運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-10-26 第24回国会 衆議院 文教委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月二十六日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 加藤 精三君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 辻原 弘市君       伊東 岩男君    杉浦 武雄君       並木 芳雄君    小松  幹君       小牧 次生君    佐竹 新市君       高津 正道君    野原  覺君       平田 ヒデ君    山本 幸一君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     斎藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (初等中等教育         局特殊教育主任         官)      辻村 泰男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      内藤誉三郎君         文化財保護委員         会委員長    高橋誠一郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君         厚生事務官         (児童局養護課         長)      渥美 節夫君     ————————————— 十月二十六日  委員河野正君、木下哲君及び山本幸一君辞任に  つき、その補欠として佐竹新市君、小松幹君及  び赤路友藏君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  学校教育及び社会教育に関する件  文化財保護に関する件     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 これより会議を開きます。  本日はまず文化財に関する調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。野原覺君。
  3. 野原覺

    野原委員 高橋委員長にお尋ねしたいと思いますが、例のいつも国会で問題になって参りました奈良肥鉄土会社のあの未許可道路については、すでにあなたの方で許可をしたような新聞報道がなされておる、こういうように聞いたのですが、その後どうなっておりますか。
  4. 高橋誠一郎

    高橋説明員 私その新聞をこう見ておらないのでありますが、文化財保護委員会といたしましては、まだ許可を与えておりませんでございます。
  5. 野原覺

    野原委員 それではお尋ねいたしますが、そういたしますとこの前国会で問題になりまして、あなたの方ではそのような問題点についてはすみやかに検討してみたい、考慮してみたい、こういうことでございましたが、その後委員会としては、あの肥鉄土会社の問題をどういうような検討を続けてこられておりますか、お尋ねします。
  6. 高橋誠一郎

    高橋説明員 肥鉄土会社に対しましては前回お答えいたしましたように、先方態度にはなはだ遺憾なものが多いめでありまして、こういうことでありまするならば、われわれとしてはあくまでも避けたいと考えておりました文化財保護法を発動させまして、罰則適用もやむを得ないことではないかと決意いたしておったのであります。その後になりまして社長鍵田氏と二回会見いたしました。その際私としましては、やはり罰則適用は避けたい。ただ避けたいというばかりでなく、これを適用いたしましても、その効果の点などがはなはだ疑わしいのであります。肥鉄土をとりますために史跡を荒したという点につきましては、原状復旧に近いことをされたならばどうであろうか。むろん完全に原状に復帰させるということはできないといたしましても、でき得る限りこれに近いものにさせたらばどうであろうか。この方はむろん罰金などを払いまするよりも費用はよけいにかかることと存ずるのでありまするが、そのとりましたあとに草を植えるとか、芝をつけるとかいうようなことをいたしまして、見にくくないような状態にこれを返すという誠意を示しまするならば、罰則適用は避けた方がむしろ得策ではないかと考えまして、その点を鍵田氏に話をしたのでありますが、鍵田氏は快くこれを引き受けまして、すでに二カ月ほど以前からこれにかかっているのであります。この点はいろいろ報告がございまして、確かに行いつつある、こういうことでございますので、保護法を発動させるというようなことはしばらく見合せているのであります。それから正倉院を守りますがために種々なる条件を付して道路を許しているのでありますが、その条件履行ということもはなはだ疑わしかったのでありますけれども、だいぶその後になりまして先方態度も改まりました。私が会見いたした最初におきましては、しきりに私有財産権の尊重などということを云々いたしておったのでありますが、その後の会見の際には、さようなことも全然申されないのでありまして、あくまでも文化財を尊重する、ことに正倉院御物はあくまでも守らなければならぬということを、誠意を顔に現わして申しているのであります。私考えましたところでは、会社の経理の状態もだいぶ改まっているということが、同君の心境を変化させるのにあずかって力がありはしないかと考えますが、もしまた万一会社状態が悪くなった場合にはどうかということもただしたのでありますが、自分としてはやがて社運を回復させる道は、公共との利益会社利益の一致したことが、とりもなおさず社運をまた挽回させ隆盛ならしめる道と考えているということを申しているのでありまして、実際に徴しますと、条件履行は着々として行われているのでありまして、写真そのほかによりまして、奈良の方から絶えず報告が参っているのであります。かようなことが行われますならば、すでに大部分道路を許していることでありますので、未許可部分を許すこともやむを得ないのではないかという意見に傾いているのでありますが、専門委員諸君態度は慎重でございまして、まだ最後的な答申を得ないでいるのであります。この点をむろんわれわれは尊重しなければならぬのでありますし、それからまた宮内庁におきましては、独自の立場からしていろいろ研究を進めているのでありまして、その報告を待ってわれわれの態度をいよいよ決定しなければならぬ、こう考えているのであります。  それからまた、御承知のようにわれわれはこの四月以来東京文化財研究所諸君に、どれだけの影響塵埃あるいは排気ガスによりまして御物にあるかということを調査しているのでありますが、その結果がだんだん現われつつあるのでありまして、どうもこれまでのところによりまするというと、塵埃排気ガスというようなものが増加しており、その影響全然なしとは言えないのでありまするが、しかしながら正倉院のお倉の中に御物をケースに入れ、あるいは箱の中に入れて納めてありまする場合には、これらのものに対する影響はまずないものと言ってよかろう、こういうような報告を得ておりますので、ややその点安心いたしておるのであります。まず一番心配になりますものは銀器でありまして、その色が変る、銀の色が紫色になると申しますか、くすぶると申しますか、このことが心配されておるのでありますが、この点なども十分の注意をいたしますならば、まず守ることができるのではないか。明治の中葉ころと申しますか、まだ光っておりましたところのものが、その後におきましてだいぶ変色しているという事実があるのでございますが、これらのものは、あるいは明治に始まりました曝涼の結果ではないか。毎年秋行われます曝涼の結果ではないのか。今度のこの自動車道路を設けました結果というようなことは考えられないという報告を受けておりまするのでありまして、これらのものをすべて総合いたしまして、われわれの最後的な決断を下したい、かように考えておる次第でございます。
  7. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、肥鉄土会社に対しては罰則適用しないということが保護委員会最終態度として決定をされたのかどうか、その点いかがですか。
  8. 高橋誠一郎

    高橋説明員 さような決定はいたしておりませんのでありまして、ただいま申しましたように、専門審議委員報告を得、そのほかの点を考えまして、これを許可する方針に向って進みましても、むろん万一御物に対して影響があるということがはっきりするとか、あるいはまた会社誠意をもって条件履行しない、こういうような場合には断然これを取り消すとかあるいはまた文化財保護法適用する、かような決心はいたしておるのであります。先方誓約書などにもこの点がよく現われておるのでありまするが、委員会といたしましてはさような決心をいたしておる次第でございます。
  9. 野原覺

    野原委員 そうすると罰則適用する場合に、その決定権というものは文化財保護委員会にあるのでございますか、それとも保護委員長ですか。
  10. 岡田孝平

    岡田説明員 文化財保護委員会には決定権はございませんで、これは裁判所にあるわけでございます。
  11. 野原覺

    野原委員 私も家はそうだと思ってお尋ねしたのであります。そうだとすれば、ただいまの委員長答弁は実に重大だと思うのです。あなたはこの会社社長鍵田という男と二回会つて裁判所罰則適用決定をされる以前に、保護委員長としてのあなたが罰則適用は避けようじゃないか、こういうようなことを漏らすということは文化財保護法の建前から見てどうかと思う。その点いかがお考えですか。
  12. 高橋誠一郎

    高橋説明員 私の申しておりますることは、私もむろん裁判所適用するということは存じておりまするのでありまして、この点は鍵田社長に対しまして、つまり裁判所に提訴するという意味で話をいたしておるのでありまして、今日の答弁言葉を省略いたしたのでありまするが、先ほど申し上げました史跡を破壊したという点におきましては、罰則適用裁判所によって行われまする可能性の最も強いものと考えておりまして、この点は強くわれわれから主張することができると考えておった、ただそれだけのことでございまして、むろん文化財保護委員会が直ちに罰金を取り立てることができるというようなことを考えて申し上げたのではないのであります。
  13. 野原覺

    野原委員 私はどうも実はわからぬのです。罰則適用裁判所にあるのだということであれば、文化財を保護すべき責任のあるあなたが、文化財を棄損してきた鍵田君に対して、罰則適用自分は避けたいのだ、こういうようなことを言うというのは、私は裁判所無視だ、法律無視だと思うのです。これははなはだ僭越きわまると思うのです。その点もう一度あなたの所感をお伺いしたいのです。
  14. 岡田孝平

    岡田説明員 罰則は刑罰でございますから、これは裁判所適用するわけでございますけれども、しかしながらその原因となります事件につきましては、やはり文化財等を扱っておりまする関係の者が罰則適用の事実があるというふうに認定をいたしまして、そうしてそれを裁判所に申し出ることによって初めて裁判所がこれを発動するということになるのでございまして、その裁判所に申し出るか申し出ないかという段階におきましては、文化財保護委員会におきましてこれは十分に検討すべき問題であろうと思います。
  15. 野原覺

    野原委員 この史跡地肥鉄土採掘しておるという採掘継続の事実は今日毛頭ございませんか。これは重要ですからお尋ねしますが、私がこの前質問したときにあなた方はこれを認識されていなかった。史跡地内で肥鉄土なんか採掘していないということであった。ところが私の質問に驚いてその後調査した結果、数カ所で——私は三カ所ないし五カ所だと思うのですけれども、もちろん史跡境界に近いところでありますけれども、明らかに史跡地内で肥鉄土採掘しておる。史跡地肥鉄土採掘するということは法律の規定に抵触するわけなんです。これは委員長もお認め通り。従ってその後この会社採掘を継続しておる事実があったかないか、いかがです。
  16. 高橋誠一郎

    高橋説明員 私ども鍵田氏に警告を発しました後におきましては、史跡内においては採掘は行なっておらないという報告を、奈良の教育庁並びに教育委員会課長からは受けておるのでありまして、これを信じていいのではないかと考えております。
  17. 野原覺

    野原委員 今日採掘していなくても、史跡地内を棄損して採掘したという過去の事実は否定することはできない。それからなおそういう事実があった場合には、やはりこれは法を適用しなければとんでもないことになると思うのです。だから提訴の責任者であるあなた方がその点をおろそかにされて、これは何とかして穏やかに適用しないでいこうというようなことを言われることは、これは高橋さんもお認め通り、この会社はまことにふらちな会社で、実はあなた自身を罵倒されておるのですよ。どういう言葉で罵倒しておるかというと、文化財保護法のような不都合な法律は守るに及ばないと過去五年間豪語してきております。これは私はどこへ行ってでも事実をもって申し上げますが、史跡指定土地所有権の侵害だ、自分土地所有権を持っておるから、そこに史跡を指定していろいろなことをすることは、まことにもってけしからぬ、道路を不許可にすれば文化財保護委員会から損害賠償をとってみせる、こういう心がけの業者であることをあなたは重々知りながら、君に罰則適用しないようにおれが何とかしてやる、こういうことはどうかと思う。他の人が言うならいい。しかしあなたは日本における文化財保護最高責任者である。その方が史跡を非常に棄損してきた事実のある会社に対して、そういう言葉を出されるということは、まことにもって私は了解できない。そういうことですから、この会社が図に乗って今日やはり問題を起しておる。史跡地内で採掘継続の事実も今日ある者から指摘されてきております。しかし私は至急あと文教委員理事諸君にも御相談して、近く現場を視察したいと思う。その点もう一度あなたの所見を承わっておきたい。
  18. 高橋誠一郎

    高橋説明員 ただいまお話のございました点は、先ほども申しましたように鍵田氏の最初態度には現われておったのでありまして、あくまでも所有権申請を主張する、あるいは文化財保護委員会を相手取ってどうこうというようなことは私には申さなかったのでありまするが、少くも文化財保護法になりまして私有財産を侵略することは不当であるというような動きが、言葉は穏やかでありましたが、その中に現われておりましたことは先ほど申し上げた通りであります。しかし同氏新聞にこういう意見を述べましたことは、これはだいぶ以前のことであると私は記憶いたしております。その後におきましては、あるいは地方新聞などにさようなことが載っておったかも存じませんが、私が鍵田氏に会いまして話をしたときにはいささかも現われておらぬのであります。それで私どもとしては、これも先ほど申し上げた点でありますが、これを提訴いたしまして罰則適用させてもらうということもやむを得ないことと考えて、鍵田氏を東京に呼び寄せ、厳談いたしたのでありますが、同氏はその態度を改めまして、しきりに云々いたしておるのであります。保護委員会といたしましてはいろいろ考えまして、また奈良教育長とも諮りまして、この際罰則適用して罰金を取り立てたとしてどれだけの痛痒を与えるものであるかという点をいささか研究いたしたのでありますが、ほとんど言うに足る痛痒は感じないであろう、それより何かもっといい方法はないであろうかということで、先ほど申し上げましたように原状回復に近い措置をとらせるということの方が文化財保護の上におきまして一そう有効なものではないか、過去の罪はむろんわれわれ常に責めておるのでありまして、向うもその点はあくまで謝罪いたしておるのであります。今のところこれを許すということではないのでありましょうが、まず裁判所に提訴するというようなことは一応見合せまして、向う誠意を持って原状回復に向って努力いたしますならば、わずかばかりの罰金などを科しまするよりもかえって効果があるのではないか、かように考えまして、ただいま申し上げましたような態度をとっておるのであります。またわれわれといたしましては絶えず地元と連絡をとって調査いたしておるのでありますが、もし御調査の結果、史跡内で新しく肥鉄土採掘するというようなことを無許可でいたしております場合には、いよいよ文化財保護法を発動させるということもやむを得ないのではないか、どうしても行わなければならないのではないか、こう考えておるのであります。
  19. 野原覺

    野原委員 るる御答弁をなさるのですけれども、私はもう一点事実をあげてお尋ねいたしますが、この会社が若草山とも勝山の境界付近で何基かの石仏を掘り出しておる事実をあなた方は御承知ですか。
  20. 高橋誠一郎

    高橋説明員 それは全然私は聞いておりません。
  21. 野原覺

    野原委員 この点はすみやかに調査をしていただきたい。奈良ではこのことがもう評判になっておる。これが掘り出されておるにかかわらずどう一体処理をされたのか。これは掘り出されたならば文化財保護法で当然掘り出したものはあなたの方に届け出る責任があるはずです。これを隠匿しておるとすれば重大だ。こういう事実もやはりすみやかに調査をしてもらわなければならぬのであります。私どもには調査の権限がありませんから、そういううわさがあるとすればそれは一体事実なのかどうか、そういうことも調査し、万全の態勢をとった上でこの法を適用するかどうかということを決定しなければならぬにかかわらず、あなたが——穏便主義は私もきわめてけつこうだとは思いますけれども、いたずらに穏便主義をとるために、せつかく文化財保護法がありながらそれが適用されないことによって生ずるその他の弊害が今日奈良で続出しておるではありませんか。  これはあなたも御承知かと思いますが、私は奈良公園内にバス駐車場を作りたいという申請が来ておるやに聞いております。この問題についてのあなたの所見をまず承わっておきたい。それは一体どう処理されるか。
  22. 高橋誠一郎

    高橋説明員 石仏を掘り出しましたことにつきましては、ただいま申しましたように全然私は聞いておりません。ただいま局長にも聞いたのでありますが、全然その報告は入っておらぬということでございますので、事重大でありますからさつそく調査を進めたいと存じております。  私の知る限りにおきましては、肥鉄土会社が計画いたしましたところのものは、夏、納涼のためにとうろうを建てるということ、それから京都にならいまして大文字焼きを行いたいということであったのでありますが、地元の勧告その他によりましてとりやめたということを私に申しておるのでございます。また文化財保護委員会のお許しを得て、許される範囲内において明年度においてはいろいろ計画を立てたいと思っておるがということを申しておりましたので、今年は全然待なっておらないのであります。その点におきましても同君誠意が現われておると考えております。  それから公園内にバス駐車場を設けるということ、これはわれわれ早くから聞いておったのでありますが、この点につきましては奈良地元などでも強い反対がありまして、われわれといたしましてもむろんこれは許さるべきものではない。しかしながらこの前に肥鉄土会社のやりましたことほどこのことは奈良文化財保護の上に大きな悪い影響があるとは考えられないのでありますが、それでもなおこういうものを許すべきものではないという考えに到達したのでありまするが、この点岡田局長から何か申し上げることがあるそうでございますから、一つお聞き願えれば幸いでございます。
  23. 岡田孝平

    岡田説明員 今の駐車場の問題は、これは全然別の人でございまして、個人がやはり公園の区域内に自分土地を持っておりますが、そこを自動車駐車場にしたいということで、駐車場にやや地ならしをしかかったということがございましたので、そういう報告を受けまして、直ちにその停止命令をこちらで県教育委員会に出しております。その結果その駐車場設置工事は停止されております。その後その本人から現状変更書類をこちらに認可の申請が来ておりますけれども、私どもといたしましてはこれは許すべきものではない、また県の教育委員会におきましても県といろいろ打ち合せまして、そこはやはり公園の敷地として保存したいということで、県の方でもいろいろ心配いたしまして、むしろこれは県で買い上げたらいいんではなかろうかということで、ただいまいろいろ地元の方でそういう協議を続けておるように聞いております。
  24. 野原覺

    野原委員 この有料駐車場は別のことのように申されましたが、私は別のことではないと思う。なるほど肥鉄土会社ではない。しかしながらあなた方文化財保護委員会が徹底した文化財保護の取締りをやらないことによって生じてきたやはり大きな問題だ、こういう意味で私は別のことでないというのでお尋ねをしたのであります。あなた方は不許可決定されたと言いましたが、文化財保護委員会がこれを許可しないということを決定したならば、起業者に対して正式の文書をもって不許可であるというところの通知を出すべきでございますが、出しておりますか。
  25. 岡田孝平

    岡田説明員 これはまだ出しておりませんが、それは県の教育委員会の方でいろいろ知事と打ち合せまして、その結果によりましてこちらで書式を出すということになっておりますので、地元協議段階でございまして、まだ出しておりません。
  26. 野原覺

    野原委員 冗談も休み休み言ってもらいたい。ここは国会なんです。あなた方の答弁を聞いておりますと、いつも私から追及されると、いいかげんなことでごまかそうとされておる。あなた方は今不許可にしたと言ったじゃないか。不許可にしたというならば、許可しないというところの正式文書が相手に通達されて初めて不許可にしたということがこの答弁として生きるのです。そういういいかげんな答弁で私どもをごまかそうと思っても、ごまかされませんよ。冗談じゃないと思う。これは不許可にはしていないのです。冠ははっきり言います、起業者はもらっていないのです。起業者がもらわないで自分たちだけが許可しないと決定されても、それが許可されないこととして通りますかね、岡田さん。通らぬでしょう。この問題は私は明らかにいたしておきたいと思いますが、本年の四月十日、この業者文化財保護委員会あて許可申請書を提出しております。ところがあなた方からは何の通知もなかったのであります。何の通知もないので、そこでこの業者は数回督促をしたのであります。それでもあなた方は回答していないのであります。よろしゅうございますか。そこで起業者は待ち切れずに、とうとう八月四日から無許可のままで工事に着手したのであります。そうして九月中旬に有料駐車場は完成してしまっておるんですよ。この事実に間違いがあるならば指摘してもらいたいと思う。
  27. 岡田孝平

    岡田説明員 書類が参りました日は今ちょっと記憶しておりませんが、もりとあとではなかったかと思います。あるいは県の方にそういう書類が出まして、県でいろいろ善後処置考えておって、文化財保護委員会の方に出したのはもっとあとではなかったかと思いますが、はっきりした記憶はただいまございません。
  28. 野原覺

    野原委員 私がこれを持ち出したのは、実は本日持ち出さなくてもよかったんですけれども肥鉄土会社に対する前の事務局長森田君以来の弱味が今日文化財保護委員会に実際あるから指摘した。私ははっきり申し上げますが、そういう弱味があるから、あなた方はこの問題に対しても英断がふるえないじゃないか。一体これを許可しないということであれば、この業者は開き直るのですよ。何だあの肥鉄土会社史跡を破壊して、そうしてこれこれの事実があるにもかかわらず、いいかげんにしておきながら、どうして自分にだけ許可しないという態度で臨むのかと開き直ることは明らかなんです。こちらの有料駐車場奈良公園ですからね。片方は重要な正倉院あるいは天地院、これは奈良朝初期の非常な史跡であり、そこを破壊しておる。それをいいかげんにして提訴しない、君かんべんしてやろうというようなお考えでございますから、片方の業者は開き直る。あなた方はそれをおそれて不許可通知すら出せないではないか。それで一体日本の文化財保護ができますか。これは委員長答弁したいようだが、私はもう少し続けて申し上げます。それでごゆつくりあなた方の御答弁を聞きたいと思うんですけれども、これは県に何とか善処してもらうようなことを申しておりますが、私の調査したところによりますと、県の公園計画を何とか生かして、あなた方がこの有料駐車場の問題処理に当ろうとしたことは事実のようであります。ところが県はどういう回答を寄せておるかというと、公園内は歩行が建前だから駐車場は要らないといって回答が文化財保護委員会に来ております。県からそういう回答が来たならば、なぜ一刀両断的にその業者に対して、駐車場を作ることはまかりならぬと処断しないのですか。今日に至るもまだやってない。九月十日に完成しておる。完成しておるまで起業者には何らの注意もせず、不許可の通告すら出さないということは怠慢ではないか。委員長は一体これを怠慢であると認められるか。それはまことに相済まぬことだとお考えであるか。その点を一つ明確に御答弁願いたい。
  29. 高橋誠一郎

    高橋説明員 ただいまの点は、先ほど私申し上げましたように、日をただいま申し上げることはできないのでありまするが、無断でバス駐車場公園内に設けたということが委員会報告せられ、委員会の問題となったのでありまするが、これは無論許可すべきものでないのである、奈良県の当局も同意見と聞いておりまするので、奈良県の当局と十分歩調を共にしてこれを撤去させるようにしなければならぬ、委員会はこういうような決議になったと記憶いたしております。ただいま野原さんの言われましたような言葉がやはり委員会においても出て参ったのでありまして、要するに、かようなことになったのも、前の肥鉄土会社の場合などがあるから一そうこんなような結果になったのではないか、われわれとしては十分この点考えなければならぬのであるが、しかしながら有効な処置を講じまする上においてさらに考えなければならぬところが多いというような申し合せがその際行われておったと記憶いたします。  それから、ただいま野原さんのお言葉の中に、森田前局長の暗い行為とでも申しましたか、ちょっと言葉を記憶いたしませんのでありまするが、それが用をなしておるというお言葉でございます。森田氏の人格につきましては、いろいろ意見があることと存じます。現に為替管理法違反でただいま裁判になっておりまするのでありまして、いかに決定いたしますか、まだはかり知ることができないのでありまするが、こういうような暗い影のある人物である、かような人物を局長といたしておったということに対しまする私ども責任ということも考えられるのでありまするが、しかしながらこの問題に関しましては、前にも申し上げましたように、森田氏にどういう暗い影があるか、われわれこれをつかもうとして、いまだつかむことができずにおるのでありまして、もしかような事実を御指摘いただきまするならば、われわれさらにまたこれをもとにして調査を進めたいと思っておるのでありまするが、今日聞きましたところは、あるいは新聞紙上などに報道せられておりまするところに基きまして、調べました結果におきましては、かような点ではいささかも疑いがない、こう申さなければならぬのであります。検察庁あたりではずいぶんこまかな点までいろいろほじっておるようでありまするが、さようなことはほとんど見出しておられない、あるいはまたそういう点に疑問を持ったということすらないと聞いておるのでありまして、ただいま問題になっておりまする点は、先ほど申しましたように、為替管理法違反、この点でございまするので、この点をあわせて申し上げておきます。
  30. 野原覺

    野原委員 今承わった局長の問題、それから人の非行に関する問題を公開の場で具体的に申し上げるということは、これは重要なことでありまするから、私はなるべく避けたいと思うのです。しかし巷間伝うるところによれば、肥鉄土会社の経営者と結託して、その背後には何名かの政治家諸君が動いておるということが奈良ではうわさをされておる。しかしこれはうわさとして私は申し上げておきます。そういううわさが出されるという点から見ても、きわめて遺憾であるし、具体的には私はその他の面で、それらのうわさとは別の面でいろいろな事実を持っておるのであります。しかしそれはさておいて、ただいまの奈良公園有料駐車場でございますが、これは何ら文書通知も出していないということであるけれども文化財保護委員会は九月末に、企業者文書で何か命令をしておるでしょう。その内容をここで示してもらいたい。何も出していないと言いながら何か出しておるはずだ。
  31. 岡田孝平

    岡田説明員 私は承知しておりません。何も出しておりません。
  32. 野原覺

    野原委員 公式か非公式か知りませんが、それでは有料駐車場のさく、すでにこれは九月にでき上っておりますが、その有料駐車場のさくだけは取り除いてもらいたいということを言っておりませんか。調べたらわかるんですよ、これは。
  33. 岡田孝平

    岡田説明員 この駐車場の問題は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、県の方で非常にその措置に苦慮いたしまして、いろいろと教育委員会なり、いわゆる県の方と、それからまた業者の方ともいろいろと話をしておったようであります。私の方といたしましては、まず県の方の公園計画とこれはどういうことになるかという点が第一の点でありますので、その点は県に照会したところ、県としましては、これは県の公園計画上差しつかえがある、やはりこれは公園の敷地にしておきたい、というふうなことなので、そういうことならば解消すべきである、こういうふうに考えて、この工事は停止するように、県の教育委員会に命じております。その後、県の教育委員会ではいろいろと今検討、打ち合せしておりまして、先ほど言ったように、県でこれを買収するというような話も聞いております。そういう関係で、教育委員会の方の措置を待っておるという状態でございます。私どもの方から特にさくをどうせい、こうせいということは言っていないと思います。もし間違っておりましたら、また調べて、後ほど申し上げます。
  34. 野原覺

    野原委員 この駐車場のさくを撤去せよということを文書で命令した事実はないという、文書でなくても、口頭で何らかの意思表示をした事実がないと申されますか、ないと申されるならば、私は、これはもう一度この業者にも確かめて、あなた方に対決したいと思いますが、よろしゅうございますか。
  35. 岡田孝平

    岡田説明員 ただいま申しました通り、詳細な事実はわかりませんので、調べてまた御返事いたします。
  36. 野原覺

    野原委員 私は勝手なことを憶測いたすようでありますが、この肥鉄士会社が無断で敷地内に作った駐車場がそのままになっておる、そのために、文化財保護委員会は、肥鉄土会社を何とかして見逃してやるために、奈良公園駐車場に対する意思表示ができない、そこで県を引っぱり出して、県をうまく利用して、県にやらせようというような、実になまぬるい、いいかげんな態度しかとっていない、私はこう推測するのであります。しかしながら、時間もちまりとってはどうかと思いまするから、関連質問が並木委員からございまするから、この程度で私は終りたいと思いますけれども、関連質問のいかんによっては、私二、三またこの問題では質問をいたすかもわかりませんが、いずれにしても、高橋委員長がこの会社の経営者に対して、不問に付するかのごとき意思表示をされたことは、これは軽率です。まあ、幸い裁判所はございます。裁判所がございましても、平素の責任者であるあなたが、従来のいろいろな事実があるにもかかわらず、これを不問にして、これを不問にすることによって、奈良には次々と文化財毀損の事実が起ってくるのです。これは私は刑法というもの、処罰法というもの、こういうやはり社会に対する一つの威嚇的な作用があつて効果があるものだと考える。ところがあなたは、その威嚇作用というものを完全に骨抜きにしようとしておるところに問題がございます。関連質問がありますから一応これで終ります。
  37. 高橋誠一郎

    高橋説明員 私、ただいまのお言葉にございました、何とかして肥鉄土会社を不問にしたいとか、許してやりたいとかいうことのために私が力を尽した、というふうに伺ったのでありまするが、さようなことは毛頭ないのでありまして、先ほども申しておりまするように、わずかばかり——三万円以内の罰金がよし適用されたといたしましても、これによりまして彼の感じまする苦痛というものはきわめて少いのであると聞いておりまするので、それ以上の費用のかかることであり、それ以上に効果のありまする原状の復旧をやらせる方がいいと、かように考えまして、先ほど来申しておりまするような態度をとりましたのでありまして、決して肥鉄土会社をそのままにすることを許すために、いろいろなことを申しておるという事実は全然ないのでありまして、その点どうぞ御了承願いたいと存じます。
  38. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 関連して、並木芳雄君。
  39. 並木芳雄

    ○並木委員 文化財の保護の最高責任者である高橋さんからただいまの答弁を聞いておりますと、やはり非常にわれわれたよりなく感じます。今、そのわずか三万円ぐらいの罰金をかけるのだったらこうだ。つまり先ほどの言葉をかりて言いますと、これでは当事者に痛痒を与えない。痛痒を与えないようなことで罰するならば、やめてしまった方がいいのです。私、そういう感じがします。痛痒を感ずるような罰則を作らなければ、やはり文化財なんか保護はできません。ですから、そんな軽い金額よりはというお考えになる前に、もう一つ文化財の保護の責任に当る高橋さんとしては別の意欲がわいてこなければならないはずだ。こんな軽い罰則だからいけないのだ。二度と再び、文化財をだれも棄損するようなことが起らないように、有効適切な罰則を設けなければならぬ。端的に言えば、罰則の強化ということが当然高橋さんとしては念頭に浮んでこなければならぬと思いますけれども、その点はいかがですか。
  40. 高橋誠一郎

    高橋説明員 この点は前にもお答え申したと思いまするが、われわれといたしましては、もっとこの罰則を強化してもらわなければならぬという考えもむろんあるのでございますが、他の罰則とのにらみ合せの上におきまして、なかなかこれが困難であるということが申されておりまするので、ただいまの法律のもとにおきまして、われわれの苦慮いたしておりまするところのものは、罰則適用などということは、でき得る限り避けまして、そうして他の方法によりまして文化財を守ることに力を尽したい、こう考えておつたのでありまして、ただいまの史跡を荒しました点などにつきましても、先ほど来お答えいたしておりまするような態度をとった次第でございます。
  41. 並木芳雄

    ○並木委員 そういう手ぬるい考えでは今後文化財の保護はとうてい目的を達せられないと私は感じます。現に、この間の比叡山の延暦寺の大火にいたしましても、まだ原因ははっきりしないだろうと思いますが、あれは結局、どこかに弛緩があるのです。これは天火にあらずんばどこかに弛緩がある。たとえば、管理者の無過失の責任を付加してこらんなさい。管理者は、完全にそこをもう一回回って、火のもとを注意しよう。そういうことがあるわけです。私は文化財のようなものは、人間が切られたとか、けがしたとか、けられたとか、そういうものと違って、相手は無言です。すぐ被害を訴えない。そういうものに対しては倍の刑罰を課しても足りないだろうと思う。そのくらいの意欲がなければ私は今後文化財は保護できないと思う。それを今痛感したから関連質問に立ったのです。どうしても、火災なんかが起った場合に、どこに原因があるかわからないというときには、無過失罪を課すべきだ、私はそう思うのです。高橋さん、そうは思いませんか。無過失責任というものをここで一つクローズ・アップさせて、ほんとうに原因が不明の場合には管理者にあるのだ、四の五の言わせない。そのくらいの責任を課さなければ大事な文化財というものは保護されないと思う。従ってただいまの、たかがこのくらいの罰金では痛痒を与えないだろうからこうだということは、これは本末転倒なんです。その罰則は強化すべし、体刑にして、公民権を停止する。そのくらいでもいいのです。しかし、はっきりここで、あなたは法務大臣と相談して、文化財の保護に当られるならば、高橋さん、あなたにそれだけの文化勲章を差し上げます。はっきり御答弁願いたい。
  42. 高橋誠一郎

    高橋説明員 重大な過失がございました場合には、罰則、体刑を課するという規定もございますのでありますが、しかしながら今回の場合におきましては、どうもそこまでいくことははなはだ困難であろう、せいぜいでただいま申しました三万円以下の過料という程度であろう、こういうことでございまして、さようなことでありまするならば、やはり必要ある場合にはそれだけのものでも提訴しなければならぬとはむろん覚悟をきめておるのでございまするが、はなはだ効果が薄いと、こう考えておった次第であります。叡山の場合につきましていろいろ伺ったのでありまするが、これはわれわれといたしましてもまことにその責任を痛切に感じておるのでありまして、われわれは防災第一という考えでおったのであります。ちようど二十六年と記憶いたしまするが、今度焼けました大講堂の屋根がえができました際に、私、叡山に参りまして、叡山の重要な職にありまする人たちといろいろ話し合いまして、火災予防のために、あるいは雷の場合を避けまするがために、これは御承知のように横川の中堂が雷火のために焼けておったという事実もありまするので、こういう点に万全の設備をしなければならぬという話をし合いまして、文化財保護委員会に帰りましてその報告どもいたし、翌年の二十七年には、小規模ながら防火の設備ができたのでありまするが、まだこれでは不十分であるというので、特に京都大学の防火研究所などの意見を求めまして、そして二十八年にただいまのような、まず完全といってもいい設備ができ上りましたのでありまして、これで一安心と思いましたのがわれわれのなまぬるさと申しまするか、足りなかったところでありまして、このたびのことは、設備にはまず遺憾なしと言えるのでありましょうが、ただ早く発見しなかったがために大事に陥らしめたのでありまして、管理者にこの点まかせておきまして、われわれといたしましてはあまり立ち入ったこまかな点まで指導いたさなかったということが、われわれの責任を感じさせられるところであります。自警のために人は二人おったのであります。その中の一人が、絶えず宿直しておるということになっておったのでありまするが、少くとも深夜以後におきましては、見回りをしなかったというような事実、そのほかの点におきましても非常に遺憾な点が多いのでありまして、われわれとしては、もっとやかましく指導しなければならなかったのではないかということが痛切に感じられるのであります。これに対しまして、このたびの出火原因が明らかになり、その責任者が出て参りましたならば、どういう措置を講ずべきであるかというようなところまでは、まだ委員会の問題にはなっておらぬのでありまするが、こういうような点を十分に考えてみなければならない。今度の痛ましい事件によりまして学びましたところをさつそく行いたいと、こう考えまして、けさの新聞にも一部分発表されておりますような防火態勢要綱というものを、各都道府県の教育長並びに所有者、管理者ともに配付したのでありまして、当然これらの考えられていなければならなかったと思いますることが行われておらなかったのでありまして、この点まことに保護委員会の手ぬるさ、なまぬるさと申されますならば、一言弁解の余地はないと存じまして、深く責任を感じておるのであります。
  43. 並木芳雄

    ○並木委員 無過失罪についてはどうお考えになりますか。
  44. 高橋誠一郎

    高橋説明員 この点はまだ委員会といたしましては、実は考えておらないのでありまして、さつそく今日の御質問のありました点などを、次回の委員会には申しまして考えたいと存じております。
  45. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 野原君、なるべく簡単に願います。
  46. 野原覺

    野原委員 簡単に終りたいと思いますが、高橋さん、あなたはまじめな御答弁をお願いしたいのです。私、罰則についてでございますが、ただいま法文を取り寄せてみたのです。あなたはいつも三万円、三万円とおっしゃるけれども、しかし第百七条の二には三万円になっていないでしょう。この肥鉄土会社に条文が適用されるとすれば、第百七条の二だと思う。「史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁こ又は三万円以下の罰金若しくは科料に処する。」とある。これが自分の所有に関するときには「二年以下の懲役若しくは禁こ又は一万円以下の罰金若しくは科料」というのでございまして、奈良公園有料駐車場自分の所有地だというのですから、これは最高刑の二年以下の体刑です。それから鍵田君の場合は、自分の所有地じゃないのです。ここにも問題があります。これは結果的にあなた方は他人の所有地を今日の文化財保護委員会鍵田君と共同謀議をやって損壊しておるということが私は言えると思うのですが、これはややこしくなるからここでは申し上げませんけれども、十数名の者は非常に憤慨して、今裁判で争っておるのです。無断で自分土地に道を作つておる。そういう事実がある。これは他人の所有地ですから五年以下の体刑、三万円以下の罰金だ。こういう答弁でお茶を濁すことは断じて了承できない。やはりまじめな御答弁をお願いしたいのであります。これについてのあなたの御答弁は私は伺う必要はありません。とにかくこの問題については、われわれ文教委員会は文化財愛護の責任があるわけでございますし、法治国国民としての良識という立場からも、私は徹底的にこの問題は追及する。今日の文化行政は遺憾ながら、今日このままの状態では麻痺しておると思う。私は日本の文化財は今のようなやり方では完全なる保護はできないと思う。われわれは文教委員会の責任がございますから、今後も機会あるごとにこの問題は監視をいたしまして、追及するということだけ委員長に申し上げて質問を終ります。
  47. 高橋誠一郎

    高橋説明員 ただいまお読みになりました条文、体刑を課することもできるということは重々心得ておりまするので、先ほどの御質問に対しましても、その点申したのでありまするが、今回の場合におきましては、私特に申したのでありまして、体刑とか禁固とかいうような法はとうてい適用されないと専門家は申しておりまするので、せいぜいかけられたところで、先ほど申しました三万円以下の罰金、こういうことで私は三万円ということを云々しておるのでありまして、場合によりましては、それ以上の重刑を課し得るということは重々心得ておるのであります。
  48. 辻原弘市

    ○辻原委員 ちょっとと時間があくようですから、関連して一点質問いたします。先ほど並木委員からの質問で、延暦寺に対する今回の火災について、委員長からも率直な意見が述べられております。私も委員長が言われましたように、今回の火災はあげて管理の責任に由来しておると断定せざるを得ないのです。そこで管理に対する要綱を作られて、それぞれ管理者あるいは都道府県教育委員会等に流されておるようでありますけれども、先ほども並木さんが言われましたように、明らかに管理者の過失によってあるいは怠慢によってこういう重大な事態を引き起したということになれば、やはりそれ相当のその責めを要求するということが重要な文化財を保護するゆえんである、ところが先ほど高橋先生のおつしやられた、これは並木委員が例をあげられたのだと思いますけれども、体刑等を課していくべきではないかと言われたのに対して、今度の延暦寺の場合は、そういうふうには考えられないというのですが、私は延暦寺の場合に相当厳重な措置を要求しなければ、おそらく他の場合に文化財について要求すべき管理者の責めというものは存在しないように思う、というのはあなたも言われましたように、二十八年に千三百万円を投じてあれだけの、今日の日本の防火施設にしては最も学問的にも科学的にもすぐれた防火施設を有しながら、しかも実際にはその効用を発揮されなかった、しかも聞くところによると、当日当然見回らなければならぬ夜警についてもこれをやっていない、宿直員も置いていない、ああいう山頂でありますから一たび火災が発生すれば、どんなりつぱな防火施設を持ってあっても、おそらくそれは活用されないままに終ってしまう、結局問題は日常の見回り、発見ということが一番肝心なのです。そういう点についておそらく従来の文化財保護法等の規定に基いて、管理者に対しては所要の発見に対する措置あるいは防火に対する措置を要求しておると思う、何かしら要求があると思う、ところが今度の延暦寺の事態については、何らそれらのことを管理者は実行していないのです、このことがもうすでに明らかである、だから火がどういう形において発生したか、漏電に基くものかあるいは香であるかあるいはろうそくの火であるかあるいは行路者のタバコの火であるか、この場合そんなことは私は問題でないと思う、今あなたはそういうことの原因がはっきりすれば云々ということを申されましたけれども、こういう文化財の保護について、人を処罰することは目的でない、火災を起さない管理をするということにおいてそれぞれの規定が設けられておる。ですから今日まで明らかになっておることは、すでに管理に重大なる手落ちがある、その責めをもうここらで明らかにして処置することができる段階ではないかと私は思うのですが、先ほどの御答弁によりますと、どうも相変らず同じような答弁を繰り返されておる、それでは今後こういう事故がやはり続いて発生する危険を持っておると思う、二十四年から数えあげてみましても重要文化財、特別施設について六カ所焼けておる、その中で松山城等の放火を除けば、四カ所は明らかに管理者の過失に基いておる、発見がおくれておる、こういうことを累次重ねておるようなことでどうして文化財が完全に保全されるか、こういうことに私は著しく疑問を感ずる、だから私は延暦寺の場合を克明に調査して、このような再び得られぬ貴重な文化財がこうした怠慢によって焼失してしまうというような遺憾なことがないようにいたしたいと考えておりまするが、この点について委員長はどういうふうにお考えになっておるか。
  49. 高橋誠一郎

    高橋説明員 先ほど私のお答えいたしました点につきまして誤解をお抱きになったのではないかと思いまする点は、私この場合においては体刑を科するということははなはだ望みが薄いのであって、せいぜいで三万円以下の科料、こういうことを申し上げましたのは、野原さんの御質問に対しまして肥沃土会社に対して申したのでありまして、今回の叡山炎上につきましては、まだ委員会はどういう態度をとるかということは決しておらぬということを申し上げたのでありまして、今回の叡山の場合について申し上げたのでないことをどうぞ御了承願いたいと存じます。  それから叡山の管理者の責任を問わなければならぬということはむろん委員会考えておるところでございまして、建造物課並びに管理官の報告などをしさいに聴しておるのでございまして、これは長文のものを局長が用意いたしておると存ずるのでありまするが、これを一々読み上げる時間はむろんお許しいただけないと考えております。叡山も非常にその責任を感じておりますこと申すまでもないことでありまして、最高の責任者といたしまして叡山の執行がその責めをとって辞任いたしましたこと新聞紙上において御承知のことと存じます。先ほど来申しておりまするように、この遺憾なできごとを大きな教訓といたしまして、ますまずわれわれの文化財保護の責めを全うして参りたいと存じます。  先ほどお話のありました松山城、松前城、長楽寺、金閣寺、これらのものはいずれも文化財保護委員会が設立せられまする以前のことでありましたので、こういうような遺憾事が法隆寺以来何件となく続いておりましたので、われわれとしてはこの委員会ができました当時においては、まず防災第一主義をとって、乏しい予算の中で、他の方面を切り詰めましてもここに重点を置かなければならぬという決意で進んだのでありまするが、その後になりまして大きな台風が二つ襲って参りました際に、どうも修理を等閑に付しておった点が特に災害が大であるという教訓を得ましたので、防災と並んで修理を相当重視しなければならぬというような考えになりまして今日まで進んできたのでありまするが、幸いにして今日まで文化財保護委員会所管の建造物におきましては、長い間と申しまするか、昨年あたりまではほとんど災害はなかったのでありまして、いささか安心をいたしておったのであります。御承知のようにまず京都の小御所は、これもわれわれ決してあずかり知らぬとは申さぬのでありまするが、宮内庁の所管でありましたので、われわれかれこれ申すことのできないものが多いのでありまするが、その後になりまして宝来山の東照宮が焼けたということ、それから次いで金桜神社が焼けたということ、この二つの教訓がきわめて近い過去にありましたので、これに学びましてわれわれもっと手を打っておかなければならなかったのではないかと考えまする点、先ほど来申しておりまする管理者に対して十分警告を発しておかなければならなかったのであります。しかしながらわれわれ決して何もしなかったわけではないのでありまして、毎年全国に対しまして一回警告を発し、年によりますると二回も警告を発しておったのでありまするが、今回のような不祥事を引き起しましたこと痛切にその責任を感じておるのでありまして、今日になってみますると、まだまだわれわれやらなければならなかったことが多かったのではないかと、その点を痛切に感じておる次第でございます。
  50. 辻原弘市

    ○辻原委員 お聞きいたしますると、管理者に対する注意勧告というものは累次やっておった、まあ設備にたより過ぎたということはあったけれども、一面管理者に対するそういった注意喚起についての方法も講じておったというお話であります。具体的に新聞紙等の報ずるところによりますると、この延暦寺の場合には先ほど申しましたように防火施設は完備しており、さらに警報施設についてもやってはどうかというふうな話もしたが、それについては管理者側から拒否されたとも聞いたのです。そういったことから考え合せてみますと、叡山延暦寺の場合は、文化財保護委員会の方からのそういった管理上の注意あるいは防火施設等についての勧告といったものを受け入れないで、そのために見回りあるいは火災発見等の措置を怠っておった、こういうふうに私は受け取れるのでありますが、文化財保護委員会としてもそういうようにお考えになっておる、そう受け取ってよろしいかどうか、これを委員長にお伺いする。
  51. 高橋誠一郎

    高橋説明員 この点は管理者の責任ということはむろん考えられるのでありましょうが、文化財保護委員会といたしましても実際遺憾の点をみずから感じておるのであります。自警の点、火災報知器の設置などの点につきまして、ただいまお言葉のありましたようにむろん委員会は感じておったのでありまするが、何分にも大講堂ができ上ったと思いますると、その後ではすぐに根本中堂の修理にかかる、これができ上りまするとただいま行われておりまする釈迦堂の修理を行わなければならぬ、それでこれらのものがすつかりでき上りました上においてさらにまた自警の方法も考えなければならぬものがあるのでありまして、いましばらく自警の組織の点などはそのままにしておいて、竣工の上において一つ考え直してみよう、やり直してみようというような考えがありましたので、決してわれわれの言うところを向うは拒否したとは申せないと思うのであります。新聞はさよう報道しておったかもしれませんが、拒否しておったとは私ども考えないのであります。しばらく待ってさらに整備したいという考えであったと聞いておりますのでありまして、その時期まで待たずに、でき上ったところからさつそくやるべきではないかという感じを強くいたしまして、委員会におきましては係官を呼びまして、さつそくその点などをいろいろ問い、試みたのでございまするが、こういう点におきまして、まことに遺憾のありましたことを先ほど来申しておりますように、しみじみ感じております。
  52. 辻原弘市

    ○辻原委員 防火設備に対する国庫補助も年々増額いたしております。三十一年度も三千三百万円程度の防火施設に対する国庫補助がついておる。ところが今回のようにどんなに金をつぎ込んでも、どんなりつぱな施設をやってみたところで、活用されなければ何もならない。そういうことになればこれはむしろ国費の乱費であります。一千トンの水をたたえるだけの、そういった完璧とまでいわれるような防火施設を有しておりながら、根本中堂一つ残して焼けてしまった。しかも実際に動いた消火能率はわずか四割である、地元からかけつけた消火ポンプはほとんど役に立たなかった、火災を発見したときにはもうすでに火が回っておつた、こういうことである。そこに幾ら文化財保護委員会責任をとる、とると申しておられましても、問題は解決されない。やはり管理者に十全の文化財に対するもっとしつかりした考え方と責任を持たせる態勢をしがなければ、今後こういう重要文化財の保護には任ぜられないということを申すのであります。一般の建物と違って無人であります。人があまりいない。しかも広大な面積を持っておる。しかも老朽にわたって、火災には最も弱い。そういうことに着眼すれば見回りを強化するということなどはもう初歩である。その初歩の見回りが行われていないということは、明らかに管理者の責任であると言える。しかしそれすらも今日どうもお伺いいたしましても、文化財保護委員会としての態度がはっきりきまっておらない。最後に私は時間があまりありませんから、お伺いいたしますが、一体その責任をどういう形でおとりになるか、これをどう処断されようとしておるか、文化財保護委員会態度について最後に承わりておきたい。
  53. 高橋誠一郎

    高橋説明員 この点はまだ文化財保護委員会におきまして問題といたしておらないのでありまするが、さらに調査報告が行われ、事実がはっきりいたしました上におきまして、この問題に関しまして責任をいかにとるべきかということを十分慎重に考慮いたしたいと存じております。     —————————————
  54. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 次に昨日に引き続き文教行政について清瀬文部大臣に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。辻原幸一君。
  55. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣並びに社会局長、それから厚生省からどなたかお見えになっておられますか。——問題になっている不良映画の取扱いの問題について、先月の委員会でお伺いをいたしましたが、その後の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  先月私が委員会でお尋ねいたしましたところ、大臣の御答弁は問題となっている太陽族映画その他不良映画等に関しても、文部省としては検閲制度は設けない、こういう御答弁でありました。ところがそれにかわって何がしの取締り法規を制定していくというような意向を若干表明せられたのでありましたが、その際は具体的な内容は不明でありました。そこで大臣にお伺いをいたしますが、検閲制度は設けないが、新しく取締り法規を設けるというのは、一体どういう内容であるのか、この点をまずお伺いいたします。
  56. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 この前に新たなる取締り法規を設けるのだという意味に私は言ったのじゃないつもりなんです。これは非常に重要な問題でございますから、一つには文部省の青少年問題分科会で調査を続け、もう一つは内閣で中央青少年問題協議会、並行した形になりますが、二つで調査をいたしております。その答申なり審議が済んでしまってから方針をきめる、こう申し上げたのであります。ただしかしその答申がどうであろうと、わが国では憲法で映画を対象とした検閲はしないという規則がある以上、私どもは検閲法規は作らない。映画法といったような銘を打った、映画を対象とした検閲法は作らない、こう申し上げたはずであります。検閲法を作らないというからには、それでは他の法律を作るのかという御推定で今の御質問があったと思いまするが、それは私まだ言っておりません。今の文部省の分科会で作りましたテキストはすでに御承知と思いますが、あの通り、もし対象とすれば映画を対象とするのでなく、見る方の青少年を対象とするような行政なり法律なりにいくべきもの、かように思っておるのであります。
  57. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこらに問題があるようです。映画を対象とする取締りの法規は制定の意思はない。青少年の観覧を対象とする取締りの法規については何らか必要である、こういうような今御答弁でございました。結局青少年の観覧を禁止する、こう申しましても上映される映画についての事前の審査が、これが国において行われるというようなことになれば、それは将来どういう形に発展するかもわからないということが問題です。そこで私も先般の委員会で申し上げましたように、教育的な意味において児童の環境をよりよくする、あるいは映画に対する子供の目というものを、いろいろセレクトしてやるということ、こういうことは必要ではないか、しかしながら法律でもってそれを国がやるという場合には、別の問題が生ずるということについての懸念があるわけです。だからその内容をよくただしておきたい、こういうような意味で、今大臣がお答えになった青少年の観覧禁止を対象とした立法措置について伺いたい。というのは十月九日の読売新聞に出ておった記事がありますが、それによりますると、非青少年映画観覧制限法案要項、こういう見出しで内容の要項が列挙されております。その重要なる部分は、一つには文部省の中に映画審査会を設けて、その映画審査会の議によって、これが非青少年映画であるか、しからずかということを判定した後において上映を許す。それに基くそれぞれの処分規定、こういうふうになっておったと思っております。この内容を言われるのでありますか。そういったような意味合いの内容を言われるのでありますか。これはどうですか。
  58. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そのこととわれわれの考えておることは、ちつとも関係ありません。それは別のことです。どこからそういうものが出たか私知りませんけれども、私のさっき言ったことをもう一ぺん繰り返しますれば、私は映画を対象とした検閲はやらない。しかし教育でありまするから、青少年が相手にあって、それに対して生活指導的のことは、もしやるとすればそういう方向に行くんだろう。しかしながらすでに諮問されて——文部省の方はできましたが、中央青少年問題協議会の答申が出るまでは、どの方針をとるかは、今かくのごとき公けの席で発表いたすことはできないのであります。初めから諮問しなかったら別でありますけれども、ある機関に諮問しておいて、答えが出るまでに諮問した側の政府がこうするんだと言ってしまったら、諮問されておる人はどうしますか。これはできはしません。
  59. 辻原弘市

    ○辻原委員 これはそういう形式論より、重要な問題ですから少し具体的に答えていただきたい。それでは順序を立ててお聞きしますが、八月の三十一日に文部省の社会教育審議会で、まずこの問題が取り上げられた。一応の文部省の態度がここで決定しているわけであります。それは、うなづいておられますから間違いないと思いますが、お答えはいただきません。さらにその下部機構である青少年教育分科審議会、ここで約三回にわたって意見がかわされているようです。その中の審議の過程を見ましても、この問題の取扱いについて、主として論議は法的な制限を加えるかどうかということにわたっておるようでありますが、結局最終結論は何らかの措置をとるべきである、こういうような形に結論が出ておるようであります。その後社会教育審議会の答申案としてすでに発表されておりますが、その案も、これは伝え聞くところによるのでありますから、正確かどうかわかりませんけれども、一応大臣に答申されたあれとしては、何かのそういった方法を講ずべきであるというふうに結論が出ているようであります。それを受けて文部省は、それでは一体どういうふうな態度をきめられたかということであります。その答申案を尊重するということでは、これは大田、答弁になりません。具体的に立法措置を講ずべきであるという、そういう答申が行われておる。それに基いて文部省は態度協議せられたと思うのです。その態度はどういうようにきめられたのか、この点を一つ伺いたいと思います。
  60. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 この分科審議会の決戦は大へんいい決議だから、これは尊重しようと思っております。しかしながらもう一つ中央青少年問題協議会に意見を伺っておって、それがもうすぐ出そうになっておるのです。それをも参酌いたしまして、その後に文部省としての態度決定いたしたと思っております。いかなる場合にも応ずるために、いろいろと資料の内調査はいたしておりまするけれども、やはりこの二つの答申が出そろうて後にわれわれの決意を発表いたしたい、かように思っておるのであります。
  61. 辻原弘市

    ○辻原委員 答申を尊重するということで、ほぼ大臣のお考えになっている方向はわかったようであります。しかしながら中央青少年問題協議会の方の結論が出ないからそれまで待とうという。これも聞くところによりますると、大体三十日ごろに総会が持たれるように聞いております。そういたしますと時日はもう余すところ、きょうは二十六日でありますから、あともう数日であります。しかも中央青少年問題協議会というのには文部省を代表して幹事が入っておられると思うのですが、どなたが幹事に行っておられるか、それを伺いたい。
  62. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 幹事には社会教育局長と初中局長がなっております。
  63. 辻原弘市

    ○辻原委員 数日後に控えたこの重要な問題の協議について、文部省は何がしの意見も持たないで、フリー・ランサーで行くということはあり得ない。しかも幹事会に諮って原案が作成される。その中に文部省のそうそうたる内藤社会教育局長と初中局長の二人が入っている。意見を持ち合わさないということはあり得ない。従って今文部省が公式、非公式にしろ、これは重要な問題ですから隠しておく必要はないのです。今ここの席上で述べられたものと、それから中青協が出した結論と食い違おうが、さらにその後それらを参酌して内閣がどう扱われようが、そういうことは私はかまわない。しかし事の審議の経過、文部省のこれらに対する考え——後刻厚生省にもお伺いいたしますが、やはりこれは明らかにする必要がある。明らかにしないから、大臣がよく言われるように、どうも私の考えが誤解されて困る。それは言わないから誤解されるはずです。そこで私は一つ内藤幹事に、どういうようなお考えでもってこの青少年問題協議会に臨まれておるかということをお伺いいたします。
  64. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 文部省の決意を示せといえば、私が大臣でありますから、私の決意のことになります。幹事とか局長いろいろ御精励下さっておりまするけれども、私としてはやはり中央青少年問題協議会の決定があってから後に決意を明らかにしようと思っております。人に諮問しておいて、その答えが出ぬ先に諮問した人が私はこうだと言ってしまっては、諮問された団体はそれをどうします。いわゆる顔をつぶすわけです。それからまたこういうことが出るだろうと思っても、そのテキストを見て、私のもと考えておったことが幾分動揺するかもしれない。国家のためでありますから、最後の最善を尽して決定しよう、そういうので私軽々に今言わないわけなんです。しかしながら経過の内容、今どこまで行っておるか、どういうふうになりつつあるかということを局長にお聞き下さるならば、喜んで返事してもらいます。決定と私の言うのは最後の決定です。
  65. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 内閣にあります中央青少年問題協議会で実はこの問題が議論されまして、第一回の委員会がございまして、その委員会の席上に一つの案が示されたわけですが、その案の基本的な考え方は、この前の二十八年のときの内閣における不良映画出版物等の答申が出てございまして、その答申の中には法的規制はいましばらく様子を見るというような答申であったことは、辻原委員承知通りだと思います。それを冒頭に持ってきまして、そして、しかしながら最近映画界の一部に太陽族映画等好ましくない問題があるので、この段階では法的規制が必要であるというような答申が出ておったのです。ただその場合も委員の大多数の方が法的規制ということの内容が明らかでないという点で疑問を持たれた。これでは検閲制になりかねないというような不安もあるので、むしろ文部省の社会教育審議会で答申されたような線の方が望ましくないか。すなわち青少年に悪影響のある映画については観覧を制限する。そういう意味の法的規制ならば委員の大多数の方は御賛成になったのです。そしてその問題とさらに優秀映画を広く勧める。こういう積極面の方の活動がないじゃないか。こういう点も御指摘があった。それから一部の委員の中には、法的規制の内容が明らかでないから賛成しかねるというような方もあったわけであります。そこで、今度もおそらく今月の月末ごろに委員会が開かれると思うのですが、そのときに、前回に委員からいろいろ御質問が出ました問題を整理して、今度の委員会におかけすることになると思うのです。
  66. 辻原弘市

    ○辻原委員 さつぱりわからないのですが、その整理というのはいろいろ意見があって、初めは法的措置を講ずべきではない。これは発表しておるから私も承知しておりますが、その後あなたが今言われたような、観覧制限というような形における法的措置はやむを得ないだろうということで、それが意見の一致を見て、そういう線に立って審議を進め、次の総会で大体取りまとめるという段取りですか、その点を一つ。
  67. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 この前の審議会では法的規制というものの内容が明らかでないから、そこで青少年に悪影響のある映画の観覧を制限する、こういう意味の法的規制なら委員の大多数の方が御賛成だったわけです。ですからそういうような点をさらに検討し直して、今度の委員会にかけるようにという委員会からの注文があったわけです。しかしそれ以外にも優秀映画を広く観覧するような積極的な対策も盛られていない、それを盛るようにそういうような幾つかの意見がございましたので、そういうような点を明らかにしてさらに案を練り直して今度の委員会におかけする。こういう段取りでございます。
  68. 辻原弘市

    ○辻原委員 積極策の方はあとでお伺いしますが、今の制限するという消極策の方にしぼってお尋ねしてみたいと思います。そういたしますと、大体観覧を制限するという形における立法化の方向だ、こういうふうに承わっていいわけですね。そこでこれはどなたが考えても制限をするということになると、大きなかなめは二つになってくるのじゃないか。一つは製作過程から上映されるまでの間についての措置、それから今度は実際常設映画館で入場を制限するという問題が一つ。今の方向というのは、それら二つの問題を含んでお考えになっているのかどうか。その点をお伺いしたい。
  69. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 答申の線は主として青少年に悪影響があると認めたものについて入場制限をするというような線でございます。
  70. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうしますと悪影響があると認めたものとおっしゃるのですから、悪影響があるかどうかということを審査しますね。その審査はどういうところでおやりになるお考えですか。
  71. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 それは今後研究しなければならぬ問題だと考えておるわけですが、ただ答申の線はできるだけ民間の自主的な自粛を要望する。あるいは国民世論の推進をはかるという線も出ておりますので、そういう線ともにらみ合して考えなければならぬ問題だと思います。
  72. 辻原弘市

    ○辻原委員 その点についてどうするかは今後研究したいとおっしゃる。民間の方の自粛を要望するというような形も御考慮になる、こう今言われた。そういたしますと、映倫の方では、御承知のように従来のひもつき映倫を改組したいという態度を発表されて——これはまだ具体的に手をつけていないわけですが、態度はすでに発表されております。ああいうように映倫が直接タッチするかどうかは別として、完全な民間の運営機関として、そこでよしあしの判別をする審査機関、こういうふうにお考えになるのか、そういう審査を文部省が管轄の中に設けて、それにある程度の法的な規制を加えてやるというような考え方のいずれをとられようとするのか、その点を一つ。
  73. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 そういう問題も今後十分検討いたしまして考えなければならぬ問題だと思います。
  74. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは今の時期の答弁としては、大臣のお話もありましたので、私も質問に困るのですが、今後研究するといったって、あと二、三日であなたは総会に青少年問題協議会の幹事として文部省の態度を持って行かれる。だから今の段階においてそういう重要部分についてのおよその考え方が立たないということはあり得ない。それは人を食った答弁です。私は決して正式な決定とか何とかいうことじゃなしに、方向としてお尋ねする。そこは重要な方向なんです。だからどうするのかということについて、これは大臣のお考えを承わりたい。
  75. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 先刻から答えておることは御承知通りなんですが、でありますから、私はこうするという答えはきょうは言いませんよ。しかしながら今青少年の観覧について心配をして、法律じゃありませんけれども、各府県で条例を作っておる。これらの傾向を見ると、大ていこれは教育目的でやる仕事ですから、今教育目的のためには教育委員会といったようなものもあります。またPTAと名づける——これは法律の会じゃありませんけれども、この制度は日本全国に行きわたっております。それから学校の訓育に責任を持っておるものは校長先生であります。そういうふうな教育系統の者で審査をさせようという条例が大部分であります。ほんの一つか二つ知事がきめるということをやっておるのも見ましたけれども、これは数が少いようであります。今ややもすると、官僚統制ということは、二言目には新聞の方のおっしゃることですから、いわゆる官僚統制ではならないので、教育目的のためこするのだということがわかるようにする方が一般の方向じゃないかと思いますけれども、私がそうするということをきょうは言いません。ただ一般の情勢を言っただけのことでありますからこれは御了承願いたいと思います。
  76. 辻原弘市

    ○辻原委員 一般の情勢で言われたが、その一般の情勢を大臣が肯定をされたと私は受け取りたいと思います。若干私見を申し上げれば、映画が国家の機関で審査されるということは、何といったって文化財の禁止、制限、検閲の一つの窓になる。だからその点だけは十分に配慮すべきである。この太陽族映画の問題が非常に世論の喚起を呼んで、それ以後の動向を見ましても、これは映画製作者それ自体の問題に遺憾の点があると思いますけれども、世論の動きとしては非常に強いものがあります。何人もこれらについての悪影響を完全に否定し去る者は私はないと思う。そういう点から世論の力にまかしておいて解決のできる面が相当ある。しかし教育的に考えた場合には、これはついては環境の浄化という立場からその取り扱いを考慮しなければならぬ点のあることはこれは再三申し上げた通りであります。ですから私は先ほどからだんだん承わった中での二つの問題、入場を制限するための教育上の措置、これについてはわれわれも考慮してしかるべきだ。しかしその前提となるいいか悪いかを判定する審査機関を国が積極的に設けるということは、これは好ましからざる方向であって、取りやめるべきだ。そういうようなもし立法化の方向に行くならば、大臣の今お話のごとく、教育的にあるいは民間人等によって自主的にその取捨判別が行われ得るような形ができ得れば、私はこれが一番いいと思う。だからむしろ文部省が力を尽すならば、そういうような世論、そういうような動きを助長すべきであって、これをにわかに文部省がその問題を引き取つて、文部省の中で、あるいは国がそれを作るという、そういう立法化は誤まりであると思います。この私の見解について大臣はいかにお考えになりますか。
  77. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 辻原さんの意見はまことにごもっともな御意見と思います。尊重いたしたいと思っております。
  78. 高津正道

    ○高津委員 関連して。不良映画の悪影響ということを文部大臣はほとんど何人よりも一番強く感じておられるらしいのですが、実害がありと認められるのはどういう点からでしょうか。青少年に実害ありという証拠ですね。
  79. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ある高等学校で非常な悪いことをした生徒があったのです。聞いてみたら暴力教室の映画を見てやりたくなった、こう告白しておりまするから、映画それ自身が青少年の行いに影響ありということは証明されておると思います。
  80. 高津正道

    ○高津委員 暴力教室の映画を見て、その影響で学校の生徒がそういうことがあったというのは、日本で何百何十そういう例が出ておるのですか、一つですか。
  81. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 あなたのお問いは、それが影響するかどうかということですね。たとい一人でも人間の生命は尊いのです。たった一人の子供でも、あの映画を見て映画とかりに同じようなことをやったという証拠があれば、やはり映画は子供に影響があるという証拠なんです。それを一つ一つ数で数える必要はありません。それは例ですけれども、一つでもあった以上は、これは重大問題です。
  82. 高津正道

    ○高津委員 それは新聞で見られたことであろうと思うが、文部省としてその影響東京で調べ、大阪で調べるというように調べた統計的なものを持っておられるのかどうか。
  83. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ほとんど一々について調べる必要はなかろうと思うのです。現に悪映画の影響が少年にあったということが一つある以上は、一人の心といえども奪うべきでないのでありますから、そういう統計などはいまさらやってから後という必要はなかろうと思います。
  84. 高津正道

    ○高津委員 江戸川乱歩氏と私話したのですが、ある犯罪をやった人間を捜査したら、江戸川乱歩の作品が出てきた。しかし自分が実際にその本を見ると、その人間の犯罪には全然関係のない自分の作品だけ持っておったので、自分はまことに迷惑だと彼は語っていたのでありますが、だから暴力教室の影響もあるが、いろいろな影響が青少年には及んでおると思う。映画からもむろん影響がありましょうけれども、大臣の考え方は、明治時代には性道徳というものは実にりつぱであったし、青少年もりつぱであった。大正もそれに次ぐし、だんだん悪くなって、今や事ここに至るかというような、昔をよしとされるその根本の考え方から、何を見られても今のが悪いと判断されるように私には映るのでありますが、私の今述べた見解に対してあなたのお考えはどうでしょうか。
  85. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私の会社観が何から影響しておるかということは、むしろほかの人から御判断を願いたいと思うのです。清瀬が明治時代に生まれたからそのときのことを夢みておるとか、あれはどういう学問をしているからこういうことを思うておるということは、私自身よりそとからごらん下さる方がこれはいいと思う。清瀬一郎の心理研究は、あまりお役に立たぬと思います。しかしながら悪い映画が児童の行いに影響ありということは、これは万人の認めるところである。ちつともかまわぬというような人は私はないと思うのです。いわゆる進歩学者は、これは当りまえなんだ、昔からあったんに、今でもおとなの太陽族があるじゃないかという御論もありますが、議論は多少おもしろく言わなければならぬのでありますから、雑誌、新聞等に反対の論もたまには見ますけれども、これは議論のための議論であって、今日映画館などでやっているわいせつに近いような行いを子供に見せていいでございましょうか。私はこれは考うべき点と信じております。私がこんなことを思うのが、私の過去における修養の足りなかったことかもしれませんけれども、日本全体としてはこの映画をどうかしてくれということが希望なんです。われわれは政治家です。これが一つの政治問題になっている以上は、これを取り上げざるを得ないのでございます。
  86. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 実は最近の警視庁の青少年犯罪の統計を見ますと、ここ数年同に約十倍以上にふえているわけです。その犯罪の原因をいろいろ調べている。これは読売新聞調査ですが、青少年犯罪の大体六一%が映画、小説による影響であるという調査も出ておりまして、もちろんお話のように全部かそうでなく、ほかにもいろいろ原因かあると思いますが、映画と小説の影響も看過できないという事実だけは明らかになっていると思います。
  87. 高津正道

    ○高津委員 元来性風俗文化という言葉を使いますが、性風俗文化というものが、昔よりも今が悪くなっているのではなしに、ジグザグ・コースをたどってだんだんよくなっていっていると私は見るのです。明治よりも今の方がよくなっている。港における、あるいは農村における夜ばいだとか、いろいろ昔より今がよくなっていると思います。けれども、その間に出てくる太陽族映画というものもあるのでありますが、ジグザグ・コースをたどりつつだんだん前よりもよくなっていくんだ。その過程に現われるちょっとしたところをとらえて大騒ぎをしないでも、しかるべくいくであろう、こういうふうに見るべきではないか。それからまた文部省としては、法的規制を考えないで、地方の自治体が条例でやってくれればそれでもいい、そういうふうになっていることを喜んでいる、こういう意味なのか、そこがはっきりしないのですが、私は地方が条例でそういうものを作れば、いろいろそれを悪用することになりはしないか。よほど厳密な規定でないと、進歩的なものでも、これを青少年に見せてはならないというように広がっていく傾向があるし、地方が作っても中央が作っても、そういうものは行き過ぎではないか。家庭が注意すればいいし、PTAが考えればいいし、法的規制ということは、地方が作ることも問題だろう、このように考えるのでございますが、これらの点に関する大臣の御所見を承わりたいと思うのです。
  88. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 性道徳または性風俗が昔と今と比べてどうだろうとか、ジグザクじゃないかとおっしゃるのですが、あなたがそうおっしゃるのは御自由でございます。しかしながら文部省といたしましては、やはり青少年の教育をしなければなりません。昔悪かったから今も悪くていいんだ、こういうことは文部省は言っておりません。われわれの任務は戦後の民主主義の日本、平和主義の日本、この日本において将来立つべき、あるべき人間像を想定して、これに近づけしめるように少年、青年を教育し保育する義務があるのであります。昔悪かったから、強姦もあった、どろぼうもあったんだから、これは人間の本性だからほっておくというわけにはいかないのです。戦後、文化国家として進むべき日本の人間像を描いて、これに近づかしめる。そしてその人間像というものは、性道徳を尊重する、他人に迷惑を及ぼさぬ、自発的に進む、自分が自発的に進む以上は他人の権利も尊重しなければならぬ。こういう理想を持って進んでおるのでありまして、昔悪かったからとか——悲しいかな人間の本能というものも神様の通りではありません。ある人は、人間は神様と動物の間だと言っておる。しかしながらなるべくは神様に近づけるようにするのが、これが教育です。そのために日本は六万近い学校を作っておるのです。本能通り動いていいのなら学校は要りませんよ。職工を養成すればそれでいいのです。産業も進むのです。いやしくも道徳を進めるということは、もう学校を作ったときがもとでございます。それゆえに私は、昔よかったか悪かったかというようなことはあまり重要じゃないと思います。日本にも戦国時代もあったし、あるいはまたもう一つ昔の一夫一婦がきまっておらぬ時代もありました。昔の豪傑は英雄色を好むで……(笑声)こんな時代もあったのです。だけれども、それを手本にして、今青少年に対する放らつな生活を許すという議論には、私はならぬと思うのです。  それから御質問の終りのところですが、これは辻原君にたびたび答えたように、統一立法をするやいなや、また地方の府県における条例にまかすやいなや、そういうことはきょうは私明言いたさないつもりでおるのであります。しかしながらいい方法がありましたら府県々々で別々にすべき性質のものではないと思います。教育の水準保持ということもたびたび言うのでありまするが、たとえば東京と横浜は境を接しておる、東京でこしらえたのと横浜でこしらえたのと違う、しかし電車も通ずればバスも通ずるので、それでは寛大な方へ行こうかといって横浜の子供が来てはこれは何の役にも立たぬのですから、もしよい工夫がつけば全国統一の方がよいと思います。けれどもそれは全国統一がよいといっても、その統制を国がするということには限っておらないので、辻原君の御意見に敬意を表したのはそれであります。必ずしも官僚統制しなければ国の法律じゃないとは考えておりません。国の法律で地方の自治体にも許しておるのです。国の法律教育委員会に委託することもできるし、PTA出身の人に委託することもできる、そこは誤解のないようにお願いしたいと思います。
  89. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の高津委員の質問は、非常に大臣気負い立って御答弁になりました。私もこれは重要な点だと思うのです。というのは、文部省が映画の問題をものするのは、何も悪い映画を子供にあてがって子供がその映画をまねするような形において映画の教育をやろうというのではない。映画の教育は、これは申すまでもなくどろぼうをやっておる映画があれば、そのどろぼうをやっておる映画を見てどろぼうをしないというために映画教育の価値があるでしょう。だからもしかりに、極端にいえば、どんな性映画があっても、その映画を見て子供がそういうことをしちゃならぬと受け取ったならば、その映画については価値があるでしょう。だから映画の価値判断というのは結局見る者の目なんです。私はそう思う。だから私はそういう意味で、今高津委員が問題を提起された、一体どういうような影響を与えるだろうかという点についての研究というのは、そう簡単に私は必要がないと断定されては文部省の責任が勤まるまいと思う。一体どういうような方面にどういうような影響を与えているかという、そういった調査ぐらいはあってしかるべきだと思う。ないとするならばこれは漠とした世論をもっておやりになるという浮草のような文部省の見解だと言われてもやむを得ないと思う。少くとも文化国家を標榜する以上文部省は文化省です。一国の重大な文化を預かるのが清瀬大臣なんですから、その一国の文化を育てるためにどうあるべきか、同時にその文化の中に子供たちがよりよい文化を学んで、教育的に効果をあらしめていくかということにお互いが悩んでおるわけです。そうした意味においてこの問題をとらえたならば、そういった科学的調査あるいは倫理的調査というものは私は必要だと思う。簡単でけっこうでございますから大臣から一つそれらの調査について今ないならばおやりになる心組みがないかどうかお答えを願いたい。
  90. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 どこまでが太陽族映画で悪いんだ、これから以上はよいんだと直線的な線を引くことは非常に困難なことであります。同じ話でも場所によって人が笑う場合と怒る場合とある、そこの調子ということはむずかしいので、お説のように研究はしなければならぬことでありますけれども、その結果一直線というわけにはいくまいと思います。しからば何が標準かといえば、人は心を持っておりますから、多数の人が集まってこれはいかぬと言えばそれは一つの基準に落第しておる。これはよろしいということを常識ある人が言えば、それは基準をパスしておるのであって、文字でこれだということは非常にむずかしいのです。仏者の言う不立文字でこれを表わすことはむずかしいと思います。けれども研究はしなければなりません。それからまた人間の道徳基準ということも逐次動いていっているのでありますから、あなたの御意見御無理じゃありませんけれども、よほど困難なことと思います。そこでこれを許すか許さぬかということをきめる尺度は委員会できめることになると思います。今昔のようにだれか一人というわけにはいきませんから、委員会で五人なら五人の人の心を平均したものがその尺度になると思います。
  91. 辻原弘市

    ○辻原委員 調査の必要は認められたようであります。むずかしいとおっしゃるけれども、私はそのむずかしい問題に取っ組まなければ文化などというような問題は、これはお互い人間が幾ら蝸牛角の論争をやっておっても始まらないと思う。やはり毒が変じて薬となる、簡単なたとえでありますが、私はそういう立場でも、この映画とかあるいは出版物とか、演劇というものをながめる必要があると思う。だからそれが毒になるのはどういう程度のものであるか、薬と称するのはどういう程度のことか、その限界はどうかということを絶えず研究を進めていくことか最も効果あらしめることである、文化を伸ばすことだ、軽々に簡単に、およそここらだろうというようなことで、使いようによっては薬になる部分までも切り捨ててしまうというような行き方が、今日の世論を背景にしてこの問題にタッチされている人々の頭にないかどうかということを心配するのです。まあこの点は論争になりますから申し上げませんけれども、データを今日お持ちになっていなければ、そういうような調査をそれぞれの専門分野に依頼しても、文部省の方で直接おやりになるにしてもできていると思う。ここに一例を申し上げますと、ある新聞が太陽族映画をどう見るかという世論調査をしております。ところがこの対象の取り方は、二十才以上の人をとっております。どういうような形に調査の方法をやられたのか私は克明にはわかりませんけれども、一つはこういう調査も世論を見るということには大事でありましょう。しかし問題は、それに一番強い影響を与えられるだろうと思われるたとえば高等学校の生徒、中学校の上級学年の生徒、それがどういうふうに受け取っているかという心理的影響調査が、遺憾ながら今日の調査にないのです。私どももあのチャンバラ映画を見て帰ってきて子供たちがまねをする、やはりこれは困ったことだなと思っております。しかしそれはおとなの頭かもわからない。だからあの映画を見て、どうも口と口とがくっついてきた、ああ困った映画だなと思う、それは場合によってはおとなだからかもわかりません。全然そういうことを知らない善良な指導を受けて育つてきた子供、いい環境において育ってきた子供は、場合によっては知らないので、おとなは顔を赤らめても、子供は平然としているかもわからない。だから私は物事を判断する場合に、おとなの考え、おとなの頭というものがやはり入っているのじゃないか、こういう点も考慮すべきじゃないか。非常に熱心にお母さん方がやっております。しかしお母さん方の行為それ自体を考えて、ああいうことは困ったものだ、こういうふうに考えられる部面があるのじゃないか、ほんとうに子供というものを見きわめて考えてやっているかどうかという点について、相当突っ込んだ研究をやっておく必要があると思う。そういう意味で、子供たちに直接与えている影響の科学的なデータというものも、私は文部省あたりでは準備されるべきが至当じゃないか、こういうことを一つ申し上げておきます。  それから先ほどの法律をどういう形で作るか作らぬかの問題でありますが、私の申し上げましたのは、端的に言えば、法律委員会を設けて、そしてその委員を文部大臣が任命をして、その所轄下に委員会を運営するというような形でセレクト機関を設けるのは、これはやはりそういった映画というものを作っていく、また一般にそれを見せるということに対する窓口を、いい悪いは別にして、とにかく狭めることになる。やはり一般に見せるもの、文化というものは、これは大衆の批判をもってセレクトしていくのが正しい。だから次善の手としてそういうことが必要であるならば民間の力、世論を借りて、そういうふうにおやりになるのが至当であろうと申し上げたのでありますが、いまさっき大臣のお答えによりますると、やはり何か五人とか十人とか委員会というものを作られてやられるようなお話でございました。それの最大公約数が一つの基準だろう、こういうお話であります。その点がどうもちょっと、私の意見を尊重していただいて非常に喜んでおったのでありますが、いささか食い違うように思いますので、少しく確かめておきたいと思います。
  92. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今おっしゃる前段のところは同感です。絵それ自身の調査も一つだけれども、それを受ける青少年の感受性ということを考えなければならぬことは、あなたのおっしゃる通りであります。お互い青少年時代を一たん過ぎたのでありますけれども、その当時から時間がたっております。しかしながらだれでも考えるところで、ことに十五、六、十七、八の時分には、ちょっとしたことが非常に感動を与える。ことに性問題についてはそうでありまするから、その点に注意をすることはあなたのおっしゃる通りであります。  後段のこと、これを調査する委員をどうするかということは、今私は申し上げかねます。けさから申し上げておる通りであります。しかしだれかがこれをきめなければならぬですから、適当なことを委員会考えて下さることと思うておるのであります。どつちがいいかということは、けさから申し上げておる通り私は避けておるのであります。御了承を願いたいと思います。
  93. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこでちょっと厚生省に伺います。厚生省の所管の方だと思いますが、あなたの方も、内閣としては最終的な意見を求める中青協の幹事役として入っておられる。それで今までいろいろこの問題について、文部省あるいは法務省等と突き合わされて構想を練られたやに承わっておりますが、すでに結論を出す段階に来ておる。先ほどからるる文部省の態度を承わりましたが、大体その文部省のああいう方向をあなた方としては支持されるお考えか、あるいは別途のお考えを持っておるのか。少くともあなた方はその他にも福祉法の建前で、これらの映画の問題については重要な役割を持っておるわけでありますから、そういう点で一つ厚生省としての構想があらばお聞かせ願いたいと思います。
  94. 渥美節夫

    ○渥美説明員 厚生省におきましては、その所管の児童福祉委員会というのが児童福祉法によって設置されております。性的な出版物、映画等の悪影響の防止に関する決議、こういうような決議を昭和二十八年十二月に児童福祉委員会がいたしまして以来、こういうふうな児童に悪影響を及ぼす不良な映画なり出版物に対する問題につきまして、いろいろと行政官庁である厚生大臣の方に意見の具申なりあるいは答申なりをされてきておるわけでありますが、実は今回のいわゆる一連の太陽族映画の問題につきましても、児童福祉委員会自体でもいろいろと問題が取り上げられております。しかしながらいまだその具体的な内容につきまして、特に立法措置等の問題につきましては目下いろいろと御検討中でございまして、来月の初めごろにこの児童福祉委員会の本会議が開かれる運びになっております。従いまして今お話の今回の中央青少年問題協議会に厚生省がどういうような態度をとるかというふうな御質問でございましたが、おそらく厚生大臣といたしましてもその児童福祉委員会の御意見を尊重するというふうな立場になると思いますので、この月末に開かれます中央青少年問題協議会におきましてはその態度決定ができかねるのではないか。十一月の初めに開かれます中央児童福祉審議会の意見がきまりまして後に正式のその態度がきまるのではないか、かように思っております。
  95. 辻原弘市

    ○辻原委員 ちょっと私はおかしいように思うのです。そういたしますと結局文部省としては、中青協の答申、意見がまとまればそれに基いてやる。ところが大体今までの経過から、月末に開かれる中青協がほぼ意見のまとまりだと私は判断いたしておりますし、また文部省も大体そういう判断だろうと思います。ところが厚生省の方は福祉審議会の方の結論を待たないと態度がきめられぬということになれば、結局はこの月末の育少年問題協議会では結論が得られぬというように判断していいですね。
  96. 渥美節夫

    ○渥美説明員 中央児童福祉委員会が厚生大臣に対する諮問機関であり、かつ意見の具申の機関である。それとまた厚生大臣が行政機関として別の態度をとるというふうなことは、一応理論的にはあり得るかと思うのでありますけれども、しかしながら、今申しましたように、児童福祉委員会自体の意見を尊重するというふうな立場で進んでおりますので、お話の今度の中央青少年問題協議会に関してもはっきりとした態度が出しかねるのではないか。実はごの三十日に開かれるようになっておりますので、そこいらの意見の調整をどうするかということをなおまだ研究しておるのでありますが、いずれにいたしましても、厚生省といたしましては、中央児童福祉委員会意見を十分尊重いたしまして、それによりましてさらにまた、あるいは開かれるかもしれません中央青少年問題協議会において発言をする、意見を出すというふうに考えておるわけであります。
  97. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間もありませんので、詳しく厚生省にお伺いすることができませんし、今の御答弁によりますと、あなたの立場でははっきりしたことが言えないようであります。そこで、制限という消極面の問題についてはそれだけにいたしまして、最後に積極面について一つお考えを伺いたい。  それは、社会教育審議会の分科会でも、青少年分科会でも、その結論は積極、消極の二面があった。この前の委員会で私が伺ったときも、私が児童映画館の設置ということを申し上げたところ、大臣もそれを肯定された。私は何も思いつきで申したのではありませんので、これは昨年の九月でありましたか、エジンバラでのユネスコの文化部会等において、例の児童映画の国際センターの問題が決議として取り上げられております。その後これが各国に相当な影響を与えた。そういう立場から、おそらく文部省もその構想を持っておられると思いますが、それに関連して、私は環境の浄化という意味で、中央のみならず、それぞれ常設館があるような地域にわたって、そういうものが将来設立されるということは非常に意味のあることだと考えるのです。そこで、その国際センター、国内センターというものをどういうふうに具体化されるか。この前は体育館の下にそういうものを作りたいという簡単な構想であったのですが、それを一つ承わりたいのと、それから地方に及ぼしていくというふうな点についての方策、努力をどういうふうに考えられるか、これを承わりたい。  それから、いま一点は、これは資料の御提出を求めたいのでありますが、それは内藤局長はずっと各国の社会教育についての事情を調査されておる。そういう点で、おそらく非常に意気込んでおられるので、諸外国の立法例、諸外国のこういった問題に対する取扱いの例というものはかなり豊富に持っておられるのではないかと思うのです。その点、各国においては、こういった不良文化財の取扱いについて、制限があればどういうような形において制限しているか、取扱をしているか、この点を一つ資料として御提出をいただきたいと思います。今言いました点についての御答弁をお願いいたします。
  98. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 積極面の対策といたしまして、一つは優秀映画の減免税の措置、これは間接税の増徴との関連でなかなか困難でありますが、主税局と打ち合せて、特に文部大臣の特選になつたような優秀映画の入場税の減免の措置について特に申し入れをし、相談をしております。それからなお文部大臣が選定いたしました優秀映画を買い上げてこれを地方に巡回する、こういう予算的な措置も講じております。さらにお話の児童映画館、これにつきましての普及について今後どうするか。中央のみならず地方にこういう点をどうするかというお話でございましたが、これも現在の映画館に対して、特に児童映画館というものとの調整をはからなければならぬ。一つはたとえば日曜日の朝を児童映画館に開放してもらうとか、そういうような点もあるし、お話のような新しく設置の問題もあると思います。こういう点も十分検討いたしまして、将来児童の生活環境をよくするという点に努力いたしたいと思います。なおこのほかに映画のみならずスポーツ、あるいは教育キャンプ、あるいは青少年会館——実は青少年会館というものを本年と前年度で十五館作りましたが、今後これを少くとも全県に行き渡るようにいたしまして、ここを児童のキャンプ・センターにするとか映画館にするとか、そういうことも研究してみたいと思っております。なお音楽とか演劇もこういうところでやれるように、演劇音楽の巡回指導と申しますか、巡回鑑賞、こういうような予算も計上しておりますので、できるだけ青少年の環境浄化につきまして今後努力を続けて参りたいと思います。
  99. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 内藤社会部長にお願いいたしますが、辻原委員御要求の資料をお願いいたします。
  100. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 承知いたしました。
  101. 平田ヒデ

    ○平田委員 私は辻村事務官にお答え願いたいと思うのでございますが、問題の映画を見まして——問題の映画といいますのは、ただいまこの委員会で問題になったような、いわゆる不良と目されるような映画でございますが、その映画を見てその映画のまねをする、先ほど大臣がおっしゃいましたように、その映画そのままをまねするような子供が出るということは大へん心配だという御意見でございました。いわゆる問題の映画と問題児といったようなことにつきまして、大ぜいの子供もそれを見ているのですけれども、ほかの子供はあえてそういうようなまねをしない、これは健全な精神と申しましょうか、私どもの心配のない子供たち、これについては問題がございませんけれども、映画を見てその中で一人でもそういう問題の子供があるということが問題なのだと、大臣も大へんその点を御心配になっていらっしゃいました。どうして心配しなければならない子供ができてくるのか、その点でございます。掘り下げた御意見を承わりたいと思います。辻村事務官はかつて厚生省の教護課のその方の担当者でいらっしゃいましたから、私はお詳しいと思いまして、そういう問題を掘り下げて考えなければ、私は幾ら美辞麗句を連ねても解決の道は生まれてこないと思うのです。そこでどうか辻村さん、掘り下げた御意見をお聞かせ下さるようにお願いいたします。
  102. 辻村泰男

    ○辻村説明員 私にただいま御期待いただきますような十分なお答えができますかどうかちょっとわからないのでございますが、ただ私が今携わっております特殊教育関係の仕事のことを考えてみましても、特に精神薄弱児などの場合でございますが、適正な客観的な判断がつきかねる、見たものをそのまままねるとか、ちょいとそそのかされるとすぐに善悪の判断もなしにそういうようなことを行なってしまう、かようなことは非常にしばしばあるのであります。そういう意味におきまして、子供の持っております知能とか、あるいは感情、意志の働きとか、そういうようなことで劇映画を見ましても影響が大きいということは、先ほど大臣もおっしゃいました通りだと思うのであります。特に問題がこういう点にもあるように私思いますのは、たとえば家庭環境から申しまして、片親でありまして、その残っております片親が働きに出なければならない。その子供が自・然学校から帰りましたあとの時間の消費の仕方で、手っとり早い映画を見に行くというようなことがしょっちゅう起りがちでございます。そうしてそのために映画をしょっちゅう見るので、いつとはなしにその映画の影響を受けるというようなことも、特殊教育の方面におきますいわゆる不良少年の問題の事例を見ましても多いのでございます。ですから、そういう心理的な面と同時に、生活環境ことに余暇指導の問題とからみ合せてこういう映画の影響という問題も当然考えていかなければならぬと思うし、私が申すまでもなく、社会局の方におかれましてもそういうお考えで進んでおられるように私も考えております。突然の御質問で、とても御期待のようなことが申し上げられないでどうも申しわけございませんが、以上お答えいたします。
  103. 小林信一

    ○小林(信)委員 新しい教育委員会法にのっとりまして教育委員が生まれたわけでありますが、選考された人たちは大体大臣の御満足のいくような人たちがそろったかどうか、あるいはその選考の方法におきまして、文部省としましても予想しない支障になるような問題が出てきやしなかったか、あるいは手続上の問題で法律上不備な点がありはしなかったか、要するに新しい制度の施行でございますので、いろいろ文部省としてのこれに対する反省というようなものがありましたらお聞きしようと思っておったのですが、大へん時間がないようでございますし、ことに当該局長もおいでにならぬようですから、この問題はいずれかの機会にゆっくりお聞きすることにいたしまして、一つだけ時間が許されておりますのでお伺いいたします。  それは、先日開かれました全国の中小学校の校長さんの集まりでございます。この会議に対しましても、文部省としての教育行政のあり方というような考え方の問題で多少伺いたいことがあるのですが、きょうは一つだけ特にお伺いしたい。それは、中小学校の校長先生は教員組合の組合員になることは至当でないというような御意見が出たと新聞にありましたが、出たとするならば、それに対してどういう御見解を持たれたか、その点をお伺いしたい。
  104. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今仰せられた前段の教育委員のことは、みなりっぱな委員が御承認になって、喜んでおります。  過般の校長協議会は、御承知通り研究会でございます。昔の知事を集めた地方長官会議のような、こちらから訓示をするような場合じゃございません。しかしながら文教に関係いたしておりまするから、やはり質疑応答はございました。私の出席しておる席においては、校長が職員組合に入るのがいいか悪いかの点は出ておりませなんだが、他の局長の出席のときにそういう問題も研究されたようでございます。文部省としては現在の状態についてお答えするのほかはございませんので、現在においては校長が組合に入ることは禁じておらない、御自由であるということ、しかしながら、その結果板ばさみになるようなことがありはせぬか、すなわち、組合に属しておれば組合員でありまするから、あるいは学校において一般の教員が組合の支部の長で、校長がこれに服さなければならない地位にあるような例外のことも起るであろうというようなことも研究されたように聞いております。しかしながら、そういう場合には、校長の公けの職務を組合の決議で左右することはできないのであります。さような矛盾したような状態はなるべくは起らない方がいいだろうという感想は述べたと聞いております。私は、大体それでいいのじゃないか、組合の方においても校長の立場を御研究の上適当な決議をされるのが当然である、校長は決議があった場合には自己の公けの地位にかんがみてこれに対処するということがいいのしやないか、こういうことてあります。今これについて早急に何ら行政的立法的解決をする考えは持っておりません。
  105. 小林信一

    ○小林(信)委員 これは従来から問題になっておったところでありますので、今回校長さんの集まりでそういう文部省の希望的な意見が述べられたというので、だいぶ地方の人たちは、どういう考えで文部省はそういうことを述べられたか疑問に思っておりますので、私はお尋ねするのでありますが、たまたまこれが新教育委員会法と一緒しになりまして、任命権——人事権の問題で、校長さんが教育長に進言することができるという条項が生まれているから、今度は校長さんが部下教職員を採用したりあるいは転任させる意見を申し述べる権限が出ておるという点から見ても、校長さんが組合員になっておったのではまずい、かえって理事者側に立たなければいけないというように、新しく生まれた法律そのものを簡単にとってきてそれに裏づけをする意見と、もう一つは、今大臣のおっしゃられたように、板ばさみになることが多いということで、組合員でない方が好ましいではないかという問題が出てくるわけです。私は新しい委員会法の校長の権限はその当時特にお伺いし、この前も委員会で申し上げましたが、その後流布されている自民党の新教育法解説係というような人たちが説明するところでは、今度は校長さんが部下教職員に対してにらみがきく、そういうことを流布されている。それと一緒になりまして、なるほど校長さんは組合員であることが不適当だという見解が出てくるわけです。しかし、あの法律を審議する場合の文部省の御意見は、それは校長が部下の教職員というものに対して自分が裁量する権限でなくて、部下の希望を聞いたり、あるいはいろいろ協議の上で学校側としての意見教育委員会教育長に申し述べるものである、校長個人ではないということを言われたわけですが、そこらの点に非常に解釈上問題がありますが、もしあの当時文部省が説明されておる通りであれば、いわゆる部下教職員に対してにらみがきくというような性質のものでない以上は、それでもって校長さんが教員組合の組合員になるということは不適当であるということは言えない。それから文部大臣のおっしゃる板ばさみという問題ですが、今のような状態で、もし校長さんが組合員でなく、理事者側に立つべきものであるとするならば、校長さんが教職員の諸君から何か要望されても、あるいは希望を申し入れられても、校長さんには権限も何もないのですから、これこそ校長さんが板ばさみになるわけです。私は何も校長さんが組合員であることが至当であるというふうなことを言っておるわけではないのですが、文部省のおっしゃることもまことに根拠がない言い方じゃないか。私はこれはまことに極端な言い方ですが、この前の委員会におきまして、中小学校の校長さんたちを文部省へ集めるけれども、これはあくまでも校長さん個人を集めるというふうな考え方でなくて、中小学校の教育に当られる方たちの代表を集めるのだという面もしっかり持っていただきたい、こういうふうに申し上げて、そしてとかく世間からいわれておるように校長と教職員とを分離して、そして今とかく文部省にはじゃまになる日教組というものの分裂をはかっていこうというような誤解を持たせないようにすべきだというようなことを言ったのですが、最近の文部省の発言から端を発して、それが今のような問題で、簡単な理由でもって地方にいろいろ解釈されて流れておるものと考えますと、結局何か組合を弱体化させる、少しでも教職員の中に別な固まりを作ることによって組織を弱めていこうというふうにもうかがわれるのですが、重ねてこの点についての大臣の御意見をお願いしたいと思うわけであります。
  106. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 先刻のお問いは、この間の校長協議会でこういうことが起ったかという御質問でありましたから、私の出席したときには起らなかったが、他の者の出席したときにその問題があって、こう答えたという過去にあった事実を答えたのです。今回は私自身の御意見をお聞きになりましたか、私は板ばさみは起らぬと思っておるのです。校長はあなたがおっしゃるように内申権といっておりますが、今の任命権は府県教育委員会に付属するようになりましたが、その前に校長は内申権を持っておるのです。これは校長が法律に与えられた固有の権利であります。もし組合がその内申権を拘束する決議をすれば、それに従うべきものではありませんです。自分の良心に従って内申すべきでありまして、そこに板ばさみなんて感ずる校長は、これは公私混淆の校長です。ですから板ばさみはありません。それからその次に日教組を弱体化する考えを持っておると言われるが、そんなけちな考えはちっとも持っておりません。ただし行動をされる以上は、日教組は尊重します、しかしながら間違った行動をなさる分にはこれには従いません。そんなけちくさい、これを分裂するのなんのというようなそういう弱い考えを私は持っておらないのであります。
  107. 小林信一

    ○小林(信)委員 この問題は大事な問題だからさらにお尋ねしますが、そんなけちな考え方をする清瀬文部大臣でないことは、これはもう私も考えておるわけなんです。しかしそういうような、世間に誤解を与えるようなところかある。というのは、今大臣がおっしゃっているところからも出てくるわけですよ。校長さんに内申権を与える、それだけでもって校長さんに何かえらい理事者的な立場が与えられているというふうな考えをしたら、これは単に任命権、人事権だけの問題でなく、もっと教育上の問題もあるし、あるいは生活上の問題も先生方は持っているわけですよ。そういうものに対して校長さんはどうすることもできない今、立場なんです。それこそほんとうに板ばさみになってしまうのです。これに対して板ばさみにならないという根拠があったら承わりたいのです。  それから今の内申の問題ですが、内申権とおっしゃったのですが、それほど強い権限ですか、内申することができる、その内申も具申ときっと地方の教育委員会ではとりますよ。校長なんかに内申権をこの条文からは考えられない。地方教育委員会、県の教育委員会に対する内申権を、果してどの程度までその権限が執行できるか、これまた問題なのです。県の教育委員会は内申を持ってということだけであって、内申によって人事をやるというふうなことには考えられておらない。とにかくこの法律が、——おそらく文部大臣はお考えになっていると思いますが、今後これが施行されて、いよいよ人事問題を扱う場合には、県教委と地教委の間ではあの条文をめぐって相当問題となると思います。ましてきわめて弱く書かれてある校長の内申権なんていうものは、権でなくて、することができる程度のものであって、これは決して権限でも何んでもない。今私は大臣にこういう意見をお話ししたのです。審議の最中には文部省側はどういうふうに答弁されたかというと、校長は部下と別個の立場でもって、部下を常に自分が監督するという立場で、あの教員がなまけているからこうせよとか、あの教員はこうであるからどうせよとか、そういうような昔の権限のような形でやるのではなくて、それは相当先生たちと話し合いをした学校側の意見ということで内申するのだ、こういうふうに言われたはずですが、今大臣にお聞きすると、今度ははっきり部下の要望なんというものは、自分の一つの考えがあったら——そんなものを入れなくて、自分独自の考えでもって内申をするということになったら、これは法律解釈が大へん違ってくるのですが、もう一ぺん大臣、部下とは何ら関係なく絶縁状態において校長個人の考えでもって内申をするように文部省はあの条項を考えていたのかどうか、これが一つ。そしてさっき板ばさみにならないと言いましたけれども、もし校長さんが理事者側の立場に立ったとしたらば、生活問題、教育上の問題、これが今度は先生方と対立的な立場となって板ばさみにならないかどうか、この二つをお伺いして、私は時間がございませんので、問題をあとに残したいと思います。
  108. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 世の中のことは人間の接触によって進行しているのであります。それゆえに部下の言うことも聞かなければならぬ、組合の言うことも参考にするのは当然でありますけれども、組合の決議で内申をかくしろという決議があっても、それには従わぬでもよろしいので、内申をいかにするかは、内申する人の最後の決断によるのであります。決断をするまでに意見を聞くことは、これは人間の接触で当然であります。次の問題もそれと同じものという考え方をいたしております。
  109. 野原覺

    野原委員 関連して。校長の組合加入の問題ですが、私は大臣の御見解には非常に敬意を表しますけれども、校長会の席上で初等中等教育局長ともあろう者が、校長が職員組合に加入することは好ましくないというみずからの私見を押しつけていったということは問題があると思う。これは確かに問題があると思う。きょうは初中局長がここに見えてないので私は非常に残念に思いますけれども、これはやはりあの席上に出ておった校長は、組合に加入することには文部当局は反対だと受け取って帰っておる。校長諸君が私のところにたずねてきておる。だれが言ったかと言ったら、緒方局長がそうはっきり申しておったと言う。従って大臣の先ほど申された御見解をもって私どももこれは賛成でございますから、すみやかに何らかの形で全国の校長諸君に対して御訂正を願いたい。大臣のそれに対する御所見を承わりたい。
  110. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そのことは現実に答えをした緒方局長が次の委員会に参るでありましょうから、そのときにお願いしたいと思います。私は報告を受けましたけれども、それが狂いが生じるとよくありませんからそう願います。
  111. 野原覺

    野原委員 そこでやはり問題になりますから、当時の速記録があるでしょう。
  112. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ないのです。速記をつけなかったのです。
  113. 野原覺

    野原委員 いろいろあなた方として申されたいことがあれば参考になる資料を持ってきていただきたい。私はこの問題はあとへ保留してけっこうです。
  114. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 小牧次生君。
  115. 小牧次生

    ○小牧委員 時間がございませんから簡単にお伺いしますが、今の校長の研究協議会、それからその前に教育長の会合をやられたということでございますが、いろいろ学校教育あるいは学校の運営について文字通り研究をされただろうと思うのです。今の小林さんや野原委員の質問にもちょっと関連がありますが、そういったいろいろな研究の際に、その前私も質問いたしましたが、例の学校の先生方の昇級昇格の問題、これで一番困っておるのが集まつた校長先生だろうと思う。しかも新しい教育委員会法ができまして一番困ったのが、またその問題では学校の校長先生ではないかと私は考える。というのは大多数の府県がなかなか昇級ができない。もちろんこれはそれぞれの地方公共団体の問題で、直接文部省の責任ではない、こういうお考えであろうかと思いますが、しかしいろいろ校長を集めて研究をされる際に、教育内容の問題等について研究されるのもけっこうでありますが、こういった点について何か校長の間から意見なりあるいは希望なり、そういったものは出なかったかどうかお伺いいたします。
  116. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 分科に分けて校長の間に御研究され、最終日には高等学校の代表、中学校の代表、小学校、幼稚園の代表の各種の方が意見をお述べになりましたが、ちょうどあなたの今のお問いに匹敵するような、今度の新教育委員会法でわれわれは大へん困るといったような御意見の発表はありませんでした。
  117. 小牧次生

    ○小牧委員 それはあるいは出なかったかも知れませんが、現実に品では言わなくても実は一番困っておられる問題だと私は思うのです。直接文部省の権限の問題でないからあるいは出なかったかもしれませんが、しかし先般の委員会でも申し上げた通り、道徳教育の強化とか、いろいろ文部省におかれては地方教育行政について積極的に乗り出しておられる。こういった問題についても重ねてお願い申し上げておきたいのでありますが、地方自治体の行政の首長なりあるいはまた教育長を集めてこの間も会議をやられましたが、やはりそういう際にも文部省の方もまん中に立って自治庁ともいろいろ御相談をされて、早急に学校の先生方の昇給昇格なり、こういった問題が円満に解決をするように今後とも御努力を願いたい。というのは、御承知通り教育基本法の中にも、教職員は職責を遂行しなければならない、同時にその身分なり待遇については適正でなければならないということがはっきり規定をされておるのでありますから、広い意味においては私はやはり文部省の仕事であるというふうに考えておりますので、今後この点の解決にも御努力をお願い申し上げたい、こう考える次第であります。  それからもう一つ、これは全然関係ありませんが、この機会に稲田局長にお伺いいたします。久留米大学のその後の問題でありますが、私どももいろいろ陳情を聞いたり、あるいはまた昨年私も文教委員長も現地に参りましたし、また先般坂田委員もおいでになつたように聞いております。すでに文部省の方針によって第二分校は福岡の方に移されて、今からになっておりますが、膨大な機械設備はそのままになっておりまして、地元においては何らかの形においてこういったものを利用する施設を残してもらいたい、というのはこの学校ができる当初、地元側においても相当多額の犠牲を払って寄付行為をいたしておる。そういうような関係もありまして強い要望がある。これは短期大学制度の問題とか、また大学制度そのものに関する問題で、非常にむずかしい問題であろうかと考えますが、現在どういう段階にあるか、この機会にお知らせ願いたいと思います。
  118. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいまお話がありました九州大学久留米分校跡の問題でありますが、当時地元から熱心に御希望がありましたのは、国立の昼間の短期大学で工業を専修するものを置いてもらいたい、こういうお話であったのであります。しかるに当時短期大学制度の改善について中央教育審議会が審議中でありましたし、新たに昼間の短期大学を創設するというような点につきましては、いろいろ国立大学の増設拡張の他の問題等との関連で考慮せられなければならない問題等もございまして、直ちに実現に着手することはちゅうちょせられたのであります。その後今日に至っておりますが、今日も、昨日お答え申し上げましたように中央教育審議会において目下期短大学制度の改善について再び取り上げていろいろ御審議中でありますので、その帰趨を見たい。一面また地元におきましては私立の薬科大学を創設したいという御希望も熱心に起っておりまして、これらについて果して地元のまとまった御意向が工業短期大学であるのか、あるいは薬科大学であるのか、市長もお見えになりましたようなときに、われわれといたしましては地元のまとまった御意見、御希望を承わりたいものだというふうにもお願いしておるようなわけでありまして、この辺につきましてはごく最近の地元の御意向をつかみかねておるようなわけでございますが、今まで御論議になりました点は十分承知いたしておりますので善処いたしたいと考えております。
  119. 小牧次生

    ○小牧委員 時間がありませんからもう一言お伺いいたしますが、今お話で大体経過はわかりましたけれども、もしそのように地元の方で何らかまとまったならばおやりになりますか、お伺いいたします。
  120. 稲田清助

    ○稲田説明員 これは当初から申し上げておりますように、いろいろ前提がございます。地元の意向がおまとまりになれば、おまとまりになったことを地元の意向として考えますけれども、もし短期大学の問題であれば制度改善の問題に関連いたしますし、国立大学の増設拡張という問題であれば国立大学増設拡張の一般方針の一環となりますので、それらとにらみ合いました上で決定せられなければならぬ問題だと思っております。
  121. 小牧次生

    ○小牧委員 今ここで明確な御答弁はむずかしいと思いますが、しかしいずれにしても長い間の問題であるし、もう来年度の募集というようなことも考えまして、そろそろそういう線も明確にしなければ、そのときになって困難な事情も生じてくると思いますので、一つ大臣におかれましても十分この問題は御研究いただきまして、円満な解決をお願い申し上げたいと思います。  それからもう一つこの機会にお伺いします。これも従来長い間の問題でありますが、学校の事務職員の身分の改善の問題があることを文部大臣は御存じですか。これは前の二十二国会でございましたか、いろいろ問題がありまして、文教委員会としてはできるだけ早く事務職員の身分の改善をすべきであるという決議をいたしております。従って文部当局におかれても、その後十分この問題について研究しておられると思います。来たるべき通常国会にこの問題の法律案等を作って提出される御用意があるのかないのか、この機会にお伺いをしておきたいと思います。
  122. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 前段のことはよく御意見を拝聴して研究いたします。後段のことも文教における重要なものでありますからよく研究いたします。
  123. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 この際お諮りいたします。最近延暦寺を初め山梨県の金桜神社、愛知県の鳳来寺山東照宮など、国宝や重要文化財の建造物が相次いで焼出しており、また本委員会においてしばしば問題になっております正倉院の有料観光道路等による被害問題等もありますので、その被害状況、管理の実際等について実情を調査し、文化財保護の万全を期するため現地に委員を派遣いたしたいと存じます。つきましては委員長が議長と協議いたしました上で委員長において委員派遣承認申請の手続をとりたいと存じますので、この点委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 御異議なしと認めます。  なお派遣委員の人選、派遣地目数等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。本日はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十三分散会