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1956-03-29 第24回国会 衆議院 本会議 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十九日(木曜日)     —————————————  議事日程 第二十五号   昭和三十一年三月二十九日     午後一時開議  第一 憲法調査会法案岸信介君外六十名提出)  第二 原子燃料公社法案内閣提出)  第三 核原料物質開発促進臨時措置法案内閣提出)  第四 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 余剰農産物資金融通特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出)  第六 厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 船員保険特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出)  第八 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案法務委員長提出)  第九 工業用水法案内閣提出)  第十 厚生省設置法等の一部を改正する法律案内閣提出)  第十一 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案参議院提出)  第十二 日本電信電話公社法の一部を改正する法律案(第二十二回国会本院提出参議院送付)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  健康保険医の総辞退に関する緊急質問八木一男提出)  ハバロフスクにおける抑留同胞請願運動に関する緊急質問臼井莊一君提出)  小笠原島民帰島問題並びに沖縄軍用地借地料支払問題に関する緊急質問田中稔男提出)  日程第一 憲法調査会法案岸信介君外六十名提出)  日程第十二 日本電信電話公社法の一部を改正する法律案(第二十二回国会本院提出)(参議院送付)  日程第十 厚生省設置法等の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十一 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案参議院提出)  労働省設置法等の一部を改正する法律案内閣提出)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出)     午後四時四十六分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、八木一男提出健康保険医の総辞退に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。健康保険医の総辞退に関する緊急質問を許可いたします。八木一男君。     〔八木一男登壇
  6. 八木一男

    八木一男君 私は、日本社会党を代表して、健康保険区の総辞退の問題に関し、内閣総理大臣厚生大臣大蔵大臣に対し若干の質問を行いたいと思います。(拍手政府提出健康保険法の一部改正案並びにそれに関連した新医療費体系をも含む諸種の行政措置の案に対し、医師歯科医師等社会保険診療担当者諸君は強く反対をしておりまして、右が強行される場合はやむなく総辞退をせざるを得ない旨の態度をとっているのでありますが、ついに、去る三月二十日、京都府において保険医辞退が行われたのであります。続いて、二十四日には東京都、大阪府の二大重要地点において、二十五日以降においては兵庫、奈良、栃木、群馬、長崎等の数県において総辞退が行われ、現在、そのほかの府県においても、急速に同様の事態が起らんとしておるのであります。健康保険制度創設以来初めてのできごとで、まさに社会保険国民医療重大危機といわなければならないのであります。(拍手政府世論を意に介せず改悪強行しようとする従来の態度に関し、猛省さるべき時期と考えるのであります。(拍手)以下、順次、各大臣に対しまして具体的な質問に入るわけでありますが、それに先だちまして、政府考え方の不当であります点について少しく指摘をしておきたいと思うのであります。そもそも、政府提出健康保険改正案は、三千万の被保険者並び家族がこぞって反対をいたし、十万の診療担当者がその非を指摘しておるのでありまして、社会保障制度審議会等の答申もこれを否定し、国庫負担増率義務化等によってこの問題を解決すべきことを指示いたしているのであります。その欠点の最大のものは、申し上げるまでもなく、一部負担制強化であります。昨年六月、世界一高率の保険料率がさらに五%引き上げられ、このたびの改正案では、その料率をかけられる標準報酬額がまた値上げになっております。こうして二重に高くなった保険料を強制的に徴収される被保険者が、一旦病気に相なりますると、金を払わなくては診療が受けられないことに相なるわけでありまして、被保険者は全く踏んだりけったりの目にあわされているわけであります。(拍手)元来、一部負担というものは、最も不仕合せな立場にある病人、けが人に、他の人々より余分の負担を負わせるものであります。社会保険の本旨である相互扶助根本理念に完全に反するものでありまして、断じて強化をしてはならない制度であります。(拍手)この一部負担強化によりまして、大幅の受診率の低下を来たし、早期診断早期治療という医療根本原則が破壊せられることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)この点が最も憂慮されておるのであります。このほかにも、赤字対策のために受診率を低下させ、医療給付支出を不当に少くしようとする意図が至るところに含まれておるのであります。すなわち、診療報酬請求明細書官給制、入院の事前審査扶養家族の制限、継続給付の要件の強化等でありまして、前の二者は、結局、患者診療を受けることをはなはだしく不便にするものでございます。あとの二者は、それぞれ近い身寄りのない老幼者、あるいは失業した被保険者等の、最も気の毒な人の既得権利を剥奪して、健康保険恩恵を受けさせないようにする、血も涙もない改悪であります。(拍手)次に、二重指定制、監査の強化審査機構改悪等は、保険医官僚の思うままに縛りつけ、医療内容を独善的な官僚統制下に置いて、医療を荒廃させるものでありますことは、識者のよく知っているところであります。そこに流れる、人を見ればどろぼうと思え式の考え方は、被保険者並び診療担当者の人格を全く無視したものでありまして、犯罪人にすら許されておる黙秘権がこの人々には認められていないことは、実に大きな人権じゅうりんといわなければなりません。(拍手)被保険者診療担当者団体では、健保改正案のこのような欠陥について指摘し、その実施を見ないよう、国会政府に懸命に陳情してきたのでありますが、政府は一向その強行する態度を変えようとなさらないのであり、これに対して、診療担当者諸君は、やむを得ず、最後合法的手段に出たわけであります。その意図するところは、あくまで政府反省を求むるにあり、健康保険保険者に奉仕する気持はごうも変っていないことが明らかにされておるのであります。(拍手診療担当者諸君は、被保険者に対して最も良心的な診療をしてあげたい、手続が簡単で便利な、しかも負担が増大しない方法で被保険者診療が確保されなくてはならない、早期診断早期治療ができなくなるのはいけないという考え方を持っておるわけであり、また、受診率が低下したり、新医療費体系等強行によってその生活が不当に脅かされることは困るという立場をとっておるのであります。その主張は、しごく当然なことといわなければなりません。(拍手)このように考えて参りますと、社会保険危機をもたらした責任はすべて政府にあると断定せざるを得ないのであります。(拍手)  かかる観点から、まず第一に、鳩山内閣総理大臣にお伺いをいたしたいのであります。総理は、過日、同僚岡本君の質問に対し、総辞退は起らないと確信する旨を答えておられますが、その確信がおはずれになった責任をいかにすべきだと考えられるでありましょうか。(拍手総理も言われましたように、診療担当者はみな良識の士であります。この人たちが、しかも何千何万という良識の士が、政府案に強硬に反対して総辞退を行いましたのは、明らかに政府案が悪いからだと率直に認めらるべきであると私は信じます。総理のお考えはいかがでございましょうか。  過日の岡本君の質問に対し、用意された紙をお読みになりまして、社会保障後退ではないと言われましたが、それは明らかに誤まりでございます。よく思い出していただきたいと思います。保険料値上げになっているのに、病気のときには、さらに現金を出さなくては見てもらえないことになるわけでございます。厄介な手続をとらなければ、診療を受けたり入院したりすることができなくなるのでございます。これが後退でなくて、ほかに何が後退と言えますか。(拍手かくのごとく、社会保険後退をもたらす健保改正案強行によってこの保険医辞退が行われ、わが国社会保険危機が招来されていることは明らかでございます。この場合において、総理責任を重んじられた御答弁は、悪法案撤回であり、二割国庫負担を実現して、社会保障前進をもたらす社会党案への同調でなければならないと信ずるわけでございまするが、総理の御所信はいかがでございましょうか。(拍手)どうか、行きがかりや面子にとらわれないで、国民のために決断をもってお答えを願いたいのでございます。(拍手)もし総理にして率直な態度で右の御答弁をしていただきますならば、われわれは、総理の最近の言動に対する百パーセントの不信の念につきまして幾分考え直すのにやぶさかではないのでございまするが、(拍手)もし右の御答弁がいただけないのならば、社会保障制度拡充のにせ看板をおろしていただくことを国民の名において要求しなければならないことを明らかにいたしておきます。(拍手)  次に、一萬田大蔵大臣に簡単に質問申し上げます。このような重大な事態が起ったのも、もとをただせば、大蔵省の大なたに原因があると考えられるわけでございます。今からでもおそくはありませんから、八十億もある予備費の中から四十億ほど、けちけちしないで追加支出をするなり、あるいは補正予算を組むなりして、この問題を解決する御意向がおありになるかどうか、はっきりとお伺いをいたしたいのでございます。(拍手)  続いて、具体的なことについて小林厚生大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  最初に、厚生大臣は、今回の重大な事態について、真剣に収拾する気持を持っていないように思われますが、どうでありましょうか。三月二十三日の次官通牒の中で辞表正式受理を指示いたしている点は、明らかに挑戦でございまして、火に油を注ぐような結果を招来しているのであります。みずからの責任を全く回避して、被保険者の迷惑を顧みずに、事態を悪化させようとするこの態度は、まさに、医師会に対するだけでなく、国民に対する挑戦とも言うべきであると考えますが、大臣はいかに考えるのでございましょうか。次に、不幸にして五月一日から実際に保険診療が停止されるようになったときの対策について、どう考えておられるか、お答え願いたい。次官通牒によれば、公的医療機関協力を求むることを都道府県知事に指示しているのにすぎないが、このようなことが総辞退に対処すればよいとされるのならば、まことに驚くべき無定見であり、無責任これよりはなはだしきはないといわなければなりません。(拍手)第一に、公的医療機関がないところ、少いところはどうするかの問題がございます。第二に、公的医療機関医療担当者は、厚生省の無責任な方針によって猛烈な労働強化をしいられておる現状であり、協力できる余裕はきわめてわずかでありまするとともに、厚生省の、何ら反省のない、独善的な、弾圧的な態度を指摘して、一方的な協力要請には応じられない旨の態度であることは、三日前の全医労日赤従組の声明でも明らかであります。(拍手)第三に、私的医療機関保険診療を取り扱えないとき、公的医療機関をもってこれにかえ得るという考え方自体が、根本的な誤まりでございます。(拍手診療には継続的な観察が必要でございます。この意味で、診療担当者の変更は不可でございます。また、急患の場合には、もよりの医師診療が必要なことは言うまでもございません。さらに、被保険者負担面から考えますならば、初診料の二度払いの問題、交通費負担などの問題はどうなるのか。遠路の通院や、大病院で待たされることによる時間の空費などという問題も、決して軽視されてはならない問題でございます。  以上の諸点について解明を願いたいのでございます。  以上、考えて参りますると、この場合、療養費払い制度がありますことが、ただ一つの救いでございますがそれも、現在の厚生省のような態度では、どれだけ効果を上げ得るか疑問でございます。すなわち、現在の診療報酬支払いのように決して遅延させてはならないと思うのでありまするが、一体、その用意はおできになっておるのでございましょうか。さらに、療養費支払いのなされるまでの被保険者現金負担について融資等措置が講じられなくてはならないのに、それを考えられる気配さえも見受けられないのは、どうしたわけでございましょうか。お答えを願いたいのでございます。  さらに、厚生大臣は御自身の責任についてどう考えておられるか、お伺いをいたしたい。もし責任ということのほんとうの意味を知っておられるならば、事態をさらに悪化させるような現在の挑発的な態度を改めて、ここ数日間に渾身の勇をふるって政府健保改正案の完全なる撤回を実現することによって、(拍手事態の収拾に当られるべきでありまするが、それがもしできない場合には、いさぎよくみずから辞表提出されるのが至当と考えられるのでございますが、その点についてどうお考えでございましょうか。  以上が私の質問内容でございます。  最後に、総理初め三大臣に、重大なる事態を円満に正しく収拾するために、社会保険国民医療社会保障を守るという立場から、積極的な、率直な、そうして明確なる御答弁をいただくことを、国民の名において強く要求をいたしまして、私の質問を終る次第でございます。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまの御質問に対してお答えをいたします。  健康保険法改正は、健康保険財政を立て直しまして、将来のわが国医療保護の健全な発達をはかる趣旨のものであると信じております。ゆえに、政府としては、これを撤回する意思はございません。     〔国務大臣萬田尚登登壇
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 政府管掌健康保険につきましては、被保険者の一部負担が拡大せられまして、また、この保険が主として中小企業をもって構成せられております点等考えまして、政府といたしましては、社会保障確立促進する目的をもちまして、今回財政上の補助制度を新たに設けまして、三十一年度予算におきまして三十億円を補助することにいたしたのであります。この点は、他の保険とのつり合い及び今日なお三千万人に及びます保険恩恵に浴せない人々もあることを考えまして、財政上の負担右程度にとどめたのでありますが、しかし、政府といたしましては、申すまでもなく、今後社会保障につきましては財政の許す限り充実して参るつもりでおります。(拍手)     [国務大臣小林英三登壇
  9. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 八木さんの御質問お答えをいたします。  保険医の総辞退に対しまして、政府は今回の事態をいかにして収拾するかというような御質問でございますが、私は、今回の健康保険改正案につきまして、医療担当者諸君が、しかも常識ある医療担当者諸君が、保険医療の重要なる公共性にかんがみまして、総辞退という問題ははなはだ遺憾千万に存ずるのでありまして……。(発言する者多し)しかし、この問題につきましては、私どもといたしましては、都道府県知事あるいは日本医師会等にも十分に善処方についてお願いをいたしまするし、また、都道府県知事に対しましても、できるだげ医療担当者諸君自重方お願いし、万一総辞退というような問題が起りました場合には、誠意をもってこれを慰留していただくというようなことを、二十三日に次官通牒をもって出したのでありますが、先ほど八木さんの御意見によりますと、当然なすべきこの問題に対して、あたかも厚生省がこれによって弾圧するがごときことをおっしゃったのであります。(発言する者多し)これは、私は、今日の事態に即しまする厚生省当局といたしましては当然のことであると思っておるりであります。ただ、問題といたしましては、厚生省といたしましては、今日すでに辞退を出しておられます医療担当者諸君につきましても、都道府県知事を通じまして、できるだけこれらの取り下げについてもお願いをいたすつもりでおるのであります。なお、保険医の御辞退につきまして、万一最悪の事態が発生いたしまする場合におきましては、辞退をいたしておられません医療担当者の方々、並びに公益団体でありまする、国立あるいは公的の医療機関の御協力を得まして、国民皆様方に御心配のないようにいたしたいものだと存じておるのであります。  なお、八木さんの御説明によりますると、社会党のおっしゃっておられまする保険改正案に対してどう思うかということでありますが、あくまでも政治は現実的な問題であります。社会保障前進はもちろんでありますが、これは国家財政に応じて前進すべきものでありまして、理屈では幾らでもものが言えるのでありますが、私は、あくまでも政治は現実のものであると考えておるのであります。(拍手)  なお、今日私どもが提案をいたして御審議を願つておりまする健康保険改正案につきましては、社会保障確立促進のために、高度の医療機関を保ちながら健康保険発展向上をはかるのが改正案でございますから、これを撤回する意思はございません。(拍手)      ————◇—————
  10. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、臼井莊一君提出ハバロフスクにおける抑留同胞請願運動に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  ハバロフスクにおける抑留同胞請願運動に関する緊急質問を許可いたします。臼井莊一君。     〔臼井莊一君登壇
  13. 臼井莊一

    臼井莊一君 私は、自由民主党を代表して、ハバロフスク収容所における抑留同胞虐待事件に関し、外務大臣並びに厚生大臣緊急質問を行わんとするものであります。  すなわち、ソ連ハバロフスク第十六収容所におけるわが抑留同胞が、長期にわたる不当かつ非人道的管理に抗議して、作業拒否に入っておるとのことであります。この点に関し、過日、海外胞引揚特別委員会における柴田団長外三名の引揚者参考人の報告によりますと、収容所管理当局は、わが同胞の絶対絶命の生きんがための抗議に対して反省せざるのみならず、かえつて報復手段として、二月二五日以来、給与わずかに黒パン四百五十グラム——黒パン四百五十グラムというと、一斤の三分の一程度であります。それに塩水にひとしいスープを朝夕二回という殺人的懲罰食に切りかえたという悲惨な事実を報じているのであります。  ポツダム宣言の第九条に、次のごとく明記されております。すなわち、日本国軍隊は、完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し、平和的かつ生産的の生活を営む機会を与えられるであろうと明確に記してあります。しかも、日本ソ連に対して宣戦布告をしておりません。しかるに、ソ連は、この宣言の条項に反し、いわれなくして邦人を拉致抑留し、勝手に国内法を適用し、一方的にこれを戦犯とし、過酷な重労働まで強制してきたのであります。抑留された同胞は、悲憤のうちに、ひたすら帰国の日を待ちわびながら、この無慈悲な待遇にもかかわらず、黙々として、誠実に、勤勉に役務に服してきたことは、すでに帰還した西ドイツの戦犯諸君のひとしく賞讃しているところであります。(拍手)しかしながら、劣悪な施設と人道無視管理下にあつて、過重な強制労働を十年の長きにわたって続けてきたため、その健康は急速にそこなわれ、重病患者の多発、死亡者の累増を見るに至つたことは、当然といわざるを得ないのであります。  このような状況下にあつて抑留者は、許された唯一の適法手段によって、ソ連当局に対し、幾十、幾百回となく待遇改善方法請願し続けてきたのでありますが、その必死の願いも全く顧みられなかったのであります。しかも、たまたま待望の日ソ交渉が開始せられるや、ソ連が明らかに抑留邦人日ソ交渉の人質としているという事実を知るに及んで、過去十年にわたり累積したソ連の非人道的扱いに対するふんまんは、ついに極点に達したのであります。あまつさえ、昨年十二月十六日、再び、現地当局は、医師の認定を無視して、明らかに病人である六十五名を強制労働にかり立てたために、作業席倒者が続出する事態を見るに至つたのであります。十年余にわたる長い間の抑留だけでもたとえよらのない懲罰であるのに、病人にまで強制労働をさせるとは、冷酷と言おうか、野蛮と言おうか、ソ連の辞書には一体人道という文字はないのでありましようか。(拍手人道問題には階級はないはずであります。国境もないはずであります。この、人種を越え思想を越え、階級を越えた、人道問題たる本事件に対し、世界の世論のすみやかにしてかつ厳正なる批判を仰ぎたいと思うのであります。(拍手)  かくのごとく不当かつ冷酷な処置に対し、こらえにこらえた彼ら抑留同胞は、忍耐もついにせきを切り、みずからの生命を守る最後手段としてとられた措置が、今回の全員一致作業拒否による請願運動となつたものであります。  さらに、特筆すべきことは、これら同胞の公正なる取扱いを要求した数々の請願書は、日本赤十字社はもとより、国際赤十字社にも一つとして到達していない事実であり、おそらくソ連中央当局にも到達していないのではないかと憂えられるのであります。かくのごとく、在ハバロフスタ抑留同胞は、基本的人権をすら無視され、必死の請願も途中においてことごとく握りつぶされ、彼らの生命は今や全く風前のともしび同様にあるのが偽わらざる実情であります。(拍手)  そこで、まず第一に質問したいことは、政府は、一体ソ連抑留者実情につき、今までいかなる調査をなされていたかということであります。(拍手)このような抑留者の悲惨な状況は、決して今偶然に発生したことでなく、おそらく常時行われていたことだろうと想像されるのであります。政府は、当然の責務として、あらゆる手段を尽し、ソ連抑留者実情調査していなければならないと信ずるものでありますが、今までどのような調査をなされていたか、また、その調査の結果どのような措置をとられていたかを伺いたいのであります。(拍手)  この点に関連して、なおお伺いしたいことは、昨年九月ハバロフスク訪問社会党議員団抑留者より託された十通ばかりの手紙についてであります。この詳細に関しては、去る二月二十三日及び二十四日の海外胞引揚特別委員会において論じられておりますので、詳細はこれを会議録に譲るとして、その要点について申し述べますと、その書簡のことごとくが、まず第一に抑留者に寄せられた国民の同情に対する感謝であり、次にソ連側の不当なる待遇を訴えているのであります。一例を申し上げますと、千葉栄亀氏は、邦人の視察の際には常に収容所に粉飾が行われていることを訴え、「この様な環境に抑留日本人が過去十年収容されたものでも、又現在されているものでもありません。表裏、殊に裏面を深く観察せられ、ソ同盟の実相を正しく国民に指導せられ、日本再興の大計に過誤なき様念の為申上げる次第です。むしろ私達一人一人の、丸十ケ年一切の自由を奪はれ、いためつけられているこの真さおな顔を、しつかり見つめて御帰りになられん事を切に御願申上げます。」と書いてあります。まことに涙なくしてはとうてい拝見できない悲壮な手続であります。これらの手紙は、奇怪にも、昨年十二月十五日の引揚特別委員会において初めて明らかにざれたのであります。この点については社会党諸君にいろいろ伺いたいこともありますが、私は、今人道問題を論じているので、この点については今日はやめておきます。  そこで、私は、政府にこの機会にお伺いしたい。  政府は、このような情報や資料の収集にどのような努力を払われたか。また、対策につきいかなる措置を講ぜられたかを、あわせてお伺いいたしたいのであります。(拍手)  第二に、政府は、この際、悲惨な在ソ同胞を直ちに救出すべく、全世界の良識に訴え、ソ連当局の良心を喚起し、すみやかにわが抑留同胞に対する不当な処遇を改善せしむるとともに、一日もすみやかにこれら同胞を帰還せしむべく、即刻あらゆる努力を傾けなければならないものと信ずるのでありますが、(拍手政府は、これに対し、今までにいかなる措置を講ぜられたか、また、今後いかなる措置を講ずるか、確固たる所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)  今や、ロンドンにおける日ソ交渉は、領土問題並びに航行権の条項に関し意見の一致を見ず、自然休会に入つたのでありますが、事は一刻を争う生命に関する人道問題であり、元来、日ソ交渉とは別個の問題であります。(拍手)ロンドンにおける日ソ交渉の無期休会が即引き揚げ問題の休止であつては絶対になりません。(拍手政府はいかなる手段方法をもってこの引き揚げ問題を引き続きソ連と交渉せられるか、承わりたい。(拍手)  第三に、慰問品についてであります。先般、第六次引き揚げ出迎えの大成丸に託して、国民の真心を込めた六千余個の慰問品がソ連地区抑留者に送られたのでありますが、これが果して無事に抑留者の手に渡つたでありましようか。もともと、ハバロフスク抑留者には、慰問品でも、薬品はもとより、ビタミンすら渡さないという、ひどい取扱いを行なっているとのことでありますが、これら慰問品に対し、政府はいかなる措置をとられたか、承わりたい。(拍手)慰問品こそ、抑留者にとつて、故国よりの便りとともに、唯一の激励であり、光明であり、また栄養の補給の源であります。今後一大国民運動を展開し、継続的にかつ計画的に慰問品を送るべきものと思いますが、その点に関する政府の所見を承わりたいと思います。(拍手)  第四にお伺いしたいことは、慰問使の派遣についてであります。抑留邦人の問題について当面最も急を要する事柄は、実情の把握並びに慰問であると思うのであります。(拍手政府は、この際、ソ連当局と折衝して、公けの、または民間の慰問使を派遣するよう努力せらるべきであると思うのでありますが、(拍手)そのようなお考えがないかどうかをお伺いしたいと思うのであります。  以上申し述べました通り、事は生命に関する問題であり、従って、いつときの猶予も許さない、緊急を要する事態であります。この深刻な問題に対し、政府当局は、すみやかに、かつ有効なるあらゆる措置を講じ、留守家族の不安を除き、抑留者の希望を達成せしめるべきであることを重ねて強調して、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣重光葵君登壇
  14. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 御質問お答えいたします。  日ソ交渉の最中に、今お話のごとき事態の発生が報道せられました。このことはきわめて遺憾に存じます。在ハバロフスク同胞の境遇に対しては、もとより深く同情をいたすものでございます。この抑留者待遇改善のためには最善を尽すべきことは当然でございます。しかも、非常に急を要するものでありますので、政府は、直ちに、ロンドンにおける全権団をして、このことをソ連の全権団に通告せしめて、即時事態の改善をはかるように強く要請して、その反応を待っておる次第でございます。なお、抑留者状況につきましては、もちろん、可能な限りの手段を尽して、その状態を調査いたしておる次第でございます。これら抑留者の困難を幾分でも軽くするために救恤品を送つておりますが、今後も引き続き継続的にこれを送るように手段をとつておる次第でございます。  なお、抑留者の帰還に関する交渉は、ソ連との間には目下ロンドンにおいて交渉を続けておる次第でございます。これに対する返答を今日待りておるのでございます。  抑留者に対する慰問品を送るためには、赤十字社等に対して十分尽力せしめておる次第でございます。  なお、慰問使の派遣等につきましては、お話の点は十分に考慮をいたしたいと考えておるのでございます。  これをもってお答えといたします。(拍手)     〔国務大臣小林英三登壇
  15. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ハバロフスクの問題につきましては非常に遺憾にたえないと思っておるのでありますが、厚生省といたしましては、さきに、慰問品を、二月分と三月分とを第六次引揚船の出迎えの際にことずけまして、六千二百六十九個お送りいたしておるのであります。この中には、衆議院議員諸君の非常な御同情によりまする百四十二個、政府の二千五百八十個及び遺家族並びに一般国民の三千五百四十七個が含まれておるのであります。臼井さんの最も御心配になっておりますところは、これらの慰問品が果して現地の本人の手元に着くかどうかということでございますが、従来の経過によりますと、日本赤十字社を通じまして、二月、三月分の、前の荷物につきましては、現地にいない者の荷物をどうするかというような問題につきまして、ソ連より日本赤十字社を通じまして照会があったくらいでございますから、多分到着しておると思います。しかしながら、この問題につきましては、将来十分に確かめる意味におきまして、先般の二月分、三月分の慰問品につきましては、各収容所ごとの日本人代表によって受領証を送つてもらうように、日本赤十字社を通じてお願いしてあるのでございます。今後の問題につきましても、一人々々の受領証を荷物につけて送りまして、個人々々からそれを受け取つたということが証明せられるように、日本赤十字社を通じまして、ソ連の赤十字社にお願いしておるわけでございます。(拍手)      ————◇—————
  16. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、田中稔男提出小笠原島民帰島問題並びに沖縄軍用地借地料支払問題に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  小笠原島民帰島問題並びに沖縄軍用地借地料支払問題に関する緊急質問を許可いたします。田中稔男君。     〔田中稔男登壇
  19. 田中稔男

    田中稔男君 小笠原諸島の全島民七千七百余名は、昭和十九年七月、日本軍の強制疎開命令により、一切の財産を放置したまま、わずか手荷物三個を所持して本土に引き揚げたのでありますが、戦後、欧米系島民及び混血島民百七十人名だけ帰郷を許され、一般島民は、帰郷を許されないのみか、同諸島が特殊の法的事情に置かれておるために、日米両国いずれよりの補償も受けられず、その大半は浮浪民同様の生活に追い込まれておるのであります。そのために、親子心中、一家心中等の悲劇が十二件、十八名に達しておるありさまであります。人道上まことにゆゆしき事態といわなければなりません。(拍手)  昨年、小笠原帰郷促進連盟の幹部数名は、島民を代表してワシントンにおもむき、関係当局にるる嘆願を試みたのでありますが、その結果は一時有望を伝えられたのであります。しかるに、最近、アメリカのダレス国務長官の来朝に際し、政府が小笠原島民の帰郷促進を訴えましたところ、意外にも、すでに帰郷した欧米系島民及び混血島民の反対のため、一般島民の帰郷は困難であるという説明に接したのであります。しかも、欧米系島民及び混血島民は、グアム島その他にある米軍に農産物等を供給することによって莫大な収入を得、多き者は三万ドル、少き者も三千ドルないし五千ドルの現金を所有し、電気洗濯機や電気冷蔵庫を使用し、家屋は米軍に建ててもらい、学童は英語で教育を受け、アメリカヘの帰化運動をしきりに行なっておる実情であります。かくして、この南方の楽土は、一握りの欧米系島民及び混血島民の独占するところとなり、数千名の一般島民は、はるかに祖先の墳墓の地を望みながら、終戦すでに十年、本土にあつて流浪の生活に泣き続けておるのであります。(拍手)同じ島民をかくのごとく差別して待遇することは、黒人の差別待遇においていかに無慈悲なアメリカといえども、とうていこれを許すことはできません。(拍手)しかし、事態の本質は決して人種問題ではないのであります。欧米系島民及び混血島民は、アメリカ海軍に使嗾されて、一般島民の帰郷に反対しているのであります。そして、アメリカ海軍のねらいは、潜水艦基地として重要な小笠原諸島の永久確保にあるのであげます。  次に、沖縄における米軍収用地の講和発効前の借地料支払いの問題でありますが、米軍はもちろん、政府もこれが支払いを拒否しているため、沖縄の農民は非常に困窮しているのであります。もっとも、米軍は、昭和二十五年七月から講和発効の日まで一年十カ月分として、三億六千万円を支払つたことになっておりますが、その額が不足であるばかりでなく、昭和二十五年七月以前の分は依然として未払いであります。占領期間中、本土における同様の場合には、政府が相当の補償を行なっているのでありますから、政府は沖縄の場合にも当然これが支払いの責めに任ずべきであります。しかし、政府がたとい過去の借地料を満足に支払つたといたしましても、米軍が現在不当に安く支払つている借地料の問題は依然として残るのであります。  さらに、根本的な問題は、元来ネコのひたいほどしかない農地の実に二〇%に当る一万七千エーカーを軍用地として奪われた五万戸の沖縄農民が、現に路頭に迷つている事実であります。まことに、今日の沖縄は、かつて元内閣委員長故稻村順三君がその視察報告の中で語りましたように、沖縄の中に基地があるというよりは、むしろ基地の中に沖縄があると言つた方が適切であります。(拍手)八十万の同胞が、この極東のジブラルタルに閉じ込められて、政治的に弾圧され、経済的に収奪され、道徳的に堕落しつつあるのであります。  思うに、小笠原と沖縄とはともに平和条約第三条に規定された地域であり、その条文によれば、日本は「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は」「行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」こう書かれているのであります。すなわち、いわゆる残存主権が日本に認められているという口実のもとに、事実上アメリカの領土権がこれうの地域に確立されているのであります。  回顧すれば、ペル日提督は、一入五三年、すなわち、わが嘉永六年六月二十五日付で、沖縄の那覇港より当時のアメリカ海軍長官に送つた書簡の中において、次のごとく述べております。本職は、さきに賦与せられたる国務長官訓示の命ずるところに従い、東洋近海において艦船の避泊港を求むるに当り、目下鷹下艦船の在泊せる琉球国那覇及び小笠原群島中ポート・ロイド、すなわち今日の二見、この両港を適当と認めたり、本職は、予定のごとく、那覇、ポート・ロイド、すなわち二見の両港を獲得し、ひそかに各種の施設をなすにごうも住民の感情を害することなかりき、吾人は事実上琉球国の支配権を獲得せり、と。しかし、ペルリ提督のこの野望は、幸いにも、当時のアメリカの民主党出身ピアス大統領のいれるところとならなかったのであります。しかるに、百年の後になって、今日、アメリカは、ペル刀提督の抱いた野望を実現し、小笠原及び沖縄を対ソ作戦の重要基地として確保するに成功したのであります。(拍手)  日ソ交渉において、政府は、日本が平和条約によってすでにその権利権原及び請求権を放棄した南千島の返還を強硬に主張することによって、ついに事実上両国の国交回復を不可能にしてしまつたのであります。もし南千島の領土問題を取り上げるならば、政府はなぜ小笠原、沖縄の領土問題を取り上げないのであるか。(拍手)また、ソ連に対しては、あたかもトラの威をかるキツネのごとく大胆にふるまいながう、政府はなぜアメリカに対してはあたかもトラの尾を踏むような憶病な態度に出なければならないのであるか。(拍手)国交における領土問題の解決は、政治的にも条約的にもきわめて困難であると考えられるのでありますが、もしかりにその解決が可能であるとするならば、それは、南方における領土問題と関連して解決する以外に、絶対にこれを解決する道はないのであります。(拍手)同じく平和条約第三条に規定されている奄美大島の返還がすでに実現を見た今日、小笠原及び沖縄の返還が、政治的にはともかく、条約的に著しく困難な理由は存在しないのであります。  以上、私は、とりあえず小笠原島民の帰郷のすみやかなる実現を期待するとともに、沖縄における講和発効前の借地料の正当な支払い政府によって行われんことを要求するものであります。  私は、さらに、わが党従来の政策たる沖縄、小笠原の全面的返還を主張し、政府が今日までこれがため何らなすところのなかった怠慢の罪を責めるとともに、今後いかなる努力を払わんとしているかをたださんとするものであります。(拍手)鳩山首相及び重光外相の真撃にして明快なる答弁を要求するものであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  20. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 田中さんの御質問お答えをいたします。  小笠原、沖縄の返還について、まずお答えをいたします。政府は、従来とも、あうゆる機会をとらえまして、小笠原及び沖縄に対する管轄権返還に関する日本国民の要望を米国に申し入れて、米国政府の配慮を要望しております。今後とも、この線に沿いまして努力するつもりでございます。  第二の点についてお答えをいたします。第二の質問も、第一とほぼ同様の趣旨でございましたが、政府は、ききに実現を見ました奄美群島の返還をもって決して満足するものではありません。沖縄及び小笠原諸島についても、今後とも、国民の総意を体し、これら地域の復帰実現に努力をいたしたいつもりでおります。  最後の御質問に答えます。旧小笠原島民の帰島につきましては、政府は、従来から、わが方の希望を米国に申し入れまして折衝しております。さきにダレス氏来日の際にも強く要望いたしましたが、今後とも、さらに引き続き折衝を行いまして、早期帰島の実現に努力をいたしたいと思います。  なお、沖縄における講和条約発効前の軍用地の借地料等の補償について御質問がございましたが、この点につきましては、実情をよく調査いたしまして、関係機関をして検討せしめて、適切なる措置をとりたいと考えております。  以上、お答えといたします。     〔国務大臣重光葵君登壇
  21. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 御質問に対しては、ただいま総理大臣からお答えしたことで尽きておると思います。私も、外交当局者として、その外交に関することを御答弁申し上げます。  小笠原島民の復帰の問題は、ずいぶん前かう要請をし続けておるのでございます。今日まで実現を見ませんことは遺憾でありますけれども、今後とも協力をいたす考えでございます。  沖縄島民の福祉の問題についてもお話があったと思います。このことについても、十分に資料を提出して、米国側の善処を要請しておるわけでございます。  なお、領土の問題は、すでにお答えがありましたが、これは日ソの交渉とは私は関係はないという建前に考えております。しかし、米国側に対しては、米国側に対するわが方の主張を持っておりますから、その主張に沿うて十分要請するつもりでございます。      ————◇—————
  22. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、憲法調査会法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長山本粂吉君。     〔山本粂吉君登壇
  23. 山本粂吉

    ○山本粂吉君 ただいま議題となりました、岸信介君外六十名提出憲法調査会法案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案の要旨は、わが国の国情に照らしまして、日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告することを所管事務とする憲法調査会を内閣に設けようとするものでありまして、調査会は国会議員三十名、学識経験者二十名、合計五十名以内の委員をもって組織することとし、委員はこれを内閣が任命することといたしております。また、調査会には会長一名、副会長二名を置くことになっておりますが、いずれも委員の互選によってこれを定めることといたしております。なお、調査会には、専門委員を置くことができるほか、幹事を置くとともに、事務局を設け、事務局長以下の職員をして調査会の事務を処理させることといたしております。  本案は、二月十六日本会議に上程され、翌十七日質疑の後、当委員会に付託されたものでありますが、委員会におきましては、二月二十一日提案者より説明を聞き、直ちに質疑に入り、三月二十二日まで前後十一日間にわたって、各委員と提案者及び鳩山内閣総理大臣その他関係大臣等との間に熱心な質疑応答が行われ、三月十六日には公聴会を開くなど、慎重審議を行なつたのでありますが、その内容については、何とぞ会議録によって御承知をお願いいたします。  かくて、三月二十三日、質疑を打ち切り、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  24. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。稻村隆一君。     〔稻村隆一君登壇
  25. 稻村隆一

    ○稻村隆一君 私は、ただいま議題となりました憲法調査会法案に対し、日本社会党を代表して反対の意見を表明せんとするものであります。(拍手)  提案者の諸君は、現行憲法の平和主義、民主主義、基本的人権尊重の原則は正しいと言いながう、ただ、占領中最高司令官の要請によって制定されたるものであり、国民の自由意思よるものではないかう改正しなければならないと言うのであります。しかしながら、主権在民の憲法が実現されるまでには、人類の自由のために戦った幾多の人々の血が流されたものであり、従って、この民主憲法なるものは、人類共通の遺産であって、外国のものも日本のものもないのであります。(拍手)かつてイギリスにおいて暴君チャールス一世を倒したるクロンウエルの兵士が、憲法なるものは人民の協定なる旨宣言し、君主主権の憲法より永遠に訣別して以来、アメリカの独立戦争においてこの言葉を引用し、世界において初めての主権在民の成文憲法が制定されたことは、御承知の通りであります。(拍手)しこうして、フランス革命における共和国憲法はアメリカ憲法を模範として作成されたるものであり、続いてナポレオン戦争は、プロシャを除くほとんどの西欧国家が、君主の意思に反して人民主権の憲法を採用せざるを得ない結果になったのであります。  わが国の自由民権運動の志士仁人は、かくのごとき主権在民の憲法のために血を流したのであります。かかる歴史的事実は、自由なる思想と学問と真理には国境がないことを証明するものであり、もし日本に敗戦という悲劇がなかったならば、国民は主権在民の憲法を与えられなかったでありましょう。すなわち、今なお、日本国民は、言論、集会、結社の自由の抑圧のもとに、治安維持法、治安警察法の弾圧のもとに、軍閥政治の奴隷となっていたでありましょう。(拍手)かかる意味において、終戦後の日本国憲法こそは、日本の災いを転じて福となしたるものであり、断じて擁護すべき憲法なりと確信するものであります。(拍手)何人の示唆によるとも、真理は真理である。しかして、この日本国憲法こそは、日本歴史始まって以来初めての言論、集会、結社の自由のもとに、金力と権力の干渉なく、国民の自由なる意思によって選出されたる真の代表者によって、国会において自由に審議され、決定されたものであります。(拍手)かかる憲法が、いずこに押しつけられたる憲法であるか、押しつけられたるもの、干渉を受けたるものは、日本の民主化の方向に反対し、ポツダム宣言による国民基本的人権を抑圧せんとして、明治憲法の残存形態を保持せんとしたる人々のみであります。(拍手)終戦後、日本国民大衆は、歓呼の声をあげて、この国民主権の憲法を喜び迎えたのであります。(拍手)しかるに、日本国民を奴隷状態より解放したるこの憲法を、ごまかしの憲法、にせの憲法と称して侮辱するがごとき総理大臣ありとするならば、それは憲法をじゅうりんする許すべからざる行為として弾劾されなければならないのであります。(拍手)  鳩山首相のごときは、日本国憲法改正に当り、その平和主義、民主主義の基本原則はあくまでも尊重する、ただ自衛軍に持つために憲法第九条を改正するのだと言っておる。そらかと思うと、憲法を改正せずとも自衛軍は持てるという、何が何だかわけのわからぬ矛盾したことを言っておるのであります。(拍手)もし九条を改正せずとも自衛軍を持つことができるとするならば、鳩山論理に従っても、いずこに憲法改正の必要があるのであるか。(拍手かくのごとき矛盾きわまる言動の裏には、この近代的民主主義憲法を根本より改悪ぜんとする陰謀が隠されているものと疑わざるを得ないのであります。(拍手)すなわち、旧自由党、旧改進党、自主憲法期成議員同盟の憲法改正草案を見るならば、すべて天皇を象徴より元首にせんとしております。また、法律をもってしては国民基本的人権は制限しあたわざる現行憲法の基本原則を、法律をもって制限し得るように改悪せんとしているのであります。(拍手)もし法律をもって国民の基本的権利を制限し得るとするならば、かつての帝国憲法と一体いずこが異なるであろうかといわざるを得ないのであります。(拍手)しかして、われわれ日本国民は、かかる憲法の改悪によって、旧帝国憲法治下におけると同一の抑圧を邪悪なる権力者より受けること必至であります。  さらに、再軍備問題を考えまするならば、現反動政権の誤まれる政策は一そう露骨に現われておるのであります。この祖国日本には、実に七百にもわたるアメリカの軍事基地が置かれ、これらはすべてアジアにおけるアメリカの対ソ、対中戦略の最前線基地としての役割を果し、一朝有事の際は、原子力の発達せる今日、まさに日本は全滅の悲運にあるのであります。ゆえに、日本の防衛の最善策は、外国の軍事基地の撤廃であり、傭兵的再軍備を拒否することにあることは、小学生といえども理解できる明白なることであります。(拍手)しかるに、現政府は、自衛権に名をかりて、日本ならぬアメリカ防衛のための再軍備に狂奔し、重光外相のごときは、昨年渡米の際、海外派兵の意図きえほのめかしておるのであります。また、最近、鳩山首相、船田防衛庁長官等は、急迫不正の際における敵基地爆撃は自衛権の発動であって、憲法第九条もこれを禁止せずという、驚くべき解釈をなしているのであるが、過去のいかなる侵略戦争も、自衛権の発動なる美名のもとに行われたのであります。しかして、今日の軍事科学の段階においては、いかなる自衛権の発動たる戦争も、必然に、局地戦といえども全面的原子戦争に発展し、これに関係せる国民は全滅しなければならないのであります。(拍手)しからば、憲法第九条を順守して、一切の武力的国際紛争に参加しないことが最大の防衛であることを銘記しなければならないのであります。(拍手)すなわち、自衛または防衛は、必ずしも武力を意味するものではありません。  私は一つの例として申し上げるのであるが、かつて、アインシュタイン博士は、ガンジー翁を二十世紀における最大の天才的な現実政治家であると言いました。愚かなる者は、彼の無抵抗、非協力なる論理を宗教的空想であると笑ったのであります。しかしながら、武力を持たざるインドの独立運動は、力によって対抗するときは、はかり知るべかちざる悲惨なる結果を生じたのであります。そこで、抵抗はしないが、イギリスには一切協力せずとの方針が実行されたのであります。このガンジー翁の政策こそは、アジアに共通せる偉大なる精神であって、軍事的に無能力なるアジアの民族が西欧帝国主義の羅絆より解放されたる政策でありました。これこそ、弱き者の自衛権の発動であります。(拍手)いかなる暴虐者といえども人間の魂の自由を奪うことができないからであります。(拍手)そして、今や、世界平和のかぎを握る者は、力の政策による米、ソ、西欧の当局者にあらず、戦争に反対するこれら国家の大衆と、かつては西欧帝国主義のためにしいたげられたる、軍事的には無力なるアジア、アフリカの民族であります。(拍手日本がこの民族と運命をともにしてこそ、すなわち、世界の第三勢力としてアジアと西欧のかけ橋になることが、アジアにおける近代的先進国家として成長せるわが国を世界の大国としての地位に再び押し上げる道であります。(拍手)しかるに、アメリカ共和党政府の、誤まれる、成功の見込みなきアジア政策の犠牲となって再軍備するがごときは、日本を再び破滅せしむるものであり、私は、かくのごとき政治的短見に対し、日本のために真に悲しまざるを得ないのであります。(拍手)  要するに、この憲法改正の企図は、憲法第九条を改めて、国民の血税をしぼって不相応なる再軍備を強行し、それに反対する者を弾圧するために、基本的人権を制限せんとする国際戦争勢力の策謀であり、かつ、利己的なる利潤追求のために労働運動の自由を抑圧せんとする独占資本の陰謀にほかならないのであるます。(拍手)  また、この憲法調査会法案は、明瞭に憲法違反の法案であります。もともと、主権在民の憲法は、政府の権限を制限する目的をもって制定されたものであります。しかるに、制約されるはずの政府がみずから原案を作成するというがごときは矛盾もはなはだしいものであって、これを擁護する学説のごときは、窃盗罪の法文をどろぼうが作成することができるというのと同じ笑うべき理論であります。(拍手)憲法の歴史、本質、精神からいって、憲法改正の原案を提案することができるのは、国会であって、内閣ではないのであります。(拍手)しかるに、内閣がこれを提案することは、明らかに憲法第九十六条の違反であって、これに賛成する議員は審議権をみずから放棄することと同様であります。(拍手)  世界における議会政治の先進国たるイギリスのごときは、不成文憲法であるがゆえに、明確な規定はもちろんないのであるが、憲法的規定の重要法案の制定は、国会の中に特別委員会を設置するのが慣例であって、内閣は絶対に関与しないのであります。(拍手)これは三権分立の精神より当然であって、内閣が憲法上の規定の変更に法律をもって関与するがごときは、民主政治の本質を乱るものであります。(拍手)提案者並びに鳩山総理大臣が、憲法第七十二条と内閣法第五条によって、政府にも提案権ありというがごときは、憲法違反の三百代言的暴論といわなければなりません。(拍手)  特に、われわれが国民各位とともに黙過し得ないことは、政府及び自民党の諸君が、理不尽なる小選挙区制の強行により憲法改悪の野望をたくましゅうせんとしていることは、世論のひとしく非難するところであります。(拍手)しかしながら、かりに諸君が小選挙区制により、いかに多数の議席を獲得しても、日本国民政治的良心は、国民投票において必ずや諸君の野望を粉砕するであろうことを予言いたします。(拍手)自民党の諸君におかれましても、思いを深くここにいたされ、かかる非立憲的なる提案を撤回されんことを切望いたしまして、私の反対討論を終る次第であります。(拍手
  26. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 高橋等君。     〔高橋等君登壇
  27. 高橋等

    ○高橋等君 私は、自由民主党を代表いたしまして、憲法調査会法案に対しまして賛成の討論をいたすものであります。(拍手)  わが自由民主党は、立党に際しまして、その政綱として、平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をなし、独立体制の整備をはかることを決定し、もって国民の幸福と国家の発展に資する重大なる決意をいたしております。(拍手)現行憲法は、昭和二十一年、わが国の主権が連合国最高司令官の制限下に置かれていました時代に制定せられ、しかも、政府原案は、いわゆるマッカーサー草案と各条章のほとんどが用語においてまで同一であり、実質的に異なる点は、わずかに二院制の採用と土地国有の条項削除のみであります。もちろん、形式的には議会の審議を経ておりまするが、議会における審議は進駐軍の監督のもとに行われ、その審議状況は刻々総司令部に報告せられ、一字一句の修正もその指示によったことは、社会党諸君も、よもやお忘れではございますまい。(拍手)それを、議会において自主的に修正し、国民の自由意思で制定せられたと主張するに至りましては、あきれてものが言えないのであります。(拍手)わが国が独立を回復し、完全な主権を取り戻した今日、現行憲法を再調査いたしまして、われわれの憲法は日本国民の手によって自主的に決定する、国民投票によって決定することは当然の措置と申すべきであります。(拍手)  以上のごとき経過によって制定せられました必然の結果といたしまして、現行憲法は、過去九カ年にわたる施行の経験に照らしまして、わが国の民族性、国情等に即応しない点が多々あることは否定できません。(拍手)  わが党は、国民主権の原則を堅持いたします。従って、天皇主権の復活をわれわれは考えておりません。ただ、現行憲法では、天皇は象徴とせられ、その権限もあいまいでありまするために、日本国の代表者はだれであるか、また、日本国は君主国か共和国か、学説においてさえも明確を欠いておるのであります。また、ただいまお述べになりました基本的人権につきましては、公共の福祉に反するときは立法等によって制約を受けるのでありますが、個々の権利についてどこまで保障されておるか明らかでなく、公共の福祉の名のもとに、基本的人権が不当な制約を受ける危険があります。従って、権利の正当な行使と乱用の限界を明らかにいたさねばなりません。  その他、現行憲法には調査究明を要する多数の問題点がありますが、ことに内閣委員会で論議の中心となりました第九条のごときは、その解釈にはなはだしい懸隔があり、国論分裂の因をなしておりますことは遺憾でございます。社会党は、自衛権と交戦権の問題につきまして、自衛権は認める、交戦権は永久に放棄する、安全保持は武力以外の方法でする旨の党声明を発表されておる。武力以外の方法とは何でございますか。わが国が直接間接の侵略を受けましたときに、あなた方はいかにして国土の安全と国民生命財産を守らんとなざるのでありますか、国民の前にはっきりお答えを願いたいのであります。  わが党は、だれよりも戦争を嫌悪し、平和を探求いたします。そのために、外交その他あらゆる方法に訴えて努力を払っておるのであります。しかも、わが国が急迫不正の侵略を受けました場合、これを武力によって排除いたしますこと、すなわち、自衛力を行使することは、国家として当然なさねばならないことであります。国家あっての憲法であり、憲法あっての国家ではございません。憲法のいかなる条章といえども、国家の自滅を規定いたすものはないはずでございます。(拍手)われわれは、他を攻撃いたしまするには無力であり、他からの侵略を防ぐには十分の自力を持つことが必要なのであります。しかして、この程度におきましては、徴兵制度海外派兵を考える必要の毛頭ないことは、自明の理でございます。しかも、憲法改正を徴兵制度海外派兵に通ずるがごとく宣伝これ努めますることは、ためにする党利党略以外の何ものでもございません。(拍手一体、世界じゅうのどこの国の社会党が、諸君のように、国家防衛のための戦力を否定しておりますか、お知らせを願いたいのでございます。(拍手)わが国におきましては、国家の存立に関しまする重大問題について国論が分裂いたしておることは、まことに遺憾にたえないところであります。社会党の猛省を促す次第でございます。(拍手)  以上申し述べました理由によりまして、憲法調査会の設置は早いほどよいと考えます。申すまでもなく、憲法は国家の基本法であり、その改正国民生活のすべての面に影響を持つものであります。従って、憲法の改正は、拙速を避け、きわめて慎重でなければならないことは、申すまでもないところでございます。国民は憲法改正を熱望いたしております。現実と遊離したところの社会党の宣伝には失望いたしておりまするから、選挙があれば、わが党に三分の二以上の議席を与えることは、信じて疑わないのでございます。(拍手)しかし、国会におきまして三分の二以上の議席が与えられましても、それだけで直ちに憲法改正の発議をなすことは慎しまねばならない。要は国論の統一にあるのでございます。憲法調査会の慎重なる審議を望みますとともに、国民に憲法改正の趣旨と改正点に関しまする理解を深め、国論を統一することは、われわれの共同の責任であり、憲法改正の絶対の要件でございます。関係者の重大なる関心を求めてやみません。  憲法調査会は自主的機関であって、その審議が内閣の意向によって左右せられないことは当然の措置でございます。その構成に当ひましては広く各界の識者を網羅し、その審議は、全国民考え方を総合いたしました国民立場でなされなければなりません。そのためには、本調査会には社会党諸君の参加を強く要望いたします。  社会党は、現在、平和憲法擁護運動を展開せられ、国民は、社会党は憲法改正自体に反対であるかのごとき錯覚に陥っております。合同前の左派社会党の綱領には、中央議会では安定した絶対多数の上に立って、社会主義の原則に従って憲法を改正し、かつ産業、教育、言論の重大なる規正をなすことを定めておられるのであります。昨年、左右両党の合同に当りまして、九月十九、二十日の両日にわたって池袋の豊島公会堂において開かれました新綱領承認の左社定期大会において、大阪府連代表の質問に対して、当時の左派社会党の政策審議会長であり、現在の統一社会党の政策審議会長である伊藤好道氏は、社会主義政権ができたとき憲法を改正することは当然のことである、反動勢力は、社会党が政権をとればすぐ憲法改正をすると言うので、特に綱領草案では、そのことに触れることを避けた、と答えておられるのであります。都合が悪いので憲法の改正社会党の綱領からは隠しておくが、われわれの天下がきたら当然改正するというのでございます。保守党の時代は憲法擁護を訴え、社会党の時代がきたら憲法を改正するというのでは、国民は納得いたしません。しからば、社会党は、いかなる改正案を用意しておられるか、国民の前にはっきりと示されることが、公党としての義務であると存ずるのでございます。(拍手)こうした意味からいいまして、このたびの憲法調査会の設置は、社会党の皆さん方にとりましても絶好の機会と申すべきでございます。ガラス張りの中で、保守、革新の、それぞれの憲法改正意見を国民の前に明らかにせられまして、その批判に訴えるべきであると考えまするが、いかがでございまするか。(拍手)  私は、本調査会に社会党の参加を強く希望し、また、必ず参加せられるであろうと確信するものであります。本国会で成立した売春対策審議法案には社会党反対されましたが、審議会には三名の委員を送っておられます。国民は不思議に思っております。諸君が憲法調査会に参加するつもりでありまするなら、調査会設置法に反対態度を一風して、この際快く賛成せられるようお勧めいたします。(拍手)  私は、日本人の手によって日本人の憲法を制定いたしまするために、憲法調査会設置法案に満腔の賛意を表する次第でございます。(拍手
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの高橋君の発言中、不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることといたします。  中原健次君。     〔中原健次君登壇
  29. 中原健次

    ○中原健次君 ただいま議題となりました憲法調査会法案に対しまして、私は、小会派、すなわち無所属、共産党、労農党各派を代表しまして、絶対反対立場を明らかにせんとするものであります。(拍手)  その理由の第一は、本法案が、憲法改正政治意図に基き、政府みずから世論を都合よく指導育成せんことをその目的とする点にあるのでございます。(拍手)あたかも、さきに提案されました公職選挙法改正案が、お手盛り選挙で衆議院の議席の三分の二を獲得し、もって憲法改正の態勢を固めようとするのと全く同一のねらいであるのであります。両者は、あたかも鳩山内閣の車の両輪の役割をなさんとしておるものであります。  もともと、この憲法改正の提案権は、憲法によって国会にのみ与えられており、内閣はその権限を持っておりません。これは、今日、学界の通説であります。しかるに、政府並びに与党は、強引にもこの原則をくつがえし、政府部内に、憲法改正をねらいとし前提とする憲法調査会のごときを作り上げ、改正に際して政府提案を既成の事実化しようとし、これを政府官僚、与党の支配のもとに置こうといたしておるのであります。これこそ、政府並びに提案者の重大なる憲法違反であり、国会無視の許しがたい行為であると考えるものであります。(拍手)  周知のように、憲法によれば、政府及び国務大臣並びに国会議員は、憲法を尊重し、擁護するの義務を負うておるのであります。にもかかわらず、先般、内閣委員会におけるがごとく、一党独裁の態勢をとってまで、とかく問題の多い本法案強行通過せしめんとするがごときは、これまさに一種のクーデター的であるといわなければならぬのであります。(拍手)  本法案に対する反対の理由の第二は、今日憲法改正の真に客観的な理由は、全くこれを認めることができません。そうでなくて、その順守、尊重こそ最も重要であり、かつ必要であると考えておるからであります。いわゆる保守党による歴代政府、特に今日の鳩山政府は、憲法を尊重、順守しないどころか、全くこれをじゃま者扱いにいたしておるのであります。このことは、鳩山総理を初め、閣僚諸君のたび重なる発言や談話の中に、あまりにも明らかに相なっておるのであります。(拍手)さきに警察予備隊を作り上げ、保安隊を経て、これを現在の自衛隊となし、なおかつその増強を進めておること、勤労者の働く権利を奪い、膨大な失業群を作り上げていること、その団結権と罷業権を奪い、かつ制限いたしておるということ、また、健康にして文化的な生活国民一般に保障することができず、それどころか、かえってこれをさらに削減し、抑制せんとしておること、さらにまた、国民の自由権に対して野蛮なる攻撃を加えておること等々は、指摘するに限りもない次第であります。(拍手)まさに、憲法と国民生活の現実は、このようにいたしまして、はなはだしく食い違いを生じておるのであります。(拍手)  しかるに、政府は、今日国民が真剣に求めておるように、政府の政策と行動を改め、そのあやまてる現実を憲法の水準にまで引き上げようとはしない。それどころか、全く逆に、憲法を改悪することによって、この間違った現実とのみぞを埋めようとする、驚くべきコースをたどっておるのであります。全く反動政策の推進者そのものといわなければなりません。もとより、国民は、このような憲法改正を断じて許しません。われわれもまた憲法改正反対いたします。この憲法の順守と尊重を厳として政府にこの際要求をいたすものでございます。(拍手)  本法案反対の第三の理由は、政府、与党の憲法改正の真の目的が、徴兵制と海外派兵を内容とする再軍備の強化及び天皇制など、旧制度の復活にあると信ずるのであります。(拍手)明らかにその方向が改悪にある点でございます。先般、鳩山総理を初め、政府、与党の諸君が、われを先にとダレス長官にお会いになられたようであるが、その際、ダレス氏は、日本の現在の憲法がある以上海外派兵は許されないであろうという意味の発言をいたしたかのように承わっておるのであります。当時、新聞紙も、注意深くこの点について報道いたしております。その上、ある閣僚は、ダレス氏に向いまして、それならば、なぜ占領期間中に憲法を改めておいてくれなかったかなどと、実に許しがたい発言をいたしておるのであります。(拍手)笑止千万というより、全く奇怪しごくであります。これによっても明らかなように、まさに今次の憲法改正は━━━━━━━━━━━━━━━━ほかならないのであります。  押しつけられた憲法を自主憲法へ、などという言いわけを宣伝しておりまするけれども、われわれ国民は、全くこの欺瞞的な宣伝に対しまして、あぜんたらざるを得ないのであります。(拍手)何がために、一国の閣僚が、他国の政府の当局者に対して、自国の憲法の扱いについて、わざわざお伺いを立てなければならなかったのでございましょうか。(拍手)これこそ、占領状態がなお払拭されておらないという何よりの証拠ではないでありましょうか。すなわち、憲法の押しつけられた改悪、今行われんとしておる事態は、まさにこれなのであります。  たれもが認めるごとく、今日の国際情勢は、決して戦争とか軍備拡大の方向ではございません。明らかに平和と軍備縮小の方向に立ち向っております。わが日本は、この世界の基本動向にさおさすことなくいたしまして、決して自立と繁栄の道を歩くことはできないのであります。しかるに、政府の基本方向は、これをまさに逆行しようとしておる。いや、すでに逆行しつつある。アメリカ当局の意を受けまして、世界の大勢に逆行せんとするものといわなければなりません。(拍手)  三十一年度防衛関係費を分析してみますと、空軍最優先、次いで海軍の順となっておるのであります。再軍備は、いわゆる自衛型から攻撃型へと、その編成の転換を行なっておるのであります。また、防衛庁経費のうち、軍需調達予算の占める割合を見ますと、二十九年度の一八・七%、三十年度が二一・八%、三十一年度はさらに飛躍をいたしまして、二五・七%と相なっております。財界の有力グループは、これを三、四年の後には五〇%程度までに引き上げようと画策いたしておるようでありますが、かくて、徴兵制は、単に募兵上の必要からのみではなくして、このように財政上の人件費を圧縮する上からも必要とされる情勢になっている。これが、徴兵制と、そのための憲法改悪政府、与党があせる最大の理由であると断ぜざるを得ないのであります。  政府、与党は、また、しばしば公然と天皇元首論を言明し、宣伝しておりますが、しかも、一方では、現憲法の明示する国民主権の原則は守りますと約束しているようであります。これは国民にとって全く不可解なることといわなければなりません。明治憲法、すなわち、大日本帝国憲法第四条を見ますと、「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総撹シ」云々と書いてありますが、ここに再び天皇を国の元首の地位に戻すことは、国家統治の最高の権力たる主権を明らかに国民の手から奪い去ることになるのであります。主権とは国家意思の最高の源泉であり、従って、それは唯一かつ不可分のものなのであります。国家主権を二つの単位で分ち持つということは絶対に許されません。その権能の一部分が奪われるならば、それはもはや主権ではなくなる。そして、それを奪った者が、遠からず、あらためて主権者の座につく段取りになって参るのであります。諸国の政治変革の歴史がそれを立証いたしております。従って、政府、与党のいわゆる天皇元首論が、現憲法の基本原理たる国民主権主義と断じて相いれないことは、おのずから明らかでございます。(拍手)すなわち、それは国民主権の圧殺をねらった反動的クーデターであると、私は重ねて断ぜざるを得ないものであります。(拍手)  現行憲法制定の際、占領下にあったわが衆議院が、まことに賢明にも今日の平和新憲法原案を修正いたしました部分の一つ、すなわち、憲法前文第一段の末尾に、人類普遍の原理である国民主権、この原理に反する一切の憲法、法令及び詔勅はこれを排除すると明記いたしたこと、今こそ、政府並びに政府与党の諸君は、このことを心に深く銘記されるべきであります。(拍手国民主権を侵すがごとき憲法改悪をたくらむ憲法調査会法案の成立を強行することは、主権者たる国民のすべてが絶対に許しません。私は、特に最後にこのことを強く主張いたしまして、憲法調査会法案に対する反対意思表示をいたす次第であります。(拍手
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの中原君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることといたします。  これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君は白票、反対諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数       三百七十八   可とする者(白票) 二百三十九     〔拍手〕   否とする者(青票)  百三十九     〔拍手
  33. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、憲法調査会法案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)     —————————————  本案を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  青木  正君    赤城 宗徳君  秋田 大助君    淺香 忠雄君  足立 篤郎君    荒舩清十郎君  有田 喜一君    有馬 英治君  安藤  覺君    五十嵐吉藏君  伊東 岩男君    伊東 隆治君  生田 宏一君    池田 清志君  池田 勇人君    池田正之輔君  石井光次郎君    石坂  繁君  石田 博英君    一萬田尚登君  稻葉  修君    犬養  健君  今井  耕君    今松 治郎君  宇田 耕一君    植木庚子郎君  植村 武一君    臼井 莊一君  内海 安吉君    江崎 真澄君  遠藤 三郎君    小笠 公韶君 小笠原三九郎君   小笠原八十美君  小川 半次君    小澤佐重喜君  大麻 唯男君    大石 武一君 大久保留次郎君    大倉 三郎君  大高  康君    大坪 保雄君  大野 半睦君    大橋 忠一君  大平 正芳君    大村 清一君  大森 玉木君    岡崎 英城君  荻野 豊平君    奧村又十郎君  加藤 精三君    加藤 高藏君  加藤常太郎君    加藤鐐五郎君  鹿野 彦吉君    上林山榮吉君  亀山 孝一君    唐澤 俊樹君  川崎末五郎君    川島正次郎君  川野 芳滿君    川村善八郎君  菅  太郎君    菅野和太郎君  木村 文男君    菊池 義郎君  岸  信介君    北 れい吉君  北澤 直吉君    北村徳太郎君  吉川 久衛君    清瀬 一郎君  久野 忠治君    楠美 省吾君  熊谷 憲一君    倉石 忠雄君  黒金 泰美君    小泉 純也君  小枝 一雄君    小島 徹三君  小平 久雄君    小西 寅松君  小林  郁君    小山 長規君  河野 一郎君    河野 金昇君  河本 敏夫君    高村 坂彦君  纐纈 彌三君    佐々木秀世君  齋藤 憲三君    坂田 道太君  櫻内 義雄君    笹本 一雄君  笹山茂太郎君    志賀健次郎君  椎熊 三郎君    椎名悦三郎君  椎名  隆君    篠田 弘作君  島村 一郎君    正力松太郎君  白浜 仁吉君    周東 英雄君  須磨彌吉郎君    杉浦 武雄君  助川 良平君    鈴木 善幸君  瀬戸山三男君    關谷 勝利君  田口長治郎君    田子 一民君  田中伊三次君    田中 龍夫君  田中 正巳君    田村  元君  高岡 大輔君    高木 松吉君  高碕達之助君    高瀬  傳君  高橋 禎一君    高橋  等君  竹内 俊吉君    竹尾  弌君  竹山祐太郎君    千葉 三郎君  中馬 辰猪君    塚田十一郎君  塚原 俊郎君    辻  政信君  綱島 正興君    渡海元三郎君  徳田與吉郎君    徳安 實藏君  床次 徳二君    中垣 國男君  中川 俊思君    中嶋 太郎君  中曽根康弘君    中村 梅吉君  中村三之丞君    中村 寅太君  中村庸一郎君    中山 榮一君  中山 マサ君    仲川房次郎君  永山 忠則君    長井  源君  灘尾 弘吉君    夏堀源三郎君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽 兵助君    西村 直己君  根本龍太郎君    野澤 清人君  野田 卯一君    野田 武夫君  野依 秀市君    馬場 元治君 橋本登美三郎君    橋本 龍伍君  長谷川四郎君    畠山 鶴吉君  八田 貞義君    鳩山 一郎君  濱地 文平君    林  讓治君  林  唯義君    林   博君  原 健三郎君    原  捨思君  平塚常次郎君    平野 三郎君  廣瀬 正雄君    福井 順一君  福井 盛太君    福田 赳夫君  福田 篤泰君    福永 一臣君  福永 健司君    藤枝 泉介君  藤本 捨助君    淵上房太郎君  船田  中君    古井 喜實君  古川 丈吉君    古島 義英君  保利  茂君    保科善四郎君  坊  秀男君    星島 二郎君  堀内 一雄君    堀川 恭平君  本名  武君    眞崎 勝次君  眞鍋 儀十君    前尾繁三郎君  前田房之助君    前田 正男君  松浦周太郎君    松浦 東介君  松澤 雄藏君    松田 鐵藏君  松永  東君    松野 頼三君  松本 瀧藏君    松山 義雄君  三浦 一雄君    三木 武夫君  三田村武夫君    水田三喜男君  南  好雄君    宮澤 胤勇君  村上  勇君    村松 久義君  森   清君    森下 國雄君  森山 欽司君   山口喜久一郎君  山口 好一君    山崎  巖君  山下 春江君    山村新治郎君  山本 勝市君    山本 粂吉君  山本 正一君    山本 利壽君  山本 友一君    横井 太郎君  横川 重次君    吉田 重延君  米田 吉盛君  早稻田柳右エ門君  渡邊 良夫君    亘  四郎君  否とする議員の氏名    阿部 五郎君  赤路 友藏君   茜ケ久保重光君  淺沼稻次郎君    飛鳥田一雄君  有馬 輝武君    淡谷 悠藏君  井岡 大治君    井手 以誠君  井上 良二君    井堀 繁雄君  伊瀬幸太郎君    伊藤卯四郎君  猪俣 浩三君    池田 禎治君  石田 宥全君    石橋 政嗣君  石村 英雄君    石山 權作君  稲富 稜人君    稻村 隆一君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    小川 豊明君  大西 正道君    大矢 省三君  岡  良一君    岡本 隆一君  加賀田 進君    加藤 清二君  風見  章君    春日 一幸君  片島  港君    片山  哲君  勝間田清一君    上林與市郎君  神近 市子君    神田 大作君  川俣 清音君    川村 継義君  河上丈太郎君    河野  正君  木原津與志君    菊地養之輔君  北山 愛郎君    久保田鶴松君  栗原 俊夫君    小平  忠君  小牧 次生君    小松  幹君  五島 虎雄君    河野  密君  佐々木良作君    佐竹 新市君  佐竹 晴記君    佐藤觀次郎君  坂本 泰良君    櫻井 奎夫君  志村 茂治君    島上善五郎君  下平 正一君    杉山元治郎君  鈴木 義男君    田中幾三郎君  田中織之進君    田中 武夫君  田中 稔男君    田原 春次君  田万 廣文君    多賀谷真稔君  高津 正道君    滝井 義高君  竹谷源太郎君    楯 兼次郎君  辻原 弘市君    戸叶 里子君  堂森 芳夫君    中井徳次郎君  中居英太郎君    中崎  敏君  中村 高一君    中村 時雄君  中村 英男君    永井勝次郎君  成田 知巳君    西尾 末廣君  西村 榮一君    西村 力弥君  野原  寛君    芳賀  貢君  長谷川 保君    原   茂君  原   彪君    日野 吉夫君  平岡忠次郎君    平田 ヒデ君  福田 昌子君    古屋 貞雄君  帆足  計君    細迫 兼光君  細田 綱吉君    前田榮之助君  正木  清君    松井 政吉君  松平 忠久君    松原喜之次君  松前 重義君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  三輪 壽壯君    門司  亮君  森 三樹二君    森本  靖君  八百板 正君    八木 一男君  八木  昇君    矢尾喜三郎君  柳田 秀一君    山口シヅエ君  山口丈太郎君    山崎 始男君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    山本 幸一君  横錢 重吉君    横路 節雄君  横山 利秋君    吉田 賢一君  和田 博雄君    渡辺 惣蔵君  岡田 春夫君    川上 貫一君  久保田 豊君    小山  亮君  志賀 義雄君    中原 健次君      ————◇—————
  34. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 日程第二ないし第九はこれを延期せられんことを望みます。
  35. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程第二ないし第九は延期するに決しました。      ————◇—————  日程第十二 日本電信電話公社法の一部を改正する法律案(第二十二回国会本院提出)(参議院送付
  37. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程順序変更の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、日程第十二を繰り上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。
  38. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程の順序は変更せられました。  日程第十二、日本電信電話公社法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。逓信委員長松前重義君。     [松前重義君登壇
  40. 松前重義

    ○松前重義君 ただいま議題となりました日本電信電話公社法の一部を改正する法律案に関し、逓信委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  この法律案は、国会法第五十条の二の規定に基き、衆議院逓信委員会の提出いたしましたものでありまして、     〔議長退席、副議長着席〕 昨年七月十二日、本院において全会一致をもって可決されたものであります。従って、本案の内容につきましては、すでにその際御説明いたしましたので、ここに重ねて詳細を申し上げることを避けまするが、本案の要旨及び目的は、日本電信電話公社法の一部を改正して、日本電信電話公社が国際電信電話株式会社の株式を保有することができる旨の規定を設け、これによって、一つには公衆電気通信事業の国際部門と国内部門との連係協調をはかり、他面、日本電信電話公社を国際電信電話株式会社の安定株主たらしめて、同会社の事業経営の安定並びに公共的使命の遂行に協力せしめようとするものであります。しかしながら、公社が会社に対して支配的地位に立つことは不適当と認めて、株式保有の限度を会社の発行済株式総数の五分の一としたほか、将来公社が会社の株式を取得しまたは処分しようとする場合には郵政大臣の認可を要することとし、なお、附則において、政府はこの法律施行の日における持株を公社に返還しなければならない旨の規定を設けておるのであります。なお、つけ加えて申し上げますが、現在における政府の本会社の株式所有数は百三十二万株、額面総額六億六千万円でございます。  前にも申し述べましたように、本案は、昨年第二十二回国会において本院を通過し、参議院に送付されたのでありますが、参議院においては、第二十三、第二十四の両国会にわたって継続審査となり、昨三月二十八日に至って修正議決を見て本院に送付されたものであります。参議院における修正の内容は、本件審議期間中において政府持株が処分された事実に基く条文の訂正その他きわめて技術的な修正であります。  逓信委員会におきましては、昨日本案の付託を受けたのでありますが、もとより本委員会提出法律案であり、参議院の修正も事情の変更に基く立法技術上のものでありますので、別段の質疑もなく、同日、討論を用いず直ちに採決の結果、全会一致をもって本法律案を可決いたした次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  41. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  43. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、日程第十及び第十一とともに、内閣提出労働省設置法等の一部を改正する法律案及び行政機関職員定員法の一部を改正する法律案を追加して、四案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  44. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  日程第十、厚生省設置法等の一部を改正する法律案日程第十一、恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案労働省設置法等の一部を改正する法律案行政機関職員定員法の一部を改正する法律案、右四条を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長山本粂吉君。     〔山本粂吉君登壇
  46. 山本粂吉

    ○山本粂吉君 ただいま議題となりました四法案について、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、厚生省設置法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、厚生行政の効率的運営をはかるため、厚生省設置法及び国家行政組織法にそれぞれ所要の改正を行おうとするものでありまして、その内容を御説明申し上げますと、第一は、現在厚生省の付属機関として未帰還者関係業務を取り扱っております未帰還調査部を縮小いたしまして、これを内部部局たる引揚援護局のもとに編入することであります。第二は、社会保険諸事業の運営に万全を期するとともに、医療保険の飛躍をはかるため、現在引揚援護局に置かれております次長二名のうち、一名の定員を保険局に配置がえすることであります。第三は、厚生省の付属機関である国立予防衛生研究所及び国立彌生試験所におきまして、医薬品の検査及び検定に必要な標準品を製造することができる根拠規定を明確にすることであります。  本案は、三月五日当委員会に付託され、同七日政府の説明を聴取し、昨二十八日、質疑を終了し、討論省略、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  次に、恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  大正八年以来、蒸気機関車の乗務員等のように不健康かつ危険な業務に従事する公務員には、その実勤在職年に加算するいわゆる加算制度があったのでありますが、昭和二十八年法律第百五十五号をもって、加算制度の全廃に伴い、恩給法第三十八条の四に規定するこの加算制度恩給法の本文から削除されたのであります。しかし、その附則の第四条二項において、この不健康業務等の加算制度については、特に、暫定的措置として、昭和三十一年三月三十一日まではなお従来の通り存続いたしておるのであります。本案は、以上申し上げましたように、本年三月三十一日をもってこの加算制度の存続期間が満了いたしますので、これにかわる制度の決定を見るまで、移行による空白を補うための措置として、さらに一年その期間を延長いたそうとするものであります。以上が本案の要旨であります。  本案は、参議院議員野本品吉君外二名の発議者及び十一名の賛成者をもって提出されたものであり、二月二十日に予備審査のため当委員会に付託され、昨二十八日本付託となり、同日参議院議員千葉信君より提案理由の説明を聴取した後、質疑、討論を省略、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。次に、労働省設置法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、労働者の福祉の向上をはかる目的をもって、労働省の機構を整備することとし、労働省設置法及び国家行政組織法にそれぞれ所要の改正を行おうとするものであります。  改正のおもなるものは三点であります。第一は、現在労働基準局の労災補償課で取り扱っておりまする労働者の災害補償関係事務が複雑多岐であり、かつ事務量が最近急激に増加いたしましたので、これら事務の円滑なる遂行を期するため、労働基準局に労災補償部を新たに設けることであります。第二は、労働衛生に関する研究機関として、労働衛生研究所を労働省の付属機関として新たに設けることであります。第三は、行政簡素化の線に沿って、すでに設置の目的を達成した特殊技能試験審議会を廃止することであります。  本案は、二月十八日当委員会に付託され、同二十一日政府の説明を聴取し、本日質疑を終了いたしましたので、討論省略、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。  最後に、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、昭和三十一年度における各行政機関の事業予定計画に即応して、行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものであります。  改正のおもなる内容を御説明申し上げます。  第一点は、各行政機関職員の定員の合計六十三万六千三百五十二人に対し、五千七百八十人の増加を行う反面、千百四人の縮減を行い、差引四千六百七十六人を増加し、結局定員の合計を六十四万千二十八人といたしたことであります。その増員のおもなものは、郵政省の特定郵便局における勤務時間に関する仲裁裁定の実施に伴うもの千六百二十二人、電気通信施設の拡張に伴うもの千三百七十二人、郵便取扱い業務量の増加に伴うもの六百六十九人等でありまして、これらの現業的業務の増加に伴う増員がその大半を占めております。その他文部省国立学校の学年進行、学部、学科の増設等に伴うもの七百八十三人等、必要やむを得ない増員が行われております。減員のおもなものは、郵政省の電話業務の一部を日本電信電話公社に移管することに伴うもの三百六十人、大蔵省の旧軍用財産の転用に伴うもの六十二人、建設省の営繕関係業務量の減少に伴うもの六十人等であります。  第二点は、事務の縮小、定員の移しかえ等に若干の時日を必要とする行政機関につきましては、それらの事情を考慮し、これに必要な定員を経過的に付加することといたしたこと等であります。  本案は、三月九日当委員会に付託され、同十三日政府の説明を聞き、本日質疑を終了し、討論省略、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  47. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 四案を一括して採決いたします。四案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、四案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  49. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。     午後七時十一分散会