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1956-05-08 第24回国会 衆議院 本会議 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月八日(火曜日)     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四十二号   昭和三十一年五月八日     午後一時開議  第一 公共企業体職員等共済組合法案参議院提出)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  在外財産問題審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件  全国的霜害対策に関する緊急質問   (神田大作提出)  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)及び北海道開発庁設置法案内閣提出)の趣旨説明及び質疑  日程第一 公共企業体職員等共済組合法案参議院提出)  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  千九百五十五年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件     午後一時三十八分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、在外財産問題審議会委員に本院議員愛知揆一君、同受日新吉君、同大平正芳君、同藤枝泉介君、同古屋貞雄君、参議院議員遠藤柳作君、同小西英雄君、同田畑金光君及び同竹下豐次君を任命するため、国会法第三十九条ただし書きの規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。      ————◇—————  全国的霜害対策に関する緊急質問   (神田大作提出
  5. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、神田大作提出全国的霜害対策に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  全国的霜害対策に関する緊急質問を許可いたします。神田大作君。     〔神田大作登壇
  8. 神田大作

    神田大作君 私は、日本社会党を代表して、このたびほとんど全国一円を襲った凍霜害による農作物の甚大なる被害に関し、総理大臣大蔵大臣農林大臣に対し緊急質問を行わんとするものであります。  今次凍霜害は、四月二十九日より三十日にわたり、北関東、東北、中部、近畿九州四国の各県を中心とし、北海道を除くほとんど全国地域に及ぶ激烈なる寒波の襲来を見、麦、桑、茶、バレイショ、果樹、苗しろ、菜種、蔬菜葉タバコ等発芽期開花期穂孕期及び出穂期に当った各種作物に甚大なる被害を与えたのであります。中央気象台がいち早く発表した農業気象災害推定調査報告によりましても、被害地域の広さと被害の深度においては、昭和二十八年度の凍霜害に比して、それ以上甚大であると報告されておるのであります。  私は、党より派遣されまして、一部被害地調査し、たび重なる災害に打ちしおれた被害農家に対して言うべき言葉もなかったのでありますが、総理大臣は、この際、この気の毒なる全国の幾百万の被害農家の惨状に対し、いかなる心境と、その対策に対する決意を持っておられるか、まず率直なる見解をただすものであります。(拍手全国農民は、あなたの同情ある言葉と誠意のある実行とを今やおそしと待ち望んでおるのであります。常に友愛を口にする総理は、このような災害にこそ、陣頭に立って、その対策に立ち上るべきであると思うのでありますが、その心境を披瀝されたいと思うものであります。(拍手)  第二に、これが救済措置に関し、農林大蔵両省を初め関係各省に対し、これが対策に関して真剣なる態度をもって臨まれんことを要求し、以下、数点にわたって質問を行わんとするものであります。(拍手)  二十八年における凍霜害に際し国のとった措置を見まするに、まず融資特別措置法を制定いたし、二十億円を限度とする営農資金融資に対し利子補給損失補償等措置を講ずるとともに、一方では、農林漁業金融公庫法改正して、政府は約一億円の増資をはかり、肥料蚕種種子購入資金貸付を行い、また、予備金支出によって、樹勢回復のための肥料代病虫害防除のための農薬代、稚蚕共同飼育施設費蚕種代技術指導費等補助金として五億八千九百四十万円を支出しておるのでありますが、他方・農業共済保険特別会計より三億四千万円の概算払いを行い、また、連合会の仮払い準備金として、共済基金に対し三億三千万円の融資をはかり、かつ、被害農家食糧に困難するものに対し政府所有の麦を売り渡し、その代金延納措置を講じたのであります。以上の融資助成共済金早期支払い食糧等の諸種の措置は、不十分かつスローモーであったけれども、これを行なったからして、辛うじて農民生産を継続する意欲を持ったのであります。  しかるに、二十九年度、三十年度における政府の凍霜害対策を見ますると、補助金支出における若干の不正不当の支出のあったことを口実といたしまして災害対策の費目及び金額を大幅に整理削減し、昭和二十九年度の凍霜害においては、単なる融資措置動力噴霧器等に対する若干の助成にとどめ、さらに昭和三十年度の凍霜害に至っては、ついに融資措置のみでお茶を濁し、被害農民の不信を買ったのであります。  このように、政府が最近になって災害対策に逐次冷淡となっておりますことは明らかでありますが、それを主導しておるのは財政当局であります。大蔵省当局であります。政治の要諦は、申すまでもなく、国民をその災害から救い、それから守り、生業に後顧なからしむるにあります。政府は、今次大災害に際しては、よろしく大悟一番、万全の措置を講じ、もって被害農民の困窮を救済すべきであります。私は、罹災農民の立場に立って、政府がすみやかになさねばならぬ具体的事項を一々あげまして、当局の明快なる答弁を求めるものであります。(拍手)  まず第一に、農業生産確保最低生活の維持のために、被災農民に対し、長期低利資金融資について特別なる措置を講ずることであります。第二には、農業共済金の仮払いを即刻断行することであります。第三には、被害作物樹勢回復のために速効肥料無償交付をすることであります。第四は、被害農作物に対する病虫害防除に対する助成を講ずることであります。第五は、予備蚕児共同飼育施設、掃き立て不能蚕種代金補償等、その被害まことに甚大であるところの養蚕農家に対する対策であります。第六には、被害農家に対する所得税減免であります。第七に、被害府県市町村に対し、その財政を救済するための地方交付税の増額であります。  以上は、その災害に対するおもなる救済対策であるが、それをなすに当って、迅速と、その被害に対し十分なる財政的裏づけが必要であることは、申すまでもないのであります。関係大臣は、これら一つ一つのことについて、この議場を通じて、悲しみと涙にむせんでおるところの幾千万の農民に対し明確なる答弁をしてもらいたいと存ずる次第であります。(拍手)  次に、私は、今次凍霜害に対する被害状況報告を求めるものであります。昭和二十八年度の凍霜害は、主たる農産物の受けた損害は、公式発表によりますれば九十三億円でありましたが、今次災害は、これに匹敵するとも劣らざる大問題であると思うものであります。これに対しまして、総合的な救済措置をすみやかに講ずべきは、先ほど述べた通りでありますけれども、具体策樹立に当っては、その被害状況を的確に把握することであります。二十八年度における凍霜害の発生より第一次調査が終了するに至るまでは約二週間の期間がかかったと言っておりますけれども、今回の凍霜害に当って、当局は三週間を要すると言っております。一年を経るごとに、科学的調査技術が進歩して、その被害の的確な確認が早まって、迅速なる対策ができるというなら、話がわかるのでありますけれども、それとはあべこべに、調査が年々おくれるというのでは、話にならない、怠慢もはなはだしいと申さなければなりません。(拍手統計調査部災害調査要員が不足であるというならば、何ゆえに、三十一年度予算において、必要欠くべからざるものの人員の整理を行なったのであるか。また、聞くところによると、農林省行政機構改革に当り、今までは災害対策の取りまとめは官房総務課が当ったのでありますが、何ゆえか経済局農政課に移した。これでは総合的な災害対策支障を来たすものであるが、官庁内のなわ張り争いによって被害をこうむるものは全国農民である。これによって適切なる対策ができない、これによって支障を来たすというならば、われわれは断じてこれを許すことはできないと存ずるものであります。(拍手政府は今回の被害調査を迅速かつ的確に調査すべきであるが、その完了は一体何月何日までにできるか、明確にこれを答弁されたい。なお、現在の調査状況においては、いかなる被害の現況であるかを報告されたいと思うのであります。また、従来、これらの災害調査に当っては、面積、金額等に関する地方側報告中央調査との間にはなはだしい懸隔が見られ、二十八年度においては実に七対一の開きがあって、政府及び県はそれぞれ権威を失墜したのであるが、政府はよろしく統一的調査方法を確立し、いやしくも不公平のそしりのなきょう万全の措置をすべきであるが、これらに対する所見を伺いたいものであります。  次に、政府は、被害農家に対し、二十八年度当時と同様なる総合的施策を講ずる意図ありやなしやを伺いたいと思うものであります。単に天災融資法に基く融資のみならず、各般の助成措置を並行的に実施すべきものと考えるのであるが、その所見はいかがであろうか、承わりたいものであります。  二十八年度の際の例に徹しまするに、桑に対する施策は一応これを是認するといたしましても、麦、果樹蔬菜葉タバコに対する救済措置は、はなはだ貧弱でありまして、特に麦は凍霜害により生理障害を惹起しておりますが、外見に変化がなかったためにこれを見のがし、後日に至って大問題が起ったのであります。これがために登熟がおくれ、青刈りせざるを得ないのでありまして、これに対して、飯用麦飼料対策明年度種子確保、五等麦の規格設定等措置をとるべきでありますけれども、これが所見はいかがでございましょうか。(拍手)  また、共済金早期支払い措置についてでありますが、法令に基いて概算払い実施するのはもちろん、連合会の仮払い措置のために融資及び利子補給実施すべきであると思うが、その所見ははいかがでございましょうか。  なお、例年の凍霜害により手ひどくたたかれ、打撃をこうむっておりますところの開拓農民でありますが、開拓者は、まだ共済制度の恩恵を受けることのできないほど、その営農条件はまことに不利であります。彼らに対しては、一般救済措置のほか、開拓者資金融資法改正により、三十一年度の被害開拓者に対しても、特に生産設備資金貸付により営農条件の一段の推進に役立たしむべきであると思うのでありますが、政府はこのような考えを持っておるかどうかを伺いたいと思うものであります。(拍手)  さらに、開拓者を含む一般農家であって、累年の災害によって借財にあえいでいる者に対する負担軽減措置を講ずべきであると思うのでありますが、その考えはいかがでございましょうか。  最後に、私は、総理大臣並びに関係大臣に対し——昭和二十八年度の凍霜害に引き続き昭和二十九年度の災害を受け、三十年度は幸いにして未曽有の豊作に恵まれて、農民はようやく愁眉を開いたのであります。ところが、本年また思わざる凍霜害に襲われ、農民は全くあすべの希望を失いました。惨たんとして悲涙にむせんでおります。しおれた桑の若芽をつかんで、しょう然としている農夫の姿を見たとき、この人たちを何とかしなければならないと思うことは、これは私だけではないと思うのであります。
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 神田君、時間が参りましたから簡単に願います。
  10. 神田大作

    神田大作君(続) 今やわが国農政植民地農政に堕しつつあるといわれております。外国の余剰農産物の買手としての日本農業は、その自主性を失いつつあります。政府は、この大災害を期に、植民地根性を一擲いたしまして、国家百年の計に基く農業政策を確立すべきであると思うものであります。霜にも、風にも、雨にも、アメリカの麦にも負けないところの自主的農業政策の確立こそ、私は大事であると思うのであります。これに対する所信を伺いまして、私の簡単なる質問終りといたします。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  11. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 神田君の御質問にお答えをいたします。  今回の凍霜害被害につきましては、すでに十数県よりその被害状況の通報を受けております。被害の甚大なるに驚きまして、同情にたえない次第でございます。政府としては、目下のところ、当面の技術指導に万全を期するとともに、その実態につきまして調査中でありますので、被害判明次第すみやかに適切なる対策を講ずることといたします。(拍手)  詳細は主管大臣より答弁をしていただくことにいたします。     〔国務大臣萬田尚登登壇
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 四月の二十九日、三十日、五月一日にかけまして、関東、東海及び東北近畿、中国、九州四国の一部に霜がおりました。桑、麦、果樹茶等農作物に大きな被害のありましたことに、まことに痛心いたしておるわけであります。すでに十数府県から被害通告があったのでありますが、なお、全体の被害状況を把握するには、ちょっと今明日第一回の報告にかかると思っておるのであります。関係者を督励いたしましてできるだけ早く実情を把握いたしたいと考えております。目下のところは、当面技術指導に万全を期しますとともに、とりあえず、追肥の需要に応じまして、保管硫安緊急譲渡使用を全購連に対して行なっております。  なお、このつなぎ融資につきまして、農林中央金庫と連絡済みであります。なお、天災によりまする被害農家に対しまする融資措置法の適用をいたしまして、営農資金に十分な処置をいたしたい、かように考えております。なお、農業共済金早期支払いについても努力をいたしたいと存じます。  その他につきましては、被害判明次第、被害状況に応じまして、あらゆる努力を傾倒いたしたいと考える次第であります。  なお、開拓農家に対しましても、その営農支障のないよう特段の配慮をはかりたい、かように考えているわけであります。  さらに被害判明いたし次第、なお報告いたすことにいたします。(拍手)     〔国務大臣太田正孝登壇
  13. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 今回の災害は痛ましいことでございます。災害を受けた農家が租税の減免をされました場合に、地方団体の収入が減少いたしました場合には、特別交付税交付について考慮する考えでございます。(拍手)      ————◇—————  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、国会法第五十六条の二の規定により、経済企画庁設置法の一部を改正する法律案及び北海道開発庁設置法案趣旨説明を順次求めます。国務大臣石橋湛山君。     〔国務大臣石橋湛山登壇
  15. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 経済企画庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  政府は、さきに、行政審議会の答申に基きまして、行政事務の管理を強化し、その能率を向上させるため、行政機構改革及び行政運営の改善をはかることといたしたのであります。この改正法案もその一環をなすものであります。すなわち、従来総理府の長としての内閣総理大臣所轄に属しておりました事務はきわめて複雑かつ多岐にわたっておりますので、事務運営能率化責任体制明確化趣旨から、極力各行政機関の長に移管することとせられたのでありました。この意味において、従来内閣総理大臣に属しておりました公正取引委員会所轄権経済企画庁長官に移管し、総理府付属機関であった電源開発審議会経済企画庁付属機関とした次第であります。もちろん、所轄権者の変更がありましても、公正取引委員会従前通り職権行使独立性を有することは、あらためて申し上げるまでもございません。  次に、今回の行政機構改革におきまして、内政の総合的かつ能率的な運営を確保するため内政省が新設せられることになりましたので、国土開発に関する事務所掌調整いたしまして、従来経済企画庁所掌しておりました国土調査法特殊土ょう地帯災害防除及び振興臨時措置法離島振興法に関する事務及び国土総合開発法に関する事務の一部を内政省に移管し、経済企画庁企画官庁または総合調整官庁としての性格を明確ならしめる等の措置をとることとした次第であります。  以上が経済企画庁設置法の一部を改正する法律案趣旨の概略でございます。(拍手)      ————◇—————  北海道開発庁設置法案内閣提出)の趣旨説明
  16. 益谷秀次

  17. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 北海道開発庁設置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、北海道開発を一そう総合的に、かつ民主的に推進するため、現行の北海道開発法規定にある参与及び北海道開発審議会委員定数増員を行いますことと、その開発を担当する現地機関を統合して強力なものとし、開発行政一元化をはかりましたことであります。次に、この法律案のおもなる点を申し上げますと、第一に、参与増員であります。従来、参与は、北海道開発法第七条で十人以内を置き、関係行政機関職員のうちから任命することになって居るのでありますが、開発総合化を期するために、各機関の範囲を拡大して、広く関係機関の意見を聞く必要があると考えまして、その員数を十六人以内に増加するものであります。第二は、北海道開発審議会委員増員であります。従来、委員定数は、開発法第十条によりまして二十人以内を置くことになっておるのでありますか、これを三十人以内に改めるものであります。これは、総合開発計画重安事項について一そう広く各界の衆知を集める必要を痛感いたしたからでありまして、十人の定員増加の内訳は、北海道市町村長及び市町村議会議長から四人、学識経験者から六人ということにいたしております。  第三に、開発行政一元化であります。現在、北海道開発行政には、北 海道開発局のほか、札幌通商産業局北海道海運局札幌陸運局等の国の出先機関がその衝に当っておるのであります。政府といたしましては、北海道開発を一そう強力に、かつ総合的に推し進めて参りますためには、これ等行政機関のうち、今申し述べました開発局、通産局、海運局及び陸運局を統合いたしまして、北海道開発庁地方支分部局たる北海道総局とするとともに、これに農林省、通商産業省、運輸省及び建設省の所掌事務のうち開発に必要な事務の一部を分掌させ、現地においてこれらの事務調整を行い、開発行政一元化をはかることが必要であると考えたのであります。  終りに、この法律案提出に伴いまして、北海道開発法の廃止、職員の身分の引き継ぎ等、所要の法的措置を行う必要があるのでありますが、これは別途提出いたしまする関係法律整理に関する法律案において一括御審議を願うことといたしております。  以上がこの法律案趣旨であります。(拍手)      ————◇—————  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)及び北海道開発庁設置法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑通告があります。これを許します。渡辺惣蔵君。     〔渡辺惣蔵登壇
  19. 渡辺惣蔵

    渡辺惣蔵君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました経済企画庁設置法の一部を改正する法律案及び北海道開発庁設置法案につきまして質問を行うものであります。  この二法案は、さきに四月二十六日に本院に提出をされました国家行政組織法の一部を改正する法律案内政省設置法案その他二法案とも密接不可分な関係を有しまする行政機構改革に関する一連の重要法案でありますので、特に鳩山総理大臣を初め関係大臣の誠意ある率直なる答弁を要求するものであります。(拍手)最初に、経済企画庁設置法の一部を改正する法律案に関して質問をいたします。経済企画庁の前身は、御承知のように、経済審議庁であり、経済安定本部であります。敗戦直後のわが国は、経済安定本部設置によりまして、悪性インフレと戦いながら、国民経済の安定と経済再建のための計画とその総合施策樹立に、不十分ながらも成果を示して参りました。ところが、その目的を十分発揮し得ないうちに、安定本部経済審議庁と変り、さらに三転して現在の経済企画庁となるに至ったものであります。わが国経済計画貧困は、実にかくのごとくにネコの目のように変転する行政機構いじりに終始しているところに基因するものであって、その上、当初の安定本部設置の趣百から著しくかけ離れた性格に衣がえした結果にあると言っても過言ではないと、そう信ずるものでございます。(拍手)先般発表されました経済自立五カ年計画一つを取り上げてみましても、全くの机上プランであって、三十一年度の予算とは何らの関連も見出せぬ、安易な作文に終っておることは、国会の論議を通じても明らかであって、識者の一致した見解であります。(拍手)このことは決して能力の貧困に由来するものではなくて、実に機構の欠陥と政府の新経済政策建設への熱意の喪失によるものであるといわざるを得ません。(拍手政府は、この現実に深くメスを入れることなく、行政機構全体とのつながりさえも無視していたずらに機構いじりに終始して、その責任の所在から目をおおわせようとしておるのであります。一体鳩山総理大臣及び経済企画庁長官は、この現実をどうお考えになっておるのか、日本経済長期計画樹立とその実施について、いかなる熱意と成案とをお持ちになっておられるのか、この際これをお尋ね申し上げる次第でございます。(拍手)  第二の点は、今日まで総理府の外局として置かれていた公正取引委員会が、本法の改正によって、新たに経済企画庁の所管に置かれることであります。申し上げるまでもなく、最近におけるわが国経済は、財閥が復活され、大企業独占集中が著しく促進されております。このことは、保守政権と結合しつつある大企業の不公正取引が増大しつつあることを物語るものであります。その反面においては、中小企業に対するところの不当なる抑圧が急速に増大、加重しつつあることを示すものであります。本国会におきまして、百貨店法下請代金支払遅延防止法政府提出せざるを得なくなったのも、こうした中小企業の必死の抵抗の前に、政府及び与党もついに屈服せざるを得ないほど、深刻なる事態に直面するに至ったからであります。(拍手)すなわち、この際、公正取引委員会は、ますますその機構を強化して、独立した強力なる活動が要望されるのでありまするが、この現実に目をおおわんとする政府は、行政簡素化の美名に隠れて、これを経済計画調整機関に転落していく経済企画庁のもとに編入して、独占禁止法の番人としての役割を圧殺しようとするところの態度は、いかなる情勢分析と理由に基くものでありますか。鳩山総理経済企画庁長官行政管理庁長官の明確なる答弁を求めるものであります。(拍手)  第三点は、国土総合開発計画とその実施に関する問題であります。本法案によりますると、その第五条におきまして、従来四部制でありました機構を四局に昇格することになっておりまするが、そのうちでも、従来の開発部が総合開発局ということになるのであります。しかるに、内政省設置法案におきましても、十一局の中に開発局が設けられることになっております。また、過日成立いたしましたところの首都圏整備法におきましても、総理府の外局たる行政組織としての首都圏整備委員会が設置されております。しかも、現に総理府の外局として北海道開発庁があるにもかかわらず、さらに、関係各省北海道庁との間に、その中間トンネル機関として北海道総局が提案されているという状態であります。国土総合開発が今日ほど強力に、統一的に、計画的にその遂行が要望されておりまするときに、それとは全く逆に、機構の重複、分散、複雑化が現われてきているという状態であります。たとえば、その一つの例を申し上げますと、昭和二十五年に制定された北海道開発法が廃止されて、単なる行政組織法たる北海道開発庁及び北海道総局だけが作られるかと思いますと、次には、国土開発法の中で、全国開発計画だけが経済企画庁の所管となる。地方開発計画と特定地域開発計画と都府県開発計画内政省の所管となる。首都圏におきましては、関係府県は首都圏整備委員会と内政省の二重の指揮監督を受けることになります。北海道開発計画は、北海道開発庁経済企画庁内政省との三重の指揮監督を受けることになるのであります。国土開発審議会は、経済企画庁長官内政大臣の二本建の諮問機関となって、その責任の所在が明らかでなくなってしまいます。こういう、まことに複雑怪奇きわまるものであります。鳩山さんおわかりになりますか。このたび鳩山内閣によって行政機構改革が打ち出されましたのは、その簡素化による能率化がねらいであったことは申し上げるまでもありません。しかるに、このたびの政府提案は、完全なる公約じゅうりんであり、官僚セクト主義と閣内の不統一を暴露したものだといわなければなりません。(拍手)特に、この点に関しまして、鳩山総理及び経済企画庁長官行政管理庁長官、馬場建設大臣、正力国務大臣答弁を求めるものであります。  次に、北海道開発庁設置法案について質問を申し上げます。  この法案は、昭和二十五年に制定された北海道開発法を廃止して、これを単なる行政組織法たる北海道開発庁設置法に置きかえるとともに、新たに北海道総局設置し、開発行政一元化の美名のもとに、北海道庁と対決させようとすることを意図するものであることは、自他ともにこれを認めるところであります。(拍手)  そこで、まず第一に正力国務大臣質問いたします。  正力国務大臣は、この重大な意図を持つ法案提出するに先だって、何がゆえに北海道開発審議会にこれを諮問されなかったのか、その見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。北海道開発審議会は、国の法をもって規定するものであって、本院の議決によって任命する委員をもって構成いたしております。また、この審議会は、開発計画の建議及び諮問を行うばかりでなく、従来、北海道開発予算につきましてはもとより、昭和二十六年の北海道開発局設置につきましても、また本国会提出された北海道開発公庫法案等も、ことごとくこれを諮問してきておるのであります。しかるに、このたびの、北海道開発の基本法であるべき北海道開発法を廃止してこれを単なる行政組織法に変えようとする重大な政治的意図を持つところの本法案に関する限り、これを審議会に諮問することなく、故意にこれを避けられたのは、いかなる理由に基くものであるか、さらに、今後においてもこの審議会に諮問する意思がないかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)第二に、先ほど申し述べましたように、国土総合開発計画の遂行は、今日わが国におきましても最も重要な政策であり、政府が国策としてこれを強力に、統一的に、計画的に推進しなければならないことは申すまでもありません。従って、北海道開発機構もまた、あくまでも国家行政機構の一環でなければなりません。しかるに、国家開発機構経済企画庁内政省に分割されるというときに、さらに北海道開発庁総理府の外局としたことは、いかなる理由によるものでありますか。聞くところによりますと、内政設置法案をめぐりまして、関係各省の間には、北海道開発庁内政省の外局にすべきであるという意見が、次官会議その他においても強く要求されてきておると承わっておるのでありますが、この点の経緯と理由につきまして、正力国務大臣、馬場建設大臣経済企画庁長官行政管理庁長官所見を承わりたいと思うのであります。第三に、北海道総局に関しまして質問を申し上げます。すなわち、北海道開発庁設置法に基いて新たに設置ざれることになりまする北海道総局なるものは、その機構上におきましては、北海道開発局札幌通商産業局、北海海運局札幌陸運局等を統合して、北海道開発庁地方支分部局としてこれに農林省、通産省、運輸省及び建設省の一部の事務を分掌させようとするものでありまして、他府県ではその類例を見ないところの変則的なる行政機構であります。すなわち、国の若干の出先機関を無理にかき集めて、行政執行上は、各省大臣の指揮のもとに、ばらばらに事務を分掌する寄り合い世帯にすぎないのであって、何らの統一性も権限もない中間トンネル行政機構であります。しいて申し上げますならば、これは自民党の党勢拡張のための地方的陳情受付機関であります。(拍手)その、ものの考え方は、三等郵便局長を特別職として自民党に入党させて党勢拡張を企てようとする考え方と同じ考え方にすぎないのであります。従って、行政事務の円滑や正確、迅速を期しようとするところの、各省の官僚の中にもおりますまじめな人々が、こういうでたらめな暴案に対しまして強く反対をしておるということも、私どもは見のがすわけにいかないのであります。この法案によりますと、通産、陸運、海運の各行政が、全国機構から分離されてしまう。さらに、従来から他府県と同様に北海道知事に委任して執行したところの補助事業等を、北海道のみに特別の機関を設けて、これを分掌せしめようとすることは、全国的な、国家的な視野から見ましても、明らかに行政の効率化を阻害することになりはしないかどうか、この点につきまして、農林、建設、運輸、通産各大臣所見をお伺いするものであります。  第四点は、地方自治を侵害しないかどうかという問題であります。地方自治の育成強化のためには、むしろ国の所掌事務をできるだけ地方に移譲、委任しまして、その自主性能率化を高め、財政機能を強化することであります。しかるに、それとは逆に、従来地方自治体に委任した事業まで次々と国が奪い取ろうとすることは、地方行政の総合性を破壊し、地方自治に対するところの圧迫、侵害であるといわなければなりません。(拍手)本法案が成立いたしますと、ちょうど明治初年の官僚政府のもとに植民地官治行政を復活すると同様になって、道州制を実現するための布石として、北海道に総督府を作る道を開く結果になるのであります。かかる時代に逆行したところのやり方に対して、太田自治庁長官はいかにお考えになるか、明確なる答弁をお願い申し上げるのであります。(拍手)  最後に申し上げます。この法案提出されるに至りました経緯を見ますと、昨年の末に、自民党の北海道開発特別委員会、俗称廣川委員会と申しますが、この廣川委員会で、北海道庁から開発関係の一切の権限及び業務を取り上げて、自民党の党利党略のために北海道開発行政を壟断しようとするところの政治的謀略にその端を発しておるのであります。(拍手)すなわち、自民党の北海道開発特別委員会は、まず第一に、北海道省の設置を提案しました。現に、現地に認証官たる長官のもとに北海道総局を設けて北海道知事と対決させようとする案を発表いたしたのであります。さらに、これを合理づけるために、北海道を五つの県に分県して北海道におけるところの政治、経済、行政を分断支配することによって、利権の追求と選挙地盤の擁護を策したものであります。(拍手)しかし、こういうような考え方は、ちょうど小選挙区法の考え方と同じであります。北海道の分県は廣川マンダーであります。こういうようなことを全道民が許すわけがございません。全道民の火の出るような反対運動のために、ついにこの分県論がくずれ去ってしまいまして、その結果として、このたびのような北海道総局案という形に化けて出たのであります。こういうことに対しまして、自民党の人々の中でも良識を持たるる人は賛意を表しておられません。まさに政調会の方々や一部の議員諸君がこれに反対をせられた卓見に、われわれは敬意を表しておるのでありますが、しかし、北海道分県問題を打ち出し、鳴りもの入りで九騒動いたしましたこの跡始末をしなければなりませんために、特にこの分県論を打ち出した人々は、党の幹部や政府の人々に泣きついて何でもよいから、どういう形でもよいから、一つこの国会へ出すだけは出してくれといって拝み込んで出ましたのが、この法案であります。(拍手)このようなふまじめな、国家の政治及び行政を私しようとする一部議員の面子を立てるために、不当、不合理なことを承知の上で、かかる謀略案を提出するに至ったことは、はなはだ不可解とせざるを得ないのであります。(拍手鳩山総理大臣、正力北海道開発庁長官並びに行政管理庁長官は、果してこの間の事情を十分理解しておられたのか、この法案の持つところの政治的意図及び開発行政に及ぼす影響をどうお考えになっておるか、明快なる所信を明らかにしていただきたいと思うのであります。  これをもって質問終ります。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君)ただいまの渡邊君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 渡邊君の御質問にお答えをいたします。  今回の行政機構改革は、主として占領治下において作られた諸制度に検討を加え、わが国の現状に適合しないものはこれを改め、国民全般にとりまして一そう便利なものとすることを主眼としたものであります。今回第一次分として御審議をお願いすることになつた関係法律案は、いずれも先般の行政審議会の答申の線に沿うたものであります。行政審議会においては、引き続き残った問題についての審議が続けられるはずでありまして、この答申を待ち、政府において成案を得次第、できるだけ早き機会に国会の御審議をわずらわす運びといたしたいと存じます。  残余の御質問に射しましては関係大臣から御答弁をいたします。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山登壇
  22. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) お答えいたします。  御承知のように、公正取引委員会は、今まで総理大臣所掌事項になっておりました。しかし、総理大臣所掌事項は非常に多岐多端にわたっておりまして、かえって行政上の実効を期するゆえんでないという見地から、今回それをある程度整理することにいたしたのであります。公正取引委員会は、今後、そういう意味において、経済企画庁長官所掌事項にいたすことにしたのであります。しかし、内容においては何も変化はございません。公正取引委員会は、依然として、今まで通りの法律によって、今まで通りの権限、今まで通りの仕事をするのでありますから、御心配のような、何か公正取引委員会を弱体化させるというようなことは毛頭ありませんから、どうぞその点は御懸念のないようにお願いいたします。  それから、開発局の問題でありますが、なるほど開発という名前は各省に使われておりますが、これはもうやむを得ないことであります。今回企画庁と内政省に分けましたのは、企画庁においては、今まで通り総合的な開発計画あるいは全国的な計画というようなものは、依然として企画庁がこれを所管いたします。地方行政機関等に密接な関係のあるところの開発実施、その他の地方的な計画につきましては、これを内政省に移管する。これが実際の仕事をいたす上において最も適当である、かように考えまして、企画庁と内政省に分けました次第でございますから、今までの経験によりましてこれまた一そう実効が上るものと確信をいたしておる次第であります。  それから、すべて機構はこれをはっきり分割することが非常に困難な場合、また、総合するといいましても、必ずしもむやみに一緒にしていいわけではございませんので、そういう見地から、機構の分割、総合を適当にいたした次第であります。  北海道を総合開発するということは、もうすでに国民多数の希望でありまして、日本の経済のためにも、ぜひとも北海道の総合開発を促進する必要がございます。その意味におきまして、今回特に一つの機構ができまして、今まで通産省の所管でありましたところの北海道に関する通産局がその中へ入りましたが、しかしながら全国的な通産省として必要な部面につきましては依然として通産大臣関係を持つのでございますから、総合をいたしながら、しかも特殊の北海道の事情に従って通産局を活用いたしまして、その開発をはかるということのためには、ぜひかような方法をとることが必要であると考えまして北海道開発庁を作ったわけでございます。  以上をもって、簡単でありますが、お答えといたします。(拍手)     〔国務大臣倉石忠雄君登壇
  23. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま石橋国務大臣から申し上げました趣旨で大体私への御質問は尽きておると思いますが、公正取引委員会は、御承知のように、独占禁止法関係を取り扱っておるものでございますから、経済企画庁のように日々変化いたして参ります経済情勢を把握いたしておるところの官庁がこれを所掌いたすことが最も適切ではないか。しかしながら、公取委員会を作りました趣旨は、御承知のように、今度の機構改革では全面的に残しまして、また特殊性を失わないようにいたしているような次第でございます。  北海道開発につきましては、ただいまこれも石橋大臣からお話がございましたが、行政審議会の答申案を政府は尊重いたしまして、これは内政省に置かないということにいたしました。各省の出先機関北海道にございますが、これの総合調整をいたしまして、より効果的に北海道開発の成績を上げたいというのが、今回の北海道開発局の総局のねらいでございますので、他意はございません。(拍手)     〔国務大臣馬場元治君登壇
  24. 馬場元治

    国務大臣(馬場元治君) 前両大臣答弁によりまして大体尽きておると思いますが、首都圏整備委員会の問題もございますので、その点に関する御答弁を申し上げたいと存じます。  首都圏整備委員会で作成をいたしまする首都圏整備計画のおもな内容は、宅地、道路、公園、緑地等の空地、水道、下水道、河川、水路及び海岸、住宅等の整備に関する事項でございまして、これらの大半につきましては現在建設省の所管となっておりまするのみならず、この計画地域的な国土総合開発計画にほかなりませんので、首都圏整備委員会を、国土の保全及び開発を重要任務として、今回設置されんといたしております内政省の外局といたしたのであります。  ところで、北海道開発庁の作成いたしまする北海道総合開発計画の内容は、農林、通産、運輸、建設各省それぞれの所管にかかる事業を包含いたしておりまして、各省所管の事業の総合調整ということがおもなものになるのでありますので、むしろ、内政省に置くよりは、総理府の外局として、内閣総理大臣所轄のもとに運営をした方が適切である、かように考えまして、かような措置をとったわけであります。別に申し上げることはないと存じます。(拍手)   [国務大臣正力松太郎登壇
  25. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 今回の機構改革は二重機構を作って党勢拡張ではないかという御質問がありましたが、今回の改革は決して党勢拡張ではありません。北海道における出先機関をできるだけ統合して、北海道開発を従来より一そう強力かつ総合的に推進するのであって、事務の繁雑化を来たすことなく、むしろ事務の簡素化、能率化を促進するものと確信する次第であります。(拍手)  北海道開発局設置につきましてなぜ審議会に諮らなかったかというお尋ねでありました。開発計画自体については審議会に諮らなければなりませんが、今度のは機構改革であるから、法律上は審議会に諮る必要はないのであります。(発言する者あり)しかしながら、事実上は審議会に諮りたいと思いましたが、時間がなくて諮れなかったことは残念に思っております。(拍手)     〔国務大臣萬田尚登登壇
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質疑北海道総局農林省の仕事に関係することであったと思うのでありますが、従来北海道開発局か担当しておりました公共事業の直轄事業のほかに、新たに北海道開発に特に関係の深い牧野の改良、整理、開拓、土地改良、入植関係事務、漁港関係事務等をその権限として付加されたものであります。このことは、各省から北海道総局に統合されるものと相待ちまして、北海道の総合開発を強力に促進するものと考える次第であります。(拍手)     〔国務大臣吉野信次君登壇
  27. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) 現在運輸省の所管になっております陸運局海運局を今度北海道総局に統合することはお話の通りでございますが、しかし、運輸行政に関する限りは、北海道総局の上級官庁として運輸省がある建前でございますから、運輸行政の全国にわたる運営には少しも差しつかえない、こう考えております。(拍手)     〔国務大臣太田正孝登壇
  28. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 北海道総局を設けますことと地方自治との関係についての御質問でございました。すでに提案理由において明らかなるごとく、北海道における国の開発行政一元化をはかることでございまして、開発関係のある現地の国の行政機関を統合するのでございます。自治体たる道の処理する開発事務とは関係がございません。直接関係はございません。また、この法案による国と地方団体との権限の委譲はないのでございます。各省の出先機関が統合されますことは、地方団体の側からのかねての要望であったことをつけ加えておきます。要するに、この総局を設けますことは、自治に及ぼす影響はない、また、北海道の行政への干渉ではないと申し上げる次第でございます。(拍手
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、公共企業体職員等共済組合法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事石村英雄君。     〔石村英雄君登壇
  31. 石村英雄

    ○石村英雄君 ただいま議題となりました公共企業体職員等共済組合法案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、参議院議員田中啓一君外二十九名によって提出されたものであります。  まず、提案の理由並びに内容の概略について申し上げます。  日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社が公共企業体へ移行した際、その職員となった者のうち、すでに恩給法上の公務員となっていた者については、当分の間恩給法の規定が準用されることとなり、その他の者については、この時以後国家公務員共済組合法の規定が準用されることとなったのであります。従って、現在では三公社職員の退職年金制度は、恩給制度の適用を受ける者と、共済組合年金制度の適用を受ける者と、さらにこれら両制度の適用を受ける者とがあって、きわめて多岐にわたる状態となっております。しかるに、この両制度を比較いたしますと、その給付内容はほぼ同程度であるにもかかわらず、恩給法に基く国庫納付金は、共済組合の長期給付の掛金に比べ著しく低いために、実質的には給与上の差別待遇となっておりまして、職員に不満を生ぜしめる原因となっておるのであります。しかも、このような不均衡な年金制度に対する不平不満は年とともに激化する事情がありますので、労務管理の上から考えましても、早急に解決する必要があるのであります。また、公共企業体におきましては、その職務内容も一般公務員とは異なり、現業的労務を主体といたしておりまして、それらの職員は自然他に転職することも困難でありますので、永年勤続者の退職後の生活を十分保障できるような年金制度を確立することは、企業能率向上のためにも早急に必要となってくるのであります。  以上が本法律案の提案の理由でございますが、次に、そのおもなる内容について概略御説明申し上げます。  第一に、各企業体ごとにそれぞれ共済組合を設け、長期給付、短期給付及びその他の福祉事業を行うことといたしております。  第二に、現行恩給法及び国家公務員共済組合法による年金制度を統合し、一本化して、全職員に適用することといたしておりますが、各年金及び一時金について簡単に申し述べますと、まず、退職年金の基本額は、現行恩給法及び国家公務員共済組合法に比べ若干引き上げて、最終本俸の四〇%といたしますが、支給開始年令は、年金額の引き上げに対応して五十五才まで延長することといたしております。しかしながら、重労務作業に従事する者で、五十五才までその職務に従事することが無理を伴うような職務にある者については、特に五十才から退職年金の七〇%を支給することといたしております。次に、退職年金の充実を重視した関係上、早期退職者の退職一時金については、掛金の払い戻し程度に押えることといたしております。次に、廃疾年金については、退職年金と同様に基本額を引き上げ、不具、廃疾の程度に応じて最終本俸の三五%、四〇%、六〇%の三段階といたしております。また、遺族年金については退職年金の半額といたしておりますが、遺族の範囲については、国家公務員共済組合法による遺族と大体同様であります。  第三に、短期給付については、現行国家公務員共済組合法と全く同内容といたしております。  第四に、組合の給付に要する費用は公共企業体の負担金と組合員の掛金によってまかなうものとし、公共企業体の負担割合は、現行国家公務員共済組合法におけると同様、長期給付については五五%、短期給付については五〇%といたしております。この結果組合員の掛金率は、短期給付については現行国家公務員共済組合法とほぼ同程度となり、長期給付については現行恩給法の二倍以上、現行国家公務員共済組合法とほぼ同程度となっております。  第五に、新制度への移行に際しては、現行恩給法及び国家公務員共済組合法上の既得権を尊重しつつ、新制度の理念に照らして所要の調整を加え、給付の公平をはかるよう、それぞれ必要な経過措置を講ずることといたしております。  本法律案は、去る四月二十六日本委員会に付託せられ、翌二十七日提出者より提案理由の説明を聴取いたしましたが、別に問題もありませんので、同日、質疑及び討論を省略の上、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。右、御報告を申し上げます。(拍手
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  34. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  35. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員会理事保科善四郎君。     〔保科善四郎君登壇
  37. 保科善四郎

    ○保科善四郎君 ただいま議題となりました運輸省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、気象業務の利用価値が交通、産業、学術等、広範な分野にわたって近年ますます高まりつつあることにかんがみまして、気象業務の運営に万全を期するため、運輸省設置法等に所要の改正を加えようとするものであります。  その改正のおもなるものは次の三点であります。第一点、運輸省付属機関である中央気象台運輸省の外局とし、気象庁とすることであります。第二点は、気象庁は気象業務を行うことを主たる任務とし、その長は気象庁長官とすることであります。第三点は、気象庁の機構について現行のものを踏襲することであります。すなわち、その機構につきましては、本庁の内部部局として総務、予報、観測及び海洋気象の四部を置き、付属機関として気象研究所、高層気象台、地震観測所、地磁気観測所、気象庁研修所、気象通信所及び気象測器製作所を置き、地方機関としては管区気象台及び海洋気象台を、また、これら事務の一部を分掌させるため、所要の地に地方気象台、測候所等を置くこととしております。  以上、本案の概要を申し上げたのでありますが、本案は、去る三月二十日当委員会に付託され、四月三日政府説明を聞き、本日質疑を終了いたしましたところ、自由民主党の大平委員より、一、気象庁長官には気象業務関係技術者をもって充てることが必要であるから、行政面から長官を補佐する次長を一名置くこと、二、付属機関から外局となるに伴い、その準備のため施行期日を一カ月延長すること等を趣旨とする修正案が提出されたのであります。  次いで、修正案と修正部分を除く原案とを一括して討論を省略、採決の結果、全会一致をもって修正案の通り修正議決すべきものと決定いたした次第であります。  なお、社会党の受田委員より、気象業務の重要性にかんがみ、   気象業務の運営は、各省に亘る関係機関との連絡を密にし、災害の防止、産業交通その他の社会活動に対する対策の万全を期する必要がある。従って、機構上、予算上速かに適切な措置を講ずべきである。この附帯決議案が提出され、この決議案も全会一致をもって可決されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  38. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員報告通り決しました。      ————◇—————
  40. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、千九百五十五年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件、農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  41. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  42. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  千九百五十五年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件、農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長前尾繁三郎君。     〔前尾繁三郎君登壇
  43. 前尾繁三郎

    ○前尾繁三郎君 ただいま議題となりました千九百五十五年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件並びに農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を報告申し上げます。     〔議長退席、副議長着席〕  まず、農産物に関する日米協定について説明いたします。この協定は、昨年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日米協定に次ぐ第二次の協定でありましてその内容においてはほとんど同様であります。ただ、第一に、農産物の買付総額が八千五百万ドルから六千五百八十万ドルに減額されましたこと、第二に、買付品目が小麦、大麦、トウモロコシその他の飼料、綿花及び葉タバコとなって、第一次協定の際の米を除いて飼料を加えたこと、第三には、積立円の使用率を、日本側七〇%から七五%に増率されたこと、第四に、贈与につきまして、条文からはずして付属交換公文で定めたことなどの差異があります。借款の条件等も全く同一であります。  この協定は、昨年七月から東京において米国側との間で非公式な折衝を開始し、次いで、九月に河野農林大臣の米国訪問の際に、ワシントンにおいて正式に品目、金額、積立円の使用区分等につき話し合いの妥結を見ましてワシントンにおいて協定文の仮調印が行われたのであります。  しかるに、この協定の正式署名は昨年五月の第一次協定第三条に基く第一年度の農産物の贈与に関する細目及び第二次協定に伴う第二年度以降の農産物の贈与についての両国政府間の話し合いが妥結した後に行うことになっておりましたので、その後、東京において贈与に関する取りきめの交渉が行われ、両政府間で意見の一致を見ましたので、去る二月十日東京において本協定及び議定書の署名が行われたのであります。  議定書につきましては、第一次協定第三条によれば、わが国が贈与を受ける農産物は千二百万ドルをこえない小麦及び脱脂粉乳並びに三百万ドルをこえない綿花となっておりましたが、その後、両国政府間の話し合いの結果、綿花分を小麦及び粉乳に振り当てることに合意が成立しましたので、第一次協定第三条を改正することに相なった次第であります。  この協定によりまして、わが国は輸入を必要とする農産物を六千五百八十万ドルまで円をもって購入することができるほか、その購入によって積み立てられる円資金のうち、ドルに交換された七割五分、約四千九百万ドルをわが国の経済開発のための借款として受けることができ、また、第一次協定によって予定されております第一年度の千五百万ドルの贈与に引き続いて、第二年度以降数年間にわたって贈与を受けることにより、わが国の児童福祉計画を拡大することができることになるのであります。  本二案件は、二月二十三日本委員会に付託されましたので、外務委員会並びに外務・農林水産連合審査会を開き、政府側の提案理由の説明を聞き、質疑を行いましたが、その詳細は議事録によって御了承願います。  かくて、質疑終了の後、五月八日討論に入り、右二案件を一括して討論を行いましたところ、日本社会党福田昌子君並びに小会派岡田春夫君から反対の意見が表明され、自由民主党伊東隆治君から賛成の意見が表明され、直ちに採決の結果、本二案件はいずれも多数をもって承認すべきものと議決されました。  以上、報告申し上げます。(拍手
  44. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。福田昌子君。     〔福田昌子君登壇
  45. 福田昌子

    ○福田昌子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日米間の余剰農産物に関しまする協定及び交換公文に対しまして反対の意見を申し述べんとするものでございます。(拍手)以下、その趣旨を簡単に申し上げたいと存じます。  本協定及び交換公文は、一言にしてこれを申しますならば、アメリカのあり余っております余剰農産物に対して、わずかばかりの借款と一部の贈与というえさにつられて飛びつき、わが国にとりましては、さしあたって必要でもない余剰農産物までも買い込みまして、これによってアメリカの農業恐慌を日本にまでも持ち込み、さらにはまた、日本国民のアメリカに対する従属性に拍車をかけ、そして、ひいては日本経済の自立を阻害して、東南アジア貿易の門戸を狭くする、こういう内容のものでございます。(拍手)  まず第一に、私どもが了解に苦しみますことは、御承知のように、本年度は、昨年度の未曽有の豊作を受けまして、食糧事情はきわめて好転いたしておるのでございます。それにもかかわりませず、輸入食糧の分につきましては、大体昨年度並みの量を、ことしも輸入することに相なっておるのでございまするが、そのさらに上積みとなりまする本協定によるような余剰農産物の買い入れに対しまして、ことに、昨年度よりも、小麦の買付などは四百八十万ドルも上回る量を、本協定によって買い入れようということでございます。そればかりではございません。今日、まことに貧乏な日本国内におきましても、政府の経済政策の失敗のために、葉タバコあるいは綿花の原材料は三、四年分もストックいたしておるのでございまするが、この上に、また本協定によりまして、多量の葉タバコと綿花をアメリカから買い入れようというのでございます。  政府の御説明によりますと、こういうものは腐らないから買い入れるのだということでございます。かような状態におきまして、アメリカから押しつけられて買わされる余剰農産物のために、日本の農村はますます貧困化への道をたどらされておるのでございます。御承知のように、今日におきましては、国内の小麦価格も低落いたし、その生産量も低減の一路にあるのでございます。政府自体が国内の農業開発に非常に誠意を欠いて参りつつありますことは、本三十一年度の予算の全貌を見ましても明らかであるのでございます。かような日本国内の農業政策に対しまする政府態度がこのままで推移いたしますならば、勢い日本農業は破滅の道をたどる以外にはないのでございます。(拍手)こういう大きな犠牲を払ってまでも、今日政府がこのアメリカの余剰農産物協定に飛びつく意図を、私どもは全く了解するに苦しむのでございます。(拍手)  一方、アメリカにおきまして、御承知のように、小麦も、葉タバコも、綿も、国内需要量の二倍以上を生産いたしまして、その過剰生産をもてあましておるのでございます。そこで、アメリカは一、昨年、国内法四百八十号を制定いたしまして、この余剰農産物を最も有利に他国に売り込む方法を考えたのでございます。今回の協定はこの四百八十号のアメリカの国内政策を押しつけられて、政府がそのアメリカの圧力に屈した、いわば日本の従来の卑屈外交そのものの一つの現われと見ても差しつかえないのでございます。(拍手)  政府は、これらの農産物の買付にはドルが要らないことを強調いたします。しかし、いずれにいたしましても、これは借款であり、年三分の利子がつけられるのでございます。そして、昨年度の余剰農産物買い受けの協力によりまする借款分までも合せますると、すでに一億ドル以上の借金をいたしておることに相なっておるのでございます。しかも、その利子分だけを考えましても、長期借款といたしましても、最終年度支払いまする利子分だけでも五千万ドルをこえるということが言われておるのであります。また、さらに、鳩山内閣の御意思によりますると、来年も、再来年も、さらにまたその先も、この余剰農産物を買い付ける御所存のようでございまするが、このことは言いかえますと、ますます借金を増加いたしまして、私どもの子々孫々にまでもその債務の責任を負わすことに相なるのでございます。(拍手)個人間におきましても、借金のある者は債権者に頭が上りません。国家間におきましても全く同様でございます。  しかも、この余剰農産物協定によりまする借款分の使用につきましてはアメリカはうるさく干渉いたしまして、結局日本国内の使用にまかされました分につきましても、その使用いたしまする部分、大資本の資本の蓄積や、戦略目的にのみ使われるように、アメリカが陰に陽にワクをはめて参っておるのでございます。ことに、今回輸入いたしまする農産物の輸送に当りましては、アメリカの商船法で、その五〇%までがアメリカの船で運送しなければならないことに相なっております。しかも、それはドルで支払わなければならないばかりでなく、アメリカの運賃というものは世界一高い運賃でございます。こういう点を考えましても、アメリカが、実にこまかいところまでも、まことにそろばん勘定の高い国であるということがわかるのでございます。(拍手)  さらに、本協定を、わが国の貿易促進の立場に立って考えますならば、ことに東南アジア貿易の発展のためにも非常に考慮しなければならない点があるのでございます。農産物の輸出をその第一義といたしておりまする東南アジアに対しまして、その最も必要な農産物の輸入を、日本がアメリカ一辺倒に傾きますということは、ひいては結局、大切な東南アジアヘの見返り輸出の道をみずからふさぐところの愚かな政策に相なるのでございます。(拍手)  次に、また、本協定につきまして見落してならない最も大切なことはこの協定が、一つにはアメリカの自由国家防衛という対外防衛政策に結びつき、二つにはまた米ソの対立の渦中にますます引き込まれて、アメリカヘの従属性を一そう強化するという、この点でございます。このことは本協定。基本法でありますアメリカの公法四百八十号の第二条、第百四条、第三百四条によりましても明白であるのでございます。このような二つの世界の対立と抗争を目的とするような経済、外交政策に対しましては、これまた私どもは絶対賛成することができないのでございます。(拍手)  さらに、また、今回は昨年度の協定と異なりまして、余剰農産物の贈与分に関しまして協定と切り離して新しく交換公文といたしました。ちょっと考えますと、ただでくれる贈与というもの、まことにありがたいように考えられるのでございますが、これを詳細に検討いたしますと、これまた、アメリカにとつてはきわめて好都合、日本にとつてはきわめて不利、苛酷な条件がつけられておることを知るのでございます。この贈与は小麦及び脱脂粉乳であり、学童の給食用に使われることに相なっております。もとより、私どもは、給食そめものには賛成でありまするし、この大切な給食を軍備の犠牲にしてはならないということを主張し続けて参っております。そしてまた、その増進、向上に努力をいたしておるのでございまするが、問題、その学童給食がいかなる形で行われるかというところに大切な点があるのでございます。  本協定規定によりますれば、拡大された学校給食計画がきわめて詳細に規定されまして、その計画実施に伴う運賃、事務費、運営費用などは全部当然日本の負担になることがきめられております。しかも、この贈与は本年度を第一年度とする千五百万ドルから年々逓減されまして、第五年度以降においては贈与が行われないことに相なっておるのでございます。しかし、贈与が打ち切られましても、日本政府は、初年度千五百万ドル分の贈与のときに決定されました学童給食のそのワクを継続する義務があることに相なっておるのでございます。このこと、資材の面から考えますと、学童給食に必要な分は今後もアメリカの余剰農産物の買付をしなければならないということを暗に強要いたしていることに相なるのでございます。(拍手)しかも、ストック分の処分を急ぎます余りに、アメリカは、この贈与分の第四年度の分までも、一九五七年六月二十日、つまり来年度までにその譲渡の手続を完了しなければならないことを、日本政府に要求いたしております。しかも、その贈与分の余剰農産物を学童に給食いたしまするに必要な日本政府の負担分につきましても国会承認を得ることを要求いたしておるのでございます。つまり、このことだけを見ましても、わが国の将来の予算までをもアメリカが拘束することに相なって参るのでございます。一体、アメリカに、日本の純然たる国内問題であります学童給食の基準までも規制するほどの権利があるのでございましょうか。(拍手)全くこれは屈辱以外の何ものでもないといわざるを得ないのであります。  なお、この贈与農産物の利用につきましては、四半期ごとにアメリカ政府に通報する義務が負わされておるのでございます。また、その効果的な利用を確保いたしますために、日本政府はアメリカ側の要求に応じまして現場の視察にも同行いたし、また、その配給、利用などの諸状況につきまして公衆に周知徹底させるところの広報活動を行うことが義務づけられておるのでございます。つまり……。
  46. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 福田君、申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  47. 福田昌子

    ○福田昌子君(続) このことは、一言にして言いますと、アメリカからいただくものですよ、大へんにありがたいことですよということを公衆及び児童に宣伝しなければならない義務が負わされておるのでございます。  かくのごとくいたしまして、次の世代をになう児童にアメリカヘの卑屈と従属性を強要しようというのが、この交換公文の内容なのでございます。(拍手)結局、この贈与は、私心のない人道的な贈与では決してないのでありまして、むしろ、きわめて巧妙な、まきえさであるということに気づかなければならないのでございます。(拍手)古来から、ただほど高いものはないということわざがございますが、私は、まさに、この贈与分が、将来の日本及び日本人にとりまして、精神的にも、物質的にも、どれほど高いものにつくか、はかり知れざるものがあることを、衷心よりおそれるものでございます。(拍手)  以上数点の理由によりまして、私どもは、わが国の将来の運命に重大な損害を及ぼす木協定と交換公文に対しまして、この際断固として反対せざるを得ないのでございます。(拍手
  48. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 伊東隆治君。     〔伊東隆治君登壇
  49. 伊東隆治

    ○伊東隆治君 私は、ただいま議題となりました農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件並びに千九百五十五年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件について、自由民主党を代表いたしまして賛成の意を表明せんとするものでございます。(拍手)  本協定は、改正後の千九百五十四年の農産物貿易の促進及び援助に関する法律に基きまして、アメリカ合衆国余剰農産物を円貨で購入し、これによって生ずる円資金を、わが国が長期の借款をすることを協定したものでございます。同趣旨協定は、昨年においてもわが国との間に締結し、これによって生じた円資金の七〇%が、借款として、電源開発農業開発等、それぞれわが国の経済発展に不可欠の重要産業部門に投資せられたことは、皆様御存じの通りでございます。今回の協定による農産物の買付は、前回分より幾分減額されて、六千五百八十万ドルとなっておるのでございますが、わが国が借款いたします分は、前回分よりも増率されまして、その七五%となっておるのでございます。これらの資金は、前回同様に、わが国の重要産業部門に融資されるので、これによってわが国の経済の発展がさらに大きく期待されることばもちろんでございます。  このように、われわれが本協定に賛成いたしまする第一の理由は、当然にわが国が必要といたしておりまする農産物が、外貨によらずして円貨で購入し得るという点でございます。しかし、一部には、このことによって通常の貿易のワクが狭められる結果、特に東南アジア諸国との間の貿易に支障を来たすのではないかと危ぶむ向きもございますが、こうした理由もありまして、今回は米の購入は取りやめたのでございます。このことによりまして、今回の協定によりまする農産物の購入が東南アジア諸国の輸出と競合することは全くなくなつたのでございます。また、小麦にいたしましても、昨年の実績より見ましても、通常の輸入量を圧迫したということも特に見られなかったのでございます。従いまして、今回におきましても、協定によりまする数量程度の農産物を購入いたしましても、わが国の通常の貿易並びに農業全般にわたりましての影響はないものと確信いたす次第であります。  次に、賛成の第二点といたしましては、積立円貨の七五%が、前回同様、長期借款として、わが国の自主的使用に供せられるということでございます。この借款の返済期間は、四十年という、通常の借款ではとうていあり得ないような長期でありまして、また利率におきましても、最初の三年間は据え置きで、第四年目から三%ないし四%という、一般よりもはるかに低いものであり、しかも、返済通貨は円もしくはドルのいずれでもよく、すべてわが国の裁量にゆだねられていることなどは、この借款がいかに有利であるかを明らかに物語つているのでございます。この借款によるわが国の経済的 利点についてはすでに申し上げましたので、今さら繰り返す必要はございません。  第三点としてあげられますのは、交換公文による学童用の贈与によるものでございます。贈与は、初年度の千五百万ドルより順次逓減せられることに なっておりまして、第二年度分は千百 二十五万ドルとなっておりますが、いずれにせよ、これによる学童の給食が拡大せられまする事実は、何としても認めざるを得ないのでございます。しかも、これらの量は、総体といたしまして、さほど大きなものでないために、わが国の貿易及び農業に及ぼす影響はまずないものと確信いたすものでございます。それに、また、贈与分は漸次逓減されますので、それだけの不足分を国内産のもので調達いたしますとするならば、農業、酪農業の増産の刺激となりますることは、当然にまた考えられることでございます。  しかし、私は、本協定に賛成するに当りまして、二、三、政府の善処と特段の努力とをここに強く要望いたしたいのでございますが、それは、購入した農産物の輸送の問題でございます。米国の法律によりますと、余剰農産物の輸送は、その五〇%が米国船によらねばならないことになっておりまするが、この点は、各国が購入をちゅうちょする最大の原因となっておることは事実でありまして、わが国におきましても、同様に、このために多額の外貨払いが余儀なくされているのでございます。この点については、政府におきましても十分留意されまして、今後は、こういう規定をはずしてもらうよう、特段の努力を払われますよう要望いたす次第であります。このことにつきまして、最近の新聞報道によりますると、米国でも考慮され始めている由でございますので、政府努力次第によっては、これが実現も十分に可能性はあるものと信ずる次第でございます。次に、円貨による借款によりまする便遂についてでございます。この使途については、交換公文の第五に列記されておりますが、いやしくも米国の指示によるものであるかのような印象を国民に与えるようなことは厳に慎しんでいただきたいということでございます。これは、あくまでも自主的に、独自の観点から、わが国の経済に寄与する目的に使用されるものであることは、あわせて国民に周知せしめることが緊要であると考える次第でございます。しこうして、その列記されている使途のうち、電源開発等もさることながら、特にわが国農民全体の福祉に直接関係を持つところの事業、たとえば、灌漑、排水、干拓及びこれらに関連する事業並びに森林、畜産及び水産等に関する事業に主として向けられるように、一段の努力をしていただきたいのであります。  私は、以上の要望を特に強調いたしまして、私の賛成討論を終る次第であります。(拍手
  50. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。  両件を一括して採決いたします。両件は委員報告通り承認するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  51. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 起立多数。よって、両件は委員報告通り承認するに決しました。      ————◇—————
  52. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十五分散会