運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-05-25 第24回国会 衆議院 法務委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十五日(金曜日)     午前十一時五十一分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君    理事 猪俣 浩三君 理事 菊地養之輔君       小島 徹三君    花村 四郎君       古島 義英君    松永  東君       横井 太郎君    横川 重次君       佐竹 晴記君    古屋 貞雄君  委員外出席者         参議院議員   井上 清一君         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         参議院法制局参         事         (第二部第一課         長)      三原 次郎君         参  考  人         (国立国会図書         館調査立法考査         局専門調査員) 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君         参議院法務委員         会専門員    西村 高兄君     ――――――――――――― 五月十四日  委員加藤精三君、中山マサ君及び渡海元三郎君  辞任につき、その補欠として三木武夫君、宮澤  胤勇君及び横井太郎君が議長指名委員に選  任された。 同月十五日  平田ヒデ君、福田昌子君、古屋貞雄君、戸叶里  子君及び山口シヅエ辞任につき、その補欠と  して片山哲君、佐竹晴記君、下川儀太郎君、武  藤運十郎君及び勝間田清一君が議長指名で委  員に選任された。 同月二十二日  細田綱吉辞任につき、その補欠として古屋貞  雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十八日  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(第  二十二回国会衆法第五四号、参議院継続審査) 同月十五日  豊多摩刑務所移転促進に関する請願松永東  君紹介)(第二二三〇号)  売春防止法制定促進に関する請願戸叶里子君  紹介)(第二二八四号)  戸籍事務費全額国庫負担に関する請願(八木一  郎君外三名紹介)(第二二八五号)  浦和地方法務局皆野出張所設置請願荒舩清  十郎紹介)(第二二八六号) の審査を本委員会に付託された。 同日  五番町事件に関する陳情書  (第七六四号)  芦原町に罹災都市借地借家臨時処理法適用の陳  情書(第八一〇  号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(第  二十二回国会衆法第五四号、参議院継続審査)     ―――――――――――――
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案を議題とし、議事を進めます。  この際お諮りいたします。すなわち、国立国会図書館調査立法考査局専門調査員村教三君を参考人と決定いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  なお、本案につきましては他に参考人より意見を聞く必要があると存じますが、その人選、日時等委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高橋禎一

    高橋委員長 なければ、さよう決定いたします。  本案は、御承知の通り、第二十二国会におきまして本院より参議院に送付いたしました案を参議院におきまして継続審議し、今国会においてこれを修正議決して本院に送付して参ったものでございます。従いまして、本案につきましては、参議院における修正部分につきまして、その趣旨説明を聴取することにいたします。参議院法務委員長代理井上清一君。
  5. 井上清一

    井上参議院議員 接収不動産に関する借地借家臨時処理法案参議院における修正部分につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  第一点は、土地接収されました当時におきまするその土地借地権者でありましてその土地接収中にその借地権存続期間満了によりまして消滅いたしました者、及び、土地接収された当時から引き続いてその土地借地権を有する者でその土地にある当該借地権者所有に属する登記した建物接収中に滅失いたしましたためその借地権をもってこの法律施行の日までにその土地について権利を取得いたしました第三者対抗することができない者は、他の者に優先して、相当な借地条件で、その土地賃借することができると第三条規定しておるのでございますが、当事者の公平を考えますとき、いわゆる権利金を支払われるのが相当である場合がございますので、かかる場合におきましては、権利金を支払って土地賃借権設定を受ける旨を明らかにいたしたのでございます。  第二点は、接収地疎開建物敷地であります場合にも、この原案では、第十二条で第三条を準用いたしまして、土地優先賃借権を認めておりますが、元来両者は本質的に異なると存ずるのでございます。すなわち、第十二条で規定いたしておりますところの接収地疎開建物敷地である場合は、補償を受けて疎開いたしておりますので、その借地権はそのときに消滅しているわけでございます。しかし、第三条規定によりまして賃借権設定を受ける者は接収という事態によりまして消滅いたしたのでございますから、両者の間に差異を設けるのが妥当であると考えるのでございます。そこで、第十二条の場合、すなわち接収地疎開建物敷地であります場合には、常に権利金の支払いを要することといたしたのでございます。  第三点は、第八条(接収地借地権対抗力)及び第九条(接収地借地権存続期間契約更新の請求)の二年の期間をそれぞれ一年に短縮し、さらに第十四条接収建物賃借権対抗力)の一年の期間を六カ月に短縮をいたしました。かようにいたしました理由は、対抗要件なくして長期間第三者対抗し得るとしておきますることは、第三者不測損害を与え、不動産取引の安全を害するからでございます。  第四点は、第一点、第二点の修正に伴います条文の表現の修正でございます。  以上が参議院におきまする修正案の大要でございます。  なお、詳細につきましては、御質問によりまして、私から、また参議院法制局からも参っておりますので、お答えを申し上げたいと存じます。
  6. 高橋禎一

    高橋委員長 ただいまの御説明に関して質疑がありますれば、これを許可いたします。——質疑がないようでございますから、法務省より意見を聴取いたします。平賀参事官
  7. 平賀健太

    平賀説明員 この法律案に対しまする法務省意見をごく簡単に申し述べたいと存じます。  この法律案は非常に条文の数が多うございまして、卒然として読みますと、この法律案のねらいはにわかにわかりにくいのでございますが、大体要点を申し上げますと二つの点になると思うのでございます。  一つは、この法律案では、第三条と第四条関係でございまして、すなわち、終戦占領軍が参りまして土地接収して使用したわけでございますが、占領軍土地接収しました際に、借地権のある土地があったわけでございます。ところが、その土地接収されましたために、その借地権につきましては借地法あるいは建物保護法などの全面的な適用がないために、接収中に期間満了によって借地権が消滅した、あるいは接収中にその土地第三者に売られた、そういうようなことでその借地権対抗力がなくなった、そういうようなことで借地権の消滅したものがあると考えられるのでございます。こういうのは、まさしく、接収されたことによって直ちに借地権がなくなったわけではありませんが、接収ということが間接原因になりまして借地権が消滅したのでございます。接収なかりせば、おそらく借地権は消滅しなかっただろう、そういう事情のものであります。そういうものにつきましては、第三条、第四条によりまして、接収解除の暁においては、もと借地権者地主に対する優先的な賃借申入権を認めまして、その借地権復活の道を開いてやろうというのが、第三条、第四条関係でございます。  第二は、この法律案の第十二条が規定しておるところでございます。この第十二条と申しますのは、まだ戦争中でございますが、防空法によりまして防空上の必要から強制疎開政府の方で実施いたしたのでございます。それは、東京大阪名古屋、神戸、ああいう大都市におきまして強制疎開を実施いたしたのでございますが、この強制疎開を実施いたしました際、その土地借地権を持っておった人がいたわけでございます。そういう借地権者に対しましては当時の防空法に基きまして補償がなされまして、その当時借地権は消滅しておったのでございます。ところが、終戦になりまして、昭和二十一年でございますか、罹災都市借地借家臨時処理法が制定されまして、そういう強制疎開跡地もと借地権を持っておった人に対しましては、一定期間、すなわち昭和二十三年九月十四日までの間、この強制疎開跡地の旧借地人賃借申し出権というものを、罹災都市借地借家臨時処理法第九条が与えたのでございます。それで一般の強制疎開跡地につきましては、ただいま申しました昭和二十三年九月十四日までは地主に対して優先的な賃借申し出権を持っておったわけでございます。ところが、たまたまその強制疎開跡地占領軍接収されておりますというと、この優先賃借申し出ができない状況にあったのでございます。そこで、この第十二条におきましては、ただいま申しました昭和二十三年九月十四日現在その土地接収中であったものにつきましては、現在もう十年近くたっておりますが、今から賃借申し出ができるということにしようというのが第十二条なのでございます。  この法律案全体に対しましては、法務省といたしまして、次のように考えるのでございます。  この第三条、第四条関係は、これはとにかく接収当時借地権があったのでございます。そのあった借地権接収のために——これは間接原因でありますけれども、とにかく接収のために借地権が途中でなくなった。こういうものを復活させると、これは地主にかなりの損害損失を与えます。しかしながら、この三条四条関係を見ますと、実際問題といたしましては大部分戦災地であると考えられるのでございまして戦災地でありますと、その接収当時ありました借地権というものは現在でもまだあるのじゃないかと考えられるのでございます。つまり、少くとも本年の九月十五日まではなおその借地権は存続しておるのでございます。でありますから、三条四条によりまして借地権復活すると申しますけれども、今この法律が制定されますと、ちょうどその借地権の寿命が延びたのだとも言えるわけでございまして、必ずしもこれは不当ではないだろう。地主としては現在借地権があるということは承知しておるはずでありますから、その借地権期間が延びる、しかも、こういう手当をしませんと九月十五日現在で切れてしまう、期間満了してしまう借地権がある、それを救済してやるということなので、一応合理性もありますし、地主としてもこの程度損失は甘んじなくちゃならぬのじゃないかということが考えられるのでございます。もっとも、この法律案の考えておりますたとえば登記なくしてその借地権対抗できるというようなことがございまして、不動産取引の安全を害するという弊害はございますけれども、これは一定の限られた土地でございますから、さほどまで取引界混乱を来たすこともなはだろうということが一応想像されるのでございます。そういうわけで、三条四条はやむを得ない立法である、やむを得ない措置ではないかということが考えられるのであります。  しかしながら、この十二条の関係につきましてすでに戦時防空法によって政府から補償を受けまして借地権の消滅した旧借地人に、もう十年近くも経過しました今日になりましてその借地権復活を認めるということが果して妥当であるかどうか、この点につきましては非常に問題があるのじゃないかと思うのでございます。  現在この十二条の事案に該当するケースは一体どのくらいあるかと申し上げますと、これは正確な数字ではございませんが、調達庁で調査いたしましたところによりますと、すでに接収解除のもの、また接収中のもの、両方ございますが、総坪数にいたしまして、十二条の適用を受ける土地が全国で二万二千五百三十六坪あるのでございます。その場所を申しますと、東京、横浜、名古屋大阪でございます。それから、強制疎開当時借地権者であったと推定される人の数が約三百人でございます。  これは、今申しましたように、占領軍が参りまして接収した当時借地権があったのではなくて、戦争中もうすでに政府補償によって借地権のないさら地になっておる土地でございます。従いまして、従来もう戦争中から——戦争末期でございましたけれども戦争末期から今日に至るまで、その土地につきましては昔の借地権はないものとして取引されておる、あるいは地主が変っていない場合もございましょうし、とにかく今までは借地権負担のない土地として見られてきたのでございます。ことに、ただいま申しました二万二千坪の約半分の一万坪はすでに接収解除になっておりまして、こういう接収解除になった一万坪につきましては、その後相当取引が行われておるのではないか。所有者が変っておるものもございましょう。あるいは賃借権設定しておるのもございましょう。あるいは抵当権設定して金を借りておるのもございましょう。相当権利関係の変動が今まですでに生じておると考えられるのであります。ところが、今までそういうわけで完全にさら地として見られて取引対象になってきた土地につきまして、この十二条のような立法によりまして、昔すでに戦争政府補償によって消滅しておりました借地権が突如として復活してくるということに相なりますと、これは非常な混乱を起すのではないか、すでに安定した土地権利関係に非常に大きな混乱を生ずるということになると思うのでございます。その点におきまして、十二条の関係は非常に問題があるのではなかろうかと法務省では考えておる次第でございます。  もっとも、十二条の関係土地におきましては、罹災都市借地借家臨時処理法の九条の規定によりまして、昭和二十三年九月十四日までは強制疎開当時の旧借地人賃借申し出権が与えられておったのでございます。しかし、当時の事情を申し上げますと、ともかく戦争直後のことでございまして、これら大都市が荒廃に帰した中で、当時の地主といたしましては、さしあたってこの土地をどう利用すると、いうこともなかったでありましょう。それからまた、あの終戦直後の混乱の時期に、この土地を利用してどうという、事業の計画を立てるとか、あるいはこれに担保権設定して金を借りるとか、そういう権利関係もほとんど生じてなかったと考えられるのでございます。その当時におきましては、都市復興戦災復興一つ手段として、昔そこに住んでおった人たち復帰を認めまして、そして都市復興と同時に戦争被害者復興をはかってやるという措置をとることは、これは十分合理性があることでありまして、地主に対して不測損害を与えるということも大してなかったのでございます。罹災都市借地借家臨時処理法第九条の規定は、その当時においては——これは非常に異例の立法ではございますけれども合理性なきにしもあらずと考えられるのでございます。ところが、今日におきまして、現在まで何も負担のない土地として取引対象ともなっておりますところの、そして権利関係が種々発生しておりますところの土地につきまして、突如としてこういった立法によりまして借地権が現われてくるということになりますと、これは権利関係の安定を害する、当を欠くのではないかということが考えられるのでございます。それから、なお、この十二条につきましては、こういうこともあるのでございます。罹災都市の九条の規定におきましては、強制疎開跡地の旧借地人だけに復帰を認めたのではないのでありまして、その強制疎開跡地に前建っておりましたところの建物賃借人にも賃借の申出権を認めておったのであります。要するに、罹災都市のあの法律精神は、以前そこに住み、そこで生業を立てていた、以前そこに生計の本拠を置いておった人に復活を認めるというのが精神であります。もと借地権があったから借地権復活させてやろうというのではなくて、むしろ、もとそこに住み、そこに生活本拠を置いておった人に復帰を認めることが、すなわちその人たちの救済になるのみならず罹災都市法律の眼目であります戦災地復興に役立つということが、九条の精神であろうと思うのでございます。ところが、この法律案におきましては、旧借地人だけに復帰を認める、この旧借地人の中には、ほんとうに零細な土地借地しておってそこに自分のうちを建て、あるいは店を建て、そこに居住し、あるいはそこで営業しておった人もございましょうけれども、そうでない、広大な借地を持ちまして、そこに住宅店舗を建てまして人に貸しておったという、そういう現実にそこには住んでいなかった借地人もおるわけであります。現に私ども承知しておるところでは、東京では今芝浦の約六千坪の土地接収中でありますが、そこでは、一番大きな借地をしておった人は、約千坪近くの土地借地しておったということでございます。ですから、この千坪につきましても、その借地人がもしこの法律の定める要件を満たしておれば、千坪の借地権復活するわけでございますが、この千坪の土地につきまして借地権を取得いたしまして、そこに住宅を建て、あるいは店舗を立てまして、これを第三者権利金をとりまして貸し付けるということになりますと、その借地人は非常に大きな利益を得ることに相なるわけでございます。罹災都市法律はそういうことを予定しておったのではないのでございます。しかし、この法律案におきましては、そういう事態も発生する可能性がある。非常にひどい言葉ではございますけれども中間搾取と申しますか、そういう機会をも与えるような結果に相なるおそれがあると思うのでございます。  それから、もう一つ申し上げたいことは、この法案は一見借地人保護ということで社会政策的な立法ではないかということが考えられるのでございますけれども、もしそうでありますならば、やはり真に困っておる者を救済する、昔そこに住んで、そこで生業を営んでおったその人たちをこそ救済すべきでありまして、ただもと借地権があったというだけの理由で、その借地権復活をはかってやるということになりますと、単にその人たち利益を擁護してやるというだけにとどまりまして、どうも社会政策立法というには当らないのではないかと思うのでございます。  それから、なお、この法律案を支持する根拠といたしまして、この十二条の関係でございますが、戦時政府補償によりまして借地権がなくなった地主は、反射的に非常に利益を得ておる、自分の腹を痛めないでさらに地が手元に帰ってきて非常に利益を得ておるじゃないか、大体都市のいい場所でありますから、現在地価も上っておるし、さら地を今現実に保有いたしておりまして非常に利益を得ておるということが言われております。なるほど、そういう地主利益を得ておるケースも多々あるだろうと思います。しかしながら、賃借の申出権の対抗を受けますところの地主というのは現在の地主でございまして、現在の地主の中には、そういう利益を得ていない地主もあり得るわけでございます。ことに、すでに接収解除になっておる土地につきまして売買譲渡が行われますときには、借地権なきものとしてその土地取引されておるわけでございまして、現在の地主の中には相当の対価借地権なきさら地としての対価を払ってその土地を取得しておる人もあるわけでございます。こういう人はそういう利益を受けてないのでございます。現在の地主政府補償によってさら地を取得して非常に利益を得ておるから、その利益は社会的に言えばいわば一種の不当利得だというようなことも言われるようでございますけれども、これは必ずしもすべての土地について当てはまるものではないと思うのでございます。また、かりにそういう地主が現にあるといたしましても、これは何も不正手段によって得た利益ではないのでございまして、国家の法制もとにおいて正当に得られた利益なのでございます。ある私人が政府補償によりましてさら地を持つに至った、そのために非常に利益を得ておる、それが社会的にどうも好ましくないというのであれば、これは別に社会政策立法という見地から、そういう広大な宅地を独占しておる者の利益国民全部に、真に困っておる人に均霑するような社会政策立法を考慮する余地は十分あると思うのでございます。しかしながら、この法律で考えておりますような、その地主が得ておりました利益を旧借地人に分けてやる、その利益を山分するというのは、どうも社会政策立法と言うには当らないように思うのでございます。  非常に簡単でございますけれども、以上のような理由をもちまして、法務省としては、第三条、第四条関係、これはやむを得ないと思うのでございますが、十二条の関係はきわめて当を得ないものではないかというふうに考えておるのでございます。  なお、参議院におきましては、衆議院で御議決なさいましたこの原案修正をなされまして、三条四条関係と十二条の関係に差別をつけるということで、十二条につきましては、賃借申し出をして賃借権を取得しますには必ず権利金を払うという建前のようになっておりますけれども、しかし、一般的に言いまして、権利金さえ払えば必ず借地できるというようには法制はなっていないのでありまして、権利金を取れる可能性を認めたという点では、ある程度地主のこうむる損失を軽減するということには相なろうかと思いますけれども法務省といたしましては、第十二条は結局特定お者の持っておる利益を奪いましてある特定の者にその利益を与えてやることになるのではないかと思う次第でありますので、たといそういう修正がなされたといたしましても、第十二条はやはり当を得ない、こういうふうに考える次第でございます。簡単でございますけれども法務省の見解は以上の通りでございます。
  8. 高橋禎一

    高橋委員長 ただいまの平賀参事官の御意見に関連して御質問があれば、これを許します。
  9. 古屋貞雄

    古屋委員 ちょっとお尋ねしたいのですが、防空法によって強制疎開をさせられた補償というのは、どの程度補償を受けたのでしょうか。それは借地権に対する補償だけですか。その借地権を利用して商売をやったり営業をやったりしていた人は、相当生活の脅威を感じても、当時戦争中ですから、国民はこれに対して自由な権利主張ができない状況に置かれていた。たとえば、平賀さんはそうおっしゃいますが、私ども社会運動をやった者は治安維持法弁護もさせられなかった。天下の弁護士自分職業弁護である治安維持法弁護も私どもは強制的にやらせられなかった。弁護士職業に対してもそういう圧迫ですから、当時政府は弾圧を加えて徹底的に強制疎開をさせた。補償というものがほとんど問題にならなかったのが事実だと私は思うのであります。営業権を奪われ、生活権を国から取られた借地借家人がたくさんあります。それが多少の補償をしたからそれで穴埋めができておるというお考え方は、ちょっと私は公平を欠くようなお考え方だと思います。それによって権利が消滅したと言われますが、強制的にさせられたんです。従いまして、私どもは、ただいまのように、今度は借地権主張するには相当の賠償を払って権利主張ができるということになれば、その土地地主から譲り渡しを受けた現在の所有者に対しても大した損害を与えていないし、しかもそれは土地を持てる立場におる人、やはりこういう立場から考えまして、社会保障政策的に考えますと、多少は不公平で無理だと思っても、相当大きな犠牲を払った者の補償をするという考え方からいけば、このくらいの程度のものは大して所有者に対する不利益を与える結果にならぬと思いますが、一体、防空法に基いての補償の当時の状況——私は、単なる形式的な補償がされたといっても、補償にあらずして、ただ強制的にやられた、こういう工合に考えておるので、この際多少の保護政府はすべきだと考えておりますが、その点はいかがでしょうか。
  10. 平賀健太

    平賀説明員 防空法によりまして強制疎開の地域として指定されました土地の利害関係人に対しましては、これは今の土地収用法と同じ建前でございまして、通常生ずべき損失補償するという建前でなされております。当時は戦時中で戦争苛烈の末期に近いころでございますから、その当時を基準にして補償がされておるわけでございますけれども、当時としてはその当時の補償が不当であったということは言えないのではないかと考えておるのであります。それから、なお、強制疎開当時の借地人は、先ほど言いましたように、罹災都市借地借家臨時処理法によりまして昭和二十三年九月までは賃借申し出ができたことになっておるのでございますが、この賃借申し出をしましても、やはり賃借権の取得ができなかった人もあり得るわけでございますし、さらに、罹災都市借地借家臨時処理法の九条におきましては、ただし書きがついておりまして、国または地方公共団体なんかでその土地所有しあるいは使用しておりますと、これは賃借申し出ができないことになっておるのでございます。現実の問題といたしましては、たとえばこれが道路の敷地になるとかあるいは公共の施設の敷地になるとかというようなことになっておりますと、そういう人はもう賃借申し出ができなかったのでございます。本件の接収地土地の旧借地人も同様でございます。もし、ただいま古屋委員の仰せられますように、その当時の補償がかりに当を得ないものであると仮定いたしまして、その補償の不足を補う意味においてこういう借地権復活を認めてやるということが正当であるといたしますならば、この罹災都市借地借家臨時処理法の九条の規定によりまして賃借申し出をしてもその目的を実現しなかった人、あるいは道路の敷地になるとか公共の施設の敷地になりまして賃借申し出ができなかった人、こういう人たち損失というものもやはり同時に考えてやらなければ公平を欠くのではないかというふうに考える次第でございます。
  11. 古屋貞雄

    古屋委員 今の公共の施設の場合は、国民としては公共施設によって犠牲になるのはこれはよく了解がつくわけです。しかし、接収されておりました関係上疎開の三年間の申し出もできなくなったというこの事実だけはお認めなんでしょうね。そういう場合に、ごくわずかの——承わりますと二万坪くらいの坪というのですから、ごくわずかの少数の地主関係なんです。しかし、私が申し上げるのは、強制疎開をさせられておる。平賀さんは補償をされたと言っておりますが、一体それじゃどのくらい補償をされたかということがおわかりでしょうか。ほとんど焼け石に水のようなもので、当時の借地人などは、それがために生活権を奪われた状況になって、ごく悲惨な、苦しい生活をさせられたことを私も承知しておるわけでありますが、一体どういう補償をされたか、具体的におわかりでしょうか。ただいま抽象的に土地収用法に基く収用だとおっしゃっておりますが、土地収用法のような、やかましい当時の所有者権利者の権利主張は認めないような法律だった。現在の土地収用法では、少くとも収用されます相手方である所有権者あるいは権利者は相当自己の主張ができ得る状況である。あの当時は、戦争中、しかも戦争末期でございまして、ほとんど有無を言わさずに勝手にきめられたということを私どもは承知しておるのです。従いまして、適当な補償が行われたというならば、具体的にどのくらいの補償をもらったということがおわかりでしょうか。
  12. 平賀健太

    平賀説明員 私どもといたしましては、結局、防空法規定、それに基く勅令の規定によりまして、補償の基準というものは、先ほど申しましたように、収用によって通常生ずべき損害損失補償するということになっておる点は承知しておりますが、具体的に借地権に対しましてどの程度補償がされたかということは、個々のケースによってもちろん違うわけでございますので、私どもその点詳細は承知いたしておりません。ただ、何分あの当時は地方長官がたしか国の機関としてこれを実施いたしておりますので、その当時の事情東京都についてはわからないのではないかというふうに私考えております。  それから、なお、ついでに申し上げておきたいと思いますことは、今日から考えてみますと、借地権補償としてきわめて金額は少いというようなこともあるいは言えるかもしれませんが、当時の戦争下、これは昭和十九年から二十年にかけてのことで、ほんとうに戦争末期で、戦局苛烈のときでございまして、多くの人々は任意疎開、とにかく何らの補償ももらわないで自費でもって疎開した人が大部分でございます。それから、戦災によりまして家を焼かれたりなんかしましても、そのたびに補償があるわけじゃないのでございまして、これはまるまるの損失で、そういう人たちについての権衡を考えてみますと、とにかく政府から何らかの補償、お金をもらっていなかに疎開ができたという人たち、これはむしろある点では恵まれたとも言い得るのではなかろうか、こういうふりに考えるのでございます。
  13. 古屋貞雄

    古屋委員 それはお役人さんの勝手な考え方なんです。古い考え方です。そういうことを考えますと、それじゃ農地法の改革はどうしてやったんですが。農地法の改革、それを思いますと当然だと思います。農地法の改革をごらんなさい。小作人が占有しておったということだけで、ほとんどただのような、一升のやみの米よりも安い値で一反歩の土地を取られておる。こういう事実を見ましても、国民生活保障の問題、国民の社会保障の制度から言って、これは正当なんです。あの直後だとおっしゃっていますけれども、あの直後の当時の臨時措置法に基く恩恵を受けていない者の救済政策ですから、日本中の何百万町歩という土地がただのように小作人に与えられたということも、これも、土地所有権の絶対性という過去の古い所有観念を持っておれば、こういう法務省のお考えはつくと思う。私に言わせると、むしろ法務省は封建性の強い考えでもってやっておる。法務省から特に社会保障政策を考えられたことはない。既得の権利を行使すればいいということを考えている。今日まで十年たったとおっしゃっておりますけれども、せめて当時の恩恵に浴せない——どもから申しまするならば、実際強制疎開をされたために、その恩恵によって疎開をされたからというお考えでしょうけれども、そんなものじゃないのですよ。やはり長い間の職業場所を奪われてしまって、そのために過去にどのくらい苦しんだかということをお考え願えれば、このくらいのことは考えても無理はないと思う。相当譲りに譲ってきて、その賃借権主張をいたしますにも、相当な代償を払わなければ主張ができなくなっているということは、参議院でもお考えになって、だいぶ私どもこれに対しては異議がございましたけれども参議院でこれを修正いたしますについても、現在の法律状況について特段な波乱とか不条理が起らないようにというふうに相当考慮された修正だと思うのです。それでもまだ御反対になるというような法務省のお考えですが、どうも私は納得がいかない。そういう理論からいきますと、今申し上げた自作農創設特別措置法の第二次農地解放なんというものは考えられないのです。こういう観念からいけば、このくらいの措置は当然に当時の賃借権者に与えて、そして、日本の法律は公平であった、公平に措置をされたんだという考えをこれらの人々に持たせることが、やはり法秩序の上からも大事だと思うのですが、農地法に対する観念と同じ観念でお考えになったらどうか、この点を一つ
  14. 平賀健太

    平賀説明員 農地解放という非常にいい例をお出しになりましたので申し上げたいと思うのでございますが、御承知の通り、あの農地改革の際におきまして、政府が小作地を買収いたしまして小作人に売り渡したわけでございますが、あのときの買収の対価を考えてみたいと思うのでございます。これは、当時すべての人が言っておりましたように、買収の対価と言うには値しないほどの対価であった。そのために、自作農創設特別措置法は違憲であるという議論までも出たくらいでございまして、その対価はきわめて安いものでありました。当時の取引の相場と比較しますと、ほとんど対価と言うには値しないほどの対価で買収されたのであります。しかしながら、これも、ただいま古屋委員の仰せられましたように、社会政策的な意味を持っ立法をもってああいった改革を断行いたしたのでございまして現在、当時の地主といたしましては、あの当時の占領中に行われた農地改革の際の政府の買収の対価はきわめて不当に安かった、だから今日になってその損失を償ってくれという請求は、これは断然できないと思うのでございます。それと同じことであろうと思うのでございます。とかく、戦争中、戦争末期におきまして、空襲されたあの非常に困難な時期におきまして、かりに今日から見ましてその当時の借地権に対する補償は安かったといたしましても、これは今の農地買収と同じことであろうと思うのでございます。  それから、農地改革のようなああいう社会政策立法もあったことなんだから、地主権利を制限することはこの法律においても許されてしかるべきだというような御意見だと承わったのでございますが、農地改革の場合は、全国一様に、この法律要件に該当する者は一様に政府によって土地を買収されたのでございます。ある特定の者というふうに限定していないのでございます。この法律案におきましてはそうではないのであります。ある特定の人、強制疎開によって借地権を収用されたそういう特定の人、その人にこういう利益を与えるということに相なるのであります。片一方は一般的な社会政策立法でありますけれども、こちらはそうではない。むしろ、私どもの考えといたしましては、ある特定の人に一つ利益を与える、そういう立法ではないか、社会政策的な意味はきわめて薄いように考えるのでございます。  なお、先ほども申し上げましたように、社会政策的な立法精神を今少しでも実現しようとするならば、真にその強制疎開の際そこに住んで生業を営んでおった、そういう人たちにこそ復帰の機会を与えるべきでございまして、ただそこに借地権を持っておったという理由だけで、その借地権復活をその人に認めてやるということは妥当でないのではないか、社会政策立法とは言えないのじゃないか、そういうふうに考える次第でございます。
  15. 古屋貞雄

    古屋委員 ただいまの御説の借家人というのは、ごもっともで、原案はそういう案だったのですその案がどこで修正されてなくなったのです。しかし、ただいまそう特定の者、特定の者とおっしゃるが、特定の者だけが当時羅災都市借地借家臨時処理法に対する適用を受けなかったから、その失われたものを回復してくれということで、特定の人というのは当然だと思う。あの当時は、その与えられた権利の行使、いわゆる罹災都市借地借家臨時処理法に対するところの権利主張ができなかったのです。——接収という事実によって。だから、その接収という事実がなくなったから、それだけを復活してやってくれということは、何も特定の人に特定利益を与えるわけじゃない。当然のことなんです。当時接収されていなければその主張ができたのです。しかも、今度は、できましても、その当時と違って相当の負担をしなければできないということになっておるのですから、その程度のことは、そう反対されなくてもいいと思いますが、これはいかに御質問申し上げても考え方が違っておるのですから、このくらいで私はやめますけれども、私どもは、特定の人に利益を与えるのではなくして、当然その当時与えられた権利行使がなかったから、それに似通ったような権利行使をさせるというのがこの法律精神でありまして、決して無理はないと思う。従って、当時の借家人に対する権利を認めなければならぬというこの主帳は、私どもも同意見であり、ごもっともと思う。その点については、当然これはやかましく申しますれば借家人についてもこの権利を認めさせるような修正でなければならなかったかもしれません。その他の点についてはどうも平賀さんの御説明によっては納得いかないので、これは特定の人に特定利益を与える法律ではなくて、当然その当時主張すべき権利主張できなかったから、それをやらせるということで、むしろ公平な観念に基くものだと考えますが、以上私の意見だけを申し上げて、質問を終ります。
  16. 平賀健太

    平賀説明員 もう一言つけ加えておきたいと思うのでございますが、罹災都市の第九条といいますのは、当時としてもきわめて異例の措置で、すでに消滅した借地権所有権利者に権利復活を認める、あるいはその借地上に建っておりました建物の借家人に賃借権取得の機会を与えるまことに異例の立法なのでございます。しかしながら、都市復興の見地から、そういう異例の立法をして、そういう旧借地権者あるいは旧借家人に一つの恩恵を与えることは必ずしも不当ではない、その不当でないというのは、地主に対して損害を与えない、他人にあまり迷惑をかけないということで、その恩恵が与えられたと思うのであります。ところが、現在におきましては、事態が非常に変っておりまして、他人の犠牲においてそういう人たち利益を与えられる。当時とは事情がまるで違うと思うのでございます。そういう点におきまして、ただいま古屋委員の御意見もございましたけれども法務省としては、やはり十二条につきましては非常に大きな異議を抱くのでございます。
  17. 古屋貞雄

    古屋委員 ちょっと一言。非常に異例のものだと申しますけれども、最近におきましても、大火の場合にはこれは認めておりますね、適用区域を。そういう精神が生きておるのだから、その点はあまり変っていないと思う。最近も、能代の火災であるとか新潟の火災になりますと、その精神が生きて参りまして、そういう特別の措置をしておるのですから、一万坪のわずかばかりの土地所有者というものは、やはりそう大して権利の侵害を受けるということにならないので、そうまっこうから反対されなくてもいいと思うのです。政府の立場から申しますと、特別の異例だ異例だとおっしゃるけれども、やはりそれと同じ精神の生きた法律は最近でも適用するようなものが出ておるのですから、その点は、私どもは、この程度はやむを得ない、当然認むべきものだろう、こう思います。
  18. 平賀健太

    平賀説明員 少しくどいようでございますけれども、最近の災害の際に罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の規定適用いたしますのは、災害の際に現に借地権者である者、その借地権に基いて建っておりますところの家の借家人であった者、それの保護でございまして、これは相当に理由がある。この法律案でいきましては、まさしく三条四条に当るような事例なのでございます。十二条に相当するような事例は最近の災害の場合には全然ないのでございます。それだけを申し上げておきます。
  19. 三田村武夫

    ○三田村委員 関連して。今卒然の見解になるかもしれませんが、古屋委員平賀参事官質疑応答を伺っておってちょっと気になることがあるから、お尋ね申し上げておきたいのです。  この法案は、当法務委員会において議員提案で審議され、参議院に行って参議院修正で戻ってきたことになっておるのでありますが、ただいま平賀参事官は、何かこの立法が少数特定の人の利益のためになされるかのごとき発言があったようであります。法務委員会として、この法案を立案し、審議し、あるいは提案するときには、特定少数の者の利益のために、また恩恵のためにやるのではないのであります。ただ、この権利関係が正しいかどうか。その比重の点においてはいろいろ見解も違うでしょうが、少くとも当法務委員会立法し、あるいは提案し、審議するときは、特定の者の利益のために立法をするのじゃありませんから、今の平賀参事官の御発言が速記録に残っておりますと、何だかわれわれ非常に不愉快な気持を持つのであります。何か当法務委員会特定少数の者の利益のためにかくのごとき提案をし、審議をし、立案するような誤解を受けることは、法務委員会の権威としても好ましくないと思うのであります。われわれは特定少数の者の利益擁護のためにこの法案の審議をするのではありません。権利関係が正しいか正しくないかというところに審議の重点があるのだということをわれわれは建前として持っておるのであります。その点、何か言葉の上で誤解を生むような気がいたします。言葉のあやかもしれませんが、平賀参事官あるいは法務省の一部の中に、この提案なるものが何か特定少数の者の利益のためになされるような誤解があるとするならば、大へんな誤解でありますから、一言申し上げて、この際もう一度御所見を伺っておきたいと思います。
  20. 平賀健太

    平賀説明員 ただいま私が申し上げましたことの中で、この法務委員会におきましてそういう意図を持ってこういう御提案をなされたというように聞こえる部分がありましたら、それは私の言い間違いでございまして、そういうつもりでは毛頭ございません。ただ、この法律案法律としてでき上りました暁におきまして、結果的にはそういうことになるおそれがあるということを私は申し上げたつもりでございますので、もし私の言い誤まりがございましたならば訂正いたします。
  21. 高橋禎一

    高橋委員長 椎名隆君。
  22. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 少しお伺いしたいのですが、第三条権利金の算定と第十二条の権利金の算定とは同一ですか、それともしんしゃくされますか。第三条は、やむを得ざる措置で仕方がない、当然そういう立法をしてもいいのだ、第十二条は、いわゆる疎開によって一ぺんは賃貸借権は消滅した、それにもかかわらずさらに優先賃借を認めるとするならば当然権利金を支払わなければならないのだ、こういうことになる。権利金の支払いはいずれも同じことだ。ただ、第三条における権利金の算定と第十二条におけるところの権利金の算定とは同一のものか、あるいは第三条における権利金の算定に当っては幾分かその事情をしんしゃくされるのか、その点をお伺いしておきます。
  23. 平賀健太

    平賀説明員 ただいまの御質問は、この参議院修正通りでこの法案が成立いたしました場合にどういう解釈になるだろうかというお尋ねかと思うのであります。これは最終的には裁判所できまることでございますけれども、私ども、この条文で見ました感じでは、権利金自体の額がこの三条四条関係と十二条の関係とは違う、とにかく根本的に違った見方でこの権利金が解釈されるというふうにはちょっと思えないと思うのでございます。これは、具体的事案に即しまして、やはり諸般の事情を考慮して、相当なことというところで当事当間に協議が成立いたしませんと、裁判所がきめるわけでございます。たとえば、十二条の権利金は高くあってしかるべきだが、三条四条はそれに比べれば安くあってしかるべきだということにはならないのではないかというふうに解されるのであります。
  24. 高橋禎一

    高橋委員長 他に御質疑がございませんから、次に国会図書館専門調査員村教三君の意見を徴します。
  25. 村教三

    ○村参考人 私は、専門員といたしましてこの委員会のお世話になっておりましたところ、この法案の立案に関係しておりました点で、意見を述べろという御趣旨であると思いますので、原案を提案し、そうして提案の事務をお手伝いし、そしてまたその後相当の期間にわたってこの法案を支持して参りました者の立場といたしまして、簡単に申し上げます。専門家であられる皆様方としましては、内容はほとんど御承知であり、かつまた提案者としてたびたび御説明を願った皆様方のことでございますから、あまりよけいなことを申し上げる必要はないと思いますので、今あらためて提案当時の考え方を簡単に取りまとめて、最後にこの修正案につきましてただいまの私の立場から意見を申し述べさせていただきます。  この法案は、内容といたしましては、接収当時借地権のあった者は接収解除の際に優先借受権がある、そこで、地主と交渉いたしまして相当の条件で借りることができる、結局時価よりは安くて権利金どもなしに借りられる、せいぜいこの程度の内容でございます。それも、この法律を施行した後六カ月の間に申し込まなければ、それで失権するというような建前で第一の要点はでき上っておるわけであります。これを裏返ししまして地主の方から申しますと、地主の方といたしましても、自己使用をする、自分で使うというような場合、その他正当の理由のある場合におきましては、優先借受権を拒絶できるのでありまして、どうしてもそこを使いたいというときは自己使用すればそれでいいのでありまして、その点で所有権尊重の観念はあくまでも貫けると思うのでありますが、なお、六カ月たちまするならば優先借受権は消滅いたします。そうなれば、いろいろと紛議のあったものが一挙にして解決されまして、経済的には地主の方もずいぶんよかったということになると思っておったのでございます。そこで、これは今から接収が解除される場合でございますが、すでに接収解除済みのところでございましては、その土地につきまして設備を何かしてある、工事をしかてあるということでありますならば、それは絶対に動かないのでございまして、建前は、その場合の設備とかいろいろ工事の基礎は地主がしておられましても、また新しい賃借人がしておられましても、接収当時の賃借人がしておられましても、どちらでもいいのでありまして、現在の設備は動かない。その意味におきまして、現存設備、現存工事をそのまま維持していくという精神条文の全般を貫いておるわけでございます。ただ、法律的取扱いから申しますと、接収が解除されたのと解除されないとの間におきましてえらい違いが出てくるのでありますが、これは、私、やむを得ないと当時から思っていたのであります。なぜかと申しますると、この法案は、そもそも憲法制定前におきまして接収という超憲法的事実が発生いたしまして、憲法違反の事実がわが国に絶対的事項として入ってきたのであります。それをなるべく憲法に合うようにどう始末して取り次ぐかというところに問題があるのでありまして、そういう点に最初から無理があるのであります。最初から無理があるのに対りまして、現在の憲法を前提としていろいろ平常の法理論を構成することは、私は、立場的に限定があり、ある意味で本質をつかまえることのできない法理論ではないかと思っております。結局時間の前後で非常に不公平になりますが、そこが終戦処理法でありますので、やむを得ないものとしてがまんしていただくほかに方法はないだろうと思っております。大体の骨子はその通りであります。最後に、十二条の問題でございまして、疎開地は、なるほどこれはかなり異論のあるところがあります。しかし、疎開地といえども、やはり、接収をされたという一線におきましては、この法案の中に入るべき合理性は私はあくまであると思っております。しかし、賃借権が消滅しておったじゃないかという議論もあります。それからまた、十二条を削除するという考え方も私は法理論の立場からは可能であると思っております。しかし、問題は、そういうものの取扱いの立場をどこに置くかということでありまして、やはり社会政策的立場に立ちまして、あるいは社会保障的な立場に立ちまするならば、十二条はやはり入れられるべき合理性は今日も私は残っておると確信しております。実は、いろいろこまかい議論は、こうした委員会で申し上げることはあまり適当でない、むしろ著述なりそういう面で緻密な冷静な議論をする必要があると思いますが、私は、立案当時の考え方そのままでただいまもけっこうだと思っております。ただ、多少反省すべき点は、だいぶ時間を経過して、その後数年間たっておりまするので、この点については多少おくれたなというような印象を持っております。その点から起ってくる問題は、いま少しく考慮しなければならぬと思っておりまするが、私自身、この委員会を離れておりますし、どうにも力がなく、ただ従前の考え方をしっかりと守っている点におきましては何ら変りはないものと思います。  最後に、修正の点でございますが、この修正点については、参議院法務委員会でも意見を述べてくれということでございまして、専門員の方とも参議院法制局の方とも御相談にあずかりました。私は事務的に妥当なものであると思っております。十二条の削除論に対しましては、私は反対をいたします。しかし、第三条、第四条、それに関連した十二条の程度における権利金の取扱いの問題でありまして、これは私は事務的に妥当であると思っております。  その理由はおよそ二つありまして、一つは、参議院法務委員会では、伝統的に、この法案について、権利金の取扱いについてただいま修正案の内容となっておるようなことを主張しておられました。これもこれでりっぱな考え方であると思っております。次に、権利金の取扱い方につきまして、十二条の場合と、三条四条の場合と分けて、あのような取扱いをしておられますことも、要するに、臨時措置としていきます場合の階段的取扱いといたしましては、私は妥当であると思っております。立法技術上の点につきましても、必ずしも権利金を払わねばならぬと規定しているわけではないのでありまして、立法技術としても参議院において相当苦慮されたものとして、私は尊敬しているわけでございますが、権利金を払っていい場合と賃借金を払わない場合と二つ考えられます。それでどっちでも例外ができるような解決ができるようになっております。これは最後に裁判官にまかすという意味でありまして、これが最も妥当であります。地主論と、借地人論と、何回繰り返しても、私はこの問題は解決できるものではないと思います。大体そういう点で私の意見を終ります。
  26. 高橋禎一

    高橋委員長 ただいまの村君の御意見に対して何か御質疑はございませんか。——ないようでございますから、本案に対する審議はなお後日続行することにいたします。     —————————————
  27. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、参考人招致に関してお諮りいたします。すなわち、法務行政及び人権擁護に関する参考人の出頭を求め、実情を調査いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  なお、参考人の人選及び日時等については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  次に、去る五月十一日の当委員会における江口警視総監の沢証人の失跡問題についての答弁の中で、「警視庁の公安二課というところに、間組の経理部長ですか、その方が見えまして、」云々とあるのは「間組の会計課長の木原という方が」云々と訂正いたしたいとの申し出が同総監よりありましたので、御了承願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時五十九分散会