化して、
日本の運命に至大の
関係を持つような、そういう行き道をする
予算だというように考えざるを得ないわけであります。
以上をもちまして、私の公述の
意見といたします。