○小牧委員 大体今のように
答弁されるだろうと
考えましたけれども、一応正式にお伺いいたしてみたわけでございます。しかし私どもはただいまの
大臣の
答弁では納得できません。明らかに
法律が現存しており、まだ成立もしておらないこの
法案が果してどうなるか、審議の過程において今秋行わるべき
選挙の費用をすでに予算から取りはずしたという態度は、なるほどあなたの党は多数でございますから
法案を出せば通過する、従って
選挙は要らない、なるほど
事務的にはそういうことも言えるかと
考えます。しかしながらこの態度は、少くともわが国が法治国家であり、法治主義に立つ以上、また
清瀬文部大臣は法曹界の権威であり、また弁護士であられ、
法律を尊重し、たっとばなければならない仕事に携わっておられる方でありまして、法治主義と国家と、あるいは
議会、こういうような観点から今回とられた態度はわれわれは納得できないのであります。
この点については中央公論の三月号の巻頭言というところに、いろいろ批判をした論文が掲載されております。お読みになったかどうかわかりませんが、少くとも中央公論はわが
日本でも一流の総合雑誌であろうと私は
考えております。従いまして多少
内容は長くなりますけれども、一応ここでその巻頭の論文を朗読いたして、さらに
文部大臣の御見解を伺ってみたいと
考えるわけであります。こう書いてあります。伝えられるところによると、この秋予定されている
教育委員公選の費用は、こんどの予算に計上されていないとのことである。おそらく
政府の腹は通常
国会で、
教育委員会を改廃する
法案を
提出し、その通過を、多数派の威力で強行することになるから、その経費は不要と
考えたためでああろう。官庁としては、はなはだ時宜に適した便利な
措置といわねばならぬ。
だが、
日本を法治国家と
考え、
議会政治の国と見ているわれわれ
国民にとって、この
措置ほど奇怪なことはない。なぜなら、第一に
教育委員会は現に存在し、これに関する
法律も決して消えていないからである。鳩山
内閣は、もし
委員会の
公選が存続するとなれば、予備費をもってその費用に充当する意図であろうが、これは、まつたく本末を顛倒した
議論といってよい。なるほど、
教育委員の
公選を廃する声は、
政府・自民党・自治体のなかにある。だが、これに
反対する世論も、新聞雑誌を通じてすくなくない。改廃
法案が
提出されるという事実は認めても、それが当然
法律になるとは、
国民は必ずしも
考えていない。いまもし同様に賛否の両論が闘わされている自衛隊についても、これを
廃止する案が、何党かによって上程されるとしたら、
政府は、自衛隊法を無視して、その経費を予算に計上しないつのりであろうか。まさか
政府提出法案だけが、予算の面で遡及効を有しているなどという珍説を、法曹生活の永い
清瀬文相が抱いているとはおもえない。
法律がある以上、その費用は予算に含まれねばならぬ。
廃止になったとき、はじめて削除するのが
正道である。その意味で、こんどの
措置は明かに
法律を蹂躙する
ものである。
けれども、われわその批判すべきより重要な点は、この
法律無視の背後にある
議会軽視の思想である。多数党を背後に擁する
政府の
提出した
法案ならば、その
内容の正邪を問わず、かならず
法律になるという思い上った態度がこれである。ここでは野党の社会党はもとより、自党の陣笠議員をも、
意見のない投票人形と見なしている。これでは、せっかくの民主
議会も、
法律を製造する自動機械と異なるところはない。
こうした態度と思想が、
教育委員の
公選を廃し、文部省の威令を
全国各地の
学校に振り撒くこんどの
措置を生み出したのである。現に
教育委員会の改廃について、かんじんの児童生徒の父兄からは、なにひとつ賛成の声は挙っていない。ある
ものといえば、文部省や府県
市町村の
行政上の便宜だけである。その便宜が、法治主義の無視と
議会の軽視に結びついているとすれば、国定教科書と
教育勅語の復活は、
あと一歩である。」こういう論文が三月号に掲載されておるのであります。従いましてなるほど先ほどの
文部大臣の御
答弁は一応わかります。しかしその背後に、ここに書いてあります
通り、法治主義と
議会という
立場から本問題を
考えてみますときに、われわれは現在ある
法律は、あくまでもこれを尊重しなければならない。もしこの尊重の念がだんだん薄れて参りますと、次第に官僚の力が増大して参ってくる。結局は官僚に
議会の勢力がその地位を譲るという弊害を再び引き起さないとは、これは断言できないと思うのであります。われわれはあくまでも
国会は最高の
機関である。この権威を守るためには現存する
法律はあくまでもこれは順守して、そうして正しい
立場において運用して参らなければならない。そういうことから申しますと、現在審議されているこの
法案は果して通過するのかしないのか、これもわからないのに、すでに予算からこれをとりはずすということは、これは明らかに法治国家の建前から
法律を軽視いたしておる、かように私は信ずるのでございまするが、もう一度
大臣の御見解を承わりたいと思います。