○春日一幸君 私は、ただいま議題とされました、
淺沼稻次郎君外四名
提出にかかる
大蔵大臣一
萬田尚登君に対する
不信任決議案について、提案者を代表して、提案の
理由を説明いたします。
まず、案文を朗読いたします。
〔
議長退席、副
議長着席〕
主文
本院は、
大蔵大臣一
萬田尚登君を信任せず。
右決議する。
〔
拍手〕
理由
一萬田
大蔵大臣は、
昭和三十一年度予算
編成に当り平和と民生安定を願う
国民の意志を無視して再
軍備インフレ予算を
編成し、
1
平和憲法の精神をじゆうりんし外国のための
軍備拡張を強行せんとしている。
2
防衛費を削減して社会
保障を充実するとの
政府の重大公約を完全に裏切り、再
軍備拡張のために社会
保障を犠牲にせんとしている。
3 独占資本大企業偏重の財政金融政策により、中小企業の壊滅と
国民生活の窮乏をもたらさんとしている。
4
政府の三大政策たる税制の根本的改革は龍頭蛇尾に終つたのみならず高額所得者の優遇と大衆収奪の徴税政策をますます露骨化せんとしている。
5 各省における相つぐ国費の不正不当支出なかんずく大蔵省における国有財産管理の乱脈ぶりは
国民の血税を湯水のごとく考えるものであり、
大蔵大臣の
責任は誠に重大である。これが、本
決議案を
提出する
理由である。
〔
拍手〕
一萬田
大蔵大臣、あなたは、見るからに異様の風貌を備え、常にもみ手で奇声を発し、鞠躬如として、ひたすら、いんぎんの体をつくろうておる。しかしながら、貴下のその
大蔵大臣としての施政を検討するに、それは、独立の完成、経済の自立、民生の安定、平和の増進、民主主義の確立等、
わが国政の基本的憲章をことごとくじゅうりんするものであって、その実体は、まさしく反動逆コースのかじとりであって、その心底は実にふてぶてしきものがあるのである。(
拍手)今ここに貴下に対する
不信任案の
趣旨弁明を行うに当り、その罪業のあまりに深刻なるに徴し、私は、この際、貴下の前歴、日銀総裁たりしころの業績をもあわせてつまびらかにして、もって貴下をすみやかにその台閣の座から退けんとするものである。(
拍手)
一萬田
大蔵大臣、貴下は、日銀の一社員から身を起し、ここで三十年の累進を続けて、
昭和二十一年には、大阪支店長を経て、ついに
日本銀行総裁たるの栄冠を占められたのである。
かくて、貴下の総裁の座は、二十九年十二月第一次
鳩山内閣に迎えらるるの日まで、実に八年六ヵ月の長きにわたって動くことはなかった。いつしか、世人は、貴下に一萬田法王なる称号を奉った。これは、貴下の権力によって利得を得た者からすれば感謝の御追従ではあったろうが、同時にまた、
国民大衆の側からすれば、それは、けんらん豪華な総裁室にこもって大衆の困窮を顧みない貴下に対するあざけりと非難を込めたあだ名であったのであるが、貴下は、このような含蓄について何ら御自覚はなかったようである。
顧みれば、戦後、
わが国の経済は幾多の試練にさらされた。しこうして、おおむね、この全期間を通じて、貴下は、中央銀行総裁として、さらには
大蔵大臣として、
わが国金融政策に重大なる決定的
責任を負うておったのである。
まず許しがたきは、貴下のとられたる大企業偏重の金融政策についてである。貴下は、大企業に対し、彼らがいよいよ肥満できるように、その産業資金を野放図なほど放漫に供給した。後日、これは偏向融資、系列融資となって累積し、ために、これが今や世論の激高となって騒がれていることは、貴下もまたこれを認めざるを得ないであろう。すなわち、これらの現象について、当時の銀行局年報によれば、一企業に対する貸付が、銀行の
自己資本に対し一〇%をこえるものは全貸し出しの三〇%、さらにそれが二五%をこえるもの一八%となっておる。すなわち、当時の年間貸出総額を三兆円と推定すれば、このうち約一千億円に近いものが、この銀行と特殊関係にある大企業に対する偏向融資であるのである。およそ、市中銀行の資金は、おおむね大衆の預金であり、足らざるは日銀に仰ぐ借り入れ資金であって、言うなれば、金融機関の資金は、そのいずれもが大衆と国家の資金である。このような公共性百パーセントの金が、
日本銀行と市中銀行とその関係大企業との三者の結託によって、このように壟断されていたということは、一体これが正当なことであるであろうか。(
拍手)当時、私どもは、日銀総裁としての一萬田氏を大蔵委員会に参考人として招致し、しばしば忠告を行なったのであるが、しょせんは顧みるところなくして、この事態が実に本日にまで持続いたしておるのである。
さらに非難さるべきは、特定事業会社の生産設備の二重投資、過剰投資に対する銀行の貸し出しに対し、一萬田君は、日銀総裁たりしときも、また
大蔵大臣となっても、何らこれを抑制することなくして、むしろこれを助長しているということである。これは、為替管理政策と相からんで、企業家が希少物資の輸入割当をより多く獲得するための、最も悪質な策略であった。すなわち、原材料物資の輸入外貨の割当は、当時、その生産設備のみを対象としたために、関係企業家
たちは、その生産設備を拡大することによってのみ、その原材料の輸入量を増大し得たのである。ここに必然的に生産設備の拡大競争が猛烈に展開されて、しかして、この競争の勝敗は、設備資金を供給する金融機関とのつながりの強弱の度合いによって決定されたのである。けだし、希少物資による生産企業の利潤は、今もそうであるが、当時は、とほうもなく膨大なものであったので、この設備拡大競争の場裏において試みられたところのこの運動の様相は辛らつ俊敏をきわめて、まさに戦国野盗の行状を思わしむるものがあったのである。当時世論はこれを金融無
政府状態と酷評したことによって明らかであるが、このような企業家
たちの貧らんなる設備拡大競争に、日銀を含めた
わが国の金融機関が最善の親切を尽した結果、
わが国の産業構造は、その後果していかなる
状態に立ち至っているでありましょう。
ここに、繊維関係で通産省の調査したところによれば、その実相はおよそ次の
通りである。すなわち、紡績については、現有設備八百二十万錘、三十年の生産実績から見て、そのうち百二十万錘が過剰設備となっており、比率にして実に一七%強である。羊毛については、梳毛の現有設備百二十二万錘、うち、過剰設備が三十万錘、比率にして、なんと二四%強、これらがいずれも過剰設備となっているのである。砂糖については、農林省外貨割当基準によれば、現有生産能力は年産二百七十万四千五百トン、これに対して三十年の生産実績は約百万トンであり、ここに百七十万四千五百トンの設備が過剰または遊休となっているのである。四年前の
昭和二十七年初め、いわゆる統制撤廃直前の砂糖の生産能力は日産千八百八十五トンであったものが、わずか四年後の今日では、日産能力九千トンと、四倍強にもふくれ上っているのであります。製糖事業がいかにもうかるかは天下周知の事柄であるが、その原糖を確保するための外貨割当をめぐる設備拡張競争は以上のごとき結果をもたらし、これは資金のむだづかいであることは当然であるけれども、そのために、
国民は遊休施設の維持費までも含む不当に高い砂糖をなめさせられておるのであります。(
拍手)
これが国家資源をむだ食いした大企業と金融機関との最も悪質なる典型的な結合の実情であるが、思うに、保守政権の住宅政策は、実に熱意が乏しくして、現在その不足数は三十万戸を数えておる。
道路は荒廃し、
橋梁は修築されていないのに、
かくのごとく独占企業家
たちがその独占利潤をほしいままにするための設備は、何事にも先んじて、このように二重にも三重にも過剰に融資されておるのである。さきには
日本銀行総裁として、今は
大蔵大臣として、一
萬田尚登君に金融の公共性の何たるかをわきまえ、その金融政策に国家と民族をおもんぱかるところあらば、決してこのような奇怪にして不経済きわまる投融資は行われることはなかったはずであると思うのであります。(
拍手)
特に公憤を禁じ得ないのは、一萬田蔵相が、日銀総裁
時代から本日に至るまで、まことに堅持して譲らない、その中小企業冷遇の
態度についてであります。貴下は、中小企業金融難を打開するために、また、
わが国産業の本体である中小企業の基礎を確立するために、真剣に、あるいは少しぐらいでも、何かお考えになったことがおありであろうか。本院の大蔵委員は、貴下が総裁たりしころより、幾たびもこの問題について貴下とは論じ合っているところであるが、何
一つ問題の解決は貴下によってはかられはしなかったのだ。中小企業のために資金量を増加し、その金利の低下をはかれとのわれわれの要望に対する貴下の
答弁は、まるでゴム判で押したように、いつ、いかなる場合でも、同じようにあじけなく、かつ、そっけないものでしかなかったのである。すなわち、貴下は、中小企業の問題は金融では解決できるものではない、その品物が売れて金が入ってくるようにすることが先決だと答えて、ことさらに中小企業問題を
日本銀行や大蔵省の所管の外に押しやるの
態度に出て、全く
責任を感ずるの気配はなかったのであります。
今日、大企業の繁栄を外に、中小企業の窮乏は何ら解決されてはいない。しかのみならず、本年四月における手形の不渡り件数を言うならば、東京手形交換所の記録によれば、月の集計四万五千七枚、一日当りとして実に千八百枚であって、事態はまことに憂慮すべきものがあるのであります。(
拍手)貴下の言うところの、品物が売れてその代金が入ってきさえすれば何も問題がなくなるくらいのことは、総裁、大臣に聞かずとも、市井の少年店員にもわかり切っておる事柄である。品物の売れ行きが悪いこと、その上、売れた品代金の回収がつかないからこそ、また、そのような事態が深刻で、少しも好転しないからこそ、中小企業問題が社会問題となり、
政治問題となって、真剣に論じられておるのである。生産に対して内外の需要がこれに伴わない原因も、さらに品代金の支払いがやたらに遷延せざるを得ない
理由も、いずれも、それは国の政策にその淵源が存するのである。
もとより、金融のみによって中小企業問題の全部が解決されるとは何人も考えているところではないが、さりとて、血が流れ出すままに捨てておけば、その人間が死んでしまうので、すみやかに包帯を巻いて手当をせよというのが、臨床的立場からする中小企業金融の強化を強調するわれらが切実なる
理由であるのであります。(
拍手)中小企業金融が多分に政策的金融であるということを、貴下はことさらに理解しようとはされていないのである。ここに、貴下は、総裁
時代においても、また、大臣になってからも、この正当にして必要欠くべからざる提唱を退けて、ただ大企業と市中銀行の藩屏たらんことにのみ没頭されておるのである。戦後十年をけみして、
国民大衆の生活はいまだ安定しない。失業者は日とともに増大して、中小企業は重税と金詰まりにあえいでおる。大企業と金融事業とだけがいよいよ巨大利潤を独占して、
国民の貧富の懸隔はいよいよ急ピッチでその
距離を広げておる。経済自立への道はまだまだ遠くして、その行方もさだかではない。
このような
国民相剋の基をなしたものは一体何であるか。自由にして公正なるべき民主経済の法則が、大企業と大財閥の利益のために全くゆがめられてしまったのであるが、一体その主たる下手人はだれであるか。
今、
大蔵大臣としての貴下に対し、ここに
不信任の
趣旨弁明を行わんとする私の心底に黒くわだかまるものは、実に、かつて日銀総裁、金融界の法王たりしころよりする貴下があえてしたこれらの失政、悪業の数々である。もとより、これらの行跡が
国民経済に与えた損失は莫大なものであって、国家のため許しがたきは当然であるが、しかりとはいえ、その後における、すなわち、貴下が
大蔵大臣として犯した数々の非難事項に比べれば、これらの事柄は、わずかに鯨群の中の一匹のマグロほどのものでしかないのである(
拍手)
かくて、貴下は、
昭和二十九年十二月、時の民主党のささやきにこたえて、第一次
鳩山内閣の
大蔵大臣に就任された。
かくて、貴下の
大蔵大臣としての非政、逆政は、予算の
編成、徴税行政、国有財産の管理運営、金融、外国為替、外資の処理等、実に広範な舞台と、かつ大
規模なスケールで、ここに戦慄すべきスタートを切ったのである。
以下、その
一つ一つをつまびらかにして貴下をして一日もその職にとどむべきでない
理由を明らかにいたしたいと思うのであります。(
拍手)
まず第一に、私は、国有財産の管理、運用にからまる不正、汚職と、この管理者たる
大蔵大臣の
責任をたださねば相なりません。
すなわち、行政管理庁は、
昭和二十九年十月から二回にわたり、大蔵省所管の国有財産の処分、管理について、その監察を行なってきたのであります。しこうして、去る四月の十三日、その監察結果について、大蔵省に対し、管理、処分を正確適切に行えとの勧告をするとともに、十四日、その驚くべき紊乱の内容を
発表いたしました。全く、その監察報告は、およそ国政に参画する者ならば、はだにアワを生ぜしめずにはおかぬほど、乱離骨灰をきわめたものであります。(
拍手)すなわち、抽出調査対象の四割近くが台帳に記載されておるだけで、実際にはもはや存在しなかったり、また、国有財産を個人が無断で使用したり、さらには、貸付、売り払いのうち、約三割が不当な賃貸料や価格で処分されておるなど、管理、処分のでたらめな点がきわめて多く、このための国費の損失は実額一千億円以上と推定されておるのであります。(
拍手)
この行政管理庁の行なった国有財産管理の調査対象は、旧軍用財産一万六千九百二十二件中六百六十三件、旧大蔵省雑種財産五万五千九百八十九件中千七百五十九件、計二千四百二十二件の未利用財産を抽出したのでありまするが、このうち、台帳にあって現実に存在しないものが五百八十二件で、全体の二四・一%、その存否不明のもの二百二十一件で、九・一%、一部が滅失したか、存否不明のもの百四十七件で、六・一%、すなわち、抽出調査したもののうち四〇%近くが、
かくのごとくにして、何が何だかわからないという
状態に放置されておるのであります。(
拍手)また、国有財産を個人が無断で使用しておるもの九百八十九件で、これまた全体の四割を占めておるのでありますが、このうち最も悪質なものは大津財務局管内で、これで調査した十三件中、その六件が二十年以上、他の四件が十年以上も個人に無断に使用されて、大蔵省はそのまま手をこまねいてこれを傍観しておるという事実が報告されておるのであります。
また、これを
土地建物について分析をいたしますると、
土地の調査対象八百五十万一千坪、このうち、台帳面には記載されておるが、実際には今は存在しないことになっておるものが九十五万七千坪、しこうして、あるのかないのか明確でないものが十八万二千坪、無断で使用されておるもの百五十九万坪、一部滅失、または、てんでわけのわからぬものが三十三万六千坪というように、実に調査対象八百五十万坪のうち三百万坪が、あるものは行方不明に、他のものは不法占拠され、その乱脈ぶりは言語に絶し、まさにおもちゃ箱をひっくり返したような、まるで手もつけられぬ、ざんばらの光景であるといわれております。
建物の管理状況もまた同然であります。その調査対象は十七万二千六百坪であるが、そのうち、存在しないもの五万一千坪、存否不明のもの千坪、無断で使用されておるもの九千坪、一部滅失または不明のもの四千五百坪というように、六万五千坪が実態と相違をしておりまして、正当に管理されてはいないということが指摘されておる。これら未利用財産の価格は、大蔵省の台帳価格では十五億円ではありまするが、これはその算定基準がまちまちで、ひどいものになりますと、明治十年ごろの地代をそのまま使用しておる例もありまして、現在の物価が戦前物価の二百倍と見ましても、これは時価に換算して三千億に当りますから、その四割に当る実に一千億円以上の国有財産は、このようにルーズに、かつ、めちゃめちゃに取り扱われておるのであります。
一体、このようなふざけた管理方式というものがあり得るでありましょうか。およそ、実在しなかったものが、国有財産台帳に載せられるはずはないでありましょう。いかなる
理由で存否不明になったものか、
土地や建物が妖怪変化のように消えうせた、この怪しい大蔵省の国有財産処分のからくり、われら
国会は、今こそその真相をきわめて、
国民の前につまびらかにせなければ相ならぬと存ずるのであります。ここに、国有財産管理の衝に当っている
大蔵大臣の
責任はきわめて重大であります。——国有財産が
国民全体の財産である点にかんがみまして、かかる放らつ三昧な管理者を引き続いてその衝に当らせておくことは、あたかも、極道者や、たわけに、蔵のかぎを預けておくと同じことである。まことに危険この上もないことだと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
さらに、国有財産の処分の面についてこれを検討いたしますると、調査対象は、
昭和二十八年度中の貸付五万五千四百十件中千七百四十四件、売り払い一万九千三百七十九件中千五百二十八件を抽出したものでありまするが、このうち、処分が不適当なものは貸付五百一件で、二八・八%、売り払いについては五百四十七件で、三五・八%に達しておるのであります。しこうして、この内容は、貸付、売り払いとも料金、代金のきめ方が不当に安いもの、その徴収がルーズなものがほとんど大部分でありまして、このための国費の損失は、これまた膨大な額に達するものと見られております。
さらに、この際看過し得ないことは、これらの国有財産が常に利権の対象となり、従って、これをめぐって悪質な汚職が行われておることであります。最近
新聞紙上にしばしば
報道されました印刷局の
汚職事件なるものは、上は局長より下は係員に至るまで、官紀の紊乱はその極に達し、その悪質なることはまさに空前絶後と称されておるのであります。(
拍手)
まず、前印刷局長井上義海君の国有財産不当取得の事例を申し上げます。
同君は、関東財務局長から印刷局長に転任になってからわずか二カ月目の
昭和二十九年六月、当時宿舎として大蔵省から借りていた家屋と
土地の払い下げを受けておりますが、この
土地、建物は、元山階宮家所有のものを大蔵省が買い取ったものでありまして、
土地は七百三十坪、家屋は四十二坪という広大なものでありました。場所は渋谷区南平台の一等地でありまして、
土地の時価相場は坪三万八千円と言われておりますが、かりに百歩を譲って税務事務所の評価額をもっていたしましても、坪実に八千円であり、どんなに安く見積ろうといたしましても、この国有財産は六百万円を下ることは許されないのである。しかるに、がけ地があるという珍妙なる名目を付しまして、これを坪三千円で払い下げを受けております。家屋については、同じく税務事務所の評価額五十三万円とされておるものを、これまた、
自分で半分以上は修理したと称して、わずかにこれを十三万円として、この広壮な大邸宅を、
土地と家屋を合せてわずか二百三十七万円で払い下げを受けておるのであります。しかも、この代金の支払いは実に十カ年年賦というものであります。親切で、丁寧で、ゆうちょうで、寛大で、まことに至れり尽せりのお取扱いであります。
国民が税金を滞納いたしますならば、
たちまちにして延滞日歩を課し、さらにおくれれば、その財産を差し押えてこれを競売に付する大蔵省の方針とあわせ考えたら、このような取扱いは、まさに、やかんとてんかんぐらいの相違であろうと思うのであります。(
拍手)
申すまでもなく、国有財産法は、財務局の職員が払い下げを受けたり交換することを、特に一カ条を設けて、厳重に禁止いたしております。ここに、井上元印刷局長は、その前任たる関東財務局長在任中に、部下であった同局目黒出張所長に命じて、坪三千円にするよう、お手盛りの払い下げ価格を決定させ、その他これに付随する準備の一切を済ませて、印刷局長に転任するや、わずか二カ月を出ずして、これが払い下げを受けて、
自己の所有といたしておるのであります。このほかに、
同君は、
昭和三十年二月ごろ、自宅の修理、塀の新築など、約五十万円相当の工事を、印刷局の改修築工事を請け負っておる下請の中野組、五十嵐組などに、ただでやらせた容疑等もあります。さらに、同年初めには、千葉の野田ゴルフ場の会員となった際、これに必要なる株二十八万円、入会金十六万円、計四十四万円、これを印刷局の外郭団体である朝陽会に支払わせておる不正等も明らかになっております。また、自宅の庭には、町の有料練習所も顔負けするようなりっぱなゴルフ練習所が設けられ、これは印刷局の公けの資材によって作られておるということであります。
そこで、ここに最も奇怪なことは、
かくのごとき言語に絶する悪質なる犯罪容疑を持った
同君が、このほど一萬田
大蔵大臣によって依願免官と相なったことであります。
同君は、さきに事件の発覚するや、印刷局内に
汚職事件を出した
責任をとるとの
理由で辞表を
提出し、本年三月二十三日依願免官となっておりますが、一体このような人事管理の方式というものが許されてよいでありましょうか。(
拍手)いやしくも、犯罪の被疑者に対しては、その者が起訴されたときはこれを休職処分に付し、罪状決定とともに懲戒免官とすべきは、これは官紀の厳粛を保つための鉄則とされておるところであります。(
拍手)ここに背任容疑の刑事被疑者を故意に庇護して、特に依願免官とした
大蔵大臣の措置は、断固として許されては相ならぬと存ずるのであります。(
拍手)一体、大蔵省では、その職務に関してどんなに悪事を働いても、それが露見したときに辞表を出しさえすれば、このように、いとも円満に退職ができるというのであるか。このような、ふしだらな人事管理の方式をもってして金融、税制、管財、外為、予算の
編成等、その広範なる所管事項について、果して
大蔵大臣は
国民の負託にこたえ得るのであるか。この一事をもってしても、一
萬田尚登君をその職にとどむることは断じて許されないのであります。(
拍手)
この事件は、去る一月十七日、印刷局の外郭団体朝陽会の不正入札事件を発端として、約二カ月間に、印刷局の役人十人、朝陽会二人、業者側九人、合計二十一人が、贈収賄、背任、業務上横領罪で逮捕され、事件は印刷局の古輪転機の不正払い下げ問題から、同局管下工場の建築、改修業者とのなれ合い、さらにまた、同局所管の
土地など、国有財産不正処分問題へと発展してきたのでありますが、これは今当局の捜査によって明るみに出たものでありまして、そのほかに、このような事例は、幾多枚挙にいとまなしとすらいわれておるのでございます。しかしながら、時間等の関係もありますので、ごらんの
通り、この数枚はこれを省いておる。(
拍手)
特に現在指摘せなければ相なりませんことは、国有財産の不当貸付として、数年来の懸案となっておりまする、あの虎ノ門事件、これも今なお未解決のままに放任されておるのでありますが、一体これはどうしたことでありましょうか。本件は、虎ノ門の元満鉄ビルに隣接する一千余坪の国有
土地を、公園にする目的をもって東京都に無償貸付をしたるところ、
昭和二十三年二月、ニューエンパイヤ・モータース株式会社が、連合国軍に対する自動車の修理サービス業を営む目的をもって、
土地の使用許可申請を行い、東京都は、五月二十五日、これが申請を許可したのであります。許可の条件は、使用面積千百三十六坪、使用期間は
昭和三十二年十二月三十一日まで、一カ月賃貸料千七百四円、公園の美観をそこなわないよう、これを条件といたしておるのであります。越えて二十四年二月、許可を一応取り消しまして、そうして許可条件を変更して、使用面積六百五十坪、使用期間は
昭和二十八年一月三十一日まで、一カ月の使用料は三千三百十五円、同使用地に建てる建物は、恒久的な鉄筋等を認めず、木造二階建とし、期限がくれば、エンパイヤ・モータース株式会社の費用をもって施設を撤去すること、これが条件になっておる。この間、会計検査院においても、
昭和二十六年三月、公園目的以外に使用されておるこの国有
土地は、すみやかに用途を廃止して普通財産とするよう、財務局に勧告がなされておるのであります。しかるに、その後、遷延いたずらに日を経るのみで、何ら解決もしておらない。現在使用許可期限を経過することすでに三年有余にして、依然として今日もなおニューエンパイヤ・モータース株式会社が当該国有財産を占拠、無断で使用しておるこの現状、これを
大蔵大臣は全然拱手傍観して見のがしておる。いかなるかんばせあって、そのようなところにすわっておられるか、と尋ねたいくらいである。(
拍手)全く、これらは、
国務大臣の国有財産の管理、運用について何らその
責任を果していない証拠でありまして、一萬田
大蔵大臣がその間違った執行と怠慢によって国家に与えた損失はまさに莫大であります。これが一萬田君をしてその職にとどまることを許し得ざる
理由の
一つであります。(
拍手)
次は、一萬田
大蔵大臣不信任の
理由といたしまして、国の財政政策に対する無節操にして厚顔無恥なるその
態度についてであります。(
拍手)一萬田
大蔵大臣は、口を開けば、常に健全財政を強調せられておりまするが、もとより、これは当然のことでありましょう。いつの
時代においても、また、いずこの国においても、みずからの立案になる財政政策を不健全財政などと自称するばか者はおりません。問題は、その財政政策が真に健全であるかいなかについてである。時の財政政策が、その
時代の
政治的、経済的、社会的情勢に照応いたしまして、果して当を得たものであるかどうかは、これは立場の相違によっておのずから論議の分れるところでありましょうけれども、少くとも
大蔵大臣が健全財政であるとみずからの案を誇称する限り、その方針は首尾一貫したものでなければならぬと思うのであります。しかるに、一萬田
大蔵大臣の予算
編成方針をめぐる
態度は、まことに変転常なくして、きのう言ったことと、きょう行なっておるところには、一片の脈絡もなければ、
責任観念もなく、その方針はカメレオンのごとく変り、その考え方は、うわ気なチョウチョウよりもさらに移り気であります。
現に、予算
編成に当っても、その方針は、議会における審議以前に幾たびもころげ回っておるのであります。たとえば、一萬田
大蔵大臣は、その就任した初年度の、昨三十年度の予算を組むに当り、一般会計における出資を二百六十二億円計上いたしました。すなわち、農林漁業金融公庫九十五億円、
国民金融公庫二十億円、中小企業金融公庫十五億円、商工組合中央金庫十億円、住宅金融公庫五十二億円、住宅公団六十億円、国際航空十億円でありまして、
吉田内閣時代よりも六十二億円を増額していたのである。また、と
かくインフレの要因となる公募公債は、これを五億円減額をいたしまして三百八十五億円といたしたのであります。健全財政の趣旨から申しますならば、これらの出資は一般会計において計上すべきであり、また、公募公債は多少なりとも減額をはかるべきことは、われわれもまたこれを肯定していたところであります。しかるに、昨年五月、少数与党たる民主党が自由党との間に行なった予算折衝の過程において、この一萬田蔵相の当初における健全財政の大構想は、こつ然として、その姿をまるきりかき消してしまったのである。自由党との間に、当時いかなる取引が行われたのか、それはとうていわれわれの想像のらち外ではありますが、いずれにしろ、この間における一萬田蔵相の豹変ぶりは、これは天下をひとしくあぜんたらしめずにはおらなかったものであります、すなわち、一般会計出資は実に百五十四億、当初予算に比較いたしまして何と六割という額を削減して、わずか百八億円として、一方、公募公債は百三十六億をふやして五百二十一億円にするという、驚くべき軽わざの芸当を見せたのであります。ここに公債への道は開かれました。公債への道は、一歩これを踏み出せば、あがきのとれない泥沼に通じておることは、財政学者のいずれもこれを論じておるところであります。さればこそ、三十一年度予算においては、すでに一般会計出資わずかに二十億、公募公債は逆に九百億円というがごとき、一萬田構想にとっては、さんたんたる結果を招来せずにはおかないという、そういう結果に相なっておるのであります。
ここで、私は、一萬田財政の本質に言及して、大臣就任当初の一萬田構想が、果してわれわれをも納得せしめるに足るだけの健全財政を行なってきたかどうかを、その現実に照らして追及せなければならぬと思うのであります。(
拍手)
まず、一萬田蔵相は、就任の当初から、
わが国予算の軍事的性格を特に推進しておることを見のがしてはなりません。
鳩山内閣は、昨冬の総選挙に当り、
防衛支出金を減額して住宅を作る、社会
保障を拡充強化すると公約はしたが、御承知のように、三十年度予算では、なるほど、
防衛分担金だけについていえば、
アメリカに泣き込んで、とまれ百二十五億円減らしてもらったが、それは、その分をそっくりそのまま
防衛庁費に回しておるのであります。三十年度一般会計において軍事費の占める割合を見まするに、狭義の軍事費は一三・六%で、二十九年度よりも〇・一%の増額となっておる。旧軍人恩給費は、二十九年度分の六・四%から六・八%と、〇・四%増加いたしておる。さらに、ここで特に指摘せねばならぬことは、二十九年度八十億円であった予算外国庫負担を、三十年度では、実にその倍額に近い百五十四億八千万円の予算外国庫負担を行なっておることであります。さらに、三十一年度予算では、狭義の
防衛関係費は八十億円増加して、一三・九%という総予算の中に占める割合を示し、旧軍人恩給費は七%で、それぞれ三十年度よりも増加の傾向著しく、予算外国庫負担は、継続費と合計して十億円の増加となっておるのであります。
かかる傾向の中において、われわれが明確に指摘し得ることは、すなわち、一萬田財政は、その中心に軍事費を置くという軍事的性格であり、かつ、年々歳々、鉄面皮にこれを増大していくという、このことにあるのであります。かかる軍事費中心の予算がインフレ予算であることは論を待たないところでありまして、千四百三十億円の通貨を、単にどぶの中へ捨てるだけであれば、それは通貨の収縮にすぎないでありましょう。しかしながら、何ら再生産に役立たず、従って、何らの経済価値をも生まない軍事費にこれを使用するということは、少くともその額だけがインフレとなって返っていることは明らかであります。
かくのごときインフレ予算が底の浅い
わが国経済に及ぼす悪影響はまことに甚大なるものがあると指摘せなければ相なりません。(
拍手)
鳩山内閣にして、施政すでに一年有半を経て、その公約を何
一つとして実現できない
理由も、また実にここに存するといわなければ相なりません。まことに
大蔵大臣には予算
編成に関する何らの抱負経論もなく、現に三十一年度予算
編成に際して、
防衛分担金削減折衝を通じ、ついに売国的屈辱外交に慴伏して、
アメリカとの間に次のような取りきめを行なったのであります。
すなわち、
米国は将来
日本の
防衛庁費及び
米軍用施設費の予算の合計額の増加分を均等に負担し、究極において
日本の
防衛分担金をゼロならしめるというのであります。これを端的に
解釈すれば、
防衛分担金がゼロになるときは
米軍は撤退するという
解釈もできないこともないのであります。現在、
防衛分担金は三百億円でありますが、
防衛庁費を六百億円増加せしむるならば
米軍はいなくなると考えられるかもしれませんけれども、それはとんでもない早合点というものであります。このような取りきめの実態というものは、まことにそのようななまやさしいものではないのであります。六百億円という金額
自体が、再建途上にあってなお塗炭の苦しみをなめておる一般
国民大衆にとって、それこそ容易ならない金額であることは当然でありまするが、その六百億円の行き先は
防衛庁費と
米軍への施設提供費にほかならないのでありまして、しかも、施設提供費が不足する場合は、自由に
防衛庁費を削って提供費の方へ回そうというのであります。言うならば、この方式こそは、
防衛分担金がゼロになるのときは、
自衛隊も増大するが、同時に、
アメリカのおそるべき
原爆基地が、まさしく
日本の国土において完成するという、そういうおそるべきときであるのであります。
かくして、
日本の
自衛隊は、
アメリカ軍の弾よけとして仕上げられ、生活にあえぐ民衆の呪詛を込めた血税が
原爆基地のために惜しげもなくささげられるという、これをしも売国的取りきめと糾弾せずして、
国会議員たるの面目いずこにかありましょう。(
拍手)西独においては、アデナウアーが断固として
防衛分担金の支払いを拒否いたしておりますときに、
わが国においては、一萬田蔵相が、従来のそれに輪をかけて、平然として、かかる屈辱的取りきめを行なっておるのであります。
ここに、一萬田蔵相は、
防衛庁における国費の乱費を何と見るか。たき木にしかなり得ないような直径一、二寸のナラ材を、建築材として評価して、五千数百万円を余分に支払ったり、冬服を十年分も倉庫に眠らせたり、また、ただいま同志
諸君によって論述されましたところの例の中古ガソリン・エンジンの買い上げ、これらの
防衛庁費に一指だに触れ得ずして、それでしも一国の
大蔵大臣の職責が果されるというのであるか。(
拍手)
また、
アメリカに対するこのような屈辱的政策だけにはとどまらない。一萬田蔵相は、貿易政策の面においても、
日本の国際的信用を傷つけて顧みるところが全然ありません。すなわち、蔵相は、
わが国の貿易はその生命ともいうべきものである、貿易振興のために東南
アジア貿易を伸張させねばならないと言い、また、東南
アジア開発機構を作ると言って、もっぱら
アメリカの映画関係の会長や
ダレス長官と話し合ってきたのでありますが、しかしながら、バンドン精神の横溢した東南
アジア、この民族独立の希望に燃えておるその国作りの人々は、今、東南
アジア諸国に対して、帝国主義者
アメリカと組んで進出を試みんとする、かつての帝国主義
日本に対して、今やいよいよ警戒の念を増しこそすれ、決して一萬田構想などを歓迎してはいないのであります。今日、東南
アジア貿易が伸びるべき幾多の好条件に恵まれながら、なおかつ伸び悩んでおる原因は、まさに一萬田蔵相の反動政策に起因するものでありまして、その罪業は将来にまたがって禍根を残すでありましょう。(
拍手)
さらに、また、一萬田蔵相の財政政策が、
憲法に基いて福祉国家たるべき
わが国の社会
保障政策を一歩も二歩も後退させておることについて、せめては何らかの自覚があるのであるか。その選挙公約とあわせ比べて、
国民を欺瞞するの最もはななだしきものと糾弾せざるを得ないのであります。(
拍手)
今日、社会問題のうち最も重大な問題は、住宅難の問題であります。同じ敗戦国たるイタリアにおいても、はたまた東西ドイツにおいても、およそ住宅難の問題は次第に解消しつつあるのであります。家がないばかりに結婚ができない青年
たちが幾十万をこえておる。また、六畳、八畳の一室に間借りをして、多数の世帯が難渋しておることを、大臣は何とも感じないのでありますか。
鳩山内閣の選挙公約のうちで最も魅力に富んだものが、その住宅建設四十二万戸というかけ声にあったことは、当時の
新聞記事を拾えば一目瞭然であります。しかるに、その実際は、
諸君も御承知の
通り、財政的裏づけがないばかりに、四十二万戸のうち二十四万五千戸というものは、民間の自力建設、これに期待するものであって、
政府がやるという十七万五千戸すら、これが年度内に実際に建設されるというのは、実はその七割ないし八割というがごときありさまである。民衆は、欺瞞に対して、きわめて敏感であります。巷間、たまたま、四十二万戸とエープリル・フールとはシノニムとなって、新しい流行語として流行していることを、大臣は御承知でありましょうか。(
拍手)しかるに、現
内閣は、またぞろ、本年度は住宅建設は四十三万戸だと
放言をしておるのでありますが、その神経の図太さは、まさにおそれ入るばかりであります。(
拍手)
さて、三十一年度の社会
保障関係費において、一萬田蔵相はいかなる財政措置を講じたか。その結果、
わが国の社会
保障政策をいかに後退せしめておるか。われわれの公正なる
見解において、さらにその
責任を追究しなければ相なりません。三十一年度の社会
保障関係費は、住宅対策費を含めて千三百八十七億六千三百万円、予算全体においてこれが占める比率は一三・四%でありまして前年度に比較して約十六億円の減、比率において〇・八%の減となっておるのであります。念のために申し上げておきまするが、ただいまの数字は、
諸君がお持ちの「予算の説明」という大蔵省主計局発行の解説書とは数字が違っておる。私の申し上げた数字は、予算を目的別に整理総括したものであって、「予算の説明」では、社会
保障関係費は千百三十四億円で、前年度よりも百二十二億円の増額となってはおる。しかし、住宅対策費を含めて目的別に分類整理をいたしますると、前年度よりも十六億円の減と相なるのであります。住宅対策費を「予算の説明」のように計算をいたしますと、住宅対策費が前年度よりも約七十億円の減となっておりますので、社会
保障関係費は百二十二億円の増加ではなく、約五十四億円の増加となり、(「時間だ」と呼ぶ者あり)結局、予算総額の中においてその占める比率は前年度と変らず、一二・三%にすぎないのであります。