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1956-10-25 第24回国会 衆議院 文教委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月二十五日(木曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 高村 坂彦君 理事 辻原 弘市君       伊東 岩男君    杉浦 武雄君       永山 忠則君    並木 芳雄君       山口 好一君    小牧 次生君       高津 正道君    野原  覺君       平田 ヒデ君    山本 幸一君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     齋藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君     ————————————— 十月二十日  委員加藤精三辞任につき、その補欠として眞  鍋儀十君が議長指名委員に選任された。 同日  委員眞鍋儀十君辞任につき、その補欠として加  藤精三君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長指名委員に選任された。 同日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。 同日  理事加藤精三委員辞任につき、その補欠とし  て同君理事に当選した。 同日  理事高村坂彦君委員辞任につき、その補欠とし  て同君理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  文教行政に関する件     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選挙についてお諮りいたします。すなわち、理事でありました加藤精三君及び高村坂彦君委員辞任され、再び委員に選任されましたので、その補欠選挙を行わなければなりません。つきましてはその補欠委員長において指名することとし、それぞれ理事加藤精三君及び高村坂彦君指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
  4. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それでは本日は文教行政に関する質疑を行うことといたします。なお去る九月二十八日の委員会におきまして聴取いたしました文教関係予算に関する天城会計課長説明に対する質疑もあわせ行うことといたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。高津正道君。
  5. 高津正道

    高津委員 文部大臣はまだ御出席になりませんが、大学の数が五百になんなんとするほどの多数であるので、弁当を売る駅の数ぐらい大学があるというので駅弁大学というような、悪口を意味するような言葉で呼ばれております。だからそれを整理統合するという考えだというようなことを、車中談その他においてしばしば見解を発表されておりますが、担当局長であられる稻田大学学術局長はこの問題についてはどういう構想を持っておられるのか、至急それらの統合をやろうという考えを持っておられるのか、これをお伺いするのでありますが、ただいま文部大臣が御出席になりましたので、文部大臣は五百になんなんとする、あまりにも多い大学整理統合するような見解車中談その他でしばしば御発表になっておりますが、それはどういう構想のものであるか、またどうしてそれをそういうようにせねばならぬとお考えになっておるのであるか、それをお伺いしたいと思います。
  6. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 遅刻いたしまして初めから承わっておりませんから、もしピントがはずれておったら重ねてお尋ね願います。前国会でたびたび申し上げました通り、わが国の大学は数が非常に多いのであります。それからして内容についても検討すべきことが世間では要求されております。これは大きな問題でありまするから、臨時教育審議会にかけまして、すなわちこれは政治家もお入り願い、教育経験者はもちろんのこと、実業界の方もお入り願って、それで根本的に各角度から研究してみたい、かような構想を持っておりまして、お問いの趣意に従ってその考えからお答えしておるわけであります。それゆえ臨時教育審議会結論が出るまでの間に、軽率に、あるいは統合整理または増設も、規格に合うならば仕方がございませんけれども昇格等は控えておこう、こういう立場を今とっております。しかし大学自身整理統合ではなく、学内の施設等については、時の状況において必要なことは世の中の進運に従ってはばまない、こういうことであります。
  7. 高津正道

    高津委員 御答弁の中に、昇格等は控えておこうというお言葉がありますが、それは私研究が足りないのですが、どういう意味でございましょうか。
  8. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 言葉が少し悪かったのです。今府県等において経営しておるものを国立移管ということがあるのです。移管等もちょっと考えればして差し上げる方がいいと思うのも非常に多いけれども、これは大学のことは全体としてお調べ願うのですから、しばらく待とう、こういう立場にあるのであります。
  9. 高津正道

    高津委員 移管とか昇格とかいうようなことは望ましいことであるけれども、もしできないというならば、それは予算からくることであろうと思いますが、来年は大蔵省も認めておるように、自然増が一千億円という大きな自然増が見込まれるとしてあり、そうして租税特別措置法の改廃によれば、そこからも九百数十億円という金が浮くということも言われておるのであります。大蔵大臣予算に困る場合には一番先にネズミのように教育費をかじるという言葉がイギリスで言われておるそうでありますが、日本でもすぐにねらってくるのが教育費でありまして、文部大臣はよほどしっかりしてもらわねばならぬのであります。攻勢に出て文教予算をとるのに、来年の予算を編成する今くらい文部大臣が大きく主張してとりやすい事情のときはない、絶好のチャンスだ、このように思うのでありますが、その点に関するあなたの意気込みというか、あなたの決意のほどをこの際一緒に承わっておきたいと思います。
  10. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 世の中のことはやはり金があれば十分なことができるのでありますけれども文教のことは金ばかりをぶんどるといったような心の持ち方ではなくして、日本の学問を必要な方面に充実しようということでありまして、多少大蔵大臣が金を持っておるからといって、今大いに一つせがんでやれといったようなふうには思っておらない。しかしながら必要なことはやらなければならないと思いますけれども、あなたの今のお問い言葉それ自身を受けてイエスとは言えないのでありますが、文教に関してすべきことはたくさんあります。大蔵省なり閣議を経てやりたいと思っておる仕事はたくさんございます。
  11. 高津正道

    高津委員 御答弁を善意に解釈いたしまして文部大臣は抜かりなくやつていただけることだと信じまして、次に短期大学制度に関する改革をお考えになっており、改善措置を講ずる必要があるとして中教審へも諮問しておられるのでありますが、短大についてはどういう点が悪い、改善しなければならないと考えてああいう諮問を出されておるのでありましょうか。そうして現在中教審進行状態、大よそこういうようにするという、どこまでその審議が進んでおるのか、その二点をお伺いしたいと思います。
  12. 稻田清助

    稻田説明員 御承知のように昨年中央教育審議会におきまして大学入学試験制度を取り扱う委員会ができて、御審議になって、やがて本会議答申になったわけでありますが、この入学試験中教審が扱っております間に、中教審の側において短期大学制度改善しなければならないという考えが起って参りました。そうして答申の上に短期大学制度改善という問題に触れてこられたのであります。すなわち短期大学をより魅力あらしめるものとすることによって、現在一部の四年制大学学生が集まり過ぎるのを適当にあんばいすることができる。こういう御趣旨答申があったわけです。ただいま御質疑のようにもともと私どもの方の側から短期大学というものをどういたしましょうか、短期大学にどういう欠点があるから、どう直したらようございましょうかという聞き方をして伺ったわけではないのであります。一応中央教育審議会でそういう答申が出ましたが、この答申に対しましては、短期大学当事者、ことに私立短期大学協会の側におきまして、いろいろなお意見がありましたので、事の慎重を期す意味において、中央教育審議会に再度、このたびは短期大学制度を一体どう改善すべきかというような趣旨諮問し直したわけであります。今経過についてのお尋ねでありますが、目下同審議会特別委員会審議継続中でありまして、おそらく近く特別委員会の議がまとまり、やがて本会議報告審議せられることだと考えております。
  13. 高津正道

    高津委員 今稻田局長の御答弁を承わったのでありますが、文部大臣中教審に対する諮問の文章の終りの方に、「その目的性格高等学校教育との関連および女子教育特殊性等についてさらに検討を加え早急に改善措置を講ずる必要があると考える。」文部大臣はそう考えるというのでありまして、中教審から入学試験の受験に関する問題で、そこに触れてきたから、それで形式上そうやったのだというお答えのように響いたのでありますけれども文部大臣の独立の見解がこういう文句になって現われておるのであろうと思います。問題が出てきた経緯はそういうことであろうけれども、「改善措置を講ずる必要があると考える。」こういうのであるから、どういう点が悪いというちゃんとした内容文部大臣におありで、それでその方法諮問しておられるのだと思うのであります。それで文部大臣並びに担当稻田局長のお考えがあるに違いない。それをお伺いしたい。
  14. 稻田清助

    稻田説明員 今経緯を申し上げましたように、前回の中教審から自発的に建議せられました内容に、目的として職業的、実際的というような性格が書かれておりますし、高等学校との関連において、必要に応じては高等学校一貫教育制度考えるべきであるという内容もありますし、これに対する短期大学当事者等批判におきましては、女子教育についてはどうするのだというような疑問も投げかけられておりますので、再度慎重を期しての文部大臣諮問内容には、そうした問題の諸方角を述べられたわけであります。中教審全体の答申短期大学改善すべしということが第一回の答申にありますから、その意味合いにおきましては文部省側としてもその問題を考究していただく必要がありとして、再度諮問せられた経緯であると私は考えます。
  15. 高津正道

    高津委員 現在数多くの短期大学があるのでありますが、その中に小学校の教師を養成することを目的としている短期大学があり、教育学部分校の形で行われているのが幾つかあるのであります。その一つ広島大学教育学部三原分校なるものがあるのでありますが、それを廃止統合するかの動きがあったので、第二十四国会において文部省意向を聞きましたところが、竹尾政務次官稻田局長から、文部省にはそういう意向はないという御答弁をいただいたのであります。さらにその上に広島大学においては三原分校入学者の数をだんだんしぼってきて、結局はそれがつぶれるような扱いをする。これは非常にけしからぬではないかという私の質問に対しまして、そのようなことはない、あってもないようにするという御答弁をいただいたのでありますが、むろん文部省のその見解は変っているはずはないと信ずるのでありますが、三原分校においては非常に広い敷地を持っておりまするし、そんなにいじめられるのならば、そしてまた文部当局において短大を四年制度にする計画がおありのようだから、この分校をこそ、その四年制度にして充実したものにしてもらいたい。地元もそのためには一はだ脱ぐくらいな決心を持って文部省にも陳情をしているようでありますし、文教委員である私たちにもその陳情がきたのでありますが、こういうケースに対してはどのようなお考えでありましょうか、お伺いいたします。
  16. 稻田清助

    稻田説明員 一応私からお答えいたしますが、ただいま一種の短期大学というようなことを仰せられましたけれども、これは制度としてはいわゆる二年課程でありまして、四年課程教育課程を便宜集約いたしまして、中途退学いたします者に免許状を与える特殊の施設であるわけでございますが、御指摘のごとくこの広島大学には成り立ちから申しまして幾つかの分校がございます。その中の三原分校の問題でございますが、御承知のように国立大学教員養成学部における二年、四年、中学、小学の学生定員は、需要供給状況と見合いまして予算化し、募集いたすわけでございます。ところが年々広島県下におきましては二年課程、ことに中学向けの二年課程需要が激減しつつある傾向がございますので、全部の分校について考慮いたしておりますけれども、年々この分校における二年課程募集定員が減小せざるを得ない現状であるわけでございます。これをしいて維持いたすといたしましても、昨年におきましても本年におきましても、当該三原分校卒業生において未就職の人々が非常に多いという現状でございますので、やはりその点定員減小の考慮を用いなければならないのがやむを得ざる事情でございます。しかしながらさりとて三原分校も長い歴史と沿革があり、また地元におきましても非常に御熱心な御支持もあることでございまするから、これらの定員減小ないしは一部で言われておりまするような分校の廃止というようなことを決意いたしまするにつきましても、十分学校当局も、われわれといたしましても、従来慎重な態度をもって今日に及んだわけでございます。ただ今後といえども、本年の需要供給状況及び今後の児童生徒数学級数というような見通しから考えますれば、やはり全国的な傾向一つをここに現わしまして、三原分校といえどもなお定員減小はやむを得ないのじゃないかと考えておりますが、いろいろな点につきましては十分慎重に考慮いたしたいと思っております。
  17. 高津正道

    高津委員 二年制については需要がだんだん少くなる、こういう実情にかんがみて定員減小もやむを得ないことである、しかし三原分校についてはむろん軽率なことはしないので廃止するような考えはない、こういうお答えをいただいたのでございますが、二年課程卒業生に対しては、需要が減小するその場合に、それを四年制にすれば需要供給が見合うようになるということは地元も知っておるのでありまして、だから四年制にして大いに充実したい、小学校教員養成りつぱな大学にしたいと、このように熱望しておるのでありますが、そういうようなケースをどういうようにお扱いになるのでしょうか。三原の場合も、それと同様な場合も、全般的にそういう場合はどういうようにお扱いになるのでしょうか。
  18. 稻田清助

    稻田説明員 普通の場合におきましてはお話のように四年が本体であり、二年が需要供給の急に応じまする施設でありまする以上、漸次二年課程を減小して四年課程を拡大する、この方針は数年来全国の教員養成学部でとってきておるところである、今後におきましても広島大学で、その方針で一方四年課程を太らせ二年課程が減って参ると思うのでありますが、ただ急速に二年課程をなくして四年課程のみとするわけにも参りませんし、御承知のように広島教育学部は東千田町、東雲町、三原、福山、これだけに分れておりますので、どこに四年課程を集中し、どこに二年課程を按配するのが教育効果が最も上るか、あるいは進学、通学等の便があるかというような点につきましては、大学当局も目下慎重に教育的な配慮をもってしておるわけでありますので、今直ちに三原分校には四年課程を置くという結論も出しにくいという状況でございます。これらの点につきましてはなお大学当局とともに慎重に研究いたしたいと思っております。
  19. 高津正道

    高津委員 この問題はそこまで伺つて、次の問題に移りますが、委員長、それでよろしゅうございますか。
  20. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 けっこうです。
  21. 高津正道

    高津委員 京都において観光税をとる問題があって、文部大臣の仲裁によって、実際にはまだ問題は解決していないのであります。このときに当りまして長野県の教育委員会においては観光税をとるようなところへは修学旅行スケジュールからはずすという決定をしておるのであります。私はこの長野県の教育委員会の見識は非常にりつぱなものである、こう考えるのでありますが、文部大臣はこれに対してどのようにお考えでありましょうか。  それから観光税の問題について、現在たとえば清水孝のごときは観光税はとらないという態度で臨んでおりますし、まだちっとも解決しておらないが、事態をどのようにあなたは認識しおられるのか、以上二点をあわせてお尋ねします。
  22. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 長野県の教育委員会決定なるものについては、私まだ承知しておりません。本日ここで御批判を申し上げるとか、方針を示すことができませんのは遺憾であります。  京都市の問題は、あなたが御指摘通り当事者間に一応の妥結ができたのでありますから、その後新聞等でなおいろいろと問題があるようには出ておりますけれども、自然落ちつくところに落ちつくものと思っております。
  23. 高津正道

    高津委員 長野県の教育委員会がそう決定したということは、昨日の有力新聞で報道されております。その内容は今も申し上げました通りに、観光税をとるようなところは、修学旅行スケジュールからはずす、けしからぬことである、こういう見解でありまして、それは間違いだとか、それは新聞の誤報であるということはないと思いますが、それに対してはあなたはどのようなお考えでありましょうか。
  24. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 いまだ私は責任をもって批判なりあるいは意見を開陳することができないのは遺憾であります。
  25. 高津正道

    高津委員 京都市の場合は、国が七千万円くらい文化財保護のために金を出しておって、そうして京都市が実際にそういう文化財保護のために使っておる金は二百万円にすぎなかった、こういうことを聞いておるのでありますが、その上京都市が数億の金を向う数カ年の間に取ろうというのはずいぶんむちやであり、ことに観光客やそれから教室の延長である修学旅行からまで金を取るということはずいぶん乱暴なことであって、まだほんとうの最終の決定が出ておらぬのであるから、今からでもおそくはない、文部大臣はその問題については課税が一カ所でも少くなるように大いに努力されることを私は望むのでありますが、問題というものは何らかの解決を見るものであつて、どうにか落ちつくでしょうというような非常に熱意のないお言葉は、文教行政に対して非常に熱心な大臣であるにもかかわらず、あれは失言じゃないですかね。
  26. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 文教方面の主張としては、大体二つ考えをもって進んでおるのです。その一つ観光とは言いまするけれども、やはり日本歴史の観察なりあるいはまた美術、芸術の鑑賞なりはやはり学校教育の一部分でありまするから、それには支障のないようにいたしたい、もう一つは私ども所管文化財はこれを十分に保護したい、この二つ方面から、この問題が始まって以来いささか努力いたしておるつもりでございます。しこうして児童生徒文化財研究視察ということについては、高津さん御承知通り学校先生が引率しておる以上は小学校生徒は取らない、中学校はやむを得ませんけれども、しかしながら四回以上はこれを取らない。これも財政の都合がつき次第小学校と同じようにされるのであります。すなわち教育方面のことは十分じゃございませんけれども、われわれの意見はいれられておるわけです。それからまた文化財保護についても、文化財保護施設を第一に置くという言明も得、規則もできておるのです。今かれこれいたしておるのは、やはり他省所管の自治問題あるいは税制問題、そういうふうな方面でいろいろと問題があとを引いておるのでございます。それゆえにこれらのことは所管政府部局地方自治当局、それから納税を管理する寺院その他との間で折衝中でありまするから、その折衝を待とうということでありまして、私が文教行政に冷淡ということじゃございませんから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  27. 高津正道

    高津委員 今のどうにか落ちつくところへ落ちつくだろうという言葉は、あれでいいでしょうか。
  28. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今申しまする徴税の方法あるいは時期、手段等について今折衝中でありまするから、それを待とうという意味であります。
  29. 高津正道

    高津委員 貴重な時間でありますのでそこだけにかかわっておっては委員諸君に相済みませんので、遠距離の修学旅行というものは小学生はないのでありまするから、京都市の観光税から小学生をはずすということは、税金を取る方から言えばそんなに痛くないのであります。そこで中学生が問題になる。それが大部分ですよ。それだから小学生をはずしてやる、中学生だけから取っておるのだと言われるけれども、そこが税金の一番取れるところであって、小学生をはずしたということは、そういう声を励まして言うようなことではないです。  もう一点、四カ所まで取って、それ以上は取らないのだから、そこもあまり取らないようにしてあると言われるが、中学生を連れて歩いて二カ所、三カ所までは行けるが、四カ所以上というのはあまりないのでありますから、四カ所であとはもう取らぬとずいぶん遠慮した税金の取り方だというように言われるが、そこも文部大臣はやはり認識していてもらわぬと困るのであります。さらに学校先生が引率してきた場合にはというので、引率しないで親が子供を連れて行けばみんな取られるのですからね。先生が引率してきても四カ所までは取られるし、親類の子供を連れて歩いても、十カ所歩いたら五十円余分に取られることになるのでありまして、これはもっと大きな問題であることを認識していただきたいです。お答えがあればお答えがあってもいいし、お答えがなければなくてもようございます。  私はこれで質問は終ります。
  30. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私はあなたと同様に、中学校生徒も無税がいいと思ったわけです。また親が連れた場合も子供などから取るのはよくないと思っております。しかしながら世の中の現実に当面いたしまして今言ったようなことに落ちついておるのであります。今施行についておくれておるのは、それについておくれておるのじゃございません、ほかの問題で折衝中であるので、それゆえに私が関与しないでもそのうちに片づくだろう、かように答えたのであります。
  31. 佐藤觀次郎

  32. 辻原弘市

    辻原委員 大臣予算の問題で少しお伺いいたします。  この前の委員会会計課長から予算説明の概略的な報告を受けたのでありますが、私の受ける印象は、ずっと並べられました予算項目に、重点と申しますか、本年度こういうところに力を注いで教育振興をはかりたいという点がほとんど見受けられないのであります。従って会計課長に対してそうした問題をお伺いするよりも、大臣から所信を承わった方がいいと思いますので、この機会に、すでに三十二年度予算要求大蔵省に提示いたしておりますが、その中でどういう方面に特に力点を注いで予算の確保をして実施に移していきたいとお考えになっているのか、この点を一つしぼってお話しを願いたいと思います。
  33. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 初めからお断わりいたしておきまするが、予算の大きな方針は各省ともまだ閣議決定を経ておらないのでございます。御承知通り毎年、本年度は何を主眼にするかという目的決定いたしますが、それはまだ決定いたしておりませんので、目下は事務的な大蔵省との折衝段階にあるのでございます。それゆえに実際に次の通常国会の初めに提案するものには、幾分重点の置き方が違うこともあり得るであろうことは御了承おき願いたいのであります。  大体おもなものを十くらい予定いたしております。まず科学技術振興科学技術自身振興と、科学技術に関する教育振興一つやってみたいと思っております。これが一つ項目であります。それゆえに、たとえば新たなる研究として物性物理の研究をするとか、きょうも船を出しまするが、国際地球観測年の仕事に力を入れるとか、原子力の研究、これは国立大学五カ所に設けます。それから私立大学が科学研究をなさる場合にはそれに対して助成をしようとか、こういう方面に力を尽したいということを考えておるのが一つでございます。  第二は、今日の情勢にかんがみまして、青少年に対する対策に重きを置こうと思っております。青年学級をふやし、また一般教育には道徳的指導を十分にやってみたいと思っております。これは高津さんも御同意を得られると思いまするが、道徳の講釈をするのじゃございませんよ。それからそれに牽連して映画等もよき映画を作ろう、かように思っております。劇も音楽もスポーツも力を入れようと思っておりまするが、全体から見ますれば、青年対策とこうおとり下さっていいと思います。これが第二であります。  第三には教育の機会均等という方面から力を尽したいと思っておるのであります。特殊教育、僻地教育、養護学校の拡張、前の国会にも御賛成願ったのでありまするが、準要保護児童に給食、また教科書の獲得を援助する、これなどは再び持ち出して十分にやっていきたい。定時制高等学校のことは別の科目でも出てきまするが、やはり事の性質上教育の機会均等という意味もあるのでありまして、教員の給与等については四〇%くらいはもらわなければならぬという主張をいたしております。  これが三つの大きな柱でありまするが、そのほかに学生の育英、奨学には力を入れたいと思っております。これをかりに四つといいましょうか。それから留学生、わけても東南アジアからの留学生を明年以後は相当飛躍的に招聘したいと思っております。これと同時にわが国の在外研究員もふやしたい。これも一つ項目とごらん下さることができようと思います。  これは毎年戦争以後やっておることでありますが、国立及び公立の文教施設はこれを充実することはむろんであります。来年度はわけても国立劇場の設立等も考えておるのであります。一般文化財保護も、はなはだ申しわけないことでありますが、近時りつぱなものが火災にかかったり何かいたしておりますから、なおいかにしてこの保護を十分になすべきかということを考えております。スポーツの振興、芸術の振興については、例をあげますれば明治神宮外苑に国立競技場を作りたいと思っております。上野には西洋美術館を作ろうと思っております。スポーツ、芸術の振興は例年力を注いでいることでありますが、私学振興にも力を入れたいと思っております。文部省のいたすことでいつも総予算の半分を食っているのが義務教育国庫負担金であります。これも国で一番大切なことでありますから、これを重要視することはむろんであります。あとの方で言いましたけれども、これは軽く見ているということではなくて、言うまでもないことだという意味あとで申し上げたわけであります。  大体以上十項目くらいなことをやつてみたい、かような考えでございます。御了承願います。
  34. 辻原弘市

    辻原委員 大体十項目でくくってしまいますと、文部省のおもなるものはほとんどこれに入ってしまうのであります。そういうことの御説明を私が求めたのではないのです。ずっと予算の御説明を聞きましても、中にぼつぼつ新しい試みのものがあります。中にはわれわれが非常に賛成をして推進していきたいものがあります。そういう意味で今年は政府の方でも自然増収が一千億ほどあって、国の予算の編成から見て、ことしあたりは相当文教予算に力を注いでもいい年ではないかと一般に言われている状況ですから、ここらで私は今まで陥没しておった教育の中で、特に取り上げていかなければならぬようなものを具体的に指摘をして、しぼってやるべきじゃなかろうか、こういうふうに考えております。今の説明の中に入っているのですが、これは今のところ絵に描いたもちでありまして、去年から約二五%の増加要求をまるまる認められるなどということはちょっと考えられません。さてしぼられたときに、ことしはこれとこれとを一つぜひ重点的にやりたい、そういうものが大臣の方からお示し願えましたならば、われわれとしても将来の予算審議の際に非常に好都合ではないかと考えたのであります。最初一、二、三と、こう並べられましたので、三つくらいで打ち切られると思いましたが、とうとう十まで読み上げられましたので、ちょっと重点がわからなくなりました。  そこで具体的に一つ伺いますが、ことしの予算説明を承わって、中身を見ますと、従来よりは非常にいいことは、定時制の教育に相当関心を払っておるということであります。これは機会均等の中の一つ項目として含めてもいいということが大臣のお話にありましたが、私はこの問題はぜひとも本年度一つの特徴的な問題として重点的に取り上げてほしい、こういう考え方を持つものであります。私は新聞で見たのでありますが、ラジオでもそういう放送をしておりましたが、過般の全国校長会議で、どなたかおっしゃった言葉の中に、最近の教育傾向は、どうもそれぞれ、中学校高等学校の予備校的な性格を持っておる、高等学校大学の予備校的な性格を持ってきている、言いかえてみると、英才教育に堕しているような傾きがあるんじゃないか、これは行政に携わる文部省自身がそういうことを認められておる。ましてやわれわれはそういう点を最近非常に実感として味わう。こうした弊を救うためには、普通のコースにおける教育行政の中でこれを是正していくと同時に、一面その裏に忘れられがちな勤労青少年に対する教育振興がより重要な意味を持ってくる。さような意味合いにおきまして、ことしの九月までの町村合併で、定時制は地方では顧みられなくなってきた状況がございます。この地方の町村合併の動きと町村財政の状況から、非常に陥没しておる定時制教育振興するには、どうしても国の方で手を差し延べる必要がある、そういう意味合いで私はこれに重点を置くべきじゃなかろうか、こういうように考えるわけであります。そうした点でやはり非常に問題は、第一番に定時制の人件費の問題であります。これは予算の中に出されておりますが、かつて国が負担しておった四割を復元しようという計画であるそうであります。しかしいかほど熱意を持ってこの問題に当っているかということについていささか疑問なしとしない、この際定時制の中で施設も完備しなくちやなりませんし、あるいはその他付随する給食の問題等、たくさんありましょうが、まず息を吹き返す一つの手としては、この国庫負担についての最低四割復元をぜひこの機会に実現すべきだ、こう私は思う。その点についてかりに将来大蔵省との予算折衝その他で、定時制に関する問題の中でいろいろしぼられてきましても、この点だけは何とか一つ実現をしていっていただきたい、かように思うのでありますが、大臣は、定時制の中で具体的に出されておるその問題を最後までがんばって、本年実施に移せるような意気込みをお持ちなさっていられるか、この点を伺いたい。
  35. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなたの今おつしやられる通り考えております。どうか実現したいと思っております。何とぞ御支援をお願いいたします。  それからさきにつけて言えばよかったのでありますが、通信教育、これも画期的に充実いたしたいと思っております。定時制にしても通信教育にしても、一方に実務に従事しつつ修学しようということでありまするから、非常にいいことだと思っております。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 その通り考えておると言われてしまうとそれまででありまして将来のことでありますから、どう申し上げていいのかわかりませんけれども、これは一つ一もちろん真剣にお考えいただいておると思いますけれども、おそらく本年何か国の方で手を打たなければ、定時制教育は、極端に言えばだめになってしまうのではないか、私はそういう観測をいたしております。特に勤労青少年の教育の場として、定時制を中心にした教育振興ということに力点を置かれるようお願いいたしておきたいと思います。  それから科学技術振興でありますが、内容をずっと見ますると、別に目新しいものはないのであります。従来の理振法あるいは産振法等に対する補助金の増額ということが、一般教育における科学技術教育振興の具体策と呼応しておるようであります。その他に、大学においては研究費の増額、それだけではありませんけれども、私は今度の予算編成の中で、おそらく文部省も現在突き当っておられると思いますが、本年度発足いたしました科学技術庁との関係であります。科学技術庁との関係で、もちろん法律に明記されておりますから、分野ははっきりいたしておるのでありますけれども、これは技術庁のできるまでの経過から見ても、往々各省の科学技術担当の部門との折り合い、調整というものが非常にむずかしい問題になっております。そういうことで、私は文教予算の問題ではなくして、予算全体の問題だと思いますけれども、ほんとうに科学技術振興あるいは科学教育振興という立場から、その点にロスのないような予算編成をぜひともしなくてはならぬと思う。この予算だけを見ますとそういう心配はないようでありますが、そうした点についてどのような考慮を払われておるか、また文部省としては、大臣が今二つ並べられました科学技術振興科学技術教育振興、どつちにウエートを置かれるか、その点が分明いたしませんので、予算文部省としてはどちらに重点を置いて確保しようとするのか、あるいは技術庁との提携についてはどういうふうに考えられるのか、これを一つお答え願いたい。
  37. 稻田清助

    稻田説明員 科学技術庁との関係においては、科学技術庁に科学技術審議会というものがありまして、文部省も有力なメンバーとして参画いたしておるわけであります。文部省の基礎的な科学技術振興及び学校教育、社会教育関係における科学教育振興、これと科学技術庁との関係でありますが、科学技術庁の立場におきましては、全般のわが国の科学技術振興という要請の上に立って、いかなる基礎教育文部省の部面において振興してもらいたい、あるいはいかなる力点において科学教育振興してもらいたい、こういうことを科学技術審議会の特別の部会を通じて文部省に反映してくるわけであります。文部省といたしましても、そういう社会の科学技術振興の要請というものを文部省の受け持つ基礎教育なり基礎的学術に反映しつつ今回の予算を組んだわけでありまして、その間間隙がないことを期しておるわけであります。科学技術振興、科学教育振興、これは全く車の両輪のようなものであって、いずれを主としいずれを従とする問題ではないと思うのであります。しかしただいまの御質問は、おそらくある点に力点を置いたがために他の点がゆがめられることを御心配であろうと考えられるのでありますが、科学技術振興という要請から見て、学校教育をゆがめることがあつてはもちろんならないのでありまして、学校教育の自主性という立場において科学技術振興を取り入れる、こういう考えに立っていることは申すまでもないことでございます。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 次の問題といたしまして青少年対策ということを取り上げられておりますが、私は青少年対策というのは、むしろ重点を置くとするならば、先ほど申し上げました勤労青少年対策という形での教育振興考えることが現実的だと思いますけれども、いささかこの点は大臣のお考えとは違うようであります。むしろその内容として盛られている青少年対策ということは、これは社会教育なり一般教育の分野において取り上げていける問題ではないか、予算重点を置く問題とはいささか観点が違うのではないかと思いますが、これは見解の相違でありましょう。しかしその中で特別に項目が出されておりますので、一言伺っておきたいのでありますが、先ほどちょっと御説明を付加された道徳教育でありますが、これは先日の新聞にもその点が取り上げられておりまして、明年度相当な意気込みで青少年に対する道徳教育一つ文部省が音頭をとって展開していきたい、こういうことであります。予算の細目が出ておりませんから、予算説明の中でこれを取り上げたのは一体どういう理由か。またいかほどの予算を盛るのかわかりませんけれども新聞の報ずるところによりますと、私の記憶では金額は些少でありまして、二百万程度のものをもってやろうということですが、これは一体何をおやりになるのか。天野さんがかって道徳教育についての要綱を何して、パンフレットでも出したいということを申されたようであります。それと類似のようなことをおやりになるのか、これは大臣の所論を伺ってみたいと思います。初中局長の事務的説明あとにしていただいて、その点を大臣から承わりたい。
  39. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 道徳教育ということは、先刻申し上げた通り、道徳の講釈をここでやろうということじゃございません。それだけお断わり申し上げておきます。過去において、戦前の道徳教育二つあやまちを犯しておると思います。それがために、道徳ということそれ自身を悪いもののように考えておる向きがあるのでありますけれども、これは間違いです。過去において道徳それ自身のうちにあまりにも国家主義に偏しておるものがあった。アメリカ人は超国家主義というのです。国が一番大切で、個人は犠牲になるのだ、これは行き過ぎです。そもそも人類が団体を作るという場合には、団体構成員の幸福をまとめてはかるために団体があるのでありますから、過去においてあまりにも国家を第一に置いたことは、一つの間違いです。  もう一つは、道徳を外からしいるものと考えておったのです。初めから徳目を設けてこれをやれ、こうやっておったのです。これも間違いです。人間の行いは、すべて合一したたった一つのもののところどころの重点に名前がつくのが徳目です。アメリカ人はこれをインテグリティというので、人間の人格は完全合一した一つなんです。けれども、それじゃわからぬから、そのうちで艱難にあうたときに、ある人はこういうことをしたということを知って、それを忍耐と言ってみたり、あるいはまた気の毒な人に会うて涙をこぼしたということで、ここで愛と称したり、名前はあとからつくものなんです。それを先に名前をつけて、それをつぎ込もうといったところにあやまちがあったことは認めなければなりません。この二つのあやまちを犯したがために、道徳それ自身を悪いものなるごとく言うのは、これはあつものにこりてなますを欠くといったたとえで、愚かなことであります。いやしくも学校を設け、人間を育てようというのには、やはり道徳が大切なんであります。そこで道徳は実践、経験、それからいかなければなりませんが、遺憾なことには戦後どつちとらずの状態にあります。今社会科というものがありまして、地理と歴史とのほかに一般社会というので、世間と自分との関係を知らすといったような回りくどいことでやっております。やっていることも、やはり講釈なんです。それではいけませんので、一般の生活補導から進むということで、道徳指導をしなければならぬという考えで、はやすでに私どもの着目する以前に各種の委員会等で計画されたものもございます。そこでそれを着実に考えて、今局長より御説明申し上げんとして立たんとしたのはその方法でありまして、これはまた詳しく局長に補充してもらいますが、まず今の学校小学校中学校高等学校とこれが各府県に三段階あるわけであります。そこで一府県に一つずつ小学校中学校高等学校をモデル・ケースといいますか、委員会あるいは校長等の御指定によって一年間特定してみました。生活の指導なりあるいはサゼスチョンなり、府県なりあるいは一般社会との交通をしつつ、どうしたらこれができるだろうという研究をしてもらいたいと思うのであります。前の国会でも私はたびたび引用いたしましたが、ある学校においては卒業証書をもらったが、ひっくり返つていって今度は先生をなぐりにいったというようなことは話にならぬことです。そこまで極端でなくても、やはり日本の青少年、学校におる者とおらぬ者と両方ともでありますが、この平素の行いについてはどうしたら理想的に導けるか、それを初めから一律にこうなすべしといったような指導規則を頒布して、これでできたと思うのであったら、これは戦前のやり方です。そのやり方ではいかずして、やはり一府県に三つといえば全国では相当な数になりますが、それでやってみよう、こういうことで、詳細今局長がさらに補充いたしますからお聞きを願いたい。
  40. 緒方信一

    ○緒方説明員 大臣から詳細に道徳教育の根本的な考えについて申されました。それでこのたび予算考えております具体的な問題につきましても詳細御説明がありましたので、私から補足いたす部分は少いのでございますけれども、ただいま大臣のお話のように、来年度考えております事業は、各県小、中、高等学校一校ずつ研究指定校といたしまして指・定をいたしまして、これはほかの教育部門でもやっておることでございます。あるいは僻地の学校、あるいはそのほかの産業教育の問題にしましても、特に学校を指定いたしましてそこに研究題目を与えて、特に研究してもらい、そうして実践を通じて研究を進めてもらう。その成果はまとめて発表して、その地域の学校にもそれを及ぼすというような考え方で、研究指定校ということをやつております。来年度におきましての計画としましては、道徳教育あるいはまた生活指導、これらの点につきまして、特定の題目を出しまして、それを中心にして実践を通じて研究をしてもらう、かような考え方であります。その研究を通じまして実践的にも成果をあげていくということでございます。今大臣からお話がございましたように、ただ講釈をするというのではなくて、実際の生徒の生活を実践に即しながら指導をしていくということでございます。研究題目としまして、今一応私どもの予定しておりますことは、いわゆる教課外活動、クラブ活動その他ございますが、これらをいかに有効に生活指導と結びつけてやっていくか、あるいは生徒の個別指導、個人的な指導、そういうふうなものをいかに効果的にやっていくかというような問題を二、三考えまして、それを中心に今申しましたようなことを進めていきたい、かように考えている次第であります。
  41. 辻原弘市

    辻原委員 承わってみれば、そう大した知恵のある方法でもないように思います。ともかく教育振興の具体策といえば、これは文部省の知恵がないというのではなしに、結局だれが考えても、一つ目的学校をもってこういうことをやろうとするならば、同じようなことになってくると私は申し上げたい。それは科学あるいは職業教育でも、それから体育でも、結局何か特徴を現わそうという考え方で、文部省なり教育委員会が旗を振ると、必然的に教育の場で生まれるものは研究校の指定と、こういう格好に出てくるわけです。これは従来から何回も同じようなことを繰り返してきた、そういうようなやり方自体にわれわれも皆さんもやはり知恵がないのではないか、そういうふうに、そこはかとなく思う。結局今二百万ばかりの予算で、名前は何とつけるか知りませんけれども、だんだん説明を聞いていけば、今やっているようなことにも考えられるし、さりとてこれを道徳教育と銘打てば、だいぶ言いわけをなさっている。押しつけるのではないということも言われる。それならばどんなものがここにでき上ってくるか、私は懸念するのですが、いずれにしましても題目をきめて、そして道徳教育の実験学校というものを設けるということになれば、おそらく私はその教育の成果から現われるものは一種のしつけ教育だと思います。それは大臣一つの規範を示して、かくかくの基準で道徳教育をやれと押しつけるのではないかとおつしやいますけれども、しかし問題を道徳教育と限定して、そうしてこれについての一つの実験的な成果をあげろ、こういうことになりますと、これはやはり勢い古い観念に基く道徳教育、しつけ教育の範疇を出ないのではないかということをおそれるのです。もしそういうことになりましたならば、これは私はただ単に道徳教育が必要だからということで、そういう点の新しい指導をやるという問題ではなしに、現在の社会科の体系なり、教育万般の体系に影響を及ぼしてくる問題だと思う。そこで一体社会科との関係はどういうふうに考えられているのか、別個に現在の社会科の体系は体系として、そして実験学校を設けて、そこで別の道徳教育の指導というものをやっていくのか、その成果を他にも及ぼしていこう、こういうような考え方に立っているのか、それともそれに結びつけて、その道徳教育一つのあり方というものを社会科の中に取り入れていこうという方向を進まれようとするのか、この点は私は非常に重要な点だと思うのです。従って今試みようとするこの際、大臣から一つ考えをお聞きしておきたいと思います。
  42. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 道徳と申すものは、ほかの学科のように別の学科じゃないのです。すべてに通ずるものなんです。
  43. 辻原弘市

    辻原委員 それなら社会科でやりなさい。
  44. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 でありますが、社会科それ自身は今の制度で置いてありますから、実験学校で社会科を廃するのじゃありません。しかしながら児童、生徒の身の持ち方をいかにするかは、社会科の中にも入っておりますよ。数学の中にでも入りますよ。体育の中にも入ります。天皇陛下の御葬式のまねをしてやる体育やスポーツが行われることは、これは道徳的な体育指導のもとではありません。すべて道徳は何にも入るのです。給食の中にも入ります。それをいかにするか、それがモデル・ケースとしてやってもらわなければならぬことでありまして、昔の修身のように道徳科というものを置いても役に立たぬと思っているのです。空気のごとく、すべてに共通するのが道徳です。仏法では念々従心起、すなわち良心の発露が念々に心より起る。これが道徳教育のコツだと私は思っている。だから社会科はそのままあります。けれども社会科の運営については、担当の教師はこの学校道徳のモデル・ケースということは頭に置いてやって下さると思う。体育の先生もそうです。みなその通り考えを持っていると思います。
  45. 辻原弘市

    辻原委員 どうもこれは大臣を責めるのではありませんけれども、わかったようなわからぬような、非常に混乱するのですがね。どうも社会科にもある、体育にもある、どこにもある、それが今日の教育の体系であって、社会科の社会科たるゆえんがそこにある。従って社会科の中に欠陥があればそれは人それぞれ考え方が違うのですから、大胆率直におやりになればよろしい。それはそれとしておいて、別にこういうところで強調して取り上げて、そうしてそれが道徳教育という過去のものとまぎらわしいものであるだけに、この取扱い方は非常に問題が出てくる。そこでどうも一体何を望んでおられるのか、結局一番最後の結論大臣にお伺いすればよくわかるのではないか。私は道徳というものを今のような実験学校を設けてやろうとするならば、社会科がやろうが何がやろうが、やはり一つの道徳教育として与えられたものに対する答えを出さなければならぬのですから、何がしかその実験学校の中にはそれらしきものが見えてくる。それらしきものというのは何を現わそうとしているのか、どういう形のものを現わしているのか、いわゆる行儀のよい、しつけのよく行き届いたそういう一つ制度をこの道徳教育によって作り上げようとしていくのか、それとも社会科が望んでいるような社会的現実的要請にこたえられるような広範な内容を持った、その中に生れた社会道徳、こういうものを身につけた子供を要求されようとするのか。かつて大臣といろいろお話をいたしましたが、どうも今の道徳というものは横にばあつと広がって、縦の観念というものが非常に欠除している。やはり中外に施してもとらない、何というか、忠という表現は今日は違うけれども、いわゆる忠孝の観念というものがやはりこれは現存している。だからそういう意味における道徳教育、こういうものをしつけという形において現わしていこうと大臣はされているのであるか、そこのところは、一体最後にどういう人間を求めておられるか、これについての大臣のお考えを承わりますれば、このたび文部省が出された通達による実験学校、道徳教育モデル指定校というものはかくかくの任務をになうものであるということが、全国の教育委員会にも、各学校にもその趣旨が行き渡ると思います。しかし今の程度の範囲でありますと、受け取り方によっては、おれのところは別にそういうものを取り上げなくても、それぞれの教科の中でやれるのだ、こういうものも出てくるだろうし、いや、これは大へんだ、世の中がだいぶもとへ逆戻りしてやつぱりこれは道徳教育というものを、蔵の中にしまってあったものをもう一ぺん取り出してきて、いわゆるしつけ教育をやらなければならぬ、そういう使命を当該学校に負わされたのだと考え学校長もありましょうし、そこらあたりは明確にしていただかないと、教育が今の体系から若干ゆらいでくるという心配がありますので、いま一度大臣からその道徳教育の帰結するところは何かということについてお聞かせ願いたいと思います。
  46. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは私の徳の備わらぬことと思います。私は終始修身科の復活なんということは一ぺんも考えたことも言ったこともないのです。ところが世間で、私が老年のものでありまするから、昔の人の考えをやるのだろう、こういうふうなことで、新聞などにも、いわゆる進歩主義者はそう見て批評しておるのです。それは間違いです。年はいっておりまするけれども、私は昔の朱子哲学を唯一の真理だとは思っておりません。すなわち外界から服従させる道徳をやろうという考え一つも持っておりません。これは一つ先に申し上げておきます。もう一つは、昔の修身科のように、道徳科という特別の科を一つ設けるという考えも持っておりません。これも第二に申し上げておきます。  道徳はすべて一体のものと思っております。人間全体を通じておるものと思っております。それゆえに個々の徳目を選定してこれを奨励しようという考えも持っておりません。私は道徳は今の民主主義の根本である人格の尊厳からきておると思っておるのです。尊厳なる人格の発露、自分の心から発した善が真の善である、こういうことは子供にはなかなかむずかしいことでありまするけれども、誘導の作用によって自己の良心の発露で正しい行いをするように導こう、かように考えております。それゆえにこの時間は道徳をしてもらう時間だからといって別扱いに教えれば、これは道徳ではないのです。もう朝起きたときから夜寝るまでの間、心の持ち方を教えなければならぬ、それゆえに社会科のときもそうでありましょう、数学のときもそうでありましょう、体育のときもそうでありましょう、食事のときもそうでありまして、人間の行いを全体として正しい行いにしょう。今しつけということをおっしゃったが、しつけもこれは現われでありまして、本来私の今言ったような道徳の基本、天地古今に通ずるような道徳から見れば末梢のことではありまするけれども、この世の中に住んでおる以上、日本の伝統慣習に無理に反逆する必要もない。世の中を平和に保つということも一つの道徳でありまするから、それゆえにしつけも入ります。やはり食事するときにあぐらをかいておってやるということもよくありませんし、道でも室内でも勝手につばを吐くこともよくない。いわゆる家庭でいうしつけのようなこともするのです。けれどもこれを道徳の基本とは考えておらぬのです。今エチケットという言葉がありまするが、その進んだようなものとは考えておりません。これもやつぱり言わなければならぬ。何ぼ心が正しくても、見るからにどうも工合が悪いのがありまするから、父兄諸君もだいぶそれをおっしゃるんです。私ども文部省に入りましてから、選挙区内の有志あるいは私の職業上の友達、そういう人に会うと大ていしつけの方のことをおっしやいますから、国民の希望でありますのでこれもやるつもりであります。そういうふうに外部から要求され、服従させられ、やむを得ずしてやりますといったような、昔の修身を復活する考えはございませんことを申し上げておきます。道徳ということはなかなかむずかしいことで、今の人は大体民主主義、平和主義の日本に存在する、またこれから復活しなければならぬ日本に生まれて、どういう人がいいか、時代の要求する人間像を描いてそれに接近することだ、こういう御説明をなすっております。それも一つ説明方法でございます。日本の要求する人間像を描いて、これに接近せしめるようにする。けれども、むやみに像を描いて、接近せいということをあまり言うと、昔の服従道徳と同じようになるのです。それよりは、根本において良心の目覚めを求める。日本には遺憾ながら今宗教がはなはだ衰退いたしておりまして、ことに日本人の大多数の仏教というものが権威がなくなっておりますから、やはり教育の方から良心の目覚めを誘導する、ここに重点を置かなければならぬ、私はかように思っております。
  47. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 平田君、時間がありませんから簡単に願います。平田ヒデ君。
  48. 平田ヒデ

    ○平田委員 北海道東北の冷害のことは御承知でいらつしやると思うのでございますけれども、私ども東北でございますけれども、この間福祉事務所二、三カ所に参りましたら、子供の姿が見えなくなっているのを御存じですかという質問を受けました。私はそのことを全然知りませんので、冷害で食べ物がだんだん少くなってきてとにかく農村にお金がなくなってきておりますから、また始まったのでしょうかといったら、今調査中ですけれども、どうもそうじゃないかと思う。お家の方では隠しておるのでわからないということでございまして、私今度帰りますまでに調査をしていただくようにお願いして参りましたけれども、またいわゆる冷害について参っております身売りというような、身売りという言葉は該当いたさないかと思いますけれども、要するに自由を拘束されたような子供がまた発生しつつあるのではないかということが大へん私心配になって参りましたので、その点について今から御注意を払っておいていただきたいと思うのでございますが、その点について何かお考えになっていらっしゃるとか、また冷害でそういう子供がたくさん出るようでは困るというようなお考えをお持ちになっていらっしゃるかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  49. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 北海道の冷害については内閣でも非常に心配いたしまして、高碕大臣を現地に派しまして状況を調べ、その答えにおいておよそ七、八つの方針をきめておるのでございます。来年の作を考えなければならぬから、来年の種分だけは一つ食わぬように保持しよう、というのは内地からもみを持っていっても来年植えられませんから、食糧を向うに送って飢餓状態がないようにしたい。それから土木を起して一部の人に賃金を与え、生活の道を開こうといったようなことを考えております。これは適当な機関から適当に発表されることと思います。わが文部省といたしましてはユニセフのミルクを百五十万ポンドほど向うへ送つてあげたら子供のためになるのではないか、かような考えを持ちまして、運送賃を予備費から払ってもらいたいといったようなことをやっております。それから給食の補助費を、これも九十九校分ぐらいを大蔵省に出してもらいたいという折衝をいたしております。給食の小麦を無償で配付ができないかと研究しております。それから学用品等が買えない場合は、やはり給与するような方法をとりたい。本来育英資金は一カ所に集中するものではありませんけれども、やはりこの方法によって幾分の補助ができはせぬか、こういうことを研究いたしております。辻原さんの御質問のうちにありましたが、衣食足って礼節を知るで、あまり不自由をさせますと道徳の方もよくならぬのであります。効果を上げがたいのでありますから、十分に注意するようにいたしております。どうぞお気づきの点がありましたら、公けの席でも、また私にでも御忠告下されば、いいことはみなやりたいと思っております。
  50. 平田ヒデ

    ○平田委員 局長さんにお答え願いたいのでございますが、小、中学校子供が親のもとを離れなくてもいいように何とか考えていただきたいのです。ぼつぼつ出ておって、いない子供がいるということでございますが、この点については、これからでもよろしゅうございますが、それについてのお考えをお述べいただきたいと思います。
  51. 緒方信一

    ○緒方説明員 ただいまのお話は、冷害のために家庭が困窮して、子供をあるいは奉公に出す、そういうことをせざるを得なくなっているというようなお話でございますが、これはただいま大臣からもお話がございましたように、そういう困窮した家庭に対する対策の全般を通じて、その問題の解決をはからなければならない問題であろう、かように考えておる次第でございます。特に文部省所管の事項としましてはお話のような点に重点を置きましてやっていきたい、かようなことでございますのでよろしくお願いいたします。
  52. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 小林君、時間がありませんので残ったらまたあすやりますから、一点だけ……。
  53. 小林信一

    ○小林(信)委員 これはあとでもいいのですが、今の大臣のお話を聞いて非常に感心しておることですから、ちょっと大臣に御質問申し上げたいのです。  大臣の道徳教育に対する御信念をきょうは詳細に承わったように私は感じたわけですが、大臣のお考えは——これは私なりの解釈ですが、それなら安心だと思うのです。方法といい、大臣の信念といい、これは非常にけっこうだと思うのです。しかしその考え方から、教育の実際問題というものが多少心配になるからお伺いするのですが、先ほど大臣の最も私を感銘させたところは、道徳教育というのは、一つの部門を設けてそれをどうするとか、一つの科目で担当するということでなくて、数学の中にも、体操する中にも、道徳教育がある、こういう考え方が基本だ、こうおっしゃったのですが、私はそれは非常にいいことだと思うし、それでなければならぬと思うのですが、数学の授業の中では数学ばかりでない道徳教育が行われる。それと同じように地理を扱っておりましてもそこには数学が行われる、あるいは理科をやっておりましても国語の指導も行われるというふうに、教育というものはすべて総合的になされなければならぬものなんです。これはあらゆる科目を先生が指導されるときに、単にその科目にこだわることなく、その中にあらゆるものが含まれて、そうとてそれを先生が常に注意して指導されるときに教育の成果が上るものだ、生きた教育がなされるものだと思います。それがほんとうの教育のあり方で、特に道徳教育だけをほかの教育の中にまんべんなくしみ込ませるのではなくて、どの科目の中にも、あらゆる科目が生きて総合して行われるところに教育がある。これが従来の教育の基本的なあり方だと思うのです。今大臣のお話を聞いて私感心したのですが、しかしその感心した中にちょっと不安に思うものは、今まではそういう考えがなかったのだというように伺ったのですが、もう教育はそうでなければならないものだ。特に大臣がそういうことを考案されたのではなくて、気をつけられたら、それはそういう取扱い方が非常に薄かったのだ。そういうところをもっと意識を強くして、濃くして、今後の教育を行うのだ、道徳教育をそういうふうにまんべんなくあらゆる科目の中で行うようにこれからさせるのだというふうにお考えになったらこれは少し誤りだと思う。それが基本的なものであって、それを教師がもっと意識的にやる、それをもっと強く考えてやる。今後文部省としては、大臣としてはここに気をつけていかれるというならば私賛成ですが、今までそういう形がなかったから、それを今度意識させるというならば、少し実際を軽くお考えになっているように思うのですが、そこのところをもう一ぺん大臣に御説明願いたい。
  54. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今小林さんのおっしゃる通り考えております。ただふと私が幾らかすべったか批評したのは、社会科ということで、はや一つの科目を設けて、これで自分と社会との関係をそれで教えてしまったというのであるならば、昔の修身と同じ型ですな。全体についてこれは広げなければならぬ。  それからさきに一つ申し落したことを申し上げますが、子供のときにやはり道徳心というのでなくて精神衛生ということがありますが、幾らか病気の子供があるのです。むやみに人をいじめた方が心持がいいというようなことですね。ほかのことではよくできてそういう癖があったり、あるいはまた逆に人を非常にこわがって卑屈であったり、あるいは非常に潔癖で潔癖過ぎる、世間でかん性病みという、そういうものは今度科学的に考えて、道徳が低いというのでなくて、これが子供の身体健康からきておる場合もあると思います。それらもよく注意してもらわなければならぬ。すなわち衛生体育の方にも関係あると言ったのは、私そういうことも含んで言っておりますから御了承願いたいと思います。
  55. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本日はこの程度とし、次会は明日午前十時より文教行政に関する文部大臣に対する質疑文化財及び社会教育に関する調査を行います。  これにて散会いたします。     午後零時三十八分散会