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1956-04-10 第24回国会 衆議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十日(火曜日)     —————————————  議事日程 第二十九号   昭和三十一年四月十日     午後一時開議  第一 首都圏整備法案内閣提出)  第二 海岸法案内閣提出)  第三 地方税法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案内閣提出)  第五 国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案黒金泰美君外一名提出)  第六 健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  第八 船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 首都圏整備法案内閣提出)  日程第二 海岸法案内閣提出)  日程第三 地方税法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案内閣提出)  日程第五 国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案黒金泰美君外一名提出)  日程第六 健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第八 船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  森林開発公団法案内閣提出)  行政監察特別委員長の小、中学校における教科書関係事件についての同委員会における調査報告     午後一時十九分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。     —————————————     〔大島秀一登壇
  3. 大島秀一

    大島秀一君 ただいま議題となりました首都圏整備法案につきまして、建設委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  わが国政治経済文化等に関し重要な機能を果している東京都につきましては、首都としての重要施設整備を推進するため、すでに昭和二十五年首都建設法が制定され、今日に至っておるのでありますが、首都への過度の産業及び人口の集中と、これに伴う環境の悪化にかんがみまして、単に首都整備のみならず、これと社会的、経済的に密接な関係を有する周辺地域をも含めて、これが重要施設整備を促進し、十分にその機能を発揮し得るよう措置する必要を生じて参ったのであります。そこで、本法案は、従来の首都建設委員会を発展的に解消し、総理府の外局として国務大臣を委員長とする首都圏整備委員会を設置し、首都圏整備計画の作成並びにその計画に基く事業実施を推進する等、わが国政治経済文化等中心としてふさわしい首都圏建設と、その秩序ある発展をはからんとするものであります。  本法案は、去る三月十九日本委員会付託されて以来、慎重に審議いたしましたが、質疑内容速記録を御参照願いたいと存じます。  本法案に対しましては、瀬戸山三男君より、首都圏整備委員会事務局二つの部を置くことについての修正案提出されました。  かくて、討論を省略して、修正案及び修正部分を除く原案についてそれぞれ採決いたしましたところ、本法案全会一致をもって修正可決すべきものと決定いたしました。  続いて、三鍋義三君より次のような附帯決議案提出され、採決の結果、全会一致をもって本法案附帯決議とすべきものと決定した次第であります。  附帯決議内容は次の通りであります。     附帯決議   政府は、本法制定に伴い首都圏整備に関する事業の強力な推進を図るため、昭和三十二年度以降の事業計画に係る予算は、首都圏整備委員会予算に一括計上し、その実施に当つては、これを関係各省に移し替える措置を講ずること。  次に、ただいま議題となりました海岸法案につきまして、建設委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、本法案提出理由並びに内容について申し上げます。わが国は二方五千キロ余にわたるきわめて長大なる海岸線を有し、国土の保全上、これが防護の必要性はきわめて重大なるものがあるのでありますが、今日に至るまで、これら海岸の管理に対する責任態勢が明らかでないために、高潮、波浪、侵蝕あるいは地盤の変動等、連年にわたり災害を続増させて参ったのでありまして、これが抜本的対策を確立することは多年の懸案であったのであります。従いまして、この際海岸行政に対する各省大臣の所管及び責任を明確化するとともに、あわせて費用に対する国の負担保全施設築造基準及び行為制限法的規制等をも定め、海岸行政の統一的かつ円滑な執行を確保し、その進展に寄与せんとして、本案提出を見るに至ったのであります。  本法案は、三月二十七日本委員会付託されたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  かくて、討論採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。日程第一の委員長報告修正日程第二の委員長報告は可決であります。両案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。、よって、両案は委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第三、地方税法の一部を改正する法律案日程第四、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。地方行政委員長大矢省三君。     —————————————     〔大矢省三登壇
  7. 大矢省三

    大矢省三君 ただいま議題となりました二法案に関する地方行政委員会における審議経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  この二法案は、別途政府提案にかかる地方交付税法の一部を改正する法律案とともに、地方財政現状にかんがみ、その改善策の主要なものとして立案せられ、これによって地方財源を拡充強化し、他の諸施策と相待って、将来地方財政に赤字の発生する余地のないようにすることを目的とするものであります。  まず、地方税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  今回政府の企てた地方税制改正は、地方制度調査会及び臨時税制調査会答申趣旨に沿い、非課税の範囲を縮小し、租税負担均衡化をはかりつつ増収を期待すること、受益者負担制度を拡張して施設充実財源を確保すること、及び、税務行政の規律を明確にすること、以上三方針のもとに、大要次のような改正を行おうとするものであります。  第一の方針としては、従来非課税とされていた国、地方団体及び三公社の所有する固定資産について、所在市町村交付金または納付金制度創設するほか、日本放送協会及び日本中央競馬会の所有する固定資産に対する非課税をやめ、道府県民税及び市町村民税に関しても、その地方団体内に事務所や事業所を有しないが、寮、クラブ等を有する法人等に対しては、均等割を課することとしておるのであります。  第二の方針としては、軽油引取税及び都市計画税二つ目的税創設したのであります。軽油引取税は、都道府県及び五大市の道路に関する費用に充てるための目的税でありまして、特約または元売業者からの軽油引き取り課税客体とし、これら販売業者営業所所在都道府県においてその引き取りを行う者に課税することを建前としておりますが、徴収特別徴収方法によることとし、税率は一キロリットル六千円であります。本税は道路財源に充てる目的税である関係をも考慮して、一般の船舶鉄道車両動力源、陶磁器の焼成、農業林業用機械漁業用船舶等動力源等に供するものについて免税措置を講じております。なお、五大市所在の府県においては本税収入の一部を道路面積に按分して五大市に交付することになっております。都市計画税は、都市計画事業に要する財源に充てるため、都市計画区域の全部または一部の地区内にある土地及び家屋に対し、市町村固定資産税賦課徴収の例により、また、これとあわせて課することができるものでございます。なお、軽油引取税創設に伴い、自動車税においては、揮発油自動車との負担均衡上、軽油自動車について五割増しに定められていた税率区分を廃止しております。  第三の方針による措置としては、不動産取得税における住宅の定義を明らかにして、併用住宅に対する基礎控除を確保し、遊興飲食税においては公給領収証制度と関連して徴収猶予並びに納入義務免除等規定を設け、自動車税について、用途、所有者地域等変動のあった場合、月割り課税を行い、また、月賦販売等の場合には、売り主、買い主を共有者とみなして課税するなどの合理化を行い、また、住民税の過納、誤納の取扱いを便利にする等の改正を行なっております。その他、娯楽施設利用税におけるところの学生生徒非課税電気ガス税におけるところの国鉄運送用電気非課税国民健康保険税課税限度額引き上げ事業税における課税標準についての合理化等改正を行なっております。  本法案は、二月二十一日本委員会付託、翌二十二日太田自治庁長官提案理由説明聴取、特に地方税法等改正に関する小委員会を設けて慎重に検討し、三月七日及び八日には運輸建設の両委員会との連合審査会を開き、さらに三月の一日には参考人意見聴取いたしました。三月十六日には建設委員会から軽油引取税に関して、また、二十日には運輸委員会から軽油引取税及び私鉄に対する事業税に関して、本案に対する修正意見の申し入れがあったのであります。  次に、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案について申し上げます。  本法案は、国または地方公共団体が所有する固定資産のうち、国または地方公共団体以外のものに使用させているもの、国有林野にかかる土地及び発電施設について、固定資産税に相当する額の交付金を、また、日本専売公社日本国有鉄道及び日本電信電話公社が所有する固定資産のうち、従来固定資産税を課せられていなかったものについても、固定資産税に相当する額の納付金を、それぞれその固定資産の所在する市町村に交付し、または納付する制度創設しようとするものであります。これらの資産がその所在市町村から受益している関係は他の固定資産と同様でありますので、この間の負担均衡をはかるとともに、困窮せる地方財政自主財源を増強しようとする趣旨であります。ただ、国や他の地方公共団体市町村との関係及び三公社の持つ特殊な性格等にかんがみ、固定資産税形式によらず、これに準じて算定した額を交付金及び納付金形式で付与することになっております。  本法案は、二月十八日本委員会付託、同月二十日早川自治政務次官から提案理由説明聴取、二十九日には参考人を招致して意見を聞き、また、地方税法の一部を改正する法律案とともに、小委員会において詳細に検討を加えました。  この二法案は、現内閣の重要な政策の一である地方財政改革のための対策の一環として提案されたものでありますから 本委員会としては 本年度地方財政計画その他関係法案とともに、熱心かつ慎重に審議を重ねました。  個々の問題点は、あとに述べます附帯決議の中に現われているように、はなはだ多岐多様でありますが、常に議論の中心となりましたのは、今回の税制改革による住民負担変動納税者相互間における負担均衡、国の産業政策地方税制との関係及び国と地方との税財源の配分の問題であります。新税創設等によって住民負担が加重され、さらに負担零細収入者、すなわち大衆に転嫁されることは、国民所得現状等ともにらみ合せて厳に避くべきであると強く論ぜられたのであります。政府はこれらの点につき、今回の改正は今日なし得る当面の措置にすぎず、税制の総合的かつ根本的な改正昭和三十二年度実施を目途として立案する方針であると言明し、特に国有等貸付資産所在市町村に対する交付金制度影響に関し、委員会を代表して私から、公営住宅使用料、特に低額所得者を対象とするものの家賃引き上げ等の結果を招来せざるよう、政府は適切な措置を講ずべきであるとして、その所信をただしたところ、政府はその趣旨を尊重し、交付金負担をそのまま使用者に転嫁すべきでないから、特に低額所得者の使用する第二種公営住宅家賃はこれがために引き上げをせぬよう地方団体を指導する旨、太田自治庁長官から答弁のあったことを申し添えておきます。  かくのごとく、右二法案は本委員会付託以来、常に一括上程審議を尽し、四月六日両法案に対する質疑を終了しました。  その際、日本社会党を代表して委員北山愛郎君より、地方税法の一部を改正する法律案に対する修正案提出せられ、その提案理由説明されました。修正案内容は、税種目改廃税率変更など十五項目にわたっておりますが、後刻社会党からここに説明されますから、これを省略いたします。ただ、この修正案地方税収入の減収を地方交付税増額等によって補てんすることとなっているために、国の予算増額を伴うものとなりますので、国会法第五十七条の三の規定により内閣意見を求めましたところが、太田自治庁長官は、本年は年度予算もすでに成立した関係もあり、政府としてはこの修正案賛成しがたき旨の意見の開陳がありました。  修正案に対して質疑を行なった後、政府提案にかかる二法案及びこれに対する修正案一括討論に付し、委員永田亮一君は自由民主党を代表して、二法案に対して賛成修正案に対しては反対の意を表され、また、委員中井徳次郎君は、日本社会党を代表して、修正案に対して賛成、三法案に対して反対の意を表されました。  採決に入り、まず国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案賛成多数をもって可決すべきものと決しました。  これに対して、次のごとき附帯決議を付すべき旨の動議委員川崎五郎君より提案され、その趣旨弁明がありました。  一、アメリカ合衆国の軍隊及び国際連合軍隊が使用する固定資産並に旧軍港施設所在市町村に対し、政府は国から当該固定資産に対する交付金相当額を交付する等の措置を講ずること。  二、地方公共団体水道事業のための水源地等施設を他の市町村区域内に所有する場合においても、政府はこの法律を適用する等必要な措置を講ずること。  右決議する。  採決の結果、全会一致をもってこの附帯決議を付すべしと決したのであります。  次に、地方税法の一部を改正する法律案に対する修正案賛成少数をもって否決され、政府案賛成多数をもって原案通り可決すべきものと決しました。  なお、本案に対して、自由民主党を代表して委員川崎五郎君より、次のごとき附帯決議を付すべしとの動議提出されまして、その趣旨弁明がありました。決議案は次の通りでございます。   政府は、左記事項趣旨に従い、次の国会において改正法案提出せられたい。      記  一、主として自家労働を以て営む大工左官板金植木業及び公衆浴場業に対する事業税については、その負担軽減を図ること。  二、地方鉄道事業及び軌道事業に対する事業税課税標準改正、信用金庫のうち基礎の確立しないものに対する事業税負担緩和を図ること。  三、一般人のスケート場利用に対する娯楽施設利用税を廃止すること。  四、昭和三十年度以降新たに建設に着手する水力発電所償却資産に対する固定資産税課税限度額につき激変緩和経過的な措置を講ずること。  五、大規模償却資産に対する所在市町村固定資産税課税限度額につき、激変緩和経過的な措置を講ずること。  六、軽油引取税については、軽油消費状況の推移をみて、負担緩和を図ること。  七、遊興飲食税につき再検討を加え、とくに公給領収証使用義務制については、実施状況に鑑み、改廃措置を講ずること。  右決議する。  採決の結果、多数をもってこの附帯決議を付すべしと決しました。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第三、地方税法の一部を改正する法律案に対しては、北山愛郎君外十名から成規により修正案提出されております。この際、修正案趣旨弁明を許します。土山愛郎君。     —————————————     〔北山愛郎登壇
  9. 北山愛郎

    北山愛郎君 ただいま議題となりました地方税法一部改正法律案に対する日本社会党修正案につき、提案者を代表して趣旨及び内容概要説明し、各位の御賛成を得たいと存するものであります。  修正の第一は、政府地方税増税、すなわち軽油引取税都市計画税及び国鉄等公社課税を含む交付金納付金制度創設に対し全面的に削除を要求する点にございます。  これらの新税は総額百十二億円にすぎませんが、いずれもバス鉄道運賃電話料住宅使用料等引き上げ原因となり、そのまま大衆負担される危険を持つものでございます。今年度内鉄道運賃値上げはしないという運輸大臣答弁にもかかわらず、参議院選挙後においてその値上げが必至と伝えられ、また、すでに東京都営住宅使用料引き上げが決定している等、新税創設影響は明瞭に現われているのであります。もちろん、われわれといえども、地方自治体の自主財源を強化することには賛成であります。しかしながら、その方法は、かくのごとく、直ちに大衆負担に転嫁される新税によるべきではなくて、地方制度調査会等答申にもあるように、たばこ消費税税率引き上げて国の財源地方に委譲するか、あるいは、大法人独占資本に対する国、地方税の特免、軽減措置改廃によって行うべきであると信ずるものであります。しかも、三十一年度地方税は、別に二百九十億円に及ぶ自然増を見込んでいるのでありまして、これに新税分を含めて約四百億円、約一〇%の増税となるのであります。われわれは、歴年保守党政府が行なった、国税の減税の裏ではこれを上回る地方税増税を行う常套政策に対しては、賛成することができないのであります。この百十二億円の増税分は、ほとんど全部が明年度増加する地方債元利償還分、すなわち百二十億円に使われてしまって、資金運用部や銀行に吸い上げられておるのであってこれを負担する住民の福祉には役立たないとするならば、このような不合理な、不公平な新税全面的削除を要求することは当然の道理といわなければなりません。  修正の第二点は、シャウプ税制以来、地方税制の重大な欠陥である都道府県民税市町村民税の不均衡に対して若干の修正を加えんとする点であります。  勤労者給与所得者に対する住民税が過重であることは、今日すでに常識となっております。これは勤労者の要望であるばかりではなくて、税をとる方の市町村当局商工会議所等経済団体までがその軽減を要請し、地方税制最大欠陥となっておるにもかかわらず、歴代の保守政党は、この改善についていまだ何らの手を触れておらないことは、きわめて遺憾といわなければなりません。しかも、市町村民税課税方式は五種類に分れ、所得税額基準とする第一方式をとる一部の都市に対し、農村方面では、第二、第三方式をとるものが大部分を占め、その結果として、市町村の間に、同一所得階層の間に、二倍以上の負担の開きが存在する不均衡が年々増大するままに放置されていることは、無視し得ないところであります。われわれは、これら住民税の不合理に対し、きわめて実際的な修正を加え、勤労者負担軽減し、道府県民税と、第一方式以外の方法をとる場合の増税に対し、一定制限を加える措置をとることといたしました。この軽減分は六十六億七千万円であります。  次に、事業税については、大衆の日常利用する公衆浴場及び大工左官屋根ふき工板金工トビ工植木職等公衆衛生一定の規則を受けるもの、あるいは自家労務を主とする零細営業を第三種事業とし、また、地方鉄道軌道事業については、バス事業との均衡上、所得課税に改めるとともに、法人の営む林業事業税を課することとしたのであります。事業税は最近若干軽減措置がとられましたが、中小個人事業に対する重圧はいまだ解消しておらないのであります。しかし、それは根本的改革に譲り、今回は単に部分的修正にとどめたのであります。  次に、固定資産税についても、現行制度中には改正すべき基本的問題がたくさんあるのでありますが、今回は政府案に対応して、三公社及び日本放送協会課税反対し、かつ、昨年以来の懸案である大規模償却資産に対する所在市町村課税限度額につき激変緩和措置を講ずるにとどめたのであります。  その他、この修正案においては、自転車荷車税を廃止し、原動機付自転車のみに課税することといたしたのであります。千三百万台以上の自転車、四百万台の荷車リヤカーに対する自転車荷車税は、まさにげたやくつに課税すると同様であり、荷車リヤカー等農業等の日常必要の用具であり、この大衆課税を廃止することは、むしろおそきに失すると申さなければなりません。  以上の修正によって、地方税収入減は約二百十四億円に達しますが、これに対しては、たばこ消費税及び地方交付税税率をそれぞれ二%引き上げることにより、百七十二億円の財源を国から地方に交付し、これとともに、地方債元利償還金中、政府資金元金償還を五年間支払い延期することによって残余の補てんをなさんとするものであります。もとより、本修正案に伴う国の予算への影響地方財政計画変更については、すでに昭和三十一年度国の予算に対し、わが党の組みかえ動議の中に組み込み済みであり、その基礎の上に立つ実行可能な現実的修正であることは申し上げるまでもありません。  特に、私は、地方行政委員会における審議の過程において、わが党の修正案に対し与党諸君から寄せられた熱心な御支援について、一言申し上げたいと思うのであります。われわれの、このささやかな修正案が、地方税小委員会あるいは地方行政委員会討論におきましても、まじめな与党側委員から熱烈な御支持をいただいたことは、まことに光栄に存ずるものであります。(拍手与党の一部には、われわれと軌を一にする修正について、まじめな努力が行われたのでありますが、数回の討議を重ね、ついには、政府与党首脳会議において遊興飲食税公給領収証廃止問題と心中する結果に終ったことは、きわめて遺憾に存ずる次第であります。(拍手)これは、与党一部の幹部の、遊飲税の公給領収証制度を廃止しようとする朝令暮改的横車の結果として、与党委員諸君努力が水泡に帰したことに原因があるのでありまして、この点は隠れもない事実でございます。保守党の内部においてわずかに残存する良識と正論が、戦前派の古い金と権力政治の圧力に抹殺される姿は、小選挙法案におけると同様に、この地方税法改正案においても明らかに見ることができるのであります。(拍手地方税法改正のような問題で、政府与党首脳会談を持ったことは、国家のためきわめて好ましい徴候でありましょうけれども、その議題は、料飲店やキャバレーの領収証問題ではなく、勤労大衆の念願する住民税の不合理是正であってほしかったと思うのは、私一人だけではないと存じます。われわれの修正は、もとより、根本的税制改正ではございません。また、理想案でもございません。しかしながら、一部の階層の活発な陳情や請願のみに従ったものではなくして、国民の中の声なき声をも取り上げた点について、十分な御理解を賜わりたいと存ずるのであります。(拍手)  最後に、この修正案は、国会の三分の二の賛成がなければ成立をしないというような、めんどうくさい、悪い案ではございません。御出席の各位の半分以上の起立で簡単に成立をするならば、直ちに数千万の国民に喜びを贈ることができるということを十分に銘記せられまして、各位の御賛同を念願し、本修正案説明を終る次第でございます。(拍手
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。徳田與吉郎君。     〔徳田與吉郎君登壇
  11. 徳田與吉郎

    ○徳田與吉郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方税法の一部を改正する法律案並びに国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案について、政府原案賛成をし、社会党提出修正案反対討論を行おうとするものであります。(拍手)  地方公共団体の財政が窮迫して、自治行政に大きな阻害を来たしておりますことは、御承知の通りであります。すみやかに根本対策を樹立して、その健全化をはかることは、当面急を要する問題であります。政府与党は、さきに臨時国会を開いてこの問題を取り上げ、地方財政再建特別措置法を成立せしめ、累積する過去の赤字解消をはかるとともに、さらに、臨時地方財政特別交付金百六十億円を支出して、当面の臨時応急の措置を講じて参ったのであります。しかしながら、この暫定措置のみをもってしては、とうてい地方財政の将来は期待することができないのであります。進んで積極的に適切なる財源等の付与によって地方財政の安定と育成をはかる必要に迫られております。これがゆえに、鳩山総理は、去る一月三十日、本院におきまする施政方針演説の中で、昭和三十二年を目途として中央地方を通ずる税制の根本改正を行う旨を明らかにしたのであります。ただいま議題となっておりまする二つ法律案も、この趣旨に基く地方財政確立に関する諸方策中の一連の改正案でありまして、別途審議中の地方交付税法の一部改正による交付税率引き上げ、あるいは入場讓与税の全額還付など、国からの委讓財源を含む一連の税制改革によって、新たに増加財源三百二十二億五千八百万円を地方に付与せんとするものでありまして、地方財政立て直しのためには欠くべからざる措置といわなければなりません。(拍手)  政府は、今回地方税法改正するに当って、大衆への影響を最も慎重に考慮して、税法上負担均衡を乱さぬと考えられる非課税範囲を縮小して租税負担均衡をはかるとともに、一面、施設の拡充によって明らかに利益を受けると認められる範囲のものに対して受益負担をなさしめることにより一部の財源を求めておるのであります。すなわち、第一には、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案によって、所在市町村は、従来非課税であった国または地方公共団体所有の貸付資産国有林野発電施設、あるいは、いわゆる三公社の所有する業務用資産について、固定資産税のかわりに交付金または納付金を受けることになったのであります。本問題につきましては、租税理論の上からいいましても、かつまた、所在市町村が多年要望いたして参ったところでありまして、これらの資産が、市町村が行なっております道路、消防などの諸施設によって、現に固定資産税を課せられている他の資産と同様に恩恵を受けているのでありますから、負担を分任するということは当然といわなければなりません。(拍手)特に三公社については、端的に固定資産税として賦課すべきでありますけれども、従来からの沿革もあり、なおかつ、その負担運賃使用料等に転嫁して大衆に及ぶのをおそれて、ただいまのところは納付金として、特に低率規定を講じたこともやむを得ない措置と考えられます。(拍手)  第二には、地方税法の一部を改正する法律案によって、軽油引取税都市計画税創設し、道路施設の充実、都市計画促進のための自主財源を与えるとともに、三公社納付金に並行して、日本放送協会及び中央競馬会に固定資産税を賦課することとなり、地方財政を大いに潤すこととなったのであります。軽油引取税につきましては議論もありましたが、揮発油を使用する自動車との負担均衡を保つため、やむを得ないものとの結論に達しました。しかしながら、税率その他についてはなお検討の余地があるものとして軽油消費の推移にかんがみ、その善処方を決議として附帯いたした次第であります。  以上二法案は、いずれも、地方財政の現況にかんがみ、適切なる措置として、その努力は大いに評価すべきものと考えます。その他、法案内容を詳細に検討いたしまするならば、地方団体相互間における配分の均衡、納税者の負担の公平化、徴税技術上の問題など、考慮を要すると認められるものを発見いたすのでありますが、これらについては、いずれ昭和三十二年度実施を目標として、この際附帯決議によって政府に要望することとして、原案賛成した次第であります。  次に、社会党修正案でありますが、修正のおもなる内容は、わが党の附帯決議趣旨を同じゅうするものは除きまして、軽油引取税及び都市計画税日本放送協会に対する固定資産税並びに三公社納付金等の取りやめ、すなわち、今次改正案の自主財源は認めず、これが歳入不足を交付税及びたばこ消費税の増率に求めようとするところにあるのであります。  社会党各位は、つとに行政の民主化を理想として、常に地方分権の必要を力説いたされておるのであります。地方分権の実は、住民の意思によって自主的行政が行われることに存するのであります。しかし、その行政の実効をおさむるには、行政に即応する自主独立の財源を保有することであります。(拍手地方財政の根本的改正の根拠もここにあると私は思います。地方財政今日の窮乏も、財政需要に応じ得る財源の裏づけがなく、中央の財源に依存せざるを得ない現状にその大きな理由を見出すのであります。社会党諸君も、このことはつとに指摘されておったところであります。しかるに、今回提出せられました修正案を見まするに、地方分権に逆行するところの中央依存の財源措置をせんとするものでありまして、平素の理論と主張に相反する修正案といわなければならぬと思います。(拍手)かような修正案は、分権的地方自治を育成せんとするわが党の絶対賛成し得ざるところであります。  以上申し述べました理由によって、私は日本社会党提出修正案には反対をいたします。  今や、各地方団体は、すでに本改正案を基礎として、それぞれ新年度予算の編成を終り、議会の決議を経て、本法律案の通過を一日千秋の思いで待っておるのであります。社会党諸君も、すみやかに修正案を撤回せられて政府原案賛成し、本案の通過に協力せられんことを望んで、私の討論を終ります。(拍手
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 中井徳次郎君。     〔中井徳次郎君登壇
  13. 中井徳次郎

    ○中井徳次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました政府提出地方税法の一部を改正する法律案外一件について反対し、社会党提出の同修正案賛成討論を行わんとするものであります。(拍手)  政府は、昭和三十一年度において地方団体の財政難につき抜本的な対策を講ずると、しばしば声明しました。本案もその一環であります。しかるに、その内容を見ますと、政府は依然として、今日の地方財政の赤字は過去数年の歴代保守内閣の施策に基くものであるという根本的な立場に目をおおいまして、赤字の原因をすべて地方団体責任に帰し、その穴埋めを制度改正に籍口したり、あるいは、一般国民大衆に直接間接さらに重税を課することによりまして、罪を地方団体になすりつけようといたしているのであります。(拍手)しかも、その政府の抜本策なるものは、実は決して抜本策なるものではなくして、これはまたもや来年に繰じ越され、本年も地方財政計画上の当面のつじつまを合せたにすぎないということは、地方行政委員会審議経過により、はっきりいたしたのであります。(拍手)私は、二、三の点をあげまして、この問題について討論を進めたいと思います。  まず第一に申し上げたいことは、本改正案により、政府軽油引取税都市計画税等々をさらに新設をし、三公社に対して納付金制度を設けることによりまして、本年度百二十億円、平年度実に百七十億円を国民大衆からしぼり取ろうといたしております。国民にとりましても、あるいは国民経済上より見ましても、目的税とはいいながら、対象は広範囲のものであります。また、国税といい、地方税といい、租税であります限り、本質的には、国民に及ぼす影響には何ら差異がないのであります。政府は、昭和三十一年度国家予算において、所得税の勤労控除一五%を二〇%に、最低限度六万円を八万円に修正することによりまして、百五十億円の減税をしたと、大いに減税の宣伝をいたしました。しかるに、今申しました通り、実質上地方税及び大衆負担に肩がわりされる納付金において百七十億円の増徴でありますから、減税どころか、差引二十億円の増徴となり、この面だけでも政府の看板に大へん偽りがあると申さねばならぬのであります。(拍手)  第二に申し上げたいことは、地方債のことについてであります。地方債の総額は、特別会計を除きまして、一般会計のみで、すでに五千億円を突破いたしております。これは天下周知の事実であります。従いまして、昭和三十一年度の財政計画において、公債費は実に六百二十三億円に達し、その利子は、大蔵省預金部及び一般市中銀行の金融機関のそれを含みまして、三百億円を突破いたしております。そうして、この公債費は毎年毎年激増いたしまして、ここ二、三年の間でその年度の各地方の起債額をオーバーし、金利負担のみで四百億円を突破しようとしておるのであります。しこうして、これらの公債は、今申しました通り一般会計でありまするから、内容はもとより赤字公債といわねばなりません。地方財政のガンは実にこの点にあります。従って、政府といたしましては、これまで指導してきた地方団体の放漫なる赤字公債について、最近の一般金利の低下の傾向に乗じ、たとい一厘でも二厘でも地方債の金利の引き下げに努力するとともに、政府自身の責任に おいて相当額の利子補給を行うのが本筋であると考えます。(拍手)しかるに、政府は、わすかに未承認の赤字四百億円程度のみにつきまして、再建整備法案その他の悪法を施行して、地方を恩典に浴せしむるがごときことを言いまして、わずか数億円の助成をするにとどまり、実は五千億を突破する一般起債については、何らこれに手を触 れておらないことは、まことに納得できないのであります。(拍手)この点は 重ねて申します。五千億以上の地方債は、政府がこれを承認し、過去数年、一種の特典を与えるがごとき考え方でありまして、ときには、実は党利党略にさえこれを利用し、これを地方にばらまいたのであります。国は赤字公債を発行しない、発行しないと宣伝しながら、裏で、地方においては、どんどん地方債を認めたのであります。この跡始末は、あくまで私は中央の責任であろうと考えます。(拍手)従って、その収拾策も政府にあるのでありまするから、政府がこの点について何ら手を触れることができずに、ほおかぶりでいきますということは、まことに遺憾であり、地方団体を愚弄したものであるといわねばならぬと存じます。(拍手)  第三に申し述べたいことは、交付金及び納付金についてであります。政府は、都合のいいときは地方制度調査会答申に基くと言い、都合の悪いときはこれを無視いたします。これは、あたかも、選挙制度調査会における小選挙法案の採用に関し、今回政府のとりました態度と、全く軌を一にするのであります。(拍手)特に、財政上の問題は、ただ名前をとっただけでは何にもなりません。率が変っておれば意味がないのであります。すなわち、今般も、政府は、工合の悪い地方交付税及びたばこ消費税の三〇%等の答申については、決して地方制度調査会の率はとりませんけれども、いわゆる三公社納付金については、調査会の答申に基き、と、ぬけぬけと表明いたしております。これによりまして、皆さん、国鉄運賃に及ぼす影響は三%強であります。金額にいたしまして七十二億円という数字であります。また、軽油引取税の新設によるバス運賃値上げ、これも実に四%強の影響があることが、政府答弁によってはっきりといたしました。従って、国鉄運賃については、吉野運輸相がおりまする限りは、あるいは三十一年度はまさか値上げをしないと考えますが、三十二年度には必至であります。また、バス運賃はもうすぐ各地方において値上げが始まること、これまた政府答弁によって明らかになっております。さらに、電電公社に対する納付金の設定によりまして、全国各地の町村合併に伴いまする電話の合併、統合、拡張等は当分たな上げになってしまいました。私どもは、ここまでやるのならば、横須賀だとか、呉だとか、佐世保等々の全国各地に散在いたしまする駐留軍、防衛隊等の国有地、その施設等に対しまして交付金制度を拡張すべきであると主張し、与党諸君におかれましても実は賛意を表わしておりますのを見るのであります。いかにこれらの制度が不公十、不均衡かつ浅薄な考え方に基いて考えられたものであるか、保守党一流の防衛、軍事、外交等に対する旧態依然たる考え方をこの点に暴露したものといわねばならぬと存じます。(拍手地方税は、もとより複雑多岐であります。住民税の地区別不公平、職業別の不公平、大資本による膨大なる非課税措置等、幾多の欠陥が山積しているのであります。政府は、これらのものに手をつけず、もっぱら増税によって表面を糊塗しようといたしましたことは、遺憾千万であります。これに対して、わが党は、従来の地方税の不公平を是正しつつ、国民経済現状より見まして、これ以上の国民負担の増徴は断じて許すべきでないという見解のもとに立案をいたしました。政府案のごとく、国の国策であり、かつ、与党議員中にも猛烈な反対のある軽油引取税や、都市計画税交付金及び納付金等の新設は絶対にこれを排除し、地方交付税税率を二%引き上げ、さらにまた、地方債の元利償還に対する国の積極的対策によって地方財政の赤字を解消せんとするものであります。交付金を二%引き上げることによって、百三十億円の地方財政への補てんができるのであります。もとより、これによりまして、国の予算に百三十億円だけ穴があくわけでありまするが、昭和二十九年度決算における会計検査院の報告において、氷山の一角として報告された金額のみで実に七十三億円ではありませんか。今回の防衛庁の経費増だけで実に百四十億円ではありませんか。さらに、一昨年の予算審議において、当時の民主党及び自由党の話し合いにおきまして、年度の途中で、国の予算の経費の節約、約二百億円を捻出した実績がございます。政府は、地方財政のために国の予算を節約し、百三十億程度を地方へ回すことができないなどということは、全くこの事実をもって見ても偽わりであり、実に政府地方財政軽視にその原因があるといわねばならぬと存ずるのであります。(拍手)従って、わが党の修正案につきましては、地方行政委員会建設委員会運輸委員会等におきましては、実は与党議員においても賛成者が多く、政府案に大修正を試みたい委員も多数見えたことは、先ほど北山君からの説明でも明らかであります。(拍手)  実は、政府案並びに社会党修正案につきましては、最初は、一カ月ほど前、三月八日ごろ本会議に上程の予定でありました。野党の立場であるわれわれ社会党さえも、予算関係法案でありまするから、三月末日までには、順序として、まあほどよく進めば審議が終るであろうと考えていたのであります。しかるに、その期日に近づきまするや、突然、今度は逆に与党委員の御都合によりまして、この法案は十日、二十日と延び延びになりまして、とうとう年度を越して本日上程の始末であります。なぜかような始末になったのか。聞くところによりますると、自己党の議員の人たちの中には、この案に大修正を加えたかった者が多かったようでありまするが、幹部の皆さんが、例の公給領収証の問題で一部業者の運動に踊らされまして、この法案に少しでも修正を加えましたならば、勢い公給領収証制度もいじらねばならぬ、こういう羽目に陥るというので、政調会、総務会等でてんやわんやの大騒ぎ、もみにもんだあげく、三月成立が四月になってしまったのであります。(拍手国民大衆にとってまことに影響の多い家賃値上げバス運賃値上げ等の関連法案が、一部のキャバレーや高級料理店のために犠牲になったことは、国民のためにまことに惜しむべきものであると存ずるのであります。(拍手)  そうして、結局のところ、税率の値下げはできませんで、附帯決議によって、次期国会においてこれを修正するというのでありますから、どうぞ、そのような右顧左眄の態度を改められまして、社会党修正案に対し全面的に賛成されんことを希望いたしまして、私の討論を終ります。(拍手
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  これより日程第三の採決に入ります。  まず、法案に対する北山愛郎君外十名提出修正案につき採決いたします。北山愛郎君外十名提出修正案賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立少数。よって、修正案は否決されました。  次に、本案につき採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって本案委員長報告通り可決いたしました。(拍手)  次に、日程第四につき採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第五、国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長山本粂吉君。     〔山本粂吉君登壇
  19. 山本粂吉

    ○山本粂吉君 ただいま議題となりました、黒金泰美君外一名提出国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。     〔議長退席、副議長着席〕  国家公務員は、基本給のほかに、寒冷地に勤務する者には寒冷地手当が、また、北海道に勤務する者にはさらに石炭手当支給されておるのでありますが、石炭手当支給額が北海道全道一律であり、寒冷地手当支給区分にも適当でない点があるなどのために、寒冷度の激しい東北その他の地方に勤務する者の給与が比較的に恵まれぬ状況に置かれておるのであります。ことに、近年は、公社、現業関係官署において、薪炭手当等の名称をもちまして寒冷地手当増額をいたしておりますので、それとの均衡をはかるため、これらの寒冷地方に在勤する公務員に対して新たに薪炭手当を設けようとするのが、本法案提出理由であります。  その内容を申し上げますと、東北六県、群馬、新潟、富山、石川、福井、長野及び岐阜の各県のうちで、人事院の勧告に基いて内閣総理大臣が定める区域に在勤する国家公務員に対して、一冬に、世帯主には四千五百円、その他の職員には千五百円の薪炭手当を、寒冷地手当と合せて支給しようとするものでありまして、本年度内において政令で定める日から施行することといたしておるのであります。  本法案は、三月十七日内閣委員会付託となり、三月二十九日黒金泰美君より提案理由説明聴取し、四月六日自由民主党大平正芳君、日本社会党石橋政嗣君より両派共同修正案提出され、これについて石橋委員より説明があったのであります。修正案の要旨は、薪炭手当の支給地域を、北海道以外の地域で内閣総理大臣が定めるものとしたこと、支給金額を世帯主五千円以内、その他の者千七百円以内としたことの二点であります。  続いて、質疑討論ともに省略、採決の結果、修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決せられたのであります。よって、本案修正議決すべきものと決した次第であります。  なお、国会法第五十七条の三の規定により内閣意見を徴しましたところ、田中内閣官房副長官より、公務員制度調査会の答申により、目下寒冷地手当石炭手当の統合簡素化を検討中であり、新たに薪炭手当制度を設けることは好ましくない旨、また、支給地域の確定等につき、技術的にも予算的にも実施困難である旨、答弁があったのであります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  20. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって本案委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  22. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 日程第六、健康保険法等の一部を改正する法律案日程第七、厚生年金保険法の一部を改正する法律案日程第八、船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。社会労働委員長佐々木秀世君。     〔佐々木秀世君登壇
  23. 佐々木秀世

    ○佐々木秀世君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案並びに船員保険法の一部を改正する法律案の三法案につきまして、社会労働委員会における審査経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。  まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  健康保険制度は、昭和二年実施以来約三十年間、今やわが国社会保障制度の一大支柱として、近代医学の発達とともに、その給付内容も充実を重ねて参ったのでありますが、その結果、医療費は逐年増加し、特に中小企業を対象とした政府管掌保険においては、昭和二十八年末に至り、給付費がついに保険料収入を上回るに至ったのであります。この情勢に対処して政府は、昭和二十九年秋以来、各種行政処置を講じ、財政の健全化をはかる一方、昭和三十年度においては、約百億円に上る収入不足見込みに対し、七十億円の政府資金の融資をはかり、また、保険料を千分の五引上げて収支の均衡をはかったほか、第二十二国会に本法の一部改正法律案提出したのでありますが、審議未了となりましたため、昭和三十一年度においても再び六十六億円の収入不足を生ずる見込みとなったのであります。これがため、健康保険の財政を根本的に立て直す意味においてのみならず、全国民を対象とする医療保障制度実施の前提として、健康保険事業の恒久的な健全化をはかることが当面の急務と相なった次第であります。以上が政府の本法律案提案の理由であります。  次に、そのおもなる内容について申し上げますれば、まず第一は、社会保障制度の確立を促進する意味におきまして、政府管掌健康保険事業の執行に要する費用に対し、国庫は予算の範囲内において補助を行うことを法律上明文化し、昭和三十一年度においては三十億円を一般会計より受け入れることとしたことであります。第二は、療養の給付を受ける者に対する一部負担金の範囲を広げたことであり、第三は、標準報酬等級区分を最低四千円から最高五万二千円の二十四等級に改めたことであり、第四は、保険医療制度について、個人指定方式の長所を取り入れた機関指定方式を採用すること、第五は、継続給付の受給資格期間を一年に延長すること、第六は、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること、第七は、被扶養者の範囲を明確化すること、第八は、厚生大臣または都道府県知事の検査に関する規定整備すること、第九は、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査につき、その公平正確を期するため、審査機構を整備すること等であります。  次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本改正案の要旨は、健康保険法の改正と歩調を合せて、標準報酬の最低を現行の月額三千円から月額四千円に引き上げることであり、第二は、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子の一部に対して、脱退手当金の支給条件を緩和いたそうとするものであります。  次に、船員保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。  船員保険制度は、船員の疾病、老齢、死亡、失業等の各部門にわたる総合的社会保険として、海上労働者の福祉向上のために重大なる役割を果してきたものでありますが、最近数年来、医療費等の支出増加のため、その医療給付部門におきまして収支の不均衡を生じて参ったのであります。これがため、昭和三十年度においては、健康保険と同趣旨の財政的措置を講じたほか、赤字処理のための応急的対策として、保険料率の引き上げ、標準報酬の等級区分改訂、給付の適正化等を含む改正法律案を第二十二国会提出したのでありますが、審議未了となりました結果、昭和三十一年度においても約四億円程度の財源不足が見込まれるに至ったのであります。かかる見地から、現行制度の不備を是正し、その合理化をはかろうとするのが、政府の本改正法案提出理由であります。  本改正案のおもなる内容について申し上げますれば、第一は、国庫は、予算の範囲内において、船員法の災害補償に相当する給付に要する費用を除き、船員保険の執行に要する費用の一部を補助することとし、その結果、昭和三十一年度において一億円を一般会計から補助することといたしております。第二は、健康保険法と歩調を合せ、新たに一部負担制度を設けたことであり、第三は、保険料率につき、失業保険の適用を受けるものについては千分の五、失業保険の適用を受けな…。いものについては千分の七を引き上げたことであり、第四は、標準報酬等級の区分を改め、その最低額を五千円としたことであり、第五は、報酬が歩合によって支払われる場合の報酬月額の算定方法を、前年度における実績を基準として算定することとしたことであり、第六は、職務外傷病に対する資格喪失後における療養の給付に対し、原則として一年につき三月の資格期間を設けたことであり、第七は、独身入院者の職務外の事由による傷病手当金の支給額を百分の五十とするほか、健康保険法の改正に準じ、被扶養者の範囲の明確化、保険医療制度整備等、各般の改正を行なったことであります。  健康保険法等の一部を改正する法律案は、去る二月二十九日本会議に上程の後三月一日、厚生年金保険法の一部を改正する法律案は二月二十七日、船員保険法の一部を改正する法律案は二月二十九日、それぞれ本委員会付託せられ、三月三日厚生大臣より提案理由説明聴取した後、一括議題として、連続二十数回にわたり、きわめて熱心なる質疑応答が行われました。なお、本改正案の重要性にかんがみ、去る三月十六、十七日の両日にわたり公聴会を開き、日経連代表牛尾栄次君外八名の公述人から意見聴取したのでありますが、これらの詳細は会議録について御承知願いたいと存じます。、  かくて、四月六日質疑を打ち切りましたところ、健康保険法等の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案について、翌七日の委員会において、自由民主党藤本捨助君外十名の提案になるところの次の修正案提出せられ、藤本委員よりその趣旨説明がありました。その要旨は、まず健康保険法等については、第一、一部負担について外来分の再診の際、その日に処方箋の交付、薬剤の支給、注射、補綴等が行われた場合は三十円となっているのを二十円に改め、また、入院分の一部負担の期間を六ヵ月から三ヵ月に改めること、第二は、事業主、被保険者、保険医療機関または保険薬局等に対する質問、検査のため、その事業所施設等へ立ち入り得る規定については、現行法通りとすること、第三、保険医療機関、保険薬局指定の有効期間の二年を三年に改めること、第四、第九条の二の規定による医師、歯科医師等に対する検査の規定に違反した場合の罰則については、罰金を過料に改めることでありまして、船員保険法については、第一、事業主、被保険者、保険医療機関または保険薬局等に対する質問、検査のためその事業所施設等へ立ち入り得る規定については、現行法通りとすること、第二は、第九条の三の規定による医師、歯科医師等に対する検査の規定に違反した場合の罰則については、罰金を過料に改めたことであります。この修正案についても特に質疑応答が行われたのであります。  なお、日本社会党岡良一君外十二名より、四月四日、本委員会健康保険法等の一部を改正する法律案提出せられたのでありますが、その要旨は、健康保険については、原則として保険給付の百分の二十を国庫負担とし、船員保険についても同様趣旨改正をいたそうとするものであります。  かくて、質疑を打ち切り、健康保険法及び船員保険法改正に関する各修正案及び修正部分を除く他の原案厚生年金保険法の一部を改正する法律案並びに日本社会党提出法案を一括して討論に入りましたところ、自由民主党を代表して亘委員より、修正案及び他の政府原案賛成日本社会党を代表して井堀委員、小会派クラブを代表して石野委員より、それぞれ修正案並びに政府原案反対日本社会党案に賛成意見の開陳がございました。  次いで、内閣提出の三法案について、修正案並びに修正部分を除く他の原案について採決に入りましたところ、それぞれ多数をもって修正可決すべきものと議決いたしました。  さらに、日本社会党提出にかかる健康保険法等の一部を改正する法律案については、すでに内閣提出法案が可決されましたので、議決を要しないものと多数をもって議決いたした次第でございます。  なお、健康保険法等の一部を改正する法律案の施行に当っては、その運営上万遺憾なきを期するため、多数をもって次の附帯決議を付するよう採決を行なったのであります。  朗読いたします。     附帯決議  一、政府は、社会保障制度の確立に資するため、医療面における国民皆保険制度の実現を目標として、此際格段の準備調査に専念すべきであり、今回健康保険法案改正にあたって、国庫が政府管掌の健康保険医療給付費の一部を補助する途を開いたこと及び患者の一部負担措置を講じたことは、かかる将来の大いない制度確立のための布石を敷き、財政的基盤を整備したものとして、時宜に適するものと認められるが、政府は更に進んで最も近い将来において、恒久的に定率による国庫負担制度を設け、社会保障に関する国の責務を明確にすべきである。 二、政府は今回健康保険法等の一部改正に当り、診療報酬の請求に関しいわゆる官給明細書(レセプト)方式を採用せんとする意向のようであるが、かくては医療担当者に対し徒らに繁雑なる事務の負担を加重するのみならず、ひいては被保険者の受診率の低下を招来し、医療保険本来の使命に背馳するが如き結果を齎す虞がないでもない。よって政府はかかる施策を避け、更に有効適切なる行政措置等を検討し、もって所期の目的達成につき善処すべきことを要望する。 三、戦後における医師会、歯科医師会、薬剤師会の三団体については、従前における国民医療法等の如き特別の法制がなく、為に各地に結成せられた会の間には何等の連絡統制の方法がない実情であつて国民医療の発達普及並びに公衆衛生の向上を図るべき之等団体本来の使命にかんがみるときは真に遺憾なる状態にあるものと言わざるを得ない。よって政府は速かに医師、歯科医師及び薬剤師関係団体の性格、事業、会員等に関する適当なる施策につき調査研究の上、我が国医療の健全なる発達に資すべき制度を樹立すべきことを要望する。   なお、右制度の確立されるにいたる間においても、政府は、関係行政の実施に当り、これら関係者の意見を充分尊重するよう、極力留意されたい。  右決議する。  以上をもって御報告といたします。(拍手
  24. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。堂森芳夫君。     〔堂森芳夫君登壇
  25. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました健康保険法、船員保険法並びに厚生年金保険法の一部改正に対しまして、保険給付の二割は国庫が負担すべきであるとのわが党の主張に基きまして、政府原案並びに与党修正案反対の意向を表明するものであります。(拍手)  申し上げるまでもなく、労働者の健康は国家経済発展のためには不可欠の原動力でありまして、同時に、労働者の生活を維持するために必要欠くべからざるものであります。(拍手)この生産と生活の最も大切な、そして唯一の源泉でありまする労働者の健康を守るために発足いたしましたわが国の健康保険制度は、すでに三十年にわたる長い歴史を持っておりまして、その間幾多の先輩が血みどろの努力をいたしまして今日の姿に相なったのであります。しこうして、今日では、わが国社会保障制度の大黒柱と相なりまして、二千三百万になんなんとするところの労働者とその家族の健康を守っているのであります。ところが、健康保険制度の財政は、この両三年以来、療養に要する費用が増加いたしまして、毎年四十億、六十億、七十億という赤字を出すに至ったのであります。そこで、この赤字の穴埋めをいたしまするために、政府も幾分補助はするが、労働者や医師も当然その犠牲を負担してもらわねばならない、これが政府原案並びに与党修正案の正体であります。  ところが、一体どうして療養の費用がふえて参ったのであるかと申しますと、政府の資料を待つまでもなく、医学は日進月歩でありまして、医療内容の向上と受診率の増加という、健康保険本来の目的に全く合致いたしました制度の進歩発展が収入と支出の不均衡を起して参ったのであります。ところが、この収支の不均衡を、政府与党諸君は、全く労働者や医師の責任であるかのごとく心得まして、彼らの犠牲において赤字の穴埋めをしようというのであります。(拍手)  元来、社会保障制度というものは、いずれの国を見ましても、これが発展し、また普及するほど赤字が出るのが当然でありまして、これを、社会保険と民間保険とをはき違え、赤字対策のために被保険者を犠牲にしようなどとは、近代的な社会保障に対する完全なる無知を暴露するものといわねばなりません。(拍手政府原案によりますると、二十三億という労働者の一部負担に加えまして、一部悪徳者があるからという理由で、良心的な医師をも含めまして、医療担当者全体に天下り的な規制を加えるという、健康保険発足以来常に多くの犠牲を忍んで協力して参りました医師に対し、まっこうから冷水をぶっかけておるのがこの法案であります。(拍手)  社会保障制度の民主的な運営というものは、関係者の相互信頼、相互協力をその生命とするものであります。これを全く力ずくの官僚的統制に逆行させようというのが本案でありまして、この原案が公表されまするや、労働組合、医師はもとより、社会保障の確立を待望いたします全国民の憤激は、政府の無知と横暴に猛然として立ち上っておるのであります。この糾弾にたじたじとなりました政府与党の窮余の一策が、ただいま委員長によって読み上げられました与党修正案なのであります。(拍手)しかし、これとても選挙目当てのごまかしでございまして、その本質において、遺憾ながら、政府の改悪案と大同小異と申さねばなりません。たとえば、依然として入院の際には一日三十円という一部負担を残しておりまするが、中小企業を対象といたします政府管掌の被保険者の平均賃金はわずかに一万一千円余であります。これが、入院いたしまして賃金は六割となりますから、六千円台に落されます。その上、月九百円を一部負担として払わされるのでありますから、これでは家族持ちの労働者は入院ができません。かりに、できましたといたしましても、家族は働き手が病気にかかったという心配に加えまして、明日の生活の苦労が襲いかかります。全く病気をした労働者に追い打ちをかけようという無慈悲なやり方だと申さねばなりません。(拍手)  諸国の例を引用し、一部負担もやむなしと政府説明いたしておりますが、一部負担を行なっております国国、たとえば、イギリスでは二万四千円、ドイツでは一万一千円、フランスでは九千円と、いずれも最低賃金制を実施いたしておるのであります。最低賃金制を否定し、健康保険だけは赤字が出たからお前たちが負担しろというのは無知というよりは悪意に満ちたデマゴギーと申さねばなりません。(拍手)  また、健康保険の療養に要します費用の三割以上は結核の療養に支出されております。いわば、結核が保険を食っていると申しても過言ではありません。結核予防法におきまして明白に示されております国費半額負担の原則を採用いたしまして、まず、さしあたって政府管掌に対し二割の国庫負担実施すべきは当然であります。現在の保険料がすでに限度にきているといいますならば、すでに国庫負担実施いたしております失業保険、労災、厚生年金、日雇労働保険、国民健康保険にかんがみましても、なぜ政府管掌の保険だけは二割の国庫負担ができないのか、われわれの了解に苦しむところであります。(拍手)二割国庫負担をいたしますならば、労働者も助かります。医師も満足いたします。健康保険制度そのものも安泰が期待できるのでありまして、ここに二割国庫負担理由は明瞭なるものがあるのであります。  さらに、私は、この機会にわが党の社会保障制度に対する根本方針に触れまして、反対理由を一そう明らかにいたしたいと存ずるのであります。(拍手)  まず第一点といたしまして、すみやかに全国民に対し医療の保障普及をはからねばならないとわれわれは主張いたすものであります。(拍手)この立場からは、健康保険制度を逆行せしめようとする政府原案並びに与党修正案はとうてい承認するわけには参らないのであります。(拍手)第二次世界大戦後、各国政府が最も力こぶを入れております政策の重点は、福祉国家の津設、社会保障の確立にあることは、諸君も御存じの通りであります。西ドイツの今日の隆々たる経済復興の原動力が、実に年々予算の三割以上を社会保障の確立に投じて参りました民生安定の努力に待っていることは、鳩山内閣が刮目して学ばねばならぬとわれわれは言いたいのであります。(拍手)なるほど、政府は、本年度予算におきましても、社会保障関係費は百十四億ばかり増額したと自負しておられます。しかし、その内訳は、失業対策費にすでに三百五十余億も費しまして、生活保護費は三百六十億でございまして、この二つ費用だけでも社会保障費の六割をこえておりまして、実に莫大な予算国民の失業と貧困のためにつぎ込まれておるのであります。しかも、この事実こそ、政府の社会保障に対します熱意というよりは、かえって、鳩山内閣成立以来、国民の失業と貧困が年々深刻と相なっておるということを物語るものでございます。(拍手)鳩山内閣の社会保障の予算とは、みずからの政策の貧困と破綻の結果、失業と貧困が年々増大することを物語っておるのにすぎないのであります。  社会保障の充実とは、資本主義の政府が生み出す必然悪ともいうべき貧困と失業に対します弥縫的な救済に終始するものではありません。現在の社会保険をさらにさらに政府責任におきまして前進させることが、ほんとうの社会保障の前進の姿であります。その手始めとして、まず立法的にも予算的にも当面の努力を集中いたしまして、全国民に医療の保障を与えることであります。すでにわが党が提案いたしておりますごとく、四年以内には全国の市町村国民健康保険を設立し、給付の内容は、少くとも療養に関しまする給付におきましては、現在の政府管掌健康保険を基準とすべしと主張いたすものであります。ここに、われわれは、単なる財政的理由から現在の健康保険の給付を低下せしめようとする一切の意図に反対する根本の理由があるのでございます。(拍手)  われわれが反対いたします第二の理由は、あくまでも憲法を守り、再軍備よりも、まず守るに足る国を作るべしとするところの、わが党の根本的立場に立つものでございます。本年度の防衛費は、昨年度に比べまして七十億も上回っております。しかも、あの予算編成当時におきまする、てんやわんやのぶんどり騒ぎの中にありましても、政府与党も、ついに防衛関係費には一指も染めることができなかったのであります。まことに傍若無人にあぐらをかいておるのが防衛費予算であります。(拍手)しかも、その結果は、健康保険の財政不足の過半が、ついに労働者と医師の犠牲に転嫁されてしまっておるのであります。かつて軍閥内閣が賃金ストップと労働時間の強化をやって参ったことを再び繰り返しておるのが鳩山内閣だと、われわれは断定いたすものであります。  今や、一部負担の名目のもとに賃金の実質的な切り下げをはかろうとする政府に対しまして、労働者は、健康保険法の改悪反対を大きな旗じるしとして立ち上っております。医師の良心的な診療をロック・アウトしようとする政府の意図に対しまして、社会保障を守らんとする熱意から、医師会員は保険医総辞退の最後の態勢を整えて立ち上っておるのであります。わが党も、また、あくまでも憲法を守り、再軍備よりも守るに足る国を作るべしとの立場から、労働者の健康に対します政府の保障を要求し、また、良心的な診療を確保することを要求して、政府並びに与党修正案に対し、その撤回を求めるものであります。(拍手)  最後に、私は、政府並びに与党諸君の改悪に反対いたしまする第三の根本理由として、われわれの二割負担の要求が、日本の真の独立と平和を待望する全国民の悲願に直結していることを申し上げたいのであります。鳩山内閣は、第一次組閣以来、しばしば繰り返して防衛支出金を減額し、民生の安定に振り向けると公約いたしております。しかるに、本年度予算を見ましても、防衛支出金は八十億の減額を見ましたにもかかわらず、防衛関係費は全体として七十億の増額を見ておるのであります。しかして、七十億と予想されております健康保険の赤字は、その過半を労働者と医師の犠牲に転嫁して顧みない。この事実こそは、鳩山内閣予算なるものが、防衛分担金が減額されるに従い逆に防衛関係費は増大するという悪循環を明白に示すものであります。(拍手)  わが党は、先般の予算組みかえ動議におきまして、防衛支出金の全額削除を要求し、大幅に社会保障の財源といたすべきことを提案いたしました。しかるに、諸君は、これをもって不可能事なりと言っておられるのであります。しかしながら、果してこのことは不可能でありましょうか。現に、防衛分担金の支払いを拒絶し、実行しておる国があるではありませんか。西ドイツのシェフアー大蔵大臣を見よと私は言いたいのであります。ドイツ政府は、繰り返し支払い拒否を言明し、米英仏に対する過去の分担金未払い分三十二億マルク、約三千億、将来の年間支出二十四億マルク、すなわち二千億の莫大な防衛分担金の支払いを拒絶いたしておるのであります。その結果、英軍も、仏軍も、自国民負担によるドイツの防衛をあきらめて撤退しようとの議が持ち上っておるのであります。ドイツ国会では、これを財源として減税を断行せよとの要求が現われておるのであります。(拍手)  ヨーロッパでは、祖国の独立と国民の生活を守るために断固として防衛分担金の支払いを拒絶する政府がありますときに、アジアにおきましては、労働者の健康と生活を犠牲に供する政府があるではありませんか。(拍手、発言する者多し)西ドイツの政府は、外に向ってこぶしを振り上げ、祖国の独立と名誉のために、しかして国民の生活を守るために、分担金の支払いを拒絶いたしたのであります。しかるに、日本の政府は、こぶしを振り上げ、権力をもって労働者や医師を威嚇し、平然たる総理大臣がおられるのであります。(拍手、発言する者多し)  防衛費を削減し社会保障に充てよ、保険給付に対しては国庫負担二割を実現せよというわが党の要求は、かようにして、日本の独立と平和を念願するほうはいたる全国民の世論をうしろだてといたしておることを断言いたしまして、私は反対討論を終るものであります。(拍手
  26. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) ただいまの堂森君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることといたします。藤本捨助君。     〔藤本捨助君登壇
  27. 藤本捨助

    ○藤本捨助君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案並びにこれら二法案に対する修正案につき、修正案修正案を除いた政府原案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対して、賛成討論を行わんとするものであります。  まず、健康保険法等の一部を改正する法律案の使命並びにその特質等についてであります。  疾病が貧困の最大温床であり、生活保護法の適用を余儀なくする原因の六割がまた疾病であるわが国現下の国民生活の実情にかんがみるとき、国民の要望する福祉社会を建設するため、国民医療の確保をはかることは、まことに急務中の急務であります。わが党が、立党の基本政策において、社会保障整備の大旆を揚げ、まずその中心課題である医療保障制度を統合整備して、勤労者の生活安定とその労働力の保全強化に寄与するため、病める者にはあまねく医療をもってせんとするゆえんも、またここにあるのであります。(拍手)しかるに、その中核をなす政府管掌の健康保険が、近年医療費の異常なる増加と、これが零細なる中小企業を対象とする事情等のために、昭和二十九年度及び三十年度において約百億円、三十一年度においても、これを放置すれば約六十七億円の収支不足を免れまして、財政的危機に陥り、まさに崩壊の寸前に瀕しておるのであります。従って、これが財政の立て直しに邁進し、その健全なる発展を促して医療保障の完全実施をはかるため、強力なる法的、財政的措置の必要なる、けだし今日よりはなはだしきはないのであります。(拍手)  そもそも、近代医学、医術の驚異的進歩と国民の保健衛生思想の普及に伴い、医療費がますます増高することは、むしろ当然のことでございます。しかしながら、保険財政においては、この増加する医療費をいかにしてまかなうかということが問題であり、また、保険理論による保険料の収入のみをもってしては、とうていこれに対処し得す、ついに収支の均衡が破れて、しょせん、この制度を崩壊に導き、ひいては医療保障制度の全面的危機を招来せんとするところに、さらに深刻なる問題の焦点があるのであります。(拍手政府は、この収支の不均衡を是正するために、昭和二十九年秋以来、各般の行政措置を講じて、健康保険財政の健全化に鋭意努力を続けて参ったのでありますが、今回の改正法案における諸改革は、これが根本的立て直しを行い、進んで全国民を対象とする医療保障制度の確立を目途として、その地固めを行わんとするものでありますから、わが国医療保障を、今後徹底的に、また急速に改善充実するため、まさに一大転機を画するものでありまして、きわめて重大なる使命を有するのと断言せざるを得ないのであります。(拍手)  以下、そのおもなる特質を明らかいたしますれば、第一に、政府管掌の健康保険事業の執行に要する費用に対して国庫が補助を行うことを法律上明文化し、昭和三十一年度において三十億円を一般会計から受け入れたことであります。これは、社会保障制度審議会や社会保険審議会等の勧告及び答申に対してはもちろん、広く国民の要望にこたえて、保険の範疇を越え、特に社会保障を重点政策とするわが党の立場から、画期的にその前進をはかる布石として、健康保険の直面する財政的危機を打開し、進んで国民の待望する国民皆保険の道を開かんとするものであります。(拍手)よって、政府は、社会保障制度の確立を指向して、すみやかに現行医療保障制度を統合整備する総合政策を樹立し、その強固なる財政的基盤の確立をはかるため、まず医療保障制度の中核である健康保険事業の運営に対して、さらに百尺竿頭一歩を進め、今後は恒久的に国庫が定率の負担をする制度を設けて、医療保障制度に対する国家の重大なる責任を明確にいたすべきであります。(拍手)  しかし、ここに大切なことは、社会保障の費用は、医療需要の増加と扶助人員の増勢等が、給付内容の向上と相待って、国民の分配所得の増加率や国民の担税力並びに一般会計予算の伸びに比し急激に増加して、自動的に予算を膨張せしめ、しかも、かくのごとき費用は財政費目の中で固定的経費となり、その増加とともに財政の弾力的運用の幅を失わしめますので、これらの実態に対して周到なる配慮を加えるとともに、また、健康保険の財政的危機がいかにして生じたか、保険の建前にもかかわらず、社会連帯の精神に基く相互扶助の自力ではやり切れないのか、制度や運営に幾多の欠点を包蔵しておるから、そこにいわゆる不正の請求や給付の行き過ぎが行われて赤字が出たのではないか等、慎重に検討して、いやしくも国費のむだや浪費のないようにせねばならないことであります。従って、保険財政の赤字即国庫負担というがごとく、社会主義体制下における医療保障制度に見るがごとき形式的主張は、これを軽々にとるべきではないのであります。(拍手)  第二に、被保険者の一部負担の範囲拡張の問題であります。これを、社会保険審議会や社会保障制度審議会における多数意見や、社会保障の先進国である諸外国の制度等に徴するまでもなく、わが国においても、また、現下の財政その他の事情上、最低限度の被保険者負担の範囲拡張は真にやむを得ざるものと思量するのであります。思うに、これによって高度の給付内容が堅持され、また、いわゆる一部の乱給と不正の請求等がありとせば、これを抑制して、給付の適切、受益の均衡並びに負担の公平を調整するための一助ともなり、さらに、これが社会保障前進の布石とする国庫の負担や、事業主、医療担当者等に対する施策と、その協力に相待って、今回における法改正の眼目とする健康保険財政の立て直しに貢献し、進んで医療保障制度の確立を促進する使命に寄与することにもなりますから、これを思えば、被保険者本人にとっても、保険財政の立て直しや、はたまた医療保障制度の確立に対しても、その意義きわめて重大なりといわざるを得ないのであります。(拍手)  しかるに、今や、巷間伝うるところによれば、現下における国家財政の実情や保険の性格を無視し、また、健康保険等の実態や本改正法案の使命並びに社会保障の先進国における事例等に眼をおおい、被保険者の一部負担の範囲拡張をもって単なる健康保険財政の赤字対策なりと強弁し、また、今回における法改正を目して社会保険の後退なりと非難し、あるいは改悪なりと称して、これを阻止せんとする策謀があるのであります。しかしながら、社会主義体制下における医療保障制度ならばいざ知らず、もし、それ、今回の改正が、終局的には福祉社会の一翼たる社会保障の確立に寄与するため、やむを得す被保険者の一部負担の範囲を拡張したる使命の曲解によって阻止されるようなことがありとすれば、ただに健康保険制度を崩壊に導くのみならず、ひいては医療保障制度の全面的危機を招来すること火を見るよりも明らかでありまするから、これと、今回の改正によって医療行政の合理化をはかり、健康保険財政等の立て直しを可能にし、その健全なる発展を促進し、進んで国民皆保険の悲願に達するに至ることとを彼此較慮するとき、そのいずれを選ぶべきかについては、あえて良識に待つまでもなく、事理きわめて明白なりといわざるを得ないのであります。(拍手)  第三に、保険医療制度合理化の点であります。今回、個人指定方式の長所を取り入れた機関指定方式を採用して、保険医、保険薬剤師等の義務を明確にし、その公共性に反するがごとき行為を排除せんとしておるのであります。もとより、本制度実施に当っては、指定規準の設定や、適正配置並びに医療担当者の協力等について十分慎重なる配意を要することは、言を待たぬところであります。  次に、行政庁の検査に関する規定を明確にし、また、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査機構を整備いたしたのであります。これをもって医療担当者に対する不信行為なりと牽強付会する論議もありますが、しかし、これらの規定は、すべて健康保険財政の危機に当って保険給付の適正をはかり、その内容の低下を阻止するとともに、受益の均衡負担の公平を期したにすぎないのであります。  以上のほか、本改正法案においては、被扶養者範囲の明確化、標準報酬等級区分の改訂、継続給付を受ける資格期間の延長等、もろもろの措置を講じておるのでありますが、いずれもみな保険行政の健全化と保険運営の合理化をはからんとするものでありまして、現下の健康保険制度等の実態にかんがみるとき、一応適当と認められる程度のものであります。  しかしながら、審議の過程において不適当と認められたる諸点については、与党といたしましても、正すべきは正すの立場において先刻委員長の御報告通り、断固修正を加えて、本改正法案実施にいささかも無理のないよう十分留意いたしたのであります。すなわち、特に、被保険者の再診の際における一部負担の程度を若干軽減したこと、質問もしくは検査に際しての立ち入り権限に関する規定削除して現行法の規定に戻し、関係者の不必要なる不安感を除くようにしたこと、保険医療機関指定の有効期間を一年延長したこと、医師、歯科医師等に対する検査規定に違反したる場合の罰則規定を改めて、罰金を過料にしたこと、特に、いわゆる官給明細書方式採用については、附帯決議をもってこれを中止せしめる措置をとった等、大乗的見地から、いたずらに面目にとらわれず、でき得る限り摩擦の発生を回避して、本改正法案の真実の企図を実現せしむるため遺憾なきを期したのであります。  次に、船員保険法の一部を敗走する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案についてであります。  政府原案改正法律案は、ともに、これらの対象とする重要産業現状とその特異性に適応せんとするものであります。その改正案及び前者に対する修正案については、それぞれ健康保険法等の一部を改正する法律案及びその修正案と同工異曲の趣旨によるものでありますから、ここではその詳論を避けることにいたします。  最後に、独立後の容易ならざる経済的、社会的諸条件を克服して新しい福祉社会を建設するためには、国民生活の安定がすべての基調であることは申すまでもございません。社会保障制度の確立、特に医療保障の画期的普及と充実は、まさにかくのごとき国民の要請にこたえるものであります。かかる見地から、政府は、すでに経済五カ年計画を樹立し、その背景として社会保障五カ年計画の策定に邁進し、まず、その重要なる支柱として今回健康保険法等の一部を改正する措置等を講じ、もって医療保障の完成を企図するとともに、なお、その他各般の総合的施策を考究いたしておるのであります。  この際、特に重点を置くべきものとして指摘いたしますれば、現在、各省ばらばらに組織せられ、しかも、思い思いに運営せられておる各種保険の総合的調査を行い、その抜本的総合政策を樹立して、社会保障行政を統合整備し、もって事務の能率化をはかり、施策の重複を避け、経費の節減、負担の公平及び受益の均衡を期して高度の社会保障を確立することであり、さらに、現行の制度のもとにおいては、今なお約三千万の国民が何ら医療保障の恩恵に浴しておりませんので、すみやかに全国民を対象とする医療を国民皆保険の完全実施にまで推進することであり、ことに、近年医療給付費の約三分の一を占め、今や健康保険財政等に重圧を加えつつある国民病結核に対し、予防、治療及び予後にわたる一貫的な根本的改善方策を樹立して、現在各種医療保険の根底をゆるがし、これを危殆に瀕せしめている難問題を解決することであり、さらに進んで、これらの国民医療を担当する者の地位の向上、生活の安定をはかるとともに、その属する諸団体を整備して、これに法的性格を付与する措置を講じ、国民医療における重要なる使命を円滑にまた強力に推進し得るよう万全の方途を講ずること等であります。  今回政府提案にかかる健康保険法等の一部を改正する法律案外二案は、これらの重要なる諸問題を解決する施策としては、いまだその理想に遠いものでありますから、政府は、今後すみやかにこれが解決の完璧を期するため、全力をあげてこれに対処すべきことを強く要望するものであります。しかしながら、かかる境地に前進する第一の段階として、まず、瓦解に瀕せんとする健康保険財政等に活を入れ、医療保障制度の枢軸を堅実にすることがまさに喫緊の要務であると考えまするので、数え来たれば、今回の改正法案にはなお幾多の不満の点がないでもないが、現下における国家財政や国民経済の実情から見て、あとう限りの措置と信じ、これが運営に関しては、附帯決議に要請せられたる諸条件の具現に深く期待して、政府提案にかかる健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案並びにこれら二法案に対する修正案につき、修正案修正案を除いた政府原案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対して賛成いたす次第であります。(拍手
  28. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、日程第六につき採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君は白票、反対諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  29. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。     〔「投票漏れがあるじゃないか」「もう一回やれ」「投票無効だ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  30. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕     〔「投票に異議あり」「休憩しろ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  31. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百十三   可とする者(白票) 百八十七     〔拍手〕   否とする者(青票) 百二十六     〔拍手
  32. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君)右の結果、本案委員長報告通り決しました。(拍手)     —————————————  健康保険法等の一部を改正する法律案委員長報告通り決するを可と  する議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  青木  正君    赤城 宗徳君  赤澤 正道君    秋田 大助君  足立 篤郎君    荒舩清十郎君  有田 喜一君    安藤  覺君  五十嵐吉藏君    井出一太郎君  伊東 岩男君    池田 清志君  池田正之輔君    石坂  繁君  石田 博英君    石橋 湛山君  稻葉  修君    犬養  健君  今井  耕君    今松 治郎君  植木庚子郎君    植原悦二郎君  植村 武一君    臼井 莊一君  内田 常雄君    内海 安吉君  遠藤 三郎君    小笠 公韶君 小笠原三九郎君    小川 半次君  小澤佐重喜君    大倉 三郎君  大島 秀一君    大高  康君  大坪 保雄君    大村 清一君  岡崎 英城君    荻野 豊平君  加藤 精三君    加藤 高藏君  加藤常太郎君    鹿野 彦吉君  亀山 孝一君    唐澤 俊樹君  川崎末五郎君    川崎 秀二君  川村善八郎君    菅  太郎君  木崎 茂男君    木村 文男君  岸  信介君    北 れい吉君  北村徳太郎君    吉川 久衛君  久野 忠治君    草野一郎平君  楠美 省吾君    熊谷 憲一君  倉石 忠雄君    黒金 泰美君  小枝 一雄君    小島 徹三君  小平 久雄君    小林  郁君  小林かなえ君    小山 長規君  河野 一郎君    河野 金昇君  高村 坂彦君    纐纈 彌三君  佐々木秀世君    齋藤 憲三君  坂田 道太君    笹本 一雄君  笹山茂太郎君    薩摩 雄次君  志賀健次郎君    椎熊 三郎君  椎名悦三郎君    椎名  隆君  重政 誠之君    篠田 弘作君  島村 一郎君    首藤 新八君  杉浦 武雄君    助川 良平君  鈴木 直人君    瀬戸山三男君  關谷 勝利君    園田  直君  田口長治郎君    田子 一民君  田中伊三次君    田中 角榮君  田中 龍夫君    田中 久雄君  田中 正巳君    高岡 大輔君  高木 松吉君    高瀬  傳君  高橋 禎一君    高橋  等君  高見 三郎君    竹内 俊吉君  竹尾  弌君    千葉 三郎君  中馬 辰猪君    塚原 俊郎君  辻  政信君    戸塚九一郎君  渡海元三郎君    徳田與吉郎君  床次 徳二君    内藤 友明君  中垣 國男君    中川 俊思君  中嶋 太郎君    中曽根康弘君  中村 梅吉君    中山 マサ君  永田 亮一君    長井  源君  並木 芳雄君    楢橋  渡君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽 兵助君    根本龍太郎君  野澤 清人君    野田 武夫君 橋本登美三郎君    長谷川四郎君  濱地 文平君    濱野 清吾君  林  讓治君    林   博君  原 健三郎君    原  捨思君  平塚常次郎君    平野 三郎君  廣瀬 正雄君    福井 順一君  福井 盛太君    藤本 捨助君  古井 喜實君    古川 丈吉君  古島 義英君    保科善四郎君  坊  秀男君    堀内 一雄君  本名  武君    眞崎 勝次君  前田 正男君    町村 金五君  松浦周太郎君    松浦 東介君  松岡 松平君    松澤 雄藏君  松永  東君    松野 頼三君  松本 瀧藏君    松山 義雄君  三田村武夫君    水田三喜男君  宮澤 胤勇君    村松 久義君  森   清君    森山 欽司君  八木 一郎君    山口 好一君  山崎  巖君    山下 春江君  山中 貞則君    山村新治郎君  山本 勝市君    山本 粂吉君  山本 正一君    山本 猛夫君  横井 太郎君    横川 重次君  吉田 重延君    米田 吉盛君  渡邊 良夫君    亘  四郎君 否とする議員の氏名    青野 武一君  赤松  勇君   茜ケ久保重光君  淺沼稻次郎君    有馬 輝武君  淡谷 悠藏君    井岡 大治君  井手 以誠君    井上 良二君  井堀 繁雄君    伊瀬幸太郎君  伊藤卯四郎君    伊藤 好道君  池田 禎治君    石田 宥全君  石橋 政嗣君    石村 英雄君  石山 權作君    稲富 稜人君  稻村 隆一君    今澄  勇君  今村  等君    受田 新吉君  大西 正道君    大矢 省三君  岡  良一君    岡本 隆一君  加藤 清二君    春日 一幸君  片島  港君    片山  哲君  勝間田清一君    上林與市郎君  神近 市子君    神田 大作君  川俣 清音君    川村 継義君  河上丈太郎君    河野  正君  木原津與志君    菊地養之輔君  北山 愛郎君    久保田鶴松君  小平  忠君    小牧 次生君  小松  幹君   五島  虎雄君  河野  密君   佐々木 良作君  佐竹 新市君   佐竹  晴記君  佐藤観觀次郎君   坂本  泰良君  櫻井 奎夫君   島上 善五郎君  鈴木茂三郎君   鈴木  義男君  田中幾三郎君   田中 織之進君  田中 武夫君   田中  利勝君  多賀谷真稔君   高津  正道君  滝井 義高君   竹谷 源太郎君  辻原 弘市君   堂森  芳夫君  中井徳次郎君   中居 英太郎君  中崎  敏君   中村  時雄君  中村 英男君   永井 勝次郎君  成田 知巳君   西尾  末廣君  西村 榮一君   西村  力弥君  野原  覺君   芳賀   貢君  長谷川 保君   原    茂君  原   彪君   日野  吉夫君  平岡忠次郎君   帆足   計君  穗積 七郎君   細道  兼光君  細田 綱吉君   前田 榮之助君  正木  清君   松井  政吉君  松尾トシ子君   松岡  駒吉君  松平 忠久君   松原 喜之次君  松前 重義君   松本  七郎君  三鍋 義三君   三宅  正一君  三輪 壽壯君   武藤 運十郎君  門司  亮君   森  三樹二君  森島 守人君   八百板  正君  八木 一男君   八木   昇君  矢尾喜三郎君   安平  鹿一君  柳田 秀一君   山口 シヅエ君  山口丈太郎君   山崎  始男君  山下 榮二君   山田  長司君  山花 秀雄君   山本  幸一君  横錢 重吉君   横路  節雄君  横山 利秋君   吉田  賢一君  和田 博雄君   渡邊  惣藏君  川上 貫一君   志賀 義雄君   中原 健次君     —————————————
  33. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 次に、日程第七及び第八の両案を一括して採決いたします。日程第七の委員長報告は可決、日程第八の委員長報告修正であります。両案を委員長報告通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  34. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告通り決しました。(拍手)      ————◇————— 森林開発公団法案内閣提出
  35. 長谷川四郎

    ○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、森林開発公団法案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  36. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。森林開発公団法案議題といたします。委員長報告を求めます。農林水産委員会理事吉川久衛君。     〔吉川久衛君登壇
  38. 吉川久衛

    ○吉川久衛君 ただいま議題となりました、内閣提出森林開発公団法案につきまして、農林水産委員会における審議経過並びにその結果について御報告申し上げます。  わが国の木材需要は国民経済の発展に伴い年々増大して参っておりますが、これら需要のほとんどは里山である既開発林から毎年の生長量を越えて供給されている現状にかんがみ、奥地未開発林の積極的開発が必要とされてきておるのであります。現在、大規模な未開発林地帯の中で、奈良県、三重県及び和歌山県にわたる熊野川水系の流域並びに徳島県の剣山周辺地区は、千古斧鉞を入れざる地であり、針葉樹用材が多く、また、伐採跡地の造林についても好条件を備えておりますので、特にこれら両地区を対象として、その森林の急速かつ計画的なる開発を行いまして、林業生産の増強と林業経営の改善に資するため、余剰農産物資金融通特別会計等から資金を借り入れ、事業合理的かつ効率的に行うため、森林開発公団を設立しようとするものであります。  以下、本法案内容について、その概要を御説明申し上げます。  まず公団の組織でありますが、理事長及び監事各一名は農林大臣の任免に、かかり、その他の役員二名以内は、理事長が農林大臣の認可を受けて任免することとしてあります。  次に公団の業務でありますが、林道の開設、改良及び災害復旧事業並びに維持管理を行うほか、これら林道の利用地域において、土地所有者の委託による造林事業をも行います。その事業費は、現行の公共事業に準じ、国は公団に補助金を交付し、また、関係県及び受益者は公団に負担金を納入することといたしております。また、これら事業を行うに当っては、農林大臣が関係大臣の同意を得て基本計画を定め、林道の開設、改良その他の災害復旧の事業についての実施計画は、公団が、関係県知事と協議をし、農林大臣の認可を受けて決定することと相なっております。  さらに、公団の財務及び会計についても、予算、業務計画及び資金計画については農林大臣が認可することとし、借入金、余裕金の運用についても一定制限を加える等、経理の公正を期することとしております。  その他、公団に関する監督規定、公団の役職員の普通恩給の特例規定、公団の税法上の特例規定をそれぞれ設けております。  本法律案については、その事業の実態を確かめるため、特に、去る一月二十日より六日間にわたり、現地の熊野川水系の流域に委員を派遣いたして調査をせしめたのであります。  本案は、去る三月二十三日に付託となり、同日政府より提案理由説明聴取し、四月三、四日及び本十日の委員会において慎重審議いたしましたが、その詳細については会議録で御了承願いたいと思います。  次いで、討論を省略し、小会派欠席のまま採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告いたします。(拍手
  39. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  41. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 行政監察特別委員長から、小、中学校における教科書関係事件について調査報告をしたいとの申し出があります。これを許します。行政監察特別委員会理事篠田弘作君。     〔篠田弘作君登壇
  42. 篠田弘作

    ○篠田弘作君 行政監察特別委員会において調査をいたしました小、中学校における教科書関係事件について報告申し上げます。  本件は、昭和三十年六月二日付をもちまして衆議院議員南好雄君より提案されたものでありますが、今日種々の点について問題とされておる小、中学校における教科書について調査を行うことは、義務教育の本旨にかんがみ最も適切なるものであるとして委員会議題とし、第二十二国会より調査を継続し、六月二十四日から十二月十四日に至る約半カ年にわたって、文部事務次官田中義男君外、公正取引委員会、教科書発行会社、教科書供給業者、教育委員会、日本教職員組合、PTA、学校生活協同組合等の関係者二十七名を証人として喚問し、調査を行なつたのであります。  また、本件については特に現地調本の必要が認められ、昨年八月中旬、北海道、東北、九州の三地方にそれぞれ委員を派遣し、現地の実情につき調査を行いました。  本件の調査に当って論議されたおもなる点は、教科書に関する検定、採択並びに供給の実情、教科書の価格並びに内容、その他、教科書に準ずる夏、冬休み帳などの学習用図書類の使用状況、その販売方法等で、教科書行政全般にわたったのであります。世論は本件に関し徹底的な究明を要望し、本委員会あて提出された意見書等も多数に上り、各委員も、各分野にわたって、真摯かつ精密なる調査を行なった次第であります。  この調査内容全般にわたって御報告申し上げますことは時間の関係上差し控え、ただいまから本委員会において調査した要点についてのみ申し上げ、詳細は別途文書をもちまして議長あて提出いたしておりますから御了承願いたいと存じます。  さて、本件に関する調査の第一は、教科書に関する検定についてであります。この点につきましては、現行検定事務の実情と教科書の内容の両面から調査いたしたのでありますが、まず検定事務の面について申し上げますと、検定は教科書用図書検定調査審議会の答申によって文部大臣が行うことになっておりますが、この審議会の審査はおおむね疎略であると認めざるを得ないのであります。これが原因としては、一、調査員の採点した原稿の結果のみを見て、原稿を直接見もせず合格、不合格を決定しておる審議会のあり方、二、調査員の氏名が非公開であるため生ずる弊害、三、文部省退職者を各教科書会社が競って採用しておることから想定される公正なる検定の阻害、四、学習指導要領がひんぱんに改訂されるために、教科書も絶えず改訂される等が指摘されるのであります。  次に、教科書の内容の面でありますが、現在の教科書の一部には、叙述、表現等において誤まっているものがあるのであります。今日国際法上いまだその領土の帰属が確定しておらない南樺太を「ソヴェットのサハリン」と明記した教科書のごときその一例であります。また、教育基本法の精神にもとり、一方的見解に終るおそれのあるものがあります。まず小学校教科書について一例をあげますれば、中教出版社発行、周郷博著作による「あかるい社会」があります。この教科書の九十五ページでは、日清戦争について説明し、「日本はこの戦争で大陸へ進出するいい足場ができました。そこで日本はさらに大がかりに戦争の準備をはじめました」とあって、日本だけが悪くて、正しくない戦争を行なったような印象を植え付けておるのであります。さらに、日露戦争については「そのころのロシアは皇帝がたくさんの軍隊をもって、あちこちに手をのばしていたので、世界じゅうからおそれられていました。だから中国の領土へせめこむのは、日本もロシアもおなじことなのに、日本国民の多くは、これは正しい戦争だと思って戦いをつづけました。しかし国民のなかには、戦争に強く反対をする人たちもいました。」と、堺利彦や幸徳秋水などの名があげられておるのであります。この説明では、反戦論者の名前だけをあげ、一方的見解による日本歴史の説明が行われておるのでありまして、明らかに義務教育の精神から逸脱するものであります。  また、中学校教科書について一例をあげますならば、実教出版社発行、長田新編による「模範中学社会」であります。この教科書は、一冊百六十ページ中、約七十ページにわたって、平和を題材として取り扱っておりますが、その内容中、平和運動について「戦争によって国民の大部分は苦しみ悩むけれども、きわめて一部の人々は戦争によって得をする。だからそういう人々は、政治家をそそのかしたり、国民が戦争を好きになるようにしむけたりして、戦争をくわだてる、こういう人々のことをふつう『死の商人』とよんでいる。死の商人たちはしばしば戦争をしなければならないと人々にいいきかせる。軍備をかため、戦争をすることによって失業者には仕事がみつかり、景気がよくなり、生活が楽になると説ききかせる」と、戦争は死の商人が起すように仕向けていくものであると説き、さらに「平和のときは国民の生活が苦しく、反対に戦争があったら、しばらくでも楽な生活が出来るとすれば、人々はつい戦争を願うようになるかもしれない。私たちが戦争による破滅をほんとうにさけるには、私たちの生活の中から貧しさをなくさなければならない。そのためには社会の改善が必要である」と説いておるのであります。戦争の起る原因については、この教科書で説明しておることもその一つとしてあげることができるでありましょうが、これのみをもって断定してしまうには、あまりにも多くの要素を含んでおるのでありまして、これらの要素を無視した説明方法は、一方的見解に立つものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)しかも、このようなおそれのある教科書の多くは日教組の講師団によって書かれたものでありますが、これらの著者の見解や指導方針を解説した教師用指導書は発行会社から無料で配付されており、この指導者は文部省とは全く没交渉であるという状態に置かれておるのであります。  このほか、同一事象に対して種々さまざまな表現がなされ、概念の混乱を招くおそれのあるもの、各教科間の連絡がとれていないもの、また、漢字の使用等においても教科書ごとに統一がとれていないものなど、検定の基本条件に欠けたものが検定に合格、使用されておる諸事実が認められたわけであります。従って、政府としては、すみやかに現行検定事務に再検討を行い、審査方法改善を加えるとともに、検定基準整備するなどの措置を講じ、さらに、現在発行業者に関係ある者を教科書行政に直接関与させないよう配慮するなど、文部大臣の有する検定権の適正な行使に遺憾のないよう取り計らう必要があると認めるのであります。  第二は、発行に関するものであります。現在教科書の発行は自由であるため、極端な営利の対象となり、発行業者の数も逐年累増し、教科書の種類を著しく増加させております。これら発行業者の中には、事業能力において疑問の持たれるものや、また、信用微弱のため企業の倒産により需要者に不慮の迷惑をかけている事実等も認められ、教科書の国家的公共性からいって、はなはだ遺憾な状態といわなければなりません。このことは、教科書発行業者に対する現行規定が不備であるばかりでなく、文部当局がその規定実施を怠っておる点にその原因の一つが認められるわけでありますから、教科書を発行せんとするものについては、一定の資格条項を設け、その事業能力、信用状態が教科書発行に不適当と認められるものを排除するよう措置する必要があります。  第三に、採択について申し上げます。採択とは、多種類の教科書の中から使用すべきものを決定することでありまして、採択はあくまで教科書の内容本位によって公正に行わるべきもので、発行業者の販売政策によって曲げられてはならないことは言うを待たないところであります。しかるに、調査の結果におきましては、教科書の採択をめぐって業者が不正行為を犯し、教育者が検察庁の取調べを受けたような不祥事実も明らかにされ、また、教科書の編集、著作に携わる者と採択関係者との間に直接間接の関連を有するため教科書採択の自由と公正が阻害されておる事実も認められたのであります。これはいわゆる地方版といわれる問題でありますが、九州地方においては理科研究九州地区委員会、北海道においては北海道国語教育連盟、北海道社会科教育連盟など、現場教師の研究団体が編集しておる教科書、いわゆる地方版の形態で発行されておる教科書が、採択関係者との直接間接の関連のもとに、これらの地方においてはその採択部数が圧倒的多数を占めておるという事実がこの例証であります。現行法規におきましては、採択は当該学校を所轄する教育委員会が決定することになっておりますが、採択の方法について一定方式がきめられていないため、採択をめぐって教育委員会と現場教師との間に紛争を起しておる事例もあり、教科書を選定する施設が不十分であるため。教科書の内容検討を困難にしているうらみもあります。従って、政府、教育委員会その他採択関係者においては、次の諸点に考慮を払い、善処せられんことを要望するものであります。  すなわち、一、採択権は現行通り教育委員会にあることは至当であると思量されますが、採択権の所在を法規上さらに明確にするとともに、権限範囲についても基準を明らかにすること、二、教師の共同研究ないし児童生徒の転校等の場合を考慮し、また学童の心身発達に応じた学力を均等にする上からも、一定地域内においてはできるだけ少い種類の教科書を採択するよう考慮すること、三、現行展示会制度では所期の目的を達成しがたいうらみがありますから、常時研究できるような恒久施設を設けるなど、これに再検討を加えること、四、発行業者の採択に関する不正行為につきましては、発行停止などの厳重な処罰規定を設けること、五、発行業者側の主催する研究会、講習会等は、教科書の採択と関連を有するものでありますから、これを禁止すること、六、地方に発行業者が配置しておる駐在員は、採択の公正を害するおそれがありますから、これを禁止すること、七、地方教職員の組織する団体の編著にかかる教科書、いわゆる地方版は採択に関連して弊害が発生しておりますから、この種の教科書につきましては特に採択の公正が期せられるよう配慮すること、などであります。  さらに、この際、教科書の採択と関連して付言しなければなりませんことは、日教組が、その講師団を動員して、教科書に対する採択基準を作成し、中央執行委員長の名をもって現場教師に示しておる事実であります。教科書に対し第三者が批判を下し、採択基準を示すことは自由でありますが、特定の教科書の編著者の入っておる集団が採択基準を作成し、しかも、採択に関係ある教育者の組織を通じてこれを流すこと自体問題であります。さらに、この採択基準内容において一方的傾向の観点に立っておるものがあることが認められ、問題となったのであります。一例をあげますと、「資本家と労働者、地主と小作人等の関係で生産の問題が考えられているか」「社会の発展が法則的に示されるような時代区分がされているか」などでありまして、生産の問題を資本家と労働者というような階級的対立観点で説かれているか、あるいは社会の発展を唯物的弁証法で説明しているか等の一方的見解に立つ事項が教科書採択の標準とならなければならないということであって、かかる日教組の行動は、明らかに公教育の中正を破壊せんとするものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第四、価格について申し上げます。現行教科書の価格は、その価格構成をしさいに検討いたしますと、相当低減できる余地のあることが発見され、多数の証人の証言によっても裏づけがなされたのであります。義務教育に関する父兄の負担軽減することについては特別の配慮がなされなければならないのでありまして教科書価格引き下げにつきましても、関係者は格別の努力を払う必要があるのであります。このため、発行業者としましては、企業の性質にかんがみ、売り込みに消費する宣伝経特等の節減をはかるとともに、政府としては、教科書の製作につきまして、紙質、色刷り等に一定基準を設けるほか、定価の認可基準を教科書の原価構成に即応するものとし、教科書の運賃、輸送料等につきましてもなお一段の軽減措置を講ずることが必要であると認めるのであります。第五、供給について申し上げます。教科書供給の現況は、終戦直後に比べかなり改善が認められるのでありますが、なお次の諸点について十分考慮を払う必要があると思量されるのであります。すなわち、児童、生徒の転校の場合、教科書の供給を完全にするため、特約供給所及び取次供給所に対し監督についても考慮を払うこと、二、特約供給所について、その業務内容に応ずる手数料の引き下げに努め、その供給区域が重複している場合、不当の競争を生じないように、また、単独の場合は独占的地位によるサービスの低下を生じないよう適当なる措置を講ずること、三、取次供給所の選定に当っては、学校側の便宜を考慮し、従来の供給地域についても再検討を加えること等が必要と認められるのであります。なお、この際、教職員関係者によって構成されておる学校生活協同組合より発足した特約供給所について一言いたします。終戦直後既存の特約供給所のサービスが著しく低下したということを動機として、佐賀県外数府県において、学校生活協同組合が、特定の発行業者と結び、教科書の供給業務を行うに至ったのであります。学校の教師は教科書の採択に重要な役割を果しておりますから、学生協が教科書の採択に乗り出せば、その成功は易々たるものであることは明瞭でありまして、一例として福岡県の実例を申しますならば、昭和二十六年以来、同県中学校学生協は、大日本図書発行の「科学の世界」の採択に成功し、みずからは供給業務を行わないのにもかかわらず、協力金の名称のもとに、供給手数料の半額を特約供給所から提供させる契約を結んでおるのであります。かかる傾向に対し、文部省でも問題といたしまして、教科書の選定に当るべき教師が供給業務を行うことは好ましくないとの警告を発したのであります。この結果、関係者は株式会社に改組したのでありますが、その株主並びに役職員の大部分は、学校の教職員もしくは教職員であった者で構成されておりまして、教科書採択に直接間接関連を持っておるのであります。このため、公正取引委員会は、この会社の動きは、教科書の供給という本来の責務をはずれ、私しろ教科書採択の勧誘に重点を指向しているから、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する行為が行われている疑いがあるとの警告さえ発したのでありますが、事態は依然として改善の跡を見ないのであります。一例を佐賀県について申しますと、同県における学生協系の特約供給所の取扱い部数は逐年増加し、今や旧来の特約を圧倒し、昭和三十年度における全県下に供給される教科書部数の七〇%に達するに至ったのであります。しかも、当初からこの学生協系特約と取引しておる二、三の発行業者の教科書のみが増加しておる実情でありまして、この事実は教科書採択の公正を阻害しておるものと断定せざるを得ないのであります。従って、これら特約供給所の運営については再検討を加え、採択関係者と供給業者との関係が明確に分離される措置を講ずることの必要があると認めるわけであります。  第六、教科書以外の学習用図書類について申し上げます。準教科書、ワーク・ブックなどの教科書以外の学習用図書類は、教科書と並行して広く使用されておりますが、これら図書類の販売に当っては、業者から学校側へ不当なリベートをして売り込み、さらに、一部の学校では、このリベートを正当な収入に記載せず、やみの経理をしている疑いがあるのであります。  一例を申し上げますと、北海道下は、北海教育評論社の発行しておるワーク・ブックがほとんど独占的に使用せられ、昭和二十九年度には発行部数百九十九万部となっておるのであります。これを同社は平均して定価の五円引で直接学校に発送しており、その卸値と定価との差額は全部学校側が取得しておるのでありまして、昭和二十九年度だけでも、その額は千二十三万円に上っておるのであります。しかも、これらのワーク・ブックは、北海道中学校学習指導研究会、北海道各市小学校長連合会、北海道社会科教育連盟等、北海道における教師の団体が編集しておりますので、北海道においては、他の発行会社の入り込む余地はほとんどないという次第であります。  また、夏、冬休み帳などの学習帳については、各府県教職員の組合の編集しておるものが大部分使用されておりまして、各組合はこれによって多額の収益をあげておるのであります。一例を申し上げますと、北海道では北海道教職員組合文教部、同各地区文教部が編集し、北海教育評論社が発行しておる夏、冬休み帳がほとんど独占的に使用されており、昭和二十九年度においては、夏、冬合せて百五十六万部に達しておるのであります。北海教育評論社は、その販売に当って、定価三十円のものを北教組各支部に二十二円でおろし、各支部ではこれを二十七円で各学校に渡しており、年間で北教組支部は七百八十万円、学校側は四百七十万円の多額の収益をあげておるのであります。北教組支部の受け取った七百八十万円については、北教組側の説明によると、すべて編集費に使われておるということでありますが、北教組の本部では、別に編集費として、北海教育評論社から、一冊につき一円七十二銭、年間約二百七十万円を受け取っておるのでありまして、編集費は二重となっており、北教組全体では年間一千万円以上の膨大なる編集費を受け取っておるということになるのであります。この点について、北教組では、夏、冬休み帳一回ごとの編集だけで延一万五千人の教員を動員するのでこのような多額の編集費となると説明しておりますが、編集に便乗した組合活動であることは明らかであります。  しかも、この多額の収益については、北教組は脱税しており、本委員会の指摘によって、昭和二十六年度以降分として四百万円の申告をしたのでありますが、札幌国税局が調査した結果、さらに一千万円の所得の増額更正処分を受けたのであります。また、福島県では、福島県学校生活協同組合の年間の総売り上げは二千百万円でありますが、そのうち、夏、冬休み帳の売り上げが千五百万円でありますので、学生協の総売り上げの七五%は夏、冬休み帳によって占められており、学生協は組合員でない児童、生徒を対象にした夏、冬休み帳の売り上げによって維持されている状況であるのであります。  また、福岡県の中学校学生協では、中学校用夏、冬休み帳について一冊につき四円の利益をあげておりますが、学生協の出資金二百六十五万円のうち、その七%に相当する百八十九万円を出資いたしております生徒児童に対しては、一銭の割り戻しをしたこともないという実情であります。  以上は本委員会において現地調査を行いました数府県の実情でありますが、その他の全国各府県教員組合ないしその分身である学校生活協同組合についても大同小異の事実の存在することが想定されるのであります。(拍手)このことは、昨年九月十三日、十四日の両日、日教組が埼玉県長瀞に全国各教職員組合書記長を秘密裏に招集して、学習帳について各府県は早急に帳簿を整理する、税務署の了解工作をする、組合本部と会計を分離することなどの諸事項を議した事実によっても立証できるのであります。これらの事実は、学習用図書類の使用が野放しになっている結果生ずるものでありますから、この点については特別の注意を払い、制度その他検討を要するものであると認められます。  以上を要するに、小、中学校における教科書は、検定制度実施後、関係者の努力のより、逐年進歩向上してきた事実は認められますが、その内容並びに制度運営の実情について調査いたした結果は、以上の通り、なお幾多の欠陥があることが明らかにされたのであります。現行教育制度のもとにおきましては、教科書は教材の一部にすぎないといわれておりますが、一般の教材に比較して格段に重要な地位を占めておることは言うまでもないところでありますから、政府並びに関係者におきましては、義務教育教科書の国家的公共性を深く認識せられ、教科書に関する現行諸法規の是正と、これが運用の適正をはかり、義務教育の目的を達成されんことを要望するものであります。(拍手)  なお、委員西村力弥君より修正意見が述べられましたが、否決されました。  以上をもちまして報告を終ります。(拍手)      ————◇—————
  43. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十二分散会