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猪俣委員 今森田局長の
証言の中にも少し矛盾しているところがあるのですが、さきの
池田哲子君の答弁がまずくて、はなはだわからなかったのですが、土産に、一緒に
書類を置いてある宿へ行って、もらってこいということで、言いつけて出した。ところが、実際は、金を用意して、
哲子の連絡があったら場所をきめて落ち合う、そこで品物と引きかえに金を渡そうと
考えた、こう今はおっしゃるが、そうすると、土屋と
哲子が一緒に来たときには、その品物のあるところへ土屋を連れていって、そこで品物を渡すという約束ではなかったのではないか。それならば再度落ち合うところを電話で打ち合せる必要は何もない。それだから、土屋が飯でも食おうなんということで先に立って案内したのではなかろうか、私
どもはそういう
疑いを持ちます。しかし、それはお互いの主観の違いでありますから、大したことでもありませんけれ
ども、本日問題にいたしましたのは、私
どもは
人権擁護の立場からこれを問題にいたしておりますので、その立場から言いますと、大した恐喝なんという状態であったとは
考えられない。常識上
考えられないにかかわらず、このうら若い娘を恐喝未遂なりとして、しかも未遂罪なんというものでぶち込んでまで調べるというようなことはそうたくさんないことだと思う。殺人未遂でもあるならばいざ知らず、恐喝であって、しかもそれの未遂であるというこの事案をたてにとって、十数日間人身自由を拘束した。しかし、これは、公安
調査庁においても、
警察においても、堂々たる局長が恐喝されたなんと
考えておらなかったに違いない。恐喝される状態ではありません。あなたは品物を失っちまって辞職願まで出してしまっておる。何の恐喝がありますか。あなたの身体はお上、もう
上司に預けちゃっているじゃないか。その失ったことが発見せられない以前に、その
事情を知っておる者が
上司に告げるぞと言うた場合には恐喝になるかもしれません。あなたは、すでに失い、失ったことを白状し、辞職願も出した
あとじゃないか。何の恐喝があるか。それを恐喝だというようなことを言う。そこに問題がある。これは森田局長の発意じゃないかもしれません。それは畑君がついておったから起ると思う。畑君の経歴——私は畑君という人を知りません。この
事件があって私が
法務委員会で質問をすると、それが信濃毎日
新聞に簡単に出た。そのことからと思いますが、畑君が私に切々たる手紙をよこしたので、私は畑君に会った。今でもまだ畑君の全貌というものはわかりません。しかし、
自分が前科者である、放火犯やあるいは置引の嫌疑をかけられたことをみずから私に全部告白しまして、いかに官憲というものが
人権じゅうりんをやるものであるか、
自分は今徹底的に実に不信の念を持っておるということをるる説明せられました。そこで、諸君は、この畑君の何らかの前身を、経歴を調べなさって、がぜん方針が変ったんじゃなかろうか。そこに、公安
調査庁の、例の朝日
新聞がいみじくも指摘しているように、商売心が起ってきた。また、共産党に届けるなんということをこの
池田哲子は不用意に言っておる。そこで、もう本来の職掌柄の根性を出して、
警察は
警察で畑君を置引の隊長くらいに
考えたんじゃなかろうか。この子はその手先だ、そこで、上野駅でカバンを盗んだのもこの一味だというようなこと。しかし、それに対して証拠がはっきりあがらぬために、公安
調査局と連絡をとって、これに恐喝未遂なんという、とほうもない非常識な罪名をくっつけて留置した。これをもし
検察庁で起訴でもなさって、これが公判になりましたならば、あらゆる全貌が明らかになる。私も相当
調査しました。さっきも上野の
警察の
少年係まで私ひそかに電話をして連絡をとりまして、畑君の言うことが正しいか間違っておるかも
調査しました。これに対しましては、諸君が
考えておることと相当違ったような事実がある。しかし、
本件は畑君に関しまする幾多のそういうことを調べるのが目的でありませんから、私は簡略に、あまり質問もしなかったが、畑君の前歴全部聞いております。そこに諸君の誤解が生じてきて、その犠牲が
池田哲子にしわ寄せられておる。畑君が言う、
池田哲子の母親に会わせるために連れていったということも、それから長野善光寺に用事があったということも、全部物的証拠でもって立証ができる状態であります。しかるに、諸君は、この
池田哲子を置引の一味と
考えて、また
刑事の尋問が主としてそういうことに集中せられたらしい。そうして、この
哲子を、とほうもない恐喝未遂なんということで
逮捕している。私
どもは、現在の
刑事訴訟法の解釈上、よく
警察なり
検察庁が、ほんとうは敵は本能寺、ほかの罪名で調べたいのであるが、その罪名が、今物的証拠が明らかにないために、まず簡単な罪名によってその人間の身柄を拘束しておいて、実はその奥のものを調べるという手をしばしば用いられておるが、これは違法だということを当
委員会にもしばしば指摘しておる。
本件もその違法なるやり方の一場面であります。しからざればこれは納得できない。さようなことは、
警察におかれましても、
検察庁におかれましても、十二分なる
注意をしていただきたい。他の犯罪に見込みをつけておいて、つまらぬことでひっかけて人間を
逮捕しておいて、そうしてその方はそっちのけにして、ほかの事実について調べる。これは
刑事訴訟法の精神から言えば違法であります。諸君にとっては便利かもしれませんが、さような
逮捕のやり方というものは違法だと私は思う。さような
疑いがこの件に実に濃厚なのだ。私は、それに対する
一つの反省をしていただきたい。
それから、公安
調査庁の
長官がお見えになっておりまするので、なお申し上げたいのであるが、一体、最近のソ連の情勢及び世界の大勢から見て、破防法なんというものが、諸君のような多大の予算をとり、多数の人員を擁して、この破防法の実施を監視するような必要があるのであるか、ないか。
日本の共産党も変貌しております。しかし、諸君にとってみれば、いや、そうじゃないのだ、——共産党がおとなしくなったなんということを認めれば公安
調査庁の廃止論が出てしまう。昔の特高がそれなんです。特高
警察の予算を減らそうという空気が出ると、何かでっち上げをやっておった。これは自己保存本能から出るかもしらぬ。しかし、そういう妙な自己保存本能を発揮されては困る。一体、この民主主義の現代において、しかも共産党そのものは合法政党として存しておる今日、なお、中国においてもソ連においても、世界は
一つなりの理想のもとに親善
関係を厚うせねばならぬ現代において、そんな、暗号電報だ、
書類をなくすと腹を切らなければならぬというような、そういう実に陰うつな、軍国主義時代のスパイの
活動余地が十分存在するようなやり方というものが、一体必要があるだろうか。私はどういう
書類か知りませんが、暗号電報であったということを
新聞は報道しておる。
日本のこの民主主義の明るい時代において、そんな妙な暗号電報で何を一体やっていられるのか。そんな必要がどこにあるのだ。破防法の違反者が何人出ているか。今まで、破防法が施行せられてから、公安
調査庁は予算の使い道がなくて困っていると聞いている。非常に予算が余っている。
仕事がないんですよ。そこで、妙な暗号電報なんというものばかり発明している。そんなまた命にかかわる大事なものをとられるとは、何ということだ。はなはだあんぽんたんと申さなければならぬ。昔天皇の御真影というものがみな小学校に安置せられた。これがために幾多の悲劇が小学校の職員に起っておった。この御真影を焼いたというので校長が腹を切る。まことに悲惨なことがたくさんあった。今日御真影というものはなくなって、まことによくなったと思うのだ。しかるに、こんな暗号電報だの機密
書類などがあるから、森田局長が命をかけてもなんということを言うようなことが起ってくる。そんな命をかけても守らなければならぬ機密というものが、軍事機密保護法なんというものがなくなった今日、あるんですか、一体。実に不明朗な不愉快な話だと思うのだ。
そこで、公安
調査庁の
長官にお聞きします。一体破防法の違反なんというものが何件今まであったか。そんな膨大な公安
調査庁のような機能を一体存続する必要があるのですかないのですか。その実情を御説明下さい。