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1956-03-28 第24回国会 衆議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十八日(水曜日)    午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 高瀬  傳君 理事 福井 盛太君    理事 猪俣 浩三君 理事 佐竹 晴記君       伊東 隆治君    小島 徹三君       小林かなえ君    須磨吉郎君       世耕 弘一君    花村 四郎君       中村 寅太君    松永  東君       横井 太郎君    菊地養之輔君       武藤運十郎君    志賀 義雄君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         法務政務次官  松原 一彦君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君         検     事         (刑事局庁事務         代理)     長戸 寛美君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         文部事務官         (初等中等教育         局中等教育課         長)      杉江  清君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月二十三日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員戸塚九一郎君、花村四郎君、南條徳男君及  び三木武夫辞任につき、その補欠として須磨  彌吉郎君、伊東隆治君、松永東君及び中村寅太  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 同日  委員須磨吉郎君、伊東隆治君、松永東君及び  中村寅太辞任につき、その補欠として戸塚九  一郎君、花村四郎君、南條徳男君及び三木武夫  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  違憲裁判手続法案鈴木茂三郎君外十二名提出、  衆法第一三号)  裁判所法の一部を改正する法律案鈴木茂三郎  君外十二名提出衆法第一四号)  法務行政及び人権擁護に関する件  罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災  害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案  起草に関する件     —————————————
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会開会いたします。  本日はまず罹災都市借地借家臨時処理法に関する問題について調査を行います。  質疑の通告がありますので、これを許します。池田清志君。
  3. 池田清志

    池田(清)委員 去る三月の二十日能代市におきまして前後二回にわたり出火があり、相当災害及び相当の広い地域被害が及んでおるのでありますが、これにつきまして、私は、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の規定によりまして特別の立法をすべきであると思うのでありまするが、それに先だちまして、両回における災害実情をまず当局にお伺いをいたしておきます。
  4. 平賀健太

    平賀説明員 法務省民事局におきまして、国警消防庁、建設省など関係方面に照会いたしましたところ、現在わかっております火災実情は次のようでございます。  すなわち、三月二十日の午後十一時ごろに出火をいたしたのでありますが、その結果、罹災戸数は約千五百戸くらいであります。そのうち借家であるものの戸数が二百三十六戸、二百四十戸近くです。それから、罹災面積が九万五千三百坪くらい。この火災によって罹災しました人員が約六千人。罹災しました世帯数が千二百六十三世帯。なお、損害の見積り額が約二十億円に見積られておるようであります。  大体法務省民事局の方で各方面に照会しまして得ました事情は以上のようであります。
  5. 池田清志

    池田(清)委員 ただいまの御報告によりまして、罹災地における借地借家関係相当被害をお受けになっておられることを伺ったのであります。すなわち、借家におきましては全罹災戸数の一六%に当り、借地におきましては全罹災地の三六%にも当るという高率を示しております。火災の発生いたしました後、今日までにおきまして、必ずやこれら借地借家関係におきまして秩序の乱れた部分もあるのではないかと懸念をいたしますが、これにつきましてはいかなる実情でありましょうか。そしてまた、当局はこの秩序維持についていかなる処置をとられたかをお尋ねいたします。
  6. 平賀健太

    平賀説明員 ただいま申されましたように、今般の火災罹災者には、借家が全罹災戸数の一六%、借地が全罹災住宅面積の三六%という相当の量に上っておりまして、当然借地借家の問題に関しまして紛争も生じますることも考えられますので、従来の例にならいまして、この際、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の規定によりまして、この火災法律で指定いたしまして、この法律関係規定能代市にも適用する必要があるのではないかと思います。  それから、なお、現地におきましてのいかなる対策がとられたかにつきましては、法務省民事局といたしましては詳細な資料は得ておりませんけれども現地の市あるいは県・あるいは中央におきましては建設省の方におきまして、それぞれ応急の対策が講ぜられておることと存ずる次第でございます。
  7. 池田清志

    池田(清)委員 私はこの際罹災都市借地借家臨時処理法そのについて当局の御意向をただしておきたいと思います。  この法律は、御案内の通り、過般の戦争によってわが国方々都市がめちゃめちゃにやられました直後、すなわち、この法律法文中にもありまするように、空襲その他今次の戦争による罹災都市にこれが適用されるということであり、戦争のために焼野原になった都市についての借地借家関係秩序を特別に維持しようという趣旨立法されたものであります。これができましてからすでに十年を経過いたしておりまして、今日いまだ戦争関係のこういうような用語が法文上にあるということも、どうもおもしろくないと思いまするし、しこうしてまた、この法律の条項を二十五条の二の規定によって特別立法によって適用するような処置もとられておるのでありますが、これらを考えますると、私は、この法律全体を再検討いたしまして、喜平和時代の今日に適合するように改正をすべきであると考えますが、当局におきましては、これについても調査研究があるかどうか、あるいはまた、これについての御意向を伺いたいと思います。
  8. 平賀健太

    平賀説明員 この罹災都市借地借家臨時処理法につきましては、ただいま御質問のような問題がございまして、法務省民事局におきましても、目下この法律をどうするかという点で検討を続けております。ただ、問題は、この罹災都市借地借家臨時処理法改正ということだけにとどまらず、借地借家の問題、すなわち借地法借家法根本にも非常に関係がございます。借地借家法関連法律であります建物保護法の問題にも関連があります。これらの根本にさかのぼって根本的に検討し直す必要が実はあるのでありまして、借地借家法根本に立ち返りまして、そこからさかのぼって根本的な改正をいたしたいということで、ただいま検討を続けております。それが法律案になりますのはいつということまでも今申し上げることはできませんけれども、できるだけ早い機会にこの法律並びに借地法借家法建物保護法等、一連の借地借家関係法律について根本的な改正をする必要があるのではないかと、今準備をいたしておるところでございます。
  9. 池田清志

    池田(清)委員 ただいまの御説明によりまして、当局におきましても、本法根本的に改正をしようという御意向があり、そのものとに調査研究をしておられる真相を伺ったのであります。しかしながら、今の御答弁のお言葉によってうかがいますに、この事業は大事業であり、ほかの法律等関係もありまして、そう一朝一夕にできないことであるということをうかがわれたのであります。ところが、本法の第二十五条の二の規定によりまして特別の立法をいたす趣旨といたしましては、罹災都市に対しまして早急にその手を打つという必要からこの規定ができておると思うのであります。ところが、国会は年中開会されておるのではありません。たまたま開会中に起きましたところの災害につきましてはこの特別立法ができるのであり、すでに先般名瀬市について、あるいはまた今般の能代市につきましては、幸いに国会開会中でありますから、時宜に適する特別立法ができるのでありますけれども、たまたま先般起りました新潟市の火災につきましては、国会が閉会中でありましたので、相当おくれて、次の国会開会になってから特別立法が行われたわけです。そういたしますと、その時間が経過する間に、肝心な守るべきところの借地借家関係法律秩序が乱れてしまう、こういう懸念がありますので、私は、この特別立法時宜に適するように迅速にいたすべきであるという根本の考え方からいたしまして、二十五条の二によるところの特別の立法行政政府権限に移しまして、そのつど早急にできますよう、すなわち政令等によって地域及び災害を指定する方が適当であると考えるものでありますが、これにつきまして、当局はいかなるお考えでありましょうか。
  10. 平賀健太

    平賀説明員 政府といたしましても、災害を一々法律で指定するということをしないで政令で指定できるようにするという御意見には、法務省民事局としても全く同様に考えておる次第でございます。
  11. 池田清志

    池田(清)委員 本法改正等に対する根本のことはきょうの問題としては早急にできない事柄でありまするから、本日は私は能代の両回の大火に対しまして本法第二十五条二の規定によって特別の立法をいたし、これが実施を早く行なっていただきたいということを申し上げる次第であります。
  12. 高橋禎一

  13. 須磨彌吉郎

    須磨委員 今回の大火に対しまして、私は私どもの党を代表して先般現地を見て参ったのでありまするが、ただいま御当局のお話もございましたが、またここにその概要もございますが、だんだんと建設省並びに厚生省、消防本部等から出向いておられます係の方々がそれぞれ報告をまとめられまするならば、もっとはっきりした数字その他が出て参るのみならず、この全貌がわれわれの予想以上に惨状をきわめておったもののように私は見て参ったのでございます。ことに、このパーセンテージはここにあがっておりまするけれども、全体を見ますると、きわめて零細な家が多い地域が今回罹災をしておりますので、借地借家法律関係といたしましては予想以上に混乱をきわめる事態がすでに市当局県当局によって認められておったのでございます。ただいま池田理事からもいろいろな御質問がございまして、この法律立法について今後当局においていろいろな方策がおありの様子ではございまするが、とりあえず、この実情から見ましても、一日もゆるがせにすべからざる混乱状態がすでに発生しておる次第でありますから、本法の第二十五条の二に基くところの特別な措置をさっそくとっていただくことが緊急な問題であると私は見て参ったのでございます。また、さような報告のもとに、県当局はもちろんでありますが、それぞれの当局に対して私ども関係方面から陳情等をいたしておる次第でございまするが、きょうは、本委員会において、ただいま池田理事からも御発言通り、二十五条の二の規定の発動によって特別の処置を早急にとっていただくことを、ここにお願いかたがた申し上げる次第であります。
  14. 高橋禎一

    高橋委員長 須磨委員発言に対して政府当局から何か発言がございますか。——世耕君。
  15. 世耕弘一

    世耕委員 実は、能代市の大火はまことに御同情にたえないと思いますが、これについてただいま資料をいただきましたが、私はもっと資料をたくさんいただきたいと思います。その理由は、二十四年に大火があって、また三十一年に二度目の大火があって、まことにお気の毒だと思いますが、二十四年の大火のときの跡始末をどうしておったかということがまずわれわれの疑問とするところであります。ことに、この資料から見ますと、水利が非常一に不便であったから大火になったというふうな文章になっておりますが、その水利不便という下に水道施設がないということが書かれております。これだけ大きな都市で、しかも前回に大火があったその都市が、水道施設がないということはどういう理由であったか。この点も調査をしていただきたい。ことに、水利が不便だというのだが、そばに大きな米代川が流れておるではないか。この米代川能代市との間の水利は工夫すれば簡単に解決できるのじゃなかったか。それをしなかった理由は、財政的処置を誤まったのか、あるいは市民の水利に対する協力と関心が薄かったかどうかということに疑問が一つ起ってくるのであります。もう一つは、すでに前から強風注意報が出ておったはずである。しかも、これによりますと、東風で十五メートルの風速、瞬間風速二十メートルであったということが報告されておるのでありますが、そうなりますと、強風注意報が出ておる状態であれば、消防署がもっと緊張した状態に置かれなくてはならなかった。ここに消防署当局の万全の策が果してとられておったかどうかということと、午後十一時に発火しておるのでありますが、その発火の間において消防隊の出動に意外な時間を要したということに対しては、この資料うしろの方で、近くの町の明治町というところで工場、住家大火があって、そこに消防隊が出払っておったというふうに説明いたしておりますが、そういう強風注意報のあるようなときに、能代市の消防隊がこぞってそういう方面に集団的に出動するということは、消防対策上果して妥当であったかどうかという疑問を一つ持ってくる。それから、発火をすみやかに発見するのに手落ちがあったのではないか。それと、もう一つは、消防署消防署との連絡、それから、いわゆる発火を発見する望楼と消防署との間の電話とかあるいは通信連絡というものが欠ける場合に往々こういう大火原因か起るのであります。かつて三重県下に大火がございました。ちょうどこの委員会であったと思いますが、三重県の消防当局市当局その他関係人たちをここに呼んで、それは今後の防火対策上にも重大な参考になるばかりではなしに他の都市消防に対する注意の意味から、関係当局を呼んで厳重な調査を行なった結果、かなり大きな欠陥があるということが発見されて、そり後対策を講ぜられたということが記憶に残っております。しかも、能代市のごときは、二十四年に大火があっし、今度は二度目であります。今この表を見せていただいただけでも、二十四年の大火跡始末に対して防火対策が果して行き渡っているかどうかということについてわれわれは大きな疑問を持つのでありますから、もし時間を許されるならば、この関係当局に対して十分な資料を提供していただいて、場合によっては関係当局者を呼んで、今後かくのごとき不祥事の起らぬような、禍根を絶つ意味において慎重な審議をお進め下さることを私は特に要望しておく次第であります。  なお、もう一つは、今度の大火は七輪の火の不始末ということに原因をしておりますが、多くは原因不明の出火によって大火を引き起しておるのが各地にあります。この原因不明は多くは漏電という言葉で片。つけられておりますが、今日は漏電を防ぐりっぱな施設対策十分打つ手があるのでありますから、こういうことも十分この機会検討していただくよう要望いたします。
  16. 高橋禎一

    高橋委員長 世耕委員の御発言につきましては、十分検討して資料調査いたしたいと存じますが、それは理事会においても相談をいたしまして他の機会に譲ったらと存じますから、御了承を願います。  他に質疑はございませんか。——他質疑がなければ、この際罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定めろ法律案起草についてお諮りいたします。すなわち
  17. 高橋禎一

    高橋委員長 起立総員。よって、以上のごとく決しました。  なお、以上の法律案について字句の整理の必要がありました場合には委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 高橋禎一

    高橋委員長 なければ、さよう決定いたします。
  19. 高橋禎一

    高橋委員長 違憲裁判手続法案及び裁判所法の一部を改正する法律案一括議題とし、提出者より逐条説明を聴取することにいたします。猪俣浩三君。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 まず裁判所法の一部を改正する法律案逐条説明を申し上げたいと存じます。  これは、先般提案理由として説明いたしましたように、一切の法律命令規則または処分について、それらが憲法に適合するかしないかを、具体的な法律上の争訟を離れて、最高裁判所裁判により決定させる必要があります。ところが、そのためには現行裁判所法には不明確な点がありまするがために、憲法八十一条の精神を体しまして、抽象的違憲訴訟ができるような裁判所法改正を企図したものでありまして、裁判所法第一編総則第三条の裁判所権限、ここに以上申しましたような趣旨規定を明確に入れたいと思うのがこの大体の趣旨であります。  そこで、第三条第二項中「前項」とあるのを「第一項」に改めまして、そうしてこれは第三項になるのでありまして、第二項としては新たにかような文句を入れたいと思うのであります。  「最高裁判所は、前項に定めるもののほか、別に法律で定めるところにより、一切の法律命令規則又は処分について、それらが憲法に適合するかしないかを裁判により決定する権限を有する。」、これが第三条の二項になるわけであります。そこで、現行法の第二項の「前項規定は」という「前項」を「第一項」に改めまして、「第一項の規定は、行政機関前審として審判することを妨げない。」、こういうふうに改正したいと思うのであります。それでありますから、もう一ぺんこの改正案の第三条の全文を読んでみますと、こういうことになるわけです。「第三条(裁判所権限裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。」、二項として、「最高裁判所は、前項に定めるもののほか、別に法律で定めるところにより、一切の法律命令規則又は処分について、それらが憲法に適合するかしないかを裁判により決定する権限を有する。」、第三項として、「第一項の規定は、行政機関前審として審判することを妨げない。」、四項として、「この法律規定は、刑事について、別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない。」、これが改正せられましたときの第三条の全文に相なるわけであります。  かようにいたしまして、最高裁判所がいわゆる抽象的違憲訴訟裁判する権限のあることをこの総則的な第三条の裁判所権限の中に織り込んだのであります。  それから、第七条であります。第七条に最高裁判所裁判権という規定がありますが、これは、現行法はいわゆる具体的争訟事件に関する裁判権規定したものでありまして、抽象的違憲争訟事件最高裁判所裁判できるということを第三条の総則に入れましたので、第七条の裁判権は、これはいわゆる具体的事件裁判権であることを明確にしなければなりません。そこで、第七条に「(裁判権)」といたしまして規定してありまするものを、これを「(争訟に係る裁判権)」と、こう改めました。そうして、「最高裁判所は、」の下に、「法律上の争訟につき、」と、こう加えまして、結局、第七条の全文を言いますならば、「(争訟に係る裁判権)」として、「最高裁判所は、法律上の争訟につき、左の事項について裁判権を有する。」、こういうふうに改めて、「一 上告」、「二 訴訟法において特に定める抗告」、こういうことになるわけであります。  これは、次に説明いたしまする違憲裁判手続法案が成立いたしまして最高裁判所が抽象的な違憲訴訟裁判いたしますのに多少不明確な点のありますところから、この裁判所法改正をはかったのであります。大した説明の要もないのではなかろうかと思うのであります。  そこで、これはこの程度にいたしまして、引き続きまして次の違憲裁判手続法案逐条説明を申し上げたいと思います。  第一条、「(この法律趣旨)」、これは一般的にいろいろの法律にありまする法律目的を掲げたのでありますが、「第一条 この法律は、国の最高法規である日本国憲法の各条規が正しく運用されることを確保するため、日本国憲法第九十八条第一項及び第八十一条の規定に基き、最高裁判所裁判所法第三条第二項に規定する権限として、」——これは改正せられまする第三条第二項に規定する権限として、「一切の法律命令規則又は処分憲法に適合するかしないかを裁判により決定する手続その他の事項について定めるものとする。」とあるのでありまして、この違憲裁判手続法案憲法上の根拠は、ここにあげておりまする九十八条の一項及び八十一条、これがこの違憲裁判手続法案根拠であることを第一条において明らかにいたしました。九十八条には、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律命令詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」とあり、この憲法それ自体に違反いたしまするところの法律命令詔勅及び国務に関するその他の行為の全部または一部は無効なのであるということが憲法九十八条に宣言せられ、わが国憲法がイギリスと違いまして国家最高法規である権威をこの九十八条にうたわれておるのであります。さような意味におきまして、無効なるものの存在を許されないこの憲法精神、及び、これを具体的に処理いたしまする国家機関といたしましては、憲法第八十一条、違憲法令審査権規定中に、「最高裁判所は、一切の法律命令規則又は処分憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定せられ、九十八条によりまして憲法に違反いたしまする一切の国家行為は無効である、それを実現する機関といたしまして八十一条に最高裁判所というものを規定されておる。かような、この九十八条と八十一条の両条を根拠といたしております。ただ、この八十一条は原則を明らかにしただけでありまして、具体的な手続はありませんので、この違憲裁判手続法において具体的な手続規定するという意味であります。  この第一条の「この法律は、国の最高法規である日本国憲法の各条規が正しく運用されることを確保する」という文句は、日本国憲法公布記念式場におきましての勅語の文句をここに使ったのであります。それから、三行目の「裁判所法第三条第二項」というのは、さっき申しましたように、裁判所法の一部を改正する法律案の第三条第二項を意味するのであります。  次に、第二条であります。「(訴訟手続による裁判)」、「第二条 最高裁判所(以下単に「裁判所」という。)は、第五条に規定する訴訟において前条の裁判を行う。」、これは、第一条の裁判最高裁判所が第五条に規定する訴訟の方法において行うものであることを明らかにしたのであります。別に大した説明の要もないと思います。  第三条は、「事件審理及び裁判は、大法廷で行う。」、これは、現行裁判所法の第九条、それから第十条に、最高裁判所には大法廷及び小法廷というものが規定されておるのでありまして、この裁判所法の第九条、第十条の大法廷、小法廷規定の大法廷意味するのであります。そこで、事件審理及び裁判本法における抽象的違憲訴訟審理及び裁判裁判所法の第九条、第十条の大法廷で行うという意味であります。  第四条は、「裁判官は、その者が第五条に規定する訴訟の当事者又はその訴訟代理人であったときは、当該訴訟につき職務の執行から除斥される。」、こういう規定でありますが、これはあまり説明の要のないことで、一般の民事訴訟法の原則と同じであります。ただ、後に説明しますように、訴訟の当事者は、国会議員であり、あるいは検事総長でありますため、最高裁判所の判事になる確率があるわけであります。そこで、原告であり被告である者が最高裁判所の判事にならぬとも限らぬのでありますから、やはりこういう規定が必要であると思ったのであります。  それから、第五条、「(訴の提起)」であります。これは、原告及び被告、つまり抽象的違憲訴訟の形態を、訴訟の形態にするか、非訟事件手続法における非訟事件のように裁判所の職権調査を中心としての審理にするかということは、いろいろ問題があって、提案者も苦心したのでありますが、これはやはり争訟の形式、原告、被告を立てて争う形式にすることが、今司法裁判所的色彩である最高裁判所に持ち込むには適当じゃないかということになりまして、ここで原告、被告争訟という形でこの手続法ができ上ったのであります。  そこで、第五条はその原告及び被告を何人にするかということの規定であります。「衆議院議員及び参議院議員のそれぞれの定数を合計した数の四分の一以上の員数の国会議員は、法律命令規則又は処分について、それらが憲法に適合しないとの裁判を求めるため、検事総長を被告として、裁判所に訴を提起することができる。」、これは衆議院議員及び参議院議員それぞれの定数を合計した数でありますから、衆参両院議員の定数、今はっきりした数はわかりませんが、衆議院が四百六十七名、参議院が二百五十名だといたしますと、これを合計いたしました数の四分の一以上の国会議員ですから、結局七百十七名を四等分いたしますと一七九・二五になりますが、百八十名以上の国会議員のうち、衆議院議員が百三十名で参議院議員が五十名、あるいは参議院議員が百名で衆議院議員が八十名、いずれでもいいわけでありまして、衆議院及び参議院の国会議員の定数を合計したものの四分の一以上の衆参両院議員が原告となる、こういう規定であります。  原告を何人にするかということも非常に議論の分るるところでありますが、結局、日本の国民主権主義の立場に立ちまして、やはり国民の代表は国会議員である。そこで、この抽象的違憲訴訟を提起いたしまする根拠はやはり国民主権主義から出ているのであって、その国民主権主義の原則から、国民の代表である国会議員にこの訴権を与えるということに考えたのであります。さればというて、一人一人の国会議員ということになりますと乱訴の弊もありますので、一定数の国会議員——これは外国の立法例がありまして、ドイツのごときは三分の一ということになっておりますが、ドイツの憲法裁判所というものは、日本国憲法の第八十一条の最高裁判所と組織、構成、権限が非常に違っておりまするので、全部を参考にすることはできませんが、やはり国会議員につきましては三分の一というように数の制限をしておるのであります。私どもはこれを四分の一というふうにしたのであります。  そこで、今度は、被告を検事総長にしたということ。これも実は、違憲なる法律命令といえども国の法律であり命令であるがゆえに、結局それが違憲なりとして訴える相手は国でなければならない。そうすると、国を相手に訴訟する場合におきましては、現在においては訴訟上国を代表するのは法務大臣ということになって単行法があるのでありますが、一応さように考えましたけれども、ただし、法務大臣がこの違憲訴訟の被告として適任であるかどうか、これも実は相当議論があったのであります。政党内閣のものにおきましては、法務大臣はやはり与党の出身者が多くなるものである。この法務大臣を被告とするということは、結局において公正な裁判をするという意味訴訟であって、一個人の利益によってこの訴訟は行われるのじゃないので、公益のため日本国憲法を護持せんとする意味におきましての訴訟でありますがゆえに、相なるべくは国家機関において比較的公正な地位にあると法律上も規定せられ、また事実上もそういう立場にあると推定せられまする機関を被告にするということが妥当ではないかということに落ちついたのであります。政党内閣においては、法務大臣ということになりますれば、訴訟の途中においてしょっちゅう変るかもしれませんし、あるいは二大政党が交互に政権をとるということになると、訴えた者が今度は訴えられる被告に変らぬとも限らぬということで、被告としての安定性も欠いてくる。そこで、現行法を見ますると、検察庁法の第四条に、検事総長は公益の代表者であるという規定があるのであります。そこで、もちろんこの違憲訴訟なるものは、いわゆる具体的訴訟と違って、一個人について利害のために出発するものではないのでありまして、いわゆる公益のために出発するものでありますがゆえに、被告もやはり公益の代表者ということが適任ではなかろうかということで、この検察庁法の第四条を根拠といたしまして、公益の代表者として検察庁法に規定せられておりまする検事総長を被告とする。検察庁法の第二十五条以下におきましても、検事は準司法官として相当身分の保障もあります。安定性がある。それでありまするがゆえに、公益の代表者であり、比較的国家機関として安定性のありまする準司法官的な立場に立っておる検事総長が適任であろうということに相なりまして、検事総長を被告として訴えを起す。ことに検事総長は法律解釈におきましても専門家でありまするがゆえに、被告としてこれまた適任であるというような意味において、検事総長を被告としたのであります。  第五条はさような意味におきまして原告及び被告をきめたものであり、原告を国会議員といたしましたのは国民主権主義にのっとった趣旨であり、四分の一といたしましたのは乱訴の弊を防がんとする他国の立法例も参酌いたしましてこの数を考えたのであります。被告は、検察庁法の第四条を基礎といたしまして、公益の代表者として地位の安定せる、法律に詳しい検事総長を被告としたというふうに御理解いただきたいと思います。  次に、「第六条前条の訴は、法律命令又は規則については当該法律命令又は規則が公布された日から、処分については当該処分があった日から、それぞれ、六箇月以内に提起しなければならない。」、申すまでもなく、法律命令規則処分というような国家行為がいつまでも不安定でありますることは、これまた法の秩序の安定を求める趣旨から感心しないことでございまするがゆえに、かような訴え提起の期間というものをきめたものでありまして、かように提訴期間の制限をきめた例は行政事件訴訟特例法の第五条にもあるのであります。その趣旨にのっとった規定であります。  次に、「第七条第五条の訴の提起は、訴状を裁判所提出してしなければならない。2訴状には、裁判所の定めろところにより、申立の趣旨理由その他必要な事項を記載しなければならない。3訴状が前項規定に違反する場合においては、裁判所は、相当の期間を定め、その期間内にけん欠を補正すべきことを命じなければならない。」、これも、民事訴訟法の、訴え提起の方式は二百二十三条、訴状の起載事項については二百二十四条、訴状の欠缺補正につきましては二百二十八条一項、おのおのさような民事訴訟法規定と相待ってかような規定を作ったものであります。これはその意味におきまして特別に説明申し上げまする条文ではないのであります。  次に、「第八条不適法な訴であって、そのけん欠が補正することのできないものであるときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決をもって訴を却下しなければならない。」、この八条も、民事訴訟法の二百二条及び二百二十八条二項——民事訴訟法の二百二条は口頭弁論を経ないで判決をもって訴えを却下することの規定でありますが、二百二十八条二項は訴状の却下命令規定であります。さようなものを第八条に規定したのであります。これもことさら御説明申し上げる必要はないと思います。  次に、「第九条 原告は、当該訴訟を行わせるため、その中から三人以内の代表者(以下「原告代表者」という。)を定めなければならない。2原告代表者は、当該訴訟について、原告の全員のために、一切の裁判上の行為をする権限を有する。3原告代表者は、二人以上あるときは、訴の提起、訴訟代理人の選任・申立の趣旨の拡張及び訴の取下については共同して、その他の訴訟行為については各自、原告を代表する。4民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第五十三条及び第五十四条の規定は、原告代表者に準用する。5原告代表者でない原告は、裁判所の許可がなければ、訴訟行為(訴の提起、原告代表者の選任、第十四条第一項の規定による訴訟からの一脱退及び第十五条第二項の規定による承継の申立を除く。)をすることができない。」、こういう訴えの実際問題についての規定を置いたのであります。  先ほど申し上げましたように、原告は衆参両院議員の四分の一以上ということになっておりますが、そうすると百名をこえる多人数に相なりまするので、そこで、やはり、訴訟技術上、原告のうちに原告代表者というものをきめて、この原告代表者が実際の訴訟行為をやるというふうにしたのであります。原告代表者ときめられた者は「原告の全員のために、一切の裁判上の行為をする権限を有する。」、こういうふうにいたしました。  それから、原告代表者間の関係は第三項に書いてあるのであります。「訴の提起、訴訟代理人の選任、申立の趣旨の拡張及び訴の取下については共同して、その他の訴訟行為については各自、原告を代表する。」、つまり、大切な訴訟については共同する、しからざる場合においては単独代表というような規定であります。  それから、第四項で準用しております民事訴訟法の五十三条、五十四条、これは御存じのように、民事訴訟法の五十三条といいますと、訴訟能力や法定代理権等の欠缺のある場合の措置について書いてあるものであります。五十四条は、訴訟能力、法定代理権の欠缺の追認のことを規定しているものでありますが、これも本法に準用するということにしたのであります。  それから、五項は、原告代表者でない者、三人を除いたその他の者は、裁判所の許可がなければ原則として法廷へ出て訴訟行為ができないことにいたしたのでありますが、ただ、訴えの提起とか、原告代表者の選任とか、第十四条第一項の規定による訴訟からの脱退及び第十五条第二項の規定による承継の申し立て、こういうことができなければ原告の構成員になりませんから、これは一般の原告ができるが、その他の訴訟行為は原告代表者がやる、それが原則だということにしたのであります。  それから、第十条は指定代理人のことでありまして、「被告である検事総長は、検察庁の職員でその指定するものに訴訟を行わせることができる。」、第二項は、「前項規定により指定された者は、当該訴訟について、訴訟代理人の選任以外の一切の裁判上の行為をする権限を有する。」、これは別に事新しいことでありませんので、国の利害に関係ある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律にもこの指定代理人のことは書いてあるのでありまして、検事総長が被告でありますが、検事総長の指定した代理人が訴訟行為ができるという規定にしたのであります。これは、今の国を相手にいたしまする訴訟においても大体そういうふうになっておりますから、そのようにやろうとしたのであります。  それから、第十一条は、「当事者は、弁護士ほか、弁護士法第五条第三号に規定する大学を定める法律規定する大学の学部、専攻科又は大学院において五年以上法律学の教授又は助教授の職に在った者を、訴訟代理人に選任することができる。」、第二項、「訴訟代理人は、訴訟代理人の選任、申立の趣旨の拡張、訴の取下及び第十四条第一項の規定による訴訟からの脱退については、特別の委任を受けなければならない。」、第三項は、「民事訴訟法第五十三条、第五十四条、第八十一条第三項本文及び第八十三条の規定は、訴訟代理人に準用する。」、これも大して説明する必要がないのでありまして、大学の教授及び助教授の職にあった者を代理人にすることができるようにいたしましたのは、主として憲法論議、法に関する論議を中心とする訴訟になりまするがゆえに、学者も広く代理人として法廷に出られるようにいたしたのであります。あとは民事訴訟法を準用いたしましたので、大して御説明申し上げることはありません。  第十二条は、「原告は、次に掲げる法律命令規則又は処分について、申立の趣旨を拡張し、それらが憲法に適合しないとの裁判を求めることができる。ただし、これにより訴訟手続が著しく遅延すると認められる場合は、この限りでない。一 申立に係る法律命令若しくは規則を実施するため、又一は当該法律命令若しくは規則の委任に基いて、制定された法律命令又は規則 二 申立に係る法律命令又は規則に基いてされた処分」、これは、原則といたしまして申し立ての趣旨の拡張はしない、こういう原則に立って十二条というものはできているのであります。これは、訴訟の形態でありまして、職権調査を中心としたのではないのでありますがゆえに、そこで、申し立ての趣旨の範囲内においてのみ判決をすることができるということがあとの条文に出てきております。ところが、そうなりまして、申し立ての趣旨というものの拡張を絶対に許さないということになりますと、非常に不都合なことが起るのでありまして、原告が申し立てをいたしますにも、そう凡百のいろいろの法令を並べ立てるわけには参りません。たとえば、ある法律が違憲であると考えまして、その法律を違憲として訴訟を起したといたしますが、その法律が無効だということになりますと、その法律を基礎として出ました命令規則はたくさんあるかと思います。あるいは処分もあるかと思います。あるいは場合によりますと各自治体の条例もあるかもしれません。ところが、最初出すときにそれを一切調べて出すことは容易ではありません。訴訟の進行の途上におきまして、この法律を無効にする以上はこういう法令も無効にしなければならないというものがいろいろ出てくると思いますので、そこで、申し立ての趣旨の拡張ということはある程度許さなければならぬ。しかし、それも無制限に許すと際限がありませんし、さればというて、裁判所の職権調査にそれを命じますと、裁判所がまた大へんだと思います。全部の自治体の条例まで調べなければならぬなんていうことが起ってしまって、裁判所の必要的職権調査事項にそれを入れますと裁判所が大へんだ。そこで、その調和をとりまして十二条というものをきめたのでありまして、原則としてむやみに申し立ての拡張を許さぬが、この一号と二号、これだけは例外として申し立ての拡張を許す。それは、「申立に係る法律命令若しくは規則を実施するため、又は当該法律命令若しくは規則の委任に基いて、制定された法律命令又は規則」が訴訟の申し立て後に発見せられましたならば、これは訴訟の各段階におきまして申し立ての趣旨の拡張としてこれが許される。また、同じように、処分におきましても、「申立に係る法律命令又は規則に基いてされた処分」——ことに処分なんていうものは容易にわからぬかもしれませんが、それが裁判の途上におきまして発覚いたしました際には、それを申し立ての趣旨の拡張として追加することができる。それがとうとう発見されないで判決になった際には、あとで発見された場合には、また別の訴訟としてそれを起さなければならぬことを原則にするというような趣旨なんであります。行政事件訴訟特例法はこの違憲裁判手続法に大へん似ている法律なんでありますが、これにはやはり明文があまりないのでありますが、ただ、学者の学説の中に、田中二郎東大教授の意見といたしましては、行政争訟の訴えの申し立ての拡張は許さないのが法理的だという説明を「行政争訟の法理」という本にお書きになっておられるのであります。そこで、そういう学者の言を相当参酌いたしまして、かような十二条のような規定を置いたのであります。  次に、「第十三条 原告は、何時でも、訴の全部又は一部を取り下げることができる。2 前項規定による訴の全部又は一部の取下があった場合においては、当該訴訟の原告であった者は、当該取下の時におけるその者の衆議院議員又は参議院議員たる地位と同一の地位においては、当該取り下げられた訴に係る法律命令規則又は処分について再び訴を提起することができない。」、原告がある法律が違憲であるといって訴えの提起をいたしましても、その後考えが変りまして訴えを取り下げたいということができるかもわかりません。これはやはり民事訴訟と同じように訴えの全部または一部を取り下げることができるようにしたのでありますが、訴えの全部または一部の取り下げられた場合には、その取り下げた訴訟の、原告であった者は、同じ資格では二度と同じ訴訟について原告になれない、そういう意味なのであります。たとえば、衆議院議員猪俣浩三として原告の一員になって訴訟を起したが、その訴訟を取り下げた、ところが、同じような訴訟をまた私が衆議院議員として起すということは相ならぬということなのであります。だから、ちょうど取り下げたと遂におけるその者の衆議院議員または参議院議員たる地位と同じ地位においてはできないというのでありますから、衆議院議員として取り下げたが、後に今度は参議院議員に当選したなら、参議院議員としてはまたできる、こういう規定であります。  それから、「(訴訟からの脱退)」、「第十四条 原告は、何時でも、訴訟から脱退することができる。2 前条第二項の規定は、前項規定により訴訟から脱退した者に準用する。」これも、訴えそのものは取り下げないのですが、百八十人の原告のうち、ある人間が、僕はもうやめた、こういうことができないとも限らぬ。それならば、それは脱退することができる。しかし、一たん脱退した以上は、前条と同じように、その脱退したときにおける地位と同じ地位では再びまた原告になれない、こういう意味であります。  それから、「(訴訟手続の中断)」、「第十五条 原告が、死亡その他の事由により原告たる資格を喪失し、又は前条・第一項の規定により訴訟から脱退したことにより、原告の総数が第五条に規定する員数に満たなくなったときは、訴訟手続は、中断する。」これは、原告が普通の民事訴訟のように一人ということではなく、原告は員数が要件になっております。ある集団が原告になっておりますので、従って、百八十名のうち何人か死んでしまった、そうすると百八十名の計数がそろわないことになります。それから、衆議院が解散になれば、衆議院の何十名かが一ぺんにその地位を失ってしまいますから、原告たるの地位を失う。これは衆議院議員たる地位において原告たる地位ができるのでありますがゆえに、解散しましたとたんに原告たる地位を失うものであります。参議院の場合もしかり。さような場合においては、百八十名を原告たる要件といたしました趣旨から、どうなるかという規定を置かなければなりませんので、訴訟手続は中断する、こういう規定にしたのであります。この訴訟手続の中断の規定は、民事訴訟法の二百八条ないし二百二十二条にもありますので、さような趣旨を参酌いたしたのであります。  そこで、第二項といたしまして、「前項規定により訴訟手続が中断したときは、裁判所は、遅滞なく、国会議員であって当該中断した訴訟の原告たる地位を承継する者があるときは、裁判所の定める期間内に裁判所に対して承継の申立をすることができる旨を官報で公示しなければならない。」、つまり、百八十名の原告のうち何名か脱退した、あるいは死亡したという場合におきましては、裁判手続が中断されるのでありますが、裁判手続が中断されましたならば、裁判所は、遅滞なく、裁判所の定める期間内に裁判所に対して承継の申し立てができるように、その原告たる地位にある衆参両院議員に承継の申し立てをすることができる旨の官報の告示をしなければならない、こういう規定を置いたのであります。この中断した場合補充をどうするかということは、実際問題は、今言ったように原告代表者が三名あります。あるいはまた原告代表者から委任されました弁護人があります。従って、実際上の問題は差しつかえないと思うのでありますが、中断した場合に承継者を一体どういうふうに作るかということもいろいろ議論したのであります。衆議院あるいは参議院の議長裁判所が通告するようにして、その承継する者があるかないかを衆議院や参議院の議長にあっせんさせるようにするかというような議論もあったのでありますが、結局これはやはり裁判所の公示によって承継者をきめることが適当じゃないかということに落ちついたわけであります。  あと、大体専門家の方々ばかりですから、原案を読んでいただけば別に説明が要らぬのじゃないかと思うのですが、ただ説明を要するものだけちょっと説明しますと、十五条の三項、「前項規定による承継の申立をした者は、同項に規定する裁判所の定める期間の経過した時から、原告になるものとする。」たとえば、三人死亡した、脱退した、そこで三人の者が承継した、しか上承継する期間はまだ先十日間あるが、さっそく承継してしまった、そこでいっぱいになった、あと十日間の承継の期間を待たぬで原告がそろった、そうしたらすぐ裁判を始めていいのじゃないかという議論もありますけれども裁判所が一カ月なら一カ月という承継の期間を置いた場合においては、たとい十日目に全部原告の数がそろったといたしましても、なお二十日間そのままの形で中断しておいて、期間が切れたとき初めて原告たる資格が発生する、こういうふうにしたのであります。それは、この第二項によって、官報で公示して国会議員に一般的に呼びかけておる。従って、その脱退した人数だけ補充できたかもしれませんが、何かのことで、あるいは最初原告にならぬ人間で今度は僕も一つやってやろうという人間が出てこないとも限らぬ。それですから、承継できる最終の期間までそれを待たねばならぬ。それを待って、裁判所の承継期間の切れたその翌日をもって、初めてここに原告は確定したとして原告たる地位を承継するというふうにしたのが第三項であります。  それから、第四項は、前に説明したと同じでありますから、説明を省略します。  そこで、第五項ですが、裁判所は一カ月なら一カ月という期間を置いて承継することを公告いたしましても、−カ月の期間待ったけれども、どうも国会議員四分の一の定数に満たなかったという場合におきましては、期間の経過した翌日になりましょうが、そのときをもって訴えを取り下げがあったものとみなすということにしたのであります。それが第五項であります。  それから、第十六条、これはやはり民訴の規定でありまして、大した説明をする要がないと思います。民事訴訟法の百二十五条あるいは裁判官弾劾法の二十三条に規定されておるものと同趣旨のものであります。  それから、十七条、「(証拠調)」、この第二項の「公務員又は公務員であった者は、その職務上の事項について証言又は書類の提出を求められたときは、他の法令の規定にかかわらず、職務上の秘密を理由として、これを拒むことができない。」、これは実は民事訴訟法にも行政事件訴訟特例法にもちょっとないのでありまして、民事訴訟法の二百七十二条ないし二百七十四条に、御承知のように監督官庁の承認が公務員には要求されております。刑事訴訟法の百四十四条、百四十五条にもやはり同じように監督官庁の承諾が要求されておるのであります。そして国家公務員法の百条には公務員の秘密順守義務があるのであります。地方公務員法の三十四条にもあります。そこで、これはこの法律一つの特例になるかもわかりませんが、一切の公務員の職務上の秘密を理由として証言を拒むことを排除したのであります。裁判長から要求いたされましたならば、彼の取り扱ったる職務上の秘密についてもこれを明らかにしなければならない。それは、憲法を守る以外に重大な国家機密なんというものはないのだから、憲法を守り、憲法に適合するかしないかという重要なる案件について、公務員の秘密をたてに、その判断の材料とすべきものを裁判所提出できないという法はないのだから、憲法最高法規で、公務員全部これを守らなければならぬ義務があることは九十九条に規定されておるのだから、そこで、普通の証言と証言が違うのだということで、この憲法裁判を非常に重要視しまして、公務員の証言の拒否権を剥奪したのであります。さような趣旨でこの二項を書いたものであります。  十八条は大した説明をする必要はないと思います。  十九条から二十条、これも、お読みいただけば、普通の場合と大した違いはないと思います。  二十一条は、「第一条の裁判は、判決によって行う。」という、判決によって行うことを明らかにしたのであります。  そして二十二条には判決の事項を書きました。「二十二条 裁判所は、原告の申し立てない法律命令規則又は処分について判決をすることができない。」、これは、先ほど申しました第十二条の「(申立の趣旨の拡張)」とにらみ合せまして、「申し立てない法律命令規則又は処分について判決することができない。」として、そして必要やむを得ざる場合は十二条において申し立ての趣旨が拡張できる、こう調和したのであります。それですから、やはりこれは職権調査にあらずして、申立人の申し立てる範囲において、最高裁判所は申し立てられたる法律命令規則または処分について判決するというふうにいたしたのであります。  二十三条、二十四条は御説明する必要はないと思います。  それから、二十五条の「法律命令規則又は処分は、それらが憲法に適合しないとの裁判があった場合に、その効力を有しないことになるものとする。」、これも大した説明の必要はないと思うのです。憲法に適合しないとの裁判があった場合に無効になる。無効  であるという裁判ではないのです。憲法に適合しないという裁判です。憲法に適合しないと裁判されたら、いわゆる憲法九十八条の原則に返りまして、それが無効になり、その効力を有しないことになるものとする、というのであります。  それから、第二十六条、この違憲裁判の効果でありますが、「法律命令規則又は処分憲法に適合しないとの裁判は、当該法律命令規則又は処分に基いて当該判決の言渡前に生じた事項に影響を及ぼさない。ただし、法律で別段の定をすることを妨げない。」、こういうふうな規定であります。これは相当議論がありまして、憲法の九十八条において憲法に違反するところの法律命令規則または処分は無効であるのであるから、無効であるものは初めから遡及して無効であるべきだという議論も立つのであります。ただし、初めからこれが無効ということになりますと、この法律命令規則または処分によって既成事実ができ上っており、こういうものがみな崩壊することになりまして、法秩序の上からも一これは大へんなことになりますから、そこでこれは遡及しない。最高裁判所で無効の判決があった以後に無効になるんだというのを原則としました。そうして、「ただし、法律で別段の定をすることを妨げない。」、すなわち、何らかの例外があるならば、法律で例外をきめることはできるというふうにしたのであります。初めから無効のものを、判決があったときに遡及しないで将来に向って無効にするということは原理原則に反するようでありますが、しかし、西ドイツの連邦憲法裁判所法の七十九条二項もさようになっておりまするし、また、現行法におきましても、商法の百十条、合併無効の判決、あるいは百三十八条の設立無効の判決、これも既往にさかのぼらぬのが原則でありまして、無効ではあるが遡及しない。法秩序維持のためにさような特例になっておるのでありますがゆえに、さような私ども趣旨をくみまして第二十六条をきめたのであります。  それから、第二十七条、「(違憲裁判の公示)」、これは最高裁判所裁判事務処理規則の十四条に書いてあることでありまして、それをただ法律にしただけであります。  それから、 二十八条、「(裁判の費用)」、これは、お互いに私利私欲のためにやるのじゃなく、憲法擁護をせんとする悲願から出発する訴訟でありますがゆえに、また被告になる人も公益の代表者である検事総長がなるのでありまして、いずれにいたしましても、これは国庫の負担とするということが適当だと存ずるのあります。現在の裁判官分限法の九条にも、裁判官分限裁判につきまして、やはりこれを国庫の負担とするという規定がありますがゆえに、裁判官分限法九条にのっとりまして、同趣旨に基きまして二十八条を置いたものであります。  第二十九条は、「この法律規定するもののほか、第一条の裁判に関し必要な事項は、裁判所が定める。」、御存じのように、最高裁判所には規則制定権がありまするがゆえに、この法律は大綱を規定いたしまして、なおこまかいことにつきましては、この規則制定権にゆだねて、最高裁判所の権威を保持するとともに、また、実際実務をとられる方々のやりやすいように規則を作ってもらうという意味におきまして、大綱だけをきめまして、詳しいことは規則制定権に譲る趣旨であります。  施行期日は、先ほど説明しました裁判所法の一部を改正する法律の施行の日から同時にこの法律も施行するというふうにしたいのであります。  それから、経過規定といたしまして、「この法律の施行前に公布された法律命令文は規則及びこの法律の旅行前にされた処分に対する第六条の規定の適用については、この法律の施行の日に、当該法律命令若しくは規則が公布され、又は当該処分があったものとみなす。」、だから、現存の法律についてはいつから六カ月の期間計算をするかというと、この法律の施行の日にこの法律命令もしくは規則が公布され、または処分が行われたものと見て、それから六カ月間にもし現行法で違憲なものがあるならば訴訟を起さなければならぬという経過規定を置いたのであります。  大体あらましの御説明を申し上げましたが、きょう説明申し上げましたことを基礎といたしまして、逐条の説明書をやはりプリントにして、きょう御出席なさらない方々にお配りしたいと思います。わが国にいまだかってないような異例な訴訟手続法でありまするがゆえに、委員各位におかれましても十二分なる論議を尽していただきたいと存じます。  以上をもって説明を終ります。
  21. 高橋禎一

    高橋委員長 以上で逐条説明は終りました。質疑は後日に譲ります。  なお、提出者にお願いいたしますが、資料等がございましたら適当な機会に御提出下さるように申し上げておきます。     —————————————
  22. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、法務行政及び人権擁護に関し調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。世耕弘一君。
  23. 世耕弘一

    世耕委員 時間もだいぶ経過いたしておりますから、私はごく簡単に数点お聞きして、都合によれば御答弁はあと回しにしていただいてもいいと思います。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、最近特に目立つ学生生徒の教授並びに先生に対する暴行事件であります。ごく最近の例といたしまして、大阪の教師暴行事件、これは大阪府下私立大鉄高等学校内の事件で、関係者は十数名に及んでおります。その他、愛知県下における普通科卒業生徒三十何名が集団して暴行を教師に働いた事件があります。なおそのほかに和歌山県における高校生の暴行事件、これは教員の立場から事件が発生しているように報告が来ておるのでありますが、おそらくこれは表面に現われてきた事件だけで、全国に相当多数こういう事件が発生しているのではないかというふうに考えられるのであります。過日手元にいただきました資料がございますが、この資料だけではその真相が明らかになっておりませんので、当局におかれてその後御調査が進められておられれば、この際御発表願いたいということと、特に、この事件が発生する前に、昨年でございましたか、本委員会でも取り上げて相当研究論議をしてみました京都大学の学長殴打事件がございました。これはまだ御調査が進んでいないようにも聞いておりますが、中間報告でもできたら適当な機会にしていただきたい、かように思うのであります。  要約して申し上げますと、最近学生生徒の学園内における暴行事件並びに教師に対する暴行事件が悪質をきわめておるのであります。ことに、最近大阪と愛知県下に起った事件のごときは、教育面から果してこれが救済できるかという限度に達しておるのではないかと思われるような節があるのであります。近来、平和問題がやかましく論議され、他人の人格を尊重するということはかなりあらゆる面で論議されているときに当って、しかも学園でこういう不祥事がひんぴんとして起るということは、まことに日本の社会にとって嘆かわしい現状だと思うのであります。これは単に一学園内の事件として取り扱うべきでなくして、少くとも治安という立場から、あるいは一般刑法的、刑事政策的立場からも重要視しなくちゃならぬ、私はかように考えておるのでありますが、この機会にそういう点について御意見があれば承わっておきたい。都合によれば文部大臣お立ち会いの上で私は取り上げていただきたいと思うような感じもいたすのでありますが、この点について御所見を承わっておきたい。  なお、時間を省略する意味において、つけ加えてもう一つ、これは学生に関係することではございませんが、先般人権擁護その他の問題に触れて、新興宗教の問題が猪俣委員その他から発言がございました。私は、その新興宗教の悪徳行為の弾圧という面ばかりでなしに、何ゆえ新興宗教が現代社会に興隆するかということの社会情勢をむしろ検討すべきではないか、かように考える。私も最近一、二の新興宗教の関係者に会って、あるいはその状況視察に一日ばかり行ってみましたですが、教祖が出てきて信徒にあいさつして教義を説いているところを見ると、非常な感激を持っておる。一たん休憩に入ると、その多数の大衆が目を泣きはらして、ハンカチがしぼれるくらいに涙をしぼっているというような状況なんです。説明している内容というのは、別に大して変ったことじゃない。結局、倫理道徳を説いて、人間らしい心のあり方を説いているわけです。それだけで病気のなおる人も目撃することができる。ところが、問題はそこにあるので、そういう人の講話を聞いただけで病気がなおる人炉あるとするならば、その新興宗教はわれわれの生活の足しになり得るのじゃないか、こういうことも考えられる。これは少しとっぴな意見かもわかりませんが、最近欧米各国の医学雑誌の中に現われている文献を見ますると、現代医学において、四五%の病気は医者の力によってなおるけれども、あとの五五%はなおらないという。そのなおらない原因を、調べてみると、結局その五五%はみな神経系統、精神系統からきているのだという。そこで、医者にかかってもなおらないような神経系統の病者が、迷うた結果、新しい宗教にたよる。そうして、すがってなおるということになるとすれば、あながち弾圧する必要はないのじゃないか。もし弾圧する必要があるとすれば、そういうような人間の弱点をとらえて金もうけをする邪悪な行為を厳重に取り調べて処罰しなければなら参ないのじゃないか、かように私は考えるのですが、こういう点も一つ当局の方で調査をしていただきたい。ただ単に新興宗教がけしからぬから弾圧するのだという意味じゃなしに、そういうような科学的立場で検討をしていただきたい。せっかく大衆が救われようというところをけ散らかすような無慈悲な仕方をしないで、もう少し科学的な面から判断して善処してほしいということを私は希望するわけであります。われわれもまたもう少し研究して故たいと思うのであります。  それと、もう一つつけ加えて申し上げたいと思うことは、大学の学問の自由あるいは大学の自治という問題が出ております。これはもう論議の余地はないと思いますが、しかし、そういうような大学の自治とか学問の自由とかいうことをやかましく論議されるその学園から暴力ざたが現われてきているのです。そうなると、彼らは真に教育のあり方ということを理解して教壇に立っているかどうかということに問題があると思うのであります。本日はもう時間がございませんから、私はこの程度にして後日に譲りたいと思いますが、ただ、問題は、最近私の地方で起った事件の一端を申し上げますが、新しく小学校の講堂が新築された。君が代を歌うべきか、日章旗を式場に掲ぐべきかというので、かなり長い間論議されたようであります。父兄と教員との対立で論議されたが、結局教員側の意見がいれられて、君が代を新しい講堂の落成式に歌わなかったということか報ぜられておるのであります。そこで、私たちが問題にするのは、大体教育権というものはだれが持っているのであるか、教育する権利というのはだれが持っているのか、それは先生が持っているのか父兄が持っているのか、こういうことが疑問になってくるのです。父兄は自分の子供を教育してもらうために学校に預ける。そうすると、教員はいわゆる父兄の代理で教育するということになる。そうすれば、父兄の要求するところに基いて教育しなければならぬということになれば、君が代を歌わしてくれという父兄の要求であれば、これに応ずるのが当りまえである。どろぼうの技術を教えてくれというのじゃない。君が代を歌わしてほしいという父兄の要求なれば、私は、それは歌わすべきじゃないか、それを拒否する権利は教員にはないはずだということを考えておるのであります。ここに一つの問題点が残されておるのではないかということと、もう一つは、これは最近あまりやかましく論じられないかもわからぬが、親孝行をしろという教育をしてくれということを言うと、親孝行をすることを要求することは封建的であるばかりでなしに、大体親は勝手に子を産んだので、育てる義務があるのだということを学校で教えておる。これは露骨なことを申し上げますけれども、そういうことは父兄が教員に要求しておるはずはないのです。教員は勝手にそういうことを教育しておるということなんです。こういうようなことから、師弟愛にも開きが出てきて、暴行ざたが行われる。この間の大阪の事件は、私、この間大阪に参りました機会に、私の方の大学の付属の高等学校の校長を通じて厳重にいろいろ関係筋を調べさしてみましたが、なぐりつけて、先生が担架に乗って運ばれていくのを、またなぐっておる。これはよほど何か深い原因がなくちゃならぬ。もしそれが教育であったとしたならば、教育そのものがもうすでにその場を失っておる。こういうような傾向が全国にあるとするなれば、これは単なる教育事業の範囲にのみとどめておくべきでないと私は実は痛感したのでありますが、この点を特に社会面、社会情勢という建前からよほど検討していただきたい。まあ、卒業生の不満のためにガラスを割ったとか、なぐって器物をこわしたというようなことはあり得ることだけれども、かなり悪質であるということを考えられるのと、さらに、もう一点は、われわれ教育に関係のある者から申しますると、不良でも、四年間ないし三年間学校で教育をして、善良にして出すというのが目的なんです。またそうあらなくちゃならぬ。それが、学校を卒業するときは卒業前よりも悪いということにかりになったとするならば、ちょうど入院当時よりも退院するときは悪かったということであり、除名退校処分をするようなことがかりにあったとしたならば、病院であれば死骸にして外に出すという結果になる。私たちは、教育者としての建前は、ごく通俗的に考えれば、学校は、病院と同じように、健康にして帰す、精神面も肉体面もそうなくちゃならぬと思う。もし在学中に悪いくせがついたり、悪くなるとすれば、それは教員自体、学校自体の恥だというふうにわれわれは考えてやっておるのだが、この気持がよほど失われてきておるように思うのです。それは、学生だけ、教員だけ、生徒だけを責めるべきものではなくて、そこに何かの深い原因があるだろうと思う。この点を十分検討すべきだと思う。それは、文部省だけでなく、少くとも法務省その他の関係も十分協力して、その根本をつかむことが今日の場合必要じゃないかということを痛感するのでありますが、これについての御感想を、時間がございませんから、後日御説明願いたいと思います。  なお、ついでに、最近における犯罪傾向に関する白書、もしあればそういうような書類をいただきたい。最近の犯罪内容はかなり悪質な犯罪がだいぶんふえたように思いますが、その傾向等も一ぺん見て判断いたしたいと思いますから、後日お願いします。
  24. 高橋禎一

    高橋委員長 世耕委員も御存じのように、政府の方では、きょう法務大臣も文部大臣も出席しておられないような関係であるし、今お尋ねの点は非常に重大な問題で、また根本的な問題ですから、後日理事会を開いて相談して、法務大臣、文部大臣の出席を求めて質問していただくようにしたらと思います。  そこで、本日おいでの政府の側の方方に対しては、今世耕委員発言されたことに関連しての資料提出していただきたいと思いますから、文部省の方もそういうふうにお取り計らい願いたいと思います。
  25. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 世耕委員質問関連いたしまして、小中学校の生徒に対する指導理念について何か参考資料がありましたら、提出していただきたいと思います。
  26. 高橋禎一

    高橋委員長 それでは、文部省の方では、そういう趣旨資料を整えていただくようにお願いいたします。  戸田人権擁護局長、何か御発言がありますか。
  27. 戸田正直

    ○戸田政府委員 最近・教師の生徒に、対する体罰問題であるとか、非常にと申し上げると語弊がありますが、人権擁護局に申告されて参る事件がふえております。次回に統計資料でお示しいたしたいと思います。
  28. 高橋禎一

    高橋委員長 私からも特に政府側に望みたいことは、さっき世耕委員の御発言にもありましたように、学童の暴行事件原因はどこにあるかということ、それから、その事件の処理を一体どういうふうにしていなさるか、当局の態度、捜査機関の側の処理の仕方、特に起訴、不起訴の問題、裁判の成り行き、そういうような点を明瞭にするような資料を整えて提出していただけばと思います。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十四分散会