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1956-02-06 第24回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月六日(月曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 小平  忠君    理事 柳田 秀一君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    今井  耕君       植木庚子郎君    小川 半次君       加藤 精三君    北澤 直吉君       北村徳太郎君    纐纈 彌三君       河野 金昇君    周東 英雄君       須磨彌吉郎君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    楢橋  渡君       橋本 龍伍君    廣瀬 正雄君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       眞崎 勝次君    松浦周太郎君       三田村武夫君    宮澤 胤勇君       山本 勝市君    山本 猛夫君       足鹿  覺君    井手 以誠君       今澄  勇君    川俣 清音君       久保田鶴松君    小松  幹君       河野  密君    田原 春次君       辻原 弘市君    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       矢尾喜三郎君    八百板 正君       山花 秀雄君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 馬場 元治君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (原子力局長) 佐々木義武君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月六日  委員北村徳太郎君、楢橋渡君及び古井喜實君辞  任につき、その補欠として加藤精三君、眞崎勝  次君及び廣瀬正雄君が議長の指名委員に選任  された。 同日  委員加藤精三君及び廣瀬正雄君辞任につき、そ  の補欠として北村徳太郎君及び古井喜實君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  昭和三十一年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。  一昨日の松浦君の質疑に対し牧野法務大臣より答弁いたしたいとの申し出があります。この際これを許します。牧野法務大臣
  3. 牧野良三

    牧野国務大臣 先日の松浦委員よりの御質疑に対しましてお答えをいたします。御質疑は私承わつておりましたが、参議院から、委員会を開いておりますので、それで出席を要求されまして、時間がなくて答弁を延ばしまして、申しわけがございません。数字をあげて的確なる御質疑でございます。当局としては実に恐縮のほかございません。御指摘になりましたのは昨年の数字でございますが、実際この数字に現われたる以上の事態ではないかと私は憂慮いたしております。この点に対しましては、戦後だんだん民心が弛緩いたしまして、人心が非常に頽廃しているという事実を明らかにするもので、ことに政府関係機関並びに官吏の間にかかる事実が会計検査院より指摘せられるのみならず、法務省省検察行政の中にかような数字が出て参っているということは、首相を初め、閣僚一同深く戒心しなければならぬ事実だと存じます。この点につきましては、松浦委員の申された通りに、官吏道をこの際振粛して、さらに信賞必罰の実をきわめて明らかにするということが、当面の急務だと存じます。それにつきましては、昨年この委員会におきまして補助金等使用が非常に乱雑になっておる——この点につきましても調査をいたしました。その事実があまりに多いので、これは大蔵大臣にも申し上げて、政府より各地方団体その他に補助金その他の名目によって支給されまする金の支給される時期が当を得ないという点が非常に多いので、そのために地方自治体並びに政府関係機関資金のやりくりをしなければならないというところから、法律上幾多疑いを生ずべき事案を惹起いたしているのでございます。これらをもあわせて政府は深く今後戒心しなければならないと存じます。この点において松浦委員の御質疑の御趣旨を体しまして、政府一同深く反省することにいたしたいと存じます。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま法務大臣より申しました通りに、私としても全く綱紀粛正の必要にして急務なることを痛感しております。
  5. 三浦一雄

    三浦委員長 質疑を継続いたします。小川半次君。
  6. 小川半次

    小川(半)委員 私はまず鳩山総理にお尋ねしたいど存じます。総理も御存じのように、健全なる議会政治を保ち、二大政党対立先輩国でありまするイギリスなどにおきましては、政党総裁に任命された者は直ちに次期総裁を推薦することが慣習となっております。たとえばチヤーチル氏が保守党総裁になったときイーデン現総裁を推薦したごとくであります。またアメリカでは副大統領という最高の補佐役があり、その他副首相という例が世界の諸国に見られるのであります。これらの制度方法には総裁大統領総理に万一のことがあった場合、直ちにそれにかわって政務を続け、政治に一日の空白をも許さない。また国民にいささかの不安動揺も与えないという、きわめて潔い配慮が払われているのであります。  鳩山総理は、総理後継者として緒方氏を意図しておられたことは、総理の御意見なり周囲の事情からよく推察できたのでありますが、緒方氏の急逝によって、ここに新たに後継者考えなければならなくなったと思うのでございます。私がことさらこのようなことを申し上げますのは、緒方氏の急逝国民に多大の衝撃を与え、はなはだ失礼ではございますが、国民鳩山総理の御健康を心配する余り、このかけがえのない総理のおからだに万一のことがあったなら一体どうなるだろうか、万一の場合に政治空白ができ、あるいは政局が混迷するのではないかという不安動揺が見え始めてきたからであります。従って、この際すみやかに後継者を選んでおくということは、国民を安心せしめるためにも適当なことであると思うのでございます。これについて総理の御意見を伺いたいのでございます。
  7. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 副総理が置いてある  ことは御承知通りであります。副総裁を置くということは、私もあなたと同じように必要だと思います。必要であると考えておりますので、私の友人たちには、早くそういうようなことをきめてもらいたいということで、相談中であります。
  8. 小川半次

    小川(半)委員 それでは目下相談中であって、その時期はいつであるかということは、今総理はお考えではございませんのですか。
  9. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのところ、その時期は発表する時期に達しておりません。
  10. 小川半次

    小川(半)委員 次に憲法問題についてお尋ねしたいと思います。  憲法問題について、世間ではよく鳩山さんは自分の手で憲法改正をやりたいのであるという風説があるのでありますが、これは、鳩山総理憲法改正に熱意を持っておられるということか、このように飛躍して伝えられているのではないかと私は思うのであります。なぜかと申しますと、憲法個人のものではなく、国民のものであって、個人の手で改正するということはあり得ないことでございます。また個人の手で改正するということは、その個人の主観が憲法に強く織り込まれるという誤解が生すると思うのでございます。これについて総理はどのようなお考えを持っておられるか、伺いたいと思います。
  11. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 たびたびこの委員会においても申しました通りに、国民総意によって自主独立に対応するような憲法を作りたいというのでありまして、決して国民の多数の意思というものをはからずに憲法改正するというような考え方はしておりません。憲法調査会においては、国民憲法改正する必要があるということを認識せしむるのが、一つの目的であり任務であるということをここで答弁したつもりであります。そういう意味において憲法調査会も作りたいと思っておりますので、自分個人の思うように憲法を作りたいというような僭越なる考え方はしておりません。  なお憲法改正というのは、従来の例を考えますときに、ただいまの憲法は実に早々の間にできましたけれども、日本明治憲法というのは、ずいぶん長い歳月を経てようやくにしてでき上つたものでありまして、日本国民意思憲法の上に現われていくのにはずいぶん長い歳月が必要だと思います。国民意思が十分に憲法の上に現われてくるのには相当の時日が必要かと思いますの、で、私がこれをやり遂げるというような考え方は、ただいま持っておりません。
  12. 小川半次

    小川(半)委員 今国会憲法調査会を設けて将来憲法改正の意図を明らかにしたのでありますが、国民の中には、今なお憲法改正といえば、旧帝国憲法のように戦争を起しやすい鰻法にするのではないかという不安があることであります。もちろんこれは擬装平和主義者社会党などが故意にそのような含みで反対論を唱えるから、国民の中で誤解する者ができるのでありまして、改正を意図する憲法は、より平和的、より民主的なものであるということはやがてわかるのでありますが、しかし一時的にもせよ国民不安感に置くということは政治の道ではないのでありますから、この際改正を意図する要点などを国民に知らしめる必要があると思うのであります。特に最近は国民考え方は落ちついてきておりまして、かつて左翼陣営人たちが、人民政府樹立といえば、盛んに拍手を送つていた人たちでも、今日人民政府樹立といってもだれ一人拍手する者もなくなったほど落ちつきを取り戻してきているのであります。また現行憲法を支持していた学者たちの中にも、今や憲法改正への段階に入った以上、今後はどのような内容改正するかを研究しなければならないといって、すでに改正を自認する態度を示すに至っておるのであります。従ってこの際政府改正を意図する要点国民に啓蒙するとともに、今国会において設けようとするところの憲法調査会は、改正をするかしないかを調査する機関ではなく、改正を前提とするものであるということを明らかにしなければならないと思うのでございます。私がこのようなことを申しますのは、一部の人の中には、今度の憲法調査会は、憲法改正するかしないかを調整するものであるという主張をする人がありますので、この点を総理から明快にしていただきたいと思うのでございます。
  13. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、自分考え方はたびたび発表したように思っておりますけれども、なぜ憲法改正したいかといえば、昔の占領中にでき上ぅたところの憲法は、国民自由意思によってできたものとは言えないと思うのです。でありますから、国民自由意思総意を尊重をして、自主独立に対応した憲法を作りたいというのが抽象的の考え方であります。  具体的にこれをいえば、ただいまの憲法長所は、民主主義を採用したとか、あるいは自由主義を採用したとか、あるいは基本の人権を作ったとかいうような長所があるのでありますから、その長所は尊重して、そうして自主独立に対応した憲法に持っていきたい。その詳細のことに対しては、問題を掲げれは、いろいろの雑誌などに出ております通りに、実にたくさんあります。でありまするけれども、ともかく自主独立に対応した憲法にしたいというのが、抽象的の説明としては、私は一番適当だと考えております。あなたのお話の中にはありませんでしたけれども、反対派の中には、これによって再軍備をやるんだ、これによってまた戦争に持っていきたいんだというような底意があって、憲法改正するというような考え方があるように言う人がありますけれども、そういうような考え方は絶対にないのであります。
  14. 小川半次

    小川(半)委員 大体了承いたしました。  次に日韓問題について総理にお尋ねしたいと思います。わが国の対アジア外交の促進が緊急の課題でありますことは総理施政方針にもある通りでございます。とりわけ日韓両国間におけるいろいろないきさつがありますこと、かつて苦楽をともにした両民族が、現在非友好的状態にありますことは、何と申しましても両国民にとつて不幸なことでございます。隣国との友好関係をすることができなくてどうしてアジア外交かと申しても、あえて過言ではないのでございます。そこで、総理にこの日韓問題について基本的な点をまず伺っておきたいと思います。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日韓の問題は外務大臣がいらっしゃれば外務大臣から答弁する方が適当かと思いますけれども、ただいまおりませんので、私から大体答弁をいたします。  今日のような状態において日韓両国の間に紛争があるということは、まことに嘆かわしいことでございまして、漁民が長く抑留されておるというようなばかげた事態は、一日もすみやかに解消しなければならないと思っております。いろいろな誤解が生じておりまして、日韓両国の間に紛争がだんだんともつれて参っておりますけれども、この間賀川君に会いましたところ、やはり賀川君もそういう考え方で、両国の間に誤解があるのだから、その誤解を解けばこの問題は解決できると思う、というようなことを言っておられました。私も同じように考えております。この誤解を解くのに、大村に収容しておる人々に対する誤解であるとか、あるいは以前の発言に対する誤解であるとか、あるいは両方にある財産に対しての考え方であるとかいうような問題を解決して参りまして、そうしてこの根本問題を解決したいと私は痛切に考えております。
  16. 小川半次

    小川(半)委員 外交問題については、アメリカやヨーロッパは超党派的に推進しているのでございますが、残念ながら日本は外交問題についてまだそこまで行っておらぬのでございまして、特に私はこの日韓問題につきましては、できるだけ一つ超党派的に持っていきたいということを念願しておるものでございます。そこでただいま総理からお聞きしますと、過日賀川豊彦氏とお会いになったようでございますが、その際における賀川氏との会談内容は、そう具体的に申し述べていただかなくともけっこうでございますが、内容のアウトラインをお聞かせ願いたいと思います。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 賀川君からは、李大統領に会ったときにどう言われたとかなんとかいう話がございましたけれども、これはただいま申すわけには参らないと思います。とにかく賀川君の大体の話し方というものは、双方の間に誤解があるからして、その誤解を解くのに努力をしようじゃないかという一言に尽きると私は考えました。
  18. 小川半次

    小川(半)委員 賀川氏の言として昨日社会党鈴木委員長に語っておられるところによりますと、韓国におきましては日韓合併条約について非常に神経をとがらしておると申しますか、この条約について非常な意見を持っておるようでございます。一体日韓合併条約というものは今日でも生きておるものですか、あるいは死文となっておるものでございますか、この点条約局長がおられましたら御説明願いたいと思います。
  19. 中川融

    中川(融)政府委員 お答え申し上げます。日韓合併条約は、日本サンフランシスコ条約に調印いたしましてこれが発効いたしますと同時に、あの条約の中に日本韓国が新しく日本から分離して一個の独立国となったということを承認しておりますから、従って、その際よりこれは死んだもの、かように考えております。
  20. 小川半次

    小川(半)委員 それでは日韓合併条約死文であるということは日本政府は一応明らかにしているのでありますが、韓国が特にこの問題にこの条約についての意見をはさんでいるということについて、これは将来の参考になることでございますから、政府当局において特に慎重に韓国とのこの条約につける解決をお願いしたいと思います。死文ではございますが、向うはこの意見から見ると死文と解釈していないようですから、その点を一つ先方へ明らかにしておく必要があると思うのです。  そこで、韓国の問題につきましては、先ほど総理も申されたように、抑留者の問題であるとかあるいは財産の問題その他李ラインの問題等重要な問題が山積されておるのですが、今日まで何一つこれが効果的に運んでおらぬのは非常に残念でございます。そこで、過般賀川氏は個人の資格で韓国に渡られまして何かと御努力相願ったわけでございますが、この際政府の特使というわけではございませんが、何か一つわが国政治的な面を代表いたしまして、外交的にも相当権威のある方が非公式で韓国に渡られまして、賀川氏がとってこられたほぼ同様な線で一応瀬踏みをされる方法はどうかと思うのです。たとえば過般三木武夫氏が東南アジアその他南方に行かれて、賠償金の問題その他について一応瀬踏みをしてこられたのでございますが、これと同様な方法で、韓国問題は非常に重大でございますから、その会談に入るに先だちまして、瀬踏み式にどなたか適当な代表者を派遣される方法が得策ではないか、このように私は考えますので、総理におかれましてそういうお考えがあるかどうかを承わっておきたいと思います。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま韓国わが国どの間の紛争については、大体の争いの根本はお互にわかってきたのであります。わかってきましたから、これの解決案努力をいたしまして、案が作成できましたならばそういうような手続をとるようになるかもしれません。
  22. 小川半次

    小川(半)委員 倉石労働大臣委員会にお急ぎのようですから、先に倉石労働大臣にお尋ねすることにいたします。  倉石労働大臣は就任以来しばしば労働協調を唱えておられるのでございます。同様のことは今までもどの大臣も唱えてきたのでありますが、いつも単なる作文に終ってしまっています。私は特に倉石労働大臣にこの点期待するものであります。そこでその協調方法として具体的にどのようなことが必要であるか、またどのように努力しておられるか、その段階をお伺いしたいと思うのでございます。
  23. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 第三次鳩山内閣ができまして、労使協力態勢を作っていくということをしばしば申しております。従来もそういうことは言われておったのでありますが、私は使用者と被使用者とは終局において利害が必ず一致しているのだという観点に立っておりますから、話し合って産業の育成をしていくべきだ、こういうことで私が就任いたしましてから、経営者側、それから公益と申しますか、第三者的な方々と、それから組合方々約三十一名でありますが、労働問題懇談会を開きました。幸いに総評ほか全労働組合委員長諸君にも熱心に参加していただきまして、しばしばおのおのの御意見を戦わしておられるのでありますが、こういうことを重ねていく間に相互の意思を疎通することができるのでありまして、労働省としてはそういうことに重点を置いております。  それから民間のそれぞれの企業においては、終戦後御承知のように経営協議会というふうなものが各産業に設けられました。しかしこれはその過程を見ますと、それが労使の闘争の場のようになってしまいましたので、だんだんときらわれるようになってきたことも御承知通りであります。そこで最近は、各企業経営協議会ではなくて労使協議会という形のものをだんだんまた復活して参りまして、私最近関西方面に行きましたが、関西電力を初め、そういうような機関が非常に労使意思の疎通をはかることに成功いたしておるようでありまして、私はそういう制度を助成いたしていきたいと思っております。
  24. 小川半次

    小川(半)委員 ただいま労働大臣が申されましたように、労使はお互いに協調の広場を持つことが必要であると思うのでございます。ただ賃上げ交渉のとき以外には資本家を相手にしないというような狭い了見では、生産性向上もできないし、また労働者向上性も認められないのでございます。そこでたとえば今労働大臣は、かつて経営協議会というような制度もあったけれども、これは成功しなかったという御意見でございますが、私は労使代表協調と申しますか、さらにそれよりも一歩進んで、労働者代表経営参加ということなどが、労使協調の新しい一つ方法ではないかと思うのでございます。これは西ドイツで実施されている例でございますが、これによって西ドイツでは、一年ほど前に官公労組ストがあっただけでございまして、戦後十年間ストと名づけるような争議は絶無でございます。このような労働者代表経営参加というような具体的な案でも持ち出さなければ、労使協調の実際の線は出てこないのではないか、このように私は思うのでございますが、労働大臣はこの労働者代表経営参加というようなことについて考えがあるかどうか、承わっておきたいと思います。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いわゆる経営参加考え方はおもしろい考え方ではあると存じますが、西ドイツの最近の情勢を見ますと、御承知のように西ドイツ労働総同盟は、この経営参加という形で労働組合側経営に参加していくうちに、だんだん組合代、表としての気持が変ってしまっておもしろくないという傾向から、最近はむしろ組合側の方が経営参加を脱退するというような傾向にあることは、御承知通りであります。しかも西ドイツ経営参加というのは、これは個々企業経理内容にその個々組合代表者が参加しているのではございませんで、たとえば船会社経営参加という場合には、海員組合といったような組合代表者が入っておるのでありまして、こういう形ならば私はあるいはおもしろいかと思いますけれども、日本の今日の実情で個々会社経理内容組合代表を入れるというようなことは、相当慎重を要するのではないかと存じますし、今西ドイツ以外にそういった形をとろうとしておる国もございませんが、私は研究課題としてはおもしろい研究課題だと思って、目下検討をいたしておる最中であります。
  26. 小川半次

    小川(半)委員 次に雇用問題についてお尋ねしたいと思います。雇用拡大政策鳩山内閣の一枚看板であり、また労働大臣も積極的に唱えておられる問題でありますが、実はでき上りました新予算案を見ますと、新味と内容に乏しく期待が幾分裏切られたような感じがいたすのであります。それは雇用増大が、財政資金によるよりもむしろ民間資金の活用や経済活動活発化を希望して、民間事業への大量吸収に依存しているからでございますが、三十一年度において民間事業に吸収されると予定される雇用人員は、大体どの程度に労働省は見ておられるか、この点を伺っておきたいと思います。
  27. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 三十一年度予算雇用の問題についてあまり期待できないではないかといったような御心配があるというお話でございますが、私は三十一年度予算というものは雇用増大に相当裨益するところがあると確信をいたしております。御承知のようになるほど昨年は外国の好景気の影響を受けて、輸出は増進いたした。しかしながら論者によればその割合に雇用量がふえていないではないかという御意見でありますが、輸出が増進されたそのすぐに雇用増大するというのはおかしな話でありまして、やはり一定の時間があって、その輸出の増強に刺激されたる産業が拡大されることによって、時間を経て雇用量増大として現われてくるのでありますから、私は三十一年度においては雇用量は、決して楽観はいたしておりませんが、この予算を実行いたしていくことによって相当量が期待されると思います。この点は私より経済企画庁の方がよいかもしれませんが、ただいま私どもの方でやっております直接の雇用問題については、小川さんも御承知のように、昨年と同じ金額の三十五億円をいわゆる特別失対として取りましたが、これは金額は同じでありますけれども、地方の要望に応じまして補助率の引き上げなどをいたしましたから、昨年は三十五億円で三万人、ことしは三十五億円で二万人に減らしました。そのかわりに建設省関係に緊急就労対策という目的で六十九億の予算を別途に計上いたしておりまして、これで建設省と労働省の協力のもとに二万人の吸収人員を計算いたしているわけであります。そのほか三万人の吸収を失業対策として組んでおるのでありまして、今年度の失業量から見ますと、私はこの程度でいいのではないか、こういうふうに存じております。
  28. 小川半次

    小川(半)委員 ただいま労働大臣は、三十一年度に民間事業へどれくらい吸収されるか、その数を明らかにされなかったようでありますが、失対についてお話がございましたから、これに関して伺います。失対事業費について伺いたいことは、失対費は本年までは一般失対と特別失対の二種目に限定されていたものが、三十一年度から一般と簡易と特別、それに就労対策の四種目に分れたようでございますが、これはおそらく従来一般失対の登録労務者のうちで、婦人とかあるいは老齢者という比較的労働力の低い者を分離して、簡易失対という新種目に入れて、一般失対の労働能力を向上させようというねらいでこういう制度を作ったのではないかと思うのですが、大体労働省はそういう意図で作られたものですか。
  29. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御承知のようにこの失対事業というものを当初始めましたときには、生活保護的な気持で、出てきた失業者に何か働いた形をとらして現金収入を与えようということでありましたが、だんだん社会が安定しまして、そういうことは国家の不経済ではないかといったようなことでありますので、だんだん失業対策事業も経済効果をねらう方がいいという形でやって参りまして、前内閣時代に特別失対というふうなものを設けました。しかるに最近はいわゆる失業対策事業でも、一部の世間の非難よりは非常に経済効果の上るりっぱな土木事業などをいたしておることを、私はしばしば視察に行って知っておるのでありまして、失業対策事業の能率をもっとよくすることは当然必要なことでありますが、失対事業についてはだんだん効果的な成績を上げてきております。そこでそういう経済効果の上る土木事業などをやっていただくにはあまりに老齢でお気の毒であるといったような人々には、御指摘の簡易失業対策事業というものを選びまして、それへ就労していただいて現金収入を与える。従って一般の者よりそういう者は給与の額が少いことは当然であります。
  30. 小川半次

    小川(半)委員 失対事業費というものは、今、労働大臣も申されたように保護的な費用ではないのであって、あくまでも日本産業発展のために自分たちも働きながら貢献するのだという、そこに失対事業の本質があるのですから、今度の制度の失対事業費を四種目に分けたということは私も大賛成であります。  次に昭和二十八年八月七日に施行されましたスト規制法は本年の八月六日で期限が切れることになっておるのでございますが、この法律をどう扱われるのかお伺いいたしたいのでございます。期限一ぱいで打ち切るのか、あるいは延長する御意思なのであるか、この点を伺いたいと思います。
  31. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いわゆるスト規制法は本年の八月六日が三年目の期限でありまして、従ってこれを延長するかどうかということについて政府も研究いたしておるわけであります。私は本来ならば、このスト規制法というものは、電気事業法とかあるいはまた鉱山保安法などに禁止されておることを明文化したような法律でございますから、ああいうものはなければないにこしたことはないのでありますが、当時の労働情勢ではああいう法律を作らざるを得なかった。そこでその後の労働界の実情をつぶさにただいま検討いたしておるわけでございますけれども、あの法律ができたことによって少くとも電産の争議に制約が与えられたことは事実でございまして、その効果はございました。しかし電産の状況は現在のような状況でありますが、ただし炭労は御承知のようにああいう悪法は守らなくてもいいというようなことを言っておられた時代もございますので、そういうような諸般の実情を勘案いたしまして善処いたして参るつもりであります。
  32. 小川半次

    小川(半)委員 これは時限立法ですから、もうすでに本年の八月に期限が切れるのですから、延長するとすれば今国会へ延長の法案を出さなければならぬと思うのです。この法律のためにわざわざ臨時国会を召集するというわけにもいかぬだろうと思うのです。今お話を承わると目下研究中だということ、ですが、私はこの法律ができてからは少くともこの方面における労働争議というものが規制され、なくなりましたので、日本産業の発展のために非常に有効であった、このように見ておりますので、さらにこれは延長すべきものである、私はこのような考えを持っておりますから、ぜひ今国会に延長の方法をお考え願いたいと思います。  次に総評の唱えております春季労働攻勢に関連して伺いたいと思います。この問題につきましては一昨日松浦議員からも一通り質問がございましたが、特に重要な問題でございますから、さらに私からもお尋ねしたいと思います。この春季攻勢について見のがしてならないことは、民間労組とタイアップして官公労組が賃上げ要求の大きな闘争の波を用意しておることでございます。一体スト権のない官公労が法規を無視してゼネストに参加するということは、国民に挑戦する行為であって、まさか本格的に参加するとは思っていなかったのでございますが、しかし私の知るところの情報では、官公労組においても組合員の休暇戦術とか、ピケット、すわり込み、順法闘争などを行うべくかなり準備が進められておるようであります。公務員の給与については二年間賃上げを見送ってきたとはいうものの、定期昇給はずっと行われてきたのでありますし、それに民間の給与水準と比べて決して低いとはいえないのであります。また予算の関係からいっても無理な要求であることは、国民のだれもがこれを知るところであります。公務員の給与は、国民の血税でもってまかなわれておるものでありますから、国家全体の経済に応じて決定されるのが当然であって、あらゆる規模の私企業の給与の平均が基準となるべきであります。この観点よりいたしますと、公務員の給与は私企業よりも上回わるほか、公務員には国家が背景となっておるだけに私企業と違って、危険負担が全くないのであります。のみならず恩給制度という特別の優遇措置が講ぜられておるのであります。今かりに官公労の要求する二千円アップをのんだ場合、二百万人以上の公務員を持つわが国は、年間六、七百億円の予算が必要となるのであって、政府が彼らの要求をのめないことは、国の予算を知る者は当然理解できるはずであります。スト権のない官公労が、争議行為とみなされるところの今回のピケット、すわり込み、順法闘争、休暇戦術、このようなことをすでに指令しておる以上は、これは完全に違法と私は見ております。この点について、労働大臣は過日も相当強硬な態度を示されたようでありますが、これはただその態度を示すだけではなく、すでに法規に違反し、あるいはそれを無視しておる以上は、断固たる処置をとるという態度が必要であると思いますが、この点伺いたいと思います。
  33. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 最初のお話のいわゆるスト規制法のことにつきましては、八月六日に切れますが、あの法律によりますと、もし休会中に期限がきたときには、その次の国会が始まったとき十日以内に提出すべし、そうしてそこで継続するならば、継続の議決をいたせばいいのでございまして、この国会に必ずしも手続をとらなくてもいいのですが、場合によってはとるかもしれません。  それからいわゆる総評の春季闘争ということにつきましては、しばしば私がこの席で申し上げておる通りの態度を動かしておりません。いろいろ公務員の行動のことについて小川さんからお話し下さいましたが、私も全く同感であります。何百万人という官公労の諸君の大部分は、決して違法な行為をやったり政府に反抗する、すなわち政府というのは国民でありますから、国民に反抗するようなことを考えておるものではないのでありまして、少数の一部の人々がああいう行動をとろうということでありますから、私どもとしてはあくまでもあたたかい気持で官公労の大ぜいの人に処していくつもりでありますが、そのリーダーが違法な行為をいたす場合は、断固たる処置をとるということは決意をいたしておりますし、ただいま万全の措置を講じております。
  34. 小川半次

    小川(半)委員 今度のこの争議によって民間企業に及ぼす場合について伺いたいと思うのでございます。従来民間企業において賃上げをやりました大企業は、その負担を、中小企業の下請単価を引き下げることによって、転嫁してきたのでございます。これが中小企業労働者の賃金あるいは労働時間にしわ寄せされてきたのであって、今回の賃上げ闘争においても、大企業が労組の要求に屈服した場合は、必ずその犠牲と負担は中小企業者とそこに働く労働者に大きくしわ寄せされてくることは当然でございます。過去の例から見ればこれは明らかでございます。この際大企業のベース・アップをストップして、その資金を合理化、あるいは資本構成の是正に向けるなれば、必ずコストは下って参ります。そして輸出は伸び、景気は好調になり、経済規模は拡大することとなって、そこで初めて中小企業者の経営も改善されるし、低賃金問題も解消できると思うのでございます。それで結局国民生活が向上してくる。ここに根本的な問題があるのでございまして、この賃上げによって大資本、大企業から結局中小企業労働者に及ぼしてくる影響、こういう根本的な問題について、労働大臣、それから通産大臣から御意見を伺いたいと思います。
  35. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お説のように下請関係を持っておる大企業の方でべース・アップが行われてコストが高くなれば、そういう方にしわ寄せしてくるであろうことは、経済機構の現状を見ればその通りだと思います。しかし賃金ストップというふうな法的措置をとるということのむしろほかの方に及ぼす影響も考慮しなければなりません。これは通商産業大臣あるいは経企長官のお答えが適当かと思いますが、私どもといたしましてはこういうことなんであります。私どもの労働政策の基本的な考え方は、当該企業経理内容の中で労使双方が話し合いの上で支払い能力があると考えるならば、一応支払っても一向養しつかえないが、そのことが国民経済全般に影響するところを考えてもらわなければならないわけでございます。極端な例を申しますならば、専売公社というものがありますが、この専売公社というのは、当該企業内容で幾らでも金を出すということはできるわけであります。労働者に幾らでも月給を払える。なぜならば、一千億余りの国庫に対する納付金の義務を負っておるわけです。その中に給与というものを繰り込んでしまえば、それは幾らでも払えるでありましょう。しかしそれが社会的影響、またその当該専売公社の企業内容ということから見てそういうことは不可能だということでありまして、これは極端な例でありますが、そういうことで労働組合側経営者側もおのずからその帰一するところがあるのであります。しかるに今度の総評の闘争方針を指導しておられるある人の意見が発表されておりますが、それは全日本産業のあげられたる利潤の中から取れるだけ労働者側に取るのだ、こういう御意見であります。私はそういうものの考え方では日本産業というものは成り立っていかない、そういう考えの賃金政策というものは私どもとしては賛成ができない、こういうことであります。
  36. 小川半次

    小川(半)委員 私が先ほど申し上げたことは、結局中小企業者あるいはここで働く労働者にそのしわ寄せがくるからお尋ねしたのでございます。  次に、労働大臣労働基準法に改正する意思がないということを言明しておられるようでございますが、私は改悪にはもちろん反対でありますが、適正に改正を要する部分のあることをこの場合指摘したいと思うのでございます。わが国労働基準法の中には国際労働条約の基準を上回る部分があります。あるいは国際労働条約において何らの基準を設けていないにかかわらず、わが国の実情に即応しない基準を認めておることであります。たとえば現行法で時間外労働労使協定を要件としておるがごときは、国際労働条約の定めにないところでございます。また業種別、すなわち工業的企業と非工業的企業とを区別して、これに即応するような改正も必要でないかと思うのです。あるいは労働管理において大企業と中小企業を同一に取り扱っておるということも、果して法の精神に沿うものかどうか、この点も私はやはり考えなければならぬと思うのです。また認可、許可、届出、このような事項も非常に複雑になっておりますから、整理することも必要であります。これらの諸点を国際的な信義に反しない範囲において労働基準法を適正化するということは、決して労働者を重圧するものでもないのであって、私はやはり日本労働基準法というものは、国際労働条約の基準に沿うところのものでなくてはならぬ、このように考えておるのでございますが、これらの点について将来訂正される御意思があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  37. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 労働基準法について私が改正する意思がないと言明したようにおっしゃいましたが、私はそういう言明をいたしたことは一回もございません。そこで労働基準法というものにつきましては、ただいま私どもの手元に約八百項目くらい御注文がきております。改正すべしという御意見改正すべからずという御意見がそれぞれたくさんきておりますが、目下労働省といたしましては前内閣時代から労働基準法の審議会を作りまして、委員の諸君に非常に熱心に目下検討を続けていただいておるわけでありまして、この答申の出るのを待って善処いたして参りたいと思っております。
  38. 小川半次

    小川(半)委員 それでは労働大臣はもうよろしいです。  次に大蔵大臣にお伺いしたいと思います。昨年三十年度予算を審議する予算委員会の席上、同僚議員のこの趨勢では三十一年度予算は一兆三、四百億円を組まざるを得ないであろうという質問に対して、大蔵大臣は来年度も一兆円でとどめたい、もう一年しんぼうして節約を続ければ将来は楽になる、ゆえに今年と来年はわが国経済の地固め予算にしたいという意味の御意見がありましたが、しかし編成されました予算案は一兆をオーバーすること三百四十九億円で、これは大蔵大臣の当初の見通しとはかなり距離があるのであります。これはその見通しの違いであったのか、あるいは貿易が伸び、国民所得が上昇したからこれに応じて当初の予算よりも拡大するということに至ったのであるか、この点まず伺っておきたいのでございます。
  39. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私、三十一年度の予算編成につきましては、一兆円のワクには必ずしもこだわらない、こういう表現を用いておったと思います。むろん三十年度において三十一年度の予算の規模が一兆何百億になるか、これはとても予見のできるものではありません。ただ私が当時頭に描いておったことは、普通歳入の範囲内において歳出をまかなう健全たる予算を組もう、しかし普通歳入が相当ふえれば必ずしも一兆にこだわるまい、かように申し上げたわけでありまして、ただいま編成いたしておる三十一年度のこの予算は私の考えと違っておりませんことを申し上げます。
  40. 小川半次

    小川(半)委員 昨年は大蔵大臣はデフレ政策をとり、経済健全化方策をとっておられたので、三十一年度にあまり多くの財政規模の拡大はないだろうという大体の見通しのようであったのでありますが、しかしデフレ政策をとり、経済健全化方策をとっても、なおかつ昨年来日本の経済が拡大し、国際収支が伸びてきたのでございます。これは結局従来の、財政規模を拡大すれば伸びる、デフレ政策をすれば伸びないというような、そういう論を私は完全に日本の昨年来の経済はくつがえしてきたと思うのです。わが国では、予算のワクを少し拡大するとすぐインフレ予算であるといって神経質になって騒ぐ者がおります。現に社会党などもその一人でありまして、盛んに今度の予算はインフレ的意味を含んでいるということを言っておるようであります。現に社会党の大幹部が、この予算を発表したときに、はっきりそれを新聞に発表しております。これは新聞を読んでいる社会党の諸君だったら明らかでしょうが、明らかに日本のインフレというものは実際の財政的処置からくるものではなくして、神経的な心理インフレというものが日本の過去のインフレであったのです。一昨日も社会党西村議員は、多分に今度の予算というものは弾力性がないということでございましたが、私はさようなことは考えません。ですから、昨年に比べて本年は三百億や三百五十億円の増加が見込まれても、これは決してインフレ予算とも思わないし、数年前の国際収支が非常に悪化していた時代と現代とを比べて、予算のワクはそう大した差がないのであります。しかも今日のような好調の気配にある経済事情から推して、予算にもっと積極性を打ち出しても、俗にいうインフレなき経済拡大は可能であると私は見ております。現在の日本の景気は、物価は横ばいであるが、経済規模が拡大するところのいわゆる数量景気だと言われておるのでありますが、まさにその通りで、わが国にはまだまだ数量景気の伸びる余地と素質があると私は見ております。労働力の不足しておる国の場合は、もちろん数量景気は限界に達しておると思うのでございますが、日本にはまだ七十数万の完全失業者や三百万以上の不完全就労者があり、労働力に余裕があるので、経済規模の一そうの拡大が見込まれると思うのであります。この点について大蔵大臣の見解を承わっておきたいと思います。
  41. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの御質疑、いろいろな問題をと含んでおると思いますが、私といたしましては、もしも財源が許すならば、社会保障的な方向に金を出して、そうして民生の安定をしたい。これは私は国として当然考えるべきことであると思うのです。そうして経済拡張というようなものはむしろ民間の手にゆだねべきだ、こういう考え方が私の一つの基本線をなしておるのであります。問題は、そうすると、どうすれば歳入がふえるのかという問題になるのであります。そうしますと、結局、日本の経済規模が拡大する、健全なる生産が増加して、国民所得がふえるということに初めて私は財源の基礎があると思う。それでは日本の場合にどうすれば生産が健全に増加するかといえば、日本の場合には、貿易に依存する以外に手がない。こうして見ると、しからば今の数量景気の原因であるものを尋ねてみた場合に、デフレ政策が受け入れ態勢として整っておったということにもあるが、同時に、海外の好景気というものが大きく影響している。これが直接の原因とも言える。ところがこれに今日なかなか安心ができない。むしろ海外の景気は、私は悪くはならぬと思うが、よくはならぬ。アメリカ大統領の選挙でも済んだあとは少し頭打ちをするのではないか、こういうような大体の見通しを持っております。そうしてみると、この国際情勢に対処するのには、まず財政の健全化。健全化というが、具体的には、昨年のように、歳入がいかにあろうと、厳重に一兆に抑えるというやり方でなく、もう三年もたったらとにかく一般歳入でまかなえる範囲の歳出は組んでも、私は健全性は害せぬだろうと思う、それでやっていきたい。一方物価騰貴ということが一番危険なんでありますから、それは数量景気の持続する限りにおいては物価を上げないようにする。物価を上げないということになれば、預貯金がふえることは間違いないから、民間資金の活用ということで健全なこれは採算的になります、民間資金をむだに使うということは原則としてありません、必ず経済効果をねらって民間資金が動いていきますから、初めてここに健全な経済の拡大ということが起ってくるだろう、こういう考え方で今度の予算を組んでおります。
  42. 小川半次

    小川(半)委員 今の日本に必要なのは大衆景気なんです。日本の大衆はここ数年来景気という恩恵に浴していなかった。幸い昨年から非常に国際収支もよくなって、経済規模も一切が拡大してきた。こういう際にこそ大衆景気が必要なのであって、私はそれを言う。財政規模の大小にかかわらず、国際的な景気に日本も非常に恵まれてきたのだから、この機会にもう少し財政規模を拡大して、大衆景気をあおることが国民を明るくする、こういう考え方を私は持っておるのであります。この点に重点を置いてほしいということを申し上げておるのであります。  昨年来の貿易勘定の黒字は、ヨーロッパやアメリカに建設事業が盛んになって、その世界的投資景気のおこぼれの恩恵に日本も浴し、当初十六億ドル程度と見込まれていた輸出高が十九億五千万ドルという数字を示すに至ったのでありますが、このような日本の貿易状況は、決して日本のコスト安とかあるいは新しい発明品の進出によって好転してきたものではないのでございますから、多少の手持ち外貨に陶酔して、朝鮮事変によってうちょうてんになったあのときのような不手ぎわな経済政策を再び繰り返さないように慎重を期さねばならぬと思う。特に本年も世界景気が続くことが予想されますので、昨年同様貿易高の上昇するということは大体常識になっております。それで私はことさら朝鮮事変当時のことを深く感ずるのでございます。そこで朝鮮ブームの二の舞を踏まないようにしなければならぬと思うのですが、これに対する対策についてお考えがあるかどうか、お尋ねしたいのでございます。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。一応朝鮮事変の後のブームですが、朝鮮事変はごく一時的なものであるということが強く言われておったにかかわらず、何でもあの朝鮮事変前は非常なデフレでありました。ですから朝鮮事変が起った場合に、一般に日本に天祐が来た、こんなことを言った人もあるぐらい。従ってそういう気持でありましたから、ここに投融資というものが盛んに行われた。言いかえれば、その結果二重三重の設備の拡大が行われた。ところが朝鮮事変が終ったら、これがすべて動かなくなった。動いても、たとえば五〇%、六〇%。従いましてコストが非常に高くなるということは言うまでもありません。それが貿易に影響しまして、輸入超過、輸出が伸びない。従いまして今回の場合におきましては、やはり合理化を進めなければならぬ。私は合理化を進めなければならぬと思うが、二重投資、いわゆる設備の拡大をするについてはよほど慎重な態度がなければならぬ。それがゆえに財政投融資なんかは私はそういたずらに拡大をいたすべきでない。これは新しい部面がありましたら、その分についてはやらなくちゃならないが、よほど計画性を持つた投融資が必要である。従ってこれを民間に移せば、民間としては回收のできない、見込みのないようなものについては——最近デフレが続いて非常に経営の心がまえが堅実になりましたから、なかなか投資をしない。従いまして今日のように金融がゆるんでおりましても、金を借りに来る人が非常に——非常にというと語弊がありますが、割合に多くならない、預貯金がふえる、これで非常に健全な姿をとっております。これで今回はいいと思う。それで特に貿易がよかったのは、やはり私は造船関係が非常に影響しておると思う。いわゆる鉄関係あるいは機械関係、特にこの造船については今正確に申し上げかねますが、まだ少くとも二年くらいの注文は持っております。しかしこれは世界が相当軍拡といいますか、忙しかったためになかなか注文が手に負えない。従って日本は鉄が相当高いのですが日本に注文しようということで、日本にずいぶん注文が回ってきたわけであります。やはり将来を警戒しますが、私が今申しましたような心がまえと客観的ないろいろな具体的な情勢を考えれば、今回は朝鮮事変の二の舞は起らないし、また政策的にも決して起すべきでない、かように考えて施策をしておるわけであります。
  44. 小川半次

    小川(半)委員 今大蔵大臣は金利の問題に触れられましたからこの点についてお尋ねしたいと思います。大蔵省と日銀との間に金利問題について意見の対立が続いておるということはあまり歓迎されるべきではないのでありまして、こういうことは今後の金融政策の方向がどこに行くのかわからず、国民不安感を与えているのであって、非常に残念だと思います。金融政策は予防医学的役割を持つものであるということは今日諸外国の常識になっているのでありますが、この世界の趨勢にならってわが国にも公定歩合の操作にももっと弾力性と積極性を持たせようという議論が当然起ってくるわけでございます。高い利子でもよいから金を貸してくれといって銀行に頭を下げていったのはきのうのことであって、今日は銀行から借手を探しておるというような金融情勢になってきており、必然そこに起ってくるのは市中銀行間の貸し出し競争、金利低下の問題であります。日銀当局は金利低下を極力戒めておるようでありますが、金融が緩和し、資金の需給関係によって金利が低下することは、自由主義経済のもとでは当然のことであって、貸し出し競争によって金利が低下するのは私たちは望ましいことだと見ております。しかしながらこのことについて好ましくないという日銀当局意見もまた考えてみなければならぬと思うのですが、あるいは金利引き下げをすれば必ず借手がふえて資金需要がどっとふえてきて、そのためにインフレ気がまえが起るのではなか、このように日銀当局などは考えておるのではないかと思うのです。私は金利を下げてもインフレになるというような考えは持っておらぬのでございましすが、この点について一体日銀と大蔵省との意見はどこに食い違いがあるのか、この点をお伺いしたいのでございます。
  45. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金利の問題について大蔵省と日本銀行との間に意見の相違はございません。これは明確に申し上げておきます。ただしいて世間が言うのは——むろん金利が下るのはよろしいのですが、私どもは金利を下げるのではなくて、金利が下ることが望ましい。従って金利が下る客観的な条件、ことに資金の蓄積が非常に十分にあること、資金の蓄積が十分になるにはどうするか、これは物価政策にもさかのぼり、生産までさかのぼるのですが、そういう政策をとっておるのです。かりに世間が言うとすれば、日本銀行も金利が下ることを防ごうとか、これはよろしくないということは言ってない、ただ客観的な情勢が熟さずに人為的に下げようということは適当でないだろう、私はこういう見解だろうと思う。これは私も同様なんです。特に今後の政策として、今日市町銀行は日本銀行に依存しておりませんが、今後も依存させずにいこうとすれば、どうしても人為的にやるべきでない。さらに問題を一つここでつけ加えれば、日銀の公定歩合のお話が出ましたが、従来日本銀行の公定歩合というものは全然きかなかった。これは日本銀行の公定歩合が安くて市中金利が高かったからきかなかった。そこで第二次高率適用というものをある段階にくれば適用したのでありますが、今日はそこが一つ違います。たとえばコールのレートは今日一銭五厘です。従来は二銭三厘くらいであった。ところが日本銀行の公定歩合は今日一銭六厘というのが最低。金利についていろいろと検討を加えてみる一つ段階にきておるのですが、その一辺にいろいろ議論がある。かように御了承願いたいと思います。
  46. 小川半次

    小川(半)委員 私が特に金利の問題を申し上げますのは、日本の製品は海外市場において外国製品よりも若干高いのです。その高いのは、日本の製品のコストに金利というものが含まれておる。大体日本の今日までの産業界は、自己資金ではなくて、ほとんど銀行その他からの借入金でやっておりますので、その金利が結局生産コストとして製品の値段に含まれておる。それがために海外において外国製品に値段の上において往々敗北しなければならぬという事情がありましたので、私はやはり貿易発展の上からもぜひとも金利の引き下げを行わなければならぬと思う。大蔵大臣は人為的に下げるべきではなくて経済的に自然的に下るのを待つのである、こういうことですが、それだったら政治家も大蔵大臣も要らぬことになるわけです。やはり一定の金利の最低線というものはどの程度であるかという線をきめて、できればそこまで持っていきたいという方向、きっかけを示さなければ下るものではない、私はこのように考えておるのですが、それは議論になりますからよします。  次に民間資金の活用に千三百九十七億円を計上されておりますが、これは財政投融資の減額を補い、また自立計画を推進し得るので当を得た方法であると思うのでございますが、しかしこれは果して計画通りいくかどうかということに非常な疑義もございますが、あるいは融資の方法づけに一段の工夫なども必要であります。そこで三十年度の六百二十三億のあの民間資金の活用状態は一体どうなっているか。それによって本年度も国民はあるいは安心できるかもわかりませんから、三十年度の民間資金の活用の状況をお聞かせ願いたいと思います。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回の予算の特色は財政、金融を総合的に一体化して運営していくというところにあります。従いまして、民間資金を今お話のように、相当高く千三百億以上のものを活用するということになっております。これをどういうふうにするか。私の考えでは今日の金融情勢からいたしまして、金融機関も特に従来と異なりまして、その公共的な立場に十分に目ざめて——目ざめてというと悪いかもしれませんが、さらにそういう考えを新たにいたしまして、そして国の経済に真に必要なる方面に資金を流すことに自主的に努力している。他面御承知のように資金の供給量、資金源は民間に豊富になっておる。従いまして自主的なやり方にまかせても、私は国家の要請に十分こたえ得るという確信を持って——むろん政府としても必要な指導をいたしていくべきでありよしようが、そういう確信を持っております。しかしなおまた私は、この資金の旭川については、特に国の施策がよく反映するような機関を作りまして、自主的な機関と相待ちましてやっていきたい、かように考えております。これは一応千三百億以上にわたる民間資金の活用の分布については、御配付申し上げてあります通り、大体の資金分配は一応その通りであります。これが十分動きますことは、単に抽象的な確信を持ってやってもしようがないと言われるかもしれませんが、今の客観的な情勢からすれば、十分心配なくやっていける、かように思っております。
  48. 小川半次

    小川(半)委員 大蔵大臣にもう一点お尋ねしたいと思います。勤労者の所得税については、従来の給与所得控除率一五%から二〇%にし、またその最高限度額も六万円から八万円に引き上げられることになりましたことは、昨年の臨時税制調査会の答申にも沿うものであって、一応了とするところであります。しかしこれによって勤労者がどれほど生活に潤いを持つかというと、実ははなはだ心細い感じがするのであります。その理由は、三十一年度において砂糖関税の引き上げなどによって間接税の負担も重くなるし、地方税には都市計画税など新しい税金が設けられる。このほか健康保険の患者の負担増加や、あるいは学生の授業料の値上げなどがあって、これらを通じて考えてみますと、今度の勤労所得税軽減の喜びも決して満足すべきものではないと私は見ております。そこでこのような事情から見て、一応本年は既定予算を実施するといたしましても、本年度は税負担の軽減を根本的に改正する必要に迫られるのではないか、このように私は思うのでありまして、大蔵当局におきましては将来税制改革の用意があるかどうか、これは来年度に対する税制改革の点を伺っておきたいと思います。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十二年度において税制の根本的改革をやることは、さきに総理大臣がすでに御声明になっておる通りで、総理大臣の意を体しまして、大蔵省としてはこれに着手いたしておるわけであります。ただこの際一言申し上げておきたいことは、直接税をまけても間接税がふえるじゃないか、この点私の考えをこの機会に申し上げたいのは、昭和九—十一年という年は、大体いろいろな経済活動についての基準の年にされておるのです。この年における日本の税の直接税と間接税との構成は、大体私の今の記憶にある限りにおいては、直接税が三六%、それからあとの六十何%が間接税、こういう形の構成になっておる。ところがシヤウプ博士が来られての日本の税制の立て方として、直接税一本になった。これはいろいろな財産がなくなったことにもよりましょう、いろいろな関係もありましょうが、私は直接税に行き過ぎておると思う。もう少し間接税に移行して直接税の方を軽くしたい、こういう考えを持っておりますので、これは税のバランスの上から見ても、直接税は軽くするが間接税を重くするのはけしからぬじゃないかというようなことは、もう少し皆さんと御一緒に考えてみたい、かように思っております。
  50. 小川半次

    小川(半)委員 正力国務大臣はお急ぎのようですから、それではあなたにお尋ねいたします。  本年の予算の中で、新味があり、一応国民の注目を引くのは、おそらく原子力関係の予算ではないかと思うのですが、過去五、六年来アメリカ、ソビエト、イギリスの国々は、原子力研究や原子兵器を主体とした原子産業にやっきになっておるのであります。それは原子力発電所の設置や放射性同位元素の工業、農業、医療面への積極化を見てもうかがわれるのでございます。今原子爆弾等の兵器は別として、これらの国々がなぜやっきとなり、鳴りもの入りで原子力の平和利用に関心を寄せさすべく強調しているかであります。それは多分に商業的意図があって、原子力時代に乗りおくれる国は世界の落伍者になると言わぬばかりにせき立てて、自国で生産される原子炉や放射性同位元素の輸出活発化せんとするものではないかという実にうがったような憶測までが生まれて、あるいは日本もそのアジテーシヨンにあせりぎみとなって、乗りおくれてはならないの心理から、ついに原子力予算に踏み込んだのではないかというような意見も出てくるのでありますが、政府はこのような意見に対処して、日本の原子力平和利用は、アメリカ、ソビエト、イギリスの商業戦術に乗ぜられたものではないというところの実証を、この際大臣から明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  51. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 小川さんにお答えいたします。原子力政策につきましては、原子力基本法を誠実に守るということを第一義と心得ております。従って、その原子力基本法に、自主的に運営するということがありますから、すべて日本の国情に通ずるように自主的にやります。従いまして、御心配のような外国の売り込みだとか、外国に利用されるということのないように十分の注意をいたします。
  52. 小川半次

    小川(半)委員 科学技術及び原子力推進について、各国は軍がその推進力となっているか、あるいは科学技術省という権威ある制度を設けているか、または国会に合同委員会が設けられている。日本も戦前は科学技術などは軍が推進力となって進めておったのでございますが、一体今後はどこに推進力を置くのか、将来はそうした科学技術省というようなものが設けられるのかどうか、今は技術庁というものがありますが、この規模で将来いくのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  53. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 ただいまのお話の科学技術を尊重すべきことは当然でありますが、私どもは原子力政策は国民全体の支持をもととしてやっていくつもりであります。従いまして、その国民の代表である国会にも、幸いにして原子力合同委員会というものができておりますから、この意見を十分尊重して進めていきたいと考えております。
  54. 小川半次

    小川(半)委員 原子力を推進するにはやはり目標がなければならぬと思うのです。日本の場合は、電力に目標を置くか、あるいは船舶とか機械とかどこかに目標を置いて、そうして原子力を推進しなければならぬと思うのです。不幸にして国民は、日本の原子力の推進はどこに目標を置いておるのか、まだ納得しておらぬだろうと思うのです。この目標を明らかにすることは、日本は決して原子力というものを兵器産業とかあるいは原子爆弾などに利用するものでない、使用するものでないのだ、あくまでも平和利用に供するのである、そういう安心感と目標を与えるために、ここに日本はどこに重点を置くのかということを明らかにしなければならぬと思うのですが、その点について御意見を伺いたいと思います。
  55. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 原子力の目標につきましては、原子力基本法に、原子力の利用は平和に限るということを明確にしております。それが第一であります。そうしてさらに、運営につきましては、自主的にやる、それからまた研究の自由、技術の公開、この方針に基きましてやりまして、その目標とするところは、発電とアイソトープの利用であります。この問題につきましてさしあたり私どもが考えておりますのは、原子炉を早く作ること、いま一つは技術者の養成ということに万全の力を尽しております。
  56. 小川半次

    小川(半)委員 日本の原子力というものは、発電を目標に置くということが明らかになったので、一応了解いたします。  そこで原子力政策については、私はあくまでも超党派的でなければならぬと思うのです。この原子力政策というものは、やはり一党一派に偏したり、あるいは政権がかわるたびごとにくつがえされたり、利用されたりするようなことであっては、将来おそるべき事態を惹起する場合がないとも限らないと思います。たとえば、あくまでも平和利用ということを明らかにしておりますが、ある極端なる政党が出まして、その政権の力で原子力利用をあるいは戦時兵器に向わしめるとか、そういうふうなことがあってはならぬと思いますので、あくまでも超党派的にこれを推進すべきものでありますが、これらの点について具体的に何か構想がございますかどうか、承わっておきたいと思います。
  57. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。今仰せの通り、原子力の推進につきましては、超党派でやるということを根本義と考えております。従いまして、先ほども申しましたごとく、幸い国会に原子力合同委員会がありますから、この意見も尊重いたしまするし、のみならず、原子力委員会を初め、組織が大体全国民の意向を受け入れるようにしております。従いまして、委員会でも学界、財界の代表的の人を入れ、また研究所につきましても学界等の代表的の優秀な人を入れることにしまして、各方面から人を集めることにしておりますが、さらに私どもはそれに満足せずに、新聞紙上御承知通りに、原子力産業会議というものを作りまして、そうして広く産業界の総意を結集したいと思っている次第であります。
  58. 小川半次

    小川(半)委員 一昨日原子力産業会議が開かれまして、いろいろ産業界の人あるいは学界の人も意見を出しておられるようでございますが、幸い日本の原子力関係には湯川博士とかあるいは石川さんなどが参画されて、将来非常に期待すべきものがあるのでございますが、ただ民間と学者との場合は、過去の日本の例を見ますと、意見が一致しない場合が非常に多かった。今後は民間及び学者、そして政府当局、三者一体となってこれを推進しなければならぬのです。従って原子力産業会議というものの重要性は、ますます高く評価されなければならぬのですが、ただいま承わったのでは、会議があるというだけでは、将来の構想についての御意見は別になかったようですが、この構想について、ございましたら、一つお聞かせを願いたいと思います。
  59. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。原子力産業会議というのは、実は先刻も申し上げました通りに、広く民間の声を聞きたい、民間総意を集めたいということであれを作ったのであります。今日今までの状態では、民間には各原子力の研究所が幾つもできておりますが、みな独立しております。これは一つも総合的になっておりません。それだからこれをみな集めたい、それだけではいかぬから、一つ民間の全部の意思を結集したい。現にアメリカでもフランスでも原子力産業会議があります。しかし私どもは、アメリカやフランスのものよりも、もっとほんとうに各民間の業種にみな集まってもらいたい。そして協力を得たいと思います。ところが幸いにして、日本民間の各界の代表的の人が、新聞でごらんの通り六十七人も集まりました。こういう代表的の人がこんなに集まったということは珍しいことだと思っております。しかも列席した人が満場一致で、どうしても日本のために原子力を進めなくちゃならない、われわれ一丸となってやろうという決意をしまして、これが鞭撻をしてくれるし、また一面学術会議——これは政府の方で、審議会であります。この学術会議があり、民間には民間総意を集めた産業会議がありますから、これでこそほんとうに日本国民が一丸となって原子力を進められると思いますから、どうぞ御期待をお願いいたします。
  60. 小川半次

    小川(半)委員 次に原子力研究所についてお尋ねしたいと思います。原子力研究所は、国立研究所のごとき弾力性のないものでは、私はやはり効果を上げることはできぬと思うのです。従来から日本の国立研究所というものは非常に非能率的であって、有名無実というような性格のものが多いのでございますが、いやしくも原子力研究所においては、国立研究所のようなああいう性質のものではなくして、民間もこれに参画できる研究所の態勢を整えなければならぬと思うのです。そこで、たとえば公社のような制度などが最も必要ではないかと思うのですが、現在政府において考えておられる原子力研究所はどういう性格のものであるか、お答え願いたいと思います。
  61. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。原子力研究所は、お話通り、全く今度の原子力開発の総合的、重点的の中核体をなすものであります。従いまして、資金面におきましては国庫が重点的にこれを投じますが、一面におきまして、学界、民間の技術者あるいは研究者をもこれに参加せしめたいと思います。そうしまする関係上、どうしても会計の点において弾力性を持たさなくちゃならないと思いますので、純然たる国立ではなかなかめんどうではないかという点も考えられます。この点は目下法案を研究中でありますが、万全の策を講ずるつもりでおります。
  62. 小川半次

    小川(半)委員 日本のウラン鉱の見通しはどういうことになっておりますか、この点を最後に伺っておきたいと思います。
  63. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。探鉱の問題は、今までは実はごく小規模でやっておりますので、まだ日本の将来はどうか断言できませんが、すでに小規模でやってすらもウラニウム鉱はあちこちに発見されております。今度大規模にやればかなり出はせぬかと思っておりますが、これは十分探鉱に力を入れます。
  64. 小川半次

    小川(半)委員 それでは次に通産大臣にお尋ねしたいと思います。主として中小企業の問題でございますが、中小企業の問題についてはいつの場合でも一応の対策が論じられてきたのでございますが、いまだ見るべき成果が上っておらないのであります。日本経済が正常を取り戻した今日こそ根本的な対策が必要と思うのであります。これまでの中小企業対策を見ますと、一時しのぎのこうやくばり的な心細い対策しか見られなかったのでありまして、従来のような金融と減税だけが中小企業対策であるといったような、あのような一時抑えの対策から今後は長期的な対策に移らなければならぬと思うのでございますが、この長期的対策について通産大臣のお考えを承わりたいのであります。
  65. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 中小企業についてはお話通り明治以来の問題でありながら、なかなか解決できない、それほどにこれは困難であります。今あらゆる手を打っておるのですが、その中で私ども特に最近力を入れたいのは、一つは中小企業を協同組合、その他の方法で組織化するということと、中小企業経営及び設備の近代化、これを強力に進めていきたいと思って力を入れております。何しろ中小企業と一言にいっても実はその正体がはっきりしない部分がありまして、たとえば中小企業の統計と申しましても、数字的にその正体をつかむというような材料も十分でありません。三十一年度の予算には少額ではありますが、その調査の費用を計上しております。中小企業そのものについて根本的に一つ調査を進めたい、かように考えております。
  66. 小川半次

    小川(半)委員 私は中小企業のための長期的な対策として百貨店法などが必要じゃないかと思うのです。中小企業の商店が絶えず百貨店に脅かされておるのでございますが、近年特に大資本、大企業の百貨店が進出していくに反しまして、衰えていくものは中小企業でございまして、これは大企業の前には中小企業などが太刀打できないのは当然でございますが、だからといっていかにこの自由経済の社会とはいえ、これをこのままに見捨てておくということは政治ではないと思います。しかも今後各地各所で大デパートが建設されていきます。それで私は中小企業の商店が成り立つために、今日国会の内外で問題になっております百貨店法のごときものを作って、中小企業商業者を今後恒久的に成り立つように持っていくべきではないか、これが長期的な一つの対策にもなるのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  67. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 百貨店法の問題はただいま検討いたしまして、多分この国会に御審議をわずらわすことになるだろうと思います。しかしながらこれは大きな百貨店を抑えて、ただ小売商を保護するというだけでは、実際は中小企業の小売商の経済的根拠がないのですから、これもいわばお話のこうやくばりの対策であろうと思います。もっと根本的に中小企業は中小企業として成り立つような経済的根拠を作りたい。それには先ほど申しましたように中小企業そのものの体質を変えて、ほんとに日本の経済に中小企業というものがなければならぬ、彼らの存立し得る根拠を何か発見いたしたいと思います。これが助長に十分力を注ぎたい。百貨店法につきましてはただいま考究いたしておりますから、多分御審議をわずらわすことになるだろうと思います。
  68. 小川半次

    小川(半)委員 わが国の貿易商社のここ二、三年来の取引状態を見ておりますと、実に驚くべきものがあるのであります。たとえば大体原料買付の場合は国際価格よりも五%高で買っておる。そしてそれを製品化して売る場合は、逆にその五%、国際価格よりも安く割って売っておるというようなことで、常識では考えられない行為が行われておるのでありますが、これはわが国における商社の濫立がはなはだしく、非常に数が多いために競争が激甚となってくるのであって、買う方においても日本のそうした貿易商社の足音を見ておりますので、どうしてもその原料を高く売って、また製品を安く買うという非常に残念な状態が自然起ってくるのでございますが、たとえばジャワ糖の買付のときでも、日本の商社が三十数社競争して買いをあせったと聞いておるのです。これで相手は足元を見て高く売りつけるのは当然であって、このときも日本の商社は米国の商社よりも五%だか高く買い付けておる、そこで買えなかった商社は今度米国の商社からまた間接に買うというようなことが起っておるのでありますが、このような商社の濫立の結果、結局生産者や問屋を苦しめたり、また倒産させたりしておる。このような状態をいつまでも放任しておくわけにはいかないと思うのであります。そこで政府において貿易商社の整理統合等に本腰を入れてもらわなければならぬのですが、通産当局においてはこれらの商社についてどのような対策を立てられるかお答え願いたいと思います。
  69. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 わが国の商社が戦後非常に数がふえまして、過当競争をしておることはお話通りでまことに困った状況であります。通産省としてもできるだけそのような過当競争の起らないように方策をいろいろ講じております。しかし商社を強制的に統合させるというようなことはこれは政府としてはできかねるところでありますし、これはどうしても商社がおのずから統合整理をするという方向に向うように指導していくよりしようがないと思います。今回実行いたしました外貨の問題のごときものもそういうことのきっかけに多少なろう。今までのやり方がいろいろ事情がありますが、たとえば実績主義で実績によって外貨を割り当てるというようなことが、つい過当競争になる。そういう点もこれから外貨予算編成等の場合には十分改めていって、そうしてあまりに過当競争が起らない、同時に前の国会で成立しました輸出組合、輸入組合というようなものも利用しまして、過当競争を除去していく方法を講じたい、かように考えてただいま努力をいたしておるのであります。
  70. 小川半次

    小川(半)委員 聞くところによりますと、南米アルゼンチンはわが国に対する一億数千万ドルに上る支払いを未解決のままでいつ払うのかいまだに明示しておらぬということでございますが、先般政府の方から関係者がアルゼンチンに出向いて交渉されたということですが、その結果がどうなっておるか。国民は返事を知っておらないような状態ですから、その後どうなっているかお伺いしたいと思います。またこのようなことはインドネシア、韓国などでもあるようでございますが、これらの国々に対しても同様のケースと思いますので、今後どういう方針をとられるかお答え願いたいと思います。
  71. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 アルゼンチンにつきましては、お話のように通産省からただいま通商局長が行っておりまして、いろいろ向うと交渉いたしております。大体の方針はできるだけアルゼンチンの品物を、羊毛、小麦等をたまった金で入れようというので、これはある程度話がつきました。しかしこれだけですぐに全部の解決はつきませんので、できればたとえばアルゼンチンの事業にこれを投資するということまでも考えて処置するように話を進めておりますが、まだ通商局長は帰って参りません。多分もう数日中に帰るようであります。詳しい報告をまだ受けておりませんから結果を申し上げられませんが、ある程度の解決はできるような方向に向っております。それからインドネシアの方は、これは少し古いことで賠償とからんでおります。やはり賠償問題を解決するということが必要であるように思います。私がインドネシアの代表とシンガポールで会ったときは、必ずしもあれを賠償以上にみんなよこせというようなことを言っておりませんでした。賠償問題は片づけてほしいということをしきりに言っておりましたから、そういうこととからんでこれも解決はできると思います。韓国の方は先ほど話がありましたように、特別の問題ですから、これは今のところでは計算外です。
  72. 小川半次

    小川(半)委員 通産大臣に対する質問はこれで終りますが、最後に自治庁長官にお尋ねしたいと思います。大体昨日の新聞記事のように、地方財政は一兆四百五十億円台に決定したものであるかどうか、この機会にお答え願いたいと思います。
  73. 太田正孝

    ○太田国務大臣 地方財政計画はようやくきのうの夕方にまとまりまして、ただいま御指摘のような数字でございますが、一兆四百五十三億円でございます。まだ大蔵省と数学の突き合せが済んでおりませんので少し動くかもしれません。また地方財政の骨格ともいうべきものでございますから、皆様のお手元になるべく早く届けるように提案いたしたいと思います。
  74. 小川半次

    小川(半)委員 地方財政を新しい財源として三公社等の固定資産税を創設する方針を本予算説明にも伺っておるのでありますが、この固定資産税を政府部内において交付金制度に変更するというような意見が出ているように聞くのでございますが、現在一体どうなっているか、固定資産税として取るのか、あるいは交付金と改めるのか、まず伺っておきたいと思います。
  75. 太田正孝

    ○太田国務大臣 三公社の固定資産税につきましては、初めその方針で進んでおりました。しかしこれを出します一番主力になる運輸省関係及び郵政省関係におきまして、税の本質についても議論がございました。国家の機関であると同じような性質の三公社にかけるようなことはどうも筋が通らないというような議論もございまして、今回三公社課税と別に国有の資産等に対して課する課税がございますが、これは交付金という新たなる名前を持っております。この方にしようかということでただいませっかく三省の間にまとまりつつあるので、今確定しておりませんが、一両日のうちにこれを確定いたしたいと思っております。しかしながら固定資産税にいたしましても、交付税にいたしましても、地方へ分布される関係におきましては同じ状況になるように考えております。
  76. 小川半次

    小川(半)委員 もちろん固定資産税も交付金も分布される額には変りがないのでございますが、問題はやはり性質の問題です。憲法において自治体の発展、そして自主的に伸びていくことをうたっておるのでございまして、そうした憲法の精神から考えますと、交付金の場合は政府が地方自治体に金をくれてやるのだといったような芳ばしからぬ印象を与えるのであります。固定資産税は市町村がその市町村内にあるところの課税対象物から当然徴収できる金でありますから、政府に頭を下げなくてもよい金である。いわば遠慮のない性質の金であって、本来から言えば地方財政の自主財源でございますから、これはやはり固定資産税として取ることが地方自治体の立場を尊重するものでないか、私はこのように考えておるのですが、これは相当変更が進んでいるわけですか。どうですか。
  77. 太田正孝

    ○太田国務大臣 お言葉の通り自主財源という意味において固定資産税の重要なることは同感でございます。ただ三公社の課税というものは、現在の鉄道関係あるいは電電関係など見ますと、楽な負担というわけにはいきませんので、一方に運賃値上げまでしなければならぬというような状況のときに、地方財政のために非常に御心配下さいまして、今回出すようになったいきさつがございます。さらに電電関係におきましてもまだ電話のない村などがございまして、この方にも伸ばしたいという切実な要求がございますが、地方財政の現況がいかにも救わなければならぬという意味から出たので、この負担を受ける三公社の関係から問題がかようなところまで来ているのでございます。しかし御趣意の通り憲法における自治の精神その他から見まして、御趣意の点もよく考えて善処したいと思っております。
  78. 小川半次

    小川(半)委員 地方財政の赤字解決の目標で、新年度において機構の簡素合理化、停年制あるいは教育委員会制度の改廃等で五十億、事業補助金や零細補助金で百億、三公社に対する固定資産税、都市計画税、軽油引取税等の自主財源の増強で百億円、それに交付金の現行二二%を二五%にすることによって百九十四億円、以上約四百五十億というもっともらしい財政計画が出ているのでございますが、毎年の例にも見られるように、政府の計画通りに地方自治が運ぶものとは思われないのでございます。市町村代表や知事会議での意見を聞いても、これではとてもやっていけるものではない、せめて交付金を二八%とか、あるいは公債を認めてくれた場合はこの難関が打開できるであろう、こういうふうな、非常に熾烈な訴えがあるのでありますが、この政府の案とそれから地方担当者との食い違いをどのように調整していくか、この点を承わっておきたいと思います。
  79. 太田正孝

    ○太田国務大臣 小川さんの御質問は、今回の地方財政についての政府の措置に対する根本問題に触れておるのでございまして、一言言わさしていただきたいと存じます。政府予算方針においても地方財政の措置ということを中心課題としておるのでございます。また赤字の出ないようにということにしておるのでございます。同時に前国会におきまして一萬田大蔵大臣とともに根本解決をいたしたい、こういうことを申し上げたのでございます。今御質問の点がこれに関連しているので申し上げますが、根本的な施策があったかという、こういう問題でございます。  その第一は、御質問の中で御説明なされたような地方財政自体に関する根本的策と、国家の財政から地方財政へどういう措置がとられたか、この二つに分けられると思います。  その第一の、地方財政自体についての問題につきましては、相当根本的な手を加えたつもりでございます。ただもしこれを地方財政の支出と収入とに分けますならば、支出に対しまして、御指摘の通り相当強い政策を加味しております。すなわちあるいは委員会制度を縮めていく、あるいは教育委員会については公選を廃するとかいうようなことも考え、あるいは地方の府県における部局も収縮する、地方議会の制度についてもまた節減を加えていくというようなことを考えております。さらに長く唱えられ実行されなかった地方公務員の停年制も断行するつもりでございます。また国家財政の建前から、大蔵省が非常に心配してくれまして、補助事業等に対する地方の負担を軽減するため、たとえば河川砂防等に対する補助率も国家の負担を非常に多くし、地方の負担を軽減して参ったのでございます。  かようなことで、今まで長く唱えられて行われなかった問題を解決しますとともに、お話の収入方面におきまして、自主財源として約百億円をここに軽油引取税、都市計画税、三公社等の固定資産税に対する課税をもっていたしたのでございます。公債につきましてもなるべく縮めるという意味におきまして、今回いろいろなことを考えております。その結果が収縮いたしまして、結局財政計画となっておるのでございますが、この方策で幾ら計画を立てても実行できなければいけないということの御忠告は、私もかねがね小川委員と同じように感じておりました。この財政計画をもしこの通りに行うならば、地方自治団体が十分にこの意を体してやってくれ、われわれもこれに十分な指導をいたしますならば、赤字は出ない、実行はでき得る、かように考えるのでございます。  さりながら国の財政からして地方財政に対する関係はどうであるかと申しますと、こまかい費用は別といたしまして、また財政投融資の関係を除きまして、大きな線は、国の財政から地方へは二つのパイプによってつながっておるのでございます。その一つは交付税であります。他の一つは文部省所管にある義務教育費国庫負担でございます。前者が千六百五十億円見当、後者が七百七十億円見当、合せて二千四百二十億円見当になります。一兆三百五十億円の国の財政の中で四分の一に近いところまできているのでございます。さらに交付税は酒税、法人税、所得税の中におきましてその二割五分、国家の最も大きな税の中で四分の一を占めるところへきております。交付税が国家の税の中で四分の一、義務教育費と交付税と合せて国の財政の四分の一——自治団体というものは財政における独立性ということを意味している点もあろうと思いますが、かように大きな額になって、国と地方との関係を考えてみますと、お言葉の通りこれが実行されなかった場合におきましては、大へんなことになるのでございます。私といたしましては、この四分の一の国費の中に占める額、あるいは国の三大税の中で四分の一を占めるという、この点を考えますと、将来の国の財政と地方財政とのからみ合いというものは大きな問題を提供しているではないかと思います。しかしわれわれが今日地方の窮状を見ますと、もそっと国の財政から出してもらいたい、補給してもらいたいという考えがございます。しかしながら健全財政を主張されている政府の方針でありまする限り、新しく出ます五百五十億円見当の中で、百五十億円を減税に充てますと、残る三、四百億円の中でどれだけのことができるか。農林関係ありあるいは建設省の関係などを考えてみますと、その中へ割り込むべき地方財政の要求額というものは、われわれの要求する通りにいかないのも無理はないことであろうと思います。  三十年度におきましては一兆予算のしわ寄せが最も強くきたのは地方財政でございました。百四十億円しわ寄せがきまして、どうにもならなくって前臨時国会において百六十億円の金をととのえたわけでございます。ただいま申し上げた計画がどう行われるかという意味から申しましても、三十年度において百四十億円の赤字になるだろうという心配があった前年度の予算を作ったころと比べますと、百六十億円は前国会において認めた額ではございますが、とにかく三十一年度の予算におきましては赤字が出るようにならない、財政計画はその意味においてまとまったのでございます。御言葉の通りいかに数字を並べましても、政府側における指導も、自治体自体がほんとうにやって下さらなければ、御心配のような問題が起ると思います。この点は各自治体にもよくお気をつけ願い、また政府といたしましてもしかるべく指導していきたいと存じ上げる次第でございます。
  80. 小川半次

    小川(半)委員 時間がございませんので、最後に一点だけ伺っておきたいと思います。  近年、町村の合併が促進されまして府県の事務が少くなったし、また町村の財政も幾分か縮小される傾向になってきた。そうした例から見まして、将来はどうしても町村合併と同様に府県の合併ということが問題になってくるだろうと思うのです。そこまでいかなければ地方自治体というものを根本的に救うことができないと私は結論として考えているのです。自治庁において将来そうした傾向にあるという考えを持っておられるのか、あればその対策などができているのか承わっておきたいと思います。
  81. 太田正孝

    ○太田国務大臣 町村合併は順調に進んでおりまして、八割五分見当達成いたしました。今年の九月に一応締め切ることになっておりますが、この制度はここで一応打ち切る態度をとり、その合併につきまして育成の方向に進んでいきたい考えでございます。新自治体は新合併町村をもとにして立っていく意味において非常に重大なる時期にきておると存じます。しかしてその上に立つ府県はどうするか、あるいはいわゆる道州制の問題はどうなるかということは、御指摘の通り最も重大なる問題でございます。ただいまは新町村の育成ということを主力として進んでおりますが、この府県及び道州制につきましては、現在地方制度調査会に答申を求めておりまして、鋭意その研究が進んでいることと思います。私どもはその結果を見まして、政府の実行に移したいと考えております。ただいまここで府県制をどうする、及び道州制をどうするという段取りにまでは参っておりません。もっぱら調査会の結果を待っておる次第でございます。
  82. 小川半次

    小川(半)委員 残余の質問は適当な機会に行うことといたしまして、私の質問は本日はこれをもって終ります。
  83. 三浦一雄

    三浦委員長 午後は一時より再開することにし、暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  84. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を継続いたします。辻原弘市君。
  85. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は社会党の立場におきまして、主として文教の問題、社会保障制度政府の施策並びに地方財政に関する諸点等につきまして、総理大臣以下関係の各大臣に対して、順次質問をいたしたいと思うのであります。  まず総理にお伺いいたしますが、先般の施政方針におきまして、総理は文教の施策について次のごとく述べておられるのであります。すなわち、自主独立の達成も、正しい民主政治の確立も、その基はすべて国民の燃え上る祖国愛と良知良能にあることは言をまたない。その意味で、教育に関する根本的な改革を行いたい、かように述べておられるのでありますが、これを要しますれば、結局総理が一大教育改革を行わんとするその根本の目的というものは、祖国愛の涵養にあり、愛国心の高揚というこの点に集約され、ここに最大の重点を置かれているように私は考えるのでありますが、その通り受け取ってよろしいかどうか、御見解を承わりたいと思います。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 民主政治になりましたならば、教育の方針というものは非常に大事であります。民主政治に適合した国民を作っていかなくてはならない。それには、やはり民主政治に適合した国民といえば、祖国愛の燃え上るような人、同胞愛の強い人、道義の高揚を考える人、とにかく次代の国民の育成ということが教育の目的であれば、それには民主政治に適合した国民というものを作らなくちゃならない。民主政治に適合した国民というものは、ただいま申しましたような性格の国民が必要だと考えます。
  87. 辻原弘市

    ○辻原委員 民主政治に適合した国民を養成するということは、何もあらためて教育改革の上で論ずべき問題でなくして、少くとも今日の教育のあり方におきましても、その点は十分目的の中にも明白に示されておるところであります。ただ私はここでいま少し総理考えというものを明瞭に具体的にいたしておきたいと思いまするのは、総理のおっしゃっておる、特にあげて施政方針の中で強調された祖国愛というこの言葉の中身についてであります。一体いかなる中身を、いかなる祖国愛の具体的行動を要請されるのであるかという点につきまして、総理の御見解を承わらなければなりません。祖国愛という言葉は抽象的にはだれにでもわかる言葉であります。また少くともそれが、あるいは美しい自分の郷里の山河を愛するとか、あるいは同胞を愛するとか、また自分が生きている社会環境、ひいては国というものを愛するといったような、平たい言葉、平たい意味合い、こういった点における感情というものは、これはだれも否定する者はいないであろうと私は思います。ただしかし問題は、この言葉が一たび権力者の口から平たい意味ではなくして、肩ひじを張って、こうあらねばならぬというように打ち出されてきたときには、これは国民としては十分まゆにつばをつけて警戒を要すると私は考えるのであります。ましてや今日の情勢の中で、しかも総理が述べる場合におきましては、私が今申し上げました感が国民の胸にはより深いであろう。すなわち先般参議院において食言問題を惹起いたしましたその言葉を借りて申しますならば、陸軍も持てない、あるいは海軍も持てない、飛行機も持てないような憲法には反対である、すみやかに陸軍も海軍も飛行機も大っぴらに持てる、そういった憲法に改めたい、さらに聞くところによりますれば、憲法改正については、先般の共立講堂における自主憲法の講演会の際ですか、テーブルをたたいて強調したともいわれる、また閣議の席上におきましても、閣僚のこれに対する熱意の度合いが足りないということで、平素の総理にも似げなく、大声一番これを強調されたということもわれわれは聞き及んでおります。少くとも再軍備のために憲法改正したい、こう強く主張されておるその張本人であるだけに、私は総理の言われる言葉が少くとも再軍備のための憲法改正に役立たせる祖国愛の涵養であり、さらには一たん緩急ある場合においては義勇公に奉じなければならぬといった祖国愛、これをあなたはこれから教育の上に、ひいては国民の中に要請されていこうとしているのではないかと私は考えるのでありますが、総理はこの私の言った言葉並びにお考えになっていられる祖国愛という問題の中身について、具体的にお話を願いたいと思うのであります。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 御質問のような趣旨、すなわち軍国主義を土台として祖国愛を主張したものではございません。民主政治というものは、つまり自由主義から発足をしておるのであります。自由主義を理想として民主政治というものが生まれたのでありますが、その自由主義誤解をして、自由主義というものは自分のことばかりを主張すればいいというような誤解がありまして、自由主義に欠陥が生ずるのであります。自由主義というものは、自己の自由を主張すると同様に他人の自由を尊重しなくてはいけない、すなわち友愛思想というものが民主政治根本になるというような考え方を持っておりますので、教育においても、間違いのないように自由主義の説明をしてもらいたい、つまり、友愛精神が基礎になるというようなことを土台として教育をしてもらいたいというような考え方を持っておるがために言ったのであります。
  89. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理は今、友愛精神というその言葉を表現するに祖国愛、こういった形を申したのだ、かように言っておるのでありますが、私は友愛精神という限りにおいては何も祖国愛という表現をとることも必要でなければ、またその友愛精神を強調するために教育改革を行うということも、現在の教育制度の万般をながめれば、一にそれだけを取り出して教育の上に打ち込んでいくというような必要をごうまつも認めないのでありますが、少くとも私が申したような意味合い、決して私は過去における極端な国家主義あるいは軍国主義というものとそっくりそのままの祖国愛ということを今お尋ねしているのではないのでありまして、少くともあなたが言われたこの言葉は、憲法改正にまた再軍備の遂行に、国民としてそれに協調できるような一つの精神訓練というものを、教育の上にやろうとしているといったような意味合いで、施政方針の中に述べられておるのではないかと申しておるのであります。逆に言えば、もし今総理が言われたように、そういうものとは無関係だということにおいては、少くともあなたは祖国愛の強調というものが、あるいは文部大臣がしばしは言っておりますように、今日の再軍備等の問題の中では特に考えなくてもいいというふうな結論になると思うのでありますが、その点は、今さきにお話になられた点は町違いはないかどうか、いま一度お尋ねをいたしたいと思います。
  90. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま答弁いたしました通りに、再軍備と関係をもって祖国愛を強調したわけではございません。
  91. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、私は具体的にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、総理は少くとも今日の憲法には反対である、再軍備の必要を認められておるのでありますが、私たちは自衛に名をかりて他国から強制されるがごとき再軍備にはまっこうから反対であります。しかもそのために行わんとする憲法改正にもわれわれは応ずるわけには参らないのであります。従ってわれわれの考えによりますならば、今日国を愛し、また国民を愛する具体的な行動、具体的な考えというものは、この前提をもって平和の精神を貫いている憲法を忠実に実践すると同町に、この憲法をあくまでも守っていく、こういった立場、こういった行動、こういう考え方がわれわれは国を愛する心であり、また祖国愛というものを表現する具体的な考え方であるというふうに考えておりますが、この点をあなたはお認めになるかどうか、お伺いをいたしたい。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自衛のために最小限度の軍備を持つということを必要だと考えております。それは平和条約に通ずる道である。兵力を一つも持たないで平和というものが維持できるかどうかは直ちに返事ができません。(「その通り」)平和を維持するのには自衛のための軍隊が必要な時代だと考えております。それに対する必要なだけの軍備はやはり憲法上明瞭に持つようにできた方がよい、かように考えております。
  93. 辻原弘市

    ○辻原委員 平和がいかなる手段によってもたらされるかは論のあるところでありましょう。われわれは今総理の言われたような方法においては、平和というものは将来維持できないという考え方に立っている。それが今申しましたように、そういった前提をもって私たちが考えた場合においては、愛国心あるいは祖国愛というものの帰するところは、軍備を持たないことを規定しておる憲法を守っていくことが愛国心であるというふうにわれわれは考える。これについて総理はどういうふうにお考えなさるかということを私はお伺いしておるのでありまして、軍備を持たないことが、平和が将来できるとかできないとかという総理の見解をお尋ねしておるのではありません。いま少し私の問いに一つ忠実にお答えを願いたい。
  94. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのお考えはあなたの自由であって、これを妨害する意思はありません。
  95. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、今言ったいかにして日本の国の自衛を考えるか、こういう問題を取り上げました場合に、これに対する国民の愛国心というものは、われわれは、今申しましたように、否定することが愛国心であると考える。総理は明瞭にはお答えになっておりませんが、これを肯定して、総理のお考えを実践することが愛国心である、こういうふうにお考えになっていられるのであるか。その点について承わりたい。私の考えは私の考え、これは総理が御自由でありましょうと申されれば、これはこれ以上お尋ねをいたしません。総理考えられておる平和に対する考え方、それを具体的に実践していくことがあなたは現在において祖国愛とお考えになるのかどうか、この点をいま一度明瞭にお答えをと願いたい。
  96. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたと私とその点について意見が違うというだけでもって、あなたの考え方を非愛国心であるということは決して私は申しません。
  97. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは巧みに総理は逃げておられるのであります。逃げてないとおっしゃるならば、少くとも大胆率直に、かように自分考えるということでありますならば、そのこと自体が私は国を愛するゆえんである、そういったような精神を強調し植つけていきたいのだ、こういうふうに御答弁なさればよろしいと私は思うのであります。というのは一鳩山個人がこの問題についてお考えになっていられるなら私の質問があるいは酷かわかりません。しかし一国の総理として施政の中にそれを強調していく限りその具体的な要請、中身というものは、これは国民の前に明らかにする必要があると思う。私はそうした考え方を持っておる。あなた方はあなた方の考えを持っておられるでしょうといったような無責任なことでは少くとも今日済まされないような状態だと思います。(「何が無責任だ」と呼ぶ者あり)従っていま一度この点に対する総理の御見解を承わっておきたいと思います。
  98. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は先刻申した通り考えます。無抵抗主義でもって平和が守れるということを主張する人がないわけではないのです。そういう人もあるでしょうけれども、その人は非愛国心を持っている人だとは私は言わない、こう言ったのであります。
  99. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、総理はそれぞれの人がそれぞれの考え方を持つ。現在においても大きく平和に対する考え方が分れております。しかし、総理考えられている平和の考え、これに反対の立場をとる者であっても、これは決して非愛国というか、あるいは祖国愛に反する者ではない、こういうふうにおっしゃるのでありますか。
  100. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りです。
  101. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこでお尋ねいたしたいと思うのでありますが、今日日本の教育者は憲法の示す方向、また憲法と軌を一にする教育基本法の精神に立脚をいたしまして、教育万般の中にいわゆる平和精神というものを打ち立てていかなければならぬという具体的な教育を実践しつつあります。このことも、私は今さきの総理のお言葉をもっていたしますならば、少くとも慫慂してしかるべきものがあると思うのでありますが、総理はいかにお考えになるか、またこの点は文部大臣の御所見にも私は触れて参りたいと思いますので、あわせて文相からも御答弁を願いたい。
  102. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現行の憲法に従って学校でもって教育をするというのは、全く当然なことでございます。現在の憲法の解釈通りに子弟を教育するのは適当なことだと思います。
  103. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 総理と同様であります。
  104. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうも今清瀬大臣の御答弁ははっきりしないのでありますが、いま少し具体的に、はっきりおっしゃっていただきたい。
  105. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 あなたのお問いは、今学校で現行憲法の趣旨に従って、平和教育をしておるが、これをどう思うかというのですが、私もそれでいいと思います。われわれはこの憲法改正されるまでは、この憲法を基準として自分の行為を律しようと考えております。それゆえに、憲法を無視して、暴力の行使はいたしません。
  106. 辻原弘市

    ○辻原委員 それではもう少し具体的にお伺いをいたしますが、憲法の精神に立脚した教育をやることは当然であります。そこで教育者が、平和憲法の精神というものが教育本来の使命に完全に合致するものである、そういった意味合いから、この憲法を擁護する憲法擁護運動には参ずる、あるいは教育の上でこの平和憲法というものの精神を強調して、あくまでも憲法を擁護するための教育実践を行う、この点も先ほどの総理の御答弁によりますと、大いに慫慂してしかるべきものがあると私は考えるのでありますが、総理並びに文相の見解はいかがなものであるか、御答弁願いたいと思います。
  107. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 その同じ問いは、臨時国会において、あなたから委員会において受けた問題です。そのときに私のお答えしたことは、教員が教室において現行憲法を守るように教えることはむろんいいのであります。しかしながら、今政治問題として現行憲法改正すべきや、改正に反対すべきやの一つ政治論がある。その場に臨んで憲法改正反対だ、これがすなわち憲法擁護だという意見を出すことは、やはり政治問題に関与することになると考えておるのであります。
  108. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうも文相の答弁は、先ほどの答弁とはだいぶ違っているように私は思うのであります。憲法の精神というものはこれはよろしい、従ってそれを尊重して、これは正しいのだと考える。正しいということが前提になれば、変える必要はないということが、結論として出てくるのは当然であります。そういう意見の開陳になれば、これは教育者としてとってはならない、いわゆる政治的な行動である、こう文相は今述べられたのでありますが、そういった言葉をこれを表現することが、一体どういう意味合いにおいて政治的行動になるのか、具体的におっしゃっていただきたいと思います。
  109. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 辻原さんも御承知通り、今わが国で、憲法改正すべきや、あるいはこのままに維持すべきやは、一つの大きな政治論争でございます。これほど大きな政治論争はございません。その場に臨んで、憲法改正は反対だという運動に参加することは、やはり政治行動であると私は考えておるのです。憲法第九十九条は、現行憲法の効力の存する間はこの効力に従うということであって、憲法改正はすべからずという規則はないのでありますから、適当な理由で憲法改正を主張することは、やはり憲法を尊重しておることなんです。暴力で改正するというのであったら憲法違反であります。また暴力で憲法改正を阻止するのも憲法違反であります。合法的に改正しようという主張は、これは正しい主張でございます。
  110. 辻原弘市

    ○辻原委員 だれも暴力によって改正をしたり、あるいは改正に反対したりするというようなことは、これは今日考えている者はおそらくないであろうと思うし、そんなことはだれも言いはしないのであります。ただ私はこれは重要な点でありますので、文相にお伺いしておりますのは、あなたも今言われましたように、いろいろこれに対する意見があるでありましょう。しかしながらそれに対して賛成するも反対するも、これは一つ意見であります。従って教育者なりとはいえ、やはりそれに対して国民の立場における意見の開陳というものは、これは保障されなければ、どうして民主国家の一成員として教育をやっていくことができるでありましょうか。それを口にすることがすでに政治行動であるというふうな判定は、これは結局言論統制といいますか、少くとも自由にそれらに対して国民の世論を集めるという、そういった民主的な行き方に対しては、逆行しているではありませんか。この点については文相はどうでありますか。
  111. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 学校の教員であっても、教育委員であっても、意見の開陳は悪いと言ったことは私はありません。しかしながら憲法の擁護運動に参加し、またはわれわれの憲法改正運動に参加することが、やはり政治行動になると言ったので、論文などをお書きになるのは自由でございます。
  112. 辻原弘市

    ○辻原委員 政治行動になるというのでありますが、政治行動になれば、一体どういうことをあなたはしようというのであるか、政治行動になれば、それはどうなるというのでありますか。
  113. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 あなたは学校において教育に参加しておる者ということでお問いになったと了解したのであります。学校教員は御承知通り政治行動をなすことは禁じられております。あなた方の始終おっしゃる教育二法、人事院規則がございます。
  114. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは私はおかしなことを承わったものだと考えます。これは最も天下に悪法の声も高い二法律が厳存していることは事実でありますが、少くとも今日政治行動という範疇に入れられますものは、これはやはり特定の政党ないしは内閣の施策に対して反対、賛成等の具体的行動を意味するのであって、今日憲法に対する意見は、国民あらゆる階層にわたっていろいろな意見を持っておると思う。その憲法に対して意見を述べ、あるいはその意見に従って行動することが、二法律のどこにひっかかるというのでありますか。いかなる法規においてこれは取り締られるというのでありますか。この点を私は伺いたい。
  115. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 同じことを繰り返すことになりますが、今日本における大きな政党は、あなたの社会党とわれわれの自由民主党でございます。あなたの方では憲法改正反対という大きな綱領を持っておられる。われわれは憲法改正しようという主張を持ち、現に総理大臣国会においてもその演説をせられておる。日本政治問題の大きな一つであります。これに対して、言論の自由の範囲内において論文を発表されることはよろしいけれども、学校教員がその一方の運動に参加するということは、やはり人事院の発表しました解釈によっても政治行動と見なければならぬ、こう私は思うのであります。
  116. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣は人事院の発表した見解云々ということをおっしゃられます。私は一人事院が発表した見解等によって、こういう重大な問題が律せられるなどということは、これはあり得ないと思う。そこでもう少し、大臣が今この二法律に関係して人事院云々を言われておりますから、一体その人事院の発表した規則のどこにそれが該当するか、私はこれをおっしゃっていただきたいと思います。
  117. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そう書いておるはずでございます。ごらん下さい。
  118. 辻原弘市

    ○辻原委員 ありません、そういうものは……。
  119. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そこにあなたのお持ちになっておりますのは十四の七ですか。
  120. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は持っておりません。具体的におっしゃっていただきたい。
  121. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 その五項、六項もごらん下さい。特定の政党の主張しておることを支持するための行為を言うておるのであります。
  122. 辻原弘市

    ○辻原委員 今例証にあげられましたのは人事院規則であろうと思いますけれども、少くともその条文にかかっておる一つ政治行動というものは、これは特定の政党が行動を起している具体的な事実について、その中に具体的な行動で参加していき、しかもそれがはっきり一つ政治目的を以ってその行動を行うという場合に限られておると思う。一般的な政党がかく主張する、その主張とたまたま同一であったというような行動まで、それをその特定政党につながる政治行動とは法律は規定していないと私は考える。これはここで論争しておりましても時間がかかると思うけれども、しかしこの点は重要な事項でありますので、この場合、法制局長官の見解も私はあわせて伺っておきたいと思います。
  123. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 時間がかかるぐらいはかまいませんが、十分に論じて下さい。今日わが国において、憲法改正すべしということを論じておるのはわが党でございます、改正すべからずということを論じておられるのはあなた方であります。これを単純の意見として発表さるることは、それは妨げないのです。よろしゅうございますか、単純の意見として発表さるることは、われわれは非難をしておらぬのです。ただその行動を助け、これに参加することが政治行動だと言っておるのです。私の言うことは言葉自身でわかっておるでしょう。政治行動に参加することが政治行動だ、これ以上どうも言い方がありませんではありませんか。
  124. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうも特定政党云々をやかましく言われておりまして、憲法改正に反対をするのは社会党だけであって、賛成をするのはあなた方自民党だけだと言われる。そんなことはないのです。そんなことをいえば、今日共産党あるいは労農党の諸君も怒るでありましょう。これはいろいろな他の政党の中でも、憲法に対するおのずからなる考え方を持っておるのです。憲法改正反対は何も社会党だけのお家芸ではありません。そうしますとここに特定政党の主張というのは、何ら根拠がないではありませんか。もう一つは、あなたはその行動に支援を与えると言っておるのですが、私の質問は、学校教育の中において憲法は守るべきものだ、だからこの平和憲法考え方は正しいのだ、こういうような一つ考え方を教育の中に実践していくということは、あなたは政治行動だというふうに言われるかということを、私は質問の前提としてただしたいのです。
  125. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 同じことを申し上げて恐縮でありますが、教員は学校の教えとして憲法を守るべしと説明することは、少しも妨げるものではありません。私も教員であったらそうしようと思っておるのです。ただしかしながらこの憲法のできた由来について述べ、またこの憲法改正すべきかということは、これは憲法九十九条の禁ずるところではございません。今特定政党とおっしゃるけれども、届け出た小さい政党はあるかもしれませんが、日本における大政党は、わが党とあなたの党派です。この党派が一は憲法改正を主張し、一はこれに反対しておることも顕著な事実なんです。逆に教員がわれわれの演説会へ出てきて、憲法改正の演説をすると言ったら、こっちは断わります。だからあなたの党にしても、憲法改正反対の運動を教員にしてもらうという必要はなかろうと思う。同じことでございます。
  126. 辻原弘市

    ○辻原委員 今清瀬大臣は私の質問にお答えになりましたが、そういうことを私は言っておるのじゃございません。そういうことをお尋ねしたのじゃございません。憲法改正に対する反対の意見を開陳し、憲法を擁護するというここは、これは改正に反対でございます。そういう意味合いにおける教育実践並びに教員がそうした擁護の運動に参加すること、それらを含めて、あなたは政治行動であって、教員の立場においては二法律の対象になる、こういうふうに言われたのでありますが、その根拠は私には合点がいかない。だから今あなたの言われる演説会云々というようなことは、何ら私に対する回答にはなっておりません。しかしこれ以上押し問答しても、この場におきましては時間が、あなたはかまいませんけれども、私の方が差しつかえますので、これはこの程度にいたしておきたい。  次にお伺いをいたしたい点は、先ほど申し上げましたように、総理はこの際に一大教育改革をやりたい、こういうふうに言われておるのであります。従いまして、一大教育改革と銘を打たれる限りにおいては過去における十年間の民主教育というものが、かくかくの点に具体的に欠陥があるという、こういうような反省に基いてやろうとしているものだろうと私は考えますので、この点総理は、過去における教育のいかなる点に具体的に欠陥があったかを御指摘願いたい。あわせてあなたが進めようとなさっていられる教育改革の構想をお示し願いたい。
  127. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は占領治下において歴史教育を廃止したり、地理の教育を廃止したりしたことは間違いだ、そういうことは直した方がいい、こういうように考えております。
  128. 辻原弘市

    ○辻原委員 その御答弁はこの間の松浦委員答弁にもありましたが、地理や歴史の教育がないから教育改革を進めたい、それだけでしょうか。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 主としてそういうような事実をとらえて言ったのであります。
  130. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、あなたの御構想によれば、そのないものをどういう形に復活させようとしておるのか、この点の構想がおありになると思いますので承わりたいと思います。
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの答弁によって御了解願います。
  132. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは私総理に申し上げておきますが、あなたは簡単に地理、歴史の教育がない、こういうことを言われておりますが、私はそうは考えないし、おそらく日本の教育者もそうは考えていないだろうと思う。地理、歴史の教育はもちろん従来の形はなくなったかもわからないけれども、それはりっぱに今日の社会科なりその他総合的な学科の中に組み入れられてある。従ってその部分だけをとらえて教育改革をやるなどということは、私はきわめて不見識だと思う。一国の総理ともあろう者は、そういう部分だけをとらえるのでなく、国家百年の大計を立てていかなければならぬ。また容易に変革してはならない教育制度を、そういった単純な意味で改革を行うなどということは、私は恥かしいと思う。総理は一体どういうふうにお考えですか。
  133. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は占領治下において幾多の、日本で欲しないことをアメリカから強要をせられたという感じがありますので、ただいま申しましたような二つの事実によって、教育の改正もいたしたいと主張したのであります。
  134. 辻原弘市

    ○辻原委員 文部大臣はこれについてどういうような構想で進められようとしておるのか。
  135. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今総理の仰せられた通りでございますが、この前の臨時国会でも申し上げた通り、この内閣では臨時教育制度審議会というものを設けて、教育に関する問題を掘り下げて研究していただこうと思っておるのであります。すべての制度機構よりも前に取り上げらるべきものは、今総理のおっしゃった根本であります。ことに道徳上の基準でございます。それから学校の制度でございます。それから国が教育に対してどれだけの責任、従ってどれだけの監督権を持つか、こういうふうな根本に関することを御研究願いたいと思っておるのでございます。これをもって全貌を御了解願いたいと思います。
  136. 辻原弘市

    ○辻原委員 やる形だけはわかりましたが、あとのどういうことをそこでやろうとしておるかについては、全貌をわかってもらいたいと申されましたけれども、私はまだわかりません。ただ臨時教育制度審議会というものは、すでに法案が国会に出されておりまするが、これを設けてやる。そこで私が非常に不思議に思うことは、現在教育制度についての権威ある機関が設けられておる。いわゆる中央教育審議会というものが大臣の諮問機関として存在しておるのであります。この中央教育審議会をさておいて、新しく総理府に臨時審議会を設けられたということについては、機構改革がとかく強く叫ばれておる折柄、まさしく屋上屋を重ねる一つのやり方ではないか。何がゆえにこれを総理府に持っていかなければならなかったか。中教審においてはそういうことはやれないのか、やる力がないのか、この辺のところはきわめてあいまいであります。その点についての御見解を承わりたい。
  137. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 いずれそのことはこの法案審議の際になお具体的に申し上げますが、現在の中央教育審議会は、今の教育制度を作りました教育刷新委員会の後身であります。それゆえに、大体のところは現行の制度のワク内において文部大臣の諮問に応じておるのであります。われわれ現行の制度それ自身の根本に改革を要する点ありとして、そのワクを乗り越えて内閣に教育制度審議会を置いて、あなたが始終引用されます教育基本法を一ぺんにらみ直す必要があるのじゃないか。学校教育法はむろんのこと、日本の教育制度根本を一ぺん考え直してもらいたい、かようなことでございます。
  138. 辻原弘市

    ○辻原委員 大体この審議会に付託する外貌はわかりましたけれども、具体的な問題として、どういう法律あるいはどういう制度を、どういった形に改めていくかという、そういった点についての文相の構想というものがすでにおありになるだろうと思います。伝え聞くところによりますと、何か教育政策の中で、あるいはこれを一般政策であるとか、このものは緊急政策であるとか、そういった種類分けをしておるように聞いておるのでありますが、一体その緊急政策あるいは一般政策というものがどういうものか、またその中でどれをこの新しく作る審議会の中に持ち込もうとなさっておるのか、この点を具体的にお示し願いたい。
  139. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 教育のことは、道徳のこととともに、この内閣、従って内閣を作りました政党、自由民主党の重要な政策であります。道徳と教育は、立党の際に緊急政策として抜き出しております。それは、教科書の問題を調べてみたところが非常に緊急である。今までの教科書に誤まりが非常に多いのです。これは一日もゆるがせにすべからざることと思って、教科書については後に審議会で調べはいたしますけれども、これを一つ緊急政策としたい。それから教育委員会のことは、今年の秋に選挙がありますから、選挙してから後四年も改革ができぬではこれも困るので、教育委員会のことを緊急政策としたのであります。以上のようなわけで、緊急政策も一般政策も意味において違うことはない、いずれも国家の非常に根本的な重要なことであります。
  140. 辻原弘市

    ○辻原委員 承わりますと、緊急政策というものは教科書の制度、教育委員会制度に限定せられておるようでありますが、私は少くとも教科書制度かどというものは、これは申し上げるまでもなく、かつての日本の教科書の変遷を見ましても、国家の動向にきわめて重大な影響を与える。これは国民教育の重要部分であります。従ってそれについてはどうするかということは、これはじっくり腰を落ちつけて検討をしなければならぬ。ところが今承わりますと、何か教科書に誤まりがあるから、これを直ちに是正してやる必要があるのだ、こういうことを言われておる。しかし、少くともあなたが今検討なさっておられることは、新しい教科書の制度に対してこれを法律化して、従来の教科書制度というものを改めようとなさる構想を持っていらっしゃるように聞いておるのでありますが、そこまで教科書の問題をいじっていくのに、あえてこれが緊急政策であるとはどうも受け取りがたいのであります。そういたしますと、さらに臨時教育制度審議会においては、ここでも検討するがと言われたのですが、国会において法律を出して、それが決定を見た後においても、この教科書制度についてさらに新しい根本的な構想を取りまとめよう、こういうような二段の構えでありますか、この点を明白にいたしてもらいたい。教育委員会法についても同様であります。確かにこの秋選挙が予定されておりますけれども、しかしながら地方教育委員会等に例をとってみますならば、最近の町村合併によって相当数の選挙がすでに終っておる。またかりに選挙がありましょうとも、この制度自体は今日の地方教育における根本であります、中核であります。それをその選挙に間に合せなければならぬというそのことで、きわめて短かいわずか二、三ヵ月の間にこれをやり上げてしまうということは、私はこれはいささか教育の制度というものを軽んじている証拠ではあるまいか、こういうふうに考えるのですが、その点は大臣どうですか。
  141. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 物事は限度があるのです。今の教科書がどういうものか一ぺんお見せしましょうか。ポツダム宣言はソ連とイギリスとアメリカとフランスが宣言していると、ある教科書はポツダム宣言の国の中にフランスが入っておる、楠木正成は大和の吉野で死んだと、正成が湊川で死んだことが間違って出ておる、こんな教科書があるのではすみやかに教科書制度は直さなければならぬとわれわれは痛切に感じた。それから教育委員会のことでも、一部はそういうことがありましたが、この十月になりますと日本の大部分の教育委員会が改選になる。町村が合併しましたが、それでも今四千九百残っております。そのうちで四千ほどが改選になったならば、あとは四年間手がつけられぬ。選挙した委員会を中途で廃止することはできやしません。それゆえにこれは緊急だと思うのです。緊急であるかないかは限度の問題でありますが、私の認識とあなたの認識と、緊急の度合いが幾らか違うかもしれぬけれども、私はこれは緊急なるものと思ったのです。
  142. 辻原弘市

    ○辻原委員 確かに認識が違います。教科書のどの部分に誤まりがあったかどうかは知りませんけれども、しかしながら今日の文部省といえども、少くとも史実に関してあるいは記載の内容に関しては、これは大臣が認定をせられたものでありますから、私は単純な誤まりを犯しているとは考えない。しかしかりに誤まりがあったといたしましても、急に急いで制度を直したからといって、そういった細部にわたる誤まりというものは、これは人間のやることでありますから完全に是正できると思えないのであります。そういうところに教科書の重要な問題があるのではございません。どういうふうな形の検定を行なっているか、あるいは採択をどうしようとするか、こういう点についての問題が教科書の中心点であります。従ってそれには相当研究をしてかからなければ、単純に今政府がやろうとしているような、教育委員会を作っておいて、またそれを廃止してというような朝令暮改では、これは国民の教育は混迷をするのであります。そういう意味合いから、私の認識は緊急政策などといって、しかもあとにはあなた方のお考えで、少くとも形においては民主的な諮問機関というものを作って検討しようということが、すでに今日予定されておるのであります。その予定されておるものを素通りして、そういった民主的な手続を何ら経ないでやっちまおうという考え方は、幾ら清瀬大臣が年を召してお先が短かいからといっても、あまりにも私は積極的すぎると思うのであります。そういう点から私は申し上げておりますので、この点については御再考あってしかるべきじゃないかと思うのであります。特に申し上げておきますが、教育委員会法の改正、教科書の問題は、一応中央教育審議会に諮問をされまして、その答申もすでに旧臘十二月の五日に提出されております。ところが、重要な委員会制度については、いまだそういった諮問機関なり、あるいは一般の世論を聴取するというような手続を何ら経ていないではありませんか。ただ一党の独善的な考え方によって事を決しようとしている、ないしは文部省の一部官僚の手によって、この教育制度を改めていこう、こういうような考え方に終始しているではありませんか。その点を私は申し上げるのであります。いかがでありますか。
  143. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 教科書というものは、白紙の子供に読ませるのです。一点、一画が違いましても、一生の大きな結果を生ずるのであります。私が今あげた二つ三つの例をあなたはどうお考えになりますか。そんな間違ったことを教えていいでありましょうか。それゆえに、われわれは一日も、一刻も早く正しい教科書を作りたい、かように考えております。  教育委員会のことも重要であります。従って、われわれは独断でこれをきめようというのじゃなく、十分念に念を入れて、党内でも調査いたしておりますが、さらにこの国会にすみやかに出しまして、あなた方の御意見もよく伺って、十分に練ったものを法律にするのでございます。これよりほかにいたし方がない、これが民主政治じゃございませんか。
  144. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の問いに忠実に答えていただきたい。なぜ中央教育審議会がありながら、それに付託しなかったかをお尋ねしておる。国会においてわれわれが論議することは当然であります。それまでの手続において、少くともより民主的に行いたいという趣旨のもとに教育審議会というものが今日あるのであります。またあなた方が、今臨時教育制度審議会を作るという趣旨もそこにあると思う。国会において論議することが、すべての論議を尽したということになれば、そういう諮問機関は要らぬじゃありませんか。そういう点を言っておる。大臣は教育委員会に関する限りは、そういった諮問機関意見を徴する必要がない、こういうふうな断定をされたのかどうか、そういう点を私は承わりたい。
  145. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 それが緊急政策というものであります。今から中央教育審議会にゆるゆるかけておるひまがないのでございまして、この国会でこれを通さなければ、大きな結果を生じます。ただ政府がかつて占領法規の再検討のために委員会を作っております。そこには明らかに教育委員会に関して諮問され、答申されたものがございます。
  146. 辻原弘市

    ○辻原委員 多くを申し上げる必要はないかと思いまするが、今からかけよと私は申しておりません。中央教育審議会の発足いたしましたのは、これは少くとも今から二、三年前であります。教科書制度につきましても、世論がやかましくなれば、すぐさまこの問題についてはかけておるのではありませんか。そういう意味合いにおいて、教育委員会制度も、地教委が昭和二十七年にできてから以来の問題であります。十分かけられる余裕がありながら、これをそこにかけることをしなかったのは何ゆえか、こういうように申しておるのであります。お考え誤まりないようにしていただきたい。
  147. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今からという言葉にもつれてあなたは御議論なさいますが、わが党ができましたのは十一月でございますので、それからかけてもとても間に合わないのです。しかしながら占領法規を再検討するという諮問機関がありまして、それに明らかに答えが出ておりますから、これを採用してしかるべしとわれわれは考えたのであります。
  148. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあその議論はやめにいたしましょう。占領法規を再検討する機関意見をあなたは尊重されたと言うが、事実されているか、されていないかは漸次明らかにしていただきたいと思いますが、それに先だちまして、あなたが教育基本法の問題を臨時教育制度審議会に持ち込んで、そこで検討したいということは、先日の松浦委員に対する御答弁でも明らかになっておりますが、先ほど私が総理に対して御質問申し上げましたいわゆる祖国愛の教育、これが欠けておるから、この精神を教育基本法の中に注入するために基本法の改正を行いたい、こういう趣旨であったかと思うのであります。その趣旨のもとにこの審議会にかけられて改正をおやりになるつもりであるのかどうか、この点を承わっておきたい。     〔三浦委員長退席、重政委員長代理着席〕
  149. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 大体私が観察しますと、教育基本法に書いてあることそれ自身に悪いことはあまりないのです。ただそれに漏れておることか非常にあるのです。長くなって失礼と思いますが、たとえば「真理と正義を愛し」という文字が使ってあるけれども、国家を愛しということはない。それから「個人の価値をたっとび」ということはありますが、自己の近親、父母を尊ぶということはないのでございます。かようにわれわれの日本の道徳と考えるところに手が届いておらぬことは事実であります。それゆえに、国内の長老耆宿を煩わして教育制度審議会を作る以上は、この根本一つ触れてみたい。これを作るときの記事を読みましたが、教育勅語にかわるものだと言っておるのです。それゆえに、各種の徳目もこれで書く必要があったのであります。ちょうど占領最中でございます。しかも占領の前期でございます。その当時の委員の方も国家のことは考えられなかったのじゃあるまいと思います。りっぱな人が委員になられた。しかしながら進駐軍に遠慮して、日本の国に対する愛国心ということがすっかり欠けておるのです。これをもう一ぺん考え直す必要があるじゃございませんか。あなた方の党派におかれてもどうか一つ御研究を煩わしたいと思います。
  150. 辻原弘市

    ○辻原委員 一つは国を愛せよということがない、それからいま一つは父母に孝にということがない、それで改正をいたさなければならぬ。しかもこの教育基本法が作られた当時、そういう点を忘れたのだろうとおっしゃっておるのでありますが、私の見解はいささか違うのであります。この基本法にいうところの個人の完成あるいは真理を愛する、そういった教育の徹底において、おのずからそこに生まれるものは、おおらかな国を愛するという気持であり、あるいは人間の情として自然に生まれる父母に対する孝行、いわゆる友愛の気持である、こういうことを今日の教育は、一つの教育実践の過程に自然に生まれてくるものが、そういった万般の道徳であるという、ふうに教育の理念がうたっておるのであります。そういうことを、のっけからこうしなければならぬ、ああしなければならぬというような教育は、画一教育に堕するということで、これは排除したのであります。しかしこれは論争になりますから、そのことはそれだけにとどめておきましょう。しかしながら、われわれの把握においては、そういったことを事新しくこの基本法の中に入れるということは、そういうような一つの強制的な道徳教育というものが中核になった日本国民教育が行われる一つの契機を開くものだという考え方を持つのであります。この点についてはそれ以上申し上げませんが、ただここで指摘をいたしておきたいことは、この教育基本法というものは、大臣も御承知のように、他の法律とは違います。憲法と同じようにこれには前文が付されている。しかもその前文の精神、またこの教育基本法を一貫しておる十数ヵ条の条文というものは、全く憲法の平和精神とこれは同じであると申して過言ではないのであります。しかもこれはその名のごとく、教育の根本を示しておるものであります。従ってこれを改正しようということは、ありきたりの法律を改正するといったような、そういう程度のものではございません。これは教育に対する憲法であることは、あなたが所管している文部省がかつて公式に出されたその声明の中にも、それを明言しているのであります。これは教育の憲法である。従ってこれを改正しようということは、これは改正にあらずして、私は教育の一大革命であると考える。この点一体どういうふうにあなたはお考えになられているか。
  151. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私は現行憲法の平和主義も、これを受けた教育基本法の平和主義も賛成でございます。それゆえに、この教育基本法に書いてあることに悪いことはないと先刻私は申し上げておるのです。しかしながら、これには、まだ日本の教育基本法としては足らぬところがありはせぬかということを申し上げておる。足らなければつけ加える方がいいんじゃございませんか。もっとも、私一人でそう言うんじゃございませんで、今度は審議会を開きまして、あなた方にもお入り願いまするが、国内の大域を呼んで、どうだろうということを審議するのでございます。それゆえに、ここであなたが腹を立てて私を面罵されるほどのこともないのではありますまいかと思うのです。
  152. 辻原弘市

    ○辻原委員 清瀬大臣初め政府の閣僚の方々が、しばしば例に引用される自由主義諸国家の中のアメリカにおいてすら、過般のイギリスとの会談における共同宣言の中に、私は非常にその言葉を実は味わって読んだのでありまするが、国というものは、これは個人に優先して存在するものではない。あくまでも個人が中心であって、個人のために国家が存するのだということをあの宣言の中に強調しております。その次の項は、これは私は別に感心も何もいたしませんが、その言葉に関する限りは、私は非常に自由主義の、あるいは民主主義の原理としてこれを受け取ったのであります。従って私は自由主義諸国家における教育の原理というものも、これはだれが考えてもまずそこに基本を置くということが中心。ところがあなたが今改正されようとする基本法の中に、国家を愛せよというような抽象的な概念というものを、教育目的の中に入れたとするならば、これは教育目的が、おそらく私は個人というものと国家というものが、相対的な形において教育目的というものが現われてくるだろう、こういう点において、私は民主主義における教育の原理、体系というものをくずしていくことは間違いない事実であるということを、予言をいたしたい。この点についてどうでありますか。
  153. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 この教育基本法が国というものを全く見ないのではないのです。やはり見ているのです。たとえばここに、教育の目的としては、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民を育成することを期するとあって、国民という言葉が出ているのでありますから、この教育基本法はこの点においては正しいのです。しかしわが日本の教育としては、単に国というものを認めているだけじゃ私は足らぬと思うのです。やはりこの国を愛する、この国の伝統を尊重する。また日本の国は憲法によって家族制度はあの通りになりましたけれども、これは私だけじゃないですが、子供がお父さん、お母さんを尊敬するということは、私はいいことだと思う、悪いこととは思わないのです。それが今ここに現われておりませんから、ここに書いてあることは一つも悪いことはない、基本法はよろしいが、足らぬところがあると私は言っているのです。あなたの話とうまく出会わないのです。
  154. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣のお考えとして承わることは承わりましたが、確かに出会いませんので、それは一応その程度にしておきます。  次に先ほど触れました教育委員会改正でありますが、あくまでも緊急政策だというので、短かい期間の間にこれをまとめて国会に提出される、こういうことであります。そこでそうなりますれば、すでにもう成案を持っておられると思いますので、その委員会改正に対する主たる改正要点はどこにあるのかを承わりたい。
  155. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 あの通り諮問機関にもかけずにやっておりますから、非常に慎重を期しまして、今日ただいまに至るまで研究いたしております。なるべく早い時期に、あるいは両三日のうちにでも成案を得て皆さんのお目にかけられると思いますから、本日はこの教育委員会の機構構成だけについては留保さしていただきたいのであります。
  156. 辻原弘市

    ○辻原委員 まだ成案を見ていないということでありますが、もちろん最終的な決定についてはあるいはそうかもしれません。しかしすでに去る七日でありましたか、自民党政調部会と相談の上だというので、その大綱が新聞紙上にも発表されております。またつい四、五日前にも文相が政調会に臨んでその構想を説明されたということであります。大体の要点というものは明らかにされております。そこで何も私は最終的にまとまったものを示せと言うのではありません。今大臣が少くとも新聞に発表し、あるいは政調会に行って説明したというその文相の構想をここに発表していただきたいと思います。
  157. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 委員会のことは私よりもまた党よりも発表したことはないのでございます。自然漏れて新聞に活字となるのでありまするが、非常に大切なことでございますから、数名の委員とか幹部とかいうことでなくして、十分に党内に徹底せしめて二百九十前後の代議士によく見てもらいまして、あやまちのないところを申し上げますから、もうしばらくお許しを願いたいと思います。
  158. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは私の方から一つお聞きいたしたいと思います。まずこの問題の経過を考えてみますと、結局話は相当古くさかのぼって昭和二十七年の十二国会当時、法律がそのままであると地方教育委員会というものが設置されるというので、文部省もそれに対して検討の期間をつけるために、一ヵ年間施行を延期するその法律を参議院に提出した。ところが当時この文部省の考えにも、またその文部省の考えを支持する世論にも反対をいたしまして、当時の自由党の諸君が強引にこの一年延期の法律案を参議院において否決した、そのまま解散となって生れてきたのが地方教育委員会である。従って私たちは、この地方教育委員会というものが今日問題となって、それが契機で委員会制度の問題というものが起っておる、こういうふうに把握をしておるのであります。従ってその経過から見れば、今日この問題を惹起せしめた原因というものは当時の自由党の諸君にある、こういうふうに断じて差しつかえないと思うのであります。その地教委問題が端を発して委員会制度の検討ということになったということであるなれば、これは私は地教委それ自体の、当時から問題になっておった設置の規模とか、権限の内容とか、あるいは運営とかいった問題に限定をするなれば、これは私はあなたが言われたように、当時の占領政策を是正するという委員会等の意見も十分参酌してしかるべきものであろうと思うが、しかし今日私が知るところにおいては、あなたがお考えになっている、あるいは与党が考えているところのこの委員会制度に対する改正というものは、はるかにその範囲を越えているではありませんか。と申すことは、何ら従来これに対して大きな世論というものが上っていなかった都道府県教育委員会にまでこれを及ぼし、また委員会制度根本問題にその検討を発展さしているということ、ここにおいて私は重大な問題であるということを申しているのであります。どうでありますか、その改正の範囲はそこまで及んでいるではありませんか。一体公選制はどういうふうになさろうというのか、この点について承わりたい。
  159. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 これが昭和二十七年以来の問題であるということは、あなたのおっしゃる通りでございます。ただこの委員会をどの程度改正するか、いかなる機構にするかは、先刻申しました通り、しばらく時間をおかし願いたいのであります。長くはとりません。数日の間であります。
  160. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間をかせというのでありますが、ここは少くとも国会における予算を審議する重要な委員会であります。世上、すでに発表したか発表しないかは例問題として、大臣の構想あるいは与党の構想が明らかとたっているこの問題について、お答えがないということは、私はけしからぬと思う。そこでいま一度お尋ねをいたしまするが、漏れ聞くところによるなれば、委員会制度根本である公選をこの機会に廃止をして、任命制に持っていかれるという構想をあなたは示したといわれる。事案であるかどうか、またこの公選を改めたという文相としての見解、理由、これを承わりたい。
  161. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私はこの国会予算委員会を最も尊重するがゆえに、最後の確定しない、中間のものをここで申し上げることは、かえってよくなかろうと思います。先刻申し上げました通り、数日の御猶予を願います。
  162. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういうことは私は許されないと思います。その過程を私は聞いておるのである。先ほどからしばしば申しているように、結論をお尋ねしているのじゃない。すでに示したといわれている。またその大綱が成ったといわれている。法律案として成るか成らないかは別問題として、あなたの構想はまとまったという。だからそれについて私はお尋ねをいたしておる。言えないということはあり得ないと思う。
  163. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 党内の審議の過程でございます。あなたの御党派におかれても、やはり政務の審査のある段階において、一の意見が出、また他の意見が出ることはあり得ると思います。党の内部で審議過程のことを外部に発表すべきものでなかろう、かように存じます。
  164. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は政党としての自民党の態度をお尋ねしているんじゃない。文部大臣として文部省において取りまとめたその見解を述べろ、こういうのです。
  165. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今の政治は昔の官僚政治と違いますので、文部省できめたことを言えとおっしゃっても、それを言うことは適当でないと思います。私は党議がはっきりきまりましたら、これを事務的に成案にして皆さんにお目にかけよう、こう思っております。必ずお目にかけます。
  166. 辻原弘市

    ○辻原委員 自分が屈する政党意見がまとまらないうちは発表できないというこの言葉、私はよく今後承わっておきたいと思います。そういうことが鳩山内閣の方針であるならば、私はそれはやむを得ない。全然きまらないうちにいずれの機関にも発表しないということがここでお約束できるならば、それはよろしい。しかし従来のやり方を見ておりますと、必ずしもそうではない。ただ都合の悪いことだけそういうふうな逃げ口上を張られることは、はなはだもってこれは迷惑であります。その点をお答えにならぬということならば、私はこれは留保いたして後日文部大臣にその点を明らかにいたしてもらうつもりでありますが、ただ申し上げておきたいことは、若干文部大臣の言われることも私はわからぬでもありません。それは先ほどから私が経過を申し上げましたように、党内にこれについてのいろいろごたごたというか、意見の対立が起っている。そこで文部大臣の構想があったが、その党内にもまた意見がわかれて、やはり多少のそれに対する責任観念をお持ちなさっておられる方々が、何といっても当時みなが反対するものを押し切ってこの地方教育委員会というものを無理やり作って、無理やり生んだのでありますから、それを生んでおいて今さら知らぬと言えないので、やはり何とか格好をつけなければならぬ、形だけでも残してくれ、そういう声が党内にもいまだに残っているがために、その意見の調整ができないで延び延びになっているということを私は聞いております。従ってその間の事情の一部はわかるから、大臣の話しにくいということについても、その点に関する限りは私は了といたしましょう。  次に、これは先ほど大臣も触れられましたが、あまり時間がありませんので詳しくお伺いできませんが、教科書の問題であります。これはすでに中教審の答申も出て、文部省においても相当検討されてまとまっているはずだと思いますが、これもまだ結論に達せないので申し述べることができないのでありますか、その点を承わりたいと思います。
  167. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 これはほぼ結論に到達いたしております。簡単に申し上げますれば、教科書はやはり検定制度にいたします。検定するには、専任の、名前の知れた検定官を任命いたします。数は四十五名ほどで、この予算にその給料等は計上しております。検定したものは、やはり各府県または府県を区切った機関において採択の手続をいたします。それからなるべく教科書は安く製本するように指導をいたしまして配給するのでございます。大体そういう方向できめておるので、このことは地方教育審議会にかけて成案を得て、成案は前回お手元に差し上げましたが、大体はあの線でいくつもりでございます。     〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  168. 辻原弘市

    ○辻原委員 大体の構想はわかりました。地方教育審議会の答申の線に沿ってと言われておるのでありますが、その中で私が非常に疑問を持つ点が、今のお話でありますと二つあります。一つは、答申にあった検定という制度を堅持すると言われておるのであります。ところが予算に盛られている四十五名ですか、この検定調査員、これをふやして、そうしていわゆる検定に対する事務を強化されるということ、これは一面非常にいいように考えられがちでありますけれども、悪くすると検定そのものが、俗にいう、いわゆる官僚の手において行われ、事実上名は検定であっても、生まれてくるものはその官僚のパイプから吐き出される国定に近いものになるのではないかというような疑点が一つであります。もちろん理由はそれだけではありません。これは御参考に大臣に申し上げて御見解を承わっておきますが、御承知のように教科書の前提となる指導要領というものが、今文部大臣の手で作られている。検定は、民主的な審議会というものが設けられていて、その審議会は、その指導要領を中心にして定められた検定基準というもので行われている。そういうふうにこの脈絡を考えていきますると、幾ら検定の審議会というものを民主的にやっても、作られる根本であるこの指導要領が、官僚の手で、しかもその官僚を動かしている政府与党の手で行われるということになれば、教科書の最も大事な部分である内容というものは、そこで規制することができるということではありませんか。この点は私はいずれの党が与党になろうが、やはり同じことだと思う。従ってこういうような仕組み自体にもう少しあなたはなぜメスを入れなかったか。あなた方が絶えず主張されるように、いわゆる教科書というものの生命、性格というものは中立でなければならぬ。われわれもこれに対しては同感であります。中立を保持するということは、内容における問題であります。そうするならば、その検定基準の前提になるべきいわゆる指導要領といったようなものを、これを少くとも民主的な形において編さんするということでなければ、検定本来の使命を達成することはできないと考える。こういうことを私は少くともあなた方の在来の御主張から、今度の教科書の改正の構想の中に十分持ち込まれるであろうと思ったのでありまするが、今お聞きいたしてみますると、単に文部省の権限を強化することにとどまつておる。こういうようなことでは、中教審が答申している、あくまでも教科書の内容の、いわゆる発行の自由というものを国民に保障する、そうして一方に片寄らない教科書というものを、これは百年でも二百年でも続けていけるような制度にしていくという趣旨とは大いに隔たりがあります。大臣の御見解はいかがでございますか。
  169. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 官僚的の指導要領ができないように努めます。検定の方法も要するに運用にあるのでありますから、あなた方のお知恵も拝借して、りっぱなる教科書ができるように工夫したいと思っております。
  170. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう二点だけ教科書について指摘をいたしておきます。今の御構想によりますと、採択については、都道府県を範囲としていわゆる限定採択ということをやろうとしております。御承知になっておられるように、相当広い範囲に限って限定をして、一つ機関でもって採択をやる場合においては、往々にしてそこにむずかしい問題が起るのであります。これは過去において明治三十五年でありましたか、史実にも残っている有名な疑獄事件がそういう過程から生まれてきているということを考えてみれば、こういうような相当広大な範囲において、一つ機関において採択をやらしていこうという考え方については、危険きわまりない考え方である。しかも教科書というものは、御承知のように現場の教員が使う。その使う者が自分意思自分考えというものを十分通した上でなければ、そういうことはあり得ない。従って原則としては、かりに採択委員会を設けるにしても、それはふだんの教育者の研究の成果というものが順次積み上ってきた形における採択あるいは採択委員会というものでなければ何ら意義がない。今大臣考えられている構想によれば、私はおそらくその間に脈絡はないと思う。だからそういう懸念をどうして防止していくかという対策がその間になければならぬと思うが、この点については一体どうなのか。  それからいま一つお伺いをしておきたい。これは大蔵大臣にも関係することでありますが、値段を下げるというその具体的な対策は、教科書の根本問題とは別個にして行われ得ることであります。現に今までそれをやらなかったということははなはだしき怠慢である。郵送料、運賃の引き下げ、特別な保護策あるいは教科書に対する融資、こういった点については十分現在においても考えられ得るはずなんであります。その点について引き下げ対策の中に入っているのかどうか、この点もあわせて伺っておきたいと思います。
  171. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 先刻簡単に言いましたがために幾分誤解を生じたことと思いますが、一県一教科書にするつもりではないのであります。  それから運賃等もやはり他の省と交渉いたしまして値下げしてもらうつもりであります。各種の方法によって教科書を安く需要者の手に入れたい、かように思っております。
  172. 辻原弘市

    ○辻原委員 その点大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今文部大臣が申されたようなそういう措置をとるお考えでありますか。
  173. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私といたしましては、財政の許す限り教科書をなるべく安くしたい、こういうふうに考えております。
  174. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がございませんので、教科書の問題は以上にとどめまして、細部の点はいずれ文教委員会その他において行いたいと思います。  次に正力国務大臣にお伺いをいたしますが、それはこの間からの新聞でも問題になっている原子炉設置の位置問題であります。現在いろいろ取りざたされておりますが、一体原子炉設置の位置は、今政府の方では何ヵ所を予定されておりますか。
  175. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。原子炉の設置につきましては、今財団法人研究所の方でやっておりますので、私の方へ詳しい報告がきておりません。そこで調査した上でだと思います。(「新聞に出ているじゃないか」と呼ぶ者あり)新聞に出ているのは、まだ私のところに正式に報告がきておりません。ただし私どもの仄聞するところによると、四ヵ所きめているというようなことであります。あれば報告をやります。
  176. 辻原弘市

    ○辻原委員 何でも知らぬということでありますが、少くともこれは新聞にも発表されている事項であります。所管大臣が全然知らないということは常識上あり御ない。すでに原子力研究所を中心としてやっているこの位置問題に対する運営委員会調査というものは、相当進捗しているやにわれわれは聞いておるのであります。ほぼ一通りの技術的な調査は終ったとも伝えられている、その現在の状態の上に立って、いろいろこれに対してのうわさが飛んでいるということは、少くとも日本に初めて設置をするこの原子炉の位置問題については、私は非常に遺憾なことであると思いますので、この際そういう事情について、大臣の知れる限りつまびらかにいたしてもらいたい、こう思うのです。
  177. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。先ほど申し上げましたように、正式にまだ詳しい報告に接しておりませんが、新聞に出ているようなことは、それとなく聞いております。しかしまだきょうも現に調査に行っております。調査がまだ済んでおりません。調査が全部終った上、諸方面の事情をよく調査いたしまして、慎重にこれを決定いたします。
  178. 辻原弘市

    ○辻原委員 これも新聞で私は見たのでありますが、何か位置を設定するについて、技術的な条件を見合った立場のみならず、政治的ないきさつに基いて、その位置が決定とまでは至らないでありましょうけれども、予定されていかれるような、そういう危険性もあるやに私は見たのでありますが、そういう事実はございませんか。またそういうことについて、あなたは所管大臣としていかに考えられるか。少くとも私は、さっき申したごとく、この重要な問題に当っては、あくまでも立地条件、あくまでも技術的な検討の上に立って、将来の日本の原子力研究の上に資するその目的から一歩もはずれてはならぬと思うが、この点に対してあなたは、もしそういった動きがあるならば、断固これを排除する決意があるかどうか、ここで承わっておきたいと思います。
  179. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。先ほど申し上げたように、きょうもまだ調査に行っておるような状態でありますから、調査が終っておりません。調査が終った後に、諸種の情勢を調査いたしまして、ただに技術だけでなく、経済上の事情も調べなければなりません。決して単に世間のうわさするごとき、政治上どうの、そういう事情だけでできるものではありません。国家的立場から、すべての点を総合いたしてやりますから御安心下さい。
  180. 辻原弘市

    ○辻原委員 最後に一つ承っておきますが、これは今実地調査をやっている中で、横須賀の武山が、私の聞く範囲では技術的な立場における条件というものが非常に整っておる。まあ非公式な話でありますけれども、原子力委員会関係のそれぞれ専門的なエキスパートに聞いてみましても、これには大体異論はなさそうであります。そういう点について、あなたはどういうふうに考えておるか。もう少し具体的に申し上げますると、この武山については、現在米軍の接収にかかっている地域であります。その接収にかかっているということを一つの条件として、だから、ここは立地条件がよくてもだめだというふうなことをあなたは申されたとかいうことも伝わっておるのでありますが、そういう事実はございませんか。
  181. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。武山は、今駐留軍が使っておりますから、その問題がきまらなくてはできないということだけは申しました。そのほかは別に何もいいとも悪いとも申しておりません。
  182. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは、私は少しおかしいと思うので、かりに米軍が使っているものであっても、もしそれが日本における原子炉の位置として好適なものであるとするならば、技術的に検討してそれが最適であるならば、まずそのことをきめて、そうして解除をしてもらうべく当るのがほんとうのやり方ではないかと思うのでありますが、それについてはどう考えますか。
  183. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、研究所の方から調査をして詳しいものを私の方に持ってくるのであります。まだそれを持ってきておりません。それを見た上できめるべきことだと思います。
  184. 辻原弘市

    ○辻原委員 位置問題については以上にとどめまして、次に、これも最近非常に問題になっておるのでありますが、これは文部大臣であります。今度の予算を見ますると、約一億六千万ばかり、国立大学の授業料の値上げによって財政収入といたしておるようであります。これについては、先日来から当該学生、あるいは父兄が非常な反対の世論を開陳いたしておりますけれども、一つの問題は、今度の文部予算の中で、育英資金というものが新しく重点的な施策として置かれていない。去年通りの額をきめられておる。そういう施策でありながら、授業料を値上げして——額はあるいは少いと言われるかもしれませんけれども、しかし今日の文部省の統計によっても、国立大学の大半の学生、過半数はアルバイトによって学業を継続している。そういうような状態にある中に、年間少くとも三千円の引き上げということは、これはある学生にとっては、学業を断念しなければならないような状態も起きるかもわからない。また私立学校、あるいは地方の公立学校、あるいは高等学校も、この国立の例によって授業料の値上げを計画しているやに私も聞いております。そういう突破口をこの問題においては開くのでありますから、軽々に授業料値上げなどという問題を文部省が賛成してもらっては困るのである。これについて大臣はどう考えておられるか。
  185. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 この問題については、理想として、私は辻原君と同様大学の授業料は安くいたしたい。これはあなたと同じ考えであります。しかしながら物事には限度がございまして、今の授業料がきまったときと今日と物価の指数を比べてみますと、百九十倍になっておるのです。国民所得も百九十二倍になっておる。それやこれや勘案いたしまして、なお学校の学生費、学生の実験などのために使う費用、すなわち学生のためになる方に使おうという原則で、将来入学する者のために五割の値上げを計画しておるのであります。現在の学生は、現在の授業料で入学したのでありますから、一銭一厘も値上げはいたしません。
  186. 辻原弘市

    ○辻原委員 原則的には賛成であると言われましたので、それ以上申し上げませんが、わずか一億六千万程度の金を、かりにそれが学生のために使途せられるようなそういう考え方であったとしても、それはあくまで間接的であります。取られる方は直接的に響くのであります。従って、その点は今後とも十分配慮をして、今日の学生の経済状態といいますか、学業の状態も十分考えられた上取り扱われるように、私は希望をいたしておきたいと思います。  次に、社会保障の関係で二、三お伺いをいたしたいと思うのでありますが、厚生大臣は、先般来からの新聞にもしばしば社会保障についての重要政策というものを発表いたしております。それを見ますると、一つは医療保障の問題、一つは結核対策の問題、一つは生活扶助、こういうふうに相なっておるのでありますが、その中で、昨今特に問題になっておる国民健康保険の拡大の問題、それから健康保険の赤字対策の問題、これはこの間からの委員会でも答弁がありましたが、私はそれらをひっくるめてここで明らかにしていただきたいことは、この社会保障の本年度の重要政策というものが、かねがね総理も言われておる自民党としての性格、あるいは鳩山内閣が、少くともこれが表看板だ、一枚看板だと言われる、いわゆる福祉国家としてのそういう立場において、長期の計画を立案の上に、この重要政策というものをここに打ち出してきたのかどうか、その点を承わっておきたいと思います。
  187. 小林英三

    ○小林国務大臣 お答えをいたしたいと思います。ただいまお尋ねのように、わが国の各種の医療保障制度並びに生活保護法によりまするところの医療の扶助、結核予防法によりまするところの結核医療、これらは、現在世界的に考えましても、わが国のこういう問題はかなり高度なものと考えられまして、国民の保健の問題に関しまして相当の貢献をいたしておるのであります。しかしながら、ただいまお尋ねの中にもありましたように、現在なお社会保険というものの制度の適用から漏れている方々が約三千万人おりますることは、御承知通りであります。  それからまた、今お話がありましたような社会保険のうち、特に健保の赤字の問題、これは先般の本院の予算委員会におきましてもちょっと触れておいたのでありまするが、本年は国庫も約三十億円持つ、被保険者も二十数億円持つ、それから事業家といたしましても、標準報酬の引き上げ等によりまして相当の数字を負担する、こういうことによりまして、刻下の危機に直面しておりました健保の赤字を克服をして、そうしてこれを軌道に乗せて、健全なる社会保険の姿としてやる、こういうことになったのであります。そのほか各種の医療制度が今日御承知のようにばらばらになっておるのであります。国保は国保、健保は健保、健保の中にも、なおそれに参加していないような事業場もあるのであります。国保は国保として、先ほど申し上げましたように、適用を受けていない未加入者が三千万人もあるという状態でありまして、これに対しましては、国内におきましてもこういうような姿を統一して、将来は国家的な制度にしたらどうかというような御意見もあることは事実であります。それから今日の健保という問題からして、結核というものに対する取扱いをまた別に考えたらどうだというような御意見もあることは事実でありますが、しかし今日の社会保険というものをどういうふうにするかという問題は、今直ちに現実の問題としてここで線を引くべき問題ではないと思いますので、こういういろいろな問題を取り上げまして、厚生省の私どもの相談相手として、かりに医療保障委員というようなものを設けまして、本年はある程度予算もとれましたので、できるだけ早くいかにしてこれを取り扱うかという問題につきまして、企画並びに具体的な立案をいたすべく考えておるのであります。
  188. 辻原弘市

    ○辻原委員 今から立案されるということらしいのでありますが、たしか前大臣のときであったと思いますが、防衛庁が防衛計画の六ヵ年計画を立案されたと同じように、社会保障においても、長期の見通しを立てていわゆる長期計画、五ヵ年計画あるいは六ヵ年計画というものを立案された、私はこういうように拝見いたしておりました。おそらく本年度の計画というものは、その中の一環として出されてきたものだろうと、こう解釈したのでありますが、今の御答弁によりますと、そうではないという御趣旨のお話であります。それはその通りでありますか。
  189. 小林英三

    ○小林国務大臣 お答えいたします。本年度の社会保障の全般につきましては、もちろん私が先般この委員会において申し上げましたように、やはり経済五ヵ年計画の本年度のその一環といたしまして計画したものであります。私がただいま申し上げましたのは、将来五ヵ年計画の最後の年であります昭和三十五年には、少くともすべての国民をこの社会保険の恩典に浴させるように進めていきたい、こういうことでありまして、それをやりますには、今私が申し上げましたように健保をどうするか、国保をどうするか、あるいはその他の問題をどうするかというようなものも、すべて合せまして研究を進めて参りたいということを申し上げたいのであります。
  190. 三浦一雄

    三浦委員長 辻原君に申し上げますが、お申し合せの時間も迫っておりますから、簡潔にお願いいたします。
  191. 辻原弘市

    ○辻原委員 一つ答弁の方も簡潔にやっていただきたいと思います。要らざる説明をしないでもらいたい。委員長に要望しておきますが、将来のことをつらつら述べてもらっても益のないことであります。ただ現実に見通しを立てて、その一環としての説明なら意味合いがありますけれども、単に今からこういうふうにして、将来はこうなるだろうと絵にかいたもちの話は一つやめてもらいたい。  そこで私が具体的に聞いたのは、長期にわたる年次計画を持っておるかどうかということなんです。そうすると、今からそれはやろう。何も国民健康保険の問題はきのう、きょうの問題ではないのであります。少くとも前大臣のときにおいてすら、その種の計画を立案しておいたという限りにおいて、私はそれが今日具体的に固まって、進歩して、その一こまとして提出されておらなければならないと考えたから、その質問をいたしたのであります。そういう計画が全然ない。まさにその通りでありまして、国民健康保険の問題をとらまえてみましても、何かまた委員会を作るらしいのでありますが、現実に三千万が今日では非対象であるということは、これは明らかな事実であります。今に始まった問題ではないのであります。少くともことしは、それについてどの濃度のものをその中に包括していくかという具体策がなければならぬ。しかしその点については、ことしの予算の中には何も触れていないではないか。またそういうこともあげて委員会の中にゆだねよう。これでは社会保障が前進をしたとか、あるいは将来三十五年になったときには全部包括するのだという、あなたの話をそのまま正直に受け取るわけには参りません。また赤字の解消の問題でもそうであります。これは去年もそういう案を、今と同じような案を立てた。ところが社会保障制度審議会もまっこうからこれに反対して、考え直すということであったが、一向に考え直さないで、依然としてその赤字解消の大半をいわゆる国民の側に、利用者の側に押しつけよう、そういうことで赤字のつじつまを合わそうとしているその考え方、これは決して社会保障の政策を推進するゆえんではない。そういう考えでもってほんとうに社会保障というものを政策的に拡大されたとあなたはおっしゃるのか、この点を私は承わりたいと思う。鳩山内閣の一枚看板である福祉国家を作るのだ、総理は、今居眠りをされておりますけれども、そういうことをしばしば言明された。ところが実際を見てみると、何らその間には進展がないのであります。何ら進展がない、私はこうきめつけて差しつかえないと思うのですが、大臣の御所見はどうであるか。
  192. 小林英三

    ○小林国務大臣 鳩山内閣の一枚看板であります社会保障制度に対しては、何らの進展がないというような御質問であったのでありますが、私は苦しい財政の中にも、社会保障の上に相当な進展をいたしていると信じております。それは、たとえば数字をあげて申し上げましても、社会保障関係の経費は、三十年度におきましては一千十二億円でございましたが、三十一年度におきましては一千百三十四億円、すなわち百二十二億円の増でありまして、約一二%の増をいたしております。厚生省関係の所管の経費といたしましても、三十年度におきましては八百四十一億円に対しまして、三十一年度は九百三億円でございますから、約六十一億円の増でありまして、この増加率は六・七%でございます。これに対しまして、一般会計予算の総額は約四百三十四億円の増でございまして、この増は四・三%になるのであります。これは先般の委員会におきましても、社会党委員の方から、少しも増加していない、自然増等もあるというお話もありましたが、たとえば人口の増は〇・七%でありますし、それから国民所得の増は大体三%であります。社会保障の全般の増というものは一二%でありますし、厚生省だけの予算にいたしましても六・七%でありますから、こういうことから考えましても、本年の社会保障に対する予算というものは、相当の進展をいたしているものと信ずるのであります。  なおただいま御質問のありました健保の赤字というものは、社会保険として非常な後退であるというような御説もあったようでございますが、健康保険の私どものこの処置というものは、数年来の健康保険の内容よりも、今日はこの内容が非常にレベル・アップして参っております。二十九年度は四十億円の赤字を示し、また本年度は六十億円の赤字を示しておりまして、これは借入金その他によって暫定的な処置をいたしたのでありますが、三十一年度において予期されておりますところの約七十億円の赤字をいかにするかという問題は、これはなかなか大きな問題でございます。しかしながら、私はこのままの状態で——あるいは三千万人というような、社会保険の恩典に浴していないで税金をとられるという国民も一方にあるのでありますが、こういう健康保険が今日相当な内容のレベル・アップしております現状にかんがみまして、一部は被保険者が持っていただく、また一部は事業者が持っていただく、国庫も被保険者の負担に見合うだけの負担をして、そうしてこれを健全なものに持っていくということは、私は社会保険の進展のためにまことに望ましい施策であると信じておるのであります。
  193. 辻原弘市

    ○辻原委員 数字はよくわかりました。数字はわかりましたが、私が言いましたのは、数字がふえたということは、必ずしも政策的に推進されたということではないと言っておる。現実に今赤字の問題を言われましたけれども、われわれの知る限りにおきましては、今日赤字を生む原因は、何といっても医療給付の中で大部分を占めている結核の問題であります。結核対策が十全に行われていないがために、健保の赤字を生み、あるいはさらに次の結核を生むという要因をなして、社会保障は雪だるまのような状態に今苦しんできておる、こういうことを私は考えておるのであります。その点から予算をながめてみますと、確かに百二十二億ばかり社会保障という形における金はふえておる。ところが中身をめくってみますれば、結核対策の中で最も必要な医療給付については、約五千万円ばかり減っておるではありませんか。あるいは病床に対する準備はどうであるか。去年よりも大幅に、六千床も減らしておるではありませんか。こういうふうに個々の政策をめくって参りますると、政策的に後退しておるということを私は言うのであります。こういうような後退が起るから、こういったような一つの社会保障に対する考え方をやるから、ただ数字だけがふえれば社会保障が進展したというて喜んでおるから、いわゆる赤字の問題が累増をしてきて、それに対策を集中しなければならぬという結果が起ってくる、その他の社会保障に対する政策の進展を見ることができない、ここに私は政府の社会保障に対する重大な欠陥があるというのであります。そういった総合対策というものを、これは計画的に早期に立案するということでなければ、真の意味の社会保障の政策推進ということには当らぬということを私は申し上げておるのであります。時間がありませんので、個々について具体的に申し上げることはできませんけれども、そういう点を私は申し上げておるということを、よく一つ考えを願っておきたいと思います。  時間も経過をして参りましたので、最後に一点お伺いいたしておきたいと思うのでありますが、それは人口の問題であります。これは経企長官が先般本会議においても発表されておりましたが、すでにわが国の人口が、昨年の国勢調査によって明らかになって参りました。この人口の増加に備えるに、やはり十全の雇用の対策というものが行われてなければならぬと思いますが、大蔵大臣の本会議における説明によりますと、全く手放し楽観論、鉱工業生産が一〇%ふえ、その他経済全般に対する活況を見た、従って雇用についても、きわめて順調に、それに比例をして伸びていくような、そういう説明をなさっていると思うが、私はその楽観論がきわめて危ないと思う。  さらに経済五カ年計画の中においても、六ヵ年計画でありましたか、前期後期という分け方をいたしまして、雇用の伸びというものを想定されておりますが、私は何か雇用については、非常に楽観したような考え方をしておると思う。この点について御見解を承わっておきたいのと、もう一つは、これは労働大臣の問題になると思いますが、こういった人口増、その中から生まれるところの労働人口の増加、それと必ずしも経済の進展に伴っていない失業問題の増加、この二つがからみ合って、今非常に深酷な失業の様相がさらに現われてきている。その特徴は、一つを申し上げますと、失業という問題は労働者が多数集中する都会のみではないということであります。特に私の現実に見ておる問題は、山間部におけるいわゆる不完全失業、この問題が今日完全失業に近い姿になってきておる。ところが、御承知のように、山間部においては、あなた方がお考えになっているいわゆる特別失対も、一般失対もないしは簡易失対もあるいは就労対策も、ほとんど行い得ないような状態になっている。最近の山林不況という問題から、全村の八割が完全な失業に追い込まれているような村を私は知っているのであります。こういう点に対する失業問題、いわゆる経済五ヵ年計画の中においても、完全失業者については触れておるけれども、こういったいわゆる不完全失業の八百万ないし一千万と推定される者には何らの施策も述べられていないし、また具体的な予算措置、具体的なこれに対する解消措置というものも全然考えられていないという点が、はなはだ今日の失業の様相から遺憾きわまりないと私は思うのでありますが、これらの点について政府としては具体的にどう対処されているのであるか。私は本日時間がありましたならば相当詳細にこの問題についてお伺いをいたしたいと思っておったりでありますが、時間がございませんので政府のお考えを承わるにとどめておきたいと思います。大蔵大臣から、あるいは経企長官から、労働大臣から一つお答えを願いたいと思います。
  194. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。雇用の将来を決して楽観しておるのではありません。われわれは雇用の機会を増大することにあらゆる努力を傾倒するということを申し上げておるのです。そうしてこの雇用の機会を増大するのは結局日本の経済がよくなるということがやはり基本だという意味のことを私は申し上げておるのであります。従いまして、予算の面におきましても失業対策については特に力を入れておるつもりであります。たとえば本年度の一般並びに特別失対につきましては、二十二億円と思いますが、その程度増加し、特にまた特別失対は昨年同様三十五億ばかり労働省予算に計上いたしまして、これで一日二万人の労働者を吸収する。さらに六十九億の予算を臨時就労対策費としまして計上いたしております。これも二万人。これは昨年に比べて一日に一万人たくさん吸収するようにいたしております。そうして一般のものと加えまして、三十一年度におきましては約二十五万人の失業者を一日吸収するようにしておりまして、昨年に比べて二万八千人ほど多い。さらに炭鉱地方の失業者を特に考慮いたしまして川崎線を新設することにいたしまして、これで約二千人くらい吸収する。昨年に比べて一日三万人くらい労働者はたくさん吸収するように心がけておるのであります。なおいろいろと今お話のように問題はあるのでありますが、これは一つ議論なんかしておったってしようがありませんので、できるだけの財政的の手をみんなの協力を得まして——職にみんながつくように、また職から離れた人にはみんながなるべく社会的に手を差し伸べるように努力したいというのが私の念願であります。
  195. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。この人口問題、特に就労者の人口の増加ということはこれは非常に重大な問題でありまして、これを政府といたしましては十分取り入れまして経済五ヵ年計画を立てたわけであります。大体におきまして生産を増加していくということがすべての問題を解決するゆえんである、こう存じておりますが、しかしながら労働におきましては今日非常にたくさんの人口をすでに包容しておりますから、これには三十五年度を期しまして、大体四%程度を吸収していこうじゃないか、それから工業方面におきましても大体一七%強、約一八%くらいを吸収する、第三次産業におきましては二〇財吸収する、こういうような考え方でおります。第三次産業には少ししわ寄せがするのじゃないかという御意見があるようでございますけれども、事業がふえて参りますとどうしてもサービス業等もふえますし、特に社会保障等がふえますと、お医者さんとか、そういう方面の従業者は全部第三次産業に入る、こういう結果に相なります。従いまして、第三次産業の収容力が非常によけいいっておるようであります。また、農村の方において不完全失業者が多いじゃないか、こういう御意見はまことにごもっともでありまして、これは私ども非常に気を病んでおるものでございますが、農村の方におきましては、多角経営等をいたしまして収入をよけいにする、できるだけ農村の収入をよけいにすればこれが幾らか緩和されるだろう、かように存じまして、その方面の施策を構じたいと思っておる次第でございます。
  196. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 雇用、失業の問題につきましては、私どもの立場からは決して楽観をいたしておらないのでございます。御承知のように、経済五ヵ年計画を遂行いたすことによっての雇用量増大は、ただいま両大臣から申し上げた通りでございますが、生産性の向上あるいはオートメーション・システムなどによって、一面においてはコスト・ダウンができますけれども、それだけに一時的に失業が出てくるという現象は現実に体得されるのであります。しかし、国際競争力を維持して参りますためには、そういう方法によって生産を増強いたしていかなければならないのでございますから、一時過程的には出てくるかもしれませんが、終局においてそれによる輸出の増進ということによって雇用量増大ははかれる。五ヵ年計画を通覧していただければそういうことが明らかに出ておるわけであります。ただ、先ほどお話のございましたような、山の方の地帯においての失業につきましては、私どもも農林省と共同いたしましていろいろ調べておりますが、ただいま御指摘のような深刻な状況は私どもまだはっきりいたしておりません。実は来年度予算編成に当りまして、いわゆる特別失対百億円というものを当初計画いたしましたけれども、労働者が比較的多く出る地方だけに五ヵ年計画の建設の仕事がないものでございますから、山の中へああいう道路の仕事をたくさん持っていかれても仕事にならないということで、従って建設省の方に六十九億の予算をさきまして、それで緊急就労対策という、今御指摘のような地方にこういう労働者を吸収し得る仕事を振り向けていく、こういうことで、そういうへんぴな地帯に出てくるであろうと想定される失業者の吸収を計画をいたしたようなわけであります。あとのことは両大臣が申し上げた通りであります。
  197. 辻原弘市

    ○辻原委員 残余の質問は、時間も経過いたしましたので、後日に譲りまして、本日の私の質問はこれで終りたいと思います。
  198. 三浦一雄

    三浦委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時九分散会