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1956-03-23 第24回国会 衆議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十三日(金曜日)     午後零時二十六分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君    理事 山崎 始男君       伊東 岩男君    稻葉  修君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       千葉 三郎君    塚原 俊郎君       並木 芳雄君    山口 好一君       河野  正君    木下  哲君       野原  覺君    平田 ヒデ君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      内藤譽三郎君  委員外出席者         海上保安監         (船舶技術部管         理課長)    太巻 光吉君         海上保安監         (警備救難部         長)      砂本 周一君     ————————————— 三月二十二日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として林  唯義君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員林唯義君辞任につき、その補欠として久野  忠治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十二日  教育職員免許法施行法の一部改正に関する請願  (楢橋渡紹介)(第一四九一号)  八日市場市中央中学校屋内運動場建設費国庫  補助等に関する請願竹尾弌君紹介)(第一四  九二号)  地方教育委員会制度存続に関する請願外九件(  足鹿覺紹介)(第一四九三号)  教育委員公選制確立に関する請願松原喜之  次君外一名紹介)(第一四九四号)  同外一件(井上良二君外一名紹介)(第一四九  五号)  同外五件(久保田鶴松君外一名紹介)(第一四  九六号)  同外七件(杉山元治郎君外一名紹介)(第一四  九七号)  同外一件(西村榮一紹介)(第一四九八号)  同外四件(松原喜之次君外一名紹介)(第一五  二八号)  同外十件(杉山元治郎君外一名紹介)(第一五  二九号)  同外二件(西村榮一紹介)(第一五三〇号)  同(井上良二君外一名紹介)(第一五三一号)  同外十一件(久保田鶴松君外一名紹介)(第一  五三二号)  同外一件(井上良二紹介)(第一五七二号)  同(井手以誠君紹介)(第一五七三号)  同外一件(久保田鶴松君外一名紹介)(第一五  七四号)  同(原茂紹介)(第一五七五号)  同(淺沼稻次郎紹介)(第一五七六号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第一五八九号)  同外一件(杉山元治郎君外一名紹介)(第一五  九〇号)  同(西村榮一紹介)(第一五九一号)  同(下平正一紹介)(第一五九二号)  同(木下哲紹介)(第一五九三号)  同(田中織之進君紹介)(第一五九四号)  写真技能師法制定に関する請願粟山博君紹  介)(第一五五一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  教科書法案内閣提出第一二一号)  市町村立学校職員給与負担法及び教育公務員特  例法の一部を改正する法律案平田ヒデ君外二  名提出衆法第一〇号)  南極探検等に関する件     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  教科書法案議題として審査を進めます。  都合によりこの際暫時休憩し、午後は一時三十分より再開いたします。  休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後二時三十九分開議
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  審査都合により、まず市町村立学校職員給与負担法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案議題といたします。提出者より提案理由説明を聴取いたします。平田ヒデ君。     —————————————
  4. 平田ヒデ

    平田委員 ただいま議題となりました市町村立学校職員給与負担法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  幼児教育についての重要性は今さら述べる必要もないくらいでございますが、ことに最近は、幼児発達段階より見て、小学校入学期よりさらに重要性が大であるという実証もなされ、また一方、生活不安の増大により、家庭における幼児教育が不十分になりつつある事実がございますので、義務教育必要性も強く叫ばれている現状でございます。従って、現在幼稚園入園希望者も、年々増加しておりますが、公立幼稚園においては、施設が少いため、希望者の三分の一しか収容されておりませんので、幼稚園入園に当っては、その競争率が二倍から二十倍の狭き門であり、公立幼稚園に入園することができなかった幼児は、私立幼稚園へと入園していく実情でございます。  しかしながら私立幼稚園は、御承知のようにすべてが父兄負担によって経営されております関係上、保育料を取り上げてみましても、平均して年間一万五千円という高額で入園料等も相当な額に上り、幼稚園教育が企業化されつつある現状であります。  また公立幼稚園相互の間にも、アンバランスがあり、同一県内父兄負担を見ましても、年間二千四百円から六千円で、教員給与施設設備教員構成勤務時間等にも不均衡を生じている現状でございます。  もともと幼稚園学校教育体系の一貫として学校教育法に明記され、教育職員免許法においても、義務教育教員と同様な資格を要請されているにもかかわらず、市町村立学校職員給与負担法が適用されていないのは片手落ちの措置と言わねばなりません。  これらのことは教育機会均等立場よりみても、また現在年々幼稚園が普及している現状から見ても、当然何らかの形で、幼稚園教育振興をはかる必要があります。  そのためにはまずもって教員給与全額都道府県負担にすることが望ましいことでございますが、幼稚園教育義務教育でないため、それを実現するためには、相当の時間を要しますので、これらの実情を勘案いたしまして、この法律案におきましては、一方において幼稚園教員給与を半額都道府県負担といたしまして父兄負担の軽減をはかりますとともに、公立幼稚園の設置をうながし、また地方において、幼稚園教員給与勤務時間、その他の勤務条件につきましても、少くとも都道府県内で均衡化することといたしたのでございます。  かかる現状にかんがみまして幼稚園教員給与を半額都道府県より負担いたしますことは、幼稚園教育振興のためにもぜひとも必要なことであると考えられますので、あえてこの法律案提案いたしました次第でございます。  以上簡単でございますが、提案理由の御説明を申し上げました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に補足説明を聴取いたします。山崎始男君。
  6. 山崎始男

    山崎(始)委員 市町村立学校職員給与負担法及び教育公務員特例法改正する法律案補足説明を申し上げます。  ただいま市町村立学校職員給与負担法及び教育公務員特例法改正する法律案につきまして、提案理由を御説明を申し上げましたが、これにつきまして若干の補足説明をいたさせていただきます。  この法律案は二カ条に分れておりまして、第一条におきましては市町村立学校職員給与負担法の一部改正について規定いたし、第二条におきましては教育公務員特例法改正について規定いたしております次第でございます。  一、先ず第一条について御説明申し上げますと、新たに一カ条を新設いたしまして、第二条の二といたしまして、市町村立幼稚園の園長及び教諭、助教諭の給与の二分の一を都道府県負担とすることを規定いたしたのでございます。  次に同法第三条の改正でございますが、第三条は都道府県給与負担する教職員定数は、都道府県条例の定める範囲内で市町村教育委員会都道府県教育委員会と協議して定めることになっておりますので、幼稚園教員につきましても、同様の取り扱いをいたすための改正規定でございます。  また同法第四条の改正規定は後に御説明いたします教育公務員特例法第二十五条の四において、都道府県条例で定めることとなっております給与以外の給与、すなわち退職手当退職年金退職一時金、死亡一時金、旅費公務災害補償等につきましても、都道府県条例で定めようといたすものでございまして、先に御説明いたしました同法第三条の改正と同様に幼稚園教員もこれを含ませることといたしましたのでございます。  二、次に第二条について御説明いたしますと、市町村立学校職員給与負担法で、給与負担いたしております教職員につきましては、給料勤務時間、その他の勤務条件につきましては、都道府県条例で定めることになっておりまして、幼稚園教員も、これと同様の取扱いをいたすために、教育公務員特例法二十五条の四を改正いたしたものでございます。すなわち現在各市町村幼稚園は同一県内におきましても、市町村によりまして、幼稚園教員給与勤務時間等の勤務条件は、同一学歴、同一勤年数の者の間にも、非常なアンバランスがございますので、この際これをも改正いたすことといたしたのでございます。  三、なお附則について御説明いたします。この法律は、昭和三十一年四月一日から幼稚園教員定数給与以外の給与、すなわち退職手当退職年金退職一時金、旅費公務災害補償等幼稚園教員給料勤務時間、その他の勤務条件も、今後県条例で定めなければならないわけであります。しかし現在幼稚園教員県条例が適用されておりませんので、県条例が施行されるまでには、若干の日数を要しますので、その間は従前の例によることにいたしたのでございます。  以上簡単でございますが補足説明を終ります。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本案に関する質疑は追ってこれを行うことにいたします。     —————————————
  8. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に文教行政についての質疑を許します。平田ヒデ君。
  9. 平田ヒデ

    平田委員 私は南極探検について学術的な立場から二、三お伺いいたしたいと思います。これは総括的にお伺いをいたしたいと思います。明年の七月から明後年十二月までの間に世界の四十カ国の地球物理学界が協力一致して国際地球観測年という国際的学術行事を行うことになっております。わが国学界もその一翼としてきわめて重要なる学術調査を行うことになっておりますけれども、過般来発表されております同事業に対する政府予算措置を見ますのに、この国際的な大事業の本質からみてはななだ不適当かつへんぱな予算が組まれているのでございます。これをこのまま放置いたすといたしますと、二十五年に一回しかないというこの一大国際学術事業においてわが国が引き受けた光栄ある国際的使命のほとんど全部が実施不能となり、これがために国際連帯の同事業に甚大なる損害を及ぼし、ひいては日本の名誉を傷つけ、一大国辱を招来するおそれがあると思うのでございまして、政府はこの際南極探検に対する予算の不備を反省して、その全面的な組みかえを断行される御意思はございませんか。お伺いいたしたいと思います。
  10. 竹尾弌

    竹尾政府委員 御説ごもっともな点も多々ございまして、私どもがこの予算を獲得するに際しましては、われわれといたしましては非常な努力を払ったのでございますけれども予算の大体の決定を見るぎりぎりのところまで、この南極探険地球観測年予算がなかなか思うようにつかなかったのでございますが、最後まで私どもががんばりまして、今予算書に計上しているような予算がとれたわけでございます。お説の通り、これだけでは非常に不備な点もございますし、何と申してもあの人跡未踏南極に貴重な方々をお送りするのでございますから、そういう点も勘案いたしますると、これは非常に少い予算であるということを痛感してはおりますが、何と申し上げてもなかなか思うように財政関係が許しませんので、私どももやむを得ずこの程度でがまんをしておるような実情でございまして、機会がございましたならば、できるだけその方面にも多くの予算をさきたい、こういう考えを持っておるのでございます。どうぞ御了承をお願いいたします。
  11. 平田ヒデ

    平田委員 ただいまの予算の額などについては、一応総括的にお伺いしてから、もう一ぺんお伺いいたすことにいたします。  今回の国際地球観測年学術行事は、地域的に申しまして、一つ北極——欧州——アフリカの線、もう一つ北極——北米——南米——南極の線、三つはアリューシャン——日本——フィリピン——濠——南極の線、この琴の線に区分して行われております。この地域内の各国学界が、それぞれの国内において周到精密なる観測調査を実施して、同時に絶えず連絡統一を緊密にし、その学問的成果もすべて公表、交換することになっているのだそうでございます。また調査観測項目は、担当国によって多少の差はありますけれども日本が引き受けたところのものは気象、地磁気、極光及び夜光、電離層、太陽活動宇宙線天文経度緯度ロケットによる上層大気南極、これらの項目でございますが、日本の当初国際学界に約束し、かつ日本学術会議等でも最初から計画した調査項目は、前述の九項目のうち、ロケット南極を除く七項目、すなわち国内観測であります。これは日本の地理的な位置から申しましても、当然この七項目がこの国際事業重点でありまして、日本でなければできない最優先の項目でございます。このことは、昨年の初め政府学術会議の協議によって、一応右の国内観測のために昭和三十年から三十四年までの五年間に、約十億の既定経費支出の了解ができておることを見てもわかるのでございますが、その後に至りまして、昨年九月一部の地球物理学者がブラッセルの最終国際打合会議に出席いたしまして、南極地域での観測ロケット観測とを引き受けて帰ったのでございますが、その結果であるかどうか判然とはいたしませんけれども、三十一年度の関係予算といたしましては、国内項目に対してはわずかに二億、南極地域観測に対しては七億五千万円という巨額が組まれておるのでございます。国内観測が昨年末予定もし、政府との折衝によって了承もしていた三十一年度の予算は、四億五千六百万円であったものが、その半分にも満たない二億円に削減をされたのでは、とうていその使命を果たすことはできないと思われるのでございます。特にことしは、この国内観測部門及びロケット部門、これも国内観測の一部分でありますけれども、これらはいずれも観測機械の購入、施設の新設、予備観測実施等最後の物的、人的準備も完了しておかなければならない重要な段階にあるのでありまして、今年度の予算が半額にされたのを、来年度の増額で取り戻せるというような段階ではないのでございます。ことに現に新聞などに発表されたところによりますと、このような大削減にあったために、茅学術会議長自身が、国内観測既定計画を縮小しなければなるまいと言っておられますし、観測年研究連絡委員長京大教授であります長谷川万吉博士も、問題は世界的に認められている日本地球物理学立場であるから、体面を汚されるようなことはしてほしくないと語っておられるのであります。このほか国内観測の各担当学者の間でも、非常なショックと悲観論が生じておるのでございます。南極地域観測は、三年前からのわが国学界観測年行事にはなかったものであり、また南極については、アメリカ、ソ連、英国、フランス以下十一の大国の学界がこれを担当して、その豊富な財力と資材をもって十分に観測調査を行い、これを世界学界に公表するのでありますから、わが国がこういうような僻遠の地に巨額の国費を投入し、わずか三十名程度の人員を送り、しかも重大なる人命の危険を冒して世界一の小規模観測を行い、そのために本来的使命である日本列島内における国内観測部門が、きわめて不完全なる観測しかできなくなるということは、非常に重大事だと思うのでございます。政府は右のようなへんぱにして本末を転倒した予算をどのような信念によって組まれたか、その経緯と考えをお伺いいたしたいのでございます。
  12. 稻田清助

    稻田政委員 ただいまの御質疑に対しまして、総体的に政務次官からお答え申し上げたことで御了承いただいたと存ずるのでございますけれども、細部の点について、さらにただいまの御質疑に御指摘のありました諸点について補足いたします。  第一は、国内における国際地球観測年関係経費が僅少に過ぎるではないかというような御趣意の御質疑であったと存ずるのであります。この点につきましては、計上いたしておりまする約二億の経費をもちまして、文部省、運輸省あるいは郵政省関係の諸機関が協力いたしまして、総合的な観測をいたすわけであります。もっともその観測をほんとうにいたしますのは、明年度ではないのでありまして、ただいま御指摘通り、これは明後年の問題でございます。従いまして明年度国内観測に関しまする準備といたしましては、いろいろな諸器具機械を購入いたしまして、観測テストを試みる、こういうような状況であるのであります。国内のことでありまするから、新たに購入いたしまする機械ばかりではなく、すでに各研究機関あるいは観測機関が持っておりまするあらゆる機能をあげていたすわけでございます。何分準備の年でございまするので、われわれといたしましては、大体各機関とも相談いたしまして、この程度経費で十分であると考えまして予算をお願いしたわけであります。すでにこの二億の経費をもとといたしまして、測地学審議会総合的企画に当っておりますので、この測地学審議会を中心として各省庁の関係機関準備観測の相談をいたしております。別に予算が足りないから困るというような結論は、今のところ出ていないのでございます。  ただ問題となっておりまするのは、ロケットの製作及び飛翔、打ち上げの問題でございます。この点はだんだん順を追うて準備を進めて参るわけでありまして、今のところ学術的に計画いたしておりまするものが順を追うて成就するかどうかということも、これはその先の先まで、テストの上にテストを重ねるわけでございますから、予見し得ない状況でございます。ロケット飛翔も三十二年度に入りましてから、打ち上げるわけでございますから、打ち上げるまでに準備が完了すればよろしいのであって、必ずしも三十一年度中に一切の準備を完了しなければ実際の打ち上げに間に合わぬというわけではありません。もしまたいろいろなテストの上にもテストを重ねて参りますものが、早くいくかおそくいくかも、今のところ見当がつかないわけでございますから、ロケットにつきましては、ただいまお話がありました費用のほかに、国立学校経費付置研究所経費の中にも相当額計上いたしておりまして、それらをあわせて準備をいたすつもりでございます。とにかく三十二年が本観測でございますから、関係機関も全力をあげて準備をするでございましょうし、われわれといたしましても、三十二年の予算にはもちろん遺憾なきを期したいと考えております。  南極の点につきましては、七億五千万円、そのほか本年度の船の関係の五千万円余をもちまして、われわれといたしましては、一応予定いたしました計画が成就し得るものと考えております。
  13. 平田ヒデ

    平田委員 ただいまの御説明了承いたしましたとも私申し上げかねるのでございます。学術的な専門家の御意見も後ほど伺いたいと思います。  次にお伺いいたしますことは、政府南極地域観測に多額の予算を組んだようなただいまの御答弁でございましたけれども、この程度予算で安全なる南極観測ができると思っておられるのでございましょうか。
  14. 稻田清助

    稻田政委員 ただいま申し上げました通り政府といたしましては、関係機関寄り寄り相集まりまして、この計画準備し、必要な予算をお願いしたわけでございますけれども、決してあり余って余裕のある予算ではございませんが、ともかく所期目的を達しまするには十分な予算と心得て要求いたしておるわけであります。
  15. 平田ヒデ

    平田委員 それは、先ほど私あとでお伺いすると申しましたけれども、この予算でございます。これは国際地球観測年事業費として三十一年度の文部省予算は九億七千五百万円とっておられます。それでそのうち南極探検のための経費として七億五千万円、そうするとこの二億何千万というのは項目が明細になっておらないように私思ったのでございます。この七億五千万円の中には宗谷改装を含んでおるということでございますけれども、この点について御説明を願いたいと思います。
  16. 稻田清助

    稻田政委員 国際地球観測年の二億二千五百万円は、七億五千万円の外でございます。それから宗谷改装費及び船舶輸送に関しまする費用は七億五千万円のうちに含まれております。
  17. 平田ヒデ

    平田委員 そうしますと、この七億五千万円から宗谷改装費をとりますと、宗谷改装費は幾らでございますか。
  18. 砂本周一

    砂本説明員 宗谷改装費といたしましては、五億一千二百八十六万五千円計上されております。もっとも他の流用等によりまして、実際に使えます経費はもう少し増加する予定でございます。
  19. 平田ヒデ

    平田委員 この宗谷というのは古い船で、改装をしなければ困るような船だそうでございますけれども、そういう改装しなければならないような船で間に合うのでございましょうか。私は大へん不安なんでございます。
  20. 砂本周一

    砂本説明員 南極観測が決定せられまして、どういう船を使って輸送の任務を果すかということにつきましては、いろいろ広範囲にわたって研究をされたようでございますが、時間の問題とか、経費の問題とか、こういうこともありまして、数隻の候補の中から、技術的な検討が加えられまして、もと海上保安庁の灯台補給船宗谷が決定した、かように承知しております。従って現在動いております状態におきましては、当然これは不適格でございますので、これをいかようにして改造すればいいか。もちろん南極につきましては、いろいろ未知の事項がございますので、決定的な判断は非常に困難でございますが、しかし現在まであります調査資料その他によりましていろいろ検討し、この程度改造であるならばまず所期目的が達成できるであろう、こういう見込みをつけまして、改造計画を立て、それに対する見積りをはじきまして、予算計上経費が出たわけでございます。
  21. 平田ヒデ

    平田委員 この船は氷原を突き破って進まなければならないという非常に強力な設備を持たなければならぬ船であると思うのでございますけれども、この改装というのはどういうところに——ども普通考えますと、ぺンキの塗りかえとか、よごれをとるとかということを考えがちでございますけれども、私専門家ではありませんから、ただその改装については万全を期せられるであろうとは思いますけれども、どういうところに重点を置いて改装なさるのでありますか。
  22. 砂本周一

    砂本説明員 南極に参りますには、いろいろ検討した結果、やはり氷を割る性能を持つことがきわめて重要な事項だということがわかったわけでございます。しかしこれは古い船の改造でございますから、金の制限もございますが、やはり改造範囲もおのずから制限がございますので、どの程度の氷を割る能力があれば十分かということは——これは能力の大きいほどけっこうなのでございますし、はっきりと、これだけあれば完全だということも、おそらくいかに検討いたしましても不可能だと思うのでございますが、宗谷を使うことに一応きめまして、可能な範囲において最小限度一メートルの砕氷能力はぜひ必要だということが、いろいろな機関の検討を経まして最初にきめていただいたようでございます。この一メートルの砕氷能力ということが非常に大きな基準でございます。それから氷原の中に入りまして閉じ込められるというケースも非常に多いのでございまして、そのときに氷の中で固着することを防ぐために、船を動揺さして氷を割る。それからまた、先ほど申しましたが、一メートルの氷を割る一つの方法といたしましてもこれがあわせ考えられるわけでございますが、船を前後左右に適当な角度に適当な時間ゆすぶって割る、こういう性能が必要でございますので、これの設備を加えることにいたします。  それから一メートルの砕氷能力に直接関係することでございますが、現在持っております馬力では非常に寡少でございますので、この馬力を強化しなければいかぬ。そのためにはもちろんエンジンをかえるのですが、その馬力が約五千馬力を要するという計算になりました。正確に申しますと四千八百馬力ぐらいになりますが、大体五千馬力ぐらいのエンジンと入れかえまして馬力を強化するのでございます。  それから先ほどの前後左右に動揺する装置をつけますことは、外板と申しますか、これを二重張りにすることになります。氷塊その他に接触あるいは衝突いたしましたときの外板の能力を強くすることもあわせてこれで目的が達せられる。そういうふうに改造するのでございます。  その他寒冷地における航海でございますからいろいろ暖房装置の点、それから従来乗っております乗組員の数がふえますし、さらに観測員の方々もお乗りになりますから、かなり居室も拡充しなければならぬ。それから計画といたしましては、航海上ぜひ必要な機関としてヘリコプターを要求しておりますが、これを搭載する施設も必要でございます。こういう点が重要な点でございます。
  23. 平田ヒデ

    平田委員 ヘリコプターを載せられるそうでございますが、その費用もこの中に入っております。
  24. 砂本周一

    砂本説明員 今申し上げました金額の中には含まれておりません。私の申しましたのは、別途ぜひ何らかの方法で確保していただくように関係者の御努力を期待しておるわけでございます。もちろん私どもも努力するつもりでございます。
  25. 平田ヒデ

    平田委員 そうすると、このヘリコプターというのは、まだ予算化されていないわけでございますね。
  26. 稻田清助

    稻田政委員 ただいまの点は、政府部内にもヘリコプターはございますので、いろいろそれを使う計画等を進めております。
  27. 平田ヒデ

    平田委員 これは保安庁の方にお伺いしたいのですけれども宗谷で接岸するのは困難だということを私たちも新聞で見ております。松本船長らの南極の報告によりますと、あの砕氷能力が非常に貧弱で、プリンス・ハラルド海岸への接岸はとても困難だというふうに言っておられます。ただいまの御説明を伺いましても、何とかこれで間に合うだろう、何とかこれで押し切ろうというようなことが、言外におありになるというふうに私感じたわけなのでございますけれども、一体そういうことで実験をなさるということは、私は当ってくだけろ式ではないかというふうに考えるのですけれども、そういうことであってはならないと思います。この点についてお伺いしたいと思います。
  28. 砂本周一

    砂本説明員 先ほど御説明申し上げました宗谷に関する性能の説明について、御疑問があるようでございますが、もちろん私ども南極の困難な状況をはっきりとつかみまして、それに十分実際の実績あるいは学理的の根拠によって、一メートルの砕氷能力であれば十分であるという根拠で改造に着手したわけでございませんので、そこにはやはり多分な疑問を残しております。しかし先ほど申しましたように、十分研究をいたしまして、かつ船員としても優秀なものを乗せ、また出るまでにはいろいろな研究、訓練、調査もいたしますし、またヘリコプター等の力によりまして、船の構造について十分警戒をして、非常に危険な事態において、その危険を犯して特に突っ込んで、危険の目に会うということは事前に避けつつ、ある目的地点には到達し得るという、ある程度の見当をつけておるわけでございます。もちろん困難でございますけれども、そこには直接大きな危険にさらされないように十分な注意を払って、厳密な意味におきまして必ずしも正確な地点にタッチできますかどうですか、これも疑問ではございますが、観測のために必要な地点付近におきまして、器材あるいは人員を船から揚げますことは可能である、かように考えてせっかく努力しておる次第でございます。
  29. 平田ヒデ

    平田委員 そういう場合に、たとえば氷上に荷物をお揚げになるかもしれませんけれども、それらを設営地と申しましょうか、そういうところに運ぶというときに、ヘリコプターでお運びになるのですか。
  30. 砂本周一

    砂本説明員 ちょっと船にも関連がございますが、陸上におきましてそういう作業のできる地点を選ぶことが重要だと思うのであります。陸上の運搬その他につきましては、もちろん私どもも十分関心を持っておりますが、その点につきましては、観測隊自身がいろいろと研究なり御準備をなさることと思いまして、それと十分関連をとりまして、いろいろ今後の航海関係研究したい、計画を立てたい、こういうふうに考えます。
  31. 平田ヒデ

    平田委員 氷原を突き進んでいく、そういう氷を破っていくときに、その氷原の間を進んでいく間はいいのですけれども、もしもこれが氷に包まれて、その圧力で船が押しつぶされるというような危険がないものでしょうか。
  32. 砂本周一

    砂本説明員 船が氷にとざされることが絶対にないとは私どもも保証しかねるのでございますが、そういうことを極力避けるようにいたすつもりでございます。それから一応現在改装工事におきましても、最悪の場合を考えまして、それが極力悪い状態にならないように、船体その他の設計も考えておるわけでございます。従って今そういう場合に遭遇したら非常に危険だなどということは考えておりません。しかしいろいろ最悪の場合を考えまして、与えられました予算と期日の許す限り、それに対する最善策を講じていくつもりでございます。
  33. 平田ヒデ

    平田委員 主要国の南極探検隊の規模を承わりたいと思います。主としてアメリカ、ソ連、アルゼンチン、そういった国々が一体どれだけの規模をもって探検をするか、それを伺いたいと思います。
  34. 稻田清助

    稻田政委員 本年の六月に国際会議がございまして、日本からも永田氏が参加するわけでありますが、その国際会議に、各国がそれぞれの計画を持ち寄ることになっております。その際におきましては明らかになると存じます。
  35. 平田ヒデ

    平田委員 それで明らかになるというので、それでは現在では日本の国ではわからないというわけでございますか。
  36. 稻田清助

    稻田政委員 なお情報をあらかじめとりたいという意味合いにおきまして、豪州に最近隊員の一人を派遣することになっております。正確なことはお帰りならなければわからぬと存じます。
  37. 平田ヒデ

    平田委員 それでは私のちょっと調査いたしましたところを申し上げます。日本ではヘリコプター二機、しかもそれはまだ予算化もされていない。日本の国にあるから、それを使おうというお考えのようでございますけれども、アメリカでは飛行機二十五機、ソ連では飛行機五機、アルゼンチンではヘリコプター二機、飛行艇二機、グラマンを二機、こういうふうになっておるようでございます。人員につきましては、アメリカは一千九百人、ソ連が一千二百人、アルゼンチンが八百人、日本が三十人です。それから船でございますけれども、アメリカでは軍艦が一万三千トン、砕氷船が九千トン、六千トンの二隻、貨物船が一万三千トンがこれも二隻、タンカーが四隻、それからソ連は砕氷船が一万二千トンが二隻です。アルゼンチンは砕氷船が三千六百四十トンと、貨物船が三千百トン、日本はただいまこれから作り直して出すという砕氷船の宗谷が二千二百トン一隻。この現状。これが今度の会議ではっきりすると稻田局長さんはおっしゃいましたけれども、私はこれでほんとうに、世界注視の的となっている日本南極探検隊が、私どもの期待するようないい効果をおさめることができるかどうか。しかもこの船に乗られる三十名の方々は、いずれも選ばれた優秀な方々であると思うのでございますけれども、この数字をごらんになってどうお思いになりますか。私清瀬大臣にお伺いしたいと思いますけれども、それから局長さんの方にお願いします。
  38. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 いろいろの事情もありまするが、日本の受け持っておる観測地の面積といいますか、広さが、他の大きな国よりだいぶ違うのです。
  39. 稻田清助

    稻田政委員 今の大臣の言葉で尽されておりまするけれども、非常に広範囲にわたり、また奥地にも進むべき他の国々の計画と、一地点に集中いたしまして安全を期しながら、その地点における観測を徹底しようという日本におきましては、規模も船の数も自然違う道理だと考えております。
  40. 平田ヒデ

    平田委員 それでは広範囲に行くときと、小さいところに行くときとで、そのいわゆる南極というものは私は別に違いはしないと思うのです。大ぜいで行くか一人で行くか。一人で小さく行って、そこへ到達すればいいのだから、それで人数も少く、船も少くていいというものじゃないと思うのです。私は南極というようなものを、ただ本を読み、いろんな写真を見たりして想像しておるにすぎないのですけれども、何人で行こうと、一人で行っても、そこに行くまでの過程というものは変りはないと思うのですけれども、いかがでございますか。
  41. 稻田清助

    稻田政委員 結局何隻の船列をもってするか、艦隊をもってするかということは、何人行ってそれに関連する必要な資材、器材が何トンあるかという船の搭載量の問題だろうかと思うのです。先ほど海上保安庁から申し上げているような準備をもって作りました船——一隻ではありますけれども、五十人くらいな人々を乗せる搭載量としては無理のない船を持って参りますれば、われわれといたしましては一応安全は期せられるだろうと考えるわけでございます。
  42. 平田ヒデ

    平田委員 私はそういうただ不安の念一ぱいで申し上げているわけでございますけれども、東京の天文台が、——これはいずれも私は新聞で見ておるわけでございますが、終始南極観測の加入の招請を拒んでいる事実もあります。プリンス・ハラルド海岸にたとい設営できたとしても、その観測所が東経何度何分にあるかということをきめる天体観測が正確にできるかどうか、危ぶまれているということもいわれておるのでございます。それから南極探検隊要員七名を乗せて、根室港外で流氷の爆破訓練をしている巡視船が厚さ四メートルの流氷に閉ざされて、悪戦苦闘の結果ようやく脱出した、イギリスの観測船が南極でこれまた氷に閉じ込められて非常な困難を冒してようやく脱出したとか、南極の氷のおそろしさというものは想像以上らしく思えるのであります。私はただいたずらにおそれているのではございませんで、ほんとうに申し分のない、日本全国をあげての総力を結集したような設備をしていただきたい、そういうような考えから質問を申し上げているのでございます。  もう一つお伺いいたしたいのですが、政府南極地域観測を強行される場合に、観測宗谷並びにその観測所の設備などについて、聞くところによりますと、この学術的事業を国民に認識させる報道関係者などを多数に収容する能力はないのじゃないかというふうに、私考えるのでございます。ややともするとこういうような場合には、これは国の費用でするのですから、国民全部が耳をそばだてて聞いていると思う。いやしくも多額の国費を使って、しかも国家の吏員である学者によって行われる事業に対しては、報道員も万全を期さなければならないのじゃないか、その十分なる報道の設備を増設なさる御意思はないかどうかということを一つ伺いたいと思います。
  43. 稻田清助

    稻田政委員 お話のように報道ということは非常に重要だと思います。しかしながら多数の報道関係者が参らないでも、報道の適確と迅速は期し得ないものではないと考えております。隊員の数、船の大きさ、荷物の積載量その他とにらみ合いまして、報道という点につきましても十分留意しながら計画を進めたいと考えております。
  44. 平田ヒデ

    平田委員 国際学界の取りきめによりますと、観測年には国内観測はすべてこれを行うことになっておりますけれども南極、北極等の国外観測については各国の自由意思ということになっておるようであります。さらに一度参加を表明した国でも、ベルギーのような国は途中で自由に不参加を申し出ておりますし、敗戦のドイツ、イタリアはこの計画に参画いたしておらないようであります。私は反対するのではありません。政府日本が不十分な準備と人員とによって、重大なる人命の危険を冒して行われる日本南極地域観測をどうしてもなさるということでありましたら、私はどこまでも予算を十分に盛って、もっともっと増額されなければならないというふうに考えているのでございまするけれども、この上の予算の増額というようなことは、全面的に組みかえられてはいかがですかと私先ほど申し上げたのですが、これに対してもう一度お伺いいたしたいと思います。
  45. 稻田清助

    稻田政委員 非常に御心配の御見解を承わっておりまするけれども、われわれの見るところは、先ほど来お答えいたしておりますように、今予見いたしまするところから見れば、この予算をもって遂行し得ると考えておるわけでございます。しかしこの観測というものを非常に重要視して、万全の準備をすべしというただいまの御教示はとくと承わりまして、政府部内におきましてもその御趣意に沿うようにこの上とも努力いたしたいと考えております。
  46. 平田ヒデ

    平田委員 私はこれで質問を打ち切りますけれども委員長に対して要望申し上げたいと思います。それは本委員会では今次の学術調査について事情を正確に調査して、予算の公正を期するために、次にあげる関係者を本委員会に参考人として招致して実情を聴取いたしたいと思うのでございます。これは日本学術会議議長の茅誠司、南極地域学術観測隊長永田武、それから中央気象台観測部長の川畑幸夫、東京天文台の畑中武夫、科学研究所の宮崎友喜雄、柿岡地磁気観測所長の吉松隆三郎、以上の諸氏でございます。ただいま申し上げた人を参考人としてお願いし、そして実情を聴取することをお願いいたしたいと思います。
  47. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 追って理事会によく諮ることといたします。  この際、清瀬文部大臣より発言を求められております。これを許します。
  48. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ただいま平田さんの南極探険に対するいろいろな御注意、ありがとうございました。よく注意いたします。  それからきのう本会議で能代市の被害のことを簡単に報告しましたが、その後秋田県の教育委員会からやや詳報がありましたから、ここでお聞き願う方がいいのかと思います。  それは学校は被害がなかったのです、自宅で被害した者は小学校の教職員が二十四人、中学校が十七人、その他二十六人、合計六十七人の罹災者がございました。それから児童生徒の方は、小学校が千五十七人あります。中学校が三百十八人、高等学校が九十人、寄せまして一千四百六十五人であります。千三百世帯余りですから、一世帯に一人よりちょっと多い。それから死傷者は、教職員も子供も死傷いたしておりません。  校舎は、きのう言いました通り私立の幼稚園で教室が二つ焼けておりまするが、そのほかは被害ございません。  天然記念物として神代のフジの根元が焼けました。  それからただいま災害救助法を発動して、教科書及び学用品の補給について打ち合せ中と申しております。  高等学校の授業料の減免については、委員会で検討中ということでございます。わかっただけ御報告申し上げておきます。
  49. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいま大臣の方から御報告のありました能代の火事の手当の問題について、実はきのう本会議で大臣から承わることができませんでしたので、一点だけお伺いをいたしておきたいと思うのであります。それは私も一昨々年大災害に見舞われました当時現地におりまして、学童救済にいろいろな災害の示唆を受けたのでありますが、その中で、今お話によりますと、大体校舎等に対するこれが手当の問題は直ちにはいかない、今後に残された問題でありますが、緊急を要する問題として教科書の手配がなされたようでありますが、それと同時に、特にやはり雪国でもありますし、貧困家庭も比較的多いのじゃないか、こういう観測からいたしますと、やはり児童の食生活に対しても相当の考慮が必要と思いますから、給食に対する処置はどういう形でおとりになっておられるか、この点を一つ承わりたい。
  50. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 それも心配いたしておりますが、いずれこれは秋田の教育委員会と交通いたしまして、できるだけのことはいたしたいと思っております。
  51. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは従来の災害のときの手配といたしまして、大体災害が突発的に起りますと、直ちに脱脂粉乳その他の備蓄した現物を放出いたしまして、無償給付でもって大体週のうち二回か三回やっておる給食でありますと、それを適時利用いたしましてそうして急場の間に合せているというような形で適宜運用がとられておったように思うのでありますが、そういう放出等に対する措置はまだやっておらないのでありますか。それとも最近給食問題でいろいろありますので手控えておるのか。そこら辺を一つ……。
  52. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 まだその的確な報道は受けておりませんけれども、急に調べて、適当な方法をとるようにいたします。
  53. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは、先ほど申しましたように、私が経験いたしました災害のときに、学童給食という制度があるのだから、この制度を活用して、現地においては一般にたき出し等もやっておりますけれども、やはり学童の保健衛生という見地からいきますと、学校の給食ということでそういうことが兼ね行い得れば、学童給食も新たな妙味があるのじゃないか、こういうことを考えて、でき得ればそのときには三食給与するというような適宜な措置もとってしかるべきじゃないか、こう私もかねてから思っているわけですが、そういう点も一つ早急にお考えをいただきまして、せっかくのこういう制度を災害等にも活用できるようにお考え願いたいと思います。
  54. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 承知いたしました。     —————————————
  55. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それでは先ほど議題といたしました教科書法案について質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。辻原君。
  56. 辻原弘市

    ○辻原委員 本論に入る前にぜひとも承わっておきたい問題があります。これは前文部大臣の松村さんの当時にもずいぶん私たちが熱心に意見を申し述べましたが、はっきりした回答が出ておらない。それはこの四月から高等学校の教科課程の改編が行われるということが、再三再四われわれそれに反対をして参ったのでありますけれども、どうやら強行されてそういうことになるというのが既定の事実でありますが、当時そうした改編期に起るごたごたの問題で、十分それに対処する文部省としての心組みなり準備を進めておるかと私が尋ねましたときには、それは遺憾なく進めております、こういうあなた方の御答弁であったわけです。ところが最近いろいろ私の聞く範囲によりますと、必ずしもスムーズにいっておらない面がある。一つは教科書の問題であります。四月から教科課程が改編されて実施に移されるが、学校で四月から使う教科書はもうすでに準備せられて、それぞれの当該学校においては採択もきまって、しかも教科書会社等は相当量のものを準備して、現在手持ちをかかえてどうすべきかに非常に苦慮しているという実情を聞くわけです。そういう点について、私の耳に入るくらいでありますから、おそらく文部省等にもそういう申し入れなりまた教育委員会等からの連絡があったかもわからないと思いますので、もしあればその実情はどうなっておるのか。またないとなれば、これはやはりほっておけない問題です。だからその間の切りかえについて、そういう教科書等の取扱いの問題をめぐって、困った問題が起きていないかどうか、調査された事実があるか、あれば一つ具体的におっしゃっていただきたい。私は先ほどもちょっと伺ったのですが、大阪等においては相当量の教科書が手持ちになって困っておるという話を聞くのでありますが、なければないでけっこうです。
  57. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいまお尋ねの点は、来年四月から高等学校の教育課程を改訂する場合に、その教育課程の新しい改訂の一環として、特に社会科の改訂に関連いたしまして、新しい教育課程、新しい学習指導に沿う教科書ができていないという状況一つございます。これは御承知の通りでございまして、特に社会科の社会でございますが、これにつきましては、文部省としまして早くからそのことを研究いたしました結果、地方に対しましては、今申しました社会科の社会につきましては、従来の一般社会とそれから時事問題と両方の教科書を使って学習指導をやるようにということを通達いたしてあります。従いまして、私の今知っている範囲におきましては、その通達に基きまして各県の教育委員会は教科書の採択をいたしておりますので、今おっしゃいましたような、教科書会社が手持ちをかかえて困っているという状況は私はないと存じます。新しい教科書はまだ出てないのでありますので、その古い——これはやむを得ない便法でありますけれども、従来の一般社会と時事問題と必要があれば両方使って、必要がなければこれは一方でもいいのでありますが、それでいく、こういう方針を確立いたしておりまして、その点は御心配ないと私は確信しております。
  58. 辻原弘市

    ○辻原委員 承わればそういった困った事実はないということでありますので、まことにけっこうなことであります。私ももう少し精細に調査をいたします。私の聞いたのは相当困っておる——今どういう方面が困っておるか、私も判然といたしませんが、しかしその教科書は本年度はともかく使えるけれども、次年度からは使えないので、そういう方向にこの教科書を採択していくそのこと自体に困っておるのか、ないしはすでに相当量のものを教科書会社が印刷して、そうして教科書会社が相当の冊数をかかえて困っておるのか、そこらあたりがまだ私もはっきりいたしませんが、私の方でも調査いたしますから、あなたの方でも調査して、そういうことになればこれはやはりもったいない話でありますから、行政措置によってそうしたことを、かりに教科書会社の損失といえども、これはいたし方ないということでは無責任であります。この点はもう少し精細な調査をされてしかるべきものだろうと思います。  次にこれは一つ大臣にお伺いいたしたいですが、昨年来から教科書の問題をいろいろ国会におきましても取り上げて、またその間これに対してそれぞれ父兄の側は父兄側としての意見を出され、また専門家専門家として教科書に対する意見を出され、教科書に対する一般世論というものが相当大きく動いて参りましたし、また従来より以上この教科書に対する認識が深まってきておるのでありますが、そういう事態に対応して、政府としては教科書を新しく立法化するという方向に参ったわけであります。私はそのまとめられた法案の内容の是非はともかくといたしまして、今日教科書に対して少くも文教の府にあるそれぞれの方々は、相当以上の認識をもってこれに対処しなければならぬ、こういう意味合いで本委員会におきましても、できるだけこの教科書法案については慎重なる審議をいたして参りたい、かように考えておるわけでありますが、問題が学校で使われるいわゆる教科書だけに、最近われわれの目も奪われておるのではないか。もう少し目を広くして児童に影響力を持ついろいろな読みもの、こういうものに目を開いたときには、教科書の問題と意味は違いますけれども、同等程度考えていかなければならぬ問題があると思う。これは別に事新しい問題を私は申し上げるのではありませんが、つくづく私最近考えておりますのは、学校では教科書という教材によって子供たちは勉学を続けておるが、一たび家庭に帰り、一たびそういう教育環境から離れたならば、何によって非常な影響を受けておるかといえば、一つは最近もう市中にはんらんをしているいわゆる児童読みものと称する、われわれとしてはどうかと思うような雑誌に影響されておる。いま一つは、最近の映画の傾向あるいは演劇の傾向、こういうものの中に、はなはだわれわれとしては考えていかなければならぬ問題がある。そういうものをひっくるめて、この教育環境というものをもう少し正しく、おとなであるお互いがこれに対して適切な何といいますか、教育的児童環境の構成ということに熱意と努力を払うべきじゃないかと私は思うのです。大臣にはお孫さんがいらっしゃるかわかりませんが、おそらくお孫さんの現代遊んでいるその環境をしさいに観察されたならば、相当考えられる面があると思うのです。これはいかに親が一生懸命努力しても、また教育者が学校という小さなワク内で努力をしても追っつかぬ大きな一つの流れをもって子供の生活の中に浸透してきておると思う。その読みものが非常にいい影響をもたらすものであるならば、私はまことにけっこうだと思うのですが、必ずしもそうじゃない。漫画本あるいは何というか、豆スター等を英雄視して、そういうものでもってほとんどそういう読みものの中を満載しておる。そういうものに学校の教科書よりもより深く興味を持って子供たちは引きつけられておる。その中から生まれる一つの子供の人格形成というものはどういうものかと考えてみたときに、私は大臣に、教科書を一つこうやりたいという熱意を、それ以上にこういう方面にぶち込んでいただいたならば、はなはだ失礼な言い分でありますが、まことにりっぱなおじいさんとして後世に名を残す。こういう文部委員会において大臣としては何か委員会法なり教科書法で新機軸を開くものもけっこうでありますが、そういうようないろいろなものをわれわれ考えても、なかなか一人や二人の力では及ばぬ。幸いにあなたは文教の府にすわっていらっしゃるのですから、これを行うということに何か御抱負はないか。これは私は通り一ぺんの答弁を大臣からお伺いしようと思っていない、もう少し掘り下げて、より具体的な考えを大臣からこの機会にお伺いして、今後の教科書法案審議の参考にもいたしたいと考えておるのでありますから、一つ御親切な御答弁を願いたい。
  59. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 まことにけっこうな御意見で、平素私ども考えておることをぴったりおっしゃったように感じるのでございます。今は内閣に青少年問題協議会というのがございます。そこで関係当局が諸団体と協力いたしまして、不良文化財の取り扱いをどうするか、こういう研究を進めております。私の郷里の兵庫県では不良文化財につき条例を作ったんですが、あれがさてわが国の憲法に合するかどうか疑いがあるんですね。時々参考として手元へ来ておりますが、検閲はこれをなさずということがあるので、ああいう行き方でいけるのか、これがまたこの間うちから御研究の憲法問題にも関係するんです。漫画とか、あるいははなはだしきはわいせつ文書に類似するものまでございます。これを青少年の目に触れぬようにどういうふうにやったらいいか、私も心胆を砕いておるのであります。文部省の責任を持つ以前から、今おっしゃった通り、私の家庭にも子供がありまして、その様子をよく知っておりますから、また何かいいお知恵がありましたら拝借もいたしたいし、今の方向で十分に研究を進めてみたいと思います。
  60. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣も非常に関心を持っておられるということを聞きまして、私も今後に御期待を申し上げたいのでありますが、抽象議論をいたしておりましても、このような問題は進展いたしませんので、実は昨年でありましたか、私もあるそういった子供読みものを発行している発行者の方々とお会いをいたしまして、そこでどうするかといったようなテーマでいろいろ話し合いをした経験があるのでありますが、そのときに私は発行者の立場は、どっちかといえばこれは営利を目的としておりますから、売れるものならばどんどん出していこう、こういった立場の方にウエートがかかっているのではないかと思って、実は私はあまりわれわれがそういう営業を度外視したような意見をもって押しつけていくことは、向うとしては受け入れられないだろうと内心多少ちゅうちょしたのであります。ところがいよいよ会って話し合ってみますと、なかなかそうではなしに、やはり発行者の方々は発行者として、売れることももちろん第一義的に大事なことであるけれども、ほんとうにそれが子供たちのためになって売れていく、こういう両々かね合ったものならばなおさらいいのだから、われわれもそういう方向に実は努力したい。しかしこれは、一、二の、あるいは三、四のそういう発行者が幾ら努力をしてみても、たくさんある中でどうしても押し流されてしまう。そこで一度一つお互い自粛しようかという申し合せもした。しかしその申し合せもいつの間にかやはりどこかでくずれてだめになってしまった。努力しているのだがやはり今大臣がおっしゃったように、何かいい知恵がありませんか、こういう話を私はそれぞれにその発行者の方から聞かされて、非常にその方たちの良心的な立場を喜んだのです。  そこで私はもう少し具体的に考えてみたいと思うのです。もちろん根本的な問題は、これは環境全体の問題でありますから、おとなが適当なことをやっておいて、子供にしいるなんということはできない相談です。しかし根本的な環境の是正ということは、大きな政治の問題、責任の問題にもなって参りますから、そのことはさておいて、先にやれる手近なことだけでもやって、幾分でもわれわれは防いでいくということを世論として盛り上げる必要がある、こういうことを考えている。先般所生活運動をあなたの内閣が提唱せられておりましたときにも、私はこの問題を前の松村文部大臣に何とか一つ考えてくれ、こういうことを要求をいたしておいたのでありますが、はなはだ残念ながら、今日新生活の運動もいかが相なったか、これもつかみどころのない状態に消えてしまった。しかしせめてまず子供たちの読みものを善導するという意味において、たとえば発行業者の方々でお互い自発的な意味合いでよくそういうことを検討する。これはまかり間違えば一つの出版統制とか、言論統制とかいうことにもなりますから、きわめてデリケートな問題でありますが、しかし事子供の関係のことでありますから、あまり野放図に営業ということだけで一冊の雑誌に三冊も四冊も漫画本をくっつけて、そうしてどっちが本物かわからないような形のものが市中を横行して、これに対して何にも世の良識あるいは世論というものが起ってこないということは、やはりそれぞれ為政者には関心もあるようだが、実際力が足りないのではないか、こういうことを私考えますので、今ここでどういうふうにしろということは、私もそんな早まったことは申し上げませんけれども、せめて市中を横行している月刊雑誌等について、一ついいものを何とか出そう、青少年問題協議会でもけっこうです、真剣に掘り下げてやっていくような形にすれば、私はもっとそういうものによる子供への影響は是正されてくるのじゃないか、こういうふうに思うのです。そのことが一つ。  それからいま一つはやはり映画の問題であります。これは先般内閣の方で映画審議会を作られて、文部省もそれに入ってやったというのでありますが、一体どういう形に進展しておるのか、いかほどの効果があったかということを、一つこの機会文部省から私は承わっておきたい。何回くらい会合を開いて、どういうことがテーマになって、そうして文部省としてはどういう点を力説して、現在具体的にこういう問題がこの程度に進展しつつある、解決しつつあるというふうな話を一つ聞かせてもらいたい。
  61. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今その係の局長を呼びまして、その後の経過を御報告いたします。
  62. 辻原弘市

    ○辻原委員 このことも私は非常に期待を持っておったわけです。いたずらに映画審議会が企画その他に対する統制を加えるような形に動いたのでは、これは身もふたもないし、そういうことはすべきでない。しかし今市中を横行している映画を相当量子供が見ておりますが、どの一つを見ても、これなら幾分子供たちに教育的な価値があるなんというものは——非常に程度の高いものは別ですけれども、チャンチャンバラバラの小さい子役、あるいは子役に毛のはえたような者を偶像化したり英雄化したりするような映画に、全く目を奪われてしまっている。こういう点について、そういうものを規制するのじゃなしに、それよりももっといいもので指導していくということに対する世の力があっていいのじゃないか。そういうことを期待するがゆえに、その映画審議会というものがそういう指導性をもってやられておるのかどうかを私は承わっておきたいのでありますが、係の方が見えてからその御返答をいただくことといたします。  次に、教科書制度そのものに対する過去、現在、未来、こういうことを想定いたしまして、どういうふうに教科書というものを——まあ、これは大ざっぱでありますが、考えて作っていったらいいのか。それは一口に言えば、この法案でいいんだ、こうおっしゃるかもしれませんけれども、そうじゃなしに、われわれが一つのものをつかまえたときに、こうありたい、過去はこうあって、こういうところに欠陥があった、そういうところを——ただ最近市中でいろいろ出ている素朴な意見、これはもちろん傾聴すべきでありますが、そうじゃなしに、わが国でとった教科書制度の変遷の過程から見て、一体将来教科書制度というものをどこに持っていったら一番理想的なんだろう、そういうことに対する御見解を大臣からも私は承わっておきたい。  そこで御参考に少しく昔のことをちょっと思い出してみたいと思うのであります。これはまたいずれ教育委員会法のときにでも大臣から御所論を承わりたいと思うのでありますが、それは日本教育それ自体が、大東亜戦争を一つの境にして、それ以前とそれ以後では教育の形態は全く根本的にあらたまっているということは、私の認識も大臣の認識も、これはひとしく間違いないところだろうと思います。教科書制度にいたしましても、私はやはりそういう認識に立つのであります。当時われわれとしては、教育について戦時中も戦前もさしたる反省もなくしてやってきたのでありますが、それがああいう事態に至って初めて外国の諸制度等にも目を開いた。とるべきところはとらなければならぬし、また占領政策としてある部分については持ち込まれた点もある。しかしやはり戦後の民主教育というものについては、これは遺憾せんわれわれがどう力みましたところで、いわゆる民主主義それ自体、あるいは民主教育それ自体、あるいは民主主義による教育方法、教育理念、こういうものはやはり民主主義先進国に学ばなければならぬということも、これは私は事実であっただろうと思います。そういう意味合いにおきまして、一つの指標として当時採用せられましたものが、第一次教育使節団あるいは第二次教育使節団の勧告であったと思います。第二次使節団は特に教科書等の問題に触れておりませんが、第一次教育使節団の勧告を見ますると、特に教科書について力説をいたした点があります。これは過去の日本教育制度、その中にあった教科書制度に対して、少くとも民主主義教育をやろうとし、またやっておる人たちが見た場合に、こういう考え方を持ったということは当然ではないか、こういうように私は現在においても考えるわけであります。従いまして御参考にその部分を引用いたしてみますると、次のように述べておるのであります。「日本教育に用いられる教科書は事実上文部省の独占となっている。小学校用の教科書は文部省において直接これを作成し、中等学校用の教科書はこれを作成せしめて文部省の検定を受けさせることになっている。調査した範囲では、教師は教科書の作成にも選定にも十分相談にあずかっていない。カリキュラムについて前節に論じた原則が健全な至当なものとすれば、さらに教科書作成並びに出版も一般競争にゆだねられるべきであるという原則が生れてくる。機会さえ与えれば、教師も視学官も教材の工夫と評価とにおいて十分有能であることを示すであろう。多数の努力によってこそ、新しいすぐれた考案を発展せしめる一そうよき機会がくるものである。主として経済的理由により教科書の選定を全然教師の自由にゆだねてしまうことはできない。教科書の選定は一定の地域から出た教師の委員会によって行わるべきである。日本教育者たちのみがよくこの仕事をなし得るのである。他国の教育制度は、手引きとして役立つかもしれないが、これを盲目的にまねるべきものではない。日本教育の転換にはきわめて重大な役割を持つある教授分野が存在するはずである。」こう言っておるのでありまして、私はこういった最近の教育の傾向、これを考えましたときに、決して私は大臣とは申しません、よく一部には、いわゆる占領行政の行き過ぎであるとか、他国から押しつけられたものであるとか、いろいろ論議はありますけれども、しかし静かに謙虚に立ち返って考えてみた場合には、必ずしもそうとは申せない。私が今引用いたしました中にも、やはりそういった指標を与え、そうして日本独自の制度を制度化して持っていくべきであるということを、使節団として報告をしておると思うのであります。私が特にこういうものを読みました趣旨は、民主主義というか、今日の教育基本法に定められている、個々の人格の完成を目ざし衆知を集めた形において教育を運用していこう、こういう形態をとる教育の中にあって使われるべき教科書というものは、やはり衆知を集めたよいものを作り、そうして同時にその教材というものは、自分が行おうとするその教育に最も役立ち得る教科書を教師が選定する、こういう原則をまず確立すべきことが一番かんじんではないか。従ってよく教科書についての論議の中に、いわゆる作る方を制限しておいて、数を少くして、そして使う方の選定眼というものを勢い狭めて、そして画一的なものをもって教育をやろうという考え方が、非常に常識的に起りやすいのであります。私はそうでなく、極端に言えば、もう教科書は検定とかなんだとかいう制度自体よりも、ほんとうに使う方の良識というもの、あるいは独断ではなしに、それを活用する人々が真に教育的な見地に立って考えられるならば、いかほどの数があってもよろしい。そして選定はその人たちの良識によって自由に選定していく、こういうことが私は教科書といえども理想ではないか、こういうふうに思うのであります。あなたの提案理由の中にも書かれておりますように、これもやはり教材であり、主要なるものだけれども、教材であるとする限り、教材という以上はやはり教師が使うのでありますから、それが私は一つの理想ではないかと思うのであります。そういった原則的事項について大臣はどういうふうに——過去における日本の教科書制度、また今日における教科書制度、また将来そういう理想をもって近づこうとする場合に、あなたとしては、教科書についての基本的なお考えは那辺に置かれておるのか、この機会に大臣の該博な深遠な御高説を承わりたい。
  63. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今のお話は、教科書の採択の部面を中心としてのお話でございましたが、理想としては、わが国のような制度じゃなく、少し前のイギリスのように、家庭でやるというふうな制度でございましたら、その教師が一番いいというものを得てきて、具体的のその子供にも合うようなものをずっと使わせていけば一番いいでございましょう。それが一つの理想なんです。わが国義務教育で、ならした教育をしなければなりませんから、一人々々の趣向じゃなく、少くとも一学級は同じようにやるとか、こう広がっておる。しかるに学校の一学級では足らないので、やはり今日交通もひんぱんになりまするし、その児童は直ちにたくさんの学校と合せた一つの中学へ進むこともございまするし、さらに大学にも行きまするから、そこで教育水準というものがなければなりません。あまりこれにこだわって、昔の国定のように、鹿児島から北海道まで一つというのじゃこれはよくありませんが、しかしながら自然的、経済的、文化的に相当の範囲一つのいいものを使わせよう、こういうことは理想から言えば、現実と幾らか折衷しておる点です。そうしてこの案では、最後の採択の判を押すのは教育委員会でございまするけれども、その前に選択協議会というものを作って、これはまだはっきりとだれと申すわけにいきませんが、校長さん、教員さん及び委員会委員なり、あるいは地方教育長なりをまぜまして、二、三十名ぐらいの委員で、実際この地方ではこの教科書がよかろう、こういうことをきめるんでございます。すなわち徹底した民主主義からはそれだけぼやけてはおりまするけれども、また一方それが子供のためにもなり、父兄の教科書負担の軽減にもなるであろうと思います。そこでその使う教科書はどうすればいいかといえば、これはやはり自由競争になっておるのです。りっぱな経験者が教科書を編著して下さいまして、それを自由競争で、いいものこそ検定の見込みがたくさんあるのであります。その検定も、徹底民主的、純粋民主的といえば、標準も基準も要るものではありませんけれども、やはりわが国には教育基本法というものがありまするから、現在でもやっておりまするが、編さんの絶対要件というものは基本法を取り入れて現在でもやっております。必ずしも法律に拘泥しないでいいのでありまするが、日本義務教育としてやるべきものについては、学校教育法にある教育の目標なり、あるいはそれより高位の、高次元の教育基本法なり、また法律になくても、たとえばわが国の人が望むあり方として温良、強健、謙譲といったようなことは、法律にありませんけれども、やはりその目的を達成するようなふうに考えたものがたくさんできて、いい悪いというほかに、また一種の趣向趣味というものもありまするから、それらを交えて一つ検定をいたして、選択の自由を地方に与える、こういうふうな行き方が今回の新しい教科書法の根底でございまして、私がこの間、これも口がすべって人から攻撃されたが、民主主義一本やりでそれだけだというのだったら事簡単でありまするけれども、世の中の現実は複雑で、ほかの要素をも交えて、まずこういうものを作ったのでございますから、今の限度ではこれが一番いいという信念を私は持っておるのであります。
  64. 辻原弘市

    ○辻原委員 この法律に書いてあることは、法律を読みましたらすぐわかりますし、私も読ましていただきましたので構想はわかりましたが、問題は、こういうような教科書法を作るについて、その前提となるべき、現在の教育形態と結びついた教科書制度というものに対して、大臣がどういう根本的なお考えを持っていらっしゃるのかと思ったんです。それを今承わりました中で採択がどうの、検定がどうのという話はあとの問題にいたしまして、結局大臣としては、理想的な一つの民主主義という形においては、私が申し上げましたようないわゆる教科書それ自体を作るということに対しては、もちろん一国の文化なり社会の文化程度によって、いいものが生まれもするし悪いものもできたりいたしますけれども、少くとも今日の日本のような、相当文化においても高度な位置にある国において、採択する人たちの自由にゆだねるという徹底した考え方、これは理想の民主主義形態としてはあなたとしてもお認めになる、そういうふうに私は承わったのですが、そうですか。
  65. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 さきの話と同じで、教育は個性の開発ですから、子供は一々違った子供でありまするから、ごく理想を言えば、一人々々が一番いい教科書を持つべきであります。しかしながら今言った日本の社会生活の要求として、やはり相当多数の者に通じた最善の教科書ということで、一定の採択区域というものを作っております。すなわち、文化的経済的自然的の環境を考えて、この地方で一番よかろう一そうすると一番よかろうということをだれが考えてくれるかといえば、一番元は選定協議会です。実は教育委員会の採択というのはこれに基いてですから、実際は県の教育委員会の名前で採択しますけれども、一番中心になるものは選定協議会です。選定協議会はその地方教育を現実にあずかっておる人が寄って組織する会でございますから、これであなたの御理想に近いものができるじゃないか、こういうふうに考えております。
  66. 辻原弘市

    ○辻原委員 選定協議会の採択の方法につきましてはあとで御意見を承わることにいたします。まあ大体において理想の形を追えば、できるだけ地域地域に似通った、しかも子供一人々々に見合う、そういう教材を与えていくことが理想である。しかし現実は必ずしもそうでないという大臣の御意見のように承わりました。ただし、先ほど大臣が例にあげられましたイギリスの例でありますが、私もだいぶ前に教科書制度についての諸外国の概要を少しく調べてみたことがあるのです。大体今日西欧民主主義国家と言われているそれらの国の中では、できるだけ理想に近い形態において教科書制度が、当時私の見た資料によればとられておったように思う。これはあとで文部省の方から諸外国における教科書制度についての資料をお出しいただきたいと思いますが、少くとも大臣が今言われましたように、イギリス等においての採択も、今お出しなさっているこういう形に限定されたものでなしに、相当自由な採択にゆだねておるし、また、たしか検定についてもやっているところとやっていないところがある。フランス等検定制度それ自体すらない、自由発行制度をとっているところもある。あるいは私の記憶の誤まりかもしれませんけれども……。それら各国においては厳密な検定制度、いわゆる検閲によって教科書をセレクトしていこうという考え方ではなしに、あくまで発行はフリーにして、もちろんそのパイプを通すのだけれども、しかし自由発行という形で、セーブするのは採択の面、すなわち使う人たちの良識にゆだねてこれをセーブしていこうというきわめてフランクな制度を採用しておるように思う。そういたしますと、従来日本の国としては、こういうものが一つの示唆ともなり、一つの反省ともなって今日の検定制度が生まれてきた。そして十年間やってみて、大臣がどうお思いになるかは別ですけれども、少くともわれわれが見るところ、一般世人が見るところでは、必ずしもそういう理想に近づける形態にしているのじゃなしに、むしろ逆にネジを戻していこうというような形になってきている。ということは一体どういうことか、そういう西欧、いわゆる民主主義諸国家に比較して、日本においては民主主義が育たないのだ、あるいはそうして育てていく必要はないのであろうか、それよりも文化の程度、また良識の程度においてはるかに劣っているだろうか、そういうあきらめの気持でこういうものを出されてきた、こういう危惧を私は持つのであります。どういうことか大臣のお考えを承わりたい。
  67. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今あなたの御引用になった第一回、第二回の教育使節団の報告書は、私も繰り返しよく読みました。今回の教科書法は従前の教科書法より民主主義的に退歩したものだと私は考えておりません。今の教科書法というものは、臨時立法でございますから非常に簡単な法律で、それがために、どこに欠陥があるか知らぬが、実は十年を顧みるとよくなかったのです。ここで一々欠陥を申し上げるのもどうかと思いますが、本院の行政監察委員会で昨年審議してもらいました一人一人の証言の中には、あるいは誇張したりあるいはミニマイズしたりしたところもありましょうけれども、やはりあそこで現われた欠点はあるのです。きょう私は所持しませんでしたが、私みずから二、三の教科書を読んで見ました。あの「うれうべき教科書」は私が作ったのではありませんが、私の責任で発行したのです。よく見てみますと、事実に非常に誤謬があるのです。はなはだしきは、ポツダム宣言の発表者にフランスが入っておったりなんかするのです。伊藤公がハルピンで殺された年度は五年違っておるのです。そういうふうな大きな間違いもありますし、ここで言うとまた論争になりますが、やはり偏向と言われても仕方のないような記事も出ておるのです。どこから来たか。必ずしもこれは民主的と言うわけにいきませんです。ただ私は、教科書がどうしてできるかははずかしながら去年まで知らなかったのです。だんだんやってみると、千人もの調査員というものがおって、だれが調査員かわからないというのです。それが幾組かに分れてやっておるというふうな欠陥から来ておりますので、この野放しはよくない。今の民主主義は責任主義なんであります。たれが調べたかという点責任を持つ者がなければよいものができるはずはありません。それゆえに、この匿名主義をやめまして、この乏しい財政から四十五名もの調査官を置き、また八十名の審査員を置いてもらいまして、これはわれわれはちっとも干渉しません。それからまた中立のりっぱな人を頼みたいと思っているのであります。この案ができておりませんから個人の人には当りもせず、考えもしておりませんけれど、この広い日本でありますから、人格高潔な、また教育、文化、法律、経済に明らかな方があるに相違ないから、これで責任を持ってやっていただく。この点についてはもとよりは民主主義になっているのであります。やみの人が調べたこと、これは民主主義ではないのです。しかしながら、教育委員会のときにも言いました通り教育のことはそう一ぺんに魔術を施したようにがらりとはならぬ、学年進行というものがありますから、この法律を皆さんに御賛成願う、法律は死んだもので、これを運用することが大事ですから、これをわれわれが良心的に運用するということになると、日本教育に寄与できはせぬか、こういうことでお国のためになりたいと私は考えておるのでございます。
  68. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣の方から問題を提起されたような格好になりましたので、私は本日大臣と論争をするという趣意のものではございません。できるだけ大臣のお考えを承わりたいと思います。避けておるのでありますが、少しく覆面調査員あるいは従来の教科書の中に誤まりがある、こういう問題がこの制度万般の大きな欠陥のように今御指摘になっておられるのであります。私も教科書問題に対しまして、実は行政監察委員会でいろいろ意見も拝聴いたしましたし、みずからも若干の意見を申し上げたのでありますが、そのときの御意見の中にも確かにありました。しかしたとえば今誤りの問題が大臣から指摘されましたが、これは後日それぞれわれわれも資料を持っておりますが、大臣からも見せていただきまして、一体どこにそういう欠陥があったか究明をいたしたいと思いますけれども、まあ一つ今あげられました例を考えてみましても、よく言われるところの用語の間違い、これは確かにあったようであります。用語の間違い、てにをはの使い方、あるいは同じ一つの言葉を表現するにも、同じ教科書、同じ編著者の使っている言葉においてもいろいろの誤りがある、そういうことがありました。また今あげられましたようにポツダム宣言の中にフランスが入っていたということもあります。しかしこれは必ずしもそういうような偏向とかイデオロギーから発する問題でもなければ、また機構の大きな欠陥でもない、もう少し担当者が精密に——少くとも現在の機構においても相当私は精密になっておるんじゃないかと思います。従ってその機構等については一つ次官なり局長の方から御説明を承わりたいと思うのでありますが、確かに現在の欠陥の中で、覆面による調査員については、責任の所在が明らかにならぬということで、これは従来からわれわれもそういう覆面調査員のやり方は改めてしかるべきものだということを申して参りました。その点に関する限りは、大臣が言われましたけれども、もう今日それに反対する者は一人だってございません。おそらくどなたの意見も——覆面でもって何人かの人に責任を持たしておるのだけれども、責任のとれないような、また長年月たてば隠しておいたところでおのずからわかるようなものを、いつまでも続けておくことはいかぬ。こういう意見はもうだれも否定はしていないわけなんです。しかしそれを覆面の調査員の責任だけに塗りつけてそれで事済むものか。今日検定権は大臣にある。しかもその機構は文部省の中に厳然としてスタッフを持って存在しているのでありますから、歴代文部大臣がもう少しこういう問題に何というか、関心を持ってやっていれば、その程度のことは十分防げたことではないか。全く子供だましの誤りである。そういうことを防げなかったというのは、機構ではなしに怠慢——そういう場合われわれは怠慢という言葉で表現したい。だからそういうことをすぐさまイデオロギーの問題にくっつけて何か誤りがイデオロギーに発するようなものの言い回し方をやりますけれども、その種類の誤りの是正については、今日においても当然私は是正ができるはずだと思う。ですから一度現在やっておる検定の、というか、教科書担当の文部省内の機構、それから順序、こういうものを一つ説明をいただきたい。
  69. 緒方信一

    ○緒方政府委員 現在の教科書検定の組織でございますが、文部省の初中局に教科書課がありまして、文部省といたしましては教科書課が担当いたしております。ただし教科書の原稿の調査並びに検定の実質的な仕事は、これは今大臣からお話のありました調査員それから審議会、この系統を通じて行なっているわけでありまして、調査員は現在非常勤の調査員でありまして、主として小、中、高等学校の先生、それから各教科の専門的な学識経験者として大学の教授というような人方を、数も今お話が出ましたように千四百名くらい委嘱しまして調査をいたしておるわけであります。この調査員が五名一組になりまして、出て参った原稿をおのおの調査するわけでございますけれども、これは非常勤でございまして、学校の教務のかたわらあるいは大学における講義のかたわらやるわけでありますから、どうしても十分に参らないのが現状でございます。そうしてこれらの人々が調査されました結果が評点になって出て参ります。それを文部省の教科書課としては事務的に取りまとめてこれを審議会にかける。こういう庶務的な仕事を担当しておるにすぎないのでございまして、文部大臣がこの審議会にかけて検定はするのでございますけれども、その面におきまして、機構におきましてもはなはだ整備せられない点があるのでございまして、審議会におきましても従来は十六人のメンバーで検定分科審議会が構成されておりまして、今申しました調査員から出て参った調査の結果をそこに持ち込みますけれども、しかし人数の点から申しましても、なかなかその中身に入って検定をするというわけに参りませんので、大体調査員の調査結果がそこを通っていくという形に相なるわけでございます。かようなことからいたしまして、従来いろいろと教科書の内容について粗漏、不適正が指摘されましたことは、私ども担当局といたしましてはまことに申しわけない点があると思うのでございますけれども、しかしこのたびさような機構の欠陥にかんがみまして、審議会についても調査職員についても、教科書法を新たに制定して整備したい、そうして誤りなきを期していきたい、かように考えてこのたびの法律にさような点について相当な整備を加えた次第でございます。
  70. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで文部省内における調査局それから教科書課、こういうものを全部合せて、教科書の検定の事務内容にかかわらず、ともかくタッチをしておる人員はどの程度あるのか。
  71. 緒方信一

    ○緒方政府委員 教科書の検定事務につきましては、調査局では全然タッチいたしておりません。初中局の教科書課がこれを担当いたしております。内容の調査につきましては、教科書課の職員といたしましてはほとんどこれを担当いたす機構になっておりません。ただいま申しましたように、調査員の出して参りました調査結果を取りまとめるとか、そのほか発行、供給等の事務がございますので、それらの面にほとんどとられておりまして、検定の過程において内容について調査をするという機能は果しておらないわけでございます。
  72. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま一つ聞いておきたいのは、視学官制度ですね。こういうものは教科書の検定、それから教科の内容等の作成にタッチをするのかしないのか。タッチするとすればどの程度ですか。
  73. 緒方信一

    ○緒方政府委員 視学官は初中局に二名ございます。これは教科書の検定の仕事には全然タッチいたしません。教科内容あるいは教科の指導、この面につきましては総括的に初中局のその担当のものについて仕事をいたしております。
  74. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで結局現在文部省で直接検定事務を取り扱っておるのは教科書課だけ、いま一つは、それは内容には全然タッチをしていない、この二つが明確になりました。そういたしますと現在その事務を取り扱っておる教科書課の人員はどのくらいでありますか。
  75. 緒方信一

    ○緒方政府委員 二十四名であります。
  76. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで今度置こうとする四十五名の調査官というものは、これは一般に誤られやすいのは、従来教科書課というものがあって、そこで教科書に関する事務をやっておったが、手不足なんで四十五名を増員するのだというような印象を与えているが、今承わってはっきりいたしまするように、そうではございませんね。いわゆる今日までの教科書検定に対する文部省としての責任は、覆面の調査員の手を通じ、しかも大臣の諮問機関である審議会にゆだね、検定について文部省内のお役人の方々の意向によって左右されない、そういう形の一つの検定機構というものを設けられた。ところが今度四十五名これに設けられるというものは、これは省内に新しく設けられるのですね。従ってもう少しその点を承わっておこうと思いますが、この新しく予算措置をして設けようとしている四十五名は、文部省のいずれの部局に所属せしめて、そしてその仕事の内容はいかなるものか、この点を一つお尋ねしたい。
  77. 緒方信一

    ○緒方政府委員 大体ただいまお話のありましたように相なるかと存じますが、調査職員四十五名はもっぱら教科書の原稿の調査に当る職員でございます。この職員が専任職員としましてこの仕事に当りまして、文部大臣の検定に誤まりなきを期するために十分その職責を果したい、かような意味でございます。ただ今お話のございました、従来とはなはだしく変ってくるというお話でございますけれども審議会を置いて、審議会の議を経て文部大臣が検定を行う、この点は従来と変りございません。ただ先ほども申し上げましたように、従来の検定審議会、分科審議会でありますが、これは人数も少くて十分の機能を果し得ないうらみがございましたので、このたびは、先ほど大臣からお話のございましたように、八十名の委員で組織いたしまして、さらにこれに各教科別に専門の分科会も作りまして、専任の調査職員が調査しましたあと、さらにこの審議会におきまして専門的に検討していく、こういう機構を整備したいと思うわけでございます。
  78. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう少し伺っておきますが、従来は専門的分野は、主として現場の、それに特に経験なり見識を持っている方々を文部省が委嘱されて、そうしてその検討にゆだね、しかる後に審議会において取りまとめ、総体的な検討をやって、それを大臣が検定する。こういう形態になります。そうすると今度のあれは文部省に所属をする。間違いであればその点の訂正をしていただきたいと思いますが、文部省に所属する四十五名の調査官が中心となって、この人たちが専門的な研究をやる。これは非常勤ではありませんね。非常勤の人もあろうが、大多数は常勤だ。そうすると、いわば文部省に常時所属をしておる公務員である。これが主として専門的な分野を担当して、それの検討に当り、しかる後に審議会の議にゆだねる、こういう形態になるわけでありますね。
  79. 緒方信一

    ○緒方政府委員 その調査職員でありますが、従来の調査職員も非常勤でございますけれども、文部大臣の任命しまする公務員であることには違いございません。ただこのたびの新しく設置しようと思いまする調査職員は、お話の通り専任の調査員でございます。常勤の調査員であります。文部省の職員といたしまして設置するわけでございます。  それから今後行いまする調査の方法は、今お話の通り、大体今の四十五名の専任の調査員が中心となって調査に当ります。しかしながらなおその補助的な役割としましては、従来の非常勤の職員も使いたい、かように考えております。
  80. 辻原弘市

    ○辻原委員 この点が私は今後大いに検討、究明いたしていかなければならぬ点だと思います。今あなたが若干の言いわけというか、釈明がありましたが、従来のいわゆる覆面の調査員——私は覆面の調査員がいいのだとは言いませんが、覆面の調査員、この形態でやっていった場合といえども、大臣の任命だからその取扱いについては何といいますか公務員的な取扱いをなさってきた、こういうのですけれども、しかしそれは形式的な見方で、事実はやはり現場の先生であり、あるいは専門的なそれぞれの専門教科にわたる教育学者である。こういう人々の手によって行われた。その間にも欠陥はあります。ありますが、そういう行き方に対して今度は純然たる公務員、率直にいえば文部省のお役人、さらにいえば文部官僚が中心になって大体のところは作り上げて、そして審議会というのはあくまでこれは諮問機関なんです。その答申によって行わなければなりません。この方々は一つのニュアンスをぴしっと取りまとめる大綱的な役割しかやはり果されない。審議会の性格それ自体、大体はおぜん立てが整って、特別な問題がなければ通すというのが審議会の性格です。これが単なる諮問機関的なものであれば、それ自体事務局も構成し、またそれぞれその諮問機関には専門家も入ってやりまするが、もちろんこの審議会も専門家を網羅いたしますけれども、しかし日常それを繊細に積み上げ組み立てていくという仕事までこの審議会に負わしめるということはできない。そうすると事実上その検定についての大体の大綱をまとめるものは、結局この四十五名の文部官僚の方々が中心になられて、その検定の大綱がきまってくるということ、ここにわれわれとしては非常に——決して文部官僚がいけないというのではありません、あるいは力がどうとかいうのではありません。そういった一つのやり方——確かに一つのやり方でありましょうが、こういうやり方についてはいろいろと私どもとしては心配なことができるということを申し上げておきたい。しかもこういう今までのやり方とは非常に違う、今まではあなたの言われたように、確かに事務的なんで、文部省のいわゆる官僚と名のつく方々は直接それに対して内容がどうのこうのということは全然やり得なかった。その大綱はあげて審議会にゆだねた。専門的分野はそういった人々の広い範囲にわたっての意見においてやった。しかしその間に誤まりが出てきた。その何といいますか部分的な誤まりを是正しなければならぬということに、こういう根本的な改訂を加えられるということに、われわれははなはだ納得のいきがたい点がありますということを申し上げておきます。これについての是非の論はいずれまた機会をあらためましてもう少し検討していきたい。  それから次に問題としてお伺いをいたしたいのは、こういうような形に今度は教科書の検定というものが行われて、先ほど大臣がおっしゃったように、従来だって教科書の検定については別段基準なしにやっておったのではない。それには何ですか、先ほどお話になりました絶対要件と、それからもう一つ絶対がある限り今度は絶対でないやつがあるに違いないので、その二つの要件に基いて行われた。絶対要件というのはいかなる教科書においても絶対的にその基本を組み入れていなければならぬ、このいう一つの要素だろうと思う。これは一つどういうものか、それであるのか、あとで御説明をいただきましょう。しかもその絶対要件のさらに基本となるべきものは、これは先ほど大臣も言われましたが、現在の教育基本法である、現在の教育基本法に照らして絶対要件というものが生まれ、従って教科書は少くともその線を逸脱することがない、その線を逸脱したる教科書は検定ということに採用は相ならぬのだということになる。そういうことです。
  81. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいまのお話は検定基準のことでございますが、法律案の第五条にその規定を掲げておるのでございまして、教科書検定の基準は文部大臣がこれを定めます。定める場合には教科書検定審議会に諮問をして定めることに相なっております。現在行なっております検定基準は、ただいまお話のように絶対条件と必要条件とこの両方で構成いたしておりまするが、これにつきまして、さらに教科書検定審議会に諮問をいたしまして、検討をして適正なものをさらに作りたいと考えております。この教科書検定基準のさらに基準となるものは、この第五条にございますように、教育基本法あるいは学校教育法にその基準を求めたい、かように考えておるわけでございます。その基準に照らして検定をいたすということに相なります。
  82. 辻原弘市

    ○辻原委員 大体私が申したような形でありますが、その中に一つの重要な問題がある。それは大臣が諮問をした結果に基いて検定の基準がきめられる。絶対条件と必要条件といいますけれども、もちろん必要条件の方は相当こまかいに違いないと思いますが、絶対条件というものはそうこまかく書くわけにもいくまい。それにかわって今日作られているのが指導要領じゃないかと思う。もちろんそれ自体が直ちに検定の基準ということでありませんけれども、実際に教科書を作成し、あるいは編著者が書く、発行者が書くといったようなときには、その指標となるべきものは絶対条件、必要条件のほかに、もちろん直接の関係がありますけれども、指導要領というものが相当のウエートを持ってそれの基本になっている。ところがその指導要領自体は一体どういう形に作られるのか、私はこれも疑問なのですが、指導要領がどういう形で作られるか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  83. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいまお話のございました現在使っております検定基準が絶対条件と必要条件に分かれておりますことは先ほど申した通りであります。絶対条件は今三項目に分けておるのでございまして、わが国教育目的と一致しているかということが第一、立場が公正であるかということが第二で、第三はそれぞれの教科科目と指導目標が一致しているかというようなことでございます。このたび改訂をしようとする検定基準もこの第五条に基いて作りたいと存じますけれども、ただいまお話のありましたような各教科科目に関しまする条件といたしましては、検定基準の中に指導要領の中心的な部分はこれを取り上げていかなければならぬと考えております。その指導要領がどうやって作られるかという御質問でございますが、これはただいま学校教育法に基きまして、文部大臣がこれを定めるわけでございます。ただ、これを定めます場合には、文部省に設置されておりまする各種の審議会がございますので、これらの審議会に諮問をして作っておるのが現状でございます。これを作成いたしまする権限は文部大臣の権限でございまして、慎重に検討いたしておるのが現状でございます。
  84. 辻原弘市

    ○辻原委員 指導要領が文部大臣の権限になっているかどうかについても若干の疑問がありますが、後日にいたしまして、ともかく一番基本となる指導要領というものが、従来率直に言いまして、文部省部内で作られておる。そうして検定だけはそういう民主的な形をやっている。事実上検定の門戸は相当広く自由発行という制度をとっておるけれどもその一番根本のところで締めつけておるという現行の制度の中にも大きな矛盾があると思う。従って、ほんとうに大臣がかねがね言われる教育の自主中立性、あるいは広く識者を集めて、一つ教育指針を作り、いい教科書を作っていくのならば、少くとも指導要領の作成からいま少し検討してみる必要があると思う。指導要領、それから検定機構、まずここだけの分野においていろいろな問題がひそんでおる。教科書の値段が高いからこれを引き下げるとか、あるいは採択をどうするかということも重要でありますが、検定の門戸をいろいろ組み合せた形でやることによって、おのずからこの可否の範囲が小さくなったり、あるいは広くなったり、いろいろなことがそこに行われますので、本日は時間がありませんから、それ以上のことを私は申し上げようとは思いませんが、そうした点につきましても、われわれとしてはこの法案の検討に当って刻明に大臣の御所見を承わりつつ検討を進めたいと思います。  そこで検討の都合上、先ほど申しました諸外国における教科書制度の変遷とその実情。それから、私の今の質問でだいぶん明らかになりましたが、各発行者がまず作ろうと考えて、編著者を依頼して、文部省に持ち込んで、それが検定教科書として発行されるまでの経路を、一つ図示をしてわかりやすく御説明のできるような資料を整えられて次回の委員会提出されるよう、最後に要望いたしまして、残余の質問は留保して本日は終りたいと思います。
  85. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいま御要求の資料のうちで、外国の制度の変遷ということでございましたけれども、これはちょっとむずかしいと思いますので、現状につきましてなるべく正確なものを提出したいと存じます。これはただ外国の制度でございますので……。
  86. 辻原弘市

    ○辻原委員 外国の制度についてあなたのところで出したのがあるのだが、変遷がわからないのです。古い時代は要りません。
  87. 緒方信一

    ○緒方政府委員 なおついででございますが、前回御要求になりました教育委員会に対する資料は、きょう一部を差し上げてありますので、ごらんを願いたいと存じます。
  88. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 この際、先ほど辻原委員より質疑のありました点について内藤政府委員より発言を求められておりますのでこれを許します。内藤社会教育局長。
  89. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 先ほど辻原委員から、不良文化財の排除につきまして、映画審議会はどういうことをしているかというお尋ねであったと思いますが、映画審議会は昨年の十月十四日に発足いたしました。その構成は大体映画業者が十四名おります。これは製作業者、興業者等を含めてであります。一般の学識経験者がほぼ同数でございまして、毎週一回ずつ開いておりまして、すでに十八回ほど回を重ねておりますが、この中で問題になりました点は、映画行政が、輸入の関係では大蔵省、環境衛生の面では厚生省、映画の審査関係では文部省、割当の面で通産省関係もございます。こういう点から、これをどこかでまとめて総合的な対策を審議しようというのが目的で発足したわけでございます。この間の問題になりましたのは、現在までのところ外画の輸入の問題でありまして、輸入の割当をふやせとか、あるいは現在の実績割当に対して不満があるとか、欧州映画をふやせとか、こういう輸入の関係、それからそれに伴う蓄積円の処理の問題、それから入場税を、たとえば教育映画を上映した場合には入場税を負けるとか減免しろとか、その他二時間半興行をどうするか、こういう問題が中心であったようでございます。またこの不良文化財、不良映画の排除というような問題には、映画審議会は入っていないようでございます。ただこの点につきましても、文部省といたしましては、映画の選定委員会を設けまして、いい映画を広く普及するように、教育映画及び劇映画を通じて、できるだけいい映画を推選して参る。そしてこれを速報で都道府県にも流し、また文部広報等で、各学校にも流しまして、いい映画を見るようにいたしまして、不良な映画を見ないように指導しておるのでございます。  なお特に悪質な映画につきましては、たとえば暴力教室のごときものにつきましては、文部省からも通達を出しておりますが、府県には、青少年保護条例というものが大部分の府県で制定されておりますので、この保護条例によって、青少年に観覧禁止の措置をとっておるのであります。その他条例の制定されてないところでは、県の方で学校長を指導いたしまして、不良な映画を見ないようにという措置を講じておるのでございます。
  90. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本日はこの程度とし、散会後本委員室で理事会を開会いたします。次会は公報をもってお知らせします。  これにて散会いたします。     午後四時五十五分散会