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1956-05-23 第24回国会 衆議院 本会議 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十三日(水曜日)     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四十九号   昭和三十一年五月二十三日     午後一時開議  第一 教科書法案内閣提出)  第二 家畜取引法案内閣提出参議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  防衛庁長官船田中不信任決議案淺沼稻次郎君外四名提出)  大蔵大臣萬田尚登不信任決議案淺沼稻次郎君外四名提出)  日程第一 教科書法案内閣提出)     午後五時四十七分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、淺沼稻次郎君外四名提出防衛庁長官船田中不信任決議案は、提出者要求通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  防衛庁長官船田中不信任決議案を議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。飛鳥田一雄君。     —————————————     〔飛鳥田一雄君登壇〕
  6. 飛鳥田一雄

    飛鳥田一雄君 私は、ただいま上程されました船田国務大臣不信任決議案について、日本社会党を代表いたしまして、その提案趣旨説明を試みんといたすものでございます。(拍手)  まず第一に、理由を読み上げます。  国務大臣船田中君は、自衛のためには敵基地を爆撃攻撃し得ると、憲法第九条を不当に拡大解釈し、わが国及びアジアの平和に脅威を与えている。防衛庁における相次ぐ汚職事件の発生は、長官たる船田中君の監督不行き届きの結果であり、同君責任は断じて許されない。これが本決議案提出する理由である。(拍手)  以下、その理由を申し上げます。  その第一の理由は、国務大臣船田中君が、本国会において、自衛隊敵基地攻撃ないしは爆撃し得ると、あえて宣言せられたことであります。これは、日本国民にとって、まことに重大なことといわなければなりません。すなわち、それは、一は憲法解釈の問題にかかり、一は全世界の平和の問題に関するからでありまして、軽々にこれを黙過するわけにはいかないのであります。(拍手)およそ、憲法は、その第九十九条にある、国務大臣国会議員のひとしくこれを尊重し擁護すべきものでこそあれ、船田国務大臣が自由にこれを伸縮し得べきものでないことは当然であります。また、その正しい解釈は、一あって二あるべきものでもありません。しかるに、保守党政治家諸君は、従来、ややもすればこれに勝手な解釈を下し、年とともに変って参ります。(拍手船田氏の今回の失言もまたこれに淵源をいたすのでありまして、今その変遷をあらためてたどってみる必要を感ぜざるを得ないのであります。すなわち、それはまことに奇妙不可思議なものでありまして、きっと、保守党諸君といえども、これをお聞きになれば、苦笑を禁じ得ないものがあると存するのであります。(拍手)  まず、その第一にあぐべきは、平和憲法感激時代とも申すべき時代であります。この時代に、吉田総理大臣は、憲法規定は直接には自衛権を否定していないが、一切の軍備交戦権を認めないから、自衛権発動としての戦争も放棄している、あるいはまた、無軍備こそわが国民の安全、幸福の保障であると強調せられたのであります。ところが、次の、戦力なき軍隊時代とも呼ぶべき段階に入りますと、とたんに、保安隊警察予備隊もまだ戦力ではありません、戦力でないものが自衛のための行動をしても憲法違反とはなりませんと、変説改論せられたのであります。この時代のことでありました。自衛隊には軍艦があるではありませんか、こうわが党の議員質問をいたしますと、いや、それは人と大砲を載せた船である、とお答えになりました。(拍手タンクがあるじゃないか、こう質問をいたしますと、あれはタンクではありません、特車であります、とお答えになったのであります。また、木村元長官も、戦力というためには、まずジェット機や原子爆弾を持っていなければならない、と答弁をせられました。お気の毒でございますが、今の自衛隊にはジェットF86がたくさんございます。さらに、鳩山内閣時代に入りますと、八方破れ時代とも名づくべき時代がやって参りました。(拍手自衛権範囲内ならば戦力も持てる、こうおつしゃり、自分は初め自衛隊は違憲だと考えておったが、自衛隊法国会を通過したから、これを合憲だと思い直した、こうおっしゃるのであります。まことに八方破れといわざるを得ないのでございます。(拍手)  法律をもって憲法を変え得るとはいかなものでありましょう。たしか、鳩山総理法科大学の御卒業だったと思います。なるほど、ある雑誌で拝見したのでありますが、昭和三十年四月、鳩山総理は、新聞記者諸君に対して、政権をとって国会答弁をしてみると、われながら気持の悪いうそを言わなければならない、こう述べられておるそうであります。まことにお気の毒ではあり、一応御同情は申し上げるところでありますが、しかし、国民の側は、また憲法解釈とは、かくも伸縮自在なものかと、かつあきれ、かつ感心せざるを得ないのであります。(拍手)  こうした鳩山さん、吉田さんだけで、もうわれわれ国民はうんざりしておりますところへ、またも船田氏が一枚飛んで出て加わられたのであります。すなわち、船田国務大臣は、本年二月二十七日、急迫不正の侵略があり、これを防ぐのに他に手段がないときは、自衛最小限度手段として敵の基地をたたくことはあり得る、こういうふうに衆議院内閣委員会でお述べになりました。越えて二十九日、鳩山総理は、御自分閣僚失言を救いますために、自衛のためには敵の基地侵略してもよい、ここに侵略とは攻撃という意味だと言ってのけられたのでありました。一体、急迫不正でない侵略というものがあり得るのか。侵略は急迫不正であるからこそ侵略であり得るのではないか。国務大臣の言説は、こう考えて参りますと、それ自体論理の矛盾であります。この点をついた、わが党の石橋議員質問に対して、船田さんは十分近くもお答えにならなかったのであります。事が重大でありますために、何と答えるだろうか、いや、うまく答えてくれればよいが、こういった与党議員諸君の祈りにも似たしじまの中で沈黙は続きました。同君は答えられないはずであります。正当防衛という形式論理をかりて無制限な侵略をあえてしようとなすっているからであります。すなわち、自衛隊法第七十六条を見ますと武力侵略がある。いや、そのおそれがある場合には、総理大臣国会承認を得て自衛隊の出動を命ずることができる。いや、特に緊急の必要がある場合には、国会承認をさえ必要といたしておりません。これでは、急迫不正の侵略のおそれがあり、かつ、他にこれを防ぐ手段なしと唱えることによってあらゆる先制攻撃が可能となるのであります。だれがその認定をするのか。総理及びそのアシスタントである船田長官は、かくして、言葉を飾りつつも、実は無制限侵略共産圏への先制攻撃の端緒をここに作り出そうとする下心を露呈せられておるのでございます。(拍手)  憲法第九条は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。「国の交戦権は、これを認めない。」と規定をいたしました。このような船田長官の無制限なる先制攻撃を許す見解をいれる余地はないのであります。こうして、保守党政治家諸君は、長い憲法第九条歪曲の歴史をたどって、今船田放言到達をいたしました。(拍手)それは完全なる憲法のじゅうりんですらあります。平和憲法死刑執行者船田長官不信任の、これが第一の理由であります。(拍手)  さらに、こうした船田長官自己自衛侵略論は、単なる言葉の遊戯ではなく、わが国、ひいては東亜の平和を破壊する重大なる結果をもたらすのであります。これまた、同君を信任し得ざる第二の理由となるのであります。(拍手)  すなわち、一体敵基地とは何を意味するのか。船田氏及び総理敵基地と呼ぶ場合、これは何を意味しているのでありましょうか。まさか台湾やフィリピンを意味してはおられますまい。この点は、与党議員であります自民党の大坪議員からたびたび質疑が繰り返されました。総理は、この点については、今はっきりと言いたくない、こう言われたのであります。しかし、それが中国及びソビエトを目していることには誤まりありますまい。現に、自衛隊は、昨年度において、混成団——混成団とは、それだけで戦争のできる旅団編成でありますが、これを熊本及び北海道に増設いたしました。本年度、また、これを青森市に増設したのであります。南方及び北方の守りにのみ重点を置いている点よりして、このことは明らかでありましょう。およそ、仮装敵を持たざる軍隊というものは存在いたしません。自衛隊仮装敵が中ソであることは、いかに言葉を飾ろうとも、その編成及び装備がこれを物語っているのであります。あまつさえ、稻村議員に対する答弁において、船田長官は、なるほど、表面においては平和攻勢あるいは民族の解放であるというようなことを申しておりますけれども、とにかく侵略をしておる、先に手を出しておるのは共産圏である、これは歴史上の事実だと思う、こうお答えになりまして、仮装敵中国及びソビエトであることを暗黙に承認せられたのであります。もし、しかりといたしますならば、敵基地という言葉をこの国会において責任者であるところの船田長官が使うということ、このこと自体が、いかなる反響を中ソに及ぼすか。一方において、鳩山内閣は、日中、日ソ国交回復国民に約束せられながら、他方において、かくのごとき刺激を意識しつつ行うのはなぜか。政治は、ひとり国内だけに行われるものではありません。少くとも、責任ある政治家は、その説くところ、その影響するところを、内外において考慮していかなければならないのは当然でありましょう。(拍手)こう考えて参りますと、敵基地という言葉を使うだけで問題がありますところへ、さらに船田さんは今回の暴言をあえてせられたのでありまして、今かりに急迫不正の侵略ありとして自衛隊ジェット爆撃機大挙中国なりソ連なり基地をたたいたといたしますならば、彼らもまた、これに応ぜざるを得ないでありましょう。  中ソの間には、御存じのように、中ソ友好同盟条約が存在いたします。その第一条第二項を読み上げますと、このようになっております。締約国の一方が、日本またはこれと同盟する他の国から攻撃を受けて戦争状態に陥った場合には、他方締約国は、直ちになし得るすべての手段で、軍事的の、または他の援助を与える、とあるのであります、また、これに対応するものとして、わが国には安保条約が存在をいたします。安保条約を読んでみますると、「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょうを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するため」米軍を使用することができると述べておるのであります。すなわち、この両条約を理解いたしますならば、急迫不正であろうとなかろうと、敵基地をたたくということは、必然的に中ソ二国と日米両国との間の大戦争を惹起するものでありましてそれは、全アジア、いや、全世界の問題であります。(拍手船田さんの軽々たる放言は、ただ単に自衛権範囲にそれが属するかどうかということ、あるいは憲法違反の問題なりやいなやといった法律解釈の問題にはとどまらないのであります。かくのごとく、世界の平和の問題を、軽々として、座して死することはできないからだなどと言い放つことによって解決しようとするのは、長官がいかに国際政治的感覚欠除しているかということを物語って余りあるのであります。(拍手原水爆戦争時代、台湾問題を控えた現在、国際的な政治感覚欠除日本国民に破滅をもたらすであろうことは明らかであります。  今、試みに、原水爆戦争がいかなる戦力日本に展開するであろうかを考えてみていただきましょう。ここ数年間の原爆、水爆の発達は、おそるべき段階到達をいたしました。米ソ原水爆所有の数が膨大となりましたのはもちろんであります。また、その一つ一つの性能は著しく高度化されつつあります。海外紙報道によりますと、その一発は最小限度二百四十ポンドに縮めることができたとさえいわれておるのであります。こうした発達は、単に原水爆だけの発達にとどまりません。まず、その結果は、飛行機において戦闘機爆撃機の区別を消滅せしめました。今までは、爆撃機が何十発という爆弾をかかえて飛んでいかなければ、敵基地あるいは敵首都を壊滅させることはできなかった。ところが、今は、一発の原爆、しかも、それが二百四十ポンド程度のものを搭載していけばよろしいのでありまして、もし、しかりといたしますならば、音の二倍のスピードで走る戦闘機爆撃機にかわるのは理の当然でありましょう。そこで、距離は今や防御ではなくなったのであります。さらに知るべきは、無線誘導弾の発明、発達であります。それは地球を半周する段階にやって参りました。皆さん方も、今小笠原島付近へ敵潜水艦がやつて参り、原子弾頭をつけた誘導弾を一発東京に向けて放った場合を考えていただきましょう。これで万事終るのであります。こうした段階前提にいたしまして、一昨年暮れでありましたか、ヨーロッパのNATO軍は大規模演習を展開いたしました。  ここから結論づけられましたものを一つ、二つ拾ってみますならば、まず第一には、陸上航空基地航空母艦に劣るということでありました。第二次世界大戦当時の結論は、航空母艦は撃沈される公算が大であるのに反し、陸上基地は、修理に、よって、またすぐ使うことができるから、はなはだ価値ありとせられたのでありました。しかし、今回は、NATO軍演習の結果、その結論が逆転いたしました。すなわち、陸上航空基地は、一回の原子攻撃を受けることによって、一ヵ月以上も人間の立ち入ることのできない放射能を帯びてしまうのに反し、航空母艦は、無線誘導弾を搭載しているところの船によって守られる限り、逃走の可能性がある。ちなみに、GMの命中率は、アメリカの実験によりますと、三発に二発とのことでございます。かくして、世界戦略は完全に変って参りました。今まで航空母艦建造を見合わしておりましたイギリスは、大型航空母艦建造へと乗り出したのであります。ソ連また、航空母艦大量建造を計画いたしつつあるとのことであります。このように、世界戦略無線誘導弾発達によりまして変って参りますると、当然それはアメリカ日本に対する態度の変化をも物語るのであります。すなわち、日本アメリカ陸上兵力を駐屯させておく土地としては適当でなくなったのであります。今までは、アメリカは、日本陸上兵力を駐屯せしめておき、いざとなれば朝鮮へも行き、いざとなれば仏印へでも行くぞ、こういう態勢を示すことによって、アジア支配権を把握せんといたして参ったのであります。ところが、原水爆の二、三発で全滅をするこの日本土地に、大切な自国兵を置いておくことはできません。こうして、今、米陸軍は、アジアの第二戦陣地たるマリアナ諸島へ、グアムからミッドウェー戦線へと、続々後退いたしつつあるのであります。先般、防衛庁発表によりまするならば、日本に駐屯いたしておりまする米軍兵力は、陸上兵四万二千、海軍六千七百、航空兵五万という御発表でありました。いかに陸上兵力日本から後退しつつあるかということを、この数字は物語って余りあるでありましょう。(拍手)  かくのごとき状態になって参りますると、米国はその後の日本をどうすればよいのか、こういう問題が出て参るはずであります。こうした米作戦の事実を端的に物語っておりますものに、米国軍事評論家ハンソン・ボールドウィン氏の、ニューヨーク・タイムスに載りました論文がございます。これは、まず第一に、ポールドウィン氏は、日本を一刻も早く原水爆基地に変えなければならない、しかして、第三次世界大戦が始まった場合には、中国及びソビエト原水爆攻撃日本磁石のように吸い寄せてしまわなければいけない、日本磁石のように中国及びソビエト原水爆攻撃を引きつけている間にアメリカソ連を討つ時間をかせぐのだ、と書かれておるのであります。(拍手)これがアメリカ日本に対する態度であります。この態度は、現に、鳩山さんが、総選挙を終られて、内閣を作られ、その公約に従って防衛分担金削減の交渉をアメリカにせられますと、明確に現われて参りました。すなわち、五つの飛行場を至急拡大することと引きかえに百七十五億円の防衛分担金を負けてあげようという要求がそれであります。これがすなわち原水爆戦争であります。  話が少し長くなりましたが、こうした原水爆戦時代に、急迫不正の侵略に対し、敵基地をたたくことも自衛隊の任務だなどとせられるこの感覚は、国際政治に対する無感覚といわなければならないのであります。(拍手)しかも、それが他の国務大臣であられるならばいざ知らず、防衛庁長官であられるとするならば、これは重大な問題であります。(拍手)私たちは、これをもって船田国務大臣不信任の第二の理由としなければならないのでございます。(拍手)  第三の不信任理由は、これもまた、おなじみの海外派兵の点であります。海外派兵といえば、だれしも思い浮べますのは、昨年夏の重光外相渡米の一件であります。御存じのように、ダレス・重光日米共同声明の中では、実行可能な限り、日本ができるだけすみやかに自国防衛をするための主たる責任を負い、かつ、国際平和の維持と西太平洋の安全に寄与することができるような条件を、日米協力の基礎の上に作り出すような努力が払われるべきであると述べてありまして、アンドアンド・ザスか、これを契機に、海外派兵の論議が強く再燃いたしたことは、御存じ通りであります。海外新聞、あるいは米国国務省筋海外派兵を約束したという見解に反して、政府は陳弁これ努め、特に重光外相は、記者団の、今回の会談で日本海外派兵について同意を与えたのか、こういう問いに対し、そのような了解があったとは考えられない、こら答えられて、打ち消すことに必死となっておられたのであります。しかし、どんなに懸命にこれを否定されようとも、国民の胸の中に幾ばくかの疑念が残ったことは否定し得ぬところであります。なぜならば、かつて、同じ保守党緒方自由党総理は、公務員海外大量出張はあり得ると答弁をせられたことがあります。自衛隊諸君は純然たる公務員であります。また、佐藤法制局長官も、いわば公務員海外出張のような意味のものなら、憲法上可能といわなければならない、と答えられたのであります。公務員である自衛隊が、銃をかついで、タンクを操縦して、海外に大量出張することもあり得る、これでは、幾つもの不安の念が国民の胸から去らなかったのは当然であります。(拍手)果せるかな、国民の直感は正確でありました。  昭和三十年十一月、船田長官は、就任せられまするや、その第一声を放って、国際的には、私見ではあるが、西太平洋防衛における自由主義国家群との協力の必要上、日本はその一員として日本防衛体制を考えるべきであるとせられ、日本の運命がSEATOの機構に組み込まるべきことを暗示し、さらに、本年二月二十七日、内閣委員会において、米軍撤退後、日本だけでは自衛は困難だから、集団安全保障という考え方にならざるを得ないと説明せられ、海外派兵がその前提であることを示唆せられたのでありました。かてて加えて、今回ダレス氏が来朝せられまするや、その公式の会見の席上で、米軍占領時代憲法の再軍備条項を改正しておかなかったため、海外派兵論争を引き起したのは遺憾であると、注目すべき発言が行われたのであります。すなわち、同長官は、将来憲法を改正して海外派兵の可能な再軍備をしたいという意図を不用意にも表明せられたのでありまして、相手がダレスさんでありますだけに、おそるべき結果をもたらすだろうことは必定であります。  およそ、海外派兵は、単に憲法に違反するやいなやの法律解釈だけの問題ではありません。国民は、自己生存権の問題として、これに重大なる関心を有するのでありまして、(拍手ひとり防衛庁長官のよくこれを決し得べきものではないはずであります。(拍手国会の論戦、国民の世論を尽した後にこれを決すべきは当然でありますのに、同君一人海外派兵の約束をダレスに与えるかのごとき言辞をもてあそばれましたのは、完全に国民に対する反逆であります。(拍手)これ船田国務大臣を信任し得ざる理由一つであります。  こう申し上げますと、あるいは、船田さんは、それらはすべて新聞報道であって、真実ではないと、こうお答えになるかもしれません。都合が悪くなると、誤報ですと、ジャーナリストの責任に押しつけるのが、最近の閣僚諸君の、実にごりっぱなくせであります。(拍手)それならば、私たちは、こうお聞きをいたしたい。自衛隊装備を検討し直してからおっしゃっていただきたいといわざるを得ないのであります。(拍手)  自衛隊はどんな装備を持っているか。すなわち、その一つタンクであります。現在の編成表によりますと、陸上自衛隊の一管区隊には六十三台、一混成旅団には二十四台のタンクが配備せられることになっているのであります。地上軍最終目標である兵力十八万、六管区隊、四混成団が完成いたしますと、そして、それに数個の独立特車大隊が加わりますと、一千台前後のタンクが必要になって参ります。現に、防衛庁は、三十五トン戦車を、昭和三十年度において、すでに三菱日本重工業株式会社に発注いたしました。元来、三十五トン重量戦車などを作って、貧弱な道路日本で、果して十分にその機動力を発揮することができるかどうか、自衛隊の内部ですら相当な疑問を持っておるといわれておるのであります。現にごく最近の建設省の道路局の集計を見ますと、全国の橋梁数十二万五千三百、このうち、自動車すら通行することのできないものが四千六百七十、六トン以上の重量が渡ると危険なものが二万七百四十もあるのでありまして、これだけでも全橋梁の一四%であります。まして、三十五トンなどといえば、おそらく日本中の橋の半分も渡れますまい。こんなことで、三十五トン戦車日本国土内で使用するなどとは、だれも言い得ないのであります。すなわち、これは海外派兵用だといわざるを得ないのでありまして、(拍手)この装備の事実が、いかに言葉を飾られようとも、真実を物語っているといわざるを得ないのであります。(拍手)  御存じのように、自衛隊は、昭和三十年十月十日から十四日にかけて、自衛隊始まって以来の大規模演習北海道で展開いたしました。ここで注目すべきは、東千歳で行われましたパラシュート部隊降下演習であります。これを視察しておりました外国某部官は、ああいうことは防御には必要がない、攻撃のためにやっているのかと、すこぶる神経をとがらせておったと伝えられておるのでありますが、全くしかりであります。自衛隊が今持っているかかる武器こそ、同隊が今後どのような方向に使用せらるるかということを物語って余りあるのであります。  さらに、われわれは、また、P2V哨戒潜機シュノーケル型潜水艦をも見なければなりません。P2V機については、その航続距離約四千マイル、もし自国内の防衛のみを考えるならば、全くかくのごとき長距離機は不必要であります。しかるに、防衛庁は、今このP2V機を一台七億の巨費を投じて製作に着手いたしつつあるのであります。シェノーケル潜水艦、また、その航続距離の長いことで有名であります。国内防衛のみを考えるような場合、その必要性を疑わざるを得ないのでありまして、頭隠してしり隠さずとは、このことであります。(拍手)すなわち、国民を欺瞞しつつ海外派兵をもくろみつつある船田国務大臣を今こそ信任し得ずとなすのは当然といわなければならないでありましょう。  さらに、船田国務大臣を信任し得ずとなす次の理由がございます。官紀粛正をなすべきは、国務大臣の当然の任務であります。しかるに、張本人の船田大臣みずからが紊乱の先頭を切っておられるということ、このことを、私たち軽々に黙過するわけには参りません。(拍手)まず第一に、それに関する幾つかの記事を読み上げてみます。  「九日朝は、昨夜から吹きまくった男体おろしも止み、長官空からの訪問には絶好の飛行日和であったが、長官搭乗機シコルスキーS55型海上自衛隊ヘリコプターは同日九時二十五分作新学院校庭に到着、出迎えの約三千五百名、「歓迎船田防衛庁長官」のノボリがはためく中を船田長官は」「元気に降り立った。「ウワー」という歓声の渦と日の丸の波にかこまれ、カメラマンのフラッシュを浴びながら、幕僚長代理松田陸将補の出迎え、作新幼稚園能田和子ちゃんの花束贈呈という歓迎ぶりにニコニコ顔の船田長官は、特別に設けられた歓迎台の上に立ち、「おめでとうございます、皆さんの元気な姿を拝見し又心から歓迎して戴き嬉しく感謝にたえません」と口をきり」云々とあります。一体、自己の経営する学校を訪れるのに、自衛隊のヘリコプターに搭乗、しかも、その学校は御自分の選挙区にあります。これは一体いかなることでありましょう。これを公私混同といわずして何があるでありましょう。(拍手国民は血税を大臣の選挙運動のために納付はいたしておりません。(拍手)さすがに、同大臣も、この点の追及をした、わが党受田議員質問に対し、内閣委員会において、「いかなる御批評をいただきましても、もしそれがどうしても悪いということでありますれば、十分私の行動に対しましては責任を負います。」と答えざるを得なかったのであります。軍の武器を私するということの悪であることは、三才の童子といえども承知するところ、なぜ明白に責任をおとりにならないのか。昔から、上行うところ下これにならうとあります。一体、これで防衛庁の部下諸君を監督できるとおっしゃるのでありましょうか。  自衛隊には、これまでも、幾多の汚職、涜職が発生いたして参りました。疑獄、汚職でないまでも、軍服を十年分も購入したり、しかも、それを貯蔵するために新しい倉庫を建造するなどということさえありました。長官にして軍の飛行機を私用に使われる以上、どうしてこれを取り締まることができるでありましょう。先般も、防衛庁は、不当支出を行なった将兵十数名を処罰いたしました。しかし、御自分の自粛なくして、その実をあげることは不可能であります。(拍手)  こうした例をあげて参りますと数限りないのでありますが、今その最も顕著な事例をあげてみまするならば、それはいわゆる中古パッカード・エンジンの問題であります。(拍手)これはわが党の決算常任委員の諸君によって明るみに出されたものでありまして、国民ひとしく、あぜんたるものがありました。すなわち、防衛庁は、海に墜落した飛行機の乗員を救助するために、海上自衛隊の航空基地に高速度救命艇を配置することとし、昭和二十九年度二隻、昭和三十年度一隻を予算に計上いたしたのでありまして、そして、そのエンジンは、三十年三月に四基、本年二月に二基が防衛庁に納入されました。防衛庁の買い入れ価格は、一基千二百五十万円であったのであります。しかるに、このパッカード・エンジンは、調べてみますと、実は、昭和二十六年春、立川基地米軍が余剰物資として一基七万二千円で東京通信局に放出し、東京通信局はこれを一基十万五百円という値段で民間会社松庫商店に払い下げたものであります。この値段は、まさにスクラップの値段でありました。その後、民間会社の間で転売され、最後に富士重工が修理を加え、これを防衛庁が間組から買い入れたものであった。払い下げられたときは、たった十万五百円。一体何倍になったでありましょうか。五倍や十倍ではありません。実に百七十三倍余の高値であります。しかも、これについて、防衛庁高官の態度は実に不遜きわまりないものでありました。同種のエンジンは、新品で買えば千八百万円もするし、関東財務局の見積った千三百六十五万円よりは安い、すなわち買い得だとうそぶいているのであったのであります。また、防衛庁に出入りしている業者諸君は、国会で騒ぐのはおかしい、千二百五十万円は国際価格を下回るくらいだし、あれくらいの利ざやは商取引では当然だと述べたのであります。すなわち、防衛庁との取引が死の商人たちにとってどんなにべらぼうなもうけになるかということを告白したといわざるを得ません。(拍手)  少しのことではなかなか怒らない新聞人も、これについては、ひどく怒った筆法を用いました。朝日新聞の天声人語欄の一部を抜粋して朗読いたします。船田さんは、どうぞよく聞いていただきたい。すなわち、「五倍や十倍というのではない。百七十三倍余というケタはずれの高値だ。だれの金と心得てか、気前のよい大名買いにもほどがある。国費の乱費ここに極まる。」「いくらか加工したことになっているのだろうが、まさかダイヤモンドをちりばめたわけでもあるまい。」「ネズミ算でもこうはならぬ。」「とにかくデタラメな買い方をする。この春にはムダ使いの責任者として六人の将補を含む三十八人を免職・戒告・訓戒等の処分にしたが、昔の臨軍費でも使う気でメチャクチャな乱費をする人間がいるらしい。」「防衛庁費は年度内に使いきれないで毎年あましている。こんなムダ使いをしても余るのだ。税金を出すのがイヤになる。防衛予算は思いきって削ってよい。国を守るどころか、国費を虫食っているのではないか。」と、口をきわめて防衛府に不信を投げつけているのであります。(拍手)しかし、これはただ単に天声人語の筆者だけの気持ではありません。全国民の声として声くべきでありましょう。このむだづかいには、船田長官を支持する立場にあるべき自民党の生田さんすら、その非を追及しなければおられなかったのであります。  しかるに船田長官は、去る二十六日の内閣委員会で、十万円で払い下げたものが千二百五十万円で買い上げられたというその事実だけをとって批評されれば議論もされます、二十六年三月、米極東空軍がパッカード・エンジンそのほかを一台七万二千円で放出、それを十万円余りで払い下げた、その後、業者間で転々としていたが、防衛庁が高速救命艇建造の予算を計上したのは二十九年度である、価格とか性能を考えた上、このエンジンを適当として、これを救命艇として買い上げた、その払い下げと買い上げとの間には何ら特殊の因果関係はない、価格については、関東財務局の意見を聞いた上、防衛庁として千二百五十万円を適当とした、その間に何ら不正の事実は認められない、こう答弁しておられるのであります。しかし、この点については、国民は何ら信ずるものではなく、現に、東京新聞に、このような記事すら載っておるのであります。「三十年三月から三十一年三月に至る間、防衛庁は一台千二百五十万円で六台購入しているが、この間、間組、富士工業会社は運動費として七千万円をバラまき、情報キャッチや、防衛庁への橋渡しなどについて政界の有力者を動員、そのうち約三千万円は当時防衛庁の最高首脳者であった保守党の有力幹部S氏(とくに名を秘す)に渡されている」と書かれておるのであります。だれが考えても、こんなばからしい金の使い方はないのであります。われわれも、国民も、船田長官はもう少し慎重であるべきだった、この程度の陳謝のごあいさつはあってしかるべきだと考えました。国民は、御承知のように、苦しい生活をいたしております。この国民から有無を言わさず取り上げた税金を、まるでざるに水をぶちまけるような使い方をして、しかも、おれには責任はないのだ、こういうようなうそぶき方をなさることについて国民の一人々々はだれも納得することはできません。(拍手)こういう方々に政治をお預けいたしておきますと、国民は骨の髄までしゃぶられてしまうに違いありません。(拍手)  これだけでたくさんでありますところへ持ってきて、最近もいろいろな事実が出て参りました。近代軍隊の原動力で、しかも貴重な外貨を投じて購入いたしますいわゆる血の一滴ガソリンが、地中に漏れておるという事実であります。たとえば、茨城県霞ケ浦にある陸上自衛隊松戸浦給処朝日燃料補給支処の二百トン入り燃料タンク四十のうち二十に十数ヵ所の穴があいて、九ヵ月もほうりっぱなしにしてあって、地中にガソリンが吸い込まれていたということであります。また、北海道島松補給処において、給油管が破れて、相当量のガソリンが地中に吸い込まれておったということであります。工事を請負った業者に対する監督、工事の検査が全然なっていないという有様。防衛長官は、一体、部下をどのように監督しておられるのでありましょうか。(拍手)これについて、防衛庁は、いずれも大した量ではないと、うそぶいておられるのでありますが、しかし、国民の苦しいふところから無理やりに徴収したお金をこのように乱費しながら、長官も、あるいは長官の部下も、国民に相済まぬという顔は一つもしないで、大した量ではないなどと、うそぶかれるお心根が、私たちはいけないと言うのであります。(拍手)また、防衛庁に納入しておる井上工業所のくつ十三万足が、右と左とが大きさが違っている品物があった。(拍手防衛庁の検査官が検査に行けば、ドスでおどかされる。こういう、ならずものの業者が、防衛庁の指名業者になっているということ自体が、われわれとしては納得し得ないものであります。こういう点をあげて参りますならば、幾らでも私たちはあげることができます。これこそ、私たち防衛庁長官を信任し得ずとなす理由でございます。(拍手
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 飛鳥田君、時間が参りましたから、なるべく簡単にお願いいたします。
  8. 飛鳥田一雄

    飛鳥田一雄君(続) さらに、船田防衛庁長官を信任し得ずとなす第五の理由は、日本防衛の自主性を回復するための努力を怠っているというだけではなく、ますますその自主性を失いつつある責任を問わんとするものであります。(拍手船田長官は、防衛庁試案と称する、いわゆる防衛六ヵ年計画の構想を持っておられるようでありますが、この内容は、防衛六ヵ年計画の最終年度を昭和三十五年度に置き、そのときの兵力を、陸上自衛隊自衛官を十八万人とする、海上自衛隊は、その保有艦艇を十二万四千トン、哨戒航空機百八十機、航空自衛隊については練習機を含めて約千三百機、さらに、このほかに、予備自衛官二万名をそろえたいという内容であります。しかし、これだけの軍隊を作ることは、そうやすやすとできるものはありません。当然、周到綿密なる年次計画に基いて進めていかなければならないのであります。ところが、長官は、参議院予算委員会において、あるいは衆議院内閣委員会において、その年次計画はない、こう説明をしておられます。また、わが党委員の追及に際して、アメリカからの供与兵器に待たなければならない部分もありますので、今その年次計画はできておらない、とお答えになりました。その所要経費についても、経済企画庁の経済五ヵ年計画によりますと、今までの防衛費の国民所得に占める割合が二%強であるから、昭和三十五年度の国民所得が八兆八百八十億円、このうち防衛費に充てられる額は約千六百億になろうという見通しでありますのに反し、防衛長官は強力に否定をされておりますが、防衛庁の試案として計算せられておりますものを見ますと、昭和三十五年度における維持費は二千百五十億円になるといわれるのでありまして、一体この差をどう埋めようとするのか。ここに矛盾があるのであります。
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 飛鳥田君、簡単にお願いいたします。
  10. 飛鳥田一雄

    飛鳥田一雄君(続) この問題について追及をされますと、船田長官は、艦船、兵器等はアメリカ側の供与を受けなければなりませんし、供与を受けるためには米側と折衝して参らなければなりません、従って、アメリカ状態を見なければ具体的な計画は立てられないのだ、と言われるのであります。一体、アメリカの供与次第という自衛隊の建設の仕方というものでは、自衛隊は自主性を欠いたものだと、だれが言い得ないでありましょうか。真に自主性のある防衛計画というのならば、当然これらの点について明確にせられなければならないのであります。こうした事実を何ら明確に説明することなくして、いかに日本の自主防衛というようなことを叫んでみたところで、それは単に言葉の上だけの問題にしかすぎません。  私たちは、今、日本自衛隊の武器をつぶさに反省をいたしてみますると、みずから自衛隊が購入いたしましたものは、わずかに自走車、トレーラー、車載無線機の一部と、野外無線機、野外電話にすぎないのであります。その他の大部分はアメリカから供与を受けた中古兵器でありまして、その総額は七百八十五億円に達し、艦船においては、その保有七万三千トンのうち五万二千トン、航空機にありましては五百八十九機のうち五百七十機が、アメリカの供与によっておるのであります。しかも、これら兵器の供与は、明確な協定や取りきめに基いているものではありませんで、大部分のものは、もらったのか、借りたのか、あるいは今後金を払わなくてはならないのか、全く不明な状態に置かれております。ただ、日本アメリカの御意に沿っている限りでは、別に取り上げられることななかろうというのにすぎないのであります。
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 飛鳥田君——飛鳥田君、すみやかに結論にして下さい。
  12. 飛鳥田一雄

    飛鳥田一雄君(続) 日本の自主防衛などということを唱えることは、言葉の矛盾であります。私たちは、およそ、政治が、かくのごとき欺瞞と、ただ言葉の上だけの問題として片づけられていくということについて、限りない憤りを感ぜざるを得ないのでありまして、(拍手)これすなわち船田防衛庁長官を信任し得ずとなす理由であります。  以上、幾多申し上げたい点もございますが、時間もございませんので、残念ながらこの程度にとどめて、私の提案趣旨説明を終らしていただくつもりでおります。(拍手
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより討論に入ります。細田綱吉君。     〔細田綱吉君登壇〕
  14. 細田綱吉

    ○細田綱吉君 ただいま上程されました防衛庁長官船田中君に対する不信任決議案に対して私は日本社会党を代表して賛成の討論をいたします。(拍手)  船田中君は、前任者であった砂田重政驀走長官のあとを受けて、きわめて慎重に、また、きわめて温厚な紳士として買われておりました。しかしながら、戦時中の内閣で法制局長官その他の要職にあったせいでもありますまいが、その感覚は、どうも、大日本帝国陸海軍当時のそれを一歩も出ていない。(拍手)しかも、そのままの、夢よいま一度ということをこいねがっておるのではないかと思うと同時に、(拍手)しかも、その反面には、アメリカの忠僕として、従順な軍隊の育成に日夜懸命の努力を払っておるのでありまして、その考え方と、行動と、そうして時代感覚のずれとは、きわめて矛盾に満ちておるのであります。よって、私は、まず同君不信任決議案に賛成する第一点として申し上げますのは、われわれは、この防衛庁長官を据えておく限りは、近い将来には、かりに第三次戦争が起きないとしましても、それが日本周辺に生じた局地戦争でももし起ったとするならば、この長官は必ず戦争に介入して、アメリカのために火中のクリを拾うの危険を冒すからでありまして、(拍手)そうして、再び日本を破滅のどん底に陥れるからであります。  船田長官は、飛鳥田議員の説明にもありましたように、内閣委員会の席上で、もし飛行機等によって日本侵略を受け、それが急迫不正と考えられた場合は、直ちに海外に出て敵の基地をたたく、こういうことを再三にわたって内閣委員会で言明しております。これは、私が申し上げるまでもなく、きわめて危険な考え方でありまして、現在世界に帝国主義を代表する国と一部にいわれておる米国ですらが、御承知のように、かつて、朝鮮戦乱の節、当時のマッカーサー司令官の企図する南鮮襲撃の基地たる満州爆撃を阻止して、そうして、第三次世界戦争誘発の危機を乗り切った事例に徴しましても、いかに船田防衛庁長官の考え方が時代離れのした危険きわまりのない意見であるかということをうかがい知ることができるのでありまして、(拍手)今にして船田防衛庁長官長官のいすを退いていただいた方が、将来の日本を破局より救うゆえんであると、われわれは考えるのでございます。(拍手)  また、本決議案に賛成する第二点を申し上げまするならば、船田防衛庁長官は民主的な憲法をまっこうからじゅうりんしている。また、日本が敗戦後十ヵ年の歳月を費して、全国民の偉大な努力によって仕上げた、現在の民主主義の日本を根底から破壊せんとする元凶的な存在であるからであります。(拍手)申し上げるまでもなく、憲法第九条は、飛鳥田議員がもうすでに御説明になりましたように、明らかに軍備または交戦権を否認しております。かつてワン・マンをもって自他ともに許しておりました吉田前首相ですらが、あるいは戦力なき軍隊だとか、あるいは憲法を改める意思がないとか言って、一応は国家の基本法たる憲法に遠慮した表現を使っておるのであります。しかるに、鳩山首相と、わが船田防衛庁長官に至っては、この民主憲法をまっこうからじゅうりんして、膨大な軍備を擁する軍国日本を育て上げようとしております。すなわち、防衛庁は、飛鳥田議員の言われましたように、年間一千余億の巨費を投じて、すでに本年度をもっても、日本軍隊は陸上十七万二千名、海上二万四千名と九万九千トンの艦艇、航空一万六千名と航空機五百八十二機とを整備しているにもかかわらず、さらに五ヵ年計画の達成によって、現憲法を素通りして軍備の増強を企図し、堂々と、軍隊だ、あるいは戦力だとかいう不逞な用語を自衛の名のもとに使用しているのでありまして、かくのごときは明らかに憲法第九条のじゅうりんであることは申し上げるまでもなく、また、第九十九条に規定された国務大臣としての重大な責任を懈怠したものであるからであります。  さらに、本決議案に賛成する第三点は、船田防衛庁長官は、昔の参謀本部、軍令部を統一したよりもさらに強力な軍の最高指導機関たる国防会議法律を御承知のように本国会に提案して、急速に日本の軍国主義体制の強化をねらっているからであります。かつての軍国主義はなやかなりしころの日本におきましても、政府があり、軍がありまして、陸軍省あり、海軍省あり、参謀本部があり、軍令部がありました。また、枢密院もありました。さらに、一応はその上に天皇が存在して、いやしくも軍の出動にはかなりの複雑な手続があって、それが勢い軍活動を慎重ならしめていたことはもちろんでございます。しかるに、国防会議法によりますると、総理大臣議長として、わずか数名の閣僚会議によって、直ちに一国の運命を左右する大軍の出動を可能ならしめるのでありまして、現在の日本のごとき、人のいい病首相のもとにありましては、防衛庁長官の意見のままになることはもちろんでございます。また、絶大なる権限を有する国防会議議長である総理大臣について見まするならば、脳に故障を生じやすい病気といわれておる、そういう御病気になっておるだけに、この人のお考え一つに国家の運命をゆだねるがごときは、まさに国家の運命を累卵の危うきに置くものでありまして、かくのごとき計画と実行の元凶こそ、まさに船田防衛庁長官であるからであります。(拍手)  なお、賛成する第四点といたしましては、船田防衛庁長官のもとにおける防衛庁の予算の使い方でございます。これまた飛鳥田議員が詳細に申し上げましたが、その使い方は国民の想像以上に紊乱をきわめておりまして、しかも、これに対しての長官は、何ら反省の色がないということであります。(拍手)  御承知のように、防衛庁は年間一千余億の巨額な予算を擁しております。もの金が毎年使い切れないで、二百億内外の繰越金を出していることは、各位の御承知の通りでございまするが、また、会計検査院からの批難事項が非常に多いことも、各位の御承知の通りであります。しかも、これは氷山の一角でありまして、予算実行の全体について詳細に検査をいたしまするならば、その不当と違法ははかり知ることのできない巨額に達するであろうことは、想像にかたくないところであります。(拍手国民の汗とあぶらの結晶である血税が、かくのごとくむだに使われている事実こそは、断じて見のがすことができないのでございます。  たとえば、ただいま飛鳥田議員が申し上げました一例をさらに申し上げてみますならば、昭和二十六年立川の米駐留軍の払い下げた一台当り七万五千円が、さらに国から松庫商店に対して十万五百円で払い下げられましたこのパッカード・マリン・エンジンが、わずか三年余で、驚くなかれ千二百五十万円、しかも、六台も防衛庁が買い上げているだけでなくして、さらに引き続いて残余の機械を購入しようとしているのでございます。なお、この問題について不思議なことは、一千二百五十万円という価格の形成の基礎をなす——間組が三友産業株式会社に対して一億四千七百万円を払った、だから一台一千二百五十万円でも相当であるということを防衛庁は言っている。その間組が三友産業株式会社に支払ったという一億四千七百万円の領収証——三友産業株式会社は破産会社でございます。営業なんかしていやしない。しかも、おかしいことには、この領収証を発行した総務部長何がしは、洗ってみると、代表取締役ではない。代表取締役でないのみならず、単なる一社員ですらないのであります。かくのごとき一億四千七百万円という膨大な金の領収証、しかも、それは原価計算の基礎をなしておるこの領収証——単に取締役だというならまだしも、あるいはまた、会計担当の一社員が発行したというならまだしも、この会社は破産会社である。そうして、この発行者は一社員ですらなかった。こういうような、大きな見落しというよりも、むしろ、その一千二百五十万円という単価を見積るために、あえて間組からこういう偽造にひとしい領収証を提出さしたということが、正当な見方であり、真実をうがっておるのではございますまいか。(拍手)  こういう例を申し上げて見ますると数限りもございません。飛鳥田議員もずいぶん例証しておりました。奈良県下の井上何がしに対して、わずか百円しか安くない質の悪いくつを、しかも十万足、最大量を注文しておる。そして、会計検査院から検査官が行くと、ドスを突きつけて検査させない、あるいは、かつて防衛庁から検査に行ったところが、四日間監禁されてしまって、それを救出に行った。こういうばかな、単なる一個人、しかも、辻議員の御説明を伺っておりますと、これは専門にやっておるくつ工場ではない。ここに十万足、一億八千万円という膨大な注文をした。この工場は、注文があると百姓をかり集めて製造させる。そうして注文品を製造すると、また帰りつ百姓をさせる。辻さんの言葉を拝借して言うならば、屯田兵工場、この屯田兵工場に十万足、一億八千万円というような膨大なくつを——しかも、それは半分しか使用にたえない。一月はくと水が入ってくる。(拍手)こういう無責任な金の使い方をしておるのでございます。あるいは、ガソリンがどうだ、また、機械を買い入れたところが、機械は使いものにならない、飛行機は飛ばない、こういうような例は数限りなくございます。のみならず、数千台という膨大なトラックを買い入れて、これが、依然として、現在も、土浦に、あるいは千歳に、一年有余も雨ざらしになっておる。あるいは、数十万着の洋服をこしらえたというようなことは、すでに皆さんの御承知の通りだと思います。あまりにもひどい。あるいは、アメリカから何だか高い計算機を入れたけれども、もうすでに入れてしまったのだが、為替管理の関係で、何かそれは翌年に形を変えた。実にでたらめきわまる支出をやっておるのであります。(拍手)  私は、こういうことを一々申し上げておると時間もございませんし、また、皆さんももう御承知のことと存じまするので、多くは申し上げませんが、とにかく、申し上げるのもいやになるほど多くのスキャンダルを聞くのであります。(拍手)疑惑の多い支出が累積しておるのでありますが、しかも、先ほど申し上げたように、こういうでたらめな支出に対して、船田防衛庁長官は依然として態度を改めない。不法でない、不当でない、この一点張り、こういう揚言を再三委員会でしておるのであります。  ちょうど百年ばかり前に、イギリスの軍隊におきましては、軍隊の会計を三年やると大金持ちになるということがいわれておったそうでございます。もちろん、日本防衛庁にそういうことがあろうとは私は信じません。しかし、現在、民間において、防衛庁の廊下を歩くと金につまずくという評判、格言がある。(拍手)こういうことを考えてみますと、火のないところに煙は立たないという格言が真理だとしますならば、私は思い半ばに過ぐるものがあると考えるのでございます。国民が乏しい生活の中から泣きながら出してくる税金、血とあぶらの税金を使うには、申し上げるまでもなく、慎重にも慎重を期さなくてはならないのでございます。しかるに、かくのごとく軽率に、しかも疑惑に満ちた予算の使い方をして、反省の色を示さない。こういう長官に対して、われわれは断じて信任するわけにはいかぬのでございます。(拍手)  多くの例証は、すでに飛鳥田議員からも申し上げました。私も防衛庁の予算の支出について今幾多の点をあげましたけれども、すでに皆さんも御承知のことと存じますので多くは言いませんが、一千数百億という膨大な予算を、国民の血税を預かる防衛庁長官が——こういう火のないところに煙が立たないとしますならば、その百分の一、千分の一をとっても大きな問題でございます。国民は、防衛庁の予算に対しては疑惑を持って見ております。しかも、先ほど申し上げました、日本の周辺に局地的な戦争があるにしても、おそらく、船田防衛庁長官は、あえて日本軍隊海外派兵を試みるでございましょう。こういう危険きわまりない防衛庁長官は、一日も早くそのいすを去っていただくことが、日本の平和と独立を守るために一番必要であると私は存じまして、本決議案に賛成をするものでございます。(拍手)  以上をもって私の討論を終ります。(拍手
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 吉田賢一君。     〔吉田賢一君登壇〕
  16. 吉田賢一

    吉田賢一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、船田中国務大臣不信任案に賛意を表したいのであります。(拍手)  私の船田君を信任しない第一の理由は、それは、同君の思想なり言動が国務大臣としての適格性を欠くと確信をいたすからであります。(拍手)それにつきましては、提案者の趣旨弁明にも相当御説明がありましたが、本国会を通じまして、衆参両院における防衛庁長官としての船田君の言動は、明らかに憲法の条章をじゅうりんし、日本交戦権がないのに、あるがごとき錯覚を国民に与え、あるいは、憲法九十九条の、国務大臣として憲法を順守し、これに従うべき義務に背反する、こういった言動が、委員会等の質疑応答を通じまして幾多現われました事実は顕著であります。これだけをもってみましても、船田君がすでに国務大臣として国民の信託に沿う適格性を欠くことは明瞭であります。(拍手)ただ、私は、前者の論じたことでもありしまするので、この点については、きょうは多くを述べないつもりであります。  私が次に申し上げたい第二の理由は、これは、日本政治を粛正するために、船田君は国務大臣として一日もその地位におってもらうことはできないのであります。(拍手)この政治の粛正なる問題は、歴代内閣、たとえば吉田前首相におきましても、鳩山総理におきましても、口を開けば、いろいろな儀式的な文言には必ずつけるのが綱紀の粛正であります。そして、世間を騒がす政界の重要な問題は、必ず綱紀紊乱が伴ってきたのであります。私どもは、たとえば、船田君を従来支持なさった自民党の諸君においても、政策の論議の前に、この政治の粛正ということが日本の現在及び将来にとってどんなに重要な価値があるものかということについて、深い御反省を願いたいのであります。(拍手)たとえば、選挙の際に、どんなに公約、政策、看板を掲げましても、また、一兆円をこえる予算を組みましても、特別会計と合計して二兆円をも使うような膨大なその国の世帯におきまして、反面において財政の執行面に紊乱と不正が伴いまするばかりに、日本政治というものは、実に、戦後十年を経過しまするけれども、いまだ腐敗のあとを断たぬというのは、おそらく世界にも類例のない顕著な事実であろうと思うのであります。私どもは、もし国会の論議、あるいは政策の当否がいろいろの角度から批判されましたときには、静かに、たとえば、その予算執行の省庁において、一体綱紀の粛正はどうあるであろうか、予算の実行は綱紀問題との関連においてどれほどの厳正さを維持しておるであろうか、こういったことをほんとうに検討しつつ政策を論議するのでなければなりません。事実、国民に対しては、羊頭を掲げて狗肉を売り、パンを求めるものに対して石を与えてきたのが、今日の国民生活が困窮した最大の原因なのであります。(拍手)ここに思いをいたしまするときに、私は、船田中君が防衛庁長官として、国務大臣として存することが、どんなに日本の政界をさらに腐敗、紊乱せしめるかということをおそれるがゆえに、私は、その理由を述べまして同君の引退を迫るのであります。  たとえば、ここに例をとりまして、最近世上大きな疑惑に包まれ、今なお未解決で、国会は追及のまっさなかであります、いわゆるパッカード・マリン・エンジンの購入の件を申し上げてみたいと思います。  これは実に奇怪千万、あたかも知能犯的な思慮、努力がなされまして、おそらくは、諸君においても、その真相をほんとうに知りなすったならば、防衛庁に対して、これからは、しんから疑惑を持って見られるであろう。しかも、この中古エンジン事件なるものに登場して参りまする人物は、それは政界の大物もあるのですよ。(「でたらめ言うな」と呼び、その他発言する者多し)よろしい。申し上げますから、ゆっくり聞いて下さい。大物があるんですよ。そして防衛庁、通産省、無数のブローカー……。(発言する者多し)申し上げますから、ゆっくり聞いて下さい。——ブローカー、それから、今佐久間ダムにおきまして、紙上喧伝され、問題を起しておりますところの間組、こういった官庁、あるいは民間人、あるいは政府が、これに関与しておるのであります。二十六年、立川の米軍がスクラップとして、一基七万二千円で放出した。パッカード・マリン・エンジンであります。それが直ちに古鉄屋に十万五百円で売られ、そして、昭和三十年になりましたら、防衛庁は一基を千二百五十万円で購入するに至ったのであります。そこで、この経緯をいささか検討せねばなりません。  皆さん、これは私はずけずけ申しまするが、防衛庁当局はひたむきに事実を隠蔽するのです。あなた方は、決算委員会の状況を直接御承知でないから、あるいは何かと言葉をはさみなさるかもわからぬけれども、直接防衛庁当局が船田中君を先頭にいたしまして事実を隠蔽するところの答弁に触れましたならば——私どもは、国民の代表といたしまして、血税がこんなにむちゃくちゃに経理せられて、しかも、それに対して反省の色がなく、こう然として事実を曲げて答弁するような態度が、どうしてこれが許されるかという、そういった感じを持って毎日審査に当ってきたのであります。(拍手)  皆さん、今細田君が若干触れましたので、私は重複を避けまするけれども、しかしながら、この千二百五十万円という根拠を、試みに調本の契約部長に説明させましたところが、いわく、間組が、三友産業というものに、このエンジン代二十基に対して一億四千七百万円という金を支払っているので、それを出して割ってくれば、いろいろな経費、金利その他のものがかかっているので、それで千二百五十万円に計算したと、最初言うたのであります。ところが、あとで証人が出てきまして、実はあの領収書を出しましたのは間組に頼まれたのであります、一億四千七百万円という金はもらってはおりません、七千三百数十万円はともかく入っておるけれども、松庫商店に二十華分として支払った金額は千六十万円にすぎません、そのほかは、ブローカーの暗躍代、飲食費が約二百万円、中助松代議士のところに六百万円、そういったようなものが出ておりますと言うのであります。皆さん、そのような金が出ておるのに、一応頭から一億四千七百万円、それが間組から支払ったということを口実に、正当な価格で購入したと言い張っておったのであります。ところが、あとから化けて参りまして、証人が、それは頼まれて、請託によって作ったうその領収証である、金はそれだけ受け取っておらぬ、三友産業というのは幽霊会社である、三友産業総務部長として領収証を一億四千七百万円発行しておるけれども、その領収証の発行主は三友産業の社長の名前を知りません、三友産業の本社がどこにあるか知りませんと言うのであります。それを防衛庁船田君の部下は信用して、正当な価格で買いましたと言うのであります。国会をばかにするもひどいじゃありませんか。(拍手)そこで、証人がこれをひっくり返しましたら、今度はどう言うか。今度は、いや、イタリアにまた別のガソリン・エンジンを作る会社がある、イソタ——イソタのエンジンを買うならば、これは税込みで二千万円以上かかる、それよりも計算すると安いので、安いから買いましたと、今度はまた第二の言いのがれであります。皆さん、もしこの答弁をした政府当局が裁判所あたりの証人ででもあったならば、偽証罪でぶち込まれますよ。(拍手)われわれは、政府当局であるから若干敬意を表しておるのです。表しておるけれども、二枚舌、三枚舌に変るのがこの防衛庁態度でありますぞ。その上に立っておるのが船田君であります。かくいたしましてその千二百五十万円の根拠はだんだんと変ってくるのであります。最後に、しまいの果てには、これは客観的に時価が相当であるから、会計法によれば時価で買えと書いてあるので、時価はどう見積っても千二百五十万円の値打ちがあるから買ったのであると、船田君は答弁するのであります。  皆さん、その品物を政府が十万五百円で売って、ブローカーが暗躍をして数千万円飲んだり食ったりして政界に金をばらまいてそうして、その金が全部正常な経費というような計算をして、それでまた国が一基千二百五十万円で買うというような、むちゃなことをやって、時価で買いましたと野放図ま答弁をするということは、国会の審議権を無視するもはなはだしい態度といわねばならぬのでありまして、(拍手)われわれは、途中で消え去った金を追及することが、せめて国損をかけつつあるところの政府に対する態度と考えるのであります。途中で消え去った金について、死んだ中助松君に六百万円をおっかぶせて——ほかの代議士、たとえば砂田重政君も活躍したことがはっきりしております。(発言する者多し)証人の証言によれば……。(拍手、「どうしてそんなことがわかるか」と呼び、その他発言する者多し)いいですか。証人の証言によれば、はっきりしているのだ。会議録を見なさい。(発言する者多し)心配をせずに会議録を見なさい。そこで、その他の、たとえば前の木村保安庁長官、あるいは、今議員になっておらぬけれども、安倍源基君の名前も出ております。こういうような政界の人々が暗躍をして、政府に売りつける運動のある種の力になって、われわれは、今日の政界の腐敗乱脈のもとは、防衛庁を食いものにするところの悪商人も悪いけれども、財政の紊乱のもとをなすところの政界の腐敗というものを徹底的に粛正しない限り風、この跡を断たないということを確信するものであります。(拍手、発言する者多し)  この第二の中古エンジン事件、第三の中古エンジン事件、このようなものがだんだんと出てくるときに、日本の前途は一体どうなるのでありましょうか。(拍手、発言する者多し)われわれは、行政粛正のために、国民の血税をほんとうにとうとんで、血税の行方を見守って、血税を支払う国民の立場に立って、私どもは行政の粛正、財政の粛正、政界の粛正をはかることが、現下最大の喫緊事であると確信してやまぬのであります。(拍手)かかる意味におきまして、みずから不正はないのである、部下にも不正はないのである、みずから不当はないのである、部下にも不当はないのである、もしあるならば責任を負うと公言をして、今日まで来ておるのが船田中君の態度であります。(拍手)  諸君船田中君は、みずから不正はないと言う。不正がなければ、まことにけっこう。不当がないと言う。防衛庁に不当がなければ、まことにけっこう。しかしながら、私は、次に述べる理由によりまして、大きな疑惑が防衛庁にあることを指摘せねばなりません。(拍手)  それは、第三に、船田中君を国務大臣として信任しない理由として上げるのであります。いわく、いやしくも法律上重大なる疑惑を受くる限りは、その防衛庁長官たる立場は、国民に謝す意味において、即刻辞職をせねばならぬと、かたく信ずるのであります。(拍手)何ゆえならば、私は昨日もこの点につきまして追及しておったのであります。たとえば、今間組は、国税庁によって、本件に対する会計の関係は目下調査しつつあります。正確な数字はやがて判明するのでありまするけれども、いずれにいたしましても、虚偽の領収証をもとにし、正常なる営業上の経費にあらざる経費を原価計算の要素に加算いたしまして、千二百五十万円と買い値をきめました事実は、少くとも売り主に対して正当にあらざる利益を生えたものと私は断ずるのであります。(拍手)これを反面から見まするならば、売り主に不当な暴利を得さしめて、国家にそれだけ反射的に損害をかけたということは、重大なる事実でなければならぬのであります。(拍手)これに対して、七千数百万円のうち、われわれが計算をし、正確な根拠によって把握したところによりますると、松庫に対する金額、あるいは富士重工に対する手数料あるいは倉庫料、金利、正常な、通常の利益といったようなものは計算をされまするけれども、しかし、自余のものは不浄なる運動費に消え去ったということは、見のがすわけには参らぬのであります。(拍手)不浄なる運動費は正常なる価格構成の根拠に計算すべきものでないことはもちろんであります。従って、かくのごとき千二百五十万円の大半は、これは不当なる暴利である。法律によるならば、たとえば物価統制令——法律によるならば、何人といえども不当なる暴利をとるような契約はできないことになっておる。もちろん、防衛庁当局といえどもその通りであることは申すまでもありません。防衛庁当局だけが商売人に不当な利益を与えて、それで一体許し得るかということは、船田君ならずとも、このくらいのことはおわかりであろうと思う。けれども、彼が委員会における答弁を聞いておりますると、暴利であることを認めないという態度であります。それは、あたかも、売り主の味方であります。間組の味方であります。この際、本件に関する限りは、売り主の味方になるような者は、政治の、行政の風上に置けないじゃありませんか。(拍手)なぜならば、血税を浪費するのが行政の府の仕事でないことはもちろん、血税を切り取るところの悪らつな商人に味方するような言動は、この際断じて許すわけにはいかぬのであります。(拍手)暴利を取り締まるのは当然です。暴利を与えて、てんとして恥ずることのないような、そんな買い主たる防衛庁長官は、一日もその職にあることは、国民に対して申しわけがなかろうと思います。(拍手)  私は、この意味合いにおきまして、法律上重大な疑惑が防衛庁を包んでおると申し上げるのであります。あるいは、また、委員会におきましては、これは防衛庁当局が刑法上の背任罪になるのではないかというような言辞があったのであります。背任罪の構成の有無は、これは別論といたしまして、ともかく、売り主である相手方に利益を与え、国家国民に損害を加え、そして、お互いに原価のものの素性まで一切がっさい知り合っていたというところに、法律上の疑惑を受くるということは当然であります。諸君法律上の疑惑を受けて、その地位に安んずるというようなことは、それは腐り切った政府態度であり、腐敗紊乱した行政官の態度であります。この点について、たとえば、きのうも——あなた方の辻君の発言ですよ。細田君に対して、例のシーメンス事件を引用しました。辻君が、シーメンス事件で、山本内閣のあのときに、シーメンス・シュッケルトからの注文の関係で、わずか数十万円の収賄事件であったけれども、辞職をしたということを言っておりました。わが党の小松君も、るるとして、声涙あふるるような態度をもって、この点を論及しておりました。私も思い起したのです。シーメンス事件の、あのときでも、たとえば、当時収賄をいたしました軍人が、電車に乗って、軍人のサーベルをつっておることが国民から収賄者としてうしろ指をささるるというその思いをもって暮しておったとは、某元軍人の述懐であります。薬にしたくもそのような廉潔の精神がないのが今の防衛庁長官でありますぞ。(拍手)少くとも、最後に裁判所へ持っていけ、検察庁へ持っていけ、刑事事件にするならしてごらんなさいというようにうそぶく。それは、一省の長官の言う言葉ではありません。いやしくも、かかる重大な政治乱脈、経理乱脈、経費紊乱、法律上の疑惑といったようなものを受ける限りは、みずからその地位にあることをいさぎよしとしないというのが、これがほんとうの吏道の上に立つものである。上がそれでない。上が腐っておる。恥を知らない。まぬがれて恥じないような態度であるから、すべてがこれにならうのであります。全くどろ沼のような今日の状況が、これが政界の実情であると思うときに、私どもはほんとうに涙なくしてこの事実を見ることはできません。(拍手)先年鉄道会館の問題を扱っておりましたときに、いわく、鉄道疑獄、造船疑獄が起りました。委員会からも縄つきが出ました。あのときでもそうであります。私どもは、腐った政治を粛正することは、予算の紊乱というものに徹底的なるメスを入れること以外にはないというほどにまで考えたのであります。  諸君かくして、私は、この大きな疑惑を受けておるところの船田防衛庁長官が、国務大臣としてその地位にあることは、国民の名によって断じて許すことはできないのであります。(拍手)  さらに、私は……。
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 吉田君——吉田君、時間ですから簡単に願います。
  18. 吉田賢一

    吉田賢一君(続) 道義上の理由によりまして、当然辞職せねばならぬものと信じます。これが第四の理由であります。いやしくも、今日、諸君も常に言うでしょう。道義の高揚——道義は今地を払っておりまするぞ。国民の道徳、道義というようなものは、うそを言わぬということであります。不正をせぬということであります。不当をせぬということであります。国民の血税を国民の立場においてほんとうに大切に使うという風を助長することであります。官吏道の刷新、それが第一義的な道義である。今日、国民の道義を高揚することは、行政府の首長であるところの大臣がまっ先にせにゃならぬ。間違いとうそとで固めまして国会通り抜けんとするような船田長官は、道義の観点から見まして、一日もその地位に置くことは許されないのであります。(拍手)  さらに、私は最後に申し上げたいことがあります。私が今……。
  19. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 吉田君、時間ですから簡単に願います。
  20. 吉田賢一

    吉田賢一君(続) 今日、防衛庁の問題につきまして、これだけではないのです。皆さん、続々と、何ぼでもあるのであります。何ぼでもある。(拍手)予算の乱脈。防衛庁は本家本元のような観を呈しておるのであります。まことにこれは悲しむべきことです。悲しむべきことです。ある人いわく、これはほんとうに防衛庁は何を守ろうとするのだろう。いや、防衛庁の役人は身を守ろうとするのだ。地位を守ろうとするのだ。そんな者にまかしておいちゃ、防衛庁の予算というものは、いよいよこれは果てしなく乱脈が広がっていくであろう。私は、昨日も、たとえば茨城県における朝日燃料支処が、皆さん、四十のタンクからどんどんとガソリンが漏れてしまうのであります。今、それで、けんかのまつ最中です、防衛庁と商売人の間に。横浜へ行ってごらんなさい。横浜に行ったら、ドラムカンが三つ昼寝しておりますよ。
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 吉田君——吉田君、すみやかに結論に入って下さい。
  22. 吉田賢一

    吉田賢一君(続) 結論を急ぎます。私は、以上のような観点から見まするときに、今船田君が国務大臣としてあり、防衛庁長官としてありまして、いささかの反省の色もなく、こう然として、みずからの間違った態度を正しいと人に押しつけようとする態度は、風上に置けないのみならず、政治粛正の観点からいたしましても、すみやかに彼がその任を解かれて、ほんとうにわれらが行政の府を正しい道に取り戻すという、この今日における——その他たくさんこの例はありますけれども、第一の模範的な例としてあげて、これがその任を去って、その地位をしりぞいて、国民に謝して、みずからもって政治粛正の範をなすというような、そういう態度に出るならば、船田君もなお政治的命脈はあるかもしれませんけれども、今のように、防衛庁の予算の食い散らしの上に立って、これを奨励する立場に立ちますならば、全国民を敵として、正義を敵として、国民の良心を敵として戦わねばならぬことを覚悟しなければならぬのであります。(拍手)  かかる意味合いにおきまして、私は、すみやかに本決議案が可決せられて、船田君が国務大臣の地位を去ることが、日本の将来のためにも、全国民のためにも、この上なき幸福であることを確信いたしまして、私の賛成の理由を述べました次第であります。(拍手)、
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  24. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百四十五   可とする者(白票)  百三十七     〔拍手〕   否とする者(青票)   二百八     〔拍手
  26. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、防衛庁長官船田中不信任決議案は否決されました。(拍手)     —————————————  淺沼稻次郎君外四名提出防衛庁長官船田中不信任決議案を可とする議員の氏名    阿部 五郎君  青野 武一君    赤路 友藏君  赤松  勇君   茜ケ久保重光君  淺沼稻次郎君    飛鳥田一雄君  有馬 輝武君    淡谷 悠藏君  井岡 大治君    井手 以誠君  井上 良二君    井堀 繁雄君  伊瀬幸太郎君    伊藤卯四郎君  伊藤 好道君    猪俣 浩三君  池田 頼治君    石橋 政嗣君  石村 英雄君    石山 權作君  稲富 稜人君    稻村 隆一君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    小川 豊明君  大西 正道君    大矢 省三君  岡本 隆一君    加賀田 進君  加藤 清二君    春日 一幸君  片島  港君    片山  哲君  勝間田清一君    上林與市郎君  神近 市子君    神田 大作君  川俣 清音君    川村 継義君  河上丈太郎君    河野  正君  木原津與志君    菊地養之輔君  北山 愛郎君    久保田鶴松君  栗原 俊夫君    小平  忠君  小牧 次生君    小松  幹君  五島 虎雄君    河野  密君  佐々木更三君    佐竹 新市君  佐竹 晴記君    佐藤觀次郎君  櫻井 奎夫君    志村 茂治君  島上善五郎君    下川儀太郎君  下平 正一君    杉山元治郎君  鈴木茂三郎君    鈴木 義男君  田中幾三郎君    田中織之進君  田中 武夫君    田中 利勝君  田中 稔男君    田原 春次君  多賀谷真稔君    高津 正道君  滝井 義高君    竹谷源太郎君  楯 兼次郎君    辻原 弘市君  戸叶 里子君    堂森 芳夫君  中井徳次郎君    中居英太郎君  中崎  敏君    中島  巖君  中村 高一君    中村 時雄君  中村 英男君    永井勝次郎君  成田 知巳君    西村 榮一君  西村 彰一君    西村 力弥君  野原  覺君    芳賀  貢君  長谷川 保君    原   茂君  原   彪君    日野 吉夫君  平岡忠次郎君    平田 ヒデ君  福田 昌子君    古屋 貞雄君  帆足  計君    細迫 兼光君  細田 綱吉君    前田榮之助君  正木  清君    松井 政吉君  松尾トシ子君    松平 忠久君  松原喜之次君    松前 重義君  松本 七郎君    三鍋 義三君  三宅 正一君    三輪 壽壯君  武藤運十郎君    森 三樹二君  森島 守人君    森本  靖君  八百板 正君    八木 一男君  柳田 秀一君    山口シヅエ君  山口丈太郎君    山崎 始男君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    山本 幸一君  横錢 重吉君    横路 節雄君  横山 利秋君    吉田 賢一君  和田 博雄君    渡辺 惣蔵君  石野 久男君    志賀 義雄君  否とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  青木  正君    赤城 宗徳君  赤澤 正道君    秋田 大助君  有田 喜一君    有馬 英治君  安藤  覺君    五十嵐吉藏君  井出一太郎君    伊東 岩男君  伊藤 郷一君    池田 清志君  池田正之輔君    石坂  繁君  石田 博英君    石橋 湛山君  一萬田尚登君    犬養  健君  今井  耕君    今松 治郎君  宇田 耕一君    宇都宮徳馬君  植木庚子郎君    植村 武一君  臼井 莊一君    内海 安吉君  江崎 真澄君    遠藤 三郎君  小笠 公韶君   小笠原三九郎君  小澤佐重喜君    大麻 唯男君  大石 武一君   大久保留次郎君  大倉 三郎君    大高  康君  大坪 保雄君    大野 伴睦君  大橋 武夫君    大橋 忠一君  大村 清一君    大森 玉木君  太田 正孝君    岡崎 英城君  荻野 豊平君    加藤 精三君  加藤常太郎君    加藤鐐五郎君  鹿野 彦吉君    神田  博君  亀山 孝一君    川崎末五郎君  川崎 秀二君    川島正次郎君  川村善八郎君    菅  太郎君  菊池 義郎君    岸  信介君  北澤 直吉君    清瀬 一郎君  久野 忠治君    草野一郎平君  楠美 省吾君    熊谷 憲一君  倉石 忠雄君    黒金 泰美君  小泉 純也君    小金 義照君  小島 徹三君    小平 久雄君  小林  郁君    小林かなえ君  河野 金昇君    河本 敏夫君  高村 坂彦君    纐纈 彌三君  佐々木秀世君    佐伯 宗義君  齋藤 憲三君    坂田 道太君  櫻内 義雄君    笹本 一雄君  笹山茂太郎君    椎熊 三郎君  椎名悦三郎君    椎名  隆君  島村 一郎君    正力松太郎君  白浜 仁吉君    周東 英雄君  杉浦 武雄君    助川 良平君  鈴木周次郎君    鈴木 善幸君  鈴木 直人君    薄田 美朝君  砂田 重政君    世耕 弘一君  關谷 勝利君    園田  直君  田口長治郎君    田中伊三次君  田中 角榮君    田中 久雄君  田中 正巳君    田村  元君  高岡 大輔君    高木 松吉君  高碕達之助君    高瀬  傳君  高橋 禎一君    高橋  等君  竹内 俊吉君    竹尾  弌君  千葉 三郎君    中馬 辰猪君  徳田與吉郎君    徳安 實藏君  床次 徳二君    内藤 友明君  中嶋 太郎君    中曽根康弘君  中村 梅吉君    中村三之丞君  中村 寅太君    中村庸一郎君  中山 榮一君    仲川房次郎君  永山 忠則君    長井  源君  灘尾 弘吉君    楢橋  渡君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽 兵助君    野田 卯一君  野田 武夫君    馬場 元治君 橋本登美三郎君    長谷川四郎君  八田 貞義君    鳩山 一郎君  花村 四郎君    濱地 文平君  濱野 清吾君    早川  崇君  林  讓治君    林  唯義君  林   博君    原  捨思君  平塚常次郎君    平野 三郎君  廣瀬 正雄君    福田 赳夫君  福田 篤泰君    福永 一臣君  福永 健司君    藤本 捨助君  淵上房太郎君    古井 喜實君  古島 義英君    保利  茂君  坊  秀男君    堀川 恭平君  本名  武君    眞崎 勝次君  眞鍋 儀十君    前尾繁三郎君  前田房之助君    前田 正男君  町村 金五君    松浦 東介君  松岡 松平君    松澤 雄藏君  松田竹千代君    松野 頼三君  松村 謙三君    松山 義雄君  三田村武夫君    水田三喜男君  南  好雄君    宮澤 胤勇君  村上  勇君    村松 久義君  粟山  博君    森   清君  森下 國雄君    森山 欽司君  山口 好一君    山崎  巖君  山下 春江君    山手 滿男君  山中 貞則君    山村新治郎君  山本 勝市君    山本 粂吉君  山本 利壽君    山本 友一君  横井 太郎君    横川 重次君  吉田 重延君    米田 吉盛君早稻田柳右エ門君    渡邊 良夫君  亘  四郎君      ————◇—————
  27. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、淺沼稻次郎君外四名提出大蔵大臣萬田尚登不信任決議案は、提出者要求通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  大蔵大臣萬田尚登不信任決議案を議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。春日一幸君。     —————————————     〔春日一幸君登壇〕
  30. 春日一幸

    ○春日一幸君 私は、ただいま議題とされました、淺沼稻次郎君外四名提出にかかる大蔵大臣萬田尚登君に対する不信任決議案について、提案者を代表して、提案の理由を説明いたします。  まず、案文を朗読いたします。     〔議長退席、副議長着席〕     主文  本院は、大蔵大臣萬田尚登君を信任せず。  右決議する。   〔拍手〕     理由   一萬田大蔵大臣は、昭和三十一年度予算編成に当り平和と民生安定を願う国民の意志を無視して再軍備インフレ予算を編成し、  1 平和憲法の精神をじゆうりんし外国のための軍備拡張を強行せんとしている。  2 防衛費を削減して社会保障を充実するとの政府の重大公約を完全に裏切り、再軍備拡張のために社会保障を犠牲にせんとしている。  3 独占資本大企業偏重の財政金融政策により、中小企業の壊滅と国民生活の窮乏をもたらさんとしている。   4 政府の三大政策たる税制の根本的改革は龍頭蛇尾に終つたのみならず高額所得者の優遇と大衆収奪の徴税政策をますます露骨化せんとしている。  5 各省における相つぐ国費の不正不当支出なかんずく大蔵省における国有財産管理の乱脈ぶりは国民の血税を湯水のごとく考えるものであり、大蔵大臣責任は誠に重大である。これが、本決議案提出する理由である。   〔拍手〕  一萬田大蔵大臣、あなたは、見るからに異様の風貌を備え、常にもみ手で奇声を発し、鞠躬如として、ひたすら、いんぎんの体をつくろうておる。しかしながら、貴下のその大蔵大臣としての施政を検討するに、それは、独立の完成、経済の自立、民生の安定、平和の増進、民主主義の確立等、わが国政の基本的憲章をことごとくじゅうりんするものであって、その実体は、まさしく反動逆コースのかじとりであって、その心底は実にふてぶてしきものがあるのである。(拍手)今ここに貴下に対する不信任案の趣旨弁明を行うに当り、その罪業のあまりに深刻なるに徴し、私は、この際、貴下の前歴、日銀総裁たりしころの業績をもあわせてつまびらかにして、もって貴下をすみやかにその台閣の座から退けんとするものである。(拍手)  一萬田大蔵大臣、貴下は、日銀の一社員から身を起し、ここで三十年の累進を続けて、昭和二十一年には、大阪支店長を経て、ついに日本銀行総裁たるの栄冠を占められたのである。かくて、貴下の総裁の座は、二十九年十二月第一次鳩山内閣に迎えらるるの日まで、実に八年六ヵ月の長きにわたって動くことはなかった。いつしか、世人は、貴下に一萬田法王なる称号を奉った。これは、貴下の権力によって利得を得た者からすれば感謝の御追従ではあったろうが、同時にまた、国民大衆の側からすれば、それは、けんらん豪華な総裁室にこもって大衆の困窮を顧みない貴下に対するあざけりと非難を込めたあだ名であったのであるが、貴下は、このような含蓄について何ら御自覚はなかったようである。  顧みれば、戦後、わが国の経済は幾多の試練にさらされた。しこうして、おおむね、この全期間を通じて、貴下は、中央銀行総裁として、さらには大蔵大臣として、わが国金融政策に重大なる決定的責任を負うておったのである。  まず許しがたきは、貴下のとられたる大企業偏重の金融政策についてである。貴下は、大企業に対し、彼らがいよいよ肥満できるように、その産業資金を野放図なほど放漫に供給した。後日、これは偏向融資、系列融資となって累積し、ために、これが今や世論の激高となって騒がれていることは、貴下もまたこれを認めざるを得ないであろう。すなわち、これらの現象について、当時の銀行局年報によれば、一企業に対する貸付が、銀行の自己資本に対し一〇%をこえるものは全貸し出しの三〇%、さらにそれが二五%をこえるもの一八%となっておる。すなわち、当時の年間貸出総額を三兆円と推定すれば、このうち約一千億円に近いものが、この銀行と特殊関係にある大企業に対する偏向融資であるのである。およそ、市中銀行の資金は、おおむね大衆の預金であり、足らざるは日銀に仰ぐ借り入れ資金であって、言うなれば、金融機関の資金は、そのいずれもが大衆と国家の資金である。このような公共性百パーセントの金が、日本銀行と市中銀行とその関係大企業との三者の結託によって、このように壟断されていたということは、一体これが正当なことであるであろうか。(拍手)当時、私どもは、日銀総裁としての一萬田氏を大蔵委員会に参考人として招致し、しばしば忠告を行なったのであるが、しょせんは顧みるところなくして、この事態が実に本日にまで持続いたしておるのである。  さらに非難さるべきは、特定事業会社の生産設備の二重投資、過剰投資に対する銀行の貸し出しに対し、一萬田君は、日銀総裁たりしときも、また大蔵大臣となっても、何らこれを抑制することなくして、むしろこれを助長しているということである。これは、為替管理政策と相からんで、企業家が希少物資の輸入割当をより多く獲得するための、最も悪質な策略であった。すなわち、原材料物資の輸入外貨の割当は、当時、その生産設備のみを対象としたために、関係企業家たちは、その生産設備を拡大することによってのみ、その原材料の輸入量を増大し得たのである。ここに必然的に生産設備の拡大競争が猛烈に展開されて、しかして、この競争の勝敗は、設備資金を供給する金融機関とのつながりの強弱の度合いによって決定されたのである。けだし、希少物資による生産企業の利潤は、今もそうであるが、当時は、とほうもなく膨大なものであったので、この設備拡大競争の場裏において試みられたところのこの運動の様相は辛らつ俊敏をきわめて、まさに戦国野盗の行状を思わしむるものがあったのである。当時世論はこれを金融無政府状態と酷評したことによって明らかであるが、このような企業家たちの貧らんなる設備拡大競争に、日銀を含めたわが国の金融機関が最善の親切を尽した結果、わが国の産業構造は、その後果していかなる状態に立ち至っているでありましょう。  ここに、繊維関係で通産省の調査したところによれば、その実相はおよそ次の通りである。すなわち、紡績については、現有設備八百二十万錘、三十年の生産実績から見て、そのうち百二十万錘が過剰設備となっており、比率にして実に一七%強である。羊毛については、梳毛の現有設備百二十二万錘、うち、過剰設備が三十万錘、比率にして、なんと二四%強、これらがいずれも過剰設備となっているのである。砂糖については、農林省外貨割当基準によれば、現有生産能力は年産二百七十万四千五百トン、これに対して三十年の生産実績は約百万トンであり、ここに百七十万四千五百トンの設備が過剰または遊休となっているのである。四年前の昭和二十七年初め、いわゆる統制撤廃直前の砂糖の生産能力は日産千八百八十五トンであったものが、わずか四年後の今日では、日産能力九千トンと、四倍強にもふくれ上っているのであります。製糖事業がいかにもうかるかは天下周知の事柄であるが、その原糖を確保するための外貨割当をめぐる設備拡張競争は以上のごとき結果をもたらし、これは資金のむだづかいであることは当然であるけれども、そのために、国民は遊休施設の維持費までも含む不当に高い砂糖をなめさせられておるのであります。(拍手)  これが国家資源をむだ食いした大企業と金融機関との最も悪質なる典型的な結合の実情であるが、思うに、保守政権の住宅政策は、実に熱意が乏しくして、現在その不足数は三十万戸を数えておる。道路は荒廃し、橋梁は修築されていないのに、かくのごとく独占企業家たちがその独占利潤をほしいままにするための設備は、何事にも先んじて、このように二重にも三重にも過剰に融資されておるのである。さきには日本銀行総裁として、今は大蔵大臣として、一萬田尚登君に金融の公共性の何たるかをわきまえ、その金融政策に国家と民族をおもんぱかるところあらば、決してこのような奇怪にして不経済きわまる投融資は行われることはなかったはずであると思うのであります。(拍手)  特に公憤を禁じ得ないのは、一萬田蔵相が、日銀総裁時代から本日に至るまで、まことに堅持して譲らない、その中小企業冷遇の態度についてであります。貴下は、中小企業金融難を打開するために、また、わが国産業の本体である中小企業の基礎を確立するために、真剣に、あるいは少しぐらいでも、何かお考えになったことがおありであろうか。本院の大蔵委員は、貴下が総裁たりしころより、幾たびもこの問題について貴下とは論じ合っているところであるが、何一つ問題の解決は貴下によってはかられはしなかったのだ。中小企業のために資金量を増加し、その金利の低下をはかれとのわれわれの要望に対する貴下の答弁は、まるでゴム判で押したように、いつ、いかなる場合でも、同じようにあじけなく、かつ、そっけないものでしかなかったのである。すなわち、貴下は、中小企業の問題は金融では解決できるものではない、その品物が売れて金が入ってくるようにすることが先決だと答えて、ことさらに中小企業問題を日本銀行や大蔵省の所管の外に押しやるの態度に出て、全く責任を感ずるの気配はなかったのであります。  今日、大企業の繁栄を外に、中小企業の窮乏は何ら解決されてはいない。しかのみならず、本年四月における手形の不渡り件数を言うならば、東京手形交換所の記録によれば、月の集計四万五千七枚、一日当りとして実に千八百枚であって、事態はまことに憂慮すべきものがあるのであります。(拍手)貴下の言うところの、品物が売れてその代金が入ってきさえすれば何も問題がなくなるくらいのことは、総裁、大臣に聞かずとも、市井の少年店員にもわかり切っておる事柄である。品物の売れ行きが悪いこと、その上、売れた品代金の回収がつかないからこそ、また、そのような事態が深刻で、少しも好転しないからこそ、中小企業問題が社会問題となり、政治問題となって、真剣に論じられておるのである。生産に対して内外の需要がこれに伴わない原因も、さらに品代金の支払いがやたらに遷延せざるを得ない理由も、いずれも、それは国の政策にその淵源が存するのである。  もとより、金融のみによって中小企業問題の全部が解決されるとは何人も考えているところではないが、さりとて、血が流れ出すままに捨てておけば、その人間が死んでしまうので、すみやかに包帯を巻いて手当をせよというのが、臨床的立場からする中小企業金融の強化を強調するわれらが切実なる理由であるのであります。(拍手)中小企業金融が多分に政策的金融であるということを、貴下はことさらに理解しようとはされていないのである。ここに、貴下は、総裁時代においても、また、大臣になってからも、この正当にして必要欠くべからざる提唱を退けて、ただ大企業と市中銀行の藩屏たらんことにのみ没頭されておるのである。戦後十年をけみして、国民大衆の生活はいまだ安定しない。失業者は日とともに増大して、中小企業は重税と金詰まりにあえいでおる。大企業と金融事業とだけがいよいよ巨大利潤を独占して、国民の貧富の懸隔はいよいよ急ピッチでその距離を広げておる。経済自立への道はまだまだ遠くして、その行方もさだかではない。  このような国民相剋の基をなしたものは一体何であるか。自由にして公正なるべき民主経済の法則が、大企業と大財閥の利益のために全くゆがめられてしまったのであるが、一体その主たる下手人はだれであるか。  今、大蔵大臣としての貴下に対し、ここに不信任趣旨弁明を行わんとする私の心底に黒くわだかまるものは、実に、かつて日銀総裁、金融界の法王たりしころよりする貴下があえてしたこれらの失政、悪業の数々である。もとより、これらの行跡が国民経済に与えた損失は莫大なものであって、国家のため許しがたきは当然であるが、しかりとはいえ、その後における、すなわち、貴下が大蔵大臣として犯した数々の非難事項に比べれば、これらの事柄は、わずかに鯨群の中の一匹のマグロほどのものでしかないのである(拍手かくて、貴下は、昭和二十九年十二月、時の民主党のささやきにこたえて、第一次鳩山内閣大蔵大臣に就任された。かくて、貴下の大蔵大臣としての非政、逆政は、予算の編成、徴税行政、国有財産の管理運営、金融、外国為替、外資の処理等、実に広範な舞台と、かつ大規模なスケールで、ここに戦慄すべきスタートを切ったのである。  以下、その一つ一つをつまびらかにして貴下をして一日もその職にとどむべきでない理由を明らかにいたしたいと思うのであります。(拍手)  まず第一に、私は、国有財産の管理、運用にからまる不正、汚職と、この管理者たる大蔵大臣責任をたださねば相なりません。  すなわち、行政管理庁は、昭和二十九年十月から二回にわたり、大蔵省所管の国有財産の処分、管理について、その監察を行なってきたのであります。しこうして、去る四月の十三日、その監察結果について、大蔵省に対し、管理、処分を正確適切に行えとの勧告をするとともに、十四日、その驚くべき紊乱の内容を発表いたしました。全く、その監察報告は、およそ国政に参画する者ならば、はだにアワを生ぜしめずにはおかぬほど、乱離骨灰をきわめたものであります。(拍手)すなわち、抽出調査対象の四割近くが台帳に記載されておるだけで、実際にはもはや存在しなかったり、また、国有財産を個人が無断で使用したり、さらには、貸付、売り払いのうち、約三割が不当な賃貸料や価格で処分されておるなど、管理、処分のでたらめな点がきわめて多く、このための国費の損失は実額一千億円以上と推定されておるのであります。(拍手)  この行政管理庁の行なった国有財産管理の調査対象は、旧軍用財産一万六千九百二十二件中六百六十三件、旧大蔵省雑種財産五万五千九百八十九件中千七百五十九件、計二千四百二十二件の未利用財産を抽出したのでありまするが、このうち、台帳にあって現実に存在しないものが五百八十二件で、全体の二四・一%、その存否不明のもの二百二十一件で、九・一%、一部が滅失したか、存否不明のもの百四十七件で、六・一%、すなわち、抽出調査したもののうち四〇%近くが、かくのごとくにして、何が何だかわからないという状態に放置されておるのであります。(拍手)また、国有財産を個人が無断で使用しておるもの九百八十九件で、これまた全体の四割を占めておるのでありますが、このうち最も悪質なものは大津財務局管内で、これで調査した十三件中、その六件が二十年以上、他の四件が十年以上も個人に無断に使用されて、大蔵省はそのまま手をこまねいてこれを傍観しておるという事実が報告されておるのであります。  また、これを土地建物について分析をいたしますると、土地の調査対象八百五十万一千坪、このうち、台帳面には記載されておるが、実際には今は存在しないことになっておるものが九十五万七千坪、しこうして、あるのかないのか明確でないものが十八万二千坪、無断で使用されておるもの百五十九万坪、一部滅失、または、てんでわけのわからぬものが三十三万六千坪というように、実に調査対象八百五十万坪のうち三百万坪が、あるものは行方不明に、他のものは不法占拠され、その乱脈ぶりは言語に絶し、まさにおもちゃ箱をひっくり返したような、まるで手もつけられぬ、ざんばらの光景であるといわれております。  建物の管理状況もまた同然であります。その調査対象は十七万二千六百坪であるが、そのうち、存在しないもの五万一千坪、存否不明のもの千坪、無断で使用されておるもの九千坪、一部滅失または不明のもの四千五百坪というように、六万五千坪が実態と相違をしておりまして、正当に管理されてはいないということが指摘されておる。これら未利用財産の価格は、大蔵省の台帳価格では十五億円ではありまするが、これはその算定基準がまちまちで、ひどいものになりますと、明治十年ごろの地代をそのまま使用しておる例もありまして、現在の物価が戦前物価の二百倍と見ましても、これは時価に換算して三千億に当りますから、その四割に当る実に一千億円以上の国有財産は、このようにルーズに、かつ、めちゃめちゃに取り扱われておるのであります。  一体、このようなふざけた管理方式というものがあり得るでありましょうか。およそ、実在しなかったものが、国有財産台帳に載せられるはずはないでありましょう。いかなる理由で存否不明になったものか、土地や建物が妖怪変化のように消えうせた、この怪しい大蔵省の国有財産処分のからくり、われら国会は、今こそその真相をきわめて、国民の前につまびらかにせなければ相ならぬと存ずるのであります。ここに、国有財産管理の衝に当っている大蔵大臣責任はきわめて重大であります。——国有財産が国民全体の財産である点にかんがみまして、かかる放らつ三昧な管理者を引き続いてその衝に当らせておくことは、あたかも、極道者や、たわけに、蔵のかぎを預けておくと同じことである。まことに危険この上もないことだと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  さらに、国有財産の処分の面についてこれを検討いたしますると、調査対象は、昭和二十八年度中の貸付五万五千四百十件中千七百四十四件、売り払い一万九千三百七十九件中千五百二十八件を抽出したものでありまするが、このうち、処分が不適当なものは貸付五百一件で、二八・八%、売り払いについては五百四十七件で、三五・八%に達しておるのであります。しこうして、この内容は、貸付、売り払いとも料金、代金のきめ方が不当に安いもの、その徴収がルーズなものがほとんど大部分でありまして、このための国費の損失は、これまた膨大な額に達するものと見られております。  さらに、この際看過し得ないことは、これらの国有財産が常に利権の対象となり、従って、これをめぐって悪質な汚職が行われておることであります。最近新聞紙上にしばしば報道されました印刷局の汚職事件なるものは、上は局長より下は係員に至るまで、官紀の紊乱はその極に達し、その悪質なることはまさに空前絶後と称されておるのであります。(拍手)  まず、前印刷局長井上義海君の国有財産不当取得の事例を申し上げます。同君は、関東財務局長から印刷局長に転任になってからわずか二カ月目の昭和二十九年六月、当時宿舎として大蔵省から借りていた家屋と土地の払い下げを受けておりますが、この土地、建物は、元山階宮家所有のものを大蔵省が買い取ったものでありまして、土地は七百三十坪、家屋は四十二坪という広大なものでありました。場所は渋谷区南平台の一等地でありまして、土地の時価相場は坪三万八千円と言われておりますが、かりに百歩を譲って税務事務所の評価額をもっていたしましても、坪実に八千円であり、どんなに安く見積ろうといたしましても、この国有財産は六百万円を下ることは許されないのである。しかるに、がけ地があるという珍妙なる名目を付しまして、これを坪三千円で払い下げを受けております。家屋については、同じく税務事務所の評価額五十三万円とされておるものを、これまた、自分で半分以上は修理したと称して、わずかにこれを十三万円として、この広壮な大邸宅を、土地と家屋を合せてわずか二百三十七万円で払い下げを受けておるのであります。しかも、この代金の支払いは実に十カ年年賦というものであります。親切で、丁寧で、ゆうちょうで、寛大で、まことに至れり尽せりのお取扱いであります。国民が税金を滞納いたしますならば、たちまちにして延滞日歩を課し、さらにおくれれば、その財産を差し押えてこれを競売に付する大蔵省の方針とあわせ考えたら、このような取扱いは、まさに、やかんとてんかんぐらいの相違であろうと思うのであります。(拍手)  申すまでもなく、国有財産法は、財務局の職員が払い下げを受けたり交換することを、特に一カ条を設けて、厳重に禁止いたしております。ここに、井上元印刷局長は、その前任たる関東財務局長在任中に、部下であった同局目黒出張所長に命じて、坪三千円にするよう、お手盛りの払い下げ価格を決定させ、その他これに付随する準備の一切を済ませて、印刷局長に転任するや、わずか二カ月を出ずして、これが払い下げを受けて、自己の所有といたしておるのであります。このほかに、同君は、昭和三十年二月ごろ、自宅の修理、塀の新築など、約五十万円相当の工事を、印刷局の改修築工事を請け負っておる下請の中野組、五十嵐組などに、ただでやらせた容疑等もあります。さらに、同年初めには、千葉の野田ゴルフ場の会員となった際、これに必要なる株二十八万円、入会金十六万円、計四十四万円、これを印刷局の外郭団体である朝陽会に支払わせておる不正等も明らかになっております。また、自宅の庭には、町の有料練習所も顔負けするようなりっぱなゴルフ練習所が設けられ、これは印刷局の公けの資材によって作られておるということであります。  そこで、ここに最も奇怪なことは、かくのごとき言語に絶する悪質なる犯罪容疑を持った同君が、このほど一萬田大蔵大臣によって依願免官と相なったことであります。同君は、さきに事件の発覚するや、印刷局内に汚職事件を出した責任をとるとの理由で辞表を提出し、本年三月二十三日依願免官となっておりますが、一体このような人事管理の方式というものが許されてよいでありましょうか。(拍手)いやしくも、犯罪の被疑者に対しては、その者が起訴されたときはこれを休職処分に付し、罪状決定とともに懲戒免官とすべきは、これは官紀の厳粛を保つための鉄則とされておるところであります。(拍手)ここに背任容疑の刑事被疑者を故意に庇護して、特に依願免官とした大蔵大臣の措置は、断固として許されては相ならぬと存ずるのであります。(拍手)一体、大蔵省では、その職務に関してどんなに悪事を働いても、それが露見したときに辞表を出しさえすれば、このように、いとも円満に退職ができるというのであるか。このような、ふしだらな人事管理の方式をもってして金融、税制、管財、外為、予算の編成等、その広範なる所管事項について、果して大蔵大臣国民の負託にこたえ得るのであるか。この一事をもってしても、一萬田尚登君をその職にとどむることは断じて許されないのであります。(拍手)  この事件は、去る一月十七日、印刷局の外郭団体朝陽会の不正入札事件を発端として、約二カ月間に、印刷局の役人十人、朝陽会二人、業者側九人、合計二十一人が、贈収賄、背任、業務上横領罪で逮捕され、事件は印刷局の古輪転機の不正払い下げ問題から、同局管下工場の建築、改修業者とのなれ合い、さらにまた、同局所管の土地など、国有財産不正処分問題へと発展してきたのでありますが、これは今当局の捜査によって明るみに出たものでありまして、そのほかに、このような事例は、幾多枚挙にいとまなしとすらいわれておるのでございます。しかしながら、時間等の関係もありますので、ごらんの通り、この数枚はこれを省いておる。(拍手)  特に現在指摘せなければ相なりませんことは、国有財産の不当貸付として、数年来の懸案となっておりまする、あの虎ノ門事件、これも今なお未解決のままに放任されておるのでありますが、一体これはどうしたことでありましょうか。本件は、虎ノ門の元満鉄ビルに隣接する一千余坪の国有土地を、公園にする目的をもって東京都に無償貸付をしたるところ、昭和二十三年二月、ニューエンパイヤ・モータース株式会社が、連合国軍に対する自動車の修理サービス業を営む目的をもって、土地の使用許可申請を行い、東京都は、五月二十五日、これが申請を許可したのであります。許可の条件は、使用面積千百三十六坪、使用期間は昭和三十二年十二月三十一日まで、一カ月賃貸料千七百四円、公園の美観をそこなわないよう、これを条件といたしておるのであります。越えて二十四年二月、許可を一応取り消しまして、そうして許可条件を変更して、使用面積六百五十坪、使用期間は昭和二十八年一月三十一日まで、一カ月の使用料は三千三百十五円、同使用地に建てる建物は、恒久的な鉄筋等を認めず、木造二階建とし、期限がくれば、エンパイヤ・モータース株式会社の費用をもって施設を撤去すること、これが条件になっておる。この間、会計検査院においても、昭和二十六年三月、公園目的以外に使用されておるこの国有土地は、すみやかに用途を廃止して普通財産とするよう、財務局に勧告がなされておるのであります。しかるに、その後、遷延いたずらに日を経るのみで、何ら解決もしておらない。現在使用許可期限を経過することすでに三年有余にして、依然として今日もなおニューエンパイヤ・モータース株式会社が当該国有財産を占拠、無断で使用しておるこの現状、これを大蔵大臣は全然拱手傍観して見のがしておる。いかなるかんばせあって、そのようなところにすわっておられるか、と尋ねたいくらいである。(拍手)全く、これらは、国務大臣の国有財産の管理、運用について何らその責任を果していない証拠でありまして、一萬田大蔵大臣がその間違った執行と怠慢によって国家に与えた損失はまさに莫大であります。これが一萬田君をしてその職にとどまることを許し得ざる理由一つであります。(拍手)  次は、一萬田大蔵大臣不信任理由といたしまして、国の財政政策に対する無節操にして厚顔無恥なるその態度についてであります。(拍手)一萬田大蔵大臣は、口を開けば、常に健全財政を強調せられておりまするが、もとより、これは当然のことでありましょう。いつの時代においても、また、いずこの国においても、みずからの立案になる財政政策を不健全財政などと自称するばか者はおりません。問題は、その財政政策が真に健全であるかいなかについてである。時の財政政策が、その時代政治的、経済的、社会的情勢に照応いたしまして、果して当を得たものであるかどうかは、これは立場の相違によっておのずから論議の分れるところでありましょうけれども、少くとも大蔵大臣が健全財政であるとみずからの案を誇称する限り、その方針は首尾一貫したものでなければならぬと思うのであります。しかるに、一萬田大蔵大臣の予算編成方針をめぐる態度は、まことに変転常なくして、きのう言ったことと、きょう行なっておるところには、一片の脈絡もなければ、責任観念もなく、その方針はカメレオンのごとく変り、その考え方は、うわ気なチョウチョウよりもさらに移り気であります。  現に、予算編成に当っても、その方針は、議会における審議以前に幾たびもころげ回っておるのであります。たとえば、一萬田大蔵大臣は、その就任した初年度の、昨三十年度の予算を組むに当り、一般会計における出資を二百六十二億円計上いたしました。すなわち、農林漁業金融公庫九十五億円、国民金融公庫二十億円、中小企業金融公庫十五億円、商工組合中央金庫十億円、住宅金融公庫五十二億円、住宅公団六十億円、国際航空十億円でありまして、吉田内閣時代よりも六十二億円を増額していたのである。また、とかくインフレの要因となる公募公債は、これを五億円減額をいたしまして三百八十五億円といたしたのであります。健全財政の趣旨から申しますならば、これらの出資は一般会計において計上すべきであり、また、公募公債は多少なりとも減額をはかるべきことは、われわれもまたこれを肯定していたところであります。しかるに、昨年五月、少数与党たる民主党が自由党との間に行なった予算折衝の過程において、この一萬田蔵相の当初における健全財政の大構想は、こつ然として、その姿をまるきりかき消してしまったのである。自由党との間に、当時いかなる取引が行われたのか、それはとうていわれわれの想像のらち外ではありますが、いずれにしろ、この間における一萬田蔵相の豹変ぶりは、これは天下をひとしくあぜんたらしめずにはおらなかったものであります、すなわち、一般会計出資は実に百五十四億、当初予算に比較いたしまして何と六割という額を削減して、わずか百八億円として、一方、公募公債は百三十六億をふやして五百二十一億円にするという、驚くべき軽わざの芸当を見せたのであります。ここに公債への道は開かれました。公債への道は、一歩これを踏み出せば、あがきのとれない泥沼に通じておることは、財政学者のいずれもこれを論じておるところであります。さればこそ、三十一年度予算においては、すでに一般会計出資わずかに二十億、公募公債は逆に九百億円というがごとき、一萬田構想にとっては、さんたんたる結果を招来せずにはおかないという、そういう結果に相なっておるのであります。  ここで、私は、一萬田財政の本質に言及して、大臣就任当初の一萬田構想が、果してわれわれをも納得せしめるに足るだけの健全財政を行なってきたかどうかを、その現実に照らして追及せなければならぬと思うのであります。(拍手)  まず、一萬田蔵相は、就任の当初から、わが国予算の軍事的性格を特に推進しておることを見のがしてはなりません。鳩山内閣は、昨冬の総選挙に当り、防衛支出金を減額して住宅を作る、社会保障を拡充強化すると公約はしたが、御承知のように、三十年度予算では、なるほど、防衛分担金だけについていえば、アメリカに泣き込んで、とまれ百二十五億円減らしてもらったが、それは、その分をそっくりそのまま防衛庁費に回しておるのであります。三十年度一般会計において軍事費の占める割合を見まするに、狭義の軍事費は一三・六%で、二十九年度よりも〇・一%の増額となっておる。旧軍人恩給費は、二十九年度分の六・四%から六・八%と、〇・四%増加いたしておる。さらに、ここで特に指摘せねばならぬことは、二十九年度八十億円であった予算外国庫負担を、三十年度では、実にその倍額に近い百五十四億八千万円の予算外国庫負担を行なっておることであります。さらに、三十一年度予算では、狭義の防衛関係費は八十億円増加して、一三・九%という総予算の中に占める割合を示し、旧軍人恩給費は七%で、それぞれ三十年度よりも増加の傾向著しく、予算外国庫負担は、継続費と合計して十億円の増加となっておるのであります。  かかる傾向の中において、われわれが明確に指摘し得ることは、すなわち、一萬田財政は、その中心に軍事費を置くという軍事的性格であり、かつ、年々歳々、鉄面皮にこれを増大していくという、このことにあるのであります。かかる軍事費中心の予算がインフレ予算であることは論を待たないところでありまして、千四百三十億円の通貨を、単にどぶの中へ捨てるだけであれば、それは通貨の収縮にすぎないでありましょう。しかしながら、何ら再生産に役立たず、従って、何らの経済価値をも生まない軍事費にこれを使用するということは、少くともその額だけがインフレとなって返っていることは明らかであります。かくのごときインフレ予算が底の浅いわが国経済に及ぼす悪影響はまことに甚大なるものがあると指摘せなければ相なりません。(拍手鳩山内閣にして、施政すでに一年有半を経て、その公約を何一つとして実現できない理由も、また実にここに存するといわなければ相なりません。まことに大蔵大臣には予算編成に関する何らの抱負経論もなく、現に三十一年度予算編成に際して、防衛分担金削減折衝を通じ、ついに売国的屈辱外交に慴伏して、アメリカとの間に次のような取りきめを行なったのであります。  すなわち、米国は将来日本防衛庁費及び米軍用施設費の予算の合計額の増加分を均等に負担し、究極において日本防衛分担金をゼロならしめるというのであります。これを端的に解釈すれば、防衛分担金がゼロになるときは米軍は撤退するという解釈もできないこともないのであります。現在、防衛分担金は三百億円でありますが、防衛庁費を六百億円増加せしむるならば米軍はいなくなると考えられるかもしれませんけれども、それはとんでもない早合点というものであります。このような取りきめの実態というものは、まことにそのようななまやさしいものではないのであります。六百億円という金額自体が、再建途上にあってなお塗炭の苦しみをなめておる一般国民大衆にとって、それこそ容易ならない金額であることは当然でありまするが、その六百億円の行き先は防衛庁費と米軍への施設提供費にほかならないのでありまして、しかも、施設提供費が不足する場合は、自由に防衛庁費を削って提供費の方へ回そうというのであります。言うならば、この方式こそは、防衛分担金がゼロになるのときは、自衛隊も増大するが、同時に、アメリカのおそるべき原爆基地が、まさしく日本の国土において完成するという、そういうおそるべきときであるのであります。かくして、日本自衛隊は、アメリカ軍の弾よけとして仕上げられ、生活にあえぐ民衆の呪詛を込めた血税が原爆基地のために惜しげもなくささげられるという、これをしも売国的取りきめと糾弾せずして、国会議員たるの面目いずこにかありましょう。(拍手)西独においては、アデナウアーが断固として防衛分担金の支払いを拒否いたしておりますときに、わが国においては、一萬田蔵相が、従来のそれに輪をかけて、平然として、かかる屈辱的取りきめを行なっておるのであります。  ここに、一萬田蔵相は、防衛庁における国費の乱費を何と見るか。たき木にしかなり得ないような直径一、二寸のナラ材を、建築材として評価して、五千数百万円を余分に支払ったり、冬服を十年分も倉庫に眠らせたり、また、ただいま同志諸君によって論述されましたところの例の中古ガソリン・エンジンの買い上げ、これらの防衛庁費に一指だに触れ得ずして、それでしも一国の大蔵大臣の職責が果されるというのであるか。(拍手)  また、アメリカに対するこのような屈辱的政策だけにはとどまらない。一萬田蔵相は、貿易政策の面においても、日本の国際的信用を傷つけて顧みるところが全然ありません。すなわち、蔵相は、わが国の貿易はその生命ともいうべきものである、貿易振興のために東南アジア貿易を伸張させねばならないと言い、また、東南アジア開発機構を作ると言って、もっぱらアメリカの映画関係の会長やダレス長官と話し合ってきたのでありますが、しかしながら、バンドン精神の横溢した東南アジア、この民族独立の希望に燃えておるその国作りの人々は、今、東南アジア諸国に対して、帝国主義者アメリカと組んで進出を試みんとする、かつての帝国主義日本に対して、今やいよいよ警戒の念を増しこそすれ、決して一萬田構想などを歓迎してはいないのであります。今日、東南アジア貿易が伸びるべき幾多の好条件に恵まれながら、なおかつ伸び悩んでおる原因は、まさに一萬田蔵相の反動政策に起因するものでありまして、その罪業は将来にまたがって禍根を残すでありましょう。(拍手)  さらに、また、一萬田蔵相の財政政策が、憲法に基いて福祉国家たるべきわが国の社会保障政策を一歩も二歩も後退させておることについて、せめては何らかの自覚があるのであるか。その選挙公約とあわせ比べて、国民を欺瞞するの最もはななだしきものと糾弾せざるを得ないのであります。(拍手)  今日、社会問題のうち最も重大な問題は、住宅難の問題であります。同じ敗戦国たるイタリアにおいても、はたまた東西ドイツにおいても、およそ住宅難の問題は次第に解消しつつあるのであります。家がないばかりに結婚ができない青年たちが幾十万をこえておる。また、六畳、八畳の一室に間借りをして、多数の世帯が難渋しておることを、大臣は何とも感じないのでありますか。鳩山内閣の選挙公約のうちで最も魅力に富んだものが、その住宅建設四十二万戸というかけ声にあったことは、当時の新聞記事を拾えば一目瞭然であります。しかるに、その実際は、諸君も御承知の通り、財政的裏づけがないばかりに、四十二万戸のうち二十四万五千戸というものは、民間の自力建設、これに期待するものであって、政府がやるという十七万五千戸すら、これが年度内に実際に建設されるというのは、実はその七割ないし八割というがごときありさまである。民衆は、欺瞞に対して、きわめて敏感であります。巷間、たまたま、四十二万戸とエープリル・フールとはシノニムとなって、新しい流行語として流行していることを、大臣は御承知でありましょうか。(拍手)しかるに、現内閣は、またぞろ、本年度は住宅建設は四十三万戸だと放言をしておるのでありますが、その神経の図太さは、まさにおそれ入るばかりであります。(拍手)  さて、三十一年度の社会保障関係費において、一萬田蔵相はいかなる財政措置を講じたか。その結果、わが国の社会保障政策をいかに後退せしめておるか。われわれの公正なる見解において、さらにその責任を追究しなければ相なりません。三十一年度の社会保障関係費は、住宅対策費を含めて千三百八十七億六千三百万円、予算全体においてこれが占める比率は一三・四%でありまして前年度に比較して約十六億円の減、比率において〇・八%の減となっておるのであります。念のために申し上げておきまするが、ただいまの数字は、諸君がお持ちの「予算の説明」という大蔵省主計局発行の解説書とは数字が違っておる。私の申し上げた数字は、予算を目的別に整理総括したものであって、「予算の説明」では、社会保障関係費は千百三十四億円で、前年度よりも百二十二億円の増額となってはおる。しかし、住宅対策費を含めて目的別に分類整理をいたしますると、前年度よりも十六億円の減と相なるのであります。住宅対策費を「予算の説明」のように計算をいたしますと、住宅対策費が前年度よりも約七十億円の減となっておりますので、社会保障関係費は百二十二億円の増加ではなく、約五十四億円の増加となり、(「時間だ」と呼ぶ者あり)結局、予算総額の中においてその占める比率は前年度と変らず、一二・三%にすぎないのであります。
  31. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 春日君、申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔に願います。
  32. 春日一幸

    ○春日一幸君(続) 一萬田蔵相は、政策マンとして陳腐な手品を使うために、数字の上に、かなり手の込んだしかけをいたしておるのであります。全く、事ごとに、この大蔵大臣の予算編成方針というものは、大企業、大財閥に片寄り、働く人々、弱き者、悩める者、貧しき者、こういう者に対しては、ほとんどこれを顧みてはいないのであります。  これを要するに、一萬田大蔵大臣は、その財政政策の根本において誤まったがために、破れかぶれの無手勝流となってしまって、もはや、どうしていいのか、収拾しあたわざる混乱の様相に陥ったと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)これ大蔵大臣国民の名において罷免せざるを得ない理由の三つであります。  ただいま議長から御注告がありましたけれども、私は、この際、議長並びに保守党諸君に申し述べたいことは、少くとも一国の国務大臣をその職から退けんとするがごときは、これはまさに国家の大事に属するものといわなければならない。(拍手)従って、このような国家の大事を論ずるの趣旨弁明こそは、あまねき角度から、あらゆる罪業を通じて、これをつまびらかに論述することを許さなければならぬ。従いまして、それを説くには五時間、七時間を必要とする場合もあるであろうと思うが、しかしながら、今回、諸君が、多数の暴力をほしいままにして、わずか五十分というような時間の制限をしたということは、まことに国家の大事を誤まらしむるもはなはだしきものである。(拍手)特に、日本のために警告せざるを得ないのであります。  そこで、われわれは、議会民主主義を尊重するの党の立場といたしまして、せっかく議長の御忠告でありますから、われらの膨大なる論述を省略して結論に入るが、ただ一言だけ諸君に聞いておいてもらいたい。  昨今、ちまたに、ゲリマンダーなる言葉が流行いたしております。このゲリマンダーなる言葉の語意は、陰険、悪らつ、佞奸、邪知を意味するものとされておるのであります。(拍手)さらに、この言葉がもたらされたいきさつにかんがみまして、(「議長、時間時間」と呼ぶ者あり)最近では、これを日本流にハトマンダーともじって——池田正之輔君がやじりまして、十分御聴取できなかったと思いますので、これをもう一ぺん繰り返しますが、さらに、このゲリマンダーなる言葉がもたらされたいきさつにかんがみまして、これを日本流にもじってハトマンダーというて、このハトマンダーなる言葉が、陰険、悪らつ、佞奸、邪知なる語意を持つものとして、今全国に蔓延して、これが流行語となっておる。ここに特に刮目すべきは、先般、小選挙区法に関する街頭録音において、このハトマンダーなる言葉の語意について、来会者の一人がまことに辛らつなる論議を行なったことであります。その論者の示すところによりますると、このハトマンダーなる言葉の語源は……。     〔「議長、時間だ」と呼ぶ者あり〕
  33. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 春日君、簡単に願います。
  34. 春日一幸

    ○春日一幸君(続) 鳩山のハトと一萬田のマンダを結びつけて、もってハトマンダーとしたものであって、(拍手)すなわち、これは鳩山総理の、信義と節操をわきまえざるに対し、一萬田蔵相の、大企業一辺倒の財政政策に対して、国民の憤激の思いを象徴したものであると解するがどうかと、この街頭録音の論者は言っておるのであります。(拍手)このことは、まさに天に口なし、天人をもってこれを言わしむるのたぐいであって、特に鳩山総理、一萬田蔵相は、心を澄まして、その天の警告に耳を傾けるべきである。鳩山総理は、かねて友愛精神を説いておった。  この際特に申し上げておきたいことは……。
  35. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 春日君、結論を急いで下さい。
  36. 春日一幸

    ○春日一幸君(続) 昭和二十九年十二月、時の吉田内閣の総辞職に際し、これが政局収拾のためにとったわが党の態度についてである。われらは、時の自由党総裁緒方氏を選ぶか、時の民主党総裁鳩山氏を選ぶかについて、重大なる岐路に立ったのである。すなわち、わが党の選択こそが次期政権の樹立を決定するものであったからである。あの際におけるわれらの選択は何であったか。それは鳩山総理の終生忘れ得ざる感銘であったはずである。かくて私どもは、鳩山一郎氏を次期政権首班として支持し、現にこの場において投票を行なったのであるが、自来あなたは引き続いて総理の地位にあり、この間保守合同を行なって、ついた自民党の総裁の座にも着いた。この鳩山総裁の政治生命の根源となったものは一体何であるか。言うまでもなく、それは、一にかかって、もっぱらわれら日本社会党の選択によるものであって、それ以外の何ものでもない。(拍手)しかるに、鳩山総理は、今次国会において、陰険、悪らつなるゲリマンダー選挙区法を提出し、さらに各地の演説会に臨んで、憲法を改正するために社会党の勢力を減殺して下さいと叫んでおるのである。およそ、命の恩人を虐殺するというような、そんな友愛の精神が天下いずくにかある。陰謀をめぐらして恩人たるの党の職域を期するような、そんな民主主義が一体あり得るでありましょうか。かくのごときは、道義、情理、友愛など言うもおろかなこと、まことに事の善悪、事の順逆をわきまえざるもはなはだしきものであって、私どもは、このような人物を政治家の仲間に持つことを恥辱に考えておる。一萬田尚登君こそは、実にかかる人物の下半身である。ハトマンダーの、実にマンダに位するところのその非政、虐政は、まことに枚挙にいとまないのであって、ここに論述した不信任理由は、わずかにその氷山の一角にしかすぎない。(拍手)  一萬田大蔵大臣、私は、貴下にして省みて心にこたうるところあるならば、すべからく、本動議の採決されるのを待つまでもなく、みずから心を決して国民の前にその責を明らかにされんことを強く要望いたしまして、ここに一萬田大蔵大臣不信任理由の一端を明らかにして、祖国と民族のために諸君の絶大なる御賛同をお願いいたしまして、私の提案理由の説明を終ります。(拍手)     〔「総理を呼べ」「休憩々々」「進行進行」と呼び、その他発言する者多し〕
  37. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これより討論に入ります。石村英雄君。     〔石村英雄君登壇〕
  38. 石村英雄

    ○石村英雄君 私は、ただいま提案せられました一萬田国務大臣不信任案に全面的に賛成をいたすものであります。(拍手)  一体、国務大臣不信任案という、この大事な問題が論ぜられておるときに、一萬田国務大臣を任命せられた総理大臣が高見の見物とは、私はまことに奇怪なことだと考えるのであります。(拍手鳩山さんがもし良心があるならば、この壇上に一萬田さんと並んで、不信任の論告を聞くべきであったと存じます。(拍手)春日一幸君が、ただいま、何ゆえに社会党が一萬田大蔵大臣不信任するかという、その理由を、しさいに、また論理整然として申し述べたのでありますが、鳩山総理大臣は、平然として、あの席に……(発言する者あり)いや、鳩山さんは、船田さんのときにはいたんだが、一萬田さんのときには姿を消してしまったのでございます。まことに不謹慎な態度といわざるを得ないと存じます。(拍手)こういう鳩山総理大臣のもとに忠実に勤めた一萬田さんが、今不信任を食うということは、まことに因果応報のことだといわざるを得ません。  大体、一萬田大蔵大臣が、長年住みなれた法王庁の抜け穴から出まして、一昨年十二月十日、鳩山内閣にその席を連ねたとき、多年にわたる吉田内閣の悪政に塗炭の苦しみをしていた国民は多大の期待を寄せたのであります。一萬田大蔵大臣日本銀行総裁時代の罪過は、国民もよく知るところであります。先ほど、春日一幸君から、十分にこの点は論じられたのでありますが、しかし、お人よしの国民は、これは、むしろ、当時の吉田内閣責任の大半があると考えていたのであります。従って、経済に明るい日本銀行総裁が大蔵大臣となることによって、国民の生活は明るくなるものと、国民は期待していたのであります。また、間もなく行われた総選挙で、そのように一萬田大蔵大臣は宣伝これ努めたのであります。  先ほども春日一幸君が申し述べましたように、四十二万戸住宅を作る、軍事費を減らして、防衛分担金を減らして、四十二万戸の住宅を作るとか、社会保障の拡充をするとか、あるいはミルクを飲ますとか、いろいろのことを申したのであります。当時の社会党の政策をとってきて——当時の新聞は、社会党の政策を民主党が盗んできた、こう言ったのであります。社会党の政策は、もとより専売特許ではありませんから、民主党がこれを取ってきて、もてそれを実行せられるならば、われわれは何ら文句を言うのではありません。しかし、四十二万戸にいたしましても、社会保障の拡充にいたしましても、すべて、これは、あけてくやしい玉手箱で、煙となって消えうせたのでございます。(拍手)ミルクに至っては、まことに人をごまかした話でありました。ミルクを飲ますというから、国民はミルクを飲ましてもらえるもの、こう考えておったのでありますが、一萬田さんのミルクは、実は、富士山の八合目に登ることのできる、非常に丈夫な大企業、大資本家に対して、初めてミルクを飲ましてやろうというのであります。(拍手)富士山のふもとで、氷雨に打たれ、なだれで死んでおるような者に対して、ミルクは全然飲まされてはおりません。ただ、大企業、大資本家が、富士山の八合目に上って、朝日の出るのを喜んで、絶景かな絶景かなと言って、一萬田さんのミルクを飲んだのにすぎないのであります。国民には何ら関係のないミルクを飲ますといって、国民はだまされたわけであります。  また、減税をすると言って約束いたしました。しかし、その減税は、なるほど数字の上では減税でございますが、その実態は、大所得、不労所得の者の減税をして、勤労者にはむしろ税金の減税をして、勤労者にはむしろ税金は重くかかってきたのであります。たとえば、勤労所得の今年度の税率をとって申しましても、今年度勤労所得が二十五万円ある者は、四人家族の場合、年に三百七十五円の税金を納めるのでございますが、この人が、もし別に株をたくさん持っておって、配当所得を五十三万円とっておると、その人は所得税を納めなくてよろしいのであります。ただ、朝から汗水流して働いて二十五万円年所得のある者は税金を納めなければならないが、別に配当所得が五十三万円もあれば所得税を納めなくてもよろしい、こういうような減税を一萬田さんはなさったのでございます。(拍手国民の期待はむなしい夢でありました。  今や、国民の一萬田大蔵大臣に対する信頼は地に落ち、不信任の声はちまたに充満いたしております。国民の代表として、われわれが一萬田大蔵大臣不信任の議決を今ここになさんとすることは、当然の責務でありましょう。(拍手)  一萬田大蔵大臣は、台閣に列せられるとき、おそらく大きな抱負と自信を持って就任せられたと推察いたします。おそらく、乃公出ずんばの慨があったと存じます。その自信がくずれた第一歩は、昨年四月、予算編成に当ってのアメリカとの交渉でありました。その第二歩は、昨年五月の自由、民主両党の予算共同修正でありました。この二つの事件は、その公約をほごにし、一萬田財政の方針を変更するものであります。しかし、当時、なお国民は、まだ一萬田大蔵大臣に期待をかけておりました。今日の保守政党は全く何をしでかすかわからない。一萬田大蔵大臣は、その中にあって、比較的良心的に行動するのではないかと、国民は考えたのであります。もろちん、アメリカ要求に屈して公約を踏みにじり、また、自由党のあのような公債発行の道を開いた修正に応じたということは、国民の期待を大いに裏切ったのでありますが、(拍手)なお、まだ何とか脈があるのではないかと、正直な国民は考えておりました。国民保守党内閣に求めるのは、何も社会主義をやってもらいたいなどということを求めるのではありません。ただ、日本のほんとうの独立を求め、あらゆる国々との平和的共存を求めるのでございます。  また、財政金融政策では、平静なる経済の発展であります。社会保障あるいは教育の拡充であります。インフレやデフレをもたらさず、静かにわが国経済が発展し、全国民の生活が豊かになることであります。しかるに、昨年度予算の自由、民主両党の共同修正は、先ほど春日君が申しましたように、公債発行に踏み出し、インフレに道を開くものでありましたが、一萬田大蔵大臣は、この傾向の増大に断固として戦うのではないかと、なお国民は期待をかけていたのであります。しかるに、国民のこの期待は、みじめにも裏切られてしまいました。今年度の予算では、一萬田大蔵大臣は、アメリカの忠実なるしもべとなり切り、ますます軍事費中心の予算を組み、アメリカ原爆基地の完成に奉仕し、社会保障は著しく後退し、産業経済費も見るべきものなく、国力の培養は無視せられ、インフレ要因は拡大し、はっきりと公債発行、インフレ予算、軍事予算となったのであります。(拍手)三十年度予算原案、共同修正予算、あるいは本年度予算、こう並べてその傾向をたどれば、明々白々であります。  春日君の論じたところをさらに数字的に申し上げれば、三十年度の原案では、出資が二百六十二億円となっておりましたが、修正予算では百八億円となりました。三十一年度は、驚くなかれ、二十億に減ったのでございます。また、公募債は三百八十五億が五百二十一億とふえ、三十一年度は九百億円とふえました。さらに、防衛関係費は、三十一年度は千三百五十億円でございましたが、三十一年度では千四百三十億円と、八十億円の増大を示しております。本年一月の防衛支出金削減の一般方針は、米軍交付金を削減すれば、その倍額を防衛庁費と施設提供費と顧問団費に回すというのであります。施設提供費とは、言うまでもなく、米軍の飛行場拡張整備費であります。米空軍の原爆基地の完成のためであります。米国顧問団とは、自衛隊におけるアメリカ軍人による指揮部隊であります。これらの費用は、三十一年度では一応百五億円となっておりますが、必要があれば、防衛庁費の千四億円の中から幾らでも回すことができるようになっているのでございます。原爆基地をもっと作ろうとアメリカが考えましたならば、防衛庁費の一千四億円の中から回すのであります。アメリカ軍人の指揮部隊をさらに増強せんとすれば、直ちにその費用はこの一千四億円から回し得るのであります。だから、防衛庁費は治外法権的な存在であって、予算書では一々もっともらしく分類していますが、自由自在、変転無碍、アメリカさんの懐中にほうり込まれていると言って過言ではありますまい。(拍手)だから、このしもべどもが湯水のように勝手気ままに使うのであります。先ほどから、船田長官不信任案の際にしばしば申されましたように、薪炭林を建築用材として評価して五千数百万円余分に払うとか、あるいは、冬服を十年分余分に倉庫に眠らせるとか、あるいは、あのやかましい中古エンジンというように、こうなるように一萬田大蔵大臣アメリカと約束してしまったのであります。  軍事費中心となりましたので、社会保障費や産業経済費、文教施設費は著しく当然後退し、公債増発となったのであります。社会保障関係におきましても、あるいは文教費におきましても、後退せざるを得ません。産業経済費にいたしましては、五百四十二億四千万円で、七十八億減じております。農林水産費は四百四億円で、五十一億円の減額でございます。商鉱工業費は五十三億八千万円で、十五億六千万円の減額でございます。このうち、中小企業対策費は、驚くなかれ、たった七億四千万円でございます。飛行機一台が、先ほど飛鳥田君が七億円だと申しましたが、この飛行機一台の金が、全国民の中小企業の対策費にすぎないのでございます。(拍手)飛行機一台七億、国の中小企業対策費が七億四千万円、これでは、農業も、水産業も、中小企業も、どうにもなるはずがございません。基礎産業の発展も期待することはできません。そこで、公債を増発し、千三百九十七億円を金融機関に押しつけんといたしております。金融機関が言うことを聞かないなら法律でやるがどうかと、一萬田さんは銀行をおどしつけておるのであります。  朝鮮戦争勃発後、日本銀行総裁一萬田さんの処置よろしきを得なかった結果、日本はインフレとなりました。インフレであるにもかかわらず、中小企業や平和産業はデフレに悩まされたのでございます。この当時、日本銀行総裁として、一萬田さんは何ら適切な手を打たなかったのであります。これに対して、ドイツでは、インフレ防止の積極的な手を打っておりますが、日本銀行総裁一萬田尚登さんは、ただ慢然と手をこまねいて、当時の吉田首相が天佑と言った言葉に相呼応して、インフレになるままにまかしておったのであります。その結果、中小企業や平和産業は、全般的にインフレでありながら、デフレに悩まされ、保全経済会のようなものがばっこし、銀行は両建、歩積みをするようになったのでございます。(拍手)  このときと同様な現象が、近くわが国において起るでございましょう。さらに、昔来た道、戦争への道、公債増発、インフレヘの道を、国民は、口にさるぐつわをはめられ、目には目隠しをされ、耳をふさがれて、息も絶え絶えに歩かされるでございましょう。時も時、去る三月二十四日、郷里山口において、現自民党の幹事長岸信介君は、外貨を見返りとして産業公債を発行すると言っております。これが大野伴睦さんや三木武吉さんが言ったのであるならば国民も聞き流すでございましょうが、岸信介君は経済官僚出身であります。しかも、東条内閣の商工大臣であります。これを聞き、昔を思い浮べまして、ぞっとしない者がございましょうか。われわれは、大蔵大臣の地位に恋々として、転身これ努めいく一萬田大蔵大臣を許すことはできません。アメリカに屈服して、その忠実なるしもべとなり、軍事予算を作り、公債発行、インフレへの道、戦争への道を歩み続けるところの一萬田大蔵大臣を、断じて許すことはできません。(拍手)  一萬田大蔵大臣不信任案に満場の諸君の御賛成を期待いたしまして、私の賛成討論を終ります。(拍手
  39. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 石野久男君。     〔石野久男君登壇]
  40. 石野久男

    ○石野久男君 私は、小会派を代表しまして、ただいま上程されております一萬田国務大臣不信任決議案に全面的に賛成するものでございます。(拍手)  先ほど春日議員から説明されました理由のすべては天下公知の事実でございます。平和憲法の精神をじゅうりんして、外国のための軍備拡張を強行しようとする方針は、鳩山内閣の基本的な政策であるし、同時に、一萬田大蔵大臣の財政政策の基本的なものであるとわれわれは見ております。こういう立場から、いろいろな問題が出てくる。私たちは、今日、祖国のために、ほんとうに健全なこの国の平和的建設をしようとするために、外国のための政治をしてもらいたくはないのであります。私は、これらの諸事実を指示しながら、まず、一萬田大蔵大臣が予算編成に当って、アメリカの再軍備要請と大全業独占資本に奉仕することに専念して、国民に対する公約を完全に裏切って、少数の権力者、独占をたらふくもうけさせ、国民大衆の平和と幸福をすべて犠牲にしていることを指摘しなければなりません。(拍手)  鳩山内閣は、昨年の総選挙で、社会保障の確立を国民に公約したことは、周知の通りであります。しかるに、社会保障関係経費は、実質的には、三十一年度予算よりは一そう悪い状態になっております。そのことは、健康保険法改正に関する各方面の反対を見ただけでもよくわかるところであります。選挙公約が実現されない最大の原因は、鳩山内閣が再軍備に予算の重点を置いているので、最初からできないことがわかっているのにもかかわらず、すぐにでもできるように言って、国民をだましたことによるのであります。     〔副議長退席、議長着席〕 一萬田大蔵大臣は、こういううそをつく内閣の中心になって、意識的にこれをやってのけたのであります。(拍手)しかしながら、それにもかかわらず、厚生省や関係各省は、ほんのわずかではあるけれども、公約に忠実であろうとして、予算を組んでこれを要求したこともまた事実であります。大蔵大臣である一萬田さんは、これを片っ端から削り取ってしまったのであります。  なぜこうした公約違反をしなければならなかったのか。それは、一萬田大蔵大臣が、アメリカに従属する再軍備強行を基本にした予算編成方針を頑強に固守して譲らなかったために、ほんのわずかばかりの公約を実現しようとした若芽までも踏みにじってしまうという、こういうことになったのである。これを完全に裏切らしたのは、一にかかって、一萬田さんのアメリカ追従の精神と、再軍備のための反動的精神であります。(拍手)われわれは、こういう立場からも、一萬田さんを、平和的日本建設のために、今日このいすに置くことはできないのであります。  三十一年度の予算で、厚生省は、四日に一個のリンゴを、三日に一個のミカンを食べさしたいと、養護児童のために一億七千六百万円の予算要求をしたのであります。ところが、これを大蔵大臣は七千七百万円に削減してしまっております。これは、養護児童に、一日五十七円六銭の給食費を、十円三十六銭だけ値上げしようとした要求であったのであります。一日の給食費五十七円というのは、野犬狩りをしてつかまった犬の食費と同じで、当然値上げすべきものであるのに、大蔵大臣は、それをたった四円六十二銭だけ認めたのであります。次の世代を背負う児童を、のら犬よりも軽く見ているということは何事でありますか。(拍手)あなたは、長い間日本の金融界の王座にあって、一萬田法王といわれている間に、金庫を守ることと独占に奉仕することは知っているかもしれないけれども、日本の次の世代を背負うところのこの養護児童を守ろうということを知らないでいる。(拍手)全く思いやりの一片だに持っていないのであります。社会保障制度というのは、のら犬よりも人間の子供を安上りで始末しようということではないのであります。あなたは、このことがよくわからないで、国民に奉仕する政治家になれると思っておりますか。われわれは、こういう大蔵大臣国民の将来のために持ってはいけないと考えるのであります。(拍手)  あなたは、鳩山内閣それ自体がそうなのであるけれども、何よりも先にアメリカの要請に基いた再軍備予算にすべてをささげて、国民の生活を少しも考、えていないから、こういうことになる。また、たとえば、そのようなことをした、その同じ三十一年度予算の他の面ではどうなっているか。スイスのエリコン社から三億六千二百万円で誘導弾兵器を買いたいという防衛庁の予算要求は、あっさり、あなたは認めておる。しかも、誘導弾の弾丸は、一発一千万円もするものを十発、何の文句もつけずに、それを予算編成では認めておるではないか。  戦争準備のために、国民の血税を惜しげもなく使い、民生安定のためには、わずかの費用さえも出さないというやり方は、国民に対する公約無視というよりも、世間の実情を知らない、全く良識を欠いているといわなければなりません。(拍手)予算編成に当った大蔵大臣は、独占資本とアメリカの要請に基く再軍備のためには事理をわきまえぬ走狗となって、国民のためにあたたかい血の一滴をも持っていない冷血人間になり下っているのであります。(拍手国民に対する公約に忠実で、国民の生活を守るためにあたたかい血を取り戻さない限り、国務大臣として一萬田氏に席を占めさせておくことは、国民の平和と幸福を求めるために著しく障害を来たすものであると断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)一萬田国務大臣不信任する提案に賛成する一つ理由であります。  次に、一萬田氏を不信任するその提案に賛成する理由は、不信任案の説明者も言っておるように、国有財産管理の乱脈がはなはだしく、単に国有財産の管理に関してのみならず、国の予算の支出、運用についても、大蔵大臣は、国民の公金を預かる者として、慎重さと忠実さ、まじめさを欠いているといわなければなりません。  たとえば、防衛庁関係予算が乱費されておるということは早くから指摘されておるところであります。さきには、防衛庁の物品購入に関する不正事件で、六人の将校、三十数名の関係者までが処断された事件がありましたが、今度はまた、米軍からの中古エンジンを払い下げ、それをまた買い取るというのに、七万二千円で払い下げたものを千二百五十万円で、同じ国家が払い下げ、買い上げをするというような、こういう事実を出しておる。防衛庁が買い上げたというこの事実を暴露されておるにもかかわらず、一萬田大蔵大臣は、さきに厚生省が要求した養護児童の給食費の値上げ額十円三十六銭を徹底的にたたいて、四円六十二銭に査定した。その一億円をしぼり出したということと、この中古エンジンの買い上げということとを、われわれが比較したときに、一萬田大蔵大臣は全く国民の膏血をしぼった税金の使い方を知らないのであります。(拍手国民は、こういうような税金の使い方を嘆き悲しんでおります。町には失業者がうず高く重なり、職を求めて青少年はもとより、その両親が血まなこになっているときに、中小企業者は一万円か二万円の手形でさえも不渡りを出して苦しんでいるときに、一萬田大蔵大臣が、国民の血税をこのように使い分けするということは、言語道断と申すべきであって、許し得ざる背信行為であるといわなければなりません。(拍手)  日ごろ財政金融の第一人者をもって任じておられる一萬田氏が、このようなめちゃくちゃな予算を素通りさせるほど、もうろくしておるとは思えないし、また、予算を見る目が節穴であろうとも、われわれは思わない。にもかかわらず、このようなめちゃめちゃな予算を一萬田氏がチェックしなかった、できなかったということは、ふに落ちないのであります。特別な役得でもあったのではないかという疑いを国民が持ち、われわれも持つのは無理でありましょうか。一萬田大蔵大臣は、このことだけでも責任をとるべきだと、われわれは信ずるのであります。(拍手)  また、あなたのひざ元では、底知れぬ泥沼だと新聞から書き立てられた、印刷局の井上局長にからまる国有財産管理の不正汚職事件が明るみに出ておる。さきに春日氏が述べた通り、今さらここで繰り返すことはいたしませんが、大蔵大臣のその職責上の責務からいっても、これらのことは徹底的に究明されなければならないことでありまして、あなたの監督管下にある税務官吏が、わずか数千円、一万円、二万円の滞納でもきびしく取り立てて、その差し押えを受ける国民は、全く苦しみ抜いておるのであります。今、夜逃げをしたり、あるいは一家心中をするというような多くの問題は、すべて税金にその端を発しておるのであります。そのような国民の苦痛、中小企業者、小市民は、何よりも先に、そのように税金に苦しめられておるときに、そのためにあらゆる努力をしているときに、税金をむだ使いさせるどころか、全く湯水のように使う予算、引き続く汚職の発展を、予算管理の立場にあるあなたは、どういうふうに見ておられるか。もし一萬田大蔵大臣にして政治的な良識があるならば、その監督の不行き届き、職務上の怠慢を、みずから進んで国民の前に恥じ、大臣の席から身を引いてこそ、真にあなたは政治家と言、えるのであります。(拍手)一萬田氏が、これらのことに関して何らの責任をも感じていないことだけでも、その罪万死に値するものがあるとわれわれは見るのであります。(拍手)  さらに、あなたの予算編成の基本的態度は、アメリカの利益のために、日本国民の利益、中小企業者や農民、労働者を常に犠牲にしているということを指摘しなければなりません。本年度財政投融資計画によると、日本生産性本部に対して十億円を融資することになっておるのであります。しかし、同本部に対する昨年度の融資分である一億五千万円は、まだこれは実行されていないのであります。その原因は、融資に対する返済計画が立たないからであります。何回も生産性本部からは返済計画案が出されておるのであるけれども、なかなかそれが承認されていないのも事実であります。ところが、そういう事情があるにもかかわらず、大蔵大臣は、昨年の七倍にも当る十億円を本年度において同本部に割り当て、これを実行しようとしておるのであります。余剰農産物特別会計から四分の利子で借り入れるこの金を、商工中金に六分五厘で貸し付ける。生産性本部では、そこで二千五百万円の利息のかせぎをするのであります。中小企業者に、この四分の利子で、なぜ直接貸せないのか。今、中小企業者は困り抜いておる。そのときに、この安い利子の恩恵を中小企業に与えようとするあたたかい気持は、あなたにはないのであるか。それが一萬田大蔵大臣のほんとうの本性なのであるか。あなたは、アメリカの農民に奉仕して受け入れるこの余剰農産物が、日本の農民にどんな苦しみを与えているかということは、御存じのはずであります。そのために、一切のものは、たとえば、たばこのごときは、本年は作付反別を減らすというような状態になっておる。専売局の中には二年分、三年分のたばこが梱包のまま残されておる。アメリカから来た梱包がそのまま残されておるのです。そうして本年度のたばこの作付は、そのために削減されようとしております。そういうような余剰農産物を入れて、日本の農民を苦しめているどころか、アメリカのひもがついている生産性本部への融資、そしてまた、それから二千五百万円という利子かせぎをさせて、それを中小企業に出すというようなことは、全くもって政治常識としては理解のできないところであります。われわれは、中小企業者の今日のほんとうの苦しみを、もしあなたが知っておる、鳩山内閣が知っておるというならば、こんなむちゃなことをするはずはないと思います。  今や、中小企業者は、日の当る産業が非常に好況に恵まれておるときに、あちらでもこちらでも、ほんのわずかばかりの手形でも不渡りにしなければならないような苦境に追い込まれておるのであります。あなたは、全く大資本に奉仕し、中小企業者や農民、労働者については全然一顧だにしていないということを、この事実が示しております。(拍手)そのあなたに私は質問した。あなたはだれのためにそういうような政治をするんだと聞いた。そうしたら、あなたは、巧妙に、私は人類のために政治をすると言った。あなたの人類というのはだれのことですか。私どもは、もちろん、あなたが人類のために政治をしてくれることを望んでおります。けれども、あなたにお願いしたいことは、日本国民は、今日、この日本国民のために政治をしてくれることを願っておるのであります。(拍手)特に中小企業者や労働者、農民のために、あなたのほんとうの政治力を期待しておるのであります。ところが、あなたの人類のためにというのは、何のことはない、アメリカの農民や、あるいはまた、日本の独占資本や、アメリカの再軍備、戦時体制強調者のために、あなたが協力するということよりほかにないのであります。私たちは、そういうような言葉のあやにごまかされてはいられないのであります。  思うに、あなたは、日銀から政界へ出て、この数年の間に、政治家の口車の上手だということだけを習ったようです。それは間違いです。そんなことではなくして、言葉の技術を覚えるのではなくして、人民をどのようにして救うか、日本の農民や中小企業者、あるいは労働者に、どのようにしたらよい政治ができるかということを勉強しなければなりません。私たちは、そういうような立場において、ほんとうに国民のことを考えてくれない大蔵大臣は一日も早くこの政府から去るべきであると考えます。(拍手)われわれはそのような立場からも、あなたが不信任され、その席を退かれることを望むのであります。  公金の使途に対するまじめな管理が国民のために行われていないということは、それだけではないのです。米軍に毎年交付している分担金についても、行政協定によって使用報告を受け、これを審査できることになっているのにもかかわらず、まじめに、これらのことを、あなたはやっていないのであります。また、日本側分担金に見合うところのドル勘定についても、その監査、調査を全く放置しているのであります。周知のように、行政協定は、駐留軍経費については日米折半をきめているのであります。しかし、こういうふうに監査、調査を怠り、放置している事情のもとでは、果して折半されているかどうかわからないのであります。現に、われわれの承知しているところでは、米軍のドル勘定支出は、極東軍一般用や、外国向け特需など、いろいろになされているというのであつて、これについては昭和二十八年に一回だけ米側から報告があっただけである。その後は全くそういう報告を受けた事実が見受けられないのであります。これは全く職務怠慢であって、国民に対して奉仕する誠意を欠くものといわなければなりません。  防衛庁費の問題にしても、生産性本部の問題についても、分担金問題についても、いずれもアメリカに関していることに注目する必要があります。すなわち、現内閣、特に一萬田大蔵大臣の、わが国の利益よりも日米関係の方が大切だとする非国民的な性格が現われている点を特に指摘しなければなりません。(拍手)生産性本部の融資の原資は、余剰農産物の円代金からの借入金であります。政府が、日本農業の圧迫を顧みず、またアジアの食糧輸出国の動きに考慮も払おうとしないで、余剰農産物受け入れ政策を続けるのはアメリカに対する気がねであり、日米関係をわが国の利益よりも先に考えていることは、しばしば指摘されている通りであります。一萬田大蔵大臣は、財政投資の原資難をこれによって解決するというのであるけれども、昨年後半以来、国内の金融は緩和しており、昨年度の民間資金肩がわりにしても十分実行されているのみならず、外貨も十五億ドルもあるのであるから、現在のこういう実情のもとでは、もはや外国から借金をする必要もなくなっているにもかかわらず、依然としてこの政策を続けているのであります。  また、東南アジア開発についても、一萬田大蔵大臣は、ジョンストン氏の来日に際して、アメリカ援助を当てにした東南アジア開発会社という一萬田構想をもってこれに当っておりました。しかし、アメリカの方は、日本のそんなから頼みを問題にはしていないことが、その後のダレス氏の来日や、ロバートソン国務次官補によって、最近明らかにされたのであります。ジョンストン構想などというものは、はったりであったのであります。  一萬田大蔵大臣は、国費の支出運用について、まじめさと慎重さを欠いておる。部下の監督、管理の責を果さない。国民に対する忠実さを欠き、かつ、国の利益よりも日米関係の現状維持を大切にして、一向に反省しないのであります。(拍手)これは国民のために大いなる不幸であります。われわれは、情においては忍び得ないものがありますけれども、祖国と国民の幸福のために、一萬田大蔵大臣不信任せざるを得ないのであります。  最近、金融の緩和に基いて、買いオペの問題が、政府短資の操作、コール操作等によっていろいろとその金融政策の場を変えてこようとしておる。最近の金融制度調査会法案をめぐって出ている一萬田大蔵大臣の構想の中に、われわれは将来の日本の財政の健全化のために憂えなければならぬ点が多々あります。あなたは健全財政を盛んに誇称しておりますけれども、この金融制度調査会法案の中に含まれる支払い準備制度そのものは、さきに春日議員や石村議員からも主張されているように、すでにあなたがその道を開いている公債制度への飛び石手段である。これは、再軍備政策に基いて、今日の財政資金難、原資難に対する、いわゆる公債制度への腰だめ的な制度として、あなたが構想を持っていることだと、われわれは断ずるのであります。私たちは、今日のこの時期に、あなたが一面には健全財政政策をとり、一面にはすでに公債政策を用意するというような、この二重政策を持っているその政策に対して、基本的に反対せざるを得ないのであります。(拍手)  われわれは、いろいろな以上の理由に基いて、今日一萬田大蔵大臣が一日も早く台閣よりその席を去ることが国民の利益のためになると考えます。私たちは、今のこの時期に、われわれの決議案の採決を待たずにと言った提案者の意をそのまま、あなたはよくくみ取って、今日この場でその席を去るべきである。私たちは、本院の各位が、国民に対する誠意ある良識に基いて、ただいま提案されておりまする一萬田大蔵大臣不信任案に賛成されるように切望するものであります。  われわれは、以上の理由によって、本不信任案に賛成の意見を申し述べるものであります。(拍手
  41. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  42. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  43. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数三百六十四   可とする者(白票)  百三十七     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百二十七     〔拍手
  44. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、大蔵大臣萬田尚登不信任決議案は否決されました。(拍手)  淺沼稻次郎君外四名提出大蔵大臣萬田尚登不信任決議案を可とする議員の氏名    阿部 五郎君  青野 武一君    赤路 友藏君  赤松  勇君   茜ケ久保重光君  淺沼稻次郎君    飛鳥田一雄君  有馬 輝武君    淡谷 悠藏君  井岡 大治君    井手 以誠君  井上 良二君    井堀 繁雄君  伊瀬幸太郎君    伊藤卯四郎君  伊藤 好道君    猪俣 浩三君  池田 禎治君    石橋 政嗣君  石村 英雄君    石山 權作君  稲富 稜人君    稻村 隆一君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    小川 豊明君  大西 正道君    大矢 省三君  岡本 隆一君    加賀田 進君  加藤 清二君    春日 一幸君  片島  港君    片山  哲君  勝間田清一君    上林與市郎君  神近 市子君    神田 大作君  川俣 清音君    川村 継義君  河上丈太郎君    河野  正君  木原津與志君    菊地養之輔君  北山 愛郎君    久保田鶴松君  栗原 俊夫君    小平  忠君  小牧 次生君    小松  幹君  五島 虎雄君    河野  密君  佐々木更三君    佐竹 新市君  佐竹 晴記君    佐藤觀次郎君  櫻井 奎夫君    志村 茂治君  島上善五郎君    下川儀太郎君  下平 正一君    杉山元治郎君  鈴木茂三郎君    鈴木 義男君  田中幾三郎君    田中織之進君  田中 武夫君    田中 利勝君  田中 稔男君    田原 春次君  多賀谷真稔君    高津 正道君  滝井 義高君    竹谷源太郎君  楯 兼次郎君    辻原 弘市君  戸叶 里子君    堂森 芳夫君  中井徳次郎君    中居英太郎君  中崎  敏君    中村 高一君  中村 時雄君    中村 英男君  永井勝次郎君    成田 知巳君  西村 榮一君    西村 彰一君  西村 力弥君    野原  覺君  芳賀  貢君    長谷川 保君  原   茂君    日野 吉夫君  平岡忠次郎君    平田 ヒデ君  福田 昌子君    古屋 貞雄君  帆足  計君    穗積 七郎君  細迫 兼光君    細田 綱吉君  前田榮之助君    正木  清君  松井 政吉君    松尾トシ子君  松平 忠久君    松原喜之次君  松前 重義君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  三輪 壽壯君    武藤運十郎君  森 三樹二君    森島 守人君  森本  靖君    八百板 正君  八木 一男君    矢尾喜三郎君  柳田 秀一君    山口シヅエ君  山口丈太郎君    山崎 始男君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    山本 幸一君  横錢 重吉君    横路 節雄君  横山 利秋君    吉田 賢一君  和田 博雄君    渡辺 惣蔵君  石野 久男君    志賀 義雄君  否とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  青木  正君    赤城 宗徳君  赤澤 正道君    秋田 大助君  足立 篤郎君    芦田  均君  有田 喜一君    有馬 英治君  安藤  覺君    五十嵐吉藏君  井出一太郎君    伊東 岩男君  伊藤 郷一君    生田 宏一君  池田 清志君    池田 勇人君  池田正之輔君    石井光次郎君  石坂  繁君    石田 博英君  石橋 湛山君    稻葉  修君  今井  耕君    今松 治郎君  宇都宮徳馬君    植木庚子郎君  植原悦二郎君    植村 武一君  臼井 莊一君    内田 常雄君  内海 安吉君    江崎 真澄君  遠藤 三郎君    小笠 公韶君 小笠原三九郎君    小川 半次君  小澤佐重喜君    大麻 唯男君  大石 武一君   大久保留次郎君  大倉 三郎君    大高  康君  大坪 保雄君    大野 伴睦君  大橋 武夫君    大橋 忠一君  大平 正芳君    大村 清一君  大森 玉木君    岡崎 英城君  荻野 豊平君    加藤 精三君  加藤常太郎君    加藤鐐五郎君  上林山榮吉君    神田  博君  亀山 孝一君    唐澤 俊樹君  川崎末五郎君    川崎 秀二君  川島正次郎君    川野 芳滿君  川村善八郎君    菅  太郎君  菅野和太郎君    菊池 義郎君  岸  信介君    北澤 直吉君  北村徳太郎君    吉川 久衛君  清瀬 一郎君    久野 忠治君  草野一郎平君    楠美 省吾君  熊谷 憲一君    倉石 忠雄君  黒金 泰美君    小泉 純也君  小金 義照君    小島 徹三君  小平 久雄君    小林  郁君  小林かなえ君    河野 金昇君  河本 敏夫君    高村 坂彦君  纐纈 彌三君    佐々木秀世君  齋藤 憲三君    坂田 道太君  櫻内 義雄君    笹本 一雄君  笹山茂太郎君    椎熊 三郎君  椎名悦三郎君    椎名  隆君  重政 誠之君    重光  葵君  島村 一郎君    首藤 新八君  正力松太郎君    白浜 仁吉君  周東 英雄君    須磨彌吉郎君  杉浦 武雄君    助川 良平君  鈴木周次郎君    薄田 美朝君  砂田 重政君    關谷 勝利君  園田  直君    田口長治郎君  田中伊三次君    田中 角榮君  田中 久雄君    田中 正巳君  田村  元君    高岡 大輔君  高木 松吉君    高碕達之助君  高瀬  傳君    高橋 禎一君  高橋  等君    竹内 俊吉君  竹尾  弌君    竹山祐太郎君  千葉 三郎君    中馬 辰猪君  塚原 俊郎君    辻  政信君  渡海元三郎君    徳田與吉郎君  床次 徳二君    内藤 友明君  中嶋 太郎君    中曽根康弘君  中村 梅吉君    中村三之丞君  中村庸一郎君    中山 榮一君  仲川房次郎君    永山 忠則君  灘尾 弘吉君    夏堀源三郎君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽 兵助君    野田 卯一君  野田 武夫君    馬場 元治君 橋本登美三郎君    長谷川四郎君  八田 貞義君    鳩山 一郎君  花村 四郎君    濱地 文平君  濱野 清吾君    早川  崇君  林  讓治君    林  唯義君  林   博君    原  捨思君  平塚常次郎君    平野 三郎君  廣瀬 正雄君    福井 順一君  福井 盛太君    福田 赳夫君  福田 篤泰君    福永 健司君  藤本 捨助君    淵上房太郎君  古井 喜實君    古島 義英君  保利  茂君    保科善四郎君  坊  秀男君    星島 二郎君  堀川 恭平君    本名  武君  眞崎 勝次君    眞鍋 儀十君  前尾繁三郎君    前田房之助君  前田 正男君    町村 金五君  松浦 東介君    松岡 松平君  松澤 雄藏君    松田竹千代君  松永  東君    松野 頼三君  松村 謙三君    松本 瀧藏君  松山 義雄君    三木 武夫君  三田村武夫君    水田三喜男君  南  好雄君    宮澤 胤勇君  村上  勇君    村松 久義君  粟山  博君    森   清君  森下 國雄君    森山 欽司君 山口喜久一郎君    山口 好一君  山崎  巖君    山下 春江君  山手 滿男君    山中 貞則君  山村新治郎君    山本 勝市君  山本 粂吉君    山本 正一君  山本 友一君    横井 太郎君  横川 重次君    吉田 重延君  米田 吉盛君  早稻田柳右エ門君  渡邊 良夫君    亘  四郎君      ————◇—————
  45. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、教科書法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。文教委員長佐藤觀次郎君。     —————————————     〔佐藤觀次郎君登壇〕
  46. 佐藤觀次郎

    ○佐藤觀次郎君 ただいま議題となりました、内閣提出にかかる教科書法案につきまして、文教委員会における審議の状況を報告申し上げます。  御承知のように、わが国における教科書の制度はいろいろと長い変遷を経て今日に至っているのでありまして、現行の教科書制度は戦後、昭和二十三年に制定されたものであります。  申し上げるまでもなく、現行の教科書制度は検定主義が原則となっているのでございます。終戦後の教育改革の一環として、従来の国定制度を廃止して、昭和二十四年度使用教科書からは全面的に民間の著作編集を基礎とする検定制度を採用したのでございますが、検定の手続の詳細は、教科用図書検定調査審議会令、教科用図書検定規則のごとき政令、文部省令によって規定されており、発行、供給については教科書の発行に関する臨時措置法なる法律によって定められ、さらに、教科書の採択はまた別の法律たる教育委員会法に規定せられているのであります。何分にも戦後早急の間に実施されたものでございますから、多少の問題点が含まれており、近来、この制度の改正をめぐって、いろいろと世論のあることも、またやむを得ないところであります。ことに、昨年の六月、第二十二国会において、教科書の売り込み競争の激化に伴う多くのスキャンダルが本院の行政監察特別委員会で問題とせられ、教科書関係事件があり、文部行政上の責任を追及されたことを契機として、教科書制度の再検討は当面の重要な問題となってきたのであります。これに加えて、教科書の価格が高過ぎる、教科書の種類が多過ぎる、学校によって教科書が違うから転校の場合などに困る、兄の教科書を弟が使えないなどの批判が行われ、現制度の改革に対する意見も出てきたのであります。  しかし、政府、与党の改正意図を最も強く直接に刺激したものは、何といっても教科書内容の偏向という問題であります。すなわち、かつての日本民主党は、この問題を重視して、党内に教科書問題特別委員会を設けてその調査を行い、その結果、多くの教科書は左翼的偏向を持っておるということを発表し、そのような教科書を検定に合格させないようにするため、検定機構を整備すべきであると主張したのであります。  このような社会情勢に直面して、時の文部大臣は、その諮問機関である中央教育審議会に対し、教科書の検定、採択、発行、供給の制度並びに教科書の価格を適正化する方途をいかにすべきかと諮問したのであります。すなわち、この中央教育審議会に対する諮問事項及びまたそれに対する答申について少しく申し述べます。すなわち、   現行の教科書制度は、戦後の教育改革の一環として実施され、初等中等教育の発展に重要な役割を果してきたのであるが、今日までの実績に徴するに種々再検討を要する点も認められ、又、教科書の内容、採択供給の方法、父兄の経済的負担等の問題に関し各方面からの批判が加えられるに至った。   この際、学校教育における教科書の重要性にかんがみ、教科書制度全般にわたり検討を加え、早急にその改善措置を講ずる必要があると考える。 との理由を付して、  一、検定について    教科書の検定は、非公開の調査員による調査の結果を教科用図書検定調査審議会において審議し、その答申に基いて文部大臣が行うこととなっているが、教科書の内容を改善向上するため、現行の調査検定の機構、その方法等について検討を要する点があると考える。  二、採択について    教科書の採択は、公立の学校については所管の教育委員会、国立又は私立の学校については校長が行い、使用教科書の選定のために展示会が開催されているが、その実施の結果を見るに、使用教科書の種類があまりにも増加し、そのため全体としてもまた父兄負担においても、経済的むだが生ずるとの批判を生み、又、業者の売込競争の激甚化等のため、公正な採択を阻害して、ややもすれば好ましくない行為を誘致するとの問題もあり、あるいは現行の展示会制度についても欠陥が指摘される等、採択制度に関し、その改善のため検討を要する点があると考える。  三、発行供給制度について    現状においては教科書は九十数社の発行業者がその発行にあたり、各種の供給販売機構を通じて需要者たる児童生徒に供給されることになっているが、完全供給を一層確実にし、又、不公正な取引方法の絶無を期するため、教科書の発行、供給制度について検討を要するものと考える。  四、その他    父兄負担の軽減をはかるための教科書価格適正化の方途等についても、なお検討すべき問題が存するものと考える。  以上申し上げましたことが、文部大臣の諮問されたあらましでございます。  この文部大臣の諮問に対して、中教審が次のような答申をしておるのであります。すなわち、   教科書は単なる一般の教材と異なり教育上に占める地位はきわめて重要であり、児童、生徒に与える影響は多大であるからその内容は、中正かつ適切でなければならない。他方経済面においては、家庭の負担を軽減することについてじゅうぶんな配慮がなされなければならない。   わが国現行の教科書制度は、戦後教育改革の一特色をなすものであるから現行制度の基本的性格は維持されるべきものと考えられる。しかし、教科書に関する現行法規は、戦後の特殊事情の下において早急の間に定められた臨時的措置に基くものが多く、法的に不備な点がある。さらにまた教科書の内容、価格ならびに採択の適正を確保し、発行供給の円滑、公正をはかる等の実施面において改善の必要が認められる。   よって下記の諸点についてすみやかに適切な処置を講ぜられたい。  一、検定について   1 検定は、現行どおり国(文部大臣)において行うものとし、都道府県においてはこれを行わないものとすること。   2 文部大臣の検定権の行使を適正ならしめるため、現行の審議会を拡充強化し、その委員は学識経験者、教職員その他のうちから中正かつ適切な方法により選任するものとすること。   3 審議会には教職員、専門家その他のうちから適正な方法(たとえば、教職員にあっては教育委員会に校長の意見を聞いて推薦させる等)により、退任した非常勤の調査員を置き、第一次調査に当らせるものとするが、調査審議の責任は審議会自体が負うようにすること。     この場合、非常勤調査員の職、氏名を公開すること。また審議会の拡充強化に資するため非常勤の調査員のほか別途、常勤専任の調査職員を相当数置くこと。   4 審議会は編著者から申し出があったときその他必要があると認めるとき、編著者の意見を聞くものとすること。   5 検定基準を整備すること。   6 検定は常時行うものとするが、不合格図書の同一年度における再申請は、これを認めないものとすること。   7 検定には一定の有効期間を定めること。  二、採択について   1 公立の小、中学校については、採択に関連する校長の権限を明確にするとともにたとえば郡市単位等一定の地域においてできるだけ少い種類の教科書を使用するようにすること。このため、たとえば、次のような採択方式が考えられる。  (1) 都道府県の教育委員会は、自然的、社会的、教育的諸条件を考慮して、採択地区を設ける。  (2) 採択地区には、採択協議会を設け、校長、教員、都道府県および市町村の教育委員会の委員、職員ならびに学識経験者等で構成する。  (3) 採択協議会は、採択地区内の学校の校長の申し出を基礎として採択地区内の学校で使用すべき教科書を選定する。  (4) 市町村の教育委員会は、右の選定に基いて、所管の学校において使用すべき教科書を採択する。   2 公立の高等学校については、校長の申し出に基いて所管の教育委員会が採択るものとすること。   3 国立または私立の学校については、一定の手続を経て校長が採択するものとすること。   4 適正な採択と教職員の研究に資するため、教科書の常時研究施設を設けること。   5 採択に関連する不正行為について、厳重な処罰規定を設けて禁止するとともに採択基準を示す等採択の公正と自由を阻害するような第三者の行為を禁止すること。   6 採択面における宣伝活動については、たとえば現行のような駐在員は、これを設けさせないものとし、発行者等の負担において開催する講習会等は、教育委員会の承認を得た場合に限り、行い得るものとする等適切な規制を加えること。   7 採択関係者が編集発行に関与することにより採択に不当な影響を及ぼすことがないように措置すること。  三、発行、供給について   1 発行者について欠格条項を設け、これに関連して登録制度を設けること。   2 同一発行者の発行する同一種目の教科書の種類ならびに教科書の改訂については、一定の抑制の方途を講ずること。   3 特約供給所は、毎年、関係発行者および大取次店が協議して選定し、取次店は、毎年特約供給所が関係教育委員会の意見を聞いて選定するものとする。この場合において特約供給所および取次店の供給区域が重複しないようにすること。   4 特約供給所および取次店の供給状況が不良または不誠実である場合に是正することができるようにすること。   5 発行者と供給業者は、法令および委託契約に従って共同して供給義務を負うものとし、その義務を履行させるための措置を講ずること。   6 供給事業に採択関係者が関与し、採択に悪影響を及ぼすことのないような措置を講ずること。   7 児童、生徒の転校、被災等の場合に教科書の供給を迅速かつ容易ならしめるための措置を考慮すること。  四、価格について   1 現行の教科書の定価の認可基準を検討し、その引下げを図ること。   2 教科書の用紙、ページ数、色刷りその他について一定の基準を設けること。   3 教科書、教師用指導書等の学校、教職員への献本等に要する経費が教科書価格に算入されないようにするため、これらの献本等を禁止すること。   4 教科書の運賃、郵送料について軽減措置を講ずること。  五、その他   1 教師用指導書についてその内容に教育上不適当な箇所があるときには訂正させることができるような措置を講ずること。   2 夏休み帳、副読本等の使用については届出制とすること。   3 発行、供給、定価等に関する文部大臣の権限の行使の適正を期するため、必要な審議会を文部省に設けること。   4 特殊教育用教科書特に点字教科書の編集発行を促進し、これが入手を容易ならしめるような措置を講ずること。   5 産業教育用の教科書の編集、発行を促進し、その価格の低廉化を図ること。   6 準要保護者の子弟で義務教育をうける児童、生徒に対し、教科書の無償給与の措置をとること。  以上が答申の内容でございます。  かくして、政府は、この中央教育審議会の答申を基礎として、今回の教科書法案提出したとの言葉でございます。すなわち、現行の教科書の発行に関する臨時措置法は、戦後の用紙その他の経済事情の不安定な時期に、発行を迅速確実ならしめるために制定されたものであり、検定、採択等については政令または省令等で各個別に規定しているにすぎないので、教科書の検定、採択、発行、供給等に関し現行制度を整備し、改善の措置を講じようとすると称するのでありまして、その主要点は、一、文部大臣による検定の制捜を維持するとともに、検定の公正かつ迅速を期するため、その機構及び方法を整備改善すること、二、教科書の採択に関する規定を整備して適正な採択方式を確立すること、三、発行及び供給の確実円滑を期するため所要の規定を整備すること、四、教科書価格の適正化をはかること、五、教科書と並んで教育上重要な機能を持っている教師用の指導書について必要な規制を加えること、六、本法の円滑な運営を確保するために、必要な事項について罰則を整備し、また附則においては従前の規定によって検定を与えられた図書の有効期間の特例を定める等、所要の経過措置を規定することなどが、その本旨となっております。  この政府案は、ただいま申し上げましたように、中央教育審議会の答申の線に沿って現行の教科書制度を整備改善したものであるとなし、提出したものでございますが、世論は、必ずしもこり政府の趣旨説明に納得せず、かえってきびしい批判を浴びせたのであります。  その二、三について申し上げますと、東京大学の矢内原学長や京都大学の滝川学長など学界の有志二十余氏か、文教政策の傾向に関する声明の中で、言論、思想の自由の原則を脅かすおそれがあるとして警告し、世人に大きな反響を与えたことであります。この声明に対し、自由民主党は、政府提案である教科書法案は、現行の教科書制度に対する世間の批判にこたえてこれを整備改善しようとするものであって、学者の声明は的がはずれていると反対しておられたのであります。  しかしながら、最も広く問題として指摘されたことは、この政府案は政治的に悪用されるおそれが多分にあるという点であり、かつての日本民主党が「うれうべき教科書の問題」として報告した教科書の内容偏向が物議をかもす対象となってからは、すでに教科書の検定にその影響が現われているといわれ、最近、某有力教授は、教科書出版会社からその執筆を断わられているとさえ伝えられているのであります。弱い立場にある発行業者とすれば、監督官庁の意向を無視することができないのは当然であり、特に、この政府案によって監督官庁である文部省の権限が強められれば強められるだけ、この傾向はさらに助長されるであろうといわれて、非常におそれているのであります。  また、別の批判は、道徳、地理、歴史などの教育について、保守政党の側が自分たちの思うような方向に持っていきたいと考えていることは明白であり、それだけに、政府案に見られるような改正の方向は、思想の国家的統制を意味しているものであり、また教科書の国定化への伏線であって、教育委員会制度の政府案に盛られている中央集権的な傾向と相待って、きわめて危険であると評せられているのであります。  さらに、この政府案は、文部大臣が責任のある検定を行なって、内容がりっぱな教科書を作るという建前ではあるが、検定審議会の委員が中正に任命されるかどうかという点については、そこに何らの保証がない、むしろ政党出身の文部大臣によって政治的に任命される不安を感じているばかりでなく、その結果、一方的な立場から検定されることにでもなれば、明らかにこれは国定と同様であり、また、採択の面においても、この政府案は現場の教員の自主性を阻害するというのであるから、今後の児童、生徒に対する教育は、いわゆる与えられた教科書によって行われることになるという強い非難をされているのであります。  これを要するに、政府案は、占領政策の是正という美名のもとに、戦後ようやく健全に育成されつつある民主主義の精神に基く国民教育に対して、再び国家権力による中央集権的統制を加える危険を包蔵するものであるとして、きびしく指摘されているのであります。  この世論の厳粛な批判にこたえて、衆議院議員辻原弘市君外八名は、教育の画一的な国家統制を排し、地方の実情に応じた自主性のある中正な教育を助長し、かつ、必要な水準を維持向上させ、教育本来の目的が実現されなければならない、特に教科書の検定、採択、発行及び供給に関する現行制度の不備を是正し、教科書が適正に検定され、学校の実情に応じて採択され、かつ確実に発行し供給されるように制度が整備されねばならないという趣旨をもって、この教科書法案提出したのであります。この議員提案の主要点は、一、教科委員会による検定であり、中正かつ適切な検定を保証するため、その機構及び方法を整備していること、二、教科書の採択は学校の校長が教員の意見を聞いて行い、関係規定を整備していること、三、発行及び供給については、確実な供給と発行の自由を保証するため、所要の規定を整備していること、四、この法律は、昭和三十八年三月三十一日限りその効力を失う時限立法であること、教科書の検定、採択、発行及び供給に関して、この法律規定する教科委員会の権限は、その一部を除いて、昭和三十八年四月一日以後都道府県の教育委員会に属させることなどであります。  すでに御承知の通り、本法律案は三月十三日当委員会に付託されたのであります。申し上げるまでもなく、教科書は、単なる一般の教材と異なり、教育上に占める地位はきわめて重要であり、児童及び生徒に与える影響は多大でありますから、本委員会の審議に当りましては、公聴会を開きまして、神奈川大学教授高山岩男君、教科書協会制度専門委員会委員長水谷三郎君、学習院大学講師古川原君、慶応大学助教授山本敏夫君、中央教育審議会委員森戸辰男君から意見を聞き、文教委員の全部が非常な熱意と誠実をもって質問をなし、慎重に審議を重ねたのでございます。  これらの詳細については、もちろん速記録によって御承知を願いたいと存じますが、問題点のおもなるものを申し上げますと、  一、文部大臣の諮問機関である検定審議会は、それを構成する委員の数が、従来は十六名でございましたが、今度は八十名以内となり、審議会に実質的な権限を持たせるものでありますが、この審議会の委員は、全部文部大臣の考え方一つで任命されるものであり、今までの任命の仕方から考えて、必ずしも公正に行われるとは保証しがたく、それゆえに、中央教育審議会では、その答申に当って、委員は中正かつ適切な方法をもって選任することと特に要望しているのであり、単に大臣が任命するという方法は大いに警戒すべきであること。  さらに、この検定審議会の強化と並んで、二、今年度から常勤の調査官四十五名が文部省初等中等教育局に置かれることになり、この調査官は、他の非常勤調査員とともに教科書の下調査をなし、検定審議会のために、いわゆるおぜん立てをするのであります。そうして、この調査官の任命もまた文部大臣の自由となっております。検定を申請したすべての図書が、調査官の審査から始まって文部大臣の合否決定までの間に三つの段階でしぼられることに相なります。政府は、事実の誤まった記載をなくし、思想的偏向のある教科書を追放し、教科書全体の水準を高めると主張しているのでありますが、この主張から見ても、この制度は、時の政府の考え方が教科書の内容に反映されやすい制度であるというべきであります。ましてや、審議会の委員や調査官の任命が党利党略的に行われ、検定の水準にまで政治的な手心が加えられて定められたり、検定の基準に違反するものとして検定の拒否条項を乱用されたり、発行者や供給業者の営業所またはその事務所に法第三十六条の立ち入り検査をときどき行なったり、または教師用の指導書についても納本をさせたり、訂正勧告をしたりする規定発動されては、政府与党に都合のよい教科書でなければ、検定には絶対に合格しないということが起ると案じられること。  第三、教科書の採択については、従来市町村ごとかあるいは学校ごとに選択していたのでありますが、本法律案においては、ある程度地域をまとめて採択した方がよいとして、小、中学校が使用する教科書は、一定の地区ごとにまとめて採択するように規定しているのであります。しかし、これは、都道府県の教育委員会が各採択地区ごとに置かれる選定協議会の議に基いて定めることや、また、その選定協議会を構成する委員の任命については、都道府県の教育委員会が市町村教育委員会の意見を聞いて任命するという仕組みを考えるとき、教科書の採択には教員の意向は全く反映されていないこととなり、はなはだ一方的なこととなって、現場教員の自主性を阻害しているといわれていること、また、教科書の採択地区は、郡市の区域から全県一区へと区域が漸次拡大されていく可能性を持っているために、業者の売り込み競争は従来よりも激化することが予想され、これに伴って不公正行為が増大する危険があること。  四、準要保護児童及び生徒に対しては教科書を無償で給与する措置や、転校児童及び生徒に対して教科書をすみやかに供給するために、教科書の予備本を特約供給所に備えることなどについて、法的措置がとられていないこと。  五、本法律案は、条文の全体を通じて、民編国管主義というか、思想言論を国家統制に持っていこうとする意図が感じられる。これは、昭和二十九年に、自由党の池田勇人君がロバートソンと会談したとき、再軍備のためには現行の日本の教育制度がじゃまになる、おとなはすでに固まっているが、もっぱら子供の教育に中心を置いて再軍備の方向に教育制度を改革すべきであるとの話が出て、日本国民の愛国心の涵養について完全に両者の意見が一致を見たということが伝えられているということからしても、本法律案の底にはこのような国際的背景があるのではないかということ。  六、政府はこの法律案によって教科書価格の低廉化をはかっているといっているが、どのような方法で行うか。また、教師用の指導書について、単に教師の手引きとして価値を持つものにまで届出及び訂正勧告の措置をとることは不必要ではないか。さらにまた、業者の事務所、営業所等への立ち入り検査などは全く行うべきではないこと。  以上の諸点につきまして、各委員は詳細に検討を加えたのでありますが、特に、本法律案は、その精神において国定への前進であり、強力なる民編国管的性格が打ち出されており、その背後には官僚の教科書に対する行政権の強化が隠されているのではないかとの疑念を持って検討されたことが注目されたのであります。  かくて、五月二十一日に至りまして、自由民主党赤城宗徳君から、本法律案に対する質疑を打ち切られたい旨の動議提出せられ、採決の結果、本動議は可決せられたのであります。  次いで、五月二十二日に至り、先般来本法案と併行審議の立場に置かれてありました辻原弘市君外八名の提出にかかる教科書法案の撤回申し出があり、本委員会は全会一致をもって即日これを可決したのであります。  引き続いて辻原弘市君から、本法律案に対して、一、教科書検定審議会が合理的に運営され、その機能が十分に発揮されるならば、法律第七条の検定拒否は不要であるから削除すること、二、教科書の採択は、現場の教員が教育指導計画とにらみ合せてみずから選ぶことが最善であるとの見地から、採択は採択地区において都道府県の教育委員会が行うものとせず、各学校ごとに校長が教員の全員の意見を聞いて行うものとすること、三、教育は教員の良心と識見に基いて行われるものであるから、単なる教師の手引きとしての価値しか持っていない指導書に対して不当な支配が加えられるおそれのある法案第五十六条の教師用の指導書に関する届出義務、文部大臣の勧告の規定を削除すること等について、修正案が提出されたのであります。これに対して、自由民主党の高村坂彦君、加藤精三君、社会党の高津正道君、河野正君から、それぞれ非常に熱心に質疑が行われたのであります。  次いで、質疑を終了し、討論に入り、自由民主党を代表して加藤精三君から、本法律案に対しては賛成、修正案に対しては反対の討論があり、日本社会党を代表して小松幹君から、本法律案に対しては反対、修正案及び修正部分を除く原案に対しては賛成の討論が行われ、かくて採決の結果、起立多数をもって本法律案は原案の通り可決され、修正案は否決せられたのでございます。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  47. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本案に対しては、辻原弘市君外九名から、成規により修正案が提出されております。この際、修正案の趣旨弁明を許します。辻原弘市君。     〔「定足数不足だ」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  48. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 辻原弘市君。     〔「定足数不足だ」「総理大臣もいないよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  49. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 辻原弘市君。     〔辻原弘市君登壇〕
  50. 辻原弘市

    ○辻原弘市君 ただいま上程になりました教科書法案に対する修正案につきまして、その提案の趣旨を簡単に御説明申し上げます。  御承知のように、昨年の総選挙を契機といたしまして、保守党の中から教科書制度の改革がぼつぼつ問題とされるに至りまして、これが昨年の秋になりますると、旧民主党から「うれうべき教科書」のパンフレットとなって打ち出されてきたのであります。そして、教科書の値段が高い、変更したときに困る、兄弟が代々譲り合うことができないというような口実のもとに、教科書制度を改革するような方向に常に宣伝がいたされて参ったのであります。しかしながら、果して政府、与党の教科書制度改革の意図は、かような児童や父兄の不便を取り除こうとするところにあったのでありましょうか。何ゆえに、政府、与党が、ほうはいたる世論の反対を浴びながら、なおもこの教科書法案を固執するのでありましょうや。それは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律案とともに、一貫した意図が秘められているからにほかならないのであります。(拍手)すなわち、教科書法案は、先に申しましたように、児童生徒や父兄の不便を取り除くなどという、なまやさしい意図のもとに提案されたものではないのでありまして、わが国の教育を一挙にして自由民主党の欲する教育の方向にねじ向けようとする政策の氷山の一角にすぎないのであります。(拍手)  しからば、政府、与党は、教科書法案によって何を企図しようとしているのでありましょうか。すでに旧聞に属するところではありまするが、一昨年いわゆる教育二法律が制定されまして以来、その意図は一貫していると考えられるのでありまして、かのマキァヴェリのごとく、手段のいかんを問わず、しゃにむに教育を統制し、学者の筆を曲げ、教師の口を封じ、次の世代をになう小国民の目をおおい、ついには憲法改悪、再軍備、徴兵制度の実現を期するために国民を引きずっていこうとするのが、その真意であると判断せられるのであります。(拍手)このことは、すでに公然の秘密となっておりまする、かの池田・ロバートソン会談の内容からも明らかに読み取ることができるのでありまして、日本国民防衛に対する責任感を増大させるような日本の空気を助長するという目的のために、日本政府は、教育及び広報によって、日本に愛国心と自衛のための自発的精神を醸成する第一の責任を持つことを確認いたしているのであります。そして、このような目的のために、政府、与党は計画的に幾多の伏線を引き、今回ついに教育委員会制度を全面的に改革して、地方自治の精神をも没却して、中央集権的教育行政組織を打ち立てるだけでは事足りず、政党党派を越えて中正たるべき教科書の内容をも政府の統制のもとに置こうとして、この教科書法案を提案いたして参っておるのでございます。  かかる政府、与党の真意は、すでに多くの学者や世論によって余すところなく看破せられているのでありまして、さきには矢内原東大総長を初めとする十人の大学学長の反対声明が発せられ、引き続いて関西十三大学の学長、総長から再び声明が発せられ、また、大学教授などを含め六百十七名の方々の声明もこれまた発せられていることは、わが国におきまして、まことに異例に属することでありまして、各位もまだ記憶に新たなところであろうと存ずるのであります。さらに、新聞雑誌などの報道機関も、こぞって、これら政府提出法案の意図に反対しているのでありまして、かような識者と世論の反対を押し切ってまで児童生徒や父兄の便宜をはかろうとする自由民主党であるとは、今日だれも思ってはいないのでありまして、その意図するところが那辺にあるかは、もはや疑う余地のないところだと申さなければなりません。(拍手)  わが党は、かような意図に基いて提出されました政府案に対しては断固として戦う決意を固め、政府案と対抗して、初等教育及び中等教育の教育内容等に関する法律案及び教科書法案提出いたしたのでありまして、これらのわが党の法律案におきましては、まず第一に、中央に教科委員会という文部省の外局を置きまして小、中、高等学校の教育内容についての基準は、この合議制の委員会において中央教育課程審議会の議を経て定めるものとし、これによって教育内容が一党一派に偏することなく定められることを予定し、第二に、教科書の検定もこの教科委員会につかさどらせることとして、極力教育が政治に支配されることを排除しようといたしたものてございます。(拍手)およそ、教科書というものは、教員が児童生徒を教育するに際して自由に駆使すべき材料なのでありまして、いかなる教科書を使用するかは、本来教育をなす教師自身によって決定されなければならないものでございます。従って、この点も、わが党案におきましては、校長が全教員の意見を聞いて採択することといたしておるのでございます。  かくして、わが党は、政府案に対して、対抗案をもって、まっこうから臨んだのでありますが、いかんせん、多数の前には、いかなる正論もいれられるところとならず、このままに放置せんか、ついにわれわれの幾多の努力もむなしく、国民の期待も空に消え失せて、政府案は識者と世論の反対の中を大手を振って通過するのを手をこまぬいて見守るほかはないという事態に立ち至ったのであります。しかしながら、かような悪名高き法律案が少しの改善もなされずに通過することは、公党としてまことに忍びざるものがありますので、ここに、ついにわが党案を撤回いたしまして、与党諸君の良識に期待し、修正案の形で提出する決意をいたしたのでございます。しかしながら、与党は、事ここに至りましてもわれわれの意のあるところを了とせ十、去る二十一日に質疑を打ち切るや、修正案の内容についてお互いが検討するいとまも与えず、直ちに討論、採決を迫って参ったのであります。従いまして、わが党といたしましては、この修正案に盛り込むべき幾多の点を残しつつも、涙をのんで、急遽最小限度の修正案を取りまとめて提出せざるを得ない事態に立ち至ったのでありまして、この修正案のほかにも、たとえば、第三十二条の第二項や、第三十五条の第二項を削除するとか、検定の合格、不合格を決定するまでの期間を法定するとか、あるいはまた、教科書検定審議会の委員に任期を設けるとかいう、いろいろな修正を意図しておったのでございます。しかし、先刻も申し上げましたような事情で、これから御説明申し上げる三つの点に最終的にしぼりまして、ここに修正案として提示いたしたようなわけでございます。  以下、順を追いまして修正案の要点を概略御説明申し上げてみたいと存じますが、その骨格となりますところは、第一に、教科書の検定をせずに門前払いをするという第七条の検定拒否の規定を削除し、第二に、政府案がとっております採択地区を設けて都道府県の教育委員会が教科書の採択をなすという制度を改めまして、教科書の採択は各学校ごとに教員の全員の意見を聞いて学校長が行うこととし、第三に、教師用の指導書について届出義務を課し、場合によっては文部大臣がその内容に容喙することを規定した第五十六条の規定を削除しようとするものであります。  以下、順次その趣旨を申し上げたいと思います。  まず、第一点の第七条削除の点でありまするが、この条文は、従来、言いかえますれば、現行の検定制度の中には全くなかった制度を新しく設けたものでありまして、教科書の著者や編者が心血を注いで作り上げたにもかかわらず、それが民主的な機関として設置せられておりますところの検定審議会の議に至らないまでに、文部省の官僚や文部大臣の独断によって検定が拒否せられ、すなわち門前払いを食わせられるという、そういう結果が起る、おそるべき規定なのでありまして、全くかような規定は有害無用の規定と申さなければなりません。(拍手)  その七条の規定の中にあります、たとえば「誤った事実の記載が多い」というような場合、その場合におきましては、この検定拒否の条項を発動いたしまして、事前に検定を拒否するというのでありますが、一体何が誤まった事実であるのか。特に歴史的な事実を記載いたしております場合に、その歴史的事実が正しいか正しくないかということは、一つ歴史的事象、事実をとらまえましても、学説は種々雑多でございます。その場合に、一体客観点にその事実をだれが正しいと判断するのでありましょう。客観的に判断するのではなくして、文部省が、官僚が、文部大臣がこれを主観的に決定をして、そのことが理由となって検定が拒否せられるというのでありますから、明らかにこれは思想統制の道具に活用され、教科書のおそるべき国家統制という問題がここから端を発して参るのであります。(拍手)さらには、卑近な一例をあげますと、東京では新学期は桜のことから始まるというが、これが、北海道では、それは誤まった事実であるといわれれば、これまたそれまででありまして、こういうような一つの事実について客観的に判断できず、条項を当てはめて主観的に判断されるということは、全く今日の検定制度の本質に相反する問題であると考えるのでございます。  さらに、以上の点は、これはそれぞれ普通の場合においては常識に属する点でありますが、その次の条項に規定をせられておりますところの、「検定の基準に著しく違反」した場合も、同様検定の拒否ができることとなっておりますこの事項は、これは看過できない重大な問題でございます。すなわち、検定基準というのは、これは文部省の手によって作られ、さらにはまた文部省の官僚の手によって作られました指導要領なるものがその尺度となっておるのでございます。従いまして、この文部省が考え、文部大臣あるいは文部官僚が考える検定基準によって、同様教科書の検定というものが審議会に至らないまでに拒否せられるという事態は、これまた、全く教科書の検定というものが、民主的な審議会の手にあらずして、その大半は文部官僚、文部省の手にあると断定しても差しつかえのない規定となっておるのでございます。  第二点は、教科書の採択に関する修正でありまして、第二十条から第二十四条までの採択権者に関する規定を改めまして、さきにわが党から提出をいたしておりました教科書法案がとっておりました採択は、学校の校長が教員の意見を聞いて行うということに改めたのでございます。この採択の制度につきましては、委員会におきましてもいろいろな角度から追及され、かつ批判を加えられた点でありまして、御承知の通り、先日行われました公聴会におきましても、各公述人から最も問題とせられておったのでございます。  この意味におきまして、もとより教科書は教育の主たる材料としての重要性にかんがみ、採択に関する方式をどのようにするかにつきましても、第一に考慮されなければならないのは教育者の価値判断からであります。学校教育上、教科書をどのようなものとして取り扱うべきかにつきましては、直接学習指導の任に当る教師が用いるものとして、自己の教育の方針に最も適合したものが選ばれ、その自由と創意を余すところなく発揮した生きた教育を行うこととするのが、これか近代教育の原則でございます。この意味におきまして、先般行われました公聴会において、特に森戸公述人も述べておられましたように、英米などの先進諸国においてすでにとられている検定の自由ないしは採択の自由ということが、わが日本におきましても将来向うべき方向であることにつきましては、議論の余地のないところであろうかと思うのであります。そこで、政府原案を見ますならば、極端な場合、実に一県一区でただ一種の教科書を採択して、これを教師に押しつけるというのであります。これは明らかに教育の理想に逆行し、近代教育の原則に背馳しているものといわなければなりません。  さらに、第二には、これまた多くの人が指摘しておりますように、新教育委員会法と相結びまして、文部省の権限、支配が非常に濃くなった都道府県教育委員会が採択の権限を握ることとなり、画一的な中央集権的教科書行政へと発展し、さらには教科書の国定化へと結びつけられるのであります。このことは、いかように考えましても否定することのできない事実といわなければなりません。  なお、また、新しい教科書の採択制度と教科書の供給との関係についてでありますが、大きな採択地区が設けられ、かつ一種だけ採択することになれば、発行業者は、いかに学校で用いる神聖なる教科書でありましょうとも、一面、自由企業に基く営利のための行為でありまするから、もうけるためには、あらゆる運動方法を用いて、現在よりも激しい売り込み運動が始まることは、明治三十五年の、あの一世を震駭せしめました金港堂事件における教科書疑獄の例に徴するまでもなく、われわれの予想にかたくないところでございます。これらの傾向に対して、政府案のごとく、その防止策として単なる取締り規定によりましてすべてが防止せられるであろうというようなことは、これは全くわれわれとしては考えも及びつかない点でありまして、いかに政府の考え方が甘いかということを如実に実証している点であろうと考えるのでございます。(拍手)  以上申し上げましたように、採択に関する規定は、教育目的の点からも、また将来国定への足がかりと見られる点からも、さらにはまた供給との関連について見ましても、非常に多くの問題をはらんでいることが今日明白となっておるのであります。  次に、修正の第三点は、教師用の指導書に関する第五十六条の規定を削除することでありますが、この規定は、教師用の指導書を発行した者は、その指導書を文部大臣に提出せよというのでありますが、われわれとしましては、教科書法にこのような規定を入れることは、むしろ百害あって一利なく、教師用の指導書まで文部大臣が不当に干渉支配することにより、教師の自主的な教育を妨げる結果を招来いたすものであると判定せざるを得ないのでありまして、従って、この条項は当然削除してしかるべきものであると考えた次第でございます。(拍手)  その他、法文に載っております部分の修正につきましては、これはただいまの三点の条文を修正いたしました関係から生まれる条文の整理でございます。  以上、きわめて簡単に、わが党提出の修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます、何とぞ、各位の良識をもちまして、この修正案に対しまして御賛同賜わらんことを最後にお願い申し上げまして、私の趣旨の説明を終る次第でございます。(拍手)      ————◇—————
  51. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日は時間の関係上この程度で延会することとし、明二十四日午前零時五分より本会議を開き本日の議事を継続することといたします。  本日はこれにて延会いたします。    午後十一時二十一分延会