運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-03-19 第24回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十九日(月曜日)    午前十一時七分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 三田村武夫君 理事 猪俣 浩三君    理事 佐竹 晴記君       秋田 大助君    小島 徹三君       高岡 大輔君    辻  政信君       林   博君    花村 四郎君       古島 義英君    稻葉  修君       横川 重次君    吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君  出席政府委員         法務政務次官  松原 一彦君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君  委員外出席者         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月十五日  委員戸塚九一郎君及び茜ケ久保重光辞任につ  き、その補欠として南條徳男君及び勝間田清一  君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員南條徳男辞任につき、その補欠として戸  塚九一郎君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員横川重次辞任につき、その補欠として野  田武夫君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員野田武夫辞任につき、その補欠として横  川重次君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員小林かなえ三木武夫君、宮澤胤勇君及び  横井太郎辞任につき、その補欠として辻政信  君、秋田大助君、稻葉修君及び高岡大輔君が議  長の指名委員に選任された。 同 日  委員辻政信君、秋田大助君、稻葉修君及び高岡  大輔辞任につき、その補欠として小林かなえ  君、三木武夫君、宮澤胤勇君及び横井太郎君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十四日  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二六号)  法務行政に関する件     —————————————
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由説明を聴取することにいたします。松原法務政務次官。     —————————————   訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案   訴訟費用等臨時措置法の一部を   改正する法律  訴訟費用等臨時措置法昭和十九年法律第二号)の一部を次のように改正する。  第三条中「百八十円」を「二百三十円」に、「五百四十円」を「七百円」に、「九百四十円」を「千二百二十円」に、「七百五十円」を「九百八十円」に改める。  第四条第四項中「九十円」を「百二十円」に、「二百十円」を「二百七十円」に、「九百四十円」を「千二百二十円」に、「七百五十円」を「九百八十円」に改める。   附 則 1 この法律は、公布の日から起算して十五日を経過した日から施行する。 2 この法律施行前に要した費用については、なお従前の例による。     —————————————
  3. 松原一彦

    松原政府委員 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案について提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、国家公務員に対して支給する旅費定額改訂に応じ、民事訴訟刑事訴訟等証人鑑定人等日当及び宿泊料を約三割増額しようとするものであります。  御承知通り民事訴訟刑事訴訟等における証人鑑定人等日当及び宿泊料の額は訴訟費用等臨時措置法により定められているのでありますが、これらの額は、その性質上、国家公務員が出張した場合の旅費の額を基準として定められております。今回、政府におきましては、旅費についての支出の適正化をはかり、旅行等実情に即するようにするため、国家公務員が出張した場合にこれに対して支給する旅費定額改訂して、日当及び宿泊料については、その額を約三割引き上げることとし、別に今国会国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたが、これに応じまして、民事訴訟及び刑事訴訟における証人鑑定人等日当及び宿泊料執行吏の取り扱う執行事件における証人及び鑑定人日当並びに執行吏宿泊料につきましても、国家公務員の場合と同程度の増額を行うことによりまして、現在の実情に即応させ、関係者負担適正化をはかるようにするため、この法律案を提出いたした次第であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 高橋禎一

    高橋委員長 これにて提案理由説明は終りました。  次に、本案補足説明を求めます。位野木調査課長
  5. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 補足説明をいたします。  御承知のように、民事訴訟及び刑事訴訟等における証人鑑定人等日当及び宿泊料につきましては、民事訴訟費用法刑事訴訟費用法及び執達吏手数料規則に定められておるのでありますが、これらの費用等の額は訴訟費用等臨時措置法に定められておるのであります。この法律案は、今提案理由説明にありました通り、公務のため旅行する国家公務員に対して支給する旅費定額改訂によりまして、民事訴訟刑事訴訟等証人鑑定人等日当及び宿泊料を約三割増額しようとするものでありますが、条文別に簡単に内容を御説明申し上げます。  まず、この法案に出ております訴訟費用等臨時措置法第三条の改正であります。これは、お配りしました資料の一番最後の表をごらんいただけばわかりやすいかと思いますが、同条は、民事訴訟費用法及び刑事訴訟費用法の中の証人鑑定人等日当宿泊料等に関する規定でございます。民事訴訟当事者及び証人日当、それから刑事訴訟証人日当は、現在百八十円以内になっておりますが、これを二百三十円以内ということに改めようとするものであります。それから、民事訴訟鑑定人通事及び鑑定書説明者というのがございますが、これの日当、及び刑事訴訟鑑定人通訳人翻訳人及び国選弁護人日当を、現在五百四十円以内となっておりますのを七百円以内というふうに改めたいというのであります。それから、民事訴訟当事者証人鑑定人通事及び鑑定書説明者止宿料、並びに刑事訴訟証人鑑定人通訳人翻訳人及び国選弁護人宿泊料——こちらの方は宿泊料という名前になっておりますが、これらの宿泊料は、現在六大都市におきましては九百四十円以内、その他の地におきましては七百五十円以内というふうになっておりますのを、六大都市におきまして千二百二十円以内、その他の地におきまして九百八十円以内というふうに改めたいというのであります。  次に、第四条第四項の改正でありますが、この条項は執行吏立てかえ金のうちの日当及び宿泊料に関する規定をいたしておるのでありますが、これの改正をしようというのであります。執行吏証人の立ち合いを必要とする執行行為をする場合に、執行吏からその立会証人立てかえ支給する日当が現在九十円以内となっておりますのを百二十円以内というふうにいたし、また、執行吏が値段の高い高価物競売等を行う場合に、差し押え物の評価をする鑑定人に対し執行吏から立てかえ支給する日当は現在二百十円以内となっておりますのを二百七十円以内というふうに改め、また、執行吏がその業務を執行するために宿泊した場合の宿泊料は、現在六大都市におきまして九百四十円以内、その他の地におきまして七百五十円以内となっておりますのを、六大都市におきまして千二百二十円以内、その他の地におきまして九百八十円以内というふうに改めようとするものであります。  以上はいずれも最高限の額でありまして、それ以内におきまして個々の場合に裁判所等が決定することになっておるのであります。  なお、証人鑑定人等が出張する場合に、汽車とか船を利用した場合の旅費でありますが、これは、国家公務員の場合も今回は値上げしないということになっておりますので、今回のこの法律改正にも加えておらないのであります。  最後に附則でございますが、第一項では、この法律公布の日から起算して十五日を経過した日から施行するということになっておりますが、これは訴訟関係者等に周知徹底させるためにこういうふうにいたしたのであります。また、第二項は、改正法施行前に要した費用に関する経過規定でありますが、これらの経過規定は、いずれも従前の例に従ったものであります。  以上簡単でありますが御説明申し上げます。
  6. 高橋禎一

    高橋委員長 質疑通告があります。これを許します。椎名君。
  7. 椎名隆

    椎名(隆)委員 刑事訴訟費用法第二条の証人日当というところ、それから、第三条、第四条、第五条、第七条のこれらの刑事訴訟費用の点については国家予算があるわけですが、その予算は全体で幾らくらいになっておりますか。
  8. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 三十一年度の予算額でございますが、証人鑑定人通訳人国選弁護人等でもって一億二千二百五十万円であります。
  9. 椎名隆

    椎名(隆)委員 わかりました。けっこうです。
  10. 高橋禎一

    高橋委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければ討論採決を行います。  討論通告がありませんので、これを省略し、直ちに採決を行います。訟訴費用等臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立
  11. 高橋禎一

    高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお本案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。
  13. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、法務行政に関し調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。高岡大輔君。
  14. 高岡大輔

    高岡委員 社会生活が複雑化して参りますにつれて、立法機関といいますか、国会では毎日のように新しい法律が制定され、法の改廃が行われておりますが、どうしても法律には盲点が生じてくることは現実であります。それで、この盲点で非常な損害と言いましょうか損失を受ける場合が多いのであります。その一つの例といたしまして、私は印章に関する盲点というものかあるように考えられるのであります。言うまでもなく印章に関する法律仏寡聞にしてまだ聞かないのでありますが、私の知る範囲においては、市町村条例によってのみ、印章の取締りと言いましょうか、そういうものがあると思っております。そこで、印章がそのようなことでありますために、印章による犯罪と言いましょうか、そういうものがかなりあるやに私は思うのであります。  最近の例で言いますと、ご承知のように昨年の十月一日から恩給法等に関する法律改正がございました。すなわち、戦地において戦死した者ないしは戦地において戦病死した者、こうした者に今まで一般扶助料でありますとかあるいは恩給等がついておったのでありますが、御承知のように、今度は、戦地で発病いたしましたその病気に至りましても、従来は銃弾によるもののみでございましたけれども、今度は結核でありますとかあるいは胃ガンといったような、呼吸器ないし消化器系統の傷害に対するものまでが戦病死として取り扱われ、広く遺族の方が恩典を受けるようになりました。そうしたことから、まことに見苦しいありさまではありますけれども、今まで家庭内において何らの騒動のなかったものが、そうした法の改正によりまして、せっかく今までなき夫のあとを継いでその夫との間に生まれた子供を養育しておりましたものが、いよいよ扶助料がもらえるというようなことになりまして、その親が、いつの間にやら、自分の息子の嫁であり、現に子供のあるその嫁を離縁しております。本人はどうして離縁されたかわからない。ところが、事実、調べてみますと、ちゃんと戸籍が剥奪されておる。いわゆる除籍されておる。これは、申し上げるまでもなく、ただむやみに除籍しているのではなくて、それぞれの手続をとつております。そうしてその未亡人たる女の名前の下にちゃんと実印が押されております。これで法律的にはりっぱにそれが解決したということにはなっておりましょうけれども、さて考えてみますと、その未亡人印章はだれが一体作ったのかと申しますと、これは本人にあらざる者が注文して印章を作り、その印章市町村役場に行って届けております。  こういうことは一体今日までどういうものによって規制されておったのか。私が知ります範囲においては、どういう人が印章を頼みに行きましても、印章を作る店ではこれを断わるすべがございません。また、そういう実印というものがそうして簡単に作られながら、しかも、これを市町村に届けに参りますと、市町村はこれを拒否する何らの法律的なものがございません。御承知のように、最近は市町村が相当広範囲にわたって合併が行われておるのでありまして、届出に行きました場合、市町村によりましては総務課がこれを扱い、ないしは戸籍課がこれを扱っておるのでありますが、その総務課課長でありますとか、あるいは戸籍課長というものは、新たに他町村か合併されておりますために、その届出人本人であるかどうかということがはっきりいたしません。結局法律で何らこれを拒否するわけに参りませんので、その印鑑の受理をしなければなりない。そうしました場合に、受理された実印は、次の日になって印鑑証明をもらいに行きますれば、これまた印鑑証明を出すことを拒否するわけには参らないのであります。このようにして、実印が登録され、印鑑証明が出されて参りますと、御承知のように、今日は司法書士が一切の仕事をやってくれますので、その司法書士によりましてすべての手続が完了する。そうして、その結論はどうなるかと申しますと、先ほど申し上げましたように、嫁が知らないうちに離婚されておる。目的は扶助料本人に渡したくないという見にくい姿ではございますけれども、新聞等によってもそういう点が出ておるし、また事実私はそういう事件を扱ったことがあります。  さらに、最近は、この印鑑によって自分財産がいつの間にやら転売されてしまっておるという事実もかなりあるように私は思うのであります。もちろん、そういうことをしました場合には、公文書の偽造あるいはその他のことで犯罪は構成しましょうけれども、もしも山の木を売ったとか山を売ったというようなのが親子の間でありますと、結局泣き寝入りの形に終るかもしれません。ところが、御承知のように日本法治国であります。しかも私有財産が認められておる。法治国私有財産を認められておりながら、その私有財産を保証する印鑑に対しては何らの保障をされていないように考えるのでありますが、政府当局としては、そうした犯罪はどういうことによってそれを未然に防ぐ方法を考えておられますか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  15. 平賀健太

    平賀説明員 ただいま高岡議員仰せのような現象があることは確かに事実でございます。その対策といたしましては、たとえば、戸籍虚偽届出をいたしまして、本人が知らない間に離婚されておる、これを防止するにはどうしたらいいかということが第一の問題だと思いますが、現在では、戸籍法建前によりますと、戸籍届出届出人署名捺印をして届出書を作りまして、これを市町村長に出すということになっておるわけでございます。現行法では捺印する場合の印は実印であることを要求していないのでございます。実印でなくてもいい建前になっております。今高岡議員仰せられましたような弊害をでき得る限り除去いたしますには、実印にしなくてはならない。実印にすれば、印鑑届をいたしまして、印鑑証明をもらって、印鑑証明届書につけて出すということになるわけでございますが、そうなるというと、戸籍届出事務が、——あるいは婚姻届をする、離婚届出をするというわけで、年間届出が、ちょっと私今宙に記憶しませんが、何百万、何千万という届出が出るわけであります。これが全部印鑑届をして印鑑証明をもらって実印届書に添えて出すということになるわけでございまして、これを実施するにつきましては、相当予算措置も考えなくてはならないと思いますし、相当慎重に考えてみなくてはいけないのじゃないかと考えるわけでございます。  それから、なお、これは第二の御指摘の点にも触れるわけでございますが、印鑑証明事務というものは、先ほど仰せ通り市町村条例できめてあるわけでございます。市町村条例も大体全国同じような条例内容になっておりますが、非常に困りますことは、自分本人だと言って印鑑届をして参りました場合、果して本人かどうかをどうして確かめるかという問題があるわけでございます。これは、全国民の指紋でも登録いたしまして、指紋と対照して本人かどうかを確かめるというような方法でも講ずれば別ですが、これはなかなかむずかしいことなのでございまして、そこに盲点があるわけでございます。これは、どうも、国で法律を制定いたしまして防止措置を講じましても、指紋というような、そういう科学的な方法を講ずれば別でございますが、これを絶対に除去するということは非常に困難ではないかと思うのであります。でありますから、その点は、たとえば印鑑届出がある、あるいは印鑑証明をもらいに来たという場合に、市町村の方で、印鑑届出人あるいは印鑑証明願人と称する人が果して本人かどうかを確かめるために、電話で、あるいははがきなんかで本人名あてに照会をするわけでございます。果してほんとう印鑑届をしたか、印鑑証明を願い出られたかということをやれば、ある程度防止できるだろうと思いますが、そうなりますと、やはり市町村負担というものが、現在よりも相当ふえますし、従って、市町村経費財政にも相当響くのではないだろうか。たとえば、東京都を例にとりますと、年間に二百万件の印鑑証明願があるということでございますが、その二百万件について一一本人かどうかということを照合するということになりますと、それはやっぱり財政上の問題が相当考慮されなくてはならぬのではないか。そういうわけでございまして、高岡議員仰せのように、印鑑事務につきましては、そういう犯罪に悪用されるというような弊害があるということ、これは確かにその実害があるのでございます。しかしながら、これをほんとうによくしようということになりますと、ただ法律を制定しただけで済むかというと、そうじゃいけないんじゃないか。どうしてもやはり制度の運用の面で相当金を使いまして、改善を期していかなければならぬということになります。そうなりますというと、これは市町村財政にも響きますし、さればといって、しからばその経費を国が負担するかということになりますと、これはまた問題があるのでございまして、その点に実施上の難点があるのじゃないかとわれわれは考えておる次第でございます。
  16. 高岡大輔

    高岡委員 ただいまの御説明のうちに署名捺印というお言葉があったのでありますが、その文書が本人意思に基いて書かれたものだということを承認するための署名捺印を行う方法としては、世界各国では、日本のようにやっているところと、やっていないところと、どれほどの例がありますか。その点をお聞かせ願いたいと思います。
  17. 平賀健太

    平賀説明員 ただいま御質問の点、詳細は私も存じないのでございますが、たとえば、戸籍届出の点なんかにつきましては、これはかなりはっきりいたしておるのでございます。日本では、御承知通り、たとえば婚姻届出をしますにしましても、養子縁組み届出をしますにしましても、あるいは離婚なんかの届出をしますにしましても、届出書本人署名捺印をしまして、そうして役場に出すことになっておりまして、必ずしも本人が直接役場に出頭しなくてもよい建前になっているのでございます。ところが、諸外国の例で言いますと、大体本人が市役所に出頭いたしまして、そこで市長なり、あるいは市の助役の面前におきまして、われわれ二人は婚姻をしますとか、あるいはそうではなくて教会に行って結婚式をあげることもあるのでございますが、教会の牧師の面前本人が行きまして結婚意思表示をする。必ず本人出頭という建前になっておるのでございます。ところが、日本では、明治以来必ずしも本人が出ていかなければならないという建前になっておりませんで、届出書で足りるのです。長年のしきたりでそういうことになっているのであります。そこで第三者が勝手に虚偽の届をするという弊害が起るのでございますが、しかし、年間に何千万という戸籍の届の中で虚偽の届を出されたという例は実に希有でございまして、今まで長年やってきましたところを、急に必ず本人が出ていかなくちゃならぬということにするほどの必要もないんじゃないか。本人が必ず行かなくちゃならぬということになりますと、届出が非常にめんどうになりまして、今でえさ、婚姻届が非常にめんどうだというので届出を怠って、内縁関係というようなものが非常に多いという弊害があるので、そういった届出を怠る傾向を助長しやしないか、そういう懸念もあったのであります。戸籍の届に関する限りはそういう問題があるのでございます。  それから、なお、登記の点でございますと、登記は、これは日本は非常に厳格でございまして、本人が必ず登記所に出頭するか、あるいは、本人が出られなければ委任状を作りまして、委任状には本人印鑑証明を添えて、代理人がその委任状を持ちまして登記所に行くというわけで、登記の点はかなり厳格にやっております。私の知っております範囲ではそういうことでございます。
  18. 高岡大輔

    高岡委員 ただいまの婚姻届といいましょうか戸籍関係の面につきましては、あるいは正式な結婚式をあげずに結婚をする人がありましょうから、場合によってはそういう今おっしゃったような困難さも出てくるだろうと思います。それから、出生の場合にしましても、ほんとう夫婦の間ならともかくも、夫婦でない場合においては、本人が必ず届けなければならぬということになりますと、なかなか困難な場合が出るかもしれません。しかし、それらについては、犯罪の面から言えばあまり関係がないんじゃないか。これは今おっしゃった通りだと思いますが、登記の場合において、今、非常に厳格にやっているんだ、本人が必ず出頭しなくちゃいけない、ただし本人の都合が悪い場合には本人委任状を持ってこなければいけないと言われましたが、この委任状という点が私は盲点だと思います。と申しますことは、この委任状はどうやって作られるかといいますと、さっき申しましたように、本人が知らない間に委任状が作られる場合がある。しかも、一通の白紙委任状によって——文章が書いてあればともかくも、白紙委任状によって事が処理されるに至りましては、これは私は確かに盲点だと言わざるを得ないのであります。それで、私が申し上げたいことは、市町村条例でありますと罰則ということがあり得るのでありますが、人間は、ある意味においては、罰則がついてきますればある程度犯罪は防がれるのではないかというような気がするのでありますけれども、この印章に対して罰則を設けるということは当局としてお考えになりますかどうか、この点をお伺いいたします。
  19. 平賀健太

    平賀説明員 その点でございますが、市町村条例におきましても、限られた限度ではございますが罰則を設けられることになっております。しかし、虚偽印鑑届をする、あるいは虚偽印鑑証明書をもらってそれを冒用するというようなことは、これは刑法ですでに現在罰則があるわけでございまして、他人の印鑑自分印鑑のような顔をして勝手に届け出て、まず市町村印鑑台帳虚偽印鑑を押すということになりますと、これは虚偽の申し立てによって公正証書の原本が作られたということになる一でございましょうし、また、その印鑑の証明をもらって、これを利用いたしますと、これは他人の印章を偽造したものである、偽造の印鑑を使用したものである、それからまた、それが詐欺罪になることもございましょうし、私、刑法の方はあまり詳しくないのでございますけれども、その点は刑法で十分処罰が可能であるように考えております。でありますから、かりに市町村条例を国の法律でやるといたしましても、その法律で特に罰則を設ける必要はないのではないか、刑法の現在の規定で十分ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  20. 高岡大輔

    高岡委員 昔登記所と言っていたところは法務局と今言っているような気がするのでありますが、法務局で財産所有者の印鑑を保存するというか、法務局で印鑑をはっきりしておくということはできるのですか。市町村役場にある印鑑証明ですか、これを、財産を扱っている法務局で正確にしておくという方法はとれないのでありますか。
  21. 平賀健太

    平賀説明員 お説のような措置をとることも、理論上は十分可能であると存じます。現在、法人の代表者の印鑑は、登記所で登録をいたしまして印鑑証明も出しておるわけであります。法人の設立の登記がされます際に代表者の印鑑が届けられますので、これは地方法務局あるいはその支局、出張所でいたしておるわけであります。ただ、個人の印鑑も、お説のように地方法務局でやるということは十分考えられるのでございますが、何分印鑑届印鑑証明の件数は非常に多いのでございまして、これをこの際法務局に移すということになりますと、役所の人手の問題、法務局職員の相当数の増員ということになってこなければならぬのじゃないか。その点で、やはり経費の面で困難が生ずるのではなかろうか。お説の通り、法務局でやりますと、運用の面でも国の統制がもっとよく行き届きまして、ある程度の改善は期待できると思うものでございますけれども、財政的な隘路があるのではなかろうかということが考えられるのであります。
  22. 高岡大輔

    高岡委員 この印章に関する問題は、当局としては十分御存じのような気がするのであります。これによって、法律盲点とでも言いましょうか、個人の財産が知らないうちに転売されておるとか、あるいは戸籍本人の知らないうちに除籍されておるというような犯罪が起きておることは、法務当局としてもよく御承知のことなんでありまして、これをどうするかという点につきましては、私どもずぶのしろうとが申し上げるよりも、御当局の方は十分御存じなんであります。ただ、いかんせん、その最善の方法をとるためには、私は予算措置がなかなか困難だという一点に来るような気がするのであります。幸い法務大臣が見えていらっしゃいますが、法務大臣としてはどうお考えになっておるか。たとえて言えば、日本には木造建築が非常に多い。各自が気をつければ燃えないのだけれども、こうおっしゃるのでしょうが、消防署があり、消防自動車があって、一応の対策を講じております。それと同じように、こういう犯罪があちこちにあるのですから、少々金がかかりましょうとも、これは場合によっては非常に大きな人権問題でもありますし、また場合によりましては大きな私有財産の問題でありますので、法務大臣としては、予算措置を十分に講じられて、文明国と言われ、法治国と言われておる日本にこうした犯罪があまりにも多いということは嘆かわしいことでありますので、今後法治国日本として恥かしからぬと言いましょうか、従来の盲点をできるだけ少くするような御措置を願えるかどうか、この点法務大臣のお考えを承わりたいと思います。
  23. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 高岡さんの御質問に対してざっくばらんにお答えをいたします。  私的にそのお話を聞いて、私が事重要と思いましたので、法務省におきまして省議にかけました。そして、さらに主管の方面に移しまして調査をし、かつ意見の交換をいたしました。その結果、高岡さんの御懸念のような事実のひんぱんにして、かつすこぶる重大な影響のあることをみな感じまして、善後処置という点に到達したのでありますが、刑法で印章偽造の罪及び冒用の罪は非常に重いのであります。でありますから、戸籍役場や地方法務局の取扱い等に関する新しい法律や新しい刑罰規定を置くよりも、刑法にある印章偽造及びこの冒用に関する規定を適用するだけでここは事足るのではないか。すこぶる重いものでありますから、これはこれで大丈夫だ。そこで、件数を見ましたら、最近の件数をいうと、二十七年が三百八十件くらいですか、二十八年になって四百十二、三件にふえ、また二十九年になりますと四百件を少し下りました。しこうして、これの犯罪はなかなかえらいことをやっておるのですが、刑法にやかましい規定があるものですから、これで御心配の点はいいのじゃないかと思う。  ただし、刑罰の方はいいとしても、不安じゃないかという御心配、これはごもっともであります。そこで、高岡さん、あなたの御意見のようなものを実行しようと思って考えてみましたら、これを市町村役場より地方法務局へ移しますと、だめでございます。非常な不便になる。地方法務局、支局、出張所というものは非常に少いのであります。だから、これを移すということは皆さんの不便になってだめだ。やはり不完全でも何でも市町村役場でやらなければいかぬ。そこで、しからば、今の御懸念の点をはっきりして、そんな心配のないように手配をするにはどうかというと、一年における取扱い件数が一千万にも近いものを、今度それに対して照らし合せの特別の手数、犯罪を予防し、またこれを明らかにするという点に関する高岡さんの意見をやると、自治体へ向って大へんな費用がふえるのです。だから、ことし、来年の国会ではこれは工合が悪い。こんなに自治体の経費を節減せよというときに、こういう仕事をまたプラスするということは困る。  しからば、最後に、あなたの御心配になっておる点をどう考えるか。結論的には、ごもっともなお考えで、文化国家、平和国家としては配慮をしなければならないことであるが、すでにその点には刑法の規定あり、市町村の取扱いがあるということであるから、ひとまずこの点において一般を警戒する、つまらない犯罪がある傾向があるが、これについては特に十分な注意をしてくれなければならぬというその通達をするようなことにおいて、心配ないのじゃないか、件数から言っても四百件前後にあるという事実でありますから、いましばらく状態を見たらどうか、こういうことに実はなったわけであります。そこで、私はもう少し戸籍の状況を見たいと思いますが、仰せられる通りに、印章というものは思いのほか形式的に使われるようになりまして、実質的の方面には、今言う通り、刑法の規定がやかましいから、ほんとう犯罪というものは大した心配はないじゃないかというのが専門家の間の話の結論になったわけであります。  なお、私は、この法律をこしらえて制度を実行するということは、文化制度の上におきましての文化立法として注意しなければならぬことだと思いますから、もう少し私に預けておいて下さいませんか。そうして、研究を続けたい、調査の結果を待ちたい、こう考えております。さように御承知願いたい。
  24. 高岡大輔

    高岡委員 ちょっとお伺いしたいのでありますが、各市町村にあります条例をもう少し整備する法律を出すということと、それから、もう一つは、印章を彫る店に対して何らかの注意をすると言いましょうか、実印とかそういうものの注文を受けました場合に、それを確かめないうちはみだりに実印は作れないといったような、印章を作る人に対する措置を講ずる、この二つが必要だというような気がするのでありますが、この点に対する御意見を承わりたい。
  25. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 その点はごもっともだと思いますから、十分私の方で研究しまして、大げさなことでなくて何らかの予防をすることができないか、そういうことをもう一つ研究してみたいと存じます。
  26. 高岡大輔

    高岡委員 それでは、私はずぶのしろうとでありますし、そちらは専門家でいらっしゃいますから、一つ十分御研究を願いまして、せっかく日本法治国であり、私有財産が認められているのだから、このわれわれの財産が安心しておられるような措置を講じていただきたいと思います。あわせて、戸籍等につきましても、これは、大臣はそう件数はないのだとおっしゃいますけれども、実際は、件数はありますけれども、表ざたにならなかったものが多いのでありまして、実際の数字は今大臣のおっしゃったようなそんなわずかなものではないと私は思います。ことに、農村などにありましては、立木の売買等のことは案外表ざたにしませんで、両者の間に示談とでも言いましょうか、そういうようなことで事が済んでおりますから、あなた方の手帳には事件としては載りませんけれども、実際はかなり、立木が何本切られたとか、そういうようなことの売買契約が本人の知らないうちになされて、いわゆる裁判にならないうちに損害賠償と言いますか話し合いによって事が済んでおることが多いのでありまして、件数は決して今大臣のおっしゃったようなそんなわずかなものではないと私は思うのであります。従いまして、そういうことでありますのが現実でございますので、一つ法務当局としては十分この点に対しては御研究願いまして、近き将来において万全の措置を講じていただきたいと思うのであります。  これで私の質問は終ります。
  27. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 承知いたしました。十分調査することにいたします。
  28. 高橋禎一

    高橋委員長 本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会      ————◇—————