○
佐藤觀次郎君 ただいま
地方教育行政の
組織及び
運営に関する
法律案及び
地方教育行政の
組織及び
運営に関する
法律の
施行に伴う
関係法律の
整理に関する
法律案につきまして、
文教委員会における審査の
中間報告を院議をもって求められましたので、御
報告申したいと存じます。(
拍手)
この際、去る十七日、
中間報告の
動議提出に際して
赤城宗徳委員よりなされました
提案説明は、いささか事情が違いますので、その
経過を念のため
報告しておきます。
事の起りは、四月十二日午後
委員会が
再開されたときからのことです。この日、めずらしく、
自民党席には多くの見なれない
委員が詰め寄り、空気のただならざるを感知いたしました。当日午後は、普通やらない
予定日だったので、わが
党理事は出席していなかったのですが、
審議促進のため、特に
委員会を
再開しました。午後四時半ころ、
野原委員の
質疑中、差しかえられた新顔の
与党委員も多く席を占め、また、
あとの方からは、ときどき
打ち切りの声も小さく聞えました。私は、手洗いに行くため、やむなく
前田委員に頼み、廊下に出ると、
文教委員会が
質疑打ち切りをやるからこれから出席するのだという
自民党の
委員の声を耳にいたしました。
そこで、種々
状況を
考えますと、先日、
清瀬文部大臣が、
新聞記者に、非公式ながら、本
法案が十二、三日に
委員会打ち切りになると述べられたことも、私は思い出されました。当日、
社会党の
委員席にはわずか四名しか出席していないという心細いありさまでしたので、これは容易ならざる
事態が起きはしないかと、心ひそかに心配いたしておりました。そこで、
坂田理事を
委員長席に呼んで、君の方はきょう
打ち切り動議を出すのではないかと尋ねましたところ、
同君は、そんなことはしない、
委員長、信用してくれという
返事でしたので、ちょっと安心いたしました。しかし、その後、
坂田委員より、
散会後
理事会を開けとの
申し出がありましたので、すぐわが党の
理事を出すよう
委員部の
諸君を督促して、その行方を探しましたが、見当らなかった。そこで、
前田委員に話してぜひこの
委員会が
散会した
あと坂田理事の要望に応ずるため、わが
党理事の
出席方をお願いいたしました。五時半、ようやく
山崎理事のありかもわかりましたので、
坂田理事にその由を伝え、かつ、
理事会は
委員会の
散会後開くこととして、
委員長からその旨を
散会前に宣言する旨を記したメモを
同君に示したので、
坂田理事はそれを了とせられました。その後また、赤城
理事が
委員長席に来られ、党との
関係もあるので、ぜひ
理事会を
動議として出したいとの
申し出がありました。私は、
坂田理事に話したと同じように、
理事会を開くのにわざわざ
動議を出さなくとも、
委員長から責任を持って開催することを宣言するので、そんなことはしないでほしいと申しましたところ、
同君も私の意を了とされ、自席に戻られました。(「何を言っているのだ」と呼び、その他発言する者多し)黙って聞け。それなら、なぜ
中間報告を求めたのだ。(発言する者多し)
野原委員よりの
質疑はその後も続いていましたが……(発言する者多く、議場騒然)
野原委員の
質疑はその後も続いていましたが、五時四十分ころ、ようやく終る時期がきたので、前田、横路両
委員から、坂田、赤城両
理事に、
理事会を
散会後開くことに了解を求めましたので、これで私は円満にいくと思い、ほっといたしました。ところが、赤城
理事に何かと耳打ちする
自民党の
委員の二、三の方もありまして、ちょっと私は変に感じていたやさき、しばらくして、突然赤城
理事が立ち、「議事進行の
動議」と言われたので私としては、これは急に
質疑の
打ち切りの
動議に変ったのではないか、先ほど心配していたことが実現してきたらしいと思い、議場の混乱を避けるために、直ちに
委員会を
散会したのであります。(
拍手)
その後、赤城、小山両
委員より、わが横路、前田両
委員と
交渉があり、話し合いがついて、円満裏に十三日
委員会を開催することにきめ、さよう処理したいと思っておりましたが、両者間にその了解の大きな食い違いがあることがわかりました。その後、
自民党側十二名の署名入りの
委員会開催要求書が参りましたので、これは、十三日
委員会を開き、何らかの強行手段をとることと確信し、まず両者が話し合うことが第一であると思い、
理事会を十三日午後一時に開くことといたしました。十三日
理事会を開きました結果、両
党理事の間には相当の勘違いもあり、十二日のことはお互いに誤解のあることもわかったのであるが、
委員長としては、
理事会の議がこの際円満にまとまらなければ混乱を生ずると思ったので、五回の
休憩をしながら、七時間にわたし
理事会を開いたが、わずかの食い違いで議事がまとまらず、ついに翌日に持ち越しました。
自来五日間、毎日
理事会を開きましたが、
自民党は審議期間三日を主張し、
社会党は五日ということで、両者が譲らず、私としてはお互いに話し合いで円満に処理を期待いたしましたが、ついにまとまらず、わずかの相違でかくのごとく
中間報告を余儀なくされたことは、返す返すも残念であります。(
拍手)十六日も、私は両者の
最後の妥協案を出したが、そのとき、赤城、坂田両
委員より、
委員長の
中間報告の
動議の手続をしたのだから、今さらせんなきことと、ついに
最後の通牒を受け
通り、万事休した次第であります。
私は、昨年三月以来
文教委員長の重職を汚し、松村文相のとき、
政府提案の十一
法案を円満にまとめ上げ、また、困難な議員
提案の三案も無事通過させ、各党の協力のもとに、その職を全うして参りました。(
拍手)清瀬文相になるに及び、一つは自民両党の合同ができたのにもよるのでありましょうが、実に、
委員会は、前の時代と変り、険しい雰囲気と変り果てて、しばしば怒気を帯びる発言のある
委員会となり、まことに残念に存じました。しかも、本
国会にも
政府は七つの
法案を仕上げ、今や
政府提案の残っているものはわずか四
法案となりました。私は
委員長として、教育二
法案と並んで教科書の
法案は世評の高い重要
法案であるから、努めて審議期間も長く、慎重審議すべきものと
考え、私は一日の欠席もせず、熱心に
法案の進行に努めて参りました。(
拍手)ときには
社会党の
委員の
質疑にある程度の
制限を加え、そうして、公平な
委員長として、
自民党委員もよく理解していただいたはずでございます。(
拍手)
委員長の
中間報告が求められた例は、
昭和二十二年以来初めてのことでございます。すなわち、第一
国会、
昭和二十二年十一月二十二日の
会議において、すべての
動議に先だち直ちに鉱工業
委員会において審査中の臨時石炭鉱業管理
法案について鉱工業
委員長の
中間報告を求める
動議が
提出され、院議でこれを可決したのでありますが、
委員長伊藤卯四郎君が同
委員会における審査の
経過を
報告したこと以来のことであります。このときは、民主党の議員が自由党にくらがえしたため、
与党委員が急に減った理由により、
委員会の構成が変ったので、やむなく本
会議で
動議を求めて
中間報告をなし、それから
委員会に諮り、否決されたので、やむなく本
会議において採決した理由によるものでありました。今回とは全くその事情が異なっていることも理解されたいのであります。
今回の審議がおくれている原因は、第一に、清瀬文相は本案を二月下旬に必ず
提出すると言っていたのに、
与党間の賛否両論の調整がつかず、やっと三月の九日に
委員会付託になった点にあります。また、第二の原因は、本案の審議中、清瀬文相がしばしば
委員会において冗長な
答弁をなし、時間を浪費したことでありまして、このことは
与党の
諸君もよく御存じのはずであります。(
拍手)
さらに、審議の過程中に最も大きな問題となったのは、矢内原東大学長以下十大学長の声明、次いで、関西の滝川京大学長以下十三大学長、また、上原教授以下六百七十五名の全国学者の
法案を憂うることなど、その声明の内容は、「教育は時の政治の動向によって左右されてはならず、教育の制度と
方針は政争の外において安定させるべきだが、最近、文教政策の傾向はこの原則を危うくするように思われる。たとえば教育
委員会について、あるいはまた教科書制度について、そのいわゆる改正案を見ると、いずれも部分的改正ではなく、民主的教育制度を
根本的に変えるようなものであり、ことに教育に対する
国家統制の復活を促す傾向がはっきりしているのは、容易ならぬことといわねばならない。こうした傾向はやがて言論思想の自由の原則を脅かすおそれあるものである。戦後、民主的な教育の制度と
方針が創始されて未だ年月も浅く、各部面にわたって改善を要する点はあるとしても、その
根本原則は堅持しなければならない。もし法制上改正を要する点があるならば、
政府はそのことを適当な審議機関に諮問して十分に審議を尽さしめ、また広く
関係方面の専門的
意見を聞き、世論に耳を傾け、慎重審議の上で初めて法規の改正に着手し、これを
国会の議にまかせるべきであって、かりにも制度を
根本的にくつがえすような改正案を急に作成して
国会に上程し、その通過をはかるようなことは、厳に戒められなければならない。ようやくにして健全に育成されつつある
国民教育の前途を思い憂慮にたえず、ここに有志相はかって声明を行い、
政府と
国会の反省を促し、世論の一そうの興起を期待する。」(
拍手)というものでありまし て、社会に大きな波紋を与えました。また、全教委、地教委のこぞっての熱烈な反対もあり、この
法案をめぐって、教育の民主主義を守り得るかどうかのまことに重大な岐路に立たされたものでありまして、
委員長としていよいよ慎重審議をする必要が痛感されたのも当然と理解されたいのであります。(
拍手)
さて、この両
法案は、ともに去る三月八
日本院に
提出せられ、翌九日の
文教委員会に付託されました。次いで、十四日、
清瀬文部大臣より
提案理由の
説明を聴取し、十九日より両案に対する
質疑に入ったのであります。自来約一カ月にわたり、ほとんど連日のごとく
委員会もしくは
理事会を開き、本案の審査について円滑なる議事の進行をはかって参ったのであります。
本案は、申すまでもなく、わが国教育の将来に多大の影響力を持つ重要
法案であります
ゆえ、院の内外において幾多の論議がなされ、また、本院に
提出されますや、議員各位より重大なる関心が寄せられましたのであります。すなわち、去る三月十三日、
委員会審査に先だち、本
会議において
清瀬文部大臣より
提案理由の
説明を聴取し、山埼
委員よりこれに対する
質疑がなされたことは、各位御
承知の
通りでございます。次いで、
委員会の審査に入りますや、各
委員よりきわめて真摯かつ熱心なる
質疑がなされ、
政府当局よりもそれぞれ懇切なる
答弁がなされたことは、ありがたいことでございました。
特に、本
委員会では、
法案の内容の
重大性にかんがみ、広く教育に関するわが国各界
代表の方々より
意見を聴取するため、去る四月七日及び九日の両日にわたり、まれに見るりっぱな公聴会を開きました。(
拍手)公述人として招致いたしましたのは、東京大学学長矢内原忠雄君、元総長南原繁君、全国町村会会長関井仁君、
日本教職員組合中央執行
委員長小林武君、長崎県知事西岡竹次郎君、全国都道府県教育
委員会委員協議会幹事長松沢一鶴君、国学院大学教授北岡寿逸君、朝日
新聞社論説
委員伊藤昇君、東京大学教授田中一郎君、京都大学教授池田進君、千葉市教育
委員尾形猛男君、
日本PTA協議会会長塩沢常信君の十二名でございまして、これらの方々より本案に対する熱心かつ忌憚のない
意見の開陳がなされました。また、各
委員よりも公述人に対する真摯な
質疑応答を行いまして、本案に対する線密周到な検討を進めて参ったのであります。
さて、本
委員会といたしましては、先にも述べました
通り、
委員会審査だけについて見ましても、公聴会を含めまして、今日まで回を重ねること十四回、時間数にして相当の程度審議しておりますが、なお十分なる審査を要するところが多々あります。しかしながら、
地方教育行政の
組織及び
運営に関する
法律案について見ましても、本則六章六十一カ条、附則二十五カ条から成り立つ大きな
法案でございまして、特にその盛られておる内容から申しまして、一条々々ゆるがせにできない重要なものを含んでいるのであります。(
拍手)
本
委員会といたしましては、
提案者たる
清瀬文部大臣、緒方
政府委員に対する
質疑応答及び資料の要求によって法文の内容を具体的に解明するとともに、また、先に述べた公聴会により、識者の批判を聞き、
国民各位より本
委員会に寄せられた各種の陳情、さらに、
新聞その他による世論の動向に注目して参ったのでありますが、いずれにいたしましても、あらゆる角度から慎重に検討いたしまして、本案審議に万全を期すべきものと存じておる次第であります。しかるに、現段階では、本
法案に対する総括
質問を残し、逐条
質疑に入ったのでありますが、逐条
質疑はいまだ第七条第一項の程度までしか進行いたしておりません。第二に、本案の重要性にかんがみ、現
内閣の最高責任者たる
鳩山総理大臣より直接
政府の見解をただしたく、
総理に対する出席要求がなされておりますが、これがまだ済んでおりません。第三に、
地方教育行政について密接なる関連を持つ本院の地方行政
委員会より、本案に対する連合審査会開会の申し入れが参っておるのでありますが、これもまだ行なっておりません。
以上が今日までの
経過の概要でございますが、次に、
法案の内容に関しまして、
文教委員会における審査の
経過を詳細に御
報告申し上げたいと思います。(
拍手)
本
委員会におきましてはこれよりいよいよ
質疑の段階に入ったわけでありますが、まず、逐条審査に入る前に、
一般質疑の中において問題となった諸点について申し上げます。
その第一点は東大矢内原学長ら十名の学者による文教政策の傾向に関する声明に関する問題であります。この問題について、平田
委員、辻原
委員、木下
委員、
河野委員、高津
委員より、それぞれ熱心な
質疑がなされました。そのおもなる点について申し上げます。
まず平田
委員より、この声明について大臣の
所見をただしたのに対し、
清瀬文部大臣より「大へんいいことが書いてあると思います。これは二つありまして、第一段は、民主的教育の
根本制度は容易に変更すべきものじゃないということ、第二段は、それぞれの機関等に
意見を徴して、慎重審議の上で議案を作れということでございまして、大体私もそういたしたつもりでございます。ただ、大学におられまして、
国会や文部省でしておることが、まだ十分おわかりにならなかったのじゃないかと思うのであります。」という
答弁であります。さらに、同
委員より、文教政策の傾向に関する声明というこの中には最も大きな問題は、こういう大改革を審議機関に諮問もしないで、急速に
提出しなければならなかったことと思われるその理由について
質問いたしましたのに対し、
清瀬文部大臣より「このうちで、今私が
説明しました教科書
法案と、それから今審議の対象となっておりまする
地方教育行政組織及び
運営に関する
法律、この二つについて言っておられまするが、教科書法についてはかねがね調査いたしておりましたが、中央教育審議会からは十二月の五日に答申がございまして、これをよくかみ分けて、とるべきはとってこの案を立てております。それから教育
委員会のことにつきましては、私の前任者が教育行政のことを諮問したうちに含まれておりまするので、
昭和二十八年七月二十五日付で詳しい答申が出ております。」との
答弁がなされました。次いで、辻原
委員より、これに関連して次のような
質問がなされました。すなわち、「今大臣の平田さんの
質問に対する
答弁を聞いていると、これらの人々の見解はこの
法案の研究あるいは
政府の真意、こういうものを十分検討なりあるいはそんたくすることがないために、このような声明を発表したのであって、
政府としては所要の手続、あるいは十分
関係の方々の
意見を尊重してやったのだという
答弁でありますが、もし大臣がお話のようであるなら、少くとも今日
日本の教育学界の中の大部分の人たちが、あげてこの
法案に対して警告を発するような、そういう異例の
態度はとらないでありましょう。そこに、大臣のお
考えになっている点と、またこの
法案に対して従来
関係した方々あるいは
一般の
国民との間に、非常にギャップがあると
考えられます。これに対して大臣の少くとも納得せしめられ得る御見解を承わらないことには、われわれとして黙って引き下るわけには参らない。この文教政策の傾向、言葉はどうであろうとも、少くともこれは一歩一歩教育がその根底をゆすぶられて漸次言論の自由、学問の自由を脅かすような過程をたどりつつあるということに対する声明である。これは単に清瀬大臣の見解のみならず、
鳩山内閣の文教政策が、そういった言論自由の圧迫、民主教育の根底をゆすぶつているという傾向をたどりつつあるという学界の方々の相一致した見解であります。これに対して、
政府としては具体的にどうであるかということを天下に表明せられる責任が、少くとも
政府を
代表していらっしゃる
鳩山総理にあると思うがどうか。」従って文部大臣の
答弁の
あと、
総理の出席要求がなされました。これに対する
清瀬文部大臣の
答弁は次の
通りであります。すなわち、「この声明に対する私の答え今平田
委員に対していたした
通りであります。いい声明と思います。この主張にはちっとも
異議ありません。民主教育の根底は容易に動かすべきものではありません。それから法制上に改正を要するところがあるならば、それは適当な機関に諮問して十分に審議を尽すということは、その
通りでございます。ただ、もしそれが中教審に諮問してないということでありましたら、教科書法については、最近諮問いたしましてそれを採用しております。それから教育
委員会については前任者が諮問して答えが出ております。もっとも、これは全部はとっておりませんでした。けれども、その答えの中に、市町村
委員会については多少の疑念なしとはしがたいが、現行法の性格を直ちに変改するなとおっしゃっております。私の方も疑念を持ちましたから、地方
委員会は廃止しないで存置してその規定を改めて、今の案のようにいたしたのでありまして後段のことについては、少し御調査が足らなかったのではないか。前段のことについて、ちっとも異存はありません。」との発言があり、また私からは、「ただいま辻原
委員より要求のありました
鳩山内閣総理大臣の出席につきましては、後ほど
理事会に諮り、この取扱いを決定いたしたいと存じますので、御了承願います。」との旨の発言をいたしました。
以上が三月二十日の
委員会における
質疑の内容でありますが、次いで二十七日に至り、木下
委員より、「十人の学者たちから声明書が出たが、その後日数もたちましたし、
状況の変化もあったと思うのでありますが、大臣の心境の変化は少しもありませんか」との
質問に対し、「少しもございません。」との
答弁でございました。さらに、木下
委員から言葉を続け、「では、私進んでお尋ねいたしますが、十人の学者たちがああいう
意見を出されたのに対して、大臣はこの前も、また、ただいまも本
委員会で御
答弁をなさったように、まことにけっこうな
意見だ、この
通りと思う。事実についてはいささか調査が間違っておることがあるが、
意見としてはこの
通りだということを、はっきり、たびたびおっしゃっておると思うのであります。よいことだ、この
通りだと、はっきりあれほどおっしゃりながら、なぜ逆な御
提案をなされたか。集約して言いますと、よろしい、この
通りだとおっしゃりながら、それを守らなくて公選を任命にするという逆なことをお
考えになったか」について尋ねたことに対して、
清瀬文部大臣より、「この声明は教育
委員会の構成を公選方法にすべしという御主張じゃないんです。この中には各方面に聞くがよろしい、こういうことが
最後でございます。私もそれを聞くに努めたのでございます。」「それからまた、教育
委員会のことにいたしましても、中教審に諮って一ぺんかけておりまするし、また地方制度調査会にもかけておりまするし、教育
委員会制度協議会にもかけておりますし、また政会諮問審議会にもかけておりまするが、これは一々違った答えが出ております。違った答えをみなとるわけにいきませんから、これらを研究いたしまして、また
党内の調査も経てここに至つたのでございます。これは、教科書のように、一つの単純なものじゃございませんから、どの
委員の方も、おれの言っていることが通っておらぬとお
考えでありましょう。しかしながら、どの
委員会のおっしゃることもみな少しはとってあります。」かような
答弁でございました。これに関連して、
河野委員より、「しかしながら、大臣も御
承知のように、その後、関西におきましても、瀧川京都大学総長以下十二氏の、いわゆる矢内原総長声明に対する支持の声明が表明せられて参りました。なおまた、その他のいろいろな学者の間においても、こういった矢内原総長以下の声明を支持するんだという強い意思表示がだんだん行われておるということを承わっています。大臣はそれはきわめて一部の学者の声明であると言われる。ところが、今日に至りましては関西においても、あるいは全国におきましても、そういった機運が非常に強く盛り上ってきている。これが一つの情勢の推移であるというふうに私は見て参るが、こういった情勢の推移が起って参っても、なお大臣としては、やはりそれは一部の学者の
意見であるというふうに
考えられるか」との
質疑に対し、
清瀬文部大臣より、「関西での学者の御決定は
新聞で
承知しているだけで、書面も受け取っていない。しかしながら、東京の十大学学長の御
意見は、必ずしもこの
法案をやめてしまえとか、どこを訂正せいということじゃなくて民主主義の教育の
方針は捨てるなとおっしゃるので、私も捨てません。改正の必要があったら、適当なところに諮問せいとおっしゃるから、将来も諮問するつもりであります。現在も諮問してこれを作ったので、一向私のやっておることと抵触しておらないのです。
ゆえに、これを尊重して、現に
新聞の切り抜きまで私は張って持っておるくらいで、けんけん服膺しておるのでございます」との
答弁がございました。また、文部大臣の
答弁から察しますと、おれは暗にこの十人の学者の言うことはよいと思うが、たまたま党議によってこうされたのだから、それに服したのだというお話がありました。党議ということで間違ったことをがまんしておやりになるということでは、
日本の文部行政の責任者として大へんなことだと思うがいかがですかとの
質疑があり、
清瀬文部大臣より、「党でおきめになったことに、私は逆なことはしないのであります。」「しこうして、この案ができてから後に学者先生が声明をお出しになった。この声明を文字に拘泥せずに熟読翫味いたしますと、これまたわれわれの案と根底において違うところはございません。」との
答弁がありました。(
拍手)
最後に、翌二十八日に、高津
委員より次のような
質疑がなされました。
この
法案に対しては目下ごうごうたる非難が起っており、その非難の台風は日を追って吹きつのるばかりであります。私はこれは文部大臣として十分に御留意いただきたいと存じます。
すなわちその実情を申しますが、第一は、東京方面の教育界の最高の権威矢内原東大総長初め現役大学学長八名、元大学総長二名、計十名の反対声明がありました。
第二は、これに続く関西教育界の最高権威、これまた瀧川幸辰総長を初めとする十三名の反対声明であります。
第三は、大学教育を受けつつある大学生十八万人の一大集団である全学連の右の反対声明に対する支持声明であります。
第四は、全国都道府県教育
委員会協議会すなわち全教委と、全国教育
委員会委員連絡協議会すなわち全地教委と、これら全国の全部の教育
委員がこぞって反対声明を出しているという事実。しかもこの教育
委員の諸氏は総辞職を決議しているという事実。文相御自身に対する不信決議をしているという事実。
第五は、これらの教育
委員と日教組との
関係は、従来犬とサルとの間柄であったわけでもありませんが、しかし親類同士という間柄でもなかったのであります。ところが一たびこの
法案の内容を見るに至り、一切の行きがかりを一擲して、この
法案に関する限り、教育の危機事ここに至っては黙視できないとして共同戦線に立ち、本
法案反対の共同声明を発表するという新しい
事態まで生れつつあるのであります。
第六は、大臣も
委員各位も御存じの教育界の元老、ペスタロッチ研究の権威たる長田新氏を会長とするあの
日本教育学会は、この
法案を学問的立場から検討中でありましたが、今月十九
日本法案に反対する第一次声明を発表し、これを文相あてにはもちろん、私たち文教
委員にも
提出して参りました。
第七は、学問、思想の自由を守り、教育の統制に反対する声明発起人会から、昨日私たち文教
委員に対して反対の声明を持って参ったのでありますが、これも二百四十四名の連名になるものでありまして、非常に権威のあるものと認めます。
第八は、これまた昨日東大の勝田守一教授ら五名の
代表が全国六百十七名の有名教授の本案に反対する抗議文を当
文教委員長佐藤觀次郎君に
提出されました。
第九は、学校の先生方に常々会って、教育を語り合い、教育についてともに種々な協議や行事を行なっているところの、
一般国民の水準以上に教育の愛好者であり理解者であるPTAが続々としてこの教育
委員会骨抜き
法案の反対に立ち上ろうとしておるのであります。
かくのごとき足並みそろった反対機運の大きさ、高さ、深さと申しましょうか、それは全く前古未曽有のものでありまして、教育界はこれより大荒れに荒れようとしておるのであります。
おれたちは多数党だ、数で押し切ればいいのだという
態度で臨むことは、はなはだ乱暴な文部行政ではないでありましょうか。このような、教育
関係者のほとんど全部といっていいほどの人々が反対する場合には、それらの事情を大所高所から冷静に勘案され、とにかく大切な教育のことでありますから、強引な処置は見合せられるのが妥当ではないでありましょうか。
このような反対があるのに、この
法案を通過させ、実施するのは、はなはだ乱暴な文教行政であるという点、他と違い教育のことなのだから、これらの圧倒的な反対は十分に勘案してこの
法案は見合せるがよかろうという点
この二点について伺いました。これに対し、文部大臣より、「今御列挙の九つの
意見について、私がまだ存じないものもございますが、しかしながら、教育に関する立法はきわめて大切なものでありまするから、私の手元に来ますれば、よく拝見いたそうと思っております。」との
答弁がありました。この問題については、なおいろいろな論議がなされたのでありますが、詳細は
速記録に譲りたいと思います。(
拍手)
次に、第二点といたしましては、教育
委員の総辞職問題であります。すなわち、山崎
委員より、本
法案がもし通過の暁は、全国の教育
委員が一斉に総辞職も辞せないという気がまえを示しているが、万一こういう
事態が起ったなら、
日本の教育行政が一大混乱を起すことは火を見るより明らかである、従ってこういう
事態が起ったときの文部大臣の責任の帰趨を明確にされたい旨の
質疑がなされました。これに対し、文部大臣より次の
答弁がありました。「全国の教育
委員の方々が教育に熱心のあまりいろいろと御研究になっておることは
承知いたしておりまするけれども、これらの人が同盟して一斉に辞職なさるなどとは私は
考えておりません。教育を愛護する者はさようなことには走るまいと
考えておるのでございます。」さらに、山崎
委員より、「私たちもそうありたいと実は願います。その気持は文部大臣もわれわれも同一でございまするが、御
承知のごとく、神奈川県は、過日の
新聞紙上を見ますると、もうすでに総辞職をやるようです。また、聞くところによりますると、地方教育
委員会の中にも、長野県でありましたか、出ておる。なおかつその傾向が全国的に広がらんとしておるこの趨勢というものは、あなた方の情報網にも私ははっきりと入っておると思うのであります。」「私がお尋ねしておりますことは、そういう
事態が起ったときの文部大臣の責任のとり方の御決意を聞いておるのであります。」そこで、
清瀬文部大臣より、そういうことが起らないことを望むというよりも、起らないとかたく信じておる旨の
答弁がありました。さらに、いろいろ論議があった後、山崎
委員より、「現に教育
委員会の全国協議会では総辞職をする決意を表明しているんですから、今後起ってくるかもしれないという
状態は、今あなたが事務的にその補充ができるとかいうような、そういう非常識な
答弁をされるものじゃ私はないと思うんだ。重ねてお聞きいたします。」と
質問されましたのに対し、
清瀬文部大臣より「そのようなゼネストに類するようなことは、教育
委員会に限って断じてないと思います。」との
答弁がなされました。なお、論議がいろいろございましたが、詳細は
速記録に譲りたいと存じます。
次に、第三点として論議されました問題は、文部省の広報活動についてであります。これについては、高津
委員、辻原
委員、
野原委員より、それぞれきわめて熱心な
質疑がなされ、
清瀬文部大臣、淺井人事院総裁、林
内閣法制局長官より
答弁がございましたが、詳細は
速記録に譲り、
質疑のおもな点だけを申し上げます。
まず、四月三日、高津
委員より、文部広報三月二十三日号記載の重要教育二
法案の問題点の解明文に関し、まだ議会で論争の最中に、これが
質問もまだ続行しているのに、こういうような文書を税金の中から大量に印刷をして振りまくということは、何らかの
法律に違反しないか、また辻原
委員より、
法案が
国会で論議中、しかもそれぞれ見解を異にし、
国会の審議を通じてでなければ
法律の解釈が明確にならない、それにもかかわらず、そういうものを事前に取り上げ、一方的解釈を与え、文部省の責任において宣伝していくことは、
政府の一機関としての文部省として越権行為であり、文部省の広報活動の範囲を越えるものではないか、また
野原委員より、行政庁が、立法府において今日政治上の大きな論争課題となっているものを一方的な立場で主張を流すことは、立法府の意思をじゅうりんするものではないか、また、この広報は政治的意図をもって発行されたものでないか等の
質疑がございました。これらに対し、
清瀬文部大臣より、この広報の発行は文部省設置法第五条第十号の「所掌事務の周知宣伝を行うこと。」に根拠を置き、文部省
組織令三十五条により広報課が置かれ、そこの事務になっている、もちろん責任は私が負います、
政府並びに文部省で出した
法律案の内容を世間によく知らしめるための報道は当然のことであって、しなかったらわれわれの怠慢である、広報活動の範囲を一歩も出ていないと思っている旨の
答弁がなされました。次いで、辻原
委員より淺井人事院総裁に対し、文部省職員の行なった文部広報百四十一号裏面の文章表現、編集方法は、少くとも
法律案がまだ
法律とならない段階のものであって、しかも全国の教育
関係者に及ぼす影響は大きいから、
国家公務員法第百二条の政治的行為の
制限規定及び人事院規則に照らし、どのように解釈をするかという意味の
質問を行なったのに対し、淺井人事院総裁より、この広報活動に
関係している
一般職の職員は上司の命を受けてやっておることで、人事院規則第七項により違法性は阻却されておると
考えている、ただ、こういうことが望ましいかどうかということは、人事院から申し上げるべき問題ではないと思います。との
答弁がございました。この点を要約して、辻原
委員より、総裁の御見解としては、これは一
国家公務員の責任の範囲内で出したのではないいわゆる文部省全体としてこの行為をやったのであって、
国家公務員法の個人に対する処罰規定の範囲外であるという見解かとただしたのに対し、その
通りでございますが、これは職員の本来の職務を執行するために行なった行為であると
考えております、と
答弁がなされました。また、同じく辻原
委員より、林法制局長官に対し、文部大臣の責任において、また文部省の行政当局の責任においてかかる行為が許されるかと
質問したのに対し、政策的に論ずることは別問題であるが、
法律的にはその範囲を逸脱するものではなかろうとの
答弁がございました。
さらに、引き続いて、三月二十七日から四月六日まで六回の総括
質問を行い、続いて二回の公聴会、四月十日から三回の逐条審議を行い、ようやく第七条までの審議を終った
状況であります。これらの詳細については、すべて
速記録によって御
承知を願いたいと存じます。
三月十九日及び二十日の
委員会に次いで、二十七日の
委員会におきましては、平田
委員から熱烈なる
質疑がございましたが、その内容について申し上げますと、まず平田
委員は、第一に、現行教育
委員会法が教育行政制度として果してきた業績及び欠陥について、第二は、公選制と任命制について、第三は、教育長の選任方法が都道府県と市町村で異なる理由、第四には、文部大臣の権限強化について、
清瀬文部大臣及び緒方
政府委員に
質疑を行いました。これに対し、第一の現行教育
委員会法が教育行政制度として果してきた業績及び欠陥については、緒方
政府委員から、教育
委員会が教育行政制度として果してきた従来の業績については、六・三制の確立に非常な
努力がされ、特に施設の面等の整備が行われたことなどたくさんあるが、教育
委員会制度が直接教育内容の面に効果をあげたかということについては、これがそうだと直ちに申し上げかねると
答弁がありました。続いて、
清瀬文部大臣から、この
法案作成に際しては、現在の教育
委員会の長所、短所をよく研究の上で当ったのであると、文部省内で調査研究した資料に基いて
説明がありました。第二に、公選制と任命制については、
清瀬文部大臣は、第一、選挙によりますと、すべての選挙に伴う弊害がこの場合も
考えられ、あるいは特殊な無理な請託とか、あるいは
委員の行動にひもがつきやすい、あるいは選挙のわずらわしさから、選挙をきらって適当な人物が出ない、あるいは選挙であるから政治的所属の
制限ができないので、全員または過半数が一党にかたまって中立性を危うくするおそれがあること、あるいは、選挙によると、同時にみな退職するので、連続性、すなわち安定性を欠くこと、
理事者と教育
委員との政治的立場から摩擦が激しくなること、
委員会は合議制だから長所はあるが、同時にまた、
委員の一人一人の責任感が薄くなること、あるいは合議制なため処理が敏速を欠くこと等、両方の長所、短所を拾い上げ、これをよく検討した上でこの
法案が生まれたのであるとの
説明がありました。
平田
委員は、これに対し、今の
説明は矛盾しているように思うが、
委員の発言は、民意が反映した、これは選挙をすることによって住民がみな市町村の教育行政に参画しているという、この意思がここに反映されたのであると私は思うが、今度の
法案によれば、任命制にしたので、この民意の反映ということが行われなくなるのではないかとの
質問がありました。これに対して、
清瀬文部大臣は、選挙は民意を反映するので、これが長所であるが、その反面に、小さい団体の民主主義では長短交錯していることが事実であり、やはり、この場合は、選挙制より任命制の方が、前述したような中立性確保の上から最もいい方法であり、また、公選によって選ばれた首長が議会の
承認によって任命するのであるから、民主的でもあり、最適の人物を得ることができるとの
説明がありました。
平田
委員は、さらに、文部大臣は常に党議を重んずると言っているが、大臣が無所属でない限り、やはり自由民主党の政策が教育の上に織り込まれる、あるいは、市町村長の政党の政策がそのままに織り込まれるということかないかとの
質問が行われ、文部大臣は、これに対し、それは非常に
説明しにくいことで、たとえを申すことはよくないかもしれませんが、船を作る造船所と、できた船を運航する船長のようなもので、教育法をいかにするかということは、
日本では
国会という造船町でやるよりほかはない、
法律を作る以上は、やはり政党
内閣が
提案して、反対派の人にも集まってもらって、十匁に検討して教育法を作る、これができ上ったら、これを運行する
委員会でも、先生方でも、公平中立に、一方に偏しないよう教育
委員会の行政をやつていただき、教員の方も中立の教育をやっていただくのであります、との
答弁がありました。
次に、第三の、教育長の選任方法が都道府県と市町村で異なる理由についてさらに平田
委員の
質問に対し、
清瀬文部大臣、これは一口にいえば簡素化のためであります、小さい町村では簡素にする方がよかろうと
考えたためであるとの
説明がありました。これに対し、平田
委員は小さい町村はどうして簡素にしなければならないかと
質問すれば、
清瀬文部大臣は小さい村では何事も簡単にする方がよいと思う、人口も少く、学校の数も二つか三つくらいだから、あまり大きな
組織は必要ないと思われるとの
答弁があり、さらに、平田
委員は大臣の
考えるようにすると、教育の
機会均等という教育基本法が行われなくなると思う、そのような大臣の
説明では納得できない、特に、町村によっては三人の教育
委員でよいとのことですが、教育長が一人、
委員長が一人、平
委員が一人、このような三人で教育のことが
運営できるかどうか問題であるとの
質問に対し、文部大臣は、勉強して下さるならば十分できると思う、三人で
支障あるなら五人でもよいとの
説明がありました。
次に、第四番目の文部大臣の権限の強化について平田
委員は今回
提出された
法案は教育
委員会の大切な点を骨抜きにして中央からの強いひもがつけられる仕組みになっている、いわゆる
国家統制への道をたどっているものであり、現行法の地方分権の建前を切りくずして文部大臣の監督権を強化したものであると思われるとの
質問に対し、
清瀬文部大臣は、国が
国民教育の任務を負っているのだから、児童生徒に事故が起きた場合責任をとらなければならぬ、そのためには、平生から指導監督の力をもう少し強くやっていいのではないかというのが全体の世論でありますので、この案もこういう趣旨で立てております、という
説明でありました。
次いで、木下
委員から、第一に、児童生徒の自殺事件が多くなる傾向にあると思うが、そういう事実及び原因についての調査、第二に、学区制の廃止、第三に、文部省における体育局の新設、第四に、矢内原学長外十氏の声明に対する現在の心境、第五に、民主主義の根底をゆるがすような公選制から任命制に切りかえる逆な趣旨の
法案を
提出された理由、及び、任命制と政治的中立等について文部大臣に
質疑を行いました。これに対し、文部大臣は、第一の
質問、すなわち、児童生徒の自殺事件について省内に連絡班という責任を持つものを設け、そういう事故は逐次あるたび調査させているとの
答弁があり、これに対し、木下
委員は、このように入学試験や就職試験に落ちて自殺したりする生徒が多くなる傾向があるのであるが、文部当局はいかなる善後処置をとっているかとの
質問に対し、緒方
政府委員は、省内に臨時調査連絡班という機構を設け、地方の学校の事故あるいは児童生徒の非行の問題につき調査し、その結果を検討していること、第二、児童生徒の生活指導、生徒指導を徹底させ、かようなことを防止していこうとしていること、このため、三十一年度におきましては予算も計上し、地方にこの生活指導や生徒指導をやるよう講習会を開き、あるいは協議会を設けて
努力いたしておるとの
答弁がありました。次に、学区制について、教育の
機会均等という面から見て学区制を設けて縛っておくことがよいかどうか、二、将来この制度を継続するつもりかどうかとの
質問がありました。これに対して、
清瀬文部大臣は、学区制は当分現行
通りに維持していく
考えである、第二、これが絶対的に永久方法とは
考えられないが、現在は遺憾ながら学校差というものがあり、学区制を廃止すればそこへ集中ということになるので、この
法案でも学区制は認めているとのことでございました。さらに、木下
委員は、学区制を撤廃することは学校差をなくすることにじゃまにならないし、また、教育の
機会均等という意味からも、学区制を廃止する方がよいと
考えているから、文部当局でも十分研究してほしいとの希望がありました。
次に、第三問として、体育局については、木下
委員から、文部省に設置の計画があるかどうか、あるとすればその内容について伺いたいとの
質問があり、これに対して、
清瀬文部大臣は、希望があること、三十一年度予算の作成に当り、閣
内閣外に
交渉もしたが、わが国の財政
状態の上から不可能であった、今後
機会あるごとに
努力したいとの
説明がありました。
次いで、矢内原学長等十氏の声明に対する木下
委員の
質問は、この十氏の声明が出てから一週間も経たが、大臣の心境にその後変化はないかどうか、また、大臣は、この十氏の
意見はその
通りと思うが、事実はいささか調査が間違っているとも言われましたが、しかし、
意見はその
通りであると肯定しながら、なぜこの
法案のような公選を指名とするような逆な
提案をされたかとの
質問に対し、文部大臣は、この声明は教育
委員会の構成を公選方にすべしという主張でないこと、広く各方面の
意見を聞くことというのであります、それで私も広く聞くことに努めたこと、特に教科書
法案のごときは九分
通り中教審の諮問の答えの
通りやったのであって、それを諮問されぬということは少し違っていること、四、教育
委員制度についても中教審に一ぺんかけているし、また地方制度調査会にかけているし、政令諮問審議会にもかけていること、これらの答申はそれぞれ違ったものになったので、これを調査研究してこの
法案ができたこと等の
説明がありました。(
拍手)
中間ではございますが、一言重要な点について付言いたしたいと存じます。
すなわち、本
報告の冒頭にも申し上げましたのでございますが、本案審議に当り、なお今後に残されておる問題について申し上げます。第一に申し上げねばならないことは、
地方教育行政の
組織及び
運営に関する
法律案の逐条
質疑がまだ第七条第一項程度までしか進んでおらない点であります。(
拍手)思うに、
法案の総括
質問はもとより大切でございますが、逐条
質疑において、
提出者の意図されているところが詳細に解明され、幾多の疑問がただされ、個々の条文の解釈が明確にされるのであって、これが将来
法律となった場合においては、その適正な
運営に役立つことは論を待たないところであります。(
拍手)しかるに、本案を見ますると、本則、附則合せて八十六カ条、
関係法律の
整理法案は二十カ条、及び附則九項で、総計百十余カ条がありまして、現状ではまだ審議が緒についたばかりと申すほかなく、今後論議さるべき多くの問題がたくさん残されているのでございます。(
拍手)
次に、第二点として申し上げますことは、
鳩山総理に対する出席要求に関することであります。このことにつきましては、去る三月二十日の
委員会において、辻原
委員より、矢内原東大学長等十名の学長声明に関し、
鳩山総理の出席を求める要求がなされました。その要旨とするところは、同声明の意味するものは、今日の文教政策の傾向は、一歩々々教育がその根底をゆすぶられて、漸次言論の自由、学問の自由を脅かすような過程をたどりつつあるということに対する声明であって、一つの心ある人々の警鐘と見られる重要なものであるから、
政府の首班としての
鳩山総理よりこれに対する見解を天下に表明せられる必要があると思うということであります。(
拍手)私、
委員長としては、
理事会に諮って取扱いを決定したい旨の
答弁をしておりました。その後、
理事会においては、議案の審査日程がきまらないまま、この問題も直ちに決しませんでした。しかし、その後に至り、周囲の情勢と事柄の重要性にかんがみまして、私は自由民主党中村
国会対策
委員長と直接話し合ったところ、中村
委員長は、われわれの意のあるところを十分に了とせられ、必ず
法案が上る前日には
総理を出席させることを取り計らうとの確約を得たのであります。(
拍手)その出席が、まだ今日実現していないのであります。
最後に、第三点としてまだ残されているのは、本案についての地方行政
委員会との連合審査会に関する件であります。本案は、申すまでもなく、地方公共団体における教育行政の重要性と
一般行政との
関係、並びに国との
関係等を内容としているものでありまして、本院における地方行政
委員会におかれては、本案に対し特に深い関心を寄せられ、去る十日に至り、
文教委員会との連合審査会の開会要求に関する件を協議決定されたのであります。その後、大矢地方行政
委員長より、たびたび、連合審査の開会について、私のもとへ御熱心なる要請が参っているのであります。しかるに、
理事会においてはその方法は議せられず、今日そのままになっているのは、まことに遺憾でございます。(
拍手)
以上申し述べました三点は、要するに、本案審議の万全を期する上に欠くことのできない重要なことでありまして、今後あらゆる困難を克服してでもこれらの審議を尽し、教育に関する
国家百年の計に照らして悔いのないよう、かつまた、
国民の負託にこたえたいと念願するものでありまして、(
拍手)私は、
委員長といたしまして今日まで順調に審議を重ね、一年二カ月の間、よく
文教委員会を一度のもめ事もなくして済まして参ったのであります。私は、この
関係を
考えまして、何が
ゆえに、今ごろになって、わずか一日の差をもちまして、かような
中間報告を求めまして、強引にこの
法案を決行されるか、
自民党の
態度がわからないのでございます。(
拍手)どうか、教育の問題ははなはだ重要な問題でございますので、今後も十分審議を尽し得るよう、賢明な議員各位の御賛同を得たいと存ずる次第であります。