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1956-02-10 第24回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 小平  忠君 理事 柳田 秀一君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    植木庚子郎君       小川 牛次君    北澤 直吉岩       北村徳太郎君    纐纈 彌三君       河野 金昇君    河本 敏夫君       須磨彌吉郎君    竹山砧太郎君       中曽根康弘君    橋本 龍伍君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    直崎 勝次君       松浦川太郎君    三田村武夫君       宮澤 胤勇君    山本 勝市君       足鹿  覺君    井手 以誠君       井堀 繁雄君    今澄  勇君       久保田鶴松君    小松  幹君       河野  密君    田原 春次君       辻原 弘市右    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       八百板 正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         通商産業大臣  石橋 湛山君         郵 政 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君         文部事務官         (初等中等局         長)      緒方 信一君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  昭和三十一年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。  昨日の足鹿君の質疑に対し郵政大臣より答弁いたしたいと申し出があります。この際これを許します。郵政大臣村上勇君。
  3. 村上勇

    村上国務大臣 昨日の当委員会におきまする足鹿委員の御質問にお答えいたします。質問の要旨は、市町村合併に伴う郵便局電報電話局整理統合による市町村民への影響、及び整理統合の結果生ずる職員失業対策いかんという御質問であったと思いますが、市町村統一地域郵便局あるいは電信電話局をそのまま放置しておきますと、郵便物におきましては配達区分を間違えたりあるいは届け先を誤まったりするようなおそれもありますし、また電話等におきましては同一市町村内において市外電話をかけるというようなことになりまして非常に利用者に不利益を来たすことになりますので、できるだけ早くこれの統合をはかりたいと思っておる次第であります。その統合によって関係局の間に定員の増減は当然生ずるわけでありますが、統合によって人員はかえって増さなければならないような場合も多いのでありまして、失業問題が生ずるというようなことは絶対にないと思います。
  4. 三浦一雄

    三浦委員長 質疑を継続いたします。三田村武夫君。
  5. 三田村武夫

    三田委員 文教政策に関して文部大臣にお尋ねいたしたいと思います。  昨年の第二十二特別国会におきまして、教科書問題行政監察特別委員会で取り上げられ、世上相当論議をかもし出したのであります。わが党といたしましては国政根本をなすものは教育制度であり、教科書問題がその中において非常に重要な地位を占めることは当然でありますがゆえに、この教育制度に関しましては相当の熱意を持ちまして研究してきたのであります。その点は文部大臣よく御存じでありますが、あの行政監察特別委員会で問題になりました教科書に関する調査の結果は、まだ当衆議院に正式に報告になっておりません。やがてこれは本会議に報告され、議長の手元にも書類として提出される運びとなることと思いますが、今度の三十一年度予算を拝見いたしますと、教育制度に関する新しい計画予算面に相当現われてきておるようであります。問題はきわめて、広範囲にわたりますから、私は主として教科書制度焦点をしぼって概要をお尋ねいたしてみたいと思います。これはやがて文部当局で御準備を進めておられます新しい教科書法案があるいは文教委員会あるいはその他の関係委員会で十分審議されることと思いますが、予算に出てきておりますので、当委員会におきましても予算審議責任上、その方向内容を一応伺っておくことが当然だと思いますがゆえに、お尋ねいたしたいのであります。  その前に一言申し上げて文部大臣の御政見を伺いたいのでありますが、昨年来世上論議焦点になりました、いわゆる教科書問題であります。われわれはあの行政監察特別委員会調査活動を通じていろいろな事実を承知いたしました。私もこの委員会委員の一人でありましたし、昨年の夏には同僚の委員ともども九州に参りまして現地調査を行なってきた一人であります。この調査内容はきわめて多岐多様でありますから、ここで申し上げる時間もありませんし、それをやろうとは思いませんが、要するに私はこの教科書中心にした教育政策と申しますか、教育活動と申しますか、その問題点をしぼってみると大体三点ぐらいになるのじゃないか、それは現在の教科書制度が果して妥当かどうかということであります。そこの中に、あるものは教科書制度の柱ともいうべき検定制度、それから発行採択供給、こういう順序になるのでありますが、われわれがあの委員会を通じて新しく知り得ましたものを材料にして世上大いに論議をかもし出しました、いうところの「うれうべき教科書の問題」というパンフレットを出したこともあります。果して憂うべき教科書か。(「憂うべき自民党」と呼ぶ者あり)あるいは自民党教科書問題に対する坂扱いが憂うべき態度であるか。(「正直でよろしい」と呼ぶ者あり)これは世上大いに論議されましたが、私はしかしあの行監委員会において教科書問題を取り上げたことにより、世上多くの関心を高めたことだけは大きな収健だと思います。つまり教科書というものは教壇において教師と学童の間だけの問題でなくて、その国の国政の根幹となるべき重要な問題でありますがゆえに、識者はもとよりでありますが、直接関係を持つ父兄もこれに重大な関心を常に持つべきことが必要であります。そういう意味合いからいたしますならば、あのわれわれが世論に問うた、憂うべき教科の問題は、まさに一つの大きな進歩であり、教科書問題世論の中から正しい方向に導くための一つ誘い水になったことは確かであると私は信ずるものであります。御承知の通り、今は民主主義でありまして、われわれが立案し、与党たる政府一つの案を持ちましても、世論を無視してこれを押しつけるわけには参りません。その正しい世論の中から正しいものを生み出すことが、民主主義の一番正しい方向でありますか、あの世上大きな話題か提供いたしました教科書問題が、今後の教科書行政、今後の教育行政の進展、改善、発展のために一つの大きな足場となり、前進えの誘い水になるたらば、私は決してその功績は少くないであろうことを信じて疑いません。  この論議の中に二つの問題があります。一つはその検定業務内容に関する問題であり、同時にそれに付随するのではなく、不可分の関係に立つ発行制度の問題であります。もう一つ内容の問題であります。内容偏向かいなか、われわれはある事実をとらえて、これを偏向といい、諭者はまた偏向にあらずと主張する人々もあります。そのいずれが正しいかは、これまた世論が決するところでありますが、少くともこういう観点に立って眼前の教科書問題を真剣に検討いたしてみたいと思います。    〔委員長退席稻葉委員長代理着席〕  そこで私冒頭に申し上げましたように、問題の論点教科書制度にしぼってお尋ねしてみたいと思うのでございますが、大体三十一年度予算書を拝見いたしますと、教科書改正に伴う経費として、総額六千二百九十三万五千円でありますが、前年度比の四千五百八十八万八千円増となっております。これによってどういうことをおやりにしなるのか具体的にお尋ねいたしてみたいものでありますが、その前に今まで申しました続きとしまして、さらに一言つけ加えて文部大臣の御所見を承わりたいのであります。要するに教科書問題根本と中しますか、その終着点は、よい本を安く、公正な採択で、完全に供給する。さらに集約いたしますと、いい本を安く児童学童の手に渡すということであります。松村前文部大臣は、昨年の三月六日でありましたか、文相就任第一会の記者会見で、教科書の問題を取り上げられ、二つ方向を示しておられます。一つ教科書の数を減らす、もう一つ教科書定価を安くする、この二つの線を出しておられます。現清瀬文部大臣も、前文部大臣力針を踏襲するということを就任の際のあいさつに言っておられますが、教科書の数を減らすという問題は、国の経済の面からいって、非常にいいことだと思います。それからその価格、定価を安くすることは、父兄児童の負担を軽減する意味から当然考えなければならぬことであります。ところが現在の教育制度のもとにおいて教科書なるものの置かれている位置を考えますと、教科書学習指導上の一教材にすぎないという建前になっております。これは私なかなか検討を要する問題であると思いますが、一教材にすぎないとしましても、これは他の教科雷、他の教材と比較いたしまして、その重要度の高さは問題になりません。われわれは小さな子供時代から学校で学ぶ際いつまでも頭に残るものは、先生の言った言葉教科書に書いてあることであります。教育制度の面から見ますと学習指導上の一教材にすぎないという、建前でありますが、教科書そのもの教育上与える影響というものは、単なる教材でなくして、やはり教育行政の基本的な最も重要なものであります。そういう観点から、今教科書問題が大きく論議され、文部当局においても、三十一年度四千六百万円ばかり予算をよけい組まれまして、教科書制度改正しようという御計画のようであります。大体文部大臣は、どのような方向改正のポイントを置いておられますか。まず最初にその概略、その方向をお尋ねいたしたいと思います。
  6. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ただいまお尋ねのうち、まず予算関係する具体的な部分についてお答え中し土げたいと存じます。まず教科書の問題は、今三田村君御指摘通り、昨年未の行政監察特別委員会並びに当崎のわれわれの属しておった党派の政務調査会において調べたことが大へん参考になっております。おおむねあのとぎ諭ぜられたことは、一つ教科書の取引に不公正なことが多いということが一つ。もう一つは思想的にあるイデオロギーに偏向しているということであります。もう一つ偏向の有無にかかわらず、すこぶる誤謬が多いということです。人名、年度、時、場所について非常に大きな誤謬があるということであります。それゆえにおおむねこれらの点を是正するのでございますが、これを是正する第一は今までの検定方法がこれでいいか、検定したものを学校採択する方法がこれでいいか、採択されたものを教科書屋さんからして発送して生る方法がこれでいいか、こういうことになるのでございます。そこでます第一の検定は、これを慎重厳密にするために、文部省に四十五人の専門調査官を置こうとしておるのであります。今までは専門調査官がないのです。匿名の、どこか学校先生あたりを囑託しておるのですが、名前は秘密にしてあるのです。それが何と千四百人ほどあるんです。だからここらにおるに相違ないのです。それは、はなはだ不公正だからして、専門調査官を四十五人置きまして、補助的立場で、やはり非常勤のそういう人も嘱託しなければなりません。それから教科書発行事業は、単純な営利事業じゃないのでありまして、非常に公共的の性質を持っておりますから、発行者については一定規制を加えよう。それからこれを監督することをいたそう。教科書採択、わけても義務教育である小学校中学校教科書採択は、各学校ごとに行うよりも、一定広域区域ごと教育委員会委員職員その他の学識経験者を加えた広い立場から採択をしよう、こういうことでございます。同一種類教科書使用区域範囲については、教育的な見地や、御指摘点等考慮いたしまして、慎重にいたします。これらとともに不正行為を防止するための必要な措置を講じます。ほぼ成案を得ておりますから、不日法律案として御審査を願うことに相なろうかと思います。  つけ加えて申しますが、かくのごとく教科書のことは、発行採択及び供給でありますけれども、あなたの言葉にもありましたが、教科書内容ですね。何が書いてあるか、これが大切なのです。今度出します案は、そこまでは遺憾ながらいっておりません。というのは、根本にさかのぼったら非常に深刻なことでありまして、日本はあの通り敗戦をいたしまして、旧敵国の占領下にあったのです。ことに占領軍日本教育格別注意を払った。格別注意を払ったというのは、戦勝者立場から注意を払っておる。そこで昭和二十二年に教育基本法というものを作っておる。まだ占領の初めのころであります。それは、当時今までの教育勅語にかわるものだといって、第一条には日本教育根本、すなわち道徳律を君いておるのであります。その道徳律は、人格の完成と、それから平和国家正義真理を愛する、個人価値をとうとぶ、勤労責任を重んずる、これだけが書いてあるのです。そうして教科書を作る基準といたしまして、教科書検定基準というものをこしらえて、教科書検定基準によって検定しているのであります。検定基準は、各教科書について一々検定基準が書いてあります。書いてありますが、国語にしても、算術にしても、理科にしても、社会にしても、検定基準の絶対要件として今のことが書いてあるのです。ほんの三行ほどですから読んでみますが、「教育基本法および学校教育法目的と一致し、これに反するものはないか。たとえば、平和の精神真理正義尊重個人価値尊重勤労責任の重視、自主的精神の養成などの教育目的と一致し、これに反するものはないか。」この文章がみんなについているのです。ここに書いてある責任を重んずるとか、正義を愛するとかいうことはよろしいのです。これを非難すべきじゃありませんが、第一の道徳律として入るべきものが欠けている。国を愛せということがない。それから家庭生活、すなわち父母に尽せということがないのです。この二つ教育基本法にありません。従って、学校用教科帯検定薬準すべてに共通な絶対要件として、それが欠けているのです。このものさし検定しているのでありますから、検定官をたくさんにしたところが、同じものさし検定するのでありますから、今までのような誤謬はなくなるでしょう。けれども三田村さんその他委員諸君の物足らぬと思っておられる点は、やはりこれじゃいけないのです。そこで別途の方策といたしまして、このたびは臨時教育制度審議会なるものをお作り願います。そこで国内の教育家なり民間の長老耆宿にお集まり願いまして、その根本一つ検討を加えてもらいたい、こういうことでございます。
  7. 三田村武夫

    三田委員 時間の制約がありますから、なるべく私も簡潔にお尋ねいたします。  ただいま文部大臣説明通り、今までの教育制度にあきたらないのを持っていることは、私も同様であります。私は当時院外でありましたから、言いたいことはたくさんありますが、この機会は省略いたします。しかしわれわれが今日この委員会で問題を取り上げております趣旨は、過去のこともさることながら、現在及び将来の教育制度をどこに持っていくかというところに焦点があるのでありますから、今までなされて参りました、なかんずく占領中に行われて参りました文教政策については、清瀬文部大臣責任はありませんが、責任のあるないという問題よりも、一つその論点を現在及び将来に置いてお考え願いたいと私は思います。  問題をしぼってお尋ねしますが、今文部大臣お話しになりました通り教科書問題中心は、検定と、発行と、採択と、供給であります。第一に検定について具体的にお尋ねいたしますが、これはいずれ文教委員会等で詳しい審議が行われると思いますから、私は要点だけお尋ねしていきますが、今までの検定制度がずさんであったことは言うまでもありません。教科書内容に誤まりのあったこともわれわれはその通りだと思います。偏向云々の問題はともかくといたしまして、完全なものとは私も思いません。そこに教科書制度の改訂が問題になってくるのでありますが、しかしこれは私は今までの文部大臣責任だと思います。検定文部大臣がやっているので、その制度の旧違いはともかくといたしまして、文部大臣検定を更けておるのであります。制度上の欠陥はもとよりここで指摘しなければなりませんが、今清瀬文部大臣もおっしゃったように、従来の検定はいわゆる覆面検定でありまして、調査員なるものが実際の検定の実権を持っておるような形になっております。しかしその調査員なるものはどこのだれかわからない。ところがこれは出版業者立場からいたしますと、死活問題でありますから、わからない調査員を手探りで探る。そうして大体見当がつくといろいろなことが行われたようであります。そうしてその調査をされたものが検定審議会にかけられ、ここで大体形式的にきまります。そうして文部大臣手元に持っていくと、文部大臣はめくら判をぽんと押す、こういう形なのです。制度上は文部大臣責任でありますが、実際は文部大臣責任をとり得ない形にあった。ここに問題があるのでありますから、この点に新しい教科書検定制度のねらいの一番重要な点があると思うのです。もちろんそういう方両も御考慮上新制度は立案されることと思いますが、そこで私はこの新制度について伺いたいことがある。今文部大臣説明通り審議会機構、機能を拡充する。今まで審議会のメンバーは大体十六人くらいだったのが、今度の案によると大体八十人くらいになるようであります。それから調査員覆面でなくて正規の責任ある立場調査員を置かれる、こういうことのようでありますが、しかし私はその検定ということについては非常にむずかしい問題があると思う。今文部大臣から、教育基本法に書いてある検定基準なるものがああいうことだから、今のままであるならばだれがやっても同じ結果が出るというような御意見もありました。それはそうかもしれませんが、必ずしもそうばかりではない。平和を守らなければならぬことは自然であります。真理探求教育の基本的な課題であることも当然であります。その平和を守るという内容真理探求の内枠の中に新しい道徳律がなければならぬのでありまして、それはやはり検定というものがほんとうに厳密に、厳格に正しく行われるかどうかということであります。そういう点についていろいろお考えになっておると思いますが、この検定の問題にからんであとから出てくる問題といたしまして、教科書の数をしぼるという問題があります。これは検定基準というものを一つ設けてやりますと、入学試験あるいは入社試験と違いまして、一定基準をもって検定するのでありますから、この基準にパスしたものは全部検定になる。だからこれは新しい制度のねらいの中の一つでありますが、たとえば一教科について二種ないし三種にするとか、その数を減らす、これはあと採択の面にもなってくるのでありますが、そういうことは私は検定ではできないだろうと思う。入社試験なら、うちの会社は五十人しかとらないのだと五十人にしぼれます。この学校は百人しかとらないといって百人でしほれますが、検定基準というものがあってこの基準にパスしてきたものをどこではねていくか、これは困難な問題であるばかりでなく、それに伴うものはまたいかがわしい不正行為、いわゆる運動とかなんとかいうことが出てくるのであります。私は新しい制度そのものは大体方向においては問違っていないと思いますし、内容は徐々によくなると思いますが、そういった検定制度をめぐる裏街道、これは行監委員会でもしばしば問題になったのでありますが、そういうことについて何か特別な配慮をお持ち合せでしょうか、この点一つお伺いいたしておきます。
  8. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ごもっとものお疑いでございます。検定基準をこしらえておきましても、人間界のことでありますから、いろいろ時間のたつうちに裏街道もでき、あるいは情実も起ることは予想できるのでありますが、適当なる監督機構を作りまして公正にやりたいと存じております。前任者はどうやっておられたか存じませんが、私自身も自由民主党教科書問題を取り上げた一人でございましたから、私は自分の責任として問題のある教科書は自宅へ持って帰ってよく調べるようにいたしております。
  9. 三田村武夫

    三田委員 私は、これはむずかしい御注文かもしれませんが、問題が教科書なるがゆえによほど厳格な規制をやっても当然だと思います。と申し上げることは、行監でもいろいろな事実が出てきたのでありますが、検定をパスするためにいろいろ裏街道がある。だからここで検定官、つまり今度新しく設けられます検定審議会審議委員、それから新しく覆面脱いで表面に出て参ります調査官行為、これについては相当特別な規制を設けてもいいのじゃないかと思うのです。行政上の責任だけでなくて刑事上の責任まで科する特別の考慮が要るのじゃないかと思うのです。この教科書検定に関して世上伝えられるような、いろいろ忌まわしいことがもし将来も起り得る余地があるとするたらば、これは今文部大臣のおっしゃったように、人間ですから誘惑に負げるということもありがちであります。しかしこれはありがちなことだからやむを得ないんだということでは、普通の問題と違います教科書なるがゆえに済まされないので、何か特別な配慮が要るのではないかと思うのであります。これは御研究願いたいと思って申し上げておきます。  時間がありませんから次にいきますが、発行の問題であります。これは文部大臣おっしゃったように、現在の教科書制度は極端なる自由営利企業であります。それゆえに好ましからざることがあるいは検定について、あるいは採択について、あるいは配給について、供給について起り得るのであります。世上自由民主党教科書国定にするために一歩々々前進していくのだという議論があり批判があるようでありますが、少くとも私は国定にしようたどとは考えておりません。しかしながら教科書というようなものを現在のように極端な自由営利企業にしておいていいかという問題があるのであります。これは自由営利企業なるがゆえ採択競争となり、またその供給業務に関しても切ることのできない悪因縁が出てくるのであります。これは一つ新しい教科書制度を考えられるに当って、いろいろな角度から厳重に一つ検討願いたいと思います。大体私の調べたところによりますと、教育基本法ができまして教科書検定制度が実施されてから今日まで見ますと、昭和二十三年八月の第一回展示会に出展した発行会社は、二十二社です。教科書種類は六十種類であります。ところが現在は九十五社になっておりまして、種類の点から児ますと、小学校だけで約白五十種類中学校が三百八十種類発行の総冊数を数えますと、二億三千六百万冊になっておる。中には一種類だけ出している発行会社が四十七社もある。極端な投機の対象になっておりまして、一県一科目採択を受けますと、何十万冊というものが出るのでありますから、けっこう商売になる。そこにも私は問題点があると思いますから、今度新しくお考えになる場合には、発行についての規則をどのようにお考えになっておるか。これも当然検討のことと思いますが、一応現在お考えになっておる御方針を伺いたい。
  10. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 先刻もちょっと申し上げました通り発行者の資格についての規制をいたしまして、登録制度をとりたいと思っております。それからして、かくのごとく資格をきめるのみならず、その後の監督規定も作ろう、かように存じております。
  11. 三田村武夫

    三田委員 詳細なことは文教委員会に譲りまして、次の問題に関連しながら移って参ります。今中しましたように、自由党利企業という建前をにわかに変えるわけには参りません。私も公社案とか国営はきらいでありますし、非能率であり、かえって益するところよりも害があることが多いように考えますから、現行制度を守っていきたいのであります。しかしながら今のような極端な自由営利企業のままでいいとも思われぬ。どうぞ将来の発行についての監督規制ということは、厳格にお考え願いたいと思います。  それから次に発行関係して教科書の価格の問題が出てくるのであります。これは今のように自由企業でありますから、売らんがための競争がある、忌まわしい問題が出てくるのであります。それと同時によけいな経費がかさんでいきます。売り込み競争の運動のためにいろいろの経費が重なっております。これは行監でも、各教科書発行会社責任ある代表者に出てきてもらって、宣誓証言を求めた上、いろいろ事情を聞いたのであります。現在のままでも教科書発行採択供給、これをうまく規制していけば、大体一割くらいの価格の引き下げは可能だという証言をした人が、有力な出版会社の代表者の中に二、三ありました。いろいろ計算をしてみまして、私たちもこれは可能だと思います。現在中小学校教科書今の二億三千六百万冊、金にして大体百二十億くらいでありますが、これを一割下げるとなりますと、大体十二億というものが下る。十二億というものが父兄学童の負担減になる。四千六百万円の予算をここで増して、そのことによって定価が一割下るなら、十二億円父兄の負担が軽くなるので、私はこれは非常に善政だと思う。教科書内容もよくなる、あるいは安くなってくる、新しい教科書制度でもしそれだけの効果が生み出されるならば非常にいいことだと思います。しかしそのねらうところにいくかいかぬかは新教科書制度なるものが、われわれのねらった通り、現在の文部当局が考えておられる通りいくかいかぬかに一にかかっておると思います。発行定価の問題は不可分でありますから、ついでながらお尋ねいたしておきます。おそらく文部当局は、今度の教科書制度改正に関して、教科書定価についてもお考えになっておると思います。大体われわれ行監で調べたところによりますと、一割くらいまで引き下げは可能だということになっております。責任ある業者の代表もこれを証言いたしております。その点どのような見通しを持っておりますかお尋ねいたしたい。
  12. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 三田村さん御引用の通り行監においてもこのことが調査されました。今教科書の価格の最低限をきめるために調査をやっておりますが、新たなる教科書法とともにこれも一つ検討いたしたい、かように思っております。
  13. 三田村武夫

    三田委員 これはぜひ一つ十分御検討願います。  次に採択の問題ですが、私たち一年調べて参りまして、一番いやな思いをしたのは採択の問題であります。採択競争、私はここで理論闘争をやろうとは思いませんから、過去のことは省略いたしますが、この採択問題を取り上げた際、いわゆる日教組というものが浮び出てきたのであります。この問題をここで取り上げて議論するつもりはありませんが、どうしてもこれは自由企業でありますから売らなければ商売にならぬ、売る場合には採択のウェートがどこに置かれているかということなのであります。現在まで行われてきた採択方式を見ますと、採択の権限は教育委員会にあることになっておりますが、実際の採択の実権を握っておるのは現場にある教職員であります。各教科の主任教師であります。そこにいろいろな問題が出てきたのであります。採択方式かきわめて不明確であります。教育委員会にあるがごとくないがごとく、実際は教科主任にある、こういうところに問題点がありますから、今度新しい教科書制度を作られる場合、この採択の方式についてはよほど厳密にお考え願いたいと思います。これは今詳しいことをお尋ねしようと思いませんが、私が大体拝見した文部省の諸案でもなお多くの不安が残ります。採択の問題には危惧の問題がありますが、府県単位でやるか、あるいはさらに区分して市郡単付にいくか、あるいは山間部は山間部、平坦部は平坦部、町場は町場、郡部は郡部という関係にやるか、いろいろ今後の問題は残ってくると思いますが、採択をどこできめるか、新しい案によりますと、校長の具申権なるものを尊重して選定協議会できめるというようなことになっておるようであります。そして大体府県単位に各教科目について、教科書種類は一種類ないしは二、三種類にしぼっていくという御方針のように私は伺っておるのだが、しかしながらこれは必要だが、採択の範囲を地域的にきめまして、科目についても種類をしぼって参りますと、業者の立場から考えますならばいわばえさが大きい。一府県で一科目採択をとりますと、何十万部というものがごそっと来るのであります。またえさが大きいので小さな悪よりも大きな悪が行われやすい。これはまた容易ならぬ問題が出て参ります。業者にしてみると死活問題でありますから、国語なら国語、理科なら理科、その教科書小学校何年用、どの府県のものをとるということによって、その会社の存否にかかわる重大問題でありますから、えさが大きい。従って行われることも裏面運動がより熾烈になり、また悪質になってくるということも考えられますので、これも一つ厳重に御研究願いたい。不正行為のあった場合どうするか。これは私は会社に対する行政処分だけではいけないので、発行権の停止とかそ、ういうことだけではいけないので、もっと大きな刑事上の制裁規定まで設けることが至当ではないかという気がするのです。何も私は人を罰することだけが目的じゃないのだが、しかしこういう教科書などという問題については、よほど厳重な規定を置いても世間はこれを承認すると思います。そういう点について何かお考えがありましたらこの際伺っておきたいと思います。
  14. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 従前弊害を流しました駐在員等は認めないようにいたしたいと思っております。それから今まで展示会といって急場の短時間の展示をいたしておりましたが、俗に言う教科書センターといったような、平生から教科書を集めておる場所をこしらえまして、常時研究ができるようにいたしたい、こういうふうな改善をしよう、これは予算にも組んであります。それから今の採択の区域は大体こういうふうに考えております。府県の教育委員会で当該府県の区域を自然的、文化的、経済的の条件の一致しておるものを一採択区域としよう、もっとも小さい府県ならば府県をそれにされてもいいのであります。採択する機関はかりに選定委員会といっておりますが、そういうものを作ってやろう、こういうことでございます。
  15. 三田村武夫

    三田委員 今駐在員制度はやめるとおっしゃいますが、これはできますか。私はできまいと思うのです。これは企業が自由でありますから、その自由企業という立場から営業を盛んならしめるために、ないしはその会社の企業助成のために、その当然の業務行為として宣伝員とか駐在員とかいうものを置くことは自由でありまして、これは法律で制限することはできないと思う。あるいは文部大臣の通牒とか訓令とかあるいは政令とかいうものでもちょっと書きようがないように思います。それをやると憲法上の問題も入ってくると思いますからできないと思います。私はそれよりもむしろ好ましくないこと、教科掛などを目標にして今まで世上とかくのうわさになっておりますようなことがもし行われた場合の制裁規定の方が必要だと思う。これならできるのであります。営利のために行う業務活動、それを法律で制限するとかあるいは駐在員を禁止するということは、これは訓令でももちろんむずかしいし、文部大臣の通牒が来たって開かなければいいのです。これは法律に書くわけにいきませんし、むずかしい。それよりもここでぜひお考え願いたいのは教科書採択に関して何らかの不正行為が行われた場合は、その発行会社について発行権を取り消すとか、あるいはまたその行為を行なったものに対しては刑事上重い罪を課するとか、こういうことの方が私は効果がありはしないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  16. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 御説ごもっともでございます。ただしかし自由企業の場合でも不正競争防止法というふうなものがありまして、不正の営業行為は憲法治下においてもある程度規制できますから、何とか弊害のないようにいたしたいと思っております。後段御説明の、これを犯したものについての制裁も考えておるのであります。必ずしも体刑、罰金というのではなくして、発行の停止といったようなことも一つの手段と思っております。
  17. 三田村武夫

    三田委員 よく御研究の上一つ一番いい方法をお考え願いたいと思います。  教科書問題で一番厄介なのは採択です。検定発行採択供給、この四つの関係が一本につながっている、一本なのです。ほんとうは検定発行採択供給、四つならこれが全部切れると一番いいのですが、ちょっと切れないと思うのです。そこでできるだけ弊害の起らないように、その四つのポイント、ポイントを規制していくということは私は必要だと思います。どうぞ一つ検討願いたいと思います。  それから供給でありますが、今文部大臣採択の区域についてはお話がありましたが、種類についてのお話は伺わなかったのであります。これが種類の点において一県一種類ないしは二種類、一科目、こういうことになり、供給の面でいわゆる特約店というものがだんだん集約されて一本にしほられてくるようなことになりますと、完全な独占企業になります。種類は一本にしぼられ、特約店は一本になる、こういうことになると他の商品と違いまして学校教育がある限り、生徒学童の存在する限り教科書というものは要るのであります。これは絶対に要るものであります。絶対に要るものを一県一社、一特約、一種類ないし二種類、こうなると完全に独占企業になる、これも企業になる、これも非常に問題があります。こういう点を考えて文部事務当局の案でありますか、いつか公社案なるものが出たことがあります。これも一つの考え方であろうと存じますが、私は少くともこの公社案には賛成しがたい。それならどうするか、非常に公益性を高めた立場から、営利企業である出版、発行、特約、供給、こういう業務を規制していくということは非常に困難でありますが、文部事務当局あたり何か名案をお持ちでありましょうか、教科書の数を地域的にしぼり、その種類によってしぼり、さらにその県において取次店をしぼってくるということになりますと、完全に独禁法に抵触する、つまり独占企業になって参りますが、こういう点について何かお考えはありましょうか。
  18. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 公社案はとらないようにきめております。今の供給機構については改善すると申し上げるのほかはないのであります。いずれ成案を得て成文にいたしましたらすみやかにお目にかけたいと思います。
  19. 三田村武夫

    三田委員 時間がありませんから飛んでいきますが、この教科書の問題と関連して行監特別委員会でも深刻に論議された問題があります。それは副次的な教材とでもいいますか、ワーク・ブック、テスト・ブック、学習帳の問題、冒頭に申しましたように、今の教科君というものは教育指導上の一教材にすぎない、こういう建前をとっておるといたしますならば、学習帳もまた一教材である、こういうことになります。ことに夏休み帳、冬休み帳を学校先生からもらって、そうしてうちへ帰り一生懸命にやります。これは確かに重要な教材に違いない。それが、これは検定も何もありません。今までやったことは、大体教員組合あるいは教職員の研究団体が中心になって編さんされ、普通の出版会社から出されておる場合もありますが、これはまれです。ほとんど教職員の団体の手で出されておるのであります。この内容は詳しいことは申し上げません。やがて行政監察特別委員会調査内容が本会議に報告されると思いますからこれは省略いたしますが、なかなか好ましくない問題があります。これはどうぞ教科書と切り離してしまわないで御研究願いたいと思います。どういうふうにして規制していくか、教科書の方は厳重に新しいワクがはめられてくるが、副次的な教材ともいうべきワーク・ブック、テスト・ブック、ないしは学習帳というようなものが全然別個な立場に切り離して置かれて、今まで通りこれが動いていくということになりますと、片ちんばになってしまって、教科書改正の意義目的を非常に多く失うのじゃないかという気が私はいたします。教科書改正と同時に、副次的な教材としてのワーク・ブック、テスト・ブック、学習帳、こういうものについてどうするかということをお考えになっておりましょうか。
  20. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ほかの考えで今教育委員会問題というものがありますが、いずれの案によりましても、これをなくするのじゃございません。この教育委員会に届け出しめるというふうなことでやったらどうか、こういうふうなことを考えております。あまりきつくやると困りますし、届出によって、非常に工合の悪いものはそこで措意ができはせぬかと思っております。
  21. 三田村武夫

    三田委員 私はどうぞきつくおやり下さいという要求を申し上げるのではないのであります。やはり教育制度というものは、新しい目標を持って、生徒児童の手に渡る教材はできるだけ内容的にいいものを、またできるだけ安く、公正に渡したいというのが念願であります。同時に教育行政の中核であり、教科書問題焦点でなければなりません。できるだけ内容的にいいものをできるだけ安く生徒児童の手に渡すという観点から考えますと、その負担の面からいいましても、ワーク・ブック、テスト・ブックあるいは学習帳というものはそう軽くない負担であります。こういう点についても、どうぞ一つ同時にお考え願いたいということを申し上げたのであります。  それから時間がありませんが、今文部大臣がちょっと触れられました教育委員会の問題です。これはまだお尋ねすることは無理だと思いますから、これからどのような方向に持っていかれるかをここでお尋ねいたしません。ただ私一言申し上げて、この教育委員会をどうするかということについての御参考に供し、かつ文部大臣の御所見を伺いたいと思います。これはやかましい議論になっておりまして、わが党においても真剣に研究せざるを得ない立場に立たされております。文部当局も御同様と思いますが、昨年来この教科書問題を取り上げて、われわれが冒頭に申し上げましたように二つの面を出してきました。一つ教科書発行、その検定制度内容であります。一つ偏向の問題、その偏向の問題に関連して、教育の中立性ということが当然浮び上ってくるのであります。その教育の中立性を見たときに、一体日本の現在の教育政策教科書の問題、その一番高い指導権がどこにあるかということでありますが、これは教育基本法に見ても、あるいはまた教育委員会法によりましても、これは明らかに教育委員会にあります。この教育委員会というものに教育指導の一番高い権限があるということは、これはおうべからざる事実であります。その教育委員会のあり方が今問題になっておるのでありますが、私は偶然か必然か、深刻な実際問題にぶつかったことがある。これは私差しさわりがあってはなんでありますからどの県かは差し控えますが、実はある県の教育委員長が何何県教育委員長という肩書きで出したものでありますが、去年の夏の終りにこういうものを出しております。これはその県の教育委員会、中小学校長、それから青年団一長、婦人会長、そういったもの全部に出したものであります。これは残暑見舞で、   残暑御見舞いたします。   われわれはこれまで吉田内閣に代った鳩山内閣が日ソ国交回復、日中貿易の促進、減税、住宅難緩和など、国民大衆の希望する政策を掲げていることから鳩山内閣の本質は反動であるにせよ、その公約を実現させるよう下からの圧力をかけることに全力をおいていた。   しかし、その后の鳩山内閣の施策は保守合同を名目とする舞台裏の工作に精力を奪われて、公約実行はおろか保守反動の本質を露骨に現し、『おわび内閣』となりはてつつある。  われわれ革新陣営は一日も早く国民大衆の政治的、結集を完成して、くずれゆく保守陣営より革新陳営に政権を移し、もって国際的にも新しき、より建設的な日本の樹立に邁進すべく、貴下の一層の御支持御協力を切に御希いいたします。何々県教育委員長何のたれがしと書いてある。これを私は反対の立場から考えてみたい。   〔稻葉委員長代理退席、委員長着席〕 もし今の教育活動は社会主義的で、革命的で、こういう教育活動では困るのだ、これはあくまでこういうことを徹底的に排撃しなければいけないというような文面でこういうものをその教育委員長の管轄内の教育関係者に出したら体どうなるのだ。しかもこの教育委員教育委員長というものは選挙によってつく特別職でありますがゆえに、行政上の責任も法律上の責任もない、どこからもこの責任を追及する道がないのであります。これはこの県で問題になって、県議会で不信住決議をされております。これは委員長をやめましたが、今でも委員ではあります。これは次々にこういうことをやっていいか、これは制度上の問題として残るのであります。道義上の問題はもとより、政治上の問題は政治問題として論議し、聡明にして健全な処置がとられていくことには違いありませんが、制度上の問題として、こういうことがもしあり得るとするならば、これをどう処置するかということは当然考えておいていい。今の教育基本法、それから教育委員会法を見てみると、何ともいたし方がない。これは教育委員長をやめぬでもいい。本人が自発的にやめましたからいいのですが、やめずにどんどんこれをやれば、幾らでもやれる。こういう点をどうするかということも、事実生きた例でありますから、一つ大臣頭に置いてお考え願いたい。これは今皮教育委員会法にも何らかの改正の手がつけられると思いますが、これは事実こういうことがあったのです。私は偏向教育云々という問題をここで取り上げようといたしておりません。しかしながら現在の教育制度の面から、制度的にいって、教育基本法、それから教育委員会法の建前からいたしますと、その県における教育の指導者として、一番高い地位におる教育委員長が、県教育委員長の名において明らかに政治運動をしておる、これは教育の教の字も書いてない。明らかにかくのごとき政治運動がどんどん行われるといたしますならば、どっかに制度上の欠陥がある。教育の中立性というものは、あくまで守っていかなければならぬ。方に片寄ってもいけないし、右に片寄ってもいけないのだ。児童については、あくまでも汚れなき、きれいな、人間完成への、真理探求への方向にこれを育てていくということが教育の基本命題であります。そういう立場からいたしますならば、何か先入観らしい、こういう一つのものの見方、判断をして、その県の最高の責任者が、その教育活動の中にこういう方向を打ち込んでいくというならば、私は制度上何らか大きな欠陥があるのじゃないかということを申し上げるを得ないのであります。一つこういう問題についてぜひとも今度の制度改正の際お考え順いたいのでありますが、今私がここで申し上げたこのことについて、文部大臣は判断力の正確な方でありますから、どういうふうにお考えになりますか、一つこの際御所見を伺っておきたいと思います。
  22. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 大へん参考になる事例を伺って、ありがとう存じます。このことはやはり制度的に考えなければならぬ面と、それから国民の自覚ということと、二つあろうと思います。今の法制では、驚くべきことは、文部大臣教育委員会を監督してはならぬという規則があるのですよ。また上級の、すなわち府県の教育委員会は、町村の教育委員会を監督しないのです。三つに分れてしもうておるのです。国の制度としてはやはりこの連絡が、しいて監督と言わないでも、その連絡を一そう密にする方法を考えることが一つです。それからまた、戦後非常に過渡的で秩序がつきませんでしたが、やはり日本人も精神的に成長し、発達しております。教育ということについても、近時各方面から注意をしておるのであります。教育の何たるや、従って教育の中立性の何たるやということは、宣伝啓蒙によって一そう徹底すべきものと思っております。その委員長それ自身が啓蒙されるのみならず、一般の人間教育委員会はどういうものだということが浸潤徹底すれば、恥かしくてそんなことは言えなくなります。教育並びに教育委員会のあり方が世の中に徹底する、この二つの方面から改善されんことを私は希望いたしておるのであります。
  23. 三田村武夫

    三田委員 文教委員会で詳細論議されると思いますから、この程度で私の質疑を終りますが、最後に昨年来問題になって参りました教育上の重要な点を申し上げて、文部大臣の御所見を伺っておきたいと思います。  これはわが党が、と申しましても当時民主党でありましたが、「うれうべき教科書の問題」というパンフレットを出しましてから、世上なかなか鋭い論議が行われております。教職員の諸君はいわく、われわれは終戦時の混乱の中から実に辛苦艱難、正しい教育を守るために努力してきたんだという御発言であります。同時に新しい日本に課せられた教育の方針は、あくまでも民主的、あくまでも平和でなければいけないんだ、教育の自主性を守らなければいけないんだということが強く叫ばれております。これは私はその通りこれを了承いたします。同時にまた教科書発行に携わっておる業者も、あの困難の中からともかくわれわれは困難を克服したがら学校教材としての教科書を届けておったんだ、われわれのやってきた努力を認めてほしいという発言があります。これもごもっともです。両者とも認めるにやぶさかでありませんが、私は占領以来今まで行われてきた、その占領行政の惰性ともいうべき今の教育行政のあり方、それがいい、悪いの論を別にいたしまして、おのおの歴史的任務があった、歴史的条件の制約があったと思う。教職員の諸君の努力も大いに多といたします。了といたします。業者の努力も了といたしますが、しかしながら今日独立国になって、新しい立場から、新しい教育行政を正しい方向に持っていかなければならないという一つの使命感から考えますならば、過去のことは過去のこととして、新しい立場から新しい教育のレールを引きたいということがわれわれの念願であります。過去のこともさることながら、私は占領中の誤まった占領行政をそういつまでも追及しようとは思わない。私自身も怒りと悲しみをもってあの占領行政の間とにかく生き残ってきた一人であります。しかしそのことよりもより必要なことは、今後正しい教育のあり方をどこに置くかということであろうと思います。文部大臣、非常に重要な責任を痛感されまして、この文教の府をお預かりになっておられることを私は十分拝察いたしております。どうぞ一つそういう立場から、日本教育行政をどこに持っていくんだ、ただ単に一教科書の問題だけではなくて、戦後から今日まで混乱に混乱を重ねてきた問題——昨年の議会でありましたか、小さな問題ではありますが、青少年の不良化防止のために、これを犯罪の方向に追いやらないために、よく使われます凶器を取り上げようというような立法が出て参りました。これはやむを得ない警察の臨時処置かもしれませんけれども、そういうことで問題は解決いたしません。青少年の不良化というような問題は、大きな社会的根源がある。その社会的根源を除くことが教育活動でなければならぬ。どんなにわれわれが道徳律の高きを要求し、希望しても、しよせん青少年の眼に映り、また脳裏に映っていくものは、おとなの社会の反映であります。正しからざるわれわれの社会生活というものが、青少年の頭に正しからざる姿で映ることはやむを得ません。どうしていい政治を正しく青少年の賦に反映せしめるか、どうしたらほんとうに高き道義というものが高揚されるかということに、私は教育活動全体がたければいけないと思う。どうぞ一つただ教科書の問題だけでなくて、教育活動全体について勇断をもって臨んでいただきたい。青少年の問題だけをとらえてみても、世上実に悲しみにたえない問題があります。また売春婦の問題にいたしましても、ただ売春婦の責任だけ責めても私はしょせん片づかないものだと思うのです。きれいな正しい社会の秩序というものができることが、すべての問題の私は基礎だと思う。そういう方面について経験の深い文部大臣、相当の御決意と御抱負をお持ちであろうと思いますから、この機会にお伺いいたしておきたいと思うのであります。
  24. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 長く申し上げては御迷惑と存じますので、一口に申しますれば、わが国のいい伝統はこれを保持する、もう一つ言葉をかえて言えば、日本及び日本のよさを維持する、こういうふうに考えております。
  25. 三浦一雄

    三浦委員長 午後は正一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩     —————————————    午後一時二十四分開議
  26. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。古屋貞雄君
  27. 古屋貞雄

    ○古屋委員 大蔵大臣にお尋ねをしたいと思います。  新聞で拝見しますと、台湾銀行の特殊清算人の保管中の財産並びに朝鮮銀行の同様な財産を政府の収入にするというようなことが新聞で書かれておるのですが、両銀行の特殊清算人の保管しておりまする財産は、現在は幾ばくでございますか、お尋ねをいたしたいと思います。
  28. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 朝鮮銀行で六十七億、台湾銀行で十八億と考えております。
  29. 古屋貞雄

    ○古屋委員 その中から特に政府がこの金を吸い上げて収入にいたすというような御方針がございますかどうか、お尋ねしたいと思います。
  30. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、これは両方とも発券銀行でありまして、その利益金はその発券機能から生じた部分も少くないのであります。そういうふうな見地から営業利益はむろんのこと、残存の資産もそういうふうな利益金からもきております。そういう見地からある程度納付金を納めるというようなことにいたしたい、その法律案を出したいと考えております。
  31. 古屋貞雄

    ○古屋委員 納付金をもって吸い上げる法律を出したいということですが、朝鮮銀行にいたしましても、台湾銀行にいたしましても、いまだに整理が完成しておりませんから、残余財産ということはいい得ないと思うのですが、現在において残余財産とお認めになっておられますか。
  32. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 閉鎖機関として整理は一応完了しておりまして、これの残余財産の処分はいたしても差しっかえないと思います。
  33. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこで実は承わりたいのは、特殊清算人の整理の方法なんでございます。特別な整理の方法をいたしておりまする根本的な矛盾が一つあると思うのでありますが、それは預金者の預金の三分の一は切り捨てて、三分の二を支払っておる現状なんです。従いまして三分の一を切り捨てる処置につきまして、預金者から相当納得いかない文句が出ておるわけであります。それは終戦後当時の物価指数を基準にいたしまして、それに基いて三分の一を切り捨てた、こういうような御主張をなされておるらしいのですが、その点について当時の朝鮮並びに台湾における物価指数と内地の物価指数との関係が、さような率に置かれておらなかったことが一つでございます。それからもう一つは閉鎖機関令に基く十一条の第二項でございます。零細な預金者に対する特殊な取扱い、いわゆる公平な取扱いをするようにという規定がございますが、今までの取扱いは公平に取扱われておらない。従って金が残っておりますけれども、さような取扱いが法令の精神にのっとって行われていない事実と、それから物価指数の基準をきめました基準のきめ方に非常な不公平がある。かような二つの矛盾された間違った取扱いのために預金者に十分に預金を払い戻すことができない方法である。私どもは終戦後一年の間、この二つの銀行の支払いが閉鎖されておりまして、その間に非常に飛躍いたしました日本の経済のあり方というものが変更をいたしておりますので、当時の預金者に対する払い戻しにつきましては、言いかえますと、十年前の貨幣価値と支払いをいたしますときの貨幣価値が非常に相違をいたしておりますから、そういう点を考慮されて、預金者に対する保護、預金者の権利を守る、憲法によって認められた国民の私有財産の保護については、十分な配慮をすべきだと思うのであります。そういう点に欠けておったと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  34. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 預金者に対します処理は一応終了いたしておるのでありますが、なおただいまの御質問は、その当時における実情、並びに数字にわたるところがありますので、これは詳しい管財局長から答弁いたさせます。
  35. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの御質問に対しまして、やや詳細た事務的な点がございますのでお答え申し上げますが、御承知の通り閉鎖機関につきましては、昭和二十九年に法律をお定めいただきまして、預送金債務につきましても一定の換算率によりまして支払うことを法律をもってお認めいただいたわけでございます。お話の御趣旨は、その当時の換算率のぎめ方につきまして、物価指数のとり方等に問題があったではないかというふうな御趣旨のように拝承いたしたのでございますが、この点につきましては、御承知のように在外公館の借入金の支払いにつきまする先例等もございまして、この率が採用されました。これは単に在外公館の場合のみならず、一般の閉鎖機関全般を通じましての御処置として、国会においてお定めをいただいたわけでございます。  なお公平の見地からというお話でございましたが、この点につきましては、御承知のように小額債権の優先支払いという措置も講じまして、その後小額債権につきましても、優先の支払いの道を講じておりましたことは御承知の通りでございまして、預金者の保護につきましては、先ほど申し上げました法律の換算率によりまして、十分とは申しませんが、できる限りの保護をいたしたいというふうに考えております。
  36. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいま御答弁もございましたが、公公平な処置で取り扱っていない実例を申し上げますと、台湾の例によりますと台湾の普通銀行でございます彰化銀行あるいは台湾貯蓄銀行におきましては、三分の一を切り捨てられた。その残ったあとの預金に対する利息十割を加算して支払っておる。でありますから、これは一万五千円の預金がありました場台には、五千円は切り捨てられて、一万円に対する十割、二万円の金を預金者がもらっているわけです。どころが台湾銭行におきましては、一万五千円の預金者に対する五千円を切り捨てて、一万円に対しては四割しか利息を加算して払っておりませんから、六割を搾取された。政府機関がこれを、取り上げることになりますと、一般個人の預金に対する保護政策において公平な坂扱いをしていない。一万五千円の預金者が六千円収入が違うわけなんです。こういうばかげた坂扱いが行われておりますので、そこで預金が残っておる。残ったのを政府が吸い上げてしまう。こういうことになりますと、預金者は銀行に対する信用、特に政府の取扱いに対して、信頼を失うおそれがある。現に信頼を火いまして、預金者大会を開いてこれに対する相当な抗議を申し出ることが行われると存ずるのでありますが、かような処置で果していいのかどうか、かような区別が行われておるのに、これをもって公平な処置をとっておると言えるかどうか、この点を承わりたい。
  37. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいまの御指摘の点は、在外会社令と閉鎖機関令との点について扱いが異なっていることを御指摘に相なったわけでございまして、この点はただいま申し上げました法律の規定等に対しまして、そういう点があったのでありますが、しかしながら一方この点につきましてはただいま御指摘のような加算は、あくまでも当該在外会社なり、あるいは閉鎖機関なりの支払い能力に限外があるわけでございまして、在外会社といえども支払い能力のない場合は、もとより十分な加算はできないようなことに相なるわけであります。しかしながら一応の限界といたしまして、在外会社と閉鎖機関との間の取扱いについて、さような相違のあったことは、これは前からも建前としてあったのでございまして、今回の措置によって新しくさようになったわけではないのでございます。
  38. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私ども納得いきませんのは、従って、残した金を政府が吸い上げるということになれば、国民の預金、それから清算された残金を政府が取り上げてしまうということになりますると、国民の憲法によって保障されている私有財産というものは、そうした区別された取扱いによって、没収をされるというようなおそれ、そういう考えをまた持つ、かようなことによって、国民の政府に対する信頼を失うということは、よほど考えなくちゃならぬ大きな問題だと私どもは信じておるのであります。従いましてさような坂扱いをしたから残ったんだ、その残った金を政府が吸い上げる、収入に繰り込んでしまう、こういうことになりますことは、経理上の問題はともかくといたしまして、政府機関に対する国民の信頼に非常なひびを入れる、かようなことになりますと、将来に向って国民の政府に対する信頼感を失うということは、非常な重大性を持ってくる。従いまして今残っておると存ずる財産については、これをそうした吸い上げられたかつての預金者に払い戻すという方法を講ずることが、私は公平な取扱いだと思うのであります。預金者に対する払い戻しあるいは特別の処置をして、その残った財産をそういうような預金者のふところに戻していただくような政策をお考えになることが一番公平な処置だと思いますが、いかがでございましょうか。
  39. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この預金の払いにつきましては、昭和二十九年の法律に基きましてやっておるわけでありまして、決して恣意的に勝手に、このくらい払おうというわけではありません。預金についてはこういうふうな処置をとるという法律に基いてやっておるわけであります。それで私はここで特に預金者の保護の御説もわかりますが、その法律に基いて預金の方は一応終了しておる。特にこの銀行は発券銀行で預金銀行とはまた性格を異にいたしております。こういう銀行券を発行し得るというそのことによって、多くの利益をあげておったということを御了承を得たいと思います。
  40. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私の申し上げておるのは、発行銀行だからなお申し上げておるわけなんです。特にそういうことでありますならば質問申し上げますが、終戦当時の混乱によって、邦人の預金などは証明がつかない。従ってこれを払い戻しをすることができない。外地におりました国民は、台湾という一つ日本のかつての領土におった、あるいは朝鮮というかつての日本の領土内におった、その領土におりながら、そういう特殊な地域におったということによって、財産は全部没収され、千円しか持たずに日本に追い帰されておるわけなんです。その混乱に基いて、証明すべき証券がないから証明がつかない預金が残っておる。ただいま申し上げた前の質問は、不当な処置、公平ならざる処置によって残った財産、あとの問題は証明がつかないから払い戻しを受けることができない、しかしながらいずれにいたしましても預金をした小実はある、特に邦人に対する、邦人がいかに証明をすれば邦人預金の払い戻しを受けられるかということについての明細な親切な手続きを政府はこしらえておらないわけです。従いまして邦人の証明を持たない預金者、これはすでに今残っております財産の中に含まれておるわけなんです。ことに朝鮮台湾におりましたために、同じ国民でいながら、財産の一切を没収され、千円を持って帰って来た、戦争によって非常に不公平な処置を受けておりまするその預金者に対して、なおかつ今のように、発行銀行だから、それによって利益を得たのであるから、戻す必要はないというような無慈悲な冷酷な態度は、私は政治としては正しい政治ではないと思うのです。そういう問題を考慮されて、預金者に対して払い戻しができるはずだと私は思うのでございますが、あるいは外地から引き揚げました人々、その関係を持っておりまする人々に対して、その財産の幾分かを分け与えてやって、戦争犠牲を公平に処置なさる、こういうことが私は政治的には公平な処置であり、正しい政治のあり方だと思うのですが、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  41. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 預金の支払いにつきましてはできるだけ預金者保護の見地、公平な見地から配分方法をきめて払っていくわけでありまして、終戦直後等におきまして、いろいろと、たとえば今お話の証明のできないというような問題もあったかと思うのでありまするが、しかしこれは一々どうにもならないのであります。証明ができないとすれば、これはどうもいたし方がない。戦争直後の混乱で、こういうことは各方面に起っておると思います。これは大きな政治問題として具体的なこういうものと関連なくまた考える必要があるかもしれませんが、こういうものの具体的の処理については、どうも私はいたし方がないことであろうと思うわけであります。
  42. 古屋貞雄

    ○古屋委員 まことに冷酷なお考えだと思うのです。大蔵大臣としましてはどうにもならないと言われますが、どうにもなるのですよ。法律を作ればどうにもなるのです。従って台湾銀行なり朝鮮銀行に関係のあった人々、あるいはこれに縁故を持つ人々に対する何らかの救護なり処置なりの方面にこの金を使う。さようなことが私は公平な政治のあり方だと思うのです。もっと具体的に申し上げますると、台湾や朝鮮におりました日本人は全財産を置いて参りまして、そのまま没収をされておるわけなのであります。従って内地に引き揚げて参りましてから特殊な苦労をしておるわけなんです。これに対しては特に政府で、戦争の犠牲を公平に全国民において負担するという政治が行われていないのであります。従いましてせめてさような縁故のある金は、縁政のある方面に値うという方針をお立てになることが、私はまことに公平な政治であり、さようにすべきだと思うのでありますが、それでも大蔵大臣は、仕方がないから国家に吸い上げてしまうんだという御意思でございましょうか。と申しますのは、外地から千円持って引き揚げて参りました人人に対する戦争犠牲に対する処置がいまだに十年たっても行われておりません。今さら引揚者団体の諸君が出てきて、引揚者の諸君の援護をしろと申しましても、日本の現状といたしましてはこれは通らないでございましょう。そういう縁故のある金ですから、せめてそういう縁故のある者に対する有川な利用の方面にお使い下さるというような御方針を考えられないでしょうか。私どもは、さようにしてこそほんとうに涙があり、あたたかみのある政治だと思うのです。日本は貧乏でありますので、裸で着た切りスズメで日本に引き揚げた者に対する十分な援護ができませんから、せめてこういう縁故のある金をさような方面に使いまして、そうしてさような方面の諸君の政府機関に対する下平というものを緩和させ、信頼度を高めることが政治だと思うのですが、それとも大蔵大臣は絶対にさよう相ならぬというおぼしめしでございますか、承わりたいと思います。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決して冷酷な考えを持っておるわけでもありませんし、またそういうものではないのでありまして、預金者保護については閉鎖機関等一般について公平なできるだけのことをするということを法律できめて、その法律に基いて処理をしたわけであります。単に向うに縁故があるから、そこにおった者の占有財産は縁故者に分けたらいいじゃないかというようにはやれないので、やるとかえってそれは不公平になる。預金者保護というような見地は金融機関の預金者一般について同じ立場にある者は同じ扱いをするというのは、これは私はやむを得ないのじゃないかと思います。
  44. 古屋貞雄

    ○古屋委員 どうも大蔵大臣のお考えは納得がいかないのですが、どうしても政府が吸い上げてしまわなければならぬというその理由は、もう少し納得のいくような御説明になれぬのですか。おそらくこの問題につきましては、全国の引楊者の諸君から相当強い反対の運動が行われると思うのでありますが、納得がいけばよいのですが、私ども納得がいかないのです。何でもかんでも公平に分配しろというわけではないのです。御承知の通り引き揚げて参りまして住むところもない。生活をする基礎となるべき働く場所も与えられない。病気しても満足な治療を受けることもできないという事情の人が引揚者の中に多いのです。内地におきまして戦災をこうむった方たち仁外地で千円だけしか与えられないで引き揚げた方とは非常に、格段の差別がついておるのです。従ってその中には生活困窮者が非常に多いわけです。これだけの人々に対して、せっかく縁故のある金ですから、これはその方面の社会保障制度あたりに使うことが私は公平な処置だと思うのです。ただ私は無条件、無差別に平等にしろと申し上げておるのではない。内地におりました方たちと比較して非常に生活に困っており、その率の多い、特に引き揚げる際に財産を履いてきて、向うでは相当な生活をした人たちでありますけれども、千円のはした金を持って引き揚げてきて困っております人たちに対する社会保障方面に使うとか、あるいはこれらの人々の育英資金に使うとか、あるいは戦争の犠牲になりました孤児救済などの費用に使うとか、そういうことなら私は納得がいくと思うのです。さような方面にお使いになるお考えはございませんでしょうか。その点も承わりたいと思います。
  45. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も外地から引き楊げて来られた方々の非常にお困りになっておられるお立場は、心から御同情を申し揚げるわけであります。しかしこれはまたこれとして引き揚げて参られました方々のお困りになる原因はありましょう。またこれはこれとして政治として考えていかなければならぬものであろう、かように私は考えております。
  46. 古屋貞雄

    ○古屋委員 今仰せられました引ぎ賜げた人たちの問題に対して、特別な政治が今日本の政治では行われておりません。だから私は申し上げておる。大蔵大臣の説明によりますと、特殊な引き揚げ者の困っておりまするのは、一般の日本人とは比較にならない困り方なんです。特殊な困り方なんです。特殊な困った者に対する特殊な援護処置が行われておりません。だから私どもはその問題について特別な援護処置を行なっていただきたい。こう私は申し上げておるのですが、大蔵大臣のさように申されてる根拠といたしましては、引揚者の特殊な困っておる人たちに対する援護処置が特別に行われておる事実がございましょうか。私どもは寡聞にしてそれはないと思うのです。いかがですか。この点については、私は戦争の犠牲というものは、少くとも全国民が公平に角負担するということが政治の本道であると思う。公平でない処置が行われておりまするから、私はこう申し上げるのですが、いかがでしょう。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはなかなか御承知のような財政の状況でありまして、終戦後のいろいろな事態に、いろいろと今後においてもせなくてはならぬことはむろんまだたくさん残っておると思います。これもしかし、あるいは財政の力の許す限度において、徐々に対策をはかって解消をしていくという以外には、やはり実際上どうにもならないと私は思います。引揚者について、具体的にそれならどうだ、これは今のところ、今言ったような財政事情でもありますので、主としてこれは一般の社会保障という範囲内に入っていくと思います。なお帰還者については、特に今後調査をするというようにもなっておるようでありますが、やはり日本の国力の増進に相まちまして、考えていく以外にはなかろうと思います。
  48. 古屋貞雄

    ○古屋委員 どうも考え方のずれでどうにもなりませんが、ただ最後に私が要望したいことは、とにもかくにも台湾銀行なり朝鮮銀行の残余財産というものは、もちろん政府発行機関として利益を得たでございましょうけれども、長い間台湾、朝鮮におりました在住国民のいわゆる努力によって、今日までこの財産が積み重ねられておることは明らかであります。どうか、特に千円だけ持って引き揚げて参りました非常に気の毒な引揚者が多いのでございますから、その人たちに対する特別な処置にそういう金をお使いを願いたいということを要望いたしまして、大蔵大臣の質問は打ち切ることにいたします。  次に、官房長官の御都合があるそうですから、実は官房長官のご質問は、あとでやるのが一番都合がよかったのですけれども、やむを得ませんから、ここでやります。実は本日は法務大臣もいらっしゃいませんので、法務大臣立ち会いの上で、私は綱紀粛正に関する御質問を申し上げたいと思っておったのですが、月曜日に出せというお話もございましたので、委員長の御了承を得まして、ただ総括的に官房長官二つ質問申し上げたいと思います。その一つは綱紀粛正に関する関係で、もう一つは第三国人処置に対する問題であります。日本の役所が複雑でありますので、特に六十万の朝鮮の在住民に対する関係については、特別な総括的な対策機関を設けて、一本で処置してもらいたいという要望を私は申し上げたかったのであります。  綱紀粛正問題につきましては、鳩山内閣成立以来、綱紀粛正に対して、特に総理大臣からもいろいろと綱紀粛正に関する御方針を承わっておりまするけれども、むしろ鳩山内閣になって参りましてから、綱紀粛正をしなければならぬような不祥事が、この前の内閣のときよりもふえておりまする統計がございますので、私は遺憾ながらこの質問をせざるを得ないのであります。と申しますのは、法務省の発表しておりまする犯罪統計の中で、役人の犯罪の統計が現われております。それは二十五年以降三十年までございますが、三十年度の公務員犯罪の数が、起訴されたものが五千八百何がし、約六千という数に上っております。こういう工合に役人の犯罪がふえて参りまするその原因は、どうしても綱紀が弛緩しておるからであります。総理大臣自身が口で綱紀粛正をお叫びになりましても、御自身が疑われたり、台閣に列しておる大臣の中に国民から疑惑を持たれておる人がおりますから、こういう問題は身をもって範を示さなければ、私は徹底的な綱紀粛正は行われないと思う。この問題について第一に会計検査院の御報告を見ますと、二十九年度の決算について、不正不当の摘発を受けて是正を要求せられ、あるいは不当事項として摘発された件数は、驚くなかれ二千二百四十六件ある。しかもこれにはただし書きがございます。犯罪の数も多くなっておる。不当不正の支出が多くなっておる。しかもこの報告によりますと、五万円以下の不当不正支出については急増しておるから、この統計に載せられないと報告しておる。国民の税金は百円でも千円でも納めなければ、強制的に競売をして取り上げております。しかも御承知の通り日本の新聞をにぎわしておりまする、税金を納めるのが苦になって親子心中をしたという例はたくさんございます。五万円以下の多数の不正不当については統計に載せられないという、こういうでたらめなやり方をやっておる。こういうことなんです。そういうことについて、鳩山総理がいらっしゃいませんので、私は鳩山総理自身にもお尋ねしたかったのでありますけれども、これは前の国会でも、本予算委員会で、今澄委員からも相当突っ込まれておるのですが、保全経済会の事件——保全経済会の事件などは、かつて行政監察特別委員会で今の自民党の諸君の中、自由党の諸君の中から、鳩山総理の証人喚問の要求をされたり、大橋国務相の証人喚問を要求された事実があるのです。これは私もそれに列しておりますが、まだ片づいておらないのです。そういうこと、さらに進んで今澄委員から質問された、今すでに裁判所の御審理中である、かつての自由党の幹事長の佐藤榮作さんの、五千二百万円を受け取ったというその不正の金、その金の中から鳩山総理が自由党復党のときに二千万円もらって、選挙費用にこれを充てたとか処分したとかいうことを、この前の委員会今澄委員から質問しております。このあとの処置がついておりません。私はそういう問題について鳩山総理の御心情も承わりたかったし、大橋国務相の御心情も伺いたかった。とにもかくにも現在の日本における青少年問題が非常に問題になって、この最後の解決をする一番大事なことは、おとなが悪いことをして見せつけないことだ。これはどなたが申し上げても真理だと思います。従いまして鳩山内閣が綱紀粛正を叫ぴ表看板にたさるならば、みずから閣内の綱紀粛正もされるし、みずから範を示して——私申し上げますならば、アメリカのニクソン副大統領が議会で涜職の疑いを受けました。同時にニクソン副大統領は、みずから進んで議会に自分の身のあり方をいろいろの方法を講じて明らかにして、身の潔白を国民に納得させたという、こういう事実もございます。せめて日本でも、一つくらいは総理大臣や外務大臣がみずから範を示して、国会に、明らかにこの通り潔白だということを私どもは示していただきたい、さように念願をいたします。私は鳩山さんが不正な金をもらったとか、そういうことはあり得ないと思いますから、そういうことを明らかにしてもらいたい。そうしなければ今日におきますような、毎年ふえて参りまする不正不当な、国民の血税である税金の使い方の問題、あるいは役人の犯罪の起訴されている件数の増加している姿から考えましても、とうてい口頭禅だけではだめだと思う。従って政府みずから、当事者みずからの身の潔白を明らかにするような態度をとられるかどうか、それを承わりたい。
  49. 根本龍太郎

    根本政府委員 お答えいたします。綱紀粛正につきましては、総理以下、内閣といたしまして、厳重にこれが防止をいたすとともに、そういう事実につきましては、厳正な行政措置をとり、また法によって処断された者については、当然これは処置されることと存じます。ただいま御指摘になりました総理あるいは大麻国務大臣に関する件が出されたようでありますが、これは先般の予算委員会あるいは本国会においても、若干これに野党の各位から質問がありまして、断じてさようなことはないということを明言されておりまするので、これで事態が明らかになっているものとわれわれは信じております。私個人のことでありませんから、私は、政府としてはそういう態度とっているということを、まず申し上げたいと思います。  それから会計検査院の報告に、最近国費が乱費並びに不当に支出されているという点の報告も十分承知いたしております。しかしこれは御承知のように、主として補助金等が地方に参った場合において、その使用において不正あるいは不当の点が多いということが指摘されているのでございます。もとよりこれは政府として十分監督しておりまするけれども、地方自治体においてこれが運営される場合において、いろいろの実は困難な問題もありまするので、政府は補助金等もできるだけ適切に運用されるように注意を勧告するとともに、今後、そういう事態のないように極力注点する次第でございます。  次に第三国人の対策の問題でございまするが、これは御承知のように法務省あるいは外務省等関係当局が、随時十分連絡をいたしまして処置に当っているのでございまして、目下のところこのために統合的な機関を設けるというところまでは考えておりません。しかし御趣旨の点も非常に傾聴いたす必要があると思いますので、今後従来に増して連絡を十分にして、万全を期したいと考えている次第でございます。
  50. 古屋貞雄

    ○古屋委員 長官の御答弁の中に、大体地方の補助金が不正に使われているということをおっしゃっておりますが、地方の補助金ももちろんでございますけれども、むしろ防衛庁において支出されている問題、あるいは調達庁が特別に金を払い出している問題、こういう問題はすでに決算委員会で「梨」の事件であるとか、問題になっております六億の先渡し金の問題とか、その金がそのまま使われずに放任されているということが実は明らかにたりつつあるわけです。従いまして今、日本の国民が一番悩みの種は税金が重いということなんです。日本の税金が非常に重く、税金に苦しめられているのであります。これはしばしばわが党からも主張しているのでありますけれども、予算の二十数パーセントに当るような不生産的た金が使われているという現状、従って日本の国民の台所が火の車であるという事実を考慮いたしますならば、ただいま申し上げましたような二千数百件の不正不当の支出があるということは、まことに遺憾にたえない。たとい百円程度、千円程度といえども公正に使って、それがよってもって国民の生活安定に役立ったということでなければならないはずだ。それが反対の方向に使われているということになりますから、これが国民から政治に対する信頼か失うおそろしい原因になると思う。従いましてこの点については、官房長官御自身に御質問申し土げたいとは思わぬのですけれども、どうか官房長官からも総理にお話しを願って、ただ自分はそうではないというような簡単な御答弁でなくて、みずから進んで明らかに自分の身のあり方を国民に示して、かように潔白であるということを明らかにすることが、日本の国民から失われつつある政治に対する信頼感を食いとめ、またいやが上にも信頼を深かめるゆえんであると私は思う。と申しますのは、単なる知らなかったとか、受け取っておらぬとかいうような単純な問題ではないのです。あの事実はもうすでに同僚委員から前の委員会質問されておりますから、本日はこれ以上は申しませんけれども、何ゆえ証人に呼び出すか、何ゆえそういう疑いを持つかということについては、党利党略に使われているような単純なできごとではないのです。金を出した人が出したと育っておる。一つの例をとって申すならば、本日の新聞にも載っておりまするように、大蔵省の関係あるいはその他の関係のこういうようなことは、ごくわずかな小さなことであって、根本になります政治献金の問題というのは大きな問題だと思う。わずかばかりの金を横領したとか、贈賄したとかいう問題よりも、むしろ日本の政治の混濁は政治資金にあると思うのです。政治資金として何の何がしに何年何月何日何ほど差し上げたということを、まさか全部うそだとは思わない。さようないわゆる火のないところに煙は立たないのですから、総理自身も、みずから進んでニクソンにならって、この国会において自分の潔白を明らかにするようにしていただくような処置をとっていただいてこそ、名総理大臣だと私は思う。さような御処置をとるように官房長官からもおすすめを願いたいと思います。  それから第三国入の処遇の問題ですが、朝鮮の諸君が職を奪われ、失職して生活ができないからといって、政府から生活保護を受けておる。一方には朝鮮人の諸料が日本の国有財産を占有してそこに住まわれておる。そうして一方においてはそれに対する賃料が支払われていない。一方におきましては朝鮮人商工会から発表されているところによりますと、朝鮮人の諸右が日本で企業を起し、営業し三十万になんなんとする日本の人たちを労働者として使っておる。税金も七十数億あるいは百億になんなんとする税金を納めておる。こういうような事実があるわけであります。そこで今問題になりますことは、職は奪われ生活はできない。一方では生活保護を受けており、一方では実際に祖国に帰りたいが帰れない。生活に困るから犯罪を犯す。犯罪を犯すと大村収容所に入れられてしまう。大村収容所に入れば四年くらいおります。朝鮮人の諸君にしてみれば、どうすればよいかということです。祖国へは帰りたいと言っても帰してくれない。四年も大村収容所に収容されておる。これは刑罰ではございませんが、普通収容と申しましても四年も一定の場所に収容されておりますれば、これは刑罰と同じことなんです。従ってそこに問題が起きる。生活ができない。しかしながら、相手方の祖国では引きとってもいい、援助してもいい、しかし送金は相ならぬ、こういうことになりますると、六十万になんなんとする朝鮮人諸君はどうすればいいか。帰ろうとして帰さない、生活の保障をするために職を求めても与えられない、こういうようなところに追い込んでそのままにしておくということは、私はこれは政治ではないと思う。従いましてこの点はあとから外務大臣からも伺いますけれども、官房長官としてはこういうような無理なあり方を朝鮮人にさせておいて、そして朝鮮人の諸君がいろいろ社会上障害を起すような出来事が起きた場合に、これはけしからぬ、こういうことはむしろ政治の貧困からくる問題であって、責任政府にあると私は思うのです。でありまするから、こういう問題を解決するためにもやはり総合的な対策機関を設けて処置されるということが一番必要ではないか、こう私は思うわけなんです。これをあげてみますと、まず第一に関係をいたしまするのは、法務省が入国管理局の関係関係を持っておる。それから人権擁護の関係も持っています。それから外務省においては御承知の通りアジアニ課において経済その他のいろいろの関係の企画を持っておる。文部省におきましては御承知の通り朝鮮人の教育問題についてかれこれやかましく言っておる。厚生省の引き揚げや、いろいろ援護に閥する関係でやっております。こういう関係から考えますと、やはりこれは総合的な機関を設けまして、これに対する対策を講じていただけばスムーズにいくんじゃないかというのでありまして、これを要望した次第でございます。
  51. 根本龍太郎

    根本政府委員 お答え申し上げます。第三国人、特に朝鮮人問題が非常に重大な社会問題であり、また一つの大きな政治問題として考えなければならぬということはまことに同感でございます。そのために、実はこれはあとで外務大臣その他の関係閣僚から御答弁があることと存じますが、日本は絶対に大村収界所において囚人扱いをするということは毛頭考えていないのでございます。実は韓国との問題が全面的に進展し得ないために、こういう問題を政府としていろいろ折衝したけれども、それが軌道に乗っていない、こういうのが現状でありまして、これは国内的に処置する問題と、外交折衝として処理する問題と二つあるのでございます。この点については政府も鋭意打開のために外務省、法務省関係が今折衝中でございます。  国内問題としての教育あるいは生活保護、こういう問題は、朝鮮人の方々のみならず、第三国人にはいろいろございまするが、特に朝鮮人の方々がこの問題に大きなウエートを持っておるという意味におきまして、御趣旨の線に沿いまして、従来の関係省の連絡を密にさせるほかに、あらためてこの問題について趣旨に沿うように検討を重ねたい、こう考えております。
  52. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ぜひさような実現方を要望申し上げます。  次に外務大臣にお尋ねしたいのですが、どうも中国と朝鮮と両方、いずれの国といえども日本とは無条約関係に置かれておる。ことに朝鮮の南北も同じような状況に掛かれておるのに、朝鮮の南と北とに区別をされ、中国と北鮮とを区別されたお取扱いを外務省ではされておるようですが、平等にするつもりでございましょうか、それとも区別する何か理由があるのでしょうか。私承わりたいのは鳩山内閣は平和外交を主眼とし、しかもアジア経済外交をてこにし、しかも自主独立外交をするんだということを国民に、あるいは世界に宣明されております。従って私どもは今の状況においては、無条約関係においては南北朝鮮、中国とも同様な立場に置かれておると思うのですが、現実には何か知りませんけれども、南の方の朝鮮には李ラインというような価謀な気違いじみたことをされても、手を伸べて仲よくしようとしておるし、北鮮についてはほとんど外交、貿易、居留民の往来についてはこれを拒否しておる。中国におきましてはココムの制限はございますが貿易も再開しておる。この三つは平和外交の原則から考え、自主独立の外交政策から考え、同じように考えらるべきだと思うのですが、実際には区別されておる。この区別される理由を、国民の納得のいくような御説明を願いたいと思います。
  53. 重光葵

    ○重光国務大臣 第二次世界戦争が終りまして今日十年に相なります。十年後の今日国際情勢は非常に改善されて、そうして今言われました三つの隣国、これら諸国と申しますか、諸地域も同じように取り扱っていけるように国際情勢が改善されておれば非常によかったのでございます。またその改善に向ってあらゆる努力を尽すことが日本の平和外交であることは言うをまちません。しかしながら今日不幸にして戦争後の国際情勢は、まだそこまで回復しておりません。  韓国との関係は、御承知の通りにまだ日本とは正式な条約はございません。しかしながら韓国は国際連合のみならず日本の最も密接な関係を持っておる自由民主諸国とは、正常の国交を開いてつき合いをしておるわけであります。従って自由民主国の一国である日本は、韓国との問には、正式の国交がまだ樹立してはおりませんけれども、一衣帯水の隣国の関係もございまするし、これは非常に密接な、緊密な協力関係に立たなければならぬ、こう考えて処置をいたしておるわけでございます。しかるに北鮮は御承知の通りに共産圏に入っておりまして、北朝鮮は韓国に対しては侵略者として国際連合ではっきりと取扱いをされておる地域、政権でございます。従いまして韓国とは敵味方の関係になっております。さようなわけでありますから、日本といたしまして韓国と北鮮とを同様なレベルでつき合いをするわけには参らない不幸な状況におるのであります。すみやかに両鮮が一国として日本とつき合いをし得る状態になることを希望いたす次第でございます。  第三の中共の問題は、これは朝鮮関係というよりも、関係を申せば台湾の国民政府との関係になっております。そこで中国の大陸と台湾との関係が、これも敵味方の関係に州なっております。この不幸な関係がすっかり改善されて、平常状態に戻るということは、これは希聖してやまないところでございます。さようなことが東アの平和並びに安定の条件でございますか。ら、その方向に向って大いに努力をいたさなければならぬのございます。また日本といたしましてはそれが大きな平和外交の期待でなければならぬと思いますが、まだその時期に至っていないことをほんとうに遺憾に思うのでございます。さようなわけでございますから、国際情勢の変化もありましょうし、将来のことを見て、それを徐々に改善するように努力を払わなければならぬと考えておりますが、今日におきましては、中国政府として国民政府を承認しておる関係上、中共を今承認するというような方向に処置をとることは、これはできないことだと私は考えます。さようなわけで、この三つの国に対しては、いろいろの点で同様につき合いをすることのできない今日の情勢にあるということを遺憾とする次第でございます。大体御説明をいたしたつもりでございます。
  54. 古屋貞雄

    ○古屋委員 どうも納得がいかないのですが、そこで、それでは端的に申し上げますが、同じ状況における中国とは見本市の交換をし、貿易をしておりますが、北鮮に対しては同じような立場でありながら、北鮮との貿易を抑えており、北鮮との交渉、居留民の行き来については非常な制限が行われておるのですが、この区別はいずこに置いておるのでしょうか。どういう理由でありましょうか。
  55. 重光葵

    ○重光国務大臣 北鮮との関係は、直接には韓国との関係を顧慮せずしては見ることができぬと考えております。朝鮮との問になるべくすみやかにいい関係を設定しようという一般方式は、これはぜひ取り進めていかなければならぬのでありますが、それをやるためには特に最も近い韓国との間に正常関係を開くということにいたさなければなりません。韓国との間に正常関係を開くということを交渉しながら、これと敵味方の関係におる北鮮についていろいろと施策をするということは、私は目的を達する上において順序じゃないと思います。さような時期のくることを期待はいたしますが、またなるべく早くそういうぐあいになることを望むのでありますが、まず韓国との間に正常関係を樹立するというところに目標を集中したい、こう考えております。それでありますから、先ほど申されましたが、李ラインの問題ではずいぶんひどいことをされておるじゃないかと、こう言われます。日本側から申せば——私もそう言いたいのでございます。しかしこれらの問題は何とかして韓国との間に話合いによって解決をするようにしむけていく、そして日韓関係を正常化して、さらに形勢の好転するのを待って先に進みたい、こういうように施策を考えておる次第でございます。
  56. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこで私なお突っ込んで承わりたいのですが、南の朝鮮では日本とは交渉しないといって受け付けない。北の方は私どもが行って参りましたときには、竹島の問題についてもあんなものは考えていない。李ラインなんていうものは気違いがやっておることで、国際公法から申しても国際公法の慣例からいっても通らない。李さん一人の勝手なやり方なんだ。われわれの方では北鮮の沿岸の公海に日本の船が来て、日本の漁民が魚をとることは歓迎いたしますというようなことをおっしゃっておる。なお日本の必要な品物を私の方からも、たとえばホタル石のごとき、タングステンのごとき、粘結炭のようなものを送り出したい。あなたの方からもらいたいものは、水豊ダムのあの電力を有効に使って北鮮の工業化をはかるために、いろいろの機材がほしいのだというようなことを率直に述べられた。しかも特にここで問題になりますのは、居留民の六十万の方たちを引き取ってもいい、しかも昨年の十二月の南日外相の声明がありましたように、日本政府に向っては青少年の教育費くらいは送ってもいい、働いても働く場所を与えられないし、働く能力のない、生活能力のない者については援護の金を送ってもいい、こういう工合に非常に積極的に日本との経済の交流、親善友好の正常化を要求しておる、その方面に対しては初めからてんで受け付けないで、そうしてひじ鉄を受けている南の方の李ラインの問題で、どのくらい漁民が苦しめられおるかということ、それから日本は相手にしないと拒絶しておること、また久保田声明を取り消さなければ相手にしないというようなことを言われでおる。そういう状態に置かれておる南に向ってのみそういう工合に一生縣命に——これを言いかえますたらば逃げ歩く娘さんを追いかけて歩くようなものだ、ひじ鉄を食いつつも追いかけて歩いておる、こういうことである。しかし国民全体から申しますならばせめて仲よくしたい、経済有無相通ずる交流をしたい、しかも李ラインのようなばかげたことは主張しない。竹島も日本の領土であるということを主張しておる。こういうような政府と、国交の回復は後日に回すことにいたしましても、少くとも経済的な取引くらいはやはりするように外務省あたりが配慮すべきだと思う。ことに日本の商社があちらに参りまして、たしか五十億くらいの貿易に対する契約まで結んできておる現状でありますから、現在の日本の行き詰まった中小企業の打開策から考えましても、政治のあり方、思想のあり方は別にしまして、経済の交流、外務大臣がおっしゃられておる最も近い朝鮮との貿易であるとか、こういう問題についてその道を開くことくらいは政府が努力さるべきだと思う。国民もこの点については強く要望されておると思う。こういう問題に対して何らかの道を開くようた努力をするお考えがあるかどうか、この点をお伺いいたします。
  57. 重光葵

    ○重光国務大臣 お話は一応ごもっともに拝聴いたしました。ただ先方でいろいろな人が往復をされて、いろいろなことを向うの当局等から聞いてこられたことは、われわれもよく承知をいたしております。それがどういう意思で言われておるかということもよほど検討を要します。そういう点は、だれがこう言ったからこうだというふうに考えるのは、私は少し早計であろうと考えます。そこでこれを総括して申しますと、むろんそういうようなことは日本の国民、われわれ日本国の利益を進めるためには、非常に検討をいたさなければならぬ、これは私もそう思います。それは同態でございます。しかしながら、それだからといって、大局も考えなければなりませんし、一がいに向うの言をそのまま受け入れて、その通りにやればいいというわけでもなかろうかと考えます。そこで、私の申し上げる点は、そういうふうなつもりで十分検討しなければならぬ、こういうことに考えて検討はいたしております。けれども、今すぐそれでは、政治上のことはしばらく別問題として、貿易のことはどんどん開いていくようにしたらよかろうというところまでには、まだ情勢が進んでいないように判断しておる次第でございます。
  58. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そうしますと、承わりますが、南鮮の方との関係は大体御解決がつくような見通しがついておるのですか。南鮮の方では、久保田声明を取り消さなければ相手にしないと言い、あるいはアメリカにでも頼んでお取りなしでもしてもらいたいということが新聞紙上に見えておりますが、少くとも、日本といたしまては、何もアメリカに世話になったり、第三国の介入を必要としないと私は思うのです。やはり日本は、直接南鮮に行くなり代表者をやるなり、南鮮との間の何らかの、国民の要望するような打開策をしなければならぬと思う。政府は何にもしてない。わが党の代表をあちらへ差し向けるということにお話をすると、これも拒絶してしまう。それではいつになっても南との関係も解決がつかない。北はもちろんそうだとするならば、一番近くの、長い間の歴史的な関係を持った、親善を最も先に結ばなければならない朝鮮との関係が、いつ打開されるか、いつ正常に復するのか見通しがつかないところに国民の不安、国民の疑惑があるわけなんです。外務大臣のお見通しでは、大体いつごろ、あなたのお考えになっているような国際関係正常化が行われるか、さような見通しがございましたら、具体的に御説明願いたい。
  59. 重光葵

    ○重光国務大臣 私も、韓国と日本との関係は直接交渉の建前が筋である、こう考えまして、あくまで直接交渉でやりたい、こういうのでございます。しかしながら、その直接交渉をやるために、これを促進する作用を、たとえばアメリカ側に要望するというようなことは、これはいいことだと私は考えております。何となれば、アメリカは日韓関係に非常に重要な利害関係を持っておるからでございます。  そこで、交渉の状況でございますが、人を韓国にやらないから交渉をしていない、こう言われるのは、私は少し御無理だろうと思います。私どもは機関を持っております。現に韓国の代表部もあります。これはもうしょっちゅうそのために交渉をしておるわけであります。しかし、その交渉がはかばかしくいかぬのじゃないか、こういうことはその通りであります。まことに遺憾ながら、はかばかしく参りません。しかしながら、はかばかしくいかないからこれに望みを断っというわけにはどうしても参りません。これは必ず成就さしてやらなければならぬ、こう考えます。  そこで、それならばいつこれが妥結を見ると思うかというお話でございました。率直に申し上げまして、いつこれがまとまるということは、申し上げるわけには参りません。また、それは、知っておっても、交渉の途中において申し上げるべき問題じゃございません。しかしながら、私は、これは両方の関係から見て、必ずまとまるべきものだ、こう考えて、一生懸命に努力をいたしております。  そういうわけで、韓国側と日本側との関係が進められておるわけでありますが、何はともあれ、今の日本の抑留漁夫の送還、これが一番大切でございます。先ほどちょっと御言及がありました大村収容所もこれに関係がございます。さようなことについて政府部内において関係閣僚との間に十分協議を遂げて、そしてできるだけ交渉を促進するということに今専心やっておる状況でございます。  以上をもってお答えといたします。
  60. 三浦一雄

    三浦委員長 古屋君に申し上げますが、お打ち合せの時間もだいぶ過きて参りましたし、他の大臣も列席でございますから、簡潔に能率的に一つ質問をお願いします。
  61. 古屋貞雄

    ○古屋委員 承知しました。  そこで、一番私どもが承わりたかったのは、南鮮といかに交渉が進められておるかということは、ただいまお説の不当不正に勾留されておりまする日本の同胞の問題をいかに解決をするかということであります。これは、政府といたしましては、すみやかに解決をして、いっときも早く家族に安心をしていただかなければならぬと私は思うのであります。のみならず、あの方面に出漁して、これを生業として生活の保障を得ております漁民に対して、明るい気持も与えなくてはならぬのでございますから、私はいつごろまでに解決をする見込みがあるかということを御質問申し上げたのですが、ただ大臣は、誠意ある方法を講じておる、こういうことの御答弁ですが、それではやはり国民は納得いかぬと思う。やはり具体的に、かようしかじかに進めておる、——私は何らさような面においては秘密を要する問題ではないと思う。こういう面についてやはりもっと具体的に、南鮮との問題についてはかようしかじかに交渉を進められておる、ことに一番問題となっております不当不正に勾留されておる漁民の問題については、かようにして早くこちらに帰すような方法を講じておるという、もっと国民が納得する御説明を私は承わりたいと思うのですが、いかがでしょう。
  62. 重光葵

    ○重光国務大臣 先ほどのお話は、日韓関係の全面的のお話のようでございましたので、そのつもりでお答えをいたしたわけでございます。  抑留漁夫の送還の問題は、具体的には大村における収容韓国人の釈放ということが条件になっておるのでございます。そこで、大村収容所における韓国人の釈放ということをやりたいと思っております。そのやることについて、全部一度にこれを釈放するということについては、治安関係等いろいろ考えなければならぬことがございます。そこで、実際的の方法一つ韓国側に交渉をして納得をしてもらいたいということで、いろいろ話し合いをしておるのでございますが、その方法について今日までどうしても納得が得られないのでございます。しかし、これについては、さらにいろいろな角度から韓国側と協議をして、双方の納得するような点でこれをまとめたい、こう思っております。従いまして、この問題が片づけば、漁夫の送還という問題も片づくのでございます。そこで、ぜひこれはやりたい。それはそう遠くはないと私は思って進めておるわけでございます。抑留漁夫の送還の問題はさような状況に今日なっておることを御了承願います。
  63. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこで、私、御質問申し上げるのは、今度は政治を離れて人道的の立場から申し上げるのですが、大臣も御承知の通り、大東亜戦争に日本の軍人として志願された朝鮮の方たち、あるいは強制的徴用されて日本に参りまして働いておった人々、陸海軍に従軍された方たちの中で、約三十万の方たちが戦死あるいは、死亡されておる。その遺骨の問題について、その処置がどうなっておるか。私ども承わるところによりますと、これは厚生大臣からも承わりたいと思うのですが、相当の数の遺骨が、一定の場所に保管されて、そのままになっておるんです。それから、巣鴨に戦犯で長く拘置を受け、死刑の処罰を受けた者もある。あるいはこれらの人々には釈放された人々もありまするが、一体これらの人々に対してどういう処遇を日本ではされたか、簡単でよろしゅうございますからお答え願いたい。
  64. 重光葵

    ○重光国務大臣 全部私からお答えすることが、あるいはできないかもしれませんが、戦争のために日本の軍に従事し、もしくは日本のために働いてくれた朝鮮人の処遇というものは、これは日本としては最も公平に、かつまた丁重に扱うべきものだと思います。そこで、大体のことは、そういう何は日本人と同様に取り扱うという主義で今日まで来ておるのでございます。  それからまた、遺骨のお話がありましたが、遺骨はそれぞれ郷里に送還することには少しも異存はないのでございまして、韓国側の代表者とはこのことについて交渉をいたしておるわけでございます。これは向うの都合のいいようにして差しつかえないのでございます。  それから、戦争中に日本で働いておった朝鮮人に対する処遇は、日本人に対すると同じような処遇をするという考え方で進んでおります。  それから、軍人になった人の恩給等は、ずっと積み立てて、すべて問題が解決するときにお渡しし得るように用点をいたしておるつもりでございます。
  65. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこで、私が承わりたいのは、北鮮の赤十字社からは、これらの遺骨を持ち帰るために赤十字の代表を日本に送りたい、さらに、居留民についても、赤十字の代表がこちらへ来て、実情に即する交渉を日本政府といたしまして、そうしてこれら英霊を祖国に迎えたり、居留足を祖国に帰すことをいたしたいという申し出が確かにございました。それが外務省に来ておるかどうか。もし外務省に来ておらないとしますならば、来た場合に、これに対しては人道的立場から当然に私どもはこちらに赤十字の代表を迎えて英霊を引き渡すことをしていただき、並びに居留民で帰りたい者は向うへ帰すような取扱いをすることが当然だと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  66. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう北鮮側の申し込みは正式には参っていないそうでございます。新聞情報にはそういう情報がございました。そこで、それじゃそういう場合にはどうするかというと、今日本の赤十字社の代表も北鮮に行っておるわけでございますから、いずれそういう筋でもって事情がはっきりするだろう、こう考えております。
  67. 古屋貞雄

    ○古屋委員 まことに外務大臣の無責任な……。
  68. 三浦一雄

    三浦委員長 古屋君に重ねて申し上げますが、一つ簡潔にお願いします。
  69. 古屋貞雄

    ○古屋委員 非常に重要な問題ですが、まことに無責任な答弁です。向うへ行かれている方がおりますから何とかなるというような無責任な態度をやめて、もっとはっきりすべきだと思う。そういうような御答弁を申されば重ねて承わりますが、一体、日本人と同じ処遇をしていると言うが、一つもしていない。私はこれでずいぶん苦しんだ。巣鴨におります戦犯で、処刑を受けて、刑期が満ちて帰ります者に対して、日本政府は裸で帰している。それから遺骨などは——もう時間がありませんから外務大臣だけでやめたいと思いますが、これは呉と佐世保に数万の英霊の遺骨があるわけです。これは確かに厚生省の援護局の倉庫にあるが、そのままほうってあるのですよ。なお、日本の諸君については、ビルマにしても南洋にいたしましても、遺骨を迎えるべくあちらに行っておりますけれども、その中にもたくさん朝鮮人の遺骨があるはずです。というのは、朝鮮人の戦犯の名簿を見ますと、その処刑を受ける現地は、マレーとか、あるいはジャワとか、あるいはビルマとかです。だから、向うにも遺骨がたくさんあるわけです。日本の英霊のみを迎えて、同じように日本の戦争に努力された、しかも放って参りました朝鮮の諸右の英霊をそのままにして何ら処置をしておりませんから、私は申し上げているのです。それが、もうこらえ切れずに、北鮮から代表の赤十字社が日本に参りまして、こういう問題を政府と交渉して解決したいということは、当然の権利であり、当然の主張だと思う。人道上から考えましても、日本の国の国際的信用から考えましても、当然に日本の方と同じような処置をすべきだと思う。従って、赤十字、いわゆる政治を超越した中立的立場の赤十字の代表が参りました場合には、むしろこれをお迎えして、外務省はこうした英霊に対するあとの始末などすべきだと思う。それが、葛西さんが行っているから何とかなるでしょうというような無責任な答弁では、いわゆる国際的信用から申しましても、人道上から申しましても、私どもは納得がいかたいのです。従いまして、赤十字社の代表をお迎えして、これらの問題の解決に当っていただくような配慮をする意思が外務大臣はあるかどうか、それを承わりたい。
  70. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は決して、今赤十字の代表が北鮮に行っているから何とかなるだろう、こういうことは申し上げたことはございません。ただ、私が申し上げたのは、それによって向うの当情も判明して、いろいろな方法を、話し合いをすれば話し合いができるであろう、適当な方法がつくであろう、こういうことを申し上げたのでございます。それからまた、そうして実際的に解決をしなければならぬ問題であります。むろん、お話の通り人道上の問題でありますから、これは十分に努力をいたさなければならぬことは当然でございます。今後もそのつもりでやることを申し上げます。
  71. 古屋貞雄

    ○古屋委員 それでは、なお、呉と佐世保にあります数万の英霊を送るだけの準備と決意があるかどうか。祖国にお帰しをする決意があるかどうか。ということは、四十数人の日本の居留民は近く日本に引き揚げて参ります。これは当然人道的立場から引き揚げてくる。従って、こちらにあります英霊を片づけるということも、日本政府のなすべき義務であり、たすべき当然の責務があると私は思う。従いまして、この英霊をどうするか、積極的に送り帰す意思があるかどうか、その点承わりたい。
  72. 重光葵

    ○重光国務大臣 遺骨の問題は、これは丁重に考えなければならぬと思っております。その問題については、人道上の処置をするために今十分努力をいたしておりますことを申し上げて、お答えといたします。
  73. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そうすると、こういうことですね。英霊の処置に対して、あるいは戦犯の人たちの処遇に対しては、日本人と同じような処遇をいたすということを確約され、しかも今の英霊に対する処意は丁重に、取り扱っていただく、こういうように承わってよろしゅうございますか。
  74. 重光葵

    ○重光国務大臣 さような趣旨でやりたいと考えます。
  75. 三浦一雄

    三浦委員長 田原春次君。
  76. 田原春次

    ○田原委員 私は防衛庁長官それから外務大臣並びに通産大臣に、主として防衛計画、外交方針、貿易政策等をお尋ねしたいと思います。  最初に防衛庁長官にお尋ねしますが、昨年十二月二日の閣議で船田長官は防衛庁試案なるものを説明されております。これによりますと陸軍十八万人、海軍十二万四千トン、空軍千三百機という画だそうでありますが、予算関係もあると思いますから、これを各年別にここで発表してもらいたい。   〔委員長退席委員長代理着    席〕
  77. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまお示しになりました防衛庁の試案は、昭和三十五年度に達成する最終目標でありまして、その年次計画は、防衛庁としては今のところまだ持っておりません。これはたびたび申し上げます通りに、国防会議が設置せられましたときに十分資料を整えまして、政府案として確立されるようにいたしたいと思います。
  78. 田原春次

    ○田原委員 昭和三十年から三十五年度にかけて総額七千五再億円の経費を予定して防衛庁試案というものが作られておる。そうすれば三十年度が幾ら、三十一年度が幾ら、三十二年度が幾らと逐年にできそうなものです。各年別だけでもできておるはずだと思いますので、ぜひこの機会に国民に知らしておいてもらいたいと思う。今の御答弁では国防会議ができてから提出するということですが、国防会議法案というものは出ておらない。また通るか通らぬかわからない。従って防衛庁はかく信ずるという、こういう試案をまず国民に徹底させる必要があると思う。その意味で私はお尋ねしているのです。今年度は出おるでしょう、だから三十一年度が出ないはずはないと思うが、ぜひ逐年別にお示し願いたいと思います。
  79. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問の点は、防衛庁試案としても、いまだ年次計画が十分できておりません。従いましてここにお示しする段階には達しておらないのであります。
  80. 田原春次

    ○田原委員 しからば昨年十二月二日の閣議で船田長官説明したというのはどういうことですか、その内容説明して下さい。
  81. 船田中

    ○船田国務大臣 閣議の内容につきましてはここに発表する限りではございませんが、今私の記憶では、十二月二日の閣議においてさような試案を説明したという事実は記憶しておりません。
  82. 田原春次

    ○田原委員 新聞によりますと、この六年計画はその後次の二点で、一年延びて七年計画になるのじゃないかとさえも見られております。その第一は日米相互援助協定に基く米軍側の種々の物資の供与の減少、それから第二は従ってジェット機T33、F86、それから特車、対潜哨戒機等を日本側で負担しなければならぬ問題がふえるだろう、こういうことで六年計画が七年計画になるだろうと見られておるのですから、六年計画が発表できぬわけはないと思う。なぜしからばこの二点について閣議で話をされたのであるか、もう少し国民の納得のいくように説明してもらいたい。
  83. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問のありました点につきましても、年次計画につきましては、まだ成案を持っておりませんので、ここに御説明するわけには参りません。六年計画を七年計画にするかどうかということについても、ここにおいてまだ御説明する段階に至っておりませんし、またさような作業はまだやっておりません。
  84. 田原春次

    ○田原委員 昨日の矢尾君のやはり防衛方針に対する御質問のお答えの中に、国際情勢の変化によって情勢は変るということを言っておられたと思うのです。従ってここで長官が発表されても、そのことが絶対に変更できないという意味ではない。一応の数字は出ておるはずでありますから、年度別に出してもらいたいというのですが、それがどうしてできないのですか。たとえば六年計画の後には陸軍十八万、海軍、航空隊等についてもそれぞれ数字が出ておりますが、しからばその問に侵略があった場合にはどうするのですか、その間は侵略がないという前提でやっておるのですか、そういう国際情勢にはおかまいなしに予算の都合上でこういうような数字を書いておるのですか、そこをわれわれは聞きたい。
  85. 船田中

    ○船田国務大臣 先ほどお示しになりました三十五年度におきまして達成する最終目標は、陸上十八万、海上艦艇十二万四千、航空機約千三百機、こういう目標に立っております。これが完成いたしますれば、外国駐留軍の撤退の基礎は一応でき上ることになります。しかし、その剛に国際情勢の変化ももちろん考慮いたして参らなければなりませんし、その間にもし不時の侵略というようなことが起るといたしますれば、これは当然日米安全保障条約の精神によりまして共同防衛の責任を果していく、こういうことになると存じます。
  86. 田原春次

    ○田原委員 それならば現在の外国駐留軍の陸上、海上、航空の数字を一つお示し願いたい。
  87. 船田中

    ○船田国務大臣 米軍が、どれだけの現有勢力がおるかということにつきましては、ここに詳細申し上げることは差し控えたいと思います。
  88. 田原春次

    ○田原委員 それはどういう意味で発表できないのですか。日本は日米行政協定、安全保障条約等に基いて、すでに過去四年間で五百億相当の金を負担しておる。従って日本の防衛をしてやると称しておるアメリカ軍の陸上兵力あるいは飛行機あるいは軍艦等が幾ら来ておるか、その数字を防衛庁が全然知らぬということは納得できません。だから少くとも向うから通報のあった、またこちらで調査した数字だけでも発表してもらいたい。
  89. 船田中

    ○船田国務大臣 私の承知いたしておりますところでは、大体の数字ですが、陸上は第一騎兵師団、海兵師団それぞれ一、そのほかに多少独立砲兵大隊、工兵大隊というようなものがあるようでございます。海におきましては六千名前後かと思います。それから空におきましては五万名前後の兵力があるものと考えております。
  90. 田原春次

    ○田原委員 海上は六千人と言いましたが、軍艦でいうと何隻、何トンおるのでございますか、これも一つお示し願いたい。
  91. 船田中

    ○船田国務大臣 海軍の方の艦艇につきましては数字がよくわかっておりません。
  92. 田原春次

    ○田原委員 それでは次に今問題となろうとしております国防会議の構成についてお尋ねしたいと思います。国防会議は何を目標としてやろうとするのでありますか、国防会議の目標、目的をお知らせ願いたい。
  93. 船田中

    ○船田国務大臣 国防会議におきましては、わが国の国防の基本方針その他重要の国防計画等につきまして審議をする総理大臣の諮問機関として設置する、こういうことになっておりまして、それは防衛庁設置法の規定によりましてこれを設けるということにいたしたいと思います。
  94. 田原春次

    ○田原委員 新聞の報ずるところによりますと、目的はそれだけでなく、防衛出動の可否もそこで諮問に応ずるということになっているというのですが、それはほんとうですか。
  95. 船田中

    ○船田国務大臣 諮問事項の一つには、それもあげられております。
  96. 田原春次

    ○田原委員 この国防会議は副総理、大蔵大臣、外務大臣、経済企画庁長官、防衛長官、この五人で構成するやに出ておる部分と、それから自民党の方で、それに一部の異論があって、参議という民間人を二名入れるか入れぬかという意見が今出ているようでありますが、防衛長官はこの構成についてはどういう御意見を持っておりますか、お尋ねしたい。
  97. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいませっかく検討中でございまして、一両日のうちに成案を得まして提案をするようにいたしたいと考えております。
  98. 田原春次

    ○田原委員 防衛計画の大綱の相談をすること、それから防衛出動の可否を決定する機関として、伝えられるように五人の大臣だけでは不足ではないかと見られるのでありますが、防衛長官はどうお考えになっておりますか。
  99. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまお示しのような点も考慮いたしまして、適当なる成案をすみやかに得て、お目にかけるようにいたしたいと考えております。
  100. 田原春次

    ○田原委員 閣僚だけの一種のインナー・キャビネットのように、先ほどあげました五つのポストから出た者だけで国防会議の諮問機関を作るというならば、特に国防会議という別個の機関を作らなくても、閣議の席でやれることではないでしょうか。何ゆえに特にこの五人をあげて国防会議というものにしぼっていくかという理由、この点をお伺いしたい。
  101. 船田中

    ○船田国務大臣 国防会議につきましては、防衛庁設置法の第四十二条に、国防に関する重要事項を審議する機関として、内閣に、国防会議を置く、それから、内閣総理大臣は、左の事項については、国防会議に諮らなければならない。国防の基本方針、防衛計画の大綱云々、こういうような規定がございます。この規定に基きまして国防会議を設置いたしたい。従ってこの法律の趣旨に適合いたしますように、適当なる組織を目下考えて検討いたしまして、そして適当な案をすみやかに得まして、一両日のうちに決定をいたしましてお目にかけるようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  102. 田原春次

    ○田原委員 国防会議を作らねばならぬという理由ははっきりしないのでございますが、かりに現内閣で作るといたしましても、副首相、大蔵大伍、外務大臣、経済企画庁長官、防衛長官だけで防衛計画の大綱を作ったり、防衛出動の可否をきめるということは不可能ではないかと、私はお尋ねしてみたい。それはたとえば通信、情報の面においては郵政大臣が加わるべきものではないかと思う。それから防衛出動をして、いよいよ国内で戦闘でも始まるという場合は、当然建設大臣の、いろいろな工事、橋梁の破壊等に対する対策になる。また戦死者、負傷者等が出れば、厚生大臣、厚生省の所管になる。あるいはまた食糧をどうするかということになれば、これは農林省の問題になる。それから器材をどうするかというようなことは通産省ということになる。スパイの取締りということになれば法務省というわけですから、ほとんど現在の閣僚の全体にわたるのではないかと思うのです。それを特にこの五人にしぼるという意味が私にはのみ込めない。たとえば大蔵大臣が入っておりますが、あの不思議な声を出して、金がない、金がない、金がないという、そういうふうな大蔵大臣がおったって、防衛計画なんか立ちっこない。(笑声)そういうふうで、その必要は認めぬけれども、作るならば関係各相をみなそこへ出して、大蔵大臣を中心にする、あるいは外務大臣を——外務大臣は入っておりますが、これなども世界各国の情報というものが入っておらぬと思う。たとえば先ほどの古屋君の質問に対しても、北鮮に対する外務省の認識ははなはだ浅薄だ。だれも行っておりませんから……。あるいはソビエトに対してもそうだ。結局アメリカあたりからのまた聞きの情報で、東ヨーロッパにしても中国にしても北ヴェトナムにしても判断しておるにすぎないのであります。そういう人が、ただ国防会議の構成員だといってすわってみても、ほんとうの正確な情報は入らぬと思う。こういうのでございますから、国防会議をやるというならば、一体五人にしぼった理由が私にはのみ込めない。あなたはどうですか。この五人だけであくまでも突っぱろうとするのですか。あるいは関係各机を全部入れるということにしなければならぬと思いますが、あなたの意見も聞かして下さい。
  103. 船田中

    ○船田国務大臣 国防会議の構成につきましては、先ほど来申し上げておりまするように、目下せっかく検討中でございまして、適当なる案を得まして、すみやかにこれを国会に提案するようにいたしたいと考えております。ただいまお話がございましたけれども、国防会議のその成案を得ましたとぎに、また詳しく御説明する機会があると思いますけれども、もちろん国防会議に先ほどお示しのような防衛出動というようなことの可否を諮固いたしましても、その上に閣議の決定を経なければなりませんし、ことに防衛出動というようなことになりますれば、国会の承認を得なければならぬ、こういうことでございますから、国防会議は総理大臣の一諮問機関にすぎない、こういうことになると思います。
  104. 田原春次

    ○田原委員 それでは国防会議のおもなる諮問事項であります二点、すなわち第一は防衛計画の大綱をきめる、第二は防衛出動の可否をきめるというのでありますが、この防衛計画を立てる上において当然考えねばならぬことは仮想敵であると思うのです。一体どれが当面の日本の仮想敵になるか、これを考えずに、ただ防衛計画は立つわけはありませんが、船田防衛長官は、世界八十ヵ国の中のどの国を今仮想敵国と考えておるのですか、お示し願いたい。
  105. 船田中

    ○船田国務大臣 仮想敵国などということをここに申し上げることは適当でないと存じます。しかし過去の歴史、われわれの体験からいたしまして、どういう国が侵略をやるか、どういう国がそういう危険なことをやったかということは、おのずからわかると思います。諸般の情勢を判断いたしまして、わが国の国力、国情に沿う防衛体制を整備していくということを根本の防衛整備の方針といたしておる次第であります。
  106. 田原春次

    ○田原委員 今防衛長官は重要な発言をしたのです。過去において侵略云々と言ったのですが、侵略とはどういう意味ですか。侵略ということは……。明瞭におっしゃって下さい。
  107. 船田中

    ○船田国務大臣 侵略ということは、やはり字義の通り侵略でございまして、(笑声)これ以上説明のしょうはありません。
  108. 田原春次

    ○田原委員 それではお尋ねしますが、侵略とは日本に宣戦を布告し、もしくは日本と戦闘状態に入る、それから先方が勝って日本に敵前上陸をやり占領か続けたものが侵略者と思うのですが、それに問違いありませんか。私の侵略の定義を御批評願いたい。
  109. 船田中

    ○船田国務大臣 侵略は、やはり先ほど申し上げました通りに、常識によって侵略という解釈を下す以外にはないと思います。
  110. 田原春次

    ○田原委員 将来はともかくといたしまして、現在のところは、日本と戦争をやりましたのはアメリカであります。ルーズヴェルトが東條さんに戦争をしかけるようにしむけたことは、アメリカのパール・ハーバーの調査に明瞭になっております。日本とアメリカが戦争をしたことは認めますか、いかがですか。(笑声)
  111. 船田中

    ○船田国務大臣 その通りであります。
  112. 田原春次

    ○田原委員 そうして何年かたった後に日本が戦争に負けて、マッカーサーが上陸したことは認めますか。
  113. 船田中

    ○船田国務大臣 事実は事実として私も承認いたします。
  114. 田原春次

    ○田原委員 マッカーサーの占領中に、きらいな者はみな追放等にして、幾らかのおためごかしの人気取りの政策をやって占領を継続した、このことはお認めになりますね。
  115. 船田中

    ○船田国務大臣 アメリカが占領を六年余にわたってやった、そしてその間に追放ということをやったという事実は、確かに今お示しの通りであります。
  116. 田原春次

    ○田原委員 それでこの占領中に、時の内閣と話を進められまして、サンフランシスコの講和条約の原案を示し、そこにある種の話し合いができた後に、サンフランシスコの講和条約に日本代表が出席してこれに署名した、この事実もお認めになりますね。
  117. 船田中

    ○船田国務大臣 日米の間に平和条約が成立いたしまして、戦争状態が終結をしたという事実は、私承認いたします。
  118. 田原春次

    ○田原委員 そしてその講和会議と同時に、日米安全保障条約、並びにその後それに伴って行政協定を日本がアメリカと結んだ、この事実もお認めになりますね。
  119. 船田中

    ○船田国務大臣 その通りであります。
  120. 田原春次

    ○田原委員 侵略の新しいやり方としまして——昔のやり方は、われなんじと戦闘を交えるという宣言をし、それから戦いをやり、勝った方が負けた方の国に行きましてこれを占領する、あるいは自分の版図に入れるというようなごく簡単なやり方であった。最近の世界の傾向は、おれは侵略者であるというのでなくて、お前の国を守ってやるのだ、お前の国のためになるのだというような表現をするのです。作文を発表するのです。そして、内実は一種の強迫をやりまして、無理やりに判を押させるという傾向が強いのです。従って、先ほど防衛庁長官が国防会議における侵略という言葉をお使いになりました点から見ますと、いろいろなアメリカ側の宣伝や、言いわけや、またはこれに対する利害の一致した日本側の言葉を差し引いて簡単にいたしますと、現実にはアメリカが日本の侵略者である地位におると思うのですけれども、これはそうお認めになりませんか。
  121. 船田中

    ○船田国務大臣 アメリカが日本に対して侵略をしておるとは、私は認めません。
  122. 田原春次

    ○田原委員 しからば、防衛庁長官さえも知らないほど各種の陸上兵力、それから艦艇の数も明らかにならない海上兵力並びに五万人からの航空兵力——条約は確かにやっておるけれども、その条約は対等に五分五分でやったのではなくて、講和会議をしてやるがこれだけは聞かなければいかぬぞという、これこそ一方的な、こちらの意思を無視した安保条約と行政協定に立って入っておる。これは侵略じゃないか。侵略というのは何かと聞いたのはそれなんである。国防会議の目標が侵略者に備えるというのであるならば、私はこの侵略ということについて、今のアメリカに対して防衛庁長官は考え直されたらどうか。きのうの矢尾君に対する御答弁を見ましても、自由主義諸国と協力しておいて、初めから侵略の事実はほったらかしておいて、先に現われたところだけで提携しようという言葉、これは何といいますか、まことに悪い言葉を使って恐縮ですが、卑屈です。日本国民はそんなことは納得せぬのです。われわれ侵略者に対しては、少くとも武器がなくてもレジスタンスをしなければほんとうの愛国者ではないと思うのです。戦争状態から占領占領終了から講和会議、それから安保条約までそのまま打ち切っておいて、自由主義諸国と協力して、別に将来どこか日本を侵略するかもしれぬと無理やりに探したような仮想敵国に対して、向う五年間に七千五百億の金を使って十八万人の兵隊を養うといっても、国民は納得せぬと思うのです。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 侵略という言葉をあなたがお使いになるならば、現在のアメリカに対して冷静に判断されるべきと思うのですが、それから先にされずに、もっと皮肉に言うならば、ソビエト等があなたの頭に出てくると思うが、アメリカとソビエトは確かに仲が悪いのです。双方とも相異なる主義を持って、相当の武器を持って憎み合い、おそれ合っていることは事実だと思うのです。しかし、そうだからといって、現在侵略しているところをそのままにしておいて、あそこは来るかもしれぬからといって貧弱な兵器を備える。そうして専門家でもない大蔵大臣やそういう連中が国防会議をやるといっても納得できぬ。まずわれわれは、当面の侵略者をどうするか、たとい負けておってもそれだけの気魄を持たなければいかぬと思うが、それに対するあなたのお考えはどうですか。
  123. 船田中

    ○船田国務大臣 アメリカ軍が日本に駐留いたしておりますのは、御承知の通り日米安全保障条約、行政協定の規定によってやっておるのでありまして、アメリカが侵略者だとうことは、これは、国際常識から見ましても絶対にさようなことはございません。
  124. 田原春次

    ○田原委員 先ほど私が申し上げましたように、最近の戦争傾向並びにその後の処理状況を見ますと、余は侵略者なりと言ってくるものはないのです。お前のところの役に立つと言ってくるのです。従って、防衛庁長官がアメリカを侵略者でないと今ここで言われましても、心ある国民は納得しないと思うのです。アメリカがよいことをしたというのは別です。しかしそのことも、それだけを切り離して日本のために占領をやっているかどうかは別としまして、要するに問題は、サンフランシスコ講和条約と同時に強制的に締結されました安保条約、それに基いて作っております行政協定に対して、この辺でわれわれは冷静に、基本的に、自主独立の立場から判断をしなければいかぬと思うのです。従って、侵略者の定義は、私の言うようにあなたが賛成されることによってほんとうに現実に生きてくると思うのです。そういうふうに切に御賛成を願いたいと思うのですが、どうでしょう。(笑声)
  125. 船田中

    ○船田国務大臣 私は、遺憾ながら田原委員の侵略の定義には賛成しかねます。侵略ということは、結局敵対行為開始の当初の攻撃がどちらから行われたかということによって判断すべきものでありまして、たとえばドイツがソ連に侵略をしたということは、ドイツがソ連に対して無警告で一九四一年六月二十二日に攻撃を加えておる、こういうものが侵略である、かように考えます。従って、先ほど来たびたびお話がございますが、アメリカが侵略者であるとは私は絶対に考えません。
  126. 田原春次

    ○田原委員 それは一応あと回しにいたしまして、次に外務大臣にお尋ねいたしたい。外務大臣は先日来の御答弁の中にアメリカと協力していくということを言われております。しからば日本に対してどういう協力をしてくれておりますか。あなたの御記憶になる点だけでいいから、二つ三つここであげてもらいたい。
  127. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は本会議における演説におきましても、日米関係は単に共同防衛の責任において協力しておるだけでなく、全面的に協力しておるということを申し上げました。一々それを具体的に羅列することは私はしませんけれども、全面的と申し上げるのは、経済的においてもまた文化的においても協力しておるのでございます。さようなことで御了承を願いたいと思います。
  128. 田原春次

    ○田原委員 それでは石橋通産大臣にお伺いいたしますが、最近における日本と米国との輸出入関係において、アメリカが日本に協力してくれておるか、または協力しないかの問題が今進んでおると思いますが、これを二、三御紹介願いたいと思います。
  129. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 大体においてはアメリカは日本との貿易について協力していると申すべきだと思います。ことにアメリカ政府の態度は——ただどこの国にもありますが、当業者というものは自分の利害にどうしてもとらわれますから、たとえばアメリカの綿業者が、日本の綿布の大量の輸入に対して反発をして、いろいろの運動をしているというような事実はございますが、これはアメリカ政府がやっていることじゃなくて、民間にそういう動きがある。これを押えているのが現在アメリカの政府で、協力してないとは申せないと思います。また日本はアメリカからずいぶん輸入超過でありますが、これも輸入超過がなぜ起るかというと、結局それだけドルがアメリカから日本に入ってきておりますから、それだけ輸入超過になるのであります。そういう点から申せば協力していると申すのが当然だろうと思います。
  130. 田原春次

    ○田原委員 今通産大臣の御指摘になりました紬織物輸入制限法案は、御承知のように、この二月の六日にアメリカの下院にアバネジー・ゲイジングス法として出されており、六日からきのうまで連続四日間にわたって、下院の優業委員会で公聴会が開かれていることは御承知の通りであります。これが昨年日本からアメリカに輸出をいたしました総量一億五千万ヤールを六千万ヤールに減すという制限法であることは、通産大臣御承知の通りです。通産大臣はこれ一つしかあげていない。ところが私の貧弱な調査によりましても、明らかにわれわれの納得のいかない、最近アメリカの日本に対する、特に貿易上の日本の進出をアメリカが制限しようとするものが、少くともあと四つありますから、私の知っている限りこれを申し上げますので、この正否をお答え願いたい。  第一は絹スカーフ、可燃性織物輸入禁止法というものが一九五五年の十月二十一日にアメリカで成立しておるはずであります。これに対して絹スカーフだけは除外してくれという業者の運動がありましたが、アメリカの国会ではこれを審議未了としております。この事実をお認めになりますかどうですか、まずこれをお答え願いたい。
  131. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 可燃性織物の輸入禁止をするということで、一部それが実行されておることは事実でありまして、認めます。
  132. 田原春次

    ○田原委員 第二は、これはマグロに関することであります。冷凍マグロとカン詰マグロに対しまして、輸入割当または関税引き上げ運動がアメリカにあることは御承知ですかどうですか。——むろん御承知と思いますが、一方ガットの方では昨年の九月十日の決定で、これらのものは相互に無税と決定しておるにかかわらず、アメリカだけに、日本の冷凍マグロとカン詰マグロの従来入っておった数量を減すというやり方か、または一ポンド当り一セント半の税金を上げるという運動がある。これは日本指摘はしておりませんけれども、アメリカに対するマグロの輸出は、南米のチリーと日本だけでありまして、しかも日本がそのために最大の損失と被害を受けるのでありますが、その事実もお認めになりますかどうですか、お答え願いたい。
  133. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 その通りであります。その通りでありますが、これはさっき申し上げましたように、やはり当業者同士の運動でありますから、政府がそれを助長しておるとか何とかいうものではありません。
  134. 田原春次

    ○田原委員 次は、ことしのアメリカの議会に陶磁器輸入制限法案というものが出まして、実際においては日本からの瀬戸物やその他磁器類が、従来アメリカに入っておりました数量から半分くらいに減らされる制限法でございますが、その制限法が出ておることもお認めになりますね。
  135. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 さようなものが出ておることも承知しております。
  136. 田原春次

    ○田原委員 第五点、これは沖縄の琉球人の人たちが常食にいたしまするみそを、適法な輸出入契約で日本の業者が船に積みました。ところが門司におりますアメリカの琉球軍の検査官が、このみその原料である大豆は満州から来たものである、中国地区の大豆である。従ってこのみそは送っては相ならぬというので、約六ヵ月門司の倉庫にとめられまして、ついに非常な損害を受けておる事実があるのであります。これはこまかい事件だからあるいは御存じないかもしれませんが、この事実のあるということは私は申し上げておいてよろしいと思う。  そうしますと、最近の事件だけでも、第一、日本製品である絹スカーフの輸入禁止法、第二は、冷凍とカン詰のマグロの輸入割当もしくは関税の引き上げ、第三は、綿織物輸入制限法、第四は、陶磁器輸入制限法、いずれも米国の国会に出ております。第五は、満州から入ったものを原料とした日本の加工品を米軍占領地区の沖縄へ輸出を禁止しておるという措置、これらはアメリカが全体的に日本に協力しておるとお考えになっておりまする今の政府の方々、特に重光外務大臣にお伺いするわけでありますが、これは一体どういう意味なんでしょう、協力の事実でございましょうか、非協力でございましょうか、あなたのお考えを明瞭にしてもらいたいと思うのでございます。
  137. 重光葵

    ○重光国務大臣 これらの問題は日本側で困る問題であります。困る問題でありますから、これらの問題についてはアメリカ側と十分に交渉をして、そういうようなことが少しでも日本側の苦痛にならぬように処置をしてもらわなければなりません。しかしそういうようなこまかなこと、またアメリカ側ではアメリカ側の事情があるわけでありますから、それを日米両国の間の非協力の例であるとして取り上げることは私はどうかと思います。それらの問題についても十分双方の困難を克服するように、両方の政府は措置していっておるのでありますから、それで非協力だということは私は言い得ないと思います。全体的に協力関係が成立しておるというこの考え方を動かすことになりません。
  138. 田原春次

    ○田原委員 これらのことがこまかいと言われましたけれども、綿織物、陶磁器、マグロあるいは絹は日本の輸出の大宗といわれておるのでございます。日本から飛行機や戦車は輸出いたしません。従いまして、こういうものを向うはけ飛ばすのだけれども、もっと大きな協力法がございますというてお近づきになりましたことは、これは日本の外務大臣や通産大臣としてはいかがであろうかと私は思うのであります。  今度はもう一つ先にいきまして、次はアメリカ側が日本へ協力を要請しておる一つの事実といたしまして、ここで皆様に聞いていただきたいことがある。それは外国映画の輸入の件であります。外国映画の輸入につきましては、これは一萬田さんによく聞いておいて御返事をもらいたい。これは内閣に審議会がありますけれども、主として大蔵省為替局が実際上中心になっておりまして、大蔵省がこれを所管としております。昭和三十年度の外国映画の輸入は、昭和二十九年度分をそのまま踏襲しておりまして、御承知のように、総計五百二十八万ドルというドルをわれわれは外国に払って、外国の映画を見ておるわけでございます。それによって一年間に劇映画が百八十本輸入されておることはお認めになると思いますが、いかがでございますか。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その通りであります。
  140. 田原春次

    ○田原委員 それはその通りとして次に移ります。  この百八十本のうちを三通りに分けてありまして、ドル地域からは百二十二本、それからスターリング地域からが十六本、清算勘定地域から二十六本、百八十本のうち百六十四木はそういう分け方になっているということもお認めになりますね。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その通りでありまして、それが基本の輸入本数であります。
  142. 田原春次

    ○田原委員 そこでなぜ一体アメリカの映画だけを百八十本のうち竹に百二十二本認めねばならなかったか、その問の経緯をお知らせ願いたいと思います。   〔「ドル地域はヨーロッパにもある   よ」と呼ぶ者あり〕
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 百二十二本はドル地域からの輸入になるのでありまして、大体実績に基礎を持つ数字でありまして、戦前等の実績ではアメリカから約八〇%、それが最近ではそういう実績を見て七〇%、なぜそんならそういうふうにドル地域からの映画の輸入が多いかといえば、結局やはり商売でありますから、採算に合うもの——アメリカの映画がやはり一番採算に合う、それでそれが入ってくる。しかもそれは戦前からの実績がある。しかしなるべくそう片寄らずに、一つには文化的なあるいはまた教育的な考慮も払わなければならぬと思いますが、そういう点から普遍的にいくように努力を払っております。
  144. 田原春次

    ○田原委員 ドル地域というのは、その中にヨーロッパのドル地域の国もあることは知っておりますけれども、実績によってこうきめたと申しますが、その実績はいつきめたのであり、どういう理由でその実績をきめたのか、実績のきまった年度を知らしてもらいたい。
  145. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 きめたのではないんで、実績であります。戦前にそういうふうになっておった、従来の大体の姿です。
  146. 田原春次

    ○田原委員 これは従来の姿でなくて、隠れたる婆があるのです。それは戦前の実績でなくて占領末期の実績であります。占領末期にシーボルド・吉田協定という秘密協定がございまして、占領中にアメリカの大きな映画会社八社が東京へ参りまして、ほかの国から映画を入れなかった。膨大な宣伝力か。持って日本にアメリカ映画をすっかり配給しておいて、そうしていよいよ形式だけの独立でありますが、独立になるや、この実績を基準としてこれから、日本は入れなさい、それに対してイエス・サーと言ったのが、シーボルド・吉田協定であります。そうお認めになるかどうですか。大蔵大臣はだいぶ映画通のようなお答えをしますから、お尋ねしておきます。
  147. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は率直に言って、アメリカのフィルムがたくさん入ることを好んでおるわけではないのです。ないのだが、これはやはり国家の間の関係もありまして、すでに生じておるある客観的な一つの情勢というものは、徐々にこれを訂正していくのが、私は国際信義の上からもしかるべきものとして、さような考えで、なるべくこれをアメリカだけでなくて、もう少し高い精神的な見地から一教育的な見地もありましょう、そういうふう女見地からフィルムの輸入も考慮すべきである、こういうふうに考えております。
  148. 田原春次

    ○田原委員 そういう御意見は、言葉としてはまことに公平でありますが、実際にあなたのそういう御意向を外国映画輸入委員会等に諮問されたことがございますか。ここでの御答弁だけでなく、輸入方策にそれが反映しておる事実がございますか、御返事をしてもらいたい。
  149. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これにつきましては、映画フィルムの輸入につきましても、優秀なフィルムを輸入したという向きに対しては、やはり一つのごほうびを上げるようにいたしまして、先ほどお話の百八十本のうちで百六十四本が基本輸入で、あとの十六本は、優秀な映画を入れるとあと一本入れてよろしい、こういうことに使っております。それから日本の映画を輸出してドルを非常にかせいでくれるというような向きに対しても、一本を贈呈します。こういうふうにしております。総じて私は安い、いい映画ができれば、どこから輸入するということを特に今拒否しておるわけではないのでありまして、原則的にはどこからでも入れる。ただ今言ったような採算の上からアメリカの映画がたくさん入っておる。これは私はおそらく国際的な情勢ではないかとも思うのであります。
  150. 田原春次

    ○田原委員 安い、いい映画が入ってくれば拒否しないと言いますが、また先ほどの御答弁では、実績があるから実績に従うのだと言われましたが、そこは矛盾しておる。しからばほんとうに安い、いい映画が——委員会等の判断で安いか、いいかはきめるのですけれども、そういう映画がアメリカ以外から入ろうとした場合に、この実績にかかわらず、もしくは実績内において漸次一方を漸減し、一方を漸増するというような方針に進まれますか、あなたの御意見を聞かしていただきたい。
  151. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはまたその映画フィルムの内容にもよりますけれども、そういう点はやはり考えなくてはならない。これはここに為替局長がおるから、詳しいことはそちらから聞く方が正確ですが、私だけの考えでは、フィルムの輸入については、今後は委員会審議会において、国全体の、単に商売がどうとかこうとかいうのではなくして、もう少し教育——私は社会教育にも非常に大きなものがあるのではないかと思っておるのでありまして、そういう見地からどういうフィルムを入れるべきかという——きょう教科書の問題も出ましたが、私はフィルムもやはり重大な影響を国民に与える、かように考えておるので、そういう見地から十分選択して入れることにしたいと考えております。
  152. 田原春次

    ○田原委員 あなたは今言葉としてはなかなかきれいな言葉をおっしゃいましたが、実際においてはあべこべになってきておる。たとえば昨年の九月十日以後関税定率法が変りまして、ガット加入国からは商業映画、文化映画のいかんにかかわらず、一メートル当り三十円、それからガットに加入してない国からの映画は、商業映画であろうと寄贈を受けてもらって帰った映画でありましょうと、一メートル五十円という差をつけております。それはガット加入、非加入ということでつけたと言われますが、それに併行いたしまして、アメリカからは昨年文化映画が四百本近く入っておるのです。アメリカ・センター、日米センターが全国にありますが、そこで、十六ミリの、アメリカの生活がいい、日本人はアメリカの言うなりになれといったような、要するに宣伝映画です。これが無税で入っておるという事実、すなわち実績論でなくよい映画、安い映画という理論でなく、アメリカ以外の国から、従来たとえば中国あたりから旅行者がもらってきた映画は、従価税当時はせいぜい一巻七、八千円くらい税関手続その他に払えばよかった。今は約十万円こういうふうにガット論はそれはそれなりの理屈があるけれども、実際においては従来の実績を握っております米国の映画資本家と、これに利害を持っておる人々の間に、法律の名においてアメリカ映画をどしどし入れて、それ以外の国の映画を拒否する格好に関税定率法が結果的にはなっている。だからあなたが言われるのは、ここでは言葉は非常にきれいでありますが、もしその言葉通りに受けるならば、米国からの文化映画であろうと、どこの国からの文化映画であろうと、むしろアメリカのように日本人がいっでも行けるところの映画でなくて、行けたいようなソビエトであるとか、あるいは東ヨーロッパであるとか、あるいは北鮮であるとか、ベトナムであるとか、中国とかいうような、普通行けないところからの映画こそ歓迎して、われわれが見ることが参考になると思うのです。逆にこれをとめるような格好になっておりますが、これをあらためる必要があると思いますが御意見はどうでしょうか。
  153. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから繰り返し申しますように、アメリカの映画を特に政策的に入れるというようなことは考えておりません。なお今の御意見、なるべく日本の国民の行かないような、目に触れないようなものをよく見せてはどうかという御意見、これはすなおである限りは私はいいと思います。それでへんな何らか事がなくてすなおにただ見せる、知識を供給する、こういう准度のものでしたら私はいいのじゃないか、私も賛成します。
  154. 田原春次

    ○田原委員 すなおの映画は賛成すると。言われますが、それならここでの答弁だけでなくて、実際に大蔵省の為替局の輸入方針、または必要とあらば関係法令の修正等によって、実を示してもらいたい。この問題はその程度にしておきます。  次は日本のこれからの行き方についての問題でありますが、御承知のごとく、この狭い日本で自立していきます上においては、どうしても貿易が盛んにならねばならぬ。その点は閣僚の皆さんも御異存はないと思います。ところが先日来アメリカで、米英巨頭会談等で一番大きな問題になりましたのはココム・リスト、特にその中の最も厳格なチャイナ・リスト、中国向け輸出制限の協定みたいなものでございます。これに対しましては、イギリスの方がすでに悲鳴をあげまして、ゴムくらいは入れようじゃないかということになり、近くココム・リスト特にチャイナ・リストの何かの修正は期待されておるのでございます。私どもの特に指摘したいことは、一体ココム・リストやチャイナ・リストというものは相手の国の生権をしばるような罰則の伴なったものではない、これはあくまで一種の紳士協定いわばジェントルマソ・アグリーメントの程度ではないかと思うのであります。これを後生大事に守っておる日本は、一日々々当然開いていくべき貿易の新市場を失いつつあると思うのでありますが、石橋通産大臣はココム・リスト、特にその中のチャイナ・リストの基本的な改正に対する要求、もしくは要望等がありますかどうか、この際われわれに明らかにしてもらいたいと思うのでございます。
  155. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 中共に対する禁輸品目の緩和については絶えず努力しております。決して英国などに劣らずわれわれとして希望もしておりますし、また努力しております。しかし御承知のように、現状においてはこれがなかなか打破できないというのが実際であります。そこでやむを得ずそのときどきで特別の認可を求めて、たとえば鉄板を出すというようなこともある程度いわゆる特免によって行なってきたようなわけであります。努力は絶えずしておる次第であります。
  156. 田原春次

    ○田原委員 昨年の春以来通産省、外務省、大蔵省等に陳情を続けておって、依然として特免にならない一つの例といたしまして、ここに西日本木造船の造船業者からの経過の報告を受けておりますから、これを申し上げてその当否をお尋ねしたいのでありますが、昨年の春日本から中国訪問実業団が行きまして、中国の国際貿易促進委員会との間に、木造船、特に漁船ですが、木造漁船五十隻の発注を受けた。これは発注先は中国運輸機械進出口公司というのでありまして、向うの政府機関であり、一種の貿易公団である。しかるにこれによって日本全国、特に西日本、関西から中国、四国、九州にかけての木造船造船業行は非常な活気を呈し、今にも実際の注文が来るものと思っておったところ、どうしても政府側の許可が下りませんで、今日なおこれは運動を続けておる状態であるということをわれわれは承わった。しかるにこのココム・リストが昨年の八月には大幅に扱い方が緩和されておりまして、タンカーだけは依然禁止であるが、その他の小型の船、特に木造漁船のごときは、ソビェト圏内や東ヨーロッパ、バルカン方面のココム・リストの中では、扱い方が非常に緩和されているというふうにいわれている。ひとり中国だけ、特に日本の実業家が北京まで行って契約したにもかかわらず、いまだに特免の措置が出ないということは、これは一体外脇省の責任であるかあるいは通産省であるか存じませんが、外務大臣の御見解と通産大臣の御見解を承わっておきたいと思います。
  157. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 木造船のことは私どもも承知しておりまして、これまたココムに対しては要求しております。またたとえば昨年フーヴァー国務次官補が見えたときにも、外務大臣と同席の場所で私からも話を出して要求をしておいたような次第でありまして、努力しておるのでありますが、お話のように、どういうわけかまだうまくいかないというのが実情で、はなはだ遺憾に思っております。なお今後もせめて木造船ぐらいいいじゃないかということで、交渉は進めておりますし、また今後も進めるつもりでおります。
  158. 田原春次

    ○田原委員 近くダレスも来るそうでありますから、一つ少しは元気を出して、これが正しいと思うことは二つや三つは協力の実を示す意味において、獲得してもらいたいと思うのであります。たまたま私は昨年の秋ある国を旅行中に、これは飛行機の中で知り合いになった英国の貿易商社の社員の話でございます。事実であると思うのでありますが、あなた方の御批評を聞いてみたいと思います。デンマークはココム・リストを平気で違反いたしまして、束ヨーロッパの国々に禁止品を送ること四回そのためにパリのココム委員会の問題となった。ところがデンマーク側の運動が巧妙だったのか、買い受け側が運動したのか存じませんけれども、四つぐらいのケースは問題じゃないということです。そのまま特にバトル法の発動もたくしていったということを、英国の貿易商社の社員が私どもに話しておるのです。従って私はここで大っぴらにデンマークにならえというわけではないけれども、木造船ぐらいは、注文を受けておりますから、場合によったら作らして、そして先方に送って、あとでダレスが文句を言ったら、それは私はアメリカに協力いたしますという重光外相の得意の答弁で、何とかデンマークなりにいかぬかと思うのです。こういうことも希望として申し上げておきます。  次は文化交流の問題でありますが、文化の交流というと、ほとんどアメリカとの文化の交流が唯一のごとくに思われておる。野球にいたしましても、あるいは映画にいたしましても、その他演芸、出版物、万般がアメリカ的になりつつあることはまことに慨嘆にたえない。私はアメリカの学校も出ておるし、アメリカのことは、いいところも悪いところも知っておるけれども、三つに一つぐらいはノーと言うくらいの気魄を持たなければ、御承知のようにアメリカ人というのは、何でもイエス・サー、イエス・サーと言ったらどんどん押してくる。そういう意味から言いますと、この際たまたま最も進歩的な言辞を弄しました大蔵大臣の、映画に対する方針等も、この実を示すよい機会でありますから、一つソビエトや中国や、それから東ヨーロッパ、バルカン、ベトナム、朝鮮あたりから自由にスポーツ団体、スポーツ選手、あるいは演芸、オペラ、バレー、展覧会、美術、彫刻、音楽、これらを日本との間に交流させるような、文化交流の運動を助長されることが必要であり当然であると思いまするが、これに対する見解を重光さんでもいいですから、一つお答えを願いたいと思います。
  159. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は文化の交流はけっこうだと考えて、文化協定などできるだけ広く各国と結ぶ方針で進んでおります。しかしこの文化の交流も、先ほどのお話にもありましたように、ごくすなおに考えてやりたいと考えております。それが政治的な意図を持ってなされる場合には、これはよくないことでございますから、そういうことも考慮して徐々に進みたい、こういう工合に考えてやっておる次第であります。
  160. 田原春次

    ○田原委員 すなおとか徐々とかいいますが、実際は何もやっていない。これはイーデン、アイクがワシントンでこの間協議した。そうしてソ連に対する態度ということは——このアングロサクソン民族として当然のことでしょうが、言っておる。それ同じころにロンドンでは、新聞の報道によりますと、英ソ文化交流協定というものをどんどん平気でやっているのです。この協定は、新しくできたのでありますけれども、その以前から数年来、たとえばイギリスのサッカー、フットボールが東欧、バルカンに行くとか、ソ連に行くとか、近くは中国まで来ておるし、また中国の演芸団があちらに行くとかいうように、イギリス、フランス、スエーデン、ノルウエー、それからイタリア、こういうところは、しょっちゅうソ連圏とはスポーツや文化の交流は平気でやっておる。日本だけがおっかなびっくりで、この間から北鮮の方のスポーツ選手が日本に来ようとするけれども、これに対するビザの承諾がない。あるいは中国から四月には世界ピンポン選手権大会に参加したいのでありますけれども、台湾政府の方に気がねをいたしまして、中国からの選手に対してはなかなか困難だ。だから今あなたのおっしゃるように、すなおに受けるということになるならば、せめてイギリス、フランス、スェーデン、イタリア並みに、もっと気持を広くされまして、主義の宣伝とかなんとかいうものは、そういうスポーツや映画によって入るものではありません。日本の政治がよくなり国民生活が安定すれば、主義などは来やしません。従ってもっとその意味では、正規の国交の回復等は、これもいずれは時の問題であろうと思いますけれども、それに先んじて、こういう申し出があったならば、あなたの方がすなおに受けられたらどうかと思うのでありますが、そういう考えになっておりますかどうか、承わっておきたいと思います。
  161. 重光葵

    ○重光国務大臣 先ほど申し上げました通りに、文化交流はやりたい、こう思っておる方針でございます。今のお話を伺うと、ソビエトとか共産国との文化交流をやれということに、すべて集中されておるようでありますが、私の言うのは、他のどこの国とでも文化交流をやりたいという意味でございます。その意味で、文化協定はずいぶんたくさん締結をしておるのでありまして、その数はますますふえつつあるのであります。それが私どもの方針でございます。
  162. 田原春次

    ○田原委員 私は、ソビエトや中国のみとやれと言った覚えはないのです。あなたのおっしゃる通り、外務省では、その他の国々と漸次やっておることは知っております。しかしながら、不思議にもソ連圏内とはやらないから、そこともやったらどうかという意味で言っておるのでございます。これはその程度にしておきましょう。  次は、これは特に重光さんにお尋ねしたいのでありますが、日ソ交渉の進行過程におきまして、南千島の問題が出ておることは私もわかります。ところが、私が次に述べるような一つの解釈をする者がありますが、この当否はいかがでしょう。それは行政協定が改正されぬ限り、今直ちに南千島が日本に返還されたとして、行政協定に基いてアメリカ軍があそこに施設をしたいと言った場合に、日本はこれを断わり得るか、こういう問題です。これに対するあなたの御見解をお漏らし願いたい。
  163. 重光葵

    ○重光国務大臣 南千島を返還してくれればいいと考えております。そのときにすぐ米国がこれに施設をするということは、これは話し合いの結果でございますから、日本側でそのときにこれをそういうふうにしたくないと思えば、十分にできることだと考えております。
  164. 田原春次

    ○田原委員 それは何条に基いてそういうことができるのでございましょうか。
  165. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは日本の主権に基いていることでございます。
  166. 田原春次

    ○田原委員 主権とおっしゃいますけれども、この内閣はしばしば、憲法は外国品である、一方的に抑しつけられたものである、だから効力がない、あるいは即応しないから改正をするという議論をしながら、このサンフランシスコ講和条約に基いた行政協定については、百パーセントこれが当然のごとき考えで、防衛方針にいたしましても、外交方針にいたしましても、いろいろな言葉が皆さんから出ることは私ども不思議に思うのです。従いまして、たといあなたが、日本に主権があるから南千島を将来ソ連が——沖縄、小笠原は別といたしまして、返した場合に、行政協定に基いてどうしてもあそこに施設をしなければならたいと言われた場合に、拒否できない。それが証拠には、協定の前文には、相互に敬意を払うと書いてありますけれども、ほとんど一方的な通告で、たとえば砂川の飛行場はもう何千フィートふやさなければいかぬと言うと、それに全く何の批評も再考も促さずに、今の傾向からいけばできるのでありますから、直ちに南千島の返った場合を想定いたしましても、そうなるかということにっいては一抹の不安があるのであります。これがまた日ソ交渉におけるソ連側の一つの口実になっておるのではないかといわれておるのであります。そこで日ソ交渉がロンドンであなたの思うように成立した場合には、南千島等に対して現在行政協定はあるけれども、これに対しては、自分の方はこうするという明瞭なお考えが発表できるならば、また私どもの一つの参考になることだと思っておるのであります。
  167. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、行政協定によって、日本は米国の駐も軍に便宜を供しなければならぬ、こういうことをたびたび申し上げましたが、その通りでございます。これは、行政協定の規定によってそういう義務を負うておるわけでございます。しかしながら、その規定はどうなっておるかというと、それは日本の承諾があって初めてそれができるのでございます。そういう規定になっております。従いまして、南千島の今のような仮想の場合におきましても、日本に主権が返ってくるならば、日本の承諾する場合において初めてアメリカの施設が行われる、こういうことになるのであります。日本の意思にかかっておるのであります。それで御了解を願いたいと思います。
  168. 田原春次

    ○田原委員 さて私は、長い間外務大臣として戦前、戦時、それから戦後引き続いてその地位にあります重光さん、特に副総理であります重光さんに二、三意見を申し上げてみたいと思います。それは、今回の第二次世界大戦、すなわち太平洋戦争の起った遠因は解決していないと私は見るのです。あれは要するに、日本の人口の過多、それから食糧の不足、一面世界はイギリスやアメリカやオランダやソ連等が未開発地域を独占しておる。これに対して、たまたま東条さんのやり方が、武力を使って日本の民族の生きる道を求めようとしたところに世界の糾弾を受けて、侵略者という烙印を押され、そうして敗戦になってきたのでありますから、問題は方法であったのでありまして、その方法が悪いということでたたかれたのでありますけれども、方法はたたかれたといたしましても、今後九千万からありまする日本の人口、しかも前の戦争でさらに領土が狭くなった日本において、戦争には負けたが、あの条件は引っ込めるということにはいかぬ。従って、今日あなたがしきりにアメリカに協力協力というのでありまするが、アメリカを初め、特にアメリカのごときは、ほんとうに日本の人口問題、食糧問題等に積極的に関心を持つならば、近い南太平洋には、所属は某国でありましても、ほとんど放置されておる巨大なる島が幾つもあるのであります。これらは英米、濠州、オランダ、それからこれらの国々との関連のある国々がほんとうに了承して、この勤勉にして、法律を守り、工夫力のある日本民族にあの島の開発をまかすというような気持になれば、まだまだ相当日本の人口問題の解決策はある。従って戦争原因は敗戦とともにたな上げしてしまって、もっぱら先方の意を迎えるにきゅうきゅうとして、たとえば侵略者であると明らかに思われるアメリカに対しては平身低頭する、アメリカが必要とあれば綿製品の輸入も禁止する、また絹のスカーフの輸入も禁止する、アメリカが必要とあれば、どんな田地田畑でも、墓場まで取り上げて飛行場に提供する、これを協力協力というのですが、このことに対して国民は憤激しておる。同時に、私があなたに希望することは、あなたの友人の一人であった東条さんは刑死しておるけれども、あの人の考えておった人口問題というものは未解決になっておるのであります。外務省は総力をあげて、特にアメリカを鞭撻し、日本の思うように、日本民族の平和的な海外進出ということに積極的に、協力させるような努力を払うべきだと思う。そういう日本民族の海外移住方策に対して、あなたはどのくらいの努力を今度の予算でやられましたか、それをここで発表してもらいたい。
  169. 重光葵

    ○重光国務大臣 今御意見のご発表がありましたが、その要点は、日本の人口問題の解決をどうするか、そのくらいな抱負、経りんがあってもいいじゃないか、そういうことに帰着すると思います。私は、世界にいまだに人口を包要する土地のあることは事実であると思います。しかしながら日本といたしまして、過去あやまちを繰り返すことなく、あるいは今の御趣旨の通りに、平和的な手段によって民族の生活のできるように進めていかなければならぬ、こういうことは戦後の日本としてはみな一致した意見であると考えます。従いまして、われわれは経済外交を進め、貿易を進め、人口問題の助けにしようと思っておる。それからまた移民外交と申しますか、移住の方面、さようなことにつきましては、徐々に各国の理解を得つつ進んでおります。中南米における移民の状況、それからさらにまた貿易といたしましては、東南アジアに対する貿易等についても、徐々に進んでおることはこれまた御承知の通りであります。かような方面において、米国との直接間接の協力がまた必要であり、またそれを得られておるということも御承知のことであろうと思います。さようにして、平和的に人口の問題を、外科的ではむろんございません。しかし徐々に、かつまた地についた政策によって進めていくことが必要であろう、こう考えておる次第であります。私は全体の御趣旨においてはそう異存もございません。
  170. 田原春次

    ○田原委員 そこで、日本のこれから行く方角といたしまして私どもが真剣に考えなければならぬことは、戦争を防止して、平和的に日本が世界の仲間入りをする、有無相通ずるということにいかなければならぬと思う。そのためには、ここに私ども社会党として考えておることは、一種の新ロカルノ条約方式とでも申しましょうか、あの古いころロカルノで、一九二五、六年であったと思いますが、ドイツ側の提唱によりまして、ドイツとフランスの種々なる紛糾をまず独仏で協定をし、そうしてイギリスとイタリアがこれを保障するというような形で一応の難関を切り抜けたことは、外務大臣御承知の通りであります。そこで日本の行く道は、アメリカだけにすがる、そうしてアメリカの仮装敵と思われておるソ連に対して、トラの威をかるキツネのようにへっぴり腰で防衛するというような消極的なものでなく、中ソ同盟条約と日米安全保障条約との上に、これにかぶせて新ロカルノ方式と申しますか、この四つの国、特に直接には中国と日本とが提携をし、ソ連とアメリカとがこれを保障するといったよりな新しい構想でいくならば、アジアにおけるさしあたっての平和に対する国民の安心感ができるじゃないか。ブルガーニンがアイゼンハワーに出した文書を、アメリカ側では二回にわたってけっておりますけれども、一国の代表が出したものを、言葉よりも行為であるというような言葉でけるということは、私はアメリカが侵略者であるといわれてもしようがないと思う。そうでなくて、今重光さんがやるべき仕事は、お互いににらみ合っております両大勢力の中にある日本が、むしろ積極的に双方に呼びかけまして中・ソ・日・米の安全保障協定を結ばせるというふうな方向、新ロカルノ方式にいくことが日本の平和を維持する道ではないかと社会党は真剣に考えております。こういうことに対するあなたのお考え、もしくはそれ以外にほんとうに平利を維持する方針があるか。先ほど聞いてみますと、国防会議や何かまことにちゃちなものであります。そうして六ヵ年計画といってみても、六年間戦争いたしません。その間によそが攻めてきましたらアメリカにやってもらいますという、そういうまことに独立性のない防衛長官なんていうものは実際恥かしいと思う。われわれは何もアメリカあたりにたよらなくてもよろしい。日本の防衛方針は大艦巨砲主義じゃなくて、愛国心さえあれば——レジスタンスですよ。やってくれば、これに対してわれわれはあくまでも抵抗していく、こういう気持があり、アメリカ側に対しても、ソ連に対しても、きぜんたる方針さえ立てば、日本はやっていけると思う。しかしながら、アメリカのそでのみにすがって、アメリカのきらいなソ連に対して十八万くらいの兵を持ってごきげんをうかがうということは、永久に空軍と海軍をアメリカにまかすということになって、アメリカの下請になるようなかっこうになるから、今にしてこういうような考えを抱いておる国防会議というものは、国民は絶対に受けません。またそういうところへ持っていこうとする六年計画を受けません。単に受けないということでなくて、進んで平和維持策に対する高邁なる識見が望ましいのでありまして、外交官として練達堪能な重光さんがあまり仕事がのろいから、私たちは前の臨時国会では不信任案を出しておりますが、今回も出さぬとは言えませんけれども、何かそこに目新しい、しっかりした方針を見せてくれれば、社会党も考え直すにやぶさかでないと思う。私はこの機会に、アジアにおける平和方式の立て方として、新ロカルノ方式いかんということに対する御見解を聞かしてもらいたい。
  171. 重光葵

    ○重光国務大臣 社会党の新ロカルノ方式ということは、前議会においても委員会等でたびたび伺いました。新ロカルノ方式、私は非常にけっこうだと思います。けっこうだが、実際問題として、新ロカルノ方式というのは、これは国際連合の方式です。国際連合が世界中にわたって新ロカルノ方式をもって安全保障もし、平和維特もしようというのが国際連合の方式だ。そうでありますから、日本といたしましても、国際連合の規約に従って、すべて世界的に平和政策を進めていこう、また局地的にもそういう政策に進んでおるわけであります。しかるに国際連合に対しては、日本は拒否権の運用によって入ることができぬような状態です。これはまことに残念であります。そうでありますから、日本が主唱して、東南アジア方面において、新ロカルノ方式を各国に呼びかけて、直にこれが成立するというような情勢には今日は私はないと思うのです。それからまた、それはただアジア方面だけじゃない、ヨーロッパでもそうであります。ヨーロッパでも、御承知の通りに昨年の七月、十月の両度にわたってゼネパ会議が開かれた。ゼネパ会議が開かれて、ヨーロッパ問題は何が一番大きな重要問題であるかというと、ロカルノ方式のヨーロッパ安全保障の方式をどうするかということです。それが一つもできない。ヨーロッパすらそれができない。それはいろいろほかに理由がございます。しかしヨーロッパでできないからアジアにできないと結論をするのはまだ早いのでありますが、私はそれが悪いとは申しません。しかしながら、国際連合の趣旨が十分にアジアに今実際的に行われておらないような状況において、さようなことはまだ時期尚早であると私は思う。その趣旨においては、そういう大きな経りんは私は賛成であります。しかし私は、それよりも外交上実際的に日本の将来を建設するためには、自由民主主義の各国と緊密な協力をする、アメリカとの間には十分に一つ協力をしていこう。こういうことは、私は何もこれはアメリカに追随するとか、アメリカの何もかも言うことを聞く、そういう意味を申し上げておるのではございません。しかしそれと同時に、やはり日ソ交渉もできるだけ一つ正当な条件のもとに、われわれの信ずる条件のもとにこれは成立せしめて、そして日韓の関係もこれを正常化していく、さようなことを積み上げていくと、ここに両陣営の間をつなぐ安全保障もできるというものでありますから、今あなたの言われる大きな構想も実現し得る時期に踏み出し得ると私は考えております。さような方向に向って着々一つ平和外交の歩みを進めていきたいというのが私の考え方でございます。
  172. 三浦一雄

    三浦委員長 田原君に申し上げます。お申し合せの時間をはるかに超過いたしました。どうぞ簡潔にお願いします。
  173. 田原春次

    ○田原委員 まだまだ過ぎておりません。なお特に駐留軍の飛行機の墜落による被害の問題であるとか、あるいはジープその他の自動車による即死事件等の未解決の問題であるとか、これは主として調達庁関係であるが、あるいはまたアメリカ軍が占領しておりまする南洋群島のうちボナペ、ヤップ島等は、まるで今なお放置してありまして、日本人の戦前からの資産等もそのまま腐っておりまするが、これらに対する問題等がございますので、これはそれぞれの分科会においてもう少し具体的にいろいろ聞いてみたいと思いまするから、きょうのところはこの程度の質問で終りたいと思います。
  174. 三浦一雄

    三浦委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会