○福田昌子君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日米間の
余剰農産物に関しまする
協定及び交換公文に対しまして反対の意見を申し述べんとするものでございます。(
拍手)以下、その
趣旨を簡単に申し上げたいと存じます。
本
協定及び交換公文は、一言にしてこれを申しますならば、アメリカのあり余っております
余剰農産物に対して、わずかばかりの借款と一部の贈与というえさにつられて飛びつき、
わが国にとりましては、さしあたって必要でもない
余剰農産物までも買い込みまして、これによってアメリカの
農業恐慌を
日本にまでも持ち込み、さらにはまた、
日本国民のアメリカに対する従属性に拍車をかけ、そして、ひいては
日本経済の自立を阻害して、東南アジア貿易の門戸を狭くする、こういう内容のものでございます。(
拍手)
まず第一に、私どもが了解に苦しみますことは、御承知のように、本年度は、昨年度の未
曽有の豊作を受けまして、
食糧事情はきわめて好転いたしておるのでございます。それにもかかわりませず、輸入
食糧の分につきましては、大体昨年度並みの量を、ことしも輸入することに相なっておるのでございまするが、そのさらに上積みとなりまする本
協定によるような
余剰農産物の買い入れに対しまして、ことに、昨年度よりも、小麦の買付などは四百八十万ドルも上回る量を、本
協定によって買い入れようということでございます。そればかりではございません。今日、まことに貧乏な
日本国内におきましても、
政府の経済政策の失敗のために、
葉タバコあるいは綿花の原材料は三、四年分もストックいたしておるのでございまするが、この上に、また本
協定によりまして、多量の
葉タバコと綿花をアメリカから買い入れようというのでございます。
政府の御
説明によりますと、こういうものは腐らないから買い入れるのだということでございます。かような状態におきまして、アメリカから押しつけられて買わされる
余剰農産物のために、
日本の農村はますます
貧困化への道をたどらされておるのでございます。御承知のように、今日におきましては、国内の小麦価格も低落いたし、その
生産量も低減の一路にあるのでございます。
政府自体が国内の
農業開発に非常に誠意を欠いて参りつつありますことは、本三十一年度の
予算の全貌を見ましても明らかであるのでございます。かような
日本国内の
農業政策に対しまする
政府の
態度がこのままで推移いたしますならば、勢い
日本農業は破滅の道をたどる以外にはないのでございます。(
拍手)こういう大きな犠牲を払ってまでも、今日
政府がこのアメリカの
余剰農産物の
協定に飛びつく意図を、私どもは全く了解するに苦しむのでございます。(
拍手)
一方、アメリカにおきまして、御承知のように、小麦も、
葉タバコも、綿も、国内需要量の二倍以上を
生産いたしまして、その過剰
生産をもてあましておるのでございます。そこで、アメリカは一、昨年、国内法四百八十号を制定いたしまして、この
余剰農産物を最も有利に他国に売り込む方法を
考えたのでございます。今回の
協定はこの四百八十号のアメリカの国
内政策を押しつけられて、
政府がそのアメリカの圧力に屈した、いわば
日本の従来の卑屈外交そのものの一つの現われと見ても差しつかえないのでございます。(
拍手)
政府は、これらの
農産物の買付にはドルが要らないことを強調いたします。しかし、いずれにいたしましても、これは借款であり、年三分の利子がつけられるのでございます。そして、昨年度の
余剰農産物買い受けの協力によりまする借款分までも合せますると、すでに一億ドル以上の借金をいたしておることに相なっておるのでございます。しかも、その利子分だけを
考えましても、長期借款といたしましても、最終年度支
払いまする利子分だけでも五千万ドルをこえるということが言われておるのであります。また、さらに、鳩山
内閣の御意思によりますると、来年も、再来年も、さらにまたその先も、この
余剰農産物を買い付ける御所存のようでございまするが、このことは言いかえますと、ますます借金を増加いたしまして、私どもの子々孫々にまでもその債務の
責任を負わすことに相なるのでございます。(
拍手)個人間におきましても、借金のある者は債権者に頭が上りません。
国家間におきましても全く同様でございます。
しかも、この
余剰農産物協定によりまする借款分の使用につきましてはアメリカはうるさく干渉いたしまして、結局
日本国内の使用にまかされました分につきましても、その使用いたしまする部分、大資本の資本の蓄積や、戦略目的にのみ使われるように、アメリカが陰に陽にワクをはめて参っておるのでございます。ことに、今回輸入いたしまする
農産物の輸送に当りましては、アメリカの商船法で、その五〇%までがアメリカの船で運送しなければならないことに相なっております。しかも、それはドルで支払わなければならないばかりでなく、アメリカの運賃というものは世界一高い運賃でございます。こういう点を
考えましても、アメリカが、実にこまかいところまでも、まことにそろばん勘定の高い国であるということがわかるのでございます。(
拍手)
さらに、本
協定を、
わが国の貿易促進の立場に立って
考えますならば、ことに東南アジア貿易の発展のためにも非常に考慮しなければならない点があるのでございます。
農産物の輸出をその第一義といたしておりまする東南アジアに対しまして、その最も必要な
農産物の輸入を、
日本がアメリカ一辺倒に傾きますということは、ひいては結局、大切な東南アジアヘの見返り輸出の道をみずからふさぐところの愚かな政策に相なるのでございます。(
拍手)
次に、また、本
協定につきまして見落してならない最も大切なことはこの
協定が、一つにはアメリカの自由
国家防衛という対外防衛政策に結びつき、二つにはまた米ソの対立の渦中にますます引き込まれて、アメリカヘの従属性を一そう強化するという、この点でございます。このことは本
協定。基本法でありますアメリカの公法四百八十号の第二条、第百四条、第三百四条によりましても明白であるのでございます。このような二つの世界の対立と抗争を目的とするような経済、外交政策に対しましては、これまた私どもは絶対賛成することができないのでございます。(
拍手)
さらに、また、今回は昨年度の
協定と異なりまして、
余剰農産物の贈与分に関しまして
協定と切り離して新しく交換公文といたしました。ちょっと
考えますと、ただでくれる贈与というもの、まことにありがたいように
考えられるのでございますが、これを詳細に検討いたしますと、これまた、アメリカにとつてはきわめて好都合、
日本にとつてはきわめて不利、苛酷な条件がつけられておることを知るのでございます。この贈与は小麦及び脱脂粉乳であり、学童の給食用に使われることに相なっております。もとより、私どもは、給食そめものには賛成でありまするし、この大切な給食を軍備の犠牲にしてはならないということを主張し続けて参っております。そしてまた、その増進、向上に
努力をいたしておるのでございまするが、問題、その学童給食がいかなる形で行われるかというところに大切な点があるのでございます。
本
協定の
規定によりますれば、拡大された学校給食
計画がきわめて詳細に
規定されまして、その
計画の
実施に伴う運賃、
事務費、
運営費用などは全部当然
日本の負担になることがきめられております。しかも、この贈与は本年度を第一年度とする千五百万ドルから年々逓減されまして、第五年度以降においては贈与が行われないことに相なっておるのでございます。しかし、贈与が打ち切られましても、
日本政府は、初年度千五百万ドル分の贈与のときに決定されました学童給食のそのワクを継続する義務があることに相なっておるのでございます。このこと、資材の面から
考えますと、学童給食に必要な分は今後もアメリカの
余剰農産物の買付をしなければならないということを暗に強要いたしていることに相なるのでございます。(
拍手)しかも、ストック分の処分を急ぎます余りに、アメリカは、この贈与分の第四年度の分までも、一九五七年六月二十日、つまり来年度までにその譲渡の手続を完了しなければならないことを、
日本政府に要求いたしております。しかも、その贈与分の
余剰農産物を学童に給食いたしまするに必要な
日本政府の負担分につきましても
国会の
承認を得ることを要求いたしておるのでございます。つまり、このことだけを見ましても、
わが国の将来の
予算までをもアメリカが拘束することに相なって参るのでございます。
一体、アメリカに、
日本の純然たる国内問題であります学童給食の基準までも規制するほどの権利があるのでございましょうか。(
拍手)全くこれは屈辱以外の何ものでもないといわざるを得ないのであります。
なお、この贈与
農産物の利用につきましては、四半期ごとにアメリカ
政府に通報する義務が負わされておるのでございます。また、その効果的な利用を確保いたしますために、
日本政府はアメリカ側の要求に応じまして現場の視察にも同行いたし、また、その配給、利用などの諸
状況につきまして公衆に周知徹底させるところの広報活動を行うことが義務づけられておるのでございます。つまり……。