○滝井義高君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
公職選挙法の一部を
改正する
法律案並びに
与党修正案に対する小澤
委員長の
報告に対し、また、それに関連して、
委員会の
審議の
過程を通じて不明確であった一、二の点について、
自治庁長官並びに鳩山総理に対して御所見をお尋ねいたしたいと思います。(
拍手)
〔
議長退席、副
議長着席〕
そもそも、
政府、
与党が今回この
公職選挙法の一部
改正なる世紀の悪法を今二十四
国会に提出いたしました、その根本的な
理由とするところを推測いたしてみますと、その第一の
理由は選挙のたびごとにすくすくと伸びて参ります
社会党の勢力を分断しようとすることが、まずその第一の
理由であると思われます。(
拍手)第二の
理由は寄せ集めの、寄木細工の政党である
自民党の主導権を、この小選挙区の名のもとに
確立しようとする一部幹部の陰謀であったというのが第二の点でございます。この
公職選挙法の
改正は、この二つの
理由以外にないと思われるのでございます。
政府、
与党は、この二つの
目的を達成せんがために、異常な熱意を持って参りました。私の尊敬する温厚篤実なる加藤鐐五郎
委員長をかえて、その名を聞けば泣く子も黙るといわれている、
国会内で有名な小澤佐重喜氏を
委員長に押し立て(
拍手、笑声)猛虎の勢いをもって二十四
国会を押し切ろうとして参ったのでございます。しかるに、何ぞはからんや、
世論は強くその
政府、
与党の陰謀と意欲とを打ち砕いたこと、
現実の五十有余日にわたる
審議の
経過が、しみじみと、三百名になんなんとする絶対多数を握っている
与党諸君に味わわしたことと私は思うのでございます。(
拍手)
さて、
政府は、この
法案を提出するに当って、二つの大きな
理由を掲げました。まず第一の
理由は、二大政党の育成をはかるということであったのでございます。さらに第二には、政局の安定をはかるということでございました。この小選挙区のみがその二つの
目的の達成にかなう政策であり、しかも、この小選挙区によってのみその二つの
目的が達成せられて、内外にわたって山積しておる重要政策を、着実に、堅実に遂行できるというのが、これが
自治庁長官並びに総理が絶えず
委員会において御
説明下さった点でございました。そこで、こういう前提のもとに立って、私は小澤
委員長並びに鳩山総理、
自治庁長官に、一、二の所見をお伺いいたしたいと思うのでございます。
まず第一に、小澤
委員長と
自治庁長官にお尋ねをいたします。すでに、事態は、
政府がこの
法案を提出したときとは、ずいぶん変って参りました。
政府がこの
法案を出したときの、その出す具体的な
理由といたしましては、第一には、選挙
制度調査会が、早々の間に、あの区割り案とともに、
法規の
基本となる答申をして下さった。早々の間であったために、その全部を取り入れることができなかった。だから、まずその中で特に必要と思われる点のみを採用して法文を作ったというのが、第一の
政府の
理由でございました。
さらに、第二に
政府がわれわれに示した
理由は、すでに、この
国会において、三月十四日に、参議院の通常選挙を
目的として
公職選挙法の一部を
改正する
法律案が通っておる、従って、全面的な
改正は一事不再議の原理にも反するおそれがあるので、とりあえず小選挙区制として衆議院
議員の選挙に関することのみを今回の
改正ではやるのだ、というのがその
理由でございました。皆さんも御存じのように、選挙法は、これは一体的な法典でございます。参議院、衆議院、
地方議会の
議員あるいは首長等、これらのすべてのものを包括的に
規定しておるのが
公職選挙法でございます。従って、当然、事態の急変というものは——次の
国会で
政府が選挙法の
改正をやろうとするならば、
公職選挙法自体を、抜本塞源的に、全体的に
改正することが、論理的な当然の帰結であろうと思うのございまするが、
自治庁長官並びに政治的な良識を持っておられる小澤
委員長の所見を私はお伺いいたしておきたいと思うのでございます。(
拍手)
第二には、総理にお尋ねをいたしたいのでございまするが、大体、総理は、いかなる
目的で、この
法律をこの
国会に無理やりにお通しになろうとするのか。その、あなたがお通しになろうとする
目的は一体どこにあるのか、ということなのでございます。御存じのように、この
法律は、党利党略のサラマンダーの
法律だと言われました。サラマンダーは火の中のトカゲです。サンショウウオだといわれております。この、いわばサンショウウオの二つの眼となったものは何であったか。この区割り案というサラマンダーの二つの眼となったもの、その
一つの眼は、立会演説の廃止と、そうして供託金の引き上げということでございました。いま
一つの眼は何であったか。いま
一つの眼は、選挙における政治
活動の政党に対する強化でございました。いま
一つは何であったか。それは公認制の
確立でございました。これらの眼がそれぞれ左右について、いわば画龍点睛を欠く——画龍点睛を欠くという言葉が昔から日本にありますが、このサラマンダーは、その二つの眼を持って、この
国会を乗り切ろうといたしました。ところが、おそろしいことには、
与党みずからが、その左の眼についておりましたところのこの立会演説という眼と、そうして供託金の眼を、みずからの手で抜いてしまったということであります。(
拍手)このサラマンダーは、左の眼を抜かれ、さらにその上に、
施行期日がどこにいったかわからないということで、サラマンダーの足が奪われてしまったのでございます。一体、このサラマンダーはどこにはっていけばいいのでしょうか。どういう
目的を持っておるものでしょうか。このように切り裂かれた
法律というものを、鳩山総理は、やはり政局の安定と二大政党のために必要だと、その口をもって堂々と
委員会で答弁したように、この場で言うことができるでしょうか。(
拍手)もし鳩山総理が良心的な政治家であられるならば、この壇上で
国民に向って不明を謝すべきであろうと思うのでございます。(
拍手)
さらに第三にお尋ねをいたしたい点は、これは小澤
委員長に対してでございます。
委員長も御存じのように、今回の
与党による
修正案によってできまするところの衆議院
議員選挙区画定
委員会は、四つのワクをはめられております。第一のワクは、その七人
委員会が作るべきところの
議員の定数というものは四百九十七人をこえてはならないということ、第二のワクは、選挙
制度調査会の答申案を尊重しなければならないということ。第三のワクは、次の通常
国会の前日までに
成案を得なければならないということ。第四番目には、三つの基準を基礎にして案を作らなければならない。その三つの基準の第一は、少くとも、選挙区の
人口はなるべく均等にしなければならない。
行政区画は分割してはならない。地勢上の一体性を考慮しなければならないという三つの基準、このような四つのワクをはめられました。
ところが、
政府、
与党の
諸君は、ワクをはめておきながらも、選挙
制度調査会の答申案を尊重しなければならないという一項を入れております。選挙
制度調査会のその答申を尊重するというならば、何で四百九十七人をこえてはならないか、あるいは、さいぜん申しました三つの基準をわざわざ書かなければならないのか、選挙
制度調査会の答申の中には、すでに、一人一区で四百九十七人と、きちっと書いております。書いておるばかりではない。区割り案の基礎になった基準というものは七つありまして、今回
与党のつけた三つの基準は、すべてその七つの基準の中に含まれておるのでございます。従って、選挙
制度調査会の答申を尊重するという一項で足りたのでございます。しかも、その七人
委員会の良識に信頼すると
政府も言い、
与党の
諸君もおっしゃっておるのでございますから、当然そういうものは入れなくてもよかったはずです。ただ選挙
制度調査会の案を尊重する、これだけで私はけっこうでなかったかと思う。それを、わざわざ多くのワクをはめることは、その七人
委員会の答申を尊重すると言いながらも、これを尊重しないおそれさえ出てくると思うのでございますが、小澤
委員長から、
委員長として、この壇上で、七人
委員会でできた案はそっくりそのまま尊重する所存であるかどうかという御言明を得たいのでございます。
さらに第四に私のお尋ねをいたしたい点は、鳩山総理に対してでございます。まず、鳩山総理に、政治
責任について私はお尋ねをいたしたい。同時に、良識の士である小澤
委員長についても、この点の御所見を伺っておきたいのでございます。それは、御存じのように、
政府が提案いたしましたこの
法律案というものを、
与党みずからが大幅の
修正を加え、骨を抜き、筋を抜いて、軟体動物のような姿にしてしまいました。この軟体動物のような姿になった
修正案というものについて、私は
太田自治庁長官の御
意見を聞いてみました。太田さん、一人一区ということは、この
法案のどこからも読み取れないと思うのだが、一体あなたの政治
責任はどうなるのだとお尋ねしましたところ、太田さんいわく、この
修正案の中には一人一区の精神が躍動しておるので
責任をとる必要はないと申しました。まず、これまでは、百歩を譲って、私も了承いたしておきましょう。さらに私は質問を続けました。しからば、参議院で継続
審議になった場合には、あなたの政治
責任はどうなりますかと言ったら、継続
審議になった場合には、まだその精神は死んでいないから、政治
責任をとる必要はないとおっしゃいました。しからば、継続
審議になった場合はそういうことになろうが、
審議未了になった場合はどこだと言ったら、
審議未了の場合は、まだその精神が浮いて生きておるから、これも政治
責任をとる必要はない。しからば、一体あなたの政治
責任をとるのはいつなのかと問いましたところが、それは参議院において否決されたときにおいてのみ政治
責任をとると言ったのでございます。一体、政党政治のもとにおいて、良識ある政治家が、こういうことで、
世論政治の政党政治ができるでしょうか。(
拍手)私は鳩山総理にお尋ねをいたしたい。総理が御任命になった
自治庁長官がこういう態度で、
責任政治の政党政治が行われるでしょうか。あなたもまた、この重大な
法案が、こんなにずたずたに切り裂かれても、なお太田長官と同じ御
意見であるかどうか、これをお伺いをいたしたい。同時に、長く政党人として苦労をしてこられた小澤
委員長の御所見をも、あわせてお尋ねをいたしておきたいと思うのでございます。
ざらに、
与党の皆さんもよくお聞き願いたい点は、この
法律の
施行の時期に対する問題でございます。御存じのように、非常な御無理をしてお通しになるところのこの
法案がこの
国会を通ったにしても、この
法案で実際に実施のできる、動くところの面というものは附則だけでございます。附則だけが動いて、効力があって、この
法律の本文には何ら動くものはありません。これがまず第一です。附則が動いて、今度できる七人
委員会が、次の通常
国会の前日までに区割り案を作ります。その区割り案が次の通常
国会において可決をされて
通ります。通っても、なおこの
法律は動きません。通って六ヵ月たった後の総選挙からこの
法律は動くことになります。従って、皆さん方がこんなに無理をして通したこの
法律が、いよいよその効力を発効するのは、
昭和三十二年の十月以降に行われる総選挙だということです。皆さん、二大政党の育成を考え、政局の安定を考え、内外にわたって重要政策を一刻も早く実行しようとするために出したこの
法案というものは、一体どういう
目的で出されたものでしょうか。私たちは、何が何かわからないのでございます。(
拍手)この実施の時期に対する考え方について、鳩山総理は、それでも御満足であるかどうか、私はお尋ねをいたします。
最後に、
世論政治というものは、これは政党政治であります。従って、政党は
世論に耳を傾けなければなりません。もし、
自民党の
諸君が、鳩山総理が、
政府の閣僚が、真に
世論に耳を傾けたならば、私は、このような悪法は、このような軟体動物のごとき
法律は、すみやかにここに撤回することを要請いたしまして、私の
委員長報告に対する質問にいたしたいと思います。(
拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君
登壇〕