運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-02-03 第24回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月三日(金曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 小平  忠君    理事 柳田 秀一君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    今井  耕君       植木庚子郎君    小川 半次君       北澤 直吉君    北村徳太郎君       纐纈 彌三君    河野 金昇君       河本 敏夫君    島村 一郎君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       高岡 大輔君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    楢橋  渡君       橋本 龍伍君    廣瀬 正雄君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    三田村武夫君       宮澤 胤勇君   山口喜久一郎君       山本 勝市君    山本 猛夫君       足鹿  覺君    伊藤 好道君       今澄  勇君    川俣 清音君       久保田鶴松君    小松  幹君       河野  密君    田原 春次君       辻原 弘市君    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       矢尾喜三郎君    八百板 正君       山花 秀雄君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 吉野 信次君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 馬場 元治君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 高碕達之助君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小山 雄二君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  河野 通一君         食糧庁長官   清井  正君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 昭和三十年十二月十二日  委員川崎五郎君、小山長規君、田中正巳君、  床次徳二君、井堀繁雄君及び小牧次生辞任に  つき、小川半次君、北澤直吉君、赤城宗徳君、  井出一太郎君、山下榮二君及び志村茂治君が議  長の指名委員に選任された。 同月十三日  委員田中稔男辞任につき、その補欠として長  谷川保君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員長谷川保辞任につき、その補欠として田  中稔男君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員平野三郎辞任につき、その補欠として小  金義昭君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小金義照辞任につき、その補欠として平  野三郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員阿部五郎君、赤松勇君、伊藤好道君、岡良  一君、志村茂治君、田中織之進君、田中稔男君、  福田昌子君及び山下榮二辞任につき、その補  欠として古屋貞雄君、八百板正君、足鹿覺君、  山花秀雄君、成田知巳君、田原春次君、井手以  誠君、川俣清音君及び辻原弘市君が議長指名  で委員に選任された。 同日  小松幹君が議長指名委員に選任された。 昭和三十一年一月十日  委員辻原弘市君辞任につき、その補欠として木  下哲君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員山本猛夫辞任につき、その補欠として原  捨思君議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員捨思君辞任につき、その補欠として山本  猛夫君が議長指名委員に選任された。 二月一日  委員足鹿覺君及び木下哲辞任につき、その補  欠として伊藤好道君及び辻原弘市君が議長の指  名で委員に選任された。 同月二日  委員平野三郎君、福永一臣君及び河野密辞任  につき、その補欠として中曽根康弘君、宮澤胤  勇君及び足鹿覺君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月三日  委員野田卯一君、副田赳夫君、古井喜實君、山  口喜久一郎君、山本猛夫君及び井手以誠君辞任  につき、その補欠として纐纈彌三君、松澤雄藏  君、廣瀬正雄君、島村一郎君、高岡大輔君及び河  野密君が議長指名委員に選任された。 同日  委員島村一郎君、高岡大輔君、廣瀬正雄君及び  松澤雄藏辞任につき、山口喜久一郎君、山本  猛夫君、古井喜實君及び福田赳夫君が議長の指  名で委員に選任された。 二月三日  理事赤松勇君去る十二月二十三日委員辞任につ  き、その補欠として柳田秀一君が理事に当選し  た。 同 日  理事澄勇君二月三日理事辞任につき、その補  欠として小平忠君が理事に当選した。     ————————————— 一月三十日  昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算 の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  公聴会開会承認要求の件  昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事澄勇君より理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。従いまして、委員の異動による理事欠員一名をあわせまして、二名の理事欠員となっておりますので、この際その補欠を選任いたしたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 三浦一雄

    三浦委員長 御御異議なしと認めます。よって理事小平忠君及び柳田秀一君を指名いたします。     —————————————
  5. 三浦一雄

    三浦委員長 次に公聴会の開催についてお諮りいたします。  昭和三十一年度総予算につきましては、国会法第五十一条によりまして、必ず公聴会を開かなければならないことになっております。つきましては、議長に対する公聴会開会承認要求手続その他開会に関する手続は、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なお公聴会開会の日取りにつきましては、理事諸君と協議の結果、十五日、十六日の二日間開会する予定になっておりますので、さよう御了承願います。     —————————————
  7. 三浦一雄

    三浦委員長 それでは昭和三十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算、及び昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)の四案を一括議題といたします。  まず政府提案理由説明を求めます。大蔵大臣萬田尚登君。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 昭和三十一年度予算編成方針及びその骨子につきましては、過日本会議において御説明いたしたところでありますが、予算委員会において、本日から御審議をお願いするに当りまして、あらためてその概要を御説明申し上げたいと存じます。  まず、財政規模について申し上げます。三十一年度一般会計予算総額は、歳入歳出とも一兆三百四十九億円でありまして、三十年度の九千九百十四億円に比べまして四百三十五億円の増加となっておりますが、国民所得に対する一般会計予算規模の割合を見ますと、三十一年度も三十年度と同様一四・八%程度となっております。また財政投融資は、総額二千五百九十二億円でありますが、ほかに民間資金活用額一千三百九十七億円を見込んでおりますので、一般会計歳出予算額財政投融資額及び民間資金活用見込額を合せた額は一兆四千三百十八億円でありまして、三十年度に対し一千百二十二億円の増加となっております。  次に一般会計について申し上げます。  まず歳入のうち主要なものは、申すまでもなく租税および印紙収入でありまして、歳入全体の約八〇%に相当しております。三十一年度におきましては、租税負担均衡化をはかるため、給与所得控除額引き上げにより給与所得者所得税負担を軽減することとし、これに必要な財源を捻出するため、法人税について交際費の損金不算入措置の範囲の拡大及び退職給与引当金積立限度額制限等を行い、また、砂糖に対する関税の税率引き上げる等、税制改正を行うこととしております。税制改正案の詳細につきましては、別途政府委員をして説明いたさせますが、これを織り込んだ租税及び印紙収入総額は、八千二百六十七億円となり三十年度に比べ五百十九億円の増加となっております。  次に、専売納付金につきましては、上級たばこ売れ行き不振等のため、収益状況は伸び悩みの現状でありますが、今後新製品の発売、価格体系整備経費節減等増収対策に格段の措置を講じて、三十年度予算計画を下回らない業績を確保することとしております。しかしながら、たばこ消費税税率現行の百十五分の十五から三十一年度は百分の十七に引き上げられることにより、たばこ消費税が九十二億円増加いたしますため、これから三十年度限りの臨時措置であったたばこ専売特別地方配付金四十五億円を差し引いた金額だけ益金が減少いたしまして、結局納付金は、三十年度に比べ四十七億円を減少し一千百二十七億円となっております。  次に、歳出のうち主要経費につきまして、その概要を申し述べたいと思います。  まず、社会保障関係費でありますが、これにつきましては、三十年度に比べ百二十二億円を増額して一千百三十四億円を計上し、その充実をはかっております。  このうちで生活保護費につきましては、三十年度に対して生活困窮者増加を二・五%と見込んで、三百六十三億円を計上いたしております。三十年度予算額は、二十九年度の不足補てん分十億円が含まれておりますので、これを除いて比較いたしますと、三十一年度は三十年度に比べ、二十四億円の増加となります。  社会保険費につきましては、まず、政府管掌健康保険財政再建のため根本的対策を講ずることとしております。すなわち、三十一年五月から患者の一部負担標準報酬月額引き上げ薬価対策等措置を講ずるとともに、国庫においても、財政再建のための補給金として三十億円を厚生保険特別会計健康勘定へ繰り入れることとしております。  なお、船員保険につきましても、政府管掌健康保険とほぼ同様の措置を講じております。  失業対策といたしましては、従来の一般失業対策事業及び特別失業対策事業のほかに、事業効果の発揮とあわせて失業者吸収をはかるため、臨時就労対策事業を実施する等の措置を講じ、三十年度に比べて約三万人増の約二十五万人の失業者吸収することとし、事業費といたしましては、三十年度に比べ九十三億円を増額しております。  次に、文教関係費でありますが、まず、児童生徒増加に伴う教員の増加等に応じ、義務教育費国庫負担金増額するほか、講座研究費増額原子核研究所その他の研究施設整備等国立学校運営費充実をはかっております。  また、科学技術振興につきましては、特に重点を置くことといたしております。特に原子力平和的利用に関しましては、原子力研究所の改組、原子燃料公社及び金属材料技術研究所新設等を行うとともに、研究充実をはかるため大幅に予算増額し、また前述の原子核研究所等経費を含めて二十億円を計上するほか、国庫債務負担行為十六億円を計上しております。  恩給関係費につきましては、旧軍人遺族等恩給ベース改訂等を三十一年七月から完全実施するため必要な額を計上いたしましたほか、昭和二十三年六月以前に退職いたしました文官に対する恩給に関しまして、その恩給額算定の基礎となっている仮定俸給額昭和二十三年七月一日以後に退職した職員のそれを下回る実情にありますので、これを適正に是正する措置を講ずることとし、三十一年度所要分として三億円を計上いたしております。  次に、防衛関係費につきまして申し上げます。国力に応じて漸次自主防衛体制整備をはかることは、政府基本方針でありますので、三十一年度におきましても、この方針にのっとり、陸上自衛隊における制服一万人の増員、海上自衛隊における艦船七隻の新造、航空自衛隊における航空団新設等を中心としまして、引き続き自衛隊充実をはかることとして、防衛庁経費を三十年度に比べ百三十四億円増額し、一千二億円を計上いたしておりますほか、米軍に対する施設提供等のための経費を二十六億円増額し、百五億円を計上することとしております。  一方防衛分担金につきましては、米国政府交渉の結果、八十億円を減額して三百億円となりましたので、防衛関係費総額は、三十年度に比べ八十億円の増加で一千四百七億円となっております。なお、この防衛分担金の減額は、防衛庁経費及び施設提供等のための経費増加額の二分の一に相当しております。  さらに、賠償等対外債務処理につきましては、従来一般会計から直接その経費を支出しておりましたが、ビルマに対する賠償本格的段階に入ること等にかんがみ、三十一年度から賠償等特殊債務処理特別会計を新設し、これら対外債務の経理を一般会計と区分して行うことといたしております。従いまして、一般会計からは、この特別会計に対し、財源を繰り入れることとなりますが、三十一年度におきましては、今後の外交交渉推移等をも考慮して、三十年度と同額の百億円を計上しております。  公共事業関係費につきましては、地方財政の現況にかんがみ、補助率引き上げ等を行い、地方負担合理化をはかるとともに、極力事業重点化効率化に努めることといたしました。また、失業者吸収のため、さきに申し上げました通り特別失業対策事業のほか、臨時就労対策事業を実施する等の措置を講じております。  これを事業別に見ますと、最も重点を置きましたのは道路整備であります。すなわち、道路対策といたしましては、道路現状及び自動車輸送の急速な発展にかんがみ、揮発油税財源のの増加に見合って、道路整備事業費を三十年度に比べ八十四億円増額し、一般道路整備を促進いたしますとともに、新たに日本道路公団を設立いたしまして、一般会計から、揮発油税財源のうち二十億円を交付し、資金運用部資金等と合わせ、総資金八十億円をもって、有料道路画期的拡充をはかることとしております。  また、食糧増産対策事業につきましては、土地改良開拓等事業重点化をはかるとともに、特に余剰農産物資金国際復興開発銀行資金等資金活用することにより、愛知用水事業機械化開墾事業等を促進することといたしております。  その他、工業用水の確保、空港の整備等のため新たに予算措置を講じますほか、経済企画庁国土総合開発事業調整費五億円を新規に計上し、特定地域における主要な事業調整をはかることとしております。  住宅対策につきましては、三十年度におきまして、民間自力建設を含め約四十二万戸の住宅建設を行うことを予定しておりましたが、三十一年度におきましてもこれを継続強化することとしております。すなわち、公営住宅公庫住宅及び公団住宅等を合せて、財政資金で十七万八千戸、民間自力建設を含めた合計におきましては約四十三万戸の建設をはかりますとともに、住宅規模適正化及び不燃化高層化促進等質的向上にも努めることといたしております。これに要する資金につきましては、民間資金活用をも含め、公営住宅、住宅金融公庫及び日本住宅公団を合せて五百十二億円を予定し、三十年度に比べて四十五億円を増額しております。  以上の重要事項のほかは、一々の事項についての説明は省略することといたしますが、さきに発表いたしました予算編成基本方針の線に沿い、特に貿易の振興産業基盤の強化、新農村の建設中小企業振興交通通信施設拡充等につきましては、財政投融資資金及び民間資金活用と相まって、所要予算重点的に計上することとしております。  特別会計及び政府関係機関予算につきましても、一般会計に準じ、経費重点的、効率的使用をはかりますとともに、事業の円滑な遂行を期することといたしまして、所要予算を計上いたしております。ここでは、そのうち重要な二、三の点につきまして御説明申し上げます。  まず、食糧管理特別会計がありますが、三十一年度においては、食糧管理制度の急変を避け、さしあたり普通外米消費規制を自由にすること、三十年度と同じく事前売り渡し申込制度を継続すること及び収支の均衡を確保すること等を編成の前提としております。  また、米麦買い入れ価格につきましては、三十年度の価格算定に準拠した方式により、パリテイ指数の変化を織り込んで算定し、米の消費者価格につきましては、物価安定の見地から、一応現行価格に据え置くことを予定しております。  なお、本会計の三十年度末における損失のうち、百億円は一般会計からのインベントリー・ファイナンス百億円に見合うものでありまして、残りにつきましては、追って三十年度一般会計予算補正の際処理することに予定いたしております。  次に国有鉄道につきましては、物価の安定をはかるため、運賃を据え置くことといたしておりますが、工事資金につきましては、二百九十五億円の外部資金の借り入れを予定する等により、所要金額を確保することといたしております。なお、この工事資金のうち、新線建設に対しましては、五十五億円を予定しております。  地方財政につきましては、その窮乏の現状にかんがみ、三十年度におきまして、百六十億円を臨時地方財政特別交付金として地方団体に交付する措置をとったのでありますが、三十一年度におきましては、その再建をはかるため、あとう限りの対策を講ずることといたしております。  すなわち、まず歳出面におきましては、教育委員公選制の廃止、地方議会及び地方行政機構簡素合理化に努め、さらに公共事業国庫補助率引き上げ補助金整理合理化等により、地方団体財政負担を軽減することを予定しております。  次に、歳入面につきましては、公社の全固定資産に対する課税、軽油引取税都市計画税及び国及び地方団体所有資産所在市町村交付金の創設、受益者負担制度拡充等により、地方自主財源充実に努めますとともに、地方団体間の財源調整見地から入場譲与税配分方法を改訂するほか、公債費の累増による地方財政負担を緩和するため、できる限り普通債を削減する等の措置を講ずることとしております。  さらに国におきましても、以上の措置を講じた結果なお生ずる財源不足額補てんする目途のもとに、地方交付税の率を、所得税法人税及び酒税の収入見込額に対する二二%から三%引き上げて二五%とすることといたしております。これにより、地方交付税交付金の額は、二十九年度清算分を含めて、三十年度に対し二百五十四億円の増額となっております。最後に財政投融資につきましては、前にも申し述べました通り総額二千五百九十二億円でありますが、金融正常化の方向に即し、民間資金活用を見込み、財政投融資民間資金総合的活用によりまして、経済自立に必要な資金重点的に確保されるようにいたしております。すなわち、財政投融資質的補完の役割に重点を置き、市中金融に依存しがたい部門に集中的に投下いたしますとともに、重点産業公社住宅建設有料道路整備、北海直開発等資金については、できる限り民間資金活用にまつこととし、その総額を千三百九十七億円と見込んでおります。  以上、三十年度予算につきまして、ごく概略を御説明申し上げましたが、なお詳細にわたりましては、政府委員をして補足して説明させることといたします。  次に昭和三十年度特別会計予算補正(特第三号)につきまして、その内容につき簡単に御説明申し上げます。  第一に、食糧管理特別会計につきましては、豊作と集荷の好調によりまして、三十年産米政府買い入れ数量が当初の予定二千二百八十六万石を大幅に上回り、三千四百二十万石と見込まれることになりましたので、食糧買い入れ費食糧管理費及び予備費歳出予算を約千二百億円追加する必要を生ずるに至りました。その財源としては、とりあえず、食糧証券発行によることといたしまして、三十年度末における食糧証券発行額を当初予定の二千四百十億円から三千四百七十億円に引き上げることといたしております。  当初予算歳出権はすでにほとんどゼロとなっており、二月上旬には、この会計支払いに事欠くに至るおそれがありまして、至急に予算補正を必要といたしております。  なお、この会計損失補てんにつきましては、別途一般会計補正予算において処理することを予定しております。  第二に、国債整理基金特別会計につきましては、以上申し述べました食糧管理特別会計補正による食糧証券発行増加に伴いまして、食糧証券割引差額に必要な経費が二十四億千五百万円増加いたしますので、財源食糧管理特別会計から受け入れることとし、これに伴う補正を行うこととしております。  第三に、漁船再保険特別会計につきましては、この会計給与勘定において、拿捕による抑留漁夫増加及び抑留長期化等によりまして、予備費を使用してなお約二千五百万円の歳出不足を生じますほか、歳入におきましても、中共海域における操業の安全化等に伴う加入人員減少等により、約七百万円の減少が見込まれますため、これを補正することといたしております。  なお、支払い財源不足につきましては、とりあえず、資金運用部からの借入金等によって処理することとし、本勘定の三十年度に生ずる損失補てんにつきましては、別途一般会計補正予算において処理する予定であります。  以上、今回の特別会計予算補正の要旨につきまして申し述べたのでありますが、いずれもその性質上緊急を要しますので、すみやかに御審議の上、御賛同いただきますよう御願いいたす次第であります。(拍手)
  9. 三浦一雄

    三浦委員長 次に、順次補足説明を求めます。主計局長森永貞一郎君。
  10. 森永貞一郎

    森永政府委員 ただいまの大臣説明を事務的に若干補足いたします。お手元に昭和三十一年度予算説明といういつものパンフレットがお配りしてございますので、詳細はこの資料にお譲りいたすことにいたしまして、特にお目をとめていただく必要があると思われる点だけにつきまして、申し上げることにいたしたいと存じます。  この資料は、総説一般会計特別会計政府関係機関の四つに分れておりますが、この総説につきましては、本会議における大蔵大臣説明、またただいまの説明に尽きておりますので、省略することといたします。  ただ、二ページをごらんいただきたいと思いますが、二ページの左側の上段に、財政規模につきましての計数が出ております。三十一年度の予算規模は一兆三百四十九億円でございますが、同年度の国民所得は六兆九千七百十億円と推定されるわけでございまして、これに対する割合は一四・八%ということに相なっております。三十年度の当初予算の割合も、ちょうど同じ一四・八%ということに相なっております。  なお三十一年度におきましては、金融正常化の方向に即しまして、財政投融資のみならず民間資金につきましても、広くこれを総合的に活用いたすことといたしておりますが、それらを含めました計数は、この二ページの下にございますように、一般会計が一兆三百四十九億円、一般会計以外の財政投融資が二千五百七十二億円、民間資金活用が千三百九十七億円、合計いたしまして一兆四千三百十八億円ということに相なっております。前年度のこれに相当する数字は、一兆三千百九十六億円でございまして、千百二十二億円の増加国民所得に対する割合は三十一年度二〇・五%、三十年度は一九・七%ということに相なっております。  次は五ページをお開きいただきたいと思います。五ページに一般会計歳入歳出の概観、歳入につきましては大分類別の計数、歳出につきましては重要事項別の計数、前年度との比較が出ております。これにつきましては後刻順次申し上げますので、ここでは申し上げませんが、ただ一つ記載漏れがございますので申し上げたいと存じます。このページの一番下の公共事業関係費三十一年度千四百十九億云々とございますが、その上にカッコいたしまして、千五百十八億云々という数字がございます。このカッコ内の数字は、特別失業対策、それから臨時就労対策事業費という名目で計上せられておりまするものをも含めた計数でございまして、むしろ常識的に考えます場合には、このカッコ内の数字をおとりいただいた方がいいわけでございます。そのことを備考にうたうのを漏らしておりますので、特に申し上げておきたいと存じます。  次のページに参りまして、特別会計歳入歳出予算、各会計につきまして、歳入歳出のごく簡単な内訳がございます。これにつきましても後刻おもなものにつきまして申し上げますが、ただここで申し上げておきたいことは、特別会計の数が三十七でございます。そのうち本年度新たに設けまするものが二つございます。一つは賠償等特殊債務処理特別会計、もう一つは特定物資納付金処理特別会計、この二つでございます。特定物資納付金処理特別会計は、三十年度の予算にも出ておりました特殊物資納付金処理特別会計、これは予算では成立いたしましたが、関係法案が審議未了になりましたので、自然消滅いたしたわけでございますが、これにかわる新たな特別会計でございます。内容につきましては後刻申し上げることにいたします。  八ページに参りまして、財政投融資の表がございます。原資、運用とも二千五百九十二億円でございます。この内容につきましては、あとで理財局長から詳しく説明をいたすことに相なっておりますので、省略いたします。  次は一般会計でございますが、重要事項の順を追いまして、簡単に積算の根拠等を申し上げたいと存じます。  生活保護費三百六十二億七千八百万円でございます。前年度に対しまして十四億四千四百万円増加いたしておりますが、三十年度の予算には二十九年度の不足補てん十億円が入っておりましたので、それを考えますと二十四億余りの増加ということに相なります。積算の根拠といたしましては、結局人員が問題になりますが、最近の実績を勘案いたしまして、三十年度に対しまして二・五%の保護人員の増加を見込んで精算をいたしております。  次は児童保護その他社会福祉費七十五億九千五百万円でございまして、八千九百万円の増加でございます。この経費につきましても、三十年度予算が前年度の不足補てん二億を含んでおりましたので、その点をあわせ考えますと、二億八千九百万円の増加になっております。積算の内容といたしましては、児童福祉施設の増設に伴う保護人員の増加のほかに、食費等の単価の引き上げを計上いたしております。  次は遺族及び留守家族等援護費であります。四十九億五千八百万円、三億五千二百万円の増加でございます。この経費は、失権等によりまして順次対象人員が減少いたすのでございますが、昨年軍人遺家族の公務扶助料につきましてベースの改訂がございました。そのベースの改訂がこの経費にも及んでくるわけでございまして、そのための増加を計上いたしておる次第でございます。  次は社会保険費百六十億六千九百万円でございます。前年度に対しまして三十六億八千百万円を増加いたしております。この増加のうち約二十億は政府管掌健康保険の関係でございます。政府管掌健康保険につきましては、一昨年度来赤字の問題がございまして、これについての対策が問題になっておりましたが、三十一年度を期しまして根本的対策を講ずることとなり、一面におきまして被保険者の一部負担と、標準報酬月額引き上げ薬価対策等措置を講じますとともに、他面国庫におきましても、財政再建のための補給金として三十億円を繰り入れることといたしたのでございまして、それによる増加が出ておるわけでございます。  なお昨年御決定をいただきました過去の赤字六十億円のうち、三十一年度に予定されております償還金十億円の返済は、三十二年度以降に繰り延べることといたしまして、この返済財源としての一般会計からの繰り入れは、本年度は行わないことといたしております。  なおこの関係は、船員保険特別会計につきましても同じような対策を講じておりますことはむろんでございます。  国民健康保険助成費におきましても、約十六億円増加いたしております。この積算の根拠は、国民健康保険のすみやかな普及を期待いたしまして、被保険者数を三千万人と予定いたし、また事務費の補助等につきましても、単価の改訂を行いまして、所要金額を計上いたしております。  次は失業対策費三百五十一億六千七百万円、前年度に対しまして六十二億八千三百万円の増加でございます。この経費は、失業対策事業費補助、臨時就労対策事業費、これは新しく設けました、それから失業保険費、政府職員等失業者退職手当、この四つに分れておりますが、失業保険のところで約三十円億くらい減少いたしております。従いまして他の項目での増加は九十億円以上増加いたしているということになるわけでございまして、失業者吸収につきましては、特に努力をいたしたような次第に相なっております。  まず失業対策事業費補助二十三億の増加でございます。これは一般失業対策における増加でございまして、特別失業対策はほぼ前年通り失業者吸収人員を増加いたしますとともに資材費の単価の改訂、補助率の引上げ、失業者多発地帯の補助率引き上げ、そういうことに力を入れておるわけでございます。  臨時就労対策事業費、これは公共事業費中失業者吸収に特に適しておると思われる道路事業を選びまして、公共事業としての能率向上と失業者吸収、この二つの目的を達成しようというわけでありまして、所管は建設省所管に六十九億を計上いたしました。  この一般失対、特別失対、臨時就労対策事業、この三者を合せましての失業者吸収人員は十三ページの上にございますように一般失対が二十万八千人、特別失対が三万人、臨時就労対策事業が二万人、合計二十四万八千人でございまして、前年度の二十二万に比べますと、約三万人増加をいたしておるわけであります。  次は結核対策費でございます。百三十三億六千六百万円でございまして、前年度より三億七千百万円増加いたしております。特に力を入れましたのは健康診断、予防接種等の予防対策並びに結核医療費の公費負担の対象の拡大でございます。また国立結核療養所につきましては看護体制の強化をはかっております。  次に参りまして義務教育費国庫負担金七百六十九億五千万円、前年度に対しまして三十二億五千万円の増加に相なっております。増加いたしました理由は児童生徒数の増加による職員の増加並びに昨年末行われました期末手当の改訂による増加ないしは昇給による給与の自然増、それらを理由といたしまして増加いたしております。  国立学校の運営費三百三十三億八千二百万円でございまして、二十五億二千万円の増加でございます。増加の内訳は約半ばが人件費、そのほかに特に力を入れましたものといたしまして、教官研究費の増加あるいは原子核研究所の設備の充実等がございます。  次に文教施設費八十億六千五百万円、この経費は前年度に対しまして三億九千五百万円の減少に相なっております。減少の原因は災害の関係でございます。三十年災害が前年度に比較いたしまして少かったために災害復旧費で四億円減少いたしました。その減少がここに現われておるわけであります。  育英事業費四十二億百万円、ほとんど前年と同額でございます。ただし大日本育英会といたしましては、返還金額が相当入って参るわけでございまして、その点をあわせ考えますと、三十一年度の貸付計画といたしましては、実質的に約二億円の増加が期待できるわけでございます。この二億円の増加活用いたしまして、高等学校、大学等につきまして育英制度の内容の充実を若干はかっております。  次は科学技術振興費、この費目は本年度から新たに重要事項に特掲いたしたわけでありますが、百十四億四千六百万円でございまして、前年度より三十億九千七百万円相当大幅に増加いたしております。各省を通じましてこの経費は特に力を入れたのございますが、特別に申し上げなければならぬことといたしまして、まず原子力の平和利用の関係の経費十五億六千四百万円を計上いたしております。このほかに原子核研究所、これは国立学校の方へ入っておりますが、この分をかりに原子力関係として加えて計算をいたしてみますと、二十億千九百万円ということに相なる次第でございます。このほか南極探険のための経費として七億五千万円、国際地球観測年の事業遂行のための経費として二億二千五百万円、そういった経費もこの中に計上をされております。  次は国債費でございます。三百八十五億三千万円、前年度より四十八億二千七百万円の減少になっております。この経費は償還と利子とに両方分れておりますが、償還の方は財政法の規定による二十九年度決算剰余金の二分の一額を償還金として計上いたしておりますほかは、国債の現在額に即しまして事務的な積算をいたしまして、この経費を計上いたしました。  次は十六ページに参りまして、文官等恩給費でございます。百七十二億九千八百万円、前年度より八億九千八百万円増加いたしております。この増加は受給者の増加による自然増のほかに、二十三年六月以前に退職した文官に対する恩給の不均衡是正のための措置といたしまして三億円を計上いたしております。  次は旧軍人遺族等恩給費でございます。七百二十六億二千九百万円でございまして、前年度より五十六億九千三百万円増加いたしております。この増加の内訳は十七ページにございますが、号俸是正、ベース改訂等による増加九十九億八千万円、人員の増加による増加が三十一億六千三百万円、既定計画による年金及び一時金の減少が七十四億五千万円、差引五十六億九千三百万円の増加という積算の内容に相なっております。  次は地方交付税交付金でございます。千六百二十七億九千八百万円でございまして、前年度当初予算より二百五十三億九千五百万円の増加に相なっております。この金額は三十一年度における所得税法人税、酒税、この三税の収入見込額六千四百六十三億六千五百万円に対しまして二五%——現行の交付税率は二二%でございますが、これを二五形に引き上ぐることといたしまして、この金額を積算いたしているわけでございます。  なお地方財政につきましては、別途地方議会及び地方行政機構合理化を中心とする地方自治法の改正教育委員公選制の廃止等による地方歳出の削減、また公共事業国庫補助率引き上げ等による地方団体財政負担の軽減、それから国有鉄道、電電公社、日本専売公社、放送協会、中央競馬会等に対する固定資産税の課税——もっとも国有鉄道、電信電話公社、専売公社に対する固定資産税の課税は形式的に税の形をとるか、あるいは三公社からの各市町村への交付金という形をとるか、この点につきましては、まだ最終的に決定いたしておりません。目下検討中でございますることをつけ加えて申し上げたいと存じます。こういった固定資産税に相当する収入の増強、軽油引取税都市計画税等の新設、そういった各般にわたりました地方自治財源充実も考えられております。また公債費の累増につきまして、借りかえを相当見ることによって地方負担を緩和するということも考えられております。さらに地方団体間の財源調整の一助といたしまして、入場譲与税配分方法につきましても是正を考えておる次第でございます。これらの各般の措置を講じましてなおかつ不足する不足額補てんするために、交付税率二二を二五に引き上げることにいたしまして、この交付税の金額を算定計上いたしておるわけでございます。  次は防衛支出金でございます。四百五億六千五百万円、前年度より五十三億九千九百万円の減少でございます。この経費は十八ページにございますように、合衆国軍交付金、施設提供等諸費、軍事顧問団経費、その三つの経費に分れております。合衆国軍交付金は三百億でございまして、前年度より八十億の減、施設提供費は九十九億五千五百万円で前年度より二十五億八千百万円の減、軍事顧問団経費は六億一千万円でありまして二千万円の減、この施設提供費と軍事顧問団経費を合せまして約二十六億の増加でございますが、これと十七番の防衛庁経費千二億——これは前年度より百三十三億九千九百万円の増加に相なっておりますが、これを含めました増加額がちょうど百六十億になるわけであります。その百六十億の二分の一を合衆国軍交付金から削減をいたしまして、三百億にいたしたのであります。そういうような経費に相なっております。  その防衛庁経費の千二億でございますが、これによりまして予定されておりまする増強は、陸上におきましては制服一万人、一般職員三百六十二人を増加いたしまして、一混成団、特科三個大隊の新設を予定いたしております。海上におきましては、艦船七隻、航空機四機の購入、そのほかに米からの供与艦船三十隻、航空機三十機、これを基礎といたしまして、制服三千三百二十五人、一般職員三百四十八人を増加いたしております。航空関係では、航空団一の新設、操縦教育の充実強化という計画のもとに、米国から百十一機の供与を受け、日本側の調達百二十機を予定し、これに要する職員として制服四千八十八人、一般職員七百七人、こういう人員の増加予定いたしております。  なお千二億円のほかに、予算国庫債務負担契約といたしまして百四十二億八千二百万円、継続費といたしまして二十七億千八百万円を計上いたしております。国庫債務負担行為の内訳は、装備品購入のために四億九千百万円、航空機購入のために九十九億四千七百万円、施設整備のために十四億百万円、艦船建造のために二十四億四千三百万円であります。継続費は三カ年計画でございまして、潜水艦の建造に着手する予定でございます。  次は賠償等特殊債務処理費でございまして、この百億円は前年度同額でございます。これにつきましては後ほど特別会計のところでまた申し上げることにいたします。  次は公共事業費でございます。この公共事業費のところの記述がすこぶる複雑かつ長文にわたっておりまして恐縮でございますが、時間の関係もございますので、ごく概略を申し上げることにとどめたいと存じます。  まず公共事業費の計上額は千四百十九億四千三百万円でありまして、先ほど申し上げましたように、特別失対、臨時就労対策事業を含めた数字で申し上げますと千五百十八億四千三百万円でございます。常識的な特別失業対策並びに臨時就労対策を含めた数字で申し上げますと、前年度より十七億二千七百万円の増加と相なっております。公共事業費の範囲を少し広げておりまして、一つは工業用水事業、これを新たに公共事業の中に取り込むことといたしました。もう一つは空港整備事業、これも公共事業の中に取り込むことといたしました。さらにもう一つ経済企画庁に国土総合開発事業調整のために国土総合開発事業調整費という費目を新たに計上いたしました。こういう範囲の変更がございましたことをまず申し上げたいと存じます。  ただいま申し上げましたように、公共事業費の総額といたしましては、特別失対、臨時就労事業を含めまして十七億の増加でございますが、これを十九ページの表につきましておもな種目別の増減を申し上げてみますと、治山治水対策事業費では八億五千七百万円の減、道路整備事業では八十四億一千万円の増、港湾漁港等整備事業費では七億四千二百万円の増、食糧増産対策事業費では一億五千八百万円の増、災害復旧事業費では七十一億七千四百万円の減、鉱害復旧事業では五千三百万円の減、国土総合開発事業調整費で五億円の増ということに相なっております。すなわち道路で大きく増加いたしまして災害復旧費で大きく減少いたしましたほかは、若干の出っ込み引っ込みはございますが、大体前年度程度の予算が計上されておるということが言えようかと存じます。道路増加いたしましたのは、申すまでもなく揮発油税の三十一年度の収入見込みが増加いたしました。また二十九年度の予算と決算との開き——決算の方が税収入が多かったわけでございまして、その分は道路費に計上しなければならぬわけでございますが、そういった税収入の関係から道路費の予算増額計上いたしました。災害が大きく減少いたしておりますが、これは二十九年度、三十年度と引き続き災害が比較的少なかったわけでございまして、そのために大きく減少いたしております。この予算の中で、個々的な費目の計上に当りましては極力重点化に努めたわけでございますが、特に申し上げておきたいことは、地方財政現状にかんがみまして、極力地方負担を緩和するという観点から、公共事業費のほとんど全般にわたりまして補助率引き上げを行なっております。そのために公共事業費の総体としての事業量は若干の減少を免れなかったのでございますが、他面道路公団の新設等によります有料道路整備事業の拡充、また愛知用水、農地開発等、既定の事業の遂行等によりまして事業量が増加する部面もあるわけでございまして、それらの点もあわせ考えました場合の三十一年度の総事業量は、若干ながら前年度より増加いたすことに相なっております。  公共事業費につきましてはこの程度にいたしまして、二、三枚めくっていただきまして、次は住宅対策でございます。百三億四千七百万円でございまして、前年度より六十九億九千九百万円の減少になっております。この減少は、一般会計から出資いたしておりましたものが他の財政投融資に譲られたための減少でございます。実質的には大きく減少いたしておるわけではございません。住宅対策費の内訳といたして、公営住宅は百三億四千七百万円で前年度より二億九千九百万円減少いたしております。建設戸数は約四万九千戸でございまして、うち一般住宅が四万八千、災害住宅一千戸ということになっております。住宅金融公庫は、先ほど申し上げましたように、一般会計からの出資を他に譲りましたので、一般会計には計上されておりませんが、財政資金といたしましては百九十六億をつぎ込んでおります。これによりまして住宅の新築四万七千戸、増築等三万、合せて七万七千戸の予定をいたしております。住宅公団、これも出資がございませんで一般会計には計上されておりませんが、財政資金といたしましては百九億を計上いたしております。この百九億のほかに民間資金活用百四億を予定いたしておるわけでございまして、合計二百十三億の資金をもちまして二万三千戸の新築その他宅地造成等を実行することに相なっております。  次は出資及び投資、前年度四十億ごさいましたが、これはすべて一般会計からはずしまして、他の財政資金による投融資に肩がわりをいたしております。ただし農林漁業金融公庫並びにただいま申し上げました住宅公団につきましては、資金コストの高騰を抑止する見地から特に産業投資特別会計からの出資を一部見ております。これらの点につきましては後ほど財政投融資のところで御説明があると存じます。  農業保険費百十一億六千百万円、前年度より三十四億千八百万円減少いたしておりますが、これは大部分は、昨年予想外の豊作であったことに伴いまして一般会計からの不足補てん金が要らなくなったということによるものでございます。  次は、外航船舶建造融資利子補給三十一億三千二百万円、前年度より三億七千三百万円減少いたしております。この減少は金利の低下に伴う一般融資利率の引き下げ、並びに来年度新たに予定されておりまする新規造船二十二万トン分につきまして、利子補給の割合を従来の二分の一程度に引き下げることを予定いたしておりますが、それらによる減少でございます。  最後に予備費は八十億でございまして、前年度と同額でございます。  次は歳入でございます。まず租税収入は八千二百六十七億、前年度より五百十八億九千九百万円の増加でございますが、この点につきましては主税局長から説明いたしますので省略いたします。  専売納付金千百二十七億円、うち日本専売公社は千百二十四億でございまして、前年度より四十七億七千六百万円減少いたしております。最近高級たばこの売れ行きがとかく不振でございまして、今年度も相当益金の減少を避けられない実情にございますが、今後新製品の発売、価格体系整備経費の節減等に努めまして、極力その挽回に努めることといたしまして、三十年度当初予算と同程度の業績を確保することにいたしておるわけでございますが、一面たばこ消費税税率引き上げられることによりまして、四十六億七千万円の減収はどうしても免れないわけでございまして、その減少額がここへ現われておるわけでございます。  官業益金及び官業収入百三十六億千九百万円、前年度より十四億千三百万円の増加でございますが、これは主として病院収入等における増収入でございます。  政府資産整理収入七十七億二千二百万円、前年度より五億七千六百万円増加でございますが、これは回収金収入等における増収によるものでございます。  雑収入三百六十億八千六百万円、前年度より二十九億減少いたしております。減少の一番大きな原因は、日本銀行納付金減少でございます。最近の金融正常化に伴いまして、市中金融機関に対する日銀の貸し出しが大幅に減少いたしております。そのために日銀納付金におきましては前年度より約六十六億円の減少を免れないわけでございまして、この減少が大きく響きまして、いろいろ増減の理由はございますが、差し引き二十九億の減少に相なっております。  前年度剰余金は、決算上確定いたしております金額を計上いたしております。  以上で一般会計を終りまして特別会計でございます。  まず交付税及び譲与税配付金特別会計でございますが、これにつきましては三十五ページの表の下の方にございます数字を申し上げるだけでよろしいかと思います。すなわちこの会計から地方に参ります金額は、地方交付税交付金が千六百二十七億九千八百万円、入場譲与税譲与金が百六十二億二千百万円、これは入場税収入の全額でございます。地方道路譲与税譲与金が七十四億二千万、これだけのものが国から地方に参ることに相なっております。  次に資金運用部、産業投資、余剰農産物、これらにつきましては財政投融資の際の説明に譲ることといたしまして、省略いたします。  賠償等特殊債務処理特別会計でございます。この会計は来年度新設を予定しておるものでございまして、連合国に対する賠償支払い、連合国もしくは旧連合国人の本邦内財産の戦争損害の補償、その他戦争の遂行の結果、または戦争の遂行もしくは連合国の軍隊による占領に関連して負担する対外債務処理に関する経理を一般会計と区分して経理して、これら事務処理の円滑を期したいという目的に出づるものでございます。この会計歳入一般会計からの繰入金百億円がございますが、そのほか三十年度末における一般会計の決算上の剰余金の中から平和回復善後処理費、連合国財産補償費及び賠償等特殊債務処理費の支出未済額、これに相当する金額をこの特別会計に繰り入れることといたしまして、それを含めてこの会計で経理して参りたい、その金額が百二十億と予定せられるわけでございまして、一般会計からの繰り入れ百億と合せて二百二十億円の歳入に相なります。  この歳入に対しまして歳出は、支払いのきまっておる確実度に従いまして区分いたしまして、賠償等特殊債務処理費といたしまして百五十億円、予備費として七十億円を計上いたしまして、今後の外交交渉処理の円滑を期しておるわけでございます。  厚生保険特別会計につきましては、先ほど健康保険につきまして申し上げましたことにとどめまして、省略いたします。  船員保険につきましても省略いたします。  次は食糧管理特別会計でございます。この会計予算編成の前提といたしましては、食糧管理制度につきましては制度の急変を避ける、さしあたり普通外米につきまして消費規制を自由にする、また米の集荷につきましては前年度同様に事前売り渡し申し込み制度を継続する、そういう大きな前提で予算編成に臨んでおります。米の集荷数量は平年作を考えまして、当年産米二千三百五十万石、前年度産米百三十万石を考えております。麦その他につきましては大体前年度の実績を踏襲いたしております。価格につきましては、三十年度の買い入れ価格算定に準拠した方式によっておりまして、ただ農業パリテイ指数の変化を織り込んで若干の調整をいたしております。すなわち米につきましては九千九百六十円を予算米価といたしまして算定いたしております。消費者価格でございますが、米につきましてはこれを据え置いております。外米につきましては、消費規制の撤廃とあわせまして内地米との格差を適正化するように改訂をいたすことといたしております。また麦でございますが、麦につきましては消費者麦価水準の実勢を考えまして、若干の改訂を予定いたしております。  以上のような大きな前提で予算編成いたしておりますが、御参考までにこの会計の損益を申し上げますと、三十一年度は収支償うということに相なっております。三十年度末までにこの会計損失百六十七億円になる見込みでございますが、そのうち百億円はいわゆる一般会計からのインベントリー・ファイナンスを将来取りくずして補てんするわけでございまして、それと見合っております。残りの六十七億円につきましては、不日お願いいたすことに相なっておりまする一般会計補正の際に、一般会計からこの特別会計に繰り入れる予定と相なっております。  次はずっと省略いたしまして、四十二ページに参りまして輸出保険特別会計でございます。この会計におきましては、海外投資の活発化をはかるために新たに海外投資保険を新設いたしております。また輸出代金保険の対象を海外建設事業の請負代金及び技術の対価にも拡大いたしまして、輸出振興の一助といたしておることを一言いたしておきたいと存じます。  次は特定物資納付金処理特別会計——先ほど申し上げました新設の特別会計でございまして、バナナ、パイナップル・カン詰、時計、スジコ等の輸入差益を吸収してこの会計で受け入れる。その差益は産業投資特別会計に繰り入れまして、財政投資の原資の一部として活用いたしたい、さような考え方をいたしております。  郵政事業特別会計につきましては、別に申し上げることはございませんが、郵便貯金の増加目標額は九百九十億円でございます。なお局舎の建設費でございますが、四十三億円を計上いたしております。  最後に特定道路整備事業特別会計、この会計道路公団ができますれば、それに事業を引き継ぐわけでございまして、それができますまでの間の二、三カ月の予算を計上いたしておるということだけを申し上げておきたいと存じます。  第四に、政府関係機関でございますが、専売公社につきましては、先ほど益金の見込みを申し上げましたので、省略いたします。  国有鉄道につきましては、運賃は値上げをしていないことは、先ほど大臣の御説明にもございました。工事勘定金額が幾らになるかということでございますが、四十六ページの右側の中ほどにございますように、総額五百八十三億七千百万円でございまして、前年度より五十七億円増加いたしております。内訳といたしましては新線建設費五十五億、通勤輸送五十七億、幹線輸送二十六億、幹線電化八十億、以下省略いたしますが、幹線電化、新線等に特に力を入れてございます。この財源といたしましては、損益勘定からの繰り入れのほかに、鉄道債券として公募を二百四十億、財政資金からの借り入れ五十五億を予定いたしております。  電信電話公社でございますが、これにつきましても建設勘定総額だけを申し上げますと、四十七ページの左側の中ほどにございますように、五百五十五億九百万円でございまして、前年度より四十二億増加いたしております。  その財源といたしましては減価償却引当金等のほかに電信電話債券を公募分として八十五億、加入者、受益者引受分として五十五億円を予定いたしております。  以下公庫、銀行等につきましては、財政投融資説明の際にゆだねますが、四十八ページの北海道開発公庫は新たに設けられるものでございまして、資金量といたしましては八十億を予定いたしております。このことだけを申し上げまして、あとは省略させていただきたいと思います。  以上で説明を終りますが、昭和三十年度特別会計予算補正につきまして若干の補足を申し上げたいと存じます。  お手元に説明資料がお配りしてございますが、詳細はそれにゆだねることといたしまして、まず食管特別会計から申し上げますと、米麦の買い入れ数量は、米が当初予算では二千二百八十五万九千石でございましたが、これを今回三千四百二十万石に補正いたすことを前提といたしております。価格につきましては、当初予算におきまして米は九千七百三十九円の予算米価でございましたが、今回の補正におきましては一万二百十六円に相なっております。昨年の米価決定時には平均石当り一万百六十円でございましたが、実績は早場米等の増加によりまして、若干高騰いたしまして、平均一万二百十六円に相なっております。消費者価格につきましては、米は当初予算同様据置でございます。麦につきましては、昨年七月以降改訂せられました実績を採用いたしております。  以上の結果、食管特別会計の損益がどうなるかということを多少年度区分をして申し上げますと、二十九年度末の損金が三十億ございまして、これに今回の補正の結果加わります損が百三十六億千四百万円、合計百六十七億円の損失になるわけでございます。これに相当する当初予算損失は九十九億六千四百万円でございます。今度この百六十七億円につきまして、百億円は先ほども申し上げましたように、一般会計からのインベントリー・ファイナンスを適当な時期にとりくずして補てんするわけでございますが、残りの六十七億円につきまして、不日一般会計予算補正の際に一般会計から繰り入れることを予定いたしておるわけでございます。そのためにさしあたりこの食管会計補正財源といたしましては、食糧証券及び借入金の収入を増加いたしまして、それによってまかなっておるわけでありますが、その割引差額をまかないますために、形式的に国債整理基金特別会計を通さなければならぬわけでございまして、その関係から国債整理基金特別会計に二十四億の、歳入歳出同額でございますが補正をいたすことに相なっておるわけでございます。  漁船再保険特別会計につきましては、先ほど大臣説明にございましたところに特に補足して申し上げることはございません。  以上簡単でございますが、補足しまして説明を申し上げました。
  11. 三浦一雄

  12. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 お手元に「租税及び印紙収入予算説明」というパンフレットがお配りしてあると思うのでありますが、これに従って簡単に御説明申し上げたいと思います。  一ページに概要を摘記してございます。昭和三十一年度の一般会計租税及び印紙収入予算は、八千二百六十七億円、昭和三十年度の予算額の七千七百四十八億円に比べますと、五百十八億円の増加になっております。この予算額は、三十一年度の現行法による見積り額八千二百六十七億、これから別途申し上げます税制改正による減収百五十一億を差し引き、同時に、税制改正による増収見込み額百五十億を加えたものであります。なお現行法の八千二百六十七億という数字は、昨年実施いたしました減税は半年減税でありましたが、今年は一年減税になるということによる三百億円の減収は差し引かれております。それから交付税及び譲与税配付金特別会計歳入になります入場税及び地方道路税でございますが、これは総額で二百十八億円、従いまして両者を合せますと、国で徴収します租税及び印紙収入予算総額は八千四百八十五億、こういう数字になります。  予算を見積りますに当りましては、三十一年度においては、輸出は大体現在と同じように相当の好調を続けていく、それから国内需要が相当増加する、従いまして、鉱工業生産は三十年度より約七%ふえる、物価は大体現在の水準に安定していく、個人事業、法人事業の収益はある程度増加する、雇用量もそれに伴いましてややふえる、個人所得もふえる、こういうことを一応の前提として考えております。国民所得は、農業所得が平年作に戻ることによりまして、若干減少しますが、全体としましては、昭和三十年度に比べて約四%増す、納税成績も漸次上っていく、こういうことを一応前提として考えております。  個々の税金について、ごく簡単に要約したところを申しますと、そこに書いてございますように、まず源泉所得税でございますが、給与の所得に対する源泉所得税におきましては、納税人員は約二%増、それから給与の水準は、三十年度に比べまして約四%ふえるということを前提として計算しております。配当におきましては、資本が増加いたしますから、配当率はそれに伴いましてやや引き下りますが、総額としては一割程度ふえるということを考えております。  それから申告所得税でございますが、物価はおおむね現状と同一水準、個人の営業所得におきましては、昭和三十年に比べまして約五%ふえる。農業所得については平年作を基準としまして考えております。なお配当、給与その他の総合による申告所得税につきましては、最近の実績等を見まして計算してあります。  それから法人税でございますが、法人税につきましては、ごく荒っぽく申しますと、昭和三十一年上期は、昭和三十年の下期に比べまして所得額として約五%ふえる。三十一年の下期、これは大体上期並み、こういうことを考えて一応計上してございます。  それから間接税でございますが、おもな間接税についてごく簡単に申しますと、酒の税につきましては、清酒は消費三百万石、合成清酒は七十四万石、しょうちゅうが百六十万石、ビールが二百三十万石、こういう消費の数字をベースに考えております。  それから砂糖消費税につきましては、輸入原糖の溶糖量を百五万トンと見込んでおります。なお別途申し上げますが、砂糖消費税につきましては、納期を繰り上げることによりまして、三十一年度におきましては、いわば十三ヵ月分入るということに計上してございます。  揮発油につきましては、消費の数量を三百万キロリットル、大体こうした考え方で全体の予算編成しております。  税制改正のごくあらましでございますが、二十五ページに改正の要綱がございますので、それをごらん願います。おもな点は、給与所得の控除を引き上げるということが一点。これに伴います必要な財源を、法人の交際費の損金不算入の範囲の拡大、及び退職給与引当金の積み立て限度の制限、それと砂糖に対する関税の税率引き上げ、こういうことでまかなおうという考え方であります。  第一に所得税と書いてございますが、給与所得者負担を軽減いたしますために、給与所得控除の額を、現行の一五%最高六万円を、二〇%最高八万円に引き上げる。ただし、財源の都合がございますので、これは七月一日から実施したい、半年減税。従いまして、三十一年におきましては、年を通じますと率として一七・五%、最高額が七万円ということを考えております。  これの財源として考えておりますのが、第二の法人税にございます。法人の支出する交際費、接待費、機密費等が一定の額をこえるとき、その金額の——現行ですと、二分の一相当額を損金に算入しないことにしておりますが、このこえる額の全額を損金に算入しないことにする、これが第一点であります。  第二点は、現在法人の課税上損金に入れております退職引当金勘定への繰り入れ額、これの累積限度を、現在は従業員の全員が退職したと仮定した場合において支給する金額、その金額までということになっておりますが、これを二分の一に相当する金額まで積み立てる、それ以上は積み立て得ないという制限を作ろうというのであります。  いま一つの点は、第六にございます関税でございます。砂糖に関する関税については、現在従価率になっております。普通の粗糖でございますと、従価百分の二十になっておりますが、この機会に従量税率に改めまして、税率を一キログラム十四円、斤に直しまして八円四十銭になります。現在の税率でございますと、これは従価でございますから、入ってくる品物の値段によりましていろいろ変っておりますが、最近の実績によりますと、約四円五十銭というのが一斤当りの税率になっております。  その他の点につきましては、こまかい点が多うございますが、外人課税の問題は、期限が切れますので、従来と同じ措置はしませんが、この機会に短期の特例措置は考えたい。  それから砂糖消費税でございますが、現在は移出課税になっておりまして、実際法律的には、三カ月以内の徴収猶予ができる、これを現在は、二カ月以内の徴収猶予にしておりますが、今度改めまして、その月の移出した分の砂糖消費税は、翌月末日までに納付する、こういう制度に改めて、徴収猶予をなし得る期間は一カ月以内、ただし、この一カ月以内の徴収猶予は、さしあたってはこれをやらない、こういう考え方で参りますために、先ほども申しましたように、三十一年度におきましては、十三ヵ月分の収入が計上できるというわけでございます。  揮発油税及び地方道路税、物品税等につきまして、期限の切れる問題がございますので、多少の手直しをしたいということを別途考えております。  今申しました増減税の関係は、税収としてどうなるかという点は、四ページにございます所得税の給与所得控除の引き上げによりまして、減が百五十一億、退職給与の引当金の累積限度の制限によって増が七十八億、交際費課税の改正によりまして十億、砂糖関税の引き上げでもって六十二億、差引二千七百万円の減でございますが、おおむね増減税なしということを目途に考えております。  各税につきましての計算の内容につきましては、そこに詳しく書いておりますが、ごく簡単に御説明申し上げておきたいと思います。  まず第一は所得税でございますが、源泉所得税につきましては、先ほども申しましたように、納税人員において、前年に比べまして二%増、従いまして二十九年度の数からいいますと四%の増。給与の額におきましては四・三%の増、これをベースにしまして、失格見込みとか、いろいろ計上しまして、まず本年度の現行法による歳入見込みを二千百四十七億と計算いたしました。先ほども申しました改正によりまして、人員が減少する分等を見込みまして、改正後の数字を、八ページにございますが、千九百九十六億、これは給与所得とその他の所得に対する源泉課税との合計でございますが、千九百九十六億見込んでございます。  それから申告所得税でございます。二十九年の課税実績をもとにいたしまして、生産、物価というものを見まして納税人員を計算し、同時に、その所得の金額を計算してございます。一言つけ加えて申し上げます。農業につきましては、先ほども申しましたように、平年作をベースにしておりますが、三十年におきまして予約供出の関係で、それに対応する面といたしまして、平均千四百円供出分につきまして減税措置を講じております。この点につきましてはまだ最終決定に至っておりませんが、本年も一応予約供出という前提で予算の方も組んでございますので、私の方の歳入見積りにおきましても、大体昨年同様の減税措置を行うということを前提にして、一応の予算は組んでございます。  それから法人税でございますが、これは十二ページ以下にございます。計算の方法は、大体従来と同じでございますが、申告の額、これの最近の実績をとりまして、これに生産、物価、それから所得率向上による調整といった分をからみ合せまして、大体申告見込みの税額を出しまして、同時に更正決定分を見積り、法人成りによる増、これは、申告所得税の方では、個人から法人になる分の減を見込んでございます。それとうらはらに、こちらの方に法人成りによる増を見込みまして、同時に滞納の整理分というものも見込んで、一応現行法でありますと二千百一億、先ほど申しました改正によりまして八十八億の増が立ちまして、二千百九十億、こういう見積りをしております。  それから相続税でありますが、これは税額が五十六億、一応過去の実績によりまして、相続税と贈与税に分けまして見積りをしてございますが、金額があまり大きくございませんので、省略させていただきます。  それから再評価税につきましては、大体もう勝負がついておりまして、現在としましては、年割額を徴収している程度でございます。税額としまして三十五億を予定しております。  それから間接税の中では、一番大きなのが酒の税金でありますが、先ほど申しましたように、清酒につきましては三百万石、造石は約三百二十五、六万石できると思いますが、従来供給の方が需要に不足しておりまして、早出しということをやっておりまして、できたらすぐ出していく、冬のちょうど端境期にそういうことをやっておりましたが、本年はそういうことのないように、多少造石はふやしておりますが、需要の関係で、全体の趨勢を見まして三百万石程度、本年の予算は二百八十四万石でございます。実績も大体これと似たような数字になっておりますので、それと見合いまして三百万石程度。ただ内訳としましては、特級酒が本年七万石を組んでおりますが、これはどうも減少の傾向にあります。一級酒もやや減、最近の状況を見まして、一応そういう数字を計上してあります。それから合成清酒は七十四万石、本年の実績と大体似たり寄ったりの数字ということに考えております。それからしょうちゅうが百六十万石。それからビールでございますが、二百三十万石、本年の予算は二百十万石組んでございます。実績は二百二十万石をちょっと上回る程度だというふうに思っております。最近必ずしもそういいようでもございませんが、二百三十万石程度はいけるだろうというふうに考えております。そうしたことによりまして千六百四十九億を見込んでおります。  砂糖消費税につきましては、先ほど述べましたように、溶糖量百五万トンということをベースにして考えて、同時に先ほど申しました徴収制度の改正によりまして、四十億、本年限りでありますが、特殊な増加を見込みまして、五百三十一億となっております。  揮発油税につきましては、消費の数量を三百万キロリットルと見込み、免税の分を引き、同時に三・七%の欠減を引きまして、三百七億税額として見込んであります。  物品税につきましては、二百八十七億見込んであります。最近の物品税の税収は、比較的よく伸びておりますので、それを勘案しまして、相当の伸びを見たつもりでございます。  それからあと取引所税、有価証券取引税、通行税、これも税額が少うございますので、省略させていただきます。  関税につきましては、先ほど申しました砂糖の関税の引き上げ前の数字としまして二百五十五億、引き上げによりまして六十二億ふえまして、三百十七億を予定しております。  トン税、印紙税につきましては、特に申し上げることもございません。  入場税につきましては、これもまた昨年に比べますとだんだん税収がふえていく傾向にございます。三十年度は百三十五億見込んでおりましたが、実績はこれをある程度上回る状態にございます。そうした点を考慮しまして、百六十二億見込んでございます。  地方道路税は、揮発油税の見積りと大体うらはらになっております。これによりまして五十五億見込んでおります。  以上の措置によりまして、税負担が全体としてどういうふうになるかという点につきましては、三十一ページに、国民所得租税負担率という数字が一応出ております。三十一年におきましては、国税だけでございますと、一三・八%、総額で一九・四%、三十年度に比べまして、国税だけですと、〇・一%の増加になっております。総額を入れますと、地方税の方で、三公社固定資産に対するいろいろ改正がございまして、増税的なものがございますので、全体としましては一九・四%。なおこれにより、間接税・直接税の比率というものがよく問題になりますが、これは三十ページにございます直接税が五一%、間接税が四六・二%、その他が二・八%、全体としまして直接税の比率がやや減になりまして、間接税の比率がやや増になっているという傾向にあります。  なお税制改正によりましての給与所得の負担の点につきましては、二十七ページ以下にございますが、よくいわれております標準世帯といいますか、夫婦、子三人の場合におきましては、本年今考えられておる改正が実行されますと、年額二十四万六千六百七十円までは所得税がかからないで済む。月額にしましては、二万五百五十五円までですか、この程度までは所得税がかからないで済むということに相なるわけであります。  以上簡単でございますが、私の説明を終ります。
  13. 三浦一雄

  14. 河野一郎

    河野国務大臣 私から財政投融資計画と、対民間収支について簡単に御説明を申し上げます。  まず財政投融資でありますが、お手元にあります予算説明書の八ページから九ページ十ページにかけて書いてございますので、これをごらんになりながらお聞き取り願いたいと思います。  三十一年度の財政投融資計画を立てるに当りまして、とりました基本的な考え方について、まず申し上げておきたいと思います。  第一は、財政投融資のための財源であります政府資金は、三十年度の当初の計画よりも減少をいたすことになるわけでありますが、いわゆる金融の正常化と申しますか、一般の市中金利が次第に低下いたして参り、また金融がだんだん緩和いたして参ります一般の趨勢ともにらみ合せまして、従来財政資金によってまかなって参りましたものでも、民間資金をもってまかなうことが可能となりましたものが相当出て参りましたわけでありますから、極力民間資金活用をはかっていく、こういうふうなことを第一の基本的な考え方といたしたのであります。従いまして、財政資金はできるだけ、民間資金ではまかない切れないものについて、重点的に効率的にこれを投入していく、こういうことにいたしまして、財政投融資自体は、その本来の機能でありますところの質的補完作用と申しますか、民間資金に対する質的な補完作用に限定をして考えていく、こういうふうな考え方をとった次第でございます。  以上のような考え方に立ちまして、経済自立再建に必要な資金は、財政と民間の金融と一体としてこれを確保していく、こういうふうな考え方に立ったのであります。  これをやや具体的に申し上げますと、お手元の資料でおわかりのように、財政投融資の総ワクと申しますか、これは三十年度の当初の計画におきましては、二千七百六十六億円を見込んで参ったのでありますが、これが三十一年度におきましては二千五百九十二億円、約百七十億円ばかりの減少ということに相なるのであります。これに対しまして、お手元の表にございますように、公募債、借入金という欄がございますが、この数字をごらんいただきますと、三十年度においては五百二十一億円でありましたものが、三十一年度におきましては九百億円、約三百八十億円程度の増加を見込んであります。なお民間資金活用につきましては、以上申し上げました公募債あるいは借入金といったようなもののほかに、従来開発銀行、あるいは輸出入銀行といったような政府機関によって資金がまかなわれて参りましたもののうち、相当程度これを民間資金に振りかえていくことができるものがあるわけであります。こういったものをあわせて考えますと、おおむね民間資金活用といわれますものは千三、四百億円に相なるかと思うのであります。今申し上げました民間資金活用といわれますもの、来年度の千三、四百億円に相当するものが、三十年度におきましては約六百億円というふうに見込まれるのでありますから、この政府資金民間資金活用ということを、両者をあわせて考えますと、三十年度に対して三十一年度は約六百億円の資金増加というふうな数字に相なるわけであります。  次に、財政投融資計画の中の原資の問題について簡単に申し上げたいと思います。これはお手元の資料の八ページに載っておるわけでございますが、総額は先ほど申し上げましたように、前年度に対して百七十四億円の減である二千五百九十二億円、この原資の中で、特に一、二触れてみたいと思います点は、まず第一には、一般会計から財政投融資の原資として、従来は相当程度の資金が入れられておったのでありますが、三十一年度におきましては、原則として、一般会計からの財政投融資への原資の繰り入れはいたさない。ただ例外的に、先ほどお話が出ておりましたように、道路公団に対する交付金二十億円が一般会計から入るだけにとどめたのであります。  次に、財政投融資のうちの一番大きなアイテムは、資金運用部でありますが、資金運用部資金は、千六百九十九億円を見込んでおります。このうち、郵便貯金につきましては、本年度は、当初計画千百億円に対しまして、実績としては相当程度の減少が見込まれております。今のところでは、八百億円をやや上回る程度にとどまるかと思うのでありますが、来年度におきましては、国民所得増加等を考慮いたしまして、これを九百九十億円の増加と見込んだのであります。  なお次に、産業投資特別会計におきましては、先ほども主計局長から説明いたしましたように、輸入関係の特定物資の利益の一部を徴収する関係から、十五億円の財源を見込んでおる次第であります。  なお余剰農産物資金につきましては、第二次協定分といたしまして、百七十七億六千万円を見込みました。これは買入れ予定六千五百万ドル、円に直しますと二百三十四億でありますが、このうち日本側が借款の予定をいたしておりまする七五%、これが今述べました円に直して百七十七億六千万、こういう数字に相なるわけであります。  次は運用の方でございますが、詳しい数字は、今申し上げました九ページ及び四十五ページ以下に載っておりますので、詳細は省略いたしたいと思いますが、考え方といたしましては、先ほど申し上げました基本方針のほかに、次のような考え方を織り込んでおります。  その第一は、一般会計の出資が原則としてなくなったことに基きまして、資金コスト上何らかの措置を必要と認められるもの、たとえば住宅公団、農林漁業金融公庫等につきましては、産業投資特別会計から出資をするということにいたしたのであります。これによって、利子補給等の処置はとらないで済ませるということにいたしたのが第一点であります。  第二には、北海道開発公庫でありますとか、石油資源会社等のように、新しい財政投融資の対象が三十一年度から加わって参りましたということであります。  第三点は、国民金融公庫、中小金融公庫等の中小企業関係の金融関係の政府機関及び商工中金等の資金を、財政資金から相当多額に増加をいたして投入することにいたしました。また農林漁業関係の開発資金につきましても、三十年度よりも相当増額をいたして計上いたしたのであります。  第四点は、地方財政における公債費の累増からくる地方財政の窮乏、この問題を解決いたしまする一助といたしまして、地方債、特に一般会計地方債の総額を漸減していくという方針をとって参ったのであります。  以上が財政投融資の運用の面におけるおもな問題点であります。  若干財政投融資計画の中のおもな問題について申し上げますと、まず第一は、開発銀行であります。開発銀行につきましては、三十年度当初資金量五百九十五億円を見込みましたのに対して、三十一年度は、三百六十億の資金量を見込んだ次第であります。これは、先ほど申し上げましたように、一般の金融情勢が正常化の方向をたどって参りましたので、従来開発銀行の資金に待たなければならなかったものの相当部分を、民間資金に移しかえるということが可能となったという基礎事情に着目いたしまして、そういう計画を組んだのであります。  次は電源開発会社の資金でありますが、これは、総資金は三十年度よりも若干の増加を見込みました。これによりまして、電力開発計画の遂行には十分な資金を確保したつもりであります。  それからいろいろございますが、全部省略をいたしまして、輸出入銀行について申し上げます。輸出入銀行につきましては、一般プラントの輸出につきまして、三十一年度中に二億六千二百万ドルのプラントが出る、こういうことを前提にいたしまして、この輸出に差しつかえないような資金を組みました。なお三十一年度におきましては、ビルマ等の賠償関係に基きます資金、あるいは賠償とは別でありますが、経済協力関係に基く資金等が輸出入銀行から期待されておりますが、これらのための資金もある程度織り込んで、この計画をいたした次第であります。  農林漁業関係、中小企業関係、あるいは住宅関係等につきましては、先ほど申し上げましたところ、あるいはさき主計局長から御説明いたしましたところによって省略をさせていただきたいと存じます。  以上が財政投融資計画に対する御説明であります。  次に、簡単に国庫収支、財政収支の問題について申しあげたいと思います。お手元に理財局関係の資料が配ってありますが、この第三表をごらん願えればおわかり願えると思います。  三十一年度の国庫収支の見通しでありますが、まず一般会計におきましては、収支が均衡をいたしておるわけであります。ただ歳入の中には、二十九年度中に生じました剰余金三百八十億円が財源として織り込まれております。これは三十一年度中の新たな対民間収入ではないわけでありますから、これが散布要因となるわけであります。  次に、特別会計のうち食管会計でありますが、これは、予算上は年度末における食糧証券が五十億円減少することとなっておりますので、これが引き揚げ要因になるわけであります。  その他の特別会計におきましては、問題はございません。  次に外為資金でありますが、これは、三十一年度の国際収支の見込みといたしまして、一億七千五百万ドルの受取り超過というふうに見込んだのであります。そのほかユーザンスの関係、あるいは別口外貨貸付の減少等の出入りを差し引きいたしまして、結局円に直しまして六百五十億円が外為資金の散布超過となる、こういうふうに見込まれるのであります。今申し上げました三つのアイテムを増減いたしますと、三十一年度におきましては、国庫収支対民間収支は、九百八十億円の散布超過、こういうふうに見込まれる次第であります。ただこの数字は、国際収支の状況がどういうふうになりますか、あるいは食糧のでき工合等によりまして、非常に変ってくる可能性のある数字であることを、あらかじめ御了解をいただきたいと思います。  なお御参考までに、三十年度の見込みを申し上げますと、お手元の表の左側に書いてございますように、一般会計において四百八億散布超過、食糧会計におきまして千億余りの散布超過、外為資金におきまして千三百三十億の散布超過、合計いたしまして二千八百億円の散布超過ということになる見込みであります。  簡単でございますが、私の説明を終ります。
  15. 三浦一雄

  16. 小山雄二

    小山政府委員 お手元にお配りしてございます昭和三十一年度経済計画の大綱につきまして、時間の関係もございますので、ごく簡単に御説明申し上げます。  この計画は昨年末決定いたしました経済自立五カ年計画に基きまして、昭和三十一年度経済計画の大綱について定めたのでございます。従ってこの計画は、一方では考え方並びに目標数字につきまして、経済自立五カ年計画あるいは三十五年度の目標というものをにらんで考えますとともに、一方では三十年度の経済の実績を土台といたしましてこれを勘案し、さらに最近の内外経済情勢をも考えまして立案したものでございます。この計画では、計画の基調、主要計画目標、計画達成のため実施すべき施策の重点、この三つの項目にわたって述べてございますが、計画の基調と施策の重点につきましては、経済企画庁長官の本会議における説明で述べられましたので、ここでは主として計画目標の数字につきまして御説明申し上げたいと思います。お手元の資料の二ページをごらん願いたいと思いますが、そこに主要計画目標の一覧表がございます。まず結論的な点から申しますと、三十一年度の経済の規模を総合的に表わすものといたしまして、六行目、七行目の国民総生産、分配国民所得、これは両方とも一年間の国民のかせぎを示すものでございますが、分配国民所得の方は、そのかせぎが国民に分配される面でつかまえた、こういう数字になっております。三十一年度では総生産が八兆二千六百三十億、三十年度に対して四・二%の伸び、分配国民所得の方は六兆九千七百十億、四・三%の伸びとなるように計画いたしております。五カ年計画では、この伸びを約五%と見ております。従ってこれに比べますと、若干低いようでございますが、三十年度におきましては、輸出が非常に好調であったことと、豊作であったこと等の影響によりまして、平常年を上回る経済の発展が見られました点を考えますと、三十一年度の経済の水準というものは、五カ年計画予定しております経済発展の趨勢よりも少し高い、こういう関係に相なっております。以下順次この総生産と国民所得増加をささえる要因となります諸点について御説明申し上げます。  まず需要面でございます。第一は輸出でございますが、輸出は、下の方に書いてございますが、海外景気の上昇が多少鈍化すると予想されます上に、ものによりましては、また海外市場の状況によりましては、輸出調整を必要とするというようなものも出て参っておりますので、三十一年度の輸出は必ずしも楽観を許さないのでありますが、わが国にとりましては、経済発展の支柱は、どうしても輸出にこれを求めなければならないという関係にございますので、積極的な輸出奨励策を講ずることによりまして、そこにございますように、三十年度の二十億五千万ドルに対しまして、三十一年度は二十二億ドルの輸出をはかって参りたいということにいたしました。一方特需は三十年度の五億五千五百万ドルから四億五千万ドルに、約一億ドルの減少を見るであろうと予定しております。  次に投資面でございますが、民間投資は緊縮政策がとられました二十九年以来停滞状況を続けております。しかし最近では輸出の好調、経済の正常化の進展などによりまして、企業の投資意欲もぼつぼつ回復を見せておるような模様であります。産業基盤の強化をはかるということは、三十一年度計画重点的なねらいの一つになっております。なるべくむだな消費は抑制して、資本形成を充実させていくという線で、この計画を立てております。一方政府といたしましても、先ほど来いろいろ御説明がありましたように、積極的に民間資金活用をはかっていこうということになっておりますので、投資は相当に進みまして、その表の八行目、まん中あたりにございます民間資本形成でございますが、これは三十年度に対して約八・七%の増加をはかろう、こういうことにいたしております。  次に消費支出でございますが、消費がいたずらに伸びるということは、経済発展のもとを弱めるという意味で、避けねばならないことと考えますが、個人消費支出は大体経済発展率に見合う程度の増加が妥当であろうということにいたしまして、個人消費支出、これは国民全体の支出の総計でございますが、三十年度に比べまして四%の増加を計上いたしております。この需要に対する供給面でございますが、まず鉱工業生産、これもその次にございますが、鉱工業生産は三十年度に対しまして七・二%増加で、昭和九年ないし十一年を一〇〇といたしました指数で、三十一年度では一九六までに増加させたいと考えております。  次に農林水産生産でございますが、天候を平年並みと考えますと、昨年は非常に豊作でありましたので、畜産、林産、水産等の伸びを考えましても、総体といたしますと、農林水産業生産は、三十年度に比べまして約六%減少すると考えております。  次に、以上のような内外の需要、これに対応する国内生産の関係などから割り出しますと、輸入がある程度ふえて参ります。輸入は、そこにございますように、三十一年度で二十一億九千万ドル、これを全体の実質的な輸入として考えますと、その資料の中に紙が一枚はさんでございますが、そこにございますように、三十年度の為替ベースの実質輸入は二十一億三千三百万ドル、これは輸入為替の支払額十九億ドルに、ユーザンスによる支払い繰り延べ増加額一億四千五百万ドルと、綿花借款等の支払額七千八百万ドルを加えたものでございます。それが三十一年度では、二十二億九千万ドルと相なりまして、その差、実質的な為替ベースで考えまして一億六千七百万ドル程度、三十年度に対してふえるという関係になります。このように輸入が増大いたしますので、国際収支じりは若干三十年度に比べまして悪くなります。三十年度の二億四千四百万ドル——一番下のバランスの欄にございますが、それに対しまして一億七千五百万ドルと若干悪くなりますが、依然実質的な黒字を残しておるということになっております。  さてこのような経済循環の中におきまして、就業の関係はどうなるかということでございますが、計画目標の一番上の方に書いてございますように、人口は総人口で三十年度から三十一年度に対しまして九十一万人ふえることになります。そのうち生産年齢人口、これは満十四才以上の人口でございますが、百三十四万人ふえるという関係になります。わが国はここ当分の間諸外国でも例を見ないような規模をもって生産年齢人口が増加するという人口構成の変動期になっておりまして、総人口に対して非常に生産年齢人口がふえております。
  17. 三浦一雄

    三浦委員長 ちょっと政府委員に申し上げますが、簡潔にお願いいたします。
  18. 小山雄二

    小山政府委員 これに対しまして労働力人口は八十八万人増加することを見込んでおります。労働力人口に対しましては、鉱工業生産の増大による就業増加、経済発展に伴う商業サービスの問題などの就業増加を相当見込んでおりますが、これでは十分でありません。就業機会の増加をはかることは三十一年度計画重点的なねらいでありますので、経済発展によっても吸収できない労働力人口に対しましては、三十一年度では、特に失業対策事業臨時就労対策事業などを強化することによりまして、完全失業者は三十年度より若干減少をはかることになっております。  以上簡単でございますが、経済計画の年次別計画について御説明申し上げました。
  19. 三浦一雄

    三浦委員長 これにて提案理由説明は終りました。  午後は一時より再開して質疑に入ることとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  20. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十一年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算を一括して議題といたします。  柳田秀一君より発言を求められております。この際これを許します。柳田秀一君。
  21. 柳田秀一

    柳田委員 私はただいま上程になっております予算案に関して、社会党として重要な点二点を政府にただして確認をしておきたいと思います。  そもそも国の財政、経済、国民生活を左右するような予算案は、当然慎重に十分な時日をとって、十分な審議をしなければならぬことは当然でございます。財政法には、次年度予算案は前年の十二月中にこれを提出することを通例とすると明記されております。また国会法によりましても、国会の通常会はこれを十二月に開き、会期を百五十日、こういうふうにきめておることも、この重要な予算案との関連においてなされておることは当然でございます。しかるに三十一年度予算案に関しましては、これが国会に提案されましたのは一月のもうぎりぎりなんです。おそらく今までにないことだ。これに関しましてはすでに本会議におきまして、わが党の井上君から政府に質問しておりますのでくどくは申しません。ただこのために、井上君の表現ではございませんが、われわれ野党の審議権を侵害せざるように、これは当然委員長においても、また与党の諸君においても、十分善意と良識を持って善処していただかなければならぬ。このことに関してはすでに理事会におきまして委員長からも御明言がありますので、私は委員長並びに与党諸君の良識と善意にまちたいと思いますが、問題は三十年度補正予算案でございます。  今回の三十一年度一般予算の提案の経緯を見ましても、三十一年度に組まれておりました財源を、やはり復活修正の関係等もありまして三十年度の補正に組まれた。あるいはまた午前中に提案がありました食管会計損失補填に関しても、三十年度のやがて行うであろう補正予算においてこれを処理する、こういうふうになっておる。そうなって参りますと、やがて出るであろうところの三十年度補正というものは、三十一年度一般予算と密接不可分の関係にある。本来ならばこれは当然同時に御提出になって、われわれは同時に審議に入るのが筋なんだ。ところが新聞で伝え聞くところによると、これは二月の十五日ごろでなければ出せない、これではわれわれは三十一年度予算案を審議するに際しましても、非常な支障になるわけです。三十一年度と切り離して考えるわけにはいかない。これは三十年度の補正と密接不可分のものだと思っている。従って三十年度の補正予算案は一体いつ国会に御提出になるか、その時日をはっきりお示し願いたいのが第一点であります。  第二点は、予算に関連のあります重要法案の提出時期であります。予算に関連のある重要法案も、これまた予算案を国会に提出されると同時に出されるのが当然の建前でございますが、これが従来、ともすれば非常におそくなってから出される。これではわれわれは事実上予算案を審議するわけには参らぬのであります。従ってこの予算に関連ある重要法案は、大体いつまでに御提出されることができますか、この点の内閣として責任ある御回答をまずここで最初に確かめてから、予算案の審議に入りたいと思うわけであります。
  22. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 お答え申し上げます。昭和三十年度一般会計特別会計及び政府関係機関予算補正は二月十一、二日ごろと今考えております。  なお予算を伴う法律案をいつごろ提出するかというお尋ねでございますが、予算を伴う法律案は、大体五十八件と考えております。一応これらはすべて二月十五日までに国会に提出するように、現在各省及び法制局を督励しておるわけでございます。このうち総理府の原子力研究所法案と原子燃料公社法案は、原子力委員会にかけなければなりませんので、その方面は若干おくれるだろうという状況でございます。なおまた法務省関係の売いん防止法案は、これは現在その設置について法律案を提出いたすことになっております売春対策審議会に付議する必要上、これも二月中旬以降になるのではないかと考えておる次第でございます。
  23. 三浦一雄

    三浦委員長 これより質疑に入ります。伊藤好道君。
  24. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は本格的な質問に入る前に、一言だけ簡単でございますが御質疑を兼ねて抗議的な意味で、総理にお尋ねしたいのであります。  と申しますのは、総理はどうも私どもにしばしば食言の印象を強く与える御発言をなさっておるのであります。これは民主政治家として率直な発言をされておるというふうに聞えて、むしろ歓迎すべきことではありますが、しかしながら一たん公けに発言されて、それをしばしば繰り返し訂正されていったのでは、これは民主政治が言論を通じて運営されておる建前から申しまして、実は、はなはだ遺憾な次第でありまして、私はその意味において、総理は民主政治家として言責を強く重んじていただきたいと思うのであります。たとえば簡単な例を申し上げますと、問題の日ソ交渉にいたしましても、当初総理の口を通じて出ましたその進め方、すなわち戦争状態終結の御発言と、それから明白に変って参りました要するに自民合同後の御発言との間には、これははっきりとした相違をわれわれは見ざるを得ないのであります。それでそれは前者が後者の言葉によってあとから否定されておる、こういう事態がございます。また選挙の前に防衛分担金で住宅を大いに建てる、こういうお話がございましたが、これまた事実は全然そういうことがなかったようなわけであります。またこの前の総選挙の前に鈴木、河上、両氏と総理との三党首の会談においては、やはり民主政治の政権交代のあり方として、総選挙を通じて国民の信を問うて、そうしてその上で内閣を本格的に作るつもりだ、こういうような意味の御発言がありましたが、今度の場合においては、そのことは少しも行われておりません。さらに政府は、これからなお御質疑するつもりでありますが、三大政策を公約されておりますが、その政府方針としてはっきりしたものが出ておるのは、わずかに憲法関係の改正の問題だけであります。このようにあげて参りますと、もうこれは鳩山総理の習癖であるかのような印象を受けるのでありますが、さらに今回、この国会の再開後におきまして、有名な食言を二回繰り返しておられるのであります。その第一は、申し上げるまでもなく一月二十六日の記者団会見における総理の言明と、それからあとからそれを釈明的にお取り消しになっておる事実であります。いま一つは、きのう参議院で一応けりはつきましたが、憲法反対云々の問題についてであります。私どもはこのように、一国の総理がしばしば実質的に言葉を変えておられる事態のもとにおいては、民主政治の委員会あるいは会議を開いて審議すること自体が、むしろ時間のむだづかいのような印象を受けるのでありまして、これははなはだ遺憾でございますので、これから質疑を始めるに当りまして、総理のこういう問題についての御心境参を伺いたい、こう思います。
  25. 三浦一雄

    三浦委員長 鳩山総理大臣御着席のままお答えすることに御了承をお願いしたいと思います。
  26. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまのお話に対しては、食言をしないようによく注意をいたします。
  27. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 注意をするというお話ですから、別にくどくは申し上げたくないのでありますが、特に今国会に入ってからの問題の二つの点については、前言を釈明するとかなんとかいう意味ではなくて、非常に著しく変更しておられるのであります。これは実は失言であるか、あるいは総理の本意が他の何かの事情によって、あとからどうも曲げられておるんじゃないかというような印象さえ私どもは受けるのであります。私は、本会議の席上で同僚の勝間田君から、記者団会見の速記録といいますか、録音を文章にいたしたものを読みました。従ってここで繰り返し私からは読みたくないのでありますが、本会議の席上では大へん騒がしかったものですから、十分に実は聞き取れない点がありましたので、私はその点をもう一度一つ念を押しておきたいと思うのであります。ここで総理は、日ソ間の関係で、戦争状態終結の未確定な点は、双方とも遺憾に思うということを言って、単に交渉の過程を顧みるということではなくて、最後に自分の希望を言っておられる。その希望の言い方が、交渉過程の回顧になるような形において言っておられるにすぎないのであって、その希望されている点は、やはり戦争状態の終結宣言というようなお言葉まで使っておられる。従ってそれをあとから、領土の問題のことについてどうでもいいと言ったのではない、こういうふうに取りかえておられますが、それらの点は、この文章を見ると非常によくわかるのであります。私はもう一度念を押してお耳に入れておいて、再びこういうことのないように希望しておきます。「そこでまあ戦争状態終結の宣言をしたいというようなことからはじまって来て戦争状態終結の宣言をすれば当然にそれと同時に抑留者を帰さなくちゃあならん。領土問題にしても不当に占拠しているという理由はないんであるからして戦争を防止するために必要な程度に限ってそういうようなものは暫時の間このままにしといて後日解決するというような結果になって行ってだね、日ソ交渉が片付きゃしないかということをこい願っているわけだ。」こういうお話でありまして、これは私がただいま説明した通りのことであります。あとから総理あるいは内閣が御発表になつたものとは違うのであります。  また昨日片づきました三十一日の参議院本会議にいたしましても、「自分としては日本が、日本の憲法にある通りに、陸軍を持たない、海軍を持たない、飛行機も持たない、自分はみずからこういうようにするから、あなた方も軍縮をしろというような主張は私はできないのであります。私としては軍縮を、日本が陸軍を持たない、海軍を持たない、飛行機を持たないというその憲法には反対なのでありまして、」というのでありまして、この全体の調子から見て、これが憲法の解釈の問題でないことは明瞭であります。  少しくど過ぎるくらい言いましたゆえんは、私は、総理の発言は、それを中心として国政が運営されるという民主政治の建前にのっとりまして、強く総理に御反省を求める意味において申し上げたわけであります。  第二点についてお尋ねをします。それは内閣の性格についてであります。私は鳩山内閣は、とにかく実質的に第一次以来いろいろな条件のついた内閣であって、その限りにおいてはいわば暫定内閣たる性質を持続してきたと思うのであります。第一次内閣は言うまでもなく明瞭な選挙管理内閣、その選挙管理という文字が好きであるとかきらいであるとか適当であるとかいうことは別にしまして、常識的に選挙管理内閣、第二次の鳩山内閣もまたこれと似たような意味での要するに選挙管理内閣、第三次の内閣は、翌年の春すなわち今年の春総裁公選を前提としてできておるように、われわれは承知しております。こういうような内閣で、最近鳩山さんと御競争の立場にある緒方さんが、大へん遺憾でございますがおなくなりになりましたから、多少はそういう点についてすっきりしたようなふうにも見受けられますが、この鳩山内閣の暫定的だというような印象が、われわれ国民に非常な不安を与えていると思うのでありますが、総理はこれに対してどういう御見解でありますか。
  28. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 その暫定的の考え方を国民に与える点について答弁をすればいいのですか。——国民はそういうようには考えていないだろうと思います。
  29. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 これは総理みずから暫定内閣ということは言いにくいことですから、そういう御答弁が私はあるだろうと思います。  そこで率直に今後の政局に処する総理の態度をお伺いいたします。私の見るところでは、ただいま申し上げました通り、鳩山内閣の三大政策は、税制改革は来年度以降に延びたようであります。行政改革についてはただいま成案を得つつあるように、新聞紙上などで承わっておりますが、その改革の内容は、われわれの予想した通り、だんだん規模あるいは範囲というものが小さくなってきつつあるようであります。憲法の改正だけは今度の国会にその仕事の手始めになる調査会を作るというふうに政府は言明しております。しかしいずれにいたしましても、この三大政策を完全に遂行することは、多く三十二年度以降にわれわれは移るんじゃないかと思います。ところが他方に私どもの耳には、総理は九月ごろ御引退ではないか、こういうお話もございます。また御健康のことについていろいろうわさされておるようであります。こういうような状態において、総理は政局をいつまでどういう心境で御担当になるのかということを伺いたい。
  30. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 いつまで政局を担当しているか、私自身にもわかりません。
  31. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 それは人間の寿命のことなどを言ったのでは、だれだっていつ死ぬかわかったものではありません。しかしいやしくも国会の予算委員会で総理が政局担当についての信念を披瀝するに当りまして、私はいつまでやれるかわかりませんというのでは御答弁にならぬと思います。その点はもっと私は総理も率直に御心境を御披瀝願いたいと思います。
  32. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 施政方針演説で説明いたしました通りの施策を、できるだけ実行いたしたいと考えております。
  33. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は次には、総理の内閣総理大臣としてのやられ方に対して実は多くの疑惑があって、内閣全体を統括指揮される点において欠けるところがあるのではないかという印象を強く持っております。総理がもし健康がお悪いあるいは不快であるような際には、副総理もおられましょうし、きちっとした機関があるはずであります。日ソ交渉などの事実を見ますと、ロンドンと東京と両方に分れ、そうして外務大臣の知らぬ間に他の大臣が関係しておられる。あるいはまたわれわれにはどうも不明朗なるいろいろな陰の存在のような人たちの動きがある。こういう事実をわれわれは聞いております。予算編成に対しましても全く熱がなくて、そのために予算編成がおくれて、しかもその結果はぶんどり騒ぎまでできてしまったというような事実もあります。また予算編成の過程では、防衛関係の費用は、だれが何を主張したのかわからぬ間に相当ふえてきております。しかも政府は五カ年計画を持っておるというが、五カ年計画といわゆる防衛庁の六カ年計画との間にはどういう関係があるのか、これもさっぱりわからない。要するに内閣を一体として統括して、そうしてただいま言われた総理の施政方針を貫くための一貫した努力、そういうものが一向うかがわれないのであるが、これらの点について総理は自分みずからがほんとうにしっかりと内閣を統括しておると思われるのか、その点をお尋ねいたします。
  34. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 もちろん総理として内閣を統括しておる確信を持っております。
  35. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 確信では困るのでありまして、これは具体的に現われている事実を私は二、三指摘いたしましたから、そういうことについても御答弁願いたいと思います。
  36. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は総理大臣として職責を尽しておると確信をしております。
  37. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 これはただ確信しているというだけでは済まない問題であります。今までも問題が起きましたし、今後もいろいろ問題が起きてくるだろう。これらの点については私は総理の答弁は答弁になっておらぬと思いますが、時間が制限されておりますので、先へ入ります。私は憲法改正についてお尋ねいたしたいと思います。総理の憲法をどうしてもここで改正いたしたいと考えられる基本的な理由について、お伺いします。
  38. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 たびたび申しました通りに、日本国民の総意によって自主独立の態勢に沿う憲法を作りたい、こういうように考えております。
  39. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 そうすると、現行憲法を改正する理由を私は具体的に——具体的にといっても一々こまかいところまででなくてけっこうでありますが、その点をお聞きします。
  40. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 憲法というのはその成り立ちがなかなか必要なものだと私は思っておるのであります。それでありまするから、日本の憲法は国民の総意によって自主独立の態勢に合致するように作り変えるという、その目的によって出発して、そういう形に沿うような憲法調査会ができて、改正せられることが必要だと思っております。
  41. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 なるべく失言をしないようにというので、大へん御注意になった御答弁であります。私ども従来総理の憲法改正の理由として考えられたのは、抽象的に言えば、ただいまのお言葉になるだろうと思いますが、一つは自主独立の軍隊を持ちたいということ、もう一つは一般的に見て、現行憲法は国情に沿わない点があるから、国情に沿うように改めたいんだ、こういうふうに承わっておりましたが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  42. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 けっこうです。
  43. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 それではその線に沿って少しく質問いたしたいと思います。再軍備と、今の国情に沿うように改めるというのは、独立した日本として、この機会にどうしてもそういうふうにしたいんだ、こういうふうにも承わっていいのですな。
  44. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 国民の総意によって自主独立の態勢に沿うようにしたが、目主独立の態勢に合致するような憲法に作り変えたいと申しておるのであります。
  45. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 少しく話を進めますと、講和条約で形式的には独立国の建前が相当多分にとれた、こういうことはわかるのであります。しかし従来われわれが前国会以来承わったところでは、総理は要するに独立をりっぱに完成したいというような点から、憲法改正についてのお話があったと思いますが、そういうように理解してよろしゅうございますか。
  46. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 そういうふうにお考え下さってけっこうです。
  47. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 そこで私は、もしそうだとすれば、日本の今独立したと言われている実態を、総理に一つよく御理解願いたいと思う。一番いい例は軍事基地の例だと思います。アメリカとの条約関係もございましょうが、東京の近くに例の砂川の問題があります。そのために同じ日本人同士の間で血で血を洗うような遺憾な事態が出ました。また他方、山形あたりの大高根の例などでは、アメリカの軍隊の方の要請がなくなったら、軍事基地を拡張されるんじゃないかと思っていたところがされないで済んでおります。これはやはり、日本人同士の間に問題があるのではなくて、日本と他の国との間の関係から日本人の思うようにできない部面があるわけであります。従って、このできない部面に対して政府が率先努力をして、そして日本の独立の実を上げるようにする、こういうことがこの際の問題であって、そういう実態をわれわれが確立できるならば、そのときこそ初めて日本は自主独立の態勢に沿って憲法なら憲法の問題も取り上げ得ると思うのですが、そういうふうにはお考えになりませんか。
  48. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 日本の憲法ができましたときは、とにかく日本は占領下にあったのです。ただいまの基地の問題その他の問題は、日本に自衛力がなくて、そして、安全保障条約あるいは行政協定によって、アメリカとの条約によって、共同防衛のものとに日本の自衛ができておるわけなんです。それですから、この問題と占領治下にある問題とは非常に違いがある。今の日本は条約によって日本の自衛が守られておるのでありまして、これが日本の独立を侵害しているとは私は思わない。日本は完全に自主独自の性格を持っていると思います。占領治下にある日本と占領治下にない日本と同一視することは間違いだと思います。
  49. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 ただいま総理は、日本は完全に独立したかのように言っておられるが、私は今ここにちょっと持ち合せておりませんが、前国会においても、あるいはその他においても、しばしば、独立の完成とか、全的に独立したい、こういう希望は率直に述べておられるのであります。従って、私はその一つの例としてただいまの事態を申し上げたのであります。問題の今の条約にいたしましても、申すまでもなく、これは不平等な条約であるということは御存じの通りであります。私は、そういう意味で、今日の日本の置かれた実態をよく見きわめらて、その実態を完成する、よくする、そしてその上で問題の取り上げ方をされる方がより妥当であると考えるが、それらの点についてはどうですか。
  50. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 大して意見の違いはないと思うのでありますが、とにかく憲法ができた当時は占領治下にあった。それが今日ではそうではないというのですから、違いがあることは質問者も私も同じだろうと思うのです。ただ、それならば、日本は完全に独立している態勢になっておるかというと、そうでもない。日本は自衛力はなくてアメリカの力によって防衛してもらっているわけでありまするから、自衛力を持って、早くアメリカの兵隊、駐兵の撤退をこいねがうということは、たびたび議会でも申し上げているのであります。日本の独立の完成ということは、日本の国民のすべての人が欲していることだと思います。
  51. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 話を少し進めます。今総理から、日本が自衛力を持てば、要するに軍事基地もなくなるかのような、そういう意味の印象を与える御発言がございました。なるほど、地上部隊の撤退といいますか、そういうことは、われわれといえどもある時期においては考えられると思う。しかし、どうもそれ以上の撤退ということは、むしろこれは事実に反するじゃないか、私は例を一、二あげてみます。それで一つ論議を進めたいと思います。  それは、アメリカのラドフォード統合参謀本部議長ですか、それがクリスマスの極東視察の際にこういうことを言っておられるように新聞紙を通じて知っている。在日米地上軍は予定通り本年六月末までに引き揚げるが、残存部隊は、オネスト・ジョンの野戦砲中隊など原子力を中心に改編する。戦術原子戦争の一般プログラムに従って七月の新年度よりいろいろな原子コーポラル誘導とか原子砲部隊などを日本の基地に配置する。原子軽爆一個連隊を配して戦闘部隊のジェット化を完成する。日本の防衛六カ年計画は一応了承するが、あくまでも地上部隊の増強を勧告する。こういうような情報も出ております。これは明らかに空軍もしくは原子力兵器による部隊を日本に置くというのでありまして、今の軍事基地拡張政策をもあわせて考えれば、私はアメリカの兵隊が撤退するなんということはそんな簡単なものではないと考えます。これらについて……。
  52. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 いかなる条件のもとにアメリカ軍が撤退をするかというようなことについて、詳細のことは私は存じません。どうかそういうようなことは防衛庁長官の方から……。
  53. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私も実はこまかいことは知らないのであります。従って、そういうこまかいことは、これは新聞に出た情報としてお伝えしただけであります。ただ、常識的にたれでも考えることは、日本が自衛力を持てばアメリカの兵隊が撤退するなどという宣伝を政府もしくは与党の方面から流しておられるのであります。しかし、その自衛力は今防衛庁などでお考えになっているような程度のもので、アメリカのあの大きな空軍基地あるいは原子兵器もときどき日本に運んで来る、こういうような戦略隊形が変らない限り、私は絶対に不可能なことだと思うのです。常識的な点で総理もそういうようにお考えになりませんか。
  54. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 防衛庁長官から答弁をしてもらいます。私にはよくわかりません。
  55. 船田中

    ○船田国務大臣 わが国の自衛態勢が国力及び国情に沿うて漸増されて参りまして、それに両国の撤退についての合意が成立したときに米軍は撤退すると思います。
  56. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 全く形式的な議論でございますが、私はきわめて常識的に申し上げておるのであります。日本で今兵隊を十八万にするとか何万人にするとかいうことを言っておる。そういう日本の自衛力の増強が、海空を加えたアメリカ軍隊の撤退ということとかわり得るか。われわれにはとうていそうは考えられない。たとえば、最近では、御存じのように、B五七というのも来ておるようであります。その他、アメリカの空軍長官あたりの談話が新聞に伝えられたところでは、続々として原子兵器が日本へ運ばれてきておるようであります。こういう時代に、日本がそういうものを持ち得るようにならないで、今兵隊を幾らかふやそうというような防衛庁の六カ年計画、そういうものでアメリカ軍隊撤退の条件を整え得るとは私には考えられませんが、その点についてどうですか。
  57. 船田中

    ○船田国務大臣 防衛庁といたしましては、この前の国会でも御説明申し上げておりますように、大体防衛六カ年計画、すなわち三十年度から三十五年度に至る六カ年間に、大体において陸上十八万、海上艦艇において十二万四千トン、哨戒の飛行機百八十機、それに航空自衛隊におきまして約千三百機、もちろんその中には練習機も含みます。それらの自衛力を整備いたすということを防衛庁試案として持っております。しかし、それが完成したならば必ずアメリカ軍が撤退するかということにつきましては、今のところ必ず撤退しますということは申し上げられないと思います。
  58. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 それでは、実際どこまで自衛力を増強していくか際限がない。実は、自民党の経済自立五カ年計画によりますと、われわれが承知している範囲では、財政全般において占める防衛関係費経費は、比率はほぼ同じだというような御想定のようであります。しかし、私は、ただいまちょっと承わったところでも、とうてい今の比率でそんなものができるはずのものじゃないと思うのです。そのような点はまたあとで触れますが、とにかく、今のお話によっても、防衛庁の試案と称する六カ年計画が完成してもアメリカの兵隊がそれで撤退するということは申し上げられない、こういうふうに承わってよろしゅうございますね。
  59. 船田中

    ○船田国務大臣 先ほど申し上げましたように、米軍が撤退するということは、これは日米の合意によって撤退するということになるのでありまして、ただいま申し上げた防衛庁の試案が完成したから必ず撤退するということは申し上げかねる、こういうことでございます。
  60. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 それでは、この一月九日でございますか、今のB五七が来る場合には、通報があって、あるいはそれについて日本の政府が同意を与えたとか、そういうような事実はございますか。
  61. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問のB五七の問題については、私は通報を受けておりません。その詳細については、私は今存じ上げません。
  62. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 これも私は、おそらく御答弁は、原子関係の砲弾というようなものは持っておらない、だからという御答弁だろうと思ったのですが、これは条約上の義務はどういうふうになっているか、今詳細に心得えておりませんが、しかし、新聞などでも非常に大きく取り上げられて、関係国も注意しておりますし、国民は何よりもこの問題を恐れておるのでありますから、新聞に出たあとからでも、向うに一つ十分に情報をもらって、そしてぴちっとした不安のないようなふうに国民の心持ちを置かないというといかぬと思うのですが、これはどうですか。
  63. 船田中

    ○船田国務大臣 B五七につきましては、ただいま御答弁申し上げた通りでありますが、ただいまの御注意につきましては、十分今後におきまして私も注意をいたして参るつもりでございます。
  64. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 なお、この際念のためにお聞きしておきますが、新聞電報によれば、アメリカのクォールズ空軍長官は、極東地方には太平洋地域に核兵器を貯蔵しておるという意味の発言があるようであります。ただ、どこに置いておくかということについてはまだはっきり明らかにしておらぬようでありますが、日本に来ておるそういうオネスト・ジョンにしろ今のB五七にしろ、こういうものは相当の期間日本におるのであるか、あるいは、どこかへ行く間、たとえば一週間とか十日とかあるいは十五日とか、こういう程度日本にとどまるのであるか。そういう点についても全然御存じはございませんか。
  65. 船田中

    ○船田国務大臣 作戦上の問題につきましては、私、詳細なことを承知いたしておりません。
  66. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 原子兵器が長く日本に存在しているということになれば、これは明瞭な原子基地というふうに言うことができるでありましょう。そうでなくて、これがちょっとでよそに行くならば、本来の意味においては要するに原子戦の基地ではないのだ、こういうことも私は言えるかと思うのであります。そういう意味では重大な問題だと思いますが、総理大臣いかがでございますか。
  67. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私はそういうことはないとは思います。日本に原爆を貯蔵するということはないと私は思うけれども、それに対しては外務大臣から答弁申し上げます。
  68. 重光葵

    ○重光国務大臣 私もその通報を受けておりません。そういうことがあれば通報を受けることになっておりますから、通報を受けないところを見ると、そういうことはないと思います。
  69. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 実際これはたよりのない御答弁でございまして、私は決してあげ足をとったり、そういうことはいたしません。ただ、私は、事態の真相は、特に国民が不安を持ち、常に新聞紙に公開されている事実でございますから、特にお尋ねするのであります。それらの点について全然政府の重要な関係者が御存じないというのには、私はびっくりいたしました。しかし、これ以上私は言いません。  そこで、論点を変えまして、もう二、三、憲法改正問題についてお尋ねいたします。現行の憲法は自主独立の事態ではない占領軍のもとで実は無理やりに押しつけられたのだ、こういうようなことが言われているようであります。また、原文は英語だったのだが、それを縦に直したのだというようなお話も私は聞いております。私は当時は国会議員でございませんからよく十分に知りませんが、しかし、その現行憲法の成立の過程、実際の真相については、ここにおられる大臣や国会議員の方々はよく御存じであると思うのであります。かりに占領軍あるいは占領国家として日本に対して重大な圧力が加わったといたしましても、それに対して一体何人がどういう方法で反対の意思表示をしたかということを寡聞にしてあまりよく心得ておりません。国会の中では共産党の諸君二、三の人たちを除いて圧倒的な多数の方々が賛成投票をしているのであります。そればかりじゃない。賛成投票をするにいたしましても、後日これを独立自主の立場から直したいというのであれば、その意味における留保条件といいましょうか、何らかの発言が私は十二分になければならぬと思うのであります。それを、列国注視の前で、国会で民主的にきめておいて、今さらこれについて占領軍が押しつけたというようなことでは、私は国際的に日本の国会あるいは日本の大臣としてもどうもあまり感心したやり方ではないというふうに思うのであります。  そこで、政府は要するに、この憲法の問題に対して、総理は最高の責任者としてこの憲法を尊重していかれる意思があるかどうか、現行憲法を尊重する意思を十分にはっきり最高の責任者として持っておられるかどうか。
  70. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 先日も参議院で申しましたように、現行憲法が存続する限り、これを尊重する意思は十分に持っております。
  71. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 それでは、少し進んで申し上げます。  政府は、現行憲法を改正するに当りまして、どういうような順序、どういうような経過を経てかえようとされているのであるか、この点が一点であります。  いま一点は、憲法調査会を政府のもとに置こう、こういうお考えのように承わっておりますが、これは、むしろ、置くならば、われわれは国会に置くべきではないかと思う。これは、法律技術上の論点ではなくて、憲法の改正の発案権が国会にある以上、国会の委員会として置くというのであれば、当初からこれは非常に民主的な形でいきますが、政府が自分の案を作るために政府のもとに憲法調査会を置くというのでは、そしてそれに伴って、いろいろな宣伝も行われましょうから、国会の意思を政府の意思によって制限を加えよう、こういうおそれは多分に内在いたしていると思うのであります。従って、憲法調査会を作るに当っては、なぜ国会に置かないで政府のもとに置かなければならぬという格別の理由があるのか。私は、これは少くも立法の趣旨から言えば立法の趣旨に反するお考えであると思うが、いかがであるか。
  72. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 現行憲法によりまして、日本の国会の三分の二の多数をもってしなければ、憲法の原案というものはできないのであります。でありまするから、当然に日本の国会にかけられて、三分の二の多数をもって初めて国民に憲法の原案というものを示すこともできるわけなんであります。ただ、どういう原案を作るのがいいかというような点については、内閣に調査会を置いて、そこで専門家に調査をしてもらって原案を作った方がいい、そういうようにただいまは考えております。
  73. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は、その政府のお作りになる調査会の活動と、その調査会の活動の宣伝が、政府は国会で今お話しのように三分の二以上の力を持っていないから、国会外でいろいろなものを通じてそういうふうにするという政治的な意図が見えるのじゃないか、これはむしろ、もっと公正に、国会に置けるようになるまではお差し控えあったらどうか、こういう意味であります。その点についてはどうお考えですか。
  74. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま申しましたような考え方を、私はただいまは持っております。
  75. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は、次には外交のことについてお尋ねいたします。今の憲法改正については、私どもは政府の理由はないと思うのですけれども、話が堂々めぐりをしていますから、この程度にとどめます。  最初に、一言総理にお尋ねいたします。総理は施政方針演説の中で、外交のところで、自由主義陣営の一員として、民主主義諸国と協調をする、こういうことをはっきりおうたいになっている。他方、これに対抗するソ連に対しては、国交の正常化云々のことを一言お触れになっています。これがどうも日本の外交の基本方針であるかのように思いますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  76. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 その通りであります。自由主義諸国とは緊密なる協調を保って参りたいと考えております。
  77. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 実は、私は、今日の段階における日本の外交の根本方針としては、それだけでは抽象的で意味をなさないと思うのであります。現に同じような態度ををとっていると思われるイギリスを例にとりますならば、アメリカとも協調しながら中共の承認もやっている、あるいは積極的に貿易などの開拓をしている。あるいはフランスの場合には幾らか違いましょう。そのように、同じ自由主義陣営と協調するといいながら、それぞれの国はそれぞれの国の持っている特殊の立場と利害に応じて国家的国民的利益の伸張のために努力しているのであります。そういう際に、今極東にある日本で日ソ交渉をやっておられる。そうして、ことしは新たに日中国交の正常化についても要するに大きな問題となろうとしているとわれわれは考えますが、その際に、いま少し具体的に、どこの国とはどうするのだ、あるいはどういう問題についてはどうするのだ、たとえてあげますならば、ダレスさんのせとぎわ外交はイギリスでははなはだ不評判だというが、日本政府はそういうことについては一体どう考えているか等、私はもう少し具体的なお話があってしかるべきだと思うのでありますが、それらの点について、もっと具体的にお話しを願うことができますか。
  78. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 自由主義諸国といえば、アメリカ、イギリス等を含むことはもとより当然であります。そのときに、ソ連や中共など、これもまた今のあなたの御質問の中から見ると自由主義諸国という中に考えていらっしゃるように聞えたのでありますが、ソ連や中共とはとにかく国際関係が正常化されていないのであります。それをどうにかして正常化したいということを別に項を分けて申し上げたのであります。
  79. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は別に中共やソ連が自由主義陣営とは思っておりません。それはもう当然のことです。ただ、自由主義陣営の諸国があって、日本はこれとかたく協調していく、しかし他方それと対立する国に対しても、日ソについては云々と、こういうお話があった。それで、日ソにしろ、あるいは日中にしろ、そういうような間に対して、もう少し積極的な態度をお出しになる必要はないか。単にそういうアジアの問題だけではなくして、世界の一般的な外交の関係においても、もう少し——特に日本の場合には御承知のように自衛力はないのでありまして、外交の働きはきわめて重大でありますから、そういう点について私は総理のお考えを聞いている。
  80. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 ソ連や中共とは国際関係を正常化したいということを申しました。それから、アジアの諸国とは、賠償等の問題を片ずけて、もう少し経済的に緊密なる関係を結びたいというように申したのであります。詳細なことは外務大臣から答弁した方が適当だと思いますから、外務大臣の方にどうぞ御質問を願います。
  81. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 では外務大臣にお願いします。
  82. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、今伺いました御趣旨はごもっともだと思います。自由民主陣営の諸国と緊密な協力をしてやる、これを外交の基調として進めていくことは、たびたび申し上げました通りでございますが、しかし、それをやるためには、自国すなわち日本の利害関係の向うところをよく考察して進めていかなければなりません。そこで、協力するということが無条件にそれらの国々の言うことばかりを聞くという意味ではむろんないのです。それがために日本としては総理の言われる通りに日ソ交渉もやっているわけでございます。それからまた、私どもは、アジア方面に対する相当具体的の考え方を外交演説でも申し上げたつもりでございます。経済外交について申し上げたつもりでございます。また、善隣諸国、日韓関係その他についても一通り考えるところを申し上げたつもりでございます。さような方針によって進めていきたい、こう考えております。
  83. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 具体的な問題に入ります。  一つは中共との国交の正常化の問題であります。総理の施政方針は、中共との貿易関係の改善にも力を注ぎたいというのでありまして、中共については貿易のことだけが取り上げられているように見受けられますが、一般的な国交の正常化、回復については、どうお考えになりますか。
  84. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 一般的な国交回復ということですね。これはやはり中共とも国際関係の正常化を欲しているというように考えております。
  85. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 もし総理がそういうお考えであれば、先般の政治協商会議で向うの周総理も、三べん目だがというので日本に呼びかけておるようであります。どういうふうな形式か、経過をたどるか別といたしまして、こういう中共との国交調整あるいは正常化について、向うの総理も抽象的には今の総理と同じようなことを言っておられる。それならば、われわれはこれを具体化するように努力すべき段階にあると思うが、それについてのお考えはいかがですか。
  86. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 中共が国際間の平和の一員だということが明瞭だという傷合においては、承認をされるような事態が来ると思うのです。そういう場合においては、日本も承認をし、国際関係は正常化せられるものだと思うのです。現在において、中共は平和の一員であるかどうかということについて疑っている国があるわけですね。それですから承認がされてないような事態でありまするから、日本が中共をすぐ承認をして国際関係を正常化してしまうという時期にはまだ達していない、こういうように考えられるのです。
  87. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 総理が御心配だといかぬかと思いますので、私は申し上げておきますが、承認の問題、あるいは国交の正常化の問題は、決して共産主義思想とか共産主義というものとは別個の問題であります。日本の国の独立の利害のため、あるいは極東の平和を増進するために、こういう観点から私はお考えになるべきものと思うのであります。従って、そういう点で日本としては特別の利害関係のある国に当るわけですから、列国の動きもさることながら、列国の中でもイギリスとかその他いろいろ新しい国あるいはアジアの国はみな承認しておるわけでありますから、むずかしい問題の処理は別にしまして、これらの点について格段の熱意と努力を傾けていただきたい。これについて。
  88. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 外務大臣から答弁いたします。
  89. 重光葵

    ○重光国務大臣 この点も、私は御趣旨はごもっともだと思います。むろん日本といたしましては日本自身の立場からこういうことの判断をいたさなければならぬと思います。しかし、それだからといって国際情勢を無視するわけには参らぬと思います。今の承認問題につきましては、私の申し上げました通りに、日本は国民政府を承認いたしております。(発言する者あり)これについては御議論もありましょう。(「大ありだ」と呼ぶ者あり)これは御議論もあることは私も承知いたしておりますが、しかし、これは日本は承認したのであります。国会の協賛を経て承認したのであります。そこで、直ちにその態度をこの際変えるということは、非常な理由を持たなければ容易にできることではないと私は考えます。そこで、それは国際情勢も考えなければならぬ、こういうことを常に申し上げておるのでございます。そういう情勢の変化によってこれは考えて差しつかえない問題だ、こう思っております。しかし、東ア全体、極東全体の形勢を緩和する、緊張を緩和するということは、少しでもこれはやる方がいいのであります。そのためには、台湾海峡の問題などが取り上げられて緊張緩和の方向に向くということはいい、こう考えて、私はその意見をも申し上げたのでございます。
  90. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 今の外務大臣の言われたことは、外務大臣の施政方針の演説に確かにございました。「国民政府を承認しているわが国が同時に中共を中国政府として承認し得ざるは言うを待たざるところ」、こういう文章が確かにありました。しかし、そのお考えは頭が少し固まり過ぎておる。今ちょっとお話の中に、重大なる理由があれば変えてもよろしい、こういう含みのある御発言がありました。私は、一旦政府が国民政府をかりに承認したといたしまして、また新しき事態が起れば、その新しき事態に善処するために一旦きめた方針が変更されることがあっても一向差しさわりない、それこそ政治の常識であると思うのであります。そこで、今外務大臣が言われた理由では、中共との国交の正常化をやらないという理由にはならない。おそらく、国際情勢という中には、アメリカがあまり快く思わないというようなことも入っておるのでありましょう。しかし、そういうことをも含めて、日本は日本の利益のために、東亜の平和の増進のために、複雑な事態に即応して適切な措置を講じながらそちらの方向へ持っていく、中共との国交正常化へ持っていくというのが、日本の外務大臣の重大な任務である、こう私は思うのであります。そういう点について、今すぐやるということでなくても、私が今述べました限りでの考え方についてどうお考えでありますか。
  91. 重光葵

    ○重光国務大臣 むろん、一旦きめた方針でも重要な原因があればこれを変えることができるというのは理論上正しいと思います。国際関係においてもそれは正しい。しかし、重大な理由なくしてみだりに変えるということになりますと、日本の国際信用は傷つけられます。これは重要なことでございます。慎重にも慎重を重ねなければならぬ。そこで、日本の外務大臣が自分の国の目先のことばかりで動いていいという結論は出かねます。さように言われたわけではなく、御趣旨は私も御同感の点があります。しかしながら、かような重要な問題について、日本がもし近隣の国との関係を誤まるようなことがあったらば、これは私は将来大きな傷になると思います。しかし、私もお話の通りに、国際情勢、むろん国際情勢の中にはアメリカの関係も考えなければなりませんが、さようなことを十分に考慮して、その変化のある場合にはどちらにいきますか善処するということは、これは当然のことであります。それは私はよく検討しつつ進んでいかなければならぬと思います。今のところでは、現在の日本の立場を変えることはできない、こう申し上げるよりいたし方ございません。
  92. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は、かねて、極東においての問題を日本が他国よりも先んじて憂える、あるいはこれに善処する、こういう態度をとるのは当然だと思っておるのであります。外務大臣の今の御答弁では、きわめて不満でありますが、問題を他に転じます。  実は中共の抑留者の問題でありますが、一月二十六日のジュネーヴからの電報によりますと、われわれの田付総領事に向って、向うでは、抑留者の送還のために提案をしてきておるようであります。それで、総領事から何かこれについて情報があったか、あるいはこれについて何か政府は努力されようとしておるか、これをお聞きしておきたい。
  93. 重光葵

    ○重光国務大臣 失礼ですが、抑留者はどこのですか。
  94. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 中国です。
  95. 重光葵

    ○重光国務大臣 中国から日本に……。
  96. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 そういうわけです。
  97. 重光葵

    ○重光国務大臣 最近その問題は、私は承知をいたしておりませんが……。
  98. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 それでは、簡単ですから読み上げます。ジュネーヴ二十六日発、AFP特約というので、毎日新聞に出ております。その中身は「中共代表は、日本の公式代表を北京に派遣するよう望んでいることを明らかにした。また日中貿易正常化のための会談を開くことも提案した。現在戦犯」——向うでは戦犯となっておりますが、「送還に関する交渉は行き詰まっているが、戦犯とされる元軍人一千名のほか七千名の日本人が残留している点については一致した。日本代表側は、行方不明と報告された約四万名の残留日本人の情報を繰り返し要求した。赤十字もまたこれらの行方不明者や戦犯に対してなされた告発に関心を持っている。」云々。この問題はジュネーヴの中米会談、ロンドンの日ソ交渉、こういうものにも関係がある。こういう電報がだいぶ二、三の新聞に出ております。
  99. 重光葵

    ○重光国務大臣 わかりました。中国における日本人の引き揚げ問題は、人道上の問題でございまして、私ども政治上の問題とは考えておりません。従いまして、ジュネヴァにおきまして、わが方の外交機関と先方の代表者との間に、相当長く交渉を続けております。それについては、まだ結末を得ませんけれども、相当の効果があったと私どもは考えております。その交渉を少しでも政治的の交渉に向けようとするのが、中共側の態度でございます。しかし、承認問題等のことを今交渉する時期でないことは、先ほども申し上げた通りでございますから、政治交渉には入らない。やはり人道上の問題を中心に交渉するという態度をもって続けておるのであります。結末は、まだはっきりしてないということを申し上げてお答えといたします。
  100. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私も別に政治的交渉をやれという意味ではないのであります。ただ問題がこういうふうに出て、新聞などにも報道されているような事態でありますから、私はいま少しこういうようなことにも注意を払ってもらって、問題のあるごとに推進していく、解決の方向へ進めていくという点について、万遺漏のないように注文をいたしておきます。  なお、これは日ソ交渉にちょっと関係があるわけでありますが、南千島の帰属、あるいは北千島、南樺太の問題まで含めまして、日ソ交渉に残された問題の解決について、インドに仲介を委任するというような訓令を出したという、これはある新聞だけに出たことでありますが、そういう事実がありますか。
  101. 重光葵

    ○重光国務大臣 その御質問は、どこかであったと思いますが、そのときお答えをいたした通りであります。そういうことはございません。日ソ交渉は、日ソの両全権の間でロンドンで交渉を進める方針でございます。
  102. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 日ソ交渉についても承わりたいのでありますが、これは衆参両院で多少問題になっておりますから、私は原水爆実験問題についてお尋ねをいたしたい。  一月十五日の新聞であったかと思うのでありますが、外務大臣は、川奈のホテルに総理を訪問されたあとで、談話を記者団としておられた。その中に、簡単な記事でありますが、太平洋における米国の原水爆実験による被害の補償は、国際的に措置するよう努力するつもりだ、それから実験の中止方の申し入ればできぬ、こういう二つのことを御発表になっておられるようであります。これは大体の事実ですか。
  103. 重光葵

    ○重光国務大臣 原水爆の問題について、私どものとってきました措置をちょっと御説明申し上げます。それは、原水爆の実験がまた行われるという報道は、かなり前にございました。これは、原水爆の使用はむろんのこと、実験ももちろんやってもらいたくないというのが、われわれの考え方、日本の考え方でございます。それを国際会議やその他に常に持ち出してはおるのでございますが、アメリカ側に対しても、そのことは意向を伝えたのであります。しかし、今日不幸にして、原水爆の実験禁止というようなことはまだ国際的にきまっておりません。のみならず、実際は、まるで原水爆の競争みたいな状況になっております。そこで日本といたしましては、国際的に禁止方法のないことをたてにして実験がやられるならば、その場合には、あくまで不当な被害がないように、あらゆる準備、予防措置をとってもらわなければならぬ、こういうことを強く申し入れてきておるのでございます。さような措置をとりまして、万一それにもかかわらず、被害者の過失によらざる、もしくは先方の過失による損害がありました場合には、それは、補償をしてもらわなければならぬという意向も表示しておるわけでございます。
  104. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 この問題は、御存じのように、きのう終った米英会談でも、イギリスの方から、いろいろ問題が出たというように新聞は報道しております。というのは、具体的に言えば、水爆実験の制限をしたらどうかというようなことがイギリス側から出て、そうしてアメリカの方で、あまりどうも賛成しなかったような新聞報道が行われております。従って、これは米英陣営内においても意見の相違があるようであります。しかし日本は、申し上げるまでもなく、水爆の被害を一度、原爆の被害を二度受けておる。国民全体が、非常にこの点を不安に思っておるわけでありますから、ただいまの外務大臣のお話は、まことに私は手ぬるいといいますか、そういうふうに思うのであります。万一被害が起きたらというような、そういうことじゃなくて、被害を未然に防ぐために、やはり原水爆の実験禁止の問題について、もっと日本人として正面から取り上げて、そうして強く米ソ両方に、そういう点を私どもはいろいろな形において要請をなすべきものと考えます。現にある大学の教授は、原水爆の実験については、国際法上からも重大な疑義があって、むしろ反対だというような意見を出しておる人があるのであります。特にアメリカの場合には、信託統治の地域で実験が行われている。信託統治というのは、被統治国の国民の利害をむしろ守るために、いろいろな施策が行われなければならない。その被害を受ける方は、それに反対いたしておるわけでありますから、そういう根拠もありますし、また公海に対して、この実験の結果が、いろいろな危険だとか、障害を来たしております。だから、公海自由の原則にも反する点があるようであります。従いまして、法律家としても問題があるのでありまして、私の読んだものでは、最近マーコリスというアメリカの国際法学会の会員が、やはり同じような日本の学者に対して、もう少し日本が、こういう問題について、国際法の学問的な立場からも要請したらどうか、こういう書簡を送ってきたということが伝えられております。ですから、外務省はいろいろ政治的な考慮もされておるのだと思いますが、しかし、それにしても、一定の法律的根拠もあり得る問題でありますから、あらかじめ賠償なんかも、被害が起きたらというのではなくて、被害が起きる前に、この問題について私はもう少しはっきりした強い態度で要望していただきたいと思います。
  105. 重光葵

    ○重光国務大臣 最近華府で行われました英米会談においては、原子力の問題については、平和利用ということを非常に推進しておるという発表がございます。それを制限するとかいう、先ほどちょっとお話の点も新聞に出ておることで承知いたしております。原水爆の実験ということは、私は、これはあらゆる角度からいって、人道上の点からいって、またその他今御指摘の法理論からいっても、いろいろ議論はできるのでありますから、そういうことをもって、この実験が禁止されるように努力をしなければならぬ、こう思っております。その点においては、これはやはり国際的にこの問題を取り上げて、特に国際連合等においてこれを決定することが、一番私は適当なところだと考えて、それを推進しておるわけであります。しかしながら、私の申し上げたのは、これが今日国際法として禁止されておるものではないという点を申し上げたのでございます。そこまで持っていきたいのでございます。立法論として、あくまでそこまで持っていきたいのでございますが、まだそこまでいっていないということを申し上げたのであります。従いまして、その次善の方策をも十分に考えておかなければならぬ、こう思って、その措置をとっておるわけであります。
  106. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 原水爆というものは、きわめて新しくできた問題でありますから、従って、国際法上積極的なこの問題についての禁止措置がないというのは、法律の方があとからおくれておるわけで、当然だと思いますが、それらの点につきましては、私の質問の趣意を御了承いただきまして、ぜひ万全の努力をお願いしたいと思います。  次に、私は予算のことについてお尋ねしたいと思います。第一に三十一年度予算について、これは総理にお尋ねいたしたいのでありますが、政府の三つの大政策——組閣にあたりお約束になりました三つの大政策は、本年度予算にどのように盛られておるか、どういう関係があるかという点でもよろしゅうございますが、これについて。
  107. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 三つとおっしゃいましたのは……。
  108. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 憲法改正、行政機構改革、税制の改革であります。
  109. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 税制改革は、本年度においてはまだ完全には出せない、三十二年度において、これを実行するつもりであると申し上げたと思っております。  行政機構の問題は、成案のでき次第この国会にかけますということを申し上げたのでありまして、今行政管理庁で一生懸命やっておるわけであります。できたらば出しますということを申し上げました。
  110. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 申し上げるまでもなく、予算が一番の政策の具体的措置になるわけであります。ただいまもお話がありましたように、税制はあと回し、憲法だけは、政府に置く調査会の形で出発したいというお話のようであります。それから行政機構改革はでき次第、こういうことであります。私は、今度の通常国会に、政府のこういう大きな政策が十分に盛られなかったという点では、これは、実は政府の公約違反の疑いが多分にあると、こう思います。もちろん鳩山内閣は、三十二年度予算その他をみずから組むというので、そこに逃げ場を求めておられるようにも思いますが、しかし実際の政治的常識は、内閣がそのときまで続くかどうかについては、はなはだ疑わしいのでありますから、鳩山内閣として御公約になった三大政策が三十一年度予算に盛られなかったという点については、私は、政府は相当の責任を感じなければならぬと思うのでありますが、総理の御心境はいかがでありますか。
  111. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 三大政策として申しましたものについては、ただいまあなたのおっしゃる通りの経過であります。けれども、社会保障の問題についても、住宅の造営の問題につきましても、あるいは減税の問題につきましても、前年度に引き続いてやっておりますことは、あなたの御承知の通りであります。
  112. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 大蔵大臣に一つお伺いいたします。どうも三十一年度予算は、全体として非常に弾力性がないようにわれわれには見受けられます。当初予備費として計上されておった百三十億が、五十億くらい削られております。朝鮮銀行や台湾銀行の清算剰余金なんというものまでひっぱり出されておるようである。それから三十年度の恩給、あるいは義務教育費に充てられていたものが、やはり三十年度の補正の方へとられてしまっているようにも見られる。自然増収も、相当大幅に計上されているようであります。従って予算に弾力性がないので、これで果して補正をやるということになれば、大へんなことになるのではなかろうかとわれわれは思いますが、大蔵大臣は、補正予算をお出しになる御意向はありますか。
  113. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。三十一年度の予算、これは健全な方針を貫いた結果、言いかえれば、普通歳入の範囲内において歳出をまかなう、こういう建前をとっております。従いまして、そういう面から見ました場合に、なかなか思うように資金の配分ができなかったということは認めなければならぬと思います。しかし他面において、今回の予算は財政と金融とを一体にしていこうというところに特色を持たしておるわけであります。弾力性がないという、それはいろいろ見方もありましょうが、私の考えとすれば、それほど弾力性がないとも考えておりません。補正予算を組む考えは持っておりません。
  114. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 補正についてのお考えを……。
  115. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十年度の予算補正につきましては、三十年度に補正予算を組むとすればどうしても計上しなくてはならぬものだけに限りまして、三十年度に補正をしていきたいと思います。
  116. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 話が少し食い違っております。私は、三十一年度予算補正をお出しになる御意向であるかどうかということを伺っております。
  117. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど、三十一年度に補正は組まぬということを、前の答弁の最後のときに強く申し上げております。
  118. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 ただいま大蔵大臣は、私がお尋ねしたことに対して、三十一年度は補正は組まない、こういう御答弁であります。ところが、すでに総理もお答えになっておりますが、行政機構改革が成案を得れば、本国会にも提出したいというお話であります。従って、もし予定通り成案を得られた行政機構改革法が通過いたしますならば、これは当然予算補正を必要とするものではないかと考えますが、いかがでございますか。
  119. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 特別の事態が起つた、あるいは行政機構の改革は、おそらく予算総則に規定すると思いますが、行政機構を特にかえたという場合は、むろん予算補正はあり得ると思うが、しかし今の状態におきまして補正は行いません。
  120. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私が大蔵大臣にお尋ねいたしたいのは、行政機構改革というような問題は、政府の三大政策の一つでございます。あらかじめ政府がそれについて成案を得るように、今全力をあげておる最中であります。これは、天災やその他不測の事態とは違うのであります。これは、むしろ早く成案を得て、国会に提出しなければならぬものであります。従って、そういう際には、当然予算補正を必要とすると私は思う。それを、ただいま大蔵大臣は、予算補正をしないというお言葉ですが、もししないというならば、行政機構の改革をやらぬということになりはしないか。少くも、予算補正を必要としない程度の行政機構の改革をやるということになるではなかろうかと思うのですが、いかがですか。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 行政機構の改革につきましては、総則の二十一条にも一応書いてありますが、「行政組織に関する法令の改廃等に伴う職務権限の変更によって、別冊各号に定める所管および組織区分により、予算を執行することができない場合においては、所管もしくは組織の設置、廃止もしくは名称の変更を行い、または所管もしくは組織の間において予算を移し替えることができる。」こういうような形で一応総則にも考えております。しかし、行政機構の改革がどこに及ぶか、これはいよいよ成案を得た上でないと申せません。
  122. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は、何か法律のすみをほじくるような意味で申し上げているのではないのです。やはり政府の大きな政策なんです。ですから、実はそういう点については、大蔵大臣が初めから言っておられればいいのであります。行政機構改革をやるのだ、これは政府としての大方針なんだ、この大きな政策を生かす場合には、予算補正をすることがあるんだ、こういうような建前を公然ととっておられるなら、われわれは承知するのです。しかし、今のようにしないと言っておいて、すぐまたこういう言いわけが予算の総則についている。きょう実は午前中に大蔵大臣の御説明を聞いただけで、御説明にはそういうものは出ておりません。従って、われわれはそれを承知しないのはあたりまえなんです。それらの点は、ぜひもっと率直な、そして政治的にきちっとした御発言を願いたい。特に今度は、通常国会で三十一年度全体についての予算が出ておるわけです。そのときに当然に、行政機構改革をやれば補正が出るのはあたりまえだと思うのです。今の政府のお考えは、当初のような大きな機構の改革からだんだん縮小してきておるようにわれわれは見ております。しかし、それにしても、なおかつわれわれは、政府の三大政策なんでありますから、私は、相当な変更があって、結局予算をいじらざるを得ぬ、こう思うのでありますが、その辺はいかかですか。
  123. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。従来の行政機構の改革におきましては、先ほど私が申し上げた総則のあの規定で大体片がついておる。行政機構がどういうふうに大きく改革ができるか、これはそのときになってみないと、今から何とも私は私の立場としては言えない、そういう意味において、先ほど御答弁申し上げたわけであります。
  124. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 じゃ一つ、行政管理庁長官に聞きましょう。
  125. 河野一郎

    河野国務大臣 行政機構の改革についてお尋ねでありますから、お答え申し上げます。行政機構の改革につきましては、これを断行することに準備を整えておりますることは、御承知の通りであります。前国会におきまして、審議会の機構を拡充いたしまして、また各方面の御要望にこたえまして、委員も全部これを新しくいたしまして、せっかく今非常に熱心に委員の諸君が会議を進められております。大体この答申が、二月の二十日ごころまでに出ることを目途として審議会を進めていただいております。それが出ました上で準備を整え、成案を得て、本国会に提案をいたすということに大体の閣議了承を得ておる次第でございます。
  126. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 総理、ただいまお聞きになりましたようなわけで、ただいま私どもは、三十一年度本予算審議に入ったばかりであります。その入った当初において、行政機構の改革は、二月の二十日くらいに成案を得て本国会に出すと担当の大臣が御答弁になっております。そうしてその内容は、もちろん私どもも具体的に承知はしておりません。それから、その改革の規模は、当初いろいろ伝えられたよりは小さく狭められてきたようにもわれわれは思います。しかしそれにしても、このわれわれが審議を始めた予算では、私はやっていけない、そういう程度のものであることは明らかだと思うのであります。そこで、本予算審議するその出発から予算補正を当然に伴うようなものでは、どういうものかよくわからぬ。これは政治的にいってやはり大きな問題だと思うのです。悪口を言えば、今審議を始めようとする三十一年度予算案は、何か不確定な、非常に異同を予想されるような、変化を予想されるような予算だ。(「暫定予算だ」と呼ぶ者あり)暫定予算だという声がありますが、そういう疑いも実は出てくる。総理は、こういうような予算の出し方はまずいとお思いになりませんか。
  127. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 どういうような行政機構の改革ができるかは、私もあなたに説明はできないのでありますが、その範囲においては、大体において予算総則の規定、さっき大蔵大臣が読みましたが、あれによって措置ができると思っております。
  128. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 これは、むろん私は総理がそんなこまかいことまで御存じないことは、当然だと思う。しかし、伝えられるところでも、どの省とどの省をくっつけてどうするとか、それから予算編成の仕方をどうするとか、中央・地方の関係をどうするとか、相当広範囲なことがいわれておるわけです。またそういうことをやらなければ、行政機構の改革とは言えないのです。少くとも内閣の三大政策の一つなんですから、これは率直に言って政治的な不手ぎわ——別に私は法律のすみをつっつきませんけれども、大局的にいって、私は本年度の予算は、その点ではちょっとまずいというくらいのことは、お認めになって一向差しつかえないと思います。
  129. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。先ほどから申し上げましたように、三十一年度の予算は、今提案して御審議を願っておるわけでありまして、今補正を組むということは考えていないわけであります。
  130. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 今ここで補正を組まぬという答弁をしておられますが、間もなくこの国会に補正が出てくると思う。それでなければやり繰りがつくはずはないと思う。今ここで私、これ以上意見の相違を述べると時間がかかりますから、やめますが、しかし大蔵大臣、御発言の責任は十分お持ちになっていただきたいと思います。  次に、私は本年度予算編成と政党の立場について、総理の御見解を承わりたいと思います。私どもは、自由民主党を基盤とする鳩山内閣が、自由民主党の多くの政策を実践に移すべき責任は十分にあるものと思います。従いまして、大局的に予算編成について自由民主党の政策をお取り上げになり、あるいは具体的に予算措置を講ぜられるということについては、政党政治の上から申しまして十分に賛意を表するものであります。ただ私どもが承わるところによれば、そういう程度の政党の内閣に対する指導的立場と申しましょうか、そういう立場以上に出て、何億円はどこへくれ、何億円はどこへやったらどうかというような、いろいろな動きが編成の過程にあったようで、要するに内閣の予算編成権そのものが、政党のいろいろな動きによって阻害されたというような傾きもあるように、実はわれわれには見られるのであります。そこまで参りますと、これは、むしろ政治的にも行き過ぎでありますし、ともすれば、これは政党の個個の利害、特に本年は参議院選挙などもありますので、その選挙のためのいろいろな経費が盛られるというようなきらいもあるという批判が、世間に相当広く行われております。従いまして、政党と政党内閣における予算編成の根本的な点について、私は総理のお考えを承わりたいと思います。
  131. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 予算編成は、言うまでもなく政府の責任においていたしました。しかし、党の熱意のある希望も聞いたことは聞きましたけれども、編成の責任は政府においてとっております。
  132. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 次に、私は特に総理にもう一度お尋ねいたします。予算編成が思ったよりも長くかかったという裏には、総理が予算編成について指導、あるいは指揮、あるいは命令等等、総理としての立場を具体的に出して十分に尽力されなかった点があるのではないか。これは御病気のせいとも思われますが、しかし、どうも総理の予算編成に当っての熱意のない態度は、相当今国民の批判の的になっております。それについて総理の偽わりのない、ほんとうの率直な御心境を承わりたい。
  133. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は、はからずも二週間ばかり腸胃を害しまして、川奈で寝ておりました。けれども、毎日官房長官と電話で連絡をとりまして、予算編成のおくれないようによく相談をいたしました。病気のためにおくれたという事実はないはずであります。
  134. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 少し具体的に論議を進めます。最初に、三十一年度は、経済自立五カ年計画の第一年度に当るわけでありますが、自民党の経済自立五カ年計画との関係と申しましょうか、どういう点を特に取り入れてやったのだということについて、これは高碕経企長官にお尋ねいたします。
  135. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済五カ年計画は、昨年の経済六カ年計画を大体に受け継いだものでございます。昭和三十五年を目標といたしまして計画を進めておるわけであります。三十一年度の予算は、三十年度の一年の経験によりまして、この目的を達成するために、いろいろ重点的にいたしますが、せんじ詰めますと、三つの点に帰着するわけであります。一つは、生産基盤の強化ということ、第二が輸出の促進ということ、もう一つは雇用機会の増大、この三つが重点になっておるわけであります。生産基盤の拡大につきましては、まず工業立地条件ということのために、工業用水をどういうふうに確保するかという点を新たに組んであります。それから中小工業を基礎に置きます機械設備の合理化ということでございまして、これは、開発銀行の金をそっちへ回すということで、新たにその方を見ております。まだいろいろございます。貿易の促進につきましては、輸出入銀行の資金増額する。もう一つは、プラント輸出というものにつきましては、あとのサービスをよくしなければならない、これが欠けておるきらいがありますから、その方に新たに予算を組む。それから失業対策、つまり雇用関係の増大につきましては、一般失業対策というほかに、臨時就業対策というものについて、昨年よりもかれこれ百億円近くの増額を認めたわけであります。以上であります。
  136. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 ただいま経企長官のお話は、例示的に幾つかの点をあげて、五カ年計画の第一年度としての三十一年度予算にいろいろ重点を置いたのだと、こういうお話であります。実は経済自立五カ年計画のような、計画的に日本の経済を建設し、拡充していく。こういう計画を具体的に推し進めていくためには、そういうような部分的部分的の問題を取り上げて、これに予算措置を講ずる、こういうやり方ではむずかしいのではないかというふうにわれわれは思います。そこで、私は実は今五カ年計画が出ましたので、五カ年計画について、三、四の点をお尋ねしたいのであります。  第一は、五カ年計画は、五カ年計画とされてはおりますけれども、実は毎年の計画数字ではございません。政府の理由とされるところは、おそらく毎年毎年の具体的な事情によって、その年その年の経済の関係は変ってくるから、あまり一年ずつものにこだわってはならぬというような御意向ではなかろうかと思う。しかし私は、毎年々々の数字まで策定しておいて、その数字を実現するためには、こういう点に重点を置いた施策をやるのだというところまで踏み込んでおかないと、五カ年計画は、ただ五年後の理想の数字をあげただけだ、こういうことになると思うが、経企長官はどうお考えになっておりますか、この点が一点であります。  それから第二に、この五カ年計画を推進するために、どういうような根本的な方針が継続的に行われるのか、その根本的方針、あるいは資金的裏づけがさっぱり見当らないように思うが、その点についてはどう考えられるか。第三に、雇用の問題を相当言っておられるのであります。私どもも、雇用の問題は一番重要な問題である、しかし一番困難な問題だと思うのであります。この雇用の問題について、たとえばちょっと数字などを見ますと、基本産業を合理化する、生産性を高める、こういうお話がありながら、しかも五年間に、この基本産業の方で百万人からの新規雇用をかかえ込もうとされておる。これなどは、希望数字としては私はいいと思うけれども、政府の五カ年計画として実現の可能性があるかないかということになると、はなはだ疑わしい。消費水準の問題でも、五年間に二三%程度の消費水準の引き上げを考慮されているようであります。そして生産の増大と見合えば、まあこれくらいいいだろうという考え方じゃないかと思うのですが、現に今日本は、戦前に比べて、生産の数字は八割から上っております。しかし雇用はどの程度上っておるか、私は相当問題じゃないかと思う。こういう点。  それからさらにいま一点は、防衛費だとか対外債務の大体の考え方、比率ですね、財政の中において占めるこの二つの経費の比率は、大体ずっと横ばいのような考え方——私は、政府の考えておられる防衛関係の経費なんというものは、そんなものでは済みそうもないと考えるが、それらの点について、相当ずさんきわまりない、五カ年計画は絵にかいたもちではなかろうか、こう思うが、これらの点についてお考えを承わりたいと思います。
  137. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 第一の、年度別計画を持っていないじゃないか、こういうことについての御質問でございますが、これは、資源を自分の国で持っている国が、自給自足の経済を立てるということからいたしまして、それでやる場合には、きわめて容易に参ると思うのでありますが、御承知のように、日本の経済は輸出貿易を振興する、これによって経済の基調を作っていかなければならぬ。輸出貿易の伸張ということは、一にかかって海外の景気のいかんによることでありまして、これははなはだわれわれの不明を謝するわけでありますが、昭和三十年度のごときは、実は当初は、十六億二千万ドルから四千万ドル輸出をすればいいだろう、こういうふうに考えておりましたところが、最近の見通しでは、二十億五千万ドルになった、これは海外の状況によって左右されたわけであります。そういうことによって、しょっちゅう変化するものでありまして、これは、年々変更するものと見なければなりませんから、大体五年先の目標を置きまして、それに近寄るようにして、実際の数字は、最近の実績を基礎として立てていくのがほんとうじゃなかろうか、不安定な数字を羅列して、それによって計画を立てることは、かえって間違いが起るのじゃないか、こう私は考えておるわけであります。  第二の根本方針については、これは経済を自立するということ、雇用関係を増大させて、増加する人間にいかにすれば職業が与えられるかということが根本の方針でありますから、その方針に沿うにはどうすればいいかという目安をつけるわけであります。雇用問題につきましては、今の御質問のごとく、工場を能率化し、手動、ハンド・ワークの機械をオートマティック、自動的の機械にかえますと、そこに必ず一時的には相当の失業者が出ることは当然であります。けれども、一つの工場を経営いたしますにつきましても、ただ工場で働く人だけではなくて、運搬をする人、帳簿係、仕入れをする人、販売をする人という人等があるわけでございます。これが一国の経済にいたしますと、いわゆる第三次産業になるわけでございます。一時は三次産業にこの余剰人員を吸収することになりますが、終局におきましては、合理化をいたしまして事業がふえてくれば、それだけ輸出もふえるということになりますから、それによって全部の失業者吸収するということが、政府のとっておる根本の方針であります。  それから第四の防衛関係のことについての御質問でございますが、これは現在におきましては、五カ年計画におきまして、大体国民所得の二%ないし二・五%という程度で、現在防衛費とそのほかの支出と一緒にして見ておりますが、これは防衛六カ年計画が国防会議におきましてきめられましたときに、それにアジャストしていきたい、こう考えております。
  138. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は、五カ年計画自体を特に突っ込んで検討を加える時間はございませんから、それについての問題はこれで打ち切りますが、ただ自立五カ年計画というような形で——私は、計画経済なんということは一つも言っておりません。計画経済と経済を計画的に建設していくこととは違うのであります。今政府のおやりになっておるのは、できるだけ自由にまかせてはおくが、しかし一定の計画を立てて、できるだけその方向へ引っぱっていこう、こういうことだろうと私は思うのであります。しかし、それにしても今の五カ年計画は、ペーパー・プランの色彩が多分にあると思います。しかし、せっかくお作りになったのでありますから、そこで私は、本年度予算との関係を聞いたのであります。  最後にもう一つお伺いいたしますが、たとえば大蔵省の予算原案と、それから最終的な政府の今御提案になった予算案との間には、若干の開きがあるわけであります。これは申し上げるまでもありません、相違がある。その間三者会談とか六者会談とかいろいろあって、そうしてできたのであります。そうすると、最初の大蔵省原案では、五カ年計画を遂行するのに不十分である、あるいは最終案ならば五カ年計画が大体見込みがつくのか、それらの点については、その程度の予算の変更なんか何でもないとお考えになるのか、そういう点でも、五カ年計画と三十一年度予算との間には大へんギャップがある。はっきり言えば、大した関係はないのだ、ただ美辞麗句で、関係があるかのように言っておるのだ、こういう印象しかわれわれは受けませんが、この点はどうですか。
  139. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お話のごとく、計画経済ではないということは事実でございまして、経済に計画性を持たしていくということで、われわれは自由経済のもとに進んでおるわけでございます。それにつきましては、最初の政府が考えましたこと、あるいはあとで修正いたしましたことにつきましても、できるだけ経済五カ年計画に沿うように努力して参ったわけであります。
  140. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 今度の予算は、ただいま申しましたように、いろいろの産婆が入りまして、たくさんの人が取り上げた予算のようであります。従って、あっちも入り、こっちも入り、どこに重点があるかわからぬ雑炊予算だというような、あるいは分取り予算だというような、あるいは参議院選挙政略予算だというようないろいろな話が伝わっておりますが、確かにそういう傾向もあります。しかし、その中で一番はっきりしておる点は、防衛関係の経費の相当大幅の増加だ、こう私どもは見ております。たとえば、防衛支出金と防衛庁費は、初め千三百二十七億円であったようでありますが、だれが運動したのかわかりませんが、千四百七億円にいつの間にかなっておるようでおります。そして防衛庁費の方も、これは千億をとうとう突破し千一億、そのほかに百六十億の予算外契約があるようであります。総予算に占める比率を、削減された賠償関係費と合せてみても、われわれの計算では一五%以上でありまして、前年度は一四・四%くらいだったとわれわれの計算では思いますが、相当比率の上から見てもふえております。これは大蔵大臣、その意味で、われわれは軍事予算だということをはっきり申し上げておるわけですが、お認めになりますか。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 防衛費に関しましては、基本的に防衛ということに対する考え方が違うと、私はなかなか話がしにくいと思うのでありますが、私どもは、国力に応じて漸次防衛力を増していくというのを基本方針にいたしております。この基本方針に基いて防衛に関する経費を考えますと、今回は全都で千四百七億ですか、この金額を計上いたしましたが、国民所得増加等いろいろな観点から見まして、私はそう多分に過大であると思っておりません。昨年度に対しましては、全体として八十億の増加になっております。他方、たとえば社会保障も百二十二億増加いたしております。まあ大体バランスをとってやったつもりでおります。
  142. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私が申し上げましたように、今日は、要するに総理は自衛力というものは認める、こういうお立場のようでありますが、いわゆる平和憲法のもとで、すでに去年からことし、全体としての予算において占める防衛関係ないし賠償関係は、支払いの率がふえておる。こういう点も注意を一つ喚起したわけであります。  これに対照的な関係から私はお伺いいたしますが、住宅の関係であります。この住宅というのは、政府のこの前の四十二万戸という建設計画は、今どの程度に進捗しておりますか。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 具体的な戸数等の数字は、私今持っておりませんが、大体予定にいっておりますが、あるいは若干繰り越しになるかもわかりません。
  144. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私が個人的に調べてもらったところでは、政府の四十二五戸のうち、民間住宅が大体二十四、五万戸見込まれておるようでありますが、これは二十万戸がせいぜいだろうということを私は聞きました。公営住宅は、これは増改築の問題があります。大体これは、工事の完成もしくは工事をしておるものが五割以下の四割五分くらい、あとの五割五分以上は、全然着手をしておらないように私は聞いております。それから公庫住宅は、大体契約は済んで、ほぼできるだろうということであります。しかし、今度は住宅公団などになると、ほとんど実は、特に東京などは申し込みがないといいますか、全然できておらぬようであります。そこで私は、こういう事実から見て、政府は、総理もきょうまたお話しになりましたが、四十三万戸の住宅といっている。これは宣伝としてならいい。しかし実際実績をしっかりあげて、住宅問題の解決をまじめにはかる、こういうふうな立場からいけば、いたずらにその呼称する家の数をふやしてみたところで、実際の家ができなければ、何も問題の解決にならぬのであります。そういう意味と、さらに今度は、住宅関係の資金民間資金を使うようになったようであります。従って、すでにこれは、家賃の増加が当然にあるという世間もっぱらの常識であります。東京都の住宅は、もうすでに毎月払う家賃の額を引き上げてきております。もうすでに引き上げを決行しておる。そこで住宅政策、要するに住宅の増築の問題も、家賃が高くなるという問題も、この二つの点から、特に都市の生活、あるいは焼かれた戦災都市の住宅問題も、実は非常に重要視されなければならぬ現状です。政府は、単に四十二万戸、四十三万戸ふやすなんということじゃなくて、もっと真剣に住宅政策に取り組んでもらいたい、どうしても実行してもらわなければ困ると思うが、こういう点について、住宅問題だけは、たしか数字まであげて施政方針の中に出ておりましたから、総理も御関心が深いと思いますが、お考えをお聞きしたい。
  145. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私が聞いておるところによれば、四十二万戸の住宅は建つ、四十二万戸は大丈夫実行できますという返事を得ているのでありますけれども、ただいまの御質問に対しましては、よく調査をいたしまして、間違いのないようにいたしたいと思います。
  146. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 住宅問題を宣伝の具にしないで、実際住宅問題を解決していただきたいというのが、私の真意です。  それから社会保障の点で、一点だけお聞きしたいと思う。政府は、社会保障にかけた全体の経費が幾らかふえたので、そこで社会保障の関係を重要視して、きょうも大蔵大臣から御発言がありました。しかし社会保障の中で重要な、たとえば健康保険の問題をとってみますと、厚生省の要求は四十一億あり、それを大蔵省が三十億にされて、さらに被保険者の負担すべきものが二十三億もふえておるのであります。自民党の方では、かつて国庫負担を一〇%程度したいというお話であったが、実際的にはその半分程度しか国庫負担しない、こういう実情であります。だから、保険の内容は悪くなってきている、これは悪化したのである、よくなったのではないのであります。この点についてどう考えるか。  いま一点は、生活保護要員のことでありますが、これもことし二・五%だけ対象人員をふやしたのが政府はお得意のようでありますが、たしか去年は、倍率は五%ふやしたと思うのであります。ことしはその半分でいいという根拠、あるいはその半分で十分引き上げになる、手厚く扱うことになったという根拠があれば承わりたいのであります。結核病棟などの整備は、実際には、私は減ることになるというふうに聞いておりますが、さらに進んで医療保険の点では、被保険者の三千万人に及ぶといわれる全体の人口について、何とかもう少し前進した態勢を整えるべきであると思うが、これらの社会保障関係についての認め方について、一つ伺いたい。
  147. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私としましては、もう少し財政にゆとりができれば、ほんとうに社会保障というものについては、十分な検討を加えたい。それは、もう当然のお説のように私傾聴するのでありますが、しかし今日の財政状況では必ずしも思うように行きかねる。しかしそれにもかかわらず、特に今回健康保険等につきましては、受益者負担といいますか、これは二十九億くらいになると記憶しておりますが、それに対応して国もせめて三十億、半分、同等程度は出したいというふうに、実は私としましては非常にふんばったつもりでいたしておるわけでんであります。なお詳しいことは厚生大臣から……。
  148. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお尋ねの健保の赤字問題につきまして、政府負担が四十一億円というようなことであったが、三十億円になったのはどうだというお話がありました。なおそのほか患者の、被保険者の一部負担というものは、健保の後退ではなとかというようなお尋ねでありまするが、私現在の健保の内容というものにつきましていろいろ掘り下げて考えてみたのであります。御承知のように、二十九年度は四十億円の赤字を出した、本年度は六十億円の赤字を出しまして、この両年度の百億円の赤字の処理につきましては、一部は千分の五の料率を上げ、七十億円は資金運用部から借り入れまして、そうして毎年十億円ずつ一般会計からちょうだいをしてこれを償却する、こういうように暫定的に処置をいたしたのであります。しかし私は三十一年度におきましても、今日の健保というものは、七十億円程度の赤字は出る見積りでありますので、いつまでも健康保険というものを今日のような状態に置くことはいかぬ、どうしてもこれを軌道に乗っけなくちゃいかぬ。この赤字の出る原因といたしましてもいろいろたくさんあるのであります。たとえば二十八年度には点数の一部改正をいたしております。それから二年の療養期間を三年に延長しておる。あるいは今まで使っておりませんところの抗生物質であるとか、いわゆる新薬の採用をいたしておる。あるいはその他今日では医術が非常に進歩いたしておりまして、結核の手術ばかりでなしに、場合によっては脳の切開手術までもするというようなことに向上をいたしておる。被保険者もふえ、また全国の病院診療所もふえておりまして、このままの状態で置きますことはいかぬ。ある程度抜本的に健保の赤字対策をしなければいかぬ。これにはやはり一方においては国保には三千万人もこの社会保険の恩典に浴していない者もあるのでありますし、また健保におきましても五人以下の事業場では、そういう恩典に浴さない方々があるのであります。これを全部国庫負担にして、赤字の克服をするということは不可能であります。私は少くとも被保険者が一部負担をする程度に見合うだけの国庫負担は、最低線として出してもらわなければならぬ、こういうことでありまして、それにはまた一方におきましては事業家にも負担をさせる、いわゆる標準報酬を引き上げまして、これから約七億くらいの収入を得るというような工合で、健保を軌道に乗せるということが一番必要であるというので、本年は三十億円の、いわゆる被保険者の負担に見合うだけの国庫負担をしてもらうということにいたしたのでありまして、今後健保が軌道に乗りますれば、私は健全なる健康保険としてスタートをすることができると確信をいたしております。また先ほどお尋ねの、たとえば生活保護の問題について、昨年はたしか五%であったものをさらに二・五%の自然増を見積ったのはどうかと言われておりますが、昨年はまだデフレの傾向が非常にきびしいという関係からいたしまして、一応五%に見込んだのであります。本年はまずまず横ばい状態でございますから、二・五%増の程度でよろしい、こういうことにいたしたのであります。
  149. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 時間がないようでありますから、私は反駁をやめまして、次に鉄道運賃の値上げはやるのかやらぬのか承わりたい。一つは一般的に鉄及び非鉄金属などに非常に強い価格騰貴の傾向があります。それから私鉄やあるいは都あたりでは、すでにこういう協定料金というものをどんどん引き上げております。それから国鉄内部の財政事情から、鉄道運賃値上げは必至で、九月一日から引き上げられることにすでにきまっているような放送が盛んにある。それを参議院選挙のために政府は延ばしておるということでありますが、ここで一度、少くとも三十一年度のうちには、鉄道運賃は引き上げないという御言明を承わりたい。
  150. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 お答えいたします。国鉄の経営の現状は非常に苦しいのでございまして、このままに放置しておっては、私は近き将来に容易ならぬ結果が生ずる、こう思いまして、いろいろその善後処置は考えております。しかしながら今お話になりました通り、鉄道運賃値上げの問題は、ただ採算上の問題だけではございませんので、政治的なり社会的なりあるいは心理的の問題でございますから、この際はこれは上げない、こういう方針であります。
  151. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 この際ではなくて、三十一年度中は上げないのかどうかという私の質問であります。結論だけを……。
  152. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 三十一年度の国鉄の予算には、運賃値上げのことは考慮しておりません。
  153. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 まああれで逃げたつもりで、少しおかしいのですが、先を急ぎましょう。  河野農林大臣に承わります。消費者米価は本年度内上げないかどうか。それから米の管理方式についてどういう構想があるか。それから本年度は食管特別会計で赤字を出さぬという御方針のようであるが、その具体的な理由、こういうふうにするから赤字を出さぬということを、簡単でいいですから一つ。いま一つ、生産者米価はいつごろ御決定になりますか。
  154. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。消費者米価は現状のまま据え置きでございます。ただし外米については引き下げをする予定であります。生産者米価の決定は従来の方式によってきめるつもりであります。三十一年度の食管会計は、外米の価格の下落等を勘案いたしまして、赤字は出ないということに考えております。
  155. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 この予算と非常に密接な関係があります民間資金の動員のために、資金に関する規正の委員会を設けられるかどうか、その委員会の法律的性質はどんなものであるか、どういうことをやられるか、簡単に承わりたい。
  156. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、最近の金融情勢は非常な変化を来たしておりますので、半年や一年前に考えられなかった様相であり、十分民間資金を財政的に確保できるのでありまするが、しかし私としましては、政府の施策を十分反映ができるような何らかの方途を講じたい。それで今考えておりますことは、私としましては、法律によらずして一つ委員会を作っていきたい、かように考えております。
  157. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私は今度の予算で前提とされている相当巨額の民間資金政府の企図する方向へ吸収していく、活用していくということのためには、大蔵大臣の今お話のような委員会では不十分である。おそらく自民党の中にも、私はもっと強いきちっとした資金委員会という構想はあったろうと思う。私はその点で今お話の点では賛成いたしかねますが、時間が来たようでありますから、資金委員会についてのただ簡単のお話だけ承わっておくにとどめます。  ただいま申しましたように実は本年度の予算一般会計あるいは財政上の投融資あるいは民間資金の動員などを入れますと、全部で一兆四百億をこえておりまして、前年度に比べると千三百億以上の増加であります。また単に投融資だけの関係でも、去年は前年に比べて三百六十億くらいの増加でありますが、ことしは八百五十億からの増加であります。すでに公定料金その他の騰貴についても非常に心配がある。予算執行の結果正規のインフレとはいわないでも相当の信用膨張を来たす、いわゆる信用インフレという傾向を来たす。そうして物価が上るということになれば、現在の数量景気は消えてしまい、インフレ景気になるおそれが出てくるのであります。従いましてそういう点についての全体としてのこの予算執行の結果の見通しと、それについてそういうふうにならないようにするために、何か特別の措置をお考えになっておるかどうか、こういう点を私は最後にお聞きいたします。
  158. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 仰せのように民間資金活用までいけば、大体お話のようになるのでありますが、予算といたしましてはあくまで減税を貫きまして、大体税その他の一般歳入ですべてをまかなう。民間資金活用するところは、これは今日日本の経済の規模が相当健全な意味において、いわゆる静かなる拡大をいたしておる、自然資金も要るが、これは採算ベースに乗っていくのでありますから心配しないでもよい、ほんとうのいい意味の生産的の資金、かように考えてよいと思います。ただ予算で私どもが注意せなければならないことは、仰せのようにどちらかというと、幾らか消費的な面の歳出がふえておるということは、これはやはり私率直に注意する必要があると思う。この点については今後極力貯蓄の増強ということを打ち出していきまして、これがインフレ的にならないように最善を尽す覚悟でおります。
  159. 三浦一雄

    三浦委員長 この際お諮りいたします。総予算三葉につきましては質疑は明日続行することとし、この際昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)について審査を進めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  これより昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)を議題として審査に入ります。河野農林大臣より発言を求められております。この際これを許します。農林大臣河野一郎君。
  161. 河野一郎

    河野国務大臣 米の予約数量は農業団体の努力と豊作等の事情によりまして、三千百十一万石に達し、その集荷も非常に順調でございまして、予約数量の全量に相当する数量の売り渡しがすでに完了されたような次第でございます。従ってそれに伴いまして食管特別会計より支払われまする買い入れ代金も多額に上り、この調子で参りますと成立予算の範囲内では、これらの支出ができますのは二月上旬までの分でありまして、それ以上はどうしても成立予算による歳出額を増加いたしませんと、支出できかねるような見通しになって参りました。そこで現在提出いたしておりまする補正予算は、主として内地米の買い入れ数量の増加に伴う歳出額の増加を内容とするものでありますので、すみやかに御審議の上至急成立することのできますよう、お取り計らい願いたいと思う次第であります。
  162. 三浦一雄

    三浦委員長 これより質疑に入ります。足鹿覺君。
  163. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま提案になりました昭和三十年度特別会計予算補正(特用3号)について、若干の質疑を試みたいと思います。なかんずく農林省所官の食糧管理特別会計を中心に関係関原にお尋ねをいたしたいと思います。  私は本問題に入るのに先だちまして、食管特別会計補正の前提であります二つの重要な問題を、まず政府から御答弁を願いたいと思います。その第一点は特集米制度について農林大臣の所信を承わりたいという点であります。巷間伝うるところによりますと、農林大臣は二月中旬を期して特集米制度を実施することを決意し、事務当局に対して法令その他の審議を命じておると伝えられておりますが、農林大臣はそのようなお考えをただいまも持っておられるかどうか、まずお尋ねをいたしたい。
  164. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、特集制度につきましては、昨年予約集荷が豊作に比してはかばかしく参りませんときに準備をいたしたのでございます。ところがその後関係団体方面の非常な御努力、御熱意によりまして、所期の成績がだんだん具現いたして参りましたことは御承知の通りであります。そこでその後経過を見ておったのでございますが、最近に至りましても、たとえて申しますれば青森県等におきましては、実際配給米の辞退が非常に多額に及んでおるというような局地的にそういう事実があるわけでございます。これら局地的に配給辞退が非常に多いということは、逆の考え方を持っていたしますれば、そこにまだ集荷の不十分な事実があるということも考えられるわけでございまして、これらの事情を全面的に調査勘案いたしまして、関係団体の御努力は御努力としてさることながら、どうしても十分でないというような事態があれば、この制度によってこれを補強しなければならぬのじやなかろうかということで、せっかく検討中でございます。
  165. 足鹿覺

    足鹿委員 検討中という御答弁でありますが、その検討の構想はどういう構想でおやりになっておりますか。昨年の八月三十一日付農林省令第三十三号によりまして、その当時河野大臣は外遊中であり、高碕経済企画庁長官が農林大臣の臨時代理として、特別指定集荷業者の指定の特例に関する省令の一部を改正する省令なるものを出しまして、本年の八月三十一日までは、新しく特別指定集荷業者の指定はやらないという農林省令を出しておるのであります。もし河野農林大臣が現在考えておる構想を実施される場合は、この省令を変えられる、こういうことでありますか、変えないというお考えでありますか、伺いたい。
  166. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘のように予約集荷制度の実施いたしますに当りまして、ただいま御指摘になりました処置をとりましたことは御承知の通りでございます。しかしその後の事情が、先ほど御説明を申しました通りに、全国的な豊作に比して、一時は予約の制度があまり十分でなかったという事実もございましたし、またこれがその後非常に順調に動き出したということもありますし、また局地的に、今申し上げましたような事実もあるのでございまして、特集制度をぜひ実行しなければならないということは別に、これを制度をもって補強いたした方がよろしいという事実がありますれば、それをそのように補強していかなければ仕方がないのじゃなかろうかと思うのでございまして、これらは一に事実に徴して考えていくことであって、今それをせっかく検討しておる、こういうことであります。
  167. 足鹿覺

    足鹿委員 事実に基いて検討するということでありますが、私はこの特集米制度の問題はその構想が二つあろうと思うのです。一つは昭和二十七年に実施をされてわずか二、三万石集めただけで、全く完全な失敗に終ったいわゆる政府の委託によって農民からこれを買い上げるという委託代行の行き方か、現在全集連やあるいは全糧連等商業団体が熱心に農林大臣にお願いしておるようでありますが、買い取り制の構想でおやりになるのか、このやり方は二つしかないと思います。そのいずれをあなたは構想して現在御検討になっておるのでありますか、この点は総理大臣にお伺いする問題を含んでおりますのではっきりしていただきたい。
  168. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げましたような事情にございますから、その事情に適応するようにいろいろな問題を勘案しまして調査しておるわけでございます。どれときめておるわけではございません。
  169. 足鹿覺

    足鹿委員 私はあなたに聞いておりますことは、もしおやりになるならばどちらの特集米集荷の方式をとられるか、どちらをとられんとしておるのであるかということについて伺っておるのであります。おやりになるかならないかという腹がまだきまっておらないようでもありますが、どちらでありますか。
  170. 河野一郎

    河野国務大臣 大体において買い取り制をやるということは、まだ考えておりません。
  171. 足鹿覺

    足鹿委員 買い取りはやらない、こういうことのようでありますので、その点については一応この程度で打ち切っておきますが、いかような方式かは知りませんが、もし昭和二十七年方式等の委託方式をかりにあなたが考える場合に、大体特集米制度によってどのくらい集めようというお考えでありますか。これは補正予算との関連が相当出て参りますので、大体見当を一つ明らかにしていただきたい。
  172. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げましたように、大体関係団体の十分な活動によりまして所期の目的を達成することができますれば、また今申し上げましたように特別に配給辞退が大部分の地方で出てくるというようなことがありませんければ、無理に進んで特集制度をやろうというのではないのでありまして、そういう事情があって、変な言葉でございますけれども、やみ米がたくさん流れて、配給はほとんど辞退しておるような地方があるというようなこと等を勘案じて、考えておるのでございますから、これによってどの程度の数字を企画しておるかというようなことは、まだそこまで計算をしていないわけであります。
  173. 足鹿覺

    足鹿委員 大体特集米を考える場合は、どの程度の米を集めなければならない、その米はどういう必要があって、それだけの無理をして、予約供出制度の本質にもとるがごとき暴挙をあえて行なって、特集米制度を敢行するのか、その根拠が明らかにならない以上、ただ一部に若干の配給辞退があったという一時的な現象をとらえて、供出問題の本質をゆるがすようなことは、みだりになすべきではない。特に政府昭和三十年産米の集荷について、予約制度以外の方式は絶対にしない旨を言明して、農業団体に協力を求めたのではありませんか、そういった意味からも、今さらその言明を放棄するがごときは私は不信のそしりを免れないと思います。そういった面からもわれわれはそういう点には断じて承服しがたいのでありますが、第一余剰米そのものがあると考えておるのか、大体昨年は七千九百万石の実収高を押えて、これを三千九百万石の保有米をにらんで、供出可能量は大体四千万石がいいところだろうと思う。現在三千百十三万石が先ほど農林大臣説明にあったようにすでに出ておる。今後もまだ予約によって、農業団体の協力によって相当出てくるということになりますと、もともと九百万石程度しか余裕米そのものはない、しかも農家は二年前の続く凶作等の始末のために換金を必要とし、いろいろな面において米の処理を行なっておるだろうと思う。とするならば、われわれは余剰米の余地はほとんどないと思う。どのような根拠に立って特集米を考えるほど余剰米があるとお考えになるのか、その数字的な根拠を示していただきたい。
  174. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたしますが、ただいま御指摘のように九百万石の計算になりますか一千万石の計算になりますか、いずれにしてもわれわれも常識的に勘案いたしまして、まだそういう数字がある、それがやみ米に流れるということは決していいことではないと考えますので、なるべく政府がこれを集荷いたしまして、これを成規のルートで配給いたすことがよかろうということで、せっかく努力いたしておるのでございます。
  175. 足鹿覺

    足鹿委員 私どもはこれ以上申し上げても議論になろうと思いますが、先ほどの買い取り方式はやらないという農相の言明を一応聞きましたので、この問題については先を急ぎますから一応打ち切ります。  次に昭和二十九年産米の追加払いの問題について伺いたい。政府昭和二十九年産米のパリティ指数が上昇いたしておるということは知っておりますか。
  176. 河野一郎

    河野国務大臣 多少上昇しておることは上昇しております。
  177. 足鹿覺

    足鹿委員 大体これは従来の慣行によって当局は知らないはずはない。世間が黙っておればそのまま知らぬ顔でおられるのを、一応私は記憶を呼び起しておきます。  そこで伺いたいのでありますが、この際食糧管理特別会計補正を出されるからには、昭和二十九年産米に対するパリティの上昇分に伴う追加払いの補正を出されるのが当然ではありませんか。なぜそれを御予定にならなかったのでありますか。今後は一体どうされる所存でありますか。
  178. 河野一郎

    河野国務大臣 この点につきましてはいろいろ当時研究考慮いたしましたが、昭和三十年産米価格の決定、もしくはその後の豊作の事情等を勘案いたしまして、一応これはこの程度で置いておいていきたいということに考えたのでございます。
  179. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣ともあろう方が、昭和三十年産米が豊作であるから二十九年産米の追加払いは要らないという議論がどこから出ます。昭和三十年産米が豊作であることは何人も認めております。二十九年産米とは別個のものであります。なぜそれを一緒にするのでありますか。第一、大臣も御存じかとは思いますが、念のため申し上げますと、この追加払いの制度は昭和二十二年に始まって、昭和二十五年、二十六年そして二十八、二十九と続いてきておるのであります。私どもが厳密に計算をいたしますと、大体におきまして石当り四十五円支払う責任が政府に生じておるように思います。これを金額にいたしますと、当時の供出量にかけてみますと、大体十億円をちょっと上回る金額になるようであります。昨年の豊作は別として、昭和二十九年の農家の実情は大臣も御存じでしょう。二年続く凶作によって農家は非常な窮乏にあえいでおる。それを、昭和二十九年の九月の米価決定をされるときのパリティで一応試算したものを仮米価として政府は払う。昭和二十九年の六月から昭和三十年の七月に至る間の平均パリティをとって、その米価決定時の九月現在との差を見たときには必ず追加払いをすることは歴代内閣の慣例ではありませんか。どうして昨年の豊作に事寄せてこれを支払わないのか。昨年の米価を勘案して云々という今の農林大臣のお言葉は、私どもは納得できません。
  180. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り従来の米価の決定を変更いたしまして、昨年より植付時に豊凶を考慮に置かずに決定をいたしました。ところが昨年の大豊作で農家の収入も非常にふえておるというようなこと等から勘案いたしまして、まずこの辺のところで農家の諸君にがまんをしていただきたいものだということで出したわけでございます。
  181. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣は昨年の産米が非常に豊況であったということを言われますが、大体昭和二十九年産米に対する追加払いは、そのあくる年の、すなわち昨年の七月に支払う従来の慣例をお忘れになっております。三十年産米の豊凶指数の出るのは昨年の暮れであります。去年の七月ないし八月に支払うべき責任を知らぬ顔しておって、昨年の豊凶実数云々ということは奇怪な言葉ではありませんか。そういうことは許されません。もっとはっきりしていただきたい。
  182. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどお答えした通りに御了承願いたいと思います。
  183. 足鹿覺

    足鹿委員 今の昭和三十年の豊凶指数を勘案して云々ということを取り消されない限り了承できません。そういうことは全然事実と違うではありませんか。それははっきりされたがよろしい。農林大臣の御所信をあえて問います。
  184. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、価格の決定の方式を変えましたので、ことしから植付前にきめますから、しかも算定方式も変えておりますから、その結果ことしからはこういうようにやっていきたいと思います。
  185. 足鹿覺

    足鹿委員 ことしじゃないです。河野農林大臣に伺いますが、昭和三十年産米に対する算定方式をお変えになったので、昭和二十九年の算定方式は変っておりません。
  186. 河野一郎

    河野国務大臣 三十年の算定方式を変えましたので、米価の支払いについてはこれからこういうふうにいこうということにきめたのでございます。
  187. 足鹿覺

    足鹿委員 それはあなたの詭弁というものです。米価政策が右に左にあなたの懇意性によって変ることにつきましては、おそらくあなたが今後いかような農業政策を次々と御発表になっても、この一事をもって日本の農民は信頼しないと私は思います。そんなばかな話はないと思う。昭和二十九年産米の算定方式というものはちゃんときまっている。三十年産米に対するところの算定方式をあなた方がどう変えられたかということはおのずから別個の問題です。第一、追加払いを打ち切るなら打ち切るということをあなたはいつ声明されましたか。米価審議会において一言でもそれを相談しましたか。また内閣に作った食糧懇談会であるとか、あるいはあなたがいろいろ思いつきによって米価対策その他食糧対策の機関をお設けになっておりますが、少くとも政府方針を示して、農民あるいは集荷に当った機関の人たちの、それでもよろしい、あるいはそれでは困るという世論に聞いて、今までとってきたことはやめるならやめる、こういうのがいわゆる公党の立場であり、公けの政治の立場ではありませんか。それを二十九年と何の関係もない三十年の豊作を勘案してネコババにしてやめにするというようなことは、農民に対するところの背信行為ではありませんか。あえて背信行為でないとおっしゃる勇気がありますか。私はおかしいと思う、おっしゃって下さい。
  188. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の点につきましては、われわれとしても十分考慮いたしましたが、農家経済全体から考えて参ります上におきまして、昨年の春米価を決定いたしまするに当りまして、相当合理性をもって米価の決定をして、今後こういうことにいくというふうに実はしたつもりであります。従いまして前年度分につきまして御指摘の点はわれわれも十分考慮のうちに置きましたが、農家経済全体を考慮いたしまして、まずこれでよかろうということでこの措置をとったわけでございます。
  189. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣に申し上げますが、昭和二十九年までの米の集荷方式というものは、従来の通り強権供出制度をとられた。昭和三十年産米をあなたの構想で、いわゆる事前予約売り渡し制度というものに切りかえられた。従って算定の問題についても若干異同のあったことは、いろいろな機関を通じて、いい悪いということは別として世間が知っております。従って二十九年のものと混同されるということは卑怯です。昭和二十九年産米は今までの通り食管法第三条で真正面から発動された強権供出です。ですから三十年の方式は三十年から変えられたのであって、それに伴って価格政策も必要と認められた措置をあなたが講じられたことであって、昭和二十九年という年はどういう年でありましたか。平年作を下回り、東北その他においても冷害が起き、あるいは霜害が起き、二十八年のあの大凶作のあとを受けて非常などん底の年ではありませんか。そのものをあとの事実によって、これを知らぬ顔をするなどということはもってのほかではありませんか。(「減収加算を出しているぞ」と呼ぶ者あり)減収加算ではない。追加払いです。パリティ上昇に伴う追加払いです。そういうことをなぜあなたはやらないのですか。三十年の問題とは別個な問題なんですよ。ごかんべん願いたいというそういう程度のものではありませんよ。はっきりして下さい。
  190. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げました通りに、農家の経済全体を勘案いたしまして、われわれといたしましてはこの程度にするということでよかろうということでやっておるわけでございます。
  191. 足鹿覺

    足鹿委員 そういたしますと農林大臣に伺いますが、あなたはバツク・ぺイを払う当時において、すでに昭和三十年の作況を見越していたのでありますか。そういうばかなことは私はあるまいと思います。昭和三十年の豊作であったことは私は否定いたしません。しかし昭和二十九年のバツク・ペイについては、従来の慣例通り当然支払うべきものであります。念のために申し上げますと、昭和二十五年産米においては、百七十二億六千四百七十八万一千円の支払いがなされておる。昭和二十六年においては五億六百十四万九千円の支払いがなされておる、昭和二十八年は四十二億一千五百六十一万円の支払いがなされておる。従ってこの方式によるならば、二十九年については十億四千五百二十万三千円の当然支払いの責任があるのです。それをあなたは今言ったような理由にならない理由でもってこれを全然知らぬ、出さぬと押し切る御所存でありますか。それをはっきりおっしゃるならば、われわれはわれわれとして別個な用意があります。そういう不合理な話はおそらく通りますまい。民主主義の現在の政治家をもって自任される河野さんのそういう今の一言というものは、日本の農民に聞かしたら何と批判されるか、あなたはお考えあってしかるべきだと思います。いま一応あなたの御所信を伺いたい。
  192. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、昨年の米作は非常に豊凶が早くから決定づけられまして、八月において豊作であるということは予想されたことであります。従いまして当時私は旅行中でございましたが、私の旅行中に、これはことしは大豊作である、しかも農家の経済は非常によろしいということを勘案してそういう処置に出たのでございます。
  193. 足鹿覺

    足鹿委員 昭和三十年産米の豊作を外遊中から予察されておったようでありますが、昨年の七月に、これは恒例によって七月中旬に支払うべき性質のものなんです。三十年の作況というものがどういうふうになるかなどということは、おそらく日本の気象学者といえども想像のつかないことです。今のあなたの一言は、外遊中からわかっておったとかいろいろなことを言われますが、そういうものではありません。事務当局の意向等ももっとよく調査して責任のあることを言っていただきたい。なぜ当然五年間、六年間にわたって支払われてきたことが、昨年の豊作とは別個なことが、政府の恣意によって一言も農民にも話もせず、世間の世論にも問わずに、こういうことができていいのでありますか。
  194. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えをいたします。従来このバツク・ペイは、八月に支払われております。今足鹿さんお話しでございますが、昨年の八月はもう非常にことしは豊作でもあるし、価格の決定からこの豊作を見たならば大体よかろうということで、こういう取りきめにいたしたわけでございます。その点を御了承願いたいと思います。
  195. 足鹿覺

    足鹿委員 私どもは今までの農林大臣の理由なき御答弁については納得いきません。しかしこれ以上申し上げてもこの答弁を翻さないお考えのようでありますが、われわれはこの問題に対処する別個な方法を、追って党としても検討いたしまして別個な措置を講ずることといたしまして、一応この問題は留保いたしまして次の問題に入りたいと思います。  さてこの食管会計の三十年度の補正予算でありますが、去年の十二月十六日に国会は年度末食糧証券発行高を、その限度を引き上げまして三千五百億になるような措置を講じておったのであります。従ってこのたび一般会計補正予算と並行して出さるべき性質のこの予算を、これのみを切り離して、これを急いで出されなくても限度額のワクが広がっておるのでありますから、当然支出ができるはずであります。かりにできないにしてみても、当然その不足、米を集荷するに足りない金のみをあなた方は補正として出すことが、事務上の問題として当然ではありませんか。
  196. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の通りの数字だけでございます。ほかのものはあまり入れておりません。米を買うに必要なものをふやした、こういうことでございます。
  197. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣は知られぬでしょう。この予算書をごらんになっておりますか。そんなばかな答弁はだめですよ。この特補正を見ますと、非常に内容の複雑な予算がこれに含まれておる。大蔵事務当局も知っておるでしょう。第一酒米の数量増加による収入の増二百億が大体この中にたたき込まれておる。それから希望配給実施による歳入増七十六億が含まれておる。外米による欠損十七億、砕け米による損失四十二億、大麦、裸麦による損失十一億、小麦による利益三十九億、飼料による損失十八億、澱粉による損失二十八億、テンサイによる損二億、学校の給食用の一般会計受け入れ十八億、菜種による歳出増十億、以上のようなものが全部この中に含まれておるのです。なぜこういう要素を全部——こういうものは一応この食管特別会計の複雑さと分けてなくとも——きょうの新聞も汚職問題を伝えておりますが、これを一応切り離して、そうしてこの豊作によって政府の買い付け量がふえたならば、それに必要な限度の事務的操作の予算をなぜ出されないのでありますか。こういうものまで全部含めるということは不合理ではございませんか。
  198. 河野一郎

    河野国務大臣 その点はちょっと違うと思います。今御指摘になりましたものはそれは今年度の食管会計の赤字として、当然これは一般会計から埋めていただくということにして、これは別に別途財源を持って補正をするということにしておりますので、今は限度を広げて、そうして買い入れするのに必要な金がありませんからやっていただくということでございます。
  199. 足鹿覺

    足鹿委員 それであれば当然あなた方は昭和三十年の一般会計補正をあわせ提出すべき責任があるのです。第一、このいただいた議案の第十六ページに、昭和三十年度農林省所管食管特別会計補正予定貸借対照表、昭和三十一年三月三十一日現在というところに、累年の損失三十億八千三百九十五万八千円、本年度損失、これは見込みでありますが、百三十六億一千六百四万二千円、このものを合せて百六十七億の赤字が出るという計算になっておる。そうして主計局長が各会派の理事に持ち回られたときの資料によりますと、大体六十七億の赤字が出る。六十七億の食管特別会計損失補てんする際に、一般会計補正でその問題を解決する、こういうことを言っておられる。第一、歳入が的確でないのに歳出のみをやることは、会計法上適法でありますか、あえて大蔵大臣にも伺いたいし、法制局長官にも伺いたいが、そういうことはできますか。
  200. 森永貞一郎

    森永政府委員 昭和三十年度食管特別会計予算補正の内容は、けさも申し上げたのでございますが、食糧買入費増加千六十三億の追加、それから食種管理費、これも食糧買い入れ数量の増加に伴いまして、管理費が増加いたしますので三十七億、それから農産物等の管理費につきましても、その後の買い入れ数量の変化に伴いまして、若干の補正要素がありますので、三百九十七万円、それからその買入代金の財源食糧証券をもってまかないます。一部は食糧売り払い代もございますが、大部分は食糧証券発行によってまかないまする関係上、その歳入を調達する上におきまして、食糧証券発行差額がございます。この分は、国債整理基金特別会計に繰り入れなくちゃなりませんので、その関係が二十四億、それから予備費が百億、他面におきまして食糧の種類等によりまして、若干買入費等の減少あるいは管理費等の減少がございますが、それを差し引きまして今回の補正をお願い申し上げておるわけでございまして、大部分と申しますか、もっぱら食糧買い入れ数量の増加に伴う歳出権不足を取り急ぎ補てんするための補正であると、さよう御了承いただきたいと思うのでございます。参考書といたしまして、三十年度末の損益計算も明らかにしてございますが、これも米価の関係、数量の関係等から当然出て参ります要素を掲げておるわけでございます。
  201. 足鹿覺

    足鹿委員 私はそういうことを聞いておるのじゃないのです。先ほど農林大臣のお話によりますと、私が先ほど並べました十項目ばかりの、この食管特別会計の中の種目別損益というものを掲げたということは違うとおっしゃいますが、違わないのです。数字も正しいのですが、大体そういうものを全部受けて、食管特別会計の中にはいわゆる収支はないわけでしょう。結局帳じりに出てくるものがことしの米を買うのに不足をしてくる。だから、そこにこの際の補正を出されてくる。そして年度末におけるところの貸借対照表の帳じり予定は、百六十七億の赤字になる。その百六十七億のうち、百億はインベントリー・ファイナンスをくずす、三十億は砂糖の益金を出す、三十七億は税の自然増収を見込んでおるではありませんか。こういう重大な一般会計予算に関係のあるものを、その本予算補正はそっとしておいて、これのみに集中するということがそもそも間違いではありませんか。そういうことは会計法上できますか。
  202. 森永貞一郎

    森永政府委員 今回補正をお願い申し上げておりますのは、先ほど申し上げておる通り歳出権不足をとりあえず補うために、この特別会計補正をお願いいたしたのでございますが、別途価格の関係、あるいは買い入れ数量の関係から、年度末には先ほどお示しがございましたように、百六十七億の損益計算上の損が出るわけでございまして、この損は、やはりこういう企業会計でございますから、それを出すわけには参らぬのでございます。それにつきまして、百億は従来の方針通りインベントリーで埋める、さらにインベントリーで埋め足りない六十七億につきましては、この会計の健全性を確保いたしますために、後日一般会計補正いたしまして六十七億を繰り入れるということを、今朝来申し上げておるわけでございまして、同時に補正をいたすことができれば一番それがけっこうでございますが、一般会計につきましては、この食管特別会計繰り入れの要素のほかに、他のいろいろな要素もございまして、目下せっかく補正予算の準備をいたしておる最中でございますので、数日の御猶予をいただきたいということを申し上げておるわけでございます。その点御了承をいただきたいのでございます。
  203. 足鹿覺

    足鹿委員 主計局長の言われることは、私は説明でよく聞いておるのです。あなたは同じことを言われておるが、そういうことはわかっております。それでは伺いますが、先ほど私が述べましたいろいろの損の出たもの、あるいは利益の出たもの、そういったものを全部詳細な資料にして、そして何によってこういう赤が出た、何によってこういう利益が出たということを、当然明瞭にして本委員会に提出するのがあなた方の親切というものではありませんか。これだけの膨大な複雑な内容に出てきたもの——帳じりは年度末にならなければわかりませんが、一応私が指摘したようなものは含まれておるのです。その結果が、買い入れ米代に不足を生ずる、こういうことになっておる。それをおもんぱかって、昨年の十二月十六日には、衆議院は限度高の二千六百億を三千五百億に引き上げる決議をして、そして当局のやり方に対しては協力をしておるのです。そうでしょう。とするならば、今になってこういう数字を、予算だけを切り離して出される以上は、事実において食管特別会計はこういう経過を持っておるけれども、こういう事態になっておるということを述べられて、少くとも年度末においてインベントリーの百億をくずし、砂糖の益金を三十億入れ、税の自然増収までも三十七億これに入れてくるという想定貸借対照表の帳じりが出るような重大な内容を、もっと初めから出すべきではありませんか。そういう事態を全然われわれに教えずして、ただ米の買い入れ金に事欠くからこの問題を早くやれ、早くやれという要請であったということを聞く。大体国会の審議権をあなた方大蔵省は無視するのですか。これぐらいなことがわからない国会ではありません。当然知っております。大体国会を侮辱しておりますよ。年間七千億からの膨大な食管特別会計ですよ。国の予算に見合うような膨大な予算をかかえておる食管特別会計です。さなきだに世間の疑惑がこれに集中しているじゃないですか。当然この問題については、内容をもっと懇切丁寧に出して、こういう欠陥によって事実米が買えない。しかし、これには当然一般会計のものを繰り入れなければならぬが、その想定としてはこういうものになるというぐらいは、少くとも懇切に解説すべきである。累年損失の三十億と本年度の損失の百三十六億を合せて、百六十七億というものが出てきます、一言でも主計局長はこの点について触れましたか。私が指摘して初めてそうですという話じゃありませんか。そういう態度というものは許せません。
  204. 河野一郎

    河野国務大臣 私が先ほど来申し上げましたことは、食管に百六十七億の赤字が出る、これは主として今年度米の集荷が非常に多くなったということで、高く米を買いまして、そうしてそれを操作いたします関係から出て参るのであります。これは、その赤字はほかにも原因が多少ありますけれども、大体はそうでございます。ところが今回増加をしていただこうとしておりまする、補正をしようとしておりますのは、今買い入れまする米の数量が、予定いたしておりました二千三百万石から三千四百万石にふえましたので、一千百万石程度ふえることになりましたので……。(「去年からわかっておる」と呼ぶ者あり)これは申し上げます。予約はいたしておりましたが、これは御承知の通り、従来でございますと、こんなに米は早く出て参りません。御承知の通り、三月まで米が出て参るのであります。ところが、ことしは天候のかげんその他非常に米の出回りがよろしいのであります。そういう関係で、われわれといたしましては、当然今御指摘になりました赤字等全部勘案して出す予定でおったのでございますが、一方米の売り渡しの方が非常に進んでおりますので、これに対応いたします関係上、今申し上げますように限度の拡張の方をまずしていただいて、そうして決算は、今の赤字については一般会計から埋めて会計を健全なものにして参ろう、その際にはむろんそれらについては一切の資料を整えて御説明をし、御了解を得るつもりでおったのでございます。
  205. 足鹿覺

    足鹿委員 それはよくわかるのです。だから去年の年末に国会は三千五百億の食糧証券発行限度のワクを引き上げておるのです。大体普通の経理の場合と事業予算の経理の場合とは違うんじゃありませんか。要するに予算経理をやる場合は、現物と見合うということはありますまい。事業予算の場合は、食糧特別会計の場合等は、金は使ってもそれに見合う現物が入ってきます。でありますから、食糧証券発行の限度額が高くなっていけば、当然それに見合う買っただけの食糧が入ってくるわけでありますから、そこに一般会計予算経理と事業会計予算経理というものとの相違があるはずでしょう。だからそれだけでけっこうやれるのではないのですか。どうしてやれないんですか。
  206. 森永貞一郎

    森永政府委員 趣きの点はよくわかりましたのでお答えいたします。昨年末に食糧証券発行限度を広げていただきましたが、これは歳入の調達の手段であったわけでありまして、それによりまして政府買い入れ資金増加いたしますに応じます歳入確保の手段が講ぜられたのは事実でございます。ところがこの食糧管理特別会計でもやはり予算の限度内においてしか買えないわけでございまして、当初の買い入れ代金は四千三百七十七億、これは国内産と輸入食糧と両方入っておりますが、この範囲内でならば今拡張していただきました食糧証券の代金をもって米は買えるわけでありますが、いよいよこの四千三百七十七億でも足らぬというところに昨今参っておるわけなのでございます。この四千三百七十七億をこえて買い入れます場合には、これはやはり歳出権をふやしていただきませんと米は買えないわけでございまして、こういう場合に予算技術上の手段といたしましては、あらかじめ弾力条項というような手もないではありません、あるいはそれにかわる方法といたしまして予備費等もございますが、本会計の場合においてはそういう弾力条項を設けることもいかがかと思われますし、予備費も使い尽して、いよいよこの四千三百七十七億を約一千億広げていただきませんともう予算超過支出になる、そういう事態が参りました。そういう関係から単に食糧証券発行限度を広げていただくだけでなくて、歳出権そのものを直していただくという必要がどうしても起って参ったのでございまして、この歳出権が切れますのでぜひとも早く御審議をお願い申し上げたい、さような立場でおるわけでございます。
  207. 足鹿覺

    足鹿委員 今の主計局長の答弁を聞いておりますとわれわれの解釈とは違う。私が先ほどから問題にしておりますのは、昨年の暮れに二千六百億の食糧証券の限度ワクを三千五百億に引き上げておる。従って食糧証券発行限度の引き上げによって当然歳出権は出てくるものだ、こういうふうにわれわれは解釈しておるが、法制局長官はいかような御見解でありますか。
  208. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、今森永主計局長からお答えございました通りに実は考えておるわけでございます。御承知のように、一般会計でありましょうと、特別会計でありましょうと、歳出権政府が得るためには、予算をもってその歳出についての国会の御議決を経た範囲でのみしかできないわけであります。ただし特別会計の中には、特殊な、いわゆる資金運用部特別会計のような資金会計というものがございますが、これにつきましては、資金の運用はいわゆる運用としてやるのであって、歳出としてやらない例もございますが、事業会計としては、すべて歳出は国会の御議決した範囲においてのみ歳出権がある、かように考えておるわけであります。今食糧証券発行限度を広げましたことは、これは事業会計におきましては米を買って売るわけでございますから、歳出はその限りにおきましては均衡するわけでございますが、大体において、御承知のように、まず買ってあとから売るわけであります。従いましてやはり歳出が先に出ていって歳入はあとになる、その間のずれを埋めるために、食糧証券発行してその歳入補てんをする、これはいわゆる一時借入金的な性質をもって発行するわけであります。食糧証券発行高をふやしたからといって直ちに歳出権が出るもの、かようには考えておりません。
  209. 足鹿覺

    足鹿委員 では法制局長官に伺いますが、いわゆる資金の調達と運用とは別だという解釈を今お述べになったが、昨年の十一月中に大体二千六百億のワクがあった際に、去年の十一月の末には農中の立てかえ払いを含めて食管会計の負債は二千六百七十億、すでに七十億突破しておりますよ。これは適法ですか。
  210. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は詳しい事情は存じませんけれども、食管会計歳出は、食管会計が、生産者あるいは生産者の代表委託機関等から買います現実の支出権の問題でありまして、あるいは下部機構において委託あるいは生産者からの委託によって融資したとかなんとかいうことは、歳出の元とは私関係ないことではないかと思っております。
  211. 足鹿覺

    足鹿委員 大蔵大臣にこの際伺っておきますが、会計法第十八条の四によれば大蔵大臣は各省各庁の支出負担行為が、実施計画またはその変更について法令または予算に違反することがないか、積算の基礎が確実であるか等、計画の適否を審査した上承認することになっておる。こういうことになっておりますが、今の場合昨年の十一月末にすでに七十億超過したことについて、あなたは適否を審議してよろしいと裁断を下した事実がありますかどうか。
  212. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。その事実をよく存じておりません。
  213. 足鹿覺

    足鹿委員 それは非常に恣意性の強い——先ほど私が追及をいたしました際に、特別会計補正を伴わないということについても違法ではない、これだけでよろしいのだという解釈だ。昨年の十一月末にすでに限度額を七十億もこえて貸付をしておる。これはただ単なる資金の運用面ではありません。貸付ではないですか。そうだとするならば、今の不足額を、予算支出権を認められなければ買えないということを、あなた方はすでにもう去年の十一月の末にやっておるのではありませんか。
  214. 森永貞一郎

    森永政府委員 お示しの事実は、私もつまびらかにいたしておりませんが、昨年の十一月当時においては、まだ歳出権が相当余っておりまして、この分で参りますれば、二月中くらいはこの歳出権でどうにか泳げるのではないだろうかというぐあいに考えておりました。ところが歳出権に関する限りは、その後急速に買い入れが進みましたので、二月中と考えておりましたのが二月上旬に足りなくなった、それが事実でございます。  なおただいまお話しの借り入れ限度をこえて借りておったかどうかという点につきましては、食管長官からお答えいただいた方がよろしいかと存じますが、借入金に関します限りはさような事実はなかったのではないかと私ども考えております。あるいは立てかえ金との関係におきまして出入りが若干あったというようなことは考えられますが、限度以上に借りておったという事実のありますることは私ども承知いたしておりません。
  215. 足鹿覺

    足鹿委員 この問題についてはこれ以上申し上げませんが、大体あなた方は不当な支出をやらしておられる。第一去年の発行限度額を三千五百億に引き上げたのは、十二月の十六日です。七十億オーバーして出ておったのは十一月末のことです。そのときは、二千六百億の食糧証券発行限度額しかなかったじやありませんか。だれが見てもそれは明らかでしょう。そういうことを幾ら指摘しても、合法性だと言われる真意が私どもはわかりませんが、そういうことは以後お慎しみになった方がよかろうと思います。  最後に私は重大な問題を集約的に一点お尋ねをしまして、私の質疑を終りたいと思いますが、先ほども河野大臣はインベントリー・ファイナンスをくずすということを言い、森永主計局長もこれを認めた。そういたしますと、来年度はインベントリー・ファイナンスはどうなるのですか。
  216. 森永貞一郎

    森永政府委員 私がインベントリー・ファイナンスをくずすと申し上げましたのは、二十七年でございましたか、六年でございましたか、一般会計から食管会計に百億円を繰り入れたことがあるわけでございます。二十六年です。これがいわゆるインベントリー・ファイナンスでございますが、これは食管会計といたしましては、一般会計からの借入金ということになっておるわけでございます。そこで、今度損が出ましたにつきましては、この一般会計から申しますと、貸付金、これを法律をもちまして決算確定後この債務を免除しよう。しかしこれは決算を確定した後に行うのが常例だと存じまして、先の話になるわけでございますが、そういう意味でインベントリー・ファイナンスを取りくずすということを申し上げておるわけでありまして、立法措置といたしましては、国会に法律を出しまして、一般会計のこの食管に対する百億円の債権はこれを免除する、そういう法律を出すということになるわけでございます。
  217. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、来年度は百億程度はインベントリー・ファイナンスを継続する、こういうことに解釈してよろしいか、はっきりしておいて下さい。
  218. 森永貞一郎

    森永政府委員 インベントリー・ファイナンスは、二十六年に実行いたしまして以来やっていないわけでございます。ただその債権が残っておりますので、その債権を一般会計として放棄する、さような意味で御了承願いたいと思います。
  219. 足鹿覺

    足鹿委員 それに見合うような措置昭和三十一年の食管特別会計の中にも考えられるかどうかということです、私の言っているのは……。これは来年の米価と大きな関係がある。
  220. 森永貞一郎

    森永政府委員 これは先ほど申し上げましたように、国としての債権を放棄するという措置でございまして、法律によってその措置をとるということになります。
  221. 足鹿覺

    足鹿委員 河野農林大臣に伺いますが、これは非常に重要な問題です。食管特別会計は、御存じのように、一般会計と違って——一般会計でも繰越明許の場合がありますが、食管特別会計は、いわゆる通し年度みたような結果になるのです。実際上の運営は……。従って、三十年のいわゆる年度末帳じりの結果は、三十一年度の食管会計に大きな影響をもたらしてくるのです。つないでおるわけですからね。そうしますと、ここで大きな問題が出てくることは、今までの赤字は全部、百六十七億始末してしまう。そうすると、先ほどの答弁にもありましたように、外米はトン二百十ドルから百六十四ドル程度にまで今下っておる。従って若干の下りをあなた方は見ておられますが、下りの見積りが足りないと思う。そういう点で、もうけておいて、一般会計のいわゆる債権放棄のインベントリーに見合うようなことはやめてしまう、そしてあくまでも消費者米価は上げたいということでありまするならば、これは明らかにコスト主義です。そういたしますと、二重価格主義というものはもう来年度以降は死んでしまう、全くのコスト主義にしていくということになりますと、結局来年の米価は予算米価にちゃんとくぎづけになって、それ以上は上らない仕組みになってしまいますよ。それでこの補正予算をわれわれが重視しておるという点は、政府の食管特別会計の運用の中身を通じて、事実上において食糧政策の大転換を企図しておるとわれわれはにらんだから、この問題を重視しておるわけであります。よくおわかりだろうと思います。一体、二重価格主義ということについての同意はあなたはとられぬでしょうが、少くともそういう事態にあなた自身の所管しておる食管特別会計が追い込まれてくる、こういうことにあなたはお気づきになっておりますかどうか。そうした場合においては、今述べましたように、国家の債権放棄によって食管特別会計の赤を埋めるということがあれば、二重米価とはあなた方はおっしゃらないが、それに類するようなことによって食管特別会計の弾力性を保持していかなければ食糧操作はつかぬでしょう。事実食糧の統廃があるいは外米による操作以外には一般会計からの対策はないということになりますならば、もう食糧庁のこの方式というものは根本からくずれてしまいます。そういう重大な問題を含んでおるのでありますが、大蔵大臣との間に、一般が考えているところによると、何かあなた方は話し合っているだろう、こういうふうにも一般は見ておりますが、大蔵大臣の御所信はどうでありますか、同時に農林大臣の御所信もあわせて聞きたい。
  222. 河野一郎

    河野国務大臣 足鹿さんのお話でございますが、われわれは二重価格制というものは、あまり考えていないのであります。ただ従来(足鹿委員「弾力性でもいいのです」と呼ぶ)弾力性をもって、物価が高騰し、米価が上りましたときには、その間に食管に相当利益が生まれてくるという時代があり、またそれをくずしていく時代があるということでございます。しからば明年はどうするつもりか。全然一般会計からも入れずに、全部買ったもので売った方を一ぱいに帳じり合せて予算を組んでおるかどうかということだろうと思います。これは食糧でございますから、常に価格は動いておりますし、また米価の決定にいたしましても、今、一応予算米価を立てて予算を組んでおります。しかしこれは今後の推移によって、先ほども申し上げました通り、生産者米価の決定はすべきものと考えております。ただし消費者価格につきましては、現行通りこれを据え置きにして参る。消費者価格は決定しておりますが、生産者価格につきましては、米価の推移によって決定すべきものである。さらにまた輸入外米、外麦につきましては、国際情勢の変化によって変るものでございますから、これについては当然将来の見通しとしてこれを予測することは困難でございます。しかしわれわれは将来の予測の上に立ってこの予算を組んでおります。これをただ、今あなたのおっしゃるように、歳入をもって歳出に充てる、売った米の代金で買った米を払うということでやるのか、そういう単調な考えか、決してわれわれはそう簡単に考えておりません。
  223. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今農林大臣が御答弁になったことで大体尽きておると思います。
  224. 足鹿覺

    足鹿委員 まだいろいろと重大な問題がたくさんありますが、私は結論的に申し上げて私の質疑を終りたいと思いますが、大体今度の食管特別会計は、名は補正予算という簡単な名前で出ておりますが、先ほども申し述べましたように、利益の出るものについては二百億も利益が出ておる、損失の出ておるのもあるというようなものを最後に集約をし、しかもこの予算の内容として持つものは、内地米に対して希望配給制度というものをとっておる。それによって七十六億も政府歳入増になっておる。そういうものも入れる、あるいは内地米の業務用払い下げ制度の問題もこれにからんでおる、あるいは外国輸入食糧の大幅値下りの問題についても、国会の十分なる検討を経ずして、こういった既成事実を積み上げていくということについては、私どもは了承ができません。しかもこの結果を今のまま推し進めていきますならば、おそらく大蔵省が年来唱えておったところのコスト主義に、結局この食管特別会計は厳重なワクをはめられる結果になるでしょう。そうなった場合は、消費者米価は上げないという基本方針を示した、しかるならば、いわゆる内地米の、農民の生産者価格をたたかざるを得ない結果になる。一方においては、新農村建設運動とかいろいろな美名を並べて農業政策を並べながら、基本問題についてかくのごとき欺瞞的な措置をとられ、しかもこれを公けにして一般の論議を経ずして、こういう問題を一般会計予算と切り離して出された政府の態度につきましてはわれわれは断じて承服できない。この旨をはっきり申し上げまして、私の質疑を終ります。
  225. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま足鹿さんのお話でございますけれども、われわれの意思をそんたくしてそういうふうに結論を出されることは、はなはだ迷惑でございます。われわれ決してそういうふうなことは、たびたび申し上げますように、考えていないのです。それを考えておるかのごとくに否定されますことは、全国の農民に非常に失望を与えることであります。決してわれわれはそういう態度はとりません。はっきり申し上げておきますが、消費者価格は据え置きにいたします。生産者の価格につきましては、従来の慣行に従ってこれを決定いたします。その結果、よってきたるところの予算上の処置につきましては、別途これを考慮する場合があることはやむを得ぬことでございまして、しかしそれは今ここで、生産者の価格についてはその制約を受けるだろう、この通りやるだろうということで、生産者に対して失望を与えるようなことは、われわれは断じていたしませんということを御了承おきいただきたいと思います。
  226. 三浦一雄

    三浦委員長 これにて質疑は終了いたしました。
  227. 小平忠

    小平(忠)委員 議事進行について。ただいま議題となっておりまする三十年度の食管特別会計予算補正につきまして、足鹿委員の質問に対する農林大臣を初め政府委員の答弁を拝聴いたしておりますと、この食管特別会計に、特に昨年来問題となっておりまする二十九年産の麦のバツク・ペイの問題あるい特殊米の問題、あるいは今回の収穫増によるところの買い上げ増に要する食糧証券のワクの増大等の問題、これらを承わっておりますと、われわれはとうてい理解できない、また納得できない答弁なんです。足鹿委員からも再三その点について所信を明らかにいたしておりますが、私はこのような政府、特に責任ある農林大臣の答弁なりあるいは大蔵省関係の答弁、あるいは法制局長官の答弁等を聞いて、本委員会といたしましても了解できないのであります。従いまして、このような重要な問題を本委員会が直ちにこれを討論採決するということは、きわめて軽率であります。従って、委員長は暫時休憩いたしまして、この問題について理事会を開いて、その処置について審議されんことを動議といたしまして提出する次第であります。(拍手)
  228. 三浦一雄

    三浦委員長 ただいまの小平君提出の動議について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  229. 三浦一雄

    三浦委員長 起立少数。よって動議は否決せられました。  これより討論に入ります。重政誠之君。
  230. 重政誠之

    ○重政委員 私はただいま議題となっております昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)に対し、自由民主党を代表して賛成の意を表するものであります。簡単にその理由を以下に述べます。  本案は第一、さき食糧証券発行額を当初の予定二千四百十億円を三千四百七十億円に引き上げたのでありますが、これに対応する歳出権を確保するために、食糧管理特別会計予算補正を行い、かつこれに伴う当然の措置として国債整理基金特別会計予算補正を行わんとするものであります。御承知の通り昭和三十年度産米は前古未曽有の大豊作でありまして、政府の買い入れ数量も当初予定した数量より一千万石以上も大幅に上回り、これが買い入れを完遂するためには千二百億円の支出増加を要するのでありますが、米の政府買い入れは現行制度のもとにおきましては、できるだけ多量に買い入れ、天の恵みを国民のすべてに浴せしめるためにも、また次年度以降の食糧政策の遂行に資するためにも、きわめて緊要であると存ずるのであります。ことに食糧増産の上からも、また食糧政策の上からも、政府の買い入れは生産農家に対する政府の当然の義務ともいうべきものであると考えるのであります。しかも今日すでに買い入れ支払い会計上事欠く実情でありまして、食管会計予算補正並びにこれに伴う国債整理基金特別会計予算補正は焦眉の急であるといわなければなりません。  第二に、本案は漁船再保険特別会計予算補正して、給与保険金の支払い増額に応ぜんとするものであります。いわゆる李承晩ラインに関連いたしまして、拿捕抑留せられる漁夫の数が増加し、抑留期間も長期化するので、これがため給与保険金の支払額は増加し、二千五百万円の歳出不足を生ずる等のため、漁船再保険特別会計予算補正はきわめて緊急に要するものと存ずるのであります。  右の理由により本案に賛成の意を表するものであります。(拍手)  米価の基本問題を食管特別会計運営の問題等につきましては、さきに農林大臣の言明をせられた通り明らかであります。しかるにこれに反対をいたすのは、生産農民並びに国民に対する冒涜であると存ずるのであります。(拍手)
  231. 三浦一雄

  232. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)について、その一である食糧管理特別会計、二の国債整理基金特別会計に対しましては反対いたします。三の漁船再保険特別会計に対しましては、賛成の意を表して、これが討論を行いたいと思うのでございます。さらにあわせて、食糧問題についてのわが党の見解の一端を明らかにしたいと思うのでございます。  わが党がこの補正予算に反対する理由の第一は、本日この補正予算案が政府によって提出されるに至るまでの経過、取扱いに重大な政府の怠慢が見られるからであります。この補正を必要とするに至った最大の原因は、言うまでもなく三十年度産米の豊作により、食管会計の米穀買い入れ数量が、当初の見込みを大幅に上回るに至ったことであります。だが昨年秋には、すでに豊作の事態は明らかであって、従って政府の米穀買い入れ数量が予定を上回るであろうことは、当然予想されたところであります。従いましてわが党の見解によれば、政府は昨年秋の第二十三臨時国会において、この食管会計予算補正に関する措置を講ずべき責任があったのであります。しかるに政府はこの当然の措置を怠って今日に至り、今日卒然としてこの補正予算案を提出して、これが今日成立しなければ、二月六日以降の米穀買い入れに差しつかえると称しております。これは政府がみずからの不手ぎわ、怠慢を省みることなく、むしろ逆にこの事態を利用して、われわれにこの補正措置成立のための圧力をかけようとするものであり、まことに言語道断の態度と申さなければなりません。(拍手)  さらにこの食管会計補正措置を講ずるには、それに伴う一般会計補正を行い、そのための財源措置等を明らかにするのが当然であります。ところが政府は、この一般会計補正措置を明らかにせず、食管会計補正のみを切り離して提案してきております。これも政府は技術的な手続の問題と申されるかもしれません。しかし、もし技術的な手続の関係で、一般会計補正予算案の提出がおくれているとするならば、昨年末から最近に至るまでの三十一年度予算編成について、あれだけの大騒ぎをやるひまがありながら、この差し迫った食管会計補正のために、一般会計補正を行うひまがなかったということは、まことに不可解であるといわなければなりません。(拍手)わが党はかくのごとき理由により、食管会計の本補正予算案提出に際しての政府の態度は、不誠意きわまるものと考えるのであります。  第二の点は生産者米価の問題であります。御承知の通りわが党は、昭和三十年度一般会計当初予算審議に際し、生産者米価は生産者の自家労賃をも含めた生産費を補償する価格をもってし、消費者価格は据え置きとして、二重価格制を採用することを主張し、また米価審議会においても同じ主張をいたしてきたのであります。遺憾ながらわが党の主張は政府のいれるところとならず、一万百六十円の現行生産者価格が決定されたのであります。今日政府が提案しておられる食管会計補正予算案も、この一万百六十円の生産者価格に基いた補正であります。わが党の主張は昨年以来今日に至るまで、何ら変化いたしておりません。当然今日でもわれわれは米価についての同じ主張を貫いておるのであります。この立場に立って三十一年度予算案の審議に際しても、われわれの主張を明らかにしていくつもりであります。従いまして以上のようなわが党の立場よりいたしまして、本補正予算案には反対の態度をとらなければならないのであります。  第三に明らかにしなければならないことは、以上の反対にもかかわらず、わが党は三十年産米の今後の集荷について、決して反対しているものではありません。また食管会計の赤字を補てんすることそれ自体に反対するものでもありません。この点につきましては、三十年産米の豊作を契機として、政府あるいは自民党において米の統制撤廃を意図するがごとき政策を、しばしばほのめかしておられることは、農民の生産意欲と出荷意欲を著しく阻害するものであって、きわめて遺憾なことと申さねばなりません。すでに指摘しました食管会計補正措置を講ずるに際しての、政府が誠意を欠いていた態度も、政府食糧管理制度を堅持する熱意を喪失しておることの証拠にほかならないのであります。わが党は政府及び自民党の意図しておられる統制撤廃は、海外の食糧過剰の情勢下で、わが国農業を破滅に陥れるものと考え、これに絶対反対をいたすものであります。わが党はむしろ現行食糧管理制度をさらに改善民主化して、わが国農業の発展をはからなければならぬとの立場から、わが党の食糧対策特別委員会においては、そのための改善策を立案中でありますが、このような現行食糧管理制度をさらに改善する立場に立って、三十年産米の集荷をさらに積極的に推進するように、政府に要求するものであります。  要するに、以上のごときわが党の主張は、わが国民経済の基礎をなす食糧管理を真に安定せしめて、わが国経済の自立を達成し、またわが国農民の農業経営をも安定せしめようという趣旨に基くものであり、政府の食糧管理政策がますますこの基本線から逸脱しようとしておることは、まことに遺憾にたえない次第であります。  私はここにおいて政府の重大なる反省を求め、私の反対討論を終る次第であります。(拍手)
  233. 三浦一雄

    三浦委員長 これにて討論は終結いたしました。  これより採決に入ります。昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  234. 三浦一雄

    三浦委員長 起立多数。よって昭和三十年度特別会計予算補正(特第3号)は原案の通り可決いたしました。(拍手)  なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時八分散会