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1956-01-31 第24回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年一月三十一日(火曜日)     —————————————  議事日程 第五号   昭和三十一年一月三十一日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  議員緒方竹虎君逝去につき院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞議長に一任するの動議鈴木茂三郎君提出)  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)  人事官任命につき同意を求めるの件     午後一時三十八分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御報告いたすことがあります。議員緒方竹虎君は去る一月二十八日逝去せられました。まことに痛惜哀悼至りにたえません。  この際、弔意を表するため、鈴木茂三郎君から発言を求められております。これを許します。鈴木茂三郎君。     〔鈴木茂三郎登壇
  4. 鈴木茂三郎

    鈴木茂三郎君 ただいま議長から御報告になりました故衆議院議員正三位勲一等緒方竹虎君に対し院議をもって弔詞を贈呈し、その弔詞はこれを議長に御一任するの動議を提出いたします。(拍手)  緒方君は、去る二十八日午後十一時四十五分、心臓衰弱のために急逝されたのであります。私はここに、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼の辞を申し述べます。(拍手)  緒方君は、明治二十一年一月三十日山形市に生まれ、長じて福岡立中学修猷館を終え、早稲田大学政経学部に学び、明治四十四年六月卒業されました。学業を終るや新聞界に入り、大阪朝日新聞社に入社され、大正九年には欧米各国に留学、三年間政治経済等の研究に専念して、後年における各方面の活躍の素地を作られました。大正十一年帰朝の後には、大阪朝日通信部長東京朝日整理部長政治部長を経て編集局長となり、次いで、昭和三年には朝日新聞社の取締役、昭和九年には主筆、昭和十八年には副社長に就任され、わが国新聞界に偉大なる業績を残されたことは、諸君のすでに御承知の通りであります。(拍手)  緒方君が官界に御活躍になるに至ったのは、昭和九年に鉄道運賃審議会委員となられたのが初めてでありまして、昭和十一年内閣情報部参与となり、後、議会制度審議会臨時委員医薬制度調査会委員国語審議会委員中小産業調査会委員などを歴任され、行政各部の諸施策に参画され、議会制度の改善に貢献されたのであります。昭和十九年、小磯内閣の成立に際しては、その人格識見を望まれて入閣し、国務大臣情報局総裁に任ぜられ、さらに鈴木内閣の顧問となり、昭和二十年八月に貴族院議員に任ぜられました。戦後、東久邇内閣成るや、国務大臣情報局総裁及び内閣書記官長として、当時の政治経済社会等、異常な混乱の中から、きわめて困難な戦後処理の重要な任務に当って大きな功績をあげられました。  昭和二十六年十二月自由党に入党、政界に入られたのであります。翌年五月、吉田首相の特使として東南アジア諸国を訪問し、各国との親善に力をいたされ、昭和二十七年十月の第二十五回総選挙には福岡県第一区より衆議院議員に当選され、第四次吉田内閣国務大臣内閣官房長官に任ぜられ、同十一月に副総理となられました。次いで、第五次吉田内閣においても、国務大臣に任ぜられ、副総理になられたのであります。また、昭和三十九年十二月吉田内閣総辞職の後は、選ばれて自由党総裁となり、また、昨年十一月自由民主党の結成とともに、総裁代行委員の要職につかれたのであります。  緒方君は、衆議院議員に当選されたのは前後三回、本院に議席を占められた期間は長いとは申されませんが、四たび国務大臣となり、再度副総理の重責をにない、あるいは政党総裁として、また、昨秋以来の保守合同に際しては、一身の毀誉褒貶を顧みず事に当り、合同なるや、自由民主党総裁代行委員の一人として、かねて念願されていた現代的の保守陣営の結束に努められるなど、政党政治のため、憲政の発達のため尽された御功績は、はなはだ大なるものがあるのであります。(拍手)  緒方君は、まことに重厚な御性格でありまして、事に当っては熟慮遠謀、常に、自己の信念に従って、その正しいと信ずる道を堂々と歩むというお人柄でありました。人としてまことにりっぱであったばかりでなく、識見もはなはだ高く、当然、政権を担当して、日本運命をになうべき一人として、内外に絶大の信頼を得ておられたのであります。(拍手)今や、国家は二大政党の分野に立ち、民主政治の完成に多大の期待が寄せられているときであり、国事もまた多端の折柄、かくのごとき緒方君を失ったことは、議会のため、国家のため、まことに痛惜至りにたえません。(拍手)  私は、ここに緒方君の政治生活を静かに顧みて思いますことは、寒に耐ゆる白い梅の花が、まさに開かんとして、一夜の風雪に地上に散ったという感がいたすのであります。(拍手)季節も春立つ日が旬日に迫り、梅花もまさに枝頭にあって開かんとするときに緒方君が卒然として急逝されたことは、まことに感慨無量なるものがあるのであります。国家運命人力をもって切り開くことができますが、人の死生は人力いかんともいたしがたいところであります。(拍手緒方君も、おそらくは、民主政治の将来、国家民生の前途に深い憂いを抱き、高い理想を蔵しつつも、しかし、なすべきことをなしたという安らかな心をもって瞑目せられたものと信じます。  ここに、緒方君の御長逝に対し、その人となりを追慕し、敬弔の誠をささげ、その御冥福を祈つて、追悼の言葉といたします。(拍手
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいま鈴木君から提出されました動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって動議は可決せられました。  ここに議長の手元において起草いたしました文案があります。これを朗読いたします。  衆議院ハ屡、国務大臣重任ニアタリ憲政ノ為ニ尽シタル自由党総裁自由民主党総裁代行委員議員正三位勲一等緒方竹虎君ノ長逝哀悼シ恭シク弔詞呈ス     〔拍手〕  この弔詞贈呈方議長において取り計らいます。      ————◇—————
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。勝間田清一君。     〔勝間田清一登壇〕     〔議長退席、副議長着席
  8. 勝間田清一

    勝間田清一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、河上議員あとを引き継ぎまして、財政経済に対する質問を続行いたしたいと存ずるのであります。  第一に、昭和三十一年度予算案一般について、重要諸問題をお伺いいたします。  今回政府が提出した昭和三十一年度予算案は、一般会計が一兆三百四十九億円で、これは三十年度予算に比して五百三十四億円の実質的増加を示すものであります。しかしながら、この増加額の七割五分、すなわち四百億円が軍事費恩給費、そして地方財政赤字補てん費増額であって、もしこれに賠償等特殊債務返済費百億を加えるとすれば、これら総額は実に四千三十五億四千七百万円に達しまして総予算額の四割を占め、いかにわが国財政をこれら非生産的支出が圧迫しつつあるかに驚かざるを得ないのであります。(拍手)しかも、これら費目のいずれを見ましても、現鳩山内閣の続く限り、年々歳々ウナギ登りに上りこそすれ、軽減される見込みは断じて期待し得ないのでありまして、鳩山内閣財政的行き詰まりは、もはや今日時間の問題とここに申しても過言でないと存ずるのであります。(拍手)  公務員の給与を二ヵ年にわたってストップし、民間労務者の賃金を、労働生産性上昇率をはるかに下回ったままに抑圧しながら、わずかばかりの所得税の軽減でお茶を濁し、鳩山内閣の三大公約の一つと豪語した総合的減税が早くも遅延せざるを得なくなったのも、その一つの大きな現われであります。(拍手)  食糧増産関係を含む公共事業費を五十億円、住宅対策費七十億円、その他の建設資四十億円等をそれぞれ一般会計から削減してその不足分の一部を、利子のついた民間資金に切りかえてつじつまを合わせねばならなかったのも、鳩山内閣財政の限度を示すものであります。(拍手)  鳩山総理は、昨日の答弁におきまして、社会保障費を百二十二億円増額したと称して大みえを張ったのでありますが、これは実に数字の表面づらだけを見た空論でありまして、実態を御存じない証拠といわなければなりません。増額いたしたの、鳩山内閣炭鉱合理化駐留軍労務者の首切りを初めといたしまして、中小企業者を倒産せしめている独占資本中心政策から街頭に投げ出されておる労働者方たちへの失業対策費が不十分のままに増額されたのがその根本でありましてあとは、対象人員自然増から当然増加すべきものが増加したにすぎないのであります。国が管理しておる健康保険赤字対策として、当然、二割、すなわち約八十二億円の負担を国がすべきにかかわらず、わずか三十億円だけ国が負担をいたしまして、病人に二十三億円を医療費の一部負担として負担をさせるような鳩山内閣政策に、社会保障を論ずる資格は断じてないと確信するのであります。(拍手)  さればこそ、一萬田財政は、ついに、この財政行き詰まりに対する逃げ道を、財政投融資民間資金の利用、さらには国庫債務負担行為増額に求めたのであります。そして、一般会計を含むこれらの総額、すなわち真の意味における予算規模とも称すべきものは一兆六千四百七億円の膨大なる金額にのし上り、三十年度に比し、実に一千百六十九億円の膨張となって現われておるのであります。  そこで、私は、一萬田大蔵大臣並びに関係閣僚に対して、次の諸点を明らかにいたしてもらいたいと思うのであります。  第一は、予算基礎になっておる消費者米価をいかに考えておるかということであります。河野農林大臣は、膨大な赤字に達しておる食管特別会計をいかに処理せんとするのであるか、また、その結果、消費者米価は本三十一会計年度に関しては断じて値上げせずとここで断言することができるかどうか、大蔵大臣とともに、この点を明白にせられたいのであります。(拍手)  次に、政府は、物価の横ばいを前提といたし、また、物価の安定を経済政策の一目標といたしておるのでありますが、果してこれが維持できるかどうか、経企長官に根拠ある説明をお願いいたしたいのであります。すなわち、政府施策を見れば、当然無利子財政資金によるべきものを、金利のついた民間資金財政投融資に切りかえておること、従って資金コストが上っておること、砂糖消費税軽油税、さては鉄道等に対する固定資産税等を設けて、物価値上り基礎をここに作つておること、また、最近における物価の若干の上昇、なかんずく鉄鋼等の二千円引き上げ等、すべての条件をここに総合いたしまするならば、さなきだに料金値上げ要求いたしておる鉄道運賃を初めといたしまして、家賃、電気料金等値上げが危惧されるのであります。政府参議院選挙をおそれて、これらの物価値上りを今日押えておるけれども、やがて、選挙の後に、これらのものを引き上げるのではないかというのが、今日国民の持っておる一様の危惧であります。この点を明白にお答え願いたいのであります。  次に、政府は、財政行き詰まりのしわを民間資金の活用で逃げまして、公募債を除き四百八十八億円をこれに予定いたしておるのであります。この民間資金を、大蔵大臣はいかにして確保せんとするのであるか、いかにしてこれが合理的な運営をはからんとするのであるか、この点をまず明白にせられたいのであります。また、公団債発行政府は企図されておるのでありますが、利益が確実である限り、また公団が乱立に陥らない限り、この政策が必ずしもインフレを惹起するものとは考えませんが、公団債発行公社債発行の第一歩であり、インフレの懸念をここに内蔵いたしておることは、争われない事実であります。従って、われわれは、公団乱造に対しては絶対反対すると同時に、当然必要なる経費は特別会計によってまかなっていくのが必然であると考えるが、大蔵大臣所見を承わりたいのであります。  次に、政府は、各大臣並びに与党内における予算の分配のために、幾多の無理な財源を捻出いたしておるのであります。その代表的なものは、旧朝鮮銀行と旧台湾銀行に対する清算剰余金を三十五億円も引き揚げんといたしております。また、賠償費を当初の原案より五十億円減額いたしております。そこで、外務大臣に対してお尋ねいたしたいのであるが、これらの財源日韓交渉目比賠償に支障はないのであるかどうか、また、日比賠償いかんによっては補正予算を組まざるを得ないのではないか、この点を大蔵大臣に明白にお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)  次に、恩給費の将来についてであります。恩給費は、予算に明らかなごとく、旧軍人恩給文官恩給を合せて、前年度より六十六億円増額いたしております。そうして、恩給総額は実に八百九十九億円に達しているのであります。そこで、今後の問題でありますが、文官恩給の二十三年度以前の退職者に対する不均衡是正を平年度化すといたしますれば、実にこれは十一億に達します。そうして、また、軍人恩給についても是正をするのであるかどうか。それをやるとすれば、まさに恩給費は一千億円に達するのであります。ここに、財政を憂える者の中には、日本恩給亡国になるのではないかという当然の疑問が生じて参るのであります。  しかし、他面におきまして、これらの恩給権者の権利を剥奪することも無理でありましょう。同時に、社会保障的性格を無視することも無理でありましょう。そこで、財政的な要求社会保障的な要求とをいかにして合理的に確立するかということが、当然政府において計画されねばならぬことは明らかであります。(拍手)ここにおいて、わが党は、世界の動向をにらみ、現在のこれらの状況を勘案いたしますならば、農民等国民に対して老齢年金制度を設け、それを組み入れることによってこの恩給制度を吸収して、全社会保障体系としてこれを確立すべきである、これがわれわれの考え方であります。(拍手一体総理大臣及び厚生大臣は、これらの方途に対していかに考えておるのであるか。  以上、私は予算上の諸問題の質問を若干いたしたのでありますが、これを要するに、本予算案は、きわめて脆弱な基礎の上に無理に組み立てられた、きわめて弾力性のない予算であることは、否定できないと思うのであります。特に、一萬田蔵相と高碕経企長官主張にもかかわらず、日本経済に対する長期的な見通しと、それに対する配慮を欠いており、経済自立五ヵ年計画に対する財政的な裏づけのないものであることは明らかであります。(拍手)  アメリカの三十二年度予算教書を見ましても、現在アメリカが未曽有の繁栄にあり、しかも、年末には大統領選挙を控えながら、あえて減税を見送り、国債の償還をはかり、しかも不況対策への弾力性を保持しつつあることは、両大臣とも認められるところと思うのであります。また、たとい一萬田財政主張をいれるといたしましても、それは、日本をしてアメリカの支配から脱却せしめ、平和と生活安定をこいねがう全勤労階級のための健全財政でないことは明らかであります。(拍手)再軍備独占の上に安住を求める資本家、財閥のための予算であることは今日明白であります。(拍手)私は大蔵大臣所見を承わりたいのであります。  次に、外交問題について重光外務大臣に御質問をいたします。  政府は、昨日、アメリカとの間に防衛分担金削減に関する一般方式の取りきめを行いました。一体、その内容はいかなるものであるか、その経過実態とをお示し願いたいのであります。新聞の報道によりますれば、昭和三十年度の防衛庁費八百六十八億円、対米施設等提供費八十億円、並びに防衛分担金三百八十億円を基準といたしまして、毎年、防衛庁費と対米施設提供費合計額が前年度のそれをこえる金額の半分を防衛分担金から削減すると聞いております。もしこれが政府の取りきめの内容であるといたしますならば、私は二つの疑問が起きて参ると思うのであります。  その一つは何か。何ゆえに、これら増加額の半分にとどめて、全額を分担金から削減しないかということであります。(拍手)何となれば、このことは、アメリカ防衛分担金一を削減することによって、日本は二倍の再軍備要求せられることにほかならぬからであります。もしこの方法で行くとするならば、現在ある三百八十億円の分担金をゼロにするためには、防衛庁費施設提供費を百億円ここで予算増額したといたしましても、実に八ヵ年を要することに相なるのであります。日本予算に対して長期にわたってこの重大な制約を政府間の取りきめによって行うことに対して、私は断じて承服し得ざるところであります。  第二の疑問は、防衛庁費増額分だけを分担金削減に見返るというならばまだ話はわかるのでありますが、何ゆえ施設提供費増額防衛分担金削減条件になっておるかということであります。(拍手)これは重大なごまかしであります。われわれは、昨年度の予算において、分担金を一面において削減しながら、他面において、立川、砂川、大高根等の飛行場を初め、軍事基地を拡張した苦々しき経験を持っておるのであります。また、たとい七年か十年の後に分担金がゼロになったといたしましても、施設提供費義務になっておるから、最後の段階においては、膨大なる施設日本の国に厳然と残るのであって、アメリカ軍隊も駐屯することを意味するのであります。(拍手)そこで、今日、鳩山内閣が再軍備すればアメリカ軍隊は撤退すると国民をごまかしてきたが、これをやつても厳然としてアメリカ軍隊は駐屯することを意味するのであって、鳩山総理はいかにこれを考えるかを御答弁願いたいのであります。(拍手)  次に、賠償等特殊債務返済に対して、特に日比賠償中心といたしまして、鳩山総理並びに高碕、重光、一萬田等関係大臣お尋ねをいたします。  およそ、賠償問題のうち、日比賠償交渉経過ほど不明朗かつ不愉快なものはございませんでした。昭和二十七年二月、津島使節団フィリピンに派遣されて交渉を開始して以来、今日まで満四ヵ年を経ておるのでありますが、その間、日比双方に政変と複雑なる国内事情があったとは申しながら、その基本方針、特に、日本政府基本方針に確固たる見解がなく、常にぐらつき、軽々に取り扱われつつあることは、きわめて遺憾にたえないところであります。(拍手)  津島使節団のとった役務賠償主義が、昭和二十八年六月の吉田首相国会答弁によって、現物賠償併用主義に変りました。次いで、二十九年四月に、四億ドル、十ヵ年返済大野ガルシア協定覚書が調印されました。これが、不幸にして、フィリピン与党内の反対によって流れました。国際信義の上にきわめて遺憾にたえないところでありますが、われわれが、しかし、さらに遺憾にたえないことは、鳩山内閣が、昨年五月四日、突如として来朝したネリ大使との交渉で、賠償五億五千万ドル、海外投資二億五千万ドル、計八億ドル案を軽々にもうのみにし、しかも、ネリが帰って直後、この全貌がマニラ新聞によって暴露されて、今日に至っては、国民の正当なる主張要求もすでに許されざるまでに既成事実化しつつあることであります。(拍手)いかに鳩山内閣が当時功をあせっておつたとはいえ、日本としては大野ガルシア覚書経過尊重を当然要求すべきであります。すでにきまっておるビルマ賠償との均衡、今後行われるインドネシア等への影響、さらには日本経済賠償支払い能力等への計画的な配慮の上にこそ、この重大事は決定さるべきだったと思うのであります。(拍手)しかるに、これら一切の条件を無視いたしまして、にっちもさっちもいかぬ八億ドル案を軽々にのむに至った鳩山内閣の無責任きわまる底抜け外交を、われわれは断じて糾弾いたしたいのであります。(拍手)  そこで、鳩山総理は次の諸点を明らかにされたい。  一つは、賠償五億五千万ドル、投資三億五千万ドル、計八億ドル、このワクは今や動かし得ざる状態に立ち至っているのであるかどうか、もしそうだとすれば、四億ドルの大野ガルシア協定かち二倍の八億ドル案に行ったあのときの経過を、この国会を通じて明らかにすべきであります。(拍手)また、伝えられるところによれば、もし日本が八億ドル案をのまなければ、交渉経過フィリピンは暴露すると言って、総理をおどかしているやに聞いておるのであるが、それを受けて立つ総理の確信が今日あるかどうか、これを明らかにいたしたいのである。(拍手)  もう一つ明らかにいたしてもらいたいのは、ビルマは二億五千正万ドルの賠償及び投資を締結いたしました。その際に覚書によって明らかになっていることは、フィリピンインドネシア賠償は、ビルマ賠償と適正なる比率を保つことの約束になっておる。ビルマの一億五千万ドルは、ほぼこの二倍のものがフィリピン及びインドネシア賠償になることが受諾されてあの締結はスムーズに進みました。ここで、もし、フィリピンとの八億ドルの賠償案政府がのむとすれば、当然、ビルマの二億五千万ドルの賠億及び借款は、日本追加補正をしなければならない義務が生じてくると思うが、どうか。この点を、重光外務大臣は、外交責任上明らかにすべきであります。  最後に、大蔵大臣及び経企長官お尋ねをいたします。もしこの日比賠償が八億ドルのワクとなりまするならば、先ほどの経緯をもって、インドネシア賠償はほぼ同額になって参るでありましょう。ガリオア、イロアの援助によって行われた約二十億ドルの対米債務がたとい五億ドルに削減されたといたしましても、タイの特殊円その他の賠償を含めて、私は、ここに、二十億ドルの賠償並びに特殊債務返済が、すなわち約八千億円の弁済が日本義務となる可能性がきわめて濃化したことと思うのであります。これは、すなわち、たとい二十ヵ年にこれを償還いたしましても、実に年四百億円ずつ予算負担しなければならないことを意味するのであります。今日のこの予算において、将来の予算においてこの賠償費に対する日本負担能力をどう見るか、いかにしてこの際この賠償問題を解決せんとするのであるか、それに対する計画をこそ今日日本国民に明らかにせずして、いたずらに健全財政を謳歌することは国民を欺くこともはなはだしいと確信いたすものであります。(拍手)私、次に、外交問題の最後の問題としまして、中国に対する鳩山内閣見解を重ねてお尋ねいたします。  鳩山総理は、対ソ交渉においては国民の世論に抗し得ず、もたもたいたしつつも、とにかく平和回復のための交渉を踏み切ったのである。しかし、日本の最大の課題は、隣国として、経済的にも、文化的にも、あるいはアジアの平和のためにも、わが国に重大な関係のある中国との関係をいかにして打開するか、いかにして平和を回復するかという問題であることは、否定できないと思うのであります。しかも、わが国に率先して、すでに英国はこれを承認し、インド、ビルマ等中立外交をとつている諸国家はもちろん、アジアアラブ諸国は、バンドン会議に見られるごとく、急速に中国との友好関係を回復いたしつつあるのであります。この傾向は、好むと好まざるとにかかわらず、世界の大きな外交上の課題であること、今日明白であります。  私は、過般、党を代表いたしまして、アメリカに使いいたして参りましたが、対中共に最も強硬な態度をとっていると見られるアメリカにおいてさえ、大統領選挙以前においては、あるいは大きな動きはないかもしれないが、少くともその後において、対中共政策を大きく進展せざるを得ないであろうとの印象を強く受けて参ったのであります。いずれにも増して、中華人民共和国は一大独立国として成長いたしつつあるのであります。これを無視して、国際外交、なかんずくアジアの問題を解決することはできないまでに世界の情勢は進みつつあることを、アメリカ自体も承認せざるを得ないのが現在の世界であると思うのであります。(拍手)私は、諸般の情勢を考え、昭和三十一年度の国際外交の重点は実に対中共の承認の問題であると思うのであります。鳩山総理は果してこの情勢をどう判断せられておるのであるか、ここに一言明白ならしめてほしいのであります。  しかしてこうした情勢の中で、日本は、肥料一トン送るのにも、一人の客人を中共から招くのにも、やすやすとはできない。まことに、わが国中共外交は、かたくからを閉ざしておるというのが、私は現内閣の中共外交であると思うのであります。私は、これには二つの理由をあげることができると思うのであります。  その一つは、わが国外交、すなわち、吉田内閣以来の数次の保守党内閣が、外交の自主権をみずから放棄いたしているからにほかならぬのであります。(拍手)自由諸国との協調という美名に隠れて、ひたすらアメリカ外交に追従いたしておることが、この最大の欠陥であることは明らかであります。(拍手)いずれの陣営に対しても国際的協調を保たねばならぬことは、わが国憲法の建前から当然であります。同時に、みずからの義務と権利の上に立って外交の自主権を行使し得る権利を忘れてはならぬのであります。戦後十一年、隣国との間に不自然な戦争状態のままに置かれておる日本が、これと国交を回復しなければならぬ自由を、いずれの国といえども阻止することは断じてできないのであります。(拍手鳩山内閣は、対ソ連との交渉に踏み切ったごとく、対中共に対する国交回復をここに踏み切ることができるかどうか。  昨日の北京放送によれば、周恩来は、政治協商会議において日本政府に対し、昨年八月十七日、十一月四日にわたって交渉したが、残念なことに何らの返事のないことを遺憾に思う、と称しております。一体、今日、鳩山内閣は、これらの中共外交に対する根本の態度を明白ならしむる必要があると確信いたすのであります。むしろ、今日、中共との国交回復は鳩山内閣によってはできないというのが、鳩山外交の限度であるのではないか。(拍手)  対中共との国交回復を阻害いたしておる第二の大きな条件は何か。言うまでもなく、吉田内閣によって決定せられた日華条約の締結というものが中共との国交回復を阻害いたしておる原因ではないかということであります。思うに、終戦以来、今日、日本外交における最大の失策は、日華条約の締結にあったと思うのであります。サンフランシスコ条約その他の条約は、あるいは国際的な圧力によってできたという弁解も成り立つかもしれない。だが、少くとも、台湾政府との条約については、日本は自由なる権利を行使することができたはずであります。しかし、私はここに過去の批判のみを言わんとするものではありません。問題はここに明白になります。一つは、台湾と日華条約を締結しておる事実と、今後中共と国交回復をしなければならぬ要請との間における調整、矛盾をここにいかに解決するかという問題であると私は思うのであります。(拍手)  われわれの考え方は、台湾は中華人民共和国に終局的には帰属すべきであると考えるが、いずれにいたしましても、中国と台湾との関係は、中国の国内問題なのであって、両当事者が話し合いによって平和的に解決すべきであると確信いたすのであります。(拍手)われわれの今日なし得ることは、両当事者の話し合いに国際干渉をすることではなくて、この促進に協力することが、われわれに負わされたる今日の道であります。(拍手)そして、日本は、この問題とは別個に、中共との間に、すなわち、日華条約の廃棄を前提条件とせず、無条件の姿で中共を承認し、これと国交回復をする具体的な手段を今日とるべき段階に達したと確信いたすのであります。(拍手)私は、ここにおいて、鳩山総理の今日これに対する見解をお伺いいたします。  私は、最後に、鳩山総理一つ質問をいたしたいと思います。昨日の河上顧問の質問に対して、領土問題は後に主題とするということを言った覚えは断じてないと言われました。私はここに明らかにいたします。朝日新聞等における鳩山首相の記者会見の録音によれば、「そこでまあ戦争状態終結の宣言をしたいというようなことからはじまって来て戦争状態終結の宣言をすれば当然にそれと同時に抑留者を帰さなくちゃあならん。領土問題にしても不当に占拠しているという理由はないんであるからして戦争を防止するために必要な程度に限つてそういうようなものは暫時の間このままにしといて後日解決するというような結果になって行ってだね、日ソ交渉が片付きゃしないかということをこい願っているわけだ。」こう言っておる。鳩山総理に私は質問をいたしたい。あなたにおける今日の二重外交、二また外交、これはまさにこの事実によって明白であります。私ははっきり申し上げたい。この新聞の録音の速記がうそであるか、鳩山総理主張がうそなのであるか、いずれがうそであるか、明白にせられんことを最後要求いたして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  9. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 勝間田君の御質問にお答えいたします。  最後の日ソ交渉の問題につきまして、領土問題をあと回しにするというようなことを目的として、領土問題をあと回しにして解決するということを言った意味ではございません。こういうことが交渉で起きるかもしれないということを言ったのでありまして、私は、領土問題はあと回しにして、世間に伝うるがごとくに、歯舞、色丹だけで満足をして日本は領土問題を解決するのだという意味を言ったのではないという意味であります。  それから、中国との外交につきまして、承認の問題がございましたけれども、中国をただいま承認するということは、国際情勢上、直ちにはできないと考えております。国際情勢を見て善処をすべき問題だと考えております。  日比の賠償についても御質問がありましたけれども、日比の賠償経過について、調印がじきできるような今日において、その詳細を申し上げるわけには参りません。  その他の事柄については、私への質問よりは外務大臣もしくは大蔵大臣についての御質問が多いようでありますから、担当大臣から御答弁申し上げます。(拍手)     〔国務大臣重光葵君登壇
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答え申し上げます。総理のお答えを補足し、かたがた、その他の問題についてのお答えを申し上げます。  中国問題について、東亜の緊張を緩和しなければいかぬというような御趣旨は、全く私もその通りに考えます。世界の動いておることもその通りであります。しかしながら、今日世界の情勢は変化があるから中共との間に国交を回復するというふうなことには中共を承認するというところまでは動いておらぬと思います。  それから、その理由として、日本は、自主外交を放棄して、他国の外交に追随しておるということでございますが、私はさようには考えません。自主外交を維持すればこそ、自由民主の諸国と協力をいたしておるのであります。反米の言動をすることは自主外交ではないと私は考えております。(拍手)  また、日華条約の締結が中共を承認するための障害になっておるというお話でございました。これは、ある意味においてそういうことはございます。日華条約は、日本の締結したものであって、国会の承認を得て、ちゃんと締結いたしておるのであります。内閣はかわっても、今日これを変えるわけには参りません。  それから、台湾海峡の問題は中国の国内問題であるということを申されましたが、台湾海峡の問題は、今日国際問題となっておるので、中国の国内問題として解決ができないから、今日紛糾をいたしておるのであります。従いまして、国際的に取り上げられてこの紛糾を解決するように持っていくことが一番適当である、こう考えます。  予算の問題が日韓交渉日比賠償交渉に差しつかえがあるようなことになりはしないか、こういう御質問でございましたが、日韓交渉日比賠償の問題は、それに関係なく進めて参ります。しこうして、その結果予算的処置が必要ならば、これはとらなければなりません。  そこで、日比賠償の問題でありますが、吉田内閣時代の交渉の経緯はむろんございます。それらをもとにして交渉を継続しておるのでございます。八億ドルの案をうのみにしたということを言われますが、そういうことはいたしておりません。しかしながら、今交渉中でありますから、この交渉経過を一々申し上げる時期のすみやかに来らんことを希望しておるのであります。それは交渉ができた後であります。  それから、ビルマ賠償には、これは別に何にも影響しないようにやっておるつもりでございます。  次に、防衛分担金の問題についてお話がございました。分担金の御質問の点は、何ゆえに防衛費の増加分の半分ずつを分担するかという——これは一般方式に関することでございましょう。そういう御質問でございました。日本の防衛は、今日、日本と米国軍との共同責任でやっております。そこで、半分ずつ増加分に対して分担をいたすということでございます。(拍手)  それから、施設費が何ゆえに計算の基礎に入れてあるかということでございますが、施設費も防衛費でありますから、防衛費として一括してこの中に入れておることは申すまでもありません。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  11. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 軍事費恩給費賠償費地方財政等に予算のうち約四〇%を計上しておって、ほかの民生安定の方の支出は少いじゃないか、こういうふうな御質問であったのでありますが、今申し上げました軍事費恩給費賠償費地方財政も、これはみな当面重要な施策であるのでありまして、これに相当な経費を計上することは、私は当然と思っております。同時に、それがゆえに民生安定等の経費が決しておろそかにされておるわけではないのでありまして、私が財政演説で申し上げましたように、社会保障についても百二十二億は増加しております。さらに、また、特に社会党の方々が要望しておりました、月二万円程度の給与所得者には所得税をかけぬようにというのも、今回実現をいたしたのであります。なお、このほかに、中小企業、科学技術振興、農業、漁業等についても、十分な配慮を加えてあるつもりでございます。  なお、しかしながら、今回の予算の特徴は、財政と金融というものを一体にして、これを総合的に運営するということが一つの大きな特色であります。従来、財政において、民間で当然なすべき仕事も、資金の蓄積状況等から、ともすると財政負担になっているのを、これを民間へ返したわけであります。この資金の確保については、今日の情勢から十分確信を持っております。  なお、公団債発行につきましてこれは公債発行のもとになりはせぬか、こういうことをやつておると公債を発行することになりはしないかという御意見につきましては、公団は、私が説明するまでもなく、採算のとれるように、そして、民間資金の導入が可能であるような、そういう公団にいたすのでありまして、何でもかんでも公団にいたすわけではありません。従いまして、一般会社に社債の発行が許されるのと似たような意味におきまして、こういう公団について公団債発行ということは、今日の状況において私は少しも差しつかえない、かように考えておるわけであります。  大体以上をもって答弁といたします。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇
  12. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。  米の消費者価格を上げはせぬかということでございますが、このことは、たびたび申し上げます通りに、米の消費者価格は据え置きにいたしまして上げようと考えておりません。なお、外米につきましては、これは引き下げの方針でいく予定でございますから、さよう御承知を願います。     〔国務大臣高碕建之助君登壇
  13. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 物価の安定についての御質問でございます。現在鉄及び非鉄金属は多少値上りをいたしております。これは世界の情勢に左右されておりますが、これにつきましては、日本といたしましては、原料政策を根本的に考究いたしまして、この育成政策を講じております。また、繊維工業につきましては、繊維工業の合理化及び加工繊維の生産等につきまして十分施策を講じまして、繊維製品の値下げを断行しております。一方、食糧につきましては、国内の農業技術の向上、農業多角経営等によりまして生産原価を引き下げると同時に、現在世界的に生産が過剰になっております食糧を輸入することによって、食糧の安定、つまり食糧価格の安定を講じたい、こういうふうに思っております。  第二の御質問の、五ヵ年計画財政計画の裏づけがない、こういう御質問でありますが、天然資源を持たない国が自給自足の経済を立てることはできない。従いまして、われわれは、輸出こいうことを中心として計画経済を立ておりますが、この輸出というものか大体外国の景気によって左右されることを考えましたときに、毎年々々財政計画を年度ごとに立てるということは無理がございます。従いまして、五ヵ年間の総ワクをきめて、それに向っていくように、最近の情勢を勘考いたしまして、それに応じて翌年度の予算を組む、これがわれわれの言う五ヵ年計画計画経済の一端であります。対外債務についての御心配でありまして、賠償、対外債務等、各国要求をそのままのめば一年に四百億になるではないか、まことにその通りであります。けれども、これは、日本経済力と日本財政力とをにらみ合せまして、この支払い期限等は引き延ばすというようないろいろな方法を講じまして、これは財政負担の能力に応じて相手方とも交渉したいという所存であります。(拍手)     〔国務大臣小林英三君登壇
  14. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 勝間田さんの御質問は、軍人恩給の経費を社会保障費に繰り入れまして、一般国民を対象とする老齢年金制度社会保障制度を確立してはどうかというような御質問であったのでありますが、軍人恩給、特にその大部分を占めておりまする遺族扶助料は、公務上の傷病によりまして死亡されました軍人の遺族に対して国家補償の趣旨をもちまして支給するものでありまして、国民の最低生活を確保することを究極の目的といたしておりますところの社会保障制度とは一応別個のものと考えるものであります。この際は軍人恩給費を社会保障費に繰り入れる考えは持っておりません。しかしながら、一般国民を対象といたしまする社会保障制度の拡充強化につきましては、現内閣におきまして今後十分に考えていくつもりでございます。(拍手
  15. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 稲富稜人君。     〔稲富稜人君登壇
  16. 稲富稜人

    ○稲富稜人君 私は、日本社会党を代表して、鳩山内閣の農業政策中心に若干の質問を行い、もって国民の疑点を明らかにしたいと存ずる次第であります。何とぞ関係閣僚より明快なる御答弁をお願いする次第であります。  まず質問に先だちまして申し上げたいことは、農林省は、昨年末、「農業経済の現状に関する基礎的分析」という調査資料を、また、本年に入ってからは、あたかも予算編成のまっさなかに、「過剰農産物裡の日本農業」という調査資料を公刊したのでありますが、これらの資料は、国内的には言うまでもなく、国際的にも、日本の農業の現状に関心を持つ方面に対しては大きなる反響を与えたのであります。     〔副議長退席議長着席〕 その資料、冊子の内容は、農産物の世界的過剰傾向、なかんずく、アメリカにおける過剰生産とその対策、共和党政権が、外交問題と相並んで、余剰農産物の処理問題に党の運命を託している事実、アメリカ農民を救済し得る絶好の市場としての日本の地位、従って、アメリカ掌握下の日本における農業政策の実施上、これら海外要因の急激なる増大、このことが食管機能の低下、農産物価体系の変動を誘発し、その結果は食糧増産対策費を中心とする農林関係予算を大幅に退潮させている事情、しこうして、農民困窮化の急速なる進行状態を説明し、現下日本における農政の貧困と混迷を如実に指摘しているのであります。これは実に官庁出版物としてはまれに見る率直な態度で執筆され、今やまさに暗雲に閉ざされんとする日本農業の前途を暗示しているのでありまして、これこそ、まさに自民党政権下の農業政策に対する偽わらざる抗議文であるといっても過言でないと思うのであります。(拍手)  農業予算は、終戦以来拡大、増大されてきたことは御承知の通りでありますが、その中心は、申すまでもなく、食糧増産対策の経費であります。しこうして、これら並びにその実施形態である補助金を主軸とする農業予算の増加の勢いは、二十七年を頂点といたしまして、自来下向き傾向に転じてきたのであります。特に、二十九年度、国際収支の均衡を目ざして緊縮予算の編成が行われるに及び、予算において占める補助金が財政膨張の主たる原因をなすものとの理由で圧縮され、さらに三十年度予算におきましては、これらの緊縮方針は踏襲され、政府原案においては、農業予算は二割減という大幅の削減となり、国会における増額修正による若干の回復を見たものの、あとにさらに一割の節減が強行され、食糧増産をバック・ボーンとする農政の後退と行き詰まりは、もはやおおうべからざる事実となって表面化しているのであります。これらの事実は、とりもなおさず、戦後から二十七年を頂上として展開されましたところの、経済自立の基本としての食糧自給度の向上、換言すれば食糧増産政策の全面的後退であるといわなければならないのであります。  しからば、何ゆえに食糧に対する努力をかくのごとく冷却せしめる事態に立ち至らしめたのであるか。その基因するところを検討するならば、一般的には、食糧増産に対する国家投資の増産効果の稀薄さ、非効率性等についての非難があり、さらに、補助金行政の全面的再検討と徹底的圧縮への財政担当者の強い要請があり、最近におきましては、新たに地方行政の赤字増大の有力原因と見られるに至ったというのであります。しかしながら、これらの理由は、いずれも表面的な理由であるにすぎないのであります。その本質は、申すまでもなく、世界的規模における農産物の総体的な過剰生産の激化に伴い、年間平均二割の食糧不足を告げるわが国が、アメリカを初めとする食糧生産過剰国の市場争奪戦の一大目標となり、従って、多額の国費を食糧自給の非効率的な事業に投下することをやめて、割安な外国食糧の輸入に転じ、財政投資を非生産的な再軍備予算に振り向けようとする鳩山内閣予算編成方針に基因するにほかならないのであります。(拍手)  河野農林大臣は三たび農相の地位に留任せられたのでありまして、明年度予算こそは、河野農相としての経綸を示すべく本格的に取り組まれた最初の予算案というべきであると思うのであります。しかし、遺憾ながら、三十一年度予算案は、全国農民の期待を裏切り、農業保護政策と食糧自給態勢とを一擲して、借金農政と食糧海外依存政策とを特徴とする再軍備農政の特徴をいよいよ露骨に現わした、実に戦後最悪の予算となったのであります。(拍手)私たちの最も遺憾と存ずるところであります。私は、このような観点に立ち、各関係大臣の所信をただしたいと存ずる次第であります。  まず、河野農林大臣は、大臣就任以来、しばしば農政に対する構想を発表されたのでありまして、世間はこれを河野農相の思いつき農政と批判し、その思いつきによって上げられるアドバルーンに対して、そのつど不安に襲われているのでありまして、かくのごときは断じて国民に親切なる政治とは言えないのであります。願わくば、この機会に、全国民が安心し得るよう、責任ある御答弁をお願いする次第であります。まず、食糧増産対策に対してお伺いいたします。鳩山内閣は、総合経済六ヵ年計画ないしは五ヵ年計画を樹立せられたが、その計画に基く食糧増産量は、三十五年度までに千三百万石といわれ、その基本目標を達成するため、農地の拡張、改良に課せられる増産量は、三十二年度以降三十五年度までに年平均百五十万石であり、この目標数字は、今後における人口の増加及び農地の壊廃を辛うじて補足し得る最低限度と思われるのであります。しこうして、これがためには、三十一年度において最小限度三百六十億円程度を必要とするのでありますが、予算規模の全体は昨年より膨張しておるにもかかわらず、政府原案は与党の修正をいれて、辛うじて昨年程度計上しているにすぎないのでありまして、これにより食糧輸入がますます増大する方向に向わざるを得ない結果になることは明らかであります。これは、河野農林大臣がしばしば言明されておる、今や日本の農業は転換期にきている、従来の米麦生産の偏重対策を改めて、世界農業の一環にせねばならないとの主張の裏づけであるといわねばならないのであります。しかし、私は、わが国農政の基本方針は食糧増産対策の堅持であり、いかにして食糧の自給自足態勢を確立するかということであらなければならないと思うのであります。これに対する農相の御所見を伺いたいと思うのであります。  さらに、次には、高碕経済企画庁長官及び大蔵大臣にお伺いいたしますが、政府は何のためにあれだけ大がかりに人員を動員して経済長期計画を策定せられたのでありますか。両大臣は五ヵ年計画予算化する責任を有せられないのでありますか。その点、特に両大臣の所信を承わつておきたいと存ずる次第であります。  これに対して、あるいは河野農林大臣は、余剰農産物見返り円資金をもって不足分をカバーすると言われるかもしれません。また、国営土地改良事業に対しては特別会計方式を採用すると言われるかもわかりません。しかしながら、見返り円という、ひもつきの不確定財源を当てにすることには、もちろん不安があるのであります。また、国営土地改良特別会計の資金は、一般公共事業の内ワクであるか、または外ワクであるか、さらに、いかなる方法により資金を確保せられ、また、いかにしてその促進をはかられようとするのであるか、その結果、県営、団体営の灌漑排水事業が事業量の圧縮を受けるようなおそれはないのであるか、これらの諸点について御所見を伺いたいと思うのであります。また、三十一年度において新規地区の着工を認められるのであるか、この点を明確にしていただきたいと存ずる次第であります。  今日、余剰農産物見返り円という、他人のふところを当てにする他力本願の悪風潮が世間にびまんしておるのでありますが、第二回受け入れ分に伴う農業投資総額は幾ばくであつて、いかなる使途に、また、いつ、幾ばくの配分を行う所存であるのか、これらの不安定な資金を数年ないし十数年の継続事業に対して投下せられることは、国内資金の財政投下をいよいよ縮減する口実を大蔵省に与えるのみならず、食糧増産事業の将来を著しく不安定化するおそれがあると思われるのでありまするが、これに対する農相の御意見を承わりたいと思うのであります。  さらに、この公共事業費に関連して、私は災害復旧事業に言及したいと存ずるのであります。すなわち、三十年度は、幸いにして災害が比較的少かったのでありますが、しかし、過去数年間の連続災害によりまして疲弊した農村に対して、国庫の負担すべき農林水産関係災害復旧残事業は、今なお実に三百六十億円の巨額に上っているのであります。しかるに、予算案にはその三分の一にも足らぬ額を計上し、三十年度に比較して三十二億円の減少を見ているのであります。かくのごときに、実に被害公共団体及び被害農民のために遺憾にたえざる次第であります。何ゆえに、二十七年災まで残事業の四〇%、二十八年災七五%、二十九年災七〇%、三十年災六五%というがごとき小刻みの負担をせられるのでありますか。しかも、二十八年災のごとき、本国会は特別立法措置を講じ、政府もまた、その臨時措置法に基き、三、五、二の原則により、三ヵ年間の継続事業としてこれを完済すると、しばしば公約しながら、これを履行していないのであります。被害公共団体等はこの政府の公約を信じて、他よりの融資を受けてこれが復旧を完了しておるところもあるにかかわらず、政府がこれを放任しておるがごときは、本国会を軽視するもはなはだしきものであるといわなければなりません。(拍手政府は、この際、少くとも三十九年災までは全部完了せられるよう考え直すことはできないのであるか。さらに、前に申し述べましたように、公共団体が他よりの融資により復旧を完了しているものに対しては、これが利子の補給をなすべきであると思うが、これに対する大蔵大臣及び農林大臣の御答弁を承わりたいと存ずる次第であります。(拍手)  次に、私は農林漁業金融政策についてお尋ねいたしたいのであります。経済長期計画に見合う長期貸付資金を確保いたすとすれば、おそらく八百億円に近いものとなると思われますが、しかるに、明年度資金計画による農林漁業金融公庫の融資ワクは二百八十五億円に決定せられているようであります。この額は本年度より二十五億円の増加でありますが、その資金の質ははなはだしく劣悪化しているのであります。すなわち、例年相当額を一般会計より出資しておるにもかかわらず、今年度はわずか十億円、明年度は実にこれをゼロにしており、あげて資金運用部、簡保特別会計ないしは産業投資特別会計に依存せんとするもののようでありますが、この産業投資特別会計のほかは、いずれも利子負担があるのでありますから、公庫資金のコストは当然割高とならざるを得ないのであります。大蔵大臣及び農林大臣は、長期低利融資の目的をいかなる工夫によって達成せんとせられるのであるか、国庫よりの利子補給なくして農林漁業金融は成り立ち得るかどうか、この際御説明をわずらわしたいと存ずる次第であります。  なお、このことに関連して、私は最近世上に流布されておりまする系統金融の改革案に関してお伺いいたしたいと思うのであります。御承知のごとく、系統農林金融は三段制をとつておりますが、これがため、一般市中金利の低下傾向にもかかわらず、系統資金コストが割高であることは事実であります。ところが、これを口実にして総合単協から信用事業を切り離し、信連をつぶして、農林中金と信用農協との二段階制を採用すべきことを言明されていると承わるのでありますが、一体、農林大臣は、このような荒療治によって健全なる農業協同組合が育成できると本気でお考えになっておられるのか。かくすれば、おそらく、過半数の単協は破産のうき目にあうでありましょうが、これに対する責任はいかにされんとするのでありますか。何ゆえに、経営指導に万全を期し、健全なる農協の育成に精励しようとされないのか、実に私は了解に苦しむものであります。(拍手)全国に約二千三百の不振組合があると聞いております。農林事務当局は、この不振組合の再建整理を行うために、調整勘定の益金五億円を用いて行う計画であったと聞いておりましたが、予算案におきましては、これまた大削減のうき目にあっておるのであります。調整勘定の益金は、元来農協の資金の処分益でありますが、大蔵大臣は、これを農協に還元する御意思はないのであるか、この点、大蔵大臣にお伺いいたしたいと存ずるのであります。  次に、農業団体再々編成についてお尋ねいたしたいと思うのであります。今や、農協は、非常事態宣言を発するまで農林大臣に追い詰められているのであります。巷間伝えられている農業団体再々編成、農民会法案なるものが、すなわちそれであります。本案は、最初河野農林大臣と安田経済局長の合作にかかり、これを平野三郎代議士の私案として一般に流布されたものと伝えられておるのであります。これは、まさに、農業委員会の機能退化を救済するために、農民に対する経費賦課権を持つ強制加入の官製農業団体をでっち上げ、共済事業、防除事業、指導事業、新農村建設等を集中して、保守党の選挙と官僚の農民支配との共通の基盤を補強せんとする大隠謀にほかならないと存ずるのであります。(拍手)かくして、信用事業をも含む農協の経済事業と指導事業とを寸断して、農業生産に対するその総合的職能並びに農民に対する民主主義的教育の場を剥奪し、かつての地主的農村ボス支配体制の復活を企図しているのでありまして、かくのごとき野望に対して、私たちは断固反対せざるを得ないのであります。(拍手)この際、先日平野私案として発表されました農民会法と政府との関連はいかなるものであるか、もし関連なしとこの際言われるならば、この法案に対する農林大臣としての見解を承わりたい。さらに、今回政府が企図されているといわれている農業団体再々編成に対する農林大臣基本方針を明快に承わりたいと存ずる次第であります。  さらに、農林大臣は、このような、一方においては天下り農政を考慮しつつ、他方においては新農村建設運動を提唱せられ、河野農政の一枚看板として、明年度予算に十五億円の経費を計上されておるのであります。昨年末の各新聞は一斉に農相の談話を掲載しておりますが、それによれば、農相は、新農政三十一年度版として新しい村作りを考えている、従来の食糧増産に偏重した農政を改め、適地適産により、個々の農村の農業経営の向上をはかり得るように予算を重点化するが、耕地造成、土地改良のごときものは九牛の一毛としか考えない、と、その言たるや、実に河野農相一流の大胆さであります。しかるに、一歩それを踏み出して、その内容を検討するならば、その前提となるべき諸条件の整備に欠くところ実に多く、また、多くの許しがたい政治的偏向が含まれておるのであります。私は、ここにそのおもなるものを指摘いたしまするがゆえに、農相のこれに対する明快なる御答弁をお願いする次第であります。  その第一点は、農相談話にも現われておりまするように、国内食糧の不足は、今後、恒久的に、海外、なかんずくアメリカの余剰農産物に依存し、食糧増産への努力を放擲し、農林関係公共事業費の縮減を行い、もって再軍備農業政策実現のための伏線としたことであります。  その第二点は、農林大臣は、新農村建設機構と農民会構想とは直接の関連なしと言われている由でありますが、農民会設立後においては、新農村建設の指導は農民会の重要なる事業分野となることは疑いないところでありまして、かくては、農村青年の盛り上る意欲を結集した農村建設運動が、上から押しつけられた官製運動に堕落することは、火を見るよりも明らかなことであると思うのであります。(拍手)  さらに、第三点は、農林大臣は、本計画において、適地適産、ないしは、もうかる農業を唱道し、農業の多角化、さらに、商品作物の導入をうたわれておるのであります。しかして、他方においては、基幹作物の生産者価格を押え、米単作の積寒地帯その他生産条件に恵まれない特殊農業地帯の犠牲において、条件に恵まれた大都市近郊農村の繁栄をはかられているやにうかがわれるのでありますが、農林大臣は、特殊地帯対策がごうも悪影響を受けないのみでなく、さらにこれを強化拡充する用意があるかどうか、この点、疑わしいのであります。  さらに、第四点は、農林大臣は、最も劣勢産業たる農業に対する今日までの保護農政を廃して、農業改良基金等による借金政策への転換を策しておられるのであります。いずれ遠からず農業改良基金法案が政府より提出されるでありましょうから、その際徹底的に批判を加えることといたしますが、要するに、農業改良基金制度は、補助金政策から金融政策に転移することによって、政府負担金の安上り政策を打ち出したものと思うのであります。もし補助金政策に欠陥があるとするならば、これが監督を強化し、あるいは補助金を資材の補助に切りかえるなどにより、その運営方法を改善すべきであります。しかるに、借金政策は、借金を返済する能力あるもののみその恩恵に浴し得るのでありまして、これは、とりもなおさず、保守党の基盤となり得るような富農層にその恩恵を施すことになると確信するのであります。かくのごとく、政策の立案の対象は貧農であり、恩恵をこうむるものは富農であるというがごとき農業政策は、断じて善政とは言えないのであります。  次に、第五点は、新農村建設案の内容を吟味いたしまするに、いわゆる適地通産主義により、米麦等から換金作物に作付転換いたす場合に、貿易上または国内的に、価格面に対する安定措置を並行せしめないならば、たちまちに農家の手取価格は暴落して、農民は重大なる損害をこうむることは必至であります。また、農林大臣は、数百町歩ないし数千町歩程度まとまって有利に作付転換を指導し得る特産物が果してあると考えておられるのであるか。あるとすれば、具体的に御教示にあずかりたいと存ずる次第であります。また、個々の農村を対象にして施設の助成を行われるつもりのようでありまするが、市町村相互間あるいは県相互間等、広範囲にわたる基幹的生産施設の整備については、いかなる措置を講じようとせられるのであるか。かくのごとく、河野農林大臣のお考えになる新農村建設運動の具体的内容は、このように総合性、計画性に欠けた、はなはだ失礼な言い分であるかはわかりませんが、全くしろうとだましの、思いつき、はったり行政であると言わざるを得ないのであります。(拍手)  特に、私は、この新農村建設運動という美名のもとに隠れた最も悪質なる野望のあることを指摘しておきたいと思うのであります。それは、食糧増産という大義名分を撤回した河野農林大臣は、今日及び次代の農村を背負って立つ青年層が、ようやく保守党の本質を認識して、次第に私たちの立場、私たちの考え方に理解を持ち始めているこの現実に焦燥ろうばいせられて、再軍備農政の本質を隠蔽せんがために、青年に向つて国費をもって保守反動教育を実施せられようとしておるのでありまして、わずか十数億円の事業費に対して、数千万円の研修費予算を計上せられている事実が、雄弁にこれを物語つておるのであります。いやしくも国費をもって一党一派の政治教育を施さんとするがごときは、許すべからざる不当支出であり、私の断じて賛成しかねるところであります。(拍手)以上の私のこの所論に対しまして、農林大臣としての抗弁の余地がありますならば、まじめに御答弁をお願いする次第であります。  以上のごとく、河野農政の三十一年度版は、予算案、法律案の審議を通じて、さらにその全容を明らかにするでありましょうが、吉田政権以来まかれている種子を、いやおうなしに刈り取らざるを得ないとき、しかも、河野農林大臣は、さらにこれに拍車をかけて、わが国農政の一大転換を見つつあるのであります。しこうして、農業政策を商業主義に隷属せしめんとする短兵急な商人的農業政策は、わが国百年の大計を誤らんとする重大なる結果を生み出さんとしておるのであります。今や、わが国の農民は、農民抑圧の農政のため、ますますその生活は窮乏し、一歩々々転落の道をたどりつつあるのであります。  このとき、政府は、追い打ちするがごとき農業課税をもってこれに報いんとしているとさえ言われておるのでありまして、さらに農民の不安を増大しつつあるのであります。すなわち、水稲の所得に対する石当り標準を反当り標準に変えることは、本年度所得税より実施することになったのでありますが、政府は課税方式の変更による増税はしないと言明しておるものの、確定申告と、それに先だつ標準率の決定において、相当の実質的増税が行われる傾向が強くなってきたことは事実であります。なお、一時問題となった農業事業税の復活は、今のところ、参議院選挙等もありまして、さたやみのようでありますが、将来これをいかにするか、これに対する政府の態度を明確にする必要があると思うのであります。  なお、最後に明らかにしていただきたいことは、最近、鳩山内閣の反動的風潮に便乗して、かつての旧地主間に、農地改革の犠牲に対する補償要求の運動が起り、これに対し、あたかも農林大臣の補償の言明ありたるがごとく、また、農地法の改正が決定したるかのごとく流布せられ、耕作農民に多大の不安を与えているのであります。まさか農林大臣はかくのごとき言明はなさつてはいないと信じまするが、ここに農相のこれに対する明快なる御意思を表明されることをお願いする次第であります。(拍手)  この秋、私たちが農村に行って、農村青年より聞く声は、かく農業が引き合わないならば、いっそ思い切って自衛隊へでも行こうという声であります。私たちは、この絶望的な農村青年の声を涙なくして聞くことはできないのであります。かくて、今やまさに、農村の青年は、生活苦の中から再軍備の一線にかり出されんとしているのであります。その証拠は、近時、農村不況とともに、自衛隊応募者に農村青年が増加しつつあるこの事実であります。再軍備予算は、ただ軍事費の膨張ばかりではありません。かく農民生活を窮乏に追い詰めるところにもその伏線があるのであります。実に事は重大であります。この重大なる事実を、総理はいかに考えられるか。一体日本政治、しかも、農業対策はこれでいいのであるかどうか、これに対しましては、特に総理大臣よりの御答弁をお願いしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  17. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 最後の御質問に対してお答えをいたします。政府といたしましては、農民圧迫の政治などは考えておることは絶対にございません。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇
  18. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 稻富さんにお答えいたします。  食糧の自給自足度を拡充いたしますことの必要なことは申すまでもございません。私も全く同意見でございます。ただ、財政の都合で、予算の編成に当りまして、十分所期の目的通りの予算がありませんで、明年度の予算の上にそれが計上できなかったことは、はなはだ遺憾でございますが、ただ、この際一言お聞き取りをいただきたいと思うのであります。それは、食糧増産の必要、自給度の拡充の必要なことは申すまでもございませんが、他面、農家経済を犠牲にして食糧増産の国家目的の要請にのみ没頭してよろしいかどうかということについては、遺憾ながら、私は多少の意見を持っております。この点は十分検討の余地があると心得るのでございまして、ただいまの相富さんの御意見を通じて申しますると、農家の経済を確立し、そのために、適地適産、農家の経済に裨益するために、その農家の一番有利なものの耕作を指導奨励するということは、これを全然政府は放任するわけには参らぬのでございまして、これについても十分なる指導助成をすることが必要であると思うのでございまして、この両面を調和しつつ農政は進めて参るべきものだと考えるのでございます。(拍手)  第二に、見返り円の用途についてでございますが、これは目下せっかく財政当局と打ち合せ中でございまして、近日のうちに案ができました上で御説明をいたすことにいたしたいと考えます。  第三に、災害復旧対策の問題でございます。これも、御指摘通りに、すみやかにこの復旧は具現いたしまして、できるならば、私も二十九年災害までは明年度においてこれをぜひ実現いたしたいと考えたのでございますが、これも、ただいま申し上げましたる通り、財政等の都合によりまして、この予算に編成いたしましたところでやって参りたいと考えております。  次に、農業団体の問題でございます。これにつきましては、多少誤解があるようでございますから、この際お聞き取りをいただきたいと思いますことは、先般新聞に平野さんの案として出ました農民会案なるものは、平野さん個人の案でございまして、農林省当局もしくは私がこれについて関与しておるものではございません。  農業単位協同組合の信用部の問題についてお話がございましたが、これについては、なお十分検討を要する問題として、目下検討中でございますから、これについてのお話は、しばらく拝聴いたしまして、十分研究の資料にいたしたいと考えております。  農業団体再編成の問題についてお話がございましたが、これは、できればこの議会に、農業団体再々編成と申しますか、現在の農業団体の一部について再編成をする必要のあることを私は認めて、目下検討中でございますから、案ができました上で提案するつもりでございます。  次に、新農村運動について少しくお答えを申し上げたいと思います。これにつきまして、だんだん御意見がございまして、さも、この新農村運動の裏にいろいろなことを包蔵して、これを企画いたしておるやにお話しでございましたが、私は、農村の青年に対して、お互いにもう少し真剣に臨みたいと思うのであります。(拍手)私は、そういう意図を持ってこの運動を起そうとは断じて考えておりません。現在の農村はこのままでよろしいか。たとえば、御承知の通り、町村合併等によりまして、農村の行政区画も非常に不均衡でもあり、もしくは、都市を中心として合併等のありました地区等については、そのあり方等について非常に考慮を要する問題が多々あると思うのであります。従いまして、私は、この際、町村合併の進行と別途に、適当なる規模の単位をもって、ここに、新しい農村の、同じ地方々々の、もよりもよりの仲間が集まつて、すなわち、生産条件の同じ人たちが集まつて、そうして、しかも、そこに農村青年が中心となって、新しい農村経済の立て直しについて相談をし、明日の日本の農村の規模について十分企画をし、立案をし、これを実行に移すという運動を起すということは、正しい行き方だと思うのでございます。(拍手)このあり方に対して、政府として十分な協力をして参りたいということが、この新農村運動でございましてこれによって、私は、全国農村に、明るい、正しい、りっぱな農村が確立することを期待するものでございまして、これは一にかかってその地その地の農村の青年諸君の自主的な運動に待つのでございまして、決して、上から、とかくの企画とか規模であるとかいうようなことを押しつけようと考えておるのではございません。  さらに米の税金についてお話がございましたが、これまた御承知の通りに、従来の米に対する税金のかけ方は、とかく、やみ米を奨励するようなきらいがございましたので、今回は政府に売り渡した米について税金をかけるのではないのでございまして、反当収穫量を調査して、しかも、その調査に当りましては、地方のそれぞれの農業団体の代表者を立ち会わして、合意、納得の上で課税標準をきめて、全体の米の収穫量に税金をかけることに変えたのでございまして、私はこの行き方の方が合理的であると思うのでございます。  最後に、地主の問題でございますが、これは、ただいまお話しのような事実は全然ございませんし、私も、この問題につきましては、特に慎重に臨むべきものと考えておりまして、軽々に扱おうとは考えておりません。     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  19. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 農林漁業金融公庫の方から出ます金の金利をなるべく安くしたいということは、全くそうであるのであります。そこで、今回は、特にこの金庫につきましては、産業投融資特別会計から出資をいたしまして、金利が上らないように措置をいたしてあります。  それから、農協の調整勘定の益金を農村に還元したらどうか、こういうような御意見もありましたが、これについては、今そういう考えを持っておりません。     〔国務大臣高碕達之助君登壇
  20. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 稻富さんの御質問にお答えいたします。  予算編成は、長期経済計画基礎として毎年行うことに相なっております。食糧の増産につきましても、五ヵ年計画の目標は千三百万石と定めてありまして、これは現在以上輸入をふやさない。ふやさないで、増加する人口をまかなっていくためには、五ヵ年後には千三百万石を目標とせなければならぬ。この数字は持続して参りたい考えであります。同時に、農家の経営の安定と、所得の増大、生活の水準を向上するということにつきましても、施策として行なっていきたい所存でございます。
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 多賀谷真稔君。     〔多賀谷真稔君登壇
  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 私は、日本社会党を代表し、労働問題並びに社会保障全般につき若干の質問を試みんとするものであります。  今日、わが国経済の最大な課題は雇用の問題であり、働く意思があり、働く能力がある人を職につけるということが政治の要諦であります。しかるに、一萬田大蔵大臣は、昨日、財政演説において、雇用は好転のきざしがうかがわれると、楽観論を述べられましたが、一体、いかなる根拠に立ってかような発言をされたか、まずお伺いいたしたいのでございます。もし、この根拠を完全失業者の減少と考えられておるのならば、私はとんでもない誤まりであるということを指摘いたしたいのであります。(拍手)  完全失業者とは、一ヵ月の最後の一週間において一時間も収入のある仕事をしなかった人のことであり、日雇い労働者はもちろんのこと、一時間でも働けば失業者には数えられないのであります。一週間一時間も働かないで暮していけるような、けつこうな身分の人は、特殊な人でありまして、その大部分は失業保険をもらつておる人であり、これをもって政策を論ぜられることは許されないと思うのであります。完全失業者の統計こそは、失業者の数を隠蔽しようとする資本主義国家の欺瞞的統計であるといわざるを得ないのであります。(拍手)完全失業者は全く氷山の一角であり、不完全就業者は、昭和二十九年十月で八百三十万人を数え、わずか一ヵ年において二百七十万人も増加しておるのであります。  今、かりに、新規投資をし、雇用の増大をはかるといたしまして、常用雇用者は、一億円当り、水力電気で一人から一・八人、火力電気で三・五人から五人、硫安工業で一三・二人から一三・八人、鉄鋼一貫作業で一八・一人、石炭新鉱開発で四三・八人、合成繊維で四六人から八九人という状態であり、直接的雇用効果はきわめて少いのでございます。経済五ヵ年計画は、昭和三十五年完全失業者四十七万人と数えておるが、不完全就業者については一切目をおおうておるのである。経済五ヵ年計画は、雇用の増大を主として中小企業と第三次産業に求めておるのであります。しかるに、昭和三十一年度の中小企業対策の予算は、わずか七億八千万円にすぎないのである。わずか七億八千万円で、数百万の労働者をいかにして吸収するのか、それを期待される中小企業は、企業家もろとも失業者の群れに投ぜざるを得ないでありましょう。(拍手)結局、五ヵ年計画の雇用政策は、家に帰って農家の手伝いをし、商売の手伝いをする家族従業の見えざる失業に追い込もうとしておるのであります。  雇用の問題は、日本資本主義が解決すべくして解決できない難問題であります。利潤追求と自由投資を本則とする自由経済ワク内においては、雇用を直接増大し、完全雇用を実現する方法は存しないのであります。(拍手)せいぜい、経済規模の拡大によって、間接的に雇用の増大を期待するにすぎないのであります。  ドイツにおいては、労働者三人に一人の失業者が出たときに、ナチスが政権をとりました。アメリカにおいては、一千三百万人の失業者がおりましたときに、典型的な自由主義者フーヴァーが退き、ルーズヴェルトがかわり、ニュー・ディール政策を断行したのである。ナチスもニュー・ディールも、資本主義経済を救うため非資本主義的措置を行わなければならなかったことを、われわれは銘記しなければならないのである。(拍手政府のように、出てきた失業者を単にニコヨンで救済する程度でなく、緊急失業対策法というような、お粗末な、やつてもやらなくてもいいような法律でなく、国家の力で雇用を創出するという抜本的法律の制定を行わなければ、雇用の増大は全く夢物語に終るでありましょう。雇用政策に対する総理大臣の基本的考えを承わり、あわせて、雇用は好転の兆があると言われた根拠を大蔵大臣から、経済五ヵ年計画における雇用計画経済企画庁長官から、具体的雇用創出政策労働大臣から承わりたい。(拍手)  第二に、倉石労働大臣の賃金政策についてお尋ねいたしたいと思います。鳩山内閣の賃金政策を見ると、千葉労働大臣は、生産報償による合理的賃金制度を打ち出し、労働強化を伴う生産力賃金を唱え、西田労働大臣は、利益があれば、労働者と企業者とが分け合うだけでなく、消費者にも還元すべきである、と述べられておるのであります。しかるに、今日、日経連は、「当面の賃金問題とその課題」というパンフレットを発行し、これらの主張を一切退けて、企業利潤は社内自己蓄積に回し、この際賃金ベース・アップに使うべきでないと主張し、今やみずから国民経済のにない手と自任した独占資本は、賃金は号令一下自分たちで決定し、労働者に押しつけるものであるといった、彼ら本来の野望である権力賃金の構想を明らかにして参ったのであります。(拍手)しかも、今次の総評、全労会議を初めとする賃金闘争を批判して、賃金より雇用だとして、組合の賃金闘争は失業者を発生せしめるものだと主張しておるのであります。完全雇用を実現するためには、賃金闘争はもってのほかであり、低賃金で全部の労働者に雇用の機会を与えなければならないし、賃金水準の低下のみが労働階級全体に完全雇用を保障する唯一の道であると考えておるのであります。これこそ、まさに資本家のドグマ的賃金理論であるといわざるを得ないのであります。(拍手)  これは、全労働者に支払われる賃金の総額は常に一定の固定化したワクがあるという前提に立ち、賃上げ闘争は無意殊であると主張した賃金基金説に基いておるのであります。この賃金基金説の創設者はジョン・スチュアート・ミルである。彼自身が、これは誤まつておつたと、後に自説を撤回したという事実から見ても、まさに誤まてる理論であり、その主張労働階級分断の企図から出ていることを意味するものであります。この日経連の主張こそ、全体の利益の名をかりて現われた権力賃金といわざるを得ないのであります。一体、倉石労働大臣は、いかなる賃金政策をもって臨まんとするか、お伺いいたしたい。  次に公務員のベース・アップについてであるが、公務員の今日のベースは、昭和二十八年三月の民間給与との比較において定められたものであります。約三ヵ年の久しきにわたって固定された公務員のベースをアップせんとする熾烈なる要求が今や行われ、国鉄を初めとする公企労関係労働者も一斉に要求し、調停に付しているのであります。一体政府は、これに対していかなる処置をとられんとするか。日経連は、公務員のベース・アップが民間給与にもたらす影響を非常におそれて、猛烈に政府を牽制しているが、一体どういうお考えであるか、お聞かせ願いたい。  さらに、日経連は、大企業労働者の闘争は中小企業との賃金格差をますます拡大するものと非難しているのであります。政府は、何ゆえ、賃金格差を縮めるために、中小企業労組の育成、最低賃金を実施されないのか。最低賃金法は、すでに、インド、ビルマフィリピンアジアの後進国も、中南米の諸国までも、ほとんど制定を見ておるのに、アジアの先進国と誇つておる日本が何たる状態でありましょうか。特に低い四業種については、賃金審議会からすでに答申まで出ているのに、政府はいつまでこれを放置するつもりであるか。  第三に、労働関係諸法規の改廃についてお尋ねいたしたい。最近、労働大臣はヒステリックな談話を発表されておるが、その中で、公務員のすわり込みは世界に類がない、断固取り締ると言っておられるが、公務員及び公企業体の労働者がすわり込みをせざるを得ない原因がどこにあったとお考えであるか。これは、すなわち、公務員の諸君が、公務員法、公労法によって争議権を剥奪され、しかも、その代償として認められた仲裁制度に関し、保守党内閣はみずから蹂躪をしてきたではありませんか。(拍手一体、仲裁のうちで何回完全実施をされたものがありますか。しかも、予算総則なるものを作り、全く団体交渉の余地なからしめ、当時の大蔵大臣は、仲裁裁定を全く骨抜きにしたとうそぶいたではありま。せんか。ここに官公労の諸君が困難な戦術に出でざるを得ないゆえんがあるわけであります。すわり込みや休暇戦術を断固取り締るというならば、いじけた戦術を解消するため、公務員、公共企業体の労働者に対し、すべからく争議を許し、稀代の悪法、公務員法、公労法を廃止すべきであると考えるが、いかん。(拍手)  政府は、行政機構の改革に名をかりて、人事院を廃止し人事局にせんと企図しておるようであるが、これまた、人事院は公務員の争議権を奪つたかわりに設けられたものであり、日経連の権力賃金の押しつけと軌を同じゅうするものである。基本的人権を無視した憲法違反の措置であるといわざるを得ない。これに対する所管大臣答弁を求める。  歴代の政府は、とかく、みずから原因を作り、それによって誘発する末梢的現象のみをとらえて不当呼ばわりする習性を持っておられるようであるが、これは全く盗人たけだけしいといわざるを得ないのであります。(拍手)たとえば、ピケットについても、断固取り締るということを言っておるが、一体日本のピケットがなぜかように激しいかを研究してみる必要がある。外国においては、争議の際に、一人か二人の労働者が今スト中というプラカードを持って、ぶらぶら歩いている程度であります。何ゆえにピケットが少いか。それは、すなわち、産業別、組織別組合が確立しておるから、ピケ破りがいないから、争議が平穏なのであります。産業別、組織別、職業別組合の組織の確立は世界の大勢であります。しかるに、歴代の内閣は、逆行して、これらの組合組織を分断せんとする政策のみとってきたではありませんか。(拍手)その最も尤なるものは、昭和二十七年の秋に行われた炭労、電産の争議であります。電産の統一交渉を拒否し、企業別交渉主張したのは日経連であり、経営者は、争議をいたずらに長期化せしめ、停電ストを挑発し、停電スト禁止の立法化を企図したのであります。その背後に政府が暗躍したことは、いまだ吾人の記憶に新たなるところがあるわけであります。(拍手)石炭並びに電気産業などにおけるスト規制法はまさにその争議の所産であったと言い得るのであります。英国においては、ゼネスト禁止法は労働大衆に、法律は労働者に不利益になるように作られるものである、法廷は労働者に対抗しておるという感じを与えただけであり、この法律が失敗であったと、撤回したではありませんか。スト規制法も同様であり、延長しないとこの際言明する意思はないか、お伺いをいたしたい。ピケを取り締まるよりも、その原因の産業別、職業別の組織を強化することこそ真の労働行政であると考えるが、労働大臣所見を承わりたい。  次に、二月二十四日よりジュネーヴにおいてILO理事会が開催せられ、労働時間の短縮について論議がなされると聞いておるのであります。前の総会の決議により、ILO総長が各国の実情とその対策について百ページに及ぶ報告書を送付し、理事国である日本にその意見を求めてきておるのであります。今や、労働時間の短縮は、世界労働界に一大要請となって現われておるのであります。私がその報告書を見てまことに遺憾に考えますことは、日本労働時間が一番長いということであります。インドやパキスタンよりも長く、六十時間という欄があるのは、ただ日本のみであります。しかも、その報告書には、日本の経営者は労働時間の短縮に反対し、労働時間をさらに延長しようと企図しておると明記されておるのであります。大臣は、この報告書を見て、いかにお感じになったか、理事会にはいかなる態度で臨まれるのであるか、承わりたい。  さらに、わが国がガット加入に際し、各国よりいかなる処置を受けたか想起してもらいたい。英国を初めといたしまして、相互関税交渉を行わないというガット規定の第三十五条適用の国が十四ヵ国あるではありませんか。アメリカでも、今、一ドル・ブラウスの問題が大きくなり、これらの輸入を禁止せんとする立法が上程されんとしておるではありませんか。かかる原因はどこにあるとお考えになっておるか、外務並びに通産大臣お尋ねいたしたい。  さらに、私は、こういう国際情勢の際に、労働基準法を改悪し、労働時間を延長せんとする政府の態度の大胆さに一驚せざるを得ないのでありますが、基準法に対する政府の所信いかん。  さらに、第三回アジア地域会議において決議されました国際労働条約批准促進の勧告について、いかに準備を進められておるか、お尋ねをいたしたいのであります。  私は、最初、倉石労働行政の出だしを見まして、保守党内閣に新たなる労働行政を打ち立てるものと期待をしておったのであります。しかるに、先日の大阪の談話のごときは、争議に対する国家権力の介入を示唆し、報復的行政を露骨に現わしてきたのであります。経済闘争を政治闘争のごとく喧伝し、総評の出方いかんでは、労働三法も改悪し、スト規制法も延長するという威嚇的言辞を弄するとは言語道断でございます。(拍手吉田内閣は、わが国労働法を治安立法のごとく考え、相次ぐ改悪によって労働法体系を漸次崩壊せしめてきたのでありますが、倉石労働大臣は、当時、その労働委員長として、それに協力した、その反動的本性を現わしたものといわざるを得ないのであります。倉石労働大臣労働行政に対する基本的態度をお尋ねいたしたい。  最後に、私は社会保障制度についてお尋ねいたしたい。経済五ヵ年計画は、経済自立と完全雇用を二つの柱として立案されております。しかるに、最も大切なもう一つの大きな柱が全く忘れられておるのであります。これは、すなわち、社会保障政策による福祉国家の形成でなくてはならないのでございます。(拍手)この経済五ヵ年計画は、すでに指摘したるごとく、一千万人以上の潜在失業者に目をおおい、労働者を零細企業、第三次産業への見えざる失業に追いやり、労働力率を抑制しておるのであって、これこそ社会保障政策の推進なくしては達成は困難でございます。経済五ヵ年計画の補完としての政府社会保障五ヵ年計画はいかになっておるか、まず、その全貌を明らかにされたい。次いで、昭和三十一年度の予算にいかに盛られておるか、お尋ねいたしたい。もし、その社会保障五ヵ年計画が樹立されていないとするならば、明らかに経済五ヵ年計画は絵にかいたもちであり、看板に偽わりがあるということを立証するものであります。  次いで、医療保障についてお聞きいたしますが、政府はこのたび健保法を改正し、低額所得者の標準報酬日額を引き上げ、患者の一部負担を認めようとしておるのであります。保険料を払った上に、医者にかかるたびごとに三十円ずつ払うとするならば、これこそ、低額所得者を医療保障から遠ざけ、早期診察、早期治療に重大な支障を来たすことになるのであります。(拍手)医療保障の著しい後退といわざるを得ないのであります。厚生大臣には、健保法改正に対する労働者及び医療担当者のあの切なる反対の声が聞えないのでありますか。社会保障議会の勧告通り、国庫補助二割を負担し、国会に再提出するとともに、結核予防法を改正し、公費の補助率を三分の二に引き上げ、義務制をしく御意思はないかどうか、お尋ねをいたしたい。(拍手)  三千万人の医療保障の対象の外に置かれた人々をいつまで放置するつもりであるか。五人未満の零細な事業所の労働者の保険はいつになったらできるのか。新マルサス主義の旗を高らかに掲げた家族計画の推進も、わずかな予算では前進せず、寿命は延びても養老ヰ金制度は確立されず、このままでは、社会保障の確立は百年河清を待つにひとしいといわざるを得ないのであります。大砲もバターもといったが、ついに大砲のみ大きくなって、バターの量は一向ふえず、社会保障は軍事予算の陰に隷属への道をたどり、福祉国家への建設は忘れられて、戦争への方向に進まんとしておるのであります。(拍手)  鳩山内閣に対する国民の怒りを代表し、私は質問を終える次第であります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  23. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの御質問に、完全なる雇用について政府はどういうことを考えているかという御質問がございました。これは、大蔵大臣が説明をいたしました通りに、経済政策の発展によりまして、健全なる経済の発展によりまして雇用を増大したい。  ただいまの御演説中に、ドイツでナチの異ったのは、雇用の少いために興ったというようなお話でありましたが、ドイツにナチが興り、イタリアにファッショが興ったのは、これは共産主義が浸漸してきたから興ったのでありまして、共産主義が浸漸しなければナチもファッショも興りはしなかったのであります。(拍手)     〔国務大臣重光葵君登壇
  24. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私に対する御質問は、ガット加入の問題についてでございました。日本経済状態が漸次認識せられまして、ガット加入ができた次第でございます。しかし、これに対して留保をつけておる国が相当ございます。今はその留保をはずしてもらうために努力をいたしておる状態でございます。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  25. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私が、雇用につきまして、最悪な状態は脱したように思うということを申し上げましたのは、これは失業保険、企業整備、その他失業に関する統計にそういうふうな傾向を示しております。また、現実に日本経済の今日の状況から見て、さよう判断し得ると確信いたしたからでありまするが、しかし、これは何も雇用を安心しておるとかいう意味ではないのでありまして、政府としましては、雇用に今最も力を入れようといたしておるのであります。そのときにいろいろ力を得たい、こういう意味に御承知願います。(拍手)     〔国務大臣高碕達之助君登壇
  26. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 五ヵ年計画の中の雇用の計画についての御質問でございますが、失業者が中小企業の方にしわ寄せになるだろう、こういう御心配でございますが、基本的には輸出を中心として経済を拡大する、そうして雇用を増すということに相なりますと、自然にその結果は中小工業にも及んでくるのであります。一方、失業対策といたしましては、公共事業については、雇用政策というものを十分織り込みまして、単に経済効果だけをねらうのでなくて、雇用効果を十分ねらって実行いたしたい所存でございます。  また、社会保障政策は長期計画に入っていないじゃないか、こういうお話でございますが、これは国力に応じて年々織り込んでおる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣倉石忠雄君登壇
  27. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 雇用の問題につきましては、経済企画庁長官と大蔵大臣から申し上げましたような趣旨でやつて参りたいと思いますが、私どもの見るところによりますれば、われわれの熱心にいたします五ヵ年計画が満足にいくといたしましても、雇用の問題だけはなかなか楽観を許さない状態であると存じます。そこで、政府は五ヵ年計画を作りますについて、この五ヵ年計画を遂行する最終的目的が、経済自立と雇用量の増大というところに重点を置いておるわけでございます。  そこで、ただいま第一にお尋ねになりました賃金政策のことについて、第一次鳩山内閣と第二次鳩山内閣、また引き続いて第三次に至って、各労働大臣が違う考えを持っているのじゃないかというお尋ねでございましたが、賃金の問題については、御承知のように、千葉労働大臣は、いわゆる生産報奨制という表現を用いられました。それから、西田労働大臣は、賃金問題を国民経済的見地に立って取り上げる、たとえば、生産が向上して利潤が上った場合に、これをただ単に労使双方のみで分配すべきものでなく、広く国民全般にも均霑させるべきであるという趣旨のことをお述べになっておられるのは御承知の通りであります。こういう見解の表現においては違っておりますけれども、国民経済との関連において賃金を取り上げるという意味でございまして、根本の精神においては、いずれの閣僚も同じ考えであるのでございます。(拍手)  そこで、私もまた、およそ賃金問題は、ただ単に個々の企業における労使間の力関係の問題としてだけでなく、国民経済全体との関連においてこれを考えなければならないと信ずるものであります。たとえば、利潤が企業に上ったからと申しまして、直ちに賃金の引き上げのみを考うべきではないのでありまして、国民経済の実情に即して資本の蓄積を行うとか、あるいは物価の引き下げをはかるとか、あるいはまた、労働階級に対する福祉施設を強化するとか、国民経済全体が拡大強化する方向において各般の考慮が払われなければならないと存ずるのであります。(拍手)従って、賃金問題は、このような見地から慎重に処理されなければならないと存じますので、世の中に伝えられております、いわゆる一部の労働組合のおやりになろうとしておる春季闘争というようなものについても、労使ともに慎重にやつていただきたいというのが私の考え方であります。(拍手)御承知のように、今回のいわゆる春季闘争にも総評は参加されるようでありますが、全労会議及び中立の一部の組合の方々は当然参加をしないということを表明されておるのでありまして、全労働階級の御意見ではないことは明確であります。(拍手)  そこで、ただいま多賀谷さんのお話にございました、今度の闘争について、日経連が意見を発表いたしました。これについてどう考えるかということでございますが、こういう問題は、でき得べくんば委員会ででも詳しく申し上げたいと思いますが、基本的に申せば、今日の私どもの考え方は先ほど申しましたようでありまして、政府が三十一年度予算を編成するに当りましても、われわれは、消費者米価は上げないように、鉄道運賃も上げないように、しかも、窮屈なる財政の内部においてすら、なおかつ勤労階級所得税の軽減をやろうという考え方でありまして、そこへ持ってきて、御承知のように、すでに、三十年度は、輸出の増強の他と相まつて、日本経済がやや安定したと見るのが常識的であります。その結果、物価は横ばいであります。従って、インフレ時代には、物価が上るからして賃金を上げなければならないというイタチごっこで、実際労働階級は苦しまれたことがあるのでありますけれども、幾ら賃金を上げても、物価がいたずらに上ってきたのでは、結局、生活は楽になりません。しかるに、幸いにして、ようやくにして三十年度は物価が横ばいであって、賃金はどうであるかというと、平均四・七%民間産業の賃金が三十年度において上昇しておることは御承知の通りであります。従って、実質賃金は増加されておるのでありますから、ここのところを一つ勤労階級の人も考えていただいて、今、もうかる商売と、もうからないもの——総評のある人は、御承知のように、申しております。つまり、上った利潤のうち、できるだけよけいとるのだと言うのでありますが、それならば、石炭のような赤字を出しておる産業と、合化労連のように非常に利潤率の高いものど、日を同じゅうして賃上げのストライキをやるというのは、私は少しむちやではないかというふうに考えておるのであります。(拍手)  そういう考え方で、公務員の給与べースについてお尋ねがございましたが、公務員の給与ベースについては、私は、給与担当の閣僚として、来年度予算に定期昇給の原資を確保することに努力いたしました。これはそういうふうになっております。しかし、いわゆるベース・アップということは、今申し上げましたような事情と、国の財政事情等にかんがみまして、政府はベース・アップをいたす考えがございません。  そこで、いわゆる春季闘争ということで、いろいろなことを——たとえば、スケジュール闘争というふうな指令をお出しになるというふうなことが伝えられております。これはまだ実行に移しておりませんけれども、あの、いわゆるスケジュール闘争に示されましたものを拝見いたしますと、これは、あれを実行に移されれば、公務員法に定めてある違法な行為ではないだろうかと私は思うので、そういうことをあえて断行されるならば——そういう違法なことをしていただきたくないと思うのでありますが、かりにそういうことをおやりになったとして、これを見のがしておるようなことがありましたならば、政府の八千万国民に対する義務を怠るということになるのでありますが、政府は、正しい法の運用によって、そういうものに警告を発することは、政府として当然なる義務であるというのが私の考え方でございます。(拍手)  それから、大阪における記者会見などのお話もございましたが、十分にああいうところで私の思うことをなかなか申し上げられなかったのでありますが、多賀谷さんもよく御存じのように、労働法というものは人間と人間との関係を律するものでありますから、元来、なるべく法律、規則などで縛らない方がいいというのが私どもの考え方でございますけれども、しかし、今度おやりになろうとする争議行為を静かにわれわれが観察をいたしましてやはり法に欠陥があるのではないかということを考えますならば、当然われわれはその関係法律を改正するのが国民に忠実なるゆえんであると存じます。(拍手)従って、ただいま慎重に検討をいたしておるということであります。  公労法のことについてお話がございました。公共企業体等労働関係法については、多賀谷さんも御存じのように、これは経営者も従業員もみんな困っておる法律でございますから、ただいま、経営者側と従業員側と公益委員との三者にお願いいたしまして、私の手元で三者で検討を続けております。これは、意見がどうしても一致しないというならば、私はあえて改正を断行しようというわけではありませんが、この法律はなるべく改正した方が双方のためによいと思います。そういうことで今やっております。  その次のお尋ねの、いわゆるスト規制法でございますが、これは今年の八月六日に期限が切れるのであります。この、いわゆるスト規制法というものは、主として電気産業及び炭労の労働関係の法律でございますが、元来、こういう法律はない方がよいのであります。なぜならば、こんな法律がなくても、ほかの法律でやってはいけないということがきまっておるのでありますから、それを解明するために作ったような法律で、屋上屋でありますから、ない方がよいと思いますが、こういうものがあることによって、やはりその当時の労働運動が非常に慎重になったことも世の中の常識であります。そこで、ただいま行われております炭労の問題、すでに新聞にも現われておりますが、ああいうようなことについては、多賀谷さんもよく御存じのように、アメリカであるとか、イギリスであるとかいう国の炭鉱の争議を見たときに、日本の炭鉱の争議のような、保安要員が引き揚げてしまうような争議を今までやっておるでありましょうか。そういうことを考えたときに、残念ながら、ストライキ規制法というものの存在価値があった。しかし、これはまだ期日が来ておりませんから、私は静かに情勢を観察いたしておるというのが今日の状態であります。  ピケラインのことのお話がございました。ピケラインにつきましては、先年いわゆる次官通牒が通達されました。この次官通牒は違法であるとかなんとかいうことを、ある一部の学者が申しているだけでありまして、ピケラインの合法性、順当なことだ、当りまえなことだという解釈は、今日労働界の通説になっていることは、多賀谷先生もよく御存じの通りであります。(笑声)  それからILOの問題でございますが、ILOの理事会に、日本は昨年参加いたしました。そこで、ILOの理事会で近く取り上げられることになっております労働時間の短縮問題でございますが、これは、日本の実情に即応いたしまして慎重に検討をいたさなければ、うかつに決断を下せないということでありました。多賀谷先生も御承知のように、(笑声)この労働基準法のことについてしばしば問題になりますが、ジュネーヴのILOの総会においていつも問題になります日本の基準についてでありますけれども、これは英国などは、経営者と労働者が一緒になってILOの総会に来て、商売がたきである日本労働基準なんかについても攻撃しています。日本だけである。日本は経営者と労働組合とが別になって、労働組合の方々は、御承知のように、常に政府と企業家の基準違反を攻撃しておられる、こういうことでありまして、私どもはこの基準については、国際関係もございますから慎重にやっておりますけれども、労働基準審議会に答申を求めておりますから、この答申が出ましたならば、われわれはそれによって判断をする、こういうことで、基準法を今改正するとかしないとかいうことを明確に申し上げるわけにはいかないのは、答申を待って善処するということであります。  最後に、自由民主党内閣の労働政策について、いろいろ多賀谷さん独特の御意見は、参考に拝聴いたしましたけれども、私どもは、労働政策は、あえて企業家の利益、労働組合だけの利益を考えて判断すべきでなくて、事業の公共性ということが優先でありますから、八千万国民の利害休戚を念頭に置いて労働政策をいたすということを申し上げる次第であります。(拍手)     〔国務大臣小林英三君登壇
  28. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 多賀谷さんの御質問はいろいろあったのでありますが、まず健康保険の一部負担の問題につきましてお答えをいたしたいと思います。  健康保険の立て直しをはかりまするために、本国会におきまして、標準報酬等級区分の改正並びに一部負担制の改訂を内容といたしまする健康保険改正法案の御審議をお願いいたしたいと思っておるのでありまするが、まず、何がゆえて今日多少でも被保険者に一部負担をしていただかなければならないかという問題につきまして、いろいろ私は検討をしてみたのであります。それは、御承知の通りに、昭和二十九年度におきましては、健保は赤字といたしまして四十億円を出しておるのであります。本年度におきましても六十億円の赤字を計上いたしまして、この二年間の合計百億円の処分につきましては、御承知のごとく、千分の五の料率を上げまして二十五億円、その他の七十億円につきましては、資金運用部から借り入れまして、そうして、一般会計から毎年十億円ずつ七年間かかってこれを解消する、こういうことで暫定処置をいたしたのであります。私が就任いたしまして、何がゆえに健保がだんだんと赤字が累増してくるかというような問題につきまして検討いたしました。大体、この二十八年度におきましては、いわゆる点数の一部改正をいたしております。それから、二年間の療養期間を三年間に、二十八年度におきまして延長いたしております。なお、二十八年度から、さらに、抗生物質でありまするが、いわゆる新薬の、ストレプトマイシンでありますとか、パスでありますとか、オーレオマイシンでありますとかいうような新薬の採用をいたしております。これらのものが、二十九年度になって、ぼつぼつと赤字の形で出て参りました。のみならず、最近の健保というものは、非常になじみができて参りました関係もありまして、受診率も非常にふえております。のみならず、今日のこの技術の進歩その他からいたしまして、非常に点数もふえて参っておりまして、いろいろな意味からいたしまして、今日の健康保険というものは、非常に往年からいたしまするとレベル・アップしておるのであります。従いまして、このままで、この赤字をいかにするかという問題につきましては、どうしても国庫で一部負担をしていただくかわりに、やはり被保険者にも今日の健保の状態といたしましては負担をしていただく。のみならず、料率の改訂によりまして、標準報酬の改訂によりまして、事業主にも負担していただく。この金額を国庫に幾ら負担をしていただくかという問題につきましては、私は、とにかく被保険者が負担する程度のものは国庫が負担してもらいたい、こういうような意味で、このたびの一部改正案を出したいと思っておるのでありますが、私は、今日の健全なる健保の育成をいたしますためには、こういうふうに、それぞれの者が負担をし合つてやることがよろしい。一方におきましては、三千万人の社会保険の恩典に浴しない人もいるのでありますから、実際の受益者といたしまして、こうすることが正しい、こういうことに考えたのであります。  なお、結核対策の強化につきましては、政府といたしましても、その必要を痛感いたしまして、鋭意努力いたしておるのであります。  なお、現在の医療保障制度のワク外におられます三千万人の国民につきまして、どういう対策をするかという御質問があったのでありますが、社会保障制度の進捗をはかる意味におきまして、医療保障の対策は当面最も緊急の問題と考えられますので、現在何ら社会保険制度の適用を受けておらない約三千万人の国民につきましては、今後国民健康保険の普及をはかるはもちろんでございますが、経済五ヵ年計画の最終年次であります昭和三十五年度達成を目途といたしまして、全国民を対象とする医療保障制度の確立を念願いたしておるのであります。(拍手)  なお、家族計画の推進と老齢年金制度の確立に対する御質問でございますが、適正な家族計画基礎となる受胎調節の必要性につきましては相当認識されて参っておるのでありますが、所期通りの効果がまだ上らないのは、これは、実行するに当りまして、実地の知識がまだ十分に体得されていないことでありますから、こういう方面につきましては、全国の保健所及び優生保護相談所におきまして十分啓蒙をいたしたいと存じておるのであります。  なお、鳩山内閣社会保障制度の問題につきまして御質問があったのでありますが、明年度一般会計予算におきましては、厚生省関係の経費のみにいたしまして、経済五ヵ年計画の関連を考慮いたしまして、九百三億一千七百万円が計上されておるのでありまして、これを本年度の八百四十一億円に対比いたしますと、約六十一億円の増となっておるのでありまして、さらに失業対策費の増加等の予算を合併いたしますと、社会保障費といたしまして百二十二億円の増となっておるのでございます。  以上、お答え申し上げます。
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、人事官に入江誠一郎君を任命するため、国家公務員法第五条第一項の規定により、本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後四時十九分散会