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1956-03-30 第24回国会 衆議院 文教委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月三十日(金曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 加藤 精三君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 米田 吉盛君    理事 辻原 弘市君       伊東 岩男君    稻葉  修君       植木庚子郎君    久野 忠治君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       千葉 三郎君    塚原 俊郎君       並木 芳雄君    山口 好一君       河野  正君    木下  哲君       小牧 次生君    高津 正道君       野原  覺君    平田 ヒデ君       山本 幸一君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (調査局長)  福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君  委員外出席者         総理府事務官         (宮内庁書陵部         長)      三井 安彌君         文部事務官         (調査局宗務課         長)      近藤 春文君         参  考  人         (学校給食会常         務理事)    大野こう毅君     ————————————— 三月二十九日  教育職員免許法施行法の一部改正に関する請願  (神田博紹介)(第一六〇五号)  名古屋大学工学部航空学科復活等に関する請願  (江崎真澄紹介)(第一六五四号)  教育委員公選制確立に関する請願北山愛郎  君紹介)(第一六七九号)  同(下平正一紹介)(第一六八〇号)  同(松平忠久紹介)(第一六八一号)  同(西村彰一紹介)(第一六八二号)  同(岡本隆一君外一名紹介)(第一六八三号)  地方教育委員会制度存続に関する請願(中村時  雄君紹介)(第一六八四号)  同(柳田秀一君外一名紹介)(第一六八五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人より意見聴取の件  教科書法案内閣提出第一二一号)  学校教育、宗教及び文化財保護に関する件  学校給食に関する件     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 これより会議を開きます。  まず教科書法案議題とし質疑に入ります。そのほかなお審査の便宜上文教行政に関する質疑もあわせ行うことといたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 ただいま議題になりました教科書法案並びにそれに関連いたしまして、若干の質問大臣に行いたいと思います。  国民真実を知り得ずあるいは真実を語り得ないというとき、ことに学問のあるいは思想の自由が守れないとき、この日本というものがいかに大きな不幸を味わわなければならないかということ、これはすでに過去の歴史が証明するところでざいます。すなわち太平洋戦争に基きますところのあの惨禍を見ましても明らかでございます。ところが、最近これは委員会におきましても、いろいろ論議されて参りましたが、最近の情勢を見て参りますと、ことに教育部門におきまして、学問思想国家統制というものが復活されるのではなかろうか、こういうような事実が強くいろいろな各界から指摘されて参っております。具体的に申し上げますならば、これはすでに委員会におきましても、いろいろ論議されて参りましたが、先般の矢内原総長あるいは滝川総長、近くは東京教育大学教職員全員、また六百数十名の学者有志によりまして、先ほど申し上げますような教育を通じての学問思想国家統制というものが強化されておるのではないかということが次々と指摘されております。またそういったいろいろな権威ある人々声明なりあるいは御意見などに対しましては、全国からほうはいとして支持の声が高まって参っております。このことは今後教科書法案が察議されるその前提といたしまして、私はきわめて重要な問題であると思いますので、こういった社会情勢と申しますか、ことに教育を通じましての諸情勢、こういう諸情勢に対しまして、大臣がどのようなお考えを持っておられるか、まずその所信をお尋ね申し上げたいと思います。
  4. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この内閣思想国家統制または言論の自由の制限などはごうも考えておりません。
  5. 河野正

    河野(正)委員 大臣のお言葉ではさようでございますけれども、これは私個人の考えだけではなくて、先ほども御指摘申し上げましたように、一番近くは全国の六百数十名の学者グループ先ほど申し上げましたような意見をすでに声明されて参っております。このことは、大臣はさよう国家統制をするのじゃない、大臣自身としてはそういったお考えかもわかりませんけれども、今日まで大臣がとって参りました態度というものは、政党政治であるので、党議優先という立場をとって参っておるのであります。ところで今日では自由民主党でございますけれども、先般は日本民主党の名前におきまして教科書問題についてのパンフレットが発行されております。あるいは今回の教科書法案を見ますと、これは私どもの見解ではなくて、全国の権威ある学者方々が今回の教科書法案というものは、実質的には国定化一つ前提であるというようなことを指摘されておるわけでございます。大臣はさようでないというふうな御意見でございますけれども全国におきまする権威ある学者方々は、少くとも今回の教科書法案あるいはその他の教育立法というものは、一つ国定の学説あるいは官許の思想国民に押しつける形跡が非常に濃厚であると指摘されております。大臣先ほどからも、また今日までの委員会におきましても、そのような国家統制をやる意思はないのだとおっしゃいますけれども、これは単に私ども思い過ごしということだけではなくて、全国の権威ある学者がそういった危惧を持っておられるということは今日の声明を見ましても明らかでございます。  そこでこういった人々声明なりあるいは御意見というものは全く大臣の御答弁と相反するわけでございます。そういたしますと、今日まで声明されましたたいろいろな声明書あるいはまたいろいろな談話というものに対しまして、大臣はいかがお考えになっておりますか、その点を明快にお答え願いたいと思います。
  6. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今ここに提案しております教科書法案は、河野さん御承知通り部分中央教育審議会の御答申によっております。あの声明なされた十学長教授諸君のうちには、その審議会に入っておられる方があるのでございます。教科書検定制度は現行の法制にもあることで、またこれら学者も寄られまして今の検定制度を改善されておるのであります。各方面でいろいろと検討をなさっているおもむきでありますが、この委員会でお互いに質問応答また討論をするうちに、世の中には真相がだんだんとわかってきて、皆さんも御了解下さることと私は存じておるのであります。
  7. 河野正

    河野(正)委員 だんだん大臣意思が了解されるのだ、さようなことになりますれば、問題ないのでございますけれども、私どもは今日の段階について申し上げておるわけでございます。少くとも今日の段階におきましては、先ほどからいろいろと御指摘申し上げますように、日本の権威ある学者の方方あるいは評論家方々が非常にこういった問題を論難されておるわけでございます。そこでその点につきましては基本的に大臣と私ども考え方が相違いたしております。しかしながら今日出て参っております教科書法、これは具体的な問題につきましては後ほど論究いたしますが、その前提となる基礎的な考え方、これを私どもは強く取り上げて申し上げておるわけでございます。法律そのものを見て参りますと、大臣が申されるような御答弁も成り立つかとは存じますが、しかし少くとも私どもはそういった法改正基礎的な思想と申しますか、そういう問題については、非常に大きな疑惑を持たざるを得ないのでございます。さらに私どもがそういった懸念に基いて論を進めますと、国民教育というものが、一つ政治権力に基いて、——大臣はそうではないとおっしゃいますけれども、画一的な統制を行うような色彩が非常に強いというようなことになりますと、言葉をかえて申し上げますならば、国民教育というものが、こういった画一的な統制なりあるいは支配に屈して参るというようなことになりますと、学問思想進歩というものがはなはだしく、侵されていくはなはだしくそこなわれていくと申しますか、阻害されていくというふうに私ども考えるわけでございます。大臣はそのような考え方は毛頭ないということでございましょうけれども、今日提案されました教科書法に基いて、今後学問の自由、進歩、あるいは思想進歩というようなものが侵される危険性というものは、私どもは十分持っておりますが、大臣は断じてないというふうにお考えになりますかどうか、その辺の事情もお伺い申し上げたいとおもいます。
  8. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今回提案いたしました教科書法が採用せられ、その趣旨に従って運行されますれば、ごうも学問思想の自由を侵すことのないのみならず、やはり学問進歩には貢献することは多大であろうと信じておるのであります。
  9. 河野正

    河野(正)委員 先に論を進める前提といたしまして、これは次の質問に関連して参りますので、一つ大臣のお教えを願いたいと思うのでございます。それは憲法第十九条には「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」ということ、それから第二十三条には、「学問の自由は、これを保障する。」ということ、こういった憲法の十九条あるいは二十三条の建前で、先ほど私が御指摘申し上げたようないろいろな権威ある学者評論家識者、こういった方々声明を出されたものと思いますが、今日の教育制度——教科書教育制度の一環でございますが、そういった中で、十九条あるいは二十三条の精神というものは確固として貫いていこうというふうなお気持であろうと思いますけれども、先の質問がございますので、まずその点についての御所感を承わっておきたいと存じます。
  10. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私並びにこの内閣全体といたしまして、思想良心の自由は極力尊重いたしたいと思います。また、学問の自由はこれを保障いたしたいと思っておるのであります。今回の法案を提案するにつきましても、根本は、これらの自由権を尊重することが大きな基礎になっております。
  11. 河野正

    河野(正)委員 そこで具体的に最近出て参りました一つの実例をもってお尋ね申し上げたいと思うのでございますが、大臣も御承知のように、東京の某デパートにおきまして、ザ・ファミリー・オブ・マンという写真展が行われております。大臣承知通りかと思うのでありますが、この展覧会の中で、御承知のように長崎の原爆被災写真というものが五枚展覧されておる。ところがたまたま先日天皇がこの展覧会に参られましたときに、実行委員の方がその原爆被災写真五枚に対しましてカーテンを張って、天皇に見せないようにしたというようなことが、新聞でも指摘されております。そのこと事態につきましても、新聞ではいろいろな批判が生まれておるようでございます。この点は御承知のように、今後日本思想の自由、そういったものを考えて参ります場合に、私は事天皇なるがゆえにきわめて重大だと思うのでございます。御承知のように、私どもの心からの期待というものは、やはりそういった原爆というものが、かの忌まわしい太平洋戦争を終止せしめるきわめて大きな動機になったのでございますから、今日のような社会情勢というものが非常に大きな転換期に立っておる事態におきましては、願わくは一度でも天皇にその実態を見ていただいて、そして大臣教育は平和でなければならぬということを強調されておりますけれども天皇も積極的な平和論者として、今後日本象徴であっていただきたいということを、私ども強くこいねがってやまないのでございます。ところがただいま申し上げますような処置が、これは大臣がとられたわけではございませんけれども、とられた。こういった社会趨勢というものを私は決して軽視することはできないと思うのでございます。そこでこういった事態に対しまして、私は一応大臣御所感を承わっておきたいと思います。
  12. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今のお話は私もつまびらかにいたしませんが、少くとも原爆写真をおおうべしなどと政府から指令も指揮もいたしたものではございません。これを示すことも自由、示さざることも自由で、しかして天皇陛下にはあまり残忍なことをお見せ申すことは御遠慮しよう、こういうような心を実行委員方々が持たれたではあるまいか、これは私の想像であります。政府では天皇陛下の目をおおうなどという考えは少しも持っておりません。
  13. 河野正

    河野(正)委員 私が申し上げましたのは、先ほど私も指摘申し上げましたように、政府がそのような指図をしたのではなかろう、そのことはわかるのでございます。しかしながらそういった社会趨勢というものは、決して軽視できないということで、御質問申し上げたのであります。そこで私がお尋ね申し上げたい点は、そういった社会情勢に対して大臣がどのような考えを持っておられるかということをお尋ねしたわけでございますから、その辺の御答弁をお願い申し上げます。
  14. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私としては、やはりあるがままの姿を天皇陛下にごらん願うことがよかろうと思います。しかしながらわが国は、皇室に対しては一種独特の感情を今なお持っておられる方がございますので、そのままお見せするのをおそれ多いとでも考える人があろうと存じます。しかしながらそれは決して学問の自由、思想の自由に妨げになることではなくして、日本一種皇室に対する慣行、敬意すなわち尊敬の念でありますが、その念から出たことであろうか、かように私は存じております。
  15. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ理由はあると思いますけれども、私ども一が特にこの問題を取り上げましたのは、ただいま申しますように非常に原爆被災写真というものは残酷だ、そういう事情天皇に見せなかったかもわからない、あるいはそのようなこともあり得るということでございますけれども、この展覧会を催しました実行委員の一人であります丹下という人は、芸術的に全体の調子をくずすようなものではないということを指摘されておりますし、ただいま大臣が申されましたような事情と申しますよりも、やはり今日の社会情勢と申しますか、そういうものに天皇の目をおおいかぶせてしまうという色彩が非常に濃厚ではなかろうか、そのようなことになりますと、きわめて重大だというふうに指摘申し上げたわけであります。これは先般の委員会だったと記憶しておりますが、天皇の位置については、これが再び戦前の天皇制に戻る、こういった心配があることは大臣も指摘されておりますし、そういうことがあってはならないということも、いろいろと教科書あるいは教育基本法の再検討の問題のときに文部大臣委員会でも申されたことがございます。これは新聞にも載っております。私どもはそういった建前から、要するに日本の現実をおおいかぶせることによって天皇地位というものを人間天皇から再び神格化するというような動きか、今日の社会情勢の中に強く出てきたのではなかろうかということを心配申し上げるわけでございます。それと同時に私ども考えなけばならぬことは、これも憲法論議になって恐縮でございますけれども憲法第九十九条では、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」ということでございまして、この憲法天皇も尊重擁護する義務を負わなければなりませんけれども、ところがこういう事態が起って参りますと、天皇みずから憲法を犯させるような結果になる、そういう点からも私は遺憾だというふうに考えておるわけでございます。私ども一番心配いたしますのは、御承知のように原爆被災によって今回のいまわしい太平洋戦争が終止せしめられた。しかも今日の社会情勢というものが再び逆コースという方向に戻りつつある、天皇も昔の天皇制に戻るのじゃないかということは大臣も御指摘しておられます通りでございます。そういった考え方から、私どもはこのような社会情勢につきましては、非常に重大な関心を持たなければならない。これは写真展でございますけれども、しかしながらこういう考え方が今後教育行政あるいは教科書のいろいろな基礎資料となって現われて参るというような事態につきましては、私どもといたしましてもきわめて重大な関心を持たなければならないわけでございます。そういった意味で、見せるも自由、見せないのも自由であるというふうな御答弁もございましたけれども、そういうことだけでは、あまりにもこういう重大な問題を軽く取り扱われるという考え方を強く持っておるのでございます。そこで重ねてでございますけれども、この点はもう一度大臣から御答弁を願います。
  16. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 もし政府として天皇にお見せ申すなということならば、展覧をしている人の自由を政府が侵すわけであります。必ずお見せしろということもまた一種指図になります。自由権を持っている日本国民が自由にやっている際でありまするから、これを主催する人の自由にまかすことがいわゆる自由主義でございます。昔はそれをやったでありましょう。警視庁あたりから風俗を害するとか、思わしからぬとかいうので、行政権を行使したことでありましょうけれども、今日は検閲の制度も何もないので、展覧会でも、映画、絵画、彫刻の展示会でも、すべて主催者の自由にまかしてございます。これをもし強制しておればその方に非難がきて、政府は自由を侵す、こういうことになると思います。私どもは自由という見地からいえば、今やったことでいいのではないか、天皇の御地位のことについては今の問いに含んでいるかいないか知りませんが、われわれはこれを昔の天皇制に戻す考え一つもございません。しかしながら社会的に尊敬するということと、それからもう一つ憲法にある通り国民結合象徴と観念することは今でもやっております。
  17. 河野正

    河野(正)委員 私が御質問申し上げております趣旨というものは、ただいま大臣がおとりになった趣旨とはちょっと違っておるのでありまして、展覧会のいわゆる主催者がそういったことをやるかやらぬかということを文部省が規制するというようなことを取り上げて私は申し上げているのではなく、そういった社会情勢が今日生まれているが、そういった社会情勢に対して大臣はどのようにお考えになっているかというような意味を御指摘申し上げたわけでございます。大臣も御心配なされておりましたような天皇制が昔の天皇制に戻るというようなことは、かつての委員会でもいろいろ御説明なされた中にそういう言葉があるわけであります。そういった言葉考えてみましても、これは一つの事例でございますけれども社会情勢というものはそういった事態を生み出している。そういう事態に対して大臣はどのようにお考えになっているかということを御質問申し上げているわけでございます。
  18. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 主催者原爆写真におおいをかぶせたという具体的な事実でなく、今日の世の中情勢がややともすると一種方向に流れておりはせぬか、これをどう思うかという御質問だと存じますが、私は今の社会情勢、戦後一方においては国民結合に対して否定的の考えのある人はこれを虚脱状態といい、あるいはこの前この委員会で出た言葉でありますが、デカダンスだという一つの流れと、またわが日本国民はいかにあるべきかといったようなことを反省する考えと二通りのものが今世の中に交錯しております。かりに右翼と申しますか、極端なる人々考えは私は賛成いたしませんけれども皇室に対して尊崇の念を持つということについては私は賛成でございます。ただこの実行委員の人は尊崇するの余り、あまりにもおそれ多いということを考えたのであったら、少し非科学的だと思います。わけても現に天皇科学尊重で、みずから生物の学問ども研究されることは世界の周知のことでありますから、そういうことはおそれないでやはりお見せ申した方がよかったと私は思っております。行き過ぎても困りますけれども、今日皇室を尊崇して、正月には宮城の前へ礼拝者が集まり、天皇の行幸にはみな旗を持って出てお迎えをする、自然的に万歳を唱える、こういう傾向は私は排斥すべきものじゃない、かように考えております。
  19. 河野正

    河野(正)委員 大臣のだんだん具体化した答弁をいただきましたので、ある程度了解することにやぶさかではございません。しかしながらこの問題は、今日の世界趨勢から見て参りましても、あるいはまた日本国内情勢から見て参りましても、私はきわめて重大な問題だと思います。また大臣天皇制というものが昔の天皇制に戻ることを非常に心配になっておりますし、この点は非常に重大な問題だと思います。そこで今後教科書にいたしましても、あるいは日本教育制度にいたしましても、あるいは教育基本法にいたしましても、そういった問題はきわめて重大であります。ところがまことに残念でございますけれども、あるいは私ども考え方が当っておるか当っておらぬかわかりませんけれども憲法では天皇地位というものは国の象徴である。人間天皇である。ところがややもいたしますと、私がただいま御指摘申し上げましたように、人間天皇が再びうつつ神、こういった状態になるということを私ども非常におそれるわけでございます。このことは天皇地位に関する重大な問題でございますし、しかもそれが今後の教育基本となる問題でもございますので、委員長にお願いいたしたいことは、いずれこの文教委員会総理大臣の御出席を願いまして、その点につきましては総理大臣からも御所見を承わりたいと思うのでございます。この点は委員長においてよろしくおとりはからいを願いたいと思います。  それからただいま申し上げましたようなことに関連してでございますが、大臣も御承知のように、今度東大卒業式が行われまして、その卒業式の席上において矢内原総長から、卒業して参ります卒業生に対しての告辞があったわけでございます。その中に先日も論議されておりましたが、次のような問題点がございます。これは新聞の要旨でございますが、武力には武力をという思想政策では、もはや世界平和を達成することは不可能だ、そこで原水爆のような兵器はもちろん一切の軍備を廃止する方向に人類の決意を向けなければならないというようなことが告辞の一節にあるわけでございます。たまたま天皇原水爆写真の問題が出て参りましたから申し上げるわけでございますけれども矢内原総長東大卒業式におきまして、今日の情勢というものは、武力には武力、力には力という思想政策では世界平和というものは達成することができない、そういった意味原水爆兵器、こういったものの廃止を唱えておられるわけであります。このような問題に対しまして過剰防衛というような言葉も先般の委員会で出て参りましたが、このような卒業式におきます矢内原総長告辞に対しまして、大臣はどのような御所感を持っておられますか、この点もきわめて重要でございますからお伺い申し上げておきたいと思います。
  20. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 矢内原学長卒業式における告辞演説は私は聞いておりません。しかしながらあなたが今質問中におっしゃられたことはあるのだろうと思います。あなたのお言葉前提として申しますれば、武力に対して武力でという武力の均衡での平和は、仮の平和であります。それゆえに真の平和を最高学府において理想とすべしということを説かれておるのであったら、私はちっとも異存はありません。私もそう思うておるのです。それは本来は人間の心から出なければなりません。真に世界の二十億の国民が平和を希望し、闘争の念を捨て、恒久平和の日が来たることを望むことばむろんであります。最高学府としてはかくのごとき理想を鼓吹されることは妨げありません。従ってもし戦争のために使うという意味原水爆ならば、これは進歩さすべきものではありません。しかしながら科学の進歩をとめるということはこれはいけないのであります。今やっておる原水爆の試験が戦争準備でやるということならばおそるべきことなんで、これは禁止すべきであります。この点においても私は異存はありません。しかしながらあの演説がどういう調子や言葉で卒業生にどういう印象を与えたかは私知りませんから、ここで正確にはお答えすることはできません。
  21. 河野正

    河野(正)委員 大体趣旨は了承するということでございましょうと思いますので、了解いたします。  それからさらに論旨を進めて参りたいと思います。今回出されました教科書法等につきまして、先ほどからいろいろ御意見も出ておるようでございますが、いろいろの学者方々声明を出された。そこでそういった声明が出されたので、あるいは今度の法案が撤回されるのではなかろうかというふうな期待を持っておったけれども、なかなかそうはいかぬらしいというようなことが新聞に出されております。そういった人々がどういう考えを持って心配しておるかと申しますと、これはだんだん本論に入ってくるわけでございますが、昔政党がかわりますごとに警察の署長がかわってみたり、そういったことが行われておった。今日教育に関します重要法案が次々に政党によって変えられるというようなことは、かつての政党政治時代の最も悪い面が出てくるのではなかろうかというふうな、国民大衆の素朴な御意見だろうというふうに考えておるわけでございます。そういった意味で、世の母親もこの法案改正に対しまして疑念を持ち、あるいはまた心配を持っておるのだろうというふうに思っておるのであります。私も教育委員会の法案、また教科書法案について検討いたしましていろいろ質疑もいたし、大臣の御意見も承わりますが、第三者でございます権威のある学者からも、この問題に対していろいろな批判も行われ、いろいろな声明が出されております。しかしまことに残念なことには、その意見大臣は尊重するとおっしゃいますけれども、どうも結果的には尊重されるような気配が見えません。このことを私ども心配をいたすのでございます。世の中の母親も、やはり新聞の論説を見ておりましても非常に大きな心配をしております。今日はさようなことはございませんでしょうけれども、こういったことが一つのきっかけになりまして、一つの足がかりとなり、将来政党がかわるたびに教師というものが変節させられる、言葉をかえて申しますならば、戦争で子供の頭がなぶりものにされるというようなことを私ども心配いたしますし、世の中の素朴な国民大衆というものも非常に心配をいたしておるものと思います。こういった国民の素朴な意思と申しますか、考え方に対しまして、大臣はどのようにおこたえになろうとしておりますか。その辺の事情国民にかわりましてお尋ねを申し上げたいと思います。
  22. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今の言葉のうちに重要な法案がたくさん出ておるということは、これは日本独立後に国民の意識がやや回復してきたというこの社会情勢に応ずるものと考えておりますが、いやしくもどの政党でも内閣を担当しておる以上は、その時代に必要な立法提案をしなければならぬので、必要限度を越した提案は、この内閣はいたしておらぬつもりであります。今回の教科書法案あるいは教育行政に関する法案についていろいろと議論が出ておることはいいことだと思います。国民がこういう問題について批判することも私はいいことだと思います。また一方私どもに向って、いいからやれという激励の言葉も非常にたくさんきておるのであります。本日登院がおくれたのも、ある地方の町村長の方から一歩も退いてくれるなという陳情があったのでありまして、民主主義の時代でありますから、両論が出ることはいいので、われわれ審議の上に参考となります。
  23. 河野正

    河野(正)委員 大臣のお考え方はある程度わかるのでございますが、さらに具体的に入りますと、今度の改正では文部大臣の諮問機関でございます検定審議会が強化拡充されたということでございます。御承知のように審議会委員が八十名となります。しかも今までの旧法によりましては、暫定措置によりましては、審議会というものはほとんど名目だけだった。今度はいろいろと強い権限を持たせられるということでございますけれども、実質的には委員は御承知のように大臣の任命でございます。そこでこれは清瀬大臣が今日まで終始答弁されましたことは、公正にということでございますから、大臣を信頼いたしますならば問題はございませんけれども、しかしながら今後こういった検定審議会が権限を拡充強化される。ところが委員の任命は文部大臣であるというようなことになりますと、一歩誤まりますと、これは失礼な言葉でありますけれども、御用委員というものが生れてくる。清瀬大臣のもとではそのような危険性はないと思いますけれども、ある大臣におきましてはそういったことが行われるということになりますと、かえって検定審議会の権限というものが強化されたけれども、その権限というものにかえって災いされる。私ども仄聞するところによりますと、今までの実績によりますと、同じ学識者の中でも、日教組に同調された方は、どうもこういった委員から敬遠されるというような実績があったとかなかったとか承わっております。しかしながら公正であるということになりますならば、日教組の同調者であろうがなかろうが、そういったことは論外ではなかろうかと考えます。それで私は今日までの実績に基きまして申し上げるわけでございますが、過去の既成事実に基きますと、検定審議会が権限を強化するということは、ある意味におきましてはかえって非常に危険性がある。いい場合には非常にいいけれども、一歩誤まりますと非常に大きな危険性を招来するということを非常に心配いたすわけでございます。そこで過去の実績に基き、あるいはそういった危険性というものがないものかどうか。あるいは将来そういった問題に対しましては、大臣はどのような御措置をとって参られる御所存であるか、この辺のところをお尋ね申し上げます。
  24. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ごもっともなお問いでありまして、検定審議会委員には公平な人を選びたいと思います。わけても今回の法律で、特に心得的のことにはなりまするけれども、ひとり教育のみならず、学術文化に対しても高い識見を持った人、それからして教科書の発行に直接の利害がないような人ということで中正を期しておるのであります。文部大臣の任命は、現在でも大臣任命でございまするから、これよりほかにいたし方はないと思いまするが、断じて不公平な人事はやらない覚悟であります。
  25. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 ただいま河野委員の要求の総理大臣出席の問題につきましては、昨日も高津委員より請求がありましたので、後日理事会に諮って処理いたしますから御了承願います。
  26. 河野正

    河野(正)委員 さらに大臣に御質問を続けたいと思いますが、ただいま申し上げました問題と合せて問題となりまする点は、それは今度の法案の改訂の中で、きわめて問題となりまする点、あるいは私どもが非常に心配しなければならぬ点は、検定基準の問題でございます。政府は今度の改正につきまして、誤まった事実を記載したり、思想的な偏向のある教科書をなくしてそうして全体の水準を高めるのが目的である、かように御主張なすっておるわけでございます。ところが今回の改正法の中で私ども心配いたしますのは、この検定基準の作り方いかんによりましては、政府考え方というものがかえつて教科書の中に強く反映されるという危険性が起って参るということを、私どもは非常に心配いたすわけでございます。その点で私ども非常に大きな疑問を持つわけでございます。先ほど申し上げましたように、審議会委員あるいは調査員等につきましては大臣も公平の原則を貫いて、そうして誤まりなきを期したいというような御答弁であったわけでございますけれども、さらに問題になりまするのは、やはり検定基準の問題ではなかろうかと考えます。この検定基準というものが、もし誤まって政府の圧力あるいは党利党略というような目的のために、この検定基準に手心が加えられる。そういたしますると、不当な支配に屈することなくということでございますけれども教科書自身が政府与党に都合のよいような教科書に陥ってしまう。そうでなければ、検定に合格しないというような事態も起ってくるという形勢は十二分にあるわけでございます。そこで第二の問題といたしまして、私はただいまの検定基準の問題、この問題に対しまする大臣御所感を承わりまして、一つ私の疑問を解明していただきたい、かように考えるわけでございます。
  27. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これも重要なことでございまして、これは今度の法案の第五条に関係することであります。後にいろいろと御批判等もあろうと思いますが、教科書を検定するについての基準がなければ、たくさんの人がたくさんの本を検定するのでありますから、基準が必要であります。第五条には教育基本法をまず基本といたしとしております。それから現在の学校教育法には学校教育の目標というものが御承知通りあります。小学校については十八条でしたか、これらを基礎といたしまして、検定審議会で議してもらいまして、これをきめましたら天下に告示いたします。不公平な我田引水の検定基準を作ろうなどということは思っておりません。公平で日本国の教育の基準になるようなものをりっぱに一つ作っていただきたい、かように思っておるのであります。
  28. 河野正

    河野(正)委員 大臣が御答弁されました通りに、その通りやっていただかなければなりませんし、私どももその点につきましては、非常に大きな杞憂を持っておるということを前提としていただきたいと思います。  それからさらに私が御指摘申し上げなければならない点は採択の問題でございます。私ども、採択につきましては、いろいろな御意見があると思いますけれども、今度の法案で私どもが特に感じます点は、今度の法案によりますと、郡、市単位で協議会を設けて選択するということでございます。ところがほんとうに教育の能率を上げると申しますか、教育の実績を上げると申しますか、そういった点を私どもが取り上げますと、教科書は教材の一種でございますから、現場の教師が自分で見て、自分で検討して最も使いやすいものをみずから選んで責任をもっていくということが、教育の能率の上にあるいはまた教育の上できわめて大きな実績を上げていくというような意味におきまして適切ではなかろうか。ところが今度の場合は郡、市単位で採択されるわけでございますから、現場で教育いたします教師の意思というものは、多少は尊重されましょうけれども、みずから選択して自分が最も適切であると思う教科書を用いるような能率なり実績というものが期待しがたいのではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、その点に対しまして、大臣としては、今度の改正法に基きましても、十二分な業績、あるいは能率というものを上げ得るというようにお考えになっておりますかどうか、その辺をお尋ねしておきたいと思います。
  29. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この点は過日もお触れになったことでございますが、ほんとうに子供一人だけのことを考えますれば、ルッソーの「エミール」に書いてあるように、その子だけに本を選択してやったらいいのであります。しかしながらこの国の国民教育となりますと、そのほかにもいろいろ考えなければなりませんので、中学にも入らなければならぬ。地方の情勢にも応じなければならぬということで、中央教育審議会からの御答申にもありましたが、やはり一定の単位で採択区域をこしらえたのでございます。  これからもいろいろ御質問があることと思いますから、かえって御質問にないことをくだくだ言うようでありますけれども、採択区域をとったわれわれの考え方について大体申し上げたいと思います。第一には、教師の方から見た教科内容、教師だけの共同研究も捨てがたいことでありまして、地域的な教育計画の作成実施にはやはり採択区域をこしらえておく方がよかろう、こういうことが一つであります。二つ目には、児童生徒の知識及び学力差の解消をいたしまして、今もちょっと触れました上級学校の入学なども公平にいけるのじゃないか、通俗なことですけれども、違う本を使っていると、その本から出たことがこっちの子供は知らないということもあるわけであります。三番目には、教育関係者や有識者の衆知を集めて選択を行いますから、各学校一つ一つでやるよりも地域に適した教科書が選ばれはせぬか。四番目には、義務教育の学校については、地域制を考慮する。学校の区制よりも、その郡その町というふうに関係を持つ方がよかろう。五番目には、その地域内でお父さん、お母さんが転宅されて転校しなければならぬ場合にこの方がよかろうじゃないか。またささいなことでありますが、お兄さんの古本を使うこともできょう、こういうわけであります。六番目には、発行、供給のむだを省く、供給が迅速確実にいく、こういうふうなことをも考えたのであります。表現は十分じゃありませんけれども趣旨はおわかりのことと思います。
  30. 河野正

    河野(正)委員 ただいま大臣が仰せられましたことは、大体先般の説明の中で私ども承わって参りましたが、しかし私ども一歩突っ込んで考えますと、先ほど申し上げましたようなことがかえって教育の能率を上げあるいはまた実績を上げ得る最善の方策ではなかろうかという考え方から申し上げたのでございます。申し上げることはたくさんございますけれども、時間の制約もございますので、あとの点は留保いたしまして、本日の私の質問はこれで終りたいと思います。
  31. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 野原覺君。
  32. 野原覺

    ○野原委員 私は宗教法人法の所轄庁であります文部省に対しまして、ただいま衆議院の法務委員会あるいは参議院の法務委員会等で取り上げられております立正交成会について二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  立正交成会は、はっきり申しますと、インチキ宗教だという烙印を今日世上において押されておるわけでございまして、立正交成会の責任者が、大臣も御承知のように、検察庁に贈収賄罪その他の罪名で呼び出されまして、取調べを受けておるのでございます。従って一体この立正交成会という宗教団体が、インチキ宗教であるのかないのか。もとより文部大臣にはその監督権限は、宗教法人法によりますと必ずしもありません。これはありませんが、しかし宗教法人法の主務官庁、所轄庁は文部省でございますので、世上インチキ宗教だという説が流布されておる限り、文部省としては、果してそういう宗教団体であるかどうかを今日御調査になっておられるはずであります。調査をした二とがあるのかないのか、まずその点から承わりたいと思います。
  33. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ございます。
  34. 野原覺

    ○野原委員 あるといたしますと、その御調査をなされた具体的な点、つまりどういう方を呼び出して、どういう調査をして、その調査の結果、文部大臣としてはどういう判断をなされたか、これが邪教とかインチキ宗教と言われる宗教団体であるのかないのか、お知らせ願いたいのであります。
  35. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは私の方では直接監督権はないのです。しかしながら、宗教法人法の八十一条によって、ほんとうによくよくいけなければ、その解散を請求するイニシアチブをとらなければなりませんから、一応の調べはいたしました。もし必要なれば、調べた限度において申し上げます。
  36. 野原覺

    ○野原委員 その調べた限度を承わりたいのであります。
  37. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今それを係の者から申し上げます。しばらくお待ちを願います。
  38. 野原覺

    ○野原委員 調査をいたしたその程度、あるいはそれに基いた御判断というものは、それではあとで承わることにして、至急一つ資料を取り寄せて、十分なる御説明をお願いしたいのであります。  そこでお尋ねをいたしますが、文部大臣は宗教法人法に基いて宗教団体を認証する権限を持っていらっしゃる。そこで一体この立正交成会を文部大臣が認証されたのはいつでございますか。その点について御説明願いたいのであります。
  39. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それも今書類をもってお答えいたします。
  40. 野原覺

    ○野原委員 私は本日の午前十時半ごろから、委員部に対して立正交成会問題、宗教法人法について質問するということを通告しておるのでございますが、遺憾ながら十分なる資料の準備等が大臣のお手元になされていないようでございまして、まことに遺憾にたえぬのであります。委員会が十分なる質疑をするためには、十二分なるあなた方の御答弁があってしかるべきだ。時間の経済の上から見ても、まことに残念にたえぬのであります。従ってそれを至急にお取り寄せを願いたい。  そこで次にお尋ねいたしたいことは、宗教法人法によれば、認証をする場合に、宗教団体の教義とか、あるいは教化、布教の方法というものについて、やはり私は御調査にならるべきだと思うのでありますが、その点はどうなっておりますか。
  41. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それも調査いたしまして、記録を取り寄せて、私は見ておりますけれども、正確なことは、今宗教課の者が来て書面によってお答えする方がいいかと思います。
  42. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、私は実は、これについてただいま十分なる質疑ができなくなったわけであります。あなた方の私の質疑に対する御見解をもとにして、私もなお質問を発展し、それからこれらの宗教法人法等についての文部当局の見解もお聞きしたい、このように考えておりますが、何一つ準備がなされていない。従って私はこの問題をただいまここで続けていくことは、実はできない状態であります。そこでこれは委員長にお願いいたしますが、本日は午後この委員会が再調になるでありましょうから、再開までに文部当局としては十分なる説明資料を整えられて、私の質疑ができ得るようにしていただきたい、これを要請いたしておきます。  そこで次の問題に入ります。次の問題は、すでに御承知のように、学校給食法の一部改正はこの国会で成立を見たのでございまして、私はいろいろな役目の関係上、私の給食に関する質疑というものは、理事会によって留保になっておるように同僚議員から承わっておるのであります。そこで私はこれは何も給食法の一部改正法に直接関係はないのでありますけれども、事学校給食についての重要な問題を含んでおりますので、二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず第一点は、小学校に給食設備がなされて、そうして児童に給食をする場合に、どの学校も給食婦というものを置いておるわけであります。私は一年前か一年半前のこの委員会で、給食婦に対する文部省の見解をただしたことがございますが、一体この給食婦の身分というものは、これは学校教育法の第二十八条第二項の必要な職員という言葉がございますが、それに該当するものであるかどうか、まず承わりたいのであります。
  43. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ただいまは必ずしもそうは扱っておりませんので、ここにあなた方の、ことに野原君の平生の御主張のように、研究改革の余地はあろうと思います。
  44. 野原覺

    ○野原委員 これは清瀬さんといえども、非常に御勉強なされて各般の問題に御精通ではございますけれども、これらの法律上のさまつと言っては語弊がございますが、専門的な見識を必要とする場合には、あえて緒方局長その他の事務当局の答弁でも私はけっこうでございます。要するに文部当局の正確なる見解というものを承わりたいので、緒方さんは御遠慮なしに、そういう場合には答弁に立たれてよろしゅうございます。  そこで、昭和二十九年六月三日に学校給食法というものが成立をしております。昭和二十九年七月二十三日に学校給食法施行令というものもできておる。そこで学校給食法の第六条及び学校給食法施行令第二条第一項によれば、当然給食婦に対する給与というものは、学校設置義務者、小学校であれば市町村、この設置者が負担すべきはずであります。これは明らかに法的根拠としては第六条と施行例の第二条第一項によって設置者が負担すべきである、このように思うのでございますが、間違いございませんか。
  45. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは間違いございません。ただ実際問題としてその通りやっておらぬところもございます。あなたの御指示によって緒方局長より詳しくお答えさせます。
  46. 緒方信一

    ○緒方政府委員 私も主管ではございませんので、正確なことを申せませんが、この法律の規定によりますと、ただいま大臣お答えの通りでございますが、実際の運用としましては、いろいろな形態が行われております。
  47. 野原覺

    ○野原委員 委員部に対して監理局長出席をも要求しておるのでございますが、まだ出席をしていないのでございます。これははなはだ遺憾千万です。そこで監理局長がお見えになろうとなるまいと、明らかにこれは設置義務者が負担すべきだと法律が規定しておるし、ただいまも文部大臣はそのような答弁をされておるわけでございますが、実際はPTAの会費でまかなったり、あるいは市町村に給食法上のある特別な団体を作って、便宜上そこから金をごくわずかでございますが支給したりしておる。そういうことで、重要な学校給食の給食婦の給与あるいは身分にいたしましても非常な不安定な状態に置かれておる。考えてみれば学校にはいわゆる小使さんと呼ばれて参りました公務員あるいは用員という方々もおるわけでありますが、これらの方々よりもむしろ子供が食べるところの給食を扱う給食婦というものの資質の向上と申しますか、身分、給与の安定と申しますか、これは今日学校給食全国津々浦々に実施される段階になってきたときには、文部当局としては当然考えなければならぬ問題でなかろうかと私は思うのであります。しかるに昭和二十九年六月三日学校給食法ができて、設置者が負担しなくちゃならぬ、法律はちゃんといい考えを出しておりますけれども、何らあなた方の方ではその都道府県教育委員会に対して措置されていない、指導されていないのであります。指導助言というものが一体なされたのかどうか、これも局長がいないから答弁できませんか、これをまず伺いたいのであります。
  48. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 給食のことは戦後できましたいろいろの仕事のうちでいいことの一つであります。しかしながら創設後日が浅くして、あなた御承知通り法律的にも欠陥があり、また実際としても十分じゃございませんから、これは総体として近く大いに研究を始めようと思っております。この用員のことについては指導はしたのです。前任者が指導された記録も私は見ております。しかるに実際においては設置者が規則通りやっておるところと、PTAが金を集めて人を養ったりしておるところと、またこの月給の支出の財源についても区々でございます。これなどは一つ統一して、ことに大切な食物のことであります、最近においても集団中毒を起したようなところもあるのでありますから、よく研究いたして万全を期したいと思っております。
  49. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 ただいま福田調査局長と近藤宗務課長がお見えになっておりますが、質疑の都合上その方を先におやりになってはいかがですか。
  50. 野原覺

    ○野原委員 そこで委員長にお尋ねをいたしますが、午前中の審議時間ですね、実は同僚議員に対しても非常に御迷惑でありますので、審議時間はいつごろまで可能でございますか。
  51. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 十二時半まで。
  52. 野原覺

    ○野原委員 それでは委員長の御指示に従いまして、できるだけ御迷惑をかけないように簡潔に宗教法人立正交成会問題でお尋ねをいたしたいと思います。今私が宗教法人法でお尋ねいたしますことは、世上立正交成会はインチキ宗教だとか、邪教だとか言われておりますから、当然文部当局としては、これだけ騒がれている立正交成会を、そのまま見のがしていらっしゃるはずはなかろうと思うのであります。大臣先ほどの御答弁によれば、これは調査をしたということである。そこで具体的に立正交成会について、いつどのように具体的な調査をしたのか、それが承わりたい第一点であります。そこでその調査の結果、一体どういう判断をされているか、新聞紙上書かれているインチキ宗教とは、一体それはほんとうなのか、うそなのか、所轄省の文部省はどう判断しているかということであります。まずその点からお伺いをいたしたいと思います。
  53. 福田繁

    ○福田政府委員 野原委員のお尋ねでございますが、立正交成会の問題につきましては、最近新聞紙上にいろいろ出ておりますので、私どもといたしましても事務担当者として非常に関心を持っている問題でございます。新聞に出なくても、宗教団体の動向については私どもは常に関心を持っていろいろ必要な調査はいたすのでございますけれども、現在宗教法人法に確たる調査権がないために、場合によってその教団内部に立ち入って非常にこまかい調査をすることはできない状況になっております。ただ今回の立正交成会の問題につきましては、御承知のように新聞の記事が出ましてから、一応念のために責任者に文部省に来ていただきまして、そうして宗務課長のところでもいろいろ事情を聞き、私も直接その責任者に会ってその経緯を聞いたのであります。
  54. 野原覺

    ○野原委員 だれをいつ何回ぐらい呼び出して、一体どういう調査をされたか。もとより私は、宗教法人法によれば、文部大臣が直接宗教団体を監督する権限のないことは知っているのです。しかしながらあなたの方は宗教法人を認証する権限を持っておられるはずなんです。しかも認証した限り、一年間というものは、その認証した事柄にはなはだ違反するとか、あるいは公共の福祉に違反するという事実があがった場合には、それを取り消す権限も文部大臣に与えられているのです。立正交成会の認証は昭和何年であるか、それから承わりたいわけでございますけれども、それはあと回しといたしましても、そういう権限が文部省にある限り、しかも解散命令書を裁判所が出すときだってあなたの方は請求権を持っている。利害関係者も宗教団体の解散命令書の請求権がありますけれども、しかし利害関係者の請求権は、これは個人でありますから弱いのです。だからそれだけの権限を与えられている文部大臣は、当然ここまでやかましく騒がれているものをいいかげんな調査をされたとは思われない。いいかげんでないという具体的なものをお示し願いたいのであります。
  55. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、この立正交成会の責任者に来ていただきましたときは、その新聞に出ておりました内容は、和田堀第二土地整理組合ですか、そういう組合内部の問題でありまして、教団内部についていろいろの問題あるいは教団の活動自体についての問題ということでなしに、土地整理組合に関する問題でございました。それについて一応責任者から事情を聴取いたしましたけれども、私どもとしては、宗団内部に干渉するということはできませんので、一応事情を聴取したにとどめておいたわけでございます。
  56. 野原覺

    ○野原委員 教団内部に干渉とは、具体的に何を言っておるのです。第八十一条の第一項によりますと、これは先ほど文部大臣もお読み上げになりましたが、「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。」立正交成会の所轄庁は文部省なんです。東京都知事安井さんじゃありません。これは東京都じゃない。多府県にまたがっておりますから、これは文部省なんです。そうすると所轄庁が、場合によっては解散命令を裁判所に対して請求しなければならぬ事態が今日きておるかもわからぬのです。これほど新聞がやかましく言っている。しかもその責任者が検察庁に呼ばれて、贈収賄、文書偽造、背任、横領、脱税、しかも布教上の脅迫、医師法違反、この神様を信心したら病気が治るんだからと言って、大学病院にもやらないというような、そういう公共の福祉に違反すること、つまり第八十一条の第一項第一号の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。」これに該当する場合は、あなた方は解散命令の請求を裁判所にしなくちゃならぬですよ。これはできるとあるけれども、文部省の当然の義務規定なんです。従って私は尋ねておるのです。新聞があそこまで書いて、責任者が検察庁に呼ばれておる。しかも認証したのは文部省でしょう。その文部省が責任を感じて責任者を呼んで、一体君のところはどういう教義で、今日どういう布教方法によって信者に接しておるのか、どういう問題を起しておるのか、公共の福祉に違反した事実があるのかないのかを調べるのが、あなた方の責任じゃありませんか。文部大臣いかがです。まずこれは大臣に承わりたい。
  57. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 野原さん御指摘の通り、私も就任以来あの問題が世間に唱えられておることを知りまして、局の者に調査を委託いたしました。しかしながら今日までは、著しく公共の福祉に違反して解散請求の訴追をするに至ったという結論には達しておりません。なお問題は進行中でありまするから、一そう調査を進めたいと存じております。
  58. 野原覺

    ○野原委員 今日の段階では、いわゆる私の言葉によれば、インチキ宗教だと断定するところまできていないから、解散請求の意思はないのだ、こういうわけでございますか。
  59. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ただいままではその結論には到達いたしておりません。引き続いてよく調査の上なお考慮いたします。
  60. 野原覺

    ○野原委員 私は立正交成会に対しては恨みもなければ何もないです。これはよく大臣にもお聞き願いたいのでございますが、今日ある新聞社の方の集めた資料を見ますと、机上に山をなしております。しかもその山をなしている事柄はどういうことかと申すと、人間の無知と申しますか、しかも病気にかかった不幸な人、災難にあった不幸な方々は、自分の心のよりどころというものを失っている。ほんとうに見識の高い、しかも物事を合理的に判断していくという人々はそうじゃありませんけれども、今日日本人々の中には、特に戦争後精神的な虚脱状態に陥った方々もたくさんあるわけでございまして、そういうような心のよりどころを失った不幸な人とか、あるいはそういう無知な人間というものにつけ込んで、金もうけをやったり、破廉恥な犯罪を犯した事実があるのかないのか。これは御調査になって、今のところはインチキ宗教とは断定できないというのでございますから、そういうことも御調査になられたと思うが、そういうことが、あなた方の調査ではあるのかないのかお聞きしたい。ないということであれば、私はもうこの点についての質問はやめます。
  61. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは憲法にいう信教の自由にも関係して、非常にデリケートな問題であります。そこで法律も、著しく公共の福祉に反するという制限をいたしておりますので、今まで側面的に、また関係者を呼び出し、人権をじゅうりんし、信教の自由を害せざる範囲において調査はいたしておりますけれども、今日ただいまの瞬間においては、著しく公共の福祉に反するとして訴追しなければならぬという結論には達しておりませんが、先刻来申し上げます通り、なお善意を持って、また、非常に注意して調査を進めたいと思います。
  62. 野原覺

    ○野原委員 著しく公共の福祉に反した場合には当然問題があるので、一体著しく公共の福祉に反したかどうかということの判断がむずかしい。これはよほどの調査をしなければならぬと思うが、一体何回文部省に呼びつけたのですか、あるいはあなた方が直接に立正交成会の本部に行って調べられたのか、そこら辺をもう一ぺん説明して下さい。
  63. 福田繁

    ○福田政府委員 文部省に責任者が出て参りましたことは二回ございます。その二回の機会に、私どもは一応今までのいきさつなり、それから当面新聞で書いております事件の内容というものを一応聴取いたしました。
  64. 野原覺

    ○野原委員 責任者に二回くらい来てもらって、新聞にこういうことが書いてあるが、君やっているかと言うたら、それはやっておりませんと言うのですよ。(笑声)あなた方は一体何をしているのです。著しく公共の福祉に反したか反しないかという判断をするのに、責任者出てこいと言って二回呼んで、読売新聞にこう書いてある、世間ではこういうことを言っているそうだが、君どうなんだと言うたら、そういうことはやっておりませんと言われて、ああそうか、文部大臣、一体こういうことでいいのですか。ただそれだけのことを、あなたの監督される局長は言っているが、ただこういう簡単なことだけで、あなたは文部大臣として、所轄庁として、著しく公共の福祉に反しないという断定を下されるのか承わりたい。
  65. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 野原君もよく御承知通り、それがデリケートな問題です。われわれが逆に宗教家を呼びつけて、そして非常な糾問をするなんというようなことであったら、またこれは片一方の権利に反することであります。われわれは本人に当るよりも、客観的事実の発展をよくにらんで、現実の証拠を別の方から握って判断をすべきものじゃないか。現にあなた御指摘の通り、もし検察庁なりあるいは警察の力で問題の調査が進んでおれば、それから取材することも一つであります。宗教の自由を害せぬように、また人心の自由権を侵害しないように、よく推移を見て、確信を得た時分に決断する方が、文部当局としては穏当じゃあるまいか、かように考えているのです。
  66. 野原覺

    ○野原委員 この宗教法人法によると、先ほども申しましたように、宗教団体を取り締る法文というものは、実は第八十一条の解散命令しかないわけです。これは大臣承知のように、日本憲法が信仰の自由というものを非常に幅広く認めましたから、第八十一条の第一項による解散命令しかない。これが実は非常に重要な規定になってきている。邪教、インチキ宗教に対する制裁の条文というものは……。この解散命令はもとより裁判所が下すので、文部大臣じゃございません。しかし、そこで所轄庁の請求権ということになってくる。利害関係人ということになってくる。そうなれば、これはインチキ宗教であるかどうか、そういうことをもっと深く掘り下げて御調査にならなければならぬと思うのです。ただいまの答弁を聞きますと、簡単にたった二回呼んでおられるようでありますが、少くともあの新聞報道しておる新聞社を調査したらよかろう。一体どれだけの投書があって、どれだけの事実があって、どういう家庭争議が巻き起されておるかということを調べたらよかろうと思う。これは大へんなことですよ。そういう御調査も積極的になさらないから世上いろいろなことが流布されておる。立正交成会というのは何十億円の金もうけをやっておる、そしてその金によって文部省の官僚がどうこうされておるというようなうわさを立てられるとすれば、一体どこに文部省の権威があることになりますか。私は、こういうようなことは単なるうわさであって、断じてそのようなことはないと思います。局長にはないと思う。大臣にもないと思う。政務次官にもないと思う。東京都の安井知事は立正交成会の信者だそうでございますけれども、安井知事の属しておる自由民主党がこれに何らかの関連をつけておるというようなことは、だれが考えても荒唐無稽であることは言うまでもないのです。しかし、世間の人はいろいろなことを言うのです。そういう点から考えてみましても、文部省としては十分なる御調査を今後なさって、第八十一条の請求をするのかどうかということについての態度をすみやかに御決定なさる必要があろうと思いまするが、文部大臣はどういう御所見を持っておりますか、承わりたいのであります。
  67. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 先刻も答えました通り、この問題に関してわれわれのとるべき態度は、一つは、いやしくも日本人の信仰の自由には立ち入らないこと、また個人の人権はじゅうりんしないこと、それゆえに、客観的の事実を客観的な方法で把握して慎重に進めなければならぬことと存じます。ほんとうに淫祠邪教であり、多くの人に迷惑をかけるという客観的の事実がわかればそのときに決断いたしまするので、本日ただいままではその決断をいたして、おりません。
  68. 野原覺

    ○野原委員 これは事務当局でもけっこうでございますが、立正交成会の教義、それから今日の布教の方法、こういうものはどうなっておるのか。それが第一点。時間の関係上まとめて申しましょう。第二点は、文部大臣が宗教団体を認証する場合には教義とか布教の方法を調査して——もとよりこれは宗教法人審議会にかけるようでございますが、そこでは宗教団体の教義なり布教の方法を調査して認証するのか、その辺はどうなっておりますか。
  69. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 教義は調査いたします。——立正交成会の教義は「法華教に基いて日蓮上人の教を奉じ、大曼陀羅を本尊とし、先祖の冥福を祈り、因果の実相を教えるが、そのために姓名判断などによって戒名や姓名を改めたりする。」こういう教義をつけて宗教法人の認証を求めております。しこうして、法華教といえばわが仏教の一大聖典であり、日蓮上人の教えも正しいことでございますから、それで認証されたものと思うのであります。布教活動はこういう申請をしております。「本部及び支部の各教会で毎日修養会を行い、支部毎に法座を設けて会員を指導するほか、家庭においても月例会等を催し、又機関紙『交成』等の文書によって布教する。会員は教典・珠数・過去帳・たすき・機関紙等を受け、又会費として一人月二〇円を納める。」こういう活動の方法というのが当時の申請でございます。
  70. 野原覺

    ○野原委員 同僚委員に御迷惑をかけてもいけませんからこれで終りますが、最後に文部当局に要請をいたしておきます。どれだけの調査をいたしたのか、どれだけの資料を収集しておるのか、これを詳細に文書でもって出していただきたい。一体文部当局は二回呼んでさっと帰したわけではなかろうと思います。賢明なる事務当局の諸君でありますからそういうばかなことをするわけはないので、一体どういう調査をしてどういう事実の収集をやっておるか、文書で当委員会に提出されるようお願いします。いずれその文書を見た上でまた機会を見てあらためていたしたいと思います。  なお日本学校給食会の運営はどうなっておるか、その予算、それから運営にからまる疑惑——大野常務理事は見えておりますか。そういう点非常に問題がございます。私がこういうことを予告するのは文部当局への親切心のしからしむるところでありますから、そういう点について十分解明ができ得るよう資料を整備していただきたい。私も他人の質問を聞いて退屈するときもあるが、私のような愚問はなおさら退屈されますから、午前はこれで終って、午後お取り上げ下さるよう委員長にお願いをいたしておきます。
  71. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 午前中の会議はこの程度とし、午後は正二時から再開いたします。  休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後四時十九分開議
  72. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平田ヒデ君。
  73. 平田ヒデ

    ○平田委員 私は、三月の六日及び三月の十三日に、本委員会におきまして野原委員質問いたされました正倉院裏に設けられた観光道路について、お尋ねをいたしたいと思います。経過などにつきましては、もう時日もたっておりますのでちょっとお忘れになったかと思われますので、私簡単にその経過を申し上げて、それから私のお伺いいたしたい点に触れたいと思います。  これは昭和二十八年から二十九年にかけて、会社の名前がちょっとはっきりいたしませんけれども、肥鉄土採取運搬を目的として、道路工事を始めたのですけれども、その進捗に伴って指定の史跡内にまで、その道路を拡張したため、二十八年の六月にこれが新聞の上で問題になりまして、奈良県の教育委員会から報告があって、結果的にはこれが無断原状変更であるとして、文化財保護委員会では会社に対して路線変更を勧告いたしたということになっておるのであります。文化財保護委員会並びに教育委員会の勧告にもかかわらず、会社はこれを受けずに十月に至りまして、肥鉄土運搬とともに一般道路を延長して観光道路としたい旨の原状変更の申請を行うに至ったわけでございます。文化財保護委員会ではこれを専門審議会に諮って検討した結果、二十九年の三月許可できぬ旨の通知をし、五月に至って会社側は再び条件を変更して知足院の北側に道路開設を申請してきたという、そういうこの前の委員会の経過であります。そこで文化財保護委員会は専門審議会からのやむを得ずとの答申、それから奈良県知事、奈良県教育委員委員長、奈良県会議長のあっせんもあり、また宮内庁からも確約事項を実施するならばとの条件で許すとの回答がありましたので、二十九年六月二十六日これを許可されたそうであります。そこでこの経過をずっと一応申し上げますが、しかるにこの間、周囲に緑樹を植えること、舗装を三年以内に行うこと、それまでは散水を行うことなどの付帯事項が何ら実施されておらず、従って文化財保護法第八十条の三により契約不履行を理由として許可を取り消すべきであるのに、文化財保護委員会は今まで態度を決定するに至らず、科学的な調査を待ち二、三カ月中に決定したいというのがこの三月の六日と十三日におきますところの委員会の要旨でございます。  そこで私はこれに関連をいたしましてお尋ね申し上げたいことは、この専門審議会からのやむを得ずとの答申ということでございますけれども、このやむを得ずというこの答申をお伺いいたしたいのでございます。
  74. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 やむを得ずとの答申は、元来観光道路を設置することは史跡並びに正倉院に対してあまり望ましくないことであるから、これこれの条件を付して、しかもその条件が履行されることであるならば、これは許可してもやむを得ないであろうということで、お話の二十九年五月二十五日に専門審議会の答申があったわけでありまして、答申の内容は、許可をいたしましたときの許可の条件、内容等と全く同じでございます。
  75. 平田ヒデ

    ○平田委員 これこれの条件を履行されるならばということはやむを得ずに対するところの条件でございまして、そのやむを得ずという核心をついた御答弁はちょっと得られていないように思いますけれども、それはそれとしておきまして、第二の質問に移ります。正倉院の御物は、宮内庁の所管でございまして、文化財としての指定を受けておらないようでございます。対策を講ずるのはむずかしいと高橋委員長は三月六日に述べておられます。この観光道路許可の問題をめぐっても、宮内庁の書陵部長と文化財当局との間に意見の相違があるように見受けられるのでございます。長年正倉院の御物を管理してこられました宮内庁側の率直な御意見を承わりたいと存じます。
  76. 三井安彌

    ○三井説明員 当面の管理者として私から答弁申し上げます。おっしゃる通り正倉院の御物は千何百年の日本の文化の代表的遺産でありまして、私どももこれの管理につきましては日夜苦心いたしております。そのためには宮内庁が独善的になってもいけませんので、安倍能成会長から成ります専門家をもって構成しております正倉院評議会という諮問機関をも設けまして、年々の行事その他管理についていろいろ御相談しましたり、御意見を承わっておるようなわけでございます。それでこの道路問題につきましては、今おっしゃいました通りの経過でございますが、私どももその道路ができそうだということを昭和二十九年春ごろ存じまして、正倉院の裏の方を通ることはでき得れば避けていただきたいものと思いまして、いろいろ文化財当局の方にもお話してみたことがございます。ところが文化財当局でもいろいろと努力して下さったようでございますけれども、ただいま正倉院の北側、西側、東側と三万回っております道が昔宮内庁の土地だったのでございますけれども、その後国有地との交換などでただいまは全く公道になっておるわけでございます。それで公道になっておる道に山の方から観光道路が続くということがかたい法律的根拠をもって拒否できるものかどうか、そういう点も私ども研究もいたしたのでございますが、なかなかはっきりした見解が私どもとしては立ちにくかったのでございます。それで窓口である文化財当局の方に御研究なり御協力をお願いするよりほかないと思っておったのでございますが、地元の知事、市長その他の方の非常な御好意もありまして、必ずこの条件を実行させるからという御確約もございましたし、私どもとして決して好ましいことではありませんけれども、その確約条項が実行されるならば、まず塵埃の被害をなくすることも必ずしも不可能じゃない、そういう確信を持ちまして、その確約の条項の実行を絶対条件としましてやむを得ないという御返事をしたわけでございます。ところがその後正倉院に一番近い四百メートルの路線が変更になりまして、山手の高い方にその道がつくことになりましたので、最初の案と違います点は、位置が東北の方へ斜めに高くなりまして、東北風の強いようなときには、当初の路線から見ますと、被害がありそうに思えるわけでございます。ただ私どもも抽象的に言っているのじゃありませんので、実際に塵埃の調査もその後ずっとやっておりますけれども、ただここに数字的にはっきり塵埃がどれだけ道路のためにふえたか、またふえた塵埃がどういう影響を宝物に及ぼすかというような科学的な詳細なことを立証することがなかなかむずかしいものでございますから、ただいまは文化財保護委員会と御一緒になっていろいろ科学的調査をやっておりますけれども、まず今のところはっきりした結論は得られませんが、今申し上げました通り、その道が四百メートルの部分が高くなっております点から想像しまして、当初の路線から見て害が多かろう、こう思ったものでありますから、さらに当初の案以上に、私どもはできればこの道路ができないようにしたいという念は、最初よりはより強くなったわけでございます。しかしその法律上の解釈なり行政の取扱いとしまして、やむを得ず認めざるを得ないような状態ならば、先ほどから申し上げました確約条項をさらに強化していただく。強化するといいますのは、その舗装の部分を、さらに新しくできます四百メートルのうち二百メートル、半分ぐらいはさらにいい舗装をしていただく。それから東側の公道の方は、絶対通ってもらいたくないということを、それにまた付加しまして、なお厳重に約束していただきたい。ところが会社は御承知のように、今までのところを見ますと、どうも私どもは不安にたえないような会社なものでございますから、それの確約をしましても実行されなければ何にもなりませんので、その点を文化財保護委員会なりその他地方の知事さんなり市長さんなりの特に御協力を願いたいと思っているわけでございまして、文化財保護委員会とそう非常に違った意見だとも思っておりませんが、ただいま申し上げたことが正直思っている通りでございます。
  77. 平田ヒデ

    ○平田委員 大臣にお尋ねいたしたいのでございますけれども、私は法律のことをあまりよくわかりませんが、その土地は正倉院の所有地であった。ところが長い間に公道になった。その点をどうも今宮内庁の方の御意見でございますと、研究はしたけれどもはっきりさせることができなかったとおっしゃいますけれども大臣は専門家でいらっしゃいますから、お聞かせ願いたいと思います。(「そういう意味じゃないのだ」と呼ぶ者あり)そういう意味じゃございませんですか。
  78. 三井安彌

    ○三井説明員 ただいま私の説明がちょっとはっきりしませんで申しわけございませんが、昔のことを調べますと、あの正倉院の構内に一つの道が通っておったようでございます。これが自由に、今は画然とあすこは区画されておりますけれども、現在の構内に区画をいたしまして、よその人を入れないために、かわるべき道を作らなければ、世間に対して申しわけないわけでございますから、当時宮内庁は周囲の、ただいま公道になっております土地を譲渡いたしまして、そのかわり中の土地はだれも通らないようにしろということで、その現在公道になっております道は、全くその土地は、何年でありましたか今わかりませんけれども、ずっと昔に、明治時代ですか、それをすでに国有地に与えておりますから、現在は何も宮内庁が関係している土地ではないわけであります。
  79. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 先ほどやむを得ずということの説明がはっきりしないというお話でございましたが、史跡名勝天然記念物の保護の上からいいますならば、すべての場合に原状変更を許可しない。いかなる申し出がありましても、いやしくも影響のある場合には一切原状変更を許可しないということが、私どもは一番望ましいことであると思っております。しかしながらこの史跡名勝天然記念物と他のいろいろの産業あるいは他の事業、あるいは公益等のいろいろの関係がございます。たとえば住宅問題あるいは電源開発の問題、あるいは道路を敷設する問題、あるいはまた観光の問題、いろいろ関係がございましてそういう場合に文化財保護の立場からいうならば、これは許可したくない。しかしながらそういういろいろな関係を考えて、やむを得ず許可するということで、大体におきまして史跡名勝天然記念物の原状変更の場合には、常にやむを得ずという態度で、またそういう表現で、もう最小限度差しつかえない限度において許可する、こういう態度で私どもやって参っております。
  80. 平田ヒデ

    ○平田委員 大体了承いたしました。第二でございますけれども、この事件の経過をたどってみますと、結果的には文化財保護委員会御当局の措置が緩漫であったと認めざるを得ない実情でございますが、前回の委員会のその後の経過はどうなっておりますでしょうか。
  81. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 前回の委員会後におきましては、この衆議院の委員会におきましても相当問題になったことでありますから、直ちに奈良県教育委員会の担当課長を呼びまして、その後の処置についていろいろと打ち合せをしたのであります。その結果、奈良県教育委員会では直ちに申請者であるところの会社を呼び出しまして、いろいろとお話をしたようであります。会社におきましても、まことに自分たちの態度が十分でなかったということを率直に認めまして、必ず善処するからということを申しておるということを聞いております。たとえば散水をする問題のごときは、できるだけすみやかにこれを実施するといっておりますので、おそらく近くその実施にとりかかることであろうと思っております。その様子をしばらく見まして、私どもでは必要があれば、会社を呼び出し、また厳重なる警告を発したい、かように考えております。
  82. 平田ヒデ

    ○平田委員 奈良県の教育委員会の課長が会社を呼び出し、この確約を実行させ、善処するということを言った。それからまたこの委員会の方では、これからそうでないような場合には呼び出して、またということを言っていらっしゃいますけれども、実際お出かけになって御調査になって、今直ちにそれを行うという御態度はおとりになれないものでございましょうか。
  83. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 これはなかなか問題が複雑でございまして、一たん許可はいたしましたけれども、その後に路線の変更がございまして、その路線の変更の分につきましては、まだ許可を与えてないのであります。といいますのは、大体は前に許可した条件でもってそれが履行されますならば、今度の路線の変更の分も許可しても差しつかえないというような見解もございますけれども、なお事の慎重を期するために、宮内庁と打合せをいたしまして、さらに塵埃の点につきまして、科学的な調査をいたそうということになりまして、宮内庁と共同いたしまして科学的な調査をすることになっております。その結果ある程度の見通しをつけた上で、それを正式に許可するならする、あるいはしないならしないという最終決定をいたしたいと考えております。従って前の許可の条件を全部そのまま履行するということも、会社としてはなかなかつらい立場もございます。すなわち許可になるものやらならないものやらわからないところもございますから、全部その通りにやりましても、もし許可にならなければ、これまた会社は相当な損害をこうむることになりますので、なかなかその点つらいところもございます。しかしながら私どもといたしましては、会社のつらいところはわかる。しかし一たんは許可して、その後の変更についていろいろ審議しておる。許可の際の条件はやはり会社としては誠意をもって履行することが会社の立場として必要じゃなかろうかということで、いろいろと奈良県教育委員会また私ども直接に話し合いをいたしたいと思っております。根本的には、これはもう少し日がたちませんと、この問題は完全には解決しない。もう少し時期がかかるものと御承知願いたいのであります。
  84. 平田ヒデ

    ○平田委員 和田正倉院事務所長、それから落合奈良女子大学学長を初め、良識者の声があまり反映してないように私には感ぜられるのでございます。先般も文化財協会をめぐって汚職事件もありましただけに、文化財当局自体きわめて消極的で、何か無責任な感じを受けるのでございます。とにかく文化財を保護するということは、国家的見地から考えた場合も、このことは非常に憂慮すべき状態であると考えられます。この種の問題が発生する原因は、一体どこにあるとお考えになられますか、それをお伺いいたしたいと思います。
  85. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 この種の問題は、先ほどもちょっと申し上げましたが、この観光道路の問題に限らず、狭い国でありますから、文化財に指定してある場所、あるいはその付近に、いろいろと道路の問題とか、住宅の問題、あるいはダムを作るというような問題が起りまして、私ども原状変更の問題につきましては日夜頭を悩ましております。そういう場合には、とにかく文化財保護ということを第一に考えまして、できる限り影響のないように、また影響のないようにするにはどういうふうにしたらよかろうかということをいろいろ審議するために、専門審議会などを設けまして、そこで常にそういう問題に対して慎重審議いたして、そうしてそういう問題の解決を見てきておる次第でございます。根本的には、文化財保護という点はあくまで筋を通すということについては、私ども考えておるところでありまして、決して文化財の保護について、これをなおざりにするということは、毛頭考えておらない次第でございます。
  86. 平田ヒデ

    ○平田委員 次にお伺いいたしますが、国宝または重要文化財として指定されているものの数はどれくらいでございますか。
  87. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 それはいろいろございますが、史跡名勝天然記念物の方は約千六百件ございます。それから国宝、重要文化財の方は、有形文化財と申しておりますが、的確な数字はただいま持っておりませんが、約八千件ございます。無形文化財の方でありますが、これはまだ指定の作業が始まったばかりでございまして、あまり多くございません。的確な数字はちょっと資料を持っておりませんが、約四十件ばかりと承知しております。
  88. 平田ヒデ

    ○平田委員 数は大へんむずかしいと思いますが、その中で買い取られたものの数を承わりたいと思います。
  89. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 買い取りは国宝、重要文化財、つまり有形文化財の方でございますが、いろいろの工芸美術、主として絵画、古文書等のようなものは、とかく所有者が転々といたしまして、所在が明らかにならないおそれがあります。また場合によりましては、国外にも流出するというようなおそれもございまして、こういうものは、きわめて価値のあるもので、国がむしろ買い取った方がよいというふうに考えますものは、国で買い取ることにいたしております。これは文化財委員会が出発いたしましてからただいままでに、はっきり数字は記憶しておりませんが、四、五十件あろうかと考えております。それから史跡名勝天然記念物の方は、これはすべてが土地もしくは土地に関係のあるものでございまして、なかなかこれは所有者の関係も複雑で、簡単に国が買い取るというわけにも参りません。ただいままでにそういう土地でもって国が買い上げたというものは、三件ばかりではないかと考えております。ただし最近非常に問題になりました大阪のイタスケ古墳でございますが、これは所有者が困りまして、ある土建会社にこれを売り渡そうといたしました寸前に問題になりまして、これを仮指定いたし、大阪の堺市が買収いたしました。文化財保護委員会からそれに対して補助金を与えまして、堺市が買収いたしました。これは最近の例であります。
  90. 平田ヒデ

    ○平田委員 有形文化財四、五十件とおっしゃいましたが、その金額の総額は幾らでございますか。
  91. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 有形文化財の方の買い上げの予算は、これは年度によって違いますが、毎年二千万円平均でございます。従って過去に二十五年の途中から文化財委員会が出発いたしましたから、六年、七年、八年、九年、三十年と五年以上ございますので、その二千万円の五倍、そのくらいになるかと思っております。
  92. 平田ヒデ

    ○平田委員 私の一つだけ知っているのは、二十九年度は一千四百六十万円になっております。額が大へん違いますけれども、お調べ願いたいと思います。数字のことを突然お伺いいたしまして、大へんお困りだろうと思いますけれども、一応順序としてお尋ねいたしたわけでございます。  その次に、重要文化財の管理に関しまして、必要な指示をすることができるということが、文化財保護法三十条に載っております。あるいは国宝がき損したなどの場合に、修理に関するところの命令や勧告をすることができるというのが、これは三十七条に書いてございます。これらに規定されておりますけれども、重要文化財の管理状況はどんなふうになっておりますか。
  93. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 管理状況は、これは管理の責任は第一に所有者にございまして、所有者がみずからの責任において管理するというのが建前でございます。それから所有者が管理できない場合には、管理責任者を置いてそれに管理させる。それからまたそのいずれもが管理のために適当でないという場合には、管理団体を作る。これは主として地元の市町村でございますが、市町村を管理者といたしまして、あるいはまた特別な管理のための法人を作りまして、その法人に管理させることになっております。それらの状況は常に地元の教育委員会が時に応じて実際の状況を調べ、私の方にその報告が参っておりますので、それに従いましてこちらで適当な指示をするという建前になっております。
  94. 平田ヒデ

    ○平田委員 私の聞くところによりますと、相当な文化財が売りものに出ており、しかも国ではこれを買い取れない現状らしいのでございますけれども、この点についてほんとうに率直な御意見を承わらさしていただきたいと思います。
  95. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 きわめて価値のある文化財で、国が買わなければこれが海外に流出するというような場合は、国で買い上げるのが最も適当な措置であり、そのために二千万円——二千万円を切れたこともございます。千何百万円ということもございましたが、何がしかの予算をとりまして、その予算をもってこれをやっておりますが、もし緊急にどうしてもこの予算では足りない、しかしこれを国で買わなければ海外に流出するという場合には、予備金あるいは追加金等を大蔵省にお願いいたしまして、また現にそういたして予算をとった例もございます。
  96. 平田ヒデ

    ○平田委員 本年度の予算はどれだけでございますか。
  97. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 本年度は千八百万円でございます。
  98. 平田ヒデ

    ○平田委員 そうして三十一年度が千六百万円でございますか。
  99. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 そうでございます。
  100. 平田ヒデ

    ○平田委員 この保護法の四十四条に、輸出の禁止という規定がございます。これをこのままに放置しておきますと海外へ流れ出るおそれもあると考えられます。終戦のどさくさでアメリカあるいはその他の国に流れていった重要文化財はどれくらいございましょうか。
  101. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 終戦後とかく海外に文化財が流れるというような話も聞きますけれども、私どもの調査によりますならばほとんど流出はないものと思っております。ただし終戦直後中央と地方と連結がとれませんで、刀劔が進駐軍に引き渡されたのがございまして、それは確かに終戦直後の混乱時代に進駐軍を通じまして海外へ行ったことはございますが、それ以外には私どもの調査によりましては指定文化財につきましてはまずまずないというふうに確信いたしております。ただ指定いたしませんものにつきましては相当ございますけれども、指定いたしたものにつきましてはそういうことはございません。
  102. 平田ヒデ

    ○平田委員 現在こうしたものを防止するような手段は講ぜられておりましょうか。
  103. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 文化財らしきものが国外に出ますおそれのある場合には、すべて税関でこれを調べまして、指定文化財でないという証明を必ずとることに私ども打ち合せをいたしております。従っていやしくも文化財らしいというものにつきましては必ず私どもの方から文化財に該当しない旨の証明書を発行いたし、それを所有者が持って税関をパスするということにいたしておりまして、まずまず指定文化財が出るということはなかろうかと思いますが、なおこの点についてさらに将来絶対にそういうことがないように、あるいは法的にもまた実際にも研究したいと思います。
  104. 平田ヒデ

    ○平田委員 この五十四条に保存のための調査が規定されております。正倉院の問題にいたしましても、重要文化財の管理、修理あるいは環境の保全などについて用意周到な調査がなされていたら私は今度のような問題も起らなかったのではなかったかと思います。今回の問題についてはそれを私非常に痛感いたしておりますとともに、文化財の当局がきわめて消極的であって、積極的に国の文化財を保護するという熱意の不足を私は感じます。周囲の圧力とかあるいは世論であわてて動くといったような態度が見えるのは非常に遺憾に思いますけれども、この点いかがでございますか。
  105. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 非常に文化財の数も多いことでございますので、場合によりましては問題が起ってからこれが措置に取りかかるということもどうしてもございますけれども、私どもは急にあわてることのないように平素から文化財の管理、修理等につきましては万全の措置をとりたいと考えております。
  106. 平田ヒデ

    ○平田委員 事実保存のためにどのように具体的な調査を行なっておられるでしょうか。予算あるいは人員、調査月日、調査先などについてお伺いいたしたいと思います。
  107. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 特に保存のための調査といたしましては、なかなか数が多いことでございまして、直接に私の方から常に全国へ出て参るということはなかなかいたしがたいのでございますが、文化財の修理につきましては年々相当の予算を取りまして、修理のために補助金を交付いたしまして修理の時期のきておりますものに対しては修理をする。その際には積極的に私の方で技術指導をいたしまして、担当の技官が直接に指導を与えながら修理をさせるというふうにいたしております。その修理の際にあわせて保存状況等も調べ、そしてその状況に応じて必要な措置をとるというふうにいたしておりますので、特に保存のための調査ということで具体的にただいまそのための予算はございませんです。
  108. 平田ヒデ

    ○平田委員 大臣にお尋ねいたしますが、ただいまのお答えにつきまして、この調査のための予算はない、そうして数が非常に多いのでそれが十分にできないということです。私は結局これは予算が少いからだと思うのでございますけれども、その点について御所見を承わりたい。
  109. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 国費も多端のことでありますからただいまの程度の予算の中で文化財保護委員会に十分能率的にやっていただきたい、かように考えておるのであります。
  110. 平田ヒデ

    ○平田委員 能率的にということは結局足がなければ動かないということでございますから、お言葉だけでは私は不満足でございます。こういう問題がどうも日本の国ではなおざりにされがちなので私は非常に残念に思っております。もっと予算を増加されるお考えはございませんですか。
  111. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 来年度の予算及びその次からかくのごとき重要なものについてはなるべく国費をいただきたい。その方面についてはできるだけ努力いたします。
  112. 平田ヒデ

    ○平田委員 文化財保存事業費がどんなふうに使われておりますか伺いたいと思います。
  113. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 保存事業といいますのは、予算書にもございますが、主として修理に重きを置きまして、国有の文化財につきましては、修理に必要な予算を出してみずから文化財保護委員会が直営工事をもって修理をいたします。国有以外の文化財につきましてはその所有者に対しまして国庫補助をいたしまして、そうしてこれもほとんど直営ではございませんけれども、相当の責任を持って担当技官が指導しながら修理をしていく。そのための予算これが文化財予算の一番大きな予算でございます。それからなお防災といいましてこれは万一をおもんばかりまして、災害防止施設をする予算がありまして、防災施設を設けましたために災害を未然に防ぎました例は非常に多いのでございますので、そういう点に特に力を入れて参る。それから一般の事務費といたしましては、まず調査をいたしまして、そうしてその調査に基きまして文化財の指定をする。指定は重要文化財の指定と国宝の指定と二段に分けます。史跡名勝につきましては史跡名勝天然記念物の指定と特別史跡名勝天然記念物の指定とに分けまして指定の作業を進めております。なおその際に写真等をとりまして台帳を十分に整理する、こういう作業を進めております。なお文化財の保護思想の普及のために講習会、識演会あるいは図書出版物によります普及あるいは映画作成によります。普及等いろいろな作業をいたしております。また付属機関といたしましては博物館と文化財研究所がございますので、それぞれ博物館におきましては文化財の展示施設、また文化財研究所におきましては文化財行政の基礎になります各種の調査研究をいたしておるのであります。
  114. 平田ヒデ

    ○平田委員 これで質問を終りますけれども、私の調べました範囲では二十八年度から二十九年度への文化財保護事業費は七百九十二万円、それから二十九年から三十年へは七十九万八千五百円の繰り越しがございます。不足しておるといいながらこの繰り越しているという理由はどうでございますか。しかも数が多いのでなかなか調査も思うようにいかないと言っていらっしゃいますけれども、こういうふうにお金を余しなさるということは、私はその理由を承わりたいと思います。
  115. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 その繰り越しは、ちょっとただいま記憶しておりませんが、おそらく修理事業などがめんどうな関係がございまして、なかなか年度末一ぱいまでに、その設計、それから実際の修理の仕事がいかない場合がありますために、それがやむを得ず繰り越されて、翌年度の事業に持ち越されるということがございまして、おそらくそれが原因ではなかろうかと思いますが、なお詳細に調べまして御報告申し上げます。
  116. 平田ヒデ

    ○平田委員 私これで終りますけれども、また私もっと勉強しましてお伺いいたしたいと思います。こういうものが流れたり、こわされたり、失われたりするということは、私もほんとうに残念に思います。大臣も十分御考慮を願いたいと思います。     —————————————
  117. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 この際お諮りいたします。野原委員より質疑の通告があります学校給食に関し、日本学校給食会常務理事大野こう毅君を参考人とし、実情聴取のため質疑を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。なお念のため、大野常務理事はただいま出席いたしております。野原覺君。
  119. 野原覺

    ○野原委員 質問の順序の関係もございますので、ただいま監理局長もお見えでございますから、私が午前中質問した点について、局長が不在であったために十分なる答弁が得られておりません。それは、学校給食のまかない費ですね。給食費の問題、これは設置者が負担するということは、大臣もお認めでございますが、それがなされていない。これは文部省としても都道府県に十分に指導、助言をしておるようには承わっております。十分であるかどうかは別として、形式的にはやっておるようですけれども、これがどうもできない。そのためにいろいろな問題を起しておる。これはぜひ努力してもらわなくちゃ困るのですが、そこでお尋ねしたいことは、一体国立学校の給食婦は、これは文部省が直接責任がございますから、設置者負担をやっておりますかどうか、念のためにお聞かせ願いたい。
  120. 小林行雄

    小林(行)政府委員 この学校給食の関係の職員につきましては、これは従来からできるだけ児童数に応じて必要な員数を整備するようにという指導をいたしております。単に会議等で申すばかりでなく、実際に通牒も出して、できるだけ整備してもらいたいということを指導しております。ただ市町村の財政の貧困というようなことから、すべての児童に応じた炊事婦が設置されておらぬということも事実でございますが、文部省で調査いたしましたところでは、大体PTA等で負担をしておるのは五%程度という数字が出ております。その他は大体は町村で経費を持っておるのが多いようでございます。国立学校につきましては、国立学校の炊事婦は、これは現在のところPTAの負担になっておるものが比較的多いようでございます。
  121. 野原覺

    ○野原委員 問題はそういう点にあるわけです。あなたの方が幾ら指導、助言をしても都道府県教育委員会は聞かない。国立を見てみろ——第六条には、御承知のように、「学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは、小学校等の設置者の負担とする。」それから施行令の第二条を見ると、小学校等において学校給食に従事する職員は、明らかにこれは設置者が負担しなければならぬ、こういうことを規定してあるのに、文部省自体が実はこの法令を実施していないのであります。これは大臣どのようなお考えですか。これはまず大臣の御所見を私はお聞きしたい。これ以上この問題は追及いたしませんが、大臣どうですか。法令を実施していないのですが、あなたのところはそんなことで指導助言したって聞きはしないのです。これはどうお考えになりますか。
  122. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私就任後も本来設置者のなすべきことをPTAでやっておるということを発見いたしまして、これらは常則に戻したいと希望し、努力いたしております。  御承知通り今の制度ではわが省の方の指導助言もまことに間接になりましてよくは行われておらぬことも、あなた御指摘の通りであります。十分やってみたいと思います。
  123. 野原覺

    ○野原委員 この問題は終りますが、これは文部省の大へんな手落ちといえば手落ちで、法令を実施しないというようなことは了解できない。これは一つすみやかに是正してやはり範を都道府県教育委員会にお示し願いたい。これは大へんなことになります。  そこで本論に入りたいと思いますが、日本学校給食会についてであります。幾多の疑惑が持たれております。私十分な時間をいただきたいですけれども、時間が差し迫っておって困難なようでありますから簡潔に申し上げますが、まずお聞きしたいことは、日本学校給食会が扱っておるミルクでありますが、ミルクの横流し事件というものが大へん問題になって、私どももこの委員会でいろいろ究明をしたのでありますけれども、当時検察庁の調査進行中だということで、十分なことはうかがい知ることができなかったのであります。はなはだ残念に思っておりますが、あの問題は今日ただいまどういう状態になっておるのか、簡単でよろしゅうございますからお聞かせを願いたい。
  124. 小林行雄

    小林(行)政府委員 事故品のミルクの払い下げの状況につきましては、文部省の方から各府県に照会をいたしまして、その数字を一応取りまとめたものがございます。それによりますと、ただ長崎県だけは御承知のように関係者が相当長期間取調べを受けまして、そうして二月の下旬に起訴されたような関係がございましたので、長崎県からのはっきりした数字はまだ参っておりません。それ以外の府県についての調査でございますが、事故品ミルクの払い下げについて該当のない県が二十四県、これは各府県地元で払い下げをせずに、事故品を日本学校給食会に送り返しておる県でございます。それから府県で払い下げをいたしておりますのが長崎を含めて二十二県でございます。その数量は二十八年度に三十一万七千五百五十三ポンド、二十九年度に十一万六千三百五十ポンド、三十年度に五万五千二百七十六ポンド、三年間合せまして四十八万九千百七十九ポンドということになっております。ただこの払い下げの用途別を見ますと、そのほとんどが飼料になっております。牛馬の飼料用として払い下げておりまして、四十八万ポンドのうち四十五万ポンドまでは牛馬の飼料用として払い下げられております。この数字から見ますと、やはり牛馬の飼料に払い下げられておるわけでございますので、品質的には相当腐敗あるいは変質のひどいものであったろうということが想像されるわけでございます。  ただこの払い下げに当りまして、税関へ手続をいたしまして、税関長の承認を得るというということが一つの条件になっておるわけでございますが、約半数の二十六万ポンドについてはその手続を経ておりません。これは文部省もかねてから数回にわたって通牒も出し、いろいろ税関の手続を経るようにという指導をしておったわけでございますが、それが行われておらなかったことはまことに残念でございます。長崎県につきましては先ほど申しましたように横流しの日時あるいは数量、それから売却の代金、それから売却先その他の点につきまして詳細な事項についての調査を現在求めております。
  125. 野原覺

    ○野原委員 いろいろ掘り下げてお尋ねするとどうもずいぶん時間がかかりそうなので、私は実は質問しながら困っておるのです。そこでポイントだけお聞きしたいと思いますが、昭和二十八年度から昭和三十年度までのこの事故品ミルクを年度別にお示し願えるだろうと思う。しかしその数字は私自身も調査しておりまするし、私の調査は間違いないと思いますのであえてお尋ねはいたしませんが、これは全部払い下げましたか、売却済みでございますか。二十八年度から三十年度までの事故品、不良品ミルクは一体どういうようにして全部売却をなさったか、御答弁願いたいと思います。
  126. 小林行雄

    小林(行)政府委員 先ほどお答え申しましたように、事故品のミルクにつきましては、地元で各府県がそれぞれ所定の手続を経て払い下げるのが半分、それから事故品はこれは事故品であるということがはっきりいたしますれば、日本学校給食会に送り返してもらえば、それのかわりの品物を送ってやるということになっておりますので、その方で日本学校給食会に送ってきているものが大体半分あるということでございます。この売却の払い下げの手続でございますが、これは先ほどお答え申し上げました通り、まず県の衛生部なりあるいは保健所の検査を受けまして、給食の用途には使えないという証明をもらい、税関長の承認を経て払い下げるべきものでございます。ほとんどは保健所の検査は受けておりますけれども先ほどお答え申しましたように、約半分の量につきましては税関の手続を経ていない、実際の払い下げにつきましては各府県それぞれまちまちのようでございますが、この事故品のミルクを買い取る業者に一応手続を踏んで払い下げておるようでございます。
  127. 野原覺

    ○野原委員 この払い下げに当って公開入札をやっておりますか。入札は公開なのか。これも特定の指定業者だけに払い下げをしておるのかということが一点、それから、あなたの方は動物の飼料というようなことを言うておられますけれども、保健所等がこれは食料品には不向きだといっても、実際東京都内その他を調査してみますと、お菓子の原料にほとんどが使われております。このミルク横流し問題が起ってから、実は文部省の蔵にずいぶん積み上げて出さなかったために、東京都内のミルク卸売業者は非常に一時困っておる。これはどういうことかというと、お菓子屋さんが非常に困っておる。これは実際は製菓原料にこれが回されておるわけなんです。その点を一体どう考えるかということが二点、時間の都合上まとめて言います。それから、そうして払い下げた代金というものは一体どこにどう納入して結末をつけておるのか、払い下げ代金の使途、この声点を簡潔にお答え願いたい。
  128. 小林行雄

    小林(行)政府委員 事故品ミルクの払い下げ業者の点でございますが、これは東京日本学校給食会といたしましては、ミルクの払い下げについて申請のあった業者について一応調査をいたしまして、そうして実際事故品の出ましたときに競争入札をやっておるわけでございます。ただ飼料あるいは肥料といったような非常に用途の狭いものにつきましては全酪販と申しますか、全国酪農販売農業協同組合という、こういうものも加えて入札をやっております。現在日本学校給食会で実際入札の申請を受けておりますものが、加工用として約十社あります。それから飼料、肥料用として大体十三社、こういうものが競争入札をいたすわけでございます。  それから飼料、肥料として払い下げたようなものが、あるいは事故品が製菓原料になっておるのじゃないかということでございますが、これは文部省といたしましては、飼料、肥料用に払い下げる場合には、絶対にそういったものに使わないという誓約書を入れさせまして、厳重な契約をして払い下げておるわけでございます。加工用として払い下げる場合には、御承知のように食品衛生法に基きまして加熱処理をすれば差しつかえないということでございますので、加工用のものは、給食には不適当であっても製菓原料になり得る場合がございます。  なお第三番目の払い下げ代金の使途でございますが、これは従来も学校給食会の中に脱脂粉乳の特別会計がありまして、その中へその代金は繰り入れる。そうして各府県への輸送その他の諸掛りにこの経費を使っておるわけでございます。一般の事務費等にはこういうものは使わないようにいたしております。御承知のように昨年の十月一日から特殊法人になりましたが、まだ特殊法人になりましてからは、事故品ミルクの払い下げはしておりませんが、代金はいわゆる業務経理としてはっきり経理されることになっております。
  129. 野原覺

    ○野原委員 日本学校給食会でございますが、ただいま監理局長答弁についてもなお究明したい点があるのですけれども、論旨の進め方から便宜上日本学校給食会についてお聞きいたしましょう。この運営は国の補助金だけでまかなわれておるのですか、それともどこからか金を工面してきてやっておるのか、これは学校給食会の常務理事参考人にお尋ねをいたします。
  130. 大野こう毅

    ○大野参考人 財団法人でありました当時は二十五年から二十七年までで、これは一切国の補助もありませんので、事務費は、一ポンド幾らという、ミルクの値段に二十二銭という金をプラスしまして、それで一切の仕事をやっておったわけであります。それから二十八年からは、約半分国の補助をいただきまして、たとえば八百万円かかるならば四百万円国の補助をいただきます。半分は二十二銭とり、あと半分は国の補助をいただいてやる。それから二十九年もその通りであります。三十年になりますと、九月末までは財団法人でありますが、全部国から補助金をいただきましたし、十月以降は特殊法人になりまして、全部いただいております。それ以外は一切どこからも金は入って参りません。その何百万円かの金で運営しております。
  131. 野原覺

    ○野原委員 そこで、あなたの方が最近検察庁から書類を押収されております。一体どの程度その書類を押収されたのか、どういう疑いで書類が押収されたのか、簡明に御答弁願います。
  132. 大野こう毅

    ○大野参考人 書類を持っていかれたのでありますが、その書類は大体ミルクを扱います経理、すなわち物資経理という名前がついておりますが、先も出ました特別会計に関する書類がほとんど全部であったわけなのです。それはやはり全国のミルクの元締めである私のところから発送しておりますので、一切の配給数量並びにその代金の回収等が私の方に全部書類がありますので、地検とされましては、全国の調査などをなさいますためにそういう書類をお持ちになることが必要だったと思うわけであります。当時見えました検事は、この日本学校給食会に疑惑があって持っていくのではない、これはそういう必要からだということを理事長に言明していかれたわけであります。
  133. 野原覺

    ○野原委員 書類は全部返ってきていますね。
  134. 大野こう毅

    ○大野参考人 書類はまだ返っておりません。
  135. 野原覺

    ○野原委員 そうなると検察庁の日本学校給食会に対する疑いはまだ十分に究明されていないということであろうと思うのであります。そこで私はお尋ねをいたしますが、昨年のこと——これは大野さんよく思い起していただきたい。昨年の四月から八月まで五カ月間輸入ミルクの事情が非常に悪かったのです。そのために文部省としては都道府県教育委員会に指示をして、ミルク代一ポンド四十円見当で子供から金をもらえ、こういうことであったと思います。ところがそのミルクが八月の末ごろになっていよいよ輸入ミルクが十分入ってくるというめどもついたので、一ポンドのミルク代を二十七円であったかと思いますがそれくらいに値下げをして、四月に遡及して二十七円にしろと言った。ところがすでに四十円の値段で子供からは徴集しておる。その金は都道府県教育委員会からあなたの方に納まってきておるというので、まあ一ポンド当り十三円くらいの払い戻し金があるのであります。それが結局プールされて何千万円かの金になったということをあなたは記憶しておりませんか。
  136. 大野こう毅

    ○大野参考人 それはこういう事情なのです。私の方のミルク売り渡し価格は従来は文部省でおきめになりまして、そうして私の方にこれだけとりなさいということになっておる。最初四十円ということを文部省が言われましたのは、ミルクの値段が変動しておりまして、そのときに二十円くらいに下げても、また急に上げますと地方は非常に困りますので、とりあえず四十円とっておくということで四十円という指示がありまして、四十円とったわけであります。この八月末になりまして、いろいろ計算され、将来アメリカからの輸入の見通しをつけられました結果、二十七円でよろしいということになりましたので、四月にさかのぼって返すことになり、四月から八月三十一日までに四十円で払った総額一億四千万円は全部地方に返しております。
  137. 野原覺

    ○野原委員 その金は全部返しましたか。
  138. 大野こう毅

    ○大野参考人 返しました。
  139. 野原覺

    ○野原委員 全部返したということであれば、どういうことになるのかお尋ねをいたしたいと思います。私はある都道府県の教育委員会の事務局を調査いたしました。それによりますと、あなたの方からそのときの金にして、例を長崎県にとってみれば長崎県は十八万円だけ返してもらわなければならぬということであった。ところがあなたの方は十三万円だけ返して、五万円はこれは一つ寄付してもらいたい、こういう申し入れを学校給食会からいたしたので、五万円は学校給食会に寄付をしたのですということをあの問題を起した吉岡課長か検察庁へ証言をした、こう言われておるのでございますが、そういう事実は毛頭ございませんかお尋ねいたします。
  140. 大野こう毅

    ○大野参考人 ただいま申しました一億四千万円返したことはその通りであります。全然間違いありません。ただ、今おっしゃいましたのは、つまり私の方には価格調整金というのがあるわけであります。これはミルクの値段を文部省がきめられましても、あるいは今のように本会がきめましても、輸入の船代金、輸送費、保険料等、それだけでやりますと、ちょっとした欠損があれば赤字になり子供に迷惑をかける、こういうことになりますので、それに対して、利潤じゃありませんが、価格を調整したり本会の負担しなければならぬ金を見込みまして、一ポンド幾らというのを初めからとっておるわけであります。そのとります金は、たとえば二十円の価格のときにはその中に何円、六十円のときには何円というふうにいろいろ変化して参っておりますけれども、そういう金を前からずっととって参りましたのは、これは商売じゃありませんからもうけは要りませんが、何かの事情で本会が負担しなければならぬ欠損なり、あるいは急に価格の変動します場合に、なるべく年間の価格を変えない方が子供のためになるのでそのためにとってきたわけであります。そういう性質の金でありますから、もうこれはある程度要らないという場合には、それははっきり別にしてありますが、普通地方に返すわけであります。そこで二十九年と三十年と二回にわたりまして約七千万を地方に返しております。ただいまおっしゃいました長崎県の場合は、私の方で建物等のために醵出金をいただきますときに、二回に返しました金の中で、ある比率によって公平に寄付を願ったわけでありますが、この寄付は全国の主管課長会議すなわち本会の評議員会でありますが、その会議で決定され、その全会一致をもって寄付しようということで、公平に按分して寄付をいただいた。それはその四千万と三千万、約七千万のうちからいただいたのでありまして、今おっしゃいました四十円と二十円の価格差でも何でもありません。これは価格の変動が見通しがつかなかったから四十円とって、この八月に見通しがついたからその差額を返した、それとは全然無関係なんであります。
  141. 野原覺

    ○野原委員 いやそれはそうじゃありません。あなたはどういう答弁をしましょうとも、昨年四月から八月までにミルクの差益金というのはおかしいが、とってきた金は相当な金額に上って、あなたの方に八百万円ばかり寄付がなされたはずです。長崎県は五万円だ、東京は七百万円払ってもらわなければならぬものを百何十万円か、大阪がたしか五十万か六十万の金を、これは主管課長がどういう権限でやったか知りませんけれども、あなたの方に寄付をしておる事実がある。それをあなたが否定するということになれば、私はどこまでも事実をもってあなたと対決をしなくちゃならぬ。参考人の職責をあなた知っていらっしゃるでしょう。昭和二十九年度には、あなたの方は返還しなければならぬ金が四千万円ばかり残って、そのうち一千万円ばかりを同様手段で取得した事実がある。そうなりますと、この二つを合計しただけでも一千八百万円になる。よろしいですか、大野さんこれは一つ率直に言うてもらわなければならぬ。都道府県の諸君もここにいろいろな問題があろうし、私はこれを重大に考えておりますから、教育委員会等の改正などについても審議をしなくちゃならぬと思いますけれども、この問題は徹底的に追及する。父兄、学生、一切の関係者が、大きな疑惑の目をもって今日見ておる。この点に疑惑を抱けばこそ検察庁は今日書類を返さぬのですよ。そうしないとこの点の解明はできぬということになる。そこで、一体そういう点についてあなたはどう御答弁をなさるか。昭和二十九年度にこれはもらったでしょう。これは決してあなたの収賄ということじゃないが、日本学校給食会の運営のためにもらっておるはずです。そういう事実は毛頭ないとあなたは断言いたしますか、重ねてお尋ねいたします。
  142. 大野こう毅

    ○大野参考人 こういう大事な場所でありまので、私は絶対に率直に申しておるわけでありますが、こういうわけなのです。つまり本会は二十五年に財団法人になりまして出発したわけでありますが、配給の仕事はその前二十二年からやっておりましたけれども、事務所がないのであります。一時文部省の保健課にもおりましたし、外で二、三カ所無料で借りたりして、哀れな生活をやってきておっわけでありますが、私がお世話になったのは二十七年でありますが、そのときには日本衛生会の一室を借りて、そこで十何人が仕事をしておったわけであります。こで全国会議を開こうにも場所はありませんし、お客でも来るというと一ぱいになりますので、事務所が狭隘で仕方がない、何とかもう少し広い事務所をほしい、われわれはむろんでありますけれども、地方からお見えになる主管課長、評議員も、会合するたびにこういう話がありましたので、何か事務所がほしい、といって文部省を離れますと、非常に不便がありますので、文部省の近くにほしいというわけで、家を借りる相談もしましたし、借室の相談もしたのでありますけれども、計算をしますと、毎月の家賃あるいは借室料と申しますか、そういうものと、権利金が相当高いし、これはだれが負担するかと申しますと、最初申しましたように結局子供が負担するよりほかない、そうしますとミルクの一ポンドの価格にプラスしてとるよりほかない、そして子供に長く迷惑をかけますことは非常によくないということで、何とか建てたいということをいつも話しておったわけであります。つまり昭和二十九年六月十六日に参議院会館で全国の主管課長会議、すなわち本会の評議員会が開かれましたときに、それではまことに困るだろう、そういうふうに借りる所もなかなかない、権利金も高いので困るだろう、結局子供に負担がかかるから何とかわれわれが出そうじゃないか、こういうことになりまして、六月十六日の主管課長会議で全会一致で議決せられた。それでそれぞれ帰って教育長にも了解を得られまして、そして私の方にそのとき一千万円を寄付しよう、それはミルクを買い取った分量に按分して寄付しようということで、一千万円を寄付されたわけであります。それが一つと、それから三十年の場合は——そのときに価格調整金を返しましたから、その中から寄付されたので、そのときに一千万円と申しますのは、実は五百万円の運転資金、五百万円の建築という予定でありますが、その五百万円の建築というのは木造の予定であったわけでありますけれども、だんだんやってみますと、木造は非常に危険ではあるし、財産としてもどうかというふうな話が出ましたし、当時いろいろな話がありまして、結局コンクリートにしようじゃないかということになりまして、コンクリートの設計を文部省にお願いしたわけであります。それも最初二階の案だったのでありますけれども全国会議のホールなんかも必要な関係で三階にしたいということで、数回理事会を開いてこれをきめ、三十年の六月二十日の参議院会館における全国会議でそれでは一緒に三階にしよう、それがためにここに八百五十万の追加の寄付をしょう、こういうことになったわけであります。ちょうどそのときに、私の方は今申しました価格調整金の三千万ばかりの余りを返還しましたから、その返還のときに八百五十万寄付されたわけであります。そこで千八百五十万、それで建物を建て、設備をする等をまかなったのでありますが、ただいまの価格の四十円と二十七円の差ということとは全然関係がありませんので、御了承願いたいと思います。
  143. 野原覺

    ○野原委員 だんだんほんとうのものが出てきつつあります。私は事実を出してあなたにお尋ねをいたしますから、これは率直に言ってもらわないと困る。昭和二十九年度は何といっても一千万寄付さしたのです。昭和三十年度には八百五十万円の寄付をさしておる。日本学校給食会がそのような寄付を都道府県の教育委員会に要請をすることは、あなたに言わせれば主管課長会議が自発的にしたということであるかもしれませんが、しかし私は主管課長がどういう権限があって子供からとった金を出したか、これはあらためて追及しますよ。そういう権限はないはずなのだ。だがとにかく寄付の割当をやっておる。東京から鹿児島に至るまで一定のパーセンテージで割当をやって、一千八百五十万円という金をとっておる。もちろんそのとった金は飲んだり食ったりには使っていないかもわからかい。コンクリートの三階建の建物が千二百五十万円で建ったということも私は知っておる。落成式に五十万円使ったということも知っておるのです。一本千二百円の万年筆をそのとき都道府県の主管課長に対してサービスをしたとかせぬとかいうこともちゃんとあがっておる。そこで文部大臣にお尋ねをいたしますが、あなたは監督者なのです。どうですか。お二人に対決していただいてお聞きしたいと思いますが、あなたは、ときの文部大臣清瀬さんではなかったかと思いますけれども文部大臣の承認を得てこの寄付を受けたのかどうか。文部大臣の承認を得てあなたはこういう寄付行為をお受けになられたかどうかをお聞きしたい。
  144. 大野こう毅

    ○大野参考人 去年の九月末までは財団法人でありまして、私どもの財団法人の会長は文部省の監理局長であります。それから私の方の理事でほとんど常勤のようにいろいろ御協力願ったのは文部省の学校給食課長でありますが、そういう寄付を受け入れますにつきましては理事会で承認されております。特に文部省の給食課長である理事、それから監理局長である会長、その御了解を得ましてその節の寄付の受け入れをいたしたわけであります。ただいま万年ペンの問題がありましたが、財団法人が解散をいたしますときは、いろいろな例を調べましても役員に何らかの記念品を贈る等のことをやっておりますので、主管課長と申しますが、教育委員会の役員でありますが、給食会から申しますと、地方の給食会の理事長とか理事をやっております、つまり本会の評議員なのですから、財団法人が解散になるときに御苦労願った評議員に対して記念品として万年筆一本を贈った、こういうわけであります。この寄付を受けますのも給食会から受けたので、金をお返しいたしますのも地方の給食会に返したわけであります。先ほど教育委員会とごちゃごちゃになっておりましたけれども、私どもの取引の相手は地方にあります、たとえば東京学校給食会、神奈川県学校給食会、そういう給食会が相手であります。そこに金を返し、そこからとっておるわけであります。この給食会の役員をやっておりますのがいわゆる主管課長でありまして、財団の解散に際してお礼の意味で記念品を差し上げたというわけであります。
  145. 野原覺

    ○野原委員 大体与野党の理事間の話し合いもできたようでありますし、相当お疲れのようでもありますので、私は本日はこの程度で終ってもいいと思いますが、文部大臣にお尋ねしておきたいと思いますが、そういう場合に文部大臣の職権としてこれはやはりあなたが監督をしなければなりません。学校給食会法上そうなっております。そこで寄付を受ける場合にはやはりあなたの承認が要ると思いますが、いかがでございますか。
  146. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 元の財団法人が昨年の九月まで続きまして、十月一日に特殊法人として発足したのであります。私が就任したのは十一月の二十二日でございます。しかしながら発足後開館式をやるというので一ぺん会に行って建物等を検査いたしました。そのときにこの状況について説明を受けて、大体今大野君の言う通りの説明を会場で受けまして、すべて合法にできておると思って賞賛したようなわけであります。その当時の前任者はやはり承諾いたしておるものと私思っております。
  147. 野原覺

    ○野原委員 これで終りますが、これは相当重要に考えておりますので、私はあらためて究明いたします。予告しておきますが、私は検察庁でもありませんし、警察でもございませんから、決して被告人扱いにするような失礼なことはいたしたくない。私どもの疑惑をやはり明らかにしてもらわなければならぬのであります。これは文教委員会の私どもの当然の務めでもございますので、次の委員会に当っては学校給食会当局として次の資料をお示し願いたい。  昭和二十九年度一千万円の各府県割当はどうなっておるか。それからその一千万円という金はどういう性質の金であったかということも、もちろんミルクに関係しておることは明瞭でございますが、お示しを願いたい。昭和三十年度、昨年の四月から八月までの八百二十万円という金の割当はどうであるか。そうしてそれは強制割当でないというけれども、しかし強制的に割り当てられたといっていきまいておる都道府県の給食会もあるのでございますが、その点についてあなたの方でそうじゃないという十分確信のある説明のできる資料を出してもらわなければ困るのであります。それから最初私が質問いたしました事故品、不良品ミルクの昭和二十八年度から三十年度に至る払い下げの数量、それからもう一つは、ミルクの輸入実績、これも過去三カ年でよろしゅうございます。そうしてその輸入されたミルクが各府県にどのように割り当てられておるか。それが給食人員と比較対照した場合に一体どういうことになっておるか。この点は私ども実は都道府県が横流しをする場合に、文部当局としても厳正な監督をなしたかどうかということの資料に資して考えてみたいからであります。もう一つは、払い下げに指定業者はないような監理局長答弁でございましたが、これはちょっと私の調査間違いかもわからないけれども、これは完全なる競争入札の形式でもないように思うが、一体どういうような都内のミルク卸売指定業者が文部省の事故品ミルクの払い下げをやってきておるかということ、どういう業者であるか、どこの業者に一体どれだけ出したかというような点を資料としてお出しを願いたいのであります。いずれ資料が出されましたならば、私は予告をいたしておきますから、この問題を究明するために十分な御説明を次の委員会では的確にでき得るように措置をしてもらいたい。  以上で私の質問を、中断になりますけれども、本日は終ります。
  148. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 野原委員の参考資料を小林監理局長並びに大日本給食会参考人より当委員会に提出をお願いします。  本会議が再開されておりまので、野原委員質疑は他日に留保することとし、本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後五時四十四分散会