○林(博)
委員 先ほど
世耕委員から御
質問もありましたが、この点に関しまして一点申し上げておきたいと思うのでございます。
議事堂内における
犯罪につきましては、いろいろ問題がございまして、国会法が、現在のような、一つの政党が、何と申しますか集団化して暴行あるいは公務
執行妨害を働くというような
状態を予測しておらない国会法のように考えられます。いろいろな点に問題があると思うのであります。先ほ
ども世耕委員から御
質問がありましたように、たとえば
議長が警察権の要請ができないような緊急の事態が起った場合に一体どうするのか、議場内で殺人が行われ、あるいは暴行が行われる、そういう
状態になった場合に、それを放置しておかなければならないのかという問題、あるいは、議院内において議員はいかなる場合にも逮捕できないという国会法の三十三条の
規定になっておるかと思うのであります。また、この国会法あるいは衆議院規則と
刑事訴訟法との
関係でございます。衆議院規則二百十条には、「議院内部において現行犯人があるときは、衛視又は警察官は、これを逮捕して
議長の命令を請わなければならない。但し、議場においては、
議長の命令がなければ逮捕することはできない。」こういう
規定になっておりますけれ
ども、それでは一体この
規定と
刑事訴訟法との
関係はどうなるか、通常人は逮捕できないのかというような
関係と、
刑事訴訟法に対するこれが特別法になっておるのかどうか、いろいろな問題点があると思うのであります。私は、これを今
捜査当局に対してこれらに対する
見解を表明してくれということは申し上げない。というのは、皆様方に
お尋ねする前に、これは院内におるまずわれわれ自体が考えなければならない問題であると考えておりまするから、私は皆様方に本日直ちにこれらの問題に対する即答を求めはいたしません。ただし、国会法はこういうような非常事態を予想しておらないような
状態においてでき上っておるのでありますから、われわれ自体も国会法自体を
検討していかなければならないと考えるのであります。しかしながら、今国会において行われたような、非常に緊迫した非常事態が発生しております。こういう事態に対処して、
捜査当局としても、これに対処したような考え方を今から
検討していかなければならないと思います。ただこの問題に対して私
どもは回答できないと言うだけではいかぬと思うのであります。将来の問題といたしまして、
捜査当局として一つの心がまえ、あるいは
検討をなさることが必要であるというふうに考えますので、私は特にこの点を要望いたす次第でございます。
それから、いま一点申し上げたいのは、先ほど
長戸刑事局長から、院内における
事件は院内の自主性を尊重するために、告訴または告発がなければこれを取り上げないというお立場でありますが、けっこうであります。一応けっこうではございますけれ
ども、しかしながら、これもまた通常の事態の考え方ではないかとも考えられるのであります。たとえば、今回のここ数日間に起りました
事件のごときは、衛視は無抵抗であるにもかかわらず非常な暴力を受けまして、
相当な傷を受けております。これらの
事件は、私
どもに言わせれば、国会内に起った
事件ではあるけれ
ども、町の暴力団によって受けた暴行と相違がない。むしろそれよりもひどい事態であると考えているのであります。
捜査当局が、単に、告訴がないから、告発がないからといって、これを放任しておいていいのか。私は、現行犯の逮捕の問題と
捜査権の問題とは、先ほど
世耕先生の仰せられたように、これは別個の問題であると思う。法規上は、告発あるいは告訴がないからといってこれを
捜査できないということはないと考える。このような事態におきまして、このような暴行あるいは傷害が行われているのに、
捜査当局が、告訴あるいは告発がないからといってただ傍観しているということは、今後の考え方としては妥当でないのではないかというふうに考えられるのであります。ことに、衛視にも
人権があるはずである。衛視は、いろいろな立場において、場合によっては院内のいろいろな事情からして、告訴または告発ができないようなことがあるかもしれない。そういうような点を考慮して、衛視の
人権も尊重されなければならないと考える。こういうような観点からいたしまして、国会内における
犯罪の
捜査に対しては、全般的に考え方を多少変えていかなければならない段階にきているのではないかとも私は考えているのであります。これらの点に関しまして、
捜査当局におきましても種々なる観点から御
検討あらんことを要望いたしまして、私の
質問を終ります。