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1956-02-27 第24回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十七日(月曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 北澤 直吉君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 小平  忠君    理事 柳田 秀一君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       今井  耕君    植木庚子郎君       小川 半次君    北村徳太郎君       纐纈 彌三君    河野 金昇君       河本 敏夫君    椎名悦三郎君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       竹山祐太郎君    中曽根康弘君       橋本 龍伍君    八田 貞義君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    眞崎 勝次君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君      山口喜久一郎君    山本 勝市君       淺沼稻次郎君    足鹿  覺君       伊藤 好道君    井手 以誠君       今澄  勇君    川俣 清音君       久保田鶴松君    小松  幹君       田原 春次君    辻原 弘市君       成田 知巳君    西村 榮一君       古屋 貞雄君    矢尾喜三郎君       八百板 正君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 馬場 元治君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月二十五日  委員小松幹辞任につき、その補欠として赤松  勇君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員井出一太郎君及び山花秀雄辞任につき、  その補欠として椎名悦三郎君、小松幹君及び伊  藤好道君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  昭和三十一年度一般会計予算外二案を一括して議題とし、質疑を継続いたします。淺沼稻次郎君。
  3. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 昭和三十一年度の予算案審議も大体終了に近づきまして、衆議院においては各党それぞれ態度を決定すべき段階になって参ったのであります。そこで私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十一年度予算案関連をいたしまして、現下重大なる政治課題について鳩山総理大臣以下関係閣僚に対して質問を、したいと存ずるものであります。主として鳩山総理大臣を中心としてお聞きいたしますが、質疑応答の中に、あるいはまた他の大臣要求することがあろうと思うのでありまして、この点をあらかじめ委員長においてお取り計らいた願いたいと思うのであります。  そこで本論に入る前に、まず第一に警察担当国務大臣に承わりたいと思うのでありますが、大臣は最近の労働運動に関する警察取締りに対して、どういうようなお考えを持っておるか、伺っておきたいと思うのであります。
  4. 大麻唯男

    大麻国務大臣 せんだってこの儀につきましては、本会議においても申し上げましたが、警察労働争議に対しましては、全く不介入の態度であります。厳正公平な態度をとっているつもりでございます。ただ、しかしながらもしその行動が法に違反するような場合がありましたならば、厳正適正なる取締りを行うつもりでおります。さよう御承知おき願います。
  5. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 それでは一昨日この議場の外に行われましたところの警察官議会を包囲したという、この事実は御存じでしょうか。
  6. 大麻唯男

    大麻国務大臣 警察官議場を包囲した事実はございません。(「うそをつけ」と呼び、その他発言する者あり)
  7. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこで私はお伺いしたいと思うのであります。そういう事実はないという答弁でありますが、一昨日私どもの控室におきまして議員総会を開こうとしておりましたところが、われわれの仲間から、動議が出まして、今この国会のまわりは警察官によって警戒をされている。警察官が警戒しておるような中において、国会審議を進めるということは非常に重大である。だから直ちにこのことを当局並びに衆参両院議長抗議をしたらどうか、こういうような意見が出まして、直ちに抗議をいたしました。ところが衆参両院議長ともにわれわれの側から警視庁に対して警官の出動を要請したことはない、こう言っておるのでありますが、それにもかかわらず議会内部には警官が入り込み、なおかつ警察官を乗せました装甲車あるいは自動車が入り込んで、表門は閉鎖されたという実情であります。こういうような事情があるにもかかわらず、担当大臣がお知りにならないとは、はなはだ不可解に存ずるのでありますが、こういう事実は知っておると思うのですが、いかがでしょうか。
  8. 大麻唯男

    大麻国務大臣 淺沼さんは警察官議会を包囲した事実はあるかとおっしゃいますから、そうではないと申し上げたのでございます。議会の……(「戒厳令をしいたじゃないか」と呼びその他発言する者多し)違います。戒厳令、とんでもない話で……。(「大麻天皇だ」と呼び、その他発言する者あり)冗談ではございません。大切なる議会の秩序を保って、権威を守っていくためには……(発言する者あり)議会側警視庁とが完全に打ち合せて処置をとっておるのでございます。ところがその日は大ぜいの何万人という人が押し寄せてくるという話がございましたので……(発言する者多し)また事実そういうこともありましたから、ひょっと間違いが起ってはならぬと思って、多少の用意をしておったことは事実でございましたけれども議会を包囲した事実などは毛頭ございませんから、どうぞさよう御了承を願います。     〔発言する者多し〕
  9. 三浦一雄

    三浦委員長 静粛に願います。
  10. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 デモが包囲したならばまことにけっこうでありますが、実際は警察官によって議会が守られているという姿、なおかつ今何か衆参両院当局話し合いだということでありますが、両院議長話し合いはないと言っております。しかも議会内部における警察権限というものは、これは議長が持っておるのでありまして、いかに警視庁といえどもどうすることもできない。担当国務大臣といえどもこれをどうすることもできないと思うのであります。しかしそれが関連があってやったようでありますが、事実関連があったのでございましょうか。そうすると議長は食言をしたという結果になりますが、その点はいかがですか。
  11. 大麻唯男

    大麻国務大臣 平素のことを申し上げたのでございまして、おとといの話はまた別に申し上げておる。(発言する者あり)平素はそういうことになっておりますが、その日は何万人の人間が来ることになっておるという話でありますから、もし間違いが起ってはならぬと思って、多少の用意をした、このことは事実でございます。
  12. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 それで現実の話をもう一つつけ加えて私は申し上げますが、私も一昨日議会を出まして、私どもの党の本部まで参りました。そこに一つの関門がございまして、私は自動車に乗っておりまして、通ることができたのでありますが、そこを通ろうと思った人は誰何をされまして、通ることができない、全部そこから帰される。そこでだれも議会に近づくことはできない。これは私は非常に重大な課題だと思うのであります。すなわち議会人民陳情に来ることは、私は人民に与えられたる一つ権利であろうと思う、権限であろうと思うのであります。それを警察が警戒して入れないということは、私はどうしても納得ができません。しかも、数えればちょうど満二十年でありましょう。昨日が二・二六事件のあった日であります。そのときの光景を考えてみましても、私はあれほどひどいことはなかったと思う。また、今までの陳情形態も、集団陳情という形態はあったのであります。それを一つ許しておった。今回に限ってこれを許さないということも、私どもには納得がいかない。あなたは取締りに当っては法律を守る——同時に私が伺いたいことは、法律と同じ効果のある慣例も守るべきだと思うのであります。法律慣例も無視して弾圧するということは、私はあり得ないと思うが、この点について、もう一ぺん伺っておきたいと思うのであります。
  13. 大麻唯男

    大麻国務大臣 申し上げます。警察は決して弾圧などはいたしておりません。だが、おかげをもちまして、一昨日も大へん騒ぎがあるようなうわさがあったにもかかわりませず、無事に何事もなく済んだことは、まことに仕合せであると考えておる次第であります。(拍手
  14. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私は今の答弁を伺いまして、はなはだふに落ちない点、何事もなくて済んだ、人民の歩行が禁止され、交通が遮断されて、これで何事もなかったということは済まされないと思うのであります。人民権利だけを侵害しておいて、それで何事もないということはあり得ないと思うのであります。その点についてもう一ぺん大臣答弁を願いたいと思います。
  15. 大麻唯男

    大麻国務大臣 とにかく(「とにかくとは何だ」と呼び、その他発言する者あり)新聞で見るところによりましても、えらい騒ぎのようなことでございましたけれども、そういうことがなかったということは仕合せと申し上げた次第でございます。
  16. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 なるほど取締りの側から見れば仕合せかもしれないけれども権利を侵害され、通行を制限された人民の側から見ればこれほど不幸なものはないと思います。  そこで総理大臣に伺いたいのでありますが、陳情に来る多くの方々にはあなたの下で働いている官公庁の労務者が多いのであります。これは倉石労働大臣がわれわれは親であって、君らは子供だ、仲よくやらなければならぬ、こう言っております。今その子供が親に陳情に来ようとするときに、親がこん棒を持ってなぐる姿が国務大臣答弁の姿であると思うのでありますが、あなたはいかようにお考えになりますか。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう事案はないと私は思います。
  18. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 事実がないと思ったって事実あったのですから、これは何ともならぬのでありまして、どうも現場も見なければ新聞も見ないようでありまして、ずいぶん新聞記者にはお答えになったり、語り過ぎるようでありますが、案外あとは見ないようでありますから、これ以上のことはやめておいて、次に進みたいと思うのであります。そこで私がお伺いいたしたいと思いますことは、まず第一に憲政運用根本義について承わりたいと存ずるのであります。  昨年の十月十三日に私ども両派社会党統一をいたしました。われわれの統一に応ずるがごとく保守党統一もできて、現在は保守と革新、自由民主党社会党の二大政党になって、日本憲政が運用されるようになって参ってきておるのであります。そこでこういう工合に二大政党で運用される場合において、何が一番大切であるかということを考えてみる必要があるのではなかろうかと思うのであります。それには第一に政権移動ルールを立てるということであります。第二には少数は多数の意見に従う。しかし多数は独裁をしてはならない、少数意見を尊重する。運営上においてはこの原則は打ち立てられなければならぬと思うのであります。またときには、朝野両党に分れたのでございますから、両党の党首、あるいは総理大臣と野党の党首が懇談をする機会もあってしかるべきだと私は考えるのであります。第三には責任政治の確立を私どもはやって参らなければならぬと思うのであります。もちろんこれらの条項は憲法条章についても行われることでありますが、これらの原則について総理大臣の見解を承わっておきたいと思います。
  19. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの二大政党ができました後においての政治の大体のルールは、淺沼君の言うことに私は賛成です。
  20. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 原則に御賛成を願ったのでありますから、一つ具体的に今度は伺ってみたいと思います。そこでお伺いいたしたいのは、政権移動原則は、憲法の規定に従って四年に一度行われることになっております。しかもそれは総選挙を通じて行われるということになっておるのであります。このことも総理大臣は前の質疑応答の中においてこれを認められておるようであります。しかしながら中途において政権移動が行われることがございます。たとえばこの間行われましたところの第二次鳩山内閣から第三次鳩山内閣にかわったのも中途における移動であります。また吉田内閣からさらに加えて鳩山第一次内閣にかわったのも、一つの私は政権移動だろうと思うのであります。吉田内閣から鳩山内閣にかわる場合においては、私どもは時の日本民主党と一緒になりまして不信任案を出した。その不信任案一つの動機となって吉田内閣は倒れたのでありますが、あと政権を作るに当って、やはり政権移動は総選挙を通じて行わなければならぬということを前提といたしまして、解散条件として鳩山内閣成立を認めたのであります。その際に、鳩山、河上、鈴木党首会談が持たれた際に、われわれは強く解散要求をいたしました。その際に総理大臣たるべき候補者であったあなたは、われわれに対して解散要求の声はまさに神の声である、こう言って解散を是認されたのであります、しかもつけ加えて言うのには、日本民主党日本自由党自由党、改進党で当選した者の寄り合い世帯であるから、それが政権を担当することはまさに潜越しごくである、従って総選挙の洗礼を受けますと言って、それを明白にされまして、われわれはあなたに一票を投じて第一次鳩山内閣成立したのであります。これは記憶新たなものがあろうと思うのであります。これによって、政権移動が途中において行われる場合には、総選挙を通じて、解放を通じてという一つルールが立てられたと私は思うのであります。第二次鳩山内閣成立をして、第三次鳩山内閣転換をいたしました。われわれはあなたに対して臨時国会を開けという要求をして、しかも条件を付して憲法条章に従って要求したのであります。しかるにあなたは議会を開いたけれども、開いたときには総辞職をして参ったのであります。第二次鳩山内閣は総辞職としてきて、それでそのとき第三次鳩山内閣ができ上りました。そのときは当然私は総裁がかわれば解散をやるということを——この間今澄君とあなたは討論されまして、大体それを肯定されておりましたが、総裁はかわらないけれども、今まで総裁であったものが四人の総裁になったわけであります。前の総裁総裁の形が違う。総裁代行委員というものによって党が運営されるようになり、なおかつ民主党から自由民主党に変ったのであります。その組織の母体が変ったのであります。党首がかわるよりも政党が変ったのでありますから、これは大きな移動であると考えなければならぬと私は思うのであります。でありますから、憲政運用常道から考えて、私の原則を肯定するということになりますならば、ここで私は総選挙をやってしかるべきだったと思うのでありますが、やらなかった理由はいかがでございましょうか。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は私の内閣基礎は変らないと思うのです。私の内閣基礎は強化されたというだけなのですから、解散する理由は少しもないと思います。
  22. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこであなたは強化されたというけれども、実際は選挙のときには日本民主党選挙し、また自由党の各位は自由党選挙して、何もお互いが合同ということを公約して選挙をやったわけではございません。しかも強化されたというけれども政策的転換が非常に行われているということを私どもは指摘しなければならぬと思うのであります。たとえば自由党自体考えてみますならば、自由党の中を貫いておる政策資本主義であり、封建的色彩が強くて、なおかつ自由経済濃厚なるものがあると思うのであります。なおかつ日本民主党は改進党、その前の民主党とこの流れをくんでおるものでありますから、資本主義に対しても修正的資本主義立場をとっておる。修正資本主義立場をとっておった。そうして必ずしも、自由経済といっても統制経済をある程度受け入れておったと私は思うのであります。なおかつ外交問題一つについて考えてみましても、あとでまた伺いますが、早期妥結戦争終結宣言、これでもいいというのがあなたのお考えであった。それが今度は合同いたしまして、そうしてあなたの考え方というものはたな上げされておるのであります。明らかにあなたの延長ではなくして、政策転換を行なったということは明らかであると私は言わなければならぬと思うのであります。それに対してまだあなたは単なる二次内閣の拡大であると言って強弁されるのでしょうか。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 民主党自由党とは最初から兄弟みたいな政党です。兄弟みたいな政党で、自由党を作りますときにも私は関係をしておりまして、民主党を作るときにも関係して、まあこれは兄弟みたいなもんで、政党というものはなるたけ仲よくやっていくということが必要なんです。始終理由を見つけてけんかばかりしておれば、日本政治というものは結局つぶれてしまう。できるところで妥協をしていくのが政治なんですから、その自由党と民、正党とが合同して保守党ができた以上は、この合同したる両党の政党主義に従って内閣をやっていくというのが最も賢明な処置と私は考えました。
  24. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 その点はそういう工合にも私は考えるところがあろうと思うのでありますが、しかしあなたの考えていた考え方は修正されたのです。日本民主党政策自由民主党成立によって修正されたのであります。政策が変ったのであります。あなたが政権についておるのみのことを考えれば、私はあなたの議論が適すると思うのでありますが、政策が変ったのであり、基盤が変ったのでありますから、解散を通じて国民の世論に問うということは、私はやはり憲政常道ではなかろうかと考えるのであります。それをあえて否定するところが私にはわからぬのでありまして、もう一ぺんお聞かせ願いたいと思うのであります。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外交問題についてお話がありましたが、外交問題については全く二つの党派が一致した意見を持っているとは言えないでしょう。日比の賠償問題についてもずいぶん違いがありました。けれども自由党主張民主党も採用いたしまして、フィリピンと交渉をして、自由党主張は大体通るようになって日比の賠償問題もできることになったわけであります。日ソ関係もできるだけ早くしたい、未帰還の人たちを早く帰したいという希望は今日でも私は持っているのでありますけれども日ソの問題というものは戦争状態のないときの状態に持っていくのでありますから、領土の問題も解決しなくてはならない。この問題についてはまだ両党の党派意見が違っているというわけではないのでありまして、両党の党派の一致したる意見を今ロンドンにおいて主張をしておるのであります。それをソ連がまだ聞かないという状態なのでありますからこれもやむを得ない、少しぐらい延びても、私の観測が破れても、これもやむ得ないことだと思っております。
  26. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 政治家というものは自分主張が破れたときに、自分主張が通らないときには責任を感ずるというのが、政治家のとるべき態度ではなかろうかと思うのであります。これは私はあとでもう一ぺん申し上げますが、それが通らなくても権力の座にあればいいということでは私は済まぬと思うのであります。従いましてこの点は私はどうも納得がいかないのでありまして、これ以上追及することはやめておきますが、いずれにいたしましても解散要求の声、中間に政権移動が行われたときに総選挙を通じて行えという1日分が政権をとるときには神の声に聞え、今解散要求はどうだといえば鬼の声に聞えることは、はなはだ不可解しごくだと私は考えておるのであります。(拍手)  次に申し上げたいことは、多数独裁を排して少数意見を尊重する。その前提として少数は多数の意見に従う、これは民主主義ルールでありますから尊重しなければならぬ。このこと自体は私ども議会においてやることでありまして、これをあえて私はあなたに問おうとはしないのであります。私どもは現在の段階において二大政党によって運営をするようになった今日においては、少数は多数の意見に従う、しかし多数は独裁をやらない。そうして意見の出るまでの間にはうんと論議を尽して少数意見を尊重する。これはわれわれ国会運営原則でありまして、このことで今まで運営して参ったのであります。それと同時に私は、二大政党対立になったら朝野党首会談といったようなことが行われてもいいのではなかろうかと存ずるのであります。そこで過日私ども根本官房長官を通じまして、総理大臣鳩山一郎君に対してわが党の中央執行委員長鈴木茂三郎君がお会いしたいと会見を申し込んだのであります。会見を申し込んだところが断わられました。しかしそれは党を通じて断わられたのであります。私は今ここで会談に至るまでの折衝の内容については申し上げませんが、大体において幹事長書記長会談の催された空気から申し上げますならば、まあ一つ会うようにあっせんしよう、会ってもいいだろうということで別れたのであります。しかるにこれが一たび総務会にかかり、なおかつ今度は代行委員会の議に付されますと断わるということになって、断わって参りました。ところがこの問題について過日八百板君の質問総理が養えて言うのには、直接お話しがあればお会いいたしますというはずだった。その直接の意味はどういうことでありましょうか。それが私どもには納得がいかないのであります。私どもは直接お会いをしたいために、あなたの番頭である官房長官を通じてお願いをしたわけであります。しかるにあなたから、直接お話しがあればお会いをするという。どうもあなたは鈴木君と懇意でありますから、案外公私混同をされているような形が答弁に現われておるのであります。私は政治というものは私的ではないと思うのであります。公的にお互いに論議し合うことがいいと思う。そうすれば案外私もここに立たなくともよかったと思います。やはりお会いできないというなら、もう一ぺん委員会を通じてお目にかかることが一番立憲的であると思った次第でありまして、その点のいきさつを一つお話願いたいと思います。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 鈴木君と私とは、私的ならばいつでもお目にかかるのです。公的のことでありまして、鈴木君と私とが会うというのは、あのときには根本君から聞けば問題が限局をしている。つまり小選挙区制の問題あるいは春季労働闘争の問題、こういうような問題で鈴木君と会うことは、全く効力がないと私は思ったのであります。友だち同士の忠告ならば、いつでも私は聞きます。
  28. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 二大政党対立朝野両党に分れて政争をやっておるわけであります。個人的に会ったって意義のないことだと思います。われわれはやはり会うからには公的に会って——個人的に会うことも悪いとは申し上げません。しかしながら私どもは、公けの席において議論することも一つ、また公式に会談をして日本の将来を憂えるということは、政治家のとるべき態度でなければならぬと私は思うのであります。個人的には会うが、公けの、総理大臣としては会えないという。思い起せば、あなたは松本君が向うに行かれる際に、わざわざ野党の総裁であった緒方さんを訪問されたでありましょう、さらに加えて私ども鈴木、河上両委員長にも会見されたはずであります。あなたの方の都合のいいときは会見を申し込んで大いに語り合う、われわれのいいときには会わない、これは納得がいかないのであります。どうもあなたは公私混同の形が現われておる。親しいとか親しくないということは第二義的な問題であって、親しき中にも国の政治についてはおのずから意見が違う。問題が限られておる。それは春季闘争の問題と、もう一つは小選挙区の問題だ、なるほど限られております。そうしてわれわれの態度もきまっておる、政府の態度あるいは与党の態度もきまっております。しかしその中には、やはり両党首が会えばおのずから道が開けるというわれわれの考えでありまして、ここで会って道を開くということは当然であろう、こう私は思うのであります。しかもあなたが断わったのではない。これを私は申し上げたい。党の方から断わって参ったのであります。あなたが鈴木さんと会えば、仲がいいから何を言うかわからぬから、まあ会わせない方がいいというのが党の幹部の意見らしい。明らかにあなたは党の幹部の方から不信任を受けている。この事実をあなたは知らなければなりません。あなたが側人的に主導権を持って、会おうと思ったら、よし会おう、そこが私は議会政治家として吉田さんと違うところだと思っておったが、だんだん似てきたような形が現われて、はなはだ遺憾しごくにたえない。(拍手
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 鈴木君と会いますときに党に相談するということは、決して不当ではないと思います。党にまかして、党の方で同意があれば鈴木君と会う、これは少しも悪いことではないと思います。党の役員をしておりますから……。小選挙区の問題、それから労働争議の問題については、党も相当の決意をもって進行しておる問題と思いますので、私が会ってそれを変更するようなことは、必ずしもできるものではないのであります。ですから党の意見にまかすということは、当然私のとるべき手段であったと今でも思っております。
  30. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 それはそういうことになれば、総理大臣の方から私どもに回答があれば別でありますが、私どもに回答がありましたのは党であります。私があなたに会見を申し込んだ回答は党からあった。こういう点が、まあ総裁であるからといえばそれまででありますが、どうもやはり私ははっきりしない点がある。なおかつ鈴木君なら個人的に親しいから、会うという個人的な意欲がありますならば、これは私はやはりもっと会ってしかるべきだと思うのであります。しかしこれ以上責めません。しかしもっと私は公私の別を明らかにして、二大政党運営ということになって参る上においては、朝野両党の総裁が会って、その重大問題については話し合う機会を作られることも一つの行き方であるということだけは御承認になるでしょうか。それは御承認になるでしょうか。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 鈴木君とたびたび会うことは、私少しも拒みません。
  32. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 その次に責任政治の確立の問題について申し上げたいと思うのでありますが、これは先ほど申し上げてからみ合いましたけれども、やはり二大政党運営ということになった場合においては、その内閣政策というものが行き詰まり、政策転換をやり、あるいは大きな政策を打ち出すときには、これを世論に問う、こういうようなことがなされてしかるべきだと思うのであります。たとえば一昨日も八百板君から質問がありましたが、小選挙区制といったようなことは、この前の選挙のときにはそう問題にならなかった。それで仕方がなくてこういう問題を打ち出すときには、これを世論に問うというような形でその責任を明らかにしていく、まず選挙を実施する前に、それ自体の重大性というものを世論に問うて議会解散する、こういうようなことも私は考えるべきだと思うのであります。また繰り返す結果になりますから申し上げませんけれども日本民主党から自由民主党に変って、政策転換になったのだから、ここでもやはり世論に問ういう態度がいいと思うのであります。政治家と政府が責任を感じないようになったら、もう日本は末だと思うのであります。その責任政治について一点伺っておきます、
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府が従来とっておった政策を変更する場合において、国民の意見を問う場合があるということは必要だと思います。しかし小選挙区制を採用する場合、小選区の可否を国民に問うて、その是非をきめるということは考えていません。それがいいとは思っていません。国会においてきめて、きめた後にこれを国民の意思に問うということは必要だと思いますけれども国会が是非の判断をしないで、是非の判断を国民に問うということが必ずしも立憲政治においてとるべきものとは思っていません。
  34. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 それは国会に問うときもあるし、国会からさらに加えて国民に問うという二つの方法が用いられてしかるべきだと思うのであります。いずれにしても責任を明らかにすることが必要だと思うのであります。  次に承わりたいと思うのは憲法改正についてであります。現下わが国の政治課題で一番大きな課題憲法改正であり、それを裏づけんとしておりまする小選挙区制の問題であると私は思うのであります。  そこで第一にお伺いしたいことは、政府の憲法を改正しようとする理由であります。これはいろいろあります。マッカーサー憲法、押しつけられた憲法であるからいかぬとか、あるいは内容がいかぬとか、いろいろ言うのでありますが、これを端的に申したらどういう結果に表現されるでしょうか。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 端的に言えば、占領時代に作られた憲法で、そうして瞬間も短かいし、強要によって作られた憲法だから、独立した今日においては、とにかく国民の自由意思に沿うて改正した方がいいというように考えております。
  36. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 それではその成立の過程が悪いからということが改正の理由でしょうか。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 占領中に作られた憲法だということは、改正した方がいいという理由のおもなる理由になります。
  38. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 内容についてもやっぱりお考えの点があるのでしょうか。形式でありますならばおのずから論議の中心もありますし、形式と成立に至る過程ともう一つは内容ということにもなるでしょう。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 内容も形式と相待って改正をした方がいいと思います。
  40. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこで、憲法改正に関するいわゆる試案なるものがございます。これは自由党時代には洋さんが中心となりまして、憲法調査会ができて岸案なるものがございます。改進党時代には、これは清瀬さんが委員長になられまして、清瀬案なるものがございます。さらに加えて、最近自主憲法制定期成議員連盟というものができ上りまして、それによって廣瀬案なるものがございますが、これら全体を貫いてわれわれが看取できる点は何かと申し上げますならば、第一には主権在民の原則に制限を加えて、天皇制の復活というか、天皇元首制をやろうという意欲の現われがあります。さらには基本的人権に制限を加えることであります。第三には家族制度の復活であります。第四には再軍備、徴兵制度あるいは海外派遣というような内容が含まれているよであります。さらには参議院の制度に対しても大きな改革を加えよう、参議院の国民よりの直接選挙を廃してこれを間接なものにするか、あるいは推薦の者をもって参議院を構成するか、こういうような幾多のものを含んでおるようであります。今鳩山総理大臣が意図しておるものは大体これらの内容を含んでおる、その善悪は別として、内容としてはこれらの項目に該当するものであると考えて差しつかえないでしょうか。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま淺沼君の言われた内容については、私の反対のものもずいぶんたくさん掲げられました。たとえば民主主義を改正しよう、天皇主権に持っていこう、そういうようなことは考えておりません。民主政治はやはり堅持しなければいけないと思っております。それから基本的人権も改正する意思はございません。私個人としては、大体において憲法調査会において審議は十分されるということに残しておく方がいいと思いますけれども、しいて私の意見を問われれば、そういうような三大原則に対しては、私はただいまのところ改正したいと思っていないのです。
  42. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私のあげました点は、三大原則と称しているものに対してみんな改正を意図しているのが、保守党考えではないかということを聞いているわけであります。どうもこの点が答弁ではっきりいたしませんけれども、いずれにいたしましても全面的な改正ということに理解してよろしいでしょうか。
  43. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りです。全面的に審査をしてもらうつもりでおります。
  44. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 全面的に改正を意図しておるということになりますと、これは私は重大だと思うのであります。そこで、一体政府は憲法改正のプログラムをどうしてやろう、どういうことを考えておるのか聞きたいと思います。第一には、全面的にやろうというならば、憲法九十六条の規定が妥当であるか妥当でないかということが問題になろうと思うのであります。ここにはきょう出席されていないか知りませんが、山本勝市さんですか、それの書いたパンフレットを読みましても、それの中には、九十六条のことは、あなたの党に所属しておる人でも無理だと言っておるのです。私はやはりこの憲法の全面的改正というものは、一つの革命であろうと思うのであります。これは明らかに私は革命であろうと思うのであります。従いまして、それを合法的にやる、こう言っても私は問題があると思うのでありまして、九十六条の規定というものは、明らかに部分的な改正を意図するものであって、全面的な改正を意図するものではないと思うのであります。あなたが全面的改正を意図するというならば、合法的であろうとも、一つの革命を行おうとするのです。それはやはり一つ形態考えられてしかるべきだと思うのであります。九十六条をもって部分的改正のものを全体に当てはめるということは、少し無理ではなかろうかと思います。
  45. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いわゆる三大原則を改正する意思のないことは、私がたびたび申した通りであります。どの部分を改正するかといえば、憲法全体の改正について改正審議会に問うという行き方であります。
  46. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 憲法調査会に闘うことは当然です。しかしながら、総理大臣として問うからには、自分考えはかくのごときものがあるという一つの主体性というか、考え方がなければ、憲法調査会なんて設けることはいかがであろうか、ばく然と設けられることは国民は非常に迷惑だと考えなければならぬと思うのであります。そこでお聞きしたいのでありますが、憲法改正は一つの革命であろうと私は断言いたしましたが、現に幾多の犠牲が伴っている。悲劇がある。これは私は少し頭の中へ、入れていただきたいと思うのであります。これは外国の例を見ましても、憲法大改正が行われるときには一つの悲劇が伴っております。日本の国だって、明治の革命が行われて、それから国会が開設されるまでの間、自由民権の運動に携わった人々は多くの血を流している。多くの犠牲が伴っている。今度の戦争はこれと違った意味においてやったには違いない。しかし戦争のために二百五十万のわれわれの同胞が犠牲になったから、こういう犠牲は出したくないという国民の戦争に対する批判がこうなってきているのであります。これをあなたは考えなければならぬと思うのであります。かりに日本の国において憲法という基本法——法令とは違います。法律とは違います、日本の国家はこの憲法を源泉として活動しているわけであります。その基本的憲法に対して、国民が朝野両党に分れてしのぎを削らなければならぬということになっては、これは大へんなことになりはしないかと思うのであります。私の勘です。これは私は率直に申し上げます。憲法は、国民の血となり肉となっております。そうして生活の中に生きております。日本憲法は、戦争に敗れて十年の間に、憲法を制定して以来国民が切磋琢磨しながら、生活の中に生き、自分の血と肉となってきておるのであります。あなたはそれにメスを加えようとする。改正してメスを加える。合法的であるかもしれませんが、メスを加えると血が流れますよ。そこでわれわれは血を守ろうとする。そうして朝野両党に分れたら一体日本の国はどうなりますか。われわれは、韓国の三十八度線ができて、非常にあれを民族のために痛んだでありましょう。一歩誤まりますならば、憲法改正というような問題は、そういうような事態が出ないとも限らぬと思うのであります。従って、憲法改正には慎重でなければなりません。真剣に考えなければならぬと思うのであります。なるほど憲法制定の際にパージされておった方々は、それはこの憲法改正を論議する一つの資格があろうと思う。しかしながら、あのとき賛成した議員がまた憲法を改正するということは、何たる信念のなきことかと私は嘆かざるを得ないのであります。(拍手)それはもっと慎重に考え——私の勘をもっていたしますならば、そう簡単にいかぬと思う。——委員長、それから自主性を持ってお答え願いたい。どうもこの間から八百板君の質問に対しても、官房長官が答えるのかあなたが答えるのかわからぬようなことでは、私は納得がいかない。やはり答えられるなら総理大臣の自主性において答えていただきたい。私は、もしあなたが答弁できないならば他の大臣指名して、だれそれをしてやらしめますと、そうしてやらしてけっこうでありますから、どうか陰に声ありということだけはやめてもらいたいと考えているのであります。
  47. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま淺沼君の御質問の中に——われわれが戦争によって得た経験、戦争によって得た知識は、今度の憲法改正についても失わないようにしなくてはならぬという御意見に、要約すればなると思います。その通りでありまして、あの戦争によって、われわれが得た知識と経験とを、こりたびの憲法改正について失うわけにはいきません。それがゆえに三大原則は堅持しようということを育っているわけであります。
  48. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そういう工合に言いますと何か改正しなくてもいいような結果にもなろうと私は思うのであります。また全面的改正もしないのだというように聞えるのでありますが、どう考えたって全面的改正であります。あと順を追うて少し聞いて参りますが、そこで第二番目にお伺いしたいのは、政府はこの憲法調査会を作りまして、それで憲法改正のことを意図しておるようであります。そこで私の政治的勘を申し上げたのであります。私も長年運動をやってきておりますから、国民がどういうような考えを持っておるかということは、及ばずながら総理大臣よりよけい知っておるわけであります。そういうふうな人が血となり肉となった憲法を改正するということにぶつかったときに、その人たちの行動はどうなるかということを憂えるのであります。私は日本政治を担当する一員としてほんとうに憂えるのであります。保守党並びに総理大臣はこれを割合安易に考えておる。そこで私はそういうようなことをもう一ぺんお考えになってこの際憲法調面会法案を撤回されて、憲法改正問題に対しては白紙に返して新たなる方途をもってやるというお考えはないでしょうか。私はこれを考えていただきたいと思う。もし全面的改革をやる意図でやられるというならば、新たに憲法議会というようなものを召集してやられるのならばおのずから別であります。(「賛成するのか」と呼ぶ者あり)それは別でありますが、しかし私は今総理考えておりますことについて、もう一ぺん撤回する意思があるかないかお考えを願いたいと思うのであります。
  49. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法調査会においてはそういうような御心配になる改正案は作らないと確信をしております。そうしてその改正案のできました後に国民がこれを知れば、あなたの御心配になるような事件は起きないものと思います。
  50. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこでお伺いいたしますが、憲法調査会は改正案を作るということになるのでしょうか。——憲法調査会は憲法改正案を作るということをあなたは今言われましたが、そうなるのでしょうか。
  51. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法調査会は改正案の原案を作ろうと思います。
  52. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 これは非常に重大な問題でありまして、今まで議員提出で出ておりますところの憲法調査会については、これは調査をするためであって、原案を作るのではないということは自由民主党の言明であります。今自民党の代行委員であり総理大臣からそれは改正案を作るんだと言われた。それならば非常な食い違いがあると私は思うのであります。この改正案を作るというところに私は重大な問題を発見いたします。改正案を作る場所ではないと私は承わっておったのであります。きのうのラジオの討論会を持ち出すということははなはだいかがかと思うのでありますが、根本君がわれわれの鈴木君にだいぶ追い詰められて、それは改正案を作るのじゃない、調査をするのだと言っておられました。ところがあなたは改正案を作ると言う。一体どっちがほんとうですか。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  53. 三浦一雄

    三浦委員長 静粛に願います。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 淺沼君の御承知の通りに、改正案の原案というものは三分の二の議員の数がなければできないのであります。そうしてその原案ができてこれを国民に問うというのであります。手続はきまっておるのであります。その前に調査会がすることは、その原案の審査をするということなんです。
  55. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 いよいよ改正原案を作るのだということは明白になりました。これは自民党と総理大臣との間に幾らか食い違いがあるようでありますけれども、審査原案を作るのだということに私は聞いておきます。そこで、それならば聞いて参りたいと思うのでありますが、そういうような原案を作る権能というものが内閣は持っておられるのでしょうか、これを承わりたい。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原案の決定は国会でなければできないのですから、憲法調査会がすることは、その原案の参考になるものを審査するという結論になるわけです。
  57. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこでこの提案権についてお伺いしたいと思うのでありますが、憲法九十六条の規定には「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」こう書いてあります。従いまして七十二条の規定の中には「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、」という工合にあります。この規定があるにもかかわらず九十六条の規定があるということは、明らかに提案権は議会にあって政府にないということを私は明確にしておるものだと思うのでありますが、これはいかがでしょうか。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法の成案は議会でもって議決しなければ成立いたしません。
  59. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 提案をする案を作る場所のことを私は申し上げているのです。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原案は政府でも作ることはできると思います。
  61. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこでお伺いいたしますが、この前解散する前の国会において、あなたは施政方針の演説の中において議会に置くということをきめてわれわれに公約をしたのであります。それからその後の、今度は選挙後の国会におきましては、国会に置かないで内閣に置くという、私はあなたが提案したときの考えの中には、発案権も提案権もまさに議会にあるという観念が当時の内閣考えであったと思うのでありますが、そうではないでしょうか。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 学識経験のある者を議員以外に多数入れまして調査会を作る場合においては内閣に置くという方が例が多いのです。それで外部から多数入れます場合にその例に従ったのであります。別に権限の問題ではないと思います。
  63. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私はそれを聞いているのでなくて、解散前の議会の施政方針演説において国会に置くということをきめた心境と、その後においてそうでなく政府に置くというその転換は、いかなる理由であるかということを聞いているのです。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 知識経験のある者を多数入れる場合においては、内閣に置いた方が便宜だというように考えたのであります。
  65. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私の聞いているのは学識経験者を入れるということじゃないのです。解散前の議会における公約と、あとから変更したのはどういうわけだということ、学識経験者を入れるためということになりますならば、前の自分の発言というものは非常に誤まりであったと了解してよろしいのでしょうか、変説改論とこう考えていいのでしょうか。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国会の議決を尊重するという上からいえば、少しも変化はないのです。内閣に調査会を作りましても、単に一つの案を作るだけでありますから、改正案というものの作成の上から考えてみると、国会権限を無視したということには少しもならぬのです。
  67. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私の聞いているのは、国会の意思を無視しておらぬとか、学識経験者をどうするかということではなくして、どういうわけで議論を変えたのであるか、その政論をやった根拠を私は伺っているのです。私は少くとも初め議会に置くということをきめたのは、提案件は議会にありと考え、なおかつ発議権も議会だ、従ってそういう発言がなされたと思うのであります。途中で変っているところに、これは解釈の相違が時代とともに変化するというならば別でありますが、政治家としてはそういうことは許されないでしょう。あなたは政治家として議会においてそういう発言をしたら、その発言の内容というものを次の議会でもやはり重んじていくのが、政治家のとるべき態度じゃないかと思うのですが、その点がどうしても私は納得がいかないのです。ことにもう一歩掘り下げて申しますならば、議会に提案権があってそうして三分の二なければならない、かりにあなたの言われるように政府で提案ができたといたします。それで憲法調査会の案によりますと、国会並びに政府に報告すると書いてあります。政府は一体この報告を受けて何をやりますか、これを伺いたい。さらに国会は報告を受けて何をやりますか、国会は三分の二を持っておりません、ほんの少数でございますけれども三分の一以上われわれは確保しているわけであります。かりに政府で三分の二を持たない場合において成案へを得たときは、どうすることもできないじゃないですか。だから結果においてはやはり三分の二を持ったとき、また三分の二の賛成を得られる前提があって調査会が設けられてしかるべきであって、そういうようなものなしで作るということは、私は明らかにナンセンスな問題だとも言えると思うのであります。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法調査会において審議している間に、十分に国民の間にも、どういう点をどういうふうに改正するかということの意見が浸潤して参りますから、そういうふうになりさえすれば、三分の二以上の賛成を得ることは確実だというのが私の考えであります。
  69. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこで三分の二を得ることができなければどうします。     〔発言するものあり〕
  70. 三浦一雄

    三浦委員長 静粛に願います。
  71. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 それはあなたの議論が仮想なら私の議論も仮想ということになる。できなければ一体どうします。議会解散することになりますか。そうすると憲法を改正するかいなかを問うために一ぺん議会解散して、その後にレフェレンダムに問うためにもう一ぺん解放する、これだけの手続をとるということになりましょうか。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法を改正いたしますのには、どうしても議会で三分の二以上の多数の同意がなければできないのですから…。
  73. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 三分の二が得られるとこう言っていますけれども、かりに成案を得たと仮定して、内閣に報告しても、それからまた議会に報告しても、保守党は三分の二を持っておりません。そこで三分の二を得るためにもう一ぺん議会解散して、それからレフェレンダムに問うためにもう一ぺんやるのかということを私は聞いているのであります。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 両方ともあなたのおっしゃる通りになりましょう。
  75. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこで小選挙区の問題が問題になってくるのでありますが、これはまあ少しあと回しにいたしまして、私は政府当局に伺いたいと思いますことは、内閣審議室というのがあるそうであります。その内閣審議室において憲法改正、日ソ交渉その他の問題について世論調査を行なったやに伺っております。その中で憲法改正に関しましては、憲法改正をすべしというのが、けさの読売新聞によりますと二・六何がし、改正すべからずというのが三一・何がしで、国民の世論は大体において憲法改正すべからずというのが多いようであります。これに対してあえて世論の反対の方向に行こうとするあなたの心境を、まず承わっておきたいと思うのであります。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうことを一切知りません。官房長官からお答えいたします。
  77. 三浦一雄

    三浦委員長 官房長官より発言を求められております。これを許します。根本官房長官
  78. 根本龍太郎

    根本政府委員 ただいま淺沼さんから御指摘のありました点でありますが、現在内閣審議室において国政の資料とするために、いろいろの調査をいたしておることは事実でございます。しかしこれは今日まで施政の資料にするために、閣僚並びに関係各省に示しておりますけれども、世間には発表しておりません。しかし今御指摘になりました点は昨年六月でございまして、最近また今の憲法についていろいろの話があるようですが、あなたは今の憲法を変えることに賛成ですか、反対ですか、という調査をしたのは六月です。これのときには賛成が二六%反対三一形、それから一概に言えないというのが七%、不明が三六%でございます。ところが続いて八月に行われたのになりますと、変えた方がいいというのが二六%、かえないというのが二七%になっております。それから本年一月に実施したのになりますと、賛成が三三%、反対が二八%、こうなっております。  それから御参考までに申し上げますと、二十七年四月読売新聞において、これは明確に、憲法を改正して日本が軍備を持つことに賛成ですか、反対ですかという、憲法改正と軍備との問題を関連して世論調査をしたのによりますと、賛成が四八%、反対が三九%で不明が一二%です。七月の読売新聞には…(淺沼委員委員長委員長」と呼び、その他発言する者あり)改正した方がよいが三八%に対し、その必要はないというのが三〇%。それから東京新聞が十一月に実施したのによりますと、改正賛成が四七・五%に対して現状のままというのが三七・六%です。それから朝日新聞の十二月に実施したのによりますと、改正に賛成が三〇%であり、改正に反対が二五%、意見なしが四五%になっております。
  79. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私はそういうような世論の構成に対して、一体総理がどういうようなことを考えておるかということを聞いたのでありまして、官房長官から新聞の調査したことまで精細に述べろということを聞いたわけではありません。これは官房長官はよく気をつけていただきたい。  そこでもう一つ、それなら今度は官房長官にお伺いしますが、昨年の調査をする場合において、日ソ国交調整の問題について、すなわち鳩山方式をやるのが五六%です。それからアメリカ軍が日本に駐屯しておってそれに対する国民のあれはどうであったか、これもそれなら発表して下さい。そういうような都合の悪いことはしまっておいて、都合のいいことだけを出してやるということは、これはいかぬことであろうと思うのであります。それならいっそのこと今庄での調査になったことを全部公開を願いたい。この点は私は公開を要求いたします。
  80. 根本龍太郎

    根本政府委員 ただいま申し上げましたことは、六月のことだけが出ましたので、六月のほかに八月も実施し、それから本年一月も実施したということを申し上げておるのであります。それで先ほども申し上げたように、内閣審議室において調査いたしまするのは、政府の施策の資料としてやっておるのでありまして、公表する態度を今日までとっておらないのであります。必要とありますれば、要求されますれば、これはけっこう私の方で提出申し上げます。
  81. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 それは一つ公表のほどを願いたいと思うのであります。  そこで引き続いて調査室のことで申し上げますが、二月二十日の読売新聞によりますと、憲法改正についての調査を行うということになっております。これはやられるのでしょうか。たとえばその項目は憲法改正の一般的支持率、第二は地域、職域、年令別の支持率、第三が改正問題点ごとの調査、第四が改正の打ち出し方、それから改正の発議、それから国民投票の時期の調査、総合的判定、とこういうふうなことをやるようでありますが、憲法を調査するという会がここまでやるということは、これは明らかに、私は行き過ぎであり、行政の憲法改正に関する関与ではなかろうかと思うのです。明らかな関与だと思うのであります。
  82. 根本龍太郎

    根本政府委員 新聞に出ておるそうでございますが、政府はそういうふうなスケジュールは組んでおりません。ただし先ほど申し上げましたように、常に政府は、政治施策を実施するために世論がどういうふうに動いておるかということを調査することは当然でございまして、先ほども御指摘になりました憲法改正に対して賛成か反対かなども、今日まで随時行なってきております。
  83. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこでもっと具体的に承わりますが、たとえば第九条の戦力についてマッカーサーの押しつけた改正案の方がいいか、こういうような問い方、さらにまた国連に加盟する場合は、国連軍加盟の責務を負うので軍隊を必要とする改正の打ち出し方、この理由を書いたり、さらには社会党がどんな反対運動をやっておるかということも調査する、これまでやるつもりですか。
  84. 根本龍太郎

    根本政府委員 そういうことは政府は現在企画しておりません。少くとも私の手元においてそういうことは命じておりません。それは新聞がどういうところから出したのかわかりませんが……(「うそをつけ」と呼ぶ者あり)うそをつけとは何ですか。事実を言っておるのです。     〔発言する者あり〕
  85. 三浦一雄

    三浦委員長 静粛に願います。
  86. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 議事進行にからみますが、答弁する官房長官として、けんかを売る態度はどういうことですか。取り消してもらいたい。     〔発言する者あり〕
  87. 三浦一雄

    三浦委員長 静粛に願います。私語を禁じます。
  88. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そういうようなことでは、私は論議を進める上において、簡単にいかないと思う。もう少し静かにやっていただきたいと思う。そこで総理大臣にお伺いをもとに返しますが、大体政府の方においては、憲法改正については調査の範囲内で、世論調査についても、内容に触れて、どうやったら一番有利かということまではやらぬそうでありますから、これはやらぬと考えておきますが、どうもやるにおいがしておることだけは事実でありまして、これは今の言葉だけで、私は尽されぬと思うのであります。それは、これを受け持つ方の側からこれを伺っておりますから、どの程度ということはやめますけれども、あなたは言わないというけれども、この受け持つ方でまたおのずから考え方はあるようでありますから、そうなるとあなたの答弁にそごありというところでありますが、これ以上は追及はやめておきますが、ほんとうに答弁をそのまま生かしていただきたいと思います。単なるその場限りでないように願いたいと思います。  そこでもう一ぺん憲法問題に返りますが、総理大臣憲法改正のプログラムとしては、政府に提案権があって、発議権を議会が持つから、出したら議会解散する、こういうわけでありますが、九十六条の規定で発議ということは、やはり議会において議案を作るということも含めたものが発議じゃないかと思うのであります。これは当然のことであって、それを政府にあるということは、これは非常に無理な解釈であって、そういうようなことで、憲法改正について行政が優先だという思想が流れてきたら一体どうなるでありましょうか。少くとも憲法というものは、最高機関である国会を通じて国民の行動として表われていくものが先頭に立って、改正が考えられるべきであって、断じて私は行政の府から憲法改正の優先を握るものじゃないと思うのであります。
  89. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 発議権がどこにあるかということですか。
  90. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 発議権じゃありません。原則的にいけば、これは国民が最高の権威者であって、それを代表するものが国会であって、国民は国会を通じて自分権利を行使していくという形になって、行政の方から逆に憲法の改正案を作るということは、非常に行政として僭越しごくとお考えになりませんか。これを聞いているのです。に発議するのは、三分の二の多数を要します。しかしながらその案を国会の議に付することは、国会議員も政府もいずれもよろしきに従って権能を持っておるのでございます。
  91. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 担当大臣が出て答弁でありますが、どうも私はこの議論には納得いたしません。あらゆる場合において、やはり立法府というか、最高の権威はわれわれの側でありますから、この権威というものを行政の府が侵すような仕方が、私は出てきょうと思うのであります。発議権を持っておるものに対して、発議権を持たない政府が国会に出てきて、国会解散してやるということは、言葉をかえていえば、憲法改正に対する大きな圧力を行政府が加える、あまり言葉を荒く使うといけませんから荒い言葉は避けておきますが、どうも私は行政の独裁的傾向が現われてきていると思うのであります。これは大いに慎重に考えてもらいたいと思う点があるのであります。そういうような意味合いで、しかもかりに先ほど総理大臣が答えられたところを肯定して、憲法改正のために案がで、きたならば解散をやる——解散をやるのは憲法改正の問題を契機にやって、レフェレンダムに問うわけではないのであります。従って改正のために二回総選挙をやる、憲法改正、日本の組織法の根幹に対して二回の言論戦を展開してお互いにやり合う、しかも血となり肉となっておる、こういう点については、私は重ねて、慎重な態度がなければならぬということを申し上げておきます。  そこで、かりに合法的だからといって、一歩譲って合法的にやるとして議会解散せられる、その場合において小選挙区制の問題が問題になってくるでしょう。でありますから小選挙区制は第一には二大政党対立において政界を安定せしめる、第二は政界浄化というけれども、ほんとうの真意はどこにあるかといえば、いわゆる案ができたら国民に問わなければならない、問う前には三分の二を確保しなければならぬから、自然小選挙区をやらざるを得ぬという一つのコースから来ておると思いますが、幾ら強弁をされても実際の結果はそうであろうと思いますが、その点はいかがでありましょうか。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はまだそこまでは考えておりません。
  93. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そこまでは考えておらぬということでありますが、そうすると憲法改正案をいつ出すかわからぬということで、またどうなるかわからぬということで、まことにたよりなさを感ずるわけですが、やはりもう少し総理大臣としての信念を吐露してもらいたいと思うのであります。われわれもやはりもっと信念を打って政治をやっていただきたいと思うのでありまして、それ、で問うておるのでありますから、その点のことをよくお考え願わなければならぬと思うのであります。  そこで私は自治庁担当大臣にお伺いいたします。内閣においては選挙制度調査会なるものを設けて、そうして選挙区例に関して起草委員会を設け、これが小委員会に遮ってきて審議中のようであります。この諮問しておる案は一体いつでき上るようなことになるでしょうか。
  94. 太田正孝

    ○太田国務大臣 選挙制度調査会は今お話の通り今日小委員会を開いておりまして、先般起草委員によって提案された区画の問題等をきょう審議いたします。それが済みまして総会にかける順序になっております。政府といたしましては早くできることを期待しておりますが、選挙制度調査会がいつこれを答申するかということは私にはわかりません。
  95. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 その担当大臣が私にはわかりませんと言えばそれまででありますけれども、これは現下政治問題の一番大きな課題であります。担当大臣がそれがいつでき上るかわからぬという話でありますが、大体担当大臣としてはいつごろまでに諮問を得て、いつごろに成案を得て議会に出そうとしておるか、これを一つ伺いたい。
  96. 太田正孝

    ○太田国務大臣 私としては来月上句に提案ができるように答申がくることを期待しておる次第でございます。
  97. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 その答申を受けたら答申に基いて議会に政府提案という形において出されるつもりでありましょうか。
  98. 太田正孝

    ○太田国務大臣 答申を受けましたならば、政府提案として出したい考えでございます。
  99. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そうすると政府提案として出しますものは、今自由民主党が提示しております相当党略的な案というものと離れて、やはり答申案を中心として、諮問案を中心として出されることでしょうか。
  100. 太田正孝

    ○太田国務大臣 すべての答申を処理する問題は、御承知の通り答申を尊重いたしますが、答申そのものでいかない場合もあることは、すべての政府の諮問した答申による場合と同じであると私は思います。しこうして党がどういう段階において今日審議を進めておるかということは、私はまだ存じておりません。
  101. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 党のやっておることを知らないというのは、あなたの責任において出される案というものは答申案に基いて出されるものであるか、これを私は聞いておるのであります。
  102. 太田正孝

    ○太田国務大臣 答申もまだはっきりしておりませんし、答申はございません。しこうして来月出したいという意向は持っておりますが、答申をよく知り、かつ党の意見も1浅沼さんは党略ということを申しましたが、私はそんなことも存じませんし、またそんなことはないと思っております。よく意見を聞くことは必要であると私は思っております。
  103. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 どうも答弁がたよりないと思う。そうすると審議会の権威というものもうせていくような気がするのです。大体最近政党政治になった場合においては、審議会と政審会と申しますか、政調会というものが二つあることは矛盾で、今あなたの言うような考えをもって党の意見をいれるというなら、党の政調からすぐ内閣に直結する、こういうような形が出てくればいいけれども、そうではなくて、片方においては学識経験者を集めて議員の入れないいいものを作っておいて、いざとなると党の意見をいれる。そうなると結果においては、党略的なるものをそうでなくカバーするために審議会を作ったということになるわけでありまして、これはあとで聞きますが、河野さんの行政審議会も同様なことであろうと思うのでありまして、私はどうも信念がなさ過ぎると思う。そこで一体あなたはどちらの案を出せるか、もっと明確にしていただきたいと思います。
  104. 太田正孝

    ○太田国務大臣 先ほど申し上げた通りでございまして、答申というものを政府がどういうように処理していくかということと、法案を通すについて党の意見がどうあるかということは、ともに私ども政治をやっていく上において、またこの法案を出す上においては、考うべき問題であり、とるべき問題であると私は思います。
  105. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そうすると、まだ雲をつかむようなもので、わからぬという結果になるのでしょうか。
  106. 太田正孝

    ○太田国務大臣 雲であるか雪であるかわかりませんが、今のところの段階は、答申も出ておりませんし、党の立場も今研究中ということでございますから、雲とも雪ともわからないような状態であります。(笑声)
  107. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 どうもこういうような答弁をいただくことは、まことに大臣としての責任を感ぜざるものだと言っては語弊があるかもしれませんが、そういう感じがいたします。やはり政治家である限りにおいては、自分の担当するものに対して、党はこうだが私はこう考えますと、こういうような信念があって私はしかるべきではないかと思うのであります。この点を軽視していることを私ははなはだ遺憾に考えるのでありまして、どうか答申が出たならば、答申に基いてやはり信ずるところに向って行動してもらいたい、私はこういうことを申し上げておきたいと思います。
  108. 太田正孝

    ○太田国務大臣 もちろん私としても政治家としての信念のもとに動いていく考えでございます。
  109. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 言うことだけは勝手に言っておいて、信念だけありますといえば簡単な話でありますが、もう少し慎重にお考えを願いたいと私は思うのであります。  そこで、鳩山さんは、わからない、自分にはわからないから他からということであったのでありますが、小選挙区制についてのお考え方を伺ってみたいと私は思います。今議会の中で、小選挙区から、大選挙区、中選挙区一切を経験している多くの人があろうと思うのでありますが、そのうちの一人であろうと思うのであります。私はまだ議会に出る前に、あなたのお母さんが車に乗って戸別訪問をしておる姿を拝見したことがあります。(笑声)まあ、そういうような状態でありまして、小選挙区制というものがいかなるものであるかということは、一番よく知っておられることだろうと私は思うのであります。今小選挙区制を採用するという根本の理念というものは、第一にはどこにあるかと申し上げますならば、二大政党対立からの主張である、そう言われるのでありますが、二大政党対立といっても、これはわれわれの方が合同したからあなたの方も合同したのです。われわれの方が合同しなければ、なかなかあなたの方は合同できなかったと思うのであります。やはりこれは中選挙区の間に自然に二大政党の対立になってきたのでありまして、その対立がまた発展してきて次にりっぱなものになっていこうと思うのであります。選挙区のせいではありません。これは断じて選挙区制の相違ではないと思うので、あります。これはよくお考え願いたいと思う。それから政界の浄化、こういうのでありますが、かえって私は小選挙区になったならば、日常ふだんから選挙運動に跳梁する人ができて、そうしてほんとうに国のために働くというようなことじゃなく、毎日選挙運動をやっているような人が、議会に出てくるような結果になってくるのではなかろうかと思うのであります。大体議員というものは、選ばれるときには確かに選挙民の議員でありますが、選ばれて国会に席を置けば、これは明らかに日本の代議士であろうと私は思うのであります。従ってその視野というものは、国際的視野においてものを論議して参らなければなりません。しかしもし小選挙区となった場合においては、かりに東京都においては区が三つに割れるところがある。都会議員の選挙区が三つになった。川崎市では市会議員の選挙区が二つになる。それからまた札幌においても同様なことになります。そういうことになりますならば、国を憂える士というか、規模雄大な、世界を思い人類を思うという者はだんだん出てこなくなって、選挙民の請願、陳情といったようなところに堕落するような結果になりはしないかということを私は憂えるのでありますが、これらについてあなたの見解を承わっておきたい。非常な経験者でありますから、その点も含めて…。     〔「経験者語れ」と呼び、その他発言する者多し〕
  110. 三浦一雄

    三浦委員長 お静かに願います。
  111. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区に対する弊害とも言われる点は、淺沼君の指摘された通りの点があります。それですから、小選挙区制が中選挙区あるいは大選挙区よりも選挙を楽にするというか、正常にするというか、便利だというようなことは必ずしも言えないと思うのです。けれども、二大政党になりまして、それで選挙民に対して国政の詳細を説明して参りますのには、どうしても大選挙区では大き過ぎる。小選挙区の方は、国民と政治との密接の関係が深くなるという利益があると思う。国民が政治をする、主権は国民にあるという真実を現わすのには、実際の政治の詳細を国民に知らす必要がある。それは小選挙区の方が便利だという点があろうと思うのです。
  112. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 小選挙区制の問題で議論してもちょっと的をはずれるようでありますから、これ以上総理に聞いてもいかがかと思うのであります。ただ選挙区に報告して大いに大衆と接触する、これは大選挙区であろうと、中選挙区であろうと、小選挙区であろうと同じでありまして、そういうことが小選挙にするという理由にはならぬと私は思うのであります。ただ小選挙区がいいか、大選挙区がいいか、中選挙区がいいかということは、日本の民度の発展ということが私は対応しなければならぬと思うのであります。それがゆえに、初めからずっと選挙関係したあなたの経験から見て、日本の民度に今の選挙法のどれが一番いいか、これを私は伺いたいと思ったのであります。ところが違った方面からの答弁でありまして、これであなたと議論するよりかも、この問題はおのずから政党政党の問題になっておりますから、よく議論をして参りたいと思うのであります。ただ私は重ねて申し上げますが、この選挙法と憲法改正の問題を関連させて考えたときに、重大な問題であって、こういう問題については政府はもう一ぺん真剣にお考えを願いたいと私は思うのでありまして、この質問を打ち切っておきます。  それから次は、第三次鳩山内閣成立をした際に、あなたは議会において施政方針の演説をやりました。第一は憲法改正の問題です。憲法改正問題については今論議をかわしましたが、次に税制改革の問題を訴えられました。これはしかし演説をして所信の披瀝をやったが、本年度の予算の中には現われてきておりません。はなはだ私は遺憾と思うのであります。一たび所信を発表したら、こういう工合にやるという一つの信念でありますから、それがどれだけ出てくるかは別といたしまして、当然予算の中に組まれてこなければならぬはずだと思うのでありますが、これが徹底しておらぬことははなはだ遺憾に考えます。第三番目には行政機構の改革でありますが、行政機構の改革については審議会が設けられましてその答申がなされたようであります。しかし答申がなされても、答申は非常に低調なものであります。私は必ずしも国民が期待しておったものではないと思うのであります。そこで私は行政機構改革の根本的な政府の考え方はどこにあるか、これを担当大臣河野君に承わっておきたいと思うのです。
  113. 河野一郎

    河野国務大臣 行政機構の改革につきましては、根本的な考え総理の施政方針の演説に述べた通りであります。
  114. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 総理の施政方針に述べたといっても、それはただ占領下における何とかを改正するという程度のことでありまして、やはり私は一つの傾向がなければならぬと思うのであります。すなわち行政というものは、一つの系統に集めて、そしてその系統に集まったものを能率化する、あるいは科学化する、あるいは民主化する、こういうような前提がなければならぬと私は思うのであります。すなわち行政については、行政事務というものを一つの系統の中に集めて、それの能率を高め科学化し民主化していく。明治憲法のもとにおける行政機構というものは弾圧の機構です。われわれは弾圧された方でありますが、弾圧の機構であった。新憲法のもとにおける機構というものはサービスの機関である。従って国民にサービスする行政機構としては、あり方がどんなものがあるかということは、何も総理の演説でなくて、担当するあなたが一つの方向を示してしかるべきだと考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  115. 河野一郎

    河野国務大臣 根本の方向をお尋ねになりましたからそうお答えしたのでございますが、今のように具体的にお尋ねでございますれば具体的にお答え申し上げます。  すなわち第一は、基本的には総理が申されました通りでございますけれども、現在の時勢を考えまして、これを徹底的に行いますれば行政整理が伴う結果になりますが、行政整理を今やりますことは好ましくない、その時期にあらずという意味から、行政整理は加えないということを第一の前提にいたしました。第二といたしましては、ただいま浅沼さんのお話しになりました通りに、国民が十分に便利に、また国民に十分なる奉仕のできるような機構をとっていきたいものだということも考えております。しかしここで申し上げておきたいと思いますことは、あまりに急激な改革をするということはどうかということが委員会の声でございました。私は今前の太田さんに対するお尋ねを承わっておりますと、委員会を設けるということは、政党政治において信念がないというような意味合いのお話でございましたが、私は行政機構のようなものを改革いたします場合には、なるべく各界の方々の御意見を承わりまして、あらゆる角度から御検討を賜わりまして、これを十分われわれの参考にして考えていくことが妥当であるという意味合いにおいて、われわれの考え考え、そのほかに現在あらゆる角度の方々の御意見を承わって、これを十分に参考にして結論を得ていきたい、こう考えております。従いましてこの答申が低調であるとか、この答申が何であるとかいうようなことでございますけれども、現在あらゆる角度の方々の御要望があの程度にあるということを考えまして、これも十分われわれは尊重して結論を出していかなければなるまいと考えておる次第でございます。
  116. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 まあサービスの機関にしていくのだということはわかりましたが、それにしても今答申されたものをいかように具体化していくのか、これを承わって参りたいと思うのであります。  それからあなたにもう一つお伺いしたいことは、あなたは案を諮問するまでにはずいぶんきついことを言っておられました。たとえば大蔵省の予算を盛っている主計局というものはこれは総理局に持ってくる、こういう強いことを言っておられました。あるいは貿易省を作るあるいは食糧庁を作る、こういうようなことを言っておられたのでありますが、あなたの考え方一つも具現せられていないのであります。そういうような点について私ども考え得ることは、そうなら初めからそういう大きなことを言わないで、じみちなことをやっていくのが私は大臣の務めだと思う。実際はできないことをうんと並べておいて、あとになって私に少し皮肉を言わしていただきますれば、予算局を設置するということは、大蔵省の方から農林予算をよけいとるということに少し活用されたように考えられるのでありまして、そういうような扱い方というものは妥当性を欠くと思うのであります。そういう意味で、答申されたもの、ことに多くの意見を聞いたと言うけれども、阿部真之助さんを委員長として、評論家を委員長として、評論されることをまず避けておくことは、なかなかお手ぎわよきものと私は考えるのでありまして、そうして案外自分意見をその中に織り込むということは、形式的には確かに審議会を通しておるけれども、あなたの操作よろしきを得ていることは何人も疑うことのできない事案であろう、私はこう考えておるわけであります。そこで答申案について同意をされるか、伺っておきたいと思うのであります。
  117. 河野一郎

    河野国務大臣 私は私の政治的感覚においていろいろ意見を申しましたが、しかし先輩並びに権威ある方々の御意見がああいうふうに答申されましたならば、その答申を尊重して、党の方との意見を調整しつつ具現して参ることが妥当であると考えておる次第であります。
  118. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 具体的には。
  119. 河野一郎

    河野国務大臣 具体的に申し上げますと、大体あの答申を基礎にいたしまして、これについて十分実際の政治の動きを加味いたしまして、詳細については答申がありませんから、答申の精神を具現すべく成案を得まして、なるべく早い機会に国会に提案をいたしたい、こう考えております。
  120. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私が具体的に申し上げるということは、たとえば総理府に総務長官一つ設ける、こういうようなことを言われて、国務大臣が担当するということになってきておるようであります。また他方においては各省に副大臣といいますか、次官をもう一人置く。また他の部面においては政策審議のために一つの参与的なものを置く。こういうものを入れて能率を上げるということを言っておりますが、私ども考えをもっていたしますれば、総理府においては官房長官がございます。そのほかにまた総務長官というものができれば、二つの頭ができるという結果になって、非常に問題を残すのではないか。これは私ども政権をとっておるわけではありませんから、とやかく心配する必要もなかろうと思いますが、めぐり回ってまたわれわれのところに来たときに、変えなければならぬということを考えなければならないのでありますから、そういうような点について考えますならば、ここに根本官房長官がおられますから、もう一人の根本官房長官ができるということになりますと、非常に紛淆を来たす結果になることをおそれます。  それからもう一つ申し上げます。予算局の関係について予算閣僚審議会といいますか、委員会を開く。それからほかに貿易閣僚委員会を開く。それは戦争中から閣僚会議というものがあって、現に閣僚会議というものが持たれておると思うのであります。従ってああいうものは法制化してやられるのか、それとも法制化しないで今までのような運用でいくのか、こういう点もあわせて伺いたいと思います。
  121. 河野一郎

    河野国務大臣 総じて申しますれば、答申を受けた範囲内で今検討中であります。今現われておりますのは、審議会の精神が盛られておるのでございまして、これについてわれわれは十分検討して、そうしてその精神にのっとって具体化いたしていきたい、こう思っておるのでございます。  ただいまの総務長官の点でございますが、内閣では官房長官がこれを主宰いたしまして、総理を助けてやる。総理府の方は総務長官が各種の事務を統括してやって参るということで、内閣総理府の関係において混淆することがないというのが答申であります。私もその精神を生かしていくことがいいのじゃないかと思っております。  また予算の閣僚の委員会と貿易閣僚の委員会、この二つについてお話でございますが、これは両方とも法制化することがいいか、ないしは一方を法制化し、一方は法制化しなくともよろしいか、双方とも法制化の必要のないということについては、目下検討中でございまして、大体におきましては、予算の閣僚の委員会は法制化し、他の方は法制化の必要がないじゃないかというような程度に、今話し合っておるところでございます。結論につきましては、今ここで申し上げる段階にまだ至っておりません。
  122. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 もう一つ人事院の廃止について伺っておきますが、人事院は、国家公務員からストライキ権をとった代償として人事院が設けられて、勧告するということになって、これは政府から独立した、政府の干渉を許さない機関であります。私は国家公務員法とこの関係というものは非常に重大なものがあろうと思うのであります。これが今度の答申案によりますと、政府の自由になります。幾分か索制のきくような方向に直すようでありますが、これは直されるつもりでありますか、これも一つ承わっておきたいと思うのであります。
  123. 河野一郎

    河野国務大臣 人事院の制度につきましては、確かに今お話のような理想もあるのでございますが、従来人事院の勧告が間々具現いたしておりません関係から、そこに混淆が起っております。混乱が起った例もございますので、この際もう少し内閣責任において取り扱う、人事の問題をやる。一方において、提訴すべき委員会を別に置いて、そしてそれは内閣から離れて置くべきだという答申でございますからここの答申の精神を十分検討いたしまして、大体その精神にのっとっていくことがよろしいのではないか、こう考えております。
  124. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そのほか内政省その他の問題がございます。これまた答申が出てこれからということでありますが、ただ私ども考えますことは、政府の行政機構に対する考え方というものは、中央集権化をやって、しかもそのことは憲法改正あるいは地方行政制度の改革、それらのものと一連の関連性があって、せっかく民主化したものをもう一ぺん中央集権化していこうという意欲の現われであろうと思うのでありまして、こういう点はせっかく御警戒のほどを願いたいと私は思うのであります。従いましてこの問題については、まだ案ができたばかりでどうするかということでありますそうですから、これ以上追及いたしません。  そこで最後に私は総理に承わりたいと思うのでありますが、鳩山総理吉田内閣倒壊のあとを受けて百二十名の少数をもって内閣を作ったわけであります。そのときには選挙管理内閣、暫定内閣であります。選挙が済むまでの暫定内閣であったのであります。その次は第一党百八十五名にはなったのでありますが、過半数には達しません。過半数に達しない場合には、当然そこに新しい一つの行き方を考うべきであったと思うのでありますが、百八十五名の少数をもって暫定政権を作りました。そのあと今度は自由党民主党が合同いたしまして、第三次鳩山内閣ができました。一年の間に三回内閣がかわっておるわけでございます。これは私は非常に大きな課題だと考えます。しかも四月の五日になりますならば、総裁選挙が行われるそうであります。従って今の鳩山内閣は四月五日までの暫定政権であると言っても断じて過言でないと思うのであります。さらに加えて、新聞の報ずるところの岸幹事長その他の談話によりますと、十月まではやってもらう、あとはまたかわるんだ。そうするとかりにあなたが総裁になられ、総理を兼任するということになりましても、十月までの暫定政権ということになろうと思うのであります。私ははなはだ国民のために不幸であろうと思うのであります。やはり政権というものは長くその任期の間やれるような感じを国民が持てばいいのでありますが、案外この内閣は暫定政権、暫定権、これが三つも四つも続いてくる、こういう状態というものは国のために非常に私は不幸と存じます。また私はあなたが、からだがお丈夫でないのに、そのからだをひっさげて国政の衡に当っているその努力には感服いたします。しかしそれは私の私情であります。しかし日本の国全体のことを考え、そうしてまた国民全体のことを考えてみますならば、このような暫定政権を作っておくことが、一体国家のためであるかどうか、国民のためであるかどうかということは、真剣に総理として考うべき段階ではなかろうかと私は思うのでありますが、これについて総理の忌憚のない意見を私は承わりたいと思うのであります。(拍手
  125. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 暫定政権というものはあまりいいものじゃありません。けれども私は暫定政権をやっているつもりじゃない。
  126. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 暫定政権をやっているつもりでないということは、事実を否定した形であって、これはあまり強弁過ぎると思うのであります。これはかりに総理考えてみれば、選挙管理内閣としてであって、あなたの政権というものは選挙が済むまでの政権だったじゃありませんか。これが暫定と言えないでしょうか。また百八十五名を作って、そうして百八十五名の不安動揺の中に自由民主党ができ上るまでは暫定政権であったじゃないでしょうか。今あなたが総裁になるまでは暫定政権ではないでしょうかし相手方の緒方さんがなくなって、多分今度はあなたということになるでしょう。これはまことに哀悼にたえない点を感ずるのでありますが、しかし残されたあなたが、今度は四月の五日までとなって、それは暫定政権工ありましょう。これは評論家もそう言っていれば、世間もそう言っています。それを暫定政権と思わないところに、あなたの判断力について考えなければならぬということになります。
  127. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いつまでこの内閣が継続するかどうかは、これは私にはわからない。(笑声)
  128. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 これはこの前の予算委員会におけるわが党の伊藤好道君の質問に対しても、いつまで政権が続くかわからぬ、私はいつまで政権をやるかわからぬ。これは私は権力の座にある者はそれでいいと思うのであります。なるほど権力の座にあって、総理大臣の地位にあって政治をやっていればそれでいいと思うのでありますが、わからない方に政治を委任しておる国民の側に立てば不幸この上ないと、私はこう考えるのであります。(拍手)それは私はそういうようないつまで続くかわからぬというような言葉ではなく、あなたはほんとうに倒れて後やむというならば、これは聞かんかなであります。これはまた聞かんかなであります。そのつもりといってもその意思はどこにも現われてきません。これは私ははなはだ遺憾に考える点でありまして、どうか慎重に——これ以上あえて答弁を求めようといたしません。どうかあなたにおいては一つこの際慎重にお考えを願って、そうして日本の国民の動向をよくお考えの上にその出所進退を明らかにしていただきたい、こう考えるのであります。  以上をもって質問を打ち切ります。
  129. 三浦一雄

    三浦委員長 以上をもちまして昭和三十一年度一般会計予算案外二案に対する質疑は終局いたしました。  暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかった〕