○加藤清二君 私は、ただいま上程されておりまする
繊維工業設備臨時措置法案に対して、
日本社会党を代表いたしまして
反対の
討論を申し述べたいと思うものでございます。そこで、まず第一番に、私は、この
法案に
賛成をされる方にも、
反対をされる方にも、ぜひ見ていただきたいものがあるのでございます。それはほかでもございませんが、ここに持って参りましたこのものは、本
法案に対する
反対の陳情書のほんの一部分でございます。(
拍手)これは、全国津々浦々のこの業界に
関係する方々が、心からなる思いを込めて書かれたものでございまして、その一部分をここへ取り出したのでございます。この事実をもってししも、本
法案がいかに欠くるところが多いか、いかに
反対者が多いかということの、はっきりとした証左でございます。(
拍手)声なき声を聞いて仕事をするのが真の政治家と聞いておりますが、目の前にこれほどの心からなるところの
反対の陳情書をごらんになって、それで心が動かないということになりますと、これは、一体政治家ではないのか、それとも、この政治家たちは一体
国民の声を聞いて政治をするのか、それとも、一部特権階級の何者かに動かされて政治をするのかと疑いたくなるのでございます。(
拍手)
日本社会党は、平和と
国民の幸福を心から愛するものでございます。従いまして、平和
産業、特に
繊維産業は、こよなく愛しているものでございます。しかるに、本
法案がもし施行されたとなりますに、この愛する
繊維産業界は大きに混乱を来たすのでございます。すでに、このことにつきましては、保守党のあなた方もよく御存じの
通り、本
法案が間違いが多くて、非常に欠点が多いということを大臣も御
承知であったせいか、本
法案が上程されるまでに、何と五たびも姿を変えてきたのでございます。五たび変ったということは、先般本
国会でつぶされました繊維税の
法律に、どこやら似通ったにおいがするようでございます。しかも、五たび変ってここへ出ました。ところが、なおそれから生ずるところの犠牲者の救済ということは何ら顧みられておらないのを、私どもはまことに遺憾とするものでございます。(
拍手)
せっかく、われわれが、この
法案に質問を試みました。また、賢明なる保守党の
諸君も、一生懸命になって、この
法律をよりよくしようと、長きにわたって慎重な御
審議をなさったのでございますが、まことに残念なことに、私の一番信頼を置いております通産大臣、保守党の中では私が一番信頼を置いておる方でございますが、この方の答弁たるや、全く形式的であり、抽象的に流れまして、救済策というものがその答弁の中にとんと見受けられなかったことを、これまた遺憾に思うものでございます。(
拍手)
さていよいよこの
法案が本日
審議打ち切りということに相なりました。そこで、それこそ賢明なる
諸君から修正案がたくさんに出されました。この修正案を見て、私は驚きました。
諸君、見て下さい。まず、本
法案の半分以上の文字を改訂しないと満足できないという修正案が、しかも与党の方から出ているのでございます。(
拍手)いかに本
法案が未熟で、拙速をとうとび、大急ぎで作られた原案であったかを証明する以外の何ものでもないのでございます。(発言する者あり、
拍手)しかるに、(発言する者あり)——うそだと思うならば、やじるならば、見てごらんなさいよ。しかし、私はこの修正案に敬意を表しております。こういう修正案を出すような方が保守党の中にもいらっしゃる。こういう良識の方がいらっしゃるということについては、心から敬意を表しているものでございます。
ところが、悲しいことに、この修正を行われても、なお大事な点が抜けているのでございます。それは、本
法案の施行によって生ずるところの犠牲者の救済、これがほとんど顧みられていない。それが全部附帯決議に回っておりますが、この附帯決議はまことに抽象的でございまして、この抽象的な言葉をもって犠牲者を救う、犠牲者に満足を与えるということがとうていできな
いことは、(発言する者あり)今おやじりになった三田村さんでも、地元の陳情者が大ぜい今上に来ておられるから、よう御存じの
通りであります。(
拍手)
さてこういうことでございますの
で、私は……(「まじめにやらないと政治疑獄が起きるぞ」と呼び、その他発言する者あり)もし疑獄が起きるとしたならば、十大紡の手先になっている方にそのにおいがすることを、あなた自身がよく知っているはずでございます。(
拍手)
そこで、本質を言えということでございまするので、本
法案の及ぼすところの悪影響、つまり、本
法案にも修正案にも盛り切れなかったところの、犠牲者を救うの法について、一言申し述べてみたいと思うのでございます。
本
法案は、
日本の
繊維産業を安定化して輸出を振興しようということでございまして、まことにけっこうな
意見でございます。ところが、もしほんとうに輸出振興をする場合には、一体何が阻害になっているかということを真剣に考えてみなければなりません。口を開けば、
日本の
製品はコストが高くて粗悪であるという評を受けるのでございまするが、事、繊維に関しまして、この定理は当てはまらないのでございます。コストが安過ぎて品質がよ過ぎればこそ輸出が困難になっているということは、すでにワン・ダラー・ブラウスによって
諸君がよく御
承知の点でございます。
そこで、これを修正するにはどうしたらいいかといえば、まず第一審に、本
法案では、設備を少くすればよろしいというておられまするが、設備ではございません。設備を少くしたから繊維の輸出がふえるものでは断じてありません。(
拍手)何であるか。すなわち、繊維においては、レーバー・ダンピングであり、ソーシャル・ダンピングでございます。いわば、これは、繊維に
関係する労働者の賃金が少いことと、あまりにもその機場が搾取され過ぎているということでございます。(
拍手)これを直さないことには、どこを修正しようと、
日本の繊維品は永久に諸外国からクレームをつけられ、小言を受けることは、これは保守党の皆さんもすでによく御
承知の
通りでございます。(
拍手)なぜここを修正することができないのでございましょうか。
次に申し上げたいことは、もし機場に修正を要する職務
部門を
改正しなければならないというならば、これも設備の制限ではなくして、原料高の
製品安ということでございます。これを修正しなければ、幾らどこを直しても、機場の苦しみは永久に直りません。原料高の
製品安、これは、すでに皆様の耳にもタコのできるほど何回か繰り返されてお耳に達していることでございましょう。
〔「時間々々」「まじめにやれ」と呼び、その他発言する者あり〕